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1952-02-07 第13回国会 衆議院 水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月七日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 川村善八郎君    理事 小高 熹郎君 理事 田口長治郎君    理事 林  好次君 理事 佐竹 新市君       鈴木 善幸君    田渕 光一君       冨永格五郎君    原 健三郎君       松田 鐵藏君    水野彦治郎君       井之口政雄君    青野 武一君  出席政府委員         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整第一課         長)      尾中  悟君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         農林事務官   亀長 友義君         專  門  員 杉浦 保吉君         專  門  員 徳久 三種君     ————————————— 二月七日  委員木村榮君及び佐々木更三君辞任につき、そ  の補欠として井之口政雄君及び青野武一君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月六日  小泊漁港修築拡張工事施行請願山崎岩男君  紹介)(第四九八号)  佐世保湾内夜間漁業禁止及び障害物被害による  損害補償請願田口長治郎紹介)(第五三  四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する  件に基く水産関係命令廃止に関する法律案  (内閣提出第一四号)  小型機船底びき網漁業及び旋網漁業取締に関す  る件     —————————————
  2. 川村善八郎

    川村委員長 これより水産委員会を開きます。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案議題とし審査を進めます。本案につきましては前会提案理由説明を聽取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑通告がありますのでこれを許します。田口君。
  3. 田口長治郎

    田口委員 今議題となつておりますポツダム宣言に基く政令によつて、現在問題となつております漁船、すなわち裁判中の漁船、そういつた漁船の数はどの程度にあるのでございますか。また問題にならないで本政令によつて処分された件数は何件ありますか。
  4. 塩見友之助

    塩見政府委員 現在までにマツカーサー・ラインによる操業区域制限に関する総違反被疑件数は、GHQから違反事実を指摘されたものが百七件、当局の方の監視船違反事実を指摘したものが八十四件で、計百九十一件であります。そのうち当局から許可を取消されたものの件数が十六件、当局停泊命令等行政処分をなしたものが五十四件、廃業したもの十六件、始末書を提出したもの十六件であります。検察庁に告発された件数百件、うち起訴された件数は五十七件、不起訴のものが十七件、未定のものが二十六件であります。起訴された件数のうち、無罪判決のあつたものが二件で、懲役、執行猶予及び罰金の判決のあつたものが十一件、裁判中のものが四十四件でございます。
  5. 田口長治郎

    田口委員 ただいま数字的によく承つたのでございまするが、今の御説明によりますと、現に起訴中のものが相当あるように考えるのであります。また裁判決定によりまして、体刑に処せられておるものが相当あるように想像するのでございますが、幸い講和條約批准によりまして、国家が国民全体に喜びをわかつ上におきまして、非常に広範囲な恩赦の制度を発動するということを聞いておるのでございます。これはポツダム宣言政令による違反でもございますし、ことにこの点につきましては、水産庁といたしましてはすでに研究し、また手続をしておられると考えますが、手続中であるとすれば、その手続をどの方面にどの程度に進行されておるのでございますか。また水産庁がお考えになつております恩赦につきましては、大赦程度であるか、あるいは特赦の方法をとつておられますか、あるいは減刑の方法をとつておられますか、そこらの点をおさしつかえない限りにおきまして詳細に承りたいのでございます。
  6. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいまの問題については、法務府の方の中央更生保護委員会に詳細な統計及び事情等を十分連絡しておりまして、当局の方としては、可能な範囲において、できるだけの恩惠が與えられるような方向お話を申し上げておるわけでございます。私直接にそうたびたび折衝をしておりませんので、その係の方がおりますから、必要があればお答えさせたいと思います。     〔速記中止
  7. 田口長治郎

    田口委員 本政令によりまして行政処分をされた船が、裁判の結果司法処分としては無罪なつた、かかる場合におきまして、この行政処分の問題につきましては、水産庁当局としてはいかようにお考えになりますか、その点お伺いいたします。
  8. 亀長友義

    亀長説明員 理論的に申しますと、行政処分司法処分は別でありまして行政処分に対して不服がある者は、それぞれそれに対する不服の行政訴訟を提起し得ることになつております。また現在そのような処置をとられておる業者もあるわけであります。従いまして司法処分行政処分とは一応関係のないものとして、われわれの方では取扱つて行く方針であります。現在のところ無罪なつ判決が二件あるのでありますが、このようなものに対しましては、行政処分は全然なされておらないものがちようど無罪なつたような結果になつております。将来どういう結果が出て来ますか、これは裁判の結果を見ないと何ともいえないわけでございます。
  9. 田口長治郎

    田口委員 行政処分司法処分が全然別個のものである、理論的にはさようあるべきことを私らも承知しております。ただしかし法治国民といたしましては、最後のところにおいて罪があるかないかということは、行政庁決定にあらずして司法決定でなければならぬと思う。従つてかりに中間におきまして嫌疑のために行政処分をされた人がありといたしましても、最後司法処分において無罪決定があつた場合におきましては、理論的には行政処分司法処分と別でありましても、司法処分従つて措置さるべきものだと私は考えるのであります。また起訴中のものが非常にたくさんあるようでございますが、この中にはおそらく行政処分をされた者で司法処分として無罪になる者がたくさん出て来ると考えるのでありますけれども、いかに考えましても、最後決定司法処分である、司法処分意外にわれわれが罪を決定される点はないと思うのでございます。これは行政訴訟の問題その他もありましようが、大体において法治国国民というものは司法処分によつて決定する、こういう観点のもとにお役所として処置をされなければならないと思うのでございますが、この点について長官はいかようにお考えになりますか、
  10. 塩見友之助

    塩見政府委員 一応司法処分行政処分とは別個のものでございますので、行政処分としての要件を備えていれば、行政処分はそれで正しいと認めざるを得ない法律的な関係にあると思われます。
  11. 田口長治郎

    田口委員 あの以西底びきの整備案をつくりましたときと当局がかわつておりますから、その点いかがかと思いますけれども、あのときにその問題について業者水産庁当局といろいろ折衝した問題があるのでございますが、最初から司法処分行政処分に優先する、こういう原則が認められまして一応行政処分はするけれども司法処分によつて刑決定する、言いかえますと、無罪なつた場合におきましてはその行政処分は復活させる、こういう打合せになつてつたのでございますが、人がかわりましたから役所方針がかわつてしまうということは想像できないのでございます。この点は業者とその当時の当局との約束、協定もありますし、現在の当局にもそのことが引継がれるべきであつて人がかわつたからその約束がなくなつてしまうということには、私は考えたくないのでございます。この点につきましては別に書類はありませんが、少くとも関係業者はそういう話合いでやつておる。こういうことをみな承知しておりますが、塩見長官はその話について引継ぎを受けられたか、あるいはそういう話を聞いておられるか、こういう点について重ねてお伺いいたします。
  12. 塩見友之助

