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1952-06-17 第13回国会 衆議院 懲罰委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)     午前十一時五十分開議  出席委員    委員長 眞鍋  勝君    理事 鍛冶 良作君 理事 高木 松吉君    理事 田渕 光一君       新井 京太君    黒澤富次郎君       内藤  隆君    牧野 寛索君       柳澤 義男君    石田 一松君       岡  良一君    梨木作次郎君  委員外出席者         議     員 風早八十二君         議     員 林  百郎君     ————————————— 六月十七日  委員高間松吉君、田中彰治君、坪川信三君及び  早川崇君辞任につき、その補欠として黒澤富次  郎君、新井京太君、柳澤義男君及び石田一松君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  議員風早八十二君懲罰事犯の件  議員林百郎君懲罰事犯の件     —————————————
  2. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 会議を開きます。  議員林百郎君懲罰事犯の件を議題といたします。林百郎君の一身上弁明に対する質疑を許します。梨木作次郎君。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 昨日、林君の懲罰動議提案者である佐々木盛雄君に対する質疑の中で発見された事実でありますが、林君の六月七日の本会議における日台條約の反対討論の際に、「さすが政府でさえも、蒋介石政権には領土もありません、国民もありません、このような政権はかつて例がないが、実情やむを得ないことであると、わけのわからない答弁をしておるのであります。」政府がこういうことを言つておらないのに、虚偽の事実をあげて政府を攻撃しておる、そういう内容の討論をやつた。これが一つの……(「日華條約じやないか」と呼ぶ者あり)私は日華條約とは言わないで、日台條約と言うのです。政府がそういう事実を言つたことはないのに、言つたと称して討論を行つておる。これら虚構の事実、捏造の事実をあげておる。だから、これが懲罰の理由の一つになつておるのだ、こういうことでありました。そこであなたは、この点について何か根拠があつてそのようなことを言われたのかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  4. 林百郎

    ○林百郎君 梨木君の質問に対する答弁を申し上げますが、懲罰委員皆さんにもぜひ私の考えをよく理解していただきたいと思います。日本中国とり外交政策というものが、日本国家運命にとつて、歴史的に見ましても非常に重要な影響を及ぼして来たということは、委員皆さんも十分御承知だと思うのであります。日本国家の興亡が、対中国との外交政策を一歩誤るときに、まつたく取返しがつかないはめに陥つて来たことは、皆さん承知だと思うのであります。満州事変、それからつい最近は、近衛声明によつて蒋介石相手にせずというような声明のために、日本がどうにも解決できない窮地に陷れられまして、中国侵略戦争から端を発した大東亜戦争が、遂に日本を今日の悲惨な国家運命に陥れた大きな原因であるということは、私が申すまでもなく委員諸君も御承知だと思うのであります。従つて外務委員としての私にとりましては、時の政府の対中国政策については、再びこのあやまちを犯さしてはならない、国家百年の大計から見まして、再び中国四億八千万の同胞と敵対関係に入るようなことがあつたり、あるいは他国との侵略戦争日本が受動的に巻き込まれて、日本がまた中国と戦火を交えるようなことになつてはならないということを祈念することは、これは当然だと思うのであります。そういう立場から、私が、吉田政府蒋介石政権との間の條約は、これは再び大東亜戦争のあやまちを犯す危険の道ではないかということを、政府に極力、私たち共産党立場から警告を発するのは、当然だと思うのであります。そこで先ほど梨木君の質問のありました通りに、「蒋介石政権には領土もありません、国民もありません、このような政権はかつて例がない、」しかし現実の形として、蒋介石政権現実にある姿で手を結ぶよりほか道がない、ということを政府答弁した。この政府答弁を私が採用したところが、これが虚偽だと言つているのでありますが、これは外務委員会速記録をよく読んでいただけばわかるのであります。むしろ自由党の佐々木盛雄君の方が、この際蒋介石台湾澎湖島領土権があり得ぬということを、日本政府言つた方がよいではないかという見地から、政府に対して質問をしたのでありますが、政府はそれを拒否しているのであります。御承知通り政府見解は、台湾澎湖島については日本がこれを放棄した。カイロ宣言並びポツダム宣言によつて放棄をしたことだけは日本政府は認める、よたサンフランシスコ條約でもそう認めている。しかしその帰属が、中華人民共和国帰属すべきものであるか、あるいは蒋介石帰属すべきかという問題については、まだこれは決定しておらない。いずれ国際連合で、国連で決定するのだということで、帰属はつきりさしておらないのであります。ですから、日台條約をごらんになればわかりますが、台湾政権はどの程度にこの條約の効力が及ぶかという効力の及ぶ範囲について、現に支配し、今後支配し得べき領域とあるが、支配という言葉使つてつて領土という言葉使つてないのであります。この点について、領土権というのと、現に支配しているという点と違うかどうかということを聞きましたなれば、政府では、はつきり違う、領土ではないのだ、現実台湾澎湖島蒋介石が軍事的に支配しておる。その支配している現実の姿を言うのであつて、これは領土ではありません。法律的には領土と言うわけには行きませんということを、政府はつきり答弁しておるのでありまして、これは速記録を読んでいただけばわかると思うのであります。そうすると、蒋介石一体亡命政権になるのかという質問を、たしか労農党の黒田君がいたしたのであります。ところが、御承知通り亡命政権というのは、ある一国の主権者が、外国の勢力によつてやむを得ずその国から追い出されて、よその国にいるときが亡命政権でありまして、蒋介石中華人民共和国が成立し、革命によつて台湾に追放されたのでありますから、これはやはり亡命政権というわけにも行かないのだということで、これは岡崎外務大臣はつきり亡命政権でもない、亡命政権に似たような立場にあるけれども、亡命政権ではありませんと言つておる。これも速記録ごらんになればはつきりわかるのであります。従つて領土権もない、またこの條約の及ぶ範囲についても、これは條文をお読みになればわかると思うのでありますが、蒋介石支配下にある市民とは、台湾澎湖島にいる市民を、蒋介石支配下にある市民とみなすという言葉がありまして、みなすということは、法律的にはまだそれが国民だという意味でもない、こういう説明政府側にありました。従つて領土もないし、また国民もない。そうかといつて亡命政権でもない。こうしてわれわれは、国際法上からも前例のない立場にある蒋介石と條約を結んだというのが、政府答弁でありました。私は決してここで虚偽のことを申し上げているわけではありませんで、もし委員諸君が公正な判断をなさろうとおつしやるならば、ひとつぜひ外務委員会速記録を読んでいただければ、政府側蒋介石立場を認めた、政府側からいえば、非常に微妙な説明、われわれからいえば、まつたく理解に苦しむ政府側答弁がおわかりだと思います。決して私が申し上げたことは、虚偽でも、虚構でもありません。むしろ私の懲罰動議を提案した佐々木君の方が、これは領土言つた方がいいではないかといくら言つても、政府領土と言うわけには行かないということをはつきりつておる。この速記録をお読みになれば、日台條約に対する反対討論の際私が申し上げた言葉が、決して虚偽でないということが十分おわかりだと思うのであります。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 五月二十八日の外務委員会におきまして、この懲罰提案者である佐々木盛雄君が、以下述べるような質問を行い、さらに以下述べるように岡崎国務大臣答弁した事実があるかどうかをお尋ねしたいと思います。すなわち「私は簡單に二点ばかり承つて終りたいと思います。ただいまの御意見はもとよりのことでありまして、私は今度の日華條約というものが、台湾澎湖島領土がどこに属するかということを決定する性質のものでないことは、御指摘をまつまでもなく了承いたしております。ただこの條約を結ぶにあたつて日本政府はどういう考えに立つて條約を結んだか、しかもその領土に関して日本側はどういうふうに考えておるかという、日本政府領土問題に対する見解を承つておるので、この條約の背景をなす日本政府見解を聞いておるわけなのであります。ただいまの御説明によりますと、それではこういうふうに解釈してよろしゆうございますか、台湾澎湖島に対する領有権の問題は、今日中華民国政府中共政権との二つが争つておる。互いに領有権を主張し合つておる。従つてこれはやがて連合国側において決定すべきものである。日本としては台湾澎湖島に対する中華民国政府領有権というものは、ただいまのところ認めてはおらぬ、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。」という佐々木盛雄君の質問に対して、岡崎国務大臣から、「これは法律的の問題と事実上の問題と二つありますが、日本としては、台湾澎湖島権利権原は放棄しておる、それからポツダム宣言等を受諾しておりまして、カイロ宣言條項は遵守するということになつておりますから、カイロ宣言によりますと、こういう島々は中国に行く、こういうことになつております。そこでわれわれとしては中国に行くべきものであると考えてこれを放棄したのであります。しかしながら法律的にいいますと、中国に所属するという最終的の帰属は、連合国がきめるのであつて、今御指摘のように、中国全体に対する支配権の問題で、まだ意見が一致しておらない。そこでこの最終的の帰属は、いずれ中国に行くにきまつておりますけれども、法律的にはまだきまつてない、そこでわれわれの方ではとりあえず権利権原を放棄しておる、こういうことになると御了解を願いたい。」かかる質疑応答がなされた事実がある。この事実を受けてあなたは、政府わけのわからないことを言つておる、この蒋介石政権領土もない、国民もありません、こういうような表現になり、わけのわからない答弁をしておる、こうあなたが言われたのでありますか。
  6. 林百郎

    ○林百郎君 まつたくその通りでありまして、委員皆さんも今速記録を読まれて、政府が何を言つておられるかただちには判断に苦しまれると思うのであります。外務委員会における中国問題の質問で、政府側中華人民共和国があるということも認めております。そこで私たちは、中華人民共和国、要するに北京政府があるということを政府が認めるならば、その領土はどこだと言う。これに対しては、政府中華人民共和国のあることは認めるが、その領土がどこかということについては、それは中国本土全部のようでありますという答弁だけで、これもまた政府としては非常に曖昧模糊答弁をしております。それならば蒋介石領土はどこかというと、これもまた今のところはつきりわかりません、これはいずれ国連が決定すると思います。という答弁でありますから、これは率直にいつて野党の側からいえば、政府答弁ははなはだ了解に苦しむと私が言つても、決して不当でないと思うのであります。今の速記録でもおわかりだと思いますが、要するに日本政府見解としては、今中国には、中華人民共和国という政権と、それから蒋介石という政権と、二つがあるというように言つておるようであります。これはわれわれの見解と別個ある。われわれは蒋介石という政権は別に認めておりません。すでに国民党の残存集団考えておりますが、日本政府としては、シヨウカイカイ政権二つがある。ところが台湾澎湖島については日本がこれを放棄する。カイロ宣言によれば、放棄して中国帰属すると書いてある。しかし中国には今二つ政権がある。この二つ政権のいずれに帰属すべきかということは、非常にむずかしい問題であるから、今のところ法律的には日本政府もきめるわけに行かないし、いずれ国際連合が決定するだろうということで、台湾澎湖島帰属の問題については、決して政府は、これが蒋介石領土だということは言つておりません。それは今の速記録委員諸君がお読みになれば明瞭だと思うのであります。そこで梨木委員質問されますように、佐々木君がそういう質問をし、政府がそのような答弁をししかもその政府答弁によりましても、政府のいう蒋介石政権領土なるものがあるのかないのか、まつたく不明である。また現在のところでは、台湾澎湖島帰属すら、これが蒋介石政権のものだということは、政府が決して育つておらないということは、その速記録によつて明瞭だと思うのであります。従つて梨木委員の言われますような質問応答が、佐々木委員政府との間にありましたことは間違いありません。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 今、林君は国際連合と言われましたが、速記録を見ますと、連合国がきめるとなつていますが、それは間違いじやありませんか。
  8. 林百郎

    ○林百郎君 連合国がたしか国際連合に持ち込んで決定するというように私は了解しておりますが、正確には、その速記録にあるように政府答弁しておると思います。あるい連合国言つたかもしれません。とにかく連合国国際連合との、こういう国際的な機関で決定するということを政府がたしか答弁したと思います。速記録政府答弁連合国とあれば、あるいは連合国かもしれません。とにかく連合国なり国際連合が決定するまでは、台湾澎湖島帰属は、蒋介石にはないという事実には間違いないと思います。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 では、その点はわかりましたから、その次に佐々木盛雄君はあなたの演説の中の特にこういう点が問題だとしてあげているのでありますが、この資料の三ページの中ごろであります。「アメリカは、アジアにおける自分侵略基地台湾を、日本台湾人の血と肉弾で守らせたいのであります。」これが虚偽あるいは虚構だ、こう言うのでありますが、これについて何かあなたに根拠がありますか。
  10. 林百郎

    ○林百郎君 御承知通りに、去る五月五日の日台條約の締結に際しまして、中華人民共和国周恩来外相声明によりますと、明らかに日台條約は中国への侵略準備である。これはアメリカアメリカ自身アメリカの養育しておる、要するにアメリカの子飼いである蒋介石政権と、日本吉田政権とを結びつかせて、新たに中華人民共和国に軍事的な侵略を意図するものである、ということを中華人民共和国周恩来外相声明しておるのであります。また今年の二月三百のワシントン特電のロイター通信によりますと、デユーイ氏が、北大西洋同盟の線に沿つた包括的な太平洋同盟を即時結成し、これに東南アジアも含むべきである。濠州、ニュージーランド日本、フイリピンなど、太平洋四箇国との個別的條約は不適当であり、また太平洋地域全体として守られなければならない地域なので、これは特定の少数国のみを防衛するということではなくして、もつと包括的な太平洋同盟を即時結成しなければならないということを言つておるのであります。この周恩来外相声明、それからアメリカ側の方針として、将来濠州、ニュージーランド日本フィリピン台湾等を含めて、太平洋同盟をつくつて中国ソビエトに対してこれに対抗しようという意向のあることは、このデユーイ声明が、明らかにトルーマン大統領の意を含めた声明であるということによつても、明瞭だと思うのであります。  それから台湾政権から申しますと、常に大陸反攻を主張しておるのでありまして、もう蒋介石は機会あるごとに、中国本土に対する反攻、要するに本土侵略ということを主張しておることは、これは明瞭なことであります。このように、力からいつたならばまつたく話にならないような蒋介石日本が手を結びまして、そうして周恩来外相が、これは新しい中国侵略準備しておる、新しい宣戦の布告であるとまで言つておる日台條約のとりきめをするということは、これは明らかにアメリカアジア作戦の一環に日本が巻き込まれることであつて、そういうことを私が申し上げるのは、決してこれは不当でないと思うのであります。もし日本日台條約を忠実に履行するということになりますと、日台條約には、たしか国際連合憲章二條に基く相互援助規定相互援助し合うことを厳格に守り合うということが、あるのであります。国際連合憲章の第二條の、相互援助し合うということは、もし蒋介石が今後本土侵略するようなことがあるならば、これは日本がそれを援助するということになります。また逆に、中華人民共和国台湾解放する——周恩来外相並びに毛沢東の声明によりますと、明らかに将来台湾解放しなければならないということを強力に主張しておるのでありますから、もし将来台湾解放というような問題が起きた場合、これに蒋介石が抵抗して、台湾に紛争が起つた場合に、当然日本はこの蒋介石側について、中華人民共和国解放戦争に立ち向うという、解放を妨害するという側に立たざるを得なくなることは、火を見るよりも明らかだと思うのであります。このような危険なとりきめをするということは——しかも御承知通りに、中ソ友好同盟によりまして日本並び日本と結びついた国が将来中国侵略するようなことがあるならば、中ソ両国は協力して、日本並び日本と結びついたあらゆる帝国主義国家に対してこれを反撃するということが、はつきりソ友好同盟にあるのであります。そうすると、本土へ進攻するということを呼号しておる蒋介石と結びついて、将来本土反攻する、あるいは台湾解放するというような問題で、日本蒋介石と抜き差しならないような深入りをしたならば、明らかに中ソ友好同盟の対象になつてしまう。これは非常に日本の将来にとつて危険なことであります。つまり周恩来外相は、新しい戦争準備とまで言つておるのでありますから、中国四億八千万を敵にするようなとりきめをすることは、おそらく日本の独立と平和、日本国家百年の大計考え政治家であるならば、やるべきことでない、従つて、このいうなとりきめをすることは明らかに、梨木委員の言われますように、アメリカアジアにおける自己の作戦に、日本台湾人の血と肉弾を提供させようとする、この政策に協力するものであると私は申し上げた次第であります。  御承知通りに、日台條約につきましては、日本中華人民共和国相手にするか、あるいは蒋介石相手にするかという、その選択権については日本にまかせようということが、イギリスアメリカの間に申し合わされておつたのであります。ところがアメリカが、サンフランシスコ條約を締結するに際しまして、中国問題について日本はもつとはつきりした態度を示すべきだ、むしろアメリカ極東政策沿つて蒋介石と手を握るべきであるということについてダレスから吉田首相相当弾圧が加えられたということは、イギリスイーデン外相はつきり議会言つておるのであります。イギリスアメリカの間に話合いがついておつた中国のいずれと日本が手を結ぶべきかということは、日本の自由な判断にまかされておるということに対して、アメリカがこのような弾圧吉田政権に加え、吉田ダレス書簡を出させたことは、英米の間の話合いに反しておる、これは背信的な行為だと言つてイギリスアメリカを攻撃した事例から見ても、私は明らかだと思うのであります。このようなアメリカの強圧に基いて、非常に危険な、アジアの火中のくりを拾うような危険な蒋介石吉田政権とが手を握ることは、結局これはアメリカ政策犠牲日本がなることだ。アメリカが、アジア自分国防線であるところのフィリピン台湾日本、アリューシャンを結ぶアメリカ作戦の必要上の台湾を、日本人アメリカの要請に基いて、日本人の血と肉弾で守らせる結果になるのだ。このことはわれわれは十分心し、このような危険な條約は結ぶべきでないということで、私が野党立場から政府を攻撃するのは当然だと思うのであります。私のこのような意見は、明らかに国際的な従来のいろいろな経緯、並びに国際的ないろいろの発表から出ました当然の結論でありまして、決して私が虚構のことを申し上げたり、捏造的な事実を申し上げていることでないことは、以上申し上げました私の資料によつても明瞭だと思うのであります。そういう立場から私はこういう意見を申し上げた次第であります。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 それじやその次に佐々木盛雄君が指摘している点でありますが、資料の四ページであります。「吉田政府は、本来、むしろ日本軍国主義者の長年月にわたる中国に対する侵略犠牲に対しては、降伏国として当然讀罪し、謝罪すべきものであります。しかるに、日華條約は、かえつて新たな復讐戦布告しておるものであります。」これが虚構である捏造である、こう言つておるのでありますが、これについて何か根拠がありますか。
  12. 林百郎

