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1952-03-20 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 神田  博君 理事 中村 幸八君    理事 山手 滿男君 理事 今澄  勇君       阿左美廣治君    江田斗米吉君       小川 平二君    小金 義照君       澁谷雄太郎君    南  好雄君       福田  一君    村上  勇君       風早八十二君  出席政府委員         公益事業委員会         事務総長    松田 太郎君         通商産業事務官         (通商振興局         長)      井上 尚一君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十日  委員佐伯宗義辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事武良哲三君の補欠として神田博君が理事  に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  輸出信用保険法の一部を改正する法律案(内閣  提出第六三号)  公共事業令の一部を改正する法律案神田博君  外二十七名提出衆法第七号)     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前に、お諮りいたします。理事武良哲三君より理事辞任の申出がありますので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村純一

    中村委員長 御異議なければさようにとりはからいます。  つきましては理事補欠選任を行わねばなりませんが、先例によりまして委員長において補欠選任いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村純一

    中村委員長 御異議なければ、神田博君を理事に御指名いたします。     —————————————
  5. 中村純一

    中村委員長 次に公共事業令の一部を改正する法律案神田博君外二十七名提出議題といたします。  質疑通告がありますから、これを許します。風早八十二君。
  6. 風早八十二

    風早委員 この公共事業令の一部を改正する法律によりまして、今までやつておりました電力会社から地方公共団体への公納金継続するという趣旨は、今までの経過からいいましても、また万般の条件からいいましてもきわめて適切な措置であると考えるのでありますが、私はただ一点だけ疑念を晴らしたいのでお伺いしたいと思います。これはひとつ公益委員会の方からお答え願いたいと思います。ほかでもありませんが、ただいま電力会社はまたもや電力料金値上げを計画し、これはもう実施に移そうということであります。これについては一応理由が出ておるようでありますが、この公納金継続ということも値上げ理由にされるということであつてははなはだ迷惑千万だと思います。そういうことは一応出てはおらぬと思いますし、現在及び将来にわたつてこの公納金の問題を少くも値上げ理由あるいはまた賃金切下げ理由にするというようなことはあり得ないと思いますが、その点について公益事業委員会としてはどういうお考えであるか、それを一点伺つておきたいと思います。
  7. 松田太郎

    松田(太)政府委員 その点につきまして私から御答弁いたします。実はこの期限を延長することにつきましては、委員会としては、率直に申しますれば、賛意を表しがたいのでありますが、その問題は別といたしまして、ただいま御質問の点について簡潔にお答えいたします。御承知のように従来のこの制度は、日発ができて地方公共団体の方からそれぞれのお持ちになつてつた発電所をちようだいしたときに、そのためにそれぞれの関係の各都市においてこうむる損失を補填するという建前になつておりますので、たとえば株式配当等が順調に参りまして、その収益の減退を補填するということになれば特に問題はないと思うのですが、その点については株式配当を従来は一割ということで計上しておりましたが、今度の改訂申請におきましては一割五分という形で申請になつております。もちろんこの点につきましては聴聞会その他で各方面の御意向を承つて、最後に公益事業委員会としては認可をしなければならぬという趣旨になつておるのであります。従つてかりに一割五分の配当が行われるということで、しかも公納金の額については従来通りということであれば、おそらくそれがために電気料金改訂をしなければならぬという必要はまずなくて済むのじやないかと思います。しかしながら公納金の問題については、最近の物価指数等からいたしまして、相当大幅にこれにスライドして上げてもらいたいという御要求が従来からあるのであります。私はつきりした数字は覚えておりませんが、全部で七十数億の額に上るような御主張が関係都市の方からあるのであります。従つてそういうスライドをかりに何らかの方法で実現しなければならぬということになりますと、従来はその場合には法人税軽減という点で国家的に考えてもらつてつたのであります。今度の改正案によりますと、その法人税軽減関係は従来通り、すなわち十年間で打切るという点はかわつておらないようであります。法人税関係がだめだということになつてスライドされるということになりますと、電気料金の方にかぶさつて参りませんとどうしても動きがつかぬということになつて来るおそれがあると思います。従いまして要するに今後期限の延長をすると同時に、スライドアップの問題が要請されるかどうかというところに今の御質問の点は帰結するのじやないかと考えております。
  8. 神田博

