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1952-02-07 第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月七日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 佐藤 重遠君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 佐久間 徹君 理事 内藤 友明君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       高間 松吉君    夏堀源三郎君       三宅 則義君    武藤 嘉一君       宮腰 喜助君    深澤 義守君       久保田鶴松君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         国税庁長官   高橋  衛君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局特殊金         融課長)    有吉  正君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      原  純夫君         国民金融公庫総         裁       櫛田 光男君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月六日  石油関係関税免税措置延期に関する請願(清  水逸平紹介)(第四四五号)  同(角田幸吉紹介)(第四四六号)  同(藤枝泉介紹介)(第五二三号)  同外一件(田口長治郎紹介)(第五二四号)  清涼飲料及びし好飲料に対する物品税撤廃の請  願(大石ヨシエ紹介)(第四四七号)  同(林百郎君紹介)(第五二五号)  揮発油税軽減に関する請願高間松吉紹介)  (第四四八号)  同(山本猛夫紹介)(第四八三号)  宗教教化用楽器等に対する物品税撤廃請願(  飛嶋繁紹介)(第四四九号)  金庫等に対する物品税撤廃請願高間松吉君  紹介)(第四五〇号)  未復員者給與法療養期間延長特例患者に適  用等請願福田昌子紹介)(第五二八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣  提出第二三号)  税制改正に関する件     —————————————
  2. 小山長規

    小山委員長代理 これより会議を開きます。  国民金融公庫法の一部を改正する法律案議題とし、前回に引続き質疑を続行いたします。深澤義守君。
  3. 深澤義守

    深澤委員 それでは国民金融公庫についてお伺いしたいのであります。国民金融公庫は、私設の金融機関にあまり恵まれない中小企業、あるいはその他営業者救済のために、非常に大きな役割を果しているのでありますが、中小企業と申しましても、非常にこの内容は大小たくさんあるのであります。従つて政府の言う中小企業限度は、資本金五百万円以下が中小企業であるというような規定をしているようでありますが、しかし地方に参りますと、五百万円程度ではむしろもう大企業に属するのである。むしろ二十万、三十万という小さい経営あるいは個人経営が、この金融問題では非常に困つているのであります。そこでこの国民金融公庫資金運用の面におきまして、これを利用するものは、どうも中小企業関係でも割に上層のものが多いのではないか、むしろほんとうに救済の手を求めている下属の中小企業者は、国民金融公庫の恩恵に恵まれないという声が非常にあるようでありますが、一体現在運用しておりますところの公庫資金が、中小企業関係あるいは個人営業者関係で、どういう階層に使われているかというその区分がおわかりになりましたら、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  4. 櫛田光男

    櫛田説明員 お答え申し上げます。おつしやいます通りに、中小企業わくでありますが、私どもの方の貸付普通貸付につきましては、資本金五百万円までのお方に対して貸して、それ以上の方には貸さない、こういうことになつておりますが、実際上の貸付——お客さん方の資本金金額によつて分類した統計は今手元にございませんが、現実の貸付をいたした金額からこれを見てみますと、何と申しますか、中小企業と申しましても小口企業零細企業といつた方に重点を注がれているように存じております。また実際にそうやつているつもりであります。具体的に申しますと、全体の貸付の中で二十万円以下のものが六割五分見当に相なります。二十万円を越えて——現在は二百万円まで貸せるようになつているのでありますが、二十万円を越える貸付が三割五分見当ということになつておりまして、全体の貸付の一件当りの平均額が十数万円ということになつておりますので、何と申しましようか、先ほど申し上げましたように小口、小企業零細企業重点を置いている、こう申し上げてよろしいかと存じます。
  5. 深澤義守

    深澤委員 今までは百万円を限度として貸しているようでありますが、百万円という額で貸し付けた件数は、どのくらいでございましようか。
  6. 櫛田光男

    櫛田説明員 二十六年度の貸付の累計で申し上げますと、これは昭和二十六年の四月から十一月までの統計ができておりますが、その貸し付けました件数四万五千四百二十五件のうちで、八十万円を越えて百万円をでというのが八十五件。件数をパーセントにいたしますと〇・二%、こういう割合になつております。
  7. 深澤義守

    深澤委員 それで具体的に貸出しをする場合、申込票等を私は見たことがありますが、その中に租税の完納状態をやはり條件とするようであります。ところが最近において、金をどうしても金庫から借りなくちやならぬというような立場にある人は、税金等においてもかなり滞納があるのが通常になつております。そこである場合には税金を納めるために、公庫から金を借りるというようなこともあると思います。税金滞納しているものは借りられないというようなぐあいに、あの書類ではなつておるのでありますが、その点をひとつ……。
  8. 櫛田光男

    櫛田説明員 お答え申し上げます。税金滞納しておる場合に、それだけの理由でお貸出しを申し上げないということはございません。つまり税金をどの程度納めるお方であるか、またどの程度納めて来られたかということで、私どもといたしましては、そのお客さんの事業の御経営ぶりがわかるわけであります。また将来どういうぐあいになつて行くか、その重要な資料ではありますが、滞納があるからという、それだけの理由でお断りするということはございません。つまり滞納になつておりました場合には、その滞納の性質とか、金額とか、そういうふうなもので具体的に判断さしていただかなければならぬと思いますが、非常に大きな滞納額がある。これが、たとえば強制執行等にあいました場合には、その事業がつぶれてしまうというような、その事業自体から見まして、将来継続し、また大きくなつて行きますについて、非常に重荷になり過ぎるほど重荷になつている場合には、ちよつと困るのでありますが、何といいますか、滞納ちよつとしているからというようなことで、お断りするようなことはいたしておりません。
  9. 深澤義守

    深澤委員 もう一つお伺いしたいのでありますが、金融公庫の金を何とかして借りたいというのは、非常に経済事情がよくない人だと思います。よく官庁関係では、過去の実績とか、今申しましたような税金納入状態云々というようなことを、條件にするようでありますが、少くとも公庫の任務というのは、過去の実績でなしに、呼び水によつて経営者なり業者なりが、何とか復活できるというところに私は目的があると思う。従つて、過去の実績税金納入状態が基準になるのじやなしに、その金を注入することによつてそれが呼び水となつて、その企業経営が再び立ち上るところに、公庫資金の大きな使命があると思う。今までの様子を聞いてみますと、過去の実績を非常に詳細に調査され、あるいは税金滞納の問題が、非常に大きな條件になるというような審査の仕方をやられておるために、非常に商売に熱心であり、熱意を持つて何とか復興しようというものが、やはり借りられないという結果になつて来ると思う。総裁はこの国民金融公庫資金の性格、その使命というものは十分了解せられてはおりますが、末端は必ずしもそうではない。だからこの呼び水によつて復興できるという見通しがあるとするならば、過去の状況が悪くても、あるいは多少税金滞納があつたといたしましても、これによつてその業者が生きて行けるのだという見込みさえつけば、貸せるというような方針をとることこそ、真に公庫使命を果すことになるのじやないかと思うのですが、この点がどうも末端には十分に徹底していないようであります。その点を十分徹底させるように総裁の御配慮を願いたい、こう思うわけであります。
  10. 櫛田光男

