運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-16 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十六日(金曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君    理事 福田 喜東君 理事 小松 勇次君    理事 佐竹 新市君       岡延右エ門君    押谷 富三君       菅家 喜六君    黒澤富次郎君       椎熊 三郎君    井上 良二君       竹村奈良一君    山口 武秀君       久保田鶴松君    浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (日本労働組合         総評議会政治部         長第二十三回メ         ーデー実行委員         会事務局長)  島上善五郎君         証     人         (全国繊維産業         労働組合同盟会         長)      瀧田  實君     ————————————— 本日の会議に付した事件  治安警備状況に関する件(五月一日皇居広場  騒じよう事件)     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について調査を進めます。昨日に引続き島上善五郎君より証言を求むることにいたします。  宣誓の趣旨につきましては御承知通りでありまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を要むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人島上善五郎朗読〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事かくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  3. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  4. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  昨日の質問通告の順によりまして、まず、福田喜東君。
  5. 福田喜東

    福田(喜)委員 昨日の質問を継続さしていただきたいと思います。昨日島上証人が、私がお尋ねいたしましたのに対して答えられたところによると、本年の四月十六日に証人は、東京地方裁判所証人としてお立ちになつておるわでございますが、その際証人は、総評は、過去におきましても団体的活動ににおける暴力的破壊的な行動は嚴重に戒めて今日に至つた組織体である、と強調されたのでございます。御苦心のほどをわれわれは察知いたしまして、証人立場もよく了承しているつもりでございます。しかるに、京都や広島事件に関する当委員会事務局調査におきましては、両地区とも、総評地方組織主催合法的集会が、いずれも共産系分子に利用されてモッブ化されているのでございます。東京におきましても、昨日も証言にございました通り、神宮の会場より日比谷終点事での当日のこの暴動化につきましては、私も録音で承りましたが、証人はその責任範囲をみずから制限しておられるのでございまして、この点は、私どもといたしましては、証人の社会的の責任と申しまするか、道義的な責任をみずから制限するということは、この点はわれわれは了承いたしかねるところでございます。これは社会的に、道義的に見ましても、その責任というものはどこまでも追究さるべきものであつて、みずからその責任を制限するということは、これは許されざるところであろうと存じます。かかる行為はまた、共産系破壊活動分子にその席を譲つたものであると言えるのでございまして、所詮その責任は免れぬところであつて、いわばこれは刑法にありまする不作為による作為犯とも称すべきものでございまして、共産系分子破壊活動を黙認したものといつても、私は過言ではなかろうかと思うのでございます。五全協以来の日共は、武装行動を指令し、軍事行動を始めていることは明らかな事実であります。総評集会が利用されてはならぬと存じ、特にメーデーの前には本行政監察委員長談を発表して、御注意を喚起したような次第であるわけであります。昨日の証人陳述では、たとい合法的政党立場に立つていると言われても、容共的色彩がはなはだ濃厚であると批判されても、いたしかたがありますまい。  そこで証人は、今後労働運動を指導される重要な立場において、この暴動化した日共と、今後はつきりと一線を画されて、あくまで日共を排撃する立場をとられるかどうか、この点を一応承りたいと存ずるのでございます。
  6. 島上善五郎

    島上証人 それはメーデー直後に総評議会が出した声明書でもつて明らかでございます。総評議会ということで私の証言を求められますならば、総評議会在来共産党とは組合活動においては提携しておりません。今後もまたその方針を踏襲して行く考えに、少しもかわりないのでございます。
  7. 福田喜東

    福田(喜)委員 島上証人は、メーデー実行委員会におきましてスローガンの決定を行つた際におきまして、いろいろもめたということをおつしやつておりますが、当時の状況を少し詳細に述べていただきたい。その当日共産系方々は、いかなるスローガンを掲げてやろうとしたのか、その内容を承りたいと思います。
  8. 島上善五郎

    島上証人 スローガン議論のありましたのは、中心スローガンをきめる際、一回議論があつたのです。中心スローガンは、再軍備反対民族独立を鬪いとれ、低賃金と統一鬪争で打破れ、この二本に結局なつたのでありますが、そのなる過程で、戰争反対民族完全独立を鬪いとれ、こういう対案が出されて、いずれをとるかということで議論がありましたが、これはただいま申しましたように、多数でもつて採用された、再軍備反対民族独立を闘いとれ、ということになつたわけであります。このときは特にいわゆる共産党系組合と思われる諸君から、別の案は出されません。それからサブスローガンの際に議論がありまして、これは二十六本ですが、これがきまるまでは、実行委員会を四回も五回も開いて最終的にきまつた。つまり意見一致してきまつた分だけきめて行つて最後意見の違うスローガンが残されて、それが一番最後にまわされて、議論が多かつたのであります。     〔委員長退席高木(松)委員長代理   着席朝鮮人中国人強制送還反対、ここに書類が全部ないので、言葉の表現は多少違いますが、この朝鮮人中国人強制送還反対という問題が、一番最後議論になつた点であります。ところが、これに対してはいろいろ議論がありまして、不当な強制送還反対、こういう、不当なという言葉を入れて、全員一致で妥結しました。それから講和、安保両條約反対行政協定破棄という問題が、これは共産系とかなんとかいうことでなしに、最も議論になつた点であります。これについては結局最後には、日本独立を脅かす行政協定反対、こういうふうにしてこれは全員一致で妥結しました。妥結するまでの間に、相当議論があつたのです。そのほか、今質問されましたいわゆる共産党系から特にスローガンを出されて、それが非常に議論の種になつたということはありません。ただ昨日証言しましたように、全学連都学連朝鮮人団体から、実行委員会への参加と、同時に自分たちスローガンを採用してほしいという文書の提出がございましたが、これは実行委員会参加を認めなかつたので、文書で出されたスローガンの要求についても、審議をしなかつたわけです。従つて議論にならなかつたのです。
  9. 福田喜東

