運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-03-19 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十九日(水曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 今澄  勇君       阿左美廣治君    江田斗米吉君       神田  博君    小金 義照君       澁谷雄太郎君    土倉 宗明君       福田  一君    村上  勇君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君       風早八十二君    上林與市郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         通商産業事務官         (通商振興局         長)      井上 尚一君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十九日  公共事業令の一部を改正する法律案神田博君  外二十七名提出衆法第七号) 同月十四日  肥後大津アルコール工場存置請願藤田義光  君紹介)(第一四五五号)  木材防腐法案より私鉄の枕木及び電柱除外に  関する請願滿尾君亮君紹介)(第一四五六  号)  中小企業庁縮小反対に関する請願久保田鶴松  君紹介)(第一五〇二号)  中小企業救済対策確立に関する請願青木孝義  君紹介)(第一五〇三号) 同月十八日  電気料金値上げ反対に関する請願田中重彌君  紹介)(第一五六八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共事業令の一部を改正する法律案神田博君  外二十七名提出衆法第七号)  石炭鉱業に関する件  纎維に関する件  貿易に関する件     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず繊維に関する件について調査を進めます。本件に関し質疑通告があります。これを許します。阿左美廣治君。
  3. 阿左美廣治

    阿左美委員 私は繊維関係について大蔵大臣に御質問を申し上げる次第であります。現在新聞紙上にも報道してあります通り繊維関係資金的に非常に行き諾まつておるのは御承知通りの次第でございます。これは決して今日にその源を発したのではございませんので、御承知通り中小企業戦争中全部転廃をいたしまして、現在の業者は全部これは復元者であります。その復元者はもとよりその手元資金というものがないのが当然でございますので、その当時復元する時代には設備資金というものは融資は受けられなかつた。やむを得ずやはり業者運転資金の名におきまして市中銀行あるいはその他から融資を受けまして、それによりまして設備を完成いたしたのであります。そういうような内容になつておる関係から、運転資金でありますれば回収も容易でございますけれども設備に投じた資金でありますので、その回収はきわめて困難であります。現在の内容設備運転資金が混血いたしまして、どれが設備資金か、どれが運転資金かわからないような状態において、市中銀行より融資を受けておるような状態でありまして、内容きわめて険悪の状態にあるのでございます。ここにその大体を申し上げますと、絹、人絹織機は、現在全国に約十九万台ないし二十万台ございます。その一台当り赤字を大体十万円と推定をいたしますと、現在二百億円の赤字ということになつておるのであります。それから毛織織機は現在二万台ございます。その赤字を一台当り五十万円、これは毛織織機は五十万円ないし百万円というようなことを言うておりますが、最低見積りましても、これは五十万円はその損失を受けておるのであります。そういたしますと、これは百億円の赤字になつております。綿織機は現在二十万台ございますが、この赤字を一台二万円といたしまして、四十億の赤字になつております。麻織機が現在八千五百台、この赤字を一台一万円と見積りますと、八千五百万円というような赤字になつております。それからメリヤスでありますが、縦メリヤスは、トリコット、ミラ二ーズ合せまして現在二千台ございます。この赤字も一台約三十万円と見積りますと、これが六億円の赤字になつております。その他メリヤスにはいろいろの種類がありまして、各種を合せますと、約十万台ございます。これを一台の赤字を見積りますと、二千円に見積りましても、これが二億円になります。その他縫製、染色、より糸、糸染、雑品その他の下請等を合せますると、赤字が約百五十億円というような数字がここに出て来るのでございます。  それから商社繊維関係の問屋が全国に約二千軒あります。これらを一社一千万円の赤字と見積りますと、これが二百億円でございます。その他五大商社赤字は、これはいろいろ新聞でも報道されておりますし、大臣も御承知のことと存じますが、この赤字は約三百億円というようなことを現在言うております。合計約一千億というような数字繊維界赤字ということに現在なつております。これらの赤字のうちには、純粋の赤字もありますし、また設備にやはり固定しておるというような関係から、非常に困難を来しておるのでございます。これらの解決を何とか、これを経済的に御援助をいただきませんというと、これがいろいろの方面に発展をいたしまして、国家経済波及をするようなおそれがあるのではないか、こういうふうに考えます。それで大体において現在の中小企業を問わず、大商社といいましても、ほとんど内容は同じような状態に現在なりまして、今日までは戦後不健全なるところの経営をなしたものは、これは倒れてもある程度やむを得ないのだ、これは整理するのだというような御意見も聞いております。またわれわれもこれはやむを得ないのだというふうにも考えておりましたが、現在ではどの商社が健全であるか、どの商社が不健全であるか、またメーカーにおきましても同様でございます。皆これは全部が不健全なる内容になつておると思います。これをこのまま放任をしておきますと、健全なるところの商社も、メーカーも一人もないというような状態になりまして、最後は国家の重大なる問題に波及をして行くのではないかとこういうふうに考えますので、この際何とか思い切つたところの恒久対策を必要とするのではないか、ただ今日急場済ましの、これだけの援助を願いたい、これだけの資金援助をしていただきたいというような、その場過しの救済では、これはどうにもならぬじやないか、どういたしましても現在の赤字は、その内容がきわめて険悪になつております。そうして中小企業は、ほとんど運転資金として現在動いておる資金というものは、わずかの部分が動いておるのでありまして、あとの資金は全部固定をしておるのであります。これはそういうことはできるとかできないとかいうようなこともしばしば聞いておりますが、これはなすとなさざるとを問わず、どうしても一時運転資金の固定したるものは別わくにいたしまして、これは何らかの対策を講ずる必要があると思うのでありまして、これらに対して、われわれは一日も早くこれを現在運転資金の名において設備をしたる資金に対しては、これを長期資金に切りかえていただきたい、こういうことを強く要望するわけであります。そうなりませんと、これは内容におきましては、運転資金が固定しているのでありまして、その資金をやはり別わくにして、これを長期に切りかえていただく、そうしてまたそれは別途の経済におきまして回収方法資金の返還の計画を立てるというようなことに一応いたしまして、そうしてこの健全なるところの基盤のもとにその融資を受ける。また事業を運転するというようなことにいたさなければ現在のような状態においてこのままにしておきますれば、実に危険なる状態である。また銀行に対しましても融資を求めるということも無理じやないか。結局やはりある種の融資を受けましても、それは結局業者のためにはならない、旧債の解決をするというような状態にならない。そういうような状態でありまして、これをぜひとも現在の設備資金に固定してあるものを、長期資金に切りかえていただきたいということが、私の聞かんとするところでございまして、時間等もないようでございますので簡単にお聞きいたしますが、大蔵大臣におきまして、これらに対していかなる見解をお持ちになつておりますか、一応お聞きしたいのでございます。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 今からちようど二年前に、お話のように繊維関係中心として非常にお困りの方が出て来たのであります。思い起しますと二年ちよつと前、三月一日の日でございました。私は一時的に非常に悪いけれども、そこでじたばたせずにじつくり構えて行つてください。また景気も持ち直つて来ます。ただ戦争中並びにその後の統制経済のもとに、やみ買いをしたりやみ売りをしている人が中に二、三、四、五倒れるということは、お気の毒であるけれどもやむを得ないと、そう言つたのでありますが、二年後の今またこういう問題が起つて来たのであります。その間におきまして、何が景気がいいかといつたら糸へんがいいのだ、糸へんは一昨年の三月以後、今年の三月、二年間の間に一年間ばかり非常にいい景気があつたのであります。経済界の動きというものは非常に波を打ちます。ことに繊維関係では波を打つて参りました。その繊維界が波を打つているということは昔からの定説でありまするが、最近におきまする世界的の軍拡を見越しての買込みが、一時中だるみしたような関係で、繊維品にまず第一にその影響がやつて来たと思うのであります。やはりその二年前を思い起すのであります。こういう際にあたつて政府金融家もまた業者も心を合せて、とにかくこの苦難の道を乗り越えるようにいたさなければなりません。従いまして繊維関係と申しましても、お話通り化学繊維もございますし、紡績もございます。紡績の中でも十六メーカーもございますし、また一万錘以下の中小メーカーもあります。これに関連しております大商社、中商社、またそのうちでも貿易関係、国内関係いろいろなものがございまして、一概にどの部面に対しての対策ということは困難でございますが、まず第一に紡績の方で申しますと、十大メーカー中心にいたしまして、貿易商社、その他の商社とのつながりをよく見きわめ、今は損があつても将来立ち行く見通しのつくもの、また立ち行かせなければならないものにつきましては、日銀、あるいは市中銀行業者が三位一体となりまして、この善後策を講じつつあるのであります。このことは、昨年の春のころから、繊維関係ばかりではなしに、貿易商社中心といたしまして、皮革、あるいはゴム、あるいは油脂原料等から端を発しまして、秋から暮にかけてかなり苦しみました。暮に全部片づかなくして年を越えたのでありますが、先ほど申し上げましたように、ただいまのところ、日銀市中銀行業者と打合せいたしまして、立ち行くようないろいろな方法を講じて行つております。メーカーあるいは商社にこれが出て行きますと、これに付随しておると申しますと語弊がございますが、これと関連性を持つておる繊維関係の方は、だんだん持ち直つて来ると私は考えておるのであります。化繊の方におきましても、ことに人絹、スフの昨年の今ごろのあの景気で、お話のように、メーカー利益金のほとんど大部分、また中には借入金設備を拡張いたしましたために、今のような状態が来ておるのでありますが、これは世界的の影響が相当加わつておるのであります。もちろん国内的に設備を拡張し過ぎたということが最大の原因ではありますが、これまたいろいろな金融方法を通じて再起を促すように努力しておるのであります。従いまして、今どの点を言つておられるのか、多分紡績で言えば一万錘以下程度のものを言つておられると思うのでありますが、設備資金を今すぐ長期資金にかえろ、短期の金で貸したのであるけれども、実態が設備資金になつておるから、長期資金にかえろ、こうおつしやいましても、今の銀行の方々はただちにそういうわけには行きにくいのじやないか。大蔵大臣といたしまして、個々銀行に、お前がどこどこのメーカーに貸しておるのを長期にかえろと言うわけには行きません。これはやはり全体が立ち直るようになつて参りますと、おのずからそこに回収見通しもつきますので、解決がついて行くと考えておるのであります。いずれにいたしましても、過去一年半から半年前くらいまでの好景気酔つたと申しますか、設備を拡張すれば何でももうかるのだということで拡張し過ぎた反動であるのであります。しかし反動だからといつて政府としてこれをうつちやつておくわけには行きません。全体が立ち上るように、金融業者を督励いたしまして、再建の方策を講じておるのであります。
  5. 阿左美廣治

