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1952-05-07 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月七日(水曜日)     午前十一時五十六分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 大泉 寛三君 理事 河原伊三郎君    理事 野村專太郎君 理事 床次 徳二君    理事 門司  亮君       池見 茂隆君    田渕 光一君       前尾繁三郎君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    藤田 義光君       大矢 省三君    立花 敏男君       八百板 正君    大石ヨシエ君  出席政府委員         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  柏村 信雄君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁行         政課長)    長野 士郎君         法務政務次官  龍野喜一郎君         刑 政 長 官 清原 邦一君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 五月七日  委員橘直治君及び生田和平君辞任につき、その  補欠として小西寅松君及び田渕光一君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公聴会開会に関する件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七五号)  警察に関する件     —————————————
  2. 金光義邦

    金光委員長 これより会議を開きます。  まずこの際御報告申し上げます。昨日地方自治法の一部を改正する法律案に関する公聴会開会承認議長に求めておりましたが、承認されましたのでこの点御報告申し上げます。  つきましては、本公聴会に関しましては来る五月十九日午前十時より開会し、地方自治法の一部を改正する法律案について、意見を聞くことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  それでは衆議院規則第七十九条により、この旨委員長より議長に報告することといたします。     —————————————
  4. 金光義邦

    金光委員長 地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。昨日に引続き政府より逐条的に説明を聴取いたします。長野政府委員
  5. 長野士郎