    福田(喜)委員 全学連都学連文書で出しましたスローガンサブスローガンといいますか、その内容がおわかりだつたならばお知らせ願いたい。
  10. 島上善五郎

    島上証人 ただいまここへ書類を持つて来ておりません。
  11. 福田喜東

    福田(喜)委員 メーデーにしろ、その他のデモンストレーシヨン、デモ行進にせよ、証人もこれは言つておられますが、いわゆる規律秩序を失いました労働運動というものは、はなはだあぶないものであつて、これが流血革命行動の端をなすことは、第一次大戰後キールに起きたドイツ海軍水兵暴動に例を見るところでありまして、爾後各国の例におきましても、これはたまたま偶然でないものも非常に多いものでありますが、かくのごとく労働運動秩序を失いますると、革命行動の端をなすことは、世界の歴史に徴しましても、明らかなところでございます。今後総評主催合法集会における共産系分子をいかにして排除するか、いかにしてその暴動化を排除するかということにつきまして証人の御意見を承りたい。ことに日共一線を引くということを、先ほど証人はおつしやられましたが、総評態度は今後技術的にいかにこの点において対処して行くかということを、もう少し明確に、技術的にはつきり言つていただきたいと思います。
  12. 島上善五郎

    島上証人 メーデーのことではなしに、総評のふだん行う鬪争についてということになりますと、総評ができて、いろいろの大衆行動屋外集会、あるいは労働組合鬪争行つておりますが、その限りにおいては、総評は、総評方針と大体同じ考えを持つておる諸君とともに、労鬪という組織をつくつて、それで共同鬪争をいたしております。今後大体この線で共同鬪争が行われて行くと考えておりますが、労働組合でありまするから、直接労働組合活動に対して政党と共同闘争するという、あるいは共同鬪争をしないということについては、私どもは今までとつて来たと大体同じ考えでおるわけです。但し労働組合の中には、政党に入つている者も、いない者もいろいろな分子がおるので、それが労働組合の本質ですから、労働組合の中における政治的な考えの違いを一々取立てて、排除するとか、排斥するとかいうことを、あまりしていないのです。労働組合活動それ自体において、総評方針と反するという考えに対して、大いに議論してこれを是正し、あるいは克服して行くという考えですけれども労働組合の中にある政党の違いというものを、そう一々取立ててやるということは、労働組合としてはむしろ行き過ぎではないかとさえ考えられるので、私ども総評自体も、今総評としてはどこの党を支持するということをきめておりませんので、この点からも御了解願えると思うのです。
  13. 福田喜東

    福田(喜)委員 島上さんの御証言によりますると、皮肉な見方をすれば、党の活動政治部活動とはまつたく別個のものである。従いまして、労働運動につきましても、規律秩序はもちろんやるけれども党組織活動、いわゆる党員活動というものに対しては、組合としては制肘を加えられない、統率はできない、それはその部下に対して拱手傍観態度をとつてつてもやむを得ない、こういうふうに聞えますが、その点いかがでしよう。
  14. 島上善五郎

    島上証人 つまり労働組合の中にいろいろな党員があつたり、党に加入しない者があつたりしても、それは自由であるということです。労働組合は、総評は何党を支持するとか、何党に入るべしとか、何党を排撃すりべしという、そういうことはきめていないのです。ただ労働組合方針について総評方針考えの違う方針に対しては、これはいかなる党であろうと、それにつ対して反対するということになるわけであります。組合員の中に党に入る者、入らない者があつても、それを組合として一々統制するとか、強要するとかいうことは、今までもいたしておりませんし、おそらく今後もいたさないことになろうと思うのです。
  15. 福田喜東

    福田(喜)委員 おつしやるところはよくわかります。つまり総評といたしましては、やはり組合の主体であるからして、党員活動、何党を支持する、何党を支持するということまでは制肘できない。これはよくわかるのでございまするが、しかし規律ある労働組合運動ということになりますと、その限りにおいて、統率と申しますか、統一ある行動をとつて行かれなければならぬ、だろうと私たちは思いまするが、その限りにおいて今後技術的にその点をいかに——ことに日共中心とする暴動化計画に対して、どういう手段を考えて行かれるか、その点を伺いたいのでございます。
  16. 島上善五郎

    島上証人 今後予想されるいろいろな場合のことを今ここで言えと言われましても、それはなかなか短時間では言えないことですが、私ども在来もとつて参りましたように、規律秩序ある民主的労働運動ということを考えておりますので、今後も組合統制と申しますか、民主的な統制をしつかりと確立して、一組合員たりとも組合方針を逸脱しないように、十分組合の運営を、規律秩序を重んじた責任のある行動をとるように教育し、訓練し、また事に臨んではそういうような対策を十分に立てて行くという考えです。こういう場合にはどう、ああいう場合にはあるといつて、今後いろいろな場合を予想して今ここで一々申し上げるということは、これはなかなかたいへんなことです。具体的にこういう場合にはどう、ああいう場合はどうということを言われれば、そのことについては申し上げることはできますけれども。大体以上です。
  17. 福田喜東

    福田(喜)委員 最後に当日の状況でございまするが、五月一日のメーデーの際におきましては、医療班活動というものが非常に目ざましかつたようなことを承知しておりまするし、赤い衛生兵活動を探るといつたようなことが読売ウイークリーにも出ておるような状況でございますが、この医療班活動というものは、最初より実行委員会において決議されたものであるか、かかる大規模な医療組織というものは、私どもから見ますると、あらかじめ暴動化を予定していたのではなかするうかと想像される点もございますが、この場合は実行委員会において、どういうふうな状況でございますか。
  18. 島上善五郎

    島上証人 実行委員会では、メーデーを通して救護班を設けるということをきめまして、担当部門において適当な団体とその救護班設置について協議したのであります。従いまして、救護班設置については、実行委員会承知しております。もちろん救護班設置ということは、暑いとき会場へ多数の人が集まるので、日射病にかかるとか、あるいは多少のトラブルということがありますので、そういう場合に救護するという目的であつて、今質問者が言われたように、あらかじめ暴動を予想して救護班をつくつたなどということは、少くとも実行委員会に関する限りは全然考えていなかつたことです。実行委員会救護班メーデー行事が終了するまで、すなわち解散場所において解散するまでという考えのもとに設置したものです。     〔高木(松)委員長代理退席委員長   着席
  19. 福田喜東

    福田(喜)委員 私の質問はこれで打切ります。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 それでは佐竹新市君。
  21. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私は昨日来の島上証人証言を各委員方々と承つておりますと、大体において総評中心となりましてメーデー行つて、そのメーデー秩序あるメーデーを行おうとされたということに対して、証人証言に満足するものでありますが、ただ一点お聞きしたい点は、むしろ取締る方の警察官が、最近新聞紙上早大事件なんかにおいても問題になつておりますように、非常に行き過ぎの感があるように世評言われておるのでありますが、あなたは総評指導者とし、またこのメーデー実行委員責任者といたしまして、ああいつたようなときの警察官取締るところの態度に対して、また最近の警察官考え方、こういうものに対してどういう考えを持つておられるか、証言をしていただきたい。
  22. 島上善五郎

