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1952-05-14 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第66号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十四日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 佐久間 徹君 理事 内藤 友明君    理事 松尾トシ子君       大上  司君    島村 一郎君       清水 逸平君    苫米地英俊君       夏堀源三郎君    宮幡  靖君       宮原幸三郎君    武藤 嘉一君     早稻田柳右エ門君    高田 富之君       深澤 義守君    久保田鶴松君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      大月  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (副財務官)  清島 省三君         大蔵事務官         (理財局外積課         長)      上田 克郎君         大蔵事務官         (管財局閉鎖機         関課長)    堀口 定義君         大蔵事務官   近藤 道夫君         日本開発銀行理         事       中村 建城君         日本開発銀行調         査部事業調査課         長       網野 貞雄君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 五月十四日  委員今野武雄君辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十三日  果汁に対する消費税撤廃請願關谷勝利君紹  介)(第二六二六号)  当せん金附証票発売の委譲に関する請願(川崎  秀二君紹介)(第二六三九号)  美術品に対する物品税撤廃請願冨永格五郎  君紹介)(第二六六六号)  文化財保護法指定による国宝、重要文化財及  び重要美術品等に対する物品税撤廃請願(冨  永格五郎紹介)(第二六六七号)  旧佐世保海軍工廠第四船きよ佐世保船舶工業  株式会社に使用許可請願北村徳太郎君外二  名紹介)(第二六九四号)  公認会計士法の一部を改正する法律案に関する  請願宮幡靖紹介)(第二七一二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  長期信用銀行法案内閣提出第一一三号)  貸付信託法案内閣提出第一三〇号)(予)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三八号)  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第一四三号)     —————————————
  2. 佐久間徹

    佐久間委員長代理 これより会議を開きます。  長期信用銀行法案貸付信託法案日本開発銀行法の一部を改正する法律案、及び閉鎖機関令の一部を改正する法律案の四法案一括議題として、前会に引続き質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許可いたします。宮幡靖君。
  3. 宮幡靖

    宮幡委員 長らく議題となつております貸付信託法は、まだ一言も御質問がないようでありますから、内容方針やこまかいことにわたりましてお尋ねしてみたい、こう思うのであります。  貸付信託法案長期資金調達するという面におきまして、おおむね立法趣旨には御賛同を申し上げるのであります。この法につきまして、提案理由にもありますように、いろいろの配慮がなされておりまして、その一つ一つについては、強く反対すべき理由は、ただいまのところ見出しておらないのであります。ただ総括的な問題としまして、金銭信託運用の問題は、市場金利との関係——もちろん現在金融も、循環でありましようか、季節的でありましようかわかりませんが、緩漫と称すべき状況にありますので、この一時的な現象をもつてすべてを論ずるわけには参りませんが、どうも指定金銭信託というものにつきまして、金利水準がおいおいと引上げられて、あるいは事例として申し上げては不適当かもしれませんが、ただいま高金利に対する取締法を設けたいという趣旨と照し合せまして、そういう悪質な高金利まで及ばなくても、市場金利を引上げるという一つの役割をしておる、こういうきらいがほの見えます。さりとて金融統制をいたしておらない関係上、大蔵省としても強力な法的な手段ができない。行政指導によつて何らか是正する道がありとすれば、その方針をとつていただく、こう思うのであります。簡単に申しますれば、金銭信託のいわゆる単独分野、俗に言う指定単と申しますものにおきましては、これは御承知のように、予定配当率もない。しかも期限というものも付されておらないわけであります。そこで一つの正常の金利体制と申しますか、これを乱す一つ温床となるような形がある。しかもこれがやはり預金を集めますところの一つの特権のように取扱われて参りまして、その指定金銭信託内容を分解してみますと、合同運用信託の方が順次減りまして、単独運用信託の方に移りかわつて行く傾向かある。これは少くとも合同運用の面におきましては、やはり定期領金と同じような、年六分というような利率が予定されておりますので、金利等も適正な線を歩くと思うのでありますが、これが単独運用になりますと、いわゆるこれらのことが期限的にも、率の点においても予想されておらない。ことに今回の立法によりまして、金利に対しまする信託預金と申しますものの税の点におきましては、単に二〇%の源泉徴収にとどめる。無記名が基本的であり、要求があれば記名的になる、こういう事態でありますので、もしこの指定単と称します金利が、正常な金利を乱すような温床となるということにつきまして、ただいま見受けられております弊害が今後強くなるようでは、貸付信託法というものの法案それ自体はいいけれども運用の面において再考を要することになるわけでありますが、これらはどんな方法で押えて行くのか。適正な状態を保つための行政的な考慮を払うおつもりであるか。これを承りたいと思います。
  4. 河野通一

    河野(通)政府委員 詳細の点につきましては、銀行課長からお答え申し上げますが、大体私ども考えております方針を私から申し上げてみたいと思います。いわゆる指定単という制度、これが信託制度の中で占める地位につきまして、理論的にも実際的にも問題があるわけであります。本来信託というものの性質からいいますと、いわゆる単独運用といつたような性質のものは、信託性質からいうと、必ずしも反しておるわけではない。むしろ合同運用というふうな制度の方より、どちらかというと信託本来の性質からいえば、単独の方がむしろ信託性質に合うという考え方もいたされると思います。ただしかし現在行われておりますいわゆる指定単というものは、非常に短かい期間で行われておるものもあります。しかもそれにさらに元本補填契約をつけておるもの、そういつたふうなことからいいますと、実質的にはまつたく預金とかわらないようなところもあるわけであります。本来の趣旨従つて長期で、しかも単独運用がされ、しかも元本補填のない一つ単独運用というものがありますれば、これは必ずしも私は排斥する必要はないと思うのであります。現在行われておりますのは、実質的には預金と少しも違いのないようなものであつて、しかも実際問題として、それに相当高い利率が付せられるといつたようなことに相なつております点から、行政の実体から申しますと、間々弊害を起すことが認められる点もあるわけであります。今後におきましては、私どもの基本的な考え方は、指定単につきましては、今申し上げましたような信託本来の性質に合うように、具体的に申しますならば、期限もできるだけ長いものにして行く。最低一年がいいか二年がいいか、いろいろ議論もございましようが、その点は経済の実情に応じまして、できるだけ長いものでやらせる。しかもそれは指定金銭信託一つの本来の姿に返つて、できるだけ預金というものと性質の違つたような形で指導して行く。具体的に申しますと、元本補填契約をつけるとか、あるいは配当を予定するとか、そういつたふうなことはやらせないで、本来の信託という形でやつて行くならば、この制度もいいじやないか、そういうふうに考えておるわけでありますが、現実には、先ほども指摘がありましたように、実際は預金であつて、しかも金利調整法預金に対する利率を、その制約を受けないものという形で、実際行われておるものもありますので、これらの点につきましては、できるだけ行政上の指導をもつて、是正の措置を講じて参りたい、かように考えております。さしあたりの問題といたしましては、これらの制度をできるだけ本来の筋に乗せるという点からいいましても、今御提案申し上げておりまする貸付信託制度ができますならば、この制度の方へ、今のいわゆる指定単、実際は預金とかわらないような意味指定単を、こちらの方にだんだん移して行くという配慮を加えて参りたいとも考えております。そういうふうなことでありますので、この新しい制度ができる機会に、今申し上げましたような方針を、できるだけはつきり樹立して参りたい、かように考えておる次第であります。
  5. 宮幡靖

    宮幡委員 方針の概略はよくわかりました。まことにけつこうな構想であろうと思うのでありますが、ただ実情から申しますると、ただいまでは信託業務を兼業しております大銀行、東京、富士、朝日、中央なんかは信託業務考えてよろしい。それと日本、第一などでは大体七七%くらいが指定単であります。市中銀行といわず、すべての金融機関が、長期貸付資金源に悩んでおる折柄で、信託業務特に指定単のみに特典があつて預金を集めやすいという状況であることは、全体の金融政策としてよほど考慮を払つてもらわなければならぬ。その点にも十分な配慮があるようでありますから、私はその点を深くは申し上げませんが、特に金融政策全般として考えてみますと、いわゆる正常なる金利体系というものを一日も早く樹立する、こういう方針が必至であります。何らかの機会に触れたかもしれませんが、ただいまではコール市場の百四、五十億の残高を計上する日もあります。市中銀行の一応手持ち預金の増加に対して一分五厘の短期証券に投資する等の形も現われております。しかして今度の大蔵省計画に載つております、いわゆる本年度償還すべき国債は二百三十七億円くらいだと思いますが、それらのうちの一部分は現金で返済する。個人持ちのものは現金で返済するのはもちろんでありまするが、あるいは担保なんかに提供されておるものがあります。あるいはコールの見返りになるものがあるだろうと思う。こういうものはおおむね二百二十億くらいの線で借りかえをしたいということは、大蔵省考えておられるように聞いております。その利率は幾らかというと六分である。六分だといたしますれば、日本銀行の貸出し金利は一銭七厘であつて、かりに六分一厘借りかえたといたしまして、そのまま持つていたといたしますと、これは金利体系からいえば、逆ざやということになつて現われて来る。政府方針はいわゆる低金利金利という方向に、口には言わねど持つて行かれておる。遺家族援護のために発行されますところのいわゆる遺族の一時金という——言葉は悪いかもしれませんが、初めは一時金という言葉であつた。この記名公債のごときものにおきましても、これはやはり期間は五、六年間で、五分五厘が六分になつた。記名公債で六分になつておる。日本銀行金利は一銭七厘、こういうことから考え合せますと、ますますもつて高金利主義温床となる指定単につきましては、相当強力な手を打つて、しかも兼業の信託業では、おおむねこの元本保護のための見返り等は脆弱だと思う。これらの点から考えまして、今回の貸付信託法につきましては、元本補償という点についてその積立てを要求する、準備預金をする、この手は十分行き届いておる。しかし従来やつて来ました指定単にはこういう制度はないわけでありますが、これが移りかわつた場合には、指定単に対し元本補償という立場に立ち、同様今回の提案に基く法律案の精神、あるいは法律の適用によりまして、その準備をなさる御用意があるのかどうか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  6. 大月高

    大月政府委員 ただいま御提案申し上げております貸付信託制度といたしましては、特に元本損失を生じた場合に補填をする契約をいたしました場合に限りまして、特別預金積立てを要求しておるわけであります。現在の信託業法におきましては、元本損失補填契約のほか、利息補足契約もできることになつております。この新しい制度におきましては、少くとも元本補填のみに限りたい。これは制度として元本補填は認めるという建前でございます。しかし実際の運用といたしましては、先ほど御指摘もございましたように、一般預金信託の性格を逐次明瞭にいたしまして、分化さすということが趣旨でございますので、とりあえず第一回に発行する分といたしましては、この元本損失補填契約をつけないで発行いたしまして、逐次本来の姿に持つて行かせたいというように指導いたしたいと思つております。
  7. 宮幡靖

    宮幡委員 その方針けつこうだと思いますが、法律で言いますと、第三条の二項に信託契約事項が列記してある。十一に、信託業法第九条の規定により元本契約をする場合には、その割合その他これに関する事項というのがあるのでありますが、そうすると、方針としては当然新しい貸付信託法によりましては、認めないで行こうという運用をなさるおつもりですか。
  8. 大月高

    大月政府委員 ただいま予定いたしておりますところでは、この条項によつて補填契約をするということでなしに、やらせて参りたいと存じております。それから先ほどのお尋ねの、現在指定単におきまして、補填契約のあるものについて、こういう準備金を置かすかどうかという問題でございますが、現実一般預金と認められるもの、つまり自己の責任におきまして損失をかぶるおそれのあるものについては、今後の運用といたしまして、何らかの措置を講ずる必要があろうかと考えております。
  9. 宮幡靖

    宮幡委員 そういたしますと、今の指定単の増加して行く途上から考えまして、これは何か検査——立入り検査というようなことになつてはいかぬのでありますが、何か経理検査というような権限を及ぼすことができるのでありましようか。その点をお聞かせ願いたいと思います。
  10. 大月高

    大月政府委員 現在いわゆる信託会社といつておりますのは、正確に申しますと普通銀行でございまして、それが信託業務を兼営しておるという建前になつております。従いまして、銀行であるという面から、銀行法による検査及び報告を徴する、こういう権限がございますし、信託業務を兼営しております建前から、信託業法におきまして、やはり同じく検査及び報告を徴する権限を持つております。現在銀行局において実行いたしております鉱行検査におきましても、この指定単の問題を十分に頭に置きまして、常に濫用に流れないように、金利体系を乱さないように注意しながら、検査を実行いたしておる次第であります。
  11. 宮幡靖

    宮幡委員 これは一つの愚問でありますが、仮定の例としまして、指定単預金といいますか、これで集めました資金特別長期金融に流す。たとえば地下資源開発、さしあたつては電力の開発などへ流すというような、ひもつき運用とでも申しますか、こういうようなことをやるのにもし適したものであり、長期資金調達のために必要であるというような考えなつた場合に、さようなさしずといいますか、内示をいたしまして運用せしむることが可能であるか。これをひとつ参考のために伺いたいと思います。     〔佐久間委員長代理退席委員長着席
  12. 大月高

