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1952-06-10 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十日(火曜日)     午後零時二十五分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 田渕 光一君 理事 福田 喜東君    理事 佐竹 新市君       天野 公義君    黒澤富次郎君       志田 義信君    篠田 弘作君       野村專太郎君    福井  勇君       大森 玉木君    椎熊 三郎君       山口 武秀君    渡部 義通君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (名古屋地方検         察庁検事正)  安井 栄三君         証     人         (愛知大学学         長)      本間 喜一君     ————————————— 六月十日  委員押谷富三君及び竹村奈良一君辞任につき、  その補欠として福井勇君及び渡部義通君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国有財産管理処分関係事件(戦艦「陸奥関係  事件調査報告書に関する件  学生警察官との紛争事件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議開きます。  この際お諮りいたします。国有財産管理処分関係事件軍艦陸奥関係事件につきましてはすでに証人喚問も終了いたしまして、理事諸君とも御協議の結果、本日の委員会においては結論を出すことに意見一致を見たので、委員長においてすでに諸君のお手元に配布してある通り報告書原案を作成いたしました次第であります。  この国有財産管理処分関係事件中、軍艦陸奥関係事件調査報告書原案を議題といたします。別に討論の通告がありませんので、これより採決いたします。国有財産査管理処分関係事件中、軍艦陸奥関係事件調査報告書原案委員会報告書として決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なきものと認めます。よつて、本報告書原案委員会報告書と決定いたしました。  なお字句の整理等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。  なお本報告書関係当局に送付したいと存じますが、御異議ありませんか。     「「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なきものと認めます。それではさようとりはからいます。     —————————————
  5. 内藤隆

    内藤委員長 次に学生警察官との紛争事件につきましては、事務局において基礎調査中でありましたが、基礎調査も終了いたし、理事諸君協議の結果、本日本委員会において証人を喚問して調査を行うことに意見一致を見ましたので、本日は名古屋地方検察庁検事正安井栄三君、愛知大学学長本間喜一君、法務府特審局次長古橋敏雄君、以上三名の諸君に出頭を求めておいたのでありますが一本委員会証人として決定したいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なぎものと認めます。それでは証人として決定いたしました。  ただいまお見えになつている方は安井栄三君ですね。あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として証言を求める二とに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  ただいまより学生警察官との紛争事件について証言を求めることになりまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するときまたはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祭祀の職にある者、またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁固または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、二月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていた、たきたいと思います。  なお証人公務員として知り得た事実が職務上の祕密に関するものであるときは、その旨お申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。宣誓書を朗読してください。     〔証人安井栄三君朗読〕   宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  7. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  8. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求むることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発声の際にはその都度委員長の許可を得しなさるるようお願いしておきます。こちらから質問しておるときにはおかけになつていてようございますが、お答えの際には起立をしてお答えを願います。  安井栄三君は、現在名古屋地方検察庁検事正をしておいでになりまするが、現在の地位に至るまでの経歴を簡単にお述べを願います。
  9. 安井栄三

    安井証人 大正八年十二月司法官試補となりまして、大正十年八月東京裁判所検事大正十年十月大阪地方裁判所検事、以来引続き約二十年間大阪控訴院地方裁判所区裁判所検事並びに和歌山地方裁判所次席検事京都地方裁判所次席検事を勤めまして、太平洋戦争の始まります前、昭和十五年十月検事から少年審判官に転官いたしまして、終戦後昭和二十一年二月に出品地方裁判所検事正、同年七月に大阪控訴院次席検事昭和二十三年一月名古屋地方検察庁検事正となつて、引続き勤めております。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 本年五月の七日の夜、愛知大学に起つた警官と学生との紛争事件につきまして、大体どういう事件内容であつたか、その概要をひとつお述べ願いたいと思います。
  11. 安井栄三

    安井証人 書類を……。
  12. 内藤隆

    内藤委員長 よろしゆうございます。
  13. 安井栄三

    安井証人 この事件の発生いたしました五月七日の夜は、公務で私東京におりまして、次席検事から電話で報告を受けまして、指示をいたしたのでありまするが、急遽名古屋へ帰りまして、豊橋へ参りましたのであります。当時の次席検事報告によりますと、昨晩愛知大学内において二人の巡査学生紛争を超して、巡査拳銃警察手帳、警棒をとられ、謝罪文を書いた。ところが大野豊橋署長学校話合いの上、本日、すなわち八日の午後一時に、警察次席学校行つて拳銃警察手帳を受取つて来た事件が発生しました。それで今その事件真相捜査するために捜査会議開き、着々資料を集めております。こういうことでありました。私はすでにその当時学生警察という問題につきましては慎重に取扱わねばならぬと考え、次席検事及び寺尾公安部長検事に、この事件は、真相を明らかにすることがわれわれ警察官のしごとである、そうして事警察被害者の立場になるよう事件である以上は、これはどうしても検察庁学校警察との間に立つて双方言い分をよく聞き、双方立証を検討して、その上で正確な、公平な判断をしなければならぬのであるから、この事件はできるだけ慎重に、そうしてほんとうの姿をば調べ出さねばならぬということを、懇々と注意をいたしました。爾来いろいろと意見もありました、その議論をいたしました内容は、これは時間がかかりますから要点だけ申し上げますが、結局この事件についての学校側言い分警察官証言との間に食い違いがあり、開きがありますので、この開きをばまず考えなければならない。それで学校側にもその説明並びにその説明に照応する証拠をば出してもらいたいということをば頼みまして進んでおりました。ところが、学校側は抽象的に説明をされ、また具体的な説明が出ましても、これを証明する証拠の提出が——これは私も法律家でありますからよく申しまして、立証をお願いいたし、警察へも立証を頼みまして、双方の主張を聞いたのであります。そうしておるうちに、警察官学校の中に七日の晩に入つたことが、職務上入つたものであるのか、あるいは不法に入つたものであるのか、いずれにしても二人の内田遠藤という警察官が、学校の中に入つた事実は明らかであります。それから学生がこの巡査をば取巻いてこれを議し、かついろいろな大きな声で話して聞かし、あるいはさらに進んで暴言的な言葉に出て、最後に謝罪状を書くに至つたという事実だけは明らかなようであります。それで私どもは、その現場模様をまず学生から説明してもらいたいということを学校側にお願いいたしたのでありますが、なかなかその説明、すなわち直接の証言、伝聞ではなくして直接の証言をいただけなかつたのであります。そのうちにいろいろな捜査を進めまして、大体において十三名の容疑者、すなわち暴行容疑者をば割り出しまして、十日に裁判所に対して検事が一応逮捕状を請求して、これをば持つております。しかしながらなお慎重にやらねばならぬと思いまして、十一日でありましたか、次席検事学長にお目にかかりまして、学生に出て説明をしてもらいたい、そうしないとその場の模様がわからないからという協力をお願いしました。これが法律的に言いますと、将来有罪無罪は別として、暴行という行為がある以上は、自首の形で出てもらうか、あるいは任意説明の形で、どういう形でもいいから出てもらいたいというので、協力申入書というものを豊橋の支部の検察庁竹内検事名前で出しました。ところがその翌十二日に、協力はできないからというお答えがありました。さらに進んで当時ただちに検挙というよう意見もありましたが、これを押えまして、もつと慎重にやらねばならぬ、それについてはやはり現場をばよく検察官が知らねばならぬというので、ここに学長と打合せの上で、法律上は裁判官の令状に基くものでありますが、実際は任意の承諾を得た現場の実況検分的な検証をいたしたのであります。そのときの検証調書に付属した図面を拡大しましたのをそこに持つて来ております。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 これについてただちに御説明を聞く方がかえつて便利だと思いますから、そこへ行かれて……。
  15. 安井栄三

    安井証人 学校側警察側との間におきまして大体一致いたしておりますところの関係は、元火薬庫職員住宅と、それから第一、第二教室と言いますが、この教室のところに符号で十という字がありますが、この十というところに遠藤巡査が一人の男性の倒れている姿、言葉をかえれば寝ている姿と言つてよいかと思いますが、その姿をここで認めまして、職務質問——あなたはどなたか、だれかということを聞いた場所、これからあとはずつと大体一致いたしているのであります。その次の十一の地点は、その男がここから逃げ出して、さらにごの十二の地点には挙動不審者。続いて参りまして十三の地点で二手にわかれたということを認あているのでありますが、十四の点でまた落ち合つて、そこで結局十五の点では学生十数名が三方面から包囲の形で近づいて来て、そうしてここに包囲をされた。十六の地点で、この青い方は遠藤巡査でありますが、この地点から遠藤巡査暴行を受けたのちに、こちらの方向にこういう形に遠藤巡査は逃げたのでありますが、この逃げる姿を見た学校側証言がありますからこれは間違いないと思います。それから残りました内田巡査がこの場所におきまして約三十名の学生包囲のもとに捕縛されました。ここで拳銃を取上げられ、手帳を取上げられ、ました。それから今度はこの場所食堂でありますが、この食堂まで連れて行かれまして、ここでもさらに暴言を聞きました。そうして今度は十九の場所翠嵐寮の一部でありますが、ここでは謝罪文を書いたのであります。そうしてその後に、この筋を通つて二十のところで、この入品をば行くところを聞きまして、そうしてここから巡査が警自察の方に帰つた。こういう順序であります。  もう一度繰返しますと、この十から以後は大体一致しているのであります。それで食い違い争いのありますのは、ここに倒れておつたという姿の人は、学校側説明によると、学生がおつたんだそうであります。倒れておつたのはどういうことかというと、実は伏つて待機しておつたということが、証拠上明瞭になつております。だからここにおりますところの学生がこちらから来る二人の巡査を見たという。ですから九から以前のことは今のところでは警察側言い分しかないのであります。それで学校側はこの付近から——これは非常に困難な審理を要しますが、要するにひそかに入つた不法に入つたと認めているのではないかと思いますが、その入つたという姿を証言する者はないのであります。学校側にぜひだれか見た人はないか、ここからひそかに入つた、あるいは不法に入つたということをば見た者はないかということをずいぶん何回かお尋ねするのですが、その証言をしていただけないのであります。これはあるいは無理かもしれませんが、しかしもしさように認められ、かつこの事実について学校自治会から遠藤内田巡査に対する刑法百三十条違反としての告発が出ておりますが、この告発人側では、どうしてもこの説明立証をしてもらわねばならぬのでありますが、今のところではその説明及び立証は、何へんかお尋ねしましたがいただいておりません。説明はありますが立証がないのであります。  そこで今度はこの十以前の九、八、七、六、五、これをば説明します。これは警察側証言だけでありますが、これを説明しますと、これは道路であります。この一というのは二人の巡査が、今日の言葉でいいます警邏であります、私どもの若い時分には巡回というように聞いておりましたが、巡回勤務に服してここまで歩いて来た。その一のところで一人の挙動不審者が覆面をしましてこの門のところにおる。何だかしらんと思つて今度はここり場所まで来ましたときに——ここの場所が一からながめられ、門のちよつと外でありますが、ここの場所までさらに巡査が来て、あたたはどなたですかと職務質問いたしたのであります。ところがここからちよつと離れた三のところにおつた者は、その職務質問に答えな、いで、こちらの方向へ走つて行つたのであります。その走つて行つた姿を見ました巡査は実は元この学校の中に盗難事件がありまして、その盗難事件学校内部まで調査に来た巡査内田巡査であります。またこれは元兵営でありまして、建物が非常に広く、また非常に粗雑といいますか、近代式じやないのでありますが、前に盗難事件もあつたから、どなたですかと職務質問したところが、その声を聞いて逃げて行つた、こう認定しまして、巡査説明によりますと、刑事訴訟法上誰何して逃走したという場合に当り、準現行犯、すなわち現行犯人その場所にありとみなして、これをば追跡して逮捕することが法律上できますので、とにかく本人にぶつかつてとつ調べてみようという気になりまして、あとを追いかけて入りました。ところが馬屋のそば、この地点まで姿は見とれたのでありますが、これからあとその姿をば見失つてしまつたそうであります。ところが六の地点であります火薬庫そばに参りまして——この辺のかつては前の盗難事件の当時に知つておるし、ことにここには、七とあります道場には人の寝起きもできるところだそうですが、懐中電燈を持つておりましたので、探しながら六から七に移つた。これをこうまわりまして、そして八の地点火薬庫の東で土堤になつております。それを少し上りまして、火薬庫土堤との間は十分歩けるのですが、これを通りまして九の地点に参りました。この土堤から九へおりた、こういう巡査証言であります。この証言は、内田巡査遠藤巡査はともに同じ内容証言をいたしておるのであります。  そこで、ここにおつたその挙動不審の者はだれであるかが今日の捜査ではまだ確定いたしておりません。推定すればどうも学生ではないかと思うのでありますけれども学生であるということも、もちろん何の何がしだということもわかつておりません。それでこれが通れるか通れぬかということの争いになりますが、写真を持つておりますのでお目にかけますが、また現場検証の結果通れることは間違いありませんから、ヒの巡査のとつたコースは真なるか疑なるかは別として、不可能ではないことだけは説明できると思うのです。ですからちようどこの長い棒と短い棒のような形でありまして、巡査証言は長い棒の長さの証言をしておる。学校側は短かい方の長さだけのことを話しておる、これだけの違いがあるのであります。この違いは巡査がうそを言つているのか学校が気がつかないのか、これをば解決するのが私どもの仕事だと思つております。ことにこれを解決することは告発事件解決にもなり、また本筋の暴行事件解決にもなります。双方不可分の形において私ども捜査を続けております。ただいままだ結果は出ておりません。捜査中であります。図面によりまして申し上げることはこれだけでございます。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 最初の、本件に関する警察側で調べた真相なるものによりますと、内田巡査はなわで縛られているようですが、そういう事実はあつたのですか。
  17. 安井栄三

    安井証人 あります。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 それはどの地点ですか。
  19. 安井栄三

    安井証人 十七であります。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 そこで縛られて連れて行かれたわけですね。その連れて行つた所謝罪文を書いたのですか。
  21. 安井栄三

    安井証人 そうでございます。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 その謝罪文はどういう内容でございましたか。
  23. 安井栄三

    安井証人 謝罪文本間先生に聞いてもらいたいのですが、巡査の記憶しかありません。実は御召喚をいただきましたので、一昨日でございましたか、私の方の寺尾検事に私の公文を持たしてやりまして、学長さんに、ぜひひとつ謝罪文内容によつて検討したいので、見せていただきたい、提出してもらわなくても写真にでも写さしていただきたいとお願いしたのですが、手元にないからというので、お出し願えませんでした。
  24. 内藤隆

    内藤委員長 手元にないというのは……。
  25. 安井栄三

    安井証人 だれかが保管しておるのだと思います。何とかして出してもらいたいとお願いに参りましたが……。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 その内田巡査縛つたのはもちろん学生でございましような。
  27. 安井栄三

    安井証人 学生であります。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 学生がどれほどの人数で……。
  29. 安井栄三

    安井証人 捕縛といいますか、逮捕といいますか、それは今のところでは四、五名であります。周囲にはおります。
  30. 内藤隆

    内藤委員長 逃げないよう周囲をかこんで……。
  31. 安井栄三

    安井証人 そこまで推定することはどうかと思いますが、周囲から見ておる。悪く推定すればそういうことでありますけれども、今のところ冷静な証拠では、どうだどうだと言つておる姿もあるし、だんだん言葉が出ております。ですから附和雷同と申しますか、そういう形はあるのであります。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 そのなわは……。
  33. 安井栄三

    安井証人 そのなわが証拠品にはありません。ただ、あとで申し上げますが、これは学生が準備したものであるという証拠が出ました。あとで……。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 大体事件の概略はわかりましたが、両者の間に、ただいま証人のおつしやつたようにたいへんな大きな点において食い違いがある。この見解の対立と申しますか、これは一体どういう原因でございましようか、
  35. 安井栄三

    安井証人 私の願わしいことは、最初北門におりました人がどうも学生と推定されるのですが、この人が北門におつた巡査が追つかけて来たということはわからぬのです、うしろを向いておつたのですから……。そこで北門におつて職務質問を受けたという事実が立証されること、これは警察側の方の立証でありますが、これが出ないと、警察側の方の立証巡査証言だけになるのであります。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 一方的になるわけですか。
  37. 安井栄三

    安井証人 はあ。
  38. 内藤隆

    内藤委員長 さいぜん証人証言中にもありましたが、検察庁としてはたいへん慎重な態度をおとりになつたようですが、そういう突発の事件に対して慎重な態度をおとりになつたのは、事警察学生の問題という、時局柄同じよう事件が方々にあるから慎重にしなければならぬという意味でおやりになつたのか。また事件捜査関係上何かそういう態度をとつたのか。
  39. 安井栄三

    安井証人 これは私ども内部のことまで申し上げますが、実は説が二つありまして、ただちにこの暴力行為事一件を検挙しなければならぬ、しかも拳銃なり手帳は、こちらが裁判所令状によつて行つて、これを捜索押収しなければならぬという意見と、しかしそういうことをすべきものでないという意見と、二つあつたのでありますが、私が名古屋へ帰りましたときには、すでに警察署長が直接学校長話合いの上で拳銃手帳をもとしてもらつた後でありました。ここであまりに早く検挙することは、このごろの学生警察の問題がありますし、いたずらなる紛争を起すこともいけないというので、特に自重いたしたのであります。むしろ同僚からは、安井検事正ちつと自重し過ぎやせぬかといわれたくらい自重したのであります。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 大体の事件をお聞きしておりますると、警察手帳なりあるいはピストルなり、そういう所持品を奪うというやり方は東大にもあつた。同じような手口のように見えるのです。そこで七名の学生を今逮捕してお取調べ中のようですが、取調べの事態である程度明瞭になつて来たと思いますから、捜査上支障のない範囲において、ひとつ現在の取調べの状況を述べてください。
  41. 安井栄三

    安井証人 まだ調べが完了しておりませんので、実はこの点はなはだつらいのでございますけれども、せつかく委員長のお尋ねでもありますし、御参考になる程度のお話を申し上げたいと思います。  七名の検挙をいたしましたのは五月十九日でございます。それでただいまの刑事訴訟法によりますと、十日間の勾留状を請求し、これを延長いたしまして、さらに十日間延長ができるようになつております。その十日間延長いたしました二十日目が昨日なんでございます。もちろんそのうちの一人はもう少し調べなければ一このまま勾留することは人権の尊重からいつて、まあ本人もある程度供述しておりますので、一人だけ十三日目に処分保留のまま釈放いたしました。六名のうち昨日さらに一人を処分保留のまま釈放いたしました。そうして天野、田島、鵜飼、田村、高井の五人を、昨日付をもつて寺尾検事の名で名古屋地方裁判所公訴提起の手続をいたしました。この公訴事実は、今現われておる証拠を前提といたしまして、証拠に基いて認定できる程度で、従つて罪名暴力行為不法逮捕、それから謝罪状を強制して書かしたと認めましたので強制罪、それから私服ならともかく、制服の巡査が中へ入つてからも公務執行だと言つておるのですから、公務執行妨害の成立は明らかだと認定いたしまして、この罪名で起訴いたしました。ただ現在の証拠には、巡査証言以外に相当多数現場におりました学生証言をいたしております。それから今日では学校の教職員の中にも証言する人もあります。さらに具体的に人の名前を言うのはどうかと思いますが、そのときかけつけた玉井補導部長現場模様を話しております。それからもう一つ私どもの方で確証と思いましたのは、本月に入りまして、共犯でかねて逮捕状が出ておりました二階堂、これは最初の七名のうちには入つておりませんが、この二階堂がどこへ行つたかと思つて探しておりましたら、豊橋市の北鮮系統朝鮮人——この朝鮮人はこの事件の後に学校側とともに協議会を開いたり、あるいはいわゆるビラを出すことに関係しており、現在自由労組との交渉委員をしておるのでありますが、この人の家に隠れておる姿をようやく発見して逮捕いたしました。逮捕いたしましたところが、本人の上着のポケットから原稿用紙五枚ほどに書いてあるのが出たのであります。それにこの事件の経過が書いてあつたのであります。つまりほかにも被疑者で自白しておる者があります。たとえば高井なんか自白しておるのですが、この二階堂は全部文書に書いて持つてつたのであります。この文書は供述調書でもなければ、検察庁から書いてもらつた書類でもないのであります。これは本人が自由に書きました書面でありますので、いわゆる物的証拠の価値を持つておるのであります。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 北鮮系朝鮮人は金洛賢というのですか。
  43. 安井栄三

    安井証人 はい。
  44. 内藤隆

    内藤委員長 原稿用紙五枚というと相当長い文書ですね。
  45. 安井栄三

    安井証人 はい、長いです。ちようどここにそれの写しがあります。これの要点は読み上げますが、全部は捜査上困ります。それからそれを写真にとりました現物はこれでございます。ずつと各ページごとに写真をとつてあります。
  46. 内藤隆

    内藤委員長 捜査上支障のある点はよろしゆうございますから、さしつかえないと思われる点をひとつ読み上げてください。
  47. 安井栄三

    安井証人 人の名前なんかは略することをお許し願います。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 よろしい。
  49. 安井栄三

    安井証人 まず冒頭に「A大チーム行動について」と書いてあります。愛知大学のチームの行動ということであります。このチームの意味でございますが、これがまた証拠品の中に、別にその他の暗号とともに翻訳されたものがございます。そのチームとは中核自衛隊という意味になるのであります。これも写真がございます。そこでこのチームを中核自衛隊と読みかえまして報告いたします。  愛知大学中核自衛隊行動について、四月末から一名のスパイが某教授宅に入り込んでおるという教職員の方から情報を得た。愛大細胞は五月五日夜偵察行動に移り、情報収集に努めたが、七日再ぴ教職員組合某から申入れがあり、何とかやれないのか、やれぬなら自分たちでやるぞと強い申出があり、指導部ではただちにこの討論に移つた。しかし指導部員中にも、キヤツプを除いたほとんどは右翼的日和見が強く、キャップの提唱する一齊襲撃にはとうてい応じられず、まず綿密なる調査が必要であるといつたよう意見が散見され、無言で通すものが多かつた。しかし一人の熱烈な部員が、方針の徹底化と、国民を裏切る日和見主義者は明らかに敵であるという確信に満ちた断言に、おずおずながら居合せた職員は全員賛意を表し、具体的の打合せについては今晩八時から協議することを決定し、それまでにチームの結成に努めよという指令を出した。今晩というのはちようど五月七日になります。このチームは今度の襲撃のチームでございます。中核自衛隊がさらに新しく襲撃チームをつくるという意味でございます。「八時になつた。四チーム十四名で編成され、二名の大衆が参加した。」二名の大衆というのは、私の方の推定では、一人は自由労働者で、一人は朝鮮人、但しこれは証拠はありません。どうも前後の関係でそう思われるのです。「会議には教職員班某、某、某が参加し、七名で行われた。第一、われわれの行動を一日躊躇すれば全学生、全国民にとつて取返しのつかない不利に陥り、学生の平和運動が破滅になることを意味する。ただちにでつち上げたチームであるが、再び軍事行動の意義を再認識し、断固闘う。」「第三の一、あくまで逮捕し、大衆的に処理する方向が正しいのではないかとの意見も出たが、準備活動の不足のためにこの線に一致を見た。従つて全員繩を用意することになつた。」これが繩を用意した証拠でございます。「二、すべての行動は極祕裡に行うこと。」「三、伝令、待機位置が決定」「五、服装は軽装にレて覆面せよ。時計などポケットの中には何も入れるな。」「六、待機中の任務、各人はおのおのの部署敵情を観察、あわせて四囲を警戒せよ。」「七、十時一三十分、各チームの隊長は隊員を引率して時間を正確に配置につくこと。」八、省略、「隊は決定に従つて各チームは十時三十分、所定の位置に待機した。観察は草むらの中に伏せて歩哨の任に当り、」この「伏せて」という、この証拠によつて、先ほど言いましたいわゆる倒れておつたという姿と一致するように思うのであります。「伝令が合言葉で点検と伝達に来ていた。約一時間後に後方テニス・コートから電池の光二つが現われた。武装警官であることが判明。」このテニス・コートというのはあのうまやのそばにあたるんですね。それで先ほど言いました巡査証言にも、電池をあれしておつたというのはこの付近だと思うのでございます。この付近に電池が二つついたということは、この書面でわかるのでございます。またここで制服巡査であることがわかるわけです。「ただちに連絡に走つた。二名の警察官は出て来て、教室前で隊員二名と正面からぶつかつた。一人はただちに警察官の首に飛びつき、電池をもぎとり、一名はそのすきに警察官の頭蓋骨を三つ、あわてた警察官は二人とも五メートル後退して、ピストルを出して構えた。一名は寮大衆動員に、一名は隊員を集めて再び行動開始。貴様は何者だと叫ぶ警察官言葉は、まつたく守勢に立つた。何をするのだ、公務執行妨害だと叫ぶ警察官を徹底的な鉄拳と棒によつて——逃げも隠れもしませんから、手を離してくださいと敗北の色の見えて来た一名の警察官は、麦畑の中で数名にとりまかれて鋭く押しのめされ、気絶状態に陥つたと見えたのもつかの間、一目散で逃走、その姿を見失つた。残つた一名(内田)は覆面した三名によつて完全に逮捕し、押し寄せて来た全寮生徒と合致し、覆面等武装を解除して寮の大衆と合致した。そこで大衆の先頭に立つて敵を縛り上げ、かけつけて来たT補導部長と協議の上、敵の武装解除及び警察官手帳を取上げて、大衆的裁判にかけ、寮の一室に監禁し、誓約書をとらせて帰した。十時三十分より一時三十分まで隊員は勇敢に行動したが、一隊員は終始一貫その姿を現わさないという裏切者が出た。」これがだれかということはもちろんわかりません。  それからそのあとに自己批判というのがございます。これが済んだあとの自己批判があるのですが、そのうちの二として、「予期しない敵が背後より来たときに、隊の指揮系統は完全に瓦解された。不断の指揮訓練の皆無」と書いてあります。まあ、こういうものが——あとちよつと何でございますが、先ほどの警察官証言と、それからこの文書と相まちますと、起訴をするのに適当だというように認定いたしたのでございます。
  50. 内藤隆

    内藤委員長 捜査の途上でありますから、大体その程度でよくわかります。結局、どうでしようか、犯罪行為があつた場合には、これを捜査検挙することは、検察当局としては当然のことでなければならない、しかし将来この種の学生警察官紛争事件の発生を防止するためには、どういう対策が必要でありまするか。ひとつ職務の上からお話願いたい。
  51. 安井栄三

    安井証人 その点はむしろ法務府からお話すべきものではないかと思います。ただ私個人としてちよつと申し上げさせていただきたいと思います。  それは古いことでございますが、まだ太平洋戦争の始まる前でございます。文部次官それから司法次官、厚生次官、それから内務次官ですが、今これを翻訳しますと、文部省と法務府と、それから厚生省と国警本部といいますか、この四つが青少年の問題及び学生について四次官通牒というのを出しております。これは私若い時分によく読んだのですが、これによつてお互いの間のいわゆる紛争を避け、連絡を保つために、非常に行き届いたことが書いてあつたことを記憶いたしております。それで私が生意気なようでありますが、もし個人として申し上げるとすれば、こういうようなおのおの横の連絡のいわゆる次官通牒、そういうこと、でお互いに便宜も与え合う。法律法律でありますけれども、それがそれぞれを納得さして紛争のないように、しかも一方事件があつた場合にはすぐ仕事ができるというようなことにでもなりましたらと、これは私のまだ若い時分のことから考えるのですが、内容じやなくて形式でございますけれども、たいへんその当時あれが役立つたことを記憶しております。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどのあの謝罪文でございますが、巡査の記憶だけだとおつしやつたのですが、その記憶の程度でもよろしいが、おつしやつていただきたい。
  53. 安井栄三

    安井証人 記憶だけでございますが、巡査の記憶から、これをば私どもの方の起訴状に書いてあるのを申し上げたいと思います。「即時当初においてその口授により、同巡査をして「私今回愛大内に不法にも侵入したことを深くおわびいたします。今後かかることは上官の命令といえども絶対にいたしません。」との同巡査名義愛知大学全学の皆様あて謝罪文並びに「警察手帳拳銃こん棒はお宅に預けました。」との書面を掲げ、それに拇印を押さした」こういうのでございます。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それから先ほどのその文書をお読みになつたところからみますと、あそこの五、六から先のことはわかりますが、二、三のことが出ておらぬのですが……。
  55. 安井栄三

    安井証人 ございませんです。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするとそこに立つてつた考及びそれに二名か三名おりたものはだれであつたかわからぬわけですか。
  57. 安井栄三

    安井証人 目下捜査中です。ただこういうことは言えます。この文書の中で四つの場所におつたというその四つの場所が確定をすれば、あるいは出て来るかもしれないと思います。
  58. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは推定になりますが、先ほどからあなたの証言を聞いておりますと、そこに立つてつた者及び中におつた者は、巡査をおびき入れたものとしかわれわれは考えられないが、かような推定はなさいますか。
  59. 安井栄三

    安井証人 それはまだ調べておりまして、そこまでのことを申し上げるのは少し早いと思いますけれども、ただごの物的証拠によりますと、こういうことが書いてあります。服装は覆面をして、そして四箇所に待機する。そして各隊長は隊員を引卒して、時間を正確に配置につく。それで結局みな寄つてこれを攻撃するというのでありますから、各場所ごとにはできるはずもありません。やはり一箇所にな。ておらなければならぬ。現に最後は一箇所でやつておる。それともう一つ、あなたはどなたですかということによつて、私は学生ですという答えもなし、そのまますつと行くということは、これは推理の原則から、今鍛冶先生のお尋ねのようなことも考えられぬことはありませんが、もう少し調べをさせていただきたいと思いますので、そこまでのことはちよつとまだ申し上げかねます。
  60. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 次にお聞きしたいのは、学校から告発が出たというのですが、告発の要点を聞かせていただきたい。
  61. 安井栄三