    島上証人 警察官態度がしばしばトラブルを挑発することがあるということについては、メーデーの際には極力指導していただきたい、こう考えまして、あらかじめ警視庁に参りました際にも、たとえば日比谷解散する、新宿の駅前で解散する場合に、解散場所から自分が帰る交通機関の乗り場までは、勢い大勢の人のことですから、デモに近いような状態を呈するかもしれないが、その場合において、電車へ乗るために駅へ行く人々に対しては手を出さぬでほしいということを要望しました。これに対しては警視庁も了解しました。ただ問題となつた皇居広場事件でございますが、私はあそこの場所を一ぺん自動車で連絡の必要上通つただけで、非常に深刻な場面は直接見ませんでしたが、私の意見をお尋ねのようでございますから申し上げますが、今になつて考えてみますと、警察官があれほど催涙弾ピストル乱射するということをしなかつたならば、もつと事態はせいぜいのところ、公安條例違反という程度で済んだのではないかというふうに考えます。自動車を焼いたり、いろいろのことについては、これは明らかに行き過ぎだと思います。非常な行き過ぎだと思いますが、ある人の語るところによると、血を見て群衆が非常に興奮してああいう事態になつたという見方もありますので、私は警察官のあの場における催涙彈あるいはピストル乱射というようなことは、相当行き過ぎがあるのではないかと思います。その後の、たとえば早稻田の事件のごときも、明らかに私は警察官側行き過ぎだと考えます。総評声明の中でもはつきり言つているように、威嚇射撃範囲を越えたピストル催涙弾乱射であり、それが事態を一層激化せしめたものである、このような考えを表明しておりますが、私も警察官態度に対してはさよう考えております。
  23. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 現在衆議院でも問題になつた風早君の本会議におけるところの演説の中で、あの当時アメカリMPピストル群衆に向つて発射した、こういう本会議におけるところの演説がありました。これは実際にそういうことがその日にあつたのか。もちろん独立になつておりまする後において、MP警視庁がかり出さなければあの事件が収まらなかつたのか。この点はどうですか。
  24. 島上善五郎

    島上証人 私の耳にそういうことは入つておりますけれども、事実であつたかどうかを私は見ておりませんし、またはつきりとその事実を私が信頼できる程度に言つてくれる人がないために、今のところはそうであつたとも言えませんし、またそうでなかつたと否定するというほどの確信もありません。
  25. 大泉寛三

    大泉委員 今度のメーデー暴動に対しては、メーデー暴動ではないでしようが、とにかく国際的に大きな問題を起したということは、メーデーのいわゆる行動一つに見る、あるいはまたメーデー暴動隊は別な部隊である、こういうように二つに見る考え方がありまするが、私はこのメーデーの、いわゆるあなたがきのうの証言で言われるように、中央メーデーであるというような立場から、やはりこのメーデー行動というものは私は一本に見る。しからばこのメーデーの中に起つた問題というものは、すべてが統制されたあなたの傘下に集まつた者行動である以上は、やはりあなたの責任というものは総体的にこれを取扱わなければならない、こう思う。これに対して、証人はどんなお考えでおいでになるか。
  26. 島上善五郎

    島上証人 昨日来しばしば言つておりますように、メーデー実行委員会もしくは実行委員会事務局長という、そういう立場における責任というものは、メーデー行事解散場所解散するまでが責任であつて解散した後にいろいろの問題が起るということに対してはもちろん遺憾の意を表しており、広い意味道義的責任といえばないとは言えませんけれども実行委員会あるいは実行委員会事務局長という、そういう公の立場における責任というものは、メーデー行事解散するまでであることは昨日も申した通りであります。
  27. 大泉寛三

    大泉委員 相違つた団体が、両方目的を別々に考えられて、そうしてその行動、いわゆる主催されたところのメーデー行動同一であつたが、しかしそれまでは同一であつても、その次に大きな目的を互いに利用し合つたような感があるように私どもは思うのであります、これに対しては証人は互いに利用し、あるいは利用されたという感がいたしませんか。
  28. 島上善五郎

    島上証人 メーデーというのは、昨日もメーデーについて申し上げましたように、少くとも終戰以来五回、今年で六回メーデー行つておりますが、そのメーデーは特に政党色わけをしたり、労働組合色わけをしたりして、別個にやつておるのではなくて一緒にやつておる。統一メーデーという言葉を使われましたが、何も中央で統一したのではありませんから、統一メーデーという言葉はあえて使いませんが、そういうふうにやつて来ておりますから、こまかい点になりますと、多少考え違つた、あるいは相当考え違つた人々が入つておることは当然です。しかしメーデーはそういう人たちが集まつてやる性質のものであります関係上、たとえばスローガンにしても十分論議して一致を見たところでやるやり方にしておる。実行委員会構成団体が十分議論して一致点を見たところでやる。いわば最大公約数でやるわけであります。利用したり、利用されたりということは、具体的にどういう意味か知りませんが、私どもは利用したり、されたりということは少くともメーデー行事に関する限りはそういうことはない。最大公約数意見一致したものでやるというようなことで、またそれでやつて参りましたので、解散後の事態については、利用したという見方もおありでしようが、少くとも全部あれに参加したとか、巻き込まれたとかいえば、そういうことにもなるでしようが、御承知のようにメーデー参加した者の大部分は実行委員会のプログラム、スケジュールを守つて整然とやつて解散しておるのですから、利用されたという言葉は当らないと思います。
  29. 大泉寛三

    大泉委員 もう一つお伺いいたします。私どもメーデー行事はいわゆる労働者示威運動であるということをしばしば聞いております。またそういうふうに思つております。軍においての閲兵式のようなもの、あるいは警察官集団訓練のように見る場合もあります。今日では労働祭として非常になごやかな見方をしておりますけれども労働運動は一方のいわゆる資本主義陣営としては対立的な立場に見られる。この資本家群に対する対立の感情というものを求めての労働運動であれば、やはり資本家群に対しては威嚇的な一つ示威運動であると一応見られる。こういうことがいいか悪いかは別として、とにかく散会後に行われた暴動というものも、結果においてはこうしたこともあり得る。一つの刺激を求めるということになるのであります。そこで内部的には二つ目的を持つた団体と見るけれども、これは客観的もしくは大きく国際的に見たときには、日本労働運動かくのごときであるというように国際間からも見られておるような状態であるから、何といつても当時の主催者としての総評中心としたところの団体が、国際的に、あるいは社会的にも、相当責任を感じなければならないと私は思う。今後の労働運動に対してやはりこの見方をもつて処理しなければならないのじやないか。日本労働運動は国際的には相当信用を落した。またこれによつて日本の安定勢力に対する一つの不安感を求めているというようにも思います。これに対して健全なる労働運動を目標とせられるあなたは、どういうようなお考えを持つておりますか。
  30. 島上善五郎

