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1952-05-17 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十七日(土曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君    理事 福田 喜東君 理事 佐竹 新市君       岡延右エ門君    黒澤富次郎君       野村專太郎君    椎熊 三郎君       高倉 定助君    藤田 義光君       竹村奈良一君    山口 武秀君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         証     人         (警視総監)  田中 榮一君         証     人         (東京都特別区         公安委員会委         員)      淺尾 新甫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  治安警備状況に関する件(五月一日皇居広場  騒じよう事件)     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  昨日に引続き治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について調査を進めます。  ただいまから吉河証人より証言を求むることにいたします。あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたからさよう御承知を願います。  ただいまより治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について証言求むることになりまするが証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人吉河光貞朗読〕     宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  3. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  4. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  吉河貞光君は、現在法務特別審査局長ですね。
  5. 吉河光貞

    吉河証人 そうであります。
  6. 内藤隆

    内藤委員長 五月一日の皇居広場騒擾事件に関しまして、事前計画が三月の中ごろから立てられ、四月に入つてから具体的の準備都内共産系組織で進められていたといわれておりますが、特審局側では事前計画についてどのような情報を入手しておられましたか、その点をひとつお述べ願います。
  7. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。五月一日、皇居広場で行われた騒擾事件につきましては、私どもといたしましては、次のような事前情報を得ていたわけでございます。その内容を簡単に申し上げますと、四月の中旬前後におきましては、一部の破壊的な左翼分子は、統一メーデーを強力に推進するとともに、このメーデー行事を機会として、あるいは東京都内警察署あるいは交番等を襲撃するというような情報がありました。ところが四月の末ごろになりましてから、次のような情報が入手されたわけであります。メーデーに対しては、敵は消防隊をも動員、大がかりな弾圧の態勢を組むであろうわれわれはメーデー防衛する強力な戦闘態勢を組む必要がある。一は労組大衆団体大衆的扇動指導部の設立、二は機関としての指導部の確立、現地における指導その他について、そして三にはメーデー参加団体行動隊自衛隊大衆運動として組織させる。特に青年学生民戰日鮮行動隊その他を結集して中央大会自衛隊、各地区自衛隊をつくるというような情報がありました。さらに四月の三十日になりまして、次のような情報が入手されたのであります。大会終了後、日比谷公園にデモる。中央部隊実力を行使して人民広場に行進を強行する。これには敵がある程度感づいて警備力を重点的に向ける気配がある、相当犠牲が出ると思うが、敢行することにきまつた実行指導は党の軍事委員が当る。軍事委員会の連中は中部のデモに参加する組織に対し、中核自衛隊の編成に狂奔している。行動隊は今晩中に編制整備されよう。かような情報を入手したのであります。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの証言中にもありましたが、全学連あるいは都学連北鮮系朝鮮人、これは祖防委員会といわれておりますが、この組織メーデーに対する暴力計画をしておつたということは、大体において想像はつくのですが、こういう暴力計画等も、やはり情報を入手しておられたわけですね。
  9. 吉河光貞

    吉河証人 ただいま申し上げた情報は、これらのものの中の破壊的な分子動向を示すものと考えております。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 さような情報が入つておる以上は、特審局としては、メーデー事前において、警備を実施する機関と打合せをしておるか、あるいはその情報をこれら各種機関に流しておられたと思いますが、その間の事情を御説明願います。
  11. 吉河光貞

    吉河証人 お答え申します。メーデー行事にからんで、一部の左翼破壊分子動向につきましては、きわめて深甚な注意をもつて情報収集をいたしておりまして、ただいま申しましたような情報は、逐一関係治安機関通達しております。特に四月三十日の情報につきましては、私がこれを調査部長に命じまして、東京警視庁その他各治安機関通達させました。
  12. 内藤隆

    内藤委員長 そういう通達行つております関係上、共産系尖鋭分子皇居広場を奪還するということをスローガンにして、大規模軍事的行動に出るということは、もうあなたの証言事前情報がわかつてつた。この連絡等は、あなたは直接四月三十日にはそれぞれ協議をしておられたという今の証言でありまするが、このメーデー騒擾事件に関しまして、日共系労組あるいは思想文化団体等はどういう批判を行うておるか。またどういう方法等を考えておるか、さような情報が入つておりまするならば、これを述べてください。
  13. 吉河光貞

    吉河証人 お答え申します。五月一日の皇居広場における騒擾事件につきましての新聞、報道界、あるいは思想文化労働方面、並びにその他の諸団体のこの事件に関する論評につきましては、すでに公の出版物として発表されておることだと考えております。従いまして当委員会におかれましても、かような批評なり批判につきましては十分御承知のことと思つておるのでありますが、私といたしましては、先ほど来申しました極左的な分子の間でこの事件をいかに評価し、いかに批判し、いかに取扱つているかということにつきまして、簡單にその報情を申し上げることにいたしたいと考えております。  最近彼ら破壊分子の間にVノートWノート——Vノートと称する指令通達書が流布されつつあるのであります。五月五日付のものにつきまして申し上げますと、「一、人民広場闘いについて」と題しまして、次のような書き出しをしているのであります。「屈辱の講和條約発効後三日目の第二十三回メーデーは、米帝売国吉田政府国民的権利を奪う断圧売国奴愛労分裂活動の集中的な表われである、人民広場使用禁止を無効にさせ、国民のものに奪い返すために果敢な闘いを展開し、実力人民広場を占拠することを宣言した。労働者の合言葉は「人民広場へ」であり、米帝吉田武装権力催涙彈、ピストルの乱射と闘い大衆の憤激は町にまで伝わり敵を圧倒した」というようなことを書き出しといたしまして、進んで「吉田政府米帝に対しては請求されもしないのに損害賠償を申出謝罪し、日本国民に対しては破防法成立を有利にしようと威嚇し、愛国者を総検挙する、その売弁的な本性をますます国民の前にさらけ出した。一部学生朝鮮人自由労働者並び共産党員計画的犯罪であると革命的な行動の先頭に立つた愛国者を暴徒と呼び、一部の極左分子の陰謀であると、あらゆる機関を総動員して動揺する中間層を引きつけ、党をたたきつぶし、くさびを打込むためにやつきになり、党非合法化の策動をますます露骨に進めている。これに同調する島上を初めとする社会民主主義者は、この愛国者を非難する声明メーデー実行委で決定し、中間層の動揺を深める役割を明らかにして来た。ここで妥協や足踏みするならばさらに敵は切り込んで来る。敵は二重橋に追い詰められた予備隊のように孤立し動揺し、出ばなをたたきのめしてしまえば、われわれのように背後にいて投石で擁護する広汎な大衆を持つていない。ここで断固たる反撃組織し敵に立ち向うならば敵は動揺後退する。中間層を引きつけるには大衆勇気を與え、一層の反撃組織することである。占領法規の消滅と破防法の未成立吉田政府法的空白を来している。これは日本国民世界人民闘いによつてかちとられた空白である。モスクワ行き一つを見ても吉田政府売国的法律日本国民を縛り得ないことを現わしている。敵が人民広場闘いを口実に破防法成立をあせればあせるほど大衆反撃する。これは吉田の命とりである。当面の敵の空白を活用し、大膽に反撃組織し、破防法粉砕吉田内閣打倒国会解散一大政治反撃をかけること、勝利のかぎは、大衆大衆へと入つて行くところにある。以上の評価の上にただちに実行すべき点を指示する。」と申しまして、第一としまして「大衆に訴える基本点人民広場は終戦後国民に解放された、毎年五十万の大衆の集まる国内最大の集会であるメーデーに、この広場を使用させないのは、政府国民政府でない証拠である。」云々と述べまして、次に「真相を知らせるために全営業所行動を起すこと、目撃としていた大衆は全面的に闘いを支持し、大衆自身戦闘に参加した愛国行動広場の外へまで広がり、最高裁、櫻田門、日比谷、朝日新聞前、有楽町、馬場先門に至る広範な地域大衆創意によつて展開されている、これら広場内外真相大衆に知らせることから始めよ。アカハタ号外利用写真展壁新聞等宣伝の大攻勢をかけること。」次に「南部経験では、敵は個人的な自慢話から情報を得て検挙を擴大した。個人的な態度(武勇伝など)を排して職場地域での政治討論組織し、党内における個人行動ではなく、大衆行動組織せよ。」次に「できるところから決議をとり、田中、安井、吉田にぶつけること、特に破防法国会審議中であるから、各党代議士に圧力をかけることが大切である。労働組合民主団体抗議は一刻も猶予することなく追撃をかけること。」次に「メーデー実行委声明を支持する日和見主義者に対する闘い職場から開始すること。組合青年部が動揺している、経本、人事院では一切の責任は政府にあると声明書を出した。統一派総評声明をやり直せの攻勢をかけること、統一委員会は今までの組合をどう統一するかでなく、階級的統一闘いとる観点から取組み、特に地区労から全労働者にアッピールを出すこと。敵は大規模捜査をやつている、これを進める職制、愛労を、愛国者を売り渡す売国奴として摘発し、調査を拒否させ粉砕せよ。敵は四・一八炭労大会統一メーデーでかちとつた革命的労働戦線統一を、執拗にぶちこわして来る。これを粉碎する闘いは今後の労働運動質的向上の転機であるから重視すること。」次に「犠牲者即時釈放抗議損害賠償の要求、救援カンパを起すこと、団体として取上げること。」こういうようなことを述べておりまして、次に「当日の情況、戦術上の教訓はつづいて総括し報告するが、大衆盛り上り創意がすばらしかつたこと、大衆的行動中核隊なしには闘えないこと、軍事行動大衆のものになつたこと、敵の志気は低いこと、大衆は的確な党の指導を望んでいること、大衆革命性を党がつかみ得ないで信頼せず、またこれに追随する立遅れを示し、党員一人々々が大衆指導者になり得なかつたこと」などを述べているのであります。  さらに進みまして五月六日付の文書には、その末尾に、中核自衛隊の問題といたしまして、(イ)といたしまして「参加した大衆はプラカードの柄、旗竿で武装した、広場の石は堀り起され、一斉に武器の必要を訴え、現地での武装強化(ビンなど)に一致して発力した。」(ロ)としまして、「一時間半にわたる広場内の遊撃戦術で三回の突撃を行い、敵を翻弄した、敵の催涙弾を投げ返すなど大衆の勇散な創意性が発揮された。」(ハ)としまして、「風上にあたる唯一の入口祝田門大衆デモ隊が占領し続け、敵を広場の中へ包囲したこと。」(ニ)としまして、「公園を根拠地として約三時間にわたり市街遊撃戦を闘つたこと。新しい創意高級自動車が次々とひつくり返され、一本のマッチで炎上させていること。占領軍ビル攻撃、このすばらしい創意経験戰術能力は深く学ぶ必要がある。味方の志気は旺盛で、敵はひるんでいたにもかかわらず、最も問題のあつたのは、行動指導が立ち遅れたことである。中核行動隊はまだ訓練されていないために、最後まで隊として闘うことができなかつた行動統制は局部的にしかとり得ず、全体がすばらしい行動力を示しながら統制がとれなかつた。これが組織され訓練された行動中核隊を通じて系統的に指導されたならば、成果は飛躍的に擴大されたことは明らかである。大衆は強固な組織を望み、掌握下に入るものである。大衆行動指導に当る全党員は常にこの思想的、組織的準備を強化しなければならない。特に南部民族独立行動隊成果を生かし、明確な目的の意識のもとに強化擴大し、地区的結集をはかり、これが五・三〇の大衆行動の主体となる。また大衆が疲れを見せ、敵の攻撃にひるんだとき、行動中隊核はその志気を鼓舞し、隊伍を整えるために大衆勇気を振い起す宣伝扇動行動隊とならなければならない。宣伝扇動行動隊なつて闘争の政治的発展中核となるためには、政治訓練不足を克服する必要があり、実残的教育計画される必要がある。」というようなことが書き出されているのであります。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 相当詳細に情報を得ておられるようですが、その情報を聞きますと、日本共産党共産主義国家群の一環として、人民政府樹立最終目的として、あらゆる政治活動軍事活動を開始しておるという情報なり実情が相当に入つておるのですが、今日のメーデー騒擾事件は、その具体的な一つの事例として見ることができるかどうか、この点について御説明を願いたい。
  15. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。かような左翼破壊分子団体的活動が行われている疑いはきわめて深いのでありまして、これにつきましては目下関係機関と協力して、その実態につき調査を進めている次第であります。つまりこの破壊的な団体が、委員長御質問のような、日本共産党と関連性ありやいなやという点につきましても、われわれとしては関係機関と協力して調査を進めている次第であります。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 調査を進めておるので、日本共産党との関係があるのかどうかということの的確な証言はできない、こういう意味ですな。
  17. 吉河光貞

    吉河証人 疑いをもつて調査を進めておりますが、まだ最終結論には達しておりません。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 メーデー騒擾事件にかんがみまして、情報収集と、それから警備実施有機的一元化につきまして、現行機構並びに法規で、局長としてあなたは十分であるとお思いでしようか、その点について御説明を願いたい。
  19. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。私どもといたしましては、與えられた組織態勢機構を活用いたしまして、最大限度能率を発揮しなければならないというために、国警、自警とも緊密な連絡をとりまして、その能率向上に努めておるのでございます。現行機構態勢におきましても、さらに格段の能率を発揮し得る余地ありとは考えております。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 この騒擾事件の主動をなしたと見られております全学連あるいは北鮮系朝鮮人団体に対しまして、特審局としてはどういう処置、対策を考えておいでになりますか。
  21. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。目下これらの団体につきましては調査中でありまして、最終結論は出ておりません。全学連につきましては、御承知通り団体等規正令によりまして、都道府県単位以上の連合組織につきましては、政治団体として届出をさせまして、その動向はこれを監視いたしておる次第であります。一部破壊的な鮮人団体的活動につきましては目下調査中であります。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 調査中ということですから、あまり深くは聞かないことにしますが、要するに全学連というものは共産党細胞組織であつて、しかも前衛的務めをしておる。それからまた北鮮系鮮人も、広島なり京都なりのあの騒擾を見ますと、やはりその前衛隊としての活動をしておるのです。かような破壊分子団体的存在、あるいはそういう人々を国内に置くということは、日本治安の上に重大な問題であると考えております。特審局としては全学連等に対して解散を命ずるの権限がないでしよう、あるいはまた北鮮系鮮人に対してこれを強制送還するようなこともないでしようが、しかし特審局が調べたその材料を基礎として、それぞれの各機関善処方を要望するお気持はあるかどうか、この点をお伺いいたします。
  23. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。委員長お尋ねの措置につきましては、政府最高首脳部の御決定になることであると思います。私どもといたしましては、その実体を的確に把握するということが何よりも必要である、この見地に立ちまして調査を進めておる次第であります。
  24. 山口武秀

    山口(武)委員 ただいまの証言中、メーデー紛争事件について日本共産党との関係は現在疑いをもつて調査中である、かような証言があつたのでありますが、そこに多少疑問が起つたのであります。それはその前の証言におきましてWのことか、Vのことか、どちらかを言われましたね、どちらでしようか。
  25. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします、Vです。
  26. 山口武秀

    山口(武)委員 そういたしますと、Vノートというものはどのようなもので、どこから出されておるものですか。
  27. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。私どもとしましては破壊的な左翼分子がかような文書を発行配付しておるものと考えております。
  28. 山口武秀

    山口(武)委員 破壊的な分子がということを言われましたが、それは個人なんでしよしうか、それとも団体なんでしようか。
  29. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。この文書内容自体を見ますと、これが団体的組織を持つていることが明らかに看取されるのであります。
  30. 山口武秀

    山口(武)委員 單に看取されるだけで、これが団体から出ているということについては的確に御判断はできない状態にあるのですか。
  31. 吉河光貞

    吉河証人 先ほど申しました通りその実態調査中であります。
  32. 山口武秀

    山口(武)委員 そうすると、あなたが先ほど長々と読み上げましたところの文句、それはあまり真実性がないということにもなります。あるいはあなたの証言としてここで取上げるのにそれほど重視できる性格を持つているでしようか。
  33. 吉河光貞

    吉河証人 私は証言をしております。真実と信じたことを証言しております。
  34. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたが読み上げられたのは、これは私わかりませんが、おそらくあなたの読み上げた通りなんでしよう。ただそのことがそれほど重大な問題としてあなたが読み上げられたものであるかどうか。たとえばこの団体というものは單に推定されているのであるということになりますと、その団体ということに明確な裏づけがないといたしますと、それほど重視するに当らないというような場合も起りますので聞いたわけです。
  35. 吉河光貞

    吉河証人 文書内容自体にかんがみまして、きわめて重大なものだと考えます。
  36. 山口武秀

    山口(武)委員 Vノートという言葉の意味をどのように解釈なさるか。
  37. 吉河光貞

    吉河証人 私どもといたしましては、Vは組織体を現わす記号ではないかと考えております。
  38. 山口武秀

    山口(武)委員 組織的な団体ができているというように言われましたが、あなたが入手した経路というものはどういうことですか。
  39. 吉河光貞

    吉河証人 入手経路職務上の秘密でありますから申し上げられません。
  40. 山口武秀

    山口(武)委員 職務上の秘密と言われましたが、これは委員長はそのようにお認めになるでしようか。
  41. 内藤隆

    内藤委員長 認めております。
  42. 椎熊三郎

    椎熊委員 今度のメーデーの前に、特審局国家警察警視庁との間に緊密な連絡をとつたということを他の委員会で私は警視庁側から聞いているのですが、そういう事実があつたかどうか。
  43. 吉河光貞

    吉河証人 ありました。連絡会議をとりまして常時連絡いたしております。
  44. 椎熊三郎

    椎熊委員 その説明によりますと、相当情報を入手しておつたかのように私どもは想像されます。その情報に基いて警備防衛上の計画がなされたと思うが、防衛上の計画はどの方面でなされたのか。
  45. 吉河光貞

    吉河証人 メーデー警備東京警視庁所管でありまして、連絡会議の席上ではこの警備問題は協議決定されなかつたように聞いております。
  46. 椎熊三郎

    椎熊委員 それほどの重大な情報を持ちながら、現在の自治警察たる警視庁によつて、この情報に基く範囲内の騒擾と予想される点は防衛されると、特審局等では考えておつたかどうか。
  47. 吉河光貞

    吉河証人 これらの情報を、協力関係として警備機関に提供いたしまして、警備機関はこれらの情報並びに御自身でお集めになつた情報を総合判断されまして、十分なる警備態勢を立てられるものと考えておりました。
  48. 椎熊三郎

    椎熊委員 当日の警備には警察予備隊が出動されておつたかどうか。それから警察予備隊自治警察との関係は、警察法関係相当密着することができるような改正ができておつたと思うのですが、この際の連絡関係で、警備予備隊を出動するような要請があつたか。なくともそういうものが出たか、出なかつたか。
  49. 吉河光貞

    吉河証人 警察予備隊出動要請は聞いておりません。また警察予備隊が出動した事実も聞いておりません。
  50. 椎熊三郎

    椎熊委員 この種の状態は、全部自治警察たる警視総監のもと、警視庁管内自治警察官によつてなされたと了承してよろしいのですか。
  51. 吉河光貞

    吉河証人 さようであります。東京警視庁といたしましては、これは所管外のことでございますけれども警備要員不足を感ずれば国家地方警察からまた増員をとり得るような建前になつておりまして、国家地方警察からの増員はなかつたものと聞いております。
  52. 椎熊三郎

    椎熊委員 特審局としては、当日のメーデーの最初から最終、しかしてその後に起つた騒擾事件等についても何らかの手配等行つて情報収集実態捜査等をやつたかどうか。
  53. 吉河光貞

    吉河証人 事前におきましてはただいま申しました通り情報収集に全力をあげました。当日は職員が全部出動しました。そうして動向調査いたしました。大分けが人も出ております。その資料は東京地検並びに警視庁に提供しております。
  54. 椎熊三郎

    椎熊委員 特審局は主として情報収集事件捜査等をやつておられるのだろうと思いますが、今度の事件にかんがみて、今のような警察制度のもとにおいて、この事件全体の責任は那辺にあると考えられるか。たとえばそれは警視庁の責任であるとか、政府の責任であるとか、労働組合の責任であるとか、いろいろのことを言われておりますが、国民的立場から総括してこれを見るとき、何としても政治上の責任は政府において免れることはできないと思う。特審局等におきましては、事件実態捜査のみならず、この問題の責任ということについても考えが及ばなくしては、特審局の使命を全うすることはできないものであつて、現実におけるあなたの立場から、この最大の責任はだれが負うべきであるか、あなたの判断をひとつ……。
  55. 吉河光貞

    吉河証人 御質問の点につきましては国会の御判断にまつほかはないと考えております。私といたしましては、私どももさらに十分なる事前情報を入手して関係警察機関に提供し得なかつたという点につきましても、自分らの責任ありと反省いたしております
  56. 椎熊三郎

    椎熊委員 今あなたのおつしやるように、この事件の最高の責任の判断を国家最高の機関たる国会がなすべしとする、それも一つの議論である。ただ国会といたしましては、現実にこの問題等を契機として、警察法の改正案などがすでに提案されている。こういうものを審議して行く過程において、現在の特審局の使命、活動状態、そうしてそれらが第一線にある自治警あるいは国家警察との関係において、何らか不満足の点をあなたは発見しないのか、そういうことをお尋ねしたい。このままではよくないのじやないかという点がないかどうか。
  57. 吉河光貞

    吉河証人 たいへんむずかしい質問でありますが……。
  58. 椎熊三郎

    椎熊委員 いや、あなたのふだん考えておられることでいいのですよ。常識的な御議論でようございます。
  59. 吉河光貞

    吉河証人 日本治安機関組織編成等は、現実の所要にマッチして最大限度能率を高揚上得るように、しかもそれが民主主義のラインにおいて解決されなければならないと考えております。
  60. 椎熊三郎

    椎熊委員 一般的な質問はこの程度にしておきまして、当日の事件について二、三お尋ねしたい。あなたが先ほどから証言されました事前における重大なるいろいろな情報入手、その出所は捜査中で目下わからないと言う。それはおそらくは地下に潜行しておる非合法的組織分子の発したものではなかろうかと私は想像するのだが、あなたはどう思われるか。従つて今度の、先ほど朗読せられたるがごとき指令のような、指導書のようなものは、国会などに入つておる国会議員をよそおうておるがごとき共産党員と称する者などには、ほとんどわからないところから出ておるのではないだろうか、国会に出ておるような、そうしてこの地下戰術の指導者たちが目的を達したときには一番先に粛清されてもするような、こういう——にはわからないところから出ておるのではないか、そういうふうに私は考えるのだが、あなたの御判断はどうか伺いたい。
  61. 吉河光貞

    吉河証人 国家の最高機関であります国会の議員の方々には、かような極左的な破壊活動に御関係があるとは考えておりません。
  62. 椎熊三郎

    椎熊委員 もつとも国会に出て来る以上は、民主主義の原則を信頼し、国会主義でないと言つては出て来られないのですから、あるいは仮面をかぶつておるか、あるいは真正の共産主義者から宣伝の具に利用されて出されて来ておるか、共産党としては将来目的を達したときには一番先に粛清される——のごとき存在が、今日の日本共産党衆議院議員だ。     〔「——、何を言うか」と呼び、離席する者あり〕
  63. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  64. 椎熊三郎

    椎熊委員 お前らはほんとうの共産主義を知つておらぬ、共産主義者からおどらされている——だ。     〔「——とは何だ」と呼び、議場騒然〕
  65. 内藤隆

    内藤委員長 委員の席へついてください。自席へ帰つてください。     〔「売国奴だ」「売国奴はお前だ」と呼び、議場騒然〕
  66. 内藤隆

    内藤委員長 自分の席へ帰つてください。
  67. 椎熊三郎

    椎熊委員 ごらんなさい。ちよつと刺激されるとがまんできないほど、こんなおかしな者ばかり出ておる。こんな者は共産主義の本流を行く——ぢやないんですよ、——なんですよ、こんなのは。
  68. 内藤隆

    内藤委員長 委員の席についてください。
  69. 椎熊三郎

    椎熊委員 重大なる指令の発行所さえもわきまえないような分子は、共産党の主流だとは私は思わない、——だ、そんな者は。そこで、お腹も立ちましようが……。
  70. 内藤隆

    内藤委員長 椎熊君、質問を続けてください。
  71. 椎熊三郎

    椎熊委員 ただちにわかりますように、共産党員だなどと称して国会に入つておる国会内の共産党員議員などと称する者は、現に特審局の責任者であるあなたの眼前に展開されたところの行動によつても明らかだ。従つてこれは知るよしもない。     〔発言する者あり、議場騒然〕
  72. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、静粛に願います。
  73. 椎熊三郎

    椎熊委員 そこで、私はさらに重大な問題を聞きたい。     〔離席する者あり〕
  74. 椎熊三郎

    椎熊委員 どれだけの暴力をやれるか、やらしてみろ。こんな——は——だ。——なんだ。——なんだ。
  75. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、自席へ帰つてください。
  76. 椎熊三郎

