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1952-04-17 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月十七日(木曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君    理事 山手 滿男君       江田斗米吉君    小川 平二君       小金 義照君    澁谷雄太郎君       土倉 宗明君    福田  一君       加藤 鐐造君    風早八十二君       青野 武一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 周東 英雄君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君 四月十七日  委員上林與市郎君辞任につき、その補欠として  青野武一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十六日  中小企業経営設備資金供給等に関する陳情書  (第一三四  九号)  中小企業危機突破に関する陳情書  (第一二五〇号)  電源開発に関する陳情書  (第一三五一  号)  只見川流域変更案実施促進に関する陳情書  (第一三五二号)  電力料金値上げ反対に関する陳情書  (第一三五三号)  同(第一三五四号)  同(第一三五五  号)  電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第一三五六号)  同(第一三五七  号)  電気料金の再値上げ反対に関する陳情書  (第一三五八号)  自転車競技法改正に関する陳情書  (第二一五九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  電源開発促進法案水田三喜男君外五十一名提  出、衆法第一六号)     ―――――――――――――
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。本日は電源開発促進法案を議題といたし、昨日に引続き質疑を続行いたします。風早八十二君。
  3. 風早八十二

    風早委員 電源開発促進法案法案自体についての抽象的な質疑応答は相当続けられたのでありますが、この法案に対しては、すでに資金上の裏づけというものも考えられておるわけでありまして、今日は具体的に、この法案実施によつて、さしあたり第一期においてはどこどこでそういう電源開発あるいは送電変電施設の整備が予定せられておるか、こういう開発計画の具体的な全貌あるいはまたその第一期の具体的な方針というようなものを、提案者側からまず御説明を願いたいと思います。
  4. 福田一

    福田(一)委員 お手元資料を差出してあると思います。それによつて説明した方がいいのですが……。
  5. 風早八十二

    風早委員 この電源開発計画要綱付表一というのが配付されております。しかし具体的にどこどこにどういう発電所をつくるのか、ダムをつくるのか、どこからどこへ送電をするのかといつたような具体的な面については、これには何もないわけです。これはおそらくこの付表の第二というようなものにあるだろうと思いますが、それはまだ配られておりませんから、全国全部を出したのではたいへんですから、その主要なものを出してもらいたい。第一期分については、法案が通ればすぐにやらなければならないから、どこにダムをつくつてどうするかというような概要を出してもらいたいと思います。資料をいただければなおけつこうですが、まだもらつてないと思います。これはぜひもらいたいと思います。
  6. 福田一

    福田(一)委員 お手元に差出してあります資料の一応裏づけをしている各企業者別発電所建設計画予定表の内容を示せという御質問と存ずるのでありますが、電力会社いわゆる九電力がやります場合は、やるものを予定しておりますが、これは実は公益事業委員会に対し、あるいは通産省等に対して、こういう地点をやりたい、こういつており、またすでに従来着工しておりまして、資金裏づけも一部済んでおりますものも相当あるわけでございます。これらの中ですでに着工をいたしておりますものは、電力会社でいうと三十二件で出力が六十二万八千、それから二十七年度以降に着手する予定に相なつておる分、これは資金裏づけその他がない場合、あるいはその他の事情が起きた場合には必ずやれるというわけではありませんが、一応これを意図しておるものが三十八地点で大体六十七万、これは水力でございまして、水力総計は百七十一万に一応予定されるわけであります。これは第一期であります。次が火力発電所でございますが、電力会社がやろうといたしておる火力発電所で、従来着工計画を進めておるものが十箇地点で四十万、それから二十七年度以降に着工いたそうという地点は八地点で三十三万キロでございます。これを合計いたしますと大体二百四十五万という数字に相なるわけであります。一方公共事業による電源開発地点でございますが、いわゆる国の直轄ダムに関連いたしまして発電をするものということで見て参りますと、大体予定しておりますものが出力で十九万キロでございます。それから補助ダムといいまして、府県等が行うダム工事に国が補助を與えてやつておりますダム建設工事に関連して発電所をつくろうということになつておりますものが、第一期分は十三箇地点で、合計して二十一万八千ということになつております。それから自家発電でございますが、すでに着工しておりますのが二十地点で九万六千、これは水力でございます。今後着工されるのが十五箇地点で十七万二千、合計いたしまして三十五地点で二十六万九千キロであります。火力発電の方では大体三十三万八千、合計が五十万になるのであります。次に特殊会社地点でございますが、おそらく特殊会社の分について特に詳しい説明を御要求になつておることと思いますので、その予定について個々の地点をあげてみますと、石狩川の出力が三万一千、北上川が三万七千、只見川が二十一万、天龍川が三十五万、庄川が十四万、熊野川が四万六千、吉野川が二万七千の出力を出すという予定のもとに工事を進めるのであります。     〔委員長退席、多武良委員長代理着席〕 この変電設備その他、これも計上してございますが、その出力総計は八十四万一千、大体このように予定いたしておるわけであります。
  7. 風早八十二

    風早委員 こまかい数字は今伺つている中でもどうもはつきりしない点がありますが、これはあとで概括した資料を提供していただくことにしまして、特に本法案に関連しておりますから、特殊会社分で新しく相当厖大開発計画が示されておると思います。これと、今までなされておつた、またなされようと予定されておつたところの公益事業委員会あるいは安本で掌握している開発計画と具体的にはどういう関係になるか。たとえば天龍なら天龍只見なら只見についてその交錯している関係をもう少し具体的に説明してもらいたいと思います。
  8. 福田一

    福田(一)委員 ちよつと御質問の趣旨を伺いたいのですが、交錯しているという意味は、今までにつくりつつある発電所あるいは計画している発電所との関係がどうなるかという意味でございますか。
  9. 風早八十二

    風早委員 そういうわけです。
  10. 福田一

    福田(一)委員 そういう意味でございましたならば、大体この計画は、計画を意図している会社あるいは企業体はあるようでありますけれども、現実にこれに着手をしているというような交錯部分はまだないと考えております。
  11. 風早八十二

    風早委員 そこで建設大臣にお尋ねいたしたいと思う。国土総合開発というものについてかねがね立案をされておつたと思うのでありますが、その特定地域というようなものが多数各地方から申請があり、それの中から大体十九地域が特に特定地域として選定せられ、これに重点を置いて国土総合開発が考えられていると思うのです。電源というようなものはそれだけで切り離して開発されるということは事実上においておそらくあり得ないことでもありますし、もつと意識的に国土総合開発の面から、他の産業農業なり林業なり水利なり、いろいろな面との総合性を保つてその特定地域々々の開発を企図されているということであると思うのです。そういう意味におきまして、その実情並びにこれに対する御意見を伺つておきたいのですが、今回の法案で大体予定している各地域並びにその計画と、建設省で今提案せられている国土総合開発特定地域開発案なるものとの関連性について、建設大臣としてどういう見解でおられるのか、この点はひとつやや詳細に御意見を含めて御答弁願いたいと思います。
  12. 野田卯一