    櫛田説明員 おつしやる通りでありまして、法律にも独立して事業を営む意思を有し、かつ適当な事業計画をお持ちの方、つまりおつしやいます通りに、私ども資金をお使いくだすつてりつぱに立ち直る、またりつぱに発展して行けるという見込みのある方に、お使い願うという建前であります。過去の実績とか——その中に納税の問題が入りますが、それは要するに将来性と申しますか、りつぱに立ち直つて行けるかどうかということを、判断いたします場合の材料と申しますか、その程度であります。何と申しましても過去の実績をある程度拝見しますことが、大方の手腕なり力量なり事業経営あり方が、よくわかる材料になるものでありますから、またそのほかによるべき資料のない場合がございますので、自然そういうことになると思いますが、おつしやる通り将来性ということが中心でありますから、そういうことで今後とも具体的に第一線の職員やり方に気をつけまして、その方向に持つて行くように努力いたしたいと思います。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は総裁にお伺いいたしたいと思います。  公庫総裁はまことに親切をもつて第一とせられ、よく部下を監督しておられるわけでありますが、ややもいたしますると公庫総裁気持を、末端の方でははき違えるわけではありませんけれども、多少考え方の浸透せぬ点があるわけであります。私はその点につきまして、昨年末から本年にかけましての状態について、少しくお伺いしたいと思うのです。たとえて申しますと、昨年の十二月十日ころに出しました申請書類につきまして、もちろん年末年始のことで休業もあつたと思いますが、一月二十日に呼出しがあつたわけであります。一箇月以内に呼出しをいただいて、あと一箇月以内に必ずイエスかノーを決定していただく、二箇月以内には必ず解決していただくようにお願いいたしたいのでありますが、総裁の方ではどういうふうにお考えでありますか、承りたいと思います。
  12. 櫛田光男

    櫛田説明員 お答え申し上げます。できるだけ早く決定いたしますように努力しておるのでありますが、昨年末はことのほか金詰まり状況と申しますか、お客さまがたいへん殺到と申しますか、殺人的な申込みであつたと申し上げてさしつかえないと存じます。限りある人手でやつておるのでありますから、どうしても延び延びになりまして、お恥かしいことですが、現在東京だけで二千三百件の未決のものを有するような状態に相なつております。全体を動員いたしましてできる限り早くこれを処理しますように、今後とも努力を重ねたいと思つておりますが、一時は大体一箇月半くらいで、全部処理するような状況までこぎ着けたのであります。いろいろ御迷惑をかけて相済まぬと思いますが、しばらくの間ごしんぼうを願いたいと思います。
  13. 三宅則義

    三宅(則)委員 恐縮でございますが、念のために一応総裁に申し上げておきますから、よくお話を願いたいと思います。  新川支所におきましては、もちろんほかにもたくさんあるわけでありますが、受付の名前は聞きませんけれども、どの方面できようは開店するかと聞きましたところ、もちろん寒いときでございますから、その小使か用人でございましよう、ストーブ石炭を入れながら、どつちですか、というようなあいまいな返事をしているわけです。もちろん私は代議士という名刺を出さなかつたわけでありますが、どうかみんなに、聞いた場合におきましては、なるべく親切にやるように、総裁気持そのままを移してもらいたい。ちようど警察へ行つたようなふうです。罪人でも何でもないものが——国民一般大衆が行きました場合には、それは二階ですよとか三階ですよというふうに、親切にやらなければならないにかかわらず、ストーブ石炭を入れながら、あちらです、こちらですというようなことは——これは末端のことでございますけれども、どうかそういうとを少くするようにお願いしたい、こう思うのです。そのいわく因縁は、先日も深澤委員からお尋ねがあつたと思いますが、公務員になつております関係上、月給が安いのです。ほかの金融機関のものは、倍もしくはそれに近いような給料であるにかかわりませず、国民金融公庫の方は、月給が安いために、あるいは職員に至りますまで官庁らしい気分があるのではないか。私はほかの銀行を見ておりまするが、銀行の方は下の人にいたしましても非常に親切の度が深い。あるいは受付にいたしましても、小使にいたしましても、もつと親切にしてもらいたいと思います。もちろん今後われわれといたしましては、公務員月給を上げなければならぬという考えは持つておるわけでありまするが、そういう点を考慮に入れまして、月給が安いからとはおつしやらぬでありましようけれども、もう少し訓練をして、金融公庫職員というものは、普通の一般民間金融機関職員のように、親切さを持つことが緊要欠くべからざることであると思いまするが、総裁はどう考えておりまするか、承りたい。
  14. 櫛田光男

    櫛田説明員 たいへんおしかりをこうむりまして、恐縮千万に存ずる次第であります。今後とも職員訓練と申しますか、親切第一に、どこの金融機関よりも一番公庫が親切だと言われるようなところにまで、持つて行きたいと思いまして、いろいろ苦心いたしておりますが、何と申しましても人手が足りませんで、仕事が忙しい関係がありますものですから、午後になりますと、連日のことでありますので、疲れが出て参りまして、つい笑顔でお話申し上げるようなこともできなくなるという、生理現象がございますわけであります。そこらへんもどうぞおくみとりくださいまして、できる限り訓練いたしますから、ひとつごかんべんを願いたいと思います。
  15. 三宅則義

    三宅(則)委員 時間の関係上、もう一点だけ伺います。国民金融公庫出資は、毎年々々たとえば二十億円とか三十億円とかいうふうに、増資といいまするか、ふやして行くわけでありまするが、この際思い切つてもうちよつとふやすということはできないでしようか。われわれといたしましては、百億円に今度なるわけでありまするが、こればかりでは足らぬと考えます。当局といたしましてはもちろん多い方がけつこうでございまするから、もう少し画期的に百二十億、三十億というくらいに、一ぺんにうんとふやしてもらつた方が、国民大衆の要望に沿うと思いますが、総裁はどう考えておるか承りたいと思います。総裁でまずければ、政府にお伺いいたします。
  16. 有吉正

    有吉説明員 公庫出資につきましては、年々逐次増加して参つた次第であります。資金量三十億増を今度お願いいたしまして、百億に相なる次第でございます。この資金量をもちましても、現在の公庫に対しまするところの資金の需要を十分に満たすことができないということは、はなはだ私ども遺憾に存じておる次第でございます。今後資金量の点につきましても、さらに増大の措置を講じてみたい、できるだけの努力をしてみたい、かように存じておる次第でございますが、何分にも財政規模と申しますか、政府が全体の財政資金を産業の投資資金に投入するにあたりましては、一定のわくがございますので、その間の配分を考えまして、何分中小金融部面財政資金を扱つておるものとして、国民金融公庫は現在唯一のものでありますので、これに対しましてできるだけの財政資金の投入をはかつて、今後さらに増大して参りたいと考えておる次第であります。     —————————————
  17. 小山長規

