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1952-05-13 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十三日(火曜日)     午前十一時四十六分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 野村專太郎君 理事 吉田吉太郎君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君       有田 二郎君    池見 茂隆君       今村長太郎君    大泉 寛三君       佐藤 親弘君    橘  直治君       前尾繁三郎君    藤田 義光君       大矢 省三君    立花 敏男君       八百板 正君    大石ヨシエ君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  柏村 信雄君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁財         政課長)    奥野 誠亮君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 五月十二日  町村吏員恩給改善に関する陳情書  (第一七  〇二号)  地方議会における懲罰と出訴に関する陳情書  (第一七一一号)  地方議会権能縮小等反対に関する陳情書  (第一七一二号)  同(第一七一三  号)  同(第一七  一四号)  地方制度調査会の設置に関する陳情書  (第一七一五号)  地方財政委員会廃止反対に関する陳情書  (第一七一六  号)  地方公務員法の一部改正に関する陳情書  (第一七一七号)  地方税法改正に関する陳情書  (第一七一八号)  地方自治法による政府刊行物市議会送付に関  する陳情書(第  一七一九号)  自治体警察費に対する国庫補助金全額交付の陳  情書(第一七二  〇号)  国庫補助早期交付並びに起債の全面的承認等  の陳情書(第一  七二一号)  特別市制実施反対に関する陳情書  (第一七二二号)  同  (第一七二三号)  同(第一七二四  号)  同(第一  七二五号)  同(第一七二六  号)  同  (第一七二七号)  特別区制度改革に関する陳情書外二件  (第一七二八号)  神戸市特別市制実施反対に関する陳情書  (第  一七二九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二三号)  道路交通取締法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三二号)  警察に関する件     ―――――――――――――
  2. 金光義邦

    金光委員長 これより会議を開きます。  地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。立花君。
  3. 立花敏男

    立花委員 きのうはこの平衡交付金法義務教育費国庫負担法の関連で、主として義務教育費国庫負担法の問題をやつたわけですが、非常に政府の内部に意見の対立があるということがわかりましたし、政府としてもこの法案の通過にはあまり積極的でない。この案には反対であるということを岡野国務大臣が明言されたわけなんですが、現在の政府が衆議院の絶対多数党である自由党と密接不可分であることを考えますと、どうもこの義務教育費国庫負担法自由党による提案は、擬装提案のような気がいたしまして、私ども十分審議する価値がないと思うのですが、この問題はどうせあとで文部委員会との合同審議があるので、そこでしたいと思います。きようは平衡交付金法内容について質問いたしたいと思います。この問題について二つの点についてお聞きしたいと思います。一つ測定單位あるいは單位費用に関する問題、それともう一つ勧告権の問題、法律あるいは政令で定められた一定の行政企画地方が行わなければならないという勧告中央地方に対してやる。もしそれに従わなかつた場合は、平衡交付金を還付せしめるというこの問題、この二つの点で質問したいと思うのであります。  最初の点ですが、測定單位あるいは軍位費用に関する問題ですが、なるほど今まで政令等でやつておりましたものを法律で明文化したという点は、一応形式的には進歩的だとも言えるのですが、問題はその内容だと思うのです。これによりますと、一人当り測定單位費用が決定されておりますが、非常に大きな疑問がありますので、ひとつ詳細にお尋ねいたしたいと思います。それは警察費用が法外に大きいということです。大体警察官一人当り行政費用、これはどのくらいに見積つておるか。人口一人につき二百四十一円となつておりますが、警察官一人当りにすると、幾ら行政費をこの法案で見込んでおられるか。それを承りたい。
  4. 奥野誠亮

    奥野政府委員 お手元に「各行政項目別單位費用算定基礎」という二百ページばかりの資料を差上げておりますので、各測定單位別に今お尋ねになりまするような計算が出ておるわけであります。参考までに費用について申し上げますと、その資料の百五十七ページのところに、人口十万の団体におきましては警察吏員としては百三十三人を予定しておるわけであります。経費の総額といたしましては一般財源で二千四百十六万八千四百三十円を要するということでありますから、それを十万で除しまして二百四十一円六十八銭という單位費用算定しておるわけでありますが、この二千四百十六万八千四百三十円を百三十三人で割りますと、警察吏員一人当り費用が出るわけでありまして、約二十万円弱ということになるわけであります。
  5. 立花敏男

    立花委員 警察官一人当り二十万円の行政費ということですが、一方同じ平衡交付金の配分の対象である、算定基準である失業者費用を見ますと、三千二百五十円、こうなつておるのですが、それに間違いありませんか。
  6. 奥野誠亮

    奥野政府委員 今お話の趣旨はちよつとわかりかねるのでありますが、労働費測定いたします際に失業者数測定をする部分測定單位当りの單位費用幾らであるか、こういう御質問でありましたならば二千八百九十円ということになつております。また市町村の分につきましては三千二百五十円、そういうことになつております。
  7. 立花敏男

    立花委員 労働費は主として失業対策に使われております。だから從つて失業者の数が平衡交付金算定基準になつておるのだろうと思うのですが、その失業者一人当りが三千二百五十円で算出されておる。ところが先ほどお尋ねいたしましたように、警察官一人当りは二十万円であるということは、私はどうもこれは納得できない。ここにやはり單位費用のあるいは測定單位とり方に、非常に大きな欠陥があるのじやないか。失業者は年に三千二百五十円でよろしい。警官一人当りは二十万円でなければならないということは、明らかにこれは平衡交付金自体警察偏重彈圧費に使われておると申しても、私は過言じやないと思うのですが、その点をどう説明されるのか、承りたい。
  8. 奥野誠亮

    奥野政府委員 失業者一人当り單位費用を組みますに当りましては、やはり標準団体の中では失業者数がどれぐらいあり、そうしてまたそれらの事業の分量としては、どの程度のものを実施するかということから考えているのでありまして、言うまでもなく失業対策事業に要する経費が主体になるわけであります。これらの事業に対しましては国庫からも相当の負担金が交付されておりまするので、それらのものを差引きまして、地方団体自己財源でまかなわなければならない部分だけを、この失業者一人当り経費として測定するというような方法をとつているわけであります。経費の性質が警察費の場合とは相当違つているということを御了解願つておきたいと思います。
  9. 立花敏男

    立花委員 政府から補助金が出ていることはもちろんでありましようが、しかし警察官一人当りには二十万円で算定する。失業者一人当りは三千円でしかない。これでは平衡交付金が国民のために、特に労働者のために使われておるとは明らかに言えないと思う。こういうことはこれだけではありませんので、たとえばやはり同じ警察費の例をとりますと、警察費人口一人につき二百四十一円で平衡交付金算定いたします。ところが社会福祉費に至りましては人口一人につき九十二円です。あるいは衛生費人口一人につきやはり九十七円です。社会福祉費とか、衛生費とか、民生に非常に大きな関係のある費用測定が八口一人につき九十円そこそこであるにかかわらず、警察費だけは一人につき二百百四十一円で算定しておる。社会福祉費衛生費両方合せましても百八十九円で、明らかにまだ警察費人口一人当り二百四十一円に及ばないわけでありますが、これを見ましてもさいぜんの失業者の場合と同じように社会厚生費社会福祉費等警察費に比べて非常に少いということは明白なんですが、この点を政府はどうお考えになつているか。最近自由労働者の問題が非常に大きく浮び上つて参つておりまして、メーデー問題等におきましても、自由労働者が暴行の先頭であつたというようなことを言つておるわけなんでありますが、国費の使い方をこういうふうに、警察は二十万円、失業者一人当りは三千円というようなことでは、そういう事態が起るのは当然だと思うのであります。地方におきまして今一番困つております問題は失業対策であつて、どこへ参りましても失業対策費をふやしてくれという要求を必ず受ける。しかも政府軍需産業偏重によりまして、首切りはどんどん出てくる。レッド・パージ桃色パージをやりまして首を切る。中共貿易をやめましたために、いろいろな産業が崩壊して来て首切りが出て来る。これが今一番地方で大きな問題である。それに対してわずかに三千二百五十円の費用しか出さない、一方警察官に対しては二十万円の費用算定をやつておる。こういうことでどうして失業者政府の施策に反対し、闘爭をやらないでおられるとお考えになつておるのか。この点をひとつ明白にお答え願いたい。
  10. 奥野誠亮

    奥野政府委員 ちよつと額を対象として論ぜられておりますが、あまり適当でないと思うので、少しこまかく申し上げてみたいと思います。  警察費につきましてはやはり警察庁舎に要しまする費用でありますとか、あるいは自動車の維持修繕費用でありますとか、そういうような設備関係費用も全部包含しておるわけであります。大体警察吏員一人当りについては月額一万円程度、十二万円内外の給與支出しておるわけでありますけれども、警察吏員地方公務員として地方団体任務に服しておるわけであります。これに対しまして失業者救済に與えられます経費といたしましては、必ずしも地方団体の行います失業対策事業費のみで吸收するわけではございませんので、一般の河川でありますとか、道路でありますとか、その他の公共事業に対しましても、失業者の就労というものをあつせんし、またこれを收容するように努めて行つておるわけでありまして、そういうような経費失業者の面に向けて相当支出されておると考えておるわけであります。さらにまた生活困難な人に対しましては、生活保護費あるいは児童福祉等経費でありますとか、その他一般社会福祉経費というものも、この面に対して相当支出されて参つておるわけであります。ただいま抜き出して論ぜられております問題は、府県なり、市町村なりが失業対策事業として、実施いたしまする経費のうちで、府県なり市町村なりの事務負担になりますものを失業者数で割つてみたらどれだけになるかという額であるわけでありまして、府県單位費用につきましても、市町村單位費用につきましても、それぞれ同じ失業者数を使つておるわけでありますから、全体の失業対策事業費負担分といたしましては、一応両者の合算額考えて行けばよろしいわけであります。しかしながらこのような関係だけで失業者に対しましていろいろな経費支出されるのではございませんで、むしろ地方団体あるいはまた国の経費支出が、総合的に失業者救済という面に向けられて行かなければならないじやないかと考えているわけでありますし、またそのような運用がされていると考えているわけであります。
  11. 立花敏男

    立花委員 そういうことは当然予想されておりますが、しかもなお警察費に比べて、そういうもの全体を含めました費用が、非常に過小であるということは、この表から見ても明白なんです。今労働費單位費用三千二百五十円をあげましたが、その前に私のあげました社会福祉費あるいは衛生費、こういうものは主として労働者の住居あるいは家庭のために使われる費用が多いと思うのですが、そういうもの一切合財を含めましても、厚生労働費というものは、なお警察費一人につき二百四十一円という数字には及ばないというふうな総合的な結果も出ておるわけです。決して失業者だけの問題ではないのです。厚生労働費、すなわち社会福祉費衛生費労働費というものを全部合せましても、なお警察費人口一人当り單位費用よりも少いということが、今までお出しになりました資料自体に明白なんです。これはやはり測定單位とり方、決定の仕方に大きな問題があるのじやないか。こういう問題は決して失業対策費だけの問題ではなしに、かねがね問題になつております義務教育費測定單位費用とり方の問題にもありますので、單位費用の問題は十分慎重に検討しなければ何にもならないと思うのです。本質的に申しますと、この法案はあくまでもわく内操作でありまして、千二百五十億という平衡交付金わく内で逆算いたしまして、單位費用をきめておる。しかもその逆算の仕方の基本的な考え方が、やはり政府反動性はつきりわしまして、彈圧費、すなわち警察費等に主力を置くということになつておりますので、さいぜんから述べておりますように、厚生労働費あるいは失業対策関係費が、このようなみじめな状態になつているということが言えると思う。これは決してりくつや数字だけの問題ではありませんので、現実失業の問題が地方の大きな問題になつており社会問題になつておる。すでにメーデーでもはつきりいたしましたように、自由労働者あるいは失業者が命をかけて自分生活を闘いとらなければいけないという実際の問題がはつきりつて参つておりますので、私は單にこれは数字の問題ではない、根本的に検討しなければならない問題であるというふうに考えております。その点を政府としてはどういうふうにお考えになつておるか、今のわく内操作だけで平衡交付金制度というものは地方に対しては、明らかにじやまになつて来ておる。地方平衡交付金の増額をこの間まで要求いたしておりましたが、もうこうなつて参りますと、平衡交付金制度の打破と申しますか、平衡交付金制度そのものやめろというふうな要求にかわつて来るのは、私当然だと思うのですが、その点をどうお考えになつておるか、承りたいと思います。
  12. 奥野誠亮

