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1952-06-14 第13回国会 衆議院 懲罰委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十四日(土曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長代理理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君    理事 石川金次郎君       小西 英雄君    佐藤 親弘君       島田 末信君    田嶋 好文君       内藤  隆君    平野 三郎君       船越  弘君    牧野 寛索君       松木  弘君    森 幸太郎君       柳澤 義男君    梨木作次郎君       猪俣 浩三君  委員外出席者         議     員 風早八十二君         議     員 林  百郎君     ————————————— 五月十四日  委員飯塚定輔君、大泉寛三君、森幸太郎君及び  柳澤義男辞任につき、その補欠として平野三  郎君、小西英雄君、内藤隆君及び船越弘君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員小西英雄君及び平野三郎辞任につき、そ  の補欠として田嶋好文君及び松木弘君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員船越弘辞任につき、その補欠として森幸  太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  議員風早八十二君懲罰事犯の件  議員林百郎君懲罰事犯の件     —————————————
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 これより会議を開きます。  議員風早八十二君懲罰事犯の件を議題といたします。この際本人風早八十二君より一身上弁明を求めます。風早八十二君。——風早君に申し上げますが、たいへん時間を空費いたしましたから、簡潔にお願いいたします。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 議事進行。私たちは昨日林衆議院議長に対しまして抗議をいたしてあります。それは一昨日の本会議における風早君の身上弁明に際しまして、議長はその身上弁明の半ばで発言中止を命じ、さらに多数の衛視を動員いたしまして、暴力的に風早君を降壇せしめておるのであります。その発言中止の口実というのは、身上弁明の域を逸脱したというのであります。しかしながら、一体身上弁明というものを懲罰事犯において認めておるのは、これは国会におきまして、ややともすれば多数派の諸君が、党利党略から同僚議員懲罰動議によつていやがらせをやる、そういうことが起り得る可能性がある。そこでこの懲罰動議を出された議員に対しまして、自己懲罰動議に対する身上弁明機会を与えることによりまして、一般国民にいずれが是なりやという判断基礎を与えるためのものであります。これは一面から申しますならば……(「国会判断するんだ」と呼び、その他発言する者あり)何言つてる君は。これは国会判断の先に、諸君国会の中で行つた演説というものが、官報を通じて国民全体に示され、さらに国民の批判に服するのは当然じやないか。(「何を言うんだ」と呼び、その他発言する者あり)そういうことさえ知らないから、君らは間違つておる。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 委員間の議論はやめてください。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで、この身上弁明というものを与えておるのは、実は国会内におけるところの運営というものが、民主的に行われるための一つの保障といたしまして、この身上弁明というものが認められておるのであります。刑事被告事件においてさえ、被告人に対しましては陳述機会を与えなければ、その訴訟手続というものは無効になるということになつておる。従いまして、かかる懲罰に付せられるところの議員が、自己の主張あるいは立場、見解というもの、またその懲罰動議に対する身上弁明機会を与えられることは、一面から申しますれば、その議員の基本的な人権に属するものであり、また他面から申しますならば、民主主義原則を貫く、民主主義の原理の基礎の上に立つておるものであります。さればこそ、国会におきまして、この身上弁明に際しては時間の制限をしないという慣例がとられておるのも、ここから出発しておるのであります。従つて議長というものは、自分の独断で身上弁明の域を逸脱したなどと言つて、この身上弁明を途中で禁止させるということは、これはまつた民主主義にもとるものであり、基本的な人権を私は……。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 議長に対する抗議をここでやつてもしようがない。私に対して言うことだけ言つてください。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 いや、これから言うんだ。君らがじやまを入れるからそういうことを言うんだ。そこで今委員長は、身上弁明は時間もおそくなりましたから、簡潔に願いたいとおつしやる。それは、もちろん簡潔にやることは望ましいが、しかし、だからといつて、過般の議長のように、身上弁明の域を逸脱するなどということで、途中でこれを禁止するようなことなく、この懲罰に付せられようとしておる議員の基本的な人権民主主義原則の上に立つ限りは、これはあとう限り十分身上弁明機会を与えなければなりません。特にその点に関する注意を私は委員長に喚起して、この身上弁明に十分な機会を与えられることを要望いたします。
  8. 田渕光一

    田渕委員 ちよつと関連して。梨木君は、一昨日の本会議で、議長風早君に一身上弁明の時間を与えなかつたというようなお話で、抗議を申し込んだというようなこともただいま伺いましたが、そもそも風早君の登壇は二時五十五分であります。それから衛視の執行は三時十八分であります。二十三分間の十分なる一身上弁明機会が与えられたのであります。御承知通り一身上弁明に対しましては、時間の制限をしないということは、私たちもよく認識しております。しかしながら、一身上弁明範囲を越えないようにということは、議長は数回注意いたしたのであります。ことに、私たち自由党議場内交渉係ばかりでなく、改進党の椎熊君、あるいは社会党右派の土井君を初め、風早君の一身上弁明弁明範囲を越えて引きずつておる。これ以上このメーデーの扇動的のようなことを許すということは、議長が無能であるということで、われわれは降壇を要求したのでありまして、決して議長の責任ではありません。また同時に、風早君の一身上弁明を、決して国会は圧迫を加えてはおりません。二十三分間も時間があるならば、もしも弁明に事を集中してくださつたなら、十分時間はあつたはずであります。かような意味で、ただいまの梨木君の、つまり本会議において十分に弁明をさせなかつたということに対しては、私ははつきりと反対の意見とその真相を申し上げておきます。但し、これから入りますところの風早君の一身上弁明風早君の事、議員の身分に関することでありますから、委員長は善処されまして、十分機会を与えられたい。しかしながら、本日午前十時にこの委員会を開くということは、昨日の申合せであり、私たちはただいままでお待ちしておりましたが、風早君の入室は十一時四十五分であります。このことは一般傍聽人もよく知つております。でありますから、かような点を考えて、時間をとつたから、委員長はいわゆる一身上弁明範囲を越えないようにという御忠告があつたものと私は解しております。かような意味で、委員長においてしかるべく善処されることをお願いいたします。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君に申し上げます。御趣旨はその通りでありますが、今裁判所の例を言われたけれども、裁判所における弁明は、起訴事実  に対する弁明で、それ以外のことは許すべきものではありません。従いまして、ここでも提案理由になつておるものに対する弁明をやる、それ以外のことに対してはやられないようにということを宣言しておきます。
  10. 梨木作次郎

    梨木委員 それは君違う。大体懲罰のもとになつておるものは演説内容だろう。演説内容だからこの内容に入らなければならない。しかも提案理由を見ると、共産党政策全般についてだ。だから、共産党政策全般を、この一身上弁明でやらなければならぬ。諸君はこれをよくのみ込んでくれぬと困る。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 起訴事実に関係のないものを、裁判所においても説明はさせません。そのつもりでお願いいたします。  風早八十二君。
  12. 風早八十二

    風早八十二君 一身上弁明に入りたいのでありますが、今も議事進行梨木君が申しましたように、この一身上弁明というものは、事裁判所におきましては、被告発言に該当するものでありまして、裁判所におきましても一身上被告陳述というものは無制限で、これを拘束すべき何らの規定はない。皆さん方は弁護士もやつておられるからよくおわかりのことと思います。(「文句はここで言うな」と呼び、その他発言する者あり)つまらぬやじを飛ばすと、もつと時間をとるよ。(「つまらぬとは何だ」と呼ぶ者あり)つまらぬよ、そんなことは。さらに被告裁判所におきまして起訴事実に対する陳述だと、こういうお話でありますが、もちろんそれはその通りです。しかし、これに対して当然関連のあるいろいろな事柄は、この起訴事実に対する反駁として、これはりつぱに通用しなければならぬし、また通用しているわけです。そういう点は裁判所のことでありまして、ましていわんや、われわれ国会におきまして、同じ国会議員同士が、その国会内の全体の運営のために、国会の十分な機能発揮のために、懲罰という制度があるわけでありまして、これはおのずから裁判所とはまつたく違う。またこの懲罰事犯のやり玉にあげられました私も、これは裁判所における被告とはまつたく違う。これはいうまでもありません。従つて、ここにおきましては一身上弁明なるものは、裁判所における被告発言の自由と同等以上に、そうして十分に保障されなければならぬことは、民主主義の建前からいうまでもありません。しかるに実際問題として、一身上弁明というものがしばしば制限を受けております。もちろんこの制限理由というものは、一昨日の実例でもわかります通り弁明範囲を逸脱しているという点にあるわけです。しかしながら、実際問題としまして、私がやつておりましたのは、これはよく速記をごらんになればわかりますが、議長がいかなるときに私の発言を封じようとしたか、よくわかるのであります。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 風早君、議長に対する抗議はここでは承りません。一身上弁明ではありません。議長に対する抗議のことは……。懲罰請求事犯に対して弁明してください。(「だめだ」「一身上弁明というものに対する容喙を加えてはいかぬ」と呼び、その他発言する者あり)
  14. 風早八十二