    ○林百郎君 これは委員諸君も御承知だと思いますが、太平洋戦争で一番大きな被害を受けておるのが中国であるということは、これは否定できないと思うのであります。アメリカ太平洋戦争になりましてから、新らしく日本戦争を構えたのでありますが、しかしアメリカ自体としては、何ら日本の軍隊によつて直接アメリカの国土が侵されたという事実はない。しかし中国に対しましては、日本軍国主義者が長い間あらゆる機会に中国に対して侵略行為をしておつたということは、これは否定し得ない事実だと思うのであります。従つて日本が過去の軍国主義者が行つたいろいろの侵略戦争から一切の清算をして、新たにアジアで友好的な平和と、民主主義的な国家として立ち直るという場合には、一番先にわれわれが被害を一番加えたところの中国に対して贖罪し、謝罪し、そしてこれと友好的な関係を結ぶことが、太平洋戦争清算をする日本政府として、なさなければならない一番重大な責務だと私は思うのであります。ところが、吉田政権蒋介石と條約を結ぶということは、これは事実上中国主権者であるところの中華人民共和国北京政権を敵にすることになるのであります。ということは、先ほど私が申し上げました通り蒋介石の国府の集団諸君は、常に大陸反攻大陸反攻と、議会があれば、アメリカ軍事的援助によつて大陸反攻をしようということを呼号しているのでありますから、この中華人民共和国に対して反攻を呼んでいる蒋介石、しかもその反攻は、アメリカ援助によつてしようとしている蒋介石と手を結ぶことは、われわれ贖罪、謝罪すべき中国四億八千万の人たちに対して、新しい戦争準備に加担することである、新しい復讐戰に加担することになるということは、当然だと私は思うのであります。従つて中国四億八千万の民衆友好関係を結ばなくて、アメリカ軍事援助のもとに大陸反攻を呼号している蒋介石と手を結ぶことを、中国四億八千万人の人たちに対する新しい官職布告にひとしいと私が申し上げたことは、決して根拠のないことではないのでありまして、これは中華人民共和国の責任ある人たちの屡次に及ぶ声明、並びにソビエト同盟、あるいはそのほかの民主主義的な諸国の声明、あるいはインドがサンフランシスコ会議に反対した立場等をお考え合せになりますならば、日本蒋介石政権と手を結ぶことが、中国四億八千万の民衆に対する新しい戦争準備と、新しい官職布告になるということは、了解が願えると思います。従つて、このような私の意見は決して不当でもない、また虚偽とか、破壊的な言辞だということは、とうてい考えられないことだと私は考えます。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 それから第四点では、一番終りの八ページであります。これは林君も委員会における一身上弁明の際に触れておられましたが、「諸君が、━━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、日本の人民は━━━━━━━━━━━━━━━よりほかにしかたがないのであります。」このことを、佐々木君は何か議会を否定した言辞であるというように言われているのであります。この点については、前にも一身上弁明の際にかなり詳細にわたつて言われておりますが、昨日の佐々木盛雄君の趣旨弁明の内容と照し合して、まだ何かこの点についてつけ加えなければならない部分がありましたら、ひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  14. 林百郎

    ○林百郎君 この点は、自由党の委員諸君にもよくこの意味を正確に把握していただきたいと思いますが、私の反対討論言葉はこうなつておるのであります。「諸君が、━━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、」要するに、国家の権力を暴力的に行使して、民意の十分な伸張を暴力的に阻止して、そして自分国家権力を守ろうとするならば、これに対抗するためには、日本の人民もまた実力をもつてこれと対抗し、その政権を変革するよりほかしかたがないというのであります。暴力というのは、吉田内閣が━━━に国家の権力を使つて、そしてこの国家権力によつていつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、日本の人民は━━━━━━━━━━━━━━━━よりほかしかたがないという言葉であります。暴力というのは、私の方が暴力を使うというのではなくして、吉田内閣が十分な民意の伸張をもし━━━に国家権力によつて阻止して、そして自分政権を守ろうとするならば、日本の人民は━━━━━━━━━━━━━━━━━ほかしかたがないというのでありまして、私の方が暴力を行使するということは決して言つておりません。しかも、ここで実力を使うということは、御承知通り憲法二十八條には、勤労者の団結する権利、団体交渉する権利、その他の団体行動する権利が保障されておるのであります。要するに、勤労者が団結する、団体交渉する、あるいはストライキをするということは当然だと思うのであります。たとえば、万一吉田内閣が日本の勤労階級の利益を蹂躪し、日本の勤労階級の欲するところを満たさないのみか、もしそれを暴力的な力で押えようとする場合には、日本の勤労階級がストライキに訴えることも、これは憲法で保障されておるのであります。もしストライキに訴えて、国家の機構が麻痺してしまう。たとえば私鉄がとまつてしまう、あるいはバスがとまつてしまう、あるいは行政協定に基く兵器の生産をやめてしまうというようなことがあれば、吉田内閣がいくら政権を維持しようとしてもこれは不可能なのである。そうなれば、やはり賢明な政治家であるならば、もつと勤労階級が協力し得る政権自分政権を譲り渡すということは、これは民主主義の当然の権利だと思う。そういう場合に、大衆の熱烈な要望を賢明に見抜かなくて、それに対して暴力的な行動に出て来る場合には、人民の側からいえば、ますますストライキによつて、あるいはデモによつて自分の意思表示をするというよりほかに道がないのであります。また国会は国会で、民心の動くところを把握いたしまして、政権をもつと勤労階級に協力する政権に譲り渡すという意思表示をするのが、当然だと思うのであります。こういうことを私は申し上げておるのであります。アメリカの初期の対日方針を見ましても、力を行使するということは、決してこれは禁止せられておりません。ただ、その力がだれによつて、だれのために、どういうように行使されておるかということが問題になるのであります。たとえば降伏後における米国の初期の対日方針を見ますと、封建的または権力主義的傾向を修正せんとする統治形式の変更は、日本政府によると、日本国民によるとを問わず、許容せられ、かつ支持せらるべし。かかる変更の実現のため、日本国民または日本政府がその反対者抑圧のため、実力を行使する場合においては、連合国最高司令官は日本の占領軍の安全を保持する限度においてこれは干渉する。しかし日本の占領軍に何ら影響のない場合には、実力を行使することは許される、とありまして、このことは初期の方針をごらんになれば十分おわかりだと思うのであります。(「対日方針を今ごろひつぱつて来るやつがあるか」と呼ぶ者あり)いや、アメリカですら、こういうことを言つておるのであります。この点は非常に重要なんです。極東委員会の労働組合の対日十六原則を見ますと、ストライキその他の作業停止は、占領軍当局が占領の目的ないし必要に直接不利益をもたらすと考えた場合にのみ禁止される。そのほかの場合には、当然ストライキその他の作業停止は許される。それから第六項には、労働組合は政治活動に参加し、また政党支持を許される。また第七項には、労働組合及び役員は日本民主化計画に団体として参加し、かつ軍国主義及び独占的行為の根絶のごとき占領目的達成のための諸方策に団体として参加することは奨励される。要するに、これを見ますと、極東委員会の方針は、日本の民主化、それから日本の軍国主義的な勢力を一掃するための推進力は労働組合である。この労働組合が憲法で保障されているあらゆる実力行使、ストライキあるいは作業停止、あるいは集団行為等によつて政治活動に参加し、また政党を支持することも許されるというのであります。要するに、日本の民主化の推進力は労働組合であり、勤労者であります。この勤労者が日本の民主化の推進力であります。この日本の民主化の推進力である労働組合が、吉田内閣がいつまでも暴力的に自分国家権力を維持し、自分政権を維持しようとする場合には、この実力を行使して日本の民主化に寄與し、また日本の民主化のために立ち上ることは当然であろう、ということを私は言つておるのであります。私は決して議会政治を否認するとかなんとかいうことを、ここで言つておるのではありません。一切の従来の極東委員会の諸決定、初期のアメリカの対日基本方針、あるいは日本の憲法の保障しているところによりまして、日本の民主化の推進力である労働者の団結権によつて、この権威主義的な国家権力に対して、これを是正し変革することは当然であるということを私が主張しておるのであります。(「簡單々々」と呼ぶ者あり)この点は自由党の諸君もよく私の言つたことを率直にお読みになつてくださればわかると思います。「━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、日本の人民は━━━━━━━━━━━━━━よりほかにしかたがないのであります。」ということでありますから、これ以上私が説明しなくても、高木委員も簡單々々ということで、よくおわかりになつていることと思いますので、私はこのことについてはやめておきます。
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 これで最後でありますが、大体今佐々木盛雄君はこの四つの箇所をあけて、これが虚偽あるいは捏造の事実として討論をしておる、これが議院の秩序を乱し、議院の品位を傷つけたということだと指摘したのであります。ところがそれだけではなくして、実は佐々木君に言わせると、あなたが六月七日の本会議において日台條約の反対討論を行つた、この反対討論全体、これが懲罰に該当する、こう言つておるのであります。そこで、そうなりますと、林君は一番先に「私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となつておる日華條約に反対をする。」こういう日華條約に反対するというこのことまでも、一体あなたは懲罰に該当すると言われるのですか、こう聞いたのであります。そうすると、いやとにかく全体だ、こういうわけなんです。そこで私はさらにこの議論を進めて、いやそれは部分だ、全体を見ればこうだと言うのでありますが、私はそれを見まして、あなたのこの六月七日の反対討論というものは、実は日本共産党を代表して日台條約に反対する、この反対するということが主たる目的であつて、以下いろいろ述べておることはその理由であつて、反対することが、そもそも最大の眼目であつた、私はこれを見れば、そう了解するのでありますが、佐々木君はそう言つておられます。つまり、たとえば日本共産党を代表して日華條約に反対するということは、大したことではないというようにとれる意味の趣旨を弁明しておるのでありますが、この点について最後にあなたの見解を伺いたい。
  16. 林百郎

    ○林百郎君 この点は自由党の委員皆さんも、笑いごとでないので、よくひとつ考えていただきたいと思いますが、先ほど私が冒頭に申しました通りに、日本外交政策からいつて、事中国外交政策を一歩誤れば、日本国家の興亡に関する重要な問題であります。このことは、日本の対外政策の中心が一貫して、やはり何といつて中国政策であつた中国政策を誤つたときに、日本はいつでも戦争の惨禍に巻き込まれたということは、諸君十分御承知だと思うのであります。従つて事対中国の問題については、われわれは必死になつて、あらゆる観点から攻撃もし、あるいは諸君諸君で防禦することはやむを得ないでしよう。しかしわれわれの側からして、あらゆる観点から、こういう心配はないのか、こういうところでわれわれは反対しなければいけないではないかということを、われわれが主張するのは当然だと思うのであります。この私の演説をよく読んでいただけば当然おわかりだと思いますが、私は共産党を代表して、この台湾に追いやられ、四億八千万の中国の人民から引離され、その厖大な軍事費がアメリカ側から援助されておるような蒋介石と手を結ぶことは、日本の将来にとつてゆゆしき問題である。これはまた三たび日本の国を滅亡に陷れる道を進むことであるという立場から私が反対をしたことは、よく皆さんわかつたと思うのであります。そういう意味から、私が共産党を代表して反対討論をしたところが、その反対したことが懲罰になるということになりますと、われわれは自由党に反対すること、そのことがいつも懲罰になつてしまう。吉田内閣の政策を批判することそのことが、いつも懲罰になるということになりますれば——、御承知通りに憲法で、われわれ国会議員は、院の中で行いました自分の意思表示、あるいは言論、あるいは討議等の一切の問題については、外で刑事責任すら問われないということが保障されておるのであります。このことは、事いやしくも国会議員である限りは、国会の中で何ものもこれを顧慮することなく、断々固として百万人といえどもわれ行かんという立場から国政を論議しろということが、憲法によつてわれわれに義務づけられていると思うのであります。そういう立場から、私は日台條約を批判したところが、これが懲罰になるということになると、これはむしろ国会の中の言論というものは、国会の外よりも狭いことになつてしまう。そうして私を懲罰にするということは、この憲法で保障されている国会議員の言論の自由の保障をまつたく破壊することになると思うのであります。しかも事は日台條約だということになりますと、どうか……。この点は私が共産党を代表して反対討論をしたということでありまして、以下の、私があげた事例は、具体的な事例でありまして、私の本心は梨木委員の言います通りに、共産党の立場から日台條約に反対するという立場からの討論だ。それ以外の何らの他意もないのであります。ただ、それにいろいろの材料が組み合されているということをよく知つていただきますれば、これを懲罰にするということは、国会の本来の機能を私は破壊するものであるという結論に達せざるを得ないのであります。委員諸君も、十分この点は愼重に御考慮をなさるべきだと思います。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 私の質問はこれで終ります。
  18. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今、梨木君のあなたに対する質問を聞いておりますると、佐々木君の提案理由の一部分をとらまえて、そうして演説全体という言葉じりをつかまえて、部分々々でやつておるが、佐々木君の言われるのは、きのうも私は委員長席で注意したが、あなたの演説をやつておられる趣旨は、暴力革命を慫慂するものである。暴力をもつて政府を転覆することが当然のことである、正義である、こういう考えから出ておることが問題になつております。あなたは、そういうつもりで言うておるのじやないですか。まずその点から聞きます。
  19. 林百郎

    ○林百郎君 あなたは、あとから来られたのでありますが、きのうあなたが委員長でおられたとき十分おわかりだと思いますけれども、あなたのそういう思想の具体的な例として——私があなたの今言われたような考え討論をしているのだという具体的な例として、佐々木君は四つほど例をあげたのでありますが、それを今梨木君が、こういう例からいつて君は懲罰に値するといつておるがどうかと言つて私に質問した、それを今まで答弁していたのであります。そこで私はむしろ鍛冶委員にお聞きしたいと思いますが、私の日台條約の……(「聞く必要はない」と呼ぶ者あり)私はあなたの質問はよくわからないのです。私の演説のどこに暴力革命を合理化し、国会を否認し、破壊活動を是認するような意思があるのか、私はあなたにお聞きしたい。私はよくわからない。
  20. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは聞きましよう。今あなたはいろいろ聞きたいことがある。今聞いておつたことに関連して言いますが、あなたは先ほどから、暴力的に国家の権力に諸君が、——諸君というのはだれをさしているのか。おそらく自由党をさしているのでありましよう。「諸君が、━━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、」これは先ほどからずいぶんあなたは述べられたが、われわれが━━━に政権の座にすわろうとするとはどういうことですか。どういう暴力を使つているか。その点をお聞きしたい。
  21. 林百郎

    ○林百郎君 この点は、すでに十分梨木君の質問で私が明らかにしてあるのでありまして、日本の労働者、農民あるいはそのほかの勤労階級の要求に対しまして、諸君が警察を行使する、あるいは警察予備隊を行使する、こういうようなことを勤労者の側から見れば、これは暴力的だというように考えております。勤労者の側からは、そう見ております。私は勤労者の立場に立つて政府を批判したのであります。しかも私が暴力的というのは、国家権力の行使を暴力的にやるならばという意味であります。われわれが暴力を行使しろということは決して言つておりません。そこであなたの言うのを、もう一度私が答弁いたしますが、勤労者の側からいえば、たとえば四箇月も賃金が遅配欠配している。労働者が四箇月も賃金が遅配欠配しておれば、これは食つて行けるはずがないのであります。これは仙人じやありません。水や空気を吸つて生きて行くわけには行きません。それで当然ストライキをやる、あるいは市役所へ行つて生活の保障をしてくれということはあたりまえだ。そこでこうしてストライキをやりますと、たとえば不法に社長を監禁したとか、あるいは市役所に行くと、生活の保障をする前に、市役所を退去しない、不退去罪だというような口実のもとに、警察官が出動して来る場合がよくあるのであります。そういう場合、労働者の側からいえば、労働者は何の権制よりも、まず自分が生きるという権利が一番保障されなければならない。この生きる権利が保障される前に、いろいろの口実で警察が出勤して来る。あるいははなはだしい場合には、それ以上の力が出動して来るというような場合には、これは政府政策が暴力的だと考えるのは当然であります。私はそういう勤労者の立場から、そう言つているのであります。
  22. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 君は勤労者の立場と言われるが、勤労者とはどういう者をつかまえて勤労者と言われるのか知らない、おそらく林君と同一の考えを持つている者がさようなことを考えておるのであろうが、まじめな者はさようなことを考えわけはありません。法によらずして行動している事実があつたら、たいへんだ。そういうものを、あなた方がこれが暴力だ、勤労者を弾圧した、さようなことをもつてこれを言うことが、すでに諸君が暴力革命を起すいわゆる扇動の根本であるとわれわれは考えるから、これを懲罰する、それ以上あなたがそういうことを言つておれはそう思うと言うのなら、やむを得ない、君の見解だから……。けれども、多数の国民は暴力によつて政権をつないでおろうなどとは考えておらぬ。そういう多数の国民に反したる考えをもつて、かような演説をすることが破壊行動である、かように考えておることを十分考えておつてもらいたい。  その次にあなたは、るるストライキだ、ストライキだと言つておられるが、日本の人民は━━━━━━━━━━━━━━と、こう言う。━━━━━━━━━━というのは、無理にひつぱつて来ることです。そういうことがどうしてできるのですか、実力を使わずして、單にストライキだとか、正当なる手続をもつてやることを、━━━━━━━━━━━とはわれわれは考えられない、それをあなたは言うが、そんなことはありません。ここでは考えられぬが、あなたの本心を言つてください。
  23. 林百郎