    塩見政府委員 それは司法処分の方が法律的にはしつかりした形のものがどうしても多くなると思いますので、司法処分の方の証拠方法その他によつて行政処分要件相当変動が来るような場合も想定されますし、その他いろいろ情状等の重い軽いによつてもある程度の動きはあると思われますので、そういう場合には行政処分において情状の酌量をやる余地は相当あると存じます。私の先ほど申し上げましたのは、純粋な法律的な解釈として申し上げたので、事実上の問題としてはそういう点は考えられると存じます。前前からの引継ぎがあるかどうかというお尋ねに対しましては、今のところはつきりとした引継ぎは受けておりませんけれども、そういうかなり細密にわたるような問題についてまでは、私受けておらなくても、係の方で当然そういう点は引継いで前の方針を続けて行く、役所方向としては、特殊な、方針をかえたということがない限りは引継いで行くものとお考えくださつてさしつかえないと思います。法律的にいえば、そういうような意味で、情状を酌量することは当然考えられると思うのです。
  13. 田口長治郎

    田口委員 恩赦の問題につきましては、水産庁は相当御努力を願つておるということも承知できましたし、行政処分司法処分の問題につきましても、大体私らが考えておるような線に沿つておられるように了承いたします。この二点がはつきりいたしましたから、私の質問はこれで打切ります。
  14. 川村善八郎

    川村委員長 他に御質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて打切り、別に討論通告もありませんので、討論を省略いたし、ただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 川村善八郎

    川村委員長 御異議なしと認め、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  16. 川村善八郎

    川村委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案に対する報告書作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 川村善八郎

    川村委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。
  18. 川村善八郎

    川村委員長 次に小型機船底びき網漁業及びまき網漁業取締りに関する件を議題とし審査を進めます。漁業法に基く小型機船底びき網漁業及びまき網漁業取締規則内容につきまして政府当局より詳細な御説明を願います。
  19. 尾中悟

    尾中説明員 まず小型機船底びき網漁業取締規則の問題につきまして御説明申し上げます。この規則省令でもつて公布されることになつておりますが、内容につきましては、前に小型機船底びき網漁業処理要綱というのをお手元に差上げまして、御説明したわけでございますが、この中で大臣の方で直接省令をもつて規定しなければならない事項だけに限定いたしまして、この省令内容としておるわけでございます。内容につきまして逐條的に御説明申し上げます。  第一條は、小型機船底びき網漁業分類をしておるわけでございまして、手繰網については第一種から第四種まで、打瀬網については第一種から第四種まで、九号においては以上の各号以外の小型底びき網漁業、こういつた九つの分類になつております。これらの小型機船底びき網漁業地方名称は、地方によつて相当異なつておりますので、その点につきましては都道府県知事が県の告示でもつて関係者に明示する、こういうことになつております。  第二條は、禁止海域または禁止期間の問題でございます。これは原則といたしまして処理要綱にもございましたように、都道府県知事において関係海委員会意見を聞いて決定するわけでございますが、瀬戸内海のように対県関係が複雑でございまして、ある海面についてどの県の管轄に属するか、あるいは二以上の管轄に属しておるようなところも相当あるわけでございまして、そういつた場合には大臣が直接禁止海域なりあるいは禁止期間をきめることもできる、こういうことになつております。この禁止海域禁止期間につきましても、大臣が指定しました場合には、告示をもつて一般に公示するということになつております。  第四條は、禁止漁法及禁止漁具の問題でございますが、二そうびきによる小型機船底びき網漁業は、これを禁止する、但し農林大臣が指定した場合には、例外として認める場合もあるということになつております。第二項においてはいわゆる滑走装置を備えたけた、マンガと俗称されておりますが、そういつたものとか、網口開目板、そういういわゆる相当能率的なものであつて、資源に対して悪影響がある、こういつたものにつきましては直接この第四條の規定によりまして禁止されることになつております。  第五條以下、第六條、第七條、第八條、第九條につきましては、これはこの條項によりまして、許可船違反した場合、あるいは無許可船違反した場合に、碇泊命令をしたり、あるいは検査をしたり、さらに船長等に乗船の禁止命令を出したり、あるいは無許可船につきましては漁撈装置陸揚げ命令を出したり、こういつた小型関係のいわゆる漁業調整をやつて参ります上に、取締り上必要な行政措置をとる根拠になる規定を書いておるわけでございます。  第十條におきましては、この漁業につきまして報告を聴取することになつておりますが、その場合には、瀬戸内海漁業調整事務局なりあるいは水産駐在所を経由いたしまして農林大臣報告をとる、こういう規定でございます。  第十一條、第十二條、それから第十三條は、違反船所有者なりその経営者に対する罰則の規定でございます。附則はこの省令施行に関しての必要なる経過的な事項を記載してございます。  もう一度重ねて申しますと、この省令は、この前御説明いたしました小型機船底びき網漁業処理要綱の一部の、農林大臣が直接規定しなければならない事項のみを取上げまして、ここで規定したわけでございまして、そのほかの事項につきましては、各県の漁業調整規則なりあるいは小型に関する調整規則によりまして今後各県において規定する、こういう仕組みになつております。  以上をもちまして小型関係省令説明を終ることにいたします。  次にまき網の問題でございますが、以前まき網につきましてはまき網漁業調整要綱というのを御説明いたしておるのでございますが、ただいまこの要綱に従いまして、省令を検討中でございます。まだ成案を得ておりませんので、御説明する段階にまで至つておりませんけれども、近く成案を得ることと思いますので、その際詳しく御説明いたしたいと思つております。
  20. 川村善八郎

    川村委員長 本案につきまして質疑があれば、これを許します。松田君。
  21. 松田鐵藏

    松田委員 二つの点があるのでありますが、第一に、ただいま尾長課長から、まき網に対しての成案がいまだ整備されていない、将来において成案を待つて説明しようというお話でありますが、この点はさきに海区制が水産庁の試案として出された点があるので、沿岸漁業においてはこれが相当論議されておるような傾向があるのであります。私ども水産委員会といたしましても、休会を利用して、国政調査またはあらゆる角度から調査をしておるのでありまして、この漁業法一部改正法律案を十一月一日に提案されたときにおいて、川村委員が特にこれを指摘し、漁業調整地方漁民において相剋摩擦の起るようなことがあつてはいけないということで、この調整要綱を発表する場合においては、当委員会とよく協議をすることを條件としておいた。條件というような言葉が強過ぎましたならば別でありますが、とにかく協議を完全に遂げて、将来問題を惹起しないようにしたいという意思表示を当委員会として述べておるのであります。これに対しても水産庁松任谷部長は、さようにあらゆる点における協議を進めて成案を出したいという意思表示をされておるのでありますが、今日においても水産庁長官は同様な御意見を持つておられるかどうか、その点を承りたいと思います。
  22. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいまの松田委員からの御質問に対しましては、これはその立法上、将来においても内容的に非常に重要な事項を含んでおりますし、従来通り十分な御説明をし、御協議をいただいて、十分納得行くような形で進めて参るのが一番いいのじやないか、こう思つております。
  23. 松田鐵藏

