運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-04-28 第13回国会 衆議院 地方行政委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十八日(月曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 金光 義邦君    理事 大泉 寛三君 理事 野村專太郎君    理事 門司  亮君    今村長太郎君       川本 末治君    小玉 治行君       前尾繁三郎君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    藤田 義光君       立花 敏男君    大石ヨシエ君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁行         政課長)    長野 士郎君         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   佐久間 彊君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 四月二十八日  門司亮君が理事に補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七五号)     —————————————
  2. 金光義邦

    金光委員長 これより会議を開きます。  法案の審査に先だちまして、この際理事補欠選任を行いたいと思います。すなわち理事でありました門司亮君が一度委員を辞任されましたので、爾来理事が欠員となつております。つきましては理事補欠選任を行いたいと思いますが、これは投票の手続を省略して、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金光義邦

    金光委員長 御異議なしと認め、門司亮君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 金光義邦

    金光委員長 地方自治法の一部を改正する法律案を議題として、前会に引続き質疑を続行いたします。質疑を許します。立花君。
  5. 立花敏男

    立花委員 今度の自治法改正を貫きます精神が、どうも地方自治権の縮小の方向にあると断定せざるを得ないような点が多いわけでございますが、たとえば地方議会の開会の問題、あるいは議員の定数の問題、こういう問題でその疑いが濃厚なんですが、特に明白なのは東京都の二十三区の問題だろうと思うのです。この問題を具体的に検討することによつて、今回の地方自治法改正がまつたく地方自治に逆行するものであるという点を確認したいと思うのですが、その点で問題を二十三区の問題にしぼつて質問をやつて行きたいと思います。   まず最初に大臣自治法改正提案理由説明の中にこう書いてある。  「特別区に対して都民の生活に最も身近な事務は、原則として特別区に処理させ、そうして実質的には特別区の権能に属する事務を増加する。」こうあるのですが、これは十ページから十一ページにかけてですが、そういう考え方を持つておられるとすると、やはり特別区が特別区として存続して、しかも特別区のそういう固有事務と申しますか、特別区の区民に身近な事務は、これからますます特別区の行政にまかして行くんだという考え方だと思うのですが、この項をひとつ御説明御確認願いたいと思うのです。
  6. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今の特別区につきましての大臣提案理由の中に、特別区の権能に属する事務を増加するというふうにしてあるということでありますが、これは現行法におきましては、特別区というものについて、市に関する法律を適用する、こういうふうになつており、また都につきましても、同様に市に関する規定を適用する建前になつておるのでありまして、実質的には、この二十三区のございまする——旧三十五区のこの特別区の区域におきましては、普通の市であれば、一つの市が行いまする仕事を都と二十三区の区がそれぞれ処理する、こういうふうになつておるのであります。要するに形式的には一つの市と同じような建前に扱われておるわけでありまするが、今回の案におきましては、その点を実質的にもさらに進めまして、特別区の実質的な権限というものを、ある程度ふやすということをいたしておるわけであります。特にこの二百八十一條に、たとえば主として区内の交通の用に供する道路の設置、管理でございますとか、あるいはまた道路清掃事業でありますとか、公共便所でありまするとか、街路樹関係のことでありますとか、あるいは公共溝渠、いわゆる内外下水の問題でございまするとか、このようなものはいずれも新たに加えることにいたしておるわけであります。なおそのほかに都の條例により特別区に属する、あるいは政令によつて特別区に属する事務を処理する建前にしておるわけでございまして、そういうふうに一面において特別区に属する事務をふやしておるのであります。反面また特別区長に対しましては、各種の都直属出先機関をつくりますよりも、特別区の区長に対して直接に事務の委任をいたすことによりまして、これら執行機関としての区長事務権限も大幅にこれをふやしておるわけであります。そういうふうに実質的には特別区の事務、あるいは特別区の区長事務というものをふやすという考え方をとつております。
  7. 立花敏男

    立花委員 特別区の事務をふやして行く、区民に一番身近な事務、たとえば今言われた下水の問題であるとか、そういう区民に身近な事務をこれからどんどんふやして行くのだ、その権限を区にまかして行くのだ、実質的には区民自治を認めて、特別区をやはり特別区として存続して行くのだという考え方に間違いがないと思うのですが、そうすれば、やはり区民が一番自分たちの身近な事務を処理し、その権限を持つものに対して公選制を主張することは、これこそ私は民主主義ではないかと思うのですが、この点非常に政府提案自体矛盾しておるのじやないか。特別区の固有事務を認め、特にそれらの権限を新しく付与し、事務の内容もふやして行くという方法をとるのであれば、従来は公選でなかつたものを今回は特にそういう方法をとるのだから公選にするというのなら話がわかりますが、今までそういう事務が少かつた場合でも公選にしておいたものを、これからさらにその事務をふやし、その権限を増加して行く、こういう場合に従来の公選を廃止して、任命制にするということは、まつたくこれは矛盾したやり方ではないか、これこそ民主主義に逆行するのじやないか。区長権限が付与され、事務が増大して行くにかかわらず、区長公選だけは廃止するという考え方は、これはどうも私どもは納得できない。この点どうお考えになつておるか。大臣説明書の今申しましたこの箇所の五行ばかり前には、今回の公選制を廃止する理由として、こういうことを書いてあります、「大都市における行政の統一的かつ能率的な処理をできるだけ確保しようとしたのであります。」こういう理由であつて、遺憾ながらここには民主的という言葉が拔けておるのです。故意か偶然か知りませんが、統一的能率的に処理するために公選制を廃止するのだと書いてあつて、民主的という言葉が全然抜けておるのですが、ここに今指摘いたしました政府考え方の根本的な矛盾が現われておるのではないか。統一的、能率的に処理しようとはしているが、民主的には処理しようとしてはいないのだ、まつたく非民主的にしか処理しようと考えてないのだということが言えると思う。いくら事務をふやしましても、いくら権限を増加いたしましても、そういうふやされた事務、ふやされた権限に対して、区民発言権がない、区民が何らそれに関与することはできないという方法を一方でおとりになれば、これは決して民主的でもありませんし、区民の要望に従つて行政が行われるはずはないわけなんです。だから私が聞きたいのは、なぜ一方にそういう区民の身近な事務を区にまかせ、あるいはその権限を増加しながら、一方には、非民主的に区長公選を廃止して、任命制にしているのか、その根本的な政府自体のこの提案理由の中にありまする理由を、はつきりとひとつ御説明を願いたい。
  8. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 特別区の区長選任方法をかえたということでありますが、これは何も官選の知事任命制にした、従つてたとえば政府任命するというような方式にしたということではないのであります。根本が、東京都、あるいはほかにもし将来都ができますならば、そういう都というものは、自治法の中にいま一つございまするところの特別市という、この二つ制度、他の特別市という制度とともに、大都市社会を規律する制度として、地方自治法におきましてはこれを規定をしておるわけなのであります。この特別市におきましても、また都という制度におきましても、いかにして大都市行政を民主的に行うかということともに、また合理的、能率的に行うかという建前から、現在の制度ができておると思うのでありまするけれども、それを過去のいろいろの実績から考えまして、都とそれから特別区との関係におきましては、これをやはりできるだけ一体のものとして、大都市社会というそもそも実体一つなのでございますから、そういう一つ大都市に合理的、能率的に適用されるような制度にすることがより望ましい、こういうふうにわれわれは考えておるのであります。これは現在大阪市にいたしましても、京都市にいたしましても、やはり東京と同じような性質を持つ大都市でございまするが、ここでは一人の市長があつて、またこれに市議会がありまして、この二つがいずれも民主的な中枢の機関といたしまして、そのもとに任命区長があるわけであります。さらにこれらの区におきましては、区議会というような仕組みもないわけでありまして、完全なる行政区であります。それに対しまして現在の都政というものは、御承知のごとく都知事、都議会という民選の、それこそ民主的な一つの機構があるわけでございまするが、それが中心になつておるとともに、またその基礎になりまするものとして、東京の場合でありまするならば、二十数個の特別区があるわけであります。ここにまたそれぞれ区長区議会、こうあるわけでございまして、要するに本来実体といたしましては一つの都であるべきものが、さように数十の自治団体にわかれておる。こうして各特別区が、それぞれ独立の市としての基礎を持つようなかつこうになつておりまするところに、本来実体として一つであるべき大都市社会が、数十に分割しておつて、そこにいろいろと対立抗争というものが起つているのであります。本来行政趣旨から申しますと、行政基礎を握るものは、これは民主的に選定されなければなりませんけれども、その行政仕組みとしては、できるだけ一体的かつ統一的に行われまする方が、能率的である。能率的であるということは、少い経費で、少い住民の負担で同じような効果を上げる、あるいはそれ以上の効果を上げる、こういうことをねらうわけでありまして、そういう趣旨から申しまして、都の特別区というものは、府県のもとにおける市町村と同じような独立地域というものでなく、都という一つ大都市社会の内部的な地方団体、あるいは部分的な地方団体、それらのものが合一して一つの都という基礎的な大都市社会をつくるのである、こういう考え方に立つておるわけであります。それならばもつと徹底して、京都とか大阪のような行政区にした方が、一体にするという意味からいえば、もつと徹底するわけでございますけれども、それはやはり東京の場合として考えますならば、過去の多くの沿革がございますし、京都大阪というものも、かつて自治区があつたのでありますけれども自治実態におきましては、京都大阪自治区と東京とは、はなはだしく実質的にも違つて来ておるわけでありまして、そういう実態から考えまして、これはやはり特別区というものを団体として残しておく方が、政府としても絶対に必要である、かように考えておるのであります。ただ執行の面におきましては、やはり都区一体になつて行うことが合理的である。都は都で別に出先機関をつくり、特別区は特別区で自分でやつて行く、こういうことでは、やはり全体としての大都市社会行政が重複いたし、二重になつて参りまして、どうしても能率的でない。従つて経費もよけいかかる。こういうふうに考えられるわけでございます。少くとも執行の面においては、都区は合さつて一つ大都市社会の実に沿うようにいたしたい、こういうわけであります。しかしながら区民代表と申しますか、都民代表と申しますか、いずれの資格においても住民としては同じわけでございますが、そのいわば小さい社会代表するところの議会、都という一つ大都市の中におきまするその部分的な区域、あるいは内部的な構成区域でありまするところの区にあります自治機関としての区議会というものを存置しまして、これはいわば区民代表、あるいはその小さい区域における都民代表機関として、この権限をいよいよ強くしておるというふうに私ども考えておるのであります。区長任命につきましては、住民が直接に選挙するのではなくて、知事区議会同意を得て選ぶ、かようにいたしておるわけでありまして、区民代表機関である区議会権限は、この案によれば、強くなつておる。これは決して民主主義基本原則を逸脱するものではない。ただそういう民主主義基本原則の中で、いかにすれば少い経費で最大の効果を上げ得るかということから、来ておるわけであります。
  9. 立花敏男

