運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-06-16 第13回国会 衆議院 懲罰委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十六日(月曜日)     午前十一時二十分開議  出席委員    委員長代理理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君       青木  正君    麻生太賀吉君       有田 二郎君    押谷 富三君       高間 松吉君    田中 彰治君       坪川 信三君    内藤  隆君       牧野 寛索君    松木  弘君       松本 善壽君    柳澤 義男君       岡  良一君    梨木作次郎君       佐々木更三君  委員外出席者         議     員 佐々木盛雄君         議     員 中川 俊思君         議     員 林  百郎君     ————————————— 六月十六日  委員佐藤親弘君、島田末信君、田嶋好文君、石  川金次郎君及び猪俣浩三辞任につき、その補  欠として有田二郎君、柳澤義男君、押谷富三君、  岡良一君及び佐々木更三君が議長の指名委員  に選任された。 同日  委員有田二郎君、押谷富三君、松木弘君及び森  幸太郎君辞任につき、その補欠として青木正君、  坪川信三君、麻生太賀吉君及び松本善壽君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員麻生太賀吉君及び柳澤義男辞任につき、  その補欠として高間松吉君及び田中彰治君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  議員風早八十二君懲罰事犯の件  議員林百郎君懲罰事犯の件     —————————————
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 会議を開きます。  議員林百郎君懲罰事犯の件を議題といたします。前会に引続き林百郎君の弁明を聴取することといたします。林百郎君。  林君に御注意申し上げますが、言わぬでもわかつておることのようですけれども、ただいまあなたの本会議における弁明を読みますると、この前やられた演説並びにそれに対する懲罰要求と、全然関係のないことをずいぶん述べておられるようですから、今度はそういうことのないようにお願いいたします。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 今委員長から林君に身上弁明について御注意があつたわけでありますが、大体御承知のように、この佐々木盛雄君の懲罰動議趣旨弁明そのものが、非常に広汎な、林君だけではなくして、共産党全体の政策を誹謗、中傷するような発言があつたわけであります。従つてそれに関連して、一林君の身上弁明も、その趣旨弁明に対応して、自己の立場を明らかにしなければならない状態にあつたわけであります。大体この懲罰事犯というものは、そういう共産党そのものを問題にして来ているようなところに、非常に問題の深刻性があるわけでありますから、この点をお含みの上で、林君の身上弁明について範囲云々ということで、あまり制限されないようなことをひとつ希望しておきます。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 いずれにしても、林君の前会の演説と、それに対して佐々木君が要求したその事犯範囲であることだけは間違いないと思いますから、どうぞそのつもりで……。
  5. 林百郎

    ○林百郎君 それから委員長、私の方からの希望は、なるべくたくさんの委員によく私の身上を聞いてもらいたいので、委員長権威にかけても、もう少し委員を集めてもらいたいと思います。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記を始めて。  林百郎君。
  8. 林百郎

    ○林百郎君 去る十四日の当委員会における私の身上弁明に続きまして、本日さらに身上弁明をしたいと思います。  私は、私の懲罰動議について、考えれば考えるほど、どういう観点からいたしましても、まつたく不当と言わざるを得ないのであります。私は、昨日佐々木君の私に対する懲罰動議趣旨弁明をしさいに検討したのでありますが、これはまつたく、あらゆる観点から申しまして、不法きわまるものであります。第一に、佐々木盛雄君の私に対する懲罰動議趣旨弁明を見ますと、私の演説内容については、全文のものがことごとく懲罰対象になるというのであります。このようなことは、国会史上つて例を見ざるところであります。このことは、国会議員である私にとつては重要なことなのであります。私の演説内容全文そのものが、ことごとく懲罰対象となるということは、一体どういう意味でありましようか。このことは明らかに、時の政府反対立場に立つ者の発言は、まつたく封ずるということと同じ意味なのであります。もしこのようなことが許されるのでありますれば、これはゆゆしい問題であります。御承知通りに、委員諸君の中にもたくさんの弁護士さんがおいでになるから御存じだと思いますが、憲法の五十一條によりますと、「両議院議員は、議院行つた演説討論又は表決について、院外で責任を問われない。」という規定があるのであります。このことは明らかに、国会議員は、かりに国会で刑罰に触れるような発言があつたとしても、刑事責任は問われないということが規定してあるのであります。言いかえれば、この憲法の精神は、国会議員国会において何ものも顧慮することなく、何ものをも恐るることなく、十分その政治的な見解を吐露する、そのことを憲法保障していることだと私は考えるのであります。それにもかかわらず、自由党諸君が、私の演説全体が気に入らなくて懲罰にする、はては川上君の場合のごとく、何かと難くせをつけまして除名にするというようなことになるとすれば、これは明らかに憲法破壊だと思います。これは民主主義破壊だと思います。いうまでもなく民主主義ということは、相手方の主義主張を十分尊重して、その意見を十分伸張させて、そこにおいて大衆の批判に訴えることのできることが、これが民主主義の最も重要な要素の一つであります。ところが、相手の言うことがおもしろくない、しやくにさわる、だから相手立場を力でもつて葬つてしまえというようなことは、これは明らかに民主主義破壊するものであります。これはフアシズムであります。今や国会におきましては、国会の外よりも、むしろ言論の自由が失われておるということになるのであります。このようなことで、日ごろ民主主義を口にする自由党諸君一体いいのでありましようか。  次に重要なことは、私の演説全文そのもの懲罰になるということは、これは明らかに私の思想全体を懲罰にかけるということであります。私の持つておる共産主義思想世界観そのもの懲罰にするということであります。そうなりますと、一体諸君は、憲法の十九條に規定してある「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という、基本的な人権の中で最も重要な思想良心の自由を、諸君みずからが破壊することになるのであります。このような重大な破壊活動、これ以上の重大な破壊活動は私はどこにもないと思うのであります。  御承知通り憲法の第九十九條には、「天皇又は攝政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあるのであります。憲法十九條の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」というこの規定から、国会議員は率先して、国民の前にこの思想の自由、政治的な見解の自由を尊重する、これを保障するという、この憲法を守る義務があるのであります。もしこのように私の演説全体がいけない、私の抱懐する政治的な信念そのもの全部がいけない、そしてこれを懲罰にするというような懲罰動議を許すことになるならば、明らかに自由党諸君は、みずからこの憲法規定しておる国会議員としての義務を放棄することになるのであります。これは重大な憲法違反を犯すことになるのであります。(「ノーノー」)聞きもしないでやじばかり飛ばすな……。しからば自由党諸君は、一体天皇制帝国議会において軍部ですらやり得なかつたような、このような演説全部がいけないというような懲罰軍部圧迫よりももつとひどいような圧迫を、なぜ国会議員である私に加えるのでありましようか。  御承知通り私が日華條約に反対したのは、これは背後にアメリカの強圧があつて、そしてアメリカ傀儡政権に堕しておる蒋介石と手を結ぶことは、日本極東におけるアメリカ軍事作戦の一環に巻き込むことになるから、これに反対だと言つたのであります。ところが、この私のアメリカ政策反対する批判全部に対して、自由党諸君が私を懲罰にするというのならば、またこのようなことを許すということになるならば、日本国会は、まつたくアメリカ日本に対する軍事的な植民地支配の道具になり下つたといわれても、一言も文句の言いようのないということになると思うのであります。日本安全保障條約や行政協定で、講和後もアメリカ軍隊日本に駐屯させ、このためにたつとい土地や漁場を基地として提供し、裁判の管轄権までも放棄し、何百億という軍事費を調達して、あらゆる犠牲を拂わされておる。このことについては、行政協定一の審議において、法務委員会でここに現に委員長をしておる鍛冶君も、真剣に行政協定の問題について質問されたことを私は速記録で読んでおります。このことは鍛冶委員長みずからもまた御存じだろうと思います。この行政協定が、日本主権を回復する上において必ずしも好ましくないということは、自由党鍛冶委員長ですら気がついていると思うのであります。このアメリカ軍隊日本に駐屯させるということが、何といつて日本主権を奪い、一切の政治経済アメリカ支配下に置くことになることは、否定し得ない事実であります。  しかも、今や国の最高機関であるところの国会ですら、このような外国支配を受けることになるとすると、これはゆゆしい問題だと思うのであります。しかも自由党諸君のいう、いわゆる講和独立を得たという今日、ますます天皇制帝国議会以上の重圧と隷属を受けるということになりますと、外国支配植民地下における日本国会は、一かけらの自由すら許すことができないという、まつたく残忍さを証明するものであります。私は自由党皆さんに、むしろ私を懲罰する前に、日本人であるならば、この植民地的な国会に堕落しようとしておる日本国会を、真に独立国会にするために、何事も堂々と言い、アメリカ批判することも、何らの顧慮なくして言えるようなりつぱな国会にすることに闘うべきことを、私は諸君に要請したいのであります。  佐々木君はその懲罰動議提案理由の中に、こういうことまで言つておるのであります。「今や共産党に対する合法性を認めることは断じてできない段階に到達いたしたのであります。」と言つておるのであります。こうしてかつて共産党に対する合法性を否定しています。(「その通り」)その通りだと言うけれども、一体こんなことをかつてに認定する根拠はどこにあるでしようか。(「たくさんある」と呼ぶ者あり)法律根拠も何もない。ただ、こんなかつてなことを言つておる。合法性を認めることは断じてできない段階に達したというように、何らの根拠もなく、また言い得る権限もないにもかかわらず、このようなことを前提として私を懲罰にかけるということになれば、これはますます不届きな懲罰になると思うのであります。このような暴言こそ、まつたく憲法破壊し、議会政治を蹂躙する恐るべき破壊的言辞であります。佐々木君がこんなことを認定する権限一体どこにありましようか。今諸君共産党を非合法にしようとしても、破防法を通して、破防法でなければできないではありませんか。それをただ国会討論の中で、どうして佐々木君がかつてに、共産党を非合法にしなければならない段階に達したというようなことが言えますか。もし佐々木君がこういうことを言えるならば、われわれが吉田岡崎——といつて何が悪いでしようか。われわれはまだ自由党立場を尊重しておる。かつてに、共産党合法性認むることができない段階に達した、こういうような前提から私を懲罰にするということは、不届ききわまることであります。     〔発言する者多し〕
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。
  10. 林百郎

    ○林百郎君 これでは憲法保障されておる結社の自由も、言論出版保障も何もない。憲法によれば、結社の自由は保障されておる。この保障されておる結社共産党を、非合法にする段階に達したというようなことを言うこと自体、この憲法破壊することを公然と国会で言うような、このような感覚で人を懲罰するということ自体、この懲罰がいかに不届きであるかということがわかるではありませんか。一体佐々木君は、どういう根拠でこのようなことを言うことができるのであるか。このようなかつてきわまる違法な感情論前提にして私の懲罰をすることは、明らかに不法であり、無効である。  しかも佐々木君は、私の演説内容について全文そのものがことごとく懲罰対象だとしてさらに一、二点を例示して、提案理由の説明にかえるといたしますと言つておる。その例示として、まず第一に、私が、法務総裁人民殺傷の総指揮官であるとか言つておるということを援用しております。しかし諸君、六月七日の本会議における私の日華條約の反対討論の中のどこにこんな発言がありますか。こんな言葉は私の発言の中には絶対にありません。もしあつたら諸君示して下さい。(「いいから早くやれよ」と呼ぶ者あり)何がいいんだ。言いもしないことをとらまえて懲罰する。やれと言つても君から何のさしずを受ける……。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君、林君、たびたび申し上げますが、不規則発言に対する応酬はやめてください。委員も御注意願います。
  12. 林百郎

    ○林百郎君 ですから、こんな不見識な懲罰動議というものはない。言いもしない発言を持つて来て、いくら速記録を調べても、私が言いもしない言葉を……(「あるないは委員会で審議するよ」「だまつてやれ」と呼ぶ者あり)だまつてやれとは何だ。懲罰になる議員の身になつてごらんなさい。一、二例示するといつて、言いもしないことを言つておる。これで怒らなかつたらどうかしている。君たちもこの立場に立つてごらんなさい。     〔「反対の材料さえ提供すればいいんだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。
  14. 林百郎

    ○林百郎君 冷静に判断するなら、もう少し静かに聞いてください。私が言いもしない言葉を一番先の例にとらえて来ているじやないか。こんなばかな懲罰は、国会権威のためにだつて君たち考えてくださいよ。(「見解の相違だ」と呼ぶ者あり)私が言いもしないことをとらまえて懲罰されるんだから、それに対して私が憤慨するのをなぜとめる。とめる権限がどこにある……。     〔「提案が間違つておるのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 委員諸君に申し上げますが、不規則発言は御注意願います。いわんや委員でない人の発言は禁止いたします。
  16. 林百郎