    小山委員長代理 次にそれでは、これから税制改正に関する件を議題といたしまして、質疑を行うことにいたします。奧村又十郎君。
  18. 奧村又十郎

    奧村委員 私は今問題になつておる農村における匿名供出制度、あるいは株式の譲渡所得税、あるいは無記名定期預金制度などに関連して、なおまたこの二月確定申告に際しての国税庁の御方針などを、お尋ねしたいと思うのであります。  この匿名供出について課税をどうするか。本日の新聞に出ておりますのを見ますると、農林省としては、匿名供出については免税をするということを、はつきり発表しておりますが、これについてお尋ねしたい。ついては、これは農林当局にもここに来ていただいて農林大臣の明確なる答弁を承りたいと思います。いずれ同僚議員からも、この点は御質問があろうと思うのであります。まだ農林大臣はお見えになりませんので、まず二月確定申告の御方針について二、三承つて農林当局が見えてから、匿名供出の御方針について承つてみたいと思います。  二月確定申告でありますが、確定申告に対する国税庁の御方針としては、昨年と大してかわらぬのだ、こういう長官お話でありました。ところが昨年と比べますと、所得が全般的にふえており、平均すると大体所得が五割近くふえておるような模様であつて、この五割ふえておるということによつて、いわゆる納税者に対する税務署勧告が、昨年よりも平均五割程度多いんじやないか。これは同僚淺香議員からもこの前お話がありましたが、すでに昨年の年末において、大阪のある税務署においては、昨年よりも平均六割方所得をふやすのだから、納税者の方はその覚悟をしておいてもらいたい、こういうようなことを言うて歩いた税務署もあるようです。これは同僚議員からそういう話があつたのですが、とにかく昨年よりも五割方所得がふえておるということのもとに、税務署勧告が五割方ふえる。ところが今の日本経済の現状は、非常な金詰まりの上に、業種によつては非常に価格の暴落その他で欠損を負うておる。そういうのに対して相当の高額な勧告をなさつた場合に、なかなかこれは税務署との間に話合いがつかぬのではないかという不安が一つあります。昨年度においては、国税庁はなるべく更正決定をしないという建前のもとに、つまり納税者話合いによつて妥協をなるべく勧めた。従つて思い切つて昨年は更正決定減つたということは、われわれは承知しておる。従つて今年も更生決定をなるべくしないという建前のもとに勧告をするか、なるべく話合いのもとに、つまり納税者妥協して更正決定を減らそうという御方針なのか、その根本的な考え方をひとつお尋ねしたい。というのは、昨年は現に徴税額決定額において、わずかに九百億円程度であつた。これは予算と比べてもはなはだしく減額された。昨年のような行き方で行くならば、今年もまた予算通りには課税はできぬだろう。そうすればおのずから昨年とは、その勧告の態度について、幾分国税庁方針がかわるのじやないか、こういうことを考えるのでありますが、その点国税庁の御方針を承つておきたいと思います。
  19. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 今月の末が申告所得税確定申告の時期に相なつておるのでありまして、この確定申告の時期において、各納税者に正直な正確な申告をしていただきますように、ただいまそれぞれ申告の慫慂と申しますか、各納税者に対する指導というものに全力を盡しておる次第でございます。ただいま奥村さんから御指摘通り、昨年度におきましては、従前の大量の更正決定が行なわれることによりまして、その後に非常な紛争が続き、結局税務署と申しますか、政府納税者との間の対立感情が激化いたしまして、税務行政が非常に混乱をいたしておつたという事態を、何とかして改善をして行きたいという考え方からいたしまして、思い切つて方針の転換をし、何とかして更正決定の少い、納税者の納得を得るところのやり方をやつてみたいということで、昨年ああいうふうに税務署調査を基礎にいたしまして、各納税者税務署においでを願つて、また納税者の宅に臨んで、それぞれ税務署調査いたしましたところをお話いたし、そうして申告を出してもらつた次第でございます。しかしながら昨年の実績を静かに反省し、批判をしてみますると、結局更正決定をあまりに少くしようということに、努力を傾倒し過ぎた結果といたしまして、三月中はもちろんのこと、四月に入つてまでそういうふうな仕事が続行され、いわば結局粘つた者が得だというふうな、ある面においては納税者に悪い感じを與えた点もあつたかと思うのであります。また根本的に考えますると、税というものはどこまでも妥協であつてはならないのでありまして正確な所得が何であるかということを、相互努力して発見をするということが、一番正しいあり方であろうと考えておるのであります。その後に押問答をするとか交渉するとかいうようなことによつて妥協をする妥協課税に陥るということは、税務行政において、一番避くべき点であるというふうに考えるものであります。そういう点においても、中には遺憾な点があつたのでないかというふうに、私ども考え直しておる次第であります。従つて今年度の確定申告やり方につきましては、その根本的な方針としては、昨年と同じような心持で進みたい。すなわち政府納税者とは相互に信頼し合つて、何とかして納得して申告を出していただくというふうな方向で、あらゆる努力を拂つて行きたいとは考えますが、同時に、そういうふうな妥協課税的な弊害を除去して行くという面を、十分に考えながらやつて行きたいというふうに考えるものであります。ただいま御指摘通り、本年と昨年と比較してみますと、本年は、税務署調査によりますと、これは実際に調査しました一月二十日までの実績でありますが、昨年も申告をなし、本年も申告をする義務があると認められる人について、昨年の所得と本年の所得とを比較してみますと、営業につきましては総平均で大体四割七分の増加と相なつております。税額にいたしますと、さらに大きな増加に相なろうかと思うのであります。今日金詰まりその他の声も聞かれる際でありますし、それがため納税は容易なことではないとも考えるのであります。従つてこういうふうに所得が上昇しておる際に、しかもその所得について、十分に御協力を得られるかどうかという点については、私も必ずしも楽観はいたしておりません。しかしながら同時に二十六年度は、年度当初から税務職員が、この調査に非常な努力を傾倒することができたのであります。従つて調査の量並びに質、双方の面において、二十五年度とは比較にならぬ程度改善を見ておると、私どもは見ておるのであります。従いまして所得は上昇して参つておる。これは一般経済界自体がそうなのでありますが、所得が上昇し、今これだけの所得があるということについては、十分納税者の御了解を得ているのではないかというふうに考えております。納税の点につきましては、一時に納入するのが非常に困難な方が、ある程度あろうかと思うのであります。特に最近になりましてから、業態によりましては、相当深刻な金詰まりとか、または値下り等によつて、損失をこうむられた方もあろうかと思うのでありますが、それらの方々につきましては、昨年改正いたしました国税徴收法の七條の規定を適応いたすことによりまして、実情に即したように、納税にそう無理をしないというやり方で、十分に実情に合うような納め方をやつていただくというふうに、考えておる次第であります。
  20. 奧村又十郎