    安井証人 告発状は告発人藤井博之、豊島忠名義で、五月二十四日に豊橋支部の検察庁に提出されました。そして五月二十六日にそれを名古屋の地方検察庁に移送をいたしております。これは私がこの種の事件を、狭い小さな豊橋市の検察庁で調べるよりも、やはり本筋と思われる名古屋がいいと思いまして、移送は私の命令であります。告発状の内容は、今ここに写じを持つておりませんが、要点は五月七日の夜、豊橋警察署の内田遠藤巡査不法学校内に侵入した、こういう告発文でございます。そこで五月三十日に告発人を呼び出しましてその説明を聞き、また被告発人であるところの内田遠藤巡査を、被疑者の立場において取調べをいたしました。これは従来本件に全然タッチしておりません私の方の最も優秀な中島という検事を専属いたしました。これは本筋の事件とは全然別個で、しかも報告は聞きますけれども、独自の立場で調べることを命じまして、中島検事が調べたのであります。また中島検事は六月一日に、豊橋警察も立ち会わせしめず、中島検事だけで、しかも前の検証に立ち会つた事務官は一切やめまして、私の方の写真を写す技術者もかえまして、独自の立場で現地をよく見ました。それから続いて六月三日には、再び告発人を呼び出して取調べたのであります。  こういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、お尋ねですから多少言い過ぎになるかもしれませんが、ちよつと申し上げて入たいと思います。こういうことがある。告発状に基いていかなる根拠で告発されたか、具体的の事実並びに証拠を提出してもらいたい、またこちらで取調べる必要があるならば申し出られたいと、懇々と二度にわたつて言いましたところが、最初のときは本日は申し上げられない。告発人として相談して申し上げるといつてつたのであります。五月三十日であります。さらに六月の三日に呼び出して告発の事由について問いましたところが、早く不起訴にしてくれ、そうしたら検祭官審査会で争うということを告発人が言うたのであります。これは言いたくないのですけれども、事実なんです。しかし私は、さようなことを言われても、こちらは検察官として責任があかるから堂々と調べなさいというので、この告発事件の主任検事をこの間は遠く広島県まで出張させました。もとのこの学校の教授の某氏を調べに行つたり、ずいぶん東奔西走して告発事実について調べておりますが、いまだにもちろん私は不起訴の決裁はいたしておりません。これは相当かかると思います。というのは、一面においてまだ身柄を拘束して起訴しておりません。たとえば愛大の講師の某氏、それから犯人蔵匿で勾留しております朝鮮人なんかの起訴がございません。今のところではまだ捜査が相当続行しておる。なべるく早く片づけるつもりでおりますが、そういうわけであります。
  62. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると告発状には不法に侵入したと言うておるが、どういうところが不法なのか、どうして侵入というか、さようなところはちよつとわからぬわけですね。
  63. 安井栄三

    安井証人 十分な説明がないわけであります。多少は抽象的にございましたけれども、私どもの方は調書がとれる程度に……。
  64. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 次は先ほどの御証言で、あなた方の捜査に対して、なるべく強制手段を用いないで、協力方を学校に申し出た。しかるにその協力を拒絶したというお話でしたが、それはどういう理由で拒絶いたしておりますか。
  65. 安井栄三

    安井証人 それは私も実は学長にも会いました。学校学校の立場もあるし、学生学生の立場もある。従つて証言することも協力することも——ことにこちらは不法侵入と見ているんだから、つまり暴力事件としての証拠は十分にないと思う。従つて行つて学生説明さすことはできないという意味です。そう認めないからというのです。
  66. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それは向うの学長の言ですか。
  67. 安井栄三

    安井証人 書面があります。じや申し上げましよう。この回答は五月十一日であります。  「一、申入書第二項の要請については学生に対してその、主旨を伝達した。  併し貴庁に出頭する事を申出たものは今のところ居らない。  なお本学の調査した範囲には、学生に対し処分に値する程度暴行行為があると認める充分な証拠がない。従つて指定の学生に出頭を礁悪する事が出場来ない。又学生に対して強制処分を行う事は適当でないと思う。  二、按ずるにこの事件は警官が大学の構内に無断侵入したことに起因するものである。この事は昨今甚だ切実な問題となつて居る大学の自治、自由の侵犯とも成りかねない。学生行為を追究する前にこの根本問題について精査せられたい。  三、随つて学生捜査について強制処分などを取る前に真相を究明する為、例えば自治委員長の如く、当夜の学生行動につき最も認識あるものの見解を参考として聴取せられることをお勧めする。」  こういう回答を五月十三日付でいただきました。  それからもう一つ申し上げますが、さらに私は次席検事に命じまして、一度学生と懇談してみたまえ、——私の方の次席検事は、熊本の五高で寮に入つてつた学生生活の体験者でありますのて、若い気分になつて学生と懇談すべく伺いました。十数名の学生諸君——もつと多く会いたかつたのですが、自分の学生時代のことを話をしたりして、まつたく懇談をしたのであります。そのうちの一人、二人は何もものを言わぬ。答える必要はないとか……。ずいぶん時間をかけて、真相を明らかにしたいために、次席学長立会いの上で学校へ訪問いたしまして、懇々と話をしたのですが、お取上げがないのみならず、その集つた学生諸君名前を名乗らない。ところが今度勾留しますと、その中に次席の前で默つてつた学生が二人おるのです。そういう次第であります。だから尽せるだけは尽しております。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたは今学長本間喜一さん、この人にお会いのときに、ここに書いてある暴行事件を調べる前に、根本問題である大学の自治、自由の侵犯であるかどうかということを調べられたい、かようなことを書いてありますが、おそらくあなたがお会いのときも、その言が出たろうと思いますが、もし出たとすれば、どういうことが大学の自治及び自由の侵犯というのか、また何に基いて制服警官がかりに職務であろうが何であろうが、まあ職務だと思いますが、大学の校内に入つたからといつて、ただちに犯罪になるのか、侵犯というのはおそらし家宅侵入とかなんとかいうのであろうと思います。別に拒否もしないのに、家宅侵入ということがどこにあるか、これはあなたは法律家として必ずお聞きになつたと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  69. 安井栄三

    安井証人 実はそれを聞きたかつたのです、そこで私は学長に面会を申し込みました。学長もわざわざ名古屋まで来ていただいて会いましたが、それがだんだん日がおそくなりました点もあるのですが、お目にかかつた日が実は検挙の日に相当する。偶然そうなつた。そういうことは学長さんも言いにくいでしようし、私も聞きにくいようになりまして、まあとにかくよく調べますからということで、比較的簡単に、つまり一日前に会つておりますと……。しかしその書面に基きまして、私は相当検討いたしました。その書面をもらつてから十八日の私の方の開示になるまでには相当検討いたしまして、制服警官が入ることが、学問の自由とか学生の自治とかいうことの関係を研究いたしまして、これだけ手を尽して協力を求め、また向うの回答書を一言一句研究して、もうやむを得ないからということで、私の責任で検挙をいたしました。
  70. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはこの愛知大学の問題だけではなくて、所々の学校において警官と学生の衝突が起りました。そのときみな使われますが、大学の自治及び自由を侵犯した——一体学生がそういうことをどうして言うようになつたか、この点われわれとして最も本委員会においてあなた方に証言してもらつて調べなければならぬ根本問題だと思う。学生の中には、職務執行といえども学校へ入つた場合には不法だ。さらに不法であるがゆえに、何と申しますか、自救行為でこれをとめてもよろしいという思想を持つておる。さようなことの許ざるべきものでないことは法律上明瞭であります。学生は若いものだからそういうことを言うて困るとはいうものの、またある程度恕しますが、学校当局及び教援のうちにも同様の見解を持つておることをわれわれはなはだ憂え、かつおそれるものであります。従つて学長ともあろうものが、大学の自治及び自由を侵犯したものと認めると言うからには、何に基いて侵犯したと言うのか。大学の自由、大学の自治とはいかなるものであるか、この点を明白にせずして言うわけには行かぬのですから、それを明白にせなんでさようなことを言うとすれば、それは暴言だといわざるを得ないと思うが、この点あなたはどうお考えになりますか。
  71. 安井栄三

    安井証人 検事としては研究もいたしておりますし、また今捜査中の問題にもからんで来るのでございます。新聞に私どもが極秘にやつたことが一部出たこともありますので、ちよつと説明さしていだだきます。全部私の意見は申し上げられないのですが……。実は先ほどの物的証拠によりますと、教職員が五名この打合せに参加しておる。その物的証拠に頭文学で名が出ておるのです。それからもう一つここに写真がございますが、本人の持つておりました書面の中に、そのチームのメンバーが書いてある。そのチームのメンバーはロシア語で書いてある。私の方の早稲田という事務官が拓大を出ておりますので、私はロシア語がわかりませんから、すぐに翻訳してもらいました。そうすると、この翻訳から、学生名前及び教職員の名前が出て来たのであります。それでその説明を求めるべく金丸という講師——これは第一回の卒業生ですが、とにかく学校に縁故のある人ですが、この金丸という講師を調べましたところが、一切何もお話がないので、それで正式に裁判所の判事に尋問してもらいました。そうしたら、自分はこの暴力事件に共犯の疑いを受けるおそれがあるからといつて証言を拒絶された。それから私の方はまだ慎重に、証言拒絶ということだけで考えておつたのでありますが、だんだんと証拠が出て来ましたので、金丸講師を共犯の容疑をもつて拘束いたしました。それからいろいろとさかのぼつて、中核自衛隊及びその前身の正式の届出のある愛大細胞等の過去のことを調査しますと、学生及び若い教職員としては——私の考えとしては行き過ぎの点が学校の外にある、学校の外での行為がある。たとえばこの事件以前にやはり暴力事犯が二、三件わかつてつた。それで実はこの点は言いたくなかつたんですが、今お話ですけれども、率直に、何ゆえにこういうことが起るかということを、今一生懸命に検察官の手で調査いたしておりますので、若い教職員の中にそういつたいわゆる急進的な気分で行動しておる方がある。たとえば、某教授はこの事件直後に他府県へかわられました。その方についていろいろ聞きますと、昨年学生生数名の退学処分を教授会を開いて決定した。その決定した処分をまたむし返されているような事実がわかつて参りましたので、さらに引続き調べを進めて行きたいと思います。  それで今度はこの事件を起訴します直前の昨日起訴したのでありますが、九日の日曜日になるべく人に知れない時間に、正式に裁判所令状で、教職員の方々で私の方に証拠として出ております方のお宅へ参つて、しかもそのときはあらかじめ学長の了解を得まして、こういうように正式に調べますからといつて、数箇所のお宅へ伺いました。そうしたところが、たとえば「抵抗」と題する印刷物とか、そういうものがまた出たし、それからノート、手帳等にいろいろなこと書いてあるのが出ました。それを根拠に今また調べようとしておりますが、その中に、この事件に関して若い教職員の警察に対して争うための方針なんか書いたものがございます。これはどうぞこの際お許し願いたいと思います。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大体わかりましたが、この事件学生及び教授等のいわゆる一部の特殊行動をなさんとする——今われわれに言わせれば、暴力破壊活動をしようとする計画でやられたことは明白になりましたが、問題になるのは、この学長及び学校の経営の任に当つておられる人である。こういう計画を知つてつてようなことを言つたとすれば、これは容赦なりません。かりに知らなかつたといたしましても、かような暴力が行われたにもかかわらず、その前に警官が悪いのだから警官を調べろ。警官が悪いのなら両方やればよろしいので、警官が悪ければ、この学生逮捕、監禁、その他暴行等はさしつかえないものになるという考え方、それから学校へ警官が入ればただちに大学の自治及び自由の侵犯になるという考え、これはどこから出ておるか。先ほども申しましたが、何の根拠をもつてやるのか。こういう学生指導の任に当る人がさようなことを考えてやるというところに、赤い教授も入つて来、こういう学生も出て来ることになるのだ。われわれはかように考えますので、これらの点、わからぬとすれば、やむを得ませんが、私はこれがいわゆる学生と警官との衝突事件の根本を解決する問題であろうと考えますので、ぜひこの点を明瞭にしていただきたい。  委員長、これはもしその点がわかれば、ある時期にもう一ぺん聞かしてもらうようなことがあることを、私は希望いたしておきます。
  73. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま鍛冶君のおつしやつたことく、その点が明瞭になれば、他の機会にもう一度おいでを願うかもしれません。
  74. 安井栄三

    安井証人 いましばらく時間をおかし願います。私も長い間検事をいたしておりますが、この事件が私の最後の御奉公だと思つておりますから、必ずやります。
  75. 内藤隆

    内藤委員長 他に発言の通告がありますので、順次これを許します。渡部義通君。
  76. 渡部義通

    渡部委員 私は安井検事正の御説明や御意見を聞いておつて、実は噴飯を禁じ得ないものであります。  第一の問題は、かりに私の家にえたいの知れないやつが入つて来まして、そして私の家の中を徘徊しておるというのだつたら、私はこれをつかまえて、もしこれが逃げる憂いがあるとするならば、これを縛つてしまう。それが警察官の洋服を着ておろうが、警察官のこん棒を持つておろうが、ピストルを持つておろうが、そんなことは何ら問題はないのであつて、問題はそんな服装にあるのではなくて、そういうようにやつて来た者に対しては、警察官であるかさえも初めはわからなかつた。従つてこれは私はつかまえもするし、またこれのこん棒も奪い、ピストルも奪う。そうしておくことが問題の真実をとらえる上で、証拠品として重要なことであると考える。ところがあなたの説明の中には、そういう点はまつたく考えられないのであつて、ただまつ先に説明に入られて来たという点に、私は疑問を持つわけですが、そういう点についてはあなたの見解はどうですか。私のところにそういう連中が入つて来たならば、私は今申し上げたような方法をとるのが正しいと思います。この点はどうですか。
  77. 安井栄三

    安井証人 制服の巡査が主観的及び客観的に、挙動不審の者をば見つけて、これをば追跡するというのは職務だと思います。正当な職務だと私は考えております。それでもしその最初唯何しました者が、この学校へ、あるいは窃盗に入る者であつた場合、さらに進んでは、もつと進んだ不正行為をなす外部の者であつた場合には、この巡査がこれを追跡しなかつたら、巡査として。職務は尽していないことになるのではないかという気がいたします。ことに制服で、しかも学生に対して公務執行と言い、本人手帳を持ち、身分の証明も持つておるのでございますから、今のうさんの者が入つたので、そのうしろから制服巡査がついて来ておつたら、一般民衆は、それは来てもらつてよかつたと思う場合もあるのではないかと思うのであります。従つて、これがそういつた目的でなしに、ほんとうに何か他の目的を持つて、かりに巡査の制服を着ても、ゆえなく入つたということを説明される資料並びにその立証をしてもらえば、それによつて私の方は調べよう思つておりますので、告発事件は、いまだもつて調査中と申し上げたわけであります。     〔委員長退席、福田(喜)委員、長代   理着席〕
  78. 渡部義通

    渡部委員 あなたの説明だけはわかりました。しかしながら学生諸君は、そのとき入つて来た警察官が、何の目的で入つて来たか、そのえたいの知れない覆面した者を追跡して、それがどろぼうであり、学校に対して他の障害を与え得るという目的を持つた者であるから、警察が追跡して来たのだということを、学生諸君が考えておつたろうかどうか。その点はどうです。
  79. 安井栄三

    安井証人 その点につきましては、直接その場におつた、現に私の方でも調べ中の学生諸君が、もう少しその当時のことを説明してもらうと、それに基いて私の方も調べができるのでありますけれども、默祕されるために、説明も聞けないという状態になつているわけです。
  80. 渡部義通

    渡部委員 そういうことは逃げ口上であつて説明をしてもらえばと言いますが、学生諸君は、警官であるかどうか別として、警官の制服を着たのが入つて来た、これが何のために入つて来たのかということが問題であつて学生諸君は、どろぼうみたような覆面をした怪しい人間を追跡して来たのだ、だからこの警官の服を着たやつをつかまえよう、こう考えたわけではない。むしろ学生諸君は反対に、何のためにその警官の様子をした者が入つて来たかということが問題であるからこそ、それをつかまえたのであつて、それをつかまえたのは、当然その事態を明らかにするために、私も先ほど言いましたが、国民の当然の権利として、不法にやつて来た者をつかまえ、あぶない武器を持つておればこれを取上げ、そしてこれを調べるということは当然のことだと思う。あなたは逃げ口上を言つておられるが、実際問題としては、学生諸君は、覆面の怪しい人間を警官が追跡して来たからつかまえた、そういうことを考えているはずはないと思う。どういう目的で警官が入つて来たか、しかもその目的事態に下法なものがある。だからこそ学生諸君はこれをつかまえたのである。その点をあなたが追究せずして起訴されるということは、私はおかしいと思う。その点の確信をあなたに聞きたい。
  81. 安井栄三

    安井証人 その問題につきましては、昨日裁判所公訴提起いたしましたので、裁判所でなるべく早く裁判をしてもらつて認定してもらうことを待ちたいと思います。
  82. 渡部義通

    渡部委員 あなたはその点で、検察官としての当然の果し得る任務を果さなかつたということになるのですが、それは別としまして、先ほど物的証拠なるものを読み上げられました。しかし私たちは幾たびか検挙されたこともあり、私たちの友人関係なんかでも、無数の人が検挙されている。その場合に物的証拠として裁判所に取上げたものの中にも、架空なものがあつて、物的証拠でないことがはつきりした事例は非常に多くあります。これは検察官としてのあなたは御存じだと思います。かりにそれが物的証拠だとしましよう。私たちは内容そのものを考えてみても、非常におかしい点があるが、しかしかりに物的証拠としまして、その物的証拠の提出者という人が、その中で言つておることの中には、何か学生だちの組織をつくつて、襲撃しようということを、かりに決議したとしましよう。その場合に学生諸君は何を襲撃しようとしたか。それは連日のように学内にスパイ的な行為にやつて来るらしい不法警察官がある。だから従来やつて来たことに対する対抗処置としてのことを学生たちは考えたのであつて——私はいつの場合でも、あなたの読み上げられたその前提に立つてつておるのですが、従来やつて来たことに対する対抗処置として考えられたことであつて、従つてその晩警官が入つて来たというようなことは、警官が何のために入つて来たか、その日は覆面の怪しい者がおつてつて来たにせよ何にせよ、それは学生知つたことじやないのであつて、また事実知らないでありましよう。だからあなたもその証拠がつかめないわけです。そのようにしてやつて来たとするならば、従来から警官がそのような行動をとつて来たことに対する学生の対抗処置であつて、単にたまたまそのとき入つて来たことに対する対抗処置ではなかつたかと思うが、その点はどうでしようか。
  83. 安井栄三

    安井証人 お尋ねの中の、この原稿用紙に書いた筆蹟を私どもで鑑定いたし、——たまたま鑑定する対象が三つも四つもありましたので、対照しまして、その筆蹟者は判明いたしております。ですからたまたま特定の者のポケツトにあつたものではなくして、書いた者はもうわかつております。  それからもう一つ、今のお尋ねの警察官がたまたま来たということについて、これは本間学長さんか私の方へ出された、その晩のことを書いた書面がございます。その書面をこの際申し上げて、御参考に供したいと思うのでございますが、実は制服の警察官が来るということは、学生側では予期していなかつたことのようであります。制服の警察官が来たということに対して、学生諸君なり学校側説明が、学長のところへ報告となつて行つて学長から私の方へ出された書面に「魚をとる網で大きな鯨がかかつた」「もう少しおちついて巡査に聞けばよかつた」という二行があるのであります。これはお尋ねがありましたから、その点申し上げたいと思います。従つてかりに今のような一つの待機姿勢にあつたとする対象は、制服の巡査でなかつたことは明らかであります。しからばだれかということについて、特審局関係及び警察の情報調査等の関係を調べておりますが、その特審局関係は、調査いたしましたら、後藤という者が、従来の愛大細胞その他学校側から投書がありまして、その投書に基いて調査をばするというので、自分の郷里岐阜県の特別知合いの者が学校行つておるというところから、学校内部のことを若干依頼して調査したような実例を、私の方で、検察官として知つたので、あります。     〔福田(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 しかもこの後藤君は一度も学校の中へ入つた形跡はございませんし、職員の住宅へ行つた形跡もないようであります。しかしながらこの後藤君が学生に送つた手紙があるそうであります。私はその手紙を拝見すれば、さらにまた真相が明らかになると思いまして、これはむしろ学校側の利益のために、この手紙をば出してもらうと、きようその写しを持参できると思いまして、おととい学長にお願いしましたところが、それはある、あるけれどもようは出せないというので、断られたのであります。それは二日前ですから、八日の日曜日でございます。そんなわけで、学校側のためにこれを調べておく方がいいというよう証拠も出してほしいのでございます。
  84. 渡部義通

    渡部委員 後藤といいますと、特審局東海支部の後藤俊という人ですか。
  85. 安井栄三

    安井証人 そうでございます。
  86. 渡部義通

    渡部委員 これこそが問題なんです。つまり東海支部の後藤特審局員はアルバイトの学生に一万円を月々送るという約束のもとに、学内のスパイ行為をやらせておつた。そのうちの一人が良心の呵責にたえかねて、その後藤某から来たいろいろの要請状等を学校のある人に渡した。そこで学生諸君が、学内にまで特審局がスパイを入れておるのはけしからぬ。何のために一体学校内にスパイを入れて、何を目的に調査しておるのか、これが学生諸君の憤激の的になつたということを、私たち学生諸君からもいろいろな調査を得充のであります。あるいはまた社会タイムスの五月二十二日号に、はつきりその文章までも出ておるわけであります。この文章については、これこそ物的証拠であるので、やがて特審局の方からも明らかになるでありましようけれども、このよう行為を特審局を中心としてなしておる。これはひとり愛知大学だけではなくて、全国至るところの大学でそのよう事件の根源をなしておるところの問題は、いつもここから起きておるわけであります。学一生として、そういうものが入るヒとは、学校の自治あるいは学園の自由を侵害するものとして警戒するのは当然のはずと思うが、あなたはこの点についてどう考えられるか。
  87. 安井栄三

    安井証人 私は公平な立場から、事件真相を調べたいという念願から、今の点も調査をしたいと思いまして、名古屋の特審支局長を私どもの方に最近呼び、説明も聞きました。そのときの書面もここにありますが、今初めて承ることもあります。いずれにしても、後藤という人が法律に基いた調査をばしておる、しかもすべき必要性がある。しかしながらその調査に多少もう少し考えてやればよかつたという点が——手紙を出したということを聞いたものですから、それを拝見すると、学校側言い分もまた証明がでぎると思うのですが、その書面を出していただけないのであります。こちらから伺いましても、写さしてもいただけなければ、見せてもいただけない。です小らひとつおそれ入りますが、そういう書面は学長から検事に見せるようにお話になつていただきたいと思います。
  88. 渡部義通

    渡部委員 これは特審局にあなたが聞かれても、特審局は国民の自由や権利を侵害するいろいろな悪事をやつておる事実があるわけですから、こういうことを特審局がやりましたということを言わないことは明らかであります。また学生諸君なり教授の方なりにそういうことを聞かれた場合に、合法的なものであつても、それを非合法なものにとられ、憲法上当然許されたものであつても、これが犯罪にかけられるというならば、黙祕権を行使するのは当然のことであつて、これはなかなか発見はできないかもしれない。しかしながら今のあなたのお答えの中で、ちよつと私の気をひいたことは、あなたは特審局が法律上の手続によつて法律上必要なことを調べておつたと言われる。
  89. 内藤隆

    内藤委員長 渡部君にちよつと申し上げますが、特審局の次長を呼んでおりますから……。
  90. 渡部義通

    渡部委員 それはわかりますが、検察当局はそれに基いて検察をやつておるのですから、その問題についてちよつと聞かせていただきたい。  それで、あなたは法律上の必要あるいは調査すべき内容と言われるが、当然特審局として調査すべき内容というのは、愛知大学においてどういうものであつたのか、あるいは他の大学その他の学校においてしばしば同様の問題が起つておりますが、調査すべき事項とはどういうものであつたのかについて、特審局に尋ねられたことがあるのか。
  91. 安井栄三

    安井証人 それは私から申し上げてもいいと思いますけれども……。
  92. 渡部義通

    渡部委員 あなたに聞いているのです。
  93. 安井栄三

    安井証人 きようは特番局の吉橋君も来ると思いますので……。     〔「よけいなことだ、答える義務があるんだ。」「おどすな、おとしてもだめだ。」「ちやんちやらおかしいよ。」と呼ぶ者あり〕
  94. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。検事正に申し上げますが、職務上さしつかえのあることは、別に答えなくともいいですから……。
  95. 安井栄三

    安井証人 法律に基いて調査をしておるという特審支局長の説明で、私も法律家として、それが法律に基かないことなら大いに言いますけれども法律に基いてやつていることだということになれば、そのやることの是非とかいう問題は、検察官のあずからぬことであります。やつておるという事実は証言として聞いておるのでございます。またその点は本間学長からも説明を聞きたいと思いまとて、書面までお出し願いたいとお伺いしましたのですが、きようの間に合いませんですから、その書面を見なくても、特審支局長の説明で私はある程度その調査がいいものだというように感じておりますけれども、この点につきましては、金丸講師の起訴不起訴にも関係しますから、いましばらく御猶予を願う方がいいのではないかと思います。
  96. 渡部義通

    渡部委員 あなたはその調査はいいもののように感じたと言われるけれども、その調査内容を私は聞いておる。いいものかどうかということを判断されるためには、特審からそれを聞いておらなければならぬでしよう。そういう矛盾の点がある。しかし矛盾はともかくとして、何を一体特審が愛知大学その他の大学において調査しておるのか。それは特審にも聞かなければならぬのだが、あなたが事態の真実性を判断するためには、どうしてもあなたはそのことを知つておらなければならぬ。その点を私は聞いておる。どういう内容調査しておるのであるか。
  97. 安井栄三

    安井証人 内容はある程度聞いております。それから私ども従来名古屋に勤務しおります関係上、いろいろな事実を知つております。その事実等から、愛知大学には愛大細胞というものが昭和二十四年の十月に届出があつて、ここに一つの組織がある。その組織に基いての従来の行動、さらに最近にわかりました中核自衛隊の行動——もちろん特審は中核自衛隊を知りません。前の愛知大学の愛大細胞に関連して、学内からの投書に基いて調査をするということは、今日許されたことではないかと思います。そのことが法律に基く公務員の行動である以上は、私としては是認せざるを得ないと思います。それで足りませんでしようか。
  98. 渡部義通

    渡部委員 愛知大学の問題は、これは全国の大学、高等学校等に起きておる警察の学園侵入という問題とからんでの諸事件に関連しておるものであつて、これは全般的な問題であるのである、こういうふうに私たちは考えなければならぬ。検事としては当然その辺のことはお考えだと思うのです。ところが、たとえば東京大学等にこのような種類の事件が起きた場合には、一般的な進歩的な教授の思想から、著述から、動向から、それから単に共産党細胞というものではなくて、あらゆる進歩的な団体の構成員から、運動から、方向から、そういう万般にわたつて警察——特審の指令であるかどうかは別として、とにかく警察が入つて調査しおる。こういう調査がそもそも大学の自治とか自由とかいうものに対する侵犯になつておることを、学生諸君が進歩的な教授諸君とともに非常に憂えているのであつて、ここに問題の根源があるのだ。こういうことまで調べるのが妥当であるかどうかということです。それは検察官としては当然起訴の場合に判断さるべき性質のものではないか、こういろ点を考えられたかどうか。
  99. 安井栄三

    安井証人 もちろん特審支局長を招致して聞くのでありますから、その点を調査する必要を認めて、一応中間の処置をしたのでありますけれども、この事件については、いまだに起訴不起訴がきまつていない拘束した金丸講師というものがあり、また一面告発事件もそのままでありますので、全部の調べが済みまして申し上げることにさせていただきたい、あと捜査の済むまでは職務上の機密としてにの程度で……。
  100. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと渡部君に申し上げますが、まだあと二人の証人がおりますから、なるべく簡潔にどうぞ。
  101. 渡部義通

    渡部委員 今私の質問した内容は、あなたの検察事務にさしつかえるよう内容では断じてありません。東京大学でどういう警察調査をしたか、あなたは御存じでありましよう。そのよう調査を特審がやつているのに対して、こいうことこそ憲法の違反であり、憲法の違反どころか、思想の自由に対する暴力的なやり方だということは、今非常に大きな、全学界の問題にさえなつているわけであります。御存じでしようが、破防法とか再軍備とかに反対して、京都の方では、同志社大学では学長以下全教授と学生が反対して立ち上つております。それから立命館大学でも学長以下全部の教授、学生が反対して立ち上つた、こういうことこそが学問の自由と学園の自治とを守るゆえんであるとその人たちは信じてやつている。そういう潮流に対して、破防法の反対はいけない、再軍備反対はいけないというような考え方から、この教授、学生たちの動向、思想をあなたたちが検察しなければならぬとするならば、今や全国の大学における全教授、全学生をあなたたちは捜査しなければならぬということになる。もしそうなるとするならば、これは学問というものに対して、さらにまた人権というものに対してさえ警察権の侵犯であり、警察的な政治を貫徹しようとする意思がそこに働いていると見なければならぬ。そのようなことに検察当局が賛成の立場からこれを検察されようとするのか。そういうことは自由として認めなければならぬというあなたは検察的な立場に立つているわけであるか。その立場をはつきりされてこそ、この問題についての処理の方法なり、監察の方法なりが公平に出て来るのじやないか。その点についてあなたの見解を伺いたい。
  102. 安井栄三

    安井証人 検事としてお答えするのはどうかと思いますが……。
  103. 渡部義通

    渡部委員 これこそ検事が大衆の前に、国民の前にはつきりしなければならぬ態度である。検事が一方的な立場から物事を見、一方的な立場から検察の方向を規定するとするならば、これは反国民的なことにならざるを得ない。検事は明らかに中立の立場からするならば、こういう私の出した根本的な潮流の問題についての立場をはつきりしなければならぬ。それでこそあなたはここに出て問題に対して答え得るところの資格を持つておる。その点について——委員長、なぜ沈黙しておるか、その点について聞きたい。
  104. 内藤隆

    内藤委員長 問題を愛知大学のことに限定して言つてもらわぬと、そこまで……。
  105. 渡部義通

    渡部委員 委員長の言うことはわかるし、了承しますけれども、しかし事は愛知大学事件をさばく場合に、あるいはそれを取扱う場合に、検事は一体どういう態度をとつてつているかということこそが、この事件の全貌を明らかにする上に最も根本的なことであるので、委員会は当然これを要求しなければならぬ。
  106. 安井栄三

    安井証人 私は検事として、もちろん今のお話のような点は研究もしなければならぬと思つております。しかしながら事は愛知大学の中に起つた問題であります。愛知大学についてはさらによく調べて、そうして裁判所の判断を受けるべきものと思うたならば、起訴の手続をいたします。ただいままでの起訴は、ごく一部の学生を起訴したのでありますが、さらに追記訴があります。その起訴をしましても、まだピリオッドじやない、裁判によつてピリオッドが打たれるものと思います。私どもがここである一つの信念を申しましても、それは原告官としての考えであります。私どもは皆さん方の御協力を得まして、こういう事件はなるべく早く裁判ができることが望ましいのであります。裁判によつて、私どもの相当慎重に調査をして法廷に出しましたことが、法廷で認定される日の早からんことを望みます。今の答えとしましては、この程度でひとつ済ましていただきたいと思います。
  107. 内藤隆

    内藤委員長 どうでしよう、他に質問通告者がまだたくさん残つておりますが……。
  108. 渡部義通

    渡部委員 あと二、三点納得の行かない点があるので、その点をはつきりしておきたい。  要するに、証人証言は卑怯であり、委員会に対する侮辱である。国民もまた絶対納得しない。どういう立場から観察し、どういう立場から検察して行くかということこそが、事を判断する上の根本でなければならぬ。どうしてそれをあなたはこの委員会に言明することができないか、国民に対してはずかしいと考えてないか。
  109. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 議事進行で。安井さんは証人として出ておる。証言とは自己の経験を語るものです。どこかほかに対する判断を言うたつて、そんなことは証言じやない。こんな質問はやめさせてもらいます。
  110. 内藤隆

