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1952-04-25 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十五日(金曜日)     午後一時五十三分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 小川 平二君 理事 中村 幸八君    理事 山手 滿男君    阿左美廣治君       江田斗米吉君    小金 義照君       永井 要造君    福田  一君       村上  勇君    佐伯 宗義君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君       上林與市郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         経済安定事務官         (総裁官房経済         計画室長)   佐々木義武君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君 四月二十四日  委員小金義照辞任につき、その補欠として池  田正之輔君議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員池田正之輔君及び青野武一辞任につき、  その補欠として小金義照君及び上林與市郎君が  議長指名委員に選任された。 同 日  理事小川平二君の補欠として多武良哲三君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  連合審査会開会に関する件  電源開発促進法案水田三喜男君外五十一名提  出、衆法第一六号)     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず電源開発促進法案を議題といたし、質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。佐伯宗義君。
  3. 佐伯宗義

    佐伯委員 私はただいまから電源開発資金の面から安本長官にお伺いしてみたいと思うのであります。  現在の電力会社におきましては、再編成以来着々と電源開発計画を立てまして、昭和三十一年度までに約三千一百餘億を投じて二百五十万キロの開発を行わんとしておるように承つております。そこで安本では、資金の面から見ましてもあるいはまた資材の面から見ましても、この計画が予定通り遂行されると思つておられますか、御意見伺つてみたいと思うのであります。
  4. 周東英雄

    周東国務大臣 ごもつともなお尋ねでありますが、自由党で立てております案は、大体昭和三十年までに開発をするという計画でありますが、この間の資金計画といたしましては、こまかい出入りはありましようが、大体四千五百億程度考えております。初年度、二十七年度には約一千二百億円程度でありますが、この間に初年度においては政府資金関係が約六百十億円ほどあつたと思います。これだけくらいの資金計画でありますならばまず遂行は可能であるというふうに考えております。資材の面につきましても、鋼材とかセメントについては、今後における生産計画遂行状況ともにらみ合せまして、初年度に必要な分については実行可能なりと考えておるのであります。電線等については多少きゆうくつな点がありますが、これも銅鉱石等原鉱の輸入というようなことと関連いたしましてやつて行けるものと考えております。おそらくあなたのお尋ねは、やつては行けるだろうが、その点はほかの産業に影響しやしないかという問題だと思います。それがためには資金なんかにつきましてもぜひとも外資というようなものの援助を仰ぎたいという気持を持つて、いろいろな点から努力はいたしております。しかしながらそれが最悪の場合だめだと仮定した場合にこれをやめなければならぬかということでありますが、それはそういう計画でないのであつて、ただいま申し上げたような計画は、国内における資金資材の面から考えて、最悪の場合においても他人を当てにしないでやつて行けるという計画であります。それがためには場合によつて電源開発に関する資材資金重点的使用考えられなければならぬと思います。そういう面から極端な場合には、他の産業方面に影響が全然ないとは思いませんが、何と申しましても電気というものは一番基本の産業でありまして、これをやらなければ、日本の未稼働工場なり、餘剰労力を活用して行くことはでなきいのでありますから、そういう面から電気を優先的に考えるという考え方も含めつつ計画を立てておるのでありまして、大体今の計画遂行に対しては実行できるものと政府の方でも考えておる次第であります。
  5. 佐伯宗義

    佐伯委員 ただいま安本における総合的計画の一環である電力開発資金の心強いお話を承りまして了承いたしました。そこでいま一度お伺いしてみたいと思いますのは、この電力資金のうち本年度事業費を見ますと、八百七十億で、そのうち三百億は見返り資金によつておるようでありますが、残りの五百七十億は自己資金になつておるのであります。ところでまたこのうちの予想伺つてみますと、資本増加倍額の約七十二億、社債が百二十億、金融市場からは約九十億、それに内部資本保留が約百六十億、預金部資金予想が百三十億というように一応の目途をつけておるようでありますが、そこで安本長官伺つてみたいと思いますのは、なるほど三百億の見返り資金預金部資金の百三十億、これがきまつたかきまらぬか知りませんが、かりに政府がめんどうを見たといたしましても、現在の電力会社におきまして資本倍額増資七十二億、それから内部資本償却保留になりますのが約百六十億という厖大なものを予想しておるのでありますが、この二つが一般金融市場資金の収集あるいは社債引受けの原因ともなるのでありまして、この自己資本面から、現在の電力会社現状をもつてこれが可能性を持つものでありましようかということを承つてみたいのであります。
  6. 周東英雄

    周東国務大臣 この点はごもつともなことと思います。しかし今日の状態からいたしまして、民間資本蓄積というものも毎年々々最近はふえるような状況でございます。ことに最近における税法等の改正におきまして、資本蓄積内部留保等につきましては、大分各産業——これは電気会社だけではありませんが、一般的な法人関係においても資本蓄積がふえているようであります。一面民間会社等社債に応募する資金源というものは、民間蓄積増加を望むとともに、一面においてはある場合に今御指摘のような資金運用部資金によつて応ずるということも考えられるのでありまするが、こういう面については御承知のように資金運用部資金も年々増加しておりますつ今度はいろいろ銀行団の方から御意見が出ているくらいに、郵便貯金の金利の大幅の引上げというようなことも考えられており、あるいは今度提案中の簡易保険保険金の増額というようなことからいたしまして、新たに長期資金に充てらるべき資金源というものが政府関係においても相当にふえて参つたわけであります。こういう面から社債等においての応募ということも考えられます。また銀行が貸し出すべき金の資金源とし、銀行金融債引受けを認めて、これに資金運用部が応ずるということも政府考えております。そういう面からいたしまして、民間資本並びに政府資金関係方面から電力会社等社債に応じ得るように考えを向けて、しかもこれに優先的に向けて行きたいと考えているのであります。御指摘自己資金としての株式増資ということにはかなり問題があると思います。それでありますから今度もかなり電力料金引上げ等に関して大幅な配当金の増ということを考えて来られたわけでありますが、これはもつともな考え方ではありますが、私ども株式増加をするということ、ことに政府がそういうところに力を入れているという考え方から、一足飛びに一割五分の配当に持つて行くということはいかがか。なるほど一般企業から見れば株式配当というものがかなり多ければ株式に応じやすいということがありましようが、私ども考え方といたしましては、一割五分の配当ということを必ずしも否定はしない。しかしある程度企業努力によつて利益から株式配当増加考えて行くのが原則であつて、できるならばそのコスト計算においても株式を保証するようなかつこうになりますが、料金を上げて一定の株式配当まで持つて行くという考え方については原則的には否定的であります。しかし今度私どもの方では一割くらいは料金引上げによつてコストから配当金を確保するということも一つの見方であろう。あとの五分くらいのところは企業努力、あるいは経費の節約によつて出すということによつて行けないかということを言つておりますが、私は電気事業公益性ということを考えて、これは今日株式配当が多いとか少いとかいう問題ではなくて、そういうことよりも分量をふやしてもらうということのみに国民大衆は希望があるのでありまして、ある程度電気需用をなすものに対する株式の割当というようなことを希望している向きもありますので、樂観ばかりはいたしませんが、相当株式増資もできるのではなかろうか。その間一時的の金融的措置といたしましては、先ほど申しましたような資金運用部等金融債引受けによる銀行からの貸出し、あるいは長期資金に持つて行くということも考えております。まずそういう方面においては増加ができるものではなかろうかと考えております。
  7. 佐伯宗義