    奥野政府委員 もとより地方団体がその任務を果しますにあたりまして、たくさんな財源があつた方が仕事がやりやすいということは言うまでもないわけでありますけれども、何分租税負担が非常に重い場合におきましては、財源見合つて仕事をして行かなければならない、こういうことはやむを得ないところだろうと思います。しかしながら御指摘になつておりまする警察費につきましては、自治体警察が創設されました当時においては、人口十万の土地において警察吏員一人当り担当人口は六百五十人であつたわけであります。そういうことを基準にして警察吏員が配分されたわけであります。しかしながら今算定しようとしておりますところの單位費用基礎になつておりますものは、人口十万程度団体においては、警察吏員一人当り担当人員は七百五十人と置いておるわけであります。言いかえれば、警察吏員に対しましては今までよりはかなり重い仕事が課せられて来ておると思うのであります。しかしながらこれらの問題も将来わが国の秩序がもつと確立されて行き、もつと平穏な情勢が続くようになつて参りました場合には、私も警察費の縮減が可能だと思うのでありますけれども、現状におきましてはまた違つた意見も出ておるだろうと考えておるのであります。なお社会福祉その他の関係における支出額をお考えになります際には、たとえば生活保護費用につきましては、国が八割を負担し地方団体が二割を負担するというような仕組みになつておりますので、そういう点も総合的にお考えいただきたいと思います。
  13. 立花敏男

    立花委員 治安が乱れておるから警察費をふやす、それで失業対策費が犠牲になればやむを得ないと言われたのですが、それは逆だと思う。失業対策費をふやさないから治安が乱れて来ますので、ただいまのようなことを聞いておりますと、最後には国の費用を全部治安に持つて行つても足りない、そのために結局国がつぶれてしまうということになるのでありまして、そういう政治のあり方が実は反動的な政治であり、フアッシヨ的な政治であり、人民彈圧政治であるといわざるを得ないと思う。それがこの平衡交付金單位費用の中に、はつきりと現われておると思うのです。これを改めない限りはこの平衡交付金性格そのものが反動的であり、反人民的であり、結局は地方自治体をもつぶしてしまうというこになると思うのですが、この点を大臣はどうお考えになつておるか。たとえば最近義務教育費国庫負担法が出て参つております。これは明らかに平衡交付金制度そのものに対する不満の現われだと思う。平衡交付金制度自治体の機能を満たし、自治体の要望をいれておるものではないから、最も大きな問題である義務教育費の問題から、平衡交付金わくをはずせという要求が明らかに出て参つておる。これは平衡交付金制度自体に対する反抗なんです。そういうふうに大臣はお考えになつておるかどうか、実際この問題は義務教育費だけの問題ではなしに、厚生委員会におきましても、兒童福祉補助金平衡交付金わくからはずせという要求が出て参つております。これも同じようにやはり平衡交付金制度そのものに対する反対だと思う。こういうことがはつきりとした形で方々に出て参つておりまして、今やもう地方自治体平衡交付金制度そのもの反対であるということが、いろいろな問題を通じて明白になりつつあるのです。岡野国務大臣も、平衡交付金制度地方自治を阻害するものであるということを言われたこともあるのですが、そういう点で大臣はどういうふうにお考えになつているか、これをひとつ承りたい。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 一応の御意見として承つておきます。
  15. 立花敏男

    立花委員 私意見を申しておるのではありませんで、あなたの意見を聞いておるのであります。義務教育費国庫負担法が出て参つたり、児童福祉法による補助金平衡交付金わくからはずせという要求があることは、平衡交付金制度自体に対する不満じやないか、平衡交付金制度自体が行き詰つておることの証明じやないか、大臣はその点をどうお考えになるかということを聞いておるわけなのです。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 そうは思いません。
  17. 立花敏男

    立花委員 そういたしますと、それらの事態は一体何を現わしておるとお考えになつておるか。
  18. 奥野誠亮

    奥野政府委員 物事考えまする場合に、どういう角度から物事を見て行くかということにおいて、考え方がいろいろ食い違つて来るだろうと思うのです。しかしながら、特定立場からだけ物事を判断してはならないと思うのでありまして、やはり総合的に結論を生み出して行かなければならないと思います。従いまして立場々々によりまして、いろいろな違つた意見が出て来ることは当然でありまして、また立場立場において違つた意見が出されながら、総合的に推進されるところに発達、発展が展開されて行くものだということを考えているのであります。
  19. 立花敏男

    立花委員 そんな一般的なことを聞いておるのではありませんので、義務教育費国庫負担法が出されて参りまして、今日国会文部委員会では各委員が非常に熱心に、この義務教育費国庫負担法実現を要望されて、国会外におきましても、PTAあるいは地方団体あるいは教員組合等が、義務教育費国庫負担法実現をはかつておりまして、しかもそれは平衡交付金制度からはずしていただきたい特別にこういうものをつくつていただきたいということを要望しているのは、周知の事実だと思うのであります。この問題をどうごらんになつておるか。こういう動きや意見平衡交付金制度に満足して起つておるのか。平衡交付金制度ではこれは困るから、平衡交付金制度では現在の教育制度を完全に実施することができないから、これはひとつ平衡交付金わくからはずして、現在の教育行政の欠格を補つてくれという明らかな要求だと思うのですが、これをどうお考えになつておるか。しかもこの問題は義務教育費だけの問題ではなしに、さいぜんから言つておりますように兒童福祉の問題がありますし、その前から言つておりますように失業の問題もありますし、いろいろな問題がはつきり出て参つておりまして、政府が大きく地方財政わくをはめておりますところの平衡交付金制度が、今や地方財政の大きながんになつておる。従つて地方行政自体阻害物になつておるということが明白だと私は思うのですが、そういう点でひとつ具体的に意見を承りたいと思います。
  20. 奥野誠亮

    奥野政府委員 地方財政平衡交付金制度を創設せざるを得なかつたような事情、あるいはまたその制度を創設しましたときに、十分論議された問題であろうと考えます。やはり国が特定行政地方団体において行わせたい、しかも官僚考えるような行政を行わせたいと考えまするならば、補助金手綱を県や市町村の首にくくりつけて、地方団体にさして行けばよろしいわけであります。従来そういう意味合いにおきまして、多くの補助金が設けられておつたわけであります。またこの補助金手綱を通じまして、地方行政に対する不当な支配権が行使されたというようなこともございましたので、これらの補助金をやめてしまう。しかしながら個々行政に必要な財源というものは、地方財政平衡交付金制度を通じまして、全地方団体に保障して行こう、こういうような仕組みになつておるわけでございます。個々行政を担当しておりまする政府官僚立場から見ますと、自分考えが一番正しいと考えるのも当然でありましようし、そのような方向に地方行政を向けて行きたいと考えますることも、その立場からは当然に考えられるわけであります。しかしながら、大局から考えました場合には、わが国政治の運営から見ましてよろしくないことと考えられるわけでありますし、経費の効率的な使用の妨げにもなつて参るわけであります。しかしながら、今申し上げましたような事情から、そういうようなかつてありました行き方にまたもどつて参りたいというような希望を持たれる面のありますことも、うなずかれることと考えております。
  21. 立花敏男

    立花委員 地方財政平衡交付金がつくられました原因は、奥野君も言つておるように、官僚支配を排除して、地方自治を確立するというためではなかつたはずであります。それは一応の看板としてはそういうものが掲げられたかもしれませんが、平衡交付金制度がつくられましたのは、明らかにシヤウプ勧告によつてである。しかもそれはすでに一昨年、日本の再軍備が必至になり、中央軍事費の厖大が当然予想されました場合に、外国人の勧奨によつてつくられた制度でありまして、これは本質的には決して地方財政民主化をはかるためにつくられたものではない。政府はそういうふうに主観的にお考えがもしれませんが、客観的には決して地方財政の確立にも役立つておりませんし、さいぜんからたびたび申しておりますように、現実にはこの平衡交付金制度によつて地方財政は破綻させられている。ここから見まして、平衡交付金制度自体が、官僚意図いかんにかかわらず、明らかにこれは日本の再軍備に奉仕するものである。日本中央国家予算の再軍備費を確保するためのものであるということは、疑う余地がないと思うのであります。その点をあなたは見のがしておられるか、あるいは故意に自慢しようとされているのじやないかと私は思うのです。そういう観点からこの平衡交付金制度をながめますと、さいぜんから言つておりますように、今や地方の非常な桎梏になつているということは言えると思うのでありますが、この改正案を見ると、さらにそれを強化しようとしている。さいぜんあなたは、この制度ができたのは中央官僚の統制を排除するのが目的だと言われておりますが、今回の改正案におきましては、勧告の形で明白にそれがまた出て来ている。最初につくられたときには、民主主義的な様相というか扮装を凝らすために、そういう勧告という形は文字の上では出て参りませんでしたが、今回は、勧告という言葉を使いまして、中央の命ずるところの行政を必ず地方はやらなければいけない、それをやらなかつた場合には、平衡交付金を還付せしめるというような、まつた中央集権的な官僚的な改正が、はつきり出て来ているのですが、ただいまのあなたの説明ではこの点がまつたく逆なんです。あなた自身の言葉と、この出されました改正案とが、明らかに矛盾しているのですが、その点はどうお考えになるか。これはあなたの意見を聞くよりも、本質的な問題になりますので、大臣より御答弁を願いたいと思います。
  22. 岡野清豪

