○代田
公述人 ただいま御紹介を受けました代田でございます。私は本日は
大田区長として参
つたのでございますが、若干
関係を申し上げておきますと、昭和七年の
東京市が隣接八十二箇町村を合併するその前には、町長をや
つておりまして、そうしてそれ以来
東京市会、
東京府会、
東京都会とずつと十七、八年や
つておりますので、一応都の中の
事情、また市の当時の
行政も承知しておるわけでございますが、そういう
観点から、むしろ率直に都と区の問題について申し上げたいと存じます。都と区の問題の今度の
地方自治法の
改正につきましては、あの特別区の性格を変更するということについては絶対に
反対する者でございます。まず結論を先に申し上げておきます。そこで現在の都・区のあり方について一応申し上げたいと存じますが、今度の
改正案が出ますのにあたりましても、実際に現在の都と区のあり方というものを正しく御認識をいただきませんと、判断がつかないのではなかろうかと存ずる
観点から申し上げるのでありますが、二十二年に新しい
憲法が制定せられ、同時に新しい
自治法が出発いたしましたあのときにおきまして、新たに民主
憲法には
住民の
自治をほんとうに確立せられまして、そうして人民の基本的人権を尊重せられた
憲法にな
つたことは御承知の
通りでありますが、そのときの
自治法に、
東京都の性格といたしましては、完全に基礎的
公共団体ではない。市区町村を包括する複合的
公共団体であるということを
はつきり明定せられたのであります。と同時に、特別区に対しましては、あくまでも
地方自治の基礎的の
公共団体であるということで、
住民自治の面から特別区を
地方の市と同等であるというふうに見たということ、反面に
東京都は戰争中の戰時都政とは建
つて、今度は新しい
自治法、新しい
憲法におきましては、
地方の道府県と同等である、こういうことを
はつきりと明定せられたのであります。それによ
つて当時の安井都知事は、最後の都長官でありましたが、当時三十五区ありましたものを二十二区に区域を変更いたしたのであります。そのときの安井さんの
意見、また私
どもに公約いたしましたのにも、今度の二十二区は少くとも
自治区として出発するのである、そうして将来完全
自治区として育てるのであるから、現在の三十五区ではどうもぐあいが悪い。だからまげてこれは二十二区に統合することに
賛成してもらいたい、こういうことが当時の安井さん本人の
意見であ
つたのであります。そういうことで三十五区を二十二区にするのには、いろいろな障害もあ
つたのでありますが、たまたまそういうことならばということで、三十五区が納得をいたしまして、二十二区に統合をいたした、こういうふうな実情がまさにあるわけであります。そこで安井さんが今度は都長官をやめられまして、今度の新しい公選の知事に当選せられ、その知事に立候補せられるときにも、あくまでもそれをスローガンとして、
自治区をつくるんだということで出発をしたことは間違いのない事実であります。ところが知事に当選してしまいますと、さつぱりその公約を実行してくれないのでありまして、むしろ戰時中の
東京市と
東京府が合併したあの変態ないわゆる戰時都政というものをや
つたその味いというものは、これは忘れされなか
つたと存じますが、おそらくその割切れがつかなか
つたのが、この大きな問題の盲点にな
つていると思うのでありまして、結局あくまでもそういうふうなことで特別区というもののスタートをし、新しい
自治法で出発はしたものの、やはり戰時都政のときの気持をそのままにずつと割切れずに継続して来ている、こういうことが現在の都政のあり方であります。先ほど来もいろいろ都側の方の御
意見がありましたが、やはりそういう
考え方で、みな戰時中の都政の
考え方そのままをずつと続けてや
つている、こういうことであります。新しい
自治法、新しい
憲法の
自治の姿、
住民自治というものを生かして行くというふうなことには、少しも割切れがついておらぬ、こういうことが事実であります。そのために遂に都と区の間が、まことに円滑に
運営ができなか
つたということに相な
つたわけであります。そこで都の方から申しますれば、区がずいぶんわからぬことばかり言