    大月政府委員 現在の制度といたしましては、具体的に個々の貸出しについて監督官庁が指示をする権限はございません。しからば行政指導としてどこへ貸せということを言うことが、適当であるかどうかという問題でございますが、現在の銀行形態といたしましては、一つの私企業の形態をとつておりますので、行政官庁が個々的な融資につきまして指導いたしました結果、かりに損失が生ずるということになりました場合に、はたして責任はどこに帰属するかということになりますと、やはり最終的には銀行がかぶらざるを得ない、そういう建前のもとにおきまして、個々的な融資について行政官庁指導するということは、適当でないと考えております。
  13. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの御答弁で、いよいよもつて行政指導の面におきまして、指定単を縮小せしめるという方針が必至であるわけでございますが、さような意味において、運用しただいまそれぞれの御答弁によつて、われわれは了解ができたわけであります。さような運用に留意せられまして、本法をお扱いいただきたいと思います。これを要望いたしまして、簡単な法律案でありますので、その他の質疑はこれで打切ることといたします。
  14. 佐藤重遠

  15. 小山長規

    小山委員 長期信用銀行法案について二、三伺つておきたいと思います。長期信用銀行の問題は、制度としては私はどうしてもこういう制度でなければならぬと考えている一人であります。前に銀行等債券発行法律案というものが出ましたときに、その旨を申しているのでありますが、制度としては長期金融を扱う銀行と、短期金融を扱う銀行というものがなければならぬのでありますけれども日本において現在の法律のもとにおいては、商業銀行も届出一本によつて債券発行できるという制度になつている。これは制度としてはまずいのでありまして、その意味では、この長期信用銀行という制度を設けて、長期信用銀行というものだけが債券発行できるというふうな制度にすることは、これは銀行制度としては、ことに日本実情においてはそうでなければならぬと考える一員であります。ところがこの長期信用銀行が、現在の情勢下において債券発行することが可能であるかどうか。それが所要の資金を集められないような場合には、政府としてはどのような対策をとろうとされるのか。その点からまず最初に伺つておきたいのであります。
  16. 河野通一

    河野(通)政府委員 御指摘のように、新しい長期信用銀行制度ができました場合に、問題は、結局その資金源の充実、具体的に申しますと、債券消化ができるかできないかが、この長期信用銀行がその使命を達成することができるかできないかのわかれ目だと、私ども考えております。債券消化につきましては、今後ともますます一層その点に重点を指向いたしまして、あらゆる観点からこの資金調達については、努力をいたしたいと考えておるのでありますが、筋道といたしましては、長期資金というものは、できるだけ民間から集まつて来ることが望ましいのであります。具体的にいいますと、債券はまだなかなか個人消化というところまでは、そう急には参りませんけれども金融機関が集めました資金有価証券の保有という形で——これは普通銀行に限りません。その他の一般金融機関庶民金融機関等もそうでありますが、これらを自分で長期資金に固定するのではなくして、金融債でこれを保有するという形で資産構成ができるように適正化しながら、間接の長期信用を供与するという形に持つて行くことが——従来からもそういう形になつておりますけれども、今後はますますそういう形に持つて参りたい、かように考えておる次第であります。しかしそれだけでは、現在日本資本の蓄積が非常に不足いたしております関係もございますので、十分に債券消化ができないことも考えられますので、この点の埋め合せばできるだけ政府資金によつてこれをカバーして行く。具体的に申し上げますならば、資金運用部資金運用にあたりまして、できるだけ多額債券をこれによつて消化して行くという方向努力をいたしたい、かように考えております。現在のところでは、資金運用部資金運用計画のうちには、実は金融債消化ということは載つておらぬのでありますが、これはなるべくすみやかなる機会に、資金運用部資金状況等を見まして、なるべく多額金融債引受ける方向に持つて行きたい。これがため必要なる運用計画の修正を行つて参りたいと考えておる次第であります。現在のところではまだ正確に金額を申し上げることはできませんが、少くとも昨年度よりも多額のものを、資金運用部としては引受ける形に持つて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 小山長規

    小山委員 今局長が申されましたように、民間資金はいろいろな面において競合いたしております。現在出ておりますところの貸付信託法律にもありますように、その他無記名定期預金とか、興業債券とかいろいろな面で競合するのであります。従つて、われわれが考えましても——資金運用部の金をこれらの金融債に持つて行かなければならぬであろうということは、これはしろうと考えでも考えられる。おそらくそれがこの長期信用銀行資金源の大部分であろうと思うのであります。その場合に、ただいま仰せになりましたように、昨年度よりも多額の金を金融債として用意したいと申されますのは、たしか去年は三百億であつたかと思うのでありますが、その三百億よりもよけい金融債に流すつもりがあり、またその用意があるという見通しが大体ついたということも、前提としてのお話でありますか。
  18. 河野通一

    河野(通)政府委員 先ほど申しましたように、まだ的確に数字的なことは申し上げられませんが、大体私の腹づもりとしては、そういうことでやつて参りたい。大体見通しもそこまで行けるであろうというふうに考えております。しかし、まだ運用計画——具体的に何百億金融債引受けるというところまで金額をきめてやつて参りますのには、相当時間もかかると思いますが、さしあたりの問題としては、金融債引受に支障のないように考えて参りたいと思つております。  なお御参考までに申し上げておきたいと思いますが、この長期信用銀行制度は、法律案が通過いたしましても、準備期間相当の月日を置かなければなりませんので、大体施行は秋からということになるかと思います。それらの点とにらみ合せましてこの問題を考えて参りたいと思いますが、長期信用銀行が設立になるまで、現在の債券発行銀行に対しては、長期資本というものの必要性にかんがみまして、資金運用部は、長期信用銀行ができるまでの間も、できるだけ現在の債券銀行に対して金融債引受を進めて参りたい、かように考えております。
  19. 小山長規

    小山委員 もう一つは、長期信用銀行発行する債券利回りの問題であります。これは大体どの程度のものを予定されているのか。その点をひとつつておきたいと思います。
  20. 河野通一

    河野(通)政府委員 これは金利一般水準の問題になりますので、長きにわたつて利回りの点は、今ここではなかなか申し上げられない意いますが、さしあたりのところでは、現在の勧業債券あるいは興業債券等と、そうかわらない利回りで行きたいと考えております。なお割引の債券発行いたします場合には、大体現在の割興あたり利回りを頭に置いております。しかし金利情勢が許します限り、特に償還の見込み等とのにらみ合せを考えまして、債券発行による資金コストはできるだけ低いのが望ましいのであります。そういう方へ、全体の金利情勢とにらみ合して、できるだけ資金コストの引下げに努力をいたしたい、かように考えている次第であります。     〔委員長退席奥村委員長代理着席
  21. 小山長規

    小山委員 債券発行します場合に、債券の売れ行きがよろしいようにはからうために、利廻りは高くなければならぬでありましようし、全体の金利政策からいうと、金利は偉いほどよいのでありますから、その辺のところは十分御勘考の上で、行政指導をお願いいたしたいのであります。  次に、この長期信用銀行は、制度としては私は単一の長期信用銀行を予定しているのではないかと思うのでありますが、今後の方針としては同行程度認めて行こうというお考えであるか、それを伺つておきたいのであります。
  22. 河野通一

    河野(通)政府委員 その点は、先般の当委員会でもお答えを申し上げたのであります。私どもは、単数の長期信用銀行考えてはおりません。複数の長期信用銀行考えているわけであります。しかしながら、よく御案内のように、新しい長期信用銀行制度は、預金銀行と遍いまして相当資金コストが高いといつた関係から、経営上の立場を申し上げますと、普通の、預金銀行の採算ベースと申しますか、そういつた資金量に比較いたしまして、非常に大きな資金量を持たなければ、なかなかやつて参れぬわけであります。そういたしますと、先ほどもお話がありましたような、日本経済の持つております債券消化の能力等とも見合いまして、そうたくさんの長期信用銀行ができますと、結局弱体銀行がたくさんできることになりまして、これでは長期信用銀行制度の目的を達成するのに、非常に支障があると考えるのであります。私どもは複数とは考えておりますが、そう多くない数でさしあたりは出発したい。私どもの試算いたしたところでは、大体長期信用銀行が一人前にやつて行ける資金主は、二百億から三百億最低必要であろうと思うのであります。預金銀行ならば、地方におきましてはまあ二、三十億もあれば、とりあえずのところでは採算ベースに乗り得ると思うのであります。そういつた関係から言いましても、強力なる銀行が少数であることが必要であろうと考えるのであります。数行を考えております、か、とりあえずといたしましては大体二行ないし三行程度から出発いたすことが、適当であろうと考えております。
  23. 小山長規

    小山委員 この長期信用銀、仁は、債券を集めるという関係からいうと、あまりたくさんできてはお互いに存立が困難になつて来るという点はわかるのでありますが、またあまり少いと今度は独占企業になつてしまうおそれがある。その点については独占企業にならないように、かつまた銀行の存立が可能であるようにということから、両方から考えなければならぬのでありますが、その場合にどちらに一体重きを置かれるのか。独占企業にならぬという点に重きを置かれるのか。銀行局考えた採算の点を主として考えて行かれるのか。これは私は新設の銀行のできた場合の判断の基準になると思うのでありますが、その点についてはどうお考えですか。
  24. 河野通一

    河野(通)政府委員 私どもは両者を同じ程度のウエートで考えておるわけであります。しかしいずれかと申しますと、その銀行が堅実な基礎のもとに経営ができることが、何といつても根本の問題だと思います。その上に立つて今お話のように独占といいますか独善といいますか、できるだけそういつたことにならないような配慮を加えて参りたい。お話のような点を十分考えまして、単数であつてはいけないということが私ども考え方であります。しかし一方で今申し上げましたようにあまりたくさんの銀行もできませんので、そこらのあたりを調整して、大体今の見通しでは二行ないし三行程度、しかもそれらがお互いに競争しサービスを向上して参りますことによつて、その程度の数でさしあたりのところでは独善の弊に陥ることもあるまい。また今後私ども行政指導上、そういうことにならないように十分なる配慮を加えて参りたい、かように考えておる次第であります。
  25. 小山長規

    小山委員 ついでにその問題で伺つておきますが、おそらく今銀行局長あるいは大蔵省考えられておる考えの中には、どうせこの債券発行預金部で見なければならぬのであるから、従つて預金部の資金量を勘案してお考えになつて、そこから考え方が出発されておるのではないかと思うのであります。その場合に情勢がかわつて、たとえばただいまわれわれの方の当委員会に出ております閉鎖機関令というものがある。この閉鎖機関令によつて、今政府の管理下にある閉鎖機関の流動資産に相当するものが、約九十七億ばかりあるというお話である。これらのものが解除されるような場合になつて来ると、新たなる資金になります。これらのものがかりに長期信用銀行債券引受資金になり得るというような情勢なつた場合には、私はこの問題は少しかわつて来るのではないかと思うのであります。そういう場合には、やはりそういうものを資金源とする信用銀行というものは成り立つとお考えになつているか、その辺のところはまだお考えになつておりませんか、伺つておきたいのであります。
  26. 河野通一

    河野(通)政府委員 閉鎖機関の今持つておりまする余裕金と申しますか、そういつたものの今後の処理につきましては、閉鎖機関の処置が進むに応じましてだんだんそれが解除されて、適当なところへ運用されることになると思います。閉鎖機関の中でもやはり個個に事情が非常に違うのでありまして、清算の過程においておそらく短期にこれを処分しなければならぬものもございましよう。それらの観点から、これをどういうふうに処置して行くかということは、結局閉鎖機関自体の判断によつて処置されるべきものであろうと私どもは思います。現在でも別に閉鎖機関の持つております余裕金が、日本銀行の中に眠つておるわけじやない。その大部分は、あるいは国債でありますとか糧券でありますとか、そういつたものに運用されておるわけでありますから、これを何らかの形で別の一用途に向ける場合には、今持たれておるその糧券をだれが引受けるかという問題になつて参ります。国全体の資金から見ますると、閉鎖機関は別に眠つておるわけじやないということになるわけでありますので、これだけがこふとして日本経済全体の持つておる資金にプラスになる、いきなりそこにこれだけのものがふえて来るというわけでもない。これらは金融全体として考えなければならないと思います。かたがたこの閉鎖機関というものの性質から見て政府の金ではない。今後はやはり閉鎖機関自体の金になるわけでありますから、これまで非常な大きなさしずを政府としてすることも、なかなかむずかしいと考えております。いずれにいたしましても、まだこれらの処理方針あるいは数等を私どもはつきり承知いたしておりませんので、新しい事態に応じまして必要な考慮はして参りたいと思いますが、現在のところでは、まだそれを予定してどうするといつたところまで考えはできておりません。
  27. 小山長規

    小山委員 閉鎖機関の持つておる資金は眠つておるわけではないというお話でありますが、たとえば朝鮮銀行や台湾銀行日本銀行に登録公債として登録しておるもの、これは眠つておるのではないか。これらが生きて経済界に流通するときには、新たなる金源となるのではないかと思うのですが、その点はいかがでしようか。
  28. 河野通一

    河野(通)政府委員 閉鎖機関自体としては資金源であろうと思います。だから閉鎖機関がこれを処分してどう使おうかということは別の問題。しかし国全体として見れば、今日本銀行の中に登録公債として入つておるものを閉鎖機関が処分して、ほかの資金に充てたとすると、結局この公債をたれが引受けるかという問題になるわけであります。そうすると通貨なり金融全体の問題としては、結局一方から一方に金が動くだけであります。閉鎖機関自体としては、お話のように相なると思います。
  29. 小山長規