    佐伯委員 昨年度までにおけるわが国の電源開発資金の大部分自己資金にまつことなく、要するに政府資金が多いのであります。本年度からは三百億に五百七十億という厖大な比率が自己資金によつてまかなわれなければならないということになつて参つております。のみならず過去における電力会社はほとんど借入金でありまして、資本の十倍以上の借入金を持つている。ことに御注意を願いたいのは、公益事業は総じてその社会性から制約を受けまして、いずれの会社におきましてももうかつて、そしてそれを社内保留金に振り当てて行くことは不可能な現状になつているのです。安本長官にもよくお考えを願いたいと思いますことは、こういうことをお聞きするゆえんのものは、新たな特殊会社が出発することの前提として、非常に重要な役割をするという点から伺いたいのでありまして、今日まで電力会社資金の大部分借入金によつて建設して来ている。しかも自己資金の十倍以上の借入金を持つている。ところが本年度からは八百七十億という建設資金のうち、つ三百億だけが見、返り賣金で、あと五百七十億という厖大資金自己資金で用意しなければならぬ、その内訳の中で、七十二億は倍額増資、それから百六十億の社内保留金というのは利益金ですね。ところが現在日本における公益事業におきまして、利益金から建設費に振り充てるというがごとき資金が生れて来ている会社はないのです。今一割五分の配当をやれば株式有価証券といたしまして滿市場において資本増加が可能であるという御説明伺つておりますと、今度の電力料金値上げを全画的に御承認になるかどうか。全面的に御承認になるならばただいまお答えの七十二億の資本増加をまず可能と見ましよう。その次にこの百六十億という利益金建設費に振り充てるのですが、大体今までの足取りを見ますと、一部公益事業等電力料金とかあるいは鉄道料金等値上げをいたしますときには、値上げと同時に、陰にひそんでいるところの労働賃金値上げというものがそれに付随している。インフレが停止したとは見られません。現実におきましてはそういうことがうかがわれる。電力料金値上げして一割五分の配当が可能であるかないかということは、来るべき時期になりますと容易ならぬ変革を来す。どの公益事業も今日まではそういう名目のもとに料金値上げをいたしますけれども、その間にずれが生じまして結局は利益が生れておらぬという現状です。いわんや日本の国がここで独立いたしまして、それ相当に労働問題も激化するものと考えられる。二割八分くらいの料金値上げは結局電力事業体における労働賃金値上げということを呼び起しまして、今、電力会社予想しております百六十億と七十二億というものに大きな支障を来す。それがまた社債の募集あるいは金融市場の圧迫というような問題から、今まではわずかの自己資金を用意すればよかつたものが、一挙にして五百七十億というものでは容易ならざる暗礁があると私ども考えるのであります。しかしこれは前途におけることでございますのでこういう見地に立つておりますし、安本長官は、これはまつたく安易と言わないまでも、電力会社がやつて行けるであろう、こういう御見解であるかのごとくわれは心強く思うのでありますけれども、次に伺うところの前提といたしましてこの問題についての所信をもう一度承つておきたいと思うのであります。
  8. 周東英雄

    周東国務大臣 私どもは、電源開発計画を立てる上において、その最も重要な点における資金計画については、先ほどから申し上げましたように、このくらいの程度のものであるならば、実行可能なり、かように考えておるのですが、資金内容等につきまして、多少御意見の違う点があると思いますので、一応政府委員から詳しく説明いたさせます。
  9. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 それでは電力会社自己資金内訳をもう少し詳しく申し上げます。二十六年度と二十七年度を比較して申し上げた方が便宜かと思いますので、両方について申し上げます。二十六年度は、内部留保が百十四億で、社債が七十億、増資はありません。借入金が九十億、それから需用者負担という特殊なものがあるのですが、これはあとで御説明申し上げますが、これは二十六年度にはございません。三十七年度でそれをどういうふうに見たかといいますと、内部留保がり百四十五億、社債が百十三億、増資が七十二億、借入金が二百十億、需用者負担が三十億、こういうふうな内訳になつております。そこでただいま御質問になりました内部留保の件でございますが、これは主として積立金でございまして、二十六年度に比較しても、さして増加しておりません。このくらいは当然積立金として、償却分として保留する分でありまして、これはあまりたいして問題はないのではないかと考えております。社債の方も、これもずいぶんこの審議をいたします際に、公益事業委員会大蔵省、それから安定本部等次官クラスくらいの人たちが集まつて協議会を開いて何度ももんだのでありますが、自由党政調会の方から、これが一番重要な問題だから、とことんまで納得したいというのでずいぶん検討いたまして、大蔵省の方といたしましても、公益事業委員会の方といたしましても、これくらいは大丈夫だということで組んだ数字でございますので、大体これで行けるのではないかという感じがいたします。  それから次の増資が、おつしやつたように一番困難な問題かと思います。また先ほど長官お話もありましたように、今度の料金値上げ等との見合いもあることでございますから、この点は相当問題かと思います。しかし今度の問題さえある程度合理的に片づきますれば、これもそう問題なしにできるのではなかろうかという感じもいたします。次の借入金でございますが、これは先ほどお話がありましたように、この中で百三十億ないし百五十億を、初めは百億の考えで行つておりましたが、預金部金融債引受分からつくり出したらどうだろうかということになつておりますので、去年と比較して、純増分としては、ひもつきを除きますとほとんどありませんので、これくらいは行けるであろう。あと需用者負担は三十億つくつておりますが、初めの考えでは、業界の人たちの話を聞きますと、大口需用者等にある程度資金社債等でつのれば、あるいは電気供給等見合つて相当の金が集まるのではないかという話が相当多うございましたので、一応三十億くらいは軽く——軽くというと語弊がありますが、何とか方法によつては集まるのではないかということで、特に需用者負担というものを掲げたのでございます。しかし、この扱いはその後どういうふうに扱うのか、いまだ電力会社も正確にきめておりませんでしようし、政府といたしましても、まだこの問題の具体的な解決までには入つておりません。大体全部を合せますと、五百七十億という自己資金調達分に関しましては、増資の面で若干問題があるだけで、ほかはほぼ大文夫ではなかろうかという感じがいたします。
  10. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの政府委員説明にちよつと補足をさしていただきたいと思います。それは増資の問題であります。増資が若干むずかしくはないだろうか、問題になつておるというお話であります。私は増資は必ずできると考えておるのでありまして、なぜできるかといいますと、大体株の問題は、佐伯さんは実業家でいられるからわれわれ以上おわかりでありますが、とにかく政府としても、一割くらいの配当は、今度の電力料金値上げでも認めるということを言つておられる。一割の配当であるが、合理化された上は一割五分になつても、それはかまわない。こう言つておりますれば、先行きは、見通しとしては明るいわけでございます。もちろん一割五分という配当が、ほかの会社に比べまして非常にいい配当であるということにはなりませんけれども、一割五分将来配当があるということになれば、少くとも株価は五十円の額面にとどまることはございません。従つてそういうことを反映しておるかどうか知りませんが、最近は五十円を上まわりまして、東京電力のごときは六十円以上にもなつておるし、関西も五十五円、これが五百円勢になつておりますから、五百五十円とか六百何十円とかいう数字が出ております。そういうふうに、少くともある程度額面を上まわつておる。その場合に増資をいたしまして水ぶくれになつた場合に、これに配当ができるかどうかということが一番大きな問題になるのでありますが、御承知のように、今の電力会社の持つておる資産というものは、大きく見積りますれば八千億円とまで言われておるほどでありまして、わずかに七十二億の資本金でありますから、これが倍になつたとして、これに配当をするといたしましても、そう不健全な資本というか、株式拂込みと実際の採算とのつり合いがとれないということにならない。こういう意味合いで、いよいよ配当が一割つくのだということになつて来れば、私は大体六十円くらいのものにはなると思う。増資をいたしますれば額面でもらえるのでありますから、そうすれば、そのプレミアムの十円というものはかせげるということになるのでありまして、当然株価も七十円くらいまでは行くようになるだろうと思うのであります。そういうことから考えましても、増資というものは、一割配当であつても決して困難ではない。将来また一割五分の配当ということになれば、一割五分を見込んで、一応今の株価水準から全部を計算してみると、七十円でも、七十五円でも、八十円になつても、一割五分まで配当があるということになれば、できるということになるのでありますから、政府として大体一割程度までは一応認めてやろうという方針でありますならば、私は増資は、一応倍額増資という金はできるのじやないか、かように考えております。
  11. 佐伯宗義

    佐伯委員 たいへん私どもが案じておりました、政府特殊会社をつくられるゆえんのものは、現電力会社ではなかなか資金も困難である、能力もないのじやなかろうかというように心配をしておつたのでありますけれども、ただいまの御説明によりますと、何ら心配はない。現電力会社では、すでに三千有餘億の大きな経費を立てて、二百数十万キロの開発を行つておるのに、支障はないだろうという御説明を承つて、非常に心丈夫にしておるのであります。なお先ほど数字の上において、いささか私の調べと違つておるところがございますが、これは後ほど伺うことにいたしまして、政府は新たな特殊会社を設立して、そこで約二千六百九十有餘億を役じまして、二百六十七万五千キロを開発せんとする計画を発表されておるのでありますが、この建設費の中で伺つてみたいのは、九電力会社が建設いたしますキロ当り建設費よりも約三割ほど安くついている。もつとも電力会社におきましては送電線、あるいは変電所の設備というようなものも入つているかと思いますが、つまり現電力会社が二百五十万キロに対して三千百億餘を要するのに対しまして、特殊会社では二百六十七万五千キロを開発するのに対して、二千六百九十有餘億、約一キロ当り十万になつている。そうすると、電力会社建設費よりも非常に安くつく。これは何か発電所外のものが含まれていると考えますが、そういうものがあるのか、また裸にして同じような建設状態において特殊会社は安くできるのであるかということについて承つてみたい。
  12. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 ただいまの御質問数字でございますが、電力会社の方には送変電施設及びその他の改良費を含んでおりまして、これが千四百億ばかり入つておりますので、それを引いてもらいますと、それほどひどい差にならぬ勘定であります。なおそれにいたしましても電力会社の分と特殊会社の分では新規の建設分を計算いたしますと、この前にも申し上げましたように、発電コスト電力会社の方は二円六十五銭キロワツト・アワーでございますが、特殊会社の方は三十一年度配当なしの場合には一円九十四銭、これに六分の配当を見ますと、二円四十五銭キロワツト・アワーになりまして、それでもなお若干安いことになります。この差はどういうところから来ますかと申しますと、主として借入れ利子の差と崩しますか、また配当関係から来る差でございます。
  13. 佐伯宗義