    奧村委員 昨年よりも所得が四割七分ふえておると言われるが、それはどういう調査に基いておられるのか。つまり物価の値上りによるのか、生産増加によるのか、物価生産の上昇だけでなしに、所得の把握がうまく行つたのかということでありますが、その四割七分所得がふえたということの調査やり方は、どういう調査をいたしたか。
  21. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 ただいまの御質問は、今年度の所得税調査につきまして、先ほど営業について大体四割七分程度、今までの調査実績においては増と相なつておるということを申し上げましたが、これは、その原因が物価にあるのか、生産の増にあるのか、それともいわゆる把握の増と申しますか、調査の充実による増にあるのかというお尋ねでありますが、その原因につきましては、私ども実は分析をいたしかねております。しかし御承知の通り生産が全般として、昨年に比較いたしまして非常に増加いたしております。それから物価の増の面は、それほど大きな影響はないと考えております。と申しますのは、昭和二十五年分の所得におきましては、朝鮮動乱が六月に起きまして、物価の急激なる上昇が下半期にあつたのであります。従つて物価高によるところの、いわゆる価高差益に当るところの所得が、二十五年度においてはむしろ多かつたのでありまして、それと比較して、二十六年度中におけるところの物価の上昇の割合は、二十五年ほどにばなかつたと私どもは見ておるのであります。従つて双方の比較におきましては、物価の上昇によるところの所得の増というものは、それほど大きくは見込まれないのじやないかというふうに考えております。しこうして調査の充実によるところの所得の増という面は、それはちよつと私どもにも見当はつきかねるのでありますが、今まで調査が行き届かなたかつために漏れておつたというものが、間接資料その他直接の調査等におきまして、漸次把握されて参りましたことは事実であります。
  22. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは私の尋ね方をかえてお尋ねします。つまり四割七分も所得がふえたということは、実額調査でその結果が出たのか、あるいは青色申告の帳簿によつて、そういうふうなものを出されたのか、あるいはその他の何か基準によられたのか、その資料をお尋ねしたい。
  23. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 青色申告につきましては、たしか十月ごろまでの集計は出しております。單純に青色申告をしておられる方の帳簿の数字を、そのままとつたものが出ております。これによりますと、あの当時たしか六割三分くらいの所得の増に相なつてつたかと思います。それからただいま四割七分と申し上げましたのは、青色申告を含めない税務署でいたしました実額調査のもののうち、前年も納税義務者であり、本年も納税義務者であるというものの前年の所得金額と、本年の所得金額との比較の率であります。
  24. 奧村又十郎

    奧村委員 それではもう一つお尋ねしますが、実額調査の結果によつて平均して四割七分、それで農業及び営業その他——営業でもいろいろありましようが、大体おも立つた事業所得増加の割合は、いろいろ違つておると思うが、その点明細に申していただきたい。
  25. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 ただいま申し上げました数字は営業についてのみであります。農業については各地とも相当ばらばらになつておりまして、たとえば災害等を受けまして非常な不作な地域もございますし、全国的な集計はまだいたしておりません。商業についてもその程度でまだ数字が集まつておりませんが、最も中心をなすところの営業についてのみ、実は最近までの数字を一応集計してみたものが、四割七分という数字に相なつておるのであります。しこうしてその営業のうちでいかなるものが多いか、各業種別のものも実は区分して整理をいたしておりません。非常にめんどうなことでございますが、ただ抽象的に言われますことは、たしか機械機具製造でありますとか、それからはつきり記憶いたしておりませんが、数種目相当好況なものがあつたかと考えております。
  26. 奧村又十郎

    奧村委員 それは非常に問題を含んでおると思います。たとえば機業、つまり絹、人絹などを取扱う営業、こういうのは昨年よりもずつと悪い。しかし平均して四割七分ということ。ところが末端税務署へ行きますと、長官の言われるように営業だけだとは言わずに、農業も何もすべてひつくるめて四、五割所得がふえておるのだ、従つて全般に四、五割ずつよけいに書いてもらいたい、こういうことを言うて来ておる。そこの御指導に少し齟齬を来していないかと思う。今私がつつ込んでお尋ねしたから長官は言われたけれども、つつ込んでお尋ねしてないと、先ほどのお答弁にように、單に平均して四割七分所得がふえておる。営業だけとは一言も言うておられぬ。そういうふうなことで指導なさると、これはかなり困つた点が出て来ると思います。そうしますと、営業の中でどの営業はどうというふうな内容はおわかりにならぬのか。おわかりにならずに單に漠然とことしは四、五割所得がふえておるから、各税務署は四、五割ずつよけいに申告を出させろというような指導で今やつておられるのか。その点をお尋ねします。
  27. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 私どもが四割とか五割とかいう数字を言います際には、非常に注意をいたしておるのであります。と申しますのは、ややもすると従来の惰性によりまして、ことしは何割増だというようなことによつて、一律的に行われる危險が多分にあるからであります。私どもは、所得というものは各人によつて違うのだ、従つて各人について調査をしました具体的な結果に基いて指導する、従つて今年は何割ということは絶対に言つてはいけないということは、かねがね注意いたしておるのであります。しからばなぜ私どもがこの四割七分という数字を出したかと申しますと、今年の所得税並びにその他の税の收入が、どの程度確保できるであろうかという目安を、いつも立てておりませんと、私ども仕事やり方についても、それぞれ相当の影響があるからであります。その意味で資料を收集したにすぎないのでありまして、四割七分を基礎にして一般納税者を指導するとかお勧めするという考えは、毛頭持つておりません。各業態、各納税者の方々について、あなたの所得を調べてみました結果、この程度調査に相なつておりますから、もしその点について御不審があれば、ひとつよくお伺いいたしまして、そして御納得の上で申告を出していただきたい、そういうふうつに指導しておる次第であります。
  28. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは農業の所得についてお伺いいたしますが、特に米作農家に対しては、一応全国的な標準率をはじき出されて、それによつて各局にまた標準率をお示しになつて、各局がまた各税務署に標準率を示しておられるやに承知しておるのでありますが、米作農家に対する標準率は、ことしはどの程度にはじいておられるか。
  29. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 農業につきましても、全国的な統一をとるという必要がありますので、絶えず各局のデータを提出せしめまして、そうして農業担当の職員を集めまして、それぞれ打合せをいたしております。本庁として統一いたします事柄は、どういうものは経費として、どの程度に見るべきものであるという点の統一をとつているにすぎぬのでありまして、標準率そのものは本庁としてつくることはございません。むしろもつぱら企業的に個々のデータから集計されたものが、全体として初めて本年は幾らになつたかということが出て来るのであります。しこうして本庁としてはまだその作業はいたしておりません。目下各局ともそれらの標準率を作成し、ほとんど各地区とも町村ごとに相なつておると思いますが、町村ごとの標準率にいたしまして、そうしてそれぞれこれを交渉して、各農業者の方々の御納得を得て申告をしていただく。そうしてそれが終りました後にそれを集計して、今年は幾らになつたかというふうな見当をつけておるのであります。従つてただいまのところ、本庁としてそれらの数字を全部本年度分として集めたものはないのであります。
  30. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは各業種別に一応の標準率といいますか、目安と申しますか、国税庁も局も税務署も目安をつけております。これは当然のことです。ところが目安に縛られて、勧告所得額でもつて強引に納税者と交渉しよう、こういうふうな行き方になりやすい。ここが私はことしの一番むずかしい問題じやないかと思うのであります。そこでこの標準率と申しますか目安と申しますか、これはあくまでも税務行政の内部の問題であつて納税者單位の問題はあくまでも税法によつて所得の実際の正確な金額によりまして行くべきであつて、標準率に対しては、納税者は税法上絶対に縛られるものじやないんだということは確かでなければならぬ。その点は税務官吏にも十分御示達がなければならぬが、ことしは特に税務官吏はそれに縛られはしないかということを、私は案ずるのであります。そこでいわゆる目安まで来なかつたならば、どうして税務署は目安で行こう、納税者はどうしてもそれは納められぬ、そこで更正決定ということになつて、相当摩擦が起ると私は思うのであります。この点はもう長官の答弁を要求する事柄でありませんが、ただ問題はそこにあるのじやないか、こういうふうに思うのであります。問題はそこにあるということについて、長官はどう考えておられますか。
  31. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 所得調査につきましては、特にただいま御指摘の標準率につきましては、業態によつて非常に意義を異にすると思うのであります。たとえば営業につきましては完全な帳簿がなくても、たとえば仕入れだけの記録は完全にある、または売上げだけの記録は完全にあるという方は、相当に多いのであります。また御本人がそういうような記録をお持ちにならなくて、問屋筋あるいは取引関係等の間接の資料によつて、大体そういう数字がつかめるというような場合非が常に多いのであります。ところが農業に関しましては、農家の方でほんとうの数字をはつきりつかみにくい、自家用米まで含めて、一体どの程度まで收穫があつたというふうなことを確実につかむということは、これは非常に困難であります。農家御自身において非常に困難な問題であります。従つて農業に関しましては、大部分の場合は結局標準率によつて、推定せざるを得ないというのが実情であります。従つて、御本人において確実な、またはある程度資料をお持ちになつてお話しくだされば、もちろんそれは真相を得るゆえんでありますから、それに従うのは当然でありますが、普通一般の場合においては、標準率によつてやろうということは、これはやむを得ざる筋であろうかと思うのであります。従つて商工業等の場合におきましては、標準率を年年違えておりますが、実はこれはほんとうの内部の目安でありますので、これについて年々検討はいたしておりますけれども、推定の資料にすぎないのでありますから、公表するとか、またそれ自身についてお話をするというようなことはいたしておりませんが、農業の標準率につきましては公表いたしまして、それぞれその標準率自体についても、農業団体その他の方々、町村当局等の御意見も伺つて、それを実行して行くという実情でございます。しこうして商工業の農業以外の部分につきましては、年々調査を充実することにいたしまして、何とか推定というふうなあやふやな方法によらずに、できるだけ所得の真相をつかんで行くという方向において、やつて行きたいと考えております。いわば標準率または目安によつて押しつけるというやり方が、ある程度つたとすれば、それはその署におきましては、十分自信を持つた調査が行き届いていないというようなことを、他の面において証するものでありまして、そういう意味において私は一線の税務署を監督し、そういうふうな一般的な目安によつて押しつけるということが、いやしくもあつてはならないということを、かねがね注意している次第であります。
  32. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは農家においては、全国的に正確な帳簿がなかなかつけられていない。従つて、農家はどうしても実際上は標準率によつて納税してもらうつことになるのだということであります。そこでその標準率は公表するのだということでありますが、その標準率は各局ごとですか、税務署ごとでありますか。
  33. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 農家の米については、石当りの標準率にいたしております。これは原則として町村ごとというふうにいたしております。ただ町村が非常に小さくて、一つの団地をなしていないという場合におきましては、数町村を合併したものになつていることもあろうかと考えます。私どもの指導としては、町村ごとに標準率を出して行くということにいたしております。
  34. 奧村又十郎

