○
椎熊三郎君 同僚
川崎秀二君の案件につきまして、各
委員諸君よりすこぶる愼重な御
態度をも
つて御検討を賜つ
つておることは、
川崎秀二君と同じ政党に属し、しかも
国会の
運営委員を勤め、本
会議の
場内交渉係を勤めておる私にとりましてはまことに恐縮に存ずるところでございます。以下私は
川崎君にかわ
つて当時の模様をつぶさにお訴え申し上げて、今なお当
委員会で明確にな
つておらぬ点を明らかにして、あなた方の御審判の参考に供したいと思うのでございます。先ほど来
梨木君、
牧野君、
田渕君等より、この案件処理に関する重大な点についての深刻なる御
質疑があ
つたようでありまするが、私そばに傍聽しておりまして、
国会運営委員会に出ており、
場内交渉係をしておる私
どもから見ると、今なおあの
質疑応答は隔靴掻痒の感がある。紙一枚むいてないところがあるような感じがするのであります。実は一月二十六日、
総理大臣の
一般施政方針に対する
質疑の第二日目、その二日目の本
会議の
運営の仕方は、前日二十五日の
運営委員会において全部決定済みでありますことは、
田渕君御承知の
通りでございます。しかるところ、われわれは二十五に
運営の方法を決定しておりましたが、当日二十五日の
予算委員会における論議の結果は、非常な重大問題を発見するに至りまして、
野党各派では、この予算案片憲法違反であるとの強い主張をするに至りました。従いまして第二日目の
質疑は、憲法違反のものを
議題として取上げて、それに対する
質疑を続けるということには、
国会運営上瑕疵があるのではなかろうか、これはどうしても
議事進行上明らかにしておかなければならぬということが、前夜二十五日の晩に
考えられたことでありまして、先ほど
川崎君が言われましたように、二十六日さらに
運営委員会を丁重にやるためにその日も開いたのでございますが、この問題のために私
どもが
運営委員会に入
つておる最中に、
野党各派の連合会が、午前十一時半ごろだ
つたと思いますが、やられてお
つたようでございます。その決定はただいま
川崎君のおつしや
つたように、私
ども運営委員会には何らの
連絡がございませんでした。今
田渕君のおつしやるように、
與党としての
自由党の本
会議に入るまでの
順序等は、まことにその
通りでございましよう。これは
與党の非常に好都合な点でございます。われわれはその点では非常に不便を感じておるのです。
與党は、いつ何どきでも
国会対策委員会を開き、総務会を開き、
代議士会を開いて、その決定に基いて
運営委員会に入
つて来ることができましよう。すなわち
委員長は
與党の
委員長なんです。自党の最も好都合なる時期に
運営委員会を開いてお
つたということも、これまたやむを得ない事実で、私
どもにとりましては、はなはだ遺憾の点だ
つたのであります。
従つて委員長の
発言によ
つて運営委員会が開かれれば、たとい私
どもの党内にどのような事情がありましても、五分や十分は待
つてくれるかもしれませんが、
運営委員会をしかく延長するということは、これまでも許されてない点でありまして、
野党側の不利な点であります。これは
與党の方々におかれましても、どうか
野党の立場というものに御同情ある御見解を持
つていただきたい。そういうようなことがしばしばありまして、当日二十六日さらに開かれました
運営委員会には、そのような
議事進行の
発言を出すということは、私には
連絡がございませんでした。そうして
田渕君御承知の
通りの決定を見て、党に帰
つて参りましたら、あたかも
野党各派の協
議会が終りまして、
川崎君を代表に立てて
緊急質問をさせるという決定に相な
つて、
成規の
手続を踏んだということであります。そこで私は驚きまして、これはもう
成規の
手続で、
議事進行のことですから、間々議
場内で突発してそういうことがあるのですから、そういうことはやむを得ないといたしましても、一応私
どもは本
会議の
運営の円滑をはかるために、大体
了解の上で本
会議の仕組みをや
つてお
つた関係から、本
会議の指導勢力を持つところの
與党側から出ている
国会運営委員長並びに
與党の
国会対策委員長には、これは
了解を求めておかなければならぬことであると私は判断いたしまして、たれの命令も受けませんが、私は石田
委員長のところへ参りまして、そのことを申し述べました。石田君は、昨日以来本日の
国会の
運営はすでに確定済みであるので、そういうことを出されるということははなはだ迷惑だ。しかし事は非常に重大だ。そこで
運営委員長としてははからいかねるから、党の
国会対策委員長と
了解を遂げてくれないかという親切な話がありました。そこで私はただちに
自由党の
国会対策委員会の席上に参りまして、倉石君に室外に出ていただきまして、実はこういうことにな
