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1952-06-06 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月六日(金曜日)     午前十一時三十八分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 吉田吉太郎君 理事 床次 徳二君    理事 門司  亮君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    川本 末治君       小玉 治行君    佐藤 親弘君       前尾繁三郎君    龍野喜一郎君       鈴木 幹雄君    藤田 義光君       大矢 省三君    立花 敏男君       八百板 正君    大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  柏村 信雄君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁行         政課長)    長野 士郎君         法務府事務官         (法制意見第二         局長)     林  修三君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七五号)  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第二  一九号)  集団示威運動等秩序保持に関する法律案(内  閣提出第二三六号)  警察官等に協力援助した者の災害給付に関する  法律案川本末治君外八名提出衆法第六〇  号)     —————————————
  2. 河原伊三郎

    河原委員長代理 これより会議を開きます。  地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑はすでに終局いたしております。ただいま委員長の手元に自由党及び改進党の委員共同による野村專太郎君外十八名提出修正案並びに日本社会党日本社会党第二十三控室及び社会民主党の三党委員共同による門司亮君外五名提出修平案がそれぞれ提出されておりますので、これより両修正案について順次その趣旨弁明を求めます。まず野村專太郎君。     —————————————     —————————————
  3. 野村專太郎

    ○野村委員 ただいま提案されました地方自治法の一部を改正する法律案に対する修正案について、便宜私から提案理由を申し述べたいと存じます。  修正案内容につきましては、御手元に配付いたしてあります印刷物についてごらんを願いたいのでありますが、そもそも政府が今回の改正案提案いたしましたのは、新憲法とともに地方自治法が施行せられてから満五年、時あたかもわが国の独立の機に際会いたしまして、ここに従来の地方自治の実績と、将来の新情勢とに深く思いをいたし、その根本的、全面的改革は他日に期することといたしましても、この際できる限りの一応の改正をしようとするものでありますので、その内容は多くの重要問題を含んでおり、なお考慮を要するもののあることは、これまでの審議において、各位の御指摘になつたところで明らかであります。従いまして改正事項のうち、なお十分な検討を加える必要があると認められますものは、今後の研究調査をまつて、その結論を将来に期することとして見送り、また改正の結果、法の実施、運用において支障があり、あるいは問題となる懸念のあるもの、または現在の実際との間に調整をはかる必要があると認められますものは、政府改正提案趣旨は尊重しつつも、これに適当なる修正を施そうとするものであります。  まず修正の第一点は地方議会に関するものでありますが、議員定数の基準に関する第九十条、第九十一条の改正規定はこれを削除し、議員定数現行通りとする。但し、都道府県議員についても、市町村議員におけると同じように、条例をもつて、特にこれを減少することができるように改めるのであります。議員定数については、これを半減するというような地方行政調査委員会議勧告の線もあり、改正原案はおおむね戦前の定数を目標といたしておりますが、議員定員の増減は、民主政治の中核たる議会制度の重要な問題点であり、現在の地方議員任期は、なお両三年を余しておりますので急を要することではなく、問題の重要性にかんがみ、将来の研究にまかす意味において、この際は一応見送ろうとするものであります。  次に、議会運営に関しましては、第百一条の改正部分を削り、第百二条の改正部分を改めて、現行通り定例会制度を存続することとし、ただ、現行法が、「定例会は毎年六回以上招集しなければならない。」こととなつているのを「毎年四回招集しなければならない。」ことに改めるのであります。これは申すまでもなく議会活動の機会を十分に法律上保障するとともに、実際面との調和をはかり、かねて運営簡素化に資せんとするものであります。  なお第二百三十四条第一項に後段を加え、「この場合において、普通地方公共団体の長は、遅くとも年度開始前、都道府県及び第百五十五条第二項の市にあつては三十日、その他の市及び町村にあつては二十日までに当該予算議会提出するようにしなければならない。」こととするのであります。  これは政府改正案が、通常会臨時会制度をとり、通常会は、毎年二月または三月にこれを招集しなければならないこととしようとしておりますのを、この修正案現行通り定例会制度をとることにいたします関係上、年度予算を付議すべき議会の招集の時期の調整をはかろうとするものであります。  修正の第二点は、都道府県事務分掌のための部局に関するものであります。すなわち第百五十八条の改正規定を改めて、都の置くべきものの中に、さらに「主税局港湾局」の二を加え、道及び人口二百五十万以上の府県の置くべきものの中に、「建築部」を加えるように修正するのであります。これは東京都における税務行政及び港湾行政規模及びその特殊性考慮を払うとともに、大府県における住宅及び建築行政重要性にかんがみ、その行政の円滑なる処理に対処せんとするものであります。  修正の第三点は、特別市に関するものでありますが、まず第二百七十一条は、第四項中「法律又は政令」とあるを「法律又はこれに基く政令」と改正する部分のほかの改正はこれを削除し、第二百七十三条第一項の改正規定に必要な修正を施すとともに、第二百七十六条の改正に関する部分を削つて特別市行政区の区長現行通り公選とし、選挙管理委員会は存置することとするのであります。その理由は実際に徴し、その必要が認められるからであります。  修正の第四点は、特別区に関するものであります。まず第二百八十一条第  一項の改正規定を「都の区は、これを特別区という。」に改め、特別区の性格に変化を与えるような印象を避けることとするとともに、特別区の行うべき事務については区民に身近なものは、なるべく区に行わせるべきでありますから、すでに現在区で行つている事務は、今後引続き行わせることが妥当と考えられますので、第二百八十一条第二項の改正規定の特別区の行うべき公共事務及び行政事務を法定したものの中に、さらに診療所小売市場共同作業場を設置し及び管理することを加えるように修正しようとするのであります。  次に、特別区の区長任命制の問題は、最も論議の対象となつたところであり、法理上も実際上も影響するところが多いと思います。政府改正案大都市行政の一元化に大いなる考慮を払い、かねて行政簡素合理化をはかろうとすることはよくわかるのでありますが、一面、従来の沿革や実際面をもあわせ考える時、両面の調整をはかり、行政の統一、簡素化住民意思及び議会政治との調和点を見出すことが必要と考えられますので、改正案が、第二百八十一条の二で、特別区の区長都知事区議会同意を得て任命することになつているのを、特別区の区長都知事同意を得て、区議会がこれを選任することに改めるのであります。  なお、これに関連して現在区長の職にあるものは、この改正規定にかかわらず、その任期中は、なお従前の例によつて在職するものといたそうとするのであります。この経過規定附則において定めるのであります。  次に、特別区の財政に関連する事項でありますが、従来、ともすれば区の処理すべき事務に要する経費財源について、都と区との間に円滑を欠いたような傾向がありますので、この際、明文をもつてその弊を根絶するため、第二百八十二条の改正に関する部分中、「特別区について」を「特別区の事務について特別区相互の間の調整上に改めるとともに、さらに一項を附加して、区が法律上又は委任によつて処理しなければならない事務処理したり、管理したり、執行したりするために要する経費財源については、政令の定めるところにより、特別区の意見を聞いて、条例で、都と特別区及び特別区相互間の調整上必要な措置を講じなければならないこととするのであります。  最後に、特別区について現になされている競馬法第一条の指定は、引続きその効力を有することを附則で定めようとするのであります。  以上が修正案内容であります。何とぞ御審議の上、御賛同あらんことを御願い申上げます。
  4. 河原伊三郎