    神田委員 ただいま公益事業委員会から御答弁があつたのでありますが、この際提案者の一人といたしましてこの機会に一言お答え申し上げることがよろしいのじやないかと思いますので、簡単にお答え申し上げたいと思います。  この公納金の問題は、ただいま松田事務総長からも御答弁がありましたが、これは長い懸案のことでありまして、いきさつはしばらく別といたしましても、公納金制度を持続することによつて料金を上げるかどうかというお尋ねでありましたが、政府側から出ておる資料によりましても、昭和十七年から昭和二十六年までに支払つております額が一億八千四百万円ということになつておりまして、十箇年でありますから、十分の一にいたしますれば千八百四十万円という額であります。御承知のように今日電力料金は約二千億になろうとしておるような状態でありまして、ことに公納金所得税法におきましても、必要な経費として控除されておるようなわけでありますから、これを持続するという場合に、御心配のような電力料金値上げをするというようなことはないと思います。企業合理化につきましても電力会社はまだほとんどやつておらないような状態でありますので、かような観点から考えましても料金が上るということは想像できない。さらにもう一つは今物価騰貴によるスライド制の話が出ておりますが、これも地方財政委員会計算によりますと、約八十億すなわち七十九億三千六百万円という数字になつておりますが、計算外の町村がございますので、これらを加えますれば幾らか上まわると思いますが、これは大した金額ではなかろうと考えております。これもまだ先の問題でありまして、どういうふうに取扱うか、支払い方法をどうするかというようなことも考えなければならないわけでありますので、今度提案されておりますこの法律改正ではこの点には今のところ直接触れておらない。しかしわれわれ提案者の立場といたしましては、この問題も近い将来において解決したい。なおもつとつつ込んだことを申し上げますならば、この法律案にもうたつておりますように、復元をさせたい。希望地方公共団体に対して復元措置を講じて行きたい。それらの場合においてやはり復元の価格の際にこれらのことがさらに問題になるのではないか、こういうふうに考えております。簡単でございますけれども、一言御答弁申し上げておきます。
  9. 風早八十二

    風早委員 神田委員の御説明に対しては十分納得するのでありますが、今公益委員会の方からの御答弁によりますと、私のお尋ねした点については、あまりお答えになつておらぬと思うのです。その点について公益委員会は積極的に御賛成でないそうでありますが、しかもその反対理由なるものがよく私には納得できません。一方でスライドの問題もありますが、他面におきまして一五%の利益率というものを認めておられる。これは公益事業性質からいつて特に今日の電力不足実情からいいまして、問題はむしろそこにあると思うのです。この点については後ほど電力問題が議題に上りますから、その際に譲りますが、いずれにしましても、もしも現在でなくても近い将来に、あるいは料金値上げ、あるいはまた賃金切下げとか、あるいは賃金値上げ労働者側から要求された場合に、これに対していろいろな理由をもつて会社側が反対する。そういう場合に、この公納金の問題をこの反対の理由一つにして、あるいは公然、表ざたでなくても、そういうものを理由一つにされるということであれば、これはまたはなはだ問題になつて来ると思うのであります。そういう点で今の御答弁では、公益委員会としての責任ある納得の行く御答弁とは受取れないのです。もしこれがあいまいでありますと、私どもはこの改正案に対して附帯条項要求したいというくらいに考えておるのであります。もう一度ひとつ公益委員会としてその賛否は一応別として、とにかくこの公納金の問題を料金値上げなり、あるいはまた賃金引上げ反対なり、あるいは賃金切下げなりの理由にされるというようなことは許さない。それはまた別問題であるから許さないというような点について、もう少し具体的な御答弁を承りたいのであります。
  10. 松田太郎

