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1952-06-10 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第66号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十日(火曜日)     午前十一時五十一分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 吉田吉太郎君 理事 床次 徳二君    理事 門司  亮君       生田 和平君    池見 茂隆君       大泉 寛三君    門脇勝太郎君       川本 末治君    佐藤 親弘君       田渕 光一君    前尾繁三郎君       龍野喜一郎君    鈴木 幹雄君       藤田 義光君    大矢 省三君       立花 敏男君    八百板 正君       大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部 警 視 長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部 警 視 長         (警備部長)  柏村 信雄君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 六月十日  委員飯塚定輔君及び山本久雄君辞任につき、そ  の補欠として小玉治行君及び川本末治君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月九日  医業に対する特別所得税撤廃請願河原伊三  郎君紹介)(第三四五九号)  同(若林義孝紹介)(第三四六〇号)  同(星島二郎紹介)(第三四六一号)  同(大村清一紹介)(第三六五四号)  地方自治法の一部を改正する法律案の一部修正  に関する請願小林運美君外二名紹介)(第三  四六二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第二  一九号)  集団示威運動等秩序保持に関する法律案(内  閣提出第二三六号)     ―――――――――――――
  2. 金光義邦

    金光委員長 これより会議を開きます。  まず警察法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては、昨日質疑を終了いたしましたので、本日はこれより討論採決を行いたいと思います。ただいま委員長手元前尾繁三郎君外五名提出修正案、及び鈴木幹雄君外三名提出修正案が、それぞれ提出されておりますので、順次その趣旨弁明を求めます。前尾繁三郎君。     ―――――――――――――
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員 それでは警察法の一部を改正する法律案に対する修正案提案理由説明をいたします。今回政府より提出されました警察法の一部を改正する法律案に対しまして、この際修正を加えることを適当と認めますので、修正案の内容並びに修正理由につき御説明申し上げます。  まず修正の第一点は、改正案では警察法第十二条第二項について、国家地方警察本部長官任免権者国家公安委員会から内閣総理大臣に改めて、さらに同条に一項を追加して、この場合「内閣総理大臣は、国家公安委員会意見を聽かなければならない。」としているのでありますが、これを修正して第二項は、これを現行法通り国家公安委員会任命権者にすることとし、第三項は、この場合「国家公安委員会は、内閣総理大臣意見を聽かなければならない。」と改めることとしたことであります。  修正の第二点は、改正案では警察法第五十二条の次に五十二条の二として「特別区の存する区域における自治体警察警察長は、内閣総理大臣が、これを任命し、一定の事由により罷免する。」「前項の場合においては、内閣総理大臣は、特別区公安委員会意見を聽かなければならない。」という一条を加えているのでありますが、これを修正して特別区の存する区域における自治体警察警察長任命しまたは罷免する場合においては、「特別区公安委員会は、内閣総理大臣意見を聽かなければならない。」と改めることにしたことであります。  これを要しまするに、国家地方警察本部長官並びに警視総監任免権内閣総理大臣の手に収めることとし、ただこの場合にそれぞれ国家公安委員会または特別区公安委員会意見を聞くこととしている改正案を、逆に任免権現行通りそれぞれの公安委員会にあるごととして、ただ内閣総理大臣意見を述べるという消極的権限を持つことに修正しようとするものであります。  国内治安の最終の責任政府にあることは申すまでもないところであるにかかわらず、現行警察法上の建前からは、警察行政責任が直接には公安委員会に帰属し、内閣責任は間接的で、しかも不明瞭でありまして、今日まで治安確保について政府責任ある措置に出ることを妨げて来たことは事実なのであります。今回政府がこの点を改めまして、政府治安確保に対する責任を明らかにしようとした趣旨は、治安の現状から見まして、まことに当然であり、これを了とするにやぶさかではないのであります。しかしながらこの実現の方法として、一方内閣総理大臣指示権を与えるとともに、前述の任免権をも与えようとしたことに対して、われわれは同意を表し得ないのであります。  その理由の第一は、警察行政民主的運営を保障するために設けられました公安委員会の重大な権限を取上げて、これを内閣総理大臣の手に移すということは、現行警察法の精神に合致しないのみならず、厳正公平なるべき警察権運営政党的干与のおそれを生じ、かつて選挙干渉のごとき事態を生ずるかもしれないというような心配もありますので、少くともそのような印象を与える結果となることは、厳に戒めなければならないと思うからであります。第二に、今回の改正案では、特に必要ありと認めますときは、内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて、都道府県または市町村の公安委員会に対して、公安維持上の必要な事項について指示することができるという新しい権限を認めているのでありまして、この指示権を適当に運用しますれば、大体において政府治安維持の上に責任ある措置を講じ得ると思うのであります。あえてその上に人事権まで掌握いたしまして、無用の誤解を招くがごときは賢明でないと思うからであります。  第三に、わが国将来の治安を、さらに国際的、社会的情勢考えます場合、現行警察制度には、首都警察の問題をも含めて、さらに一層根本的に検討すべき問題があるのでありまして、かかる根本に触れずして、單に任免権について改正を加えようとする態度には賛成し得ないのであります。  以上の理由をもちまして、修正案提案いたした次第であります。どうぞよろしく御審議をお願いいたします。
  4. 金光義邦

  5. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 改進党の修正案につきまして簡單に御説明を申し上げます。案文はお手元に配付をしてありますので、これによつてごらんを願いたいと思います。修正の要点は三つございます。一つは公安委員会構成改正いたしまして、これを強力なものとし、改正原案並びに自由党修正案に対しましては、内閣総理大臣人事に干与しようとする案でありまするがゆえに反対をいたしましたが、これにかわりまして公安委員会組織運営をより以上有効適切なる強力なものとし、しかもこれに治安責任警察の部面において担当する立場を明らかにする意味におきまして、国家公安委員会には国務大臣の参加を認めたいというのが第一点であります。  それから同じような理由によりまして、警察法によれば、その公安委員のうちには、警察職員でありし者並びに官公庁における職業的な公務員であつた者は、委員任命することを得ない規定があるのであります。この規定警察法制定の当初におきまして、一応のりくつありと考えるのでありますが、今日におきましては、これらの理由だけによりまして、委員の職責にあることを排除する理由はないと考えられますのみならず、これらの者を有効に起用することによりまして、公安委員会の機能をより一層活発ならしめ、充実せしめることができると考えるのでありましてこの制限を排除し、しかも人数におきましては、これらの職業的公務員による独裁を防ぐ意味におきまして、数の制限を加えたいというのがその第二点であります。  第三点は内閣総理大臣指示権の問題でありますが、国家非常事態に至らないような程度ではありますが、しかも国家的に見て重要な事案に対しましては、内閣総理大臣がその運営管理に関するところの必要なる限度においての指示を与えるということは、これは現行警察法建前から申しましても、無理ではないと考えますし、また治安責任をとる内閣といたしましても、その程度のことを改めるのは適切であると考えるのであります。けれども改正案案文によりますと、相当に広範囲にわたりまして、しかも行政管理にわたつてまで指示ができるかのごとき印象を与えるのであります。私どもはこの点に関しましては修正をいたしまして、非常事態考えられる事態を列記いたしまして、しかも「行政管理に関するところの事項を除く。」という明文を置きまして、この趣旨を明らかならしめて、この指示権を認めたい、こういうのが本案改正趣旨であります。  以上簡單でありますが、わが党の修正案説明を申し上げます。
  6. 金光義邦

    金光委員長 ただいま両修正案について説明を聽取いたしましたが、両修正案について質疑があればこれを許します。
  7. 門司亮

    門司委員 提案者に別段質疑をするわけではありませんが、当局にちよつと聞いておきたいと思いますことは、先ほどの自由党改正案によりますと、この原案と字句を逆にしただけでありまして、何にも大したことはないように考えますが、ただ問題になるのは、政府がこの法案を出しました改正理由の中に、「警察行政に関する内閣責任を明らかにし、」と書いてあります。従つて内閣責任を明らかにするということでありまする以上は、少くとも政府原案がこの内閣責任を明らかにする意味から言えば正しいのである。ただ警察法を制定いたしました当時の考え方、それから現行警察法によりますと、こういう考え方は非常に運営の上で将来問題を起すことである。同時に政治的には内閣が全部の警察権掌握するということは、私どもいけないと考えておつたのであります。ところがこれが今の与党修正案で逆になつて参りますと、そうして任免権公安委員会にある、いわゆるおのおのの公安委員会にある、そういたして参りますと、国家警察の本部長あるいは警視総監責任は、当然公安委員会現行通り負うことになると私どもは思う。そうなつて参りますと、政府提案理由とまつたく私は違つた形が現われて来ると思う。ただかろうじて最後の指示権のところで責任がないわけではないからということで、指示権だけに与党修正案ではつながりを持つているように私は解釈するのであります。従つて当局提案理由とまつたく違う修正案でよろしいというようにお考えになつているかどうか、ひとつ大臣に御意見をお伺いしておきたいと思います。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。われわれは原案が妥当なりとして立案したのであります。しかしながら国会においていろいろな角度から御検討になつて修正案をお出しになつたものと考えております。それは原案にして妥当であるか、あるいは修正案が妥当であるか、これは議員各位が御決定になることと私は存ずるのであります。
  9. 床次徳二

    床次委員 ただいま提案せられた前尾委員に伺いたいと思いますが、意見を聞く手続がどういうふうになつているか。これは総理大臣意見を聞く場合と、公安委員会意見を聞く場合と、非常に取扱い方法が違つて来ると思いますが、意見を聞きます手続につきまして、まず伺いたいと思います。
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員 公安委員会構成従つて委員長なり何なりが、公安委員会意見をまとめてその意見を聞く、こういうことになります。
  11. 床次徳二

    床次委員 それでは総理大臣意見反対の場合に対しましては、どういう取扱いをするのでありますか、一応意見を聞きさえすれば、反対でも公安委員会任命してさしつかえないというのが、本来の建前だと思いますが、さように解釈してよろしいのでありますか。
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員 もちろん法律的には内閣総理大臣意見が食い違いました場合には、必ず公安委員会の独自の見解に従つてやる。要するに政治的な影響力というものをねらつているわけであります。
  13. 床次徳二

    床次委員 ただいまのお言葉によりますと、先ほど門司委員からも質問がありましたごとく、政府責任を明らかにするつもりのものが、実は責任が明らかにならない。もしも予期したような政府責任を明らかにしようといたしますと、公安委員会政府意見によつて必要以上の拘束を受けることになるのではないか。むしろ現実から申しますと、総理意見公安委員会対立を来たす場合があり得ると思いますが、この調節をいかように考えておられるか。これは警察法運営上非常に大きな欠陥を残すのではないかと懸念されるのでありますが、かかる懸念がないかどうかということについて伺つておきたいと思います。
  14. 前尾繁三郎

    前尾委員 その問題につきましては、先般来しばしば繰返されておるところであります。もちろん食い違いのある場合もありまするが、いずれにしましても、お互いに話合うということによつて妥協点を常に見出して行かなければならぬと考えておりまするし、また御承知のように公安委員自身が、総理大臣とすでにつながりがあるもので、従つてまつたく意見対立して、どうにも身動きができぬというようなことは予想もされませんし、さらにまたそういう無理をお互いにしたのでは、非常におつしやる通り悪い影響力を与えるわけでありますが、政治運営は決して私はそういう問題でなしに、大きなつながり――お互い責任を談じ合うということによつて、うまく運営されるものと期待しておるわけであります。
  15. 床次徳二

    床次委員 提案趣旨のごとく、政府責任を明らかにするということになれば、相当内閣総理大臣政治上の圧力が、公安委員会に加わるのではないか。さようなことになると実は本来の公安委員会運営に非常な支障を来すのではないかということを懸念しております。実は懸念がないとおつしやるのでありますが、実際問題においてその懸念が大きいということを予想されるのであります。また六十一条の新しい条項によりまして、指示権が認められておりますが、公安委員会総理大臣意見が異なる場合におきましては、この指示権によつて相当強力な拘束を受けることになる。これは本来の目的かもしれませんが、常時においてただいまお述べになりましたような政治上の圧力から、公安委員会意見が曲げられて、総理意見に従わなければならないというようなことを予想されることは、いささか警察法の運用上の本質からはずれて来るのではないか、かようなことを考えるのであります。将来悪い影響を生ずることを懸念しておる。ただいま簡單にこれが円満に予期の効果が上るようにお話になりましたが、この点はいささか意見を異にしております。
  16. 前尾繁三郎

    前尾委員 政府提出しておりました原案では、政治的な圧力が相当加わるということを懸念いたしまして、この修正案を出しておるわけであります。この修正案に従いますならば、指示権だけでも、もちろん責任はあるわけでありますが、しかしそれにつながりをさらに加えることによりまして、責任を全うできるようにする。ことに公安委員会としても政府責任のとれぬようなことは、実際問題としてやり得ないということが、十分この修正によつて期待し得ると思います。
  17. 床次徳二

    床次委員 もう一つ重ねてお伺いしますが、しからば公安委員会意見総理大臣意見と異なりまして、総理大臣意見を聞かずに、意見に反して仕命した場合は、政府責任を持てるのですか、あるいは持てないとお考えになりますか。
  18. 前尾繁三郎

    前尾委員 私はそういうことはあり得ないと思うのです。まつたくそれが意思に反してやるということになりますならば、それは政治上の運営においてできない。お互いにこれは責任が持てない。総理大臣だけが責任が持てないのではない。公安委員会責任を持てないと思います。私は実際上そういうことはあり得ないと思います。
  19. 床次徳二