つて非常に始末の悪い存在であるというふうに、誤解をされておるようでありますが、私
どもは決してそういう
考え方は持
つておりません。あくまでも特別区としましては、やはり遵法精神によりまして、結局
自治法に示されました特別区としてのあり方を、そのまま実現をしてもらいたい、こういうことを都にお願いをしておるだけでありまして、むしろその
考え方といたしましてはあくまでも六百万の
都民、
区民の
方々の
生活をできるだけ明るくして、その
方々の
福祉を増進して行きたい、それにはどうすればよいのか、こういうことを努めて研究をして来たというにすぎないのでありまして、結局わがままなことを言い、わからぬことを言
つて、ことさらに相剋摩擦を好んでやるというようなことは、何ら
考えておらなか
つたのであります。たまたま都の方はよくそういうことを外部には宣伝をするようでありますが、その点はどうかひとつ誤解のないようにしていただきたいと思うのであります。 しからばどういうところに盲点があ
つたかといいますれば、先ほど来もいろいろ御
意見があ
つたようでありますが、確かに法制と、つまり早く言えば相マッチしてなか
つたというところに、
一つの盲点があるようでございます。
地方自治法と、その他の
地方税法とか、あるいは道路法とか、社会事業法とか、
平衡交付金法とか、あるいは保健所法とか、いろいろ
関係法令がございますが、そういうものが
自治法と相マツチしておらなか
つたいうところに、
運営の
一つの盲点があ
つたのであります。
もう
一つ大きな盲点は、これは都の方ではおつしやらなか
つたのですが、
運営のよろしきを得なか
つた。先ほど御質問があ
つたようですが、むしろ知事の
政治性が足らなか
つたのではないかというお話でございましたが、私もその
通りだと思います。つまり知事がほんとうに
政治性を持
つておれば、現在の
自治法に示されたあの内容でも、都の方に対しては十分に活殺自在の剣を與えておるのであります。生かすことも殺すことも十分できるところの権限を都に與えておる
自治法でありますから、大いにその生かす方の劇を
使つてもらえばよろしいのですが、その殺人劍ばかり
使つてしまう、結局つまりものを殺そう殺そうということでや
つて来たので、始終その間にうまく行かなか
つた点が起
つて来たことは事実であります。税の問題にしましても、人事権の問題にしましても、またほかの
事務事業の問題にしましても、都が條例をつく
つて唇歯輔車の間にあるのですから、親心を十分出して、区の方にできるだけやらしてやるというふうなあたたかいお気持を持
つていただけば、都の條例で、今の
制度そのままでも、特別区というものは十分や
つて行かれるようにな
つておるのであります。それを一向にやらないで、逆の方ばかり、殺してしまうようなことばかりや
つて来たものですから、そこに
紛争といいますか、摩擦といいますか、こういうものを起さざるを得ないというふうな実情に相な
つたことを、まずひとつ御了解を願いたいと思います。
それともう
一つの盲点は、先ほど申し上げましたように、戰時統制そのままの
観念で、要するに都の当局は同じ人が戰時中の幹部であ
つたのが、やはり
民主政治にな
つてもそのままずつと引続いてや
つてお
つたために、結局その割切りがつかぬというところに、大きな盲点がある、こういうことに相なるのでありまして、そういう面から私
どもは常にその後努めて
自治権の拡充
運動ということでや
つて参
つたのでありますが、これが都で言ういわゆる
紛争だ
紛争だということに伝えられて来たわけであります。
それから都がよく
都区一体性ということを言
つておりますが、私
ども都と区のあり方が決して
一体性を欠くようなことは
考えておりません。あくまでも
都区一体性——一つの
大都市行政としましては、有機
一体性であることを十分認めておるのであります。
そこで私
どもが主張しておりますことは、できるだけ
住民の
生活に直結しておる身近かな
行政だけを区に全部やらせるべきだ、そして二十三区に共通的に、総合的に大きなもの、つまり早くいえば計画性のあるものは全部都がや
つてもらいたい、こういうことを言
