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立花委員 最初に結論を申しますと、私どもは原案はもちろん反対ですが、修正案に対しましても、原案の本質的な欠陷がこの修正案だけでは、絶対に除かれないという
建前から、反対をいたしたいと思います。
さいぜんから問題にな
つておりましたように、この
法案がこれとま
つたく一体不可分であるところの地方
公営企業労働関係法と分離して審議されたということです。この
法案は御承知のように、
地方公営企業の
性格、
公共事業の
性格を払拭いたしまして、ま
つたく
私企業的な営利的な
形態にすることを
規定している
法案でありますが、その
企業の
わく内における
労働者に対しましては、依然として
地方公務員としてのあらゆる規制を行い、地方
公営企業労働関係法におきましては、非常に峻烈と申しますか、ま
つたくフアツシヨ的な取締の規制をや
つておりますので、私どもはこの
法案をばらばらに審議することに対しましては、反対せざるを得ないわけなんですが、こういう
企業形態をとりますと、必然的に
労働者が賃金の問題に対しまして、非常に大きな圧迫を受け、賃金を闘いとりますために、生活を守りますために、どうしても大きな闘争をやらなければならないのですが、これに対してストライキを禁止し、あるいはいろいろな
団体交渉を制限いたしまして、不当に
労働者の圧迫を
強化しようというやり方は、これは許すことができないと思うのであります。しかも私どもが指摘したいと思いますことは、目下日本の全
労働者の集中攻撃にあ
つておりますところの労働三法の改悪、この中にこの地方
公営企業労働関係法を入れまして、そうして
労働者の関心が労働基準法の改悪、あるいは労調法の改悪に集中しておりますことを利用いたしまして、この地方
公営企業労働関係法の通過が、謀略的にやられようとしておる。政府のかかる謀略的な
法案審議に対しましては、この際強く糾彈せざるを得ないということを、最初に明白にしておきたいと思います。
それから
法案の内容であります。この
法案は一言にしていいますと、
公営企業の本質をなくしまして
私企業的な
経営にする。言いかえましたならば、料金で
事業経費を全部まかな
つて行くという
建前をとるための
法案なんです。こういうことを企てました政府の意図は三つあると思うのです。
まず第一に、一つは
一般会計を
公営企業の
会計から切り離しまして、最近とみに増加して参りました地方の
一般会計に対する中央のいろいろな
事務の押しつけ、それに伴います地方の
一般会計の増加、こういうものを
確保しようというところに、最初のねらいがあるだろうと思う。御承知のように最近地方の自治体の特にふえております
仕事は、警察を初めとする彈圧費の増大、さらに東京都におきましても七月から開始されようとしております
住民登録等の
事務の増大、あるいは現在地方の市町村がや
つております
警察予備隊員募集の
事務の増大、こういうものがやはり
一般会計でまかなわなければいけない。さらに地方におきます不必要なる道路の拡張、明らかに軍事的な意図を持
つております軍事道路の整備、こういう費用も
一般会計でまかなわなければいけない。あるいは最近の向米一辺倒の経済政策から生じます地方産業の崩壊、それから出て参ります失業者、あるいは生活困窮者に対する潜伏的な
意味を持ちます社会費の増大、あるいは地方のそういう
軍事予算をまかないます徴税の
強化あるいは農村における供出の
強化、こういうものに要します費用が、地方の
一般会計を圧迫しているわけです。この
一般会計の
軍事予算化に伴います増大、これをどうしても
確保いたしますために、
住民の生活に密接不可分であるところの
公営企業の
会計を
一般会計の
負担から切り離して、そうして中央あるいは地方自治体が至上命令とされて強制されております
軍事予算の
確保をはか
つて行く。ここに私は最初のねらいがあるだろうと思う。
次に指摘しておきたいと思いますのは、そういう非常に制限されました
公営企業の
わく内で、賃金を決定するという
建前をと
つておるわけです。そうなりますと、どういたしましても賃金の値上げは料金の値上げでまかなわなければいけないということが出て参ります。ここに
公営企業の
労働者と
一般利用者すなわち
住民との間の利害の対立が出て参る。おそらく政府並びに地方の権力者はこういうことを利用いたしまして、対立支配と申しますか、お互いに圧迫されております
労働者あるいは
一般市民との対立を利用いたしまして、
労働者の賃金を押えつけて参ろう、あるいは賃金
要求を彈圧して参ろう、賃金
要求を不可能ならしめて行こう、こういう意図が明白だと思います。また必然的に客観的にそういう
傾向になることは明白だと思う。しかもこの結果といたしまして、当然
公営企業の
労働者の賃金の切下げ、労働
強化が行われることは、火を見るよりも明白だと思います。
さらに第三に指摘しておきたいと思いますのは、一切の
公営企業の
事業費を料金でまかな
つて行こう、すなわち
住民の
負担によ
つてまかな
つて行こうということをねら
つておる点であります。すでに東京都におきましては、新しい
