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1952-06-09 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第65号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月九日(月曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 野村專太郎君 理事 吉田吉太郎君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君       飯塚 定輔君    生田 和平君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    佐藤 親弘君       前尾繁三郎君    山本 久雄君       龍野喜一郎君    鈴木 幹雄君       藤田 義光君    大矢 省三君       立花 敏男君    八百板 正君       大石ヨシエ君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  柏村 信雄君  委員外出席者         参  考  人         (東京都特別区         公安委員長)  橋本 寛敏君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 六月九日  委員川本末治君及び小玉治行君辞任につき、そ  の補欠として山本久雄君及び飯塚定輔君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人より意見聽取の件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第二  一九号)  集団示威運動等秩序保持に関する法律案(内  閣提出第二三六号)     —————————————
  2. 金光義邦

    金光委員長 これより会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等秩序保持に関する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 金光義邦

    金光委員長 ただいま日本共産党立花敏男君より委員長を信任せずという、委員長不信任動議が出ております。御承知のように不信任案はあらゆる案件に先立つて審議することになつておりますので、私はこの席を譲りたいと思います。     〔委員長退席床次委員長代理着席
  4. 床次徳二

    床次委員長代理 私が委員長指名により暫時委員長の職務を行います。  立花君より委員長不信任動議が提出されましたが、警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等秩序保持に関する法律案について参考人より意見聽取のため、一時撤回する旨申出がありましたので、さようとりはからいます。     〔床次委員長代理退席委員長着席
  5. 金光義邦

    金光委員長 この際お諮りいたしますが、両法案につきまして、参考人として特別区公安委員長橋本寛敏君より御意見を承ることといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  それでは橋本参考人より御意見を承ることといたします。  この際橋本参考人に申し上げますが、本日は雨中かつ御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席くださいましたことに対し、厚く御礼申し上げますとともに、忌憚なく御意見をお述べくださることを希望する次第であります。東京都特別区公安委員長橋本寛敏君より御意見を承ります。橋本君。
  7. 橋本寛敏

    橋本参考人 私は東京都特別区公安委員長でありますが、ただいまは参考人をむだに待たせないためという理由で、特別のおとりはからいをしてくださいましたことに対して御礼申し上げます。意見を申し述べろというのでありますが、どんな意見を述べればよろしいのでございましようか。——警察法の一部改正法案についての私ども東京都特別区公安委員会の中の意見を申し上げます。  この改正案民主警察理念に反するという考えでありまして、少くともその一部については、私ども反対意見を持つております。どの点について反対意見を持つているかと申しますと、まず第一には、内閣総理大臣東京都特別区警察長、すなわち警視総監任免する権限を握るということは、民主警察趣旨に反するものであり、警察法前文に掲げてある趣旨に反するものだというような考えであります。
  8. 金光義邦

    金光委員長 それでは質疑を許します。質疑申合せによりまして、お一人五分以内におとりまとめを願います。八百板君。
  9. 八百板正

    八百板委員 東京都議会議長菊池民一氏の名前で、警察法改正反対に関する請願と題する意見が出ておりますが、これをちよつと読んでみます。「政府は、警察行政に関する内閣責任を明らかにするとの理由をもつて、急遽今国会に警察法の一部改正案を提案し、特に本都特別区の警察長たる警視総監内閣総理大臣任免制に改め、さらに特別区公安委員会に対する内閣総理大臣指示権を認めんとするに至つたことは、たまたま都内に発生した騒擾事件に便乗し、警察権を実質的に政府の手中に掌握せんとする暴案である。かかることは警察の公正かつ民主的なる管理根幹とする特別区公安委員会の機能を抹殺するものであり、ひいては民主警察の確立を目的とする警察法根本精神に矛盾し、地方自治の本旨に基く本都警察行政自主性を著しく侵害するものと断ぜざるを得ない。」こういうふうな意見が、おそらく議長という立場において出されたのだろうと思いますが、出ております。橋本さんはこの東京都議会議長の名によつて出されました意見に対して、どういう御見解を持つておられますか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  10. 橋本寛敏

    橋本参考人 ただいまの東京都議会から出されましたその声明でありますか、それと同じような考えを持つております。
  11. 八百板正

    八百板委員 それから全国自治体公安委員会連絡協議会会長淺尾新甫さんの名前において、決議書というものか出ております。この決議の内容を見ますると、ほぼ似ておりまするが、まず部分的に拾つて申しますと、こういう修正案民主主義理念を基調とする現行警察法根幹を否定し、中央集権的警察国家を復元するものと認められるので、政府原案反対し、五月十四日東京都における全自公連代表者会議反対決議を支持するものであるというふうな決議であります。なお修正意見として、警察長及び国家地方警察本部長官任免にあたつては、内閣総理大臣意見を徴する、こういうふうにしてはどうかという意見があり、さらに内乱、騒擾集団的破壊行為が発生し、または現に発生が予想される場合における運営管理にのみ、公安委員会に対する内閣総理大臣指示権を認められるというふうにしてはどうかという意見が述べられており、さらにそういう指示権を行使する場合の総理大臣諮問機関として、たとえば特別の公安審議会というようなものをつくつて行つてはどうかという意見が出ております。さらにまたその場合の費用の負担についても、一部は国庫において負担するよう地方財政法及び警察法の各一部を改正すべきであるというような意見もつけ加えてあるのでございますが、この全国自治体公安委員会連絡協議会臨時大会の決定に対しては、どういう御意見を持つておられますか、お聞かせいただきたいと存じます。
  12. 橋本寛敏

    橋本参考人 東京特別区公安委員会では、この決議と同調する考えを持つております。
  13. 立花敏男

    立花委員 橋本さんにお尋ねいたしますが、民主警察の建前上、警察法改正反対だと言われたのですが、民主警察ということをどういうふうに理解すればいいのか、承りたいと思います。
  14. 橋本寛敏

    橋本参考人 私ども警察法前文に掲げてあります事柄が、民主警察趣旨をうたつたものと理解します。
  15. 立花敏男

    立花委員 警察法前文には民衆に属する主権を組織するための警察法だというふうに書いてあると思うのですが、そういたしますと、警察の持つている権利は、人民管理に属しているものだ、そういう意味で、その組織なり運営なりに関しましては、人民がこれをやるべきである。従つて人民代表としての公安委員がやるべきである。しかるに今度は、政党の総裁であり、行政官である総理大臣がやろうとしている、こういうところに根本的な矛盾があり、根本的な反対理由があるのだというふうに解釈いたしてよろしゆうございますか。
  16. 橋本寛敏

    橋本参考人 そう私は思います。
  17. 立花敏男

    立花委員 そういたしますと、理念的には反対理由はわかつたんですが、現実の問題として、そういうふうに非民主的な警察になれば、どういうふうな不合理が生じ、人民がそれによつてどういう被害を受けるというふうにお考えになつておるか、それを具体的にお示し願いたいと思います。
  18. 橋本寛敏

    橋本参考人 今の御質問は、具体的に説明しろと言われるのでありますが、どういうふうに説明することが具体的であるか、ちよつと理解できないのでありますが……。
  19. 立花敏男

    立花委員 たとえば警視総監総理大臣が任命することによつて東京都の都民がどういう不便をこうむるか、あるいはどういう自由の侵害を受け、人権の彈圧を受ける危険があるとお考えになつているか、こういう点で当然予想される、そういう実害をお示し願いたいと思います。そうでありませんと、單に理念の上からだけ反対で、実害がないというのであれば、これはどつちしても同じですが、私どもは当然大きな実害考えられるし、むしろ理念の上より、実害の上で私たちは反対いたしておりますので、單に観念的な反対ではないわけであります。だからその点を責任のあるお立場から、どういうふうに考えておられるか、それをひとつ伺いたいと思います。
  20. 橋本寛敏

    橋本参考人 それは私どもよりも皆さんの方が、もつと前々からの日本警察のあり来りなどを御存じでありますので、なお私どもよりはつきりと御存じと思うのでありますが、答えろとおつしやられれば申すのであります。戰争前のいわゆる警察国家といわれた時代と、戰争後においてその制度が改められた今日とを比較いたしまして、かつてつたような状態になるのであろう、こういうのが私どもの概念であります。
  21. 立花敏男

    立花委員 そういうふうに理念的にも実際の上でも、これは不当であるということは明白なんですが、公安委員のあなたですら、そういうふうにはつきりと御認識になつているものを、なぜ政府が強行しようとしているのかということについて、御意見がありましたら、ひとつ伺いたいと思います。
  22. 橋本寛敏

    橋本参考人 それについてはわかりません。
  23. 立花敏男

    立花委員 ここは言論の自由なところでございますし、あなたも責任のある公安委員という、国民代表としての地位にあられるので、忌憚のない意見をお吐きになるのが、それこそ民主警察を確立する基礎になるのではないかと思いますので、勇敢にひとつ発言を願いたいと思います。
  24. 橋本寛敏

    橋本参考人 勇敢に申すと申しましても、そうでもあろう、こうでもあろうというようなことを言つても、これはしようがないことでありまして、ただかつて日本状態と今日の状態を比べてみれば、かなりいろいろの点において違うことは、これは一般の国民の常識として明白であると思うのであります。私にそのこまかなことを申せとおつしやつても、長々と言いましても、下手な長談義になりますから、これは申さない方がよろしいのじやないかと思うのであります。
  25. 立花敏男

    立花委員 あえて答弁を求めません。下手な長談義でも言つてもらえばいいのですが、やはりそういうところに、警察ほんとうに民主化しない原因があるということを、御自覚願いたいと思います。  それから最後に聞いておきますが、これはこの間からこの委員会で問題になつておりますが、警察の持つております武器が、一体どこから警察が入手して来たのか、一体日本国家のものであるか国家のものでないのか、こういうことが明白でないわけです。こういう問題についてどうお考えになつているか。それから、この問題は公安委員会の重大な問題の一つだと私は思いますが、先ほどから言つておりますように、人民のための警察をおあずかりになつており、しかもその警察官の持つておる武器が、一体どこのものか、どこから来たのかわからないということでは、公安委員会としてもこれにお困りになるのだろうと思いますが、その問題をどういうふうにお考えになつているか承りたいと思います。
  26. 橋本寛敏

    橋本参考人 どうも、二、三日前になつたということを申し上げまして申訳とするのは、まことに心外でありますが、私数日前に公安委員長になりましたので、あるいは公安委員に選ばれましたのも、二箇月前のことでありまして、その武器と申しますか、警察官の装備がどこから発生したかなどということについては、まだ知つておりません。そういう問題が、なるほどそれは意義のあることであるというようなことを、今あなたの御発言によつて知つたようなものでありまして、今後調べてみようと思いますが、今ちよつと考えましたところでは、どこから来たかというよりも、一体そのものが確かにいいものであるか、使えるものであるかどうであるかということが、一番大切なことのように私は思つておるのでありますが、しかしそれがどこから来たかという、その理由をただすというようなことなども、またいろいろの意味意義があるものだとすれば、そういうこともまた興味ある問題でありますから、今後調べてみようと思つております。きようはこれくらいに……。
  27. 立花敏男

    立花委員 公安委員長は、この問題はやはり公安委員会の問題として、十分究明する必要があるとお考えになつておるのかどうか。知らないとおつしやつておられますが、知らないままで公安委員としての職責が果せるとお考えになつておるのかどうか。私はこのピストルがよいピストルであるか悪いピストルであるか、これが人が殺せるか殺せないかということは、問題じやないと思います。ピストルが非常にりつぱで、人がどんどん死んでおるということは実証されておりますので、これは公安委員長にためしてもらう必要もないと思うのですが、そういう恐しい武器がだれの手から、どういう径路で警察官の手に渡り、それがどんどん公然と、白晝使われておるのかいうことが、私はむしろ公安委員会としては問題じやないかと思うのです。
  28. 橋本寛敏

    橋本参考人 そういうようなことは、私どもこれまで考えていなかつたことでありますが、ピストルは確かに不発しないでいい弾丸を飛び出させる、そういう武器でありますから、そういうことは、これは大切なことだと思つておりますけれども、どこから来たかなんというようなことは、尋ねただすことについて、興味を感じておりませんでした。(「興味じやない、責任だ」と呼ぶ者あり)それでもしあなたのようなことをおつしやる方があるとすれば、そういうこともやはりこれから調べておく必要がある、そういうふうに思います。     〔「責任を持つてやれ」と呼ぶ者あり〕
  29. 金光義邦

    金光委員長 静粛に願います。
  30. 橋本寛敏

    橋本参考人 それで今後それについて勉強します。
  31. 金光義邦

  32. 門司亮

    門司委員 私はきわめて簡單に、今の警察法と違います集団示威運動のことについて、ちよつとお伺いしたいと思いますが、この法律によりますと、七十二時間前に届出をして、そして二十四時間前にいろいろなことを公安委員会が示唆する、こういうことになつております。実際上の示威運動秩序をどうするかということは、非常に問題でありまして、同時にまた治安関係からいえば、当然公安委員会としては、何らかの方法で、事前に知つておきたいということも、私は公安委員会立場からいえばいえると思います。従つて問題になりますのは、この七十二時間前に届出をして、そして二十四時間前に示唆しなければ、どうしてもこういうものについて、公安委員会としては処理ができないかどうかということです。端的に言いますと、私はこれは届出だけでもよいじやないか、あるいは十二時間前でも、あるいは六時間前でも、どこでどういうことがあるということさえわかればいいじやないか、それ以上のことは必要がないじやないか、というような考えを持つておりますが、七十二時間前でなければ悪いというようにお考えになつておりますか。
  33. 橋本寛敏

    橋本参考人 その問題は、二日前か三日前かという問題でありますが、やはり簡單な場合もあり、込み入つた場合もありますので、三日すなわち七十二時間の方が便利であると考えております。
  34. 門司亮

    門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますのは、七十二時間ということになりますと、実際の運営の上においては、いろいろ私ども立場からいうと支障ができるわけであります。たとえば一つの工場で争議があるといたしますと、その争議の人間をどこに集めるかということが、なかなか問題であります。従つて普通の場合でありますると、会社の講堂を使うとか、会社のどこかを使うということもできると思いますけれども争議の場合等は、場合によりましては会社の中にもちよつと入りにくいということもありまして、いやがおうでも屋外集会をしなければならぬこともあります。そういう場合に経過等の報告もしなければならぬので、緊急の事態が必ず起ると思う。そういう場合に三日前に届出なければできないということになりますと、事実上の会合はできない、こういうことになると思うのであります。われわれの立場からいうと、そういう不便が出て来ます。この辺をどういうふうに調和すればいいかということについて、お考えでもありましたら、お聞きかせ願いたいと思います。
  35. 橋本寛敏

    橋本参考人 これはそうあらねばならぬというよりも、むしろその方が便利であるというふうに理解しております。
  36. 門司亮

    門司委員 もう一つは、この次の問題の、二十四時間にいろいろなことを示唆するということであります。二十四時間前に示唆を受けるということになつて参りますと、しかもこの法律によりますと、人員制限したりあるいは場所変更したり、こういうことになります。屋外集会をしようといたします場合には、大体ポスターや何かで一応宣伝もいたします。それからこの中に二つのものが含まれておりまして、先ほど申し上げましたように、限られた範囲の人を集めるということ、これは割合によくできると思います。ところが限られた範囲でありましつても、たとえば労働組合が、メーデー等のごときになりますると、幾つかの労働団体にこれを知らせなければならない。さらに人員制限されるということになりますると、またこれも一応集まつて話合いをしなければならないということになつて参りまして、二十四時間前ということになりましても、示唆された時間によつては、なかなか話合いができないと思う。ことに場所をかえるとか、あるいは人員制限するとかいうことになつて参りますと、事実上の運動ができない、こういうことになりはしないかと思う。従つてこの二十四時間前というのに対しては、そういう不便が出て来ると思いますが、これに対してどういうお考えをお持ちになつているか。
  37. 橋本寛敏

    橋本参考人 今の御質問は、二十四時間ではおそ過ぎるから、もつと早く許可をすればよろしいというか、二日前に届出て、その日に即刻その届出を受けたということを知らせればいいというお考えですか。
  38. 門司亮

    門司委員 よくのみ込めないようですから、もう一応お話をいたしておきますが、先ほど申し上げましたような非常な不便がありますので、もう一度端的に申し上げますと、これは届出だけでいいのに、事実上の許可制でありますから、許可になつて参りますと、そういう問題が出て参ります。従つて届出制なら届出制だけでいいのでありますが、この二十四時間前に示唆するというのは、事実上二十四時間前の許可制であります。法律條文には届出と書いてありますが、実際上の運営においては許可制ということがはつきりしている。従つて二十四時間前の許可制では法律にごまかしがあるのでありまして、われわれとしてはこれでは困る。届出なら届出だけでないと、さつき申し上げましたような理由で、実際上の運動もできなければ、集会もできないということになると思いますので、公安委員長の御意見としては、これは届出だけで処置ができるものじやないかと私は考えておりますが、やはり二十四時間前の許可制にしなければならないというお考えであるかどうか。
  39. 橋本寛敏

    橋本参考人 これは許可ではないのでございまして、届出を受けたということを通知するわけでありましようが、もし危険なもの、公安に害のあるものであつたならば、注意をするとかなんとかいうことがあるといたしますと、やはり何かそういうような方法によらなければならないのではないかと思うのであります。
  40. 門司亮