    佐伯委員 大体私ども特殊会社は河川との総合的開発という面から申しまして、非常に建設面が悪くなるので、そういうものでなければ民間ではできない。こういう見地に立ちまして、むしろ非常に高くつくであろうと考えられるのでありますけれども民間建設費よりもなおかつ安いという性格は、いささか国家財政資金までも総動員してする性格とは相反するように考えられる、こういうところに矛盾があるように考えられますけれども、その点はお伺いいたしません。大体この資金のまかない方を見ますと、財政資金によるもの約一千億、それから資金運用部資金の総動員によるもの約六百億、さらに国家資本と同額の民間資本一千億を吸収するという御計画なんです。そこで九電力会社が、現に日本の国は電力に重点傾斜しておりまして、非常に大きな資金を総動員しておる。それですら困難なのでありますのに、そこへ持つて来て国家特殊会社をつくつて国家財政以外にさらに民間資本を一千億吸収するというがごときことは、私ども常識から考えますと、やはり九電力会社電源開発資金というものは困難になるということが想像されるのです。しかしながらこの点は見解の相違であると一蹴されればそれまでのことでございますが、これは私どもとしては、日本経済力をもちましてこのようなことはなかなかむずかしい、いずれか一方が困難性を持つて来るであろうと考えさせられます。そこで私はむしろそういうことよりも、現在の電力会社はすでに緒についておるのでありますから、一応はこの資金の安定を来さしめて、そしてこれが完成をまつてさらに新たなる計画を立てられることが安全なように思うのであります。しかしこのこともまたおそらく政府といたしましては不安がないという御答弁になるかと思いますので、この質問もこれでおきます。  そこで聞いてみたいと思いますのは、政府が発表しておられますのは二百五十有餘万キロ、大きいようでありますけれども、大して大きなものとは見られない。政府でなければできないものとは考えられない。ということは、すでに日本には既設一千万キロというものが民間でできておる。その上に今度また三十一年までに民間の二百五十万キロというものも政府は何とか資金ができるだろうというふうにやつております。そこへ持つて来て全国一社というような大きな性格のもとに、わずか、二百五十万キロの特殊会社が生れ出る必要があるであろうか、この点なんです。これはまじめに、安本長官からお伺いしたいのであります。この全国一社という性格は、正直に受取つてもらわなければならぬのであるが、電源開発というものの性格が、国家という強大なる権力を背景とした特殊の全国一社という体系の会社ができるといたしますならば、私は企業能力を失うものであるということは、正直に安本長官はお考えになられるであろうと思うのです。三百五十万キロぐらいでありますならば、現在の既設電力会社がもうすでに一千数百万キロに達するのと対比いたしますと、規模の上におきましても、能力の上におきましても、技術陣営の上におきましても、どの面から見てもこれよりも劣る。小部分のものです。さようなものがその必要な電源開発地点の会社をつくるというならば、これは国家的な電源開発を阻害することはなかろうけれども、かような小さなものが大きなものを全部抑圧するがごとき全国一社の特殊会社というものに無理があるのではなかろうかという点を私はまじめに考えさせられるのであります。もつともこの全国一社の特殊会社をおつくりになるという場合に、現在の既設の設備の中には御承知の通り旧日発の全国一社的な、日本全国的な一つの大規模の発電所の送電線があるのです。これを一応取上げられて、そうしてその計画のもとに全国一社をおつくりになるというならば、私は理論の筋も通ると思います。その方を全然手を触れず、そして技術陣営も持たなければ、何らの関係もない、いわゆる全国一社という観念的対象のものをおつくりになるところに私は非常な無理があるように考えられるのでありまして、この点について何とかひとつまじめな、納得の行く御説明を聞かしていただきたいと思うのです。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 党の方から提案せられておりますので、提案者から説明するのが正しいと思いますが、政府自由党の案に同調いたしておりますから、便宜私から申し上げます。ごもつともなお話でありますけれども全国電源開発を一社に独占するということは、この法案には出ておらないのであります。電源開発をする一つの特殊な形態として、ここに特殊会社ができるということにはなつております。電源開発は、あくまでも従来の九つの電力会社はもとよりのこと、地方公共団体も、また各企業の自家発電も、これはみな並行してやつて参るわけでありまして、この点は従来の日発のごとき、全国を一社に統一してそれだけが電源の開発をやつて、ほかのものには一切だれにもやらせないということは、よほど違つておるのであります。今度のは、往々にしてこの特殊会社全国一社で開発を独占するがごとくに見誤られがちでありますが、この点ははつきりと申し上げておきたいと思います。しからば新しく、どの部分でも担当する電源の開発機構として特別な会社をつくるか、こういう御質問ならそれはわかります。従来の九つの会社だけでもやれぬことはないではないか、こういう御意見のように拝聴いたしますが、これは私は考え方の相違だと思う。現在九つの会社考え方におきましても、いわば公益事業委員会等の考え方でも、今の会社だけで独立にやれないような経済状態なり、会社内容ということでは、むしろ新しい会社をつくつてやりたい、それには今の九電力会社の二社なり、三社なりを合同した新しい会社機構をつくつて、それでやりたいという意見すらあるくらいであります。これは新しく開発機構ができても、別に異論はないのじやないか。問題は、今伝え聞く公益事業委員会の案では、民間会社の合同による新会社をつくるということと、私らの、法律に基く一つの特殊会社をつくつて、それで一部を担当して行こうということだけの相違である、こういうふうに私は思います。
  15. 中村純一

    中村委員長 ちよつとこの際申し上げます。本会議が開会されて記名投票がございますので、暫時休憩いたしたいと思います。記名投票終了後再開いたしたいと思います。     午後二時三十三分休憩      ————◇—————     午後三時六分開議
  16. 中村純一

    中村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事小川平二君より理事辞任の申出がありますので、これを許可し、その補欠として多武良哲三君を理事に御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 中村純一

    中村委員長 御異議がなければ、さようとりはからいます。  なお農林委員会より臨時石炭鉱害復旧法案に関し、連合審査会を開きたい旨の申出がありますので、連合審査会を開くことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 中村純一

    中村委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。     —————————————
  19. 中村純一

    中村委員長 それでは先ほどに引続き、電源開発促進法案に関し、質疑を続行いたします。佐伯君。
  20. 佐伯宗義

    佐伯委員 先ほど安本長官お話では、全国一社というのは、あえて他の公営あるいはまた民間企業を許さぬものでないというお話でありましたが、私ども全国一社と申しますることは、公営企業にいたしましても、あるいはまた自家発電にいたしましても、各九電力会社にいたしましても、全国を対象にしておらない一定地域の電源開発という特定のものであります。しかるに今度の特殊会社と申しまするものは、全国を対象とすることができるのであります。こういう点を、われわれは全国一社制と言うのであります。この点については、先ほど安本長官お話によりますれば、公益事業委員会が出している特定地域における電源開発をする特殊会社という性格のもののように聞くのでありますが、この電力会社は、全国いかなる地域でも随時随所にその地点を選ぶことができるのであります。つまりこの特殊会社の企業区域と申しますのは、全国を対象としておるのであつて、それでこれをわれわれは全国一社制と信じておるのであります。なおまたこの電源開発株式会社説明内容並びに法案に盛られている一貫している考え方は、やはり全国一社の特殊会社であるということが、すでにこの法文の中におきましても、この会社以外に電源開発会社の名を使つてはいかぬということではつきりしております。こういうことの必要はどこから来るか。それからまた政府提出の説明書の中には、昭和三十一年までは九電力会社のいろいろな開発地点、その他の計画資金を発表しておりますけれども、その後のものは全部電源開発会社がかわるごとき説明になつております。これはもちろんそこに附則といたしまして、それからは必要あらば電力会社開発計画をなさしめるというふうに説明はしてあります。説明はしてありますけれども、元来この特殊会社がかくのごとく大げさに生れ出るといたしますならば、おそらく電力の総合的な性格上、私はやはり今後はこの会社において全国的に開発だけのことはやつて行かれるべき性格だろうと考えられるのであります。この点に対する御見解を承つてみたいと思います。
  21. 周東英雄

