○
門司委員 ただいま
提案されております
町村の
警察維持に関する
責任転移の時期の
特例に関する
法律案に対しましては、社会党といたしましては、反対の
意思表示をするものであります。
反対の
理由をきわめて簡単に申し述べたいと思いますが、本案が
提出されましたこの動機につきましては、私はきわめて純真に、常識的にものが
考えられたと思うのであります。それはこの
提案者の
理由の
説明の中に書かれております
通りでありまして、か
つてわれわれが
警察の
維持に関する問題を取上げて、いろいろ協議をいたしました場合において、本来
自治警察でなければならないいわゆる人口五千以上の戸数を持
つている、いわゆる市街地の様相を備えております人口五千以上の
町村に対しましては、
自治警察を置かなけばならないという
法律は御承知の
通りでありまして、その
法律が
町村に限
つてその
住民の
意思によ
つてこれを
廃止することができるという改正を見ました
趣旨は、主として財政的の観点と、さらに少数の
警察官においては十分なる治安の
維持ができないであろうという、こうした二つの観点から、いわゆる財政の問題と行政の面から、実質的にこれを
考えたときに、
町村においてはこれを
住民の
意思によ
つて国家警察に
責任を移転することができるということにな
つておつたと思うのであります。その
趣旨に基いてできた
法案の改正ではありまするが、その内容は
昭和二十六年の十月三十一日までに、その
警察の
維持に関する
住民の投票の結果を総理大臣に報告して、それの許可を受けなければならない。そうしたものが翌年の四月一日から
警察の
維持の
責任を
自治警察に移転することができるということであります。この十月三十一日という日にちをきめたことは、少くとも
自治体が
予算を組み、さらに
国家が
予算を組みまする場合に、
自治体警察が
国家に移転されて参りまするならば、
国家の
予算は必然的にそれを見込まないわけには参りません。
従つてその国の
予算編成あるいは国の
予算が
国会に
提案されまする以前にこれらのものを
決定して、そうして
予算の
執行に当りまする四月の一日からこれを実行するということが、この
趣旨であつたと思うのであります。またそれでなければならないと思うのであります。従いましてその時期に際して当然改廃の
住民の
意見決定というものが定められなければならなかつたはずでありまするが、幸か不幸か大阪府における一件と愛知県における一件は、きわめて短かい時間の
食い違いから、いわゆる当局の私は勘違いではなかつたかと思いまするが、
手続の蹉跌から、この十月三十一日までにその
住民投票の
意思決定の結果というものが、
内閣総理大臣に対して報告されていなかつた、いわゆる許可が遅かつたということで、せつかく四月一日の
年度がわりから
廃止することのために努力はしたが、きわめて短かい時間のうちにこれが施行ができなかつたということ、これは何らの作為もなければ、私は陰謀もなかつたと思う。いわゆる
理事者の素朴なる
考えと、
住民のきわめて常識的なものの判断の上に、
国家警察に移転することがよいという結論が出たが、單なる事務上の手違いから、これが法規上実施ができなかつたということについて、これを
救済するということがこの案の
趣旨であるということは、
提案者の
趣旨弁明を読んでみますると、はつきり伺い知ることができるのであります。従いましてこれをそのままの姿で私
どもは
法案を
受取つて、そうしてこれらのきわめて気の毒な過程にありまするものを
救済するということは、
自治警察がよいか悪いかという議論は別にいたしまして、われわれといたしましては、当然日本の民主
国家のあり方といたしましては、
自治警察が本旨ではあると
考えておりますが、しかしながら一旦できておりまする
法律に準拠して、そうして
住民の
意思決定であるものを、單にわずかの時間の違いでこれをむだにするということは、
住民の
意思にやはり反するあまりにもしやくし定規的の解釈ではあるとこう
考えまして、この
法案はまず私はこの
提案の
趣旨通りであるとするならば、一応私は了承をしてもよいかとこう
考えておるのであります。ところが
法案の
趣旨の前段にはこう書いてあります。「
昭和三十六年十一月一日から、
昭和二十七年五月二十日までに」と書かれておるのであります。
昭和二十六年の十月三十一日までに
手続を完了しなかつたものを
救済するとするならば、その
救済に必要な時日だけを延期すればよいのでありまして、あるいは十一月の一日とするか、あるいは十一月の五日とすれば事は足りるのでありまして、その目的とする二つの
自治体は
救済ができるのであります。しかるにこれが五月二十日までの間に届出をしたものに対しても、これが適用を受けるということが記載されておるところに、私は実は多大の疑問を持つものであります。