    門司委員 私がそういうことを聞いておりますのは、二十四時間前に指示を受ける事項といたしましては、ここに書いてありますように「当該集団示威運動等の開始若しくは終了の日時若しくは実施場所変更を命じ、又は参加人員数制限を命ずることができる。」こう書いてありますので、たとえば日を変更することができるということになりますと、なかなか容易なものではありません。それから同時に時も変更することができる、実施場所変更を命ずることができる、こういうことになつておりまして、しかもこれには「実施場所変更を命じ、」と書いてあります。これは明らかな許可であります。相談することでも何でもない、命令するということであります。従つてここにこういう字句を使つております以上は、これが許可制でないとはどんなことがあつても言えないと思います。さらに参加人員制限も命ずることができると書いてある。これは明らかに許可制であります。この許可制で、法文には前段において七十二時間前に届出をする、そして二十四時間前にこれを許可するというのが、この法律の正しい解釈だと思います。従つて許可制ということになつて参りますと、事実上さつき申し上げましたような運動はできない。それから時日変更するということになつて参りますと、これも非常に大きな問題であります。御存じのように、示威運動というものはただ單に無計画に行うものではございませんで、一つのものに関連いたしまして、たとえば破防法にいたしましても、これの反対示威運動をするにしても、やはり効果的に考えれば時日が非常に問題であります。法律が通つてしまつたあとで、示威運動をやつてみてもしかたがありません。従つて示威運動をやるについては、時日変更ということは非常に大きな問題であります。こういうものを命令できめることができる、命ぜられるということになつて参りますと、事実上できないということであつて許可されても、それが効果のないようなときに許可されたのでは、しようがありません。従つて実際上はこれの禁止規定にひとしいようなものだと、われわれは極端に解釈すると、そうなりますが、どうしても命令でなければいけないのですか。話合いというわけには参らぬのでしようか。
  41. 橋本寛敏

    橋本参考人 これは許可という文字は使つてないのでありますが、危険な場合にはかえろと注意して命じるわけであります。先ほどから伺つておりますと、届出たらそのままにして、すぐもらつた言つて帰して、そのままでいいじやないかというお話でありますが、そうすれば公安委員会なんというものはあつてもなくてもいいので、どういう性質のものだかも調べもしないで、ただ受取つた、さようならというのでは、私どもはあつてもなくてもよろしいということになると思います。やはり時を要して、少くとも一日くらいは考えてみまして、ほんとうにこれは有害か有害でないかということを考えまして、それからいただきましたということを返事をするわけであります。
  42. 門司亮

    門司委員 どうもあなたの意見と私どもの物の考え方がちよつと違います。私どもは、憲法で規定されておりますように、一切の自由は許されていると思います。しかし社会の秩序というものは保持しなければならないということから考えて参りますと、公安委員の方で、自分の管内のどこでどういうことが行われておるか知つておく必要はあると思う。ことに最近のように社会的にこういうごたごたがあると困ると思いますが、そういう問題の起るようなことがどこで行われているかということを知らないというわけには行くまい。従つてそれを知つていさえすれば、あと警察の方の取締りの関係もありますし、いろいろなことで処置できるのじやないか。ところが事実上はこれは命令である。「命じ」と書いてあります以上は命令に違いないのであります。従つて許可制であるということに間違いはないのであります。この許可制にしなければならぬということになつて参りますと、公安委員考え方が非常に公明である人がおいでになれば、それでいいのでありますけれども、少しわれわれの考え方と違つた人がおいでになるということになると、なかなかスムースに行かぬと思う。そうなつて参りますと、どうしても非合法の運動に流れやすいと思う。非合法の運動に流れて参りますと、取締りはなかなか困難になつて来ると思う。かえつてそういう弾圧的な法律が非合法を助長するような形にならざるを得ないということが、私は今の現状だと思う。そういうことについてひとつ御意見を承りたい。
  43. 橋本寛敏

    橋本参考人 私はまつたくずぶのしろうとでありまして、私が公安委員になつておりますのは、国民の常識と申しましては口はばつたいのでありますが、常識あるいは国民の感覚と申しますか、大多数の国民の感覚、常識というようなものを警察の活動に反映させたいと思つて精進しておるのであります。従つてどういう運動が起るかということがありましたときに、努めて弾圧というようなこととほど遠いような形をもつて、それを親切に取扱おうと思つて、私たちは公安委員なつたのであります。しかしそれにもかかわらず、ただめくら判を押すと申しますか、ただ受取つて、はいといつたようなことでは、私どものせつかく公安委員なつたその責任を全うしないと思うのであります。従つてある時日をかしていただきまして、そうしてなるほどいいといつて、その受取つた通知をするというのが、いいのではないかと私は思うのであります。
  44. 金光義邦

    金光委員長 藤田委員
  45. 藤田義光

    ○藤田委員 橋本さんがずぶのしろうとと言われまして、現在の警察法趣旨からも、ずぶのしろうとの円満な常識を警察運営に反映したいというところから、警察官の前歴のある人を委員から除外しております。そういう観点から私はきわめて常識的な問題を二、三お伺いしたいと思うのであります。  まず第一は、世界各国の首都警察を見ますると、ほとんど全部国家警察でございます。ところがわが国におきましては、完全な自治警察になつております。東京の自治警察というのは、世界共通の事例に対しまして、まつたく特異な状態でございます。ところが先般青木国家公安委員長も、どつかの新聞へ書かれておりました通り、警察法改正する以上は、民主主義を守らなければならぬ。国際間の誤解を起すような警察制度をつくつてはいかぬ。それから破壊活動、暴力行動等に対して十分対処し得るような警察制度でなければならぬというようなことを述べておられましたが、まつたくその通りでございます。ところが東京の治安は、御存じの通り全国的治安の中心でございます。在外公館も多数ございます。またここには国民の象徴たる天皇もおられるし、いろいろな観点からして特殊な治安態勢が必要でございますが、せつかく特別区の公安委員長になられました橋本さんは、警視庁の性格と申しますか、能率的な運営に関して、現状のままでいいとお考えになりますか。たとえば世界各国の共通の態勢である国家警察に移行いたしまして、首都警察というものを確立した方がいいというふうに考えられておりますか。この点はしろうとのお考えの方が、私は正確な結論が出るのではないかと思いますのでお伺いいたします。
  46. 橋本寛敏

    橋本参考人 それではしろうとの感覚を申し上げますが、世界各国の、ロンドンはどうか、どこがどうかということをいいましても、そういうところはみな歴史的の成立ち、伝統があつて、そういうふうになつておると思うのですが、わが日本は世界に類のないような憲法までつくりましたので、世界の他の首都と同じでなくても、民主主義というものが徹底すればよろしいと思います。     〔委員長退席、吉田委員長代理着席〕
  47. 藤田義光

    ○藤田委員 世界各国の例をとる必要はないということは問題の重点ではございません。実際上警視庁の運営が現在の完全なる自治体でいいかどうか。一、二の例をとれば、東京都議会に予算の審議をお願いして、いわゆる東京都予算の一四%のわく内で、今後の首都の治安の完璧を期し得るかどうか。あなたは自信を持つておられるか。
  48. 橋本寛敏

    橋本参考人 その点ならば、お答えが非常にたやすいのであります。今日のような状態で、全国的のいろいろの事件の一部の現象が東京に現われた。全国の人口の約一割は東京に集中しております関係上、それからまた外国との関係も密である。そういう意味東京というものは、特別の意味がある。従つて東京に起ります事件は、また多種多様であり、必ずしも一般の地方の都市の警察とは意味の違う事件がたびたび起る。従つてその警察活動に要する費用というものは非常に多いものである。従つてそういうようなものは、ただいま平衡交付金というものがあつて、いくらか国庫の負担の部分もあるそうでありますが、こんなことではいけない。やはり東京警察が非常に活動しましたならば、そこには国庫から多額の金が支給される、そういうのが健全なる行き方じやないかと私は思つております。
  49. 藤田義光

    ○藤田委員 そこでお伺いしますが、国庫から多額の金をとりたいという委員長の御意見でございますが、公安委員会の行政管理の中心は人事と予算でございます。予算を国家に大半仰ぐということになれば、当然公安委員会の性格というものが、自治的なものから国家的なものに移らなければならぬ、国家警察でけつこうではないかという結論が出て来るのでありまするが、その点はどうでしようか。
  50. 橋本寛敏

    橋本参考人 いろいろな事件が起るからその活動したときには、つまり国家全国としての問題が起つたために活動することが多いから、その部分は国庫の負担にしてもらいたいが、そのほかにある警察をすべてお譲りしてしまうということは、ひさしを貸しておもやをとられるというのでありますか、それと同じようなことではないか。東京ではそういうような国家として対策を講じなければならぬような事件は起るけれども、毎日々々普通の警察が取扱うような、自治警察が取扱つた方が最もよろしいものがたくさんあります。それまでもすつかり返上してしまう、そういうことは、せつかくこういう世の中になつたのに、それではいけないではないか、そういうふうに感ずるのであります。
  51. 藤田義光

    ○藤田委員 これは警察法の前書きの趣旨でありますし、民主主義イデオロギーを尊重することは、もちろん最も必要なことでございます。ところがイデオロギーを強調する余りに、かんじんな行政運営ができない能率が全然上らない。一番重大な治安の目的を達せられぬというようなことになつては、イデオロギーのために大目標を失つてしまうという結果になるのじやないかと思います。委員長は就任されて早々おわかりにならぬかもしれませんが、現在の警視庁の幹部の陣容を見ていただきたい。これはまたく澁滞してしまつて、人事交流は、国警と現実の話合いでできるというようなその場限りの答弁もございますが、実際上は全然できません。ほとんど例外的に交流しております。ところが国家警察は、全国的に網を持つておりますから、なるべく優秀な人材がほしいという自治体の警視庁に対しましては、ややもすれば第二次、第三次級の人物を交流しやすいということは人情の常でございます。この点からしましても、予算だけでなく、人事の面からしましても、首都警察にふさわしい、いつもフレッシュな感覚で、帝都の東京の治安をやれるような人事態勢を確立しなければ、おそらく橋本さんもお困りになるだろうと思います。あと一箇月、二箇月されましたら、この人事の澁滞問題は、あなたの現在の警視庁に対する構想を相当かえるほど、深刻な影響をあなたの気持に與えるのじやないかということを、私は憂慮しております。東京の警視庁を国家警察に移管することによつて警察国家である、あるいはまた民主主義のイデオロギーに反した機構の改革であるという印象は受けないと思います。先ほど来あなたも言われております通りに、東京は特殊ないろいろな犯罪が起きる。ほかの都市とは違うということを、あなたも是認されておる。だからこの際もう一回、以上につきましてあなたの意見を聞いておきたい。
  52. 橋本寛敏

    橋本参考人 問題は人事の問題について有能な、才能のある人が来ない、国家警察との交流がないというようなお話でありましたが、実際において私が公安委員になりました後でも、国警との交流が大分ありました。そうして私今警視庁の幹部であります人々とも親しく接しておりますが、私自身としては、決して二流の人物などとは思つておりません。首都警察警察官の指導者として、適当な人たちがあると思つております。そこで人間が不適当であるとかというのは人事の問題でありまして、それだからといつて、ただちに今度は制度をすつかり改めて国家警察にさえすれば人物が集まつて来る、そうは決して言えないと私は思つております。今のままでも、人事交流の問題はすでに始まつておることでありますから、ことに東京はだれが見てもはなやかなところでありますから、有能な人が集まる可能性があると思います。国家警察でなければ有能な人が来ない、そうは言えないのじやないか。ことに今日のような時代になりましたならば、そういうことは言い得ると私は思つておるのであります。ただこれは私の考えでありますので、別にあなたの御意見に対して、特にさからうというようなことはございません。
  53. 藤田義光

    ○藤田委員 よくわかりましたが、実は橋本さんは本業がお医者のようでございまして、行政官庁の雰囲気は、私の方が多少詳しいように、今の答弁から印象を受けました。東京ははなやかなところだから、優秀な人物が集まるというようなお話でございましたが、現実は警視庁に人物を整備することに、おそらく警視総監もかなり苦労しておるだろうと私は思つております。ただ私の質問に対しまして、多額の国費がほしい、それから東京では特殊な犯罪が起る、そういうことはお認めになつたようでございます。現在の完全自治体の警視庁を堅持したいという委員長の結論のようでございますが、しかし今後この問題に関しまして、おそらく委員長も御勉強になるだろうと思いますが、現在の警視庁の人事態勢等を至急把握されまして、いま少しく人事問題等には深刻な観察をしていただきたいと最後にお願いしまして、私の質問を終ります。
  54. 橋本寛敏

    橋本参考人 いろいろと御親切な御忠告ありがとうございました。これからも勉強いたします。
  55. 床次徳二

    床次委員 同僚委員から質問がありまして、ただいま警察官の人事の問題もありましたが、元来公安委員会自体におきまして、先ほどお話がありましたように、本来しろうとの公正な判断によつて警察行政に關與するということになつておりますが、やはり帝都のごとき特殊なところに関しましては、公安委員の中にも相当専門的経験者を置いておくことが便宜じやないか。今日までは技術的なことはむしろ警視総監側の方から聞かれて、それを材料に公安委員会は判断しておるわけですが、公安委員自体が専門的な知識を持たれましたならば、なお一層公安委員としての能率が上るのではないかと思いますが、今日の建前におきましては、法律上にその制限があるのでありますが、この点に関しましていかようにお考えになりましようか。多少法律改正等を希望して、公安委員の内容をかえ得るようにしたらいいというふうにお考えになりますかどうか、伺いたい。
  56. 橋本寛敏

    橋本参考人 この問題につきましては、今のお話がありましたけれども、実は私ども公安委員会では問題になつておりません。私どもの方の公安委員会で問題となりましたことは、公安委員は弱体だといわれるが、なるほど弱体だ。だからそれを強化せねばならぬ。それにはどうしたらよいかというと、三人では足りないから、もう二人ふやしてもらつたらよかろうということは、私ども公安委員の中では申しておりましたけれども、その他については言われなかつたのであります。これは私、公安委員長としてでなく、公安委員の一人として私の意見をここで述べることをお許しいただいて申し上げるのでありますが、先ほど申しましたが、公安委員国民の健全なる感覚を警察活動に反映する、そういう意味で私はなつていると申し上げましたが、やはり公安委員の機能というものは、相当大きいもので、責任が重いのでありますから、その場合に警察の活動というものに対して専門的の判断ができないようなものばかりそろつてつたのでは、これはやはりいけない。すべてがそういう人になつてはいけないかもしれませんが、たとえば五人のうち一人とか二人とか、三人であつたら一人とか、今日公安委員となる資格に、いろいろな制限がありますが、そのうち公務員であつたとか、兵隊であつたとかいうことよりも、大切なのは、かつて警察職員であつた人、その前歴を持つた人が——それが支配してはいけないけれども、少くともある数あるということはきわめて必要なことで、そうでなければ、まつたくしろうとの判断だけになつてしまうと私は思うのであります。その点は今度の警察法改正に問題にならなかつたのが、不思議だと私自身は思つております。どういうわけでありますか、公安委員というものに重い任務を與えておきながら、その機能、性格というものをごく弱めてあるというのが、かつて警察法であると思うのでありますが、その点において私はただいまの床次さんのお話は非常に傾聴すべきものだろうと思つております。
  57. 吉田吉太郎

    ○吉田委員長代理 橋本参考人に対します質疑はこの程度にいたしまして、両法案について政府委員に対する質疑を続行いたします。質疑があればこれを許します。
  58. 門司亮

    門司委員 さつき私は橋本さんにもお伺いした点でありますが、これにははつきり「命じ」と書いてありますので、私はこれは命令だろうと解釈してさしつかえないと思います。同時にこれに反したものに対しては処罰の規定があります。従つてこの法律の中で今の問題については当局はどうお考えになつているか。これは二十四時間前にそういう命令を発することができるというふうに、私は解釈するのでありますが、当局のこれに対する解釈をこの際お伺いしておきたいと思います。
  59. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは命令であります。
  60. 門司亮

    門司委員 命令ということになりますと、これは許可制ということに解釈してさしつかえないと思いますが、それでよろしゆうございますか。
  61. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 許可制ということになりますと、そういつた集団示威運動を全面的に許すか許さぬかという総括的な権限を持つわけでありますが、これは届出制でありまして、さような権限は持たないのであります。集団示威行進は届出の通りにできるだけ原則としてやらせる。ただやるについて、あるいは同じ場所を二つの団体が時刻を同じゆうしてやるというような届出をして来るとか、あるいは非常に危険の生ずるおそれのあるような状態で行われるというような場合には通路を変更するとか、あるいは凶器その他を持つて来ないようにというような、そういう制限的な命令は、これは治安保持上やむを得ないと考えております。
  62. 門司亮