    ○林百郎君 しかも委員諸君に訴えますが、「一、二の点のみを例示」いたしますと言つて、一番先に引いて来る例が、私が言つた覚えもない言葉である。私が憤慨するのはあたりまえであります。(「わかつた」と呼ぶ者あり)諸君がわかつたというなら、けつこうでありますが、そこでこのようなことは、私の発言内容を検討もしなくて、どうして同僚議員の政治的な生命を生かすか殺すかという重大な意味を持つた懲罰動議を出されるのですか。議員演説も読まないでおいて、そうしてその議員に対して、政治的生命を生かすか殺すかという重要な問題であるこんな無責任懲罰動議というものを、一体自由党は許すのですか。公党としてもしそんなことを自由党が許すということになるならば、私は自由党公党としての権威はまつたくないものと考える。またそうなれば、自由党でなくして、自由党以外のだれかからさしずを受けたものとわれわれは推察せざるを得なくなつてしまう。こうなると、佐々木君の懲罰は、もはや私の発言内容によるのではなくして、まつたく私が共産党員であるからこれを懲罰するという、無法きわまる、またはだれかのさしずでやむを得ずやつたというよりほか、私は了解に苦しむのであります。これは明らかにもう共産党を非合法化すための一布石である。そういうように考えざるを得ない。  ここで私が想起いたしますのは、このたび吉田内閣によつて国会に上程されておりますところの破壊活助防止、法、いわゆる破防法の第三條を見ますと、内乱あるいは政権変革等のことに対して単なる教唆もしくは扇動が、独立して処罰されるということになつておるのであります。これは政府言明いかんにかかわらず、思想を処罰することになるということは、院の内外、また野党を通じて破防法について攻撃しておる点であります。またこの私の懲罰を見ますと、これは明らかに自由党諸君——佐々木を含めて自由党諸君が、私の思想自体懲罰するということでありまして、これはもう破防法吉田内閣の手によつて具体的に適用される場合には、いかなる弁明にもかかわらず、国民思想自体懲罰するものであるということは、この私の懲罰という事態を見ただけでも、明瞭だと思うのであります。従つて私に対する懲罰は、これは明らかに破防法の具体的な適用であります。破防法国会版にほかならないと私は結論をつけざるを得ないのであります。  次に、佐々木君の趣旨弁明の中で、私の日華條約の反対討論中に、吉田政府━━━━━━━━━━━━━━━━としておる、こういうことを言つたということが、懲罰の原因になつています。ちなみにこれは、五月五日の日台條約に対する中華人民共和国周恩来外相声明中にある言辞であります。しかし諸君、私がこの今や━━━━━━━━━━━━としてしまうのだと言つたことに対して、これを懲罰するといいますけれども、諸君、六月十一日の外務・水産連合委員会で、自由党長老植原委員は、日米加漁業協定に対して、吉田岡崎外交を攻撃して何と言つておりますか。こうした不平等條約が結ばれたのは、まつたく腰抜け外交の結果だと言つておるのであります。しかも水産委員会では、自由党議員諸君が先頭に立つて、この漁業條約は不承認であるという決議をしているではありませんか。與党長老植原さんが腰抜け外交言つておるときに、野党の私が━━━━だと言つた言葉に、どこに一体議院品位を傷つけるという議論が立つでありましようか。與党なら腰拔外交言つてもいいが、野党━━━━と言えば懲罰理由になるというのなら、これは国会の存在の意味は全然なくなるのであります。このようなことは、明らかに自由党が多数を頼んで、まつたく懲罰をもてあそぶということに私は結論をつけざるを得ないのであります。そもそも日台條約につきましては、私たちは中華人民共和国の四億八千万の人々友好関係を結びたいという立場から、今革命によつて台湾に追われておる蒋介石と手を結ぶということには反対したのであります。政府は、中国人民からは国を売る者として台湾に追いやられた蒋介石と條約を結ぶというのであります。しかも蒋介石は、諸君承知通りに、一旦アメリカからも——華白書によつても明瞭の通りに、アメリカからもその政治的な価値を見離された人であります。ただアメリカが国防上、すなわちフイリピンと日本を結ぶ間の重要な軍事的な拠点として台湾が必要だということになりまして、アメリカの第七艦隊が海上封鎖をしてこれを守護をいたしまして、その軍事予算の三分の二をアメリカがまかなつておるのが蒋介石政権の実体なのであります。このような蒋介石政権というのは、政権という名に値しない。中華人民共和国周恩来外相は、これは一つグループにすぎないとまで言つておるのであります。この蒋介石と、吉田政府がなぜ手を結ぶ必要があるのでありましようか。しかもこの蒋介石政権——蒋介石グループは、アメリカと相呼応して大陸に反攻することを常に叫んでおることは諸君承知だと思うのであります。この大陸反攻を常に叫んでいる蒋介石日本が手を結ぶということになりますと、これは明らかに中華人民共和国四億八千万の民衆を敵にまわすことになります。そのために、また日本労働者資本家が心から望んでおる中日貿易もまつたく犠牲にしてしまうことになるのであります。この利害得失国家百年の大計からいつて、これに極力反対すべきことは私は理の当然だと思うのであります。  しかもこの日華條約は、明らかにサンフランシスコ條約の交渉の際に、ダレスのさしがねによつて吉田総理が強制されたものであるということは、イギリスがこれを認め、イギリスが、アメリカのこの日本中国の問題に対する強圧的な態度は遺憾であつて、これはアメリカイギリスに対する背信的な行為であると、抗議すらしておるのであります。このように、吉田総理アメリカの強制によつて蒋介石に対してすら、敗戦国としての立場から條約を結んでしまつたのでありますから、私が、これはまつたく吉田総理蒋介石━━━━━━━━としておるのだと言つて攻撃するのが、どこが悪いのでありましようか。周恩来中華人民共和国外相は、日台條約は明らかにアメリカ中国に対する新しい戦争準備の決意を示すものであり、蒋介石吉田に手を握らせて、中華人民共和国に軍事的な脅威を與えようとする、新しい宣戦の布告だとまで声明をしておるのであります。このような中国を敵にまわして、一切の日本国民の利益を犠牲にして、蒋介石に屈服した條約をなぜ吉田政府は締結するのでありしよう。これに対して野党として、特に共産党が、吉田政府━━━━━━━━━━━━としていると攻撃して、何が悪いのでありましようか。  古来日本中国との国策を誤るときは、必ず国を危機に陷れておるのであります。諸君承知通りに、近くは近衛の蒋介石政権相手にせずとの対中国侵略政策が、遂に日本を滅亡せしめた事実を見ても、これは明らかであると思うのであります。要するに対中国政策は、日本外交政策生命線でありまして、これを一歩誤れば、国を滅ぼしてしまうというような重要な問題であります。日台條約について、野党吉田政府を口をきわめて攻撃するのは、これはあたりまえであります。これは国民に対する国会議員の私は当然の責務だと思うのであります。しかもクラーク国連軍アメリカ極東軍最高司令官は、朝鮮戦線の失敗をとりもどすためには、日本基地から中国の本土を爆撃するということを公然と声明して来ました。こうなれば、当然中ソ友好同盟によつて日本がまた中ソ両国から攻撃を受ける危険を持つて来ることは、これは否定し得ない事実だと思います。そうなれば、日本は再び三たび中国相手として戦争に入ることになるのであります。これは実に国家の興亡にかかわる私は重大な問題だと思うのであります。戦争危機に対しては、いかに声を大にして叫んでも言い過ぎることはない。いかなる言葉使つて戦争反対しても、言い過ぎることはないということは、世界の平和を望む人々のひとしく認めるところであります。戦争反対する言葉のどこに、一体議院品位を傷つけるという口実が成り立つのでありましようか。もしそのようなことを言い得るとすれば、それは戦争を望んでいる人のみが言い得る言葉であります。われわれが戦争反対するとき、その言葉が言い過ぎたとして、懲罰を受ける理由がどこにありましようか。それは戦争を好む人のみが、よくなし得るところだ思うのであります。われわれは再び日本戦争に導くようないかなる危険に対しましても、身を賭して闘わなくてはならない。日本の国政に携わる国会議員国民に対する当然の義務であります。四億八千万の中国人民を敵としてしまつて台湾に追い拂われてしまつた蒋介石政府太平洋同盟を結ぶということが、どうして日本の国のためになるでありましようか。私が私の立場からこれに反対するのは、国会議員としての当然の務めだと思うのであります。これが懲罰になるということは、私は絶対に了解することができません。  次に、こういう問題についてもひとつ皆さんに考えてもらいたいと思うのであります。御承知通りアメリカでは、まぐろのカン詰について四割五分の関税の引上げを行つたのをきつかけにいたしまして、ミシンだとか、あるいは自転車等の関税を引上げることによりまして、日本の平和産業が非常な致命的な打撃を受けておることは、これはつい最近の朝日新聞の、ことしの貿易が昨年に比べましてがた落ちになつて来ておるという記事によつても明らかだと思うのであります。一方、東南アジアのスターリング・ブロックでは、ポンドをかせいでみましたところで、このポンドで輸入する物がないということで、これまた非常な困難に逢着しておるのみか、最近では、東南アジアヘの日本の輸出そのものが制限されるようになりまして、最近の貿易は、昨年に比べて非常な下まわりの傾向を示しておるのであります。ただわずかに息をついておるのは、御承知通りに特需による軍需産業、すなわち戦争準備のための産業だけでありますけれども、しかもこれすら、すでに諸君承知通りに、行政協定によりますと、これは米軍の直接調達の方法がとられるのであります。その発注につきましては、何ら日本政府の制限を受けないということが行政協定できめてあるために、アメリカ軍隊の思うままの、かつてな條件で注文されることになりますから、日本の業者で陰で泣いているものは数知れずあるのであります。また日本の実業家ですら、依然として講和後も、戦勝国と敗戦国とのままで契約を結ばなければならないという、このような條件については、これは撤廃してもらわなければ困るという陳情が国会に来ていることは、諸君も御承知通りであります。平和産業がどんどん倒産いたしまして、繊維産業どんどん繰短をしておる次第であります。労働者は失業をするし、賃金は遅欠配であります。農村の次男三男は、町にかせぎに行くこともできませんので、遂に身を売つてまで現金の收入をはからざるを得ないというような状態であります。長野県のごときは、労働者の賃金が、この貿易の不振のために、四箇月も遅配欠配しておりまして、一体今自分のもらつている賃金が、いつの、何箇月分の賃金かわからなくなつておるという状態であります。しかもこんな工場へでも、税務署の方は税金を滞納しているということで、せつかくの労働者の賃金の対象である製品だとか半製品を差押えをして、引上げて行くという事例が枚挙にいとまない次第であります。また、つい最近の長野県の新聞を見ましたところが、信州大学の学生は、アルバイトがなくなつたために、自分の血を輸血用に売つて、収入をはかつておるという記事が出ておるのであります。この血を売つている学生は、顔が青ぶくれになつてしまつて、いつでもぼうつとして、半分眠つたような顔をして教室に出て来るという状態であります。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)これは、もしあなたが輸血用の血を出してみればおわかりだと思います。これについては、このような農村の悲惨な状態も、もし中日貿易を再開することになるならば、一つの解決の道になるのであります。平和産業が無制限に発展すると希望を持ち得るのであります。だからこそ私は、このような日本の農村の悲惨な状態を解決する一つの道としての、中日貿易をすら杜絶させるような日華條約には、反対である、このような、中日貿易犠牲にしてまで、台湾蒋介石となぜ吉田総理が手を結ぶ必要があるかということを、私は反対討論の中で言つておるのであります。吉田総理は今や━━━━━━━━━━━━━━としているという私の表現なのであります。(「表現が悪いのだ」と呼ぶ者あり)表現だけの問題なら、それはそれで問題があるのであります。     〔「表現だけか」「表現もと言つておる」と呼び、その他発言する者あり〕
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 不規則発言の応酬はやめてもらいます。
  18. 林百郎

    ○林百郎君 漁業問題についてもそうであります。これは田淵委員御存じだと思いますが、御承知通りアラスカの沿岸から六百海里は、日米加漁業協定によつて、締め出しを食つてしまいました。しかも北鮮漁業、東支那海の沿岸漁業はソ連並びに中華人民共和国と話合いがつかないために、これも出漁することが困難だ。そこで一体日本の漁業は、どこへどう出漁していいかわからないというのが実情であります。海上保安庁は、ソ同盟の沿岸十二海里は、ソ同盟の方で領海だと言つておるから、なるべく紛争を起さぬように、そこへ入らないようにという注意を與えておる。ところが外務省の方では、そんな十二海里という領海は認められないから、いくらでも入つて出漁していい、しかし見つかると拿捕されてばかを見るから、見つからないように、拿捕されないようにうまくやれ、ということを言つておるのであります。そうすると、一体漁民はどうしたらいいのか。つかまらないように、見つからないように、ソ同盟の沿岸に入つても漁業をやれ。しかしアメリカの方へは、六百海里行つてはならない。これではまつたく漁民に、ソ支両国に対する挑戦をけしかけているのであります。アメリカの方へは六百海里の禁止区域を認めておきながら、ソ同盟や中華民国には十二海里の領海も認めない。話合いもしない。この一切の困難が漁民にしわ寄せされておるのであります。しかも両国とは何らの交渉をしておらないということになりますと、これから受ける漁民に対するしわ寄せは、重大なことである。(「漁業條約をよく読め」と呼ぶ者あり)あなたこそ、よく読んでください。だから水産委員会でも、自由党委員全部反対しているじやありませんか。反対するのは、これが理由じやありませんか。  しかも、こうして外へ出ることができない日本の漁民は、それでは日本の沿岸ではどうかというと、御承知通りに、全国四十箇所の漁場が、米軍の演習地として今取上げられようとしておる。九十九里浜の漁民は、大体正午から六時まで、これは私実際に調査したのだが、吹流しをつけた飛行機を飛ばして、それに対して沿岸に高射砲を並べて、実弾射撃をしておるのであります。正午から六時まで、沿岸に高射砲を並べて、吹流しをつけた飛行機に実弾射撃をするということになりますと、これは漁撈が不可能になることは当然であります。しかもその損害の補償は、過去二年間で九千七百万円、しかもこの九千七百万円は、日本政府が負担しておるのであります。これは一人当り四千円から三百円程度の補償でありまして、これでどうして漁民が食つて行けるでありましようか。これが吉田岡崎外交が腰抜の外交といわれるところの実体であります。野党から見れば、このような状態に対して、私たちが吉田岡崎外交を攻撃するのは、当然だと思うのであります。  また、農民は農民で、すでに公式の発表ですから明らかなように、基地として土地取上げが公式に農地委員会に申し込まれた件数が二万件でありまして、坪数では二万五千町歩といいますが、もちろん事実はこれ以上の件数があり、これ以上の坪数があることは当然でありまして、重大な問題が方々で起きておるのであります。  このように、四箇月も賃金が遅配欠配しておる。労働者は仙人ではありませんから、水や空気で生きておるわけには行きません。四箇月も賃金が遅配欠配して来れば、これはどうしてもストライキにでも出るよりほか生きる道がない。失業者は今御承知のように一日二百五十円前後、働く日数は二十二、三日、月に五、六千円であります。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君にちよつと御注意申し上げます。あなたに対する懲罰の要求は、あなたの外交問題に対する批判が悪いといつているのではありませんから、今ここで外交問題に対する演説のむし返しはお差控えを願いたいと思います。
  20. 林百郎

    ○林百郎君 それはどういうことです。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 あなたが議会否認の思想をもつて演説をやつたというそのことが要求の根本です。
  22. 林百郎

    ○林百郎君 だからそれを今説明しているのです。たとえば、一、二例示しますれば、今や━━━━━━━━━━━━としているという表現を引いておる、この例を示しておる。だからこの例が国会を否認するかどうかということを説明している。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 暴言に対する要求です。(「それは委員長の独断だ」と呼び、その他発言する者多し)━━━━━━というのは暴言です。(「暴言かどうか、そんなことは独断じやないか」と呼ぶ者あり)梨木君、発言を許してありません。(「━━━━とは何事だ」「それを審議するのじやないか」「寛大に聞いてやつているのに何事だ」と呼ぶ者あり)
  24. 林百郎

    ○林百郎君 寛大とは何だ。犬やねこじやあるまいし、寛大にしてやるとは何だ。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君、林君。
  26. 林百郎

    ○林百郎君 何が寛大だ。刑事被告じやあるまいし、寛大に聞いてやるとは何だ。(「懲罰の被告じやないか」と呼び、その他発言する者多し)君も司法次官をしたくせに何だ。大体この懲罰委員会自由党の私物じやないんだぞ。寛大に聞いてやるとは何だ。犬やねこじやないんだぞ。     〔発言する者多く、傍聴席で卓をたたく者あり〕
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 その人は何だ。退席を命じる。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  28. 林百郎

    ○林百郎君 人を懲罰にしておいて、身上弁明を寛大に聞いてやろうという恩を売るやつがどこにあるか。委員長、議場を整理せよ。     〔発言する者多し〕
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に。——林君、続けてください。
  30. 林百郎

    ○林百郎君 彼は寛大に聞いてやるということを言う。何だい、君は。刑事被告や犬やねこじやあるまいし……(「君は被告だ」と呼ぶ者あり)何が被告だ。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。
  32. 林百郎

    ○林百郎君 憲法では国会議員は被告にすらならないのだ。君たちが被告であるというのは憲法破壊しているのだ。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 応酬しておつては切りがない。
  34. 林百郎

    ○林百郎君 だからあなたが整理しろ。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 君の演説に対する要求の範囲を越えては困る。     〔「委員長は予断をもつて議事を運営してはいかんですよ、━━━━云々ということを言つたことが悪いかどうか審議するのに、それを悪いと断定してしまつているじやないか」と呼ぶ者あり〕
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君、発言も許さぬのにそこに立つて演説をやつてはだめだ。
  37. 林百郎