    小山委員 その点はその程度にしておきまして、次に長期信用銀行の業務の中で、特に証券業との関係、あるいは証券業法との関係について、数点明らかにいたしておきたい点があるのであります。それは第六条第一項第二号に長期信用銀行の営むべき業務として、有価証券の応募その他の取得と書いてあるのですが、この取得ということの中には、有価証券引受、その引受は、たとえば募集引受であるとか、請負引受であるとか、あらゆる引受を含むものであるかどうか。その点を伺つておきたいのであります。
  30. 大月高

    大月政府委員 この第二号にございます有価証券の応募その他の方法による取得と申しますのは、これをわけて申し上げますと、応募がその一つであります。それから買入れがその一つであります。それから先ほどお尋ねのございました引受がその一つでございまして、この三つを含んでおるという趣旨でございます。ただ引受という言葉につきましては、いわゆるアンダーライテイングと申しております本来の証券引受業者のやる引受と、一般に社債の総額引受という意味引受、サブスクリプシヨンというものと、この一つの種類のものがあるわけであります。従いましてここに意味します引受は、サブスクリプシヨンはいいのだけれども、アンダーライティングはやらないという意味でございまして、これは証券取引法の第六十五条におきまする証券業務と銀行業務とは正確に分離しよう、こういう趣旨とまつたく同一でございます。従いましてこの但書の売出しの目的で取得することを除きましたのは、要するに引受をいたしまして売出しをやるという行為がくつつきますと、そこで本来の証券業者の行う引受になるわけでございますので、証券業者本来の業務たる引受を除くことを正確に表わすために、この但書をくつつけたわけであります。
  31. 小山長規

    小山委員 その点はよくわかりました。  次に、引受の中には社債のほか、株式会社の新設または増産の場合の株式の引受までも含まれておるような表現になつておりますが、これらの株式、増資株の引受、あるいは新設株式の引受というような場合には、すべての株式をそういうふうに引受けるのか、あるいはその間におのずから業種に何か限定があるのか、その点はいかがでありますか。
  32. 大月高

    大月政府委員 ここにございます株式の引受という言葉をそのまま適用いたしますと、いかなる種類の株式も引受できるわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、現在独占禁止法がございまして、金融機関は、他の事業会社の株式は株式総数の百分の五を越えて取得してはならないという制限がございます。従いまして、この総額引受というように、全株式を引受けるということは、独占禁止法の建前から実行できないという制約がございますがりに非常にまれな場合を考えてみますと、増資をいたします場合に、増資分が全体の総株数の百分の五以内であるというきわめて僅少な場合に、引受をするということはあるいは可能かと思うのでございますが、こういうことは怒涛的に申しまして、実際上の意味がございませんので、そういうことも実行することは実際上ないと思います。なお銀行の性格といたしまして、この第六条の第一号にございますように、主として長期の事業金融をやるという建前銀行でございますので、銀行といたしまして株式を多量に持つということは、またその意味からも適当でないと存じます。そういう意味におきまして、法文上株式という表現は出ておりますけれども、実際上の運用といたしましては、せいぞう必要な株式を、市場でもし必要ならば、若干投資の意味で持つ、そういう限度を越えないことであろうと考えます。
  33. 小山長規

    小山委員 それから株式や社債等の応募その他の取得ということを、この銀行の業務として認めたということは、この業務から相当の手数料その他が入つて来るであろう、従つてこの銀行の附帯業務としては相当重要な業務であるからという趣旨で、これを入れられたのか。それとも長期の投資をやるについては、こういうものがないといろいろ不便であるからという趣旨で、この業務を加えられたのか。立法趣旨はどこにあるのでありますか。
  34. 大月高

    大月政府委員 この第二号を業務として掲げました理由は、この第一号の業務がいわゆる長期融資の形における事業金融でございますので、それに関連のある範囲におきまして、広い意味の証券業務を附加してやらしたい、こういう銀行の性格から出ておるわけでございます。現実の問題といたしましても、かりにこの銀行から某会社に貸金のかつこうで令が出ておる、それをその会社が社債を発行するという場合におきまして、わざわざ証券会社の手を通じてこれを取得しなくちやならぬかということになりますと、これは直接接触のある会社とこの銀行との話し合いで、それを社債化するという方が便利ではなかろうか、そいう意味におきまして、この銀行と社債を発行する事業会社、これの直接の接触を許すというのが一つ考え方でございます。なお証券業務との関連もございますので、こういうふうにして取得いたしました社債を一般に分譲するというような場合には、必ず証券業者を通じて分配する、あるいはほんの個々的な話合いによりまして、その事業者に個個的な処分として売却をする、そういうことは考えられるわけでございますが、一般の証券業務に関与することはないように、それは十分に考えられておるわけでございます。この銀行の手数料収入を増加いたしまして経理上の助けにしたいという意図は、特に立法理由としてはございません。
  35. 小山長規

    小山委員 その点はそれで非常に明瞭になつて参りました。そこでただいままでに申されましたように、この銀行有価証券業を営ませることは考えていないのであるというお話であります。従つて、その忘味では有価証券を売出しの目的で取得してはならないとちやんと書いてある。ところが、売出しの目的で取得したかどうかということの判断は、一体何によつてその基準を求めるのかという問題が起つて来るのであります。すなわち、最初にこの銀行が、たとえば社債として引受けます場合に、その募集契約内容によつてわかる場合もありましようが、同時にまた場合によつてはその社債を売却して、初めてこれは売出しの目的で持つておつたのではないかというふうに、判断される場合もあるのではないかと思います。従つて、売出しの目的で取得したかどうかということの判断は、その銀行有価証券を売つてしまつてから、初めて過去にさかのぼつて売出しの目的であつたというふうに判断するのか、あるいは買うときすでに売出しの目的なりというふうな判断の基準が成り立つのかその辺のところはどういうふうに解釈すべきものでありますか。
  36. 大月高

    大月政府委員 この売出しの目的を有すかどうかという認定の問題でございますが、きわめて明瞭な場合におきましては、直接発行いたします、会社とこの銀行との契約書に記載するのが通常でございます。たいていの場合、かりに売出しの目的を持つて実行いたします、いわゆるアンダーラィティングの意味引受の場合におきましては、こういう条件で引受けて、それをどういう条件で売り出すのだということまで、契約書に書くのが通常でございまして、それによつて、もし記載がございます。ならば、当然売出しの目的を持つているものとみなされる。それではそういう具体的な記載がない場合に、どういうように判定するかというのでございますが、もしも社債とか株式を引受けまして、その銀行がみずから直接に一般大衆に売り出す、こういうことを実行いたしましたならば、その引受けた行為と売り出した行為とを、あわせて判断いたすことができると思うのでございます。その他もし引受けました社債を、かりに特定の人に売つたような場合におきましては、当然売り出すという行為が伴つておりませんので、売出しの目的を持つていたということは言えないと想います。従つて、その場合に売出しの目的を持つたかどうかということは、現実の行動から判定いたされるわけでございまして、そこは現在監督官庁といたしまして、大蔵省銀行局がございますし、証券取引法の面からいたしまして証券取引委員会もございますので、そういう事実の認定につきましては、狭義の意味の証券業務に入らないように、厳重な監督をいたす方針であります。
  37. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 夏堀源三郎君。
  38. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 大蔵大臣がお見えになつたので。この四月二十三日今問題になつております韓国における在外資産の問題で質問申し上げたのであります。その際に、速記はとめておりましたけれども、私の質問に対しまして、たいへん満足すべき御答弁にあずかつたと私は存じております。その後五月八日付の朝日新聞及びラジオで、朝鮮における日本の存外資産に対する請求権はないというようなことを、米国の国務省から覚書として発表になつたというニュースかあつたのであります。またその後五月十日には、さらに米国が日韓交渉には介入しない、先の請求権の覚書を否定しておるということが一記載になつております。これは非常に重大な問題でありますので、この点をあらためてお伺いしたい。きようは外務大臣の出席も求めて、両大臣からの御答弁にあずかりたい、こう存じておりましたが、ちようど外務大臣は今外務委員会に出席中であるそうでありますので、またあとで出られるかもしれませんけれども、大蔵大臣が御出席になりましたので、ある程度所管の債権債務等について、ちようど今大蔵委員会に付託になつております閉鎖機関令の一部を改正する法律案に関連してお伺いするのであります。  この問題のいきさつはたいへんむずかしい問題でありましようが、国民は講和条約発効後の日本の自立経済及び政治の面に対して、第一歩を踏み出したのでありますから、いわゆる独立国家として、平和条約第四条による協定によつてとりきめすべきその条項に該当するものである、こう存じまするので、私がこの間御質問申し上げた二、三日後に私そのときにこれは平和条約発効後に、この問題を取上げるべきものであるということも申し上げたのであります。この協定はちよつと中止になつておるようでありますが、今後これはまた協定の本筋に入るでありましようか。その解釈を一応お伺いしておいて参考にもいたしたいと存じます。特に新聞に記載になつておるどちらがほんとうか、この点に対しても政府の見解を明らかにしておくへきものである、こう存じます。前委員会におきましては、私はまだ占領下においての場合であり、遠慮も申し上げ、相手を刺激するようなこともどうかと思いまして、一部速記をとりやめて申し上げた点もありますが、きようは講和条約もすでに発効になつて、独立国家となつたのでありますから、国会議員として、国民の聞かんとするところ、言わんとするところ、そうしてこの大きな問題は、ある程度これは相手を特に刺激しない程度において、申し上げることはさしつかえないだろうけれども政府も御答弁のうちに、今後協定に入つて、もしおさしつかえがあるというお考えでありますれば、その部分は適当に御処置をお願いしたい、こう存ずる次第であります。  そこで結局平和条約の第四条に当ると思いますが、第四条の「この条(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。」1住民という語は、この条約で用いるときはいつでも「(法人を含む。)」となつております。ただここで問題になるのは(b)の第二項の「日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」これが問題であろうと存じます。この第二項のこれは朝鮮のそれに該当することではなかろうか、こう存ずる次第であります。これは私の推測でありまするけれども、結局第二項のこの解釈を朝鮮側では「日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」という、これをもつてその所有権は日本にはないということを主張しておるのではないだろうか、こう私は考えておるのでありますが、この問題は結局「国民の財産の処理の効力を承認する。」の処理とは何ぞやということで、処理とは非常に範囲が広いことであつて、没収も処理であり、あるいはまた売却とかいうようなことも処理ではないだろうか、こうも考えられる節があるのではないかと思います。ただ問題として、今新聞に記載になつております請求権があるとかないとかいうことについて、問題が問題だけに、国民はこれに対して一体どちらがほんとうだろうか、こう考えておるだろうと存じます。これは今後協定する際に、請求権があるという御主張であつて初めて政府がこの問題を取上げることであつて、なければ、何も問題にする必要はないのです。であるから、請求権があるという政府の御見解を明らかにしておくべきではないだろうか。しかし、ないという御見解であれば、これは何をか言わんやでありまするけれども、このような大きな問題で、私この前も御質問申し上げて、今またここに再びこれを取上げることは、時が時であり、そうして平和条約発効後においての日本のあり方が、占領下にあつた場合にはやむを得ないけれども、講和発効後においてもアメリカの一片の覚書によつて左右されることは、一体どうしたものかということが、一部の国民の声ではないか、こう存じております。私はそのような解釈はしたくはないのでありまするけれども、事重大でありまするので、この点の解釈を御答弁願いたいと同時に、今申し上げた平和条約第四条第一項、第二項の解釈、この点について今私は自分かつてな意見を申し上げましたけれども、この点は非常に重要な問題でありますので、おさしつかえのない程度において、この問題を明確にすべきではないだろうか。今申し上げたように、もし今後の協定において何かさしさわりのあるという点については、適当に御処置を願つて答弁を願いたい、こう存ずる次第であります。
  39. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前回の御質問に対しましてお答えした通りで、何らかわつたことはございません。新聞に、請求権がないというアメリカ政府の解釈だこいうことが載つておつたのであります。しかしこれはその後の調査によりますると、そういう見解ではないということを確かめました。この問題は適当な機会に外務大臣より公表すべきだということを、私から外務大臣に先日話をいたしまして、今外務大臣が外務委員会へ出ておるとすれば、多分外務大臣としての見解をきようぐらい発表したと思います。  平和条約第四条の解釈につきましては、この前も申し上げましたように、アメリカ軍のいわゆる指令の効力は認まするが、この指令が日本の財産権返還請求あるいは原状回復請求権を否定するものではない。ことに私有財産につきましては、へーグの陸戦条約によつて不可侵の原則があるのであります。しかもこの条約では、それを否定することは何ら規定していないのであります。われわれは請求権があるということを従来主張して来ておりますし、今後も主張する考えであるのであります。
  40. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  41. 奧村又十郎

    ○奧村委員長代理 速記を始めて。
  42. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 大蔵大臣の重ねてのただいまの御答弁を承つて、私どもも満足しておる次第であります。国民もこうしたような政府考え方をどこまでも支持して、その目的の達成を希望しておると存じます。ひとつがんばつていただきたいと思います。  なおもう一つ、中国政府との平和条約において、台湾の債権債務のとりきめは除外してあるのではないだろうか、こう私どもは存じておりますが、その通りでありましようか。もしそうであれば、その債権債務が、この閉鎖機関令の整のそれにいろいろ関係を持つて参りますので、この点もさしつかえない程度で御答弁を願いたいと存じます。
  43. 池田勇人