    門司委員 今のお話でありますが、今事例をあげられた点等は、あるいはそういうことが考えられるかもしれない。しかし先ほどから申し上げておりますように、示威運動には時期と方法がかなり大きい影響を持つものでありまして、時日変更されるということになつて参りますと、その機能はまつたく失われるような形が出て来る。従つて今の齋藤長官のような御答弁ならば一応うなずける点もありますけれども、この字句をこのまま解釈いたして参りますと、きようやりたいというのを、あさつてにしてもらいたいというのでは、これはどうにもならなくなる。実際に運動はこれで非常に大きな制約ができる。それから問題になるのは命令の尊重でありますが、ここにいろいろなことがずつと例示されておる  「危険物の携帯の制限又は禁止に関する事項」というものがあつて、そうしてこういうものに対してはこれを命令によつて遵守させる、こういうことでありますが、これは何も遵守命令というような字句を使わないでも、許可條件といいますか、届出をする場合にはわかり切つた問題でありますし、それから同時に届出のことを書いておりますので、その條文の中にこういうものはちやんと入れておけばいいことであるし、同時にまたこれは常識的な考え方で、こういうものの取締りといいますか、遵守ができると思う。それをここに補正命令と書いて、そうして補正命令を出されて、その中で補正命令に対してはこういうことをすることができるということであつて、これは遵守命令と書いてありますけれども、実際は遵守命令ではなくして、これがほんとうの補正命令の一番大きな問題であります。補正命令の中におきましては、こういうことはあまり書いておらない。ただ単に時間的制約だけを一応規定しておるのであります。そうして遵守命令のところに、こういう実際上の命令権に所属する時日変更あるいは場所変更参加人員変更というようなものを非常に強く書いてある。これは法律の建前から申し上げましても私は少しおかしいと思う。実際はこの問題はさつきから申し上げておりますように、明らかに許可制であつて届出制というのは、これは間違いだと思うが、当局はこれでもどこまでもやはり届出制だというようにお考えになつておるかどうか。
  63. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 命令だと申しましたけれども、しかしそれはこの條文にもありますように、公衆の生命、身体、自由または財産に対する直接の危険を防止するため必要やむを得ない範囲に限られておるのであります。従つて集団示威運動等は、もちろん届出によつてよろしいわけでありますが、そのやる形態、それらに応じてこういうような危険を来さないように、最小限度必要な命令は、私はどうしても必要だと考えたのであります。当然わかり切つたような事柄すら、法律で禁止しておけばいいじやないかというお話でございますが、たとえば普通の集団示威運動の場合に、旗その他大きなものを持つて来てもさしつかえがないというような場合もありますし、周囲の情勢によりまして、大きな旗をたくさん持込むということは、非常に危険をかもすという場合もあるわけでありますから、むしろその事態によつてつた方が私は親切ではないか、もし法律にこういう事柄はやれないと事前に書いておきますと、やつてもさしつかえのないような場合にまで、その制限を受けざるを得ないことになるおそれの方が私は多い、かように考えられるのであります。
  64. 門司亮

    門司委員 今の答弁でありますが、それは私は少し行き過ぎだと思います。何もそこまで考えなくても、主催者の方がかりに不便だとあれば、不便なものは主催者自身がやりませんし、ものの考え方が非常に大きな食違いを来しておると私は思う。この集団の示威運動というものは、やる方から考えて参りますと、なるたけ効果のあるようにやるということでありまして、従つてその示威運動が特殊の考え方を持つておるものは別でございますが、普通の常識で考えて参りますと、その示威運動をやつたことにおいて、それがマイナスになるようなことは、私は示威運動をやる主催者は、そういうばかなことは考えないと思う。当然示威運動がやはり効果のあるように考えて行われると私は思う。従つて私から考えて参りますと、今の長官の御答弁は少し親切過ぎる答弁であつて、もう少しこれは自主性にまかしておいていただきたいと思う。それからさつきから私が聞いておりますのは、理由書の中に「届出の制度を確立するとともに、」こう書いてありますが、実際はこれは許可制であつて、法文自体をずつと見て参りましても、届出制を確立するということはどこにも書いてない。ただ「(届出)」と書いて、そうして届出の中からこういうものは除くということだけが書いてある。その次は届出の手続が書いてある。その届出は七十二時間前となつている。そうしてこれが最後に来て、その次には届出の受理ということが書いてある。届出の受理が行われて、その次に補正命令が出る、その次に遵守命令が出る、こういうふうに順を追つて書いてありまして、この一番最後には結局二十四時間前に許可をする、こういうような形で出ております。従つて届出の制度を確立するという提案理由の説明と、実際は非常に違う内容を持つた法律だというように私は考えますので、こういうことを聞いているわけですが、それならもう一つ具体的にさつき公安委員長橋本さんにお伺いをいたしましたことと同じことでありますが、事実上場所変更される、あるいは日にちが変更されるということになつて参りますと、齋藤さんの答弁では原則としては許可することが原則だというが、われわれは届出制である以上は許可をすることが原則だと思う。ところが実際上はこれか禁止規定になる危険性を多分に持つている。しかし禁止規定になる場合は、きようやりたいというのが、きようはさしつかえがあるからあしたにしてもらいたい、きようはどこそこにこういう会合があるから、それとこれとがぶつかつて困るから、あしたにしてもらいたいということになる。ところが示威運動をやる方は、どうしてもきようでなければならないという。この食い違いがあつたときにはやはり命令である以上は優先すると思う。そうするとこれは事実上の禁止であります。従つて考え方によつて禁止規定考えてもさしつかえないと思う。そういうことになり得るかどうかということを、一応御答弁を願つておきたい。
  65. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たとえば同じ場所で違つた団体が同じころにやるというような届出がありました場合には、やはりこれはどうしてもどちらか話合いによつて一つの団体にやらせるしか道がないと私は思います。従いまして話合いがつきませんときには、やむを得ませんから、あとに届け出た方を場所をかえるか、あるいは時間をかえるかという命令を出すしかしかたがないと私は思います。
  66. 門司亮

    門司委員 ただいまの齋藤さんの答弁でありますが、あととか先とかそういうことを言つておるわけではありません。同じ場所でありましても、届出を受理しておる以上は、当然届出が来た場合には、その場所にはこういう届出があるということを考えなければならぬ。これが親切な態度でなければならぬと思う。従つて七十二時間前には届出せいということは、私はこういうような場合整理が必要だと考えておる。従つて七十二時間前というのは、そういう理由がこの中に入つておると思う。それが少くとも二十四時間前の命令を遵守しなければならないというところにひつかかつては、これは私は少し筋が違うと思う、届出したときにそれはわかつておるはずであります。前にこの場所にはこういう使用者があるから、その場所変更してもらわなければならないということがわからなければならない、これが二十四時間前までわからないということになつて来ますとどうなるか、これは明らかに選択制であつて許可制であります。  それからもう一つ具体的に聞いておきたいと思いますことは、先ほども申し上げましたように、争議や何かの場合に、緊急やむを得ざる場合に、七十二時間前に届出のできないことが事実上あると思う。そういう場合の取扱いは、この規定では一体どうなつておりますか。
  67. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さきに述べられました通り、七十二時間前はまさしくそういつた折衝の時間がどうしても必要である、その方がスムースに行えるという意味から、七十二時間前のことは考えておるのであります。七十二時間前に届出を受け、警察とその団体あるいは団体相互の間でいろいろ話しあつて、納得ずくでやつてもらうということが一番望ましいと思つております。しかしどうしても納得ができぬというときには、やむを得ない最小限度において命じなければならない。それも今やるという直前に命じたのでは非常に御迷惑でありますから、少くとも一日前に命じておくという考えをとつておるのであります。  それからお尋ねの急に必要が起つて来たという場合につきましては、公安委員会の定めるところによつて除外を何らかの方法でやる、それ以外には道がないのであります。ただ具体的な計画ができませんでも、一応七十二時間前に届け出てもらつて、そしてあとで詳しく届出の補正をしてもらうとか、あるいはそれを変更してもらうということによつてやるしか道がないと思います。この公安委員会の除外のできる範囲の中に、今おつしやいましたような形のものをできるだけ考えて、何らかの方法で不便を来さないようにいたしたいと考えております。
  68. 門司亮

    門司委員 非常に抽象的な答弁でありますが、公安委員会の権限にまかされておりますものは第二條に書いてあるものであつて、六号に「前各号に掲げるものの外、公安委員会届出を要しないとして指定するもの」と書いてあります。従つてそういう規定はこの二條六号の中に当てはまらぬと思う。それは先ほどから申し上げておりますように、一般の常識で、こういう社会の一つの行事として行われるものとは少し性質を異にいたしております。ことにストライキその他の問題になつて参りますと、一般の社会の儀礼的に行われます集団の行列などとは、少し趣を異にいたしておりますから、必然的にこの法律のできた趣旨に合致する取締りを受ける団体になると思う。従つてさつきのお話のように、それらの団体があとから届出すればいいということになりますけれどもあとから届け出ていいということになると、やはりその規定をこの中にきちんと設けておくべきではないか。そういたしませんと、これがたてにとられて参りますと、御承知のようにこれには罰則がくつついております。命令を聞かない場合には、懲役に行かなければならないとか、罰金をとられなければならないということになつておる。しかも情を知つて参加した者は全部二千五百円の罰金になつておるので、これは集まつた者が全部二千五百円の罰金をとられるというえらいことになると思う。ストライキの場合は緊急やむを得ざる場合であつて、私は必ず集まると思う。これは情を知るとか知らないということだけではなくて、必要性に応じて労働者は集まると思う。そのときにこの規定が適用されて、お前たちはかつてに集まつた、未届けの集会だというので二千五百円の罰金をとられたら、どえらいことになると思う。だから私がさつきから聞いておりますように、もしこういうものが必要だとするならば、やはりそれらの規定を明確にしておかないと、これでは事実上労働運動ができないという、労働運動の取締り——弾圧という言葉を使えば悪いというお話ですが、弾圧という言葉を使わなくても、非常に強度な取締りの法律だと考えておりますが、そういうふうにお考えにならないか。これでいいというようにやはりお考えになつておるかどうか。
  69. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほどから御心配になつております、たとえば労働争議やなんかの場合に、急にどこかに集まりたいという場合のことは、ごもつともだと思います。ここで届出を必要といたしますのは、公共の場所における屋外集会でありますから、さような場合に公共の場所でないところでありますならば、その工場の構内が狭い場合には、他の大きな工場の構内を借りられるというようなことであれば、私はでき得るのじやないかと考えております。
  70. 門司亮

    門司委員 公共の場所という字句は非常に広範囲に使われるのですが、公共の場所とはどういうものをさすかということを議論すれば、幾らでも議論ができると思う。公共の場所ということは法律の中にいろいろ書いてありますけれども、実際上の定義というものがはつきりいたしておりません。たとえば私有地であつても公共に提供されている場合には、これはやはり公共の場所である。たとえば一つの広場の所有者はだれであるかわからぬが、公共の場所という解釈をすれば、あるいは解釈ができないとも限らない。従つてこの解釈はむずかしいのであります。この公共の場所ということについても、私はちやんと原稿には書いて来て十分聞こうと思つているのですが、この場合の公共の場所というのは、一体どういうものをさして言つているか。
  71. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この公共の場所は、一般の公衆の使用し得るところというように考えております。従いまして、たとえば新宿御苑のごとき、一般の公衆があそこへ入つて集まるという場合には、公共の場所でありますが、あそこを借り切つてしまつて、一般の者は中に入れない、特定の者だけしか中に入れないということになつて、そして管理者がその席におるということになりますと、これは公共の場所ではなくなつてしまうのであります。
  72. 門司亮

    門司委員 そうすると、こう解釈してよろしゆうございますか。たとえば会社の私有地があつて、グランドがあるという場合に、このグランドはある程度までは開放されている。しかし所有は明らかに会社のものであるという場合には、これは一体公共の場所ということで行つていいか悪いか。
  73. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 会社の専用のグランドで、ふだんのときには一般の子供やなんかが来て、そこで遊んだりベースボールをやることを認めているところを、今日は一般の者は出入り禁止だということで、会社の者に使わせるということになれば、これは公共の場所ではなくなるのであります。
  74. 門司亮

    門司委員 この公共の場所の解釈は、今のお話では非常に漠然といたしておりますが、そういうことになつて参りますと、もう一つ私は聞いておきたいと思う。それだとすると官公労の場合は非常にひつかかると思います。たとえば役所の広場ということになると、明らかに公共の広場であります。だれが何と言つても、そういう場合は明らかにそれに含まれることになると思います。たとえば市役所なら市役所の従業員の諸君が屋外で集まるという場合——これは現在集まつておりますが、そういう場所では絶対にできないということになると思う。こういうように解釈してよろしゆうございますか。
  75. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その場合に、管理者がその官庁の中庭に対して、官庁の職員以外の者は全然入れないという措置をとれば、そのときには公共の場所でなくなります。
  76. 門司亮

    門司委員 せつかくの答弁ですが、私はそういうことは事実上できないと思う。役所の広場あるいは役所の庭先であります以上は、一般の人を入れないということはなかなかできないと思う。そういうことは簡単に行われる筋合いのものではないと思う。従つてわれわれから考えて参りますと、この公共の場所の解釈というのは非常にむずかしいのでありまして、単に一般の公衆に迷惑をかけないというなら、まだ話がわかるのでありますけれども、公共の場所ということだけで指定されて参りますとそういうものが出て来る。ことに官公労などは公共の場所以外に集まる場所がなかろうと思う。各私営の会社でおりますれば、会社所有のグランドがあつたり、あるいは会社の柵の中でやつたりということもあるいは可能かもしれぬ。しかし一般といたしましては、官公労等のごときにおきましては、そういつた措置は完全にとれないと思う。集まろうとすれば、必ず公共の場所以外に集まる場所はないと思う。今の齋藤さんの御答弁のように、一般の人を入れなければいいということになると、これは非常に大きな問題だと思う。それについては私の考え方では、一般に迷惑をかげないのであれば、どこで集まつてもさしつかえないではないかというように考えるが、やはり齋藤さんはさつきの御答弁のようなお考えのことを主張されるかどうか。もう一応聞いておきたい。
  77. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は門司委員と同じ考えに立つておりまするから、そういうように申し上げております。この目的は一般の公衆に直接迷惑をかけないということを目的にしておるわけでありますから、従つて役所の中庭でありましても、公衆の出入りをとめてやるというのであれば、私は公共の場所と見る必要はないと考えております。従つて役所の構内で、役所の職員だけが大会をやる、その際に、一般の人たちの通行できないような措置をとるということであれば、私はさしつかえないと思います。
  78. 門司亮

    門司委員 それならこの條文にそういうことをはつきり明示しておきませんと、これはやはり問題を起すもとだと思います。公共の場所だからいけないということになれば、どうにもならなくなる。これ以上今日は私は質問いたしませんが、この問題について委員長にお伺いしておきたいことは、さつきの公安委員橋本さんのことをどうというわけではありませんけれども、経験の非常に薄い橋本さんの御意見だけでは、観念的な議論はできますが、実質的の集団示威運動の問題については、私ども少し聞き足りないような気がしますので、委員長においてしかるべき経験のある人を呼んでいただきたいと思います。
  79. 吉田吉太郎

    ○吉田委員長代理 午前中はこの程度で、午後は二時十分から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  80. 金光義邦

    金光委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等秩序保持に関する法律案の両案を一括して議題といたします。質疑を許します。立花君。
  81. 立花敏男

    立花委員 土曜日の本委員会で問題になりました警察の所有する武器についての問題ですが、あのとき、木村法務総裁と国警の谷口次長との発言の間に、重大な食い違いがありました。その問題がはつきりしない間にこの委員会が散会になり、しかも本日もその問題が取上げられないわけなんです。その意味におきまして、重大な問題が疑問のままに委員会が進行し、しかも警察法委員会を通過するということにつきましては、私どもとしては納得できませんので、そういう委員長の取扱いに対しましては、信任できないという意思表示を本日の朝の委員会で出しましたわけですが、たまたま警察法に関する法案あるいは集団行為の取締りに関する法案についての参考人が見えられておりましたので、それだけは聴取しよう、あとで問題を解決しようという意味で、一旦撤回いたしましたが、依然として解決の具体的な方法委員長から明示されないわけです。私どもとしては、このままにほうつておくわけには行かないわけです。委員長はこの問題の重要性をいかに認識しておられるかということを承ると同時に、この問題をどういうように解決なさろうとしておるか、あるいは政府の方との交渉の過程はどうなつておるのかということを、十分承りたいと思うのです。問題の重要性についていいますと、警察が使用しております武器につきましては、警察官等職務執行法によりまして、一般的な規定がありまして、それに基きまして国家地方警察基本規程の中に、ピストルと警棒だけは規定してありますが、その他の武器たとえば催涙ガス等については、何ら法的な規定がないわけです。だからそれがいかなる法的根拠に基いて用いられておるのかという問題と、もう一つピストルの問題ですが、ピストルを一体政府はいかなる経路でいかなる手続を経て、現在警察に使用せしめておるのか。谷口次長の答弁によりますと、これは占領中に占領軍から借りておつたものだと言つておりますし、木村法務総裁は、これは国家の所有物であるということをはつきり言つておられる。どちらが一体正しいのか。木村法務総裁の言うように、現在の警察で持つておりますピストルが、国家の所有物であるとするならば、いかなる経路で、いかなるアメリカとの協定によつてそれを国家の所有物にし、またそれをいついかなる形で、国民あるいは議会の承認を得られたか、またその代価については一体どうなつておるのか、こういうことを明確にされない限りは、この問題はやはり疑問として残るわけであります。しかも現在私どもが審議しております警察法とは重大な関連がありまして、警察官の持つ武器の問題であり、しかも現場ではその武器を用いまして、どんどん警察日本国民を射殺しておる現状におきましては、この問題は当然国民の関心の的にならざるを得ないと思うのであります。その問題がそういう形のままに、不明のままに、この委員会警察法が通過いたしますことにつきましては、私どもは絶対反対なんです。その点をどういたしましても、警察法が通過いたします前に、明確にしていただきたいと思うのですが、これに関する委員長の取扱い方針並びに委員長政府と交渉されました、政府のこの問題解明に対する態度、これを具体的にお示し願いたい。
  82. 金光義邦

    金光委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  83. 金光義邦

    金光委員長 速記を始めてください。  理事会を開きたいと思いますので、そのまましばらく休憩いたします。     午後三時二十二分休憩      ————◇—————     午後三時二十三分開議
  84. 金光義邦