    岡野国務大臣 事務局より答弁いたさせます。     〔「何のために出席しているのだ」と呼ぶ者あり〕
  23. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)政府委員 今回の改正法律案で、関係行政機関の勧告について規定を設けておるのでございますが、この点につきましては、先ほど来いろいろ御論議がありましたように、地方自治というものと、国の行政というものとの間において、どういう方法で調整をとつて行くかということが、やはり根本の問題であるわけでありまして、補助金政策をとりまして、いわば地方に交付されまする金が、補助金のいろいろな条件によつてひもつきになつてしまうということになりまするならば市町村長の予算編成権も、あるいは地方議会の予算審議権というものも、結果においてまつたく名目的なものになつてしまうわけであります。それを平衡交付金という形で、あとう限り補助金を整理いたしまして、残りましたものだけにつきまして、平衡交付金という総合的な形で財政調整を行う、そういう交付金を交付する、こういうことにいたしますならば、地方団体の長の持つております予算編成権、あるいは地方議会の予算審議権というものは、比較的害されずに済むわけであります。この関係行政機関の勧告というものも、本来ならばこういうことなしに、地方団体がまつたく自主的な意思に基いて、最小限度の一定の水準というものを維持できるようになることが望ましいのであります。しかしながら、憲法に保障されておりますような国民の権利義務、あるいはおよそ文化国家として保障して行かなければならない行政の最低の水準というものは、やはり法律等においてこれを維持いたすべきでありまして、そういうようなものを義務づけられておるのに、それを怠つておるという場合において、そういう勧告をする、こういうわけでございますから、これはやはり文化国家として日本が立ちまする上においては、こういうような勧告権を認めることによりまして、地方自治と国政全体との間の調整をはかつて行くことが必要であると思うのであります。そういう見地で、この勧告権の規定をいたしたわけであります。
  24. 立花敏男

    立花委員 御承知のように、現在の地方団体は、仕事は一ぱいある。中央からはどんどん仕事が押しつけられて来る。しかし金がない。仕事をやりたくてもやれないというのが、実情なんです。このことは、地方財政委員会自対がお出しになつている地方財政白書等を見ましても、赤字を出している自治団体が何十パーセントかある。しかも名目上の赤字だけではなしに、実質的に赤字を出しでおる。ほとんどすべての自治団体財政に困窮しているということは、疑いの余地がないと思う。その証拠には、警察費でも、あるいは教育費でも、莫大な寄付金を住民より取上げておる。きのう文部省の説明によりますると、教育の維持運営費、これの三分の一は住民の寄付に仰いでおるということをはつきり申しております。こういうふうになつて参りますと、地方仕事をやりたくてもやれないというのが実態だと思うのですが、その点を政府はどういうふうにお考えになつておるのか。しかも最近の政府の措置等を見ますと、さらにその上にいろいろな仕事地方に押しつけまして、しかもその財源の裏づけはほとんどやつていないという形が、はつきり現われておるわけであります。最近やりましたのは、警察予備隊の募集の問題、あるいは住民登録法施行法の問題、あるいはその少し前に消防組織法、あるいは水防法等、地方行政の責任を負わしめるような措置を政府でやりながら、しかもこれに対しては、財政的な措置はほとんどやらなかつた、こういうことをやつておりまして、しかもなお中央の定めたもの、法律で定めたものは地方がやらなければいけないということは、一体これはどういうことなんですか。こういうことでは、地方は今でもやれないのが、なおさらやれなくなるのはあたりまえだと思う。しかも地方財政平衡交付金の年を追うての増減の傾向を見ますと、総体的には明らかに平衡交付金は減少して行つておる。地方の事務は、どんどんふえて行つておる。しかもこの法律勧告権中央が持ちまして、一定の行政企画はどうしても地方がやらなければいかぬということを強制いたしますことは、これはまつたく不合理きわまる。しかもこれに心して従わなかつた場合は、平衡交付金の還付を要求するということまで規定するに至りましては、まことにこの法案は、地方自治体にとりましては、殺人的な壊滅的な結果々もたらす法案だと思うのですが、その点をどうお考えになつておるのか。
  25. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)政府委員 中央におきまして、法律なり政令によつて地方団体に対して行うことを義務づけ、あるいは置くことを義務づけておる機関、職員というようなものが、年々増嵩して来ておりますることは、別途提案をいたしております地方自治法改正案の附表をごらんくださいましても、おわかりになると思います。しかしながら、政府といたしましては、それらの法律政令に基きまして、地方団体に義務づけましたところの経費財源につきましては、これはその財源を保障いたさなければならぬわけでありまして、そういうことは地方財政法等において要求されておるところであります。そういう意味で、個々一々の問題につきまして、地方財政委員会におきまして、あるいは自治庁におきまして、この事務が現在の財源においてやり得るかどうか。またその場合の財源をいかがいたすかということを、それぞれ検討いたし、そうして義務づけますところの仕事というものをきめて行つておるわけであります。この考え方は、今日までの段階におきましては、若干十分でなかつた点がないとは私どもも申しませんが、しかし今後そのような地方団体に対する、あるいは地方団体の機関に対する事務委任というものにつきましては、十分嚴重なる検討を加えるようにいたしたいと考えておるわけでございまして、この改正法律案におきましても、特に法律及びこれに基く政令によつて義務づけられておるものに限られておりまするし、こういう法律政令主義というものは、地方自治法改正法律案におきましても、これを明確にとつておるわけでございまして、みだりに地方のそのような委任が増嵩いたしますことのないように、またその経費負担がその結果としてふえることがないように、十分戒飭を加えたいと思うわけであります。
  26. 立花敏男

    立花委員 誠意は十分あるような御答弁ですが、実際上は、まつた政府地方財源を確保することに熱意がないと思う。それは決して私の主観ではありませんので、これは具体的に事実となつて現われておると思う。政府がほんとうにそういうふうに地方財政を確立して行こうという熱意があるならば、なぜ地方財政委員会の廃止に賛成しておられるのか、あるいは二十七年度の財政平衡交付金の額の決定の際に、なぜ吉田総理の一片の書簡によつて平衡交付金の額を削減されたのか、こういう点で私どもは、政府の弁明よりも、政府の具体的に現われました実際の政策を通じまして、政府は少しも地方財政の確立に誠意を持つていない、熱意を持つていないということが言えると思う。地方財政委員会が最初できましたときと最近とでは、まつたく性格がかわつておりまして、これは岡野国務大臣の態度にも、はつきり現われておるのですが、まつたくもう最初の勢いと申しますか、最初の考え方、少くとも地方の意思を代弁してやろうというような考えも、まつたくなくなつてしまいまして、ひたすら大蔵省の言うままに、中央の軍事予算のちようちん持ちをしでおると言わざるを得ないと思う。これは主観ではありませんので、個々の政策にはつきり現われておる点だと思う。  それから元にもどりまして、勧告権あるいはそれに伴いまするところの平衡交付金の還付を要求する問題ですが、こういうふうに地方に対しまして、非常に大きな強制権を持つことをこの法案は規定いたしておりますが、逆に中央はちつとも責任を負つていないわけです。地方に対しましては、言うことを聞かなければ金を返せということを言いながら、政府自分の責任はちつともこの法案で規定していない、この点は非常に私は片手落ちじやないかと思うのですが、この点岡野国務大臣はどうお考えになつておりますか。
  27. 岡野清豪

    岡野国務大臣 片手落ちではないと考えております。
  28. 立花敏男

    立花委員 片手落ちではない言われますが、これは非常に重大な問題で、事実をもつて申し上げますと、前の国会の終りに全国一万幾つの地方自治団体がこぞつて要求し、衆議院、参議院におきましても、全会一致で平衡交付金の増額を決定いたしました。しかも平衡交付金の最も直接の責任者である政府機関である地方財政委員会も賛成いたしておりました、その平衡交付金の増額の問題、これを政府は何ら顧みないで、この全国民の一致した要望を蹂躙したわけです。これは明らかに平衡交付金法にも違反しております。明らかな政府の違反行為だと思うのですが、これに対して何ら責任追求の措置がとられていない、この点を政府はどうお考えになつておりますか。平衡交付金制度政府が当然支出しなければいけない、平衡交付金は当然政府が出すべきだと思うのですが、もし政府平衡交付金制度による額を出さなかつた場合に、政府はどういう責任をとるか、当然この法案で明確にされなければいけないと思うのですが、それがされていない根拠、これをひとつ承りたいと思います。
  29. 奥野誠亮

    奥野政府委員 その問題につきましては、先ほどもるる御説明申し上げた通りでありまして、その後に地方自治団体の実態を個別に調査いたしまして、特に財政の困難になつております団体につきましては、総額で八十億円程度の起債を認めることによつて、将来財政が健全に立ち直るように、両者合わせて努力して行こうというふうになつているわけであります。もとより法律に定められております程度に達しないような平衡交付金の額につきましては、政府といたしましても、そういうことを提案しないでありましようが、国会においても十分論議していただけるものというふうに考えているわけであります。
  30. 立花敏男

    立花委員 それはあくまでも行政的な措置でありまして、そういうことを政府がやらなければいけないということを、なぜ法文の上で明確にしないかということをお尋ねしている。しかもあなたの言われるように、八十億の起債の措置はしたかもしれませんが、当時要求いたしました額は決して八十億じやありません。実際の地方の赤字も、政府の計算によりましても、二百四十億ばかりの赤字があることは明白なんです。その二百四十億ばかりの赤字に対して、八十億の起債をしたから、政府の責任はそれで全部免れておる、そういう行政措置をやるのだから、法律的には政府は責任を負う必要はないというようなことは、これは理由にはなりません。私はあくまでもこの法律で、はつきり政府の責任を規定すべきじやないか、地方に対して勧告権を規定し、勧告に従わなかつた場合は、平衡交付金の還付を命ずるというような、厳格な強制的な規定をするのであれば、逆に中央がこの平衡交付金の法の命ずるところの必要額を支出しなかつた場合には、政府が責任を負うという規定を明確にすべきだと思うのですが、この点をどうお考えになつておるか。それはほおかむりで行くという態度でお過しになるのかどうか、これをひとつ承りたい。
  31. 奥野誠亮

    奥野政府委員 政府がどういう措置をとるかということにつきましては、すべて国会の承認を得て行うことになつておりますので、ことさら国会がそういうふうな規定をお置きになることはおかしいではなかろうか、国会自身が承認しなければよいわけでありますから、そういう規定を置くこと自身多少問題があると思うのであります。平衡交付金の総額のきめ方につきましては、第六条で、「基準財政需要額が基準財政收入額をこえると認められる地方団体の当該超過額の合算額基礎として定める。」ことになつておりますが、基準財政需要額なり、基準財政收入額なりの算定方法というものについて、十分御検討いただきまして、確保されるようにこの制度を生かしていただけばよろしいと思いますし、また現に提案いたしております平衡交付金法改正案によりまして、十分確保されるものだというふうに考えておるわけであります。
  32. 立花敏男

    立花委員 今の答弁は不可解であり、不満足なのでお聞きしたい。国会できめればいいということは、それはあたりまえです。だから国会できめるべき法案政府がお出しになつて、その中に今言つたような、政府が責任を明確にする条項がない。なぜそれを出さなかつたのか。国会できめるべき法案の中に、なぜ政府はそれを削除しておるのか、こういうことを聞いておりますので、あなたの答弁はまつたく私は見当違いだと思う。われわれはこれれを国会できめるのだから、その中になぜそういう政府の責任を明確にする法文を入れないのかと言うんです。
  33. 奥野誠亮

    奥野政府委員 もしそういうことでございますなら、地方財政法の第二条第二項を読み上げます、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」。同時にどのような経費については国が持ち、どのような経費についてはどのような割合で、国と地方公共団体とが負担するかというようなことを、地方財政法で律しようとしておるわけでありますし、またそれらの地方財政法等につきましては、衆議院の議決を経て、参議院に回付されておるわけであります。
  34. 立花敏男