    ○池田国務大臣 台湾の問題につきましても、その問題は特別にとりきめることに相なつておると記憶いたしております。
  44. 小山長規

    小山委員 関連して………。ただいまの大臣の御答弁で、朝鮮に関しまする軍政府並びに司令部の処理の効力は認めるが、日本政府として私有財産権を放棄したわけではないのであるから、従つて原状回復の請求権あるいは損害賠償の請求権はあるのであるという御解釈は、われわれは非常に満足するところであります。  ところで、ただいまわれわれの委員会議題になつております閉鎖機関令とも関連するのでありますが、朝鮮銀行は、本店は京城にあつたのであります。この朝鮮銀行という法人は日本の法人であるし、日本人が権利を持つておるものであると思います。これの処理いかんにかかわらず、朝鮮銀行日本の法人であるという主張は正しい主張であると考えるのでありますが、その点についてはいかがお考えでありますか
  45. 池田勇人

    ○池田国務大臣 朝鮮に本店を持つております朝鮮銀行の国内資産を、特別に取扱うかどうかという問題は、その法人の性質いかんにかかわるということよりも、今の日韓交渉に影響を及ぼすことが多いので、今のところはこれをそのままふせておいた方がいいのではないかというので、閉鎖機関令の改正にも実は入れなかつたことは、先般も委員会で御説明した通りであります。
  46. 小山長規

    小山委員 話の途中になりますから急いで申し上げますが、朝鮮銀行は朝鮮の特別法でできたものでなくして、日本法律で、しかも株式会社としてできております。それから朝鮮銀行についての運命が、朝鮮のものか日本のものかわからぬということになりますと、たいへんな問題でありまして、朝鮮銀行が持つておりますところの日本銀行に登録してある国債、あるいは日本内地にあるあらゆる動産、不動産、これはすべて朝鮮のものであるということにならざるを得ない。そういうようなとりきめに日本政府が応じようとは、私は思わぬのでありますが、法理論から言つて、向うのものか、こちらのものかわからぬという答弁では、私は非常に不安である。ただいま大臣が御即答できませんでしたら、あらためてお考えの上で、その点はほんとうに明確に御答弁をお願いいたしたいのであります。
  47. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題は、私はやはり日韓交渉によつてきめらるべき場問題だと思います。株主の構成その他から申しまして、財産権の帰属につきましては、十分御趣旨のような点を入れまして、交渉いたしたいと考えております。
  48. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今度の法律の面に移りますが、ごく簡単に申し上げますと、今申し上げたように、これからの協定によつてとりきめられる、こうなつております。閉鎖機関令の一部改正の第二条に「閉鎖機関の本邦外に在る本店、支店その他の営業所に係る債権及び債務で命令で定めるもの」は、これを本邦内にある財産とみなすということが書いてありまするが、そこでまだ協定でこれからどうなるか、どちらのものになるかわからないのであつて、これをこの法律案として、本邦内にある財産とみなして処理することができるか」どうかということについて、多少疑問を持つのではなかろうか、こう思うのでありますが、今この法律案を審査中であつて、これをある程度修正することはどうかという意見もありますので、ごく簡単でよろしゆうございます。またあとでもよろしゆうございますが、この点に対してどういう御意向を持つておりますか。
  49. 清島省三

    ○清島説明員 御説明申し上げます。第二条によりまして、閉鎖機関の本邦外にある店舗の債権債務について、それを命令で定めた場合には、本邦の店舗の債権債務になる、こういうふうに改正の趣旨となつておるわけですが、閉鎖機関の清算というものは、御承知のように本邦内にある店舗の債権債務のみを、閉鎖機関の清算の対象としておりまして、本邦外の店舗の債権債務は、閉鎖機関令による特殊清算の対象にはなつていないのであります。ところが、さつき問題がありました朝鮮、台湾の特別のとりきめがありまして、かりにそういう店舗のものが日本に返されたというような決定になつた場合に、それをどうするかという問題があるのですが、それは当然閉鎖機関令によります財滝であるけれども、それが特殊清算の対象にならないというような疑いが出て来るわけでございます。従つてこの閉鎖機関令自体が、国内の一店舗のみの債権債務の清算だけを目的としておることは、さつき御説明した通りでございますから、それを国内店舗の債権債務として、大蔵大臣の監督、のもとにある閉鎖機関の特殊清算の対象にするということごなるわけでございます。
  50. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 本邦内にあるということであれば問題はない。本邦外にあると書いてありますから、そこでもしこれが協定において日本の請求することがいれられなかつた、没収された。そうすると、これを本邦内にある財産とみなすということになると、債務だけが残るのではないだろうか、こういうことも考えられるのであります。債権と債務はつきものですけれども、この点はちよつとくどいようですが……。
  51. 清島省三

    ○清島説明員 これは命令でもつて定めるのでありまして、命令はいろいろなそういう条約とか、あるいはとりきめとかいう結果に従つて命令を出すということを考えまして、もし返らなければ、それは命令で定める必要がなくて、全然定めないということもできるわけであります。命令を出すか出さぬかということは、閉鎖機関令自体が、清算というきわめて事務的な法律でありまして、そういう一切の対外関係は、協定とかあるいはとりきめとかいうものに従つて、この閉鎖機関令の中に取入れて行くというようなことになつておるわけでございます。
  52. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 答弁に立つ政府委員がまちまちの御答弁になるから、ちよつと私もめんくらつてしまう。命令で定めなければいいじやないかへこうなりますけれども、この前に私が質問いたしましたときには、どなたか、これは朝鮮及び台湾を含むのかと申し上げましたら、含む、こういうような御答弁にあずかつたように記憶しておりますので、そうであれば、私が今申し上げたようなことは、たいへん解釈がむずしくなるのではないか、こう思いましたので、そのときになつて、命令で定めないのだ、こうなれば簡単に行きますけれども、朝鮮、台湾もこれに含むのだ、こういう御答弁にあずかつたように記憶しております。大体この条項は、ブラジルとかあるいはスイスとか、そういうような戦争には直接関係のない国に対して、これを適用しようというお気持ではなかつたのか。もしそうであつたならば、この書き方は一般に適用することではなく、何かもつと書き方があるのじやなかろうか、こう存じますので、お伺いする次第であります。
  53. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えいたします。この前申し上げましたのは、その条項に入つて来ておりますのは一般的な規律でありまして、単にブラジルのみならず、アメリカあるいは朝鮮、あるいは中国とか、その以外の国全部を含めて考えておるわけであります。そこでその中に資産、債務両方入つて来ておるわけでありますが、現在の建前は本邦内の店舗にかかる債権債務についてだけ、処理ができるようになつておるわけであります。ところが、もし今後平和条約の発効に伴いまして、いろいろな折衝の結果、外地店舗にかかる資産でありましても、それがたとえばブラジルのように好意的に返してやろういう場合もあるかもしれない。それから負債の場合でありますれば、最近の平和条約による折衝の結果、外地店舗に関する部分もあるいは払わなけれげならないようになるかもしれない。そこでもしその交渉の結果払わなくちやならぬという時期が、国会の会期の関係上ちようど法律を改正し得ない時期にそういう問題が起つた場合には、政府としても非常に困るのではないか。従つてもしそういう折衝の結果、払わなくちやならぬということが確定す北ば、それを政令で定めて払えるように、一応の穴をあけておこうというのが立法趣旨でありまして、あくまでそれは法律で事実をつくり出すというんじやなくて、そういうような外交交渉なり何なりの結果生じた問題の処理を、スムーズにするというだけの目的であります。
  54. 小山長規

    小山委員 先ほどの質問が中絶したのでありますが、質問をさらに続けることにいたします。  先ほど来の説明で明らかになりましたのは、この売出しの目的で取得したかどうかの判断は、いろいろなきめ方があるということでありますが、その判断の基準として、この銀行引受の、手数料というものは、一応の判断にならないかどうかという点をお尋ねしておきたいのであります。と申しますのは、有価証券業者が社債等を引受けます場合には、さらにそれを転売する目的で、転売の費用まで含めた手数料を受取つているのであります。この銀行、は転売の目的でないとすれば、手数料はそれよりも低くてよいはずである。従つてこの銀行の手数料が、一般の証券業者が引受けるときの手数料と同じような手数料を受取つたような場合には、これは売出しの目的で引受けたのではないかというふうに一応推定せられるのではないか。この点についてはどういうそうにお考えになりますか。
  55. 大月高

    大月政府委員 証券、社債の発行の場合に引受手数料を証券業者並にとる、それがいわゆる売出しの目的を持つておるものと推定する根拠になるかどうかというお尋ねかと存ずるのでありますが、現在証券業者が社債を引受けます場合には、百円につきまして二円七十銭の引受手数料をとつておるわけであります。もしこの長期信用銀行が総額引受をやる、そうしてそれをそのまま持つておるというようなことを考えますれば、必ずしもその手数料は、現在証券業者がとつております手数料と同額である必要はないわけであります。これはお話の通りでございまして、ただ必ずしも、これは同額であれば、逆に売出し目的を持つておるかということになりますと、実際の場合といたしまして、かりに証券業者は売出しの目的で二円七十銭の手数料をとる、この長期信用銀行が一円五十銭なりそのくらいの手数料で、自分が引受けてしまうというようなことになりますと、発行する会社といたしましては、手数料が少い方がいいということで、いずれかといえば、この長期信用銀行の方に頼むというようなことになるのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、必ずしも手数料の額が、売出しの目的を持つておるかどうかということの判断の基準ではなくて、やはり現実に行う引受の行為、あるいは売出し、あるいは売付の行為、その現実の行為によつて判断するのか適当かと考えております。
  56. 小山長規

    小山委員 その点はそれでよろしいことにいたします。ところでこの銀行有価証券等を売出しの目的で収得してはならないのでありますが、ということは同時に、売出しをしてもならないということになるのではないかと思うのであります。売出しの品的で収得してはいけないということは、収得したものを売り出してもいけないということではないか。売出しというとは、御承知のように確定解釈かあるのでありまして、不特定多数の人々に均一条件で売る。これが売出しという法律語の解釈であります。従つてこの銀行が収得した、あるいは引受けた社債等を、不特定多数の人に均一条件で売品り出すことも、この銀行には禁止されておるのか。あるいはこの銀行には禁止されていないのであつて、それはただ単に証券業法違反になるのか。その点はいかがでありますか。
  57. 大月高

    大月政府委員 この売出しの行為をかりにやりました場合に、この法律の違反か、あるいは証券取引法の違反かと申しますと、これは全部証券取引法の違反でございます。この第六条の規定は、この銀行としてやり得る範囲の業務をきめただけでございまして、たとえばほかの例を申し上げますと、第六条の第三項の規定でございます。これは担保附社債信託法によつて、担保付社債に関する信託業を営むことができると、こう書いてございますが、法律的に申しますと、ここの第一項があるだけでは、長期信用銀行はこの担保付社債に関する信託業は営むことができないわけでございまして、別に担保附社債信託法によりまして、大蔵大臣の認可を得る必要がある、そういうようなことでございます。同じく第六条の二号の問題におきましても、こういうように列挙してある業務以外は、やつてはいけないわけでございますけれども、しからばここに書いてある業務は、一切フリーでやれるかといいますと、先ほどから御説明申し上げますように、引受という行為自体につきましても、証券取引法に制限がある。証券の売買ということに関しましても、証券取引法の制限がある。そういうように他の法律で制限されておるところはもちろん他の法律による、こういう意味でございまして、第六条は、ここに書いてある事業以外をやつてはいけないという意味でございまして、書いてあれば全部自由だという意味ではございません。たとえばもう一つ為替取引につきましても、外国為替及び貿易管理法という法律がございまして、一々特殊な場合には大蔵大臣の認可がいる。しかしここで為替取引と書いてあるから、全部自由かというとそうではない。それと同じ関係に立つのでございます。
  58. 小山長規

    小山委員 その点はそれで非常に明瞭になつたのであります。それでは次に伺いますが、この銀行有価証券を取得あるいは引受けた場合に、換金の手段としてこれを処分することは当然に忍められておる。ところがこの取得した証券を一定の期間保有しておつて、そうして売却処分をする。それがたび重なつて行われる場合には、売出しではないかもしれないが、何か有価証券の売買業を営んでおるかのような印象を与える場合が、なきにしもあらずであろうと思うのであります。そのようなことをこの法律は禁止しておるのか、あるいはこの法律は禁止していないか、そのようなことは証券業法違反と相なるのか、その点はどういうふうにお考えになるのでありますか。
  59. 大月高

    大月政府委員 先ほどお答えいたしました通り、そういう解釈につきましては、全部証券取引法の解釈にまつべきものであろうと思います。たとえば社債を常時買いまして、常時売るというようなことになりますと、これは有価証券の売買ということでございまして、当然証券業になりますし、銀行に対しては禁ぜられておるわけであります。従いまして、しからばどの程度ひんぱんにやれば証券業になるかということは、三回ならばいいんだが四回ならばいけないということも、今の段階では言いがたいわけでございまして、これは一般の社会通念によるほかはないと存じます。そういう意味におきまして、証券取引法の解釈といたしまして、実際面は証券取引委員会及び銀行局において、適宜監督指導する必要があると存じます。
  60. 小山長規