    立花委員 問題は原則的な問題でございますので、できるだけ大臣答弁願いたいと思うのです。他の詳細な点で事務当局から御答弁があるのはけつこうですが、大臣がせつかく御出席になつているのですから、原則的な点は大臣からひとつ御答弁願いたいと思います。   それでは今の答弁ですが、都は実体的に統一した団体だから、区議会区長任命制を敢行するのだ、こう言われますが、そうであれば、それを首尾  一貫いたしまして、今度のこれが通りますと、東京都下にあります各自治体首長公選制は廃止される、区長と同じように、全部任命制になさる用意があるのかどうか。おそらくそういうことはされないと思いますが、これでは今述べられた理論は首尾一貫いたさないと思うのであります。そういう矛盾撞着のないような透徹した御答弁を願いたいと思います。それから区長任命制にいたしましても、議会に諮るのだから、これは区民代表であるという点においていささかも選出にかわりがない。かえつて区議会権限を拡張するのだということをただいまも申されましたし、先日の大臣答弁にもあつたと思うのです。そうしたら、なぜ区議会だけは公選にしておきながら、首長公選にできないのか。区民自分たち代表を選ぶ権限を拡張することになるのだ、拡張する意思があるのだと言われながら、なぜ区長公選制だけは廃止されるのか、これはまつたく意味がわからない。区民公選した区議会存続し、それの権限の拡張は民主的にもまつたくいいことだと言つておられながら、なぜ区長公選制を廃止されるのか。議員公選制だけは存置し、それの権限を拡張することは、区民自治権あるいは民主化を促進することになるので、歓迎だと言いながら、なぜ区長公選制を廃止されるのか、ここにも大きな矛盾があると私は思う。さつき述べましたように、区民固有事務、身近な事務を国にまかし、その権限を増加しながら、これを任命制にするというところに第一番の大きな矛盾がありますが、さらに区議会公選制存続、さらにその権限を増加することも賛成だと言つておきながら、なぜ区長公選制だけ廃止するのか、ここにも私どもまつたく政府の言うところに大きな矛盾を感ずるのですが、この矛盾をどういうふうに考えておられるのか、これを御答弁願いたいと思います。
  10. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第一のお尋ねの点は、区長区議会同意選任制と申しますか、そういう方式をとるならば、三多摩の方もあるいは都下市町村の方も形式的にこれは同様にすべきではないかというようなお尋ねのようでございますが、やはり自治政策というものは、そう簡單に数学的に割切つて、これがこうだからこれもこうだというふうな考え方で、考えるべき問題ではないと私は思うのであります。やはりその実質というもの、沿革というものをよく考えつつ制度を立てないと、そこに大きな誤りを来すと思うのであります。と申しますのは、昭和十八年でございますが、そのときに初めて東京都制という制度ができたわけでございますけれども、この昭和十八年の東京都制の際におきましては、三多摩の方の市長までも、全部都の内部的な地方団体であるというふうにして……。(「こら官僚官僚に何がわかるか。大臣答弁しろ。鈴木ひつ込め。」と呼ぶ者あり)大臣の了承を得て発言をいたしております。  そういうふうに、都の下の区と三多摩の方の市町村とを、いずれも同じように内部的な地方団体としてしまつたのであります。それから終戰後地方自治法改正におきましては、今度は三多摩の方の市町村と同じように、特別区をこれまた独立基礎的な地方団体としてしまつたのであります。要するに十八年のときの東京都制もまた地方自治法の特別区も、いずれもこれは一方に偏した解決をしたわけであります。  そこで今回の地方自治法改正案におきましてはどのようにいたしたかと申しますと、三多摩の方の、要するに都下市町村につきましては、これは従来と同じようにそれを包括している。二十三区の方におきましては、都の内部的な構成団体として特別区がある、かようにいたしたのであります。いわばこれは折衷的な案であります。それが一番自治の実情に合うのではないかということでこのようにいたしたわけでありまして、むしろ都の自治体というものは、二十三区の特別区と、都の包括する市町村、こういうものを実質とするものが都である。すなわち大都市社会である都というものは、そもそもそういう形のものであるというふうに、私どもといたしましては考えている次第なのであります。  それから第二のお尋ねの点でございますが、区議会同意を得て選任するというふうに、区長選任方式をかえる。しかし特別区議会の方の公選制、あるいはそれを存続するということを、そのままにしておいてはちんばではないか、こういうようなお尋ねのようでございますけれども、この点は先ほど申し上げましたように、やはり大都市という一つの大きな社会の中のいわば内部的の区わけ——法律的にはその地域代表する住民意思機関、政治的には代表機関というものがあつた方がよろしいという考え方でございます。そういう考え方で、先ほど申しましたように、区議会の地位というものは、この改正案によつて、さらに従来よりも保障されて来ておるわけでございます。そういう考え方で立案をいたした次第でございます。(「大臣そばにおるやないか、なぜ答弁しないか。」と呼ぶ者あり)
  11. 岡野清豪

    岡野国務大臣 おしかりをこうむりましたが、実は私口下手でございますし、皆様に御納得の行くように説明するには、政府委員説明さした方がいいと思いまして、ただいま私から申しつけて説明さしたわけであります。
  12. 立花敏男

    立花委員 大臣簡單に御答弁願えるような質問を出したいと思うのですが、今の答弁によりますと、やはり特別区を特別区、自治区として認めて、議会も置いておるし、権限も拡充して行くべきだと言われるのですが、大臣はやはり自治区、特別区として存続さして行こうという考え方には間違いがないかどうか、簡單でありますので、ひとつ大臣から御答弁願いたいと思います。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。特別区として残して行くつもりでございます。
  14. 立花敏男

    立花委員 次もひとつ簡單でございますから大臣からお答願いたいと思うのですが、特別区であるとすれば、憲法條項に基く特別区の地方公共団体首長公選によらなければいけない、住民の直接選挙によらなければいけないという項目に違反すると思うのですが、大臣は特別区であつても、公選を廃止して、任命制にしても、何ら憲法には違反しないとお考えになつているかどうか、その点お伺いしたい。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。特別区として残しましても、その区長公選制にしないでおいて、これが憲法違反するかしないか、こういう御質問でございます。特別区といたしておきまして、それに対してその区長公選にしないということは、これは憲法に何ら違反しておりません。憲法大綱といたしまして、地方公共団体を置く、こういうことになつております。そうして公共団体の長は公選しろ、こういうことになつております。これは大綱でございます、しかしながら憲法にはその地方公共団体組織とか運営とかいうことは、一に法律にまかしておる次第であります。でございますから、極端に申しますれば、もし地方公共団体というものを一つも置かぬというような自治法を置いたならば、これは憲法違反でございましよう。同時に憲法にいう地方公共団体を置きながら、その首長公選にしないというような自治法をつくりましたならば、これまた憲法に対して違反でございます。しかしながら憲法大綱として地方公共団体を置け、その組織運用法律によつて定めろ、こういうことになつておりまして、自治法が採用いたしておりますところの地方公共団体は、普通公共団体として、憲法に認めてうたつてあります。すなわち普遍的に、かつ基礎的であるところの公共団体憲法にいう地方公共団体とし、自治法によつて必ずその長は公選にしなければならぬ次第であります。しかしながら特別区が地方公共団体であるということは、これは自治法上の政策的の公共団体であつて、そしてその公共団体の長を公選するせぬは、自治法政策上の議論でございまして、何ら憲法に反するところではございませぬ。何となれば、御承知の通りに、自治法一條に出ておりますところの公共団体には二種類ございます。その一種類は、普通地方公共団体と称して都道府県及び市町村としてあります。第二は特別区とか、あるいは財産区とか、一部事務組合で、財産区とか一部事務組合というものは純然たる自治法上の地方公共団体でありまして、それらが今までやはり首長公選になつておらぬことをもつてしても、地方公共団体であつて、われわれが認めて憲法地方公共団体でないというものに対しては、その長の公選というものは、自治法上必要があればしてよろしいし、必要がなければしなくてもよろしい。こういうような建前であります。
  16. 立花敏男

    立花委員 簡單でいいのに大分長くしやべられましたから、いろいろな穴が出て参りまして、質問せざるを得なくなりましたが、特別市を新たに設置する問題が重大な問題になつております。あなたが言われました普通地方公共団体特別地方公共団体、この中には特別市も含まつておるのですが、そういたしますと、あなたの理論によりますと、特別市のようなものも、たとえば大阪、名古屋、京都、こういうようなところが特別市になりました場合について、そこの首長もこれは公選にしなくてもいいということになるわけなんですが、これは私どうもおかしいと思うのです。今五大市特別市制を主張しておりますが、特別市になつて市長任命制になるのであれば、おそらくこれは五大市といえども二の足を踏むだろうと思うのです。大臣がそういう考え方でおられたのでは、これはまつたく迷惑しごくだと思うのです。この問題は小さい問題なのでこのくらいにしておきますが、大臣憲法解釈にやはり大きな誤謬があるのじやないか。憲法九十二條で言つております地方公共団体は、大臣言葉によりますと、普通地方公共団体を指しておるのであつて特別地方公共団体を指していないのだということを言つておられますが、そういうことが何に基いて言えるのか。憲法によりますと、明らかにこの二つを区別せずに、一般的な包括的な言葉地方自治体の公共団体組織ということを言つておりまして、決してこれは特別区や特別市を除外していないと思うのです。それからもう一つ大臣憲法解釈で言われた言葉の中でふに落ちない点は、地方公共団体運営及組織法律によつて定めるということを言われましたが、憲法の條文には法律によつて定めるとはありませんで、地方公共団体運営及組織に関する事項は、地方自治の本旨に基いて定めるとあるわけです。だからあくまでも地方公共団体運営及組織地方自治の本旨に基いて定められなければいけない。そういたしますと、地方自治の本旨は明らかに地方公共団体の民主的な運営、民主的な組織でなければなりませんので、自治法でいくらあなたたちが非民主的な組織や運営を定めようとされましても、それは憲法の、地方公共団体組織と運営は、地方自治の本旨に基いて定められなければいけないという條項に、私は明らかに違反すると思うのです。この点を大臣地方公共団体組織と運営は法律によつて定めればいいのだというふうに曲げて解釈されておりますが、これは明らかに憲法考え方の歪曲である。憲法には地方自治体の組織と運営は、地方自治の本旨に基けと書いてありまして、決してあなた方がかつてにでつち上げた法律によればよろしいということは書いてない。地方自治の本旨ということを、政府が一方的に定めるところの法律で定めていいとは決して書いてございません。この矛盾一体どうお考えになつておるか。かつて自治法を直して官僚的な改竄をやつておいて、法律がそうなつたんだから地方自治はこの組織と運営でやつて行けというようなことは、憲法では許されない。この矛盾大臣はどうお考えになつておるか。これをひとつ御答弁願いたいと思います。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。憲法の第九十二條には「地方公共団体組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、」これはあとで問題になりますが、「法律でこれを定める。」と書いてございます。でございますから、地方自治の本旨をまず取除いておきますと……。     〔立花委員「そんなものを取除いたらたいへんだ」と呼ぶ〕
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それはあとからの問題だと言つております。公共団体組織及び運営に関する事項は、法律でこれを定めるとまず読みます。そうすれば地方自治というものは法律でつくればいいんです。そうして地方自治の本旨に基いてということは、その地方地方の伝統並びに社会的情勢によつて定めればいいのだ……。     〔門司委員「その解釈は違う」と呼ぶ〕
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それは見解の相違です。
  20. 立花敏男

    立花委員 かんじんのところを除いておいて、法律でこれを定めると書いてあるから法律できめていいのだということにはならない。その基準とした地方自治の本旨に基いて法律でこれを定めろとあつて、この地方自治の本旨を除いておいて法律で定めてもいいのだ、かつてにあなたたちの方で慣習だとかなんとかいう言葉を使いながら、かえつて慣習を無視して、今までの自治法を踏みにじつたような法律を定めておいて、そうしてそれで地方組織と運営が定め得るというようなことは、これは憲法には何ら保障しておりません。その点明らかにこれは大臣の詭弁じやないか。かんじんの点を自分つてに拔かしておいて、そういう独断的な解釈はまつたくこれは地方自治法を破壊するものだと言わざるを得ないと思う。それからその前の答弁はどうです。その前には、この地方公共団体はその議会議員及び長は直接これを住民が選擧するとあります。「地方公共団体の長」とありまして、あなたの言われるように「普通地方公共団体の長」とはしてないのです。包括的にあなたの言われる普通地方公共団体特別地方公共団体も、あわせて地方公共団体の長は住民がこれを選挙するとある。あなたはさいぜんは憲法地方公共団体というのは、普通地方公共団体をさしておるので特別市や特別区のようなものは、これは任命制にしたつてかまわないと言われましたが、これも明らかに私は憲法の精神に反するし、明文上から見ましても、ここには地方公共団体と書いてあつて普通地方公共団体とはちつとも書いてない。それを何を根拠にしてあなたはこの地方公共団体という言葉は、普通地方公共団体をさすのだと言われるのか。この点を一つ明白にしていただきたい。     〔委員長退席、野村委員長代理着席〕
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 まず第一に先ほどの御質問特別市公選にしなくてもいいじやないか、こういう御質問であつたように思います。特別市もやはり市町村の市のうちに入ります。でございますから基礎的普遍的な地方公共団体とわれわれは見ておるのでございます。でございますから特別市市長公選制からはずすということは認められない次第であります。それから同時に「地方公共団体」と、九十三條に書いてありますところのこの「地方公共団体」は、何がゆえに普通地方公共団体に限るかという御議論は、これは自治法普通地方公共団体、われわれは憲法に称する地方公共団体と解してそういう立法ができているわけであります。それだけでいいわけであります。
  22. 立花敏男

