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1952-02-04 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月四日(月曜日)     午後一時五十四分開議  出席委員    委員長 中村 純一君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 今澄  勇君       今泉 貞雄君    小金 義照君       澁谷雄太郎君    永井 要造君       福田  一君    南  好雄君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君       風早八十二君    上林與市郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高橋龍太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       本間 俊一君         通商産業事務官         (通商繊維局         長)      記内 角一君  委員外出席者         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟福         井県支部書記局         長)      中島 優治君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   門司 正信君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 一月二十六日  委員田中彰治辞任につき、その補欠として土  倉宗明君が議長指名委員に選任された。  一月二十八日  委員河口陽一辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長指名委員に選任された。 二月四日  委員金塚孝辞任につき、その補欠として高橋  清治郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月一日  石油及び可燃性天然ガス資源開発法案内閣提  出第二二号) 二月二日  電気化学工業株式会社大牟田工場自家用発電  所の復元に関する請願(高橋權六君紹介)(第  三六一号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第四〇七号) の審査を本委員会に付託された。 一月二十九日  米国まぐろ関税問題に関する陳情書  (第一二八号)  西日本地帯における電源開発並びに電力増強  に関する陳情書(第一  七八号)  電力料金値上げ反対に関する陳情書  (第一七九号)  電源開発促進及び電力料金地域差撤廃の陳  情書(第一八〇  号) 同月三十一日  輸出物資検査出張所を東北の開港場に設置の陳  情書(第二七五  号)  電源開発用電気機械輸入防止に関する陳情書  (第二七六  号)  中国地方電源開発促進に関する陳情書  (第二七七号)  中小企業金融対策に関する陳情書  (第二  七八号)  企業合理化促進法制定に際して業種指定に関す  る陳情書(第  二七九号)  企業合理化促進法案に関する陳情書  (第二八  〇号)  綾北川、南川上流電源開発に関する陳情書  (第  二八一号)  電力不足対策に関する陳情書  (第二八二号)  暖房用炭の値下げとその確保に関する陳情書  (第一八一号)  道南電源開発促進に関する陳情書  (第一八二号)  電源開発計画促進に関する陳情書  (第一八三号)  公務所におけるメートル法の完全実施に関する  陳情書(第一  八四号)  長崎通商事務所存置に関する陳情書  (第一八五号)  長崎鉱業試験場の移管に関する陳情書  (第一八六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任及び追加選任  石油及び可燃性天然ガス資源開発法案内閣提  出第二二号)繊維に関する件     ―――――――――――――
  2. 中村純一

    中村委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。  まず委員変更についてお知らせいたします。去る一月二十八日委員河口陽一君が委員辞任せられて、中村寅太君が補欠選任せられました。また本日金塚孝君が委員辞任せられ、高橋清治郎君が補欠選任せられました。  この際小委員補欠選任及び追加選任の件についてお諮りいたします。  一、電気及びガスに関する小委員。小委員河口陽一委員辞任につき中村寅太君を補欠選任し、新たに土倉宗明君を追加選任すること。  一、地下資源開発及び合理化に関する小委員。小委員田中彰治君及び河口陽一君が委員辞任せられたるにつき、神田博君及び中村寅太君をそれぞれ補欠選任し、小委員中西伊之助君が委員割当数変更により委員辞任せられ、新たに上林與市郎君が委員に選任せられましたので、同委員を本小委員に選任すること。また小委員橋本金一小委員辞任につき、高橋清治郎君を本小委員とすること。  一、中小企業に関する小委員。小委員西村榮一君及び金塚孝委員辞任につき、今澄勇君及び高橋清治郎君を小委員補欠選任すること。  一、工業に関する小委員。同じく西村榮一君の補欠として今澄勇君を選任し、中西伊之助君の欠員に伴い、新たに上林與市郎君を本小委員補欠選任すること。  一、繊維に関する小委員河口陽一君の補欠として、中村寅太君を小委員に選任すること。  一、貿易に関する小委員神田博小委員辞任につき土倉宗明君を補欠選任し、西村榮一君の補欠として今澄勇君を選任し、新たに小金義照君を追加選任すること。  以上先ほどの理事会で御了承を願つたのでございますが、そのように決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村純一

    中村委員長 それではさように決定いたしました。     —————————————
  4. 中村純一

    中村委員長 次に去る一日、本委員会に付託せられました石油及び可燃性天然ガス資源開発法案について、その提案理由説明を求めます。     —————————————
  5. 本間俊一

    本間政府委員 提案理由を御説明申し上げます。  石油及び可燃性天然ガス資源開発につきましては、従来、昭和十三年に制定されておりました石油資源開発法によりまして、試掘助成金の交付による探鉱の奨励を初めとする開発促進措置実施して参つたのでありますが、同法がその制定年次から推察されまするように、軍事目的ため強行開発を主眼とする戦時立法であります関係上、その内容には、事業計画届出強制、採油の増産または制限命令等規定され、いわゆる石油鉱業に関する事業法的色彩が強く、すでに帝国石油株式会社法が廃止されました今日においては、同法に基く行政実施いたしますことは当を失するうらみがあるばかりでなく、技術的見地から考えますと、流体鉱物としての石油及び可燃性天然ガス特性が無視され、長期的にこれらの資源の合理的な開発を阻害するおそれなしとしないのであります。すなわち、石油及び可燃性天然ガス開発は、その賦存状態におきまして流体運動が行われております関係から、石炭その他の固体鉱物開発において労働力その他人工エネルギーの活動をまつよりは、むしろ地下水またはガスの圧力、重力等自然エネルギー運動に負うところが大部分でありまして、その掘採方法におきましては、これら地下エネルギーをいかに有効に利用するかが開発重要点となつておる現状であります。すでに米国初め世界各国におきましては、多年にわたる研究の結果この油層技術学に基くところの油層エネルギー浪費防止中心とするコンサーべーシヨン・システムが実施されており、石油及び可燃性天然ガス資源地質的構造を本質的に彼我相同じくする以上は、わが国におきましても、油層の完全な開発ためには、かかる油層技術学に基くところの掘採方法実施し、石油及び可燃性天然ガスの合理的な開発促進することが、自立経済達成ため緊急事であると存ずる次第であります。  以上の趣旨によりまして、政府といたしましては、昨年来、石油資源開発法を廃止し、これにかわり、石油及び可燃性天然ガス資源有効開発に資すべき法律の制定を意図し、内外各方面の御尽力を得まして、その立案に鋭意努力して参つたのでありますが、今般ようやく成案を得るに至りましたので、ここに石油及び可燃性天然ガス資源開発法案として国会に提出し、十分な御審議を仰がんとする次第であります。  法案内容にわたりましては、御審議の際、逐次御説明申し上げる所存でございますが、以下その概要について申し述べますならば、この法案は、石油及び可燃性天然ガス資源を合理的に開発し、公共福祉増進に資するため、その掘採の方法について規律するとともに、探鉱中心とする開発実施に対しまして国家補助を行うことを規定しております。すなわち第一には、すでに御説明申し上げましたように、石油及び可燃性天然ガス流体鉱物たる特性に応じ、その掘採の方法におきまして、油層の保護及び油層エネルギー浪費防止をはかるため最小限度に必要とされる措置実施し、または遵守すべきことを規制いたしました。  第二には、石油もしくは可燃性天然ガス探鉱または石油完全開発に資する掘採方法について補助金を交付することとし、補助金の適正な支出と、確実な還付を期しまして、これに必要な手続その他の規定を置いております。第三には、石油及び可燃性天然ガス資源の合理的な開発に資する技術的事項に関しましては、高度の学識経験を有する専門家意見を必要といたしますので、この会議機関たる石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会資源庁設定することとし、その審議会に必要な諸事項について規定をいたしました。その他現行の石油資源開発法廃止等この法案が公布施行されました後において必要とされる措置及び異議申立て制度の採用を初めとするこの法案内容を円滑に運営いたしますため必要な諸規定を掲げておる次第であります。  なお最後に一言申し上げたいことは、わが国における石油及び可燃性天然ガス開発は、由来歴史的に見ますと、明治三十四年綱式掘鑿装置導入、大正三年ロータリー式掘鑿装置導入昭和四年石油試掘補助金制度実施等技術的な新方策の設定によつて、著しく向上して参つたものでありまして、この法案がその内容近代的科学性を有する油層技術学に基く諸規制を採入しておりますことを考えますと、この法案が、御審議の結果幸い可決され、公布施行されますならば、必ず石油及び可燃性天然ガス資源開発促進され、国内地下資源開発に資し、ひいてはわが国経済の興隆、公共福祉増進に資すること多大なものがあると信ずる次第であります。  政府といたしましては、この法案の成立により、新会計年度より新たなる決意をもちまして、充実せる資源行政実施に努力する所存でありまして、何とぞ、この意図するところを了とせられ、この法案につき慎重な御審議の末すみやかに、御承認あらんことを切に希望いたすものであります。
  6. 中村純一

    中村委員長 以上で提案理由説明は終りました。質疑は次会にこれを行うことといたします。     —————————————
  7. 中村純一

    中村委員長 次に繊維に関する件について調査を進めます。  この際お諮りいたしますが、本件の調査につき商工組合中央金庫理事門司正信君及び全国繊維産業労働組合同盟福井支部書記局長中島優治君の両君より参考人として御意見を承ることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 中村純一