    野田国務大臣 国土総合開発計画の一環として電力開発は当然考えております。御質問の点はきわめてごもつともな点と考えておりますが、国土総合開発計画に基いて各特定地域等において電源開発する場合に、いろいろな形があります。すなわち国が直轄で総合的な多目的ダム建設する場合、あるいはまた地方公共団体府県等がやはり同じ目的で多目的ダムをつくるような場合、あるいは電力会社がやる場合、いろいろな場合があるのでございます。現在われわれの考えているところでは、国が直轄でやつております多目的ダムに例をとりますと、北上川に猿ヶ石あたり、また旛沢川に石あたり、両二箇所ありますが、これは国が直轄でこのダムをつくつて、まさに完成に近づいております。こういう所におきましてダムを利用して水力発電をするという問題につきましては、これを新しくできる会社にやつていただきたい、こう考えております。その他なお国が直轄でやつておりますのは全国に数箇所ありますが、この会社ができましたならば、電力発電部分はこの会社で受持つてもらいたいと考えております。それから地方公共団体がやはり多目的ダムをつくつておられる場合がある。それにつきましては原則としてその電源開発は各地方団体でやつておられます。これは私の希望でありますが、たとえば東京都がやつております小河内ダムができますと約六万七千キロのきわめて有力な発電所ができるのでありますが、現在東京都は水道を整備しておつて水道をつくるために七十九億の金がいる。そのほかに電源開発のために七十六億くらいの金がいるが、両方やることは都の財政が許さぬというような場合には、発電部門はこの会社でやれるようにしてもらつたらいいのじやないかと思つておりますが、まだきまつておりません。そういうふうに多目的ダムに伴う国または公共団体発電は、この会社に担当していただいたらいいのじやないかと思つております。
  13. 風早八十二

    風早委員 国土総合開発といいましても、これ総合されるいろいろな利害関係、つまり電力並びにそれの需用産業というものだけでなしに、いろいろほかの農業なり交通なりの面に非常に関連した問題でありますから、そういう点について一体具体的にはどこに重点を置くか。あるいはその資金が限られている場合において、一方をとれば一方はとれないという場合がしばしば当然起るわけであります。小河内の場合も同様だと思う。そういう場合にどういう基準で総合開発が行われるかということは、今後の日本経済産業国民生活の上に相当大きな影響を與えると思う。建設省から出しておられる総合開発特定地域のしおりを拝見しますと、その中では特に三箇條の総合開発についての根本的な方針というようなものが出ておると思います。その一つは、各般事業が最も合理的、効率的に実施せられる。第二は事業費、これは税金もあれば、特別受益者側からの公納金というものもあるのでしようし、あるいは直接経済行為を行う企業者というようなものからも分担がなされる、こういう配分の問題が一つ出て来ている。第三にはこの事業費を真に重要な事業に集中することによつて投資効果の上昇を企図する。こうあるわけです。私は第一の各般事業が最も合理的、効率的に実施されるということと、第三の事業費を真に重要な事業に集中するということと、必ずしも具体的にはこれが合致しないというように考えるわけであります。そこでこの事業費を真に重要な事業に集中するというのでありますが、真に重要な事業というものについては、これはどういうものを考えておられるか、もちろんこれは地域々々によつて違うということを言われると思いますが、特に電源というものに対して特別な地位を與えておられるのかどうか、その点からまず御見解を承りたいと思います。
  14. 野田卯一

    野田国務大臣 具体的な例を一、二申し上げますと、御承知北上地域総合開発計画における特定地域になつております。あそこは北上川がたいへん氾濫をいたします、氾濫をいたせば堤防をつくつたらいいじやないかということになりますが、なかなかそう簡単に行かない。特に岩手県と宮城県の境には山脈がありまして、山脈を横断して北上川が流れている。いわゆる狭窄部と称してネックになつている。ここを通過し得る水の量に限度がある。従いまして大雨が降ると、上流から一度に流れて参りまして、ここを通り切れないというわけで、上流平野のところに水がたまるということで、岩手県にとりましては大切な北上平野が水につかるということがあります。そこで狭窄部を切り開くということでありますが、たいへんな費用がかりますので、今の対策としましては北上川上流地点で適当な地点を求めて貯水のダムをつくる。そうして岩手県下に雨が降りましても、降つた相当部分が貯水池にたまつてしまう。そうすると、一度に水が出ないから、北上平野が水につかるということもなくなる、こういうような方針をとつて対処しております。大きなダムをつくりますので、当然水がたまりまして、その水を利用して有利に発電ができる、こういうことになりまして、実は先ほど申しました猿ヶ石発電をし、また胆沢川の石渕ダム発電をする。こういうように進んでおります。これは洪水調節ということと同時に発電をする。東北地方電気が足りませんので、この電気使つて土地産業も興し得るのではないか、こういうような雨面の大きな目的を持つておるわけであります。同じようなことが他の地域にもありますが、特定地域一つである只見地域につきましては、日本に残されている最大電力資源であります。これを有効に開発いたしまして、日本の再建に役立たせるということは、私が申し上げるまでもなく十分御承知のことと思います。また特定開発地域でいろいろな目的で行われておりますが、天竜川上流部、ああいう方面におきましては、やはり洪水調節に合せて電源開発ということが当然考えられるというわけで、この総合開発の中において、電源開発ということはきわめて重要視されておりまして、ある地域におきましては、それが最優先に考えられ、ある地域においては洪水調節と並んで考えられる。こういうふうに場所によつて異なつておりますが、いずれもきわめて重要性を持つているということは申し上げることができると思います。
  15. 風早八十二

