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1952-02-19 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十九日(火曜日)     午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 佐久間 徹君 理事 松尾トシ子君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       川野 芳滿君    島村 一郎君       三宅 則義君    宮原幸三郎君       宮腰 喜助君  早稻田柳右エ門君       高田 富之君    久保田鶴松君  出席政府委員         大蔵政務次官  西村 直己君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         国税庁長官   高橋  衛君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 二月十九日  松尾トシ子君が理事に補欠当選した。     ――――――――――――― 二月十八日  石油関係関税免税措置延期に関する請願外四  件(西村久之紹介)(第七五五号)  同(關谷勝利紹介)(第七五六号)  同外二件(宮幡靖紹介)(第八〇七号)  同(小林運美紹介)(第八五五号)  ラジオ受信機等に対する物品税撤廃請願外五  件(高塩三郎紹介)(第七五七号)  珊瑚製品に対する物品税撤廃請願長野長廣  君紹介)(第七五八号)  未復員者給與法に関する請願(稻村順三君紹  介)(第七五九号)  公務員の退職給與制度確立に関する請願(田中  織之進君紹介)(第八〇八号)  火災原因調査用器材に対する物品税撤廃請願  (大泉寛三君紹介)(第八二八号)  理容、美容業者に対する所得税適正化請願(  高間松吉紹介)(第八五二号)  水あめ、ぶどう糖に対する物品税撤廃請願(  坪内八郎紹介)(第八五四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  年度金融難打開に関する陳情書  (第四七九号)  在外公館借入金返済実施に関する陳情書  (第四八一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第二七号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三〇号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)  砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)     ―――――――――――――
  2. 佐藤重遠

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  議案の審査に入ります前に、理事補欠選任に関してお諮りいたします。去る二月十五日理事松尾トシ子君が委員を辞任されましたので、その補欠選任をいたしたいと存じますが、昨十八日松尾トシ子君が再び本委員になられましたので、前例により同君を理事に指名いたしたいと存じます。この点御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤重遠

    佐藤委員長 御異議ないようですから、松尾トシ子君を理事に指名することといたします。     —————————————
  4. 佐藤重遠

    佐藤委員長 所得税法の一部を改正する法律案外三税制改正案一括議題として、質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。小山長規君。
  5. 小山長規

    小山委員 数点にわたつて主税局長の答弁を求めたいと思うのでありますが、第一は昨年の臨時国会から今国会にかけて、税の源泉徴收の方針を主税当局はとられ、いろいろな源泉徴收の税目ができて来たのでありますが、これらの対象になるたとえば株式配当源泉徴收、あるいは今度新たに出て参りました社会保險による源泉徴收、従来からありますところの原稿あるいは放送による源泉徴收、これらの対象となる人たち人員はどの程度になつておるか、おわかりでありますか。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 配当所得につきましては、特別に人員といつたようなものを調べておりません。これは相当な数になることば、小山さん御承知の通りかと存じます。原稿料その他の件につきましては、最近というわけに参りませんが、昭和二十五年度分につきましては、ある程度件数としまして調べたのでございまするので、後ほどお答え申し上げたいと存じます。医師の分は社会保險加入医師の数によつてわかりますので、これも別段申し上げるほどのこともないかと思いますが、もしもそれも精細に申し上げなければならないということでございましたら、調べましてお答え申し上げたいと思います。
  7. 小山長規

    小山委員 人員がまだ精細に出ていないということでありますが、私はその人員が何百何十何方いるのかということを、実は知りたいのではないのでありまして、このような広範な人たち対象にする源泉徴收というものを、やらなければならぬほどの理由があるのかどうかということを、実は聞きたいのであります。現にたとえば株式の二〇%源泉徴收の場合のことを考えてみますと、先般お配りになりました給與所得者階級別表というのを見ますと、全納税人員が九百九十三万六千人、そのうちに五十万円以下の所得者というものが九百九十万人おる。このような人を対象にした源泉徴收というものを考えますときに、実にむだなことではないかというような感じがするのであります。なぜかと申しますと、株式の二〇%源泉徴收の場合には、現行の株式配当に関する二五%の税引という規定を適用いたしますと、給與所得者をかりに例にとります場合には、二五%の配当からの税引と、それから今度の源泉徴收と合せて、四五%の税を引くことになるのでありますが、四五%というのは、税法上で見ると五十万円の給與所得を越えたときに、初めて四五%という問題が出て来るのでありまして、裏から言うと、給與所得者にして株式配当のある人は、五十万円を越える人でない限りは、すべて株式の二〇%の税は全部もどさなければならぬ。一株持つてつてもその税はもどす建前税法なのであります。そのようなむだなたいへんな手数をとらなければならぬかどうか。これはもとより源泉徴收の目標は脱税防止、つまり白紙委任状、あるいは偽名でもつて転々流通されておるのを、捕捉しようというのがその趣旨でありまして、その趣旨についてはわれわれ一向反対はないのでありますが、ただそれをそろえるためにこの五十万円以下の給與所得者、これらの人々配当所得は、全部もどさなければならぬ建前税法をつくることが、はたして妥当であるかどうか。給與所得者はそれではどの程度株式を持つておるのかと申しますと、これもはつきりした数字をわれわれは持つておるわけではありませんが、最近の株式民主化、ことに増資の場合には、その会社従業員株式を持たせるのが、普通の増資原則である。しからばこの二十万、三十万程度所得者というものは、相当株式を持つておるものと見なければならぬ。その人たちから一ぺん税をとつて、もどすのでありますけれども、翌年度にもどすことになります。そのもどすために、税務署はこちらの計算間違つているかどうか、計算しなければならぬ。計算手数がかかる。そういうことを考えますと、株式の二〇%の源泉徴收ということは、これは法律目的はいいが、実際問題として、非常にむだなところに手を加えることになりはしないか。従つて私は一回の麦拂いが三千円以下、ちようどただいま税法株式配当について調査報告書を出さないでもいいという限度、あの程度のところに、この源泉徴收をするしないの線を引くことにきめたらどうであろうか、というふうな感じがするのでありますが、この点について主税当局としてどう考えておられるか、まずその面から伺つてみたいのであります。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 源泉課税をすることにいたしましたのは、脱税防止ということもございますが、一つは、やはり納税表にとりましても、なるべく源泉で納めておいた方が、あとで納期になつて税を納めるよりも、納めやすいという点があるのでございます。また役所の側から行きましても、そのことは同時に、あと税金を納めていただくための手数よりも、事前に源泉で納めてもらつておいた方が、非常に手続簡單に済む。こういう利点がありますので、まつたく徴税便宜としまして、実は源泉課税をできるだけ広く採用しようという考えで、いたしておるのであります。しかし源泉課税をするにいたしましても、たとえば営業所得などでございましたらそういうことはできません。従いましてそういうものにつきましては、これはもう源泉課税はしない。しかしでき得る限りにおいては、やはりまず源泉で徴收いたしておきまして、あとでそれを精算いたしまして、正しい税額をとるという行き方の方が、どうも私どもわが国の過去の経験、並びに各国の立法例等から見ましても、非常にいいのじやないかという考えで、従来も源泉課税をやつておりますが、今回も御指摘のような配当とか、医者社会保險收入、あるいは弁護士さんの会社から受けられる收入、こういうものにつきまして、源泉課税の範囲を拡張することにいたした次第でございます。  お話のように、そうするとやはり若干返さなくてはならぬものが出て来る。これは確かに御指摘通りでございまして、以前は預金利子とかあるいは配当等に、源泉課税をいたしておつた際におきましては、二〇%くらいでありますと、もうとりつぱなしで返さない。実はこういう制度になつていたのでありますが、私どもはやはり総合課税原則を決定し、所得税の負担の公平という点から行きますと、正しくない。返すべきものは返すということがいいのじやないかということで、二十五年から実はそのような制度に切りかえた次第でございます。従いまして今後新しく源泉課税を拡張いたした部面につきましても、あとで精算した結果、返すべきものが出ますれば、当然返すということにいたしておる次第であります。しからば配当の中に、返すのが一体多いか少いかという問題であります。これは件数から行きますと相当あるだろうと見ておりますが、ただお考え願わなければならぬことは、御指摘のような点もございますが、所得階級別には、たとえば営業者が持つとか、あるいは医者弁護士自由職業の方が持つとか、あるいは農家の方々が持たれる、こういう場合におきましては、これはもうほとんどあとで返す場合は出て来ない。むしろ配当分税金はとり過ぎましても、その他の税を申告して納めなくてはいけませんので、それと相殺されて返す場合は出て来ない。従いましてその際には非常に納税が容易になります。それから給與所得者の場合におきましても、御指摘のように、最近は大分小さい株主で、相当多数の人が株を持たれるようになつておりますが、しかし少しまとまつてつておられるのは、やはりほかの所得があるとか、あるいは給與所得者の中でも相当に所得金額が多いとか、こういう人の場合が多いのでございまして、ほかの所得が少しでもありますと、たとえば不動産所得があるとかなんとかいうことになりますと、やはりそれと通算されまして、返す額がそれほど多くなつて来ないというようなわけでありまして、残るところは、結局ごくわずかの株式を持つて、あまりほかの資産もなくて、勤め人で所得金額の比較的低い人、こういう人は、やはり御指摘のように、返さなければならぬ場合が出て来る。それともう一つは、家族が持つておる場合におきましては、これは合算をやめましたので、それだけ分離して課税しますと、やはり返さなければならぬ場合が出て来るかと思います。こういうものにつきましては、先ほど申し上げました趣旨からいたしまして、考え方といたしましては、二〇%ぐらいなら一挙に源泉でとつてしまつたらどうかという考え方もございますが、これは正しくないので、やはり若干手数がかかりましても、返すことにした方がいいのじやないか、こういう趣旨で特別に特例を設けないで、一般的に課税することにいたした次第であります。返す方法としましては、なるべく額の小さいものにつきましては簡便な方法をとりまして、一定の要件を備えさえしておりますれば、それに基きまして調査したところによつて、まず返すというようなことを先にやりまして、しかる後にあとで、はたして納税者の申請が正しかつたかどうかを調べて、不正があれば正しくして行くという方法をとりますれば、そう納税者にも迷惑をかけないで済むのではないか。従来ややもすると税務署は一ぺん税金をとりますと、なかなか返さぬという非難がございましたが、その辺の運用及び返す手続について改善を加えまして、そういう非難をなくするようにいたしまして、円滑に行くようにして行つたらどうであろうか、かように考えておる次第でございます。なお社会保險等の場合あるいはお尋ねがあるかもしれませんが、配当につきましては大体そのように考えております。
  9. 小山長規

    小山委員 とり過ぎた税を返すという建前とつたというのは、あたかも恩典のようなお話でありますが、これはあたりまえのことであります。とりつぱなしということは、これはあつてはならない。当然のことであります。その次に申されたのは、徴税便宜だと言つておられる。脱税防止もあるけれども徴税便宜だ。徴税便宜という以上は、そういうこともこの法案の目的の中に入つておるということであるならば、なるたけ返さぬでも済む程度のところに線を引く方が、徴税便宜じやないか。あなたの御議論は、将来返すのだから、とらなければならぬ税を前取りするのだ、こういう御議論であるけれども、私の申しておるのは、そういう人たちのためには確かに便宜かもしれませんが、返すにきまつているようなへたちの分までとつて行く必要はないじやないか、こういうことを言つておるのであります。その例として給與所得者の話をしたのでありまして、これらの人はもう一つ考えなければならぬことは、会社の株を持たせる場合に、その自分の財産の中から出しておるのではない。これは借金をしておる。借金の利息を拂わなければならぬ。またそれをなしくずしで拂つて行かなければならぬ。従つてこれらの人たちがみすみす来年になればもとしてもらえるものを、今税としてとられるということは、借金利子の面、あるいは借金元本返済面で非常に苦痛であります。でありますから、そういうふうな少額のものであり、かつ来年度になれば必ずもどさなければならぬというような人々の場合には、一定の線を引いて、それ以下のものについては源泉徴收をしない、こういう考え方をされたらどうであろうか。現に社会保險の場合には、たしか命令で定める程度以上のものに限つて源泉徴收をするということが書いてあるはずであります。そのようなことを株式源泉徴收の場合、あるいは原稿放逸料の場合にも考えたらどうであろうか。とつておく方が便利だからとつておく、また返すときには簡單に返して行こうという考え方は、なるほど主税当局としては理想的にそう考えておられるかもしれませんが、実際には私はそう簡單には返してくれないと思う。相当な手数とめんどうと時間をかけなければ返さないのではないか。でありますから、どうせ返さなければならぬ程度のものならば、最初からとらぬということにしておいた方がいいのではないか。それがとりつぱなしということであればこれはまた別でありますが、とりつぱなしではなくて、必ず返すのだという建前をとつておる以上、どうせ返さなければならぬものまで、わざわざとつておく必要がどこにあるのだ、こういうことを申し上げておるわけでありますが、重ねて御意見を承りたい。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の点は、もちろん私どももこういう制度を設けます場合、いろいろ考えておるのでございまして、結局源泉課税をやりまするのは、やはり脱税防止ということのほかに、お互い徴税便宜ということがございます。どうせ返すような人の場合におきましては、源泉でとらないようにするのがいいと申しましても、ただこれを非常に複雑化しますと、またお互いは非常に混乱いたしましてはたして源泉で納めたか納めないかを追究せざるを得ないというようなことになりまして、ある程度簡單なことでやつておかないと、また結局目的を達成しないということになるのでございまして、従いましてやはり返す人がどれくらいあるか、返す場合の額がどれくらいになるだろうか、それに対しまして、結局そうではなくて、本来納むべき税金源泉で納めている場合がどういうふうになるだろうか、その辺のところをいろいろ勘案いたしまして、適当な制度をつくり上げる。制度をつくり上げた上におきましては、もちろんある程度返す場合があるということを前提にして考えませんと、こういう制度は成り立たない。もちろんなるべく少くし、かつあとで納めなければならぬ人の場合には、源泉でなるべく多く徴收しておく。この二つの相反しました点をどういうふうにして調整するかということが、なかなかむずかしい点でありまして、御意見の点もその辺に関連しました点で、確かに私どももそういう点は考慮すべき事項だと思いますが、ただ株の配当とか預金利子等になりますと、これはどうもあちこちにたくさんの人が持つている。従いましてある一人の所有者のある会社の株が少いからという理由で、はたしてそれでは源泉徴收しなくてもいいかどうか。これが非常に問題があるのでございます。私どもはごく零細なものにつきましては、あるいはお話のような点を考えてみようかとも思いましたが、問題はかえつてそうしますと、課税すべき配当金のうちで、源泉で納めた分と納めない分をまたふりわけなければならない。そうすると、お互いにかえつてやつかいになるのではないか。そうではないということになりますと、配当金の額を調べまして、二割なら二割が税がかかつたものとして申請してもらいますれば、あと簡單計算がつくわけでありますが、ある株は源泉ではとられていない、ある株はとられている、一々納税者配当受領書を嚴重にとつておきましてそれぞれむずかしい資料を整えておきませんと返す際に、今度はどちらにするか、めんどうな手数がかかつて来るということになりますので、そういう場合につきましては、どうも一律主義の方がかえつて簡便ではないかということを考えまして、実は特例を設けることに躊躇いたしたわけであります。確かに私どもも、たとえば百株以下の場合は一応徴收しないようなことも検討してみたのでございますが、これもどうであろうかということで、私が最初に申し上げましたようなことになつた次第でございまして、その点確かに問題でございますが、今の段階におきましてはそのように考えております。ただ社会保險の場合は、御質問はございませんが、これにつきましては、なおもうちよつと検討したいと思つておりますが、支拂者が一度に限定される、あつちこつちからもらうという場合は比較的少い。従いまして一定の額以下でかりに源泉課税をしないということにいたしましても、配当預金利子等のごとき複雑性がなくなりまして、最初からあとで返す分は結局とつておかなくてもいいじやないかという趣旨のことが、技術的にも比較的やりやすいのではないかということを考えまして、これはなお若干検討の余地を残しておるのでございますが、よく検討しました結果、そのような点で調整できますれば一定限度以下の報酬につきましては、源泉で徴收しないという措置をとり得るような法律案に、実はいたしておるのでありまして、この辺のところはよく小山さん等の御意見も承りまして、なお私どもも調査しました上で、妥当な結論を下すようにいたしたい。その他の場合におきましては、たとえば原稿料といえども、やはりあつちこつちから二千円、五千円、一万円もらうような場合があるのですが、二千円以下ならいい、五千円以上ならいかぬということになつて来ると、私ども経験からいたしましても、かえつて複雑になりまして間違いをつくるもとになりますし、また納税者としてもかえつて簡便を期することができないので、従いましてある程度一律主義で行かないと、源泉課税目的は達成できないのではないか。しかし給與所得のごとく大部分の人が一箇所だけからしかもらわないような場合は、なるべくあとで返さなくてもいいというように源泉で控除し、しかも税率も妥当な線で課税しておるのでございますが、そうではなくて各方面から入つて来るという場合におきましては、どうもその辺がなかなか技術的にうまく行きません。結局ある程度簡單方法源泉徴收しておきまして、確定申告で精算しまして、不足額があれば追徴するし、取過ぎがあれば返す。それを返さないのも、過去においてしばしば非難を受けましたように、わずかな金額でもなかなか返さないというようなことになりますと、これまた納税者としましては非常な迷惑になりますので、それを何とかして早くやるようにいたしたいと思つております。それができるということについて御賛成を得ますならば、私はある程度一律主義の方がいいんじやないか、かように考えておる次第であります。
  11. 小山長規