つておるのでありまして、いつもばらばらということを言
つておりますが、先ほどお説がありましたように、私
どもは決して二十三区をばらばらにしてもらいたいなどということは寸毫も言
つたことはないのであります。あくまでも
住民自治の面から
考えて、
住民の身近かな
事務事業だけは、区の方に全部まかせてやらせるべきである、そのほかの大きな
仕事、つまり早く言えば、計画性を持ちまた全都的な
仕事は全部都でやるべきであると言
つておるのでありますが、それをややもすれば、区というものはまことにうるさいことを言うものだということに、解釈されて来たのが事実であります。そこでその後
自治権の拡充
運動というものを年々や
つて参りまして、とにかく
一つの
自治体に
財政の裏づけがないということは、はなはだどうもやりにくいことであ
つて、私
どもがちようど公選
区長で二階に上げられてはしごをとられたようなものである、公選
区長で
区民に公約して来たが、はしごをとられてしま
つて、つまり人事権も
財政権も起債権も何もなく、戰争中の
行政区そのままであるから、ちつとも
区民に対してほんとうの
行政ができない、こういう姿が今日まで続けられて来た姿であります。そのために、われわれは非常に困
つて年々
自治権の拡充
運動というものを続けて参
つたのであります。それがだんだん熾烈にな
つて参りましたので、一昨年
政府や国会の
方々に、これはどうも都と区があまりや
つてお
つてはいかぬということで実は
仲裁に入
つていただきました。これは二十五年に
都区調整協
議会というものができた、あのことであります。これは御承知のように中立
委員が五人、これには国会から三人出ていただきました。衆議院から二人、参議院から一人、
政府側は主として
自治庁でございますが、
自治委員会議の方から二人、都合五人の中立
委員が出、そして都の方がら安井知事以下五人、区の方からも
区長二人、区会
議員三人、都合五人出まして、五人、五人、五人の十五人という
都区調整協
議会ができまして、約半年以上の日子を費しまして、会同すること二十数回、実際に掘り下げて研究をしたのであります。どうすれば都と区の間が円満に行くかを研究に研究を重ねまして、その結果といたしましては、大体百二十四件ばかり問題がありました。そのうち都と区の
意見の一致したものは九十二件、それから都と区の
意見の一致しなか
つた残りの三十二件に対しましては、中立
委員が二十五年八月二百に裁定を下したのであります。都の方はこうやるべきである、区はこうやるべきであるということを裁定してくださ
つたのが、都と区のいわゆる理想の
事務事業裁定の線でございます。これが私
どもがあくまでも
——早く言えば法律ではありません。法的に
根拠は何もございませんが、少くとも都と区の間を円満に運行して行くためには、むしろ法律以上の憲章であるという
考え方をその当時持
つたのであります。そこで中立
委員を入れた十五人が全部これに署名捺印しまして、全部がこれに承認を與えたわけであります。それだけではいかぬというので都はこれを持ち帰
つて、
都議会にかけてこれを承認し、区は持ち帰りまして、二十三区の区
議会にかけてこれを承認し、同時にみなこれを承認したのですから、完全に理想の案がここで一旦できた。これを実行に移してもらえば、都と区の間は何ら問題は起らずに済んだのであります。ところが完全に施行するには法律を
改正しなければならぬ案件が十二、三件ございました。十二、三件の
関係法令を
改正しなければならぬということで、中立
委員の方、中島先生、松岡先生、参議院の岡本先生などが、これはわれわれが院内であつせんする、都と区の問題であるから、両方の連名で出せば、その法律
改正はいとやさしいから、これはわれわれが心配してやるから、法律を
改正すべきだということで、この法律を
改正するということまで、この協
議会できめたのであります。そしてその法律
改正がしつかり実現するのを見届けるまで、この
都区調整協
議会を存続しよう、こういうことまで言われて存続してお
つたのであります。ところがその翌年になりますと、都の方では都合の悪いことだということにしまして、もつとも
都議会の改選等がありましたから、全部
都議会が新しくな