    長野政府委員 それではきのうに続きまして、赤黒の方によりまして、三十三ページの第七章、執行機関というところから御説明申し上げます。  今回の改正におきましては、昨日も御説明申し上げましたように、およそ地方公共団体の主たる組織につきましては、地方自治法にその根拠規定を入れまして、行政運営の合理的な処理に資するということが考えられております。従いまして執行機関につきましては、新たにここに執行機関の通則というものを第一節として規定をすることにいたしたのであります。  第百三十八条の二は、およそ地方団体の各執行機関執行に対します基本的な心構えと申しますか、そういう規定を置いたわけでございます。すなわち地方団体執行機関は、当該地方団体条例歳入歳出予算その他議会の議決に基く仕事、そのほかに法令とか規則その他の規程に基きまして、当該地方団体仕事になつており、あるいは国や他の地方公共団体から委任を受けておる仕事というものを、その判断と責任において誠実に管理し、執行する義務を負うということを、まず第一に入れたわけでございます。  次の条文におきましては、地方公共団体執行機関組織を、明確な範囲の所掌事務権限とを有する執行機関によつて、それぞれ系統的に構成されるべきである、そういうことを第一に明らかにいたしております。地方公共団体執行機関には、なお地方公共団体条例その他において設ける余地が多いのでございますから、そのような場合には、明確な範囲の所掌事務権限を有する執行機関によつて系統的に構成されるという点を、第一に掲げたわけでございます。第二項は、地方公共団体執行機関は、必ず執行機関総括的代表者でありますところの地方公共団体の長の所轄のもとに相互の連絡をはかつて、一体としての機能が発揮できるようにしなければならない。その次には、相互間にその権限につきまして、疑義が生じましたときには、普通地方公共団体の長は、これを調整するように努めなければならない。これらの規定は、内閣法、あるいは国家行政組織法にも、同様の趣旨規定がございますので、それらを参考といたしまして、規定いたしたわけであります。  第百三十八条の四は、まず地方公共団体に、その執行機関としての種類を掲げたのでありまして、法律の定めるところによりまして、普通地方公共団体の長のほかに、委員会または委員を置くという基本規定規定いたしたわけであります。第二項は、地方公共団体委員会についての基本規定をさらに明確にいたしまして、法律の定めるところによりまして、法令あるいは地方公共団体条例規則に違反しない限りにおいては、委員会規則その他の規程を定めることができる。第三項は、執行機関付属機関としての審査会、あるいは審議会調査会等のそういう付属機関を置くことができるという基本規定を置いたわけであります。法律または条例の定めるところによつて置くことができる。但し、政令で定める執行機関については、この限りでないということをうたつておりますのは、会議制執行機関でございますから、所掌事務の範囲が非常に狭いというようなものにつきまして、なお付属機関を置きますと、本来の執行機関権限が非常に不明確になりますし、いたずらに組織を複雑ならしめるというような程度の執行機関については、条例で当然に付属機関を置くということは、避けるべきであるという意味で、但書を置いているわけであります。     〔委員長退席野村委員長代理着席〕  第二節、第一節にありましたものが第二節に移つたわけでございますが、第百四十八条の第一項は、「法律又はこれに基く政令」という整備部分改正規定でございます。第二項は、いわゆる機関委任事務につきまして、都道府県知事が行うことに義務づけられておりますものを、昨日お話申し上げましたように、団体事務と調子を合せまして、別表に掲げることにいたしたわけでございます。第三項は、市町村長に対する機関委任事務事務的な処理に属するものを、同様に別表で第四として掲げることにいたしたものであります。第百四十九条の改正部分字句整備でございます。「法律又はこれに基く政令」ということに、「法令」あるいは「法律及び政令」という字句を改めたわけでございます。  第百五十二条は、これはあとで百六十一条のところで出て参りますが、必ずしも今回の改正によりまして、府県市町村におきましては、副知事または助役を置かないでもいいという規定を認めることにいたしましたので、副知事助役を置かない地方団体におきまして、その職務代理者をいかに定めるかという必要が起つて参ります。従いましてその関係を明らかにいたしますために、従前は助役を置かない町村においてのみの職務代理者規定を副知事もしくは助役を置かない地方公共団体というふうに広げたために、整備をいたしました規定でございます。  百五十五条の第三項は字句整備でございます。第五項は地方公共団体におきますところの支庁あるいは地方事務所、支所もしくは出張所または区の事務所を置きます場合にも、やはり第四条第二項の規定趣旨にのつとりまして、すなわち事務所の位置を定めたり変更するにあたりましては、住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係について、適当の考慮を払うという規定趣旨を援用いたしたわけであります。  第百五十六条の改正規定は、やはり地方団体に置かなければならないような行政機関につきましても、同じように住民の利用に便利であるような趣旨のもとに、その行政機関の位置を定めなければならない、所管区域を定めなければならないということにいたしたわけであります。やはりこの場合におきましても、この行政機関法律の定めるところによりまして、普通地方公共団体設置義務が負わされているというものにつきましては、別表第五として掲げることにいたしたのであります。第五項の「警察機関」という下に「検疫機関」というのを入れましたが、これは厚生省の所管でありますところの人の検疫、海外から入つて参ります者の検疫機関整備する必要がございますのと、農林省関係の輸入の動植物の検疫機関、こういうものは地方行政と直接関係があるというわけではないし、将来整備をして行く必要があるということのために、国会の承認を設置の場合に必ず受ける必要はないという規定の中に加えることにいたしたわけであります。  第百五十八条は都道府県職務に関する規定でございます。都道府県職務に関しましては七局六部、そのほか随意部ということになつてつたのでございますが、今回はこれを改めまして都道府県条例で、部局を置くことができるようにいたしましたために、昨日申し上げました議会議員定数の場合と同じように、都、道、それから人口二百五十万以上の府県、百万以上二百五十万未満府県、百万未満府県、この五段階にわかちまして、そうして標準的な局部規定をいたしたわけであります。すなわち都につきましては八局、道につきましては八部、人口二百五十万以上の府県につきましては総務部民生部衛生部商工部農林部労働部土木部の七部、百万以上二百五十万未満府県につきましては、民生労働を合せまして民生労働部という点がかわつておりまして、これが六部になつているわけであります。百万未満府県につきましてはさらに民生、衛生が合さつて労働と一緒になりまして厚生労働部ということで、総務部経済部土木部、と合せて四部の基準を掲げているわけであります。しかしながらこのような基準は、具体的な個々の府県に必ずしもすべて適合するというわけではございませんので、次の項におきまして都道府県知事が必要があります場合には、前項の規定にかかわらず条例局部の名称あるいは所掌事務を随意に変更することができるというようにいたしております。ただこの場合には合理的な運営という基本の趣旨にのつとり、かつ国の行政組織その他の都道府県局部との組織の間の権衡を考えなければならないということにいたしております。府県局部は御承知のように單なる地方団体組織というよりは、むしろ国行政を多く担当しております関係上、一面においてはやはり国の行政組織との関係というものが、非常に密接でございますので、そのような規定を置いているわけであります。今回の改正におきましては機構簡素化ということが眼目でございますので、さらに次の項におきまして局部の数を増加するために条例を設けましたり、あるいは改正をするときには、あらかじめ内閣総理大臣に協議をしなければならないという規定を置いているわけであります。市町村局部については変更はございません。自由に条例で必要な機関を設けることができることになつておりますが、ただそれに加えまして合理的な運営趣旨に適合するように、また各町村との部課の組織との間に権衡を失しないように規定を加えたわけであります。  第百六十一条は、副知事助役に関する規定でございますが、副知事につきましては事情によつては、その都道府県条例で副知事を置かないでもよろしいというように改めまして、その具体的な事情に沿いつつ、かつ行政簡素化組織簡素化という点をはかつたわけであります。従いまして現行法の第二項の人口二百万以上の府県にあつては二人、人口三百万以上の府県にあつては三人というような規定を削除することにいたしました。助役についても同様に条例で置かないことができるようにいたしますために、現行法では町村だけにそういう趣旨のことになつておりますのを、すべて市町村にふくらませますために但書の「町村」を落したわけであります。副知事助役を置きます場合には、条例定数を増加することができることは現行法の通りであります。  第百六十八条は、副出納長は現在必置制でありますのを随意制に改めるために改正を加えたのであります。そうして、置きたい場合には県では条例で定めまして副出納長を置くことができるというようにいたしたわけであります。副出納長や副收入役につきましては、これが特別職であることを廃しまして一般職にいたしまして、「事務吏員の中から、普通地方公共団体の長がこれを命ずる。」ことにいたしまして、実情に沿うようにいたしたわけであります。  第百七十条は、各種の委員会に関する整理規定でございます。第一項は、委員会に関する関係整理規定でございます。第三項は、出納長收入役事務の一部を副出納長や副收入役委任する場合におきまして、従来議会同意を得ておつたのでありますが、必ずしもこれが実際には地方団体において個々の場合に励行されておりません。従いまして責任を明らかにいたすということの規定趣旨を生かしますと同時に、個々のケースにつきまして議会同意を得るということを、実情に合せるために改めまして、委任をいたしました場合には、ただちにその旨を告示するということに改めたわけでございます。第四項は、副出納長や副收入役を置かない地方団体におきますところの代理規定改正する必要がありますので、改正をいたしたのであります。  第百七十二条の第三項は、職員定数条例につきまして、臨時または非常勤職員については定数条例に本来規定をすべきものじやないという、昨日もお話を申し上げました議会事務局の場合と同様の趣旨におきまして、但書を加えることといたしました。  第百七十三条の二は、普通地方公共団体の長の事務を補助いたします職員の中で、特別な資格を法律またはそれに基く政令に基きまして要求をされましたり、あるいは職名を有することを要求されたりしておるものがありまして、しかもこれを置くことを義務的に強制されておるものでありますが、これらのものにつきましては将来これを検討いたしますために、やはり別表第六に掲げまして、その関係を明らかにすることといたしたのであります。  百七十四条は専門委員に関する規定でございますが、原則として専門委員非常勤といたしますために「非常勤とする。」いう規定を第四項として加えることにいたしました。  第五款、他の執行機関との関係、これは、このようにして地方自治法中に他の執行機関基本規定を入れることにいたしましたのと同時に、普通地方公共団体の長と他の執行機関、各種の委員会等の間の合理的な能率的な運営をはかりますためにこの第五款を加えたわけであります。すなわち第百八十条の二におきましては、普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、他の委員会もしくは委員同意を得まして委員会あるいはその事務を補助する職員委任し、または補助執行をさせることができるという規定をつけまして、相互に協力し合いまして、能率的な事務処理がはかれるように規定を加えたわけでございます。  第百八十条の三は、今度は他の委員会委員の申出があります場合には、吏員その他の職員をそれぞれ兼ねさせましたり、あるいは職員をもつて充てましたりいたしまして、必ずしも事務局を置き、事務局職員を置くという必要がない、そういたしませんでも能率的な運営ができるというふうに規定を加えたわけであります。  第三節、委員会及び委員、これは現行法におきましては、第二節選挙管理委員会になつているものを改めまして第三節委員会及び委員といたしました。第一款に通則を掲げることにいたしました。すなわち、他の執行機関の基本的な規定を加えたわけでございます。  第百八十条の四は、まず一般的に普通地方公共団体に置かなければならない委員会は、左の通りであるということにいたしまして、教育委員会選挙管理委員会人事委員会または人事委員会を置かない普通地方公共団体にあつて公平委員会農業委員会、これが、原則としてすべての普通公共団体を通じて置かなければならない他の執行機関であるということを明らかにいたしました。すなわちこれらの機関がすべて地方団体そのもの機関であることも、これによつて明らかにいたしたわけでございます。第二項におきましては、前項に掲げるもののほか府県に置かなければならないものとされておるものは、左の通りであるということにいたしまして、地方労働委員会收用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会監査委員を掲げておるわけであります。三項におきましては、前二項のほか、都道府県には、都道府県国家地方警察運営管理を行わせるため、都道府県公安委員会を置かなければならない。公安委員会の性格及び公安委員会の行います国家地方警察の機能が、やや通常の他の委員会と異なつておりますので、特に一項を起しまして規定を置いたわけでございます。第四項には、市町村関係の他の執行機関規定といたしまして、市及び自治体警察を維持する町村に、公安委員会を置かなければならないという規定を入れたわけでございます。第五項は、法律に特別の定めがある場合を除きましては、これらの委員会委員は原則としては非常勤であるということを明らかにいたしました。従いまして、他の法律によりまして、その関係を明らかにしていない場合には、当然にこの規定によりまして非常勤になるわけでございます。  第百八十条の五は、委員会委員は、通常左に掲げる権利を有しない。すなわち当該地方団体を代表いたしまして、その議会との間に責任をわかち合う、そういう関係のものは、通常他執行機関はその権限を有しない。まず第一に、歳入歳出予算を調整すること。議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。地方団体の收入及び支出の命令をすること。地方税分担金加入金もしくは夫役現品を賦課徴收し、または過料を科すること。地方公共団体の決算及び証書類議会の認定に付すること。このような仕事はすべて普通地方公共団体の固有の権限でございまして、法律に特別の定あがない限りは、他の執行機関はそういう権限を有しないということを明らかにいたしました。  第百八十条の六は、これらの委員会は、前には地方自治庁関係のところに多少規定を加えてありますが、今度は、その事務の一部を長の同意を得まして、普通地方公共団体の長の補助機関職員補助執行させましたり、あるいは委任をさせることができる。すなわち支庁、地方事務所、支所、出張所等も使わせることができる。これによりまして各種の委員会が、それぞれ地方に出先の事務所を置く必要がないという合理的な運営にするようにいたしたわけであります。  第二款といたしまして、教育委員会に関する基本規定を入れたのであります。これは現在教育委員会法規定をしてあるそのままの字句を取入れまして、規定をいたしました。ただこの場合第二項、第三項は、教育委員会機関委任事務としまして行わなければならないように義務づけられております事務は、やはり知事市町村機関委任事務と同様に、別表第三、第四に掲げることにいたしまして、第三項は、教育委員会の任命する職員の中で、学校長あるいは教育長というふうに、法律によりまして特別の資格や職名を持つております職員で、しかも設置しなければならないものにつきまして、別表第六としてこれを掲げたわけであります。  選挙管理委員会は第三款で規定することにいたしております。選挙管理委員会につきましては、現在都道府県六人、市町村四人でございますが、それぞれ関係機関と協議をいたしまして、機構簡素化趣旨によりまして、道府県及び五大都市にありましては四人、その他の市及び町村にありましては三人というように、機構の縮小をはかつたわけであります。  第百八十二条は、第四項におきまして、前条で市町村委員が三人になりましたので、委員または補充員が二人以上同時に同一の政党やその他の団体に属する者となつては、選挙管理執行上公正を欠くことのおそれが出て参りますので、そのように規定を改めたわけであります。  第百八十六条の第一項の改正部分字句整備でございます。第三項は、全国選挙管理委員会が行わせられておりますところの当該地方団体選挙事務以外の機関委任として考えらるべき選挙事務というものについて、府県選挙管理委員会にありましては別表第三、市町村選挙管理委員会にありましては、別表第四に掲げることにいたしました。衆議院議員あるいは参議院議員選挙等は、その代表的なものであります。  第百八十九条は、出席定足数についての規定でございますが、市町村につきましては三人にいたしましたので、三人以上が出席しなければ開くわけに行きませんので、「すべての委員が出席しなければ、会議を開くことができない。」ということに改めたわけでございます。  第百九十一条は、当然に選挙管理委員会書記その他の職員を置かなければならないという現行法の建前を改めまして、他の委員会地方公共団体の長の職員と、相互に流用できるような規定を設けましたので、「書記その他の職員を置くことができる。」ということにいたしたわけでございます。それから第二項の改正部分は、定数常勤職員のみでよろしいという意味で、「常勤職員」という規定に改めました。但書は、議会事務局その他と同じような意味で、臨時の職員については、この限りでないという規定を入れたわけでございます。第三項の「書記その他の職員又は第百八十条の三の規定による職員」と申しますのは、さいぜんの普通地方団体の長の職員選挙管理委員会書記その他の職員を兼ねさせ、またはこれに充てることができるという規定がありますので、そのようにいたしまして、応援派遣をさせられております職員につきましても、選挙管理委員長はこれを指揮する。そうしてその委員会に関する事務に従事するという関係を明らかにしたわけでございます。  第四款の監査委員につきましては、ほとんど改正はございませんが、ただ監査委員定数が、現在府県にあつては四人、市町村にあつては二人になつておりますが、但書が加わつておりまして「市にあつて条例で四人とすることができる」ということになつておりますのを「政令で指定する市にあつて条例で四人とすることができる。」ということにいたしまして、機構簡素化をはかることにいたしたわけでございます。  第百九十六条の第三項の改正部分は、監査委員につきましては、学識経験を有する者から選任されるものにつきまして、これを常勤とすることができるという規定を入れまして、常勤非常勤の別を明らかにいたしたわけでございます。  第百九十九条第二項として新たに挿入されました部分は、監査委員監査するにあたりまして、やはり当該地方公共団体の経営にかかる事業の管理あるいは当該地方公共団体の出納その地の事務執行につきましては、合理的、能率的な運営に資しておるかどうかということについて、監査の際には特に配意をしなければならないという規定を明らかにするために入れたのでございます。六十八ページの第七項の改正部分は、委員会字句整備でございます。第八項は、監査委員は、監査の結果の報告の際に、必要があると認めました場合には、組織運営合理化に資するために、その意見を提出することができるということにいたしまして、監査委員監査を通じまして、当該地方公共団体組織及び運営合理化に資せしめることにいたしたわけでございます。  第二百条は、監査委員事務を補佐する書記その他の職員につきまして、定数条例常勤職員に限るという規定を入れましたのが、第二項の改正部分であります。第三項は、長の職員をこれに充てました場合の指揮、監督系統を明らかにするために改正を加えたわけでございます。  第五款は、地方公共団体執行機関として入れました人事委員会公平委員会公安委員会地方労働委員会農業委員会、その他の委員会につきましては、基本的規定をここへ加えたわけでございます。  第二百二条の二の第一項は、人事委員会に関する部分でございます。おおむね地方公務員法の規定趣旨にのつとりまして、規定を加えました。第二項は、公平委員会に関する規定部分であります。第三項は、公安委員会に関する部分であります。第四項は、地方労働委員会に関する部分であります。第五項は、農業委員会の基本的な機能を明らかにした部分であります。  第六項は、收用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会関係規定であります。第七項は、これらの委員会の中で、機関委任事務として、当該地方団体事務以外の事務を行つておるものにつきましては、都道府県公安委員会地方労働委員会農業委員会にありましては別表第三、市町村公安委員会農業委員会にありましては、別表第四に掲げることにいたしております。第八項は、職員の中で法律の定める特別の資格や、職名を持つておりますものについては、市町村について置かなければならないものは、公安委員会のみでございますので、別表第六に掲げることにいたしてございます。  第六款は、附属機関に関する諸規定を入れたわけでございます。すなわち附属機関の機能につきましては、法律もしくはこれに基く政令または条例の定めるところによりまして、その担任する事項についての調停、審査、審議または調査等を行う機関とすることにいたしました。この附属機関を構成する委員その他の構成員は非常勤であるということを明らかにいたしましたのが第二項でございます。第三項では、附属機関の庶務は、特別に事務局その他を置かないで、特別の定めがなければ、原則としてはその属する執行機関がこれをつかさどるということを明らかにいたしました。このような附属機関の中で、法律によりまして普通地方公共団体が設置いたしますことを義務づけられておりますものにつきましては、別表第七にこれを掲げることにいたしたのであります。  第八章は、「給与」の章でございますが、これを「給与その他の給付」と改めました。と申しますのは、地方公務員法におきまして、旅費その他のものは、必ずしも給与という観念に入らない。従いまして、この点におきまして、自治法の給与と、地方公務員法の給与という観念を合せますために、「給与その他の給付」ということに、その章名を改正いたしたわけであります。  第二百三条の第一項は、各種の委員会を設けましたので、非常勤職員につきましての規定整備でございます。  第二百四条の第一項は常勤関係職員につきましての規定整備でございます。  第二百六条の第一項の改正部分は、給与というものを、地方公務員法の観念に合せましたための整備でございます。  第三百七条は、公聴会等に参りました者に対しまして、実費の弁償をいたしますところの規定でありますが、新たに公聴会関係がふえましたので、関係部分規定を挿入をしたわけでございます。第二百十三条は、字句整備でございます。  第二百十七条は、公聴会の手続規定を、議会の議員の定数を定めます場合の公聴会を基本的な規定といたしまして、二百十七条の手続規定を改めまして、その規定を、九十条の第四項の規定を準用することにいたしたわけでございます。  第二百二十二条は、機関委任事務の手数料の徴收につきまして、委員会が手数料を徴收する必要のあるものがございます。従いまして、現在では地方公共団体の手数料条例というものが、機関委任事務について、特に地方公共団体の收入とするもののためにできておりますが、その関係が明らかになつておりませんので、ここに「又は委員会」というものを加えることによりまして、地方公共団体手数料令中に委員会が徴收し得る手数料というものが規定し得るようにいたしたのであります。第二百二十三条は第一項は字句の整理であります。第二百二十八条も同様字句整備でございまして、「行政事務(従来法令により」云々とあるのを「当該普通地方公共団体行政事務」とし、また「従来法令により」云々とあるのを「並びに法律又はこれに基く政令」というふうに改めたわけでございます。第二百二十九条は同様に字句整備でございます。二百四十三条も同様に字句整備でございます。二百四十四条の二も同様でございます。  二百四十五条は、財務関係の必要な規定を命令で定めるということになつておりまして、総理府令で定められておりますが、これは地方自治法が今回の改正によりまして、地方公共団体事務を課する場合には、原則として政令以上でなければならないということを明らかにいたしましたので、これに伴いまして当然にこの「命令」を「政令」に改めることにいたしたわけであります。第十章は従来「監督」という章でございますが、これを普通地方公共団体と国との関係及び普通地方公共団体相互間の関係という観念に切りかえをいたしまして、従来の監督という観念を改めることにいたしたのでございます。  第二百四十五条の三は、国と地方公共団体との基本的な関係を明らかにすることにいたしました。すなわち内閣総理大臣都道府県知事は、地方団体組織運営合理化に資するために、普通地方公共団体に対しまして適切と認める技術的な助言または勧告をすることができるということにいたしたのでございます。また第二項では、地方公共団体の長は、必要があると認める場合には、合理的な組織運営の助言、勧告を求めたいという場合には、助言、勧告を求めることができるという規定でございます。第三項はそのようにいたしまして、地方公共団体組織運営合理化に資するため、その情報を提供いたしますために、地方団体に対しまして国または都道府県知事は、その作成に要する資料の提出を求めることができるという規定でございます。第四項、第五項は主務大臣、各省大臣はその担任する事務の範囲におきましては助言、勧告ができる。同様にその担任する事務につきましての必要な資料の提出を求めることができるということにいたした規定でございます。これによりまして今後の地方団体と国との関係というものは、一般的にこのような関係になりまして、指揮監督というような関係ではない、相互に協力し合つて行くという関係であるということを明らかにすることにいたしました。  第二百五十一条は、地方団体相互間あるいは地方団体機関相互間に紛争かあります場合の紛争の調停のための手続規定をしたのであります。すなわち都道府県都道府県機関が当事者となるものにありましては内閣総理大臣、その他のものが当事者となる場合には府県知事が、当事者の申請に基きまたは職権によりまして紛争の解決のために、これを自治紛争調停委員の調停に付することができることにいたしました。調停はもとよりその調停案を受諾いたしましても、これは強制的な措置ではございませんので、事情によりましては、その紛争の早期解決をはかりますために、職権によつて調停に付することも可能としたわけでございます。自治紛争調停委員は三人といたしまして、行政簡素化趣旨にもかんがみまして、事件が起きますることに学識経験を有する者の中から内閣総理大臣または都道府県知事が、それぞれこれを任命することにいたしたのであります。この場合におきましては、総理大臣または都道府県知事は、あらかじめ当該事件に関係のある事務を担任いたします主務大臣または都道府県委員会もしくは委員に協議をすることにいたしまして、人選におきまして公正なる人選がはかれるように考えておるわけであります。この点につきましては、次のページの第七項に「第百八十二条第四項の規定は、自治紛争調停委員にこれを準用する。」というのがございますが、これは選挙管理委員または補充員は、それぞれその中の二人が同時に同一の政党その他の団体に属する者となることとなつてはならないという規定がございますが、この規定を準用いたしておりますのも、紛争の調停におきまして、政治的な色彩が加わらないことを保障するためであります。自治紛争委員は、調停案を作成いたしまして当事者に示しまして、その受諾を勧告いたしますか、または調停による解決の見込みがない、すなわち調停案に対しまして、両当事者が受諾をしないというようなときには、必ず調停を打切つてしまうという程度の紛争調停でございます。ただこの場合には、調停委員はその経緯を公表することができるということにいたしております。調停につきましては、両当事者が調停案を受諾いたしまして、受諾した旨を総理大臣や都道府県知事に提出いたしましたときに、調停が成立したということに考えられるように、第五項に規定を置いたわけでございます。調停委員は必要な場合には当事者や関係人の出頭を求めます。あるいはまたその陳述を求めることができるということにいたしております。その陳述と申しますのは、いわゆる証言というのではございませんので、ただその事情を述べていただくということでございます。第八項は調停した自治紛争調停委員が、いかにして調停案を作成するか等の技術的な手続に関しまして、政令で定めることにいたしているわけであります。  第二百五十二条の二、第二百五十二条の三、第二百五十二条の四、第二百五十二条の五、第二百五十二条の六までは、普通地方公共団体の協議会に関する規定を新たに加えたのでございます。すなわち第十章は、国と普通地方公共団体及び普通地方公共団体相互間の関係を明らかにすることにいたしまして、普通地方公共団体の合理的な運営、能率的な処理ということをはかりますために、各地方公共団体が共同して処理する簡易な方式を規定することにいたしたのであります。これは地方行政調査委員会議の勧告におきましても、現在地方自治法にございます地方公共団体の一部事務組合に関する規定は、機構があまりにも複雑であつて、簡易でない。従つて簡易にそういう共同処理ができるような組織を考えるべきだという勧告がございますので、これに基ままして協議会規定を設けたのでございます。すなわち普通地方公共団体は、その事務の一部あるいは機関委任事務の一部につきまして、規約を定めまして協議会を設けることができるということにいたしたのであります。ただこの場合機関委任事務につきましては、府県の加入するものにあつて内閣総理大臣、その他のものにあつて都道府県知事の許可を受けなければならないことにいたしてあります。これは現在地方公共団体の組合におきまして、市町村の組合におきましては都道府県知事の許可、府県の加入いたします組合につきましては、内閣総理大臣の許可になつておりますが、当然には許可は必要ではないので、機関委任事務の協議会を設けます場合には、許可が必要だということにいたしてあるのであります。  協議会につきましては、二百五十二条の三に書いてありますように会長、委員をもつて組織をいたします。会長や委員関係地方公共団体職員の中から選任することになつております。協議会の規約は二百五十二条の四に掲げてありますように、協議会の名称。協議会を設ける普通地方公共団体。協議会管理し及び執行いたしますところの権限に属する事務及び管理執行の方法。協議会のありますところの、事務所の所在地。それから組織及び会長や委員の選任の方法。その他協議会の担任する事務に従事いたします職員の身分の取扱い。あるいは経費の支弁方法。協議会事務に必要な物品、財産営造物の処分や設置の方法。その他関係普通地方公共団体と協議会との関係ということにいたしておりますが、協議会と申しますのは通常考えておりますものは、職員を固有には持たない、または大きな営造物は財産をこういう協議会自身としては持たない。これは関係地方公共団体から供出をされました職員や財産、営造物によつて、協議会事務運営をして行くというような気持で考えておるのでございます。  第二百五十二条の五におきまして、協議会関係普通地方公共団体または関係普通地方公共団体の長その他の執行機関の名においてした事務管理及び執行は、関係普通地方団体の長その他の執行機関管理し及び執行したものとしての効力を有することにいたしておるのであります。これによりまして協議会は、関係地方団体が共同に事務を処理いたします場合に、事務を委託してやらしておる、そういう一つの代理機関であるというふうにお考えをいただけばけつこうだと思つております。  第二百五十二条の七は、これは協議会とは違いまして、地方公共団体が設けますところの委員会委員あるいは付属機関その他の職員等につきまして、共同でそれらの機関を設置することができるという、いわゆる機関の共同設置の規定でございます。  二百五十二条の八、二百五十二条の九、二百五十二条の十、二百五十二条の十一、二百五十二条の十二、十三までがその関係規定でございます。これによりまして、たとえば各種の委員会につきましては、個々の町村が設置することなく、数町村が集まりまして、そういう委員会を共同で設置する、あるいは農業技術者につきましては、共同でその者を置いてそれぞれの市町村においてこれを使つて行くというようなことの、可能になるようにいたしたわけであります。第二百五十二条の十四は、これは事務委託の規定でございます。地方団体がやはり協議によつて規約を定めまして、その事務の一部を他の地方団体に委託することができる、すなわち職員の試験について事務委託をする、あるいは職員の講習について事務委託をする、あるいは学校教育の委託事務を行うというような関係規定を明らかにいたしますために、二百五十二条の十四から二百五十二条の十六までの規定を新たに加えたわけでございます。  第二百五十三条につきましては、都道府県権限に属する市町村に関する事件で、数都道府県にわたるものにつきましては、現行法におきましては、関係都道府県知事の協議によつて、その事件を管理すべき都道府県知事を定めることができるということになつておりますが、協議がととのいませんで、そうして問題が遷延をいたしておるという場合が起つておりますので、非常に不都合がございます。従いまして、協議がととのわない場合には、内閣総理大臣は、その事件を管理すべき都道府県知事を定め、または府県知事にかわつてその権限を行うということを明らかにしたのであります。  第二百五十四条は、この法律で用いております人口は、官報で公示された最近の人口ということになつておりますが、これにつきましてしばしば疑義が生じて参りました。従いましてその関係を明らかにいたしますために、最近の国勢調査またこれに準ずる全国的な人口調査ということにいたしたのであります。  第二百五十五条は、第七条の関係改正規定による整理でございます。第二百五十五条の二は、やはり市町村の境界に関する裁定、決定等の規定が新たに設けられまして、これによります訴訟機関等が明らかに規定されましたので、それに基きまする改正規定でございます。  第二百五十九条は、郡の区域を新たに画しましたり、あるいは廃止をいたしました場合の告示の関係を、市町村の配置分合や境界変更の趣旨と同様にいたしますために、第四項の規定を整理いたしました。  第二百六十四条は、特別市に関する部分規定でございますが、これはいずれも普通地方公共団体につきまして、同様な改正をいたしましたので、これに応じまして、関係規定の整理をいたしたのでございます。  第二百六十五条は、やはり同様でございまして、従来地方団体の区域に属しなかつた区域を特別市の区域に編入するという場合の手続を明らかにいたしたのでございます。  第二百六十六条につきましては、これは境界に関して争論がある場合の関係規定を、市町村の場合と同様に、特別市につきましても整理をいたしたわけであります。  第二百六十八条は、条例助役を置かないことができるというように、府県市町村関係と同じようにいたしたわけであります。  第二百七十条は、行政区の事務所につきまして、住民の利便を配慮して、その事務所の位置を定めるために、第四条第二項の規定を準用いたすことにいたしました。  第二百七十一条は、行政区の区助役について、条例で区助役を置かないでもよろしいという規定を明らかにし、普通地方公共団体の場合と同様にいたしたのであります。  第二百七十二条は、区の副收入役という制度を廃止いたしました。現在これらの規定は実際動いておりませんが、特別市の区というものは行政区でございますので、そのようなところに副收入役自体の事務があるわけではございませんので、そういう機構の複雑なものを整理いたしますために、副收入役という規定を廃止いたしたわけであります。  第二百七十三条は、委員会に関する整理規定でございます。  第二百七十五条も、定数条例についての、他の普通地方公共団体と同様な整理規定でございます。  第二百七十六条は、特別市におきますところの行政区の選挙管理委員会というものは、行政区自体の選挙管理事務がございませんので、この規定を廃止することにいたしました。  第二百七十七条は、普通地方公共団体に関する規定を、特別市に適用いたします場合の改正規定に応じまして、改正の条文を整理いたしたのでございます。  第二百八十一条は、特別区に関する改正規定でございます。従来「都の区は、これを特別区という。」となつておりますのを、「都に区を置き、これを特別区という。」と改めまして、都の区は、これが都の内部的な区であるということを明らかにすることにいたしたのであります。第二項は、特別区の所掌事務を明らかにいたしました。特別区は自治区ではございますが、原則として列挙いたしました公共事務及び行政事務で、国または都に属しないものを処理するということにいたしておるのであります。同項第一号は、小学校、中学校、幼稚園及び各種学校に関する設置及び管理事務でございます。第二号は、主として当該特別区の住民の使用する公園、運動場、広場、緑地及び児童遊園を設置し、及び管理することであります。これらは主として現在は、区長に対する委任事務となつておりますが、これを特別区自体の一事務にすることにいたしたのであります。第三号は、主として当該特別区の住民の使用する図書館、公民館、公会堂等についての設置、管理仕事でございます。それから社会教育につきましても、同様に特別区自体の事務として規定をすることにいたしました。第四号は、主として当該特別区の区域内の交通の用に供する道路、いわゆる区内道路と称せられるものでありますが、これも現在は都の事務になつておりまして、区長に機関委任されておりますが、区自体の事務に拡大することにいたしたのであります。第五号は、街路樹、及び道路の照明施設の設置、管理並びに道路の清掃事業について、これを区自体の事務にすることにいたしました。第六号は、公益質屋、公衆浴場及び公共便所についての事務を、区自体の事務として切りかえることにいたしたのであります。第七号は、公共溝渠、いわゆる在来下水といわれておるものでありますが、これらにつきましても、区自体の事務に切りかえることにいたしまして、主としてこのような区民の日常生活に非常に直結いたしておりますところの、身のまわりの仕事というものは、やはり特別区の事務といたしまして、これによつて十分に手の届くようにいたすべきである、このように考えまして、特別区自体の仕事を広げることにいたしたわけであります。第九号は、前各号に掲げるものを除きましては、都の処理していない公共事務少くとも都の処理しておりません公共事務につきましては、一切特別区はやれる、あるいはまた法律もしくはこれに基く政令あるいは次に申し上げます第三項の規定によりまして、都の条例によつて特別区に属する事務も、当然に特別区の仕事としてやるのであるということを明らかにするのが第九号の規定でございます。  第三項は原則として特別区が行います公共事務行政事務は、第二項各号に掲げておるものでございますけれども、特別区の存する区域につきまして、法律またはこれに基く政令規定により市が処理しなければならない事務では、原則としては各号以外のものにつきましては、すべて都が処理することになるわけでございますが、その中でも主として特別区の区域内に関するものにつきましては、都は、特別区の議会その他学識経験を有する者等の意見を聞きまして、都条例によりまして、これを原則として特別区に委任するものであるということを明らかにいたしておるのであります。  第四項は、このようにいたしまして第二項各号に掲げる事務以外は、特別区の存する区域におきましては、市が処理しなければならないということにされておる事務につきましては、都がこれを処理する。すなわち都という公共団体が特別区の区域について当然他の市町村の市が行うことが義務づけられておるような仕事は都がやるのである。それは第二百八十一条第二項各号に掲げられる以外のものについて都がやるのだということを明らかにしたのでございます。しかしながら、これも第三項によりまして、主として特別区の区域内に関するものにつきましては、原則としてそれらの事務につきましても、都が条例でこれを特別区に委任する建前を明らかにしております。  第五項は、都と特別区との事務の競合を避けるための規定といたしまして、都は、特別区が第二項の規定によりまして処理すべき事務を競合するような事務を区の存する区域内においては行わないようにしなければならないということを明らかにいたしたのであります。  第二百八十一条の二は、第一項は、特別区の区長の選任の方法を改めた規定でございます。すなわち特別区の区長は、特別区の議会の議員の選挙権を有するもので、年齢満二十五年以上のものの中から、都知事が特別区の議会同意を得てこれを選任することに改めております。  第二項は、特別区の区長についての区長の権限を明らかにした基本規定でございます。すなわち、特別区の区長は、当該特別区の事務及び法律またはこれに基く政令によりまして、その権限に属せしめられておるところの機関委任事務及び法律または政令によりまして、他の地方公共団体につきましては市長が行わなければならないということになつております事務は、原則として特別区の区長が行うということを明らかにいたしております。但し政令で特別の定めをするものはこの限りでない。たとえば都市計画のようなものにつきましては、これは市長が行うということになつておりましても、当然には区長は行えないというふうな関係規定を明らかにいたす必要がありますので、政令で特別の定めをいたすことにしておるのであります。  第三項は、都知事は、その権限に属する事務の中で、主として特別区の区域内に関するものにつきましては、都の規則によりましてこれを特別区の区長に委任して管理及び執行させることができるということにいたしております。  第四項、第五項は、委員会委員も同様な意味で、特別区の委員会委員委任をするという規定でございます。  第五項は、そのようにいたしまして、特別区の区長や特別区の委員会委員委任をいたしました部分につきましては、当然に都知事や都の委員今や委員が、指揮監督をするという関係でございます。  第二百八十二条は、都は従来特別区につきまして、必要な規定条例で定めることができるということになつておりましたが、それを今回改めまして、特別区の事務について特別区相互間の調整上、必要な場合のみに、都が条例で調整することができるということにしぼつたのであります。  第二項は、都知事は、特別区に対しまして、都の事務の処理との調整上、必要な助言や勧告をすることができるということにいたしております。  第二百八十三条は、この法律やこれに基く政令で特別の定めをする以外の市に関する規定は、特別区にこれを準用する。特別区の性格を改めますと同時に、特別区にこれを準用することにいたしておるのであります。  第二百八十四条は、普通地方公共団体の一部事務組合に関する規定でございますが、従来機関委任事務については、一部事務組合が認められなかつたのであります。これが不都合でございますので、機関委任事務についても一部事務組合ができるということにいたしますために、必要な改正を加えたわけでございます。  第二百八十七条第三項は、一部事務組合の組合会の議員あるいは管理者というものと、その組合を構成いたしておりますところの市町村の議員、市町村長というものとの兼職について疑義が生じて参つておるような状況でございますので、この兼職はさしつかえないということを明らかにいたしますために、一項を加えたわけでございます。  二百九十二条、二百九十四条はいずれも字句の整理であります。  附則第十条は、未引揚げ邦人の調査に関する事務都道府県及び特別市で行う必要がございますので、その関係規定を加えたわけでございます。  附則第十七条は、他の法令中、市に関する規定は、特別区に適用することになつておりましたが、特別区の仕事を限定的に列挙いたしましたので、それら関係規定に相当する部分についてのもののみについて、特別区にもまたこれを準用することに改めたわけでございます。  附則は、この法律は公布の日から起算をいたしまして、三月を越えない期間内において政令で定める日から施行する。  第二項は、現に効力を有する法律規定でありまして、そうしてこれが総理府令や法務府令に委任をいたしておりますものは、すべて政令規定をし直さなければならないということにいたすわけでございますから、これらのものは、この法律施行の日から一年以内に、改正後の地方自治法規定に合うように改正の措置がとられなければならないということにいたしたわけであります。  第三項は、そのように措置ができるまでは、なおその効力を有するという経過規定でございます。  第四項は、市町村の廃置分合、境界変更につきまして、この法律施行の際、現に行つております手続につきましては、なお有効である、従前の手続でよろしいということを明らかにいたす規定でございます。  第五項は、現在行われておるかもしれない市町村の境界の紛争に関する訴訟事件につきましては、なお従前の例によることにいたしました。  なお第六項は、議員定数につきましては、改正後の自治法の規定にかかわらず、現在その職にある議員の任期中に限りましては、現在の定数をもつてその定数とするということにいたしまして、改正法の施行と同時に、新たに議員定数条例をつくり直す必要のないようにいたしたのでございます。  第七項は、局部に関する規定でございまして、法律施行の日から五箇月以内はなお従前の例によつて存続させることができるようにいたしております。  第八項は、副出納長につきましても、現在その職におります者については、任期中はなおそのままでよろしいという経過規定でございます。  第九項は、選挙管理委員の数を減らしましたが、現在その任期中の者につきましては、なお選挙管理委員として在職をするという規定を加えたわけでございます。  第十項は、監査委員を四人にいたしております市につきまして、現在そうしておるものについては、任期中はそのままでよろしいということにいたしたわけであります。  第十一項は、現に行われておる共同で設置しておりますものの事務につきましては、共同設置や事務委託というこの改正法の規定が行われましても、一年以内は、なお従前の例によつてよろしいということを明らかにいたしております。  第十二項は、郡の関係につきまして、市町村の廃置分合、境界変更と同様に従前の手続でこの法律施行の際行われておるものは、効力を有するということにいたしておるわけであります。十三項、十四項、十五項、十六項等は、特別区の改正規定の施行に伴いますところの必要な経過規定として規定を加えたわけでございます。  十八項は、行政区の選挙管理委員会を廃止いたしますので、公職選挙法の規定を一部改正することにいたしたのでございます。  十九項、二十項は、厚生年金保険法、船員保険法等におきまして、厚生大臣の職権を厚生大臣の定めるところによつて委任するということになつておりますが、これは改正地方自治法趣旨に反しますので、この趣旨に適合するように改めてほしいという厚生省の申出がありましたので、この改正法の附則において改正することにいたしたのでございます。  第二十一項は、例文でございまして「この法律の施行のために必要な事項は、政令で定める。」このような規定を入れたわけでございます。
  6. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 本案に対する質疑はこれを延期し、次会に譲ることといたします。午後一時半から再開いたしまして、治安関係を中心にしまする警察関係の審査を続行することといたします。  暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  7. 金光義邦