    中村委員長 それではそのように決定いたします。まず中島優治君より御発言を願います。
  9. 中島優治

    中島参考人 それでは御指名によりまして、私ども福井県下の繊維産業、特に絹、人絹に従事しております機屋実態と、それに従事しております労働者実態を申し上げ、これに対する私どもお願いを申し上げて御了解を得たいと思います。去年の九月、十月ごろから商社が相次いで倒産いたしまして、それに関連する機屋もあちらこちら倒産を続けているような状態でございます。それで業者の方の協同組合あるいは同業会等におきましては、現在の原糸高、製品安に対しまするところの自衛手段といたしまして、操短あるいは同盟休機等を行つておりますけれども、それも現状におきましては、十一月におきまして三百三十二工場が、約三割が休機その他操業を停止しておりますのにかかわらず、逆に生産高は戦後最高の二千二百五十一万ヤールを織り上げるというような珍現象を生じて参りました。このことは正常時におきまして、しかも経営合理化によつて少い織機でたくさんの生産を上げるということにつきましては、非常に喜ばしいことであろうと思いますけれども、一方におきまして、自衛手段としての操短あるいは同盟休機計画いたしておりますやさきにおきまして、しかも一方においてはそれがために安値で投売りをやつておるやさきにおきまして、こういうような現象があるという点につきましては、私どもまことに残念なことであると思うわけでございます。しかしながらこれに対しまして——その経営者に対しましての警告を発することはもちろんでございまするが、その経営者が現段階におきまして、このような手段に出なければならないという実態に相なつておるということも了解ができることでございます。そこで一方投売り等がやられておるやさきに、またこういう休機をやつておりますやさきに、戦後最高生産高を上げるということにつきまして、これは市場撹乱と、もう一つ労働者にとつてはただ単にコストの引下げを賃金低下のみによつてつておるというような現象もここに現われて来ておるかと思うわけでございます。と申しますのは、十一月の県下約一万の労働者賃金を各機業単位に按分して調査いたしましたところが、十一月分は最低が千二百円、平均が三千四百六十二円と相なつております。現在官公吏賃金ペース等は一万円以上を見、また低いといわれておる繊維全国平均賃金も五千七百円以上を見ておるやさきにおきまして、平均三千四百六十二円というような低い数字を示しておるのでございます。また十二月に入りまして実質手取り賃金調査してみましたところが、最低五百円、平均二千七百円というような低下数字を見ておるのでございます。なおこの低下して行くという状態失業保険支給額から調査してみましても、これが証明できるのでございまして、昨年の六月には、三万八千名の失業者に対します支給額は一日一人平均百四十二円でございましたが、それが十一月になつて参りますと、生産がぐんぐん上つて参りまして、この月に調査いたしたときには、この失業者に払いました失業保険給付額は一人一日平均百十円というような低い数字になつておることを見ましても、この生産高と相反して労働賃金低下しておるというような状態を見ることができるわけでございます。しかもその労働時間は労働基準法も何のその、十二時間平均ということになつておるわけでございます。こういうようなことであつて、先ほど申し上げましたように、ただ単に経営者自衛手段を決定いたしておりながら、それに対して何ら実行しておらないというような点につきましては、私ども労働組合のものといたしましても警告を発し、この履行にわれわれは協力しておるものでございますけれども、それがいかんせん、手形の割引その他融資返済等から、俗にいう自転車経営というような実態の中にありまして、この状態がやむなくなされておるというようなことも私どもうなずけるわけでございます。そこで私ども労働組合といたしまして、従来ならばただ単にこういう低い悪條件下にあるところの労働者労働條件向上させます手段といたしましては、ただ経営者労働條件向上を叫び、要求をして参るわけでございますが、これは今申しましたように、福井県あるいは北陸の絹人絹関係経営者に対しまして、われわれが労働條件維持向上を叫びましても、もうないそでは振れない。ただそれ以上に要求いたしますならば、共倒れの結果になるというようなことも私は存じております。従つて今まで日本の労働運動史上にありませんような、経営者が従来唱えて参りましたような問題を私ども労働組合の問題といたしまして取上げまして、一月二十七日に福井県の中小企業繊維産業に従事しております全労働者大会を開催いたしまして、危機突破の件を決定いたしました。なおその決定を私ども労働者大会の代表といたしまして二十三名の陳情員が上京して各関係箇所陳情に参り、今日なお続けているような次第でございます。  なお先ほど申しましたような状態から、福井県下の各飲食店あるいはまた旅館におきましても、私ども工場を教育指導して歩きましたときに知つております女工さんたちが、そこの女給あるいは女中さんになつている姿もたくさんあるようでございます。中には子供をかかえた人が生活に苦しむあまりに工場では生活ができないので、特殊喫茶店の方に行つているような現象が続出している状態でございまして、これはただ単に労働條件云々というような問題ばかりでなくして、大きな一つの社会問題であろうかと思います。そこで私ども陳情に上りました要旨を簡単に申し上げまして、私ども立場を御了解願いたいと思うのでございます。  まず一番最初に経営が苦しいことになりましたのは、何を申し上げましても原糸価格が安定しておらないからだという結果に相なつております。人絹糸短期間に一万六千円のものが三万円になり、あるいはまた最高六万三千円というような非常にべらぼうな価格なつたり、あるいはまたそれが二月、三月いたしまして二万二千円になつております。そこで工業者であるべき機屋人たちが、非常に短期間に上つたり下つたりしている状態でありますので、よい品物をつくり出す腕前というよりも、相場の目先のきく人ということがりつぱな経営者りつぱな工業者ということになりまして、現在なお倒産しております。あるいは整理されておりますような工場を再建いたしまする場合におきましても、工業者でなくして金融家あるいは相場に目のきくような人がその経営者に迎えられて行くということで、逆に協同組合等が指導しておりますような、工業者としての建前に逆行しているような状態も現在なおあろうかと思うのでございます。  そこで私ども原糸価格の安定につきまして、ぜひとも御協力願い、安定していただきませんと、経営者がいかに経営合理化をはかりましても、またそこの労働者がいかにりつぱに働きましても、決して自主的な経営は成り立ちませんので、その点特にお願いをしたいのでございます。  二番目のお願いといたしましては、価格が上つたり下つたりする原因は、少い原糸をたくさんの者が使うからで、現在二十万台ある織機のうち、五万台分の糸が足らないといわれておりますけれども、それら糸の使用計画につきましては何ら法的にも手が加えられておりませんので、そういうことにつきまして計画を立てて、足りない糸を使うような立法的措置をおとり願いたい。  次には、そういうことをいたしまするために、大体二十人から五十人までを使用しておりまする工場が過半数を占めている弱小企業の実体でございますので、現在のこの経済機構の中にあつて立ち向つて行きまするには、そういうような弱小企業をある程度協同せしめて、経営基盤の基礎の強化をはからねばならないことで、現在の中小企業等協同組合中心とする経営様式をもう少し強化するような方法をとつていただきたい、かように私どもお願いをしたいものでございます。  なお四番目のお願いといたしましては、現在中小業者に対する融資がいろいろ考慮されておりまするけれども、それは、あまりにも傷が深い弱小企業にとりましては、今までの穴埋めにしかなりません。今後の生産資金というところまではほど遠いと思われますので、もう少し生産資金わくを拡大していただくことが、現在の弱小企業の再興の方法かと思います。その点私どもお願いをしたいと思うのでございます。  なおその次の問題としまして、労働組合団体保証による再生産資金融資わく設定についてお願いをしたい。これは今まで唱えられておりません新しい問題でありますので、特にお願いをしたいことでございます。というのは、現在福井県下におきまして、先ほど申し上げましたような融資の点、あるいは融資わくが拡大されましても、現在の流通面そのままでありまするならば、融資を受ける資格がないというような状態に到達しているかと思われるのでございます。どの工場を見ましても、第三担保設定あるいは第四担保設定という状態で、もはやこの上に物件担保等の能力を持ちません。従つて融資わくが拡大されただけでは、この恩恵に浴することはできないような状態であり、それがために生きるところの工場が死んでしまうというような結果になるおそれのある工場もあろうかと思います。従つてそこには、私ども労働者は給料が一月、二月欠配になつても、何とかこの工場を生かして行きたいというような労働組合があるところもございまするが、そういうところの労働組合が、この際私どもが絶対的に保証いたしまするから、ひとつ経営者に金を貸してやつていただきたいという方法に出ました場合におきまして、その労働組合が民主的な労働組合であるということを所轄官庁が認めました場合においては、その融資ができるというような一つ流通面設定していただきたい、これが私ども特にお願いをしたいことでございます。  その次の問題は、これは私どもしろうとにはまことにむずかしい問題でございますが、絹、人絹のうち、特に人絹レーヨン関係市場というものは、ポンド地域に多く持つておる。その関係で今ポンドの裏づけになるドルの不足から輸出がとまつておるというようなことも聞いておりまするが、そういうようなことにつきまして何とかひとつお願いをしたい。ということは、そういうこと一つの問題でなくして、特に化繊関係はどうすることもできないのだ、化繊関係は行先がもうきまつておるのだという特殊事情を特に何とか御考慮願いたい、こういうことが六番の私どもお願い趣旨でございます。  大体以上が、私ども二十七日に労働者大会を開きまして決定いたし、現在陳情に参つております要綱でございます。先ほど申し上げましたように、私どもがそういう今まで例のない運動をやつておりますので、中には、私ども労働組合の動きをあたかも御用組合だとかいうふうに誹謗しておる者もありますけれども、あえて私どもは、私ども労働條件維持向上企業の防衛からだというような点からこの運動に挺身しておりますので、その点くれぐれも御了解の上何とぞよろしく処置されんことをお願いする次第でございます。
  10. 中村純一