    小山委員 この問題は結局議論になるのでありますが、あなたの方は徴税便宜と言つておられるが、納税者便宜考えてもらわなければならぬ。納税者の方からいうと、来年度に返してもらう。わかり切つているものを納めなければならぬ。なるほど税務署の方では一律にした方がいいかもしれませんが、納税者の方からいえばそれは都合が悪い。そういうことになりますと二〇%というのが、今度は問題になつて来はせぬかと思う。社会保險の場合にしても一〇%というのが問題になつて来はしないか。あるいは原稿料放送料の場合にも一五%の問題が起つて来ると思う。パーセンテージが問題になると思うのでありますが、やはりこの問題は、返さなければならぬと大体わかり切つているようなものまで、とるということの趣旨がおかしいということを、私は申し上げておるのでありますから、政府としてもこの問題をもう一つこの会期中に真劍に考えていただきたい。私の方は党としても皆さんに諮つて、この問題を考えてみたいと思うのでありますから、その点どの程度限度を置くべきか、あるいは置いてはいろいろ支障が起るのかというようなことを、政府としては真劍にわれわれの質問に答えられるように、準備してほしいのであります。  次に今度新たに医師社会保險について、源泉徴收規定ができたのでありますが、社会保險つまり源泉徴收をする対象になる保險というのは、一体どれどれなのでありまか、それをお示し願いたい。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 その前に少しお答えいたしておきますが、たとえば昭和二十五年の課税実績からいたしましても、給與所得者で申告した人が約七十三万人ほどおります。これはほかの所得があつたり、あるいは二箇所から給料をもらつた人、それから二十五年は五十万以上で、あれば一箇所でも要したのであるが、そういう事情のために、申告いたしました人が源泉だけで済まないで、確定申告をした人が約七十三万人ほどございまして、給與所得者といえども、私はやはり相当ほかの所得がある場合が多いということを、つけ加えて申し上げておきたいと思います。問題はやはり結局ごく小さい株主で、ほかの所得がなくて給與所得だけであるとか、あるいは株の配当だけである、こういう人の場合だろうと思うのでございまして、そういう人の場合に適切に源泉において、そういう人のものは課税しないといううまい方法があれば、これは私は幾らでも考えていいと思うのでありますが、便宜の問題でございますので、なかなかそういう方法がむずかしいのではないか。むしろやはりそういう場合におきましては、今申し上げましたような見地から一律にやつておきまして、返すようにしたらどうか。  それから先ほど私は恩典だと申しましたが、日本は実は昔は源泉は全部とりつぱなしだつた。それに対しまして変更しているということを申し上げたのでありまして、源泉で二割ぐらいは全部所得税としてとつていいのではないか。明治以来、日本の所得税はそういう建前で来たのでありますが、しかしこれはやはり所得税建前としてはおかしいというので、昭和二十五年度の改正以来、預金利子、公社債の利子その他の源泉課税といえども全部通算いたしまして、返すべきものは返すということにいたしたのであります。そのことを申し上げたことで御了承願いたいと思います。  それから今社会保險としまして対象になりますものは、健康保險、厚生年金保險、失業保險、それから船員保險、これらの保險の中に含まれておりまする医者の診療による報酬でございますが、そういうものが該当すると思います。それから政府職員の共済組合関係、それと国民健康保險の一部にもあるかと存じます。
  13. 奧村又十郎

    ○奧村委員 関連して……。ただいま小山委員の御質問になつておられた株式配当に対する源泉徴收の問題でありますが、これは前国会以来問題になつております。そこで今株式の名義書きかえの励行がされていない。それから百株以下で名義を幾つにもわけることもできる。そういう方法をまず考えてみると、この源泉徴收をやめた場合、現在の状態ではほとんど株式配当所得を捕捉するのに困難である。そういう建前から、それに対する適切な方法を見つけ得るまでは、この源泉徴收をやめることはできない。たとい少額の株式でもできない。何か適当な方法の見つかるまではと、こういうふうに私は考えるのでありまして、これは小山委員にお尋ねするのが適当かもしれぬが、政府としてはこの点はどういうふうにお考えになつていらつしやいますか。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話のような点も若干考慮に入れますことは、私ども考えております。非常に株の名義書きかえが励行されていない。やはり源泉課税をやることによりまして、課税の適正化という見地からはつきりいたしたい。そういうことに源泉課税が相当役立つだろうということは期待いたしておりますが、しかし本来源泉課税を始めるか始めないかという問題の本筋は、やはり納税者政府の両方の納税徴收上の便宜、それからそれに関連しましたいろいろな問題が、その中心になつて考えられてしかるべきじやないか。しかし奥村さんのお話のような、特にこの際こういう制度をやることによつて、今の株式の名義書きかえの状況からしますと、そういうような点につきまして、相当有意義な効果を持つという点も、私どもがあわせて考えておりますことは、御指摘通りでございます。
  15. 小山長規

    小山委員 今奥村君の質問に対して答えられたことで、またちよつと思い出したのでありますが、この予算書を見ると、配当源泉徴收を百二十億と見て、二十億だけは二十七年度に返すということになつているのだが、この百億だけはとりつぱなしということになるのですか。それとも全部翌年度には返すという建前になるのですか。それをお伺いいたします。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 この全体としての精密な計算は、なかなかむずかしいのでございますが、個人の分から二十何億、それから法人の持つておるのがございます。これはやはり法人の分も予算にたしか十何億か計上してあると思いますが、これはそれぞれ控除することによつて源泉課税が前取りになるという点でございます。あとで控除しますと、結局申告の税額がそれだけ減るということは同じでありますが、残余の分がどの程度国庫の純收入になつて、返す分がどの程度になつて、差引どれくらいが今お話のような点からしまして、免れているのがはつきりして来る分か、こういう部面になりますと、私どもはいろいろ検討をいたしておりますが、何しろ的確な資料がございませんので、あまりはつきりしたことは申し上げにくいのでございますが、その中にそういう部分と翌年になつてから返す分と、両方あろうかと存じておる次第でございます。
  17. 小山長規

    小山委員 この源泉徴收の問題は、ただいま奥村委員からのお話もありましたが、脱税して逃げるやつがある。だからそれを押えるためとしては確かに一つ方法であるけれども、納める人からいえば、ちやんと申告する人からいえば、返さなければならぬものをとつているのじやないかという点に疑問があることは、私が何度も申し上げた通りです。それでさつきは九百万人の給與所得者のうち、せいぜい七十万人ばかりの人しか申告していないといわれるが、それは昭和二十五年度の話でありまして、そのころは株式配当所得なんかほとんどなかつた時代である。また給與所得者が地代、家賃などが入るなどと思つておられることは、認識不足もはなはだしい。給與所得者は、大銀行なり大会社に行つて調べてごらんになれば、そこの従業員の九九%までが給與所得だけで食つている人である。そのほかに原稿料が入るとかなんとかという人はいはしない。そういうものを想定してお考えになることは間違つている。むろん中小の企業者とか、あるいは農業者の場合には、前取りしておくことはかえつて便利な場合がありましようが、現在のように会社増資をする場合には、ほとんどその従業員に持たせる。この現実を考えて来ます場合には、その人たち借金でそれを拂つているのだ。借金の元本も拂わなければならぬ、利子も拂わなければならぬ、そういうような状態にある場合に、わざわざ翌年拂わなければならぬものを前取りするのはどうかということを、私は申し上げているのだということを重ねて申し上げておきます。  それから健康保險の問題の業種をおただししましたところが、国民健康保險も入るような御返事でありますが、はたしてその通りでありますか。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 最初に、先ほど私が七十三万人と申し上げましたのは、給與所得者で、確定申告をした人です。つまりほかの配当所得その他不動産所得なり、いろいろな所得があるために、職場の源泉の課税だけでは済まされないで確定申告を要し、かつ現実にした人の数字であります。私は株の配当なんか持つている人は、概してそういう人とダブる場合が多いということを申し上げたのでありまして、もちろん比較的小さい株しか持たないような人の中には、ほかの資産所得もない。そういう人が数から行きまして、相当あるだろうということを申し上げたのであります。しかし小山さんは反対に株なんか持つていない、ほかの所得がないと言われますが、ほかの所得があつて株の配当所得不動産所得、いろいろな所得がありまして、確定申告を現実にした人が、昭和二十五年度におおきましても七十何万人あるということを申し上げた次第であります。配当所得だけでございますと、昭和二十五年度で申告した人が十八万二千人、その中には、奥村さんも御指摘のように、当然申告すべき人が落ちているのもございましようし、あるいは資料の整理漏れで、十分調査が行き届かないために落ちているのもありましようし、いろいろあるかと思いますが、私がさつき申しましたのは、給與所得者は大部分ほかの所得はないじやないかというお話でございましたから、いや給與所得者の中にも、約七十数万人という人は、ほかの所得があるか、五十万円以上であるか、あるいは二箇所以上から給與を受けているために、あとから追徴する必要があつて確定申告をする、そういうものが相当な数に上つておるということを申し上げた次第でございまして、御了承願いたいと思います。  それから国民健康保險の方につきましては、現在は該当がない——と申しますか、指定されていないらしいのですが、近く厚生省の方では、この方もやはり支拂い基金の中に入れるということで、予定しているらしくございまして、それが対象になるかと存じます。
  19. 小山長規

    小山委員 どうも議論になるようですが、さつきの給與所得者九百万人のうち、七十万人程度はまだあるのだ、かりにそうだとしても、これはわずかに一割、その後に増資というものは昭和二十五年度以降にうんと行われている。それをお考え願いつたいということを言つておるのです。これを何度も言うと議論になりますから、これはこの辺にいたしておきます。  その次に今の社会保險の問題ですが、こういう結果になるので、これはいかにもおかしいのじやないかと思うのでありますけれども社会保險收入が二百五十万円ある。これは非常に大きなお医者さんだろうと思う。その二百五十万円の社会保險收入がある人は、一割として二十五万円の源泉をとるわけです。二十五万円の税を納める人はどのくらいの人かというと、扶養家族が一人しかいない場合には、七十四、五万円の所得がなければならぬ。そういうお医者さんがはたしているかどうかということを考えてみますと、これまたほとんどおもどしになるのではないか。だからこのようなことをなぜやらなければならなかつたのだろうか、これもひとつお聞きしたいのであります。
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のは、おそらく社会保險だけしかやつていない方の場合でしようが、そのほかの医療をやつておられる場合におきましては、その收入に対しましては全然源泉で徴收しておらないわけでございますので、両者あわせて考えていただきたい。従いまして、先ほど申し上げましたように、所得額が少くて、大部分社会保險收入に依存するお医者さん、これは相当返す場合が出て来るだろうということは考えられる。従つてこの方は配当原稿料などと違いまして、支拂いを受けるところが比較的少いから、小さい方の所得者の場合におきましては、一定の額を限りまして、源泉課税をしないということにつきましても、よく調べた上で、必要であれば考えてもいい、こう申し上げておるのでてございまして、一般のお医者さんの場合には、私はやはり一割くらい課税しておきました方が、あとで予定申告、確定申告等でまとめて納めてもらうよりも、お医者さんとしましてもよほど納税がしやすくなるのではないか、かように考えまして、源泉課税をすることにいたしたのであります。
  21. 小山長規