    奧村委員 この問題は匿名供出課税の問題に関連しますから、もう一つつつ込んでお尋ねいたします。標準率は石当りで出すのだということでありますが、そうすると石当りという石は供出の数量によるのか、あるいはそのほかの数量によるのか、これが一番問題になるかと思うのでありますが、その点を伺いたい。
  35. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 標準率を作成する基本になるところの生産石数は、これは税務署で実態を調査して、その石数をきめるということが本来の建前には相なつておりますが、事実問題としてはたとえば事前割当であるとか、あるいは農林省その他の統計等によることが、普通大多数がそういうふうなことになつておるかと考えております。
  36. 奧村又十郎

    奧村委員 重ねてお尋ねいたしますが、そういたしますと税務署が実態に応じて調べる。大体反收どのくらいあつたかということが基準になるのか。供出数量というものにはとらわれないのか。反攻で行くのか供出数量で行くのか、そこをはつきりお答え願いたい。
  37. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 各農家の実收を基礎として行くということが根本の建前でありますが、今年度は大体補正までの数字がはつきりわかりましたものは、そういう数字によることにしております。そうして供出が多くあろうと少くあろうとそれには関係ない。大体実收高というものを調査いたしまして、それに基いてやつている次第であります。
  38. 奧村又十郎

    奧村委員 ただいまの御答弁によると、補正までは供出数量によるというのか、もう一ぺん伺いたいと思います。
  39. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 実收高と申しますのは税務署調査することが建前になつておりますが、事実問題としては、大部分は補正割当の基礎になつたところの農家の生産数量による、こういうことに農林省との間で……。
  40. 奧村又十郎

    奧村委員 そうしますと、要するに実際の反收ということが根本になるのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  41. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 その通りでございます。
  42. 奧村又十郎