  5. 門司亮

    門司委員 私は、地方自治法の一部改正に関する法律案に対して、社会党社会党第二十三控室、並びに社会民主党各派代表いたしまして、修正意見を申し述べたいと思うのであります。  この修正案提案いたしました理由は、今回の地方自治法の一部改正の法案中、政府の説明その他を聞いて参りますると、あまりにも机上のプランに基く、いわゆる行政簡素化を中心とし、さらにこれに伴う事務整理のような、一応の形は示しておりまするが、この考え方は実際の実情に沿わない考え方がたくさん盛り込まれておりまするのと、同時に日本民主化地方自治体の真の民主的運営でなければならないことは、憲法にもはつきり示している通りであります。従つて地方自治法改正しようとするならば、単に事務上の問題、あるいは形式的の機構改革だけでなくして、現状に即応した日本民主化をいかにするかということを基盤にして、この地方自治法改正は行われなければならないと考えておるのであります。従いまして、私どもはこの線に沿うて、修正の案をここに提出いたしましたゆえんであります。その修正をいたしました部分をきわめて簡単に御説明申し上げまして、各位の御賛同を得たいと考えておるのであります。  修正の第一は、第七条の二項の改正に関する部分を削除するということであります。第七条の第一項は、その本文において、市町村廃置分合または市町村境界変更いたしまする場合に当該地方公共団体議決いたしましたものを、さらに「当該都道府県議会議決を経てこれを定め、直ちにその旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。」あるいは「所属未定地市町村の区域えの編入も、また、同様とする。」ということを受けておる条文ではございまするが、私どもはこの改正案内容にありまする「前項規定により市の廃置分合をしようとするときは、都道府県知事は、予め内閣総理大臣協議しなければならない。」というこの規定は、すでに前文において市町村自主性を十分に認め、なおそれを是正し、あるいは匡正することのために、私どもから言いまするならばよけいなものだとは考えておりまするが、とにかく当該都道府県議会議決を経てまで、これがきまらなければならないというふうに規定をはつきりいたしておりまする以上、その廃置分合等に対して、これがいいか悪いかということを「予め内閣総理大臣協議をしなければならない。」というこの規定であります。もし内閣総理大臣がこの協議に応じなかつた場合は、一体市町村議決はどうなるかということになつて参ります。同時に都道府県議会議決をこれが拘束する結果が来ると思うのであります。こうなつて参りまするならば、必然的に地方自治体自主性というものは失われて、そうして中央政府が、市町村住民自由意思決定にもかかわらず、これに容喙するようなことは、いわゆる地元自治体を再び中央集権化をはかるものだとして、私どもはこの条項を削除したいと考えておるのであります。  治に第八条の二の改正部分を私どもは削除しようとするのでありますが、第八条の二の改正案によりますると、「都道府県知事は、市町村が第二条第十項の規定によりその規模適正化を図るのを援助するため、市町村廃置分合又は市町村境界変更計画を定め、これを関係市町村勧告することができる。」以下ずつとこれが第六項まで、この条文に基いて書かれておるのでありまするが、都道府県知事市町村適正規模に対してこれを計画し、あるいはこれを勧告するということは、今日の地方自治体おのおの市町村の持つておりまする自主性に、きわめて強い知事干渉権が入つて来るということであります。私どもはもとより都道府県あるいは市町村適正規模の問題は当然考えられなければなりませんが、この自治法改正によりますると、都道府県に対しまする適正規模に対しては、何らの規定を設けないで、市町村だけにこういう知事計画権あるいは勧告権を認めておるのであります。こうなつて参りますると、地方自治体が自主的に廃置分合をしようというのに、また再び知事意見がここにさしはさまれて来るということになつて参りまして、前の第七条の第二項が中央集権になると同じように、やはり第八条の二におきましても、この改正案そのものを認めますならば、知事権限市町村住民意思決定の上に、非常に大きく反映するということになつて参りますので、私どもはそれらの中央集権を避けたいと考えて、この改正部分を削除しようと考えておるのであります。  次に第九条第七項の改正規定を削ることにしたのであります。第九条第七項の規定は、これは六項あるいは五項、四項の規定を受けたものでありますが、その条文は「前項規定による告示があつたときは、関係市町村境界について第七条第一項又は第三項及び第六項の規定による処分があつたものとみなし、これらの処分効力は、当該告示により生ずる。」とこう書いてあります。従つてこの市町村境界変更について、やはり内閣総理大臣告示をまたなければならないということになつて参るのであります。ところがこの条文前項の六には「前項規定による届出を受理したとき、又は第十項の規定による通知があつたときは、内閣総理大臣は、直ちにその旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。」と、こう規定いたしておりますので、この効力の発生に対しましては、当然これは内閣総理大臣が六項の規定によつて、その旨を告示するときは直ちに発生するということにぜひしておかなければ、この第七項を生かして参りますと、この六項と七項との間に時間的余裕がありますれば、ここに何らかの政治的動きがあるというようなことになつて参りまして、一応市町村並びに都道府県議会議決いたしましたものが、内閣総理大臣告示され、さらにそれが内閣総理大臣のこの告示効力の間に、そういう政治的の取引等があるということになつて参りますと、いたずらに物議をかもします原因をこしらえて参るように考えますので、私どもはこの規定は六項でたくさんだ、こういうふうに考えておるのであります。従つてこの項を削りたいと思うのであります。  次に「第九条の二第六項の改正規定中「及び第七項」を削る。」と書いてありますが、これは先ほど申し上げました第九条の七項を削除いたします関係から、第九条の二の中に、その六項に、「第六項及び第七項の規定」とこう入れておりまするから、当然この第七項を削除する一つ経過規定であります。  次に「第九十条の改正に関する部分を次のように改める。第九十条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を第三項とし、第二項として次の一項を加える。前項議員定数は、条例でこれを減少することができる。」こう書いておりますのは、この改正案で見ますと、都道府県議員定数は大幅に削減いたしておるのであります。これは現行法をそのまま認めまして、ただ現行法の中で非常に都道府県議員定数に対して不備な点を、人口に一応スライドいたしまして、そうして最高の議員定数は百二十名に規定いたしておりますが、しかしながらその間における人口の増加に伴いましては、必然的に議員定数がふえて来るようになつておるのであります。従つて私はここに「前項議員定数は、条例でこれを減少することができる。」という規定を設けまして、そうしてその地方都道府県自治体自由意思に基いて、その定員を減少することができるというようにした方が、機械的に画一的に法律でこの定員を定めるよりも自主性があると私どもは考えまして、これらの点は地方都道府県自主性にゆだねたいと考えておるのであります。  次に「第九十一条の改正に関する部分を次のように改める。「第九十一条第二項中「特に」を削る。」こう書いてございますが、これは第九十一条の中には御承知のように、市町村議員定数は、特に必要ある場合はこれを減少することができるという規定を設けておるのであります。しかし特に必要あるという字句は、何らかの理由がなければこれを減すわけには参りませんし、またこの規定を設けましたものは、従来の都道府県の合併その他に関係をしてこういう字句を使つておりますので、われわれはこの「特に」という文字を削除いたしまして、そうしていつでもこれが減少できるという規定にいたしたいと思いますと同時に、前九十条の条例と、これを条文文字を一致させることのためにこの「特に」という字句を削ることにいたしたのであります。  次に「第百二条の改正に関する部分を削る。」ということになつておりますが、これは先ほどのお話の中にもあつたかと思いますが、都道府県会期の問題であります。会期の問題につきましては、いろいろ今日まで議論はあつたのでございますが、しかし今日の地方自治体というものと戦争前の自治体と、非常にその趣を異にいたしておりまして、非常に多くの仕事、非常に広汎にわたる仕事をして行かなければならないのと同時に、地方公共団体が真に民主的にやろうといたしますならば、どうしてもやはり議会は相当回数開かれて、そうして住民意思に基いて出て参りましたその代表者である議員が、一々これを協議するということが正しいあり方である。この会期の数を減らとて参りますならば、必然的に理事者の一方的事務処理が行われて参りまして、ここに理事者に対しまして非常に強い権限を与えますと同時に、住民代表であります議員が、少し言葉を悪く申しますれば、行政に対してつんぼさじきに置かれるような結果に相なつて参りまして、地方自治体民主化のために、非常に大きな悪影響を及ぼすと考えますと同時に、これはやはり今日民主化されたとは言いながら、いまだに官僚色の非常に強い現在の都道府県並びに市町村行政の状態から見て参りますならば、この官治行政を排して、やはり民治行政に切りかえることのためには、私は現行法日本現状においては適当だと考えて、この百条の改正に関する部分を削除いたしたいと考えているのであります。  次に「第百五十八条第一項の改正規定中「第一 都」の局部のうち「二 財務局」の局の分掌事項(一)中「、税」を削り、同局の次に次のように加える。」といたしておりまして、「三 主税局(一)都税及び都税に係る税外収入に関する事項」「同条同項の改正規定中「第一 都」の局部のうち「三 民生局」を「四 民生局」に、「四 衛生局」を「五 衛生局」に、「五 経済局」を「六 経済局」に、「六建設局」を「七 建設局」に改め、「六建設局」の局の分掌事項(四)中「港湾その他」を削り、「七 労働局」を「八 労働局」に、「八 建築局」を「九 建築局」に改め、「八 建築局」の局の次に次のように加える。」といたしまして、港湾局を挿入いたして、さらに「港湾に関する事項」といたしておるのであります。  それから「同条同項の改正規定中「第三 人口二百五十万以上の府県」の局部のうち「七 土木部」の部の分掌事項中「(三)住宅及び建築に関する事項」を削り、「(四)港湾その他土木に関する事項」を「(三)港湾その他土木に関する事項」に改め、同部の次に次のように加える。」といたしまして、「八 建築部 (一)住宅及び建築に関する事項」と改めて参つたのであります。  この改めました理由は、御存じのように、東京都は約八百億の予算を組んでおりまして、国の約一割に相当する非常に多額な予算を組んでおります関係から、これらの予算処理をいたしますることのために、やはり従来の財務局というものを主税局というように改めまして、そうしてここに都の財政すべてを管轄いたしまする局部を設ける必要があると考えて、これを挿入したわけであります。  次に港湾局を設定いたしました理由は、日本現状から、港湾維持管理というものは、主として市町村にこれがゆだねられておりますが、東京都は御存じのように都でありまして、市を持つておりませんので、横浜あるいは神戸、大阪等は当然市の機構の中に港湾局あるいは港湾部を設けて、これが行政管理に当つておりますが、東京都はこれと比較いたして参りますと、非常に広汎な水域を持つて参りますので、東京都におきましては港湾局の一局を設けて、この港湾行政に関する仕事をさせることがいいと考えて参りまして、ここに港湾局を一局挿入して参つたのであります。  次に建築部を、人口二百五十万以上の府県にこれを設置するということにいたしておきましたのは、今日日本現状は、住宅いまだ三百五、六十万戸不足をしておりますときに、この建築事務はきわめて重要性を持つております。同時にまた、大きな都道府県におきましては、防火建築、あるいは耐火建築、あるいは耐震建築等のいろいろな建築技術問題等も含まれて参りますので、当然これは建築部という一つの部を置きまして、そうして住宅及び建築に関する事項を掌握させることが適当ではなかろうかと考えて、ここに設けた次第であります。  次に、第二百七十六条の改正に関する部分を削つたのでありますが、第二百七十六条の改正案によりますと、行政区の選挙管理委員会を廃止するという案になつておるのでございますが、少くとも今日の選挙管理委員会選挙事務管理でなくして、選挙自体を管理する委員会でありますので、選挙の行われまする行政区画に対しましては、これを管理する選挙管理委員会があることは当然だと考えております。御承知のように、五太市にありまするいわゆる行政区の長は、都道府県会議員、あるいは市会議員等選挙は、おのおの区の行政区画においてこれを施行いたしておりますので、先ほど申し上げましたように、選挙を行いまする行政区画に必ず選挙管理委員会を置くことが、選挙の公正を期する上に、あるいは事務の煩雑を避けることのためにも、必要かと考えて、この改正部分を削除いたしたのであります。  次に、第二百八十一条の二の改正に関する部分を削るということでありますが、これは東京都のいわゆる特別区の区長を、政府原案によれば、都知事任命によつて、そしてこれに対して区議会同意を与えるというような形式になつておりますが、これは今日の東京都の特別区は市に準ずるということは、地方自治法で明記されておりまして、従つて当然固有の事務があるということを考えて参りますならば、われわれは憲法の九十三条の解釈から、当然これを一個の自治体と認めるということになつて参りますと、そこの自治体の長は必然的に公選でなければならないということが、理論上正しいと思うのであります。従つて今日の段階におきましては、知事がこれを任命し、そして都議会がこれを承認するというような形になつて参りますと、固有の事務を持つておりまするその長は、都知事意思のままに任命されて、その区長が、任命権者である都知事に対して責任を負うということになつて参りまして、区民と区長との間が非常に疎遠になつて参るのであります。区議会というものが区民の意思決定の機関であるにかかわらず、区民の意思決定の機関である区議会意思を尊重しないで、都知事意見を尊重して、これに責任を負うというようなことは、これは運営上の非常に大きなトラブルが起る危険性もありますし、同時に政治の取引その他のいろいろな問題を起すことを考えて参りますと、これは当然憲法九十三条の規定を尊重いたしまして、私ども区長任命制に対しましては反対をいたします関係から、二百八十一条の二の改正に関する部分を削除いたしたいと考えておるのであります。  次に、「第二百八十二条の改正に関する部分の次に次のように加える。第二百八十二条の次に次の一条を加える。第二百八十二条の二 都は、特別区の処理する業務に要する財源について、特別区との協議により、充分な財源を確保できるように財源措置を講じなければならない。」と規定しておりますものは、先ほど申し上げましたように、都の特別区は自治区であります関係から、その与えられておりまする行政事務を遂行いたしますには、どうしても財源の裏づけが必要であるために、特にこの一項を挿入いたしまして、これが十分なる財源の確保の措置をした次第であります。  さらに附則第七項を次のように改めました。「改正後の地方自治法第百五十八条第一項から第三項までの規定にかかわらず、改正前の地方自治法第百五十八条第一項から第三項までの規定により設けた都道府県局部のうち、道における建築部並びに府県における農地部、労働部及び建築部については、なお、従前の例により存続させることができるものとし、都道府県におけるその他の局部については、この法律施行の日から起算して五月以内に限り、なお、従前の例により存続させることができるものとする。」こういう規定をいたしましたのは、改正法案によりますと、都道府県局部の中に、建築部は先ほど申し上げましたように、人口二百五十万以上のものには、すべてこれを残すことにいたしましたが、二百五十万以下の府県におきましても、今日当該府県が必要であると認めておりまする建築部に対しましては、なおこれを存続することが、先ほど申し上げました理由と相合致する道だと考えておりますので、これを存続することにいたしました。同時に府県におきましては、農地部あるいは労働部が廃止されておりますが、わが国の現下の情勢は、特に農地に対しましては、一応農地改革が終了したかのごとき形は示しておりますが、実際におきましては農地の廃置分合等はいまだ完全にこれを終了いたしておりませんし、また将来日本の農村を完全なる農地改革の線に基いて行おうといたしますならば、当然今日の山林原野、牧野等の開放もまた行われなければならないことは、必然的の運命を持つておりますので、それらに備えまするためにも、やはり現在農地部を必要として存置いたしておりまする県に対しましては、農地部を存置させるということが、私どもは妥当ではないかと考えて、挿入いたしたのであります。次に労働部におきましても、今日日本の自立経済の観点から申し上げましても、また日本の国内情勢から考えて参りましても、労働問題はきわめて重要な問題であるということは、皆さんもよく御承知通りであります。従いまして、この労働部が現在置かれておりまする都道府県におきましては、これの必要性を認めて労働部を設置いたしておりますので、改正案のようにこの労働部をなくするようなことは、時代に対しましてもきわめて認識不足であり、言葉をかえて言いますならば、やはり時代に逆行した一つのものの行き方ではないかと考えておるのであります。従いまして、社会的に、現実的にきわめて重要な労働部を現在存置いたしておりまする府県におきましては、なお従前通り労働部を存置することができるという規定に改めようとして、この附則七項をさつき申し上げたように改正いたしたような次第であります。  以上が私ども提案いたしました修正案の概要であり、さらに修正条文のすべてであります。何とぞ十分御審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  6. 河原伊三郎

    河原委員長代理 これにて修正案趣旨説明は終りました。この両修正案について質疑があればこれを許します。なるべく簡潔にお願いいたします。大矢省三君。
  7. 大矢省三

    ○大矢委員 野村委員にお尋ねいたしますが、今度の改正法案で最も重要な関心を持つた問題は、例の特別区の区長の選任の問題であります。今度の修正案によりますると、原案の「都知事が特別区の議会同意を得て、」すなわち先決は都知事にある。そこで議会同意を得て初めて決定する。それが今度は逆になつて、「議会都知事同意を得て」、こういうことに修正なつておるようですが、議会都知事同意を得る場合に、一応議会で候補者を決定して、その候補者をもつて都知事に交渉して同意を得るのか。この改正案によると、議会が候補者の先決によつて同意を得る。これが逆になつただけで、かえつて問題が紛糾しやしないか。この点の心配がないかどうか。これは個人の問題であれば一応打合せることができますが、議会同意を得るということになりますと、これは当然都知事同意を得るために議会意思表示をする、候補者を決定しなければならない。もしその決定した候補者が都知事同意を得られなかつた場合には、議会議決権というものは、都知事によつて無視されるということになる。これはきわめて重大な結果を持つと思うのであります。この点について修正なされた御意思を一応お伺いしたい。それから今度の法案にもありますように、来るべき特別調査会によつて抜本的な改正をしなければならぬ。独立後の日本自治体のあり方というものに対して、根本的に検討しようというために、いわゆる地方制度調査会設置法というものが通過したのでありますが、これは三年先のことです。現在の都知事は公選であるから、任期中それでよろしいというのでありますから、三年先のことを、この調査会があるにかかわらず、ここでただちにこういうことに決定しなければならぬという、何か特別の理由があるかどうか。この二点だけを一ぺんお聞きしたい。
  8. 野村專太郎

    ○野村委員 大矢さんの質疑に対しましてお答えいたします。御承知通り特別区の区長の問題に対しましては、本案中相当論議があつた問題ですが、特別区の歴史なり沿革、現実というものを見ながら、都知事同意を得て区議会がこれを選任する、私たちとしては、こう修正案を考えておるのですが、この特別区の従来の性格というものを、われわれとしては保全いたしまして、そしてその上に立つて……。しかし東京都と区の一体性なり関連性というものは、これは不可分の問題でもあります。そういう点から、いわゆる特別区の性格を尊重しながら、都区間の関連性というものも考慮いたしまして、そこで特別区の区議会においてこれを選任し、知事同意を得る。従つて区議会の選任ということが重点になります。しかし東京都と区の関連性というものを考えて知事同意を得る、こういうことにかえたのでございます。そこで今御心配のように、区議会の選任と知事同意ということに想到いたしまして、これが同意をし得ないということに対しては、御質疑のように問題が残ると思います。しかしこれは実際の運営においては、そう私は心配がないと思います。そういう点で、一応自治区としての従来の実態というものを認めておるのですが、その上に立つて都知事がこれを同意して行くというのですから、その場合いろいろあろうと思いますが、実際の手段といたしましては、同意を得るという線を十分考慮に入れて、区議会が自主的にこれを選任をいたし、これを知事同意することを期待するわけですが、しかし今御心配のように、一応そういうことは形式的には考えられますが、これは都と区の関連性なり、大都市行政運営ということに対して考えて行けば、私はそう心配がないと思う。自治区として区議会がこれを適当な区長を選任いたした場合には、これが過半数以上で区会において選任を終つた場合においては、そう心配なく同意を得られるのではないか、かように考えます。実際の手段においては、単数あるいは複数の候補者を予定しながら、同意というものを考えてやつて行きますれば私はそう心配ない、しかもこれによつて都と区のトラブルがなくなるのではないか、こう考えております。  それからあとの問題ですが、今回のこの問題に対して地方制度調査会というものが一応考えられて、地方制度全般に検討される、そういうときに地方制度調査会に付託してこれでやつてもいいじやないか、こういう御質疑であろうと思いますが、これも一応ごもつともであろうと思いますが、しかし都と区の問題につきましては相当長い間の問題であります。党派を超越して国会関係からも裁定に入つたこともあります。しかも都側、区側もこの修正案に対しては、おおむね了承されておるようでありますので、私はむしろこれを時間を制限することなく、都区間の問題は一応この修正案によつて行くことが最も妥当である、こういう見解から、しかし議員定数であるとか、いろいろな問題に対しては、地方制度調査会で相当広汎にわたつて検討され、そういう場合に都区の問題もあるいは検討のうちに入るかもしれませんが、少くとも一応現段階においては東京都と区の問題に対しては、これで一応円満に双方了解しながら解決ができる、こういう考えで修正案を用意いたしたのであります。
  9. 大矢省三