    阿左美委員 大蔵大臣といたしましてもいろいろ御心配は願つておるということは、私どもよく承知しておりますが、ただ私ども銀行に交渉いたしまして、短期資金長期に切りかえろといつても、これは銀行業者の間だけでは切りかえられないと思います。だから何とか日銀からのそういうものに対しての特別の融資方法はないものでしようか。これはこのわくにおいて、短期資金長期に切りかえたものに対しては、日銀がこう扱うという特別の方法はないでしようか。そういうようなことになりますれば、これは市中銀行との話合いにおきまして、多少の解決はつくことが多いと思いますが、そういうことに対しては特別のお考えはないでしようか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 これは程度問題でございまして、また銀行とその業者営業方針その他の問題できまることでございまして、全国一般的に繊維関係短期資金貸付長期資金にある程度乗りかえろということは、なかなか困難な問題でございます。大蔵大臣は、銀行の全体としての資金運用につきましては、ある程度の発言権がございますが、個々の人に対しまして、どういう貸し方をしておつても、その貸し方が法規に違反せざる限りにおきまして、あれこれと指示できないかつこうになつておるのであります。     —————————————
  7. 中村純一

    中村委員長 次に石炭鉱業に関する件について調査を進めます。質疑通告があります。これを許します。神田博君。
  8. 神田博

    神田委員 大蔵大臣にお尋ね申し上げたいと思います。ひとつ簡明率直に御答弁願いたい。  日本産業の健全な発達をはかりますには、どうしても石炭鉱業合理化が最も大事なことではないかと考えております。その石炭鉱業合理化にはいろいろあるわけであります。今日石炭鉱業景気がいいというようなことが言われておりますけれども、ここまで参りますにつきまして、政府石炭業者にいろいろ無理をしいて来ております。たとえば終戦後石炭が非常に減産になつたので、これを急速に増産するために多数の労働者を入山せしめる。そこで政府は非常な圧力を加えて鉱山住宅を建造せしめた。また労務者の数が四十六、七万に上つたという状態でございますから、これに要する建設費が百五十億円にも上つておる。これらが石炭鉱業合理化に非常な圧力を加えたことに相なつておるのでありまして、当時これらのことにつきましては炭価に織り込んで回収するのだということを言つてつたのでありまするが、御承知のように石炭配給統制がなくなつたわけでありまして、そういう政府の意図も達しられなかつた結果、残つているのは借金だけ残つておる。そこでちようど石炭経営も明るくなつて来ておるわけでありまするから、この機会に炭住借入金をひとつ解決したらどうか。一体政府はこの解決をどういうように考えておられるのか。非常な圧力を加えて百五十億円——これはなかなか莫大な金額であります。ことに石炭鉱業景気あるいは不況というのが常ならない産業でありますから、いいときにひとつ貸した金をずばりととつてしまう。悪いときにはとろうとしたつてとれないのでありますから、いいときにひとつ解決する。今までずいぶんこの炭住借入金についての整理は叫ばれておつたのでありまするが、かんじんかなめ石炭鉱業が支拂い能力がないのだ。またあれは万年借入金なのだというようなことを言われたくらいのときもあつたわけでありまして、こういう景気のいいときにひとつごそつととつてしまつて、ほかに困つている産業もあるわけでありますから、その産業の方へまわしたつていいわけであります。政府が強要してやつたことは、安本訓令なりあるいは政令なりに明瞭なのだ。一般の貸付金と私は意味が異なると思う。当時復金を利用して設備資金、それから炭住資金というもので出たわけでありまするが、設備資金は事実必要なものでありますからこれは論外としまして、炭住資金くらいはこの際解決することが、産業的にも国家的にも、きわめて妥当な措置ではないか。一旦経済界事情がかわつて参りまするならば、これはなかなか容易にとれない金なのです。たまたま石炭鉱業界からの要望もあるやに聞いておりますこの際、ひとつ元本をできるだけすみやかに回収して、その面からも鉱業界合理化をはかつて行く。通産省においてはそういう面について非常に努力をされておるように聞いておるのであります。池田大蔵大臣努力をされていることは聞いておりますが、その努力たるや、通商産業省あるいはまた世人が納得するに大分縁が遠いということなんです。池田さんもなかなか御苦労なさつておられるのに、万事世間の納得の行くようなことをやるだけの日本の現状でないということは私も考えておりまするが、この炭住資金の扱いこそは、私はおやりになつた方が池田さんのためになり、国のためになると思う。こういう石炭界の好況の際に、うんと繰上げて償還をさせよう。そして償却もさせて合理化をしよう。その合理化がうまく行きますれば合理的な炭価が出て参りまして、他の産業が非常に潤つて参るわけであります。また貸付金が返つて参るということは、大蔵省といたしましても政府といたしましても、これは非常にけつこうなことなのです。できるだけ短かい年限にいたして——またあまり短かくしてしまつてなくなつても困るのでありますが、可能な限り、小さいことを言わないで大局からお考えになつて取立てて、これをまた他の産業にまわしてやるというようなことをすることによつて日本産業がますます向上し発展して行くというふうに私ども考えるわけであります。いろいろ他のつり合いもあるから、そう簡単に行かぬというようなことをおつしやるかもしれませんが、私はこれと類似の事情を持つた性質の貸付金はないと思う。この間大蔵省議によつてきめたというので、森永官房長がわが党の政務調査会に来たときの説明を聞きますと、利息は六分よりまけられない、それは住宅資金が六分だから、住宅資金並に扱わなければならぬのだというような御説明でございました。なるほどこれは一応ごもつともなような説明かもしれませんが、私ども政治感覚からいうと、これは事務的な答弁なので、これから相互契約によつて借りようということなのです。そこで市中金利が高いから六分にする。その六分で納得ついたら借りて家を建てようという金である。日本産業が壊滅に瀕して、月産五十万トンくらいに落ちたことがある。二十一年からの数字を見ても二千万トン台だ。当時政府はいかなる犠牲拂つても年間三千万トン、ほしい。その後また社会党、芦田内閣を通じまして、石炭国家管理にしても三千六百万トンまで出さなければならないというので、非常な犠牲拂つて業者に強要して急速に建設させた。要するに機械化の伴わないところを労力をもつてつて来た。そこで四十六万人あるいは四十七万人という厖大な入山を見たわけであります。今日どうでありますか、それが十二、三万減つて三十四、五万になつている。当時一人当り三トンから四トン、四トンから五トン、いいときには五・五トンくらいまで上つたけれども、今日ではそれが十二トン、十三トン、十四トンというような状態になつて来たわけであります。政府の施策として労働者の頭数によつて石炭を出そう。そこで政府の機関を動員して住宅建設のためには金と資材に糸目をつけないということで強要したのであります。そういうような関係考えますならば、今日この借入金をこの若干の好調に乗つて回収するということは、これは実に機宜を得たことじやないかと思う。悪いときにはどんどん貸してやる、いいときには取立てて行く。いろいろ御事情もあろうかと思いますが、利息に拘泥して本末転倒なことに相なりますならば、これははなはだ残念だと思います。池田大蔵大臣もだんだん成長されて今日ではなかなか相当なものだというようなことも言われております。(笑声)いつまでも大蔵次官時代大蔵大臣ではなかろうと思う。日本政治史を読んでも、かように長く大蔵大臣をやられた大蔵大臣というものは珍しい。政治家池田大蔵大臣として、ひとつこれらのことを抜本塞源的にずばりと解決されるために、ことにこれは大蔵次官当時の責任もございますので、成長された池田大蔵大臣からどういう御方針でこれを御処理なさるのか、簡潔明快な御答弁を承りたいと思います。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問並びに御意見の筋は、はつきり通つておりまして、私は大賛成でございます。しかしお話通りの経緯によりまして、八、九十億円のいわゆる炭鉱住宅資金を出したのであります。その出した当時並びにその後におきましての石炭業者経営ぶりはよく御存じの通りでございます。悪いときには金を貸しました。今は石炭鉱業というものは非常にいいのであります。いいときには金を返してもらわなければなりません。この筋には一点の誤りもございません。私も賛成でございます。しかしてこの際返してもらうときに、悪かつたときあるいは貸し付けたときの状況を十分勘案して、貸し付けておる金を今の時に回収した方がいいのでありますが、條件をどうするか。せつかく炭鉱がもうけられておるのでありますから、この際住宅償却を非常に早くやつて、そうして利益金をそれだけ償却に充てる。これが一番問題だと思いまして、住宅は二十年ないし三十年の償却を、私は十年に縮め、しかも定率法で行くならば、ほとんどこの景気のいい今において、利益を削減して、そうして納めいいように——今でも御承知通り税金は五割以上かかつておりますから、急にこれを償却するということは主税局として税金をとる建前からいつたら非常につらいことなんですが、いずれは償却を見なければならぬ問題だからこの点はのもうというので、今までに例のない償却年数の短縮をやつたわけであります。しかも今までの未償却の分をずつと見て行きますから、今年度においては七、八割の償却ができると思います。こういうことは税制始まつてないやり方であります。私はこういう画期的のことをやつておるのであります。この分につきましては、炭鉱業者も異存は一つもないと思います。よくそこまで大蔵大臣は折れたとおほめをいただいておるのでありますが、ただ金利関係は問題だ。しかし金利は御承知のごとく今年九分三厘何毛で貸しております。これを中には三分にしろとか、五分にしろとか言われますが、やはり普通の金利との均衡も考えなければいかぬ。つくらした炭鉱住宅が今腐つて役に立たぬというのならば、これは考えなければなりませんが、非常に幸いに、無理やりにつくつた炭鉱住宅は今フルに動いておる。立ち腐りはない。立ち腐りのときには、やはり金利もまけてやらなければいかぬということもありますが、今は非常にいい。だから九分五厘の貸付金利を六分ぐらいにまけたところでがまんしていただかなければなりません。庶民住宅のために社会政策として住宅をお建てになる場合も、政府のいろいろな補助は六分の金利である。片一方は営利の事業で非常にもうかつているときだから、私は次官時代にやつたこととはいいながら、九分五厘の分を六分ぐらいでがまんしていただかなければならない。今の国全体の産業政策、全体の金利政策からいつて、六分ぐらいでがまん願いたいという腹をもつて今折衝に当つておる次第であります。一分、二分を言うなという昔からの大政治家の言葉がありますが、大蔵大臣としては一分、二分じやない、一厘、二厘を言わないと権衡というものがございますので、今六分まで実は折れておるのでございます。今折衝中でございまして、私よこれが最後の線とは申しませんが、自分としてはこれが適当なやり方である、もう償却でうんと見た、こういう考えで進んでおります。
  10. 神田博