つて、昨年にな
つてそんなものは御破算だ、そんなものはないということにな
つて、また相剋摩擦が起
つて来た、こういうことになりましたのが、この都と区の間柄でございます。ところがその間にすでに御案内の
通り、シヤウプ博士の線の中で、あの
地方制度調査
委員会議というものが設けられまして、その間一年有余にわた
つて審議せられた案というものが第一次勧告、第二次勧告として行われたことは御案内の
通りであります。あの第二次勧告の中に、都と区の問題の勧告をせられたのであります。私
どもはこの勧告も大いにいろいろ期待をいたしておりましたが、結局十二分に満足すべきものでなか
つたことは事実であります。しかしながらこれは勧告でありますからやむを得ぬということで
考えてお
つたのでありますが、そのあとの行き方といたしましては、当然今度はこの国会で
地方制度調査会というものができる。そうなればつまりそれに神戸勧告の線も、また都の方からも、区の方からも、また
全国的な全般的な
地方行政というものがかけられて、愼重審議の結論として当然
一つの結論が出た上に、これが立法化せられるであろうということを期待してお
つたのでありまして、そのためには十分の資料を整えなければならないということで、資料を整えつつあ
つたときに、たまたま今度の
改正案がぽかつと三月一日に朝日新聞に報道せられたということで、実に唖然としたような実情でございます。ところが
政府の方の提案の理由等を伺いましても、何か神戸
委員会か
地方行政調査
委員会の勧告の線に基いて立案したのだというふうに私
どもは聞かされるのですが、どうもそういう線に私
どもは受取れないのでありますが、もしそうであるとすれば、神戸勧告のどこに
一体任命制ということが入
つているのか。
任命制ということはあの中に入
つていない。先ほど杉村さんというその五人の
委員の一人が来て、
任命制は
憲法違反だから触れなか
つたということまで、ここで言われているくらいで、触れていないのです。
政府はその勧告に基いて提案したのだということを、
はつきり言われているのですが、どうもこれは私
ども承服できないのですが、これは
政府でやられたことですからいたし方ありませんが、そういうことであくまでも今度の
地方自治法の
改正案の立案の要領というものが、私
どもにはどうしてそんなにこの都と区の問題だけを急いでやるのかさつぱりわからない。要するに
地方制度調査会というものができて、その方でゆつくり審議して、専門家を集めて、そうして検討をせられた結論を得てからでも、おそくないのではないかというような感じが多分にいたすのでありますが、今度急速これを出して、無理に押し切ろうとする態勢にあることは、どうも不可解に
考えられるのと、一面にはこの案があくまでも自由党の何らの機関にもかか
つていない、政調会にも、総務会にも、代議士会にも何もかか
つていないということであ
つて、ほんとうに
政府の独善で立案したということは、立憲
政治のもとにおける
政府としては、どうしてそういうことをや
つたのかということも、まことに私
どもは理解に苦しむところであるのでありますが、幸いに今承るところによりますれば、
地方制度調査会というものが、すでに国会に提案せられておるようでありますし、ことに一面には道州制の問題、あるいは都道府県の性格もなお再検討しなければならぬということも言われておるように聞いておりますので、そういう面と、また五大市の特別市制の問題もございますので、こういうものと全部
一体にあわせて、そうしてこの
地方制度調査会において審議したならば、ほんとうの理想的な
日本の民生的な
地方制度のあり方というものの結論が出るのではないか、ここでこんな
改正を少しばかりや
つたところで、また全体的な都道府県の性格、
全国の市町村の性格から、全部のものをほんとうに
一つの
——つまり今度
地方制度調査会で審議して結論を出すということになりまして、またこれがどういうふうにかわ
つて行くかわからぬということになりますと、あまりにも法令の朝令暮改になるのではないかというようなことも
——これはよけいなことですが、私
どもはそういうふうに
考えておるのでございまして、むしろこれはできるだけその
