○岡野国務大臣 ただいま本
委員会に付託になりました
地方自治法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び主要な
改正事項の概略を御
説明申し上げます。
新憲法の精神に基き
地方自治の本旨を実現するため、憲法とともに、
地方自治が
施行になりましてから、本年でちようど五箇年を迎えることとなりました。この間
終戰後の悪
條件が山積する中におきまして、
地方自治確立の途上には幾多の障害が横たわ
つていたのでありますが、
地方自治関係者の不断の努力と協調とによりまして、これらの障害はなお、今後の努力にまつべきものも少くないとはいえ、次第に解決に向
つて参つておりますことは、近く
国民待望の独立の日を迎えようとしております際、まことに御同慶にたえないところであります。私は、わが
国民主化の
基礎を確立し、独立を迎える上に果した
地方自治関係者のこの五箇年にわたる努力の功績はきわめて大きいものがあると信じて疑わないものであります。しかしながら、わが国の
民主主義は、まだようやくその
基礎を確立したばかりであり、
地方自治のよ
つて立つ基盤もいまだはなはだ脆弱であることは、率直にこれを認めざるを得ないところであります。
政府は深くこれらの点にかんがみまして、この際
地方自治法の一部を
改正いたしまして
地方公共団体の
事務処理の
自主性を可及的に保障することにより、
地方自治の基盤をいよいよ確実にするとともに、独立後の
国民負担を少しでも軽減するため、極力
地方公共団体の組織及び
運営の
簡素化及び能率化に努め、も
つて今後の新情勢に対処することとし、さらに
地方自治法運用の実情に徴しまして、
地方公共団体の組織及び
運営を真に合理的ならしめて、
地方自治運営の不合理、不経済等に名をか
つて、
地方自治に対する不信の声が台頭して参りますようなことをできるだけ避けるようにいたしたいと存ずるのであります。これが今回
地方自治法の一部を
改正する
法律案を提案し、御
審議をお願いするこことした理由の大要であります。
次に、
改正法案の主要な事項につきまして、その概略を御
説明申し上げたいと存じます、その第一点は、
地方公共団体の自主的な
事務処理を保障することにより、
地方自治の強化をはかるとともに、その
運営の合理化に資しようとした点であります。明治以来
地方公共団体に委任される国の
事務はおびただしい数に達しており、
地方公共団体は、いわゆる委任
事務の処理に追われて、その創意とくふうとにより、
地方の実情に適合した
自治行政を行うことができないという実情にあることは御承知の
通りであります。
終戰後地方自治の強化のため
行政の各分野に目ざましい改革がなされたのでありますが、
地方公共団体に対するいわゆる委任
事務を整理して、
地方公共団体が自主的にその
事務を処理することができる
範囲を拡大するという点につきましては、ほとんど見るべき改善がなされずして今日に至
つたのであります。ここにおいて、
地方行政調査
委員会議は、さきに
地方自治を確立するために
行政事務を再配分することを勧告するとともに、
機関委任の認められる
事務の
範囲は、
地方自治法等において明記し、将来無
制限に増されることのないようにすべきである、と述べ、
地方公共団体の
事務とされたものについては、その義務的処理を
建前とするものは、極力これを限定しなければならない、と勧告したのであります。
政府としても、近く
地方制度調査会を設け、
地方行政調査
委員会議の勧告実現の具体的な
方法その他
地方制度の
根本に関する事項について諮問する
方針でありますが、その結論が得られますまでの間におきましても、
地方公共団体に委任される国の
事務は、いよいよ多きを加えて行く実情にありますので、この際
地方公共団体及び
地方公共団体の執行
機関に処理を義務づけている
事務並びに
地方公共団体に設置を義務づけている
行政機関及び
職員等を、すべて別表として
地方自治法中に掲げることとし、も
つて地方公共団体の自主的な
事務処理の確保に資するこことしたのであります。もとより今回別表に掲げました
事務、
行政機関及び
職員等は、現在
法律または
政令によ
つて地方公共団体に義務づけられているものをすべてそのまま掲げたものでありまして、何らこれに整理の手を加えておりませんためおびただしい数に上
つておりますので、ただちに
地方公共団体の
自主性の保障に役立つとは申せないかもわかりませんが、このような措置により、将来