    中村委員長 次に門司正信君より御発言を願います。
  11. 門司正信

    門司参考人 ただいま中島さんから、福井県におきます繊維産業の現況につきまして御発言がございましたが、そのお話を承つておりまして私どもが率直に感じましたことは、金融問題以外の深刻な要素がたくさんその中に含まれているということであつたわけでございますが、一応御参考までに商工中金繊維産業に対して行つております融資の実情を簡単に申し上げてみたいと思います。  昭和二十六年十二月末におきます商工中金全国組合に対する貸出しの総残高は二百十二億でございまするが、この中で繊維産業に対します貸出しの残高は四十六億でございまして、パーセンテージにいたしまして二一%強でございます。中小企業等協同組合法によります組合の中で、業種別に見まして中金の利用高の大きいものは繊維産業食料品工業でございまして、場合により食料品関係トップになることもあり、繊維トップになることもあるというような状況を続けて参つておりましたが、最近に至りましては、繊維産業の方が食料品工業を上まわつてずつとトツプを続けているような次第でございます。私どもといたしましては、金融ベースに乗ります限りにおきましては、いかなる所の繊維産業に対しましても公平なる立場をもつて融資に努力をいたしておるような次第でございますが、その融資いたしております資金は、大きくわけまして運転資金設備資金ということになります。先ほど申し上げました四十六億の中で設備資金が六億八千万円ほど含まれておりますが、ただいま中島さんのお話を承りましても、問題はやはり運転資金に重点があるように存ずるのでございます。運転資金につきましては、これを取上げますについて、地元銀行等で資金化のできない商業手形を組合を通じて資金化をするということを第一に取上げておるわけでございますが、それ以外に、実情によりましては、先に糸の購入資金をお出しいたしまして、一定の期日を経過した後に製品を販売して得られたところの商業手形を持ち込んでいただくということをやつておるわけでございます。このやり方は福井県下におきます数個の組合について、すでに相当前から実行中のものでございます。ただその場合におきましても、組合の構成、ことに組合員の金融機関に対します成績等を考慮いたしますので、どうしても全員に対して総花的にこの種の金融を行うことはできにくいのでございまして、全業者の中のある部分の者がこの方法によつて幾らか恩恵を得ているということになつておると思います。なお今後いかなる方法によりまして繊維工業に対する融資を積極化するかということはいろいろ研究しなければならぬ問題とは存じまするが、それにつきましてやはり一番問題になりますのは、貸出しの資金源の問題でございます。昨年末ともかくも二百十二億という残高を示し得ましたことは、各方面の御協力のたまものでございまするが、ここ二、三箇月の問題といたしましては、商工中金資金繰りに非常に苦労いたさねばならぬ実情になつておるのでございます。今月の十四日にルース台風の関係の二億四千万、月末に澱粉関係の農中よりの借入金五億、また三月十日には政府の預託金六億五千万、三月の末日にさらに六億五千万、そのほかに各府県の県費の預り金の中からおおむね三億円程度はお返ししなければならないかと思います。かれこれ合せまして二十三、四億というものを確実にお返しをすることになるわけであります。一方これに対しまして二、三箇月でふえまする商工債券の発行による資金というものはわずかに八億程度でございます。このままで参りますると、年末の二百十二億という貸出し残高を維持することも相当困難であり、全国の組合のうち現在の貸出しの残高よりもある程度収縮をしていただかなければならぬ分も出て来るかという状況にございますことは、われわれといたしましてば一番懸念をいたすのでございます。福井県の問題に対しまして直接御参考にはならなかつたかと存じますけれども、一応中金の繊維産業に対しまする融資の状況をお話申し上げる次第であります。
  12. 中村純一

    中村委員長 ただいまの参考人の御発言に関連して、参考人に対しあるいは政府に対して何か質疑がありますればこれを許します。
  13. 福田一

    ○福田(一)委員 本日福井県の繊維関係から中島君が出席されていろいろ説明があり、また中金からも最近の金融状況について御説明があり、その対策についていろいろ話があつたのでありますが、今日繊維問題を取上げて審議を進めるという点から見まして、もう少し広く全国的にこの問題を見てみなければならないのではないか、それから推し進めて福井県その他の諸問題に移つて行くべきだと思いますので、一応参考人の方にも質問したいと思いますが、政府に対してひとつ対策を御質問してみたいと思うのであります。  私が今ここに申し上げるまでもなく、繊維関係いたしましては東北などでは川俣、関東などでは桐生、足利その他中部でも浜松、岡崎あるいは北陸の金沢とか福井とか小松、勝山、あるいは関西地方でも西陣とか、泉大津その他の諸地区にわたりまして最近非常に業界の不振が伝えられました。特に昨年の末になりまして、横浜では小泉商会あるいは内外織物、福井では西野商会というような大会社が倒産をいたしました結果が、直接間接に機業者に与えましたところの影響というものは非常に甚大なものがあつたと私たちは考えおる。またそのためにいろいろと運動もありいろいろの陳情もありましたが、これに対して事実問題として政府はあまり有効適切な救済をすることができなかつたわけであります。  以上のように、今機業が非常に苦しい立場になつておりますが、その機業が苦しくなつた原因を分析して考えてみますると、終戦直後におきましては、日本の機台数は戦争の影響を受けまして非常に減つておりますが、それが最近非常に数がふえて来ておる。一方これに伴つて戦争中に相当衣服を消費してしまいましたので、しばらくの間は織れば織るほど売れるといういわゆる糸へんブームが出たのでありますが、その後だんだんこれが飽和状態に達して来た上に、一方輸出の方は伸びないようになつて来た、こういうことからいたしまして業界に非常な異変を生じて来たのであります。それに拍車を加えたのが朝鮮事変でありまして、朝鮮事変で非常に織物に対する需要がふえるという見通しのもとに、一時盛んに増産をいたしまして、また海外へはどんどん品物が出るというような異常な事態が出たので、原糸の値段も人絹などでは六百三十幾らというような値段が出て来た。ところがそれが非常な思惑違いになりまして、その後これが二百円前後まで落ちるというようなことになつたわけであります。こういうような面から考えてみますと、先ほども中金の当事者が申されておりましたように、今回のこの織物に対する対策というものは、決して金融面だけで解決すべきものではない。私は金融だけではどうにもならないと思う。金融というものは織物業者に対するモルヒネ注射のようなものであつて、抜本塞源的な道にはならないと私は考えておるのであります。しかし今苦しんでおる病人をそのままにしておいていいということにはなりませんから、やはりこれは重大な一対策ではあります。けれどもこれを要するに、もつと根本的な問題を考えてみなければならないのではないかと思うのであります。そこで今参考人も言われたのでありますが、こういうふうに機屋が非常に困つて来る一つの原因は、糸価が安定しておらないからだ、こういうことを言われておるのはもつともな意見でありまして、私たちもそれが大きな原因になつておると考えるのであります。今のところ人絹会社は日本に六社ありまして、これがほとんどこの人絹製造を独占しておる。こういう独占しておる商社があつて、いかに糸の値段が下るような状態になりましても、これを妨げるような事態をつくつておる。たとえば今綿糸の価格を見ますと一梱十一万円前後と考えるのでありますが、これを人絹の建値であるところのポンドの値段に引当ててみますと二百七、八十円になります。今の人絹相場は先物が二百八十円前後でありまするからして、人絹と綿糸とはほとんど同値ということになつております。ところがわれわれが実際に主として織物を古い昔からの習慣によつて使つております場合に、大体綿糸に対しましては人絹というものは六掛か七掛くらいの値段が相当した値段でありまして、それ以上になつておるということは大体不つり合いなのであります。しかも綿糸はアメリカの生産並びに世界中の消費をにらみ合せて考えてみましても、織物というか、綿糸の値段が今後そう上るとは私は考えられない。たとい上つたにしましても、今のところ比率が同率であるというところに、非常に疑問な点がまず第一にあるのでありますが、一体政府人絹糸の原価の計算を調べられたことがあるかどうか。またこれをどれぐらいに考えておられるかということを、まず第一に承りたいのであります。
  14. 記内角一