    神田委員 ただいま大蔵大臣のありのままのお考えを伺つたのでありますが、十年という期限の短縮については、大蔵大臣は自分もこれは大きな気持でやつたんだと言われた。私もその点については大蔵大臣なかなか見上げたものだと思つております。しかしあとの金利の問題が、どうもまだちよちよい次官時分のものが出ておるんじやないかという気持なんであります。せつかく大政治家と言われている池田さんが、利息ごときという意味で私は申し上げておるのではない。元金をとることが大事なんだ。利息でこだわつてしまつて、そのうち不景気が来て元金がとれなくなつてしまつた、あるいは池田さんも自分は少しこだわつたというような禍根を残さない意味で実はお尋ねしておるわけであります。貸し付けた初めの動機、これはここに書類がございます。利息を高くお貸しになりたいというのなら、今の貸付金を早く取上げて、ほかに貸し付けた方が高い利息がとれる。そうでなく石炭鉱業の健全化をはかるんだ、ここで合理化をしたいのだ。私ども当時ずつと産業復興の委員会に携わつておつた者の立場から考えますると、今日このような石炭界景気が出ようとは思つた人はなかろうと思う。また石炭がかような急速な足どりをもつて、しかも堅実に炭量をふやして来るということも、おそらく考えなかつたろうと思う。あらゆる努力政府石炭に注いだ、当時国民が二合一句しか配給されなかつたという際に、炭鉱労働者に四合の飯を食わせたら石炭がこれだけふえるんだ、それでは四合やろうじやないか。それは労働者だけに配給したのではだめなんだ、家族もくるんで四合配給しなければならないのだ、それもよかろう。地下たびしかり、純綿しかり、あらゆる面から石炭鉱業を甘やかすのではないかということが言われるくらい物量をつぎ込んだ。今の炭住の問題もまたしかりだと思うのであります。あの辺鄙な山に、あるいは條件の悪いところに、家をできるだけ急速に建てる、そうして労働者をかり集めてどんどん人間の頭数で出そう、そういうことを考えてやつたのだとすれば、利息にこだわることはどうかと思う。当時は元金もとれなくてもやむを得ないというような空気であつたはずです。その意味からいつても、これはこの際十分御考慮をされていいのではないか。今大蔵大臣の御答弁を伺いましても、自分の最後の意見ではない、自分の今日の心境においてはこういうように考えておるという、なかなか味のあると申しましようか、含みのある御答弁であつたと考えております。この問題につきまして当委員会において大蔵大臣質疑を重ねることは今日初めてなんです。私は時間が許しますならば、幾多の例をあげて、また幾多の角度からお尋ねしたいのでありまするが、同僚諸君もいろいろお伺いしたい言つおられますし、時間もないのでありますから、この程度にして質疑をやめたいと思いまするが、私はこれは扱い方によつては重大なことと考えております。いろいろの角度からひとつ十分御検討せられまして、日本の工業の基礎産業でありますので、善処せられんことを要望いたしまして、私の本日の質疑を打切りたいと思います。
  11. 山手滿男

    ○山手委員 大蔵大臣が久しぶりに出て来られて、私ども聞きたいことは山ほどあるのですが、まず最初に聞きたいことは、先般大蔵省が中心になつて外為と話合いをし、通産省の方を出し拔いたようなかつこうであのポンド措置をおやりになつた。大臣はいつか施政方針演説の中でもはつきり言つておるように、朝鮮事変後の備蓄輸入によつて、先般来全産業界の不況、困窮というものはきわめて深刻に現われて来ておつた。ところが通産省の方の考え方を無視して、單に金融面だけの配慮からあのポンド措置をやつて、ポンド圏に対する輸出が全面的にとまつたというふうな混乱状態を現出させた。これは單に金の面だけから大蔵大臣の一方的な考えでああいう措置をやろうとしたところに混乱があつたのであつて、朝鮮事変後の過度の輸入という比較的うろたえてやつたあの措置と並べ考えなければならない非常に大きな失政であると私は思つておる。その後いろいろ通産省の方の意見に従つて大蔵大臣の方も是正をされつつあるようでありまするが、今日御承知のように紡績は四割操短をしておる。ゴム工業も三割操短をしておる。パルプもスフも鉄鋼も操短をしようという状態に追い込んでおる。しかもさつき阿左美委員質問に対して大蔵大臣がお答えになつたのは、もうそのうちに好景気が来るのだというふうな見通しが、ないこともないような楽観的なお話でありますが、こういう貴重な資材と資金をつぎ込んで建設したわが国の産業施設が、末曽有の自体に陥つた。終戦後こういう大転換をし、操短をするとか遊休施設を過大に持ち過ぎるというふうな、夢想だにしなかつた事態を引起したのは、大蔵大臣中心にしてやつたポンド措置、これが追打ちをかけたということも私は言えるだろうと思うのです。ところがその後英国の方においては、ボンドに対するいろいろな非常な努力からして、現在私はあまりにも大蔵大臣あたりがうろたえたという響きがいよいよ濃厚になつて来たと思う。そこで私は大蔵大臣に聞きたいのは、ポンドに対する大蔵大臣考え方はどういうものであるか。非常に英国の経済力を小ばかにして、アメリカにむしろたより過ぎたようなかつこうで、ドルばかりのことを考えて私は処置をしがちじやないかということを非常に憂えるのです。わが国の産業は、それはいろいろとアメリカとも密接な関係がありますけれども、何といつても輸出貿易は、ボンド地域を対象として日本産業は生れたのです。それを單にドルとの考えだけで割切つて行こうとするところに非常にわが国の産業界を混乱に陷れた原因があると思うのでありまして、大蔵大臣はこの際通産委員会において、ポンド対策について、あるいはポンドの将来について所信を披瀝しておかれることが私は非常に大切だと思いまするから、お伺いをいたしたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 ポンド対策につきましての先般の措置につきまして、かなり誤解があるようでございますから、ちよつと申し上げておきたいと思います。  昨年の日英協定をいたします四、五月ごろからの状況をたどつてみますと、一昨年の暮れには、日本の手持ちのポンドは千九百万ポンドで、向うからポンドを借りなければやつて行けない、こういう状況であつたのです。そこでわれわれも苦労してイギリスの方からポンドを借りました。そういう状態であつた。これはドル・クローズの問題等がありましたので、そういうことも起つたのでありますが、日英協定によりましてドル・クローズをのけましてからの日本のボンドのあり高というものは、昨年の暮れには一年前の千九百万ポンドが七千五百万ポンドになりまして、今は一億ポンドになんなんとする——日英協定のときにまあ五千万ポンドぐらいは日本は持つてもいいけれども、それ以上は持たぬ、こういうので協定の根本にしたのでありますが、遺憾ながら七千五百万ポンドとなり今では一億ポンドなんなんとしておる。しかもポンドはドルに対して、スターリングとは名前だけで、ノン・スターリング、弱いです。一ポンド二ドル八十セントが、御承知通り二ドル三十セントないし二ドル二十五セント、一割八分から二割のやみで低下であります。このときにポンドが日本にたまり過ぎてドルが不足では困るから、私は通産省にとくとポンド対策を講じろと言いましたら、内輪を申し上げますが、それなら金融措置でやつてくれというのが通産省、そこで私は大蔵省の職員に、金融措置でやれ、輸出を制限するということは愚の骨頂だ、金融措置で一応やらなければ国際信義の上からいつてもよくないといつたときに、大蔵事務当局は金融措置でやるべきでない、制限すべきだということで、きつく私に反対をした。お前ら何を言うかというので、一、二箇月待ちましたが、昨年の暮れに今の信用状の六箇月というものを三箇月に縮めようとした、その下相談が漏れて、大阪ではたいへんな騒ぎを起した。そこでこれはうつかりよその省には相談できない。それから私の方の事務当局にもお前らは輸出制限とかいわずに、金融措置を考えなければ、おれが考えるというので、私が案をこしらえまして、そうして金曜日の閣議に私は重大事項として私の意見を発表した。全部の閣僚は賛成されまして、それで行ごうということになりました。そこで私は閣議の決定を受けまして、それから通産次官、並びに通産省の事務当局へ通した。大臣賛成された、君らどうか。それで通産省に個々の問題につきまして私が折衝に当つた。そうすると通産省は、いや金融措置よりも今度は逆に輸出制限をやるから、金融措置を待つてくれと言い出した。金融措置は待てないが、それでは君の方で輸出制限をするまで、金融措置はある程度まで待とう。しかし一応手を打つて、それから君らの方の輸出制限ができたならば、金融措置をだんだんゆるめて実態に沿うようにしようということで、私の独断でしかも閣議の全部の了解を得てやつたことなのです。通産省も大蔵省も何もありません。私は大蔵大臣でありましても通産大臣をしたこともあります。通産省、大蔵省、農林省もない、日本の国がよくなればということから生み出した。事務当局なんかに相談しますと、ここで事務当局を悪く言うかもしれませんが、ああじやない、こうじやないといつて、まとまりがつきませんから、私が独断でやつたのであります。この処置につきましてイギリスがどんな手を打つて来るかということを見ておりましたが、マンチエスター・ガーデイアンも、大蔵大臣のやることはやむを得ぬだろう——イギリスは私の考え方に納得しておりまして、私は大なる失政とは思いません。こうやらなければ、日本の外貨、日本経済が変なところへ持つてつてはいかぬという、ほんとうの赤心からやつたことでありまして、セクシヨナリズムでも何でもありません。通産省も、通産大臣まずもつて賛成した、事務当局も了解した、こうぽんぽんとやらなければ、ぐずぐずしておつてはいかぬ今の国際情勢でありますので、こういう手を打つたのであります。しかしてああいう措置をとりましても、鉄の輸出にしましても、私は十万九千トンの分を、夜の夜中に次官からかかつて来ましたから、それはよかろう、七万トンぐらい出すのはよいだろうと、夜の夜中に返事をした、病気で寝ているときでした、こういうような対策を講じておるのであります。  そこで今後のボンドの問題につきましてどうするかという問題。日本大蔵大臣がボンドの問題をどうするかという前に、イギリスのバトラーがわれわれが二年前にやつた日本の政策を踏襲しておる。日本の自由党内閣の政策を、私の政策をバトラーは、ならつたとは言いませんけれども、私が二年前にやつた通りの政策を今やつている。ボンドを強くしようと非常な努力拂つておるのであります。補給金を減して、食糧の補給金を減して、そうして中産階級以下の人の税金をまけた。二年前の私のやつた政策通りをやつております。そこでイギリスがどういうポンド政策をとるかにより、日本としてもイギリスの経済復興には協力いたします。今も総理と話したのですが、バトラーは吉田総理と非常に懇意です。総理が大使をしておるときに大蔵次官だつたといつておりました。非常に協力して、ボンドが非常に強くなることを望んでおりますが、今までのように弱いポンドを押しつけがましく日本に持たされてはこれはいけません。だからポンドをほんとうに強くして、将来のポンド地域に対する日本の発展を考えるならば、あれくらいのことは朝飯前だ、まだまだ強い手を打つかもしれません。私は好んで強い手を打とうとは思いません。いろいろな関係を考慮しながら、各省の協力のもとにりつぱな日本を立て、そうして世界がお互いに立つて行くような手を打つべきだ、こう考えて私は失政とは思つておりません。イギリスも納得しております。こういう考えで行つておるわけでございます。事務当局間の内輪話を申し上げて恐縮でございましたが、事柄はこういうふうになつておる。私は日本経済日本の信用を守るべき立場にあります関係上、大蔵大臣として通貨関係に対しまして当然の処置だと今も確信を持つておるのであります。
  13. 中村純一