地方公共団体に処理を義務づける
事務等を増加しようとする際には常に
地方自治法の
改正を伴うこととなりますので、その際
国会におかれましても、十分各種の
行政について
地方自治の見地から御
検討を願う機会もあることとなりましようし、
政府としても
地方行政簡素化の折柄、愼重にこれを抑制して参る
方針でありますから、
地方公共団体が義務的に処理しまたは設置しなければならない
事務、
行政機関及び
職員等を現在以上に法令によ
つて増加して行くことは、かなり反省されるに至ることを期待しているわけであります。また、
地方自治法の別表を一見することによ
つて、いかに多くの、また、特にその義務づけについて疑問のあるような種類の
事務、
行政機関及び
職員等の処理または設置までが
地方公共団体に義務づけられているかが明白となりますので、これを簡素合理化しようとする世論も喚起されまして、将来
地方公共団体の
事務の処理、
行政機関及び
職員等の設置について、その
自主性を強化するとともに、その
事務の配分を合理化する上に役立つであろうと信ずるものであります。一方、
地方公共団体の側におきましても、
地方自治法を見るだけで
地方公共団体として義務的処理を負わされている
事務及びその組織を系統的に把握できるごととなり、
地方自治の現状に対する住民の認識を高める
自治教育上の意義も決して少くないと
考えられますし、さらに、
地方公共団体の
当局者に対しましては、今後ますます必要とな
つて参ります
地方行政の総合的な
運営について合理的な計画を立てる際にも、またはこれらの
事務について
検討する機会を與える上にも役立たしめることができるものと存ずるのであります。
また、
地方公共団体または
地方公共団体の
機関に
事務を委任しまたは経費を負担させるには、必ず
法律またはこれに基く
政令によらなければならないこととし、従来総理府令、法務府令、省令その他の
政令以外の命令によ
つて委任しまたは負担させておりましたものにつきましては、この
法律施行後一年以内に
法律について必要な
改正の措置をとらなければならないこととし、総理府令、法務府令、省令その他の
政令以外の命令については
法律に基く
政令に改めなければならないことといたしまして、
地方自治の保障をさらに厚くすることとしたのであります。
さらに、議員定数その他
地方公共団体の組織につきましても、今回の
改正法案におきましては、
地方公共団体の組織及び
運営の
簡素化に努めつつ、
制度としては、
地方公共団体の組織及び
運営に関しては
地方公共団体の自主的に
決定し得る
建前を基本とすることに改め、その
自主性の確保をはかることができるよう配慮を加えた次第であります。
次に、
改正の第二点は、
地方公共団体の組織及び
運営の
簡素化及び能率化をはか
つた点であります。
地方公共団体の組織及び
運営の
簡素化及び能率化については、
地方行政調査
委員会議の勧告の次第もあり、
政府は、昨秋以来
行政簡素化本部を設けて
検討を続けて来たのでありますが、今回は、おおむね、
地方行政調査
委員会議の勧告を中心とし、これに各方面の
意見等をも参酌して、立案をいたしたものであります。
まず、
地方公共団体の議会につきましては、第一に議員の定数の法定主義を改めて
法律には議員定数
決定の場合の基準のみを定めることとし、議員字数は、
地方公共団体が
條例で自主的に定めることができるようにするとともに、その
決定の基準として
法律に掲げる定数は、おおむね戰前の定数を参考として定めたのであります。次に、議会
制度の合理化をはかる措置として定例会
制度を通常会
制度に改めることとするとともに、議員より臨時会招集の請求のあ
つた場合には都道
府県にあ
つては三十日、
市町村にあ
つては、二十日以内に必ずこれを招集しなければならないものとし、さらに議員全員の改選または長の更迭のあ
つた場合には、必ず臨時会を招集しなければならないものとしたのであります。
地方公共団体の執行
機関につきましては、まず、都道
府県の局部につきましては、現地必置の局が七、部が六で実際には六乃至十二の局部が設けられておりますのを、人口段階別に最低四部、最高八局部の基準を法定することに改め、都道
府県知事は、
條例で、局部の数を増減し、局部の名称または所掌
事務を変更することができることとしたのであります。
次に、都道
府県の副知事及び副出納長並びに市の助役の設置を任意制に改め、選挙管理
委員は、都道
府県及び五大市にあ