    松田委員 水産庁意向もわかつたので私どもは満足するものであり、あらゆる点に対して協力し、協議を遂げて、りつぱな成案をつくりたいと存ずるのであります。  次に第二の質問は、小型機船底びき網漁業処理要綱におきまして、紀伊水道特殊事情を勘案し、二十馬力以下に限定する。但し当分の間三十馬力までのものの現状を認める、かような内容になつておりますが、この点今までの紀伊水道の問題に対する考え方に対して、当局はどのようにこれを考案されてかようなものになつておるか、この点を承りたいと思うのであります。すなわち第六国会、第七国会、第八国会において、最も論議されたものは紀伊水道特別海区の問題であつたのであります。当時私どもは当委員会において、この紀伊水道の問題に対して協議を遂げ、しかして自由投票をするまでに論議をかもした問題であります。しかして衆議院は通過し、参議院においてこれを握りつぶしにされたものである。さてその当時における紀伊水道漁民のわれわれに対する陳情意向というものは動力廃止するということであつた。ここにおいて田淵委員まつ先になつて動力廃止し、しかしてあの海区の魚族の保護をして、漁民の生活を安定せしめるという議論をせられたのであります。当委員会においても、それほどまでに漁民が真剣になつて海区を守ろうということであつたならば、これこそ漁民としての最も勢烈なる自己の生存を確保するための声である、かような見地からこれを議決したものであります。しかるに今日瀬戸内海においては十馬力紀伊水道においては二十馬力というような馬力をもつてここにこの要綱を設定するということは、今までの歴史、当委員会においても論議された事情を、水産庁は何と考えておるのか。無動力ということはかりにしないとしても、紀伊水道瀬戸内海と同じ十馬力くらいのことであつたならば、私ども漁民意思を代表して当然しかるべしと考えるのであるが、どういう論拠から二十馬力ということを出されておるか、この点に対する当局説明を願いたいと思うのであります。
  24. 尾中悟

    尾中説明員 御説明申し上げます。今松田委員から御指摘になりましたように、瀬戸内海においては原則として最高馬力は十馬力紀伊水道においては二十馬力というふうに差をつけております。これは御承知のように、紀伊水道におきましてはその海域の状況なり、あるいはその近辺で操業する漁船の実態も内海と相当異つておりますので、水産庁としましても種々調査をいたしたほか、内海連合海委員会意向も十分にしんしやくいたしまして、こういつた措置をとつたわけでございます
  25. 松田鐵藏

    松田委員 海区調整委員会がどのような答案をされたか知りませんが、漁民は無動力でもいいと言うておる。沿岸漁民の代表が国会をも動かして無動力でいいと言明しておる。当地区選出の代議士である田淵委員もその当時おられた。海区調整委員会が二十馬力だとか三十馬力だとかかりに決定しても、漁民そのものが無動力でいいというものに対して、何のために二十馬力としなければならないか。この議論が私はわからぬ。海区調整委員会意見が是か、漁民意見が是か。進歩がある今日において、十馬力の小馬力でもつて自己の海区を育成しながらやつて行こうという考え方ならばそれでもよかろう。しかし漁民みずからが無動力でいいと言うのに何の海区調整委員会議論か。私ども当局の二十馬力以下ということに対しては絶対に賛成はでき得ない。あなた方もかつてこの国会において、自由党においても自由投票をあえてしたほど議論が出ておつたことをはつきり認識されておるだろうと思う。十馬力瀬戸内海の船はどうして紀伊水道まで行き得るか。やはり十馬力であつたならば、その湾なり海区なりで操業する以外にないだろう。しからば紀伊水道は独立した海区と同様な結果を来すのである。大阪湾から紀伊水道まで行くのに何海里の距離があるか。現実において十馬力であつたならば、大阪湾漁民というものは紀伊水道へ出漁することはまず不可能であろう。そうしたならば所期の目的たる紀伊水道特別海区というものは、実質的に認められたと同様の結果になつておると私は思う。その当時において無動力でもいいということで当委員会陳情なつた。さてそれならば、ここで二十馬力というような海区調整委員会議論などというものは何を考えているか。調整委員会はなぜかような議論をしておるか。この点に対して私は海区調整委員会議論が正しいか、漁民意見が正しいか、当委員会意見が正しいか。水産庁はよくその点を判断して、初めて無動力ないし十馬力の限度をもつて設定すべきものであると考えるものでありまするが、この際他の委員諸君の御意見——幸いに地元から出られている田淵委員もおられるので、その御意見も私はここで承りたいと思います。
  26. 林好次

    ○林(好)委員 日本漁業は、戦時中から戦後にかけて非常に秩序のない略奪的な漁業を行つて参りまして、司令部からも日本政府は五ポイントの勧告を受けております。それらのことにかんがみまして、この小型手繰船の整理をここに出されたものでありまして、私は漁業秩序を保持する上におきまして、非常に適正な法律であるとは思いまするけれども、しかしこの法律が制定されまして実施いたしますあかつきにおきまして、政府ではそれぞれ転廃業であるとか、あるいは希望者があれば船も政府が買い上げて魚礁に使うというような、一応の保護政策は講じられておりまするけれども、しかし漁民というものは結局他に転業をするということはまことに困難なことでありまして、この整理に伴いまして、漁民をいかなる漁業転業をさせるかという対策が、水産庁に当然なければならぬと私は考えるのであります。北海道におきましても、全国に先がけまして、小手繰りを一千二百隻ばかり整理をいたしております。もちろん表面から見ますと、一応完全に整理がついたように見えておりまするけれども、実際私どもが現地に行つて見ますと、はたして完全に小手繰り整理ができておるかどうか、はなはだ疑わしい点があります。従いまして漁民がかり漁業をやめてあるいは自由労働者になるとか、あるいは農民になるとかいうことはおそらく困難なことでありまして、漁民転業するのにはやはり漁業に従事させなければならぬということが私は原則であろうと思います。従つて水産庁がこの法律を設定いたしまして実施いたしまするあかつきにおきまして、すなわち五箇年間で約一万五千隻というものが整理されるわけでございますが、その場合転業される漁民に対しましては、いかなる仕事を與えるかというような、水産庁長官のお考えをお伺いいたしたい、このように考えるものであります。
  27. 松田鐵藏