    中村委員長 今澄勇君。
  14. 今澄勇

    今澄委員 それで率直な大蔵大臣の報告のついでに、私はもう一つ率直に関連して聞きたいのは、最近電力開発についても外資の導入云々と言われておつたが、全然見込みがないというダレス顧問の話その他が伝えられております。われわれもアメリカでいろいろこれらの外資導入については衆議院議員として奔走して参つたのでありますが、大蔵大臣はこの際率直に国家的な資金の導入を計画せられておるか、それとも民間資金の導入を計画せられておるか。わが国の産業開発その他外資の導入についての見通しと、あなたの考えておられることを聞きたい、それが第一点。  それから第二点は、阿左美委員質問に関する私の関連質問であります。これは阿左美委員に関しては、銀行融資について、一々どれたけのものをどこへと大蔵大臣がさしずするというわけには行かないという御答弁がありましたが、ごもつともと思います。ただ私は国民金融公庫、商工中金、相互銀行、信用金庫、さらに今度できた信用協同組合を通じて、国民金融公庫の金も流れれば国家資金も流れているが、これらの中小企業金融は、今言つた五段階にわかれているが、これを一応国民金融公庫なら国民金融公庫を中心に整理統合して、この際強力なものにされるか、あるいは政府資金をもう少し流すか、長期産業債の引受けをやるとか、あらゆる方法もあろうかと思いますが、これらの中小企業金融対策についての大蔵大臣としての見解を、この際説明しておいていただきたい。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 お話申し上げましよう。実はきよう九時半から司令部に行きまして、一時間半にわたつてマーカツト少将と会いました。マーカツト少将がアメリカから帰つて新聞記者を通じての発表、その後の日本新聞の取扱い方、あるいは議会での野党の質問等から考えまして、私はこの際はつきりしておかなければいかぬ、こういうのできよう参りまして、一時間半にわたつてマーケット氏と話をしました。それは私はここで註釈を加えまするが、総理がマーカツト声明について関知せずと言われた言葉は、私もわきにおりましたが、私はこう解釈した。マーケット声明によつて新聞が見出しにいかなることを書こうとも、その結果については吉田総理大臣は関知せずという気持で総理はお答えになつたと思います。これは総理もそうだつたとこうおつしやつている。マーカットもそうでしようときよう言いました。そこで私は新聞にも出ておつたと思いますが、マーカットの帰米談を実は読まないのですが、各新聞の見出しをずつと見まして、これはまちまちになつておる、困つたなと思いましたが、時間がなかつたので読みませんでしたが、マーケット少将がアメリカに行つて帰られて、日本の借款の結論が出ようはずはない。これは日本経済力とアメリカの経済力、そしてお互いの信用から来ることです。そこで私はこの委員会で申し上げたかどうか知りませんが、ほかの委員会では確かに申しました。外資導入の問題が昨年議題になりましたときに、参議院の予算委員会で、ある委員が外資導入が問題になつておるが、外資は大蔵大臣来るか、いつ来るか、どれだけ来るか、こういう質問でありましたから、私はもう御承知通りに、これは私が子供のときに説教を聞きに行つたら、お坊さんは、人から極楽はどこにあるかということを聞かれる、そのときに極楽というのは東にも西にも北にもない、みんな身にある。それと同じで外資導入をやるとすれぼ、自分の身をよくして、信用のあるようにしなければ、外資は来ない。これは鉄則です。経済の原則です。このことにかわりはない。そこで私は経済力を強くし、そうして急速に自立経済を達成するためには、総理が言われたように、急速なる達成については外資がぜひ必要だ、こういう意味において、民間あるいは向うの半官半民の銀行、あるいはでき得べくんば政府借款ということも考えて、あの手、この手でいろいろな施策をめぐらすと同時に、そのもとの日本経済を安定し、政治力を安定させるように持つて行かなければならぬ、これでやつて来ておる。三年にしてようやく日本経済が安定の度を加え、自立の見通しがついたから平和條約ができた、これも外資と同じことです。そこで日本経済をいかにしてよくして行くか、これが第一だ。これがよくなれば水が低きに流れるごとく、余つている金だから日本へ来ます。こういう考えで行つております。従いましてきようもマーカツトは、ぼくはこれから国会に行つたらこの問題でいろいろの人から質問を受けるが、ぼくの考えでいいだろうと言つたら、そうだ、その通りだ。しかも予算委員会で、総理が関知せずと答弁せられたあとで、私は今のようなことを申しまして、外資導入望みなきにあらずと言つたら、それをマーカツトも読んでおりまして、君の言う通りだ。それじや今までの通り発表するぞと言いましたら、マーカットは、こういう気持だと自分で書いてよこしました。そこで私は新聞記者に見せました。自分で三つ書いてくれました。外資導入というものは、日本が外資を借りて来て、そうしてその外資で物をつくり、生産を拡充して、これを輸出してドルがかせげるならば、これは外資導入は楽なのだ、こう書いてある。第二段目には、ドルを借りて来て、そのドルを担保で日本は円を出してやつたのではインフレになるからよくない、これは私がいつも言つている通り。それから政府借款というものは、何人も約束もできないし、否定もできない、これはアメリカの国会のみが知つている、こういう意味のことを言つたのだ。そうです、その通りです。われわれは外資の意味を考えずに、一にも二にもおぼれる者はわらでもつかむようなかつこうでは、わらがものを言いません。自分が身を泳がすようにすればわらでも頼みになります。そういうことでわれわれは地道に日本をよくし、経済を発展し、アメリカ会社が好んで外資を入れるような努力と、そのかつこうをつくらなければならぬ、これが主なんです。だからよく経済の原則を考えて、いたずらに不利だ損だというのはあまり意味がない、ほしければみな極楽は身にあるのですから、お互いに努力して入れるようにいたそうではございませんか。私は今までの信念とかわりません。こういう考えで進んでおります。中小企業の問題につきましては、私はとやかく言われましたが自分の全力を第一に中小企業に入れております。御承知の商工中央金庫は、私が大蔵大臣になつてから金が十倍になりました。国民金融公庫も五、六倍になりました。こういうふうにやつております。しかしこれではまだ足りません。そこで私は最近の状態におきましても、普通銀行に対しまする政府預金は全部引揚げましたが、商工中金の分は引揚げるのをやめまして貸してやつております。しかも三月に引揚げるのを五月末まで延ばして、今ではまた商工中金に金がいれば出そうかということを申込んでおります。相互銀行の方も引揚げを延ばして、私は情勢によつたらこういう中小企業関係には、まだ事務当局には何も言つておりませんが、少しぐらい金を出そうかと思つているのであります。とにかく何と申しましても大きい人はあの手この手で銀行へ行きますが、小さい人はなかなか行けない、そこでやはり大蔵大臣が、個々の人については言いませんが、中小企業へ金が流れるような方法や道を考えて研究いたしております。
  16. 中村純一