    床次委員 実際上あり得ないとおつしやるのでありますが、すでに過般事例があつたのであります。その場合につきまして、公安委員会意見政府意見が異なつたという過去の事例はあります。本法によりましてその点ははつきり、意見を聞くということになりまして、しかも意見を聞くことにつきましては、独自の権限を持つておるということになりますならば、当然その責任がある。従つて政府法律において、政府責任を明らかにするということを期待いたしながら、ただいまのような事態ができた場合に、はたして政府公安委員会に対して、どういう処置をするか、政治上の責任政府みずからがどういうふうにとるかということを明らかにしておかなければいけない。公安委員会が別個の意見を述べました場合に、政府責任がとれないものとしまして、しかるべき責任を負う義務が出て来るのではないか。今度の法律はそういうことを建前にして、目的にして規定したのではないかと言われております。それでも政府責任を明らかにしたと言えるかどうか。これはどうも本法趣旨と大部異なると思います。
  20. 前尾繁三郎

    前尾委員 過去においてそういうことがあつたとおつしやいますが、それは一時的の問題でありまして、その後における情勢をお考えになりましたならば、決して意見対立のままで来たわけではないのであります。もちろん政府の方におきましても、私はそれは最初の話合いのときには、そういう問題も起ると思います。しかしそれがあくまで対立したままで任命されるということは、実際上考えられないのであります。従つてこの修正によつてさらにその間の関係が密になるということが期待せられるわけであります。
  21. 立花敏男

    立花委員 国警長官任命の問題ですが、これは修正案も大してかわらないと思うのです。国警長官任命しなければいけないという具体的な理由、今までどういう不都合があつたのか。斎藤国警長官はあそこにいるのですが、彼を総理大臣任命しなければどういう不都合があるのか。その根拠が明らかでないと、任命問題あるいは意見を聞くという問題は、これは論ぜられないと思うのですが、斎藤国警長官をどういう不都合があつて総理大臣任命するようにしなければ統制がとれないのか。国家地方警察総理指示によつて動かない、斎藤国警長官をそのままにしておいたら、治安責任を持てないというのは、具体的にどういうことなんですか。これをひとつお教えいただきたいと思います。
  22. 前尾繁三郎

    前尾委員 何らのつながりがなかつたなら、これは責任を持てぬのはあたりまえであります。そこでどういうつながりを持たして、責任を持たせるかということでありますが、先般来いろいろお話のありますように、指示権によつて事務的なつながりを持たせる、あるいは人事権によつて人的なつながりを持たせるというような指示方法があるわけであります。従つて国警の場合でありますと、ほかの任命権を持つ政府が、国警長官任命権を持つというのは自然ですけれども自治体警察警察長に対してまで任命権を持つということは、まず私は必要ないというところで、修正案を出しておるわけであります。
  23. 立花敏男

    立花委員 あなたはさつき言つておられることと大分違うことを言われましたね。総理大臣公安委員つながりを持つておると言つたでしよう。ところが今つながりがないと言つておられる。明らかに公安委員会総理大臣の所轄のもとにあるのであつて、この公安委員会斎藤さんを任命するのであるから、これはつながりはつきりある。それをなぜ直接の任命にし、あるいは直接意見を聞いて任命するような形にしなければいけないのか、つながりはある。あなたの言うように、ないのではないのであつて、あるものをなぜこういう形にかえなければならぬのか、具体的にどういう理由があるのか。総理大臣長官任命する場合に、意見を述べなければ実際問題として、どういう不都合があるのか。何もこういうことをしないでもよいと思う。不都合がなければこういう意見は出て来ないと思いますが、その点は一体どうなんですか。
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員 もちろん公安委員会とのつながりはありますが、要するにその濃度、強さの問題であります。ただ公安委員に対する任命権を持つだけでは非常に稀薄である。従つてある程度責任を持つというには、それに相応した濃さを持つたつながりを持たなければならぬ。そういう意味であります。
  25. 立花敏男

    立花委員 私の聞いておるのはそんなことを聞いておるのではないのです。なぜそんな濃いつながりをつくらなければならぬ理由があるのか。それを具体的に言つてくれなければ問題にならない。つながりを持とうとしておることはわかりますが、具体的にどういう不都合があるのかということをはつきりしていただきたい。  それから次の問題ですが、あなたは政府が出して来た案はあまりに露骨で、えげつなくて、総選挙にも影響する。選挙対策をお考えになつて、そういうふうに……。     〔前尾委員「そんなことは言わない。」と呼ぶ〕
  26. 立花敏男

    立花委員 そういうふうに言つたじやありませんか。ちやんと私はノートをしておる。あなたはそういうことを言われた。選挙対策と思われるおそれがあるから、任命権を握るのではなしに、そういう意見を聞くことにするのだと言われるが、ところが選挙対策さえなければ、やはりそういう濃度を、今のつながりを強力に濃化して行こうということにはかわりがないのかどうか。しかも選挙対策のためにぼやかし、そうして片一方指示権によつて実質的効果を納めて行こう、これは指示権を強化して行こうということをあなたは言われたのでありますが、えげつない政府案はあまりに政治的ではない、国民の思惑もあるから、この点は何とか意見を聞くぐらいにごまかしておいて、指示権を強化して、実質的な警察掌握フアツシヨ的掌握をやろうと考えておられるのか。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員 立花君のおつしやることは私はあまりよくわからぬ。というのは、あなたは非常に政府責任を追究されておる。責任を追究されるについては、それに応じた濃度を持つたつながりがなければだめである。われわれは今までのつながりをもつてしては十分な責任、皆様の期待される責任は持てないということを客観的に認めておる。さらにまた選挙干渉という問題について言つておられるのでありますが、私は選挙干渉の痛くもない腹を探られるということを申し上げたので、それ以上のことは絶対に申し上げておりませんから、御了承願います。
  28. 立花敏男

    立花委員 まつたく逆のことを言つておられる。私ども政府弾圧が手ぬるいから、もつと警察法を強化し、警察フアツシヨ化して、中央集権化して、そうしてどんどん弾圧をやつて、フアツシヨ的の治安を確保しよう、そういうことで政府責任を追究しておるのではない。これはまつたく逆のことなので、こういうばかげた弾圧をやるな、警察フアツシヨ化をやめろということで、私は政府責任を追究しておる。こういう事態が起つたのは警察が弱いから、武器が少いから、警察のピストルの撃ち方がだめだからだといつて、私ども政府責任を追究しておるのではありませんので、こういうことを起す責任は、政府の売国的な政策にある、アメリカ一辺倒政策にある、それが人民の生活を破壊し、日本の経済を破壊し、日本の独立をそこなつておる、そういう責任を追究しておる。それこそが治安の乱れる根本であるということを追究しておるので、あなたの言うように、警察総理大臣つながりを濃化して、そうして弾圧をやるというような政府責任を私は追究しておるはずがない、その点重大な誤謬だと思うのですが、どうですか。
  29. 前尾繁三郎

    前尾委員 立花君の方は立場上そういうふうにおつしやつておられるが、それは世間一般考え方ではありません。国民全体の輿論というものを、われわれは考えてやつておるのでありまして、今の御質問はまつたく当らぬと思います。
  30. 立花敏男

    立花委員 国民の要求一般をあなたは言われたのでなしに、ぼくに向つて、あなた方が政府責任を追求すると言つたじやないか、ぼくたち共産党はそういうことで責任を追究しておる、こういう治安の乱れるもとは政府政策自体が誤りである、警察の強化によつて……(「おとなしくしていればいいのにあばれるからだ」と呼ぶ者あり)……ということを言つておるのだ、それはあなたの誤解だと思う。
  31. 前尾繁三郎

    前尾委員 あなた方の責任の追究の仕方であるとすれば、それはあなた方の行き方でおやり願つたらいい。私は国民全般として政府に対して責任を相当追究しておると思う。それにこたえるには、それ相当のつながりを持たなければ責任が持てないということを、客観的に、国民全般として、私どもは認めておりますから、この修正案を出しておる。
  32. 立花敏男

    立花委員 共産党の責任の追究の仕方は違うということは認められたのですが、国民一般がそういう形で政府責任を追究しておると言われますが、きのうでしたか、東京都の都民の代表である公安委員長が来られまして、この警察法改正は、まつたくフアツシヨ的な、警察の本旨にもとるところの改正である、こういうことを言つておる、従つて反対であるということを明白に言つておる。東京都の――東京都といえば、日本の人口の十分の一を占めておる、しかも最も勇敢な最も進歩的な人たちがおるところなんです。そういうところの公安委員長が、これはまつたく誤つた警察法改正である、改悪であるということをはつきり言つておる、一体公安委員長初め国民全体がそんなものを認めておるという証拠があるというなら、それこそ暴言もはなはだしい、あなたたちは何のために参考人を呼んで、忙しい公安委員長を呼んで、意見を聞いておるのだ、それこそごまかしにすぎない。ここに来て、公然と公安委員長は、この警察法はつきり間違いであるということを言つておるのだ、どうなんです。
  33. 前尾繁三郎

    前尾委員 それは立花君の聞き違いで、あなたの言われたような、そんな強烈な話ではないのです。それだからこそわれわれもある程度のこういうような修正をしておるのです。従つて私はこの修正については、そんな反対があるとは考えておりません。
  34. 立花敏男

    立花委員 意見を聞くということですが、これはあなたの意見によりますと、従わなくてもいいのだと言われましたが、それをひとつ確認しておいてもらいたいと思う。
  35. 前尾繁三郎

    前尾委員 法律上は従わなくてもよかろう。法文をお読みになれば、わかります。
  36. 立花敏男

    立花委員 いや、別にほかの人の意見を聞く必要はないので、これは従わなくてもいいわけですね。
  37. 前尾繁三郎

    前尾委員 そういうわけです。
  38. 立花敏男

    立花委員 従わなくてもいいということを、ひとつ確認しておいていただきたいと思うのですが、木村法務総裁どうなんですか。こういう法案が出ました場合に、公安委員会総理大臣意見を單に参考で、聞き流すだけで、全然従わなくてもいいというふうにお考えになつておるかどうか。それでいいというふうにお考えになつておるかどうか、意見をひとつお聞かせ願いたい。
  39. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは法案の趣旨いかんによるのであります。先ほど来私が聞いておりますると、この修正案理由として、これは政治的にうまく運営して行けば、一向さしつかえないと申されたのでありますから、私も同感でありまして、これによつて調整はきわめてうまく行き、連絡もまた相当可能なことであろうとわれわれは考えております。
  40. 立花敏男

    立花委員 では大臣も、こういう法律ができましても、公安委員会総理大臣の言うことを聞く必要がないというふうに確言されたこととしておきます。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そうではないという自由党の方のやじが出ておるのですが、大臣、どうなんです。確認しておいてください。
  41. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま修正案を御提出になりました前尾委員の仰せになつ通りと、われわれは考えております。
  42. 立花敏男

    立花委員 それでは自由党のやじにもかかわらず、こういう法律ができても、公安委員会総理大臣の言うことは聞く必要はない、いかなる問題が起つても、それは公安委員会責任にはならない、拒否した場合にも、公安委員長の責任にはならないということを、ひとつ自由党提案者、並びに政府責任者である法務総裁が確認されたということを、はつきりと確認しておきます。そうであれば何でそんないらぬものをつくるのだ。何でそんないらぬ規定をつくるのだ。これをひとつ承りたい、これは木村法務総裁と両方から承りたい。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 政府当局としては、原案が妥当なりと考えて、原案提出しておるのであります。修正案は別であります。修正案はこれは国会が御随意に修正されるべきものと、われわれは考えております。
  44. 立花敏男

    立花委員 提案者はどうです。
  45. 前尾繁三郎

    前尾委員 答弁なし。
  46. 立花敏男

    立花委員 それでは、全然あつても何の役にも立たないものを置く必要はないと思うので、これは提案者に、私削つていただきたいと思う。それから單なるこういう問題であれば、現在現行法の中で、この公安委員会規定の中に、内閣総理大臣の所轄のもとに公安委員会があるということになつておるので、これで十分なんで、あつても、何も聞かなくてもいいような規定を、事新らしく、修正案だ、改正案だといつてやる必要はないと思う。(「それは意見だ」と呼ぶ者あり)これはどうですか。この点はお削りになる御意思があるかないか。     〔「答弁なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 金光義邦

    金光委員長 八百板君。
  48. 八百板正

    ○八百板委員 関連して……。この問題は修正案根本になる問題でありまして、非常に重要でございますから、この際念にも念を押して、明らかにしていただきたいと思います。  ややもすると、自由党さんと共産党さんは、言葉のやりとりを通じて、反射作用的にいろいろな、ちよつと濃度の濃い表現をされるきらいがありまするので、事、法律に関する問題でありまするから、明確にする必要が一段と強かろうと思うのであります。先ほど来木村法務総裁の御意見や、提案者の御意見を伺つておりますると、うまくやるのだからと、こうおつしやつておられます。ところが法律として考えまする場合には、うまくやられては困るのでありまして、私どもの一番心配する点は、うまくやられては困るという点なんであります。実際上、この運用を通じてうまくやられまするというと、事実上この公安委員会の独立の機能というものがあやふやになつてしまうわけであります。でありまするから、このいわゆる「聽かなければならない」ということは、ほんとうに軽い意味で、意見を聞かなければならないのであつて、その意見に従う必要がないものであるというような点を、はつきりしていただけなければならないと思うのであります。この点私どもは言葉の上から考えまするならば、当然に、「聽かなければならない。」ということは――聽くということは、一体日本語の文字が不明瞭でございまするから、ただ物理的音声として聞くというような意味でよろしいのか。それともその内容を聞かなければならないというふうに考えるのか。形式上意見を聞くという取扱い上のものとして考えておるのか。それとも意見の内容そのものを聽取しなければならないという意味を含んでおるのであるかという点について、さらに明らかにしていただきたいと思う。
  49. 前尾繁三郎