    小山委員 有価証券を取得して、そしてまた売るという行為は、一向法律上禁止してないのであるが、しかししばしばそういうことを行つて引受けたものを売つてしまう、また引受けて売つてしまうというような場合には、この銀行法の違反にはならぬかもしれないが、証券業法の違反として処罰される場合があるというふうに解釈いたします。それでよろしいかどうか、銀行局の御見解を承つておきたいのであります。同時にまたその相手方は、たとい証券業者であつてもいけないのではないかと思うのでありますが、この相手方が地方銀行ならば、あるいは個人ならばよろしいというのでなくして、それは証券業者であろうと、地方銀行であろうと、あるいは個人であろうと、そういう売却処分というものがしばしば行われる場合には、相手方のいかんにかかわらず、やはり証券業法律反に問われることがあり得るのであろというふうに、解釈すべきであろうと思うのでありますが、その点に対する御見解を伺つておきたいと同時に、もう一つは、そのような違反行為が行われたと何人かが考えた場合に、それはそこに訴えてどのような罰則をこうむるか。まして近く証券取引委員会というものは廃止の運命になるかと思うのでありますが、かりにこれが廃止されような場合には、その罰則を適用し、あるいはそれらの異議の申立てを受ける機関は、どのような構想に相なるか、その点もあわせて伺つておきたいのであります。
  61. 大月高

    大月政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、二つの面があると思います。一つは売出しに関する問題でございまして、売出しは先ほどお尋ねのように、均一条件で不特定多数の人に売るということでございますので、たとえば個々的に地方銀行に売る、あるいは証券業者に売るというような場合には、いわゆるこの法律で申します、売出しには該当いたしません。従いまして、もし個々的に地方銀行に売るなり、証券業者に売るという行為がございましたならば、いわゆる売付でございますが、これが反復たび重なりまして、証券業になるかどうか、この判断は証券取引法でやるべきものだと思います。ただ不特定多数の人に均一の条件で売るという行為が、もしこの銀行側にありましたならば、第六条の二号の但書によりまして、「売出の目的で取得する場合を除く」といたしまして、先ほど申し上げましたように、この業務の範囲外に出るわけでございますから、それはこの法律の違反になるわけでございます。継続的な売付行為をやつた場合と、一般法律的に売出しという行為をやつた場合とによりまして、取扱いは違うかと思うのでございますが、ただ法律違反であるという点においては同様でございます。証券取引委員会がなくなりました後は、大蔵省の理財局でこの問題を管することになりますので大蔵省において、双方の面から厳重監督をするということになります。
  62. 小山長規

    小山委員 先ほど私の聞き違いかと思いますが、売出しの目的で取得するのを禁止するということは、取得したものを売り出すことも禁止したということではない、というお答えになつたと思うのでありますが、ただいまの御答弁によると、売出しの目的で取得することはいかぬということは、同時に持つておるものを売り出してもいけないということが、この法律に書いてあるという御解釈と心証になつたのでありますか。
  63. 大月高

    大月政府委員 この法律で「売出の目的でする場合を除く」とあります場合と、現実にいわゆるアンダーライテイングという意味引受けたような場合とは、意味が違うのでございまして、たとえばここに売出しの目的でする場合を除くと申しておりますのは、アンダーライテイングということではなくしても、自分で一度引受をやりまして、それを売出をしようという主観的な意図があとから解釈できれば、この法律に触れるわけでございます。それから証券取引法で禁じておりますのは、いわゆるアンダーライテイングでございますが、当然契約の文言なりその他によりまして引受けてすぐ売つてしまう、こういう行為その他の行為がある場合には、直接証券取引法に触れるわけでございまして、将来かりに売り出すという行為がございましたならば、そのときの態様によりまして、いずれかにかかるというように御了解願いたいと存じます。
  64. 宮幡靖

    宮幡委員 さつき貸付信託法についてのお尋ねをいたしましたが、一つ重要な部分を残したような気がいたしますので、小山委員長期信用銀行に関する質問に関達して、お伺いいたしたいと思います。問題はきわめて簡単でありますが、信託業者が銀行の兼営の場合もあるわけですが、信託によつて資金を集めるという行為と、銀行等債券発行に関する法律によつて金融債発行して金を集めるということは、きわめて類似した行為であります。あるいは同じように産業投資に転換されるとなりますと、まつたく同じと言うことができるかもしれない。そこでただいま「普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等二関スル法律」というのがありまして、普通銀行信託業務を兼営いたしております。この点におきましては、やはり金融債と同じ趣旨資金を集めるのが、そのまま残るのでありますが、今度長期信用銀行法の施行に伴いまして、銀行債券発行は全面的に廃止される運命にある。ところが普通銀行信託業務を兼営の認可を得ておると、同様の趣旨資金が集められるというふうになりますと、立法関係におきまして矛盾があると思います。信託業務兼営の普通銀行に、依然として長期資金を集める特典が残されておるにかかわらず、特に北拓、勧銀等について言えるわけでありますが、これらの銀行はその特典を全面的に剥奪されるか、あるいはこういうものについても認可があれば、信託業務の兼営を認めるのかどうか。この信参託業務兼営を認めるという趣旨であるかどうかということが、その間の関係が、両法案をながめますと矛盾があるようであります。その点を一応明らかにしていただきたい。
  65. 大月高

    大月政府委員 現在信託銀行と申しておりますのは、先ほど御説明申し上げました通り、銀行でございまして信託業務を兼営しておるかつこうのものでございます。しかし経理の面から申しますと、兼営と申しましても、信託財産と国有財産というものは全然別個になつておりまして、信託契約に基いて入りました金銭は、全信託財産として運用されるわけでございます。従つてその間に、本来の銀行業務をやつております固有財産との関係には、判然と区別があるわけでございます。従いまして、かりに銀行業務において、こういう不吉なことは全然ないと思いますが、かりに銀行業務の方でうまく行かないということになつて、破産ということになりましても、信託関係におきましては、これは全然無きずにおいて残るわけであります。そういう意味におきまして、いわゆる信託本来の姿と申しますのは、長期資金ではございますが、それと貸出しというものが直接リンクされておるというところに、本来の姿がございます。この長期信用銀行の集めます金は、もちろん長期でございますが、短期の金を長期に流す、そういう意味におきまして、たとえば資金運用部資金を活用する、あるいは現実普通銀行がこの債券を持つということになりますと、預金で集まりました金が長期化する、こういうところに性格がはつきりいたしておるわけでございます。もちろん金を預ける側から申しますと、信託という関係を使うか、あるいは金融債を持つか、こういう選択の余地はあるわけでございますが、資金の蓄積という面から申しますれば、いろいろの方法で各人の嗜好にまかせるという方が適当ではなかろうか。それから今申し上げました信託関係金融債というものの性格の違いから申しまして、この長期信用銀行信託業務を兼営することはどうかということでございますが、信託財産は別個に経理されるし、しかもこれは長期に金がまわるということになりますと、性格的に申しまして、比較的類似性を持つておるわけであります。従いまして、法律的に申しまして、この長期信用銀行信託業務を兼営するということは、これまた許されることでございまして、今後そういう希望がございましたならば、またそれが適当であるかどうか、検討の余地は大いにあると存じます。
  66. 宮幡靖

    宮幡委員 その点はわかりましたが、そうすると、「普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等二関スル法律」というものの普通銀行という中に、長期信用銀行は入るのですか、入らぬのですか。
  67. 大月高

    大月政府委員 この長期信用銀行法の附則によりまして、入るということになつております。
  68. 宮幡靖

    宮幡委員 次に信託財産と普通銀行資金関係は別個だ、これはわかつたのでありますが、しかしながら企業体といたしましては、一個の企業体であります。もつとも企業体ということが悪ければ、採算面から見ますと両方の利益が合体いたしまして、銀行業務の総決算ができると思います。そういう場合において、長期信用銀行の場合を考えますのに、大きな一つの悩みといいますか、採算ということがはたして達成できるのかどうかということが、一つ法律的に関心をもつて考察しなければならない点だと思うのであります。そこでこの法律の第四条の第二項に「大蔵大臣は、免許を申請した者の人的構成及び事業収支の見込、経済金融状況その他を勘案し長期信用銀行の業務を行うにつき十分な適格性を有するものと認めた場合に限り、前項の免許をすることができる。」これは純粋の民間機関であります。しかして免許を与える場合には、その人的構成に考慮をいたす——単純に考えれば何でもないのでありますが、この免許を与えられなければ、長期信用銀行なるものの生命である資金源を失うわけでありまして、この免許というものは必須でなければならぬ。その場合人的構成に対しても大いに勘案を加えまして、そうして免許をするのだということになりますと、これを曲げて解釈するわけではありませんが、どうも大蔵大臣が長期信用銀行の人事に介入する、純民間機関の人事に介入する、だれでなければいかぬのだということを少くとも言わなければならないように、法律は読めるのでありますが、この関係はどういうふうになつておりますか。
  69. 河野通一

    河野(通)政府委員 銀行、特に長期信用銀行のような銀行におきましては、その経営がなかなか容易でない。従つてこの経営者に人を得るということは、この銀行がうまく動いて行くかどうかの実は非常に大きなポィンドだと思います。そういう意味で、ここに人的構成ということを十分に考えて行こうということであるのでありまして、こういうことを書いたからといつて、大蔵大臣がだれだれをそよへすえなければ認めないといつたようなことを言うことが、この法律趣旨でないことは、よくおわかり願えると思います。実際問題といたしましても、これは大蔵大臣から直接お聞き願つたらいいと思うのでありますが、大蔵大臣が私に話されるところでも、この人事の問題について非常に大きな干渉をするということは絶対にないということを、大蔵大臣もはつきり申しております。直接お聞取りいただいてもけつこうでありますが、そういうつもりで、この条文はできておらぬということだけは、はつきり申し上げます。
  70. 宮幡靖

    宮幡委員 まあその趣旨は了解したことにいたしたいと思います。やはり採算という点から、この人ならやれるであろうというようなこどが、重きをなすものだと私は想像するのであります。そういたしますと、先ほど説明の信託財産、つまり信託預金により集めた資金と、本来の銀行資金というものとは、別格であるという単純な考え方には行かぬのであります。やはりその資金を吸収せられる面が広いといたしますと、絶対の資金量が幾らというふうに算術的に出すことはできなくても、おおむね日本の経済の中で吸収し得るところのいわゆる発券能力、これを消化するところの能力というものは、私は限度があると思う。はつきり線を引けなくても、およそこの程度だろうという予想は、これは大蔵省資金運用部資金課長でも呼び出して聞いたら、かなり神様のような数字が出るだろうと私は思つておる。そこでやはり一般普通銀行信託業務を兼営するものについて、先ほども貸付信託法において伺いましたが、指定単運用等も十分にしぼつて参らなければ、この所期の目的は達せられないだろう。採算点というような点については十分ひとつ御留意くださいまして、そうしてこの人的構成という問題を、いたずらなる人事干渉ではなく、立案者の企図するように、その人によつてこの業務の運営がうまく行くという方向に運営せられることを、希望いたしておきます。本日は関連でもありますし、時間もありませんので、これに関する質問は保留いたしまして、次会にあらためていたしたいと思います。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村委員 長代理午前中はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  72. 佐藤重遠

    佐藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  長期信用銀行法案貸付信託法案日本開発銀行法の一部を改正する法律一案、閉鎖機関令の一部を改正する法律案の四法案一括議題として、質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許可いたします。清水逸平君。
  73. 清水逸平

    ○清水委員 長期信用銀行について二、三お伺いいたしたいと思います。終戦後の銀行界において、一番いやがられておつた長期金融、これをこの法律によつてなして行こうという御趣旨のように伺いましたが、今まで長期金融をやつておつた興銀とか勧銀とか、そういう銀行がその後は普通銀行になつてしまつた。そうした場合に、この法律によつて長期金融をする銀行に特別の保護を与えるものとしては、この条文にあるように債券発行また優先株の引受とか、こういう二つの方法があるようです。このくらいのことで、この困難なる長期金融銀行計画してやつて行けるものであるかどうか。その目標をお持ちであろうと思いますので、それについて御説明を願いたいと思います。
  74. 河野通一

    河野(通)政府委員 長期信用銀行金融は、察知のようになかなかそう容易でないと思いますが、現在まだ公式には法案も通過いたしませんし、施行もいたされませんので、私どもとも申し上げるわけに参りませんが、こく常識的には、少くとも現在の日本興業銀行は、そのままこの新しい長期銀行に転換して参るものと思います。そのほか一、二いろいろ計画を耳にいたしておりますが、まだ公式に私から申し上げるまでの段階にございません。その他少くとも一つは新しい長期信用銀行ができると思います。あるいは二つになるかもしれませんが、一つは少くとも新しい長期銀行計画されつつあるように聞いております。
  75. 清水逸平

    ○清水委員 それについて債券発行額がことに規定されておりますが、この附則の十項ですか、当分の間優先株を国が持つことになつておりますが、これについて大体どれくらい国が持つものか。また銀行が二つも三つもできた場合においても、同じような条件でこれを国が持つのか。この構想についてお伺いいたしたい。
  76. 河野通一