    風早委員 今の建設大臣お話はきわめてごもつともだと思うのです。昨日も佐伯委員がその質問の中で、やはり国民電源開発そのものを別にどうこう言つているのではない、電源開発を望んでいるとか望んでおらないとかいうことではなくして、電気そのものが実際必要なんである、こういう意見が出ておりました。ところが実際地方に参りますと、電気そのものそのものでありますが、電気よりも何よりも実際において水がほしい。農民にとつて土地と水が最大の問題である。これが今まで災害復旧が怠られ、また災害予防施設が怠られ、その結果しばしば氾濫するし、また一たび台風でもあればたいへんな被害を受ける、こういうことでありまして、水の処理の問題が最も重要な問題になつておることは御承知通りです。また他方におきまして、山村地帯で全然水がない。水さえ来れば、そこで新しく田畑の開拓ができる。こういう場合においてなおさらまたこの水の問題が非常に大事である。水や土地があつて農民であり、また地方でありまして、そういうものを抜きにして電力というものは考えられない。こういう土地を整理し、また水を処理して、その間水を電力にも利用できるということであれば、これに越したことはないわけです。しかし今日総合開発といつても実際問題として、地方においてまず第一に要求することは、この土地と水の問題であると考えられる。そういう観点からいつてあなたの方で大体選定せられ、着手せられようとしている十九の特殊地域というもののそれぞれをとつてみますと、たとえば利根川の流域につきましては、これは電力よりも何よりもやはり水の問題である。むしろ治水治山、このことが開発の主要な眼目にならなければならない。こういう地域は他にもあるわけであります。しかし実際問題として今日われわれが見るところによると、りくつはその通りであり、実情も実際の地方要求もそうであるにかかわらず、まず電源開発ということが出て参りまして、実際の他のそういう事情というものが、この電源開発に従属させられる。従つてやりようによりましては、水というものは一方で農地にもまわせるし、また電源にもまわせる。あるいはまた一歩讓つて電源を設けましても、使つた水を最も有効に水利に用いるということがきわめて意識的になされるならば、その弊害も少いし、実際そうなれば総合性という点においても大体問題はないと思うのです。しかるに実際電源開発が行われると必ずその地域農民大騒ぎをする、これに対して反対をするという問題が現実に起つておるわけです。これは幾多の実例をあげることができるのでありますが、どうも現段階におきまして、また今の政策方針のもとにおきましては、この総合開発なるものも、実は電源というもに従属させられておる。建設省が出しておられる総合開発の三つの原則を見ても、重点的にある事業に対して事業費を集中する、真に重要な事業に集中するという場合、真に重要な事業というのは地域によつて違うとあなたは言われるけれども、事実においてはやはりこれが電源に集中せられる、電源に集中せられる結果、ほかの水利などが従属的に置かれる、こういうことになつておるのではないかということを私は恐れるわけであります。そういう点では今回のこの特殊会社案にしろ、また今までの公益事業委員会がやつてつた電源開発計画実施上におきましても、いろいろ遺憾な点があつたのではないかと思うのでありますが、そういう点について建設大臣はどういう見解を持つておられますか。
  16. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいまお話の、水を農業等に使うという点につきましては、もちろん総合開発の点から重要視いたしております。総合開発地域一つとして指定されております木曽川流域特定地区、これは主として木曽川の水を使いまして用水をやる、愛知用水とか岐阜用水とか、三軍用水とか、こういう用水を完備いたしまして耕地の生産力を増強するということが重点になつております。必ずしも電力だけを重点としない、その場所々々によりまして最も水を効果的に使うという点については十二分に配慮せられておるという点を御承知願いたいと思います。
  17. 風早八十二

    風早委員 抽象的にはそういうことを言われるのでありますが実際問題としてどこでもこの電源開発が行われる。電源開発ということはそれだけを考えてみますならば決して悪いことではない。電力の増強の上に電源開発が必要であることは間違いないし、また日本は特に水力に恵まれておるという意味におきましてこれを有効に電源に使うということは、これはもう言うまでもないのですが、実際問題として電源開発をするということはみな喜びそうなものだけれども、必ずそこにいろいろなトラブル達しておる。たとえば天竜川高岡ダムでありますが、そこの建設の過程で外人の測量士が入り込んでも、これをとめてやるものがなかつたという事実があつたようであります。畫そこへくいを打つておくと夜になるとはずされている。ボーリングの機械のボルトがはずされている。つまり明らかにこれに対して反対であり、それは必ず自分たち農氏にとつて不利益である、こういう受取り方をしておる証拠だと思うのです。これは決していわれのないことではないと思います。その場合にたとえば立ちのき料というようなものもほとんど田畑の実際の値段を償うにも足りない、移転料もよこさない。こういうわけで事実その場所を移転することもできないままでおる。従つてそごに非常なトラブルが起つていることがあるわけであります。またこれは現在まだ建設中であると思いますが、日光の所野第三発電所を今年の豊水期に間に合わせるということで建設中であるという話でありますが、もしこれができると農民たんぼの水の水温が三度も低下するということで大騒ぎをやつておるというようなことも聞いておるのであります。小河内村のダムにしましてもやはりはげしい農民反対の動きがあつたし、まだあるわけです。長野県の北部の信濃川の上流ダムでありますが、これが満水になるとやはりたんぼに非常に影響する。去年の夏数箇町村が水浸しになつた。これについては自由党の前予算委員長小坂善太郎君がこのダム建設反対期成同盟の会長になつておる、こういうようなことが事実地元においてはあるのであります。こういう例は全国的に電源開発という場合に大体つきものであるように出て来るわけです。こういう点から見まして、私は総合開発というその精神は抽象的にはむろんわかるのでありますけれども、現実においては電源のための電源——もちろんその電源は一定の重要な需用があつて、そこで電源開発ということはなされるのでありましようが、しかしながらこれが絶対的なものになりまして、その他の利害関係がこれに従属させられる、こういうことが実際には至るところで起つておる。また栃木の箒川のは調整池ダムであると思いますが、これなども石を積んで水量を加減しておくと電力会社が無警告で水を流す。朝起きてみるとたんぼ水浸しになつておる。腰までつかつて仕事をしなければならぬ、こういう場合にもろん建設條件として逆調整池というようなものを設けることになつておるそうですが、事実はそういう規定は守られなくて、そういうものは設けられておらぬ。ですからこれを改めればよろしいということになるかもしれませんが、事実これは改める余地がない、改められない。そういう実情で今日まで至るところで電源開発そのものが中心になつて、その他の利害関係が蹂躙せられておる、こういうことがあると思うのですが、これに対しては建設大臣として実際どういう御見解か。これは先ほどの抽象的にただその両者の重要性に応じて、そのところどころによつてつておるというだけでは、私は相済まない問題であると思う。この点については、もう現在の條件では、電源というものがどうしても第一になると考えられておられるのかどうか、これをお答え願いたい。
  18. 野田卯一