    島上証人 国際的にはいろいろの見方があるようですが、(「インドではほめているぞ」と呼ぶ者あり)しかし事実を事実としてはつきり見ていただけば、正当な判断が出て来ると思うのです。事実をはつきり見ないで、曲げた宣伝に惑わされたり、色めがねでものを見たりすると、そういう誤解が生ずる。ただしかし若干誤解を生じておることは事実ですから、これについては私ども日本労働運動の今後の行動によつて解決して行くべきものであると考えております。
  31. 浦口鉄男

    ○浦口委員 島上証人がたいへん長い間労働運動に携わつて来られまして、その体験から総評の日ごろにおける運動はもちろん、このたびのメーデーにつきましても、これをほんとうに労働者の祭典たらしめるよう愼重に計画されたということは、昨日からの証言によつて了承をするわけであります。そこで私は事実について二、三お尋ねを申し上げたい。と申しますことは、そうした愼重な準備と計画にもかかわらず、われわれの考えでは予想以上の事態が起きたのであります。証人は昨日委員長質問に対して、多少のトラブラは予想していたという証言をされたのでありますが、事実は多少のトラブルを非常に越えて、今までにない大きな事態が起きたことは御承知通りであります。そこで私が申し上げたいことは、こうしたことも予想されましたので、本委員会におきましては、四月の中旬から下旬にかけて、広島の事件あるいは京都の事件調査いたしまして、そこに一つのケースが出たわけでありますが、そのケースとこのたびのメーデー事態を引起したのは、われわれには大体同じ形が見られる、こういうふうに見ていいと思います。そこでお尋ねいたしたいのは、多少のトラブルを予想されたというその根拠は、一体どこからおつかみになつていたか。昨日お聞きしたことによれば、メーデーの以前において、東京都の公安委員会と数回にわたつて打合せて情報をおとりになつた、こういうふうにもわれわれは承知いたしておりますが、総評自体として、あるいは東京都の公安委員会、あるいは警視庁との打合せにおいて、どうした情報によつて多少のトラブルを予想されたか、その点をお尋ねいたします。
  32. 島上善五郎

    島上証人 今まで総評労鬪だけで大衆集会を行いました際にはそう大したことはなかつたが、範囲を広げますと、たとえば実行委員会できめたプログラムに追加や変更を求める者が出て、そのために多少ごたごたすることも考えられるわけです。これは今までのメーデーでも、演壇の付近に来て、緊急動議を出させろとか、おれの方の代表にも演説させろとかいうことがあつたので、多少のトラブルということは、そういうことを主として考えて、そのために演壇の付近に警備を配置したり、そのために当然なことではあるが、実行委員会の決定したプログラム通り追加変更を行わないということを確認したわけであります。  今質問者質問されるようないろいろな情報ということですが、私どもは別に情報を収集する機関を持つているわけでもありませんし、その情報に基いて皇居広場で大々的に事件を起すというようなことをあらかじめ承知しておつたわけでもありませんし、私のいう多少のトラブルということは、そういう意味ではございません。
  33. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、結局総評が予想されたトラブルとこのたび起きた事態とは、全然別のケースで起つて来た、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  34. 島上善五郎

    島上証人 その通りです。
  35. 浦口鉄男

    ○浦口委員 われわれの承知いたしますところでは、日本共産党の指令と申しますか、さような形において、このたびのメーデーにおいては、総評系の鬪争に割込み主導権を奪取せよというような指令が前から出されて来ていたということを聞いておるわけであります。そうしたことを総評ともあろうものが全然予知しなかつたというふうには考えられないのでありますが、総評としては予知されても、そうしたことが事実起きる可能性はない、あるいはそうした指令が全然デマである、こういうふうに考えていられたかどうか、その点をお尋ねいたします。
  36. 島上善五郎

    島上証人 そのような指令なるものは承知しておりません。私は先ほど言いましたように、実行委員会のきめたプログラム通り追加変更を行わないということは、実行委員会のイニシアを最後まで確保して行事を行うことをお互いに確約したことであつて、従つて今言われたように、いかなるものであろうとも、途中から割込んで来てその行事の主導権をとろうとか、あるいは行事に重大な影響を與えようというようなことに対しては、私どもはあくまでもそれを防止し、実行委員会で十分届談してきまつた通りに行おうという考えであつたのです。昨日の証言でも申しましたように、代表演説が終るころ一時演壇占拠というようなことがありましたけれども実行委員会がきめた行事の進行を一時時間的に阻害はしましたけれども、その後やはり予定通りやりましたので、時間的に一時阻害された程度であつて、そのことによつてメーデーの主導権が他にとられたという性質のものではありません。
  37. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これは決して証人責任をあくまで追究するということではないのでありますが、私の考えとしては、どうも事前にこうした事態を予想するについていろいろな材料を集められることが不十分であつたのではないか、こう考えるわけでありますが、その点いま一度気持を聞かしていただきたい。
  38. 島上善五郎

    島上証人 材料を集めるに不十分であつたと言われればそういう点はあろうかと思いますけれどもメーデー実行委員会はそういう材料をそうこまかに集めて今まで対策を立てただめしもありませんので、大体考えられるように程度のことに対して予防措置を講ずるということで実行委員会としての任務は足りると私ども考えているわけであります。先ほど言つたように、日比谷解散後の事態については、まつたメーデー実行委員会が予想しておつたことでもありませんし、また実行委員会としてはいかんともしがたい事態でもあつたので、そういう情報を十分に手に入れなかつたのは手ぬかりではないかと言われれば、まあそういうこともいわれるでしようけれどもメーデー実行委員会というものは、そういう情報を事こまかに入手して、あらゆる場合に対処できるというほどの性質のものではないのです。
  39. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そのことはそれだけにいたしまして、次にお伺いします。  吉武労働大臣は国会において、皇居前の広場をもし使用させていたなら  ば、むしろこれより大きな事態が起つていたであろう、こういうことを答弁された。それは皇居前の広場に数十万のメーデー参加者が集まつていれば、その数十万が全部ああした騒擾に巻き込まれて、より以上の大きな事態が起つていたであろう、こういうことを再三にわたつて答弁をされておりますが、その点証人はどういうふうにお考えですか。
  40. 島上善五郎