    ○林百郎君 高木君だつて司法次官まで勤めた人なんだ、黙つて聞いてなさい。おれだつて原稿を書いて来てこれだけ言えば済むのに、途中から言うのがいけないんだよ。それから委員長つて、ちやんと私はこういう原稿を書いて来ているのを途中で——きのうもここで懲罰理由を、あなたは説明する必要はないと言つて、いくら聞いたつて答えなかつた。(「興奮せずにやりたまえ」と呼ぶ者あり)ちつともこつちは興奮していませんよ。あなたの方が人権をあまり無視するから……。  以上私が申し上げました通り——委員長は私の発言懲罰になつているのは、別に外交方針に対する私の考えが懲罰対象になるのじやないんだ、私が国会を否認するような言辞があつたのだというようなことを言われています。その点について、私はこれから私の身上弁明に移ろうとしたのでありますが、ちようど委員長が言われているのと同じようなことを、佐々木君がこういう表現を使つておるのであります。私の演説の中で、「吉田政権が━━━に国家の権力によつて——これは━━━というのは吉田政権がということです、よく聞いておいてください。吉田政権がもし━━━に国家の権力によつて政権の座に居すわろうとするならば、日本人民は━━━━━━━━━━━━━━━━━と、こういうことを言つておるのであります。このことをおそらく委員長もさしておるのではないかと思うのでありますが、この点について私は今弁明に移ろうとしていたのであります。  私が先ほど例をあげました通り一体四箇月も賃金が遅配欠配している。こういう労働者が現に長野県の私の選挙区にはある。今もらつている賃金がいつの何月分の賃金かわからないというような労働者がある。四箇月も賃金が遅配欠配している。労働者は仙人ではありませんから、これは水や空気で生きていられるばずがないのであります。生きるための賃金をくれといつて、ストライキに立つのは当然であります。これは憲法でも、団体交渉権あるいはその他の団体行動権は保障されているのであります。ストライキをやつてはいけないというわけには行かない。また御承知通りに、今失業者は一日に二百五、六十円だと思いますが、就労日が月せいぜい二十二、三日だと思うのであります。そうすると、大体月に失業者の手に入る金は六、七千円になると思うのでありますが、これではとうてい家族持ちの者はやつて行けない。せめて女房や子供に三度の飯だけは食わせたい。御承知通りに今失業者の実態を調査いたしますと、大体失業者自体は外へ働きに行きますから、三度の飯は持つて行きますけれども、家庭の中では妻や子供が三度の飯を二度にしておる。しかもその二度のうち一度は雑炊でがまんしておる。せめて働きに行く主人にだけは、かたい飯を三度月々持たしてやりたいというのが実情なのであります。このような失業者が、市役所へ行つて失業手当をもう少し上げてもらいたいといつて団体交渉することは、当然の権利であります。  また私が相模原町へ行つて調査したのでありますが、そこでは農民が先租伝来耕しておりました土地を、突然YED——横浜技術部の、米国のドーソンという大佐でありますが、来まして——本来ならば行政協定によりますと、合同委員会にかけて土地の取上げの問題は決定すべきものでありますが、この合同委員会にも何もにかけませんで、直接向うの司令官が参りまして、そこで農民を集めて、大体三十町歩ぐらいの土地を六月以降は基地として接収するからといつて、補償の話も何もなくて、しかも英語で書いた立札を何十本となくさして行つたのであります。これは岡崎外務大臣の選挙区であります。神奈川県の相模原町にある例を、私が実地に調査に行つて来て皆さんに申し上げているのであります。しかも三十町歩以上の土地を新しく取上げていながら、前に取上げた土地があき地で何も使わないでおる。なぜ使わないかというと、そこは立地條件が悪いからといつて、何十町歩という土地を、解除もしないで、ただ草がぼうぼうにはえている。こつちの麦がはえている土地を何十町歩も、合同委員会にもかけなくて、直接指揮官が来て、百姓を集めて、六月からYEDの土地にするといつて、立札を立つて行くような状態であります。中には、一町多近くの自分の耕地全部を取上げられてしまつたという農民もあるのであります。たずねて行つて百姓の言葉を聞きますと、ここはアメリカのあき地ではないのだ、やたらにかつてに取上げられたんでは、われわれは生きることができないのだ、どうやつてもこれは耕さざるを得ない、もう一人や二人の佐倉宗吾ではだめだから、みんなが佐倉宗吾になつて、土地を守らなければならないと言つて、肥料をここにまいている状態であります。このようなことは、向うのやり方がもともと不法な処置でありますから、国民は基本的な人権を守るために、場合によつてはストライキに訴える、あるいは市役所に団体交渉する、あるいは農民が実力で耕地を守るということは当然であります。これは法務委員会皆さんならおわかりのように、土地を取上げるなら、予備作業班なり合同委員会で、両政府の合意の上において取上げます。直接向うの指揮官が来て土地を取上げるということは許されないのであります。ところが実際はそのようなことが行われている。農民が実力をもつて守るということは、日本人なら当然の権利であります。しかも憲法には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」ということが規定してあるのであります。また国は、すべての生活の部面において、社会福祉、社会保障の向上及び増進に努めなければならないということが規定されておるのであります。また憲法は、勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障しておるのであります。——委員長、あそこに笑つて聞いてませんから注意してください。こつちは汗かいてやつているのに、にやにやしていられてはやる気がしませんよ。もう少し真剣に聞きなさいよ。(「真剣に聞いてます」と呼ぶ者あり)もう結論がついているなら、何も一身上弁明をする必要はないのです。(「にやにやしたからといつてそう怒るな」「聞いております」と呼ぶ者あり)あなた方はみなひとばかり懲罰して、自分が懲罰されたことがないから不謹愼だよ。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 続けてください。
  39. 林百郎

    ○林百郎君 そこで佐々木君が私を懲罰する理由一つに、私が先ほど申しました政府が━━━に国家の権力によつていつまでも自分の政権の座に居すわろうとするならば、日本人民は━━━━━━━━━━━━━━よりしかたがないのであります、と言つたことに対して、これが破壊的である、議会政治を否認する、こう言つておるのであります。しかし諸君、よく私の演説を読んでいただきたい。暴力的というのは、もし吉田政府が━━━にいつまでも国家の権力に居すわろうとするならば、人民はやむを得ないから、これを━━━━━━━━━━━よりほか道がなくなるのであります。暴力的というのは吉田政権の方にかかつておる。われわれの方が暴力的にやるということは一言も言つていないのであります。この点をよく諸君に読んでいただきたいと思うのであります。もし吉田政府が━━━に国家の権力によつていつまでも自分の政権の座に居すわろうとするならば、そのときには人民はすでにりくつや話合いの問題では片がつかないのでありますから、憲法保障されている勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権、すなわちストライキ等に訴えてでも、吉田内閣を倒すよりほか道がないのであります。これは当然のことであります。  現に日本労働者諸君は、破防法反対吉田内閣打倒を標榜して第三波ストを、明らかに政治的な目標をもつて決行しようとしておるのであります。これが実力の行使でなくて何でありましよう。しかもこれは憲法保障されているのであります。しかもこれを武装警官の力で弾圧しようとするならば、弾圧する方が悪いのであります。岡崎外務大臣がどんなとりきめをアメリカとやりましようとも、またそのとりきめを実行するために、武装警官で威嚇しようといたしましても、日本がすでに戦争を放棄しているということは、憲法保障されている。また陸海空の戦力を持たないということも、憲法保障されているのであります。従つて労働者が、憲法保障されている自分の当然の権利に基いて、戦争を放棄した今日、ナパーム弾をつくるのは断ります、追撃砲のたまをつくるのはやめますということは、憲法戦争が放棄されている以上、憲法を守る立場からいつて、当然の権利であります。日本人民が使うならいざ知らず、あの寒い北海道で、日本人民に配給しない石炭をどんどん朝鮮の戦争に持つて行くのなら、朝鮮の人民を殺すための石炭は一かけらも掘りませんというのは、日本労働者として当然の権利です。日本はそんなものは輸送しませんといつても、これは憲法保障されている団体交渉権、団結権でありまして、これは当然の権利であります。こうなつて来ますと、いやでもおうでも吉田内閣政権を投げ出さざるを得なくなるのであります。国会国会でもつてその民意を十分に尊重してこのように勤労階級あげて今の政権反対するならば、これはすみやかにもつと勤労大衆の信頼のある政権に移すべきであるという意思表示をするのも、当然であろうと思うのであります。現にここにおいでになる委員諸君でも、きようはバスや私鉄へお乗りになつて来ただろうと思います。あるいは自動車に乗つて来たと思います。しかしこの労働者諸君が、もう吉田内閣には反対ですといつて、十日間もストライキをやつたとしたらどうでしようか。諸君国会へ来ることができなくなる。ここにいる速記諸君つてそうでしよう。賃金が安いから上げてくれといつて速記をとらなかつたら、国会はやろうつたつてできない。馬ですら働きたくないときには、むちで打つたりしても働きません。ましてや人間は馬と違うのでありますから、こん棒やむちでは動かないのであります。弾圧だけによつては人間を動かすわけには行かないのであります。  しからば政府はその責任上、もし勤労階級が吉田内閣に協力しないという事態が発生したならば、勤労者がもつと信頼し、勤労者がその政権のもとならば喜んで快く働くという政府に、政権を譲り渡さざるを得なくなるのは当然のことだと思うのであります。また国会もそれを認めることが、民意を尊重することになるのであります。主権人民にあるのでありますから、これが私は民主主義だと思うのであります。国民国会政府を反省させ、自分の求むるところを貫徹させるためには、そのような形に出ることは、これは憲法に基く当然の権利だと思うのであります。実力行使、ストライキをうつということが憲法で許されている。それを実行することが許されているのでありますから、それを言葉で表現することが、どうして懲罰になるのでありましよう。このような懲罰は明らかに無法であります。それでは、憲法保障されている言論、出版、表現の自由も保障も何もないのであります。しかもそれが国会の中においてであります。これは委員諸君にもよく聞いていただきたいのでありますが、昨日私はある大会で私のこの懲罰の問題を大衆に訴えました。外よりも言論の自由が保障されるべき国会が、言論の自由を外の諸君にお願いして守つていただかなければならなくなつたのが現状であります、外で自由に言えることが、国会の中では懲罰になるのであります、と言つたら、大衆は、そのような国会に対して侮蔑と嘲笑を表明していました。諸君国民から侮蔑され、潮笑される国会に、諸君みずからの手でしてしまつていいのでありましようか。私は一片の良心諸君にあるならば、考えていただきたいと思うのであります。また去る十二日の本会議場で、風早君と私が懲罰に付されましたあの情景を見ていた傍聴人は——しかもこの傍聴人は、自由党議員が紹介されて入場した人だそうであります。この傍聴人が何と言つていたか。自分は今までだまかされていた、国会がこんなにひどい議員に対する圧迫を加えるということは、夢想だにしなかつた、自分はどうしても国に帰つて、この国会の実情を報告しなければならないと言つて、風早君と私の名前を聞いて行つたそうであります。しかもこれは自由党議員が紹介した傍聴人であります。  諸君、外の人が来て驚くような言論の制限を、国会の中で行つて、どうして国会国民の信頼をかち得ることができましようか。帝国議会が翼賛議会になつたときに、日本は太平洋戦争に突入して、原子爆弾に見舞われ、国民は家を焼かれ、財産を失い、命をむなしく捨てられ、南海の果てには、今もつて日本人の白骨が累々として鬼気をただよわせているのであります。今また諸君は、国会をかつての翼賛議会にさせようとしている。しかもこれは、アメリカという新しい政治権力のもとに奉仕して、日本をその植民地、軍事基地にするための、東條時代よりもつと屈辱的な、残忍な翼賛議会にしようとしているのであります。そして日本は、今アメリカのアジア作戦の一環として、まつしぐらに戦争に突入しようとしているのであります。諸君承知かもしれませんが、第一議員会館の裏側には防空壕を今新しくく掘り出しているのであります。なんでしたら晝間の時間に行つてごらんなさい。日本の国は今明らかに戦争危機が追つているのであります。朝鮮では、アメリカはどうにもならなくなつた。ドツド准将は捕虜になつてしまつた。アメリカ軍隊は後方の捕虜と戦わなければならないという状態になり、李承晩は諸君承知通りに朝鮮人の支持を失つた。こうして極東アメリカ政策が失敗すればするほど、ますますアメリカとしては日本戦争に巻き込む必要にかられて来るのであります。クラーク大将の中国本土爆撃の言明、警察予備隊を本年度どうしても十八万に増員しなければならないということ、また北太平洋同盟締結の前提としての日台條約、これらすべてが日本アメリカ軍事作戦に強力に巻き込もうとする布石であります。このためにこそ、自由党諸君がかかる不法を行い、風早君と私の二名を懲罰にしようとしておるのであります。よく皆さんに聞いていただきたいことは、帝国議会が翼賛議会になつたときに、日本は大東亜戦争を始めました。今また私と風早君を懲罰することによつて日本国会をかつての翼賛議会にしたごとく、日本アメリカとともに新しい戦争に巻き込まれることになるということを、よく知つていただきたいと思うのであります。自由党諸君が私を懲罰にすることは、明らかにアメリカの帝国主義者のための戦争の露拂いであります。原爆のための露拂いであります。沖繩にはすでに原爆の基地がつくられております。  私は日本の勤労者、日本の平和を愛する人民、そして世界の平和を愛好する民衆、中国四億八千万の人を含めて、何億という人の名前において国会議員政府を攻撃したことを理由にして懲罰に付せられるような、かかる不当な懲罰に対しては、断固反対するものであります。これをもつて私の一身上弁明を終ります。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 これにて林百郎君の弁明は終りました。御退席を願います。     —————————————
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 議員風早八十二君懲罰事犯の件を議題といたします。動議提出者中川俊思君に対する質疑に入ります。質疑の通告があります。これを許します。梨木作次郎君。
  42. 梨木作次郎

    梨木委員 私は中川君に質問いたします。まず第一に聞きたいことは、あなたは風早八十二君を、五月六日の本会議における政府に対する質問演説の内容をとらえて懲罰動議を提出したのでありますが、私は懲罰動議提案理由をしさいに検討いたしまして、非常に疑問を持つておるのであります。あなたはこの中で、風早君の質問内容は「虚構と捏造に終始し、荒唐無稽の言辞を弄して、国民をして故意に警察官に対する反抗心を助長したることなど、無責任のはなはだしきのみならず、議院品位を傷つけ、」というようにも言つております。そういうようにも言つておりますが、さらに議論を発展させまして、共産党政策全般にまで中傷と誹誇を試み、はなはだしきは、過般わが党を脱党した党落者、裏切者であるところの中西伊之助君の発言を引用いたしまして、さらに共産党の誹諦と中傷に狂奔しておるのであります。また五全協の決定を出して来てみたり、いろいろやつております。そこで一体あなたは、風早君の五月六日の本会議における発言懲罰理由としておるのか。あるいは中西伊之助君が日本共産党を脱党した、そういう脱党者を出すような共産党であるからということで、懲罰にしようとしているようにも見え、さらに共産党全般の政策批判を試みておる。こういうことになつておるのであります。まず第一に聞きたいのはあなたは共産党政策全般、これを懲罰対象にしようとしておるのか、それとも五月六日の本会議における風早君の発言、これを問題にしておるのか、まずこの点から伺つておきたいと思います。
  43. 中川俊思

    ○中川俊思君 私は共産党政策に対して、これを懲罰に付する何らの理由を持ち合せておりません。私の懲罰動議を提出いたしましたのは、当日の風早君の演説内容であります。但し風早君の演説内容が、その根源において共産党政策の一端の現われであり、また風早君の言われたことが、平素常に共産党の内部のいろいろな政策に基いて言われておるということは事実でありましようが、しかし先ほど申し上げましたように、風早君の演説内容について、私は懲罰の動議を提出いたしたのでありまして、共産党政策について懲罰の動議を提出する何らの理由を認めなかつたのであります。
  44. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、この中であなたは中西君の問題を引用し、五全協云々という問題を出して来ておるのは、これは風早君の懲罰とは関係はないということをお認めになるわけでありますか。
  45. 中川俊思

    ○中川俊思君 ただいまも申し上げましたように、平素共産党の主張しておりますところのいろいろな本質的な性格に基いて、風早君はああいう演説をやられたのでありますから、その風早君の演説の内容を裏づけるために、共産党に対するいろいろな資料を述べることは当然だと私は考えたのであります。
  46. 梨木作次郎