    野田国務大臣 お話電源開発に伴いまして、影響を受ける地方方々との間にいろいろ問題が起ることは、私は各地をまわつて見聞しております。私はこれは問題としては二つにわかれるのではないかと思うのであります。一つは最近電源開発は御承知のようにダム式でありますので、大きななダムをつくるほどたくさんの水没地帶ができる。それは上流部が水につかるために何十戸、何百戸というものが立ちのきをしなければならない。今まで先祖代々耕して来た田畑が水につかつてなくなつてしまう、郷土を失うというような問題が各地に生じた。これについては面接その影響を受けられる方々に対してはわれわれは衷心から御同情を申し上げるのでありますが、他面電源開発して、あるいは多目的ダムをつくつて、そうして農業生産を高める、あるいは洪水調節するというような国家的な大きな立場に立つた目的のために犠牲になつていただくという場合が、あちこちにあるのは、私はやむを得ないことだと思います。しかしながら当該の方々にとりましてはきわめてお気の毒なことでありますので、それに対しましては十分な補償を考える、あるいは他に田畑を見つけて、そこに移り住んで農業に従事していただく。そういうことに対してその地方々々で深い思いやりある態度を講ずべき必要がある、こういうふうに指導しております。もう一つの問題は、ダム建設され発電所ができました後におきまして、その運営がよろしきを得ないのではないか、ただ電力を起すことのみに専念して、他の利害が顧みられないのではないか、こういう心配を持たれる方がずいぶんあります。これは琵琶湖の開発の問題についても、琵琶湖の開発はぜひとも滋賀県でやりたいというようなことを言われる一つの理由といたしまして、琵琶湖の水面が上つたり下つたり、その他のことが滋賀県民に非常に大きな影響を持つておる。従つてその水の操作が電力を起すことだけの範囲で行われたのでは、滋賀県民としては安心しておられない、こういうようなお気持もあつたように私どもは聞いておる。これはその一例でありますが、それに類した例は他にもあるわけであります。従いましてダムができ、発電所ができたあとにおきましても、その水が灌漑用水のために、あるいは工場用水のために、あるいは洪水調節のために役立つというような場合におきましては、その運営につきましては十全を期さなければならぬ。それにつきましては單に電力会社にまかせることなしに、政府が十分監督しまして、政府機関が責任を持つてその衝に当るようにする必要があると考えて、今後その方向で進みたい、そして問題を起さないようにいたしたい、また心配されないような方向に持つて行きたいと考えておるわけであります。
  19. 風早八十二

    風早委員 そういう方針をとつておられることははなはだ了とするわけでありますが、実際問題として今までうまく行つておらない。犠牲はやむを得ないと言われますが、実際に農民の側にはなはだしい犠牲を背負い込ましておるということについては、あなたは認められるのかどうか。またこれは不満なことである、満足できないことであるというふうに考えておられるのか。今後それを満足すべき程度にするために、建設省としてはどういうことを考えておられるのか。こういう点についていま一度明確な御答弁を願いたい。
  20. 野田卯一

    野田国務大臣 ダムの運営の問題につきましては、各地のいろいろな事情があると思いますが、その実情に沿つて、ただいま私が答弁いたしました趣旨によつて善処いたしたいと考えております。
  21. 風早八十二

    風早委員 善処という非常に便利な言葉がありますが、ほとんど例外なくと言つてもいいくらい、開発に関連して農民の間に非常にトラブルを起しておるような実情でありまして、今までの実績から見ると、善処というような言葉ではだれも安心ができないと思うのです。だれもそういう言葉を信用することはできないと思う。これは下野新聞の四月五日のトップ記事でありますが、利根開発株式会社開発にまつわる問題が出ております。詳細なことは省きますが、非常に詳細な記事が出ておるのです。これに対して全村民千三百七十戸がダム建設に対して反対の署名をやつております。小平知事もダム建設を許していいか悪いか非常に躊躇しておるような実情だと伝えられておるわけです。こういう問題は今後特殊会社分開発について、必ずといつてもいいくらい予想せられる問題でありまして、それに対してただ善処するということでは責任のある答弁とは受取れないのであります。そういう点で建設省方針そのものが、これはおそらく電源開発だけに限ることではないかもしれませんが、電源開発ということをとりますれば、総合開発とはいいながら決して総合開発ではなくして、そのうち電源開発ということが問題になつて来る場合には、大体電源開に最重点が置かれ、事業費も集中せられ、その他いろいろな犠牲の分担につきましても電源開発を中心にして、その他のものは犠牲にするのはやむを得ないという方針にはつきりなつておるのだとしかわれわれには考えられないわけです。そういう点で今の建設大臣の御答弁は善処という抽象的な形において、私の今申したようなそういう電源開発一辺倒の方針というものを肯定しておられるものとさえ考えられる。私は実際そういうふうにしか印象を受けないのであります。  次にこの電源開発が新しい産業需用に応じるためにどんどんとこれから遂行されなければならないと言われるのでありますが、これはきわめて特定の産業、あるいは軍事基地、つまりきわめて限られた軍需生産の特定の工場というものとはつきり関連をもつてこの電源開発がなされている。そういう実情にあるのではないかと思うのであります。こういう点については安本長官にお尋ねしたいのでありますが、安本長官はむしろ積極的にそれはその通りだというふうに認められるのかどうか。この点は今までも大体そういう趣旨の御答弁を承つておりますが、今回特殊会社が発足してさらに多数の地域においてすでに具体的な計画案が提出せられているということにかんがみまして、今後問題もてもこれは大事な問題だと思ますから、周東安本長官から電源開発の根本方針というふうなものについて見解をひとつ述べていただきたいと思います。
  22. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはたびたび申し上げております通り、あなたのお話のように、軍需生産を目的とする特殊会社と結びついての電源開発をするというふうなことは一つも考えておりません。たびたびそういう趣旨の答弁があつたようなことを一方的にまず前提としてのお話ですが、電源開発はあくまで日本国民生活上必要な電気、またそれと関連して日本産業復興に必要な立場において今非常に電力が足らないということは、去年の異常渇水における影響をごらんになつてもよくわかるわけです。そういう意味合いにおいて、日本が将来伸び行くために日本産業を復興させる上において必要なるがゆえに電力開発するのであります。特定の会社のために電力開発するのではありません。
  23. 風早八十二