    椎熊委員 こんな——は暴力も振える——じやないんだから……。     〔「委員長、取消しを命じなさい、国会の品位を傷つけるものだ」と呼ぶ者あり〕
  77. 内藤隆

    内藤委員長 委員外の指図は受けません。いずれ質問が済んでから。——椎熊君、質問を続けてください。
  78. 椎熊三郎

    椎熊委員 こういう前説がなければ、私のこれから聞くことが、あなたには了解が行かないから……。あなたは国会のこんな者どもが共産主義者と思つていたら誤りだ。これは共産主義者におどらせられている狂信者なんだ。こんな者は本流の共産主義者じやありませんよ。  そこで承ります。メーデーの日の具体的の事項について私は聞きたいのですが、メーデーの司会者は、今度の騒擾を起したのは、総評が準備委員会で拒絶した学生の一部であるとか、北朝鮮の人々であるとか、そういう者が自為発生的にあの行列の中に侵入してやつた——騒擾は主としてこれらの手によつてやられたことは昨日までの証言でほぼ明らかになつております。しかしながら真にこのメーデーの司会者が、日本の正常なる労働運動の発展のために、かくのごとき破壊分子の介入することはかえつて日本労働者のためによくないのだというまじめなる感覚があるならば、あらゆる方法をもつてこれらの者が潜入して来ることを防止しなければならない、私は昨日などの証言を見ると、そういう者が行動などに加わつて来ることは、自然発生の現象であつてむしろ歓迎してもいいくらいなことを証言しておるのであつて、そうしてみると、メーデーの式典は日比谷で散会後、その後において行われた騒擾事件ではあるが、間接的には、あるいは直接的には、このメーデーの司会者とこの騒擾事件者との間は必ずしも無関係であつたと断定することは早過ぎるのではなかろうか、従つて特審局等はいろいろの情報あるいは証拠によつて、これらの破壊分子と総評の今度のメーデーを主催した側との関連性をどうお考えになるか。
  79. 吉河光貞

    吉河証人 メーデーの主催者側におきましても、おそらくただいま申し述べたような極左破壊分子事前における情報は、ある程度察知しておられたものと考えるのであります。もししかりとすれば、これに対しては万全の対策を持つて臨むことが望ましかつたのではなかろうかと考えております。
  80. 椎熊三郎

    椎熊委員 まだ事件捜査中のようですから、最終的の断定を下すのは困難であろうと思うが、ただいまの証言によれば、あれほどの情報があつたにもかかわらず、ああいう行動騒擾前までのあの行動を許しておいたことに責任があるのだとお考えのように私は了解します。この後の事件捜査の結果によつてそのことはさらに明らかになるだろうと思います。  さて私はその中で朝鮮人破壊分子といいますか、極左分子といいますか、そういう者がたくさんある、それが多く北鮮の人だ、その北鮮のこれらの運動に参加した人々は、戰前から日本に定住しておつた者か、戦後日本に非合法で潜入して来た者であるのか、それらについての取調べはありますか。
  81. 吉河光貞

    吉河証人 具体的にまとまつた御答弁をする資料を用意しておりませんが、これらの破壊的な鮮人が、現在北鮮を支持して活発な政治活動行つているということは事実であります。出身は北鮮と限らず南鮮の出身者もまじつておるものと考えております。
  82. 内藤隆

    内藤委員長 それは不法に密航した者じやないかという点はいかがですか。
  83. 吉河光貞

    吉河証人 現在大多数の鮮人の方々はすべて登録しておる者でありますが、このほかに無登録で密航の疑いある者も相当数あるのではなかろうかということは推定される次第であります。
  84. 椎熊三郎

    椎熊委員 実は私ども他の委員会で、これに関係した委員会が国会にはいろいろあるのですが、この方面で聞いておるところによると、終戦後密航した者の中に北鮮の軍籍を持つ者、軍事専門家が多数入つて来ておる、それらが入つて来て後、日共における軍事行動指導というものが非常に活発になつて、それらの訓練等は、主としてこれらの手によつて具体的に行われておるということを聞いておるのです。そういう事実が実際にあるのかどうか。またあなた方の調査の結果、あるいはまた実際に検挙した者の中に、そういう種類の者があつたかどうか。
  85. 吉河光貞

    吉河証人 お答え申し上げます。現在日本におきましては、在日鮮人組織として民戰、祖防の二つの団体がある疑いがあります。この祖防には中核自衛隊が結成されつつあり、非常に極端な過激な行動隊組織を持つ疑いがあります。そしてただいま御質問のような、北鮮系の軍人が国内に潜入して、こういう運動の指導に当つているのではないか、これは情報がございます。調査中であります。
  86. 椎熊三郎

    椎熊委員 このごろいろいろ不穏当と思われる共産党の……。     〔発言する者あり〕
  87. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  88. 椎熊三郎

    椎熊委員 共産党の名によつてなされておる指令のようなものを、まま私ども証拠品として見せつけられておる。国会におる卑怯未練な共産党などは、これは日本共産党でないということを言いたがつておる。私もこれらのような卑怯な——は、これには関係ないだろうと思う。私思うのに、これらの人というものは、地下に潜行しておる日本共産党の本流を流れる、本質を行つておる者の手によつてなされておる指導であつて、こんな者がしておる指令ではないと思います。しかしながらその地下に潜行しておる、本流を行つておる共産党の中に、八名からなるかつて共産党指導者、幹部であつた者が、いまだ検挙されておらぬ。徳田球一、野坂參三等これらであります。それらがこの指令に関係しておると思われるような証拠があるかどうか。
  89. 吉河光貞

    吉河証人 先般コミンフオルムの機関紙に……。     〔発言する者多し〕
  90. 内藤隆

    内藤委員長 答弁が聞えませんから、静粛に願います。
  91. 吉河光貞

    吉河証人 コミンフオルムの機関紙に徳田球一名の論文が出ました。いわゆる五全協なるものの会議で決定したと称せられる新綱領の説明を述べております。かような事実からして、これらの諸君が、こういうような活動に関與されているのではないかという疑いを持つ根拠があるものと考えます。
  92. 椎熊三郎

    椎熊委員 大体私もそういうことを承つてつたので、明確に御証言を得たが、徳田球一の名によつて、そういうことは世界に公表せられておる。従つてこれらが潜行して、地下にあつて指令を出しておることは間違いない。私ども議会から見ると、それらの行動こそは日本共産党行動であつて、仮面をかぶつて、この辺をうろうろしておるのは、共産党と称する日本の国会議員ではあろうが、役に立たぬ————だけが来ておるのであつて、追放になることもできぬような——が来ているのだと解釈しておる。それですから、あなたはこの証言台に立たれましても、それらがままあなたの発言に批判を加えたり、妨害をしたりしても、そんなことでもしておかないと、党へ帰つて叱られる——なんですから、これを気にしないで、自由なる御発言を願いたいと思います。  さらに進んで学生団体のことを、あなたの方でこれを解散を命ずる権能も何もないということだが、各大学にわける学生のこういう過激分子というものは、先般来早稲田大学の総長にも聞き、東大の学長にも会つてお話を聞きましても、ごく少数だそうです。小数だそうで、多数の学生はこれを白眼視して、そばにも寄りつかぬ。けれどもこの少数はよく訓練を経ておつて、なかなか多勢を扇動してはいろいろのことをやる。これを特審局等で、学内入つて捜索するということは、警視庁等では常に問題を起しておるのだが、特審局等も、非常に困難な面があると思う。しかしながら特審局としては、学生もやはり国民の一人ですから、これらの行動は治外法権ではない。何らかの方法によつて、あなた方は常日ごろそういう者の情報をとつておるのか、お調べになつてるのか、研究せられておるかどうか。学生に関する限りは、特審局はまつたく治外法権的に別個な扱いをしておるのかどうか。その点を承りたい。
  93. 吉河光貞

    吉河証人 特別な治外法権的な扱いはしておりません。調査の必要がある場合には、むろん学内におきましても調査活動をいたしております。
  94. 椎熊三郎

    椎熊委員 そこであなたにお伺いしたいのは、ごく少数なる学生破壊分子的な者は、学生と称するだけで、実は学生でないのじやないか。学生の装いをしている擬装学生であつて、実際はだれかの指令に基くところの破壊行動の尖兵隊、そういうようなものであつて、あなた方の調べでは、実際は学問もしておらぬのだ。教授の授業も聞いておらぬ。図書館にも行つておらぬ。家へ帰つても、特別読書をしているようにも見えない。まつたく革命行動の予行みたいなことに没頭しているのであつて、これは擬装学生だとお思いになるかどうか。
  95. 吉河光貞

    吉河証人 一部の極端な破壊的な学生が、こういう破壊的な活動に狂奔しておるという疑いは、十分にあるものと考えております。
  96. 椎熊三郎

    椎熊委員 もつと具体的に言うと、札幌等の学生を調べた際に、共産党の職業党員とでも申すのでしようか、毎月一定の給與を受けて活動している者があるということを、私どもは聞いておるのです。そういう者が都下の各大学の中に実際存在するかどうか。
  97. 吉河光貞

    吉河証人 かような点につきましては、まだ最終結論は得ておりません。調査中であります。
  98. 椎熊三郎

    椎熊委員 今最終結論は得ていないのですが、そういうこともありそうで、お調べになつておるのですか。
  99. 吉河光貞

    吉河証人 調査は、そういう点よりも、むしろそういう破壊的な学生の、非合法な集団の実態いかんという点に向けられておるのであります。もしさような実態が把握されました場合には、所要の法的措置を講ずるつもりであります。
  100. 椎熊三郎

    椎熊委員 この問題には直接関係ないのですが、われわれは現実に今警察法の改正を提案されて、それを審議中です。従つてこの際あなたに承りたいのは、特審局というものは、今政府から出されている警察法の改正のもとにおきましては、将来総理大臣の命令下に置かれるのか。今のような法務総裁の命令下に置かれるのか。現在出されている法案では明確でないと思いますが、あの法案は、御承知かどうかわかりませんが、現在は一体どうなつておつて、改正法案でどうなるのか。
  101. 吉河光貞

    吉河証人 現在は法務総裁の指揮、命令、監督を受けております。将来は外局といたしまして、公安調査庁長官の指揮を受けますが、この長官は、法務総裁の監督を受けることになります。法務総裁の監督下に立つわけです。
  102. 椎熊三郎

    椎熊委員 改正法案でも、直接総理大臣の監督下にあるというのではないのですね。
  103. 吉河光貞

    吉河証人 直接は法務総裁の監督下にあります。
  104. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの椎熊君の発言中、不穏当な言辞がありますれば、速記録を取調べの上、適当に処置したいと存じます。御了承を願います。
  105. 山口武秀

    山口(武)委員 議事進行について……。ただいま委員長からのお話がありましたが、先ほどの椎熊君の発言というのは、お聞き及びの通りでありまして、これは当委員会の運営にあたつておられる委員長としても、十分お考えを願いたい、このように思うわけであります。椎熊君の先ほどの発言というのは、昨日島上証人に対して、いろいろ尋問をいたしましたが、あべこべに椎熊君がさんざんにやつつけられてしまいまして、あげくのはてに引かれ者の小うたのように、これは委員長証人の選定を誤つたのだ、このような泣言を言つてつたのであります。さらにその後に出て来ましたところの瀧田証人に対しても、椎熊君の尋問の拙劣さから、椎熊君の思う通り証言を得られませんで、これまた泣言を言つてつたのであります。その憤懣を、腹いせとして本日漏らして来たわけであります。このようなことは本委員の体面から申しましても、秩序から申しましても、許しておけない行為でありますので、委員長におきましては、十分厳正に御処置せられるよう希望しておきます。
  106. 内藤隆

    内藤委員長 御意見として承つておきまするが、本委員会委員諸君の尋問ぶり等についての批評は、御遠慮していただきたいと思います。浦口君。
  107. 浦口鉄男

    ○浦口委員 ただいま証人証言中、南部地区の解放部隊ということを言われたのですが、これは何のことですか。
  108. 吉河光貞

    吉河証人 文書内容を読み上げたのでありまして、その内容につきましては調査中であります。
  109. 浦口鉄男

    ○浦口委員 警視庁調査事項内容によりますと、注意すべきことは朝鮮人約三千名が南部地区に云々、こういうことがあるのですが、これを意味するのですか。
  110. 吉河光貞

    吉河証人 関連性のある疑いを持つております。
  111. 浦口鉄男

    ○浦口委員 事前情報収集について、先ほど御証言があつたわけでありますが、このたびの事件の実情を見た人の一部の批評によりますと、警察は、各警察署が襲撃されるということが今度の最も大きなねらいのようである、こういう情報に基いて、警察署の擁護ということに警備の重点が置かれたために、このたびの事件をして大きくした原因がある。非常に情勢の收集に誤りがあつたというような批判も一部にありますが、その点はいかがですか。
  112. 吉河光貞

    吉河証人 先ほども説明申し上げました通り、四月中旬前後におきましては、さような情報が若干ございました。私どもといたしましては、それほど確度の高いものとしては取扱つていなかつたのであります。東京警視庁がどういうような情報によられたか、その具体的な内容は実はまだ私として聞いておりません。
  113. 浦口鉄男

    ○浦口委員 実は昨日も証人として来られました全繊産業労働組合同盟会長の瀧田君の証言にもありましたし、なお全繊新聞の四月十九日号にも、労働組合としても相当徹底した情報をつかんでおるのであります。二、三行ちよつと読んでみますが、「いわゆる平和闘争の名のもとに、共産党及びその同調者が、来るメーデーを武装蜂起のメーデーとして、国内擾乱を企図せんとすることに断固反対し、極左極右の反動勢力と対決して、このメーデー闘い抜くべく、万全の準備を進めるよう要望している。」これは四月十九日の全繊新聞の社説でありますが、二十六日のやはり同じ新聞の主張を見ましても、「平和の自由と独立を破壊する国際共産党活動に対しては十分に警戒し、はつきりした態度で闘わねばならない。今年のメーデーを武装蜂起の機会にしようなどと企む共産党の策動は「健全なる労働組合の堂々たる歩調によつて一蹴せよ。」こういう、一労働組合でありますが、社説で主張しておることから類推して参りますと、特審の情報收集というものが少し甘かつたのではないか、こういうふうにわれわれは考えるのでありますが、その点はいかがですか。
  114. 吉河光貞

    吉河証人 情報收集注動には不十分な点があつたかもしれませんが、とにかく私どもとしては全力を盡して、いろいろな各種の情報收集に努めた次第であります。
  115. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これまた昨日の当委員会に参りました島上証人事前情報についての答弁では、多少のトラブルは予想された、こう言つております。と申します内容は、これは今年のメーデーばかりでなしに、今までの経験から申しましても、いわゆる実行委員会によつて計画された通りに行かない。たまたまそこにそれと別な、たとえば演説をさせると言つて演壇にかけ上るとか、何かその計画以外にじやまが入るというような、多少のトラブルを予想した、こういうことを言つておるのでありますが、われわれはこれに対してまた別な見解を持つているわけです。ところでお尋ねしたいのは、このメーデー実行委員会が、事前警視庁と数回打合せしておる。その中には都の公安委員会も入つておりますが、おそらくこの中には特審局も直接間接情報の面で打合せに加わつている、私はそういうふうに考えるのであります、そういたしました場合に、労働組合警視庁並びに特審局との打合せにおいて、多少のトラブルが起きるかもしれないというふうな情報しか、結論においてそこに想定されなかつたかどうか、その点……。
  116. 吉河光貞

    吉河証人 私どもは全然、関與しておりません。あるいは主催者と警視庁側との折衝はあつたかどうかわかりませんが、絶対に関與しておりません。
  117. 浦口鉄男

    ○浦口委員 別な言葉でお尋ねをしますと、直接に関與はしなくても、結局特審局として、警視庁事前情報の交換をして、その情報に基いて一つ結論を大体出したと私は想像できるのでありますが、そうした特審局によつて得られた情報が、労働組合のこのメーデーに対する一つ準備としての心構え、あるいは具体的な準備に、そういう情報が浸透していたと思われるかどうか。
  118. 吉河光貞

    吉河証人 自警、国警との連絡は、相協力の関係で相互の情報の交換はいたしますが、それ以上進んだ関係ではなかつたと考えております。従いまして一つ結論を打出して、これを主催者側に持ち込むというようなことは、実は聞いていないのでございます。
  119. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そうしますると、実行委員会が多少のトラブルは予想したというふうな考えでこのメーデーを実施したということについての、特審局の考えはいかがですか。
  120. 吉河光貞

    吉河証人 それはただいまここでお聞きするお話でございまして、事前においても事後においても、そういうお話は実は聞いていないのであります。先ほど申しました通り事前に、破壊的な分子の動きがあるという情報は、主催者側におかれても、ある程度は察知されていたのではなかろうかと想像している次第でございます。
  121. 浦口鉄男

    ○浦口委員 相当具体的に計画されたものではないかということを、われわれはいろいろな面から感ずるのであります。たとえばここに当日の模様が報道されております、これは当日の式典を見ていた一運転手としての談話でありますが、「共産党がどう動くかということはだれでも注意していました。党の方でも本部らしいところは赤い旗を中心にして、人目を引きやすいように振るまつていました。しかし別に積極的に暴れ出すなどという気配はなかつた。すると十人ばかりで一組になつた党員が、幾組も幾組も方々からやつて来て、場内をうろつき、おれたちの所属はどこだどこだと言いながら、どの団体、どの組合の中にもまぎれ込んで行きました。何の意味だかわからなかつたが、解散の時刻となると、この連中が日比谷へ日比谷へ、人民広場へと音頭をとり、しり押しをして、労働組合員たちを押しまくつてしまつた。あれがつまり皇居広場への動員だつたのですね。共産党つて頭がいいんですね。」まあたいへん感心しておるわけですが、こういう一運転手のこの記事をそのままとすれば、これは率直に私は見た現実ではないかと思うのですが、これくらい準備されていたとすれば、特審局はもう少し前に適確な情報がつかめたと思う。その点いかがですか。
  122. 吉河光貞

    吉河証人 概略先般御説明したような情報はつかんでおりまして、これは関係機関通達しておるのです。なおこれらの情報の中には、一部の破壊分子がいろいろな兇器を持ち込むというような種類の情報もありまして、これももとより関係機関に通報しておる次第であります。
  123. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後に一点、警察当局との連絡についてお尋ねしておきます。実はこの委員会は御承知のように、三・一事件、三・一五事件、いわゆる広島、京都の事件の審査をいたしまして、このメーデー事前に対策を講ずべくやつたことは御承知通りであります。ところで、その事件のときに、特審局の中国支局長の梶川俊吉という方が本委員会証言をされたのでありまするが、その中で梶川氏は、特審の中国支局は、三・一闘争及び総評主催の弾圧法反対、広島県大会に関する事前情報を入手し、自信を持つて治安関係機関事前打合せ会議に臨んだが、遺憾ながら聞き置く程度で終つてしまつた治安関係機関事前打合せ会議は、単なる情報交換にすぎないという意味証言をしているのであります。もちろんこの根底においては、先ほど証人もおつしやつたように、特審の情報と警察の情報とをお互いに持ち寄つて、現実にそれの取捨をどうするかということは、警備の実際に当る警察の問題であるとは思いますが、しかしこの特審局事前情報というものと警察の情報の相違は別として、特審の情報が必ずしも警備の上に生かされていない、また逆に申しますと、国警、市警、自治警の方では、特審局情報活動にあまり協力の態度を示していないということを、われわれも現実に考えまた現実に体験をしておるのであります。そういう点について、これは非常に微妙な問題ではありますが、特審局長とし情報を交換された当時の模様、あるいは今後に対するそうした欠陷についてのお気持をお聞きしておきたいと思います。
  124. 吉河光貞

    吉河証人 ただいま御質問になりましたことは、非常にごもつともなことだと考えております。さようなことを前提といたしまして、自警、国警との——検察庁も含めまして、緊密な連絡を一歩々々確立して行きたい、そうしてお互いにその協力によつて最大限度能率が高揚できるようにして行きたいと努力しておる次第でございます。
  125. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後にもう一つ。今度の暴力的な騒擾事件によつて実力には実力ということで右翼が台頭しておる、こういう一部の報道がありますが、そうした現実の実態があるのか。あればここで現実のものをお知らせ願いたい。
  126. 吉河光貞

    吉河証人 かような点につきましては、全国的にも警戒して、目下調査をしておりますが、具体的な現われはありません。
  127. 内藤隆

    内藤委員長 高木松吉君。
  128. 高木松吉

    ○高木(松)委員 実は重大な事項について証言をお願いするのですから、その証言は、はつきりした証拠に基いて証言されることと、それから証拠、状況あらゆるものから、証拠ではつきり結論は出ないが、そう推定できるという証言と、それからあなたの職務の勘で、こうであるのではなかろうかというふうに、三段階にわけて、考えて証言をしていただきたいと思うのであります。むろん私の申し上げることは、治安のことであり、皇居前のメーデー関係のあることではありまするが、日本として、日本国民として、大きな関心事をもつて、この問題の答えをはつきりさせたいと考えておるゆえに特に前置きを置いてお願いをするわけであります。というのは、今回のメーデーにおけるいわゆる騒擾事件、破壊行為、各所にこういう形のものが現われております。この形のものが、一体他国の指令、指導によつて行われておるとするならば、その事実があるかないか。その他国とは一体どこであるかということについてまずお尋ねいたします。
  129. 吉河光貞

    吉河証人 お答えいたします。個々の具体的な暴力主義的事犯が、一々他国の指令によつて行われておるとは確認もいたしませんし、考えてもおりません。
  130. 高木松吉

    ○高木(松)委員 それならば、これに影響力を與える一つ指導というようなものが、他国から流れて来ておる事実はありませんか。
  131. 吉河光貞

    吉河証人 国外からわが国内の破壊的な分子に対する一般的な勧告と申しましようか、指導と申しましようか、いろいろな動きがあることは事実であります。
  132. 高木松吉

    ○高木(松)委員 そういたしますれば、ある特定の他国が、日本に対し、間接侵略の方法として、この騒擾破壊行為が行われておるという、いわゆるあなたのお考えはどうなつておりますか。
  133. 吉河光貞

    吉河証人 その疑いはあります。
  134. 高木松吉

    ○高木(松)委員 そうしますと、日本国内に、日本の秩序を破壊して、日本の国をある一定の外国の勢力にゆだねようとするような売国的の行動をとつておる事実はございませんか。(「それは自由党がやつておる」と呼ぶ者あり)何を言うか。お前たちのやつたことを聞いておるのだ。
  135. 吉河光貞

    吉河証人 御質問の点までは確認しておりません。
  136. 高木松吉

    ○高木(松)委員 先ほど申し上げたように、あなたの職務の勘として——むろんこれは考えなければならぬ問題だと思う、勘としてそういう事実のあるかないかをひとつお話し願いたい。
  137. 吉河光貞

    吉河証人 将来におきましては、さような事実はあり得るのではなかろうかと考えております。
  138. 内藤隆

    内藤委員長 田渕光一君。
  139. 田渕光一

    ○田渕委員 私は率直に伺いたいのですが、第一、徳球以下の、徳田球一以下の地下へもぐつた者がいまだにわからぬこと、それからこのメーデー事前情報収集その他においても、あるいはまた今日ずつと当委員会吉河君に証言を求めても、具体的な確証は何も握つておらぬ。一体特審局は今日まで何をしておつたのかということを私はまず聞きたいわけなんだ。目下調査中だとか、目下研究中というような証言では、われわれ砥結論を出すのに非常に苦しむのであります。徳田球一君その他は、人も忘れるくらいの時代になつても、まだ行く先さえもわからぬということは、絶えず国民の最も関心を持つことである。どこへもぐつたかわからぬということは、結局今日の制度、機構法律が、あなた方の手と足を縛つてしまつておるがために、十分なる活動ができない。一方は、暴力革命の目的のためには、手段を選ばず破壊活動をやつておる。一方は不完全な制度、機構法律において手と足を縛られて動けない。格段の相違があるところに、あなた方の活動ができない原因があるのではないか。まずこれから先に聞いておきたい。というのは、徳田球一君そのほかの日共の幹部がつかまらぬということは、率直に言うなら、すでにあなた方はなめられておる。われわれとても不愉快だ。何を特審局はやつているのか。それは今日までの占領下における制度、機構法律の上の欠陷が災いをなし、あなた方の手と足を縛つておる。一方では、縛られておりながらも、そういう法律、秩序、機構というものを無視してしまつて、何ら手段を選ばず暴力でやつておる。それがために、地下の組織ができておるが、これを探ることがなかなかできない。これが今日この重大な段階になつて、五月一日のメーデーについて、目下調査中だとか、確たる証拠は握つておらぬとか、情報は得ておらぬとか、こういうことは、まずこの機構、制度、法律で手と足を縛られておるがためにできないのであるか、どうか。あるいは向うが手段を選ばずやつておるから、われわれは手が及ばぬというのか、こういうような点をまず伺つて結論に到達したい何かを見出したいと思うのであります。こんなことは私は初めて吉河君に発言する。しかし国民の言わんとするところを言うのが代議士です。実際特審局は何をやつておるかというのは大衆の声である。そこで私はそういうことを言わなければならぬ。どうぞそういう点をはつきりお教え願いたい。
  140. 吉河光貞