    前尾委員 もちろん物理的に聞くということを法文は言つております。また法律上はそれに従わなくしてはならぬという規定はありません。しかしとにかくうまくやらなければならぬという意味ではないのでありまして、私はその表現はとつておりません。うまくやれるような組織にこしらえておく。お互いにうまく行くように、その運用の妙を得られるような組織をこしらえておく。従つて意見を聞かなければならぬということによつてお互いの意思の疎通があり、その範囲については妙味があると思います。必ずしもこれだけの意見だけを聞くとかいうのじやなしに、お互いに話合う。その範囲は限定していないところに運用の妙が得られるのではないかと思います。
  50. 八百板正

    ○八百板委員 どうも伺つていますと、ますます混乱して来るのでありまして、相談して妥協して適当にやる、それからある程度政府責任を明らかにするというふうな、実に妙な御答弁をなさるのでありますが、やはり法律でございますから、もう少し明確にしていただかなければならないのでありまして、この問題が公安委員会の機能と、総理大臣との関係について規定するたつた一つの言葉になつてしまうのでございますから、十二条が言葉の上ではこういうふうに改められましたけれども、今後運用を通じて、実質的にはさつき出された政府改正案と同じような結果になるという危険が、非常に多かろうと思うのであります。この点自由党の出されました修正案は、実に巧妙なる、名を捨てて実をとると申しますか、実質的に警察権の指導権をとつて行こう、総理大臣の指揮下に収めようという意図を織り込まれました、実に巧妙なる案であると、私ども考えざるを得ないのでありまして、この聞くという内容はこういうものであるということを、何か提案者の方で、こういうふうな取扱いをするのだ――たとえば文書でもつて出すとか、同意の必要がないというような点を、具体的に、その運用の上に間違いが起らないような用意があつてしかるべきものだと思いますが、そういう用意はないですか。
  51. 前尾繁三郎

    前尾委員 これこれを聞けということでありましたら、これはまつたく行き詰まつてしまうと思うのであります。お互い責任を持ち合わなければならぬのでありますから、そこでいろいろな話合いがあると思う。ただその際において、内閣総理大臣任命権を持つか、公安委員会任命権を持つかということによつて意見を聞かれるものと聞くものということによつて、濃厚の差が非常に強い。われわれは民主的に考えますので、内閣総理大臣でなしに、公安委員会を主体として考えておる。おのずから法文にもそれが現われておるわけであります。私はこれで十分だと考えております。
  52. 大矢省三

    ○大矢委員 これは私も十分ただしておきたいと思います。この法文の中に、同意を得てとか、あるいは協議をしてとか、意見を聞いてとかいう字句を使つてあるが、整わなかつた場合には必ずこうするということをつげ加えてはどうか。今説明を聞いておりますと、最終決定はやはり依然として公安委員にあり、意見を聞けばいいのだということでありまして、それは立花君がだめを押したのではつきりした。單なる諮問である、最終決定は委員会にあるということはわかりましたが、そういうことになりますと、内閣総理大臣公安委員会意見を聞いて指示をすることができるという場合に、逆に考えて、今度は最終決定は政府にあつて公安委員会意見を聞くだけであるということで、今の説明をそのまま持つて来る。そうなりますと、公安委員を国会で選び、あるいは特別区の公安委員会が都会で選ばれたものが、そういうふうに内閣総理大臣が一方的に聞くだけである、諮問するだけである、最終決定はこつちにあるんだといつて、かつてに出されたのではたいへんなことになる。もしこれをかえるなら、あとの指示権もそういうふうにかえなければ、不徹底だと思う。指示をやたらに出して、公安委員会というものはあつてもなくてもいいのだというやり方になつてはたいへんだから、任命公安委員会にあるということがはつきりした以上は、今度は指示権の方も、ただ聞くだけだというのではたいへんなことになる。この点は法務総裁はどう思つておられるか。あるいは修正案提出者の前尾さんはどういうふうに考えておるか。
  53. 前尾繁三郎

    前尾委員 指示権内閣総理大臣にあります。公安委員会意見を聞くのは――ちようどさつきと逆でありますが、事務的なものであります。公安保持上必要で、しかも特に必要であると認められたときに限られている。従つてその発動権については内閣総理大臣が持つのは、先般来の各委員意見から徴しましても、指示権があればいいじやないかというところまで言われておるのであります。指示権については総理大臣にあるのが私は当然だと思います。
  54. 大矢省三

    ○大矢委員 今の答弁を聞きますると、特に必要ということで限定しておるからいいじやないかというのですが、これがあぶないから改進党から修正が出て来た。従つて特に必要というのを一方的の解釈せずに、これこれの内容のものだというようにするということでありますならば、今の答弁から行きますると、おそらく改進党の修正案に御賛成なさると思つておりますが、その点はどうでしようか。
  55. 前尾繁三郎

    前尾委員 私が特に必要があると認めるということの内容は、すでにこの前の質疑応答によつても明らかになつておりまして、さらにまた警察法目的ということをお考えになりましても、決して何でもかんでも聞くということでもなし、またさまつな問題についてやるわけでもない。従つて特に必要があるということの内容については、具体的に羅列するということは非常に困難である。しかし法律趣旨というのは、質疑応答でも明らかなように、ごく重大なことに限られているわけでありますから、私はこれでかえる必要はないと思います。
  56. 大矢省三

    ○大矢委員 特に必要だという説明が、しばしば質疑応答の中に現われて、それで安心ならぬから改進党は修正案を出しておる。それは認めたときというのでありますから、総理大臣が方的に認めれば――それは常識上そんなことはないと言いますが、これは法律を適用する場合に、その当時の内閣によつてたえず手心が加えられるように、この認めるというのは、かりに極端にいいますと、社会主義政党の社会党が政権をとつたときの総理大臣が認める場合と、自由党の吉田さんの認める場合と、およそ違うと思う。だからそういう場合の認定は伸縮があるから、ここで明らかにしておきたい。法律は全般に適用するのであるから、そのときどきによつていろいろされたのでは困る。あるいは質疑応答によつて明らかだというが、法律は速記録によつて運営されるのとは違う。そのときの答弁されたことと実際法律になつて現われたときの運営とは、非常に違うのでありますから、この際明らかにすることは常識上当然なんだ。こんなあいまいな聽いてというようなことでは、聞いてまとまらなかつた場合にはどうするか。そこで今言つたように、特に必要なときに認める条項を明らかにしておく方が――法律の精神として、あるいは今後施行する上に、むしろ進んでなしておくべきだと考えますので、そのことを認めながら、それを条項に入れるということは、どうも賛成しがたいのでありますが、その点あなたはどうお考えでありますか。
  57. 前尾繁三郎

    前尾委員 網羅的にずつと書くという行き方もあると思いますが、網羅することは法文上非常に困難であります。総理大臣はもちろん議会に対して責任を持つものであります。特に必要があるという認定については、常に国会の批判を受けておりますから、今まで明らかにされている趣旨に従う以上のことは、やり得ないと考えますので、特にこれに網羅的に書き得ない法文を加えることをしなかつた次第であります。
  58. 大泉寛三

    ○大泉委員 私は、改進党の修正案に対して一、二点お伺いしておきたいと思います。鈴木さんの警察行政に対する学識は尊敬しております。私ども立場から修正案には賛成いたしかねますが、国家公安委員委員一人を増加して、しかもその一人には国務大臣をあてるということにいたしますと――委員会は独自の立場において一つの責任を負つておる。しかも閣僚の一人としての国務大臣をこれにあてることになりますと、その委員の中の比重あるいは国政に対する責任立場から、自然委員会を軽視してしまうような形に陥りやしないか。この点において何かそこにはつきりした一つの限界、あるいは閣僚としての、国務大臣としての立場はつきりさせるところがなくなつてしまいやせぬか。それと同時に、都の場合も、副知事という知事を代理するような者が、委員の一人に加わるということは、国政に携わつておる国務大臣が参加する国家公安委員と同じような立場になりやしないか。この立場においてもやはり委員会としての独自性の線をどこに引くかということになります。この点についてあまり明確になつておりませんのでお伺いしたいと思います。
  59. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 ただいまの大泉さんの御質問にお答えいたしたいと思います。私ども考えておりますのは、人事権に直接間接内閣総理大臣が関与するということを、国警長官並びに警視総監任免権をめぐりまして排除したいというのが一点であります。しかしながら、考えなければならぬ点は、治安の最終の責任警察の面におきましては同じく内閣にあるということ、この点をどうして救済するかという問題でありますが、これは警察法の立案の当初からの問題であります。言をなすものは、今日の警察責任内閣に直接ないという理由をもちまして、警察責任を明示している公安委員会に、全部のものをひつかぶせようという考えのものもありますが、国家公安委員会内閣の所掌であり、しかも国家公安委員の任免は、内閣総理大臣がするという建前におきまして、責任はあくまでも連なつておるのであります。直接にこれを持たせる方法といたしましては、国家公安委員会内閣の閣員を一人加えることが、一番妥当な方法であろうと思うのであります。従つてそれがために公安委員会の性格が変貌しやしないかという御疑問でありますが、これは五名の公安委員に一名を追加いたしまして、六名の公安委員構成になりますので、六名の国家公安委員が一名の国務大臣の意思によつて引ずられるということになりますならば、国家公安委員の意義が失われるのであります。事実におきまして、国家公安委員の権威と名誉のために、そういうことは起り得ないと思うのでありますが、直接、間接に内閣の施策なりあるいは意思なりを反映せしむる機会を与えるという意味におきまして、現段階において一名の参加を認めるのは、妥当なる改正であろうと思うのであります。特別区の公安委員会につきましても同じような理由でありまして、行政管理運営管理をつかさどるものの意思を反映せしむる機会を与えることが妥当である。この場合におきましても、特別区の公安委員は今日三名でありますが、一名を追加して四名とします。これが都側の意思によつて引ずられるというようなことは、特別区の公安委員の名誉と権威のために、あり得べからざるものでありますし、また事実それが正しいならば、引ずられるという意味でなしに、当然反映して行くということが正しいと考えられるのでありますから、この改正案提案いたしたのであります。
  60. 大泉寛三

    ○大泉委員 よくわかりました。そこで大臣にちよつとお伺いいたします。こういう改進党の思いやりの修正案が出されたということに、大臣としても感謝しているではないかと思うのです。自由党修正案を一応検討して、あくまでもやはり公安委員立場を尊重して、任免権は存続するということになりますならば、内閣において責任を負われる確信を持つておられますかどうか。先ほど門司委員質疑に対して答弁はされておりますけれども、この点議会の決定に対して、政府が全部責任を負うという確信がありますかどうか。
  61. 木村篤太郎

    木村国務大臣 政府といたしましては、先ほど来申し上げましたように、原案が最も妥当なりと考え提案したわけであります。しかし委員会におきまして、各種の面から検討されまして、各修正案が出たのでありますから、その修正案に基いて委員会においてどのように御決定になるかまだわかりませんが、いやしくもさように修正がきまりました以上は、われわれはその修正に基いて全力を尽してそれに当るよりほかないと考えております。
  62. 門司亮

    門司委員 大臣に一言だけお聞きしておけばよいのでありますが、改進党から出ております案を見てみますと、公安委員の中に大臣が加わつて責任の所在を明確にするというのです。そうなつて参りますと、先ほど来いろいろ大臣にお聞きいたしましたときに――今木村総裁が行政警察と検察陣営の両方をお持ちになつているということは矛盾があると思う。正しい憲法の意味から言えば所管大臣がかわるべきであると思う。この公安委員の中に大臣が一人入つて来ると、検察を所管する大臣がほかにもう一人必要になつて来ると思う。木村法務総裁が現在のままでいるといたしましても、内閣の中で二人の大臣が相異なる立場に立つということが、必ず出て来はしないかと思う。こうなつて参りますと、内閣運営に支障を来すものが、必ず出て来るとわれわれには考えられるのでありますが、大臣はこういう点について、矛盾がないとお考えになつているかどうか。
  63. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点については、われわれは大いに考慮をいたしたいと考えております。しかし適当、公正に事を処理する大臣であれば、いかように兼摂いたしましても私は支障ない、こう考えております。
  64. 門司亮

    門司委員 公正にやればいかようなものでも支障はないということは、一応そういうことも言えるかと思いますが、私がさらに聞いておきたいと思いますことは、行政組織上の問題であります。組織上に大臣の入つた委員会がこういう形で構成される、しかもその大臣はやはり閣議にも出なければならない、同時に、場合によつて内閣を代表するといいまするか、政府を代表することに間違いはないのである。公安委員会意見というものが、総理大臣意見を聞かなくても法務の長官任命ができるようになつており、一方においては、総理大臣責任の所在を明確にするということのために、実際の運営管理をするために、所管大臣というものがちやんと置かれている。こうなつて参りますと、先ほども申し上げましたように、行政組織上の問題としても少し疑問がある。私どもには考え切れない問題ができて来るのであります。大臣の今の御答弁だけでは私ども十分の了解をすることはできないのでありますが、隣においでになる鈴木さんはどういうふうにお考えになつているか、その点を提案者からひとつ説明を伺いたい。
  65. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 ただいまの門司さんの御質問でありますが、国務大臣国家公安委員会委員という別の資格をもつて国家公安委員会に臨んでおり、片方においては警察担当の主務大臣という国務大臣として存在するということでありますが、同一の人格者が別の人格を持つということは、他の法制においてもあり得ることでありますし、実際の面におきまして私は支障がないものと考えるのであります。
  66. 立花敏男