    ○大矢委員 別に心配がないということでありますが、実際問題としてこういうことを考慮されるかどうか、今度のこの改正のねらいは、特別区の区長が公選であるがために都知事の思うようにならない、そこで都知事任命しようとしたところに改正案の本質があるのです。そういうことになりまして、字句を交換しただけで修正なつておりますが、都知事がかりに自由党であつた場合に、自分の意見に相違した人を選ばれては困る、そこで当然自分の部下を、ある一党一派の人に対して同意を与える、同意を得なければ区の議会がきめられないのでありますから、そこで自分の意のままの人の場合に同意を与えるということになつて、いわゆる都知事選挙ごとに、各所属党の区長をもつて独占しやしないか、それは区議会が許さぬだろう、こう言いますけれども、結局都知事同意を得なければ区議会が決定することができないのです。それはいかぬいかぬといつてがんばれば、これはどうすることもできない、これが私の杞憂であれば幸いです。あるいは仮定に立つてものを言つておるのでありますから、その御心配無用と言われればそれでおしまいですが、私は必ずこの問題は、むしろ今日よりもつともつと紛糾し、かつて東京市のあの腐敗した市会のような醜態をさらに繰返すのじやないかと思う。また今日出された条項についても、ただ字句を更改しただけの修正では、まつたくお話にならぬ。その心配は御無用だと言われるならそれまででありますが、私は将来のため、この点特に提案者にお伺いしておきます。
  10. 野村專太郎

    ○野村委員 今回の本法は政府提案として、しかも東京都区間の従来のいろいろな過税というものを考慮しながら、いわゆる神戸勧告なり、これらを尊重しながら本案が提出されたのでありますが、今御指摘のような心配もありますので、区会そのものの選任では、およそ立法である以上は、あらゆる場合を想像してこれを考えなければなりませんので、そういう点から、この区議会の選任というものを主体に置いて行く、しかし都と区の関係考慮しながら、知事同意を得るというのでありますから、おそらくこの運用にあたつては、この区の自主性というものを尊重しながら、私はそう御懸念なく行くのではないかということを考えております。またそう運営されることを期待しておるわけであります。
  11. 八百板正

    ○八百板委員 野村さんにお尋ねしたいのでありますが、ただいまの点でもう少し明らかにしていただきたいと存ずるわけであります。特別区の議会都知事同意を得て、ということになりますと、選任する場合にあらかじめ都知事同意を得て選任するというふうな考え方でございますか。それとも両者一体になつ協議してやるというふうな考え方から行つておるのでございますか。おそらく選任でございますから、選挙もあり得るのでございましようけれども、しかしながら先に区議会において選挙をして決定したものについて、都長官の同意を得るということになりますると、その議決に対する拒否権が生れて来ることになりまするから、こんがらがつて参りますので、おそらく事実上選挙ということを頭に置いてない改正だろうと私は思うのであります。そういうことでありますと、選任するにあたつてあらかじめ都知事同意を得る、そういう意味において、発議権は区議会にありまするけれども、実質上の発議権は都知事の方にあると解してよろしいのか、こういうふうな点をもう少し詳しく明らかにしていただきたいと思います。
  12. 野村專太郎

    ○野村委員 ただいまの八百板さんの御質疑に答えます。この特別区の区長都知事同意を得て、区議会が選任する、こういうことになつているわけでありますが、実際の場合においては、今のお話のように、都側の同意に対して大体内意をはかつて、その場合都知事が単数の候補者に同意する場合もありましようし、また複数の場合を考えることもありましようし、これはいわゆる自治区としての区議会が選任するということが主体でありますから、そういう点において私はいろいろな場合が考えられると思いますが、区議会住民意思を体しながら、これを選任して、しかも過半数で行こうという場合には、私はそう心配することはないと思います。これは将来の運営にかかつておるわけでありますが、実際の手段としては、都知事同意を得てということになつておりますから、そういう手段を講じながら、特別区の自主性というものを尊重しながらこれを運営して行くということになりますれば、そう私は心配ないと思います。これは一方に偏することなく行くのですから、私は現段階としては、法制上にはいろいろ両論あるようですが、一応適当な考え方ではないか、かように考えております。
  13. 八百板正

    ○八百板委員 まあ大体においてうまくやつてくれるだろうという御期待の上に立つておられることは、自治体の運用としてはまことにけつこうなことでございますが、間々そうでない場合が多いので、少し明らかにしていただきたいと考えるわけでございます。議会意思決定ということになりますと、当然にあまたの者でございますから、やはり会議を開いてその上できめる。いわゆる議会側の意思決定は、大体において議長の意思や少数個人の意思ではきめられないわけであります。ところが都知事の場合は一人でございますから、どうしても自由な意思の表示が比較的できるということになります。そうしますと、たとえば区の議会の議長さんの方で持つて行きます候補者なり何なりというものは、要するに議会同意を得ていなければ、議長個人の資格において、こんな人はどうだろうというようなことを持つて行くのでありますから、そこにどうしても弱みが出て来るわけです。ところが一方都知事の方の推薦と申しますか持駒というものは、どうしても都知事の一存によつて拒否することもできるし、どうにもできるという権限がありますから、勢いのおもむくところ、実権は都知事の手に移つて行くというふうな結果になることが、私は大体において予想できるのです。そういうことになりますと、議会自主性は非常に弱いものになるような感じがするのでございますが、そういう点について御心配なくやつて行かれる、都知事意見に振りまわされるというような形にならないで持つて行けるという自信と申しますか、運用に期待できるのでございましようか。
  14. 野村專太郎

    ○野村委員 御心配もごもつともですが、しかし都知事も特別区を含めた全体の住民から、直接選挙によつて公選しておるので、その同意権というものを非常に過大にお考えのようですが、かりにそういうことがありましても、区議会が選任をしなければ区長は生れないわけです。そういう点から、この選任というものを円満に同意の線を考えながらやつて行く。また都知事もやはり、住民意思である代表機関の区議会意思に対しては、これは尊重せざるを得ない、こう考えますので、私はそういう点から行きますならば、決して都知事が個人の主観を強く入れて行くような弊害はない、こう考えております。
  15. 河原伊三郎

    河原委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑はないようでありますから、両修正案に対する質疑はこれで終了いたしました。
  16. 河原伊三郎

    河原委員長代理 これより原案及び両修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。大泉寛三君。
  17. 大泉寛三

    ○大泉委員 私は自由党を代表して、自由党、改進党の共同提出による修正案に賛成をするものであります。そしてまた残余の政府原案に対しては賛成であります。また社会党提出された修正案に対しては、各部分においてはきわめて同調されるところがありますけれども条文の統一上、これに反対するものであります。  政府は、今度の改正案を出されるにあたつて地方自治の担当者、特に地方自治の責任者から、あるいはまた関係方面からの相当強い要望にこたえて、いわゆる占領の終末において地方自治自主性を強化する、あるいは高揚する、または行政簡素化をする、財政面のいわゆる健全強化というような部面に意を注がれたことは、十分了承せられるのであります。しかし私どもの立場においても、各地方住民あるいは国民の相当強い反対、あるいはまたそれに対する修正の要望があつたのでありまして、先ほど野村委員から提出された修正案となつたのであろうと思うのであります。特にこの現行法議員任期のごときは、きわめて合理的にまた地方住民のきわめて信頼されるような法文になつております。こういう条項は、私どもはやはりそのまま存置するのが適当であるという点において賛成するのであります。また議会審議期間の短縮というような改正案は、とうてい私どもは全面的に承服することはできない。しかし地方自治体はみずからの総意によつて審議を延長できる、あるいはまた回数をふやすこともできるのでありますけれども、何といつても一応一つの基準が定められぬというと、それに左右される点が多い、こういう点から、開会の回数を、現行の六回を四回にする、いわゆる政府原案の一回を四回にするということは、きわめて妥当な修正であろうと思うのであります。また政府が考えていられるように、議員定数を減らそうというような意図があるならば、また財政的基礎を強化するというならば、きわめて小さいところの町村の合同、合併によつて、相当その目的が得られるところが大きいという観点も私どもは考えておるのであります。現在の議員定数というものは、割合小さな町村に対してはきわめて多いようにも思います。また大都市あるいは大府県に対しては割合少い。そういう点を考えてみますると、どうしても現行法でまずこれを認めて、そうして自主性にまかして減らすとともできる、というように持つて行くことがきわめて妥当である、こういうふうに考えておるのであります。  以下、先ほど野村委員から詳しく説明されましたいわゆる東京都における特殊性、あるいはまた一昨年この委員会で、特に論議をされて設置せられたところの主税局あるいは港湾局は、これが設置せられてほとんど間もない現在において、これを改正するということはとうてい許されない、こういう関係から、この修正案はけつこうであると思うのであります。その他区長任命制においては、きわめて妥当な行き方である。これ以外にいわゆる自治の円満をはかる道はない、こういうふうに考えますので、非常にこの修正案はけつこうな案である。東京都民、区民の谷代表機関においても、相当実行上において円満をはかられると期待されるものと思うのであります。その他また建設局の設置に対しても、今日住宅問題が相当国民の悩みの種となつておるような時期において、特に大府県に対する建築部を認めるということは、これもきわめて適当なる案であると思うのであります。特に最後に、政府改正の原案において、第一条を第一条の二と落して、第一条の発頭に掲げたこの精神は、あくまでも貫いてもらうということを私は期待してやまないのであります。  今回の共同提案修正案は、きわめて地方住民意思を尊重し、政府の目的も貫遂されるところの線に沿つたものと信じまして、修正案に対しては賛成の意を表し、またこの修正以外の原案に対しては賛成の意を表するものであります。また社会党から出されたところの修正案に対しては、条文の整理上、反対を表する次第であります。
  18. 河原伊三郎

    河原委員長代理 床次徳二君。
  19. 床次徳二

    ○床次委員 私は改進党を代表いたしまして、ただいま提案せられました改進党並びに自由党の共同修正案並びに修正案を除きましたところの政府原案に賛成し、門司委員を代表者として提案せられました修正案に反対の意を表明するものであります。簡単に賛成の理由を述べたいと思います。  第一に、政府の案におきましては、行政事務簡素化並びに能率化をモツトーとせられまして、いろいろの改善を考えておられるのでありますが、その点今日の地方自治の円滑な発展をあるいは妨げるおそれなしとしない趣旨のものもあると考えられるのであります。私どもはでき得る限り、現在の民主政治の基礎であります地方自治団体の円満な運営ということを考えまして、修正をいたさんとしたのであります。すなわち議員定数、あるいは議会の開会、あるいは特別市におけるところの区の選挙管理委員会の存置等につきまして、主張いたしましてこの修正を行い得ましたので、賛成の意を表する次第であります。  第二点といたしましては、今日の自治法上におきまして、特別市の問題がすこぶる大きな点でありまして、これに対しましては、かねがね各方面の調査が行われておつたのでありまするが、今日軽々しく結論を出すということにつきましては、これは慎重考慮を要するのであります。私どもといたしましては、地方自治の基盤といたしまして、市町村をでき得る限り完全な自治主体とするということに対しまして、なお努力をいたすべきでありますと同時に、都道府県という制度に関しましても、再検討を加えるべき時期に来ておると思つておるのであります。これと同時に、大都市というものにつきましても、やはり考えをいたさなければなりませんので、政府自体におきましても、近く地方行政制度議会を設けんとするのでありますから、この審議会におきまして十分研究をせられたい。私どもはこの審議会の結論の上に立つて、さらに将来の大都市というものについて検討を加えたい。特別市並びに残存の府県というものに対しましても、十分検討を加えました後におきまして、この地方自治の問題を処理せんとするものであります。  第三点といたしまして考慮いたしたいのは、東京都におきまする都と区の調整の問題であつたのであります。数年間にわたりまして紛争のために東京都の行政がある程度まで渋滞を来したということは、いなみがたい問題であると思います。私どもといたしましては東京都民がほんとうに自己の生活に身近かな問題を、自己の手によつて処理するという自治政治の実現を目途としておりますが、今回都と区の間に調整ができまして、すなわち修正案のごとき形におきまして、一応の解決を見るに至つたことはまことに喜ばしいことでございます。なお都、区の行政の面につきましては、今後努力にまつところが少くないのでありまして、根本的な都の制度につきましては、さらに今後引続いて研究するといたしまして、今日は一応この段階をもちまして適当と思いまして、今回の修正案に対しまして賛成の意を表する次第であります。  なお第四点としまして特に政府当局におきましても考慮をお願いする問題は、地方事務の再配分の問題に関しましては、今回の改正におきましては取上げられていないので、とりあえず現状をもちまして、法文の整理を認めておるのでありますが、これはでき得る限りすみやかに改善整理を必要とするのであります。なお地方が真に地方自治に徹し得るためには、この地方の専務を完全に運用いたすだけの財政的裏づけを必要とするのでありますが、今日の状態におきましては遺憾ながら地方財源が少い、市町村が独自の財源を持たないところに、大きな欠陥を持つておるのであります。これはでき得る限り早い機会におきまして、地方財源の裏づけを確立いたしまして、もつて地方自治が円満なる運営のできまするように要望するものであります。  以上簡単でありまするが、今回の修正案並びに政府原案に対しまして賛成の意を表する次第であります。
  20. 河原伊三郎