    奧村委員 そうすれば表向きに供出されようと、あるいは匿名供出であろうと、それにこだわらずに反收が基準になる。従つて匿名供出の場合は供出数量というものは捕捉されないが、反收によつて、捕捉されておるのであるから、匿名供出されたからといつて、特に税務署は調べなければならぬということでもなしに、つまり匿名供出ということについては、課税上は特別な取扱いはしない。しかしながら基準率というものがあるのであるから、基準率で納税したらそれ以上税務署更正決定しない。その基準率というものは反收によつているということになれば、匿名供出したからといつて、その供出の分には特別に税金はかからぬというふうに、実際上の取扱いはなる。農林省と国税庁の間に、あまりこの問題について議論は起らぬはずであります。ただしかし私は、国税庁匿名供出に対しては、特に課税はしないというふうなことの通牒を出すとするならば、これは税法を国税庁みずから非常に蹂躙することになるので、これはしてはならぬと思うのでありますが、どうも農林省の……。農林大臣がお見えになりましたが、廣川農林大臣は非常に勘が鋭いと言われておりますが、ちようどこの問題に入つたところへお越しになつたというのは、いかにも勘の鋭いことが証明される。一言お尋ね申し上げます。ただいま匿名供出に対する課税の問題を、本委員会で取上げて協議しているわけでありますが、この米作農家に対する所得は標準率によつてしかもその標準率は実收を実際に調べて、それによつて標準率を出して課税する、農家はほとんど正確な帳簿をつけていないということからして、まあ実際上は標準率によるところの税務署調査に基いて、標準率によつて課税されるならばそれで納税は済む。従つて直接供出数量にはこだわつていないというのか。いや匿名供出などということは、何もそこまでこまかくしなくも、税務署は反收で行くから調べなくもいい。従いまして匿名供出をやつたからよけいに税金がかかるの、やらぬから税金がかからぬのということはないはずであると思います。従いまして実際上は匿名供出して、課税には響かぬのだということでありますが、しかし今の税法の建前から、匿名供出に対しては税金はかからぬのだということになつたのでは、これは特別に課税外のわくをつくることになつて、税法違反になります。きようの新聞を見ますと、農林省の事務次官が、国税庁に対して匿名供出課税しないという通達を出さすことになつておるということを言明しておられるが、これは税法を蹂躪するものである。そこまで言わさなくてはならぬことはないので、ほつておけば事実上はかからぬのだから、それをあまりに農林省が大蔵省の領分にまで立ち入つて、通達まで出さそうというようなことを言われたのは、これははなはだ区域を侵害し、また税法違反である。ああいうことを言われるのは国民を誤まるものと思うので、その点農林大臣考えを承つておきたいと思います。
  43. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農民のことを非常に御心配願つて恐縮でありますが、農村は非常に勉強いたしまして、超過供出をどんどんしてもらつておるのであります。そのやさきにあたりまして、超過供出に対する税金のことがいろいろとりざたされておりますが、この超過供出の税金については、池田君は非常に了解いたしておるのでありまして税法上どうしても法律をかえなければならぬか、あるいはまた現在の税法でできるかということを、自分で検討いたしておるのであります。二十三年にやりましたときに、税務署があとからほじくりまわしたものですから、農村が非常におびえておるのであります。そういうことのないようにしたいということで、あらかじめ私は閣議でその話をし、しかもまた国税庁にそういうことのないように、よくお願いをいたしておるのでありまして、税法を改正しなければならぬければここでやればいい。特に事務の方でお聞きいたしますと、所得税の対象に超過供出という文字はないそうであります。私はこまかいことはよく知らぬのでありますが、そういう文字はないそうでありまして、そこは池田君が事務を督励して、農村に不安を與えないようにするということで、今予算委員会で二人でおしやべりをして来たようなわけであります。英国の例を見ますと、食糧の輸入を制限してまでも復興に努力しておるというようなときに、飯米をさいて零細な米を超過供出する農民に対して感謝こそすれ、税をほじくることはあり得ない、こう思つておるのですが、ここに政治のあたたかさがなければならぬと思います。国税庁長官のところへも参り、ひざを屈してよく懇談いたしておるので、国税庁はよくわかつておるのであります。ただ農民側から言うと、この前のほじくられた痛さを思い起しまして、税務署に通知くらい出してくれ、こういうことを端的にわれわれに言うのであります。それを受けて農林省が出してもらうようにしてやろう。これもまた人情でありまして、そういうようなことはむずかしくせぬでも、わかつておる練達堪能の国税庁長官でありますから、その辺のことはよくわかると思います。それから閣内においても全閣僚が一致いたしまして、農村のふところを潤すと同時に、米食率が低下しないように、しかも輸入を防遏するよとにということでやつておるのでありますから、どうかその点は御了承願いたいと思います。
  44. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 ただいまの超過供出の課税の問題については、私ども農林大臣のお言葉、御気分に対して全面的に賛成いたします。ただその表現の方法がよかつたのか悪かつたのか、新聞がこれを大きく取上げて、何かしら対立しておるような気分を持たせておるということは、まことに遺憾なことであると思います。こうした問題は一日も早くその結論を求めて、これを一掃しなければならぬ、こういうようなことで、大蔵委員会は税についての所管でありますので、特にお忙しいところを農林大臣の御出席を願つた次第であります。この問題は、結局奥村君は先ほどの御質問の中で、内容から行けば大したことはない、こう申しておりますけれども、私五日に仙台に行つて参りましたが、たまたまこの問題に触れて農林大臣の言明がなされたことを取上げて、相当研究しておるようであります。しかし法律の改正を要せずしてこれを免税にするということは、非常に困難であるというようなことも申されております。私もそのように考えておりましたので、帰つたならばさつそくこの問題を取上げて、何か結論を求めなければならぬだろう、こう存じておつたのであります。そこで大政治家廣川農林大臣は、国税庁長官にひざを屈して御依頼になつたという心情でありますから、それはよくよくのことであつて、農民の苦衷を察してのそうした行いについては、私もまつたく好感を持つて迎えるものでありますけれども、法規は法規でありますので、これを法律の操作において、法律を改正せずしても行えるかどうか。ただいまの御説明では大蔵大臣とも折衝済みで、手打ちになつておるのだということであります。新聞の伝えるところによれば、国税庁長官との間はまだそこまで行つておらぬようでありますが、国税庁長官はこの問題をどういうように御解釈になつておりますか。
  45. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 超過供出の問題につきましては、いろいろに伝えられておりますが、これを少し分析して御説明申し上げますと、先ほど奥村委員からの御質問の中にもありましたように、もともと超過供出というものは、保有米から繰出するものでありますから、従つて匿名供出等の方法によつて超過供出をなすつた場合におきましても、それによつて生産増加したのだ、いわばそのときの米の收穫がふえたのだというような考え方は、私どもいたしておりません。従つて問題はきめて限定されるのでありまして、いわゆる超過供出の奨励金、これが何十億になりますか、税の上から見ますればそう大した金額にはならないと思うのであります。これが税の対象になるかならぬかということになるかと思います。しかしてこの奨励金は、ほとんど全部が今年に入つてから支給されるのが普通でありまして、この奨励金の問題も、所得というものが相当にあるとすれば、その所得は二十七年度の所得ということになるのであります。今回申告をお願いいたしておりまする二月末までのものは二十六年度分でありますが、これには関係がないのであります。しかしてもともと保有米までさいて出そうというのは、非常に正直なまた奇篤な農家のことでありまするから、それらの方は、たとえば肥料その他の点についても、経費がある程度かかつているでありましようし、それらの点は十分に実情を参酌して運用上遺憾のないようにいたしたい、そういうふうに考えております。しかしながら、これについて法律を要するかいなかということにつきましては、今後なお研究いたしたい、そういうふうに考えております。