    島上証人 もし皇居広場を使用さしておつたならばということを予想して吉武労働大臣がそう言われたそうですが、私をして言わしめるならば、宮城前広場を使用さしてくれたならば、あのような事態は起らない。つまり神宮外苑で行事をやつて、多少のトラブルはあつたにしましても、その中央会場における行事が済んでから五方面にわたつてデモ行進を開始しておるわけですから、私は宮城前でやつたならば、一昨年まで五回行つたメーデーと同じように問題なしで済んだのではないか。かりに何らかの計画があつて、多少問題が起るとしましても、宮城前広場で先般起つたような事態はなかつただろうと私は思います。
  41. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それから日本共産党はいかなる場合にも、いかなる方法でも、こうした団体集合を利用してこうした事態を引起すのだ、こういうふうな結論的な意見もわれわれ大いに聞くのですが、来年のことを言うと鬼が笑うかしれませんが、そうしたことがまた今後も避け得られないとお考えになつて おるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  42. 島上善五郎

    島上証人 共産党のことについては、共産党に聞いてもらうよりしようがないと思います。私は社会不安が増大すれば、国民の生活が窮乏に陷り、民主的な方法によつて国民の生活改善  が不可能にされるという状態になれば、共産党がやらぬでも社会不安は増大すると思うのです。(「その通り」)もちろん私どもそれを歓迎するわけではありませんが、そういうことになると思うのです。
  43. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それは御意見として承つておきます。きのうこの委員会に凶器がたくさん陳列されたのですが、ああした凶器が会場へ持ち込まれることについて、実行委員会としてはこの事実を予知していたか、あるいは当日こうした凶器を何とか会場に持ち込ませないよう処置されたか、またしたができなかつたか、その点について伺つておきます。
  44. 島上善五郎

    島上証人 それは公安委員会の許可の書類が二十八日に私どもの手元に参りましたので、これを実行委員を通じて各団体に周知する方法をとりました。二十八日ですから若干時間的に十分な余裕はありませんでしたが、しかし今度の公安委員会の條件というのは、今までの屋外集会につけられた條件と同じことですから、私ども承知しております。すなわち凶器を持ち込まないようにとか、一人で持参できないような大きなプラカードを持ち込まないようにとか、トラックや車馬を行進の中に入れないようにとかいつたことは、今までの屋外集会の際にもつけられておる條件なので、そのことについては私ども承知しておるし、参加団体承知しておる。従つてそのような手配はもちろん実行委員会としてもいたしましたし、各団体もまた常識としてよく承知しておることです。
  45. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これは総評島上さんとしてお伺いするわけでありますが、この事件が起きた後に、総評の高野事務局長は座談会でこういうことを言つておられます。しかし共産党が今後方針をかえて来るかどうかというと、これはかえない。だから来年もおそらく今年と同じようないろいろな心配が起るに違いない。そこで今日の考えとしては、共同して行くことは不可能だ。私の考えとしては、今後は共産党系団体参加を拒否して行きます。これはひとりメーデーばかりでなく、一般の集合についても共産党とははつきり一線を劃してやつて行くつもりである、こういうことを座談会で申されておる。これをどういう方法で具体的にやつて行くかということは、われわれもたいへんむずかしいと思いますし、昨日から本日にかけての島上証人のお言葉によつてもその気持はわかるのですが、この高野事務局長の座談会における発言をそのまま島上証人のお考えと承つていいかどうか、お伺いいたします。
  46. 島上善五郎

    島上証人 まあ、大体同じ考えであるということは言つていいと思います。ただ来年のメーデーのことについては、これは来年のメーデー実行委員会考えることであつて、私が今来年のメーデーはこうすべきだ、ああすべきだということは、少し僣越だと思います。
  47. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後一つつておきます。これはきのう他の委員から質問があつた政治ストと関連する問題と思いますが、本日の新聞で見ますと、昨日総同盟は破防法反対あるいは労働法改正案反対のための労鬪第三波ストには同調しない、別に国民的な抗議運動で反抗を決議した。「政治ストは共産党考え方から出たもので民主的労組の行うべきものではない」こういう記事が報道されておりますが、この点について証人のお考えを承つて私の質問を終ります。
  48. 島上善五郎

    島上証人 新聞がどうしてあんなに、でかでかと書いたか、私はちよつと了解に苦しむのです。総同盟は第一波も第二波も同調していない、初めから入つていないのです。第三波ストには同調しない。これは第一波、第二波には一緒にやつたような書き方です、私は心外です。  それから「政治ストは共産党考え方」云々というようなこれは菊川君の談話だと思いますが、私はああいう考えに対しては賛成できません。もちろん政権を獲得するために私ども今ストをやろうとしているのではなくして、私どもは、そういう意味の純然たるいわゆる政治ストと俗に言われるものではなくて、労働組合の権利と自由を守るために、それを大幅に制約しようとする法案に対して鬪うことは、広い意味労働組合活動の使命である、こういうような考えで今やろうとしておるのです。
  49. 内藤隆

    内藤委員長 椎熊三郎君。
  50. 椎熊三郎

    椎熊委員 お疲れのようですから、簡単に御質問したいと思います。私は今度のメーデーの騒ぎは、日本労働運動史上、初めての大事件であつたと思います。総評メーデー主催者のような立場をとつておられたようですが、この事件とはまつた関係ないと主張されておる。それはメーデーの運動の解散後に起つた突発事件だというふうに総評では発表せられておるようであります。従つてあなたの主張もこの騒擾事件には直接関係ない、そういう立場ですから、今度のあの事件を見るあなたの感覚は、非常に客観的で、冷静なる判断を下し得る立場にあるのだと私は信じたい。そこでこういうことは、正純なる日本労働運動の将来の発展のために、あなたはこの事件をどう判断せられるか。もつと率直に言いますと、あの事件が起されたことによつて、せつかく急速に戰後結成されて、こんなに発展して来た労働組合の運動というものに、今度の事件一つの暗い影を投ずるような結果になると心配されるかどうか。それとは別にあなたは、ああいうことによつて労働者に勇気というものを現実に示すことができて、日本労働運動の発展上にはむしろ貢献した行為であると考えられるのかどうか。こ事件のために警察方面等の弱点を暴露することができて、将来の諸君の運動には好都合のチャンスであつた考えられるのかどうか、それを今この事件に直接関係ないと主張せられて、非常に冷静な立場で客観的にこの事件を見ることのできる、しかも日本労働運動界における長い経験と将来に大望を持つておられると思われるあなたにおいて、この事件に対する客観的の判断を、この事件を見る私どもの判断の資料として、あなたのお考え方を披瀝していただきたい。
  51. 島上善五郎

