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1952-01-28 第13回国会 衆議院 水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月二十八日(月曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 川村善八郎君    理事 小高 熹郎君 理事 田口長治郎君    理事 永田  節君 理事 佐竹 新市君       川端 佳夫君    鈴木 善幸君       田渕 光一君    平井 義一君       松田 鐵藏君    小松 勇次君       水野彦治郎君    木村  榮君  出席政府委員         農林政務次官  野原 正勝君         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      伊東 正義君         専  門  員 杉浦 保吉君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 一月二十六日  委員福田喜東君辞任につき、その補欠として橋  本龍伍君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公海漁業に関する件     —————————————
  2. 川村善八郎

    川村委員長 これより水産委員会を開きます。  前会公海漁業に関し、長官より説明を聽取いたしましたが、その問題に対して御質疑あればこれを許します。
  3. 松田鐵藏

    松田委員 三国漁業協定仮調印に基きまして、今や日本漁業者においては、北洋漁業出漁したいという趣のことが新聞報道されておるのであります。また政府としても一日も早くこの着業をすることが理想であり、真に日本漁民の生活を生かすことだ、こういう観点から種々御検討されておることと存ずるのであります。たまたま北海道に帰つておりましたところが、北海道新聞にあたかもその許可とつたるがごとき報道をされておる記事を見たのであります。一社にあらず、二社もそういう報道をされており、また漁民に呼びかけるその具体的な方針をも報道されておつたのであります。私はこの新聞報道を見ましてまことに意外であり、またあまりにも軽はずみでないかという感覚を持つてつたのであります。いまだ水産委員会で、休会中でもあり、論議されていないのに、業者はあたかも許可をとつたかのごとく事業計画を発表するがごときことは、日本漁民がいまだに侵略的な考え方を持つておるように国際関係に非常な悪影響を及ぼす点が多分にあるのではないか、という心配が一番おもなる私の杞憂した点であつたのでありますが、ただいま長官からいろいろと説明を受けまして、その杞憂が氷解することができ得たことは、私の非常に喜びとするところであります。  さてこの北洋漁業というものは、われわれの論議せんとするところは、日本漁民が、第六国会で制定された漁業法精神を世界に称揚する一番大きな問題であり、そのトップであると考えておるのであります。ゆえにこの漁業法精神をくまざる漁民が、また会社が、ここに出漁をするようなことがあつたならば、日本水産業及び日本の国際的に関係するあらゆる面からいつて、非常な大きなマイナスになるのではないか、かように考えておるのでありまして、当局といたしましては愼重にこの点を考慮されんことを願うものであり、またわれわれ水産常任委員会としては、政策としてこの点を研究して、政府に対して進言をしなければならないことでないか、かように考えておるものであります。どうかこうした点について委員長においても、会社及び漁民が真に新しき漁業法に対してどれほどまでに解釈をもつて進んで行つておるかということを、ある機関を通じて、またこれらの人々と懇談する機会をつくつてもらいたい、われわれはこれに対してテストをしてみたい、かように考えておるのであります。水産長官もこの点をひとつ十分に御留意あらんことを願うものであります。  第二に、俗に言う五大会社、そのうちから今これに出漁せんとする動きを持つておるものは三社と聞いておるのであります。またその他漁民の結集によつて出漁許可を受けんと希望しておる者、またこれからその企てをする者も相当数あることでないかというように考えておるのでありますが、これらの人々に対する私の考え方は、俗に言う五大会社、そのうち三社というものは実に日本を代表する水産会社である。しかしてこうした大きな会社は当然こうした漁業に対してトツプを切つて出漁すべきであるという考え方を私は持つておるのであります。しかしてこうした会社日本政府の努力によつて、しかも日本国民全体の力によつて、今や講和がならんとしておる今日において、また講和後においてこうした出漁をすることは、それこそ資本主義をモツトーとして、その政策によつてすべてを行わんとする自由党内閣においては、当然これに対してあらゆる便宜を與うべきであると私は確信するのであります。しかし今や日本漁業というものは、戦争及び戰争後において漁場は荒廃し、漁民は食えるか食えないかという境にまで追い込められておつて、あらゆる施策を水産庁においても考慮しつつある今日において、ややもすればこれらの会社のうちには、沿岸漁民に対して自己の所有しておる資本力に物を言わせて、あらゆる角度から沿岸漁民との対立を来しておる。しかもその会社の営業の上からいつたならば当然なことであろうとしても、なかなか自分の利益というものから脱却することができずして、零細な漁民中小漁民に対する圧迫を来しておる会社もわれわれの目から見ればあるのでありまして、かような会社は、潔く沿岸から手を引いて、国が進むべきこうした北洋漁業なり南方漁業なりに進出するのがほんとうの行き方ではないか。要するに沿岸から手を引く、沿岸漁民に対しては沿岸を與えるのだ、かような考え方を持つのでなかつたならば、日本水産業は立つて行かないものではないかという感覚をわれわれは持つておるものでありまして、この点に対しては十分これから論議さるべき問題だと考えるのであります。こうした点も十分に水産庁長官においては留意されて、あらゆる角度からこの問題の解決をしていただきたいと思うのであります。  またその他に出願をしております、また希望を持つておる漁民の団体もあるように承つておるのでありまするが、私どもは漁業協同組合というものの考え方は、どこまでも漁民利益、またその自治体利益とタイアップして、りつぱな協同組合育成強化をはかつて行くのが漁業協同組合の建前であろうと考えておるのであります。ただ漁民のみの利益で事足れりとし、自治体や地方の利益はどうなつてもいいという考え方では、決して漁業協同組合育成強化はでき得ないものである、健全な協同組合の立つて行く道ではないと信じておるのであります。ゆえにこれらの人々が、ただ政府漁業協同組合に対して育成強化する、あらゆる援助をするということに対して甘えるような考え方で、もしこういう北洋漁業出漁を行わんとするようなことがあつたならば、非常な冒険であると考えるのであります。かような点に対しては、漁業会社なり、また協同組合漁民なりが、真に打解けて相協力して、その自己の主張する点をお互いが理解し合つて、そうして民主化された漁民となり、日本の国策に沿つて進んでこうした漁業に協力して行くという考え方を持たなければならないものでないか、かような点からも長官においては十分と考慮されて、先ほどの説明の中の出漁に対するあらゆる点に対して考慮を拂つていただきたい、かように考えるものでありまして、もしさしつかえのない程度における御答弁が願えるならばけつこうだと存ずるのであります。
  4. 塩見友之助