つては四人、その他の市及び町村にあ
つては、三人とし、四人の監査
委員を置くことができる市は、
政令で指定する市に限ることとしたのであります。
また、各種
委員会の
委員及び監査
委員は、非常勤を
建前とすることに改め、
地方公共団体の長と、
委員会との協力
関係に関する規定を整備して、
委員会の
事務局または出先
機関等の
簡素化に資することとしたのであります。
次に、
地方公共団体がその
事務を共同処理し、もしくは他の
地方公共団体に委託し、または
行政機関もしくは
職員等を共同設置することによ
つて、その組織及び
運営の
簡素化及び能率化をはかることができるようにするため、新たに、
地方公共団体の協議会、
地方公共団体の
機関または
職員の共同設置及び
地方公共団体の
事務の委託に関する手続その他の規定を設けることとしたのであります。
さらに、大都市における
行政の簡素かつ能率的な処理をはかるため、区の組織につき所要の改革を行うこととし、特別市の
行政区及び都の特別区の区長の公選制を
廃止するほか、都については、さらに、特別区の性格、都区の間における
事務の配分、都区の
関係の
調整の
方法等に
改正を加え、大都市における
行政の統一的、かつ能率的な処理をできるだけ確保しようとしたのであります。すなわち、特別区の存する区域におきましては現行
制度上は都も特別区もともに市としての
事務を分割して処理することとな
つており、その間の
調整がなかなか困難であり、多くの
事務について勢い二重機構、二重
行政的な取扱いがなされているのでありますが、今回、これを改め、特別区はその実体に即するように、大都市の内部的部分
団体としてその性格に変更を加え、都と特別区の一体的
関係を明確にするとともに、特別区の区域内の都民に、身近かな
事務は
原則として特別区が処理することとし、
実質的には、特別区の権能に属する
事務を増加することといたしたのであります。しこうしてこれらの
事務の合理的能率的処理をはかるためには、都及び特別区間並びに特別区相互間の
事務処理の一体化をできるだけ確保することが必要でありますが、同時に特別区の性格にかんがみ、これらの
要請とその
自治権との間の調和をはかる必要がありますので、区長の公選
制度を改めて都知事が特別区の議会の議員の選挙権を有する年齢満二十五年以上の者について特別区の議会の同意を得て選任するものと改めた次第であります。
第三は、
地方公共団体の組織及び
運営の合理化をはかる点であります。まず、
市町村の規模の合理化につきましては、
地方行政調査
委員会議の勧告もあり、
政府も、早くから勧奨しているところでありますが、これまでの実績にかんがみ、都道
府県及び国の
関係行政機関の協力がなければ、十分効果を上げることができませんので、このたび、都道
府県知事に
市町村の廃置分合または境界変更の計画を立てこれを
関係市町村に勧告する権限を認めることとし、この勧告に基く
市町村の廃置分合または境界変更につきましては、国の
関係行政機関にこれを促進するため、必要な措置を講ずべき義務を課することとしたのであります。
次に、
市町村の境界に関する争論その他
地方公共団体相互の問または
地方公共団体の
機関相互の間における紛争を、なるべく当事者の互譲により円満かつ迅速に解決するため、
地方行政調査
委員会議の勧告に基いて、
自治紛争調停
委員を設けることとしたのでありますが、
地方行政簡素化の趣旨から、
自治紛争調停
委員は、常置の制をとらず、事件ごとに任命する臨時の
機関とすることといたしました。
最後に、
地方公共団体が住民の福祉の増進に寄與するとともに、最少の経費で最大の効果を上げるようにする等、
地方公共団体の組織及び
運営の合理化をはかり、
地方自治の
内容をさらに質的にも向上するためには、
地方公共団体の
自主性をできるだけ尊重しつつ、国または都道
府県がその有する技術、知識、経験等をも
つてできるだけ協力して参る体制を確立する必要があると認められますので、
地方行政調査
委員会議の勧告に従い、主務大臣並びに都道
府県知事及び都道
府県の
委員会等に技術的な助言、勧告、情報提供等非権力的な関與を認めることとし、国と
地方公共団体との間の合理的な協力
関係の確立をはかることとしたのであります。
以上がこの
委員会に付託になりました
地方自治法の一部を
改正する
法律案の提案理由及び
改正の主要な事項の概要であります。
何とぞよろしく御
審議のほどをお願いいたします。これをも
つて提案理由の
説明といたします。