    立花委員 改進党の方の御意見を承りたいのですが、どういう国務大臣がこの公安委員になるのですか。
  67. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 総理大臣の指定する国務大臣がなればいいと考えるのでありますが、現在におきましては、警察担当の国務大臣があられるようでありますから、おそらく警察担当の国務大臣が指定されることが妥当であろうと考えます。
  68. 立花敏男

    立花委員 それは一体今はだれなのですか。
  69. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 私は現在木村法務総裁が警察担当の国務大臣に指定をされているのじやないかと思うのでありますが、内閣のことは総理大臣に聞いていただく方が一番早いと思います。
  70. 立花敏男

    立花委員 それは提案者はつきりしていなければ困るですよ、木村さんが公安委員なつたらたいへんだ、そんな提案ですか。これは、木村法務総裁を公安委員にするという提案なのですね。
  71. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 木村法務総裁を任命するという建前ではありません。内閣総理大臣国務大臣のうちからこれを任命するということでありまして、それには、現在の制度におきまして警察担当の国務大臣があるようでありますから、おそらくそれが任命されるのではないかということを私は言つたのであります。
  72. 立花敏男

    立花委員 あなたも長い間議員をされておるし、警察関係の仕事をされておつたのであるから、「あるようでありますから」ではいけない。現在おるのでしよう。それが結局公安委員になるのだから、これはやはり重大問題じやないですか。それをまず一つ伺つておきたいのです。それから国務大臣公務員だし、現行法の公安委員規定によつても、こういう規定があるのです。委員警察職員または官公庁における職業的公務員の前歴のない者の中から選ぶということになつておりまして、現在はやはり、公安委員になりますには、公務員の前歴でもあつてはいけないということになつているわけですね。ところが現任の公務員の一番偉い人、しかも警察掌握している警察大臣、これを公安委員の中に入れるということが、はたして警察制度の民主化の方向に沿つているとお考えになつているのかどうか。私は、一体改進党の考え方はわからないのですが、最近国民の思惑があつて、再軍備をやめるということを言つておりますが、警察だけはファツシヨ化するお考えであるのか。こういう形では警察フアツシヨ化と何らかわりはないのですが、その点一体どうなんです。
  73. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 修正案に関する部分だけお答えをいたします。私ども修正案では、先ほどあげられましたところの職業的公務員の前歴の排除の規定をさらに排除いたしまして、これを認めたいという立場に立つております。また、警察担当の国務大臣任命されるであろうということを、これは想像して申し上げたのでありますが、この点におきましては矛盾はないものと考えております。
  74. 立花敏男

    立花委員 根本的な考え方を聞いているのですが、現職の大臣、現職の公務員、しかも警察関係の主務大臣公安委員会に入れるということが、現行警察法の精神である警察民主化の線に沿つておるとお考えになつておるのかどうか。この問題なんです。どうなんですか。
  75. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 先ほど来御答弁申し上げている通りでありまして、繰返す必要はないと思いますが、私どもは、民主化の線に沿つておると考え提案をいたしております。
  76. 立花敏男

    立花委員 どういう点で民主化の線に沿つておるかお聞きしたい。(「答弁の必要はない、見解の相違だ、あげ足をとるな」と呼ぶ者あり)これはあげ足ではありません、根本的な問題です。総理大臣任命する警察大臣公安委員会に入れることは、いかなる点から見てもこれは民主化ではない。警察を所管する大臣公安委員会に入れることが民主化とは、日本国民のだれが見ても、どこを押しても出て来ない。だからその民主化であるという点を御説明願わないと、ただ意見の相違だと言われただけでは納得できませんので、私ども委員会で議論の詳細を尽したとは言えないと思う。意見の相違があるからこそ、委員会を開いて議論をやつておるのであつて意見の相違であるから答弁をしないというのでは、審議を拒否することになるが、それでいいのですか。それこそ民主化ではなしにフアツシズムの態度なので、それでは議会の否定です。それこそ民主党のフアツシヨ的な傾向であると思うのです。  それからもう一つ聞いておきますが、この改進党の修正案は、自由党修正案あるいは政府原案を上まわるフアツシヨ的なものであると思う。政府原案は非常に率直におくめんもなく言いたいことを言つておりまして、総理大臣がすぐひよつと斎藤さんを握つてしまうということを規定している。その点は非常に率直で愛すべき点があると思いますが、改進党の修正案になつて参りますと、非常に巧妙に民主的な仮面をかぶりながら、警察機構全体を、しかも民主警察の中枢である公安委員会そのものの性格を根本的にかえよう、前歴者があつてもいけないという公安委員会の中に、現職の警察大臣、木村法務総裁を国家公安委員会に入れようというのですから、これほど悪辣な、これほど徹底した警察のファツシヨ化はないと思う。その点はどう考えているか、これをお伺いしたい。
  77. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 大分立花さんと私とは考えが違うようであります。前歴者を入れることが、民主化に反すると言われるようでありますが、私どもは今日においては、公職の前歴者であるがゆえに排斥する必要はないということを考えておるのでありまして、これが同じ健全なる国民の一員として委員会に出て行くことが、持つておりました過去の経験あるいはその抱負を生かすゆえんであろうと考えるのであります。われわれは決して、立花さんのおつしやられるようなフアツシヨ化方法、反民主化の方法考えているのではないということを明らかにいたしたいと思います。
  78. 立花敏男

    立花委員 その次に移りまして、六十一条ノ二の規定ですが、必要がある場合の指示を特にここに規定いたしまして、大規模な災害が発生して、そのために当該地方の民心に不安のある場合、地方の静謐を害する場合、国家重大な事案等に著しく影響がある場合――こういうものは現行警察法でいいんじやないかと思うのですが、なぜ特にこんなものを入れる必要があるのか、現行非常事態宣言で十分じやないかと思うのですが、その点なぜ特にこういうものをお入れになるのかお伺いしたい。
  79. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 六十一条の二の原案が相当に拡大をされて解釈をされるおそれがあるという趣旨のもとにおきまして、国家非常事態を宣言するまでに至らないといたしましても、相当重大な事案が起つた場合においての指示権を認めようという趣旨から、この制限定義的なものを考えたわけであります。
  80. 立花敏男

    立花委員 この点はさいぜんは社会党の大矢氏も指摘しておりましたように、国家重大な事態あるいは地方の静謐を害するというのは、まつたく政府の一方的な認定にとどまるものであつて、あるいはこれが吉田さんと社会党の淺沼さんとかわつたときには、これはまつたく認識が違つて来るということは、大矢さんの言われた通りなんですが、そういうものを現在の警察法規定以外に特に認めなければならない理由は一体どこにあるのか。現在の地方の静謐を害し、国家の重大な事件が起つておりますのは、政府自身の責任なんで、こういうものをなぜ特にこういうふうに規定する必要があるのかということをひとつ承りたい。これは私は現行法で十分だと思うのですが、特にこの規定を置く理由を承りたい。
  81. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 ただいまの御質問の趣旨は、政府からたびたびこの必要を強調され、理由説明されたところによりまして明らかであろうと存じます。
  82. 立花敏男

    立花委員 そういたしますと、政府考え方と改進党の治安に関する考え方は、まつたく同じであるというふうに了解していいわけですね。
  83. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 大十一条の二に関する限りは同様であると考えます。
  84. 立花敏男

    立花委員 最後に一つ聞いておきますが、最近改進党では再軍備をおやめになつて、民主的な方向に行かなければいけないということを言つておられるようですが、この警察法修正案は明らかにこれは民主的な方向ではないと思うのです。これでは、再軍備をおやめになるということになりましても、警察法フアツシヨ化提案なさいますと同一な結果になるのではないかと思うのですが、そういう線についてどうお考えになつているか。     〔「答弁の要なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 金光義邦

    金光委員長 これにて両修正案に対する質疑は終了いたしました。  これより原案及び両修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によりこれを許します。河原伊三郎君。
  86. 河原伊三郎

    ○河原委員 私は自由党を代表して、改進党の提案にかかる修正案反対し、自由党提案修正案に賛成し、自由党修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。  改進党の修正案自由党修正案、また政府原案、この三つを比較検討いたしますると、そこに一つの共通点があると思います。すなわち、政府治安確保責任において、最終的な責任を持つという関係より、現在の状況よりも一歩を進めて、政府公安委員とのつながりを緊密にする必要がある、それに対する法制上の具体化を要するという点において、三者同一の目標のもとに立案されているように思うのであります。  ところが、改進党の修正案におきましては、畢生の知能をしぼられまして、まことに緻密に考えられたのではありまするが、私ども考えますれば、非常に緻密ではありまするが、かえつて煩わしく、紛淆を来し、国務大臣立場あるいは公安委員立場といつたような点よりいたしまして、かえつていろいろ検討を要する余地を存し、そうして公安委員会そのものがすつきりしない形を生ずるおそれもありまして、これらの点よりいたしまして、大まかな目的においては、われわれ並びに政府原案と共通するものがありまするが、その具体的な、技術上の点において悪いものがあるのでよくならないというふうに考えまするので、改進党の修正案には反対するものであります。  なお、自由党修正案政府原案との点につきまして、修正部分について考えますれば、これはある意味においては転倒しておるがごとくでありまするが、その究極のねらいとするところは一つであります。法文上においては大きな違いがありまするが、実際運営上の指向するところは帰一するものがあると考えるのであります。すなわち法律上においては大きな違いはありまするが、運営よろしきを得る場合においては、どちらにおいても結局大差ない結果を生ずる、こういうふうな観点よりいたしまして、自由党修正案に賛成し、なお、修正部分を除く政府原案に賛意を表する次第であります。
  87. 金光義邦

  88. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 改進党を代表いたしまして、警察法の一部を改正する法律案に対しまして、自由党修正案並びに原案に対しまして反対の意思を表明し、わが党の修正案並びにその修正部分を除きまする残余の部分に対しまして、賛成の意思を明らかにいたしたいと思います。  今回の改正の重点は、政府原案並びに自由党修正案によりますると、国警長官並びに特別区の警察長、この両者の任免に関しまして、内閣総理大臣があるいは任免権を握り、あるいはこれに意見を聞くことによりまして関与しようという点が、修正並びに原案の骨子であり、さらにもう一つの点は、警察から見まして治安上非常に重大なる場合におきまして、内閣総理大臣指示権を認めようとするものであります。  私ども意見は、警察法が施行されましてから今日までの実績と経験によりまするならば、幾多の改正を要すべき点があるということを認めるにやぶさかではないのでありまして、この意味におけるところの根本的な改正を、政府において用意されたいと考えておるのであります。今回の改正案並びに修正案は、それぞれその一部の問題にとどまりまして、最近の事態に照応するところの、治安の最終責任内閣にあるということを法文の上において、制度の上において明らかにせんとするところから出発したものであります。この意味でおきましては、われわれは全面的に反対をするものではないのでありますが、その方法といたしましてとられましたところの、内閣総理大臣人事権に関与という問題は、われわれ了承しがたいところであります。警察法改正におきましては、幾多の長所もあり、欠陥もあるのでありますが、この長所の一点は、国家公安委員会なりあるいは都道府県あるいは市町村の公安委員会制度を設けまして、これに運営管理並びに行政管理を一任いたすことによりまして、警察の不偏不党確立を願い、公正なる、しかも強く正しき警察を確立しようとする意図が、私は賛成し得る警察法の態度であろうと考えておるのであります。それを今回、それぞれ修正なり、あるいは政府原案におきまして、この制度を破壊いたしまして、内閣総理大臣任命し、あるいはこれの関与をしようという案につきましては、かつてのわが国の警察が政党政治によりまして、大いなる腐敗をまねき、政党化を招いたところの弊を、制度的にここにその端緒をつくろうとするものでありまして、賛成ができないのであります。しかしながら私どもは、今日の国家公安委員会構成なり、あるいは地方におきます公安委員会構成は、これをもつて十分なりとは考えないのでありまして、この意味におきましては、われわれは国務大臣の一名を国家公安委員のうちに追加任命をいたしまして、さらに前歴あるがゆえをもつて排除いたしておりますところの規定は、今日におきましては不必要なりと考えますがゆえに、これを排除したいと考えるのであります。かくして国家公安委員会なり、地方の公安委員会の機能、組織を強化いたしまして、この運営の妙に期待をいたしまして、警察の政党化を防ぎ、腐敗を防ぐところの制度を確立いたしたいというのが、私どもの念願であります。この意味におきまして、自由党修正案並びに原案に対しまして反対の意を表し、わが党の修正案につきまして賛意を表する次第であります。  最後に、治安上重大なる事態に対しましての内閣総理大臣指示権でありますが、これは原案によりますると、相当広汎にわたつて指示権の濫用が予想せられるところの節が多いのであります。もちろん私どもは、現内閣がただちにこれをもつて各般の、ことに行政管理の面にまで関与するとは考えませんし、政府答弁もまたそうであります。しかりとするならば、行政管理に関するところの指示権の適用を排除し、しかして列挙制限的にこれをいたしましても、何ら支障ないのみならず、警察運用の制度を確立する上におきまして、このことが最も好ましい方法であろうと考えまして、われわれの修正案を支持いたしたいと考えるのであります。  以上をもちまして、わが党の態度を表明いたすものであります。
  89. 門司亮