    ○林百郎君 吉田内閣の政策が暴力的だと考えるのは君たちだけだと言いますが、御承知通り破防法に反対して第一波、第二波、第三波、第四波のストまで行われておる。この参加人員はおそらく延人員にして七、八百万になると思います。これは日本の勤労階級にとつて、かつてない大きな人員であります。これは吉田内閣が暴力的だということの勤労者階級の反対の意思表示である。ストライキをやることは、反対だという意思表示である。私たちが、かつて日本で例のないような大ストライキが行われておる場合に、この勤労者の立場から吉田内閣を批判することが、なぜ懲罰になるのでしよう。そのことが第一点。  第二に━━━━━と言いますが、吉田内閣打倒ということが言われ、それが許されておる。打倒というのは、たたいて倒すことです。打倒が許されておるのに、━━━に自分政権の座にすわろうとするならば、その政権にすわることをやめてもらわなければならない、やさしいものですよ。たたいて倒すのじやないじやないですか。しかも吉田内閣打倒はみな言つているじやないですか。しかもそれは院内で、━━━━━よりほかにしかたがないのであります、という遠慮した言い方です。こんなことが国会の中で許されないのでは、国会の存在意義がなくなりますよ。打倒と、━━━━━よりしかたがないのでありますと、どつちが遠慮した言い方か考えていただきたい。
  24. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ずいぶんよくわかりました。われわれは今破防法に反対している人は——政府は適法な行為をもつて国会を通じて立法をしようとしておる。それに対して、適法な行為でなるべくそういうことを阻止しようと思つてつておるんだと思う。その適法行為をつかまえて、暴力である暴力であると言われる。君の思想がまことに明瞭になつたからもうこれ以上言いません。これはこれでやめます。  その次に、打倒というから━━━━━などとは違うと言う。これは君だけのことで、君がそう言われるならかつて言つておるがよろしい。もうやめるほかはありません。  その次に、ついでにここで言うが、これはあなたの結論です。「五月一日メーデー、三百万人の反抗は、やがて八千万の全国民吉田内閣打倒、民族解放、民主政府樹立の革命のあらしと怒濤となつて諸君を押しつぶしてしまうでありましよう。」こう言つておる。あなたは五月一日のメーデーは、これを適法なるものであつたということが前提であろうと思うが、適法だと言われるのですか。それから聞きます。
  25. 林百郎

    ○林百郎君 適法であることは東京地方裁判所の判決をごらんになつても、あそこの使用を禁止することは不適法だといつているじやありませんか。もちろんメーデーが不適法だということは、世界のどこに行つたつて通用しない。もちろん適法です。
  26. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はメーデーそうものを言つておるんじやない。あの宮城前で起つた騒擾罪だ。われわれは罪と思うが、あなたは罪と思わぬか、これだ。
  27. 林百郎

    ○林百郎君 そんなことは私のこれには何ら関係のないことであります。日台條約の反対討論には影響ないことであります。
  28. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 五月一日のメーデーで、なるほど吉田内閣打倒の言葉を使うかしらぬが、暴力をもつて吉田内閣を押しつぶそうとしておるものではありません。ただ破防法反対である、吉田内閣反対であるという意思を国民に知らせるためにやつたのであろうけれども、君の言われるように諸君を押しつぶしてしまうであろう、何のことだ。これはとりも直さずあの宮城前に起つたあのいわゆる暴動をもつて、こういう力でつぶしてやるのだというのだ。(「暴動でないよ」と呼ぶ者あり)今言うように暴動でないというのなら、これは議論の余地なしである。暴動にあらずというんなら説明は……。
  29. 林百郎

    ○林百郎君 宮城広場でどつちが手を出したとか、出さないということは、私のこの日台條約の反対討論関係ありません。それからまたメーデーの広場の問題に対する評価については、これはアメリカのいろいろの新聞をごらんになればわかります。やはり日本の国内にアメリカの占領軍が長い間いるということに対する反感の表われだということも、これは外国がすでに認めているところであります。そういう要素があつたということは、これは否定し得ない事実であります。また押しつぶすであろうということは、あなたは政治家であります。政治家であるならば、吉田内閣を倒す、政治的に倒すということをわれわれが押しつぶすという表現を使つたところで何が悪いでしようか。これは政治家として考えてみればおわかりだと思う。われわれはお互いに政治家だ。そういう言葉からこれを御判断なされば、吉田内閣を政治的に倒すであろう、次の選挙には吉田内閣は倒れるであろうとわれわれが言うのはあたりまえだ。それを押しつぶすという表現を使つたのがなぜ悪いのです。
  30. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも明白にすべきところを明白にしないな。あなたの言うことを聞くと、アメリカの新聞でも、アメリカでも、アメリカの駐留軍に対する反抗であつたということが書いてあるから、従つて反抗であるがゆえに適法だ、騒擾罪にならぬ、こういうのだね。
  31. 林百郎

    ○林百郎君 それが騒擾罪になるかどうかということは、裁判所が判決するのでしよう。私がここでそんな裁判官みたような判断をやる必要はないです。これは私の討論と何の関係もありません。
  32. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするともう一ぺん聞くが、現在騒擾罪の被疑者として調べられていることが、あなたにとつては不当だ、こういうことでしような。
  33. 林百郎

    ○林百郎君 それも答える必要はありません。もう一つ、先ほど梨木君からもちよつと話がありましたが、このメーデーがどういうものであつて、これが適法か適法でないかということは、日本の勤労者と日本の人民自体が決定すると思いますから、私は何も裁判所だけと限定いたしません。日本の人民が、また歴史がおそらくこれは判断すると思います。今私の日台條約の反対討論懲罰に対して、私がそのようなことをここで答弁する必要はないと思います。
  34. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これを読んでみると、五月一日のメーデー、ああいうことでお前らをつぶしてやる、しかもこの五月一日のメーデーの騒擾をさしておることはわかつている。その点をさして顧みて他を言つておる。まことに林君としては女々しい言葉だ。ことに私は驚いた。共産党とはいかにもかような本体であるかということがわかる。現在被疑者として起訴せられておることをどう思うと言つたら、人民がこれを決定する(「その通りじやないか」と呼ぶ者あり)裁判否認の思想である、許すべからざるものである。かように私は断定をして、これに対する質問はやめます。さようなことは許すべからざる思想である。ますますもつて君の罪重しと断定せざるを得ない。私はかように考えます。  それから、きのうから私は聞いておるのだが、あなたは馬丁ということを何でもない、こう言われた。それで聞きたいが、━━━━━━━━━━━━━━━━━━と言われた。政府というものは抽象的のいわゆる官庁であるが、さようなものをさしておるものでなかろうと思う。政府を構成しておる人間をさしておられるものと思うのでありますが、この点はいかがです。
  35. 林百郎

    ○林百郎君 どうも鍛冶委員はかつて判断をされますが、日本の国の主権が人民にあることは憲法の前文に書いてあります。あなたは御承知のはずです。やはり最高の判断、最高の決定権は人民にあるのであります。メーデーの問題についても、最高の権威のある判断を人民がするということは、決して憲法の破壊ではない、憲法の前文にその通りに書いてある。これをあなたがかつてに、私がそう言つたから破壊行為だということは、あなたの方こそ憲法を破壊しているじやないか。それからあなたの言われる吉田政府は、━━━━━━━━━━━━━━━のであります。これは先ほど私が梨木委員質問にももう十分答えましたけれども、要するに日台條約を結ぶということは、日本を新しい戦争に巻き込むことになる、この戦争を防ぐことの前には、言葉が言い過ぎる言い過ぎないの問題ではない。どんな言葉使つても、戦争の危険に対して反対することは、今の時代に生きておる国会議員の当然の務めです。そういう政治的な立場から、このような蒋介石と手を結ぶことは━━━━━━━━━━━━━としておることであつて、これを攻撃するのは当然です。しかもこのために中日貿易すら犠牲にされておる。中国四億八千万の人を敵にする。その上、また台湾防衛のために、地域集団安全保障によつて日本の若い人たち台湾に軍人として送られたらどうなりますか。このようなことに対して、われわれが━━━━━━━━━━━━━━とすると言うことは当然です。しかもこのことは、中国四億八千万を代表しておる中華人民共和国政府ですら、こういうことを言つておる。(「四億八千万を代表していないよ」と呼ぶ者あり)もし皆さんが、中華人民共和国中国主権者でないと言うなら、一体政府答弁すらみな違つておる、政府ですら中華人民共和国がある、しかもその領土中国本土全部だということを答弁しておる。それを敵対関係にして、何も台湾蒋介石と手を結ぶ必要はないじやないか、かようなことは、━━━━━━━━━━━━━とすると言うことは当然だというのです。
  36. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 君はどうも人の聞いたことを言わないで、かつてなことを言つておる。かつてなことを言つて君らの目的及びやらんとすることが明白に出て来ておる。私は指摘しておきますが、日台條約はけしからぬ、従つて攻撃する。その攻撃の方法としていかなることがあろうともいいのだ。これがたいへんな許すべからざることです、目的さえよかつたら手段を選ばぬのだ。(「そうじやないよ」と呼ぶ者あり)お前らをやつてやる、これは人民の声だ、正当だ、だからお前らを実力で倒してやる、これが君らの根本です。暴力革命を使嗾するものであるということは、この点を言つておる。私は、ここであなたが吉田政府は云々と言つておるが、それは要するに吉田政府の総理大臣、外務大臣、あとの閣僚とか、こういうことだろうと思うから、私は、人間をさして言うているのだろう、人間をおいてはほかにあるまい、こういうことを聞いている。その点だけをひとつ……。
  37. 林百郎

    ○林百郎君 私は答える必要はないと思います。「━━━━━━━━」とすると言うことが不届きだ、こういう表現を使うこと自体が不届きだと言いますが、日米加漁業協定に対して、あなたの方の長老の植原悦二郎氏は、腰抜け外交だということを言つている。與党の旧閣僚がこう言つている場合に、野党のわれわれが「━━━━━━━━━━━━━」と言うのが、何で懲罰になりますか。もしこの私の言葉が不届きだと言われるなら、植原さんに、あなたが腰抜け外交ということを言われた意味はどういう意味だということを聞いていただきたい。
  38. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 失礼千万なことを言う。値原は何と言おうと私は植原の言うことを聞いてはいない。いやしくも政府を構成している国務大臣に対して馬丁と言つて、それが無礼な言葉じやないと言つている。人が何と言おうが、私はそのことを言つて君のことを聞いているわけではない。君がこういうことを言つて何でもないと言われることに、君のけしからぬところがある。おそらく国務大臣に対して馬丁なんという言葉は、私は国会始まつて以来あるまいと思う。まことに容赦ならぬことだと思う。さようなことの弁明について、人がこういうことを言つた、ああいうことを言つた——人が何を言おうがいい。その点に対してわれわれが追撃するなら追撃する。われわれが追撃せぬからといつて、君から責められる必要はない。かようなことはいわゆる個人に対する侮辱じやないか。だから政府とは何か。個人があらずして政府はできておらぬ。政府そのもの、抽象的なさようなものはあり得べきはずがない。かような暴言を用いて、なおかつ君らは暴言でないと言われるならばこれはやむを得ない。われわれとは思想及び考え方を異にしている。もつと言えば世界が違う人だ。どういう考えですか。
  39. 林百郎

    ○林百郎君 植原さんが腰抜けと——岡崎氏をさして腰抜け外交だと言つているのですよ。自由党の幹部からすら腰抜け外交だと言われるものが、われわれが今や「━━━━━━━━━━━━━」と言うのがなぜ悪いのですか。しかも今まで国会の中で売国奴という言葉まで使つていた。政治的な立場が違えばやむを得ぬ。売国奴ということは奴隷ですよ。奴隷よりは馬丁と言うことの方がまだ敬意を表しているわけだ。これは一つの例ですが、そういう政治的な立場が違えば、相手を攻撃するためにそういう言葉を使うのは当然だ。しかも與党の長老すら腰抜けと言つているのですからね。これは政治家ならおわかりだろうと思う。
  40. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ますますもつて林君の不逞な考え方が明らかになつた。それ以上これは議論をやめましよう。  次にもう一つ聞こう。その次は「アメリカは、アジアにおける自分侵略基地台湾を、日本台湾人の血と肉弾で守らせたいのであります。」これはあなた、どこからかような断定を出して来たのか。
  41. 林百郎

    ○林百郎君 これはあなたのおいでになる前に、梨木委員に十分詳しくあらゆる材料で答弁してありますから、それをお引きしたいと思います。どうぞ速記録をお読み願いたいと思います。これは言う必要はないと思う。そんなことを繰返していたら切りがない。
  42. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 政策上の見解をもつて述べられることなら、われわれは何も言わない。侵略基地と言われること自身も問題だが、「日本台湾人の血と肉弾で守らせ」ようとしている、何のことなのか、日本人を連れて行つて何か戦争でもさせているのか。日本人を弾丸の壁にでもさせたのか。させるかもしれぬという憂いならば、まずまずもつてこれはけしからぬ、かような不穏当な文字を使うとは……。その点をわれわれは聞こう。
  43. 林百郎

    ○林百郎君 これは、あなた以外の自由党の委員の方が先ほどおいでになつて十分聞いておりますから……。あとから来た人に一々答えていたら切りがありません。ただ一言だけお答えいたしますが、侵略の定義に関する国際的な協定がございます。この協定を見ますと、他国の海岸または港の海上封鎖は侵略になつている。御承知通りこの台湾を海上封鎖しているのはアメリカであります。海上封鎖が侵略になるということは、国際的な定義によつても明らかであります。どうかこの定義をごらんになつていただきたい。
  44. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 かつてなことばかり言つていて、人の質問に答えられないならよろしい。それでは林君にもう言うだけやぼと思いますからやめます。あと風早君にやります。
  45. 田渕光一

    ○田渕委員 私はこの懲罰委員会は、議員の身分上の何をやるのでありますから、最も厳粛にやつているのでありますが、それに関連いたしましてまず林君に伺いたいのであります。六月十四日に、日本共産党国会議員団という謄写版の二つの紙を出しておりまするが、これをまず認められますか、それとも御存じないか。
  46. 林百郎

    ○林百郎君 私は全然それに関知しておりませんし、またこの私の懲罰には何ら関係がございませんから、何ら答える必要はないと思います。
  47. 田渕光一

    ○田渕委員 林君はこれを関係がないと言つておりまするが、「風早、林両議員に対する懲罰の暴虐なる陰謀について訴える」という刷りものであります。これは資料として委員長に出しまするが、それが一九五二年六月十四日日本共産党国会議員団としてあります。そこでその別葉には「林・風早両議員懲罰陰謀の悪玉」という見出しで、提案者懲罰委員の科目を設けて、党籍は自由党の自由としてあります。それで議員名、それから選挙区の県と区をはつきりしている。それから宿舎、電話までもはつきり調べて入れてあります。十五名。そうして「野党中の左記議員をゲキレイせよ」といたして、改進党の石田一松君、社会党の右派の石川金次郎君、左派の猪俣浩三君、第三倶楽部の世耕弘一君、これも右同様に書いてあるのであります。この中にこういうことを書いているのでありまするが、懲罰委員会と関連はないと言えないのであります。「右に列挙した自由党の委員は、悪玉の最たる輩で、吉田売国馬丁の足共である。こいつらゴロツキ議員にドシドシ抗議の電報、電話、速達、訪問等によりあらんかぎりの方法と量で圧力をかけられたい。」まだたくさんありますが、これが脅迫でなくしてどうであるか。こういう問題と関係がないと言いますけれども、はつきり日本共産党国会議員団で出して、おそらく委員外の不逞のやからにこれを私は煽動しているものと思う。これが関係がないとは言えない。さらに、この筆跡と、五月一日のメーデーに宮城前その他にまいた筆跡がみな同じであります。全部これらが日本共産党において発行されたということは事実であります。これを知らぬと言えば、知らぬでもよろしいが、林君がこれを知らぬと言つて関係なしとすれば、日本共産党議員団として、こういうのはにせの宣伝でありますから取消すということを、ここで宣明されるかどうか。
  48. 林百郎

    ○林百郎君 答弁の必要ないと思います。
  49. 田渕光一

    ○田渕委員 答弁がなければ、これは認めたものと本員は解釈して進んで参ります。
  50. 林百郎

    ○林百郎君 答弁しないというのを、認めたものとかつてに認定する。私は答弁の必要はないということを答えた。
  51. 田渕光一

    ○田渕委員 ぼくはそういうふうに認定する。
  52. 林百郎

    ○林百郎君 今のかつてな認定については、私ははつきり反対いたします。はつきり速記録に残したい。
  53. 田渕光一

    ○田渕委員 それはいろいろあとの風早君に関連しておりますから……。五月一日のメーデー問題はこれは鍛冶委員が御質問になつた程度にいたしておきましよう。  そこで林君の言う暴力的に国家の権力ということについて、非常にあれこれと陳弁されたのでありまするが、しからば吉田内閣の暴力的というのは、何を根拠として暴力的と言われるのか、まずこれを伺いたいのであります。
  54. 林百郎

    ○林百郎君 それは昨日の私の身上弁明、本日の梨木委員質問に対する答弁、さらに鍛冶委員質問に対する答弁で盡きております。これ以上答弁する必要はないと思います。
  55. 田渕光一