    松田(太)政府委員 ただいまのお話につきまして、要するに公納金期限が延長された結果、それを理由として賃金の引上げ、あるいは賃金値上げ要求等に対して悪影響を生じないかという御質問と思いますが、この問題は率直に申しまして委員会といたしましては別な問題と思つております。従いましてかりに先ほど来お話になりましたようなスライドアップ等の問題が出て参りました場合には、それは十分各社の経理上の内容等も検討して結論を出さなければなりませんが、ただそれを賃金の問題にしわ寄せをして解決をすべき性質の問題ではない、かように考えております。
  11. 風早八十二

    風早委員 どうもはつきりしないのでありますが、これは提案者の側ではこの問題についてもちろん明確な見通しに立つて言われておるのだと思いますが、今の公益委員会の御意見等を勘案して、さらに提案者の側において責任のある御答弁をこの問題について煩わしたいと思います。
  12. 神田博

    神田委員 風早委員から重ねての御質問でございますが、先ほど来お答え申し上げました通り、この公納金制度の持続によりまして、御心配になつておられるようなことは生じない。すなわち電力料金値上げするとか、あるいは従業員賃金切下げを行うようなことは考えられないということについて確信を持つておる、かようにお答え申し上げます。
  13. 風早八十二

    風早委員 公益事業委員会意見に関してさらに伺いたいと思います。
  14. 神田博

    神田委員 公益事業委員会から述べられたことに対して何か答えられないかということでありますが、公益事業委員会——これははなはだ失礼になるかもしれませんが、この問題を解決する熱意を欠いていると思う。もし公益事業委員会がこの問題を真剣に理解されておつて、これを解決されるという熱意がありましたならば、おそらくわれわれ議員提案というようなことには相ならずに、政府提案としてこの問題がただいま御審議願つているような方向に解決されるものと私ども考えております。しかるにその措置がなかつた、すなわち地方財政委員会が非常に御熱心で、地方財政の現状を憂えてこの制度を持続したいという熱意であつたのでありますが、公益事業委員会の反対によつてそれが政府側として一致することができなかつた。そこでわれわれこの間の事情を見るに忍びなく、議員提案にした、こういう経緯でありますから、公益事業委員会は将来どうなるかということについては申し上げませんが、こういうような考えを持つておられる限り、公益事業委員会の将来というものについては消極的な考えを私は持つております。以上お答え申し上げておきます。
  15. 中村純一

    中村委員長 他に御質疑はありませんか——他に御質疑がなければ、これより討論に入ります。討論通告がありますから、これを許します。中村幸八君。
  16. 中村幸八

    中村(幸)委員 私は自由党を代表してただいま議題となりました本法律案賛成の意を表するものであります。  地方公共団体の経営せる配電事業は、配電統制令によりまして昭和十七年四月強制的に出資されたのでありますが、当時地方財政に及ぼす影響緩和のためにとられたのが公納金制度であります。その補償期間は十箇年でありますが、本年度末でその期限が到来することになつておりますので、公納金制度の性格、これが地方公共団体財政に及ぼす影響にかんがみまして、その期間を延長せんとする本法案趣旨はまことに当然でありますが、私はさらに一歩進めまして従来より地方公共団体が熱望いたしておりますところの電気事業復元が、一日もすみやかに実現することを強く希望いたしまして、本法案賛成の意を表するものであります。
  17. 中村純一

  18. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 私は改進党を代表いたしまして、本法律案に強い条件を付して賛成するものであります。本法案趣旨といたしますところは、いわゆる公納金制度の存続でありまするが、私はこの際各地方公共団体の熱望する配電事業復元を、中村委員と同様にすみやかに実現することを希望条件として、本法律案賛成の意を表するものであります。
  19. 中村純一