    小山委員 この源泉徴收の問題については、ただいま私が申し上げ、また主税局長が言われる通り、両者の間に大分食い違いがある。この問題については、この税法が上るまでにまだ十日ばかりありますから、その間に両方で十分考えることにいたしまして、きようの質問はこの程度に打切つておきますが、さらにこの問題は保留しておくことだけは御承知おき願いたい。  その次にお尋ねしたいのは、株式の譲渡所得税でありますが、これはわが自由党が党議としてこれを掲げて、株式の譲渡所得税を一時停止して移転税にすべしということを、政府にも強く要望したのであります。その便法として十万円控除ということをお考えなつたのでありましようが、株式の譲渡所得税を停止し、かつこれをしばらく移転税にかえたらどうかと言つているのは、税の問題を若干離れまして、資本の蓄積の助長のためにやつたらどうか、そうして移転税でおそらく同じくらいとれるでしよう。ただいまの把握程度の讓渡所得税と比べまして、おそらく大差ない、あるいはもつと多い税がとれるでしよう。税の面においてはむしろよけいとれ、かつ片一方において資本の蓄積を助長できる、こういう点からわれわれは主張して来たのでありますが、この問題に対して大蔵大臣は、譲渡所得税を停止することについては賛成である、ということを言つておられるのでありますけれども、一体政府としてはその実現をする気持であるのか。この十万円控除の規定を残すか残さぬか、あるいはこれを改正するかしないかということと関連いたしますから、政府のただいまの御見解を伺つておきたいのであります。
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 最初にさつきの続きをちよつと御参考までに申し上げておきますが、所得税というものは、やはり源泉課税ができるものはなるべく源泉課税した方が、納税者からいつて徴税官庁からいつてもよい。というのは、私はアメリカやイギリスの制度を見て来た結果、強く感じたのでありますが、イギリスにいおては、貸家の收入、不動産の賃貸收入まで、全部借家人が一定率で源泉で天引しまして政府に納める、そうして家主はあとで申告して精算する、こういう制度まで実はやつている。それが実にイギリスの所得税の運用をうまくあらしめた、重大な一つ理由になつているようでございます。なるべく返さないで源泉課税するというのが一番よいと思う。私はそういう意味におきまして、勤労所得源泉課税の日本の制度は、アメリカその他に比べても、はるかによい制度だと思つております。しかし配当所得とか、預金利子所得とか、その他の所得になりますと、なかなかそういうわけに行かぬ。それをどういうところで調整して、どうすればよいかということが問題で、従いまして私は小山さんのお尋ねに対して決して頭から否定しているわけではないので、そういう点はお互いに大いに考究して、妥当な結論を下さなければならぬと思うのでありますけれども、但し考え方といたしまして、いやしくもあとで返さないような源泉課税ということを考えますと、これはまたなかなかむずかしい。若干は返すということを前提にして源泉徴收で納めて、返すべきものはすみやかに返すという方向に行つた方が、所得税徴税が、納税者にとりましても、單に役所だけでなく、よいのではないかという一つ考え方を持つておることを申し上げておきます。しかしおのずからその適用につきましては、お話になりましたような点もよく考えまして愼重な結論を下さなければならぬということも、よく了承いたしております。  その次は株式の譲渡所得税の問題ですが、これは先般奥村さんにもお答え申し上げたのですが、理論的に申しますと実にいろいろな問題があるので、ことに移転税に置きかえるということになりますと、これは私ども税制の理論から行きましてどうも十分な理由がない。損をした人からでもとる。もうけた人からとるといつても、とつたに値しないような額しかとれない。税金は、單に税收が上りさえすばよいというわけにも行かないので、やはりある程度能力のある人からとる、こういうのが税の根本の点でございますので、そういう点から考えますと、どうも理論的に考えて、お話のような制度が積極的によいということはなかなか言いがたい。しかし資本蓄積の必要からしまして、何とかして株の譲渡所得について特例を設ける必要があるのではないかということも、そういう見地から行きますと、あるということは私どもよくわかります。もしも譲渡所得税がやめになりますと、株式の拂込み増資等が相当容易になりましてその方面から資本の蓄積ができるではないかということも考えられるわけでありまして、従つてそういう点から、若干公平ということを妥協しまして、その方に行つてしまおうか、こういうことになつて来るのであります。そういうことになつて来ますと、いろいろ税制の根本にも触れて来る問題にもなりますので、もう少し研究させていただきたいというのが、現在の私たちの考え方でございます。はたして株式の譲渡所得税を全免しまして、不動産の譲渡所得を課税しない、あるいは勤労所得税なんかも相当重くて不平がありますが、そういう状態にしておいて、資本蓄積の必要だけの見地からやつてしまうかどうか、やはり問題は相当あるかと存じます。しかしこれが資本蓄積の必要からしまして、相当有効な一つの手段になるということは私どもわかつております。従いましてそういう問題はもう少しよく検討させた上で、きめるようにしていただきたい、こういう考えでございます。
  23. 小山長規

    小山委員 今のは主税局の局長のお答えとはちよつと受取れないのであります。大蔵大臣が予算委員会において、譲渡所得税は近く廃止する、こう言つている。その近くというのはいつだということを私は聞いているのであつて、その譲渡所得税を廃止するについて、主税局長に異論があるかどうかを聞いたわけじやありません。そのことをお答え願いたい。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 ですから、きまつていないということです。
  25. 小山長規

    小山委員 大蔵大臣はきまつたと言つている。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 私が申しますのはいつやるかということをお尋ねになりますから、そういうことはまだきまつていないという意味です。
  27. 小山長規

    小山委員 ああそうか。これはひとつ早急におきめ願いたい。  それからその次にもう一つ、最近問題になつたことでありますが、今度の税法改正を見ますと、外国からの技術援助、たとえば特許料などを外国に拂う場合に、その外国人に二〇%の源泉課税をやるということが今度の改正案に出ている。ところが外国との特許料その他の支拂い契約の大部分は、課税があろうがなかろうが、とにかくきまつた金額の特許料を拂うものだというふうな契約が多いそうであります。またかりにそうでないにいたしましても、外国と日本との経済の実力ということから見ると、二〇%の課税は外国人に課税するがごとくにして、実は日本人がこれを負担しなければならぬという結果になろうということで、非常に業界においては心配しているようでありますが、この特許料、主として特許料でありましようが、この技術援助に関する二〇%課税ということについては、これは私は特別の考慮を拂わなければいかぬと思うのでありますけれども、どうしてこういうものまでやらなければならぬのかという点については、いかがお考えになつておりますか。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 こういうものを所得税で課税するということは、私は小山さんにはすぐお認め願えるのじやないかと思うのですが、結局日本における事業から生れた所得なのでございます。外国人に特許料を拂いますが、その所得というものは日本において運用されまして日本において発生した所得でございます。そういうものに対しまして所得税をできるだけ課税するということは、これは各国の最近の立法例が大体そういうことになつておりまして、この原則所得税の課税理論から言うと、認めていただいてもいいのじやないか。しからばそれだけでほつておいていいかということになりますと、その点私も小山さんの点は確かに考えなくちやならぬというわけでありまして、実は二つ考えております。この点を要綱に書かないでどうも相済まなかつたのですが、一つは日本の経済の復興に必要な技術の導入、そういうものにつきましては、租税特別措置法によりまして一〇%に税率を軽減いたしたい、これが一つでございます。それはちようど外資が入つて来まして、日本から利息を持つて行くという場合におきましては、日本で課税いたしておりますが、これにつきましては、やはり措置法で外資は望ましいという意味におきまして、一〇%に軽減いたしております。それと同じようなことをやはり特許料につきましても考えたい。これは追つて租税特別措置法として提案いたす考えであります。しかしたとえば映画のフイルムの上映権等につきましては、特例を設ける必要はないのではないか。やつぱりああいう所得につきましては、外国の会社から日本に上映権を認めまして、相当莫大な報酬をもらうという場合におきましては、その報酬に対して二〇%くらい源泉徴收してもいいのではないか、というふうに考えているのでございますが、日本の経済に必要な技術の導入、これにつきましてはそういう優遇措置考える、これが一つ。  それからもう一つは、二重課税の防止協定を、アメリカとの間には大分下交渉をしておりますが、日本で納めました税額はアメリカで納める税額から控除する。ちようど反対にアメリカで納めた税額は、日本の所得税から逆に控除する。これは相互條件のもとでございますが、そういう協定を近く結ぶことに目下取進めております。そうなりますと、別段業者の負担の関係におきましては大した差はない。ただいろいろ調べてみますと、従来の契約で日本においてかかる税金はこちらの日本側の負担だ、こういうことをきめているのがあるそうです。しかしこの点は私は協定をなさる方が、現在の建前なら課税されないということで、御協定になつたのでしようから、やむを得ないにいたしましても、将来におきましては当然日本の税額は、アメリカから控除されるのでございますから、そういう協約の部分につきましては、一部更改をしていただいたらどうか。更改の申込みをされたらどうか。それから今後おきめになるような場合には、そういう協定は結ばないようにしてもらつたらいいじやないか。そういうことにいたしますと、結局負担としましては同じで、結局アメリカがとるか日本がとるかという歳入帰属の問題になつて来るわけでありまして、そういう点は先ほど申しましたように、お互いに発生地で優先的に一定の額までは課税徴收いたしまして、お互いに二重課税を避ける意味で控除する、こういう方式で進めて行きたい。それでアメリカは現に條約を結ぶまでもなく、ほんとうは全般的に控除することにいたしております。條約はそれを、一種の国際的に確約することになるにすぎないのであります。従いまして、その特別なとりきめさえかえてもらいますれば、実際上は問題はないのではないか、かように考えております。どうもいろいろ私どの所得税のそういう点につきまして調べました結果、やはり最近の各国の例等にならいまして、このようにした方がいいんじやないかという趣旨で、実は改正を加えることにいたした次第でございます。     —————————————
  29. 佐藤重遠

    佐藤委員長 ただいま税法案に対する質疑を続行中でありますが、税法案に対する質疑あとまわしといたします。
  30. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次に、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題といたします。質疑を続行いたします。
  31. 平川守

    ○平川政府委員 昨日宮原委員からの御質問に対しましてお答え申しましたが、ややあいまいであるという御意見がございましたので、なお補足して御明説申し上げたいと思います。  昨日御配付しました資料の開拓の概況の十八ページのところの最後の欄の二〇六%というのが、数字が合わぬじやないかということがございました。これは調べましたところが、二〇六%というのはミス・プリントでございまして、一九〇%の誤りでございます。御訂正申し上げます。  それから営農資金の償還状況につきまして、昨日現在のところまだ償還状況が明確でないということを申し上げたのでありますが、本日各農地事務局の係官を集めておりまして、ここで中間の報告を求めましたところが、昭和二十六年度における償還の予定総額約五千八百万円に対しまして、現在までのところ償還済みになりましたのは、千三百万円程度であるということでございます。但しこれは二月十日現在の中間報告でございまして、期限は三月十五日までになつておりますので、三月十五日までには五千八百万円ほどの償還額は、全額償還の見込みであるということを、各事務局の担当官すべてが申しておりますので、期限までにはほとんど百パーセント償還ができることと存じます。右補足して申し上げます。
  32. 佐久間徹

    ○佐久間委員 本案につきましては、すでに質疑も盡されたと思われますので、この程度質疑を打切られんことを望みます。
  33. 佐藤重遠

    佐藤委員長 ただいまの佐久間君の動議のごとく決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 佐藤重遠

    佐藤委員長 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。  それではこれより開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題として討論に入ります。討論は通告願によつてこれを許します。早稻田柳右エ門君。
  35. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 私は本案につきまして、希望を付して賛意を表したいと存じます。  本案による予算措置は、わが国の食糧計画とも重大な関係がございまして、本案の資金の導入による開拓、開墾計画はもつと積極的に実施すべきであると存じます。御承知のように本案による開拓計画を立てた当時は、きわめて大きな構想であつたのでありまするが、年ごとにだんだん細つて参りまして、今やその目的を達し得ないような開墾地もできておるのであります。ごく最近に廣川農林大臣は靜岡、名古屋方面に参られた。その折に食糧の大自給計画を立てねばならぬというような放送をしておられますが、この食糧自給計画と表裏一体をなす本計画の現状を思うときで、廣川さんの構想が矛盾しておると見られる面すらあるわけでございまして、私は政府がもつと思い切つた予算措置をとるべきであると存じます。財政の現状やむを得ぬとは存じまするが、できれば来るべき臨時国会なりあるいは適当な機会をとらえて、農林当局は思い切つた予算要求をせらるるように、私は要望したいと思う。  それから本案の持つ特性は、開発による食糧の増産計画と相まつて、もう一つは農村の次、三男の人たちの対策にも役立つておるとわれわれは考える。しかるに本計画がややもすると宙に迷うような状況でありますので、農村の次、三男はせつかく計画を立てて開墾、開拓を始めたにかかわらず、これを中途でやめんければならぬような人々も見られまして、きわめて農村に暗い影を宿しておる、こういう面からいつても、もつとこれは積極的にやつてもらわなければならぬと思います。おそらく農林大臣を初め農林当局においても、これで十分とは考えておられないと思います。私どもはもつともつとこれを力強く推進していただきたい、かように念願する次第であります。同僚議員の各位からそれぞれ質疑応答がございまして、こんなことは言い盡されておると思いますから多くを申しませんが、以上の観点から重ねて申しまするが、思い切つた予算措置を将来講じていただきでたい、こういう強い希望を付しまして、本案に賛成をする次第であります。
  36. 佐藤重遠

  37. 松尾トシ子

    ○松尾委員 私は日本社会党を代表いたしまして本案に対して條件付賛成をいたすものであります。  食糧自給の必要なる現況におきまして、政府がこの資金をもつと多額に増加して、大いに開拓を奨励することは大賛成でありますけれども、しかしながら最近警察予備隊の演習地とか、あるいはそれに充てる宿舎とか、または駐屯軍の軍用地として、開拓地を使用接收するような計画があるように承つておりますが、こういう問題になると簡單に賛成できないわけであります。なぜならば全国六十万の開拓者の多くは、敗戦の特殊事情があつたとはいいながら、海外から無一文で引揚げて来まして、その当時は受入れる土地さえもなかつたような悪條件のもとにおきまして、その最悪條件を克服いたしまして、たくましい開墾魂を打込みながら、しかも戦後国の最大国策として取上げたこの開拓事業に、死力を盡したのであります。そして現在の様子を考えてみますと、そこから上つて来るところの額は五百万石にも達していると言われるし、また入植者の数もたいへん大きなものになつているということで、政府はよくこの辺を考えていただかないと困ると思うのです。これはひとえに開拓者の汗と血と涙の必死の努力の結集ではないかと思うのです。そういつたものを今回、いろいろの国際事情から警察予備隊に充てたり、あるいは駐留軍の軍用地に充てるというときに、これらの開拓者の生活に十分な保護を與え、たとえば移転費を出すとか、他の耕作地を與えるとかというようなことをしていただかないと、困ると思うのであります。どうしても国策上、国の事情からこれらを接收しなければならない場合には、今申しましたように十分な移転費や、あるいはこれにかわる開拓の土地を與えまして、せつかく今粒々辛苦をして、生活の安定を基礎づけようという過程をくじかないようにしていただくことを、強く強く要望いたしまして、この法案に賛成いたすものであります。
  38. 佐藤重遠

    佐藤委員長 三宅則義君。
  39. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は自由党を代表いたしましてただいま議題となりました開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について、賛成の意を述べんとするものであります。  そもそもこの開拓者資金融通特別会計につきましては、昭和二十五年度において一万人、二十六年度において六千五百人、二十七年度において九千人というように貸付金をいたすのでございまして、われわれといたしまてはこの開拓者については、十分なる同情と認識を持ちまして、わが国策の線に沿い、食糧の自給態勢を確立するためにも、きわめて重要な役割を演じ、なおわが国の人口問題等も考慮に入れまして、ぜひこの開拓者につきましては特別の恩典を與えたい、かように考えておるのでございまして、昭和二十七年度におきまして、十五億三千余万円の開拓者に対しまする貸付をいたしまする事柄は、当然過ぎるほど当然でありまして、本法案に対しましてわれわれは全幅の信頼と熱意を傾けまして、この開発のために全力を盡したいと思う次第でございます。  以上をもちまして簡單ながら開拓者資金融通特別会計につきましては、賛成をいたすものでございます。
  40. 佐藤重遠

    佐藤委員長 討論は終局いたしました。  これより本案の採決に入ります。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  41. 佐藤重遠

    佐藤委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案の報告書の件につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。     —————————————
  42. 佐藤重遠

    佐藤委員長 次に所得税法の一部を改正する法律案外三税制改正案に対する質疑を続行いたします。
  43. 小山長規

    小山委員 先ほど伺いましたところによりまして、海外からの特許料の支拂いにつきましては、租税特別措置法によつて特別の措置をとる、日本の経済再建に望ましい特許料その他の技術援助については、二〇%の課税を一〇%にするというお話でありますが、その望ましき技術援助というものについては、どのようなものであるかということを、すでに大蔵当局においてもお考えになつておられると思うのでありますが、わかつておりますか。
  44. 平田敬一郎

    平田政府委員 現在小山さん御承知の通りに、外資法人につきまして一定の租税の軽減措置を講じておるのでありますが、大体あれに準じましたようなやり方をやつたらどうか。その範囲につきましてなお若干関係省とも今協議をいたしておりますが、大体におきましてはあの範囲と類似なものに、相なるのではないかと考えておる次第であります。
  45. 小山長規