    立花委員 あなたはさいぜん言われたでしよう。憲法の言つている地方公共団体とは、普通地方公共団体をさすのだ、だから普通地方公共団体の長は公選にしなければいけないが、特別地方公共団体はそうではないのだ、任命制にしてもいいのだという根拠から、区長任命制憲法違反しないのだと言われた。ところが特別市は明らかに普通地方公共団体ではなしに、特別地方公共団体である。だからあなたの根拠から行きますと、大阪や神戸や横浜が特別市になりました場合は、それは普通地方公共団体ではなくて、特別地方公共団体になるのであるから、その市長任命制にしてもいいという根拠が成り立つわけです。それでは、あなたは何をもつて特別市と特別区を区別なさるのか。特別市市長公選でいいが、特別区は任命でやつてもいいというような区別は、一体何をもつておつけになりますか。
  23. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。特別という言葉にとらわれて、あなたは錯覚を起していらつしやる。特別市というものは、性格上どういうものかといえば、府県と市とが一体なつた形の市を特別市というのであります。
  24. 立花敏男

    立花委員 あなたが法律の條文に基いて答弁なさつたから、私はあなたの答弁に基いて質問をしておるのです。あなたがさいぜん言われたように、憲法公共団体と言つておるのは、普通公共団体のことを言つておるので、特別地方公共団体のことを言つていないのだと言われた。ところが地方自治法によります特別地方公共団体の中には、特別市も入つているわけです。それに基いて今度特別市の問題が問題になつている。その場合には、特別区と特別市関係は、やはり同じ特別地方公共団体の中に含まれておつて、あなたがあげられた普通地方公共団体の中に入つていないわけです。だからあなたの答弁はまつたく首尾一貫しないのであつて特別市任命制にはできないが、特別区だけは任命制にしてもいいのだということは、あなたの答弁自体から何ら出て来ないわけです。だからあなたの答弁自体に矛盾がある。だからあなたの答弁は首尾一貫していない。さういうことを私は指摘しておるのであつて、もう少し法文をお読みになつて答弁を願いたいと思います。特別区の区長任命制にするということは、明らかに憲法九十三條の地方公共団体の長は公選にしなければいけないという條文に違反すると思うのですが、違反しないという根拠を明白にお示し願いたいと思う。
  25. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。特別地方公共団体の長を公選にするかせぬかということは、社会実態自治実態によりまして、これを自治法考えるべきものであります。でございますから、今まで特別地方公  共団体の中にも、区長公選にした特別区もありますし、公選をしない財産区もあつて、自由自在にその実態に合せてできておる次第であります。
  26. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後二時八分開議
  27. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 休憩前に引続き再開いたします。  地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたして質疑を続行いたします。質疑を許します。立花敏男君。
  28. 立花敏男

    立花委員 これは鈴木次長が談話を発表されて、新聞にも公表されましたので記憶されておると思いますが、やはりこの問題は憲法違反ではないということを自治庁で堅持されておる。午前中の岡野国務大臣答弁もそうであつたわけでありますが、その根拠を承りたい。
  29. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 特別区の区長公選問題に関係をいたします憲法上の解釈の問題につきまして、お答え申し上げます。午前中岡野国務大臣より申し上げた点とやや重複いたすかもしれませんが、補足して申し上げたいと存じます。  まず憲法の九十三條の第二項の、地方公共団体の長は、その地方公共団体住民が直接選挙する、この規定との関係において直接選挙制でなくすることがどうであるかというお尋ねだと思いますが、この点につきましては、まず憲法地方公共団体と申しまするのは普遍的な、基本的なあるいは基礎的な地方公共団体のことを申しておるのであつて、特殊な性格を有する地方公共団体に対して一律に、地方公共団体の長を直接に選挙する原則を適用するということまで、憲法は意図しているものではない、かように考えるのであります。そういう趣旨からいたしまして、普遍的あるいは基礎的な地方公共団体とは、しからばどういうものかということになるわけでございますが、この憲法にいう普遍的、基礎的な地方公共団体としては、都道府県、市町村というようなものであることについては、これは疑いを入れる余地がないと思います。そこで問題は、特別地方公共団体地方自治法上申しておりますような、そういう種類の地方公共団体は、憲法上の地方公共団体であるかどうかということになるわけであります。この点に関しましては、憲法はやはり基本的な大原則を大らかにうたつておるものである、かように解しまするので、まつたくゆとりのつかない、動きのつかない形のものではないのではないか。人権の宣言に関しまするような、いわば権利章典と申しまするか、そういうものに関しまする憲法規定は、これは拘束的に、あくまで嚴格に解釈すべきものだろうと思いますけれども組織に関する憲法規定等におきましては、あるいはその他の規定等におきましては、必ずしもそのような絶対拘束的な、きゆうくつな解釈でなく、やはり国家の大法典で、基本法典でございますから、大原則を大きくうたつたもの、かように考えるのでございます。そういう意味から申しまして、都道府県とか市町村とかいうような、普遍的、基礎的な地方公共団体については、これは当然に当てはまる大原則であり、またそれ以上のところまで憲法が特に微に入り細をうがつてうたつておる、かようには考えられないのであります。そこで学者、たとえばなくなられました美濃部博士等は、地方公共団体といいますと、財産区でありますとかあるいは一部事務組合というようなものまで、みな公共団体に入れて学問上説明をいたしております。この地方自治法におきましてもその美濃部博士の説と同じような結果になつているわけであります。一部事務組合なり財産区というようなものまですべてこれを地方公共団体、こういうように地方自治法上は解釈をいたして規定をいたしておるわけであります。そこで現在の地方自治法規定憲法地方公共団体の間の解釈の問題でありますが、やはり財産区でありますとか、一部事務組合というようなものは、学問上も地方公共団体であり、地方自治法上も地方公共団体であるということでありますけれども憲法上の地方公共団体というのは、そのような特殊な性格のもの、普遍的でないものについてまで言つているのではないというふうに考えざるを得ないのであります。またそういうふうにおそらく国会においても御解釈があつたものと解せざるを得ないのであります。その証拠には、現在財産区の執行機関あるいは一部事務組合執行機関につきましては、これは直接選挙の原則をとつていないわけであります。それからさらに特別区と市町村こういう二つ団体から都というものがなつているわけでありますが、この点は午前中もちよつと申し上げましたように、特別区のあるところがいわば大都市の中核をなす区域であるわけであります。それの近郊地帶として、たとえば水道でありますとか、その他の各種の、都市としての外郭地帶における施設というものを行い、この大都市の中心と一体をなして、いわば一種の地縁的な社会をなしており、普遍的な社会をなしておるのが都だと思うのであります。ことにそこには伝統的な沿革も加わつているわけでございます。そういうふうな都の区域全域が、やはり基盤的な地方公共団体であつて従つて都という地方公共団体の長である都知事公選は、絶対に必要な原則である。憲法原則が当然にこれには妥当するのであるが、そのもとにおける特別な地方公共団体であるところの特別区というものについて、その長を直接選挙にするかしないかということは、これは憲法の問題というよりも自治政策の問題である。都という一つ大都市社会の内部の区わけの地方公共団体、その地方公共団体の長にどういう地位を与えるかということは、その都という一つ大都市社会実態に最もよく合致するように制度考えればいい。従つてこれは憲法論ではなくて自治政策の問題である、かように私どもは解釈をいたしておるのであります。この関係は、たとえば五大都市の問題あるいは特別市の問題として考えまする場合に、行政区というような形になつて一つの同じ大都市社会考え制度として、まるで都の場合と違う場合があるのでありますけれども、これはそれぞれ理論的な帰結と、また東京の場合におきましては、多年の沿革実態、こういう両者から考えまして、特別市と都というものの間には、制度上もそのような区別が設けられたもので、このような区別は将来においても、やはりある程度認めて行つてしかるべきではないか、かように考えておるのであります。憲法との関連では、この九十三條の第二項の問題が、一番基本的な問題だと思いますが、なおその他にも御疑問があれば申し上げます。
  30. 立花敏男