    吉河証人 お答え申し上げます。率直な御叱責を受けましたが、まことにその通りでございます。御質問のように、追放八幹部の所在がまだ発見されない、またその逮捕状の執行もできないというのは、まことに何とも申訳のないことでありますが、その根本的な欠陷は、われわれ調査捜査に当るものの能力が低いからであると考えております。今日の日本におきましては、あくまでも捜査なり調査は、民主主義のラインに沿いまして、基本的な人権を尊重しながら行わなければならない。それがためには、どうしても調査捜査に従事するものの能力を最大限度に高めなければならない。高めることによつて相当解決がつくのではないかと考えておるのでありますが、職員の訓練あるいは教養につきまして、私自身といたしましてもまことにおはずかしい次第でありまして、今後訓練をいたしまして、能率を高めることによつて、この問題は解決しなければならぬと考えております。
  141. 田渕光一

    ○田渕委員 それがために予算的な措置が必要ならば、予算的に必要な措置を要求すればよろしい。あるいは、それがために立法的に必要な問題があるならば、内閣が許さなければ、われわれが議員立法として出すのでありますから、こういうふうにしてもらいたいという要求があつてしかるべきだ。徳田君の問題は今日もうかびが生えている。三年も前のことである。それがつかまらぬという隘路がどこにあるか。もちろん占領下においてはオーケーの必要があつたからしかたがない。四月二十八日に平和條約が発効して、政治が自主性をとりもどし、あらゆるものが自由になるというときが来たならば、なぜ特審局はただちにこれを出すような準備をしなかつたかということを私は不満に思うのであります。機動力が足りないならば、機械も與えよう。そうして大衆の人権を尊重しなければならぬ。(「委員長、田渕君は少し脱線したな」と呼ぶ者あり)脱線じやない。少数党の人権を尊重するために、九割九分の大衆の人権が蹂躙されている。こういうことを考えるならば、法の運用の妙もあれば、その人の能力等もありましようけれども、濫用せぬ範囲において今日ただちにこのスイッチの切りかえをする必要はなかつたか。これがなかつたために、三日間の空間において、ちようど計画されていた通り皇居前でやられたと思うのであるが、こういう点にいつてあなた方が研究されておつたが、出す時期でないと思われたのであるか、あるいはその準備ができておつたのか、できていなかつたのか、こういう点も伺つておきた。
  142. 吉河光貞

    吉河証人 まことにごもつともな御質問であります。私どもといたしましては、先般破壊活動防止法並びに公安調査庁設置法、公安調査委員会設置法の御審議を国会にお願いいたしまして、可決を見たのでございますが、この公安調査庁におきましては、特に職員の練成訓練という点に重点を置きまして、特別な研修機関を設置し、徹底的な訓練をいたしたいという建前をとつておるのであります。かような手段をもちまして、また実務を通じましても、法の実施後におきましては最大限度の練成をはかつて行き、目的を達成したい、かように考えております。
  143. 田渕光一

    ○田渕委員 そこでまず大体準備、あるいはこれに対するおおよその見通しがつきましたが、そこで今回のこのメーデーに対する情報は、あに特審局でなくても、全纎同盟会長である瀧田君が発行している、四月十六日ないし四月二十六日の全纎新聞を見ても、このメーデーに対して共産党はこういうことをやろうという実態を把握しておる。特審局でなくとも、民間の労働組合の幹部が、すでに情報を握つて、新聞に堂々と出しておる。疑いを持つのはこれなんです。特審局特審局で調べておるが、共産党情報収集だけに専念されたために——総評の幹部並びに総評の実行委員のメンバーが、社会党の左派糸の幹部によつて占められておる問題、こういうものに対して、つまり共産党情報収集に専念したために、総評のシステムあるいは計画というものに対する情報に手ぬかりがあつたのではなかつたか。吉武労働大臣の報告を聞いても、非常に甘く見ておる。これらの関係から行きまして、情報収集は、講和條約発効後における第一回の五月一日のメーデーに対する共産党情報収集ばかりであつたのか。総評のシステムあるいは幹部の連中の情報收集までもやつてつたのかどうか。この点をひとつ伺つておきたいのであります。   (委員長退席、鍛冶委員長代理着   席〕
  144. 吉河光貞

    吉河証人 私どもは、破壊活動を行う破壊的な分子に関する情報収集しておりました。
  145. 田渕光一

    ○田渕委員 そこでこういう大きな問題が起きた。結局破壊活動をするというものは、共産党もしくは共産党尖鋭分子である、こういうぐあいに考えておるが、総評の島上君の証言をずつと求めまして、きのうは全纖同盟会長の瀧田君の証言を求めると、大きな食い違いがある。見様にもよりましようが、総評の中にも、左派系といわゆる保守系と二つありましようが、破壊活動の方ばかり情報収集されたものだから、総評のメーデー実行委員会の事務局長である島上君に対する情報をとらなかつたのではないか。破壊活動尖鋭分子があらゆるものを画策したが、島上君は容共左派でありますから、これを断固としてけらずに、暗黙のうちに認めておつたというようなことが、このデモの行進の中に幾分でも尖鋭分子が入つてつた。日比谷で解散したから、われわれメーデー実行委員会は責任を持たぬというが、そういうことはない。本員はちやんと当日十二時からここで、デモ行進が開始されてから日比谷で解散するまで、実際デモの中に入つて調査し、あの暴動の状況をつぶさに見ておるのでありますが、結局日比谷で解散するまでは総評の責任で、それから後はかつてにやつたのだから知らぬというが、その総評の事務局長というのは容共左派の島上君じやないか。昨日も私は言つたのだが、島上君はあなたも御承知通り容共左派であるということははつきりしている。東京第六区の補欠選挙で左派を名乗つて出ているようなりつばな左派だ。これらはずつと一連の関係があつて、やることを黙認したためにここに来たのじやないかと思う。要するに島上君にしてみれば、あるいは島上君を実行委員会の事務局長とし、その下にある幹部どもが、全部こういう計画を知りながら、知らぬふりをしてデモが完全に行われたという。五つに分散させたということも大きな失敗です。なるほど、一つのところでやるより五つに分散すれば、五つのところに警察行動が分散する。これは共産党の陽動策戰に乗つている。警視総監が言うように、警察を襲撃するというから各警察、交番を警戒していた。はつきり陽動策戦に乗つて裏をかかれる。尖鋭分子全学連は赤坂見附から行動を起して、自由党の本部に石をほうり 日比谷から解散しようとするデモを引きずり込んであの暴動を起している。こういうような点で、あなた方は破壊活動をやる尖鋭分子だけの情報をとつておるというけれども、彼は桃色ではない、りつぱな赤なんだ、これらに対する情報をとらなかつたということは一つの失敗ではなかつたかと思うのですが、こういう点に対して、あなたとしてみれば、そういうことも知つてつたけれども、もつばら尖鋭分子破壊分子の方ばかりの情報を收集しておつたと今でも言われるのであるか、あるいは多少とも警戒をしておつたのであるか、あるいはそういうような情報によつて、取締り当局の警視庁並びに国警あるいは検察庁との会議にその話題が出たか。実行委員会の事務局長が左派である、ここらに来はせねかということを、われわれは聞いただけでもなく、見ただけでもなく、その前にもうこれは怪しいということを私どもは勘で知つてつた。それをあなた方は、職務上の勘というか、そこまでやらないと思つていたか、あるいは勘があつたかどうかということを伺つておきたい。というのは、島上君は責任がないとのがれるが、のがせません。これは大いに責任がある。道義的な責任じやございません、そこでどうかこの点をひとつ伺いたい。
  146. 吉河光貞

    吉河証人 今回のメーデー実行委員会の動向につきましては、関係機関の間におきまして、別に論議はいたしませんでした。また私どもも、主催者側実行委員会動向につきましては、別に情報は入手もいたしませんし、発見もなかつたのであります。
  147. 田渕光一

    ○田渕委員 そこなんだ。結局そこでああなつた。総評にすつかりやられた。京都の二月二十三日事件、三月二十日事件と、総評の京都地区の加賀田委員長が言つたように全部やられておる。そうして解散したものを裏でアジつて、これを連れまわつて尖鋭分子指導している。五月一日にこれが来る。あるいはまた全織の滝田君の言う通り来る。来るとすると、尖鋭分子を見守らなければならないものが、この尖鋭分子に対する警戒というものが不十分であつてまず二重橋あたりに警官を百五十人しか置いてなかつたのです。そうすると特審局情報に対して完全に裏をかかれていないならば、まずあそこに入れないためには、日比谷で食いとめるための警備力がなければならないのに、これがなかつた。これから出て来る証人からいろいろ証言が出て参りましようけれども、あなた方としてはこうなのだという情報のしかとしたものはどうなのか。取締り当局のキヤツチしている情報との間に食い違いがなかつたか。とにかくあなたが先ほど証言されたように、共産党の五全協以来の軍事革命の暴動計画の陽動作戦に今度ははつきり乗つておる。当時警官に七百二十何人の負傷者を出した。学生にも大勢の負傷者を出した。労働者にも出した。こういうときに、治安対策上警官の士気をゆるめてはならぬから、われわれは警官としてはりつぱな行動つたということを言つております。しかし実際の行動は完全だつたけれども、幹部に対する批判というものは留保しております。これからその結論を出して来るのでありますが、あの第一線で身をもつて働いた警官に対しては、一日も早く御平癒を祈るとともに感謝にたえません。けれどもけが人を出したというところに、情報面と執行面と、公安委員会との間に食い違いはなかつたか。こういうところがどうもはつきりしなかつたのでありますが、あなたは今日結果から考えてどう思つておられるか。
  148. 吉河光貞

    吉河証人 先ほど御説明いたしました事前情報、特に四月三十日当時における情報は、結果から見ますと正しかつた。もし警視庁においてその情報をお取上げになつたとすれば、結果から見まして正しい措置ができたのではないかと思うのであります。
  149. 田渕光一

    ○田渕委員 警視総監の辞職問題その他が当日その晩から云々されたのであります。しかしわれわれ政治家といたしまするならば、もちろん究明はしたいが、それがために一線の検挙の士気が衰えてはいかぬ、あるいはこれだけ働いてもこういうふうにやられるのだと思つたらいかぬというので、私たちはそこまで追究しておりませんでしたが、結局情報の裏をかかれておる。これは日共の尖鋭分子活動はもちろん憎むべきであるけれども、これを暗々裡に利用したところの総評左派の島上君の措置がまことにけしからんと思う。しかもそれを堂々と主観論の一点ばりで、責任は道義的な責任だ、あるいは狭義的にとか広義的にとか言つている。私はこの男らしくないところに非常に憤慨を持つので、島上君の証言は打切らずに留保して、これから私は反証をあげて、島上君、これでもどうだと言つてつて行くのでありますけれども、総評がこれら尖鋭分子と一連の関係があつたと私は思うが、あなたはどうお思いになるか。
  150. 吉河光貞

    吉河証人 現在の総評指導者の方々が破壊的な左翼分子と関連性ありやの御質問でありますが、まださような点は確認しておりません。
  151. 田渕光一

    ○田渕委員 実際言うと、こういう点を私は特審局にやつてもらいたい。一つは彼らの動き方を見ればわかる。実行委員のメンバーの幹部というものに社会党系があるならば、社会党の右派系の者が幾人、左派系の者が幾人という情報があなたの方にありますか。
  152. 吉河光貞

    吉河証人 さような情報は入手しておりせん。
  153. 田渕光一

    ○田渕委員 それであるからこういうことになる。それはこの国会の前を通るときに、あのプラカードを持つておる東京都の交通労働組合の連中、その中にも尖鋭分子が入つてつて、あの国会の正門前でとまつて、嚴粛なメーデーを無事に済まそうという指令に基いて謹厳なおとなしい態度で鉄かぶとをかぶつてつている取締りの警官に対して、プラカードで頭をたたいている。それでも警官は歯を食いしばつてつている。それからそこらを通りながら石を拾つて行つている。やりよるなと思つたから、これについて行つて、午後三時に私は法務総裁の部屋に行つておる。おれは暴動が起ると思う、もう始まつているのだ、これは容易ならぬというので、飛び込んで行つて見ておつた。ここから見ても総評の責任はないということは言えないでしよう。吉河さんどうです。総評は日比谷までりつぱな完全なデモ行進をいたしました、そして日比谷で解散したのであるから、それから後は全学連や自由労組北鮮系朝鮮人がやつたのだから責任がないと逃げておる。そうじやありません。ことに東西南北、中央部の、南部地区に入つてつたものが合流しておる。大体全学連というもをメーデーに入れるということがおかしい。この全学連が数日前に国会の議員面会所で相当あばれて、警視庁の仲村警部補にあれだけ重傷を負わしていることを見てみなさい。これだけを見ても全学連は何をするものであるか——全学連にはまじめな学生もおるけれども、それを指導している者があつて、これらの者が国会の面会所でわれわれに面会しているうちに、一人の警官が入つてつたら、こいつはスパイだ、出て行け、なぐり飛ばせというような指令まで出して、踏んだりけつたりして半殺しにしてしまつた。こういうような全学連統一メーデーに入つて来れば何をしでかすかわからぬから、われわれはいかぬと思つてつた。私はまだ話してはおりませんけれども、これらに対する総評の責任はどんどん追究して行く。この情報が行かなかつたという点を私ははなはだ遺憾に思うのでありますが、今後も総評に対する態度は従来通りで、あなた方がそういう情報をとらずに、対共産党破壊分子情報だけで治安が保たれて行くというように思つておるかどうか、それをひとつ伺いたい。
  154. 吉河光貞

    吉河証人 将来国会の御審議によりまして破壊活動防止法案が成立しました場合におきましては、これはあくまで暴力主義的な破壊活動という面に即して運用されなければならぬ法律でありますから、この面についての情報調査活動に集中されなければならぬものであります。しかし情報というものはこちらで求めてとるだけではなくして、求めずしても提供されて入つて来る面もあるのであります。かような暴力主義的な破壊活動に関連のある事項に対しましては、当然に情報活動も入るものと考えております。
  155. 田渕光一

    ○田渕委員 全学連あるいは北鮮、いわゆる在都北鮮学生の動き方並びに全学連の動き方、たとえば早大における騒動あるいはその他各大学において、学生の自治という問題で赤の温床となりつつあることの全学連、並びにいわゆる在都北鮮系学生たちが、メーデーの数日前に破壊活動防止法案の撤回方を要求して国会に来て、本員は面会をしておるのであります。他国の、いわゆる独立した朝鮮の学生日本に留学をしておる。その日本の国が国内秩序を維持せんがために立法する、その議員に対して学生の身分でこういう法案を撤回しろという矛盾したことを言つている。気に食わなければ日本におつてくれなければいいのであります。われわれは敗戰以来四つの島にとじこめられて、海外の同胞がみな引揚げて来て、狭くて人口が多くて困つておる。それに朝鮮の七十万、その七割は北鮮系統である。それに尖鋭分子がどんどん密入国して来てこういうことをやつておる。この間広島の民国の代表の金在賢君が話しておつたが、日本政府で執行するよりも、韓国との條約によつて韓国政府にやらして、それで執行は日本政府がやつてくれということはなるほどもつともな話だ。しかしこういうように北鮮系学生メーデー数日前に国会であばれておつて警視庁の仲村警部補に瀕死の重傷を負わせたのを私は見ておる。足で踏まれけられて、全身内出血しておる。私は警察病院へ行つて見て来た。こういう北鮮系の在都学生全学連指導して行くのである。数日前に大きな見本があつた。それがメーデーに参画して何をしでかすかということはわれわれは勘でわかつてつたが、特審局として当時全学連並びに在都北鮮系学生に対する情報はどんなぐあいであつたか、それを伺いたい。
  156. 吉河光貞

    吉河証人 最近全学連を中心とする学生の動きが非常に暴力主義的な傾向を帶びており、極端な政治性を持つておるということにつきましては、所要の情報並びに調査の資料を治安関係機関に配付いたしております。     〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 田渕光一

    ○田渕委員 治安関係に配付しても、治安関係がこれに対する対策をしなかつたとすれば、今度は取締りの面を追究して行かなければならぬのでありますが、少くとも破壊分子であるということは、数日前に国会の面会所においてはつきりお手本が出ておる。のみならず各大学において、あすはぜひメーデーに出ろ、出なければ承知せぬぞと善良な学生をおどかしておる。行かぬとあとでまたあいつらにやられると困るというので、意思の弱い者は附和随行して、そうして附和雷同して、やじうま的になつて、かわいそうにぶち込まれた人もありましよう。これは調べて行けばわかるでしようけれども、こういうような尖鋭分子が各大学に入つておる。たとえば早稲田においてその通りだ。中央大学においてもその通り。この赤の、つまり左翼系の学生の会合は地下室の一番奥の方でやつておる。だれが入つてもわからぬ。そこへ行つてぐずぐず言えばなぐられるから行かぬ。すでに早大あたりでは紅白合戦までやろうということになつておる。あなた方は情報をとつておるかどうかわからぬが、われわれは白として日本を守らなければならぬといつて、学内において紅白合戦をやろうということまで来ておる。私ははつきりその学生も知つておるから申し上げる。姓名はここに秘するけれども、すでに早大の一部においては紅白合戰をやろうといつておる。日本民族としてそれである。一方北鮮と南鮮においては、民団としてはこのままで行つたら命があぶない。南鮮系の朝鮮の人たちの命があぶないから、北鮮系に対して日本の取締りが徹底しなければわれわれが立ちますということを、金在賢君はここで証言しておる。こういう事態に対して特審局治安当局に情報を配付しておるというだけで、情報収集するだけで、結局収集した結果に対して、治安当局の一線がどこまでやつてくれたかというような権限はなかろうけれども、もう一応それに対し念押しをしておるか。情報が執行面で実施されなければ何もならぬ、から情報になる。これに対してどういうようにやつておるかという点を、治安当局から復命報告といいますか、昔の旧憲法下における復命をされておるか、あるいはそれに対して回答をとつておるかどうか。ここまで行かなければ情報治安との間が密接に行かぬ。われわれは情報を提供しておる。取締り当局は情報通りつたと逃げておる。責任の所在がない。こういう点についてはどういうぐあいにお気づきであるか、ひとつ伺いたい。
  158. 吉河光貞

    吉河証人 ただいま御質問の点につきましては、治安機関相互の協力によつて十分まかなうことができる。先ほど来の御質問もありましたが、この協力が必ずしも万全の態勢なつていないので、一歩々々この協力関係を築き上げて行くというところに私たちの努力が向けられておるような次第であります。
  159. 竹村奈良一

    ○竹村委員 先ほど田渕君の質問に対して、たとえば破防法成立した場合、いわゆる破壊活動関係するがごとき情報収集するという証言であつたのですが、もつと具体的に聞きますと、それでは現在の特審局情報收集の範囲をもつて擴大する、こういうことになるのでありますか。
  160. 吉河光貞

    吉河証人 さようなことはございません。
  161. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではもう一つ聞いておきますが、先ほど田淵君の質問に対して、特審局情報収集のまずさはもちろん局員の能力が欠けておる、それからまたもう一つは制度上にも相当欠陷がある、だからこれを改正したいという話があつたのです。そこであなたがいろいろな情報収集しておられるが、特審局としては、そういういろいろの制度の改正やあるいは単なる能率の改正ということでは、問題は解決しないのではないか。先ほどの田淵君から、わが党の徳田書記長の所在がわからないではないかというような話があつたのですが、わからないところの一つの原因は——あなた方は今まで実に一生懸命に調査をされておられた、またわれわれ国会議員に対してすらいろいろな調査をやつておられた、これは周知の事実であります。あるいはまた、先ほどの証言によりましても、学生あるいは大学の教授に対する調査もやつておられることを証言しておられる。こういうように一生懸命やつておられるが、なぜわからないか、こういう質問に対して、能率とか制度とか言つておられますが、問題の背景は、少くとも今日国民の大多数が、いわゆる特審局調査に協力しないところに問題があるのではないか、こういうふうに考えられないか。つまりもつと突き詰めて言うならば、国民特審局のいわゆる情報収集というようなことに反対している証拠ではないか。反対に言いますと、日本共産党の政策のことは最も国民のためになるものとして、地下に潜入している人々を国民みずからが守つておられるところに、捜査のでき得ない原因があるのではないか。こういうことについてあなたはどういうようにお考えになつておるか、この際聞いておきたいのであります。
  162. 吉河光貞

    吉河証人 御質問のようには考えておりません。特審局国民の行政機関でございまして、国民の御協力によりましてその能率は発揮さるべきものである……。     〔発言する者多し〕
  163. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  164. 吉河光貞

    吉河証人 特審が集めている情報国民が提供している情報であります。先ほど来御質問になりましたように、私どもが過去の追放八幹部の方々の所在を発見し得ないという点につきましては、これは私どもの無能力を暴露していることで、何とも申訳ないというふうにお答えしている次第でございます。
  165. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういう論議は時間の関係上省きます。もう一点重大なことを聞きますが、さつきあなたはだれかに対する証言の中で、朝鮮の人々を鮮人として証言されておる。少くとも法務府の特別審局長であるあなたが、この証言の言辞の中で、いわゆる朝鮮の人々を鮮人とはつきり証言されておるが、あなたはどういう考えで鮮人と言われておるのか、この点をお聞きしたいのであります。
  166. 吉河光貞

    吉河証人 言葉が足りない点があつたと思います。朝鮮人と改めます。
  167. 内藤隆

    内藤委員長 藤田義光君。
  168. 藤田義光

    ○藤田委員 私は遅れて参りましたので、あるいは質問の内容が重複するかもしれぬことを御了承願いたい。  第一にお伺いしたいのは、ただいま共産党の竹村君から、いわゆる追放八幹部の捕逮されないのは特審局に対する国民の協力がないからだという質問がございました。これに対しまして特審局長は、まつたく無能力のいたすところである、申訳ないという証言をされております。これは速記録に残りましたから、いずれ後日予算委員会その他におきまして徹底的に私たちはその責任を追及したい。厖大な国費を使つておる特審局長が、白々しく、無能力で申訳ないと、(「その通り」)責任を何ら感じないような無謀なる証言をされる。こういう特審局のもとでは八幹部がつかまらぬということはあたりまえである。こういう根性で今後公安調査庁等を運営されるということは非常に危険ではないかと感じております。ただいまの証言はあるいは言葉の間違いではないかと思いますが、いま一度御心境を伺つておきます。
  169. 吉河光貞

    吉河証人 ただいま御質問がありましたが、八幹部の所在の調査は、特審並びに国警、自警相協力してやらなければならない建前になつております。すでに逮捕状が出ておりまして、司法警察官としてこれを執行しなければならぬ建前になつております。特別審査局ではこれに御協力をしまして、その所在の発見に努力して参つたのでございます。私どもが十分その能率を高揚できないで、八幹部の所在を発見できないということは深く反省しておりますが、能力をさらに高めましてその目的を達したいと考えておる次第でございます。
  170. 藤田義光

    ○藤田委員 共産党の諸君には耳に痛いかもしれませんが、マッカーサー司令部があわてふためいて日本の警察態勢を破壊している。従つて自治警と国警に現在警察機構が分断されております。レーニンのいわゆる分力をもつて合力を砕くという戰法にまんまとひつかかつている。自治警内に入り込んだ八幹部は「国警が追跡しておつても全然これを逮捕することはできぬ。これは制度上の欠陷が最大の原因ではないかというふうに私どもは解釈しておりましたが、本日は新たに特審局長以下の無能力ということをこの委員会でつかんだことは、非常な收獲であると私は考えております。現在特審局では数億の機密費を使つておる、国民の浄財を私たちは黙つてただ使わしておるわけでございますが、しかもこの機密費の行方が、一部のボス的な情報屋、商売的な情報屋に流されておるということも再三聞いております。この点に関して特審局長はいかに考えられておりますか。かつて軍国主義時代に内務省その他に出入りしておりましたような、いわば商売人的な情報屋によつて貴重な国費がむだに使われているというようなことはないか、この点に関してお伺いしておきます。
  171. 吉河光貞

    吉河証人 私どもといたしましては、いわゆる商売屋の情報ブローカーと申しますか、さようなものは相手にしないように十分注意しております。
  172. 藤田義光

    ○藤田委員 特審局に受入れられないいわゆる情報屋が、特審局長の機密に対するいろいろなデマを飛ばしているということも承知いたしておりますが、この点に関しましては、いずれ私たちは正式の機関を通じて資料を要求いたしたいと考えております。  次にお伺いしたいのは、治安機構能率とイデオロギーの問題ですが、メーデー事件等を見ましても、いかにも国警、自治警その他の能率が上つておらぬ。特に予備隊令の一條にありますように、警察予備隊国警及び自治警の補助部隊として存在しているのでありますが、この警察予備隊というものに対しては何らの考慮も拂われておりません。私たちは、能率を上げるためにイデオロギーを蹂躙してしまうという危險が今国内で迫つておることを感じます。民主主義の血をもつて打立てましたイデオロギーは、あくまで堅持しなければならぬ、しかもこのイデオロギーを推進すれば治安機構能率が上らない、ここに国会としても最大一の悩みがあるわけでありますが、民主主義のイデオロギーを生かしながらいま少し治安機構を強化しなければならぬ。この点からいたしまして、先ほどの特審局長の証言でも、国警と自治警と協力して八幹部の追跡をやつているということを言われているが、しかりとすれば、特審局があくまでも国警あるいは自治警の中に吸収されて一体になつて推進したならば、八幹部の問題等も早く解決しているのではないかという印象を、特審局長の証言の中から受けたのであります。この点に対する所感を伺つておきます。
  173. 吉河光貞