    小山委員 追つてその問題は、内定しましたときに御報告願うことにいたしまして、先にもどりますが、株式譲渡所得税の捕捉の問題でありますけれども、これはどの程度捕捉されているのか。私どもがいつも申しますのは、万分の三程度の移転税を課した方が税收としてはいいのではないか、従つて予算上の問題は起らないであろうというのが、その出発点なのでありますが、この株式の譲渡所得税の捕捉の程度というものについては、何かありますか。  さらにまた、よく主税局長は、百万も二百万ももうかつた人たちに対して課税しないのはおかしいじやないか、こういうことを言われるが、私どもが問題にしておる譲渡所得税というのは、個人の譲渡所得税のことを言つておる。法人が売買する場合には、当然売買利益として出て来るのでありまして、この方の税は当然とれるのであります。またかりに個人で百万も二百万ももうけるような人がおるとすれば、その人は一年か二年の間には必ず損をして、すつてんてんになつてしまうということも、従来の経験から徴して当然なことでありますし、また株式の譲渡所得税を課さなかつたからといつて、それではどういうことになつて来るかといいますと、最初の年においては、一時ある程度税の捕捉ができないのでありますが、株式が転々売買されることによつて株式に対する投資者がふえて来るということは、配当所得その他において税收がふえて来るということでもあるし、また現在行われておるところの仮装名義の売買取引というものがなくなつてしまう、あるいは仮装名義による株式所有者というものがなくなつてしまうという、いろいろな便宜の問題、それから資本蓄積の面から申しますと、投資信託の制度があるけれども、これもまだ十分ではない。しかも片一方においては、無記名定期預金というふうな、間接的な資本の收集の道が講ぜられておるが、直接に資本市場に入つて来るものについての、資本蓄積の方法が講ぜられていない。こういうことから、われわれは便宜の手段として考えておるのでありまして、従つてどもは、所得税法を改正して、讓渡所得税を廃止しろとは言つていない。資本の蓄積がなるまで、三年ないし五年讓渡所得税を停止して、そうして移転税に一時かえてみたらどうか、こういうことを言つておるのであるということを、つけ加えておきたいのであります。
  46. 平田敬一郎

    平田政府委員 株式の讓渡所得税の捕捉が困難だ、なかなか申告もされないということは、小山さんのお話通りでございまして、なかなか調査上もむずかしい問題でございます。従いまして歳入としましては、ほかの税に置きかえましても、大した問題ではないと思つておりますが、二十五年の税務統計によりますと、株式だけで、九百四十九人くらいで一億三千百万円という讓渡所得になつております。不動産の方は十五億程度の讓渡所得が決定いたしております。
  47. 小山長規

    小山委員 税收上他の税に置きかえても、別に財政收入としては困らないということだけを、記録にとどめさしておいていただきたいと思います。  次に、ただいま農村方面で非常に問題になつておりますのは、かんしよの価格の問題であります。これは何から来たかと申しますと、ことしの四月から砂糖が自由販売になるであろう。自由販売になりますと、現在の輸入砂糖の値段から推しまして、現在改正を企図されておるような関税あるいは砂糖消費税をもつてしても、なおかつ一斤当りの自由販売価格が八十四、五円であるというこの間の説明でありますが、その八十四、五円で砂糖が売れるということであるならば、生かんしよの一貫目の値段は、現在の四十円見当が二十円見当に暴落するのではなかろうか。これは農林省が計算した数字もそのようになつておるようであります。この問題からして砂糖の消費税をさらに引上げるか、あるいは引上げることによつて得た税收で、生かんしよの最も重要な販路であるところのぶどう糖、水あめなどの物品税を撤廃したらどうかというような議論が、わが党内にも非常にほうはいとして起つておることは、主税局長も御承知の通りであろうと思うのでありますが、この問題については、主税当局としてはどのような考え方を持つておられるか。たとえば砂糖消費税の引上げによつて、黒糖であるとかビート糖であるとかいうようなものに対する影響はどうであろうかというようなこと、それから砂糖消費税を幾ら引上げるか、たとえばただいま百斤千七百円となつておりますが、これを千九百円とか二千円に引上げることによつて、その他の黒糖、ビート糖等に及ぼす影響があるかどうかということ、こういうようなことはわれわれ参考として、もし説明されることがありましたら、御説明を願いたいと思います。
  48. 平田敬一郎

    平田政府委員 砂糖につきまして、国内消費税を引上げ、さらに他方におきまして関税を引上げるということにいたしましたのは、やはり間接税のシステムといたしまして、砂糖に対する負担はある程度上げてもいいのではないかということを考えまして、今回提案いたしたような次第でございます。ただ引上げにつきまして、やはり北海道の甜菜糖の問題がございますが、これらもできる限り保護をいたしたいという趣旨を加えまして、関税でできる限り引上げる。関税で引上げるといたしましても、あまり高い関税をかけますと、結局各国の不信を買いまして、日本の貿易にもかえつて不都合を来すという場合も出て来ますので、まず砂糖関税として国際的に認められる限度におきまする関税をかける、あとはやはり国内消費税で、外国品も国内品も一律に課税する、そういうことで砂糖の税を考えたらどうかということで、実は提案いたしたような次第でございます。もちろんその結果、今のあめの問題の解決にも相当なると思うのでございますが、ただあめの問題を全部こういう問題だけによつて解決するというのは、これはどうも少し話が行き過ぎになりはしないか。もちろんあめに対しましても、砂糖の値段を高くしますと、間接にありに対しても保護になるということは考えられるのですが、さればといつて、あまり砂糖の税を高くして、消費者に迷惑を及ぼすのもどうであろうかというふうに考えまするし、まずやはり間接税といたしましては、課税の見地からそれぞれ妥当と認められる限度で、そういうことを織り込むということにせざるを得ないのではないか。そういう点から行きますと、政府といたしましては、今のところ北海道の甜業等の問題あるいはあめに対する問題、ひいてはいもに対する問題等の処理の方策といたしましては、今回提案しておりますようなところで、考えていただくようにいたしたいと考えておるのでございまして、物品税の問題もあめに対する問題もございますが、これもなかなか深刻な問題だということも、私ども了承いたしております。ただやはり課税という見地から考えますと、あめに対して考えた場合に、ほかの物品税の課税品目との関係をどうするか。業者が少し値下りで損したから、間接税を課税するのをやめるとかいうようなことは、少し私どもは間接税の課税理論から行きまして必ずしも妥当でない。やはりあめに対して課税する場合に、紙に対しても課税いたしておりますからどうであろうか。あるいはマッチに対しても課税しておりますからどうであろうか。あるいは砂糖について相当かかる。課税する場合にあめに対して課税しなくてもいいか。やはりそういう問題を中心にして、課税というものは基本的に考えなくてはいけないのではなかろうか。大分砂糖の相場が下りましたために、昨年末以来あめの業者が原料を高く買い過ぎまして、最近苦境に陷つているという事情も私どもよく知つておりますが、しからばといつてそういう問題を課税に持つて行くということは、はたしてどこまで行くべきか。そこに私どもは相当愼重に考えなくてはいかぬのじやないかという点を考えまして政府といたしましては今のところそのような措置考えないということで、実は法律案を提案いたしたような次第であります。しかしまたこれは問題が深刻でございますので、国会としてどういう御意見でございますか。そういう点につきましてはなおよく検討しまして、われわれとしましても單にりくつばかり言つておれぬと思いますが、そういう問題につきましては、その際によくお打合せをすることにしたらどうか。政府が一応提案しましたものの考え方は、今申し上げましたような事情でございますので、どうぞよろしく御了承願います。
  49. 小山長規

    小山委員 砂糖が、現在かりに輸入段値が一トン百五十ドルであつた場合に、今度の関税あるいは消費税をかけると、大体一斤の売値段が八十四円見当だろう。砂糖が八十四円で売れている場合には、現在の物品税下においては、生かんしよ一貫匁二十円見当で買わなければ、水あめと砂糖の競争はできないという事実、これはどういうふうにお考えになつておるか。また水あめあるいはぶどう糖に対する今の間接税を廃止した場合には、生かんしよ二十円というのを二十五円ないし六円に買つても、水あめとして売れて行くだろうという考え方に対しては、大蔵当局としてはどういうふうに考えられておるか。もしおさしつかえなかつたら聞いておきたいのであります。
  50. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お尋ねの問題は、なかなかむずかしい問題でございまして、私は簡單に断定は下しがたい問題ではないかと思います。しかし今お話の水あめなどの物品税をはずした場合に、四、五円採算に影響があるということは、大体その辺のところではなかろうか。しかし砂糖の今の国際相場が自由販売になりまして、砂糖の値段が八十円強となつた場合において、いもの値段がすぐ二十円になるかといいますと、私は必ずしもそうとばかり言えないのじやないか。いもをあめばかりに使うわけではございませんし、酒の原料等にも大分消費しておりますし、その他いろいろの原料に使つておりますので、澱粉の値段だけがいもの値段を支配するものではないと考えるのでございまして、その辺はいろいろ複雑な要素がありますので、どれくらいになりますかということは、なかなか断定は下しがたいのではないか。しかしそういう計算一つ計算として出すということはやはり考えられるが、しからばそういうふうになるかと申しますと、必ずしもそうでもないのじやないかというふうに、考えられる節もあるかと存じます。そうなりますと、いもの値段がある程度高いとなりますと、あめの業者が困るという問題もあるので、やつぱり私はこの問題はいもの問題も深刻ですが、戦後たくさん増加しましたあめの業者をどうするか。それからあめが大分ふえておりますが、一体国際的に交通が自由になりまして、あめよりいい砂糖が安く買えるような時代におきまして、一体あめというものをどういうふうに考えて行くか。その辺がむしろ問題としては深刻な問題であつて、そういう問題としてどうすればいいかで、この問題を判断すべきではあるまいか。そういう際においてどういうふうに対策を講ずべきか、あるいはどういうふうに持つて行くかということは、これはなかなかむずかしい問題でございますが、すぐいもの値段が暴落して、その方で困るというようなことばかりにも行かぬのではないか。やはりそこにはもつと複雑な問題が他にあるんじやないかというふうに、考えておる次第でございます。これはどうもなかなか私ども、そういういもの値段がどうなるかという点につきましては、率直に申し上げまして責任のある断定は下しがたいと、少くとも私は申し上げたいと存じます。
  51. 小山長規

    小山委員 物品税をはずすことによつて採算上五、六円の開きが出て来るであろうという点は、その通りであるようでありまするから、それだけを伺つておいて、あとの問題はさらにわれわれも研究し、政府当局も研究されて、この問題は片づけたいということで、その点は終ります。  国税庁長官にお伺いしたいのでありますが、前国会の終りでありましたか、例の国民保險、健康保險の一点單価の引上げの問題がありました際に、財政上の負担が非常にふえるということから、いろいろ妥協的な話合いができまして、医師所得の標準率を三〇%ないし二五%に見るということで、妥協ができたということは、この経緯についてはお認め願えるであろうと思うのでありますが、そういう経緯でこれができたということと同時に、この二五%ないし三〇%という問題は、そういうふうな政治論ないろいろな難問題を解決するための手段として、あのような結果になつたということからして、先般主税局長の答弁も得たのでありますが、例の執行当局であるところの国税庁長官意見と、主税当局意見とが食い違つても困りますので、この際確かめておきたいのであります。一つは二五%ないし三〇%というような問題になつておるのでありますが、一つの問題は、青色申告の数字がそれと食い違つた場合、及び実態調査の結果がそれと食い違つた場合に、一体どうするのかということを主税局長質問しましたところが、それはたとえば青色申告の場合には、計上すべき経費を落しておる、書き漏らしておるというような人たちがおるであろうから、それをそのように指導して行くのであるというお話である。それから実態調査の場合にも、計上すべき経費を今まで見なかつたものも、いろいろの現状に即してこれを見て行くように、指導するのであるというふうな御答弁を得たのであります。この答弁については、国税庁長官としても御同意であろうと思うのでありますが、そのように御指導なさるのかどうかということが一つ。もう一つは、この問題の経緯にかんがみまして、この暫定措置昭和二十六年度限りで終るのではなくして、一点單価の問題、その他社会保險に関するところのあらゆる問題を解決するまでは、やはりその方針で進むことをわれわれは了解しておるのでありまするが、何か聞くところによると、国税当局は二十六年度限りの措置であるというふうに、言われたことを聞いておるのでありますけれども、そのようにお考えになつておるのか。われわれとしては、これは暫定的措置ではあるが、この問題は根本的に解決されるときまでは、やはりその情勢に変化なき限り、そのような措置をとられるものであるというふうに、了解しておつたのでありますけれども、違つた情報を耳にいたしましたので、確かめておきたいのであります。この二点についてお答えを願いたい。
  52. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 医師その他の方々の社会保險診療の所得の算定につきましては、実は二十五年度のとき以来、ずいぶん多くのいろいろな苦情を私どもはお聞きいたしたのであります。従つて従来取引いたしておりましたところの帳簿を備えた人、または実施調査をいたしました人以外の人に対する、一つの推定の材料としての標準をどう置くべきかということについては、二十六年度においては相当愼重に検討する必要があるというふうに考えまして、年度当初からこの問題については、相当多数のデータを実は集めたのであります。しこうして従来は計算簡單方法を用いるという建前からいたしまして、自由診療をなさつておる方が、同時に社会保險の診療をやつているという状態が普通でありますが、その場合に雇い人費でありますとか、減価償却費というふうな種類のものを、自由診療の分にどの程度振り向けるか、また社会診療の方にどれだけ振り向けるか、その按分計算が非常にむずかしいのであります。従来は大体その双方に使われた薬価というものを、一つの標準としてやつていたのでありますが、しかしながらどうも薬価按分という方法ば、必ずしも実情に沿わないという事柄も十分に考えられますので、この際そういうふうな計算方法もひとつ改めてみたい。  それからいま一つは、御承知の通り一点單価の引上げということは、もともと諸物価が一般的に高騰したということが原因になつておるのであります。従つてなるほど昨年末におきましては、一点單価の引上げが行われたのでありますが、昨年の所得の基本となるところの一月から十二月までの分におきましては、ほとんどこれは影響がございません。従つて物価の騰貴を実際上どの程度見なければならぬかという点も、同時に考慮の必要があるのであります。そういうふうにいたしまして、結局雇い人費でありますとか、減価償却費のごとき、直接その診療に振り向けることのできないところの間接的な経費と申しますか、こういうようなものを、大体その保險診療に従事したところの所要時間というものを一応計算いたしまして、所要時間に上るところの按分をしてみたのであります。それから同時に一方の物価騰貴の面も十分に検討し、多数のデータを集めて検討してみました結果、大体推定の基本としては、三〇%程度が適当であるという結論を得た次第であります。たまたまこれが政治的な考慮によつて一つの政治的な決定として行われたがごとき印象を、一般に與えておるようでありますが、私どもとしては、どこまでも所得の算定というものは、実際の所得がどこにあるかということたきわめることが、われわれの仕事でありまして、それが変更されることはもつぱら法律によつてのみ行われるというふうに、考えておる次第でございます。従つてそういうふうに多数のデータを集め、いろいろ計算方法等も検討いたしました結果が、大体三割程度が妥当であるという結論を得ましたので、その方針に従つて行くことにした次第であります。  しこうしてそういうふうな一つの推定の標準でありますので、青色または実地調査の場合においては、それと差が出る場合が普通でありますけれども、大体標準的な状態をとつてみますと、そういうふうな結果が出ております。青色等の場合においては、これはむしろ正直なまじめな方々が多いのであります。そういう方はどつちかと申しますと、薬もよりいいものを使われているのが普通の状態であります。また時間等も多く、処置も丁寧であります。従つて普通常識からいたしまして、青色について非常に多いところの所得が出るというふうな場合には、やはり真実に離れていることが多いのではないかということが、一応想像されるのであります。従つてその場合には、なお漏れている経費がないかどうかという点について検討を加えまして、実情に合うようにいたして行きたいと考えておるのであります。御承知の通り医者の場合においては、個人生活と診療施設というものは、一体になつていることが普通であります。従つて家事関連の経費その他につきましては、この区分が非常に困難であります。従つてその区分を適正にすることができれば、青色の場合においても、実地調査の場合においても、その標準を越えるということは、まず普通なかろうというふうに考えております。その点を十分に調査するように指示いたしておるのであります。  しこうして第二点の、この措置が一年限りであるかどうかという点につきましては、私どもはこの標準というものは、年々違うべきはずのものであるというように考えております。そのときの物価の情勢、一点單価のきまり方、その他によつて、経費の割合というのはおのずから異なるのが当然であります。従つて二十七年度においては、さらにやはり相当のデータを集めて、十分検討して決定いたしたい。言いかえますと、この三〇%、二五%という措置は、今年についてのみ適用されるものである、そういうふうにお答えいたします。
  53. 小山長規