    塩見政府委員 日米加協定仮調印を契機といたしまして、北洋漁業進出の問題が重要な問題として起つておることは、ただいまお話通りでございます。元来北洋漁業というのは、遠洋漁業の中でも日本にとつてみると非常に比重の高いものであつて、これが戰前のような状態にまでもし回復することができるならば、現在非常に資源の枯渇に苦しんでおり、操業する漁場に非常に制約を受けておる日本水産業全体にとつて、非常な明るさを與えるものであるというふうなことは、私も前々から重大な関心を拂つておるわけでございます。そういうふうな意味において、独立後において、日米加協定の線によれば、かにあるいは鮭鱒等について、本年度から出漁ができ得るというふうな関係を利用いたしまして、それでできるだけ早く出漁態勢をとりたいというふうに考えておるわけでありますけれども、問題はただいまお話のありましたように、終戦後における漁業法及びこれを中心とする漁業関係の各種の立法精神というふうなものを十分に理解した上で、今後の国際漁場への進出を行うことが必要であることは、まつたく私も同感であります。特に今般のような、問題になりまするところのかにであるとか鮭鱒であるとかいうふうなものについては、これは片一方底棲性生物であり、片一方は遡河性の魚類であつて、それで沿岸国との関係というのは、特に深い性質を持つておる種類の漁業であります。日米加協定の線も十分考慮する必要がございますし、ことに濫獲については、底棲性生物であるとか遡河性生物であるとかは、特にそういうふうな点について考慮を拂わなければならないものでありまするから、これは両沿岸国とは十分な理解のもとに、十分協調を保ちつつ出漁しなければならない。ことに資源点等については、今後調査をしながら協定を変更したり訂正したりする、あるいは今後協定の線を延ばして行くというふうなことについても、調査を十分しながらやつて行かなければならない、こういう性質のものでございますので、十分漁業法中心とした終戦後における漁業立法精神に即応した形態で、即応した資格を持つた日本水産業者の選手というものが第一歩を印し、それで第二歩、第三歩というふうな国際漁場への発展の基盤を固めるという必要もあるし、出る人間については、国際的にもまた国内的にも、日本水産業者漁民というふうなものを代表して、その責任を持つて行くという覚悟がなければならないものだと存じております。そういうような関係からして、政府の方といたしましては、もちろん監視船の配置であるとか、あるいは調査員というようなものを、資源調査の必要上、政府から乗り組ませるとかいうようなことのほかに操業自体に当りますところの経営者につきましても、そういう趣旨にのつとつてその趣旨が十分に貫徹され、日本漁業のチャンピオンとして、第一歩から遺漏なしに第二歩、第三歩という発展ができるような、そういうような資格と構成を持つた出漁を望んでおるわけであります。それのためにはどういう形態がいいかというようなことは、いろいろと問題があろうと存じますが、関係漁業者にお集まり願つて、そういう点について間違いのない組織態勢とをつくり上げるように、われわれの方としても慫慂して、間違いのない組織でもつて国際漁場発展して参りたい、こう思つております。  それからまた沿岸漁業遠洋漁業との関係でございますけれども、これもまた大正、昭和を通じまして、発展できるところの公海漁業というようなものとの関係考えまして、資力のある規模の大きいものはできるだけ遠洋へ、公海へというような発展をし、それによつて沿岸の方が沖合にまでむしろ進出できるというくらいな海の余力をつくり上げたいというような関係で、沿岸遠洋との調整をはかつてつたわけでありますけれども、現在は遠洋発展しておつた漁業者もまだ沿岸にもどつているというような関係からして、当時ほど円滑に沿岸遠洋との調整ができるかどうかという点については、当時に比べれば困難さはあり得ると思いますけれども、指導方針といたしましては、やはりそういう趣意で遠洋漁業の開放をめぐつて沿岸へも十分なる恩惠が與えられるような形で発展して行くことが望ましいというふうに、私も考えております。できるだけそういう方針で進めて参りたい、こう考えております。
  5. 松田鐵藏