    中村委員長 次は風早八十二君。
  20. 風早八十二

    風早委員 私は日本共産党を代表して本改正案賛意を表するものであります。  一体電力というものの性質からいいまして、これはどこまでも日本国民経済並びに国民生活に最も有利に役立つものでなければならないわけであります。そういう意味で、この電力配分というふうな問題につきましても、今までの実情はわれわれは非常に不満足である。つまり進駐軍に対して、これは絶対量は必ずしも大であると言えないにしても、これが運営は絶対的にそれだけ天引せられる。またこれがだんだんとふえて来る。他方また同じく進駐軍の戦略的な目標に従属しておるような大口丙というものに、過当に電力配分せられ、かつその料金が非常に低廉であり、コストを割つておるというような点がある。他方におきまして、そのすべてのしりぬぐいとして、一般産業、ことに平和産業中小企業、こういうものにはとかく停電、休電というような犠牲がしわ寄せされる。いわんや一般家庭電燈に対しても、料金がはなはだしく高いのみならず、その電力流量は非常に少い。何どきでも停電ということがある。こういうような今日までの実情を見てみまして、はなはだ不満足であります。しかも今度行政協定が出るに及んで、いよいよ行政協定の第十二条によりまして、もうほとんど一方的に、公益事業というものは、米軍がそれを必要であると考えた場合に、その利用に供せられる。こういう危険性を持つことになつて来ておるのであります。この際われわれは、この電力を、日本国民経済並びに国民生活に真に役立つようなものにして行くことが、大きな任務であると思うのです。他方におきまして、特にこれらの配分は、地方、ことに農村に対しては非常に不均等で、恵まれておらない。こういう実情があるとき、われわれとしては、本改正案趣旨にもあります通り、実際に復元ということが、とにかくベターであるということを確信するものであります。従つてその見地において、この復元目標にして、今度の公納金継続ということがとられておる限りにおいて、われわれはこれに絶対の賛意を表せざるを得ない。  第二に現在の地方公共団体財政状態その他からしまして、絶対額はわずかであつても、電力会社からしては大した負担でなくても、地方公共団体の側から言えば、削減されれば非常に大きな影響を受けるのでありまして、そういう意味でも、日本の全体を総合的に考えた場合に、やはりこれが継続ということはきわめて実際的である。これはただ電力会社の側から、あるいは一つの限られた利害関係からというのでなくして、日本政治経済全体の見地からしましてきわめて妥当である。こう考えるわけであります。なお、電力がどうあるべきかというような大きな解決方法については、われわれとしてもいろいろ成案を持つておるのでありますが、当面そういう意味において、この改正案が、もしも打切られる場合を考え、それと比較してベターであるという意味において、わが党はこれに賛成の意を表するものであります。
  21. 中村純一

    中村委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。本案賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立
  22. 中村純一

    中村委員長 起立総員。よつて本案全会一致をもつて原案通り可決いたしました。(拍手)  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました議案に関する報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 中村純一

    中村委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  24. 中村純一

    中村委員長 次に輸出信用保険法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑通告がありますからこれを許します。澁谷雄太郎君。
  25. 澁谷雄太郎