    門司委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております警察法の一部改正に対する政府原案並びに自由党、改進党から提案されております、それぞれの修正案に対しまして、反対の意思を表示するものであります。  本警察法改正にあたりましては、警察法自体を改正して行くという理念の上に、私ども政府の処置の非常に大きく欠けておる点を、第一に指摘しなければならないのであります。今日治安責任はもとより内閣にあるということは、憲法の示す通りであります。しかも警察法の中におきましても、やはり第四条において、内閣総理大臣の所轄のもとに国家公安委員会が置かれ、さらにおのおのの地方の公安委員会におきましても、おのおのの自治体の長の所管のもとに公安委員会が置かれておりまして、おのずからその治安責任というものは明確になつておるのであります。しかるにこういう案を出して参りまして、政府はこの改正をいたしまする理由といたしましては、責任の所在を明確にするということで、こういう案を出しておりますが、私ども政府に対して反省を求め、さらにこの案に反対する理念的なものといたしましては、治安の確保というものは、いかなる場合におきましても、権力によつては断じてできないということであります。従つて治安の乱れて参ります原因を除去するにあらざれば、いかなる弾圧の法規を設けましても、どんなに制度をかえて参りましても、いかようにその権力を中央に集結いたすといたしましても、あるいはどんなに責任の所在を明確にするというようなことを申しましても、それだけでは断じて治安の確保はできないのであります。現下の日本情勢は、むしろ警察法改正をするよりも、治安の乱れまする原因を政府は十分に反省して、その原因を除去することのために努めることが、私は急務でなければならないと思う。従つて今日の現行警察法というものを、私ども修正をする必要はないと考えておるのであります。これが私どもの一応理念的の、この法案に対しまする反対の大きな理由であります。  次に提案されておりまする各条文に対しまする私ども意見を一応申し述べておきたいと思いますが、政府原案におきましては、国家公安委員会の現在持つておりまする警察部長官、あるいは特別区の公安委員会が持つておりまする特別区警察長任命権内閣総理大臣に移そうとして、そうして提案理由にありまする責任の所在を明確にしたい、こう考えておるのであります。もとより私どもは、政府自体としてこういうことを考えまする上におきましては、先ほど申し上げました理由で、一応これには私ども承服しがたいものがあるのでありますが、ただ条文ごとに見て参りますと、問題になつて参りますのは、公安委員会責任であります。それと同時に、任命されて参りまする警視総監並びに警察部長官の問題であります。民主主義の政治のあり方というものは、任命権者に対する責任の所在を明確にするということが、大体基本でなければならない。すなわち責任政治というものでなければならない。どこまでも権力政治によつて行おうとするのは、民主主義の建前ではないと思うのであります。そう考えて参りますると、当然特別区の警察長にいたしましても、あるいは国家警察の本部長官にいたしましても、任命権者に対して責任を負うべきである。ところが原案によりますると、任命権者総理大臣となり、その運営管理を行う者は国家公安委員であり、あるいは特別区の公安委員であるということになつて参りますと、この二元的の運用は、必ず私は運用の妙が得られないと思う。過般の事実に徴して見ましても、政府は時の本部長官を罷免したいという考え方を持つて、大いにこれを要請したが、公安委員会がこれを聞き入れない。そうして政府の意図が一応挫折しておる事実がある。政府治安責任の所在を明確にすると言つておりますが、その事実は私は、こういう改正をいたしまして、そうして政府の意の通り警察行政を行わんとする政府自体の陰謀が、この警察法改正になつて現われたと考えても、私はちよつともさしつかえないと思うのであります。今日の警察行政が、先ほどから申し上げておりまするように、国家公安委員、あるいは特別区の公安委員会の所轄のもとに運営管理が行われて、そうしておのおのの長官は、それに責任を負うということになつておりまして、きわめて民主的に一元化されておりますものを複雑にいたしまして、そうしてこれを二元的にして、いたずらに本部長官の進退あるいは考えておりますことを混乱に導き、警視総監考えておりますることが、一方においては特別区の公安委員会に気がねをし、一方には総理大臣に御意見を伺わなければならないというような、まつたく警察行政というものが、この法案がこのまま適用されて参りまするならば、今日より以上に非能率になるだろうということは、私は当然言い得ると思う。一方において政府は、治安を確保するために責任の所在を明確にすると言つていながら、現在出されておりまする、この一部改正法案がこのまま通過いたしまするならば、おそらく私は警察の機能というものがきわめて非能率どなり、一切が妥協に終つて、まつたく公正なる警察行政を行い得ないということを、私ども考えるのであります。従つてこの警察法の前段の二項については反対をし、さらに最後に残されておりまする指示権が問題でありますが、指示権は御承知のように、現在におきましても内閣総理大臣は地方の都道府県会安委員会あるいは国家公安委員会の要請でありまするならば、当然非常事態の宣言をして、その場合におきましては、地方的におきましても、あるいは国家全体的におきましても、警察権掌握することができるようになつておるのである。しかるにこの場合必要な事項に対しては指示をすることができるということになつて参りますると、地方において、あるいは国全体から見て、公安委員会非常事態に至つておらない、いわゆる総理大臣の所轄のもとに警察を動かさなくとも十分やれるというような考え方を持つておるときでも、総理大臣が必要であるとすれば、これに対して指示をする。その指示は一つの命令であつて、これにおのおのの公安委員会は服従をしなければならないというようなことになつて参りますると、まつたく非常事態の宣言とこの改正案に含まれております指示権とは、二元的のものになつて参ります。そうして国の治安の確保の上にも、ここにも権力が二元的に行使されるということになつて、非常に私はあいまいであると同時に、あいまいだけならよろしいのでございますが、意見が異なる場合、あるいは意見が非常に大きく食い違いを来しておるというような場合におきましては、必ずしも運営が満足に行かない。この運営が満足に行かなければ、私は治安の確保というものは十分できない。のみならず、先ほども行政組織の改革の中にありましたし、保安庁法案の六十二条の規定によりましても、やはり内閣総理大臣は、必要のある場合にはこの保安隊並びに海上警備隊の出動を命ずることができるようになつておる。こうなつて参りますると、まつたく日本非常事態というような事態に対しまする認識というものは、三つの要素を持つということになつて参りまして、非常に私は複雑多岐にわたつて警察行政がこのためにいたずらに混乱に陥るということが考えられるのであります。さらにこれを実質的に、あるいは具体的に申し上げてみまするならば、それはないという答弁ではございましたが、実質的には総理大臣の意思によつて、たといこれが国家公安委員会意見を聞かなければならないといたしましても、一応すべての権力を握つておりまする以上は、総理大臣の一方的意思において、そういうことが現実に行われて参りまする場合には、先ほども申し上げておりまするように、警察行政のいたずらなる混乱のもとに、政府が予期いたしましたような治安の確保は、必ずしもできないだろうということは、想像にかたくないのであります。従いまして、こういういたずらなる警察行政の混乱を来すような、三元的に行われるような警察行政というものは、今日とるべきでない、同時にこれによつて治安の確保はでき得ないであろうということを申し上げて、原案に対して反対いたすのであります。  さらに自由党から出されております修正案でありますが、これによりますと、政府改正案を逆にやる形にはなつておりますが、これもきわめてあいまいなものでありまして、公安委員会総理大臣との権限といいますか、公安委員会総理大臣意見を聞くというだけでありまして、もし総理大臣意見公安委員会意見が合致しなかつた場合の処置は、どこにも書いてない。同時に聞くというだけであつて、聞くという程度はつきりしていない。あるいはこれを尊重しなければならないとか、あるいはどこまでも意見の一致を見なければならないというような処置は、ちつとも考えられておらない。従つてこの問題は、先ほどから答弁がありましたように、きわめて政治的にのみこれが運営されるということになる。明朗であるべき警察行政政治的にのみ運用が行われるということは、私は警察行政に対する一つの大きな暗影を投げかけるものではないかと考えるのであります。従いまして世論に拘泥して、ただ單に字句を上下にしただけというようなあいまい模糊なものであつてはならないと考えております。  さらに改進党から出されている修正案でありますが、これによりますと、今日の国、地方を通じます公安委員会の中に、おのおのの所管いたします長の任命した者を一人ずつ加える。すなわち国家公安委員会の中には大臣を加え、地方の府県の公安委員会の中にはおのおの知事が指名する副知事を加え、市町村においても同じような条項になつておりますが、われわれが現行法において、この公安委員会が独立の機関において、独自の立場において治安の確保をしなければならないということに当らしめました問題は、どこまでも民主警察である、いわゆる行政的にこの警察が動かされるようなことがあつてはならない。どこまでも厳正であつて公平に民衆の警察官として、また民衆の警察として、これを運営して参りますには、やはり行政の長、あるいは行政に携つておる者の意見が加わつて参りまして、そうして不明朗のものがあつてはならないというところに、今日の公安委員会の存在の価値があると思うのであります。この価値を忘れて行政機関の最も中枢の重要な役割を果しておりまするものが、この委員会の中に入つて参りまするならば、かつて公安委員会の性格というものがまつたく失われて参りますると同時に、これが骨抜きになつて参りまして、公安委員会の存在は、私どもはつきり見出すことができないような事態になるであろうということを、きわめて強く危惧いたしますると同時に、反対をいたすのであります。  さらに最後に書いてあります内閣総理大臣指示権を、一応大別いたしまして三つにわけて、これを限定した、いわゆる限定指示権にしたということについては、一応私たちも考えられるのでありますが、しかし限定指示権の内容といたしまても、そのことが明確になつておりませんし、私どもは先ほど申し上げておりまするように、原案指示権に対して強く反対をいたしております以上は、やはりこれがたとい限定指示権でありましても、私たちはこれに賛成をするわけには参らぬのであります。  以上きわめて簡單ではございましたが、原案並びに両修正案に対して、反対の意思を表明した次第でございます。
  90. 金光義邦