    内藤委員長 渡部君の質問はやはり要点を少しはずれておるようですから、愛知大学関係のみに限定して質問をしてください。
  111. 渡部義通

    渡部委員 これに答えないということこそ、この問題についてのかつてな検察的な見地をとるものである。また委員会としては、ほんとうに物事を科学的に調べるならば、その人がどういう立場から物を観察しているかということについて聞くことこそが、今後の委員会としてのとるべき真実の正しい態度であると私は確信しております。
  112. 内藤隆

    内藤委員長 御意見としてその点は承つておきましよう福井勇君。
  113. 渡部義通

    渡部委員 まだほかに発言があるのです。
  114. 内藤隆

    内藤委員長 相当時間もとられておりますので、今福井君に発言を許しましたから、その次に許しましよう
  115. 福井勇

    福井委員 簡単に安井さんにお尋ねしたいと思います。この学校のあります位置は、昔の十五師団司令部のあつたところでありますが、これは豊橋市内の高師という地域になります。この地域から宝飯郡とか渥美郡とか八名郡とかいう方面につながつておりますが、学生の行動が、宝飯郡地方とかあるいは豊川地方とかの特殊な思想を持つた者との関連があつたかどうかという見当について、ちよつと御説明願いたい。
  116. 安井栄三

    安井証人 私はその点について詳細なお答えをするだけの資料を持つておりませんけれども、私の持つております今日までの資料だけで申し上げます。
  117. 福井勇

    福井委員 ちよとつけ加えますが、特審局の人が来ておるようですから、時間の関係安井さんは簡単にお願いします。
  118. 安井栄三

    安井証人 わかりました。この愛知大学を中心としまして、これに接続する各方面にも相当な影響があるようでありますけれども、私の今知つておる範囲におきましては、むしろ豊橋、岡崎その他の自由労組及び朝鮮人、そういつた方面との連絡が非常に浸透しておるように思われます。学生も多少はあつても、むしろ自由労組及び朝鮮人との関係です。そうしてこの五月七日後、その影響のもとにおいて、この文書によりましても、ただちに学生から自由労組の方に連絡をとり、もうすでに夜の明けるころには学校に相当な人が集まつておる、またその日も幾たびかそういつだ自由労組朝鮮人が来ておる、また一面共産地区の委員会との連絡もあります。私の知つておる限りにおいては、昨年のメーデーあるいは松葉公園内の住宅の立ちのき問題、そういうところにいろいろな影響が及んでおることを聞いております。時間の関係でこの程度でお許し願いたいと思います。
  119. 福井勇

    福井委員 もう一つだけ、逮捕者の氏名に二つ空欄がありますが、大体あそこの地元と称する豊川、豊橋、東三河、この地域の人がほとんどおりません。逮捕者の原籍地というものがないようで、寄宿だけが記載されておりますので、はつきりしませんが、大体東三河と称する地域の者が少いようにこの表では見受けます。ここに記載されてない学生、特にこれに関連しておるであろうと想像される一部の学生の出身地というようなものは大体わかりましようか。
  120. 内藤隆

    内藤委員長 福井さんのおつしやるのは本籍地が知りたいのですか。
  121. 福井勇

    福井委員 そうです。これは都合によつてあとで文書でもけつこうです。
  122. 安井栄三

    安井証人 それじやそうさせていただきます。それからきのうまでの起訴した者の本籍はわかつておりますか。
  123. 福井勇

    福井委員 わかりません。
  124. 安井栄三

    安井証人 そのうちの一人は、額田郡岩津町であります。一人は福岡県の飯塚市であります。一人は静岡県浜名郡であります。さらにもう一人は名古屋市であります。もう一人は静岡県周智郡であります。従つて東三地方の者は一人もおらぬのであります。
  125. 福井勇

    福井委員 朝倉、杉浦、この二人は。
  126. 安井栄三

    安井証人 朝倉、杉浦、これは附和随行的な立場にありまして、今処分は留保しでおりますが、私の腹では起訴しないつもりでおります。
  127. 内藤隆

    内藤委員長 それでは渡部君、簡単に……。
  128. 渡部義通

    渡部委員 証人は私の質問の根本問題には触れてお答えするこどができないようであるから、お答えができそうなものだけについて、二、三お尋ねいたします。  あなたは事件の十三名の容疑者を割出したというお言葉を言われたようだが、割出した計算の方法はどうされましたか。
  129. 安井栄三

    安井証人 いろいろと連絡をとりましたが、何分学校側から特定の学生名前も知らせていただけませんので、国警の応援のもとに、豊橋市警がいろいろと苦心をし、また検察庁の事務官、検事もこれに何しまして、あるいはその翌日に放送されたラジオで、その声を聞いた巡査が、あのラジオ放送したのがきのう自分を縛つたんだとか、そういうようなところから割出したものもあります。その他学生以外の関係人等からも調べて、大体十三名ということになりました。裁判所では十名しか令状はいただけませんでした。従つて先ほど失言しましたが、十名令状をもらつてあとは疎明資料が足りないというので、最初は本名しかもらつておりません。
  130. 渡部義通

    渡部委員 ラジオの声とか大体は国警とか特審とかの報告に基いたということですが……。
  131. 安井栄三

    安井証人 特審はありません。
  132. 渡部義通

    渡部委員 国警、市警の報告に基いたと言われますけれども、どの学生がそこにおり、どの学生がそこでいわゆる暴行をやつたということを、一体だれが見ておりましたか、こういう報告に基いてあなたたちは逮捕状を要求されるという位置にあるのですか。
  133. 安井栄三

    安井証人 逮捕状を請求いたしますのは、証明がなくともできるのであります。疎明がでぎればいいのであります。疎明資料が整いまして、判事がそれをば令状を発付するのに適当と信じたら出してくれる。起訴には証明がいり、裁判には証明がいりますが、令状は疎明でいいのであります。
  134. 渡部義通

    渡部委員 その疎明の資料となるのは、現場においてそれを実見した警察官でない限り、そういう証拠に基く疎明というのは、私は成り立たぬはずだと思う。これは常識だ。しかしそれだけではなく、それだからあなたたちは、おそらくは日ごろ徴兵制度に反対するとか、再軍備に反対するとかあるいは破防法に反対するとか、こういう国民的な動きの先頭に立つてつている者、こういう者こそが怪しいんだという立場からやられたのではなかろうか。
  135. 安井栄三

    安井証人 そういう見込みではやつておりません。見込みでは疎明資料にはなりません。
  136. 渡部義通

    渡部委員 それならばお聞きしますか、十名ですか、十三名ですか。それはともかくとしまして、その中には当の内田巡査、そこに忍び込んで不法なことをやつたというので、学生から逮捕されたという内田巡査自身が、これは無関係であるという学生逮捕状が出たと伝えられておるが、それはどうですか。内田巡査自身がそれを言つている。
  137. 安井栄三

    安井証人 この種の事件についての私の体験から言いますと、外国の例もあるのですが、思いも寄らぬ人が思いも寄らぬことをやる場合があるのでございます。附和随行的な行動に出る者が、あるいは巡査の知合いであるというような場合もないとも限りません。従つて疎明資料によつて逮捕しましても、調査した結果起訴の必要を認めないという場合には、起訴しない場合もあるのでございます。私はよく知りませんが、今のお尋ねのような場合がかりにあつたとしても、この種の事件についての特徴は、思いも寄らぬ人が思いも寄らぬことをやる場合があるということを一つ申し上げて、お答えにさせていただきたいと思います。
  138. 渡部義通

    渡部委員 あなたたちのかつてな判断で逮捕されたりしては、これはとんでもないことになるわけであります。そういうことは許さるべきでない。疎明というものがその程度のものであるならば、基本的な人権があなたたちの判断によつて左右される危険が、当然感ぜられるはずであります。しかしそれだけではない、この十名という検挙者の中には、その事件当日帰省しておつて、全然学校にもおらなかつた人が二、三検挙の対象になつておる、こういうことが問題なのであつて、さつきの例とともに、あなたたちの推定というものが、日ころ国民的な活動の先頭に立つてつたその者に対して、まず検挙をしてみようというような判断によつて検挙されるのじやないかと思われる、その危険性が今申し上げた事実の中に現われて来ておるわけであります。私はその点は、むしろ国民全体の問題としてここで究明しなければならぬ問題であると思う。事件当時帰省していた学生をどうして逮捕したか、そうだとすれば、他の人々についてのあなたたちの訴訟自体の土台というものが、根本的に失われてしまうわけであります、その点を私は聞いておるわけであります。
  139. 安井栄三

    安井証人 今の帰省中の者をば逮捕したという事情については、これは帰省中の者であるかどうかはまだ調べが済んでおりませんが、逮捕はしておりません。
  140. 渡部義通

    渡部委員 そうすると、この社会タイムスに出ておる事柄はうそを書いておるということになるわけですか。
  141. 内藤隆

    内藤委員長 渡部さんにちよつと申しますが、社会タイムスを検事正は見ておらないのです。だからそういうものについての御質問だとピントがはずれるように思われます。
  142. 渡部義通

    渡部委員 私の言つておるのは、社会タイムスではこういうことを書いておる、あなたはそれを知らなかつた、しかしこれが事実であるかどうかということは、これは重大な問題であつて、そうなれば社会タイムスがこの記事について責任を負わなければならぬことになるし、いずれにしても私は問題として出さるべきであると思います。
  143. 内藤隆

    内藤委員長 それは安井さん、逮捕していないんでしよう
  144. 安井栄三

    安井証人 はい。
  145. 内藤隆

    内藤委員長 ですからその点をきつぱりと……。
  146. 安井栄三

    安井証人 それからもう一つ、この間もこういうことがありました。この際申し上げますが、金丸講師に令状執行しましたときに、警察官が相当な人数一緒にいたと新聞にでておりましたが、一人の警察官行つておらぬ、こういうことはあるのです。といつてそれは新聞社が悪いのか、取材の方法に間違いがあつた場合には、そんなことは新聞社もあまりとがめられませんが、そういうこともあるということを申し上げたい。
  147. 渡部義通

    渡部委員 さつきのあなたの証言の中に、他の関係者が二人ある、と言われました。その他の二人というものは朝鮮人及び自由労働者であると推定されるのは、どういう点から推定をされましたか。
  148. 安井栄三

    安井証人 それは、そのときに事がありました後に、わずかな時間に自由労働者が大勢学校に来たという事実、それから従来自由労働者及び朝鮮人が愛大の学生とお互いに連絡をとつておるという事実は証明できます。  さらにもう一つ、先ほど申しましたように、二階堂逮捕されましたのは、旧朝連系の自由労組交渉委員であつた某の家で逮捕された。そういうことを考えると、さような推定が一応できると思うのであります。
  149. 渡部義通

    渡部委員 これは推定だけではなくて、これに対する検察当局の行動が出ているわけです。この推定される二名に対して、検察当局が何らかの処置をとるための行動に出ておるかどうか。
  150. 安井栄三

    安井証人 それは今後の捜査の機密に属します。
  151. 渡部義通

    渡部委員 学生諸君朝鮮人や、自由労働者と連絡がある、あるいはその日もそういう人たちが来たというようなことによつても、二人がそうであるという証拠には少しもならないことは、あなたも御存じのはずです。そういうような考え方からして、いつも物事を判断される検察当局のやり方の中に、厳正であるべき検察当局が、特審の行動に基いてやるとか、あるいは自分の主観的な判断に基いてやつてしまう危険性が十分に含まれておる。この点がこの問題を引起した根本問題の一つにかかわる重要な要素であるというふうに考えざるを得ないわけであります。先ほどあなたが、どういう立場からこの根本問題を見られるかということについて答えられなかつたことこそが、私は非常に問題があると思う。最後に一つだけお聞きしておきたいと思う。これは鍛冶委員の発言に対してあなたが肯定されたことであるが、警察がいるから自由を侵すのではなくて、警察が何の目的のために入つて来るかということが学生諸君の問題になつているのだというふうに、あなたはお考えになりませんか。その点をひとつ……。
  152. 安井栄三

    安井証人 その問題は、告発事件で引続き捜査いたしまして、明瞭にしたいと思います。  先ほどちよつとお話になりました中で、あとで誤解があつてはいけないから申し上げておきますが、推定の結果、その二人にこの際令状でも出ておるならお話もごもつともですけれども、そういう事実は今ありません。将来出るかもしれませんが、今のところ出ておりません。それから先ほど帰省云々の話の中に、こういう事実があります。それは疎明資料があることによつて逮捕状を請求したが、いろいろと反対の証拠等が出だしたために、それをば留保しまして、引続き管轄の方面に調査をして、疎明資料をそろえてさらに出そうというものもあります。従つて一つ一つ説明しましたらわかると思いますが、全部適当に人権を尊重してやつております。ただ最後に一言申し上げておきますが、ある一つの見込みで令状は出しておりません。疎明資料は必ずあります。
  153. 渡部義通

    渡部委員 最後に私はあなたに対して希望を申し上げておきます。こういう問題は、歴史の変革する過程における重大な問題であるから、あなたが検察当局として人権や自由を重んずるという立場に立たれるならば、まず第一に、何が、こういう事件が頻繁に起る歴史的な潮流の基礎をなしておるかという問題を十分に考えられなければ、私は適当な検察官としての任務を果し得られないと思う。同時に、あなたはお答えするこどができませんでしたけれども、こういう問題について何が中正な立場であるかという根本的な立場を、あなたは問題の処理にあたる責任者として、今後国民の前に明確にされて、その上でこの事件を処理なさるべきであるということ。第三に、警察官が入つて問題を起したときに、その部分的な問題をとらえることなしに、学生諸君警察が入つて来るからといつて問題にしたわけではない、従来入つて来たときも問題にしなかつたのが今問題にされるのは、不当な目的をもつて警察として許すべからざる目的をもつてつて来るから、これに対して当然の抗議を学生諸君はやつておるのだという点についてのあなたの考えを、もう少しまとめて、事件の正しい処理にあたられたい、こういう希望を申し上げておきます。
  154. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど来証人は、この問題は学生警察官の問題であるので慎重にいたしたい、これを重ねて申しておりましたし、問題の解明について、中間的な公平な立場に立つて双方言い分を正しく聞いて真相を明らかにすることを第一の任務にいたしたい、このように言われたのでありますが、その言葉としましては私も賛成であります。ところがそのあと証言によりますと、先ほど言われましたそうした言葉が、あなたの証言の中に反映されていないと思いましたので、お尋ねしたい。  あなたが真相を明らかにしたいと申しましたのはどのような意味であつたのか。さらに言いますには、北門から入つて学生の寝ている地点までの証言が食い違つておる。その後は一致しておる。そうすると、北門から入つて学生が何とかしたという警官の行動、少くともそこに現われた行動、それだけの問題についての真相を明らかにしたいとあなたは言われたのかどうか、この点であります。
  155. 安井栄三

    安井証人 私の最初申し上げました公平な立場から真相を明らかにしたいということは、今なおかわりはありません。この事件の最後の検察官としての任務である法廷においての意見を述べるときまで、終始一貫真相を明らかにすべく努力いたします。しかしながら今お話の分については、私ども刑事訴訟法証拠に基いて仕事をしなければならぬのであります。そこで、その証拠があるかないか、あつたならばその証拠が信用できるかどうか、その二つの問題がございます。ところが今告発事件については立証をしていただけない。また学校側の利益のために、その日のことについてお話を願いたいと言いましても、当初はお話をしていただけない。ようやく最近少しずつ承つておるとはいいながら、およそ学校当局としてこの事件にほんとうに心から御関心をもつてつていただかなければならぬ。法律に従つてつております私どもの仕事でございますから、もつと協力していただきたいとお願いするのでございます。もちろんまだ捜査の中間でございます。ただいま申し上げましたのが真相だといつてまだ断言しておりません。しかし捜査の結果、主観的な信念をもつて、この部分についてはこの事実について裁判所の法廷に出していいという信念を得た程度だけ、裁判所に出しております。
  156. 山口武秀

    ○山口(武)委員 もつと簡単明瞭な答えをください。私が聞いたのは、あなたの調べられる真相というのはどこまでのことであるのか。北門から入つて何か怪しい者をおつかけたという事実があるのかないのか。それだけについてあなたが調べるということを、あなたは真相の究明と言われたのか。どつちなんですか。
  157. 安井栄三

    安井証人 事件の客観的の事実関係のみならず、何ゆえかくのごとき事件が起つたかという原因はもちろん調べます。また調べつつあります。そしてそこまでのことを明らかに裁判所に出すつもりでおります。どうぞおまかせを願いたい。
  158. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、現在までにもこの事件の背後にあるものにつきましては、調査が進行しておりましようか。
  159. 安井栄三

    安井証人 今の背後にあるものという意味は……。
  160. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その意味は、警官が怪しい者をおつかけて構内に入つて来た。これに対して学生の受取り方が、きわめて大きなものとして受取つている。しかもこの問題について愛知大学当局が、あるいは学生側が、猛烈な抗議運動を始めておる。きわめて大きな学園の自由を擁護する闘争として取上げております。しかもそれが単に愛知大学だけの動きでなく、立命館大学の学長もこれに対して激励の言葉を発している。さらに同志社大学の学長も激励の言葉を発している。あるいは大阪商大の学長もこれに激励の言葉を発している。こうなつて参りますと、単に警官が怪しい者をおつかけて構内に入つたとか入らぬというような問題以上に根本問題が伏在している。私はこれを背後関係と申したのであります。
  161. 安井栄三

    安井証人 日本の刑法の条文に照し、暴力というものが立証されれば、処罰の必要の有無を検討し、処罰の必要ありと思料するならば、これをば起訴して裁判所に有罪の判決を求めるのが、私ども検察官の任務でございます。そこでその原因、動機は情状に影響することは相当あるかもしれない。しかしながら法律に違反した一つの不正の力というものがもし立証できるならば、それは検事としては裁判所に出すべきものだと私は考えております。
  162. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今の答え方はきわめて一般的な答え方です。しかしながらあなたはこの問題を調べるときに、これは単なる暴行事件としては調べられないのだ、学生警察官の問題なので慎重にするんだ、こういう特殊性を出したじやないか。しかもそれについて真相を明らかにしたい、こう言つたじやないですか。この特殊性はどこに行つたのです。先ほどそう申されたのは、単なる言葉として申されたわけですか。
  163. 安井栄三

    安井証人 どうぞ私の証言全部をひとつ総合して御判断願いましたら……。
  164. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほどあなたと鍛冶委員の質問答弁を聞いておりました。鍛冶委員はこつけいしごくにも、大学に警察官が入つてなぜ悪いんだ、これが法律上どういう問題を引起すんだ、これを騒ぐ学生をなぜ取締れないか、こういうような、おそらく現在の時勢におきましては中学生も発しないような問題の出し方をしている。
  165. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、同僚議員の批評はひとつ御遠慮願いたい。
  166. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その鍛冶君の質問に対して、この考えがきわめて狭い、こういう点を指摘することなく、肯定した形で答えられております。しかしながら問題はそんな単純なものでないことはあなたも御存じでしよう。東大の事件では警察手帳内容が問題だつた警察手帳内容によると、学生あるいは教授の思想調査、特高的な活動が進められている。これがあつたから警官の学園内の立入りという問題が学問の自由の侵犯になる。こういう問題か取上げられているはずだ。先ほどあなたは総合的と言われましたが、この点から見ましても、あなたの答弁は私には了解できない。どこまでの関係を調べようとしているか、こういうふうに聞いたのです。
  167. 安井栄三

    安井証人 ひとつ裁判の最後の論告のときまでお待ち願いたいと思います。
  168. 山口武秀

    ○山口(武)委員 当委員会は当委員会の必要に基いてあなたに来ていただいておるので、論告のときまで待つげであれば、当委員会にあなたに来ていただく必要も存農、われわれが質問を発する必要もない。お答え願います。
  169. 安井栄三

    安井証人 今日の段階におきましては、先ほど来申し上げました程度であつて、あるいは職務上もつと遠慮すべきものであつたかとも思いますけれども、この行政監察委員会に敬意を表しまして、できるだけ知つておることをば申し上げたつもりでおります。
  170. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、愛知大学の問題が起りますにつきまして、学生に張番をさせておる。この点につきましては、渡部君の尋問の際にも出されましたが、特審局が学生にアルバイトとして教授や学生の思想調査をさせていた。こういう事実があるとともに、さらに愛知大学の英文学担当のある教授のもとに、毎日夜になると、十二時から朝の四時ごろまでたずねて来る人がある、さらに、やはり同大学の某教授の自宅に、市警の野沢刑事という男が始終行つておる。これは大学に放たれたスパイであると言われておるのですが、このような事実が学生の警官に対する対立関係あるいは反抗関係を生み出すのではないか。事実ありとすれば当然生み出すわけですが、この事実をあなたは御承知ないのでしようか。
  171. 安井栄三

    安井証人 今のお尋ねの点は、先ほどの証拠の中に出ておりますので調べております。ただ調べた結果全部をまだ得ておりません。私どもはほんとうに公平な立場において特審支局長を呼び、警察方面を呼び、しかもその調べる根拠が、今言われたように午後八時から午前十二時までというようなことも、これらの文書が手に入つて以後着着として進めております。その調べた結果はまたお話する機会があるかもしれぬと思いますが、今の程度ではここで申し上げる程度にはまだプラスともマイナスともまとまつておりません。
  172. 山口武秀

    ○山口(武)委員 真相を明らかにするという点に根本があるのではないかと思いますので、十分御調査の必要があると思います。  さらにお尋ねいたしたいのは、先ほど大学に対して本件の捜査について協力の申入れをされたが、これを拒絶されたと申されましたが、これは協力の申入れという形のものでしようか、それとも大学に対して強権を発動するために口実として発せられたものなのでしようか、この点いかがな考えでなされたのか。
  173. 安井栄三

    安井証人 ほんとうに誠心誠意、御協力を得たいと思いましてやつたことでございますので、今のお尋ねのように、ある一つの前提だと認められることは非常に遺憾に思います。現にあの協力の申入れに対して、十二日に回答を得ております。私どもの方で得ました物的証拠によりますと、十一日、十二日の学校内の模様は全部わかつております。そこでさらに一週間私の方はじつと待つて、御協力願うことをば隠忍自重しておりましたことを、ひとつ御了承願いたい。決して手段ではございません。
  174. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私が今質問いたしましたのは、かつてに私どもの方で断定を下して、あなたに押しつけるような質問をするのではない。協力申入書内容から見まして、そのように判断ができると思つたので申し上げたのです。一つの点は、十一日にこの協力の申入書を発しているわけでありますが、十二日の正午までに回答をくれという期限付のものなんです。日にちはわずかに一日しかない。こういうように時間を切つて協力申入れをすることは、相手に対する強制ではないか、これが一つ考えられるのです。それからもう一つは、内容を見ますと、現場にあつた学生及びその後暴行に直接関係した学生全部を、来る五月十土日午後一時に名古屋地方検察庁豊橋支部に出頭せしめていただきたい、こう言つておる。このことは、ある意味においては二重の強要です。かりに一般の犯罪の場合でも、犯罪を犯した者は、出て来いと言われた場合、出て行かないのが普通です。何をもつてこのようなことを言われるのですか。こういうことを言われるのは、内容的にもできないことを強要する。一般においても受入れがたいことを、協力方申入書という言葉を使つてつたにすぎない。初めからできないことじやないか。しかも大学当局が協力するといたしますならば、これは大学当局というものは、検察庁の一機関にすぎないことになる。その下請をやつている一機関になる。このような事情から見まして、大学当局がこれを断るのは当然ではないか。しかも大学当局では、この協力申入書については、学生に示してはいる。こういう関係にあることを見ましたときに、これを断つたというのは当然であつて、これは検察庁のやり方はあまりにえげつないやり方じやないか。そういう点から見て、これが自発的な協力を求めたものとしては、私どもには承服しがたいものであるので、強権発動の前提として、口実をつくるものとして、この協力方申入書を発したのではないか、このようにお尋ねしたわけです。
  175. 安井栄三

    安井証人 文書並びに方法等に対する御批判は御批判として承りますが、検察当局としては、適切なことだと思つております。日本の法律には自首という法律規定もあります。また任意出頭という制度もございます。なるべく適切な方法で調べたい、そういう気分を持つてつたことは、その表現方法等よりも、その前後の私どもの行動で御判断願いたいと思います。現にその後に、さらにまた私の方から次席検事が参りまして、学生とも懇談しております。またその日の後にただちにある行動に出たとかいうようなことは何もございません。その点は書面及びその前後の私どもの行動を総合して考駿されまして、御了承願いたいと思います。
  176. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今の証言内容的に私は承服しがたいのですが、あまり時間をとるのはいかがと思いますから、これで一応終ります。
  177. 浦口鉄男

    ○浦口委員 簡単に一、二点お尋ねいたします。この愛知大学事件が、東大事件とか教育大学あるいはその他の大学の事件と違うところは、内部でこの事件関係した人と、外部の団体との関連が非常に密接である、こういうことであろうと思う。それは旧朝連であるか、あるいは自由労組であるか、これは問題があろうと思いますが、ここに私は愛知大学事件の特色があると思う。そこでお尋ねいたしますのは、今日の新聞を見ますと、八日の午前六時、名古屋地検では、この事件関係あると一応見られた金丸講師ほか六名に対して、捜査令状執行して、家宅捜索をした、こういう報道がされておる。この根拠は、先ほど証人証言中にもおつしやいましたように、いわゆる二階堂憲之介が所持しておりました祕密文書によるものと推察していいと思います。そこでこの祕密文書によるいわゆる中核自衛隊の構成メンバーである金丸講師ほか六名に対して、そういう疑いをもつて家宅捜索をした、こういうふうに断定していいと思いますが、その点確かめておきたいと思います。
  178. 安井栄三

    安井証人 今の二階堂の持つておりましたものも一つの根拠でございます。それ以外にも各種の証拠、情報等を総合いたしまして、そうして講師及び助教授の宅へ伺いました。伺います検察官には、ことごとく礼儀を尽し、紳士的にやれということを言つて、そうして行動さしております。実はこれが新聞に出るとは思わなかつた。というのは、その前日に私どもの方のクラブの諸君を集めまして、あすのことは簡単に私の方で発表するから、書かずにおいてもらいたいということを頼んだのでございます。そこまで注意深くやりましたのが、豊橋の支局方面の方にわかつて、新聞報道が私どもの予想以外に出まして、申訳ないと思つております。これは報道陣のされたことでございます。私どもの方の今のお尋ねの根拠は、今日お示しになつたもの以外のものもありまして、総合していたしたので、ただちに中核自衛隊のメンバーだと認定したわけではございません。それだけ申し上げます。
  179. 浦口鉄男

    ○浦口委員 その他いろいろな事実を総合して、こうした捜査を行うことになつた、こういうお話ですが、そういう事実はもちろん特審あるいは国警の情報によるものと思うのでありますか、それは具体的にはお示し願えないか、もしお示し願えるものならば、事実を御証言願いたい。
  180. 安井栄三

    安井証人 関係者の供述も大分ありまして、一々全部私用意いたしておりませんが、必ずしも今の特審の情報とかあるいは警察報告とか、そういうもののみではないのであります。特審の情報も、実はこれは内輪話でありますが、ほとんど私どもの方には入つておらないのであります。いろいろな過去の実績と過去の事実関係、それから抽出の関係もありましたりして、公的にきまつたこと、並びにその活動が従来現われておること、及び今度の二階希報告書関係者の供述、いろいろなものを総合いたしまして、ここにお伺いいたしたのでありまして、これ以外は用意もしておりませず、相当慎重にやりましたつもりでございます。
  181. 浦口鉄男

    ○浦口委員 こうした捜査に出られるについては、検察庁独自の、従来からりこの人たちに対する調査に基いて結論を出してその疑いを持つて捜査をした、こういうふうに了解しておいてよろしようございますか。
  182. 安井栄三

    安井証人 従来のものだけではございません。最近のものが相当ございます。
  183. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それではその点は検察庁独自の立場でそういう結論をお出しになつた、こういうふうに解釈していいと思います。
  184. 安井栄三

    安井証人 はい。
  185. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そこでもう一つお尋ねしておきたいことは、この事件の非常にむずかしいところは、事件の発端にある、こういうふうに私は考えるわけであります。学校側巡査の当日校内における行為不法侵入、こういうことを言つておる。ただそれを具体的に何が下法であるかということについては、学校側があまり明確にしていないということは、証人証言をされている。それで、学校の意思は那辺にあるのか、これは学長に聞かなければならぬと思います。学校が事実を知らないのか、学生が覆面していたというふうな推定も一部あるようであります。あるいは待機をしたというふうな事実もあるようであります。もちろんその目標は、制服の警官でなかつた別な人間を待機しておつたというようなこともわかりますが、それを学校が知らないのか、あるいは知つていても言わないのか、これは私は非常に問題だと思いますが、そこでお尋ねしたいのは、警察は、もちろん警察の行動をあくまで正当な職務執行と主張している。そこに食い違いがある。われわれの聞くところでは、その五月七日以前に愛知大学校内において盗難事件が発生した。それを捜査のためにこの日警察官が巡視をしていたのか、あるいはそれと関係なしに、定期的と申しますか、そうした特別の目的を持たないで、たまたま巡視をしているときに起きた事件であるか、その点検察当局の推定でけつこうですから、御証言を願いたい。
  186. 安井栄三

    安井証人 今の二人の巡査の警羅の任務は、この巡査の勤めております派出所が、そのそばにある福岡という派出所であり、この巡査は巡察隊の二人の巡査で、ことに年齢が土十歳、二十一歳という学生とほとんど対等の地位の、経験の浅い巡査であります。それでこの巡査をば暴力事件の方で取調べました検事も、告発事件で調べました検事も、この巡査を調べて、若い学生よう巡査だというておるほど若い巡査であります。経歴は、一人は甲種商業で、一人は小学校卒業であります。この巡査の経歴、性質、任務等から見まして、まつたく私は巡回の任務それ自体であつたと思うのでございます。まだ告発事件の調べが済んでおりませんから、その他に意味はなかつたと思いますけれども、結論までは申しかねます。ただこういうことは申し上げられると思うのであります。前に盗難事件があつたが、その盗難事件とこの事件とは関係がないようであります。ただ巡査の頭の中に、前にこの中に盗難事件があつたということが、巡査職務執行挙動不審者を見た場合に頭にひらめいた。なお巡査証言によると、学校の中に入ることについては、最近学生警察官の問題もあるので、相当注意深くやつてつたということも言うておるようであります。私どもといたしましては、ただいまでは巡回勤務ように思われます。
  187. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、この事件の発端というものは、証人の御証言は推定と思いますが、大分はつきりしかけて来たようです。その後起きた実態については、一これから委員会でわれわれ調査をして行くわけですから御質問申し上げません。  そこで第三番目にお尋ねいたしますのは、逮捕された学生は、従来愛知大学の中にあつた共産党細胞に属していたものであるかどうか、そうして細胞に属していたとみなされる学生が、何人くらいあるかそれをお尋ねいたします。
  188. 安井栄三