    風早八十二君 委員長のお言葉でありますが、私は決して今特に議長を糾弾するために……(「こんなことを聞く委員会じやない」と呼ぶ者あり)ちよつと、発言妨害になりますから……。私は通常の国会議員としての常識の範囲で、きわめて筋を立てて言つているのでありますから、いましばらく静粛に願います。(「聞けないよ」「そんなことくらいわからないのか」と呼ぶ者あり)どうも……。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。不規則な発言の応酬は禁じます。  風早君に申し上げますが、請求の事実に対する弁明限り発言を許すので、それ以外のことは許しません。
  16. 風早八十二

    風早八十二君 私は、ぜひともこの中川君の懲罰動議に対して一身上趣旨弁明をしたいと思うのです。ただ、その弁明の自由を許されたい。これは当然の権利であるということを私はまず明確にしておきたい。そのために、ただ実例として一昨日のことをあげたのでありまして、特別に、この際衆議院議長のあれをここで問題にしようとして言つているわけではない。それで一昨日の実例によりますと、私が……。     〔「まだやるのか」「君たちはよけいなことを言うな」と呼ぶ者あり〕
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。風早君にたびたび申し上げますが、請求の事実に対する弁明に限ります。
  18. 風早八十二

    風早八十二君 これは重大な問題だ。一身上弁明を私がする自由が一体あるのかないかということを私は言つている。     〔「あるからやつてるんじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。
  20. 風早八十二

