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1952-02-15 第13回国会 衆議院 水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十五日(金曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 川村善八郎君    理事 田口長治郎君 理事 永田  節君    理事 林  好次君 理事 佐竹 新市君       石原 圓吉君    川端 佳夫君       鈴木 善幸君    冨永格五郎君       二階堂 進君    原 健三郎君       松田 鐵藏君    小松 勇次君       水野彦治郎君    林  百郎君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         水産庁長官   塩見友之助君         通商産業事務官         (通商振興局         長)      井上 尚一君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第三課         長)      福井 政男君         農林事務官         (水産庁生産部         水産課長)   藤波 良雄君         通商産業事務官         (通商振興局農         水産課長)   森 日出哉君         参  考  人         (日本かんびん         詰協会会長) 川浪綱次郎君         参  考  人         (国際水産株式         会社社長)   立川直三郎君         專  門  員 徳久 三種君     ————————————— 二月十五日  委員木村榮君辞任につき、その補欠として林百  郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  北洋漁業再開に関する請願川村善八郎君紹  介)(第六五二号)  八重根漁港築設促進の請願川村善八郎君紹  介)(第六五三号)  アミラン漁網購入費国庫補助請願水谷昇君  紹介)(第六五四号)  農漁業協同組合再建整備法の一部改正に関する  請願田口長治郎紹介)(第六五五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  輸出まぐろに関する件  日韓漁業協定に関する件     —————————————
  2. 川村善八郎

    川村委員長 これより水産委員会を開きます。  本日の日程の真珠養殖事業法案を審議することになつておりましたが、字句の修正その他にもう少し時間をとりますので、本日はとりやめまして、輸出まぐろに関する件を議題に供し調査を進めます。  なお本日出席政府委員並びに説明員の御氏名を申し上げます。水産庁長官塩見友之助君、水産課長藤波良雄君、通商振興局長井上尚一君、農水産課長森日出哉君外務政務次官石原幹市郎君、経済局第三課長福井政男君、アジア局三宅喜一郎君等が出席されております。二階堂君。
  3. 二階堂進

    二階堂委員 最近問題になつておりまする冷凍まぐろ輸入関税の新設の問題及びまぐろカン詰税率引上げの問題は、非常にわが国経済に及ぼす影響が甚大でありまして、私どももこれに対しましては非常な注目をいたしておるのであります。先般日米加漁業協定の仮調印が順調に運びましたことは、一つにはわが業界並びに当局の熱意ある折衝のおかげであるとは考えますが、米国及びカナダ両国がこれらの協定についてきわめて公正なる態度を持ち、かつ大局的な立場で互譲の精神をもつて話合つた結果にほかならないと私は考えまして、非常にこの点喜びにたえないところであります。しかしながら最近のアメリカにおける冷凍まぐろ輸入関税の問題あるいはまぐろカン詰等税率引上げの問題は、わが国水産業界に及ぼす影響甚大なるのみならず、わが国一般国民経済の上に及ぼす影響はきわめて大きなものがあると考えるのであります。なおまたこれらの問題は、将来日米通商交渉前途にも一つ暗影を投じておるものと考えるのであります。さらにひいてはこれらの関税引上げ問題あるいは税率引上げ問題は、日本から相当輸出しておりますところのミシンあるいは陶器、絹織物等の将来にもいろいろな問題を起すのではないかと考えて非常に心配をいたしておるのであります。輸出振興は申し上げるまでもなくわが国経済再建根本策でなければなりません。この根本の政策の上に大きな役割を果しているものは水産であります。ドル獲得の上から申しましても、生糸に次ぐところ外貨を獲得いたしていることは御承知通りであります。一昨年におきましても、まぐろ等ドル獲得の上に占めるところのパーセンテージは七・一%を占めておりまして、一昨年の生糸の七千万ドルに次いで千三百万ドル以上の外貨を獲得していることは御承知通りであります。かようドル獲得の上から申し上げましても、わが国経済再建の上に大きな役割を果しているのであります。このよう水産界に大きな暗影を投じて来ておりますされらの問題は、ひいてはまたわが国水産業界に非常な圧迫を加えて来るかと考えるのであります。まぐろ業者の不振はとりもなおさずわが国沿岸漁業を圧迫するということにもなるのであります。ひいてはまた漁村におけるところ過剰人口の問題も、さらにこの解決を困難ならしめるよう事態であると私どもは考えざるを得ないのであります。なおまたあとで問題になります日韓漁業協定問題等もあわせ考えてみますときに、韓国はそれ自体経済自立観点から考えて、水産輸出をその根幹に考えているようなこともうかがわれるのであります。かようにいたしますならば、わが国水産業界前途並びに経済前途には、非常に大きな問題があることを私どもは忘れてはならないのであります。これらの問題を考えますときに、わが国といたしましては、みずからの盲貿易状態も、ある程度真剣に考究をしてその対策を講ずる必要があると同時に、貿易機構全体の整備強化をはかり、あるいはまた生産方面におけるところ合理化も徹底しなければならないし、同時に金融の措置あるいは業者自体の自粛と輸出組合法案の整備等緊急にこれが対策を立てて、将来のこれらの問題に対する万全の対策を講じて行かなければならないと考えるのであります。最近の新聞によりま出すと、アメリカ上院におきましてただいま公聴会が開かれておるのでありますが、これら日本に対するところ態度の最も大きな原因は、私は日本業者がダンピングをするのではないかというよう心配一つあるのではないかと考えておるのであります。これに対するところの誤解を解く対策を立てなければならない。あるいはまた最も日本まぐろ等輸入に対して反対をいたしておりますのは太平洋沿岸業者でありますが、これらの業者に対するところ対策も立てて行かなければならない。最近の公聽会状態を私ども新聞において見てみますると、ウオルターという上院議員のごときは、日本アメリカ以外のところにその市場を求むべきであるというような主張をいたしております。なおまたリンダー氏のごときは、六日の公聽会において、ある程度の輸入制限を認めておる。すなわち二千五百万ポンドの生及び冷凍まぐろ輸入は無税にして、それ以上のものについては、ある程度の関税を課すべきではないかといつたような議論も出ております。しかしながら私どもは、この輸入数量に対して制限を設けるというようなことにつきましては、根本的に反対を表明せざるを得ない事態にあると考えるのであります。いろいろこれらの問題を根本的に今日私どもは考えて、そしてもしこれが制限を受けるような、あるいは税率引上げような場合を想定いたしまして、これが根本的な策を政府当局並びに業界、われわれ一体となつて立てて行かなければならない事態に今日あるのではないかと考えるのであります。かようアメリカにおけるところ日本に対する態度は、おそらく講和後におけるアメリカの対日貿易の方針をある程度示しているものではないかとすら私どもは考えるのでありまするが、私は本日、外務省の当局並びに通産省あるいは水産庁方々に対して、これらの重大なる問題に対する対策をいかように考えておるのであるか、あるいは現在において交渉がどういうよう進捗状態にあるのか、さらにまた業界代表も来ていただいておりまするので、これらの問題に対する意見をも伺いまして、そしてわれわれといたしましても、これが対策に万全を期したい、また期さなければならない。日本経済再建の上においてきわめて重大なる問題であるがゆえに、私は今日各政府当局から、問題のいきさつ並びにこれに対していかなる具体的な案を考えておらるるのかということを承りたいのであります。
  4. 松田鐵藏

    松田委員 ただいま二階堂委員より、大局的な観点から当局に対する説明の要求及び対策に対するお話があつたのでありまするが、およそ当局といたしましたならば、その原因をつかずして、どのような方向によつてこの対策考究中である、またはアメリカに対する考え方をどのようにして行こうかというお話以外にはないものと私は考えるのであります。ゆえにこうした事態なつ原因はいずこにあるかということを、まずわれわれは自己反省をしてみなければならない。それが一番重要な問題であつて、それから起きるいろいろな対策というものが必要であろうと考えるのであります。ゆえに当局からの御説明は抽象的な御説明と私は考える。一番この問題の中心点業者意見であるのであります。この業者意見に対しては、速記をとつて、その御意見速記録に載せるということでは、なかなか思う存分なことはお話もでき得ないし、またわれわれもお聞きすることができ得ないと思うのであります。従つて業者からの御意見に対しては速記をとめて、われわれの聞かんとするところを話していただき、われわれも十分これを審議したいと思うのでありますが、委員長において、適当に御処置あらんことを希望するものであります。
  5. 川村善八郎