    小山委員 それは国税庁長官がそう言われるのは、もつともなことであろうと思うのでありますが、ただ社会的反響という点を少し考えてもらいたい。というのは、一点單価の問題はいろいろ議論はありましようが、国会として考えたのは、財政負担があまりに大きくなつて行くので、暫定的にこういうことでどうだろうかということで話が進んだことは、これは国税庁長官といえども認めてもらえるだろうと思う。その場合に、それが昭和二十六年度限りである。むろん物価の情勢が違えば違いますが、物価その他の経費が動かぬとすれば、少くともこれよりも辛く持つて行くつもりはないということくらいは、私は言われた方がいいのじやないかと思うのであります。そういうことはそのときの情勢でやるのだ、そんなことは知らぬ、こういうお考えですか。
  54. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、今年のああいうふうな数字は、多数のデータの調査から集積された結果でありますので、また二十七年度におきましても、やはりそういうふうな調査を十分いたしてみたいと思います。しこうして年々調査が技術も進んで参りますし、だんだん正確度を増して参りますので、従つて多分その他の條件が異なつておらなければ、この状況が大体続くであろうという想像はされ得るのでありますが、こういうものは、そう固定的な状態に考えるということは、やはり税務行政上いかがであろうかと考える次第であります。これをずつと三〇%、実情によつては二五%まで下げ得るという水準を、どこまでも堅持して行くという考え方は、やはり所得の実態をつかむという面から申すと、いかがであろうかと考える次第であります。
  55. 小山長規

    小山委員 大分御苦心の御答弁のようで、それ以上追究いたしませんが、下部機関は国税庁長官が言われた通りに言つて、つつぱなします。ですからこの問題のいきさつその他から考えて、長官の下僚に対する訓示その他の  ときには、苦心された結果の表現がそのまま下僚に通ずるように、ひとつ訓示その他をやつていただきたい。これを希望として申し上げます。  なお私は鉄道当局の出席を要求しておいたのでありますが、まだお見えにならぬようですから、見えてから質問することにしましよう。
  56. 川野芳滿

    ○川野委員 関連して……。ただいま小山委員の御質問に対する国税庁当局の御答弁に対して、少し質問してみたいと思います。今回の一点單価の問題について、政治的解決と申しますと、そういう意味合いにおいて、三〇%が適当であろうということで、御解決になつたものと私は考えまして、まことに適当な措置であると敬意を表しておるような次第であります。ところがただいまの長官の御答弁を聞いておりますると、三〇%がいろいろなデータを集めた結果、適当であつたというような御答弁であつたかと存じます。そういたしますると、この問題はさらに二十七年度におきましても、おそらく三〇%以下に相なるのではなかろうか、こういうふうにも考えられるわけであります。そこで私は現地の直税課長に会いまして、いろいろとこの問題を、私は医者の立場から税務当局に懇談を重ねて参つたのであります。ところが現地の直税課長あるいは係長等におきましては、いかに調べても三〇%に落ちない、少くとも五〇%、六〇%に当る、こういうふうなことを実は現地の人が言つておるわけであります。私の選挙区は熊本国税局の管内であります。そこで私は熊本国税局管内の直税部長会議あるいは直税課長会議の結果は、まだ聞いておらないのでありますが、おそらくその会議の模様をそういう点から拝察いたしますると、相当議論が沸騰いたしまして、まことに今回の決定は不都合である、こういうような議論がおそらく出たものであると、私は想像いたしておるような次第であります。しかしそれも実は一点單価の問題がああいうふうにこじれて参つたので、今回はやむを得ずこういうような措置なつたが、しかし次年度においてはよく検討されまして、政治的解決ではなくて、おそらく税法の改正を断行されて、これらの問題の解決に当られるものである、こういうふうなことで、その直税部長会議あるいは直税課長会議等も、けりがつくのではなかろうかというふうに、私といたしましては想像いたしておつたような次第でございます。しかし先ほどの御答弁から申しますると、この問題は、税法の改正は行わずして、政治的解決をさらに延長するような答弁とも、私は聞き及んだのでありまするが、この点について、さらに長官の御意見を承つてみたいと存じます。
  57. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 医者收入につきましては、問題はないところでございますが、その收入を得るに必要な経費の算定につきましては、実は先ほど御答弁からちよつと漏れたのでありますが、今まで少しく見方がきらく過ぎたというふうな感じを、私どもも持つておるのであります。と申しますのは、従来はたとえば医者の雑誌を買うにいたしましても、また医学書を買うにいたしましても、それらの経費は、その医者としての現在の水準を保つに必要な程度の医学書であるならば、経費として認めるが、その医者の技術を少しでも進歩させるという意味を持つところの医学書であるならば、これは経費として認むべきではないというふうな解釈をとつておつたのであります。従つて普通一般の医学雑誌程度のものは経費として認めますが、新しく参考書を買うというような場合においては、それを認めないというような計算のいたし方をしておりました。それからまた医師の場合におきましては、しよつちゆう学会等があるのでありますが、学会等に出席する経費、これも学会に出ていろいろな研究発表をし、医師としての技術の向上をはかるという意味であつて、これは全部経費として認めないという見解をとつておりましたが、これも少しきつ過ぎはしないか。つまり医学というものは今日相当日進月歩の状態でありますから、たとえば新しくペニシリンができ、ストレプトマイシンができますと、それらの適用の方法その他について、あるいは新しい研究について、常時医学技術を進めて行くのでなければ、普通の医師としての営業も続けて行けないというのが実情でございます。そういうふうな点の見方を、相当実情に合うように、技術の進歩に要するところの必要な経費も、また経費として認めて行くのだという考え方をいたして、取扱いをかえて参つたのであります。従つて従来の計算方法によりますと、なるほどただいまお話のように、計算をすれば、三〇%以上の場合が出て来るということもあり得るかと思いますが、そういうふうに個々のこまかい点について、計算の仕方をかえて参るということになりますと、大体全国的に見ますれば、三〇%程度が妥当であるという結論を得た次第であります。
  58. 川野芳滿

    ○川野委員 まことにけつこうな御答弁を承りまして、私は非常に喜ぶ次第であります。しかし承りますと、社会保障制度による医療については三〇%であつて、自由診療については従前通りの課税標準率をもつて税金をかける、こういうふうな御意向のように私は伺つているのであります。そうなりますと、ただいまの御答弁からいたしますると、自由診療の部分に対する課税率も、相当に減額されるものと私は考えるのでございまするが、この点に対する考えを承つてみたいと存じます。
  59. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 自由診療と社会診療との関連の経費の割合につきましては、先ほど小山さんの御質問に対して御答弁いたしましたように、間接的な経費、たとえば雇い人費であるとか、減価償却費等の経費をどういうふうに区分するか。ただいま申しました通り、いろいろな参考書を買つたり研究に要する経費も同様でありますが、それらの経費は、直接その病人に対して使つた経費と違つて、間接的な経費になるのでありますが、これらの経費を社会診療と自由診療と、どういうふうに振りわけるかということが、非常に技術的にむずかしい問題であります。これを従来は薬価按分と申しまして、その双方に使われた薬の料金の割合によつて、按分して参つたのであります。そういたしますと、どうしても薬価そのものは、自由診療だから、社会診療だからといつて、それほど差をつけていないのが現状であります。たとえば処置が非常に丁寧であるとか、または手数をかけるとかいう面は、自由診療になりますと相当ありますが、しかし使う薬価については、それほど差はないのであります。従つてどうしても、その経費の面が自由診療に有利になるというような感じが出て参るのであります。従つてこれを、それぞれの患者について使われたところの所要時間の比率によつて、按分するという方法にかえてみたのであります。そうしました結果、結局全体としては、ただいまお話しましたように、いろいろ経費の見方について従来少しきつかつたのが、今度は下つておるのであります。その下つたものがほとんど社会診療に数字としては現われて参る、そういうふうな結果に相なつておるのでございます。
  60. 川野芳滿

    ○川野委員 私は、この問題は他の業界にも相当影響を及ぼす問題であると考えるわけであります。そこでただいまの長官の御答弁は、今後の税の賦課方法に対して、経費の見方という点において変化を来したものである、こういうふうに私は実は拝聴するわけであります。どうかひとつそういう気持で、他の方面にもそういう研究費等もやはり経費の中に見込でいただいて、そうして寛大な課税をしていただくように私は希望を申し上げておく次第であります。  さらに広島局管内、すなわち大蔵大臣がお生れになつた広島県においては、二五%にすると広島の国税局長が言明した、こういうふうに私は聞いたのでございますが、もしそういうことをお聞きでございましたならば、それらのてんまつについて御答弁を願いたいと存じます。
  61. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 社会診療の問題の問題につきましては、これは皆様御承知の通り、全国的に非常に大きな問題になつている事柄でございますので、特に私ども注意いたしまして、局長会議の際または直税部長会議の際において、十分詳しく打合せをいたしております。従つて広島局管内だけ特別の措置を講ずるということは絶対にございません。もしもそういうふうな事実がありますれば、私どもあとからでも必ず修正することにいたしたいと考えます。また広島の松田局長がそういうふうなことを言つたということは、私自身は全然聞いておりません。従つておそらくは事実ではなかろう、そういうふうなことをするはずがないというふうに、私は信じておる次第であります。
  62. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの川野委員、それから小山委員の御質問なつ所得標準率の問題、これは非常に今後われわれ研究すべき問題であると思いますので、関連してなおお尋ねいたしてみたいと思います。  ただいま社会保險收入に対しては、大体三〇%をもつて所得とみなすということでありますが、これはどういう根拠をもつてそういうふうな率を出されたか。また三〇%というのは一律に、三〇%と見られるのか。これはその病院なり医者の経営規模、雇い人の数、あるいは社会的な環境、いろいろな事情によつて非常な差別があるだろう。それを一律に三〇%という数字、あるいは率を出されたその事情をお尋ねする。あるいはそこに区別をつけておられるのかどうか。区別をつけておられるとするならば、どういうふうな区別をつけておられるか、明細に申していただきたい。
  63. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 医者につきましても、青色申告をしておられる方、または実際に收支の調査が完全にできました者につきましては、それは標準というものは一つの推定の基準になるだけのものでありますから、問題は別になると思います。しこうして推定の基準を用いなければならぬようなものにつきましても、経営形態によりまして、またはその人のやり方によつて、ある人は非常に経費がかかるが、ある人は経費がかからぬという場合があるのであります。従つてども応三〇%という標準を置いておりますが、実情によつて二五%まで下げるというふうに幅をとつておるのであります。他の業態についてもそうでありますが、これは一律にやるということは非常に危險である、実情に沿わないという場合が相当ありますので、標準率というものは、ほとんど大部分のものが範囲率になつておるのであります。たとえば三割から二割五分までとか、または四割から五割まで、または二割から二割五分までというように、それぞれ範囲率を用いるのが普通であります。従つて、その土地の実情、その人の実情によつて、その範囲において最も適当なる、真実に近いと思われるところの数でもつて所得をはじいて行くというふうにいたしておるのであります。しからばどういう人が一番経費がかかつているかと申しますと、大体医師の場合におきましては、病院形態をなしているというような場合におきまして、割合に経費が多くかかつているというふうに数字が出ておるのであります。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは社会保險收入に対しては二五%から三〇%の範囲内、こういうふうに見ておられるのかどうか。それ以外に幅があるのかないのか。
  65. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 大体原則は三〇%程度というふうにいたしておりますが、その人の経費を調べてみました結果、実情によつて二五%までは下げ得る、ただ。單に二五ないし三〇の間であればどれでもよいという意味でなしに、三〇を大体標準にいたしまして、しかし実情によつて二五まで下げ得るというのであります。
  66. 奧村又十郎

    ○奧村委員 昨年はたしか五〇%以上所得に見ておちれる。今度は急に三〇%ないし二五%。そこで実際において三〇%以上所得があると見られる場合においても、三〇%の申告を出せば更正決定しないということに一般に信じられておるのでありますが、そういうふうになさるのかどうか。
  67. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 実際に調査をいたしました場合におきましては、これは実情によるのは当然であります。しかしながら、全部について実際の收支の完全な調査をするということはとうてい不可能でありますので、大体三〇%程度の申告があれば——これは收入は当然調査をいたしますが、それだけの申告があれば、真実の所得を申告しておられるものであるという推定を下しても、誤りがないかというふうに考えておる次第であります。
  68. 奧村又十郎

    ○奧村委員 社会保險收入に対して三〇%まで所得を申告すれば、更正決定をしないという取扱いを事実上なさるわけでありますか。すなわち今の御答弁では、三〇%まで所得を申告すれば、それで正当な所得を申告したものとみなす、こういう御答弁である。そうすると、税務行政上において、三〇%まで申告したならば更正決定はするな、そういうふうな何か御通達あるいは御指示でも、国税局部内にお出しになるのであるかどうか。その点をお伺いいたします。
  69. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 査察等をいたします場合は全然別でありますが、奥村さんよく御承知の通り、税務官吏も全部について完全な調査をするということは、とうてい不可能であります。従つて、大体正直であると思われる申告が出ました場合におきましては、そういうのはそのまま申告を是認するということをするのが、税務行政としては全体として番公平を保ち得るゆえんである、というふうに考えておるのであります。従つて医者の場合におきましては、そういうふうに相当データを集めて研究した推定の標準まで出ておれば、これはよほど手がすけば別ですが、普通の場合におきましては、あらためて調査をして、さらに更正決定をするというふうなことは、税務行政全体の能率的な運営の面から申しまして、妥当ではないというふうに考えておる次第であります。
  70. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねするのは、保險收入に対して三〇%の所得を申告すれば、妥当な所得の申告として更正決定はしない、そういう取扱いをなさるのであるか。そういう事柄を、国税局部内にいかなる通達あるいは指示をなさるのか。はつきり三〇%まで出したならば更正決定はしない、そういう意味の通達をなさるのか。その通達あるいは指示の内容をお聞きしているわけです。
  71. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 この問題につきましては、たしか一月の下旬でありますが、招集いたしました国税局長会議におきまして、十分指示をいたした次第であります。従つて全国的に各局ともそういう方針で進んでおると思います。
  72. 奧村又十郎