    風早八十二君 懲罰しようとしている人が、このようにあわてておつてはしようがない。なぜ君はそんなに急ぐのか。どうも妨害が入つて、ほんの一分間で済むのです。一言その点だけを明確にしておけばいいんです。  私が発言の停止を命ぜられたときは、私がまさに中川君の発言内容に対して、特に反駁を試みているときなんです。中川君が、私の言つたことが虚構捏造であると言つておりますから、私は、これが虚構捏造ではないと言うために、実際実証を試みておつたわけでありまして、これを一身上弁明と言わずして、一身上弁明はない。従つて、そのまつ最中に議長がとめられるというそういう措置は、明らかに不当なる発言制限であるということを私は申し上げたいのです。そういうことが、この際この大事な懲罰委員会においてないように、これは私は特に委員長初め懲罰委員各位に申し上げておきたい。それがわかつてもらえば、私はこれからいくらでも一身上弁明をいたします。  大体中川君が一昨日懲罰動議趣旨弁明されました。また今日はその速記がここに提出されておりまして、私は、厳密にこの速記に従いまして、中川君の摘発のその内容につきまして逐次反駁をしたいと思う。もちろん私としても最大限の努力をして、簡潔にその目的を属したいと思います。しかしながら、何分にも非常にこれは厖大なものでありまして、そう十分や二十分で簡単にこれを上げろということを言われましては、これはあらかじめ発言制限されることになりまして、その点は、今非常に時間が切迫していると言われますが、事非常に重大でありますから、あらかじめお断りしておきたいと思います。故意にこれを引延ばすということは毛頭ないことを、十分に私は断言しておきます。  まず「風早八十二君の質問内容は、虚構捏造に終始し、荒唐無稽の言辞を弄して、国民をして故意警察官に対する反抗心を助長したること」こういうことがあるのでありまして、これが中川君の趣旨弁明の非常に重要な部分をなしております。つまり私の申したことが虚構捏造であると言う。従つて、とんでもない話、私の申したことは絶対に虚構捏造ではなくして、厳然たる、しかも万人の認める事実であるということを、私はこれから申し上げようと思います。  この虚構捏造ということでありますが、たとえば、ここに「風早君は、これを称して政府━━━━行為となし、苦痛を訴える大衆に━━━━━━━━━━━━━━━━ほしいままにした云々と、品から出まかせを並べた上、━━━のか、国家警察も、予備隊同様、━━━━━━━━━━━━━━━云云と、出たらめを並べている」こうあつて、これがつまり虚構の具体的な内容として、ここにあげられておるのであります。そこで私はこの点につきまして、これが厳然たる白昼行われた事実であるということを、これは当然弁明として申し述べておきたいのであります。この点に関しましては、すでにここにもアサヒグラフがありますが、この写真を見てもわかられる通り、いかにひどいことを警察官がやつたかということは、もうここに歴然と証明せられております。これを私は立証物件  として提供したいくらいなのです。   これを実際に裏書きすべきものとして、これは「世界」という雑誌の七月号でありますが、この中に梅崎春生君という、これは文学者でありますが、この人が「私はみた」という題目のもとに、あたかもメーデー人民広場事件を目撃した、そのルポルタージュがここに掲げられておるのであります。  その中に明らかに梅崎春生君は言つておる。これはごくほんの二、三点だけをあげておきますが、「デモ隊の右側をかけ足で走り抜けた警官隊は、警棒をふりかざして、斜めにデモ隊に殺到した。私はあの一瞬の光景を、忘れることは出来ない。ほとんど無抵抗なデモ隊一般市民も相当にその中に混つていた)に向つて、完全に武装した警官たちは、目をおおわせるような獰猛な襲撃を敢えてした。またたく間に、警棒に頭を強打され、血まみれになつた男女が、あちこちにごろくごろがる。頭を押えてころがつた者の腰骨を、警棒が更に殴りつける。そしてそれを踏み越えて、逃げまどうデモ隊を「追つかける。私は鉄柵の外側だつたから、一応の安全地帯にあつた。私はつぶさにそのやり方を見た。警官隊襲撃は、なかなか組織立つていて、日頃の訓練を充分しのばせた。警棒は、立つているものに対しては、必らずその頭部をねらう。デモ隊に後頭部の負傷者が多かつたのは、逃げて行くところを、背後からねらい打ちされた為だ。倒れている者に対しては、腰部又は腹部をねらう。そこをなぐると動けなくなるということを、彼等は充分に知り、またその訓練を経てきたに違いない。デモ隊の散発的な反撃にくらべて、警官たちのそのやり方は、その非人間的な獰猛さにおいて、圧倒的であつた。」「私の見た限りでは、最初に暴力をふるつて挑発したのは、明らかに警官側であり、「組織された暴徒」とは、デモ隊のことではなく、完全武装のこれら警官隊であつた。」こういうふうに、きわめて明確な形でそのときの実情を表わしているのであります。「鉄柵を乗越そうとする時、あぶなくひつぱたかれさうになつた。ころがるようにして逃げた。一般市民の女までが、殴り倒されているのだから、俺はデモ隊員じやないと言つても、それは通らない。狂犬みたいに、手当り次第飛びかかつてくるのだから、逃げるより他に手はないのである。」こういうようなことも書いてあるのであります。ピストルの発射につきましても、「私たちは初め、あれが実弾発射の音だとは、夢にも思わなかつた発煙筒の栓か何かを抜く音だろうと思つていた。日本人が同じ日本人を撃つなんて、とても信じられなかつた。」若い婦人がひどくやられて、「松の根元に身体をくねらせ、もだえながら、「お母さんお母さん」と若い女が号泣している。煙でやられ、そこを警棒で打ちのめされたのだ。それを看護隊の人達が、かつぎ上げるようにして、手当所に連れてゆく。」というふうな記事もあるのであります。「もうその頃は、乱闘発生から二時間以上も経つていたので、デモ隊以外の一般市民通行人たちも、明瞭な反警官気分を持つていた。」警官に対する非常な反感を持つていたということであります。「鉄兜、警棒を持たない者は、全部敵に見えたのだろうと思う。孤立感のようなものが、たしかに彼等を烈しくいらだたせていた。」こういうふうに、ずつとたくさんありますが、私がちよつとラインを引いたところだけを申しましても、このようにこれはまつたくわれわれとは何の関係もない、縁もゆかりもない梅崎春生君という一文学者が、「私はみた」というその見た形で書いておるのであります。このようなことは、その前後を通じまして、あらゆる新聞記事を見れば、どなたもこれは認めざるを得ない事実なのでありまして、私はこの事実を事実としてここにあげたにとどまるのであります。  さらに警察官に対する国民反抗心を助長したと言われますが、この警察官に対する国民反抗心というものは、これは警察官のその行状、警察官の行動の事実によつて生ずるものでありまして、従つて、実際に警察官にひどい暴行を受けている人たちはもちろん、それを目撃した一般国民の間から、これは自然発生的に生じている感情であります。私があおるとあおるまいと、そういうことと何ら関係がない、私はさらにこの警察官に対する国民反抗心をあおつたものではないのであります。そういう、国民がいかに警察官を見ているかということについては、これも幾多ここにその実際を申し上げることができるのでありますが、これもほんとうに簡単にするために、一の実例にとどめておきます。これは皆さん承知の改進党の同僚議員小林運美君のむすこさんでありますが、これが渋谷でやはり警察官に非常な暴行を受けている。小林自身言つておりますが、学生証を見せていくら言訳をしてもむだだ、髪の毛をつかみ、皮ぐつで数回向うずねをけられた。まだほかの新聞には相当詳しく出ておりましたが、こういつたようなことがあがつておるわけです。これに対しては鈴木警察署長は、あの際多少のことはやむを得ないと思うようなことを言つて、あとで取消すようなことも言つておりますが、こういつたように、警察官が非常な暴行一般大衆に働いておるということは、このごろはもう日常茶飯事であつて、ほとんどこれは当然のうつかり警察官のそばを通つて警察官の目と視線でも会おうものなら、すぐこれを不審尋問するというふうな事実もあるということを、われわれは聞いておるのであります。非常なこのごろは暴行をほしいままにしておる。  さらに暴行だけじやない。最近の五月三十日の事件を見ましても、その他その前後のいろいろなデモに対するそのやり方を見ましても、人間一匹を射殺することなんか、このごろは朝飯前になつておる。こういうきわめて凶悪なる暴状が、警察官によつて繰広げられておるのであります。これに対して、警察官に対する反感が起らないのがふしぎではないかと思う。事実そういうことを言つておる記事もあるわけなんです。これは朝日新聞の五月十二日号でありますが、その「声」の欄に、「最近たびたび起る警官との乱闘事件で、警官暴力行為が一向責められないのは不思議である。」単にたまたまその現場近くに居合せたために警官になぐられたり、けとばされたりした民衆が何の保護も受けず、その暴行警官が何の制裁も受けないということは、憲法の基本的人権論を持ち出すまでもなく許し難いことである。」といつて警察官に対する非難をしておるのであります。  こういつたようなことは、やはり最近早稲田のあのきわめて穏健な、しかも無抵抗な学生に対して行われた警察官の目をおおうべき暴状、あの事件におきましても、一般に今まで学生を取締るといわれておつた学生課長という人までが、その暴行をみずから受けてみて、初めて、なるほど警察官というものは今日ひどい役割を演じておるのだということがわかつたというので、これに対する非常な反感を持つているというぐらいでありまして、これは今日だれがこれをあおるとかあおらないとかいう問題じやない。警察官自身がやつておるその行為から、当然に生れて来る自然的なこれは国民感情なのであります。この点は一点の疑いのない事実なのでありまして、私はこの事実をあげて、警察当局、並びに警察を実際に使つてあの弾圧をやらせた政府治安当局に対しても、抗議質問を試みたものにすぎないわけであります。  さらに中川君の弁明の中で、引続いて「内外に及ぼしたる甚大なる悪影響」ということを非常に問題にしておられます。「独立早々のわが国に一大汚点を印した」と、こういうことを言つておる。しかし私は、ここではつきりこれに対して反駁したい。一体内外に及ぼしたる甚大なる悪影響」というが、内外一体だれに及ぼしたこれ一悪影響であるか、この「内外」という意味が私は問題であると思う。少くともわれわれ が実際に公然と毎日見ておるところの、新聞雑誌で目撃したその内外の輿論を見ましても、これは少くも二つにわかれておる。これに対し非常に戦慄を感じたものもあり、その論調もあることは否定いたしません。  かしながら、それはどういう部類のものであるか。いうまでもなく、この場合の内外というのは、アメリカの帝国主義者、その戦争火つけ人、こういう連中を初め、内外反動勢力、こういうもの、平和を最も恐れておるところの勢力というものが、これが非常な戦慄を感じて、これではもう自分たちの足元もあぶないというような危惧の念を抱いて、それを吐露しておるということは、これは事実としてあります。従つて、もしも内外に甚大な悪影響を及ぼしたと言われる人は——この提案者としては、こういう内外反動勢力内外帝国主義者戦争屋、こういうものが恐れておるところの戦慄と同じような立場に立たなければ、こういうことは言えないことであると私は考える。  その反対に、内外に及ぼしたきわめて悪影響でない、好影響があるのであります。世界平和勢力、これはあながちソ同盟やあるいは中華人民共和国の国民大衆だけを言つておるのではありません。イギリスにおきましても、またアメリカ自身につきましてもへその労働者階級としては、日本のあのメーデー事件についてどういう一体批判をしておるか。これもやはりり——これはそうたくさんの数はないのであります。つまり外電が非常に限られておりまして、枚挙にいとまないというもわけではないが、ずいぶん出ておる。ことにインドのごときは、この事件に対しては、これはもうまつたく直接にも警察官側のあれであるが、アメリカ占領政策、アメリカ占領制度、こういうものが七年の間やつて来たその実に正し民地的な搾取と強圧、これに対する国民反感が一時に爆発したものであつて従つてこういうような政策、制度が続く限りは、今後もまたこれは当然起るべきものである。こういうことをはつきりと、たとえばヒンドスタン・ガゼットでありましたかも言つておるし、また同様に、そのときの同じ日付で、同じ新聞紙上に伝えられておつたインドのもう一つの新聞言つてつたのであります。  私はこのような内外の声を十分に古く評価するがゆえに、これはまた日本の事実と確実に合致しているがゆえに、これを私はこの場合に援用して、私の抗議的な質問のその建前に置いたのでありまして、それ以外の何ものでもない。従つて内外に及ぼした甚大な悪影響と言われるが、それは悪影響どころか、こういう人たちとしては、一日本の人民大衆もやはり魂がある、日本人にも魂がある、今まで日本人は腰抜けだと思つてつたが、しかしながらやはり日本人もいよいよ立つべきときには立つんだ、日本の民族の独立のためには、遂に日本民族も立ち上ろうとしておる。この日本民族の真価を世界に知らしたという重大なる、きわめて重要な歴史的な意義があるのであります。そういう点をまつたく問題にしていないと思うのであります。「これが内外に及ぼしたる甚大なる悪影響」と言われるものは、まつたく見当がはずれておる。見当がはずれておらない言われるならば、日本のメーデー事件に対して悪評をしておるところの外国の反動勢力、また帝国主義者戦争屋、こういうものとまつたく同じ立場に立つておるということ以外の何ものでもない。  さらに、「独立早々のわが国に一大汚点を印した」と言われますが、これは一大汚点どころか、日本民族というものの真の独立的精神、こういうものが初めてここで示されたのであります。  一大汚点ではなくして、むしろ光輝の一ページ、日本の輝かしい一ページをこれは現わしたものであるとしか考えられない。  「前代未聞の不詳事を招来したることは、まことに遺憾でありまして、」と言われておりますが、その遺憾ということの意味につきましては、これも結局その二つの立場、すなわち日本民族の解放というものを恐れる立場、日本民族をどこまでもアメリカ帝国主義者の下働き、その奴隷にしておくことに利害関係を持つ人たち、こういつた人たちにとりましては、これはまことに遺憾なことであるかもしれない。しかしながらその反対に、あくまで日本民族の独立を身命を賭しても達成しようと念願し、かつそれを実行しようとしておる人たちにとつては、これは遺憾どころか、初めて自分たち自身の力を知つた、官分たち自身も、この暴逆に対してただ黙つておるのではない、これに屈服するのではない、これに抵抗するということが可能である、また有効であるということがここで示されたというように、二つの立場がここに明確にされたということを意味するにすぎない。しかもその立場たるや、一方はもう足元がくずれかけておるし、片一方はこれからいよいよ日本を真日本に築き上げて行こうという、前途洋々たる立場にあるのだから、われわれはこの日本の真の民族的発展の立場に立つて、これは遺憾どころではない、とんでもない話である。われわれはこれをまことに迷惑であると考える。  「その責任は、一にかかつて、背後からこれを使嗾扇動したる日本共産党にありと断ぜざるを得ません。」こういうことでありますが、もし共産党がここで何らかの役割があつたとすれば、それはきわめて名誉を負うべき役割でありまして、これに対して責任とかなんとか、何らそういうことではないのであります。こういつたことは、この提案者というものが、みずからの立場、まつたくアメリカ帝国主義者の買弁になり下つておるところの立場を、ここでただ自己暴露したにすぎないのであると、われわれは断ぜざるを得ないのであります。     〔「アメリカの犬ども」「何だ、ソ連の小使ども」と呼び、その他発言する者多し〕
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君に注意いたします。そんな不穏当な言を……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛、静粛。
  23. 風早八十二