    島上証人 これはメーデー実行委員会あるいは総評声明でもはつきりしておりますように、私どもはその原因とか責任の所在とかいうことは別としまして、不祥事件である、労働運動のために好ましくない事件である、簡單に申しますと、以上に考えておる。そこで私どもは今度の事件にかんがみまして、今後日本労働運動は一層規律秩序責任を重んずる民主的な労働組合というものを確立して行かなければならぬ、こう考えているのです。
  52. 椎熊三郎

    椎熊委員 もう一点。最近海外からの通信などを見ますと、本年度における諸外国のメーデー状況等がこまかに報ぜられておるものもあります。これらの多くは、たとえばイタリーでも、フランスでも、西ドイツでも、非常に労働者の意義ある重大祭典として嚴粛かつ非常に明朗に秩序整然として行われておる、そういう点は日本メーデーを見た経験者からは、非常に意外であり、非常にうらやましいと感じたという記事さえございます。私もメーデー労働者にとつての意義ある祭典であることを信じます。従つて年ごとに繰返される、労働運動者にとつては最上の祭典であるこのメーデーを、ほんとうにりつぱに、秩序整然として民主的に行われ得るということこそ、労働運動者の、あるいは労働者の最大の理想でなければならぬと思うのです。従つてメーデーをそういうふうに、嚴粛のうちに意義ある労働者の最高式典としての行事として取行うためには、その当時逼迫しておりますところの労働組合あるいは労働者自身に関係深き政治問題等を取上げることは、労働者最高の式典たるメーデーのその当日にこれを結びつけてやるということは、かえつて労働運動のためにはよくないのではないかと、労働運動関係浅き私どもには考えられるのです。なるべくそういう問題を起しそうな事件は、五月一日のメーデーには避けられて、ほかの方法において、しかもそれは別な方法と言つても、やはり一応デモンストレーシヨンになるかもしれぬが、少くとも最高式典の当日にはもつと正純な感覚で、もつと労働者が心に喜びを感じつつこの運動に参加できるような、明朗潤達なるものにして行くということが好ましいのではないかと、労働運動関係の浅い私どもは想像するのですが、労働運動の専門家——たいへん失礼な言葉ですが、それに全身全霊を投じておるあなたは、私のこういう考え方に対してどうお考えでしようか。
  53. 島上善五郎

    島上証人 メーデー労働者の祭典であるということには間違いないでしようが、しかし現在労働者が置かれている状態というものは、五月一日に單純におめでたいと言つてお祝いだけをしておれる状態ではないのです。少くとも日本労働者はそうだと思います。従いまして終戰以来つて来たメーデースローガンを見ましても、そのとき置かれた労働者の要求を集約して表現したものをスローガンとして採用している。今日の日本労働者の置かれている状態から見ますれば、勢い政治的ならざるを得ないのです。労働者の要求は政治的たらざるを得ない。それと結びつけないで労働者の要求を充たすということは不可能です。政治的な色彩もしくは政治的なスローガンを掲げるから問題が起るというのではないと思います。これは今まで五回の戰後のメーデーをごらん願えばわかりますが、あれで十分りつぱな——どこから見ても十分ないいメーデーであつたと言い切れない面も、あるいは見方によつてはあるかもしれませんが、私どもは戰後、今年のメーデーを除いた他のメーデーはりつぱにやつて来た、それが政治的スローガンを掲げておつても、そのことは何もメーデーを行うことについて支障はなかつた、こう考えております。
  54. 椎熊三郎

    椎熊委員 最後にもう一つ伺います。当日騒擾を起した分子というものは、実はメーデー実行委員会が認めなかつた分子であつて、さらにつつ込んで言うならば、あなた方実行委員会が認めざるほど関係の薄い別個の極端なる過激な分子がやつたもので、総評はもとよりのこと、日本の正純な労働組合にはああいう分子はほんとうは入つていないのだという、そういう見方なんですか、どうですか。
  55. 島上善五郎

    島上証人 これは昨日来しばしば言つておりますが、全学連朝鮮人団体、それから土建の一部の労働組合実行委員会に入つていなかつたことは事実です。従つてメーデーの主催団体に入つていない、そういうことは事実です。ただ昨日も申しましたように、主催団体には入つていないけれどもメーデー会場に来るとか、デモ行進の後尾につくということは、今まで別に制限をしていなかつたのです。このことについてはいろいろ議論されておりまするが、戰争前も大体そうでしたが、終戰以来つて来た方式を踏襲しただけの話で、ことし特にそういう団体メーデー会場に入つたとか、デモ行進に加わつたというものではなくて、今までも会場に来ること、デモ最後尾につくということを特に制限はしていなかつたのです。問題となつた団体が主としてそういう団体であつたということは私も認めます。
  56. 椎熊三郎

    椎熊委員 最後に私は委員長にちよつと申し上げておいてこの席を退席したいと思う。  私はこの委員会の理事でなかつたものですから、証人の選択についての発言権はございませんでした。今総評島上君をお呼びすることも、われわれは決してむだではなかつたと思いますけれども総評自体はこの事件関係ないのだ。散会後に起つた突発事件だ。この騒擾事件の核心をつくためには、島上さんはむしろ第三者的の立場にある人で、この事件を批判するのに適当な人であるかもしれぬが、事件の真相を糾明するための証人としては、私は当を得ていなかつたのではなかろうかと思うので、あえて委員長にこのことを警告しておきたいと思う。この程度で私は終ります。
  57. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの椎熊君の御発言ですが、相当理事会は愼重にやつておりました。諸般の材料に従つてつておりまするから、どうぞ御心配なく。田渕光一君。
  58. 田渕光一

    ○田渕委員 昨日証人が、二つある声明書一つを読んでくださいました。他の一つを本日お持ちになつたのでございましようか。もし持つておられれば再確認をしたいと思う。
  59. 島上善五郎