    風早委員 いつも周東安本長官はただ抽象的に私の質問に対して否定的な答弁をされますが、実際国民生活の向上ということとこの電源開発ということとが必ず矛盾するということはないのです。これを矛盾しないように電源開発がなされるということはあり得るわけです。これは社会主義においてはそうであります。しかしながら現実に今あなた方がもくろんでいる電源開発は、少しも国民生活の向上に役立つておらない。この電気がなぜ不足するかということについては、私はこの前の代表質問のときに一時間半この問題だけを質疑応答したのでありまして、今日はもはやその煩を避けて繰返しません。今、日本産業の復興のためにと言われますが、問題はいかなる産業であるか、具体的にどういう経営であるか、これを明確にしなければ問題にはならない。いくら電力を増強しても増強すればするほど、依然として広汎な喜平和産業中小企業、家庭の電燈、これはやはり苦しくなり、また値段も高くなる。これが今までの繰返された実情なんです。また現在公益事業委員会によつてなされておる電源開発計画が、具体的に軍需生産、あるいは軍事基地に直結しておるということを断定させる事実を至るところに発見することができるわけです。たとえば先ほどの利根流域の問題にしましても、われわれはやはり利根流域の叢雨要点は何といつて氾濫を防止し、農民にゆたかにかつ正常な水が流れるようにする。当然これにはまた耕地の整理の問題も起つて来るでありましよう。しかし土地と水の問題が、利根流域につきましても最大の問題である。あそこで電気が来るとか来ないとか、もちろん無燈火村に対して電気が来るようになるということは、はなはだけつこうなことなのでありまして、そういうことが同時に副産物として来ることはけつこうであるが、それよりも何よりも土地と水が安全に農民に確保されるというために、利根の開発ということが要求せられておるのです。ところがあそこで何が実際なされておるか。今度の国土総合開発のこれを見ましても、利根流域については資金裏づけも何もない。ところが群馬県の箱島の発電設備というものができた。これはもうこの春から運転するわけでありましようが、これは一体だれのために、何のために発電所がつくられるかということは、送電線がどこへ向けられておるかということをはつきりさせればこれは一見明瞭になる。この箱島の発電所から二十二万ボルトの——実際に出すのは十五万ボルトということでありますが、二十二万ボルトの設備の送電線が今工事中である。どこへ送電線が行くか、これは千葉県の今問題になつておる川崎製鉄、あそこへまつすぐ向けられておる。こういうふうな明らかな事実があるわけです。これは東京電力株式会社の社報を見ましてもこの川鉄で厖大な電力需用が起つて来た。そのためにこの発電所をつくり、その電力の増強をやり、これを流さなくてはならなくなつた。この関係をはつきり東京電力の社報にも出しておるわけです。先ほど申しました日光の所野第三発電所、これもやはりまつすぐ日光の住友製造所、ここへ向けて送電線がつくられる。もちろんそこへ送られるが、そこからほかへもまわる。それは全然そこだけだというようなことはだれも言いませんし、私も言つておらない。しかしとにかくそういう具体的な目標がやはりあるわけです。それがしかも主目標である。この天竜川の高岡・ダムにしましても、これが竣工すればどこへ主として流されるか、何を目標にしておるか、これは名古屋の中日本望、つまりこれからいよいよ日本で航空機をつくる、兵器生産が許される。この中日本重工に対して高岡ダム電力というものが、そこへ流されるということになるわけです。これはもう今日漫然と電源開発をやり、発電所をつくり、ダムをつくるというようなことはあり得ない。みんなちやんとあらかじめここにアルミ工場がある、ここに飛行機工場がある、ここに基地がある。それがまずもとでありまして、そのために適当な地点を選んで水力を起し、発電所を起し、そうしてそこへ流す、こういうことになつておる。この九州の福岡の築上の火力発電所建設、これなんかを見ましても、これは今までは戸畑火力、大門火力、こういうものをつぶして、それでこれらを移転して、労働者も職場転換をやつて、築上火力発電所というものが、建設される。これは何のためであるか、これは有名な板付の航空基地があるところがこれはもう戦闘機はあそこからは出なくなる。従つてこれが今度は大分県の佐伯の旧海軍航空百基地に移る。この旧海軍航空基地、つまり新しい米軍の戦闘機の基地、そこへ向けてこの電力が流される。それから舞鶴にしてもそうである。宮津火力、北陸水力、こういうふうなものがやはり相合して、京都に変電所がつくられる。さらにこれが舞鶴の軍港へ送電される。こういうふうな計画はもうほとんど主要なる電源開発発電所計画にきわめて具体的に結びついて出て来ている。小河内にしてもそうです。
  24. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 風早君に申し上げますが、御質問はなるべく簡潔にお一願いします。
  25. 風早八十二

    風早委員 多摩の奥地において、たくさんの軍工場が建設せられつつあるわけでありますが、そこへ向けて電力一を流すためのダムなんです。こういつたようなことを見ましても、今周東安本長官が、ただ抽象的に日本産業一般である。こういうふうなことを言つて、私の質問に対して否定的な答弁をされるが、事実日本産業復興といつても、こういう軍需産業、あるいは軍事基地、いわゆる日米経済協力なるものの線に沿つたところの、こういう具体的な目的を持つて、むしろそこへ流すために新しく莫大なる資金を投じて、電源開発をやるということになるわけです。これはもちろん提案者福田一君を初め、この提案者の人たちが実際にそういうことを意識してやつておられるかどうかということは知りません。それは全然想像の限りではないのです。しかし客観的には今までは少くともそうなつてつたし、吉田自由党内閣の政策を今考えてみた場合に、また今後もそういうことに電力が主として向けられるということは、十分に推測のできることであると思う。こういう点について提案者は私が指摘した今までこういう実情に照らして、石狩なり、北上なり、只見なり、こういつた電源開発を新しく計画する、産業一般を復興させると言われますが、もう少し私はその演ずるところの実際の役割というものを、一体考えておられるのかどうかということを、この際提案者に対してただしておきたいと思うのです。
  26. 福田一

    福田(一)委員 今度の電源開発が主として軍需産業に使われる、こういうような結論であるようでありますが、——私はあなたとはその点では所見を異にいたしておるものであります。もちろん日米経済協力ということは、今後も一継続されるでありましよう。また安保條約に基く行政協定というものは現実の問題であります。従いまして日本の国力の一部がそういう面において使われて行く。電力においてもこれはもちろん例外ではあり得ないのでありまして、そういう面に使用されて行くということを否定いたすものではありません。しかしながら風早氏の言われることを聞いておると、今後できる電力はほとんどすべてがこの方面に充当されるのであるという御結論のようでありますけれども、私はさようには考えておらぬので、民生用といたしましても、また一般平和産業用といたしましても、電力は相当そういう方面によけい流れて行く、また軍需産業方面にも一部流れて行くことも否定いたさない、こういう気持なのであります。なおあなたが提示されました例の中で、たとえば箱島の発電所電力が千葉県へ流れる、川鉄へ流れるので、みんなあそこへ持つて来るのだと言われるこの例一つについても、一応考慮してみる必要がある。大体千葉県というところは非常に電源の少いところでありまして、あそこは電圧が非常に低いのであります。今まで超高圧の送電線がありませんために、千葉県の人は電燈が非常に暗いといつてこぼしておられる。従つて一時は低圧の電力に耐え得るような電球までつくつて、それを使つておられるような事情でありまして、こういう面から見ますならば、東京電力といたしましては、当然今後できますところの発電所電力を千葉県に送つて一般の人たちが使つていると同じような燭光の電力のもとに、あるいは新聞が十分読めるようなくふうをすきであると考えておつたのでありまして、今あなたの御説明によりまして、そういうように今度は強度の送電線ができるということになりますと、これは千葉県の人も民生的に考えてみましても、喜んでいただけるのではないか、かように考えるわけであります。またその他にも例をおとりになりましたけれども、御存じのように、電気というものは二六時中、たとえば会社でも使うわけではないし、工場でも使うわけでございません。そこでそういう送電線が強化されて来ますれば、この余つた電力というものも、また工場が使わないときには、当然民生の電気にも転用されて行くということも考えられることでありますし、どうも風早さんのおつしやる御意見は私として納得が行きかねるのであります。われわれといたしましてはあなたが指摘されましたように、これからできます電力の一部がそういう軍需産業の面に使われる、あるいは安保條約に基いて行政協定が結ばれ、米軍が駐留するということになれば、その面にも一部向けられることは、これは否定はいたしませんけれども、それが全部である、あるいはそれが大部分である、こういうことには私納得いたしかねると考えておるものであります。
  27. 風早八十二