    安井証人 その点については、まだ全部関係学生をそろえておりませんので、愛大細胞に関係つたと見られるものもありますが、全然そうでないという学生もあります。従つてだれとだれとがどうだということを申し上げるのには、この次の、あるいはその次の、二回、三回にわたるかもしれませんが、起訴の手続をいたしますときまででないと、ちよつと私から……。愛大細胞に関係あるものもあるし、ないものもあるということは申し上げられます。
  189. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後に、これは今結論が出ないかと思いますが、事件の発端は、少くとも待機した学生と検察官との間においては計画されたものではない、こういうふうに考えていいと思うが、ただしかしこうしたその後に起きた事態が、外部の団体と、従来のいわゆる日共による軍事活動といわれておるようでありますが、そうした計画性のあるものと、一連の行動に出たと見られるかどうか、その点をお尋ねをしておきます。
  190. 安井栄三

    安井証人 発覚の端緒、制服巡査という言葉を一番最初に私らは聞いたのであります。そこで学長が、私どもの方に出されましたこのものにも、今にして考えれば、しばらく黙して、巡査が何をするのか見届ければよかつたと、あとから知恵を出してくやしがつている者もいるようだという、こういう文書がございますように、まつたくこれも食い違いなんですね。巡査と一方の学生の考え方と、確かに食い違いようであります。しからば学生の企図しておつたことについて、さらに進んでその後もいろいろな形が——自由労組その他と関係のあることについては、これは昨日の起訴手続にも一言も触れておりません。今後の捜査にまつていただきたいと思う次第であります。
  191. 志田義信

    ○志田委員 証人に二、三お尋ね申し上げておきたいと思います。この事件警察被害者であるという立場を前提といたしておるようでありますが、警察被害者であるという前提に立つて今日もやはり捜査その他の方法をやつておられるか。
  192. 安井栄三

    安井証人 警察官二名が被害者であります。それから不法侵入の告発事件については、学校被害者であります。こういう考えは今でも持つております。ただ豊橋警察署が被害者であるという事件ではないと思います。二人の警察官被害者ということになるだろうと思います。
  193. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、その被害者である警官二名が、職務上か、あるいは不法かはこれは今後にまつといたしまして、いずれも学校に入つたという事実は厳然としておるのでありますが、証人の先ほどの証言に聞きますると、学校側には証言証拠を求めたが、これを提示されなかつたということになつておる。しかも警察側の方は立証があつたといいますが、被害者の方が立証があつて、加害者にまわる学校側証拠の提出がなかつたというふうに承知してよろしゆうございますか。
  194. 安井栄三

    安井証人 言葉の上で少し区別して申し上げたいと思います。学校側の御協力を求めましたが、得られなかつた。しかしながらその後玉井補導部長にお願いいたしまして、私の方で参考人として調べますから、学生をば検察庁に出頭させてもらいたいということを最近にお願いしまして、大体においてこちらの希望します学生の二、三割は来てもらえました。その来てもらえましたうちの一部の学生が、やはりこの晩のことを話をいたします。また教職員の中にも、漸次私どもの方に話してくださる方もあります。それがどちらかといいますと、二人の警察官被害者とすることについての証拠がふえて参りますが、下法侵入ということについての証拠は、言葉の上に、謝罪状にも不法侵入と書いてあやまつておるのですから、とにかくその場では巡査不法侵入という字を書いたのですから、それは強制されて書いたと認定しておりますが、しかしそういうことももつとく学校側からこういうようなわけだから、こうだということについての告発事件証拠、すなわち学校被害者としての証拠をお出し願いたいと思つておりますが、先ほど申しますように、もう不起訴にしてくれという話なんですが、私どもはいたしません。どんどん調べを私の方の独自の立場で進めて行つております。現に遠くに検事を出張させ、あるいはこの学校の教職員の方々も、この告発事件関係者として大分調べを始めております。やがてこの問題も解決するだろうと思つております。
  195. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、地検は地検の立場において、実況の検分はいたしておるだろうと思うのですが、そういう実況の検分においては、加害者側に有利になるよう証拠をお集めになることがあつたかどうか、集められるように努力したことがあつたかどうか。
  196. 安井栄三

    安井証人 ちよつともう一度……。
  197. 志田義信

    ○志田委員 学校側証言証拠を求めたけれども、何らなかつたということでありまするが、あなたの方では、告訴状に基いたときでももちろんでありましようが、それ以前におきましても、現地をごらんになつておりますか。
  198. 安井栄三

    安井証人 はあ。
  199. 志田義信

    ○志田委員 検証しておるだろうと思いますか。
  200. 安井栄三

    安井証人 しております。
  201. 志田義信

    ○志田委員 その略図等もその検証によつて得たものだろうと思う。
  202. 安井栄三

    安井証人 はあ。
  203. 志田義信

    ○志田委員 そういう場合に、学校側に有利になるよう証拠というものは一つもなかつたのか、それをひとつ承りたい。
  204. 安井栄三

    安井証人 検証の結果だけでは、ただちに学校側に有利だと思える点は、多少は、理論的にこうならこうだという鑑作用をいろいろ考える場合、こう考えたならば学校に有利だということがあつたとしても、またその反対の推理がありますから、これはプラス・マイナスだと思つております。その推理に加える何物かがありますと、——もちろんその方に努力すべく、中島検事が一生懸命になつておりますから、有利な証拠があれば出て来ると思つております。ことに先ほど言いましたように、きようあるいはあとで出るのじやないかと思いますが、特審局の書面なんかは、私はきよう、私が学校側の利益のため出そうと思つてつたのですが、後刻提出されると思います。
  205. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、本件は先ほどお話がありましたように、暴力行為不法逮捕強制罪あるいは公務執行妨害等によつて裁判に付せられることになるのだろうと思いまするが、そういう暴行の事実や、強制をした事実というものがある。これは脅迫をした事実ももちろんあるのじやないかと思いまするが、拳銃や警棒やそれから警察手帳をもらいに行つたというのはどういうものでございましようか。これは暴行を受けたり、不法逮捕されたり、強制されたりしてやつておる事態が発生して、拳銃警察手帳や警棒がとられておるのでありまするから、これは刑法に基く財物の強取にならないかどうか、この点はいかがでございましようか。
  206. 安井栄三

    安井証人 その点については、実は一昨晩検事会議開きましたときに、今お尋ねのような問題はもちろん話題になつたのであります。しかしながら学生としては、今までの状況証拠から見ますと、拳銃はこれをとろうとするためにとつたのでない、手帳はこれを領得しようとしてとつたのではない、そういう領得の意思ということについての証明について欠くるところがあるように思いますので、この事実関係は今のところではまだ起訴しておりません。
  207. 志田義信

    ○志田委員 領得の意思があつたかないかということは、あなた方の方では、どういう点で意思のあつたかないかということを見通しなされたのですか。
  208. 安井栄三

    安井証人 その点はちよつと今根拠はありませんが、学生意見として、学長からだつたと思うのですが、来たのが警察官であるということであれば、あと争いがあつたらいかぬからというような意味で、拳銃警察手帳とを預つたのだというようなところがあるのですね。その真否は別といたしまして……。こういうことは学生側の方がもう少しはつきりと供述してくれますと、昨日の程度——もつとはつきりするのでありますけれども、これはむしろ学生の利益に見まして、いわゆる強取したというところまでの起訴はしておらぬのであります。
  209. 志田義信

    ○志田委員 しかし拳銃をとるとか、警察手帳をとるとか、警棒をとるとかいうことは、意思するとしないとにかかわらず、とつておることは事実なんでありますが、暴行したり、脅迫したり、不法逮捕したり、強制したり、それが公務執行妨害になつておるということを認められておつて、どうしてこれらのものの領得の意思を確めることができないか、その点は私は非常にふしぎに思うのですけれども、それは情状酌量をする何か考え事があつて、いまだ年はもいかない学生に対して、そ、うした強い罰にさらすことはいかがかというような考えをもつてつておるかどうかわかりませんが、その点はもう少し明確にする必要があるのじやないかと私は思うのです。近時大学でこういう事件が起きるたびに、警察手帳というものが問題になつておる。それから拳銃というものも問題になつておる。最近のメーデー等におきましても、拳銃等がとられようとする、それをとらせまいとする、こういうところにやはり暴行が、事前、事後において行われておる。従いまして、領得の意思があるかないかということをここに見きわめることが、先ほど来あなたが言われておる本件の真相を明らかにする意味におきましても、きわめて重要な問題になると思うのでありますが、いかがでありますか。
  210. 安井栄三

    安井証人 御注意ありがとうございました。実は一昨晩の検事会議においても、そういうような話が出たのでございます。しかしながらこれが最後の起訴ではございません。法律に従つて昨日以後に拘留は延長できませんので、どうしても昨日起訴、不起訴をしなければならぬ。そうして従来私どもの仕事といたしましては、追起訴ということかできるのであります。つまりあとで追つかけて起訴ができるのであります。御注意を承りまして、さらに任地に帰りまして、そういう趣旨で検事会議をさらに開いて、委員会ではこういう御注意を受けたということを申しまして、再検討さしていただきたいと思いますが、一昨晩はこういう話が出たんです。大審院の判例についてある学校の教頭が校長を困らせようとして、昔のことで御真影を天井の裏に隠したという事件があつた。それが窃盗罪になるのかならぬのかという判例で、校長の職務執行を妨害したことにはなるけれども、教頭はそのものを自分の物にする意思はないのだ、困らすためである、こういうような古い判例なんかも話題に出ておりまして、もちろん結論は終局的にきまつたわけじやございませんが、一応この程度で起訴しようということに相なりました。
  211. 志田義信

    ○志田委員 今の例もありましたが、ほかにも例がある。たとえば警察部長が知事を困らせようとして、何々県庁という便箋を私事に使つた事実を取上げて、それをもつて公の物品を横領したものとして告発した。こういうのが過去においてあつた。これは罪になつておる。こういう事件がありますが、私はなぜこの問題を特に取上げて言わなければならぬかといえば、明らかに暴力行為は皆さんは起訴しておられる。しかも不法逮捕も起訴の対象になつておる。公務執行妨害はむろん出ておる。そうなれば刑法二百、二十六条にある「暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪」となるということが明らかになつておる。意思のあるなしの問題は、これは意思があつたかなかつたかということは、今日となつて見れば、これを調査することにも難点があるでありましようけれども、どうも最近のメーデー事件以来、各大学において行われる事犯のきわめて中心に、拳銃問題や警察手帳の問題、警棒の問題がある。しかもそういうものを強奪されておりながら、警察署長がこれをもらい下げに行くようなかつこうで学校当局と交渉しておるというようなことに、私は不審を持つておる。これは警察署長みずからが、不法に侵入したものだということを裏書きしているようなことにも相なるのでありまして、こういうようなものは、頭を下げて署長がとりもどして来る必要のものではないと私は思う。この点をつけば私は真実が出て来るような気がするのであります。たとえばA大学が中核自衛隊の暗号であつたというようなことまで、皆さんの方では資料が入つておる。そうすれば、この中核自衛隊というものが、こうしたことを裏面において共謀の立場でやつておるということになりますれば、武器をとるということがかなり重要なことにならなきやならぬ、単に預かつておるとか、あるいは何とかいうことにとどまらないものがあると思いますが、この点領得の意思があるかないかということにつきましては、よほど慎重にお考えを願いたい、かように思うのであります。  それからもう一点だけ私はお伺いしたいと思うのでありますが、謝罪文を書かしておるのでありますが、この謝罪文を書いた巡査は、もちろん強要によつて書いたものであろうということは明らかになつて、この点で強要の罪が成立しておるのじやないかと思いますが、その点はいかがでありますか。
  212. 安井栄三

    安井証人 謝罪文を書きましたことは、むしろ口伝えにこう書けということになつたわけであります。これは、私どもは今日の程度において、刑法の規定するいわゆる強要したと見て強要の罪で起訴いたしました。謝罪文については、「義務ナキ事ヲ行ハシメ」たという刑法二百二十三条でございます。  それから先ほど御質問のありました拳銃手帳の問題に関連して、事実の認定ということと、警察署長が受取りに行つたということは、全然関係ありません。警察署長が交渉して受取ろうとしたこと、また受取りに行つたこと、これは警察署長独自の考えでいたしましたことでありまして、私どもはそれはあとで聞いたにすぎないのであります。さように御了承願いたいと思います。
  213. 志田義信

    ○志田委員 謝罪文を書いてあることがあとでわかりまして、あなたの方では、これは現行犯と見て追跡した警察官に対して向うが謝罪文を書かしたのでありますから、不法行為なりとして、その謝罪文の提出を要求したが、これは学校側が拒んでおるというだけで解決はついていないと思うのであります、こういう強請に基いて書いた謝罪文でありますから、法によつてあなたはそれを要求して、検察当局がその謝罪文を読むことも見ることもできると思うのでありますが、それをなさいましたか。
  214. 安井栄三

    安井証人 刑事訴訟法の条文をここに持つておりませんが、実は裁判所でないとできないのであります。ですから裁判所から裁判官としてやられるだろうと思います。その行為は起訴前には請求してできないのであります。
  215. 志田義信

    ○志田委員 それは検事正のお話ですが、私はちよつと了解に苦しむのです。これは証拠にはならないのでしようか。
  216. 安井栄三

    安井証人 やはり証拠であります。
  217. 志田義信

    ○志田委員 証拠を求めることは、裁判所でなくてもできると思います。検察当局が証拠を収集することはできると思います。
  218. 安井栄三

    安井証人 証拠があると認められる場所を捜索して押収することは、裁判所令状をもらえばできます。
  219. 志田義信

    ○志田委員 それをなさらない理由はどこにございますか。
  220. 安井栄三

    安井証人 それはどこそこにあるということが、今のところでは認定できないのでございます。学校内部にあるとは推定できますけれども、広い学校の中のどなたのところにあるか、まず学長協力を得たいと思つて、訴訟法に基いて公文で照会をいたしました。それに対する答えは、自分の手元にないからというお答えでありました。すなわち学長が自分の保管のものでないからというお答えでございます。そこで私の希望は、まあこれはいずれ必要なものだろうと思うから、私から必ず出すようにいたしますと学長が言うてほしいのでありますけれども、それは今後の裁判所職務行為としてやられるだろうと思います。
  221. 志田義信

    ○志田委員 今後裁判所職務行為としてやられるということを待つまでもなく、あなたのお話を聞いただけでも、法律によつて証拠は収集することができる。学長手元になくても、学長がどつかにあるということを知つておるかどうかということも、法によつて突きとめることができる。たとえば事犯が起きて、そうして検察当局が家宅捜索を行う場合に、どこに何がある、どこの部屋に何がある、どこの本箱に何があるということがわかつていて検察当局が家宅捜索をするものじやございません。有無のことは別にして、あるものと推定して家宅捜索をするものと私は思う。しかるに学校長が自分の手元には今ない、しかしだれかの手元にはあるということを暗示しておることが明らかにたつておるにもかかわらず、法によつてあなたがこの証拠になる謝罪文の提出の要求を特にやらないということは、どういう事情に基くものでしようか、それをひとつ聞きたい。
  222. 安井栄三

    安井証人 この日曜日の朝検事がお伺いしまして、学長からさようなごあいさつがありました。私どもの方では、金丸講師の自宅その他に謝罪文があるんじやないかという推定はかねていたしておりました。そこで学長のごあいさつのあつたとほとんど同時に、金丸講師宅及び数箇所をその日に家宅捜索いたしました。その家宅捜索をいたしますときには、もちろん謝罪文を押収すべく令状は求めてあるのであります。しかしその捜索の結果は、謝罪文を見つけることができなかつたのであります。このあとで残るところは、学校の事務室とか、あるいは学長の宅とか、補導部長の宅、これは学校の自由を尊重いたしまして、そこまではすべきものでないと私は考えておりますので、今までしておりませず、手続もいたしておりません。学長から出してもらうより……。ただし立証材料といたしましては、巡査の記憶によります謝罪文内容以外に、学校側から朝日新聞に謝罪文をお見せになつて、その写真が朝日新聞の八日か九日の記事に載つております。この写真版は私の方に脅せきて、いよいよ謝罪文がない場合の証拠としてこれを使うつもりでおりますけれども、なるべく現物で訴訟をしたいと思つております。
  223. 志田義信

    ○志田委員 検事正が学内の自由を非常に尊重せられて、捜索においてもなかなか遠慮せられておる点が明らかに感ぜられるのであります。あるいは本間喜一愛知大学学長が、昔皆さんと同じような同業関係にあつたというような点からも、そういう御配慮があるのかもわかりませんけれでも、いずれにしましても、あなたは大学の自由に対しては相当いろいろ面で考慮して、これらの公務執行妨害、強要、傷害、不法逮捕等の容疑のもとに、七名の学生逮捕しましたことに対しましても、あるいは未逮捕の者の捜索に対しましても、なかなか遠慮している点がよくわかると思うのです。しかしわれわれの方からそういうあなたの御行動なり、御指示なりに対しまして御同情申し上げる点はありますが、これを反対側の立場から言えば、先ほど他の委員からもあなたに御質問があつたように、これは人権を不法に侵害しておる結果を招いておる。しからばあなたとしては、人権を尊重しておるのだということを明らかにしなければならない。人権を尊重しておることを明らかにするためには、やはり物的証拠の価値のあるものはどしどし集めておかなければ、あなたの大学の自治を愛されようという気持も蹂躙されるおそれがある。他から誹誇されてもそれに対して正当な立場を表明することができないと思う。謝罪文の問題にしてもそうであります。あなたは、法によつて厳重な処置を講じて、もしどうしても手に入らない場合におきましては朝日新聞を援用するというお話でありましたが、もう少しその点は慎重に捜査を続けられて、現物入手の方法を講ずることが検察当局の権威のために必要じやないかと思うが、その点いかがです。
  224. 安井栄三

    安井証人 御注意ありがとうございました。検察当局といたしましては、各方面各角度から考えまして慎重にやりますとともに、私どもに与えられました検察権の行使については適切妥当なことをしたいと思いまして、今お尋ねの謝罪文の問題でも、学長に交渉すると同時に、その日に家宅捜索をしておるという事実に徴して、あるいは今日助教授とか講師の宅を二軒も三軒も家宅捜索するのは、学問の自由のためにいけないという批評もあるかもしれないということまでも考えまして、相当慎重に、そして一齊に極秘裡に家宅捜索して謝罪文を手に入れようとして努力した事実はぜひお認めを願いたいと思います。慎重にやりますが、検察権の行使については適切妥当にやつておるつもりでございますので、さらに御注意もありましたから再考いたしまして、帰任いたしましたらよく考えて今後の捜査を続けたいと思つております。
  225. 渡部義通

    渡部委員 関連してちよつと……。
  226. 内藤隆

    内藤委員長 それでは一点だけ簡単に……。
  227. 渡部義通

    渡部委員 証人に聞きます。あなたの方では公訴提起内容として、暴行とか公務執行妨害とかいうようなことをあげておられますが、こういう見地はどういうふうにお考えになりますか。たとえば今日国民の権利と自由、また生活が非常に破壊的な状態になつておる。それで国民がそれを守るためにどうしても集団的な動き、闘いをしなければならないところに追いつめられている。こういう場合に、その行動を起すと常に警官隊によつて弾圧される。この場合に、もし警官隊と闘わないで終るならば、結局は早稲田大学事件に見るように、自由も権利も剥奪されたままに終り、他方警察行為はどのようなものであつても合法性がある、正当性があつたというふうになつてしまう。これこそ検察当局として最も考えなければならない問題であると同時に、日本国民全体にとつてきわめて重大な問題であると思うのです。従つて、このように生活の自由と権利のためにはどうしても闘わなければ存在し得ないという形での運動に対して、これを弾圧する覆として、いろいろ学校内での捜索が行われることは、国民に対する権利の侵害になり、学園の自由の破壊的な行為になると思うのですが、どうか。第一にこの問題。  第二には、そういう場合に国民が実際的な行動をする、もはや実力によるよりほか道がないというのは——大衆的な行動を起せばいつも武力的な弾圧を受けるので、実力によるよりほかに方法がない。この衝突の中にけが人が生じた場合に、民衆だけがいつでも処罰の対象となり、常に暴行罪、公務執行妨害罪となり、警察官の方が不法な、憲法を無視するような人権の蹂躙を犯しながら、しかも催涙ガスやピストルを持つてこれを弾圧している。これに対してはどういうふうな処置をとられるか。この二つの問題、つまり最後の意味は、国民が憲法の保障する日本人としての当然の権利と自由と生活を守るために、それ以外に道がなくて、不法な弾圧を加えられることに対して実力をもつて闘わざるを得ない、この場合の実力行為をあなたは検察当局としてどういうふうに取締るつもりであるか。
  228. 安井栄三

    安井証人 この点は、先ほど御意見として承りましたのと大体において内容が同じように思いますので、御意見として承つておきますが、私どもとしては、今日の時勢と、社会の動きと学問の自由、警察及び学生の問題等は常に考えさせられておりますけれども、きよう愛知大学事件についての証言を求められておりますので、どうか愛知大学事件の前提としての原因、行為調査は、今申しましたように、ますます進めて行きますけれども、今のお尋ねに対しては……。
  229. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ安井証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。  証人には長時間御苦労様でありました。  この際お諮りいたします。本日は、次の本間証人のほかに、古橋特審局次長にも出席を求めているのでありまするが、時間の関係上、古橋証人につきましては明後十二日午後一時に出頭を求め、尋問を行いたいと存じまするが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 内藤隆

    内藤委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  231. 内藤隆

    内藤委員長 次に、本間証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつている方は本間喜一君ですね。
  232. 本間喜一

    本間証人 さようでございます。
  233. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  ただいまより、学生警察官との紛争事件について証言を求むることになりまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証へに宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人本間喜一君朗読〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  234. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  235. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  本間喜一君は現在愛知大学学長をしておいでになるようですが、学長におなりになるまでの経歴を簡単にお述べを願います。
  236. 本間喜一

    本間証人 私は大正四年に東京帝国大学の法科を卒業しまして、それから司法官を数年やりました。それかう東京商科大学の教授をやりまして、昭和十一年にやめまして、弁護士を三年ばかりやつて昭和十五年から東亜同文書院に行くようになりまして、初めは副院長、終戦当時は院長をしておりました。それから帰りまして、東亜同文書院の身がわりになるよう学校愛知大学の創立をやりました。その際は私は理事でありました。それから昭和二十二年八月に最高裁判所事務総長を奉職、それから昭和二十五年の六月まで在職しました。昭和二十五年の六月以来、愛知大学学長をやつておる次第であります。
  237. 内藤隆

    内藤委員長 今年五月七日の夜にあなたの学校で起きました事件については、先ごろ来検察庁当局の話を大体お伺いしたのですが、当委員会事務局の調べでは、大学側と警察側との見解の対立があるようでありまするが、学長としてこの事件に関する大学側の、検察庁側と違つておるような立場の御主張をお述べ願いたいと思います。
  238. 本間喜一

    本間証人 五月七日の夜十一時半ごろ、学生と警官二名とが衝突したことはこれは事実であります。それが、学校の入口から見れば一番奥深いところの東南端のやぶのそばで起きたことも、これも事実であります。それから学生が逃げて、しばらくして相当の学生が集まつて来て、今度は警官が逃げ、一人はつかまり、その後学校の補導部長がそのつかまつておる際に出かけまして、そういうことをしてはいかぬ、早く帰せということを諭告したがために、学生はさらにその巡査食堂につれて行つて、あかりのかんかんした下において相当尋問し、つるし上げをして、謝罪文を書かせ、ピストル、手帳を取上げて帰したこと、これも大体その通りだと思います。そうしてその際に学生の方では、ある事情のためにそのやぶのそばにおいて張番をしていたということも、これも事実です。  しかしその張番した事情は、先生の住宅がちようどそばにありまして、一棟の建物の中に約六家族ぐらいの先生が住んでおりました。そこの住宅の一部を見張つてつた、こういう事情だつたのであります。なぜ学生がそのような張番をしたかということを確かめたところが、それは今年の二月以後三月にかけて、特審局の名古屋支局の支局員と思われる特審局の役人から、学校学生が手紙でスパイを頼まれて、そうしてスパイをしておつた。この事情が、その学生が自供したために、自治会のある種の人に、学生の仲間にわかりました。そこで学校内において特審局のスパイが横行しているという事情がわかつたので、学生は非常にいらいらしておりました。そこへ事件の起きる十日くらい前から、そこの住宅に住んでいるところの学校の職員のところに、どうも特審らしい者が連絡に来るといううわさがあつたのであります。そのうわさがあつたために学生は、それでは今晩はちやんと張番をしてそれを見届けよう。いつもそれは夜の十一時ごろ帰るといううわさですから、まず十時半からそこへ三人くらいの者が張つた、こういうことです。ところが十一時半くらいになつても、何も出て来ない。それでは帰ろうかと思つておるとき、まつたく意外な方面から、住宅でないところの、ほかの馬場の方面から巡査が二名やつて来た。こういうので、その衝突は両方とも非常に意外だつたと思います。学生の張つた事情は、そういうわけであります。しかるに警察側は、その巡査が来たのは犯人を追行して入つたのだ、学生側はそんな犯人を追行して入つたものではない。それは現にぶつかつた所は、学校の門から五町も離れた遠い所であります。その間にはいろいろな人もおりましたが、巡査が通行したことを認めた人がない。ちようどその時刻はその門は相当往復があつたわけです。それに夜間通行する唯一の門でありますから、非常に通行がはげしかつた。ことに柔道部は合宿をして練習をしておりました。その結果、十時半まで柔道の練習をして、そうして着物を着かえて、北門通つて外のおふろに行く、こういう事態もあつた。また学校の校庭には、二人くらいの女の人がおりまして、湯上りにそこで涼んで見ておつた。その際庭を通行した人はない。学校の側においても、巡査北門から入つたものではないと考えた。北門から入つたものでないとすれば、学校は全部垣根をもつて囲まれている、またその他の門は夜は閉鎖して、巡視をして巡回させている場所でありますから、巡査不法に侵入したものと認めざるを得ない。従つてこの点において警察は謝罪あるいは遺憾の意を表すべきものだ、ということを事件直後に申し込んでおるというような事態でありました。しかるに検察庁がその点についてどういうふうに考えておるか、私どもわかりません。ただ衝突した状況、その衝突したというのは、十一時半からして十二時まで約三十分、その間巡査がけがしたとか傷害ということはあつても、それはばんそうこうを三日くらい張つたくらいでなおつております。翌日の勤務にもさしつかえないような状態であります。大したことはない。そういうようなことも、しかし厳重な法規的な意味からいえば、犯罪になるでしよう。そういう点の調査に重点を置いておる。学校側は、むしろどこから入つたかということについて重点を置いてもらいたい、こう考えておるわけであります。その点に関する注意を検察庁に申し込んだこともあります。  その後検察庁の方においては、検証をしたいということでありますから、なるべく摩擦のないようにさせたいと思いまして、学生にも、裁判所令状のもとにおいて検証するような場合においては、抵抗してはいかぬということをよく諭告しておきました。学生の方はその際には、無抵抗の抵抗である。その意味は、無抵抗というのは物理的には抵抗しない、しかしかくのごとき弾圧的なものに対しては、極力憎むのだ、精神的に抵抗するのだ、こういう意味において無抵抗の抵抗という言葉を使つているようでした。その検証も無事に済みましたし、またその次の逮捕の場合においても、七百人ばかりの警官がまわりを囲んで、宿舎に入つて来て逮捕したことはあるけれども、物理的な抵抗、そういうことを受けることなしに、無事に済みました。これは学校側としては、最初の晩すでに、国警も動員して、あそこは市警ですが、国警も動員して学校のまわりを囲み、学内においては歩哨を出すという非常に不穏な形勢でありましたが、私は十二時ころ学校に行きまして、そういうことはいかぬ、手帳とピストルは返しなさいということを話して、午前三時ごろ警察署長に、ピストルと手帳はあした返させるからということを電話しておきました。その晩は両方とも興奮状態であつて、そんなことを詳しく調べ上げる余裕はなかつた。その後検察庁の方において逮捕状執行がありまして、あとは勾留期間内にそれぞれ調査したと見えて、私はきのう参りましたのですがきのうそのうち五人か四人が起訴されたという話でした。大体の経過から行くと、こんな状態になつております。  その後、学校内及び学外にある先生の住宅を家宅捜索した事実があります。それはおとといでしたかと思います。これは学校内の住宅も学校外の住宅も、先生に対しては学校は住宅を与えておるのであつて学校が管理しておる寄宿舎とは違う。寄宿舎はわれわれがいつでも行つて入ることができますが、学内の住宅でも、その人たちに貸してある住宅ですから、いずれもその人たちに捜査令状を提示して、適法に捜査したと思つております。その後のことはあまり聞きません。  私はこの事件に関して数点、大学と警察との衝突の問題として新しいケースがあるということを申し上げておきたい。その一つは、検察庁が犯罪捜査に関して協力を申し込まれたことがある。それに対して大学がどの程度協力すべきかということは、問題であると思います。それに関しては正式に書面で返事しておりますから、十分教育界でその問題に関して批判をしていただくだろうと私は考えております。学校としては、あいつが怪しいだろう、これが怪しいだろうといつて学生名前を指示したり、そういうことをすべきじやない、確たる証拠もあるわけではないのに、検察庁警察の手先ではないところの学校は、そういうことに対してどの程度協力をすべきかということは、おのずから教育者の批判かあることと思つております。  第二の点は、東京においてしばしば学校警察とが問題を起しておりますが、検察庁が進んで捜査の主体になつて捜査しておることはないと思います。それは早稲田の事件でも、犯罪として捜査するならば、捜査できるはずです。そういうこともしていない。ただ、いなかにある大学のために、上部機構がはなはだ薄い。そういう結果、暫く冷却期間を置いて、だれか話してくれればいいということが、一つの考え方でもあつたろうが、今度の場合は、検察庁が非常に大事件よう思つて捜査の主体になつて捜査しておる。これは司法当局が、そういうよう学校警察の問題に対して、そういう態度をとることはどうであるかということも、一つの批判の対象になるのではないかと思つております。  第三点は、特審局がその学校学生をスパイに使う。こういう問題は、学校の教育から見ると非常に困つた問題です。学生に対してスパイをするようなことははずかしいことであるとわれわれは訓育しているのに、国費をもつて誘惑してそういうものを出すようなことは、私は教育の立場にあるものとして非常に困つておる。のみならず、学校内において学生相互に非常に信頼心がなくなる、あれはスパイじやないか、真実を語り、思うところを語つて論議して、そして研究し合うというのが学園であります。しかるにその中においてスパイがある。ほんとうのことも語れない、こういうことをやろうということも言えない、こういう状態にさせられるということは、学校として特審局に対してはなはだ不満の意を表さなければならないというふうに思つております。この三つのことが、今度のケースにおいて各方面の批判を受けなければならない事案ではないか、こう考えております。
  239. 内藤隆