    河原委員長代理 大矢省三君。
  21. 大矢省三

    ○大矢委員 私は社会党代表いたしまして、今議題となつておる地方自治法の一部を改正する法律案に対して、政府原案にはもちろん反対であります。自由党並びに改進党の共同提案なつておる修正案についても、先ほど門司君から説明いたしました修正案と、相当共通なものがありまするけれども、本質的に地方の長の公選であるとか、あるいは地方議会に対する認識の相違がありまするために、遺憾ながらこれに対しては反対し、門司君の説明された修正案に対して、賛成の意を表したいと思うのであります。  本案の説明にあたつて政府はこの目的とするところは地方公共団体の組織の簡素化運営の合理化と国民負担の軽減をするということであつたのでありますが、その内容をつぶさに検討して参りますと、せつかく与えられた民主主義でありまするけれども、独立後における日本地方自治のあり方に対しては、逆行の傾向をたどつておるのであります。  第一に、説明にもありまするように総理大臣が市町村廃置分合に対して協議し、承認を得なければならぬというのでありまするが、また知事市町村廃置分合計画して、関係市町村勧告することができる、すなわち総理大臣は府県を、さらに府県知事市町村に向つて、いわゆる一切の勧告権なり、あるいは支配権を掌握しようとするところの意図が明瞭になつておるのであります。  次には、第二の地方議会に対する議員定数あるいはまた定例会通常会臨時会に制限する、こういうことは民主主義の運営について、民主化を推進する上に最も重要な議会運営活動というものに対して、これは一種の制限を加えておりますから、これもおよそ民主化と縁遠いものであります。  先ほど修正説明に詳しく申しましたから多くを申しませんが、第三といたしましては例の地方において、特に戦災復興あるいは新しい民主化のために必要であるべき都道府県の標準局部に対してこれを法定化し、あるいは委員会その他実際地方の事情を無視して、画一的にする。もちろんそれに対しては条例を定めて、多少伸縮性があるようでありまするけれども、しからば政府法律をもつてどうして強制したのであるか、これは私はやはりそこに潜在している中央集権的な官僚意識があるからであると思うのであります。  次は第四に、内閣総理大臣都道府県知事地方公共団体に対して、助言勧告することができる。これまた自治体に対する干渉であるし圧迫であると、私ども考えるのであります。  その第五は、市の、すなわち五大市の区の選挙管理委員会を廃止して、これを今度の修正案には双方これが抹殺せられておりまするけれども、一体この選挙を最も公平に、しかも市長並びに地方議員あるいは教育委員その他公選を最も公平にやるべき選挙管理委員会を廃止する、こういう物の考え方もただ地方財源にのみとらわれて、一切の民主化を阻止しようとする現われであろうと思うのであります。  その第六には、先ほど問題になりました特別区の区長の公選制度を廃止しようとしたことであります。廃止してこれを知事の選任にするというようなことが政府原案に出ておりますが、これはしばしば問題になりましたように憲法第九十三条に「地方公共団体の長、その議会議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体住民が、直接これを選挙する。」こうあるのでありますから、憲法違反の疑いが十分あるということは、各方面で論議せられたことであります。私どもまたさように考えておるのであります。こういうことを今度の修正案では、原案に対して逆の言葉を使つただけであつてしかも来年のことを言えば鬼が笑うというのでありますが、三年先のことを今きめてそれを何とか糊塗しようというこの考え方修正案にも、また原案にも私どもはもちろん賛成しがたいのであります。すなわち簡単でありますが、今申し述べましたように今度のこの改正法案は文字通り正しく改めるのではなく、改悪であります。すなわち地方自治の干渉、圧迫、破壊であります。中央集権化への何ものでもない。結局そこにねらいを持つているということを考えるのであります。日本地方自治体民主化のために、終戦以来長年にわたつて平和憲法の条章の中にもこれが織り入れられている。また地方自治法の単独法ができまして、抜本的ないわゆる自治の改正があつたのであります。それを独立後の最近において逆行しようとするのが、今申しましたる傾向なのでございます。これはあくまでも主権在民の原則に立つて、そうしてそれらの自治の、みずからの責任においてこれをなして行く。そのために今申しましたようないわゆる選挙法を改正せられ、あるいは各委員会がたくさん制定されまして、特に治安維持のために自治体警察、消防、こういうものを単独に持つことによつて、この自治の完成に努力しつつある現状であるのであります。ところが御承知通りの終戦前におきましてはこれと反対のいわゆる中央集権、官僚支配の独裁制、すなわち官治制度によりまして長い間、日本の民衆が苦しんで参つたのでありまするが、幸か不幸か敗戦によつて与えられた民主主義でありまするが、現在ではこういう制度が移されたのでありますから、いかなる困難をも排して、国民みずからがこれの完成のために努力しなければならぬことは申すまでもないのであつて、多少困難があつたからと言つて、また元にもどろうとするようなこういう考え方は、絶対排すべきであると考えるのであります。でなければ戦争前の独裁政治、すなわち軍国主義あるいはまた警察国家の再現となつて、逆行の一途をたどるような結果になるのでありますから、私はこの際に特にわれわれが政府あるいは議会もあげてこの逆行に反して、これを推進すべきだと考えるのであります。しかるに最近本委員会提出された法律案の中で特に顕著なものは、いろいろありまするが、現に近く審議される警察法改正法であるとか、あるいは集団示威運動等秩序保持に関する法律案であるとか、先だつて通過いたしました破防法、労働三法の改悪のごとき、ことごとくがそうでありまするが、特に私は自由党の人々の一部議員から提出されているところの警察官等に協力した者に対して、その災害に対して補償することに関する法律案、これは何でもない——けがした人にその災害に対して補償するというようなことでありまするから、何でもないように考えられておりまするが、これは一般国民に対して警察権を与えることになる。警察官が協力を求めるのですから。そういうことは簡単なようでありますが、こういう法律案が次から次へ出るということは、私はやはり潜在的に従来のいわゆる警察国家と申しますか、あるいは極端になりますると戦時中の総動員法のように一切合財の国民に協力させる、それをやろうという意思があるというふうに私は考えられるのであります。  いろいろ述べ来れば限りがないのでありまするが、要するにこの法案はおそらく多数をもつて自由党、改進党の修正案が通過するであろうと思いまするが、これについて私は政府なりあるいは大臣、特に自治庁の役人の人に申し上げたいのです。この内容を検討してみますると、これは私どもは反対ではありまするけれども、ほとんど原案を骨抜きにしている。こういうものを出して——大臣の言葉を借りて言いますならば、最高の意思決定機関たる国会の意思を尊重するのだということでありますが、それはけつこうですが、しかしながら政府がかくあるべしという提案をし、与党のためにこういう骨抜きの修正をされたということについて、一体どういう責任を感ずるか。私はこのことを将来のことに対して、はなはだ遺憾に考えているのであります。こういうことが将来ないように、出すからには委員会の、あるいはまた議会における承認に十分確信を持つて出してもらいたいということを、私どもこの機会に強く要望します。  最後に、こういう事をあげれば、ことごとくが地方財政に対しての負担を軽減するためだということ、これは一番強く響く。ところがそれほどに軽減をやかましく言うならば、それと並行して、多くの事務分担を地方団体に強いておりまするから、先ほど床次委員からも申されたように、いわゆる財政上の裏づけなり、真の自治の発展のためには財政上のもつと根本的な裏づけと、政府の熱意があつてほしい。地方財政委員会は今後廃止するということである。いつも大蔵官僚に押されて一番苦しんでいるのは地方自治体である。こういうことでは日本民主化は思いやられます。また自治庁の将来に対してのいわゆる地方の信任の程度についても、私ども疑われるのですが、こういう意味で将来の地方自治に対しては、もちろん地方では財源の節約をするは言うまでもないことでありますが、それと同時に必要欠くべからざるものは必ず確保するというこの熱意と努力を私は強く要望して、政府案に対する反対、また修正案に対しても反対し、今門司君の述べられました修正案に対して賛成の意を表して、討論を終りたいと思います。
  22. 河原伊三郎

    河原委員長代理 大矢省三君にお伺いいたします。ただいまの御発言によりますと、政府改正案に全面的に反対、そうして自由党及び改進党の提出にかかる修正案にも反対、共通の部分も一部はあるが、根本的な理念が違うから反対と、こういうふうに承つたのでありますが、出ております門司君ほか三名からの修正案と違うように思います。その点は、修正部分を除く原案ということでなければ……。
  23. 大矢省三

    ○大矢委員 そうです。門司君の修正部分を除く政府案に対して反対であります。
  24. 河原伊三郎

    河原委員長代理 ちよつともう一ぺん。除く部分は賛成じやないのでしようか。どうでしようか。
  25. 大矢省三

    ○大矢委員 すなわち政府案に対しては反対なんです。だからそれに対して修正だけを賛成する。
  26. 河原伊三郎

    河原委員長代理 そこでお伺いしますが、それならば修正案をかえなければならないということになる。残つたところはよいということから修正ができている。
  27. 大矢省三

    ○大矢委員 それはきまつている。
  28. 河原伊三郎

    河原委員長代理 残つた部分はどうですか。(「採決だと思う」と呼ぶ者あり)いや、採決でない。修正案と関連したものだから、まつたく違うことが言われると修正案というものはめちやめちやになつてしまう。
  29. 大矢省三

    ○大矢委員 それでもし間違つたら訂正しますが、原案がなければ修正案は出ないんですから。だからして修正案がいれられれば当然原案に対する部分でしよう。残つた部分の原案には賛成ということです。そういうことなんです。
  30. 河原伊三郎

    河原委員長代理 八百板正君。
  31. 八百板正

    ○八百板委員 私は日本社会党第二十三控室代表いたしまして、先ほど門司君より示されました修正案に対して賛成し、自由党、改進党の修正案に反対し、同時に政府提案にかかる部分に反対し、わが党の修正部分を除く共同部分については賛成する、こういう意思を明らかにしたいと存じます。  まず私の立場を申し述べまして、今申し上げました点を明らかにしたいと存ずるのでありますが、共通の部分がございますから共通部分については意見を述べることを差控えまして、私の賛成する部分で、その他の修正案に織り込まれておらない部分について、若干の意見を述べて私の討論に入りたいと存ずる次第であります。  まず第一に、今回の地方自治法の一部改正の根本といたしておりまするところが、地方自治の機能を弱化させるという傾向が明らかに現われておるという点であります。まず条文の上からこれを指摘して参りまするならば、第七条の二の改正に関する部分、第八条の二の改正に関する部分並びに第九条の第七項に関する部分等は、明らかに自治体権限を弱める傾向を現わしたものといわなければならないのであります。従つて、私どもはこれらの条文の削除を修正案の中に盛り込んでおるわけでございまするが、たとえば自治体廃置分合境界変更などに争論が起りました場合における意見というものは、当事者間の意見の一致によつて、それぞれの議会議決が一致したことによつて効力は当然に発生すると考えてよろしいのでありまして、あとは手続上内閣に届ければいい、届けがあつたならば、内閣は適当に事務的にこれを扱つて、自動的に事務的に官報に掲載する等の手続をとればよろしいのであります。これをことさらに改正いたしまして、自治体意見議決によつて一致したにもかかわらず、総理大臣の告示がなければ効力の発生を見ないというような改正をするということは、明らかに自治体を満足な意思表示決定をするところの能力なきものと扱つた、いわば自治体を子供扱いした、意思表示決定の能力のない禁治産者、未成年者扱いにした扱いというべきであつて、実質上の総理大臣の許可制と申してさしつかえないのであります。そういう意味合いにおいて、いわゆる中央政府自治体の後見人的立場に立つて地方自治に干渉の機会をつくるというようなこの改正案に対しまして、地方自治圧迫の戦時内務省的官僚思想の現われと考えざるを得ないのでありまして、こういう意味合いにおいて私どもは賛成しかねるのであります。この点に対する削除を私どもは主張いたしておるわけであります。  さらに議会の回数についてでございまするが、従来は六回以上とあつたものを原案は一回とし、自由党、改進党案は四回というように中をとつております。私どもは、議会というものを見まするときに、民主政治が伸びようとしておりまする日本の今日の段階におきましては、議会というものは民主主義政治の訓練の場として非常にかつこうなものだと考えるのであります。しかも納税者の目の届くところで、十分に議会において論議せられ、住民の手の届くところで議題と取組むという、この地方議会こそは、何回開かれてもそれで多過ぎるということはないと、私は考えるのであります。民主政治の成長を願いまするためには、こういう方面の多少のむだがあつても、それは専制政治から起つて来ますところの大きな損害、戦争というようなものと比べて考えまするならば、この程度のむだというものは、かえつて支持せられるところの必要なむだというべきであつて、回数が多過ぎたことによつて生じて来ますところの若干の浪費等は、この際問題とすべきものではないと思うのであります。こういうような点を、能率を上げるとか簡素化するという形のもとに制限するというような傾向は、結果において、少数者の意思によつて指導せられて、すみやかなる能率を上げるといういわゆる中央集権的な考え方からしまするならば便利でございましようけれども、民主主義政治の成長という立場から申しますならば、こういう傾向は危険なものとして、排除せられなければならないと、私どもは考えておるわけであります。さらに区長の選任に関する問題についてでございまするが、選挙によつてきめられまするところの機関が、だんだん任命の傾向に移つて行くということ、政府原案もそうでありまするが、自由党、改進党の案も、選任とは申しまするけれども、実質的には都知事任命にひとしいものに終るであろうということは、予測するにかたくないのであります。このように選挙による機関がだんだん減つて行くという傾向、法律改正のそういうふうな傾向、これは明らかに主権在民の憲法からだんだん離れて行くものであり、権力国家への道、フアシズムヘの道につながるものであります。戦争に負けた国では、こういうようなことが手取り早いものとして、うつかりすると一つの傾向となる危険が多いのでありまして、かつての第一次大戦後におけるドイツの事情などを考えましても、大いに警戒しなければならない傾向であります。自治体の長を従来の選挙制から任命制にする、そういうふうな傾向に幾らかでも近いような形に持つて行くということは、私どもはとうてい賛成することができないのであります。日本の民主主義政治の基盤でありますところの地方自治体は、そういうふうな傾向を許すことによつて、だんだんと影を失つて行くことを心配しなければならないのであります。先ほど賛成者によつて指摘せられましたように、公選制を廃止するというような傾向は、明らかに憲法にも違反するものと私どもは考えているのであります。全体として考えてみまするに、最近、日本の今の法律は占領政策の結果——ある意味においては占領政策の結果としてつくられたところのもろもろの法律であるから、そこは相当の行き過ぎがある、だからこの行き過ぎを是正しなければならない、たとえば警察の問題にしましても、日本の弱体化を——戦争をなくするために警察を分断したのであるから、これを一本にして強くしなければならないとか、あるいは自治体の問題にしても、自治体権限を強く持たしたということは、やはり権力の分散をはかるのだという占領政策の現われであるから、こういう行き過ぎの傾向はだんだん直して行き、なるたけ一本の中央集権的な傾向に持つて行かなければならぬとか、そういう傾向を占領から離れた日本の独立の方向であるというようにとられる傾向があるのでありますが、これはまことに危険な傾向であると言わなければならないのであります。もちろん、日本の実情に合わなかつた点について、若干の修正を加えることは必要なる修正でございますけれども、行き過ぎをためるということは、決して振出しにもどるということではないのでありまして、そういう点において非常に危険な傾向をたどつているということを、指摘しなければならないのであります。まして、地方自治の根源でありまするところの財政的基礎が確立せられていない時期において、そういう点を度外視して、ただ指示事項権限等を上にだけ持たして言うことを聞かせるというようなことをやりまするならば、腹を減らさしておいて言うことを聞かせるという、いわゆる中央支配を容易にするという結果になるものでありまして、自治体の明日のために非常に危険な傾向と言わなければならないのであります。  以上私の意見を申し述べまして、社会党社会民主党共同提出修正案に対して賛成し、自由党、改進党提出修正案に反対し、私の賛成する部分を除く原案に対して賛成の意思を表明する次第であります。
  32. 河原伊三郎