    川村委員長 ただいま二階堂委員及び松田委員発言は、日本輸出産業並びに日本経済、特にまぐろ、かつお漁業にとつては最も重大な問題だと考えるのであります。従つてこの際、皆様にお諮りいたします。米国向け輸出まぐろ関税率引上げ問題につきましては、今後これが実現をいたしますれば、わが国かつおまぐろ輸出貿易に多大の影響を来すものと思われます。つきましてはこの問題につき、直接利害関係を有する日本かんびん詰協会会長川浪綱次郎君、及び国際水産株式会社社長立川直三郎君を参考人として選定し、業界意見を承りたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 川村善八郎

    川村委員長 御異議なしと認めまして、さよう決しました。それではまず日本かんびん詰協会会長川浪綱次郎君の御発言を許します。
  7. 川浪綱次郎

    川浪参考人 それでは、ごく簡單にアメリカにおける問題の沿革からお話いたしまして、現状について御説明したいと思います。まぐろカン詰は、戦前昭和二、三年ごろから彼の地の事情調査した結果、相当市場性があるということで、わが国仕事を始めたわけであります。当時一年ごとに輸出が非常に伸張いたしまして、アメリカにおける消費量がおよそ三百万箱当時、日本から六十五万箱も輸出するというよう事態が起きたわけです。しかし、当時も今日とやや似たような無統制濫売気味というようなことも、おのずから結果として出ましたので、これがアメリカにおいて非常な問題となつて、やかましい論議がされるようなつたわけです。そこで当時業界からも二、三の代表が、二、三回海を渡りまして、向う事情調査され、さらに御意見を聞き、また農林省も人を派しまして、民間と協力するということになつたわけであります。そこで昭和九年に、どうしても一種の統制をしなければ、この市場の確保がむずかしいという結論になりまして、農林省輸出水産物取締法に基いて省令を出しました。年間とんぼまぐろの油づけカン詰を三十五万箱に限り輸出する。それからアメリカにおいてはライト・ミート、すなわちきはだまぐろかつお等を原料としたカン詰が非常に多くできますので、これとの競争を避けるために、かつお類は一箱も出さない、とんぼまぐろだけを輸出するということにいたしました。一方カン詰生産につきましては、やはり法に基きまして水産組合を設けて、工場許可制として、さらに割当を実施して生産制限しました。一方販売につきましては、共同販売会社を設立いたしまして、これが法の裏づけを受けまして、三十五万箱以内、しかもアメリカ市場を十分に調査いたしまして向う市場を乱さないよう販売行つたわけであります。従つてそれ以来は何ら問題もなく、戦時に至るまで円滑に輸出が続いたのであります。しかるに終戦後は、御案内の通り企業の自由、もう一つ事業者団体法並びに独禁法関係がありまして、何ら調整を施すすべが見当らないということで、昭和二十四年から輸出相当活発になりました。翌年の二十五年には、戦前の六十五万箱の倍以上の百三十五万箱という輸出をいたしたわけであります。当時業界といたしましては、戦前の轍を踏むまいとして、何とか調整を考えないと必ず問題になるということで、業界の識者は非常に心配をいたしまして、いろいろと研究をいたしたのでありますが、いかんせん、前述の団体法あるいは独禁法等関係がありまして、政府としても、なかなか手の打ちようがなく、民間としても、なすにまかせざるを得ないよう情勢にあつたわけであります。はたしてアメリカにおきましては、これが非常に問題になつたわけであります。もつとも戦前と異りまして、戦時中アメリカは肉の高いために、またこのカン詰を特に宣伝いたしましたために、非常に消費が伸びまして現在約八百万箱以上の消化をいたしております。しかしながら、それに対して日本からの百三十五万箱というものは、やはり相当な比重であります。しかもその売り方が事実濫売に陷つたことを業界としては反省せざるを得ないのであります。それは戦前において約二十二、三社であつた生産会社が六十社以上になり、輸出商戦前には大体十社以内の方々が専門にこれに当つておられました。アメリカのいわゆる大手筋インポーターと取組んで、正常なるルートによつて輸出しておりました。それで問題がなかつたのでありますが、戰後は、ちようど一九五○年、昭和二十五年に輸出いたしました商社の数を全部洗つてみましたところが、官社以上になつておるわけです。従つてアメリカにおきましても、やはり大手筋インポーターのほかに、ブローカーのような種類のバイヤーが続続と現われまして、販売ルートを乱したのであります。日本側としては向う事情がわかりませんから、あえて乱そうと思つて売つたわけではないのでありますが、結果においては、やはり乱れたわけであります。極端なものになりますと、ほとんど小売屋に近いものがオツフアをよこす。そうすると百箱、二百箱でもこれを輸出する。その場合、アメリカにおける販売の経路は、非常に組織立つておりまして、その間、商人としては相当のマージンを見ておるわけでありますが、ごく最末端の方に、同じよう値段のものが飛び込んで行つては、大手筋インポーターとしては非常に迷惑を受ける。かたがたアメリカ生産業者といたしさしては、同じく大手筋を適して正常のルートによつて流しておるところへ、日本からそういうものがどしどし行き、しかも相当の安値で販売されるというので、アメリカ生産者はもちろんのこと、販売業者まで相当の迷惑を受けたことは、確かだと思うのであります。  そこでたまたまメキシコとアメリカとの間の協定によつてツナ輸入税が二二・五%であつたのでありますが、それをアメリカ昭和二十五年七月一日に廃棄する通告をいたしました。その結果、六箇月後の昭和二十六年一月一日から四五%に引上げられたわけであります。そこで日本からの油づけのカン詰輸出はほとんど不可能になつたわけであります。これにつきましては戦前も問題が起きました当時、やはり四五%に引上げられました。しかしながら生産制限と共販の協力によりまして、円滑に輸出をしていたのでありますから、今日でも四五%でいいではないか、こういう考え方を現にアメリカ有力商が持つております。しかし当時と今日とは非常に生産コスト條件が違つております。第一にごくわかりやすいものは空カン値段であります。たとえばアメリカにおけるカン詰会社が使つている空カンは、ブリキにいたしまして、現在一トン六万九千円ぐらいのブリキを使つております。しかし日本ではやむを得ない事情のもとに、八幡製鉄から製カン会社が買いますブリキ値段は、昨年われわれが非常に努力をいたしまして、値下げをお願いした結果でも、なおかつ十三万円であります。それだけでも当時とはまつたく事情を異にするのであります。もちろんそのほかに労働基準法等による賃金の増高というようなこともございます。その他水産庁でこまかい資料をつくつてありますが、税金等のこともありまして、戦前とはまつたくコストが比較にならぬのであります。従つて今日においては四五%の税金をかけられては、まつたく手も足も出ないわけであります。一昨年百二十五万箱出たものが、昨年は油づけでわずかに二十二万箱であつたかと思います。これは冷凍輸出される場合に、魚のきずものが出たり、あるいは鮮度の悪いものなどを、場合によつてカン詰会社がごく安く買いとつてカン詰にすることによつて、初めてごく少量のものは出せるのでありますが、正常な輸出はできないのであります。油づけは四五%でありますが、塩水づけのカン詰アメリカアイスランドとの問に協定がありまして、一二・五%の関税率でございます。そこでわれわれ業界といたしましては、やむを得ず昨年の五、六月ごろからでありますが、ぽつぽつこれをつくつて輸出をするようになつたのであります。ところが、これは現にアメリカで、標準カンである七オンスカンが、油づけは一カン三十二、三セントで売られておるそうでありますが、塩水づけの方は二十一、ニセントで売られておつて、一カン約十セントも安い。しかしこれを調理して食べる場合はほとんどかわりがないと言つてもさしつかえないくらいな品物でありますので、これがまた非常な人気を呼びまして、どんどん輸出が伸びて行つたわけであります。途中から始めた仕事でありながら、昨年たしか三十六万箱輸出いたしたわけであります。そこでアメリカ業者としては、これはまたたいへんだ、こんな代用品ようなものを売り込まれてはたまらぬということで、これに対して油づけ同様四五%の税金にまで引上げようという運動が強力に行われたわけであります。幸いと申しますか、一時間的にはアイスランドとの協定がありますために、昨年の下院におきましてもこれが取上げられないで今日に及んでおるわけでありますが、各方面からの陳情によりまして、先月の末から今月の初めにかけて、アメリカ関税委員会大統領の命によつてこの問題を調査することになりまして、公聽会を開きました。公聴会にはわが方からも向うで依頼してあります弁護士あるいは二世の方等が出て、いろいろと日本事情を訴えて抗弁をしてくださつたわけでありますが、冷凍ブラインと打割つた話を申し上げますと、冷凍の方は、アメリカでもぜひ日本冷凍買つてカン詰をつくらなくてはならぬ生産者相当におるわけであります。従つて税金を上げてはいかぬということについての見方がカン詰よりは相当多いということなのであります。