    梨木委員 わが党の議員国会における一切の言動というものは、これはもちろん党の政策を実現するために行つておるわけでありますが、しかし懲罰というものは、どういうことが懲罰対象になるかということを最も厳密に限局しなければなりません。なぜならば、これは議員の身分に関係した重大な問題であります。もしもその懲罰対象になつておる問題、事犯、この事犯を裏づけるために、議員の、またその政党の政策全般に触れ、またその議員の一切の生活や行動にまで触れるということになりまするならば、これはこのこと自体が私は懲罰に該当すると思う。なぜならば、国会法におきましても、国会内におきましては議員の私生活に触れてはならぬということを言つております。あなたは一つ懲罰事犯を裏づけるために、いろいろな事実を持つて来るのだと言う。そういうことから、党の政策そのものまでも、これを裏づける一つの事実として引用するのだということになりますならば、すでにそれは——そういう党の政策そのものを批判する、党の政策そのものを一つ批判対象にするということは、それ自体委員会あるいは本会議においてなすべきことでありまして、これは断じて懲罰対象とすべきものではない。そういうことになりまするならば、国会内の議員の論その他の行動というものは、一々多数党の、懲罰を口実の弾圧の理由となつて来るのであります。私はかように考えます。従つてあなたの、風早君の言動そのものが党の政策から打出されておるものと思うから、党の政策を引用して来たというようなことは、少くとも懲罰問題を取扱うに際しての最も本質的な点を逸脱しておる。懲罰というものはさようなものではなくして、最も厳密に、その議員の問題となつたその行動を対象としなければならぬ。その行動について、いろいろな理由弁明することが当然であるかと思いますが、政策そのものをここへ持つて来るということは、それこそ私は懲罰理由範囲を逸脱した言動であるとかように思う。この点については、あなたも少くともこういうような懲罰範囲を逸脱したことを言われるにつきましては、この点についてあなたの今弁解された点は私は了承いたしませんが、この点についてもう少しあなたの見解を伺いたい。
  47. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほど来梨木君は、そこにすわつておられる林君が一身上弁明をやられたことは十分御承知だと存じますが、林君の一身上弁明をやられたときにも、十分林君が述べられたように、自由党政策に対して辛辣な批判を加えられております。私が風早君の懲罰動議を出ずにあたつて共産党政策批判することに対して、何らの制肘を受ける必要はありません。また私は、先ほど来申し上げますように、共産党政策について、風早君に対する懲罰の動議を提出したのではありません。私の懲罰動議提案趣旨をごらんくだされば、十分おわかりでありまするから、その点はあなたから何らの制肘を受ける必要はございません。
  48. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたは、共産党政策懲罰対象にしたのではないかということをはつきりお認めになつておる。はつきり認めておきながら、この懲罰理由弁明の中では、共産党政策を非難し、誹謗し、なおこれを懲罰にかけるかのごときことを言われておる。このこと自体懲罰そのものの問題にならない。実はあなたがそれに籍口いたしまして、共産党政策懲罰にかげようとしておるという印象を受ける。しかしあなたの今の答弁によりまして、あなたは共産党政策懲罰にするのではないと、こう言われまし、たから、私はその点で、あなたがその後中西君の点に触れたり、政策に触れた。これはあなたは、風早君の五月六日の演説懲罰にかけようとされたが、これだけでは問題にならないので、実は共産党政策までもひつばり出して来て、ここでひとつ反共宣伝をぶたなければならない。つまり国会をそういう舞台に、あなたはこの懲罰の動議に籍口いたしまして、利用したものと私は認めざるを得ない。(「それは独断だよ」と呼ぶ者あり)しかし私はその次に質問を進めます。ところであなたは、さらに進めますが、五月六日の風早君の質問演説のどこが懲罰対象になるのですか。あなたがここで趣旨弁明で言われていることは、ことごとく風早君の質問内容は虚偽と虚構と荒唐無稽だと、ほとんどこういう抽象的なことだけを言いまして、あとは共産党政策批判しているにすぎない。具体的には、この演説のどこをこの懲罰対象にされようとしているか、またこの演説全体を懲罰対象にしているのかどうか。これ全体がそうなのか、それともこの中の部分を問題にされているのか。
  49. 中川俊思

    ○中川俊思君 私が風早君に対する懲罰動議を出しましたのは、先ほど来私が申し上げまするように、風早君の背後にありますところの、共産党のやつていることについてのいわゆる政策についての懲罰動議ではございません。先ほど来たびたび言つておりますごとく、風早君の演説内容でありますが、なかんずく私のどうしてもこれは事実と背反していると思いました点は、私の演説の二ページの終りから六行目、「しかるに、風早君は、これを称して政府の━━━━━━━行為となし、苦痛を訴える大衆に━━━━━━━━━━━━━━━━━ほしいままにした云々と、」こういうようなこと、さらに「━━━━━━━━━━━━━━━━のか国家警察も、予備隊同様、━━━━━━━━━━━━━━━」まずこういうようなことであります。一昨日でありましたか、風早君はこれに対していろいろ弁明をされたのでありますけれども、しかしながら風早君の弁明を聞いておりますと、ますます怪しくなつて来たのであります。つまりこの当時はたして政府━━━━行為の計画的なことをやつておつたかどうか。むしろこのことは、当時あらゆる新聞、雑誌によつて明らかなごとく、これはまつたく共産党の計画的行為であつた。それを政府の計画的行為のごとくでたらめを並べておられる。しかも「国家警察も、予備隊同様、━━━━━━━━━━━━━━━━云々」などということは、私が当時述べておりますように、いたずらに国民をして警察官との間に反感を助長するようなこと、こういうようなことは、私はここにいろいろ資料を持つておりますから、御希望ならば全部朗読してごらんに入れますけれども、いかにも虚構と捏造に終始し、荒唐無稽の言辞を弄しておられる明々白々たる事実でありまして、かようなことは、議員として院の秩序を乱し、品位を汚すものである、こういうことで、私はこの懲罰動議を提出いたしたのであります。
  50. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、あなたの今の答弁によりますと、演説全体ではなくして、その中で今読み上げられたような言葉が、あなたから言わせれば懲罰に値するということになるのでありますか。それをはつきり確認しておきたいと思いますから、もう一度お答えを願いたいと思います。
  51. 中川俊思

    ○中川俊思君 ただいま申し上げましたように、私はこの演説の最初から最後までの一々の字句について、全部が懲罰対象になるとは考えておりません。共産党諸君には共産党諸君として言いたいこともあるでしよう。また私どもとすれば私どもとして、言いたいこともありますから、従つて、この演説の最初から最後まで、一々の字句全部が懲罰対象というふうには考えていないのであります。
  52. 梨木作次郎

    梨木委員 よくわかりました。そこで、全部は懲罰対象にしておるのではないとおつしやいましたから、それではひとつ具体的にどうしても伺わなければなりませんが、まず今読み上げられました「風早君は、これを称して政府の━━━━━━━行為となし、」「━━━━━━━━━━━━━━━━━ほしいままにした云々」これを問題にされたことはわかりました。それからつ次に「━━━━━━━━━━━━━━━━のか、」云々ということ、この文を問題にされておるということはわかりました。そのほかにありますか。
  53. 中川俊思

    ○中川俊思君 一々拾い上げれば切りがないのですが、たとえば七ページの「皇居前広場において、ほりにたたき落された警官や外国人が、生命の危険を感じて石がけによじ登らんとしているのに対して、雨あられのごとく石ころを投げつけたり、赤旗やプラカードの棒で突き落している残虐非道の光景を、見るに見かねた通行人が、お互いに日本人ではないかと助け上げんとすれば、その通行人もまたほりにたたき落したなどの行為は、これこそまさに鬼畜にひとしき行為として、天人ともに許すべからざる人非人的残虐行為」こういうことも、風早君の競演内容として見ますと、これはまつたく逆のことであつて、むしろこれは警察官がやつたんだ、こういうようなでたらめなことが言われておるのであります。従つて、この演説の全体をずつと通じて見ますと、私が最後に結論づけておりますように、まつたく自分らのやつたいわゆる暴力革命の前提ともなるべきようなことを是認するような構想が見られる。そういうようなことに対して、私はこの懲罰動議を提出いたしたのであります。
  54. 梨木作次郎

    梨木委員 まず中川君に伺いた言いのでありますが、「皇居前広場において、ほりにたたき落された警官や外国人が、生命の危険を感じて石がけによじ登らんとしているのに対して、雨あられのごとく石ころを投げつけたり、赤旗やプラカードの棒で突き落している残虐非道の光景を、見るに見かねた通行人が、お互いに日本人ではないかと助け上げんとすれば、その通行人もまたほりにたたき落したなどの行為は、これこそまさに鬼畜にひとしき行為として、天人ともに許すべからざる人非人的残虐行為でなくて何でありましよう。」これを懲罰対象にしたとあなたはおつしやいました。実は私もまだあまりよく検討していないのでありますが、五月六日の風早君の発言の中にはどうもそういう点は見つからないのであります。ちよつとお示しを願いたいのであります。
  55. 中川俊思

    ○中川俊思君 私の申し上げたのは、風早君の演説内容は、そういうことはむしろ警官がやつたんだ、共産党諸君がやつたんじやないのだ、いわゆる尖鋭分子がやつたんじやないのだ、こういうようなことを言つておられる。それを私はさしておるのであります。
  56. 梨木作次郎

    梨木委員 でありますから、私は先ほど来、懲罰というものは議員である身分に関係する問題であり、しかもこのたびの懲罰対象は、議員国会の中で行つた発言、つまり言論です。言論の内容が問題になつているのであります。従いまして、われわれは言論の自由については、最も神経質にこの自由を確保しなければなりません。でありますから、その人がどういう思想を持つているとか、どういう政党に所属しているかという前提條件や先入感というものはまずさておいて、少くとも発言としてなされたものを、厳密に対象として問題にしなければ、国会の中の言論の自由というものは保障することはできません。そしてまた、国会内の言論の自由が保障されることなくしては、民主主義の確立ということは、絶対に期待することができないのであります。私はそれゆえに、先ほど来冒頭において、いろいろと提案者の懲罰動議提案理由を伺つて来た。大体あなたの言われんとすることもほぼ明確になりつつあります。ところで、私が今度今聞きましたところが、今読み上げたところは、これは私が見たところではないのですが、少くともあなたが今懲罰対象にしているのだと言われる皇居前広場云々、ほりにたたきこんだという問題のこの言葉発言、これは風早君の演説の中には私は見つけることができない。しかしあなたはあるとおつしやるのか、いや、ここにはないけれども、そういうような趣旨言つているのだということなのか。つまりあるのならば、その場所を指摘してもらいたい。実はないのだ。ないのだけれども、こうこうだと言われるなら、その理由も明確にしてもらいたい。それによつて、やはりこの懲罰事犯を審議する場合に、私たちは重要な資料になるのでありますから、これをひとつお示しを願いたいと思います。
  57. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほど来言つておりますごとく、たとえば風早君が先般六月十二日の本会議における一身上弁明の中にも述べられておるのでありますが、「実に明白な殺人犯人でなければなりません。以上のごとき計画性、以上のごとき非人道的な鬼畜ぶり、しかして、その結果として殺人と重傷、これを━━━━━と言わずして何と名づけることができるか。」こういうようなことを言つておる以上、これらは明らかに宮城前で起つた、ただいま私が申し上げたような内容をみな包含しておるのであります。このことを私は言つておるのであります。
  58. 梨木作次郎

    梨木委員 私はたびたび申しますが、この懲罰委員会の審議を愼重にかつ的確に進めて行くために、私はお伺いしておるのでありまして、あなたは今風早君の六月十二日の一身上弁明を引用されました。しかしながらこれは一身上弁明であります。あなたはこの  一身七の弁明を、また懲罰対象にされるのですか。これを伺いましよう。
  59. 中川俊思

    ○中川俊思君 風早君が先般十二日に行われました一身上弁明は、ほとんど五月の六日になされた演説——字句は違つておりますけれども、むし返しであります。従つて、私はここに五月六日の演説内容速記は持つておりませんが、十二日の速記を比較、対照してごらんになれば、字句こそ違つておるけれども、内容はほとんど重複しておる。それによつてお察しを願いたい。
  60. 梨木作次郎

    梨木委員 しかしそれは私は少し乱暴ではないかと思うのです。これは一身上弁明であります。しかもその一身上弁明というのは——あなたがなさつた趣旨弁明、これはあなたも御承知のように、非常に広汎に共産党政策全般に触れられております。従いまして、そこからやはりそれに対応した一身上弁明というものもなされなければならぬことは、事の道理から見て当然であります。でありまするから伺うのであります。また先にもどりますが、あなたもこの一身上弁明懲罰対象にしておるとはおつしやらない、大体それと同じようなことを言つておるからだ、こういうことを言われますから、そこでまず最初の五月六日の演説に移りますが、もつとはつきり言つてもらいたい、皇居前広場においてほりにたたき込まされた云々が、先ほど私が読み上げました風早君の演説の中にあると主張なさるのですか。いやそれはないと主張なさるのですか。どつちなんですか。
  61. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほど来たびたび言つておりますごとく、風早君の演説内容といたしましては、これをまさに裏書きしておる。たとえば六月十二日における風早君の一身上弁明の三ページの初めの方をごらんになりましてもおわかりのごとく、「アメリカ兵士をほりに投げ込み、アメリカ将兵の自家用車を焼き拂つた」こういうことをはつきりこのときに述べられておるのであります。
  62. 梨木作次郎

    梨木委員 一身上弁明の中に今あなたの言われたようなことがあつたといたしましても、それは一身上弁明であります。懲罰対象になつておるのは五月六日の演説であります。だから私は、しつこいようでありますが、五月六日の演説の中に、今あなたが指摘されたような文句がありますかということを、繰返して聞いておるのでありますから、これにひとつお答えを願いたい。
  63. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほどもたびたび申し上げましたように、私の懲罰の動議を出しました理由は、風早君の演説内容が虚構と捏造に終始しておる、こういうことが私の懲罰内容の一番根本なのであります。従つて、しつこく梨木君から質問がありまするが、私が言わんとしておるところはそこでありまして、今一身上弁明の中にもはつきり言つておられるごとく、風早君はこのことを肯定しておられる。実際にそういうことはなかつたのにもかかわらず、あつたごとく言つておられる。ここが最も重要なところであるとして、私はこの懲罰動議を出したのでありますから、そんなささたる問題をつかまえて、梨木君はこの問題に籍口せんとしておられるけれども、私が言つておることはその問題ではございませんから、この点は御了承おき願いたいと思います。
  64. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたはささたる問題だと言われました。しかしあなたも先ほどお認めのように、五月六日の演説の中の、しかも特定の部分を問題にしているのだということをあなたはお認めになつておる。そこで私は、その部分を聞いておるのであります。あなたに、その部分がどの部分ですかということを聞いたのであります。そうしたら、この部分だとあなたはおつしやつた。だからここが問題なんだ。決してささたる問題でなくて、これが問題なんだ。これが本件懲罰事犯の一番重要な問題であります。従つて、これをささたる事柄だとおつしやることは、私は受取りがたいのでありまして、一身上弁明の中の内容を引用されることは当らないと思います。そこで私が重ねてどうしても伺わなければならぬことは、皇居前広場においてほりにたたき込んだ云々の点がどこにあるのか、あなたは今虚構と捏造云々と言われました。これはまたこれからお伺いします。それは詳細に聞きますから、それはさておいて、とにかくこの皇居前広場においてほりにたたき込んだ云々の文句がどこにあるかをひとつ示してもらいたい。
  65. 中川俊思

    ○中川俊思君 たびたび申し上げますように、風早君の一身上弁明と風早君のなされた演説内容というものは大同小異であります。従つて、風早君の一身上弁明の中に現われておる通りでありますからそれで御了承を願います。
  66. 梨木作次郎

    梨木委員 それではさらに質問を進めます。あなたは風早八十二君の五月六日の本会議演説と、十二日の風早君の一身上弁明は大同小異だとおつしやいますが、しかしどこが似ておつて、どこが違つておるか、これをもう少し具体的に示していただきたい。
  67. 中川俊思

    ○中川俊思君 梨木君のお手元には風早君の一身上弁明の原稿もございましようし、また五月六日になされた演説の内容もございましようから、どうぞそれをごらんになればわかります。
  68. 梨木作次郎

    梨木委員 私は持つております。だが、この二つを比較いたしましても、この五月六日の演説の中にはそういう文句はないのです。そうして十二日にもこういう文句がありません。従いまして、あなたのおつしやることが違うのだから——しかし違うといつてわれわれが委員会において認定する前に、あなたの方からやはりその釈明を求めておくことが、事柄の審議を愼重にするゆえんだと思いますので、提案者に聞くのであります。五月六日にはないのですよ。ないのです。ないことは間違いないのです。私は調べてあるのですから……。しかしながら、あなたがあるようにおつしやるから、念のためにもう一度聞くのです。ありませんが、あなたがあるというならば、場所を指摘していただきたいというのです。
  69. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 答弁は同じだから答えぬと言つております。
  70. 梨木作次郎