    吉河証人 私からは治安機構組織編成に関する考えを申し上げる立場にはないと考えておるのでありますが、治安機関は職員の士気を高揚させ、その技術をさらに研修させ、識見を高めるということによつて、その能率向上して行くことができるものと考えております。
  174. 藤田義光

    ○藤田委員 メーデーの際、宮城前に殺到した暴徒に対しましては、もうすでに論議が盡きておるから何も申し上げません。私は宮内庁の幹部から直接聞知した一つの事実を申し上げたい。それは当日の暴徒は、鉄のとびらが締つておりまして、あの当時のいわゆる凶器をもつては絶対に開くことができない二重橋から殺倒しております。門のあいております出入の自由な坂下門には全然近寄つておりません。この点から見ましても、当日の暴徒は、單に行政官庁が宮城前立入りを禁止しとたことに対する感情的な行動であつたというふうに見られるのであります。少くとも国権の最高機関としての国会議員は、この騒擾事件に対しまして、あくまで冷静に批判しないと、これを利用していろいろないわゆる反動が行われるようなことがあることは、非常に危險であります。私の宮内庁の幹部から聞きましたこ情報は正確であろうと思いますが、特審局長に何か情報がありましたらお伺いしておきたいと思います。
  175. 吉河光貞

    吉河証人 当日の騒擾事件の具体的内容、その動向につきましては、御承知通り東京地方検察庁並びに東京警視庁等におきまして、目下捜査中でございます。ただいま御質問の点につきましては、私といたしまして具体的な情報を入手いたしておりません。
  176. 藤田義光

    ○藤田委員 こういう問題の本質を解明する——最初から暴徒が宮城をねらつてつたということになれば、問題の本質がかわつて来ます。こういう根本的な問題に対する正確な情報特審局長が持たぬというようなことでは、正確なしかも迅速な行政の運営ができないという批判を受けてもやむを得ないじやないかと思います。私の私見としては、宮城前は、夕方になれば風紀を紊乱する連中の出入りを自由にしておりながら、晝間の、年一回の労働者の祭典にはこれを許可しない、これが現在政府のやり方でありまして、私たちは野党であるから、あるいは方針が違うのはやむを得ないかもしれませんが、いま少しこういう問題に対して冷静な判断をしておつたならば、裁判所で政府の方針と違つた判決を下すということもあるいはなかつたのではないかと思います。  最後にお伺いしておきたいのは、能力がないという特審局長の意味は、人員が不足であるのか、個々の特審局員が能力がないという意味であるか、あるいは両方を加えて、現在の特審局には能力がないのであるか、この点をお伺いいたしておきます。
  177. 吉河光貞

    吉河証人 お答え申し上げます。施設それから職員の能率、人員に及ぶものと考えております。
  178. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ吉河証人に対する尋問はこれで終了いたしました。証人には長持間御苦労さまでした。     —————————————
  179. 内藤隆

    内藤委員長 引続き田中証人より証言を求めることにいたします。ただいまお見えになつておられるのは田中警視総監ですな。
  180. 田中榮一

    田中証人 はあ。
  181. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、正式の証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。  ただいまより、治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を拓くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人田中榮一君朗読〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  182. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  183. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  田中警視総監は五月一日のメーデーについて、警視庁として当日の警備、これらの問題を総評と事前に数回打合せを行つておるようですが、その交渉の経緯等について簡単に御説明を願います。
  184. 田中榮一

    田中証人 警視庁といたしましてメーデー実行前にその主催者でありまする総評のメーデー実行委員会との交渉経過につきまして、一応御説明申し上げます。  まず第一回の交渉は四月二十三日から始まりまして、メーデー前日まで警視庁実行委員会との間に前後六回にわたりまして交渉が行われました。警視庁といたしましては、今回のメーデーは独立後最初のメーデーであり、かつ総評指導下に行われる統一メーデーであるとの観点から、実行委員会の自主的統制を期待し、特別の事情のない限りなるべく実行委員会側の実施計画を変更せざるようにいたして参つたのであります。  次にその交渉の概要を申し上げますと、第一回の交渉におきましては、実行委員会よりデモ・コース並びに解散地の計画案が挺示せられましたので、一応当庁といたしまして実査の上検討し、次回交渉の際協議することを申合せました。第二回の交渉におきましては、当庁の実査検討の結果、一部デモ・コース並びに解散地の変更を勧告するとともに、大会進行時間について、大会の閉会は大体零時ごろ、デモ開始が零時三十分、解散時間は遅くも四時三十分ごろまでに解散することに各時間の繰上げを行うことを提案いたしたのであります。特に中部地区におきましては、自衛態勢の強化、国会周辺の事故防止、解散皇居外苑なだれ込みの防止、また学連、朝鮮人団体は参加せしめないよう措置をとることを要望し、実行委員会側の確約を得ました。二十八日に至りまして、島上事務局長が来庁いたしまして、かねて提訴中の皇居外苑使用について、本日判決があり勝訴したから、大会会場を皇居外苑にしたいと申入れが参つたので、当庁としましては関係官庁の意向を待つて措置したいと回答を與えたのであります。皇居外苑整理の主管庁でありまする厚生省は、即日控訴いたしましたので、実行委員会側も会場変更をいたさないことになり、本問題が解決するまで一応明治神宮外苑をもともと通り使うことに決定をいたしたのであります。  次に第五回の交渉は二十九日に行われましたが、その際実行委員会側は朝鮮人団体を参加せしめることとなつたの申出がありましたので、当庁といたしましてはその事情を聽取いたしますと、実行委員統制に服するとの條件をもつて加入せしめたとのことであります。  メーデー前日第六回の最終交渉が行われましたが、当庁といたしましては、特に会場並びにデモ・コースを担当いたします各方面本部及び予備隊関係者と、実行委員会側の各地地区指揮者と直接具体的に打合せを実施いたしました。なお本打合せ会におきまして、警備課長より第一、会場並びにデモ・コースの各指揮担当者は責任を持つて統制をはかること、第二、駐留軍並びに一般外国人に対し事態を惹起せしめないこと、第三、各地区、特に中部、南部地区デモ隊解散皇居外苑になだれ込まざるよう適当の措置をとること等を懇篤指示をいたしたのであります。  以上申し上げました通り、当庁といたしましては、実行委員会側の自主的統制を期待いたしましてメーデーが実施いたされましたが、その結果事態が騒擾事件にまで発展いたしましたにかかわりませず、実行委員会側におきましては、一切の責任を他に転嫁するような声明を発表した態度は、まことに遺憾にたえないと存じておる次第であります。
  185. 内藤隆

    内藤委員長 その警視庁と総評との事前打合せ会には、第二十三回メーデー実行委員長という島上善五郎なる人が出席しておられましたか。
  186. 田中榮一

    田中証人 私は直接その実行委員会との交渉現場に居合せておりませんので、以上六回会議を開いたと報告申し上げましたが、そのうち一、二回はあるいは島上善五郎氏御自身がお見えになつていろいろ打合せたと考えております、そのあとは代理者もしくはその他の係の方がお見えになつたのではないかと考えております。詳しいことは私は今ここで申し上げることはできません。
  187. 内藤隆

    内藤委員長 このメーデーの前にメーデー前夜祭なるものがあつたようですが、この前夜祭が解散後水道橋の派出所を襲撃しておる事件等がありますので、かようなメーデーの前夜祭において、すでに暴行をもつて派出所を襲撃するということがあつて、さような尖鋭な事態が発生しておる以上は、事前において一体今度のメーデーが平穏裡に行くとお考えだつたかどうか。かような実態から見ても、相当にこれは恐るべき事態が惹起されるんじやないかということを御想像にならなかつたかどうか、この点をひとつお述べを願いたい。
  188. 田中榮一

    田中証人 後楽園におきまする総評主催メーデー前夜祭は、約一万八千名ほど集合いたしまして、午後七時から開会いたしたのであります。この前夜祭の席上におきましても、若干トラブルがございまして、相当注意はいたしておつたのであります。その後、この前夜祭は最高時におきまして約二万五千名くらい集合したものと一応推察いたされるのであります。ところがこの主宰者の指示統制がなかなか徹底いたしませんで、ある程度混乱をいたしまして、午後十時二十分ごろようやく終つたのでございまして、その帰途水道橋におきまして、ちようど学生が二十名くらいます先頭を切りまして、あそこで小型のデモ行進を開始いたしまして、これがジグザグ行進をとつたのであります。さような関係から、相当多数の集会者が帰路についておりますので、非常に交通が混乱をいたしました。そこで警察官が制止をいたしたところが、ここで衝突がありまして、交番を襲撃しまして窓ガラス等を一部破壞したのであります。それでその際警視庁といたしましては、若干明日のデモは従来と違つて相当荒れるであろうという大体の予想はいたしておりました。しかし当時われわれの考えとしましては、メーデーなるものはいわゆる労働者の年に一回の意義ある労働祭でありますので、警察権を行使しまして、警察権の干渉によつてメーデーそのものの実施がいかにも警察によつて干渉された形をとることはなるべく避けて、労働者自体の手によつてこの意義あるメーデーがきわめて有意義に、盛大に、また明朗に実施されることを念願いたしておつたのであります。従いまして当時若干相当荒れるであろうということは予想はいたしておりました。
  189. 内藤隆

    内藤委員長 前夜祭というのは、一体どういう性格を持つておるものだと思いますか。われわれの考えでは、メーデーの予行演習のようにも思われますが、この点はどうでございましようか。
  190. 田中榮一

    田中証人 前夜祭と申しまするものは、そのことの起源はこれはやはり私は宗教的な意義から来ておるのじやないかと思います。いわゆるカーニバルその他クリスマスの祭典におきましても、前夜祭というものがございますので、一応宗教的な意義からその前夜祭というものが催されるようであります。従いまして、メーデーその他最近の各種社会運動、政治運動に前夜祭という銘を打ちまして、一応事前に気勢をあおる、気分を出すといいますが、大いに前日に翌日の気勢をそえるという意味もありますし、また宣伝によつて大衆を引きつけるというような意義もかねましてやつておるのであります。私はメーデー前夜祭は、これは一応気勢をあおるという意味と、それから事前宣伝をするという意味が多分にあつたのではないか、かように考えております。その行進距離等がきわめて短いので、ここで訓練するということも考えれば考えられないことはないと思いますが、むしろ宣伝並びに気勢をあおるという点に重点を置いてやつたのではないかと考えております。
  191. 内藤隆

    内藤委員長 当日いよいよ神宮外苑において大会が開かれた。そうすると大会の半ば、石川島造船所のデモ隊の一部過激分子が会場に突進して参りまして、そうして混乱状態を起した。その混乱に乗じて皇居広場に集まれとか、あるいは人民広場を奪還せよとかいう緊急動議が、その大会場へ出されたというような情報が入つておる。もうすでにこの大会半ばにして大会の目的相当に蹂躙されておるのでありますから、その会場の情勢等を御判断になつて、警備態勢をつくつておられたと思いますが、この大会に石川島造船所が乗り込んで来た以後の警備態勢はどうでありましたか、簡単に御説明願いたいと思います。
  192. 田中榮一

    田中証人 会場におきまする石川島造船所のデモ隊の一部が、大会の席上に参画し、そうして会場を混乱に陷れ、また学生部隊並びに朝鮮人部隊の一部が会場の壇上等を占拠しまして、相当乱闘を行つておるという情報は、確かにわれわれも入手いたしました。そこでわれわれの考え方といたしましては、何かこの大会におきまして相当混乱が起り、それからまた途中においていろいろジグザク行進が行われ、あるいはまた途中の重要施設その他に相当な危害行為を行うのではないかということも、実は前から予想いたしております。それがために今回のメーデーにおきましては、大会会場から五つの方面にわけて行進が行われるのでありますけれども、その沿道等にはすべて要所々々に制服並びに私服の警察官を配置いたしまして、また大会場におきましても、相当多数の警察官を配置いたしておきました。従つてわれわれといたしましては、大会において多少荒れる、それから途中においてあるいは危害行為を行うであらうということは相当予想もいたしておりましたので、その意味におきまして、相当多数の警察官を前もつて沿道、解散地並びに大会の場所等に配置をいたしておきましたので、特にそうした情報があつたから、ただちに配置がえをして警戒を嚴重にしたというようなことはいたしておりませんでした。大会場にはもちろん相当多数の警察官を配置いたしておきまして、万一の場合を警戒いたしておりましたので、特にそのために特別に命令を下して警戒を嚴重にしたとか、そういうようなことは——大体そういうことも予想の中に入れておりましたので、特別に警備命令を出すというようなことはいたしませんでした。
  193. 内藤隆

    内藤委員長 要するに大会場には相当の警官を派して、なるべく警察がこのメーデーに干渉をするような態度をとらせずに、いわゆるメーデー前の計画警備状態のままであつた、こういうことになるわけですな。
  194. 田中榮一

    田中証人 はあ。
  195. 内藤隆

    内藤委員長 いよいよデモ行進に移りましてから、赤坂表町付近で全学連がにわかにかけ足をもつて中部行進隊の先頭に立つて来た、そうしてこの連中が国会の方ヘジグザグ行進を行つてつたり、あるいはまた六本木の方から進んで来たいわゆる中部隊ですか、南部隊ですか、この一行もまた要するにジグザグな行進をやつてつた。そうするとこの解散場所は日比谷であるが、こういうようないわゆる公安委員会の條件に反したデモの形勢がすでに見えておる以上は、これは平穏裡に日比谷の解散場所で解散せず、皇居前へなだれ込むのではないかというような予見、あるいはその他の考えが浮んで来なかつたかどうか、その場合にどういう警戒態勢をとつておいでになつたか、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  196. 田中榮一

    田中証人 今回のメーデー実施にあたりまして、警視庁におきましても、事前国警本部並びに特審局等との緊密な連絡のもとに、それぞれ具体的な  情報等も入手をいたしておりました。なおそのほかに、警視庁自体といたしましても、それぞれ情報等を入手いた  しておりました。それらの情報によりますると、確実な情報であるかどうか存じませんが、四月二十八日にわれわれの方で受けた情報によりますると、PD工場を襲撃するとか、あるいはPD工場の上級幹部、家族の襲撃であるとか、あるいは十七時以降ただちに行動に移れといつたような情報が入手されておりました。それからなお東京委員会メーデー対策既定事項といたしまして、今回のメーデーに対しては中核自衛隊をさらに強化する。これら指導者に対しては東京委員会からも連絡するが、地区委員会幹部からも緊密な連絡をとれ。それから解散後において、かねてよりの方針に従い行動を起す。この場合敵の警備状況をよく見きわめた上で行動する。その対象としては、警察署、税務署、派出所、南部地区の警戒手薄の箇所で大デモを行う。それから四月三十日に得ました情報では、メーデー会場で警察官の拳銃を奪取する。その他いろいろ情報がございまして、こうしたたくさんの情報がございまするが、こうした情報から考えまして、当日警視庁といたしましては、メーデーそのものに対する取締りといたしまして、大体四千百名の警察官を全部一線に配置をいたしております。そのほかに非番を上げ、大体におきまして、各警察署の自衛態勢を強化いたしております。  特に当日いろいろ同時多発的な事件発生等も十分に考えられまするので、その都度本庁から応援部隊を繰出すということは、かようにメーデーそのものが東京都内五つの地区において開催される関係上、事件が起るたびに一々本部から各地区に応援部隊を派遣するということはきわめて困難な事情でありまするので、一応各署管内に起つた事態に対処するためには、その署自体の警察力をもつてこれを解決する、従つて各署からはなるべく本庁に引揚げない、部隊をそれぞれ各署自体の警察力において自衛警備計画を立てさせるという方針を立てておつたのであります。  従いましてかような事態が起りまして、学生部隊が一般のメーデー行進部隊からかけ離れて日比谷公園に突進をして行つた。もちろんこの中に私どももいろいろな想定をいたしております。それからただちに日比谷公園内から各地に分散するものもあるであろうし、また中には皇居広場に突入するものもあろうというような、あらゆる点を十分に考えまして、相当くぎづけ状態の警察官の警備配置の計画を立てて実施いたしておりました。従いましてかような現象が起りましたからといつて、ただちにこれを他の警察署からひつこ抜いてこれにまわすということは、実際上の問題として非常に困難な状態であつたのであります。ただ予備隊を十分に活用いたしましてこうした事態に対処するという方針で、本庁に若干名の予備隊を別に予備としてとどめ置いたのでありますが、他の方から特別にこれを引揚げてそれに対処するということは、その当時の状況としてはきわめて困難な状況であつたのであります。従いましてかような現象が起りましたからといつて、特別に警備計画を変更してやるということは、当時の状況といたしましては非常に困難であつたと思います。
  197. 内藤隆

    内藤委員長 第二十三回メーデーを許可するに際しまして、東京都の公安條例を基本にいたしていろいろと附帶した條件がついておりますが、その中でまずジグザグな行進はいかぬ、あるいはかけ足の行進等もいかぬという條項が明らかに書かれておる。しかるにデモ行進に移りますると、ただちにかような現象が現われて来た以上は、そのメーデーを許した立場において、メーデー実行委員あるいは実行委員長に、かような條件に反したデモ行進を許可することはできないというような、何かそういう交渉でもやつたことはありますか。
  198. 田中榮一

    田中証人 公安條例の規定に基きまして、集会並びに集団示威行進等の許可を公安委員会がいたします際には、よくその実情を調査いたしまして、十分なる取締りができますように、それぞれ條件を付することになつております。従つて今回のメーデーにおきましても、先ほど私が説明いたしましたごとくに、特別に警備課長から、会場並びにデモ・コースの各指揮担当者は責任をもつて統制をはかつてもらいたい。各地区、特に日比谷公園を解散地とする中央、南部地区デモ隊解散後、皇居外苑になだれ込まざるよう適当なる処置をしてもらいたいということを、何回となくメーデー主催者に申入れまして、メーデー主催者側においても十分にその点を努力するということを確約されて、このデモ実施を許可いたしたのであります。従いまして警視庁といたしましては、当時のわれわれの考え方としては、多少中途においてジグザグ行進をするとか、あるいはまた部隊と部隊との間隔が自動車交通のために規定通りに間隔を置くことができないような場合、それから労働者のきようの一日の労働祭であるがゆえに、若干気分の上においても多少平日と違うので、まあ公安條例の違反の事項がごく軽微のことが起つても、これをただちに検挙するというようなことのないように、十分に労働者自体の自制によつて、このメーデー行進が平和裡に円満に明朗に行われるように念願いたしまして、できるだけ外見的に警察力を行使してメーデーを干渉するという形を避けておつたのであります。但し今回の学生部隊等がメーデーの先頭を切つて行くというようなことは、もちろん大会主催者側としましてもこうしたことは予期しなかつたことでありましようし、また警視庁側としましても、こうした事態が発生することは、全然予期していなかつたのであります。従つて一部におきましては、交通警察官におきまして、相当制止をいたしたのでありますが、何分にも大部隊の勢いに乘つての突進でありますので、十分に制止のできなかつた点は御了承願いたいと思います。
  199. 内藤隆

    内藤委員長 なお実行委員長島上善五郎に対する許可條件の中に、銃器あるいは凶器、危険物の携帶等は、嚴重にこれはならぬということを條件にしてありますが、どうでしよう、ジグザグの蛇行デモとなり、あるいはかけ足の行進となつたときに、その連中はさような禁じてある凶器、銃器、危險物等を持つていたかどうか、その点をお答え願いたい。
  200. 田中榮一

    田中証人 メーデー参加者が、それぞれの職場もしくは家庭から、あるいは郊外電車あるいは省線で出発する際に、警察側におきましても、その持物等は詳細に十分に視察しております。中には、竹やりらしいものを持つている者もあつたようであります。また中には、野球のバット等を持つてつたものもあるようであります。それからまた非常に大きなプラカード、あるいは丸太のようなものを持つてつたような者もあります。また相当長い竹棒で、先きに赤旗を巻いておつたような竹棒なんかを持つてつたようなことも、大体視察できましたので、これは相当凶器らしいものであるということから、また大会の会場におきましても、だれが見ましても野球のバットであるとか、あるいは不当に太い丸太の棒なんというものは、これはメーデーには必要ないものでありまして、こうしたものについて、相当凶器となるべき性質のものを持つておりましたので、警視庁としましては公安條例の許可條件に違反すると認めましたので、ただちに大会の責任者である島上善五郎氏に、正式にかかる凶器を持込まれることは、許可條件に違反すると認める、従つてかかる凶器はただちにこれを撤去するか、あるいはこれを遺棄するか、適当なる方法を講ぜられるように善処せられたいということを、島上実行委員長の方に警視庁としては申入れをいたしました。島上委員長としましては、ただちに地区の責任者を大会会場において招集いたしまして、その旨を伝言するように、至急連絡するように処置をとられたいと思います。しかしながら実際問題として、地区の責任者まではそうした委員長の命令が徹底したと思いますが、さらに地区の連絡者から單位組合等の責任者あるいは指導者等に行つたかどうかということは、すこぶるわれわれとしましては疑問でありまして、またかりに地区の責任者から、單位組合組合長に参りましても、各個々の組合員にそれが徹底されたかどうかということは、すこぶる疑問であります。ただ私どもがここにこの点だけは申し上げられると思うのでありますが、当日大会に参加したきわめて中正穏健な労働組合、これはほとんど大部分穏健中正な労働組合であつたと存じております。従つてこれらの大部分の労働組合の持つておるものは、これは私は凶器ではないと思います。いずれも毎年メーデーの際に持込まれるような普通のプラカードであり、普通の立札であり、あるいはラツパであるとかあるいはいろいろな飾り物であるとか、そうしたものが持込まれるのでありまして、今委員長からお話のような凶器めいたものを持つて来た者は、大多数のメーデー参加員ではなくして、少くともメーデー行進を、秩序を乱した一部の学生部隊、朝鮮人部隊並びに一部の日傭労働者その他尖鋭分子の部隊が、大体持つていたんじやないかということを申し上げてさしつかえなかろうと思います。
  201. 内藤隆

    内藤委員長 ここへ参考までに持つて来ましたこういう程度のものですか。     〔証人に証拠物を示す〕
  202. 田中榮一

    田中証人 お答えいたします。ここに持つて参りましたのは、これは参加団体一つの中心をなす標識であろうと思います。これは一つの標識でありまして、もちろん参加団体は、何々組合であるとか、あるいは何々工場労組、あるいは諸官庁の一つの中心標識としてこうしたものを持つてつたのであります。従来もこの旗、さしものは、その單位組合の中心をなす標識として持つて来ることは、一応慣習的に認められておつたのでありますが、ここにありまするようなものは、いまだかつてないのであります。昨年も旗の先に金具がついておつたものがありましたので、これは途中におきまして警察官が注意をして、これはただちに組合員もおとなしく責任者の指示に従つて、責任者がこれはやめろと言つたことに対して、労組員もおとなしくやめたのであります。この旗は普通の竹棒ではありません。皆さんもごらんのごとくに、先に大きなやり先がついております。これはまつた一つの凶器になるのであります。單なる標識ではありません。これは一つのりつぱなる凶器になると思うのであります。ただこれを持ち込む際に、おそらく私はこの先端に布を巻いてやり先を隠匿して参つたのではないかと思います。やがてこれが会場に入つてこれを解き取出し、そうしてやり先を現わしたのではないかと思いまするが、これらはりつぱな攻撃の武器であると私は認定いたすのであります。なおそのほかに、これよりももつと小型の、竹の中にあるいは鉄棒を仕込んだり、あるいは相当なものが証拠物件として現在押收されておるわけであります。この旗はメーデー当日その場から夕刻これを引上げて参りまして、これは私の総監室にただちに旗が持ち込まれまして、このままの形におきまして全部各新聞知が写真をとつておりますので、これは現物であることは間違いありません。
  203. 内藤隆

    内藤委員長 さような凶器を布を巻いてごまかして行列の中に持つてつた。その目的が奈辺にあるかということは想像し得ると私は思う。しかし昨日の島上実行委員長証言では、こういう凶器のごときは、何十万という人であるから目に入らなかつたというような、まことにわれわれとしては常識で判断できないような証言もしておるのでありまして、この点については本委員会としてはあらためて委員諸君と協議の上、何らか結論を出したいと考えております。  そこで日比谷で解散すべきものが解散をしないで、そうして皇居広場に突入して、そこであの内乱ともいうべき大騒擾、流血の惨事が起つた。これに対しまして一体皇居広場、あるいは人民広場を奪還せよといつてここをねらつておる目的がどこにあると警視総監としては思われますか。
  204. 田中榮一