    金光委員長 再開いたします。  これより警察に関する件について調査を進めます。まず五月一日の騒擾事件について、警視総監田中榮一君より、参考人として、実情を聴取することといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、さよう決します。田中参考人。
  9. 田中榮一

    ○田中参考人 五月一日皇居前広場におきましてメーデーが終了いたしましてから、きわめて遺憾なことでありまするが、一部の尖鋭分子が皇居前広場に乱入いたしまして、この間これを制止せんとする警察官との間に乱闘事件が展開されまして、双方の間に相当多数の負傷者を出し、あまつさえ外国人所有の自動車に暴行が加えられ、また何ら関係のない駐留軍の兵隊等に対して、暴徒が暴行を加えたというようなことがありまして、まことに遺憾にたえない次第でございます。この間の点につきましてはいずれ後ほど私から申し上げまするが、メーデー開催までの経過につきまして、一応御説明申し上げたいと思います。  今回のメーデーの開催は総評の島上善五郎氏が実行委員長になりまして、総評といたしましては統一メーデーをすることに決定をいたしまして、メーデー実施の方法につきまして、いろいろ治安上関係がありまするので、警視庁当局とも再三再四連絡をとりまして、総評側の意見も十分に聴取いたしまするし、また警察側の意見も総評側において十分聴取してもらい、双方意見の一致したところで、今回のメーデー実行案なるものができたのであります。総評側としましては、皇居前広場は目下使用につきましては裁判上の手続によつて係争中でありまするので、とりあえず神宮外苑をメーデー大会の場所とすることに方針が決定をいたしまして、そして神宮外苑において大会を開催する。大会が終了いたしましたならば、全体の参加人員を適当に五つに区分いたしまして、メーデーの行進を実施させるということにきまつたのであります。一班は神宮外苑から出発して新宿駅前において解散をする。他の一つは渋谷の道玄坂の繁華街を行進をして東急の駅前広場において解散をする。それからいま一班は外苑を出まして外堀を通つて九段坂を通り、小石川の後楽園の球場付近の広場において解散をする。これが第三班であります。  それから第四班としましては、神宮外苑から溜池、虎ノ門、田村町に出まして、日比谷公園において解散する。これを南部班と称しております。それから他の一班は中部班と称しまして、赤坂見付から永田町に出て、永田町から国会の周辺を迂回して霞ケ関に出て霞ケ関から日比谷公園内に入り、日比谷公園において解散をする。大体五つの班にわかれて行進を始めるということになつたのであります。  警視庁といたしましては、当初これらのメーデーを利用いたしまして、相当過激分子が集団的な暴行をなすであろうというような情報も耳にいたしておりましたので、但しその方法がいかなる方法でやるかということにつきましては、いろいろ予想を立てまして、メーデー実施に要する警戒要員といたしましては、約四千百名ほどを配置いたしまして、メーデーの大会の会場、それからメーデー行進の沿道並びに解散の場所その他を十分に警戒をいたし、またメーデー散会後にいろいろまた不祥事件の発生するおそれもありまするので、こうした場合を予想いたしまして、全七十三の警察署員にほとんど全員を待機させまして、各警察署管内はその署の署員をもつて自衛態勢をとらせるという方針をとりまして、警察から署員を本部の方に引上げて他へ転用することを、なるべく避ける方針をとつたのであります。それからさらに日比谷の解散の場所等は相当混雑々予想し、またいろいろ混乱するおそれもありますので、日比谷の解散地におきましては、相当厳重なる警戒陣をしきまして、その付近一帯を警戒せしめたのであります。それから問題になりました皇居前広場に対しましては、いずれ図面で申し上げまするが、警戒態勢をしき相当な人員をこれに配置しまして、そして十分なる警戒態勢をしいたのであります。ただ当日の情勢判断といたしましては、この五つの地区にメーデー行進が分散されて行われる。それから解散後におけるいろいろな情勢判断、起り得べき事件の予想というようなことからいたしまして、皇居前広場に多数の警察官を配置できなかつた点は、全体としての警備態勢上やむを得なかつたと考えております。なお警備計画といたしましては、日比谷公園内において一応解散をする。その解散をした余波がどういう方向に流れるかということにつきましても、十分いろいろ予想を立てまして、もちろん皇居内に入るということも予想されておつたのであります。そして五つに区分されましたメーデー行進が終了次第、手のあいたところから逐次警察力を中央に配置転換いたしまして、そして逐次これを強化して行くというような方法をとつたのであります。ところがこのメーデーの当日になりまして、すでに大会会場におきまして相当混乱状態が起りまして、あるいは石川島造船の一部の分子が会場を占拠したり、あるいは朝鮮人あるいは学生連中が会場を占拠したり、相当混乱の状態があつたのであります。その後無事に大会を終りまして行進に移つたのであります。今の中部班に属するメーデー部隊は、東京交通労働組合の労組が先頭を切りまして、ブラス・バンドをつけて秩序正しく外苑権田原口から右折しまして、青山一丁目に出て行進を開始したのであります。そのころ学生群並びに日雇労働者の一部、それから労組員の一部、これはきわめて過激な尖鋭分子でありまして、これらは別行動をとりまして、信濃町の派出所のあるところから別な梯団をつくりまして、かけ足をもつて、今の秩序正しく進行するメーデー部隊を追い越しまして、そして先頭に立つたのであります。そしてほとんどかけ足のような状態で、日比谷公園の中に走つて来たのであります。そこでこの日比谷公園のところに到着しますや、旧音楽堂付近において、その中の学生群の指導者、あるいは労組員の指導者等が、非常に激越なアジ演説を行いまして、人民広場をわれわれの力によつて闘いとれ、これから乱入しよりというような動議が提出されまして、これに全員同調しまして、日比谷公園の交叉点の入口から怒濤のごとくに流れ出たのであります。一方また南部班というので、虎ノ門、田村町を通りまして日比谷公園内へ入る班があるのでありますが、これも同様に朝鮮人のグループが先頭をかけまして、そして日比谷公園の中に入らずに、祝田橋を渡つて皇居前広場に乱入したのであります。おそらくこれら別動の梯団は、先に日比谷公園内に到着しまして、そこで他の総評傘下の労組員があとについて、そして皇居内に全員入ろうというような計画であつたのではないかということも考えられるのでありますが、幸いにいたしまして、一般の労組員は、こうした尖鋭分子の扇動には絶対乗らずに、総評の主催者の指揮通りに日比谷公園内において一応散会いたしました。そしてメーデーそのものは無事平和裡に終了いたしましたことは、これはこうした不詳事件が起りましたけれども、労働者大衆はこうした一部の扇動に乗らずに、正しく自己の行うべきところを行つたもので、私どもとしましては、今後の労働者大衆の政治活動、政治運動に対しまして注目すべき事柄であり、これらの暴徒との間に、はつきり一線を画したということは、まことに注目すべきことであろうと考えるのであります。  図面につきまして一応御説明を申し上げたいと思います。これが二重橋であります。これが馬場先門でございます。先ほど私が申しました学生を中心とする約五千のグループ、それから朝鮮人も一部入つておつたと思いますが、共産党地区委員会委員並びにこれに同調する過激の労組員と思われますが、これらの人々が大体ここに(日比谷公園)約七千くらい、一応集結いたしました。そしてここで(日比谷公園)、これから人民広場を闘いとれというようなアジ演説が始まつたのであります。そして当時の警戒配置といたしましては、ここに約八十七名、ここに三百四十二名、ここに八十二名、ここに三十五名、ここにも三十五名それからここに三十名、六十七名というように、全員七百名以上の者が、ここに一応警戒配置についておつたのであります。ここ(日比谷公園)から怒濤のごとくに、まず三千、四千の二梯団が突出し始めたのであります。そこで八十二名の丸の内の署員がここに警戒しておりましたが、この八十二名を押しのけまして、ここで相当乱闘がありました。これから始まりまして、かけ足でこちら(馬場先門)にかけまして、この間にとまつておりました留駐軍の自動車に対して投石その他棒きれでもつて暴行を働き、窓ガラスその他を相当破壊いたしまして、ここに(馬場先門付近)一応集結いたしたのであります。これが大体二時二十三分であります。そしてあとからあとから続々と来るわけです。それでここに(馬場先門付近)三田、水上警察署を動員しまして約百八十名、それからこれは第一方面予備隊がこれを援護しておつたのでありますが、これが大体三百四十二名ほどおつたのであります。そして一応ここでこれを阻止すべく相当努力いたしたのでありますが、何分にも七千名の力でこれを押して行くのでありますから、これが突破されたわけであります。その際に、ここでとまりましてから約五、六分の間態勢を整えまして、プラカードを割りまして、そしてプラカードの板をはずして、くぎだけを出しまして、それからそれぞれ棒きれ等を用意いたしまして、警察官がここで抵抗するなら、徹底的にこれを殺傷するという目的でやつたと思います。プラカードを割りまして、くぎを出しまして、——これは現実に写真がたくさんとつてありますので、全部証拠物件としてとつてあります。また凶器そのものも押收してございます。そうしてここで衆のはやるのを指導者らしいのが、大分制しておつたようであります。これが大体態勢が整いますと、赤旗その他プラカードを先頭にしまして、喚声を上げてここに突入して行つたのであります。そこでこの三田、水上の百八十名はここで阻止しておつたわけでありますが、逐次これが破られ、そして二箇中隊約二百名くらいの警察官は、喚声を上げて突入して行くこの暴徒の連中と一緒にこれを走つて、追い抜きまして、これに出まして、そしてこの暴徒の先端を行きまして、ここに(二重橋前)すつかり警戒陣をしいてしまつたのであります。なおあとに残りました一箇中隊も、さらに暴徒と一緒に走りまして、これに応援に出かけまして、大体ここに二百数十名の警察官がようやく到着いたしまして、この二重橋前で食いとめたわけであります。そしてこれから入らんとする者をここで十分に防ぎまして、しばらくそのままの状態でおつたのであります。その際に、ここにおりました祝田橋の派出所の三部巡査がこれらの暴徒から迫害を受けまして、あるいはけられたり、なぐられたり、相当な迫害を受けて、本人は人事不省、意識不明に陥つたのであります。その意識不明に陥つた警察官を、数名の暴徒がほりの中に——絶対に動けない抵抗不能に陥つた警察官を、このほりの中にぶち込んでしまうというようなまつたく残虐そのものの行為を、ここでこのような状態でやつたのであります。そうしてなおあとから陸続としてどんどん入つて来たわけであります。それからなおこの連中が入る前に、こういうところから散歩するようなかつこうをして、三々五々こうしたところにおりまして、これが入ろうとすると、これらと一緒に内外呼応して喚声をあげて、内外から突入を威勢づけるような状況になつたのであります。ここへちようど警察官が到着して、これと対峙いたしましたのは約五分間後であります。  それからなお、ここにおりました三十名、六十七名、これらはこの辺が非常にあぶなくなりましたので、これらは全部こちらに移動いたしまして、ここでこれと一緒になつて入るのを防いでおつたのでありますが、とうとう入られた、こういうことになつております。  それからややいたしますると、第一方面の加藤予備隊長が、ここにおる暴徒に向つてただちに解散すべし。もし解散をしなければ実力行使をする。場合によつては催涙弾の投擲もやむを得ないから、ただちにここから去れということを何回か拡声機によつて警告を発したのでありまするが、どうしても去らない。そこでやむを得ず、一方において警察官がほりの中にぶち込まれる。随所にまた乱闘事件が起り始めたという状況にありましたので、この加藤予備隊長の命令によつて、これが催涙弾を投擲し始めたのであります。この催涙弾によりまして、これらの暴徒の一部は、ようやくこの芝ふまで、二時四十五分ごろの態勢としましては、後退いたしたのであります。そうしてこちらに二個中隊のほかに、あとから来た中隊がこれに入りまして、三個中隊約三百四十名くらいが、対峙した態勢でじりじり押し始めたのであります。しかしここにおります百八十四名の警察官は、なおここへ入るのをできるだけ阻止しておつたのでありまするが、どんどんこれから入つて来るという状況でありました。  そのうちに、この三個中隊は、さらに残りの催涙弾によりまして、これはちようど祝田橋の通りでありまして、車が通つているところであります。この車の通つているこの道路上からさらにここまでようやく、催涙弾を投げながら押しつけて来ましたが、これがちようど二時四十五分から十分間かかつて、ここまで押して来たのであります。そうしているところに、南部班の先頭を切りましたきわめて乱暴な朝鮮人グループが桜門からまた突出し始めまして、これがこう参りまして、祝田橋からこの芝ふの方の学生軍の一部にどしどし参加合流するという情勢になつたのであります。従つてこのグループがまた非常に気勢が上り出したのであります。これが大体二時五十五分ごろの情勢で、なおこちらとしてはさらに警戒に当つていたわけであります。この朝鮮人グループがこれに入つて来るときに、ここに若干の警察官がおりまして、これがまたこのほりに数名投げ込まれたのであります。その際に、地検に各警察署から容疑者を押送して来る自動車があつた。その自動車に若干名ずつ警察官が護衛のためについて来る、これが十二、三名ここにおつた。ところが警察官が数名ほりに投げ込まれた。その状況を通行人が知らせてくれたのであります。そこでこの十数名の警察官がこれに参りまして、水におぼれんとしている警察官を引上げて助けようとしたところが、これに対してまたきわめて残虐な暴行を働きまして、ここで上げる警察官をまた突き落し、また上げる警察官を棒で突き落すというような、ほんとうに残酷な行為がここで繰返され、またこの押送の警察官もここで瀕死の重傷を負いまして、これは現在病院に全部入院加療中でございます。  そのうちに、やがて三時ごろになりますと、この学生群のグループがこの芝ふに移つたのであります。それからまた、このあとから入つて来た朝鮮人のグループが芝ふに入りまして、また再びこちらへ入り込もうというような形勢を示したのであります。そこで、今、各地からの予備隊が続々として到着中でありまして、このうち、六方面予備隊の一個中隊、七方面予備隊の二個中隊がこれに間に合いまして、ここに警戒陣をしきまして、これとここで相頡頏したのであります。これが大体三時五分くらいの時間でありまして、この二個中隊がこのままの態勢で動いて参りまして、正門等に乱入することのないように、ここで防禦態勢をしいておつたのであります。そうしてこういう態勢になりましたのが大体三時十分ころであります。ここで一応警戒態勢というものは、予備隊が若干ここに新たに加わりましたので、すつかり態勢が整つたわけであります。  それからちようど警視庁よりからこちらの方面に向つて風が吹いております。そうして催涙弾を投げますと、この催涙弾のガスがこちらの方に流れて参りますので、この学生群のはつきりした人数はわかりませんが、大体八千人ぐらいじやないかと思いますが、この風下におりました学生群は、催涙弾のガスを防ぐために風上の方へ移りまして、そうしてこちらの芝ふの方に移つて参りましたので、この朝鮮人グループは、こちらの方に参りました。これが大体三時十五分くらいの情勢であります。そこでまた警戒の警察官は、かような警戒態勢に移つたのであります。そうしてこれと相対峙して、この間に相当な乱闘事件が行われ、こちらから石を投げる、やりで突いて来る、警察官また催涙弾を投げ返す。そうしてここでお互いに棒でもつて突いて来る。これを追い返す。やりみたいなもので突いて来る。やり返す。催涙弾を投げるというような状況で、最後にここに朝鮮人グループが竹やりを全部突き出しまして、こちらの方に突入せんとするような態勢になりまして、ここで警察官はやむを得ず自衛上発砲いたしたのであります。  そうしてこの尖鋭なる朝鮮人のグループが竹やりでここへつつ込もうとする寸前に、発砲催涙弾のガス等によりまして、さらに三時三十分ごろから押し出しまして、約二十分かかつて、これを再び通りから追い返したのであります。そうして逐次警察官が押して参りますので、このうちの一部の朝鮮人グループ並びに学生グループは、祝田橋から日比谷の方へ脱出をはかつたのであります。この際にこの朝鮮人グループが——学生グループも入つたと思いますが、ここにパークしておりましたアメリカの自動車を転倒させまして、これに放火するというような、きわめて乱暴な行動をやつて、これが逐次解散に移つたのであります。あるいはまた交叉点の方に集まつたというようなわけであります。  それからしばらく芝ふの辺で対峙しておりましたが、さらに警官が逐次押して参りまして、そのころには出さなくちやなりませんので、それを馬場先門の方に移しまして、そうしてできるだけ解散させるような方法をとつたのであります。そうして三時五十分から約十分間ほどかかりまして、芝ふにおりました暴徒を逐次外へ追い出しまして、大体午後四時十分ぐらいには、完全に警察官が馬場先門まで追い出しまして、暴徒の一部は散つてつたのでります。なお行つた者に対しては各交番、派出所、警察署等の警戒を厳重にいたしたわけであります。そうして祝田橋の方から来た暴徒、それから馬場先門の方から来た暴徒とが、日比谷公園付近に約千人から千二、三百人ぐらいしばらく停滞しておつたのでありますが、やがて予備隊その他がかなり増強されまして、全部追い払われてしまつた。その間にかようないろいろな事件がありましたが、事件の概要そのものをかいつまんで申し上げますと、こういうような状況で、皇居前広場の乱闘事件というものが推移いたした、こういう状況でございます。  それでこれによりまして負傷いたしました警察官の数は、昨日法務総裁から国会において発表いたしたと思いますが、重傷者が八十三名、軽傷者が六百七十八名、計七百六十一名の重軽傷者を出したのであります。警視庁といたしましては、ただちにこの騒擾事件を徹底的に検挙する方針に基きまして、検察庁と緊密なる連絡をとりまして、現在特別捜査本部を設置いたしております。本日午前九時までに検挙した人員は三百二十一名、そのうち送致されました人員が二百七十八名、その他拘留人員百十六名、なおただいまもどしどし検挙いたしまして、おそらくこの数は午後におきましては、もつと増加しているものと考えております。警視庁としましては、当日参加しておりました指導分子というものに重点を置きまして、現場における写真その他いろいろな証拠物件等を根拠にいたしまして、さらに検挙人員はどしどし増加されるものと考えております。この事件におきまして警察官が、さつき説明いたしましたごとくに、宮城前におきまして朝鮮人の集団が竹やりを先頭に立てまして、ものすごい勢いで殺到いたしましたので、自己防衛上、正当防衛のために拳銃を発射いたしましたところ、その弾でその中にまじつておつたと思われる東京都の職員組合の高橋という人が死亡しております。そのほか学生らしい人が一人負傷したということを聞いておるのでありますが、昨日のラジオによりますと、学生さんが死亡したということを放送しておるのでありまして、この暴徒の中に何人くらいの負傷者があつたかということは、私の方ではまだ完全に数がとれておりませんが、少くとも数百名の負傷者はあつたのではないかということが一応考えられるのであります。  今回の皇居前広場における乱闘事件におきまして、警視庁はきわめて警備が手薄で、警戒態勢が不十分じやないかという意見があるのでありますが、これはそういう御意見のあることもごもつともと存じます。ただ冒頭に説明いたしましたごとくに、当日の情勢判断といたしましては、日比谷公園内における解散後のいろいろな行動、また各所におけるいろいろな暴行事件等の発生を考慮いたしまして、どうしても警察の警備態勢をこの一箇所に集中することが非常に困難であり、また危険であつたという状態であります。従つてこの皇居前の警戒につきまして、警戒態勢を解除できるところから逐次警察力を割譲して、皇居前広場の方へ持つて来るというような計画を立ててやつたのであります。  なお当日のメーデーに対しましては、これは年に一回のメーデーであり、ことに平和独立後の記念すべきメーデーでありますので、いやしくも警察がメーデー行進に介入したり、あるいはまた干渉がましい行為を行つて、これに挑戰的な態度に出るというようなことは絶対に避けなくてはならぬ。メーデー行進に際して、若干のジグザグ行進があつたり、あるいは条件に反した点があつても、また解散後において若干気勢を上げる点があつても、これはなるべく下問に付する。できるだけメーデー行進に対して警察は干渉しない、そうして主催者である総評自体の自主的統制によつて、これを解決させるというような方針をとり、なおこうしたメーデーを利用した暴行行為に対しましては、今申し上げましたように、途中においてもし不法行為をやつた場合においては、かかる不法行為に対しては、断固として取締るという方針をとりまして、四千名の警察官を一応沿道、解散地、その他には配置いたしておつたのであります。  今回のメーデーで特にわれわれが考えなくてはならぬことは、メーデー行進をやつたその構成員でありますが、最初皇居前広場に乱入をいたしましたグループは、全学連並びに都学連のきわめて尖鋭なる分子であります。それから地区委員会の尖鋭分子、日傭労働者等がこれに参加いたしまして、これらの梯団が第一回に侵入した。それからなお祝田門から乱入いたしましたのは朝鮮人のグループで、これは全部北鮮系であります。これらの連中がすでに皇居前に入るときに、先ほど申しましたように、プラカード等をわざと破壊して、そしてくぎの出た棒を持つとか、あるいは柵をこわして、その柵の棒を持つとか、まつたく警察官に対し挑戰的な一つの戰闘隊形のようなものをつくつて、喚声を上げて乱入をいたして参つたのであります。もちろんこれに対しまして、当初から警察も、相当な暴行があるであろう、ことに拳銃等を奪取されるというようなおそれもありまするので、拳銃に気をとられておつたならば、警察は十分なる活動ができぬであろうということから、予備隊にはごく一部の者に拳銃を持たせまして、大部分はことさら拳銃をはずさせまして、肉弾をもつて、この暴徒にぶつかるという態勢を整えまして、拳銃等は全部はずしまして、一部の者だけ拳銃を持ちまして、また拳銃を発射することによつて、いろいろ暴徒を刺激するということも一応考えられまするので、やむを得ざる場合においては発射する、しからざる場合においてはできるだけ皇居前広場から暴徒をおつぱらつてしまうという方針を立てまして、当初からやつておつたわけであります。ところがわれわれが予想した以上のきわめて残忍なる、いわゆる殺傷行為を主とした戰闘部隊で臨みまして、警察官に挑戰を行い、相互の間にまことに不幸な乱闘が始まりまして、双方に多数の死傷者を出したことは、ほんとうに申訳なく考えております。今後こうしたことが再び起らぬように、われわれとしても細心の注意を払わねばならぬと思います。なお今後の守都態勢につきまして、われわれは今回の警備につきましては、絶対に完全であつたとは言えません。相当不備な点もあつたと存じております。これらにつきましては、私としましても非常に責任を感じておる次第でありまするが、今後さらに装備、施設の改善を行いまして、将来再びこうした騒擾等が発生しないように最善の努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  10. 金光義邦