  91. 立花敏男

    立花委員 きのうの朝刊でございましたか、アメリカへ帰つておりますジヨン・フオスター・ダレス氏が重大な発言をしているわけです。日本の最近の治安の撹乱は、ソビエトあるいは共産主義国の計画に基くものであるという発言をしておるのでありますが、これは非常に重大な発言でありまして私ども国民はこの発言に非常な関心を寄せざるを得ないのであります。何となれば安保条約並びに行政協定によりまして、間接侵略あるいは緊急の脅威が発生した場合という言葉を用いまして、そういう場合に日本の安全を保障するという建前から外国軍隊が自動的に出動いたしまして、しかもその場合には、日本の一切の弾圧機構、警察予備隊あるいは国家警察、自治警察がその掌握下に入りまして、日本の国民に対する弾圧を開始するという規定がありますので、ダレスの発言は今まさに日本の立ち上りました国民に対して、重大な弾圧が行われようとしている、それはもう刻々日本国民の上に迫りつつあるという感じを、ひしひしと感ずるのであります。これは單に私どもが感じているだけでなしに、政府自身それを感じまして、最近の大きな国民的闘争、四・一二、四・一八のゼネスト、あるいは目下行われておりますところの三百万労働者を先頭とする第三波ゼネスト、あるいは本日ただいま東京の四谷で行われておりますところの全国数百万の中小企業者の全国総蹶起大会、こういうような大衆的な行動、大衆的な反政府、反植民地闘争が、その最も大きな形で進行しつつあるのでありますが、これを目しましてアメリカ側ではこれは共産主義陣営の計画的騒擾行為であるということを言つていることは、さいぜん申し上げました日本の安全を保障するという建前のもとに、占領軍が出動し、そのもとに全日本警察機構、弾圧機構が従属して、国民に襲いかかるということが、真にもう時日の問題になつているということを明白にいたしておりますので、政府といたしましても、至急にその態勢を整えざるを得なくなつたことは明白だと思うのです。そこから私は警察法改正提案されて参つたということは、疑いのない事実だと思うのであります。事実警察法改正は、メーデーの闘争の直後に提案されて参りましたものでありまして、自分たちの弾圧が無力であり、しかも射殺されました日本の労働者の愛国的な血潮が、全国民の胸の中に浸透いたしまして、メーデーの弾圧を越えまして、さらに大きな闘争がずつと現在生れつつある、これに対しましては、どうしても弾圧機構の整備強化、フアツシヨ化、中央集権化をはからなければやつて行けなということから、メーデー直後に警察法改正が出されて参つたと思うのであります。従つてこの警察法改正は、メーデーに行われましたあの血の弾圧を、全国的な規模で全国民の上にやろうというところの、いわば日本国民に対する血の弾圧の宣言文にほかならないと思うのであります。そういうふうな結果といたしまして、この法文を見ますと、明らかにそのことが現われておりまして、従来の民主的な警察法根本精神を蹂躙いたしまして、人民の代表が警察運営管理して行くというところの公安委員会の組織を完全に無視いたしまして、そうして総理大臣みずからが国警長官任命し、あるいは自治警察の長である警視総監任命し、あるいは全国の公安委員会を無視いたしまして、全国的に総理大臣指示権を確立いたしまして、全国の自治警察総理大臣の一手に掌握する。こういうふうにまつたくこの改正案の内容は明らかにフアツシヨ的であり、国家警察への復元であり、警察フアシズムの現われだと思うのであります。現在朝鮮では、李承晩が警察を用いまして国会議員を逮捕し、国会の解散を強制いたしておりますが、あれは一種のフアシストのクーデターだと思うのでありますが、明らかに吉田政府のこの改正案は、日本においても警察力を用いてのフアシスト・クーデターが着々と準備されつつあるということを明白にしておると思う。そのことは、この警察法改正自体が、憲法の主権在民の精神を完全に無視し、あるいは民主的な警察法を完全に無視し、あるいは日本民主化の基礎でありますところの地方自治を規定しております地方自治法を完全に無視し、あらゆる民主的な法律を無視いたしまして、強行されようとしておるところに、明白に現われておるのではないかと思うのであります。  さらに問題にしなければなりませんのは、この審議の過程で現われました警察官の有する武器の問題であります。警察官が催涙ガスあるいはピストルを使用いたしまして、最近人民に立ち向つておりますが、この催涙ガスの使用が、單に一事務官にすぎないところの国警長官の訓令一本にまつて自由に使われておるということ、これは私はまつたく非合法だと思う。国民に仕えるべき警察官、国民のしもべであるべき警察官が、御主人公の知らない、御主人公の許したことのない武器を持つて、その御主人公を殺戮しておることは、まつたく言語道断といわざるを得ない。さらにピストルの問題に至りましては、木村法務総裁は、これは日本国家の所有であると言い、あるいは国家警察の谷口次長は、これは進駐軍から借りておつたのだと言つて政府としても意見の統一がないままにピストルを使用いたしまして、ひんぴんと人民を射殺しておるのでありますが、このピストルは一体どこから来たのか、しかもいかなる手続をとつて、いつ国民の承認を得て、議会の承諾を得てこれを使つておるのか。アメリカから借りたといたしましても、あるいはアメリカからもらつたといたしましても、それは当然議会に諮り、国民の承諾を得なければならないものだと思うのであります。しかもそういう手続が何ら明瞭ではなくして、どんどんそれを国内に入れまして、それによつて人民を弾圧しておる。これこそまさに私は警察フアツシヨ化と申しますか、あるいは警察自身が武器の密輸入をやり、そうして非合法な武器を用いて、人民を弾圧しておるのです。まさに鬼畜の行為だと私はいわざるを得ない。しかもこのピストルが何らの国際条約に基かないで、アメリカから輸入されておる。それを唯々諾々として、大臣自身がその由来を知らないで、あるいはきのう参りました公安委員自身がその由来を知らないで、それを用いておりますことは、まつたく日本の国民に仕える日本人の警察ではなくて、アメリカの言うがままになり、アメリカから渡された非合法な武器をもつて、人民を弾圧するところの植民地警察にほかならないといわざるを得ないと思う。国民はかかる警察法改正に対しては断じて承服できないことを、断言しておきたいと思います。  さらにこの警察法改正選挙対策であるということを、一言しておきたいと思うのであります。かつての政友会あるいは憲政会の時代におきましては、選挙の前日にあたりましては、警察署長を任命し、あるいはひどい場合には駐在所の巡査さえ入れかえた。ところが総選挙が迫りましたにつきまして、自治警の長である警視総監総理大臣が入れかえようとし、あるいは国警長官の首をすげかえようとし、さらに全国の警察に対して指示権を持とうとしている。これはだれが何と言おうと、総選挙の対策なんです。しかもこれと並んで行われました全国選挙管理委員会の廃止へあるいは公職選挙法の改悪、これを見ても、いかに政府並びに自由党が来るべき総選挙に恐れおののいているか。人民の集中的な批判、吉田政府の売国政策に対する全国民的な批判、この国民の政治的な批判の中に迎えます選挙を、いかに恐れておるか。それで警察法の改悪をもつて弾圧し、公職選挙法の改悪をもつて弾圧し、さらに選挙管理委員会を廃止して、完全に政府がその管理権を握つて弾圧する、こういうまつたく選挙目当ての改正案でもあるという点を、最後につけ加えておきたいと思うのであります。  しかし国民といたしましては、こういうふうに警察力が増強され、あるいは警察制度がフアツンヨ化されましても、決して国民は恐れていないのであります。現にさいぜんも申しましたように、国民の闘いはますます大きくなりつつあります。国民は吉田政府並びに与党及びアメリカの人民弾圧の機構が狂暴化すればするほど、これは彼らが強くなつたことを意味するのではなくして、彼らが弱くなつたことを意味しておるということを、はつきり知つておるからであります。朝鮮におけるアメリカの軍事的な行動の失敗、あるいはアメリカが最近行いましたところの日本の貿易の制限、こういうことを通じまして、アメリカの資本主義自体が、完全に世界的に行き詰まつておる。最近イギリスのアレキサンダー国防相が日本に飛んで参りますのも、アメリカの軍事政策、アメリカの極東における政策の失敗に対する批判だということを、新聞が伝えております。明らかにアメリカに対する批判は、全世界的に巻き起つて参りまして、フランスにおきましても、日本におりましたリツジウエイに対する反対デモが行われておることは、御承知の通りであります。アメリカ国内自身で、今や大きく労働者大衆がストライキを始めておりまして、まさに敵の弱まりこそは、この警察法の改悪、日本の人民に対する弾圧機構の狂暴化、これにほかならないと考えておりますので、国民は確信をもつて、こういう弾圧法をお出しになればなるほど、国民は勝利の確信を強くし、敵の弱点をはつきりと見きわめまして、断固として立ち上ることと思います。  こういう立場からいたしまして、私ども共産党は日本国民の戰いとともに、反動法案に断固反対するものであります。(拍手)
  92. 金光義邦

    金光委員長 八百板君。
  93. 八百板正

    ○八百板委員 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、」ということは、いわゆる憲法の基本的な原則として、前文にうたわれておるところであります。この基本的な線に立つてわれわれが考えて参ります場合に、警察の行います権限は犯罪の捜索、犯人の逮捕、公安の維持など、それぞれこの作用は性質上当然に国民の行為の自由を拘束し、いろいろの意味において権力の発動によつて憲法に保障せられましたところの理想、憲法が理想といたしておりますところの人間の自由の尊厳を制限する性質のものであります。でありまするから、そういうものでありまするだけに、警察運営警察権の行使というものは、より一段と民主的な機構のもとに、運営せられなければならないということは明らかであります。自由を尊重する民主国家のもとにおいて、警察の組織がほかの組織よりも一層民主的機構のもとに確立せられなければならないということが重要視せられますゆえんであります。ややもすると権力活動は、憲法の精神を蹂躙する危険があるのでございまするが、その場合において、これらの警察権の行使が、一部階層の独裁的支配を可能ならしめるような集中的権力となつたり、あるいは官僚の支配に堕するようなことは許されないものと、われわれは考えるのであります。地方自治について憲法が一つの長を求めまして、明確に地方自治の精神をうたつて、これとの関連において自治体警察というものを考えたことも、その間の精神を明らかにしたものであると、われわれは考えるのであります。でありまするからして、これらの方向は今日警察運営の上に尊重せられなければならない基本的なものであろうと思うのであります。警察法は第五十四条において「市町村警察は、国家地方警察運営管理又は行政管理に服することはない。」と明らかに独立を規定いたしておるのであります。しかも警察の指導権を会議体の公安委員会に持つてつて公安委員会に持つて行つたがために、責任の集中と行動の迅速化がいろいろ不便である。警察行為の原則でありますところの迅速なる行為を達成するために、こういう分散した状態が不便であるという考え方は、一応これはうなずくことができるのでありますが、だからといつて、この制度の本来持つておりますところの重大な意義というものを、もつとよくするという努力をしないで、これを單に警察権の一本化、首相によるところの警察の長の任命、そういう形においてこの問題を救済、解決しようという考え方は、明らかに憲法の精神に反し、平和国家、文化国家の建設の方向に逆行するものであると、われわれは断定せざるを得ないのであります。さきに当委員会において伺いましたところの橋本公安委員長の陳述によりますると、今日公安委員会の任務は非常に重い。重いけれども機能が弱められておるということを、明らかに指摘せられておるのであります。従つてこうした憲法の精神に基き警察の問題を考えますときに、われわれがまず第一に取上げなければならない点は、この公安委員会の機能をもつと強くし、どうして解決するかという点にその改善の第一点は向けられなければならないと思うのであります。しかるに政府の出されましたところの提案を見ますると、そういう方向とはおよそかけ離れた形において政府提案がなされておるということを、われわれはまず第一に反対理由としてあげなければならないのであります。  さらに自由党修正案を拝見いたしますると、第十二条に関する部分については、これによつては何ら問題は解決せられないのでありまして、十二条の自由党修正は、改正の必要を要しないとわれわれは考えるのであります。政府提案理由として取上げております点は、言うまでもなく責任の所在を明らかにするということ、治安の確保に資するということ、この二点を取上げておるわけであります。しかしながら責任の所在を明らかにするという点が、これらの政府原案政府改正案並びに自由党修正案によつて、どの程度明らかになつておるかという点を見ますと、責任の所在を明らかにするという点は、何ら明らかになつておらないのであります。端的に申し上げますならば、治安の乱れて来る政治的な事態責任は、何ら政府が負うことなく、單に警察行為そのものの責任についてのみ、これを警察官の首切り等によつて責任を負うというような考え方が、この法律案の中に明らかに流れておるわけであります。さような点から考えて参りますならば、これは責任はとらないで、実質的な指揮をやつて、ただ單に首相の指揮下に入れるということだけを規定したものと、われわれは考えざるを得ないのであります。  さらに改進党の修正案について考えてみまするに、第十二条を削除したということは、まことに喜ばしい修正案であるとわれわれは考えるのでありますけれども、次に公安委員会の性格の変更、改変等についてこれを見て参りますと、必ずしも公安委員会の機能をより民主的なものにするための改変、変更であつたとわれわれは認めるわけには行かないのであります。  さらにまた重大なことは、改進党の修正案の中に、六十一条の関係部分すなわち六十一条の二の点については、こういう事態をというふうに、一応列挙はいたしておりますけれども、事実上において政府改正案をそのまま承認したという結果になつておることを、われわれは遺憾としなければならないのであります。  さらに治安の確保の点について考えて参りまするに、今日治安の確保をするためには、治安の阻害となつているものが何であるかということを考えなければならないのであります。今日治安の確保の阻害になつているということは、決して警察任免権が一本化されておらないとか、国家警察への集中的な警察権力の一本化が行われておらないとか、そういうことによつて、今日治安の確保が阻害されておるということは、だれもこれを言うことはできないのであります。従つて今日の治安の確保は断じて国家中心の警察権の集中、そういうことによつて救済されるものではないと、われわれは考えなければならないのでありまして、むしろ今日の治安の確保のために必要なことは、運営そのものを民主化することであり、さらに警察官の質的な向上をはかる、こういう点にこそ治安の確保の具体的な道があるのではないかと私は考えるのであります。もつと警察官が治安維持の担当者として信頼されるような、民衆の心からなる協力を得るような警察官をつくつて警察制度の改善を考えて行かなければならないのであります。とりわけ巡査の質的向上が今日必要であろうと思うのであります。今日われわれが世相を見ますときに、遺憾ながら民衆の警察が民衆から愛されるどころか、かえつてきらわれておるという現状を、われわれは率直に認めなければならないのでありまして、こういう点にかんがみますときに、学生とむきになつて、四つになつてけんかをするような巡査であつては、これは今日の日本事態を収拾し、治安維持の任をゆだねることはできないのでありますから、これらの警察官の公正なる職務の執行ができるような質的な向上を考え、さらにまたこの運営の民主化をこそ、いろいろとくふうして行かなければならないと思うのでございます。申すまでもなく、農村などに入つて参りますと、御承知のように村に駐在巡査というものが一名おりますが、この駐在巡査の村における位置というものは、私から説明申し上げますまでもなく、村長あるいは学校の校長先生、あるいは駅長さんこういうような人とほとんど同格の立場において、村の中においては一巡査の地位が取扱われておるということは、皆さん方も御承知の通りであります。ところがはたしてそうならば、なるほど制服を着て金ピカをつけておりますから、そういう点においでは違つておるでございましよう。しかしまつ裸の人間としてこれを見ました場合に、はたして、村長と同格の人間であり、あるいは駅長と同格の人格を持つた、訓練された人間であるかどうかということは、きわめて疑わしい場合が多かろうと私は思うのであります。  私は、蛇足になるかもしれませんが、ここに参考までに一つのものを読み上げてみたいと思うのでありまするが、あの「パリの空の下セーヌは流れる」という映画の中に出て来る問題でございますが、この記事を見ますると、これは写真家――顔などを非常に重要視しますところの写真家の短かい随筆でございまするが、「工場のストライキの場面があるが、そのストの警備に当つている巡察の顔が非常にうまみのあるいい顔なのである。そして警備をしながらも和気あいあいとしている。大体ヨーロツパの巡察は四十歳から五十歳ぐらいの人が多くて、日本のように、ばかばかしいいばり方をするようなこともなく、まつたくの社会のために奉仕する隣人の感じである。そんな点で日本の巡査とは何か心構えが異なるように思える。年が若いこと、社会環境による人格が完成していないことなどがそうするのであろうが、日本の巡査の味のない顔は、女子供はもとより、私たちにも親しめない。」ということが、写真専門家の言葉として出ておるのであります。こういう印象のもとに、今日の治安担当の警察官が考えられておるということは、非常に重大なことであるとわれわれは考えるのでありまして、こういうふうな点にこそ、警察の親しまれる、質的な向上にこそ、いろいろの警察法改正の努力がなされなければならないと、われわれは考えるのであります。  私ども日本社会党第二十三控室の立場といたしましては、とりわけ平和非武装憲法を特に支持する建前をわれわれはとつておるのであります。従つて国内の秩序維持の担当者としての警察官に期待する面は、より一段と大きいということを考えていただかなければならないのであります。しかるにこの警察法改正によつて、公正なるべき警察官の諸君が、時に私兵化し、あるいは一部官庁の独裁的支配を可能ならしめるような権力化の傾向に行くということは、とうていわれわれの賛成することのできない点であります。  さらに法文の点について、特に私はこの際申し上げたい点は、第十一条に関する問題でございまするが、特に必要がある場合においては、総理大臣は全国の警察指示する権限を持つことになるのでございまするが、そのときの事実上の本部の役割を果すものは、第十一条に定められておりますところの国家警察本部であります。これは特に国家公安委員をたな上げして、国家地方警察本部にそういう事態の中心を置くというところに、非常に重大なる問題があると、私ども考えなければならないのであります。しかもこの特に必要があるという事態は、もしこの法律通りまして、独立して行われまする場合においては、制限なく繰返されるという危険があるということも、あわせて考えなければならないのであります。たとえばかつて検束の時間は二十四時間ということを定めました時期においても、二十四時間で一ぺん出して、玄関からまたもう一ぺん入れて、そうして繰返すということが行われた時代があつたのでありますが、必要なる事態制限なく繰返して、これを常態化するということを、非常にわれわれは重大なるものとして指摘しなければならないのであります。それと関連いたしまして、きわめて重大なことは、警察法の六十五条並びに六十六条は、御承知のごとく、内閣総理大臣が発した国家非常事態の布告は、これを発した日から二十日以内に国会の承認を得なければならないということを規定いたしております。さらにまた警察法の第六十六条は、これらの布告に対して国会が命ずるときは、内閣総理大臣は廃止の布告をしなければならないということになつて、いずれも全国一本の統一的警察権力の行使は、国会の承認した限りにおいて、一時的に許されるものであるということが、明らかに警察法の中に規定せられておるのであります。だれが見ても当然と認められるような非常の事態においてすら、その権限の行使、警察権の一本化については、国会の承認を条件としておるのでありまするが、もつとそれよりも軽い問題について、以上申し上げましたように、内閣総理大臣の指揮下に入つて、そのことが、何ら国会等において監視せられることなく行われるということは、この六十六条に規定いたしましたところの警察法根本的な精神と、はなはだしく離れるものであると私ども考えざるを得ないのであります。  以上私は警察法の一部改正案に対して、政府提出原案反対し、自由党修正案、改進党の修正案に対して、それぞれ賛成できないということを明らかにするものであります。
  94. 金光義邦