    松田委員 ただいま長官の御答弁によりまして、まことに私は満足するものであります。ゆえに、私は北海道におつたときに、先ほど申したように、新聞やいろいろな報道があつたのでありまして、そのとき私は率直に新聞社の者に話して参つたのであります。参考までに申し上げておきます。まだ水産委員会は健全であるという言葉を使つて参りました。新しい長官によつてわれわれは活路を開くことができ得るのである。俗に言う自由党吉田内閣ワンマン内閣だといわれている。かような輿論によつて生れて来たのが某会社——会社があたかも許可をとつたがごとき宣伝をされて、そうしてその抱負まで語られている。かようなことは、結局ワンマン内閣なるがために、利権がここに伴なうがごときことを非常に漁民は心配しておつたようでありますから、私ははつきり申し上げて来た。われわれが最も尊敬しておつた塩見官房長がこのたび水産長官になられたのである。われわれはこの塩見長官であつたならばあらゆる面において協力することを惜しむものではない。水産委員会は健全なり。こういう言辞を私は新聞記者に発表して参つたのであります。どうか、こうした意味合いは、私は今まで半年ぐらいの間、長官官房長としての立場からいろいろとお話を承り、水産問題に対する深い造詣を持つてあらゆる政策の面に当られ、われわれも協力して参つたのであります。かような点から言つて、この問題はただいま長官の御答弁のあつたように、まことに日本漁民生死の問題であり、国際的水産業者責任というものが、これによつて確保されることになるのでありましてわれわれ水産委員会といたしましても、あらゆる面において協力することを惜しむものではなく、献身的に、先ほど申しましたように、他の法案を犠牲にしてまでも、この問題に対して協力したいという考え方は、委員長初め各委員、私も持つておるものであります。この点十分留意されまして、あなたの赴任された一番先の大きい問題でありまするし、ただいま言われた国際的な問題でもあり、漁民生死の問題でもあるのでありまして、この点に対する他の批判なんかということを苦にすることはないと思うのであります。どこまでも所信に向つて漁業法精神に生きて、新長官の手腕をわれわれは期待し、われわれの協力をお約束申し上げまして、私の質問を終ります。
  6. 川村善八郎

    川村委員長 なお松田君の発言中、委員長に御要望がありましたので、委員長としてお答え申し上げます。  北洋漁業出漁は、国際的にも、また行き詰まつておる日本漁業打開のためにも、非常な大きな問題でありますので、松田君の御意見通り委員会におきましては愼重に取上げる方法を講ずるとともに、農林大臣並びに水産庁長官にも常に緊密な連絡をとりまして、その意を盡す所存であります。
  7. 木村榮