    田中証人 一部の尖鋭分子皇居広場を自分らのいわゆる人民広場と称しておることは御承知通りでありますが、この皇居広場に乗り込むということが、実は数年前から皇居広場においていろいろの不祥事件が起つておるのであります。メーデー事件ではありませんが、一昨年も皇居広場においてある一部の者が進駐軍の兵士を殴打したり、その他いろいろな不祥事件が発生をいたしておるのであります。従つてこうしたことは、この一部尖鋭分子にとりましては、あの場所こそは自分らの力によつて獲得した場所であるからして、これがこのメーデー等に使用されないことは残念である。自己の力によつてあくまでも、不法であろうと、何であろうと、この人民広場をわれらの力によつてつてしまおうというようなことで、あの人民広場に流れ込んだと思います。これは一つの彼らの宣伝戦術である。かように私は考えます。
  205. 内藤隆

    内藤委員長 午前中の藤田委員の質問でもこの点に触れておりましたが、二重橋に向つてこの暴徒が突進して来ておる、これに対する警備状況はどうでありましたか。その警備線のごときは突破されましたか、あるいはまたそこに柵等があつたか、そういうものはどういうふうになつておりましたか。
  206. 田中榮一

    田中証人 いろいろの情報からいたしまして、日比谷公園で解散したものが、あるいは市内に流れ込んで、派出所、警察等を襲撃するであろうとも考えられましたし、また工場、PD工場等に押しかけるというようなことも考えられました。従つてそのうちには皇居広場に一応殺到するであらうことももちろんわれわれは考慮の中に入れておりました。そこででき得べくんば、日比谷公園入口からなだれのごとく押し出るこの暴徒の一隊を、まず日比谷公園交叉点におきましてこれを防ぎたいというので、約百名以内の丸ノ内署の一個中隊をあすこに置きまして、そうしていろいろ防禦したのでありますが、数千の暴徒のために、たちまち丸ノ内中隊も押しつぶされまして、それからさらに馬場先門の入口に数約五百数十名の部隊を配置いたしまして、ここにおいてもこれを防禦いたしましたのでありますが、もちろんこれらの者も相当に抵抗をいたしましたが、警察官の中に多数の負傷者を出しまして、ここも破られまして、この馬場先門を突破した暴徒の一隊は、ここに写真を持つて参りましたが、この写真によつてごらんになつてもおわかりのように、まず馬場先門において一隊は一応隊伍を整えまして、そうしてやりを持つ者は全部やりを持つ、プラカードは全部たたき割りまして、プラカードに出ておるくぎだけ出し、また中には特別に竹やりの先に金をつけて、それから丸太を持ち、先頭部隊は太い竹を横に持ちまして、そうして一応向つて来る者はそれを押し倒すというような、一つ戦闘態勢を整えまして、まず五百数十名の警察官とそこで衝突いたしまして、乱闘いたしました。しかしながらこの数千名の暴徒に対しましては五百数十名の警察官らはたちまち破られまして、相当の負傷者を出したのであります。この第二の関門を突破しました暴徒はまつたく喚声をあげて狂気のように宮城目がけて突進をして参りました。そのときに第一方面予備隊二個中隊二百数十名は、この狂奔する暴徒を走り抜けまして、その先端に立ちまして、まず二重橋の入口のところに警備のための配置についたのであります。流れ込むその暴徒の先端は、二重橋前に柳が置いてございますが、その柵を倒したり、あるいは二重橋のそばの橋のたもとのとこに登りまして、そうしてインターを歌う、そうしてむしろ旗か何かに日本共産党を守れという旗を立てた暴徒があつたと思います。これはわれわれ写真によつて認めましたので、間違いがないと思います。そうしてかような状況で、続々とあとからあとからと参りまして、その数はおそらく六千以上、七千くらいの数に上つておるのではないかと考えております。
  207. 内藤隆

    内藤委員長 六千以上、七千からの暴徒が二重橋を目がけて来た。その目的はおそらく二重橋のあの門を突破して宮城に乱入するのではないか、そこに目的があつたのではないかというような意図は看取できませんでしたか。
  208. 田中榮一

    田中証人 私はあるいはそういう意図があつたかもしれぬと思います。しかしながら予備隊としましてはただちに皇宮警察の方へ連絡をとりまして、二重橋は門をかたくとざし、たとい橋を暴徒が渡りましても、絶対に入れぬような措置を講じたのであります。ただちにこの予備隊は、このままの状態でおつたならば、さらに柵を乗り越えて門の方へ殺到するような気配も見えましたので、そこでかかる行動は無許可の示威運動であり示威行進である、ただちに解散すべしということを数回、いな何十回となく口々に警察官がどなつて、そうして暴徒に解散を命じたのでありますが、暴徒は絶対に解散いたしませんでした。そして祝田橋の交番の警察官に対しまして暴行を働き、瀕死の重傷を負わせ、人事不省に陷つた者をほりの中に投げ入れる等、いろいろな暴行がその辺から始まりまして、投石、それから棒でぶんなぐる、あるいは竹で突く、また凶器を投げる、ラムネびん、サイダーびんを投げるというような乱暴、狼藉を働きましたので、予備隊長といたしましては、これ以上このままの状態で置いたならば、二百数十名の警察官の生命そのものがあぶなくなり、同時に事態がますます窮迫いたすであろうという予想からやむを得ず催涙弾を投擲いたしまして、その暴徒を一時宮城前からおつばらつたのであります。
  209. 内藤隆

    内藤委員長 そこでただいま証人証言されたごとく、空前の大流血惨事が行われた。またその流れが駐留軍の自動車等を焼き拂つた。私も映画、写真等を見ました。ところがこういう凶器を用い、そうして警官と乱闘しておる者の中には、女性と見られる者、また学生と見られる者、その他労働者の姿がたくさんある。そういう女性、学生全学連でしよう、また朝鮮人でしよう、かような人たちが人道に反して、ほりへ落ちた外人に石を投じ、奮闘して倒れた警官にさらに暴力を加えるということは、それはもう新聞その他において十分国民も知つておると思いますから、この点には本日は触れません。ただ労働者の最もめでたかるべきメーデーが暴動化して行つたということは、もし多少のトラブルがあつても、今の警視庁の力をもつてしてはこれを鎮圧し得る、いわゆる統制力を持つておるというような一つの過信を持つてつたじやないか。  それからもう一つは、このメーデーを許可するに際して、相手の実行委員長もしくは実行委員会というものをあまりに過信したじやないか、これは昨日来の証言によつて十分に私は立証し得るものがあると思うが、この点に関する総監の御所見を承りたい。
  210. 田中榮一

    田中証人 今回の不祥事件は、私どもといたしましてもまことに遺憾にたえないと存じております。当時の警視庁の情勢判断といたしましては、一応学生隊が先頭に立つた、これが大体全学連都学連の一隊四千人くらいであります。これに続きまして日雇い労働者並びに地区細胞がこれに加担しておるようでありました。それから中部班に加わりました朝鮮人の一隊が大体二千人くらいではないかと考えております。かような者がおそらく皇居広場に入るであろう、従つてもちろんこれをできる限り阻止しようという考えでおりました。  さらにこういうことも考えておりました。五つの方面デモ隊が分散して行進いたしておりまして、予備隊もこの五つの方面に分散して相当多数の者を派遣配置いたしておりましたので、手のあき次第ただちに皇居広場の方へこれを招集いたしまして、そうしてここにおいて態勢を整えて、もし不法に入つた者については極力これを押して、一刻も早く皇居広場から解散させてしまうというような計画を立てておつたのであります。  ただ暴徒があまりにも急速に皇居広場の方へ参りましたので、時間のずれによりまして、警備力において若干手薄であつたということはまことに遺憾だつたと思いますが、もちろん警視庁としましては、これらの暴徒を鎮圧するに多数の警察官は必要なかろうと思つております。六千名の暴徒を約三百数十名の警察官によつてこれを押し返しております。従つてどもは十分なる装備を持ち、いろいろな計画のずれさえなかつたならば、もつとうまく取締りができたのではないかと考えて、今でも非常に残念に考えておるのであります。  現在警視庁としては、装備においてもまだ十分ではございません。いろいろの点から考えまして、一層装備の改善には万全を期さなければならぬと思つております。従つてあの当時自分の力を過信したというようなことは絶対にございません。警備力はいかにこれを十分にいたされましても、決して過ぎたることはないのでありまして、当時自分の力にあまりたより過ぎたためにああなつたということはないのであります。  いま一つは、メーデー主催者に対する過信でありますが、この点については私どもメーデー主催者に対しまして、はなはだ失礼な言葉であるかも存じませんが、少し過信りた点があるのであります。本年は当初からメーデー主催者と警視庁の間が非常にスムーズに進行いたしました一毎年いろいろトラブルがあるのでありますが、本年は主催者側も警視庁の立場を十分に理解せられ、またわれわれも独立第一回のメーデーであるから、できるだけ意義あるメーデー実行させたいという考えで、協調的な態度で出ましたので、少くとも両者間の交渉は円満に進んだと考えております。円満に進んだがために、そのことがあとになつて考えてみますと、あるいは過信であつたということになるかも存じませんが、ただ実行委員会としてはいろいろの点について相当努力はしたようであります。たとえば先ほどの凶器のことにつきましても、それぞれ示達はしたようであります。したようでありますが、さてその命令がどの程度まで実行されたかという実行力、指導力というものが、メーデー主催者側に少かつたじやないか、このような点が今回の不祥事の起きた原因でもあります。私どもとしても当初から、学生隊や朝鮮人メーデーに参加させない方がよいのではないかということを強く主張しておつたのであります。メーデー主催者側におきましてももちろんそうであるということで、最初から同調しておつたのであります。ところが途中からそれがいろいろな事情からして参加せざるを得ないような状態になつたということも、不祥事件の発生の一つの大きな原因であろうと私は考えております。
  211. 内藤隆

    内藤委員長 なお騒擾現場において暴徒を逮捕することができないで、事後においての逮捕数が多いようにも聞いておりますが、この点について、警察官の質の問題を考えさせられて来るが、最近警官の質の低下しておるという事実は、新聞等において多く国民もこれを見ておると思いますが、この点に関しまして、どうでしよう、ひとつあなた部下を弁護し庇護するという立場ではなく、率直に警察官の質の問題についてお答えを願いたい。
  212. 田中榮一

    田中証人 現場において逮捕ができなかつたということでありますが、これは逮捕ができなかつたのではなくして、むしろ逮捕はできたのでありまするが、逮捕することによつて、全体としてさらにまた非常に取締りが困難になるというような情勢であつたのであります。これはもちろん装備の点においても若干欠くる点があつたと考えております。たとえばあの現場におきまして暴行者を逮捕する、それを今度はさらにどしどし後方へ送り込まなくてはならぬという場合、現実の問題として、あの乱闘場に武装の自動車がかりに行つた場合において、その武装自動車が襲撃され、あるいは破壊される。またそこへ奪還にやつて来るというような非常な混乱状態が発生するおそれがあつたのであります。しかしながら、この暴行の現行犯につきましては、できるだけ逮捕するという方針に出まして、現にその当時におきましても相当数現場における暴行現行犯として逮捕はいたしておるのであります。従つて逮捕できなかつたというのは、警察官の志気が低下しておつたとか、あるいは質が非常に落ちておつたというような問題では全然ないのでありまして、これは一応事実上の問題、それからその場の状況判断からして逮捕できなかつたと考えております。現在警視庁管下におきましては約二万五千の警察官がおります。この二万五千の警察官は、幸い最近はいろいろな点におきまして、特に待遇等も以前と比較しまして非常に改善もされておりますし、従つて警察官が待遇的に非常に他と比較して悪いということは今はないと思います。ただ素質の点ににきましては、私はまだ十分ではないと考えますので、鋭意警察官の素質向上のためにいろいろな施設をつくり、あるいはまたいろいろな方法も講じております。ただたくさんの者でございますので、中には若干素質が悪く、従つて警察としての威信を失墜するという者もないではないのでありますが、しかし、大部分の者は警察官としての本分をよく守り、その使命に徹して、現在治安の第一線において生命を賭して鋭意職務に盡瘁しているものと私は信じておる次第であります。
  213. 椎熊三郎

    椎熊委員 ただいまの質に関連した質問があるのです。私は後ほど順番が来たらメーデーの問題で質問をし、あわせて今の問題にも触れたいと思つたが、委員長の質問がありまして、それに関連して最近の警察官の素質問題について伺つておきたい。  とかく私どもは警察官の質の低下を耳にするのでありまして、たまたま他の委員会調査したところによりますると、警察官の学歴等におきましては、戰争前よりむしろ向上しているような点も発見したのであります。けれども社会に起つておるできごとから見ると、まなはぜ遺憾な点が多い。ことに最近われわれをして唖然たらしめた問題は、かのバラバラ事件、首を失い手足を失つた悲惨な胴体だけの死体が、はしなくもあなたの管下の警察官の一人であつた。新聞等で伝えることが真相であるかどうかわかりませんが、彼の日常の警察官としての行動、素行等は必ずしも善良なる警察官と言い得ない節があるようでありまして、身分不相応な多額の借財等を料理店等からしており、家庭において不和をなし、近所のつき合いにおいてもまさに不良警官といわざるを得ない状況であつた。あなたは、ただいま二万五千名の警察官の大部分は、中には満足でない者もあるが、全体としては非常に質がよろしいと自信たつぷりでありましたが、そのあなたの言明にもかかわらず、現にこういう事件が起つておる。まれなことではありましようけれども日本の警察官に関する事件としては、こんなことは過去においてはあまりない。そこで私聞きたいのは、あの警官を採用したときの採用状況、その後の勤務の状態、最近の彼の生活行動、勤務状態等、すでに御報告があると思うので、この際明らかにしていただきたい。
  214. 田中榮一

    田中証人 世間をたいへん騒がせましたバラバラ事件の被害者が、警察官であつたことに対しまして、世間も驚かれたことと思いまするが、私自身はもちろんのこと、警視庁に勤務しておりまする警察官一同が非常に驚いたのであります。この警察官は、ちようど昭和二十二年ごろに採用された警察官であつたと記憶いたしております。昭和二十二年ごろ採用されました者の中に、ごく一部でございまするが、当時進駐軍等の関係からいたしまして、二十三年三月七日に新しく警察制度が実施になりまして、相当増員をする関係もございましたので、あらかじめ相当数の警察官を急遽募集した点もあるかと思います。それから当時、戰後のいわゆる人心が空虚の時代でありまして、そうした際に、相当あぶれた者等も中にごく少数入つた例がございますが、おそらく私はこの警察官も、この急遽募集した中にごく少数こういう者が入りましたその一人であつたと考えます。ただいまでは、こうした非常に素質の低下した、また不良警官は、ほとんどみずから退職を申し出、あるいは相当監察をいたしまして、それぞれ処分をいたしておりますので、今のところは、私の考えではほとんどないと考えておりますが、とにかくこうした事件が起りましたことはまことに申訳ないと考えております。なお本巡査は、勤務上きわめて成積がよろしくございません。それから私生活におきましても、今お話のような点も確かにあつたようでありまして、それぞれ上司において十分に監督中の巡査であつたと考えております。なお今後も再びこうした不良巡査等が出ることは、まことに警察の威信に関する問題でありまするので、従来も十分に監督はいたしておつたのでありまするが、今後もさらに監督を厳重にし、また教養等にも万全を期し、また今後の任命上につきましても十分慎重にいたしたい、かように考えておる次第であります。
  215. 椎熊三郎

    椎熊委員 今のお言葉の中にもありましたが、終戰後進駐軍の指示等があつて、警察制度がかわり、急遽多数の警察官を募集せざるを得ない実情にあつて、私の承るところによると一挙に八千名くらい採用したことがあるという。すなわちその際の採用は、まあ一口に言えば粗製濫造みたいなものがあつて、厳密な試験とか考査とかなしに、とにかく頭数をそろえるといつたような粗漏の点があつたのではないでしようか。そして一挙に何千人というものを採用したという事実が、まつたくあつたのでしようか。
  216. 田中榮一

    田中証人 二十二年、三年にかけまして、とにかく一応頭数をそろえなくてはならぬ関係上、相当無理をいたしまして採用いたしました。従つて今仰せのごとくに、任用上あるいは身元調査におきまして粗漏の点があつて、十分に調査の徹底しなかつた点も若干ありました。従いまして警視庁としましては、これら急遽採用いたしました警察官に対しましては、一応警察学校において、普通の、いわゆる所定の教養期間の間教養いたしますとともに、さらにまた実務につきましてから、何回となくいわゆる現任教養というものを実施いたしまして、できるだけその素質の向上に努めている次第であります。現在この大量採用したものの中に、相当優秀なものがたくさんございまして、それぞれの第一線におきまして、相当犯罪検挙その他に優秀な成績をあげている者も多数ある次第でございます。
  217. 内藤隆

    内藤委員長 さらに委員長の質問を続行しますが、要するにこういう惨状を引起したその原因、その責任等をいろいろ考えてみますと、これは国民の前にこの点を明瞭にしなければならないのでありまして、当委員会としてはいずれ各証人証言を総合いたしまして、またその間の実情をいろいろ聞いて結論は出すつもりでありますが、大体において警視庁は、平素訓練が不十分ではなかつたか、ことに日共も遊撃戦等いろいろ軍事訓練をやつおるというが、さよなことに対する研究等が足りなかつたのではないか。  それからもう一点、首都警察としての警視庁のあり方——申すまでもなく今日の警察制度というものは、占領初期に連合国が、ある種の偏見をもつて日本の警察制度に対していろいろとメスを入れた。実際において国民に適合しない点等も多々ある警察制度であることは間違いないのですが、こういう点につきましても考うべきものがたくさんあるのでありまして、今委員長は、ここで責任がだれにあるかということを総監に聞こうとは思いません。しかしながら、かような点等について将来の首都警察のあり方、あるいは警察制度から見て、かような騒擾事件に対する責任の所を、あるいは前段に申した警視庁のいわゆる平素の訓練の不足、あるいは日共の軍事活動に対する、遊撃戦等の研究の不足等、かようなものがなかつたか、これらの点について簡単にひとつ御意見を伺いたい。
  218. 田中榮一

    田中証人 警視庁は、こうした事件について平素訓練が不十分ではなかつたかという御質問でありまして、まことにこの点につきましては、自分としましても、今までの訓練が十分であつたとお答えすることはできません。平素警視庁といたしましては、いろいろの角度から起るべき現象を常に研究いたしまして、たとえばある事件が発生をいたしますると、たとえば蒲田事件が発生をいたしますると、その蒲田事件関係者並びに関係部局の者が集まりまして、この事件を根本的に解剖いたしまして、そうしてどこに欠陷がありどこに改善すべき点があるかということを、事件ごとについて常にあとで研究をいたしております。それからまた将来事件発生によつて考えなくてはならぬ改善すべき事項等も平素反省をいたしております。それからまた警備上の訓練につきましても、各署長は署長で相当訓練計画を立て、また本部は本部として訓練計画を立てて実施はいたしておるのでありまするが、ただあらゆる場合におきましての事態を想像しての訓練でありますので、ときにこうしたような場合においてわれわれの訓練計画と多少違つた事態が発生したようなことがありましたので、今後はこうしたことを常にわれわれは念頭に置きまして、十分ひとつ訓練訓画を立てたいと考えております。   それから次に首都警察としてのあり方でありますが、これは私自分が現在警視総覧という職にありますので、自分がかくあるべきであるということをこの席で申し述べることはまだ時期が早いと考えまして差控えたいと思うのでありますが、この首都警察の性格は大体二つあるのであります。一つは、いわゆる広い意味治安維持でなくして、実質的な治安維持と申しますか、今回のこうした不祥事件、内乱、騒擾その他国家公安上から見た一つ治安維持というような問題であります。一つは、もつと広い意味と申しまするか、あるいは犯罪の予防撲滅、それから犯罪の起つた場合の犯罪の捜査、容疑者の逮捕というような問題、あるいは交通統制面といつたような広い意味治安維持、この二つの問題がございます。それで第一の問題につきましては、この問題は、やはり首都という特別な関係、ことに矢公使も東京に駐在されることでもありますし、またこの国会議事堂というような重要施設もございます。その他の関係から国家的な色彩も相当強い。一面においてまた六百万の都民を擁したこ東京都特別区というものは、いわゆる都民生活に警察というものが直結をいたしておるのであります。従つてこの首都警察というものが、單にいわゆる官庁的な警察のみになつてしまうことは、都民生活というものとかけ離れた警察になつてしまう。また一面におきましては、日本治安維持の中心は、何と申しましても東京であります。従つて東京治安が確保されれば、全国の治安が確保されると私は確信をいたしております。こうした国家治安上の面からいいますと、この首都警察は、やはり相当政府との関係、関連性を持つ必要があろうかと考えております。かような観点から、ただいま政府においていろいろな点を考慮せられて警察法一部改正案というものが出ておりますが、こうした線で行くのも一つの首都警察の考え方であろうと思うのであります。  ただ問題は、従来の首都警察は何ら国から財政的にめんどうを見ていただいておりません。都民の税金による経費によつてのみ首都警察が運営されておるということは、理論上から見ましても実際上から見ましても、すこぶる妙なものでありまして、やはり国家的の事務に、国家的の警察費に相当な費用を今使つております。こうした面におきましては、やはり国庫の補助と申しますか、特別に国庫においてこれを支弁するような方法を講ぜられることも必要であります。それによつて首都警察としての体裁を整え、十分なる装備施設を整備することができると私は考えている次第であります。
  219. 内藤隆

    内藤委員長 質問の通告がありますから順次これを許しますが、委員諸君に一言お願いしておきたいことは、田中警視総監はきよう会議を持つておるそうでありまして、その会議に出席をしなければならぬ、こういうことで、どうか御質問は簡潔にお願いをいたします。竹村君。
  220. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今度の場合に催涙彈とピストルを発射しておられるのですが、ピストルは何発ぐらい撃たれ、催涙彈は何個ぐらい使われたか、まずそれからお伺いします。
  221. 田中榮一

    田中証人 正確な数は私今覚えておりませんので、数が違いましたらひとつごかんべん願いたいと思いますが、催涙彈は百六発ぐらいではないかと思います。それからピストルは発射数は六十一発ぐらいだと思います。これも違つておりましたら訂正さしていただきます。
  222. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私のお伺いいたしたいのは、大体ピストルが六十一発、催涙彈が大体百六発、こう言つておられるのですが、それで負傷した者は何人あつたか。そのたまや催涙彈によつて死亡した者は何人あるか。
  223. 田中榮一

    田中証人 暴徒の死傷者の数でありまするが、警察の方には実は全然わかつておりません。従つて新聞紙の報道するところによりますると、あるいは四百名といつたところもありまするし、五百名、六百名という数字も上つております。暴徒側の負傷者の数字等は全然わかつておりません。ただ私の方にわかつておりまするのは、都職員組合の高橋正夫という人が一人拳銃彈で死亡したということがわかつております。それからいま一人近藤という学生さんが、これは拳銃彈ではありませんが、どういう原因であるか私は存じませんが、これが一名死亡しておるということを聞いております。
  224. 竹村奈良一

    ○竹村委員 高橋君の死亡いたしました死体の解剖がやられておるわけでありますが、この解剖によりますと、背後からねらい撃ちに狙撃されて死んだということになつておりますが、これに対して総監は、たとえばピストルを発射する場合に、近い距離から必ず当てて殺すというような建前で発射をさすような訓練を警官にさせておるのかどうか、これを承りたい。
  225. 田中榮一

    田中証人 拳銃使用は、これは警察官が自己または他人の生命を保護し、他人の財産等に重大なる危険が生じたようなときに、やむを得ず正当防衛、緊急避難の方法として拳銃が発射されるのであります。従つてもし兇賊と取組んで相手方が拳銃を発射した場合には、当然警察官といえども自己の生命を防禦するために正当防衛として相手方に拳銃を発射して、相手方を倒すことも法律において認められておるのであります。ただあの皇居広場におきます場合は、もちろん暴徒が竹やりあるいは今ここにありますような棒を持つて突進をして来るのでありますから、もしそのままの状態でおつたならば、警察官としても非常に生命に危險を感ずる、そうした関係から正当防衛として拳銃を発射したものと考えております。ただ、今お話の背後から拳銃彈が入つておるということでありますが、なぐるときには、あるいは体をねじつたりする場合もありましようから、必ずしも真正面からたまが入らなくてもしようがない、背後から入ろうが横から入ろうが、とにかく警察官に暴行して来る場合におきましては、そのたまがどこへ当ろうが、これはしかたがないと思います。
  226. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ピストルを発射することは單に相手を殺傷する目的でなく、問題は騒動をしずめるという観点から撃たれるのが当然だと思います。しかるに背後からたまが入つておる。しかも至近距離からこれを撃つておる。あなたの言つた方法で撃たれたならば、六十一発ピストルが発射されておるのであるから、六十一人死んでおるということになるのですが、そういう場合でも正当防衛だと考えられますか。
  227. 田中榮一