    風早委員 今箱島発電所からの送電で「まつすぐに二十二万ボルトの送電線が川鉄に向けられるということを指摘いたしましたが、もちろんその場合において川鉄が常時その電気を独占するというようなことは何も言つていやしません。しかしながら主として特にあの川鉄の軍需生産というものと群馬県の箱島の発電所というものとが密接に関連して、それで箱島がつくられたということは、東京電力株式会社自身もそれを認めておる、というよりもそうだとしておる。これは事実なんです。そのことを言つておるにすぎない。なおそれならばそれによつて今まで電圧が低くて、電気が非常に足りない無燈火村の多い千葉県が潤うかということについても、これは決して保証の限りではない。今の電源開発の眼目がそういうところにある以上、それによつて県民一般に電気が潤うということははなはだ保証しがたいのです。その実例は四国にあるのです。この前も私は申しましたが、アルミ製錬をやつておる日新化学、ここではニッケルもやつておるわけでありましようが、この一工場に対して全四国の電力の半分を食つておるということは十分御承知と思います。このアルミというものは、全部とは申しませんが日本でも航空機工場ができればそこで使う、アメリカへ持つてつてもまた使う、いずれにもアルミの今日の役割は決して民需じやない、これは明らかに航空機用のアルミになるわけであります。そのために日新化学に対して資材、資金の面で特別な大きな特典があるわけです。そのために電力はあると言つても決して過言じやないのです。県民は電力不足で、相かわらず無燈火農村があるわけです。農民は脱穀もできない状態があるわけです。これは事実大騒ぎになつてつて、このことだけが原因ではないかもしれないが、実はこれは吉田総理の地元であります。地元であつて自由党は負けておる。そういうことも実際にあるわけです。一体今日この電力というものが主として何のために使われるかということは、これはもう明瞭なんだ。われわれ実は電源開発を非常に念願し、正しい意味においては日本の国力発展の必然として生れて来たのがこの電源開発なんだ。同時に国民生活の向上と十分にマッチするような形でこの電源開発がなされるにはどうしたらよろしいか、こういう問題をわれわれは実は提起しておるわけでありまして、ただ電源開発反対しているというような、そんなばかなことを考えておるわけではないのです。福田一氏は私どもと一緒に電源視察をやつて、あなたはわれわれの根本精神はよく御承知だと思いますが、われわれもまたこの電源開発ということは当然必要であると考えているのです。ただそれが今の建設省の言うようないわばインチキな総会開発ではなしに、真に総合的な見地に立つて農民の問題を解決する、同時に労働問題を解決する。また電力料金にしましても同様であります。これはもう繰返しません。いつも私はこの電力料金の問題については言つておりますし、また電力料金の問題で明後日あたりから審議も始まるわけでありますから、これは繰返しませんが、いずれにしても今日ではこの電源開発なり電力増強ということは決して国民生活の向上になつておらぬ、また農民のためにもなつておらぬのです。水とはこれが矛盾するのです。そういうやり方でしかあなた方は電源開発をやれない。これは今度高良とみさんでも帰つて来られれば、さしあたり国会ででも大きな歓迎会をやつてひとつ話を聞けばよくわかると思う。ソビエトにおける大共産主義建設計画、これはわれわれ図面もここに持つておりますが、まつたく同じ電源開発でも、これによつて同時に労働の問題、農民の問題、国利民福を総合的に解決する大きな大自然改造計画というものが出ておるわけです。こういつた電源開発こそわれわれは非常に熱望しておるのであつて、ただこれがあなた方のいわゆる日米経済協力であるとか、向米一辺倒であるとかいつたような、日本を再軍備し、また戦争の準備をさせる建前のもとで今行われる電源開発というものに対してわれわれは大いに反対したい。そして今日ではむしろ農民の水の問題を先に解決したらどうか。この総合開発計画の中でも特殊地域がいろいろ指定されておりますが、そのほかにたくさん重要な地域があるわけです。かりに十九地域総合開発計画を一応許したとしても、そこでやはり一番問題になるのは、実はその地方にとつては水の問題でありまして、それをまず主眼にして考えて、それに付随して電源開発を考えるという、そういう立案をわれわれは望むわけであります。しかしながらそういう立案はあなた方自由党内閣の手によつてはできないということを私は断言してはばからない。でありますから今日この電源開発があくまで特定の軍需生産、特定の軍事基地、そういうもののために奉仕する役割をもつてなされるということを、われわれはこうい具体的な事実をもつて指摘したい。そしてこれは明らかに農民土地の問題また水の問題にこれが背反する。その証拠は、建設大臣は一番よく御承知でありますが、河川法はどういう方針をもつて今度改正いたします、土地收用法はどういうふうに改正いたします、これはすべて電源開発に従属して改正が行われる。現にまた今度の電源開発促進法案にもはつきりとそのことが出ておる。土地収用法や河川法はこの法案に従つて改正せられなければならない。あくまで電源中心であります。その場合に土地の收用は電源開発目的上これはかつて次第です。そういつたようなことが行政協定でもつてはつきりとりきめられておる。そういう自由党の吉田内閣の手による電源開発なんということは、百害あつて一利なしであるとわれわれは考えざるを得ないので。この点だけを最後に申し上げてきようの質疑は終ることにいたします。
  28. 多武良哲三

    ○多武良委員長代理 午前の会議はこの程度にいたし、午後一時三十分より会議を続行いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  29. 中村純一