そこで関税委員会における公聽会の模様を情報によつて判断いたしますと、相当効果はあつたけれども冷凍と比較すれば、やや日本側意見の発表の方が力が弱いという感じが受けられるそうであります。そこで公聴会終つたのでありますが、公聴会終了委員が約二箇月にわたつて実地調査をするそうであります。その上で関税委員会としての意見をまとめて大統領報告をするわけであります。その後において何らかの措置がとられるのであります。その措置と申しますのは、これもいろいろ情報によつておりますので、非常にはつきりしたことではないのでありますが、たとえばアイスランドとの間にブラインというものの協定があるのでありますけれどもアイスランドアメリカがこの協定をした当時はツナ・ブラインというものはなかつたのであります。従つてこの協定の中にはそういうものが含まれていないという解釈もすれば成り立つわけであります。必ずしも協定廃棄とまで行かなくても、そういう解釈によつてアメリカの方からアイスランド通告をして一定の期間を経過すれば、それは協定から除かれるのではないかというような説もあるようでございます。大統領といたしましては、愼重に関税委員会調査せしめまして、協定の破棄なりあるいはそういう方法をとるなりされるのではないかと思うのであります。そこでわれわれといたしましては、現に平塚さんが冷凍カン詰代表として向う行つて、いろいろと各方面への運動をされておりますが、平塚さんの情報によりましても、やはり関税委員会意見を決定して大統領に行くまでの間で、何とかこれを食いとめなくてはならぬ、また大統領行つた場合でもそういう措置をとられないように、いわゆる国際政治問題として考えていただく以外に道はない。これは平塚さんがおいでになる前から、お互いの間でそう考えておりましたが、平塚さんの御報告もまさにその通りなのであります。そこでわれわれとしては、ぜひとも議会方面におかれましてもこの問題を特にお取上げ願つて、やはり日本の輿論を十分にアメリカ側に反映していただくようにお願いしたいのであります。過般冷凍業者カン詰業者まぐろ、かつお漁業者一体となりまして対米輸出まぐろ対策協議会というものを、結成して、高崎さんを会長として相当大きな運動を展開しておるのでありますが、この運動効果はある程度上つておると思います。ということは、平塚さんの情報によりましても、昨年の暮れごろには、冷凍についてもカン詰についても立ちどころに税金を上げられることがほぼ必至だというよう情報が盛んに参つたわけでありますが、その後協議会といたしまして、いろいろとアメリカの各方面へ働きかけました結果、過般関税委員会公聽会においても、また冷凍まぐろ上院における公聴会におきましても、これに反対する意見もかなり強力に出たそうであります。従つてこれが下院で通過し、あるいはブラインを四五%に引上げるというようなことが立ちどころに行われるという情勢は、大分緩和されたと思うのでありますが、いずれにいたしましても、冷凍もまたブライン相当税金をかけられました場合には、非常に輸出は困難となりまして、かりにこれを輸出する場合には、結局、そのしわ相当漁業者に寄つて行くという結果になるのではないか。そうした場合においては、日本水産業振興という建前から申しましても、非常に重大な問題になるのじやないかと私ども考えるのであります。もちろん税金が上りますと、冷凍業者カン詰業者も、かりに漁業者しわを寄せたとしても、相当やりにくくなり、ほとんどできなくなると言つてさしつかえないと思う。  なお冷凍のことは立川さんから專門的にお話があるかと思うのでありますが、日本ツナ産業全体といたしましては、やはり冷凍カン詰が常に並行して輸出されない場合には、決して健全な姿ではないということが、過去の実績によつて明らかなんであります。たとえば一昨年はカン詰が非常に盛んに出たものでありますから、冷凍の方としては非常にやりにくい状態であつたわけです。一方昨年はカン詰がほとんど輸出できませんでしたために、今度は一時冷凍の方はやりよいようにも見えましたけれども、だんだん伺つておりますと、やはり買いたたかれるとか、あるいはクレームをつけられるとか、何だかんだして決して円滑な輸出はできなかつたわけであります。方漁業者といたしましても、カン詰冷凍が同じような歩調で買われた場合に、初めて漁業者としても採算もある程度いいでしようし、安心して仕事もできるんじやないか。  そこで私ども考えますことは、現にアメリカのある報告等にちよつと名前が載つております。がツナ・ボート・アソシエーシヨンのチエアマンであるチヤツプマンさんの思想は、油づけにも塩水づけにも、それから冷凍にも、またペルーから入るそうだがつおのカン詰にも、その他南米から入るツナ類に対して、平均して税金をかけるということを、根本に持つておるようでありますが、具体的に申し上げますれば、われわれとしては現在冷凍は無税、それからカン詰の塩水づけは一二・五%、そうして幸いにして通商協定等によつて、油づけカン詰がせめて一昨年の二二・五%に引下げられるならば、非常に日本ツナ産業としては健全な姿になるのじやないか。私が冷凍のことを申し上げるのも何でございますが、カン詰の方は、御案内の通り、安い労働力が加工賃としてその中に含まれますために、アメリカよりも非常に有利な点があります。そういう点を考慮しますならば、平均といつても、冷凍にはやや低く、カン詰にはやや高くても、平均はとれると私は考えるのであります。従つてぜひとも冷凍無税、塩水づけは一二・五%、油づけは二二・五%ということになりますならば、非常に健全な輸出ができるのじやないか。もちろん、この塩水づけにつきましては、アメリカ生産業者としてはいろいろな事情で、それではおれの方でもやろうということにならないのであります。というのは、日本では手で詰めておりますが、非常にきれいに詰まるわけであります。アメリカはマシン・パツクであります。油を詰めた場合には表面がある程度落ちつくのでありますが、塩水の場合は落ちつきませんから、マシン・パツクだと非常にきたなくなる。外観が非常に悪くなりますので、日本のまねをして、塩水づけをしても、競争にならぬのじやないかと思います。そんな関係も多分あつてアメリカ業者は塩水づけをつくろうとしないのであります。従つてわが国業者としては、もし油づけを二二・五%に引下げられるならば、塩水づけは好んで輸出する必要もないし、また向うさんの御意見がそういうことであれば、自粛すればいいのじやないかと思うのであります。  要するに、先ほどの松田さんの御意見にあつた、業界としても反省しなければならぬという点につきましては、十分考えておるのでありまして、幸いその後の情勢から申しまして、ある極度事業者団体法独禁法等の取扱いにつきましても、現実の問題として少しは緩和されつつあるという事情もございますので、カン詰といたしましては、過般販売会社をつくりまして、なるべくこの会社を通して、販売ルートが乱れないようにしようということで、目下資金のことで銀行の御了解を得つつあるわけでありまして、大体順調に進んでおるわけであります。  一方政府におかれましても、貿易管理令を改正されまして、場合によつて向う市場を乱さないように、無理に押し込まないように、この辺がいいというようところで数量のチエツクをする。またダンピングを防ぐための価格のチェックをするということになつて数量の点ではまだチエツクしておりませんが、価格についてはすでに通産省がこれを実施しておられるわけであります。日本側といたしましても十分反省の誠意を示しておるわけでありますから、願わくは、アメリカ側においても、日本の非常に苦しい、また経済自立の上からぜひともまぐろ輸出をある程度アメリカになさねばならぬという観点から申しまして、まぐろ産業の安定を日本のために考えていただきたいと、われわれは願つおるわけであります。  もちろん、過般の大会におきましてリツジウエイさん、副大統領である上院のバークレーさん、それからダレスさんがこのことについては非常に関心を持つておられたようであります。それでそれぞれ嘆願をいたしまして、運動をやつておるわけでありますが、アメリカ新聞等に相当日本の立場を表明するような記事でも載ればいいのでありますけれども相当の金を使うなり、何なりしなければ、なかなかそういうことも困難であります。できれば、今後のこともありますので、政府当局におかれましても、議会等の関係においてまぐろ産業のために、場合によつてはある程度の予算をとつていただいて、宣伝費と申しますか、そういう有用な道に使い得る相当の額をおとりきめでも願つたら、安定策に非常に効果があるのではないか。業界といたしましては、まぐろについてはいろいろなことで非常に金を集めてやつておりますが、いかんせん、経済の浅い日本業界といたしましては、アメリカとまつたくけたが違つております。アメリカ業者はこの反対運動のために何十万ドルという金を立ちどころに集めて、強力にやつております。われわれの方では、過般アメリカ運動費として送つたのがわずかに一万ドルであります。こんなことではとても金では対抗できないのでありますが、せめて政府におかれましてもそういう点に御留意願つて、予算でも御計上願えたならば、幾らかでもこの問題解決のために有効に使えるのじやないか、これはお願いとして申し上げるのであります。
  8. 川村善八郎