    ○奧村委員 保險收入の三〇%が妥当な所得であるということを言われる。これは国税庁の方でそういうことを考えられるが、税法上においてそれが妥当であるということは言えぬはずである。税法上においては、法に照してこれは研究しなければならぬ。それを方的に国税庁が、三〇%来たならば、これは妥当であるというふうなことをはつきり言うことは、非常に問題である。何もこれは社会保險收入の場合だけでなしに、所得標準率という、この標準率の運用の仕方、これが将来大きな問題になるから、この所得標準率そのものの問題を掘り下げて、私はお尋ねしておきたいと思います。  シヤウプさんが日本へ来て、いわゆる努力目標制度をこつぴどく攻撃して——われわれも実は攻撃したのであるが、これがなくなつた。ところが昭和二十四年度以来、所得標準率というものを非常に整備されるというか、合理的な科学的な資料を整えて、この所得標準率でもつて税務を執行して行かれるということになつて来たことは、まことにけつこうであると思います。もつと日本の納税者納税意識が高まつて、帳簿などが整備されて行くならば、所得標準率などはいらぬのでありますが、今日の日本の税務執行の実態からいえば、所得標準率というものを運用されて行くことも、まことにけつこうであると思います。しかしもしこの運用を間違うならば、今の税法の精神を根底から蹂躪してしまうと思います。末端の税務官吏の中にはすでにそういう弊害がかなりあるんじやないか、特に今年の二月の確定申告においては、そういう弊害があるんじやないかということを私は案じておりますので、その点からお尋ねいたしますが、所得の標準率はただいまのところどの程度税務執行上御利用になつておられるか。業種はどの程度にまで、あるいは標準率はどういう部面にまで、ごく最近のうちにこの標準率は発表なさるということも承つておるのでありますが、大体その標準の運用をどの程度にただいまやつておられるかということを、お聞かせ願いたいと思います。
  73. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 奥村さんもただいまお話になりました通り、推定課税と申しますか、権衡課税と申しますか、こういうふうなやり方は税務行政の本来のあり方から申しますと、必ずしも妥当じやないというふうに感じておる次第でございます。従つて一方において青色申告をできるだけ奨励いたしましてこれを多くして行く、また一方信頼のできない納税者を選択いたしまして、そういう人について実額調査というものを、できるだけ徹底して行くということを、どんどん進めておるのであります。しかしながら実額調査と申しましても、これまた人間のすることであり、また中には十分にその能力を備えていないものもございまして、その結果がほんとうの所得に合つているかどうかということについて、必ずしも自信を持ち得ないという場合が相当あるのでございます。従つてどもといたしましては、そういうふうな調査の結果がはたして実態に合つているかどうかというふうなことを、各方面から検討する材料が必要なわけであります。そんな意味をもつて実は各業態に相当こまかく、大体の標準はどの程度になるかという調査を年々出しておるのであります。さらにこれを詳しく申しますと、標準率と申しますよりも、むしろ効率調査という言葉をもつて申すことが妥当であるかと思いますが、たとえば料理屋で申しますと、料理屋の従業員一人当りの大体の所得はどれくらいになるか、また料理屋で使うところの酒の消費量に対する所得率はどのくらいになるか、お座敷の面積に対する標準率はどのくらいになるか、そういうふうにいろいろの詳しい比率を、各地方ごとに調査いたしておるのであります。そういうものを参考といたしまして、自分の調査がはたしてそれで妥当であつたかどうか、という検討をする材料にいたしておるのであります。また経費が全然見当がつかない。帳簿がはつきりしないというような場合におきましては、やはり一つの基準を設けて、その所得を算定するプロセスとしてそれを使うという場合も、今日の場合においてはやむを得ない場合が相当あるのであります。従来標準率というのは、税務行政としてはずいぶん昔から事実上は使われて参つておるのでありますが、それらのものをできるだけ科学的に、正確度を増して行きたいという考え方をもちましてさらに詳しくいろいろな間接的な数字も用いて行きたいということで、先ほど説明申し上げましたような効率調査までやつて、そうして科学的に、または間接的な方法をもつて、いろいろとその調査の結果を、妥当な方向に持つて行くという助けにいたしておる次第でございます。しかしながら、しからばこの標準率を公表するかという問題につきましては、たとえば農業所得につきましては、帳簿のある方がきわめて少いということと、基本が大体つかみやすいという二つの面から、米、麦または葉タバコ等につきましては、標準率をはつきり年々きめまして、各市町村ごとに大体きめておりますが、場合によつては市町村の区域にわたらぬで、もう少し大きい範囲になる場合もございますが、とにかくそういう範囲について案をつくりまして、公表をして御批判を願つて、そうしてそれでもつて実行して行くという方法をとつております。その他の業態におきましては、ただいま問題になつております社会保險診療のような收入金額が、漏れなくはつきりとわかるというものにつきましては、これは一般的に公表して行くことが妥当であるというふうに考えまして、発表もいたしておるのでありますが、その他のものについては業態も種種雑多でございますし、これを一律に考えるということは非常に危險であまりす。実際その所得を把握する面から申しまして、従つて言いかえれば所得計算するところの一つの過程として、そういうふうなものを一応使つてみて、はたして実際の所得に適合するかどうかということを検討する、一つのプロセスであるというふうに私ども考えておりますので、ことにそれらは地方ことに非常に大きな差があつてしかるべきであります。また業態によつてはもちろん大きな差があるという点からいたしまして、全国的にこれを統制するということもいたしておりませんし、従つてまた公表するということは、いかがであろうかというふうに考えておるのであります。米国等におきましてもずつと以前は出版物にも相当見えておるのでありますが、最近においてはほとんどそういうものを出しておりませんし、また所得税の本来のあり方から考えましても、こういうものをもつて全部推して行くというやり方は、所得税の税務行政から申しまして妥当であるとは考えておりませんで、やはり実額調査中心でどこまでも進めて行く。さらにまた青色申告を奨励することによつて税の負担の公平を期して行きたい、そういうふうに考えております。
  74. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁はもう一つ明らかでないと思います。農業においても葉タバコの收納価格に対しても、標準率はできておりましようし、またタバコの小売業者の小売口銭に対する所得率というものもきめておられる、また営業においても売上金額に対する大体のパーセンテージ、料理屋であれば五〇%、散髪屋では三〇%というふうな大体の所得の率はきめておられるはずです。率を公表せよとは言わぬが、どの業種にはどの程度の標準率はつくつておるということは、ここでお話になつてもよろしいじやないか。社会保險の料率はもうすでに率まで発表せられた。農業においても各町村ことに発表せられるなら、ほかの部門においては、どの程度まで標準率を利用しておるということをここで言われても、私はさしつかえなかろうと思う。もう少しつつ込んで御説明を願います。
  75. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 実は標準率につきましては、大体局段階におきまして、それぞれ調整をして使つておるのでありまして、監督の一つ方法としまして、もちろん全国的にそれらの数字を集めて検討はいたしております。従つてどの業種目に、どの程度にできておるかということは私ども本庁としては全部はつかんでいないわけであります。しかしながら業態から申しますと、営業につきましてはたしか四、五十の業態については、大体標準率というものを各局で持つておりまして、それを一つの推定の材料として使用しておるように考えております。
  76. 奧村又十郎

    ○奧村委員 農業においては反当の所得標準率をつくつておられるのじやないか。それから葉タバコの收納代金などは、これは收納代金に対する何パーセントの所得、こういうふうに見ておられる。それから営業などにおいては、売上げ価格の何パーセントが所得と、こういうふうに見ておられるのじやないか。その見方はどういうふうになつておりますか。
  77. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 米並びに麦につきましては、石当りの標準を大体用いております。ここ三、四年前までは反当りにいたしておりましたが、漸次研究して参りました結果、やはり石当りにいたすことが非常に実情に適合し得るというふうに考えましたので、石当りにいたしているのであります。葉タバコにつきましては、葉タバコの收納価格を基準にいたしまして標準を設けております。またその他の営業等につきましては、売上げ金額または收入金額を基準にいたしているのが普通でございます。しかしながら先ほどもちよつと御答弁申し上げましたように、その他いろいろな外形標準に対するところの比率も同時につくつておりまして、それらも参考にして行きたいと考えております。
  78. 小山長規

    小山委員 ただいまの奥村君のいろいろな要求は、結局その課税標準というものが妥当にできているか、どうかということを知りたいのが主眼であろうと思う。国税府でそれを一々お知らせするわけにも行かぬということでありましようけれども、たとえばある局ではこういうふうなことをやつているのだというやつを、数字的にあるいは具体的にお示しくださるわけに行きませんか。そうするとその局のそれが妥当であるかどうかということと、またさら国会がいろいろ検討してみるということのきつかけになろうと思うのであります。それは全国全部を出せというわけじやないので、どこか標準になるような、まずあなた方の方から言えば、大体完全にできていると思うような局があると思うのでありますが、そういう局ではこういうことをやつているというふうな一つのモデルを、ここにお示しになつたらいかがですか。そうすれば今のような議論は立ちどころに解消し、また議論はそれからさらに発展するだろうと思います。
  79. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 先ほどから繰返し御答弁申し上げました通り、こういうふうな一つの基準を使いますのは、その他の方法による調査ができないときにおけるところの一つの推定の基準でありまして、できるだけこういうものは避けて行きたいというのが、私どもの本旨でございます。従つて現実には、そういうふうな推定をなさざるを得ぬという向きが相当数あることは、これは認めざるを得ないのでございます。従つてどこかの局と申しましても、なかなかこれ自体毎年かわつているものでもございますし、それから漸次研究してよくはして行つているつもりでございますが、まだ公表してそれ自体について御批判を願つても、要するに計算のプロセスに関する問題でありますので、いかがであろうかと考えます。
  80. 小山長規

    小山委員 ただいま私が申し上げていることは、そういうふうなどこ局としなくてもいい。かりに丸局でも三角局でもいいのです。三角局ではこの種の営業にはどういうふうなことでやつているのだ——政治は現実なんですから、現実に申告をする人がよけいいない。現実にあなた方もそういうふうな尺度を使わざるを得ない。ところが受ける方はその尺度で使われておつて、非常に不平不満があるということが、要するにここの問題なんですから、従つてそんなにあつちこつちから怨嗟の的になるような標準率が使われているのか、あるいはあなた方の方が正しいのであつて、その不平を言う方が間違つているのかこれは国会議員の判定するほかは現在の制度上はないと思う。そういう意味でお示し願つたらどうか。こういうことを言つているのです。そうでなくてあなた方はまつたく自信のないものを使つてつて、われわれはまつたく正しい尺度でやつていると思つているのだけれども、愚民どもがくだらぬことを言つているのだというふうに、お考えになつているのではまさかあるまいと思う。あなた方はまさに良心に恥じない一つ方法でやつている。ただそれが十分とは行かないけれども、ただいまのところではこういうことでやつている。それが愚民なのかあるいは賢民なのか知らぬけれども、とにかく民衆はそれに対していろいろ批判しおりますからして、それを現在判断の資料にお示しになつたらどうか。それができないと言うのであれば、まつたく自信のない行政をやつていると断定せざるを得ないのでありますが、いかがでありますか。
  81. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 先ほど来御答弁申し上げたと思いますが、標準率というものは、固定したものをつくつているものじやないのでございます。たとえばはなはだしきに至つては、三割ないし五割というのがございます。個々の業態について見まして、この家はどうも相当経費を使つているらしい、またはどの程度経費を使つていないかということは、大体その店について各種の外形的ないろいろな事案を見れば、見当はつくのでございます。従つてその範囲でそれぞれ所得の調査をするのでございます。従つて標準率というものは、先ほどもお話しましたように、單純な途中におけるところの計算か、または所得の算定が妥当であろうかどうかという、一つの参考になる資料であるというふうに私ども考えております。もつと極端に申し上げますれば、たとえば床屋で申しますれば床屋の台数が何台ある、一台当り床屋というものは、大体どれくらいのものが普通の状態であるというようなことも、別途に地区ことに調査したものがございますが、そういうようなこと。または床屋の職人の数が何人ある、またはそこの土地の状況が非常に便利な所にあるかどうかというようなこと、そううようないろいろな一つの事実についての比率を、相当多数出しているのでございます。それらのものをそれぞれ参考にして、結論を出すという性質のものでございますので、これは別に公表すると申しますか、皆様に事実を申し上げることを避ける意味では毛頭ございません。従つてどこかにおいでくだされば、いつでもそのものをお見せしていいかと思うのでございますが、これはもつぱら今後やはりそれらの参考資料にするにいたしましても、さらに研究を積んで、より科学的に正確なものを、だんだんつくつて行くというふうにすべきものであつて、これによつて所得計算するのだというような性質のものではないと、私ども考えているのであります。まあそういう趣旨でもつて、標準率というものをそう重大にお考えにならぬで、お取扱いをお願いしたいと考えている次第であります。
  82. 佐久間徹

    ○佐久間委員 ただいま国税庁長官から課税の基準についてお話がありましたが、推定の集計で一つの結論ができた、これを変更する場合は法律以外にないのだというようなことも言われたし、そういうぐあいに私は了承したのですが、推定の集計はやはり依然として推定でありまして、実際との食い違いが個々に出て来るということは、当然だと思うのであります。また実際に全部を調べてみるということも、不可能だというお話もありましたが、もつともなことでありまして、その点も了承するのでございますが私はここに一つの例を持つているのであります。これは果樹の場合ですが、しかもなしの場合を申しますと、一級が反当り五万一千三百六十円、二級が三万九千五百円、三級が三万一千六百円、四級が二万百五千二百八十円、五級が二万二百二十四円、こういうぐあいに推定で一つの基準をつくつている。それで今度課税の場合に、その果樹組合に対して二級の三万九千五百円を標準としたらしいのです。それを果樹組合に、お前の方の作付反別をかけると四千二百五十万円になるこれをひとつ組合員にうまく話合つて一つのあれをこしらえてくれということを現に言うているのであります。そうすると組合では、そうでございますか、それはどうも私の方でひとつ責任を持つてやりましよう、あなたの方ですつかりお調べになつた上の御指定の金額ですからというので、今度は組合員を一人々々呼んで、お前のところは作付反別がこれだけあるんだから、お前はこれだけ、うちはこれだけと一々それをやつてみた。たいへんなことになつてしまつて、組合が今崩壊寸前にあるようなわけであります。それから私に見てくれというので、きのう実は行つてこれを調べて来ました。そうすると、どうも今の国税庁長官お話と大分ここに違いが生じて来るのでありまして、やはり推定に基いた一つの基準を示すならば、五つに階級をわけたなら、常識的にいつてもなぜ一、二、三、四、五の三番目を標準として、やらなかつたということを考えるのです。それが常識的だと私は思う。それで反別にかけ合せてこれをうまくあんばいして来ればぴつたり行つたのに、さばを読んで二級を持つて行く、こういうようなことを平気でやつているのです。だから私はここに政治的解決の方向がありはしないか、というようなことも考えるのです。長官は、標準率は固定したものではないとおつしやるのだから、それなら私が中へ入つて、多少政治的の解決ができるということをおつしやるならば、きようでも解決してお見せするのですが、あくまでそれをがんばるつもりかどうか。そういつたようなやり方を現にやつておる事実を長官はどう思うか。この点をひとつお聞きしたいと思います。
  83. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 ただいま果樹についての御質問があつたのでありますが、果樹の所得を算定することは、これまた非常に困難な仕事でございます。御承知の通り畑によつてなり方も違いますし、また品質も相当違うのであります。しかしながら大体その村においてはどの程度の品質のものができるか、また土質もそう差がございませんから、どの程度の数量が得られるかということは、抜き検査によつてわれわれは大体調査をいたしておるのでございます。従つて個々の方についての調査につきましては、ただいまのお話のように村の協同組合の方なり、または町村当局の方なりの非常に緊密な御力を願つておる次第でありますが、そういう場合にはたしてそれをこの二の等級にするか——果樹によりましては、もつと大きな刻み方をしておる部分も相当あるのであります。非常に有名な非常にいいものができるところと、昔から災害の多いような、ほんとうに品質の悪いものができるところとでは、格段の幅がございますので、その場合は相当大幅にしておるのでございますが、それを具体的に認定する場合に、これは五階級あるのだから、どこでも三番目が一番いいのだというふうには、なかなか行きにくいのでありまして、やはりそれはできるものの品質なり、数量なり、実質なりを、私どもの方も具体的に調べまして、第二等級がいいならば、第二等級の程度がほんとうにこの土地の実情に適するのではないかというような見解でもつて、おそらくやつておるのではないかと考えます。しかしながら、その点の詳しいことにつきましては、具体的な問題としてなお御意見を伺いまして、実情適するようにいたしたいと思います。
  84. 佐久間徹