    立花委員 やはり九十三條の第二項の問題ですが、さいぜんからたびたび言つておりますように、九十三條では  「地方公共団体」と書いてありまして、決して大臣の言うように「普通地方公共団体」とは書いてない。この点がやはり私は問題だと思います。それで次長の言われましたように、普遍的、基礎的な公共団体、これは一体何かという問題になりますが、この問題から見ましても、その実際の面から見ましても、やはり特別地方公共団体として考えられております四つのうち、財産区あるいは一部事務組合というようなものと、特別市あるいは特別区というようなものとは、これは明らかに性格上本質的な違いがあつて、あなたの言われる普遍的、基礎的な公共団体といいます場合には、前の二つは当てはまらない場合でも、あとの二つは当然これは基礎的な、普遍的な地方公共団体として認めなければいけないんじやないか。だから憲法で言つております地方公共団体は、地方自治法上の特別地方公共団体を含まないんだ。それは公選制を廃止して任命制にしてもいいんだということになりますと、そういう議論から推して行きますと、大阪市でも特別市なつた場合は、それはもはや基礎的な普遍的な公共団体でないのだ、それは地方自治法規定する特別地方公共団体であるから、それは市長任命制にしていいのだというような、まつたくへんてこな扱いが出て参りまして、結局理論が一貫しないということになるのじやないかと思う。だから特別地方公共団体の中におきましても、まつたく事務的な、いわゆる一部事務組合であります市町村の一部事務を扱います組合、あるいは一定の財産、土地、あるいは建物等の財産を管理いたすためのまつたく事務的なものであります財産区というようなものと、いわゆる問題になつております東京の二十三区というようなもの、あるいは大阪、神戸、横浜等の特別市とは、根本的に違つてやはり考えなければいけないのじやないか、こういうようなものは明らかに基礎的な普遍的な公共団体である、こういうふうに観念すべきが当然じやないかと思うのです。そういうところからいたしまして、現在の自治法でやはり区長公選制を認めておりますし、あるいはもつと基本的には東京都の二十三区を普遍的基礎的な自治体として、それを自治区、行政区として特別に扱つておると思うのです。だからこそこの公選制が行われておりますので、そうでありませんと、あなたのような理論から行きますと、公選制にしたことは間違いであるということにならざるを得ないし、間違いでないといたしましても、政府の一方的な考え方で、公選にしても任命にしても、それをかわるがわるやつても、これは関係がないのだ、かつてなのだということになると思う。少くともそういう観点から、今の自治法が区を市として扱うというふうな規定がしてあるのだと思います。しかもこれはすでにそういうように法的にも定められておりますし、すでに慣習法ともなつておりますし、現在の区長公選制で出て参つておりますので、そういう事態を一方的に無視して、政府の方でただ單に形式的な地方自治法、それも完全に私妥当ではないと思いますが、そういうものを援用して、そうしてせつかくの公選制任命制にするということは、これこそいわゆる官僚の独断ではないか、特に都の都民あるいは区民から重大な要求があり、大きな運動が起りまして、どうしても任命制にしろというなら、これは話はわかりますが、現在の事態はまつたく逆でありまして、二十三区あるいは都民は反対だという声の方が大きいわけなのです。それを政府が一方的に政府提案の自治法改正の中で、そういう問題を天降り的に取上げられるということは、たとい百歩を譲りましてりくつは通つておるといたしましても、これは政府としてはなすべきことではないのじやないか。その意味で非常に大きな不満を感ぜざるを得ないと思うのですが、特別地方公共団体の中で、一部事務組合あるいは財産区というようなものと、特別市あるいは特別区というようなものの間に、本質的な差異をお認めになるかどうか、これは政府任命制を採用する根本的な考え方になつておると思いますので、この際お認めになるのかどうか、これをひとつお尋ねいたしたい。新聞で見ました首長任命制は、憲法違反ではないという根拠には、財産区などの首長公選制にしてないから、特別区の場合も公選制にしなくとも憲法違反ではないのだというような理由がありますが、財産区と特別区とは、完全にこれは本質的に違いますので、そういうふうな特殊な場合の例をもつて、特別区などの公選制を廃止し、しかも区民の大きな要望を無視してまで、なぜそういうことをされるのか、非常に不可解なのです。そういう考え方の出て参るその根本的な考え方を、ひとつ尋ねておきたいと思います。
  31. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 憲法地方公共団体と申しますのは、別に憲法がはつきりと都道府県、市町村というようなぐあいに書いてありますれば——これは特に普通地方公共団体特別地方公共団体を区分して書いているというふうに、明確にはなつていないわけでありまして、要するに先ほど来申し上げますように、普遍的な、基礎的な、そういう一般的な地方公共団体について適用される大原則を、憲法は大きくうたつたものであるというふうに、われわれ解釈をいたしておるのであります。そこでお尋ねの、たとえば特別市、特別区、それから財産区、一部事務組合というような地方自治法上の特別地方公共団体と、憲法との関係をいかにするかということでありますが、特別市地方自治法上、これは府県と市とが合体をしてでき上る地方公共団体であります。すなわち府県の仕事も市の仕事もともにこれを一括して行う、権限的にはいわば最も強い地方公共団体であります。府県なり市町村よりさらに強力な地方公共団体であります。この長は、これは当然直接選挙にしなければならぬ、憲法原則が普遍的な、一般的な地方公共団体についてさえも、その長の直接選挙を規定いたしておるといたしますれば、さらにそれよりも性格的に強い地方公共団体である特別市については、これは当然にその長を直接選挙にしなければならぬと思う。現に地方自治法もそのように特別市首長は直接選挙にしておるわけであります。これを廃止するということは、これは私は憲法違反である、かように考えるのであります。ところでしからば特別区の問題とそれから財産区なりあるいは一部事務組合との問題でありますが、財産区なり一部事務組合は、財産区は御承知の通り部落有林野でございますとかいうような市町村の一部が持つております財産、それの管理事務を行うのが財産区でございまして、これも地方住民の利害に非常に密接な関係はあるのでありますし、山村等に参りますれば、そういう部落有林野の管理というものが、実はその区域住民の死命にもかかわるような重大な問題であるわけであります。しかしその性格がやはりこれは市町村の一部、古い地方制度においていつておりますように、いわば市町村構成するところの部分的な地方公共団体、あるいはその内部的な地方公共団体であるので、そういう点から申しまして、普遍的な地方公共団体あるいは基礎的な地方公共団体と申すことは困難であるわけであります。そういう意味でその長の直接選挙というものは、これは直接に規定はされていないわけであります。また一部事務組合でございますが、この組合管理者というものは、これも相当重要な地位を持つているわけでございます。たとえば数市町村が一緒になつて水道を経営いたしますとか、学校を共同で経営いたしますとか、その他いろいろの多種多様の一部事務組合があるわけでありますし、各種の事務を共同して処理することになりますると、これまたほとんど一つ地方公共団体と同じくらいの重要な地位を持つようにもなるわけでございますが、これは直接選挙にいたしますよりも、かえつて組合の規約で、その管理者の選任方法をきめさせる方が、より実情に合うということで、組合の管理者は多くの組合規約においては、組会議会で選挙するということになつておるのであります。特別区の場合は、特別市等に比較いたしまして、これは権限がはるかに弱いのであります。と申しますのは、特別市というのは、府県と市の仕事を一つ団体があわせてやる。いわば二つ団体一つにしたのでありまするけれども、特別区と都の場合は、現在の東京都の二十三区の問題として考えますと、かつて東京市という時代におきましては、東京市という一つ団体で処理しておりましたことを、今日は都と二十三の特別区がこれを処理しておるわけであります。要するに一つ団体の仕事をそういうふうに二つの種類の都と特別区にわけてやつておるわけでありまして、特別市とはその意味でまつたく逆の立場にあるわけであります。のみならず、性格から申しまして、やはり大都市としての自治団体といたしましては、都全体を一緒にいたしまして、初めてそこに一つの自立が可能であるような、そういう団体になるのであつて、たとえば二十三区の外郭地帶の特定の住宅区域というようなところをとりますと、これは非常に住民に対する各種の直接経費がいるのでありまするが、そこには多くの工業とかそういうものがないのでありまして、そういう意味の税源は非常に乏しい。これに反して千代田区とか中央区というようないわゆる商業地帶のようなところでは、これは非常にたくさんの税源がある。あるいは大田区のようなところでも同様にたくさんの税源がある。ところが千代田区のようなところでは、晝間人口は非常に多いけれども、夜間の人口はほとんどないというようなことで、要するにこれだけを一つ一つ二十三の区を切り離してみますと、これもあくまでも他の市と同じように独立した市町村であるということは非常にむずかしいのであります。やはり二十三区とさらに市町村が一緒になりまして、都という一つの地縁社会を形づくつておる。そこで初めて自足すると申しますか、最も完全な地縁社会にまで発達して行くわけでありまして、都というものは、やはり寸断して部分々々に切つて、それに完全な独立自治体としての性格を与えるという  よりも、やはり都全体として、これが基礎的な、部分的な地方公共団体であるという性格を与えました方がいいのであります。そういう意味から申しまして、特別区というものは、やはり都を構成しているところの一つの部分的な地方公共団体である。従つてこれは同じく地方自治法上は特別地方公共団体と言つておりますけれども、性格的には、また実質的には、まつたくこれは違うものである。そういう意味から申しますると、むしろ財産区等の、市町村の一部とかつて言われたような部分的な地方公共団体と言うことの方が、より多く実態に合うのである。そういうふうに私ども考えておるわけであります。そういう意味から申しまして、特別区の区長の選挙の問題、任命の問題は、これは憲法上の地方公共団体という範疇には入らない、特別区の区長公選にするか、あるいは区議会同意を経て知事任命するようにするかということは、自治政策の問題である、かように考えておるわけであります。
  32. 立花敏男

    立花委員 今の答弁は、実際の東京の二十三区の実態を知る者にとりましては、まつたくこれは机上の空論ともいうべきものであつて、各区ごとに、人口を多いところは数十万を擁しまして、公選議員を持ち、議会を持ち、公選首長を持つて、特殊の固有の仕事をやつて参りました東京都の二十三区を、冒涜するものだと私は考える。東京の現在の二十三区が單なる財産区と同じようなものであつて、決して地方公共団体の名に値しないものだということは、これは二十三区の歴史と現実を蹂躪するものであると言わざるを得ないと私は思う。実際をごらんになりましたならば、そういう理論はどこからも出て来ない。單なる財産を管理するだけの財産区と、現在の公共団体実体を備えておりますところの二十三区の自治区とを、同一視するような考え方には、どうしても私賛成することはできません。次長のようなことで行かれますと、現在の地方自治法規定してありますところの、特別区を市とみなす、自治法規定してある市に適用される條項は、これを区に適用するのだというふうに規定されております地方自治法自体が、これでは誤りだということにならざるを得ないと思うのです。特別区はもう自治体ではないのだ、憲法で言つております地方公共団体の範囲には入らないのだ、東京の特別区のようなものは、地方公共団体ではないのだというふうな結論は、これは完全に誤りではないか。そうであれば、午前中に質問いたしましたように、この区の議会の存在を許し、議員公選を許し、その権限を拡張して行こう、どんどんと区に対して事務も委讓して行こう、区民の最も切実な日常生活に必要な事務は、これからもどんどん委讓して行こう、従つて権限も区に委譲するのだということは、これは全然意味をなさない。こういうことを政府考えられておるのは、区をやはり自治体と認められておるからこそ、こういうふうな基礎的な仕事をまかして行き、基礎的な権限を区に与えて行くのだろうと思う。そのために区議会公選も行い、区議会権限も拡張されて行くのだろうと思う。あなたの言われるように、区は地方公共団体ではないのだというふうに言われるならば、なぜこういう方法をおとりになるのか。大臣説明の中には、そういう方法をとつて区議会を尊重して行くのだ、区民自治を認めるために、区議会を尊重し、区議会議員公選を認めて行くのだということであれば、明らかにこれは東京都の特別区は自治体としての実体を認められて、それをむしろ育成して行こうということを考えておられるのだろうと思う。次長の答弁では、東京の特別区はこれは完全に行政区にしてしまつたらいいというような考え方にならざるを得ないと思う。ここに大きな考え方矛盾があるのじやないか。憲法で言つております地方公共団体ということは、明らかに東京都の二十三区のような自治体実体を備えておりますところにつきましては、普遍的に当てはまる原則なんです。地方自治法自体が、やはりこの憲法の精神から制定されておることは間違いがありませんので、地方自治法の第一條でうたつておりますところの地方公共団体は、普通地方公共団体特別地方公共団体にわける、こう書いてあります。この第一條地方公共団体という言葉は、憲法の九十三條の、地方公共団体の長は住民の直接選挙にしなければいけない、この地方公共団体を受けて、地方公共団体普通地方公共団体特別地方公共団体、こういうふうにうたつておるのだろうと思う。自治法自体が第一條において、やはり憲法地方公共団体という言葉を受けて、それを敷衍して行くところの体をなしておると思う。その際に、故意に政府の方で、東京都の特別区はこれは憲法に言う地方公共団体ではないのだというような断定を、どこからおろすことができるのか、非常に私は疑問だと思う。だからこそこじつけとして、都の実態を無視して、東京都の区はこれは財産区と同じもので、これは間違つて東京都の中でそういう自治的な権限を与えられておるので、これはむしろない方がいいのだという考え方になつて参りますと、これは大問題でございますし、政府自身、大臣自身の説明書の精神にも反して来ると思うのです。そこで最後にお尋ねいたしますが、東京都の二十三区は、憲法でいう地方公共団体ではないのであつて、これはむしろ自治区にされておるのが間違いであつて、これは完全な行政区にした方がいい。自治区として区に許されておりますところの一切の事務権限、こういうものは全部都がやつてしまつたらいいのだというふうに断定なさるおつもりなのかどうか。これをひとつ明確にお答え願いたい。
  33. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 どうもだんだんと言葉の行き違いで御意見があるようでありますが、特別区と申しますのは、財産区と同じである、こういうただそこだけの表現をとりますと、非常に誤解を生ずるのであります。私が申し上げました意味は、一部事務組合なり財産区につきまして地方公共団体の長の直接選挙に関する憲法規定の適用がないという意味において同じである、こう申し上げたのであります。特別区の実体財産区の実体あるいは一部事務組合実体、これはおのおのの個々それぞれの性格に従つてつまびらかにそれを探究して行かなければならないのでありまして、財産区と特別区と一緒であるというようなことを私は申し上げたつもりはないのでございます。ただ憲法規定の適用上におきましては、特別区の区長の直接選挙ということにはならない。これを直接選挙にするがよろしいか、知事区議会同意を得て任命するというふうにするがよろしいか、これは自治政策の問題である。従つてこれは法律において国会で十分御審議の上、御決定になるべき筋合いのものである、かように考えておるのでありまして、今の憲法問題とこれとは、従つて実質上の問題とは直接には関係がないというふうに、その点は誤解のないようにお願いいたしたいのであります。要するに実質は特別区なり財産区なり、それぞれ非常に違うことは御指摘の通りであります。ただ憲法規定の適用の上において、この間差異がない、かように申し上げたわけであります。  それでは特別区というものは憲法地方公共団体の中に入るか入らないかということでございますが、これは都という一つ大都市社会を律する制度といたしまして、この都の区域における地方公共団体というものは、これは都そのものが憲法上の地方公共団体である。従つて都の長すなわち都の知事は直接選挙にしなければならない。これは憲法上の要求であるが、その内部的な部分団体である特別区の長の選挙は、憲法規定の問題、憲法に関することではない、かように考えているのであります。ですから要するに自治政策上どれがよろしいかという原則考えて行くべきであると思います。
  34. 立花敏男