    松田委員 私はただいま林委員から述べられた議論はもはや盡きておると考えておるのであります。要するにこの整理をしなければならないということは、三万五千隻の小手繰り漁船があり、しかもそれらが十馬力や十五馬力ならいざしらず、二十馬力、三十馬力という大型にも類するような漁船使つて、ほしいままにやつておる。そこでこの海区というものは、ほとんど荒されて、もはや自滅の一途をたどるのみである。しかもそれにはマンガだとか、ヒコーキだとか、やれなんだとかというような禁止されておる漁具をも使つて、しかしてあの海区を荒してもるのである。これでは漁民は共倒れするより方法はない。かような見地からこの漁業法の一部改正の問題が起つた。しかしてこの漁船に対しては、ただいま林委員の御質問の通りの議論が幾たびとなく闘わされて、この議論はもう到達しておるのである。それならば今漁民をどこかへやろうとしたところで、漁民をやる場所があるか。農業にやろうとしたつて、農地法の制定ができて、農民として立つて行く道もない。また運送業をしようといつたところでも一発そうである。いろいろな観点からいつて日本国民全体が働くのに隘路があるということになる。それならばどういうようにこれを結論づけるかということになるが、政府で補償をいたし、比較的大型の漁船であつて、他に転換のできるものに対しては漸次これを整理し、真に漁民として生きんとする者を育成し、それを擁護して行かなければならないという結論においてこの法案ができ、予算化されたということは、もはやこれは論議がここまで到達して行つたということである。これ以外に方法がないという結論においてなされたものである。しかして水産庁においても、あらゆる角度からこの馬力を小さくし、船を小さくし、補償を與え、転業をさせるといつたことによつて、初めて海区というものが育成されて漁民の生活が楽になる。これ以外に方法がないということから、この議論が生れたものであり、もはや議論は到達しておるものと考えておるのでありますが、もつといい方法があるかどうか。水産庁において移民計画なり、またソビエトなりでも移民ができるというのであつたならば、これを御発表願いたいと存ずるのであります。この点ひとつ水産庁長官からお話を願いたいと存じます。
  28. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいまの林委員の御質問に対しまして松田委員から御意見の開陳がありましたけれども、大きな方向としては松田委員のおつしやる通りではないかと思つております。非常に遺憾なことでありますけれども、これといつて整理をされた漁民転業対策については、水産庁だけでは片づかない問題でありまして、政府全体で考えていただかなければならない問題だと思います。これといつたきめ手を持つていないことは遺憾でございますけれども、実情はそういうところにあると思います。幾らかでも地域地域によつて、あるいは産業の間で工業の方が起るとか、山林の方で造林が起るとか、いろいろなほかの方の産業も幾らか消長がございます。過去の統計をとつて見ましても、幾らかそういう点での移動というようなものは、漁業と他種産業との間にあるようであります。ことに瀬戸内海とか、また工場地帯を控えた所では、漁業と他種産業との相当大きな移動が統計面では出ておりますけれども、林さんのおつしやつておられるような北海道のあの地区などでは、かなり制限を受けるかもわからないと思います。そういう点でいくらか国際的な漁場が開放されて来れば、それが順次沿岸にもいい影響を及ぼすのじやないかと思いますけれども、それも先般御説明申し上げましたように、非常にがまんをしながらだんだん出て行くというふうな形しか、さしあたりの問題としては考えられませんで、そういう点からも相当大きな制約があるので、どうしてもこれといつた転業対策に対するきめ手はない。漁民としてはやはりなれた漁業というもので生計を立てたいという希望が多いことは明瞭たと思います。それに対しては、ある程度資源に余力があれば、そういう新しい資源に対する適当な操業方法なり何なりというものを検討した上で、そういう方向へ転換してもらうというのが、漁民にとつても一番望ましいわけですけれども、これはやはり海区海区によつてその條件も違いますので、できるだけの転業対策としてはわれわれも考えて行かなければならないと思つてはおりまするが、結局個々の問題に対しては、補償その他によつて個々の人にできるだけいい方法考えてもらうということで、法案を通していただいたような経過だろうと思いますので、その程度以上に出られないわけでございます。ただ小型底びきに対しましては、まだ事務的な折衝中でございまするけれども、失業保険その他によつてある程度乗組員等に対しても、さらに政府の方でもつて幾らかそういうふうな経費をまかない得る方法も今検討中でございます。それは結局それだけの転換に必要な金銭を差上げて、それで個々に考えてもらうという形で、まとまつてこれといつて政府できめ手をもつて処理するというところまで至つてないのは遺憾でございますけれども、そういう実情と思いますし、今のところそれ以上いい方法を持つておらないわけなのでございます。
  29. 林好次

    ○林(好)委員 松田委員のお説も私はよくわかりますし、長官の御答弁もよくわかります。しかし私は、水産庁の資源保存という考え方がきわめて消極的のように考えられるのでありまして、すなわち水産資源保護法も制定された次第でありますから、ともかくも資源の保護すなわち増殖事業ということに、今後はひとつ積極的に意を用いていただきたい、このように考えるものであります。  さらに委員長に伺いたいのでありますが、前国会におきまして水産資源保護法が制定されました。衆議院ではもちろん議員提出でありますから、満場一致で通過をいたしましたが、遺憾ながら参議院におきまして最も重要な水質汚濁の関係であるとか、あるいは保護区域、保護河川におきまする施設の関係におきまして非常な修正を加えられまして、あの法案が非常に骨拔きになつたということで、来るべき本国会におきましてはさらにあの法案を改正するという條件がついておつたように私は記憶をいたしておる次第でありまして、何としても遡河魚族あるいは滑岸魚族の保護ということに、水質汚濁の影響ということはまことに大きいのであります。これは陸上の産業が非常に振興して参りました関係上非常に影響が大きい。また私どもが内地方面の国政調査をいたしてみますると、水力電気のダムにおける遡河魚に対する影響というものもまことに大きいわけであります、いろいろな水質汚濁とかあるいは保護区域、保護河川における施設の関係というものは、水産資源の維持培養に非常に大きな影響があるのでありましてあの重要な十八條と四條を参議院で改正されて骨抜きにされておるのでありまして、私どもは本国会にどうしてもあの法案を、私どもが提案いたしました当初の考え方の強力なものに改正をしていただきたい、このように考えておるものでありますが、委員長の御意見をひとつ伺いたいと考えるものであります。
  30. 川村善八郎

    川村委員長 林委員のお説はごもつともであります。われわれも同感であります。従つてあの骨抜きにされた、すなわち限られて制定された区域内、もしくは汚濁の問題については農林大臣意見を聞かなければならないということを削除されたことはかえすがえすも遺憾であります。この問題については目下小委員会で検討中でありますので、成案ができますれば、それぞれ法律改正をするなりあるいは他の関係の法案を改正してもらうなりしたいと思つております。
  31. 田渕光一

    ○田渕委員 先刻松田委員から私に対する数回の発言がありましたので、ひとつこの点について、瀬戸内海における小型底びきの事情を申し上げたいと思います。これあるかな、私が三年前に議員立法として紀伊水道の海区を独立させなければならぬと言つたのはここにあつたのであります。これはむしろ三年前に漁業関係のない私がしろうと観からして、日本のほんとうの水産資源を確保するのには、各区域の耕地整理のごとく特別海区を切つて自治的な調整をする以外にない、こういうような観点からやつたのでありまして、御承知の通り私は事業は炭鉱であり、船一そう網一ぱい持つておるものではありません。ほんとうに日本の国家の代表的な水産資源というものから考えて、こうしなければならぬというところに打つたのが三年前、それがいろいろな政治問題あるいはまたみにくい問題、自分の選挙地盤の擁護というような小さい小乗的な、今日ほんとうに日本の政治界に恥かしいような政治家がおつたために、この問題が自由投票なつた。われわれはこの問題を決して政争の具に供しておつたのではありません。私は別に水産業でもなんでもないから、最も公平なる論をとつた。かくしなければかくなるぞということを三年前に予言した、そのことが今日このように来ておる。私は水産庁がこの漁民の実態というものを見る場合において、瀬戸内海に十馬力を認める、これは行政上やむを得ない。この紀伊水道特殊事情を認めて来たということはこれまたやむを得ないことだ。紀伊水道特殊事情を認めるならば、われわれは無動力でよろしいことははつきり断言しております。紀伊水道について今日こういう問題があるということは、これはよほど頭の悪いことである。私は思うに、委員諸公が今日それだけの発言をされるならば、この紀伊水道あるいは瀬戸内海に対して、あのときにもう少しく追加してやつてくれぬか。二回までも衆議院を通つたものが参議院で二度までもにぎりつぶされた。今度はいくら厚かましい木下委員長といえども、おそらくこの問題は通さなければならぬだろう。当時の神戸新聞が、たつた一人の田淵議員にまかしておいて、兵庫県の議員は何をしておるのだ、今度は必ず衆議院を通るだろう、ここまで書いておる。当時私は決して自分の政治とか何とかいうものでやつておるのではありません。そんな小さな人間ではありません。それをことさらに紀伊水道に二十馬力とかどうとかいう問題に対して、松田委員がふしぎと言われておりますが、紀伊水道特殊事情というものを認めるならば、なぜこの徳島県の北灘というものの特殊海区を認めておるか。御承知の通り北灘から来るところの船は、阿波の潮流によつて紀伊水道の潮ノ岬あたりまで流されてしまう。こういう意味でこれは来たものだと私は思う。私は專門家でないから専門的なことは言いません。われわれとしては、紀伊水道が独立するならば無動力でいい、これをやつてくれるならば今日喜んで受けるものであります。瀬戸内海の十馬力紀伊水道の二十馬力、船籍、隻数で行つたらどうなるか。十馬力を十五馬力にすることにおいて水産資源がどれだけ確保されるか、どれだけ濫獲されるか、パーセンテージをとつてみたらわかりますが、九五%まで瀬戸内海の底びき網ではないか。私はあまり言いたくないが、あまり田淵委員田淵委員と言うから言わざるを得ないので言つておるのであります。
  32. 川村善八郎