    立花委員 地方財政法で片づくなら、地方財政平衡交付金法はいらないわけです。基本法である地方財政法にそういう明確な規定があるならば、なおさら平衡交付金法には、総額の算定について、あるいはその交付について、国がその義務を怠つた場合はどうするかということを、明確に規定すべきが当然だと思う。基本法である地方財政法にそういう規定があるから、それだけでよろしいとは参らない。そういう規定があるのであれば、その精神を個個の法案に敷衍して個々の場合に、明確に政府の責任を決定しておくべきである、こういうことです。
  35. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)政府委員 今の御議論はいろいろございましようが、今財政課長が申しましたように、地方財政法におきましても、また地方自治法におきましても、国の負担すべきもの、国の委任いたしました事務の財源につきましては、国が財源措置を講じなければならぬということを規定いたしておるわけであります。この規定は尊重いたしておるわけであります。
  36. 金光義邦

    金光委員長 ほかに質疑はございませんか。なければ本案に対する質疑は、これにて終局いたしました。  これより討論に入ります。討論を許します。大泉君。
  37. 大泉寛三

    ○大泉委員 本案に対しては、自由党を代表して賛成の意を表するものであります。この改正案は政府としては地方自治体の実情を相当受入れて提案されたようであります。また地方公共団体も、この法案の一日も早く通過することを渇望しておる状態でありますから、すみやかに通過させてもらいたいという立場から、私は賛成の意を表する次第であります。
  38. 金光義邦

    金光委員長 床次徳二君。
  39. 床次徳二

    ○床次委員 改進党といたしましては、本案に賛成するものであります。本案が実施せられた後、なお期間が浅いためでありますか、その内容、運営等におきましては、なお不十分なものがあるのであります。この際この点を政府に警告いたしたいと思うのであります。  すなわち第一におきまして、本法が制定せられました趣旨は、一応立つのでありますが、実際の運用におきましては、いつまだ本法が十分その効果を現わしていないということを考えておるものであります。政府は本年度以降におきましては、正確に地方財政需要、また財政收入を把握して、本年度におきましては、地方財政に赤字を出さない決心であるということを述べておられるのでありますが、実は過去の実績から見て参りますと、なおこの点につきましては、私どもは疑いなきを得ないのであります。地方においてやはり本年度におきましても、相当財政の圧迫がある。しかもこれに対しましては、かなりな行政整理を行いまして、行政事務費を節約いたさなければならないのであります。この点につきましては、本法の運用におきまして、なお無理がある。すなわち今後においては、基準財政收入な見積ります場合おきましてまた基準財政需要を見積ります場合におきましては、もつと現実に即して、地方財政に無理のないような扱いをいたすべきだと思うのであります。なおこれと同時に、地方におきまして十分なる財源を持たないということも、本法が予想通りに運用し得ない大きな原因であるのでありまして、今後においては、地方に対しまして、特に財源を與えることについて考慮をお願いいたしたい。私どもといたしましては、この際酒、タバコ消費税のごとき、従来国において消費いたしておりましたものを、地方に還元する。なお税法におきましても問題となつておりますが、法人税のごときものを国で増徴する前に、むしろ地方に還元すべきであつたということを考えておるのでありますかかる裏づけがありましたならば、本法の運用におきましても、よほど当初の目的に合うものであろうということを確信するものであります。それから第二の問題といたしまして、本法の内容におきます單位費用、あるいは測定單位の数値の補正等におきましては、漸次是正を見ておるのでありますが、まだまだこの検討につきましては、実際にあてはめてみますと、不合理があるということを認めるのであります。これまたやむを得ないとは思うのでありますが、でき得る限りこの検討をすみやかに行いまして、実情に合うごとく、ひとつ政府においても努力せられんことを望むのであります。特に今回におきましては、地方財政委員会その他自治庁の機構におきまして、大きな改正が行われるのでありまして、私どもは、この地方財政の根本をなしておりますところの平衡交付金法の実施において、遺憾のないところの態勢をとつていただきたい。これが地方財政に対する影響の人なるにかんがみまして、特に政府においても、愼重に考慮せられんことを望む次第であります。  なお特につけ加えたいのは、今日特別交付金の制度が法定せられたことにつきましては、まことにけつこうでありますが、この特別交付金の配分については、やはり客観的な要素を持ちまして、でき得る限り公平なる配付を行い得るようにいたしたい。なおでき得べくんば、一般的性質を有するものは、一般交付金の方に編入すべきものと思うのでありますが、今日過渡期であります関係上、まだ不十分のものがあると思うのであります。なお特別交付金の扱いが明瞭でないために、往々にして必要な経費が、ことごとく特別交付金に待つという形になりまして、そのために財政を圧迫するというおそれもあるのでありまして、十分地方財政を確立するというためには、でき得る限り客観的な要素によりまして配分すると同時に、その算出も客観的に行い得るように、今後一層の努力をお願いいたしたいのであります。  特にこの機会に申し添えたいのは、今日政府においても研究しておられると思うのでありますが、義務教育費の問題であります。平衡交付金法が完全に運用せられ、しかも地方がその歳入におきまして、不足がなかつた場合でありましたならば、特に義務教育費国庫負担というような問題も起らないはずなのであります。しかしながら現実においては、義務教育費をいかにして確保するかということが、大きな問題となつていることに、今日の地方財政の懸案があるわけでありまして、この点に関しては、先ほど申し上げました財政立場において財源を確保すると同時に、いかなる程度において義務教育費支出するかという、支出の根源を明らかにいたす必要があるのでありまして、本法にも規定せられておりますが、将来義務教育の実施のために必要とする施設内容と申しますか、規模に対する基準を規定する法律を、すみやかに制定しまして、もつて單位費用等の算出に資するということが、大事なことだと思うのであります。この点について特に政府の努力を要望する次第であります。  以上私の所感を述べたのでありますが、この点に対しましては、後刻さらに附帯決議をいたしますから、特に本委員会においても採用せられ、国会の意思表示として、今後の実施上遺憾なきを期していただきたいことをつけ加える次第であります。
  40. 金光義邦

    金光委員長 門司亮君。
  41. 門司亮

    ○門司委員 私は日本社会党の立場から、本案に対しましては賛成の意を表するものであります。ただこの機会に申し上げておきたいと思いますことは、政府が今回の平衡交付金法の一部修正案を出しました、その内容になつております、当然法律できめなければならないと思われます測定單位の問題であります。それからさらに、これから参りますところの個々の問題につきましては、いろいろ大きな問題を残しておるのであります。従いましてこの法案が通過いたしまして、実際の実施にあたりましては、私はいろいろな問題が、これだけで解決されるとは考えられないのであります。特に私がこの機会に申し上げておきたいと思いますことは、過去二箇年にわたつて、この平衡交付金法の実施を見たのでありますが、政府はこの二箇年の経験に徴して、今回の測定單位を定められ、さらにそれから来るいろいろな条件を定められておりますが、個々のものに当つてみますならば、なおきわめて不十分のものがあるということはわかるのであります。ことに私どもは、一たび法律できめて参りましたものが、時代の推移によりまして、非常に大きな相違を来すであろうということも、容易に言い得るのでありまして、従つてこれらの問題につきましては、これの配分その他については、ひとつ政府は十分の考慮をしていただきたいと考えておるのであります。  さらに、そういうことを申し上げるものの中で、最も重要なものと考えられますものは、今自由党の有志の代議士の方で出されております、義務教育費国庫負担法案でありますが、この法案が通過いたして参りますならば、必然的に昭和二十七年度の地方財政平衡交付金算定基準に対しましても、当然特別の処置をしなければならないような事態が、必ず起つて来るのではなかろうかと考えておるのであります。従つて義務教育費国庫負担法案が通過するということになつて参りますと、勢いこの問題が出て参るのでありまして、これが出て参ると、やはり一応の修正がここで考えられなければならない。そういう問題に対しましても、政府は、そういう煩雑なことがあるからといつて、現在まで聞いておりますと、この義務教育費国庫負担法案に対しては、地財委並びに地方自治庁は、反町の意思を表しているようでありますが、こういう問題が出て参りましても、この地方財政平衡交付金わくの中で十分な操作ができない。理論上一応地方財政平衡交付金制度というものは成立つのでありますが、しかし実際の地方財政考えて参りますときに、これに依存しておつたのでは、事実上の自主独立の地方行政というものは行い得ないのでありまして、私どもはこの地方財政平衡交付金という制度よりも、むしろ地方の公共団体が、自主的に行政を行い得る財政規模の確立を、ぜひしなければならないと思います。そのことのためには、この法律の中に、やはりかつてありました地方配付税法的の性格を定め、そして地方財政が当初予算において十分見込み得るような制度を立てて、さらに国と地方との予算の均衡の上にも、やはり地方財政が画然として処置できるような仕組みにしなければ、いかにここに測定單位をきめましても、そしていろいろな処置を今度の法案で定められて参りましても、地方財政の根本的の改革というものは、私はなかなか困難だと思います。従つてこれらに対しましても、委員会で質問いたしました場合には、岡野国務大臣は、やがてできる地方制度調査会等において十分審議をしていただいて、そして完全を期したいというようなお話でありましたが、これらの点についても、政府はやはり十分留意していただきたいと考えておるのであります。  それからもう一つ申し上げておきたいと思いますることは、この法案内容に持つておりまする、いろいろな測定單位をきめまする場合の処置の仕方でありますが、この法案の中に書いておりまするような諸経費の割合、あるいはこれの基礎になつておりまするものの見積りというようなものにつきましては、政府はいま一段とこの問題についても、十分御討議を願いまして、間違いのないようにしていただきたいと思うのであります。  それからもう一つは、今度の法案の中で、特別平衡交付金の処置でありますが、これが従来一〇%内外が大体予定されておりましたものを、大臣の説明によりますと、八%に下げておるのであります。なるほど財政の処置から申し上げまするならば、特別平衡交付金というようなものは、私はできるだけ少い範囲にして、そして普通の平衡交付金をふやして、万遺漏のないやり方をするということはけつこうだと思いますが、しかし現在の段階におきましては、いまだ平衡交付金算定基礎になつておりまする基準財政需要額というようなものが、必ずしも完璧を期しておりませんときに、この数字を減して行つたということは、その運営の上に、多少の齟齬を来す危険性があるのではないか。ということは、実際の実情に即した算定基準額が定められておればいいのでありますが、これが完全になつておらないことのために、一つ地方においては平衡交付金が割合に多く行つて一つ地方には平衡交付金が比較的少く行くというような弊害ができます。同時に、それから奉りまする特別の処置を、当然講じられなければならないような事態が出て参ります。たとえば昨年度の状況を見て参りましても、われわれは当然その法の処置が完璧であれば、普通の地方財政平衡交付金の交付でよかつたと思われるものが、やはり特別平衡交付金でこれをまかなわなければならないというのが実情であります。従つて私はこの率を減されたということは、一応大臣の説明だけ伺つておればもつとものように聞えますが、実際の運営の上においては、私は必ずしも完全でないというようなことになりはしないかと考えておるのであります。この点につきましても、ひとつ十分の御留意をお願いしたい、こう考えているのでおります。  きわめて簡單ではありましたが、本法案が、以上申し上げましたような、まだ完全でないいろいろな面を残し、さらに義務教育費あるいは児童福祉法というものの関係から来る費用が、平衡交付金の実施にあたつて、必ず影響を持つて来るということがございますので、これらの点につきましても、ひとつ政府は、ただ單にそういうものがこの中に含まれておるということが、いかにも運営上都合がいいからというのではなくて、やはり義務教育費のごときにおきましても、国庫負担法ができて、義務教育費というものの負担区分が完全に明確になつて、そして政府の、ことに現在の大蔵省のやり方のように、国の財政の都合を見て、地方財政平衡交付金が定められるような、多分の疑いを持つような行き方で行つておりますときには、やはり必然的に義務教育費あるいは兒童福祉法等の、特別の費用に対しては、私は現在出されておりまするようなことが起つて来ると思うのでありまして、これらの問題も、やはり地方自治体財政考えて、こういう問題が出て参るのでありますから、権力のみにとらわれ、いわゆる今町村長の諸君が言つておりまするように、これを地方財政平衡交付金に含んでもらうことが、財政あるいは行政の運営上いいからというような、單に権力主義的の考え方でなくて、やはり地方財政を主体として、さらにそれらの仕事を主体として考えて行くことが、私どもはこの際正しいのではないかと考えておりまするので、この点に対しましても、特に私は政府の善処方を要望いたしまして、私の賛成の意見にかえたいと思う次第であります。
  42. 金光義邦