    ○記内政府委員 ただいま人絹糸の原価の計算のお話がございましたが、現在糸の相場はいろいろ変動がございますけれども、統制はまつたく廃止になつております。従いまして相場はもつぱら需給のバランスによつてきまつて来るかと思うのであります。綿糸とのバランスの問題もございますけれども、とにかく機屋の数が非常に多い。従つてつて原糸の買付をするというようなことで、糸の相場が相当強気になりがちであるというのが実情かと思います。ただ現実の問題としましては、相当強気に価格の安定をはかつておりましても、その相場が日々低落するというのが最近の実情でありまして、これは人絹会社が故意に相場を引上げておるというふうにも必ずしも考えられない点が多分にあるのではないかと思つております。  人絹の原価の問題につきましてはいろいろな見方がございます。ことに主原料でありますパルプの相場ということも多分に影響して参ります。昨年のちようど朝鮮ブームのはげしい時代におきましては、人絹糸を押える意味において勧告価格というものが、過去の売値の相場並びに原価とにらみ合せまして出たこともありますけれども、それが毎週のように値上りする。最高に至りましては、以前の三倍にもなるというふうなことにまでなつたわけであります。それが朝鮮問題が解決するということになりますと、にわかに暴落するという、非常な不安定な状態にあるわけです。これでは原価を計算しましても、需給の関係から見合つて相場がきまつて参りますので、単に原価のみによつてこれを決定することは困難ではないかというふうに考えておる次第であります。
  15. 福田一

    ○福田(一)委員 私はさようなお答えでは非常に不満足であります。なぜかといいますと、なるほど需要供給の関係によつて価格の変動の起ることはだれにもわかつておる。しかしこの対策というものを一応考えてみる場合においては、一体人絹はどれくらいの値段が原価になつておるかということを、通産省の繊維局で一応調べておかないということははなはだ怠慢だと私は考えるのでありますが、その調査がしてあるのかないのか、それを承りたい。
  16. 記内角一

    ○記内政府委員 大体の見当はつけております。
  17. 福田一

    ○福田(一)委員 それは幾らぐらいになりますか。
  18. 記内角一

    ○記内政府委員 大体の見当はつけておりますが、今の相場と非常にデリケートな関係を持つておりますので差控えたいと存じます。ただ今の状況は相場が下る状況であります。糸価の安定ということは、価格を下げることよりも、むしろ下げないようにするのが当面の問題かと思つておりますので、その御答弁は差控えたいと思います。
  19. 福田一

    ○福田(一)委員 そこが非常に問題になるので、大体相場は、最近暮れには二百四十円から二百二十円まで一ぺん低落して、今のところは二百八十円までもどした。その二百二十円並びに二百四十円のときに機屋さんはどうであつたかというと、どうしても糸が手に入れられない。現金を持つてつても二百二十円や二百四十円ではなかなか売つてもらえない。二百六十円なり二百七十円出さないと人絹会社は糸を出さない。それだから手に入れられないという意味で倒産したところもずいぶんたくさんあつたのでありまして、そういう点が私は非常に疑問を持たれることになるのではないかと思う。たとえば原価計算は二百円でできる、あるいは二百二十円でできるということになりましたならば、これに適当なマージンを加えた二百三十円とか二百四十円で機屋に売り渡し、どんどん織れるような措置をとつてやることが非常に大事なことだと私は思う。これによつて一応糸価が安定するのであります。今繊維局長が言われたようなことでありますと、原価は非常に安いのだが、相場の方が上つておる。糸価の安定というものは値段を上げることにあるといいますと、実勢以上に上つておることを認めた結果になるのでありまして、この原価計算を発表しなくても、これはもうそれだけで言われなくても言つたと同じ効果になつてしまう。もしそういうことであつたとするならば、いわゆる糸価がそういう割安にできるということであつたならば、これに適当なマージンを加えたところでこれを機屋に渡すような方策を勧告するとが、あるいはまたその程度に安くできるものであるならば、何かほかの方法を講じてでも機屋に糸が渡るようなくふうを考えてみてやる、こういうことが非常に大事なことではないかと私は思うのでありまして、実勢と違つた値段につり上げておこうということが私は一つの大きな問題だと思う。これは議論のわかれるところでありまして、たとえば輸出促進して大いに金をもうけようということになれば、なるべく高い値段で売つた方がいいのでありますから、そういう見地から見ればなるほどそういう点も考えられないわけではないけれども、そういうことをした結果が昨年の大暴落になつたのでありまして、どんどん糸の値段をつり上げて、これにつれて機屋がどんどん買い進んだ。買い進んで一番最高値まで行つたところで今度は暴落に転じ、そうして三分の一以下まで下るくらいの相場を出してしまつた。これでもう全国の人絹関係機屋はみんなぺしやんこになつてしまつた。それが今回方々の商社で倒産を出した非常に大きな原因になつておる。そういうことを考えてみますと、私は今の通産省の繊維局長の答弁ではどうも納得が行かないのでありまして、私の言うところは、人絹商社が四割も五割も六割も配当をしておる。非常に金をもうけておるということは、全国でだれでもみな知つておるのであります。そんな配当ができるくらいならば、もう少し採算のとれる値であつたならばこれを売る、またそうすることによつて今度は輸出関係でもう少し高い値段で外国に買つてもらいたいというふうに、人絹会社同士で減産をするなり、何か別途の方法を講じて輸出促進をはかり、輸出値段の維持をはかる、こういう行き方にしませんと、今ここで二百八十円というような実勢に沿わない相場であるといたしますならば、これでまた機屋が織つたものが今度は売れなくなる。売れなくなつた場合にまた暴落する。暴落したときには機屋は結局みんな損をして、また二百円か百八十円の値段の糸でもつてそれが全部海外に買われてしまうということになるならば、輸出促進とか金もうけをしようというその考え方とも相反することになるのでありまして、これは政府委員も出ておられるようでありますから、もつと抜本塞源的にひとつこの問題を検討してみてもらいたいのであります。これについて政府委員の答弁を求めます。
  20. 本間俊一

    本間政府委員 お答えを申し上げます。御承知のように暮れごろになりまして繊維界が非常に不況になり、いろいろな倒産関係ども出したのでございますが、私どもといたしましては、暮れにはいろいろの恒久的な制度を再検討いたしましてもなかなか急に効果があがつて参りませんので、とりあえず金融面で個々の会社についてできるだけの措置をいたしたのでございます。その後御説のように、単に金融面ばかりではなく、制度そのものを再検討しなければならない環境になつておりますので、ただいま御説のような点も含めて検討をいたしているような次第でございます。  最後に申し上げたいのでございますが、実は繊維関係のただいま当面いたしている問題は二つあるのでございまして、繊維全体の問題と、もう一つ中島参考人の御指摘になつたような、北陸、関東地帯の比較的小規模な経営をいたしている方々の当面の苦境の問題、こういうふうになつておりますので、これらの点をあわせまして、制度全般にわたつての結論を得たいというので、ただいませつかく研究をいたしているような次第でございますから、御説を尊重いたしまして結論を急ぐようにいたしたいと考えます。
  21. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの御説明によると、今大いに研究されているということでありますから、そういう根本的な問題について、ひとつよく研究をしてもらいたいと思うのであります。  そこでもう一つ、その根本論に入るのでありますが、何といつて人絹織物というものは大企業でなく、小さな企業でできるのであります。百姓をしながら二台か三台の機を動かして織物をつくつている、あるいは一方において商売をしておりながら——タバコ屋さんをしておつて裏では機屋さんをやつている、こういう例も多いのでありまして、必ずしも専門に機屋をやつている者だけではないのでありますが、しかし先ほど申しましたように、このよつて起つた問題というものは、需要に対して機台数が多いということが一番大きな原因であります。そこで各組合なり、あるいは各地におきまして、自治的な減産をやるような組織をやつておるのでありますが、この企業家のいわゆる自衛的措置といいますか、むやみにどんどんつくつて値段を下げたのでは、自分で首を絞めることになるから、これではいけない、何とかしてそういうようなことをなくする、そのためにいろいろみなで相談をして減産をして行くというような問題がある。これは独占禁止法の問題その他にからみまして、当面強力にこれを実行することができないというような問題があるいは残つているかもしれませんけれども、しかし日本の唯一の産業であるこの織物がつぶれてしまうということになつたのでは、これはもう背に腹はかえられないという問題でありますから、こういうような企業家の自衛的措置、いわゆる組合組織その他の方法によつて休機をさせるようなことを促進する意図があらわれるかどうか。これに対して政府はどういう考えを持つておられるか、政府委員の御答弁を願います。
  22. 本間俊一