    金光委員長 休憩前に引続き再開いたします。立花君。
  85. 立花敏男

    立花委員 谷口次長がお見えのようですが、御存じのように、土曜日にああいう木村法務総裁の発言があり、それとまつた反対なあなたの発言があつたわけです。その統一がどういうふうにその後政府の中でできたかどうか、その点をひとつ御答弁を願いたい。
  86. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先般の本委員会で、催涙ガスが武器であるかどうかという点と、現在使用しておりまするピストルの入手のいきさつ、現在その所有権がどうであるかというお尋ねがここであつたと思います。催涙ガスにつきましては、これは武器であるかないか、若干の疑問の点がございまするが、われわれのただいまの解釈といたしましては、これを武器と解釈いたしまして、警察官等職務執行法に基いて使用する、いわゆる使用の限度をしぼつた方がよかろうというので、一応武器と解釈をして、あそこに許される範囲の使用をいたされております。それからピストルにつきましては、御承知のように、これはアメリカから貸與を受けて今日まで至つております。そこで講和條約発効後その関係がどうなつておるか、かように考えますると、法務総裁は日本の方に所有権が移つているであろうというお考えで、御答弁をされたように聞きましたが、この点はまだはつきり所有権が移つておるというところまでは、実際問題といたしましては至つておりません。依然法律上はなお貸與を受けておるという形だと解釈をするのが正しいであろう、かように考えます。さように政府の見解が相なりましたから、私から訂正をいたします。
  87. 立花敏男

    立花委員 それでは木村法務総裁が、ピストル日本国家の所有物であると申されたのは、明らかに間違いであると言われるのですか。
  88. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ピストルの中には、日本政府の所有物あるいは自治体警察それ自身の所有になつておるものもございます。しかし法律上は依然貸與の形だというのもあるわけであります。アメリカから当時貸與を受けておりましたピストルにつきましては、日本に所有権を移したという正式手続は、ただいままだとられていないと御了解をいただきたいと思います。
  89. 立花敏男

    立花委員 私は初めから日本が費用を出し、日本政府が購入いたしましたものについて、質問いたしておるのではありませんので、あなたの言われましたそれ以外のアメリカから貸與を受けておるものの問題になると思う。で、それが木村総裁がそういうものも日本の所有物であると言われたのが間違いである、それはあくまでもまだ貸與のままである、講和後においてその所属は不明であると言われるのか。それから、そうであれば、私はやはりこの問題は、木村法務総裁自身の口から出た問題でありますから、しかも木村法務総裁が治安の最高の責任者なんですから、木村法務総裁から、自分の言つたことのお取消しを願いたいと思う。
  90. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 法務総裁はその点思い違いをしておられたので、私がかわつてこの席で申し上げたような次第であります。
  91. 立花敏男

    立花委員 大体話はわかつておりますが、しかしそれはあくまでも齋藤国警長官は警察の一事務官僚にすぎないので、やはり政治的な責任というものは、木村法務総裁がはつきり言明なさるべきだと思うのです。私はあなたの言われることは了承いたしますが、木村法務総裁自身のはつきりした御答弁を承りたいと思うのです。  それから催涙ガスの問題ですが、催涙ガスにつきましては、催涙ガスを使つていいという規定は、どこにもないわけなんです。で、警察官等職務執行法に基きますところの国家地方警察基本規程の中には、武器といたしまして「けん銃又は警棒」五といたしまして「捕じよう又は手錠」あるいは三といたしまして「警笛」、「警察手帳」、「鉛筆又は万年筆」、こういうようにこまかく規定してあるのでございますが、遺憾ながら催涙ガスはないわけなのであります。催涙ガスをどういう法的根拠でお用いになつておるのか。単に武器が使えるというこの警察官等職務執行法の漠然たる規定では、一体何を使つてもいいのかという問題になるわけであります。土曜日も私が指摘いたしましたように、土曜日の朝日新聞では八十一ミリの迫撃砲を今度は予備隊が持つということを報道しておりますが、予備隊は明らかに警察の補助部隊なんで、警察の補助部隊が一体どんな武器を持つてもいいのか、それは何ら法的に規制されないのかという問題が出て来るわけなんです。この問題をどうお考えになつているか。国民といたしましてはこれはまことに重大な問題なんで、人民に奉仕し、人民に対する公務員であるところの警察官が、人民の知らない武器をかつて使つて、そうしてそれもどこか、外国から正式な手続を経ずに、いわば密輸入のような形でどんどん武器が輸入されまして、それが人民の生命を奪う、人民の弾圧に使われるということになりましては、これはまことに大問題です。これでは法治国とは言えないわけなんです。特に警察は官吏の中におきましても、人民の生活、生命に対する重大な職務を執行するのですから、それに対する規定は非常にこまかく規定されておるべきであります。たとえば拳銃の取扱い等につきましても、こまかく取扱い規定は、警視庁といたしましても細心の注意を払うような規定ができているようなわけなんですが、そういうことが全然なしに催涙ガスあるいはその他の武器が用いられるということになりますと、これは大問題だと思うのですが、この点どうお考えになつているか、ひとつ承りたいと思います。
  92. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察武器を使用することができる、武器を使用し得る場合は、これこれだということを規定しておりますのは、御承知の通りに警察官等職務執行法という法律で規定をしておるのであります。そこでそこにいう武器範囲いかんということになると、これは法律には範囲を限定していないのであります。従いまして法律上の解釈ということになりますると、いかなる武器でも使用できるのじやないかということに現実になつておるわけであります。しかしながら警察といたしましては、火器としては現在ピストル以外は使わないということにいたしておるのであります。ピストルの使用規定は、これは国警本部におきましては、私の訓令に基きまして、最小限度の使用方法によつて、目的を達成するように訓令をいたしておるのであります。催涙ガスにつきましても同様であります。催涙ガスは、催涙ガス筒及び防護マスク保管並びに使用規程というものをつくりまして、それによつてつておるのであります。従つて法律ピストルを使う場合はどうであるとか、あるいは武器ピストルに限つておるというような制限はないわけであります。しかしながら警察の目的を達成するために、最小限度のものであるべきことは、これは当然でありまするから、現在実際問題といたしまして、ピストルとそれから催涙ガスを使つておるわけであります。催涙ガスは先ほども言いましたように、武器であるかどうか、これは非常にむずかしいと思います。しかしながら武器と解釈をすれば、その使用の方法制限をしなければなりませんから、警察官等職務執行法によつて、われわれも一応武器と解釈して、狭い範囲で使用しようということになつております。これは社会通念上武器に入らないということになるならば、いかなる場合にどんな使用をしてもよろしいということに法律上はなるわけでありますから、われわれはむしろこれを狭く解釈したらよかろうということで、武器の範疇に入れて解釈をしておる、かように申し上げておきます。
  93. 立花敏男

    立花委員 催涙ガスが武器でないというようなことは、これはまつたく問題にならないことなんで、催涙ガスは一種の毒ガスであるということは明白です。毒ガスが武器でないということになると、原子爆弾もこれは武器でないということになりまして、催涙ガスが武器であるかどうかということを、いまさら問題になさる長官の頭脳を私は疑わざるを得ない。これは明らかに武器なんです。それは明らかに国民にメーデーの人民広場で実現をさせて見せた。これは国民の知るように、催涙ガスが武器だということは明白です。しかもそういう武器を単にあなたの訓令一本で警察官がどしどし使用できるということになりますと、これは国民にとつては重大問題である。警察官が現在のような反国民的な運動を起します場合に、その警察官の使います武器が、単に事務官僚にすぎないあなたの訓令一本で、どんな武器でも使えるということになりますと、これは重大問題だと思うのですが、その点に矛盾をお感じにならないかどうか。きようの午前中の参考人である東京都特別区の橋本公安委員長にこの問題を尋ねましたが、知らぬと言つておる。人民に奉仕する警察、それを確保いたしますために公安委員長は議会で選ばれて、指名されて出て来ておる。ところが公安委員長警察武器がどこから出て来ておるか知らぬ、どういう武器を持つておるのかも知らないということでは、警察が持つておる武器警察官自身が、かつてに何を使つてもよいという結果にならざるを得ないと思う。そういうことでは国民は安心しておれません。そういう警察は決して民主警察ではないと思います。警察が真に民主警察であります以上は、国民が納得し、国民警察官に使うことを許した武器でなければならないと思います。その点はどうですか。
  94. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は催涙ガスは警察官等職務執行法の武器と解釈いたしまして、そうしてその使用につきましても、私はあの法律の中で認められた範囲のものだと考えます。
  95. 立花敏男

    立花委員 齋藤さんの今の御答弁ですが、警察官職務執行法によつて武器が許されておるから、訓令によつて何を持たせてもよいということでありますが、私はそうではないと思います。だからわざわざ国家地方警察では国家地方警察基本規程というものをつくつて、その中で武器をはつきり規定しておる。ところがその中には催涙ガスは入つていないように思うのですが、催涙ガスだけは訓令で使用しておるということになりますと、警察官等職務執行法による武器は、国警長官の個人の訓令によつてこれはいくらでも拡張できる。どういう武器でも使えるということになりますので、この点は国民としては不安きわまりなしということを言つておるのですが、その点はどうですか。
  96. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 基本規程で武器を規定しておるとおつしやいますが、先ほど読み上げられましたのは、こういうものは警察官は必ず携帯しておらなければならないというのでありまして、武器の種類を規定しておるわけではありません。おあげになりました警笛だとか、警察手帳だとか、そういうのは警察官は持て、拳銃も一緒に持てとこう書いてあるだけであります。それから催涙ガスについても、これは私個人の命令でも何でもありません。
  97. 立花敏男

    立花委員 それでは催涙ガスを使用してよいということは、どこから一体だれが命令を出したのですか。それからそういたしますと、あなたの御答弁によりますと、それでは警察は現在の法規の範囲ではいかなる武器を用いてもかまわないというわけですか。
  98. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 法律上はさように相なります。それから催涙ガスの使用については、これは公安委員会及び政府の意向も聞き、規定の上では私の訓令の形で出しました。
  99. 立花敏男

    立花委員 だからあなたの、国警長官の訓令一本で警察はどういう武器使つてもよいということになるではありませんか。
  100. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 拳銃といえどもこれは法律でも、何でも、どこにも使つてよろしいという規定はないのであります。
  101. 立花敏男

    立花委員 だからあなたの言つておられることは、国警長官の訓令一本で、どういう武器使つてもよいということに現行法の範囲ではなるということに、言われるのかどうかの問題なんです。
  102. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 法律上はさようであります。
  103. 立花敏男

    立花委員 それでいいと考えておられるかどうか。
  104. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さしつかえないと考えます。
  105. 立花敏男

    立花委員 それでは国民は納得できないわけなんです。どういう武器警察使つてもいい。しかもそれを国民の承諾なしに、公安委員会の承諾なしに、ましてや議会の承諾なしに、警察がどういう武器使つてもいいというようなやり方は、納得できないということを言つておる。だからこの問題は、あなたは元凶なんだから、あなたに聞いてもしかたがないので、これはあくまでも政治的な問題として、治安対策の問題として、私は法務総裁にはつきりした御答弁を願いたい。
  106. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この問題は、この委員会で、それからこの国会におきまして、警察官等職務執行法を御審議の上、御通過になりましたその法律に基いて、われわれは執行いたしておるのであります。
  107. 立花敏男

    立花委員 その法に不備があるから、しかもそれが実害として出て参つておるから、特に五月一日のメーデーのようなああいう問題が起つて参るし、それ以後どういう武器を使われても、国民は黙つていなくちやいけないという状態が出て来たから、われわれは問題にしておる。法律がきまつておるから、それで何をやつてもいいということにはなりませんので、そういう問題だから、私は木村法務総裁に承りたいと申しておるわけであります。
  108. 金光義邦

    金光委員長 この問題につきましては、後刻理事会に諮りまして、さらにまた政府質疑を続けて行きたいと存じますから、さよう御了承願います。
  109. 立花敏男

    立花委員 それを具体的にひとつ……。委員長のさいぜんのお話では、大体あさつて午前中に木村法務総裁の出席を求めて、おやりになるということだつたのですが、具体的にひとつ確言をしておいていただきたい。
  110. 金光義邦

    金光委員長 水曜日の午後でも、さような質疑を行うとりはからいにいたしたいと考えております。八百板正君。
  111. 八百板正

    八百板委員 午前中集団示威運動等秩序保持に関する法律案についての質疑が行われましたので、私はまずこの方を先にお尋ねいたしまして、あとでまた警察法の一部を改正する法律案について御質問いたしたいと存じます。集団示威運動等秩序保持に関する法律案のまず第一條に関しまして明らかにしていただきたいと存じます点は、この秩序保持に関する法律は、屋外集会のみを対象としておるかどうかということを、はつきりしていただきたいと思います。
  112. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第二條に明瞭に書いてございますように、集団示威運動につきましては、公共の場所であるかどうかを問わない。しかしながら集団行進と屋外集会は、公共の場所におけるものに限つておるわけでございます。従つて普通の屋内集会は、全然規制の対象にしておらないというわけでございます。
  113. 八百板正

    八百板委員 屋内における普通の集会は対象にしておらないが、いわゆる集団的な示威的内容を含む集会については、屋内といえども屋外といえども、これを対象にする、そういうふうにお考えでございますか。
  114. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 事実問題として、屋内の場合の示威運動ということはあまりないと考えますが、公共の場所以外において、すぐ外にあふれ出るような危険性があるようなものについては、規制する必要があると考えておるわけでございます。
  115. 八百板正

    八百板委員 屋外であるか、屋内であるかということは、はたして屋とは一体どういうものであるか、固定した建造物をさすのであるか、あるいはにわかにつくつたテント張りのようなものであつてもよろしいのか、あるいはそこからはみ出す部分とのいろいろの関係がありまするか、ここで明らかにする必要があると存じまするのは、いわゆる集団示威運動というものは、必ずしも屋外でなくとも、屋内においても威力を示すための集会ということはあり得るわけであります。従つてこの第一條の法律をこのままに適用されまするならば、一般には屋外集会に対してのみ適用されるような印象を與えておりまするが、この文字をそのまま解釈して行きますれば、「この法律は、集団示威運動、集団行進又は屋外集会」云々とあるのでありまするから、「屋外集会」云々は、この後の方にかかつて参るのでありまして、集団示威運動には屋外という言葉がかからないわけです。ということになりまするというと、屋内の集会であつても、そのものが内容上示威的内容を持つものであるということになりまするならば、届出を要するというふうな解釈が、この條文からは生れて来る可能性があるわけであります。そういう点についての取扱いを明確にする必要があるというのが、私のお尋ねする点であります。
  116. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 集団示威運動で屋内において行われるものにおきましても、集まつた者以外の一般の大衆に対して気勢を張る行為は、ここにいう集団示威運動に入ると考えておるわけでございます。
  117. 八百板正

    八百板委員 そうしますると、屋内において行われまする集団示威は、大体において直接の危険を及ぼすものとは解しがたい場合が多かろうと思うのでございます。しかしながらその屋内における集会であつても、その示威が何らかの形においてほかの方に力を及ぼすようなものであると認定した場合には、やはりこの法律の対象になる、こういうことになりますると、要するに屋の内外を問わず、示威的内容を含む集会については、この法律の適用がある、こういうことになつてしまうだろうと思うのでありまするが、そうなりますると、この法律は一般の集会にも、やがて屋の内外を問わずあらゆる集会に対して、何らかの示威的内容を持つものとして、この法律が適用せられるということになつて、全集会に及ぼすということになる危険が非常に多いと思うのですが、こういう点、もう一ぺん明らかにしていただきたい。
  118. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、集団示威運動につきまして、屋内のものはほとんど事例がないのではないかと思います。しかしながら、たとえば広い道路に面した屋上等においての示威運動というようなもの、あるいはすぐに外からもはつきりと見られる、しかもその示威運動のものが外にすぐに直接の影響を及ぼす危險があるというようなものもあり得るというふうに考えておるわけでありまして、多くの場合は、公共の場所でなくても、屋外で、公共の場所に非常に近いというようなものの示威運動を規制する必要があるという見解から、この規定を設けたようなわけであります。ただいま八百板さんのお話のように、この規定によつて、将来あらゆる屋内集会までも規制するというようなことには、絶対にならないと考えておるわけでございます。
  119. 八百板正

    八百板委員 そうしますると、屋内集会、主として会場内における集会については、内容において若干の示威的な性質を持つものであつても、それはこの適用の対象にはならない、こういうふうに解してよろしゆうございますか。
  120. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 大体御意見の通りと考えております。
  121. 八百板正

    八百板委員 この集団示威運動等秩序保持に関する法律をつくるにあたつては、東京都の條例等も参考にせられておると思うのでございまするが、東京都の條例を見ますると、御承知の通り、東京都條例第四十四号の集会、集団行進及び集団示威運動に関する條例の第六條には、「この條例の各規定は、第一條に定めた集会、集団行進又は集団示威運動以外に集会を行う権利を禁止し、若しくは制限し、又は集会、政治運動を監督し若しくはプラカード、出版物その他の文書図画を検閲する権限を公安委員会警察官警察吏員、警察職員又はその他の都吏員、区、市、町、村の吏員若しくは職員に與えるものと解釈してはならない。」第七條、「この條例の各規定は、公務員の選挙に関する法律に矛盾し、又は選挙運動中における政治集会若しくは演説の事前の届出を必要ならしめるものと解釈してはならない。」、こういうふうな規定があるのでございますが、この都條例の今読み上げましたような精神は、この中にどういうふうに具体的に取入れられておるかを明らかにしていただきたい。
  122. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第六條の規定は、これは申すまでもない規定だと考えて、特にここに明記をいたしておりません。第七條の規定につきましては、第二條の但書の規定によりまして「公職選挙法による選挙運動として行われるもの」については、何ら規制をしないということにいたしておるわけでございます。
  123. 八百板正