    田中証人 私は警察官がもし單なる殺傷を目的とした軍隊のようなものであつたならば、あの暴徒は百人の警察官があつたら完全に鎮圧できると思つております。しかしながら警察官は單に相手を殺傷するのが目的でありません。要するに相手方をしてその犯罪をやめさせ、場合によつてはその犯人を逮捕し、そうしてこれを取調べ、事件として立て、裁判所に希いて判決をいたさせるのが警察官の任務であります。もし、まつたくこれが殺傷目的にのみによつて行われたとしたならば、あるいは仰せのごとく六十一人死んだかもしれません。しかし警察としましては拳銃を有効適切に使用したものと私は確信いたしております。
  228. 竹村奈良一

    ○竹村委員 先ほど証言されました。たとえば近藤君が病院で死亡しておりますが、これに対しましては非常に重態であつて、医者が制止したのも聞かず二時間あまりも取調べをやつたり、あるいは指紋をとられたりして、それが原因で死亡したというように聞いておるのですが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  229. 田中榮一

    田中証人 今の高橋君のお話でありますが、私は詳しいことは存じておりませんから、どうも今のお尋ねに対しましては答弁ができないのであります。もちろん知つておれば答弁いたしたいと思います。なくなつた高橋君の死体を検視したときには、そのポケツトの中に、石塊その他相当なものが入つてつたそうであります。もう一人の病人の近藤というのでありますが、これもおそらく現行犯としてあるいは取調べる点があつたのではないかと考えておりまするが、私は詳しいことは存じておりませんので、今ここでお答えはできないのであります。
  230. 竹村奈良一

    ○竹村委員 詳しいことを知らぬと言われればそれまででございますが、病院に入つておる者を現行犯として取調べた。私は少し矛盾を感じる。それがたとい現行犯であつたとしても、少くとも安静にしなければ生命に危險があるとへ医師が診断しておるにもかかわらず、二時間余にわたつて無理に取調べるということ自体は、明らかに越権行為ではないか。そういう無謀な取調べの方法はない。たといそれが現行犯であつたとしても、少くとも取調べることによつて生命に危險を感ずるというときに、取調べをすることは妥当でないと思いますが、そういう事実があつたとしたならば、総監は一体どういうふうにお考えになりますか。
  231. 田中榮一

    田中証人 今回暴徒の中で、相当負傷をした者もあります。中にはそれぞれ病院に収容されておる者もあります。これらを取調べる際におきましては、医師と十分に連絡をとりまして、医師の許しを受けて、取調べする者は取調べをし、また取調べをせぬ方がよろしいという者は絶対に取調べをいたしておりません。その者が取調べてもいいような状態なつてから、医師の許しを受けて、その上で取調べる。かようにやつております。従つて警視庁としましては、そのような越権行為は絶対にやつていないと私は確信いたしております。
  232. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一点聞いておきますが、たとえば催涙彈の使用でありますけれども、これはどういうような法律的根拠で使用できるようになつておりますか。不幸にして私は研究しておりませんので、聞いてみたいと思います。
  233. 田中榮一

    田中証人 催涙彈は、現在こうしたいろいろな集団暴行事件等の鎮圧、あるいは集団暴行事件を予防するために使用されることが認められているわけであります。
  234. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それは法律のどこにありますか。
  235. 田中榮一

    田中証人 法律によつて認められてはいないのでありますが、犯罪予防上の手段として認められております。
  236. 竹村奈良一

    ○竹村委員 その犯罪予防上の手段として認められておるというのは、だれが認めておるのでありますか。
  237. 田中榮一

    田中証人 これは全国の国警、自警、同様にそれぞれ責任者がその使用を認めております。たとえば現在警棒を使う。あるいは捕繩を使う。あるいは拳銃を使用する。拳銃はもちろん法律によつて許されております。これは相手方の人命を殺傷するおそれがありますから、これは法律によつて認められております。催涙彈は相手方の人命を殺傷する危險性がありませんから、これはちようど警棒を使うとか、麻なわを使うとか、その程度の警察官の犯罪予防上の一つの手段として、これが認められております。私はそれを認めております。
  238. 竹村奈良一

    ○竹村委員 催涙彈は医者等に聞きますと、医学上からいつて、あれを吸い込みますと、肺あるいは肋膜等が冒されると聞いておるのでありますが、それでもこれは捕縄や警棒と同じような役割を果すと考えておられますか。
  239. 田中榮一

    田中証人 私は現在の医学上のことは知りませんが、催涙彈のガスを吸つたからといつて、肋膜になつたり肺病になつたりする者は絶対にありません。医師もこれは証明しております。その点を証明した上で、警察は採用いたしております。
  240. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一つ聞きたいのですが、先ほど委員長椎熊君からも、警察官の最近の傾向についていろいろ問題がありましたが、そのとき長官は、たまたまそういう入々が中にはおる、こういうふうに言つてつたのです。そこで私聞きたいのですが、たとえば最近起りました早稲田事件であります。これは後日また早稲田の問題が本委員会で取上げられるときに聞きますが、その一つの例として私は伺つておきたいのですが、新聞にも出ておりましたように、千代田のかたきを早稲田でと言つて、無抵抗な学生におどりかかつた。こういうようなことは、警察官の質の低下とお考えになりませんか。
  241. 田中榮一

    田中証人 早大事件におきまして、何か千代田のかたきを早稲田でというようなお話でありますが、絶対にそういうことはございません。それから質の向上につきましては、先ほど椎熊委員からも御質問がありました際に、私は詳細お答えいたしておりますので、これをもつてひとつ御了承を願いたいと思います。
  242. 椎熊三郎

    椎熊委員 先般のメーデー騒擾事件について、主としてあなたの配下にある警察官の行動についてお伺いいたします。  このメーデーの起る前は、特審局国警、あるいは警視庁等において、各方面からいろいろの情報収集連絡会議を開いた。そうしてあらかじめ不穏の情勢にあることを察知しておられた。そうしてこの防衛の全責任は、あなたの管下の警視庁にあるということであつた。それほどの周到なる用意をし、情報を集めつつも、かつて日本で、しかも東京で見ることができないような不祥事件が勃発した。     〔内藤委員長退席、高木(松)委員長代理着席〕  私は、先ほどのあなたの証言で、警察官の任務が人を殺戮する軍隊のようなものであつたならば、たつた百名でも鎮圧することができたと、あなたは証言されておるが、そうでなくして、人民を保護する立場にある警察官としては、犯罪を防止するのが最高の目的である。あれほどの動員力を持ち、二万五千の警察官を配下に置きながら、なおこの騒擾事件を防止することができなかつた。それはあなたの先ほどの言葉の中に、時間的のずれということがありましたが、あなたの言うずれとは一体どういうものであつたのか。そのあなた方の計画のずれの上から、騒擾事件が起つたとするならば、国民の側から見ると見のがすことのできない重大問題であります。それは今日われわれの生命財産を託しておる警察官に対する、信頼の度合いに関する重大なる問題だと私は思うのであります。なおまた、これらの行動を是認せんとするがごとき口吻を漏らす、国会内における共産党と称する——は、これを人民の勝利などと言つております。そうしてこのことが警察官の弱点を暴露したものであつて、この行動日本労働者解放のために非常なる貢献をなしたと言つております。そういうような状態で、この事件のために、ことに警視庁の警察官の威信が地におちたというような疑いがないかどうか。またあれだけの事件を起したことに対して、世の批判は必ずしも警察官に対して芳ばしい批判だけでもないで、その後における警察官は意気沮喪して、将来あるかもしれないこの種の事件に対して、勇断果敢なる行動ができないようなことでももしあるとするならば、これまたゆゆしき問題であります。これに対するあなたの見解等を伺つておきたいと思います。
  243. 田中榮一

    田中証人 メーデー前の情報の交換につきましては、おそらく吉河特審局長からも詳細お話があつたろうと考えておりまするが、この点につきましては、單にメーデーのみならず、現在諸般の治安状態から考えまして、治安関係当局といたしましては、絶えず情報連絡を実施いたしております。従いまして、このメーデーに関する事前情報につきましては、特審局からも情報はいただいておりまするし、また国警からも情報はいただいております。また警視庁自体としても、とり得る情報はとつております。その情報からいたしまして、先ほど私が説明いたしましたごとくに、單に皇居広場だけの乱入ではなくて、各所において、PD工場を襲撃する、あるいは交番、派出所、警察署を襲撃するとか、そのほかいろいろな情報が入つております。そういう関係から、警視庁側といたしましては、皇居前だけに全力を集中するということが非常に困難な状態であつたのであります。そこでなるべく全般としての警備力を一箇所等に集めないように、欲ばつて警備をいたしたのでありまして、そして皇居前につきましては、もしかりに暴徒があそこに入るとしたならば、逐次解散地等の警備をさいてもさしつえないというふうにして、これを逐次、皇居広場増員いたしまして、そしてこれに解散を命じて、逐次皇居前からこれを撤退させる。もしまたこれに対して底抗し、または暴行した場合においては、これを逐次検挙して行こうというような態勢で、一応事前に日比谷公園交叉点並びに馬場先門等において相当防禦もいたしまたのでありすが、不幸にして入つて来たのであります。そしてその入り方も、突進的にかけ足でもつて日比谷公園へ参り、そして皇居前にほとんどかけ足で参つておりましたので、時間的なずれと申しますのは、われわれが予想したよりも非常に早く皇居広場に突入してしまつたという点が時間的にずれがありまして、増員部隊等が少し間に合わなかつたという点が時間的ずれがあつた、私はかように申したわけであります。  それから本事件につきまして、いろいろ警察に対する世の批判があることは十分に了承いたしております。ただこれによつて意気沮喪することがないかというお話でありますが、少くともあの当時約三百数十名の予備隊が六千名から七千名の暴徒をささえたのでありますが、その際に私どもの考えとしましては、拳銃を持たせることによつて——情報によりますと、メーデー治の会場その他において敵から武器を奪取するということを言つておるのであります。また予備隊員としましても、拳銃を奪取されることによつてかえつて非常に危險を生ずるおそれがあるというので、あの当時ごく少数の者を除きまして全部拳銃をわざわざはずさしたのであります。そして拳銃をはずさして、むしろ拳銃なんか撃たなくても、素手で行く、相手方がどんなものを持とうが、自分らは素手でこれと戰う、かような意気をもつて、全部拳銃をはずして、皇居広場に乗り込んだわけであります。そしてこの暴徒はあるいはこうした凶器を持ち、くぎのついたプラカードを持ち、あるいはまたビールびん、サイダーびん、石灰等をまいたのであります。警察官としてはまつたく警棒一本でこれを防禦、また中には敢然として暴徒に向つて突進しまして、深入りしたがために、かえてまた非常に負傷したという者もありまして、これがために私はこの警察官自体としましては、決して負けていない、われわれは少数によつてこの暴徒を撃退したという一つの意気を持つております。従つて今後こうした事態が起りましても、たとい世の批判がありましても、警察としましてはその批判を黙々として受け、そして将来に向つてわれわれは自分の力を十分養い、また訓練して、国民のために、国民の期待を裏切らないように、ひとつお互いに努力をしようじやないかというふうな気持になつて、ただいまなお黙々として訓練にいそしんでいる次第でございます。
  244. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は今回のこの騒擾事件は突如として五月一日のメーデーに起つた問題ではなくして、それには深い根拠があるということを考えておる一人なんです。当委員会は先般来札幌における白鳥事件、京都の騒擾事件等をも調査しております。私も現場に参つております。これらの事件のほとんど共通した点は、去年十月の五全協の指令に基いての行動だということが一切の事件の共通の点で、しかも明らかな点であります。     〔高木(松)委員長代理退席、委員長着席〕 すなわち、共産党の地下組織が全国の細胞に指令いたしましてやつておる五全協の指令なるものは、主として国民との間に、指導によつては間隙を生じそうな階級、それへの神経戦、それの国民との離間策、具体的には判検事、警察官、税務官吏、そういうものに対する暴力による反抗行動を具体的に指示を與えておるのであります。しかもそれらの総合した計画の最後の終点は、彼らの常に主張しておるところの暴力革命にまで発展せしめて、人民政府を樹立するという点にあるようであります。今回行われたメーデーにおける一部過激な分子も、先般来の証言をもつてすれば、共産党の細胞分子であろうところの学生の一部矯激な分子、あるいは朝鮮人の一部の人々、これらはことごとく共産党の指令下においてなされたといわれておる。現に私どもがこの委員会に持ち込まれておるこの旗を見ましても、日本共産党の名が印刷されておるのであります。しかしながら共産党の戰術は非常に複雑怪奇、單純ではありません。そして巧妙であります。従つて今日われわれの目の前に示されておる共産党とは、日本共産党と名乗つて、公認せられて選挙に出て来て、今当委員会にわれわれと同席しておるような、衆議院議員たる共産党議員と称せらるるものと所属を同じうする共産党なのであるか、その点を明確にしてもらいたい。現に当委員会にも二、三の者が入つておりますが、白々しく彼らはこの事件に反駁的態度をもつて質問している。もつとも彼らは共産党員としても卑怯の分子でありまして、偽装しているのであるから、あまりこんなものを眼中に置いては、国会の権威として私どもはあまりかんばしくない——でありますから、そう問題にしたくはないですけれども、これでも日本が公認している政党の国会議員なんです。国家最高の機関にこれが列席しておつて、この事件を彼らに有利なごとく誘導尋問せんとするがごとき卑怯未練なる行動を私は笑うに足りたる行動だと思つている。真に彼らが筋金の入つた共産党員なら、われらの同志がこの旗を持つてつたとなぜ言わないか。ほんとうの共産党員ならそれくらいの覚悟を持つはずだ。私どもは断固として彼らと闘う。(発言する者あり)  そこであなたに聞きたいことは、この——のような共産党員と称する——と、この旗を持つている共産党員と称するものが同じ共産党なのかどうか、明確に御答弁願います。
  245. 田中榮一

    田中証人 今回の皇居広場の暴動は、昨年の五全協の指令によつてつたのではないかという御質問のようでありますが、私どには今五全協の指令によつてこれが行われたものという確実な証拠は握つておりませんが、しかし先般起りました蒲田事件、二月二十一日の東大事件、そのほかいろいろ全国に事件が起つておりますが、その行動の結果から見ますれば、五全協の指令に基いた行動のようであります。従つて今回の皇居広場が、全然五全協の指令に関係ないとは、私はここに言い切れないのであります。従つて現在のこうしたことが、日本共産党の指令であるかどうかは、私は明言できませんが、日本共産党では三月中旬、「日本の全労働者諸君、光栄ある第二十三回のメーデーに際し、日本共産党は諸君に訴える。」こういうような題で、「第二十三回のメーデーは、反戰、平和、民族独立のために、決戦しなければならない。」という、戦線統一を強調された十七項目にわたるメーデー・スローガンを発表しております。このメーデー・スローガンの中に、やはり今回起つたような暴動の事柄が、これに詳当するようなことがうたわれておるということは、これは見のがせない事実であります。現在ここに証拠物件として押収してありますのは、東京都中野地区委員会の地区委員会旗でありまして、軍隊でいえば連隊旗を押収されておるのでありまして、これは非常に有力なる証拠物件であります。少くともこの旗のもとに、日本共産党中野地区委員会のだれかが、必ずおつたものであろうということを、私はこれは断言してさしつかえないと思います。しかしこれがどういう働きをしたかということは、ここで明言できませんが、必ずこの旗を持つてつた旗手というのは、日本共産党の人以外にはこの旗は持てないのでありますから、少くとも共産党の人が参加しておつたということは、明言できると思います。それから、現に今回の皇居広場における騒擾事件関係いたしました容疑者が、現在八百数十名検挙され、なおかつ続々として検挙され、当日皇居広場に乱入いたした者が、かりに九千名といたしますと、その一割が現在犯罪容疑者として検挙されておるという状況でありまして、現に日本共産党員である都会議員の人も検挙されております。また日本共産党党員の人も、相当数検挙されておりますから、私は現在の表面に出ている共産党員の人で、この皇居広場騒擾事件関係しておるのではないかということが、一応これらの事実から証明できる。それからなお、もちろん地下にもぐつた党幹部も、これには関係しておるということが言えると思います。
  246. 椎熊三郎

    椎熊委員 大体私の当委員会を通じて調べ上げている点は、そう違つた方向のものでなくて、やや核心をついておつたことは、ただいまの証言でも明らかにされると思う。ただ国会を通じては、共産党議員と称する者は、国会の自由なる言論を通じて、今回のメーデー騒擾事件は、労働者の自然発生の現象であつて日本共産党員がこれを使嗾したものでないということを強硬に主張しているのです。しかるに、いろいろの証拠から、今は地下に潜行している徳田球一君、かつてこれらの人々の執行委員長であつて、終戦後われわれと同じく議席を持つて、国会議員であつた徳田球一君の各によつて、コミンテルンと申しましたか、(「そんなものはない。」と呼ぶ者あり)、コミンフオルムですか、先ほど特審局長の証言によると、そこから発行されている新聞紙に、明らかに徳田球一君の署名入りで、五全協の結果指令を出したということを言つておる。     〔発言する者あり〕
  247. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  248. 椎熊三郎

    椎熊委員 彼らがいかに強弁するといえども日本共産党が今度の騒擾事件関係ないと、なぜ言いたいのか。君らがほんとうに崇拝しておつた徳用球一君の名によつて、この指令を出して、世界に訴えているその事実を隠蔽して、われわれは何も関係ないとここで言わんとするがごときは、いかに共産党員としても、卑劣千万な━━━━が国会に来ているのか。共産主義者らしくない。君らの主張が正しいならば、堂々とわれわれが主張してこれをやらせているのだと言つて何で恥ずる。君らも命をかけているのだろう。そのくらいの勇気がなくちやだめじやないか。そこで私は証人に聞きたいのは、こういう共産党員というものは、すでに都会議員の中にもおる。現にあなたの目の前にも卑怯千万な二、三人の……。     〔「何を言うか。」と呼び、その他発言する者多く、離席する者多し〕
  249. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。言論は自由です。言論には言論をもつてやりなさい。——御着席願います。——議場整理は委員長にあります。委員長にまかせてください。——御着席願います。
  250. 椎熊三郎

    椎熊委員 たいへん委員長に御迷惑をかけました。言論を慎しみます。慎重な態度で、国会の品位を傷つけないようにやりますから……。
  251. 内藤隆

    内藤委員長 発言にはどうか御責任を持つて、慎重におやり願います。
  252. 椎熊三郎

    椎熊委員 そこで、こういう卑怯千万な行動が国会内でも行われているのだが、私はこの際あなた方の証言を通じて、日本共産党と称するものが、今回の、日本においては空前にして、おそらくは絶後でありたいところのかくのごとき騒擾事件に、指導的な役割を務めたのであるということを、あなたの証言によつて明らかにしたのでありますが、あなたは今、都会議員の人もすでに検挙されていると言われ、現にわれわれは、当日国会の付近において、国会の共産党議員と称する者が、肩から赤い布きれをつけて、この過激分子の一隊を激励している状況をも目の前に見ているのです。そういう不穏当な状況があつて、なおかつ今日の国会では、共産党はこの事件に出動したものでないという主張を、私は証拠を持つて国民の前に、彼らの欺瞞的行動を明らかに暴露して、神聖にこの事件内容を把握したいという念願にほかならないのです。さらにこれを具体的にあなたにお聞きするのは、日本共産党と称するものが、あれらに出ている共産党というものと、ここにいる共産党というものは、二にして一なのか、一にして二なのか、これはまつたく同一なものなのか、その辺の捜査、取調べというものはなかつたのでしようか。
  253. 田中榮一

    田中証人 現在本事件に関連をいたしまして逮捕いたしました者は八百数十名、まさに九百名になんなんといたしております。われわれのねらつておりますところは、もちろんこの容疑者の中に、日本共産党員もございますし、また現在日本共産党員でなくして、なお今椎熊委員のお話のように、メーデー当日、共産党の幹部級で、オート三輪車等に乗つて現場を相当指揮しておつた者もあります。これはただちに逃避いたしておりますが、今後この検挙の方針は逐次現在表面に出されておる幹部に及ぶだろうと思います。従つてその幹部からさらにまた今地下におる共産党といいますか、そういう者にも及ぶだろうと思います。ただ現在は、今お話の表面の動きと地下の動きとの関係を、警察、検察は鋭意努力いたしておりますので、やがてこうしたことが近い将来において何らかの形で判明できるのではないか、ということだけを申し上げておきたいと思います。
  254. 椎熊三郎

    椎熊委員 今度は観点をかえて、日本の警察制度の問題で、政府は今度の事件に関連したという気持であつたのでありましようか、急遽国会には警察法の改正が提案されておるのであります。すでにわれわれの党でも、この問題に対する研究が続けられておつて、ほぼ党議等もまとまりかけております。その中に、今度の事件の発生にかんがみて、騒擾事件あるいは内乱事件、あるいは外国侵入の暴力行為に対するがごとき重大なる問題に対する政府の責任を明らかにし、敏活にしてかつ有効適切に未然に防止しよう、しかして政府の最高責任者と警察行政の責任を明らかにしたいという意図なのでございます。ことに帝都を守る警視総監の地位を総理大臣の任命にしたいという。今日は公安委員会から選ばれて任命されておるのありますが、これが自治体警察の本質を強調するものであります。先刻来あなたの言葉の中に、警察の威信という言葉がまま私どもの耳朶に響いて、この警察の威信という言葉の使い方によつては、非常に間違いを起しやすい問題ですから、警察の威信とは何ぞや、それは国民のための国民の警察たるの威信であつて、警察官の威信として、政府を擁護し、政府の命令下にある警察の威信では断じてないというのが、新憲法下におけるわが国の警察制度の根本をなすものであると思うのであります。私はその精神から、この警察行政の責任はいずれにあるにしても、警察官というものは当時の行政官、当時の政府責任者のための警察官であつてはならない。まま間違えられる点で、今日の改正法案のごとく、総理大臣の任命によつて警視総監がきまるというがごときははたしてどうか。あなたは警視総監を総理大臣が任命することについて、いかなる考えをお持ちでございますか。
  255. 田中榮一

    田中証人 もちろん警察というものは、従来の警察がいわゆる警察国家の形式をとりまして、非常に誤解を受け、またあるときにおきましては非常な弊害すら生じたことは事実でありますが、かような点から昭和二十三年三月七日に新しい警察制度が制定いたされたわけであります。この警察制度のねらいといたしますところは、ただいま椎熊委員の御指摘のごとくに、いわゆる警察というものは政治に煩わされず、政治とは全然かけ離れたいわゆる不偏不党の立場において治安維持の責に任ずる。そのときの政府の政策とは別に、いわゆる純然たる治安確保の責任を全うせねばならないというのが、この新しい警察制度のねらいであります。従つて新しい警察制度ができまして以来、この不偏不党の立場におきまして、警察は常に治安確保に邁進して参りました。その政党のいかんを問わず、常に同じような方針で治安の維持に当つて参りました。ただ今日の立場におきまして、もちろん警察は不偏不党の立場ではありますが、今椎熊委員からお話がありましたような、皇居前における騒擾事件、それからいわゆる内乱に類するような事柄、それから非常に広範囲にわたるところの集団的暴行事件というものは、国家の治安に根本的に関係する重大なる事案でありまして、こうしたことはやはり政府の責任者において、もしあるところに起きましたときには、それが警察制度の上に関連性がないからといつて、責任を回避することはできない。やはり政治的の責任というものは政府において当然負わなくてはならない。かような観点からして、何らかこうした事件に対する政府の指示というものは当然必要であろうと考えております。またそれによつて政府の方としましても、当然政治上の責任を負わなければならぬ、こういうことになるのであります。ただ任免の形式につきましては、私は今ここで現在の政府の制度がいいとか悪いとか述べることは差控えたいと思うのでありますが、これにつきまして私の考えといたしましては、なるべく民主警察の趣旨をくずさないような方法で、しかも政府としてねらつている目的が達成できるような方法を講じていただければたいへんけつこうではないか、それではどういうことかと言われますと、今の私の立場上、これを具体的に申し上げることは少し差控えたいと思いますが、やはり民主警察の基盤である公安委員会というものは、あくまでこれを尊重して行つた方がいいのじやないか、かようなことだけは申し上げてさしつかえなかろうかと思います。
  256. 椎熊三郎

    椎熊委員 最後に簡單にもう一点。新しい警察制度になつてから、日本では初めての自治警というものができまして、これが警察のほんとうの精神の一番端的に現われたものであるということを、私ども関係方面から承つたことなどもあります。そして最近までは全国に自治警察が千五、六百あつたと私は記憶しておりますが、その後微弱な市や町におきましては、経済上の負担に耐えかねて、人民の多くの意見に従つて、これを国家警察に切りかえてもらう、そういう運動が各方面に行われております。現にこの国会開会中、全国で今五つほど、その問題で一つの政治上の事件が起つておるところさえあるのであります。千五、六百もあつた自治警察が一箇年のうちに半数に減つたというこの現実は、自治警察というものにまだ日本国民はなれておらない。それが捜査の上でも非常に連絡を欠き、微弱であり、経費の点で非常に貧弱であつて、町村の負担に耐えかねるというところから、傾向としてはどうしても国家警察に委讓するという傾きが現在のところは非常に強い。私が憂えるところのものは、それが全部一本建ての国家の警察になるというようなことにまで行くということに落ちつく——これは仮定ですけれどもそういうことにでももしなるとするならば、それは旧来の日本の警察国家式な警察第一主義の、人民を支配するような、人民を圧迫するような警察制度が復活するのではないかということを非常に心配しておるものであつて、あなたは自治警察の総監であられるので、あなた自身の立場からは言いにくい点ではございましようが、将来の日本の警察制度は、われわれの考えとしては、東京警視庁というものは、ただ單に東京市民だけの治安維持ではなく、あなたが先ほどおつしやつたように、東京治安を全うすることによつて全国の治安を全うすることができるという確信さえ持つなれば、首都の警察行政というものは、他府県の国家地方警察、あるいは自治警察というものとは、特色があつて別個の扱いをしなければならぬと私は考えておる。そこで国家警察に一元化する方向に対するあなたの感覚、首都警察に対するあなたの感覚、たとえば、具体的にでなくても、あなたの理想としてはこうだというお話でも承つておけば、目下警察法改正の審議に当つておるわれわれとしては、非常に参考になると思いのです。
  257. 田中榮一