    川村委員長 皆様にお願いいたします。議員の間の議論は差控えていただくことを特に委員長からお願いいたします。井之口委員
  33. 井之口政雄

    ○井之口委員 この小型機船底びきの問題に関しまして、紀伊水道の問題が自由党内においても意見がわかれておりますが、かくあることはすでに三年前に私が予言しておるのであります。その当時特別海区にしようという意見が出て、それを当委員会が採択し、議会においてもそのことが決定せられるようになれば、瀬戸内海全体の漁民の真の生活に大きな影響を與えるものであり、漁業が不可能な状態に陷るほど荒廃するだろうということを予言し、自由党の内部においても半数になんなんとするような多くの賛成者を得たのであります。しかるに今日またまたこれを出して紀伊水道に特別のこの措置を採用して、二十馬力以下に限定するというふうに、瀬戸内海一般よりも十馬力くらい大きな船の操作を許すということになれば、これはただいま松田委員が正論をはかれました通りでございまして、紀伊水道特別海区にしてしまつて、あの当時通過し得なかつたところの陰謀をまたここに再発して来て日本漁業全体にも大きな影響を及ぼす結果に立ち至るようなことになると思うのであります。この問題は、すでに参議院においても反対者が多くて流産になつたわけであります。そういうものをこうして復活さして来るということはどうかと思います。これは自由党員の原健三郎氏でさえも処理することができない問題だと思います。この問題については、わが党は終始一貫漁民のために働いているのでありますが、こうした問題がここに再現せられて来るごとに対しては反対であります。長官においてもこの点をよく見きわめなければいかぬと思う。われわれ委員会では、長官のほかに先代からずつと続いてやつて来て、それだけの歴史を持つてごの問題を討議している。それなのに新しい長官がまたこんなふうな問題をここに来して来ておるということに対しては、われわれは反対せざるを得ぬと思います。  さらに関連しておりまするから、ここに重大な問題をちよつとお尋ねいたしますが、こういうふうな姑息なことをここに規定して、漁民に何とか小型機船の漁業、それも少し大きいようなものも許そうとする場合、その本旨はどこにあるかといえば、先ほどから松田さんも林さんもしきりに言及しておられます通り、日本の漁場が狭くなつて来ておるのに漁民はたくさん出て来ておる、これが行くところの漁場がなくて、非常に困難しているというふうな点が大きな原因だと思うのであります。今度いよいよ日米カの漁業協定もああいう形で行われておりますが、最も重要なことは、中国並びに朝鮮、ソ同盟、この沿岸に関係する海区の漁業がどうなつて来るかということであります。サンフランシスコ会議以来一月八日までの間に、三十二隻からが中華人民共和国において拿捕され、乗組員は四百五十人からに達している。こういうような状態があるにもかかわらず、政府としては、これに対して平和的に解決するという方針がないように思われるのであります。むしろアメリカの海軍によつて防衛されて、狩り出してさらに西の方に追いやつて行こうということを主張する人たちがおるらしいのであります。
  34. 川村善八郎

    川村委員長 議題以外のことは簡単に願います。
  35. 井之口政雄

    ○井之口委員 簡単にいたします。さらに漁船を防備しろという主張をされる人たちもあり、またひどいことになりますと、漁船の保険特別会計に大きな予算を組んで、昨年においては幾らでしたか、約三億六千万円で、赤字が八千万円も出ているような状態であり、今年は約七億円からを組んで、拿捕されたところの船主に対してはこれを補償するが、その乗組員に対しては、何らその家族に補償もやつていないということになつていて、行け行けということで、西の方に行つて海賊的な行為をやることを奨励するような政策をとつておるようであります。こういうことをやつている上に、この間の吉田総理大臣の書簡によつて明らかなように、蒋介石政府と條約を結んで、中華人民共和国を相手とせず、これと敵対するという方針を明らかにされて来るといたしますと、日本漁民は、戰争前と同じように、また戰争の先端に狩り出されて行つて日本国全体を戰争に巻き込むというようなことになると思いますが、こういう方針を……。
  36. 川村善八郎

    川村委員長 井之口君の発言は議題外でありますので、簡單に願います。
  37. 井之口政雄

    ○井之口委員 非常に重大な問題でありますために、思うことは山ほどあるのでありますが、簡単にしておりますから、委員長においてその点はひとつ了承あらんことを願います。日本国民の将来にとつてこれはまつたく黙視しがたいところの大きな弊害を残すものと思います。われわれこそは、平和を愛するところの党の綱領からしても、これを見のがすことはできないのであります。この点を水産庁においてはどうお考えになりますか。吉田総理大臣に対しては、予算委員会その他においてわれわれはその責任を追求しておるのでありますが、直接行政に当つている水産庁長官は、この問題をそういうふうに明確に認識されて、将来また日本の海軍の侵略的なことに漁民が使われるということに対して、これを阻止するところの意思があるかどうか、またどういうふうなことをされておるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  38. 塩見友之助

    塩見政府委員 日本漁民は、非常に狭い海区で、非常に資源不足で苦労しているというふうな関係からいろいろな問題があるわけですけれども、ただいまの御質問に対しては、大体前にポツダム宣言受諾に伴い発する命令廃止の法案について一応の御説明はしたところでございます。対ソ連、中共との関係については、今やつております線、また今後日米カ協定等においてやります線も、海賊的な行為だとは思つておりませんし、もちろん国際法上のいろいろな制約というふうなものは、十分考えた上で進めるつもりでおりますので、そういう性質のものではもちろんないというふうに思つております。拿捕その他についているく問題がありますが、これについては、水産庁の方としても、漁業者の方としても、一般的な意向としては、できるだけ摩擦が少く、平穏裡に操業ができることを希望しております。われわれもできるだけそういう線に滑つて、摩擦を少く持つて行けるように、事務的には進めたい。こう苦心してはおりますけれども、何分にも全体の国と国との全般的な外交上の問題から影響が起つて来るというふうな問題につきましては、これはわれわれのような、ただ事務を扱つておる者といたしましては、あまりに問題が大きく、私に御質問なさるのは無理なので、ちよつとお答えしにくいのであります。御了承を願います。
  39. 田口長治郎