    内藤委員長 事件の概要等は当委員会調査でほぼわかつておるのですが、あなたの大学にもやはり学生自治会なるものはございますか。もしありますれば、その組織あるいは目的等をお答え願いたい。
  240. 本間喜一

    本間証人 自治会というのはあります。これは学生がほんとうに自主的に組織し始めて、それから学校が承認したというよう自治会であります。私の学校は大部分は東亜同文書院大学の残党、残つた学生がそこに集まつた。初めは旧制大学に出発して旧制大学でしたが、約四百人くらいのものが同文書院出身です。われわれが上海から引揚げてつれて来たのです。当時はいる場所もないというようなひどい状態でしたから、雨の漏らないところの宿舎に充てて、十分ではないかとにかくそこにおちついて学問がやれるようになつた。私どもは教育施設の方の関係に重点を置いて、学校の図書、机というようなものを集めること、そういうことに気をとられている間に、学生はみずから自分らの団体を自主的に組織し始めた。学校は、そういうよう学生の初めの意図は非常によろしいのでありますから、学生全体のことを自主的にやろう、こういう自治会の趣旨でありますから、学校の方においても、その学生の盛り上る力を認め、その会の存在することを許し、その委員は選挙によつて選ばれる、また選ばれた委員がさらに委員長、副委員長その他部長を選任して、大体世間にある学校ような学友会、校友会というか、自治会というような態勢を整えている状態です。
  241. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの一学生自治会は、一部共産党の細胞等が学校にもおるようですが、そういう尖鋭分子に引きまわされておるというような実情はないでしようか。
  242. 本間喜一

    本間証人 私の学校におきましては、共産党のフラクシヨンはあります。これは団体等規正令の施行されておる時代にすでに特審局に届出を出したものがありまして、正規の政治的団体として届出を出しておりますから、そういう人はおります。その数はどのくらいだか、届出に載つていないものについては私どもわかりません。これらはどこの場合においても、選挙においてそれぞれリードして当選して委員になる人もずいぶんあるようであります。けれども、全部が全部自治会委員がフラクシヨンに属しておるとは私どもは考えられない。なぜかといえば、届出を出したものはありますが、それ以外のものについて、そのフラクシヨンに属するかどうかということは、一つの臆測にすぎない。われわれ聞いても返事をしませず、よくその点はわからないのです。しかし委員の中においては、フラクシヨンに属しない、共産党的な色彩のまつたくないものももちろん出ています。運動部とかその他を母体にしてもちろん出ております。しかし理論的なことを議論するということになると、フラクシヨンに属しているような共産主義的なものがリードすることは、これはあり得る。大体私ども学校においては、そういう尖鋭分子が少数あるし、共産党的なものがある。それからほんとうに勉強したい、こういう学生もおります。それからあるものは、卒業して就職すればよいのだ、卒業免状をもらえばよい、こういう傾向の学生、これは一番多いのではないかと思いますが、それからある学生は、少数であるけれども、パチンコばかりやつておるというようなものもある。私は現代の大学の学生は、大体そういう四種類にわけて見ています。しかし尖鋭分子がそのあとの三つの分子を全部糾合して一線に持つて行くには、それにアッピールするところの何か正しいものを持つたときのみです。その人が不当なことを言つていた場合にはくつついて行きません。たとえば学園の自由を守るとか、そういうような場合においては、今のパチンコをやるものに至るまで共鳴する。こういう状態でありますから、そういう場合には大いに扇動されるということもあるのではないかと思います。
  243. 内藤隆

    内藤委員長 一種の目標がそういう自由とか主義とかいう場合には、尖鋭分子が先頭に立つ場合もある……。  昭和二十六年ごろに、学生自治会が補導部長の排斥運動をやつたというような事実はありませんか。
  244. 本間喜一

    本間証人 これはあります。当時の補導部長に対してやめることを勧告するというビラを張つたことはあります。私は、それは不当である、そういうことは学長のところに持つて来るべきものだ、ビラをやめなさいと言つて自治会のものを呼んだことがあります。自治会の方では、大会を開いて決議したりいろいろしているようでした。けれども学校としては、そういうことは不穏当だからやめろ、場合によつては処分しよう、こう思いまして教授会に諮つたこともあります。しかし教授会においては、いろいろその事情を考えた結果でしよう。ほとんど半分半分、賛否相半ばする、こういう状態において学生を処置するということは、学校の訓育上の意味においてはなはだ権威が少い。私はしばらくその後の様子を見ようと思いまして、その問題に関しては処置しない。今後気をつけろ、そうしてああいう排斥なんかしてはならぬ。それに対する承諾書をとつて今後を戒めて治めた事件があります。
  245. 内藤隆

    内藤委員長 本事件に関しまして、学校側に相当有利な証拠となるような書類等もあるように聞きますが、たとえばスパイがおつた。その手紙というのもあなたの手元にあるようですが、あるいはまた内田巡査ですか、これに書かした謝罪文等もあるはずですが、かような、学校がむしろ有利になるような書類等を証拠として提出するように、検察庁の方からあなたの方に申し込んでおるはずです。これを拒否しておられるようですが、どういう理由でこれを拒否されたのですか。
  246. 本間喜一

    本間証人 私のところに、おとといですか、検事正の手紙を持つて御趣旨のような要求がありました。それは何の利益になるか、不利益になるか、私は知りませんが、そういう要求がありました。第一の書類は、学生内田巡査に書かしたというピストルと手帳の預け証と謝罪文を要求した。この点に関しては、私が提出しないのは、大体その謝罪文と預け証とを見たことがない。また持つてもいないのです。持つてもいないし、また見てもいないのです。ある新聞に写真が出ておつたのを私は見ただけです。これはそういう意味合いにおいて、持つてないからして提出しない。また見たこともない。こういう返事をしました。第二の手紙は、特審局から学校学生に対して、こういうことを調べてもらいたいということを、二枚の紙に書いた手紙です。これは私は学校の自治委員長から預つてもらいたいというので預つています。現に今持つて来ておりますが、これを提出してもらいたい。こういう話です。しかしこれは私は人から預つた手紙だからして、預けた人の承諾がなければ出すわけにはいかぬ。写真をとらしてくれ、こういう話です。しかしそれは手紙の内容ですから、写真にとるにも預けた人の承諾がなければとらせるわけにいかぬ。こう言いました。もし預けた人がさしつかえないと言えば出します。そういう意味で私は拒絶したのであつて、拒絶した理由は、依頼者から預つた品物だからして、依頼者の品物を保管しているというだけの話であります。  ただなぜ私はそういうことを懸念するかというと、その学生は今は平穏に——スパイ行為はやらない。人からもまた過去のそんなことをあまり言つてもらいたくない。学生が穏やかになつて、そうしてやつと気が治まつて勉強している際に、またそれをあばき出して、その感情をまた起させることは、その学生に対して教育上どうか。こういう懸念を非常に持つておりますから……。しかし私は今書面を持つておりますから、ここでごらんに入れることはできます。
  247. 内藤隆

    内藤委員長 その警察官の書いた謝罪文というものを、あなたはごらんになつたこともないということをおつしやいましたが、それはだれにあてて書いた謝罪文ですか。
  248. 本間喜一

    本間証人 私はそれはわからないのです。というのは朝日新聞にその写真が出ておりました。おそらく学生のだれかが朝日新聞の記者に見せたのだろうと思います。それからしてもう一通は社会タイムスに出ておりました。これもまたおそらくその写真を持つて行つて借りたのだろうと思うのですが、私が預つて以来はどこにも貸したことはないのです。但しここでごらんにたるならばごらんになつてくださつていいと思います。
  249. 内藤隆

    内藤委員長 そこでその謝罪文を今だれが保管しておるかということもおわかりになりませんか。
  250. 本間喜一

    本間証人 それはわかりません。また聞いたことがないのです。聞いたことがないというのは、謝罪文をだれが持つているかということについて、私は関心を持つていませんから聞かないのです。これはだれか持つているだろうと思います。学校学生が持つているだろうと思います。
  251. 内藤隆

    内藤委員長 学生が持つているだろうと想像されるわけですな。
  252. 本間喜一

    本間証人 そうです。
  253. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの学校の創立事情等もよく調べてわかつておりまするが、教授やあるいは助教授、講師、学生の一部等に日本共産党に関係を持ち、あるいは入党などをしておる方がおられませんか。もしおいでになるとすれば、そういうようなことが教育上、大学の管理上あなたは支障がないとお考えでありますか。その点をひとつ……。
  254. 本間喜一

    本間証人 学生の中に日本共産党に入つている人があるかどうかということについては、この前に申し上げたように、特審局にフラクシヨンの届けを出しますからして、それに載つている、学生は共産党に入つているわけです。それから先生の中にそういう者があるかどうかということについては、私は各自がどの政党に入つているということはまつたく自由だと思つており、まするからして、私は先生に尋ねもしませんし、想像したこともありません。あるかもしれませんし、ないかもしれない。かつておととしあたり特審局の者が来て、学校の先生の思想動向、共産、党に入つているはないかといろいろ私に聞かれたことがあります。私はそれはわからぬ、わかつてつても特審局には返事しませんと言つておきましたから、その後来ませんけれども、今私は入つているかどうかということについては知りません。
  255. 内藤隆

    内藤委員長 もし入つておる者がおるとすれば、教育上どうでございましよう。あなたの教育者としての立場において……。
  256. 本間喜一

    本間証人 私はどの政党に入つていても一向かまわないと思います。共産党に入つている先生があろうが、自由党に入つている先生があろうが、改進党あるいは社会党に入つている人があろうが、これ客人のめいめいの政治的荷動の自由でありますから、そういうことについて教育上私は別に何とも考えておりません。またそうあるべきだと私は信じております。
  257. 内藤隆

    内藤委員長 日本共産党に正式入党しておる教授がもしおるとすれば、やはり日本共産党の何と言いますか、主義、主張その他闘争方針等を党員として守つて、それを実現するためにいろいろな運動をされると思うが、さような場合でも別に教育上さしつかえないとあなたはお考えになるのですな。
  258. 本間喜一

    本間証人 私は党員であつても一向妨げないと思いますが、学校の教育施設あるいは教場等を一党一派のために利用することは禁止します。
  259. 内藤隆

    内藤委員長 最近の傾向として、学生なり、教授なりが政治活動をやつておるということは、相当に国民も心配をしておるところでありまするし、ことに学生が、ある——あると言わずに、もつと露骨に申しますれば、日本共産党のいわゆる尖鋭分子として活動するがごときは、これは少くとも私は今日の日本の状態かち見ますると、暴力革命を主張し、軍事的いわゆる行動までもとつておるというような場合、もしさよう学生なり、教授なりがおるということは、これはもう少くとも私は教育の立場のみならず、国家の立場においても憂慮すべき問題であると考えざるを得ない。ことに教授なり、学生等の政治活動には、おのずからそこに限界がなければならぬ。あるとすればどういう点までが学内においてやつてもいいと思われるのか、ひとつその政治活動の限界点というようなものについて、何かお考えがあればお述べを願いたい。
  260. 本間喜一

    本間証人 私は学校において、学校の施設その他を一党一派のために利用させるということはしてはいかぬと思つております。従つて学校のフラクシヨンの事務所は学外の市役所のそばにありまして、私の学内には置いてない。また一党一派の行動のために学校の部屋を貸してもらいたい、研究会をするから貸してくれ、それも貸さない。学校の中をビラ張りに利用させることもしません。日本共産党などはビラを張つて行きますが、だれが張つたかわからないから一々ひつぱがしておきます。その政治的活動というものが合法の範囲においての政治活動であるならば、これに対して教育者としても別に苦情を言うべきではないと思つております。従つてもしそういうふうなことを御質問になるならば、私の意見としては、合法の範囲ではいいのだろう。こういう返事をするほかない。どの点が合法であるか。あなたは今非常に暴力々々と言われましたけれども、そういうようなことはおそらく合法じやないと思います。
  261. 内藤隆

    内藤委員長 質問の通告がありまするから、順次これを許します。福井勇君。
  262. 福井勇

    福井委員 二点ちよつと御意見を伺いますが、愛知大学は東三河地方として現在では唯一の大学でありまして、ここの住民は五、六十万人ありましようか、できた当初から非常な期待をかけておつたのでありますが、このごろ豊橋を中心として、南は渥美の伊良湖から、北は北設楽の豊根村の付近までいろいろ歩いてみますと、今日では赤い学校であるというふうにいわれて、それらの地方の子弟の進学を望まぬ父兄が多いように耳に入つておるのでありますが、二の点について学長はいかが考えておられますか。
  263. 本間喜一

    本間証人 どこの大学でも、二十人そこらの細胞がいることは普通であつて豊橋地方は、御承知ように保守的の傾向の非常に多いところです。そういうところにおいては、学生がビラ張り、その他の行動をするようなことは非常に目立つておるために、それで赤く思われているのではないか。あの学校がもし東京のまん中にあつたら、赤どころじやない、薄桃色ともつかない学校である、私はそう考えております。決してそんな赤い学校じやない。数人の者がやつておるかもしらぬ。あの地方においては共産党の組織というものは非常に薄弱なところだと私は考えております。なぜかというと、組織的労働者の団体もなし、主として自由労働者の団体であります。その自由労働者の団体と一緒になつて学校の細胞が騒いでおる。学校の細胞というものは、学校と離れた別個の政治団体だということをお考えくださらなければならぬ。それに対して、学校としての立場においての訓育はしますけれども、政治行動に対して学校はかれこれ言うことはできない。そのものだけが騒いでいるだけの話である。あの地方が、もし東京ように共産党の組織が完備しておるなら、あんな学生だけ使わなくてもいい。学生は一番おだてて使いやすいからやる。それで目立つ。それにあの地方が非常に保守的な地盤でありますから、そういう観察を受けるので、あれを東京のまん中に持つて来て見ていただきたいと思います。
  264. 福井勇

    福井委員 東三河二市五郡の町村長会長にあてて、——現在横田忍氏が理事喜長だと想像しておりますが、本間学長の方から、これらの町村長に対して、学校経営上の資金不足からでしようか、寄付の申込みをされたと聞いておりますが、この点について各町村はこれにどういうふうに応じましたか、その点をちよつと……。
  265. 本間喜一

    本間証人 学校は今官有地にあるので、それの払下げを受けたいと思つて、五千万円程度の寄付金を仰ぎたいと思つて、去年から計画しております。理事長は私であつて、横田君じやない。横田君は普通の理事です。しかしあの地方の人を知つておる関係上、町村長会、その他そういうところに横田君が出席して、いろいろお願いしておるようであります。たいへん御協力を得ております。私はついその方へ参上しないから、よく事情はわかりませんけれども、去年の秋横田君からの話で、どうも学校があまり赤いものだから、金の集まりがよくないということを言つておりました。しかしまたこの春横田君が、そういう方面をまわつて、ことしはわかつてくれるようだから、話ができそうだということを言つておりましたが、それだけでもつて、いろいろ手わけをしてやつておるものですから、その後直接私は会つていない。横田君からの話では、そんなことを言つておりました。豊橋市からも百五十万円、あるいは二百五十万円、今まで六年の間に総計八百万円くらいの補助金を受けたでしよう。非常に御好意を受けて、学校の施設をだんだん拡張して行く、こういう状態です。今年もいただきたいと思つております。
  266. 内藤隆

    内藤委員長 佐竹新市君。
  267. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人にお尋ねいたしますが、午前中証人に呼びました名古屋の地方検察庁検事正証言によりますと、本事件が起きましてこれが捜査の対象となりますときに、愛知大学の方が、協力を実れてもなかなか協力をしてくれない。この問題が大きい社会問題となつて学校警察ということよりも、学校とさらに検察庁というよう関係になつた最初事件は、二名の警官が侵入し、それに対して学生との間に衝突が起きた。この事件が、二名の警官と学生という問題を乗り越えて、今日ではあの地方における大きな社会問題となつて、むしろ学校当局と検察庁警察、こういうふうにまで発展して来ているかの観を呈しているのでありますが、こういうふうに発展したところの行きがかりといいますか、感情的な対立といいますか、そこらの底にはどういうことが伏在しているのであるか。警察の方から協力方を申出られたときに、書類であなたの方から回答せられた中に、学生行為を追究する前に、この根本問題について十分精査されたいということが書かれておるのでありますが、この学校の方からいわれる根本問題というのは、どういう点をつかれているのであるか、この点を御証言願いたいと思います。
  268. 本間喜一

    本間証人 学校検察庁との間の対立にまで発展したとおつしやいますが、それは今までどこの大学においても、犯罪の捜査に対して検察庁から協力を申し込まれた大学はない。大学において初めてのケースだと私は思います。検察庁から犯罪捜査協力を求めるといわれても、法律的にわれわれは何らの義務はない。義務のないことをする場合においては、われわれは警者としての立場において協力をすればよい。協力できることは協力するし、協力できないことは協力しない、こういう建前をとつております。検察庁が自分の手足、あるいは刑事、スパイのような行動をわれわれがしないことを、それを協力しないというなら、われわれに求めることはなはだしいものといわなければならぬ。  学園において何がゆえに警官が入ることをきらうか。これはわれわれの住宅において、警官がむやみに入つてもらいたいことはちつともないでしよう。人が寝ている際に、雨戸の外に聞き耳を立てて、夫婦が何を内緒話をしているか聞かれたら、不愉快千万です。それから窓を明けて、何しに来ているのだ。いや犯人をおつかけて来たのだというような言いのがれをして、愉快な人はおそらくないでしよう。もしそれだけ親切な警官であるならば、どろぼうをおつかけて来た、すぐ雨戸をたたいて何か中で異状はなかつたかくらい言つて、そうして帰つてくれる警官こそ、われわれの讐と思つている。まず普通の感情から行けばそんなものです。それから学園においては、学園の自由、学問の自由、これを非常に神経質にいつています。学問の自由——気分からいえば、今のめいめいのうちを立ち聞きされるような気分ですが、学校がそれを真剣にいうのは、学問の自由、研究の自由ということです。学校は真理を探求し真実を語るの府です。これが学校の生命です。戦争が済んで戦争の真相、占領が済んで占領の真相と、そんな手遅れなことは学校はやらない。現実の真相を語り真実を語り、国家の将来を憂えるのが学問であります。われわれの学校の嵩は今の憂を語りたい。今の真実を語つて、研究会を開きいろいろ研究する。おまわりさんが入つて来て聞き耳を立て、あれはどういう思想を持つておるか、あれはどういう研究をやつてどんなことを発表したか、どんなビラが張つてあるか、そんなことを何のために調査するのか。われわれは学園の自由と考えればこそ神経質になる。学生その他教授は、そういうふうに警察官その他の者が聞き耳を立てて学校に入られることはいやだから、とにかく入つてくれるなと言う。入つて来なければ問題は起きない。何のために必要があるのか。学生の就職の場合に、銀行、会社等から照会されて、あれは何々研究会に属していたと答えるためか。そうして思想を語りそういう会に出た者に対して、事実上の不利益を加える。事実上の不利益はすなわち思想の圧迫である。何も無形な思想をぶんなぐることもありはしない。戦時中ある考えを持つておる人が、雑誌に何か書こうと思つてもすぐ書かせなかつた。あるいは本を出そうと思つても紙の配給がなかつた。これは事実上の圧迫です。今学園において何のために調べるか、その目的を警察、特審局に聞いてもらつたらわかる。従つて学校はそれをいやがるのはあたりまえだ、神経質になるのはあたりまえだ。夫婦の内緒話を聞かれていやだというのと同じ気分です。だからこそこの問題における根本問題は、どこからおまわりさんが入つて来たかという点にある。それをちつとも調べない。内田巡査遠藤巡査がどういう供述をしたのか見せろと言つても見せない。どろぼうを追つかけて入つて来たと言うが、そのどろぼうはどんなかつこうをして何かふろしき包みを持つていたかと聞いても、そんなことは知らないと言う。それを知らぬようなことで、本気になつて調査しておるのかわからない。そんなものに協力のしようがない。だれがひつかいたとか、ここにこぶが出たからだれがなぐつたんだとか言つたつて、わずか十分くらいの間で、学校の先生はそんなことをやつてはいかぬ、返しなさいと注意をしておる。そしてだれも悪いことをした思つてない。かんかんとした電気の下でみんな顔をさらしながらのことである。最初に警官に会つた際に、補導部長のところへ行きますと言つてみたり、なぜ入つたかと聞いてみても、公務執行だとかなんとか妙なことを言つて、どろぼうを追つかけたことは一言も言わない。どろぼうを追つかけておるのなら、どろぼうだと言つて探さなければならないのに、それもしないようなへまな警官をよこしておいて、そしてこういう問題を起しておる。それで学校が一番迷惑をしておる。夜の十一時過ぎに何のためにうろうろしているか、はなはだ不用意であり、はなはだ不謹慎である。遺憾の意を表しろ、こう言つたのにやらない。やはりどろぼうを追つかけて探しに来たと言う。どこで見失つたのか、追つかけ始めてから学校まで百五十メートルくらいのところで見失つた。それなら早くみんなに声でもかけて知らせてくれたらいい。われわれの問題とするところの、何がゆえに警官が入つたかという点について十分な説明をしないで、そうしてだれがこぶをつくらしたか、だれが顔をぴつぱたかれたというようなことばかり言つておるから、学校ばかりじやない、学生自身だつてそんなものに協力ようとしないのはあたりまえの話です。
  269. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人学生の自由、思想の自由を守るという意味の御証言に対しては、私も同感であります。ただきよう名古屋検察庁検事正が、本事件をずつと調査してここに証言いたしますのに、この愛知大学の中における二名の警官に対する暴行事件を中心としての証拠固めをやつておるように、われわれは聞いたのでありますが、この中で最も重要な問題は、愛知大学の一学生が北鮮系の鮮への中におりまして、これを最近検挙した。この二階堂何がしのポケットの中に入れていた約五十ページばかりの書いたものの中に、きわめて緻密にこの間の愛知大学の中の警官との衝突事件の消息をずつと書いてあるので、計画的になされたものだというよう検察庁では見て、それの証拠固めを現在、やつておるのでありますが、二階堂何がしという学生が、日ごろ何か今言つた特定の細胞におつた男であるか、あるいはそういうことを事実計画して、この者が計画的に警察を誘導して本事件を起したものであるかということについて、学校の方ではどういうようにお考えになつておるか、御証言を願いたい。
  270. 本間喜一

    本間証人 私は二階堂の書類というものは見ておりません。ただ新聞に書いてあるだけを見た程度であります。学校の方では初めから教員住宅にスパイが来るのを張つてつたので、その意味においでは学生は非常に計画性があつた。けれども巡査が来るとは思わない。あの騒動を計画したのじやない。従つて計画性という言葉は非常に誤解を受ける形において使われております。特殊な職員のところへ出て来るところの特審局あたりのスパイをつかまえようという点においては、非常に計画的であつた。従つて私は魚に網を張つてつたところが鯨がかかつたと、すでに五月九日検察庁意見を述べて来ております。  それから私は二階堂という人の顔もよく知らない。従つてあれはフラクシヨンに属しておるかどうかということも知らない。二階堂は人の話では、逮捕令状執行した際に寄宿舎の中にいたということです。それを一ぺんつかまえてまた釈放したということを言う学生があります。だから寄宿舎にいたじやないかと思います。ただ逮捕令状が出たということを知つたからみな逃げてしまつた。例のあの逮捕令状は、三月国に帰つた熊本市の弁護士の子供小室一郎という人に対してさえも逮捕令状を出しておる。まだその人は寄宿舎に帰つて来ない。三月国に帰つてまだ寄宿舎に帰つて来ないそれにも出しておる。だから特審局がずさんな調べに基いて一網打尽にしたような形をとつたじやないかという非常な疑惑を持つくらいです。それで私は今申したように、二階堂という者はよく知りませんが、かりにフラクシヨンに属しておる者だとすれば、あんな検察庁に届け出るようなこまごま書いたりつばな書類を持つてふらふらしおるなんて、まことに幼稚な人間だと思つております。ほんとうの共産党員なんというものはそんなようなことができるかどうか、私は非常に疑問に思います。そういう者がかりに愛大のフラクシヨンの一員であるとすれば、愛大のフラクシヨンはフラクシヨンのままごとをやつておるものである。私どもはあんな者の書類については特別な感想は持つておりません。それからあの書類は全文みな発表してもらつたら非常にいいじやないか、あの中にどうも学校の職員に関して共同謀議したということが書いてあるという話ですが、私はそんなことは決してないと思います。学校の職員の中に、学生と一緒になつて警察をひつぱり込んでぶんなぐつてやろうというようなことを謀議したような事実は絶対にないと私は確信しております。
  271. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人の経歴によりますると、証人も最高裁判所の事務総長をされた、弁護士もされたということで、むしろ学者というよりも法律問題に対しても相当御研究なさつておられると思うのでありますが、本事件は、きよう検事正証言を聞きますと、このままになるなれば好むと好まざるとにかかわらず、大学と警察との関係の摩擦がますます対立するんではないかと思うのであります。ただいまの学長証言といい、午前中の検事正証言といい、この二つを対照してみますと、まつた証言の上で対立関係になつておるのでありますが、今後の点におきましてどういうようにこの問題を解決することが一番好ましいか、もうこれ以上発展させない、どういうようにこの問題を解決することが一番学校側としては好ましいかということについて、どういうお考えを持つておられるか、お伺いいたします。
  272. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとお答えになる前に、ただいまの証人証言された、二階堂某なる者のポケットから出た文書に対するあなたのお考えを聞いておると、信憑性はない、そんなものは信じられないものである、こういうことになりますが、これは原文があるようですから、筆蹟等鑑定すればおのずからわかつて来るのでしようが、それはいかがですか。
  273. 本間喜一

    本間証人 お答えいたします。それは私は今はつきり申し上げられませんけれども名古屋でもつてこの事件についている弁護士、私の友人ですが、脇坂弁護士に葬式の席で会つて来たのです。あれは変なものだと聞いたら、脇坂君は、あの事件のやはり関係弁護士である天野弁護士に会つたそうです。天野二階堂に、逮捕されたあとついた弁護士ですから、会つたそうです。そしてあれは書いたのかと聞いたところが、あんなものは書かない、二階堂はそう言つておるということを、脇坂弁護士を通して私は聞いております。そこで私は脇坂弁護士にあなたも二階堂に会つて、そうしてあの事情をよく聞いてくれということを頼んでおきましたが、まだ来るまでには脇坂君に会う機会がなかつた名古屋行つておりませんから会いませんでした。そんなことがあつたために、ぼくは何だか変だなと思つたからして、今のような批評をしたわけです。
  274. 内藤隆

    内藤委員長 これは検察庁としては相当重要な文書として考えておるようですから、いずれまた科学的な研究の上に立証されると思います。
  275. 本間喜一

    本間証人 私は何かあれは原文があつて、だれか写したか何かのものじやないかと思うのですけれども、新聞に書いてあるところのものを見ると、ほんとうに検察庁に対する報告書みたようなもので、実にりつぱなものだと思つております。
  276. 内藤隆

    内藤委員長 それじやただいまの佐竹委員の質問に対してお答えを願います。
  277. 本間喜一

    本間証人 私はこの事件の始まりにおいて、ぶつたとか、けがしたとか、職務執行を妨害したとかいうような点から見たら、世間にごくざらにある事件であつて、司法事件としてはそう大した大きな事件とは思つておりません。学生と警官とぶつかることはよくあります。私ども学生の時代でも、けんかしたくなると交番の前に行つて小便したりすると必ずけんかになる。これは幾らでもあるのであります。しばらく私は警察学校とが交渉するのを東京ようなぐあいに見ておつて、そうしてまずあれから一週間か十日も冷却期間を置いて、検事正署長学長でも呼び出して、困るじやないか、君の方もぶらぶら入つたのは困る、私の方も行き過ぎだというようなことで話がつけば、それでも話がつけられる問題だと私は考えております。あるいは公安委員あたりでしつかりしている人があれば、そういうことを言つてくれてもよかつたんじやないか、こう思つております。  しかるに何か非常にたくらんだ、あるいは共産党なんかの指令による一つの現われとでも考えたのか、非常に大げさなことを考えて、ただちに検察庁は向つて来た。そういう場合において、検察庁に対して、あの子は怪しい、この子はどうも変だというようなことを、私ども教育者として言うべきじやないと思つておる。むしろここにもある通り、三親等内の親族は証言を拒むことさえできる。あの精神、教育者として自分の教え子に対する気持は、三親等内の親族以上でしす。そういう精神を幾らかでもくんでくれる検察庁であつたならば、あのとき暴行の際にいた学生をみな何時何分までに出頭させよ、それができないと強権を発動するというような威嚇命令をおこさないであろうし、またそれに対してはいはいと応ずるよう学校であつたら、そんな学校はつぶした方がいいと私は思います。今にして思えば、検事正なり知事なりが入つて、実際のところ両方の話を聞いて、大したものじやないじやないか、傷だつて三日も絆創膏を張つておれば直るような、鼻くそみたようなけがで大したことはない、そんな話だけで、これから先どうするかを話してくれるならば、われわれとしては学生に多少の行き過ぎがあつたことを謝罪するに決してやぶさかじやない。
  278. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そこで私は最後の証言をしていただきたいと思うのでありますが、最近愛知大学のみでなく、東京においても、東大あるいは早稲田と、いろいろ警官と学生の衝突問題が起きておりまして、それが相当大きな社会問題になつております。名古屋においては検察庁が取上げておりますが、東京では取上げておりません。私がお尋ねしたいのは、日本共産党の細胞によつて一定の暴力活動が行われるという考え方を必要以上に持つて学生全体を最近いろいろ調査をし、また警官がそういう対立意識を持つておるというような感じが非常に見えるのではないかと、私は考えるのであります。私の子供が中央大学に行つておりまして、きようも私のところに来まして言うのに、きようこれから大学のデモ行進に行くんだ、デモ行進とは何か、と言つたところが、破防法に反対のためのデモ行進だ、それは一体合法的に届けてあるのかどうか、合法的に届ければ警察が絶対に許さない、だから示威を示すためには学生が自主的にやるんだ、みんなが行こうと言うから行つてもいいか、と言うので、私も過去において相当長い間運動をやつておるが、お前は共産党のやつておる破防法案反対というようなことをどういうように考えるか、こう言うた。私のむすこはあるいは共産党であるかもしれません。しかしながら私の関係から見るならば、まだそこまで行つておらないと思うのでありますが、この問題は共産党であるかないかというようなことでなくして、学生全体がこれは共産党の人も反対するかもしれぬ、共産党でない人も反対するかもしれぬ、とにもかくにも必要以上に政府が弾圧をする、それで学生を見たら共産党と思え、こういうようなことで対立するので、学生でも相当純なる学生は反感を持つておる、こう言うのです。私もそれはそうだと思つて聞いていたのでありますが、そういつたような考え方が今日の学生の純な頭の中にあるあではないかと思う。学問の自由、思想の自由どいうことは民主主義の原則でありますが、それに対して警察官がすぐ拳銃をぶつ放すとか、催涙弾を投げるとか、また学生がやつたことは中核自衛隊の組織的な行動である、こういうように一方的な認定をした動き方が特審局、検察庁警察の中に相当あるのではないか、こういうことが必要以上に学生の純な心持を刺激するのではないかと思うのですが、今度の愛知大学事件では、そういうような点はどういうように見られておるかについて御証言を願つて、私の質問を終りたいと思います。
  279. 本間喜一