    川村委員長 次に国際水産株式会社社長立川直三郎君の御意見を承りたいと思います。
  9. 立川直三郎

    立川参考人 私は国際水産株式会社の立川直三郎であります。御指名によりまして私どものこれまでとつて来ました冷凍まぐろ輸出について最も簡単にお話を申し上げたいと思います。  ただいま川浪さんからまぐろカン詰輸出に関して、沿革その他今日問題となつたことにつきましてるるお話がありました。冷凍まぐろ輸出に関しましても、大要はすでに川浪さんのお話で盡きていると思いますので、重複することを避けまして、簡單に冷凍まぐろ輸出に関し、その沿革と、どういうわけで今日の問題が起つたか、なお今後しからばどういうふうにわれわれ業者は考え、希望を持つておるかということをお話申し上げて、御参考に供したいと思うのであります。  冷凍まぐろ輸出は、第一次世界大戦のころにアメリカではびんながまぐろが非常にたくさんとれたのでありますが、中途でこれが少しもとれなくなつた。せつかくアメリカ業者がびんながまぐろはマーケット・プロパビアリーがないというので非常に販売に苦心をいたし、その力によつて非常な販路の拡張ができましたが、原料となるびんながの漁獲がにわかに減退したので、当時私がアメリカにおりましたが、アメリカカン詰業者から、ぜひ日本から冷凍まぐろ輸出してもらいたいという話がありまして、それから日本に照会いたしました。ところがびんながも輸出するだけの量はとれないと申しましたが、その当時日本ではびんながの値段は非常に安い。一方これをカン詰にして、ホワイト・ミートというてアメリカでは非常に需要があるので、これは非常に高く売れている。だから、これは輸出貿易としては日本に最も有効なものであるという見地から、日本における業者の方といろいろ折衝いたした結果、冷凍まぐろがだんだん輸出されるようなつたわけであります。爾来数千トンの冷凍まぐろ輸出されておりました。これは少しも問題も起さず順調に輸出を継続しておりましたが、同時に日本におきましても、冷凍で出すのもいいがカン詰にして油づけのホワイト・ミートを輸出したらどうかという二、三業者のお考えからして、初めて冷凍まぐろの油づけカン詰輸出が始まつたわけであります。そこで、さきに川浪さんもちよつと触れられましたが、だんだん二百万箱、三百万箱と売れ出しましたが、当時はアメリカの需要もそうたくさんではなかつたために、それだけのわずかな数量が出ましてもたいへんなセンセーシヨンを起しまして、そのときはもちろんあまり安く売つたわけではないのでありますが、向うの方のパッカーは脅威を感じたわけであります。そこでこれは四五%の税金では困るから輸入禁止的関税をかけろということになりました。それで日本の方では、すみやかに対策を講じなければならぬというので、カン詰業者代表冷凍の方の代表アメリカに送つて向う業者と話合いをしようということになつて、私もその代表の一員としてアメリカに参りまして、アメリカ水産局の局長、かん詰業者水産当局方々日本から行つた代表といろいろ話をしまして、そこでいわゆるクオータをきめたわけであります。それが一九三二年だつたと思います。まずカン詰は三十五万箱くらいがよかろう、冷凍の方は三千五百トン、そのかわりカン詰に対してはそれを固く守つてくれるならば、アメリカとしては関税を増すということはやめようということで、その了解のもとにずつと輸出をして来たわけであります。  ところ向うの需要によつてカン詰冷凍もだんだんふえて来るという大体の経路を踏んで参りました。そして終戦後輸出再開になりまして、アメリカの方ではまず冷凍とんぼの輸入を非常に懇望いたしました。そのときはあまりたくさんなカン詰も出なかつたのでありますけれども、まず冷凍の方がおもであります。先方のカン詰業者は、戦争中相当利益を得たとみえまして、相当高い値段冷凍も買つてくれる、従つてカン詰相当出るということになつたのであります。当時考えてみましても、冷凍カン詰もあまりに値段が高かつたのでありますが、向うで要求するままに出したという経過になつたのであります。それはたしか一九四九年だつたと思いますが、とにかく日本からの油づけのカン詰相当たくさん出るので、アメリカの方では、こうたくさん来られても困る、しかも値段が逆に安い。アメリカ業者の油づけのカン詰と、日本から行く油づけのカン詰とは、まず一箱についてニドル五十セント、三ドルも違うではないか。これではアメリカ業者は立ち行かぬ。こういうよう誉とでごうごうと非難が出たということに立ち至つたのであります。これは向うの主張でありますが、実際においてカン詰業者はさように申しますけれどもアメリカの市民、つまりコンサーマーは、いずれも安いものを供給してもらう方がいいというようなことも、これは見のがしのできぬことであります。しかしカン詰業者としては、そう安く売られたのでは、まぐろカン詰市場を破壊するものだというような問題がまず起つたわけであります。その当時冷凍まぐろについては別に問題はなかつたのであります。ところが一昨年カン詰の問題が安売するとかなんとかいうので、たくさん来ては困るというようななことで、それは関税引上げて——引上げるというよりも、四五%というのは、戦前にも四五%であつたのを、元の大統領のルーズベルトが、戦争中にどうしても各国からできるだけ食糧を輸入しなければならぬ。しかもアメリカの漁撈というものは戦争によつて大部分減つた。しかも需要は戦争中たくさん需要があるのだから、これはメキシコからもまたどこからも、とにかくあらゆるカン詰輸入しなければならぬ。むしろ外国からの輸入を奨励しなければならぬ。それについては輸入税も半分にした方がよかろうというので、臨時的にあの処置をとつたように私は了解しております。それで日本からも戦後四五%の半分の二二%の税金であるから、従つてカン詰もたくさん出た。そういうことになつてつたのでありますが、申し上げましたようにこの安い税金では、たくさん日本から安く来ては困るというようなことから、結局は元の四五%にもどした。従つて日本カン詰はこれでは輸出ができないというので、御承知通りその輸出額は非常に減退した、ほとんど輸出ができなくなつたというような次第であります。それがにわかにカン詰が来なくなると、冷凍の方がこれまではせいぜい——びんちようだけから話を申し上げますと、年に七千トンから七千五百トンの輸入であつたが、それがにわかに一万五千トン、一万六千トンというようなことになつて来たのでは、カン詰が来なくなつたと思つたら、冷凍がたくさん乗出したというようなことから、まず冷凍に対してパウンド三セントの税をかけなければ困るというようなことが起りまして、御承知通りちようどサンフランシスコで平和会議がありました当時、大統領トルーマンが来られる機会に、漁船が寄りまして金門湾で大デモンストレーシヨンをやつたというようなことになつたのであります。これはまず冷凍に対する課税はいかぬというデモンストレーシヨンであつたが、結局下院の方に一年に六十ドルの課税をするという案が提出されてそれが通過した、こういうよう事情になつて来たわけであります。これはいずれにいたしましても、先に川浪さんが言われたように、日本といたしましては、カン詰にしても冷凍にしても別々に考えてはいけないのである。だからお互いにカン詰冷凍も一緒になつて対策をしなければならぬということで、先にお話なつような対米まぐろ輸出対策協議会というようなものができまして、まずこの関税を撤廃してもらいたい。そしてまぐろは以前通りフリー・デユーテイでやつてもらいたい。カン詰の方は相かわらず元の半分の二二%にしてもらいたい。問題になりましたブレインの方は税金をやはり一二%にしてもらいたいということを、対策協議会において決議して、ただいま代表を送つてその対策について運動しておるわけであります。  以上申し上げましたよう事情でありますが、こちらから申しますならば、アメリカの方としても、大体年に二十万トンという魚をとるならば、現在のカン詰の需要に対して十分だろうが、それをアメリカカン詰業者たちは、戦争中の非常な利益を得たのに気をよくして、いつもあんなにもうかるのだというようなことから、事業的に厖大なる資本を投じて、二百三十隻も大きな漁船をつくり、しかもそれには飛行機をつけ、いろいろ非常な金のかかる漁船をつくつて原料をとるというような計画を立てたのでありますが、一方においては、一体カン詰の需要というものがどこまで行くものであるかというようなことを考えずにやつたものであり、いずれにしても先方の事業計画においてたいへんな齟齬があつたのじやないかというふうに私どもは考えているのです。そこで私らに言わせれば、これは自家中毒を起したので、これは先方の人たちも大いに反省して、事業面から考え直さなければいけないのじやないかと思う。それを日本冷凍まぐろは安く売つたのだ、カン詰は安く売つたのだ、カン詰は安く売つたかもしれませんけれども冷凍まぐろも安く売つた、ダンピングしたと言つてそれを種にして税金をかける、あるいは輸入を禁止するということに出るのは事実無根なことで、ずつと統計をとつてみましても、アメリカ業者がきめました値段というものは二百五十ドル、三百ドル、三百五十ドルで昨年あたりは売つてつたのであります。日本から行きますのは、やはりびんちようにいたしましても三百二十五ドル、三百五十ドル、これはFOBでありまして、それに六十ドルの運賃をかけますと、先方のこしらえております値段よりもはるかに高い値段で、向う業者は買つている。これは問題でない。これを日本から来るのが安売りしたということは絶対にないわけです。これは皆さん新聞雑誌でも、またいろいろのニユースでも御承知通りであります。そこヘアメリカの人たちは、何だか無根なりくつをつけてここに課税云云ということになつておるわけなのでありますが、こういうことはいずれにいたしましても、問題がそこまで来ましたのでありますけれどもアメリカ業者たちが、そういう間違つたことを宣伝の材料としてやつておることはまことに遺憾でありますが、同時に日本においてもどういう対策を今後講ずるか。さきに松田さんからも、こうなつ原因一体どこにあるかということをおつしやいましたが、内地においては、カン詰にしても冷凍にしても、先方の方の事情もよくくみまして、われわれ業者問題においては、製品をつくるにあたつて、お互いに競争して、いいかげんなクレームのつくようなものをこしらえてはならない。何らかの方法によつて一定の数量なら数量を——製造業者の割当とか何とか、そこには官庁の方の御指導もあつて、はつきりしたよい品物をつくりて行く。カン詰においても同じことをやる。ここにおいてアメリカの方でカン詰がこれだけいるというのなら、また冷凍がこれだけいるというのなら、これに対して制限をつける必要はないでしようが、送る以上は内地における統制——統制というとおかしいが、各業者の自粛によりまして、クレームのつかないようなりつぱな品物を、適当な数量を自分たちで話し合つてつくつて輸出する。そうして今後こういう問題の起らないように、また内地の業者の自粛自制をはつきりと了解させることができるならば、アメリカ業者も得心して、今後円満なる取引ができるものと思います。従つてこれを法律とか何とかで制限することなく、業者の了解によつて、円満なる取引をもつて日本カン詰なり冷凍まぐろの将来の輸出増進をはかるようにいたしたいということを私の希望として申し上げておきます。
  10. 川村善八郎