  33. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私の言わんとするところは、門司先生及び八百板先生がおつしやつてくださいましたので、私は、すこぶる簡単に原案並びに自由党、改進党の修正案に反対するものでございます。つきましては、私が最も重点的に考えていることは、ただいま八百板先生がおつしやいました通り区長任命制について私はここでたびたび反対の論議をいたしたものでございますが、ただいまの自由党の修正案によりますと、ぼやかして妥協案ができたようでございます。私は、その修正案について、はなはだ遺憾に思つて反対するものでございます。たとえて言うと、やはりこれは都知事任命制を言葉をあやにしたところの、すこぶるぼやかしたものである。ゆえにこの点について私は絶対に反対するものであります。たとえて言うと、私がここでたびたび申し上げます通りに警察国家、軍国主義、官僚政治、こうしたことによつて日本の今日の敗戦を導いたことは、私がここで再三再四論議した通りでございます。それに今やまたしても、この二十三区がばらばらであるということを始終ここで聞きましたが、ばらばらなれば安井都知事が政治力をもつて、そのばらばらを統一すべきで、すなわちそのばらばらという言葉は安井都知事か政治力がないということを、ここに表現するものであると私は思います。その意味において私はこのあいまい模糊な自由党の修正案については、絶対反対するものである。そうしてかつまた、これがきつかけになつて、やがては府県知事任命制にし、やがては市町村長を任命制に、やがては小選挙区にし、そうしてしいたげられた、全四千万の女性は、昭和二十一年四月十日、初めて婦人参政権を獲得したのでありますが、それがやがては一家の主人が婦人参政権を代表して——一家の長なるがゆえにこの参政権を代表して投票するからして、婦人は参政権がなくてもいい。すなわち婦人は過去の女らしい立場でおつたらよい。一家の長が代表するものであるからして、この婦人参政の権利はなくてもいいと言つて、やがてこれは婦人の参政権をなくする前奏曲であるということを申し上げて、私は反対するものでございます。かくなれば何がゆえにここに地方制度調査会を置いて、特別区の関係者をも委員に加えて、民主的になぜ検討しないかということを、私は政府当局に進言したい。  それからもう一つ人口二百五十万以下の都市は建築部を設置しないことになつております。私は自分の選挙区を言うのではありませんが、土木部建築部というものは、ちようど夫婦のようなものであり、車の両輪のようなものである。それに土木部は置いてそうして建築部を削除する、こうした非常に不公平なことについて、私は不賛成の者でございます。ことに私の選挙区は京都でございます。京都は、皆さんも御承知通り、実に古代建築物をもつて有名なところでございますが、それが原案について二百五十万以上の都市でないと建築部を設置することができないという修正案が出ておりますが、現在たしか十箇所あつたと思います。その十箇所の二百五十万以上の都市に建築部を設置して、そうして皆さんも御承知の古代建築物をもつて誇りとする京都市を除外する、これに対しても私は反対の意を表するものであります。  それから境界変更でございますが、境界変更については、裁判所に出訴できることになつておるが、これは裁判所に出訴させないようにして、そうして自治体の紛糾は自治体で円満に解決するのが、私はこれがほんとうの民主主義であると思います。  それから申し遅れておりましたが、区長任命制についてここに公述人を呼びましたときに、公述人の全部がすべて区長任命制に反対をいたしました。政治というものはすなわち民主政治である、民主政治というものはこれは輿論政治である。ここの公聴会において公述人の大部分の者が、区長任命制に反対しておるにもかかわらず、これを踏みにじつて、そうして改進党と自由党の間にうやむやのうちに葬られたということは、私はまことに遺憾と思います。何とぞ今後とも輿論というものを尊重し——輿論政治こそ民主政治である。政治家が輿論を尊重しなかつたら、やがては革命が起るであろうということを私は申し上げたい。ゆえに民主政治、すなわち輿論を尊重しないと、やがては革命のもとになる。ゆえに公述人のうち三人はこの区長任命制に賛成いたしましたが、ほかの人は全部これに反対しました。この意味におきましても、私はこの原案には絶対反対するものであるということを申し上げまして、私の反対の理由を申し上げました次第でございます。
  34. 河原伊三郎

    河原委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず修正案について順次採決するのでありますが、両修正案には共通の部分がありますから、この共通の部分について先に採決いたします。すなわち共通の部分は、第百五十八条第一項の改正規定中、都の局として主税局港湾局を加える点、及び同条同項の改正規定中、道及び人口二百五十万人以上の府県の部として建築部を加える点、第二百七十六条の改正に関する部分を削つて行政区に選挙管理委員会現行法通り存置しようとする点、以上の通りであります。この共通の修正部分に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  35. 河原伊三郎

    河原委員長代理 起立総員。よつて修正案中共通部分は可決されました。  次にただいま議決されました共通部分を除いて門司亮君外五名提出修正案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  36. 河原伊三郎

    河原委員長代理 起立少数。よつてこの修正案は否決されました。  次にさきに議決されました共通部分を除いて野村專太郎君外十八名提出修正案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  37. 河原伊三郎

    河原委員長代理 起立多数。よつてこの修正案は可決されました。  次にただいままで修正議決された部分を除いて原案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  38. 河原伊三郎

    河原委員長代理 起立多数。よつて修正部分を除いた原案は可決いたしました。これにて本案は修正議決いたしました。  この際お諮りいたしますが、本案に関する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 河原伊三郎

    河原委員長代理 御異議ないものと認め、さよう決しました。     —————————————
  40. 河原伊三郎

    河原委員長代理 続いて警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案を議題として、質疑を行います。質疑を許します。大矢省三君。
  41. 大矢省三

    ○大矢委員 提案者にちよつとお伺いしますが、大体災害に対する補償の金額は、どのくらいの予想でありますか、おわかりになりますか。
  42. 川本末治

    川本委員 ただいまの御質問でありますが、これは従来までの分を数字にしてありますので申し上げますが、大体従来は死亡した人に対して四十万円、それから重傷者に二十五万円、軽傷者に二万五千円というような割で出しておりますので、昭和二十三年から二十六年までの間に死亡いたしました者が四名、重傷いたしました者が八名、軽傷の者が十七名ということに相なつておりますので、大体二十三年から二十六年までで、四百二万五千円というような額が総計であります。
  43. 大矢省三

    ○大矢委員 これの立案にあたりまして、いわゆる地方自治体の警察の負担が、大したことはないにいたしましても、結局加重するわけでありますが、これに対しての補償について交渉されたかどうか。この説明書によりますると、国家非常事態の布告のあつたときには国がこれを給付するけれども、それ以外のときには地方自治体が持たなければいかぬということになつておりますために、これは地方自治体警察が財政的な負担を当然負わなければならぬということになりますが、一応交渉されたことがあるか、この点をひとつ……。
  44. 川本末治

    川本委員 この点につきましては、先般の消防団員の災害補償の場合にも、自治庁長官が明言しておりまするように、自治体におきまして、財源が不足をして補償のできない場合においては、特別平衡交付金をもつてこれを補償する、こういうことを明言しておりますので、財政措置につきましては、自治体においてさほど考慮する点もないのじやないか、かように考えております。
  45. 大矢省三

    ○大矢委員 もう一点だけお尋ねしますが、いわゆる防犯協力会というものが、最近各地方にできておりまするが、それは警察の側から一般大衆に向つて援助を求めたときに、初めてその災害に対して補償されるのか、あるいは警官に対して、援助を求められずして自発的にそういう援助をした場合に、これを考慮されるのか、それはもうかつてにしたのだから知らない、こつちが協力援助を願つたときだけにこれは適用するのか、いずれであるか。これは重要ですから……。
  46. 川本末治

    川本委員 この点はごく限定されたものでありまして、あくまでも警察官が職務執行にあたりまして、警察官から積極的に援助を求めた場合、または実際に援助を求めたと同様な場合以外には、一切適用いたしません。従いまして、御質疑のような、自分の方からかつてにした場合においては、一切そういう問題については適用しない、かようにお考えいただきたいと思います。
  47. 大矢省三

    ○大矢委員 実際問題として、たとえば具体的な例を申しますと、防犯協力会というようなものが各所に——大都市にはたいていあります。これは一体警察官が頼んだものか、自発的にやつているものか。もし防犯協力会の人がけがをした場合には、それは当然見るべきか、あるいは自発的にこしらえた団体で、その犯罪のそのときだけに協力を頼むのであつて、平素はそういうことはないと考えられるのか。これは現に、今度立法化されるのだ、われわれが補償されるのだ、まるで警察官になつたようなことを、しきりに言つている者があるのでありますが……。
  48. 川本末治

    川本委員 この点は全然この法律の適用はいたさないのでありますが、これは法律の適用範囲についての御質疑であると思いますので、この際この第二条の範囲を明確にしておきたいと思います。一応この点につきまして、私の方から御説明をかねて解釈申し上げておきたいと思います。それは本法の第二条、すなわち本法が適用せられ、給付が行われる場合の解釈につきましては、先般来当委員会において種々御質疑がありましたので、本条の解釈を次の通りに明確にいたしておきたいと存じます。本法案は、警察官等が職務執行中において、職務執行上の必要から援助を求めた場合、その求めに応じて協力援助した者が、そのため災害を受けた場合、救済を行うことを本旨とするものであります。従つて本条は、右の本旨に従い、これを厳格に解釈すべきものと存じます。  一、警察官等から援助を求められたのでないのにかかわらず、自分だけの考えでこれを援助して、災害を受けた場合のごときは、本法の規定の適用の範囲外とする。  二、本条の「職務執行中」と「職務執行上の必要」は、これを厳格に解釈すべきで、警察官等が現に職務のためある場所で活動している際に、その現場における依頼に基き、これに協力することを建前とするものである。従つて、一、警察官が援助の依頼をするに先だち、その現場において行つた行為、二、警察官等がみずから現場に臨むことなく、包括的、継続的に援助を依頼した場合、これに基く行為のごときは、本法の適用から除外される。  三、「その他これに協力援助することが相当と認められる場合」とは、状況が急迫したような場合で、警察官等が明示による援助の依頼ができないような場合、すなわち援助を求めたとまつたく同様と見られる場合に限るものとする。  以上であります。
  49. 河原伊三郎

    河原委員長代理 ほかに質疑はございませんか。——質疑がないようでありますから、質疑はこれにて終局いたしました。  これより討論に入ります。討論は通告順によつて許します。吉田吉太郎君。
  50. 吉田吉太郎

    ○吉田(吉)委員 私は自由党を代表いたしまして、本案に対しまして賛成の意を表する次第であります。  本案は民、警協力の実をあげる上におきまして、最も適切なる法案であると信じまするために、本案に対しまして、簡単でありまするが、賛成の意を表する次第であります。
  51. 河原伊三郎

    河原委員長代理 床次徳二君。
  52. 床次徳二

    ○床次委員 私は改進党を代表いたしまして、本案に賛成するものであります。  ただいまも提案者から説明がありましたように、本案の適用いたします範囲は、現に職務執行中であり、なお職務執行上必要であるということに関しては、これを厳格に狭い範囲に解釈すべきものでありまして、本法ができましたために、警察官が一般大衆に協力を依頼するところの権利ができたものではないのであります。この点に対しましては、本法施行上十分に誤解なきよう留意せられまして、本法案制定の趣旨に合致するように運用されることを要望いたしまして、本案に賛成するものであります。
  53. 河原伊三郎

    河原委員長代理 大矢君。
  54. 大矢省三

    ○大矢委員 私は社会党代表して、この法案に反対の意思を表示したいと思うのであります。  本案が単なる協力援助者の災害に対して給付するというだけでありますならば、私はまた考えは別でありますが、この持つ内容、また一般国民が受ける感じが、これがややともすると、立案者の意思に反して濫用されるおそれがある。たとえばスパイ行為を国民に協力させるようなことを警察がやることもできる。あるいは昔の太政官布告が新憲法の施行に伴つて効力を失つたのに、いわゆる太政官布告当時の岡つ引的な制度のような感じを国民の間に植えつける。また警察力が至つて薄弱であるから、民衆に向つて協力を求めるという感じを与える。これは警察の威信のためにはなはだ芳ばしくないと思います。  単なる災害者に対して給付するということでなくして、そういう危険を伴つておる内容を持つておりますから、私はこれに対して反対の意見を表明したいと思います。
  55. 河原伊三郎

    河原委員長代理 八百板君。
  56. 八百板正

    ○八百板委員 私は日本社会党第二十三控室代表いたしまして、警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案に対して反対をいたします。  第一に、この法律案が非常にあいまいであり、まぎらわしいということであります。法律というものははつきりしなければならないのでありまして、まぎらわしいものであつてはならないのであります。従つていろいろと拡張解釈せられるような場合も起るだろうと思うのです。  それから「警察官等」と申しておりますが、警察官等というあいまいな言葉を使うこともよくないと思います。質問に対してお答えせられましたところによりますと、警察官等とは、警察官吏または警察官であると二つに限定するということを申されましたけれども、たとえばこの法律が運用せられます場合には、警察に準ずるものが同じような扱いを受ける危険がないとは言えないわけであります。従つて刑務所の官吏とか、あるいは公安調査官というものも入つて来るかもしれませんし、いろいろな場合があるだろう思うのでありまして、そういう点が不明確であるという点が、まず指摘せられなければならないと思うのであります。  それから警察官に対する協力ということを、この法律は主といたしておりますが、私はこの点に非常に間違いがあるのではないかと思うのであります。警察官に対する——いわゆる官という警察官個人に対する協力というような考え方は、非常に危険な考え方であります。たとえば消防に対する協力ということを言いますけれども、消防士に対する協力ということは、消防法の場合においてもうたつてはおらないわけであります。ところがこの場合においては、いわゆる警察官個人を、これは警察行為の代表ではございましようけれども、あたかも警察行為を行う職権の機関の代表であるというような考え方に立つておるところに、非常に大きな危険があると、私は指摘しなければならないわけであります。たとえば官という言葉もいろいろ使つておりますが、それはつまり監督者がおつて、あるいは運営管理を行う公安委員会の指揮を受けてある特定の場所へ派遣せられた場合における警察官の行動というものは、いわゆる警察官という形において法文の上に見えておりますけれども、その他一般の場合においては警察官という言葉は、ほとんど使つておらないのでありまして、いわゆる警察目的を行使する機関としての警察の権限をさすような字句が、常に規定せられておるのであります。ところが本法におきましてはそういう点が非常にあいまいであつて、たとえば上級機関たる公安委員会運営管理のもとに職権を行うというような場合にのみ官という個人が、通常使われておるにもかかわらず、この法案におきましては警察官個人の形のにおいが非常に多いという点が、重要な点だろうと思うのであります。従つて官という人をさしているというところ、従つて極端に申し上げますならば、十八歳の巡査も相当多く協力者を指揮する権限が与えられるという場合が、予想せられるわけであります。従つてそういうふうな精神は、たとえば警察官侮辱罪というようなものをかつてつておつた当時の制度に、だんだんもどつて行くような考え方を盛り込んだものと指摘しなければならないわけであります。そういう考え方は民衆の警察という考え方ではなくして、何か警察官のために民衆があるというふうな考え方にまぎらわしいのでありますから、こういう点は非常に注意を要する点だろうと私は考えるわけであります。  さらにもう一つおしまいにこの法案について特に私が指摘いたしたいと考えます点は給付に関してであります。本案制定の目的はあくまでも給付そのものにあるだろうと思うのであります。決して民衆を警察に協力させるような協力助成法という形のものではなくして、そういう事態が起つた場合に、それに対する災害を責任をもつて給付をするという給付そのものに、この法案の目的が当然あるべきだと思うのであります。ところが幾ら給付するかというような点について、法文の中には明確に示しておらないわけであります。しかもそのきめ方について、私はあえてこの点を提案者の光栄ある名誉のために非常に惜しむものでありますが、この金を出す場合におけるきめ方についてでございます。地方の場合においては、地方で出す金というのは条例で出すというふうにきめてあります。従つて地方できめる場合には地方議会議決によつて条例できめるという行き方をとつており、中央におけるものは政令で定めるということになつております。これは国会の議員提出法案としては、まことに不体裁なものといわなければならないのでありまして、国会議員みずからがこの法案を提出するという場合には、国の責任の上においてしなければならないのに、国会の議を離れて、政令によつてきめる。一方地方の場合には地方議会できめるということは、地方自主性を尊重するためだというようなことを申されておりますけれども、それは逆に中央の場合における矛盾を暴露するものであるといわなければならないのであります。これは役人がつくる法律でありますれば、とかくそういう傾向が出やすいのでありまして、われわれはこれを指摘して直すという立場をとるのでございますが、議員みずからの提出の場合にも、そういうような形を示したということは、ちよつと私は残念に存ずる次第であります。そういう点が法文の体裁上としても非常に感心できない傾向があるという点を指摘いたしまして、反対の意を表する次第であります。
  57. 河原伊三郎