    風早八十二君 私は、今申した私の発言をサポートすべき他の国民発言の中から、一つだけ引用しておきたいと思います。これは「世界」の七月号に、阿部知二という人物が「遺憾という意味」と題して掲げた一文がここにあるのでありますが、その中で一言だけ申し上げたいのであります。「その夕刻からのラジオや大新聞の群が描き上げたところの暴徒の図面と、私が見た青年たちの面影とは、どうしても合致しない。しかも、その日から、ラジオや大新聞は、着々と成功して、全国の市民たちに、彼等が暴徒であるという印象をみごとに植えつけたらしい。いや、世のいわゆる識者たちも、いつしかそれに動かされて、大いに遺憾の意を表するものが多くなつてきた。一方で、為政者や大新聞は、海外に悪影響をあたえたと痛恨した。しかしわれわれにとつての「海外」、それはワシントンやニューヨークだけではあるまい。現にインドの反響は、まつたくそれと反対であつたではないか。おそらくあの時に海外に飛んだ電報などは、ずいぶんと妙なものだつたろうが、それに惑わされず正しく鋭い眼で読み抜いたインド人の前に、あの事件を遺憾とした識者たちは、恥じなければなるまい。」「秩序や平和はいいことであるが、人権を無視する悪法をつくり、悪政をしき、その下でじつとおとなしくにこにこせよ、というのは無理無態のフアシズムである。」  こういうことも同じ阿部知二君が言つておるのであります。「日比谷交叉点を行く学生群を見て、「五・四」事件を私は連想した。一九一九年の北京学生たちは、日本帝国主義と軍閥と買弁とを糾弾した。千余人が獄に投じられた。おそらく時の為政者たちはこれを暴徒としたことであろう。しかし、それは弾圧によつて、一度こつきりに窒息するようなことにはならず、つづいて上海の労働者のけつ起になり、以後万波を呼んで、アジアの歴史の大きな一頁になつた。それどころか、近代中国の新文化がそこから生れてくる、というような大きな契機をもつくつた——また私は、一九二〇—二二年のインドの反英運動のことを連想した。暴力を憎むガンジーはこれについて「……インドに大火災がおころうとしているのは私が火をつけたものでなく、ただインドがしめつたマッチでなかつただけのことだ」これは「マハトマ・ガンジー」という著書であります。このようなことを私があげるのは、これは諸君の御参考に——自身がかつて言つているのではない。やはり心ある者は、いやしくも日本民族を真に愛そうとする者は、私とまつたく同等の、言葉までもかわらないことを言つておる。諸君にとつては、この「世界」という雑誌は、共産党の機関誌「前衛」と同じように見えるであろう。しかしながら、これはまつたくいわゆる中立といわれる雑誌でありまして、諸君の今やじを飛ばしておる議員諸君の論法によれば、自由党以外はみんな共産党だ。(「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し)まだ最初の二ページでありますが、大体大事な点が出ておる。  あと中西君の問題を出して、わが党からの裏切り脱落分子を、大いに諸君はここでかつぎ上げておるようである。これはいずれ質疑の際、むろん大きな問題にしなければならぬ点でありますが、最初にまず中川君の趣旨弁明の大きな二点、今その一点として、私は私のあげたことが、虚構捏造ではなくして、厳然たる、しかも白昼公然と行われ、万人の認めておる事実であるということを、若干これについて立証し、中川君を反駁したのであります。  もう一点は、私が暴力的革命を扇動した云々というようなことがあるのであります。この点に関しては、私がすでに本会議一身上弁明の中で、また緊急質問の中でも、特に強調した点でありますが、われわれの基本的人権というものと、そして国民の抵抗権というものと、この二つの間の密接不可分な因果関係というものを、私は明らかにしておく必要を感ずるのであります。昨日も新聞を見ておりますと、東京新聞の放射線というところに、これは花戸何がしという署名入りの文章が載つておりますが、そこに引用せられておるものに、同志社大学の田畑忍総長が、「自由が傷つけられないところに騒擾なし」、自由が傷つけられないところに騒擾、暴動というようなものはないということを言つております。今回の人民広場の、これは諸君の方から言えば騒擾事件言つておる。騒擾罪に問うておる。しかしながらこの騒擾ということを、言葉はとにかくとして、諸君はそう言つておるが、これは人権の蹂躙ということとまつたく不可分のことであり、人権の躁欄ということの中から必然に生れて来る一つの事態であるということを、私はこれから若干申したいのであります。  個人というものが個人的に一つの侵害を受ける、肉体的な侵害を受けるという場合、これに対して正当防衛権があることはいうまでもありません。これは刑法でもはつきりと認めておる。一民族にもまた同じような抵抗権があるのです。日本民族が今まで七年の間、これはおそらく近世史におきまして、日本としては初めての経験であると考える。七年の間アメリカの占領下にありまして、この占領制度を利用せられて、結局何のことはない、植民地にされてしまつておる。これはただ植民地にされるという、植民地にするための植民地政策だけではないのでありまして、それは同時に日本をアジア侵略の手先に使つて行こうという、その大きな地ならしでもあつたわけです。そういうような目に日本はあつている。しかも、日本はアジア侵略の単なる足場ではない。日本自身がこの植民地化、戦争準備、この二つによりまして、この二つの結合によりまして、アメリカ帝国主義者によつて侵略せられておる。この点に気がつくことなくして、日本民族の解放ということを言うことはナンセンスだ。日本民族自身が、このアジアの民族の中でも特に朝鮮と——朝鮮は今戦争の惨禍のもとに、事実アメリカ帝国主義によつて侵略されておる。しかし日本も、経済的にあらゆる面から、すでにアメリカに侵略せられておる。このような場合に、日本民族として一体何をしなければならぬか。個人が個人を侵略する、侵害する、その場合に正当防衛権があるということは今申した通り、民族もまた、このようにして今侵略を現に受けておるとすれば、これに対してわれわれが抵抗するということは、民族として当然の義務だ。そうでしよう、当然の義務です。そういうことをわれわれはメーデーで実際に見た。人民広場におきまして——今までならば、MPの姿をちよつと見ただけでも皆おつかなびつくりで逃げ出した。しかし、現在はもう昨日の日本人ではない。相手がMPであろうが、またその手先であるところの警察部隊であろうが、それが武装していようが、それに恐れることなく、この暴逆な彈圧に対しては、断固としてこれをはね返す気構えが日本人にもあるということが、あそこで証明せられた。この点は諸君自身日本人自身の当然なすべきことを、この日本の人民大衆がみずからの力でやつたというこの事実を発見しなければならぬ。日本民族を発見しなければならぬ。私はこの点を特に強調しておるのであります。私ははつきり……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  24. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。
  25. 風早八十二