    木村(榮)委員 こまかい点を二、三承つておきたいのですが、これは政令三百六号の廃止伴つて、あれだけたくさんな規制があつたわけなのですが、あの関係と、それからまた農林省省令で出ています第八十三号の関係はどうなるのですか。もう少し具体的に聞きますと、たとえば無線電信とか電話を設置しなければならない義務があり、あるいは正午にはその船の位置の報告をやる義務、これはトロール船とか、かつを、まぐろ関係の船ですが、こういつたような場合、これはたとえ政令三百六号を廃止いたしましても、いろいろな海難防止とかその他の関係ではやる必要があると思うのですが、そういう点は今後どうなるか、承つておきたい。
  8. 塩見友之助

    塩見政府委員 一応ポ勅、すなわちポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係の諸命令は、全部廃止いたしますが、必要のあるものは別の規定でまた生かして行くという方針をとるつもりであります。ことにこういう北洋漁業につきましては、領海関係操業区域関係、両沿岸国に対する諸種の関係から見まして、そういう点についてキャツチャー・ボートと母船との連絡通信監視船との連絡通信は、今後国際的な漁業としてできるだけ協調的に参るという必要性から、大いに重要性を持つものだと思つて、これはやはり今般進出したいと存じております北洋漁業でも、もちろんこういうふうな規定は生かして参りたい、こう一応考えております。
  9. 木村榮

    木村(榮)委員 それはやはり政令でお出しになるわけですね、この廃止と同時に。
  10. 塩見友之助

    塩見政府委員 おそらく今までの取扱い上は省令で行けると思います。
  11. 木村榮

    木村(榮)委員 それからこれはさつき北洋漁業の問題でございますが、御説明によれば、大体大きな三社と申しましようか、そういつた特定のものを何か御指定になるといつたふうな話ですが、三社以外の、たとえば協同組合とかその他のある程度実績のあるものは、何かの方法でそういつたものに参加できるかできないか、こういう点はまだお考えになつておりませんか。
  12. 塩見友之助

    塩見政府委員 現在まで出願しており事ものが三社、これはおのおの経験を持つておるわけですけれども、そのほかに北日本漁業者協同組合というふうなものがまだ設立準備中だそうでございますけれども、一応出願がございます。これは過去における北洋漁業経験者でありまして、沿岸の五十トン、六十トンというふうな漁船の持主で、十分北洋出漁経験を持つた者で、各県を通じて協同組合をつくるという方針で進んでおるように、当事者からは聞いております。それももちろん含めて、相談をしてもらうという必要があろうと思つております。
  13. 木村榮

    木村(榮)委員 そういたしますと、これはさつき松田委員からお尋ねがあつた中にもお触れになつたと思いますが、大体そういつた出願者が今ある。そういつたものを総合して、最終的には水産委員会なんかの意見をよく聞いて、最後的な形態とか、運営方法会社設立、いろいろあるでしようが、そういつた最終的な決定はこうした水産委員会なんかの意見を尊重されて、最後的決定をなされる、大体そういうふうに解釈していいのですか。
  14. 塩見友之助

    塩見政府委員 これは政府において決定はいたします。その許可の問題でございますが、もちろん非常に重要性の多い、ことに沿岸漁業との関係漁業法その他戰後に行われたこれらの立法との関係も、相当深い関係を持つものでございますから、委員会の方の意見は十分われわれれの方としてその場合には尊重して参りたいと存じます。
  15. 木村榮

    木村(榮)委員 もう一つ最後に、これはまあ議論ではございませんが、大事な点だからお尋ねしたいのですが、今のところ、北洋漁業と言いましても、一番大きな漁場は、ソビエト同盟との領海関係がまだ解決していませんから、きわめて範囲が狭いものだと思う。しかしながら国際的な諾関係を見ましても、また日本の将来の遠洋漁業のことを考えましても、どうしてもソビエト同盟との漁業協定といつたふうなものが成立しなければならぬと私たちは考えておる。それはいろいろな困難もあるし、いろいろな紆余曲折もあると存じますが、そういつたことは拔きにして、そういう点に到達しなければならないということを考えます。あるいはまた過去の実績から見ましても、かつて日ソ漁業協定なんかにつてつてつたわけなんです。今度の日本の船団と申しましようか、そういつたものが、将来北洋漁業漁場が大きくなつた場合にも、出漁する関係にもなると思う。従つてそういうことを考えますと、相当前例になるわけなんですから、この機構というのは、愼重に御考慮の上決定される必要があると思う。ただ單に三社とか、あるいは経験があるといつたことのみを強調して、せつかく大きく北洋にまた将来やつて行かなければならぬ場合に、悪い前例を残すと困ると思いますので、その点は愼重にやつていただきたいということを希望しておきます。
  16. 塩見友之助