先ほどから申し上げておりますように、十月三十一日にしたいということが
予算的措置の
関係から、
自治体においてもこれを
廃止して、翌年からその経費を少くして
予算を組むことができるし、
国家もそれを受入れて二十七
年度の
予算を組むことができる。この
予算的措置の
関係から十月三十一日というものをきめたにもかかわらず、これを
年度半ばでありまする五月二十日までこれを延長するということは、きわめて私は不可解なことだと
考えておるのであります。これはまつたく
提案者の前段の
趣旨と相反する法文にな
つて現われておるのであります。この点はいかに
提案者が申されましようとも、五月二十日でなければならぬという理論はどこにも見出せませんし、また私の
質問に対しましても、
提案者から明確な
答弁はなかつたのであります。ただ最初は四月三十日と
考えたが、五月二十日まででよかろうということでそうしたということだけで、何らの理論的根拠を持
つていないのであります。しかも理論的根拠のないものに対しまして、私
どもは撤回を要求いたしましたが、これに応じられないということに対しましては、私はそこに何の
関係があるかということを見出すことに、現在でも非常に苦しんでおるのであります。
なおこれが具体的に現われて参
つておりますものが、五月二十日と書かれておりまする
関係から、この
法案の
提出は四月一日にな
つておるということは御存じの
通りであります。にもかかわらず、四月一日に
法案を
提案されまするときの
提案者の御
意思は、
先ほどから申し上げておりまする
通りである。二つのものだけを救わなければならぬという
趣旨に出ておつたことだと
考えますが、これが五月二十日と書かれましたことのために、現在一地区におきましては、いまだ
住民投票に向いつつある
自治体があるということであります。この
自治体の様子を私
ども調査いたして参りまするならば、
国会においてこういう
法案が四月一日で
提案されるであろうから、しかもこの
法案は
国会の
提案を受付けておりますところには一応出ておつたのでありますが、議員に配付されたのはそれからはるか後であります。議員に配付され、そうしてお互い
国会議員が知らされる以前において、この
法案が
提出されるであろうというようなことが、すでに予測された一地区におきましては、御承知のように緊急
町会を招集して、そうしてこれに便乗して——いまだに
意思決定はされてはおりませんが、私はこの
提案者が良心的にものを
考えられ、
提案されたときの
気持をそのままお
考えになるならば、四月一日までにはお
出しになることは予測しなかつた。この新事実に対して、しかもいまだこの
法案は通過はいたしておりませんし、また
住民の
意思決定もいまだに行われておらないものを、どこに
救済する必要があるかということであります。この点については
提案者は何らの
説明をいたしておりません。ただ悪いことでないからよかろうというような、きわめてあいまいな
答弁でありまするが、私は少くとも
法律を施行いたします場合には、日本の
全国民が同じ権利と同じ立場に立
つて、これを享受し得る機会を與えなければならないと
考えておるのであります。一部の人だけがこの
法律の恩恵を享受して、多数の人がこの
法律の恩恵を享受しないというようなことは、法治国としては許すことのできない問題ではなかろうかと私は思うのであります。しかるに
提案者は
抜けがけにそれを知つた者は得だというような御
答弁であるに至りましては、まつたく奇怪千万であります。しかも
先ほどから申し上げておりまするように、その地区においてはいまだに
住民の
意思決定は見ておりません。
住民の
意思決定を見ていないものまでも、一体この中に含まれるというようなことは、
提案者の
提案された四月一日にはお
考えにな
つていなかつたのである。そういたしまするならば、当然
提案者はその
提案の
趣旨の
通りに、その
副産物であります便乗者に対しましては、
先ほど床次
委員からもこれに対して善処せられたいという御発言がありました。私は
提案者みずからが、いさぎよくこの日付をかえられることが私は至当だと思う。五月二十日とされたことに何らの
理由がないのであります。私はこの五月二十日でなければならないという
答弁は聞いておらない。
提案者は少くとも
答弁をすることのできないような問題を、無理に多数を頼んで押し通そうとするならば、一体
法律の権威はどこにあるかという問題です。私はこういう諸点を
考えて参りまするときに、こうした
法案自体を、そうした観点からただちにここで通すわけには参りません。もしこの
法案が通
つて、そうしていち早く