    河原委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  58. 河原伊三郎

    河原委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。  この際お諮りいたします。本案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 河原伊三郎

    河原委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時四十七分休憩      ————◇—————     午後四時二十六分開議
  60. 金光義邦

    ○金光委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等秩序保持に関する法律案の両案を一括して議題とし質疑を行います。質疑を許します。門司君。
  61. 門司亮

    門司委員 私はこの際この前の委員会に引続いて、法務総裁に御意見を伺つておきたいと思います。それは国家地方警察の本部長を定めまする場合に、国家公安委員会意見内閣総理大臣意見が食い違つた場合の処置でありますが、先ほどの委員会で斎藤長官の意見を徴して参りますると、要約してこれを申し上げますと、国家公安委員会は、自分の意見がいれられない場合におきましては、結局それをやめるか、あるいは意見がいれられないでも、総理大臣はこれを任命するということになつて参りますると、ただ単に国家公安委員会意見を聞くというだけであつて意見の衝突したときには公安委員会がやめるであろう、こういうことになつて参りますると、警察法の第八条との関係であります。警察法の第八条の末尾の方に、「第二項、第三項及び前項の場合を除くの外、委員はその意に反して罷免されることがない。」と、こう書いてあります。その第二項及び第三項というのは、ここに書いてありまするように、委員のうち、何人も所属してなかつた政党に、三人以上の委員が所属いたしました場合においては、これらのもののうちの二人を越える員数の委員、あるいは委員中、一人がすでに所属している政党に新たに二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらのもののうち一人を越える員数の委員、それから第五条第三項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。内閣総理大臣は委員中二人がすでに所属しておる政党に新たに所属した委員をただちに罷免する。こういうことが内閣総理大臣の罷免の事項なつておる。それから同時に内閣総理大臣が国会の両院の同意を得て罷免することのできるのは前段に申し上げたのでありまして、そのほか委員が心身の故障のために職務の執行ができないと認める場合であるとか、あるいは委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、こういうふうに大体書いてあります。従つてこれらの場合になりましても、両院の同意を得てこれを罷免することができるということで、どこまでもこの両院の同意を得なければ、内閣総理大臣は公安委員というものを罷免することができないというように書いてある。ところが公安委員会と総理大臣との意見が合わなかつたということで、内閣総理大臣が罷免を国会に要求する、あるいはみずから罷免することができるというような条項には、私は当てはまらぬと思うが、そういう場合には委員の申出をただちに受けて、これを総理大臣は国会に諮るということになると私は思いますが、国会に諮るということになりましても、この八条の規定以外の、たとえば一身上の都合というようなことが政治的に考えられて参りまして、もし国会がこれに対して同意を与えないというような場合が、かりにできるといたしますならば、これは行政上から申し上げますと、意見のまつたく合わない公安委員会運営管理のもとに、長官は置かれるということになつて参りまして、従つて長官と運営管理をする公安委員会との間に、大きな溝ができるということで、これがやはり警察法施行の上に一つの大きなトラブルを起す、とまでは申し上げなくても、多少の齟齬を来すという点がありはしないかと思いますが、この辺の調整は一体どういうふうになさるのでありますか、この点をひとつお聞きしておきたい。
  62. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今の御疑問はまことにごもつともであると思います。国家公安委員を罷免するについては、警察法第八条にはつきり規定してあるのでございまして、これは容易に罷免ができないことになつております。そこで問題になるのは、総理大臣と国家公安委員との間に、国警本部長官任命について意見の不一致があります場合、この改正法の建前といたしましては、どこまでも国家公安委員の意見を尊重し、十分にその意見を聞いて、そうして総理大臣が本部長官任命する建前をとつておるのであります。純理論から申しますると、そこに非常な意見の不一致のときにギヤツプが生じますが、実際問題といたしまして、両者間において私は十分な調整がとれるものと考えております。たとえば総理大臣がある者を適当なりとして、今度本部長官にしたいということで、これを国家公安委員会に諮つたところ、国家公安委員会では、それはどうもぐあいが悪いといつたときに、総理大臣がどこまでも自己の主張を通すというようなことはあつてはならぬと思いますし、おそらくあり得ないと思います。その場合にはさらにあらためて人選をやり、かえて、この人ならばどうかということで、国家公安委員の意見をさらに徴して、そこに円満な妥結を生じ得るものと考えております。要はこの法案は、そういう運営の面において、非常に妙味があるのでありまして、実際においてはその点についての御心配は、私はなかろうと考えております。
  63. 門司亮

    門司委員 実際問題として、大臣は心配ないという話でありますが、私にはそれが非常に心配されるのであります。そもそもこの法案の出て来た問題はそこにあると思う。この法案の出て参りました問題の一番大きな原因は、ここに書いてありますごとく、あるいは大臣の提案理由の説明の中にも、行政上警察の責任の所在を明確にするということが書かれておりますが、これは表面の理由であつて、ほんとうの意向というものは別にあつて、たとえば昨年でありましたか、そこに今斎藤長官おいででありますが、斎藤長官を前に置いて申し上げることはいかがかと思いますが、斎藤長官に対して時の官房長官の圧力が加わつて、やめてもらいたいというような事件があつたことは、私は天下周知の事実だと思う。その場合に国家公安委員会の方ではこれを承知しなかつた、従つて政府では罷免ができなかつたわけであります。私は今の大臣の答弁はまつたく逆であつて、私どもから考えて参りますと、この大臣の答弁といいますか、提案理由の説明の中には、なるほどもつともらしいことが書かれておりますが、実際の腹の中は、警察権を掌握したい、かつての斎藤事件のようなことがまたあつたのでは困るから、そのときに都合のいいようにしておきたいというのが、ほんとうの腹ではないかと思います。そうなつて参りますと、さつきから申し上げておりますような心配が出て参るのでありまして、今の御答弁のように、尊重するというお言葉でありますが、しかし法案の内容字句通りに解釈して参りますと、これは単に聞いてということだけでありまして、ほかの法律の書き方を引用して参りますと、たとえば人事院の勧告にいたしましても、あるいは地方財政委員会勧告にいたしましても、ざつとこの意見を尊重するという字句法律の中に使われている。そうしてやはりある程度、はつきりした拘束力は持つておりませんが、道徳的な拘束力はちやんと持つておる。ところがこの法文の中には道徳上の拘束力もきわめて薄いのでありまして、ただ聞くということだけであつて、尊重するということは書いてない。従つて、尊重してという御答弁でございますが、もしそうだといたしますれば、やはりこの文の中に明瞭にそういうことが書かれて、そうして国家公安委員というものは、やはり一つの独立した治安上の責任のある機関であるというようなことが、この法文の中に明確化されなければならないと思う。現行警察法の中には、国家公安委員会がいかにも責任のあるように書かれておりまするが、こう改正されて参りますと、この公安委員会の任務といいますか、影はきわめて薄くなつて参りまして、警察法を制定いたしました当時の精神とまつたく違う形が出て参るのであります。従つて大臣の今の御答弁では、政府が出して参りました実際の腹とは、非常に違うというふうにこの関係がとれるのであります。従つてもう一言聞いておきたいと思いますことは、一体国家公安委員会権限といいますか、公安委員会の持つておりまする地位と申しますか、あるいは公安委員会の現在行つておりまする職責というものは、この法律によつて非常に弱められると考えておりますが、大臣はそうではないというふうにお考えであるかどうか。
  64. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は必ずしも弱められるとは考えていないのであります。そこでこの公安委員と総理大臣と、たまたま意見が不一致の場合があつて、総理大臣が強行するというようなことになりますと、これこそ国会におきましても、また世間におきましても批判の的となるのでありまして、かえつてこれを押し切るようなことをさせない意味において、この法の建前がいいのじやないか、穏やかであつて、お互いにこれは事実上は協議することなのであります。意見を徴するというのは結局協議であります。お互いに協議を経て、そして円満妥結をもつて適当な人を選ぶということになるのが、この法案の趣旨でありまして、必ずしも国家公安委員の権限を縮小するというような考えはないのでありまして、実際またさように至らないと存じております。
  65. 門司亮

    門司委員 そういたしますと公安委員会は、こういう規定内閣総理大臣が一応指示をいたすといいますか相談をいたしました人に対して、ある程度の意見も必要でございましようし、かりに今の大臣のお話のように話合いの上でできたといたしましても、自分の方に推薦権といいますか任命権といいますか、そういうものがなくて、ただ単に相談を受けて、それでよかろうと同意を与えたというような程度で、現在公安委員会が持つておりまする運営管理の責任を全部公安委員に負わせるということになりますると、私は少し片手落ちだと思う。公安委員は責任は負うが、しかし長官は公安委員会に対して、私はむろん責任は少しは負うかもしれないが、実際は負わないと思う。やはり任命権者に責任を負わせるのが当然だと思います。そういたしますと、公安委員会の地位というものは、責任は背負わされるが、実際の権限は何も持つておらない。人のこしらえてくれた長官に対して、その人の行動に対してただ単に責任を負うだけであるというようなことになつて参りますと、勢い公安委員会制度というものは、非常に影が薄くなるものであつて、現在の警察法の前文に書いてありまするような、日本行政組織というものを民主化して行くことのための一つの最も重大な案件であるべき警察制度というものが、公安委員会の影が薄くなれば薄くなるほど、必然的に権力政治になつて行くと私どもは思う。しかし大臣はこれでもやはり権力政治にはならない、現在の警察法の建前と同じように、やはり公安委員会運営管理のもとに行われるから、どこまでも民主的の警察であるというふうにお考えになつておるかどうか。     〔委員長退席、河原委員長代理着席〕
  66. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 総理大臣が任命いたしました国警本部長官といえども、これは国家公安委員会の下部に属するものでありまして、従来通り国家公安委員会と国警本部長官との関係は、少しもかわりはないのであります。ただ任命においてその責任を明らかにするということにとどまるのでありまするから、私は支障のないものと考えております。
  67. 門司亮

    門司委員 大臣も時間がないようでありますから、あまり長く申し上げませんが、六十一条の二の改正であります。この場合の指示権でありますが、この指示権というものは一体どの範囲を含むかということであります。いわゆる警備関係の指示権もこれに含むのか、あるいは行政関係の指示権もこれに含むのか、一つの指示権というものの中に刑事関係とか、警備関係とか、あるいは行政関係という三つの警察行政に対しまする指示をこの中に含んでおるのかどうかということを、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この法案の建前は国家の治安に関する問題であります。その治安はもとより運営管理に属するものであります。行政管理についての指示はしないのでございます。
  69. 門司亮

    門司委員 行政に対する指示はしないという御答弁でございまするが、そうだといたしますると、ここにやはり「特に必要があると認めるときは」、というようなこと、「公安維持上必要な事項について」、というような字句が使つてありますが、これらのものに対しましても、私はもう少し明瞭にすべきではなかつたかと思うのであります。特に必要があると認めるときというようなことになつて参りますると、たとえば行政上の問題にいたしましても、選挙法の取締りのごときは、全国一齊にこれは行われるものでありまして、従つてこれが部分的に行われるものでも何でもない。そうなつて参りますと、今の大臣の答弁では、大体私どもは警備警察に関する問題あるいは多少刑事が含まれておるかもしれないと思いますが、私どもの観点から言えば刑事警察に対しますることは、警察法のお互いの連絡の問題で、大体こういうものは用が足りるのであつて、特に総理大臣が指示すべき筋合のものは一つもないと思う。警備関係にいたしましては、あるいは多少のそういうことも考えられるのでありますが、そのほかさつき申し上げました行政関係として最もわれわれが憂慮するのは選挙の問題でありますが、これらの問題につきましては、やはりこれが刑事問題と相からんでおりまして、そうして全国一齊に行われる一つ仕事でありまする以上は、何らかやはり大臣がこれらに対して指示をされるということになると、非常に私は選挙に対して不安を感ずるようなことが必ずできる。こう考えておりますが、先ほどの大臣の答弁のように、行政関係に対しては、特に選挙関係その他に対してはそういう指示をすることがないということが、ここではつきり大臣に言明ができますれば、ひとつお答えを願つておきたいと思います。
  70. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 改正法案におきましては特にその点についての注意を払いまして、「内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、国家公安委員会意見を聞いて、都道府県公安委員会又は市町村公安委員会に対し、公安維持上必要な事項について、」こう書いてあります。この点を十分御理解くだされば、その点の御疑問はお解きくださることと思います。
  71. 門司亮