    塩見政府委員 経験の点につきましては、これからの出漁についても、相当採算関係について危惧される点も多いのと、それから特に資源その他に対する調査については、十分な実績を上げるという必要性もありますので、往往にして未経験者が戦後において漁業進出しましたけれども、それが採算割れのために沿岸に近づいて違反をやるとかどうとか、とにかく漁業者調査のために行くのではなくして、食うために行くわけですから、そういう関係で、漁獲の実績が上らなければ、苦しまぎれに往々にしてそういう国際的に考慮しなければならないような繁殖保護、その他の條件を無視する危険もありますので、私の方としましては、そういう危険はやはり相当重視しなければならぬ、こう思います。
  17. 田口長治郎

    田口委員 日米加漁業協定仮調印がでまして、ようやくわれわれが待望しておりました北洋出漁ができるようになりましたことは、まことに喜ばしい次第でございますが、私はこの北洋漁業に対しましては、ことに終戰後日本が置かれておる立場からいたしまして最重点的に考えなければならない問題は、国際信用を損しない、この問題が最も重大と考えるのでございまして、この問題に関しましてはいろいろな方法があると思いますが、各方画から十分御研究になつて、いやしくも日本漁業というものが、従来のような国際的こ悪い印象を與えることがないように、ぜひ十分の御注意を願いたいと考えるのでございます。それにつきましては、やはり漁業経営形態というものが非常に重大なものではないかと考えるのでございます。この北洋漁業考える場合に、国際信用の問題、第二に有利に経営する、第三に広く漁業者が参加する、こういうような三つの原則をもつて考えてみます場合におきまして、かに工船などにいたしますと、どうも第一の原則と第二の原則という点が一つ形態で満足ができると思うのでございますけれども、広く漁業者を参加させる、こういう問題について非常に困難な漁業であるように考えるのでございます。たとえば独航船一つの網を入れる、そうして調査をする、川崎船は入れた網を上げる。そこで、どこで仕事が切れるかということがわからない漁業でありますから、この点はやはり一つ形態として進ませる。こういうことがこの仕事を経済的にやる、そして国際的に信用を失墜しない、こういうような観点からいたしまして、私は一つの確固たる形態として進まなければならない漁業ではないかと考えるのでございますが、この点について長官はどうお考えになつておるか。まず第一点をお伺いいたします。  第二に鮭鱒の流し網の漁業でありますが、これはどうしても全国の漁業者と言いますか、あるいはこの方に経験のある漁業者と言いますか、こういう者をできるだけ参加させていただきたい。ただこの場合におきまして、ことに今年の出漁というものは、新しい漁場で未開発の漁場にも行かなければならないというような点から申しまして、カムチヤツカの東岸なんかの漁業と非常に事情が違うと考えるのでございます。こういう点から申しまして、必ずしも有利に経営されるかどうかということが非常に疑問でございますが、広く漁業者を参加させた場合におきまして、この参加した漁業者が大きな損失を招くということでは、非常に全部の者が困る次第でございますから、何か大きいところで、もしそういう損失があつた場合におきましては、助けて仕事をさせる。こういうような大きいところと小さいところの結びつきを、おそらくアラスカ海域では漁が非常に薄いと思うのでございまして、必ずしも有利に経営ができる。とは考えないのでございますから、小さいものと大きいものを結びつけられた場合におきまして、損失が来た場合において、小さいものの損失を大きいものでカバーする、その点をぜひ考えて組み合してもらいたいのであります。なおこの鮭鱒につきましては、第一の原則でありますところの、間違つて国際信用を失墜するようなことがない、こういうようなことをしますためには、許可方法ということが非常に問題になると思うのでございます。たとえば独航船一つ一つ許可を與える、これが非常に民主的のようでございますし、将来はそういう方向に行かなければならぬと思うのでございますけれども、この一年あるいは四、五年の間は相当訓練の時期でもありますし、何か母船の方と独航船の方と一緒にした許可か、あるいは母船独航船結びつきができるような、そういう許可方法をお考えにならなければならないと考えるのでございますが、この点もひとつとくと御研究くださいまして、めいめいがかつてにできるというようなことでなしに、一つのかたまりで有機的につながつておる、こういう許可の仕方でなければいかないと考えますから、その点をとくとひとつ御研究くださいまして、かりそめにもそういう間違いがないようにお願いいたしたいと思うのでございます。要するにこの北洋漁業というものは、非常にはなはなしいようでございますけれども、実際はやり方によりますと、採算がとれない、こういう結果にもなるおそれがあるのでございます。たとえばかに工船なんかにいたしますと、六万箱とりましても、おそらく四億七千万円程度の収入になると思うのでございますが、支出なんかをいろいろ計算いたしますと、船をチヤーターする。チヤーター料が非常に高い、こういうことになると、ほとんどごくわずかでございますけれども赤字が出る、こういう状態になると思いますから、とにかく赤字を出さないようなくふうをして、そうして漁業が永続して将来発展するような道を、ぜひとらなければならないと思うのでございます。以上につきまして、大部分は私の意見でございますが、かに工船経営形態について長官はどういうふうにお考えになつておりますか。それから鮭鱒流し網で小さいものが損をした場合に、何とか大きいものにカバーをさせる、こういうようなことができるかどうか、あるいはぜひそうさせなければならぬ、こういうようにお考えでありますかどうか、その二点だけお伺いいたします。
  18. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいま種々専門的な見地からの御質疑がありましたけれども、かに工船については、まつたく同感でございます。  鮭鱒についても、まつたく問題はそこにあると思います。ただしかしながら、やはり採算関係というものを非常に重視しながら、せつかく進出が赤字で今後の公海への進出がはばまれるような結果になることは遺憾なことでありますから、採算関係はそういう点に留意して、十分考慮して行かなければならないと思います。しかしながらあとのお尋ねの鮭鱒独航船でとる人間が赤字を出した場合に、母船の方でカバーするというふうなことですけれども、これは母船の方との公正な契約で、とにかくそこのところを調整して行く必要があると思いまするけれども。しかしながら、どうも下手な人間が行つてやりそこなつて不漁であつたという場合、どの程度までそれがカバーできるというふうな、その契約が公正であるかという点については、これは具体的に検討しなければならぬので、すべて北洋に出さえすればカバーされる、こういう考え方ではいかぬと思います。要は具体的に、どの程度の漁獲ができる独航船ならば補償されるかという問題に帰着すると思いますので、それは具体的な契約で——できるだけそういうふうな形で進められることが望ましいとは存じますけれども、ある場合には非常に下手な漁業者が失敗すれば、それは赤字も出得るということは覚悟しなければならない、こう感じておるわけであります。
  19. 田口長治郎