    周東国務大臣 なるほどほかの九つの会社はそれぞれの地区の中にある開発をすることになつております。その点から見ると、こちらの方は各地域にまたがつている箇所を開発し得るという点について、これが全国的な会社だと断定される。それはその意味においてはその通りでしよう。私の言うのは、よく言われるようにこの開発会社というものが全国一社で、電源の開発はこの会社をおいてほかにはやらせぬ、こういうような独占形態ではありませんということを言つているわけです。よく日発の再現だとかいうことを言われますのがその点なのであります。これははつきりしてもらいたい。日発では全国至るところでも、公共団体にも開発を絶対に許さないで、あれだけの独占的な形態だつた、ここに全国一社という意味があつたわけであります。それと比較したら違うのだということをはつきりしておきます。もしも開発の地点がほかの九会社のように各地域別になつておらぬということを御指摘になつて、これが全国一社だというような観念におとりになるならば、これはその通りでありましよう。その点に私は異議はありません。しかしこれなども無制限にやるというようなものではなくて、およそ特定された箇所について、なるほど九電力会社よりも広い地区にまたがつておりますけれども、独占するにあらずして、急ぐ電源開発に対しては他の九社も並行してそれぞれ担当して開発を進めて行くというところを私どもは強く主張いたしたいと思います。  それから三十年までの計画はいろいろあるけれども、それ以後はこの特殊の電源開発会社だけにやらせるのじやないかという御質問であります。これは私もその後における動き方はどうなるか、先のことはよくわかりませんが、ただいま考えておりますところにおいては、その後独占的に開発だけはこれが担当するとかいうことは考えておらないのであります。
  22. 佐伯宗義

    佐伯委員 安本長官全国一社観念というものの必要性は、どこから起つて参るかと私どもが申しますのは、企業の性格が対等のものでありますれば企業意欲を阻害しないのでありますが、もし同一企業の中において権力的なものがありますと、どうしても一方が衰えるということはまつ正直にお受取り願いたい。企業というものは自由な立場において競争しつつ進歩発展して行くものである。ですから社会主義理論から申しますならば、国有化というような問題は同一事業がことごとく国有化されるべきものであつて部分的に国有化すべきではないという信念をわれわれは持つている。全国一社でなくて、各個々の企業会社にも電源開発せしめるのだと言われることは、それは申し上げるまでもなく現在はそうなつておりますが、全国一社の特権的な、権力的なそういうものが存在すること自体が、むしろその企業における発展性を阻害するということをわれわれは案ずるのであります。現に日本の国の交通発達史の上におきましても、御承知の通り国有鉄道は明治三十三年に国有化されました。爾来ごらんの通り日本国有鉄道は非常に発展して来たとは申しますけれど、欧米各国に比較いたしますと実に三等国のイタリアと同じです。そして地方鉄道はどういう状態に置かれておるかというと、大木の陰にひそんでおるがごとき日陰者である。そしてそこには民間企業の創造意欲というものは盛んにはなりません。だからそういう場合には、すべて鉄道は国有とすという一つの原則に基いて、一種の人類平等の原理に立つことが最もいいことであろう。今度のこの特殊会社性格は国営ではありませんけれども国家管理の性格の非常に強いものとわれわれは見ております。こういうものを御採用になる場合には、好むと好まざるとにかかわらず、電力事業を全部こういう性格にするのだということであれば問題はない。非常にあいまいなものの存在が電力界に生れ出ることは畸型児である。現に日発がどれだけ非難されたか。私はこういうことを攻撃したくありません。この特殊会社それ自体が特権的なものを持つて生れ出ることは、日本国民の一人として見ますと、せつかくの電気事業の出鼻をくじくものであるという強い観念を持つのでありまして、そういう点から全国一社制を非難するのであります。しかしこれは見解の相違でそういうものは生れても何でもないのだとおつしやればそれまでのことでありましよう。結果を見なければ明らかにならぬと存じますけれども、今安本長官のおつしやるようなものでありますれば、いま一歩お讓りになさつて、特定の地点における特殊会社をおつくりになるというだけの雅量をお持ちになることはできないのであるか。それ以上にそれを一つにしなければならぬという理由はどこにあるかということを承つてみたいと思います。
  23. 周東英雄

    周東国務大臣 その点は結局意見の相違です。政府が財政的にゆたかであれば、お話のように地点ごとに特殊会社をつくつてみることも一つの行き方かもしれません。しかし今の状態ではそういうようにたくさんの地点ごとにつくるだけの財政的餘力もない。しかも一面には民間企業としての九発電会社もありますし、それに対しては政府はやはり見返り資金なり資金運用部資金というものの融通もいたしまして、できるだけ開発については協力をしておるのであります。それと並行して、特に国土総合開発等の見地に立つて電力発電ということに対するダムの建設と、治山治水の立場に立つて洪水調節なり灌漑用水に対するダムの建設を総合的に考えるときに、それに対してまとまつた行き方をして行きたいという意味もありますし、特に政府の出資による民間会社は、法律こそ特別法でありますが、これは公社でも何でもない、特殊法人でありますけれども民間法人であります。そういうものをほかの会社と並行してやらせることがなぜ悪いのかとも思うのです。総合開発計画に基く電源開発を、そういう国で出資した会社に総合的にやらせつつ、他の会社と並行して早く電源開発を促進する、こういう立場に至ると意見の相違になると考えます。今のお話のように特殊地域別に別々に特殊会社をつくらなければならぬとも私は思わない。まずこれでやつてつて、それで背負い切れないようだつたらまた別につくることもよろしいでしようし、また民間会社の合一によつて一つの新しい会社をつくるのも私はよいと思います。私はそこのところが、物事は常にある意味においては一線を画して、右か左かということでなくてはならぬということを考えるのは、日本人的な潔癖性かもしれませんが、経済の運用にあたつては、右にあらずんば左ということでやることだけは、政治なり経済の運用を的確にするものとも考えておりません。
  24. 佐伯宗義