  11. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 今回の宮城前広場における騒擾事件の概況につきましては、昨日の本会議において法務総裁より説明があり、またただいま警視総監から詳細御説明があつた次第でありますからこの点は省略いたしまして、本問題に対しまする法務府の態度並びにそれに対する見解を申し上げたいと存ずるのであります。本日は法務総裁がまかり出まして、御説明申し上げるはずでありましたが、たまたま法務委員会労働委員会との連合審査会がありまして、それに出席しなければなりませんので、かわつて私から申し上げます。  本事件が発生いたしまして、ただちに東京地方検察庁におきましては現場に出頭いたしまして、その実情を見て参つたのでありますが、これはまさしく騒擾事件というふうに認定いたしまして、それ以来騒擾罪並びに公務執行妨害罪の罪名のもとに、検挙に努力いたしておるのでありますが、昨日まで送検を受けました総数は、二百七十八名に達しておるのであります。目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部、特別審査局の協力のもとに、事件関係者の徹底的究明に当つておりますので、逮捕者の数は今後相当増加する見込みであります。検察庁におきましては、先ほど申しました通り目下全力をあげておりますが、右の事件の被疑者の確定逮捕、証拠の收集に当り、特にその背後関係並びに計画性の有無等、事件の全貌の究明に努めておるのでありますが、真相の判明次第どこまでも追及いたし、断固として処分する態度を維持いたしておるのであります。  次に、本事件の性格を申し上げますならば、目下検察庁において捜査続行中でありますので、確定的なことは差控えますが、今回のメーデー・デモ参加者の大部分を占める総評傘下の穏健な労働組合員は、終始平穏裡に行事を行い、予定の解散地点において、それぞれ無事解散いたしましたことは、ただいまの警視総監の説明によつて御承知と思うのであります。本件は、一部極左的破壊分子が、群衆の昂奮を利用し、激越な扇動によつて行われた計画的組織的な暴挙であり、彼らのいわゆる軍事委員会の指導による計画的軍事活動として実践されたものと、当局では考えるのであります。実際騒擾に加わつたと思われる暴徒は、それぞれあらかじめ用意していた日本共産党地区委員会旗、同細胞旗、北鮮国旗のほか竹やり、こん棒、くぎ付プラカード等を振りかざし、これを武器として使用いたしたのでありますが、その数は約六千名を越えると見たのであります。しかも騒擾容疑罪で検挙いたしました者の年令層を見まするに、三十歳未満の青少年が、大体全体の三分の二を占め、また学生、朝鮮人、自由労務者、日本共産党細胞員などの占める割合が比較的多いということは、この暴挙に参加したものは特定の年令層のある種の組織体に属する階層であることを推知せしめるものであります。  次に今次事件の背後関係について申し上げまするならば、今回の不詳事件の背後関係は、本年二月二十一日の反植民地デーにおける蒲田事件、同月二十三日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であつて、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測いたしておるのであります。今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子のメーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場、及び行進中における人民広場へ参集せよ、あるいはまた実力で人民広場を闘いとろうという内容のビラ多数が散布されて、大衆を扇動する行為などが活発に行われ、また日本共産党幹部岩田英一君は、主要な役割を演じている疑いがあるのであります。さらにまた今回の騒擾事件における破壊的暴力行為の主たる方法は、彼らのいわゆるゲリラ的軍事活動方針に従つて、計画的かつ組織的に行われたものであると推定されることなどから、今回の事犯が、その背後において、明らかに一部破壊的な共産主義者らの組織を基盤として、その指導並びに扇動のもとに行われたものと推測されるのであります。法務府の特別審査局及び国家地方警察本部並びに東京警視庁におきましては、今回の不詳事件に関連する情報を事前に若干入手いたしましたので、治安関係において相互に連絡して協議し、ことに東京警視庁当局としては、先ほど総監より申し述べたような方針によりまして、主催者側幹部に対しては数回にわたり厳重な申入れを行い、暴力的不法事犯の発生防止につぎ協力を求める等、十分なる方途を講じたのでありますが、残念ながら遂に予想以外の事態の発生を見るに至つたのであります。  最後に、今回の下様事件によりまして、警察側にも相当数の負傷者が出たのでありますが、また暴徒側におきましても死者一名を含む相当数の負傷者が出たのであります。これらはあるいは警察官の発砲等によつて生じたことともうかがわれるのでありますが、これらに対する警察官の責任につきましては、当局といたしましては、これは自己または他人の生命身体に対する急迫、不正の侵害に対する防衛のためなされたもの、いわゆる正当防衛と認定いたし、警察官に対しての刑事責任はないものと考えておるのであります。従いましてまた国家補償法の適用は受けないものと、われわれは解釈いたしておるのであります。  以上、簡單でありますけれども概要を申し上げた次第であります。
  12. 金光義邦

    金光委員長 理事会を開きたいと思いますから、しばらく休憩いたします。     午後三時五分休憩      ————◇—————     午後三時六分開議
  13. 金光義邦

    金光委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいま理事会の申合せによりまして、質疑をなさる方は、一名大体十五分程度にお願いいたしたいと思います。
  14. 八百板正

    ○八百板委員 時間が制限されておるようでありまするから、要点をお尋ねしたいと思います。  皇居前広場に起りましたこのたびの事件は、まことに遺憾にたえないものでありまして、労働者の祭典であるメーデーが、一部このような事態を起したことは残念にたえない次第であります。しかしながら労働者の大多数が組織的に計画された予定のコースをもつて解散し、一部の暴徒に乗ぜられることなく、秩序を保つて事の大事に至らなかつたことは、不幸中の幸いと考えるのであります。私はこの問題を種種の点から明らかにいたすにあたりまして、それぞれ事犯は司直の手に移されておるのでありますから、その事犯を起されました人々を今問題とすることは、私のとらないところでありまして、私はこの問題にあたつて警察官が公務の執行をどういう立場に立つて、どんなふうに行われたかということを明らかにいたしたいと考えるのであります。  そういう角度からまず第一にお尋ねいたしたいのでありますが、日比谷公園に中央班と申しますか、あの行進の隊の先頭が到着いたしました時間並びに最後部が到着して解散をして終了いたしました時間を、お伺いいたしたいのであります。
  15. 田中榮一

    ○田中参考人 ただいま御質問の日比谷公園に到着いたしまして解散をした時間でありますが、中部班が解散地に到着後解散完了いたしました時間は、三時三十分であります。それから南部班が日比谷公園で解散いたしましたのが三時五十分であります。
  16. 八百板正

    ○八百板委員 ピストルを発射されましたのは何時でございますか。
  17. 田中榮一

    ○田中参考人 正確な時間はわかりませんが、今の図面から考えまして、大体三時三十分前後ではないかと思います。
  18. 八百板正

    ○八百板委員 ピストルは何発撃たれておりますか。おそらくピストルはそれぞれ警官に渡してありまして、たまの数等も明らかになつておるだろうと思うのであります。従つてどれだけ撃つたということも、当然すでに集計ができ上つておることだろうと思うのですが、その撃つた数並びにできまするならば、だれが何発撃つたという点もお知らせいただきたいと思います。     〔「そんなことがわかるか」と呼び、その他発言する者あり〕
  19. 金光義邦

    金光委員長 静粛に願います。
  20. 田中榮一

    ○田中参考人 拳銃発射弾の数は、今調査しておりませんので、いずれ調査してからお答えいたします。
  21. 八百板正

    ○八百板委員 私は公務執行を妨害したと称せられるいわゆる暴徒と称せられる人々に対して、どのような公務を正当に行つたかということを、この委員会において明らかにしたいと思つてお尋ねしているのでありまして、従つてそういう角度から公務の執行がはたしてその状況に応じて、正当に行われたかどうかということを判断するためには、一番大きな問題となつておりまするピストルを何発撃つたかということ、これがわからなければ話にならないと思うのであります。先ほど法務政務次官は、これらの行為はそれぞれ警察の急迫危急のやむを得ざる事態として、ピストルを撃つたのであると言われておりますが、そのピストルを撃つた数がどの程度のものであつたかということが、その際にまずそれが正当であるかどうかということを、取上げる重要な要素になるのでありまして、何万発撃つてもよいということは言えないのでありまして、それが一発であつたか、百発であつたか、二百発であつたか、それとも三百発ぐらいであつたかということは、大体においてわかつておらなければならないと思うのであります。しかもたまは何発渡してあるということは明らかになつておると私は思うのであります。一部の新聞の報道によりますと、ピストルを撃つた警官を新聞記者がつかまえて、撃つたのはあなたですかと聞いたら、私です。名前を言つてくださいと言つたら、これは上司に報告した上で言う、その責任は私がとるというようなことを述べておるという新聞記事があるのでありますが、そういうふうな点から考えましても、おそらく今日、結果についてどの警察官がどれだけのたまを使つたかというようなことは、すでにはつきり報告されておるのだとぼくは思います。そういうことをまず明らかにしないで、ただ警察の行為は、正当なる自分を守るための行為であつたというふうに、法務府が初めからそういう調査もしないで断定されることは、少しぼくは軽卒ではないかと思います。そういう点についてひとつ法務府の見解並びに警視総監の御見解を承りたいと思います。
  22. 田中榮一

    ○田中参考人 大体発射した弾丸の数とか、そういうものははつきりいたしております。ただ私今ここにその資料を持ち合せておりません。いずれまたわかり次第報告いたしたいと思います。
  23. 八百板正

    ○八百板委員 まず私はこういう事態を未然に防ぐために、もつと適切な方法がとられたのではないかという点を考えるのでありますが、実は私あの日メーデーの会合に私の関係団体の来賓という形で参加いたしておりまするので、さらにまた私はその会場から五つにわかれた隊の中に入りまして、たまたま日比谷において解散いたしました中部班と申しますか、あの班の中に加わつておりまして、そうしてその散会後私は日比谷公園から一部が皇居前広場に行つたらしいというので、私も実は困つた事態が起らなければいいがという心配を持ちまして、あの日はずつと事実を私は見ておるのであります。そういう立場から私は目撃者の一人としても、いろいろ明らかにしなければならぬ問題が多いということを感じておるのでありますが、あのピストルを撃つた場合の指示と申しますか、やはりこれは指揮をされて撃つておるのでございますか。
  24. 田中榮一

    ○田中参考人 もちろん拳銃の発射は個々の任意の考えでは撃たせぬことにいたしております。一応指揮官の命令によつて撃たせるということになつております。そういう規則になつておりますが、ただ実情からして、たとえば警察官が拳銃発射をせねば、自己の生命が危ういというときには、指揮官の命令を待つまでもなく、本人の判断によつて、現在の警察官等職務執行法に規定いたしておりまする武器使用規則範囲内において、拳銃使用が現在認められております。
  25. 八百板正

    ○八百板委員 大体時間から申しまして、私が目撃し、耳にした状態は、最初に警察官の発砲された時間、そのときに私が見ておつた状況から判断できるのでありますが、私の見ました限りにおきましては、催涙弾をいわゆるデモ集団に対して投げつけて、そのやりとりを二、三やつて、そうしてそのあとでピストルの音が断続的に数発続けられて混乱に入つた。こういうふうに私は目と耳をもつて承知いたしておるのであります。そこでお尋ねしたいと思います点は、公務の執行というものを、この際に目標をどういうところに置かれてやられたか、これを解散させるという目的、そういう点がどういうところにあつたかという点、この点をまずお伺いしたいのであります。  それから大体広場に入つて来るであろうということは、予定されておつたというようなお話であつたのでありますが、中にはまた一方先ほど図面の御説明の中にも、馬場先門でございますか、そこに入る際も衝突が起つた。その際に一部の指導者がどういう意味か知りませんが、乱暴するなというような意味の制止をされたというような御説明もちよつと伺つたのでありますが、そうしますると若干その中にその集団を指導し得るような人がおつたとしまするならば、そういう連中にまず代表を出させるなり何なりして、そうして交渉して平穏に解散させるような時間をかす。こういうような方法がとられなかつたかどうかということを私は考えるのですが、(「そんなことができるものか」と呼ぶ者あり)その点について、どういうふうにお考えになりますか。
  26. 田中榮一

    ○田中参考人 現在桜門から出て向おうとする暴徒の連中は、その場所でとまつて、後続部隊の来るのを待つていたようであります。その際に、説明申し上げましたごとくに、プラカードを全部道にたたきつけて、板を割りまして、くぎを全部出しまして、さあこれで行こうというようなことで、それからまた棒切れを全部旗をとりまして、そうしてやりだけにいたしまして、さあこれからつつ込もうというようなことを言つておつたそうであります。その際にもちろんその場におりました警察官は、解散すべし、解散しろということを、声をからしてどなつて、入つてはいかぬということを何回も何回も制止はしておつたのでありますが、しかしその間大体五、六分だと思います。五、六分たたぬうちに、七千人の集団が怒濤のごとくにあの皇居前広場の中に乱入いたしたのであります。これはとても二百人、三百人、人垣をつくりましたところで、この七千人の者のこの勢いは、とうていこれはとあることはできなかつたのではないかというような実情だと思います。
  27. 八百板正

    ○八百板委員 もちろん私が見ておりましたのは、私一人の目でございますから、広場の群衆を隅から隅まで見れるものでもございません、全体を同時に見るということはできないのでありますが、私は私の見た、目に映じた限りにおいて申すのでありますが、先ほど一部の方がそんなことができるものかという意味のお笑いをせられましたが、私は警察官とデモ隊が、一時対峙して落ちついた状態でありましたときには、何とかここで仲裁ができないものかというような考えを実は持ちまして、できるならば両方の代表を立てて、そうして落ちつかせるような方法を、時間をとつてやるならばできないことはないだろうというような感じを私は実はいたしておつたのでありますが、そうして両方でにらみ合つているうちに、先ほど申しましたように催涙弾が投げられ、ピストルが撃たれて、そうして混乱に入つて行つたというようなことになつて、たじろぎまして私も逃げまわるようにして、状況を見て参つておるのでありまするが、その間の状況を私が見ますると、それほどピストルをぽんぽん発射しなけれ警察官の身辺、生命が危いというような状態にあつたというふうには、私はあの空気からして判断できないのでありまするが、(「君らは指導しているからこわくないかもしれないが、警官はこわい。」と呼ぶ者あり)そういう点ちよつとそちら側の御見解を承りたいと思います。御承知のように、たといくぎのついた棒などを持つておりましたにしても、警察官の方はそれぞれ鉄かぶとをかぶつているのでありまするし、それにピストルを持つておりますし、こん棒もそれぞれ持つてつたのでありまして、先ほど竹やりとかいうお話がありましたが、私は竹やりは見ておりませんけれども、あるいは私の見ないところで持つておつた人があつたかもしれないが、私の見たところでは竹やりというものは持つておらなかつたのでありまして、それぞれプラカードの棒などを折つて、あるいは旗の俸などを振りまわしておつたように見えたのであります。もちろんプラカードをこん棒くらいの長さに折つてつておつたようであります。しかしながらそれに対する警察隊の態度は大体において、一個中隊と申しますか私存じませんが、集団的にこのデモ隊に対して集団行動をもつてじりじりと押して行く、大体においてそういうふうな方法をとつておられるのでありますから、そういう場合に、こん棒を持つて鉄かぶとをかぶつた二百人前後の集団警察隊が、各方面からデモ隊をじりじり押して行くというようなそういう形をもつてデモ隊を圧迫するというふうな方法をとられる場合において、ピストルを撃たなければならぬというふうな事態は考えられないと思うのでありますが、その点どんなふうにお聞きになつておられるか、もちろん警視総監は見ておられないと思うのでありますが、その点をもう少し伺いたいと思います。
  28. 田中榮一