    中村委員長 風早君……。
  17. 今澄勇

    今澄委員 今の最初の大蔵大臣答弁を野党として黙つて聞いておられるか。委員長のやり方というものは話にならぬじやないか、一体われわれを何と心得ているか、しかも大蔵大臣の最初の外資導入の答弁で、質問をやらせないで、風早君なんというような……。歴代の通産委員会でそのような態度をとられた委員長はおらぬぞ、もう一問やらせろ。大蔵大臣に聞きたいけれども、たとえば電気事業九分断、これはその目的は何か、外資導入をやるにはこの道以外に道はないのだ、これをやれば外資導入はできるのだということをここに来て通産大臣答弁しておると、これが内閣の意向であるといつて、すべてこれまでの方策は事ごとにこうやることが外資導入を導く唯一の方針であるということを、われわれはこの通産委員会の席上で、通産大臣その他から耳にたこができるほど聞いておる。しかして最後になつて、今日外資導入がこれこれのこういう状態でこうだというような、馬の耳に念仏のようなことを何べん聞いても、これまでやつたこれらの政策は、全部むだであつたのかどうか、そうしてそういう見通し政府の誤りではないか、その責任を持つところの大蔵大臣の責任ではないか言えば、大蔵大臣はこれまでやつた日本のあらゆる産業行政その他のものが全部これは失敗だつたから、今日外資の導入はだめなのかどうか、これは外資の導入の見込みがなければ、ないとか、いや必ず私は責任を持つてこの程度はどうするとかくらいの度胸がなくて、口の先だけでこれまでのことを答弁するくらいならだれでもできる。私は後段の中小企業についての答弁は満足するが、先の外資導入についての答弁は、これまでの経緯をふり返つて責任のある答弁をお願いします。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはつきりわかりませんが、今までこういう方策をとる、ああいう方策をとる予定だという、そういうことを私は言つたことはございません。(「それは閣議において前の通産大臣が述べておる」と呼ぶ者あり)通産大臣がどう答えましたか知りませんが、聞いておりませんから、これは日本の信用を高め、すなわ  ち高めるためには経済力を強くすることが第一の問題だというので、今までやつて来たおかげでよくなつて来ました。(「それじや外資は幾ら入る」と呼ぶ者あり)外資も株式の投資が昨年暮まででこれはまだ少うございますが、千五百万ドル(「電源開発は」と呼ぶ者あり)それは貸付金が二百七、八十万ドル、それから特許その他の技術を入れますと、これが五千万ドルで、合せて七千万ドル近くの分は今まで来ております。しかして大蔵委員会で御審議願つている外資法の改正によつて、今度はそれに数倍するものが——特許その他の技術などは別でございますが、株式投資やあるいは貸付金等は、今までに数倍するものが入つて来ることは必定であります。しかしてまた輸出入銀行の綿花借款四千万ドルが来ております。そして今懸案の国際通貨基金に加入ができれば、また道も開ける。御質問の電力に対して、私は外資がどういう方法で来るということは、だれにも言つたことはありませんし、私の責任ではありません。しかしこの電力の問題でも、電力開発公社を早くやり、早く仕事が地につけば電力として来るが、われわれはその金が電力に来ようが何に来ようが、実際を言うたら、二億ドルなら二億ドル日本へ持つて来て積んでも、これは意味をなさないのです。二億ドルが意味をなすということは、ダムをこしらえる鉄鋼を、ポンド地域へ売るのをやめて、ダムをこしらえることに使う。セメントを南米やインドネシアに持つて行くのをやめて、ダムをこしらえることに使う。電線その他の銅の輸出を少くして、電力の方に使う。こういうふうにして輸出が少くなつて、麦や米あるいは綿花の代価が足りなくなつて来たときに、この借りて来た二億ドルが役に立つ。マーカツトの話の中に、ドルを借りて来て円を出したら意味をなさないと言つたのは、こういうところから言つておるので、電力の外資とか何とかいうことは、これはりくつで言えるかもわからないが、外資というものはもとは一つのさいふであります。そこで電力でどういう計画をして、それは大蔵大臣の責任だと言われましても、私は責任を負うのにやぶさかではありませんが、どの点で責任とおつしやるのか、それを承りたいのです。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私が大蔵大臣に聞きたいのは、少くとも閣議において、電源開発なら電源開発の方式というものが打ち立てられたら、これに対して各閣僚は共同の責任を負うべきものであつて、通産大臣はそう言うたかしらぬが、私は知らないと言われるが、しかしあなたが通産大臣を兼任したときも、実は電力についてはこれこれこうだという答弁を明確に言つておる。何ならその速記録を揃えておるから見せてもいいが、そういうふうな外資導入をやるために、あらゆる経済政策というものを通産省として立てていると言つておる。それが今日あなたの御意見によると、たとえば今後電力については幾ら、貿易外収支については幾ら、これこれについては幾ら、こういう見通しであれば了承するが、そういう数字をあげ得ないで、ただ数倍するなどというような答弁だけで、外資導入についてはこうだと言われたところで、われわれは満足できない。私はここではつきり言えば、この問題、この問題は大体こういう程度の外資の導入ができ、マーカットとの交渉はこうなつたが、それはこういう意味のもので、実は下期においてはこれだけがこういうふうに入る、上期においてはこれだけという見通しを、ここで述べてもらいたいというのが私の質問の要旨です。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 電力九分割の問題のときにおきましては、私は通産大臣として、これは外資導入の一助にもなるということを申し上げました。これははつきりしております。それで電力開発公社の問題は、行く行くは外資を期待しております。しかし相手のあることであります。自分ばかりひとりよがりでもこれはいけません。ただわれわれは、こういう方面、こういう方面、あるいは工作機械だとか、あるいは石油事業とか、あるいは肥料事業とか、いろいろな問題はあります。こういうものを一々ここで、この分についてはこういう約束ができているということは、私も会社の重役ではないから知りませんが、見通しといたしましては、外資法の改正によりまして、今までに数倍のものが、最近のうちに入つて来ることは確かであります。これははつきり申し上げますが、もう一年か二年待つてごらんなさい、これがはつきりいたします。しかし電力の問題につきましては、まだ会社もできていないし、しかしてまた九電力会社の発電計画も、ただいまのところ国内資金の千百億円の確保が大体できる。外資の力を今借りなくても、大体千百億円の金はできる。これ以上来ればベターだ。ベターということを総理が言つたところが、ベターでなしに、これが来なければフエイタルだとお考えになつておる人がある。これは予算その他の経済事情を知らぬ人の言でありまして、私は所定の方針通り、着々と外資導入の手を打つております。だんだん呼び水も多くなつて来ましたから、そのうちあなた方が、さすがにやつたわいという時が来ると確信しております。
  21. 中村純一

    中村委員長 風早八十二君。時間がありませんから簡單に願います。
  22. 風早八十二

    ○風早委員 簡單にやりますが、池田大蔵大臣答弁に対しては、ぼくの方から必ずもう一度反問しますから、その点あらかじめ委員長において御了承願います。  今池田大蔵大臣は、日本経済というものがよくなれば外資は入る、こういうようなお話であつたのです。それはもちろん、そのことだけをとればその通りです。しかし施政方針演説等において、政府言つておるところの外資導入は、むしろ日本経済をよくするためにこそ外資がいる、その場合の導入を問題にしておつたはずだと思います。そうでなければ意味をなさない。日本経済をよくすれば、金も貸してもらえる。しかし日本経済をよくするのにはどうしたらよろしいか。たとえば、電力の問題が一番はつきりしている。これで千百億の国内資金と、十億ドルの外資を入れて、電源の大開発をやる、こういうこともすでに政府筋から出ておつたのであります。つまり日本経済をよくするために、今の政府方針としては、外資を入れるという話であつた。これについては、すでに外資の入る見通しについて、池田大蔵大臣は一月二十五日の衆議院の本会議において、非常に大きなことを言つている。「今後日本経済の建直りと、また外資導入に関しまする諸政策を実施いたしまするならば、今までに数倍して外資が来ることは明らかでございます。これはここに断言してはばかりません。」こういうお話であつた。この場合の外資というのは、やはり日本の電源開発にしろ、石炭やまた造船にしろ、あるいは今政府の意図しておる道路にしましても、それをやるために、少くとも呼び水として外資がいる、率直なところがそういう意味の外資であつたと思うのです。そういう外資については、残念ながら入らない。これはやはりあくまでがまんして、日本の自力でやつてもらいたい、これが三月十二日の朝日にも載つた、あのマーカット声明であつたのです。この声明に対しては、三月十五日の各紙、これは毎日で見ましたが、それによつて再確認されておる。吉田総理との会見について、いろいろ誤解があるようだが、われわれはそれは関知しない。さきに言つた声明は、これを再確認する、こういうはつきりした再声明が載つておるわけであります。先ほどの御答弁では、きようの午前中にマーカットとの会見で、あなたの言われたことは、全然的をはずしておる。これはいろいろな形で表題が出ておるけれども、力説する観点が違います。それによつて生ずる影響については、吉田総理は、マーカットはつまりそれは関知しない、こういうふうな話であつたということで、これは問題の正体をそらしておる。問題は外資を入れるのか入れないのかということである。アメリカの対日外資導入についての方針については、マーカットは再度はつきりこれはできない、日本自身でやれ。これは言いかえれば今まで外資を入れて、外資をだしにして日本産業を支配し、そうして日本を軍事化して行き、戰争へ持つて行く、この政策をやつてつたのだが、今度は同じその政策をやるのだけれども、一切合財日本自身の犠牲負担でやれ、そういうことだと思う。でありますから、一月二十五日の池田大蔵大臣の本会議における言明というものが、まつたくでたらめであるということは、これははなはだしく暴言であるということは、今日においては明らかであると考えるのでありますが、池田大蔵大臣は一体これに対してどういうお考えを持つておるか、これが一点であります。  さらに日本の外資導入の今後について、アメリカ側において、一体どういう方針をとつておられるかを今後の問題として池田大蔵大臣から説明してもらいたい。これは日本政府の政策、ひいてはわれわれの政策審議の上に重大な関係があるのじやないか。池田大蔵大臣は御存じでありましようが、アメリカの国会においては、日本に対する政府援助資金としては全然計上しておらない、こういう事実があるわけでありまして、池田大蔵大臣が今ここでいくら何を言われようと、事実入らない仕組みになつておるということだけは明らかであります。こういう点もあらかじめ考慮して、一体アメリカの対日援助政策というものがこれからどうなるか、どういう方針であるかということについて、池田大蔵大臣の口からひとつ述べてもらいたい。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 主義、政策その他いろいろな考え方が風早君と私は違いますので、いくら説明しても御納得は行かぬと思いますが、先ほど今澄委員にお答えいたしましたように、民間の過去数年間におけるものが株式として千五百万ドル余りだ、しかし今の見通しとしてはこれに数倍するものが来ると申し上げたことは、私はうそを言つたつもりはございません。自分としてはいろいろな点から見通しがついておる。うそか、うそでないかは一年たつてみればおわかりになります。ところが外資導入というものは、どんな外資がどういうふうなかつこうで来るかということは、はつきりしない。今一年半と言つたら笑われますが、エクスポート・インポート・バンクの四千万ドルの年間借款というものは、入るか入らぬかという質問があればまた答えますが、こういういろいろな点から行きますので、大蔵大臣としては大体の見通しを申し上げて審議の参考にするよりほかない。今後外資法がかわつたならば相当のものが入つて来るかということは、いわゆる民間と民間との導入、外資の入りぐあいでございます。私は輸出入銀行とか、開発銀行のことはこのうちに入れておりません。また政府借款というものにつきましても、向うは予算にないがどうか、こう言つておられますが、あなたは日本の予算とアメリカの予算の組み方を御存じないと思います。(「知つておりますよ」と呼ぶ者あり)それならば、向うは法律をつくればいつでも出せる。今の予算に載つてないから、アメリカはこんりんざい出せないというふうなことをおつしやるのはだめなんでございまして、アメリカが日本に対して外資についてどういうふうな考え方か、私はいろいろな人に接しておりますから想像はつきますが、あなたに申し上げる事由を持つておりません。
  24. 風早八十二

    ○風早委員 大体の見通しを出して政策審議の参考に供したと言われるが、一月二十五日の言明はまつたくでたらめだつた。見通しはまつたくくずれた、つまりそれに大きな望みをかけさせておきながらそれはくずれたのであります。これに対しては、政治的な大きな責任があるということは明らかだと思う。アメリカの対日援助政策について、どうしてあなたは国会においてこれを述べる事由を持たないか、そんなばかな話はないと思う。これはいつ何日どこでどういう取引があつたということを聞いておるのではない。抽象的でよい。一体出すのか出さないのか。この点を最終的にはつきりしてもらいたいということを言つているわけであります。言えないところを見ると、これは出せないと思う。あくまで一切合財日本犠牲負担で、しかもアメリカの望むところの、対日援助ができるような政策を行えという線がはつきり出て来ていることをわれわれは確認せざるを得ない。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 今までにも増して外資が来るということは、見通し言つたのであります。今来てないから責任を負え、でたらめだというのは、あなた話が少し早過ぎます。それはわれわれの施策の結果を見て御批評願いたいと思います。(「それは一年先のことだ」と呼ぶ者あり)その通り。(「一年先のことを二十七年度の施政演説で言うことはないではないか」と呼ぶ者あり)予算は一年分を組んでありますから、将来の一年間の見通しについて言うのは当然であります。そういうことを言うのでは、議会の議論としては問題にならぬと思います。  次にアメリカからどういう金が来るかということについては、もしお聞きになるんだつたら、民間と民間とはどうだ、輸出入銀行と民間との関係はどうだ、輸出入銀行と開発銀行その他との関係はどうだ、こういうふうにお聞きになるんだつたら答えます。アメリカの政府がどう思つているかということを日本大蔵大臣が国会で言うなんて、そんな不見識なことはありません。アメリカの政府はこう思つておるのだから、あなたはこう思えということを大蔵大臣は今言えません。そういうことは言うべきではない。相手のあることですから、相手が貸すか貸さぬかわからないのに、日本大蔵大臣たるものはそういうことを言うべきではありません。
  26. 中村純一

