○土屋
政府委員 今回の
かに工船につきましては、
農林省特に
水産庁と私どもの方は、あらゆる角度からこの問題を討議して参りましたし、また
情報の交換もしたのであります。ただ
外務省として今遺憾にたえませんのは、当時私どもの情勢判断では、大体三月一ぱいくらいで
講和條約の批准が済みはしないか、そうすれば三
国漁業協定はそれから間もなくのうちに正式の
調印を終る。そうすれば何ら
アメリカ側を刺激することなく、平和裡にこの
かに工船は
出漁できるという判断を当時したのであります。ただ実際はそれよりやや遅れて来ましたので、その点から見ますと、
講和條約がかりに四月の半ばなり、四月の末に
発効するということになりましても、
漁業協定の
調印は、必ずしも翌日というわけにも参りません。相手国もあることでありますから、多少の時間もいるわけで、こういう点から
考えますと、この点を無理押しいたしまして、権利だけを主張するということになりますと、どうしても
アメリカの
業者との間にいろいろ摩擦も起きようということから、大局から見て、この際は涙をのんで
水産庁の方でもお見合せをいただく方がよくはないかという
考えを持
つたところに、情勢の判断においてやや時間的なずれがあ
つたということは、これは自認せざるを得ないかと思います。それから
アメリカの
業者、特に製カン界の
業者が、
日本の
水産の問題に関しましては
輿論の中心になり、それが
ために
アメリカの
輿論がかき立てられるという事実は、まさにその
通りであります。そこで私どもとしては、
アメリカには輸入
業者だけではなく、
日本の
水産物を
アメリカに入れる場合においては、
アメリカの消費者もまた大きな関心を持たなければならないわけでありまして、安いよい品物を買うということは
アメリカの消費者の
利益でなければならないはずであります。そういう点から消費者の声も出て来はしないかと思いまして、その方面にも多少の努力をして来たのでありますが、遺憾ながら本年はその努力
がまだ報いられないという形であるわけであります。
在外事務所長、その他在外におります者が、
漁業問題に対して重大な関心を持つべきことはまさに当然であります。
日本の産業の中に
水産業の占める位置から
考えまして、
外務省の海外に
行つております者に、この点を認識しない者はなか
つたはずだと思いますので、今後とも
外務省の表に出ます者が、
水産について
日本の
利益を常に考慮しながら、相手国に対して善処するという点は最も心がけるべきことであり、上司に申し上げて、そういう点についてうかつな者がかりにあれば、今後において
外務省としても十分海外を督励するつもりであります。
サンフランシスコう云々という問題がありましたが、現在の在外事務所は限られた予算と限られた権能を持
つているだけであります。
お話になりました当時は、遺憾ながら在外事務所はこの問題について自発的に出て行く権能を持
つていなか
つたのであります。現在においては、
アメリカ政府の承認を得まして、ややその権能が拡大されましたから、今は行けるはずであります。それから任地以外に出ることがむずかしいということは、実は
外務省にはきまりがありまして、自分の管轄区域以外には、
大臣の
許可なくして出られないのでありますが、今は交通が発達しておりますから、そういう事態があれば、今後は電報一本で、遠い所でも二日もあれば
大臣から行くわけでありまして、いかほど金が少くても、
日本の
水産に影響のある、これだけのものを
大臣が
許可しないはずはないと思います。今後は御期待に沿うような方面に、対外的にも行けるだろうと
考えております。
水産専門家の点は、先日ここの
会議でもやはりそういう御議論がございまして、私も
帰りまして上司に伝えまして、今後
外務省がこの
水産に
関係の深い在外事務所、総領事館、あるいは公使館には、
水産担当官を置く必要がないか。もしそれが予算その他からできないにしても、
外務省の人
たちにもこの問題をよく認識していただきまして万遺憾なきを期したいという
意味のことを、希望として私どもの方からも伝えてあるわけであります。今後この点につきましては、御鞭撻をいただきまして、御期待に沿うような
方針で措置したいと
考えております。