    風早八十二君 私ははつきり申しますが、この中川君の趣旨弁明は、事実が虚構であるという点が一つと、今申したように……。もう一つは、この価値判断というものが非常に問題になつているのです。あの事件の意義というものを一体どういうふうに見るかということが問題になつておる。これはまつたく一つあなた方のよく言われる、いわゆる見解の問題なんです。その見解、その背後にある立場の問題なんです。でありますから、われわれの立場とあれと結びつけて、われわれがあれをいかに判断したかということを明確にしなければ、この趣旨弁明に対する一身上弁明にならない。そういう意味言つておるのでありますから、その点だけはひとつ十分に発言の自由を許してもらいたい。  私は一昨日の本会議におきまして、アメリカ大統領リンカーンの言葉を引きました。しかしながらあまりに野次がはげしくて、ほとんど聞き取れない、速記もとれないというような状態でありました。これはきわめて大事な引用でありましたから、これをこの際もう一ぺんさしていただきたい。リンカーンが大統領の第一期の演説の中で言つておる。これはアメリカであります。アメリカもこのときはまだ性根があつた。もし国民がその政府に飽きた場合は、彼らはその政府を改造する権利、またはこれを廃止し、もしくは打倒する革命的権利を行使することができる。もし大多数の人間が、多数の威力をもつてこれは聞いてもらいたい、多数の威力をもつて、憲法に明記された権利を蹂躙し、少数者を無視するに至るときは、道義的見地から革命を肯定せざるを得ない。もし、その侵された権利が重要なものであるときは、おそらく革命に至るであろう。現在われわれの前に、われわれが今直面しておる事態というものは、民族解放かあるいは隷属か、大きな革命的な一つの事態であるのであります。われわれがものを見るという場合においては、結局、一体日本はどうしようというのか、日本はこれから真に独立平和の日本を築き上げようというのか、それとももうすつかり奴隷化し、植民地化し、そうして滅亡の道をたどろうというのか。この点でわれわれは、すべての愛国者、すなわち日本の民族の平和と独立をあくまで守り抜いて闘つて行こうという人たちを結集して、そうしてその結集した力でもつてあくまで抵抗して行こう。これによつて、外からも、あるいはそれの下請をやつておるところの内部の裏切者、こういうものに対してわれわれが抵抗を試みて行こう。こういうことをかねがねも一貫して主張して来たし、また現在それを主張し、かつ実行しつつあるのであります。従つて、われわれがやることは、これは古今東西、真に民族を解放しようというその瞬間において、民族の独立を真に守ろうという瞬間において、何人の口からでも出て来るという意味におきまして、私は今、アメリカのリンカーン大統領の演説の中の一句を引いたのであります。こういうことは、これはもちろんどの国も、民族の危機が生れ、その危機から脱却しようとするその際に叫ばれた同じ言葉であります。  ここに私は今持つておりませんが、世界人権宣言——これは戦後の日本でやはり一応掲げられた世界人権宣言でありますが、あの中にもまさに同じようなことが書いてある。いやしくも政府というものが人権を蹂躙するとき、これは暴動——諸君のいわゆる暴動、あるいはまた諸君のいわゆる騒擾、そういうことだけではない、革命というものが、その国民にとつて至上の最も神聖な権利となり義務となるという、この命題というものは高く掲げられておるのでありまして、アメリカの対日占領政策の、初期占領政策の中にもその趣旨が盛られておつたことは、諸君も御承知通りと思う。でありますから、このメーデーの問題を、真にそういう日本民族の解放の立場から、一体、われわれが見るかということは、これはただ自由であるとかどうであるとかいう問題ではない。そう見ることは自由である。それは自由にはきまつておるが、それだけではなくして、その立場をとらなければ、日本は滅びるという重要な立場を、われわれは事実とつて、その立場から、あの緊急質問を試みておる。でありますから、その緊急質問に対して、これを懲罰とかなんとかいうような、そういうけちくさい、まつたく的をはずれたことをやる一ということは、もし善意であるならば、これははなはだしく的はずれであり、また悪意の上であるならば——もちろんこれは悪意に違いないのだが、われわれは断固として、こういう立場に対して全国民愛国者とともに闘う以外にはないのだ。大体これが大きな柱に対する私の根本的な点でありまして、以下これらの二つの点について、これからやや具体的にこまかく、私が実際に持つて参りました資料について、諸君弁明を試みたいと思います。     〔「少し疲れておるから一服しようじやないですか」と呼び、その他発言する者あり〕
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 風早君の一身上弁明は終りましたから、風早君に……。
  27. 風早八十二

    風早八十二君 まだこれからやるのです。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 あなたはもう大体いいと言つたから……。
  29. 風早八十二

    風早八十二君 つまり中川君の出された点につきまして、その要点を明らかにしたのでありまして、それをこれから一々申し上げたい。但しこれは委員長に私要求したいのであります。私はきよう十一時何分にここに入場したと言われますが、最初に本件の懲罰動議が提出せられましてから、ずつと今日まで、ずいぶん長い、一箇月以上、商量になんなんとする時間があつたのです。一昨日突然、まつたく不意に出して来られた。そうして急にばたばたと、この会期のまさに終ろうとするときに、これを問題にして来るということでありまして、私が待つたのは——諸君はきよう一時間待たれたと言われるが、私はほとんど一箇月以上も待つたわけです。毎日待つておりました。しかしながら一向に諸君はこれを問題にするような様子もないし、われわれもまたこれは問題にすべきものでないと考えておるから、そのままにしておいた。それを急に出して来る。そして急にきよう一日でこれを。(「病気だから待つてくれと梨木君が言つた」と呼ぶ者あり)とんでもない話だ、事実……。     〔発言する者多し〕
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 不規則発言を禁じます。
  31. 風早八十二

    風早八十二君 よく調べてもらいたい。私が届けを出して休んだのは、五月十一日と十二日、十三日だけだ。十五日には前回の懲罰問題のために……。私は絶対に休んだことはない。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 風早君に申し上げます。ここは懲罰委員会でありまして、こちらに送られたからこちらの委員会を開くので、その前のことに関してはわれわれの関知せざることですから、ほかの方面で抗議せられることはかつてですが、ここではさようなことは困ります。
  33. 風早八十二

    風早八十二君 その点はよくわかりました。そういう事情でありますから、私は今日もうちやんと朝から控室にはおつたのでありまして、実際にまだ野党の他の政党の方々が一人も来ておられない、自由党の諸君ばかりが手ぐすねひいて待つておる、こういうような状態なんです。これは懲罰委員会の権威としてもはなはだ私は問題だと思うのであつて……(発言する者多し)そこで私は一身上弁明最中でありますが、これは問題だ。私は懲罰委員ではない、懲罰にかけられる人間でありますから、もちろん私がとやかく言うのではないが、しかしながら、きよう一日で、どうでもこうでも一身上弁明を終ろうとされても、それは私はあんまりむちやだと思う。事は重大なんです。諸君の意図はもうわかつておる。少くも私の弁明だけは十分にこの席においてやらさなければ、諸君は後代に、末代に汚点を残します。(「失礼なことを言うな」と呼び、その他発言する者多し)これをはつきりさしておかなければ…。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 たびたび申し上げますが、請求の事実に対する弁明であつてその以外のことは困ります。
  35. 風早八十二

    風早八十二君 なお裁判所におきましても、被告といえども、やはり非常に長時間にわたります場合は、ことに昼の時間というふうなことにさしかかれば、適当にやはり休憩ということはあるはずなんだ。私はずつと立ちずめでやつておる。まだ何時間続くかわからない。それで適当な機会に休憩するなり何なりして——今するとは申しません。しかし、そういうことはやはり考えてもらわなくちや困る。昼飯は諸君もやはり食わなければならない。また私も昼飯を食わなければならない。そういう人権に関しては、やはり懲罰委員会としても考慮されたい。
  36. 田渕光一

  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 発言を許してもいいですか。
  38. 風早八十二

    風早八十二君 どうぞ。
  39. 田渕光一

    田渕委員 議事進行で申し上げますが、十二時十分から風早君は約五十五分間の弁明をされたのであります。私たちも冒頭に申し上げました通り、つまり議員の身分に関することでありまするから、努めて厳粛に、静粛に伺つたのであります。しかしながら大体一点、二点とおわけになりまして、十分弁明趣旨はお尽しになつたと思います。そこで具体的に入つてというお話もございますが、これは質問のときに十分具体的に伺つていいと思いまするので、風早君の一身上弁明は、この程度で打切られんことを望みます。  (「発言中だ」「発言中じやない」と呼び、その他発言する者多し)
  40. 風早八十二