  46. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 法律の改正を要するか要しないかということは、これから研究するということでありますが、研究することはよろしいでしよう。しかしやはり行政面にタッチして、上層部の方では何とか親心をもつてこうしよう、こういうような御意見で、そういう調査の方法もお考えになるのはけつこうですけれども、下部の方に行つてどういう解釈になりますか。たとえばこれまでの本委員会で徴税のことについていろいろ親心を持ち、こういう通達によつてやれというような意見がたくさんあるのでありますけれども、それが下部の方に徹底しておらぬのであります。そのために下部の方では、いわゆる法律一本によつてすべてを操作するということが、今までの例になつております。ただ大蔵及び農林御当局の間で、政治折衝の上で、適当にこれを調査し研究してみるといううちに、何か問題があれば困つたことになりまするので、できるだけこうした問題は早くその結論を求めてこれを御発表になり御通達になりますことがいいだろう、こう存じております。これははなはだ農林大臣に対して申しにくいのでありまするが、新聞の報道では、おれの言うことを聞かなければ国税庁長官ちよん切るとか、処分するとか、ちよつと私目を悪くしておりまするので、あるいは見違いかもしれませんけれども、水産庁においても、かなり大幅な整理が行われておるようであります。この点もいろいろ批判もありまするけれども、行政整理においてはどじを踏んだ、かわつて農林大臣の政治力によつてばつさり——ばつさりということがありますれば、いい面もありまするけれども、悪い面もありまするので、他省の管轄の国税庁長官を処分するということは、あまりに政治力が大き過ぎるというような感じを国民に與えまして、はなはだどうかと思います。こうした面は、私どもは自由党でありまするが、自由党としても、あまり内輪のけんかはよくないと思つております。大政治家農林大臣と最近第二のワンマンぶりを発揮しておる大蔵大臣、このお二人の、いわゆる偉い人方は、新聞に発表されるようなどじを踏まないで、内部において、こうしようじやないか、また発表の方法も、納得のできるような御発表であるように、こう思う次第でありまするので、そういうことをおつしやつたとは思いませんけれども、どうもかかる他省の管轄の国税庁長官をばつさりとか、また水産庁の整理が来るのではないかという感じを持たせることはよくない、こう存じております。具体的にあえてこれに対する御答弁をほしいという意味ではありませんから、その点は御心配なく。ただもう少し発表の方法を上手にしていただきたいと思います。
  47. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 どうも婉曲に針を刺されるので苦しいのですが、これは何か誤解があるようであります。しかし結論は、ほんとうに農民の努力に報いたいということについては、閣内一致いたしておりまするし、また大蔵当局も非常に熱意を持つてつていただきまするので、私そういつた考えはちつとも持つておりません。円満に解決いたしまして、喜んで農民が供出できるようになると信じております。しかもまた、これから毎日曜全国に行脚してまわるつもりでありますが、西部地方は非常に作柄が悪いのであります。いい方から出してもらわなければなりませんが、この出してもらう土においても、快く出してもらうように早く解決づけたいと思つておりますので、まだ内部でそういうけんかをしておる余裕がございません。十分一生懸命努力いたします。
  48. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 ただいま御質問がありましたことに関連いたしまして、二、三お尋ね申し上げたいと思うのであります。この匿名供出の問題につきましては、この委員会でさきに深澤君からいろいろ、お尋ねがありまして、そのお尋ねに対して、主税局長から木で鼻をくくつたような御答弁があつたのでありますが、それに対しまして、私、そのときの委員会で、それはおもしろくないじやないか、ことに今日の日本の食糧事情というものを考えてみると、私どもはこの問題については、よほどまじめな態度で考えなければならぬ。これは廣川さんも御存じだろうと思うのでありますが、ごく最近ブラジルから外米を入れたのでありますが、トン二百五ドルになつております。これは沖渡しであります。従いまして、これを内地にわけますときは、おそらく石一万二、三千円になろうかと思うのであります。そういう高いものを入れなければならぬ今日の日本の食糧事情、しかもドルの少いときに、農民が自己の飯米までさいて出そうかという農林省の匿名供出制度に対して、所得があるのだから、所得税をとるのは当然で、断じてその線は譲らぬというようなお話でありましたので、ずいぶん主税局長には申訳ないほどえげつない言葉を申し上げて、御考慮を願つた次第なのであります。そこで私が廣川さんにお尋ねしたいのは、実は大臣のただいまのお言葉は、その通り私は受取ります。しかし世間にはややもしますと、大臣のお言葉に対して、廣川放言という言葉があるのであります。たとえば地方の者が参りまして、大臣にいろいろお願い申す。すると大臣は、心配するな、属領どもが何と言つてつても、おれが引受けてるんだからと言つて、胸をおたたきになる。みな喜んで帰る。ちつともそれができ上らないというようなことから、私は廣川放言というものが出ておるのではないかと思うのであります。ところが大勢の者は決して愚な者ではないのでありまして、やはり大勢の中には賢者があるのであります。そこで、大臣は非常にこのごろ農村をお歩きになつておりまするから、農村の事情もよくおわかりになられまして、いろいろあたたかい思いがあるのでありますが、どうもこういう点を見ると、ああ、また廣川放言かというわけで、信用しないのであります。それであなたは、食糧長官から府県知事にあてて匿名供出制度の通知を出しておりますが、おそらく私は、あなたが今日そういうことをしても出ないと思う。それが出るためには、廣川放言という言葉をひとつ返上するというようなことで、やつてもらわなければならぬのでありまして、問題は一にかかつてそこにある。さきに奥村君がいろいろ国税長官にお尋ねになつたのでありますが、私も匿名供出というものについては、税金をかけてはならぬと思う。かけべきものじやない。今日の農業者課税制度から申しまして、私はそう思う。二十三年のあのときも、この委員会におきまして私はこの問題を取上げました。その当時も主税局長はやはり平田さんでありまして、ずいぶんこの問題は真劍にここで議論したのでありますが、現にあの結果をながめてみましても、匿名供出はあとで非常に農家から恨まれて、農林省は二十四年も二十五年も差控えたというような事情であつたのであります。  そこで私は、廣川さんは大臣でありますから、政府の態度をひとつお尋ね申し上げたいと思うのであります。先ほど高橋長官お話になりました通り、これは匿名供出いわゆる超過供出に対する奨励金が今度出る。これが課税の対象になるのでありますが、この課税の対象になる問題について、特別の法律をこの国会にお出しなさる意思があるかどうかということであります。匿名供出したものは、私は課税の対象にならぬと思う。これはあなたの所から出ておる通牒で、あとから私は高橋さんともう少し深く掘り下げて、検討してみたいと思うのでありますが、私はかからぬと思うのであります。ただかかるのは奨励金の問題でありますが、その奨励金は特別な法律を出して税金をかけないという政府の御趣旨かどうか。それをひとつお答えいただきたいと思うのであります。政府の態度をお尋ね申し上げます。
  49. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは税の專門家をここに置いておかしいですが、今報奨金と言つたかどうか、政府はたしか集荷手数料という形で出ると思つておるのですが、集荷手数料それ自体にかかるかかからぬか、これは専門家の方に譲るとしまして、私たちとしては、これを何とかみんなかけないで行きたい、こういう考えでおるのですが、そこは事務的に検討中で、予算委員会でもそういう話をしたのですが、よく事務の方で検討してもらつて、あたたかい心で法律を解釈してもらいたい、こういう考えでおるわけであります。
  50. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 これは廣川さん法律の解釈ではないのでありまして、手数料でありましても、あるいは奨励金でありましても、補償金でありましても、これは一つの所得になる。従つて平田さんの言われるように、所得のあるところには必ず所得税はとるのだ。この原理原則は曲げるわけには行かない。もしそれをあなたのおつしやるあたたかいという言葉から言うならば、どうしても私は臨時措置をやらなければならぬと思うのでありますが、それをなさるのかなさらぬのか、その一点だけだと思うのであります。これをひとつはつきりと政府の御意見として承りたいのであります。
  51. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは池田君とよく相談いたしておるのですが、そういう法律によらなくてでき得るならばそのようにしたい。もし法律が必要であるようならば、なるべく早く法律をつくりたい、こういうことに二人は意見が合つておるのでございまして、そこが今自分の折衝中であると言うことであります。
  52. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 それではうしろにおられます平田さんにお尋ねいたしますが、この前の委員会でまことに申訳ないことを申しまして恐縮でありましたが、平田さんの方でその事務を進めて、この国会にお出しなさるかどうか、お心持をこの際お漏らしいただきたいと思います。
  53. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ずいぶん問題が深刻になりまして、扱いようでは超過供出自体に相当影響するようなふうにも考えられますので、よく私ども愼重に考えまして、適当な方策を考えるようにいたしたいと思います。
  54. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 そういうふうなことになりますならば、廣川さんの、よく新聞にあります廣川放言ということはなくなると思いますから、どうかひとつせつかく御努力を願いたいと思います。
  55. 深澤義守