    ○田渕委員 林君は、しからば現行の法律制度というものを認められますか、否認せられますか、それをひとつ……。
  56. 林百郎

    ○林百郎君 そのような非常識な質問に対しても私は答弁する必要がないと思います。この質問はあまりに非常識です。
  57. 田渕光一

    ○田渕委員 非常識ではありません。これだけの法律と制度があつて、しかも憲法のこの條文により、あるいはまた衆議院規則によつてできておるところの内閣の首班の指名、あるいはこの行政権を握つておる内閣というものが暴力的だというようなことは、私は現行の法律制度を認める林君としては出ないと思うのであります。そこで林君は暴力的というのはこうだ、ああだといろいろこれを解説いたしておりますが、これは大衆を誤らすおそれがありますから私は申し上げる。憲法の四十三條をごらんになつていただけばはつきりとそれが書いてあります。憲法四十二條には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」として国会はできておるのであります。そこで、大体六十五條の内閣の行政権というものははつきりいたしております。憲法六十五條をごらんになつていただけばはつきりいたしておりますが、「行政権は、内閣に属する。」また内閣総理大臣の指名というものは、六十七條にはつきりいたしております。「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行う。」といつて、いわゆる選挙から内閣、内閣は行政権を握つておる。そこでその内閣の首班の総理大臣は、憲法六十七條によつて会議員の中から指名される、こういうぐあいにはつきりいたしておるのであります。しかもまた六十八條には、「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は国会議員の中から選ばれなければならない。」内閣の構成もはつり現に明示しております。さらに衆議院規則の十八條におきましては、「内閣総理大臣の指名は、記名投票で指名されるものを定め、その者について議決する。」こうしてはつきりできた吉田内閣であり、吉田内閣総理大臣であります。これを━━━にいつまでも居すわるならばというのは、これだけりつぱな法律制度のもとにおいて、合法的におる内閣が、━━━に居すわつている、こういうようなことはわれわれには解釈できないのであります。これだけ憲法並びに国会法、あるいは衆議院規則によつて厳然としておる制度のもとにすわつておる吉田内閣が、━━━にいつまでも居すわつておると言う。なるほどあなた方から言うなら、早く退陣するのがよかろう。無政府状態がよかろう。法律機構制度がある以上は、その今日の機構に従わなければならぬじやないか。それをあなたは、どの点を吉田内閣は━━━に居すわつていると言うのか、この点を明確にしていただかなければ私は納得ができない。
  58. 林百郎

    ○林百郎君 その点につきましても、昨日以来私は精魂こめて答弁しておりまして、それで十分だと思いますから、これ以上私は答弁する必要ないと思います。
  59. 田渕光一

    ○田渕委員 ちよつとも、昨日来の、あるいはその前の一身上弁明におきましても、この点に触れておりません。ただ抽象的なことばかりでは、一般大衆を惑わすものであります。私たちは現行の法規の上にこうやつてあるのであつて、その合法的な内閣が、━━━に居すわるとは断じて論ぜられないのであります。私はここで先ほど申し上げたのでありますが、ここまで突き詰めて行くと、林君は行き詰まつてしまう。これは合法にすわつておるのであります。どこに暴力性があるかということをはつきり私は伺いたい。  それから重複しないように避けまするが、大体われわれは日華條約としております。共産党の方では日台條約というふうに仮称いたしております。これは自由であります。ところが、そもそも中華民国とこの條約を結ぶという前提のものは、ヤルタ協定であり、あるいはまたカイロ宣言から来たところのポツダム宣言です。一九四五年の七月ポツダム宣言に参画されたものは、アメリカイギリスと中華民国とソビエト連邦である。この四つの宣言に対して、日本が一九四五年八月十五日に無條件に受諾して降伏をした。九月二日に降伏文書に調印をいたしておる。その後占領中に、周恩来あるいは毛沢東が中国を革命いたして、かりに中共政府ができたといたしましても、私たち日本人民というものは、ポツダム宣言によつて降伏をいたしたのであります。周恩来や毛沢東には降伏しておりません。これははつきりしておかなければなりません。そうするならば、この降伏いたしました蒋介石政権というものがどこにおろうと、一応ある以上は、このポツダム宣言を忠実に守る日本国といたしまして、台湾におろうが、どこにおろうが、蒋介石政権とこの日華條約を結ぶとにおいて、何られわれわが国民の利益を、血の一滴までも、     ━━━━━━━━━━━━━ ━━━というような意味でやつたものではありません。そもそも国際法の信義を守り、そうしてここに来ているのであります。こういう事実が厳然としてあり、われわれの負けたのは蒋介石である。周恩来だの毛沢東は、あとから出て来たものであります。つゆのかびのはえたようなものと私は思つている。諸君と畑が違う。こういうようなポツダム宣言に何ら関係のないものに、何でわれわれが遠慮気がねしなくちやならぬか。これがはつきりして来て、蒋介石政権がなくなつて、毛沢東の政権はつきりして来る。周恩来外務大臣がはつきりして来るなら、そのときは別だ。今日の国際情勢下において、日本をこれ以外再建して行く道がないとすれば、何も━━━━━━━━━━として吉田内閣がやつたものでないと私は思う。こういう一九四五年のポツダム宣言以来今日までの状態というものは、林君などの日本共産党は認めておりません。これがこういう惑いを起して来る原因だろうと思う。占領中の政策もいろいろありましようが、近くは最近の三国漁業協定に対して、わが党の長老植原議員の言葉じりをつかまえて、いろいろ言つておりまするけれども、国家の安危あるいは憂いに関するものに対しては、野党諸君の力を借りなくても、野党諸君が言わなくとも、與党であるわれわれが言うことは当然でありますから、内閣を鞭撻し、外務大臣が貧弱なら引下げろということも言うのであります。これでこそ正しい民主政治が行われるのであります。諸君が言うようなボス自由党ではありません。また諸君声明するようなごろつき悪玉議員でもありません。堂々と言うことを言うのが民主政治であります。與党ではそれを言うておるのであります。野党がかつて放題なことを言うことも、思想の自由、言論の自由を認めておるのでありますから、かれこれ言いませんけれども、少くともこれだけの事実というものを、林君はこれも認めないと言うのであるか、あるいは答弁の限りでないと言われるのであるか、その点をはつきりしていただきたいと思います。
  60. 林百郎

    ○林百郎君 田渕委員の私に対する質問言葉の中にもあります通りに、吉田内閣の政権が暴力的になつて来たかどうかということについては、これは見解の相違だと思います。ということは、御承知通りに、あなた方の内閣で出している破防法は、これは基本的な人権を侵すものである。基本的人権を侵すということは、暴力的だと思うのであります。そういうふうで労働者諸君が反対し、学者の諸君が反対し、学生の諸君が反対しておるのであります。しかしそれが暴力的でない——もちろん多数である吉田内閣は、暴力的でないと言うかもしれない。これは見解の相違であります。政治的な見解の相違であります。これほど破防法に対して反対が高まつて来るならば、これはこの立場に立つて、政治的な見解を吐露するのは当然だと思います。また今中国の真の主権者がだれかということは、中国人民自身が決定するので、決して自由党が決定するのではないと思います。従つてわれわれとしては、今中華人民共和国、要するに北京の毛沢東政権が正当なる中国の主権の承継者と考える。しかしあなたは蒋介石だと言う。これもやはり政治的な立場の違いだ、政見の違いだと思います。しかし、そういう政治的な違いを国会の中で自由に吐露し、これを人民の批判にまつことができるのが、国会の機能だと思います。ところがあなたは、その自由党の見解を私に押しつけて、その自由党の見解と違うから、お前を懲罰するということになると、これは国会の機能を破壊することになると思います。だから私は、田渕委員がそういう見解をお持ちになつているのはいいと思います。しかしまた私が、中国の正当なる政権承継者は毛沢東である。吉田内閣の最近の傾向は、暴力的といわざるを得ないような傾向に来ておる。憲法に違反して、実質的な軍隊をつくつている。そうして労働者がやむにやまれずいろいろなことをするときに、警察が出て来るということは、これは暴力的だとわれわれは認定する。そこは、お互いに自由党と共産党のいろいろな政治的な見解の違い、自由党と共産党の違うところである。これは当然だ。それをお互いに国会の中で表現し合つて、そしてそれを人民の批判、国民の批判にまつというのが、私は国会の機能だと思うのです。だから、私はここであなたと、中国の正当なる政権の承継者がだれであるか、吉田内閣が暴力的であるかどうかということを、理論闘争する必要はないと思う。あなたはあなたのその見解でけつこうだ。われわれがわれわれの立場から見解を吐露するのは当然だ。だからあなたがその見解を私に押しつけて、そうして懲罰にかけるということは不当だということだけを私は答弁しておきます。
  61. 田渕光一

    ○田渕委員 私は、決して思想の自由と言論の自由を何も押しつけるものでありません。自由党は自由党として、いわゆる民主陣営の名のもとに、これに協力をして、世界の福祉増進、平和と幸福を増進して行こうとする。あなた方が共産主義をもつてつて行こうとするのは、それは自由であります。こういうことを言うのではありません。しかしながら、その自由なる言論の府において、憲法に保障された言論の自由に名をかりて、国民大衆を惑わすような言葉があつちやいかぬというので、私はこの憲法から国会法、あるいは衆議院規則にこうあるんじやないか。そういう嚴然たる事実の上にある吉田内閣であるから、暴力的ではない。ところが諸君は、警察官をもつて暴力を行使すると言う。どこに吉田内閣が警察に対して暴力行使の命令を下したか。今日の警察法を見ましても、御承知通り国家公安委員会が管理し、あるいは警視庁においては東京都公安委員会がこれを管理しておる。むしろ内閣総理大臣の指名権、あるいは政府、あるいは與党の何が行かないために、警察法の改正をしようとしておる。決して内閣は警察に向つて、善良なる国民に暴力を行使させようとしているのでないにかかわらず、片つぱしから取締られるものをかたきのごとく罵詈讒謗いたしまして、敵のごとく見る。これも今日の制度、法律、機構というものを林君が否認しておられるからでしよう。どこに吉田内閣が警視庁あるいは国家警察に対して、共産党あるいは大衆運動で何もしないものをひつくくれなどと言つたか。五月一日のメーデーを見ましても、むしろ大衆の方があばれておる。われわれのこの国会の前を通過するときにも、むしろ一人立つている巡査に向つて「こらポリ公」などと言つて、あのプラカードの木の先で巡査の鉄かぶとをつつきまわしている。それでも五月一日のメーデーは嚴粛にやらなければならぬという指令が出ているから、警察官は嚴然と涙をのんでおる。この姿を見たときに、日本の治安を維持する警察官に対して何たる侮辱を加えるものであるか。こういうような状態でがまんをしておる。丸の内警察などは、ピストルなんか持つていまい。肉弾でもつて取締らなくちやならぬというのでやつておるくらいやつておる。こういうふうに警察みずからやつておるということは、われわれは行政監察特別委員会においてはつきりしておる。こういう問題を、どうして吉田内閣が暴力を行使して善良なる大衆に暴行を加えておると言うのか。どこにそういう実例があるか。これは風早君のときに言いますが、一例を申したのであります。諸君見解——少くとも日比谷からあそこに入つたというようなことも、これは虚構捏造だということを私は風早君に言うのでありますが、五十万の大衆がやつたと言いますけれども、あの神宮外苑に行つてつたのは警視庁その他の調査によつて約二十万そこそこである。これを五十万と言い、あるいは二重橋皇居前に十万の大衆が寄つたと宣伝しておりますが、警視庁午後三時の調査によりますと、約八千入、私はそんなになかつたと思う。私はそこに入つてつたが、八千も入つておりません。しかも諸君らが煽動したために、全学連あるいは尖鋭なる北鮮の分子がみずからあばれて行つた。そうして警官隊に向つて突撃をやつた。こういうようなことをするから、警察がしかたなしに催涙弾を投げたのであつて、これはいよいよ自分の身体があぶないか、他人の生命があぶないというときにはピストルを発射せよということを、警視総監は言つてある。何らこの問題においても吉田内閣、わが党内閣との間に、共産党を弾圧しろとか、大衆に暴力を行使しろとか言うたことはない。それを警察を手先に使う。警察は吉田内閣の犬である、番犬であると言つて攻撃する。こういうふうなことを言つている。これは林君もここまで説いて来ればよくおわかりであると思う。これをも見解の相違だとは逃げられません。事実は事実として、あらゆる新聞、行政監察特別委員会に収集したところの三百余枚の写真を見ましても、警官みずから手を出しておるということは一つもありません。あるいは提案者の中川君が出しておる写真を見ましても、巡査を女がなぐるからやるのである。警察みずからやつておりません。最後の日比谷で石を投げるのを見ても、あとから投げる、こつちへ来る、また向うから投げる、ちよつとも警察から手を出しておりません。それを九人も殺したとかどうとかいう大きな捏造をするから——これは風早君のときに徹底的に言いますが、こういうふうな事実を林君は、吉田政府が命令しておるかのごとく言うのは、大衆を惑わすものである。こういうふうに惑わして、暴力を使つているから暴力政権だ、暴力で居すわつておる。こう宣伝すると、何にも知らぬ大衆はそうかと思う。こういう点を私は当委員会はつきりしなければならぬと思うので、これを申し上げます。
  62. 林百郎

    ○林百郎君 メーデーでどつちが発射したとかしないとかいうことは、私の日台條約の反対討論懲罰には関係がないことであります。ただ田渕委員はメーデーの問題について、あらゆる新聞、あらゆる雑誌を見ても、どれ一つでも全部警察の方が真にやむにやまれぬ立場でやつたんだというようなことを言われておりますが、私はそれに対する反対資料をたくさん持つておるのでございまして、たとえば岩波書店の「世界」七月号を見ますと、これには梅崎春生氏がこう言つております。「警官隊の襲撃は、なかなか組織立つていて、日頃の訓練を充分しのばせた。警棒は、立つているものに対しては、必らずその頭部をねらう。デモ隊に後頭部の負傷者が多かつたのは、逃げて行くところを、背後からねらい打ちされた為だ。倒れている者に対しては、腰部又は腹部をねらう。そこを欧ると、動けなくなるということを、彼等は充分に知り、またその訓練を経てきたに違いない。デモ隊の散発的な反撃にくらべて、警官たちのそのやり方は、その非人間的な獰猛さにおいて、圧倒的であつた。僅か三百名ほどの人数で、数千のデモ隊に対し得たのも、ひとへにその非人間的な暴力の故である。私の見た限りでは、最初に暴力をふるつて挑発したのは、明かに警官側であり、「組織された暴徒」とは、デモ隊のことではなく、完全武装のこれら警官隊であつた。」さらに「中共公論」の六月の高見順氏のを見ますと、「老人達はピストルの発射とは即座に判断もつかず、女子供はただボンヤリしているだけだつた。お上りのおばあさんが、ワアワア泣いていた。デモ隊に対しては一番先に女がねらわれた。頭を割られる、腰をかがめている者は腰から、脇腹をやられたが、外傷はないにしても、内出血して後から死ぬ者も多数出るにちがいない。」こう言つております。それから「十分間くらいそんなふうにしていると、南側の方からヘルメットを被つた警官隊が出て来て道の左端を通つて棚際へ進んだ。と、いきなりデモ隊に襲いかかつた。アツという間もない出来事で、私はビックリしたが、もう目の前は乱闘で、催涙弾が投げられ、デモ縁側は次第に押されて行つた。塵と催涙ガスの濛々たる中でピストルが鳴り、交番がひつくり返つた。デモ隊はだんだん退き、空地が目の前にできたが、そこには幾人もの学生や男女と警官が倒れ、血が流れていた。」云々、こう書いてあります。こういうように田渕君と異なつた資料は十分あるのであります。この点はいずれ後ほどの風早君の問題にも出て来ると思います。しかしこれは何も私の日台條約には関係はありませんから、私は一、二の例にとどめておきます。なお例を出せということなら、いくらでもありますから、後刻十分お出しするつもりであります。
  63. 田渕光一

    ○田渕委員 風早君もそれを非常に引用されてやつておりまするが、私は「世界」という雑誌、あるいはまたその梅崎何がしという人の思想も存じません。これは一方的にどうでも書けます。しかし最も公平なるところの各国別の反響という資料を見れば、これは外国の新聞社がどう見ておるかということは、はつきりいたしておる。イギリスアメリカを出すなら、公平でないと言われるかもしれませんが、最も中立であるスイスあたりでもそう言つております。五月三日付のジュルナール・ド・ジユネーヴにこういうふうに書いている。君もそれを読んでいるだろうが、参考に言つてみる。その社説では、この事件は幾つかの教訓を與えたものであるとなし、その第一は、いかなる場所でも共産主義がいつかは直接行動に出るということ、第二は、アメリカ人はその善意にもかかわらず、アジア人の魂の波長を発見し得なかつたこと、第三は、占領当局が日本の旧秩序を破壊し、それにかわる新秩序が確立されていないため、日本政府二つのいすの間にすわらせてしまつたということ、この三点をあげている。このような意味からいたしまして、最も公平であるスイスですから、共産主義の煽動であると言つている。これはあとで風早君の問題でも、いろいろ中核自衛隊、あるいは栄養分析ビタミン療法、その他諸君の軍事行動というものについて、私はこれを伺つて行くから、林君にはこの程度にいたします。決して吉田政府は暴力を行使しているのでもなければ、暴力の上にすわつているものでもないということだけ、この際はつきりいたしておきませんと、大衆が誤りますから、この点を伺つたのであります。
  64. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 他に質疑の通告がありませんから、林百郎君に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  65. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 次に、議員風早八十二君懲罰事犯の件を議題といたします。風早君の一身上弁明に対する質疑を許します。鍛冶良作君。
  66. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど来大分実質的には風早君に対する質問の内容もありましたから、私はできるだけ簡單にやります。  まず伺いたいのは、「メーデー当日、約十万の大衆が人民広場に向つて正々堂々行進したのは、正当な権利の行使であることは明白であります。」このことでありますが、われわれは人民広場とは、おそらく宮城前のことをさされると心得ております。共産党独特の使用語ですから、宮城前のあの騒擾のことと心得ますが、あながこれを、正々堂々と行進して、これは正当なる権利の行使であると認められる根拠を、ひとつ伺いたい。
  67. 風早八十二