    田口委員 ただいままで瀬戸内海馬力数についていろいろ議論があつたのでありますが、伊勢湾、知多湾及び渥美湾、この海区における馬力数につきまして、水産庁から十月三十日に配付になりました小型機船底びき網漁業処理要綱、それから同じ目に水産庁でおつくりになつたと思いますが、本日配付になりました要綱、この二つを比べてみますと、前に配付になりました伊勢湾、知多湾及び渥美湾においては十馬力以下に限定することを目標とし、当分の間二十馬力までの現状を認めるということになつております。今回配付になりました要綱によりますと、伊勢湾、知多湾及び渥美湾における小型底びきの馬力は二十馬力以下に限定するということになつて、両方の要綱が、同じ日につくられたにもかかわらず、たいへん内容が違つておるように考えるのであります。この問題につきましては、水産当局も御承知の通り、本委員会で非常に激論のあつた問題でございますが、どちらの要綱によつて水産庁省令をつくらんとされるのでありますか、また一方から一方に移つたとしますれば、その間の調査をされました事情、これがどういうことによつてかくのごとく変遷されたのでありますか、その点をはつきり御説明を願いたいと思います。
  40. 尾中悟

    尾中説明員 ちよつとお断り申し上げておきますが、本日御配付いたしました資料は、一月二十三日に作成したものでありまして、係りの者がちよつと誤りまして十月三十日というふうに書いておりますが、一月二十三日であります。従いまして本日配付いたしました資料によつて、今後水産庁としては馬力の制限を行つて参りたい、こういうふうに思つております。  前の馬力制限とかわつて参りました事情でございますが、この点につきましては、その後伊勢湾において連合海委員会を開きましてたびたび意見の聴取を行つたわけでございますが、その間の実情の調査に従いまして二十馬力というふうに限定いたすように改正したわけでございます。その事情といたしましては、まず第一に予算の問題でございますが、馬力の制限をいたしますと、当然その馬力を超過したもので制限馬力以下に機関換装ができない、こういつたものにつきましては当然整理されなければならぬということになるわけでございます。そこで予算とのにらみ合せというようなこともございますし、また連合海委員会意向も二十馬力以下に限定するという線に最終的に決定いたしましたので、水産庁といたしましてもこういつた事情を勘案した結果、こういうふうに改正した次第でございまして、この線に沿つて今後の施策を進めて参りたいと思うわけでございます。
  41. 田口長治郎

    田口委員 ただいま御説明の予算に関連した問題は、実は私はどうでもいいと考えておるのでございますが、この処理要綱の趣旨にどちらが合致するか、この問題で判断されてしかるべきだと思います。この点につきましては、当委員会におきまして非常に議論があつたということをひとつ御承知願つておきたいと思います。  第二に、これは少し無理とは思いますが、この小型底びきと無動力の打瀬が同じ海区において操業しております場合におきましては、漁場荒廃、いわゆる資源保護という意味からいろいろ漁獲物を調査してみますと、むしろ小型底びきよりもこの打瀬の方が各種の魚をとり、また稚魚を非常にたくさんとつておる。こういう事実があるのでございますが、たまたまこの処理要網に、小型底びきとして螺旋推進機を使う、こういう定義がありますから、この法案で無動力の打瀬を整理することはいささかむずかしいのでございますが、この小型底びきを整理をしなければならぬ。言いかえますと、資源を保持するという観点から申しますと、むしろ海区によりましては小型底びきを整理するよりも無動力の打瀬を整理した方が、魚の繁殖のために非常に有効である、こういうような海区が非常に多いのであります。いわんやこの無動力打瀬は非常に正直に往復の航海をするために動力をつけなかつた。同じ地方の打瀬でありますけれども、おうちやくな人間は無断で動力をつけておる。いわゆる無許可動力で打瀬をやつておる。正直だつたものはどうも困るけれども機械をつけない。こういうことで来たのでありますが、現在小型底びきと無動力打瀬と一緒に操業いたしますと、どうしても無動力の方には乗組員が来ない。こういう事情にありまして、経営にも非常に困つておる。さらに経営をいたしますと、魚の保護という点からいえば、動力小型底びきよりもなお大きな害を與えておる。こういう実情からいたしまして、魚をふやすという意味からいえば、この螺旋推進機を持つておろうがおるまいが、魚族の繁殖に害になるような打瀬は、これと同様に整理すべきものと考えるのでございますが、この法規の定義からいたしますと、いささか無理でありますけれども、資源を保護するというこの処理要綱の趣旨から申しましてこの点について当局として何かお考えになつておりますか、また整備するような方針を将来とらるべきものと思うのでございますが、現在いかようにお考えになつておりますか、その点をお伺いしたいと思います。
  42. 尾中悟

    尾中説明員 お答えいたします。この要綱でお示ししておりますように、今度の小型機船底びき網漁業調整なり、あるいはその減船につきましては、動力船による小型底びきだけに限定しております。これは決して無動力の打瀬等に関して水産庁として考えていないということではございませんので、やはり今田口委員から御指摘になつたような趣旨もよくわかるわけでございます。と申しますのは、無動力のものでも、藻場等で操業して資源に対して相当悪影響のある所も見受けられるのでございまして、こういつた問題につきましては、県の調整規則でもつて禁止期間なり禁止海域を指定し、そういう方面で調整をとつて参りたい。ただ減船という点につきましては動力船に主体を置いております関係上、今ただちにそれを対象として入れるということについては検討中でございますので、今後の問題として研究を続けて参りたいと思つております。
  43. 松田鐵藏

    松田委員 それから伊勢湾、知多湾、渥美湾における小型底びきは二十馬力以下に限定するということになつておりますが、この地区においては三重県と愛知県との協定が成り立つたことと存ずるのでありますが、その間におけるもつと小型の船の禁止区域を設けるのであるかどうか、二十馬力以下と十馬力以下との禁止区域を設けるという考え方であろうと私は思うるのであるが、この点はどのようにお考えになりますか。
  44. 尾中悟

    尾中説明員 ただいまの御質問の点につきましては、連合海委員会の種々現地の実態に即した検討が行われたわけでございまして、その結果として馬力別による禁止区域なり、あるいは禁止期間を区別して設定する必要はないだろうという結論に達しております。その前に、もちろんこの馬力制限につきましては愛知、三重両県の海区委員会なり、あるいは漁民の大多数の方の御賛同を得ていることは当然でございます。
  45. 松田鐵藏

    松田委員 大体においてわかりました。この要綱に対しては紀伊水道と伊勢湾、知多湾の問題を除くほかは、今まで論議された問題に対して、水産庁と当委員会とほとんど意見が一致しておるように思われておるのであります。紀伊水道と伊勢湾の問題はわれわれはもう少し研究しなければならぬのでありますが、その他の問題に対しては異議がないように考えます。
  46. 川村善八郎

    川村委員長 皆さんにお諮りいたします。小型機船底びき網漁業取締規則農林大臣の権限によつて発令することは御承知の通りであります。しかれども国会において非常な議論となりまして、この漁業法改正ができるかできないかということについて非常に長い時間を費やしたのであります。一方予算措置はどんどん進みまして、その予算措置漁業法の一部改正が伴うものでありますから、この小型機船底びき網漁業取締規則の問題については、後日本委員会の承認を得てから制定をするということになりましたので、今日議題に供したようなわけであります。皆さんにまだ議論もあると思いますが、実は本日中にあげて、この次の委員会にはまき網漁業の同様の規則を十分審議したいと思い、この方はきよう中に議論を盡して修正すべきことは修正したいと考えておりますので、委員におかれましてはひとつ時間を短縮して御質問を願いたいと思います。
  47. 松田鐵藏