    島上証人 どの声明書ですか。
  60. 田渕光一

    ○田渕委員 昨日総評声明書ともう一つありまして、関係がないので自分は持つて来なかつたという、きのうお読みになつたのはどれでございましようか。
  61. 島上善五郎

    島上証人 きのう読みましたのはメーデー実行委員会のものです。
  62. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで総評声明です。
  63. 島上善五郎

    島上証人 総評声明書は、私は本日も持つて参りません。しかし趣旨は大体大同小異と言つていいと思います。
  64. 田渕光一

    ○田渕委員 大体の趣旨を、眼目だけでもよろしゆうございます。そう詳しくはいりませんが、おさしつかえなかつたら、大体趣旨とするところを大略、御記憶だけでもひとつ伺いたい。
  65. 島上善五郎

    島上証人 大要と申しますと、このメーデー実行委員会の趣旨と大して違わないです。ただ実行委員会実行委員会立場で、総評総評立場で行つた。それだけの違いであつて内容の趣旨においてはかわらない。
  66. 田渕光一

    ○田渕委員 実行委員会にはあらゆる団体が入つておられるのでありまするから、実行委員会総評単独の声明というものが違わなければならぬと思いまするが、大体同一と伺つてよろしゆうございますか。
  67. 島上善五郎

    島上証人 いわゆる趣旨は大体同じである。こういうことは言えます。
  68. 田渕光一

    ○田渕委員 お持ちにならなければ、資料は事務局に上つておりますか。——ではその資料を参考にすることにいたしましよう。そこで昨日来伺つておりますると、島上さんはどうも遺憾だと言うだけをもつて遺憾の意を表するだけで、何らここに責任というような点が深く感じられてないように伺うのでありますが、この問題に対しては責任は全然ないとおつしやるのでありますか。あるいは遺憾の意を表するばかりがその責任考えておらるのでありますか。これを伺いたいと思います。
  69. 島上善五郎

    島上証人 広い意味いうと、私は方々責任があると思う。実行委員会実行委員会といういわば公の立場からすると、メーデー行事が終了するまでを実行委員会責任としておりますから、終了するまでの間に起つたことについてはもちろん実行委員会責任があるのですが、終了した後の——おそらく質問者は終了した後の皇居前の事件のことを言つておられると思いますが、このことについては実行委員会としてははなはだ遺憾あるということは声明書でも明らかありますし、そう私自身も考えておりますけれども実行委員会としては責任を負うべき筋合いのものはない、こう考えております。
  70. 田渕光一

    ○田渕委員 私は大正十三年以来約三十年の経歴を持つ島上君にしてはまことに男らしくないと思う。少くとも総評京都地評議長ある加賀田君が二月二十三日の京都事件あるいは三月二十日の京都事件に対して、総評はつきり日本共産党の尖鋭分子によつてかき乱されたのはまことに遺憾ある。責任があるといつて、京都の地許の議長すすら責任を感じておるのあります。しかるにこの京都の問題は国内問題あります。本年の二十三回のメーデーは国内問題だけはとどまらないのあります。外人の自動車を十三台も焼却し、あるいはまた三十台の自動車のカラス窓を破壊し、外人を濠にほうり込み、なおかつ警視庁の警官六十八名の重傷者と六百七十二名の軽傷者、二名の危篤者を出しております。かような大きな問題を出していながら、国内的に及ぼしたところの日本全国のまじめな労働者の名誉を汚し、三十万のいわゆる尖鋭労働者がああした、こうしたということが出ておりますが、まことにまじめな勤労者の御迷惑、その上なお国際間にも日本独立後の信用というものを失墜し、われわれは米騒動以来のかつてなき騒動を体験して、七百二十何名というような重軽傷者を治安取締り当局に與え、外人の自動車を数十台も焼いたり、こわしたりしておる。こういうような問題に対して、これはとても国内問題だけではありません。しかるに国内的にも国外的にもこういう不祥事を起したということを、メーデーが散会した後あるから責任はない、こう逃げておられる。島上君がそう言うならば私ははつきり教えてあげたい。あなたは議長として中央に連絡をとつてつたから知らぬのでありますけれども、私たちデモの行進が始まつて以来ずつと日比谷解散ま監視し調査しておる。この国会の前を通る総評デモの中にも、第三倶楽部の中野四郎君の自動車に傷をつけて通つておる。国会の前においては配但している警官にプラカード鉄かぶとをつつついたりしておる。それも巡査はがまんをしておる。なおここらどんどん石を拾つて行くのもある。こういうような結果が、日比谷解散してもそれがただちに行こうという計画あるから、日比谷、馬場先門から皇居前に行つたということに対して、私は一連の関連性があるのあつて皇居前、解散後に起つたのだから、この問題は、総評実行委員長としての、あるいは第三十三回メーデー実行委員会事務局長としての責任がない、こうは私はのがれられないと思うのありまするが、あなたは外苑におつて連絡をとり、あるいはは東西南北と中央の五班の連絡をとつてつて御存じないかもしれぬけれども、私はこの目で現実に見ておつて、これが総評のしわざかと思い、それが総評行動かと言わざるを得ない。同時に、あまりに尖鋭化したところの皇居広場一つの乱鬪、あるいは暴動というものだけに目をつけるから、それだけだつたらわれわれに責任がないのだと、日比谷島上君は責任を持切つているけれども、あそこに至る途中れんがを拾い、あの祝田橋リヤカーに一ぱい投げられておる。もちろんよそから持つて来たものもありましようけれども。この点から見て、私は島上君の責任がないということは言えないと思うが、あなたはどう考えておられますか。
  71. 島上善五郎

    島上証人 いろいろ御見解もあるでしようけれども総評のしわざあるという言葉もございましたが、総評のしわざあれば総評責任を負います。それからメーデー実行委員会行事として暴動をすれば、メーデー実行委員会責任を負います。行事以外のことについて責任を負えと言つて責任の負いようがない。広い道義的な意味責任といえば、もちろん私も感じております。しかし実行委員会という、いわば公の機関、実行委員会事務局長実行委員会つた行事に関する限りの責任ある。それ以外のことを負えといつても、これは私は負えないという以外に言葉はない。責任はないというよりしかたがないと思います。
  72. 田渕光一