    澁谷委員 私は自由党を代表いたしまして、輸出信用保険法の一部を政正する法案につきまして若干の質疑をいたしたいと存じます。本法改正をお考えなつた当時のポンド過剰対策と、今日の状態とではかなり情勢が変化しておることと思います。御承知のように、昨日の委員会におきまする池田大蔵大臣説明によりますと、英国ポンド価値強化てこ入れ工作が逐次成功して参つておるような話であります。私は必ずしも同調はしておりませんが、大臣ポンドの強気を言つておるのであります。もしそうであつたならば、あえてポンド過剰恐るるに足らず、すなわちポンド地域輸出制限の必要はだんだん薄らいで来おることになるのであります。でありますから、この丙種保険はあながちドル地域や農水産畜産品ということに限定するいわれは非常に薄らいで来ると思うのであります。ポンド過剰と申しましても、問題は日英双方の物の交換価値の不適正にあるのではないかと思うのであります。ポンド地域への輸出にも何らかの金融上の危険保障は必要でないか、こういうふうに考えるのでありますが、この問題について御当局の御答弁を願いたいと思います。
  26. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 ポンド累積ということが今日最も重要な貿易上の問題でございますが、ただいま澁谷委員は昨日の通産委員会におきまする大蔵大臣意見等を御引用になりまして、今後のポンド問題の見通しについて、もしポンドに対する強気的な考えを持つならば、今度の輸出信用保険制度改正中の重要な項目であります丙種保険及び丁種保険実施対策適用の範囲をポンド地域の方についても拡大してやつてもいいのではないか、原案ダラー地域またはダラー決済のみにこれを限定しているという点についてどう考えるかという御趣旨の御質問であります。この点につきましては、ポンド過剰対策につきまして協定改訂の問題、あるいは単に従来のような、いわゆる支払い協定のみならず、相なるべくは貿易協定の方までこれを進めて行きたいというようなことを中心とし、各般の方策を考えて参つておることは御承知通りであります。今後のポンドの問題につきましては、われわれといたしましてももちろん重大な関心を持つておるわけであります。現在の状況としましては、一億ポンドになんなんとするポンド累積という事実を目の前にしまして、いやしくも国庫負担ということをあえてしまして、丙種保険すなわちこの際輸出金融についての保険制度という方法を通じまして、輸出金融円滑化を期して行く。あるいは丁種保険、言いかえればエキスポーターないしはメーカの海外への広告、宣伝費用保険国庫負担において持つてやろうというような問題につきましては、今日の段階ではさしあたり丙種丁種保険実施対象ドル地域またはドル決済条件というものに限る方が妥当であると考えたようなわけでございますが、今後の情勢に応じましては、その適用対象についての改正をなお十分に考慮を加えたいと存じます。
  27. 澁谷雄太郎

    澁谷委員 次に、本法に限りませんが、中小企業信用保険法でも同様でありますが、国家なり政府なりが、形式上は保険となつておりますが、実質上は補償をしておることは、憲法上、財政法上においてどういうような解釈をとつておられますか。また本法改正に対しアメリカは別といたしまして、占領軍の中でも競争相手である英国等はどんな考えでいるのか。もつとも独立後のことですからそんなことはかまわないと仰せられるかもしれませんが、今後いろいろな形で輸出奨励助成策考えるにも参考と相なりますので、お聞きしたいと思います。
  28. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 言うまでもなくこれは保険制度でございますので、保険全般を通じまして収入保険料をもつて保険金をカバーして行くというのがその原則であります。そういう点から、今度の第一条の四の規定でも十分御了承願えますように、保険料率はこの法律による政府保険事業収入が支出を償うように政令できめるということに相なつておるわけでございます。これに類似した制度として、戦前には輸出補償制度というのがありまして、文字通り政府輸出契約によつて生ずる業者の損失補償し、金融機関のこうむつた金融上の損失補償するという制度があつたのでありますが、今日の情勢としましては、いわゆる国際貿易憲章関係もあり、こういう収入保険料をもつて保険金をカバーして行くというような独立採算制方法によつて、この際輸出振興について政府として十分な援助を加えて参りたいというのが今般の制度の本旨であります。英国におきましても今般の制度と同趣旨輸出信用方法をすでに前から実施中でございまして、各種の内容をこの中に盛り込んでおり、保険という方法を通じて貿易振興に直接間接相当な援助を加えている実情であります。今般のわが国輸出信用保険制度改正につきましても、そういう英国、フランス、ドイツ、スエーデンというような先進国の従来の例も一応参考として、わが国実情に十分合うような立案をこの際いたしたつもりであります。なお今般の法律改正案を国会に提案する経過におきましては、日本政府内部はもちろんのこと、関係司令部方面にもこういう問題についての了解は十分ついているというふうに御了承を願いたいと思います。
  29. 澁谷雄太郎