    中村委員長 大蔵大臣に対する質疑は時間がありませんので、本日はこの程度で打切りといたします。     —————————————
  27. 中村純一

    中村委員長 次は本日付託になりました神田博君外二十七名提出公共事業令の一部を改正する法律案を議題といたします。提案者より提案理由の説明を求めます。神田博君。     —————————————
  28. 神田博

    神田委員 公共事業令の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。  本法律案の趣旨とするところは、本年度をもつて一応いわゆる公納金の納付期間が切れますので、公納金制度の申来なりその性格なりにかんがみまして、今後も公納金制度を存続しようとするものであります。公納金と申しますのは、一般に知られておりますように、昭和十六年勅令第八百三十二号、配電統制令に基きまして従来配電事業を公営として行つておりました地方公共団体が、その経営する配電事業設備一切を当該区域の配電株式会社に対し強制的に現物出資せしめられたために、出資いたしました地方公共団体の出資後における財政上の支障を考慮いたしまして、同令第三十四條第一項の「配電株式会社は、命令の定むる所によりその成立の日より十年を越えざる期間、出資又は讓渡を為したる者に対し、一定金額を支拂うべし」と規定するところによりまして、当時の配電株式会社から出資または讓渡した地方公共団体に対し、その地方公共団体が毎年四月から翌年三月に至る一年間に出資または譲渡して得た株式の配当金、現金の利子及び出資または譲渡した電気設備または事業について収納すべき公課公租の合計額が電気供給事業利益金の九五%に達しないときに、これに達するまでの金額を納付せしめたのであります。しこうしてこの納付すべき期間を十年に限定いたしておつたのであります。ところで配電統合は高度国防国家の建設という当時の戰争目的に応じて、国家総動員法に基く勅令に基いて、地方公共団体の猛烈な反対を押し切つて行われたのでありまして、地方公共団体といたしましても、国策として配電統合に、その意に反しながら協力せざるを得なかつたのであります。従いまして出資または讓渡をいたしました地方公共団体は、戰争が終結し、その目的を失うと同時に、再び元の姿において電気供給事業経営できる期待を強く持つていたのでありまするが、御承知のように、戦争の終結後はもちろんこのような措置をとられるに至らなかつた。電気事業再編成によつて事実上その道はいまだとざされておる状態でございます。この間におきましても、公納金制度だけは終戰によつて配電統制令が失効いたしましても、改正電気事業法中に踏襲せられ、さらに公共事業令中に再び踏襲せられておるのでありまして、旧配電株式会社の債務は、新電気事業会社に継承せられたのであります。もちろんこのような措置は、配電統合によりまして、著しい財政上の支障を来した地方公共団体の配電事業よりの収益を十年間保障するということによつたのでございます、ところで公納金を十箇年間に限定いたしましたのは、いかなる理由に基いたものと申しましようか。十箇年たちましたならば、統合の目的も失われ、再び元の姿において地方公共団体が当該事業経営ができるであろうという期待があつたということが考えられまするので、これが実現せられない今日、いまだ出資または譲渡に基く財政負担をになうておる地方公共団体に対し、公納金制度を存続して行く必要は当然の処置と考えられたのであります。すなわち統合前においてこの事業会計から一般会計に相当多額の繰入れを行つていたばかりでなく、出資または讓渡に至りました地方公共団体は、いまだその事業建設のための公債の償還も終了していないばかりでなく、統合によつて引継いだ職員の退隠料、遺族扶助料も支拂つて行かなければならないのでありますから、これらの確実な基礎財源として、出資または譲渡いたしました電気供給事業設備または事業を再び地方公共団体に復元することができる立法措置がなされますまでの期間、この公納金制度を存続しようというのでございます。  なお該当公共団体は、青森、富城、山口、高知の四県、東京、京都、大阪、神戸、静岡、仙台、金沢、一関、苫小牧、酒田、宇治、都城の十二都市、ほか四十二箇町村に及んでおるのであります。  これが本法律案提出いたしました理由でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  29. 中村純一

    中村委員長 これにて本案の提案理由の説明を終りました。質疑は次会に行うことといたします。     —————————————
  30. 中村純一

    中村委員長 次に貿易に関する件について調査を進めます。質疑通告がありますから、順次これを許します。 山手滿男君。
  31. 山手滿男

    ○山手委員 貿易の問題とも関連はしますが、今問題になつておりまする行政協定に基くところのいろいろな問題、特に特需の関係については産業界にはいろいろな問題を起しおるのでございまして、私はその点について二、三明らかにしておいていただきたいと思います。  まず第一に私の聞きたいと思うことは、きようも一、二の新聞は報道しておるようでありますが、行政協定に基くところのいろいろな調達は、アメリカ側の考え方と日本側の考え方は相当食い違つてつて、今後向うの方で一括してできるならば発注をして、いろいろ調達して行きたい、こういう考え方を持つておる。しかしながら六百五十億のわが方の分担金もあつて、この分だけについては日本側においてその調達そのほかをやらしてもらいたい、こういうふうなことで折衝をしておられるようでありまするが、先方においてはすでに調達機関を各部門別に整備強化をして、あらかじめ向うの表現をしている意図を実際に移して行くという態勢を実際には着々と立てつつあるのであります。この点について通産省の方ではどういう交渉をしているか、まずお聞きをいたします。
  32. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 お答えを申します。行政協定に関しましての物資調達の方式でございますが、先般来予備作業班におきまして物資調達に関する委員会を設けまして、通日日本政府の各関係当局と先方の各関係官が出まして、協議を続けつつある状況でございます。その基本的な方針につきましては、行政協定の第十二條で明らかなように、大体軍からの直接調達が原則となつておるわけであります。言いかえれば、先方の直接調達を原則としまして、なおこの調達が日本経済に不利な影響があるという場合には、日本の当局との調整をはかるというのが大体の原則と申しますか、本来の建前でございまするが、行政協定の第十二條の規定にも、なお望ましい場合には、日本国の権限のある当局を通じて、またはその援助によつて云々という規定があるわけであります。日本政府方針としましては、直接調達がかりに原則になりましても、これが日本経済に対して不利な影響を生じます場合には、重要物資等についてあらかじめ調達計画の内容を当方に連絡願うとかあるいは具体的な問題について、従来の例に徹して申しますれば、たとえば石炭とかあるいは木材とかによつて、往々にしてその莫大なる調達量が日本経済にかなりの影響を及ぼしたという例にも徴しまして、そういうような場合には日本政府の方との具体的な問題についての適当なる調整の方法を十分講じて参るという考えでおるわけであります。なおこの問題につきましては、従来の調達庁の機能がどうなるか、あるいはわれわれとして間接調達と申しますか、日本政府の機関を通じて調達するというケースをなるべく多くしたいという気持はこちらにあるわけでありますが、そういうような問題については今後の具体的な協議、交渉の結果にまちたいと考えております。
  33. 山手滿男

    ○山手委員 きようは大臣がおられませんから、私はそういう基本的な問題はそのくらいにして他日に保留をしておきますが、現在まで向うの発注ぶりそのほかで、わが国の産業界に相当な影響を與えておることは公知の事実であります。そこで私はあなたの方に出ておる資料なりいきさつをお伺いしたいと思うのでありますが、某自動車工場においては、これは警察予備隊の関係があつて向うのさしがねがあつたようでありますけれども、ジープを発注しておきながら、向うの古いジープが拂い下げられたために、途中でこれをとりやめた、そして自動車会社に相当な損害を與えたというふうな事実がある。そういうことをお聞きになつておるのかどうか。あるいは現在毛布とかそのほかいろいろな需要資材の調達が行われておりますが、向うの超過利得協議法の発動と思われるような、各会社なり工場の検査あるいは調査をされて、いかにも超過利得があるかのごとくいろいろな手が打たれようとしており、業界を相当ふるえ上らせているといつても言い過ぎではないような事態があるのでありますが、それについて通産省の方はどの程度に御存じであるか、承りたいと思います。
  34. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 お答え申します。従来の特需の契約のやり方は、申すまでもなく軍が直接関係工場に対して発注するという軍と工場との間の発注受注の契約であります。通産省としてその間に介在するという関係にはないわけであります。従つてわれわれとしましては、従来特需の内容等については軍から司令部を通じてこちらに報告を聞いているという関係でございますが、問題の生じましたようなケースについては、機械関係については機械局、あるいは雑貨関係については当方の雑貨局というようなぐあいに、われわれ通産省内の各原局の方には、具体的に問題のあつた都度関係工場から連絡と申しますか、いろいろ陳情も聞いているという状況でございます。なお今お述べになりましたジープの件等についても、今の例は軍側の一方的な契約の破棄のような例でございますが、従来経済法規が違うとか、労働法規が違うとか、あるいはそれの解釈が違うとか、商慣習が違うというような関係で、発受注契約に関していろいろなトラブルがあつたということはいろいろ聞いているわけであります。そのような経済法規、労働法規、商慣習の相違から来る具体的な問題につきましては、先刻申しましたように今後は日本政府が調整の方法を講ずるという行政協定の明文通りに、今後通産省として十分適切な調整の道を講じて参りたいと考えております。なお毛布等についての超過利得云々の問題につきましては、振興局は通産省全般を通じましての特需のとりまとめを担当しておる局であります関係上、そのケースにつきましてはいまだ詳細なことを承知していないということを申し上げておきます。
  35. 山手滿男