    本間政府委員 御説のように設備が非常にふえまして、ここにも大きな問題が横たわつておることは私も同感でございます。そこでこの非常にふえた設備に対しまして、実際に沿うようにして行くという業界の自主的な動きを促進いたしますると同時に、新設の設備につきましては法的に処置をしなければならぬということで、あわせてただいま考慮をいたしておるような次第でございます。
  23. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの点は私と同意見のようでありますから非常にけつこうであります。これは根本的な問題でありますから、真剣に取上げて研究していただきたい。  次にもう一つ根本的な問題というか、日本経済の持つておる悩みということでありますが、先ほども中島参考人から言われたのでありますけれども、今日本はポンド地域に対しては輸出超過になり、ドル地域に対しては輸入超過になつている。こういう状態において世界経済につながりを持つているわけであります。そこでポンド地域に対しましては織物というのは非常にお得意先が多いのでありまして、そのお得意先の多いポンド地域にはあまり輸出を奨励しない。もちろん輸出をしてはいかぬというわけではありませんが、輸出を奨励しないという建前をとつている。これでは織物業界が立ち上るということはとうてい困難な問題であると思います。そこでポンド地域に対する輸出促進ということについて政府はいかなる考えを持つているか、通産大臣より御説明を承りたい。
  24. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ただいまの御質問は非常にむずかしい問題でありまして、現在ポンドがだんだんたまつて来る、この対策をどうするかということを簡単に言えば、ドル区域の方の輸出を奨励してスターリング・ブロックの方を押えて行く、輸入の方はそれと反対にする。これはだれも言うことで根本の対策であろうと私も思うのですが、さてこれを実行面に移すとなるとなかなか支障がある。要するに根本的に考えますと、ポンドの信用が低落したためなんです。これに対応して日本の力で策を立てるということはなかなか困難なのであります。ただいまの御発言の中にありましたポンド区域の方の輸出を押えるという意見政府部内にあります。しかし原則としては私はこれには賛成をようしないのであります。原則としてはやはり輸出は奨励すべきものだと思つております。というのは、二十六年度は相当輸出がふえて来ました。ただ残念ながらドル区域よりもポンド区域で輸出増進したのでありますが、日本の自立経済の立場からいうと、まだまだこういう程度ではいけないのであつて、もつと輸出がふえなくちやいけない。ポンドへの昨年の輸出の程度がようやく各地に日本の商品の足場ができたのであります。それを日本の国内事情のために都合が悪いからもう輸出はその地方にはしない、あるいは三年先に日本の国内事情が違つて来てまた買つてくれ、それは商売ではないと私は思う。商売というものは、ある場合にはある地方では赤字が出ても、その足場だけは何とかして確保して行かなければいけないのだ、私はそう考えております。しかしそれは要するに原則であつて、ちようど今、現在もイギリスから鉄を十一万トン買いたいといつて交渉が起つておりまして、民間ではもう約束ができたのであります。鉄は御承知のように許可制になつておりますので通産省としてこれをどう扱うか、私はこの場合ただ無條件でこれに許可を与えるべきでないと思う。鉄というものをイギリスでぜひ必要だというのであるから、それに対しては少くともわれわれが欲しいものをよこせ、そういう方針で今交渉をしているのですが、イギリスのいろいろな立場からいうと、それもなかなか困難な様子であります。結論はどうなりますか、まだ見通しがつきませんが、そういうふうで、原則としては輸出を制限すべきではないが、それは原則であつて一つ一つの場合には鉄のように原料の大部分をドルで払つているものを、ただ無條件でポンドで売るということは考えて行かなければいかぬ、そういうふうに私は考えております。
  25. 福田一

    ○福田(一)委員 政府のお考えはわかりましたが、私が申し上げたのはそういう足場ができたのをやめてしまつたのではいかぬから現状維持程度にしておくのだ、こういう御方針のようでありますが、私が言つているのはそうではなくて織物についてはもつと足場を広げてもらわなくては、糸価の安定といいますか、織物業界の不振は救われない。だから織物については逆のことをして行かなければならぬのだ。こういうことを実は申し上げているのであります。しかし政府としてはいろいろの点も考慮をされているようでありますから、この問題についてはそれ以上追究はいたしませんが、私が発言している意味を十分御参考に供せられて施策の決定を行つていただきたいと思います。  そこで今通産大臣からお話があつたのでありますが、ポンドが非常に信用を失いつつある、こういうことが世界の経済から見て大体推知されるということを今申されたのでありますが、われわれの心配いたしますところは、そういうふうにポンドの価値が下落しているということになると、いわゆるスターリング地域に対する今後の輸出というものは、今の日本はだんだん失われて行く傾向になりはしないか。特に恐れますことは、ポンドの切下げが行われたという場合には一大打撃を受けることになると思います。この場合に、ポンドの今度切下げがあつた場合に、この前に切下げがありましたけれども、日本といたしましては何ら措置をしなかつた。いわゆる為替は現状維持のままでしのいで参つたのであります。当時の日本の経済情勢は輸入が多くて輸出が少い状況であつたから、一応そのりくつも成り立つたのでありますが、しかし今は当時とは状況もかわつておると思いますが、ポンドがもし切下げになつたような場合には政府としては今度は抜本塞源的な措置を考えておられるか、これについてひとつ通産大臣のお考えを承りたい。
  26. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 今の前の御質問に対しての私の答弁が少し言葉が足りなかつたので誤解をなさつておるように聞えるのですが、私が言いましたのは輸出はますますふやさなくてはいけないのだ、そういう対策を講じなくてはいけないのだというあなたのお言葉には全然賛成なんです。ただ私が言いましたのはある区域で、ある品物で日本がそれを輸出すれば赤字になるのだ、そういう場合にも、少くとも現状維持でその足場を確保することに努力しなければいかぬということを申し上げたので、その点はあなたとまつたく同じ意見なのだろうと思います。  ところで次の御質問のポンドの切下げが起つた場合にどういうことを考えるか。これは非常にむずかしいことでありまして、デリケートでもあるし、しいて御答弁をしいられますれば、政府はまだ今日では何も対策を持つていないと御答弁をするよりほかしようがないのです。これは非常にむずかしい問題でございますから……。
  27. 福田一

    ○福田(一)委員 今の大臣の御答弁は無理からぬことで、今責任のあることを言えという方があるいは無理かと思いますから、その程度で私はこの質問を打切つておきます。  そこで根本の問題としてはそういうことだと思うのでありますが、次にこれは先ほど中金からもいろいろお話があつたのでありますが、とにかく昨年来非常な打撃を機業家は受けておりまして、立つことができないくらいの痛手をみんなこうむつておる。そして手形の書きかえとか切りかえというようなときに、いつも悩まされておりまして、昔は機屋さんに対しては糸屋というのが非常な力を持つてつたのでありますが、最近はむしろ銀行家が機屋さんに対して力を振うというような状況にまでかわつて来ておるのであります。それほど金融面が機業をやる上においてウエイトを増して来たということでありまして、何といつても非常に金融面は苦しいのでありますが、政府として国民金融公庫だとかあるいは商工中金、あるいは農林中金というようなものを通じて国庫の余裕金の貸付をこれらに行つておるのでありますが、これを急激に引揚げてしまいますと、先ほど中金の当事者が言われたような問題が起きて来る、また割引商工債券その他の問題も同じでありますが、いずれにしても、こういうような国民金融公庫、商工中金、農林中金等を通じてもう少し機業家に対しての融資を楽にする、これは単に機業家のみではありません。中小企業全般にわたる問題ではありますけれども、こういう金融面に対して政府当局はいかなる考え方を持つておられるか御答弁願いたい。
  28. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。通産省が所管をいたしておりますのは、御承知のように商工中金でございます。政府が預託いたしております金を返す期限が来ているものもあるのでございますが、とりあえず今まで預託いたしましたものは引揚げないということで、大体話合いがついております。それから新しく政府資金もさらに預託をふやしたいということで、ただいま大蔵省の方と話合いを進めておるようなわけでございます。  それから一般の繊維関係の金融の問題は、御指摘のように非常な苦境にあるのでございますが、貿手の決済の期限も来ておるのでありまして、これらの点もあわせ考えまして、御承知のように綿花借款の関係もございますので、これらも何とか活用して、苦境打開のために役立たしたいという方向で、ただいま関係方面と折衝いたしておるような次第でございます。
  29. 福田一

    ○福田(一)委員 この問題につきましては、二月危機とか三月危機ということが伝えられておりまして、業界も非常に関心を持つておる。また日本国民全体といたしましても、ここで経済的な何らかの破綻が起きるということになりましては一大問題でありますので、非常に関心を持つている問題であります。従いまして、ただいまの政府の御答弁によりますと、これについては真剣に今対策を考えておられるということでありますが、どろぼうを見てからなわをなうということになつたのでは——まあ、そういうふうにはなつておりますけれども、しかしどろぼうが逃げないうちになわがなえるならば何とかなるのでありますから、なるべく早くこの対策を強力に推進していただきたいということを特にこの席上を通じて希望を申し述べておきます。  次に委員長にひとつ申し上げたいのでありますが、先ほど中島参考人から福井が非常に困難な状況にある。労働者が一箇月に千円とか千円以下の平均収入にしかならないようになつておる。これはもう大問題であります。何となれば人絹生産高の約四割は福井県が占めておるのでありまして、日本の繊維工業の中でも福井というところは非常なウエートを持つているところであります。そのところで労働者の収入が月に千円や二千円、しかも失業者が続出しておるということは非常に大きな問題だと思うのであります。中島参考人は本席ではこういうことは述べられませんでしたけれども、何かそういう実情をよく調査してもらいたい、今は議会開会中ではあるけれども、だれか人をよこしてこういう点までよく調査して、そうして対策を立てる上の参考にしてもらいたいという希望を持つておられるようでありますから、この問題についてはこの企業において福井県が占める重要性を特に考慮せられまして、何らかの善処方を委員長に希望いたしまして、私の質問を終ることといたします。
  30. 中村純一