    澁谷委員 次に丙種保険におきまして、保険対象となる手形貸付または手形割引形式によるとありますが、その場合われわれの経済常識では、手形貸付と申せば自己の振出しの単名手形でこれを借用証文のように担保として金を借り入れる。手形割引と申せば複名手形のいわば裏書きのある手形を割引してもらうのであります。そういうふうに考えられますが、その場合貿手と普通の商業手形とが混乱いたしまして、銀行の窓口で区別できないということになると思うのであります。極端に申せば貿易には何らのかかわりもないような手形が割引せられるおそれがないではない。この点についてどういうふうにお考えになりますか、御答弁願いたいと思います。
  30. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 実際問題としまして丙種保険実施の場合において、仰せのような事例があるいは生ずる危険性もあろうかと存じますが、この丙種保険実施方法につきましては、政府が各銀行の方と包括的な保険契約を締結しましてこの保険関係が設定になり、具体的に銀行からエキスポーターあるいはメーカーに対しまして、こういう手形貸付割引方法によつて融資をやるという場合、その銀行から政府に対して通知を行うことによつて実質的に保険契約がそこに締結になるといいますか、保険関係内容がここできまつて来る。そういう方法になりますが、この制度はもちろん輸出契約の成立に際しましての生産、加工、集荷に要する資金の金融ということでありますので、貿易に直接関係のない方面への融資について、今般の制度対象にこれが入つて来るということは極力防止する必要があるかと思います。この場合に手形形式なり、あるいは輸出契約の成立によるものすなわち輸出金融であるという証明方法等につきましては、包括的な保険契約の場合におきまして、そういう点についての十分な調査といいますか、チエツクするような方法について、政府から銀行に対しまして十分な道を講じたいと考えております。
  31. 澁谷雄太郎

    澁谷委員 次にお尋ねしたいことは、丙種保険におきまして政令で定めております輸出貨物は、農林、水産、畜産別に限定されておりますが、この趣旨はおそらく農産物というものが本質的に生産と集荷等にかなり長期を要するということが理由であろうと思うのであります。そういうふうに考えますと、綿糸布やコム製品にいたしましても、原材料を買いつけまして、それが入つ棄て、これがいよいよ末端に行つて二次製品になつて来るというには、やはりかなり長い期間がいるのであります。かような場合に、農林、水産の品のみに限定して輸出資金の前貸し保証をするということは、どう考えてもちよつと片手落ちの感がある。現に昨年のゴム、油脂あるいは皮革等の輸入の場合、国内に原材料が非常に乏しいために、政府が先に立つて一—三の大きい輸入を確保するという方策を立て、それがようやく入つて来る時分には大きな値下りをするという実例があるのであります。これがいよいよ入つて来て製品になつて、かりに海外に出るとするならば、そこに非常に大きなリスクがあると思う。それにもかかわらず、農林、水産の方面に対してばかり特に重点的にそういう方法をとるということは一体どういうお考えであるか、この点をお尋ねしたいと思う。
  32. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 今般の丙種保険の態様といたしましては、この法文の第六条第二項で明瞭な通り、結局輸出契約が成立している場合に、その輸出契約の成立によりまして生ずる生産、加工、集荷等に要する資金の金融の問題が第一でございます。第二の態様といたしまして、輸出契約の成立はないが、輸出契約の成立の見込みが確実であるという場合、これは言いかえれば一種の見込み生産金融と申しますか、そういう場合であります。第一の場合は、金融的なあらゆる物資、商品について丙種保険対象に結局なりますが、第二の場合については、これを品目の方から限定して行こう、こういう両建になつているような内容であります。今ゴム製品、繊維製品等についてのお話があつたのでございますが、われわれの承知しております従来の範囲内では、大体輸出契約の成立のある場合がほとんど大部分であるというふうに聞いておりますので、そういうような商品について、これは地域については先刻申しました通りドル地域またはドル決済の地域というふうに一類、二類を通じましてその限定は当然ついておるのでございますけれども、その第一の態様、すなわち輸出契約成立の分については、全般の商品がこれの対象になる、第二のいわゆる一種の見込み生産金融というものの対象については、これの品目の範囲を政令できめようということであります。政令については目下並行して研究、準備中ではございますが、今おつしやいましたように、商品の性質輸出契約の時期と実際生産、加工、集荷の時期との間に時間的なギヤツプがあるというような、普通の例としては農林、水産物関係ということに大体なろうと思いますが、そういうような品目について具体的にこれをピック・アツプしまして、第二類の、すなわち見込み生産金融対象の品目としてきめたいと考えております。今御質問のような商品について、第一の、すなわち輸出契約の成立ということを条件とする丙種保険対象ということでまかなえない部分がもしございましたら、われわれの方としても実情に応じてなお十分研究を加えたいと考えております。
  33. 澁谷雄太郎