    ○山手委員 今の局長の答弁はちつともわれわれの要求する答弁にならないので不満足でありますし、何のことやらわからぬのでありますが、公正な入札制度によつて落札をし、落札者が向うの仕事であるというので非常に力こぶを入れ、しかも落札のときにあれこれいろいろなことを言われ非常に不利な状況で入札をしいられているということはまつたく情ない。これは占領下であるから、そういうことを一方的にやられても、これで工場がとまつてはということで泣寝入りをしてやつているわけでありますが、その上に現在のように経済界が大変動を来して、一昨年、昨年あたり輸入した原料の価格が相当大幅に下落している。そして今になつて今の価格なんかをしやくし定規に当てはめて原価計算をして、超過利得云々というような、日本の商習慣と違つたアメリカの法律をいきなりここへ持つて来てやられるということを、通産省当局が、何かそういうことは聞いておりますけれどもというようなことでは、振興局長は勤まらぬと思う。この点については行政協定のとりきめの根本において、日本側が非常な譲歩をし、あるいはしいられた点があつていろいろ末端においては苦しい面もあろうと思いますが、通産省はもう少しがんばらなければいかぬと思う。  そこでお聞きしたいのは、今のような場合、ジープを発注しておきながら、キャンセルをして、資材は手当をしている。資材を手当しておけば相当な金利もいる。そしてキャンセルされつぱなしである。間に外商なんか入つて来たとか、いろいろな要素によつてそういうことになつたと思いますが、これはたいへんな迷惑でありまして、日本経済界の将来に重大な影響を及ぼすものと思いますので、その補償はどうするのか、行政協定からはどういうふうになつて行くのか、それに対して通産省はどういう交渉をする腹であるか、振興局長の御意見を承りたい。
  36. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 繰返して申します通り、従来は日本政府を通じて契約をやるという建前ではないわけであります。これはまつたくコマーシヤル・べースといいますか、両契約当事者間の交渉によつてやられているというのが従前の例であります。その結果として事実上の力のバランスの関係上、実際問題として業者に対して不利な結果があつた、たとえば一般的な入札につきましても非常に不明朗な入札が往々にしてあつたという例もございましたし、あるいはまた前渡金という商慣習が米国の方はあまりないという関係で、日本業者として非常に不利があつた、また労務管理につきましても一方的な解雇だとか転勤だとかという例も従前ないではなかつたという実情でございますが、今後は先ほども申しましたように、日本政府が行政協定の結果といたしまして、権限をもつてこれの調整の道を講ずるということが明瞭になりましたので、今後は日米両方の関係官を加えましたこの調達委員会を通じまして、そういう紛争の解決ないしは非常な不合理な問題についての是正に十分努めて参りたい。かように考えているわけであります。
  37. 山手滿男

    ○山手委員 この工場の従業員に関係のあることをそちらの方からお話になりましたが、実際にそういうことを調べてみたところが、あることは間違いがないので、向う側の契約官のさしがねによつて、工場内の職員を免職していたり、雇用拒絶に類する行為をやつたりするというふうなことがあるといたします。またあるのでありますが、あるとするならばこれはちようど戰争中の軍の監督工場のようなものの再現であります。しかも一方的に、今のお話でありますが、予告期間が一箇月やそこらで打切るというふうなことをする。あるいは短期間の中に業務の転換を命ぜられるというふうな事態が起る。そのためにまつたくわが国の産業界は、手は出したいけれども出せない。これが業者のほんとうの気分だろうと思うのでありますが、そういう事態が今後続々起きて来ると私は思う。今までもあつた。それで今後行政協定のあの筋書で行つたならば、今のような労務管理の面にまで手が伸びて来るというふうなことが強化されて行くということを予測されるかどうか。そういうことについて單に紛争の処理の委員会で協議をするということでなしに、通産省としてはどういう考えを持つているか。一種の軍管理工場というふうなものが続々できて行くのではないか。こういうことについてお聞かせを願いたいと思います。
  38. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 従来のこの軍と工場との間の契約の方式につきましては、いろいろのやり方が実はあるわけであります。注文しました製品の値段だけきめまして、一定の数量を一定の値段でもつて発注するというその材料は、これに要する直接材料のみを軍の方から出すが、これに反しましていろいろ人件費その他間接資材その他一般管理費はその單価の計算中に入つているというような、いわゆるユニット・プライス・システムというような方法もございますし、あるいはマン・アワー制と申しまして、工員一時間についての單価をきめて行く。そういう契約の方法だとか、あるいはタイム・アンド・マテリアル制と申しまして、労働時間とこれの所要資材の二つの面からいろいろ契約の條件をきめる。そういうようないろいろな方式があるわけでありますが、今後の方向といたしましては、われわれといたしましては今仰せのような軍管理工場風に、工場の内部の経営にまで食い込んで来るというようなことはあくまで排除したいと考えております。この協定の十二條の本来の原則といたしましては、先ほど申しましたように直接調達ではありますが、日本政府の方はなるべくならば間接調達といいますか、日本政府を通じまして調達するような方式を機会のある都度主張して参りたいと考えておりますが、かりに直接調達という場合につきましても、この工場の具体的な実地についての介入の問題等は、調達委員会等で日米関係で十分な協議を盡しまして、そういう工場の内容経営の管理についてまで向うが干渉、介入というような問題は極力排除するようにわれわれとしては考えて参りたいと思つております。
  39. 山手滿男

    ○山手委員 私は将来の日本産業界にとつて知らず知らずのうち養うべき事態が起るのではないかという気がするのであります。六百五十億の防衛分担金を出してあるその分も向うに直接発注して行くのだというふうなことがやられてしまいはせぬか。いわんや向う側の分は自分の方で直接発注する、直接発注をして直接調達をするということになると、全部日本の商習慣を無視し、日本の法律そのほかを無視した契約をされ、それに無知な日本の会社側なんかはずいぶん混乱をするのじやないかという気がいたします。私は今日はこのことを深入りしてもいけないのでありますが、この根本問題に触れて次会に大臣を呼んで質問いたし、答弁を求めたいと思いますので、今日はほかの委員もいろいろ質問があるようでありますから、この程度で私の質問は打切つておきます。
  40. 中村純一

    中村委員長 次は風早八十二君。
  41. 風早八十二

    ○風早委員 特別調達庁長官を要求してあつたのですが、おられませんのでやはり通商振興局長に御質問いたします。行政協定の締結に関連しまして、今までの特別調達問題についていろいろな問題があるわけです。これが行政協定のとりきめでどうなつて行くかという点を明確にしていただきたいと思います。  行政協定の第十二條の第一項の二のところに物資、及び役務の調達が日本経済に不利な影響を及ぼすおそれがある場合には、日本当局と調整すると書いてある。場合によつて日本当局を通じ、またはその援助を得て調達する。日本当局を通じということについては、日本の業界でも特に要望があつたと思います。しかるにこれが場合によつてはということになつておりまして、本則としては、日本当局と調整すとあるので、日本当局との調整ということが非常に問題になると思います。今あなたのお話では、できる限りの機会で間接的な調達という方式をとりたいと言われますが、そういうふうになつておらないわけですね。こういう点できわめて不十分な規定だと思いますが、こういう点は事務当局とされても何かお考えがあると思います。それについてまず伺つておきたい。
  42. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 先ほどお断りしました点と重複するかと思いますが、先般来予備作業班に物資調達に関する委員会を設けまして、この委員会でいろいろ連日今後の物資調達に関する具体的問題について協議を続けつつあるという状態であります。日本側の方からは大蔵省、安定本部、調達庁あるいは農林省、通産省というような関係官庁の方から入つております。米軍の方から相当な担当官が入つていることは当然のことであります。この調達委員会におきまして、分科会を設けまして、調達の方法の問題、あるいは契約の様式の問題、あるいは税、労務、調整、紛争、そういうような六つの分科会を設けまして、その調達委員会の分科会でそういう具体的な問題についての調整と申しますか、改善について十分な方法を講じて参りたい、そういう方向で現在進んでおります。
  43. 風早八十二

    ○風早委員 大体今言われたことは、新聞等で一応拝見しておりますが、私根本的にお聞きしたいのは、日本当局を通じてということにならなくて、それは場合によつてということになつて、きわめて例外的になつておりまして、本則としては日本当局と調整するということになつてしまつていることですが、これははなはだ妙だと思うのです。どうしてこういうことになつたのか、これに対してはどういうお考えかということを聞いておるわけです。これは業者の要求かち見ましても非常に妙なところへ行つてしまつておるじやないか。
  44. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 われわれ通産省の関係官としましては、行政協定締結の当面の責任の衝にはないわけでありまして、どういう理由でこういう協定の明文がきめられたかという点につきましては、私としましてお答え申し上げられません。
  45. 風早八十二

    ○風早委員 少くもこれの成り立ちは、だれがやつたかということはわかるわけです。そういうことでなしに、あなたがこの面に実際に当られる人として、今まで——これはあらゆる物資についてそうでありますが、たとえば石炭なら石炭をとつてみましても、これが必要であるとなれば、その物資を持つておる、あるいは生産する業者そのものが、向うによつてつてに指定せられて、そしてこれはどうでもこうでも、向うさんとの取引はいやだというようなことを許さない。そういう関係がまず一つ出て来ておるのではないかと思います。これは今の行政協定の第十二條に、「日本国で供給されるべき需品又は行われるべき工事のため、供給者又は工事を行う者の選択に関する制限を受けないで契約する権利を有する。」こういうことになつているわけです。会社にこの品物を頼みたい、こういう場合に一般の自由な契約であれば、相手方と取引するのはいやだというような会社に無理に契約を取結ぶことはできないわけですが、そういうことを制限を受けないで契約する権利を有する、こうなつているのです。こういう点はきわめて一方的な形でありまして、日本メーカーなりあるいは工事を行う者にとつては、非常に迷惑な場合があると思うのですが、そういうふうなことがまず根本にあると思うのです。さらにこの値段にしましても、今まではきわめて一方的である。またそのほか罰金制というようなものもついている。いろいろ品質につきましてやかましい規格を言い、検査をやり、これにはずれた場合に罰金制というようなものがあるとか、あるいはその代金の支拂いもはなはだしく遅延するとか、しまいには原価報告の義務まで負わしている。これは通常の売買関係ではない。銀行が金を貸す場合においては、いろいろな方法で相手方の資産なり、経理状況を調査しております。しかしそれは調査の権利があつてつているわけではない。ましてや一般の売買関係ではそういうことはあり得ないことであります。しかるに米軍との関係におきまして、こういう原価報告の義務まで負わしている。今までこういつたようなさまざまの不平等な條件、契約とは言えないところの條件があつたと思うのです。こういうことが一体行政協定でどう改善されるかということが大いに国民の関心事であり、また業界の関心事であると思うのでありまして、あなたは実際にこういうことを扱つておられるならば、その立場からお考えがあつてしかるべきだと思うので、それを聞いているわけです。
  46. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 契約の方式としまして、直接調達、間接調達と両方あり、この両方の方式中、間接調達の方が、できれば望ましいという点につきましては、申すまでもないかと思います。行政協定第十二條第二項の規定としましては、繰返して申します通り、直接調達が原則となり、間接調達が例外として認められておるという状況であります。こういう行政協定を前提としまして、われわれ実際こういう問題を担当するその実務者として、どう考えるかという問題であります。われわれとしましては、具体的な運用について、まず第一に、間接調達のケースをなるべく多くしたいという気持、そうしてまたそういう方向に調達委員会等を通じまして努力を続けたいと考えております。第二に、直接調達になつたとしましても、直接調達方式自体が必ずしも当然に日本経済日本業者にとつて不利になるということにはならないわけでありまして、直接調達の場合における具体的な契約の條件、契約の方法というものが、その契約の内容が不利にならないようにという点から是正の道、改善の道を講ずれば、日本業者に対する不利というものは十分防止が可能である。かように考えております。つきましては、今申しました日米関係官より成ります調達委員会には、契約の方法、契約の様式、労務、税、紛争、調整というような六つの分科会を設けまして、その具体的な契約の内容、様式につきましては、われわれとしまして十分愼重な綿密な検討を加えまして、もしわが国業者としまして不利な点があれば、そういう條項につきましては、これの是正をこの委員会ないしは分科会を通じて要求するというふうに、この調達委員会ないし六つの分科会の運用を通しまして、具体的な契約の内容なり、條件なり、方法等について、できるだけわが国への不利な影響がないように、これを防止、緩和、是正することに、われわれとしましては努力を盡したいと考えております。
  47. 風早八十二