    中村委員長 加藤鐐造君。
  31. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 先ほど来中島参考人の陳述で、福井地方の繊維工業、特に人絹工業の極端なる窮状はよくわかつたのでございます。しかしこれは単に福井地方ばかりではなくして、おそらく全国的な、特に繊維工業の非常な窮状であるということが新聞紙上にも日日伝えられまするし、われわれは今の中島参考人の陳述によつて一層それが明確になつたような気がいたすのでございます。そこでこれらに対するところの応急処置ついては、いろいろ福田委員の御質問にもお答えになりましたし、また商工中金門司理事からもお話がありましたが、私はこの応急処置について、特に金融処置についてはなかなか困難な問題があろうと思うのであります。門司理事からは特に福井地方の処置についてのお話がございませんでしたが、おそらく商工中金としても、この地方に対しての特段な応急処置を講じてはおられないのではないかと思うのであります。私は先ほどの門司理事お話を聞いておつてもわかります通り、中小企業に対しては先ほどお話のモルヒネ注射的な応急処置ではどうにもならない状態になつて来ていると思うわけであります。しかしそうかといつて応急処置を怠つたならば、倒産者が続出することは火を見るよりも明らかでありますので、できるだけの応急処置は講じてもらわなければならないと思います。しかし私はまず根本対策から考えてみて、政府当局の御意見を承りたいと思いまするが、第一に人絹工場がこうした状態に陥つた直接の原因は、輸出の梗塞であろうと思いまするが、先ほど来もお話のありましたように、ポンド地域が主たる市場であつた関係で、ポンドの過剰ということが一つの大きな原因になつております。そこで私は、ポンド過剰のため輸出が梗塞されている、これを打開する道はいわゆるドル地域からの輸入の促進であろうと思いまするが、これについても政府はしばしば輸入の促進をはかるということを声明しておられます。しかし私どもはどういう方法において輸入の促進をはかるかという具体的な方法については、政府当局から承つておりません。この委員会においても私はかつて質問をしたことがありまするが、抽象的な御答弁だけであつて、具体的な御答弁はありませんでした。たとえば従来ドル地域から輸入しておつた原材料をポンド地域に切りかえるというような方法がとり得るかどうか、一々事例を申しませんけれども、そういう措置がとり得るかどうかという問題について具体的に承つてみたい。たとえば鉄鉱石であるとか、綿花であるとか、あるいはその他の金属というようないろいろな原材料について、そういう処置がとり得るかどうか、あるいはまたそういう切りかえの方法でなくとも、促進し得る方法が考えられるのではないかとも思いまするが、そういう点についての御意見を承りたい。  それから最近新聞紙上で伝えるところによりますると、インドネシア政府においては、日本から輸入する、特に雑貨類については大体従来に比較して二割五分くらいの制限をするというようなことが伝えられております。これが事実といたしまするならば相当大きな影響を与えますので、これに対して何らかの対策を講ぜられたかどうか。それからさらに中共関係においては、繊維についてはほとんど無制限に輸出してもいいという承認が与えられたようでございます。しかしその以後において中共に対する繊維輸出があまり進んでおらないようでありまするが、この点の状況等について、そうしたいわゆる輸出促進対策というものについての具体的な問題について、直接担当官がおられないからあるいは御答弁が詳しくできないかもしれませんが、もしできなかつたならば特に呼んでいただいて詳細に御答弁を願いたい。
  32. 本間俊一

    本間政府委員 お答えを申し上げたいと思います。スターリング地域の方が伸びまして、ドル地域への輸出がそれに比較いたしまして思うように出ないということは御指摘の通りでございます。そこで先ほど大臣からもお話がありました通り、私どもといたしましては、スターリング地域への輸出はできるだけ制限をしないという方針で進んで参りたいと思うのでございます。御指摘のようにせつかく日本の品物が入るようになりました地方で、輸出を制限するというようなことをいたしますると、すぐフランスでありますとかイタリアでありますとかいうような商社がおつつけ伸びて来るのでございまして、大臣が申し上げましたように、私どもといたしましてはできるだけ輸出はスターリング地域へでも増進をする、制限をしない、こういう考えでおるのでございます。それからドル地域から入れておりまする原材料をできるだけスターリング地域から入れたい、また入れるようにしなければならぬということは御指摘の通りでございます。たとえば綿花にいたしましても、パキスタンから綿花を入れるということにいたしますと、価格の面、品質の面、こういうような面からまたいろいろな問題が出て来るのでございます。鉄鉱石にいたしましても、インドの方に何とかその原材料を求めたいということでせつかく努力はいたしておるのでございますが、思うような——開発もまだそこまでは進んでおらぬ、こういう状況でございます。それから御承知のようにただいまのドルの不足、スターリング地域への輸出が伸びておりまするのは、一面は濠州の昨年の農産物が不作であつたというようなことも大きな原因かと考えておるのでございます。そこで濠州の食糧につきましてもできるだけ数量をふやしたい、こういう努力をして参りたいと考えておるような次第でございます。それからインドネシアの問題でございますが、これは新聞で拝見をいたしたのでございますが、まだその実情が、本日調査をいたしたのでございますが、まだ判明をいたしませんので、事態が判明をいたしましたならば対策を講じたい。その際に御説明をいたしたいと思うのでございます。  中共の繊維関係につきましては繊維局長から答弁をいたさせたいと思います。
  33. 記内角一