    ○田中参考人 どの辺でごらんになつておつたか私は存じませんが、今私の説明したのは、朝鮮人を中心にした一グループが——これは一グループと申しましても百や二百ではないのであります。数千のグループが縦隊をつくりまして、そうして警察官の直前二、三十メートルのところへ来まして散開しまして、全部竹やりを持つて一齊に突いて来るのであります。その際にこちらの警察官は二百数十名であります。これはいかに勇猛な者でも数千の者が竹やりを持つて散開して突いて来た場合において、やはり生命の危険を感ずることは当然だと思うのであります。そこで私が先ほど説明しましたごとくに、拳銃は原則としてはずさしているのであります。ただやむを得ざる場合において擁護のために、ごく少数の者に拳銃を持たしているという状況であります。ほとんど警察官は素手で闘つたということであります。
  29. 八百板正

    ○八百板委員 お話のようにピストルを持たせないような注意も払われたというのでありますから、従つてピストルを発射する場合に、細心の注意を払つてもらいたかつたというのが私の考えでありまして、そういう意味で私どもの考えからしまするならば、ああいうふうな処置をしなかつたならば、もつと事態が平穏に済んだのではないかというふうな感じを持つのでありまして、そういう点について公務執行において行き過ぎがあつたというふうな判断を、私は現場を見た一人といたしまして感じておるのでありまして、言うまでもなく、あの皇居前広場を使わせないという処置をとられた趣旨は、公園規則によつて処置されたのであります。それが判決によつてどうなつたという問題はしばらく別といたしましても、判決の結果その処置が不当であるとして無効になつたといたしましても、現にその問題は係争中でありますから別といたしまして、樹木の損傷を防ぐとか、公園の美観を保つという趣旨から、広場の使用を禁止してあるのでありまして、そういう禁止した処置が一応妥当なりという前提に立つといたしましても、それを暴力をもつてそこに侵入したその行為は、当然に責めらるべきものだと思うのであります。しかしながらそういうふうな禁止した場所に実力をもつてつて来たという人々を、また実力をもつて排除するというそういう行為というものは、おのずから限界があるものではないかと思うのであります。樹木が傷つけられてはならないとか、美観を害してはならないとかいうふうな根拠によつて使用禁止せられました広場に対して、実力をもつて不法に入つて来た、その不法に入つた者を実力をもつて排除するという場合の行為というものは、こん棒で追いましたりピストルで撃つたりしまして、そうしてこれを排除するという性質のものではないと、私は思うのでありまして、そういう点から警察官の警察法による警察行為が、明らかに日本国憲法の保障する国民の自由及び権利の干渉にわたる職権の濫用になつておる危険はないかという点を問題といたしたいのでありまして、そういう点についてただ一概にこれは共産党系の連中の暴力行為だから、騒擾行為だからけしからぬ、けしからぬということのあまり、それに対してとつた警察官の行為というものが、そのために全然問題にされないというようなことであつてはいけないのでありまして、そういう点を糾明して、そして初めてそれが正当な警察行為の範囲内であつたかどうかということを、みずから十分に調べ上げ、そして判断する。その上に初めてりつぱな民主国家の成長があるのだろうと思うのでありまして、そういう意味合いにおいて、暴徒のやつたのはむろん悪いけれども、それに対してピストルを撃つたり人を殺傷させるような結果になつたという事態についても、やはり十分の反省と調査をして、そういう点について警察活動が職権の濫用に陥らないかどうかということを十分に掘り下げて考えるという態度が、私は必要だろうと思うのでありまして、そういう点を警視総監並びに法務府に対して、私は特に希望するのであります。そういう点について御見解を承つておきたいと思います。  なおこの際にそういうふうな状態に便乗いたしまして、次々と集団運動を圧迫し、物も言えないような状態に人人をおびえさえ、いじけさせるような結果になることを非常に憂慮するのでありまして、そういう点について特に考慮を払われることを私は希望するのであります。
  30. 田中榮一

    ○田中参考人 たいへん残念でありまするが、あなたと私は意見が非常に違つておるのであります。と申しますのは、当日乱入した暴徒の連中は、明らかに殺傷を目的とした凶器を持つて乱入したものでありまするから、従つてこれは警察官が何をしようがしまいが、これは警察官に対して理由なく暴行を働いておるのであります。たとえば祝田橋派出所におつた警察官に対して、いきなり理由なくして撃つてかかり、数人でもつてこれを袋だたきにする。そして意識が不明になつた者をさらにこれを堀の中へ投げ込む。今まで残忍な戰闘行為が戰争によつて行われたときにおきましても、敵が再び立つあたわざるような抵抗不能の状態に陥つたならば、一応戰闘行為というものはやめたのではないか、ところが相手方がまつたく意識不明に陥つて抵抗不能の状態に陥つたものを堀の中に投げ込んでこれを溺死させるような暴挙をやるということは、これは明らかに殺傷を目的とした乱入以外の何ものでもないということが言えると思うのであります。従つてこれを実力によつてこれを解散するとか、そういう問題ではなく、これは警察官自体が、自己の生命を防衛するためにやむを得ずやつた行為で、ある、かように考えまして、それで正当防衛であると法務府において解釈されたものと私は考えます。
  31. 金光義邦

    金光委員長 大矢省三君。
  32. 大矢省三

    ○大矢委員 私時間がありませんから、ごく簡潔にお尋ねいたします。今日おいでの方で、現場におられた人がおられるかどうか。——おられませんか。残念にして私は先ほどの説明を聞くことができなかつたのでありますが、今答弁の中に、二百名の人に対して約数千名の人が竹やりを持つて来ておる、そういう竹やりを持つて行進して来ることが、一体その現場に来るまでわからなかつたのか。それからこの議会内でも報告がありましたが、ごく少数の人間で相当長時間にわたつて行われているにもかかわらず、その動員がほとんどさいていない。これはどういう欠陥か。なぜ私はこれを聞くかと申しますと、今度起つた問題よりも、今後起るであろうことに対して、どこに欠陥があつたかということを、私は聞きたいためにこれを申すのであります。そこで一体負傷者の数が双方にどのくらいあつたか、それから拳銃を使つたという人の数は、今わからぬというのですから、あとでけつこうですが、人数とそれからたまの数、それを知らしていただきたい。まず負傷者の数は双方にどのくらいあつたか。それから最後の六千とか七千とかいうておりますが、当時の最初の警官の数、あとの警官の数、それまでの時間、そういうものだけ伺つておきたいと思います。
  33. 田中榮一

    ○田中参考人 負傷者の数は、警察官の数はわかつておりますが、相手方の数はわかつておりませんから、これは申し上げかねるのであります。警察官の数は、重傷者八十三名、軽傷者六百七十八名、合計七百六十一名になつております。そのほかの点につきましては、今手元に資料を持つておりませんから、また後ほどお答え申し上げます。
  34. 大矢省三

    ○大矢委員 今申しました二百名しか警官がいなかつたということについて、竹やりは数千名と言いますが、その竹やりを何ぼ押收しておるか。
  35. 田中榮一

    ○田中参考人 最初の態勢は、入口に三百四十二名、さらにその付近に百八十四名、合計五百二十六名の警察官が、この皇居の中におりました。それから数千名が竹やりと申しましたのは、数千名全部が竹やりを持つたという意味ではありません。これはその中に竹やりを持つた者もありまするし、さらにくぎのついた凶器を持つた者もあります。それから竹やりどころか、ほんとうに竹の先に鉄棒を入れたようなものもあつたようであります。そのほかその付近の棒切れなどを折りまして、くぎのついた棒切れなどを、相当持つておつた者があつたように聞いております。
  36. 大矢省三

    ○大矢委員 新聞その他あるいは議会報告によりますと、約七八千名の群衆であつたということですが、それに対してわずか五百二十六名、こういうことだが、最近の装備その他を見れば、特に大都市の治安を守るためには、私は当然もつと敏速にやらなければならぬと思う。それが相当時間がかかつているのに、十分の対策が講ぜられていなかつたように私どもは聞いておる。いま一つは、これは取締る方と取締られる方との相違がありますが、えてして群衆心理と申しますか、私はピストルさえ放さなかつたら、あるいはそうならなかつたかもしれないと思う。竹やりを持つておつたとか、殺傷する意思であつたとか、中にはそういう者もあつたかもしれませんが、六千、七千のうちで、はたしてそういう人が何。パーセントあつたかということは疑問です。私はしばしばそういう群衆と警官との衝突をみずから経験して来たのでありますが、だれかが一つ石を投げれば、かあつとなるのです。むしろ私どもが見ていると、無手の労働者よりも、当時帯剣しておつた警察官の方がよほど興奮する。こういうことも八百板さんから話がありましたが、私はピストルを持つという警察の制度に対しても、最初から反対を持つていた。アメリカの群衆がいろいろなものを持つている。ところが日本の法律では、五十センチ以上のものを持つてはならぬというので、何も持つておらぬ。しかるに相手を保護する立場にある警察官が拳銃を持つて、いつもこれを放す。最近何十ちようとられておりますか。あれはみな逆に向うに使われる。私はこの調子なら、万一の場合には警察官の半分が民衆に拳銃をとられると思う。その民衆はやがてみずから撃たれるでしよう。そういう危険なものを一体どうして持たすのか。私は持つていなければもつとけが人は少くて、ああいう興奮状態はなかつたと思う。最近大阪では交通並びに婦人の警官から全部これを取上げた。今後依然として警察官が銃を持つならば、あの交番に二、三人おる者は絶えず襲われて、必ずとられます。そういうのを相手にして現に何回もやられておる。それから危険なときにみずからを守るためというが、日本の法律では最高の裁判、大審院の判決を受けて初めて死刑ということになる。それを裁判も受けずに人を撃つていいのだということが平気で行われるということは許されていいのかどうか。みずから身を挺してということがありますが、ほんとうに警察官はその身を挺していたかどうか。それにピストルなどやつて、一体今日の治安を国民は安心して警察官にまかせられるかどうか。私はせんだつてある新聞に巡査が頭をかかえている写真があつたのを見た、それから手帳をとられてみなにあやまつているのも見たが、あの際なぜ警察官としてやらなかつたのか。さらに大きな欠陥は、敏速に大衆を取締るという訓練がとられていない。あんな棒よりか、もつと長い数倍のむちを、大衆を阻止するときには持つたらいい。それを二時間も三時間も乱闘しているにかかわらず、集まつて来ない。なるほどつつ込んで来るのに、竹やりを持つてたり、くぎを持つてやつた悪質な者が必ずしもなかつたとは言いません。しかしそれがあつたからといつて、ぽんぽんピストルをぶつぱなして興奮させて、そうして堀に突落したのはけしからぬと言うけれども、はたしてあの取締り法に遺憾がなかつたかどうか。あれが最善の方法だと考えておるのか。私が最初に、現場にどなたかおられたかどうかを聞いたのはそこです。あれがほんとうに最善の取締り方法であつたかどうか、むしろ民衆に対してああいう興奮状態を与えた責任も多少あるのではないかということを私は考えたい。というのは、今申しましたように、私自身数回そういう大衆運動の体験をしておりますからよくわかる。なにも一方だけ興奮するのではない。すべての犯罪がそうだ。最初から人を殺そうと思う者はないが、かあつとなつて人を殺すのと同じように、あの事件も單に労働者だけに責任があつたわけではない。しかも前前からそういう事情をキャッチしていたと言いながら、ああいう結果を起したということの責任を感じていないかどうか。私は、今後の取締りをどういふうにしたら、ああいうことを繰返さないようにすることができるか、またあの取締りについて、あれが万全であつたと責任者は考えておるのかどうか、この点を将来のために聞いておきたいと思います。
  37. 田中榮一

    ○田中参考人 警察といたしまして、ああした警戒態勢が必ずしも万全であつたとは、私は申しておりません。あるいは不備な点もあつたろうと思います。いろいろあとから考えて、ああしたらよかつたのじやないかということも、実は考えておるわけであります。ただ拳銃を発射したにつきまして、あの客観的情勢として、とにかく数千の者にわずかな者が取り巻かれて、いろいろ武器をもつて襲撃を受けようとするその場における警察官としては、もちろんこれは相手方を退避させるという目的もありましようし、同時にまた自己防衛のために拳銃を使用せざるを得なくなつたという状況は、現場に私もおりませんでしたから、その点はわかりませんが、現場におつた者のいろいろな情勢判断からして、これはやむを得なかつたというように考えるのであります。もとよりわれわれは拳銃を濫用させることは、十分慎まなくてはならぬと思います。それから今仰せのごとくに拳銃を奪取され、そしてまたそれが一部都民に非常に迷惑をかける、国民に不安を起させるということはごもつともと思います。今までも細心の注意は払つたのでありますが、今後もいま少し注意を払つて、そうしたことの再び起らぬように努力をいたしたい、かように考えております。
  38. 大矢省三

    ○大矢委員 私は時間がありませんから、これで終りますが、例の指令系統ですか、そういう系統について欠陥が現在あるのかどうか。と申しますのは、最近これによつて警察法の改正をしなければならぬ、総理大臣がこれらの指揮権を持たなければならぬ、公安委員ではどうも安心ならぬ、こういう意見が出ておるようですが、先ほど私が申しましたように、今後こういう方法をすればもつと機敏に動ける、あるいはこうすればもつと効果的に自治体警察が活動できるという点で、何か欠陥が今日あると思われるのか、そうでなく、これはこのまま運営して、もつと指揮命令というか、それらの連絡を十分やるべきだつたのに、こういう対策がやれなかつたが、今後はこれで行けるのだという確信があられるのか。この点警察法の改正に重大な関係がありますから、総監みずからの御意見でけつこうですから、ひとつお聞きしたいと思います。
  39. 田中榮一

    ○田中参考人 私の今までの経験からいたしますと、首都警察につきましては、政府の指揮下というのではなくして、首都警察のやつたことに対しては、政府も当然責任を負わなければならないという点があるわけであります。こういう点において、責任のつながりというものは、何かつけた方がいいのではないかと考えます。ただしからば現在の状態で首都の守りができるかできないか、私は現在の首都警察の上におきまして一番欠点は、まだ装備、施設が足らぬということです。人員をふやすことよりも、いま少し完備した装備、施設をこれに与えれば、さらに最も有効な警察活動ができるのではないかというふうに私は考えております。
  40. 大矢省三

    ○大矢委員 ちよつと重要ですから……。一体装備というのはどういうことですか。それからこの間のような場合に、警察予備隊の応援を求めることが、事実上今日あなたの権限においてできるのかできないのか、それをひとつお聞きしておきたいと思います。
  41. 田中榮一

    ○田中参考人 装備と申しましたのは、主として車両でございます。もう少し早くやれなかつたかというお話があつたと思いますが、機動的に迅速に警察力を移動するためには、車両というものが必要だと思います。現在の車両では不足であろうと私は思います。そのほかいろいろ警察官の使用する通信施設、これなどもきわめて不備であります。たとえば騒擾現場からのいろいろな連絡につきましても、無線も、きわめて不完全なものはありますが、十分なる通信施設というものがまだありません。そのほかいろいろな科学的の施設についても、きわめて不完全で、そうしたものはもう少し近代的な装備を持つことが必要ではないか、こういうふうに考えております。  それから警察予備隊が出動できるかどうかという問題でありますが、これは政府の方針によつて政府が出動さしてよろしいということならば、私はできるのじやないかと思います。これは私の方の権限ではなくて、むしろ政府権限でありますから、政府の意思によつて使用ということが決定されるのではないかと考えております。
  42. 大矢省三

    ○大矢委員 もう一点、現行法の現在のあなたの地位で、そういうことをただちに政府に要請したら、それはできることはきまつておるのだが、そういう場合に、ただちにできる権能がございますかということです。
  43. 田中榮一

    ○田中参考人 私自身は権能を持つておりませんが、情勢によつて、予備隊を出動させるような要請と申しますか、そういう意見を述べることはできると思いますが、そのほかの権限は警視総監は持つておりません。
  44. 金光義邦

    金光委員長 立花君。
  45. 立花敏男

    ○立花委員 この間の事件で多数の人命を奪つておるのですが、この問題について、総監は現存どう考えておられるのですか。これは新聞の発表によりましても、通行人と出ておりますし、こういうような多数の国民の生命を奪いながら、さいぜんからの説明によりますと、一言もそれに対する責任を感じた言葉がないわけであります。あなたの報告では、警官が幾ら傷ついたかということだけでありまして、国民の側が幾ら殺傷されたかということについては、はつきり数字すら述べない。こういうことでは、全然責任を感ぜられないと思うのですが、心境を承りたい。
  46. 田中榮一

    ○田中参考人 私の方は、実は相手方の負傷の数を知りたいのであります。しかしながらこの負傷をした者は、あるいは警察官に暴行を働き、あるいは警察官の公務の執行を妨害して、それがために負傷したものではないかという関係か、私の方に負傷したという申出がないのであります。われわれの方としては、何人負傷したかということはぜひ知りたいのであります。もしそうしたものがありまするならば、私の方にお申出を願いたいと思います。  それから多数の人命を奪つたという話でありますが、警察は人命を奪つたことはないと思います。これはお互いに戰闘でありますから、あるいは場合によつて警察官の生命も奪われておつたかもしれない。また相手方の生命が奪われておつたかもしれない。これはその場におけるお互いの闘争でありますから、やむを得ぬと思います。
  47. 立花敏男

    ○立花委員 人命を奪つたことはないと申されましたが、では一体だれが殺したのですか。東京都の民生課の高橋君は一体だれが殺したのですか。あるいは病院で死亡した法政大学の学生、これは一体だれが殺したのですか。あなたはラジオで学生が死んだのを聞いたと言われましたが、瀕死の重傷を負つた学生、しかも病院にいるということは明白なんです。ラジオも放送するようなはつきりした状態に置かれておる。これをあなたはラジオで聞いただけで、ラジオがそんなことを言つておつたというのですが、あなたの部下が、あるいはあなたが命令してあの事件をあそこまで発展させながら、この人命を落した者を調べない。そういうことは一体どういうことですか。
  48. 田中榮一

    ○田中参考人 現在拳銃によつて死亡したと認められる高橋正夫君は、当然逮捕令状の出る人であります。なおいま一人学生で負傷したという人も、おそらくこれは逮捕令状の出る人ではないかと私は考えております。
  49. 立花敏男

    ○立花委員 死んだ高橋君に何を理由に逮捕状を出すのですか。死亡をラジオでしか聞いていないものに、どうして逮捕状を出せるのですか。そんなにむやみやたらに逮捕状を出せるのですか。死人に口なし、死んだ者に対してどうして逮捕状を出すのですか。
  50. 田中榮一

    ○田中参考人 死人に逮捕令状を出すというのではないのであります。もし高橋君が負傷しておつたならば、逮捕令状が出る人であろうということを申し上げたのであります。
  51. 立花敏男

    ○立花委員 それからその問題と関連するのだが、さつき龍野君も正当防衛だと言つたが、相手の者を死亡させておいて、それをすら調査もしない、死んだのをラジオで聞いたと言いながら、その射殺が正当防衛であつたかどうか、どうしてわかる。さいぜん八百板君が追究いたしましたように、発射したピストルの弾丸の数もわからない、それでは正当防衛だとは言えないと思うのですが、さらに負傷させた相手を全然調べないでおいて、どうして正当防衛だということが言えるのですか。一体あなたはラジオで死んだと放送されたこの法政大学の学生を病院へ見舞つたことがあるのかどうか。
  52. 田中榮一

    ○田中参考人 高橋正夫君並びにその学生が撃たれた実況につきましては、私自身は見ておりませんが、現場にたくさんの警察官がおりましたし、それから他の目撃者もありましたので、これが証明できるものと思つております。それから暴徒の一人として負傷されて入院されておる方に対して、警視総監が、あるいは逮捕令状が出るかもしれないという容疑者のところへ見舞に行くという手はなかろうかと思います。
  53. 立花敏男