法案ができないうちに、あるいは過程において、そういうことをした者が得だというようなくせをつけて参りますならば、まつたく
法律の権威というものはなくなるのであります。
提案者は、少くとも
国会議員として
法律をここにお
出しに
なつた以上は、やはり法の威厳を保ち、法の適用が
住民全体に享受できるような建前にされることが、私は良心的に正しいと思う。その良心を曲げてなぜ一体五月二十日がどうしても動かせないかというのです。これを私
どもが臆測して参りまするならば、必ずしも私はそういうことはなかつたと思いますけれ
ども、しかし現在この
法案に便乗しようとするところとの何らかの
関連がなきにしもあらずという疑いを持たれても、やむを得ぬことではなかろうかということさえ申し上げることができるのではないかと私は思うのであります。幸いにして本
法案のごときは、さしたる利権の問題でもございませんし、
地方の行政に関する問題でありますから、私
どもは疑うことを避けたいとは
考えてはおりまするが、もしかくのごときことがこの
法案でなくして、他の多少なりとも利権を伴うがごとき
法案でありますならば、ゆゆしき問題を惹起するということをわれわれは予想しなければならない、こういうことを私
ども考えて参りまするならば、本
法案に対しましては、五月二十日までにされたということについて、的確なる御
答弁のなかつたこと、さらに前段の御
趣旨とまつたく結果が相反するものが、ここに出て来ておること、この二つの問題が
提案者から明快に答えを私はいただかなかつたことにつきましては、きわめて遺憾の意を表せざるを得ないのであります。こういう立場に立
つて、私はまず反対の
意思表示をしたいと
考えておるのであります。
次に問題にな
つて参りまするものは、
国警長官の
答弁から出て参りました
予算的処置に対しまして、私は
予算的処置の
関係から大蔵当局の出席を求めたのでありまするが、この大蔵当局の
説明並びに私の
質問に対する答えを聞くことができない機会において、これが現在処理されようとする一点であります。これらも——話が元にもどるのでありますが、十月三十一日にこれをきめたということは、国及び
地方の
予算に
関連を持つ行為でありますから、そのことのために特に十月三十一日という日にちをきめる、そうして翌年にこれを繰越すことにな
つておる。おそらく
自治警察を
廃止しようとする
町村がありまするならば、この十月三十一日までの間に、これが
決定をされれば、翌年の四月一日には当然これが
廃止されることになるのでありまして、これもやはり
予算の
関係からそういうことが行われるのである。何がゆえに本年に限
つてこの
特例を設けなければならないか。言いかえまするならば、この
法案は、現在
住民の
意思決定をいまだにしておらない
町村のために、これが行われると極言いたしましても、あえて反駁の余地はございますまい。私は
予算の中途においてこういう問題が行われたということについて当然この
予算的処置は、大蔵省に、こういうことをしてもいいかということを一応聞きただした上で、大蔵当局が、予備費その他の
関係もあるし、
一つの
町村が
国家警察に
なつたからとい
つて、大して私は
予算上のくるいがないとは、
現実には思いまするが、しかし形の上においては、当然その差異を生ずるであろうということは言い得るのであります。
従つてその処置を大蔵当局から拝聴しなければ、この
予算のすべての
審議というものは、私は終らなかつたと思うのであります。この点がいまだに私には明確にな
つておらない。しかも私
どもは本日ここでその問題を申し上げまする段階をすでに越えておりまして、討論の段階に入
つておりまするが、私はいまだこの問題について
審議が十分ではないということ、
従つて要約して申し上げまするならば、
警察法に書いておりまする十月三十一日というこの日付の変更をされたということについての大蔵当局の財政的の
説明、さらに、五月二十日にされたということが、
先ほどから申し上げておりまするように、撤回ができないとするならば、きわめて気の毒な
自治体を
救済することのためにとは言いながら、
現実の問題としては、現在
住民の
意思決定をしておらない
町村の
救済であるということを申し上げても、あえて私は過言ではないと思う。もしそれが私の言い過ぎであるとするならば、
提案者は、いさぎよくこの五月二十日を訂正さるべきものであります。
この問題が解決をしておりません現状に対しましては、以上の
趣旨はきわめて簡單ではございました。いわゆる
警察の本来には触れておりません。ただ單にこの
法案だけの問題を取上げて討論をいたしたのでありまするが、以上の観点をここに社会党といたしましては披瀝いたしまして、本
法案に対しまする反対の
意思表示をしたいと思うのであります。