    深澤委員 ただいまの質疑応答の中で、非常に重大な問題がはつきりして参りました。その一つは、超過供出並びに匿名供出は、これは生産増加による供出ではない、保有米をその方に節約をしてまわしたのだという解釈であるから、これは余分の所得ではない、従つて税法上から言つても、特別に超過供出、匿名供出で出たものに対しては課税しない、こういうことを国税庁長官が言われたのでありますが、それは確実にそういう方針で今後おやりになるかどうか。それをひとつ明確に伺いたい。
  56. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 先ほどもお答えいたしました通り、もともと補正割当の基礎になつたところの生産数量というものを、所得の計算の基本にいたしております。しこうして匿名供出または超過供出は、農家の保有米から出しているものと推定されるのでありますから、これは新しい所得がそれによつて生じたということにはならぬというふうに、考えておるのであります。先ほどもお答え申し上げました通り、奨励金その他のものについては、これは別であります。
  57. 深澤義守

    深澤委員 ところが従来農村の所得課税の問題におきましては、これが生産増加を見込んで課税されておる事実が幾多あるのであります。従つて私はこの際明確に、国税庁としてこれを末端に徹底させるべく、通牒を出す必要があると思うのであります。その点どういうぐあいに考えておりますか。
  58. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 ただいま御指摘のような点について、何らかの誤解が末端にあるということでありますれば、それを明確ならしめるようにいたしたいと考えます。     〔小山委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 深澤義守

    深澤委員 そこで今の結局政府から出る集荷手数料が、課税対象になるかならぬかという問題は、これは農林大臣が御答弁になつ通りに、これはひとつ十分善処を願いたいと思うのであります  そこでもう一つ問題になりますのは、匿名供出に対して課税するかしないかという問題が大きくなり、農林省がこの匿名供出に対して課税するなという意見を、大きく出したかという問題が実は他にあるのです。昭和二十三年度の匿名供出の場合において、事実農民はとられておる。農業協同組合が供出の任に当りまして、そうして匿名供出をやつておる。そうすると税務署はこの協同組合へ行つて制度として匿名であるから名前は発表できないと言うのを、非常に強硬に調査をして、だれが匿名で供出したかということを調べて、源泉課税的に税金をとつておるという事実がある。だから農民がこの匿名供出に対して課税されては困るから、何とか農林省は力を入れてくれということで、初めて匿名供出に対する課税問題が起つて来ておるのです。現在の税法上から言えば、先ほどの解釈では、匿名供出であろうと超過供出であろうと所得増加ではない。保有量を出すのだから、決してそれに課税しなくてもよろしいのです。ところが、昭和二十三年度においては、私は具体的に調査しました。山形県の南部におきましても、私の方の山梨県におきましても、事実匿名供出に対して源泉課税的に、一石に対して何百何十円というものがとられておるわけです。私はこの前も国税庁長官にこの問題を出したわけですが、これは明らかに税務署所得税法の違反をやつておるのです。私はそう考えておる。つまり匿名供出に対して源泉課税的に税金をとつておる。そういう事実があるということを、国税庁長官は必ず御存じだろうと思うのでありますが、これはどうしても現在の税法からいつても、税務署のやり過ぎではないかというように考えておりますが、そういう匿名供出に対する課税をした事実があるかどうか、あつたとしたならば、それが現在の税法からいつて違法ではないかというように考えておりますが、その点はどうか、この二点をお伺いしたい。
  60. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 二十三年度の匿名供出の場合におきましても、この問題は相当論議されたのでありますが、とにかく匿名供出の場合におきましては、名義人によつてまとめて供出がなされて行くことだと思います。しこうしてその場合に奨励金等が相当大きく、特に超過供出の奨励金が特に大きくついておりましたので、今回のようにわずかな金額でなしに、何倍という額に上つておりましたために、その金額が非常に厖大になつて来ました。従つて名義人だけにその所得税がかかりますと、累進税率がかかりまして、非常に大きな負担に相なつて参ります。従つて結局負担増加になるというような面からいたしまして名義人といたしましても、実際の各供出の方に割当てると申しますか、元に還元してやることの方が実情に適するということで、そういう資料をお出し願つて課税したような実情であると考えております。
  61. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 高橋さんに今の問題に関連してお尋ねしたいのでありますが、二十三年度は当時私どもこの問題を取上げまして、また実際の税務署の様子も見たのであります。そこであのときの超過供出の奨励金に対しての問題と言われましたけれども、実はあのときは超過供出、匿名供出そのものについて税金を納めた。でありますから、私はそれがいけないということであるならば、あのときの納めた税金を農民にお返しなさる気持はありませんか。これをお尋ねしたい。これは当然とるべからざるものをおとりになつた。だからこれをお返しなさるかどうか、それをお尋ねしたい。
  62. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 せつかく今農民を考え政府一体として、税金のかからないようにという努力中でありますから、あまり今までのことをほじくらずに、ここまで政治が成長したということで御了解を願いたいと思います。
  63. 深澤義守

    深澤委員 その点を不安に思うから、農民には結局匿名供出に対して課税するなということで、農林省は踏み出していると私は思う。先ほどの税法上の問題から言えば全然問題ではない。政府の集荷手数料だけが問題だ。ところが末端税務署は現にそういう匿名供出の場合にやつておるのです。そこで私はもう一つ高橋さんの御答弁からお伺いしたいのは、一人の名義でまとめて供出した。するとその人に課税すると累進課税で非常に高くなるから、各個人々々に還元をして税金を出さした、こういうやり方を事実やつた。そうするとその場合には、個人個人に環元してやつた場合においては、今度はその個人の匿名供出分を、やはり総合所得として課税すべきであつたわけです。ところがそうではなくて、結局匿名供出一石分に対して幾らという源泉課税的なとり方をやつている。これは農民の方で多く出すか少く出すかという、この結果についてはよくわかりませんが、少くともこれは税法上違反のやり方をやつている。匿名供出一石について幾ら税金を出すということは、今の税法から言つて違反である。この前もその問題をあなたに言つたのですが、十分実情調査してということで、前々国会かにおいてはまだ答弁がはつきりしなかつた。私はそういうとり方は違法のとり方であるというぐあいに考えておりますが、その点はどうでありますか。
  64. 高橋衛

    高橋(衛)政府委員 お話通り所得税はすべて個人の所得に総合して税率をかけて課税するのが当然であります。従つて、もしも源泉課税的に扱つて、しかもその税の負担が、総合した場合と比較して重かつたというふうなことがありますれば、これは当然に是正すべきものであると考えるのであります。具体的な事例がございますれば、調査いたしまして訂正いたしたいと思います。
  65. 深澤義守

    深澤委員 ですから多額に納める者は、あるいは総合所得にすると多く納めることになります。しかしながらあのときの匿名供出は、供出農家でないものも供出をしているわけです。そうするとその人は非常にわずかな供出です。ところがそれは総合すれば税対象にならない農民が、今度は源泉課税のために税金をとられておるということのために、非常に零細な農家が匿名供出をして、かえつて税金を納めたという弊害がある。そういうことがからまつて、今度の匿名供出に対して課税をするなという結果になつて来ておると思う。こういう意味から、私は農林省が大いにがんばつていることは当然であり、これに対しては相当政府自体が善処をしていただきたいと私は考えるわけです。今の農林大臣の御答弁によつて、大分話はうまく進んでいるようでありますが、ひとつ私は政府の集荷手数料をはつきり免税するという法案を出さない限り、廣川さんの努力も單に努力に終つてしまつて、実質上私は役に立たないと思う。どうしても臨時措置法をつくりまして、政府の集荷手数料には課税しない。こういうことを明確にしていただかなければ、せつかくの御努力が事実上私は税制の上に現われて来ないということを申し上げまして、一応私の質問を打切ります。
  66. 佐藤重遠

    ○佐藤委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時二十四分散会