    金光委員長 ほかに討論の通告がありませんので、これにて討論は終局いたしました。  これよう採決いたします。まず鈴木幹雄君外三名提出修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  95. 金光義邦

    金光委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に前尾繁三郎君外五名提出修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  96. 金光義邦

    金光委員長 起立多数。よつて修正案は可決されました、  次にただいま可決された修正案修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  97. 金光義邦

    金光委員長 起立多数。よつて修正部分を除く原案は可決されました。よつて本案修正議決されました。     ―――――――――――――
  98. 金光義邦

    金光委員長 次に集団示威運動等秩序保持に関する法律案を議題といたします。  本案につきましてもすでに昨日質疑を終了いたしましたので、本日はこれより討論採決を行いたいと思います。  ただいま委員長手元に、吉田吉太郎君外五名提出修正案提出されておりますので、その趣旨弁明を求めます。吉田吉太郎君。
  99. 吉田吉太郎

    ○吉田(吉)委員 私は自由党を代表いたしまして、本法律案に対しまする修正案趣旨弁明簡單に申し上げます。  本修正案は第三条一項中「七十二時間前」の下に「行進を伴わないものについては四十八時間前」を加えるという修正であります。  御承知の通り本案の第二条においては「集団示威運動又は道路、公園その他の公共の場所における集団行進若しくは屋外集会を行おうとする場合には、あらかじめこれらを実施しようとする場所を管轄する公安委員会に届け出なければならない。」ということになつているわけであります。わが党といたしましてはできるだけこうした届出は、主催者の便宜をはかるために、できるだけ短かい時間にして便宜を与えたいという考え方でありますが、いろいろな今日の治安状況から見まして、また本法実施の状況から見まして、この際行進を伴わないものについてのみ四十八時間前に、届出をすればいいという程度に改めることが最も妥当でないか、かように考えましたために、本修正案提出いたしました次第であります。何とぞよろしく御賛同をお願いいたします。
  100. 金光義邦

    金光委員長 ただいま修正案趣旨について説明を聽取いたしましたが、この際質疑があればこれを許します。
  101. 大矢省三

    ○大矢委員 提案者にお尋ねしますが、旧憲法当時二十四時間であつたものを、今度四十八時間に――いわゆる新憲法で保障されてなかつた労働者のあらゆる権利が認められた今日、その当然の団体行動である示威運動を、旧憲法の当時よりかさらに複雑な、しかも長時間にわたつての四十八時間前に、これを届けなければならぬ。こういうことの修正であるのでありますが、すなわち憲法で保障された労働者の団体行動に制約を受けるということの懸念がないか。それからこういうことの届出をし、さらに許可制にする結果といたしまして、きようも新聞に載つておりますが、五十人か、百人で各所で行う非合法の波状的デモ、警官が来たときはもうだれもいない。それから学校の中やビルの中で、屋外における合法的な運動を阻止するために、そういう非合法な、巧妙な、陰惨なるデモンストレーンヨンが起る結果になりはしないか。およそねらうところと反対にそういう結果が起ることを私はおそれるのですが、一体そういうことの心配はないのか。現にそれは起りつつあるから、こういうことをやれば、さらに一層巧妙な、すなわち非合法なデモンストレーシヨンが各所に起ることを私は言明しておきますが、この点について心配はないか。労働者の不平不満というものは、その意思表示をするためには、堂々と合法的にやれるものを、これをこういうふうに制約を加え、こういうめんどうなことを規定するために、そういうことが行われるということは、当然過去の事実によつて明らかであります。この七十二時間を四十八時間にしても、旧憲法当時よりははるかに長時間前に届出をしなければならぬということは、これはかえつて逆行である。そういうことについてどう考えておるのか、この機会に法務総裁と提案者の両方の意見を聞きたい。
  102. 吉田吉太郎

    ○吉田(吉)委員 ただいま大矢委員の御質問でありますが、御趣旨の点につきましてはわれわれも同感でありまして、できるだけ短い時間に制約したいという考え方を持つておつたのであります。さようなために原案は七十二時間になつておつたのでありますが、それをできるだけ便宜をはかるために、行進を伴わないものについては四十八時間に修正をいたしたわけであります。ただ現在の治安関係の実情に即しまして、旧憲法時代と今日の客観情勢が多少違つておる点があると私は考えますために、さようにいたした次第でありますが、後段に関しますることは当局から回答していただきます。
  103. 木村篤太郎

    木村国務大臣 修正案については政府当局は何も意見を述べることがないのであります。原案については十分先般の質疑応答の際答えた通りであります。
  104. 大矢省三

    ○大矢委員 私は重大なことを伺つておる。こういう制約を加える結果として起ることが想像ざれるし、あり得ると思うし、また現にあるのです。これの完璧を期するということの対策がありますか。そういうことをすることによつて、非合法運動はどんどん地下に入り、波状的にそういうことが起るということは、現にあるのです。かえつて助長させる結果になるということを憂うるのですが、これに対して何らかの対策がありますか。こういう点心配はないのかということをお聞きしたい。
  105. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はこういう法案ができたから、今の波状的の小さいデモがますます増加するというような結果にはならないと考えております。むしろその目的とするところは、全然異なつておるのであつて、かりにこの法案が可決されまして執行されるような場合におきましても、さような小規模なデモが各所に起る。これは決して多くなるとか、少くなるとかいうようなわけ合いのものでなく、そういうものは従来からたびたびやつておるのでありますが、これに対してはわれわれは相当な処置をとりたい。こう考えております。
  106. 金光義邦

    金光委員長 これにて修正案に対する質疑は終了いたしました。  これより原案及び修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。川本末治君。
  107. 川本末治

    川本委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつております集団示威運動等秩序保持に関する法律案に関し、自由党提出修正案に賛成し、修正部分を除きます政府原案にまた賛成の意見を述べるものであります。  本法律案提出されましてから今日まで、当委員会におきまして数日にわたつて熱心に各位が質疑応答を続けられて参つたのであります。政府の意のあるところは十分各位も御了承であり、私どもまたこの際かような法律案を出すことは、最も時宜に適したものであると、全幅的にこれを支持するものであります。詳しく申し述べる必要を多く認めませんので、省略をいたしますが、要点をかいつまんで申し上げますと、現在区々になつております市町村条例、これは大体許可制になつておる。それを憲法の新精神にのつとりまして、りつぱに基本的人権を尊重する意味で届出制にしたということは、実に百尺竿頭一歩を進めたまことにけつこうな法案であると思います。まことに皮肉なことに相なりますが、先ほど共産党の諸君が警察法の一部改正において非常に御心配になつて、神経をとがらせられた直後に、かような進歩的な法案がここに論議されたということは、まことに私は共産党の諸君を顧みて意外の感があると思う次第でありまして、この法案につきましては修正部分についての意見を述べましても、大体七十二時間の届出時間が長いということから、屋外の行進を伴わないものについては、四十八時間にしたということはしごく適切であると思います。ただ四十八時間にしたということは、いかにも長いようでありますが、これが届出制であるときには、危険な状態におきましては、修正方法を通告をしなければいけないという意味合いから行きまして、このくらいの時間は当然認めてやるべきである、かように私ども考えておりますので、修正の点についても賛成をし、原案につきましても簡單でありますが、以上の趣旨によりまして賛成をする次第であります。
  108. 金光義邦

  109. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 私は改進党を代表いたしまして、集団示威運動等秩序保持に関する法律案について、修正案並びに原案につきまして賛意を表するものであります。  集会、多衆運動等は憲法の保障する基本的人権でありまして、みだりにこれに干渉すべきでないことは多言をまたぬところでありますが、この種の運動が正当な範囲を逸脱して無秩序、無統制に陥るがごときは、公共の福祉を害するものといわなければならぬのであります。終戰後国内各地に多衆運動が活発化しましたことは、国民の自由なる意思の表現といたしまして喜ぶべき現象でありますが、中には民主主義の行き過ぎがあり、あるいは公共の安寧を害するがごとき事例をも見るに至つたことは事実であります。この事実にかんがみまして、従来都道府県及び市町村におきまして、条例をもつて個個に規制をいたしたのでありますが、ここにこれを統一して法律化そうとする本法に対しましては、是認せられるべきものが多分にあると思うのであります。ただ私は法律の執行にあたりまして、政府並びに警察機関に望みたいのでありますが、国民の自由の意思の表現として、この種運動は十分に尊重すべきものであることは言をまちません。しこうして公共の福祉を害するもののみに、最小限度においてこの規制を行うべきものであることを銘記していただきたいのであります。このことを強く要望いたしまして、修正案並びに修正部分を除く原案に対して賛成する次第であります。
  110. 金光義邦