    門司委員 私が先ほどから申し上げておりまするのは、公安維持上必要という事項を聞いております関係上から、当然警備警察関係でなければならない。こう考えております。従つて警備警察関係であるとするならば、私はやはりここには、この前に大臣にお尋ねをいたしましたように、当然非常事態の宣言と、さらに保安庁法案の六十一条に書かれておりまする総理大臣が保安隊の出動を命ずることができるということとの関連性を、私はこの条文の中にやはり明確にする必要があるのではないかというように考えておるのであります。少し言葉はおわかりにくいかと思いまするが、この前の委員会でお聞きいたしましたときに、大臣のお言葉といたしましては、いわゆる警察法にいう国家非常事態と、それから保安庁法案に言う六十一条の総理大臣の保安隊の出動命令あるいは警備隊の出動命令というものとは、何か言葉の聞きようによつては違うのであるというように私は聞いたのでありますが、このことは実に重要な問題でありまして、この前も申し上げましたように、この公安委員会、いわゆる都道府県の公安委員会が非常事態の宣言といいますか、非常事態の要請をしない前に、保安隊の出動ができるようになつておる。さらに総理大臣は公安維持上必要があるときには、これに指示することができるということになつて参りますと、二本建ではなくして、国家非常事態というものは三つのような形に私は現われて来ると思う。第一段階としてはこの警察法改正案に書かれておりまする公安維持上総理大臣はこれを行う。都道府県の公安委員会に対して命令をするというような形にできておる。その命令すること自体が、たとえば警備関係に対して、こういう事態が発生しそうだから、こういうことにしなさいということで命令が発せられる。その上に立つてあるいは非常事態の要請がなされて来る。そうして非常事態の宣言が行われるということが一つの行き方になつて来る。従つてこの法律をこのまま適用いたして参りますと、非常事態宣言の前ぶれみたいなものが私は出て来ると思う。従つてこの公安委員会が非常事態宣言をまだしなくてもいいというように考えておりまする場合も、総理大臣のこういう指示権、いわゆる命令にひとしい——これは拘束することになると命令だと解釈してさしつかえないと思いますが、命令が出て来るということになつて参りますと、必ず公安維持上の関係から、どうしてもそこには非常事態の宣言をしなければならないようなことが、私は必ず出て来ると思う。従つてこの非常事態の宣言を、ここにいわゆる公安維持上必要なものについて命令を発するということが、先ほど申し上げておりまするように、地方都道府県の非常事態の宣言を要求する基礎的のものになると考えておりますが、大体そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  72. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 警察法第六十二条の場合は、これは国家非常事態宣言の場合であります。この場合は総理大臣のもとに全国の国警、自警を一手にまとめていわゆる統一させる。そうして国家治安の任に当らしめようという建前をとつておるわけであります。保安庁法の非常事態は、全般的に見て、必ずしも国家非常事態の宣言に至らない程度におきましても、必要やむを得ないと思つたときには、総理大臣がここに出動命令を出し得る。たとえて申しますると、最近に起りました鳥取の火災のような場合であります。これは一地方の問題でありまするが、あの場合において治安維持上必要だと認めれば、保安隊を総理大臣が出動させる。そうして時宜の処置をとらせる。これはきわめて必要なことでありまして、必ずしも国家全体の非常事態ではなくとも、一地方であつても、公安の維持上必要な場合には、保安隊を出動させて臨機の処置をとらせる。私はこれはきわめて必要なものであろうと考えて知ります。
  73. 門司亮

    門司委員 もう一つお尋ねしておきたいと思いますことは、この公安維持上必要な事項について、都道府県の公安委員会、または市町村公安委員会に対して命令をすることができるということになつて参りますると、この場合の地方の公安委員会はこれによつて拘束を受けて、そうしてその命令権といいまするか、指示されたことに従わなければならない。当然そうあるべきだと私は考える。もし地方都道府県の公安委員会が自分の責任において、こういう指示があつたが、しかしそれほどのものに至つていないというような考え方を持つておる場合が私はないではないと思いますが、その場合の処置というものは、この法案ではどういうふうに考えられておるか。たとえば任命権については、先ほどのお話のように国家公安委員会意見内閣総理大臣意見とが食い違つておる場合は、当然公安委員会があるいはやめるかもしれない。しかしそれは国会の承認を得なければなりませんから、私はなかなかむずかしいことだと思いますが、この場合の地方の公安委員会というものは、内閣総理大臣からそういう指示権がありますると、絶対にこれに服従しなければならないということでありますから、もしこれに服従しなかつた場合の責任は、一体だれが負えばいいかという問題であります。こういう点、これは少し話がおわかりにくいと思いますが、要するに地方の公安委員会内閣総理大臣の指揮に従わなかつた場合の処置でありますが、これについてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  74. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 市町村なり都道府県の公安委員会が、総理大臣の指示に従わなかつた場合につきましては、法律の上には罰則も、またこれを強制する方法もございません。ただ政治的に、あるいは道義的にその公安委員会が批判をされるということであるのであります。それをもつて足りるとわれわれは考えております。
  75. 門司亮

    門司委員 それからもう一つ、まん中の五十二条の特別区の警視総監に対する問題でありますが、警視総監の任命をいたすということになつて参りますると、現在の日本東京都というものは、首都ではありまするが、外国の首都とは私は少しその形が違うと思うのであります。たとえばワシントンにいたしましても、ワシントンは御承知のように、いずれの州にも属しない一つの完全なる特別市なつております。ところがあるいはロンドンにおきましても、同じような形がいえると思うのでありますが、東京都の中には警視総監もおりまするが、しかし八王子あるいは立川というようなところには、おのおの公安委員会があるのであります。それでこれは首都警察であるからということで、この警視総監に対しては総理大臣が任命をするというような行き方は、実際上の運営の上からいい、さらに今日の日本地方自治体というものは、形からいいますると、首都警察としての——一応首都であるということはいえるかもしれませんが、自治体自体のあり方といたしましては、特別の首都である、いわゆる二十三区なら二十三区というものだけが東京都になつておりますれば、あるいは首都警察としてのそういうことが言えるかもしれませんが、東京都の中には市町村をたくさん含んでおりますので、これが完全なる一つの首都であるというように考えることには、まだ日本現状では考え方がどうか、こう考えるのでありますが、今日の東京都というものを完全なる首都というように大体解釈されておるかどうか。この点は相当自治法との関係の上で、疑問があると思いますが、この法案の内容から考えて参りまして、さらに説明あるいは御意見等から総合して参りますると、首都であるから特別の行政組織にしなければならないということになつておりまするが、今日の首都というものは、先ほどから申し上げておりまするように、二十三区以外に、旧東京市以外にたくさんの町村を持ち、市を持つておる。しかもその中にはおのおの独立した公安委員会というものを持つておるというように考えられて、今の都道府県の公安委員会と私は何らかわりのない形を持つておると思いますが、これでも大臣はやはり特別これを首都として取扱うから、こういう法案に直すのだというように御解釈ができまするならば、その御解釈をこの際承りたいと思います。
  76. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 東京都はなるほどアメリカのワシントンというようなところとは事情を異にしております。しかしいずれの面からいたしましても、東京都特別区、二十三区でありますが、これは私は中心をなすものと考えております。申すまでもなく政治、経済、文化、日本のこれらのものが集約されたものが一つ東京二十三区と見てよかろうと私たちは考えております。すべてここに集約されて日本の経済あるいは政治、文化の中心となつておるのであります。実質的に見てこれは私は日本の首都であると言い得るものであろうと考えております。この首都については、治安の面から見て、特別な措置を講ずることが最も望ましいことじやないかとこう考えております。
  77. 門司亮

    門司委員 大臣の御答弁は先ほど私が申し上げましたように、東京都が旧来の東京市内、今日の二十三区、あるいはかつての三十五区というようなものだけに限られた東京都制がしかれております場合には、そういうことが言い得ると思います。一つのりつぱな首都としての形を持つておると言つてもさしつかえないと思います。しかし東京都の中には御承知のように伊豆の大島も含んでおります。小さな村もあるのであります。それらの小さな村は、神奈川県とちつともかわらない町村、どこの町村ともかわらない町村をたくさん持つておる。そういうところにあります町村の公安委員会というものは、他の都道府県の公安委員会と何らかわりのない組織にする方がいいのではないか。東京都だけをこういう形にするということは、首都警察であるからということは、今日の自治法の建前からいいますと、少し片寄つたものができはしないか。先ほど大臣の御答弁がありましたように、二十三区だけが東京都になつておれば、ある程度大臣の御答弁もそのまま受取るのでありますが、現実に伊豆の大島も東京都の中に含まれております。ここまでいわゆる警視総監の考え方といいますか、行政の範囲が広げられておる。神奈川のいなかに対しましては、神奈川県の公安委員会行政監理に当るのでありますが、東京都はどんないなかに行つても、総理大臣の任命した警察長がその衝に当るということになつて参りますと、今日の自治体の形の上から行けば、東京都は必ずしも首都とは言い得ない。東京都のまん中は、あるいは首都の形をしておるかもしれませんが、全体を見ますとどうも伊豆の大島は日本の首都ということにはちよつと当らぬと思う。首都警察であるから、これを公安委員の手から離して総理大臣が任命するということについては、行政上の関係から行けば、私はそのことは必ずしも当らないと考えるのでありますが、それでも大臣は、やはり首都である、伊豆の大島に対しても——これははなはだへりくつのようでありますが、伊豆の大島もやはり東京の、首都の中に入るのか。行政区画だけではなるほど東京都の中に入つておりますが、実際上は私は首都とは言えないと思います。こういうものも首都と考えてさしつかえないと大臣はお考えになつておるかどうか。
  78. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 門司委員は少し誤解しておられるのではないかと思いますが、この総理大臣が任免をしようという警視総監の管轄区域は二十三区だけを管轄しておりますので、従つて伊豆の大島は東京都公安委員会が所轄しております。八王子、立川はそれぞれの市の公安委員会……。三多摩の町村はやはり東京都の公安委員会が管轄しておりまして、これは一般の他の府県と同様な扱いで、この法案によつて何らの変更を加えられないのであります。従いましてこれは今おつしやいます通りなつておるのであります。
  79. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、私の誤解かもしれませんが、東京都には警視総監ともう一人の警察長がおりますか。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 東京都国警本部がありまして、東京都国警の隊長がおります。これは東京都の公安委員会の指揮のもとに、東京都の国警の隊長がおるわけであります。これは東京都内の自治体警察の区域以外のところを所轄しておるわけであります。
  81. 門司亮

    門司委員 私にはよくわからぬのでありますが、むろん東京都にはおると思います。神奈川県にもおりますから……。おのおの府県には隊長がおるにきまつておる。それでは、今の東京都の警視総監の管轄区域というものは、それから東京都の公安委員会というものは、そのほかの行政区というものについては——行政区といいまするか、区画については、何らの権限を持つておらない、たとえば横浜市の警察と同じようなものであるから、これは一つの自治警察として認めておるから、自治警察の公安委員会に相談するのだ、私は法律の解釈はそうだろうと思います。その通りでございますか。
  82. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その通りであります。東京警視総監の管轄区域は二十三区だけであります。これ以外には全然及んでおりません。
  83. 門司亮

    門司委員 私の聞いておきたいと思いますことは、なるほど東京都の警視総監とほかの国警の本部長官との関係が、そういう形になつておるということは警察法の建前でありますが、それと同時に、個々の都道府県の公安委員会に対して、あるいは市町村の公安委員会に対しても指揮命令ができるという関連性であります。これは東京都の警視総監が任命制になると同時に、今日のこの警視総監の指揮命令のもとに二十三区だけがこれに動かされており、その他の土地に対しては、やはり非常事態の宣言その他についてもこの大臣の、大臣といいまするか、総理大臣の命令に従わなければならない、こういうことになつておりますが、最後に聞いておきたいと思いますことは、その間の調整であります。この総理大臣の任命いたしました警視総監の立場というものは、警察法に定めております東京都の公安委員会と他の公安委員会、あるいは国警との関係は、連絡調整現行法ではできるようになつております。そういたしますと、この場合の警視総監は、運営管理だけは公安委員会が握つておりますが、この公安委員会同士の間で連絡あるいは協調いたしまして、そうして相互の間の援助規定等がありますが、その場合に東京都の警視総監は、任命権者である総理大臣の意見を徴さないで、ただ単に東京都の二十三区の特別区の公安委員会運営管理のもとにただちに入つて、そうして普通の——普通と言いますと多少わかりにくいかと思いますが、たとえば横浜市の警察長と同じような形で、これが行われるかどうか。ことに私が聞きたいと思いますることは、この任命制になりました警視総監が、国家非常事態の宣言のありました場合に、この警察法に定めておりまするその当該地区の警察長の指揮命令を受けなければならないということに大体なつております。そういたしますと、東京都の警視総監も八王子市に非常事態が起つて参りますと八王子の警察長の下に入る、こういうことになつて参ります。そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  84. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは任命の点がかわるだけでありまして、それ以外の点はすべて他の自治体警察の警察長と同じ立場であります。従いまして横浜市の警察長も全然同じ立場で、その間には何ら変更を加えられません。八王子に応援に警視庁の警察官が参るというような場合には、警視総監がそこに行つて応援をするというようなことはございませんで、警視庁の部下が行つて、八王子の公安委員会の管理下で働く、こういう関係になるわけであります。任免の変更によりまして、自治体警察の警察長としての権限の行使その他につきましては、何らの変更を加えられていないのであります。
  85. 門司亮

