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本間政府委員 平和條約の発効を目前に控えました今日、
わが国の
経済的自立をすみやかに達成すべき必要性があらためて痛感されるのでありますが、それがためには
貿易の飛躍的な振興にまたなければならないことは申すまでもないところであります。
政府はここに
輸出貿易振興方策の一環といたしまして、
輸出取引における諸種の危險を保險する制度をさらに擴充強化するため、このたび
輸出信用保険法の一部を改正する
法律案を
提出して御審議を仰ぐことといたした次第であります。
現行
輸出信用保険法は、昭和二十五年三月三十一日に施行せられ、甲種保険制度を確立して、最近における緊迫した国際状勢のもとに
輸出取引に伴う為替
制限、戦争等の非常危険に基く不測の損失を救済いたして参りました。また、昨年十二月一日には、これに一部改正を加えまして、
機械設備等資本財の
輸出につきまして、船積み後その
輸出代金を回収するまでの間における買手の破産、支拂い義務遅滞等のごとき信用危險を救済する乙種保険制度をあわせて実施して参りました。しかしながら、過去約二年にわたる甲種保險制度実施の経験にかんがみまして、この制度についてなお
改善すべき諸点が見出されましたほか、さらに現下の切実な要請であるドル地域向け
輸出振興を促進するため、
輸出資金の融通の円滑化をはかり、また海外
市場の開拓を期する上に、保険制度による推進策を講ずる必要が生じて参
つたのであります。本改正
法律案は、かかる必要性に基きまして、現行制度の
改善と新種保険制度の設定をその
内容といたしたものであります。以下改正
法律案の概要を御説明申し上げます。
改正の第一点は、甲種保險制度の
改善であります。甲種保險につきましては、その被保險者及び損失填補の
範囲を擴大するほか、損失填補の方式についても技術上の改正る加えております。
改正の第二点は、丙種保險制度の創設であります。
輸出品の生産、集荷等に必要な資金につきまして、その調達の円滑化をはかりますことは、
輸出振興上きわめて肝要でありますが、金融機関が
輸出資金を融通する場合における最大の関心事は、言うまでもなく、その融通した資金が満期に回収され得るかいなかということであります。丙種保険は、金融機関のこのような不安に着目し、保険制度によ
つてこの不安を除去して、ドル地域向け
輸出に関する金融の疏通をはかるとともに、他方金融機関から
輸出資金の融通を受けた
輸出業者または
輸出品製造
業者等に対しては、
輸出不能の事由が発生した場合において、
輸出資金の返済の延期を許し、も
つて損失の償却に要する時間的余裕を與えようとするものであります。
改正の第三点は、丁種保険制度の創設であります。これはドル地域向け
輸出の促進を目的として、
輸出品の広告宣伝費用が支出せられた場合におきまして、当該費用が爾後の
輸出によ
つて回収されない損失を保險する制度でありますが、かかる保険制度に基く保護によ
つて、新
市場の開拓及び
輸出量の増大をはかるとともに、
関係業者の広告宣伝に対する関心を喚起しようとするものであります。
以上申し述べました
輸出信用保険法の改正に関しましては、
輸出信用保險に関する
政府の事業を経理いたしておりますところの
輸出信用保険特別会計の資本金を増額する必要がございますので、昭和二十七年度予算におきまして、一般会計より本会計に対する十億円の繰入れを計上するのほか、所要の事務費の増額を計上いたしております。
何とぞ御審議の上、御賛成あらんことを切望いたします。