バスの路線の設定あるいはそのために要します新しい車体の購入、こういう費用までも
バスの料金の値上げによ
つてまかなおうとしておる。GHQが市ケ谷に移りまして、新しい
バスの路線あるいは
水道の引込み等が
要求されておるのは御承知の通りでありますが、こういう一切を
水道料金あるいは
バス料金でまかな
つて行こうということは、もう現在問題とな
つて起
つておりますので、こういう費用まで
一般市民の
負担でまかなうということは、ま
つたく許すことのできない政治方針であるといわざるを得ないと思う。
この点に関連いたしまして指摘しておきたいと思いますのは、行政協定第七條との関連でありまして、中央地方を問わずこういう公営
事業、
公共事業に対しましては、合衆国軍隊が優先的にそういう
事業並びにそこに従事いたしております
労働者の役務を利用する権利が與えられておりまして、市民のためにつくられました公益
事業あるいは市民にサービスいたします
労働者の役務を、市民よりも優先的に、なおかつ自治体よりも優先的に、外国軍隊がこれを利用し得るという
規定が明確にあるわけであります。おそらくこれによ
つて日本のすべての自治体の
公営企業は、市民のための
事業という
性格が第二段になりまして、外国軍隊に奉仕するという
建前が強く出て来るであろうことは否定できません。このことは明白に行政協定の第七條に
規定されておりますことで、私はこのことと関連なくして、この
公営企業法案を審議することはできないと思うのであります。現実の問題といたしまして、すでに東京都におきましても、東京都の周辺にあります厖大なる軍事基地、軍事
施設、軍需工場、軍需道路あるいは彼らのキヤンプ設営に対しまして莫大なるガス、
水道、電気の必要が当面出て来ておる。こういうものに対しまして、市民の必要よりも優先的にこういうものが先行する。しかもそれの費用は
独立採算制の
建前によりまして、料金からまかなわれなければならないということが当然出て参りますので、これは一言にしていいますと、ま
つたく地方の
公営企業は軍事植民地的な
性格を持
つておる、市民のための公益
企業というよりは、日本を侵略しております外国軍隊のための利用が、優先して参るということになりますので、私どもは強くこれには反対せざるを得ないのであります。
さらにこの問題が
地方公営企業に従事いたしております
労働者の問題と、強く結びついておるということを指摘しておきたい。これはさいぜんからの政府側の答弁によりましても明白になりましたように、ま
つたく切捨てごめんの奴隷的な労働取締法をつくろうといたしておる。これは市民のためにやられるのではなしに、外国軍隊の利用を
確保するためにやられようとしておるということを、特に指摘しておきたいと思います。一切の争議
行為を禁止し、あるいは正常なる業務の
運営を阻害する一切の
行為を制限し、さらに共謀し、そそのかし、あおるというようなま
つたく破防法と同様なあいまいな
規定をつくりまして、一切の
労働者としての行動、労働組合員としての行動を禁止しようというところに、彈圧
法案としての重大なる本質を持
つておるといわざるを得ないと思う。しかもこういう
行為を行いました者に対しましては、労働
関係法による一切の救済手段を拒否しておる。こういう
行為を行い、馘首されました場合に、
労働者はそれに対して何らの抗議を申し出ることができない。労働
関係法による一切の救済措置が拒否されておるということは、これはま
つたく
労働者を人間と見ない
建前である。これほどひどい、ま
つたく奴隷的な、徳川時代の切捨てごめんともいうべき
法案は、私どもどうしても納得できない。しかも最後に明らかになりましたことは、こういう一切の救済
行為を拒否しておきながら、なお
労働者が行政処分を裁判所に
要求いたしました場合に、それを総理大臣の
権限によ
つて禁止するという方法がとられようとし、またとられ得る
建前にある、行政訴訟特例法第十一條によりましてこの方法がとられ得るという
規定があること、しかもこれは最近の青森の例におきまして、あるいはか
つての神戸市の例におきまして、すでに政府がや
つておることなのです。こうなりますと、
労働者はわけのわからない首切りをやられまして、しかもそれに対する一切の救済手段を拒絶されて、最後には裁判所における救済
行為までも、総理大臣の行政的な
権限によ
つて拒否しようということが明白にな
つておるわけなのです。これに対しまして政府はただいままでの答弁では、そういうことを絶対にしない、行政訴訟特例法は
適用しないということを言
つておりますが、なお非常に不明確であり、しかもそれを積極的に
関係法文の上で、明白にする意思を明示されておりませんので、この点はおそらく私は政府はそういう方法を用いまして、
地方公営企業関係労働者の一切の生活の権利、労働の権利を剥奪する意図を持
つておる、しかもこの
法案はそういう
意味におきまして、ま
つたく奴隷的な、軍事植民地奴隷的な
性格を持
つておるということを指摘しておきたいと思います。そういう
意味で共産党はこの
法案に反対であり、そういう根本的な
性格を、何ら根本的に修正することのない修正案には、賛成いたしかねるということを、
はつきりいたしておきたいと思います。