    立花委員 今の答弁はやはり納得できない。憲法関係ないと言われますが、これはやはり憲法の問題なんで、午前中にも大臣お尋ねいたしましたところの憲法の九十二條では、地方公共団体の運営は地方自治の本旨に従つてやらなければいけないとありますし、憲法上あるいは地方自治法上、東京都の区は明らかに地方公共団体としての扱いを受け、明白に一個の市としての法律上の扱いを今まで受けて来たわけなので、この区が財産区のようなものである、あるいは一部事務組合のようなものである、こういうことは一時のたとえにいたしましても、まつたく当を得ていない。御承知のように財産区というようなものは、特に公選にする必要は、私これはあまりないと思う。何となれば財産区と申しますのは、御承知のように一定の土地とか建物とか、特定のそういう財産を管理するためのものでありまして、一般の住民もそう大して関心も払つておりませんし、あるいはそういうものに対して公選の主張もあまり強くなると思う。そのやつておる事務から申しましても、都民あるいは区民の日常生活、その自治体の日常生活に、そう密接な関連のある仕事を扱つておるわけではないわけです。特定の財産だけを扱つておるものですから、こういうものの性格と、完全に自治体の体をなしておりますところの区と比較されて、財産区の長が公選ではないから同じ地方公共団体である特別区の長も公選を廃止して任命にしてもいいのだ、そういうことを立案して区民に聞けばそれでいいのではないか、こういうふうなことを言つておられるのですが、これはまつたく論理のもてあそびなので、実態から離れた、東京都の区というものから離れた理論であつて、私どもは迷惑しごくだと言わざるを得ないのであります。一部事務組合にとりまして同じなのです。水道の業務だけを共同で扱う、こういうものと東京都の自治区のようなものと同一視されて、一部事務組合の長が公選ではないから、東京都の区長公選制も廃止していいじやないかという理論は私はどこからも出て来ないと思う。だから問題は、東京都の区あるいは特別市というようなものを、他の特別地方公共団体であるところの財産区や、あるいは一部事務組合と本質的に違うものとして認識されるかどうか、この問題に帰着して来るだろうと思うのです。こういうものを無視して、しかも今まですでに法律上も実際上も自治が与えられておるものを、今回逆転さすというようなことは、これは私はどうしても感情の上からも納得できないし、憲法の上から申しましても、自治法の上から申しましても、完全な間違いであるだろうと思う。政府の方で自治法改正をお出しになるのであれば、やはり憲法の精神に従つて自治の本旨に従つて改正をお出しになるべきで、自治の本旨を離れて改正をお出しになるべきではない。そういう意味においても、この問題と憲法の問題は完全につながつておらなければならないだろうと思うのです。それを政府の方でこれは憲法上の問題ではないというようなことを言われるのは、政府のお出しになつた法案が明らかに憲法違反しておるから、憲法の問題ではない——憲法からこういうふうに切り離して問題を事務的に片づけようとする策謀にほかならないと、私は断言しても間違いではないと思います。憲法の九十二條に規定しておりますところの自治体の運営と組織は、地方自治の本旨に従つてやらなければいけないという規定は、いつの場合にもこれは生かされなければいけないし、特に講和を控えまして重大な地方自治の問題が問題になつております場合に出されます地方自治法改正につきましては、その点こそ私は最も愼重に尊重されて、改正案が出されなければいけないと思うのですが、政府が故意に九十二條の地方自治の本旨に従つてやらなければいけないということを無視されようとしておられることは、はなはだ私は遺憾だと思いますし、出されました改正法案の全体を貫きまして、やはりその精神があるのではないか。最初に申し上げましたが、地方議員の定数を減らし、あるいは議会の開会を制限し、政府は最近府県知事任命制にして、道州制をやるのだということを吉田総理の意見として新聞に発表されておりますが、こういうふうに、講和を機会として政府考えております地方自治は、大幅に中央集権的に、反動的に切りかえられようとしておる。そういう意図が憲法の九十二條と真正面から衝突するから、憲法とは関係ないのだというふうな詭弁を弄されておるのだと私は思いますが、改進党の質問があるようですから、私の質問はこれで打切りますが、大臣から、今回の地方自治法改正憲法の問題とは関係ないのだ、憲法の九十二條を無視して改正をやるのだというふうにお考えになつておるのかどうか、これをひとつ明白に伺つておきたい。
  35. 岡野清豪

    岡野国務大臣 われわれは憲法を尊重して、憲法違反した改正案を出したという考えは毛頭ございません。今次長から十分御説明申し上げました通りに、憲法違反しないという確信のもとにこの法案を出しております。
  36. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 藤田義光君。
  37. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいま立花委員質問の中にもありましたが、今回の自治法改正は、日本がいよいよ独立するときにあたりましていろいろな意味で重大な影響をもたらすので、私は少し問題を提供しまして、大臣の御答弁を煩わしたいと思います。  まず第一に去る二十一日岡野国務大臣が吉田総理大臣に会われまして、——会われたことは事実のようでございますが、一部の新聞の報道では、その席上で吉田総理大臣が道州制の研究を希望されたということが言われておりますが、事実でありますか。
  38. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は私の所管の事項に対して、すべての方面にわたつて吉田総理と話合つたのでございます。それはむろん今回自治法を出しますについていろいろな問題もありますし、中央の機構の改革の問題もございます。そこで新聞に出ました道州制の問題でございますが、むろんこれは話が出ました。しかしこれはどういう経緯で出たかと申しますれば、終戰後いろいろ自治の改革が行われましたが、日本が独立国家になりました後は、これを日本の国情に合わせ、同時に日本の財政的立場からまかなつて行く、最も日本化した——と言いますよりは現状の日本に適用するようないろいろな改革をしなければならぬ、それには地方制度調査会というものを設けきて、それにいろいろなことを研究させなければならぬ、こういう話をしておるときに、それでは今後地方事務を再配分するときには、やはり府県の性格というものは相当研究しなければならぬ、府県の性格を研究するということになれば、やはり今まで唱えられておりますところの道州制であるとか、あるいは府県を廃合することであるとか、そういうことが問題になる。これは当然地方制度調査会の研究の一項目として出さなければならぬことである。ほかのこともありましたけれども、道州制のことに関しては、そういうような話合いでございます。
  39. 藤田義光

    ○藤田委員 そういたしますと、私は新聞記者として地方総監部あるいは地方行政議会設置の当時のいきさつについて、多少知つております。行政の内容の善悪はとにかくといたしまして、当時相当の成果をあげておつたということは、識者のひとしく認めるところでございます。これがいわば今日論議されている道州制の行政区画と大体一致したものでございます。ただいま岡野国務大臣の御答弁によれば、道州制のごときものと関連して、都道府県の性格を研究され、近く設立される地方制度調査会においてはこの問題を研究するということを御答弁願つたと了解してよろしうございますか。
  40. 岡野清豪

    岡野国務大臣 ちよつと御質問趣旨がはつきり了解しにくかつたので、私の真意を申し上げれば、それが一番はつきりしていいと思います。道州制とか府県の性格ということは——地方制度をいかにしたらいいかということに対しては、当然事務再配分から府県の性格もやはり考えられることになるだろう、そういうことは大問題であるから、概括的に今後の地方制度考え地方行政制度調査会をつくれば、そういうものが当然話題になることで、政府は今考えていないけれども、しかし地方行政制度調査会設置法をつくるときは、それは何を研究されるのだという質問があつたものですから、こういうことであると申し上げた次第であります。
  41. 藤田義光

    ○藤田委員 民主主義の基盤は地方自治であり、地方自治のほんとうの基盤は、市町村自治であることは当然でございます。この意味からしまして今後独立国になりまして、ますます市町村自治の強化発展をはかることは、まつたく大臣も御同感だろうと思いますが、私も大臣と同様に府県の性格に関しましては、根本的に早急に検討すべきではないかという意見を持つております。ただいまの大臣の御答弁によりますると、総理の意見のようでございまするが、この際府県の性格を根本的に検討しまして、道州制の問題も関連させて早急に研究を開始すべきではないかと思います。これは今後いろいろな問題に関連しますので、重ねて大臣のお気持をお伺いしておきます。
  42. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。最近に地方行政制度調査会の設置法を提案いたします。その提案をいたしますにつきましては、いかなることを研究するかということをまず頭に置かなければ、そういう会を設置する必要は認められませんから、それで設置することになつたのでありますが、設置するには先ほど申し上げたように当然、府県制の性格というものも検討するという考えは持つておる次第であります。
  43. 藤田義光

    ○藤田委員 仮定でありますが、都道府県制を根本的に検討するという場合を想定いたしますれば、たとえば東京都の区制のごときは、東京都におきまする最も典型的な自治体として、これを強化して行くということがいいのではないか。この際都知事の推薦した人物を民衆代表の形式にするために、区議会にかけるという姑息な手段をやめまして、あくまで理想的な自治体の形態をとりまして、先ほど立花委員も繰返し質問いたしました現行の自治法一條のいわゆる特別地方公共団体というわくをとりまして、この特別区はむしろ普通地方公共団体に組みかえした方がいいのではないかと私は考えておりますが、政府の原案で区長任命制度に改められます理由を、大臣提案理由説明によりますと、区長任命制には関係なしにやられるのではないかというようなことが列挙されてありまして、この説明に不足した部分があると思いますので、任命制にかえられました理由を、いま一度簡單に御説明願いたいと思います。
  44. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方行政制度調査会というものは、私は根本的な大きな改革をしなければならぬということで考えた次第でございまして、それにはやはり前にで  きましたところの地方行政調査委員会議の勧告、これは相当権威があるものでありまして、国会であの設置法をつくられ、そしてまた最も優秀なる学識経験者を得て、一年有余かかつて研究したものでございまして、またわれわれといたしましても、あれは非常にいい報告並びに勧告だと考えております。でございますから地方行政調査委員会議が結論を出しましたことは、もし地方行政制度調査会でさほどかけることもないであろう。しかしこれを実行して行く上において、いろいろ考えなければならぬことがあるので、やはり地方制度調査会を置かなければなりません。そこで地方行政調査委員会議の勧告以外のことをやつて行きたいと思います。勧告に出ていることは、できるだけ早い機会に実行したい、それには、東京都のことは大体明白に結論が出ているようでございますから、それに従つて今回の改正をして行く。御承知の通りに大改革ということは、一時にやることはできないかもしれませんが、順々に順を追うてやつて行くのがやはりやりやすいと思いまして、地方行政調査委員会議の勧告を非常に尊重いたしまして、政府の立場といたしましては、これをまず実現に移して行くというわけで、この際出したわけであります。
  45. 藤田義光