    金光委員長 立花敏男君。
  43. 立花敏男

    立花委員 そもそもこの地方財政平衡交付金制度ができましたのは、一昨年の占領中に、シヤウプ勧告によりまして、できたものでありまして、当時すでに日本の再軍備の問題が大きな問題となり、どういたしましても、中央の再軍備費を確保しなければいけない。そういうところと、それからもう一つは、地方に対する中央の総括的な財政的な掌握、この二つが問題になつて生れて参りましたものが、現在の平衡交付金制度であります。その結果といたしまして、一方再軍備費が増嵩いたすにつれまして、平衡交付金が削減されて来る。平衡交付金の創設以来、年を追つてこの交付額は、総体的に明らかに減少を来しておりまして、このことはもはや疑う余地がないと思うのです。それから一方では実際の再軍備の問題が着々と進行いたすにつれまして、地方への再軍備事務の押しつけ、これが明らかに現われて参つております。これはさいぜんも申しましたが、警察予備隊の募集の問題とか、あるいは住民登録の施行の事務、あるいは在郷軍人組織に匹敵いたしますところの消防団、水防団の組織、こういうものが。きびすを接して地方に押しつけられて参りまして、しかもこれが財源的な措置がほとんどなされない。こういうふうに平衡交付金が縮減されて行き、一方再軍備の事務がどんどん押しつけられて参り、ここから地方はまつたく破産的な状態に今陷つておるわけであります。こういうところから、現在地方では、平衡交付金制度そのものに対する大きな不満が起つておりまして、その現われとして、義務教育費平衡交付金わくからはずせ、あるいは兒童福祉補助金を、平衡交付金わくからはずせという、明らかな運動が起つて参つておりまして、平衡交付金自体に対する大きな反対の機運があがつておるわけであります。しかも政府といたしましては、この大きな地方自治体、あるいは地方住民の動きに目をおおいまして、なお一層この平衡交付金制度を改悪強化しようと企てて参りましたのが、この改正法案だと思います。  御承知のように、政府行政協定を調印いたしまして、日本の再軍備が至上命令となつておりますが、このためには、どういたしましても、再軍備事務の地方への押しつけと、それから再軍備から生じて参りまするところの人民の生活の破壊、地方財政の破壊、こういうものに対する国民の反対を彈圧いたします。この二つが非常に緊急の要件となりまして、これをどうしても地方にやらさなければいけない、こういうところから明らかにこの改正法案提出されておると思うのです。具体的に申しますと、国民の反抗を彈圧いたしますために、この平衡交付金警察費に対して非常に多く交付しよう。警察費に対しましては、この法案の中にもありますように、警官一人当り二十万円の費用で計算いたしながら、失業者につきましては、県におきまして二千八百円、市におきまして三千二百円、こういうふうに、警察官費用のわずか何十分の一にしか過ぎないような費用しか出していないわけです。これは明らかに失業の問題よりも警察の問題が重要である。警察費平衡交付金を重点的に配分するということが明白に現われておると思うのです。このことは決して失業の問題だけではなしに、一般厚生労働費、具体的に申しますと、社会福祉費あるいは衛生費等が、全部合せましても、警察費の人員一人当り費用に及ばないということにも明白に現われております。これは今回の改正が單なる形式的な改正ではなくして、これを法律で定めましたところに、この改正案の反動的な性格が明白に現われておると思います。  そのほかに問題とすべきは、さいぜんも申しましたところの、これから行政協定に基いて当然予想されますところの、いろいろな日本の再軍備事務の地方への強制、具体的に申しますと、徴兵事務の地方への強制、あるいは防空事務の地方への強制、あるいは軍事土木事務の地方への強制、こういうものが当然至上命令として中央から地方自治体に押しつけられなければならない情勢にありますので、これを確保いたしますために、中央で決定いたしました一定の企画のこういう行政事務を、当然地方がやらなければいけないという勧告権を、今度の改正案で規定しておるわけなんです。しかもそれをやらない場合は平衡交付金をとりもどすというような、まつたく言語道断な決定をやつておるわけです。これは明らかにこの改正法案が国民を彈圧するためのもので、あるいは再軍備事務を地方に強制いたしまして、再軍備を強行する、この二つの意図から出ておることは明白だと思うのです。集中的に申しますと、行政協定を促進いたしますために、この改正法案を出して来ておるということは明白だと思いますので、共産党といたしましては、もちろん反対であります。
  44. 金光義邦

    金光委員長 八百板君。
  45. 八百板正

    ○八百板委員 私は日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、この法案に賛成するものであります。  平衡交付金制度は、平衡交付金を必要とするそういうような地方財政の貧困そのものに対しては問題があるのでございまして、その点地方財政財源の確保のために、特段の考慮を払わなければならないという問題があるわけでございます。しかしながら今日の段階において、事実上日本産業が偏在し、また今日の資本主義制度のもとにおける財源の片寄りから来る不均衡、こういうようなものは、こうした平衡交付金制度によらなければ、この不均衡を是正し、救済して行くことは困難だろうと考えられまするので、そういう意味合いにおいて、私どもはこの場合平衡交付金制度の合理的な確立を希望するものであります。しかしながら平衡交付金制度はややもすると、運用の上から中央集権的財政の弊害を伴うおそれがあるのでありまして、そういうふうな点を運用の経過にかんがみて考慮し、このたびこのような改正をせられるということは、趣旨において了承することができるわけであります。しかしながら必ずしもこの改正によつて十分な交付金の額の算定の合理的客観的な基礎ができるとは考えられないのでありまして、そういう点について單位費用の高低等々について問題は多く残されており、不十分なものがあると考えるのでありますが、以上申し上げましたような趣旨から、平衡交付金制度の運用の方向としては賛成すべきものであると考えて賛成する次第であります。
  46. 金光義邦

    金光委員長 ほかに討論の通告がありませんので、討論は終局いたしました。討論は終局いたしましたが、都合によりまして、採決は次会にいたします。     ―――――――――――――
  47. 金光義邦

    金光委員長 次に道路交通取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに質疑を終了いたしておりますので、これより討論採決を行います。まず本案に対する討論を許します。大泉君。
  48. 大泉寛三

    ○大泉委員 私は道路交通取締法の一部を改正する法律案に対しましては、自由党を代表いたしまして、賛成の意を表するものであります。これはきわめて簡單な問題でありますので、多くの説明を要しないと思います。
  49. 金光義邦

    金光委員長 床次君。
  50. 床次徳二

    ○床次委員 改進党といたしましては、ただいまの道路交通取締法改正案に対しましては賛成であります。  ただこの機会にお願いいたしておきたいことは、道路の問題につきましては、実は左側通行、右側通行という問題が、多少国民の中にも徹底しておらないし、関係当局者においても、この実施についてはまだまだいろいろ不自由を感じておられると思うのです。すなわちわれわれが道路の安全を保持し、しかも交通の至便をとうとぶという立場におきましては、現在実施されておりまする対面交通というものに対しまして、もつと確信をもつて実施できるように、ひとつ研究してもらいたい。悪いところがありまするならば、これを改めてもさしつかえないと思うのでありまするが、この点今日まだ十分な材料が得られておりませんし、結論も出ておらぬようでありますので、一部には対面交通を廃止したならばという意見もあるのでありまするが、この機会にはこれを一応留保して、本案をそのまま承認することにいたしたいと思うのであります。当局におきましても十分研究をしていただきまして、はつきりと将来の方針をきめるように、今後ひとつ調査を進めていただきたいと思うのであります。
  51. 金光義邦

    金光委員長 門司君。
  52. 門司亮

    ○門司委員 私は本案に対しましては賛成でありますが、ただこの場合に、道路交通取締法に対しましては、やはり根本の改革を必要とするものがあると思いまするので、それらの意見を申し述べまして、政府に、将来におけるというよりも、むしろ近い機会にひとつこの道路交通取締法改正を、ぜひ研究をしておいていただきたいと考えるのであります。と申し上げますのは、この法案の中にありまする一―この改正法もやはり同じことでありまするが、いわゆる運転その他に対しまするものを、できるだけ交通を安全にしたいというのが、大体この法案の趣旨でありまするが、その安全にしたいという対象になつておりまする交通機関を運営する者の立場から、一応これを考えて参りますときに、御承知のように、本法案に書いてございまする第二十八条の問題でありまするが、この二十八条の対象になつておりまするものは、法の七条、八条を受けて立つておるものでありまして、これらの問題は、交通事故で人を殺傷したり、あるいは指示に従わなかつた場合、そうして事故を起した等の場合における処罰の処置でありますが、これがそのまま現行法によりますると、罰金または懲役に大体全部が付されることになつておるのであります。交通事故というものは、もとよりこの指示に従わない、暴走をする、あるいは酒に酔つて乱暴な運転をするというようなことのために事故を起した者に対しては、いろいろ考えられなくてはならないのでありますが、しかし問題は、交通事故の起りまする諸般の原因というものが全部――私どもは人道上から考えなければならないと思う、いわゆる罰金あるいは懲役ということになつて参りますると、今日の時代におきましては、これを全部前科者として取扱わなければならないことになつておる。従つてこの運転の免状を取上げる、いわゆる運転を禁止するという段階にまで立ち至らない者に対しましても、罰金刑が科せられておる。従つて前科の数から言いますと、運転手のごときは前科十何犯というようなものが実はあるわけであります。これらの問題を前科者として取扱うということになつて参りますと、非常に大きな前科を背負うことになつております。従つてこれを私どもは今日の日本の状況かも考えてみまして、やはりできるだけ前科者というものは少くする、そして刑罰の苛酷であるよりも、むしろ反省を促す道を講じてやつた方がいいのではないかというようなことが考えられるのであります。従つて厳罰主義で臨むというよりも、むしろこの中に科料を加えてもらつて、運転手に十分反省の余地を與えるということが、法の建前としては正しいのではないかと考えるのであります。もとより法に従わないとか、あるいは他人に非常に大きな迷惑をかけたとか、あるいは人命を殺傷したというような問題に対しては別でありまするが、必ずしもこの七条八条に書いてありまする事項の中には、万やむを得ない事態のためにそういう過失を犯したという者がないわけではありませんので、これらの者を前科数犯あるいは十数犯というようなことで取扱うことは、私は実際の実情に多少かけ離れた面ができはしないかと考えるのであります。同時にまた科料と罰金との相違は非常に大きな開きでありまして、現行法によりますると、罰金の最低は千円である。さらに三千円あるいは三箇月あるいは三年以下の懲役ということになつておりまするので、日々わずかな給料で働いておりまする運転手が、やむを得さる事故のために起した過失に対して、千円あるいは三千円というような罰金をとられて参りますると、まつたく一箇月の收入のあるいは三分の一以上をかけられるというようなことになつて参りまするので、やはり本人の生活自体も私どもは考えなけはばならないと考えておりますので、この点についてはぜひひとつ当局も十分お考えを願いまして、刑罰の重きよりもむしろ犯した罪の反省を促すということで、これを善導して行くというような刑罰の方法をとるべきであるが、――この際私はこの法案を通じて見まして、罰則の面が多少苛酷ではないかと考えるのであります。従つて将来において、政府に対しましてぜひこれの改正を要望いたしまして、本案に対する賛成の意を表するものであります。
  53. 金光義邦