    松田委員 ただいま委員長お話でありますが、私が申し上げたように、紀伊水道と伊勢湾の問題はもう少し時間をかしてもらわなければならないと思いますので、きよう中にあげるということはちよつと時間がなさ過ぎるのじやないかと考えるものであります。委員長においてしかるべく善処されんことを希望いたします。  そこで私は議題となつておるもの以外のことで一言しておきたいと思うのでありますが、北海道の浜益村から、漁業調整委員会できめた問題を、知事が不当な認可をしたという三つの訴願が水産庁に出ております。それが私どもの方へも陳情書となつてつております。この点はけさほども私は水産庁に行きまして、どうなつておるかという意向をただしましたところ、関係当局及び本人が上京しているので、いましばらくの間これを調査したいというお考えであるので、それを了としたものでありまして、当委員会にこれを持ち出すべく考えていなかつたのであります。たまたま内容を調べてみたときに私が唖然としたことは、日魯漁業の第四五号、五一号というものが認可されておる。にしん漁業といえば中小漁業者が行うべき現地漁業であります。これに対して日魯漁業がこうした行為をとつて、出願して決定されておる。かようなことから今までやつていた者は自己の経営をすることができ得なくなつた。法規をあやまつて解釈をして生産組合をつくるべく予想して出願をしたものに許可を與えた、こういうことが上つております。私は水産庁においても、あらゆる観点から北洋漁業の問題について審議されておることと存ずるのでありますが、われわれは北洋漁業に出漁するのは資本漁業でなければならないという考えを常に持つておる。先日の委員会においてもはつきり私はこのことを申し上げ、長官も御答弁をされておる。しかるに中小漁業のにしん漁業に対して、どうして大資本漁業がこの漁場に割込んで漁業を営まなければならないか。資本漁業がいかにして民主化された形態を現わすかどうかということが、今日の北洋漁業に出漁せんとする第一要素だと私は考えおる。こういう点から言つて、こうしたところに割込んで行つて中小漁業に入らなければならないという資本漁業であつたならば、態度を改めてもらわなければならぬのではないか。また漁民が小さな村において相剋摩擦をしなければならないという原因は、大資本漁業がここに入り込んでいるがためにこうした災いを来している、漁村の紛糾も来している。こうした点はわれわれとしても十分研究し、法律においてはやむを得ないとなつても、こうした気分、こうした考え方を常に是正して行かなければならないのでなかろうかとわれわれは考えるのであります。この点に対して私は答弁を要求するものではありません。ただ将来起きるいろいろな問題を長官の頭の中に入れておいていただきたい、かようにお考えておるものであります。
  48. 林好次

    ○林(好)委員 ただいまの松田委員の御意見に私はまつたく同感でございます。すなわち漁業というものはやはり漁業秩序を保つことが最も重要なことであります。しかしながら戰時中、戰後というものは、漁場が非常に狭められまして、資本漁業も沖合い漁業とか沿岸漁業に入り込んで来た。しかしながらすでに日米カの漁業協定も仮調印が終り、また関係諸国ともきわめて近いうちに漁業協定が成立する情勢に相なつておるわけであります。従つて沿岸漁業、沖合い漁業、あるいは遠洋漁業とはつきり三つに区分をいたしまして、そうして沿岸漁業沿岸漁民によつてやらすべきである。また沖合い漁業というものは中小漁業者によつてやらすべきものであつて、今後資本漁業というものは、どうしても遠洋漁業に進出をしてもらわなければならない。この小さな四つの島に八千三百万の同胞がおるのでありますから、今松田委員が言われるように、沿岸漁業にまで資本漁業が入り込んで来るということでは、沿岸漁民の非常な生活脅威であります。従つてどうしても漁業秩序というものを明らかにしなければいけない。法的にはいろいろ困難な事情もありましようけれども、これは勘案事項として当然考えらるべきものである。従つて従来の資本漁業の悪弊はどうしても打破しなければならないと私は考えておるのであります。もちろん私は今日の委員会に若干遅れて参りましたので、あるいは同僚の委員からかような御質問があつたかもしれませんが、新しい長官のお考え方をこの際お伺いしたいと考えるものであります。
  49. 塩見友之助

    塩見政府委員 これも多分初めの委員会でちよつと申し上げたとは思いますが、大体日本漁業は、大正から昭和にかけて動力化を行いまして、沿岸の者の中で力のある者は沖合いに、それから沖合いに操業している人たちの中で力のある者は遠洋へと、こういう形で資源の問題についても、それからあまりに漁業者が多過ぎるという問題に対しても、順次解決して進んで行つたわけですけれども、それが終戰と同時に元へ帰つて来たという関係から、昔やつていた漁場なり何なりの方に、また一時遠洋の方がとざされたためにもどつて来て、そこでいろいろなもんちやくを現在起している状態になつておるかと思います。それに対して、方向としては、従前と同じようなやり方では必ずしも遠洋漁業が開放されたとは思われません。これは平和條約第九條によりましても、吉田総理からダレス大使あての書簡等によつても、とにかく條約を結びながら相手国と十分な了解を遂げつつ進出をして行くという方向をとるようになつておりますので、そう大正から昭和にかけてと同じように、急速に非常に自由に飛び出すというわけには参らない、そういう点は非常にがまん強く、着実に一歩々々と出て行くほかは方法がないと思いますが、方向としては、ただいま松田委員及び林委員から御意見の御開陳がありましたように、やはり遠洋の方へ出て行く人は順次沿岸の方は手を抜いて楽にしてもらうというふうな形、また沖合いの人は沿岸の方から幾らかでも小さい漁民のために、自分も苦しいかもしれないけれども、忍んでもらうという形で進むのが非常にいいのじやないかと思う。ですから政府の方といたしましても、事務的に処理できる範囲ではできるだけそういう方向で行政的な処置をやつて参るのがいいのじやないか、こういうふうに指導方針としては考えております。
  50. 田口長治郎