    川村委員長 この際川浪、立川参考人の御意見に対して御質疑があれば、これを許します。
  11. 松田鐵藏

    松田委員 日ごろわれわれ水産業界として最も尊敬している立川、川浪両氏から、いろいろこの内容について御説明を承つたのであります。たいへんありがたく参考になるのでありまするが、私は立川さんにお伺いしたいと思います。速記をとめていただきたい。
  12. 川村善八郎

    川村委員長 速記をとめて……。     〔速記中止〕
  13. 川村善八郎

    川村委員長 速記を始めて。  時間の関係上、参考人に対する御質疑はこの程度にとどめます。  次にまぐろ関税に関する件につきまして政府委員及び説明員に対し御質疑があればこれを許します。二階堂君。
  14. 二階堂進

    二階堂委員 ただいま立川さんからいろいろな御意見がありましたが、事態がここに立ち至つた原因は、私も一昨年七月から十二月までアメリカに参りまして、いろいろな貿易業者とも懇談をして参りましたが、日本における業者自体も自粛自戒しなければならぬ問題が多々あるものと推察して参つたのてあります。この点につきましては、わが国といたしましても、政府当局もそれぞれの立場から指導監督はして来られたはずだと考えております。しかしながらなお一面またアメリカにおいても、日本水産に対する認識が不足しておる。あるいはダンピング等の問題につきましても、アメリカ輸入業者自体が、非常に日本の一部を撹乱するよう態度に出て来ておつたということは事実であります。これらの問題を解決するためには、双方の了解の上に立つて円満に問題を解決し得るような努力を業者自体もやらなければいかぬ。特に今回の問題に対する反対、もちろん反対を強く主張いたしておりまするのは、太平洋沿岸における業者であると私は承知いたしております。これらの業者業者同士の隔意なき意見の交換も行つて、特にまたアメリカ日本経済再建、自立を真剣に考えておりまするならば、深く日本経済の現実を見きわめまして、特に経済再建の上に重大なる役割を持つておりまするこの日本水産の上に、一段の考慮をアメリカ政府としても、また業者としても拂うべきであると私は考えております。大体向うにおいては、政府並びに業者一体となつて日本の問題を考えるし、また日本業者並びに政府当局、それぞれの指導的立場にある人たちが協力して、これらの問題を具体的に解決して行くような努力をいたさなければならない、かように考えておるわけであります。これらの問題につきまして、ただいま業者方々からいろいろ御意見がありましたが、私は、時間の関係もありまするので、ごく簡單に、生産者の立場を指導監督せられるような——監督と言うと語弊がありますが、めんどうを見ておられます水産庁当局から、これらの問題についてどういうようなお考えを持つておられるか、またいかなる指導を今後やつて行こうと考えておられるのか。あるいはまた輸出関係方面をいろいろ考えておられます通産省当局において、今後こういうような法律がもしアメリカにおいて実施されますならば、これは先ほどから申し上げておりますように、日本国民経済の上に及ぼす影響がきわめて甚大であると考えるのでありますが、これらの問題につきましてどういうようにお考えになつておるのか、見通しをどういうふうにつけておられるのか、もしこれらが実施されるといたしますならば、このアメリカ日本に対する方針は、今後やはりアメリカの対日貿易の政策をある程度基礎づけるものではないか、方向を示すものではないかとすら私どもは考えるのであります。これらの問題について、通産省の当局はどう考えておるのか、あるいはまた外務省当局は、現在において独立はいたしておりません。従つて国と国との正常なる交渉はいたす立場にはないのでありますけれども、しかしながら在外出張所もありまするし、ワシントン、ニユーヨーク、サンフランシスコあるいはロスアンゼルス等にもそれぞれの事務員もおるわけでありまするが、これらの方々を通し、どういうような手を打つておられるのであるか、あるいはまた日本政府といたされましても、いかようなる対策を考えておられるのか、こういう問題は單に——今後たくさんの国と通商協定を結ばなければならぬ日本であります。特にまた韓国との問題も起つておりまするが、これらの問題等も考えてみまするときに、これはきわめて重大なる問題だと私は考えておるのであります。従つてこれらに対するところ対策なり、あるいは今後の方針をどういうふうに考えておられるか、それぞれの立場から、ひとつ簡單に御意見を承りたいと考えております。
  15. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 外務省及び通産省の方からは、それぞれお話があることと思いますけれども、私の方で今考えておりますところは、やはり今までの経緯からいたしまして、向う関税の問題は、これはもちろん関税自主権というものを持つておるわけですから、話合いの問題ではなくして、一方的にきめられる、こういうふうな関係にあるわけで、独立国なれば、いろいろ外交的な申入れ等も行われ得るかもわかりませんけれども、そういう関係上からして、アメリカでこの関税の問題が審議される際に、向う公聽会その他を開かれるときに、そこを通じて、日本関係業界意見を十分反映するようにすることがいいというふうな考え方から、われわれの方もあつせんをいたしまして、利害関係に幾らか差異はあるかもわからないけれども、この際大同団結して対米輸出まぐろ対策協議会というふうなものを民間につくつていただいて、それを中心にして関税委員会等に間接に働きかける、こういう形態を中心にいたしまして、そのほかは外務省系統の在外事務所その他との連絡によつて、できるだけこの日本側意見が反映するように働きかけておるという状態でありまして、なお今のところそういう方針を継続して行くつもりでおります。  それから内部的な問題は、先ほど川浪さん、立川さんから詳細な御説明がありました通りに、品質の問題については、現在は抜取り検査というふうなことになつておりますけれども、ほんとうに業界の自粛が不徹底であるならば、これは強制検査というふうな形へ持つて行かなければその全きを期し得ないわけですが、これにはもちろん予算の問題も、それから検査人員の問題も関係するわけでございまして、今そういう点について、そこまでの必要があるかどうかというところは検討中でございます。それから価格あるいは数量等について、日本の方でも、あまりに向う市場に対する影響を自由のままに放任しては困るのではないかというふうな点についても、これは政府の方で貿易管理令等によつて価格や数量を調整するということは考えられるわけでございますけれども、メーカーの方からしますれば、やはり数量等については、価格ももちろん関係があるわけですけれども、やはりその生産の計画をきちつとして、工場数も非常に多いわけでございますから、自分の生産のうちどのくらいのものが輸出に向けられるかというおよその想定がつかない限りは、企業として非常に危険性が多いわけです。ことに輸出の比重の非常に高いものにつきましては幾らというふうな——それは全体の数量ではなくて、メーカーとしては、自分が幾ら出せるかというふうな形になる。その数量が相当決定的な意味を持つて来るわけで、それについてはどうしても政府調整措置だけではなくて、民間である程度の内部的な調整が講じられなければ円滑には進み得ないのではないか、こう考えられますが、それらの機構というふうなものになりますと、どうしても独禁法ないし事業者団体法などがそれの制約になつて参りますので、その仕組み等についても、私はことし就任したものでございます。けれども、前々からいろいろと業界と協議をしながら検討を続けておるわけでございますが、今のところ非常に困難が多いというふうな状態で、なおこの点については、日本側のそういう措置だけではなくて、輸出先であるアメリカの方の受入れ関係も考えた場合に、あちらにもまた同様なシャーマン法等がありまして、向うの方の措置もなかなか円滑につきにくいというよう状態にあるので、その点のやり方については、なおよく研究してみないとはつきりしたこれといつたきめ手がまだ見つかつていない、こういう状態にあるわけでございます。先ほど立川さんの方からちぐはぐになつているというふうなお話がありましたが、そういう点から見て、この問題の処理の仕方というのは非常に困難が多い。しかしながらこれは何らかの形で解決して行かなければならぬ、こう考えてはおります。
  16. 川村善八郎