    田口委員 鮭鱒流し網の場合におきまして、小さいものが仕事がまずいために赤字を出した、その際大きなものがカバーできるかどうかということについて、疑問を持つておらるるようでございますが、その点私はこの許可方法ということが大きなフアクターになるのじやないか、こういうふうに考えるのでございますが、下手に單独に許可された場合におきましては、自由奔放にかつてなところに行つて漁業する、統制がつかない、こういうようなことになる問題が一つ。もう一つは、欠損をいたしました場合におきまして、資本家にある程度責任を持たせる、こういう意味におきまして、両方が十分に話し合つてその二人の名義にして許可をする、こういうようなことで、人を選択する場合に、資本家の方にもある程度責任を持たせて選択をさせる、そういう点を役所でもあつせんをされる、こういうようなことになりますと、必ずしも漁業者が下手なために、全部の損を自分で負わなければならぬ、こういうようなことがないと思うのでございますが、この許可される場合に單独で許可されるか、あるいは共同出願のものに許可をされるか、こういう点を十分お考えくださいまして、一は統制がつくように、一は損失を来した場合に、補填ができるように、こういう二点から、この許可の問題を十分御研究くださいますことを特に要請いたす次第でございます。
  20. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいまの点は、非常に許可にあたつての重要な点だと思います。十分考慮して参りたいと思います。
  21. 川村善八郎

    川村委員長 先ほどの松田君の発言中に、漁業者の選択のために愼重を期せというお言葉がありましたが、もちろん本委員会において必要な場合は、何らかの方法を講じて、十分漁業者の選択に意を盡したい、かように考えております。  本日の議題といたしまして、水産行政等に関する問題を審議することになつておりましたが、その問題は解決がつきましたので、審議をとりやめます。  本日はこの程度にて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。     午前十一時五十五分散会