    梨木委員 私は本委員会の審議を愼重かつ民主的に運営して行くためには、今の私が提案者に行つた質問は、本委員会における懲罰問題を審議する最も重要な事柄であります。今提案者中川君は、この答弁はしませんとおつしやいましたが、しかし本委員会といたしましては、これについての提案者中川君の答弁は、やはり聞く必要があると思います。そこで委員長からこの点についてもう一度、これは非常に重大だと私は思いますから、私の質問に対してお答えを督促してもらいたいし、お答えがなければ、私はまた私の考えがありますが、まず第一に委員長から、これは私は非常に重要だと思いますから、答弁を促してもらいたいと思います。
  71. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 中川君は、何べん答えても同じことだからと、こう言われます。
  72. 梨木作次郎

    梨木委員 委員長は、今私と中川君との質疑応答を通じて、事の重要性を認識されていると思います。従つてこの懲罰事犯を慎重に扱う限りにおきましては、委員長はやはり職権をもつてこの釈明を求めることが必要だと思います。私はそう考えます。だから、私は委員長のそういう職権の発動を促したいと思います。
  73. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 私は何もそんなことをここでやる必要がないと思います。委員諸君がこれを聞いてしかるべく御判断願いたいと思います。     〔発言する者あり〕
  74. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほど来梨木君は、鬼の首でもとつたように、この問題を取上げられておりますが、風早君が先般ここにおいて弁明されたときにも、皇居前で起つたいろいろな問題は、共産党としての自分は派生的問題としか考えていない、こういうことを風早君ははつきり言つておられます。私は派生的問題とは考えていない、これは計画的問題と考えておるのでありますが、かりに一歩譲つて、風早君の言をその通り引用するといたしましても、今私が申し上げた問題について、一々字句が違つておるから、あるいはお前の言つた通りがここに載つておるかいないか、こういうことは問題ではございません。この演説の内容をごらんになれば、私が今言つたようなことは、風早君自身も弁明において述べられておられる。その述べられておることは、風早君の五月六日の演説内容と大同小異であるということをもつて、十分おわかりの通りなのでありますから、それに対して、私はこれ以上あなたに御答弁を申し上げる必要を認めないのであります。
  75. 梨木作次郎

    梨木委員 今中川君の答弁を聞いておりますと、自分が懲罰にかけようとしておる言葉、文句、これが風早君の演説の中には全然存在しておらない。ところが、そういう文句があるかないかは問題でない。こうなりますと、また逆にもどりまして、あなたは一体何を懲罰にしようとしているのかわからぬじやないか。こういう文句を問題にされないとおつしやるなら、そうならば、また逆にもどりまして、何を懲罰にしようとするのですか、これをひとつ伺いたいと思います。
  76. 中川俊思

    ○中川俊思君 当初申し上げました通り、虚構と捏造並びに警官に対する反抗を助長したこと、これが私の懲罰動議の最大の理由であります。そこで大分くどいようでありますから、ひとつ当時の新聞なりまた雑誌なりを引用して、徹底するまで御説明申し上げましよう。
  77. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 中川君、あまり長くなつても……。速記をとめてください。     〔速記中止
  78. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記を始めて……。
  79. 中川俊思

    ○中川俊思君 それからこの五月一日のメーデーの騒擾事件というものは、これは共産党を背景とする一部尖鋭分子の計画的行動であつたということは、当時の新聞雑誌は言うに及ばず、労働組合の批評を見ても、政党の批評を見ても、また一般の批評を見ても、それから君らときのうまで同志だつて中西君の批評を見ても、はつきりしているのだ。君らの気に入らなければ、君らの言うところでは、みな裏切者、反動者なんだ。今ちよつとここにおらぬが、名前をあげて言うても気の毒だから言わぬが、現在共産党の中におる君らの同志で、いつ脱党しようかとチヤンスをねらつている者がおることを知つているか。失礼だが……。そういうことであるのだ。(「自由党にもあるじやないか。」と呼ぶ者あり)自由党にもあるかもしれぬ。数が多いのだからあるかもしれない。
  80. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 討論はやめてください。
  81. 中川俊思

    ○中川俊思君 そういうふうに、要するに私のこの懲罰動議を提出した一番の問題は、さつきからたびたび言つておるごとく、一々の字句の問題じやないのだ。これは要するに計画的にやつたことを、計画的にやつたのじやないのだ、警官がやつたのだ、こういうような虚構と捏造に終始していることがいけないということを言つているので……。
  82. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 あまり討論にわたらないようにお願いいたします。  午前中はこの程度にとどめ、午後は二時から委員会を開くことといたし、この際暫時休憩いたします。     午後一時七分休憩      ————◇—————     午後三時十九分開議
  83. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  議員風早八十二君懲罰事犯の件を議題といたします。動議提出者中川君に対する質疑を続行いたします。梨木君。
  84. 梨木作次郎

    梨木委員 午前中中川君に質問いたしたのでありますが、さらに質問を続行します。  午前中の私の質問に対するあなたの答弁によりますと、この五月六日の風早君の演説の中の二箇所を指摘されて、これが懲罰対象になつておる、こういうことでありました。それでこの二箇所以外にはまだほかにあるのかどうか、これをひとつ伺いたいと思います。
  85. 中川俊思

    ○中川俊思君 たくさんございますが、私は冒頭に申し上げましたように、風早君の演説の第二ページから三ページにわたつてありまする部分を特に強調いたしたのであります。その他ただいまお尋ねでありまするから追加をいたしますと、四ページの最初の、「━━━━━━━━━━━━━━━、」さらに四ページの終りから三行目の「━━━━━━━━━━━━━━━━━」云々、さらに五ページの最初から三行目の「今やまつたく━━━━━━━━━━━━━━━━ことは明らかであります。」さらに六ページの「━━━━━━━━━━━━━━━━━被害者たる国民に対しては、損害賠償どころか、逆に入院中の被害者の治療を妨害し、」云々、その他たくさんあるのです。たとえば七ページの初めから三行目、「━━━━━━━━━━━━━━━━この武装警官隊、これこそ日本国内に派遣せられた━━━━でなくて何であります。」その他その下の「━━━」であるとか、数え来ればたくさんありますが、要するに私が本動議を提出いたしましたのは、午前中にも申し上げましたように、虚構と捏造に終始しておる、しかも無益に警察官と国民との間に反抗を助長するようなことを風早君が述べておる、こういうことを私は指摘したのであります。
  86. 梨木作次郎

    梨木委員 今指摘されたのは六箇所であります。六箇所のほかにまだたくさんあると言われるのでありますが、具体的に示してもらわなければ、この懲罰対象となつておる問題が明確になりませんから、やはりごめんどうでも、ひとつ具体的に示していただきたいと思います。
  87. 中川俊思

    ○中川俊思君 梨木君の手元には風早君が当日された演説速記があるはずでございますから、それをどうぞごらん願つて、私がただいま申し上げたこと——さらにその他たくさんあると申しましたのは、そこに筋を引いてあるところ、これをごらんになればおわかりでございます。
  88. 梨木作次郎

    梨木委員 筋を引いてあるところと言われますが、筋を引いてあるところは、そのほかには見当らないようでございます。これだけでありますか。
  89. 中川俊思

    ○中川俊思君 九ページの初めから四行目にもございます。「━━━━━━━━━━━━━━━━こと、」さらに七行目にも「━━━━」さらに十ページの初めから八行目にも「━━両條約」、その次にも「━━両條約」、その他十一ページにも同様の文句がありますが、これらであります。
  90. 梨木作次郎

    梨木委員 これらの文句が虚偽と控造だから懲罰に該当する、こういう主張なんでありますか。
  91. 中川俊思

    ○中川俊思君 午前中申し述べた通りでございます。
  92. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたは、今あげられたような問題が虚偽と捏造だとおつしやる。しからば私は聞くのでありますが、五月一日に高橋正夫君という人がピストルで殺されております。この事実をあなたはお認めにならないのですか。これもうそだとおつしやるのですか。
  93. 中川俊思

    ○中川俊思君 うそだとは私は申しませんが、午前中からしばしば申し上げておるように、この問題の本質から考えまして——ただいま梨木君の指摘されたことが事実であるかもしれない。しかしながら、高橋正夫君という人がどうして殺されたか、はたして警官隊に撃たれたか、あるいは自分らの同志、君らの称しておられる同志の何かによつて生命を失われたか。そこまで私は現場を見たわけでありませんから、その詳細にわたつて答弁することはできません。
  94. 梨木作次郎

    梨木委員 この高橋君というのは、腰のうしろからピストルの弾丸が胸を突き抜けて、これが致命傷になつて死んでおるのであります。ピストルの弾丸で死んでおるのであります。これは警察官が射殺したということは、当時この現場におつた人々ばかりでなく、いろいろな雑誌や新聞にも報道されておりまして、これは明らかに警察官によつて射殺されたというように国民大衆は感じておるのであります。そこでこの問題につきまして、一人の人が殺されておるのを、あなたはそれはどういう原因によつて殺されたかわからないとおつしやるのである。しかし当時武器、しかもピストルを持つておつたのは警察官だけだというのは常識であります。そうなつて参りますと、一人の人が殺され、しかもそれはピストルによつて殺された。これは診断の結果明らかである。そしてピストルを持つていたのは警察官であるということになりますれば、この問題をとらえて、これは警察官が殺したのではないか、警察官が殺したものであるとすれば、これは重大なる政府責任であるといつて政府責任を追究し抗議するということは、殺された国民の側からいいますならば、当然なされなければならない質問だと私は思うのです。だからかりに立場をかえて、あなたはそれはどういう原因で殺されたかわからないとおつしやつても、国民がこれは明らかに警察官によつて殺されたと信じておる場合、そして一般的にさような報道がなされている場合に、これを受けて質問するのは、私は国会議員として当然であろうと思うのですが、こういう問題について質問することが、あなたはやはり懲罰に該当するという御主張なんですか。
  95. 中川俊思

    ○中川俊思君 高橋君という方が殺されたか殺されないか私は知りませんが、もしあの問題でなくなつたとすれば、私どもは国民の一人としてつつしんで弔意を表するのであります。しかしながら、一体この問題がどうして起つたか、こういうような根本原因を探究いたしますならば、もし高橋君がその渦中に巻き込まれて殺されたとするならば、高橋君の霊は、おそらく共産党のこういう問題を惹起したいわゆる尖鋭分子のやつたことに対して、今地下で恨んでおるであろうということを信じておるのであります。
  96. 梨木作次郎

    梨木委員 そうなりますならば、それはあなたがそういう感覚を持つておられるということだけのことでありまして、それは一つの政治的な主張になると思います。しかし私がここで問題にしているのは、この警察官によつて一人の労働者が殺されたというこの事実、これは警察官によつて殺されたのかどうかはあなたは疑問であるとおつしやるといたしましても、国民の間ではそういう疑問を持つておる。これが事実であるといたしますならば、少くともこの点について国会議員がこの疑問を晴らし、さらにこの点についての政府責任を追究するということがもし懲罰になるといたしますならば、政府に警官の人権蹂躪を抗議し、責任を追究するということが一切できなくなるじやありませんか。だからあなたが高橋君が死んだという事実をお認めになつて、ここに一人の人間が殺されておる、メーデーのあの人民広場の問題で殺されておるこれは国民生命、財産を保護するのが任務である警察官によつて殺されたということが、はつきり事実であるということになりますならば、重大問題でしよう。だから、この問題を質問するのは私は当然だと思う。だからこの点をあなたが虚構だの何だのと言つて、そして懲罰にかけようとするならば、これは私は非常に問題だと思う。
  97. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほどから、高橋君のことについて盛んに梨木君は質問をしておられるようでありますが、おそらく梨木君といえども、当時高橋君が警察官によつて撃たれたということの確認はないだろうと思うのであります。そういう仮定の事実に基いて答弁することはやめます。
  98. 梨木作次郎

    梨木委員 私ども少くとも国会議員として、国民の負託を受けて国政に参質しておるものは、一々その事実を現場で見なければ、政府に対して質問できないというような性質のものではありますまい。国民の中にこういう疑問、疑惑、そしてこれはもう日本労働者にとつて、明らかに警察官が殺した、こう信ぜられておる。だからこの国民的な疑惑感情、こいつを解くために、そしてまたこれを真実と信じて質問するというのには、いろいろな立場がある。だからその立場々々によつて、いろいろな表現も出て来るでありましようが、少くとも高橋君が死んだという事実、この点は動かすことのできない現実の事実だ。この点について、政府責任を問いただすことを懲罰にかけようとすることになりますならば、━━━━というようなこの言葉自体——そのほかにもたくさんの人が死んでいるという疑惑が起つて来ている。これを一切とらえて質問するというのがなぜ悪いのです。だからここで問題になることは、私どもは……(「━━━━という言葉を使うことが悪いんだよ」と呼ぶ者あり)そこで次にさらに伺います。(「質問することが悪いと言つているのではない」と呼ぶ者あり)そういうよけいなことを言わなくてもよい。そこでこの人民広場において一人の人が死んだ。(「一人ではないか」と呼ぶ者あり)これは一人ではない。諸君は一人と言うけれども、さらに近藤巨士君というのが、これがやはり五月六日に死んでおる。この五月六日死んでいる原因というのは、人民広場で負傷をいたしまして、これが病院へ入院いたした。病院で治療中に瀕死の状態にあつたのです。この瀕死の状態にあつた人に対しまして、武装警官を張り番させて、そうして深夜尋問を行つた。その結果近藤巨士君という人が死んで行つておるのです。これは人道上から見ますならば、瀕死の人間に対しまして——医者が絶対安静を要するという人を尋問するということは、これは人道上許すことのできない問題である。そのために、治療ができなくて死んで行くということは、こういうことは文学的に表現すれば虐殺ということになりませんか。(「じようだん言うない」と呼ぶ者あり)しかしそれは立場は違うといたしましても、こういうような死に方をして行つておるこの事実について政府に対して質問する、これがどうして懲罰に該当することになるのか、こういう質問をしてはいけないとあなたはおつしやるのですか。
  99. 中川俊思

    ○中川俊思君 先ほど来、高橋君その他しばらくして、なくなられた方の話をしておられますが、私どもの大衆というのは、非常に多くの国民諸君相手に、いわゆる対象としての言葉であります。しかし今聞きますと、高橋君その他、一週間ほどしてなくなつた近藤某氏を梨木君はさしておられるようでありますが、私どもは警察官との衝突によつて一人ないし二人の者が死んだことを、ただちに━━━と言うようなことは、あまりに共産党諸君のいわゆる誇大な宣伝として、国民に対して非常な悪感情を起さす、こういうようなこと、ことに虐殺というようなことに至りましては、およそ当日の事実とかけ離れているように思われるのであります。高橋君がはたして警察官によつて殺されたかどうかということは、当の梨木君はもちろんのこと、風早君といえどもこれは目撃されたわけでも何でもないであろうと思うのであります。しかるにかかわらず、そういうことをさも警察官が殺したごとく、自分らが目撃したようなことを言つて宣伝すること、そういうようなことが、いわゆる虚構と捏造であると私は言つたのであります。また今梨木君の御質問でありまするが、私は、そういうことを質問されたことが悪いということを一つ言つた二とはございません。私の申しましたことは、先ほど来、午前中・来申し上げておりますように、要するに虚構と捏造に基いたことを言つておられる、そのことを言つておるのでありまして、それに対する反証をあげろということであるならば、ここにいくらでも材料がありますから御説明いたします。あなたの言われるのは、そういうことを政府に対して質問するのがなぜ悪いのか、こういう御質問のようでありますけれども、私はその質問の内容が悪い、よいというようなことを言つたことはございません。
  100. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたはそれでは、当日警察官がピストルを発射したこと、そういう事実はなかつたとおつしやるのですか。
  101. 中川俊思

