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松澤委員 私は
日本社会党の立場から、この
法律案に対しましては反対の意思を表明いたしたいと思います。と申しますことは、すでに他の
委員の方方からも言われましたように、この保安庁職員の
給與法は保安庁法と密接不可分の
関係があるのでありまして、私どもは現下の状況において、軍隊とも称すべき保安隊、警備隊というものの存在を認めるということは、憲法違反の疑いがあるという点を第一に指摘しなければならないと思うのであります。もしこれがその編成におきましても、あるいはまた動員におきましても、あるいはまた勤務の内容におきましても、あるいは保安庁法に掲げられております保安隊あるいは警備隊の目的といろものを
考えてみまするならば、どんなにこれを割引して
考えてみても、やはり軍隊であるというふうに言わなければならないのであります。もしそういうものであるとするならば、
前提として憲法を改正してからかかる軍隊的な組織というものを
考えるべきであ
つて、いわゆる自衛力の漸増主義というものによりまして、われわれの知らないうちに軍隊あるいは軍隊的な部隊というものができ上りつつあるということは、これはまことに国民の立場から意外に思うことでもあり、
賛成しかねる点であります。
もちろん私どもは、かかる治安の維持のために率先して働かれる個々の隊員につきましては、その労苦に対して十分報いところがなければならないと思います。けれども、それは根本的にこの部隊というものがいかなるものであるかということを断定してからでなければ、その個々の隊員の
給與あるいはその他の
勤務條件というものを判断することはできないと思います。
法案の審議の中に現われました主要な問題としましても、たとえばこの部隊の基本的な理念はどういうものであるかということにつきましても、
はつきりとした
答弁を得ることができなかつたのであります。かつまた
法律の全般にわたりまして、保安庁
法案は非常に政令にゆだねている点が多いのであります。こういうまかり間違えば憲法違反にもなかもしれない、あるいはな
つているかもしれないという、国民が非常に疑惑を持
つている
法律あるいは
法律案につきまして、さらに政令にゆだねる部分が非常に多いということは、将来のこの部隊の
運営について、私
たちは非常に心配をするのであります。先ほど自由党を代表いたしまして藤枝君が申されましたように、出動の場合の手続などにつきましても、
はつきりとしたものがない、こういう
状態であ
つて、どんなに隊員個々の人々に対しましては敬意を拂うにいたしましても、この
給與法全体に対して
賛成を表するわけには行かないのであります。もしもほんとうに保安庁の幹部の人
たちが待遇をよくしてやるということであるならば、何よりも先に現在日陰者のような
状態にあるこれらの隊員に、正々堂々と大道を闊歩することのできる地位、そういう性格を與えてやることが、一番親切なやり方であると
考えるのであります。
給與法個々の問題につきましては、私は帶には短かくたすきに長いという感じを持つのであります。多少は
一般職員よりは優遇されておるかもしれないけれども、しかし出動の場合における
給與や
手当の問題については、何らここに規定されておらない。あるいはまた実際に死傷を受けた場合に、どの
程度の優遇を受けるのか。あるいはまた将来やめた場合における恩給の
状態等、幾多まだ議論すれば議論する余地のある問題がたくさんあるのであります。従いまして、こういう生命の危險までかけて勤務しなければならない個々の隊員の人
たちの立場から
考えてみると、一般の
公務員よりは多少優遇されたとい
つても、おそらく実際の場合における出動力あるいは機動力というものが、この
程度の
給與の
状態であるならば、真に死を顧みないで働けるだけの
確信は持ち得ないのじやないか。物質的な保障が十分できておらない限り、十分にその効果を期待することができないのではないかという点を
考慮いたしまして、私どもはこの
給與法に
賛成するわけに行かないのであります。
以上私どもの反対の
理由を申し上げました。