    ○風早委員 ついでながら伺いますが、今までこの物資の特別調達に関して、はなはだしく不利な、不平等な條件で契約を要求されておつたわけです。そういうことに対して、あなた方は今言われたような努力をされ、それによつてどういう効果があつたか、それらを簡単に述べていただきたいと思います。
  48. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 従前は通産省としまして直接その契約に介入することはもちろんございませんでしたし、またその問題々々について、自動車なら自動車につきましては通産省の機械局とか、あるいはその他の各品種々々につきましてもし問題がありますれば、その都度各原局の方にそういつた連絡があつたかと存じますが、われわれ振興局の所管としましては、全般的な問題の扱いをやつている関係上、その具体的のものについて、その契約條件の是正等について一、二こちらから司令部にその方法の改善について交渉をやりました例はないではないのでございますが、この従来の契約について交渉をやつた例、そしてその実際の効果がどういう効果か、従来現にそういう例があつたかという問題につきましては、今ここで私の方からお答え申すことはできないわけであります。あるいは御要求に応じまして機械局等各原局の方といろいろ連絡しまして、そういつた問題についてまとめてみてもいいかと考えております。
  49. 風早八十二

    ○風早委員 先ほど石炭のことを出しましたから、石炭について申しますが、まず第一に日本でこの石炭が非常に不足しておる。それでアメリカからわざわざ三十一ドルも出して石炭を買い込むというようなことをやつていながら、やはり朝鮮の動乱で朝鮮向けの石炭が必要だというので、とにかく日本からまたなけなしの石炭を、特に中塊炭というようなものまで相当の量を毎期々々運んで行つたわけです。そういう場合、やはり山元としても実際問題としてそれを必ずしも望んでいないわけです。石炭の需要はいくらでも国内にあるわけです。というのは、その値段が御承知のように日本の国内市場価格と非常な開きがある。最近ではおそらく八百円から千円の開きがあると思う。そういう安い値段でどうでもこうでもお前のところからほしいということになれば、断ることもできない。こういうような條件で今までは来ておつたわけです。そのほかまことに常識を逸したような、一般の取引では考えられないようないろいろな條件が一ぱいあるわけです。おまけにその代金の支拂いも、約束をしてもそれが非常に遅延しているが、これに対する苦情がなかなか通らない。こういうようなことで、もうたまらないからどうしてもこれは日本政府を通じてやりたいというのが、今までの業界の全面的な要望であつたと思うのです。しかしこれに対して今まではどうすることもできなかつた。それが今度はいよいよ行政協定ではつきりこれがきめられてしまつたということではないのですか。あなたはその中で実際の取引でいろいろにやつて行くと言われるけれども、「日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞があるものは、」とあるのでありまして、どういう場合に日本国の経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるかということの認定は向うさんがやる。ですから不利な影響を及ぼさないと考えて向うで認定した場合においては、これは今言つたような一切のことはみな消えてしまうわけです。日本当局との調整すらやる余地はないのです。ましてや日本政府を通じてというようなことは全然消えてしまうのです。こういうことの中でどうして一体実際の運営をやつて行くか、それは、これを認めるというならばそういう運営をやつて行くと言われるかもしれませんが、それで一体やつて行く見通しがあるのか、それはやつてつても結局は効果はないわけでありますが、そういうことに対する日本産業界に対する責任という立場から言つて、何とかもう少し積極的な、これでは困るというような見解が当然出そうなものだと私は思うので聞いているのです。
  50. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 日本経済に対する不利なる影響のおそれの防止についてどういう方法考えているかという点でございますが、先般来もこの委員会を通じまして、当方の要求は、重要物資についてはその発注前にこの調達委員会を通じて調達計画を日本側に内示連絡願いたいという希望であります。この点につきましては先方もこれを十分了解いたしておるわけであります。ついてはその重要物資の範囲はどういう範囲だということで、今具体的な品目につきまして、こうこういう物資について先方が発注しよう、調達しようというような場合には、その調達の計画を年間を通じて毎四半期というようなぐあいに区分しまして、その数量ないしは金額というような重要なポイントについてはこちらに事前に内示連絡を願うということを通じまして、そういう方法を通して日本経済に対する不利な影響の緩和、修正という方向に十分な効果は期待していい、かように考えております。
  51. 風早八十二

    ○風早委員 それこそ非常な不可能に近いことではないか、しかもそれをやつてみたところでどうということはないと思うのですが、しかしそれにしても内示連絡というようなことは全国的にどこでどうこれをやるか。一々内示連絡ということになりますれば、それ自身大きな機関を必要とすると思うのですが、そういうことが実際に行われ得る仕組みというようなものは考えておられるわけですか。特調というようなものは一体どうなり、これからどういうふうにこれをやつて行かれるつもりなんですか。
  52. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 米軍の方の調達の全体的な総括はJPAでこれを担当します。そしてまたそういう調達計画の日本の方への影響の問題につきましては、安本がこれを総合して調整の方法を講ずる。言いかえればこの調達委員会にはJPAの代表者も入りますし、安本の代表者も入る。この両方を通じまして全国的な調達計画の全貌、具体的な内容がこの調達委員会に明示される、かように御了解を願いたいと思います。
  53. 風早八十二

    ○風早委員 地方はどうですか。
  54. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 地方の分も全部中央のJPAの方でこれを統合するというふうに聞いております。
  55. 風早八十二

    ○風早委員 これは実は予算委員会でも労働大臣でしたか大蔵大臣でしたかに一応提出した問題ですが、大体米軍の軍用車両の再製修理の直接調達をやつておる池貝自動車、日発、富士自動車その他たくさんありますが、これら全部の、つまり代表として進駐軍自動車委員会会長の名をもつて、特調の長官にあてて陳情書が出ておることは十分御承知と思います。その中にもいろいろな事実をあげまして、まつたく今までの契約というものが、日本の習慣やその他を無視して一方的にかつてにやられる、それを断るすべがないというような、そういう立場に置かれておるということで、これはどうしても日本政府が、かわつて契約の一方の当事者になつてもらいたい、それでなければ話がこれではわからないという、そういう陳情書があるわけです。詳細は、ここにも全文がありますけれども省きますが、そういつたような非常に切実な要望があつたわけでありますが、こういう点がまつたく踏みにじられておるということは明らかでないかと思う。しかも私が驚くことは、北大西洋條約におきましては、これはもうはつきり——日本の行政協定は大体これに範をとつたといわれておる、その北大西洋條約も、その実際の正体はやはりアメリカというものが上におりまして、これが非常に都合よくこれを運営しておる。そういうふうな実態に基礎づけられてできたものでありますが、それでもこれは原則的に、つまり例外なしに駐留地の政府を通じてというふうに、はつきり明記されておる。北大西洋條約でもそうなんです。つまりそういう程度にまでも行かない、それよりもなおはみ出して、ほとんど一方的に規定したと同じような規定になつておるということは、非常に問題だと思うのです。それで事務当局のあなたにどうこう言つてみたところで——これは私は別に責任問題を言つておるのではない、あなたは何も責任はない。しかし実際問題として、これでは困るのではないか。そういう点で、もう少し事務当局としても、実際仕事を遂行する上からいつてもこれではやつて行かれないという、当然その確固たる見解が出そうなものだと思う。そういう立場から運営されるというのであれば、これはまたわれわれは十分了承したいと思うのです。なおこの問題につきましては、どうもやはり責任者自身にこれをたださなければしようがない政治的な責任の問題でありますから、その点だけ事務当局としての見解を最後に承つて、私の質疑を終りたいと思います。
  56. 井上尚一

    ○井上(尚)政府委員 協定の締結の経過あるいはその理由、内容等につきましてわれわれとしましてはお答え申すべき地位にないということは先ほど申した通りでございますが、この行政協定第十二條を前提としましてこれの実施の面を担当する人間として、今後これをどういうふうに考えて行くかという点であります。これは先ほど来申した点とまつたくダブるわけでございまするが、この行政協定の規定上は直接調達が本則であり、間接調達が例外としてこれも認められているわけであります。われわれとしましては調達委員会の運用等を通じまして、なるべくならば間接調達のケース、そういつた事例というものをできるだけ多くして参りたいという点、それからなお直接調達をやるということになりましても、直接調達の方式自体が別段日本業者日本経済にとつて、これが当一然ただちに不利になるということはないのでございますから、これの場合のその契約の方法、契約の條件等につきまして、従前の実施の経験に徴してまずいような例は、今後この調達委員会及び先ほど申しました分科会、こういう機構を通じまして先方と十分折衝を続けて参りたい考えであります。そしてこの委員会、分科会の十分なる活用を通じまして、われわれ日本政府の希望、意のある点を向うに注入し、また日本経済に対する影響あるいは日本業者に対する不利というようなものは、極力これを排除するという方向に十分な方法を今後講じて参りたい、かように考えております。
  57. 中村純一

    中村委員長 本日はこの程度にて散会いたします。次会は明二十日午前十時より開会いたします。     午後四時七分散会