    風早八十二君 これは東京地方裁判所の判決でありますが、この東京地方裁判所の判決におきまして、メーデーの行進が人民広場で行われるということについて、それが正当であるという趣旨の明確なる判決が下されております。「この外苑を何か侵すべからざる聖域であるかのように扱うことは相当でないといわなければならない。」「上に説明した皇居外苑の管理運営に関する国の基本方針、見たままの皇居外苑の状態、皇居外苑の性格の変化等に徴して考えると、皇居外苑の本質は、どこまでも、公共の用即ち主権の存する国民一般の用に供してあるという点にあつて、これを国民的集会や行事のために使用することはその本質に適するものであるといわなければならない。」次に中央メーデーというものについて、書いてあります。「新憲法のもとにおいては、国民はもはや臣民ではない。国の主権者である。そしてその国民の大部分は勤労者である。憲法は勤労者の地位をごく重く見ている。憲法第二十七條は「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と規定し、その第二十八條は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定している。その第二十一條、第二十五條も主として勤労者に関する規定である。わが国は勤労者中心の国家といつて差支ない国柄になつたということができる。実にわが国は勤労者が栄えることによつてよく大をなすことができるのである。それは国民主権を支柱とする憲法からいつて当然のことである。かような国柄にあつて、勤労者が、毎年五月一日を期して勤労者の団結を固め、その威力を示すために、平和のうちに集会及び示威行進を行うことは、当然憲法第二十一條の保障する集会や表現の自由に包攝されることはいうまでもないが、更に、勤労の尊嚴についての勤労者の自覚を促し、それに対する一般国民の尊敬を高める意味において、公共の福祉にも適するものということができる。」、「ことに労働者の地位の向上を目標とするメーデーの行事において、多数の労働者の集会や行進が、整然たる秩序と節度を保つて行われるかどうかは、一国の労働者の文化水準を示す一指標といえるから、この点十分の注意と努力とが必要である。しかしながら他面管理上多少の支障を免れないといつて国民公園本来の用途にそう使用を許さぬことは、少くとも公園が存在することの意義を一部放棄することになるのであつて、正当ではない。」「皇居外苑を使うことができないことによつて一般国民が蒙る迷惑なるものは、殆んど言うに足りないものであることを銘記すべきである。」それからまた「皇居外苑を集会、示威行進のために使用することは、「公共の用に供する」という皇居外苑の本質に抵触せず、また公園の機能を害しない。」「しかし集会、示威行進が高度に公共的のものであり、皇居外苑以外には施行の場所がなく、また皇居外苑で行うことがごく適当である場合には、厚生大臣の拒否は制限を受けるのである。要は他の一般国民に多少の迷惑を及ぼし、または公園を毀損することが免れないにもかかわらず、なお許可を與えなければならないほど、その集会または示威行進が公共的なものであるかどうかによつて、拒否できるか否かができるのである。」このようにして、判決によりまして、「よつて原告の請求は、被告のした本件不許可処分の取消を求める部分についてのみ、これを認容し、被告に対し原告の皇居外苑使用の妨害禁止を求める部分はこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二條但書を適用して、主文の通り判決する。」こういうわけで、判決が裁判長その他連名でなされました。その趣旨として、その不許可の処分はこれを取消すということがここに明記されておるのであります。このようにして、この人民広場にあの日のメーデー大衆が入つて行くことに対しては、これを拒否すべき何らの法的な根拠はないといわざるを得ないのであります。また、実にこれがきわめて明確な形でなされておりますために、現在警察側が盛んに、いわゆる騒擾事件と称して、多数の、一千名を越えるメーデー参加大衆を検挙いたしておりますが、その裁判はできない。(「そんなことを聞いているんじやない」と呼ぶ者あり)裁判は非常に困難をきわめておる、こういうような状態であります。以上の通りで、鍛冶委員は、この人民広場に正々堂々と入つて行くということは、これは正当かどうかという話でありますが、裁判所はそれを正当であると認めておるのであります。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 実に驚き入つたものだ。裁判所は、使わせることが正当だと言つたんで、あの日必ず入れなければならないということは言いやしない。ここにすでに君らはかつてなことを述べておるが……。(発言する者あり)さらに聞こう。平穏にメーデーが行われる場合使わせることは、それは正当だ。われわれもそう認めるが、そのメーデーを悪用して、不穏な形勢があるとしたら、それでも判決あるがゆえに使わせなければならぬという理由は一体どこにあるか。そのとき使用を禁止したことが、それが不適法だと言われるかどうか、その点を聞きましよう。
  69. 風早八十二

    風早八十二君 私はそんなことは別にお答えする必要はないと思う。
  70. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 なぜ私の質問に答える必要がないのか。
  71. 風早八十二

    風早八十二君 それは答える必要がありません。私の緊急質問に即して聞いていただきたい。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 なぜ答えられないか。答えられないなら、かぶとを脱ぎたまえ。そういうことではいかぬ。なるほど普通一般の場合使わせるのはいい。われわれもそう思うけれども、現実に五月一日のメーデーに不穏当なることが起るという懸念があつたら、行政処分としてこれをとめるのはあたりまえである。そこで聞くが、行政処分としてとめておつたことを知つてつたかどうか、それを聞こう。
  73. 風早八十二

    風早八十二君 私の知つているのは、裁判所があそこの使用を正当であるのみならず、これは必要であるという趣旨の判決を下していることである。あの不許可ということはけしからぬ、取消せということを言つている。この人民広場使用の問題に関しては、具体的に五月一日のことを言つているのでありましてこれについては、裁判所のこの判決こそが準拠すべき根拠であると考える。
  74. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、その入つていかぬという行政命令があつたというのかどうか、それを言いたまえ。あつたけれども、入るのがあたりまえだというのか。それがこの問題の根本なんだ。
  75. 風早八十二

    風早八十二君 そういうことは全然問題にならないし、全然知らない。
  76. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 知らないと言うに至つては……。
  77. 風早八十二

    風早八十二君 ただ言つておくが、そういう行政処分というものは、すでに無効であるということを判決しているじやないか。判決を読みたまえ。
  78. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 風早君が法律を知らぬ人ならば私は言わぬのだ。法律を知つている者は、判決がそういうことを認めたからといつて——それは一般の場合を判決で言うていることはわかつている。いや、命令は判決によつて効力を失うというなら、私は聞きたい。そういうことをあなた言えるなら、私はその根拠を承ろう。それで命令になつていることを知つてつて、それは知らぬと言うに至つては、君のいわゆる不逞なる言辞であることは明瞭である。しかしてこの命令があるにもかかわらず、この命令を犯している者を、正々堂々と権利の行使であると言う君の考え方が、一体まじめな考え方かどうか、それを聞きたい。これは言うだけやぼかしらぬが、ひとつ聞こう。
  79. 風早八十二

    風早八十二君 実際知らぬということは、知るはずがない。一体どこで、どういうわけで知るのだ。大衆はまたこれを知らなかつた。そういうことがかりにあるということは想像もしない。裁判所はもうすでにこの問題に対する裁定を下している。それ以外に何ものもない。
  80. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは驚いた。メーデーに参加する場合において、ちやんとメーデーの主催者と契約して、あそこへは入らぬというので、明治神宮でやつている。それを、これを知らなかつたと言う。それはなるほど私は悪いということを肯定してよろしい。悪いかもしれぬが、いやしくも命令が出て、その命令に従つて入らぬという約束をしておりながら、これをぶちこわす、この命令を破ることが、正々堂々たる権利の行使だと言うに至つては、君らの考え方は許すべからざるものだ、このことを断言しておこう。  それからその次に言うが、あのメーデー当日約十万の大衆が正々堂々と行つたと言うが、十万の大衆とは、日比谷公園へ集まつた全体をさして言うのか、それとも、あれから抜け出て宮城へ突入したものを言うのか、どつちなのか。
  81. 風早八十二

    風早八十二君 このメーデーに際して、人民広場に参加したいろいろの新聞社、この中で、労働組合、民主団体の機関紙の機関紙協会というのがあります。これは各労働組合、大衆団体のそれぞれが持つておる機関紙でありますが、それが共同デスクを持つて、各方面から全部材料を集めて、それによつて判断したものが約十万ということになつておる。その事実をあげておる。
  82. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも人の言うことに答えぬのだね。日比谷へ集まつたメーデーのあの行進のその全部をさして言うのか、あれから抜けて出て宮城前へ突入したのが十万と言うのか、どつちなのかと聞いておる。
  83. 風早八十二

    風早八十二君 要するに、あの午後半日の間、人民広場のあの事件に直接、間接間連した大衆の数だろうと私は考える。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすれば、いわゆる虚偽の事実をここで述べておることが明瞭になる。この点だ。正当なるメーデーの行進をした者は、日比谷から宮城前へ行つておらぬ。日比谷できれいに解散しておる。それ以外の不逞のやからが突入した。それにもかかわらず、それをメーデーで日比谷へ集まつた者全体だとこじつけておる。それをこじつけでないと、ことさら天下周知の事実を君らがそのように言つておる。さような虚偽なことを言つて、いかに言論自由なりといえども、いやしくも神聖なる国会において諸君はみずからに恥じないか。どうなんだ。
  85. 風早八十二

    風早八十二君 約十万ということを否定するのは君たちばかりだ。とにかくわれわれが入手した一切の資料は、みなひとしく約十万という数を出しておる。諸君は警察側の資料を信用しておるらしい。それには八千とあつた。しかし最初はこれは三千とも言つてつた。それが五千になり、八千になり、しまいには約一万というようなことも書いてある。だんだんとせり上げおる。しかしわれわれは最初から、大衆団体、民主団体、これの共同デスクに集まつた総合された判定によつて、約十万ということを言つておるので、この事実に従つてその質問を試みたにほかならないのだ。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 何もわれわれは警察側の言うことだけを信用しておるわけじやない。行政監察委員会で、メーデーの主催者である島上君が来て、われわれのメーデーと全然別個のものが行つたのだ。われわれと関係がないのだと明言しておる。それにもかかわらず、さようなことを言われるというのは、まことにこれはあわれむべきことだ。  その次に、警察は無謀にも計画的に数千の武装警官をこの広場に配備し、     ━━━━━━━━━━━━━ のである。これはあまり長くなるからなんだが、一体どこをつかまえてあなたはそういうことを言うのか。(「簡単に」と呼ぶ者あり)
  87. 風早八十二

    風早八十二君 これはすでにたびたび言つたように、五月二日の法務委員会において、田中警視総監自身が言つておるじやないか。田中警視総監自身が、これは最初から人民広場におびき寄せてと、ちやんと言つておるじやないか。昭和二十七年五月二日ですが、この法務委員会にはぼく自身が法務委員として出ておるのであつて、これはもうこの耳で聞いておるのだから、あとで速記をどう直したかしらぬが、とにかく速記録にも「こういう点を考慮いたしまして、皇居前の広場に入れまして、乱闘をいたしたような次第であります。」こういうことを言つておる。これはもう最初からちやんと入れるということをはつきり意識してやつたのである。それからなお諸君は、これはたびたび聞いておることであるから……。(「全部読んでみせろ」と呼ぶ者あり)「今回の暴徒のやり方は、全然メーデーというものとは別な行動でありまして、いわゆるメーデーを利用した一つの暴力破壊活動であるというふうに私どもは考えておりまして、」……(「その通りじやないか」と呼ぶ者あり)これは事前の話だ。「情報等も入手いたしまして、相当暴力行為等が行われるということも予想はいたしておつたのであります。ただ当局側といたしましては、これらの暴徒と繁華街におきまして、町の中において乱闘をいたしますることは、一般の通行人等に非常な死傷者を出したり、あるいはその他の物件に損壊を来し、あるいは非常な損失を来すようなこともありますので、こういう点を考慮いたしまして、皇居前の広場に入れまして、乱闘をいたしたような次第であります。」こういうことでありますが、この田中警視総監自身の言明をまつたく裏書きするかのごとく、さらに「改造」の六月号に、環豊一郎という筆者名で出ておる論文があります。これは論文というよりも、メーデーの人民広場のルポルタージュのようなものである。その中にこういうことが書いてある。百五十二ページの下段であります。「馬場先門からデモ隊が進入するとき、両側に待機していた武装警官隊は阻止も警告もせず、黙つて入れた。先頭が進入したとき(午後二時三十分)警官隊の指揮官は部下をかえりみて「ここはやりすごす。中へ入れてやつつける」と下知したのを傍にいた市民が聞いている。」こういうことが書いてある。これは非常にこれと符合している。これは明らかに計画的に人民をおびき寄せて、そこでやつつけるということを警察当局自身が上も下も言つていることを証明している。
  88. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 かつてなところだけを引用してさようなことを言われるが、最初から皇居前へ何千人の警官を派遣して、そして武器を用意してやつたというのが君の論点なんだ。さようなことがあるべきはずがないじやないか。ここにこう書いてある。田中総監がこう言つておる。「この中に加藤峯治という警視で、第一方面の予備隊長をやつておりました隊長でありますが、これは約三箇中隊、一箇中隊七十人として約二百十人の部下を率いて、皇居外苑を守つてつたのでありまするが、この一部暴徒が喚声をあげて宮城に向つて突進を始めましたので、これらの二百十名を率いまして、この部隊をかけ抜けまして、そうしてあの前にこの二百十名が体を犠牲に供して、この六千の暴徒と闘つたのであります。」こういうのであります。二百十名でここでやつてつた。それからだんだんだんだん押されて行つて、とうとうほんとう  の宮城前に行つて、二重橋のあのさくを乗り越してまで、宮城の中へ突破しようとした。そこでいよいよかなわぬというので、これに対して非常手段を用いた。それから予備隊を寄せ集めて、そこで予備隊が来たのが、それは何千人であつたでしよう。これが実情なんだ。こう書いてある。君らはかつてなところだけ読んでおる。かような実情だ。初めから何千人の者があそこにおつて、ピストルも用意する、何もかも用意してやつたという、そういうことを君らがいやしくも先ほど言う。神聖なる議場において、かようなことを言われる君方の考え方、言おうとするその思想、かようなことは一体許されておると思つておるのか、どうだね。
  89. 風早八十二

    風早八十二君 一体先ほどからしばしば、その考え方、思想と言うが、これはあくまで事実の問題だ。もしや思想を問題にするというなら、これはまた話は別だ。思想を問題にしているのか。それをはつきりしてもらいたい。
  90. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、ありもせぬことをいかにもあるように、神聖なる議場で言う、そのお前らの考え方をおれは言つておるのだ。さようなことは許されぬ。それをどう……。(発言する者あり)
  91. 風早八十二

    風早八十二君 お前らとは何だ。
  92. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 お前らはお前らだ。
  93. 風早八十二

    風早八十二君 お前らとは何だ。とんでもないことを言いやがる。一体神聖な懲罰委員会で、まじめな議論をしておるのだ。不都合千万だ。一体そういう、人を被告扱いするのがこの懲罰委員会か。そういうところには出る必要はない。
  94. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ものにはほどがある。さようなことをのめのめ言う以上は……。さようなことはいけないです。もう少し考えて……。(「取消せ」と呼び、その他発言する者多し)人の質問に答えるなら、正当なることを言わなくては、どうしようもないじやないか。
  95. 風早八十二

    風早八十二君 答えておるじやないか。
  96. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、そういうことを言うのは、あたりまえの普通のわれわれの仲間の者とは思つておらない。
  97. 風早八十二

    風早八十二君 では質問をやめたらいいじやないか。
  98. 高木松吉

    ○高木(松)委員 議事進行。風早君も相当疲れておるようですから、一時間ばかり休憩願いたいと思います。
  99. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 今議事進行に関して休憩の動議が出ました。風早君も大分疲れておるようであります。諸君も、もうすでにちようど二時ですから、一応……。
  100. 石田一松

    石田(一)委員 しかし、ちよつと委員長、今——これはよく気持はわかるのですけれども、いやしくも自由党の古参であるところの鍛冶君が——懲罰に付せられてここにおる風早君は、何も被告でも何でもない、同僚議員なんです。それをお前とか何とかと言うに至つては、ちよつと私はふだんの鍛冶君に似合わぬ興奮の仕方だと思うのです。こういうことは何でもないことですから、鍛冶君が、お前という言葉だけ取消して、君に直すと言えばそれでもうおしまいなんですから、今のその点は……。
  101. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと申しますが、ほんとうの発言ならばいいけれども、ただ空気が大分脱線したのですから……。
  102. 石田一松

    石田(一)委員 速記録を見て、あれば……。
  103. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 いずれ速記録を調査しまして、石田君にお答えしたいと思います。
  104. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ぼくは風早君にお前と言つたのではない。お前らと言つたのだよ。お前らとは、かようなことを風早君一人で言うておるのではない、それをさしておるのだ。
  105. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 それではここで休憩をいたします。     午後二時五分休憩      ————◇—————     午後五時五十八分開議
  106. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  議員風早八十二君懲罰事犯の件を議題といたします。風早君の身上弁明に対する質疑を続行いたします。鍛冶良作君。
  107. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 午前中に続いて、風早君がいわゆる荒唐無稽なことを並べて本会議で演説せられたことを私は明確にしたと思いますので、あとは一つ二つ事実について質問したいと思います。こういうのがあります。「しかるに、木村法務総裁は、これでもまだ警察のやり方が手ねるかつたと放言いたしましたが、政府はまだ日本人民を━━━━━━のであるか、人権尊重に対する法務総裁の所見をただしたいのである。」こう言つております。これははなはだ容赦のならぬ言葉だと心得ますが、一体政府はまだ人民を━━━━━━のであるかという、━━━━━という事実を、何によつてあなたは確認せられたのであるか、その点を承りたいと思います。
  108. 風早八十二

    風早八十二君 警察は人民広場において、先ほど私がいろいろあげた通りの事実、すなわち━━━━━━━をやつておる。その警察のやり方が、まだ手ぬるかつたという木村法務総裁の放言は、これは人民を━━━━━━ということなのです。
  109. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどあなたの指摘せられたことが、全然うそであるということが明白になつた。そういうものを━━━━━━だなどということはけしからぬことだ。そういう自分つてな前提をもとにして、そうして人を殺す、━━━━━、かようなことは、これ以上の暴言はありません。いわんや政府はまだ日本人民を━━━━━━━……、政府が殺すことを命令したという前提でなければ、こういうことは言われない。私はそのことを聞いておる。そういう事実がどこにあるか。政府が人民を殺すという命令をした事実があれば意味があるが、またあつたとしたらたいへんなことだから、指摘してもらいたい。ないのに、かようなことを言つたとしたら、君の責任はいかに重いかをみずからさとるべきだ。この点を聞きたい。
  110. 風早八十二