  54. 立花敏男

    立花委員 共産党はこの法案反対であります。反対の要旨をはつきり申し上げますと、この法案は明らかに夏時間と同じように、占領軍が参りまして、緊急に日本の国民に押しつけた法案でありまして、今まで日本人が左を通つておりましたのを、右を通れということをきめた法案であります。しかも自分の本国では、やつこさんたちは左を通つておる。ところが日本だけは右を通さすというふうなことなんで、これは私どもはまつたく賛成できない。これは向うさんが占領制度をやめた以上は、日本人の自主的な決定で今まで通つておりました左を通るようにするのが当然だ思う。それをこの法案はそのままなおさら強行しようということでありまして、まつたく共産党としては賛成できません。この対面交通の問題と左側通行の問題ですが、対面交通の問題は、合理的で世界各国が採用しておるのですから、これは採用してもいいと思う。ところが右側通行というやつは、さいぜん申し上げましたように、アメリカでも左を通つておる。世界の国々でも大半が左を通つておりますのに、なぜ日本だけが右を通らなければいけないのか。なぜ今後莫大な費用と莫大な努力をかけて、世界に逆行して、日本人だけが右を通らなければいかぬという法律国会できめなければいけないのか。私この理由がちつとも発見できないわけです。その理由を政府に聞きますと、バスの乗口をちよつとかえなければいかぬので、都合が悪いと言つておられる。あるいは安全地帯をかえなければいけないという。しかしバスの乗降口をかえたり、安全地帯をかえなければいかぬというだけの理由で、日本人が世界の風潮に逆行して、右を通らなければいかぬという理由はどこにもありませんので、進駐軍がおりまして緊急にこういうものが必要であつた理由のまつたく解消いたしました後におきましては、私は日本人の従来の習慣通り左を通るようにすべきが当然だと思う。こういうところに私はやはり政府考え方の中にこの屈辱的な、奴隷的な考え方が骨の髄までしみ込んでおるのじやないかと思いますので、その意味におきましても、これには強く反対しておきます。夏時間を改正いたしましたと同じ考え方で、これは日本の慣習に従つて左を通るようにすべきが当然だと私は思う。日本の国が独立したとか、あるいは占領が解除されたということを宣伝される意思があるなれば、こういうところからこそまつ先に改正さるべきではないか、私はこう考えます。それから最後に言つておきたいことは、この法律が非常に濫用されまして、民主勢力に対する彈圧の法律として使われておるということです。この法律によりまして、街頭演説おるいは屋外集会あるいは示威行進等が、道路交通取締りでどんどんやられております。もつとひどいのになりますと、同じ街頭で並んでビラをまいておりましても、隣にまいておりますのが映画館のビラ、自分のまいておりますのが日本の独立と平和を望むビラでありますと、映画館のビラの方はひつぱらないが、道路交通取締り違反というやつで平和と独立のビラの方は、検束いたしております。  こういうふうにこの法案を非常に濫用いたしまして、実際民主運動の阻害になつておるという例が、全国的に無数にありますので、この点を最後に警告いだしまして、共産党としての反対意見を開陳いたす次第であります。
  55. 金光義邦

    金光委員長 八百板君。
  56. 八百板正

    ○八百板委員 日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、この法案に賛成いたします。もちろんいろいろ問題が残されておるようでありまして、これをもつて最終的なものとは認めがたいでございましようが、一応将来問題を根本的に検討するといたしまして、この際賛成する次第であります。  なお先ほど門司委員からも希望がございましたが、この際近い機会において二十七条の改正を取り上げてもらうことを希望する次第であります。先ほど述べられましたように、運転士に対する処罰というものは、これを反省させて間違いを起させないようにするという趣旨に沿つた取締りがせらるべきであつて、ただそれを処罰さえすればいいということでは、これを未然に防ぐことはできないだろうと思うのであります。昔の運転士の違反等を見ますると、五十銭から三円くらいの過料で処置されておつたようであります。もちろん安いからいいというものではございせんでしようが、大体軽い違反事件の五十銭から三円程度のものでありますならば、かりに現在のパリテイ計算で勘定いたしましても、その額は百五十円から五百円前後の過料という程度で反省を促すという方法が考慮されてよろしいと思うのであります。運転士の事故というものは、車そのものが老朽しておつたり、また予測しない事故が走つている間に起つて來たりして、結果から見ると運転士の責任であつてもつつ込んで行けば必ずしも運転士の責めに帰し得ない場合もあるだろうと思いますので、そういうものを含めた根本的な改正を近い機会にやつていただきたい。こういうふうな前提に立つて法案に賛成するものであります。
  57. 金光義邦

    金光委員長 大石君。
  58. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私ちよつと私用のためにこの法案について政府の答弁を聞きませんでしたが、ただいま門司先生がおつしやいました通り、私もタクシーに乗りますと、運転士から実は非常に警察が苛酷で、ちよつとしたようなことでもすぐ免許証を取上げるとおまれりさんに言われて、われわれはその日の生活に実に困る、何とか機会があつたらわれわれの意思を伝えてくれということを、常に私は聞いております。それで今後とも運転士に対して温情ある御処置を特にお願いいたしまして、私はこの法案に対して賛成の意を表する次第であります。  それからもう一つ、今立花先生がおつしやいましたが、日本だけが右側で欧米はみな左側でございますか、この点はなはだ相済みませんが、ちよつとお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  59. 金光義邦

    金光委員長 ちよつと速記をやめて。   〔速記中止〕
  60. 金光義邦

    金光委員長 速記を始めて。ほかに討論の通告がありませんので、これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  61. 金光義邦

    金光委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。  ただいま可決されました法案に関する衆議院規則第八十六条による報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
  63. 金光義邦

    金光委員長 次に警察に関する件について調査を進めます。  まず去る五月八日早稻田大学において起つた事件に関しまして警視総監田中榮一君より参考人として実情を聽取いたしたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決します。田中参考人。
  65. 田中榮一