    ○中川俊思君 それは先般この席でもつて風早君が一身上弁明をされましたときにも、風早君がしばしば言つておられることでありますが、警官隊との衝突は派生的な事実である、こういうことを風早君ははつきり言つておる。速記録をごらんになればわかりますが、要するに根本の問題は、これを背後から使族した、煽動した共産党を中心とする一部尖鋭分子にあるのである、こういうことを私どもは言つているのでありまして派生的な問題につきまして、かれこれ私は今言おうと思つておるのではありません。
  102. 梨木作次郎

    梨木委員 諸君はそういうことを言いますが……。     〔発言する者あり〕
  103. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 静粛に願います。
  104. 梨木作次郎

    梨木委員 このメーデー事件のあつた翌日です。五月二日、衆議院法務委員会におきまして、田中警視総監が発言しております。この発言にこう言つております。「いわゆるメーデーを利用した一つの暴力破壊活動であるというふうに私どもは考えておりまして、情報等も入手いたしまして、相当暴力行為等が行われるということも予想はいたしておつたのであります。ただ当局側といたしましては、これらの暴徒と、繁華街におきまして、町の中において乱闘をいたしますることは、一般の通行人等に非常な死傷者を出したり、あるいはその他の物件に損壊を来し、あるいは非常な損失を来すようなこともありますので、こういう点を考慮いたしまして、皇居前の広場に入れまして、乱闘をいたしたような次第であります。」とこう答えております。そこで私はお尋ねいたしたいのです。つまり御承知のように、あの人民広場というのは、ほりに囲まれておるのであります。そして出入品は数箇所に限定されておるのであります。ここへ、田中警視総監のこの答弁によりますと、デモ隊を引入れておいて、この入口をみんな締めてしまう。これは袋のねずみになつてしまう。そうしてそこで警察官は催涙弾やピストル、こん棒、鉄かぶとで武装しておる。この場合におきまして、一体こういうようなことが、——しかも当時目撃した人々の報道によりますと、警察官が最初に催涙弾、それからピストルを発射しておる。こうなつて来ますと、これは袋のねずみにしておいて、そうしてこれをピストルや催涙弾で襲撃するということになりますならば、私はこれはまつたく━━━━を計画したというように思われても、これはしかたがないじやないか。またこういうような諸般の情勢を、事実関係前提といたしまして質問をする場合に、こういう言葉を使つて質問すること、その当不当はともかくといたしまして、ここで一番私たち国会議員として考えなければならぬ問題は、あらかじめ人民広場へ引入れておいて、ここで乱闘したということになりますならば、これは計画的に、あらかじめ何かの暴力行為が行われるということを、これは初めの情報でわかつておる。そこでここへ引入れて……。
  105. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 梨木君、梨木君、ちよつと申し上げます。簡潔にお願いします。簡潔に……。  柳澤君。     〔「発言中じやないか」「被告、黙れ」「被告とは何だ」と呼び、発言する者多く、議場騒然〕
  106. 柳澤義男

    柳澤委員 梨木君の発言を聞いておりますと……。     〔「発言中じやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  107. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 議事進行ですね、柳澤君。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  108. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 委員外発言は禁じます。  柳澤君。
  109. 柳澤義男

    柳澤委員 あなたの発言を聞いておると、まつたく質疑の内容に触れておらぬ。用語の遊戯にすぎない。午前中から質疑は盡されて、もはや……(「今発言中だ」と呼び、発言する者、離席する者多く、議場騒然)質疑は盡されておると考えますので、この辺で中川君に対する質疑は打切つていただきたいと思います。     〔「賛成」と呼び、その他発言する者多し〕
  110. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 ただいまの柳澤君の動議……。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  111. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 柳澤君の動議に賛成の諸君の……。     〔賛成者起立〕     〔「起立多数」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聽取不能〕
  112. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 動議提出者である佐々木盛雄君に対する質疑に入ります。(「質疑中じやないか」と呼び、その他発言する者多し)梨木君、静粛に願います。(「政治家として生きるか死ぬかの問題じやないか」と呼び、その他発言する者多し)林君、委員外発言を禁じます。林君に退場を命じます。——退場を命じます。——退場を命じます。林君。(発言する者、離席する者多く、議場騒然)林君、退場を命じます。——林君、退場を命じます。委員皆さん着席してください。いま一度申し上げます。動議採決の結果、質疑は終了いたしました。
  113. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 質疑は終了したということでございますが、先ほど委員長に申し上げましたように、私きようは突然猪俣君の欠席によりまして、代理で参つたので、まだ十分に書類を読んでおらないのであります。それで私の質問は明日にまつわしていただきたいと思います。従つてこの質疑の打切りということは、全体の打切りではなくして、私の質疑は明日に延ばす、こういう理由で質疑を終了していただきたいと思うのであります。
  114. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 ただいま質疑終了の動議が成立いたしましたから、その留保をするわけには参りません。
  115. 梨木作次郎

    梨木委員 議事進行について。今の柳澤君の質疑打切りの動議の経過を見ておりますと、こういうことになつておるのです。これは速記録を見れば明らかですが、委員長は私に対して質問はなるべく簡潔に願いたいという注意があつて、私もそれに応じまして、簡潔にやりましようということで、質疑を続行しようとしたのです。その質疑を続行中の発言中であります。その発言中に、あなたはこの柳澤君の議事進行の発言を認めたのです。私の発言が終らないうちに、こういうような発言も許すということは、これは明らかに議事規則に違反します。また委員会の運営上、慣例からいつても、こういうことはありません。現に、私は昨日他の委員発言中に、いろいろ議事進行について発言を求めたが、今他の委員発言中だからと言つて、私の発言を認めなかつたことも明らかであります。しかも佐々木更三委員がほかに質問したいことがあるということは、先ほど委員長にも通告しておるところであります。質疑の通告がしてあるにもかかわらず、佐々木君のこの質問は全然させる機会を與えないで、質疑の打切りをするような、そういうとりはからいをすることは、少くとも委員会の一人の委員、しかも重要な野党委員に質疑の機会を與えないということは、この委員会の運営上、まつたく乱暴なやり方だといわざるを得ません。
  116. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 梨木君にお答えいたします。梨木君は私の注意によつて、一度いすに腰かけられた事実がある、従つて私はあなたの発言は打切つたものと認めて、柳澤君の発言を許したのであります。それから佐々木君の発言通知は受けておりますが、動議が成立した以上やむを得ませんから、御了承願います。
  117. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私ここで詳細に調べておりませんが、たしか委員会の質問発言は、あらゆる委員に平等に割当てなければならぬという規定になつているはずであります。従つて私は委員長に対しまして、きようの質問にこの書類の調査が間に合わないから、明日に私の質問を延期してくれないか、こういう申入れをしてあるのでございますけれども、私の質問権を放棄しておるのではないのであります。従つて柳澤君のこの質問打切りの動議は、梨木君の質問打切りの動議ならば、これは適当かもしれませんが、私の質問まで柳澤君の動議によつてこれを打切る、こういうことは委員会運営の上から、私は何か違法ではないか、こういうふうに考えられます。
  118. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 佐々木君にお答えいたします。あらかじめ時間の割当をしたときには、佐々木君のようなことがございますが、時間の割当をなさずして、今日のような場合は、動議が成立してからは、あなたの発言は許すわけには参りません。
  119. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 それにいたしましても、委員長はまだ質問者が残つておるのに、これを見ずして全然そういう質問者の意見を尊重しないで、これを打切るということは、どういたしましても私は委員長のこういうとりはからいは公平だとは想えません。こういうような不当な委員会において私はとうてい職責を盡すことはできませんので、この委員会に対しては退場いたします。
  120. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 佐々木君にお答えいたします。私は委員長として動議が成立した以上は、やむを得ないからしかたがありません。     —————————————
  121. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 ただいま梨木君から、委員長代理に対する不信任の動議が提出されましたが、私の一身上のことでありますので、理事田淵君に末席を譲ります。     〔高木(松)委員長代理退席、田淵   委員長代理着席〕
  122. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 ただいま梨木君より高木委員長代理に対する不信任の動議が提出されましたから、これについて議事を進めます。  まずその趣旨弁明を許す順序でありますが、その発言時間は五分以内とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 御異議なければ五分間と決しました。梨木君。
  124. 梨木作次郎

    梨木委員 ただいま私が提出いたしました高木松吉君に対する不信任の動議の趣旨弁明をいたします。  私は平素高木松吉君を尊敬しておる一人でありますが、本日の議事運営は、平素の高木君に似合わず、非常に非民主的な、へんぱな運営をされております。その第一は、本日午前中、私は中川君に対して提案理由についての質問を試みたのであります。午後もこれを続行することになつておりまして、これを続けておつたのであります。その間私の質問がまだ続行中である。委員長のほうからこれに対して簡潔に願いたいという要望があり、私も簡潔にいたすために、その趣旨を了として進めようとしたときに、突如柳澤君から議事進行の発言があつた。そこで私は委員長に対して注意を促した。今私の発言中だから、議事進行は私の発言が終つてからにしてもらいたいということを要求したのであります。この点は速記録にも明確に残つているはずであります。そのときに、委員長の今の弁明によりますと、私が何か腰をかけた、だから質疑が終つたものと認めた。そういうことは私は——わが党の風早八十二君の一身上の問題に関しての重要な懲罰委員会の審議であります。それで私は、たくさんの質問をしなければならないことを持つておりますし、またそのことは当然委員長も百も承知のはずであります。もし委員長が真にこの審議を愼重に取運ぶ意思がありまするならば、もし私がいすにすわつたという事態を認めたなら、もう質問は終つたのですかというような注意ぐらいあつてもよろしかろうと思う。私の方は全然質疑の続行中という考えでおつたのであります。ところが、突如そういうようなとりはからいをされるということは、明らかに——私が本日午前中の様子を見ますと、委員の顔ぶれが非常に少かつた。ところが午後になつて来まして、こうたくさん顔をそろえて来た。非公式の情報によりますと、これはひとつ頭をそろえて質疑打切りをやろうじやないか、こういう策謀があつたと私は聞いておる。そういうことが真実なりといたしまするならば、そのような自由党の質疑打切りの野望を——実はそれに乗つて、公正なるべき委員長が、與党のかかる質疑打切りの隠謀を実現するために協力したと認めざぎるを得ないのであります。私はこういう委員長のやり方に対しましては、どうしてもこれを信任することはできません。これが第一点です。特に……。
  125. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 梨木君に申し上げます。申合せの時間はあと一分であります。
  126. 梨木作次郎

    梨木委員 わかりました。しかもこういうような一身上の問題に関連しての審議というものは、最も愼重、かつできるだけだれが見ても納得するような形で委員会の審議が進められなければならないと思います。ここに午前中出席の方は御承知だろうと思いますが、私の質問に対しましては、中川君はまつたく支離滅裂なんだ。どこと、どこと、どこが懲罰対象になつているかという私の質問に対しましては、事実何ら風早君の発言していないことを、これが懲罰理由でありますと答えるような、さようなほどに無責任なこの懲罰動議提案理由なんです。
  127. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 梨木君、簡単に。
  128. 梨木作次郎

    梨木委員 それだけに私は、ますますこの懲罰の内容について、どういう点が懲罰対象になつており、どのような理由懲罰対象になつているかということを、これはもつともつと時間をかけて質問しなければならないのです。にもかかわらず、私の質問がまだ序の口のときに——そのことは諸君にもはつきりわかつているはずだ。にもかかわらず、こういうような質疑の打切りを途中でやるということは、これはまつたく委員会の審議を愼重にやるべきはずのことを、一方的に與党の利益を代弁してこれを運営するような印象を受ける。明らかにそうだ。これが第二点。もう一点は……。
  129. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 梨木君、簡単に願います。
  130. 梨木作次郎

    梨木委員 佐々木更三君が、午前中から、私は質問いたしますよ。まだきようは委員にかわつて準備がしてありませんから、どうかあしたに続行してもらいたいという要望があつたことは、委員長承知のはずだ。そういうときに、他にまだ質疑をする人があるにもかかわらず、この佐々木君の発言をすら禁止するようなことを、しかもこれは有力な野党委員の質問であります。諸君が今ごらんの通り、彼は憤慨して、こういう事態の中ではとうてい私は職責を果すことができないと言つて、退席したじやないか。こういうような運営をする委員長は、絶対に私どもは信任することはできません。このことは、本件の懲罰とまつたく表裏一体だ。つまり諸君はあらゆる野党言論圧迫して、自分たちの我を通そうとする、自分たちの意思だけを押しつけようとする、こういうやり方の現われである。これこそ諸君は、諸君自体国会の機能を破壊することじやないか。野党の権能を全然認めないということは、民主主義破壊じやないか。だから、私はこれを理由といたしまして、委員長の不信任案を提出した次第であります。
  131. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 これにて趣旨弁明は終りました。  討論に入ります。討論は通告順によりこれを許します。柳澤義男君。
  132. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいま梨木君から委員長代理の不信任案の趣旨弁明がありましたが、まつたく事実と相反する。これはこの部屋において公知の事案でありますから、多くは論ずる必要はありません。     〔発言する者多し〕
  133. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 静粛に願います。
  134. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいま梨木君から説明されたのと事実とまつたく相反するという点は、ただいま梨木君の質問に対して、委員長が簡潔に願いますと言つたときに、梨木君はそれで一ぺんかけられた、そのときに私の方から議事進行という動議を出している。この点は満場の諸君のおそらくきわめて明白な事実として立証を要しないと思う。     〔発言する者多し〕
  135. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 委員外発言は御遠慮願います。
  136. 柳澤義男

    柳澤委員 私の方からなぜこの打切りの動議を出したかということについても、今民主主義的な審議の破壊であるとか、あるいはいろいろなことを言われましたけれども、この梨木君の質疑は、午前中から継続されており、しかも食事もずらして継続して、一時までずつとやつておつたのであります。しかるに、その間において梨木君の質疑は、実に微に入り細をうがつて、まことに敬服するほどこまかくやつておられる。しかしてその後における質疑たるや、まつたく午前中の質疑の用語をもてあそんでいるだけであつて、しかも……。     〔「どことどこか言つて見ろ」と呼ぶ者あり〕
  137. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 梨木君、御静粛に。
  138. 柳澤義男

    柳澤委員 しかも約束の時間が来て、委員長が着席し、われわれ委員が来ても梨木君は姿をここに現わさぬ。しかも質問を受ける方の、提案者もすわつてつても、梨木君は姿を現わさぬ。しかも見るというと…(「茶坊主何を言うか。定足数が足らぬのだ」と呼ぶ者あり)黙れ。人の発言中だ。
  139. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 御静粛に願います。
  140. 柳澤義男

    柳澤委員 しかも見るというと、ちやんと控えている。(「定足数が足らなかつたじやないか」と呼ぶ者あり)しかもこちらで定足数を集めると、さつと出て来た。(発言する者多し)黙つて聞きなさい。そういうふうに、ただ引延ばし戦術をしているだけで、真の意味の質疑を行おうという腹がない。こちらでちやんと頭をそろえて進行しようというときに、これでは質疑を打切られるかもしれないというので、そのときに初めて現われた。     〔発言する者多し〕
  141. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 静粛に願います。
  142. 柳澤義男

    柳澤委員 さような誠意のない、真の審議の意思のない、これはまつたく審議権を放棄しておるものである。しかもいたずらに時間を引きずつて、いたずらに用語をもてあそんで、ただ引延ばし作戦に出ている以上は、民主主義的な運営を行わんとすれば、この辺で打切るのが当然である。しかも議事規則に照して、委員長がその議事進行の動議を受入れて、そしてそのかけた瞬間に、その事実を認めた。     〔発言する者多し〕
  143. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 梨木君、発言を許可しておりません。
  144. 柳澤義男

    柳澤委員 この動議を諮つて、採決の結果打切られたということに、何の違法があるか。これはまつたく運営よろしきを得た委員長の運営ぶりである。従いまして、私はこの梨木君の委員長代理不信任の動議には、まつこうから反対します。     〔発言する者あり〕
  145. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 御静粛に願います。  これにて討論は終了いたしました。  採決いたします。ただいまの高木委員長代理に対する不信任動議に、賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  146. 田渕光一