    川村委員長 ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  17. 川村善八郎

    川村委員長 速記を始めて。
  18. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 対米輸出まぐろ関税問題につきましての従来の経過については、今日お手元に九ページに詳しく書いた資料を配付申しましたので、十分これについてごらんを願いたいと思います。  なお最近の公聽会の模様としましては、塩水づけのまぐろカン詰に対しましては、先ほど川浪さんの方からも申されました通り大統領直轄の関税委員会の方で、一月二十八日から二月四日までの間審議が続けられました。この公聽会の空気は、一般的に申しますれば、日本側に必ずしも有利ではなく、塩水づけの関税引上げについての反対論が弱かつたようでありますが、公聽会終了後におきまして、この委員会としましてはなお約二箇月くらいの予定でもつて実地調査をやつて、結論をまとめて大統領に答申する、そういう模様であります。アイスランドの方との協定関係なんかについて、どういう方向に今後進んで参りますか、その辺は今日まだわれわれ通産省としましては不明でございます。  次に一番当面の問題としまして重要な冷凍まぐろ関税公聽会につきましては、上院の歳入委員会において四日から開始になり、七日に終了に相なりました。四日にはカー氏あるいはミリヘン氏というような両議員の方からは、日本に対しましてむしろ好意的な質問があつたようでありますが、第二日目におきましては、むしろ課税をサポートするような、そういう業者の証言がありましたようです。第三日目におきましては、国務省代表としまして経済担当の次官補代理のリンダー氏の方から、本件課税は中共貿易の制限によつて米国の方から主要原料あるいは主要な物資の輸入を必要とする日本の貿易、日本経済という点から、これは日本に対して非常に重大な影響を與えるものである、なおまた全般的に米国の対外経済政策について世界各国が不安を感ずるおそれがあるというので、国務省としましては、外交政策の見地から、この原案についてはむしろ反対であるという意見の開陳があつたようでありますが、そのかわりとしまして、場合によつては一定限度の数量を限つて、その限度内の輸入についてはこれを無税とし、その数量を越える分についてはポンド当り三セントを課税するという妥協案の提起もあつたように聞いておるのであります。この詳細、正確な内容につきましては、われわれとしましてもいまだつまびらかにいたしておらないのであります。なおこの公聴会は七日に終了いたしたのでありますが、この委員会は約二週間以内に報告書をつくる模様である、そういう情報をわれわれは受取つおります。  今後の見通しにつきまして、われわれとしましては、どういう結果に相なりますか非常に注目しておるところでありますが、われわれ通産省としましては、もちろん従来も対米輸出まぐろ対策協議会等を中心としまして、米国の朝野の有力者方面にこの法案の成立をチエツクするような陳情還続けて参りましたし、またワシントンの在外事務所を通じまして、アメリカの国務省方面にも日本事情をつぶさに詳しく申しまして、理解を願つて参りましたし、またさらにGHQの外交局を通じましても、当方の外務省とも連絡しまして、同様に先方の善処を要望して参りました。この阻止につきましては、今後あらゆる手を盡して十分な方策を講じて参るつもりであります。  日本側の態勢の確立と申しますか、当方としまして、貿易行政を担当する通産省としまして、今後どういう対策を考えておるかという点でありますが、この問題勃発以来われわれ通産省としましては、全般的な貿易政策の一環としまして、輸出組合法案と申しますか、貿易組合法案をなるべく早く制定したいという考えを持つて参りましたが、先刻来お話がいろいろありましたように、事業者団体法独禁法との関係がありまして、関係方面の了解は容易に得られなかつたわけであります。しかし米国におきましても、いわゆる独禁法の例外としましてウェブ・ポマリン・アクトというように、少くとも輸出に関しましてはそういう例外的な方法を講じておるのでありまして、わが国としましても、少くとも輸出貿易に関して、一般的な独禁法事業者団体法の例外としまして、自由公正な競争の維持という観点から、そういう法案ができないわけはないというふうにわれわれとしては考えるわけであります。なおこの問題につきましては、いろいろ関係方面交渉その他微妙な点もあるのでありますが、通産省事務当局としましては、でき得れば本国会にでもそういうような法案の提案をいたしたいという希望を持つて、準備はいたしておるような状況であります。なお今日までの方法としましては、そういう業者の団体というか、輸出組合ないしは貿易組合というような団体によりまして、業界の自主的な協定といいますか、数量、値段についての協定がどうしてもできないという状況にかんがみまして、便法として輸出貿易管理令の承認品目といたしまして、九月二十五日にカン詰輸出貿易管理令の要承認品目に追加をし、また十二月十五日には、冷凍まぐろにつきましても輸出貿易管理令の要承認品目にしていただきまして、輸出貿易管理令の運用によりまして、値段のチエツク、値段の適正な保持という方法を講じておるような状況であります。なお合後の問題につきましては、先方の業界の方との円満なる交渉によりまして、もしできます場合は数量の協定をし、数量あるいは値段等につきまして、輸出貿易組合ないしはこれに準ずるような機構をもつて業界の自主的な適正な協定によつて、この問題の打開改善をはかつて参りたいというふうに考えておるわけであります。  なお品質の点につきましては、先ほど水産庁長官の方からお話がありましたが、輸出品取締法の第四條の品目といたしまして、すでに冷凍まぐろカン詰につきましてもその法律の対象になつておるわけでありますが、今日の段階といたしましては、民間の検査あるいは政府の検査は全面的な強制検査では必ずしもないので、今後の検査制度の運用につきましても、一層有効な方法を講じてみたいというふうに考えまして今後この問題につきましても、水産庁方面とも十分に連絡をとつて参りたいと考えております。
  19. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 まぐろ貿易を初め水産業が今後の日本経済再建、貿易進展に重大な関係を持つておりますことは、先ほど来お話のあつた通りでございます。外務省におきましては、ただいま関係各省と緊密なる連絡をとりまして、関係方面等にもあらゆる資料を提供いたしまして、実情を訴えておる次第でございます。また業界代表いたしまして、平塚さんが向う行つて朝野の理解を深めておりますことも御案内の通りでございます。それから在外事務所等在外機関を通じまして、こちらの情報は十分に向うに送つておりますし、また向う情報をキヤツチするようにこれまた努力しておる次第でございます。御案内のように、この問題につきましては、米国消費者一般にも若干の異論があり、また国務省当局においても一部に異論もあるようでありまして、この問題の将来に対しましては、各方面に緊密な連絡をとりまして善処したい、かように思つております。先ほどちよつと話が出ましたが、米国識者の中からも、米国の対外通商政策の九局的見地からこの冷凍まぐろカン詰類に関してラテン・アメリカ諸国を含む関係諸国と商議すべしというような提案もあるようでありまして、政府といたしましては、日米両国産業の共存共栄の立場から、満足すべき結果に到達させるべくせつかく努力をいたしおる次第でございます。
  20. 松田鐵藏