    金光委員長 門司亮君。
  111. 門司亮

    門司委員 私は原案並びに修正案に対して反対の意思表示を行うものであります。  私ども日本社会党を代表いたしまして、今提案理由になつておりまする現下の社会情勢に徴し、あるいはというようなことで、いかにも現実的に物が考えられておるようでございまするが、これを現実的に考えて参りまするならば、わが国におきましては、四十六都道府県、並びに公安委員会を持つておりまする市が二百七十六を数えておるのであります。しかるに現行公安条例を持つておりまする都道府県並びに市町村は、わずかに百三十の程度でありまして、そのほかの日本の全部の自治体に対しましては、これが適用を受けておらない。言葉をかえて申し上げまするならば、政府がここに提案いたしておりますように、緊迫した事態であるといたしまするならば、当然日本のこの四十六都道府県並びに二百七十六の市が、おのおのこれを持つていなければならないはずであります。しかるに現在まだそこまで立ち至つていないということは、この政府考えておりまする提案理由とは、現状はいささか違うものがあるのではないかということを私ども考えざるを得ない。従いまして、われわれは、こういう一つの現実の姿の上において、事実上こうした法案が一つの法律として出されて、全国的にこれの取締りを受けて来るということになつて参りまするならば、地方の自治体の自由にまかせておりまする、この住民のきわめて自由なる意思決定の上に、その秩序の保持をいたしておりまする警察法の制定、あるいは今日の憲法の制定とは、おおよそかけ離れたものができて来て、そうしていやおうなしにこの法律でこれをしばつて行くということである。なるほど政府の言つておりますように、一部にはあるいはこれよりも少しきついような法律があるかもしれない。しかしながら今日までの公安条例というものは、そのできておりますゆえんのものが、いかような理由でありましようとも、大体実施されておりますその範囲というものは、きわめて強い連合軍の示唆のもとに、これが行われておるということは間違いないのでありまして、七十二時間の現行、あるいははなはだしきに至りましては九十四時間前に届出をしなければならないということもあつたということも、われわれは承知しておりますが、これはもとより住民の意思決定に基くものではありませんで、連合軍のきわめて強い示唆のもとに、そういうことが行われておつたということであつて、これらのものを知つてつて、ここに七十二時間前に届出しなければならぬというようなことは当らないと思う。先ほど大矢委員からも申されましたように、過去の治安維持法その他が適用されておりました当時におきましては、屋内集会においてはわずかに三時間、屋外におきましても十二時間以前の届出で許可されておつたのであります。しかるにこの民主的に一切の仕事が運営されております今日において、なおかつこれを七十二時間前に届出しなければならない――ことに私がこの法案で最も遺憾に考えておりますのは、表面は七十二時間前の届出制ということを強く主張いたしておりまするが、法案の内容におきましては、まつたく許可制であるということであります。すなわち二十四時間前にその補正命令を出し、さらにその補正命令に対しましては、これに十分に従わなければならないということが明らかになつておる。いわゆる補正命令という字句を使つておる。この命令は、明らかに許可しなければならないのでありますが、協議するという言葉もなければ何にもない。一方的にこれを命ずるということがこの法文の中にはつきり書いてある。私はこれほどフアシズム的な物の考え方はないと思う。一方的の解釈により、あるいは見解によつて――ことに私はこの場合に強く申し上げておきたいと思いますることは、治安の確保の上から、あるいは取締りの上から、こういうものの必要があるとするならば、しかもその必要に応じて二十四時間前に、この地方の公安委員会その他がこれを認定するということは、きわめて大きな問題でありまして、地方におきましては、いろいろな条件がおのおのありまするので、その条件に必ず適合した処置がとられればいいのでありまするが、もし万一この命令を発する者が、間違つた認識のもとにこの命令等を発しまするならば、命令を発したことにおいて、ことさらに私は混乱に導くであろうということは、はつきり言えるのであります。同時にこの法案の内容の中で最も悪いのは、先ほど申し上げましたこの命令の問題でありまするが、しかもこの法案によりますると、「二十四時間前までに、当該集団示威運動等の開始若しくは終了の日時若しくは実施場所の変更を命じ、又は参加人員数の制限を命ずることができる。」こう書いてあるのであります。そういう時日の変更を命ずることができる、あるいは場所の変更を命ずることもできる、参加人員の変更を命ずることもできるということになつて参りますると、示威運動を行いまする者の自主的の権益というものは、何も認められておらない。すべてがこれを許可いたしまする公安委員会の手に握られておる。ことに示威運動等は、時日が非常に重要な問題でありまして、いろいろな観点から申し上げまして、その時日を変更いたされることにおいて、まつたくその意義をなくするというようなことが、非常に多く私ども考えられるのである。従つて一方的に時日を変更したり、あるいは場所を変更したり、人員の制限をするということは、先ほどから申し上げておりまするように、明らかにその主催団体の独自の行動というものを、極度に制限する一つの法案でありまして、およそたとえに使われておりまする羊頭狗肉という言葉がありまするが、提案理由並びに政府説明によりますれば、これは届出制であるから決して束縛するものではないと言いながら、実質的には明らかにその自主性を束縛して、どこまでもこれは命令制である。しかもその命令に従わない者に対しましては、罰則をもつて臨んでおるということであります。私どもはこうした住民の自由なる意思の上において、集団示威運動等が行われまするものを、秩序保持というきわめて美名のもとに隠れて弾圧し、さらにこれの実行を不可能に陥らしめようとするというようなこの法案に対しましては、断じて承服するわけには参りません。  さらに修正案でありまするが、修正案に対しましても、何も七十二時間が四十八時間になつたところで、それが別にどこがどうというわけでもございません。二十四時間前にやはり許可するという線だけは、ちやんととつておるのでありまするから、届出がわずかに少しばかり時間が遅れてもいいというだけであつて、実質的には何らの変更がなされていないということであります。私どもはこういう欺瞞的な修正案に対しましても、反対せざるを得ないのであります。
  112. 金光義邦

  113. 立花敏男

    立花委員 共産党は政府原案並びに自由党提出修正案に対して反対であります。  さいぜんも述べましたように、現在ただいま第三波ストが行われ、中小企業者の総蹶起大会が行われておるのであります。しかもこれを中心といたしまして、全国的に労働者並びに中小企業者、あるいは国民の大衆的な行動が全国津々浦々で行われておるのであります。これが実はアメリカの帝国主義者と吉田政府の最も恐ろしいところでありまして、この行動が、吉田政府の売国政策反対、あるいは日本のアメリカに対る植民地化反対が中心であるからこそ、吉田政府がこれに対する弾圧を極力目下準備中でありまして、その一つがさいぜんこの委員会を通過いたしました警察力の集中的な把握となつて現われておるのであります。政府はこの集中的に把握いたしました警察力を用いまして、今またこの大衆行動、大衆の実力行動を全面的に禁止せんとして出して参りましたのがこの法案であります。そもそもこの公安条例は、政府説明によりましても、実は占領中に占領軍の指示によつてつくられたものであるということは明白でありまして、もしも自由党あるいは政府の、講和が成立したということが事実であるとすれば、これは講和成立の日以後ただちにこれを撤廃され、あるいはその効力が喪失せねばならぬものであることは明白なのであります。ところが今自由党の賛成理由を聞きますと、この当然失効し、当然無効であるべき公安条例を、さらに全国的に統一するのがこの法案であるということを言つておりますが、これこそまさに、私は自由党の申しておりますところの講和が、見せかけの講和であり、自由党政策が完全に占領当時と同じであり、しかもさらにそれを一層強化しようとしておることが暴露されておると思います。すでに公安条例に対しましては、京都の地方裁判所におきまして、憲法違反である、かつ無効であるという判決が出ておることは御承知の通りでありまして、いまさらそれを、しかも講和成立後と称しております今日、全国的に押しつけようとしておりますことに対しましては、国民として断固反対せざるを得ないのであります。しかもさいぜん社会党の方からも指摘いたしておりましたが、当時占領軍の指示によつて命令によつて、全国的に公安条例を押しつけようといたしましたのに対しまして、現在まだ全国の自治体の何パーセントしかこれを持つておりませんので、明らかに全国の自治体は公安条例を不必要とし、これを拒否し続けて参つたことは事実であります。しかもこれを全国的な要望であるかのごとく捏造いたしまして、今この法案によつて、全国的な公安条例の統一をやろうということは、これまた国民の断固反対せざるを得ないところであります。  こういうふうに、この法案はその成立の過程においても、その意図においても、あるいは国民の意思を無視しておるという点においても、まつたく植民地的な弾圧法案であることは間違いないのでありますが、その内容を見ましても、これは非常に明白なのです。京都の公安条例の憲法違反の判決、それが許可制であるから、そういう違憲の判決が出たのだというふうに、形式的に事態を理解いたしまして、この出されました法案は、届出制というまつたく欺瞞的な形をとろうとしておるのであります。許可制ではなくて届出制だから、これは合法的であり、憲法違反でないという形をとろうといたしておるのでありますが、かかる形式的な粉飾は、法案の持つております弾圧的な本質と矛盾いたしまして、届出制をとりながら、実はたとえば補正命令、遵守命令というような命令を多数準備いたしまして、完全に大衆行動あるいは実力行動を禁止しようとねらつておることは、これはこの法案の性格から言いまして、あるいは吉田政府の売国政策から言いまして、けだし当然であろうと思うのでありますが、これは決して人民の許すことのできない問題であります。しかもこの取締りの対象になつております集団行進、屋外集会あるいはデモ行進、これは新しい民主憲法に、明確に基本的な人権として、日本の民主化の推進力として、侵すことのできない基本的な権利として規定されておるものでありまして、しかも憲法二十八条におきましては、特に労働者に対して団体行動の自由を明確に特別に規定しておるのであります。それに従いまして、労働関係法におきましては、この日本の民主化の基礎であり、働く者の基本的な権利である団体行動権に対して特に規定いたしまして、それを許しておるのであります。しかもそれら憲法あるいは労働関係法、そういうものの一切の規定をこの法案は無視いたしまして、すべての労働者の闘争、労働者の団体行動を禁止しておるということは、いかにこの法案が反動的であるかということを、私どもは指摘せざるを得ないと思うのであります。しかも政府与党はおそらくこの法案を通すでありましようが、この法案によつて二、三のデモあるいは集会は暴力的に禁止することはできるかもしれないと思うのでありますが、八千万全国民の愛国的闘争は、自由党がその売国政策を改めざる限りは、断じてとどめることができないということを断言いたしておきます。
  114. 金光義邦

    金光委員長 八百板正君。
  115. 八百板正

    ○八百板委員 私は日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、この集団示威運動等秩序保持に関する法律案に対して反対し、また修正案に対しても反対するものであります。  一番私どもが心配いたします点は、この第一条に定められました本法目的並びに適用が予想せられるのでございますが、この法律は、集団示威運動、集団行進または屋外というふうになつておりまして、一般的には屋外集会のみを対象として取締られるかのごとき印象を与えておりますが、この法律が独立して行われます場合におきましては、屋内集会といえども、その内容が集団示威の内容を伴う場合においては、この法律の対象となし得るという点が、非常に重大な問題であろうと思うのであります。集団示威というものは一体何であるかというと、いろいろあるでございましようけれども、集まること自体が威力を示すことであります。そういう場合が多いのであります。従つて屋内の集会といえども、集団そのものが威力を示すためのものであると認定せられ、しかもそれがややもすれば一方的に認定せられる、そういう場合においてこの法律の適用を受けるという事態があることを、私は非常に心配するわけであります。そういう点において、この法律は、その目的とするところが非常に不明確であるという点を、まず反対の第一として指摘しなければならないのであります。すなわち屋内集会も取締られるという場合が起るのではないか、これを妨げないというふうな危険が予想せられるという点であります。  それから第二条に、一般の慣例ということを申されておりますけれども、この一般の慣例について必ずしも公平に取扱われるという保障がない点を、私どもは心配する次第であります。係り警察官の判断によつて、従来もさような弾力ある運用が行われておつた場合が多いのでございますけれども、弾力ある運用は、好意的に行われる場合にはよろしいのでありますが、何らかの意図をもつてこれを悪用すると申しますか、そういう場合においては、憲法の保障しますところの集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由を、必要以上に拘束する場合が起つて来るだろうと私どもは心配せざるを得ないのであります。  さらにこの法律全体を通じて見ました場合に、この法律の体裁は、先ほど門司君によつても指摘せられましたように、届出主義をとつております。しかしながら、実質的には補正命令、遵守命令あるいはその他の命令によつて、事実上何らかの条件を付して命令をすることができることになつておりますから、極端な場合を考えてみますならば、その集会がいわゆる取締当局立場から望ましくないと考えた場合においては、あれやこれやと条件を付して、事実上その集会が行えないような、実質的に集会が禁止されるような状態に、この法律が運用せられる場合も決して予想するにかたくないのであります。しかも、ある命令を出す、聞かなければ制止する、解散するというようなことが逐次行われて行くということを考えますと、当局の目によつて好ましからざる集会は、事実上禁止せられるという実質的な結果が予想せられる点であります。  さらにまた、七十二時間を四十八時間に改められましたところの自由党修正と関連して考えて参りますと、七十二時間というものは、一体どこから出たものであるかということを、先日来質問等を通じて伺つておりますと、ある方は、これは便利であるからというふうに答弁せられております。便利であるということを考えますときに、非常に重大な点は、一体だれに便利であるかという点であります。取締る立場からだけ便利である、こういう考え方に立つて、七十二時間という時間が便利であるからといつて割り出されるといたしますならば、それは決して、いわゆる民衆のための警察という考え方ではなくして、警察のための民衆と申しますか、そういう逆な考え方に何かしら根拠があるのではないかというふうな感じがいたすのでありまして、特に取締る側の立場からだけの都合を一方的に考えて、こういう時間の制限を付するということは、実質的に必要以上に公共の安寧のために譲つてもらわなければならない事由以上に、單なる事務的な必要からそういう制限を一層強くするという危険が伴うということを、私どもは申し上げなければならないのでありまして、そういう点について考えて参りますと、届出主義をとりながら、実際上において許可主義となり、いじ悪くこれを使えば、ほとんど集会の禁止同様に使える。こういうふうになつて参りますと、もしそれこの運用のいかんによつては、昔の治安警察法以前に後退する危険が非常に多いと、私どもは指摘しなければならないのでありまして、そういう意味合いにおいて、県条例の部分的なものと比べますれば、進歩的な面が幾分かある部分もあるでございましようけれども、これが画一的な国の法律として決定せられるということを考えます場合に、以上申し上げました点について憂慮いたしますために、この集団示威運動等秩序保持に関する法律案に対しては賛成できない、反対であるということをはつきり申し上げまして、私ども立場を明らかにする次第であります。
  116. 金光義邦

    金光委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず吉田吉太郎君外五名提出修正案について採決いたします。本修正案について賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  117. 金光義邦

    金光委員長 起立多数。よつて修正案は可決されました。  次にただいま議決されました修正部分を除く原案について採決いたします。修正部分を除く原案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  118. 金光義邦

    金光委員長 起立多数。よつて修正部分を除く原案は可決されました。よつて集団示威運動等秩序保持に関する法律案修正議決されました。  この際お諮りいたしますが、ただいま修正議決いたしました両案に関する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。     午後二時三十三分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた〕