地方制度調査会の方で、もつともつと正常の軌道を歩かして、そうして正常の軌道で十分に審議してから国会に提案して、そうしてこの
委員会でなおまた愼重に御審議を願うということが、私は当然あるべき順序ではなか
つたかと思うのであります。そういう面から
考えましても、私
どもはどうしても今度のこの行き方には
賛成かできないような気持がいたすのであります。特に私
どもが
反対しておることが、
区長の立場で
区長の
任命制に
反対すると、護身のために
反対しているように思われるのは、非常に遺憾でありますが、私
どもはそんな
考えは毛頭持
つておりません。あくまでも六百万
区民の
自治権というものは、どうしても擁護しなければならぬ。われわれの現職の時代に、
区民六百万の
方々が
自治権がなくな
つたと言われては、われわれはほんとうに
責任の面において申訳がないという感じを強く持
つておるのでございまして、そういう面からこの際大いにこの問題について
反対をいたしておるのであります。そうしてあたかもその
法案の内容が、違憲の内容を多分に持
つておりますことは、もう私が申し上げるまでもないことでありますが、ごく
簡單にはしよ
つて申し上げますと、一点といたしましては、今度は府県と市の性格を都が持つのでありますから、完全に戰時立法、戰時都制に逆行するということは間違いのない事実であります。そういうことは民主
憲法の精神をま
つたく蹂躪するものであると思うのであります。
それから特別区の性格が基礎的
公共団体ではたいようにしてしまおう、こういうことの
考え方、その面から見ますと、
一体あの提案理由の説明の中には、
大都市の内部的な部分団体としての性格に変更するというのでありますが、内部的の部分団体としての性格というものは、
一体どんな性格でありますか、私にはよくわからないのでありますが、かりにこういうものにしたときに、そういうものにしながら、結局私
どもに解釈せしめればこれは
行政区である、こういうふうに断定いたしたいのであります。
行政区とするのにこういうふうな苦しい言いまわし方をしているのだというふうに解釈できるのであります。しかるにその
改正案の中には、あくまでもこういうふうになりましても、二十三区はやはり特別区としておくのだ、そうして特別区という文字を、
地方公共団体としても、そのままにしておくのだということを言われておるのですが、しからば
一体地方自治法の第一條の特別区というその特別区というものと、それから今度の
改正案の二百八十一條の特別区というものとは、
一体どういうふうな性格的な
関係を持つのかということを、私
ども非常に理解に苦しむのであります。いずれにしましても、これが特別区であるということ、
地方公共団体であるということには相違がないと仮定するならば、これはあくまでもやはり九十三條である程度まで
はつきりしておる
住民の直接
選挙でなければその長を選べないという結論にな
つて来るのではないかと思うのでありますが、この点につきましても、私
どもはあくまでも
憲法の違反であるということを強く主張をいたしたいのであります。ただこれをあるいは財産区だとか、一部
事務組合のようなものだから、これは何も公選でなくてもいいのだ、こういうふうな
政府の方の御見解があるようでありますが、これはどうも私
どもには受取れないのであります。財産区、一部
事務組合といえ
ども、あるいは一部公選でないものが、
日本全国の中にはたまたまあるかもしれませんが、
任命制はおそらく
一つもないと思います。
任命制で一部
事務組合あるいは財産区の者をきめておるというのは、おそらく
全国に
一つもないと思います。こういう面から見ましても、財産区、一部
事務組合でもさようであるのに、特別区に対して
任命制を使おうなんということは、あまりにも
憲法の解釈を便利主義に解釈しておるということであ
つて、私
どもはこんなか
つてな解釈をすること自体が、
憲法の威信を害するものであり、同時に
憲法の神聖なる
国民の信頼を喪失するものであるということを、強く申し上げたいのであります。
それからなお六百万
区民から
自治権を剥奪するのだということにおいては、間違いのない事実でありまして、御承知のように