    松田委員 先ほど川浪さんからいろいろとお話があつた中で、私の一番重要な点だと思うことで、業者が今日苦しい立場に立ち、アメリカでも非常に大きな政治問題としてこれを論議しておる。しかして日本においても議会で輿論をつくつて、この問題を善処してほしいというお話があつたのであります。ただいま水産庁長官及び通産省の局長からのお話も承りましたが、今日水産委員会においてこれを取上げるよりも通産省は通産省の立場において、この問題はこうなつておるから、業者はこのように苦しんでいるということで、水産委員会なりまたは通産委員会なりに、むしろ事務当局の方から先んじて論議してもらわなければいけないのではないかと考えるのであります。どうか石原政務次官においても、今日の国会の状況をよく御理解くださつて、こうした問題ばかりでなくいろいろな問題があると思うのでありますので、どうか政務次官会議においても十分とお話をしていただいて、善処されんことをお願いするものであります。官僚は官僚の独善で進むようなことがあつたならば、国家の不利益となり、業者が苦しむことと存ずるのでありまして、私の考えている点を石原政務次官にお願いしておく次第であります、
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 漁業問題は重要な問題だと思いますが、先ほどから業者の皆さんの意見も聞いたのでありますが、第一に私たちが率直に申し上げたいことは、この問題が起きたのは、自由党の松田さんの言われるように、業界の諸君がクレームつきの悪い品物をダンピングで持つて行つたことが重大な原因だとはわれわれは考えられないのであります。結局日本漁業の発展を何とかして制限したいというのがアメリカの本心で、これから問題が出ているようにわれわれは考えざるを得ないのであります。この問題は一業者の責任で解消することは私は間違つているのではないかと思うのであります。その具体的な問題として、占領下の状態のもとに日本の利益を十分守るような自主的な漁業協定が結ばれるはずはないと思うのであります。従つて日米加漁業協定の内容を見ますと、ほとんど公海の自由すら制限されている。こういう屈辱的なとりきめがなされているのであります。従つて今後太平洋方面に対する日本漁業の発展は期待できない。こういう日米加漁業協定にさらにフィリピンあるいはインドネシアあるいは韓国ですら、これにならつて日本漁業制限させよう、封じ込めをさせようという方針をとつておるのであります。ただ開かれているのはソ同盟、中国方面であります。     〔発言する者あり〕
  22. 川村善八郎

    川村委員長 お静かに願います。
  23. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで中国、ソ同盟方面だけは、むしろ挑発的に幾らでも行けという。しかも何らの講和関係も結んでおらず、漁業のとりきめもなく、マ・ラインの問題についても何らの話合いもなくて……。
  24. 川村善八郎

    川村委員長 林君に御注意申し上げますが、まぐろ関税に関することを議題に供しておりますので、議題に直接関係のある問題を御質問願います。
  25. 林百郎

    ○林(百)委員 海上保安庁では、本年度二千トン級の巡洋艦をアメリカから下付を受けて、この巡洋艦の保護のもとで実力で北洋漁業に行けという。拿捕船問題だとか、いろいろな事を構えて、中国、ソビエト方面には、挑発的な漁業をさせて……。
  26. 川村善八郎

    川村委員長 林君に再び御注意申し上げます。まぐろ関税に関する問題を議題に供しておりますので、それについて御質問願います。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 日本漁業制限する日米加漁業協定から端を発してまぐろ関税問題も出ておるということは否定できないと思う。従つて私は政府に、こういう方針があるかどうかということをまずお尋ねしたいと思います。  第一には、日米加漁業協定の問題については、まず日本が完全なる自主権を保持しておるという條件のもとにとりきめをすべきものであつて、少くとも占領下、アメリカの軍隊が日本を占領しておるという状態のもとに、日米加漁業協定というものは結ぶべきものではないということ、第二は、ソ同盟、中国と友交関係を結んで、この方面漁業日本の将来の発展への出口として、話合いのもとにこの漁業協定を結ぶということ、そうしてもしアメリカがそのよう関税を設けて、日本漁業の発展を制限するならば、われわれはすみやかに中国、ソビエトとも貿易関係を開き、アメリカがドルをくれないというならば、われわれは何もアメリカにばかりたよらず、このようなこじきかあるいは盗人みたいな取扱いを受けることから脱してもつと対等な立場でものの言えるような自主性を確保するために、中国、ソビエトとも友交的な関係を結んで、中国、ソビエト、アメリカ、その他の国際的な関係で自主的な立場から貿易のできるような方向に持つて行くということを考えておる。政府はこういう点についてどう考えておるかということであります。  もう一つは、やはり……。     〔「そんなことはもう小委員会でやつたんだ」と呼びその他発言する者多し〕
  28. 川村善八郎

    川村委員長 お静かに願います。     〔「宣伝をするな」と呼びその他発言する者多く、議場騒然〕
  29. 川村善八郎

    川村委員長 委員長は林君の発言を停止いたします。石原委員
  30. 石原圓吉

    石原(圓)委員 このまぐろ関税問題につきましては、水産議員連盟よりダレス顧問に対して懇請をいたしたところが、まことに懇切ていねいなる御回答が参つておるのであります。これによりましても、日本側が紳士的にあくまでも持続してやつたならば、私は必ず曙光を認めるものと思うのであります。どうかこの点は紳士的にあくまでも協力一致してアメリカに対応するよう態度をとつていただきたいということを切に懇望するものであります。ことにすでにまぐろの漁期に入りまして、その前後より関税問題が起りましたので、まぐろ漁業者は非常な恐怖の中に出漁をしているわけであります。このために一回沖合いに出て、もしなわを流したならばもうその次の漁業準備ができない、金融の面からも資材の面からもやり得ないというよう状態になつてまぐろ漁業者は非常な危機にひんしております。その上にもう一つ困つたことは、カン詰業者その他が、その生産原価の点において関税を負担するものとしての生産原価で製造をしておられるか、免除されるものとして加工をしておられるかという点が重大なる問題であります。私はおそらく常識的に考えたならば、その中間をとつて関税をとられてもとられなくてもそのそろばんが合うという程度の加工をしておるのではないか、それが最上であつて、最低の方面ではまず関税をとられるものとして加工をしておるというのが相当あるのではなかろうかと思います。こういう状態が続いてだんだんとまぐろの価格が安くなつて、その結果は大部分のまぐろ漁業者が休むことになるでしよう。こういう場合において、水産庁及び外務省、通産省はどういう手段をとるか。まずつくるところのこの輸出カン詰の保持をすることである。関税問題が解決するまで必ず保存して、一品も輸出しないで確保するところの金融措置が必要であると思います。またその金融措置をつけなかつたならば、資金に耐えられなくてこれまでのように濫売をしたならば、再びアメリカの同情を得て関税問題の撤廃などということは、思いもよらないと私は思うのでありますが、これに対してどういうお考えを持つておるか、一応承つておきたいのであります。この問題に対しては、国際的ないろいろな事情影響あると思いますから、この席で許される範囲の御説明は求めますが、それ以外は他の機会に譲ることを承認いたします。
  31. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいまの石原委員からの御質問にお答えいたします。一つ対策として、まぐろカン詰問題がアメリカの方で不利にきめられた場合の措置としては、十分考えられる措置だとは存じますけれども、ことにびんちようまぐろようなものになりますと、輸出の比率が七〇%から八〇%ということで相当大きいので、金融の関係でどこまで手を打てるかというふうな点については、十分検討した上でないと、この場で今のところ御即答できないよう状態にあります。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は、先ほども申し上げましたように、現在におきましては、これが好転するように、まず朝野をあげて努力しなければならぬと思うのであります。もし不幸ただいま石原委員からお話よう事態に立至るようなことがありますれば、これは関係各省、大蔵当局も加えて、十分研究いたして遺憾のないよう措置をとらなければならぬものと思います。
  33. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 ただいまの御提案はなかなか大きな問題でありまして、幸い今日関係業界代表からなる対米まぐろ協議会等にも十分御相談を申しまして、また関係方面農林省、外務省方面とも十分連絡しつつ愼重に考えてみたいと存じております。
  34. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私はこの場合政府に対して、私の所見を参考に申し上げます。それは最近に設けられたところの繭糸価格安定法であります。生糸なるものは保存の方法において永続性を持つておる。それにもかかわらず日本の重要産業であるから価格を調整する法律ができる。しかしそういう考え方は、それ以上にこの輸出カン詰並びに輸出真珠等には絶対に適用すべき性格のものであると思うのであります。この点は各省において研究せられ、これが実現の一日もすみやかならんことを強く要望いたしておきます。
  35. 二階堂進