    中村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。肯野武一君。
  30. 青野武一

    青野委員 私は電源開発促進法案につきまして、お忙しい中を御出席していただきました大蔵大臣に二、三御質問したいと思います。質問の要点は、この間の通産委員会に、東北電力の白洲さんが見えられまして、ほかの委員の方がいろいろ御質問いたしましたけれども、その答弁が雲をつかむようで、どうしても私どもは納得できない箇所がたくさんあります。それでその点についてお尋ねしたいと思いますのは、国家資金は別といたしまして、この電源開発をするに必要なる外国資本が長期に借り入れられる自信があるかどうか。一口に申しますと、質問の要点はそれでございます。私は同僚の八百板委員質問をいたしまして、まだよくわからなかつた点がございますので、それについて、一応外国資本を電源開発に借り入れるということにつきまして、政府責任の肩がわりになつております宇治電力、台湾電力、東邦電力東京電燈、元信越電力日本送電旧大同電力日本電力、これらの電力会社に外国資本が大体具体的に個別的にどの程度政府責任の肩がわりになつて後に償還されておるか。償還されてあとにどの程度の残額が残つておるかということをまず第一点としてお尋ねしたい。
  31. 池田勇人

    ○池田国務大臣 各電力会社の外債の政府が肩がわりして引受けました残額についての正確な数字は今用意しておりません。いずれ調査いたしましてごらんに入れたいと思います。
  32. 青野武一

    青野委員 重ねてお尋ねいたしますが、その当時——これは大正十四年あるいは大正十三年、あるいは大正三年といつたような古い外債ですが、その当時は日本の貨幣に直して一ドルが二円と承知しております。今レートの計算で、大体今残つております総額は、旧貨幣価値と違いまして、レート関係から行きましてどの程度になるか。概算でよろしいですから、おわかりならひとつ……。
  33. 池田勇人

    ○池田国務大臣 電力会社のみならず、満鉄の方もございますし、東拓もありますし、また政府の直接の国債もありますので、その区わけは覚えておりませんが、利子を入れまして、全体といたしましては四億五千万ドル程度でございます。そのうち今までに支拂わなければならない利子だけで一億五千万ドルばかりございます。従いまして、元本で申しますと三億ドル足らずに相なります。
  34. 青野武一

    青野委員 私は御参考までに——これははたして正確な数字かどうかわかりませんが、外資関係を一応整理しないと、電源開発についての外国資本というものが非常に入りにくいのではないか。これは相当正確な資料だと私は信じておりまするが、ひとつ御参考までに聞いておいていただきたい。先ほど申しました宇治電力が約千四百万ドル、発行は大正十四年、額面は九十一ドル、利子は七分、引受け会社がニューヨークのボストンリーヒ・ギンソン・コーポレーシヨン、その次台湾電力は二千二百八十万ドル、これは額面が九十三・五ドル、五分五厘の利子、ジエピー・モルガン商会、クーレ・ループ商会、それからニューヨークのナシヨナル・シティ商会、フアースト・ナシヨナル銀行、この四つ。東邦電力が千五百万ドル、大正十四年で額面が九十・五ドル、七分の利子、ギャランテイ・トラスト・コンパニー・オプ・ニユーヨーク、こういうことになつている。それから別に英国関係では三十万ポンド、これは九十七ボンドの額面で、ロンドン・セール・エンド・コンパニー。東京電燈は七千万ドル、大正三年、これも同じく九十・五ドル、六分の利子、ニューヨークのギヤラントリー・トラスト・コンパニー、それから別に英国から四百五十万ポンド、これは額面は九十ポンドで六分、ラザード・ブラザース商会、それから別にもう一つ借入先がありますが、省略しておきます。元信越電力が七百六十五万ドル、これは九十三ドルで六分五厘、これはデイロンリード商会。日本送電が一億一千五百万ドル、大正十三年、九十一・五ドル、七分、これも同じくデイロンリード商会、次が旧大同電力一千三百五十万ドル、大正十四年、八十六ドルの額面で六分五厘、これも同じ商会です。日本電力が九百万ドル、大正三年、九十四ドルの額面で六分五厘、ハリス・フオブス商会、その他三つほどございます。これは相当苦心して手に入れたのでございますが、この中からどの程度政府責任の肩がわりによつてこの外債を償還されておるか、その金額と残額を、ひとつ御迷惑でしようが、ガリ版でけつこうでありますから、書類で通産委員全部に資料としていただきたいということを希望しておきます。  次にお伺いしたいと思いまするのは、この残額あるいは利子等について、二十七年度予算の上にどういう数字になつて出て来ておるかということをお尋ねしたい。
  35. 池田勇人

    ○池田国務大臣 二十七年度予算一には、外債ガリオアの返済、あるいは賠償等の支拂いを見込みまして二百十億円計上いたしております。正確に申しますると平和回復善後処理費は昭和二十六年度の繰越し使用になつて参ります。二十七年度予算に出ております二百十億円の中から連合国財産補償費に百億円を要しまするから、実質的には前年度の繰越しによりまして二百十億円を見込んでおります。そのうち外債についてどれだけ支拂うかという問題については、外債をどういう方法によつて支拂つて行くかということを向うの債権者と打合せをしなければきまりません。ただいま政府といたしましてはいろいろな点を議いたしまして研究いたしておる状態であります。予算はガリオア、賠償を含めて二百十億円計上いたしておるわけであります。
  36. 青野武一

    青野委員 重ねてお尋ねいたしまするが、今私が申し上げました電力関係だけはどの程度になりますか。これは正確な数字が出て参りますれば、お調べの上、前の書類とあわせてお願いしたい。  次に今お話がありましたいわゆる債権者との話合いは非常にむずかしいように聞いておりますが、話合いがどういうふうに進行するか、またその点について日本政府とその債権者との間に何らかの機関を設けて、それによつて話合いを進めて行くのか。毎年幾らなら幾らずつ拂つて行くということをおきめになつておられるか。あるいはなつておられなければそういう債権者と日本政府との間で何らかの機関を設けられるのか。設けてあればよいですが、設けてなければ何らかの機関がやはり必要になつて参りますが、その点についてはどういうお考えを持つておられますか。
  37. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本政府と債権者側との間の処理機関についてはまだ設けておりません。ただいま私が申し上げることができるのは、国内的に外債支拂いのためにいろいろな研究機関を置きまして、昔外債に携わつてつた方方にお集まりを願つて、相談をしております。債権者側とどういう方法で行くかということは、まだ話合いもいたしておりませんが、平和回復後におきましては、日本政府としては早急に支拂いについての具体的準備にかかりたいという心組みのもとに研究を進めております。
  38. 青野武一