    佐伯委員 どうも安本長官に敬意を表しておりますが、右か左かは、反対に私の方から御質問したいのであつて、何も私は特殊会社をおつくりになるのが悪いというのではありません。企業にはいやしくも安定性を与えなければ、その企業は発展しないことは、私が言うまでもなく、安本長官はよく御承知である。いわんや電力や鉄道事業は、厖大なる建設を要する。そこに国家料金を認可制にいたしましたり、施工方法にしても免許を与えたり、あるいはまた供給区域には一定の権限を与えたりしておるのであります。私の言いたいことは、そういう一定の制約を受けると同時に、国家は一定の保護を与えておる。それが義務と同時に保護を与えられる権利がある。しかるに今度の特殊会社のみは、随時随所に、それに超越していつでもやれる、こういうことになつて来るのです。国家であるがために、さしつかえないのだとおつしやる。この点でありまして、なるほどいかなる面におきましても、この九つの会社以外に、同一の会社であればさしつかえない。今度の会社は、なるほど特殊法人だとおつしやいます。しかしながらその構成要素を見ますと、強い国家政治意識が介入しておる。国家が過半数の株式を所有し、その経営者は国家が任命するという国家管理の強い意思が、私は入つておると思うのであります。また特権的なものであるということを、国民ことごとく感ずるのであります。そういう意味から、せつかくわれわれは厖大なところの投資をして、建設をやります場合においては、制約を加えられると同時に、一定の保護を与えて安定性を持たしていただくということが、企業の発展上必要である。またそういう方針で電力九分制というものの法の建前ができておると思う。その根本法の建前をそのままにしておいて、さらに国家性を持つておるがために、いつ何時でも、どの供給区域の電源も開発されるのだというがごときことは、どういうものであるかということを私は憂えるのであります。しかもその面、安本長官にさらに技術的に伺つてみるのは異なことでありますが、全国における大規模の電源開発、特に国家資本を投下して特殊会社をつくらなければならぬという性格の電源地点というものは、そうたくさんあるとは考えません。昨日は斯界の権威者であられる久保田さんに、私はその点に重点を置いてお聞きした。北海道においても一、二点でございましよう。九州においても一、二点でありましよう。四国は吉野川を中心とするくらいのものではありますまいか、本州においても熊野川とか只見川というのが主力でありまして、あとかりに天龍川にしても、庄川にしても、こういうものは取上げられなくても、現在の九電力会社で能力があると思います。そういたしますと、現在いささかでも電気に対する知識のある者でありますれば、日本全国に幾つかにばらまかれておるところの発電所を、一つの企業体で、どういう技術的な関連性があるか、またどういう河川行政との関連性があるか、これです。私はきのうは、それがために久保田さんにお聞きした。何の関係もない。また現実にありません。九州の発電所が北海道の発電所と何の関係がありますか、技術の上にも何も関係がないのでありまして、久保田さんなどは、その点に対してはただ資金関係だけであろう。こういうふうに全国一社にしなければ資金ができないと言われるから、それはよいでしよう、こういうことを言つておるだけだ。こういうふうにわれわれは承るのであります。この面から、安本長官全国を一つにしてやらなければならぬという、技術的な面からの理由を伺いたい。要するに、北海道その他において五、六箇所の電力開発をやるのに、こういう技術的な関係が起つておる。またこういう経営上の関係が起るといわれるようなことが明らかにわかりますれば、合理的にわかりますけれども、ただ観念的に、めんどうであるから、全国一つにするというようなことのように聞くのでありますが、この面の説明をもう一ぺん承つてみたいと思います。
  25. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点は、結局この会社のできた後における開発計画の進め方なり、その技術陣なりの問題に関連することだと思う。私どもは、先ほども言つたように、金があれば別々に特殊会社をつくるのも一つの行き方かもしれぬということを言つております。これは初めてそういう議論がありました。その点はつきりしませんが、一つずつ別々につくつて別々のところに金を出してくださいという話があつた。それを一つつくつて置いて、漸進的にやつてつてどうして悪いのですかと私は言いたい。この運営の問題について、法律に現われぬことでありますけれども、この会社がどこもかもやろうということじやない。形式的にはお話のように、こういうものをつくつておき、しまいには九電力会社にやらさないで、どこもかも全国やるつもりじやないかという御質問がさつきありましたが、なるほど法律の上においてはやれるようにできておるようですが、この特殊会社は、限定した場所で相当に金もかかるような所を、政府が出資したり、いろいろな恩典のある関係から、できるだけコストの安いものをつくらして行こうという一つの考え方があるわけです。そういう意味からいたしましても、国家資金の出資、あるいは免税等いろいろな特典のあるこういう特殊な会社にやらして行くということは、私は理由があると思う。その際に、それでは関係のない北海道とか何とか、どうして別々に技術陣をとつて、どうして調査をこれから進めて行くのか、これには何も素材なり、準備がないじやないかというところが突きたいような御質問の内容ですが、私どもも、この会社の運営にあたつて、技術陣なんかをそろえるときに、おそらく提案者も言つたと思いますが、既存の会社等で調査した材料も十分活用しますし、技術陣は両方で使えるものは使うというふうな考え方でもつてくという面からも考えておるのであります。その点は今後の運営に関係して来ると思います。私どもは、この会社というものが、総合開発見地に立つた総合性を持つておる会社であり、あるいは相当経費のかかるダムを、できるだけ発電さるべき電気のコストを下げるという意味において、半分国家において資金を持つておるところでやらして進めて行くことがよろしいという考え方であります。私の申し上げたいことは、この会社はもちろん電気の卸賣りということもあり得ることは、法律に出ておりますが、できれば設備の貸付、讓渡、こういうことをする。ある意味においては、開発会社電気を賣るということが独占的になることのないように、むしろ一番経費のかかる発電を安くやるために、こういう特殊会社をつくつて担当しようというところにねらいがあるので、その点は御了承願つておきたい。なぜこれを否定されるかということが、私にはわからないのであります。
  26. 佐伯宗義

    佐伯委員 賢明な安本長官に、よく公平に御判断願つていただきたいと思いますことは、なぜこれを否定するかわからぬと言われるが、私どもは否定しておりません。国家資本を投下され大いに電源を開発なさることも、私どもはこれを拒否しておらぬのです。この点を誤らずに、よく御理解を願いたいのでありまして、そのこと自体が、せつかくの日本電源開発の総和に対して影響しないかということであります。ところで安本長官にお考え願いたいのは、かつて日本発送電が解体いたしますときに一体どこが悪いのかという論議が行われましたが、発送電は日本全国を一つにするという理由があります。何となればと申しまするに、一体国家資本を投下して、そうして国民に豊富、低廉なる電力を供給すること、生産というよりもむしろ供給という分配、消費の面です。従つていかに今言われる特殊会社日本全国に幾つこしらえられても、送電線を持たないでおいて、どうして国民にその電力を公平に分配できましようか。私はここに非常に重大なる問題があると思います。全国一社になされなければならぬという理由は——何のため日本発送電は全国一社にしなければならなかつたかと申しますと、大体が送電線なのであります。発生せられた電力送電線によつて国民に最も公平に均霑せしめるということが、あの発送電の起つた強き理由と承知しております。そういうところに発送電のでき上つた意味があるのであります。発送電の悪かつたのはどういうところか。それは観念的なものでありまして、実際は北海道と本州と、電気を送電することはできない。九州と本州は電気が交流されておりますが、経済性を持ちません。経済性を持たないところまでも、社会主義的な一つにしなければならぬというところに無理があつたと私は考えます。でありますから、私どもはあのときに発送電は五つにしたらよかろう。つまり電気を経済的に届け得られる限度をもつて一つの区域とする。これは送電幹線を主体にしたからであります。ところが今ここで安本長官によくお考え願いたいのは、九州と四国と北海道、こういうふうに五つか六つの発電所だけができるわけであります。送電線がこの電気を交流する役目をするわけではありません。それを一つの会社にしてやらすのだ、こういうことはさしつかえないのだと言われること自体が、電力の一切の行政を乱し、企業の自主性を破壊する。こういうところに、せつかく燃え上つて来る民間創造意欲というものを無視するものがあるのです。われわれは事業人でありますから、あるいはもうけ一ぱいであるというふうにお疑いになるかもしれませんけれども、われわれといえども利益はことごとく国家に還元するということを建前にしておる。こういう意味から申しまして、国家がなさることも、われわれは何等異議はありません。つまりある一定地点の電源特殊会社をなさるのならば、何らさしつかえない。全国一社ということをなさるがために、全日本における民間企業意欲というものはこれで制止されます。これは恐ろしいものだ。私どもにはこれが強く信じられる。安本長官はこれをよく御承知になつておられるけれども自由党の案だからこれを強く主張しなければならぬという矛盾を持つておいでになるのではないかと私は思うのであります。これが一つ。  いま一つ非常な矛盾がございますことは、電気が発生されまして、それを貸付、讓渡する、この点です。私はこの前安本長官の、自由党の主義主張に対するラジオ討論を聞きまして、非常に傾聴させられた。それとこのお考えとは、たいへん違うように思われます。今は開発時代です。発電の時代、生産の時代です。欧米先進国におけるところの発達過程を見ますると、開発とか生産の時代は、できるだけ国民の創意、創造意欲を発揮せしめる。そうしてその生産が飽和点に達したときに、分配、消費するためにこれを社会化する。これは共産主義社会あるいは社会主義社会は別であります。英国の労働党が今日いかにして社会化したかと申しますと、あれは日本人の社会主義理論とは全然違つておる。彼ら英国においては、生産の段階は過ぎて、生産が飽和点に達しておる。ですから生産を阻害するに至つてない。今日本の国の電力事業はどういう状況にあるかと申しますと、まだ開発時代である。まだまだ幾千億の厖大なる資本を要すると私は思う。国家が限られたるところの、わくにはまつた予算の限度において、この大資本を集め得るということは、安本長官は御信用なさるまい。おそらく全国至るところ自由企業になさることが、自由党の政策にも一致するものと私は信じられる。そうしてこれがある程度飽和点に達したときに、国営になさることも、社会化なさることも、われわれはあえて反対するものではございません。この実例を一つ私はお話いたしまして、そうであるかないかという御証明をいただきたい。わが国の産業界をごらんください。明治三十三年の日本国有鉄道のときにおいて、加藤高明が国営に反対で殺されかかつたことがある。しかしその後、日本の国有鉄道は長い歳月を経まして、八十年の歴史を持つておりますが、毎年毎年国家の予算のために制約をされまして、鉄道の発達というものは英国の三分の一、フランスの三分の一で、イタリアと匹敵しておる。国営なるがゆえに大規模に発展するものだとは、自由党はお考えになれまいと思う。残念ながらこの国営が早かつた。しかるにその後どうですか。数十年遅れて発生しました電力事業は、これはどうかと申しますと、急激に発展いたしました。戦前までにおける水準は、世界の一等国に列するエネルギー源を持つておつたと思われる。国有鉄道は八十年の歴史を持つて、世界の三等国であります。海運事業はどうでありますか。海運事業におきましても、あの自由企業といたしまして、世界の一等国に利するまでに至つたのであります。われわれは国家管理は、どつちかと申しますと、少くとも開発、生産がある程度飽和点に達したときにそれを社会化して行く、この段階が最も必要だと思う。今、日本における電源開発ために総力をあげて集中して行かなければならぬときに、国営という美名に隠れて——今右か左かと言われましたのは、反対なんです。私の言わんと欲するところは、日本国民は国家に依存性格を持つております。国営という錦の御旗なら、だれでもすぐにいいと思う。残念ながら日本の国には資本もあるわけでありません。こういう見地に私は立つて、決して国営がただちに今日本の国を潤すものではないと思う。しかして私は、どういうところを御参考に願いたいかと申しますと、せつかく国が投資なさるのは、われわれはこれを歓迎いたします、それがいかぬと言うのではありません。ただ全国的に優越した権限を持つておる——同一電力事業に対して優越したこの特殊会社だけでは、いつ何時どこの区域でも随時に、特権階級として電源開発に特権を持つて臨むことができるということを生ずる。対等な立場においておやりになるのならば、これは大いにおやりを願いたい。もう一つは、ここまでせつかく国がおやりになるのならば、現在の九つの電力会社の中には、今国家が大規模と目せられるところの発電所が重要河川に関連してあるのですから、これを合理的に取上げていただいて、それを基本にして大いにおやり願う、これならばわれわれはいささかも反対ないのであります。安本長官はいま一度御再考になる餘地がないものでありましようか。
  27. 周東英雄