    河野(通)政府委員 元来長期信用銀行は、やはり自力で資本調達をして、できるだけその資本金の上に立つて債券発行して行くということが、本筋であろうと思うのであります。従いまして現在のところでは、特別に具体的にどの銀行にどの程度のものを予定しているというような国の出資ではございません。しかしながら現在のような資本市場がなかなか順調でない状況のもとにおきましては、場合によりましては、新しい長期信用銀行が十分な活動をするための必要な資本を集め得ないというような場合におきましては、少くとも当分の間国が必要な出資ができるようにしておきたいという意味におきまして、この附則の第十項ができているわけであります。私どもはこれはできるだけそういつたことでなしに、民間資本調達をできるだけやつていただく。そうしてそれに基いて債券発行していただくということが、本筋であろうと急つております。今後の実績を見た上で、それではどうしても長期信用銀行が十分な機能を発揮できないというようなことになりました場合に、そういう道を開いておこうということでありまして、現在のところでは具体的な計画はまだ持つておりません。
  77. 清水逸平

    ○清水委員 御答弁によれば、その業績によつて優先株を持つ、こういう御趣旨でありますが、設立の場合に、その五億円の資本金をもつて設立する場合に優先株を持つ、こういうようなことはお考えになつておらないでしようか。
  78. 河野通一

    河野(通)政府委員 御承知のように設立の当初は、おそらく長期信用銀行を新しくつくる方の計画といたしましては少くとも五億程度のものは民間で十分消化できると私は考えております。しかも当初からその資本に対して当分の間三十倍、あるいは本文によりましても二十倍の債券発行できるわけでありますから、これによりまして、少くとも一年とか半年とかいうものは、それで十分まかなつて行けるわけであります。その間においていろいろ資本の充実をはかつて参りますにあたりまして、十分な資本調達ができないといつたような場合がありました場合には、この規定を活用して参りたいと考えておるわけであります。また午前中の委員会でも申し上げたように、この法案もまだ通つておりませんことでありますし、通りましても準備期間がありますので、大体発足いたしますのはこの秋くらいになると思います。それまでの間に諸般の状況等の推移を見て参りまして、必要がありますれば、その発足の当初から国が優先株を持つということも考えられぬではないのでありますが、現在のところでは、そういつた必要はまずないのではないかというふうに思つております。
  79. 清水逸平

    ○清水委員 それから、これはちよつと法案とはかけ離れているような質問になるかもしれませんが、ここで債券発行される。この債券は割引発行におそらくなると思いますが、今債券発行されておる場合に、割引したものに対しては、これは少し違うかもしれないが、税金がない。それから利札である場合には、それに対する税金がかかる。こういうようなことであるとすれば矛盾があるように感じますが、これらについての銀行局長の御意見を承りたい。
  80. 河野通一

    河野(通)政府委員 実は直接の所管でありませんので——満足な答弁ができるかどうかわかりませんが、割引発行をいたした場合の割引料は、税の対象にならぬというわけではないのであります。申告によつて、それだけの所得がありますれば、これは当然税の対象になるわけでありますが、事実上これは補足の仕方がなかなかむずかしい。ことに無記名等の場合におきましては、なかなかその方法がむずかしいという事実問題はございますけれども、これが租税の対象から除かれておるということは、実は制度上はないわけであります。実際問題として、それでは十分税がとれておるかという点につきましては、結局個々の方々の申告にまつという制度になつておりますから、どこまで捕捉できておりますか、この点は疑問だと思います。制度としては除かれておるわけではないように承知いたしております。
  81. 清水逸平

    ○清水委員 午前中先輩の宮幡委員から質問がありましたが、四条の二項の免許の場合における人的構成という条件がございますけれども、これらについては非常に漠然としておる。その際御答弁にもあつたようですが、公平を期したものにするという御答弁でございました。しかし、この法律の条項を見ると非常に漠然としておつて、大蔵大臣が長期信用銀行の人事問題にも立入るというように、私どもには解釈されるのであります。この点運用について私がこの法律を見て一番疑念というか不安に思うのは、この二項の条件であります。この運用を間違わないようにしていただくことをお願いして、これは私の意見でございますが、質問を終ります。
  82. 河野通一

    河野(通)政府委員 第四条第二項につきましては、今御指摘のように、「人的構成」という言葉が目ざわりなようにとれるのじやないかと思いますけれども、この趣旨は午前中に宮幡さんにお答え申し上げましたような趣旨考えております。なお現在の銀行法その他につきましても、こういうふうな規定はございません。ございませんが、実際に私どもが免許をいたすかいたさぬか、申請が出た場合には、やはりここに書いてあるようなことを中心にして、免許すべきかすべからざるかということをきめておるわけであります。それは古い法律でありますので、そういうことは書いてございませんけれども、ここ書いて勇と同じよ議旨で、実は免許すべきかすべからざるかを検討いたしておるわけであります。そのことをただ条文に書き表わしというだけでありましてここに書いたからというて、別に銀行法による銀行等の免許の場合と、特別に違つた審査をいたすわけではございません。それから先ほどの御質問にちよつとお答えするのを落しましたのですが、この新しい長期信用銀行発行いたします債券は、必ずしも割引債券ではございません。むしろどちらかといえば、できれば長期の利付債券の方が実は望ましいわけであります。資金長期に寝かし得るわけでありまして、できれば原則としては、やはり利付の長い債券の方が適当であろうかと考えますけれども、場合によりましては短期の割引債券発行させる、こういうことであります。御了承願いたいと思います。
  83. 清水逸平

    ○清水委員 ちよつと思いつきましたが、この附則の第四項によつて、現在まで債券発行をしておつた銀行に対して、その債券発行を廃止する。この場合、今まで債券発行をしておつた銀行に及ぼす影響はどうか。また現在どのくらい債券が残つておるか。そういう数字がございましたら伺いたい。それから、その数字によつてその銀行に影響を及ぼさないか、営業上支障を来すようなことはないかということについて、御意見を承りたいと思います。
  84. 河野通一

    河野(通)政府委員 現在の債券発行をいたしております金融機関債券の残高については、今調べましてお答えいたしますが、かりに今債券発行いたしております銀行が、一般普通銀行と申しますか、銀行法による銀行として残り、この長期信用銀行になりません場合に、一体その銀行に対して影響があるかというお話であります。これは影響はないとは申しません。と申しますのは、債券発行いたしておりますものが、期限が来ればだんだん返して参らなければならぬ。しかもその返すについて、借りかえの発行も今後は認められないわけでありますから、影響がないとは申せません。しかし営業が成り立たないようなことには、少くとも現在の見通しでは、なるようなことはないという確信を持つております。具体的に収支伴いました営業のヴオリユームの問題が一つと、現金的にそういう債券の償還に充てるだけの資金があるかないかという、二つの問題があるわけであります。前者の問題につきましては、これは具体的には債券を償還いたしますために、資金が非常に足りないというような問題が起りました場合には、この不足によりまして、場合によつては、新しい長期信用銀行にその債券を移して行くという手もございます。それによつて、それに見合うべき資金というものを獲得できることもあるわけであります。そういつた形で、営業上の収支のバランスというものはとれて行くことになる、と思います。ただ現金の問題につきましては、これは一般的に金詰まりがあるかないかの問題でありまして、現金の問題については特別な問題はないと思います。そういう過渡期におきますところの新しい長期信用銀行に対しての債権債務の譲渡、引継ぎというような操作を通じまして、今後、現在の債券発行銀行が純粋に預金銀行になりかわりますにあたりましての経過的措置について、万全を期して参りたい。そのためにここに長々と実は附則の規定が設けてあるわけであります。これをよくお読み願えばおわかり願えると思います。なお四月末におきます勧業銀行、興業銀行、北海道拓殖銀行発行いたしております債券の残高は、千三十億ということになつております。
  85. 佐藤重遠

    佐藤委員長 それでは宮幡靖君。
  86. 宮幡靖

    宮幡委員 午前に保留しておきました質問を続けるわけであります。他にも質問者があろうと思いますので、関連的なことを順次お尋ねいたしまして、適当のところで本日は切上げたいと思うのであります。先ほど伺つておりました問題の次に、もう一つ資金源の問題を検討してみたい。債券による調達ということは、この法律の根本趣旨でありますが、さらにこういう長期資金を獲得する手段方法はないのか。採算の点から見ましても、最も有利な比較的コストが高いと予想されます債券による調達以外に、もつと低コストの長期資金獲得の方法はないかということを、この法案において一応考えなければならない。戦勝国の、いわゆる民主国家の一員でありますイギリスとかフランスとか、われわれと同じ耐乏の国家であるかもしれません西ドイツなどの情勢を簡単に調べてみていただきましても、これらの点につきまして、純民間の機関としての長期信用銀行に類似するものの中に、なかなか参考に供すべきものがあるわけであります。すなわち長期資金源といたしまして、反面解釈として、長期預金の受入れまたは長期期限に対し、さらに通知制をとりました通知預金と申しますか、かような預金受入れの機能を銀行に付与いたしまして資金調達する。たとえばこの法律は、六箇月を越える定期預金といつても間違いではないのでありますけれども、そういう二箇年を越える定期預金考える、または通知預金のようなものを預金として受入れることができるということを加えたならば、ただいまの逼迫いたしました金融情勢下におきましては、それは即効はないかもしれません。しかしそういうことができるということによりまして、あるいは小さな言葉でいえばたんす、預金式のもの、そういうものが一つの世襲財産観念をもつて、この方面に転換されるということも期待されるのではなかろうか。またそういう預金の受入れをいたすことによつて、いわゆる取引先の範囲が拡大いたしまして、密接なる金融取引が発生して参る、こういうことで相互にいい結果になるのではなかろうか。ただいまこれを修正するというわけではありませんが、そういう考え方をお持ちになつておられるかどうか。あるいは考えたが、どうも不適当だという判定になつたのか。その経過をはつきりしていただきたいと思います。
  87. 河野通一

    河野(通)政府委員 この法案提案いたしますにあたりまして、そういう問題も考えてみました。しかしながら結論的に申し上げますと、やはりそういう制度は、少くともこの際としては適当でないという、実は結論になつたわけであります。この点は実際問題になりますが、一つは、御案内のように、なかなか現在の金融情勢では、たとえば二年というような長い預金というものは集まりにくい。もしこれをかりに集めようと思いますならば、やはり債券について同じ程度の相当高い利回りを与えなければ集まつて来ないであろう。ただ形が債券の形になつておりますか、あるいは預金証書の形になつております。か、その違いはありましようけれども、実質的には預金者なり債券保持者は、やはり利回りを対象にして考える。そういつた関係からいいますと、そういう長い預金に対しては、相当高い利回りを与えなければならぬ。そういうことをするならば、結局債券の形でやらせるのと何ら相違はないのじやないか、そういう点が一点であります。それからもう一点は、今も申し上げましたが、相当高い利回り預金ということにすれば別でありますが、そうでないものにつきまして考えてみますと、現在金銭信託相当長いのがあるのであります。預金と実質上同じようなものであります。これらを見ておりましても、なかなかどうもまだ個人の資本長期化するということはむずかしい。定期預金について申しましても、現在預金のうち定期預金が大体四千億でございますが、その四千億のうち、一年というのはわずかに一割足らずであります。銀行預金の総額は一兆五、六千億でありますから、それに対して比較いたしますと、実にわずかなものであります。そういつた点から考えても、そういう長期定期預金をつくつても、実際の話、金が集まらないというのが第二点。それから第三点は、かりにそういうものが集まつて参りました場合には、これはやはり預金銀行にやらせたらいいのじやないか。預金銀行も、できるだけ短期預金というものがだんだん中心になるとは思いますけれども長期信用銀行が発足いたしまして、ただちに長期融資というものをすべてこれで受持つて一般預金銀行というものは長期融資は全然なくしてしまえるわけのものでないことは、皆様御承知の通りであります。従いまして預金銀行というものは、だんだんそういう方向に向けて参らなければなりませんけれども、やはり長期融資は実際問題として当分残るのでありますから、これに見合うべき預金資源としてならば、やはり長いものも認めて行つていいじやないか。もしとれるならば、そういう場合に長期信用銀行預金を押えております精神から見まして、そういう長い預金がもし集められるならば、それは普通の預金銀行にやらせる。そうして長期信用銀行はやはり取引先からの預金を集める。取引先からの預金で長い預金が集まればけつこうであろうと思いますけれども、御承知のように取引先の預金は大体当座預金で、長い預金は集まりません。それは事業資金でありますから……。そういう関係から見まして、結論的には、いろいろ考えてはみましたけれども、どうもこの際としては適当であるまいという結論に到達した次第であります。
  88. 宮幡靖

    宮幡委員 第一点、第二点、第三点についての御答弁は、御研究のあとがわかりまして、一応のりくつでもあり、また現下の日本の経済の実情に合つたお考えであろう、こう思うのであります、。そこでさらに一歩を進めてみますると、まだく考究の余地があろうと思いますのは、すでに実施いたしました定期預金の無記名式であります。大蔵大臣は本委員会においても、そういうことをやりたいとまで言われておりますが、つまり源泉徴収の五〇%を四〇%程度にしてみたいというようなことまで言われておる。もし無記名とその源泉徴収の緩和等によりますと、相当長期定期預金が生れて来るということは、これは裏から見ますと多分の真実性があるわけです。しかしそれは一般市中銀行長期定期預金として取扱つた方がよいというのは、これも一つ考え方でありまして、これの優劣はただちに判定しがたいのでありますが、制度といたしましての長期定期預金というものがふえて来るという趨勢にあることは、確かであります。そうしてかようなものを吸収した場合におきまして、そのコストというものは債券発行の場合より安いことも明らかであります。長期信用銀行へ各人がどういうふうに申請して参りますか、あるいは現在の銀行から長期信用銀行にどいうふうに転換して来るか、これは本法律が施行された後の問題でありますが、少くとも採算を重視しております立法趣旨から申しますと、こういり資金源についてもさらに考究をすべきではないか。 さらに法律で定めてありますいわゆる取引先という言葉も、一体貸さなければ取引先にならないのか、貸したと同時に預金をさせられる、これを取引先というのか、あるいは先に預金をさせてしかして貸すと取引先になるのか、これはどういうふうにお取扱いになるのか。この点もひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  89. 河野通一

    河野(通)政府委員 取引先と申しますのは、貸出し先が一番大きな取引先であります。貸出しの関係がないものにつきまして、先に預金をさせて貸すといことはこの銀行性質からいつて適当でない。それから今お話の、貸し出してその中である程度両建預金と申しますか、そういつたものをさせるのかという点につきましては、そうではございません。これは先ほどちよつと申し上げましたように、事業会社が資金の借入れをして、当座すぐいらない金、あるいはほかに送金をしなければならぬために、一応預けておくということもございますが、そういつた当座の預金が多いと思います。なおここで取引先と申しておりますのは、株式の払込金の受入れ事務等を取扱う場合がございますが、その委託者であります。あるいは株式配当の支払い事務を長期信用銀行が取扱いますが、その場合の委託先、社債の元利金の支払い事務を取扱いました場合のその委託先、こういうものを大体取引先というものに考えております。
  90. 宮幡靖

    宮幡委員 では次に伺いますが、貸出しより預金を先にさせることはない。これは法の表でそうなつておることはわかりますが、いきなり貸せ、こういう悪が起る。しかも長期金融である。こういうような場合におきまして、これは民間金融機関でありますから、政府が干渉して云々すべきではありませんけれども、常識的に考えまして、大蔵当局としてこれらの長期信用銀行というものが発足いたした場合に、その信用調査はこの方法によつてつて行く方がよろしいとか、これによらなければならないというまで行かなくても、そういうお見通しにつきまして伺いたい。いわゆる世間的にしかわかつていない信用をもとに、資金を貸し出しまして将来取引先となる、こういう建前で行くのでありますから、その信用調査の機関はどういうふうにするか。これは貸せると貸せないの分岐点にもなるのでありまして、これが不完全でありますれば、長期信用銀行などというものをつくりましても死物化する。あるいは特定の私人、特定の機関のものと化します。昨日でありましたか、私は開発銀行のことで一つのジヨークとして、総裁の名前が出なければだめだなどという評判があるが、どうだと言いましたが、そういう機関に堕するおそれがあります。大蔵省行政指導をいたしまして、どういうふうな信用調査機関をもつて信用力の調査をいたし、貸出しの決定をなさろうとお考えになつておりますか。これは法律運用の根本だろうといますので、お考えをお聞かせ願いたい。
  91. 河野通一

    河野(通)政府委員 いかなる方法で信用の調査をやつて行つたらいいかという問題は、これは私もまるでしろうとであります。私どもがかれこれ指導しなければならぬような銀行では、実は困る。例が非常に悪うございますが、たとえば興業銀行にいたしましても、従来から相当長期金融をやつておりまして、それに即応するようないろいろな信用の調査の機構を持ち、人的な構成を持つておるわけです。それから現在長期金融機関として働いておられる勧業銀行にいたしましても、そういうふうな長期の面への信用調査の機構は持つておるわけです。ちよつと余談になりますけれども、きようも午前中小山さんの、信用銀行が幾つくらいできるかという御質問に対して、そうたくさんはむずかしいとお答え申し上げたのでありますが、やはり長期融資をやつて参りますとか、債券発行するとかいう事務につきましては、相当経験と特殊の技能と申しますか、そういつたものを確かに要するわけであります。そういつた能力等からいいましても、いきなりここへそうたくさんの長期信用銀行はつくれないと思います。そういつた意味でこれらの長期の投融資に非常に慣熟しておられる方を、十分活用して行くことによつて、ずぶのしろうとである私どもが、信用調査を指導しなければならぬようなことは、毛頭ないというふうに考えております。戦争中から外地の銀行、ことに朝鮮銀行、台湾銀行等におきましても、長期金融相当つておりましたので、これらの方々でそういう経験を持つた方が相当たくさんおられるわけであります。こういう人を十分活用することによりまして、現在の債券発行銀行が持つておられます機能とあわせて行きますならば、私どもがかれこれ申すまでもなく、十分円滑に信用の調査をやつて行かれるものと考えております。
  92. 宮幡靖

    宮幡委員 ごもつともな御答弁であると思います。けれども資金源の低コストということを考えると同時に、借りる側の低コストということもあわせて考えなければならない。今までそれは興業銀行もやつていましようし、あるいは民間銀行もやつていましようけれども、貸出しに至るまでの経過におきましてはなかなか煩雑であります。それがために今の金で一千万円や一二千万円貸してもらいましても、その何パーセントかに当るものが、その期間において書類の整備あるいは出張して参ります旅費その他の人件費に消えてしまう。これをやはりなるべく安い方向に持つて行くことが必要であります。特に御指摘のように、戦前戦後あるいは将来にわたりまして、その方面に活躍されようとする優秀なる人材をかりに得たといたしましても、戦争前の方は、失礼な話でありますが、型が古いのであります。金を貸すのはおつくうなものだ、そんな簡単に借りられると思うなと簡単に片づけまして、みんな非常に迷惑しておることはいなめない事実であります。もしも長期信用銀行ができましたならば、その運用の一面におして従来よりも簡素化されて、しかも的確果敢にその事業体の中核を見通すことができる信用調査機関が生るべきだと思う。もちろん大蔵省は干渉がましき指導等を与えない。これも納得できますが、そう他人ごとのようにのみ考えているべきでないということを私は痛切に考える。しかもこれが純民間機関であるといたしますならばなおさらである。政府機関でやつておりますようなくどい信用調査をいたしておつては、これは長期信用銀行の使命は達成できないと思います。法律に賛成するかどうかわからないときに、かような実施後のことを申すことは行き過ぎでありますけれども、とにかくこの信用調査機関については大蔵省も十分な御研究を遂げて、ひとつモデルケースでもとりましてやるような熱意を示していただきたいことを、この際要望いたすわけであります。  次に法律の条文の第六条をごらん願います。第一号に「設備資金又は長期運転資金に関する貸付、手形の割引、」とありますが、この字のままで行きますと、設備資金または長期運転資金の手形の割引、こういうことになり、手形の割引に運転の字句がかぶつておると思いますが、この長期運転資金の手形というのは、一体どういうときに出て、参りまして、短期運転資金との区別が「どこでできますか。これの運営上どう考えられますか。あるいは銀行課長がお見えになりましたら、銀行課長に伺いたいと思つたのですが、お見えになつておりませんから、局長からひとつお答え願いたい。
  93. 河野通一

    河野(通)政府委員 この一号は、長期設備資金または長期運転資金の貸付と書かないで、わざわざ「長期運転資金に関する貸付」と書いてある意味関係することであります。わざわざそう書きましたのは、その貸付自体が長期であることを実は考えておらない。その資金の需要期間が長いものを考えております。従つてその貸付自体は場合によつては短かいものもある。たとえば一番いい例は、社債の前貸しであります。社債自体は長いものでありますが、その社債を出しますまでの間、しばらく前貸しをすることがあります。これはその期間がたとえば一月であつても、やはり長期運転資金に関する貸付というふうに、私どもは読んでいただきたいという意味で、わざわざ「関する」という言葉を使つたわけであります。そういう意味からお考えいただければ、手形の割引ということも、そういう長期運転資金に関しての手形の割引であるということも、御了承いただけると思います。
  94. 宮幡靖

    宮幡委員 「関する」はそれでまことに明瞭になりました。けつこうであります。そこで手形は割引くとありますから、単名手形は意味してない。単名手形の場合は前の貸付の中に入るであろうと思う。手形はそういうわけで一時の短期資金でも、性格上長期資金の一環をなすものであるということによつてこれでいいと思いますが、しからばいかに長期信用長行によりまして債券が円滑に消化されたといつても、資金が潤沢でありましても、特に資金源に悩む場合がある。こういうような割引牽ました手形を再割の必要に迫られることは当然あると思う。その場合にはどういう経理、どういう機関を通じてその再割を保証されるようになりますか。これは常識的な場合でありますが、その御構想を聞かしていただきたい。
  95. 河野通一

    河野(通)政府委員 そういう場合は、実は私は非常に少いと思いますが、起りましたならば、一般預金銀行が再割引の形でやつておりますのと同じような道を、開いてやつてけつこうだと思います。具体的には、たとえば他の金融機関に対して再割を受ける、あるいは日本銀行に対して再割を受けるという道があると思います。その点は一般商業銀行が現在やつておりますのと、かわりはないと思います。
  96. 宮幡靖

    宮幡委員 日本銀行が手形の再割を拒否すべき理由はないと思いますので、日本銀行で再割ができさえすれば、お説の通りその機会は少いでありましよう。でありましようけれども、割引手形はたくさん持つておるけれども資金がないから返せないというような場合には、窓口業務を実際にやるためには再割でもして処理しなければならぬ、この道が開かれていなければならない、こういう意味に私の考え方はなるのであります。これは念のために私はお聞き申したのであります。  次に第三条でありますが、これは資本の額が五億円以上、こうなつておる。これは一体授権資本でよろしいのでありますかどうか。
  97. 河野通一

    河野(通)政府委員 これはどうもよくわかりませんから、説明員から答えさせます。
  98. 近藤道夫

    ○近藤説明員 お答え申し上げます。資本の額五億円という意味でありまして、いわゆる発行する資本の総数という意味における、授権資本という意味ではございません。
  99. 宮幡靖

    宮幡委員 そうするとこれは全額払込みという意味でございますか。
  100. 近藤道夫

    ○近藤説明員 今までの払込み済み資本金という言葉に対応する概念であります。
  101. 宮幡靖

    宮幡委員 そうするとこの法律は、現行商法に対する特例となるように考えるのであります。私まだこれをよく読んでおらないので頭にはつきり入つておりませんが、商法の特例だと認むべき何ものかの規定がここにあるのです。さもなければ、商法の規定のこれは授権資本だと私どもは解釈するのでありますが、その特例と認むべき根拠をひとつお伺いしたいのであります。
  102. 近藤道夫

    ○近藤説明員 資本の最低限度を五億円といたしましたのは、商法の特例という御質問の意味は、商法上の資本の限度のきめ方と、それから長期信用銀行法の資本の最低額のきめ方とが、食い違うという意味でありましようか。
  103. 河野通一

    河野(通)政府委員 十分な御答弁になるかどうかわかりませんが、長期信一用銀行も株式会社でありますから、商法の規定の適用があるわけであります。商法にいつております授権資本は、やはり適当な方法で何億と定めることになると思います。これは、そのうちの少くともいわゆる払込み資本金と申しますか、昔の払込み資本金は五億以上なければいけません。そのほかの株式会社法によるいろいろな制約なりあるいは措置は、当然とらなければならぬ。それに対してさらにこれだけの制約がある、こういうふうに御了解いただきますれば、別に除外規定とか、例外規定を置く必要はないんじやないかと思います。
  104. 宮幡靖

    宮幡委員 その説明の通り条文に現われておれば、何も除外規定だとかなんとかいつて聞かなくてもいいのであります。この第三条がそう読めるという意味はもちろん法制局の意見等もありまして、ちつともさしつかえないということになつておるのでありましようが、まぎらわしいのであります。これを四分の一払込みだということにいたしますならば、二十億の公称資本第三条に長期信用銀行は公称資本の額二十億円以上にして、払込み金が五億円以上でなければならないというふうな意味に書けばいい。もつと法律に明瞭に書いておいた方がいいと思う。少くとも第三条におきまして、払込み済み資本額五億円以上くらいのことは書いた方が、私は親切のように思いますが、わかりました。それならそれでよろしい。現に払込みをしたものが五億円以上であるという意味だ、こう書いてある。しかし字の不適当かどうかは協議することにいたしますが、常識から行けば、公称資本は二十億円だということになる。ですからこれはそうでないと私は思つたのです。しかし認可をするについて、公称資本五億円でも、これが全額を一時に払い込まなければいけないぞという認可に対する措置はできるわけであります。それならばまたそれでもわかるのでありますが、どうもその点が明瞭でない。そこで資本金の構成につきまして、今度株主の面から考えてみますと、他国の例なんかを見ますと、株主の構成資格を相当つてある制度があるように思われます。たとえばこの場合におきましては、比較的資金の容易に集められる信託会社、あるいは遊金がある——というと同僚佐久間委員から怒られるかもしれませんが、保険会社というようなものの出資を株主たることの要素とする、あるいは一般商業銀行等を株主とする、あるいはこういうものを株主とするというように、株主の資格を特定して行くという一つの構想が考えられるのでありますが、これはだんだん自己資本を膨張せしめて行くためには、必要な一つの要件になるのであります。こういうことについてお考えなつたことがあるか、また方法をとろうとせられたことがあるか、将来またこういう点について何か補助的な立法措置によりましてたとえば保険業法を改正いたしまして、保険事業を営む者は、長期信用銀行に対し、準備積立金の何パーセントを預金しなければならないというような法律でもつけて、この補助作用でもいたしますか、そういう考えがあるか。その点をお伺いしておきたいと思いま参す。
  105. 河野通一