    田中証人 私は警察制度が改正されるというたびにいつも感ずることでありますが、一体、制度というものはすべて人が運営するものでありまして、この制度を生かして使うのも殺して使うのも、結局これは人の問題であると思います。そこで昭和二十三年に警察制度ができましてから、大体四年数箇月になつております。その間に、常に警察制度の改革ということが問題になりまして、そのたびに自治体警察側の受けるところの感じというものは、まず第一に警察官の志気に及ぼす影響であります。また制度がかわる、また制度がかわる、そのたびに一体われわれはどうなるであろうかという、これは自治体警察官全員の偽らざる告白であります。どこの自治体でありましても、また警察制度がかわり、五万以上の都市が国警になるのじやないか、十万以上の都市が国警になるのじやないかということで、そのたびにこの自治体警察に従事しておる警察官というものは非常に人心が動揺する、安んじて治安維持に従事できないということが一つございます。  それからもう一つは、警察制度がかわるたびに一体自治体は金が出ないものでありますから、やがて警察制度がかわつて国警になるならば、必要なる装備設備の改善なんかは、なるべくできれば国警なつてからやつてもらおう。できるならば今経費支弁を遠慮しようじやないかということで、せつかく築き上げました自治体警察制度というものは、そのたびに経費の点において抑制せられ、また警察官全体の気持の上において、非常に影響を及ぼしております。今回警察制度が政府においていろいろ提案されおります。しかしながら自治体警察官全体はこれがまたさらに進展して、また何か第一次階段に来るのじやないか、第二階段にはこれが来るのじやないか、第三階段にはこれが来るのじやないかというような非常な心配がございまして、こういう重大なときに全体の自治体警察官に及ぼす心理的な影響というものは、すこぶる大きいということを私は申し上げてはばからないと考えております。ただ現在の状態からいたしまして……。
  258. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に申しますが、ちよつと椎熊さんにも申しますが、これは警察制度改正の委員会等もありますから……。
  259. 椎熊三郎

    椎熊委員 あまり詳しくなくていいのです。あなたの感覚を……。
  260. 田中榮一

    田中証人 私の考えといたしましては、将来もし日本の警察制度を強くするというならば、小出しにせずに、一ぺんに徹底的な警察制度の改正をされることを私は希望いたしております。
  261. 椎熊三郎

    椎熊委員 わかりました。
  262. 内藤隆

    内藤委員長 浦口鉄男君。——ちよつと浦口委員に申し上げますが、もう総監が会議に出たいという時間も非常に経過しておるのでありまして、はなはだ申しかねますが、なるべく簡略に要領よく御質問願います。また証人もなるべく簡單にお答え願います。
  263. 浦口鉄男

    ○浦口委員 なるべく簡略にお尋ねします。最初にお尋ねしたいのは実は証人も去る四月二十五日、この委員会証人としておいでになつたであります、そのおいでになつた理由は、御承知のように昨年の十二月以来、警視庁管内にもいろいろ治安関係した騒擾事件が起きまして、その証人としておいで願つたわけであります。この委員会警視庁管内のあるいは京都、広島各地の騒擾事件を取上げたそのねらいは、五月一日に予想されたメーデーが、日本の独立とか、あるいは昨年以来全国的に起きておる騒擾事件との関連において、例年のメーデーとは必ずここに違う事態が起きるのではないかというふうな国政上の一つの心配から全国的に問題を取上げたということはすでに御承知と思うのであります。その際証人も、こうした昨年来の警視庁管内事件も、一つ思想的背景を持つたものであり、権力闘争につながる一連の事件のように思われるということを証言されておるのであります。行政監察委員会における結論は、私の承知するところでは、おそらくメーデーの直前において、委員長の名前をもつて警視庁にもメーデーに対する一つの資料として差上げてあると思うのでありますが、この行政監察委員会の四月までに行われた審査に対する結論を、このたびのメーデーの場合において、どういうふうに活用されたか、その点をまずお尋ねいたします。
  264. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとその前に浦口君に申し上げますが、委員長名における警告は出しましたが、これは中間報告でもなければ、結論でもないので、委員長としてかような今までの各種事件を調べて行くと、五月一日に危險があるように思われるということを、あらかじめ警備を整える意味において、資料として差上げたにすぎないのでありまして、決して中間報告でも結論でもないことを御了承願います。
  265. 田中榮一

    田中証人 先般の行政監察委員会におきまして結論を出されましたものを文書で私ちようだいいたしました。そうしてそれをただちに文書にいたしまして、管下各警察署その他警視庁管下の関係方面に全部これを流しまして、現在行政監察委員会としてはかかる方向に向つて意図を持つておられる。治安に従事する者としては、これに乘せ十分留意した上で警察活動をせよということを全部の警察署長にただちに伝達いたしました。
  266. 浦口鉄男

    ○浦口委員 その結果具体的に何か役に立つたとお考えになつておられるかどうか、その点をお伺いいたします。
  267. 田中榮一

    田中証人 あの行政監察委員会からいただきましたものは、大体におきまして具体的なものでありませんで、抽象的なものといいますか——相当抽象的な点もございますので、これにつきましては、とにかく国会においてこうした問題について相当強い関心を持つておる、従つて国会の意思というものはこういう点にあるから、十分この点を考えて取締り等に従事し、警察官もこういう点を考えて警備に当らねばならぬということは、各署長があの文面において十分徹底したのじやないかと考えております。
  268. 浦口鉄男

    ○浦口委員 次にお尋ねいたしますのは、このたびの事件が決して偶発的なものでないということは申し上げるまでもないのですが、先ほどの御証言の中で、大会において多少は荒れることも予想した。またデモの沿道においてトラブルも予想した、こうおつしやつておりますが、われわれとしては、そういうふうな考え方が根本的に非常に甘かつたのじやないかと考えるわけであります。しかもその後の証言において、やはり主催者側総評も警視庁も、まつたく予期しなかつた、何分大部隊のためにどうにもならなかつた、こういうような御証言もあるわけです。私そういう言葉じりをとらえるわけではありませんが、そういう言葉がここで聞かれるということ自体非常に甘く見ていたのではないかと思うのです。そこでその後の御証言において、あらゆる点を十分勘案、計画、実施したという言葉と非常に食い違つて来るのです。そこで、情報は非常におとりになつているが、その情報の取捨選択が適切でなかつたのではないか、こういうふうに私は考えられて来るわけであります。五月十一日の読売ウイクリーを見ましても、この表題を見ても、「暴動の作戰はこうして練られた」「数十日前から準備」「行動中核隊組織秘密指令」というようなことで、治安当局と新聞記者との合同記事として出て、おります。その中でこういうことが報ぜられているのであります。結論は、情報はたくさんあつたが、しかしその判定に重大な失策があつた、当局はまず頭脳作戰において最初から黒星であつた、こういう結論が出ているわけであります。具体的な事実といたしまして、総監も言われるように、これを非常に平和的に解決しよう、いきなりピストルを使うとか、催涙彈を使うということでなくて、最も平和的に解決しよう、そのためにピストルを使うことも禁止したというふうな通達の出ていることは了承するのでありますが、ただこういうことがあるわけであります。メーデー前日の三十日、警視庁で開かれたメーデー警備対策会議が、何ら結論を見ないまま散会になつても、そのときは別に気にもしなかつたという驚くべき事実がある。その会議というのは、警備、公安の幹部が情報検討をしたわけだが、某幹部は、皇居広場の交通を一時遮断して、入口にはバリケードを築いて万全の態勢を整えよと主張した。ところが他の幹部は、デモは大したものではない、交通遮断といつても、一般に迷惑がかかることだし、それに皇居広場は広いから、一一入口をふさぐのもたいへんだ、万一中に入れば、広い場所を自由に使つて一網打盡だと楽観論を述べ、その日は結論を見ないまま、メーデー当日の一日午前中に会議を開くことにして散会した。ところが当日になつても、なぜか会議は開かれず、そのうち暴動事件となつた。これがもし事実とすると、万全の準備をして計画、実施したという証言と非常に食い違つて来るのでありますが、この点ひとつ御証言を願いたい。
  269. 田中榮一

    田中証人 警視庁側といたしましても、大会におきまして、また沿道におきまして、相当荒れておりますので、必ずしもこれがきわめて軽微の暴行事件で終るということは予想いたしておりません。やはり相当暴行事件等が起るであろうということを予想いたしておりますればこそ、活動に支障を来してはいかぬというので、予備隊員等がわざわざ拳銃をはずして行つたほどあります。それから私どもの考えといたしましては、あらゆる点を考慮いたしまして、ただ情報判断からしましていろいろの警備計画を立てました。その警備計画が、これもやらなくてはならぬ、これもやらなくてはならぬ、あらゆる程度の警備計画を立てましたがために、いわゆる警備計画の重点的な点について、もししいて言うならば、たとえば皇居広場に、他の一切を犠牲にして集中すべきではなかつたか、あるいは皇居広場を捨てて他に待機しておるという手もあるのでありますが、むしろ他の一切を捨てて、どんなことが起つても構わずに皇居広場に重点を置いておつたならば、あるいはこうしたことはなかつたかと思いますが、警備警察に従事するものといたしましては、やはりそうしたことだけに警備を集中するということは、建前上できないのでありまして、そういう点から皇居広場に対する重点的の考え方が足りなかつた。要するにウエートをそこにもう少し置けばよかつたものを、置かなかつた、こういうことではないか。決して甘く考えたとか、そういうふうな考えではないのでありまして、要するに重点の置き方が他に少しよけい行き過ぎて、皇居広場の方が若干手薄であつた、こういうことは言えると思うのであります。  それから三十日にメーデー対策会議を開いたというのでありますが、これは二十八日にすでに管下の署長会議を開催いたしまし三警視庁といたしましては、こういう点について警備計画を注意しろという確定的な案をすでに指示いたしておりまして、その後さらにそれを変更して三十日に対策会議を開いたような事実はございません。それから翌日十時にまた開くということも考えておりませんでした。これは現に私がそういう考えを持つていなかつたのでありますから、二十八日に警視庁の方針を署長会議を開いて徹底させまして、その後その方針に基いて取締りを計画いたしておりますので、従つて三十日の会議を開く意思もございませんでした。だから、さらにどういうところでまた別の部下が会議を開いておつたかどうかは存じませんが、少くとも私が主催する会合は開いておりません。
  270. 浦口鉄男

    ○浦口委員 事実はこの新聞の報道と違うということになるのですが、それはそれで了承します。  次に、これは具体的な問題になりますとたいへんむずかしいと思いますが、結局は虚々実々と申しますか、向うも相当の作戰を立ててやつて来ておりますことはもちろんでありますから、その実際の過程においては、作戰通り来るか、また作戰の裏をかくか、かかれるか、これは両方の問題だと思いますから、私はそういう具体的なことを今ここで申し上げるつもりはありませんが、要は、向うの作戰に従つてその情報を的確に本部の方に伝えて、その作戰の裏をかかれないように、あるいはそれにふさわしい警備体形を次々とかえて行くという連絡が非常に悪かつたということをわれわれは考えるのでありますが、その点いかがでございますか。
  271. 田中榮一

    田中証人 いわゆる軍事行動なるものがいろいろな陽動作戰をもつて参りますので、情報そのものをまともに受取つてこちらが警備計画を立てるということは、なかなか困難でありまして仰せのごとくにいろいろな点を考えて、どこに来るかということは、われわれとしても慎重に考えているわけです。当時も、今お話の作戰の裏をかかれないようにするためにいろいろ連絡関係が欠けておつたのではないかというお尋ねでございますが、この点は要するに警察力の配置転換が十分でなかつたということができると思います。これは確かに現在の装備、施設におきまして機動力がまだ十分でございませんので、従つて警察力の配置転換の時間というものが非常にかかつたことはある。この点はわれわれも今後十分装備を改善いたしまして、こうしたことのないようにいたしたいと考えております。
  272. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういう具体的な問題を申上げていると時間がありませんから申し上げませんが、ここにやはり別の新聞によりますと、当日の会場における状態を、第三者として見ていた一自動車運転手のそのままの言葉が載つているわけです。これを見ますと、非常に計画的に、巧妙に事態は運ばれているということがわかるのであります。この自動車運転手の言葉は、最後は何と言つているかというと、「共産党つて頭がいいですね。警戒の盲点を縫つて、民衆を戰闘のうずに巻き込む日共のゲリラ戰術のテストが、みごとに成功したのである。本部に衆目を引きつけて、行動班を各団体にまぎれ込ませる手口などは、まつたく忍術の初歩であつて、きわめて簡單だが、この簡單な戰術こそ陸の魚雷戰法、ゲリラ戰術の鋭い一形式と見るべきであろう。」警察官がこれにすつかり操られたということを言つておるのでありますが、私は、当局としてこうした非常に巧妙な作戰というものは、結局軍事的な一つの作戰と見てもいいのではないかというふうに考えるわけでありますが、その点先ほど証人が、今後の問題に対して戰闘態勢を整えるというふうなお言葉を聞きますと、相手がそういう軍事作戰に出るならばこちらもやはりそういう緻密な軍事作戰的な計画を立てて対抗しなければならないというふうな、新たなる観点に立つて今後お考えになつていいんではないか、こういうふうに私は考えるのですがいかがですか。
  273. 田中榮一

    田中証人 もちろんあらゆる條件、環境のもとに行われまする、いろいろな軍事活動の性質でありますので、これが方程式化された警備計画というものがなかなか困難であります。あらゆる時期、そのときの状況、それから地形地物の関係、まあいろいろな状態から勘案いたしまして、常に最悪の場合を考えて警備計画を立てなければならぬと思つております。ことに最近の軍事行動の性質等からいたしまして、われわれもいろいろ考えなければならぬ点がございますので、これらにつきましては十分にひとついろいろそれに適応する装備を現在着々考えておる次第であります。これによりましていわゆる軍事的作戰に対するそれぞれの対策を十分に現在講じたいと考えて、いろいろいたしておる次第であります。
  274. 浦口鉄男

    ○浦口委員 もう時間がないようですから、簡單に三つだけ項目を並べて質問しますから、簡單に答えていただきたい。  責任の問題は、これはまあ終局は政府にも大きにあると思いますが、総評は総評の計画した通りデモは日比谷で終つているので、計画後の事態に対しては現実の問題として責任はない。もちろんこうした事態を起したことに対して間接の責任はいろいろある、こういうことを言つております。そこで日比谷で解散以後の非常事態に対しては、これは警察の責任であるというふうに言つておりますが、その点総監の見解を聞きたいと思います。  それから第二には、今度の騒擾事件が起きた直接間接の原因としては、何としても皇居前の広場を使用させなかつたというとが、いろいろな意味で一部の原因をなしていると思います。これが全部の原因ではないが一部の原因をなしていると思います。吉武労働大臣は、皇居前を使用さしていたならばあそこに数十万の組合員が固まつていたのであれば、なおさらその組合全体が、数十万の人全部がこの騒擾に巻き込まれたのであろう。であるから結果においても使用させなかつたのが当然であつた、こういうふうに言われておりますが、労働組合の方は逆の意見を持つていることは当然であります。それに対して警察側の見解をお聞きしたい。  それから第三には、特審局情報と警察の情報については、各地においてどうもしつくり行かない点があります。これはお互い証人も、特審局に対するお考えをここで率直に述べられることは、私は立場上苦しいかとも思いますが、一体特審局情報活動と警察の情報とが食い違つて来る場合がたくさんあることも、これは当然であります、それを取捨按配して、打合せ会議で適当な情報に集約して行くことこそが、情報の特徴を生かして行くことだと思うのであります。その点しつくり行かないというのは、機構上の問題であるか、あるいはまた人の問題であるか、また根本的にこうした二つの機構があるのがいけないのかどうか、こういう点についてできるだけ率直にお考えを述べていただければけつこうだと思います。
  275. 田中榮一

    田中証人 今回の騒擾事件についてのいろいろの責任問題でありますが、これはいろいろの点から責任問題が考えられると思います。少くとも騒擾事件におきまして、警備上にもし欠陷が実際にあるといたしまするならば、その警備警視庁でやつておりますので、私がその責任者でございます。  それからまた、一体この全学連とかあるいは朝鮮人というようなものをメーデーに参加させたということが、そもそも私は根本問題じやないかと思います。もしこうしたものが参加していなかつたらもちろんこうした問題は起らなかつたかと思います。こういう点から申しますれば、私は総評におきましても十分責任というものは感じてもらわねばならぬと思います。ことに当初総評におきましては、こうしたものは入れないということを一応警視庁に約束をされたようであります。それが途中からいろいろの事情から総評が拒否することができずに入れたということについて、その点はいろいろ事情がございますが、そういう点は十分総評側としても責任は感じてもらわなくちやなるまいと思つております。  それから皇居前の広場を使用したならばこんな問題は起らなかつたじやないか、こういうお尋ねでありまするが、これは吉武労相がこうおつしやつたのですが、これは結果論でありまして、もしもかりにあすこを使つて、そうして今度五箇所にわかれて、五箇所でこういうことをしたならばどういうことになるか。五箇所からもう一回皇居広場まで帰つて来る、あるいは五箇所において今度は交番、警察署その他をあつちこつちで襲撃したならばどういう結果になるか、こういう点から考えますと、これはどちらを使つた方がいいかということはちよつと私はここでお答えできぬと思うのであります。  それから特審局情報と警察の情報がしつくり行かないということでありますが、この情報というものはやはりいろいろな立場から、いろいろな情報網から入りますから、そのありのままの情報をやはりとつてもらつたがいいと思う。その情報をつき合わせて、もちろん仰せのごとくにその情報は、警視庁の方の警備計画をする上においてこれを消化してやつております。従つていろいろな情報をやはり警視庁がいただくことが必要なのです。特審局特審局としての情報国警国警としての情報、これはありのまま、生のままいただいた方がいい、それによつて情勢判断をいたします。決して情報が両方しつくり行かないということは絶対にありません。
  276. 田渕光一

    ○田渕委員 時間が切迫しておりますので、私は総監に簡單に二点をお聞きしたいと思います。  一点は、つつしんでお見舞申し上げます。去る五月一日のメーデーにおける首都治安維持のために第一線警官各位がかつてなく多数の重軽傷者を出したことは、独立早々の時にまことに遺憾であることは、これはわれわれ一般国民もその通りであります。この負傷警官各位の一日もすみやかなる御平癒を祈ると同時に、私は心からお見舞を申し上げるものであります。どうか療養加療中のお手当は十分であり、また御家族の慰問等に関しましては万般の遺憾なき措置を講ぜられていることと思いまするが、一層の御注意をお願いいたしたいのであります。また同時はこの委員会を通じまして私はこの機会に、五月一日の当日全国各地において御同様の負傷警官各位に向つて同じ趣旨を心から申し上げるものであります。これは私の見舞の言葉であります。  そこでもう一点伺いたいのは、ここに提示されておりまする、本日この委員会に証拠品としてあげられておりまする大体三メートルくらいの赤旗の先端に三十センチくらいの鉄棒をつけ加えました竹やりの押収物件の証拠品があります。この旗を見ますと、相当古い赤旗でありますことは、当委員会の各位も認めるところであると思いますが、この旗に白地で抜いて日本共産党中野地区委員会と書いてあるが、メーデーの当日に参加した日本共産党の各地区委員会の旗などは、写真等によつて明瞭にたくさん出ておるのでありますが、こういうような旗の地区委員会の所在地、同時にその委員会のメンバー、あるいは責任者等は捕逮されておりまするか。地区委員会の所在地、幹部、あるいは委員会のメンバー、これらのことがおわかりであつたらお教え願いたいことと、同時にこれらの責任者が逮捕されておるかどうかという点を伺つておきたいのであります。お忙しいでありましようから、私は本日は二点だけにとどめておきます。
  277. 田中榮一

    田中証人 メーデー当日、皇居広場におきまして暴徒のために負傷いたしました警察官一同に対しまして、非常に御丁重なるお見舞の言葉をいただきまして、まことに感激にたえません。そのことは、私は帰りましてただちに、現在入院中の者はもちろんのこと、当日負傷いたしました全員に対しまして、さらにお手厚きお言葉を伝達いたしたいと考えております。なお全国各地の警察官にも同様な負傷者がございましたが、私は全国自治体警察連合協議会長でございますので、その名前によつてこのことは全国に伝えることにいたしたいと思います。なお国警長官にもそのことをさらに伝えたいと思います。  現在ここにあります東京都中野地区委員会でございますが、これも今私ははつきり覚えておりませんが、これの関係者が多分逮捕されておると思います。この地区委員会そのものであるかどうか存じませんが、これに関連した者も逮捕されております。それからなお各地区委員会におきまして、旗は押収されておりませんが、現場における写真によりまして——これは相当科学的な方法によりまして、現場写真をたくさん今とつております。その多数の写真を突き合せまして、現場におつて暴動を働いておる現況を現場写真といたしまして、それぞれ逮捕いたしておりますので、その中には、今お話の東京都内の地区委員会のメンバーはもちろんのこと、またメンバーでなくとも、いわゆる同調者等も、この逮捕者の中に相当つております。なお今後逐次証拠物件等によりまして、さらに検挙の数は増大されるものと考えております。それによつてわれわれのねらつておりますのは、それの幹部、それから先ほど椎熊委員のお話のございました、いわゆる地下にもぐつた幹部との関連性を、ただいま徹底的に追究中でございますので、さよう御了承願います。
  278. 山口武秀

    山口(武)委員 本年度のメーデーは、例年と違いまして、一つの重大な特殊性があつたわけであります。それは昨年米国を中心の相手としますところの單独講和が結ばれまして、日本がアメリカのもとに従属し、日本にアメリカの軍事基地をつくり、さらに予備隊が増設されまして、これがアメリカの傭兵的な性格において進められておるという事実がある。これが合法化されたということなのであります。このような状況におきまして、今年のメーデーというものは、例年に比べますと、きわめて特殊な状態のもとにおいて開かれたわけであります。さらにこれに加えまして、破防法の制定という問題がある、さらには労働関係法律の改悪という問題がある、さらに直接的には皇居広場の使用禁止というような政府の彈圧措置がありまして、このもとにおきまして、本年度のメーデーを迎えたわけであります。これは一つの国が一定の外国のもとに従属し、そこの植民地になり、あるいはその軍事基地化した場合、各国の例を見ましても、その国におきましては、その国の国民が当然実力をもちましてその支配者に対して反抗するというのは、世界のあらゆるところにおける歴史的事実というものがこれを証明しているのであります。
  279. 内藤隆

    内藤委員長 山口君に申しますが、どうかひとつなるべくこの際意見は省略されてメーデーに関する当委員会の……。
  280. 山口武秀

    山口(武)委員 だから本年度のメーデーにはそのような特殊性があつたということを申し上げるのです。
  281. 内藤隆

    内藤委員長 その点でひとつ……。
  282. 山口武秀

    山口(武)委員 その特殊性を抜きにして、本年度のメーデーというものをいかに考えましても、いかにそれの対策を立てられても、対策が立たないから、この特殊性を明らかにしなければならない。こういうわけで一番重要な点を私は申し述べるわけであります。  それでこういうような状態におきまして、日本国民がこれに対して反抗をして行く。このことはメーデーがなくても考えられるわけなんであります。ところが本年度のメーデーがいわゆる講和発効直後に開かれ、ここにおきまして、アメリカに対して日本が従属しているという事実によつて、最も激しく搾取され圧迫されているところの労働者、それから社会の事情に対して最も敏感であり、最も進歩的な立場をとるところの学生の諸君が、いかにこれに対して反能を示すかということは、今後の日本動向を推察する上に、きわめて重大な意味を持つていたわけであります。
  283. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、なるべく質問を簡潔に。
  284. 山口武秀

    山口(武)委員 だから質問を明確にするために——それはこれまでの各委員はこの問題に触れません。少くともわれわれが政治問題としてこの問題を考えないときには、何ら正常な判断も結論も出て参りません。従いまして、私はこの点を特に強調しなければならないと思いまして、申し上げておるわけです。それでここで私が聞きたいと思いますのは、第一にこの皇居広場におけるデモに参加した参加者の数なんであります。これは毎日新聞の報道によりますと、皇居広場のうちに参集したデモの数は三万と報ぜられていたのであります。さらに機関紙協会で出しております新日本通信によりますと、皇居広場の内あるいはその外におけるデモの参加者は十万と言つておるのであります。ところが警視庁の発表はあまりに少いが、ことさらにこの問題における日本国民の参加者数を過小にしようとして、警視庁はあのような少い数字を発表されているのではないかと考えられますが、その警視庁の発表数字は、どのような根拠に基いて、どのような方法によつて測定されたものであるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  285. 田中榮一