    周東国務大臣 いろいろ豊富な御経験をお話いただきましたが、今各所にある重要な大きな発電所を取上げて再編成をしたらどうかというお話でありますが、これは今日すぐにと言われても私はいいとも悪いとも申し上げません。今後の推移で研究される価値あるものは研究して行きたいと私は思います。こだわる必要は一つもない。電気のごとき公益性を持つたものについては十分研究の上、悪いところがあれば直して行くことについてはやぶさかでないのであります。もう一つ、先ほどお尋ねでありますが、この会社全国のどこの開発でもやり得る特権を持つているというお話でありますが、この点はもしも必要があれば特殊な箇所を限定してもいいと私は思つております。あなたのお考えと私はちよつと逆になると思いますけれども、今のような日本状態では民間資本だけではなかなか開発ができない。苦しいことはわかつておる。そこへ国が相当にタツチして行こうというときに、民間のものを育てて、それは貸金運用の面で助けつつ、片一方経費がかかるような、せつかく発電をされてもコスト高になるようなところは、なるたけ安くできるように、こういう機関で開発をやろう、でき上つた電気については独占的に賣ることを原則としていない、原則として地区々々の会社等に設備が移転されてそれから電気が配分されると思う。あなたの説によりますと、どんなに貧乏のときでも開発は全部民間に自由経済でやらせて、配分のときに社会政策をやつて統一せよ。こういうことのようです。これも一つの御意見です。いよいよ国民の生活に影響のある電気を配分するときには、統制して安い電気を配分する、あるいは産業別に調整してやるということがいいのではないかという御意見のように承りましたが、これも一つの考え方と思いますけれども、今日日本現状から見れば開発をやるには相当金がかかる、コスト高になつておる。これを一面少くとも大きなところ——場所によつては限定してもよろしいが、その箇所のものについてはできるだけ安く発電させて、単価を安くすることによつて将来の国民生活の向上、産業の発展に資したいということで、開発をいかにしてやらせるか、こういうことであります。しかも全国的にやる方は、将来あくまでこれを独占するという考えはひとつもありませんので、今申し上げたように限定していいと思います。それではどこへやるか、この分配の際に公平にやるかどうかということについては、たびたび参議院でも意見が出ましたが、私はもつともだと思うのです。現在のところどこへどうやるかということはなかなか言いにくいのですが、絶対量が足りないのですから、各地域ごとに九つの会社の間で開発する所もありましようし、あるいはこの特殊会社が球磨とか四万十とか吉野とかあるいは天龍、只見の開発をすることによつて電力の絶対量がずつとふえて来る。そうするとその各地域における量の増加した部分と、その間にこの開発会社によつてでき上るところの安いものとをまぜ合わして行けば、その点で今日のきゆうくつな電力事情はよほど緩和されて行くのではなかろうか、その際の一つのねらいをつけて準備をし、あるいはその場合においての総合融通性に関しては、十分に考えて行かなければならぬことだと考えております。
  28. 佐伯宗義

    佐伯委員 一応今までの問題はこれで打切りまして、さらにさかのぼりまして、見返り資金電力会社に貸し付けられておるのでありますが、昭和二十七年度以後の電源開発に対し政府の提案を見ますと、見返り資金はほとんど電力会社に引当てておられます。そうして電源開発会社には引当ててない。そこで承つてみたいと思いますのは、この見返り資金性格はどういうものであるか。そしてこの見返り資金は、特に電力会社の方に全部引当ててあつて特殊会社の方には引当ててない理由は何か。私のお尋ねしてみたいと思うのは、この見返り資金性格はあるいは先様の御承認でも受けなければならぬものであるか。そういうことから特に電源開発会社には引当てないで、電力会社に引当ててあるのか、何かそこに事情があるのか、ちよつと承つておきたい。
  29. 周東英雄

    周東国務大臣 その点はおわかりいただけると思うのでありますが、現在ある電力会社の方へ見返り資金等を貸して、その開発を援助しておるゆえんであります。この特殊会社の方になぜ引当てぬかということでありますが、この方へは政府の出資が行つております、政府出資ですから安い金が使えるわけです。それで初年度でありますので、開発銀行を通じての出資が五十億、それからもう一つ六十億ほどは貯蓄債券の発行によつて得た金をこの会社の方へまわす、こういう杉にいたしております。合せて百十億の出資になつておりまして、その方は政府出資で行きます、従つて今日の事態として安い金であります。見返り資金の方は九つの会社その他の方に持つて行く、そういう考えでおります。
  30. 佐伯宗義

    佐伯委員 私は見返り資金性格をお伺いしたいと思つたのでありますが、元来見返り援助資金はアメリカの軍事費においてまかなわれておりますが、日本の関係は、占領政策上の恵みの贈りものとかいわれたように、日本の出方によつてはこれは帳消しにされるものかどうか、また的確にこの金を返さなければならぬものかどうかという問題が先ほどの私の質問に対して関連性を持つのでありますが、この点をちよつと承つてみたいと思います。     〔委員長退席、中村委員長代理着席〕
  31. 周東英雄

    周東国務大臣 まずその前に、見返り資金の性質によつて今度の特殊会社に行く行かぬ、あるいは九つの会社だけに行くのかというようなことではないのです。これはやろうと思えばやれぬこともないのであります。そういう性格からではありません。  それから今お話見返り資金というものは、アメリカのどういう資源から来ようと実は金で借りて来たものではなくて、これは御承知の通りガリオアで入つて来た食糧とか石油とかあるいは油脂というようなものを日本政府が受けて、これを日本政府民間に拂い下げて得た金であります。それらに対する債務と今まで大蔵大臣はたびたび繰返しておりますが、こういうものは将来返さなければならぬ性質のものであります。それがどういう額をどういう方法でやるかということはまだきまつておりません。しかしいずれにしても政府が責任を持つて返さなければならぬものでしよう。しかして今の電力会社その他従来見返り資金を貸し付けた方面に対しては、政府がそちらに対して出しておることになつておりまして、その点は自然アメリカに対して直接会社がどういう責任を負うというような関係にならずに、日本政府がガリオア資金に対する返済は責任を負う。その建前に基いて、特別会計に入つている見返り援助資金というようなものに対する債権債務の取立て、支拂いというものは、日本政府との間に問題が起つて来る。それは他の資金と同じ関係になると私は思います。
  32. 佐伯宗義

    佐伯委員 そういたしますと、見返り資金は返さなければならない。二十億ドル、七千二百億のこの見返り資金については、今日までわれわれが占領政策に忠実に服従して参つた以上、当然日本国民の出方によつては帳消しにしてもらえるものとわれわれは強く信じておる。また日本国民も政府もこれを要請するものだと思う。そのかわりアメリカの民主主義体制というものを信奉しなければならない。私はそういうふうに考えております。そこで先ほど伺つて見ました点にさかのぼつてみまして、日本政府電力会社見返り資金を使つておる。見返り資金を使うのは日本政府でありますが、一応先様の承認を受けなければならぬ。それとも使い先の承認は受けなくて、自由に見返り資金を使うことができるのである。今までは当然承認を受けておつたと思うが、今後それはどうなるのか、このことをちよつと伺つてみたい。
  33. 周東英雄

    周東国務大臣 今までは占領治下にありましたので、お話の通り一々相談をし、承認を受けておつたことは事実でありますが、独立後においては、それに関してはあくまで日本政府が債務を負うてアメリカと話合いをするので、その貸付、取立ては日本政府が自由にやつて行けるものと私は考えております。
  34. 佐伯宗義