    田口委員 私はまき網調整問題につきまして水産庁長官に御意見を伺つておきたい点がございます。水産庁で昨年の十月一日に提出されましたまき網漁業調整要綱関係地区の業者が見まして、びつくりして業者の大会を開いてあの案を検討したのでございまするが、長崎県の業者は決議をいたしまして、国会にも、あるいは役所にも陳情書を出したと思つております。決議の要旨は、昭和二十六年十月一日付水産庁の提出されたまき網漁業調整要綱中西日本海区の設定には絶対反対を表明するものである、長崎県は県独自の立場において相互調整する、こういうような決議でございます。先日陳情団が参りましてこの決議のよつて来るとことろをいろいろ聞いてみますと、結局長崎県は漁業を除いてほかに産業がない、どうしても魚で長崎県民全体が飯を食つて行かなければならない。しかるにこの魚の内容を検討してみると、長崎県ではいわしだ。数字的に申し上げますと、総漁獲高の六〇%をいわしが占めている。いわし漁業が各漁村津津浦々にありまして、この漁業によつて漁獲をし、とれたものを加工して生活をしている。これはひとり水産業者ばかりでなしに、長崎県にはほかに何も産業がないために、長崎県の銀行にいたしましても中小企業にいたしましても、すべてのものがいわし漁業の盛衰によつて景気、不景気を決定している、こういうような実情である。われわれの考えから申しますると、県にはおのおの立地條件があつて、魚で食わなければならぬ県があるし、あるいは米をつくつて生活をする県もある、あるいは山に植林をしてそれによつて県が立つている。こういうように県にはおのおの立地條件があつて生命を保持する資源がある程度限定されている。これは神から與えられたものである。従つて生活のために絶対に必要であるところの資源だけは、県自体の立場において守らなければならぬ。もし長崎県の魚をほかの漁民がとるとすれば、それだけの生活資源をほかの県から持つて来なければならぬ、こういうような観点におきまして、長崎県といたしましては、いわしだけは何としても保持しなければならぬ、こういうようなことを言つておるのであります。何ゆえにいわしとさばとの関係があるか、こういうことを聞いてみますと、いわしとさばは同一漁場で群をなして遊泳している、それを一緒にとるのだ。しかるにさば網は網目が大きいためにさばだけがかかつて、いわしは全部中から逃げてしまつて、一度網から逃げたものは、今度はいわし網漁業者が火をたきましてもその火にどうしてもつかない。こういうような問題が一つ。それからもう一つは、長崎県といたしましては、大衆漁場が長崎県のいわし漁業の中心地帶で、この漁場を荒廃させますと長崎県のいわし漁業というものは成り立たない実情にあるのでありまするが、この狭い漁場で、昨年の状態から言いますといわし網漁業が百統以上——百統といいますと所属漁船が約五百隻になるのでありますが、さば網が七十統、二百八十そう、この五百そうと二百八十そうが狭い漁場で入り乱れて操業するということになると、網の乗切りだとか、あるいは船の衝突だとかいうようなものが実におびただしく起る。南松の津田という男が一人で調停した問題だけでも十三件調停をしておる。こういうような実情でありまして魚が火につかないという問題と、漁場が実に乱雑になつて事実においてもう操業ができないというような実情であるから、どうしても大衆の漁場というものは長崎県知事の権限においてわれわれは守らなけ参ればならない、こういうような主張をし、こういうような基礎のもとにこの決議案を決定をしたそうでございます。しかしながら私らは国会議員の立場におきまして、必ずしも長崎県の漁業者の意思通りに動くわけには行きません。今の態勢から申しまして、私はこの許可権を農林大臣に移す、いわゆる海区制というものも実はやむを得ないと思うのでありまするが、ただこの西日本海区において一番がんになりますものは、結局山口県のさばのまき網の問題であります。この山口県のさばのまき網は、従来朝鮮におり、朝鮮から帰つた連中が下関を根拠として漁業を開始した。従つて朝鮮に行けない面におきましては、結局どこかの漁場に行かなければならぬ。山口県の沖合いにもさばはたくさんあるのでありますが、山口県当局沿岸漁業者の関係からいたしまして、あの海で夜、火をたいてさばをとるということを許していない。そういたしますと、結局漁業のできるような、いわゆる火をたいてできるところの長崎県にこれらの船がやつて来る。こういうような実情で、あの海区におけるさば、あじのまき網というものは、実は山口県のまき網によつていろいろな問題が起きております。海区制を設定することもけつこうだ。しかし問題は山口県のまき網の問題であるから、近く日韓の漁業協定の話を進められ、この話がいかように決定するかもわかりませんけれども、山口県のまき網は朝鮮の海において仕事をして来ておつた連中ばかりであるという点から考えましてこの漁業協定が締結されますと、西日本海区のさば、あじのまき網事情が一変すると考えるのであります。従つて海区を設定されるとしましても、この日韓漁業協定が締結されるのを待つてとつ考えになることがしかるべきではないか、こういうことをまず第一に考えるのであります。日韓漁業協定が締結されまして、そうしてこの海区制をその後において設定するという問題につきまして、私が根本的に考えておりますことは、今のような事情からいたしまして、この海区ではさば、あじのまき網だけでこの問題を解決することができない。結局いわしとさばとあじと、この三種類のものを一緒にして頭の中に入れた調整要綱でなければ、実際には漁業調整というものはできない、こういうことを考えておる点が第一点であります。それから海区を設定する場合におきましては、各府県の條件を均一にししなければならない。いろいろな問題があると思いますけれども、そのうちの最も重要なる問題は、火をたいて漁業をする。これは水産当局も御承知と思いまするが、日本の北の漁場におきましては、海の透明度の関係あるいは上層と中層と下層の水温の相違——北の方に行きますと、下層、中層には非常に冷たい水が来ておる。従つてあじ、さばは表面の所にいるというような関係からいたしまして、晝張りだけで魚がとれるのでございますけれども、南の方に行きますと、上層も中層も下層も水温が大体において同じである。かかる場合におきましては、最も安全な下層の方に魚がいる。この下層の魚を網で巻くためには、どうしても上の方に浮かさなければならぬ。浮かすためには火をたかなければならない。こういうような実情にあるのでありまして、南の方の漁業者は海の環境から申しましても、また今までの漁業技術の発達の上から申しましても、どうしても火をたかなければならない。各県の状態を均一にして海区を設定する、言いかえますと火をどこででもたいて、そうして魚のいる所にはどこにでも行ける、こういうような地ならしをまず第一にしなければならない、こういうことを私は考えるのであります。  また水産庁の案によりますと、鳥取県、兵庫県の境に一本の線を引きまして、長崎県から石川県までの間を二海区にお考えになつておる。この海区の問題は、私は北太平洋の場合におきまして、もし金華山沖に一本の線を引くというようなことになりますと、いわゆる漁業調整上かえつて非常な支障を来すものと考えるのであります。すなわち北太平洋と、今水産庁がお考えになつておりますところの中部、西部の海区というものは、距離においても大体において同じと考えるのであります。また網の数から申しますと、むしろ中部、西部の方が多い。こういうような関係から申しまして、この海区設定、漁業調整という点からして中間の線を引くべきものではない。言いかえますと、大海区制を設定しなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。私がただいま申し上げましたのは、結局この海区につきましては、あじ、さばだけの漁業では考えられない。いわし漁業も同時に調整をしなければならない。この問題と、そして各県が同じ状態において同じ操業ができるようにという意味におきまして、同じ條件で海区を設定しなければいかな。そうして中間線というものは、これは海区設定の趣旨に反する。こういうようにこの三点を非常に重大視しておるのでございまするが、今から省令を御研究になるというようなお話でございますから、この三点につきましては十分に御研究になりまして、その上で省令を御制定になるようにしていただきたいのであります。さらにその前には日韓漁業協定の問題がありますから、この協定が締結をされ、その上でこの問題をよく静かに考えてみる。いろいろ越佐海峡の問題もありますし、非常に重大な問題でございますから、この点だけは十分当局としてお考えになつて、そうして立案されるように特に希望しておく次第でございます。
  51. 川村善八郎

    川村委員長 委員各位にお願い申し上げます。次回の委員会には、ただいま議題となつております小型機船底びき網漁業処理要綱案及びまき網漁業調整要綱案を議題として十分に審議いたしたいと思いますから、どうぞ委員各位は時間を厳守せられるようにお願い申し上げます。  本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。     午後零時三十一分散会