    本間証人 今御質問のような点が非常にあると思います。私どもはまつたく同感です。大多数の学生は、そういう暴力革命に賛成しておるものではありません。私の学校なんかは「赤を追い出せ」というビラを張つたこともあります。去年の騒動の際に張つております。今度の事件についてもあちこち「赤を追い出せ」というようなことを書いてあるところもあります。それで今のような純心な学生に、国家権力は変なふうに使うものだ、不当に使うものだというような印象を与えたならば、青年層は国家権力の行使に信頼をしなくなるというようになつたら、この社会はどうなるか。私はあなたと同じく懸念しおります。われわれは警察力というものは、こん棒ではないと思つております。一人の警察官がこん棒を振りまわす際には、十人の民衆がそれを応援するように、それだけの信頼を得て初めて警察権が確立する。一人のこん棒に対して一人が反対したら、八千万の巡査がいたつてどうにもならぬ。その権力行使は、国民から信頼を受けるような行使の仕方をしてもらいたいと私は思つております。これは国会その他そういうところにおいて大いに取上げて、そういう政治的面は大いに考えていただきたいと思つております。  それから特審局のスパイに学生を使つたために、われわれの学壌は、だれと話していいのか、学生相互に信頼感がなくなつた。とてもこれでは教育ができるものではない。ほんとうのことを話そうと思つても、相手は警察に言うのではないかという状態にさせられて、学校は教育できますか。外から入つているスパイは商売であるからかまわない。しかし学園内における学生をスパイに使う態度については、真に批判をしていただきたいと思います。
  280. 浦口鉄男

    ○浦口委員 この事件の表面に出た事実から推せば、ただいま証人がおつしやつたように、共産党のフラクと見られる者が学内には二十名内外あるということであります。また警官と対立した事実についても、東大あるいは早稲田と比べますと、格別大きな問題でないと思います。ただ私はこうした愛知大学のこの事件が、やはり全国的な日本の全体の思想動向と申しますか、そうしたものと全然関連を持つていないということではないと思いますので、慎重に扱うべきであると考えます。  そこで先ほどの証言の中に、検察庁から協力を申し入れられた文書に対する回答の中に、本学の学生に対して、いかなる場合にも極力冷静な態度をとる、たとえば強制権の発動等のことがあつても、これに対しては抵抗をしないように注意を与えたという項目がございます。なお先ほどの証言においても、無抵抗の抵抗というふうなお話もございましたが、私はその意味で、学生一同に対して慎重にされているということは、敬意を表するわけであります。  そこでまず第一にお尋ねしたいことは、巡査がどこから入つたかということが非常に問題のようであります。警察並びに検察当局は、北門から入つたものである。そして先ほどの証人証言によりますと、単なる巡視にすぎなかつたであろうと言われております。と申しますことは、この巡査は二十か二十一で、非常に経験も浅い、まあ、お坊ちやん巡査だということで笑つたというふうなことも言われておりますが、そうしたことで、それ以上の使命を持つて計画的に巡視をしたのではないだろうということを、検事正証言されております。ところが本間学長のお話によりますと、まつた北門から入つたものではない、入るべからざるところからもぐり込んで、そこに何かの計画性がひそんでいた、それが学生を非常に刺激したというふうにお考えになつていると思うのであります。そこで私は、この事件の発端がその後に発展する事態の大きな原因をなしていると思うのですが、その点、検察庁当局と学校側との食い違いについて、いま一度お考えを承りたい。
  281. 本間喜一

    本間証人 今の点は最も重大な点であります。学校は、ほんとうにどろぼうをおつかけて入つて来たものだつたら、どろぼうをつかまえるのを応援します。学校が今まで調べたのによると、どうしても北門から入つたのではないと思つておる。そのわけをお話しますと、大体どろぼうをおつかけて入つたならば、みな寄宿舎やなんかは起きておりますから、ピイでも吹いて起せば、みな出て来て人は集まります。現にそのおまわりさんが衝突したあとで笛を吹いております。だからして笛を吹けばその近所の者が集まつて来ます。そういうことをしないところが変だ。第二点は、私が警察署長から電話を聞いたのはちようど十二時十五分だつたと思う。そのときは、北門の門の中で怪しい者の話声がするから、懐中電燈を照らしたら中に入つたという。怪しい者の話声がしたならば、二人いなければならない。一人の話声はないと思います。ところが今でも二人をおりかけたということを警察は決して言つておりません。一人の怪しい者と言つている。それから中日新聞には、内田巡査と一問一答やつたことが載つております。それはうそじやないと私は思いますが、それによると、内田巡査は、寄宿舎の窓をのぞいている怪しい者がいたので、それに声をかけたら逃げたから、おつかけたと言つている。ところがあんな三棟もある大きな寄宿舎で、その前に建物があつて、はすかいになつているから、寄宿舎の窓なんかどこからも見えない。ところが、おまわりさんを連れて来てどこを歩いたと言つたときに、私は立会つてくつついて行きましたが、門のところに石の橋があります。その石の橋のところに怪しい者がいた。それをよほど遠いところから見て不審尋問したところが、中に入つた。こういう陳述にかわつております。怪しい者をおつかけたという点について、内田巡査の陳述は初めの言い方と非常に違つておる。それはつくりごとだと私は思つております。もし内田巡査遠藤巡査をここに出して、私に自由に質問していいといつたら、うそをついていることが十分暴露できると思う。この警察の陳述の中には何かうそがある。  それから巡査のまわつたところを見ると意外なところをまわつている。火薬庫の中の大きな土手に囲まれた平生まつ暗にしているところがある。ちようどそこを柔道の道場にして明りをつけて合宿していたのですが、そのまわりをぐるくまわつたり、少しさびしいところをまわつたり、土手の上に上つたり、そんなコースをとるということは、常識上巡査として考えられないことだ。あれは何かうそがある。とにかく図面の上でどこをまわつたということから、そう言わざるを得ない。入つて来た北門とくつけるために、そういう無理なことをしていると私は思つている。それから変なことは、そのときちようど合宿している人がどたんばたんやつていた。十時半に着物を着かえて、北門から入つたというのと逆コースをとつて、十何人か湯に入りに行つているのですが、一人も巡査やなんかに会つた人がない。その柔道部の人が出て来るのを見て、庭におつたところの女の人が、そこにしばらく涼んでいる間に騒動がこたく起きて来た。そうすればその間に庭に入つていなければならぬ。あの庭に入つて来るのには、五万坪もあるところに二百燭一つですから、懐中電気を照さないと、どぶもありますし、通れない。だからぼくは非常にうそがあると思う。それから内田巡査にわび状を書かして帰す際に、内田巡査は運動場の方に逃げて行つた学生がどこへ行くのだというと、外へ行くという。外へ行くんなら北門から出て行けと、北門を教わつて出て行つた。たいていの人は、帰つて行くときは入つて来た方に行けば出られると思うからそつちへ出て行く。それから入り品は、始終垣根のところを越えて来るので、もう子供が出入りするところの道がついている。スつて来る気で入れば、入れるところは三つもある。もつともまつすぐに大手を振つては入れませんけれども、くぐれは入れるし、またげば入れる。だからそこから来れないという事情では決してない。現にぼくは、うそかほんとかしらぬからはつきり言いませんけれども学校の巡視が、きのうかおととい捜査に来ました、その際帰りに一人の人が一これは顔を覚えておりますが、鉄条網の間をくぐつてつて行つたということを言つてつた。だから私は、そんなところは犬のほか出入りするなという札を立てたらいいだろうと言つておきましたが、それを見ても、そこのところは始終警察が出入りしているのだから、あそこから来られないことはない。ですからいろいろな点から考えてみて、そういう警察の主張は何かうそがある、こう考えておる。
  282. 浦口鉄男

    ○浦口委員 ただいまの御証言、われわれも疑問が残つていることを申し上げておきたいと思います。そこでその次にお尋ねいたしたいことは、この内田巡査が、教授や学生の動きとかその他をスパイしに来ているかどうか、これは問題といたしましても、従来学校側いたしましては、集会その他に対して特審局、警察の活動が非常に盛んであつて、教授並びに学生がこれに対して非常に反感を持つていた。その一つの現われとして、これは制服の警官をねらつたのではなかつたが、先ほどお話になつたような、いわゆる私服のスパイをつかむために待機していた、これはそのままにわれわれは事実として認めてよろしゆうございますか、いま一度確認しておきたい。
  283. 本間喜一

    本間証人 それは私かたく信じております。それなしにはあんなところで警官とぶつかるはずのない場所なのです。なぜそこに学生がいたかということはその理由のほかはない。そしてそのためには、特審局の手紙から何から、その心配したところの何を全部私に説明してくれましたから、私は確信しております。
  284. 浦口鉄男

    ○浦口委員 次にお尋ねいたしますことは、先ほどの検事正から承つて、私はつきり言葉を覚えていないのですが、昨年何か学生に対して退学処分があつた。それがまた最近むし返されて問題になつているというふうなお話があつたように思いますが、その実情をお聞かせ願いたい。
  285. 本間喜一

    本間証人 退学処分には結局しなかつたのであります。だからむし返しもないのであります。前のは補導部長をやめさしてくれ、「補導部長やめろ」というようなビラを張つたことから問題が起きたのですが、その後にその問題のむし返しはありませんでした。
  286. 浦口鉄男

    ○浦口委員 どういう事情で退学をさせようというお話合いが出たのですか、その事情をひとつ……。
  287. 本間喜一

    本間証人 それは、補導部長は補導の仕方がはなはだいかぬ。ことに警察の依頼状か何かが来て、それにどんどん応じて報告してやるというようなことも一つのようでした。それはあまりはつきりしておりませんが、補導部長に対しては、これは学生関係を取扱うのですから、窓口を大きくしてくれとか、寄宿舎の設備をよくしてくれとか、いろいろ注文する。けれどもそれをなかなかよくしてくれないとか、一生懸命やつてくれないというような、要するに学生に親切でないというような意味の理由でしたが、ぼくはそのとき学生に、これは補導部長のせいじやない。ぼくも部長から始終直してもらいたいというて頼まれており、その気でおるけれども学校に金がないからできない。決して補導部長のせいではない。あなた方が排斥するようなことはないといつて説明したが、なかなか聞かないで決議したりするから、そんな学生は退学をさせようというようなことが問題になつた。そして教授会においてはほとんど半々のような状態になつてしまつた。そこで権威がない。教授会の決議で処分するのは、相当多数の教授の一致した意見で退学させるのがほんとうと思うから、処分しないで、将来を戒めることでそれを治めた、こう私は心得ております。
  288. 浦口鉄男

    ○浦口委員 他の委員もたくさんおいでのようですから簡単に御質問申し上げたいと思いますが、その次に、先ほどの委員長の、政治活動の限界いかん——教授、学生を含むわけでありますが、そういう質問に対して、学問の自由、行動が合法的ならばこれは当然いいと思う。しかしもしそこに実際行動において暴力があればいかぬと思う、こういう御証言があつたわけでありまして、共産主義を主義として持つているということにおいては、これは私はそういう見解も一応肯定できると思いますが、その主義を持つていることが、一つの暴力的行為に出る危険がある、そういうふうにお考えになつていられるかどうか、それをお尋ねいたします。
  289. 本間喜一

    本間証人 この問題はすでに去年のレッド・パージの問題で、進駐軍のいる時代におきまして、各学校において共産党に属している教授はいかぬということで、あのイールズという司令部の人が方々の学校へ言つて歩いた。そして各大学にみなそれぞれ批判され、学生にもその反撃を受けて帰つて行つた。共産党に属するために大学に置けないというような主張は、アメリカにおいてさえも是認されないじやないか。アメリカにおいては、教授に国家に対し忠誠を誓わせるのですが、それをしない人がある。学問に対する忠実は誓うけれども、国家に対する忠誠は誓わないといつて退席している人も航る。そういう点について、共産党であるがために教授としてはいけないというようなことは考えるべきじやないと私は思つております。共産党を認めたい時代になつたら別でありますが、現段階においてはそういうことは主張すべきじやないと私は思つております。
  290. 浦口鉄男

    ○浦口委員 共産主義者であるということと、それから党員であるということと、党員として一つの計画性に従つて行動する、こういう三つの段階があるようにも私は思うのでありますが、そうした具体的行動が教授なり学生の上に現われたというふうな場合に、学長としては、この教授、学生に対してどういう態度で臨まれるか、それをお聞きしておきたいと思います。
  291. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと皆さんにお諮いたしますが、証人はタバコをのまぬとどうもたまらないからだだそうですから、許していいですか。     〔「よろしいよろしい」と呼ぶ者あり〕
  292. 内藤隆

    内藤委員長 それでは御自由にのんでください。
  293. 本間喜一

    本間証人 もしそういうような暴力請行為に、教授、学生が参加したような場合においては、学校としてはもちろん処分しなければならないし、それを許容していることはありません。われわれは暴力を防ぐだけの実力を持つていませんから、そういう場合には国家の権力によつて防ぐのが当然でしようし、学内からもそれを追い出す必要もあるでしよう。それから場合によつては戒めて改心する者は改心させることもあるでしよう。適宜それは処置する、何もしないでいるということはないと思います。
  294. 浦口鉄男

    ○浦口委員 学校側警察側との取締り上の連絡ないし打合せというものが、どういうふうに行われていたかということをお聞きしたいのであります。と申しますことは、愛知大学の校内そのものが一軒の家のようなものであるというお話も伺いましたが、やはりこの中に犯罪事実が学校自体として起きる場合もありましようし、また外部の犯罪との連絡において事が起きるということもありますので、そうした具体的な問題について大学が治外法権でない以上、私立大学ではありますが、何とかそこに警察と打合せなり連絡がある、またあるべきであるというふうに考えるわけであります。従来そうしたことがあつたか、またどういうふうな事実があつたか、その点をお伺いいたします。
  295. 本間喜一

    本間証人 従来あらたまつて話したことはありませんけれども、従来警察がやつている慣例上、いろいろ学校内の問題について警官が入つて来るような場合には、あらかじめ通知をよこして了解を得ております。今度の検察庁の来る場合も同様であります。それはおととしあたりでしたか、次官通牒がありまして——あそこにはそのとき公安条例がなかつた、だから別に交渉する必要はなかつたので、あらかじめ交渉しなかつたのです。そのころは事実上そういうふうな連絡があるものですから、非常に円満に行つてつたようです。それから豊橋の公安条例では、屋内集会では別に届けを出さぬでもいいということであつた。だから学校内の建物を利用して、屋内で集会している分には別に問題は起きない。それからデモンストレーシヨンを学校の庭でやるということもあまりない。やれば運動会くらいなもの、あるいは馬術の大会をやつたり、そんなことで、警察自身も来て参加しているような状態で、そういう問題について、お互いにこれは話しておかなければいかぬぞと思つたことさえもなかつた、そういうふうな状態でたいへんによく行つてい斉した。
  296. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと浦口君に申しますが、あとまだ質問者が相当においでのようですから簡潔に願います。
  297. 浦口鉄男

    ○浦口委員 一問一答で一つずつ伺います。先ほど委員長の質問に対しまして、教授の思想動向についてはまつたく関心を持たないという御証言があつたのであります。しかし私は、学長としてはちよつと言葉が足りないのではないかと思います。と申しますことは、どういう教授がどうした思想傾向を持ち、日ごろどういう教授振りをしているか、しかもその影響が学生にどういう現実の影響を与えているかということは、当然学長として胸の中にしつかりとたたみ込んで教育行政をやつて行かれるべきであると私は考えるのでありますが、その点いま一度学長の心境をお尋ねをしておきたいと思います。
  298. 本間喜一

    本間証人 さつきは主としてどの党に属しているかというようなことを問題にしておつたのです。だから、どの党に属しているかというようなことについて私は関心を持つていない。しかし学校の先生を頼む際に、これはどういう思想の者であるとか、どういう考えを持ち、どういう学術上の論文を出しているかというようなことは、審査委員があつて、それが審査して教授会に報告して、教授会で論議をして——われわれの方は私立学校ありますけれども学長一存でなしに、教授会においてそれを調査して、さしつかえないりつぱな人だという人をお頼みしている次第であります。中に入つてからは、これは先生ですからして、学生にいろいろ訓育上の影響を及ぼすことは当然であります。けれども、共産主義を論じようが、ロシアの現在の状況をいろいろ研究する人であろうが——あるいは、私の学校の一番の特長は中国の研究をやつている。現代中国については、この間ロツクフェラー財団からフアースという人が来ましたが、現在日本において現代中国の研究をやつているのはあなたの学校だけだ。——古いのは東京大学、京都大学、民間団体では平野義太郎氏の中国研究所がありますが、そういうわけで、特別にアメリカから手紙をよこして、私の学校を見に来てくれました。  そういうふうにいろいろのことを研究しなければならないから、それを理解するにはそれだけの理論を持つていなければならぬ、これは十分にやつてもらわなければならぬのであります。マルキシズムを研究するからいかぬというようなことで、どうして中国の研究ができますか。これは学問の自由の範囲内において当然やるべきことであります。私はそういうふうな点は十分のみ込んでおります。どの先生はどういうふうだかまるきり知らないというようなことでは決してありません。
  299. 浦口鉄男

    ○浦口委員 なぜそういうことをお尋ねするか申しますと、われわれ文部関係の方からこれを検討して行きますと、学生は何と申しましてもやはり教えられる立場である。しかも、年齢から申しましても、社会的にも学問的にも未熟である。こういうことは当然言えると私は思うのであります。そこで、その学生が起した現実の行動に対しては、もちろん刑事事件として処分すべきであるが、そういうことが突発的に起るものではないということも、学者であり教育者であられる学長はもうはくおわかりのことと思うのであります。そこでわれわれは、星のこういう事件に対してはどうしても教授の責任を問わなければならぬというふうに日ごろ考えているので、そういうことを申し上げてお尋ねをしたわけであります。そこで先ほど証人は、自分たちの学生時代にも乱暴はしたと言われたが、われわれの学生時代を考えても、若いときは、一つの権力に対する反発心と申しますか、事の善悪にかかわらず、権力に対してまつこうから反対するというような気持があることは、われわれも体験をしておるわけでありますが、現在の学生運動を通観いたしまししたときに、二十年前の学生運動と違いますことは、同じ一つの暴力行為に出請ましても、過去の学生のそういう時代においては、何かそこに一つの稚気とか、ユーモアとか、無邪気さというものがあつたのであります。しかし現在の学生の動きには、何となくそこに一連の非常な残忍性を持つている、あるいは非常に執拗である、また陰惨な現われがあるというようなことをわれわれは現実に考えるのでありますが、そういうことが一体どういうところから起きて来ているのか。全国の学生運動が暴力化している、急転回する全学連というようなことも言われております。本日の新聞によりましても、お茶の水女子大学が破防法反対のストを決議したというようなことも出ているが、こういうことはかつてわれわれの経験しない、予想もしないことであると考えられるのであります。学長といたしまして、愛知大学は決して赤でなく、桃色ぐらいで問題でないとおつしやつておりますが、そういう全体の学生の思想傾向に対する見解を承つておきたいと思うわけであります。
  300. 本間喜一

    本間証人 われわれ年寄りになると、やはりあなた方と同じに、そういうことに対して非常に懸念していますが、しかし、私どもは若い学生に接していると、あの乱暴するやつでもやはり純真なところがあります。それは、われわれこんなに年をとつてからだと、二十代の若僧が、お前たちもつと研究をしろ、研究しなければいかぬぞということはもちろん言います。言いますが、しかし、明治維新をごらんになればわかりますが、だれが明治維新をしたか。それはみな二十代であります。森有礼がアメリカの公使になつたのは二十三、四のころだつたと私は思つております。みな二十代であります。敗戦、占領下のこの苦労を経て、そうしてこの社会について何らの感じも持つていないような若い者が役に立ちますか。私はあの人たちの気持が非常にわかるような気がする。ただ二十代の人は本も読んでいればいいのだ、それでいいかどうか、私はそうじやないと思う。  私は学年の初めにおいて、新入生に対していつでも言うことでありますけれども、私の考えでは、日本人は正しいことについて勇敢でなかつた、これが日本をこうした運命に導いた一つのもとである。日本の師範教育というものはみな屈従教育をして来たと考えている私は上海である機会にイギリスのシイテイズン・リーダー、尋常五、六年生に読ませる二百ページばかりのものを読んだのでありますが、もつとも向うから引揚げの際でしたから、その本を持つて来るわけには行かなかつた、何かフエルスターという教育会の副会長の本で、昭和十八、九年には八十版も出している。イギリス人としては非常に常識的な教科書であつたのではないかと私は思つております。その本は小学校の六年生ぐらいに読ませる本である。大国民を養成するにはやはりこういう教育だと私は思いました。それは全巻を通じてジヤステイスのために勇敢でなければならないという言葉が到るところに出ておりました。戦争にも正しい戦争と正しくない戦争がある、イギリスも正しくない戦争をした。そうしてそこにはエドモンド・バークの写真が丸く載せられている。小さいこのくらいの本でありますけれども、相当のスペースをとつて顔を出している。正しくない戦争の例をあげて、アメリカの独立戦争のことを言つておりました加私は阿片戦争でも書けばなお一層適切だと思いましたけれども、エドモンド・バークは、アメリカの独立戦争は植民地を圧迫しておるからいけないという喧々諤々の論を掲げております。あの当時、エドモンド・パークのようにやつてつたら、英米関係はもつとよかつたと思う。その次のページを開けてみると、ピリリーという人の、これは写真でなく、図ですが、あつて、思想の自由は、この人が時の政府に反抗して、思想の自由を叫んで、耳をそがれ、何かさらし物になんかなつたりして、大いに闘つて、その結果われわれは思想の自由を得ているのだ、正しいと思うことは、政府の何であろうが、勇敢に主張しなければならないというようなことを書いている。プレスの自由はどうして取得したかということがその次に書いてある。もつとも議会一の権能とかいうよう法律的なことも書いてありますが、随所にそういう味のある言葉をもつて、正しいことについて勇敢でなければならぬと書いてある。日本の今の民衆はどういうような教育を受けているか、長いものには巻かれろ、出るくいはたたかれる、何か正しいことを言えば損するから、あれはばかだ、それが日本の教育だつた。だから窓口に列をつくつているのに横から入つても、それをたれも無関心で、とめる人もいない。ドイツあたりでは、うしろからでも前からでもみんな応援して、そんな者は入らせないようにしている。社会正義はみんなの力によつてできて来る。私は日本の教育は正しいことについては勇敢でなければならない。と考え、これを私の教育の信条としていました。従つて学生は正しいことをやることについては勇敢でなければならない。何が正しいかは、この四年の間に十分勉強して行くのが、本学に入つて来た目的である。しかし学内の問題について、お前の方が正しいと思うなら、おれのところにつつかかつてつて来い、そうしてお互いに議論して、お前の言うことが正しければ——学生の正義の主張に対しては私はいつでもいれるにやぶさかではない。決して前に言つたことを改めることについて、面子にこだわつていないという方針で、実質の訓育をしているつもりなんです。  従つて今度のような場合についても、警察官が無断で入つたのに対しては、どこまでも追究しなければならないという気持を持つておる。これはしかしなぐつたりするのは少し行き過ぎだ——もし法務総裁の言葉で言えば、少し勢いがよ過ぎた。けれども、それは多少恕すべきところがあると思う。先生のところに来いといつて引張つてつれて来ようとしたがへ行かないから、みんながそこに集つた。決して悪いことをする気持ではなかつたと私は思つております。もし悪いことをする気持だつたら、食堂の明りのかんかんかんした中で巡査を問責するようなことはなかつた思つております。
  301. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま本間学長の教育上の大方針を聞きましたが、承つておると、何か小児病的英雄をつくるような感じも今の証言から持たれました、もちろん正義を愛するということはいいでしよう。しかしながらそのために正義というものに対する判断を誤つて、もしあなたの今おつしやつたような英雄的な立場をとつて行く学生がおるとすれば、これが国家生活、社会生活の上に影響がないとお考えでしようか。
  302. 本間喜一

    本間証人 大いにあるでしよう、あると思います。あるからこそ私が、四年間は勉強するときでありますということを入学の初めにいつも言うのはそこです。けれども、私がこんなことをしよつちゆう学生に繰返して言つているわけではありません。講義は全学生にやつておるのじやない。四年間に一ぺん、新入学のときだけ、私の方針としてそういうことを言つておるというだけの話であります。毎日やつておるわけでもないから、そんなに何しているわけでもない。学生がみなそんな気持になるのだつたら、これはありがたいんですが、そんなふうにはならないと思います。
  303. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は証人とは深いつき合いでありまして、あなたのお考えなりお気持はよく知つておるのですが、この間からこの事件でいろいろこつちで聞いておりますと一他の学長諸君も、第三者として出られたときには、まことに公平な、りつぱな議論をせられるのですが、事いやしくも自分の学校のことになると、はなはだどうもかわつた表現をせられるように考えます。私はまさか本間学長にはさようなことはなかろうと思うのですが、質問するにあたつて、まずもつてようなことのないことをお祈りして質問いたしたいと思います。  先ほどからいろいろあなたの御議論を聞きましたが、一体、ああいうことがあなたの学校で起りましたのは、これは警官が悪いことをしたんだから蘇るのはあたりまえで、当然のことと甲つておられますか、それとも、事のいかんにかかわらず、まことに遺憾であると思つておいでになりますか、まずその点を承りたい。
  304. 本間喜一

    本間証人 私の方では、学生が行き過ぎのあつたという点についてはまとに遺憾であるということを当初から十分言つております。学生に行き過ぎのあつた点についてははなはだ遺憾である、こういう点は考えております。当然とは考えていない。ただ学生がこういう行き過ぎをするようなことが、一体何で起きたのか、おまわりさんが入つて来るからだ。その点はまた私は検察当局に対してはなはだ遺憾の次第であるというふに考えております。
  305. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 学校のこういう学生と警官の衝突事件は諸所にあるにもかか弘らず、私の学校へだけ検察庁が入つて来たことはまことに遺憾だとおつしやいましたが、東大だつてつておりますよ。現に暴行学生は校内で白昼逮捕せられている——問題は起りましたが——どうも私は、おれの学校だけに特別に圧迫するというように考えられておりはせぬかと思いますが、そんなことはありませんか。
  306. 本間喜一

    本間証人 私は東大の場合は、警察裁判所令状を請求して執行したんだと思つておりますが、私の方の学校は、検察庁裁判所令状を請求して執行しております。少し違うじやないかと思つております。
  307. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはまあ、あなたも法律学者だから——普通の人にはちよつとそういうことはわかりません。そう言われればわかりますが——それから今もちよつとおつしやいましたが、検察庁から犯罪捜査協力を申し出た。そこであなたは書面で回答したが、先ほど述べられたことを聞くと、重生を議することにわれわれは協力するわけに行かぬからこれを拒否した、こうおつしやいましたが、それだけの理由でありましたか。
  308. 本間喜一

    本間証人 そうじやありません。検察庁から要求されたのは十二日の正午までに暴行関係ある学生を全部出頭させられたい、こういう要求でありました。だからその趣旨は自治会を通して学生全般に、暴行関係つた者行つたらいいだろうという報告はしました。学生にその趣旨を徹底せしめた。けれどもだれも出て来ないのだから連れて行くわけにいかない。だからある意味においては協力している。そうかといつてまた特定の人がいつどんなことをしたかについて、まだ十二日あたり十分な認識をわれわれは得ていないから、何の何がし、あなたは検察庁へ行きなさいというようなことも言えない。だからそういうふうに御了承願いたいといつて返事をしたのであつて、きわめて正直な返事だと私は思つています。もしその以上の協力をするなら、警察の手先とか検察庁の手先のように、どうもあの学生は臭いぞとか、あいつもいたらしいとか、わけのわからぬことをいつて協力するよりなくなる。そういう協力をしなければならぬ。それは教育者としてすべきものじやないという見解を持つております。
  309. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど検事正言葉を聞きますと、検察庁捜査を初めた以上は、参考人及び証人として、直接その場で目撃した人を取調べることの権限は当然あるんだが、学生の身分であるから、さようなことをするよりか、学校の手を経て、直接その場におつて目撃した人から聞いた方がいい、こう思つてつたが、遺憾ながら学校には協力してもらえなかつたと言つておられます。あなたのおつしやることとちよつと違うようですが、これはどうですか。
  310. 本間喜一

    本間証人 私どもは決して学生に行くななんていうことを言つてやしない。呼出状が来た者はみなそれぞれいる人には配付しているのである。それが出て行かない限りは協力しないと言われるのでははなはだ困る。そんなのは学生の自由意思でやりなさいといつて、はがきをみんな出しておる。それを不協力だと言われるなら、何を協力したらいいか。お前行けというようなことを言つて、いやがるのを無理にやらなければならぬ、そんなことは学校の先生はやらなくてもいいのではないかと一思つております。
  311. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはちよつと何ですが、その程度……。  先ほどあなたの言われた書面で回答したというのを読みますと、第一には、あなたの今おつしやつたことが書いてあります。第二に、「案ずるにこの事件は、警官が大学の構内に無断侵入したことに起因するものである。このことは昨今はなはだ切実な問題となつておる大学の自治、自由の侵犯ともなりかねない。学生行為を追究する前に、この根本問題について十分精査せられたい。」こう書いてあります。私はこれも大きな拒否の理由であつたろうと思いまするが、間違いないでしようか。
  312. 本間喜一

    本間証人 それは別に拒否の理由ではないのですけれども学校では今でもそう考えておる。なぜかというと、検察庁当局や警察のやり方は、ぶつかつたあとのなぐつたことだけを調べる。われわれになぜ入つたかということを一言も説明してくれない。なぜ入つたのですか、どろぼうをおつかけて入つた、そのどろぼうはどんな着物を着ていたか、どんな品物を持つていたか、言わない。何かのときにゴムぐつをはいていると言つたが、それきりです。どんな径路で入つたのか、何を聞いても、巡査がほんとうのことを言つおるのかどうか、われわれに信憑を得させるようなことを一言も説明してくれない。だからそれを説明してくれ、その入つたことのいかんによつて学園の自由の問題にもひいて関係して来るから、それを知らしてくれというけれども、いまだに内田巡査遠藤巡査の供述内容は、ちつとも私の方に知らしてくれない。だからそれを私どもは今でも要求しておる。けれどもそれがために拒否するというようなことではないと思う。
  313. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その点についても先ほど検事正から聞いたのとあなたのおつしやるのとはたいへんな違いがあります。しかし検事正といえども、今捜査中で断定するまでもないと言つておるのですから、違うのはやむを得ぬと思う。どうもあなたのこれを見ると、無断侵入、不法侵入と断定してかかつておられるようでありますが、この点は私はどうかと思います。
  314. 本間喜一