    ○藤田委員 区長任命問題は事重大でありますから、いずれまた機会をあらためてお聞きしたいと思います。  次に鈴木政府委員にお伺いしたいのでございます。それは都道府県の機構の問題で、副知事、副出納長等に任意制を認められたようでございます。それから委員制度に関しても一部改正になつておりますが、非常に微温的なように私は感じております。現在の副知事以下部長総数は、かつて戰前の課長の数とほとんどかわらぬくらいに大きくなつております。いわば現在の府県庁の機構は、頭が大き過ぎまして末端が非常に貧弱であるというような情景を呈しておりますが、これを強行規定にされなかつた理由をお聞かせ願いたいと思います。あくまで徹底した機構改革をするためには、府県庁の機構の徹底的な縮小をやることが必要ではないかと私は感じておりますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  46. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 都道府県の機構につきましては、今回の改正案におきましては、人口段階で区分をいたしまして、四分、六分、七分、八分あるいは九分というふうに、標準と申しますか、基準を規定をいたしておりまして、それをいかなる名称のものにするか、またその事務分掌をいかにするかということは、それぞれの都道府県が條例で定めるということになつております。  なお御指摘の副出納長でございますとか、副知事というようなものを置くか、置かないかは任意にいたしております。あるいは議会議員の数もまた増減は任意にいたしておる。そういうように、それぞれ都道府県の組織を決定する上におきましては、自主性をできるだけ尊重いたしまして、これを任意にいたしたのであります。自分の都道府県団体組織をいかように簡素化するか、あるいは合理化するか、能率化するかということは、できるだけ各地方団体の自主性によつて決定せしめるようにすることが、地方自治の本旨にも合するゆえんではないかというふうに考えたのであります。もちろん一定の基準を示すだけでなく、それをただちに法律制度として強行する、励行するということも、一つの案でございまするが、先ほど来大臣から申し上げましたように、根本的な制度の再検討ということは、すべて政府としては地方制度調査会に讓つておるのであります。従つて一応現在の建前を特に変更しない限度におきまして、一面自主性を考えつつ、簡素化の方式をとろう、こういうのが今回の改正趣旨でございます。
  47. 藤田義光

    ○藤田委員 最近総合開発等に関連いたしまして、県庁に、自治法規定せざる、たとえば熊本県の振興局のごときものができておりますが、今回の自治法改正によりまして、こういうものは将来自治庁としてはどういうふうな認定をされますか、この際お聞きするとともに、県によりましては、各部の下に次長制をしいている所すらございます。たとえば経済部の下に経済部次長というようなものをつくつております。これは現行自治法から行くと、多少法律を逸脱しておるものではないかというふうに考えますが、この点に関して御意見を伺つておきます。
  48. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 府県の部の組織につきましては、現行地方自治法上は、いずれも部の名前と部の各分掌事務法律できちつと固定的にきめているわけであります。従つてそれと異なつた部を設けたり、その事務分掌と異なる事務の分掌をするということは法律違反であります。そういうことは、いろいろ中央の行政機関との関係もございますので、今日さようになつているわけでございますが、改正案におきましては、先ほど申し上げましたように、これにもつと弾力性を与えたいというところから出発いたしたのであります。そこで今お話の県の振興局あるいは企画局というような形のものを、法定いたしております以外に設けている県が数県ございます。これは企画とか調査とかいつたようなことは、いわば行政事務自体ではないわけでありまして、そういう行政事務の処理執行方法あるいは段取りというものを、どういうふうに企画して行くか、またそういう事務をやる上において、どういうふうな調査をして行くかということで、地方自治法上は、特にその事務自体を掲げていないのであります。これはむしろ府県の執行機関の長としての府県知事が、いかにすれば所掌の事務を合理的に遂行できるか、総合的に能率的に処理できるかという見地からのプランを立てるために調査をするのであつて、こういうようなことは、この部制とは別個に設けておるのでありまして、そのことを法律は特に制限しておるのではないというふうに私ども解釈いたしておるのであります。従つて振興局、企画局というような名前のものが、今申しますような内容のものであります限りは、これは法律違反するものではないであろう、かように解釈いたしております。  それから各部等に次長制をとつているものも、御指摘のごとく若干ございます。これはやはり機構の簡素化、合理化という点から申しますと、部長の下にさらに次長を置くということは、課長、次長、部長、副知事知事というようなぐあいに非常に段階をふやすことになりまして、第一線の業務を処理する地方団体組織としても、必ずしも適当ではないのではないか、しかし所によりまして、たえば非常に大きな経済部を一つの部にしておるような、農林関係も商工関係も、あるいは水産関係とか、金融関係とかすべて一つにひつくるめて、経済部という形をとつているような所で、ある一定の範囲の仕事は次長だけで処理ができるように決裁をさせるようにするという意味で次長制を併用することは、そのこと自体としてはやはり一つの簡素化の原則にも合つておるのではないか、要するに具体的な問題としてこれは考えて行かなければならないのではないか、一概に次長制は簡素化上不適当とまでの論はすることができない、かように思いますが、一般的に申しますと、必ずしも好ましい制度ではないと考えております。
  49. 藤田義光

    ○藤田委員 今回新たに市町村の廃合あるいは境界変更に関しまして、知事市町村に勧告する権限を認められております。この勧告ということは、戰前にはあまりなかつた法律用語のようでございますが、どの程度の拘束力を持つものであるか、この際勧告の性質をお示し願いたいと思います。
  50. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 勧告ということでございますが、地方制度関係におきましては、先ほど大臣がお話されました地方行政調査委員会議の勧告というものがございますが、この地方行政調査委員会議の勧告の中に中央の政府地方公共団体との基本的な関係考え方として、勧告あるいは助言あるいは模範的な條例などの提示とかいつたような従来の指揮監督という関係ではなく、すなわちそういう権力的な政府地方団体との関係ではなくて、技術的な助言とか勧告といつたような非権力的な関与の方式を勧告しておるわけであります。今回の地方自治法改正においては、その勧告の趣旨を尊重いたしまして、それぞれのところで勧告とか、助言とかいう方式考えておるのであります、今御指摘の市町村区域の変更につきまして、ことに町村合併につきまして、知事市町村に勧告をするという形を認めておりますが、この勧告はあくまでも勧告でありまして、相手方にそれに応ずる義務を課するものではないのであります。それに応ずると応じないとは市町村の自由であります。従つてそこに拘束力はございませんけれども一つの行き方、方向をさし示すという意味において、やはり関係地方公共団体としては、それを一応民主的な議会あるいは市町村の所要の手続によつて応ずるか応じないかをきめるというような結果になるであろうと思うのであります。
  51. 藤田義光

    ○藤田委員 勧告が非権力的なものであれば、この際一歩進めまして、都道府県の廃合に関しても、主務大臣の勧告の規定を設けてもあるいは行き過ぎでないというような気持がいたしますが、実は最近一部に都道府県の本質に関していろいろ論議があります際に、都道府県自体にも市町村と同様な廃合の問題等が、すでに叫ばれているところがございます。この点に関しまして何か政府当局で、研究されたことがございますかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  52. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 都道府県、ことに府県の廃合でございますが、これにつきましても地方行政調査委員会議におきまして、一定の人口の基準を示しまして、たしか百七十万であつたと思いますが、百七十万を基準といたしまして、ある程度の府県の廃合を勧告しておるのであります。これは一つの府県の適正規模というものを示しました唯一の研究の成果ではないかと思うのであります。しかしこのような一定の人口を基準にして府県の廃合を行うということは、市町村のような小さい団体でも、非常にむずかしいことでありまするが、都道府県の場合におきましては、なお非常な困難を伴うものであろうと思うのであります。自治法上は御承知のように都道府県の区域の変更というものは、法律でこれを行わなければならぬ、かようになつておるわけであります。従つて都道府県の廃合という法律案を国が作成いたしまして、国会で議決がございましても、さらにこれは個々の地方公共団体である都道府県に関係する問題でありますから、当然これはその関係府県の住民の一般投票において、過半数の賛成を得なければならないということになつております。従つて具体的の問題としては、都道府県の廃合というものは非常なむずかしい問題であるのであります。政府としてはこの問題をいかようにいたすかは、先ほど来大臣が申し上げましたように、すべて地方制度調査会において検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  53. 藤田義光