    ○立花委員 そんなばかなことがあるか。逮捕状が出るか出ないか、未来のことはわからないじやないか。しかも君たちの撃つた弾丸で負傷した者に対して、逮捕令状が出るかもしれぬから見舞に行かないというのは、一体どういうことか。逮捕令状が出るまでは一個の国民じやないか。そんなばかなことがあるものか。そういう態度だから、君の報告には警官の負傷の数しかない。明白である負傷者あるいは死亡者の問題にちつとも触れない。根本的な考え方が違う。暴徒か、暴徒でないかわからないじやないか。何をもつて判断しているか。  それからもう一つ聞いておくが、今回のメーデーは、労働者の統一された意思として人民広場を使うということは、最初から明白だつたわけです。(「人民広場なんてない」と呼び、その他発言する者あり)このことはあなたは知つているのかどうか。それから龍野次官に聞きたいのだが、龍野次官は、人民広場へ行けというアジ演説をやつた、アジ・ビラをまいたということを言つておるが、人民広場へ行くということがなぜアジ・ビラなんだ、なぜこれが扇動なんだ。人民広場へ行くということは、今回のメーデーの最初からの日本の労働者の一致した意見なんだ。しかも占領下といえども人民広場を使つてメーデーをやつて来た。君たちが独立だといつてごまかしている独立ができたにかかわらず、占領下に使わした広場をなぜ使わせないか。警察は法を守ると言つているが、人民広場を使うということは(「人民広場というのはない」と呼び、その他発言する者あり)これは当然憲法で許された権利なんだ。これをとめたことは裁判で負けている。これをどう考えている。警視総監は、法律に違反して裁判で負けるような人民広場を、なぜ武装警官で守らなければいけなかつたか。皇居前広場という言葉が使いたければ、皇居前広場という言葉を使つてもよろしい。裁判にも負けて、去年まで使わせた人民広場を、なぜ武装警官で守らなければいけなかつたか。私どもの写真によりますと、警視庁は特別狙撃隊までつくつている。そういうものをつくつてなぜ人民広場を守らねばいけなかつたのか。あなたは、労働者が初めから警官を殺傷するために人民広場へ来たと言つているが、そんなことは初めからない。今度のメーデーの最初から、人民広場へ行きたいというのが労働者の要求であつた。人民広場へ警官を殺しに行くためにではなくて、メーデーをやらせろということが、最初から労働者の要求であつた。これを政府が不当に禁圧して、そうして裁判においても負けている。それを警視庁がお先棒をかついで、なぜ武装警官で守らなければいけなかつたか、なぜ馬場先門へ多数の警官を配置して、これをとめなければならなかつたか、その理由を明らかにしてもらいたい。
  54. 田中榮一

    ○田中参考人 皇居前広場におけるあの暴徒のやり方は、これは無許可示威行進であります。同時にまた示威運動であります。従つて現在都条例がある以上、これをわれわれが取締るのは当然だと思います。これを阻止することも当然だろうと思う。それから人民広場と言いますが、人民広場なる言葉そのものがないのでありまして、これは皇居前広場であります。それから同時に皇居前広場に乱入せんとするあの状態は、あのときにおいてすでに騒擾の形を呈しているのであります。單なる無許可の示威運動である、示威行進である、そんなものじやない。あのときにすでに外国の自動車に対して投石をし、いろいろな暴動をやつている。かような状態において、都条例によるところの無許可の示威行進、示威運動、そんななまやさしいものでない。あのときにすでに騒擾の様相を呈している。暴動なんです。だからわれわれが取締るのは当然です。
  55. 立花敏男

    ○立花委員 君は、憲法で許しているデモの自由、団体行動の自由と、單なる樹木を折つてはいけないという公園の使用条例、あるいは公安条例によるデモの届出、それとどちらが重大だと考えているのか。憲法は明白に基本的な大衆団体の権利としてデモの行進を認めている。(「暴動だ」と呼び、その他発言する者多し)それを單なる公安条例で禁止するのは一体何事だ。しかも吉武厚生大臣の言葉によると、草をむしつたり、木の枝を折つたりするから、皇居前広場は使わせないと言つている。あれは国民の広場であつて、憲法に保障された団体行動をどこでやろうと自由である。しかも都の公安条例は、あれができる際にすでに血を流している。橋本金二君が、あの公安条例がつくられるときに、君たちのどろぐつで殺されている。その事情をあなたは知つているだろうと思う。しかもあれは占領中ウイロビー書簡によつて、日本の人民のデモあるいは集会を禁止する書簡を出した。それを強制的に日本の政府が各自治体に押しつけたものである。当然この公安条例というものは、講和後においては廃止さるべきものである。明らかにこれは憲法で保障されておるところのデモ、集団行動の自由を不当に制限したものである。占領下の遺物なんだ。これをもつて、年に一ぺんのメーデーに対する大衆行動を禁圧し、しかも裁判にまで負けておるところの皇居前広場を武装警官で防衛して、大衆団体を入れないというところに今度の原因があるのじやないか、その点どうお考えになつておるか。
  56. 田中榮一

    ○田中参考人 あなたは、警察がメーデーを非常に妨害したとか、禁止したというお話でありますが、当日のメーデーは平穏裡に終つておるのであります。これに対しまして四千名の警察を出して、メーデーが平穏裡に円満に行われるように協力をしているわけであります。従つてメーデーなるものは無事に円満に終つたわけであります。あなたの言われるのは、そのメーデー以外の暴力行為であり、しかもこれは無許可の示威行進であり、示威運動であり、一つの騒擾行為でありますから……。
  57. 立花敏男

    ○立花委員 だから、さつきから言つておる。今年のメーデーに最初から人民広場を使うということが、メーデーに参加した全大衆の意思であつた。それを政府が不当に禁圧し、しかも最後には警視庁のピストルとこん棒でこれを暴圧したから、この問題が起つたということは明白である。だからメーデーの神宮外苑の大会でも、人民広場へ行こうということが問題になつている。これをメーデーと関係がないとは、一体どこを押したらそういうことが言えるか、私は不可解だ。しかも今度の問題が單に一部のものだと言つておるが、あなたは新聞をごらんになつていない。世界が、特にイギリスあたりは新聞の一ページの大部分をさいて、この問題がやはり占領後における日本の国民の動向を示すものとして、非常に大きな関心を払つておる。あなたの言われるように、一部少数の連中の行動であつたことならば、これだけ世界が問題にするはずがない。だからアメリカの新聞でもこれは東京における赤色メーデー三十万という報告をしている。しかもインドの輿論を見てごらんなさい。インドの輿論は、世界に、帝国主義が他の国を植民地にし、他の国の人民を虐げるところでは、この問題が起るんだということをはつきり言つておる。アメリカの新聞でも最近の新しい論評を見ますと、日本に中日貿易を禁止して、日本に行政協定を当てはめてひどいことをやつておる、そういうところからは当然この問題が起ることが予想されておつたということを、アメリカの新聞自体がはつきり批判しておる。知らないのはあなただけだ。世界中が日本の赤色メーデーは明らかに七箇年の占領政策に対する日本の国民の怒りの破裂だということをはつきり言つておる。これをあなたはちつとも知らないんだ。しかも一つのはつきりした例を申し上げますと、あの五月一日には同じ条件のもとにある西ドイツでやはりメーデー警官隊との衝突が起つておる。今の地球の上で非常に植民地的な状態にあるのは西ドイツと日本なんだ。同じような状態にある、同じように外国の軍隊がどろぼうをして、踏み荒しておるところには同じような条件が起つておる。五月一日のメーデーには同じような事態が西ドイツと日本に起つておる。この問題を忘れてやれ暴動だ、やれプラカードの先にくぎがついておつた、こんなことだけでピストルを発射して国民を殺しておいて、しかもその殺した国民の見舞にも行つていない。ただ自動車を焼かれたらそのお見舞に行つておる、こういうことで一体君たちが日本の国民の税金によつてまかなわれておるところの警官としての職責が果されるかどうか、なぜあなたは日本の国民の負傷者あるいはそれの状態あるいはそれに対する善後措置、そういうものを報告なさらないのか、その理由を承りたい。
  58. 田中榮一

    ○田中参考人 私は今回の勤労者大衆の代表したメーデーはきわめて明朗に行われたもの、かように考えております。しかしながら、メーデーは無事に済んだけれども、そのうち一部の暴力分子がかくのごとき不詳事を起した、かように伝えておることも私は見たのでありますが、今回のメーデーについては、島上実行委員長も、われわれは一部の尖鋭分子に絶対に乗ぜられなかつた、われわれはりつぱにメーデーを果したということを声明しております。その声明はあなたもお読みになつたと思います。従つて私はあなたの言われる通り、このメーデーなるものは終つたと思つております。
  59. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 この五月一日の事件につきましては、日本の帝都の中心であります皇居前広場において、約二時間にわたつて治安がまつたく乱れて、ここに市街における一種の戰闘状態が現出したということは、日本の国全体といたしましても、きわめて遺憾なことでありますし、独立後旬日を出でざる間におけるこの種の行動については、(「独立してない証拠だ」と呼ぶ者あり)私は非常に遺憾の意を表するものであります。この原因を各種の観点から見て参りますと、私は政府当局に相当の責任を追究しなければならぬものがあると思うけれども、この問題は本委員会におきましてやるのには不適当であると思いますが、問題を治安確保の観点からだけに限局いたしまして、警察当局並びに法務府の政府委員にお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一は、問題は警察官の挑発行為というようなことが、ときどき言われておるのであります。この問題を明確にするために、一体デモ隊がいつの時期をもつて暴徒になる、あるいは不正行為に入つたかという認定が、非常に重大だろうと思うのであります。そうするとその入つたときにおいては、もはや正常な状態にあるところの労働者でない、国民でないと言わなければならない。その場合においては正に対する不正の関係が成り立つて来ると思うのであります。言葉の濫用を避ける意味におきまして、私はそういう今度の事件におきまして、いつの時期をもつてデモ隊が不法行為に入つたか、これはもちろん一部の者であります。今の御説明によりますと、六千ないし八千の者でありますが、時間にして二時過ぎから入つたと考えられるのであります。その時期をひとつ捜査当局からお話を願いたい。
  60. 清原邦一

    ○清原政府委員 事件の実態につきましては、目下東京地方検察庁が鋭意取調べ中でありますが、現在までの調査した結果によりますと、おおむね隊伍を整えて馬場先門から皇居内に乱入せんとした時期、その時期以後をもつて騒擾罪を構成するものと一応認定いたしております。
  61. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 皇居内に乱入しようとしたのをいつに見るか、もしくは都条例に定められてありますところの条例違反の行為がいつから発生したかという問題までさかのぼつて考えて参りますと、日比谷公園において最後に解散するということになつておるならば、日比谷公園から出て来るときにおいて都条例の違反が行われるということになつて参り、あるいは自動車を転覆せしめるとか何かすることによつて、一つの暴行行為がそこに成立するのじやないかと私は思いますが、そういう見解が正しいかどうか承りたい。
  62. 清原邦一

    ○清原政府委員 ただいま私の申し上げましたのは、騒擾罪としての犯罪構成の時期を申し上げたのであります。それより以前において別罪を構成するかは問題でありません。都条例違反の問題は、ただいま私の申し上げた時期以前において発生することはあろうかと思います。
  63. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 その問題はこの程度で打切ります。皇居前広場におきまして約二時間、こういう乱闘事件が行われまして、しかもその間に相当数の負傷者を出したということにつきましては、私は遺憾の意を表せざるを得ません。問題はこういう事件を事前に鎮圧することができなかつたかということでありますが、当局といたしましてはどういう考えを持つておられるでありましようか。  それからもう一つお伺いいたしたいのは、皇居前広場において警察官の数は事前におきましてきわめて僅少であります。これに対しまして乱入したところの暴徒の数は最後におきましては六千ないし一万という数に上つております。警視庁にはおそらく予備隊があつたであろうと思いますが、この配置なんかにつきましては最後においてどれほどの数字になつたか、どれだけの時間を要したか、こういうことは将来の問題に備えましてきわめて重大なことでありますし、大きな研究問題であろうと思いますが、今回の皇居前広場のこの種事件に対し、動員された実情をお話を願いたいと思います。
  64. 田中榮一

    ○田中参考人 まず第一に事前に鎮圧できなかつたかということでありまするが、これは私が先ほど申し述べた通り、警視庁の方針としましては、かかる暴徒に対しまして、できればこれを事前に解散させ、そうしてお互いに乱闘のようなことをなるべく避けて、警告を発して解散させたい。平和的な手段によつてこれを処理したいというのが、われわれの目的あつたのであります。しかしながらすでに馬場先門に来たときには、戰闘隊形みたいなものを整えまして、しかも凶器等を用意して、まさにこれから皇居前に突入せんとするような情勢にありましたので、これではとうていこうした平和的な解決もできないということを感じたのであります。そうして暴徒が二重橋のところまで参りましたが、そのときもできれば平和的な方法によつて、これを解散させるということに重点を置いて、何回も解散すべしということを命令いたしたのであります。しかしながら絶対に解散いたしません。解散しないのみならず、警察官に対して非常な暴行行為に出て参りましたので、やむを得ず催涙弾によつてこれを退去させるというような行動をとつたのであります。それから皇居前広場に警察官の数が非常に少かつたのでありまして、これは最初に申しました通り、いろいろな情勢判断からいたしまして、各署の警備態勢というものを、中央に集めることが非常に困難であつたというような情勢であります。ことに西部渋谷地区は二時四十分ごろに解散が終り、また南部地区の方では四時近くに終つております。それから北部新宿駅の方ではやはり三時半ごろに終つております。それを全部終えてから、できるだけ早急に——終える前に予備隊をこちらへ集中さしたわけであります。それで予備隊等が全部大体四時近くにようやく集まつて、そうして最後に全体として二千五、六百名になつた。最初は数百名の警察官で一応暴徒を皇居外に追い出したのであります。
  65. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 先ほどの説明にありましたように、今回の事件がメーデーに参加をいたしました労働者の全部の意思ではないと私も確信をいたすものであります。おそらく一部極左分子によるところの行動であろうと思います。但し六千ないし一万の全員が、同じような気持でもつて参加したかどうかはまた別であろうと思います。従つて本問題の事件後における究明の一点といたしまして、どこに主謀者がおつたか。どこにこの計画を発起したところの者があるかということを究明しなければならないということであります。これにつきましては現在捜査の途上にありまして、まだお伺いする時期ではないかと思いますが、わかります範囲におきましてお話を願えれば、非常にけつこうだと思います。
  66. 清原邦一

    ○清原政府委員 東京地方検察庁が本格的に取調べに当り出したのは一両日前でありまして、目下のところは、はなはだ残念ながら、だれが主謀者であるか、だれが指導したか、あるいは計画性云々のことにつきましては、まだ申し上げる段階になつておりませんが、わかり次第御報告申し上げます。
  67. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 まだおわかりにならないようでありますから、わかつてからまたお尋ねをいたしたいと思います。こういうような事件が今後起りますことは、国民のきわめて悲しむべきことであります。私どもはこういうことがなくして日本の民主革命が行われ、円満に国家の進展を期待するものであります。こういうような事件を通じまして、捜査の当局といたしましてはいろいろ御意見があろう思います。これを事前に治めるために、あるいはこういうような問題が起ることを避けるために、最小限度において現在の法制なり制度の上から見まして遺憾な点があるかどうか、あるとするならばどういう点にこれがあるか、あるいはまた改正をどこに持つて行つたらいいかという点につきまして、御意見を承りたいと思います。
  68. 田中榮一

    ○田中参考人 これは私の方からお答えできる範囲においてお答え申し上げたいと思います。現在こうした犯罪が起りまして、これを捜査する場合におきまする捜査手続上の問題等におきまして、人権擁護の立場から、捜査を進める上において非常に困難な点がございます。容疑者がいずれも黙秘権を行使いたしまして、ほとんど捜査もできぬというような状況でございます。それから治安立法につきまして、ほんとうに今後独立後の日本の国内治安を十分に確保して行くためには——これは第一線の警察官の意見を代表して申し上げます。政府当局者ではありません。第一線の警察官、司法警察官を代表して申し上げるのでありますが、実際の取締りに従事するものといたしまして、機構とかいろいろな問題もありますが、そういう問題もさることながら、実際問題としていろいろな治安立法が不備のために、いろいろの点について支障を来しているということは事実であります。従つて今後こうした事件の再度の発生を防止するためには、いろいろな治安立法につきまして、十分国会において御審議になつておるとは存じておりますが、ひとつできるだけ早く成立されんことを、第一線の警察官を代表した意味において申し上げた次第であります。
  69. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 時間がありませんので、最後に一言だけ私の希望を申し上げておきます。今回の暴行、騒擾に関係いたしました者は、先ほどの数字によりますと六千名以上ということになつておりますが、その全部の者が初めからこの意図を持ち、初めからこれに参加をし、騒擾、暴行をやろうというような意思のもとに動いたものとは私は考えておらぬのであります。一番重大なことはその主謀者であり、指導者であり、この計画を企図するところの背後的なものがあるとするならば、その核心をつくことに全力を傾倒していただきまして、第一線の警察官がともすれば今回の事件に関しまして、大衆に対する反感であるとかいうようなことを誘発いたしまして、人権を蹂躙する、基本的な人権に侵害を与えるとかということのないように、ひとつ十分なる御留意をお願いいたしまして、私の質問を終らしていただきます。
  70. 田中榮一

    ○田中参考人 仰せのように、なるほど皇居前広場に乱入いたしました暴徒は、その数八千名近くと心得ておりますが、この八千名全部が非常な極左破壊分子であるとは考えておりません。もちろんその中におのずから差別はあると思うのであります。ただほんとうに附和雷同的についておつた者もございますし、またあるいはその中に見物人的に入つておつたような者も、中にはあるのではないかと考えております。従つて今後この事件を捜査する場合におきましては、こうした附和雷同した者は別といたしまして、できるだけこの暴動に対して指導的役割を演じた者、またはこうしたことに対して相当謀議を行つて、みずからこうした事件を発生させるべく指導した、いわゆる首魁と申しますか、指導分子、こういうものに重点を置きまして、今後徹底的に捜査の手を伸ばして行きたい。多少時間はかかるかも存じませんが、あくまで執拗にこれを徹底的に捜査したい、こういうふうに考えております。
  71. 河原伊三郎

    ○河原委員 去る五月一日の不祥事件は、いろいろな面からすこぶる遺憾なできごとでございまするが、特に三つの重要なる点があると思います。一つは騒擾の過程におきまして一時警察が押されぎみになつておつた、一時的ではあるが非常に弱体なときもあつたということ、それから重軽傷合せて七百六十一名という厖大なる犠牲を出したという点、これらによりまして帝都の警察がはたして完全に治安確保の重責に任じ得るかどうかについて、若干の不安を国民に抱かしめた。同じく都市に同じような事件が起りましても、帝都の場合は日本の心臓部であります関係上その関心はきわめて大きいのであります。ところで騒擾事件の経過、それから当局の御説明により判断いたしまして、当日明治神宮外苑における集合の場合においてすでに異変を生じておる。予想以上に多数の者が集まり、その集まつた者はそれぞれ何どきでも凶器、武器にかわるものを多数に携えておつたということは、すでにその当時わかつてつたのであります。それから行進の途中にありましても、整然としてデモを行うものとしからざるものとがありまして、すでにその間にも顕著な異変を生じておつた。そして日比谷公園において解散いたしまするせつなにおいては、それが最も露骨に現われておつた。そういうふうな状況のもとに騒擾的な行動、暴徒的な行動の行われることが、すでに事前において判明しておつた。そして、それが入るべからざるところへ、しかも取締りの警察官を排して実力をもつてつて来た。すでにそれらの点よりいたしまして、これは普通の人間の所作ではなく、騒擾的、暴徒的性格がはつきりとしておつたのであります。ところがそれに対する警察側の態度といたしましては、ただいま田中総監の御説明、御答弁などより察しまして、なるべくピストルを多く持たせない方法をとつた、容易に撃つなという方針を持つておつた、これは実にばかばかしいことではないか。かような暴徒に対しましては峻烈なる態度をもつて、(笑声)しかも事は歴然としてすでに起つておるのでありますから、あのようなふにやふにやとしたこんにやくだまのような態度をもつて臨まれますならば、むしろ今後におきましてもこの種のことを容易に起させる因をなすのではないか。従つてかような徴候が歴然と現われましたときには、すべからく普通の場合と違う態度をもつて部下を督励して、峻厳なる態度をもつて取締られることがきわめて必要であると考えるのでありますが、この点に関する田中総監の御所信を承りたいと思います。
  72. 田中榮一