    青野委員 この前だれであつたかよく知りませんが、たしか加藤鐐造造君だつたと思います。五、六日前の通産委員会で白洲さんに来てもらつて加藤君が質問いたしましたときに、外資導入は相手のあることで、われわれが考えておるほどそう簡単に片づきません。さしあたり三千億円ほどあれば間に合うと資金関係は思つておりますが、いろいろな関係でそう簡単には、相手のあることで外国資本が口で言うようにやすやすと導入はできないだろうといつたお話があつたのであります。先ほどから質問申しましたように、こういう外債についてまだ機関も設けてなく、話合いも進んでおらないといたしますと、こういう問題が未整理のままではたして外資導入が思わしく行くかどうか、この点についてわれわれは非常に危惧の念を持つておるのであります。でありまするから外国の民間資本が関係者の努力、政府の努力によつて電源開発について日本に入るようにかりになつたといたしますと、やはり政府として何らかの保証をなさる御意思があるか。と申しますのは、御承知のように日本に五十六箇所も軍事基地ができる。そうするとやはり一種の非常事態で、日本電源開発事業についても平時と違つて非常な危険率がある。ましていわんや今申しましたような外債がそのままになつておりますから、やはり外国の民間資本はそう簡単には入つて来ないのではないか。そうすると国家資本が大幅に入りまして、あとのできないものは外国の資本も当てにするし、いろいろな方法もありますが、かりに政府その他の関係者の努力でアメリカならアメリカの民間会社あたりから、あるいは銀行から資本がこれに対して入つて参りますときには、いろいろな国際上の情勢だとか、日本の国内情勢からいつてみて、危険率の多いところにそういう投資をすることについては、やはり政府の何らかの責任と保証がなければ簡単に入つて来ないのではないか。それについて政府はどういうお考えを持つておるか、お尋ねしたい。
  39. 池田勇人

    ○池田国務大臣 政府の保証があつた方が入りいいという場合におきましては、そういうことも考慮してもいいと思います。また電力のみらずほかの方で、民間同士の外資の導入問題につきましても、開発銀行等の保証もできると私は考えております。
  40. 青野武一

    青野委員 重ねてお尋ねいたします。この外資の導入がうまく行かない場合には、やはりせつかくこういう法律案ができましても途中で頓坐するのではないかというようなことも私どもは考えておるのでありますが、先ほどちよつと述べましたように、日本にアメリカの軍隊が駐留する。私は一月の中ごろに佐世保に遊説に行つたときに、つぶさに関係者にも会つて見て来たのでありますが、朝鮮の戦争は大体陸海空軍の相当数佐世保におりまして、日本の労働者も進駐軍要員として佐世保だけで七千名ばかりおる。いろいろな関係で双方の詳しい話を聞いて参りましたが、具体的な内容はこういう公開の席上では遠慮したいと思います。  それから北海道の今度の地震災害を衆議院を代表して五人のうちに加わつてつて参りまして、災害と同時にいろいろな北海道開発局のやつております仕事をつぶさに見て参りました。その他港湾労働法に関していろいろな港湾も私は自費で見て参りました。そういうものを見て来ましたのは、日本にこういうアメリカの駐留軍が来ておるし、日本で今度の二十七年度の予算に御承知の千八百二十億からの準軍事費と見られるような予算を計上された。従つて警察予備隊は増強され、海上保安隊の費用も大幅に引上げられた。安保條約に基く支出金も六百五十億、保障費が五百六十億、こういうものが大体日本の国の各方面に軍事的な施設になつて参りますと、そこへ民間外資が日本に入りますれば、政府の保証で何とかなりましようが、たとえば外国の資本が直接外国政府からかりに出るようになりますと、いろいろな軍事施設関係でそれに密接な関係を持つて参りますから、勢い日本電源開発、特に国家の資金をたくさんつぎ込んででき上つて来る一本建ての電力会社というものが、外国の資金によつてやられるということになりますと、いろいろな軍事的な意味を含んでひもつきになつて、その経営者の手ではどうすることも博きないようになるのじやないか。聞くところによれば日本の鉄道もある程度にらまれておるということである。大事な国民生活に非常に重要な関係を持つておりますこの電力というものが、外国資本に事実上左右せられるということは、将来に大きな不安を残すことになりますが、そういう点について私どもは心配しておるの零すが、これをひとつ重ねてお尋ねしておきたい。
  41. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそう考えておりません。資本は日本政府で持つわけであります。借入金は銀行からの借入金でありまして、そのほかにそれに対して向うが支配力を持つというものではないと思います。
  42. 青野武一

    青野委員 大蔵大臣に対する質問は、私は具体的にこまそれしく申上げずに項目別に簡単に申し上げておるのでありますが、この電源開発調整審議会というものができますと、民間人が三人入る。これはどういう立場の人がお入りになるか、あるいはこれは大蔵大臣に質問すべきではないかもしれませんが、御存じならばひとつお伺いしたい。  それからもう一つは七名の大蔵大臣、通産大臣、農林大臣、建設大臣、安本長官、公益事業委員会委員長地方自治庁長官、こういう人たちを入れますと、結局これらの大臣諸君の手によつて電源開発調整審議会というものが牛耳られ、悪く言うと吉田さんを中心として調整審議会が完全に独占せられて行く、そういう傾向によつていろいろな障害が起つて参りますから、せめて民間人三人のうちに農民関係の代表者くらいは入れてさしつかえないのではないか。この民間人五名はおそらく学識経験者というところに重点を置いているのではないかと思いますが、どういう立場の人を御推薦になりますか、ひとつお答え願いたいと思います。
  43. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は所管ではないのでございまして、どういう人が選ばれるか主管大臣からまだ聞いておりません。
  44. 中村純一

    中村委員長 委員長から申し上げます。ただいまの御質問につきましては提案者からお答えするのが適当かと思うのでありますが、今日は提案者は参議院における本案の事前審査に参つておりますのでお答えいたしかねるのでありますが、御同様の質疑が今日まで数回ありました。それからに対する提案者の答弁によりますれば、学識経験者という抽象的な基準でありまするが、そういう線で考えておるという趣旨の答弁をいたしておりました。なおただいまの御質疑の点は提案者によく委員長から申し伝えておくことにいたします。
  45. 青野武一

    青野委員 あとは今池田大蔵大臣にお尋ねいたしました程度の項目を、実は農林大臣か農林政務次官にお尋ねする予定にしておつたのでありますが、飛行機事故でおなくなりになつた人のお葬式に行つて、おそらくおいでにならないのではないかということでございますから、これは通産委員会の適当な機会に発言させていただくことにいたしまして、きようの私の質問は終りたいと思います。
  46. 中村純一

    中村委員長 他に御質問もないようでありますから本日はこれで散会いたします。  次会は明後日午前十時より開会いたします。     午後三時六分散会