    門司委員 もう一つだけ大臣に聞いておきたいと思いますことは、この自治体警察のあり方でありますが、先ほどから大臣のお話もありましたように、われわれも従来聞いておりまする通り東京都は首都であるからこれを任命制にする、こういう特別の取扱いがされるわけでありますが、しかし現在の東京都というものは、やはり地方公共団体であつて東京都知事御存じのように東京全体の選挙の上に置かれておる、同時にその東京都知事がこの東京都の公安委員会に対しましても、これは自治警察ではありまするが、特別区に対しましては、いわゆる東京都の知事のもとに——知事のもとというわけではありませんが、大体東京都の知事がこれを推薦し、あるいはこれが決定されておるということに間違いはないと、私は考えるのであります。そういたしますると、今日の東京都の公安委員というものは、首都であるからといつて、首都ではあるが、しかし東京都知事の推薦によつて東京議会がこれを任命しておる、りつぱな自治体の上に立てられた公安委員会だと、こう考えております。またその通りであると思いまするが、そのりつぱな自治体である公安委員会任命したこの警視総監に対して、総理大臣がこれを任命するということになつて参りますと、自治制の一つの破壊であるというように私は考えるのであります。従つてもしこういうことが行われるとするならば、東京都の公安委員に対しましても、何らかの、やはり国の責任において、これを任命するような形ができなければ、私は今日の自治体の建前からいつて少しおかしいのではないか、いわゆる自治体行政に対して政府が干渉するといいまするか、くちばしを入れるような形になりはしないかと思いますが、東京都の特別区の公安委員会は、このままで大臣はよろしいというようにお考えになつておるかどうか。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いわゆる東京都特別区の警察をどうするかということについては、相当議論の余地があると考えております。世間では首都警察法というようなものをつくつたらいいのじやないか——私は繰返して申しまするが、日本の政治の中心であり、経済の中心であり、文化の中心である、また外国使節がこれからたくさんここに集まる、そういうようなところを自治警察にまかしてよろしいのであるか、これは国家において直接責任を負うような制度にするのがいいのではないかというような議論も出ておるのであります。しかし一応われわれといたしましては、自治制度というものを十分認識した上において、これまでせつかくでき上つた自治体警察を尊重して行く、そのもとにおいて何らかの形において政府と密接な連絡をするのがいいのではないか、この建前から、警視総監を内閣総理大臣任命するということをとつたのであります。しかしながら実際の運営におきましては、もとより特別管区の公安委員会がすべて運営管理に当るのであります。そのもとに警察長が働くのでありまして、その点については従来と何らかわりはないのであります。ただ政府と直接密接な関係をつくることにおいて、警察の運営が円満に行くのではないかということの考慮から、この改正を行つたわけであります。
  87. 門司亮

    門司委員 今の大臣の答弁でありますが、非常にあいまいでありまして、私は先ほどから申し上げておりますように、首都であるから国が責任を負うとすれば、やはり公安委員も、国の公安委員と同じように国が責任を負つて、これを任命するというような建前の方が私はすつきりすると思う。またそうでなければならないと思う。ところがこの法案で見ますると、先ほどからの御答弁のように、自治体のあり方というものをくずさないで、そして何らかの形で国家の権力を入れて行こうというところに私は無理があると思う。従つて私はこれに関連してお聞きをいたしたいと思いますことは、国家公安委員会意見を聞いて、あるいは特別区の公安委員会意見を聞いて、おのおの長官を任命し、あるいは総監、隊長を任命するということについて、政府とこの両方の公安委員会意見がまつたく一致しておつたかどうかということに私は疑いを持つのでありますが、この点について公安委員会意見と、政府意見がまつたく一致しておつたのであるという御見解があるかどうか、あるいはそういうことでなかつたというお考えがあるかどうか。このことは東京都の二十三区の公安委員会、あるいは国家公安委員会委員長であります青木さん——私、これは誤りであれば訂正いたしますが、新聞か何かで私が拝見いたしましたときは、必ずしも政府原案に対して賛成でなかつたというような意見を拝見いたしておるのでありますが、東京都におきましてもそういう矛盾があると思いますし、従つてこれに対して私は公安委員会の諸君は必ずしもただちに同意したものではなかろうという解釈を一応するのでありますが、この点のいきさつについてひとつ大臣からお答えを願つておきたいと思います。
  88. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 国家公安委員会委員長をやつておられる青木君は、私もとより多年の友人でよく知つております。今申し述べられました点については先生は反対しております。私と見解を異にしております。しかしお互いにこれはひとつ検討してみようじやないかということになつておるのでありますが、私は本案の建前をとつて行きたいと考えております。青木君はまた別の見解をとつております。ただいまのところでは両者の意見は一致しておりません。
  89. 門司亮

    門司委員 国家公安委員長意見と、内閣の意見とが一致しておらない、しかし内閣といたしましては、こういう法律を国会に出して、この公安委員会の反対の意見を押し切つて、国会で法律にされようとしておるということになつて参りますと、私は治安上にかなり大きな響きを持つものではないかと思うのであります。単に私どもは国会の委員会で、これを大臣と議論するだけでありませんで、やはり公安委員長意見も十分聞かなければ、これに対する態度をきめるわけには参らぬかと思いますが、問題は国家公安委員長が、あるいは特別区の公安委員長というものが、自分の責任において警察の運営管理ができる。同時に、国家公安委員長であります限りにおいては、警察行政がまかせられております限りにおいでは、やはり日本の治安ということについても、いわゆる公安維持の問題につきましても十分考えられておると思う。従つて現行の警察法で定められておりまする公安委員が、十分自分の責任の上においてやれるという自信のもとに反対されておる。私はこう解釈することがいいと思いますが、もしそうだといたしますると、この政府改正意見というものは、結局政府の一方的の見解であつて、無理があるというように考えざるを得ないのでありますが、大臣はそういう無理があるというようにお考えにならないかどうか。同時に、公安委員会委員長の反対しておりまする意見というものは、ただ単なる見解の相違というだけではありませんで、この問題は日本の治安に関しまする非常に大きな問題でありますので、私はもう少しこの意見調整する必要はなかつたかということについての、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  90. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 青木君も十分に考慮されて、そういう意見を出されたものと考えております。われわれもまた全般的に見て、この提案の法案が万全なるものと考えております。両者においてその点については相違しておりますが、志は同じでございます。公安委員会の反対意見も、われわれは十分尊重しておるのであります。しかし全般的にわれわれ考察いたしまして政府原案が妥当なり、こう考えて提案したわけであります。青木君、われわれの意見についてはむしろ反対をされておるのでありますけれども、一たびきまつた以上は、すべての行きがかりを捨てて、十分に御協力を願えるものと確信しておるわけです。
  91. 大矢省三

    ○大矢委員 今門司委員から詳しく質問いたされましたから、私はごく簡潔にいたしたいと思います。  第六十一条の二の、特に必要があると認めるときは、先ほどの答弁の、公安維持上必要な事項について指示するという指示権です。これは非常事態の場合を言つているのであるが、治安の最終責任が政府にあることは明らかである。そこでこういう改正法律案を出さなければ、最終責任がある行政府の政府が責任を負えないという実際上のさしさわりがあつたことがあるかどうか。これは将来をおもんぱかつていつたものかどうか。今申しましたように、この条項は非常事態をさしてこういう指示をするのであつて、そういう日常のことについては、それぞれ公安委員がその責任においてやるのか。この第六十一条の二の指示権というのは重要でありますから、この点をもう一応重ねて私からもお尋ねしたいと思います。
  92. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 警察法六十二条の国家非常事態宣言を必要とするに至らない程度におきましても、いろいろ国家の治安上必要な場合があるのであります。区域的に見ても、あるいは全般的に見ても、治安維持上必要なりと考えた場合には、総理大臣がその指示権を行使する。必ずしも国家非常事態宣言に至らない程度においても、必要な場合がしばしばあると私は考えおります。例を申せということでありますが、たとえば一つの場所に大きな災害が起つて市町村の警察ではとうてい急速に間に合わぬ。すぐに何らかの指示を与えなくちやいかぬというような場合が、将来もしばしば出ることだろうと考えております。これはぜひとも国家治安の面から見まして、指示権を総理大臣が持つということが必要であろうと考えております。
  93. 大矢省三

    ○大矢委員 今私が申し上げましたように、この規定を新たに設けなければ事実上どう支障があつたか、具体的な実例があればお聞かせ願いたい。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 必ずしも今までにどういうことがあつたかということを、具体的に私は申し上げることはできませんが、現在の治安状況にかんがみまして、いろいろ将来において事件が出て来るようなことを予想いたしますれば、ぜひ必要であろうと考えております。
  95. 大矢省三

    ○大矢委員 私は申しましたように治安の最終責任者は、いわゆる行政府の内閣にあるということはもちろんでありますが、その内閣がこれをこしらえなければ今日まで指示ができないのだ、従つて不便があるから、さしつかえあるから、これをこしらえるのだということが何かなければ、現在責任があるのだから、当然指示権があると思う。こういう法律規定をしなければできなかつたという特殊事情、また実際にできないのだと思つているのかどうか、その点を私はお聞きしたい。さらにまた非常事態である場合は、これは明らかに警察予備隊令にもありまするように、その最高指揮はこれはいわゆる自治体警察の長でもなければ、国警の長でもないのであります。従つて私はこういうものがもし発せられた場合には、それは実際内閣総理大臣のもとに、あるいは今度治安大臣ができるかもしれませんが、この保安大臣でありますか、そのもとにいわゆる保安隊という警察予備隊が活動するのでありますから、一切その指示のもとに動かなければならぬということになりますが、私はちつともこういう条項をこしらえなければならぬということは考えられないのですが、今申しましたようにどうしてもこれがなければならぬというような何か具体的な事実があるのか、不都合が生ずるのかどうかということを重ねて承りたい。
  96. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま法務総裁からお答えになりましたように、必ずしも過去においてこういう指示を現実に法律に基いて行わなければならなかつたという事例があつたと、法務総裁がおつしやつたようには私も思いません。ただこれはこの前も私申しましたように、現在の警察法はその運営におきましては、市町村あるいは都道府県の公安委員にまつたく白紙委任をしているような形になつておりますので、少くとも国の重大なる治安ということにつきましては、これは統轄的に指示をする機関がなければ、警察の具体的な活動、国の治安確保という面に欠陥がある。従つてその欠陥のないように、独立をいたしましたこの際に、筋の通る警察法にしておきたいというのがその趣旨であります。従いましてこの法案に指示することができるとありましても、現実にこの法律に基いて指示をするということは、そう数多くあるとは考えられないのであります。ちようど昨年の臨時国会の際に、改正法案を提出いたしまして二十条の二の一項を加えまして、知事が介入し得る場合をつくつたのでありまするが、この際にも申し上げましたように、これは現行法の法理上の穴を埋めたい、現実にこれによつて知事の指示が自警の区域に発動するという場合は、おそらくないであろうと申しておつたのでありますが、それ以来一度もなかつたわけであります。しかしこういう秩序を立てておくということは、やはり警察の運営上現実に使いませんでも、非常に必要なことだとわれわれも痛感をいたしているのであります。
  97. 大矢省三

    ○大矢委員 今答弁がありましたように、治安の責任の所在を明らかにすること、指令権というか指示を一本にしたい。これはもしそれを徹底させますならば自治体警察もいらない、かつての命令系統一本の国家警察であつたいわゆる中央集権的な戦前の警察が一番いいのだ、それに弊害があつたからこそこうした、それをまた元に返そうとする、しかしながら返さなければならぬような非常に支障があつたり、あるいは責任の所在が不明瞭であつたりするために、どうしても必要だというなら、これまた私ども考慮しますが、今の御答弁では大した必要もない。ただ命令を一つにしたい、こういうことは実際問題としてさしさわりはない、こういうことであるのに、どうして改正を出して来たかということは、今答弁になつたように将来は一本化したいのだ、ほんとうはやむを得ず、示唆のもとにこういう制度を設けたけれども、これは廃止したいのだという意図が、私は含まれているのではないか、これは想像でありますが、もし内閣総理大臣意見を徴してそうして首都の自治体警察、あるいは国警長官を任免するということになると、——もちろん意見を徴してそういうことはないと、大臣も今答弁があつたようでありますが、この内閣がかわるたびにその治安の最終責任、大臣がかわるのでありますから、その大臣のもとに自分の責任上そうしたいということは当然でありまするし、内閣は更迭するたびにこれをかえるというおそれはないか。かつての警察部長があるいは知事が更迭されたとき、内閣が更迭されると同時に、ただちに命令一本でかわつたような、いわゆる今度の任免もそういうふうに意見を徴する形式だけは整えておりますけれども、私はそういうおそれがあると思う。もし内閣がかわつてもそういうことは絶対ないと言えるか、必ず私はそうしたいと思うのであろうし、またそういうことになりはしないかとの危惧から、この点を伺つております。
  98. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この国警本部長官については一定の罷免事由がなければこれはやめさせることはできない。総理大臣がかつてに罷免するということはあり得ない。さような心配はなかろうと思います。
  99. 大矢省三

    ○大矢委員 それからこの公安委員制度というものは、私が申すまでもなくその地方自治体あるいは国の治安を維持するために、全責任をもつて、いわゆる警察を運営して行くものでありますが、そのために国会あるいはまた地方自治体から間接選挙でありますけれども承認を得ている、そういう非常に責任感を持つてこの衝に当つている公安委員会が、もしその長であるべき国警長官あるいは警視総監を内閣総理大臣任命したような場合には責任が非常に軽くなる。内閣総理大臣任命するのであるから、これはわれわれの責任が非常に軽くなる。あるいは一般民衆も公安委員会というものは単なる諮問機関である、そういう治安に対する重大なる責任をを感じているのではなくして、むしろその上に内閣総理大臣が統轄しているという責任感が、私は非常に軽くなるようなおそれがあると思う。言いかえれば自治体の警察あるいは国家警察の公安委員会の性格というものが非常に弱められる、ゆがめられる、責任が薄くなる。みずからの責任においてなすという考え方が私は非常に薄らぐじやないかという危惧がありますが、その点は心配ないとおつしやられるかどうか。
  100. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御心配の点はなかろうと考えております。国家公安委員につきましても、自治体の公安委員につきましても、おのずから法律にきまつた権限規定が設けられておるのであります。その権限の行使は、何人が国警長官になろうと、また警視総監になろうと、影響はないのであります。ただ単に任命権が移るというだけのことでありますから、心配の点はなかろうと思います。
  101. 大矢省三

    ○大矢委員 これはちよつとどなたに聞いたらいいかわかりませんが、五十二条の三の、「予算の範囲内においてその一部を負担する」という、特別区の自治体警察——いわゆる首都の警視庁のことでありますが、この国庫の予算の範囲内において、その一部を負担するというのは、これはいわゆる平衡交付金とは関係なしに、何かの特別費用のいつた場合に、こうされるのかどうか、この点がはつきりしておらない。従つてこれは平衡交付金との関係がどういうことになるのか伺いたい。
  102. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは平衡交付金とは別個に、あるいは費目を指定して、用途を指定する、そういうぐあいにして、特に国家的性格の非常に強い仕事に対しまして、国がその一部費用を負担しなければならぬ、することができるという道を開きたい、こういう考え方であります。
  103. 河原伊三郎

    河原委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。御質疑がないようでございますから、一応本件については質疑を終了することにいたします。  本日の会議はこれにてとじます。     午後五時三十二分散会