    佐伯委員 外債の償還金といい、あるいは見返り資金の償還といい、賠償問題といい、日本の国の経済力の底の浅さから考えて行きますと、これらのものをまつたく日本の負担で今後返さなければならぬということは、政府の責任問題でもあると思う。この見返り資金に対しては過去六箇年占領政策を忠実に実行して来たかわりに、政府としてはこれを帳消しにしてもらうべきものであると信じております。そこで電力開発について私は安本長官にお聞きしたいと思いますことは、電源開発という問題は、おそらく日本民主化のために一番大きな問題であると私は主張しております。私は国会に出まして五年間ただこの一点に集中して来ました。電力再編成に対してもいろいろ反対して参りましたが、日本の民主主義政策の今後は、結局この電力再編成にありとさえ言われておる。しかるに日本政府なるものは、占領政策がもう終るか終らぬ前に、アメリカの意思に反した電源開発特殊会社をさらにまたつくる。こういうことは日米協力の上におきましても、国際親善の上においてもとらざるところではなかろうか。こういう民主化に逆行するようなことであるならば、われわれはこの見返り資金を返さなければならぬ、こういう考えを私は強く持つのであります。人おのおの見解の相違でございましようけれども、アメリカの建前と申しまするのは、強く公益事業委員会をつくつて、政治の介入を完全に断ち切つて電力事業は電力事業として経済の独立性をもつとはつきりしろということであつたのであります。外資が導入されるのも、決してこの特殊会社のごときものではないと思う。この特殊会社のごとき性格のものが生れたために、せつかく外資導入がされ得る電力会社になされなくなつた。われわれは強くそういうふうに信ずるのです。ここを国家ためにわれわれは憂えるのです。のみならずこの見返り資金、いわゆる援助資金という根本問題に対して、大きなる矛盾が生ずることをわれわれは非常に憂えるのであります、私のごときは一介の国民の一人でありますが、台閣に列しておられるところの安本長官の責任たるや、将来のこの問題について非常に大きなものがあろうと考えられるのであります。こういうことから電源開発ためのせつかくの見返り資金が、その根本性格をかえて来る。その以外にいつ何時外債の支拂いに対して早期償還を要求せられないとも限らない。また国家財政資金をもつてこの厖大電源開発をする餘裕があるとするならば、現に遺家族援護資金のようなものをすずめの涙ほどやつておるが、こういうものに対してもいずれが優先するか、あるいはまた自衛力の漸増というような段階においても、いずれが優先するかという疑問を私どもは起して参るのであります。つまり日本の国の現状から申しますと、どの面から申しましても、国家財政をもつてはあらゆるものに振りわけるところの餘力のあるものでは決してない。こういう考え方を持つておるのでありまして、国家性格の現われたる電源開発会社というものが、この際どうしても生れ出ねばならぬということと見返り資金との関連は何もない。私は実は司令部で当路の方にお目にかかつて電力問題に対する意見も承りました。そういう面から申しますと、アメリカとしてはこの電源開発会社には全幅の賛意を表しておるとはとれません。この点に対する安本長官の御意見を承つてみたい。
  35. 周東英雄

    周東国務大臣 御意見は御意見として承つておきます。この特殊会社ができるということによつて見返り資金の償還に影響を与えるものとは考えておりません。見返り資金は債務であることは明らかでありますが、この償還がどのような方法でどういう程度になされるか、外債がどういうふうに償還されるかということは、政府の今後の折衝にまつのであります。イタリアの例もありますが、こうだということがあれば、もちろん日本から希望は述べることもよろしいでしようけれども、はつきりと債務であるということを自覚しておらなければならぬ、こう思います。また見返り資金については非常に多額の金が貸されております。これは電気だけに限つたものでないことは、御承知の通り、各方面にやつておりますが、それはあくまでも今後日本政府の特別会計との関係において処理されるべき問題であり、外に向つてはやはり日本政府がアメリカに向つて交渉いたします。その間に直接の関係は起つて参りません。繰返しますが、この特殊会社ができるごとによつて見返り資金の弁済というものに影響を及ぼし、変更を来すべきものではないと考えております。
  36. 佐伯宗義

    佐伯委員 わが国の経済の底の浅さは私が申し上げるまでもなく、貿易の状況におきましても安本長官はよく御承知のことである。駐留軍に守られておるということだけですら歴史の上に例がありません。しかしそれ以上に駐留軍によつて生活力を支えられておる、このことは国民としてよくわかつておると思うのであります。その上に戦争という不幸が特需というものを生みまして、収支のバランスを合わしておるというがごとき、実に底の浅い経済力を持つておるのである。いわば駐留軍によつて食わしてもらつておる。こういう日本の国の財政状態において、長期を要する電源開発資金について、国民の国家依存性格——国家というものの財政資金は、何でもかんでも金持であるという錦の御族を押し立てて、国有国営という観念を植えつけられるということは、なるほどよいものだと国民は無批判的に盲従はいたしましよう。しかしこういう日本の国の経済力の底の浅さが、国家資金をもつて長期を要する電力資金をまかない得るとお考えになるのでありますか伺いたい。
  37. 周東英雄

    周東国務大臣 電力開発について、全部を財政資金でやるということは述べておりませんし、この計画もそうなつていないのであります。先ほどから繰返して申し上げておりますように、二十七年度に例をとりましても、電源開発に使わるべき資金総額は千二百億前後、その中で出資として出るのは五十億、ほかに貯蓄債券の引受けによつて得た金を会社に貸すということになつておりますが、全部財政資金でまかなうのでなく、あとは一般民間から資金の需要をまかなつてもらおうという計画であります。その間に処して、債務として残るべき資金運用部資金なり見返り資金の貸付を受けて動くというわけです。これは私は当然だと思います。むしろ私どもはつきりしていることは、日本人が日本人的性格に立ち返つたときにまず大事なのは自分の力でやるという気魄がなければならぬということであります。この点はあなたの御意見と同じであります。その資金をまかなうことにむしろ私らは苦心しておる。国家が何もかもまかなおうというのでなくて、国家資金として出すものですから社債なりその他のもので政府が貸し付けるものである。その他は民間資本が自分でやらなければならぬということであります。私はこの問題が起りましたときに、名前を申し上げては失礼ですが、東京近郊の私鉄会社の社長さんから、今日は金を借りることよりも電気の供給量を豊富にすることが必要なのであつて、それは電力を使う特別な会社等に一番優先されるわけだから、そういうところに、発電をこれだけふやすためにこれだけの資金がいるのだから協力を求めるということで割当ててもいいのじやないか、そうすれば相当出資ば集まるものであるということを言われ、これは一人ならず数人の経験者から承つております。その気魄とその考え方電力開発をするのであつて、決して政府は国策会社といいますか、国営というものをやつて、これを全部国家資金でまかなうということを考えているのじやないのです。その点はよく御了承をいただきたいと思います。
  38. 佐伯宗義

    佐伯委員 非常に強い御主張を承りましてわかりましたが、なお安本長官にお考えおきを願いたいと思いますことは、少くとも一たびかような会社が生れ出ますと、豊富低廉なる電力をつくると申しましても、その基本は企業形態であるわけで、一朝企業形態が誤りますと、残念ながらすべて矛盾を生ずる原因となります。これは私が申し上げるまでもないことであります。まだいろいろ承りたいこともございますが、大体において私どもと同じような見解をお持ちでございます。しかしただ全国一社制というような観点に立つて考えますと、せつかくの自由な部門に対して影響を及ぼす。そういうことのないように、国家資力の総力をあげて開発なさることをわれわれは拒んではおりません。しかし電力特殊会社ができたとなりますと、この特殊会社電力開発の責任を負わねばなりません。また国民もそれを信頼いたします。そうでないとおとりなさるが、確かにそうですよ。日本国民は全部依存性を持つておりますから、この特殊会社はすぐれた会社だ、これを信頼せよと言えば、そういう気持を持つ。ですから政府はこの特殊会社をおつくりになる以上は、日本の今後における電力開発はこの特殊会社が責任を持つべきものであるということだけは強くお考えを願いたいのです。従つてもしその責任をお持ちになつて、これをこの日本の貧弱な国家において断行なさるときには、強度の計画経済に移らなければできません。私どもは現在の電力会社は絶対に信用しません。現在の電力会社は国民の神経線に入り込んで、零細なる資本を集中して来る役割をしております。これがぴたつととまる。ですから国家国家権力によるという方向に向つて電力資源開発をやらなければなりません。これは強く信じます。ですからもしこの特殊会社ができてこの性格を持つたならば、国家百年の悔いだと思う。この会社ができれば国民は総力をあげて信頼いたしますし、これを生み出した責任ある皆さんといたしましてはどうしてもこれを強固に実行しなければならない。その場合には計画経済を断行する以外にないと私は強く信ずる。従つてどういうことが起るかというと、私は思い出すのでありますが、吉田総理大臣はかつて、社会党を育成し、天下を社会党に讓ると言われた。私はそういうことがあるかないか知りませんが、この点において自由党の一枚看板たる自由主義をかなぐり捨てて社会主義に移行せられるのではないかということをわれわれは憂えるのであります。皆様に御参考にしてお考えおき願いたいと思います。この質問はこれで打切りまして、もう一つお伺いしてみたいと思いますことは、電力行政の民主化ということです。政府は今回電力審議会というものを設けられるのでありますが、最近新聞紙上に伝えられる行政改革というものから見ますと、公益事業委員会を廃止なさるように見られるのであります。これが通産省にでも吸収されるということがあるのじやないかと考えますが、公益事業委員会は存続せられて行くのかどうかということを伺つてみたい。
  39. 周東英雄