    八百板委員 それと関連いたしまして、たとえば国会報告、時局批判等の演説が随時街頭において行われる場合があり得るだろうと思うのであります。その場合の集会の様相が、おのずから集団示威の形体をとることも、場合によつてはあり得るだろうと思うのでございますが、そういうふうなものも同様の届出の規制を受ける、こういうふうに考えるわけでございますか。
  124. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話になりましたような一般の演説会につきましては、この規定によつて規制をする必要があると考えております。
  125. 八百板正

    八百板委員 それから「一般の慣例」という言葉が使われておりますが、一般の慣例と申しましても、なかなか明瞭でない場合が多いだろうと思うのであります。「冠婚葬祭その他これに類する行事」で、一例を申し上げまするならば、宗五郎神社の祭礼だとか、あるいは山本宣治の祭りとかいうものもありましようし、組合その他の団体の創立を記念するための祭典、あるいはメーデーなども考えられるわけでございます。それから従来の有名な大将というような人のためのお祭り、あるいは労働運動の犠牲者をまつるための祭典等、いろいろな場合があるだろうと思うのでありますが、そういう場合についてどういうふうな区わくを考えられておりますか、この点も、もう少し明らかにしていただきたい。
  126. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この「一般の慣例」と申しますのは、社会通念的に考えて、慣例として行われておるものという程度の意味でございます。特定人についてのみ行われる行事でない、こういう意味でありまして、一地方に限つて行われるような慣例であつても、これはさしつかえないと考えております。
  127. 八百板正

    八百板委員 たとえばメーデーのごときは、いわゆる労働者の祭りとして、一般の慣例として長年にわたつて行われておるものでございますが、おそらくこの法律の対象に考えておられるだろうと思うのであります。しかしながら今お話のような考え方をもつて参りますならば、いわゆる労働者の祭典としてのメーデーも、これまた一つの一般の慣例として、そのわくの中に入るものだと考えることもできないことはないと思うのでありますが、そういうふうな点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  128. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第二條の但書の一号にありますように、「冠婚葬祭その他これに類する行事で一般の慣例として行われるもの」というふうに規定せられておりますので、メーデーのごときはこれに該当しないと考えております。
  129. 八百板正

    八百板委員 やはりお祭りという意味においては、労働者のお祭りと解することができるだろうと私は思うのでありますが、この問題については論議をしてもしようがありませんので、次の点についてお尋ねいたします。  第二條の四に「学術研究」という言葉がございますが、学術研究という場合には思想的な研究発表と申しますか、そういう方面のものも含むと考えてよろしいかどうか、單なる学術研究の発表と考えるのか、明らかにしていただきたい。
  130. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 四号におきましては「もつぱら学術研究、体育、競技、」云々のみの目的で、行われるものという規定になつておりますので、もつぱら学術研究のみの目的で行われるものが、これに該当すると考えております。
  131. 八百板正

    八百板委員 学術的な研究であつても、やはりもつぱら思想的な学問の研究の発表という場合も、あり得るだろうと思うのでございますが、そういう場合に一般的な思想発表の集会と、科学的な——科学的なと申しても技術的な方面の学問的な研究の発表と、これを両方同じような扱いにして、学術研究ということを考えておられるかどうか、この点もう一ぺん明らかにしていただきたい。  それからあとの方に、「興業又は商業宣伝のみの目的で行われるもの」とありますが、この「興業」というのは、たとえば青年団、婦人団あるいは社会事業団体その他の寄附金を集めるためのいろいろな興業、こういうものとの関連は、どういうふうにお考えになつておられるか、この点もあわせて明らかにしていただきたいと存じます。
  132. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 学術研究はもつぱら学術研究という意味でありまして、ある思想の発表演説会というような点につきましては、すべて言論の発表というものが思想を通じて行われるわけでございますので、そう広い意味ではなくて、もつぱら学術研究のみの目的ということに限定されておるわけでございます。  また興業と申しますのは、必ずしも営利のみを目的としたものと狭く解する必要はないと考えております。
  133. 八百板正

    八百板委員 次は第三條の点について少しお尋ねしたいと存じます。第三條の中には時間について七十二時間という限定がありますが、時間ということになりますと、随時届け出られたものが受理せられるものと考えてよろしいと思うのであります。執務時間等の関係上、いろいろ時間の食い違いが出て来る場合があるだろうと思うのでございます。従つてこの七十二時間という時間は、執務時間に関係なく、夜中でも届出の意思表示があつたならば受理しなければならない、こういうふうに考えて、万事この時間を計算してよろしいかどうか、この点をひとつ伺いたい。
  134. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この七十二時間はそうした執務時間のいかんにかかわらず、単純に七十二時間という考えでございます。
  135. 八百板正

    八百板委員 第四條の関係について少しお尋ねいたします。この場合に主催者の方の責任について、主催者が集会への示達が困難な場合が起り得るだろうと思うのであります。そういう場合はどういう取扱いを受けることになるのでありましようか、主催者とそれを現に行つておる者との伝達関係であります。警察の場合にはたしか掲示してよろしいなんという規定が、どこかにあつたと思います。直接相手方に通達困難な場合には、見えるか見えないかわからない掲示板に掲示しただけで、効力が出るというふうな取扱いをしておりますが、一方主催者の方でもそういう困難の場合があり得ると予想されるのでありますが、そういう場合にも同様に機械的な意思表示をしただけで足りるのか、相手方に通達が困難な場合の取扱いを、どういうふうにやつて行くという考えであるか、この点を明らかにしていただきたい。
  136. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今の点につきましては、第六條の遵守命令等の趣旨の徹底などに該当する場合だろうと思いますが、こういう場合は主催者においてできるだけ誠意をもつてしていただくということで、できないものにまで遵守命令を徹底させなければならないというようなことにはならないと思います。従つて道義的な意味におきまして、「周知させ、且つ、遵守させるため必要な措置を講じなければならない。」ということにいたしておりますが、これについては何らの罰則の規定は設けておらないような実情でございます。
  137. 八百板正

    八百板委員 次に第五條の関係でございますが、第五條の関係において、公安委員会が不在と申しますか、いない場合には権限の行使を警察官もしくは警察吏員に委任したり、あるいは委任を指定することができるというような規定がありますが、いないときは事務局において処理するというような規定でございますが、この場合には、「指定して、前項の規定による権限の行使を委任することができる。」という、指定というのはその都度指定するというのですか、それとも常時委任をすることができる、こういうような考え方に立つておるのでございますか、この点をお伺いしたい。
  138. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 公安委員会がたとえば全部欠員であつたというような場合の処置の方法につきましては、各公安委員会において、公安委員会が成立しない場合、緊急を要するときにはどういうふうにするとか、あるいは公安委員会が集まる余裕がないときはどうするというようなことは、各公安委員会ごとにそれぞれ規定を設けておられるわけでありまして、公安委員会が事実上存在しないような場合の措置は、そういう各公安委員会のきまりによつて運営せられるべきだと思います。ただいまお尋ねの公安委員会がこの法律実施について必要な権限の行使を委任するという場合についても、具体的にこの集会においてこういう行為を委任するという場合もありましようし、この集会については警察長に委任するというようなことも、公安委員会のきめ方によつてあり得ると存じております。
  139. 八百板正

    八百板委員 そうしますと、その事項を明らかにして、その事項に限つて委任するというふうに考えてよろしゆうございますか。
  140. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 大体具体的にその事項を限つて委任すると了承いたしております。
  141. 八百板正

    八百板委員 事項を明らかにしないで、常時ずるずると委任した状態のもとに、その事務の処理をまかして行くという、そういう状態はあり得ないし、あつてはならないと考えてよろしゆうございますか。
  142. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは好ましくないと存じますが、公安委員会によつてこの法律実施に関する権限のみならず、各種の公安委員会に與えられておる権限を警察署長または警察官吏に委任するやり方は、公安委員会によつてきわめて区々たるものがありますので、そういう慣例にのつとつて適当に公安委員会においてきめていただきたいと考えておるわけでございます。
  143. 八百板正

    八百板委員 いろいろこまかい点もございますが、一応この法案の関係の質疑は、この程度にとどめまして、警察法に関する件をお尋ねいたしたいと存じます。  まず警察法の一部を改正する法律案について、最初にお伺いをしたいと存じます点は、これは警察の方にお尋ねしては、少し筋が違うかと思うのでありますが、内閣責任ということをこの中によくうたつておるのでございますが、この内閣責任というのは、非常に漠然としております。大体政府のいう最終責任というのは、一体どういうことをさしておるのか。どうもこれは警察の方にお尋ねしても、少し筋違いかと思うのでありますが、ついででございますから、そちらの方の御見解を伺つておきたいと思います。
  144. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 政府は一般の行政について最終責任を持つという建前になつておりますので、警察についても同様に最終的な責任は、政府が当然持たなければならない、こういう前提に立つておるのであります。
  145. 八百板正

    八百板委員 政府責任というものを政治的に考えますと、治安が撹乱されるような事態の起つたことも、やはり政府責任だという問題があるだろうと思います。それともつと狭い意味において治安上混乱が起つた場合に、これを鎮圧するという責任、こういう場合も考えられるだろうと思うのでありますが、その点が非常に不明確でございまして、ただ言葉の上だけで政府の最終責任というようなことを、文字に使つておりますが、どうも私ども了解できないのであります。こういうことになりまして、ただ国警長官の任免権を総理大臣が持ち、警視総監任免権を総理大臣が持つという、それによつて果される責任というものは、自分は責任をとらないで、気に入らないときにはいつでも首が切れる、これだけの責任を果す行為しかできない結果になるのではないかと思うのでありますが、ほんとうに最終の責任政府が持つというのでありますならば、治安上間違つた事態が起つた場合には、また警察権の行使について穏当ならざる事態が起つたという場合には、最終の責任者である総理大臣がみずから責任をとつてやめるなり、何なりの責任を明らかにするという処置が伴わなければ、いわゆる最終責任というものを明かにしたことにならないのでございます。ところが私どもの今了解しておるところによると、ただまずいときには警察だけを首切つて、自分の方には責任を持つて来ない、そういうことをする程度の責任しか持たない、これが最終の責任政府が負うという意味だというふうに、私は考えざるを得ないのでありますが、そんなふうに考えてよろしゆうございますか。
  146. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この法案によりまして任免権と、公安上特に重要な事項に対し指示をすることによりまして、最終的な責任政府がとれるようにする、とれるようにした以上は、今おつしやいましたように、その措置が当を得ない、指示が万全でなかつたという場合には、政府自身が責任をとるということが、この法案によつて初めてできる、こういう考え方でございます。
  147. 八百板正

    八百板委員 事態の責任は当然総理大臣みずからが負うべき筋合いになつているだろうと私も思うのでございます。それからこの法律の中で一番重要な点は、第六十一條の二に「内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、」云々というところでございますが、これに関連いたしまして、国家公安委員会意見を聞いて、地方に指示するというのでありますが、この聞くというのは具体的な公安維持の上に必要な事項そのものについて意見を聞くというのであるか、お前たちの権限はおれの力にまかせるかまかせないかというような点について、意見を聞くという扱いをするのであるか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  148. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは具体的な指示の内容について聞くわけであります。
  149. 八百板正

    八百板委員 そうすると、具体的内容を明らかにして、そのことに関する限り意見を聞いて総理大臣指示下に入る、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  150. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 こういうぐあいに指示をしたいと思うが、どうだということで聞くわけであります。
  151. 八百板正

    八百板委員 そうしますと、国家非常事態には宣言をもつてその指揮系統を総理大臣の下に収めるという規定があるのでございますが、この特に必要があると認める場合というのは、一体どういう場合であるか、さらにはその必要があると認定するのは総理大臣個人であるか、あるいはまた別個の機関がそこにあるのであるか、こういうふうな点が問題になつて来ると思うのでありますが、その問題と関連いたしまして、特に必要があるという場合には、何らかのけじめをつけなければならないのでございますから、公安委員会意見を聞くという場合には、公安委員会に具体的な事項を示して、それに対する公安委員会の同意書というようなものでも出して、そこからこういう事態が進んで行くというふうに考えてよろしうございますか。従つて同意書を出すということになりますならば、同意書を出さない場合もあり得るわけですが、その間のけじめをどういうふうにしてつけて行くという予想を立てておられますか。
  152. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 特別に必要があると認めました場合に、こういうような指示をしたいがどうかということで、意見を聞くわけであります。そこで、公安委員会がそれはいけないといつて反対をいたしました場合には、この法律の上では、反対をしても指示はできるということになつておりますけれども、重要な問題につきましては、国家公安委員会意見を無視して指示をするということは、政治的な問題となりますので、これは実際行われ得ないであろうと考えますし、また指示を受ける公安委員会も、それぞれ民主的に選任された公安委員会でありますから、国家公安委員会意見を無視された指示であつて不当であるというような指示は、実際上総理大臣はなし得ないと考えております。
  153. 八百板正

    八百板委員 まだ少しはつきりしないのでございますが、国家公安委員会意見を聞いてということは、一方的に聞いて指示するのであつて、同意を要しない。ただ電話一本で通告するとほとんど同様のものであると考えられるのでございますが、そういうふうな見解でございますか。
  154. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 法律上はさようでございます。しかし国家公安委員会は常時総理大臣に対して助言をする事実上の責任がございますから、むしろ国家公安委員会の方から、こういう場合にこういう御指示をされてはということで、実際の運営は行われると考えております。
  155. 八百板正

    八百板委員 国家非常の事態において、非常事態の布告をした場合において、警察法の六十五條並びに六十六條はそれぞれ非常事態を布告した後において「これを発した日から二十日以内に国会の承認を得なければならない。」第六十六條には、この布告の廃止に関しては、「速やかにその廃止の布告を発しなければならない。」さらに国会がその廃止をせよと命じた場合には、内閣総理大臣はその廃止の布告をしなければならないというぐあいに、いわゆる国家警察並びに地方自治体の警察に対して、総理大臣指示権を持つような事態の場合においては、事後において国会の承認を得るということを明らかにしておるわけであります。すなわち全国一本の統一的な警察権力の行使は、国会の承認した限りにおいて、一時的に許されるという建前が、警察法の建前になつておるのでございます。ところがこの改正によりまして、そういう非常事態を宣言、布告をするに至らないような軽微な事態においても、総理大臣が必要と認めた場合には、総理大臣の指揮下に全警察を攻めることができるということになりますと、この六十五條、六十六條の、警察法の精神である国会の監視のもとに行われなければならないところの全国的な統一的な警察権力の行使が、国会の監視から逃げ出して、首相の独断に入るという形になるわけでございますが、この点警察法の根本と大きな矛盾があると思うのでありますが、この点国警長官はどのようにお考えになつておられますか。
  156. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 非常事態の布告が発せられました際には、全警察総理大臣が統制をするわけであります。そうして都道府県あるいは市町村公安委員会も、非常事態布告の間は、警察管理責任がその限りにおいてなくなつてしまうわけであります。ところがこの六十一條の二のただいまの規定はそうではありませんで、公安委員会は都道府県、市町村にそれぞれ存在し、それの責任のもとに運営させるという点は、平常と何らかわりがないのであります。その平常の状態において、特に重要な事項について必要な指示だけを與えるということでありますから、その間に非常な相違があるのであります。非常事態の際は全権を総理にまかしてしまう。公安委員会はそれについて何ら責任も持たなければ、自分の今まで持つてつた権限もなくなつてしまうというわけでありますから、非常な相違があるのであります。
  157. 八百板正

    八百板委員 ただいまのお答えでありますると、公安委員会の権限行使を通じて行われるのであるから、非常事態の宣言の場合とは違うという御説明でありまするが、そうだといたしますと、この法案全体の構成の上に非常に疑問になつて参ります点は、「第十一條に次の一項を加える。」という規定があります。すなわち「国家地方警察本部は、前項に規定する事務の外、第六十一條の二の規定による指示に関する事務を処理する。」となつておるのでありまして、実質上の事務処理は、公安委員会の手を離れて国家警察の事務の処理の中に入るということを第十一條は明らかにしておるわけでありますから、ただいまの長官の御説明とは全然別な取扱いがせられるということになるわけでございまするが、この点の矛盾はお考えにならないのでございますか。
  158. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほど申しましたのは、都道府県公安委員会、市町村公安委員会は、非常事態の布告がありました際には、運営の権限がなくなつてしまうと申し上げたのであります。ただいまのお尋ねの点は、国家地方警察本部は総理が指示するについてのスタッフになるわけであります。しかしそのスタッフは原則として国家公安委員会の指揮監督のもとにあるわけであります。
  159. 八百板正