    二階堂委員 時間の都合もありますが、委員長にちよつとお願いをいたしたいと思います。この問題は、共産党の方からの御意見をまつまでもなく、きわめて重要な問題を包含しておる性質のものでありますので、あらためてまた委員会を開かなければならぬと思います。そして各省の方々根本的にお尋ねしてみたい点も多々ありますので、後日また委員会を開いてこの問題を取上げられんことを要望いたします。
  36. 川村善八郎

    川村委員長 委員長からお答え申し上げます。本問題は非常に重要な問題でありますので、次会もしくはごく最近の委員会に再び取上げたいと思つております。     —————————————
  37. 川村善八郎

    川村委員長 次に日韓漁業協定に関する件について石原委員より発言を求められておりますので、これを許します。
  38. 石原圓吉

    石原(圓)委員 さきに調印を見ました平和條約第二十一條によりまして朝鮮との間においても、同條約第九條にいう漁業協定の締結について、すみやかに交渉を開始する受益の権利を有することになつておることは申すまでもないのであります。この線に沿つて日韓両国の修好條約及び懸案の諸問題について協議するための日韓会談が本日より開かれ、韓国との漁業問題についても交渉が始められるように聞きましたが、韓国と本邦との漁業関係はきわめて重大である。しかも韓国の漁業なるものは、明治初年よりわが日本漁業者が開拓し、指導して今日をなしたのであります。韓国における漁業なるものは、船もなければ漁具もないという実情であつたものを、日本の技術、資本、漁具、漁船等を供給して、最近に至るまでも漁業労働者以外は全部日本の指導によつて発達したものであります。従つて日本の韓国沿岸に投資したものは巨額でありまして、数字を調べるにも容易でなかろうと思うのであります。ここでよく了承をしておいていただきたいのは、最近台湾が漁業日本の指導を仰ぎ、資本その他の協力を仰いで来ております。フィリピンにおいても同様であります。その他南洋諸島も、日本の資本的、技術的協力、漁具、漁船等の供給を得て漁場を開発しようとしておることは、私が説明するまでもないのであります。またロシヤの沿海州におきましても、あの盛んであつたカン詰は、みな日本漁業者が漁獲し、それらの加工をしたのであります。ロシヤであろうが朝鮮であろうが、中国その他いずれの国も漁業は下手であります。加工も経営もすべて下手なのでありまして、漁業に関しては日本が真心をもつて指導してやらなければ、世界全体の水産の増強をはかることはできないと私は思うのであります。外務省といたしましては、これらの問題を十分お考えになつて国際的な問題で水産問題が犠牲になるようなことは絶対にないとは思いますけれども、幾つかの條約を締結する場合に、ややもすると水産問題が犠牲になるおそれはないかということを非常に杞憂するのであります。これは日米加漁業協定のときたも私はその感を相当深くしたのであります。外務省としては、どの條約も結ばなければならぬから、円満協調主義で行くということは、一つの形式としてやむを得ないかもしれませんけれども水産庁においては、このことに毅然たる態度でなければならぬと思うのであります。藤田前長官が、日米加協定のときに大なる努力を拂つたことはわれわれは認めるのでありまして、今後これ以上の努力を塩見新長官に特に私ら要望するのであります。たとい外務省との間に、相剋摩擦とは申さなくとも、相当の軋轢があつても、今日水産以上に日本が世界的に発展する産業はないと言つていいのでありますから、その覚悟で新長官は見えられたことと思いますので、はなはだ過言のようでありますけれども、ここに特に要望を申し上げておく次第であります。  この問題は時間の関係その他によりましてあまり長くやれませんので、次の機会を得てさらに発言を求めたいのでありますが、さしあたり李承晩大統領の独善的声明は非常に不合理なるものであります。これに対して外務省からは相当強い反撃と申しますか、反駁的の意見が出たようでありますが、これが最初だけであと腰くじけが行つたらたいへんであります。その情勢が今日どういうことになつておりますか。またこれは外務省と水産庁だけでなく、衆議院、参議院側、その他民間側の総合した知識と意見とを集結して事に当る必要がないか、その点をまずお伺いいたしたいのであります。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま今後やります日韓交渉についていろいろ御意見、御要望があつたのでありますが、いずれもごもつともな御意見と拝承いたしました。水産業が今後の日本経済再建の上に大きな地位を占めますることは、当局といたしましても十分了承しておるのでありましてそこらは念頭に置いて今後の折衝に当ることと思うのであります。  ただいま李承晩声明の問題についてお尋ねがございました。これは、今日までの経過につきましては、大体新聞で御承知と思うのでありますが、突如ああいう声明が出ましたので、外務当局日本政府といたしましても、これに対する反駁的声明を出しておることも御承知通りであります。また書簡をもちまして向う代表部にもこのことを申し入れておりますが、日本といたしましても、従来の国際慣習となつております公海自由の原則はあくまで堅持して行かなければならぬと思うのであります。ただ将来いろいろの水産資源の保護という面につきましては、科学的調査その他によりまして、両国の話合いで十分なる資源の保護、確保をはかつて行かなければならぬことも、これまた一つの必要なことではないかと思います。また今後両国がそれぞれ友好善隣の立場において緊密な関係を持たなければならぬことは申すまでもないことでありますから、技術援助その他の指導的方面においてもあらゆる協力をしなければならぬ、こういうことも考えて行かねばならぬと思うのであります。以上申し上げましたよう考え方によつて今後の折衝が続けられるものかと思つております。
  40. 川村善八郎

    川村委員長 この際皆様にお諮りいたします。日韓漁業協定は、公海漁業に非常に重要な問題でありますので、これを公海漁業に関する小委員会に付託いたしまして十分審議を進めたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 川村善八郎

    川村委員長 それでは御異議ないものと認め、さようとりはからうことにいたします。
  42. 石原圓吉

    石原(圓)委員 もう一言簡單に発言をお許し願います。私の申し上げたい要点は、日本の漁民は漁業に最も適正な体質、性格を持つておるから、他のどの国よりも非常に能率を上げ得るというこの点に十分諸外国が着眼してもらいたい。御承知ように、今出ておるまぐろ船は、わずか百トンから二百トンまでのものである。それへ五十人、六十人の人が着の身着のままで乗り込んで、沖へ出て、二十日も三十日もそのまま家族に面会もせずに沖合いで働いて来て、魚を揚げたらまたすぐに沖へ行くのであります。こういう忍苦に耐える漁業者は世界にないのであります。この漁業の能率を上げることは、だれが考えても日本人でなければならぬと思うのであります。それがもし日本を排斥することになれば、その国はことごとく漁業は廃滅になると私は思うのであります。この韓国にもあまが多数におります。それが発達して来た時分には、もう韓国の漁場はとるがままですから荒廃に帰しまして、そのあまが日本の沿岸に来て日本漁業までも荒らした時代があるのであります。その後朝鮮の各地に水産試験場ができ、日本から指導者が行つていろいろ保護繁殖を加えた結果、元のように朝鮮からはあまがやつて来ない。日本も安全に沿岸の漁業がやれるということになつたわけであります。この実例は無数でありまして、私は盡きないほど材料を持つておりますが、時間の関係でこれにとどめます。ただいかなる国際情勢にいたしましても、漁業というものは日本が独特のものを持つておる、これを利用することが世界的の水産業の発展であるということにあくまでも着眼されて善処せられんことを要望する次第であります。
  43. 川村善八郎

    川村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。  これにて散会いたします。     午後一時十八分散会