憲法十五條には、公務員というものを選定し、また罷免することは、
国民固有の権利だとしております。固有ということは非常に強い意味だと思います。
国民が固有の権利として公務員というものを選定したり罷免したりすることが、要するに
国民の固有の権利でありますから、この固有の権利をと
つてしま
つて、任命するということはこれは大きな
憲法違反であるということを申し上げても、過言ではないと思います。先ほ
どもお話がありましたように、これを
東京の二十三区だけ行うということになりますれば、第十四條の平等の原理にこれは当然違反することは間違いのない事実であります。
それからなおことさらに、現在の三年間まだ残
つておる任期のある
区長を、その三年間を任命
区長とみなしてやらせるというような便利主義の
考え方は、これはま
つたく参政権を冒涜し、同時に
憲法の精神を蹂躪するものだということは、ま
つたく論ずる必要のないほど、
はつきりしていることだと思います。
なお
一つ申し上げたいのは、特別区から基礎的
公共団体であるという性格を取上げ、都に基礎的な
公共団体であるという性格を與える、こういうことになりますから、これを今度は区の方は別としまして、都の方から見たときにも、都の方の性格がかわ
つて来るわけであります。都はいわゆる基礎的
公共団体ではなく、市区町村を包括する複合的
公共団体であるという性格が、今度は基本的
公共団体であるという性格を與えるのでありますから、ある程度までその都の方から見ますれば、
はつきりその都だけの区域の
一つの
違つた特別法ということに私は見られると思うのであります。特別法というその意味は、
憲法学者等に伺いましても、決して單行法でなければ特別法でないということは言えない、そこに
一つの
政治の現われとして、実際に実行し得るものならば、やはり
一つの條文の中のことであ
つても、それはやはり特別法とみなす、こういうことを私
ども聞かされておるのでありますが、そういう面から参りますれば、あくまでも
東京都の面から参りまして、性格が完全にかわるのでありますから、
東京都全体の
住民投票をいわゆる九十五條の規定によ
つてしなければ、結局これは成立しないという議論も、私は成り立
つて来るのではないかというふうな
考え方もいたすのであります。
あまり長くな
つて恐縮でありますから、結論を申し上げたいと思いますが、さような線で、あくまでも今度の
任命制に対しましては、私
どもは性格の変更であるがゆえに
反対をするのでございますが、先ほど伺
つておりますと、何か職員組合が全部この
任命制に大いに
賛成してくれるかのごとき
言葉がありましたが、非常に私
どもは遺憾千万でありまして、実際にはそん事実はありません。むしろ職員組合でそういうことを最高幹部のごく少数の者が言
つたために、職員組合で問題にな
つて、あとで声明書まで出して、われわれはこの
任命制に対しては厳正中立であるということを声明までしておるので、八万の署名をと
つたということでございますが、これは人事の任命権だけについてと
つたのでありまして、今度の
任命制についてと
つたものではないということを
はつきり申して、御了解願いたいと思います。
なお二十億の問題が先ほど出ておりましたが、こういうこともはなはだ都の方の一方的な詭弁でありまして、現在二十億をむだ使いしておるのは、都の方がむだ使いをしてお
つて、むしろ私
どもは、公選
区長に、任命
区長にまかせる
仕事を全部まかしてやるならば、都が八百何十億の予算を組んでおりますが、少くともその一割くらいの予算の節減は必ず可能性があるということを申し上げておるのでありまして、決して任命
区長でやることによ
つて都費が軽減できるとか、全体の
都民、
区民の
負担が軽くなるということにはならないと
考えますので、この点も御了解願いたいと思います。
また申し上げたいことがありますが、時間がございませんので、以上申し上げまして
反対の理由といたします。何とぞ種壷に御審議をいただきまして、
せつかく地方制度調査会ができるのでありますから、その方で十分慎重審議の後に、なお皆様方に御審議していただくことになりますれば、たいへんけつこうだと思います。