    本間証人 それは私の名前で返事しましたが、教授会を開いて、全学一致の教授会のもとにおいて、みんながあの事件を判断しながらそうしたのであります。やはり無断で、しかも合法でなく、北門でないところから入つた北門以外から入ればすべて非合法です。全部閉鎖しておる、垣根をめぐらされておるのでありますから、私どもは今でもそう信じております。
  315. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 まだ未定の事件でありますが、あなたは信じてやられたというならこれはやむを得ません。そのかわりあなたとしては、もし先ほど検事正の言つたこと違つておるということになると相当責任が出まするが、ここであなたを追究する必要はありません。そこで私聞きたいのは、これがあなたのおつしやるよう不法侵入であつたといたしましよう。いたしましようが、学生行為を追究する前にこの不法侵入問題を調べろと抗議をしておられる。そうしてみると、あなたは先ほどから学生は行き過ぎだ、行き過ぎだと言われるのだが、学生行為は単なる行き過ぎであつて不法にあらずという前提でありますか。
  316. 本間喜一

    本間証人 学生の行き過ぎというのは、そういうときは先生のところへ行けとでも言つて連れて来るのが普通のやり方だと思う。そうじやなくて、自分でなぐつたりなぐられたり、そんなことをするのは行き過ぎだ、その行為が衝突以後については行ぎ過ぎの点がある、こういう意味において行き過ぎだと言つたのであります。それからその前のことを明らかにしてくれということは、その点を調査してもらえば、あとの行き過ぎなんかの点については、学生は喜んで協力するようになるだろうと思う。ぶつつかつたということを先に言うから、学生はおれも一緒にそこにいたと言わない、ほんとうに不法に入つたか入らなかつたかを明らかにされたならば、その後のことなんか学生は何とも思つていないと私は思つております。そこでその前のことを明らかにしてくれということを言つておるわけです。それから門について、どこから入つたか、合法に入つた不法に入つたか認定してくれということですが、私どもは確かに北門から入つたのではないと今でも思つております。その認定が間違つたために教育に影響を及ぼすことがあるならば、私いつでも学長を辞めるのは何とも思つていない。これは学問の自由その他の問題について重大な関連があるから、それをかけてやつておる仕事なんであります。あと署長検事正がやめようがやめまいが、そんなことは問題にしておりません。
  317. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もう一つ確かめておかなければならないことは、行き過ぎと言われるが、どの租度の行き過ぎなのか。先ほど検事正から聞きますると、なわでいわえたらしい。そのなわの計画もあつたと言つておる。そして食堂ヘ連れて行つて、その食堂で傷の程度の浅い深いは別といたしまして、暴行、暴言をやつたことは間違いありません。その次はピストルと手帳とを預けたというが、奪い取つた。これらについては単なる学生の若い者の行き過ぎだと思つておいでになりますか、刑法上の犯罪に該当するものと思つておいでになりますか。
  318. 本間喜一

    本間証人 それは刑法の犯罪に該当します。犯罪の条文に当てはめれば、どれもこれも犯罪になります。しかし傷といつても、首のちよん切れるような傷もあれば、はなくそみたような傷もある。それからなわだつて荒なわではなく、私の聞いたところでは巡査の持つておる捕繩で縛つた。しかもその期間は十分くらいでしよう。先生が来て、こんなことをしてはいかぬと言つて、それから連れて行つてつた。初めぶつかつてから帰すまでの時間が三十分ぐらい——庭のまん中におるときに補導部長が来て、こんなことをしてはいかぬと言われたので、それではそうしますと言つて連れて帰つて食堂行つての話ですから、十分も——早稲田のときなんか軟禁したのは何時間になつておると思います。それから見ればわずかな時間です。捕繩で縛つたという話をそのときに聞きました。やはりそれは時間的に何ぼ短かくても、十分でも二十分でも不法逮捕不法逮捕に刑法上はなるにきまつておるけれども、騎虎の勢い、あの雰囲気の中において、そのくらいの行き違いのあることは、これはあることである。たとえばメーデーのときに、堀の中にはうり込まれた外人が、まつたく無抵抗になつておる。それに対して石をぶつけるというのは、これは私は行き過ぎておると思う。しかしそういうようなことは、その雰囲気の中においてこそ理解し得ることであつて、今冷静に机の上においてこうしたらいいだろう、ああしたらいいだろうという話だつたら、これは行ぎ過ぎだ何だと言つておられますけれども、現実に衝突したその場面におけるその雰囲気の中におつたときは、一体どれだけ理性的に皆さんがやれるかどうか。それを考えて行き過ぎかどうかを批判しなければならない、こう思つております。
  319. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたともうこれ以上は議論をするつもりもないのですが、ただここで私の言うのは、犯罪であるということがわかれば、検察庁が手をつけたからといつて、私はそれは手をつけるのがあたりまえで、手をつけていかぬということは言えぬのじやないか。そのかわりあなたがおつしやる通り警察不法をやつてつたら、それはあなたの方でそれを責められたらよろしいので、まずそういうことをしないで、警察不法侵入ばかり責めておる。これが私は合点が行かないのです。私はあなたに聞かんとするのはその点なんです。不法があつたらそれをお責めになるのがよい。片方が犯罪があつたとすれば、検察庁がやつたつて、これに抗議を申込むというのはできないのではないか、こういうことです。
  320. 本間喜一

    本間証人 それはもしその点を先に調べてくださるなら、あとの点のぶつかつた点を調べるのははなはだ容易だろうから、検察庁に対して御忠告申し上げたという程度です。ただぶつかつたことばかり調べているからそんなことになるのだ。そうじやない。まずどうして入つたかを調べてくだされば、協力もできるようになるだろうと思うから、私ども意見検察庁に対して御忠告しただけの話です。
  321. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さつき学問の自由で、教授がいかなる政党へ入つておろうが、学生がいかなる政党へ入つておろうが、またいかなる研究をしておろうが、学長としては容喙すべきところでないとおつしやるこれは私はたいへんごもつともだと思いまするが、学問のために研究するということと、共産党員として活動するということとには、たいへんな差異があるのではないか、こう思います。ことに今日の共産党はいかなる指令を出し、いかなる行動をしておるか、この点は御承知であろうと思いまするが、御承知かどうか。御承知であつて、今の共産党の指令し、やりつつあることは危険なものでないとお思いになつておられるかどうか。日本の今日の現状において許すべきことだとお思いになつておるか、許すべからざることだとお思いになつておるか、この点をお聞きしたい。
  322. 本間喜一

    本間証人 私は共産党は、学生それから教授に対してどんな指令を出しているか、ちつとも知りません。また知る方法がない。もしおありになつたら、ひとつぜひ見せていただきたい、そう私は思います。そういう参考資料があつたら、早いところ各学校に資料を提供するのが、政治家あるいは行政に関係する者の任務ではないかと思つております。私は知りません。そうして共産党を合法の政党として認めている以上は、共産党によつて活動するのは何も悪くないと私は思つております。
  323. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはどうもまことに遺憾ですが、球根栽培法というものが、アカハタの後刊紙として、名前は球根栽培だが、実際は暴力革命の指令書である。これは文部省であなた方の方へそういうものを見せなかつたということは、私は非常に遺憾だと思うが、そこで中核自衛隊とは何ぞやというたら、暴力革命をやる中心活動体で、かようなものをやれと言つておる。かようなものを現実に行えば、これは危険だとはお思いになりませんか。しかも暴力革命をやるときの非合法の手段をみな教えておるのです。御承知ないならばやむを得ない。もしそうであつたら、あなたは危険でないとお思いになりますか。
  324. 本間喜一

    本間証人 私は球根栽培法というのは新聞で見ただけで、実物は見たことがないのです。もしおありだつたらみな配布していただきたいと思いますが、見たことはないのです。これは実際見たことないからなんで、うそではありませんから……。それから暴力革命を正当とするというようなことは、私は一つも見ておりませんし、また今でも決して賛成しているわけではない。だからおそらく見てそういうことが書いてあれば、こんなことはいかぬということは言えるでしようけれども……。
  325. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 中核自衛隊というのは、暴力革命の第一線隊なんです。そして実行すべきことなんです。その実行はすべて非合法手段なんです。そして火炎びんを投げることから、敵の武器をとれとか、警官からピストルをとつてこれでやれということがみな書いてある。これは間違いありません。あなたはこれだけのことを聞けば、そういうことをやろうとすれば、学生及び教授の身分でやるとすれば、容赦のならぬこととお思いになりますか、それとも自由だからいいとお思いになりますか。
  326. 本間喜一

    本間証人 それは学生としてはいかぬと思います。それから教授としてもそういう暴力的なことをするというようなことは、もちろんいかぬことだと思います。けれども私はそういうよう内容については、初めて聞いたことですから……。
  327. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで、そこまでお思いになれば、あなたにひとつ特別懇意だから私は申し上げるのですが、あなたは先ほどから一党一派に入つたからといつて悪いことはない。しかしそれが行動として悪いものに現われればとめるとおつしやる。なるほどあなたの前へ現われればそれはおとめになりましようが、あなたの知らぬ間にさようなことを計画しているとすれば、あなたはさしつかえないとおつしやるが、はたから見ればすこぶる危険なものだと思うのです。この点はどうお思いになりますか。
  328. 本間喜一

    本間証人 それはそういうふうなことを準備しているとすれば、はなはだ危険だからそれはいかぬことだと思いますが、私どもから考えるならば、もし共産党がそんなことを指令し、やつているなら、なぜ議会において共産党を否認するような法案でもつくつて、共産党否認の態度をとられないのか。われわれは法律のできるのを待つて見ているんですから、ここでもつてそれだけわかつているなら、共産党を認めなければいい。そういう共産党を認めておいて、党員が何かするというのを学校でばかりとめろと言つたつて、それは無理な話で、むしろここでおとめになつたらいいじやないですか。
  329. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 立法上の問題はおつしやる通りで……。
  330. 本間喜一

    本間委員 私は立法を見て、いろいろ考えてやつておるのです。
  331. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 破壊活動防止法というのは、大体そういう目的でやつております。ただ私が申し上げるのは、あなたの学校のことを申し上げるのです。あなたはそうおつしやるが、あなたの学校には共産党の中核自衛隊の設立のある疑いが濃厚なんです。あなたはそれをどう思います。それを私は申し上げておるのです。
  332. 本間喜一

    本間証人 私は中核自衛隊が学校の中にあるなどとは思つておりません。そんなことを初めて聞いた。火炎びんなど見たこともない。それから何もそんなようなものを見たことがない。学校の中で火炎びんをこしらえておるとかいうことがあるなら、なるほどそうかと思いますけれども、自衛隊を認めるというのは、何を根拠としてそんなふうに言われるのですか。もし材料があるなら伺つて、さつそく帰つて調べてみますから……。
  333. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はこれ以上あなたと議論するつもりもないし、私はあなたのために申し上げるのです。これはあなたは私のところの学生は、純真なものであるから、そういうことはないのだ。共産党へ入つたつてそういうことをしない。中核自衛隊も御承知ないというのであるから、ごもつともだと思うが、それでは日本の現実とあなたの目とはちよつと離れておる。これははなはだ言い過ぎかもしれませんが。もしそうだとすれば、これはあなたとして重大だ。しこうしてあなたのおつしやるように、幸いにして、あなたの学校で現に疑われておることが、疑いだけで済めばまことにけつこうでありますが、現実に中核自衛隊が組織されておつたということになれば、すこぶる重大なことでありますから、さつそく、さようなことがあるかないかお調べになつて、もしあるとすれば、これに対しての対処、また今後起るようなことがあるなら、あなたとしての対処を希望して、私はこれ以上追究いたしません。
  334. 本間喜一

    本間証人 それは、もしそういうことがあつたら、署長なり何なりが私に言つてくれればいい。ところがこの間の騒動の際に、寄宿舎に竹やりをうんと準備しているということを電話をかけて検察庁に知らせた人がある。それで私はさつそく調べたが、そんなものは全然なかつた。だからもし火炎びんがあるとか何かあるというような例をあげて、署長なり検事正なり私に一言でも注意してくれれば、私みんな探します。
  335. 志田義信

    ○志田委員 大分時間もたちましたので、要点だけひとつお尋ね申し上げたいと思います。今までのお話を聞いておりますと、学校内に特審局のスパイがいたり、あるいは特審局が職員と連絡をとるというようなことが、学生を刺激して、そうしていらいらした気持にさしておる、こういうような御発言がありましたが、それでは特審局がなぜ愛大にスパイを放したり、あるいは職員と連絡をとらなければならなくなつておるのかということを、学長として考えたり、あるいは調べたことがあるかどうか、それをお尋ねいたします。
  336. 本間喜一

    本間証人 あります。特審局の要求しているのは、反植民地デーなり何かに、学生はどんな運動をするだろうか、どの学生はどういうたくらみをしているだろうか、それからどういうビラを張り、どういう印刷物を刷つて、何部をどこに配付したか、だれが配付したかというようなことを、項目を示しております。これはいちいちさせる一つの原因だと思います。しかし私の学校ばかりではない。その特審局の人が頼む際に、京大資料、愛大資料というようなものを出して見せているところを見れば、私の学校ばがりではないと思う。相当数いるんだ、あなたの学校のフラクシヨンの中にもスパイが入つているのだから、安心しておやりなさいというようなことを言つている。京都大学、愛大ばかりではない。どこにでもそんなものを出しているだろうと思つて、ぼくはそうふしぎに思わなかつた
  337. 志田義信

    ○志田委員 あなたは先ほど、学校内の施設その他を一党一派に使用させることは禁止しておるということを言つておりましたが、今聞きますと、いろいろなビラを張つたり、あるいは伝単をまいたりすることは、一々学長の許可を得てやるものではないのでありまして、これにはただちに学生の行動が付随するものだと思いますが、これに対してはあなたがこれを許すとか許さぬとかいうときには、すでにやつておる。行動になつて現われておる。そういうことがあるということをお考えになりますか。
  338. 本間喜一

    本間証人 ビラを張るとかいうようなことが暴力的なこととは思つておりません。ただ、だれが張つたかわかれば、つかまえて処分しますけれども、夜中に張つたり、外の壁に張つてある。しかたなしに、学校から金を出して、あとからあとからそんなものをひつぱがさしておる。金がかかつてしかたがない。実に迷惑しておる。しかしそれは合いう暴力の行動とは思わない。思想の発表であり、意見の発表であり、そういうことだろうと私は考えております。
  339. 志田義信

    ○志田委員 たとえばあなたの学内の細胞が共産党と直接結びついておつて、その戦術もいわゆる五全協というようなものに基いた方針を踏襲しておるのだ、その結果学生運動と違つた暴力活動、軍事活動の一環としての暴力的な活動に方向を転換することは、風向きいかんによつてはいつでもあり得る、あるいは絶対にあり得ないと思うか、それをお尋ねいたします。
  340. 本間喜一

    本間証人 それはもう時至れば、そんなことをする者はたくさんいることになると思います。けれどもそれはどうにもしようがない。学校だけではどうにもしようがないことであります。社会が全部そういうことについて、ないように気をつけなければならぬことです。学校がどうしたとか、どうしないからということで防止し得るものではないと思います。そういう機運があるでしよう
  341. 志田義信

    ○志田委員 社会全体で気をつけるとおつしやいますが、少くとも愛大に関する限りは、あなたは管理の最高責任者として、それは始終気をつけておらなければならぬ。これを社会の罪に帰するというわけには行かないと思う。あなた自身は、愛大に関する限りにおいては、そういう問題は現在も起つておらないし、将来も起らないのだという考え方を持つて、学内のフラクシヨン活動というものを、正しい政党の合理的な分派である、あるいはその組織体であると、そのまま認めておるのかどうか、その点をひとつ承りたい。
  342. 本間喜一

    本間証人 私はそんなふうに学校がなると思つていないし、それから、そんなふうなことになるという予想もしておりません。学校学生がそんな点まで進行するだろうとは思つておりません。
  343. 志田義信

    ○志田委員 先ほど来あなたは、学問の自由は憲法の保障のもとに行われておるのだということを再三言われておりました。これは同様でございますが、その憲法二十三条の保障の趣旨及び内容というものを、あなたはどの程度にお考えになつておられるのか。特にあなたは法律においては専門家であるというのでありますから、重ねてお尋ね申し上げます。
  344. 本間喜一

    本間証人 私は思想の内容にタッチしないことが、思想の自由だと思います。どの程度ということはない。どの思想でもお互いに論議し合つて、それがいい悪いということを批判することが学問の自由だと思つております。決して思想の内容にリミットがあるものとは思つていません。
  345. 志田義信

    ○志田委員 学問の自由はこれを保障するという条項が二十三条に保障されておることは、証人も御承知通りでありまするが、学問といいますけれども、学問の内容の中に思想があり、思想の内容の中には良心の自由がある、それにはさらに表現の自由もある、あるいは行動の自由もあるというふうにまでお考えになつてるかどうか、その点をひとつお尋ね申し上げたい。
  346. 本間喜一

    本間証人 私は行動の自由があるとは思つていません、思想の自由は。
  347. 志田義信

    ○志田委員 思想の自由、あるいは良心の自由はあるけれども、この学問の自由という中には、行動の自由がないというお考えのようでありまするが、その行動の中には、政治的行為の自由が含まれておるか含まれていないか、それをお尋ね申し上げます。
  348. 本間喜一

    本間証人 政治的の自由とは違つておると思つています。だからして、言論で、口で言い、それを発表する、そういう点までは、一つの思想の自由を保護するためには、そこまで進まなければならぬと思います。だからして、破防法のようなものを必要とするというようなことになつて来るのであろうと思います。
  349. 志田義信

    ○志田委員 それでは、政治的な行為、行動の自由というものは認められておらないということが、今証人において明らかになつたのでありますが、にもかかわらず、あなたが学内におけるフラクシヨン活動の政治的な行動の自由を許しておるのは、どういうわけでありますか。
  350. 本間喜一

    本間証人 学内における、学内におけると言いますけれども、フラクシヨンというものは、学校の人ばかりでやつてるんじやないです。学校の人でもほかのフラクシヨンに入つてる人もある。これは共産党の、一つの団体の下部組織だろう、私はそう思つています。
  351. 志田義信

    ○志田委員 下部組織だから、どうなんですか。
  352. 本間喜一

    本間証人 学校関係したことぢやないのです。それは、ここでもつて、国会のフラクシヨンといつたつて国会に何も関係がないと同じだと思います。
  353. 志田義信

    ○志田委員 あなたはそれでは、フラクシヨン活動によつて起きた行為に対しましては、学問の自由を擁護する憲法二十三条の保障をもつて要求しておるのです。しかるにかかわらず、フラクシヨンの行為の自由に対しましては、何ら学校内の責任がないというような考えでございますか。
  354. 本間喜一

    本間証人 私は今まで学校学生及び教授の思想の自由ということは言つていますけれども、何もフラクシヨンの思想の自由というようなことは言つていません。
  355. 志田義信

    ○志田委員 先ほどまでは非常にとうとうたる弁論の学長が、私の質問に対しましては、きわめて端的に答えられておるのですが、私は何もあなたがおつしやるように、フラクシヨン自体が学生であるとか、あるいは教授であるとか申し上げておらない。フラクシヨンを構成するメンバーの中には学生があるということを申し上げておる。愛大フラクシヨンというのは愛知大学学生によつて構成されておるということを申し上げておる。しからばその行動に対しては、あなたは自由を要求せられておるのだから、その行動を少くとも一定の限定のもとに考えておるのか、それとも限定のないもの、リミツトのないものと考えておるのかということをお尋ね申し上げたい。
  356. 本間喜一

    本間証人 愛大フラクシヨンというのは、誤解がないようにしていただきたいが、私がさつきから言つたのは、学校の教授の研究の自由とか思想の自由を言つておるのであつて、愛大のフラクシヨンの届け出てあるのを見ると、学生でない人がたくさん入つています。その学生が、たとえば自由党に入つてつて、自由党の活動を手伝つておるのと私は同じことだと思つております。学生らしくなかつたら、それは学生としては行き過ぎた行動をしてはいかぬぞというぐらい言いますけれども、フラクシヨンの行動は、愛大フラクシヨンといいますけれども、私は愛大の名前をつけられるのは迷惑であるということをみなを集めて言つたことがあります。たとえば、抗議する自由があるから、大いに抗議して、愛大という名前をつかつては困るといつたけれども、向うでかつてに使つているので、だれに抗議していいのか、今は責任者は学生じやありませんし、愛大パチンコ屋、愛大カフエーと同じくらいに私は迷惑する、そんなものを使わないでくれといつたけれどもどうもしようがない。
  357. 志田義信

    ○志田委員 それではあなたは、学内における政党に属する自由というものは認める、こういうことを言つておるのですが、共産党フラクに対しましては、これは認めないというお態度でございますか。
  358. 本間喜一

    本間証人 いやそれは認めているのです。学生がフラクシヨンに入つてようが、共産党に入つてようが、自由党に入つてようが、ちつともさしつかえないと言つておる。これは認めておるのです。認めたつてそのフラクシヨンというのは、私は自由党を監督するんじやなし、共産党を監督するんじやなし、それは知つたことじやない。その事務所だつて学校からずつと離れたところに愛大のフラクシヨンの事務所はあります、届け出てあるのが。
  359. 志田義信

    ○志田委員 あなたは、そうしますと、愛大のフラクシヨンといわれるのは非常に迷惑千万であるということを言つておるのだからして、その行動に対しては迷惑を受けているのだろうと思うのです。その点はいかがですか。
  360. 本間喜一

    本間証人 いや、あなたが愛大の細胞は愛大の学生だけでやつておると思つておられるのと同じように、世間の人にもそんなことを思われるのはいやだから、ぼくは迷惑している、こう言つたわけです。
  361. 志田義信

    ○志田委員 それは迷惑だということは、実害があるという意味ですか、実害がないという……。
  362. 本間喜一

    本間証人 愛大に関係があると思われることが迷惑なんです。
  363. 志田義信

    ○志田委員 愛大に関係のあることが迷惑だといわれますが、愛大細胞というものは存在しておるということは、これはあなたは認めておられる。それでそれを言われれば迷惑だというのはどういうわけですか。
  364. 本間喜一

    本間証人 愛大に関係があると思われるから迷惑しておるのです。関係がないことを関係があると世間で思われるから迷惑しておる、こういうことです。
  365. 志田義信

    ○志田委員 そうすると、愛大のフラクシヨンというのは、あなたの教え子が構成メンバーになつておらないというのですか。関係がないのを関係があると思われるのは迷惑だというのは、どういうわけですか。
  366. 本間喜一

    本間証人 関係があるというのは、学生の入つている人があるかもしれないが、だからといつて、それがために関係があると思われるのは迷惑だ、全部学校が何かさしずしたり、学校がフラクシヨンの活動に何か関係しておると思われる点が迷惑だ、だからほかの名前を使つて、町畑町フラクシヨンというふうにしたらいいじやないかといつたけれども、ちつとも改めない、どうもしようがない。
  367. 志田義信

    ○志田委員 それは名前の問題であつて、愛大という学校のスペースの中に起居をともにしておる、しかもあなたの学校に学んでおる学生が、構成のメンバーになつておる、それは認めますか。
  368. 本間喜一

    本間証人 それは二、三入つていました。今まではみな抜けて一人ぐらいになつているかもしれない。この間、中日か何かの人がメンバーを持つて来て見せた。その中に一人入つてつたあとは全部、前に学生つたかもしれないが、今は除名したり退学したり卒業したりした人々であります。今のメンバーはだれだか知りませんけれども、いわゆる登録した中には一人ぐらいしか入つていません。
  369. 志田義信

    ○志田委員 一人であるとか百人であるとかいうことは、これは数の問題であつて、本質の問題ではないのです。愛六フラクシヨンというものが存在しておる、その存在はあなたは学長として監督しなければならぬ立場にある、学生の人たちが、一人なりといえどもやはりメンバーに入つているとすれば、愛大フラクシヨンという名称を使われるということについては、あなたが迷惑であろうと迷惑でなかろうと、そういう存在を認めないわけには行かないと思いますが、いかがですか。
  370. 本間喜一

    本間証人 そういう存在はあるのです。自由党に入つている学生もいる。だからみんなそれは認めているのです。
  371. 志田義信

    ○志田委員 愛大のフラクシヨン活動の中に、愛大の学生が入つておるということをあなたはお認めになつたのでありますが、その愛大のフラクシヨン活動の背後に何か政治的な作為がある場合が考えられるとか、あるいは過去においてあつたとか、将来考えられるというようなことはお考えになりませんか。
  372. 本間喜一

    本間証人 それは共産党の支部ですからして、政治的活動をするだろうと思つております。学生学生たる身分においてやつてはならぬことをやるような場合には、そういうことをしてはいかぬということは言いますが、細胞に対してどうしろうしろということは私は言えない。
  373. 志田義信

    ○志田委員 愛大フラクシヨンというものは、別に北大のフラクシヨンでもなければ東大のフラクシヨンでもない。あるいは先ほどから例をとつた早稲田のフラクシヨンでもない。愛大のフラクシヨンはどこまでも愛大のフラクシヨンなんだ。あなたはそれを何か固有名詞のような気持で、ただ愛大という名前を使われるのは迷惑上ごくであるということを考えておられますが、少くともこうしたフラクシヨンが軍事行動の一環として、学生を動員する可能性があつたり、一般大衆をそれに動員する可能性があるということは、いわゆる政治的作為があるかないかという問題なんです。そういうことをあなたはお考えになることがあるかないか。
  374. 本間喜一

    本間証人 そういうことはちつとも考えていません。考えてなかつたのです。それは共産党の支部ですから、共産党の指示によつて何かするだろうということはだれでも考えますけれども、愛大の細胞が巡査をひつぱだくとか、そんなことをしておるとはぼくは考えていないのです。
  375. 志田義信

    ○志田委員 あなたはきらめて安易な考え方、見方をしているように私は受取れる、きわめてノーズロースな考え方じやないかと私は思うのですが、あなたは先ほどから、学者は真理を研究するのだ、冷静な批判で判断を下すのだということを言つておりますが、そういう学者の真理を研究するという立場におきましても、国家の発展のためであるとか、国家の安寧秩序を守るためであるとか、あるいは乱すようなことがあつてはならぬというような、真理探究の立場をとられるのではないのですか。
  376. 本間喜一

    本間証人 その通りです。
  377. 志田義信

    ○志田委員 その通りだとすれば、あなたは愛大フラクシヨンというものが、もし政治的作為によつて学生運動とは異なつた暴力的な方向に進むような状態が見えた場合においては、学長としてあなたは適当な処置をしなければならぬと思いますが、その点はお考えになりませんか。
  378. 本間喜一

    本間証人 フラクシヨンに対して処置をすることは私は思つておりません。もしそれに属しているよう学生があるなら適当な処置をします。ちようどそれは早稲田の細胞、そういうものがあると同じような意味において、共産党の支部だろうと私は思つております。だから早稲田のフラクシヨンの中に愛大の学生がいれば、やはりそれはいかぬ、そんなもし暴力的な行為をするのならそれはいかぬ、そんな学生はいかぬといいます。
  379. 志田義信

    ○志田委員 先ほどあなたは、国家権力の行使にあたつて、信頼を薄めたような状態を警官がとるということは、八千万の国民に八千万の警官を必要とすることになるというような御説明でありましたが、国家権力の行使に対して、正当な批判を持つてあなたがこれを学生に対して教え導くということは、学長として当然だと思うのでありますが、そういうことを今までになされたことはございませんでしようか。
  380. 本間喜一

    本間証人 今の現実の警察がみな、国家権力を正当な穏当な状態において行使しているのだというようなことは、残念ながら私は学生に言つておりません。たとえば早稲田の例のごときは、私どもは少し警察官はやり過ぎていないかというくらいな雑談さえもしているくらいである。それだけの信念を、国家権力は非常にりつぱに行使しているのだということを教えるだけの私は自信を持つておりません。
  381. 志田義信

    ○志田委員 国家権力の行使にあたつて、信頼を持たれるよう巡査ではない、警察官ではないということを、あなたはお考えになつておるようであります。
  382. 本間喜一

    本間証人 いや、そうじやないのです。そういう者もあるというのです。
  383. 志田義信

    ○志田委員 そういうような者もあるということをお考えになつているようですが、同時にその言葉を裏返しにすれば、学生の中にも学問の自由のたてによつて、学問の真理を探究するというたてによつて、事実においては愛大フラクシヨンのいわゆる学生運動と違つた暴力的な方向に行こうとする気配をあなたは感知することはできないのですか。
  384. 本間喜一

    本間証人 私はそういうことを感知しませんし、もし感知している人があつたら、警察その他の人から私に教えてくれると思いますが、そういうことを忠告されたこともないのです。
  385. 志田義信

    ○志田委員 あなたは自分の学生につきましては、きわめてわが子を思う親心で、いろいろ特審局のスパイ等は不愉快だというようなお考えを持つておるようです。しかし特審局が国家的な見地に立つて、もしそういう学生運動と異つた運動の方向のきざしが見えたというようなことがわかつて、あなたに連絡なり、あるいはあなたにお知らせしたりなどした場合においても、なおまたそういうフラクシヨン活動についてわれ関するところにあらずという態度をとられるか、それとも何らかの処置をとられるか。
  386. 本間喜一

    本間証人 学生が具体的にどういうことをしたということについて、もしそういう話があれば、学生をよく取調べていろいろ処置し、訓育をします。しかし今までそういうような忠告を警察から受けたことは一ぺんもありませんし、特審局から言われたこともない。ただ私がさつき特審局のことについて言つたのは、そういうことをお調べになるのは自由だから、非常にいいことでしよう、特審局の任務から言うたら……。しかしうちの学生を使つて、私が教える学生を使つて、そういうことをやられるのは学生相互に非常に不安を来し、お互いに疑惑の念を抱く、これは学校の訓育上よほど考えなければいかぬ。そういうことは為政者としても考えていただきたいということを言つているのであつて、特審局が調べるのは職務だから、よその人を使つてどんどんやればいいんじやないか、こう思います。うちの学生を使うことについて、非常に私は疑惑を持つ、こういうことであります。
  387. 志田義信