    ○田中参考人 第一の御質問の、騒擾の過程において警察が押されておつたということでありまするが、なるほど押されておつたこともあると思います。こうした警察取締りの場合におきまして、常に警察が圧倒的に他を排するというようなことはあり得ないことでありまして、あるいはときに押されることもありまするし、また押すこともある。しかし終局において大勢を警察がよく制圧して、警備の責任を全うすればそれでいいのでありまして、多少人員が少いために一応押されたことがありまするが、わずかに三百名ぐらいの警察官で、とにかく七、八千名ぐらいの暴徒をあそこまでささえたということは、決して警察官の士気が沮喪しておるのでも何でもない。相当勇敢な行動によつて、あれだけのことが行われたのでありまして、ことに重軽傷者七百名を出したというのは、相手方をなるべく負傷させずにこれを逮捕したい、そういうような考えからやつたものでありまして、むしろ警察が軍隊のように拳銃でもどしどし発射したとすれば、おそらく警察官は何ら負傷なくして済んだかもしれませんが、そうでなくして警察というものは、あくまで犯罪を捜査し、犯人を逮捕し、そうして治安の責任を全うするというのが警察官の任務でありまして、そういう点において現場にいた警察官としては、できるだけこれを逮捕するとか、あるいは予防、鎮圧することに重点を置いたためでありまして、私どもとしてはかような信念からこのメーデーの取締りをやつたのであります。それから凶器を持つておつた者に対しましては、メーデーの主催者側にも警告を発しまして、凶器を持ち込むことは条件に反するから、至急善処しろというようにいろいろ交渉もいたしたのであります。また行進中すでにそうした異変もありましたので、相当警戒はいたしておつたのであります。なお暴動の性格が相当明らかになつたので、それから拳銃をはずしたのではなく、われわれはもう最初から、この場合において拳銃を持つことは、かえつて相手方を刺激したり、あるいは拳銃を奪取されたりするおそれがある。かような点からむしろ拳銃をはずして素手で行つた方が、もつと勇敢な取締りができるのではないか。拳銃をはずしてから取締りがやわらかいとかいうのではなく——拳銃をはずして行つたことは、警察官にとつては危険だつたと思うのです。その危険をあえてしたというのは、われわれとしてはできるだけこの騒擾事件を平和裡に治めたいという考えからやつたことであります。たまたまこういう騒擾事件になりましたので、結果論から申しますと、まことに恐縮でありますが、拳銃をはずしたのは警察官にとつては危険であります。その危険をあえてしたというのは、むしろその事件をなるべく平穏裡に治めたいという信念からやつたのであります。
  73. 河原伊三郎

    ○河原委員 とにかく警察官が袋だたきにあつた上、堀にはめられ、あるいはいきなり堀に突き落され、上ろうとする者を、引上げようとする者をこれまた突き落すというふうな乱暴な残酷な挙にあつても、なおかつなるべく人を傷つけない、まるで仏さまのような気持でありますけれども、そういつたことが七百六十一名という厖大な犠牲を出したのではないか。そのやり方において、暴徒でも何でも同じ国民であるから、なるべく傷つけないようにという気持は一応はわかりますけれども、しからばといつて警察官が幾ら傷ついてもかまわないという放漫な取締り方は感心しないのでありまして、今後はなるべく警察官に犠牲の少いように考えてもらいたいと思います。なお今後の検挙でありますが、徹底的にやる。執拗に時日は長くかかつてもやるというお説でございますけれども、この種の検挙は拙速をたつとぶのであります。これが長きに及んで、相当時日が経過いたしますれば、おのずからわかりにくくなる、やはりその熱のさめないうちに早く検挙をやることが、最も大切ではないかと思うのですが、この点に対する御見解を承りたいと思います。
  74. 田中榮一

    ○田中参考人 今お言葉の中に放漫な取締りという言葉がございましたが、私は非常に遺憾でありまして、私どもとしては決して放漫な取締りをやつた覚えはないのであります。やはりいろいろ計画を立てて相当やつたつもりでありまして、その点御了承願いたいと思います。それから検挙は仰せのごとく徹底的にやる考えでおります。しかしながら思想的背景を持つた犯罪というのは、いろいろの関係から普通の刑事事件と非常に趣が違つておりまして、複雑な面もありまするし、また非常に困難な面もあります。われわれとしては拙速主義で、できるだけ早急に検挙いたしたいと思いますが、いろいろの点から相当時間的に延びる場合もあると思いますが、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  75. 野村專太郎

    ○野村委員 今回の自主独立後第一回のメーデーにあたりまして、今回のような事件を惹起いたしましたことは、ほんとうに私は遺憾に存じておるわけであります。そこで最近におきまする各地の治安状況、特に先般行われました京都事件にいたしましても、各種の状況から判断をいたされまして、私らは首都警察すなわち警視庁の治安に対する布陣に対しましては、絶対に信頼を持つておるわけであります。そこで今回のメーデーに対しましては、遺憾ながら、あらゆる最悪の場合も考えられる。さつき鈴木委員からも指摘をされたようですが、警視庁の予備隊なり、相当なそれに対する実力を備えながら、今回のような暴行、騒擾を起したということは、非常に遺憾に存じております。これは今河原委員からお話があつたように、努めて刺激を避けて行こうというようなくふう、あるいは拳銃なども最小限度に、——長官がお話のように、これを事前に考えてやつた、こういうようなことも考えられまするが、少くとも今回のメーデーに対しましては、これは行政監察委員会あたりでも相当指摘もいたしておつたし、しかも警視庁が実力を持ちながら十分行使し得なかつたということは、今総監がお話なつた、いろいろの角度から周到におやりになつた結果から見ますならば、最小限度にとどめ得た、こういうことになりますが、それに対しては、いわゆる機動力とかそういつたものに対しても、いろいろ欠陥があると考えます。そこで今回皇居前の広場を使用することができなくて、外苑の方を会場に充てたということは、今日係争の過程において、私はむしろ皇居前を会場といたしましたならば、メーデーに参加されました多くの健全なる労組——はその間においては多少トラブルもあつたようですが、もしも皇居前の広場を使つた場合には、一方から言わせますならば、むしろそういうことを拒んだことによつて、この事態が惹起したということも言われている向きもあります。私らはそうは考えないのでありますが、この点に対して総監はいかなる見解をお持ちになりますか。
  76. 田中榮一

    ○田中参考人 かりに皇居前広場を使用した場合において、むしろその方がよかつたのではないかということでありますが、一応そういう考えもあるのであります。しかしとにかく、集団暴行をしようとする目的のために集まつた一部の尖鋭分子がおるのでありますから、これが皇居前広場で大会をやりましても、結局あとは何箇所かで、これが分散してやる結果になる、そういうことになるのではないかと私は思います。たまたま皇居前広場一箇所で行われたのでありますが、これが逆に皇居前広場を出発して行つたとしても、数箇所でこうしたことが行われる結果になるのではないかということも考えられるわけであります。しかし皇居前広場をメーデーに使わした方がいいかどうかということは、これは私どももう少し考えた方がいいのではないかと思います。     〔金光委員長退席、河原委員長代理着席〕 これはなお政府としても、いろいろ方針を決定されることと考えておりますので、これは政府の御決定にまかせるほかはないと考えております。
  77. 野村專太郎

    ○野村委員 皇居前の広場を使わせた方が、かえつて今回のようことが起きなかつたのではないかということからはずれたような気がする。私はかえつてそのことによつて健全な、統制された労組の人たちが、その巻添えを食つたのではないかという心配のことを言うのです。そこで総評を中心にしてメーデーを敢行するという事前にあたつては、警視庁も相当周到に各種のことを具体的に打合せをされたと思うのですが、たとえばプラカードにおける五寸くぎとか、あるいは新聞の伝うるところによりますと、鉄骨によるわくをこしらえ、ただちにこれが武器に変ずるようなこと、またその途中においても石、しかも相当大きな石まで投げ込むというようなことが行われておりますが、今日この首都における相互担々たる道路の上に、そういう石がそう散在しているわけはない。しかも行進中の舗装道路においては、そういつたものを拾う機会もないと私は思います。このことはあらかじめ計画をされておるのではないかと思います。それから竹やりが相当持たれたというのですが、これは京都なり他の地区でも見られるのです。これは懐中や何かに納められるものではないと思う。なおそれらのものがあるといたしましたならば、私はこれらに対する取締りなり、事前の対策なりに、その間における何か欠陥があるのではないかと考えておるのでありますが、これらに対する手落ちはなかつたかどうかということを、お尋ねいたしたいと思います。
  78. 田中榮一

    ○田中参考人 もちろん会場内に持ち込むプラカードその他持物につきましては、主催者側にも厳重なる条件を付しまして、凶器その他銃砲、火薬類の持込みを禁止するという条件で許可をいたしたわけであります。ただ主催者である総評側といたしましては、もちろん総評自体としての自衛態勢を整えまして、警戒員その他を相当会場に配置して、十分注意はしておつたようでありまするが、石塊であるとか、あるいは竹の先に鋭い矢先みたいなものを——これは現物を現に警視庁に押收いたしまして、検察庁に証拠物件として送致してございまするが、長さ二尺ぐらいの金のやりが竹の先についておりまして、そうして大きな赤旗でその竹やりの上の矢先を包んで、会場に持込んだようであります。そうして会場に持ち込むと同時に、その旗をほどいてやりをあらわしているというようなこと、それから現に警察官が殴打されましたときに、その警察官の負傷者が直接私に話すことでありますから間違いないと思うのでありまするが、手の中に入るような平べつたい石でもつて頭をなぐるわけであります。これで二、三回なぐられたならば、頭蓋骨はほんとうに粉砕されてしまう。これで少し脳底骨をやられまして、現在耳から鼻から出血いたしております。この石は皇居前広場にもありません。それから日比谷公園にも、こうした石は見当りません。これはおそらく紙に包んでポケットに入れるか、あるいは身体の中に持つて来て、そうして現場において出して、この石を使つておるということが、はつきりいたしておるのであります。これは現に負傷した警察官から私個々についてこれを聞いておりますので、こうした物はおそらく参加の際には外に現わさずに、あるいは弁当箱のようなかつこうをして腰にぶら下げて来る場合もありましようし、あるいはまた洋服の中にこれをつつ込んで来るということも考えられるのであります。おそらく竹やりのようなものは、みんな旗を先につけて、旗で巻いて来ておるのじやないかと思います。それから現にプラカードの類は、板さえはがせば、くぎが出て来るのでございまして、大体においてプラカードに板をかぶせて、くぎの出た棒で争闘したということになつております。それからそのほか皇居前広場の中にありましたいろいろな交通制限のためのくいとか、いろいろなさく等がございましたが、それをほとんど全部破壊いたしまして、そのくぎのついた棒切れによつて警察官に暴行をしておるような状況であります。もちろん事前におきましては、警察側も、また主催者である総評側も、相当な注意をいたしておつたのでありまするが、しかし何分にも二十万に近い大衆のことでございまするから、なかなか一々これが警戒、取締りということは、非常に困難であつたことは事実でございます。
  79. 野村專太郎

    ○野村委員 いずれにしましても、あの朝、あの日の状況というものに対しては、国民は非常な憂慮と痛憤を、一部の人を除いてはいたしておるわけで、そこで公安委員会におきましても、警視総監といたしましても、爾今のことに対しましては——事前に、今総監のお話のように、あらゆるデモ行進なり、大会に対しては、いろいろな条件をきめてやつておるのですが、どうもこれが完全に行われておりませんことは、ひとり今回のメーデーばかりでなく、他の各地の事件についても、その実例が示しておるのであります。そして済んでしまつてから、今後と言うが、その次に来るべきものも実施されぬことを、非常に遺憾に存じております。合法的な労働運動なり、特にこのメーデーのごときは、私はこれを理解するに決してやぶさかではない。そういうために、大会は多少会場においては波瀾があつたようですが、とにかく大会そのものは無事に終了いたしたということについては、非常に私は欣快に存じておるわけです。しかしその間においても、権田原付近ですか、いわゆる正々堂々として隊伍を組んで、プラス・バンドを先頭として行くにもかかわらず、さつきの総監の説明によると、最も矯激な分子が隊を乱してトップを切つた。こういうようなことは、主催者とかいろいろな関係者は、十分これは注意をすると同時に、再びそういうことのないように、私は希望いたしたいのであります。そういうことが、やはり波瀾の原因、橋頭堡になると思います。しかも今回のこの皇居前の広場に殺到することに対しては、情報は十分おとりになつておつた。しかもこれが十分な実力をお持ちになつておるにもかかわらず、あえて刺激を最小限度にとめるというお考えのためかもしれませんが、その配備が過少に過ぎますると、やむを得ずわずか二百か三百の警察官をもつて、数千という暴徒に対峙いたすのですから、正当防衛に行きまする手段も、まことにやむを得ないものがあると私は考えるのであります。そこで爾今に対しましては、十分状況を正確にキヤツチいたしまして、十分なる配備をしてもらいたい。私は首都の警察に対して非常なる信頼を寄せている。今回の波瀾暴動については、国際的に非常なるシヨックを受けて、新生日本独立の上においても、私は非常な汚点を印したと思うのです。どうか首都建設の治安の権威にかけましても、今回の事件によりまして、任務に傷ついた警察官のお方に対しては、ほんとうに同情にたえないと同時に、われわれ国会内においても立法措置なり、いろいろな点もありますが、どうかひとつ首都の警察の重大性をさらに再認識をして、再びかようなことのないように、十分検討されんことを希望いたしまして、私の質疑を終ります。
  80. 河原伊三郎

    ○河原委員長代理 床次徳二君。
  81. 床次徳二

    ○床次委員 簡單に御質問したいと思います。先ほど龍野政府委員の御報告によりますと、事前に若干の情報を手に入れて、三者が十分連絡して対策を練つたと言われますが、国警、法務府あるいは警視庁が得られました情報につきまして、はたして三者が同じ程度の情報を持つておつたかどうか、そしてこの得ました情報について、相互に完全にこれを連絡したかどかということを伺いたいのであります。特に伺いたいのは、なおこの事件について龍野政府委員が報告されました中に、この事件は今日から見ると、計画的、組織的活動であると認めるということを言つておられるのでありますが、事前に得られました情報におきまして、この計画的、組織的活動であるということを認識しておられたかどうか、そういう程度の情報を事前に持つておられたかどうかということを伺いたい。
  82. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 法務府といたしましては、先ほど申し上げましたように、メーデーの機会に若干のトラブルが起るであろうという情報を得たのでありまして、この情報を国警本部あるいは警視庁とともどもに検討いたしまして、それに対する対策を協議いたしたわけでございますが、しかしながらその当時得ました情報の結論として、かくのごとく大規模な騒擾が演ぜられるであろうという断定を下すことは、残念ながらできなかつたのであります。この点は情報收集についての問題が、今後に残るわけでありますが、今回のこの不祥事件については、そういう次第でございます。
  83. 床次徳二

    ○床次委員 情報を收集されましたときに、あの程度まで悪性であつたかどうかということはわからなかつた。これはやむを得なかつたとも思いますが、過般の京都事件以来、相当悪性のものがあり得ることも予想できたのじやないか。この点に関しましては今さら追究はいたしませんが、これは十分当局としても考慮を要することじやないか。しかもこの情報に基きまして、法務府、警視庁あるいは国警というものが、三者意見を持ち寄つて相談をされておる。従つてこれが対策につきましても、当初の前提が比較的それが悪性でないという前提のもとに会見されたのでありましようが、最善を尽したところの配備をされたものだと思う。しかもこの配備は究極において警視庁が担任した形になつておりますが、しかし事柄たるや、法務府も当然関知しておるし、国警といたしましても当然知つておつたものと思うのであります。事件の後になりまして、いろいろ新聞紙上を見ますると、この事件責任というものが、いかにも警視庁の責任である、政府では関知しないかのような言動が出ておる。あるいは公安委員会というものがあるので、十分お互いの連絡がとれないかのような意見が出ておるのであります。私はこの点は、はなはだ遺憾に考えておるのであります。情報の交換があり、しかも対策を三者ともに練つておられたならば、それによつて生じたところの結果に対しましては、三者共同の責任じやないか。警視庁のみを責めるということにつきましては、これは実際にあたつて予定通り警視庁が動けなかつたということについては、これはまた直接衝に当つた警視庁としては非難を受けるのはやむを得ないと思いますが、計画そのものに対し、対策そのものに対しましては、三者が十分連絡をとつておられた。従つて全体の責任はむしろ政府が持つべきじやないか。なるほど今日制度上から申しますると、警視庁の責任というものは、直接国警あるいは法務府にはないかもしれません。しかしながら治安という立場から見ますると、今回の問題については、当然法務府あるいは国警本部といたしましても、十分関知しておるのじやないかと思いますが、この点に関しまして当局の御意見を伺いたいと思います。
  84. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 今回の事件について、政府においてある程度の責任があるのじやないかという御意見でございますが、むろん国政全般について責任を持つておる政府といたしまして、政治上の責任はこれはあるだろうと思います。しかしながら御承知の通り、首都の警察に対していかなる警備計画をつくり、これに対していかに警備するかという問題は、これは政府のさしず外の問題であることは、床次委員も御承知の通りであります。従いまして若干の情報を持ち寄つて、何か起るのではなかろうかというような判断が下され、これに対していかなる警備計画をしてこれを防止するかということは、これは直接政府としての責任をとるのは現行法上いかがかと存ぜられるのであります。先ほども申し上げます通り、かかる不祥事件に対して、政治上政府が考えなければならぬ問題は多々あるだろうし、また制度上の欠陥についても、これはむろん対策を考えなければならぬと思いますが、当面の問題について法律上直接の責任はないことは、床次委員もよく御承知の通りと思うのであります。
  85. 床次徳二

    ○床次委員 私は責任問題を追究いたそうとは思つておらないのであります。今回の事実に基きまして、今後再びかかることを起さないようなことが、現行制度のもとにおいてできるかどうか。おのおの職務に最善を尽して治安に当ることができるかどうかということをはつきりいたしたいために、お尋ねいたしたのでありまして、責任をあえて追究しようとは思いませんが、どうもある程度まで法規が不十分なために、これ以上責任が負えないというようなことがあつたのではいけないと思うのであります。結局この問題は警察法の改正という形になつて現われて来るかのように、世間では期待しておると申しまするか、うわさを聞いておる。政府の方もそういうところに一つの結論が落ちておるかのように思うのでありますが、私は簡單にこれはそういう結論を起したから対策ができたのだとは言えないのではないかという疑問を持つわけでありまして、この点ひとつ当局の方々から現在の警察法の中におきましては十分な協力ができない、すなわち法務府あるいは国警、警視庁というものが三者会談して対策を立てられたけれども、しかもそれが十分でなかつたということが起つたのでは、はなはだいけないのでありまして、これはやはり他のものができ得る限り補うだけの対策を持つべきだと思う。これがどうしても法規でなければ、あるいは国警等において助力ができないということになりますれば、それはまたそのような措置を講ずるということを今後考えなければならぬと思いますが、どうも今回の場合におきましては、大体警視庁にだけ一任せられておつた。これは当然警視庁の権限でありまするが、それをもつて大体足りるという予測のもとにやつておられたように思うのでありますが、警視庁としては力のないものを自分で引受けたわけではなかろうと思う。大体の予想においてさしつかえないと三者が認める限度において、対策を立てられたのだろうと思うのでありますが、警視庁が力が足らなかつた、しかも他に協力を請うべきにかかわらず請わなかつたということになりますれば、これは明らかに警視庁の責任である。しかし大体了解のもとにやつておつたものでありますれば、一概に警視庁を責めることは困難ではないか。なおこの間に欠陥がありますれば、法規上の欠陥も是正しなければならぬのでありますが、はたして法規上の欠陥というものについて、どういうふうにお考えになつておりますか、御意見がありますればお述べをいただきたいと思います。
  86. 田中榮一