    澁谷委員 先ほどもちよつとふれたのですが、信用保険ドル地域への融出にのみ重点を置いておるようですが、ポンド地域よりの輸入について取引の安心の行くような何らかの措置が打たれていないように思いますが、この点に関する御回答をお願いしたいと思うのであります。ことに大蔵大臣を初めといたしまして、最近の財界あるいは業界の有力者の意見では、ポンド地域輸出はわざわざ抑制しなくても、自然に自重して来るだろうという見通しが多いのでありまして、今日におきまして、ポンド地域への輸出の抑制は必要がないということとわれわれは考えるのでありますが、そういうふうな状態でありますれば、オープン・アカウントの地域等に対するところの丙種保険適用のないということはどういうふうな理由でありまするか、以上あわせて御答弁をお願いしたいと思います。
  34. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 ポンド地域の方からの輸入について、金融上どういう便宜の方法を講じているかという点が第一点のようであります。ポンド地域からの輸入の促進につきましては、いろいろの方法を先般来講じているわけであります。第一にはまず、自動承認品目の拡大、あるいは担保率の引下げの問題というようなことはもうすでに実施に入つているのでございますが、これと並行しまして、いわゆる外貨貸付制度ポンド貸付制度、この実施につきましても、まず第一に鉄鉱石と強粘結炭と原綿と、この三品目につきまして先月来ポンド外貨の貸付制度対象品目としまして、すでに実施中であります。なおこのほかに、最近われわれ通産省の方針としまして燐鉱石、カリあるいは弱粘結炭、このほかにできれば羊毛というようなもの、これは大体原料の買付市場をドル地域からポンド地域に転換するという品目を中心にしまして、そういうような数品目について、通産省から正式に日銀及び日銀政策委員会の方と交渉をやつたのでありますが、その結果最近燐鉱石、カリ、ガス用炭等につきまして、外貨貸付制度対象品目の追加をしようということにきまりました。こういうふうにポンド地域からの輸入の促進につきましては、従来われわれもできる限りの方法を尽しているつもりでございます。  なお、オープン・アカウント地域を丙種保険制度対象として加えた方がいいのではないかという御意見のようでございますが、繰返して申し上げますが、今日の実情等から申しまして、商品の対価としましてドル決済条件ということに該当するもののみに、一応われわれとしましては丙種保険適用の範囲を限りたいというつもりでございまして、ドル地域またはドル決済条件というふうに限定しまして、まずこの制度実施に入つて、今後の実情に応じまして、場合によつてはこの適用の範囲の拡大についてなお研究を十分いたしたい、かように考えております。
  35. 中村純一

    中村委員長 本日はこの程度にいたし、次会は来る二十五日火曜日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時九分散会