    ○田中参考人 去る八日の日に深夜早大校庭におきまして不詳事件が発生いたしまして、まことに遺憾にたえない次第であります。本件につきましてはすでに新聞紙等において相当報道されておりましたので、大体の経過につきましては御了承と存じまするが、なお詳しいことにつきまして、私から報告を申し上げたいと思います。  当日神樂坂警察署勤務の公安係荻野巡査が、すでに逮捕令状の出ている早大生某の住所につきまして予備調査の必要上、五月六日電話で学生課並びに文学部の某事務官に神樂坂警察署の荻野であることを名乗りまして、問い合せをしたのでありまするが、用務の都合上、むしろ学校に行つて要談をした方がよいということになりまして、訪問を約束したのであります。八日午後四時十分ころ、山本巡査とともに早大正門前に到着いたしまして、山本巡査は正門を入つてすぐ左側の松の木のところに待たせて、單身文学部事務室に入りまして、その事務官に面会をいたしまして、姓名を名乗り、警察手帳を出して身分を明らかにした上要談の後――この間約十分間であります、校門を出ようといたしましたところ、広場で二百名ばかりの学生が輪をつくつて、わいわい騒いでいたのであります。山本巡査があるいは捕えられたのではないかと心配して、その付近まで確かめに行く際、このやろう、つかまえろとののしりながら、これらの五、六十名の学生が追跡して参りまして、正門より鶴巻町方面に約三百メートルほど逃げまして、ある民家に隠れて、その民家の妻女の好意によりまして、百十番並びに神樂坂警察署に急報してもらい、戸塚警察署員数名がかけつけてこれを救援いたしたのであります。しこうして荻野巡査の行動は、すでに逮捕令状の出ている犯罪容疑者の逮捕令状執行のいわゆる予備調査のために学校を訪問いたしたもので、いわゆる次官通牒に示す集会等の取締りには全然関係なく、当然学校の了解なくとも学校に訪問できるのであります。犯罪の捜査令状執行等に関係ある事項で、学校の了解がなくては一歩も校門内に入れぬといたしましたならば、学校内はまつたく治外法権の地域となりまして、犯罪の捜査に多大の支障を来すことになるのであります。従つてかかる場合は学校の承認は必要なきものと認めているのであります。本件に関しましては、荻野巡査は念のために事前に一応電話で身分を明らかにし、連絡の上、訪問をいたしております。学生らは荻野巡査が学校にその承認なくして行つたことについてわび状をしたためろと、強く主張しているのでありまするが、荻野巡査は犯罪捜査の必要上行つたので、次官通達には全然関係なく、従つて次官通達に違反したからというわび状は、書く必要がないのであります。  また一方山本巡査は、荻野巡査が單身文学部事務室におもむくので、君はこの辺で待つておれと言われまして、図書館わきでベンチに腰をかけて待つておりますると、洋服を着た二人連れの男がやつて参りまして、その中の一人の口のあたりに最近直つたと思われる擦過傷のあとのある二十五、六才の者が、社会部はどこですかと尋ねましたので、わからないと答えると、いきなり開き直つて、君は外部の者だろうメーデー事件を知つているはずだ、またわれわれの仲間をつかまえに来たのか、お前の顔には見覚えがある、と言つている間に、ほかから五六人の学生が集つて来たので、そのうち一番大きな男がこのことを連絡して来るから、お前たちは見張りをしておれと言つて走り去つたのであります。間もなく二百名ぐらいの学生が山本巡査のところに参りまして、地下室に連れて行こうと一人 の学生が山本巡査の腕をとり、あとの四、五人の学生があとから押して、地下室に入れようとしたのであります。山本巡査は必死にこれを拒否して、何のために不当に地下室に入れられるか、自分は行く必要はないと抵抗したのであつたのであります。この文学部の地下室は、早大細胞活動の本源地であつて、ソ連研究会等の事務室があり、共産党員とおぼしい人々が常に出入しており、しかしてその辺はピケラインが常に張られている所であります。山本巡査は警察手帳を危うく奪取されようとしたのでありますが、頑としてこれを守り続けたのであるが、遂に抗し得ず、手帳の官職氏名欄のところを写眞にとられまして、写眞は正面左右から山本巡査そのものも撮影をせられたのであります。紙と鉛筆を出して学園に不法侵入のわび状を書けと言つたが、なかなか書きませんので、さらに両方の手を両方の学生の肩にかけられ、あとから押されながら、文学部の事務室に連れて行かれました。そのとき学生らが今一人いたが逃がしてしまつたと言うことを聞いて荻野巡査が逃げたということを、山本巡査は了承したのであります。やがて二階の教室に連れて行かれまして、このときは、彼は腕時計を見ましたところが、ちようど午後四時二十分であつたのであります。百名ぐらいの学生に取巻かれて教壇に立たされて、この警察官は拳銃を持つているはずである、会議をする前に拳銃身処分すべきであると言つて、教務主任という人が両内ポケツトに手を入れて中のハンケチ、手帳を出しでみなに呈示してまた中に入れ、外側のポケツト等を検索いたしました。そこで不法侵入したことに対して謝罪文を書けと多数の威力によつて強要せられ、朝鮮なまりの言葉で、われわれの同僚がメーデーにやられたのも、この連中にやられたのだ、お前も同僚を殺した一人だろう、あだをとつてたたき殺してやれ、命はほしくないのか、またある者は、例の方法でやつつけてしまえ、またある者は、三分以内で聞かないと手帳を取上げてしまうぞ、こういうような怒号がありました。この間こずきまわされ、わび状を書かなければまさに危険な暴行を受けんとする緊迫した状態に立ち至つたのであります。なほ彼は便所に行きたいと申しまして、便所に行くときも隣の便所から監視いたしまして、あと三分で出て来ないと、このとびらをこじあけるぞとおどかされたのであります。山本巡査も身に非常な危険を感じたので、やむを得ずわび状をまさに書かんといたしたところに、神楽坂署の藤原警部補が、山本巡査がとりこになつておるということを聞きまして、早大の川原田学生課員に案内されて入つて来たのであります。藤原警部補が入室をいたしますと、ここでは狭いから広場につれて行つてけりをつけようと言われて、両手をうしろ手にねじ上げられて、藤原警部補もあとからついて参りました。そうして二人とも広場につれ出されたのであります。ちようど二人がねじ上げられてつれ出されたその瞬間に、十六ミリの映画をとつた者があつたのでありまするが、学生らは後日の証拠になつては困るから取上げろと盛んにわめいていた。しばらくしてから、ニュース映画を取上げたから安心しろと大きな声で発表しておりました。やがて両名のつるし上げが数百名の学生のわめき声の中で始められたのであります。現場には川原田学生課員、荻野文学部教養主任がおられました。荻野氏が、諸君さあここで大衆討議で解決をつけることにしようと、あたかも学生につるし上げを承認したような形であつたのであります。やがて二十五、六才ぐらいのノーネクタイの男が、議長は自分が勤める、発言は自分を通じてやつてくれとどなつておりました。了解を得ないで入構したからわび状を書け、書かなければ手帳々出せと、数百名の学生の喧々囂々、怒号喚声が起つて参りました。そのうちに、ある商業新聞が写眞をとつたが、不利だから取返しをするために話をつけた、みんな安心してくれ、諸君、一人七、八百円ぐらい出してもらうかもしれぬというようなことを言つてつたようであります。やがて議長は、二人はわび状も書かぬ、また手帳も渡さぬ、どうべきかと大衆に諮つたところ、こいつらは不法侵入の現行犯だから、われわれの力によつてつてしまえと両名のからだに手をかけ、け飛ばしたりなぐつたりいたしたのであります。両名は、死んでも離すものかとしつかり前に腕組みをしました。暴行を受けましたので、苦痛に耐えかねてしやがんでしまうと、立て立てと引立てられ、何回か繰返されました。外はすつかり暮れてしまつて、薄やみの中に、このつるし上げ行為が、怒号喚声の中になお続けられんとしたのであります。ちようど七時四十分ころとおぼしいころ、第四方面予備隊が正門に到着待機の姿勢をとつたのであります。武装警官が到着した報告があつたので、学生らはにわかに総立ちになつて、いろめき、あわて出しました。そのとき議長は、諸君、ただいま武装警官が来た。このままの状態でつつ込んだら、この二人の生命は保障できぬが、諸君はどう思うかと言うと、大衆は一段と喚声をあげたのであります。そのうちやがてある部長が学生の前で、ぼくは二階から諸君の行動を見ていたが、諸君の態度は実にりつぱだつた、実に涙が出るほどうれしかつたと言われたのでありますが、こうした一部の尖鋭過激な学生に使嗾されな統制あるつるし上げ行為というものが激賞せられるということは、私どもとしましては、何とも納得のできない点があるのであります。藤原、山本両警察官に、なおも暴力行為が続けられんとしている際、滝口という学生部長が、荻野巡査が文学部事務室に来て警察手帳身示さなかつたのだから、手続をあやまつて学園に入つたのだからわび状を出しなさい。武装警察官が今外に来ている、事態は急変した、個人の資格でいいからぜひ書きなさい、不利になつたらいかようにも弁護してあげる。両者がぶつかつたら君の責任だぞというように、藤原警部補に攻めて来たのでありますが、藤原警部補は責任上書きませんと申しましたら、ようしわかつたというような態度をとられたのであります。一方伊藤神樂坂署長は事件勃発とともに七時ごろ戸塚署におもむき荻野巡査とともに早大におもむきましたところ、二号館と本館との間、で学生が盛んに気勢をあげておりました。一同交渉のために学生生活課に行つたが、とびらが締つてつて入室ができませんので、再び門のところに帰つて来ました。ちようどそのとき川原田学生課員が来たので、どうか二人を返してもらいたいということを要望いたしました。七時三十五分ごろになつて、午後八時三十分までに二人を返さないときは、やむを得ず実力行使をするであろうと川原田氏に伝えたのであります。川原田氏はこの旨学生に伝えましたが、警察官が構内に入ることは次官通達の違反であるから、わび状を書けと言つていました。次官通達の問題ではないと署長がこれを詰問したのでありますが、何回説明しても次官通達の線に違反しているということで了解できませんでした。第四方面本部長衛藤警視正の命により事態をなるべく平和裡に收拾するために、実力行使については現場の意見にまかしたのであります。そうして九時ごろ再び現場の署長や予備隊長等が協議の結果、九時三十分までに二人を釈放しないときは実力行使を行うことあるべき旨を申し送つたのですが、このとき佐々木部長から、今実力行使をしたら二人の生命は学校としては保障できません。二人は手績上過誤のあることを認めているのだから、二人にあやまちがあつたことを、署長さん認めてやつてくれとの申入れがあつたが、署長としては応じがたいという旨を申しました。九時四十五分ころ――広場のつるし上げは夜中続いたのでありましたが、そのころ佐々木、滝口両部長が正門におりました伊藤署長の前に現れて、署長の申しますには、こんな状態では交渉はできません、別の所で学校、学生、警察の三者で会談をしたらどうでしよう。交渉中は学生はいらないから、学生連中は全部帰してもらいたい。また二人を別室に移したらどうかと提案いたしましたところ、両部長は、学生と相談して来るからと言つて引返して、学生のところに行つて、佐々木部長が、神楽坂署長と会見の結果、署長と学校側と、学生の中から十名の代表者を出して別室で交渉すること、また署長も陳謝すべき点は陳謝して始末書を書く、そうして解決と同時に学生も予備隊も一緒にぱつと引揚げることにまとめて来たが、諸君どうだと言つたので、学生の中から拍手が起つて参りました。これは署長の意思を推量して言つたのでありましようが、署長の意思とは大分かけ離れておつたようであります。そこで、一般の学生群から見えるところがよいというので、法学部の一階の室を会見場ときめて、関係者が全部一室に入つたのであります。これが九時五十五分でありまして、つるし上げが始まつてから、実に五時間三十分以上も時間が経過しておりました。こうしたつるし上げ行為は、多いときは一千名の学生群の中に包囲されて、多数の威力を背景として、あらゆる罵詈讒謗、暴行脅迫が行われたのでありました。ほとんど身体の自由が失われているこういう場合には精神的威圧を受けることが、すこぶる大きいものであります。この状態はまさに不法監禁に該当すると認められます。そこで交渉する部屋は電燈がともされ、窓が全部あけられました。外部の学生群と中の学生群とが相互に連絡ができるように、窓をあけたのであります。最初学生代表十名くらいが中に入つておりましたが、逐次その数を増加して、おそらく二十名以上も学生が周囲を取巻いておつたと思います。会談は比較的冷静に行われたと思われますが、ただ内外の学生が相呼応して喚声をあげて、喧噪をきわめました。この交渉の状況は、外部とほとんど連絡がとれぬ、また自由に出入ができない状態でありました。すべて相互の交渉は自由に連絡すべきところには連絡し、指揮を受けるべきときには、指揮を受ける状態で交渉すべきであると思います。この三者会談は警察側にとつては不法監禁または不法軟禁の状態での会談であつたと思います。少くとも山本巡査、藤原警部補、伊藤署長は絶対に足どめをされました。そのほかに三人の警察官が護衛連絡のために随行いたしましたが、十一時ごろまでは外部に一、二回辛うじて連絡したが、あとは学生らに妨げられ、また遮断されて連絡の方法がまつたく断たれました。どのように連絡が遮断されたか、どの程度に制限されたかを実例について申し上げますると、藤原警部補は議長の許しを受けて、第一回に外へ出たのでありまするが、その際学生代表二名が監視として随行、そのとき入口のドアーにおりました学生らは、連絡の内容を発表しろとどなつておりましたが、この随行の学生によつてそれは制せられました。第二回目に連絡のために外に出ようといたしましたときは、正門のところまで二、三名の学生がつき添つて時間も五分間だけ許されました。もし五分間以内に帰られぬときには、その都度許可を受けろ、こういうことでありました。