    ○田渕委員長代理 起立少数。よつて高木委員長代理に対する不信任の動議は否決されました。  高木委員長代理の復席を願います。     〔田淵委員長代理退席、高木(松)   委員長代理着席〕     —————————————
  147. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 議員林百郎君懲罰事犯の件を議題といたします。動議提出者、佐々木君に対する質疑に入ります。梨木君。
  148. 梨木作次郎

    梨木委員 どうも私は、少し委員長にはつきり確認を求めておかないと、だしぬけにとんでもないことをやる。だから私はひとつ委員長に伺つておきたいのでありますが、私はこれから質問いたします。しかしながら、質問の途中で議事進行の発言を許すようなことをやつて、そうして質疑の打切りを突如やられるようなことは、これは愼んでもらいたい。しかもきようは野党委員は出ておりません。特に佐々木更三君は、質問をすると言つておきながら、本日は退席いたしましたが、この点を含んで議事の運営をやつてもらいたいと思います。
  149. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 梨木君にお答えいたします。適法に基いて議事は運営いたします。
  150. 梨木作次郎

    梨木委員 佐々木君に質問いたします。佐々木君のこの林百郎君に対する懲罰動議趣旨弁明を見ますと、共産党の活動全体を問題にして、懲罰対象としておるような印象を受けるのであります。そこでまず第一に伺いたいのは、あなたが懲罰理由とされるところは、共産党政策そのもの、これを懲罰にかけようとしておるようにこれでは見えますから、そういう趣旨でこの懲罰動議を出されておるのか、これを第一に伺います。
  151. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私個人は、共産党そのものに対する合法性についても、非常な疑問を持つております。しかしながら、私が先般出しました懲罰動議理由といたしましては、そういう国会を否認し、暴力革命を達成しようという考え方の共産党であるから、従つて国会内において破壊的な言辞を弄することも、別に驚くには足らないけれども、単にそれが、いわゆる共産党であるというだけの理由によつて、そういう無責任言辞を放置するにおいては、とうてい院内の秩序を保つこともできなければ、議院品位を保つこともできないという点が一つと。さらにもう一つには、林百郎君の演説の中におきまして、議会政治を否認するごとき破壊的言辞が行われておりますことに対して、これまた私は懲罰に値すると考えた次第であります。
  152. 梨木作次郎

    梨木委員 答弁がはつきりしないのでありますが、(「はつきりしているよ」と呼び、その他発言する者あり)委員長、静かにさせないと混乱しますから……。
  153. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 頭が混乱するそうだから、静粛に願います。
  154. 梨木作次郎

    梨木委員 共産党政策共産党の活動そのものを懲罰にかけようとするのじやないということは、お認めなんですか。それをまず承りたい。
  155. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 繰返して申し上げる必要はないと思いますが、私個人は、共産党そのものに対する合法性についても疑問を持つている。しかも今回提出いたしましたこの懲罰につきましては、共産党の林百郎の先般行つた演説の内容が、いろいろ懲罰に付すべき理由があります。ただ今あなたが御質問になつた、共産党政策懲罰に付するかという御質問だけについて答えますならば、共産党政策であるかもわかりませんが、きわめて破壊的な、憲法を否認し、国会政治を否認するような、そういう破壊的言辞を行つたことは、懲罰に値すると申している次第であります。
  156. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、あなたは六月七日の本会議における林君の日華條約の反対討論、この反対討論だけを懲罰対象にしているのだ、ごう受取つてよろしいのですか。
  157. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 大体その通りであります。
  158. 梨木作次郎

    梨木委員 この大月七日の本会議における林百郎君の演説、これの全文懲罰対象になるのですか。それとも部分を問題にしているのですか。
  159. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私は提案理由におきまして、申し述べたと記憶いたしておりますが、私をして言わしめますならば、林君の演説全文は、ことごとくが懲罰対象になり得るものと信じております。理由につきましては、御質問になれば申し上げてもけつこうであります。
  160. 梨木作次郎

    梨木委員 林君の演説全体が、懲罰対象だという答弁でありました。そこで私は伺いますが、林君は一番先に、「私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となつておる日華條約に反対をする。」と言つておられます。日華條約に共産党を代表して反対することが懲罰対象になると、こういうことになるのですか。
  161. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私は、林百郎君の演説の内容は、そのほとんど全文懲罰対象となるべきものと考えるが、特にかくかくかような点は、最もおびただしいものであつて、われわれが黙過することができないということを申したわけであります。総括的に申しますならば、この演説の内容全文は、私は懲罰対象となるべきものであると考えるわけでありますが、決してそれが私の重点ではございません。特に次のごとき点がはなはだしいということを申し述べた次第であります。  さらにただいまの御質問の、林百郎君が共産党を代表して、日華平和條約に反対をするということが、懲罰対象となり得るかという御質問であります。これに対しましては、おそらくこの議場の中において、各議員は良識をお持ちになつておると考えますが、私はそういう片々たる、ことさらにこじつけの議論に対しましては、良識をもつて御判断を願いたいと思います。
  162. 梨木作次郎

    梨木委員 だから私は、あなたがそういうことをおつしやるかと思つて最初に聞いたのです。演説全体を懲罰対象にしているのか、その中の特定部分を問題にしているのかと聞いたのです。するとあなたは、演説全体が懲罰対象だ、こうおつしやる。すると、この演説をごらんになれば、一番重点は何かといえば、日華條約に反対するということ、しかもこの日本共産党を代表して反対するということが、六月七日の本会議における林君の演説の重点なんです。その理由を以下ずつと説明したのであります。従いまして、このあなたの論法をもつていたしますならば、共産党を代表して日華條約に反対したことが懲罰になるというのですから、これはとんでもないことじやないかという結論になるわけです。日華條約に共産党を代表して反対するということが、この討論の重点なんです。この反対することまで、あなたは懲罰対象にしておるのがどうか、これをはつきりお答え願いたい。以下はその理由なんです。共産党を代表して反対するということが主題なんです。この点をどうお考えになりますか。
  163. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 どうも共産党良心と良識と、われわれの良心と良識の間には、非常な隔たりがあるようであります。私の申し上げることを私の申し上げた通り了解をしておられないからこそ、そういう誤解が生じると思います。共産党日華條約に反対されることは、もとより御自由でございます。ただ反対の説明にあたつて、その論拠として引出されましたことが、全文を通じて考えますると、ほとんど全部が虚構、捏造あるいは欺瞞、従つてときに議院品位を傷つけ、ときに議院の秩序を乱し、ときに議会政治憲法をも否認するごとき言辞を弄しておる、それらの事々は、ことごとく懲罰対象たるべきものであるというこのが、提案理由であります。
  164. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、今の答弁によりますと、共産党を代表して日華條約に反対したことは、懲罰対象じやない、こう受取つてよろしいのですか。
  165. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 もとよりさようでございます。
  166. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、まずあなたが、この演説全体が懲罰対象だと言われたさきの答弁と、これは矛盾いたしますから、お取消しになりますか。全体じやなくてやはり部分だ、こういうことになります。そうでないと趣旨が一貫しないのですが、しかしそれをあなたが強硬に主張なさるならそれでいいのです。私がこれから質問する建前が違つて来ますから、ちよつと伺つておくのですが……。
  167. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 林君に一言申し上げます。衆議院規則では、「議員は、自己の懲罰事犯会議及び委員会に列席することはできない。」旨を規定してございます。これは傍聴まで禁止するというわけではありません。法規上、傍聴までさしとめるという理由は別にありませんが、委員席におつきになることだけは御遠慮願いたいと思います。
  168. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 梨木君は、私の申し上げることを、私の言わんとする通りに了解されないで、ことさらに一方的な見解でもつて解釈されようとしておりますが、私は、先ほど申し上げたことと、後ほど申し上げたこととの間に、何ら論理の矛盾はないものと考えております。従つて取消す必要は、毛頭感じておりません。
  169. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは、私は全文について逐一あなたに御質問申し上げます。その前に、演説全体が懲罰対象だとあなたは言われる。その演説のどういう点が懲罰にしなければならない理由なんですか。この理由を伺いたい。
  170. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 長時間御説明申し上げまするなれば、冒頭から終りに至るまでことごとくについて、私の見解を持つておりますが、一、二申し上げますると、たとえば「蒋介石政権には領土もありません、国民もありません、」……。
  171. 梨木作次郎

    梨木委員 それは何ページですか。     〔「最初の方だ」「一ページだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  172. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 静粛に願います。
  173. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 もう一度申し上げます。「蒋介石政権には領土もありません、国民もありません、このような政権はかつて例がないが、実情やむを得ないことであると、わけのわからない答弁をしておるのであります。」ということを、まず林君は申しておりますが、このようなことを政府が答弁いたしたことはございません。これは速記録によつてごらんを願いたいと考えますが、これにつきましては、私も林君とともに外務委員会におりまして、大分この問題を論議し参つたところでありまして、いまさら御説明申し上げるまでもないと思います。中華民国政府が現に支配しておるところの台湾、澎湖島というものもあるわけでありまし  て……。     〔発言する者あり〕
  174. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 委員外発言は禁止いたします。
  175. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 従つてこのようなことは、岡崎君も日本政府も発表いたしたことはございません。この一例だけを見ましても、まつたくこれが虚偽であり、捏造であることは明らかでございます。  さらにそれに続いて、速記録におきましては削除されておりますが、林君は「━━━━━━━━━━━━━━━」かくのごときことは、これは良心や良識を持つた議員のとうていなし得ざるところであるのみならず、━━━━━━━━━━━なつたというようなことは、まつたく虚構、無根のことであることは、何人も認めるところでございます。  さらにまた「アメリカは、アジアにおける自分の侵略基地台湾を、日本台湾人の血と肉弾で守らせたいのであります。」このアメリカ台湾を侵略基地として、日本台湾人の血で守らせようとしておるという、さようなことはまつたく虚構捏造のことでございます。
  176. 梨木作次郎

    梨木委員 それは何ページですか。     〔「三ページだよ」と呼ぶ者あり〕
  177. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 さらにまた「この條約は、明らかに中国、ソ同盟を敵とするアメリカ政府のアジアにおける新たな侵略戦争の決意を示すもの」だというふうに、いかにもそれに日本が協力しておるかのごとくに申しておりますが、それのごときもまつたく虚構捏造であることは申すまでもありません。しかも「日華條約は、かえつて新たな復讐戦を布告しておるものであります。」と言つておるが、今日の吉田政府にそのような意図のないことは、きわめて明らかなことです。以下申し上げますならば、全文にわたつて申し上げなければなりませんけれども、これはひとつ良識ある委員の御判断にまかせたいと思います。
  178. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたはこの趣旨弁明の中で、「ただここで一、二の点のみを例示いたしまして、提案理由の説明にかえんとするものであります。」と言つて、「まず第一には、法務総裁人民殺傷の総指揮官である。」こういうことを林君が討論の中で言つたと指摘して、その例示にあげておるのでありますが、林君の演説の中にそういうところがどこにあるか、お示し願いたいと思います。
  179. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 実を申しますと、当日の私の討論中、共産党諸君発言妨害のやじがきわめて熾烈に行われたために、私は率直に申しますと、書いてあります原稿を一枚飛ばしたようなわけであります。従つて私が提案理由を説明いたしましたあくる日、ここへ参りまして、提案理由を説明申し上げましたときには、速記録をお調べ願いたいと思いまするが、そのようには申していないわけであります。さらにまた私の提案理由の中でも、林君が言つたということは、その当時においても私は言つていないと思います。私の言つたのは、この前の前の委員会速記録をごらんになつたらわかりまするが、こういうことを申しております。まず第一に、共産党は、十日の木村法務総裁に対する不信任決議案において、木村法務総裁人民殺傷の総指揮官だとか、去る十二日の戦犯釈放決議案において、━━━━━━━━━━━━━━━━とか述べておつたが、林君は日華條反対討論において、━━━━━━━━━━━━━━━━━と言われたということを私は申したのであります。またその趣旨を申し述べたかつたのでありますが、先ほど申しましたように、共産党のやじに妨害されまして、一枚原稿を飛ばしたわけでございます。
  180. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、これはまつたく林君の演説の中にはない、だから、これは誤りであるということをお認めになりますね。
  181. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 木村法務総裁人民殺傷の総指揮官であるという言葉に限りましては、林君がそのようなことを申したことはないと私は思います。
  182. 梨木作次郎

    梨木委員 それから今あなたがあげられましたが、それだけですか。虚構と捏造だとあなたのおつしやるのは。私はちやんと部分を、どことどこが虚構と捏造だということを指摘してもらいたいのですが、そこだけですか。
  183. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 先ほども申し上げました通り、一々申し述べますならば、限りないほどに……。     〔「一つでも言つてみろ」と呼ぶ者あり〕
  184. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 委員外発言を禁じます。
  185. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 すでに数個の例をあげて申したわけでありまするが、さらに今までよりももつとたくさんの場所があるわけであります。後ほど御質問もありましたならば、私は事実によつてお答えしたいと思います。私をして言わせますと、この演説全文の内容に盛られたものが、虚構や捏造や、あるいは議員としてあるまじきことや、あるいは憲法議会政治の否認である、そういつた破壊的言辞であるというふうな意味のことを申しておるわけであります。
  186. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたは、あるときは虚構と捏造が懲罰理由だ、こう言われる。また今は内容に盛られたものが憲法否認の思想だ、こうも言われた。どちらなんですか。どの点が虚構と控造であり、どの点が憲法否認なのかわかりませんから、もつと具体的にひとつお示しを願いたい。
  187. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私の提案理由をもう少しよくお読みを願いたいと存じます。
  188. 梨木作次郎

    梨木委員 読んでおりますよ。
  189. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私の提案理由は、まずこれを国会法から申しますと、第百十九條において厳禁しております無礼の言に抵触することはもちろんであります。憲法第五十八條は、院内の秩序を乱した議員懲罰を明記いたしております。さらに衆議院規則第二百四十五條は、「議院の秩序をみだし又は議院品位を傷つけ、その情状が特に重い者に対しては、議院は、これを除名することができる。」ことをも規定をいたしております。これらのことごとから、虚構捏造の言辞というものは、とりもなおさず無礼の言であり、また無礼の言というからには、それが虚構捏造の事実でもあるわけです。  さらに私は最後に申しておりますが、林君はその討論において、吉田政権が━━━に国家の権力によつて政権に居すわろんとするならば、日本人民は━━━━━━━━━━━━━━━と、まことに不穏当きわまる暴力的脅迫言辞を吐いておるわけでございます。一体、林君は、もし吉田政権が━━をもつて国家の権力によつて政権にすわらんとするならば、ということを申しておりまするが、この前提吉田政権が━━━にすわつておるという立場に立つております。われわれは、今日国法に従つて、法律によつて吉田内閣というものは成立をいたしておる合法的な存在でございます。従つて、これが━━━に国家の権力の座にすわろうなどと考えておることは毛頭ないわけでございます。これらのごときは、これはまつたく虚構捏造というよりも、これによつて治安を乱し、秩序を破壊しようという意図に出たことは明らかでありますが、さらに聞き捨てならないことは、日本人民は━━━━━━━━━━━━━━。院内におきまして、国会内部におきまして、━━━━━━━━━━━というような、暴力宣言を公然となすというがごときにおいては、とうてい院内の秩序を保持することはできないと考えます。かくのごとき暴力的脅迫言辞をわれわれは黙過することはできない、従つて私たちは、当然懲罰対象とすべきものであると考えて、提案をいたしたような次第であります。
  190. 梨木作次郎