    八百板委員 ということになりますると、第十一條によつて公安委員会意見を聞いて、地方的には公安委員会運営に期待して行われるということになりますならば、ことさらに十一條の改正をする必要はなくて、公安委員会の主務者をして担当せしめて、十分であろうと私は思うのであります。しかしこの点私どもの了解できないところでありまするが、さらに指示事務を担当させるという場合に、先ほど集団自衛の関係についてもちよつとお伺いしましたように、第十一條の規定の結果、特に必要な事態というものが、その都度問題ごとに指定せられるという形ではなくて、いわゆる特に必要があるという認定の上に立つて、常時第十一條のような状態に移行して行く、つまり特に必要があると認めたがために総理大臣の指揮下に置くという状態が常態化し慢性化するという点も、この法文だけから申しますると可能なわけでございまするが、こういう状態が常態化するということはあつてはならないが、この法によつてはそういうことはあり得ないと考えてよろしいかどうか、この点長官の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  160. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは総理大臣指示するたびに意見を聞かなければならぬわけでありますから、包括的にこれこれの場合は公安委員会意見を聞かないで指示をしてもよろしいというような運営はできないと思います。
  161. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 齋藤国警長官にちよつとお尋ねしたいのでございますが、「当該集団示威運動をその実施場所において統轄指揮すべき者」「統轄指揮」とありますが、その人がもし病気、突発事故でけがをしたとか、それからまたその人が死亡したとき、これは一体どうふうになるのでしよう。それをちよつと疑問に感じましたからお教え願いたいと思うのです。七十二時間前に届出ねばならぬ。ところがその指揮者の名前届出ておいて、その人が突如病気で死亡した場合にはどういうふうになるか、そしてかわつた人が指揮者になつた場合には、虚偽の申告になるのか、この点御教示願いたいと思います。
  162. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 不慮の事由で、統轄指揮者がなくなつた場合におきましては、後任者というものができて、これが統轄指揮者になるものと考えております。
  163. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 七十二時間前に届出なくちやならない。それがその以後にその人が死んだ場合、かわつた人が指揮をした、そうしたら虚偽の申告になる。それをどういうふうにするか、この点が明示してないから、私は法の不備と思うのですが、いかがお考えでございましようか。
  164. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういう場合には変更申請をして許可を受けるということになるわけであります。事実上変更せざるを得ないような状況でございますから、当然変更したものについて異議をさしはさむ余地はないと思いますから、実際上の問題として支障はないと思います。
  165. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それから開始及び終了の時刻ですが、日本人はなかなか定時に集まりません。そうすると、やはり虚偽の申告になると思いますが、これをどういうふうに解釈したらいいでしよう。十時なら十時に集まれ、そう言つておいて開会が十一時半になつたり、十二時になつたりする。そうすると、その申告は虚偽になる。これをどういうふうに解釈したらよろしゆうございましよう。
  166. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 届出と申しましても、事実上集まる人の集まりが遅いというような場合まで、届出事項を遵守しないということにはならないと考えておるのであります。
  167. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それでは十時なら十時として届出ておいて、開会時間が遅れても、虚偽の申告にはならないのでございますね。そうでございますね。
  168. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 さように考えております。
  169. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 予定の人員が、かりに約三千人として届出て、それが三千百名になつてつたら、どういうふうになるのでしよう。やはり虚偽の申告になるか。そしてその人々が罰せられて罰金をとられる、これは一体どういうふうになるのです。私は勉強しておりませんが、今ちよつと見たのです。女ですからこまかいところに気がつくのです。一体どういうふうになるのでしよう。お教え願いたいと思います。
  170. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ここには参加予定人員数ということを書いておりますので、予定をある程度下まわろうが上まわろうが、そういうことは問題にならぬと考えます。
  171. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それでは約三千人と言つておいて、それが五千人集まつてもいいのですね。それは虚偽の申告にはならないのですね。いかがです。
  172. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 五千人集める予定を持ちながら、二千人とか千人とかいうように、故意に言う場合は虚偽の申告になると思いますが、大体三千人集まると予定したところが、非常に天気もよくてそれ以上になつたというような場合には、虚偽の申告ということにはならないと思います。
  173. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それから道路における蛇行進というのはどういう意味ですか、ちよつとわからないので教えていただきたいと思います。
  174. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 いわゆるジグザグ行進という種類のものでありまして、道路を右から左にへびの動くような形で行進する状況であります。
  175. 床次徳二

    床次委員 あるいはすでに質問があつたと思いますが、第二條第六号の「公安委員会届出を要しないとして指定するもの」、これはどの程度のことを今日予定しておられますか。
  176. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは各地方によりましていろいろ事情が違うと思います。一般的なものはこの法律に規定をいたしておりますが、地方によつてこういうものまで規制する必要がないというようなものは、公安委員会届出を要しないというように、自由に指定してよろしいと思つております。
  177. 床次徳二

    床次委員 たとえば多数の人が集会しておりまして、これが臨時に動かなければならぬという場合に、嚴格に本法を考えられると移動ができないことになるではないか。あるいは移動する場合に個々別々に、乱雑に通路を歩まなければならぬということになると思うのです。これが列をつくつて歩くと本法にひつかかるおそれがありますが、単純に、そういう示威の目的でなくて、場所を移動するような場合は、やはりこの届出を要しないものに扱えるかどうか。
  178. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この集団行進というのも、一定の行進の目的を持たせるものでありまして、平穏にあるところに集まつてつて、これがほかに移動しなければならないときに、単純に移動するようなものまで、これで規制する必要はないと考えております。
  179. 床次徳二

    床次委員 ただいまの点は重要な問題と思いますから、これははつきりさしておいていただきたい。私もお言葉のように一応は解釈いたしたいと思います。  それから第三條でありますが、届出の時間は七十二時間前であります。なお当事者に送達しますのは二十四時間前でありますが、実はこの内容を見て参りますと、主催者が二十四時間前に受取りました場合におきましても、いろいろ主催者として処理をしなければならぬことが多いのであります。その事柄の内容から見ますると、公安委員会が七十二時前にあずかつていろいろ調査審議する時間が長過ぎるではないか。その実情を見ますると、主催者が受取つてからの二十四時間をもう少し長くしなければ、ここにいろいろ掲げられました注意事項がありますが、こういう遵守命令を施行するのに、相当困難があるではないかと考える。できるならばこの七十二時間をもつと少くしてもよいではないかと考えられるのであります。当局におかれましては、公安委員会において書類を受理してから、当事者の間に話合いをさせるとか、その他を考えておられるようでありますが、これはあまりに委員会が世話をやきすぎると私ども考えるのであります。これはむしろ主催者自体早く書類を出させることを奨励しまして、早く届出がありますならば、それによつて一つの取扱いの基準が、先願順とでも申しますか、そういうような形になる。なおその場合にいろいろ不都合がありますれば、当事者同士いろいろ話合いをさせるという形でよいのでありまして、あまり公安委員会が深入りすることは好ましくない。従つて、七十二時間は長きに過ぎると思いますが、この点についてもう一回御意見を伺いたい。
  180. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お話のごとく、公安委員会があまり出しやはり過ぎるということは、これは好ましくないことでありますが、ここで七十二時間と規定いたしておりますのは、二十四時間前までにどうしても話合いのつかないようなものについて、たとえば同一場所において二つ以上の会合が持たれるとか、あるいは行進の径路がぶつかるとか、そういうのを例にとつてみますと、一番よくわかると思うのでありますが、そういうようなものは、七十二時間前に届出のありましたものについて、できるだけお互いの話合いに譲るということが好ましいわけでありまして、公安委員会としてもそういう措置をとるべきだと思います。従つてその話合いがつかないで、なおかつ最終的に命令をしなければならない場合、二十四時間前までということでありまして、話合いがつけば、今お話のようにそれよりもできるだけ早い機会に決定的なやり方というものが、当事者の間にきめられるということを望ましいものと考えておる次第でございます。
  181. 床次徳二

    床次委員 きわめて事務的なことでありまするが、これは当事者同士で話合いを予想するよりも、やはり届出が参りまして、さしつかえがなかつたら、どんどんこれを受理してしまうという習慣をとりまするならば、主催者の方におきましても大体それを予想して参るのじやないか。しかし、先に届出がありまして、どうしても話合いをしたいという場合は、むしろ当事者同士が話合いをした方が、ほんとうなのじやないかというふうな取扱いにされますと、公安委員会としては非常に責任も少くなるし、民主的な解決ができるのじやないか。そういうことを考えますと、むしろこの公安委員会が取扱う時間を少くしておいて、実際におきましてはできる限り早く届出をさせるというふうに扱つた方が、民主的な感じを持ちますし、実際も公安委員会責任を負わずに行くのじやないかという感じがするのでありまして、話合いをさせてうまくやろうということは、少し親切過ぎるのじやないか、むしろ早く届出をさせて、そうしてさしつかえないものはやらして行く。あとから届け出た者は、先に届出があるから自分の方は引込めるという習慣を遵守された方が、実際問題としてはいいのじやないかという感じがいたすのでありまして、それでお尋ねしたわけであります。  なおこの機会にもう一つお尋ねしますが、第六條に参加者が遵守すべき事柄をいろいろ列記しておられますが、危険物の携帯禁止のごときものは、これは本来当然やるべきものではない。特に集団的に行動いたしまする場合に、初めから危険物を持つて来ることはよくないことじやないか。たまたま持つているならば別といたしまして、いやしくも集団運動に参加しようという人が、危険物と目されるものを持つていることはよくない。だからむしろこういうものは参加者は持つて来るなということを明記しておいたならばどうかという点、何ゆえにこれを禁止事項になされなかつたかという点。第二項におきましても、道路における蛇行進その他は、道路交通の関係から申しましても、これは禁止事項じやないかと思うのでありますが、これが特にいわゆる遵守事項として掲げられている点について理由を伺いたい。第三項におきましても、これはまた当然のことだろうと私は思う。これがやはり遵守事項として命ぜられるということに対しまして、多少理由があるのじやないかと思うのですが、その理由についてお尋ねいたしたいのでありまして、むしろこの点に関しましては、当然集団示威運動として、かかることをなすべきでないということを前提にいたしますと、いわゆる主催者において非常に責任が軽くなるし、団体の運動が統制がやりやすくなると思うのです。二十四時間前にいろいろ注意事項が出て参りましても、主催者におきましてこれを参加者に徹底せしめることがなかなか困難じやないか、できない責任を負わされることになるのじやないかと思うのでありまして、この点かたきをしいられた責任者がよけい出て来るということになるのじやないかというおそれがあるのでありますが、何ゆえこれをはつきり禁止事項その他にされなかつたかということについて伺いたい。なお、危険物の携帯等につきましては、先ほど赤旗とかその他プラカードとかいう例をお考えになりましたが、これは元来から危険物でないものでありまして、初めから危険物と目されるものがある。あるいは火炎びんを持つて来るなり、あるいは小石を持つて来るなり、あるいはプラカードあるいは赤旗といいながら、普通の旗でなしに、危険物であるところの旗を持つているところの者がある。こういうのはむしろ初めから制限してもいいのではないかと思うのでありますが、第六條のごとき規定の方法をなさつた理由を伺いたいのであります。
  182. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 届出については、できるだけ早く処理をして行つた方が、よくはないかというお話でありましたが、その点はごもつともだと思います。ただそれで、なおかつあとで届け出たもの等において、場所変更はいやだが日時の変更はいいとか、日時の変更は困るが、場所変更ならばいいというようなことについての話合いが必要ではないかという意味で、申し上げたわけであります。  第二に六條の規定でございますが、これは床次さんのお話まことにごもつともであります。明らかに危険物と考えられるものは、当然持つべきではないのでありまして、これを抜き出して、持つてはならないということにすることも、一つ方法考えられますが、危険物の中には、集まる人数により、あるいはその態様によりまして、ある程度の棒も危険物になり、あるいはくぎを打抜いたプラカードが危険物になるというようなこともありますので、やはり個々具体的に、こういうものについては、こういう注意をするというようなことが必要ではないかと思うのであります。道路の蛇行進なり、すわり込み等につきましても御説の通りだと思いますが、それほど交通の妨害にもならないというようなところにおいて、少しぐらい蛇行進程度のことをしたからといつて、すぐに、初めからの禁止事項としてこれに罰則でもつけるというようなことは、やや行き過ぎではないかと考えたわけであります。また第三項につきましても、たとえば行進の路線というものを、一応届出をして来るわけでありますが、そこにどういう学校があり、どういう病院があるというところまで、こまかに注意をして届け出ないものもあると思いますので、そういう点について特に注意すべき事項を遵守させるというようなことを考えた次第であります。御趣旨の点はよく了承いたしておる次第であります。
  183. 床次徳二

    床次委員 ただいまの第六條でありますが、主催者あるいは統轄者に対して、かかる遵守事項を命ずるということになつておりますが、現在行われているところの集団運動におきまして、主催者並びに統轄者にかかる責任を負わして、主催者並びに統轄者がはたしてこれを実施できるかどうか、責に任じ得るかどうか、実際問題としてはたしてどうか。どうも、せつかく遵守命令を出されましても、これが事実においてできないのではないか。何千人あるいは何万人というような人が集まる場合におきまして、事実上、今日の主催者あるいは統轄者はかかる力がない、実質上の力がないということになりはしないか。並びに、二十四時間前かそこらの時間において、これを徹底させること自体もむずかしいのではないか。すなわち、結局第六條によつて形式的な責任だけ負わせることになるのではないかということを恐れておりますが、この点、現在の集団示威運動というものについて、主催者、統轄者がどれくらいの責任を持つて、今日運動をやつているかということについて伺いたいのであります。
  184. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 事実上非常に大規模な、または特別に尖鋭的な分子を包蔵したような集団示威運動等においては、お話の通り、周知させ必要な措置を講ぜしめることは、非常に困難かと思いますが、ともかく、この集団示威運動等の主催者に対してそういう責任を持たせ、なお、公安委員会としましては、その規模に応じ態様に応じまして、新聞その他の報道機関等も利用して、一般に周知させるというような必要の起る場合もあるかと思いますが、一応この集団示威運動等の主催者に責任を持つて、そういうことをさせるようにしておくことが法の建前としてよろしいのではないかと思つておるわけでございます。
  185. 床次徳二

    床次委員 第九條の罰則でありますが、この第三項の第二号の「虚偽の届書又は虚偽の変更承認申請書を提出した者」、これは集団示威運動の本質に関係するものでありまして、これによつて本法の目的がまつたく蹂躙されるおそれがある。従つて罰則があるわけでありますが、結果の重大性にかんがみますると、少し罰則が軽きに過ぎるのではないかという感じがいたすのであります。むしろこれは前項の方に当つてもいいくらいのものだと思いますが、特にこれが第三項に規定せられましたる理由、権衡関係はどういうふうになつておりますか。
  186. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 非常に悪質な意図をもちまして虚偽の届出をし、ゆだんをさせて大きいことを起すというようなものにつきましては、また別條によりまして取締る方法もあるかと考えます。従いまして一般に虚偽の届出、虚偽の変更承認申請書の提出等については、この程度でよろしいのではないかと考えております。
  187. 床次徳二

    床次委員 別條で取締るといいますと、個々の具体的な行為で行くのでしようか、あるいはどういう規定でひつかけるのでしようか。
  188. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 具体的な行為によつて規制をするということであります。
  189. 大矢省三

    ○大矢委員 私はつとめて重複を避けたいと思いまして、今まで私の聞いて徹底しなかつた点だけをお伺いしたいと思うのであります。  まず第一に、今度の警察法の一部を改正する法律案集団示威運動等秩序保持に関する法律案、これはおのおの公安委員に重大な関係を持つておるのでありますが、これを立案するにあたつて、一方には地方の自治体警察あるいはまた国家公安委員に対してあらかじめ意見を徴して、何らかの形でそういう相談があつたのかどうか。それと、逆に今度は国家公安委員から、こういう法律を出すについて、長官は意見を聞かれたことがあるかどうか、この二つをお伺いいたしたいと思います。
  190. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 実際の経過を率直に申し上げますると、私の手元でいろいろ研究をいたしました。その案を自治体警察の方々に示して意見を聞き相談をし、国家公安委員会に相談をし、そして政府に提案をいたした、こういう形でございます。
  191. 大矢省三

    ○大矢委員 それから警察法の一部を改正する法律案の五十二條の二であります。すなわち長官を総理大臣が任命する、一定の事由により罷免するとある。一定の事由というのはどういうことですか。
  192. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 一定の事由と申しますのは、国家公務員法にこういう場合には罷免するというように事由があげてあるわけであります。その国家公務員法にいう一定の事由でございます。
  193. 大矢省三

    ○大矢委員 そういうことであれば、この法文に明らかにすべきじやないかと思う。政令か何かできめるつもりか。それとも今御答弁になつたように、現在の公務員法によつてやるのですか。
  194. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 現行法でも、たとえば国家地方警察の長官は国家公安委員会が任命するわけでありますが、一定の事由により罷免する、同じ用例でずつと使つているわけであります。現行法にもすでに一定の事由により罷免する任命するとありまして、その一定の事由は国家公務員法の七十八條をさすという解釈になつております。
  195. 大矢省三

    ○大矢委員 御承知のように旧憲法のもとにおいても、こういう取締法はあつたのでありますが、その当時は屋内の場合は三時間、屋外の演説会は十二時間、屋外示威運動をやる場合には二十四時間、つまり一晝夜でよかつた。ところが今度は七十二時間、つまり三晝夜ということになつている。新しい憲法によつて堂々と自由の権利が認められておる今日において、示威運動に対し旧憲法よりかさらに三倍も届出の時間を増したことは、明らかに新憲法の精神に背反するものではないかと思うのですが、この点いかがでありますか。
  196. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 一応ごもつともな御意見と存ずるのでありますが、しかし以前におきましては、警察権の発動が非常に容易にできるようになつておりました。すなわち警察力でただちに解散せしめたり、それから何でもできるような法律があつたわけでありますが、今度はそういうわけに参りませんので、まず民主的に事前にできるだけ相談し合い、場所、時間等で変更を必要とするものは、変更してもらうというやり方でやる方が望ましい、それにはこれだけの時間はどうしても必要ではないかということであります。
  197. 大矢省三

    ○大矢委員 現実の問題として、せんだつてのメーデーの場合でもそうですが、示威行進の解散後にしばしば問題が起きておる。これでは幾ら事前に届け出ても何もなりはしないと思うのですが、一体これをスムースに行うために七十二時間も前に届け出なければならないというような、こういう規定をこしらえなければならなかつたという実例があつたかどうか。
  198. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 お説のように、いわゆる解散の際に、いつも非常に社会的な治安関係に影響する問題が起るわけであります。従いまして、できるだけ解散をしないでやり得ますように、あるいは危険物を事前に携帶しない、あるいは示威行進の通路を事前に打合せて、さしつかえのないところを通つてもらうというぐあいに、解散をしなくて集団示威の目的を達するように事前にした方がよろしいというのが、この法案の目的であります。
  199. 大矢省三