第三回目に連絡のために出ようといたしまして出口まで行つたが、外とは学生らのために遮断されて連絡不能に降りました。交渉の最後の段階で、伊藤署長が滝口議長の許しを得て、広場を距てた本館の部屋の電話をかけに行つたときも、前に一名、あとに四名ぐらいの学生の見張りがついて、電話口のそばに学生がついていて、全然通話の自由はありませんでした。しかのみならず外には八、九百名ぐらいの学生群がさきに申しましたように内外相呼応して喚声をあげておりました。まつたくこの平和交渉というものは、決して自由な交渉ではない、多数の威力によつて脅迫された会談であつたのであります。前に広場でつるし上げが行われたが、ただ場所が部屋の中になつたというだけで、ほとんどこの状況はつるし上げ行為と同じような状態であつたのであります。しこうしてこの会談の内容は、結局わび状をしたためろ、したためないの一点に集中いたされております。警察署長は早く二人を帰したいので、自分らは徹夜してもいいからどうか二人を帰してくれと要望いたしましたが、二人を帰すことは許されなかつたのであります。だんだん話が進んで、学生らも山本巡査は通達違反ではないことが若干了解されたようでありまするが、荻野巡査の学園立入りは、彼が文学部事務室に来て最初話をしたとき、警察手帳を見せず身分を明らかにしなかつたから手続上過誤がある。だから学園に無許可で入つたのであるから、わび状を書くべきだというのが学生の主張であつたのであります。しかしながらさきに申し上げましたように、荻野巡査は名前を名乗り、また警察手帳もはつきり示しておるのであります。そこで山本巡査の方は学生も了解をいたされましたので、連絡のためについておりました一警察官が、さあ山本君立とうと、彼の腕を持つて立ち上らせようとしたときに、学生一同は総立ちになつて、口々にそいつを帰すなとわめいておつたようであります。山本巡査を救い出そうとしても、ただちに数百の学生がいきり立つ状態でおります。こうなつては平和的な交渉とは名ばかりで、まつたく監禁の状態であります。いつまで交渉いたしましても、警察側としましてはわび状を書かぬと主張するし、学生側は書けと主張いたしますので、双方の意見がまつたく対立いたしまして、いつまでたつても解決の徴候さえ見えぬ状態でありました。これ以上の交渉の継続はむだであるという状態になつて参りました。佐々木教育学部長に対して連紹の警察官が怒つて、一体山本巡査を監禁する理由がどこにありますか、何の権限であなたは監禁するかと詰め寄りましたところが、佐々木堂部長は山本君を監禁する権限はない今署長が連絡している、わび状の返事がすぐ来るからしばらく待つてくれ、とこう言つたのであります。このわび状の連絡と申しますのは、署長がとてもこれでは解決ができぬと考えましたか、もし荻野巡査に手績上の過誤があるといたしますならば、わび状を書こうということを約束いたしたのであります。そこで藤原警部補が外へ出まして、いろいろ調査してみましたところが荻野巡査は決して身分を秘匿していない、身分を明かし、また警察手帳も示しておる事実がわかりましたので、伊藤署長としてははつきりわび状を書かないということを言つたのであります。今署長が連絡しているわび状の返事がすぐ来るからしばらく待つてくれというのは、藤原警部補が外へ連絡に出ておるから、しばらく待つてくれという意味であります。そこで伊藤署長としては何とかして山本巡査と荻野巡査の二人を帰したいと考えまして、さらに佐々木学部長さんどうでしようか、二人を帰してくれたならば、予備隊と学生とが同時に解散して、あと警察と大学側と徹夜して会談をやりたいと思いますがいかがでしよう、と言つたのでありますが、これもただちに拒否せられたのであります。  十二時ごろになつて、そばに連絡のためにおりました警察官がふと思い出しまして、山本君、夕飯を食つたかという問いに対して、山本巡査が首を振つたのを見まして、佐々木学部長は、そうそう忘れていた、何かあるだろうと学生に命じたあとで、どんぶりを一つつて來ていただきました。もちろん山本巡査は手をつける気持にならなかつたようであります。山本巡査が一時ごろになつて、疲労困憊その極に達して来たことを、全部の者が認めたのであります。そこで二階の教育学部長室のソファーに寝かして、発熱しておりまするので、水を手ぬぐいに浸して冷やしていただきました。学生が数名つき添つておりました。ただ学校側とされましてはかように飯を出され、またソファーに寝かしていただいたことほ、私どもといたしましては非常にありがたい措置と考えておりまするが、しかし飯を出され、またソファーに寝かされましても山本巡査が帰りたいという意思は、まつたく束縛されておるのでありまして、やはりこれは監禁の状態であると考えざるを得ないのであります。  当時の模様は、單に山本巡査のみならず署長もしかり、藤原警部補もまたそのほかの護衛連絡のための警察官も、今やまつたく完全に外との連絡が断たれたような状態でありまするので、これらの者全部がちよつと監禁されたという状況になつております。これはまさに違法状態であると私は考えます。山本巡査は実に十時間の監禁であります。藤原警部補にいたしましても、八時間以上も束縛されておつたのであります。  遂に一時過ぎ伊藤署長は、会談が決裂の状態で少しも進捗いたしませんので、今までの経過を報告するとともに、緊迫した情勢下にある現在の状況を本部に話し、もはや平和的な手段で解決の方法も見出されない、心中実力行使を本部長に要請するために、また今後の指揮を仰ぐつもりでありますか、瀧口議長の許しを受けて本部長のところへ電話をかけたいということを申し出たのであります。そこで藤原警部補は別館に五、六名の学生に監視されながら電話をかけようといたしたのでありまするがその際に実力行使が行われたのであります。私はこの事件を通じて見まして、教授の方々も学生と同様次官通牒の趣旨というものが、まだ十分におわかりになつていないのではないかと思うのであります。何ら次官通達に違反していないものにわび状を書けということでありますが、あるいは学生の手前、あるいは学校の立場から、あるいはまたなるべく事件を早く解決したいという気持から言われたのかも存じませんが、また次官通達の趣旨というものが、学校の先生にもまだ十分おわかりになつていないのではないかということも、一応考えられるのであります。もし学校の先生に次官通達の趣旨がわかつていないというのならば、学生にもまだわかつていないのも無理はないのではないかということも、一応考えられるのであります。私は今後こうした問題が再び繰返されないために、十分に先生みずからが次官通達をまず理解されると同時に、十分に学生にその趣旨の徹底をはかつて、今後学校、警察間のトラブルを絶対なくするように、お互いに努力をせねばならぬと考えております。  それからなお署長が一旦わび状を書くと確約したのであるが、外から書くなという命令があつたから、途中で署長は翻意して書かなくなつたということが宣伝されておりますが、これはそうではないのでありまして、署長としては最初からわび状を書く意思はないのであります。ただ荻野巡査が手続上間違つてつたならば書きましようということを言つたのであります。ところがこれが間違つていなかつたので、これ々書く必要はない、そこで署長としてはわび状を書くことを拒否したのであります。  それから実力行使と交渉打切りの関係でありますが、現場における交渉は継続されておつたのでありまするが、室の内外に学生が充満して、盛んに気勢をあげておりまして、多数の威力によつてわび状を書かせようとしていた状況で、ほとんど内外の連絡すら思うようにできない状態であります。しかも警察側としてわび状は書かぬと主張しているし、片方は書けと主張しているのでありますから、両者の意思はまつたく対立して、交渉継続の見込みのない状態であります。何とか現場の收拾策といたしまして、島田総長に直接御依頼を申し上げるほかに道はないと考えまして、午後九時五十分ごろに増井警備第一部長、衛藤第四方面本部長、江間前戸塚署長らは、島田総長の私宅を訪問しまして、一時間余にわたりまして、いろいろ折衝を重ねたのでありまするが、総長は本問題について最も信頼できる佐々木教育学部長、瀧口学生部長、川原田学生課員の三人がいるから、総長が出なくても円満解決ができると信ずる。自分は自宅で事件解決を指揮する、こう申されまして遂にお出かけにならなかつたのでありますさらにまた最後に総長はこう申されたのであります。問題の中心はわび状にあるらしい、この点ちよつと見通しが困難である。交渉の経過については川原田学生課員をして連絡させるから、警察側はこれによつて判断せられ爾後適当な措置を願いたい、こう申されて一応会見を終つたのであります。その後川原田氏から電話がありまして、その内容は次官通達に反しているから、わび状を書かなくては事件が解決せぬというようなことをまた言い出されたのであります。衛藤本部長は電話であなたは次官通達の内容をよく御存じなんですか、またかかることを言つていらつしやいますが、これ以上交渉の余地はありませんから、交渉はこれで打切ります。どうかこの旨を伊藤署長に伝えてくださいませんかとお願い申し上げましたところが、伊藤署長には自分は伝える義務はない、それではしかたがありませんから、佐々木学部長に交渉打切りの旨をお伝え願いたい、そこで一応交渉打切りのことを川原田学生課員に通達をいたしました。そこで増井部長は最後の断を下すところに到達いたしましたので、島田総長にさらに電話で連絡いたしまして、川原田学生課員からの最後の電話の内容を伝えたのであります。そうしてさらに現場においては解決の望みは絶無であることを申し述べまして、警察官は依然監禁の状態であります。釈放の措置がされない限り、実力行使によつて救い出すほかに道がありません。この点支障かないかいかがでございましようかと念を押して、そこで島田総長もやむを得ないであろうというようなお答えであつたように思うのであります。  そこで方面本部長は田原警視、名取警部を現場に派遣いたしまして、西原第四方面予備隊長、石村第五方面予備隊長に、実力行使の命令を授くるとともに、田原警視、名取警部が会見現場に赴いて中にいる署長に、会見打切り実力行使の予告をするために、予備隊員の護衛のもとに、これは予備隊員の護衛がなくては非常に危険でありまするので、予備隊員の護衛のもとに会議場に行こうとしたところ、たちまち会議場等の電燈が消され、とびらは嚴重にとざされました。学生らは出入口をふさいで、中に通させないというようなことになつたのであります。こうしたときに、中に入ろうとした警察官と学生との双方の間に乱闘が起り、事実上すでに実力行使の状態となつてしまつたのであります。従いましてこの会見打切りの警告も不可能の状態になつてしまいました。  以上の通り交渉はやつていたが、これはまつたく軟禁された状態での交渉で、全然解決の見込みなく、また交渉打切りの通報は、大学側には衛藤本部長より、その旨電話にて確実に川原田学生課員に申し伝えましたが、伊藤署長には伝達途中にて乱闘状態となり、伝達不可能の状態になつてしまいました。従いまして警察側としては、一方平和的交渉をやつているのを無視して、突然横から実力行使をしたではないかというようなことは当らないのであります。また本事件は必ずしも偶発的でなく計画的ではないかという見方も若干あるのでありますが、この点はあまり長くなりますから、省略さしていただきたいと思いますが、そのおもなることを申し上げますと、本事件は一部学内に巣食う尖鋭分子の指導する計画的行為ではないかと思われるのであります。学内には常に過激な不穏ビラがまかれ、また張られ、善良なる多数の学生をアジつております。細胞活動は相当活発に行われております。一日のメーデーの際も、これら過激分子は参加して積極的に活動しております。たとえばメーデー当日夜、並びに翌日早大校庭でデモを行い、皇居前広場での負傷者の資金カンパを計画して、学校側から拒否せられ、校内でデモを行つております。おそらくこれらデモを行つたグループが、その指導権をとつて活動したのではないかと思われます。多数の学生がおりましたが、あとは附和雷同的に参加した者が相当あつたようであります。  なお写真を取上げるときに、商業写真云々といつたような言葉より見て、つるし上げの処置がすでに前もつて決定しておつたのではないかと思われます。なおつるし上げ中にも、たえず共産党の署名入りのビラがまかれて、学生の中からたしなめられたような事実もあつたようであります云々。山本巡査誰何の際は、二人の男が呼びかけたが、外部の者とわかつて、その瞬間に学生がただちに集まつて来ました。また文学部の地下室にまずひつぱり込もうとしたような事実がありました。また写真を取上げたような事実、こうしたようなことは、何か思想的背景を暗示するようなものではないかと考えられるのであります。  なお本事件が相当平和的交渉のうちに交渉を進められておつたのでありますが、実力行使にならざるを得なかつたということは、警察側といたしましても、学校側といたしましても、まことに遺憾にたえないのであります。また実力行使の現場におきまして、警察官並びに学生側にも相当な負傷者を出しましたことも、まことに遺憾にたえません。また当日警察官の活動状況におきまして、行き過ぎの点があつたようにも思われます。この点も私は遺憾にたえないと存じております。  なお相当学生側に負傷者のあるようなこともわかりましたので、戸塚署ではただちに四谷、澁谷の両消防署に救急車の手配をいたしまして、一時四十分ごろ救急車が現場に到着いたしまして、四谷消防署の車で戸山国立病院に男一名、岡崎病院に男三名、女一名、訂五名、澁谷消防署の救急車で戸山国立病院に男五名、計十名を送り、これを收容いたしました。  以上をもつて早大事件の状況を御報告申し上げたのでありますが、まことにこうした事件の起りましたことは、私どもといたしましても、遺憾にたえないところと思う次第であります。
  66. 金光義邦

    金光委員長 暫時休憩いたします。     午後二時十三分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた