○野原
政府委員 わが国の森林の現状は御
指摘のごとく戰時中及び戰後を通じまして、非常な過伐、濫伐に陥りました。すなわち森林の林木の成長は、年々ある
程度ずつ成長しておりまして、その成長の分だけを伐採いたしますと、永久にその森林は保続ができるのでありますが、何分にもあの大戦争及び終戰後における非常な木材界の好況によりまして、ほとんど成長量の二倍ないし三倍にも達するような伐採をしたのであります。数字等はあとで
林野庁長官から詳しく御
説明申し上げますが、しかもそれが森林の全体にわたりまして、適正に伐採が行われたのではないのでありまして、生産のしやすい場所、運び出すことが楽な場所、いわゆる里山でありますが、その里山にだけ伐採が集中された、それで非常に里山の過伐、濫伐が極度に行われたわけであります。しかも一部には奥地の未利用林のごときは搬出の設備がないために、依然として大木がいたずらに山中で朽ちておるというようなものも相当あるのであります。里山につきましては、先ほど申しましたような
状態でございます。こうした過伐、濫伐の現象、これが当然まだ伐採の時期でない盛んに成長しておる成長盛りの幼壮齢木まで伐採されるということになりまして、その結果といたしまして、御
指摘のごとく山林の持ついわゆる保水力、洪水を調節するという山林は、非常な重大な国土保全の役割を持
つておるのでありますが、その国土保全の機能というものが、著しく喪失したことは事実であります。従いまして雨が降りますとすぐに水が出る。従来ならば雨が降りましても、洪水にな
つて出て来るまでの間には相当の時間がかかる。あるいはまた降りました雨量に比較いたしまして、出水の量というものが、非常に山に水が保たれるということのために、そう多くの水は出なか
つたのでありますが、最近は保水力の点におきましても、著しくその機能を喪失いたしました結果、雨が降るとすぐに水が出るというような現象が
——これは関東地方のみならず関西あるいは九州、
日本全国至るところがさような
状態に相なりました。この
状態を繰返しますと、勢いわが国は非常な災害を繰返すことに相なります。そのために山林はもとよりのこと、農耕地は流失をし、あるいは河川は氾濫して堤防は決壊する。工場あるいは人家、人畜の生命までも危險
状態に相なるということになりますと、結局このことが続きますと、国土崩壊が起
つて来るわけであります。さようになりましては、これはあらゆる産業経済の破壊であります。従いましてわが国の国土の保安をするということは、あらゆる産業、経済の基盤をなす山林をして、これが十分国土保全の機能を果すというところに、
日本の林業の基本的な林業政策の基調があるわけであります。従いまして今日の
日本の山林の現状から
考えまして、これは一刻も放置できない、何とかしてここにはつきりした
方針を立てまして、治山治水の全きを期さなければならぬという観点から、御
承知の
通り昨年の
国会におきまして、森林法の
改正を提案いたしました。当時私が森林法
改正の提案者といたしまして、
国会にお諮りをいたしまして、新しく森林法が
改正されたわけでございます。その森林法
改正の主眼は、これを詳しく申し上げますと非常に時間がかかりますけれ
ども、
簡單に申しますれば、つまり現在山林が非常に過伐にな
つておる。しかもその過伐されておる山林に対しまして、当然造林をしなければならぬ、木を植えなければなりません。ところがその伐採した跡地が相当面積が残
つておりまして、まだまだ造林をしなければならぬ部分が非常に多いのであります。その部分を急いで造林をしなければならぬ、まず国をあげて造林をする、いわゆる国土緑化ということを徹底しなければならぬということと、それからまたまだ伐採できないような非常に若い林が無残にも切られている。これをもう少し伐採を制限して、そうしてもう少し太くな
つて成長してから切るということになりますと、山林を所有しておる人たちの利益でもあり、また国家のためにもけつこうなことである。
従つてそういう細い木、まだ小さな木はできるだけ切らせないようにする、伐採の制限をすること及び国全体を通じまして、成長量をみだりに越えた伐採量はできるだけ避けたいということで、伐採の全体の量に対する制限、それからまたまだ伐採してはならぬものに対して、山林を保護するための保安林をつくるとか、その他治山治水の面、あらゆる観点から
考えました林業のあり巧につきまして
規定をいたしまして、森林法をつく
つたわけであります。その方向に向
つて、
日本の林業施策を進めて行きたいと
考えております。