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鈴木(俊)
政府委員 憲法の
地方公共団体と申しますのは、別に
憲法がはつきりと都道府県、
市町村というようなぐあいに書いてありますれば——これは特に
普通地方公共団体、
特別地方公共団体を区分して書いているというふうに、明確にはな
つていないわけでありまして、要するに先ほど来申し上げますように、普遍的な、
基礎的な、そういう一般的な
地方公共団体について適用される大
原則を、
憲法は大きくうたつたものであるというふうに、われわれ解釈をいたしておるのであります。そこで
お尋ねの、たとえば
特別市、特別区、それから
財産区、一部
事務組合というような
地方自治法上の
特別地方公共団体と、
憲法との
関係をいかにするかということでありますが、
特別市は
地方自治法上、これは府県と市とが合体をしてでき上る
地方公共団体であります。すなわち府県の仕事も市の仕事もともにこれを一括して行う、
権限的にはいわば最も強い
地方公共団体であります。府県なり
市町村よりさらに強力な
地方公共団体であります。この長は、これは当然直接選挙にしなければならぬ、
憲法の
原則が普遍的な、一般的な
地方公共団体についてさえも、その長の直接選挙を
規定いたしておるといたしますれば、さらにそれよりも性格的に強い
地方公共団体である
特別市については、これは当然にその長を直接選挙にしなければならぬと思う。現に
地方自治法もそのように
特別市の
首長は直接選挙にしておるわけであります。これを廃止するということは、これは私は
憲法違反である、かように
考えるのであります。ところでしからば特別区の問題とそれから
財産区なりあるいは一部
事務組合との問題でありますが、
財産区なり一部
事務組合は、
財産区は御
承知の通り部落有林野でございますとかいうような
市町村の一部が持
つております
財産、それの管理
事務を行うのが
財産区でございまして、これも
地方住民の利害に非常に密接な
関係はあるのでありますし、山村等に参りますれば、そういう部落有林野の管理というものが、実はその
区域の
住民の死命にもかかわるような重大な問題であるわけであります。しかしその性格がやはりこれは
市町村の一部、古い
地方制度においてい
つておりますように、いわば
市町村を
構成するところの部分的な
地方公共団体、あるいはその内部的な
地方公共団体であるので、そういう点から申しまして、普遍的な
地方公共団体あるいは
基礎的な
地方公共団体と申すことは困難であるわけであります。そういう
意味でその長の直接選挙というものは、これは直接に
規定はされていないわけであります。また一部
事務組合でございますが、この組合管理者というものは、これも相当重要な地位を持
つているわけでございます。たとえば数
市町村が一緒にな
つて水道を経営いたしますとか、学校を共同で経営いたしますとか、その他いろいろの多種多様の一部
事務組合があるわけでありますし、各種の
事務を共同して処理することになりますると、これまたほとんど
一つの
地方公共団体と同じくらいの重要な地位を持つようにもなるわけでございますが、これは直接選挙にいたしますよりも、かえ
つて組合の規約で、その管理者の
選任方法をきめさせる方が、より実情に合うということで、組合の管理者は多くの組合規約においては、組会
議会で選挙するということにな
つておるのであります。特別区の場合は、
特別市等に比較いたしまして、これは
権限がはるかに弱いのであります。と申しますのは、
特別市というのは、府県と市の仕事を
一つの
団体があわせてやる。いわば
二つの
団体を
一つにしたのでありまするけれ
ども、特別区と都の場合は、現在の
東京都の二十三区の問題として
考えますと、か
つて東京市という時代におきましては、
東京市という
一つの
団体で処理しておりましたことを、今日は都と二十三の特別区がこれを処理しておるわけであります。要するに
一つの
団体の仕事をそういうふうに
二つの種類の都と特別区にわけてや
つておるわけでありまして、
特別市とはその
意味でまつたく逆の立場にあるわけであります。のみならず、性格から申しまして、やはり
大都市としての
自治団体といたしましては、都全体を一緒にいたしまして、初めてそこに
一つの自立が可能であるような、そういう
団体になるのであ
つて、たとえば二十三区の外郭地帶の特定の住宅
区域というようなところをとりますと、これは非常に
住民に対する各種の直接
経費がいるのでありまするが、そこには多くの工業とかそういうものがないのでありまして、そういう
意味の税源は非常に乏しい。これに反して千代田区とか中央区というようないわゆる商業地帶のようなところでは、これは非常にたくさんの税源がある。あるいは大田区のようなところでも同様にたくさんの税源がある。ところが千代田区のようなところでは、晝間人口は非常に多いけれ
ども、夜間の人口はほとんどないというようなことで、要するにこれだけを
一つ一つ二十三の区を切り離してみますと、これもあくまでも他の市と同じように
独立した
市町村であるということは非常にむずかしいのであります。やはり二十三区とさらに
市町村が一緒になりまして、都という
一つの地縁
社会を形づく
つておる。そこで初めて自足すると申しますか、最も完全な地縁
社会にまで発達して行くわけでありまして、都というものは、やはり寸断して部分々々に切
つて、それに完全な
独立の
自治体としての性格を与えるという
よりも、やはり都全体として、これが
基礎的な、部分的な
地方公共団体であるという性格を与えました方がいいのであります。そういう
意味から申しまして、特別区というものは、やはり都を
構成しているところの
一つの部分的な
地方公共団体である。
従つてこれは同じく
地方自治法上は
特別地方公共団体と言
つておりますけれ
ども、性格的には、また
実質的には、まつたくこれは違うものである。そういう
意味から申しますると、むしろ
財産区等の、
市町村の一部とか
つて言われたような部分的な
地方公共団体と言うことの方が、より多く
実態に合うのである。そういうふうに私
ども考えておるわけであります。そういう
意味から申しまして、特別区の
区長の選挙の問題、
任命の問題は、これは
憲法上の
地方公共団体という範疇には入らない、特別区の
区長を
公選にするか、あるいは
区議会の
同意を経て
知事が
任命するようにするかということは、
自治政策の問題である、かように
考えておるわけであります。