つて運営委員会にはかることができなか
つたことは、
手続上はなはだ遺憾ではあるけれ
ども、事いやしくも本日の本
議題に直接関連する重大案件であるから、これは法規上は当然許さなければならぬものだ。私は政党の仁義上あなたに
了解を求めて来たんだ。どうかこの点はお許しを願いたい。そうして
川崎君の
発言は、
国会規則上当然許さざるを得ないものであるから、これは
運営委員会にかけないという多少の
手続上の瑕疵はお
つても、ぜひこのことを許してもらわなければ困るという話を私は非常に懇切をきわめて申し上げて、倉石君も案件の内容の重要性はそのとき御認識があ
つたようでありますけれ
ども、いかんせんこういう決定をして、もはや
代議士会にはかる余裕もないものだから、
自分としてはそういうことは困る。しかしながらこれは
議事規則上許さなければならぬものだと
自分も思うから、許す時期については考慮しよう、こういう話があ
つた。そこで私は、それは許す時期を考慮するの必要のない問題である。許すか許さぬかがきまるならば、許すということは、案件に先んじて許さなければ、
議事進行の
発言には相ならぬのです。そこで時期の問題で考慮することは意味がない。許すか許さぬかの問題である。しかしながら
国会法上これを許さぬということは、
議長の権限でもできない。そういうことを強く主張して、実は話が徹底しないうちに振鈴が鳴
つてしまいました。
そこで
川崎君に、
自由党の
国会対策委員長並びに
運営委員長には申入れて来て、そのことの重要性は
認められたようだが、時期の問題については
自分と見解を異にしておるようである。しかし
自分は
国会法の建前上、この重要性を
認めた以上、他の案件に先んじて許すことが当然であると思うから、これは
議長としては許さざるを得ない案件だということを
川崎君に強く確信を持
つて主張したのであります。従いまして私はこの本
会議に
議長が
開会を宣すると同時に、このことは
発言を許すべきである、許さざる場合は
議長における瑕疵であると私はいまなお確信しておるのであります。
従つて私はこの問題につきまして、しばしば
運営委員会に出ました際に、
議長を目前に置きまして
——林
議長は実に人格的にもりつぱな人で非常に公平にや
つてくださる方で、私
どもは反対党の立場ではあるが、常に協力を惜しまない、この人をして無事に
国会を切拔けて行くようにと念願しつつ、
運営委員会の円満な
運営を私
どもは願
つておる。これほど私
どもは崇拝しておる
議長の前でも、
議長を目前にして、林先生はまだ
議長としてはおなれにならぬ。
国会の
運営上のことについては、長い
議員生活ではあるが
——たいへん先輩に対して失礼な
言葉だとは存じましたが、
国会運営の微細な点についてはまだおなれにな
つておらぬので、今回のこの
事犯というものは、
議長さんの
扱い方に間違いがあ
つたから起
つた問題であ
つて、必ずしも
川崎君一方の犯したる一つの事実ではないのだということを私はたびたび
運営委員ににおいて
議長の前でそのことを繰返して言
つております。
議長さんもそのことに対しては、実は
自分もふなれなものだから、よろしく頼むというようなことで、多少その点については先輩に対して失礼ではありましたが、私はいまなおそれを確信しておるのであります。
そこでその当日は倉石君とわかれて来て、十分もたたないうちに振鈴が鳴
つて、もはやわれわれとしても
代議士会を再び開くの余地がなく、本
会議場に入らざるを得ない。そうして入ると同時に、これは
川崎君の番だということを私は確信して、そこで耳をすましで
議長の宣告を待
つたのです。
議長は
開会と同時に、
川崎君より
議事進行に関する
発言がございます、と言
つた。その瞬間私は
——これは私の悪いくせかもしれませんけれ
ども、そういう微細な点について私は全神経を使
つて議
場内で心配しておる一人なんです。このことはいいか悪いか批判は別なんです。しかし私はあの
発言があ
つた以上、さあ
川崎君、そういうことを私は
国会の本
会議院内交渉係として、さあ行けということを、
川崎君が受取
つたかどうかはわかりませんが、私は言
つた。同時にその後の
発言がどうも明確でなか
つたものですから、私は
川崎君に許したのか許さぬのか、許さぬということは違法であるということを、
議長のところへ言いに行
つた。私は向う側の階段から上るし、
川崎君はこつちから
上つております。ところが
議長は
小川半次君を
指名された。そうして
演壇を占拠したということを、
有田君などは先ほどから強く言われましたけれ
ども、占拠というのは
演壇に向
つて議員諸君に面接して場を占めたときに、私は占拠というふうに言えると思う。
川崎君は初めから壇に