    風早八十二君 鍛冶委員自分つての前提のもとにやつておる質問に、一々答弁する必要はないと思う。
  111. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじやあなたは何だね、かようなことは論拠がないのに、そういうことを言つておるんだね。あるなら指摘してみたまえ。政府がだれに人を殺せと命令をしたか。それがなくてどうしてかようなことが言えるか。
  112. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 風早君。もう答弁ありませんか。
  113. 風早八十二

    風早八十二君 ありません。
  114. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 答弁ないそうです。
  115. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もちろんできないでしよう。けつこうです。どうせすてばちなんだろうから……。  その次に聞き捨てならぬことは、「多数の遺骸を隠しておる。これこそ、盗人たけだけしい限りであるばかりでなく、天人ともに許すべからざる非人道行為であります。」こう言つておる。遺骸を隠したという事実があつた指摘してもらいたい。
  116. 風早八十二

    風早八十二君 私はすべて大衆が明確に言い、また信じておるその事実をもつて政府質問したまででありまして、それ以外の何ものでもない。
  117. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大衆が言つておる、それでおれは信じておる。大衆とはだれをさしているのか。大衆とは何を言うのか。
  118. 風早八十二

    風早八十二君 どうも委員長からも注意してもらいたいのだけれども、同じ質問が非常に重複されて出ておるのであります。たびたび私が事実をもつてすでに述べておることを、また聞かれておるのであります。一例をあげますと、この機関紙協会の共同デスクに集まつた総合的な情報、こういうものがすでにあるのであります。私はその事実をあげて政府にその真偽をただしたまでなのであります。
  119. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 機関紙協会とかなんとか言うが、そのものが遺骸を隠しておる事実を何か指摘して証拠でもあげたのか。ただそういうことを言つておるから、おれが言つたということなのか。
  120. 風早八十二

    風早八十二君 およそ国会議員というものは、国民が疑問とするところを疑問として、政府にその真偽をただすということは、これは当然の義務であります。私はその義務を遂行しておる。
  121. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 じようだん言つちやいけませんよ。こういうことを言つておる、こういううわさがあるが、これはどうだというのなら、私はあなたの言われることもいいと思うが、そうじやない。隠しておる、多数の遺骸を隠しておる。これこそ、盗人たけだけしい限りである。天人ともに許すべからざる非人道行為である。(「そう国民言つておる」と呼ぶ者あり)こういううわさがあるがどうだというなら、私は聞くが、あなたの言うのは、そういううわさをもつて、あるものとして、そうして天人ともに許すべからざる非人道行為である……。一体常識のある者の言えることか。またかようなことを言つて自分に責任がないと思つているのかどうだ答えたまえ。
  122. 風早八十二

    風早八十二君 私はもうこれ以上別に答弁の必要はないと思いますが、たとえば在京の民主団体機関紙協会の共同デスクに集まつた情報、すなわち各団体の大衆が一致して確認しながら、その遺骸が見つからないために、最後の確認をすることができない、行方不明になつておる、そういうものが七名ある。また東大学生新聞には、塚本トシオ君、これがMPに六発を撃たれて即死しておる。日比谷で職安のおばさんが撃たれ、桜田門で衝突直前MPの自動車にひき殺されて運ばれて行つた。広場で足を撃たれて倒れているところを、後頭部をピストルに撃たれた。こういうような記事がいくらもあるわけであります。これらはすべて実際の目撃者がその事実を持つて来て、そうしてこの共同デスクで收集しているのであります。これらを総括した結論的な事実として、確かにあの二名以外になお多数の死者があるということが十分に推定し得られる。これを私は事実として、これを根拠にして聞いているだけの話。その他重傷者が五十一名ある。その日の診断によつても危篤が五名ある。これらもそのとき十分に考慮して言つておるわけであります。
  123. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これ以上言つたつてしようがない。あなたの言うのが、こういうことを言われているが、これは事実かとか言うのならいいが、多数の遺骸を隠しておる。かようなことは盗人たけだけしい限りであるばかりでなく、天人ともに許すべからざる非人道的行為だ、かようなことを断定して、今聞けば、うわさをもつてつたとか、さようなことで、堂々とこういうところで述べられる度胸には、ただあきれざるを得ない。その程度にしておきます。  もう一つ聞きますが、その次は、「大衆の抵抗は、この——に対する正当防衛であり、民族的憤激の爆発であつたのであります。」これはとりもなおさず、あのメーデーの後に起つた暴動は正当防衛であつて、適法な行為であるというところの言葉だと思うのでありますが、その通り間違いないか。
  124. 風早八十二

    風早八十二君 これもまた、実際に目撃した大衆はもちろん、その他の大衆も、これは明確に信じておることであります。それを私が取上げたまでの話。
  125. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも君は人のうわさをもつてそういうことを言うが、私は君の信念を聞いているのだ。国民全体の憤激の的である騒擾罪を、正当な行為であり、適法な行為であると言われることに私は驚いて、これは正当でない、適法行為でないと思うがどうだと、こういうのです。
  126. 風早八十二

    風早八十二君 私の信念を問われているようですが、遺憾ながらこれは懲罰委員会であります。懲罰委員は検事や特審じやありません。人の信念のいかんというようなことがここで問題になるとは私は思わない、従つて答弁の限りでない。
  127. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ここに「正当防衛」であるということを言われるが、君はいかなる信念をもつてこう言つたのかを聞いておる。もうそれ以上答えられぬのなら答えないでもよろしい。もう一つ聞きますが、これが適法行為である、正当防衛である、そして民族的憤激の爆発であつた……。そうして見ると、あなたはあの騒擾をもつて適法なるものとし、かようなことの起ることをあなたが希望し、またはかようなことのあることを喜んでおる、こう見るよりほかないが、これはどうだ。
  128. 風早八十二

    風早八十二君 鍛冶委員はけさは遅刻して来られたのでありますが、前回の私の身上の弁明の中でも、十分にその点は、大衆が実際に責任をもつて書いておるルポルタージュの中にはつきり出ておる。これはまつたく大衆の憤激の爆発だと言つておる。私はこのことをもつて政府に迫つたにすぎないわけです。
  129. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは巨細にわけると二通りに解さなければならない。「大衆の抵抗は、この——に対する正当防衛であり、」抵抗したことは正当防衛であつて、適法行為である、こう言つておる。その次には「民族的憤激の爆発であつたのであります。」これは正当防衛と違う。これはあそこで騒いだことが、民族的憤激の爆発であると、かようにいわなければならない。さようなことを今もかわらず考えておるのか。それこそ、国民大多数が天人ともに許さざる行為だと考えておるものを、これを民族的憤激の爆発であつたのだ、そうして警官に抵抗したのは、正当防衛で適法だと、二通り言つておるのである。これは間違いないことだと思うが、あなたはどうだと、こう聞いておるのです。
  130. 風早八十二

    風早八十二君 たとえば、私が前に述べた環豊一郎君のルポルタージュの中にも、「逃げるものに対しての警官隊の追討ち、その滅多討ちの攻撃、老若の婦女子に対してのむごたらしい傷害、それを目のあたりにした一般市民がどんなに憤怒に燃えていたことか。」こういうことが書いてあります。これはもうルポルタージュの中から、自然に大衆もまたその憤怒に燃えておる事実を指摘しておるわけです。こういうことは、その当時新聞なりわれわれの接触した一切の大衆からはつきりわれわれは伝えられておるのです。これが明白なる事実なんです。そういうものを私はあくまで基礎にして政府質問しておるわけです。
  131. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうなると、またあとにもどるのだが、私が、諸君の言う人民広場はわれわれは宮城前広場と言つておるが、あそこに入つていかぬという命令があつたことを知つておるか、と言うと、別に答えられない。その命令を破つたものを、正々堂々と権利の行使であると言うから問題にならない。それに対する答弁ができないというと、これまた、さような根拠のない一部の者の言つたことを、うわさやそういうことの創作をもつて断定して、神聖なる議場において、かような乱暴な言葉を吐くに至つては、君自身相当の制裁のあるべきことを自覚せなければならぬと思うのであるが、しかし自覚しないのであるなら、われわれはわれわれとしての行動をとるだけだ。最後に君の意見を聞いておこう。
  132. 風早八十二

    風早八十二君 何を一体質問しているのかわからない。
  133. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 答えられないなら、よろしゆうございます。どうせすてばちの議論であるから、われわれはわれわれの考えによつてやります。
  134. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 田渕光一君。
  135. 田渕光一

    ○田渕委員 これは私は先ほど林君にも聞いたのでありますが、まずメーデーの数字の問題であります。風早君は五十万と言い、皇居前広場を十万人と言つておりますが、実際十万はおろか一万も入つておりませんことは、私は当日十二時から五時半、日比谷の解散まで、ずつと調査いたしておつたのでありまするから、逐一知つておるのであります。こういう数字からそもそもデマであり、虚構といわゆる捏造といわなければならぬのでありますが、この皇居前の十万というような数字は、あらゆる資料その他によつたものであつて、あなたは自分で目撃されたのではないのでございましよう。それをどこまで十万あるいはまた五十万——総評の島上善五郎君の行政監察特別委員会での証言においても、それだけの数字を言つておりません。それでありますから、それはなるほど共産党を支持するところの赤系の雑誌、あるいは共産主義の思想を持つておる方は、いろいろ書くでりましようけれども、そういう一方的なものばかりではなく、少くとも私たちは、懲罰委員会では、あらゆる公平な資料から出して来た——もちろん私は、インドでもあるいはフィリピンで書かれた論文でも引用して行きます。またイギリスアメリカ、スイスその他の新聞記者の率直な報告も引用して行きます。風早君のは、ただ一方的ないわゆる共産主義、あるいは共産主義思想の人たちの書いたものばかりをもつて、一方的に言つておる。だから、そういうことでなく、あなたは、五十万とかあるいは皇居前の十万とかいうようなこの数字は、自分が目撃したのでございましようか。それともどういう資料でもつて言われたのか。この点をひとつつておきたい、数字からひとつ……。
  136. 風早八十二

    風早八十二君 けさほども十万というようなことをいろいろ聞いておられる。私が実際聞きたいのです。田渕委員は実際自分で勘定されたのですか。警察の数字というものは、最初たしか三千と出ていたのです。そうすると間もなく五千になつた。それから一万になつた。だんだんせり上つて来ております。これは一つのあなたの論拠であると思います。先ほど申したように、機関紙協会というのは、これは総評系のあらゆる大衆、労働組合初めその他の民主団体の共同の代表が集つておるところでありまして、そこで約十万という大体推定をしておるわけであります。私はもちろんこの労働者階級の判断が最もこの際根拠とすべきものであると考えて、この数字を出したまでであります。
  137. 田渕光一

    ○田渕委員 それなら常識からでも申し上げましよう。そもそも神宮外苑に集まりました五月一日のメーデーの人民が、デモ行進に移りましたときには、東西南北、中部班と、この五方面に分断しておるのであります。もちろんこれは共産党の陽動作戦による、あるいはまたその他の戰法も島上君がとられたことは事実であります。かりにあなたの言う外苑に五十万の大衆が寄つたと仮定いたしましても、これが五方面に分断されてデモ行進いたしておる。その中部班が日比谷公園において解散するというので、これがかりにこのうちの一つとして十万と仮定いたしまして、そのうちの一部分しかあそこに入つておらぬことを見ても、十万というものはあり得ない話です。少くとも日比谷公園では大部分が解散してしまつた。わずかな全学連の連中が二、三千人馬場先門を突破したということは、そのデモに参加いたしておつた電産がはつきりこれを言うておる。全国繊維の滝田君も証人に呼んだときにはつきり言つておるのであります。また合繊新聞で全国繊維同盟の連中が座談会を開いたときに、はつきり言つております。この点を申し上げてもあなたが御参考になると思うのでありますが、たとえばこういうことを言つておる。(「資本家の手先が言つておることだ」と呼ぶ者あり)これは資本家でも何でもない。いわゆる総評の一部の……。(「資本家のボスだ」と呼ぶ者あり)ボスでなくてもこう言つておる。富田君はこういうことを言つておる。これは五月十日の合繊新聞の二面に書いてある。これはひとつ参考に……。数字から参考に言う。富田君は「日比谷公園へ向う中部班の先頭に全学連の学生約二千が立ち禁止されていたジクザグ・デモをやつて一挙に皇居前広場へ進んだ。警官隊はこれを阻止しようとしたが、押え切れず、デモ隊はなだれを打つて広場へ突入した。それを各班から押寄せて来た学生、朝鮮人、自由労働者らが続々と加わつて約三万名」となつた、こう言つておる。これはその中に入つてつた富田君であります。私の三千と言い、五千と言い、一万と言うのは)時間的に言うのであります。皇居前の二重橋の前にいた日本共産党新宿地区委員会というのを、写真にもとつておる。朝日新聞も警視庁もとつております。この旗を立てて二重橋を乗つ取つた。そうして日本共産党万歳というむしろ旗を立てた。これがちようど二時半です。このときには約二千人から三千人、それにずつと加わつて来出して、祝田門でいよいよ突撃が始まる時分には、五千から八千と見る。どこで見たかといつて、われわれどこの会場へ行つても、きようは二千人寄つておるとか、きようは三千人集まつておるとか、圓山公園ならば一万人入る、こういう常識で、私は勘定する。あなたのは、資料その他によつて、要するに、人の言う資料によつて十万とはつきり言われておるのであります。私のは、目の前に本人自身がみずから見て来ておる。私はうそも偽りも言いません。何一も万を二万と言うのではない、三千を五千と言うのでもありません。むしろ警視庁などよりわれわれの方が、大衆的な人間を勘定するのはおよそのことがわかる。ここで私にはどう考えても一万と入つておらないものを、十万の人民広場に押し寄せたところの大衆の声であるというようなことは、少くとも虚構としかわれわれにはとれないのであります。しかるに、あなたがどこまでも十万だと主張するならば、それでよろしい。よろしいけれども、はつきりと総評に加わつてつたところの全繊の富田さんが、そういうことを言つておる。あるいは新聞その他ではつきりわかつて来ているのであります。かような意味で、五十万の外苑のつまり当日寄つたメーデーの参加者が、五方面に分断されて行つておる。かりに五十万と見ても——総数二十万というのだから、四万しか集まりやせぬ。四万の一部分が日比谷公園に乗つて、大部分解散してしまつて、二、三千が馬場先門からなだれを打つて突入した。これを、そのときには二重橋の前に十万、こういうようなことを言つておる。諸君、ほらを吹くのもいいかげんにしてもらわぬと、少くとも議員たる者が、常識から割り出してもわかるものを、一万も入つておらぬのに十万も押しかけたというような数字はどうしても私は納得できない。あなたはどこまでも十万ということを支持されるかどうか。これは数字から行く一つ虚構捏造の中に入つて来  るのであります。ひとつはつきりこの点を御回答願いたい。
  138. 風早八十二

    風早八十二君 先ほど述べた通りでありまして、われわれは、この機関紙協会の共同デスクの資料というこの質料で、はつきり総合し、科学的に検討した。「アカハタ」にそう書いてある。(「アカハタ」はお前たちのところの機関紙じやないか」と呼び、その他発言する者多し)ところが「アカハタ」でない一つの文献をあげておきましよう。「デモの行進は、先頭が二重橋前で武装警官隊の襲撃をうけているとき、後尾はまだ国会議事堂の付近を歩いていた。その数は約十万。霞ケ関から日比谷公園を抜けて日比谷交叉点、馬場先門と何も知らずに、前につづいて宮城前広場へ入つて来る。しかも、それは明治神宮外苑から五隊に分れて出発したうちの一隊の中部部隊だけで、そのような数にのぼつている。そこへさらに、「人民広場へ」と、すぐ近く虎の門へ向つた南部部隊や、新宿、澁谷へ向つた北部や西部の部隊もやつてきた。」こういうのです。十万あるいはそれ以上という事実をはつきり指摘している文献は、いくらでもある。われわれはこれに従つて言つておるわけです。この出所は「改造」の六月号の百五十ページの上段にあります。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  139. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 静粛に願います。
  140. 田渕光一

    ○田渕委員 まあそれは何とでも……。私はこれ以上問答いたしませんが、われわれは当委員会において判定を下す前に、それは資料といたしますについて、あまりにもかけ離れておらぬかということを念のために申し上げる。もう一つ、これを立体的、写真的に言うならば、室中から写真をとつております。これが十万あるか、一万あるか、はつきりわかつておるのであります。かような点において、いかなる資料を持たれておられても、私は十万はなかつたということを率直に申し上げます。  それから先ほど鍛冶委員もお聞きになつたのでありますが、「都民の即死者九名、重軽傷六百数十名、たちまち人民広場は血の広場と化した」と言つておる。死者九名ということについてはわれわれは納得行かない。もちろん東京都の民生局におりました一人が即死した。また一日おいて法大の学生が一人なくなつた、この二名は聞いておりますが、こういうようなものも新聞にも一つも書いておらぬ。あるいは警視庁もその死体を収容しておらぬければ、報告もない。こういうことでどつから九名と言つたか。先ほどもいろいろおつしやつておられますけれども、この九名の死者というものはわれわれ納得が行かない。私はそう見ておりません。けが人は確かにありました。これが広場の松の木の下において資金カンパを集めておる、そうして水で顔を冷やしておる。私は幾人かけが人も見ておりますけれども、死体というものは私は見ておらぬ。即死者の一人があつたということは、私は現場を知らない、これは新聞で知つただけでありますが、即死者九名を出したというような点はどこからお聞きになつたか、あるいはどの資料から言われたか、警視庁にもそんなものはありませんと言つておる。もし諸君が言うように、ありとせば、行方不明の人間がなければならぬ。即死して帰つて来ない、もし警視庁が死体を隠したとするならば、うちの主人が本日のメーデーに参加しまして帰つて参りませんと届けなければなりません。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  141. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 静粛に願います。
  142. 田渕光一