    ○佐久間委員 それはよくわかるのです。長官の言われる通り、何も必ずしも二級を持つて来たから不適格であるということを、私は言つているのじやないのです。とにかく五つの段階にわけたのだから、常識的にいえばちようどそのまん中をとるのがいい。いずれも推定なんでございますから、そういうぐあいに行つた方が常識的であろうということを、私は言つているのであります。従つて推定でございますから、もうこれでぴつたりその通りだということは、だれも言い得ないわけであります。それで納める人とそれからとる人との間には、心の気持というものも大分違つて来るだろうと思う。その点もよくわかるわけです。しかし税務署としても、確信があつてこの四千二百五十万円をとるのだということを信じておるか。これは神様が見ても間違いないのだという数字じやないと私は思う。でございますから相手の組合も、あなたのおつしやる通り事情はよく知つているのだ。あの畑は幾らとれる、品質は大体どうであるというので割当てているのですから、まあやや近いところが出て来るのじやないかと思うのです。そこに多少の開きがあるのだから、税務署の方もあくまでこれをがんばり通すというような、けんもほろろのあいさつでがんばるというやり方をしないで、ちよつと行つて色をつけて、それじやあ妥協するという気持を見せれば、それでぴつたり解決するのです。それなのにこれは法律以外には動かすことができないなんという、偉そうなことを言つてしまうから、どうにも壁に突き当つてしまつてもさもさしてしまう。こういうわけで初めから推定でやつているのだから、そこには水増しもあるだろうと思う。そこを率直に話合つて解決の方法を立てたい、こういうぐあいに私ども考えておるものだから、そこを言つたのですが、実情を調べなければおわかりにならないだろうから、あまり言つたつてしようがないと思います。
  85. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 佐久間さんもよく御存じだと存じますが、従来の税務行政におけるところの一番の弊害は、妥協的なことが行われたり、または団体交渉的なことを行うことによつて個々の納税者にひがみというかひずみを起させるというようなことで、これが税務行政における大きな欠点だつたと考えるのであります。従つて、さばを読むとか山をかけるということは、税務官吏としては最も愼むべきことであると思います。でありますから、私どもはそういうことについては特に心をいたしまして、絶対にそういうふうな態度をとらないようにということを、注意いたしておるのであります。しかしてある程度の集団地でありましたならば、そのうちの二、三の例については必ず実際の調査をいたしまして、そうして各地域間の権衡と申しますか、品質の等級と申しますか、そういうような点を絶えずにらみ合せて、相当愼重な態度をとつてつておるつもりであります。しかしながら地域によりましては、実情に合わない点も起り得るかと思いますから、そういう点は十分に事情をお聞きいたしまして、実情に合うようにいたしたいと考えます。
  86. 佐久間徹

    ○佐久間委員 それならば個々におやりになつたらよろしいと思うのです。組合にそういうぐあいに持つて来たというからには、その実情をよく知つておる組合を利用して、税金の公正を期そうとするお考えであるから、組合にそういうお話をしたのでしよう。従いまして、税務署がほんとうに確実性を、プロバビリティをはつきり出してやることができないから、そういう相談をしてやるのですから、やはり組合の立場もよく考えて、これが立つて行くように持つて行かなければうそだと思うのであります。利用するときだけうまく利用して、あとはおれの方のかつてだというような行き方は、少くとも政治面の暗い半面ではないかと思うのであります。そんなことをここでとやかく言つてもしようがございませんけれども、利用して行くということはいいことなんですから、どしどし利用してもらいたい。しかしその反面には、その立場々々もある程度考えてやり、この組合の立つて行くような方法考えてやらないと、つつぱなしただけで行くというようなやり方は、あまり冷醜過ぎはしないかということを申し上げているわけです。私の質問はこの程度にいたしておきます。
  87. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 御承知の通り、特に農業関係つきましては、地元のいろいろの団体の方々の御意見を十分に伺うということが、実情に適するゆえんでございますから、そういうふうにお願いをいたしておりまするし、また各地方とも最近は十分な御協力をいただいておるのであります。従いまして、私どもに、私どもの見解のみが正しいのだというような、思い上つた気持で事を判断する向きがあるとすれば、その態度はあまりよろしくないというふうに考まえすから、そういう点は土地の方々の御意見も十分に伺つて、そうして組合が成り立つかどうかということよりも、むしろ実情に合つているかどうかということに重点を置いて、実情に合いさえすれば十分に御了解を得て、十分に衷心からの御協力を得られるもので謝るというような観点のもとに、仕事をいたすつもりでございます。
  88. 佐藤重遠

  89. 久保田鶴松

    ○久保田委員 両長官がおられますので、国民所得の標準の問題がいろいろ今論議されておりますから、それに関連して私はお伺いしたいと思うのであります。  この国民所得の標準の問題の基本的な点を伺いたいと思うのですが、この間高橋長官は、業者に対しては売掛帳と仕入帳を中心として四割七分を、今度は昨年よりも多く申告をしてもらわなければならぬ、というようなことをお話になりました。そこで基本的な問題というのは、昨年度においては電気の関係等におきまして、非常に所得が少かつた。その国民所得が昨年よりも本年の方が多いということの見方ですね、これは根本的には安本関係等において問題があるのでございますが、国民所得が五兆三百億という大体線を出されております。その線に基いての国税局におきましての両長官の御意見、いろいろ今問題になつております本年度の標準の問題ですが、これはそのときどういうようなお話合いであつたかということを、まず第一に伺いたいと思うのです。
  90. 平田敬一郎

    平田政府委員 国民所得の算定の問題と、今の個別的な納税者所得を査定する場合の所得標準率の問題と、関係は確かにあると思いますが、実際問題としましては、相当かけ離れた問題と申しますか、角度が違つておりまして、両者相関連しましてお答えしますことは、なかなかむずかしいのでございますが、どういう御趣旨でございますか。大体国民所得におきましては、それぞれ営業所得者の場合もある程度サンプル調査といたしまして、これは商工会議所を通じて資料をつくつておりますが、標準的な営業者につきまして、一種の基準的な調査をやつて、それをもとにしまして全体の推計をいたしておるのでございます。そういたしまして今わかつておりますのは、二十五年度の実績でありまして、それをもとにいたしまして、二十六年度、七年度分は、それぞれ生産、物価、所得率、雇用等の変動状況を見て、国民所得を推定いたしておるわけでございます。従いましてこの所得の伸びを見る場合の生産、物価、雇用それから所得率、こういう問題になりますと、私どもが予算で見ておりまする課税所得の増減の見方、これと非常に緊密な関係がございまして、私どももできるだけ国民所得の見方と歩調を合せまして、相互に意見を交換して、適正な算定をするということに努めておるわけでございます。ただ所得の標準率の問題になりますと、もつと非常に具体的な卑近な問題になりまして、ちよつとその問題とすぐ結びつけてお話申し上げるものとしましては、少し問題がまた違うところが多いのじやないかというふうに考えられますので、何かあるいは具体的にもう少し御質問がございますれば、お答えしてもよろしいと思いますが、一般的にはそういうことかと思います。
  91. 久保田鶴松

    ○久保田委員 私の今伺いましたのは、それは平田さんのおつしやいましたような点もございまするが、基本的な問題といたしまして、国民所得かどれだけあつたかということからして、その予算に基きましての税のとり方ということ、これがやはり関連している問題だと思います。そこでこの間長官が四割七分という線を出されましたが、どなたの質問でございましたか、各末端の税務署においては、昨年よりも本年は五割よけい申告してもらわなければいけないのだ、これは親の心子知らずという意味からお話しておられましたが、しかし税務署においては、これは五割ということをおつしやつております。それは長官も四割七分という線を出しております。この国民所得ということになりますと、全体についてでございますが、しかし今の所得の四割七分という線を出されました点に対する——これは今所得標準の問題が問題になつておりますので、そこでこの四割七分という線を出されたその根本的な問題を、私伺つているわけでございますが、その点……。
  92. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 この予算の見積りにつきましては、二十七年度の予算につきましては、二十七年度の国民所得を基本にして、それぞれ推算をいたしておるのでございますが、私ども税務行政を実行するにあたりましては、予算がどの程度である、従つてこの予算だけはどうしても徴收しなければいかぬのだというふうには考えておりません。むしろ税法に、いかにしたら最も忠実にこれを実施できるかという点に、もつばら主眼を置いておる次第であります。しこうして先般の会議におきまして、四割七分だけ所得が増加しておるということを申し上げましたのは、今年の一月二十日までに集まつた各局におけるところの実額調査の結果を集計してみますと——これは範囲をはつきり申し上げておかぬといかぬと思いますが、二十五年度の申告所得税納税義務者であつた者が、二十六年度も申告所得税納税義務者であつた。つまり二十五年度と二十六年度を比較できる人のみについて、集計をしてみたのであります。そうしてみますと、その人の全国平均の所得の伸びのぐあいが、四割七分という結果になつて出て来たという事実を、報告申し上げたのであります。従つてこの四割七分という数字が出たから、これで押さなければいかぬのだ、またこれだけとらなければいかぬのだというような考え方は、もちろん持つておりません。のみならず、この四割七分というのは全国の平均でございまして、個々の人について申しますと、倍以上も出ておるような方もございますし、あるいは二十五年度よりは減少しておるという方もあるのでございます。それらの方々の実額を調査した上の全部の平均をとつてみると四割七分になる、こういうふうに私は申し上げた次第であります。
  93. 久保田鶴松

    ○久保田委員 それではこの間はまだ農業の方はわからないというようなお話でございましたが、今は農業の方もおわかりでございましようか。
  94. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 農業については、実はまだ数字を集めてないのでございまして、確実な返事を申し上げることができないことを遺憾に存じます。
  95. 久保田鶴松

    ○久保田委員 それではまだ高橋長官の方では、農業の方については何もお考えはないわけでございますか。
  96. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 営業に関しましては、実額調査の結果を全部——非常に心配になるものでございますから、一応とつてみたのでありますから、ここに御報告できるのでありますが、農業につきましては、先ほどから説明申し上げます通り、各町村ごとに一つの標準率を設けまして、これを各納税者について計算をいたしまして所得を算定し、その結果の数字を事後になつて集めるということにいたしておるのであります。しこうしてたとえば米価をどう見るとか、または経費の見方をどうするかというふうな点につきましては、十分本庁として統制をとつておりますが、それ以外の点については実は統制をとつておりませんし、従つて大体どの程度になるというはつきりした事柄については、見通しを立ててない実情でございます。
  97. 高田富之

    ○高田(富)委員 先ほど医師保險收入に対しまする三〇%の利益を見るという問題につきまして、奥村委員その他各委員からいろいろ質問があり、それに対して御返答がありましたが、これについてぜひ確かめておきたいと思いますことを、関連して一、二お伺いしてみたいと思います。  先ほどの御答弁によりますと、今度この保險收入についてだけ標準率を四割も下げた。このことは何か今まで保險收入についての、一般に医師收入についての必要経費の見方が辛過ぎた、間違つておつたということに気づいて、それをより正しく是正されたのだというふうな意味のお答があつたと思うのでありますが、そういうふうに今まで間違つてつて、相当過電な税金をかけてしまつたということは、それだけでも相当大きな失態が暴露されたことになると私は思うのですが、そういうふうに私には受取れたので、この点を念のためにもう一度お答え願つておきたいと思います。
  98. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 税法を実行する際におきまして、その経費をいかに見るかということは、非常にむずかしい問題であります。従つて先ほども川野さんの御質問に対しまして、お答え申し上げたのでありますが、たとえば医者の場合におきまして、学界に出る経費がはたしてその人の経費になるかどうか、理論を申せば、あるいは経費でないという見方が妥当であるという見解も成り立ちますし、またある程度は経費として見るのが当然だ、という見方も成り立つのでございます。私は絶えずどれがほんとうの真相に近いか、医学界というものは日進月歩であり、それぞれそのときの状態に追随し得るというところまでは認めるのが、妥当であろうというふうに考えまするからして、ある程度、年々誤つた点は直して行きたいというふうに考えておりますが、これはもとより真相に近づいて行くという一つの過程でありまして、必ずしも以前の解釈が完全に誤つておるといつた考え方は、いたしておらないのであります。
  99. 高田富之

    ○高田(富)委員 そうしますと、より正しい方向へだんだん進歩をして来たという意味に解すればいいということでありますが、これもさつきちよつと質問があつたようですが、医者全体の利益の計算等についても、より正しい方向へ発展したということはわかります。特に保險收入についてだけの部分が、しかも大幅にそういうふうに減税措置がとられなければならぬほど、保險收入の部面だけに、特に必要に追られたものがあつたということが、発見されたのであるということを理解するのは、ちよつとおかしいのであります。それはどういうふうにお考えになりますか。
  100. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 御承知の通り社会保險診療につきまして、一点單価がきまりましたのは相当以前でございます。そうして一般の物価が上つて参りましたのは、昭和二十五年の後半期からであります。しこうして先般一点單価の改正があつたのでございますが、これも二十六年の收入には、ほとんど影響がない程度でございます。一方において薬価その他物価が非常に上つておりますので、従つて社会保險診療に相当大きく響いたということが実情でございます。なお先ほども繰返し説明申し上げておりました通り、一人の医師の全体としての経費の割合という点から見ますると、そう大した差はないと思うのでありますが、ただ自由診療と社会診療とその双方を、特に間接的な経費を区分いたしまする方法というものが、漸次調査してみました結果、妥当な線に向いて参りました結果といたしまして、社会診療においては所得の率が少くなつて来た、言いかえれば経費の率が大きくなつたというふうに、私どもは見ておる次第でございます。
  101. 高田富之