    ○藤田委員 最後に一点伺つておきますが、現在地方自治体の運営基準をきめた自治法改正に当つて、最も大きな問題は地方財政の問題であることは多言を要しません。ところが今回の改正によりますと、地方団体の当面した最大の問題である地方財政の改善強化には、ほとんど目を向けられておらない。議員定数の問題あるいは局部の問題等、一部間接の関連はございますが、ほとんど現状維持で、現在の地方行政運営方式の合理化を目ざしておられるにとどまつております。これでは今回の改正意味がほとんどなくなつてしまうのじやないか、地方自治法で根本的な地方財政確立の方向を示すことが焦眉の急ではないかというふうに、われわれは考えておりまするが、この点に関しまして今回の改正案は、地方財政に多少の関連がありますかどうか。またほとんど関連がないから、近い将来に根本的な改正地方制度調査会で審議されるのであるかどうかお伺いして、私の質問を終りたいと思います。
  54. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今回の地方自治法改正が、地方財政にあまり寄与しないではないか、あるいはどの程度寄与するか、こういうお尋ねでございますが、これは全体として機構の簡素化という地方行政調査委員会議の第二次の勧告の線にのつとりまして、立案をいたしたものでございます。従つて若干勧告の線を調整いたしてはおりますが、簡素化に相当役立つような改正になつておるのであります。ただいま議員数の減少あるいは都道府県の部局の減少ということは、法律では当然に拘束するようなことになつておりませんが、標準として府県が自主的に條例でおきめになる場合の一つの数を書いてあるのでありまして、この数は府県の部局にいたしましても議員数にいたしましても、現状よりも若干低く定めておるのであります。また選挙管理委員の数でございますが、これも都道府県の選挙管理委員の数は、現在六人でございまするが、これを四人にいたしております。また監査委員の数につきましても、政令で指定する市以外の市の監査委員は、これを二人というふうにいたしております。また委員につきましては特に法律で常勤と断つてない限りはこれを非常勤にする。また府県等の各種の出先機関でございまするが、現在各委員会がばらばらに独立して、地方事務所の区域ごとに出先機関を設けておるというようなかつこうでございますけれども、これを他の委員会の仕事であつて地方事務所がその仕事を引受けてやることができるというふうにいたしておりまするし、また各委員会の事務局の仕事は、執行機関の他の部局のものがこれを処理することができるというふうにいたしておりますとか、各種の点で簡素化を考えておるし、また委員会におきましては、單独で置かないで共同して設置してもよろしい。また組合を設けることが困難であれば、協議会というような簡便な方式でやつてもいい。また教育事務を委託しておりますのと同じように、事務を他の地方団体に委託してやつてもよろしいというふうなぐあいに、いろいろな点で簡素化が可能であるようにいたしておるのでありまして、各地方団体でこの趣旨をくんでやつていただきますならば、これは相当に地方財政の負担軽減にも寄与するのではないか。それをやるやらないは、一に各地方団体の努力にかかるような仕組みにいたしておるわけであります。
  55. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 大石ヨシエ君。
  56. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 これは鈴木さんじやなく、岡野大臣質問いたします。土曜日に私は区長任命制について質問いたしましたが、もう一度それに関連したことをお尋ねしたいのです。  この区長任命制というものはGHQが区長任命しろと命令されたのですか、いわゆる勧告されたのですか。その点をお聞かせ願いたい。
  57. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。区長任命制はGHQのさしずは一向受けておりません。われわれといたしましては神戸委員会の報告を尊重いたしまして、立案いたしたわけであります。
  58. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 実はけさ婦人の都会議員さんが私の方へおいでくださいまして、いろいろ聞かれました。お互いに同性でございますから、胸を打つことがございました。そこであなた方はこの区長任命制にして、その次はまた区会議員をどういうふうになさるおつもりなんですか。区会議員をやめさせるおつもりで、区長任命制になさるのでしようね。その点を御説明願いたい。
  59. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。区会議員と区長任命制との関連が、私にはよく了解がつきませんが、つまり区長任命をするということは、区会議員をまたやめさせるとか、あるいは任命するというようなことになるのじやないかという御質問でございますか。
  60. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 そうです。
  61. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それならばはつきり申し上げますが、区会というものは今後ます、ます尊重しまして、結果として出ておりますごとく、今までの区会、区長都民全般の公選になつておりますから、区会が区長の身分に差出がましいことは一向できなかつたわけでございます。     〔野村委員長代理退席、委員長着席〕 けれども、今後は都知事同意を求めて来ましたときは、区会がそれに対して同意を与える、同意を与えない、こういうような権限が区会に新しく加わつたわけでございます。それで区会といたしましては、もとより権限がそれだけ伸びたと同時に、私は今の区会はそのまま残し、同時に区会議員は今まで通りの区民の選挙によつて出て行く。こういう制度は確保して行くつもりでございます。
  62. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それではおかしいじやありませんか。それならば区長任命制にして、区会議員をやめさすのが行政区なんです。それを区長任命し、区会議員は置いておく。これは岡野先生の頭をちよつと疑うのですが、お聞かせ願いたいと思います。
  63. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはやはり昨日も申し上げましたが、自治は、その基盤になつております自治区域の情勢をよく自主性に従つて検討しなければならぬ。東京は、御承知の通り、人口が六百万もありますし、二十三区にもわかれておるような大都市でございますから、ほんとうを申せば、大都市としまして、大阪とか京都とかいうような行政区にして、区会を置かなくてもいいという御議論も成り立ちましよう。しかしながらもともと区会というものがあり、区会議員があつたという伝統が一つございます。同時にその議会が存在しておりますと、二十三区が最も身近な仕事をする場合には、こまかく自分自身で考えることも、非常に区民各位の福祉を増進するゆえんであろうと思いますから、あつた方がいいんだという考えから、区会はそのまま残しておきたい。こういうように伝統を尊重し、同時に大きな都市でございますから、それを存続しておきたい、こういう考えであります。
  64. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 特殊の問題で多数の者が登場して来て、府県民の莫大な血税を使いますが、このことに関しましては主婦の立場から、婦人の立場から私は非常に悲しんでおる次第であります。そこできよう新聞を見ますと、東京都の御婦人の連中は、区も都もどちらもひいきしない。どうか早くこの摩擦を何とか解消してくれと言つて、非常に悲しんでおります。私は同性でよくその気特がわかるんです。それになぜこういう摩擦の起ることを、賢明なる皆さん方が閣議でおきめになつたか。私はそれを非常に不審に思うんです。  そこで区長任命制にすると、たとえて言うと、区長と区会議員は夫婦です。そうすると私たちは、敗戰の結果、婦人参政権をマ元帥からもらつた。それは一昨日も申しました通り、長い間婦人は奴隷的な存在であつた。それが昭和二十一年四月の十日初めて婦人が、敗戰の結果、参政権を獲得し  て、投票権を持つた。そうして自分の信ずる人に票を入れたんです。おそらく東京都の婦人の人も、この区長を選んだ人がたくさんあるでしよう。それから区長任命にする。そうして区会議員は置いておく。岡野国務大臣は今はそんなにおつしやつていられますけれども、だんだんと、私が土曜日に申し上げた通り、府県会議員もやめさせ、そうして知事任命制にし、そうして牧野良三さんが小選挙区にするとおつしやつておられるごとく、やがて一家の主人さえ参政権を持つておつたらいいじやないかという理由で、二人が参政権を持つということはとんでもないことである。ゆえに主人が参政の権利を持つて選挙で投票したら、それがその家を代表するものである。ゆえに夫だけ選挙権を持つておつたらいいから、やがて婦人が与えられた権利は抹殺されるのではないか、この点を私は憂えます。先日申し上げた通り、あなたがこれは警察であるとおつしやつておつたのが、軍隊になり、これは海上保安庁だと言つておつたのが、海軍になる。そうしてこれがだんだんと逆行して、非民主的なものになつて、やがてはわれわれ全四千万婦人の参政の権利を剥奪する。私はこれが前提であると思う。私は岡野国務大臣に詳細な御答弁を聞く次第であります。
  65. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。区長任命がとんだところまで発展しましたが、私はそうは考えません。婦人の参政権、これは憲法の大精神でございますから、一家の家長が投票すればあとはどうでもいいということは、憲法改正せぬ以上はできないことです。またそれを改正すべきものじやなかろうと思います。ですから私はただいま断じてそういうことにはならぬということを断言します。
  66. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 ただいま岡野大臣は断じてそういうことにはならぬということをおつしやいますけれども、これがまず前哨戰であつて、逐次日本はまた元の通りに右翼化して行く。ただいま鈴木さんのお言葉で勧告とおつしやいました。勧告とは戰争時代の命令と同じです。言葉がかわつただけで、またしても右翼に転換して行こうとしている。そこでただいま岡野大臣はとんだところに話が行つたとおつしやいますが、これはとんでもないことです。区長はわれわれ人類の半数である婦人も選んでおります。男の人も選んでおります。これがやがては小選挙区域になつて、婦人の代議士がだんだんと減つて行く、区長区議会というものは一体です。夫婦です。区長任命制にして区議会は置いておく、これは一つのかたわではありませんか。それと同じようにだんだんと行つて、せつかく与えられた婦人の参政権も、やがてはあなたによつて剥奪されるようになると私は思う。そういうようなことをこの選挙前にやると摩擦が起るということを、私は再三申し上げているのであつて、都会議員は都会議員で一生懸命にくだらぬところに運動をし、区会議員は区会議員でまたこうした方面に運動する。そして東京都二十三区というものは、毎日この運動に明け暮れているではないか。なぜこうしたことをなさいますか。私はぜひこの撤回を望む次第でございますが、あなたの御心境をお尋ねしたい。
  67. 岡野清豪

    岡野国務大臣 何と申し上げてよろしいか、私自身といたしましては参政権が動くというようなことは、絶対にあり得ないという信念を持つております。  それから区長任命制でございますが、区長区議会は夫婦である。またこれはむろん親密であらねばならぬと思います。しかし区長はやはり執行機関でございますから、二十三区がばらばらでちつとも都と血が通わない——区民全体の公選によつて出たのでございますから、血が通わないということはありますまいが、しかしそこが問題でございまして、二十三区がばらばらに自分自身が考えられた区長を出されて、その統一がつかぬということで、大都市行政上過去において非常な摩擦が起きておりますから、それを都とも連絡がつき、その上に区を代表し得るような区長にするということが、区長任命制のよつて来るゆえんでございまして、今後はおそらく夫婦の関係はもつと親密になると思います。と申しますことは、区長は今までは何ら区会議員のお世話にはならない。間接的には選挙のときにお世話になられる方もあるかと思いますが、しかし法律的にはやはり区長公選されることと、区会議員というものとは何ら関係ございません。しかしながら今後は区会にお諮りして、区会があれならよかろうというような承認を与えた人でなければ、区長になれないのでございます。ですから少くとも区議会区長との関係は、区長は区会の御承認を得てほれてもらつたのだということになつて、今までのように、わしはお前たちのごやつかいになりはせぬのだ、区民全体の公選によつて出たのだから、お前たちがぐずぐず言つたつて、わしはわしの考えを持つているというようなことが言えない立場になりますから、むしろ区議会区長はよけい親密さが増すという考え方を私は持つております。
  68. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私は岡野国務大臣を非常に信頼しておつたのであります。ところが今の一言を聞いて、岡野国務大臣の非常に封建的な考え方に実は驚いておるような次第です。区全体がばらばらになるとおつしやいますが、一体区長任命制にしたら、どの点とどの点がばらばらにならぬと思つているのですか、それをちよつと聞かしていただきたい。
  69. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。ばらばらになる最も大なる原因といたしましては、区長を区だけで公選されるといいますと、区長に立候補されたお方は、ほかの区のことは何らお考えにならなくてよろしいのです。Aの区で区長になろうとおぼしめせば、そのお方はAの区民に気に入るような政策を掲げて立候補して、大いに努力すれば絶対多数で通るはずです。ところがあにはからんや、この二十三区というものは一つの区だけが独立して大都市行政のできるわけのものではありません。やはり二十三区が共同体として一つ大都市行政ができて行くのでありますから、二十三区の方がみな自分の区だけのことに頭を使われて公約を掲げて出て来られたときに、それをまた一致させるということは、なかなかむずかしいことです。しかしながらそういうような公約を持つて出られた区長は、どこまでも公約を果されるために、ほかの区には非常にじやまになるとか、不便とかいうようなことがあつても、それをひつ込めるわけに参りません。ですから私はその点において、二十三区が一体である大都市行政区長というものは、やはり区そのもののことも考えてくれ、同時に二十三区全体のことも考えられるような人が出られる、その方式はやはり区議会同意し、同時に都知事任命したということの方がいいと思います。なおいろいろ事務的な詳しいことは事務当局から御答弁させます。
  70. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 任命制を非常に賞讃されますが、それなら区会議員も同じことじやありませんか。区会議員もやはり区民に対して公約を果すべく区民、に選ばれた人です。何ゆえあれほど皆さんがいやがつておるものをしなければならぬか。それは日本の国を右に向けるには三番叟で一番都合がいい。こうしてその次には区会議員をやめさせ、次には吉田総理のおつしやる通り、都道府県知事任命にさせ、鈴木さんのおつしやるように戰前は命令であつたのが勧告という言葉になつて、日本は右翼転換しそうになる。そしてやがては人類の半数である婦人に参政権がなくなり、国会にも婦人代議士がなくなつてしまう。そういうことをあなたは好んでおられると私は思いますが、それはいかなるお考えでございましようか、再度お尋ねしたいと思います。
  71. 岡野清豪

    岡野国務大臣 たいへん悪党になつて残念ですが、それはまつたくの杞憂でありまして、婦人参政権がなくなるようなことは、絶対に私はないと確信しておりますから、これは御安心くだすつてけつこうであります。同時に私自身がそういうことを考えて、その伏線のもとにこういうことをしておるということをもしお思いになるならば、それはたいへん私に対する不信の何でありますから、私はそういうことを考えておらぬということを、はつきり申し上げます。
  72. 金光義邦

    金光委員長 野村君。
  73. 野村專太郎

    ○野村委員 本案に対する大臣提案理由に関しまする私の質疑は、前会に大体終つておりますが、今日の委員会におきまする御答弁に、若干関連してお尋ねをいたしたいと思います。そこで大臣は本案を提案するに至つたことは、要するに神戸委員会なり、委員長のいわゆる報告を尊重しておる、こう言われておるのですが、今度の法案の内容は、二十三区の特別区は確かに他に類例のないものでありまして、この点は私も了承をいたしておるのですが、従来の二十三区は今度の法案の内容によりますると、都にある区を特別区と称するとなつており、要約いたしまするならば、従来の自治区を行政区に転換をする内容を持つわけでありまして、このことは神戸委員会も私が先般質疑いたしました通り明らかに東京都の二十三区はかつての歴史、現実から見て、いわゆる自治区であるということは認める。しかも能率の上からいつて大都市のこの東京知事さんにいろいろの問題が殺到するということは当らない。こう言うて二十三区のことに対しては私に答弁した。大臣はこれに対して、これは関知せぬというお話でしたが、さつき藤田君の質問の中にもありましたように、今回の改正区長任命問題以外は、ごく平凡なものである。ところがこの区長任命問題は非常に飛躍しておる。しかも最近においては地方制度調査会の設置法なるものの提案を見て、そうして地方制度全般にわたつて研究するということでありまするから、十分これに付議して検討すべきである。そうして二十三区の実態というものに対しては、かつての歴史、現実から見て、能率的な運営がこれであるという結論を下すべきである。こういう点に対しまして、大臣は第二次勧告を尊重したというのですが、現実においてはどうも尊重されておらぬように思うのですが、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  74. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今度の特別区はやはり自治区でございます。自治区でございますが、ただそのあり方の実態がかわつただけでございます。でございますから、簡單なる行政区になつたわけではございません。詳しくは事務当局から御説明いたさせます。
  75. 野村專太郎