    ○田中参考人 今回のメーデーの計画につきましては、もちろん情報として国警、特審局、警視庁三者集まつて事務的にひとりメーデーの警備警戒のみならず、一切のいろいろな社会情勢の推移に伴いまして、常に三者会談を催しまして、もちろん私どもがこの会議の席上には出ないのでありますが、担当の部長なり課長なり、その他実際の事務を担当する者が、常に三者の会談に出席をいたしまして、有効なる情報の交換を行いまして、これによつて情勢判断をし、それぞれ適切な計画を立てて参つたのであります。従いまして、今回のメーデーの対策につきましては、これらの情勢判断からいたしまして、警視庁としましても、警備実施面はこれは当然地域管轄の点から、警視庁が全責任を帯びて、このメーデーの取締り計画を実施いたしたのであります。従つて今政務次官からお話がありました通りに、警備上の直接の責任はこれは警視庁であり、私が当面の責任者でありますので、警備上の欠陥から来たことに対する責任は、当然これは私が負わなければならぬと考えておる次第であります。  なおいわゆる政治的な大きな責任というものは、やはり内閣総理大臣が日本の全体の行政の統轄の元締めでありますから、今政務次官から仰せになりましたように、やはり政治的の責任政府が負うべきであろうと思いますが、直接のこうした事件の警備上の責任は、これはあくまで警視庁で負わなくてはならぬ、かように私は考えております。  なおいろいろ機構の問題もございますが、私は、これは私だけの考えでありますが、もちろん機構をいじることも必要でございます。しかし制度を運用するものは人にあるのであります。やはりいかにりつぱな制度ができましても、それを運用する人というものが、十分に密接な連絡をとつて行かなければ、なかなかうまく行かないのでありまして、少くとも今日まで警視庁なり国警なりまた特審局は、人の問題におきましても、相当密接な連絡を保持しつつ、今日までいろいろやつてつたのであります。しかしながらこうしたことの起つたということに対しましては、私どもも非常に恐縮に考えておるのでありますが、この事件のあとをさらに振返り、またさらに反省をいたしまして、今後もし欠点があるならば、これを十分にひとつ補正し、また反省して、再びこうしたことの絶対に起らないように、われわれとしてはさらにひとつ努力をして行かなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  87. 床次徳二

    ○床次委員 制度の問題につきましては、また別の機会に言及したいと思うのでありますが、三者が十分連絡協調した場合におきましては、これはある意味において、三者は十分共同の責任を持つべきものではないか、これを結果において実施官庁にだけ——実施上の責任はこれは当然でありますが、他の一般の責任を免れるというようなことは、ほんとうの意味の三者の連絡ができておるものではないと思う。これは制度の問題ではなくて、ただいまお話がありましたごとく、関係当事者の人間の問題だという気持がするのであります。これは運用の面においても十分お考えおき願いたいと思います。  なおこの機会に一言申し上げたいのでありますが、今回のメーデーは、最初におきましては、なかなかよくできたと言つてもいい部分があつたと思うのでありますが、私が見ました範囲内におきましては、もう国会近所に参りました場合におきまして、ある部隊におきましては、いわゆる交通妨害を非常にやつておる。結果において交通妨害になつておる。なかなか警官が道路をあけさせましても、自動車の交通を許さないというような形を呈しておつたと思います。かかる事柄は、やはりメーデーを今後りつぱにやらせるという場合につきましては、少しの法規違反というものに対しましても、やはりこれを正して行く、これを放任せずして、法に従うという運動を馴致して行くということが必要だと思います。わずかくらいだからといつて、交通違反をあえてして行くというような形をいたしますると、これがだんだんと高じまして、遂には群衆心理によつてこれが暴動にまで持つて行かれるというようなおそれもあるのではないかと思います。この点はひとつ取締りに当られる当局におきましてもお考えをいただきまして、今後正しい労働運動というものを、さらに一層誤りのないように御留意をいただきたいと注文を申し上げる次第であります。
  88. 田中榮一

    ○田中参考人 まことにけつこうな御意見でありまして、私どもも小さいことも実は一々これを注意いたしまして、警戒もし、また警告も発しまして、これを是正いたして参つておるのでありますが、ただ何分にもこうしたメーデーとかそういつた場合におきましては、集まる一般大衆の気持の上で、非常に興奮状態になつておりますので、こちらとしては当然小さなことでも注意をいたすのでありますが、それがややもすればメーデーそのものに対する干渉というように誤解をいたしまして、それを刺激したということによつて警察官に対していろいろ暴行みたいなことをした例も過去においてあり、やがてそれが非常に大きな暴動にもなるというおそれもありますので、われわれとしてはメーデーの当日だけは、大衆が気持よくメーデーが行えるように、できるだけ警察官としても協力するという態勢で、実は進んでおつたのであります。今後は十分主催者側とも連絡をとりまして、今御指摘の点については、さらにひとつ主催者側にもこれを申し伝えまして、善処いたしたいと考えております。
  89. 河原伊三郎

    ○河原委員長代理 門司亮君。
  90. 門司亮

    ○門司委員 この機会にごく簡單に聞いておきたいと思います。もうすでに十分本会議でもいろいろ質問されておりますので、余分に聞く必要はないのでありますが、今度の事件で私どもが非常にふに落ちないのは、皇居前の広場まであの行進が行つたということであります。日比谷公園で解散することになつておりますので、日比谷公園の外に出れば、そのときからああいう行動は当然行われる。そのときにどうして取締りができなかつたか。この点は技術上の問題で、私はしろうとだから一向わからんですが、何か取締りの方には理由があつたかどうか、この点を先に聞いておきたいと思います。
  91. 田中榮一

    ○田中参考人 当時の情勢判断といたしましては、日比谷公園においてメーデーの大部隊が解散をする、あるいは日比谷公園から新橋方面であるとか、あるいは銀座方面であるとか、あるいはまた神田方面または皇居前広場へ入つて行くというようないろいろな情勢判断をしておつたのであります。そうして日比谷交叉点のところに、先ほどちよつと図面で説明したのでありますが、八十数名の警察官を立てまして、無許可の示威運動等が行われないようにというので、あそこで一応さらに警戒をいたしておつたのであります。ところが何分にも数千の部隊が一ぺんにどつと出て来たものですから、その制止ができませんで、そのまま押されて馬場先門まで行つてしまつたということになつております。そして馬場先門におきましては、やはり三百数十名のものがありまして、一応警戒しておつたのでありますが、これも人数が不足のためにそのまま突破されてしまつた、こういう状態になつておるのであります。従つて事前の警戒態勢というものは、きわめて人数は少かつたのでありますが、われわれとしては一応警戒を実施すべくそこに警察官等を立てておつたわけであります。
  92. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと、最初からどの方面にどういう形で出て行くであろうかというような予測がついておつたとすれば、今の答弁だけでは非常にふに落ちないのでありまして、日比谷公園の入口の交叉点のところに八十人くらいおつて、あと馬場先門のところにたくさんおつたということになると、私は誘導したのじやないかという気がするのですが、これを悪く考えると、宮城前の広場がお互いに演習するのに都合がよかろう——これは少し言い過ぎかもしれませんが、どう考えても私には一応誘導したような形としか受取れないのであります。もしそういう情勢判断がありますならば、さつき申し上げましたようにすることが私はいいと考えております。しかし現実の問題としてはできなかつたということであります。  それからもう一つ情勢判断について聞いておきたいと思いますことは、あそこでああいう乱闘にならないように、この行進をそのまま手をつけないで見のがしておつたら、一体どういうことになるかというような判断を、警視庁では考えられておつたかどうか、それを聞きたい。
  93. 田中榮一

    ○田中参考人 第一の御質問の、この暴徒の一団を皇居前広場に誘導したのではないかというようなお疑いがあるのでありますが、これはもちろん警察官がこうしたものを皇居前広場に誘導するというようなことは毛頭考えておりません。それがために入口等には相当な警察官を配置いたしまして、こうした乱入を防止しておつたわけであります。  それからあの場合に、手をつけない場合はどうかということでありますが、これはもちろん手をつけないで、そのまま解散できたならば、それが私は一番よかつたと思います。しかしながらあの場合におきまして、警察官に対しまして、何ら事由なく突然暴行行為をやつて来たということでありまして、これは手をつけるとかつけないとかいう問題でなくて、正当防衛上これを解散させざるを得ないような状態になつて来たわけであります。あれは私の方としてはもちろんそのまま解散させればそれが一番よかつたと思います。しかしそうでたくして、明らかに警察官に対して一方的に挑戰的に暴行して来たという事実がある以上、これは解散するとかしないでなくて、警察としては正当防衛上これをあくまで押しのけて、そしてこれを解散させ、とにかく皇居前広場からこれを一掃させるということに努力したわけであります。なお暴行した者に対しては検挙するという方針をとつております。
  94. 門司亮

    ○門司委員 警視総監に政治上のことを質問してもしようがないと思いますので、單にそういう取締りの面だけをお伺いしておきたいと思います。そういたしますと、あの事件の起つたということは、不法な集団行為に対する解散命令に対して、それをがえんじなかつたので起つたということでありますか、それとも單なる交通妨害の形で最初は取締ろうとされたのか、一体どちらでありますか。
  95. 田中榮一

    ○田中参考人 皇居前広場から乱入した数千の集団が、二重橋の前で大きな集団をつくりまして、そこでインターを歌い、あるいは演説をする者もありましたし、あの場所で大きな無許可の集団示威運動になつたわけであります。それからすでに馬場先門から入るときの状態がまつたく乱入する状態になりまして、そのときに私どもの考えとしては、法規上單なる無許可の示威行進、示威運動というものではなくして、もうそのときからすでに騒擾の形を呈しておつた。それは駐留軍の自動車に対して投石したり、放火したりしながら来ているのでありますから、これは無許可の示威行進ではないのでありまして、一つの騒擾という形を呈して来ているわけであります。そこでこれを二重橋前においてそのままにしておいたならば、どういうことになるかわからぬということから解散を命じようとしたところ、警察官に対して暴行を加えて来たのであります。そのときからすでに乱闘が始まつたわけであります。こういう状況であります。
  96. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思います。この場合、今の総監の御答弁では、最初解散を命じようとしたときにあの事件が——命ずるというか、その伝達が十分に向うに通じないうちに、乱闘になつたというように私は解釈しておるのでありますが、もしそうだとしたならば、あそこでインターを歌つて、そしてデモ行進、デモ隊になつて、これがどういうことになるかわからないという予測があつたというようなお話でありますが、その前に一般の通行人あるいは関係のない諸君に危害を加えるというような危険性があつたかどうかということです。それからまたそういうことが事実あつたかどうかということです。
  97. 田中榮一

    ○田中参考人 現実に一般の市民が傷害を受けたかどうかということについては私はまだ存じませんが、すでに日比谷の交叉点におきまして八十数名の警察官がおつて、そこでもつて相当集団が混乱状態になりまして、交通がまつたく混乱状態になつております。それからさらに馬場先門においても、そういう状態になつております。それからそのグループが手に手に凶器を携えて、二重橋前におきまして大きな一つの集団となつて、気勢を上げたのであります。従つてこれをそのまま放置しておきますれば、これがどういうところへ集団的に移動しましていかなる暴行が行われるかわからぬ。そういう点から警視総監としては、これに解散を命じたのであります。
  98. 門司亮

    ○門司委員 私はまつたくその実情を知らないから聞いておるのであります。知つていて聞くわけではありません。従つてもう一つ聞いておきたいと思いますことは、今の話でありますが、どうするか、どこへどう行くかわからぬ、こういうことでありまして、従つてこれはよくあることでありまして、警察も少し冷静を欠いて、あのままほうつておくならばどういう事件が起るかわからぬというようなことで、一応実力においてあれを解散させろというようなことを、一方から言えば警察の挑発と言い、警察から言えば正当防衛だ、こういうことに現在なつておるのでありますが、警察が挑発したかしないかということは、非常にむずかしい問題でありまして、むずかしい問題であるということは、結局見通しの問題でありまして、もしあのままにしておいてどうなるかわからぬということになりまするならば、事態は一体どういうふうに展開するとお考えになつておつたかということ、相手のないのにけんかはなかなかできるものではないと思いますが、もしあの集団が普通の家屋に侵入したり、あるいは普通の家屋に放火をしたり、あるいは二重橋を渡つたかもしれない、そういうことがあのときに想像されたかどうかということ、いわゆる警察官が取締ろうとする警察法にありまする他人の財産あるいは生命に危害を加えようとする者に対しては、これは当然取締ることが必要だ。あの集団がそういう危険性を持つておつたかどうかということでありますが、これの見通しは一体どうでありましたか、この点をもう一つ伺つておきたい。
  99. 田中榮一

    ○田中参考人 私も現場におつたものでありませんから、よく実際の実感は出ないのでありますが、ただ私は当日警視庁の五階の屋上から、あの広場の中の状況を望遠鏡をもつて見ておりました。その際の状況は、旗を振り、インターを歌い、そうして警察官に対して投石をいたしております。盛んに砂利を投げ、棒切れを投げ、あらゆるものを投げつけております。演説する者もあつたようであります。これは都条例から言えば、はつきり一つの無許可の示威運動に該当するわけであります。それからいろいろの点からしてこうしたものを、警察官がそばにおつて、そのまま放置しておくということはできない。従つてこれに解散を当然に命じた、こういうことになります。  それからもしこのままの状態にしておつたならば、どうかということでありますが、写真にもございます通り、二重橋の柵は倒されております。二重橋は渡らなかつたと思いますが、写真なんか見ますと、柵なんか相当倒されておる状況で、あるいは二重橋に侵入するというようなことも、絶対に考えられないことはないのでありまして、幸いにしてそうしたことはなかつたのでありまするが、しかしあのままの状態で放置しておくということは、いろいろの意味におきまして、やはり憂慮すべき状態になるのではないか、一刻も早くこれを解散させる、追い出す、これを早く散らしてしまうということが、警察としては当然とらなくてはならない処置であつたと思うのであります。
  100. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ。あのままの状態であれば、普通の民家に放火するとか、あるいは普通の人に対して危害を加えるというような危険性があの場合あつたのか、なかつたかということであります。
  101. 田中榮一

    ○田中参考人 私は普通の民家に放火するとか、普通の通行人に対して危害を加えるというようなことは予想はいたしておりません。ただ駐留軍の施設に対するいろいろな暴行であるとか、あるいは警察派出所、税務署とか、そうしたものに対する暴行事件というものは、あるいは起るのではないかということは考えられたわけであります。(「広場に税務署があるか」と呼ぶ者あり)
  102. 門司亮

    ○門司委員 これ以上私は聞きませんが、きようの夕刊を見ますと、治安対策に対して政府は特別の処置をとりたいということがきようの閣議できまつた、いわゆる警察法の改正をするとか、あるいは公安条例を各自治警その他でやつておりますものを一本にする方がいいというようなことで、公安条例がおそらく法律になつて出て来るのではないかというようなことが、書かれておるわけでありますが、こうしたことが今政府で考えられておるということについて、公安条例に対してはこれを一本化した方がいい、いわゆる法律にした方がいいというお考えを、総監はお持ちになつておるかどうかということ。  それから政務次官にひとつお聞きをしておきたいと思いますことは、きようの閣議できまつたと夕刊が報道しております警察法の改正は、新聞ではそう詳しく書いておりませんが、一体どの程度に改正が行われようとしておるのか、この機会に私お聞きをしておきたいと思います。
  103. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 警察制度の改善、ここに首都の警察に関する問題は、政府としても早くから研究いたしておつたのでありますが、御承知の通りに治安の確保というのは、政府仕事としては最も大きな責任でなければならぬにもかかわらず、今日の警察制度はこれに対して政府として直接の責任を国会に対してとるというような仕組みになつていないことは、御承知の通りであります。でありますから、今回の騒擾事件に照しましても、先ほども床次君の質問にもお答えいたしました通りに、政府として政治上の責任の有無は議論がありましようけれども、これを未然に防遏し、また起つた結果に対して、法律政府責任をとるというような仕組みになつていないことは、これははなはだ政治の方式としておもしろくないというふうに、われわれも考えておるのであります。従つて最小限度政府が国会に対して治安に対して責任をとり得る態勢にするのが、最小限度の要望であるのであります。本日の夕刊に、本日の閣議で決定された要綱が発表されておりますが、これに対しまして法務総裁談も発表になつております。この内容は要綱でありまして、この要綱に基いて今後法律案を起草するわけでありますが、その内容は二つございます。一つは、自治体警察に対して治安上必要な場合には、ある程度の指示権を総理大臣が持つ。これが第一点。第二点は国家警察本部の長官並びに首都警察の長である警視総監の人事に関して、政府がそれぞれの関係委員会意見を聞いて任命するという、この二つの点がおもな点になつておるのであります。この線に沿うて近く警察法の改正が行われ、おそらくこれは私の想像でありますから、あるいは違うかもしれませんが、近く国会に——今国会に提出する運びになるのではないかと、われわれは考えております。
  104. 田中榮一

    ○田中参考人 これは私から答弁するのは少し筋違いであるかも存じませんが、現在公安条例は、全国の都市におきましてむしろできておる方が少い。それから地方によりましては、県で条例をつくつてそれで全体の市町村をカバーしておる状況であります。またある県によりましては、県条例もできてない、それから市条例もできてない、ことに関西地方の尼崎市のごときは、全然公安条例もございません。そのために相当朝鮮人等が、常に集団的な暴力行為の挙に出まして、非常に治安上憂慮すべき点があるやに聞いております。また公安条例というものは、要するに適法なる示威運動、それから公開の場所における集会等の取締りでありまして、現在警視庁におきまして、公安条例の許可申請が八千件くらいありますが、それを不許可にしたのは、ほとんど二、三件しかございません。大体において公安条例に基く許可というものは、大部分条件をつけるとか、適当な方法によつてこれを許可いたしております。従つて現在地方によつて公安条例があるところもあるし、ないところもあるのでは、全体としての治安上の取締りについて厚薄があり、また非常に欠陥を生ずるのではないか、かように考えております。従いまして、これは県条例、あるいは市条例等にまかすべき性質のものではないと思います。これはやはり全国をカバーするところの法律によつて、何という法律になるか知りませんが、そうした法律によつて、同等に全国を取締るというふうにした方が、公平を期し得るのではないか、かように考えておる次第であります。
  105. 門司亮

    ○門司委員 これで質問をやめますが、これは次官に質問するのはどうかと思いますが、もしお答えが願えるなら、お答えをしていただきたいと思います。それは、先ほど警察法の改正について二つの要点のお話がありましたか、いずれも事務的のものでありまして、ただ直接の任命権者であるから、責任がそこにつながるということは、一応考えられるのでありますが、それ以外に、この警察法をこういう形にかえましても、こういう事件が起らぬとはだれも言い得ないのでありまして、もし政府がこういう事件が起つて政府責任の所在において処理することが、非常に困難であつたということに十分気がつくなら、政府警察法の改正よりも、むしろこういう事件が起らぬことを考えた方がりこうだと思います。こういう事件は、十分われわれ考えていただきませんと、もしこういう形で国家警察の長官の任命なり、警視総監が任命されるということになつて参りますと、いまだ真に民主化していない日本の政治形態の上におきましては、ややともいたしますると、これが政党あるいに権力に利用される危険性の方が多くなりはしないかと私は思います。従つてこういう事件を起さぬようにするには、先ほど申し上げましたように、政府自身がそれが起らないような施策を講ずることが先決であつて、そうしてその上で警察法というものを討議すべきである。従つてこの機会に御考慮を願いたいと思いますことは、政府は單なる警察法の改正だけで、責任の所在が明確になればというようなお話でありまするが、責任の所在は、もとより政府にあることは間違いありません。これはただ法律運営の上において、公安委員会があり、あるいは公安委員会の任命する者があることでありまして、国家の治安の責任は、総理大臣にあることに間違いありません。これは政府がのがれようとしても、のがれることができないことであります。そのゆえんのものは、先ほどから申し上げておりますように、治安の状態の保持ということは、政府の政治の貧困さということが、一つの大きな問題でありまして、ほかに何も原因はないと思います。ということは、單なる窃盗とか、あるいは小さな強盗のようなものでも、やはりある程度政府の施策が悪いからということが言い得るのでありますが、そういうものではない、こういう大きな集団的の問題が起るということは、警察法が不備だからそういう問題が起つたとは、だれも考えられない。また警察法が不備だから、責任上これにとやかく言うなら、それほど責任をお感じになるなら、警察法を改正する前に、むしろこういう事件の起らないような施策を講じていただきたいということを、強く考えておるのでありますが、一体政府はそういうお考えをお持ちになつておるかどうか伺いたい。
  106. 龍野喜一郎

    ○龍野政府委員 ただいまの御意見は、まことに御意見としてりつぱなことで、昔から法の目的は、法なきにしかずと言われるが、自由党内閣もその目的のために、全力をあげてやつておるわけであります。なおこの警察法の問題につきましては、国会に提案になりましたならば、その際十分御審議願うことにいたしまして、私の答弁はこの程度でお許しいただきたいと思います。
  107. 河原伊三郎

    ○河原委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十六分散会