    河野(通)政府委員 その前に資本の額の問題について御説明申しておきたいと思います。お話のように言葉がちよつとまぎらわしいので、表現として百パーセント完全とは申しかねるかと存じますが、実はこれは新商法が施行されます際に、それに応じまして銀行法その他を直しております。その直しました結果の銀行法は新商法に合わせたわけであります。その際に銀行法の第三条で「銀行業ハ資本ノ額百万円以上ノ株式会社ニ非ザレバ之ヲ営ムコトヲ得ズ」といことで、その際にも御説明申し上げたかと思うのでありますけれども、この資本の額というものは、今申し上げた昔の観念でいういわゆる払込み資本金というふうに、御了承いただきたいと思います。字句の問題につきましてどうもまぎらわしい点は、恐縮に存じております。  それから後段の御質問でありますが、保険会社の資金を必ずこれに持つて来るようにといつたような特別の措置は、現在のところ考えてもおりませんし、またそこまでする必要もないのではないかというふうに考えております。
  106. 宮幡靖

    宮幡委員 資金集めの狭き門は広きに越したことはないと思いますので、あらゆる意味において、ひとつ面を広く御研究願いたいのでありまして、私も、あえてこの際かつての司令部あたりの指導精神を排撃したり、非難したりするという気持ではありませんけれども、当時の司令部の指導というものが——もしこの立法措置に対してアドヴアイスがあつたといたしますならば、必ずしもそれが日本実情に全部合うとは思わないのであります。そういう意味におきまして——小りくつをこねるのではありませんけれども、十分そういう面については御研究をいただきたいのであります。それがまずこの法律案に賛成できるかできないかの、まつたくわかれ目だと私は思うのであります。  それから資本の額の問題、につきましても、これは民法に対する商法の特例法であり、その商法に対する銀行法が特例法であつて、特例であるといえばわかるのであります。ただ単に新しくつくる法律資本の額と書いてあれば、これは私の言うことが決してりくつではないのでありますから、銀行法と同じように、やはりこれは特別法として存在するのだという御説明で、私は満足できるわけであります。「たまたま商法の問題が出ましたので、商法に関する問題でひとつ伺います。この附則の第八項でありますか、社債の承継の特例というのがある。これは発行券高に算入しないこととするのがおおむねの原理でありますが、一体この社債の承継というのが、これは特別法的な性格を持つているのでありますが、商法の一般的規定を抹殺することができるのかどうか。これはむしろ法制局あたりに聞くべき問題と思いますが、便宜大蔵当局のお考えを伺つておきます。この社債の承継というものは、商法的に見ますと、起る問題は会社の合併と営業の全部の譲渡ということになりまして、多くの場合におきまして、旧発行の主体というものは消滅するわけであります。この場合におきまして、たとえば一部銀行を分離して、一部が長期信用眼行として発足し、あるいは長期金融の部門だけはずしまして、発券の関係債券債務等を褒長期信用金庫に譲渡するという事態が起きた場合におきまして、はげしい言葉でいえば、商法に違反する行為というようなことができるものかどうか。これは私は相当疑問を持つている。これはなお一つ研究してみたいのでありますが、その時間がありませんし、残念ながら私の方の研究もまだ深さがないわけであります。荒削りでありますが、会社の合併、営業の全部の譲渡以外、しかも旧発行主の主体の消滅という原則が貫かれていないと、社債の承継ということはできないのではないかと私は思つておりますので、実はこれは一生懸命で調べてみたのでありますが、どうも疑問です。私はこれをやることが悪いと言うのではないのですから、誤解しないように願いますが、やれるならばもつとはつきりした方法で表現してもらいたい、こういう意味であります。
  107. 近藤道夫

    ○近藤説明員 お答え申し上げます。債券の承継ということが、まず観念として有効であるかどうかということが、第一に問題になるわけであります。債務の引受自体については、わが民法には別に規定はないのでありますが、これが有効であることは学説慣例ともに認めております。それからそのうちの債務の引受全般の中に含まれます債券の承継、その承継につきましては、企業再建整備法の第十条が、特別経理会社から第二会社等への債務の承継を規定しておりまして、その内容が整備計画によつて定められることになつております。そして、事実上その際に債券の承継ということも一応行われたのでありまして、債券の承継ということが実際に債務の引受の意思として行われております。それから商法の第四百十四条の第二項が、合併によつて社債を承継するという場合を前提といたしておりますので、御念としての債券の承継が有効であるということは、大体それで明らかだろうと思いますが、次に、その条件となります社債権者または金融債の権利者の同意を、どういう方法によつて具体的に現実に得たらいいかということが、問題になるわけであります。これは、特に金融債の権利者の数が多い関係から、問題は現実にむずかしいという問題はあると思いますが、その点につきましては、銀行法等特例法、昭和二十年法律第二十一号が、第一条におきまして、営業者の全部もしくは一部の譲渡が金融機関の間で行われます場合「におきましては、特定種類の知れたる債権者以外の者に対し、公告をもつてこれを行うことができるという旨を定めておりますし、特にここで金融債の承継ということを排除いたしておりません。  それから次に、今御指摘のございました債券の承継の場合の具体的な登記の問題があるわけでありますが、登記の問題の場合には、現行商法はこのことについては何ら規定を置いておりませんが、これは債券の承継がまれにしか起らないために、特に規定を置かなかつたものと解すべきでありまして、かかる場合においては、さきに申し上げました商法の四百十四条の第二項の規定の趣旨に準じまして、社債の登記を行うべきであるというように解せられております。長期信用銀行法の場合におきましても、商法と同じように登記事項の規定は置いてないわけでありますが、同じく商法第四百十四条の第二項の趣旨に準じまして、非訟事件手続法の第百九十三条の二に準ずる登記をすればよいというふうに考えております。ちなみに、その非訟事件手続法の第百九十三条の二の第二項に、「合併ニ因リテ消滅スル会社ノ社債」とあり、それからまた商法の第四百十四条の二項に「合併後存続スル会社又ハ合併二因リテ設立シタル会社が合併二因リテ社債ヲ承継シタルトキ」とありますので、先ほどちよつとお話がありましたように、社債の発行主体——前の発行主体そのものが消滅しませんで存続しますような場合には、社債の承継そのものは大体あり得ないのではないかというようなお考えも出て来ると思いますが、昭和二十六年施行の新商法におきまして、旧商法第四百四条三号を削除しております。このことは営業の全部譲渡というものは、必ずしも会社の解散を結果しないということを、特に鮮明してあるわけであります。会社が依然存続し得ることになつておりますので、しかも一方において営業の全部譲渡という観念については、旧商法時代と何らかわりなく、そのままそういう観念が存在しておるということと照し合せますと、営業というものの中には社債も当然含まれるものというふうに考えられますので、新旧両発行社債が併存しておる場合におきましても、社債の承継は許されるというふうに解されております。なお登記の実際の方法につきましては、法務府関係と十分打合せができておりまして、それで登記してよろしいということになつております。
  108. 宮幡靖

    宮幡委員 非訟事件手続法などの細目は、これは添付書類さえよければ必ず登記になるのでありまするが、これは第三者に対する対抗要件でありますから、別にこの法律審議に深く意に解すべき問題でない。ただ御指摘の特別経理会社の問題とこれは性格が違うものだと思う。企業再建整備法あるいは金融機関再建整備法というものの趣旨とこれとは、まつたく違うのでありまして、これは話がそこに及んだからでありますが、もし現在の市中銀行のうち半分だけが預金銀行として残れば、半分はどこかへ肩がわりをしなければならないというようなはめに陥る。これは生きているもののをわけるのであります。戦争によつて敗北して、しかも会社が特別損失によつて、何らか手を打つてもらわなければ生き返れないという場合の承継とは趣を異にいたします。それでありますから再建整備法あたりと同じように扱われて、生きた人間をまん中からさかれるようなことをいたしますと、私どもは情においても忍びないのであります。でありますからこういうことが最もスムーズに行われるたとえば債権者保護のための催告を一々出すわけに行かないことも、これは常識的である。法制もその通りである。しかもその譲渡に対して異議があつた場合には、返済しなければならぬことが原則であります。かりに具体的な例を言つてはいけないけれども、北海道拓殖銀行預金銀行とかわつて、従来の債券を全部を長期信用銀行へ譲る。ところが幸いにしてその長期信用銀行が北海道拓殖銀行以上に信用力もあり、また郷土の人たちの愛着心があるならよいのでありますが、もしなくてそういう長期信用銀行はいやだ、だから異議がある、こういう場合には、これを承継いたします新長期信用銀行は、その債券を返済しなければならない。一体五億くらいの金でそういうもの、かどうして返せるのでありますか。それでありますから、私はこの手続ができるなどということは問題でない。その間が、この移りかわりが実際問題として円滑に行くということを予想せられて、こういう附則を設けられたのではないか。これは多大の疑問がある。実際においてこの場合には公告して、ただ知らせるだけでもつて異議がない、あるいはあつても払わない、あるいは今度の新しい債券をあてがつて、それで乗りかえをして、しかもこれは発行限度に算入しないとして書いてあるではないかという議論で行かれるならば、私はこの附則八項はまつぴらごめんこうむりたい。私はその点について御専門家もおられる事うでありますから、もう少し納得の行く説明をしていただきたい。返すのか返さないのか。異議があつた場合には返すのか。
  109. 河野通一

    河野(通)政府委員 ただいま説明昌の方から御説明申し上げました法律論、これはどうも宮幡さんを前にしてはなはだ失礼でありますが、この法律論につきましては、大体法務府当局よ同意見のようであります。ただ実際問題として今お話のように、債券の引継ぎということが法律上可能であつても、一体それが政策としていいかどうかという問題は確かにあると思います。ことに一番問喜遮になりますのは、かりに債券を一部譲渡したといつたようなことになりました場合には、それでは無記名で出ている債券ですから、どつちにとりに行つたらよいかわからぬという問題が実際出て来る。全部譲渡といいますか、引受けてもらう場合におきましても、今お話のように新旧銀行の間の信用の問題がございます。現在の債券発行銀行発行している債券なら、これは安心して持つていいだろうと思つた人が、今後新しくできる長期信用銀行が将来どうなるかわからぬと、かりに思う人があつたとした場合に、そこの債券なつたのでは困るということも起つて来ると思います。そういつた関係で実際問題としてはなかなかこの債券を引継ぐということは、相当むずかしい問題が起つて来ると思います。従いまして今後新しい長期信用銀行ができて、それに対して現在の債券発行をいたしておりまする銀行債券を引継ぐといつたような問題につきましては、相当これらの事情をよく参酌いたしまして、円滑なる方法があつて、それができるならばけつこうでありますけれども、そういつた非常に信用の度蓬うとかいろいろな関係で摩擦を起すような場合には、この規宋はそういう道は開いておきますけれブも、そういつたふうな支障が起るような場合には、この規定を適用することは適当でないというふうに考えます。しかしながら全然道をとざしておく払要はないのであつて、そういう諸般の情勢が非常にうまく円滑に移るという場合には、これは移してやつてもいいのではないか、そういう迫だけは開いておこう。その場合には限度に算入しないといつたような形にしたらどうか。その道をとざすことは、そこまではやる必要はないのではないか、こういう意味でできておると御了承願いたいと思います。
  110. 宮幡靖

    宮幡委員 その点でもう一点、お尋ねした点でお答え漏れがありますが、こういうことの道を開いた、たまたまそういうケースができたという場合におきまして、債権者の保護規定によりまして、公告による異議申立てがあつた場合に返済するかしないか。その点について承りたい。
  111. 河野通一

    河野(通)政府委員 異議を申し立てました場合には、それは引継がれた新銀行が払うわけじやないので、旧銀行が引継げないことになるのだと思います。従つて銀行が引継ぐ前に異議を申し出て来た人には払つて、異議のないところだけを新銀行に引継ぐ、こういうことになるのではないかと思います。
  112. 宮幡靖

    宮幡委員 その通りだと思います。従いまして、道を開いてとざす必要がないから、この附則を畏くのだという御趣旨なら、私は明らかな答弁だと思います。けれども必ず異議が出る、またもしこういう制度に乗つて行きたくないという気持があつたといたしますならば、異議者をつくることになる。従つてこの附則というものは、まず実行困難なものであるということを予想しなければならない。だから単純に債券発行高に算入しないというような、もつとうまい言い方が大蔵省の知恵袋の中にはあるべきだと私は考えておる。法制局も立ち会つてつくつたのでありますが、しろうとの宮幡が見まして、どうも感心しない字句だと思つております。ほんとうのことを申しますと、これはあまり事態を甘く見過ぎている。だから登記ができるとかできないとかいつたような、そんな枝葉末節の非訟事件手続法などは論じていない。私はそういうものじやない。実体ができるかできないか、できないものを法律化しておいて、道をとざさないからといつておいても、これはよい言訳ではないと思うのでありますが、私もまだ先ほど申し上げましたように、この点についての研究は深く掘り下げてありませんから、この問題はさらに保留しておきまして、次の機会にお話を申し上げることにいたします。  何分委員の出席も少いし、どうも一人で朝から晩までやりますこともたいへん疲れますので、きようはこの程度で、残余は次の機会委員長のおとりはからいで発言を許していただきたいと思います。
  113. 佐藤重遠

    佐藤委員長 了承いたしました。本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十九分散会