    風早八十二君 ぼくは……。今ぼくが何を言つたか知つておるかね。(「動議の採決をしろ」と呼び、その他発言する者多し)
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記をとめて……。     〔速記中止
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記して。  この際、相当長時間にわたつていますので、補足的弁明の時間はこれを十五分以内とすること、この趣旨に御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」「反対だ、議事進行議事進行、動議が出ておる、動議に対して意見を述べさせないというばかなことがあるか」と呼び、その他発言する者あり〕
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 従いまして、この提議が通りますれば、先ほどの田淵君の動議は取消すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 異議がありますから、先ほどの提案に対して採決いたします。賛成の方の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  45. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 起立多数。よつて十五分以内で許すことに決しました。風早君に発言を許しました。     〔「そんな手続は効果ないよ。」「お前の態度がいかぬ。」「不信任だ。」と呼ぶ者あり〕
  46. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 風早君に発言を許します。     〔「動議に対する意見を開陳する機会を与えてない。そんなむちやなことがあるか」と呼ぶ者あり〕
  47. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 梨木君の発言風早君の発言が済んでから……。     〔「十分や十五分でやれるか」「やれるかやれないか、やつてみなければわからないじやないか」と呼ぶ者あり〕
  48. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 済んだらやりますと言つている。風早君の発言中かつてなことを言つても困るよ。(「そんなこと言つたら、君はおれが発言を求めているのに一切やらせなで、しやあしやあとやつておる、そんなむちやなことがあるか」「そんなことを言つたつて……」「委員に十分な審議と発言機会を与えてやつてくれと言つているんだ」と呼び、その他発言する者多し)
  49. 風早八十二

    風早八十二君 だから私はこの身上弁明の最初に言つたんだ。この身上弁明の自由というものは、これは無制限なんだ。この無制限の自由を諸君がこのように封殺するということがわかつておるから、われわれは最初からちやんとはつきり言つたんだ。諸君はそれに対してもうそをついておる。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)うそをついておる。先ほどそう言つたじやないか。     〔「委員長委員でない者をどうして席へ置くんだ。しかも提案者がまん前におつて、そういういろいろなやじを飛ばすのをだまつているのか、どこかへ連れて行け」と呼ぶ者あり〕
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 注意します。     〔「注意しろよ、実にうるさい」「席をはずしているじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 中川ちよつと向うに……。
  52. 風早八十二

    風早八十二君 私は最後に、私の緊急質問に対する懲罰動議の陰謀に対して、ここで徹底的な駁撃を試みようといたします。提案者諸君は、一体今日の日本の内外情勢についてどういう認識を持つておるか。統一メーデーに盛り上つた日本国民の新たな決意を一体何と見ておるか。今、日本国民大衆は、民族の独立と自由のために、帝国主義者とその手先に対し、抵抗自衛権を行使するところにまで成長している。諸君はこれを知らない。幾百万の労働者大衆が、七箇年の植民地的占領制度のもとになめた屈辱と苦難の中から、実力的大衆行動をもつて自衛的抵抗に立ち上ろうと決意し、かつ実行に移しつつあるときに、やれ破防法だ、やれ懲罰だとは一体何事か。諸君はこれによつて国会議員の品をふさごうとしておるんだ。現に諸君は、占領下だからといつて占領権力におもねつて国会議員発言の削除をやつて来たが、今度は頼まれもしないのに、自分の手でやろうとしておる。こうして、政治批判の自由というものが保障されておつたただ一つの場所であつた国会の言論を、国会みずからの手で抹殺しようとするその愚劣をあえてしておる。自由党の諸君は、それによつて自己の売国性、反動性を……。(「何を言うんだ」と呼ぶ者あり)きさまのことだ。(「きさまとは何だ」と呼ぶ者あり)きさまでたくさんだ。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に。
  54. 風早八十二

    風早八十二君 大衆の前に隠蔽し、合理化したと思つておるのだ。売国性の隠蔽は売国政策をやめることによつてのみ可能なんだ。私の国会議員としての自由なる政治批判の言論の封殺を前提としておるこの懲罰動議、こういうものは、結局私を国会議員の地位から抹殺しようとする隠謀であることは明白であります。しかしながら諸君、いかに私の口をふさごうとも、幾百万大衆の口をふさぐことはできない相談である。私を国会議員から抹殺しようとしても、日本国民自身の抵抗闘争は断じて抹殺されないのであります。私は国民の支持のもとに、断固提案者諸君の陰謀をあばいて、国民とともに民族解放の闘いを進める、それをじやまする売国吉田政府はまつ先に打倒されるに違いない。占領制度の継続に反対して、全国にほうはいとして起つておる大衆の怒りの荒海の前に、君の懲罰動議のごときは一沫のあわのごとくに砕かれてしまうのだ。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 これをもつて風早君の一身上弁明は終りました。  暫時休憩いたします。     午後一時二十八分休憩      ————◇—————     午後四時五十二分開議
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  議員林百郎君懲罰事犯の件を議題といたします。この際本人林百郎君より一身上弁明を求めることといたします。林百郎君、一身上弁明を求めます。
  57. 林百郎

    ○林百郎君 ちよつと委員長一身上弁明をする前に、私はまだその資料をもらつていないのです。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 あなたの弁明だけだろう。
  59. 林百郎

    ○林百郎君 あなたの弁明といつたつて提案理由がわからない。起訴状を見なければ、被告の意見は述べられない。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 お渡ししてもいいが、弁明者には渡さなければならぬことはないそうです。渡さなければならぬことはないが、渡してあるのだそうだ。——速記をとめて。     〔速記中止
  61. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 速記をやつてください。     〔発言する者あり〕
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 静粛に願います。重ねて林百郎君の一身上弁明を求めます。
  63. 林百郎

    ○林百郎君 委員長にあらためて答弁を求めますが、なぜ月曜の午前十時に延ばせないのですか。土曜日の五時のこれからやつて月曜日の午前の十時になぜ延ばせないのですか、その理由委員長聞かせてください。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 一身上弁明を求めておる人から質問を受けるわけはありません。弁明を求めます。
  65. 梨木作次郎

    梨木委員 委員長議事進行。今、林君からも委員長あてに、非公式ではありますが、申入れをしておりますが御承知のように林君はきよう午前中は外務委員会で、非常に重要な日印の平和条約に関する審議に参加し、引続き本会議におきまして討論をしておるのであります。この討論は、非常に重要な条約でありまして、林君はきのうから心魂を傾けて実は討論を準備し、心身ともに非常に疲労しているのです。これは皆さんごらんの通りです。しかもきようはもう五時を過ぎておる。一身上弁明は本人にとつてはきわめて重要な発言であります。この発言いかんによりまして、皆さん方判断の資料に供するのでありますから、林君といたしましては十分準備いたしましてとにかくこう疲れ切つた中では、弁明をまとめることすら非常に困難であります。だから委員各位はこの事情を御了察くださつて、とにかく同僚が今これから重要な一身上弁明をしようというときに、この疲れ切つた中でこれを押しつけるということは、人道的に見ましても非常に重大なことであるし、委員諸君つてお疲れでしよう。しかも彼は非常に重要な一身上弁明をこれからやろうというのですからきようは土曜日であります。一週間活動して来た人にとつては、普通ならば土曜日というのは半分ということになつておるのです。日曜日というのは、一週間一生懸命働きまして、これは生理的にもどうしても休まなければならぬ。ところが諸君はこれからこれをやろうという。これは同僚が一身上弁明という重要な発言をするのでありますから、きようはこの程度にいたしまして、月曜日も続いておやりになるというのだから、これは月曜にやるのと、これからやるのと、どれだけも委員会運営上に支障がないと私は思うのであります。でありますから、どうか林君に十分なる一身上弁明機会を与えるためには、きようはこの程度にしてもらいたいということを、委員長はぜひ諸君に諮つていただきたい。     〔「進行々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  66. 林百郎

    ○林百郎君 私は職業が弁護士ですから、常に被告立場を弁護する立場に立つております。こういうことは慎重にも慎重を重ねるということが、私の職掌柄の習慣にもなつておるのであります。そこで私は、とにかく本会議場で佐々木君の私を懲罰にする提案理由で不明の点がありますので、これは委員長でけつこうですから、説明していただきたいと思うのであります。私の一身上弁明をする前に、一、二——  これは本来なら佐々木君から聞きたいのですが、これから佐々木君を呼ぶことは不可能ですから、委員長にお聞きしたいのであります。   六月七日の本会議における私の発言というところで、筋の引いてあるところは大体二箇所でありまして、「—————————————————————」ここが一点。それから「——に、国家の権力によつて、いつまでも自分の政権の座に居すわろうとするならば、日本の人民は——よりほかにしかたがないのであります。」この字句だけが懲罰に該当するというのですか。
  67. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 私は提案者でありませんから、答えるわけに行きません。
  68. 林百郎