    ○記内政府委員 中共の方面に対しましては、大体繊維輸出に関しまする限り自由にいたしております。もつともバーターということでなければ代金の決済ができにくいということで、一応バーターということで進めておるわけでございます。しかしながら現実の問題といたしましては、決済関係が明確にきまらないということで話が十分に進捗しないというふうな実情になつておりまして、現実に繊維関係が出るということは、直接の取引としましては非常に少い。但し香港あるいは澳門というふうなルートを通じて相当出向いて行つているのではないかということは、十分考えられるところでございます。
  34. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 ポンド地域からの輸入促進の問題は、これはむずかしい問題であることは私ども承知しております。しかしこれをやらなければ、日本の自立経済の上から考えましても、あるいは日本の輸出貿易という点から見ましても、日本の経済自体が非常な窮状に陥つて来ることは明らかでありますので、これはひとつ真剣に考えていただきたいと思うわけであります。この問題は、おそらく日米経済開発の問題ともからみ合せて、いろいろむずかしい問題を解決しなければならないと思います。きようこれ以上この問題について具体的にいろいろ追究してお伺いしてみても、御答弁はむずかしいようでありまするから、これ以上お聞きしませんけれども、ひとつこれは政府としても真剣に考えてやつていただきたいと思います。  それからもう一つの問題を、これは大臣にお聞きしたいのですが、日本の中小企業をもう少し政府が保護し育成しなければ、日本の中小企業というものは倒れてしまう、朝鮮ブーム等、一時的な景気によつて一時的に太ることはありましても、結局はこれは野放しにしておいては日本の中小企業は育つものではない。そういう観点から、もう少し保護育成するために、まず第一には中小商工協同組合法を改正して、いわゆる共同販売、共同購入ができるようにしなければならない。それからまたさらに輸出の面においては、それと同時に輸出組合法を制定して、ある程度の統制をしなければいけないのではないか、特に中小協同組合法が共販制を積極的にやられるかどうかということは、これは金融の面にも関係して来るのでございます。先ほど来、中小企業者が実際には信用がないから、窮状は見るに忍びないけれども、希望通りにはなかなか融資できないというようなふうにも御説明が聞き取れたのでございまするけれども、私はこれは当然だと思う。やはり協同組合自体がもう少し実力を持たなければ、金融の問題も解決しないと思うわけであります。それからしばしば申し上げますように、小さな貿易業者が雨後のたけのこのようにできて、そうして業界を撹乱し、あるいはまたその相手のバイヤーの乗ずるところとなり、これがまた価格にも影響するというような問題を考えますと、どうしてもこの問題を解決しなければならないと思うのです。ところがこれは独禁法にも関係し、あるいは事業者団体法第四條の改正も伴うということで、いわゆる関係筋の了解が得られないというようなことで、大臣もしばしばできるだけ早く実現をはかりたいということを私に対して答弁をせられました。前回の御答弁によりますれば、この通常国会の劈頭においては、この問題が解決して出されるというような答弁でございましたが、今日まだこの問題は解決しておらないようでございます。私はこの問題が解決して、今言つたように協同組合がほんとうに実力を持つて、そうしてこの中小企業者の強固なる団結の力で企業をやつて行けるようにしなければ、中小企業というものは結局において滅びる運命を迫る以外にない。要するに、いわゆる自由主義経済の中に野放しにしておいたのでは、中小企業はやつて行かれないと思うわけであります。この点について大臣は今日どういうふうにお考えになつておるか、かつて私に御答弁になつたように、あらゆる努力を続けておられるかどうかという点を承りたい。
  35. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 輸出組合の件でありますが、私が昨年あなたに御答弁をしたのが一向に実現していないではないかというお言葉で、はなはだ恐縮するのでありますが、私は今日なお努力をしております。通常国会の劈頭にそれが提案できなかつたことを非常に残念に思いますが、今日なおぜひこの通常国会にはそういう提案ができるように解決したいと苦心をいたしております。なお協同組合をもつと強化しなくちやいかぬじやないか、これも御同感であります。漸次組合法は修正改善をして行きたいと存ずるのであります。臨時国会に提案しましたのも、実は通産省としては、遺憾ながら満足のできない程度の提案であつたので、残念に思つておる次第であります。なおいろいろまた御意見を承りまして、この強化方を熱心に取上げたいと存じます。
  36. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 努力はあくまで続けておるというお話でございますが、これは実に急を要する問題でございます。ここらで協同組合を強化しなかつたならば、今の福井人絹工業が最も適切な例でありますように、おそらく中小企業者がばたばたと倒れて行くということを思うのであります。私は急速に実現をはかるように御努力を願いたいと思う。その際気をつけていただきたいことは、政府輸出組合法の制定に全力を注いでおられるようでありますが、私は輸出組合法を制定して輸出組合をつくらせる前に、協同組合法の改正をして、協同組合が共販あるいは共同購入をやれるような態勢をつくらしてから、輸出組合法を制定するのが順序である。そうしなかつたならば、結局中小企業者が輸出業者に食われてしまうという結果になりますので、この点は十分御注意願いたい。あくまで協同組合法の改正が前提であるということでございます。  それからもう一つ応急対策の問題でございますが、これは先ほど来中島参考人がいろいろ御陳情なつたような点を実現することが急務であると思います。その点については、これは商工中金に対しても、私はあらため福井地方にどういう具体的な処置を考えておられるかということは御質問しませんが、やはり商工中金の本来の使命というものを考えて、できるだけこういうものに対しては、ある程度の大きな腹をもつて対処していただきたいという強い希望を申し述べておきます。  ただこの際ひとつ政府意見を承りたいことは、先ほど中島参考人が述べられた一つの新しい問題でございます。すなわち今日、中小企業者は、実は担保力も薄弱であるし、従つて今日の窮状に至るまでにはあらゆる手を打つておりますので、もはやここに従事するところの労働組合のほんとうに身体を張つての共同責任における人的の保証ということが、最後の手段であるということを述べられました。これは最後の手段でありましようが、また中小企業にとりましては、一番大事なことではないかと思うのであります。中小企業が資産の担保によつて借りられる額というものは、きわめて範囲が狭い。そこでこの中小企業、ことに非常な苦境に立つたところの中小企業が生きる道は、労働組合の積極的な協力ということが非常に大事なことだと思う。私どもはそういう点についての二、三の実例を知つております。倒産しかけた工場が、労働組合の積極的な協力によつて、またある程度労働組合が犠牲を払うというような点において、そこまで労働組合が腹をきめて協力して、もはや倒産以外に道がないと考えられた工場が復活して、今日非常な成績を上げておるという実例を私は知つておるのであります。具体的にあげて見ろとおつしやれば、あげることはできます。私ども関係しておる工場にも、そういう実例が今日までありました。私は、今労働組合の諸君、ことに人絹労働組合の諸君が、この窮状に立つて労働組合が先頭に立つて、この問題の打開に努力しておられるということは、一つの大きな力であると思うのであります。従つて私は、今日応急処置としての方法は、金融の道を開く以外にはないと思いますので、そういう点で一つの新しい道を開く。そうして労働組合も全責任を負つて、その保証の地位に当る。労働組合には何も保証するだけの力がないじやないか、そういうふうに物質的にこの問題を見れば、それまででございます。しかしながら苦境に立つたときの人間の力というものは、非常に大きな力を発揮するということは、何人も考えられるところでございます。従つて今日機業関係の方が来ておられませんけれども、機業関係の方も、そういう立場に立つて労働組合の積極的な協力を求めるという考えになられることが必要でございます。中小企業の諸君は、はなはだ失礼ですが、そういう点の認識が、今日まで欠けておるように私は思う。そういう点で、中小企業が苦境に立つて生きる道の、また最大の力は労働組合の協力を求めるということでございますから、そうした従業員の人的保証ということも、一つの考えなければならない道ではないかと思う。またこれは、その労働組合がほんとうに民主的な労働組合でありますならば、またその組合の指導者がほんとうにそういう点を自覚しておる人たちでありまするならば、私は最も誤りのない道であると考える。そういう点について政府はひとつ積極的に考慮される必要があるのではないかと思いますが、政府の御意見を承りたいと思います。
  37. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。中小企業の育成に関する御意見につきましては、私どももまつたく同感に考えておるのでございます。あくまでも協同の力によりまして打開をして行くという御指摘の点はまつたく同感でございます。例の福井の問題でございますが、できるだけ協同組合の組織化されました機構を活用して参りたいということにつきましては御指摘の通りでございますが、調べてみますとまだ組合化されておらない面も多々あるようでございます。そこで中金でかりに金をつけましても、それが必ずしも思うようなところに流れるようにはただいまのところではなつておらぬような面もございますので、これはぜひ県当局とも御相談をいたしまして、ひとつ実効の上る方法を考えたいということでせつかく努力をいたしておるのでございますが、御指摘になりましたように、労働組合の各位が苦境に立つております機業の実態を認識せられて、いろいろ奮闘せられ、努力をせられまた保証もしようということでございますが、これは一つの力でございますので、この面も考慮に入れつつ実効の上る対策を考えて行く、こういうつもりでおります。
  38. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 今政務次官より、福井地方の機業家がまだ組織化されておらない点が多分にあるというお話でありますが、この一つの原因は、やはり商工協同組合法の欠陥から来ておると私は思う。今の商工協同組合法では一人の人が組合の統制に従わずに、この組合をつぶそうと思えばつぶせるような状態にあるわけです。これはやはりある程度組合に強制力を持たせなければならないということと、いろいろ資金の面においても力を持つために、またその価格の維持、あるいはまた一朝好景気が来れば業者が雨後のたけのこのように出て来るというような点もある程度防がなければならないと思うのです。従つてやはりそういう人たちを組織化するためには、ことに聞きますれば、二十人以下の工場が非常に多いというお話ですが、そういう工場経営者というものは、失礼ですが、無自覚の人が非常に多い。これは自覚させなければならないと同時に、それを自覚させる方法は、商工協同組合法の改正というものが伴わなければならないというふうに考えますので、やはり商工協同組合法の改正ということに急速になり得るように御努力を願いたい。  私の質問は以上で打切ります。
  39. 中村純一

    中村委員長 次は山手滿男君。
  40. 山手滿男

    ○山手委員 大体言い尽されたような気がするのでありますが、あえて重複をして少し質問をしてみたいと思うのであります。  先ほどから御答弁がありましたように、織機の台数も絹、人絹だけでなしに全般的に過剰になつて来ておるという事実があります。ところが織機だけでなしに紡績あたりでも、今日では中小紡績はもう整理統合の段階に来ておるというふうな実情が新聞紙上などに報ぜられておるのであります。私は、先ほどからの政府の御答弁を聞きますと、終戦後、あれだけの計画的な統制経済を現政府が一ぺんに野放しにされた結果がこういう実情に立ち至つた、徐々に、段階的に、もう少し現実を見きわめた統制の解除なり業界の指導がなされなければならなかつたにもかかわらず、一ぺんに無計画に手放しなされたということからこれは来ておると思うのであります。今本間新政務次官から、機械設備、台数が多過ぎるからこれを法的に制限して行く、縛つて行くというふうな方法を研究してとつて行きたいというお話があつたのでありますが、このことはかなり重要なことであろうと私は思う。それで今ちようど大臣もおいでになりますので、このことについての大臣のお考えをもう少し掘り下げて、どういうふうに指導し、どういう措置をとつて行くつもりであるかをまずお尋ねいたしたいと思います。
  41. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 この問題は非常に大きな問題でありますので、まだここで御答弁をする段階に参つておりません。研究中であります。ただ簡単に私の考えを申しますると、織機にしましても紡績にしましても、あるいは近ごろ問題になつておりますビルデイングのようなものにしましても、日本が現在資材も乏しい、資金も乏しいその際に、不要不急の設備がふえて行くことは望ましくないと私は考えるのであります。織機の問題、あるいは紡績の問題というようなことでなしに、もつと大きく考えて、不要不急の施設を新しく起す、あるいは増設するというような場合には、業種によりまして、いくらかの制裁が必要だと考えられます業種には、たとえば許可制をとりますとか、何かそういう法的の措置ができるようなことに持つて行くべきだと私どもは今考え、研究しておるのであります。
  42. 山手滿男