    田中証人 このメーデーでなくても暴動事件が起るであろうということですが、このメーデーは、ある一部の者以外の労働者は、実によく統制がとれてできました。それ以外の者が多数を頼んで暴動をやつているのです。そうしてその数は大体において集団の数でわかつております。学生団体が四千から五千、それから地区委員会労組が約二千、それから日傭労働者朝鮮人その他が約二千、大体八千と見ております。
  286. 山口武秀

    山口(武)委員 ただいまの数字を私は信用いたすわけではありませんが、学生諸君が四千、五千参加したということはきわめて重大なことだと思う。  これを單に一部少数者の策動であるというようなことで説明されることはないと思う。社会におきまして最も進歩的であり、社会の事情に対して最も敏感である学生の諸君が参加したという事実は、あなたの言う通りの言葉をもつていたしましても容易ならないことだ。今の数字によりますと、労働者の諸君が二千であるというような証言をいたしましたが、ここに参加したデモ隊の数というものは、あのデモ隊の乱闘の中において検挙された人たちの数とは比例していないのでしようか。
  287. 田中榮一

    田中証人 私は学生は四五千と申し上げましたが、あの中に入りました学生が非常に尖鋭分子であるとは考えておりません。あの中には、やはりある一部の尖鋭分子に誘導されて無心の学生相当つていたようであります。そのほかの部隊は私は尖鋭分子であろうと考えております。
  288. 内藤隆

    内藤委員長 山口君に申しますが、どうぞ簡潔に願います。
  289. 山口武秀

    山口(武)委員 誘導されたと申しまするが、あそこに入つた相言葉というものは、人民広場を奪還しなければならない、さらにアメ公に帰つてもらわなければならない、戰争に反対である、このような相言葉のもとに私は動員されたに間違いないと思う。もしもこのような相言葉に対して反対の意向を学生の諸君が持つていたとしますならば、これは誘導はされないのです。いかに誘導いたしましても少数者の活動だけに終つてしまうはずなんです。  あなたの言う誘導という言葉を認めましても、それでは説明し切れないものがある、このように考えます。私がさらに重ねてお尋ねいたしたいと思いますのは、検挙者が八百何名、九百名近かつたというのでありまするが、あなたの言われる学生の諸君あるいは朝鮮人の諸君、少くともこれが圧倒的多数を検挙者の中に占めていないということを数字上において見ているのですか。これは何を語つているか。
  290. 田中榮一

    田中証人 あの当時人民広場人民広場へというようなことを言つております。この人民広場ということは共産党の人々がよく言う言葉でありまして、あの人民広場人民広場へということを言つたのは共産党とその同調者が叫んだものだと思います。純真なる学生はそういうことは言つていないと思います。  それから検挙者の数の分類でありまするが、検挙者の分類と集団の何とは必ずしも合致いたしておりません。これは当然であります。必ずしも合致するものじやないのです。
  291. 山口武秀

    山口(武)委員 参加者の数と検挙者の数が一致していないと申しましたが、この場合もしも全学連の諸君あるいは朝鮮人の諸君が、最も尖鋭な分子として他を引きずる形においてあの乱闘事件が起つたとしますならば、何よりかにより朝鮮人の検挙者の数と学生諸君が多くなければならなかつたはずである。これが逆に少くて、一般の労働者の諸君が多かつたという事実は何か。(「お前ら逃げたからだ」と呼ぶ者あり)逃げたにしても何にしても、ともかくおかしいではないか。それとも警視庁では逃げるような人あるいは弱いような人だけをつかまえたのか。  さらに次にお尋ねいたしますが、警視庁行動に対しまして、これを見ていた群衆——一般の市民でメーデーデモ隊に参加した以外の人たちが大勢これを見ていたと思う。この人たちが警察に対し協力いたしましたか。それとも警察に対して反対の態度をとりましたか。これはいかがでしよう。
  292. 田中榮一

    田中証人 今の数字は先ほど申しましたからお答えしません。当日市民の方で非常に警察官に協力したいが、ある一部の人々の仕返しが恐ろしいからできません……。
  293. 山口武秀

    山口(武)委員 そういう人が少数あつたでしようね。
  294. 田中榮一

    田中証人 いや、大部分です。あとで仕返しが恐ろしいからやれませんで残念でした。     〔「議事進行」と呼び、その他発言する者あり〕
  295. 内藤隆

    内藤委員長 議事進行は必ずしも発言を許すということはないのですが、特に簡單なら許しましよう。
  296. 竹村奈良一

    ○竹村委員 本委員会は超党派的な委員会であると言われておりますけれども、しかし先どの椎熊委員の発言につきましては、はなはだ国会議員に対するところの威信を傷つけた、しかも最も国会議員としてあるまじき言辞、たとえて申しますならば、夜店でバナナ売りをするような言辞を平気で吐く。こういうことに対してわれわれがとり合うことははなはだおとなげないとは思いますが、しかし委員会の権威に関すると思いますので、少くとも委員長においてしかるべく処置されんことをお願いします。
  297. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま竹村君よりの議事進行に関する御発言によりまして、椎熊君の発言中もし竹村君のおつしやるような不穏言辞と議員の品位を汚すような問題があれば、速記録を取調べの上におきまして、委員長において適当に処置いたしたいと思います。さよう御了承願います。  他に御発言がなければ田中証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでありました。     —————————————
  298. 内藤隆

    内藤委員長 引き続き淺尾証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになられておられる方は淺尾新甫君ですね。
  299. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 はい。
  300. 内藤隆

    内藤委員長 昨日も御出頭を願つて、当委員会関係上お調べすることができなかつたのはまことに申訳ないと思います。さらにまた本日もお約束の時間よりもまた延びて、これは委員会が重大な問題でありますので慎重審議をしている結果で、国家のためでありますので、その点御了承願つておきます。  あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたからさよう御了承願います。  ただいまより治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について証言を求むることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むごとのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罪を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しこうして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人淺尾新甫君朗読〕     宣誓書    良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  301. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  302. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得てなさるようお願いしておきます。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際には起立してお答えを願います。  淺尾新甫君は現在東京都特別区公安委員会委員長であられますか。
  303. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 委員長ではありません。委員であります。
  304. 内藤隆

    内藤委員長 いつから委員に推薦されましたか。
  305. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 昭和二十五年の四月からです。
  306. 内藤隆

    内藤委員長 現在の東京都の特別区公安委員会の運営方法はどういうことになつておりまするか、簡單を御説明を願います。
  307. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 毎週火曜日の二時あるいは三時から集まりまして、公安委員会を開催いたしております。その間に起つたいろいろな警察の問題、それから今後起り得べきような問題等を相談いたしております。
  308. 内藤隆

    内藤委員長 毎週二回ですか。
  309. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 火曜日に一回です。但し問題がないときは休会いたすときもあります。
  310. 内藤隆

    内藤委員長 今回のまことに不祥事件でありました皇居前のメーデー、すなわち労働者の最も大切な祭典が、流血の惨事を見たということはまことに遺憾でありまするが、このメーデーに対します警備の実施計画等について、事前に公安委員会として何か検討されたことがございますか。
  311. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 今度の警備計画につきましては公安委員会としては打合せはいたしませんでした。しかしどういうふうな警備をやるかということは個々に聞いておりました。
  312. 内藤隆

    内藤委員長 現在の警視庁警備能力で、このメーデーに対して十分に警戒し、または警備し得るとお認めでありましたか。
  313. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 今度のことにつきましては十分警備し得ると考えておりました。
  314. 内藤隆

    内藤委員長 今回のこの騒擾事件の結果について、何か委員会として御調査をしておいでになりますか。
  315. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 現在やつておりますのは、今度なぜああいう申訳ないことが起つたかという原因についても相談いたしております。その原因等につきましても申し上げましようか。——捜査等につきましては、嚴重捜査すべしということにいたして、警視庁で目下嚴重捜査中であります。
  316. 内藤隆

    内藤委員長 その原因等は、結論に達しておるならば簡單にお聞きしたいのですが……。
  317. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 結果的に申しますと、主催者側の統制力を信頼し過ぎたきらいがありました。それからもう一つは陽動作戰に乘つた形勢もあります。それからもう一つは機動力が思うように発揮できなかつた。この三つの点ではないかと考えております。
  318. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証言中にも含まれていると思いますが、主催者側を過信しておつたということが一つの原因だつたと思う……。
  319. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 結果的に見ますとまさにその通りであります。
  320. 内藤隆

    内藤委員長 当委員長もさように考えます。そこでこのメーデー実行委員長である島上善五郎という証人においでを願つたのですが、その島上君の証言等をいろいろ聞いてみると、まつたく責任を感じていないような、單に広範囲の、広義の道義的な責任というようなことで当委員会証言しておられる。しかしながらあなたの方でこれを許可するにはそれぞれ條件を付してありますが、この條件に非常に相違した結果に相なつておるのでありますが、かような際にその責任者である実行委員長の島上善五郎君をあなたの方へお呼び出しになつて、許可條件に反しておるじやないかという責任をお伺いになつたことはございますか
  321. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 まだございません。
  322. 内藤隆

    内藤委員長 ではおやりになるおつもりですか。
  323. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 まだそれは委員会としては決定いたしておりませんが、おそらくそういうことになると思います。
  324. 内藤隆

    内藤委員長 これはどこに責任があるかということになるとすこぶる重大な問題で、いずれ当委員会としてはこれに対する結論を出さなければならぬと考えておりますが、一応まず当面のあなたの公安委員会としての立場においても、十分その点をついてもらいたいと希望しておきます。
  325. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 承知いたしました。
  326. 内藤隆

    内藤委員長 今回のメーデー騒擾事件は国家的治安と非常に関連が私はあると思います。この結果の責任を公安委員会で負わねばならぬような現行警察法の制度になつておるようですが、その点に対するあなたの御意見はどうですか。
  327. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 この問題につきましては公安委員会はまさに責任があります。そして今後それがいいか悪いかという点になりますと、これはまだ十分検討しておりませんので、結論に達しておりません。
  328. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとこの公安委員制度に対しまして相当改善をすべきものがあるというふうにお認めになつておるわけですな。
  329. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 委員会制度自体にもありますし、委員を選ぶ上においてもあるのではないかと考えております。
  330. 内藤隆

    内藤委員長 制度機構等の上にその欠陥があるように思う……。
  331. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 さようであります。
  332. 内藤隆

    内藤委員長 集団示威取締りの都條例でありますが、かような條例を持つておる都市もありますけれども、いまだこれを持つていない都市もあるようであります。これを国の法律に一元化した方がいいのではないかというような説も出ておりますが、あなたはこれに対してどうお思いでありますか。
  333. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 東京都の公安委員会といたしましては、統一した方がよろしいという結論が前に出ておりました。今でもその意見であります。
  334. 内藤隆

    内藤委員長 いわゆる国の法律に一元する方がいいという……。
  335. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 さようでございます。
  336. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はございませんか。
  337. 竹村奈良一

    ○竹村委員 お尋ねいたしますが、今度のメーデーの会場につきましては、おそらく公安委員会においても御承知であろうと思いますが、主催者の方では皇居広場の使用を前から要望しており、しかもこれが裁判の結果、皇居広場を使わせないのは不当であるという、政府の方の敗訴になつておるということは、御存じであろうと思うのであります。そこで私のお聞きしたいのは、当然国民が、しかも労働者が集つてもいいと裁判所が言つた。従つてこの皇居広場を使わすべきである。従つてそういう皇居広場を使わすべきではないか、これを使用させてはどうかというようなことを、公安委員会として警視庁とか国の方に要求されたことはないかどうか。
  338. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、皇居広場を使わせるかどうかという問題は、主管は私の承つておるところでは厚生省にあるということであります。これを使わしていいかどうかという問題になりますと、私どもは国の情勢いかんによつて決定すべきものであると考えております。
  339. 竹村奈良一

    ○竹村委員 少くとも公安委員会としては、いわゆる東京都の公安をつかさどる場合、たとえば国民の一番中堅であり、基本である労働者の諸君が、皇居広場を使わせろと言い、しかも裁判の結果は使わしてもいいということになつている場合、少くとも公安委員会としては公安を維持する建前から、政府にそういう勧告をされるような意思がなければ、ほんとうに自分の意思で責任を持つて公安を維持する委員会の制度ではないと思うのでおりますが、そういうことについて御協議になつたことも、あるいは使わせなければならないのじやないかという考えをお持ちになつたこともないのでございましようか。
  340. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 皇居広場を使わしていいかどうかという点は、もし管理者である厚生省がいいということになれば、初めて公安委員がそこを許可するかどうかということになるわけであります。従つてどもはまだその点に対して、はつきりした意見をつくつておりません。
  341. 竹村奈良一

    ○竹村委員 問題は、そういう皇居広場を使わすべきであるかどうかというのは、厚生省が決定をするのでありますが、あなた方としては公安を維持するという建前から、これを使わしてはどうかという勧告を厚生省に対してされるのが、私は当然ではないかと思うのですが、そうでなかつたとおつしやる。しかも先ほど私の質問に対して、国の情勢いかんだというようにおつしやつておりますけれども、国の情勢というよりも、むしろ公安委員会は公安を維持する建前から、国の情勢がどうであろうと、これが公安を維持するのであるならば、使わすべきであるという結論を出されて、要求されるのがほんとうだと思いますが、そういうことはされていないということですが、そういう点について欠けておつたと考えになりませんか。
  342. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 平静の状態であれば、使わした方がいいと思います。
  343. 山口武秀

    山口(武)委員 国の情勢という意味は、どういうことなんですか。これはこういうふうに解してよろしいですか。日本はアメリカに従属しつつある。アメリカの意思というものを、国民に押しつけなければならない。そういうような全体の政府国民に対する支配力の強化、彈圧の強化、あるいは彈圧態勢の整備、こういうものから見  て、あなたは国の情勢ということを言われたのでしようか。
  344. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 そういう意味ではありません。
  345. 山口武秀

    山口(武)委員 どういう意味ですか。
  346. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 各人が自省して静粛に行  い得る状態ならばよろしい、こういう意味であります。
  347. 山口武秀

    山口(武)委員 だから、各人が自省して静粛に行えないような政治的な、社会的な條件というものが日本にある。その條件というものは、私が述べたような意味ではないですか。
  348. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 政治上の情勢から社会不安が起つている限りは、静粛な行事は行われないと思います。
  349. 浦口鉄男

    ○浦口委員 簡單に二、三お尋ねします。まずこのメーデー事前において、実行委員会と公安委員会が数回お打合せになつて行事の具体的なものがきまつた承知しておりますが、その各條項についてそのまま行われなかつたことが、今度の騒擾事件の大きな原因であると思います。その中でとりわけ大きく申合せが破られたとお思いになるのはどの点ですか。
  350. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 まず統制が十分とれなかつたことが一つ、第二に、凶器等を持参して来た者があつたこと、この二つだと思います。
  351. 浦口鉄男

    ○浦口委員 メーデーが行われてからその経過において、いろいろ事態が変化をして行つたのは事実なんですが、その事態の変化に応じて、公安委員会としては適切な判断のもとに、警視庁に対して情勢の判断をし、それに基いて国警の援助を受けるなり何なり、そういう具体的な指令があるべきだとわれわれは承知しておりますが、その点どういう状態でありましたか。
  352. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 事前においては、まだ国警の援助を受けるというふうな判断をしておらなかつたのであります。結果的に考えますと、あるいは得られた方がよかつたかと思いますが、事前においては、さような想定は立てなかつたのであります。もし結果論からいたしまして、その点に誤りがあれば、これは公安委員の責任であります。
  353. 浦口鉄男

    ○浦口委員 私たちの聞くところでは、これが事実かどうかは御証言いただかなければわかりませんが、あのメーデーの当日に都の公安委員会は、深夜になるまで事件真相を知らなかつたというのみならず、一委員のごときは、これはどなたかわかりませんが警視庁の運営管理の一切を田中警視総監に委任してあると放言したそうである、こういう報道が一部になされておりますが、これが事実とすると、私はたいへんなことだと思うのでありますが、その点御証言を願います。
  354. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 私が騒擾が起つた報を受けましたのは三時ごろでした。あるいは四時ごろかもしれません。そして一部の報道を受けました。それで全部の責任を田中総監にかけておるというような事実はございません。
  355. 浦口鉄男

    ○浦口委員 一部事実であり、一部事実でない、こういうふうに了承しておきます。先ほど御証言の中に、今後の問題として委員会制度の改善を認める、こういう御証言があつたと思うのででありますが、もし具体的にお気づきの点があるならば、この際承りたい。
  356. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 これは公安委員会結論ではございませんで、私の私見であります。それでよければ申し上げます。
  357. 内藤隆

    内藤委員長 私見でいいですか。
  358. 浦口鉄男

    ○浦口委員 いいです。
  359. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 現在、東京都特別区の公安委員は三名になつておりますけれども、この三名の数がいいかどうか、あるいはもう少しふやしたがよくはないかということも考えられるのでありますが、どういう人間を選任すべきかということは、これは十分時間を持つた人を選任したらよくはないかというふうにも考えております。
  360. 浦口鉄男

    ○浦口委員 人選の問題は、田中総監もこの委員会で、もう少し幅を広げて適当な人を選ぶべきではないか、こういう証言かあつて、われわれもこの点は考えるべきではないかと思います。  その次にお尋ねしたいのは、公安委員会制度そのものの根本に触れる点も多いと思いますが、どうも世間ではいろいろ批判をされているわけであります。と申しますことは、公安委員の方そのものが職業をお持ちになつておつて、名誉職というようなことから——われわれは国家全体の治安上、今後まだこうした重大な事件が起きないとは考えておりません。これは各地にそうした状態を予想したくないのでありますが、予想して考えなければならぬ。そういう面で、公安委員会委員の方が、非常に大きな責任をお持ちになりながら、これは事実上名誉職というようなことで、なかなかむずかしいと考えております。私は別に公安委員の悪口を言うつもりはありませんが、一部では、警察官の任免やその俸給を上げたりするような点については大いに活動してもらうが、実際の役には立たぬとかいう意見も出ております。また暴動メーデーの終つたころ、これは証人もお読みと思いますが、国家公安委員長の青木氏が、ある座談会で、日立の争議事件のときにも、公安委員会がこれに立ち入ると、あとで商売が繁昌しないとか、あとで非難される、住民ににらまれる、恨まれるとかいうようなことで逃げてしまつたというようなことを言つておられる。この委員会制度そのものは、いわゆる警察の行き過ぎを是正して民主的に運営させるということで、根本はたいへんけつこうなのでありますが、どうもそういう点についてわれわれとしては委員会の本質にいろいろ疑問を持つておるわけであります。その点、何か御意見をお持ちであればお聞かせ願いたい。
  361. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 先ほどのお話の、名誉職と心得ているという点も、ある点はあるような気もいたします。それで、あまり忙がしい人を任命することは、どうしても時間をさき得ませんから、その点は改善したらどうかという気もいたします。だからその人選の問題について今後改善すべき余地はあるように考えられます。
  362. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後に、集団示威等の取締りについては、今各都府県市條例でやつておりますが、これを全国的にする方がいいかどうか、その点についての御意見、それからこのたびの事件の責任の帰趨については、非常にむずかしい問題で田中警視総監のこの事件後の進退がいろいろ論議されておりますが、公安委員会といたしましては、これはどういう過程にあるのか、その二つの点をお答え願いたいと思います。
  363. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 先ほどお答えいたしましたように、全国的に統一した方がよいと思います。  それから田中総監の進退問題については、田中総監は、進退は一切公安委員会にまかせる、こう言つておられます。それをどう処置いたすかということはまだ決定いたしておりません。
  364. 内藤隆

    内藤委員長 田渕先一君。
  365. 田渕光一

    ○田渕委員 私は、この二月二十三日、三月二十日の京都事件における京都公安委員会のとつた態度並びにそのメンバー、あるいは進んではその人格、経歴というものを突き進んで行きますと、これはまた実になつておらぬのであります。だから京都公安委員会はああいう失敗をした。ところで今度の東京の場合は——私は今そのメンバーを聞いたのでありますが、一人は郵船の社長、それから聖路加病院の院長、それから評論家の伊藤君ということであります。こういうような意味から、とにかくアメリカが占領して、その占領軍がおつた時代の構想のもとにつくつた公安委員会と、独立した後の日本における、こういう危險な状態における公安委員会の制度というものは、まずその制度よりも、委員のメンバーに対して第一気に食わぬのであります。こういうメンバーでやつておるから、事態を誤つて、何百人もの負傷者を出すということになつた。私は率直に言つて、あなた方は無能だと思つている。少くとも社会党左派の島上君が事務局長であつて、こういうような線に行くというようなことは、早くからわかつていなければならぬのに、それに対する事前の対策がなかつたことと、さらに島上君が公安委員会に申入  れ、あなた方が許可された條件に違反している。その違反したことに対して、あなた方はどういう処置をとつたか。私は警視総監の責任よりも、あなた方の責任を追究する。
  366. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 一切の責任をとります。
  367. 田渕光一

    ○田渕委員 責任をとるというのは、辞表を出しましたか。
  368. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 出しておりません。
  369. 田渕光一

    ○田渕委員 それだから君らにこういうことはまかしておけないのだ。無責任な——今まで辞表を出さないというのは……。事件は五月一日で、今日はすでに十七日、半月もたつておるのに、行政監察委員会でその責任を追究されなければ、辞表を出す意思がなかつたのか。
  370. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 追究されたから出すという意味ではありません。自分の意思で出します。
  371. 田渕光一

    ○田渕委員 大体今日、共産党が暴力的な線で出るということははつきりして来ているのであつて、われわれもそれに対して自衛手段で出て行がなければならぬ今日において、警視総監だのあるいはどうだのということは別だ。東京都の公安を管理しているあなた方——あなた方だけではない、京都の公安委員も無能である、東京都の公安委員も無能であると私ははつきり言いたい。どうです、私の言うことは暴言でありますか。あなたの良識に考えて——あなた責任をとると言われている。しかし実際、こういう事態を起して、世界に対して、国民大衆に対して相済まないと思うか、それに対して聞きたい。
  372. 淺尾新甫

    ○淺尾証人 先ほど申し上げましたように、責任は一切委員会にあります。
  373. 田渕光一

    ○田渕委員 警視総監が公安委員会に進退を一任しておるというが、これは警視総監をうまく使うも使わぬも、公安委員会であります。公安委員会が管理してこれを執行させればいい。私に言わせれば、あなた方は警視総監の辞表を預かるような有識者ではない。潜越だ。公安委員会という占領中にでた機構の温床の中に隠れておつて警視総監の辞表を預つたというが、人の辞表を預かる前に、みずから辞表を出さなかつたということをはなはだ遺憾に思う。今からでも遅くはないから、ただちに出しなさい。私ははつきり要求しておく。同時に、辞表を出す前に、あなた方はただ辞表を出して済むのではない。島上に対してはどういう措置をとるつもりであるか、とつたか、これをひとつはつきり聞きたい。
  374. 内藤隆

    内藤委員長 田淵君に申し上げます。あなたちよつとそこをはずしておられたときに、その点委員長が触れましたが、もう一ぺんやりますか。
  375. 田渕光一

    ○田渕委員 どういう具合に。
  376. 内藤隆

    内藤委員長 島上善五郎君が公安委員会の許可した條件に反しておることを、委員会は認める。そこで、しからばその実行委員長を呼んだか、まだ呼んでいない、呼ぶ気があるか、近くこれを呼んで責任をとる、こういうことであります。
  377. 田渕光一

    ○田渕委員 そういうゆつりした問題ではないでありましよう。今日食うか食われるか、共産党とわれわれはそこまで来ておるんでしよう、問題は。あなた方、郵船の社長としてのんびりしておつても、あなた方がやられればわれわれもやられるのだ。さつきも警視総監が言つてつたが、日本をモデル・ケースとして、彼らがやつた仕事だ。その首脳者が、十五日たつても、委員会から注意を喚起されるまで知らなかつた、こういうことがすでに大きな予盾でありますが、私は少くとも島上君に対してはその翌日、君何と違つたことをやつてくれた、全学連を入れたり、持つてはいけない凶器を持つていた——ということは写真ではつきりしている。こういうようなものを見ていながら、今日まで措置をとらないというところに、公安委員会としての無能さを私は追究する。一線の警官が、けがをしてやつている。公安委員会が無能であつたためにあれだけの犠性者を出し、またとばつちりを受けた学生もあるでありましようが、もちろんこういうものに暴動さして国際的信義を失つたことになる。結論としては何も聞く必要はない。君らのような無能な者は、ただちに東京都の公安委員会から総辞職すればいいということである。
  378. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はありませんか——他に御発言がなければ、淺尾証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には御苦労さまでございました。次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会