    ○林百郎君 それがわからないと私は答弁できないですよ。ということは、委員長委員諸君にも聞いていただきたいのですが、佐々木君の提案理由の中には、私の使つておらない言葉が使つてあるわけです。木村法務総裁は人民殺傷の総指揮官になつてというような言葉を使つている。私の原稿を見ていただけばわかりますが、私はそんなことは言も言つていない。ところが佐々木君の提案理由の中には、たしか私は聞いていたのでありますが、そういうことがあつた。これは私の発言を見ていただけばわかりますが、一言もそんなことは言つておりません。  それがはつきりしませんと、私の使つた字句が懲罰理由になるのか、あるいはこの演説内容自体がいけないというのか。そのどちらかはつきりしないと…。演説内容全部がいけないというなら、これは共産党立場を全部否認されたということで、共産党国会における存在そのものを皆さんは無視するということになる。一体どちらなのか、それをはつきりしないと、私の弁明が立たないわけです。
  69. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 国会法では、懲罰事犯にかかつた人から質問はできないことになつておるそうであります。あなたは違つていると思われたら、違つたこととして弁明してください。
  70. 林百郎

    ○林百郎君 それは国会法のどこにありますか。ちよつと見せてください。
  71. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 一身上弁明というのは、身上の弁明だけなんですから、それ以外の発言は許さぬことになつております。
  72. 林百郎

    ○林百郎君 身上弁明をするについて——これは委員皆さんも知つておいていただきたいのでありますが、この筋が引いてある字句がいけないというのなら、この字句を私は身上弁明しなければいけない。ところが、演説全体がいけないというのなら、その立場からやらなければならぬ。佐々木君の提案理由の中には私の使つていない言葉が出ておる。どういうのかということをはつきりしていただきたい。
  73. 田渕光一

    田渕委員 この懲罰動議提案者に私もなつておるのであります。そこで、同僚提案者である佐々木君がおりませんから、私は委員席から、一応公式であつてもなくてもよろしいが、林君に申し上げます。林君の六月七日の演説の全部、ことに字句及びその内容が全部懲罰にかかつておるのであります。そこで、その大体のことを申し上げまするならば、憲法五十八条に規定されておる……。
  74. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 田淵君、それは提案者でもないんだから、提案者ですら、そういう説明を許されぬということでありますから、提案者でない者がやると前例になるから困るという今……。
  75. 田渕光一

    田渕委員 それじやよしましよう。
  76. 林百郎

    ○林百委員 そんなことならわれわれは弁明できないじやないですか。何を対象にして弁明するのか……。
  77. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君にお答えしますが、動議提案の理由はすでに佐々木君が説明されておるのであつて、それを聞いてあなたは本会議弁明されたのでありますから、いまさらさようなことを繰返す必要はないと思います。
  78. 林百郎

    ○林百郎君 その後検討してみた結果、佐々木君の趣旨弁明の中に不明な点があるから、委員会で責任のある弁明をするためには、佐々木君の趣旨弁明のわからない点を明らかにする必要があると思うのです。そうでなかつたらこの懲罰委員会はまつたく形式的になつてしまう。(「わからないなら、わからないと言つておけばいいじやないか。」と呼び、その他発言する者あり)
  79. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 説明は終りました。昨日……。
  80. 林百郎

    ○林百郎君 委員長つて弁護士でよく知つておるでしよう。わからない点は検事に釈明を求めて、それから弁護人なり被告人陳述するのです。
  81. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 ここは裁判所ではありません。
  82. 林百郎

    ○林百郎君 裁判所ですらそうやつて、いるんですよ。それを国会提案理由のわからない点をはつきりしてもらいたい。それがどうして許されないのか。     〔「君はわからぬ、わからぬと言いながらわかつておる。君自身弁明しておる。」「わからなければ弁明できません。懇談にしてください」「本来ならこれは提案者提案理由を聞いて、そうして質疑をやらなければいかぬのだよ」「やつたじやないか、説明したじやないか」「私は聞いていないですよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  83. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 聞かないのが悪い。君だけに前例のないことを許すわけには行かない。
  84. 林百郎

    ○林百郎君 だから懇談にしてください。なぜ委員長は四角ばるのですか。私が除名になるかどうかわからないから、ひとつ懇談して聞かしてくれというのに、なぜしてくれないのですか。来週の月曜日の十時にしてくれというのを、無理に私をひつぱつて来ている。裁判所つてこんなひどいことはしない。犬や猫じやあるまいし、わからない点を聞くのが何で悪いか。
  85. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 わからなければ、本会議弁明できるもんじやありません。
  86. 林百郎

    ○林百郎君 質疑を先に聞いてからやるのが一番いいんだよ。それをやらないのが…。
  87. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 重ねて申しますが、本会議において提案理由を聞いて弁明をしておられるのでありますから、わかつたからこそ弁明せられた。しかるにここへ来てわからぬというのはわれわれ受取れない。
  88. 林百郎

    ○林百郎君 それは本会議で聞いて、その後わからない点があつたから、最後の委員会では万全の策を講ずるために、わかつている人があつたら聞かせてもらいたいと言つているのです。
  89. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 それは正式の会議で。
  90. 林百郎

    ○林百郎君 それでは大体非公式でありますが、田淵君から私の演説全部がいけないということが言われましたから、これは私は大体自由党の諸君の考えがそういうものだという前提で、私は弁明したいと思います。  冒頭に申し上げますが、私は弁明について今ここで大体三つほど項目を設けて来ました。第一は、この懲罰はまつたく違法であつて、こういうことが一許されるならば、議会の権威あるいは民主主義というものは根本的に破壊されるということこの点を第一に申し上げたいと思う。(「議事進行議事進行。なぜ衛視をたくさん入れたか、諸君はこういうふうにたくさん衛視を入れて、わが党の議員懲罰の審議にあたつてこれは一つの脅迫だよ」と呼ぶ者あり)私は衛視をあんなに入れたら精神的に威圧を感じますから、あれを減らしてください。衛視を一人にしてください。
  91. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君、一身上以外の発言は許しません。
  92. 林百郎

    ○林百郎君 一身上弁明をするのに精神的威圧を加えられますから、一人にしてください。
  93. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 何のために衛視が入つたからといつてじやまになりますか。
  94. 林百郎

    ○林百郎君 昨日以来衛視に演壇よりひつぱりおろされたのは二度だ。     〔「普通の委員会にはこんなにたくさん入れることはない」「そんなことは規則にはないじやないか」と呼ぶ者あり〕
  95. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 林君、発言したまえ。
  96. 林百郎

    ○林百郎君 したまえとは何だ。君の小使ではない。そんな権利がどこにあるのだ。したまえとは何だ。まるで被告じやないか。したまえというような言葉が使えるのか。第一きようの扱いは何だ。とにかく……。
  97. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 同僚に対してしたまえはあたりまえだよ。(「きようは土曜日だから、疲れたから月曜にしてくれと言つたじやないか。」と呼びその他発言する者多し)
  98. 林百郎

    ○林百郎君 それじや委員長継続いたします。私は先ほどから幾度か申しますが、まつたく心身ともに疲労しています。しかし皆さんの要請もありますから、大体十分くらいはやりますが、十分くらいを過ぎたら、月曜日の十時に継続していただきたいと思います。  そこで、先ほどからの話もありましたが、私の演説全体が懲罰になるということになりますと、私が国会に出ておる意義がなくなるということになるのであります。私は五万幾らの投票を得、人民の支持を得て国会に来ておるのであります。ところがこの私の演説全体が悪いということになるならば、これは五万幾らの選挙民の意思を全然無視することになるのであります。しかも私は、自由党とは全然立場の異なる共産党という立場から——これは皆さんも御承知通りに、自由党と共産党とは階級的にまつたく対立している立場であります。皆さんは、品ではどう言うかもしれませんけれども、資本家だとか、あるいは地主だとか、あるいは外国の帝国主義者だとか、とにかく意識するとしないとにかかわらず、こういう人たちの利益と結びついている。ところがわれわれ日本共産党というのは、これはやはり労働者だとか、あるいは農民だとか、こういう働く人たち立場から、われわれの政治的な信念は出ておる。この階級的にはつきり対立しているそれぞれの立場からものを言う場合に、われわれの立場からものを言う場合に、諸君が気に入らないことは、これはあたりまえなんだ。しかし諸君承知通りに、共産党はちやんとした合法政党として国会に存在が許されている。その国会に存在が許されている共産党が、反対立場から政府を攻撃することが許されないということになるならば、これはまつた国会民主主義国会の権威を諸君みずからが私は破壊することになると思うのですよ。これはどうか国会議員皆さん、特にここでは長い間国会議員として、帝国議会のころからおいでになつた議員諸君もいると思いますから、十分私は考えていただきたいと思うわけなんです。御承知通り帝国議会のころですら、いわゆる天皇制の補助機関であつた翼賛議会ですら、軍部に対する批判というものは十分に許されていたのであります。ところが民主主義によつて国の主権は国会にあるといつている。そしてわれわれ国議員の身分は、院の外にありて刑事的な責任をすら免除されておる。こういう十分な保護の規定があるのに、外でものを言うよりも、国会の中でものを言うことの方が遠慮しなければならないということになりましたならば、これは単に私個人の問題ではなくして、われわれが国会議員として、国民の代表として、ここでものが言えなくなると思うのであります。このことは皆さんによく考えていただきたい。   ことにこの日華条約の問題について、私が吉田内閣についていろいろのの批判をいたしましたことは、吉田内閣外交方針が向米一辺倒に行き過ぎる、この向米一辺倒の傾向をこのまま続けて行つたならば、これはゆゆしい問題になるということを私は言つたのであります。現にこのことは、外務と水産の連合委員会で日米加漁業協定の審議の際に、アラスカの沿海六百海里、アメリカの沿海に日本の漁船が入つてはならないというとりきめ、これに対しては日本のさけ、ますの漁業に対しては致命的だ、公海自由の原則をまつたく踏みにじつたものである、このようなとりきめはまつたく屈辱的なとりきめだということを、与党の皆さんの方からすらその意見がありまして、本日の水産委員会理事会では、この岡崎外務大臣がきめましたところの日米加漁業協定は、これは水産委員会理事会としては承認することができないという決議がなされまして、しかも本日の水産委員会では、これが満場一致で決定されておつたのであります。しかも外務委員会と水産委員会の連合委員会に際して、自由党の、皆さん方の党の長老である植原悦二郎氏も、このようなとりきめをすることは、これはまつたく岡崎外交の腰抜け外交腰抜けという言葉を使つておるのであります。アメリカにとつては、この太平洋沿岸の漁業という問題は、一つのビジネスかもしれない。しかし日本の漁業一問題について、アラスカのさけ、ますがとることができないということになれば、日本の漁業にとつては致命的なものなんだ、この点をどうしてもつと一十分に言わなかつたかということを、これはあなたの方の長老植原さんですら言つておるのであります。  吉田内閣の閣僚であつた植原氏から腰抜け外交と言われるのに、全然見解を異にし、鋭い対立をし、すでにはげしい闘いをしているわれわれ野党から、台湾に追い込まれた蒋介石と吉田とが手を握ることは、まつたく吉田政権が————————ようなことなんだ、これはどうかやめなければならぬ、このことは中国四億八千万を敵にすることだから、日本の平和のためにも、独立のためにも避けなければならぬ、と言うことが、どうして皆さん懲罰になるのでしようか。どうか皆さんにこのことを考えていただきたいと思います。私がとんでもない言葉を使つたならば別です。私と同じ問題を問題にして、いわゆる岡崎外交を皆さんの植原先輩が腰抜け外交と言うときに、われわれがこのままで行つたならば、————————のではないかと言うことが、懲罰を受けるということになれば、これはまつた国会の権威はなくなると思うのです。このことは、すでに皆さんが破防法を国会の中で実現しておることになると思うのです。どうか皆さん、お互いにわれわれは今度の選挙でアヴアンゲールの——戦前派の議員戦後派のわれわれが、選挙民を前にして角逐を争わなければならないときに、戦前の議員の方がもつと国会民主主義を命をもつてつていた、戦後派のわれわれの方が国会の権威を守る点に彼らに劣つていたということになるならば、われわれはどうして追放解除の諸君と選挙民の前に確信を持つて闘えましようか。私もこの中においでになる多数の方と同様に、戦後派の国会議員であります。戦後派の国会議員ということは、新しい憲法に基いて国会国民の主権の立場にあるという議員であつて、戦前派の議員よりももつと名誉のある地位だ、戦前の彼らよりはもつと権威のあるという誇りを持つて私は今度の選挙に臨みたいと思う。ところが国会速記録を読んでみますと、戦前派の議員諸君の方が、時の軍部に対してもつと痛烈な批判をし、もつと痛烈な攻撃をしておるときに、戦後派のわれわれが、私のこのような言葉をとつて懲罰にするということになつたら、われわれは実際今度の選挙に戦前派の諸君と確信を持つて争えないことになると思うのです。どうか一共産党の林議員だとか、あるいは自由党の皆さん方という立場を越えて、この問題を私は皆さんによく考えていただきたいと思うわけなんです。  それからもう一つ、蒋介石政権の問題について私が論議したのは、御承知通りに、今台湾はアメリカの第七艦隊に実は取囲まれているのであります。このアメリカが台湾を守るということは、あれは御承知通りにアメリカのアジアにおける国防戦線の第一線であります。これはむしろ、蒋介石自身よりもアメリカ自身の方が、台湾を守るということについては痛烈な利害関係を持つているのであります。ところが、この台湾の防衛について、アメリカでは空軍と海軍だけはアメリカが責任を持つけれども、陸上部隊は日本と台湾の人に負担させたいということが明瞭に出でいる。そういうことは日台条約んだ際に、台湾陳誠そのほかの蒋介石の首脳部が、必ず太平洋同盟を結ばなければならない、必ず大陸に反攻しなければならない、このときには、やはり日本も引入れて太平洋同盟をつくらなければならないということを言つているわけです。そうすると、日台条約が、将来は日本の若い諸君を再び台湾か、あるいは大陸の戦場に送り込む危険を包蔵している。時あたかもつい二、三日前にクラーク国連軍最高司令官が、朝鮮事変の推移によつては満州本土を爆撃しなければならない、こういうことはすでに国務省とも了解済みだということまで言われている。国連軍が満州本土を爆撃するということになると、明らかに日本の基地から向うの飛行機が飛び立つことになる。そうすると、中ソ友好同盟に基いて日本がまた報復爆撃される危険があることは、どうしてわれわれは想像しなければならない。少くとも国会議員として、日本の国の平和と、独立、日本の国の青年諸君の生命について真剣に考える者だつたならば、いやしくも戦争の危険については真剣にこれを考えなければならない。ところが日台条約を結ぶということは、これは平和の道ではなくて、非常に戦争の危険に導くものだ。戦争の危険があるのだということ。しかもわれわれは、最近方方でまた防空壕が掘られるとか、あるいは防空訓練をするとか、いろいろのことを聞かされている。この際また日本の国に戦争を導き、日本の国土を戦場にし、日本のわれわれの若い人たちをむなしい肉弾にしてはならないということを考えるのは、国会議員として当然です。皆さんつて子供さんをお持ちになつている。その子供さんがまた戦場にひつぱり出されて、むなしく南海の果てかどつかで白骨になるということを考えられたら、親の身としてこれは当然でありまして、この点については、私は自由党の立場よりも野党の立場でありますから、神経質かもしれない。  こういう危険を含んでいる日台条約について、これは戦争に行くか平和に行くかという岐路に置かれる問題でありますから、私たちは、どんな言葉を使つても、この日台条約は戦争の危険があるのだからやめてもらいたいということを、国会国民にかわつて言うことは、私は当然だと思う。これは今の時代に生きている国会議員のまた当然の務めだと思うのです。これを皆さんが許さないということになつたら、まつたく私は国会が死物化すると思う。どうかこの点も、私が決して単に自由党を攻撃するとか、そういう小さい気持でなくして、日台条約の将来が、また日本と北太平洋同盟を通じて戦争に導く危険があるということから、この演説をしたということを、まず皆さんによくひとつ理解していただきたいと思うのであります。私の使つた字句そのものが問題だということになればまた問題なんですが、演説全体がいけないということになつたら、まつたくこれは何をか言わんやということになるのであります。どうかこういう立場から私がこの演説をしたということ……。  その次に、私がこの吉田岡崎外交が————————のではないかということを言うたことについて、その後いろいろな例がありますから、これはまた御説明したいと思いますが、どうかひとつ党派を離れて、このような私の言うことを懲罰にかけるということが、はたして国会の権威を傷つけることになるかどうかということについて、十分に皆さんにも考えていただき、私からも訴えまして、きようはひとつこの程度にしていただきたいと思います。
  99. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 本日はこの程度にとどめ、明後十六日午前十時より委員会を開き、引続き林君の弁明を聞き、さらに両懲罰事犯の審査を継続することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十五分散会