上つてみると、
小川半次君というので、それは違うじやないかと立
つておる。私は
川崎君を目の前に置いて、
議長に、
国会法上こういうものはどうしても許さなければならぬものだと言
つた。
議長は私に問いつめられて、もう困つちや
つて、それではせつかく小川君を
指名してしま
つたのだから、この次に
指名するから、それで納得してくれ、こう言うのです。それは
議事進行の
発言を
認めて、その案件の
あとに許して何になりますか。私はその不当をなじ
つてお
つたのです。
議長といえ
どもこれは間
違つたなと思
つたから、そういう妥協案を出したのですが、私はそれは不服である。
小川半次君を
指名したことそれ自体が、間違いなんだ。けれ
ども議長がその
指名した
小川半次君という
発言を取消すということも、
議長としてはこれは不見識な話でしようから、私もほかならぬ林先生の二とでもあるし、せつかく言うのですから、私は賛成はいたしませんでしたけれ
ども、それでは
川崎君、この次にがまんして下ろうじやないかということで、降壇を促しつつ、私も降壇した。そうして
小川半次君の
演説が終り、
答弁が終ると、
議長はただちに
川崎君を
指名しておるのです。それですから、
演壇を占拠したなどという不法
行為があるならば、
議長の職権をも
つて退場を命ずべきです。退場を命ぜられないほど、
議長にはこの
議事運営上の手違いがあ
つた。
私はこの点に関しまして、
議事運営上の練達なる
国会職員
諸君がおるのですから、この
議事進行の
発言に対して、いかなる取
扱いを旧来の
国会はや
つて来たかという、
慣例上、法規上の点を聞こうと思
つたが、それはいかぬと言うものですから、私は遺憾ながら
自分の信念で申し上げておる。この
議事進行の
発言は、その範囲を逸脱して何かを申した場合におきましては、それは不法の
行動であります。しかしながら案件に関連して、そうして重要なる緊急性を持つものであるならば、これは
国会法上当然許さなければならぬのです。許さぬ方が間違いなんです。そこで私
ども長年この
国会の
運営をや
つて来ておりますが、その状況によ
つて——突発的の問題は常にそうなんですが、
運営委員会にかけなくてもよろしいのです。
議事規則上明らかなるものは、何も
運営委員会で妥協し合わなくてもよろしい。
国会法上明確な問題なんです。それだから私
どもは強く主張したのであ
つて、
川崎君は
演壇を占拠したのでもなく、小川君の
発言を妨害したのでもありません。小川君は原稿
通り全部の
演説をしております。しかも
議長は、なおかつ手違いであ
つたということを自覚されたのでしよう、
小川半次君の
あとに
川崎君に
発言させておるのです。そうして私
どもは……(「簡單々々」と呼ぶ者あり)長く申し上げて申訳ないのですが、私は一人の同僚の
議員が不名誉なる
懲罰の
動議によ
つて懲罰委員会にかけられるという事態そのことが、
国会議員としての名誉の上から耐えられないことなのであります。あなた方は多数でございますから、何ごとでもできると
思つておられましようが、どうか今回の事態の真相を把握せられて、公平なる御判断を私はお願いしたいのでありますから、
川崎君にかわ
つてその当時の状況を申し述べておるのでございます。
なおもう一言お許し願いたい。もうこの問題について
発言する機会がないと思いますから、最後のお願いをもう一分か二分聞いていただきたいのは、私は先般
議長の許可を得て、北海道に旅行いたしました。その旅行するまでの間、一月二十六日のこの案件について、その私の出発する当日まで、私は
議院運営委員長石田君とも
国会対策委員長倉石君とも
話合いの上で、どうかこれは
懲罰事犯にかけないでもらいたいということを、連日のごとく哀訴嘆願して参
つた。しかるに
自由党の
代議士会においてはなかなか硬論があ
つて、許しそうもないという情報も聞いておりました。その硬論はどこから出て来ておるかということになると、今の
田渕君の
お話でよくわかる。
代議士会としては、そういう内情を知らぬ。見ておらぬ、その情景を知らぬので、ただ軍に
演壇を占拠して、
議長の命令に反抗したという印象を受けたから、
代議士会が強硬な意見があ
つたのででございます。今のような事情であるならば、いかに多数であ
つて、いかにあまり好ましからざる人物であるとしても、同僚
議員を
懲罰に付するという案、件に対して、必ずしも
自由党の
諸君といえ
ども快く賛成しておるはずはないだろうと思うのです。どうかそういう当日の事情等をよくしんしやくくださいまして、この問題に関する限り、御寛大なる、しかも公平なる御決定を賜わりますれば、非常に光栄でございます。
たいへん駄弁を弄しまして、まことに申訳ないのですが、どうぞお許しを願います。