    ○田渕委員 風早君が死者九名と言うのは、雑誌その他の資料によつて言うのでありますか、伺いたい。
  143. 風早八十二

    風早八十二君 根本は、先ほど鍛冶委員に対する答弁で盡きておる。それ以外に別に答弁することはありません。なおこの点については、すでに私の本会議における身上弁明の中でも指摘してありますが、行方不明の者が多数あるわけです。これについて某議員並びに某都会議員が、東京の地方検事局に参りまして、その行方を追究したわけです。そのときに田中次席検事が言つておる。たとえば目黒川で死体が出て来た。その頭部並びに胸部に傷がある、どうも変だとは思う、しかし何分にも日にちがたつているからはつきりしたことは言えない。こういう答弁をやつておる。行方不明者がないじやないかと言うが、行方不明者はある。そういつた行方不明者を、これはおそらく今警察が盛んに追究しておることだと思いますが、ほんとうのあれの一つの材料としても、あなた方は警察と御懇意でありましようから、よく聞いてもらいたい。
  144. 田渕光一

    ○田渕委員 とにかく鍛冶委員が激昂されるのも無理もないと思います。そういう場合に、白々しく言つたのでは審理が済みませんから、ある程度までひとつお答えを願いたいのであります。たとえばこういうことを言つておる。「自由を行使した後に散会したに違いない。」これはあなたの発言の資料の二ページであります。しかるに、宮城側にすでに待ち構えていた数千名の警官隊は、━━━━━━━━━━━━━━━━━」こう言うが、待ち構えていたのではありません。おそらくあなた方は島上と結託しておる。そうして左派を入れ、あるいは共産党のため、全学連もいたでしよう。統一メーデーとして、二十万のものを四万ずつか、四万とか三万とか、二万もありましようが、とにかくこれを五方面に分断して、五方面において警察を襲撃する、交番を襲撃するという、いわゆる球根栽培法によるところの陽動作戰をやつた。そこで警察の方は、なるべく交番やその他に被害がないようにというので、交番を多く警備した。一方五方面に分断された行進に対して、警備をつけて行つたが、手薄のために、まさか宮城の方には来まいというので、百五十名しか置いていなかつた。実際言うてみれば、あすこに行つてみたとき、ちようど五時半でしたが、日比谷の何が終りまして、私は国民の一人として宮内庁にお見舞に行つた。そこで、宮内庁の和田倉門のところに立番をしておる巡査に、どうだつたと聞いたら、ちようどデモ除が来たときに私もおりましたが、まるで朝鮮人は気違いみたいでした。私どもほんとにあやまつてつた、手が出ない、そのうちに、たつたつたつたつと三個中隊ばかり来てくれたので助かつた。こう言うのです。これは事実であります。おびえておつたのです。百五十人しかいないときに、突破されて、馬場先門を通つて宮城の方、二重橋の前へ警官が押されて行つた。こういうことで、これは明白な事実であります。これを、数千人の警官が待ち構えておつて、さも機関銃をすえてでも打つたように言うということは、表現があまりにもひどい。ここらがわれわれは虚構捏造といわざるを得ないところです。あなたの言う通りに、数千名の警官は実際に行つておりません。むしろやられておつたのだが、いよいよしかたがなくて、方々狩り集めて、そこに押し返して行つたときに、アメリカの自動車をひつくり返して焼いてしまつた。そうして日比谷の活動街の方に押し込めた。ずつと私はついて行つたからよくわかる。これを数千名の警官が待ち構えておつた、こう言うということはどうしても私納得できません。これはあなたは雑誌その他の記事によつてこれを言われたのでありますか。(「この写真を見ろ」と呼ぶ者あり)こんなものは三時半か四時ごろのことだ。とにかく時間的には、それは事実だ。それはそうでしよう。あとで来た。私の言うのは、風早君が、待ち構えておつたということは、そうでないと言うのだ。それでずつと集まつて来たのは、ます三時半から四時ごろです。だから、あなたの言うようなぐあいに、宮城側にすでに待ち構えていた数千の警官が——これは絶対に数千はおろか——二百人と警視庁では言つておるが、私は百五十人と見ておる。こういうようなことは大きな食い違いでしよう。百五十人か二百人と数千名、これは大きな食い違いだ。しかも待ち構えておつたのじやない。なるべく事の起らないように、丸の内署ではピストルを持たさずにやつてつた。私の見たところでは百五十人、あなたの言う数千名との間に大きな食い違いがある、どうです、この点は……。
  145. 風早八十二

    風早八十二君 田渕委員は見たと言われるが、私はおそらく目のつけどころが少しどうかと思うのです。やはりこれを特に見るために行つておる、そういう人たちの言うことも、これもよくひとつ聞いてもらわなくちやいかぬと思うのです。あなたはやはり観察したと言われる。それは事実だと言われる。私は必ずしもそれはうそだとは言いません。しかしまつたく違つた目の人もあるわけです。私どもはその目の人の——この事実を基礎にして言つているわけなのです。たとえば「しかしながら、実際にあのメーデーのいきさつを目のあたりにしたものは事態が何であるかをまざまざと知つている。一般市民はもちろん、新聞記者——外人記者までが警官の挑発と暴挙に憤り、新聞記者さえ警官がピストルを乱射するのを制止していたという。」「子供づれや一家総出で来たと思われる、幼い子供たちの参加が特に共産党の団体に多かつた。また学生たちは、特に女子学生が多数参加していたが、ズボンなどはいているものは一人もなく、ことごとくスカートをはいて、ネッカチーフなどで美しく飾つていた。そこに「騒擾」の空気は全く予想されなかつたのである。大体、常識からいつてメーデーはすべての勤労者の「お祭り」である。労働者もサラリーマンも大学の先生も、およそすべての勤労者が一年に一回職場から解放されて、働く者の地位向上のために階級的示威を行い、そして青空の下で終日踊り楽しむ「お祭り」であつて、「押しかけ」の暴動ではない。もしも一部のものがそんなことを企んだら他のものから排撃されてしまい、その運動は失敗に帰するのはわかりきつている。そんな小兒病的な冒險主義——それはアナキストなどの極左偏向で、国民的統一戰線を叫んでいるこんにちの共産党が敢てするとは思われもしない。学生たちも宮城前広場へ入つたら、歌でもうたう程度で解散するつもりらしかつたことは、二重橋前に進んだ先頭部隊は立止つて「休め」の姿勢をしていたし、あとから入つてきた学生たちは、スラクムを解いて円陣をつくり、歌をうたつてもいた。その円陣をめがけて警察隊は襲いかかつたりしたのである。そこで、第三者としてあのメーデー前夜のいきさつを見聞したものには、奇怪にたえぬ幾多の事実があるのだ。一、何よりもまず、二重橋前で整列しかけていたデモ隊に対し、警察隊が不意討ちに「武力」を用いて殺傷行為に出たこと。そして退却の余裕もあたえずに、逃げようとするものを追いかけて攻撃したこと」。このことをメーデーのいきさつを見聞した者は、奇怪にたえぬ事実としてあげておるのであります。(「だれが書いたんだ」と呼ぶ者あり)これは「改造」の六月号、環豊一郎君のルポルタージュであります。(「共産党のまわしものだ」と呼ぶ者あり)何か知らない。
  146. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで、そういう資料であなたは言われたわけだな。それは人はどうとも書けましよう。ことに私は「改造」のその記事はどういう思想を持つている人が書いたかしらんが、これもあまりにはなはだしい虚構捏造だから私は申し上げる。少くとも当日は宮城前を使わせないということで、青山の外苑に寄つた。そうして東西南北にわかれて、中部班は日比谷公園で散会、これに参加したところの全部の参加者は平穏裡にわかれる、そこで堂々と停止をすることの順序があつて、来たか来ないかということは——すでに日比谷の交叉点から馬場先門の司令部を通るまでのせり合いといもうのは、なかなかそういう秩序われわれ行くようなものじやありません。今の記事はいかにも作文的にできておるので、参考のために申し上げる。かようなぐあいにして、馬場先門から出発しようとする。通すまいとする。それをぶち破つてつて行こうとしたら、それに並行して先に二重橋にまわつて、あのまま出て行つたということが事実であります。その書き方はいかにも虚構であり、捏造であるからそれを申し上げておく。これは風早君がでたらめな論拠をもつてやるから言うのである。  そこでこういうことを風早君が言つておる。「わが党は、国民にかわつて政府に要求する。一、政府被害国民に対して公に陳謝し、完全な賠償をなすべし。多数の遺骸はどうした。遺骸を出せ。一、警視総監並びにすべての下手人たる警官を即時罷免し……」法律家にも似合わね風早君の言葉には、私は納得が行かない。なぜならば、現在首都警察というものは政府が任免権を持つておらぬ。どうして政府がこれを罷免することができるか。そういうことを言つて政府にすべてを結びつけて、わが吉田内閣を誹謗する。これはあまりにもあなたの発言としては——私はこういうことは、あなたの考え方から出たのか、あるいは共産党の本部の原稿から出たのかしらぬが、あまりにもはなはだしい。この点いわゆる行政監察ではこういうふうにはつきり結論を出しておる。行政監察特別委員会では、首都警察の性格の問題についても注意をいたしております。首都警察としてのあり方が従来その責任の点においてあいまいであり、政府が確固たる責任を持つていなかつた。この点首都警察の性格はいかにあるべきか。こういう結論を出している。というのは、首都警察というものは公安委員会が管理いたし、警視総監を置いている。どこにわが党が罷免することができるか。あるいはわが党が支持するところの現政府がどうしてこの警察を罷免できるか。こういうような点について、できもしないことをどうして要求するのか、これをひとまず伺いたい。
  147. 風早八十二

    風早八十二君 罷免すべきものがあるわけなんです。実際の官吏を罷免すべき権利はあるのです。そういうふうな罷免する人間がだれであるかということは、そこに一つ言つているわけではない。よくそれを読んでもらいたい。そういう政治的な主張というものはできるのです。ちやんと公安委員という罷免する権限者があるわけです。だから罷免ということは、政治的主張が通れば、公安委員が権限に従つて罷免する。だれが罷免するということは々あげる必要はない。
  148. 田渕光一

    ○田渕委員 それからもう一つ伺いたいのは、君子は交わりを断つても悪声を放たぬということは東洋の古諺でもあり、われわれの最もよく知るところである。ところが、共産党の中西君が脱党いたしまして、その声明を出すや、ただちに諸君は、あれは脱落者だ、こう言つている。それに対する中西君の反駁が出ている。これは参考になるところがあると思います。これは六月十五日のサンデー毎日にこう出している。「脱落御返上」というところで、中西君がはつきりこう言つておる。なぜかと申しますると、このアサヒグラフの五月二十一日号の写真をもつて風早君がはつきり言われたから、私は申し上げるのだが、第九ページのまん中の写真です。二重橋の欄干の端、日本共産党新宿区委員会の赤旗が立つているところです。この写真においてはつきりしているが、こういうようなぐあいにして、諸君がすべて尖鋭分子をかり立てて、いわゆる球根栽培法、あるいはまた栄養分析表その他において、暴力革命に持つて行こうとする。そういうことでは、共産党だけで革命はできるものではないということを、中西君がはつきり言つておる。うぬぼれ根性もひど過ぎるということを言つておる。「日本の共産主義者にいつまでもそんな自惚れが拔けず、つまらぬ思い上つた優越感をいだいているかぎり、革命なんかできるものではない。」とはつきり言つておる。(「懲罰関係がない」と呼ぶ者あり)関係があるのだ。かような意味で、諸君がまつたく暴力革命に持つて行こうというあらゆる手を、いわゆる中核自衛隊その他でやる。そのやるそもそものものが、この五月一日のメーデーで、そのテスト・ケースとしてこれをやつたにすぎない。これを裏でやらせておいて、表からは、これもやつた、あれもやつた、そうして警官がやつたのだといつて持ちかけて来て、大衆を煽動するから、私はそれはここに関連がないとは言えない。やはり国民のうちにも、そういう矯激の者もあろうけれども、またおちついた良識者は、このメーデーの結果というものをどう見たか。いかにも共産党にあいそうつかしている。こういうことの批判が、諸君の脱落者を出し、すでに出さんとするところである。そういうことになると、結局脱落者というような言葉を使うということは、すでに同志に対する悪声である。君子は交わりを断つても悪声を放たぬ、きのうまで同志であつた者が、きようはもう共産党のやり方がはなはだしいから、これでは君らとは行をともにできないと言つて、一応縁を切れば、ただちにあれは脱落者だと言う。かえつてむしろ、諸君が批判されているということをみずから考えなければならぬ。五月一日のメーデーというものは、諸君がずつと前から計画したことで、すでに社会党の左派の島上善五郎というものは、はつきり東京都の六区の選挙に社会党左派の公認として出ておる。この島上についた者は全部社会党の左派である。それが陽動作戦で警察を分断させておいて、二重橋に持つてつて、数千人の警官を待ち受けてやつた。こういうことになる。そうして死にもしない人を、即死九名出して隠蔽しているとか、いや損害賠償だ、あばれたあげくにまだ損害賠償、あばれるのもここまで来たら、純真な学生などは迷う。私は議員として慎むべきだと思う。であります。私は風早君の問題は、時間があればまだまだ伺いたいのだけれども、予定の共産党と約束もあつて、早く打切ろうとしておるから、やめるが、諸君がいかに計画し、いかに行動に出て来ても、日本国民はついて行かない。むしろ顰蹙しておるということを、よく銘記しておいていただきたい。少くとも風早君があのアサヒグラフをもつて先ほど一身上弁明の証拠に出されたのでありますが、そのアサヒグラフの九ページに、りつぱに日本共産党新宿区委員会というものが二重橋のあのそばに赤旗を立てて、大きなむしろ旗を立てて、警官がいなければ、彼らは二重橋の門をくぐつてつたであろうということも考えられる。やりかねないことである。これは日本の大衆の利益擁護のためにやつている警察だ。何も共産党だけに彈圧を食わそうということでやつてつたのではないということ、これらに向つて発砲しようと思つてつてつたのではないということを私ははつきり言つて、この風早君の発言というものが、ほとんど全部といつてよろしい、全部が虚構捏造である。そうして大衆を煽動したものである。こういうふうにとるのであります。
  149. 風早八十二

    風早八十二君 大体今言われたことは、特に中西君のことは、全然われわれの懲罰事犯とは関係がない、大体田渕委員の今の発言は、別に懲罰には関係がありませんから、御答弁の限りではありません。
  150. 田渕光一

    ○田渕委員 大体これ以上進めても、こういわゆる盗人たけだけしいで、白々しくては、われわれは要するに愼重に判断を下す以外にないのであります。
  151. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 他に発言の通告もありませんから、風早君の身上弁明に対する質疑はこれにて終了いたしました。
  152. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 議員風早八十二君懲罰事犯の件及び議員林百郎君懲罰事犯の件の両件につきましては、それぞれ動議提出者の説明及び本人の身上弁明を聞きまして、これに対する質疑も全部終了いたしました。  この際両件を一括議題といたしまして、委員各位の御意見を求めます。すなわち議員風早八十二君及び議員林百郎君について、それぞれ懲罰事犯として懲罰を科すべきかどうか、及び懲罰を科するとすれば、国会法第百二十二條に規定するいずれの懲罰を科すべきかについて御意見を求めます。田渕光一君。
  153. 田渕光一

    ○田渕委員 動議を提出いたします。すなわち議員風早八十二君及び議員林百郎君の両名に対しましては、いずれもこれに懲罰を科すべきものとし、国会法第百二十二條第二号による公開の議場における陳謝を命ずべきものと決せられんことを望みます。以下その理由について申し述べたいと思うのであります。  すなわち、林百郎君の去る六月七日本会議場における午後四時四分ごろからの発言、また風早君の問題になつておりまする発言、これはいずれも——憲法第五十八條に規定いたしておりまするところによれば、院内の秩序を乱した議員の懲罰規定をはつきりいたしておるのであります。ことに衆議院規則二百四十五條の「議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者に対しては、議院は、これを除名することができる。」という規定もあるのであります。またこれは国会法第百十九條に厳禁いたしております無礼の言であります。少くとも吉田政府は━━━━━━━━だとまで無礼の言を用いておるのであります。かような点、また国会の言論が自由であるというのに名をかりまして、言いたいほうだいの虚構捏造を論じておるのであります。(「その通り」)かようなことは東條内閣にもなかつたと、林君あるいはまた風早君が一身上弁明で述べておりまするけれども、その当時と今日との議場の空気というものは、全然違つております。国の情勢も違つております。国際情勢の今日、この中におきまして、少くとも日本国民の大部分が支持するところのこの政府が條約を結びましたところの蒋介石政権をば、まるであたかも流れ者かのごとく誹謗し、しかもこれに対するこの政府を、落ちぶれ政権の━━━━━━━━━━と、こう言つておるのであります。かような無礼の言は、いかに国会の言論が自由であるとはいえ、断じて許されるものではありません。そこでこの国会法の第百十六條、百十九條、衆議院規則の二百三十八條、二百四十五條の各條項に照しまして、ここに佐々木君並びに中川君から懲罰が提案されたことは当然であります。  かような意味におきまして、私たちは、真にこの国会を品位のある厳粛なる議政の殿堂として守るのには、かような、自由の名に隠れて国の秩序を乱し、若き青年たちを煽動し、そして再建せんとするこの国家を危殆に導いて行くような、ことに暴力革命をもつて、パルチザン戰法に持つて行こうというような共産党議員の言動に対しては、断固としてこれを臨まなければならないために、この動議を提出したものであります。
  154. 眞鍋勝

