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奥野政府委員 地方財政委員会としてただいまお述べになりました御
意見に対しまして申し上げてみたいと思います。
一つは憲法上の義務であるということを非常に強調されております。しからばそれをどう具現するのかというような御
意見をまだ承
つていないのでありますけれ
ども、もしそういう思想を推し進めて行くならば、小
学校も中
学校も全部国立小
学校、中
学校にすべきだという
意見になるのじやないだろうかと
考えております。
第二に、現在
地方団体にまかせておいたんでは、
義務教育の水準が維持されないというふうに
考えられるのではないかと思いまするけれ
ども、そうすれば一体
義務教育費の額というものを、ふやそうと
考えられておるかどうかという問題であります。もし現在
財政事情を増そうといたすならば、やはり国民の租税
負担を増さなければならないんだ、これを根本的に
考えていただかなければならないのであります。何かあの制度ができれば、ただちにPTAの
負担が軽減されるというふうなことが、宣伝されておるようでありまするけれ
ども、PTAの
負担を租税
負担に切りかえない以上は、PTAの形における租税
負担はなくならないと思うのであります。しかもまたPTAの
負担の性質というものも、なお検討する余地があるのでありますが、それは私はさしおきたいと思います。ただ
昭和九年ないし
昭和十一年における国民所得に対する租税
負担の
割合というものは一三・九%
程度でありましたものが、現在におきましては二〇%に達している。しかも国民一人当りの実質所得は低下しているこの事実だけは強く申し上げておきたいのであります。しかもまた終戦後
地方行政、
地方財政は非常に混乱いたして参りました。さらにそれらの原因がどこにあ
つたかと言いますと、いろいろ問題がございましたけれ
ども、一番大きな原因の
一つとして、やはり
教育制度の改革というものが、
地方財政事情を非常に大きくしたということが言えると思うのであります。しかもまた
市町村にありましては、新制中学の建設は国と
地方が折半して
負担するということにな
つておりまして、
文部省が二分の一
国庫負担の運用をしていただいたわけでありまするけれ
ども、その二分の一の中には
職員室は入
つていない、廊下は入
つていない、机やいすあるいは黒板は入
つていないということがあ
つたようでございます。現在そうな
つておると思います。しかもまた土地の購入費も入
つておりません。そこに非常に問題があ
つたわけであります。それじやそれで足りたかと言いますと、やはり
地方団体は必要
経費というものを調達しなければならないわけだ
つたのであります。幸いにして今日新
教育制度がようやく安定しようとしていますることは、非常にけつこうでありまするけれ
ども、さらに今自由党から出されている案を見ますと、やはり
義務教育費をさらに増額したいという
考えがあるようであります。たとえば
職員につきましても相当数の
増加が見込まれておるということが言えると思うのであります。
第三に問題になりまするのは、終戦後のわが国の政治
行政の運営の目標というものは、国民の
考え方に基いて政治
行政を運営して行こう、民主政治を打立てて行こうというところにあ
つたように思うのであります。そういたしますと、なるたけ国民は自分の身近な問題は、自分たちで処理して行かなければならない。そのことから民主政治の
基礎というものは確立されて行くと思うのであります。何もかも国が
地方団体の世話をやいて、その
予算額まで国がきめるというようなことにな
つて参りますと、自分で真剣にどういうような
行政のやり方をやるかということを、
考えられなくな
つて行くと思うのであります。せつかく民主政治の
基礎を確立しようという原則において、
地方自治を拡充強化して行こうという方向に逆行すると思うのであります。
ことに第四の問題として申し上げたいことは、一般
負担金制度がそうでありますけれ
ども、
負担金を運用する面におきまして、いろいろな方面に干渉が加えられやすいという点であります。もし
義務教育の水準を維持しようということだけに
考え方があるならば、私は
義務教育の
施設を維持管理する主体に対しまして、八千万国民の立場からどのような維持管理を希望するのかということを、国会の議決を経て
個々の
地方住民に要請すれば足りると思うのであります。
個々の
地方団体に国が
法律の形をも
つて基準を示しまして、なおやらないということは想像できないのであります。もしやらないのならば、それは全体としての
地方財源が足りない。その場合には
個々の
行政につきまして、これを簡素にして、国民の租税
負担を少くする、あるいは
財政需要を少くするという面からの検討が加えられなければならないと思うのであります。このような
法律をつくらないで、ただちに
負担金、補助金を持ちたいということは少し行き過ぎだと思います。まず
法律で
基礎をつくる。それでも国が
考えているような方向に行かないならば、また第二段の
方法を
考えればよろしいのでありますけれ
ども、前提条件が第一にできていないのじやないかということを言いたいのであります。ことに
負担金ということになりますと、
個々の事案につきましてまず
負担金の申請をいたします、調査をいたします、それから交付の事務を行います。しかもまた主管の
行政官庁や会計検査院が、
負担金を支出する以上は特定の仕事に
経費が与えられなければなりませんので、そのように使われておるかどうかという検査を行います。あるいはまた
負担金をめぐ
つて陳情等もございましよう。非常に事務費を食
つて行くものでございます。これは
個々の
負担金制度について十分
考えられる点であります。私は民主政治をや
つて行こうといたしますならば、国会闘争をや
つてもらいたい、
法律でいろいろな
基準をおきめになればよろしいのじやないか、何も
政府官僚に補助金、
負担金を運営させる必要はないというような
考え方を強く持
つているものであります。