    ○大矢委員 この法案が成立いたしますると、現在大都市にある條例が無効になると附則に書いてありますが、一体自治体警察あるいは公安委員会の制度というものが、その地方における実情に即して自立的な責任において治安を守るために、地方で條例をつくつて、それぞれ適当な処置をしているにもかかわらず、それが国の法律によつて上の命令一下、こういう地方の実情を無視した、あるいはその條例が上からのこういう法律によつて全部無効になるというようなことは、これはしばしば言われるような、かつて警察政治あるいは警察国家、一切の自治体警察あるいは公安委員制度のできた精神をまつたく没却する、蹂躙する結果となるのではないか。そういうことは別にどうも考えないのか。こつちの方が最高だから、こつちで決定してそれはやつた方がいい、こういうふうに考えてこの法律ができたのか。これは重要だから、今後の自治体警察のあり方、精神について私は政府考え方をぜひひとつお聞きしておきたいと思います。
  200. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この法案の草案をつくりました一番大きな動機は、むしろ地方の方の要望から、それも自治体警察側の要望から、できるだけ全国統一的なものをつくつてもらいたい、こういう声があつた。これは自公連の決議あるいは自警連の決議としても、われわれのところに申し込んで来られておる。決して中央からこれに従うようにいたしておるような次第ではございません。
  201. 大矢省三

    ○大矢委員 これは本質の問題になるから、齋藤さんにお尋ねするのはかえつてどうかと思いまするけれども、一体この自治体警察というものに対する考え方なんか、これは非常にかわつて来ておる。もちろんこの公安委員会ができた当時、あるいはその後における活動というものに対して、いろいろ批判があるようですが、これは占領中でもありましたし、まだ日も浅く、住民みずからも、また公安委員としても、十分活動ができなかつた。むしろ活動の表面に立たない、行き過ぎを牽制するという役目を多分に私はやつたと思う。またそれが本来でなくちやならぬと思いますが、そういう意味で、私はこの公安委員というものを、もつと根本のあり方について検討し、正常といいますか、ほんとう日本的なものにすべきだと考えておる。それはただちに與えられたものであるとか、この制度がどうも中央集権でない、分権的でどうも芳ばしくないというようなことから、こういうものを軽く見、むしろこれを廃止しようというような傾向が非常に強くある。それでこういうことについて、これは本質の問題でありますが、一体実際に経験を持つておられる長官は、どういうふうに今日考えておられるか。
  202. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は公安委員会の制度は、民主的な警察を確立し、また育成をして行く、また維持して行くという上からも、非常に大事な存在だと考えております。現在もその役割を果しておられると思いますし、今後もますますその役割を果してもらわなければならないと考えております。この集団示威運動等秩序保持に関する法律は、これは各府県あるいは市町村のまちまちの條例を統括したわけでありますが、基本的なあり方を統括をいたしまして、個々の運営はやはりその公安委員会が、地方の実情によつていろいろな指示命令や、あるいは取締りをして行くという範囲が非常に広いのであります。そういう意味合いからも、私は公安委員会制度というものは、これは自治体警察にどこまでも必要な、また有益なものである。これをまた育てて行かなければならない、かように考えております。
  203. 大矢省三

    ○大矢委員 それから警察法の一部改正をする法律案には、総理大臣が特に必要と認めた場合には、いわゆる指令をすることになつておりますが、こういう場合に今まではあげて公安委員指示に基いて、その方針で長官はいわゆる責任を持つて施行すればよかつたのですが、こういうように公安委員と、その上にさらに総理大臣といういわゆる最高責任者ができるとなりますると、これはその両方の意見を受けることになる。命令というたら語弊がありますが、平素いろいろなことを行う上にも、国家的な立場あるいはその地方のいろいろな実情によつて違いますが、そういうことのために長官の立場が非常に困難になりはしないか。勢いどつちにつくということでなしに、責任が非常にあいまいになるというような恐れが、私どもは多分にあると考えますが、いわゆる孝ならんとすれば忠ならず、そういうふうにしてどつちにつくわけにも参らぬというぐあいで、はなはだ困る。第一その公安委員自身が、私ども最高責任者であるという責任を持つてつたのが、その上にさらに長官を命令する、任免する権限を持ち、あるいは指示する権限を持つておる総理大臣がおるのでありますから、公安委員というものが責任感が薄らぐというような傾向が、私は必ず出て来ると思う。それでいつも責任のいわゆる所在というものが、最高の総理にあるのだということで、公安委員責任を回避するような、あるいは責任を軽んずるがごとき傾向になることは免れない。従つて私はその公安委員がこういう法案が成立した後における責任感、あるいは長官はいずれに重きを置くか、いずれそういう意見の相違のあつた場合に、非常に苦しまなければならぬ。これを齋藤さんは言いにくいかと思いますが、私は一応お聞きしたい。
  204. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その点は外部からごらんになりまして、まことにさように見えるかと思うのでありますが、実際問題といたしまして、総理大臣またはそのかわりになつて警察を担当いたしておられる担当大臣と、それから国家公安委員会というものは、絶えず一体的な関係になければうまく参りません。従つて私の立場におきましても、国家公安委員会の御意見と、それから担当大臣の御意見と、絶えず一致を見て実行をいたしておるのであります。この法案が通過をいたしましても、従来と実際面におきましては、何ら変更がないと考えております。実際の面においては、もう両方の御意見のいつも一致を見てやつておるのであります。一方だけの御意見で動くということは、事実上不可能でございます。
  205. 大矢省三

    ○大矢委員 あまり長くなりますから、これで最後にしておきますが、最近この種の法律がたくさん出て来る。いわゆる法律によつて取締ろうとする、法律国家といいまするか、実際の民主主義の、住民がみずからの手によつて、自主的に行おうとするものを、もう絶えず法律によつて縛りつけて行く。なにか規定しておいて、結局においてこれは法律があるからひつかかる。ひつかかれば罰する。私はせんだつてあの非常な問題が起つた平のメーデーのときにその情勢を詳しく聞いた。あそこは約一万七、八千の小さな都市で、警察官は一人も出してはいかぬ。そのかわりわれわれが責任を持つということで、完全に何にも問題なしに行つたということは、いわゆる組合の幹部に責任を持たしたからこそ問題が起きなかつた。それがこういうふうにああしちやいかぬ、こうしちやいかぬというように、この規定にもあるようにあれば、法律に基いてやつたということになるから、警察官は大いにやるでしよう。そこに衝突が起る。今度の早稲田大学の問題でもそうです。あれの国民に與えた感情は、警察官は、もつと常識の高いものだと思つてつたのに、ああいう無抵抗の者に実力を行使するのはけしからぬというわけで、警察官に対する感情に非常に悪影響を来したのではないか。一切合財法律で取締るなどという考え方は、およそ民主主義の政治に反することなんです。よほどこういうことは考えなければならぬ。一々昔の考えのように、法律によつて取締ろうという考え方は、これだけではない、たくさん、幾つとなしに現われて来ておる。こういうことから、最近権力闘争ということが、しきりに叫ばれておる。要するに、そういうことをするなら、まともにぶつかつて、どつちが悪いか輿論を大いに高めよう。それで警察官に対して、絶えず感情的にまわそうまわそうとする傾向がある。故意に運動を起す人が私は出て来ると思う。またその結果というものは、いわゆる対立して、自分を保護してもらうべき警察官を敵にまわし、あるいは保護すべき警察官が民衆を敵にまわす。そういうふうな対立が、ひいては大きな社会不安の原因になるのではないかと思う。次から次へこういう法律をこしらえなければ、どうしてできないのか。それからこれを立てる前に、何がゆえにこういうものが必要か、どこに原因があるか、法律の不備があるからこういうことが起きると考えるのか、それともそうでなく、もつとほかに原因があるか。そういう原因を究明せずして、ただこれだけによつて取締れば、それでなくなると思うことは大きな間違いだ。私は、どろぼうをつかまえて交番の前で巡査が二人立つてなぐつているのを見たことがある。どろぼうをつかまえて、抵抗すればなぐることは、だれが考えてもふしぎなことはない。しかし程度を越えると、そうまでしなくてもいいじやないかというように、かえつてどろぼうに同情が集まる。こういう法律をつくつて、正直なまじめな者に非常に迷惑をかけて、その人が刑を受けた後、あるいは取調べ後における警察官に対する感情というものは永久にとれない。そこで実際問題として、私ども経験があるが、ぽかぽかやつたり、石を投げたりして混乱させたやつはもうそこいらにいやせぬ。ひつかかる者は、ほんとうに何も知らぬ者ばかりひつぱられる。ことに集団示威運動のごときは、いつもそうなんだ。それでこんなもので取締ろうということは、正直な者ばかりひつかかつてほんとうにやつた者はひつかからない。そこで先ほど地方の公安委員から希望があつたからというが、たいていの重要な都市にはできている。そのことが行き過ぎであるといつて、裁判所ではこれを行き過ぎなりとして判決もくだつておるような京都市のごときもある。従つて今ある條例でもつて足りない、あそこはゆるやかで、ここは嚴重だから、統一したものをこしらえてほしいという者があろうとは思われません。ほんとうに具体的にそういう請求があつたかどうか知りませんけれども、そういうことまでは聞きませんけれども法律によつてこれを取締まる。しかも執拗な示威運動がいかにして起き、どうような気持に大衆はなつているか。それから最近権力闘争としてやろうとする、それにひつかかつて、結局それを助勢することになる。その目的にちやんとひつかかつている。こういう法律があるがために、ますます警察に対する大衆の信頼と威信がなくなつて、およそこの法律の目的と反した結果になるということをわれわれは憂うるのですが、これは討論ではありませんから多くは申し上げませんが、これについて実際どう考えているか。これは必要だから出したのだということを言われるかもしれませんが、私はよほど考えなければならぬと思う。むしろ私が前に言つたように、みずからを守るピストルによつて、みずから撃たれる結果が起きると同じような結果になりはせぬかということを憂慮するのですが、その点について率直な御意見を聞きたい。
  206. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察官の権限行使のやり方によりましては、むしろ善良な人からも反感を買うようになつて、治安の目的をかえつて果さない、ただいまの御議論はまつたくその通りでございまして、われわれの金科玉條としておるところでございます。しかしながら、話合いではどうしても行かないというものにつきましては、何らかの法律上の規制が必要ではないか。ただいま平におけるメーデーの例をおあげになりましたが、平にも実は許可制度の公安條例が福島県にあるのであります。しかし相手の方が全幅的に信頼ができる、凶器も持たない、あるいはそういう不法な行動をやらないというように信頼ができるという場合には、警察官は一人も立てないでやつておるのは、これは当然でありまして、できるだけみなそういうようにならなければならぬと思うのでありますが、不幸にして、そういう信頼がどうしてもできない、またいくら話合つても話がつかぬというときには、こつちに最後の手段として法律がありませんと、結局治安の確保ができないということに相なるわけであります。要はこれの運用の問題だと思います。運用の点につきましては、ただいまお述べになりました点は、われわれの元から金科玉條にいたしておるところでありますから、どうぞ今後もそういう点で、さらに御鞭撻を願いたいと思つております。
  207. 大泉寛三

    ○大泉委員 示威運動を目的としないところの集団に対しては、私どもは当然これは適用外と思いますが、これを明確にしておきたいと思います。示威運動を目的としないところの集団に対しては、この法は適用しない、こういうふうに思われるのでありますが、さように解釈してよろしいでしようか。
  208. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この趣旨は、ただいまおつしやいます通り、示威運動が最も公衆の身体、財産、自由等に危険を及ぼす場合が多いのでありまするから、それを趣旨にいたしておるわけであります。しかし屋外における行進、あるいは屋外における集会は、それ自身示威の目的がありませんでも、示威運動に非常になりやすいものですから、従つて屋外の行進と屋外集会だけは、一応届出の制度ということにいたしております。趣旨は示威の点が主でございます。
  209. 大泉寛三

    ○大泉委員 たとえば駅頭に送迎の群集が集まる。具体的に言うと、総理大臣が来るとか、その他の大臣が来るとか、あるいは宗教家が来るとか、有名な選手が来る、学者が来るという場合には、相当やはり土地の知名な人が大勢これを歓迎に出る。そういう場合に、あいさつ的な演説をするということは、届出の必要はないと思うのですが、そういう場合にもやはり信頼される者はいいけれども、信頼できない連中が来た場合には、届出を要するということになりましようか。
  210. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たとえばある駅に総理が着かれる。それを聞き伝えて集まる。それに対して総理が演説をされるということは、ここでいう集会考える必要はない。いついつか総理が来るから、こういう演説会をやるから集まつてくれということを計画し、ビラを張れば集会になりますが、たまたま大勢来られて、そこであいさつされる、それが半時間、一時間になりましても、集会で取締る必要はないと思います。
  211. 大泉寛三

    ○大泉委員 そういうことは一般常識としてはわかりますけれども、やはり各自治体の公安委員会の解釈が、いろいろ違つて来る場合もあり得ると思うので、そういう場合にやはり統一的な一つの解釈が私は必要だと思うのですから、政府においては、こういう場合、こういう場合と例を列記して、これを指示するお考えがありますかどうですか。
  212. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 できるだけ御不便をかけたり、あるいは無用な摩擦を起さないように、こまかい点を書きまして、そうして府県及び市町村の公安委員の御参考のためにお知らせしたいと考えております。
  213. 立花敏男

    立花委員 警察法並びに集団デモ取締法ですが、これはやはり私は憲法違反になると思うのです。齋藤さんはさつきから金科玉條ということを言つておられるが、私どもの集団デモ取締法等に対する金科五條は、やはり憲法の中に求められなければいけないと思うのですが、齋藤さんの言つておられる金科五條は、憲法の中においては、どういう條項をさしておられるのか承りたいと思います。
  214. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 憲法のどういう條項をさしているかと言われますと非常に困りますが、憲法に求めまするならば、私は憲法で保障をされておりまする国民の幾多の自由を擁護するというのは、警察の職責だと考えております。
  215. 立花敏男

    立花委員 自由にもいろいろありますので、この集団デモの対象といたします憲法の條項はどれだということをお尋ねしたわけであります。
  216. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その自由の中には、集団行進するという自由もありましよう。またその集団行進によつて公衆が危害を受けないという公衆側の自由もあると考えております。
  217. 立花敏男

    立花委員 そんなことは言つておりませんので、これの取締りの対象としております集団行進、会合、こういうものの憲法の中に保障されておりますところは、どこだというふうにお考えになつておるのか、それを承りたい。
  218. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 憲法の二十一條とそれから十二條、十三條であると思います。
  219. 立花敏男

    立花委員 二十八條をお拔かしになりましたが、二十八條はどうなんですか。
  220. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは当然だと思いまするが、二十八條は、勤労者の団結権を保障すると書いてありますので、団体的にいろいろ行動するというのは、ただいまあげた方が主であろうと思います。
  221. 立花敏男

    立花委員 二十八條は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」とちやんと書いてありますので、これを受けまして労働組合法等労働関係法では労働者のストライキの権利、あるいは労働者のその他の団体行動の権利、これを認めているわけなんです。これを一体どうなさるおつもりか。これに基いて労働者はストライキの場合に会合をやる、あるいはメーデーをやつておるわけなんです。これは取締りの対象でないというのであれば、これは自由なことになるのですが、それでいいのですか。
  222. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この団体行動をする権利は何ら侵されないので、この二十一條の集会、結社、言論、出版その他表現の自由を、どの程度保障するかということが問題であると考えます。
  223. 立花敏男

    立花委員 そこにやはりあなた方の考えの非常におかしい点があるので、憲法の最も重要な二十八條を抜かして考えている。これは労働者がメーデーをやり、ストライキのときに会合をやる権利を二十八條で保障しているのです。それをあなたは抜かしておられるのだから、抜かしてもらつてもつけの幸いだが、これは一体どうなんです。
  224. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 決して抜かしているわけではありません。
  225. 立花敏男

    立花委員 ただいま言わなかつたじやありませんか、あなたは二十一條と十二條と十三條をあげただけで、二十八條はおあげにならなかつた。対象じやないと言われた。
  226. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 二十一條は個人も団体もみな含んでおりますから、その方が私は包括的だと思つて申し上げたのです。
  227. 立花敏男

    立花委員 そうしたら憲法二十八條はいらないわけです。二十一條のほかにはつきりと二十八條で労働者の団体行動の権利を認めているわけです。特に戦後民主国家になつて、その推進力は働く者の団体行動であるという意味から、これは特に規定されているわけです。しかもそれについては労働者の保護法である労働組合法その他の法律があつて、特にこれを認めているわけです。その点がわからなければ警察官の資格がないのですが、どうなんです。
  228. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私はこれは労働者の団結権というものを、主としてであると考えております。
  229. 立花敏男

    立花委員 団結権だけじやない。さつき読みましたように、「団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」と、はつきり書いてあるじやないですか。これを受けて労働関係法では労働者のストライキなり、労働者の団結行動を認めているのです。
  230. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は決してこれを軽視するわけではありません。二十八條ももちろん尊重すべきで、ここに書いてある通りでございますが、この二十八條は二十一條をくぐつて、いわゆる集団行動の場合には出て来るということになつております。
  231. 立花敏男

    立花委員 くどくは申し上げませんが、それでしたら今お出しになつている集団デモ取締法の対象には、二十八條の団体行動は入らないというふうにひとつ確認しておきます。それから憲法にこういうふうにはつきり——あなたは二十八條はあてはまらないというならそれはいいのですが、二十一條その他のデモあるいはその他の自由、これはいわば国民の固有の権利で、これに対しては当然保護育成さるべきもので、決してこういうような取締法で制限されるべきではないのですが、こういう点にこの法律の憲法違反の精神があると思う。その点をどうお考えになつているか、承りたい。
  232. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 団結権あるいは団体行動でありましても、やはり公衆の身体、生命、財産の危険というものからは、私は防護されなければならないと考えます。
  233. 立花敏男

    立花委員 デモがどうして国民の身体生命財産を侵害するのです。それが武器を持ち、あるいは刑法等に規定する行為に当りますれば、それは刑法で取締ればいいので、デモ自体が国民の身体、生命、財産を侵害するとは、どこからも出て参りません。
  234. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 そういう侵害するおそれのないものは、デモとして十分行い得るようになつているわけでございます、武器を持つたり、そういうことのないようにする保障の規定であります。
  235. 立花敏男

    立花委員 そういうことば銃砲火器取締なりいろいろな規定がありますし、あるいは破防法で取締ろうとされておりますし、あるいは刑事特別法でやろうとされておりますので、デモ自体を取締りの対象にするということは、どこからも私は出て来ないと思う。
  236. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これはデモを取締ると申しますよりも、デモが秩序正しく行われることを確保するということを目的にいたしております。
  237. 立花敏男

    立花委員 そうではありません。これは明らかに今までの許可制であつた公安條例を上まわりまして、これは命令制なのです。あなたたちは京都の公安條例が許可制であるから憲法違反だという判決が出ておるということを、何とかごまかそうとしてこれは届出制にすればいいのだというような形で、今度届出制という形を表面上はとつておられますが、しかしこれは、その次には遵存命令あるいは補正命令というような命令によつて、デモを制限禁止しようというものなんです。これは明らかにデモ自体に対する一般的な制限なんです。一般的な命令なんです。届出にしておいて、なぜ命令にしなければいけないか。届出命令というばかなものはどこにもないので、こんな子供だましのようなことをやつて、実質上は憲法で保障された集団行為を禁止しようというのは、許可制よりもひどい、命令制じやないか。あなたさつきから問題の起らないように、主催者と話合いするのだ、労働者と話合いするのだと言つておられますが、これは話合いじやありませんぞ、協議という言葉じやありませんよ、命令ですよ。命令なんだ。しかもそれに従わなければ実力をもつてこれを解散せしめるというのだから、これほどひどい憲法の権利を侵害するものはないと思うのです。京都の許可制に憲法違反の判決を、京都地方裁判所が下しておりますが、ああいう許可制ですら憲法違反でありますのに、こういう命令制の集団デモ取締りになりますと、これは明らかに私は憲法違反だと思う。その点どうお考えになりますか。
  238. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この法律は原則として集団示威運動届出でやれる。しかしながら実際公衆の身体、生命、財産等に、明らかに危險がある、こういう場合に危險がないように、條件を事実上相談し、聞いて、その通り行われるならよろしいわけでありますが、聞かれない場合にはやむを得ず命令を出す、こういうことになつておるわけであります。しかし公衆の身体、生命、財産に危害を及ぼすおそれがきわめて明らかだという場合には、公衆の自由の擁護という立場から、かような措置もやむを得ない、こういうわけであります。
  239. 立花敏男

    立花委員 ここで「行進隊形、行進隊列の区分等当該集団示威運動等の混乱防止に関する事項」というのが、遵守命令の中にあるわけです。これが公衆の身体、生命、財産を明らかに脅かすことに対する保障なんですか。遵守命令の一項目に値いするのですか。行進の隊形まで命令を出す、これは市民の身体、生命、財産に何の関係あるのですか。さつきからあなたはとにかく憲法を金科玉條として尊重すると言つておられるので、あります。行進の隊形が命令に従わなければこれを禁止するなら、どこにデモの自由がある。行進の隊形が三列になろうと四列、五列になろうと、そんなことは自由じやないですか。どこにそれが都民の生命を脅かす危険があるのですか。
  240. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 行進がたとえば十列、二十列となつて道路を一ぱい占領して、押し進むというような場合には、公衆の自由に著しく危險を生ずるおそれがあると私は考えます。
  241. 立花敏男

    立花委員 そのために道路交通取締法があるんじやないか、道路交通取締法は何のためにあるのですか。デモ等の隊形をなぜあなたたちは命令で縛らなければいけないのか。しかも命令に従わなければ実力で解散さすと言つておる。これほどはつきりしたデモの制限はありませんし、これほどはつきりした憲法の違反は私ないと思う。この点どうですか。
  242. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は憲法違反にはならないと考えております。
  243. 立花敏男

    立花委員 あなたもお話なつたように、憲法の二十一條でも十三條でも十二條でも保障している基本的な自由なんです。特に二十八條では、労働者に対して特に憲法に一條を設けて、団体行動の権利を認めておる。しかもそれについては労働関係法が、はつきりとそれを具体的に認めておるのです。その與えられた人権に対して、隊列が五列だから、三列だから、それを命令して聞かなければ禁止する、これが憲法違反でないと一体どうして言えるのです。
  244. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 隊列は三列はいかん、五列はいかんというわけではありません。道路交通状況等とにらみ合せて、やはり適当な隊列にするのが当然であろうと思います。
  245. 立花敏男

    立花委員 それならこれは削除したらよいと思います。道路交通取締法が、さつき言つたようにあるのだから、道路交通取締法に反則しない程度なら、隊列の問題なんかなぜ問題にするのですか。なぜそれを命令の一條項として、ここに規定しなければいけないのですか。
  246. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 道路交通取締法では事前にそういう事柄のないように措置ができないのであります。
  247. 立花敏男

    立花委員 それはそうだろう。人間が何列になつて歩こうと、そんなことは人間の自由なので、それが交通を実際阻害しなければ取締りの対象にならないことは当り前だ。人間が左を通つてつたのを右に通らすのさえたいへんなのに、何列の隊列でなければいかぬというのはおかしい。しかもこういうものが憲法違反じやないというようなことまで言い出すのだ。憲法は今までの東條時代の、天皇が主権であり、日本人民が奴隷であつた時代から、国民の基本的な自由が認められて、その一つとしてはつきりと集団行動の自由、デモの自由ということが認められておるのです。これこそが日本の国を民主化する基本的な形なのです。基本的な力なのです。それを保護育成することこそ、法律の仕事であるのだが、それを今言つたように隊形まで命令指示して、これに従わなければ実力で解散さすというに至つては、まことに言語道断だと思うのですが、そういう明白なことまでおわかりにならないのですか。知つてつてつておられるのですか。
  248. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たとえば道路交通取締法違反が必ず起るに違いないというのに、それをほつておきまして、交通違反が起つたときに、そこでやるということの方が私は不親切だと考えるのであります。
  249. 立花敏男

    立花委員 それこそフアシストの論理なんだ。憲法の許しておる範囲で、あなたたちは仕事をしなければならない。特に国民の意思に従つてあなたたちは仕事をしなければならぬ。憲法がはつきりとこれは基本的な自由、基本的な権利なんだということを規定しておるのだ。それに対してあなたが独断で、明らかに交通違反の事項が起るというようなことを決定して、それを命令の形で出すこと自体が、これはフアシズムなんだ。これは警察フアシヨなんだ。だからあなたたちはおこがましいことを言わずに、憲法が規定しており、労働組合法が規定しておることに従つてやればいいのです。
  250. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は所見を異にしております。
  251. 立花敏男

    立花委員 デモの問題は非常に明白だから次に移ります。  警察法の問題ですが、警視総監を任命することによりまして、任命料と申しますか、どこに国家から警察の費用を支弁するという規定があるのですか。六十一條の二で全国の公安委員会に対して総理大臣指示する場合には、国家の負担する費用はどうなさるのですか。この場合はやつぱり指示料をお出しになるのでありますか、承つておきたいと思います。しかもこれは総理大臣が特別の指示を出して、自治体の警察に仕事をさせます場合には、当然これは国家が負担すべきものなんで、そうでありませんと、これは地方財政法の違反にもなるわけなんです。しかもこういう法律をおつくりになる場合には、地方財政委員会意見もお聞きにならなければならないことになつておるのですが、その点はいかがなんですか。
  252. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 地方財政委員会意見も聞いて、立案をいたした次第であります。
  253. 立花敏男

    立花委員 どういう意見なんですか。
  254. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さしつかえないということであります。
  255. 立花敏男

    立花委員 費用は一文も負担しないで、どういう事態が起り、どういう仕事を総理大臣が命じても、その費用は一切市町村が負担すべきで、国家は支弁しないということを、はつきりと地方財政委員会が認めたのですね。いつ、だれが認めたか、はつきりしていただきたい。
  256. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 地方財政委員会意見としましては、かような場合、特に用がいるという場合には、平衡交付金であんばいをしようということを言つておられます。われわれの方といたしましては、今後そういつた場合には、できるだけ補助金とか負担金とかいう道を開いてもらいたいということで、これは後の問題としてただいま研究いたしております。
  257. 立花敏男

    立花委員 それじややつぱり出すのですね。あなたは出さないと言つたが、出すのですね。
  258. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 別個には出さないが、平衡交付金として出すと、地方財政委員会の方は言つております。
  259. 立花敏男

    立花委員 あなたは平衡交付金というものを知つておられるのですか。
  260. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 若干は知つておるつもりであります。
  261. 立花敏男

    立花委員 それじやどういう形で出すのです。一般の警察に対する平衡交付金と、特に指示した場合の平衡交付金とは、どういうふうな形でわけているのですか。
  262. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 それは地方財政委員会で適当に考えるということを言つておられますから……。
  263. 立花敏男

    立花委員 大分話が違つて来たのですが……。初めは出さないということを地方財政委員会言つておると了承したのですが、特別に総理大臣指示して仕事をさした場合には、一般の平衡交付金で警察費に対する平衡交付金を出すそれ以外に、特別の支出をするということを、地方財政委員会が確約をしているわけですね。
  264. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 市町村の警察におきまして、予想しなかつた費用が、巨額にいつたというような場合には、平衡交付金で手直しをしておるわけであります。従つて指示があるとないにかかわらず、特別に費用がたくさんいつたという場合には、その方法によつてやるという趣旨であります。
  265. 立花敏男

    立花委員 あなたの言葉だけでは私は信用できませんので、地方財政委員会のどういう機関とどういう話合いができておるか、これをひとつはつきり文書でお出し願いたいのです。そうではありませんと、私ども地方行政委員会といたしましては、——従来も警察の費用で地方がどんどん困つております。その際に総理大臣がこれをやれ、あれをやれ、こういつたふうでどんどん仕事を押しつけられまして、その費用の裏づけについては、確たる政府の証言もないというままでは、私どもはこの法律を通すことはできませんので、その点お約束になつたのならば、いつ、だれと、どういうことをはつきり約束したということを、文書でお出し願いたいと思うのですが、その点どうなんです。
  266. 金光義邦

    金光委員長 立花君、どうですか、その点はもういいでしよう。この問題は地方財政委員会も同意をされて、完全な了解に達しているそうですから……。
  267. 立花敏男

    立花委員 それをはつきりさしてくれと言うのですよ。
  268. 金光義邦

    金光委員長 今齋藤長官からそういうお話がありましたから、それで御了解願います。
  269. 立花敏男

    立花委員 実際不明瞭きわまるじやないか。だから地方は今苦しんで、地方の警察の費用を出している。そのために借金をして、学校を建てる費用までさいて出しておる。どんどん仕事を押しつける法律を出して来て、その費用をどうするという答弁ができないとは何たることですか。どうするのだ。責任をもつてこれは明らかにすべきことじやないか。私どもは地方から、あなたたちはあの法律を通したらしいけれども、あの費用はどうするのだと聞かれたら、どう答弁するか、答弁のしようがない。何か齋藤さんと地方財政委員会の方で話があつたそうだと言つてごまかせますか。明確にしてください。
  270. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この指示によつて特に費用がかさむということは私はないと思つております。警察権を行使をするのに、どういうように行使をするかという行使の仕方を指示するわけですから、別にこのために特に費用がかさむということはないので、当然地方自治警察がやるべき仕事のやり方について、指示をするにすぎないわけであります。しかしながらこの指示があるとないにかかわらず、事件が起つて、予想しない費用がかかつたという場合には、平衡交付金で今までも地方財政委員会があんばいをしておりますから、そういう場合にもあんばいをする。地方財政委員会とは会議の手続を完全に済ましておりますので、文書で答弁をいたすのも、この席で速記録にとどめていただくのも、同じことだと考えております。
  271. 立花敏男

    立花委員 それではまた話が元にもどつて、出すのか出さないのか、わからなくなつたのですが、一体それはどうなんですか。ここにも何も運営について指示するのでなしに、「公安維持上必要な事項について、指示をすることができる。」とはつきり書いてある。だから必要な仕事をやはり内閣総理大臣が地方の警察に対して指示をすることになつておる。仕事をすれば、費用がいるのはあたりまえなんです。いくら地方の警察官つて飯を食わないで働くことはできません。費用がいるのはあたりまえです。その点どうなんですか。
  272. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 大して巨額の費用はいらないであろうということを申し上げておるわけであります。
  273. 立花敏男

    立花委員 巨額であろうとなかろうと、そんなことはやつてみなければわからないことで、法律をつくる以上は、巨額であろうと少額であろうと、その支出の面ははつきりして行かなければ地方は安心ができない。そのことをほつたらかしておいて、法律だけつくればいい、地方の警察総理大臣が掌握しさえすれば、それていいのだというのは、あまりに地方の実態を私は無視しておると思う。巨額でないというならば、どれくらいに見積つておられるのか。
  274. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 費用は、警察費全体として、平衡交付金で財政をまかなつて行くと、地方財政委員金では言つておられるわけであります。
  275. 立花敏男

    立花委員 全体としての場合と、特に指示した場合とは、これはまつたく事態が違うのです。全体であれば、地方が地方の責任において、地方の住民の選んだ自分たちの代表を通じて、自分たちが自分たちのために警察を動かすのだから、それに対して負担するのはあたりまえなんですが、それとはまつたく無関係に、総理大臣がひよつと命令をして来て、ある仕事をさせられた場合の費用とは、これは全然別なんです。
  276. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 平衡交付金で財政の收入と支出をバランスして、地方財政委員会が見られるということには、かわりがないと思います。
  277. 立花敏男

    立花委員 さいぜんから公安委員会の問題が問題になつておりますが、公安委員会意見を聞かれたそうですが、公安委員会ではどういう意見であつたのか。午前中都の公安委員長が来られまして、警察法には反対であるという——基本的な考え方が間違つておる。民主警察の方向でないということを、はつきり公安委員長言つておられたのですが、あなたはどの公安委員にお会いになつて、どういう答弁を得られたか承りたい。
  278. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほど答弁をいたしましたのは、集団示威運動等秩序保持に関する法建案について、私は申し上げたのであります。
  279. 立花敏男

    立花委員 だから警察法に対する公安委員会意見を聞いておるのです。相談されなかつたか。
  280. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察法につきましては、公に地方の公安委員会意見は聞いておりません。
  281. 立花敏男

    立花委員 国家公安委員会はどうです。
  282. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 国家公安委員会の意向は聞いております。
  283. 立花敏男

    立花委員 どういう意見ですか。
  284. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 青木公安委員がここで御説明になつたはずだと思います。
  285. 立花敏男

    立花委員 それから公安委員会総理大臣との関係ですが、あなたはさつきから公安委員会総理大臣は絶えず一体であるということを言つておられるのですが、これは一体ではないはずです。一体であつた公安委員会はつくる必要はありませんので、総理大臣にまかしておいてはしかたがないから、特別に公安委員会というものをつくつたはずです。あなたはそうじやなしに、一体だと言つておられる。これは一体ではない、一体であつてはいけないから、一党一派を超越して時の政権から離れたところの公安委員会をつくる。特に議会の指名によつて公安委員会をつくるということになつておるはずです。これは一体ではないはずです。その点はどうなんです。あなたの考え方は非常に混乱があると思う。決して一体ではないはずです。一体ではないがために特に公安委員会をつくつてある。この点どうなんです。
  286. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 物理的に一体でないものが、いろいろ意見を吐き合つて、そうして結論的には一体的な結論が出るということは私は非常に民主的な行き方だと考えております。
  287. 立花敏男

    立花委員 物理的に一体であるか一体でないかということを言つておるのではなしに、理論的に日本警察人民のための警察である、政府のための警察ではない。東條があの当時警察権を一手に掌握いたしましたように、時の権力者に警察権というものはまかしておくべきではない。そのために理論的に公安委員会政府から一応独立した機関として設けてある。これは一体であつてはいけないから別体にしてある。私は物理的の一体のことを言つておりませんので、民主的公安委員会は別個でなければならぬ。そのために公安委員会があるはずです。なおあなたはさつきから総理大臣公安委員会は、一体だ一体だと言つておりますが、大きな考え方の混乱があるのではないか。民主警察理念をお考えになつていないのではないか。だからこういう法案をお出しになるのではないかと思うのですが、一体だということは一体どういうことなんですか。
  288. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察国家になるとか、あるいは警察法を濫用するとか、そういうような事柄が公安委員会があることによつて行われないということは、これは申し上げた通りであります。さように考えます。従いまして公安委員会考え方と、純粋の意味の総理の考え方は違うものでないということを申し上げておきます。
  289. 金光義邦

    金光委員長 ほかに質疑はありませんか。——なければ両案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  明日は両案に対する討論採決をいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十四分散会