    梨木委員 林君が「諸君が、━━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分の政権の座に居すわろうとするならば、日本人民は━━━━━━━━━━━━━━━よりほかにしかたがないのであります。」こう言つておるのでありますが、今あなたの答弁を聞いておりますと、吉田政権が━━━に政権の座にすわつているのだということを前提にして言つておる。これは無礼である、けしからぬ、こう言います。そうして吉田政権というものは、合法的にその政権の座にすわつているのだ、こう言われる。ところが同じ論法で、日本共産党も今憲法保障によりまして、あらゆる政党活動を行つておるところの政党であります。しかるにあなたは、共産党はもはや合法性を認むべきじやないというようなことの個人的な見解を表明された。これはまことに共産党に対しては無礼な、懲罰に値する言動である。こういうことと、どれだけの違いがあるのですか。そこで、反対党が時の與党政府を攻撃する際に使う言葉といたしまして、こういうものを一々懲罰に付するというようなこと自体が、政府批判し、非難することを抑圧することになると私は思います。しかしこれはさておきまして、ここに書いてあることをよく読んでください。━━━に、国家の権力によつて、いつまでも自分の政権の座に居すわろうとするならば、日本人民はこうこうするであろう、こういうのである。私どもが憲法を忠実に実行しようといたします際に、今日本でどういうことが行われておりますか。憲法では再軍備を禁止しておる。戦力を持つことは禁止されておる。それにもかかわらず、警察予備隊、警備隊というような戦力を保持しておる。また軍需産業が復活しつつある。武器の生産が行われつつある。明らかに憲法違反の行為が政府によつてなされておる。そこで私どもはこれに反対して、ここで徴兵反対の運動を行う。この運動は憲法によつて保障されておる。集会それからデモ行進、こういうものは保障されておる。ところが現実には、これに対して武装警官がこの集会を追い散らし、これに対して暴逆な弾圧を加えておる。その場合に、一体どうしたら集会、デモの自由を確保し、また憲法を侵害しようとする政府のこの不法行為からこれを守ることができるか。結局は、そういう目の前に警官がピストルを持つて、われわれが憲法を守ろうとする一切の行動を暴力的に弾圧し、襲撃して来る場合に、一体国民はどうしたらいいのですか。憲法に許されたこの行動に対して、みずからもやはり、彼らの苦しみに対して、みずからの力をもつて守らないことには、今憲法は守れない状態ではないのですか。これが憲法違反ですか。労働者憲法によつて団体行動権というものを保障されております。ストライキ権というものは保障されております。労働者が、これでは食えないからひとつ賃金をあげてもらいたいというストライキをやる。このストライキをやるというと、お前このストライキはけしからぬといつて、警察が武装警官でこのストライキを弾圧しておる。そのときは、労働者が自分たちのこのストライキ権、生活権を守ろうとする場合、目の前に警官がピストルを突きつけて来たときに、自分たちの団体行動権や、さらに自分たちの生活を守ろうとするこの基本的な人権を保護するための行動が、一体どうしてなされるか。結局はそういう暴力に対して、実際は労働者の方も実力をもつて対抗する、これは憲法保障するところではないのですか。そういうことをやつていけないとあなたは主張なさるのですか。ストライキ権をあなたは否認なさるのですか。それでは憲法の否認に通ずるではありませんか。私は憲法の否認に通ずると思う。この点をあなたはどうなさるのですか。これを私は伺いたい。
  191. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私は、ただいまの梨木君の発言速記録を後ほどお調べ願いたいと思いますが、ただいま梨木君は、暴力に対して暴力をもつて対抗することが悪いというのか、という意味のことを申されました。そういうあなたの言葉の中にも、すでに暴力というものを肯定されておる。はしなくも、ここであなたは、共産党の性格が暴力的なものであるということを語るに落ちたわけでございます。そこで、何も労働組合の団体行動権ないし基本人権を弾圧するために、政府や官憲が暴力を行使しおるとはわれわれは考えません。ただなるほど、言論結社、その他の自由は憲法保障するところではありまするけれども、さりとも、暴力的な目的をもつてする言論結社の自由というものは、與えていないと思います。私は、いやしくも憲法範囲内においての基本人権というものが許されるのは、法治国家の鉄則であると考えます。従いまして、官憲が暴力をもつて対抗するとも私は考えておりません。むしろ、暴力的行為を挑発したものが何であつたかということは、私がこの壇上から申すまでもなく、すでに今日の社会通念になつております。従いまして、そういう、時の政府に対して暴力をもつて対抗することがなぜ悪いのかといつて、開き直つておられる梨木君の気持の中には、あなたがやはり暴力というものを肯定し、議会政治否認の上に、憲法否定の上に立たれた言動であると考えるわけであります。     〔高木委員長代理退席、鍛冶委員長代理着席〕
  192. 梨木作次郎

    梨木委員 私はあなたに質問したのです。いいですか。ここには林君はどこにも暴力をもつて云々ということを書いてない。私もまた暴力をもつて云々ということは一つ言つていない。日本人民は━━━━━━━━━━━━━よりしかたがないのであります、こう言つておる。だから、この━━━━━━政権の座から━━━━━━━━━ということ、これにはいろいな場合があるわけです。よろしいですか。憲法においては、団体行動権や団結権、ストライキ権というものを保障しておる。そこで、労働者は、今の吉田政府のもとにおいては、まつたくひどい軍事植民地的な搾取のもとにあつて、食えない状態だ。諸君も知つておるように、一家心中や自殺者がどんどん出て来ておる。失業者がまつたく増大して来ておる。もう国民は困苦のどん底に陷つておる。この状態の中において、労働者憲法保障された——つまり、健康で文化的な最低限度の生活を保障すると憲法はいつておる、その健康で文化的な最低限度の生活の保障、これを闘いとるために、ストライキをやるという——これは諸君もいろいろ政治ストとかなんとか言いますが、とにかく経済的な問題で、食えないからひとつ賃金を上げてもらいたいというストライキをやる。そこで、あるいは炭鉱の労働者、あるいは電産の労働者、あるいは国鉄の労働者や金属の労働者、こういう一切の日本労働者が、憲法保障するところの団体行動権や団結権やストライキ権を発動いたしまして、全部仕事をやめてしまつたら、一体吉田内閣は政治が運営できますか。さつきも林君が言つたように、一体国会のこの職員自体つて、賃金値上げのストライキをやつたら、議会だつて運営できないじやないか。その場合に、君たちがいくらいばつてみたところが、石炭一かけら掘れるわけではない。電車を動かせるわけではない。第一、議会に来れまい。そうなつた場合においては、諸君はいくらいばつたつて政権を維持できないじやないか。(「質問じやない、質問をしろ」と呼び、発言する者多し)これはとりもなおさず、憲法保障するところの実力行使によりまして、結局吉田内閣が打倒されることじやないですか。これをあなたは認めないのかということなんです。(発言する者あり)ストライキを認めないということじやないですか。だからあなたはストライキを認めないということかという質問をしておる。ストライキということは実力行使ということなんですよ。それをあなたは認めないのですか。
  193. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私は先ほども反復して私の考え方を表明したので、正しくお聞き願つたら、私の言うことはおわかりだと思いますが、私は労働組合の団体権というものを認めないなどと申したことは一回もございません。ただ暴力的な行為に対して、また暴力的に実力を行使しようということに対して、われわれはこれを認めることができないということを言うておるにすぎないのであります。
  194. 梨木作次郎

    梨木委員 だから、どこにもそういうことは書いてないのだ。政府が━━━に、政権の座に居すわろうとすれば、人民は実力、つまり憲法保障する一切の実力行動の発揮によりまして引きおろされるであろうと、こう言つているのです。こうなりますね。これをあなたはここで、私が実力という言葉を使つたことを、何かえらく気にしておるようなんです。ところが実力の中にはいろいろございまして、労働者が機械をとめること、これも実力ではありませんか。日本の全労働者が実力を行使いたしまして、ストライキをやつたら、吉田内閣はいくら政権を維持しようつたつて、できないじやないですか。そのときに吉田内閣がやめたら、これが実力によつてやはり政権の座からおろされたことになるのじやないですか。これは憲法のちやんと保障しておるところじやないですか。これをあなたが否定するということになれば、憲法の団体行動権や団結権を否認するということになるじやないですか。そうなれば、あなた自体憲法を否認し、憲法破壊することになりやしませんか。私はこれを聞いている。これは重要な問題だ。
  195. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君、質問ですから、あなたの意見を言うて、相手の意見に対し意見を闘わしてみたつてしようがない、質問しなさい。
  196. 梨木作次郎

    梨木委員 質問をしておるのだから、私は質問します。さらにもう少し明確にします。
  197. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 意見の相違だ。
  198. 梨木作次郎

    梨木委員 委員長はまたそんな応援をしてはだめだ。委員長は議事を最も民主的に運営すればいいので、提案者に対してそういう入れ知恵をする必要はありません。
  199. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 そんな入れ知恵を必要とするような佐々木君じやない。
  200. 梨木作次郎

    梨木委員 ここに、政府が━━━に、国家の権力によつて、自分の政権の座に居すわろうとするならば、人民は━━━━━━━━━━━━━━よりほかにしかたがないと言つておるのです。だからこの実力の中には、憲法保障する団結権や団体交渉権、罷業権もありますから、これによつて引きおろす手もあるわけなんです。こういうこともあなたは否認されるかということを言つておるのであります。
  201. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 申すまでもないことでありますが、この文章の立て方というものをよく御検討願いたいと思います。政府が━━━に居すわらんとするならば、これに対して実力を行使するということは、暴力と実力という言葉の表現は違いますけれども、これはシノニム——同意語です。暴力に対して暴力というのが、論理の一貫したものである。従つてあなた方のおつしやつた実力の行使というのは、明らかに暴力を含んだ実力行使であるということに私どもは了解をいたします。     〔「曲解々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  202. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。委員外発言はことに御注意を願いますが、特に林君、君自身の事犯だから、そこで発言することは遠慮願いたい。
  203. 梨木作次郎

    梨木委員 佐々木君がここでこの表現をどう理解されるか、これはあなたの御随意でありますが、私はもつと明確に、委員諸君の本懲罰事犯の審議にあたつて、判断の正確な基礎を引出すために質問するのであります。あなたは暴力的というものと実力というものとは、同義語だというようなことを言われますが、そういう言葉の解釈はさておいて、私はここでごう質問する。とにかく林君は、日本人民━━━━━━━━━━━━だろう、こう言つておるのであります。これをあなたは、何か暴力革命の現われだというようなことが言いたいらしいのでありますが、しかし私どもは、この実力の中には、憲法保障するところのストライキ権、ストライキをして機械をとめるということ、これは一つの実力行使ではありませんか。この実力行使によつて、実際は吉田政府政権を維持できなくなる事態が、今私が説明したところによつて起るではありませんか。あなたとして、これまでもいけない、こういうことを言うことが懲罰に該当するのだという主張になるといたしますならば、これは明らかに憲法を否認する建前に立つて懲罰を出しておるということになるから、これは重大問題だ、私はこういうふうに考えるから質問しておるのです。ここの、━━━━━━━━━━━━━ということは、ストライキや、そういうような行動によつて吉田政権が打倒される、これもいけない、そういうことを言うことが懲罰なんだという意味なのかどうか、この点に限定して聞きたいのです。
  204. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 申すまでもなく、兒戯に類することでありますから、申し上げるものも片腹痛いのでありますが、合法的な政治活動を否認しようなどということはどこでも私は申しておりません。またそんな考えは毛頭ございません。
  205. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、日本労働者が全部ストライキをやつて吉田政府がとうてい政権を維持できなくなつた、そういう場合、そういうことの表現だということになりますならば、これはあなたは問題にしないのだ、こういうことになるわけですか。
  206. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 私はもうそれ以上答える必要もなかろうかと思います。私は、かくかくかようなことは、憲法国会法や衆議院規則によつて懲罰対象たるべきものであると考えるという提案をいたしたのでございます。はたしてこれがそれらに該当いたしまして、懲罰対象たるやいなやということは、委員各位の御審議によつて決定されてけつこうなことでございます。この席におきまして、あなたと私とが根本的な思想や哲学の見解を闘わしたところが、懲罰とは大した関係のないことであろうと考えるのであります。
  207. 梨木作次郎

    梨木委員 あなたが、少くともこういうところが懲罰対象になつているのだ、こうおつしやる。もちろんわれわれはこれから判断するのだけれども、われわれの判断からすれば、これは憲法保障する実力行使によつて政権の座から引きおろす、そういう事態はあり得るのであるから、これは少しも憲法違反にならないという建前をわれわれはとつている。しかしあなたはそうじやないとおつしやる。だからそこのところを私どもの判断の資料にするために、まだほかに何か理由があるなら、その理由を聞きたいというわけです。私は何もここであなたと意見の討論をしようとは思わないのでありますが、私の見解からいたしますならば、これは全然懲罰の問題にならないと思うが、しかしあなたはどんな腹でやつているかわからぬから、聞いているのです。私の主張から言いますならば、全然これは問題にならないと思うのですが、それについて何か意見があるならば聞きたい。
  208. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君、いつも言うが、君の意見をもつて相手にどうだどうだといつて詰めてみても、質問にならないじやないか。君の意見を相手に押しつけようとしても、そんなものは質問にならない。佐々木君が答えるというなら、しいて私はとめはしませんが、そんな質問はありません。
  209. 梨木作次郎

    梨木委員 大体あなたは、委員長のくせにそういうことを言うから、ちつとも委員会の審議が最も愼重なる形において運営できない。あなたがそういうことを言えば、提案者は、ああそういうことかというわけで、質問に答えないというふうにならないとも限らない。
  210. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 質問はほかにないのですか。
  211. 梨木作次郎

    梨木委員 それじやこれはこの程度にいたしまして、ひとつ伺いますが……「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)簡単にやります。先ほど言われた四点について、「蒋介石政権には領土もありません、国民もありません、このような政権はかつて例がないが、実情やむを得ないことであると、わけのわからない答弁をしておるのであります。」さつきのあなたの答弁だと、これは虚構、捏造、欺瞞だ、こういうことになつておるのであります。そこで日華條約交換公文第一号によりますと、こうなつております。「書簡をもつて啓上いたします。本日署名された日本国と中華民国との間の平和條約に関して、本全権委員は、本国政府に代つて、この條約の條項が、中華民国に関しては、中華民国政府支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」こうなつておるのであります。ここでは「今後入るすべての領域」という言葉を使つておるのであります。これは領土とも違うのであります。領土という言葉がちやんとあるにもかかわらず、「今後入るすべての領域」こういうことを言つておる。そうなると、蒋介石国民党残存グループといいますか、これが一体領土を持つておるかどうかということは、表現自体においてまことにあいまいなのである。だから林君は、わけのわからぬことを言つておると言うが、これが虚偽になりますか。私はこれは非常に問題だと思うのですが、どうです。
  212. 佐々木盛雄

    佐々木盛雄君 ここで国際法の説明を申し上げるのはまことに心苦しいのでありますが、領土といい、領域というのは、原語で申しますとテリトリーズです。これは国家主権の及ぶ室間的な広がりについて、土地に連なるものを領土と申します。水域に連なるものを領海ないし領水と申します。空に連なるものを領空と申します。従つて領土も領域も、これは同意語でございます。従つてあなたの立論の、中華民国政府には領土がないという根拠には、少しもなり得ないのであります。中華民国政府に領土がないと政府言つたと、林君が申しておりますることが、はたして虚偽であるかどうかということは、ひとつ皆さん御自身が、政府や官報についてお調べを願いたいと思います。私はそのようなことを政府が申したことは、一度も聞いたことはございません。
  213. 高木松吉

    ○高木(松)委員 議事進行について。(発言する者多し)私はさいぜんから聞いておりますと、単なる議論にわたることであつて、質疑の域を脱しておる。要するに梨木君の質疑は、おそらく引延ばしのための質疑ではないかと思うから、この際質疑打切りの動議を提出いたします。(発言する者多く、離席する者あり)
  214. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 ただいま高木君から質疑終局の動議が出ました。質疑終局の動議には賛否の討論を要しませんから、ただちに採決いたします。高木君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 起立多数。よつて高木君の動議は成立いたしました。  梨木君の質疑はこれをもつて打切ります。(「暴力じやないか」と呼び、その他発言する者あり)  明十七日は午前十時より委員会を開き、引続き両件の審議を進めます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五分散会