    周東国務大臣 その点についてはただいま行政機構の改革という面で検討中でありまして、近く国会へ提出し協賛を求める運びになると思います。その際に全貌が明らかになると思いますが、要するに今お話電力行政の民主化は必要であります。しかし同時に電力のごとく、国民生活にも非常な関係を持ち、また産業行政についても非常な関係を持ち、その価格料金の決定それ自体が物価政策に影響し、国民生活に影響するという場合には、この行政は一元化されることが必要である。しかも一元化の方向に向つて進む際には、電力プロパーだけやつておる箇所に持つて行くがよろしいか、あるいは産業行政全般に関して日本の経済を将来どう持つて行くか、また一年間における電力の割当その他を考えてどういう産業電力を優先的に供給しなければならぬか、国民生活に必要な部面にわける電気量の面をどう持つて行くかということの全体を握つておる役所に統一することがよろしいか、こういう考え方のもとに今案を練つております。
  40. 佐伯宗義

    佐伯委員 公益事業委員会が廃止されるされぬは今言明できますまいが、しかしかりに存続されるとしても、電源開発法の精神から申しますと、電力審議会が最高の権威であれば、公益事業委員会は存置の価値はありません。ですからこれは廃止されるものとわれわれは見るべきものだと考えます。そこで伺つてみたいのは、今仰せられた通り、電力行政の民主化として統一をはかるということになると、かつての官僚統制とどこが違うか。民主化の制度として今度は審議会をおつくりになるというのだけれども、あの審議会自体が民主化の形態であるとおつしやるのか。先ほどからとかく私の方が右か左かということを言うことになりますと、公益事委員会はどうも難物である、あまりうまく行かぬ、だから元に返せ。つまりもし敗戦前の日本のすべての政体が、非民主的なものであつたといたしますならば、それに逆もどりする。どこにその後における民主化というものと違つたところがあるのかという点を承つてみたい。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 それは行政機構の全貌が決定したときに説明されるこであると思いますので、そのときにおける主管大臣から詳しく説明があると思いますが、公益事業委員会というものを、仮定の問題でお話しますと、やめたら一ぺんに民主化は逆行するものとも私は考えないし、いろいろ行政をして行く場合においての公聴会制度というものも、もちろん必要であります。従来昔の役人だけがかつてなことをやつておるというような世評はあると思う。公聴会制度は存続して行くでしようし、また昔と違つて皆様方のような練達堪能な方がおられて、国会が市政機関の上にある今日において、十分その方面においても、公聴会制度を通じ、また国会の意見を聞いて調整しつつ、民主化の線を維持し推進して行くことができると私は考えます。
  42. 佐伯宗義

    佐伯委員 民主化という問題につきましては、三歳の童子もよく申しますが、民主化とは何ぞやということにつきましては、これほどむずかしいことはないように考えます。そこで軍に電力行政だけを論じてみますならば、私は民主化というものは、最も発達したアメリカがこれを実現しておる委員制度というもの以外には私はないと思う。いろいろ公聴会がございますとか、審議会をつくるとか申しましても、かりにあの審議会なんかができても、大したことはありません。きのうは私ども建設審議会というものがございました。私は特にやかましい男で、いろいろ言いますけれども、たいていはおざなりのものが多い。しかし委員制度となりますと、特殊の権限を持つて参りますから、そうは行きません。日本の国において民主化ということを言いまするならば、委員制度以外にはないと思う。ところが、日本の国においては、委員制度になれておりませんから、やつかいものです。また妙味を発揮できません。それがため委員制度を全部捨てますならば、先ほど安本長官が言われたように、日本の国は好むと好まざるとにかかわらず、すべての民主化は非民主化に逆もどりをするものである。ただ残るのは観念だけのものである。現実は何も残らないと、私どもは強く考えさせられるのであります。日本の民主化制度を育成して行くか行かぬかということは、世界各国が高く見ている、私はそういうふうに信じます。占領政策後における日本の民主化制度は、委員制度を一ぺんにかなぐり捨てて逆もどりをする、これは警戒を要することであります。そういうことが非常に考えられるのであります。そこで私どもは民主化ということについては、アメリカがアメリカ流の民主化を持つて来たから、日本で間違つて来た。と申しますことは、アメリカと日本は政体が違つておる。日本の国は英国流の一種の責任政治をとつておる。ところが、あの公益事業委員会の中には、電力の政治面も入つております。認可、免許するという行政事務も入つておる。しかるに、ただ民間から撰ばれた五人の委員でもつて、少くとも国家の行政を代行してみたり、免許、認可を与えてみたりというがごとき、制度それ自体の組織が悪いと私は強く考える。従つて右か左かで、悪い組織を改正せずしてやめてしまえ、こういうところにわれわれは無理があるように考えるのでございまして、この点は、私ども政府に列しておらぬのでわかりませんが、安本長官にお考え願いたいと考えるのであります。あれをあのまま廃止することなく、私どもは、民主主義の本体はやはり三つのものにおいて構成されておると思う。つまり三権分立の一つの方式から発しておるものが委員制度だと思う。そこで現在選ばれている五入の委員というものは、われわれは国民の経済的な代表表だと思う。決して政治の面から入つているものでもありません。行政の面からの代表者でもない。電力行政というものは、政治と行政と国民の経済と三つにおいて組織されている。しかるにかかわらず、彼はただ一方でありますから、独善的になつてしまう。私はあれにはやはり、政治の面は国会が代表し、そうしてわれが入るべきものだ。行政の面からは政府が代表いたしまして入るべきものだ。つまり現在の五人の定数に対して、安本長官と通産大臣が入ればよろしい。衆議院は通産委員長と経済安定委員長とが入ればよろしい。参議院から一人入る。五人の数をもつて、十人でもつて審議会をつくつて、そこできめて行くという最高組織をつくつたならば、公益事業委員会は妙味を発揮して行ける。完全に政治と経済と行政の三面が対等で寄つて動いて行くのが、委員制度の骨子である。それを、ただいたずらに、委員制度というものは妙味がないからすぐやめてしまうというぐあいに、またもや日本の万般の政体一切が反動的に返つて行くということを、非常に恐れるものであります。単なる電力開発会社一つの発生にいたしましても、今九つの電力会社が悪いから、すぐ特殊会社をつくれ、安本長官が私に対して、君の言うことは、右にあらずんば左と言われたけれども、むしろ私はそのことなら安本長官に返上してみたいと考えているのでありまして、こういうところが指導者たる立場を持つているのでありますから、現政府はそういうことをも考えていただきたい。独立後における日本の国は、ややもすれば反動的になるおそれがございます。このときにあたりまして、委員制度の妙味を十二分に発揮していただきたいということを申し上げまして、おそくなりましたから、今日の質問を打切ります。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 今のお尋ねでありますが、あなたのお話の通り、アメリカの制度というものを、国情の違う日本へそのまま移すというところに、いろいろな欠陥も出て来ると思う。新しいスタートに立つて日本が行政機構を考えるときに、日本日本的に即した方法で民主化の線を生かしつつ考えて行きたいと思つておりますから、御了承願いたいと思います。先ほどからときどき右か左かということをよく言われますが、速記録をよくごらんください。あなたの言われるように、申したわけではない。物事というものは、右にあらずんば左、左にあらずんば右というように、しつくりと二つだけに限られるものでない、中間があるということも考えて、そこに政治の妙諦がある、こういうことを申し上げておりますから、誤解のないようにお願いします。
  44. 中村幸八

    中村委員長代理 他に御質疑はありませんか。なければ、本日はこの程度にいたし、次会は来る五月六日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会