    ○高田(富)委員 これははつきり言いますと、今度一点單価の問題があの通り大きな全国的な問題になりまして、社会保險の危機が叫ばれ、場合によつては国庫負担によつて單価の増額をやらなければならぬだろうというような状態であつた。これを放置すれば社会保險そのものが崩壊するかもしれないというところまで行きまして、全国のお医者さんがみな健康保險医を辞職するというような大運動になつたわけです。しかしこの目的はあくまで公正な診療をするために、單価を公正に改めて、そして良心的な治療が安んじてできるようにしたいというところにあつたと思うのです。ところがたまたまこの方は国庫負担をやれないために、まあ若干の單価の引上げ——問題にならない程度の引上げをやりまして、国庫負担を避けるという方向に出た。その埋合せとして税金の方でめんどう見ましようという約束が、全国のお医者さんの協議会におきまする決議と、御当局との折衝において了解点に達しまして、その結果こういうふうな減税措置が講ぜられたということは、天下公知の事実であつて、何ら一点の疑いを入れる余地はないと私は確信する。だからそのことによつて、それでは單価を上げるかわりに税金を下げましようというので、税金を今までの見方を二割も四割も大幅に引下げてやるということを、あえてやらざるを得なかつた。しかもそれをただそういう理由で下げますというのでははなはだ困る。そこで合理的にこれを説明すべく、あとから考えてみましたところが、やはり必要経費の見方が相当辛過ぎたということを発見するに至つた。これによつて合理的に説明する根拠ができたということでは——私はそういうふうに受取りますが、そういうことではあとの言つたことと全部矛盾してしまう。たとえば先ほどの奧村委員質問に対しましては、標準率などというものはそんなに重んじなくてもよいことです。そういうことはほんの参考程度で、何ら問題がありませんと言つたかと思うと、三〇%までは、医者が申告すれば正直なものと認めるというようなことを言つておられる。まつたくこれは矛盾撞着しておつて、私はそれでは納得させることはできないと思う。要するにここでお聞きしておきたいことは、今後といえども当局はこれで大丈夫だ、これでやつて行けると思つておる税のかけ方が、たまたま何らかの機会に、これはもうとんでもないことだというように、大きく反省を促すような問題にぶつかりましたときに、その問題について当局が反省して行つて、だんだんに重税を、その部分々々というふうに改めて行く可能性がある。自然に間違つたことが発見されるのではなくして、やはり誤りを発見させるための正当な職業なり業界なりの意見というものが、当局に対しまして不合理な点を強く反省せしめたということが、この結果を生んだと思うのです。もちろんまだこれが正しいとは思いません。しかしながらそういう方向へ進んだ契機を與えたもりは、やはりそこにあつたということをお認めにならなければならぬと思うのです。それをお認めになるならば、今後といえども各種の業界等におきまして、お医者さんだけが飛び離れて重税をこうむつてつて、飛び離れて苦しい、お医者さんがつぶれてしまうという特殊なものであるかどうかということは、これはもう一般にわかつておる通りであります。そうではなくて全体がこの重税の下では苦しんでおる。これは問題ないと思う。ですからあらゆる業界、いろいろな方面から、今後課税が非常に実態に沿わないで重いというときには、もつとそういうものについて真劍に考慮して、採用すべき意見であるならば率直に採用して、自分たちがやつておる標準率が必ずしも適当しておらぬかもしれぬという謙虚な態度で、これから納税者の要望を聞きたいという御意向が、このことによつて私は当局に生れたのではないかというふうに考える。その点そういうふうなお考えを持つに至つたかどうかということを、ぜひ御答弁願いたい。
  102. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 税務行政の適当な運営と申すものは非常に重大な問題でございまして、またそうなまやさしい問題ではございません。いくら努めてもこれは努め足りないと、私どもは非常にシーリアスに考えておる問題であります。従つて常に謙虚に私どもも反省いたしまして、絶えずいかにしたら実態に即し得るかということを、研究して行くつもりであります。また過去においてもそうして参つたつもりであります。しかしてただいま一点單価の値上げができないから、やむを得ず税にしわ寄せしたというお話がございましたが、私どもは税務当局としてそういうふうには考えておりません。たまたま今年は年度当初からこの問題を非常に大きく取上げまして、愼重なる検討をしました結果が、ようやく年末近くになつてその結論が出て来た。その結論がたまたまああいうふうな数字になつて現われたというふうに、解釈している次第でございます。
  103. 高田富之

    ○高田(富)委員 それではもう一つで終ります。そういうふうな検討を始められる契機になつたものは、やつぱり全国の保險医、お医者さんのあの血の出るような叫びから、税務当局者をしてそれに対して特別に検討してみようという契機を與えたというふうに、私は理解いたします。  そこで先ほど来団体交渉はやらぬとか、腰だめはやらぬということを申されるのであります。むろんそういう腰だめでやられたのではたまりませんが、そういうことのないようにしていただきませんと、税金のかけ方が非常にむずかしいし、先ほどあなたのおつしやつた通り、やはりそういうやり方というものは、納税者の実際の気持を反映しないと、正しい線におちつけることはできないと思うのです。今度の場合は、団体交渉としては最も典型的なものであつて、お医者さんが全国的にあれだけ堂々と大蔵大臣と団体交渉をやつたことは、納税者の適正課税のための交渉としましては、おそらく私は最もりつぱな交渉だつたと思うのです。従つてその交渉が基礎になつてそういうふうに一歩々々課税の方法が進歩して行くということは非常に喜ぶべきことであつて、しやくし定規に団体交渉はいかぬということではなしに、やはりそこから正しいものをくみとる契機をつかむという意味において、今後ともこの経験を生かされることが私はぜひとも必要だと思います。その点についてもしお考えがあれば、重ねてお伺いして、私の質問を終りたいと思います。
  104. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 社会保險診療についての所得の調査について、年度当初から重点を置いたゆえんは、御承知の通りたとえば電気であるとか、または郵便であるとか、鉄道運賃であるとか、その他の諸物価がすべてあの当時値上げをされたのであります。ところが、社会保險診療の一点單価についてはそのまますえ置きになつていた。そういうような面からいたしまして、どうしてもこれは相当愼重に扱つて真相をきわめる必要がある。言いかえれば、他の業体と違つて、相当動きがあるはずのものだから調査を要する、そういうふうに考えまして調査いたした次第であります。しこうして団体交渉というふうな方法によつて税の決定をすることは、嚴に避くべきであるという考え方については、今日といえどもちつともかわつていないことをお答え申し上げます。
  105. 奧村又十郎

    ○奧村委員 本日は所得標準率の問題がいろいろ論議されたのでありますが、まだどうもはつきりした長官の御信念が承れないと思うので、重ねて締めくくりをしてお尋ねしておきたいと思います。  昨年ごろまでは高橋長官は、できればすべての納税者に対して実額調査をもつて適正な課税をして行きたい、こういうことを言うておられた。年一年と実額調査のパーセンテージをふやすという話であつたが、今度はそうではなしに、所得の標準率をもつてつて行こう。実際においては所得標準率でもつて運営されているように私は見ております。というのは、いかに実額調査をなさろうとしても、帳簿のないところでは、これはおそらく税務署の方でもどうにも方法がないと思う。従つて実額調査もある程度のものである。そうすれば、いやおうなしに所得標準率をもつて適正を期そう。そうすると、所得標準率というものを最も妥当なものにして行くということに努力するのが、かんじんであろうと思う。そこで長官はどつちに重点を置いて行かれようとするのか。社会保險診療收入の場合は、三〇%で行けば実額調査はとても手がまわらぬから、それで行くんじやという答弁で、さつき高田君からつつ込まれたのはそこです。それでまた所得標準率はどうなつているのかというと、いやこれにはあまり基準を置いておらぬので、というようなことで、一体国税庁の今度の税務執行はどういうふうに持つて行かれるのか。国税庁長官は今まで科学的、客観的に徹底した資料をもつて合理的な所得を把握するのだ、こう言われるが、私どもとしてはまずこの所得標準率を最も合理的にはじき出して、これをうまく運営して行くのが、日本の税制として最も適当じやないか、こう思うのだが、それに邁進して行くという御信念は今までの答弁では承れない。それなら実額調査で行けるのかというと、これもむろん行くなら行くでよろしいが、その行くという御信念も承つておらぬ。その点今後の方針をはつきり承りたい。
  106. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 税務行政の実態については、奥村さんもよく御承知でございますから、私から申し上げるまでもないのでありますが、売上げ金額または收入金額に対する所得標準率の問題が、相当重要な意義を持つておるということは、もちろん否定するのではございません。私どもとしては、收入金額なり売上げ金額がはつきりと帳簿その他によつてつかめるということであれば、それは大部分成功しておるといつていいというのが実情であります。むしろそれをいかにしてつかむか。現実の帳簿からはつかめないのが相当多いのでありますが、それをいかにしてつかむかということが大切なことなんであります。従つてそういう場合において、先ほど来申し上げましたように、いろいろな資料から、たとえば営業所の面積であるとか、調査したときにおける在庫商品の数量であるとか、または従業員の数であるとか、その他いろいろな面から見て、それでその人の所得を大体推定して行くという方法を、講ぜざるを得ないのが実情でございます。従つて軍に所得標準率、いわゆる売上げ金額または收入金額に対する所得標準率のみを金科玉條として、これによつて一律にやるというようなことにすると、非常に実情に沿わないことが出て来ることは、奥村さんもよく御承知だと思います。しかして私どもの今後における方針といたしましては、何とかしてできるだけ青色申告を続けて行きたいというふうに、まず第一に考えます。この点に関しましては、今回も法律案について御審議願つておりますように、青色申告についての特典を、さらに相当大幅に今回は認めるような措置を講じております。従つて今回の、たとえば專従者の問題等に関しましては、相当大きな反響を呼んでおるようでございまして、今後私どもは青色申告が相当積極的によくなつて行くのじやないかと、非常な希望を持つておる次第であります。  それから実額調査に関しましても、これは二十五年度と二十六年度を比較しますと、その量においても質においても格段の進歩を見ておると、私どもは見ておるのでございます。しかしながらもちろん限られた税務官吏でもつて、全部を完全に調査することはとうていでき得べくもございませんし、また理想的な形から申しまして、そういうことをなすべきでもないじやないかというふうに考えるのであります。私どもは何とかして正直な納税者を一人でも多く見つけ出して、そして納税者に信頼して行くという方面を積極的にやつて行く。言いかえれば実額調査をする対象を選択する方法について、もつと科学的に研究して行きたい。その選択する方法としては、たとえば間接資料であるとか、その他各種のデータを集めておりますので、そういうふうなものを基準にして納税者の選択をして、そして最も漏れの多そうな、最も申告が信頼できぬと思われる方について、できるだけ徹底した実額調査をして行きたいと考えております。しかして実際上記帳漏れ、また申告についての知識もないような方々につきましては、できるだけ実情をお聞きして、税務署において指導して正しい申告をしてもらいたい、そういうふうに三段構えと申しますか、そういうふうなそれぞれの方途を講ずることによつて、年一年と漸次よくなつて行くのじやないかというふうに考えます。標準率の問題ももちろん軽視するのではございません。私どもも相当に科学的なやり方の所得計算一つのプロセスといたしまして、やはりこれも今後さらに研究いたしまして、どうしたら自分の見方が正しく行けるかという一つの基本的な材料として、そういうものをとりたいというふうに考えますが、しかしそれのみにたよることは非常に危險であるというふうに、考えておる次第であります。
  107. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうもただいまの御答弁は、高橋長官の主観的なお心構えを言われたように思う。国税庁の、また国税局の末端の税務執行においては、そういうふうじやないと私は思います。すなわちことしの二月の確定申告におけるお知らせは、いかにしてやつておられるか。これはほとんど大部分所得標準率から割出して、お知らせを出しておられるのじやないか。この点ひとつお尋ねいたします。
  108. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 繰返して申し上げますが、もしも收入金額なり売上げ金額が確実につかめて、しこうして、それに所得標準率だけを適用して行けばいいという状態であれば、これは私ども税務行政は実に楽だと思います。むしろその基本になるところの売上げ金額なり收入金額をどうして見るかという点に、最も大きな困難があるのが実情でございます。従つてどもは、むしろそういう点により大きな努力をいたしておるような次第でございます。
  109. 奧村又十郎

    ○奧村委員 社会保險料の收入に対して、三〇%をもつて所得とみなす。これは社会保險收入だけにそういことをなさつたのか。ほかの場合は全然そういうことをやられないのであるか。そこの点。またどうしてそれだけにそういう特殊な取扱いをなさつたのか。
  110. 高橋衛

    ○高橋(衛)政府委員 社会保險收入につきましては、奥村さん御承知の通り收入金額は完全にわかります。これは各人ことに政府が拂うのでございますから……。従つて一つの基本がはつきりいたしておりますから、それで全国で相当数のデータを集めて経費を算定してみれば、大体標準的な経費はどれだけかということで、それでもつて所得の実態に、ある程度適合し得るところの数字が得られると思うのでございます。ところがその他の業態につきましては、その基本そのものがなかなか把握しにくい。その基本の把握には非常に大きな努力を領倒しておるのが現状であります。従つてたとえばどうもその人の帳簿だけによつたところでは、売上げが五十万円しかない、しかしながら間接資料その他から推量すると、どうもこの五十万円は非常に少いよう患われる。一方いろいろな設備なりストックの状況その他から考えて、この売上げ自体が相当おかしい、従つて所得は大体この程度であるべきだというふうな、單に一つの基準ではなしに、四つ五つの基準をそれぞれ比較検討いたしまして、所得を推定して行くという方法をとらざるを得ないのが現状でございます。従つて所得標準率につきましても、これは全国的に統制はとうていとれません。従つて各局それぞれ非常に幅の広い範囲でそういうものを設けて、そして大体この程度くらいが出るのが普通の状態であるという、税務官吏の頭にあるところの常識として一つのものはつくつておりますが、これに必ずしもよれということは、いたしていないのが実情であります。
  111. 小山長規

    小山委員 大分横道にそれまして、関連質問で追われてしまいましたが、最後に一点主税局長伺つておきたいのは、勤労控除の限度の問題であります。勤労控除の限度は、たしか三万円だと思うのでありますが、これをきめたときには、官吏の給與ベースがたしか六千円見当のときではなかつたか、従つて現状に即して少し低過ぎはせぬかという感じがするのでありますが、今度の改正法案においては、この点に触れられていない。この問題は主税局ではお考えなつたかどうか。またかりにそれをある程度引上げられるとすると、相当の收入減を来すということからおやりになつたのか。その点をひと2勤労控除の限度の引上げをなぜ行わなかつたのかということだけ、伺つておきたいと思います。
  112. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題は私ども検討いたしたのでございますが、一つは相当の收入減になるということと、もう一つは、勤労控除につきましては、たとえば農業の勤労控除その他いろいろ問題はございますが、そういう問題もございますので、ひとり中以上の給與所得者についてこの際負担の軽減をはかるというようなことは、少しいかがであろうかということを考えまして、今回としましては、見合せた次第であります。将来勤労控除の問題をさらに検討します際におきましては、そういう問題ももちろん当然問題とし得べき事柄かと存じます。
  113. 小山長規

    小山委員 三万円を六万円にした場合には相当の減收になるか、計算がありますか。
  114. 平田敬一郎

    平田政府委員 相当の減收になりますが、あとで六万円にした場合の計算はお返事申し上げます。
  115. 佐藤重遠

    佐藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十日午前十時から開会いたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会