    ○野村委員 今大臣がいわゆる都区間にあつて紛争の煩にたえないので、任命区長によつてこれの解決することを期待しているという答弁ですが、もしかりに都と区の間に紛争ありとすれば、これはいわゆる立法上の性格から来ているものであろう。いわゆる都が自治法を実施するといいながら、関係法規がいわゆる行政的な立法手段になつておるところから来ておる摩擦が多分にあるのでありまして、これを区長だけにしわ寄せするということは、私は当らないと思う。これに対する大臣の御所見はいかがでありますか。
  76. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。今まで都と区との間にいろいろな紛争がございました。これは端的に申し上げますれば、区の方では完全自治体になりたい、こういうような希望がある。また都の方としては総合的の行政運営ということから、これが完全自治区のような仕事のやりくりになつては、大都市行政としてうまく行かない点がある。われわれ第三者の立場としてみておりますと、大都市行政といいうものをやはり育成して行くべきである。これが自治政策上いいことであるということで、特別区を完全自治体にするよりは、都の一部分である自治区にした方が、自治政策上非常によいことである。こう考えて今回の改正案を出した次第であります。
  77. 野村專太郎

    ○野村委員 これは前会も申し上げておるように、二十三区は今大臣からお話のあつた完全自治区、このことをすべて要望しておるのではないのでありまして、いわゆる都と区の特殊の関係というものを相互に理解しながら、その自治性を認めながらやつて行こう、すなわち都市計画ですとか水道、交通ですとか、そういう全体に関係するものは東京都政にゆだねる、こういう考え方のようですから、これを大臣がいわゆる完全自治区という名をとられて、これに行くのは少し偏見ではないか、かように考えておるもので、むしろ国会なり、所管の自治庁が立法手段において今日まで努力をしておつたならば、今回の問題なども惹起しなかつたのではないか、かように考える。とにかく数十万を擁しており、そうしてそれぞれの歴史と現実の上に立つたりつぱな自治区である。しかし他の市制にあるものとは違う。そういう点はある程度の制限をつけた自治区であることはわかつている。そういう考えの上に立つて行きますならば、いわゆる任命区長等の強行をあえてすることに疑義がある。いろいろ委員各位から質問があつたのですが、どうもすつきりしない。こういう点から考えて、私はこの問題は調査会へ付議して検討して行くべきであろう。しかしこの機会に自治法改正案を出されて、少くとも従来あつた摩擦はなるべく少くして、都区一体協力して行くことは望ましいと思う。そういう点に対して大臣は五大都市とか、道州制とか、いろいろな問題がありますが、この都区の問題なども十分調査会に付議して、慎重にこの問題を処理するお考えがあるかどうか。
  78. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。都区の調整につきましては政府といたしまして十分調査し、研究した結果、こういうような案なら調整はつくという意味においてやつたのでありまして、これを行政制度調査会に持ち込むほどの問題でない、こう考えて今回提案したわけであります。
  79. 野村專太郎

    ○野村委員 いろいろ意見もありますが、時間の関係もありますから、この次にやりたいと思います。
  80. 金光義邦

  81. 門司亮

    門司委員 ちよつとこの機会に一言だけ聞いておきたいと思いますが、先ほどから聞いておりますと、いろいろな議論がありますし、私も昨日大臣の腹は大体お伺いしたのですが、今度の改正法案を見ておりますと、先ほどの鈴木次長の答弁の中に、財政の問題を考えておるということを言われた。そうして行政の簡素化がその中に含まれているということは、一見法文の上から見ればなるほどそう見えるのでありますが、しかしこれは全部が全部と言つていいほど、中央集権的にものが考えられているのであります。この点が今度の自治法改正の問題にも、一つの問題が残されていると思う。たとえばこの都区の問題を離れて考えてみましても、例の監査委員の問題、それから次に選挙管理委員会の設置の問題というようなものが、だんだんなくなつてつております。特に五大市では御存じのように選挙管理委員会を各区に置いておりますものを廃止して、そうして一本にするということを考えておられる。これも大阪のような非常に大きな区を持つておりますところでは、実際の上において選挙の自治というものができないと思う。ことに現在の選挙管理委員会は選挙管理委員会であつて、選挙の事務管理委員会でないはずであります。事務管理委員会でないといたしますと、これが市の中央に一つだけあつて、いろいろ疑義があつたり、選挙運動に対するところの問題が起りました場合に、一つではなかなか解決が困難だと思う。やはり選挙を取締り、選挙を管理して行くには、相当な区域に選挙管理委員会がある方がやりいいと思う。こういうものがずつと廃止されておる。そこでこの機会にお伺いをしておきたいと思いますることは、この自治法改正の根本の趣旨でありますが、これは行政上の改革をされる御意思から、こういうものをお出しになつたのか、あるいは地方財政をお考えになつて、こういうものをお出しになつたのか、一体どつちに重点を置かれておるのか、その点大臣からでもよろしゆうございますから、ぜひはつきりお聞かせを願つておきたいと思います。
  82. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。今回の自治法改正は、行政の簡素化というものに重点を置いております。同時にねらいといたしましては、その副産物として財政的に非常に助かるだろう、こういうことを見てやつておる次第であります。
  83. 門司亮

    門司委員 大体行政の簡素化を主としてねらつておるというお考えで一応わかつたのでありますが、もしそうだといたしますると、先ほどから申し上げておりますように、行政の簡素化と事務の複雑化というものは、別の問題であります。行政をいたずらに帳面の上だけで簡素化することが、実際上の  事務が非常に混乱するということになると、その効果は上らないわけでありまして、私は事務の簡素化をはかろうとするならば、やはり実際の仕事が複雑にならないように、住民がめんどうにならないように考えるということが本旨でなければならぬと思う。ことに自治の制定は、御存じのように地方住民の利便というものが、第一番に考えられなければならない。役人の都合だけでこれが改廃されて、そうして住民意思に沿わざるような、あるいはますます複雑化するような機構の改革が、しばしば行われておりますので、実際から言えば一向行政の簡素化にならない。そうして一年か半年たつと、また元のように返つておるというのが現実の姿であります。こういうことから考えて参りますと、さつきからの大臣答弁だけでは、私どもはあまり感心できないのでありまして、たとえば今問題になつております区長任命制の問題にいたしましても、大臣は選挙するより任命制の方が楽だとお考えになつておるかもしれませんが、実際はそうではありませんで、これが完全に区会議員の自主的な立場から区長を選ぶいわゆる間接選挙にするという従来の市町村制の建前と同じような形がとられますならば、まだ複雑性はやや緩和されますが、都知事が推薦してそれを区会にのめというようなことになつて参りますと、これは決して行政の簡素化になりません。実際は複雑化になる危険性を多分に持つておりますので、われわれはさつき申しましたように、この提案の理由の真意を実は疑うわけでありますが、大臣は、行政の簡素化と、住民の不便と、さらに政治的の複雑化というようなものについてお考えなつたことがあるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。
  84. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。なるほど公選なら一度で済みますが、都知事がまず選考し、同時にそれを区会にかけて、またそれをその区会で承認してもらうということについては、これはそれだけ段階がふえますから複雑になるでしよう。また今お説の通りに区会が自分自身の独自の立場で推薦する、こういうことも一つ方法でありましよう。しかしこの根本の精神といたしましては、やはり都と区というものがよく円満に仕事のできるような人物に、区長になつてもらつた方が都政、区政を遂行して行くのにぐあいがいいだろう、こういうことから都知事と区会の両方が、これに関与する任命制をとつたわけであります。
  85. 門司亮

    門司委員 その点が私ども実はわからないのであります。一体行政は、住民本位の行政が行われるのか、知事本位の行政が行われるのか。なるほど知事任命して自分の手足のように動く人があれば、これは事務が非常に能率的に行くということは、私も考えられる。しかし住民の側からいえば、住民意思に、沿わざる者が、しかも区の固有事務を持つておりながら、その固有事務に対して、住民意思に沿わざる行政を行うということになると、住民が非常に迷惑する。自治の本旨はどこまでも住民の政治上のいろいろの問題を、現実に表わして行く一つの大きな機関でありますし、また自治自体は自治という字の通りでありまして、みずから住民が治めるのが自治の本体でなければならぬ。そう考えて参りますと、私どもといたしましては、自治の本義というものは、どこまでも住民本位でなければならないと考えておりますが、一体当局はいかに考えておられるか、自治の本義に対するお考えを、この際もう一応承つておきたいと思います。
  86. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知の通りにわれわれといたしましては、都というものを一つ自治団体考えておる次第であります。でございますから、都知事は都全体の住民意思を受けて、それに公選されて出ている都知事でございます。従つてその都知事が都の行政の全責任を持つています以上は、区の方の行政もやはりある程度まで、自分自身が責任を持たなければならぬわけでございます。そういたしますと、住民の負託を受けて公選せられて出ておる都知事任命するということは、これは民主主義にも何にも反しないのでありまして、都全体の行政をするために都知事は選ばれ、そうして区もやはり都の一部であるという以上は、都知事も区の行政に対しては相当な関心を持つと同時に、その区の行政がよくなつて行くことを念願する次第であります。そういたしますと、都知事と区というものと何らかのつながりがある方が、区民は同時に都民でございますから、都民に対する政治というものがよくなつて行くのではないか、かような考えからやつた次第であります。
  87. 門司亮

    門司委員 もう一つ聞いておきたい。これでやめます。どうもその点ははつきりしないのですが、この前も私お聞きいたしましたように、区にはやはり区の一つ固有事務があると思います。この区の固有事務というものについては、区民自分事務として、これは区限りの行政の單位で行われることが正しいのであつて、もちろん都知事は都全体の知事であることには間違いありません。都の行政は都知事考えたように行われることは、私どもはその通りだと思う。ところが区の行政については、必ずしも都知事考えているようには住民考えておらないと思う。この点の問題が非常にむずかしいのであります。従つて、もう一応繰返して恐れ入りますが、行政上の事務考え方からこういう問題が出ておるか。私がさつきから申し上げておりますように、固有の区の事務があるといたしますならば、当然これに対しては区民公選するの権限憲法で保障されておりますので、これを一つ自治体考えることが正しいと思いまするし、法律の中にもやはり市に準ずる、こう書いてあります。おそらく御議論はないとは思いますが、こういう建前から考えて参りますと、やはり住民を本位とした今度の地方自治法改正でなければならないと思いまするが、率直にひとつお答えを願いたいと思いますことは、事務が非常にやりいいという事務的の区の考え方で、今度の自治法全体の改正が行われておるのか、あるいは住民本位の改正が行われておるのか。大臣としては非常にお答えしにくい点だと思いますが、ひとつお聞かせを願つておきたいと思います。
  88. 岡野清豪

    岡野国務大臣 住民意思を無視して行政をするような制度には、私はこれはなつていないと思います。と申しますことは、まず任命方式から行きましても、都知事は、先ほど申し上げましたような全都民の負託を受けてやつておる政治家でございます。でございますから、どの方面のどの部分の住民に対しても、都知事は公正なる、また福祉的の行政をして行かなければならぬ責任を持つております。その都知事任命をしまして、同時にただいま仰せのように区の利益を尊重しなければならぬ、こういうような意味におきまして、区議会にその同意を求めて、区の固有事務に対して十分なる責任を持たないような区長同意をせぬ、こういうことにしておるわけでございます。でございますから、私は区民の要望も入れ、都民の要望も入れて行政のできる人がなれるように、ただいまの制度にかえたわけでございます。
  89. 金光義邦

    金光委員長 ちよつと理事会を開きたいと思いますので、そのまま休憩を願います。     午後四時休憩      ————◇—————     午後四時二分開議
  90. 金光義邦

    金光委員長 都合により本日はこの程度で散会いたします。     午後四時三分散会