  155. 梨木作次郎

    梨木委員 私は議員風早八十二君並びに議員林百郎君に対する懲罰事犯の件につきまして、この両件はいずれも懲罰事犯にあらず、懲罰に付すべきにあらずという動議を提出いたします。その動議の理由を簡単に陳述いたします。  議員風早君の問題になつている演説というのは、去る五月の大日本会議において政府に対してなした質問であります。これは御承知のように、五月一日の人民広場における政府、警察の弾圧、特にその際労働者、学生が殺されておるこの事実につきまして、政府の責任を追究し抗議した演説であります。さらに林君の問題になつておる演説というのは、六月七日本会議に上程されたいわゆる日華條約、この條約の反対討論が問題になつておるのであります。この反対討論は、懲罰動議の提出者の説明によりますと、この演説全体が懲罰の対象だというのであります。この二つ懲罰事犯考えてみまするに、これは本委員会においても、提案者並びに懲罰に付せられようとする両議員に対する質疑応答を通じて明らかになつたことは、要するに国会におけるところの政府の責任を追究し抗議する質問、並びに政府提案の條約案、これに対する反対討論が問題とされておるのであります。このように国会において国会議員が国民の負託にこたえて、特に警察官によつて人民が殺されておるという、こういう重大な人権蹂躪の事実につきまして、政府に抗議し質問するのは、これは国会議員として当然なことでございます。それからさらに、政府にとつては都合が悪いかもしれないが、いわゆる日台條約のごときものに対して反対する、この反対討論全体が懲罰の対象になるということになりますならば、これはまつたく国会におけるところの反対党の意見の陳述、反対党の言論というものを頭から否定し抹殺することであります。いうまでもなく、国会におけるところの言論というものが自由でなければ、国会の機能というもの、議会政治の機能というものを果すことはできないのであります。それゆえに、国会内におけるところの言論というものにつきましては、国会外においては議員は一切責任を負わないという憲法上の保障がなされておる。従つて国民が最も憤りを持つておるところの政府のとつたいろいろな不当な措置、また政府がなそうとする不当な法律案や條約、かようなものに対して、国民的な立場からこれを追究し、攻撃すること、これを十分に許すということこそが、国会の秩序を維持し、国会の権威を高めるゆえんなのであります。しかるにこの言論を圧迫し、抑圧するというようなことは、かえつてこれは国会の機能を麻痺させることになり、それ自身が国会の議会政治というものを破壊に導くものであるといわなければなりません。  私はかかる観点から、本件の懲罰事犯懲罰に付すべきではないという動議を提出するのであります。
  156. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 ただいま両件に関しまして、田渕君より、議員風早八十二君及び林百郎君に対しては、いずれも懲罰を科すべきものとし、国会法第百二十二條第二号により、公開議場における陳謝を命ずべきものとの動議が提出され、また梨木作次郎君からは、両件についていずれも懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議が提出されました。これを一括して討論に付します。通告順によりまして発言を許します。鍛冶良作君。
  157. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は田渕君の動議に賛成の意を表明いたすものであります。  まず風早君の五月六日の本会議場においてなされたる演説を大約いたして申しますると、全部虚構の事実を連ねまして、これを大前提として、警察並びに政府行為を攻撃した。ただ單なる攻撃ならば、梨木君の言われるように、われわれはあえ言うのではありませんが、許すべからざるものである。警察は計画的の殺人行為をやり、政府は殺人を命じた、これでもなお足りないで、これ以上殺人をやれと言つておる。かようなことを連ねまして、今日日本国民で心ある者——特殊の者はこれは人間が違うのだから別だ。そうでない者、常識を持つておる者はまことに許すべからざる騒擾であるとして、国民最もこれをきらつております。かの五月一日のメーデーを悪用いたしまして、皇居前広場で犯したあの騒擾事件を正当なこととし、さらにかくのごとき行為を慫慂して、なお一層かようなことを起すような言辞を弄されるに至つては、これほど大きな議院の秩序を乱し、議院の品位を下げるものはないのでありまして、これは国会法に基いて極刑に処すべきものだと考えておるのであります。私は以下その実例を二、三あげまして、私の述べますることの正当なることを裏づけしようと考えるのであります。  その第一は——これは最初から言つておるのでありますが、「メーデー当日、約十万の大衆が人民広場に向つて正々堂々行進したのは、正当な権利の行使であることは明白であります。」これが根本だ。メーデー当日人民広場へ行つて権利の行使をやつた。こう言うからには、メーデーを悪用いたしまして、メーデーの正当なる示威運動から離れて、不規則なる行動をもつて、そうして禁止されたる所へ突入したのであります。そこで問題は、裁判ではあの広場を使わせるのは正当だと言つた、であるから入るのは正当なる権利の行使だ。ここに共産党の本体が現われておるのであります。正常に使われるものならば、使わせるのがよろしいというのが、これが裁判所側の普通一般の考えだ。けれども、この当日は、メーデーを悪用して、ここで暴動を起すであろうという疑いは十分にあつた。このような疑いがある以上は、行行政処分としてこれへ入ることを禁止するのは当然の行為だ。この禁止を破つたことが、法律に違反したものでなくて何でありましよう。ことに、メーデーの主催者とは、この広場は使いません、ほかの所を使つてこのようにやりますという十二箇條の契約ができておるんだ。彈圧であるならばなぜそういう契約をしたか、島上君自身はこれを守つてつたんだと言つておる。この契約に違反し、この條項に違反し、この命令に違反して突入したる者は、これを取締り当局として防禦しなければならぬことは当然であります。これを正当なる行為であり、正当なる権利の行使であるというに至つては、この一言をもつてしても、まことに許すべからざるものである。  しかして、このような不法不当の行為をなしておるにもかかわらず、「しかるに、吉田政府は、無謀にも計画的に日数千の武装警官をこの広場に配備し、     ━━━━━━━━━━━━━  しかして、このような不法不当の行為をなしておるにもかかわらず、「しかるに、吉田政府は、無謀にも計画的に日数千の武装警官をこの広場に配備しておる。今言うように、禁止したる地域へ入つてさえ来なかつたら、警官は絶対に手を出さない。これが第一だ。破つた以上はこれをとめるのあたりまえだ。しかもこれはこの国会で、法務委員会でも行政監察委員会でも明瞭になつておる。武器も何も使わないで素手で押さえた。わずか二百十名の警官があの祝田橋で押さえたところのものは数千だ。これは風早君の言葉をかりて言えば十万だ。われわれは数千と申しておる。これをとうとう突破した。突破して遂にそれがどこえ行つたかといえば、今田渕君が言われたように、二重橋の前へ行きまして、二重橋の前の垣を打破つて二重橋を渡らんとした。ここで初めて警官隊と衝突を来したのであります。けれども、このときは粗なる衝突だつた。それでどうにも方法がないというので、予備隊々々というので来て、初めて警官隊が二千何百名になつてこれを押した。それにもかかわらず、これに対して竹やりを持つて来る。はなはだしきはほんとうのやりを持つて出て来る。(「そんなことは一つもないじやないか」と呼び、その他発言する者あり)それで遂に進駐軍の車に対して火をつける。これに暴行する。かくのごときことを黙つて見ていたら、これこそ警察としても権能を失つてしまう。でき得るだけのことをやつて、なおかつ彼らが抵抗する以上は、多数に少数ではかなわぬから、しかたなく武器を持つてつた。やむを得ずやつた行為で、これを━━━━だ、計画的にやつたというのは、逆にこれを持つてつたものであつてこれは許すべからざる言動と申さなければなりません。その他たくさんありますが、これらに対してどうしてかような言を吐いたのかと聞いてみれば、まことに荒唐無稽です。いよいよ行き詰まれば答えぬ、かつてにせいと言う。これはすてばちだ。かような、彼らが国会における言論の自由を言いながら、その自由をみずからは行使して、そうして相手の自由を束縛するというがごときは、これこそ風早君の言葉をもつて言えば、まことに片腹痛いことである。かくのごとき言動を懲罰にしなかつたら、これは懲罰の規則というものはまつたく無用に帰します。かような場合に適用するためにこの規定が置かれておるのである。  なお私は一、二申し上げますと、先ほども言つたが、まつたく許すべからざることは、「しかるに、木村法務総裁は、これでもまだ警察のやり方が手ぬるかつたと放言いたしましたが、政府はまだ日本人民を━━━━━━のであるか。人権尊重に対する法務総裁の所見をただしたい。」木村法務総裁は、もつと準備をして、これを押えればよかつたが、準備が足りなかつたということは言つております。言つておりまするが、人民を殺せというがごときことは、絶対に言つてないことであります。ことにいわんや、政府日本人民を殺せというこの断定のもとに、この言辞を吐いている。かようなことはあり得べきことではない。もしあつたとしたらば、われわれはこの政府に対して容赦ならぬ。何人も容赦せざることです。そうだというならば、ないにもかかわらず、これを言うた者の責任まことに甚大なりといわなければならない。われわれが先ほど来どれだけ根拠をつきましても、出て来ません。はなはだしきに至つては、何やらがそういうことにきめた、会議の結果そういうことに認めた、さようなことをもつて、実に容赦ならぬことを彼らみずらが断定して言つておるのであるから、これがなかつたとしたら、彼らみずからそれに対する責任を負わなければならぬことは、当然のことであります  その次に、もつと容赦ならぬことは、「多数の遺骸を隠しておる。これこそ、盗人たけだけしい限りであるばかりでなく、天人ともに許すべからざる非人道行為であります。」諸君、この通りに遺骸を隠しておる、かような事実があるならば、ここに言われる通り、天人ともに許すべからざる非人道行為であります。しかし、かようなことがないにもかかわらず、盗人たけだけしいとか、天人ともに許すべからざる非人道行為だとか断定したその言うた者の責任、まことにこれ以上重大なるものはないのであります。そこでどこに根拠があるかというと、これは何やらに書いてあつて、そうみんなが言うておつたから私も言つた。みんながこう言つておるが、かような事実があるかと、こう言うならば、われわれはあえてとがめませんが、それにもかかわらず、さような荒唐無稽な言葉をかりて来て、これは隠したものであるというような、天人どもに許すべからざるものであるなどと断定する。神聖なる議場においてかくの。ごとき言辞を吐いたに至つては、まことにこれは議員として許しておけない。この点は断定いたします。  もう一つ、先ほども言つたが、「大衆の抵抗は、この━━━に対する正当防衛であり、民族的憤激の爆発であつた」というのである。これもまことに実に重大なる発言でありまして、第一に、先ほどから言つたように、不穏の形勢あるがゆえに、これは入れないといつて、とめたにもかかわらず、これをぶち破つた。ぶち破つた行為を、これは民族的憤激の爆発であると言つておる。これは暴力をもつて社会の秩序を乱した行為であります。騒擾罪であります。その騒擾罪を民族的憤激の爆発だと言うに至つては、騒擾罪をやることが国民のなさなければならぬことだと言つて、この犯罪行為を正当行為と彼らはむしろ認めて、これを国民に挑発しておるわけであります。これはまつたく共産党の使命とする暴力革命をやらなければならぬものであると、国民の前に国会を通じて言明したものである。許すべからざることである。暴力革命はいいという諸君ならば別だが、日本国民の大多数、ほんの君らの特別の者以外は、さようなことはもつてのほかだと言つている。これ以上大きな犯罪はないと認めておるにもかかわらず、これを国民の憤激の爆発だと言うごときは、第一に許すべからざることだ。  その次は、今言つたように禁止区域を暴力をもつてぶち破つた。何の抵抗があつたか。人民広場の抵抗の少いところに無理に入つてつた。これを名づけて正当防衛だ。これは犯罪を正当なるものと言う弁護論と同様であります。裁判所におきましても、かようなことは言えない。この通り明白に命令を暴力によつて突破したものに対して、正当防衛と言うに至つては、許すべからざるものだと断言せざるを得ないのであります。  その他あげれば数限りはありませんが、要するに、虚構の事実を連ねて、しかも不法なる行為を正当だと名づけ、そしてありもしない事実をもつて官憲を罵倒し、政府を非人道である、許すべからざる反逆行為だと言うに至つては、これは許すべからざる言動であります。かようなことを神聖なる議場で言つたとすれば、その言つたことに対して、相当重大なる責任のあることを彼みずからがもちろんさとつて言つたものであると断定せざるを得ない。それがいよいよ詰められれば、かつてにせいと言うに至つては、捨てぜりふを言つたのでありまして、まことにどうも許しておけないことである。  その次は林君の点に入ります。林君はこの弁明で、しばしば私は日台——われわれは日華條約と言うが、日台條約に反撃した、そのことがいかぬというて懲罰に付せられた、さようなことを懲罰にかけるものではないと言うが、その演説に名をかりて、許すべからざる言動をやつておる。われわれはこれを責める。第一番に、国会法第百十九條にいわゆる各議院において無礼の言を聞いたものとして、懲罰に値するということが一つ。こう言つておる。「━━━━━━━━━━━━━━━━━」というのである。政府という抽象的観念のものは、一片の良心を失つたり、馬丁になつたりするわけはない。これは個人のことを言うてみれば、吉田政府を構成している各閣僚をさして言うておるものといわなければならない。この閣僚に対して、いやしくも国政を真剣にやつておるこの閣僚に対して、神聖なる議場において━━━━━━━━━━━━━━これは何事です。先ほども言つたように、かような事実があるならば、これは国民が許さない。事実がないのに、かようなことを言うたとすれば、言うたやつは許すべからざるものである。これを言う。     ━━━━━━━━━━━━━ ━━━とは、一体何事であるか。かようなことを言つて、なおかつこれがあたりまえだと言うに至つては、これは極刑に処するべきものである。(「極刑とは何だ」と呼ぶ者あり)極刑というものが懲罰規定にはある。  なおまたひどいのは、アメリカは、アジアにおける自分侵略基地台湾を、日本台湾人の血と肉彈で守らせようとしている、と言つておる。君が單なる政策論をもつて攻撃するなら、だれも言わない。一体日本台湾人の血と肉彈で守らせるとは何事だ。何か事実があつたのか。このようなことがほんとうにあつたとすれば、日本国民全体が許しませんよ。食われわれは、平和を守るために一生懸命にやつている。一人といえども血を流さないようにやつておるにもかかわらず、現に血を流しておるというに至つては、これほど虚構の事実はない。(「そんなことを言つていない。守らんとしておるつて言つているじやないか、流しておるつてどこで言つている。演説をよく読め。読まないで……。君の言うことが虚構捏造だよ。流さんとしておるつて言つているんだ」と呼ぶ者あり)私は速記録を呼んでいる。速記録虚構だと言うのか、そこに至つてはもう問題にならぬ。  それから最後に、あなたの結論だ。これでお前さんの……(「お前さんとは何だ」と呼ぶ者あり)林君の演説は全体が暴力革命を慫慂するものであるということが、この結論にある。読みますよ。「諸君が、━━━に国家の権力によつて、いつまでも自分政権の座に居すわろうとするならば、日本の人民は     ━━━━━━━━━━━━━ ━よりほかしかたがないのであります。」この点の弁明にあたつていわく、この暴力的にやるというのはおそらく自由党でしよう。これは……(「政府も言うんだ」と呼ぶ者あり)いや、政府が暴力的に居すわるならば、こういう場……。一体政府が暴力的に居すわるとは何のことだ。(「居すわつてるじやないか、警察予備隊はどうなんだ、破防法はどうなんだ、みな反対しているじやないか、警察も持つているし、これでみな押えつけている。」と呼ぶ者あり)これは今問い詰められたがために、やむを得ずそこへ持つてつたんだ。(「何を言つているんだ」と呼ぶ者あり)これは全体にかかつている。さようなことに持つてつたんだが、かりに持つてつたとしても暴力で政権を……。     〔「とするならばだよ、よく読んでみろよ、何を言つているんだ。」と呼ぶ者あり〕
  158. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 林君は本懲罰事犯の本人ですから、本人があまりやじるのは御遠慮ください。討論者も易まりやじに注意せぬように御留意願います。
  159. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうしていよいよ詰め寄られると、政府は法律案を提出する、議会にかけて弁明する、これが暴力だ。急場の言いのがれとしてならやむを得ぬかもしれませんが、さようなことでは通りません。この暴力というのは、「日本の人民は━━━━━━」ここへひつかかつておる。実力とは暴力である。暴力でもつて内閣を━━━━━━━というのが、この文章の全体に明白である。これは暴力革命をいたしますということを、国会に宣言したものである。許すべからざることだ。  さらに、もう一つあとに行つて、「五月一日メーデー、」これはやめますが、「民主政府樹立の革命のあらしと怒濤となつて諸君を押しつぶしてしまうでありましよう。」(「それが暴力革命だ」と呼ぶ者あり)五月日のメーデーとは、單なる正当なるメーデーをさしておるのではない、メーデーを悪用して、あの宮城前へなだれ込んだ騒擾を君らが言つておることは間違いない。これがなかつたら、実力をもつて押しつぶすということになりはしない、ただのブラスバンドをもつて行進して行くことで、内閣がつぶされたり、引きずりおろされたりするものじやない、力をもつてやるというのは、あのメーデーを悪用したる騒擾やからである。その力をかりて、怒濤となつて……あの力を怒濤と見ておる。あの怒濤の力で諸君を押しつぶす。このあともなお出るが、それでもこわくないかということがある。これは議会政治を否認し、暴力をもつて自分の野望を達成せんとする言が現われておるものとして、国会議員としては許すべからざる言動であると断定いたします。  以上の点から見まして私は風早君、林君、両名ともに国会法百二十二條の中の最も重き刑に処すべきことを相当と考えるのであります。けれども、これは議員という身分もありますし、できるだけ議員に対し言論を保障しておるという点もありますから、私はまず諸君に対して、かようなことがよろしいのだという考えを改めなさいということを言いたい。これが第一番。われわれは議員同士を考えるがゆえに、情をもつてこれを許します。諸君にもつと反省を促す気持といたしまして、百二十二條第二号による陳謝文を公開議場において読ませることが最もよろしいと考えるものである。この意味におきまして田淵君の動議に賛成をす者であります。(「君たちの恩恵でやつて行けるか、與党と野党とがしのぎを削つて闘うのが国会だ」と呼ぶ者あり)
  160. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 君子は互いに悪声を放たずということをつらつら考えさせられるのでありますが、この際お諮りいたします。大分時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にとどめ、明十八日は午前十時より委員会を開き、討論を継続することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 眞鍋勝

    眞鍋委員長 御異議なければさように決します。  これにて散会いたします。     午後七時二十八分散会