    ○山手委員 許可制にするとか法的に縛るとかいろいろ手段はあろうかと思うのでありますが、日本の経済組織の中で繊維産業は特に早くから世界的な発達をいたしましたし、力もある産業であります。それが今日大ゆれにゆれて、大きな経済のがんになつておるのでございますが、上から下まで業者自体の何とか自衛的な方法措置を講じようというふうな自主的な動きも非常にたくさんある。これを私は見のがすわけには行かないので、今日の段階に来るまでは、むしろ法的に縛つておつたものをある程度漸進的に解いて行くことが私はよろしかつたと思うのでありますが、今日のような状態になつてつてまた法的に縛つて行くことはどうかというふうに考えるのであります。業界の方では、さつき加藤委員から話がありましたけれども、糸価の安定などを含めて、どうしても価格の安定をする必要からは、紡績は紡績で操短をしようじやないか、あるいは人絹もいろいろな措置を講じようということで、各社が自衛的な措置というものを共同して協議しようとしておる。これは日本のような経済界の実情においては非常に考えなければいかぬことで、場合によつては大いにやつてもらわなければならないと私は思うのであります。さつきのお話のように、事業者団体法とか独禁法にひつかかつてしまうということで、業者の方からもこれが早急に廃止ないし緩和をするように、そうして業界の安定に少しでも自分たちが自衛的に措置できるように配慮を願いたいという陳情政府当局にもあり、通産大臣もおやりになつておられるそうでありますが、私は法的に縛り上げてしまう前に、協同組合法の改正という問題もありましようが、もう一ぺんそういうものを十分考えてやつて行かなければならないじやないかと考えます。大臣にお伺いしたいのは、そういう自衛的な措置を十分とらしめ得るような事業者団体法あるいは独禁法の改正について、国会の再開劈頭に出すことはできなかつたが努力をするというお話でございますが、現在の段階としては、それをまつこうから改正するということでなしに、運営そのほかで手心を加える余地がないものかどうか。現にこういうふうに経済界が混乱するようになりつつあるのでございまするから、急いで運営の面そのほかで手心を加える余地はないものであるかどうか、そういう点についての御所見を承りたいのであります。
  43. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 その点は私もいろいろ研究し、心配してみましたけれども、独禁法と事業者団体法がありますと、その運用の手心でそれを是正して行くということは非常に困難であるし、現在ではほとんど不可能です。御承知のように、公正取引委員というものがありまして、非常な権力を持つており、われわれが運用に手心を加えてくれというようなことを言つても、なかなかやらないのです。根本的に両法案の修正をしますか、あるいは特別法を出しますか、それよりほかに方法がないと私は考えております。
  44. 山手滿男

    ○山手委員 公正取引委員会の行動についても、関西の財界あたりでもいろいろ批判が起きておると私は思います。業界人のまじめな会合がありまして、そのまじめな会合で、みんなで自主的にひとつ自粛しようじやないかというような軽い申合せが一、二されたような場合でも、すぐつつかかつて、それの詳細を半ば強制的に罪人扱いのように調べ上げたりするという行き方がなされておりまして、必要以上に刺戟しておる事実を私はたくさん知つております。今大臣のお話を聞きますと、それはむずかしいというお話でございますが、しかしやはり私はそこに政府の権威があろうと思うのでありまして、このことについては、公正取引委員会というものが政府のらち外に立つて、どういうことをやるのか政府の関知できない問題だというふうにお考えにならずに、ぜひひとつ御研究を願つて、実際に混乱しようとする日本の繊維業界のために活を入れてやつていただくことが非常に大切ではないかと思うのであります。  それから福井の問題が出ましたが、この福井の問題は、やはり朝鮮事変後の備蓄輸入そのほかから来た昨年来の危機の一つの現われであろうと思うのであります。福井の問題もさることながら、大阪においては商社と紡績というふうなものが、今日二百五十億余りの厖大な売掛金を、どつちがどういうふうに背負つて行くかという問題で話がもつれております。大蔵大臣もこの前の本会議の答弁で、これはみんなが負担をするのだ、みんなが責任を感じなければいかぬという答弁をいたしております。あのときの質問は、政府が備蓄輸入を奨励したことによつて巻き起され、それが問屋からさらに中小企業へとずんずんしわ寄せをされて行つて、今日いろいろな問題が起つておる、それについて政府は責任をどう思うかという質問に対して、みんなが責任を負わなければいかぬという答弁であつたと私は思つております。これはなるほどと思うのでございまするが、私は単に貿易商社がどうであるとか、あるいは紡績がどうであるとかいうことでなしに、やはり政府もこれについては積極的に、二百五、六十億もの資産をどういうふうに棚上げをして行くのか、どういうふうに金融をして行くのかということについて、もう少し積極的に一役買つてこの問題を解決してやつていただかなければいかぬのではないか。日銀もある程度今日乗り出して行くかのごとく見えておりましたけれども、これも全然ケース・バイ・ケースで行くのだというようなことで無関心の状態に立つておる。やはりこういうところから二月危機説とか、三月危機説というものが深刻に出て参るのでありまして、ぜひとも私は通産大臣がもつと積極的に措置を講じていただきたいと思うのでありますが、その点もあわせて御所見をお願いしたいと思います。
  45. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 御意見はよく承つて参考にいたします。なかなかこれは私の力で解決するような問題ではない。私も非常に苦心をして、業者の方あるいは銀行の方、いろいろの人に会つて意見を聞いておりますが、みんなが責任を負つて解決するのだというような、答弁としてはうまい答弁かもしれませんですが、そういう簡単な問題でないと私は思つております。非常に私は苦心しております。
  46. 山手滿男

    ○山手委員 みんなが責任を負うということは、業者だけの話合いで済まないようなこういう問題については、政府も責任を感ずることであろうと私は思うのでありまして、今の通産大臣の御答弁は、私はきわめて不満足でございます。福井の問題あたりも、やはりこういうところからずつと下に危機が押しやられて、その危機の一つの現われになつておることを私は知らなければならないように思うのであります。  それからさつきからいろいろ問題が出ましたが、ポンド地域との貿易の問題でございます。その節加藤委員から、輸入もポンド地域からの輸入というものを大いにやらなければいけないのではないかというふうなことを申しました。本間さんからの答弁では、非常に高いからとかなんとかいうお話がございましたが、私も案はこの問題については一、二研究をしてみております。研究をしておるのでございますが、まだまだ私は十分余地があると思う。たとえて言えば、一つの例をとつてみますると、今日砂糖あたりを六十万トンばかり輸入する計画でおやりになつていらつしやる。この二月、三月あたりの輸入が、十一万トンばかり砂糖の輸入だけでもおやりになる。ところがその大半はどこから輸入しておられるかというと、キューバから輸入しておられる。十一万トンのうち、六万四千トンばかりはキューバからの輸入である。残りの約五万トンをフィリピンと台湾で半々輸入しておられる。ところで今日インドネシアのジヤバ島は、もう世界で有数の生産地で持てあましておる状態です。今日日本から賠償を払う払わぬということが非常に大きな問題となつておるにもかかわらず、インドネシアの砂糖を日本政府はちつとも積極的に切り開いて行こうと努力をされていない。今日インドネシアは、やはり外貨が非常に足りなくてギルダー貨の切下げを数日前にやりました。ギルダー貨の再切下げをやつた今日、私は対インドネシア貿易は一段とここらあたりで好転をして行くと考えるが、砂糖などのように、インドネシアあたりが厖大な施設を持ち、厖大な生産力を持つものについては、キューバ島あたりの輸入を半分以上ここに振りかえるというような措置ができないものかどうか、そういう研究がなされておらないのであるかどうか、私は非常に疑問に思つております。そのほか例をあげるとたくさんございますが、東南亜諸国との貿易の問題は、輸出も大切でございますが、輸入の面を、ただ繊維に限らずうんと切開いて行く努力をお願いをしなければいかぬと思つておりまするが、その点についてどういうふうにお考えでございましようか。
  47. 本間俊一

    本間政府委員 砂糖の問題は御指摘のような事情になつておりますので、政府としては御指摘のような線でただいま話合いをいたしております。その他の品物につきましてもいろいろ話合いは進めておるのでございますが、大臣が先ほど申し上げましたように、期待いたしましたような効果があるかどうかわかりませんけれども、ただいまの日本の輸出入の関係から申しましては最善の努力をしなければならぬのでございますから、御趣旨に沿うように努力をいたしたいと考えております。
  48. 山手滿男

    ○山手委員 もう大分時間が遅くなりましたから、いろいろ聞きたいことはありますが、他の機会に譲りまして、ちようど商工中金門司さんがいらつしやつておりますから、さつきの御説明について一言だけお聞きしてみたいと思います。商工中金はできるだけ金融をするというお話でございますが、そのときに金融ベースに乗る以上は金融をして行くのだという御説明があつたように思つております。金融ベースに乗るという抽象的な御説明でございますが、これはどういう意味であるか、非常に不動産がたくさんあるとか、あるいは取引を十分してあるとか、信用があるとかいうふうなことは一つの條件になるであろうと思いますが、金融ベースに乗るということについて、中小企業者はこれが念頭から離れない、よく使われる言葉であろうと思いますから、少し具体的に御説明お願いしておきたいと思います。
  49. 門司正信

    門司参考人 お答え申し上げます。私どもが考えておりまする金融ベースに乗るか乗らないかという問題は、融資いたしまする資金の使途が適切妥当であるということはもちろんでございますが、この資金が一定の貸付期間内に償還できるであろうという見通しを持つことも大切でございます。裏づけの問題といたしましては、中小企業の金融について信用保証制度あるいは信用保険の制度なりが設けられておるのでございまして、われわれといたしましては、貸付額に対して、これを完全にカバーし得るだけの物的担保がその裏になければならぬというような、きゆうくつな考えは毛頭持つておりません。その点は信用保証なり信用保険の制度を十分に活用いたしまして処理をいたす考えでございます。
  50. 中村純一

    中村委員長 他に御発言はございませんか。それでは参考人に一言申し上げます。参考人におかれては御多忙中のところ本委員会に御出席くだされ、種々貴重な御意見を開陳せられたことに対し厚く御礼申し上げます。本件の調査につきましては、十分各位の御意見参考といたしたいと存じております。  本日はこの程度にして散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時六分散会