    ○志田委員 あなたはそういうことを言つておられるが、もしアルバイトであつたらどうですか。
  388. 本間喜一

    本間証人 アルバイトということは、学生の貧乏なものを利用してやることだから、なおさらそんなふうにアルバイトさせる金があつたらば、その人にくれてやればいい。そんなことかさせるのでなければ、金をくれてやらせることは決して悪くはない。しかしそういうことはアルバイトであつても、やつぱりほかの学生に影響を及ぼすからよくないのではないか、こう黒います。
  389. 志田義信

    ○志田委員 愛大フラクシヨン活動がそういうアルバイトをやつていた場合はどうしますか。
  390. 本間喜一

    本間証人 それでもやつぱり困ります。フラクシヨンに属している学生であつても、やつぱりぼくはうちの学年がお互いに話もできないような状態にさせられるということはよくないことだと思つております。
  391. 志田義信

    ○志田委員 それではあなたは愛大フラクシヨン活動というものが、行動に出ざる前においても、やはりそういう状態はいけないとお考えになられていますか。どうですか。
  392. 本間喜一

    本間証人 行動に出ないということはよくわかりませんが、スパイをするような、そういうことがお互いの信頼を害するからいけないと言つておるので、何も愛大のフラクシヨン活動と関係ないでしよう。フラクシヨン活動の行動と何ら関係はない。私はそういう学生相互の間に疑心暗鬼を生じさせるようなことは、教育の面からはなはだ困る、こういうことを言つておるわけです。
  393. 志田義信

    ○志田委員 あなたはフラクシヨン活動というものとレセプシヨンというものと間違えておるのじやないですか。
  394. 本間喜一

    本間証人 私はレセプシヨンとは何ですか知りません。
  395. 志田義信

    ○志田委員 お茶の会というのと間違えておるのじやないですか。
  396. 本間喜一

    本間証人 お茶の会というものを私は知りません。
  397. 志田義信

    ○志田委員 少くともフラクシヨン活動というものはどういうことをするものかということを、愛知大学学長としてお知りになりませんか。
  398. 本間喜一

    本間証人 私は共産党の専門家じやないからちつとも知りません。今よく言われている「球根栽培法」なんというものは、新聞じや見たけれども、私の方では手に入れようとしても手に入れることもできない。
  399. 志田義信

    ○志田委員 それではお尋ね申し上げますが、今日の日本共産党は、御承知かどうか知りませんが、国際派が駆逐されて、主流派が主権を握つて以来というものは、あらゆる機会に軍事行動というものを指令しておるのです。しかもこの軍事行動というものに対しては、一切批判を許さない段階に入つておる。これは中西伊之助氏の言葉によつても明らかです。文書にも書かれておる。そういう場合に一切の批判を許さない、行動に対しては許さない、ビラに対しては反抗させない、批判も許さないということは、学内に日共の細胞を認めておるならば、まつたく批判は許さない結果になつて暴力行為に走るだけが許されるということになる。それでもなお学者は学問の真理を探求するのである。学生は学問の自由を擁護するという立場でお認めになるかどうか、それをひとつ……。
  400. 本間喜一

    本間証人 あなたは学内にフラクシヨンがある学内という言葉を使いますが、私は学外にあると言つておる。学校が管理して、学校が支配するところでないところにあるのだから、学外にある。だからさしつかえない。
  401. 志田義信

    ○志田委員 そうすると、あなたは愛知大学の学内にそういうフラクシヨン活動があるということはないと言うのですか。
  402. 本間喜一

    本間証人 フラクシヨン活動というのはどういうことを言うのですか。
  403. 志田義信

    ○志田委員 細胞活動を言うのです。
  404. 本間喜一

    本間証人 どういうことをするのですか。具体的の事実に現われたことは……。
  405. 志田義信

    ○志田委員 共産党の宣伝をやる。革命運動に移行するようにする……。
  406. 本間喜一

    本間証人 そんなことは学校の中ではやつておりません。ビラなんかを張つているだけの話です。
  407. 志田義信

    ○志田委員 そのビラの中に、こういう「抵抗」などというビラが張られているのは……。
  408. 本間喜一

    本間証人 「抵抗」というビラを学校の中で張つているのは知りません。
  409. 志田義信

    ○志田委員 あなたがそれを知らないのは別です。とにかく学校内にビラがまがれたり張られたりしておる事実は知りませんか。
  410. 本間喜一

    本間証人 いろいろなビラが無数に来ます。
  411. 志田義信

    ○志田委員 その無数のビラの中に、「抵抗」というビラがあつたというのを知りませんか。
  412. 本間喜一

    本間証人 昔はあつた。「抵抗」——レジスタンスとか「愛大戦線」というようなものもあつた。今では自由にやるものだから、なお一層あるだろうと思います。
  413. 志田義信

    ○志田委員 これはフラクシヨン活動の一つの現れであるというふうには、ごらんになりませんか。
  414. 本間喜一

    本間証人 それはフラクシヨンだから、愛大細胞と書いてあるやつは愛大細胞の活動でしよう
  415. 志田義信

    ○志田委員 愛大細胞の活動であるということは認めますか。
  416. 本間喜一

    本間証人 そう書いてある場合にはそうかもしれません。私全部は見ておりませんから……。
  417. 志田義信

    ○志田委員 日本共産党愛大細胞二十九号と書いておる。
  418. 本間喜一

    本間証人 そう書いてあれば愛大細胞の活動でしよう
  419. 志田義信

    ○志田委員 さらに、その活動をあなたは認めますか。
  420. 本間喜一

    本間証人 そう書いてあればそうだろうと思います。
  421. 志田義信

    ○志田委員 それでは先ほどからのあなたの愛大フラクシヨン活動というのはないのだという言葉は、どこから出たのですか。
  422. 本間喜一

    本間証人 私は学内にないと言つただけです。あなたは学内にあるというから、私はそうじやない、事務所は外にある……。
  423. 志田義信

    ○志田委員 事務所のことを言つておるのじやない。
  424. 本間喜一

    本間証人 事務所は外にあるし、そのメンバーとして届けた者は、学校学生ばかりではない。そうい者がビラをまいた。そんなビラをだれがまいたか。そんなものはまいちやいけない、——あるいは日本共産党というビラを張つているものはずいぶんたくさんありますよ。私はひつぱがす。そんなものはたくさんありますよ。「愛大戦線」「愛大何々」「だけれども学生の大部分は、そんなものはまたかといつて、はなをかんで捨てるくらいです。こんなものはBCGの注射みたいなものです。そんなものには無感覚になつている。そんなものには無感覚にするところに学校の教育がある。そんなものを見て何とか思う人はありませんよ。私どもは現にビラは張つてつても、読んでみる気もしません。だから皆慢性になつているだろうと思います。そんなものでいろいろ刺激を受けるよう学生はないのです、私の学校には……。
  425. 志田義信

    ○志田委員 日本共産党愛大細胞というものによつて「抵抗」という、こういうビラも出ております。新聞も出ておつた。しかも一部一円で売られておる。それを学生が買つておる。こういう事実などは、あなたはお知りになつておるか。そういうことをお知りにならないのかもしれないが、それが闘争資金になつている。その闘争資金が何に使われておるか。それが共産党の指導に基く軍事行動の一環としての闘争資金になるというようなことは考えておられませんか。ずいぶんのんきなことを言つている学長さんではないか……。
  426. 本間喜一

    本間証人 そんなものは昔五十銭で売つていたのを私は見たことがある。そこに書いてあることは、まるで労働者に言うようなことで、こんなばかばかしいことを書いている「愛大戦線」は低能戦線と名前をつけろ。こんなものを五十銭で買つて読んでいる者は、もつとばかだということを言つてつたわけです。もつと低能ですということを言テくらいです。こんなものによつてうんと刺激を受けて、大いに共鳴して共産党に入ろうというような気になりますか。私の学校にはそういう者はありませんよ。
  427. 志田義信

    ○志田委員 あなたはそういうふうにして、そこで大分自説を固持しておられる形があるのだけれども、たとえば二十歳、十九歳、十八歳というような頭脳のいまだ固まらない学生が、こういう立場の抵抗というようなものを行一句見ても、——あなたがさつきおつしやつたじやありませんか、ジャスティスに対しては、青年は非常に正義感に燃えて反抗すると言つているじやないか。これに書いてあるのは、一行ごとにジャスティスということを言つておるのです。社会正義ということを言つておるのです。「抵抗」というものに書いている。これは社会正義によつて発行されている。この事件は、社会正義の立場から闘わなければならないと書いてある。こういう非常に学生に対しては情熱的なアッピールするものを、——あなたは幾つか知らぬけれども、棺おけにはまだ相当長いと思うのだけれども、あなたが冷静に見る考えと、二十歳、十九歳あるいは十八歳の青年なんかの考えと、アッピールされる仕方が非常に違うと思う。そういうふうにはお考えになりませんか。教育者としてのあなたの信念を伺いたい。
  428. 本間喜一

    本間証人 若い人たちにはそんなことがあるかもしれませんけれども、その内容から見て、ジャスティスといつたつて、何がジャスティスなのかわけのわからないようなものが書いてあります。そこに書いてあるものを見て、ほんとうに社会正義にアッピールする内容がありますか。私の学校にはそんなものは何にもない。でつち上げている欺瞞ですよ。
  429. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に伺いますが、あなたは学長として自分の教え子をかばわれることはいい。しかしこの事件を見ますと、警官を縛つたこと、また縛つた者食堂へ連れて行つてつるし上げたこと、さらに警察手帳を奪つたこと、ピストルを奪つたこと等は、すべてこれは共産党の戦術から出ておる。そういう事犯が全国に、京都大学にもあるでしよう、東大にももちろんある。少しあなたはその考え方が甘くはありませんか。そういう甘い時代だとお思いですか。その点ひとつどうぞ。
  430. 本間喜一

    本間証人 これは御意見だから、そういう批評を受けてもしかたがないでしよう。私は甘いかもしれませんし、甘くないかもしれません。私は、若い人が世の中について、こういうふうな時代にいろいろあることは、これは大いにあるだろうと思います。だからして、あの人たちが悩むことは、何となくわかるような気がします。
  431. 内藤隆

    内藤委員長 ことにあなたは経歴をお伺いすれば、中国にもおられ、そうして中国革命——今日の中共が来るまでの事情をよく御承知だと思う。少くとも中国革命の先頭に立つた者は大学生なんです。この事実、あなたは直接にお認めになると思う。その場合に、大学の内部にさよう学生がおるということ、そうしてまたそれが尖鋭分子であつて、他の学生を扇動してひつぱつて行つた場合には、一体どういうことになるか、これはもうあなたの経験から見てもおわかりだと思う。その点どういうふうにお考えになりますか。
  432. 本間喜一

    本間証人 中国において学生が革命運動の先鋒になり、そうしてその仕事の完成に役立つたということは私はよく知つております。その通りだと思う。日本においてももし革命があれば、そういうことになるかもしれません。しかし革命が起きるようにするような社会にするのも考えものであつて学生は正直だから、真実にいろいろな状態を見ながら、革命をしなければならぬと思う人が出て来るかもしれない。そういうことはあるかもしれない。しかし私はそんな革命なんかできるもんじやないと思つております。
  433. 志田義信

    ○志田委員 証人は先ほど愛大フラクシヨンには一名くらいはいるだろうというお話でありました、しかるに本件を調査するために愛知県民主調査団というものが組織されまして、その民主調査団の構成メンバーは、自由法曹団、名古屋大学理学部の学生自治会、産別労組、全盲動車労組、愛知県自由労組連合会、全港湾労働組合、日本国民解放救援会、日本自治団体労組総連合、名古屋市職組合、東海朝鮮人教育者同盟、朝鮮民主統一戦線県委員会、自治労新聞、全逓新聞へ豊橋市議落合氏、こういう人たちが調査に参つたあと調査の座談会が開かれておりますが、その座談会に愛大生三十人がやはり出席して、討論いたしております。この事実を御承知でしようか。
  434. 本間喜一

    本間証人 そんなことは知りません。どこでやつたのですか。
  435. 志田義信

    ○志田委員 これは名古屋でやつています。
  436. 本間喜一

    本間証人 それは知りません。豊橋にも聞いたことはありません。
  437. 志田義信

    ○志田委員 こういうような状態が「抵抗」その他に書かれているのですが、しかもこれが日本の共産党愛大細胞によつて発売頒布されているのです。これはもちろんあなたといたしましては、お知りにならないといえばそれきりなんですが、それでも自分の学生は子供同様であつて、愛大の学生はフラクシヨン活動には一人より入つておらないということがここで言い切れますか。
  438. 本間喜一

    本間証人 私は一人しか入つていないと言うのは、中日新聞の記者が、今届け出ているのは一人だけだと言つたから、一人と言つたのです。あとは届け出ない人が何ぼいるか、それはわからない。
  439. 志田義信

    ○志田委員 教育者としては、将来をおもんぱかつて教育をしなければならぬことは、申し上げるまでもないと思うのだが、一人の愛大フラクシヨンがあるという事実をあなたは他より知らされた場合に、さらに三十人、五十人、百人の愛大フラクシヨンの活動分子が増大して行くであろうというような懸念を持つたことはないかどうか、あるいは懸念はないけれども、そういうことのために何らか教育方針を統一しなければならぬというお考えを持つたことがあるかないか、それをお尋ねしたい。
  440. 本間喜一

    本間証人 私はどの党派に属しておつて学生はさしつかえないと思つて、います。共産党に属する学生があつても場、これもしかたがないと思つております。親が共産党であり、子供が共産党である。世の中に共産党員はたくさんいますから、その子供だつてわれわれのところに入つて来るだろうと思つています。だからフラクシヨンが何人いるか、それは自由党が何人いるかというのと同じことで、ちつとも何とも思つていません。
  441. 志田義信

    ○志田委員 それが行動化された場合のことを私は聞いておるのです。その背後に政治的な作為があつた場合に、問題はそう簡単にはならない。共産党員であるないという問題ではない。それが中央ないしは本部からの指令に基いて、政治的な作為が生じて、これが行動化された場合のことを懸念して言うのですが、あなたにはその懸念はないのですか。
  442. 本間喜一

    本間証人 私はそんな懸念をしておつたら切りがないのです。とてもそんなことまで懸念しておれない。そんなことは懸念しません。それは世の中にいろいろな党派があつて、党の活動をいろいろなさるでしよう。われわれは学校における教化をやるので、どの党派に属して、どの党派がこういう動きだからその党派に入らぬ方がいいとか、この党派はどうもいかぬからこの党に入らぬ方がいいだろうとか、そんなことは決して申しておりません。
  443. 志田義信

    ○志田委員 愛知大学学長としての本間さんは、思想対策についてどういうお考えを持つておられるのか、この機会にお伺いしたい。
  444. 本間喜一

    本間証人 思想に対しては、すべての思想を自由平等に扱えという考えを持つております。
  445. 志田義信

    ○志田委員 思想に対しては自由平等に扱えと言いながら、その思想から出て来る行動については、あなたは拒否すると言つておられるけれども、その点はいかがですか。
  446. 本間喜一

    本間証人 その通りです。私は合法の範囲における行動はいいけれどもその以外のことはいかぬ、思想に対しては自由に討論して行きなさい、こう言つておる。
  447. 志田義信

    ○志田委員 先ほど来申し上げておることは、あなたは愛大フラクシヨンを合法的な思想活動であるというふうに見て、それを行動であるというふうには見られないのですか。
  448. 本間喜一

    本間証人 もし行動であるならば、実力を使うとかそういうことを言うのであつて意見の発表その他のものは、これは思想の自由の範囲内だと思つております。
  449. 志田義信

    ○志田委員 先ほど委員長も触れておりますが、私も検事正にも質問しましたが、拳銃をとられたり、警察手帳をとられたり、こん棒をとられたり、あるいは警察官の持つておる捕繩をもつて縛られたりするということは、それは思想であつて、行動とは思いませんか。     〔委員喜長退席、鍛冶委員長代理着席〕
  450. 本間喜一

    本間証人 それは行動です。りつぱな行動です。私も聞いてみた。なぜ捕繩で縛つたのだということを、直接やつた人ではないけれども自治会委員長説明を求めたところが、委員長いわく、それはピストルを出してあぶないから、ピストルを擬するから、前にビラを張つただけでピストルを撃たれた例があるから、あぶないから、ピストルは預からなければならない。手を出そうとしたから、しかたがないから縛つておく、こういう説明でした。なぜ警察手帳を預かつたかと言つたら、警察官が無断で入つて来たからけしからぬ。あとでうちの巡査が入つたのではないという抗議をされないように、その証明のために手帳を預かつたのだ、とこう言つておりました。それでは今署長から電話がかかつて、うちの方の巡査が入つたのだ、こう言うのだから、もう手帳証拠にする必要はない。ピストルは、またそれを出して撃つ人はないのであるから、すぐ出して返せばよいのだ、私はそれを返えさせることについて非常に骨折つた。そして午後の十時ごろ起きた事件に対して、すでに二時において、あした返します、私の責任において返しますと電話で言つたくらい私は骨を折つております。翌日は学生の会がありまして、そこへ行つて早くしなければいかぬ問題だということを説いて返さしております。今のようなことは行動で、決して思想じやありません。
  451. 志田義信

    ○志田委員 それは行動だということをあなたは自認なさるのですから、現にピストルをとつたり、警察手帳をとつたり、警棒をとつたということを、預かつたとあなたは証言しているが、預かつて強制罪が成立するわけはない。起訴の罪状の中には強制罪というものがある。これをあなたはどういうふうに考えているか。預かつたものならば強制罪に問われる必要はないのですが、どういうふうに考えておるか。
  452. 本間喜一

    本間証人 それはそういうふうに検察庁は見たのだろうと私は思つております。強制罪と見たのだろうと思います。預かつたというのは、証文に預かつたと書いてあつたからこう言つておる。
  453. 志田義信

    ○志田委員 そうするとその預かつたというのも、事実が預かつたものであるかどうかということについては、学長としては確信がないわけですね。
  454. 本間喜一

    本間証人 私預かつた人に直接会つたのではないから、もし、そういうものを調べて確実な返事をするなり、その当時立会つた者をよく調べて、その上で返事するわけです。強制なしに預かつていれば強制罪にはならないだろうし、それが脅迫観念のもとにおいて預かつたならば、強制罪になるだろう、その点は私調べておりません。
  455. 志田義信

    ○志田委員 学長にお尋ねしますが、あなたはその点は調べていないと言うのですが、あなたは豊橋警察署長に対して申入書を出しております。その申入書の中に、あなたは真相の究明に善処するということを書いておるのですが、それでは真相の究明に対してあなたはちつとも善処していないということになるがどうですか。
  456. 本間喜一

    本間証人 逃げて行つていないのですから、真相は調べようもない、検察庁の方に行つている人もあるし、私の方で調べようがない。
  457. 志田義信

    ○志田委員 調べることができないものを、どうしてあなたは預かつているというふうに解釈するのですか。
  458. 本間喜一

    本間証人 預けたと書いてあるから、そう言つただけの話です。別に預かつたというのは預け証明があるでしよう、預けたからこそとりに来たのでしよう警察署の方では預けたから、駅の一時預かりに預けたようなものですから、駅長が持つて行くというようなことはないのですから、とりに来たのでしよう
  459. 志田義信

    ○志田委員 学長は少し言うことがよくつじつまが合わないのだけれども、まさか学校学生巡査を縛つてつた拳銃や、警棒や、警察手帳が、駅の一時預かりに預けたような気持で預けたのだと証言されることはいかがかと思いますが、どうでしようか。
  460. 本間喜一

    本間証人 それではそんなのは取消しておいてもよろしゆうございます。ただ一例を言つただけで、警察の方では豊橋市の署長が警官を一人連れてとりに来たからそうだろうと私は思つております。
  461. 志田義信

    ○志田委員 あなたは学生に行き過ぎがあるということはその点をさして言つているのではないですか。学生の行き過ぎとは何ですか。
  462. 本間喜一

    本間証人 それは縛つたり、それから傷をつけたり、手帳を取上げたり、ピストルを取上げたりするのは不穏当だと思つております。それは行き過ぎだと思つております。
  463. 志田義信

    ○志田委員 行き過ぎであるとすれば、その行き過ぎの状態は十分真相の究明をまつて善処しなければならぬ。申入書に書いている通りなんです。そこでこの真相の究明に善処するということは、今表面的に現われたその警察官をなぐつたとか、捕縛したとか、あるいは警察手帳をとつたとか、拳銃を取上げたとか、縛つたとかいうことだけではないという深慮があなたにはなければならぬと思いますが、あなたはお幾つになるか知らぬけれども、その程度の御深慮があつてしかるべきですが、しかしあなたには子供を預けられないという親が出て来たとしたらどうでしようか。
  464. 本間喜一

    本間証人 それは御自由にしていただきたい。
  465. 志田義信

    ○志田委員 御自由にしていただきたいということでは、教育者としてのあなたに教育を託するわけには参らない。愛大はたとい私立大学といえども日本の将来を託する幾多の青年を訓育してもらわなければならぬ。あなたは二十三歳でアメリカの公使になつた森有礼の話を先ほどしたではないですか。人をなぐつておいて、ピストルをとつておいて、あるいは縛つておいて、それであなたが説明するような状態で、そういうことだと言つて、将来大きくなるような子供を、あなたは社会の構成メンバーとして十分りつばな青年である、森有礼の二十三歳のアメリカ公使にも匹敵するくらいの社会正義に燃える青年になるというお考えを持つてるかどうか、そういう教育の方針で持てるかどうか、お尋ね申し上げます。
  466. 本間喜一

    本間証人 それは教育家の後世の批判によることだと思つております。そういう点については、教育者に対しての批判は、学校を出たところの学生が将来社会にどういうふうに活動をするかということを見ていただいて批判ができると思います。自分らは自分の信念に従つて教育しているのであつて、教授会がそれを相談して真相調査ようとしているし、それからいろいろな刑事事犯なんか起きた場合においては、あとの処分はそういうものが済んだあとにしようというような慎重な態度をとりつつやつております。
  467. 志田義信

    ○志田委員 それではその点はそれでいいといたしましてもう一つお伺いいたします。  あなたは先ほど同僚委員の質問に対しまして、学校経営と将来のために五千万円ほどの寄付金を募集したい。しかも今までに七百万円とか八百万円の寄付金を募集したという話がありましたが、愛知大にこういう問題が起きて、世の中の批評を受けている際に、あなたのごとき今の態度をもつてして、なおかつそういう寄付金などというものがどんどん学校に集まるというお考えを持つておるか、それともこれには非常に悪い影響になるというふうに考えているか、その点をお尋ね申し上げます。
  468. 本間喜一

    本間証人 私は今までのいろいろの批評を人から言われるところによると、それは悪い影響を受けるから寄行金なんかに大いに影響するだろう。来年の卒業生は就職は非常に悪くなるだろう。現に早稲田はレッド・パージの結果二年間くらい卒業生の就職が悪かつた。法政はどうだというようなことを知つておりますから、あるいは寄付金の集まりも悪くなるだろうし、それからして就職も悪くなるだろう、こう思つております。
  469. 志田義信

    ○志田委員 そうすればあなたは、学生の行動はきわめて悲しい影響があるということを認めているにかかわらず、先ほどの御発言の、自分の教育の方針、あるいは今までの教育したことに対しては、将来を待つて批判してもらわなければならぬというようなことをおつしやるのはどういうわけですか。
  470. 本間喜一

    本間証人 私は学校を営利のためにやつているのではないのです。従つて金が集まろうが集まらなかろうが、気の合つた人は来て勉強してくれればいいのであつて、決して金を集めるために批判をよくしようとか、人によく思われようとか、そんなことは考えておりません。だからして集まらなかつたら集まらなかつたでしかたがない。しかし私の気持に共鳴してくれる人があつて、一紙半銭といえども出してくれる人があつたら非常にありがたいと思つております。
  471. 志田義信

    ○志田委員 私はそこを言うのです。あなたはあなたの教育信条に基いてやるにしても、輿論に対しては聴従しなければならぬ。あなたの寄付金が集まるか集まらぬかということは、営利を目的にして集めているのではないことはこれは明らかだ。しかしこういう事件が起きて、愛知大学学長さんのところに——しかもこれらの行動というものが、先ほど来あなたは、大学の自治、自由の侵犯にもなりかねないということを言つて、切実の問題としてあなたは豊橋地方検察庁に対しましても、学長名をもつて申入れをしているくらいでありますが、そういう重大な事件を、あなたは先ほど来話を聞いておると、きわめてたんたんとしたお話であつて、吹けば飛ぶような話のように受取れるよう証人としての証言をしておられる。     〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕 その点に私はきわめてふに落ちないものがある。きわめて遺憾なことであり、国家のためにもきわめて重大なことである。愛大の将来のためにもこれは真相を究明して、学生が非であるか、警察官が越権であるか、不法であるかということを明らかにしなければならぬというくらいの情熱があなたにあつてよろしいのではないか。そういうことがないのはどういうわけでしよう
  472. 本間喜一

    本間証人 大いに情熱はあるのです。その点は明らかにしたいと思つております。非常にはつきりさしたいと思つております。
  473. 志田義信

    ○志田委員 どういう方法によつて明らかになさるお考えでございますか。今後の点をお尋ねいたします。
  474. 本間喜一

    本間証人 私は警察官が無断で入つたの——しかも入つたかどうかということについては、証拠を集めるところの強制力を持つておりません。従つてそれを明らかにする裁判所の公判において、遠藤巡査証人に呼んで、その上にはつきりしたところの質問によつて明らかにしたい、こう思つております。それからその事態においてどういう行き過ぎがあつたかどうかということも、おのずからそこにおいてはつきりするだろう、こう思つております。学校としては、教授会初めみなこの問題について懸念していますから、真相だけは何とかはつきりさしたいと思つています。追つてそのうちにできることだろうと思います。私どもにもし人を引致したり、勾引したり、いろいろできるなら大いにやりますけれども、それ以上のことは裁判でやつて、くれますから、しばらく見ているわけです。
  475. 志田義信

    ○志田委員 学生の教育方針として、あなたは今後学内における日本共産党愛大細胞の存在を、やはり合法なものとして将来とも認めて行くお考えでありますか。その点をはつきりしていただきたいと思います。
  476. 本間喜一

    本間証人 私はもし共産党が合法な団体として将来認められるならば、やつばり認めなければならぬものだ。こう思つております。
  477. 志田義信

    ○志田委員 あなたは合法であるということで、それが非合法をやらないというお考えなんですが、合法なものでも非合法をやると私は考えるのです。あなたは合法性のもとに非合法はやらないという断定に立つておるようですが、その点はいかがですか。
  478. 本間喜一

    本間証人 私はそんなことはちつとも断定しておりません。合法な形において非合法が行われることはたくさんあると思つています。共産党ばかりでなしに。
  479. 志田義信

    ○志田委員 愛大フラクシヨンが合法の立場にありながら非合法をやろうとする方向をあなたが察知された場合においては、いかなる方法をとられますか。
  480. 本間喜一

    本間証人 愛大細胞に対して何もやりませんけれども、その属している学生がもし愛大の学生でありますれば、とめます。
  481. 志田義信

    ○志田委員 それでは愛大細胞の構成メンバーは愛大の学生であるということを、私は先ほど来証人証言を求めておつたのですが、それはお認めになりますか。
  482. 本間喜一

    本間証人 私は愛大細胞のメンバーというものは知らないのです。けれども、最近届出の書類を持つて来たのを見ると、一人はありました。そういうことだけは認めていますが、細胞にだれが入つているというようなことは調べようがないのです。これは何か警察権でも持つているとか、私が検事であるどいうなら一何か調べようはあるでしようけれども、調べようがないのだからしかたがないのです。ただ形式的に届出があるような人だつたら、みずから自認しているのですから、そうだろうと思う。私は細胞だと言つて来る学生は一人もいない。
  483. 志田義信

    ○志田委員 日本共産党の今までの主義、主張によりますれば、かえつて共産党員になることは、いろいろな意味で自由がそこなわれる懸念がある。ましてや学生にとつて一番生命とする学問の自由ということが、そういう共産党に属することによつてきわめて不自由になるというようなお考えを持つたことがないかどうか。教授、助教授、講師の中にそういう人がある場合においては、かえつて学問の自由が阻害されるというお考えをあなた今まで持つたことがあるかどうか、それをひとつ伺います。
  484. 本間喜一

    本間証人 これはよく雑誌やいろいろのものの中に、共産党の学問理論を固執しないような共産党員の教授はない、みな学説も指令に基いてやるというようなことを書いているようなものがありました。だから、もしそれがほんとうならば、学問の自由を害するでしようね。私はそう思うています。
  485. 志田義信

    ○志田委員 これで証人の考えているところも大体わかつたと思います。そこで最後に、あなたは今後愛大の教授、講師を雇い入れる場合におきまして、共産党員であるということが経歴書の中にうたわれてあつても、あなたはこれを採用するか、それとも、それらは学問の自由をかえつて阻害される党派に属しているものであるという考え方から、これを拒否するか、その点を伺いたいと思います。
  486. 本間喜一

    本間証人 共産党員に属しているということをはつきり言つて、そうして学校の教授に採用してもらいたい、こういう場合、これはよほど疑問になると思います。今までのところではそういう人はいなかつた。それから教授の採用は、大学の自治という原則をわれわれはとつて、そうして教授会においてこれを決定することになつております。だから、その点は教授会においてさように決定された場合に、それでもその人は学問の自由を持ち得るという認識のためだと思いますから、私は教授会の認定を尊重します。
  487. 志田義信

    ○志田委員 教授会の認定以前においては、学長としてはどういうようにお考えになりますか。認定はあとのことですが、学長自身はどういうようにお考えになりますか。
  488. 本間喜一

    本間証人 私は自分からはそういう人は推薦しません。かりにそれが教授会の議題になつた場合には、学長はそういうことを阻止すべきものじやない、こう思つております。
  489. 志田義信

    ○志田委員 先ほど来の御説明で大体わかりましたが、最後にくくりをつけておくという点で、愛大フラクシヨンというのは、愛大の学生によつて構成されておることを認められたわけですから、その愛大フラクシヨンの党活動というものが、単に迷惑であるとか迷惑でないとかいう抽象的なことだけでなくて、あなたとしては真剣にこの愛大フラクシヨンの今後の動きを監視して行くとか、あるいは調べて行くとか、気をつけて行くというお気持があるか。それとも全然無関心に将来ともほつたらかしておくというお考えであるか、その点だけを伺います。
  490. 本間喜一

    本間証人 私は知つている限りのことは知りたいと思うのですけれども、手の届かないところがあります。「抵抗」なんか私のところに持つて来ません。補導部長あたりはどこかで見つかつたとき、こういうものを出しておると、持つて来て見せることがありますが、あなたがごらんになつているようなものを私は見たことがない。そういうことに対して一々調査してまわる何は持つておりませんから、事実上そういうことはできない。する気になつても、その者の監督ということはできません。しかし学生が事実行為を何かやろうという場合には阻止することはします。監督の責任は負えません。
  491. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、本間証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。次会は明後十二日開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十九分散会