    ○田渕委員 島上君は本年の春の東京六区の補欠選挙には、社会党の左派を標榜して出ておられたことは御承知通り。しかもこの左派と共産党の結ぶ線、さらにこれに対する北鮮と結ぶ線、これらを見て、いわゆる鮮人労働者、つまり尖鋭分子があばれたということは、北鮮の学生が堂々とやつていることからはつきりしておる。こういうような点からして、島上君は責任がないとして逃げるならば、われわれはこの問題を突き進ん行かなければならぬ。前夜祭において、あれだけあばれたものを、あるいはその他の情報が入つておるものを、もしこれが総評島上君が左派なく、右派の社会党の、かりにもしもこれが議長あつたとすれば、この情報に対しては打つ手を打つてつたと思う。これは私の独断はありません。三歳の童子といえども、これくらいのことが起ることはわかつておる。警視庁はあらゆる情報をとつている。特審局もとつておる。島上君の三十年の体験からして、このくらいのことが——講和條約が四月二十八日に発効した。そうして第一回メーデーある。この機会に共産党があばれる。あばれぬことはないということは、われわれは知つておる。そのために、われわれの当委員会の委員長警視庁に対して、あるいは新聞紙を通じて、全国に警告を発しておる。このくらいのことは労働運動に携わらないわれわれさえ第六感わかるのに、労働運動に携わつている君がそんなことを知らぬはずはない。知つておる。統が左派に所属しておる。共産党に近い。ここらうまくあばれてくれればいいということがあつたに違いない。それは紳士ぶつてつても、はつきりしているじやないか。日本社会党の左派として堂々と第六区の選挙にお互いにまみえたということをわれわれも知つておる。この線をあれこれ結ん行く場合に、島上君は、これは自分の党に有利なことならさせておけ、これはやらした方が少しは有利なことの——これは人間としてロケットない限りは人情として……。     〔「ロケットとは何だ」「ロケットではわからない」と呼び、その他発言する者あり〕
  73. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  74. 田渕光一

    ○田渕委員 発言をする者に禁止を命じてください。     〔「ロケットとは何だい」「われわれが聞いていてもわからない」と呼ぶ者あり〕
  75. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に聞いてください。わかります。
  76. 田渕光一

    ○田渕委員 かような意味で、私は島上君が責任を持たぬと言うけれども、現在私の目の前第三倶楽部の中野四郎代議士の自動車に傷をつけ、そこを警備しているところの警官の鉄かぶとをば振りまわし、突きまわして、それも警官は、きようは厳粛にやらせなければならないといつてがまんしておる。この警官のがまんしていることに対してはまことに涙が出るくらいある。しかもこれがずつとやつて来て、そこらでみな石ころを拾つてポケットに入れておる。これが総評責任がないとだれが言えるか。質問する諸君皇居前の広場事件にばかり目をつけているからわからない。最後にこれ全学連あるいは自由労組、あるいはまた北鮮系の学生やその他がやつた。それに扇動されたところのとばつちりを受けた学生もずいぶんある。これはあそこの皇居前で乱鬪最中に拾つたビラである。こういうようなものを、今申し上げるけれども、ここへ持つて来るのは関連性があるからだ。日比谷解散をしておるから総評責任ではないとあなたは言いますけれども、この事実が今取調べ当局で調べてわかつて来たら、君は責任を負うかどうか。それをはつきりしておきたい。どうでしよう。
  77. 島上善五郎

    島上証人 私は解散後あそこへ行つた方が自分たちに有利である、それがいいことであるという考えは毛頭持つておりません。いないからこそ、少くとも実行委員会参加している団体には連絡して、解散場所解散して、組合員が自宅に帰るようにという指示をした。だからこそ私は総評系の、あるいは実行委員会参加している組合の大部分が、群衆心理の働くああいう場合においてすら、巻き込まれずに済んだと思う。私があそこへ行つた方がいいと考えるならば、堂々と行くことを奨励し、堂々と責任を負います。しないからこそ責任を負わぬというだけの話である。
  78. 田渕光一

    ○田渕委員 かりにも、とにかく平和條約が発効して、この発効と同時に、あらゆる制度、機構、法律の欠陥に乗じて共産党系尖鋭分子が動いていることは、いわゆる白鳥事件以来ずつとわかつておる。中核自衛隊、いやパルチザン戰法だ。これを何かにおいて現わそうということは、われわれ自由党の議員においてすら想像ついている。何かあるぞ、よつぽど気をつけなければならぬ。それを三十年の経験者である君が知らぬで、従来通の甘いメーデーで行くという、そんなことはここでは通らぬ。そうでしよう。一体あなたが多少の何はあるかもしれぬ、不安はあつた、こうきのうの委員長に対しては逃げておるけれども、多少どころではない。われわれとしては暴動が起きはせぬか、風が吹けば風上から火をつけるかもしれぬと心配しておつた。そういうふうな極端なことをあの通りつておるのだから、われわれはそこまで心配しておつた。幸いに片つぱしから検挙し始めたからよかつた。もし検挙していなかつたら、やつておると思う。たとえば会場へあれだけの大きな凶器を持つて行つてつて、君は知らないと言えるか。メーデー参加する者に対して、公安委員会あるいは警視庁との打合せにおいてあなたの代理者が、あらゆる條約ともいうべき規約をつくつているわけである。これが凶器でなくして何だ。島上君よく見たまえ。二間に近い竹の先にこれだけの鉄棒をつけておる。それらのものは何のためにメーデーに必要なのか。こういうようなものを持つて会場に来たものを、赤坂見附から自由党本部を通つて日比谷から馬場先門にあばれ込んだ。これを会場に来ておる君が気がつかぬとか、君に実況を報告しておらなかつたとすれば、君らに一連の計画性があつたと断定されてもしかたがない。どうです。これだけのものを持つて来て目の前に突きつけられて、会場に持つて来なかつたと君は逃げるか。これをメーデーに参画したところの最後尾につく者に許したということで、ここを君は逃げられると思うか。これをあなたはごらんになつたかならないか、あるいはこういうような木刀あるいは竹やりその他まだまだありましよう。これは一部にすぎないのです。こういうものを外苑へ持つて行つて、これをメーデー実行委員長とし、あるいは総評政治部長とし、知らぬということは私はなおさらあるまいと思う。何のために目の前に置いておるか。デパートのウインドーのものではあるまいし、あなたはこれを見せて、あなたの良心を伺うというのが目的なんです。どうですこの点は。
  79. 島上善五郎

    島上証人 いろいろ見解の違うところもあるようですが、もちろん私どもは公安委員会から付された條件を守るために最善の努力をしたものです。四十万人も来るものですから、戰争前みたいに身体検査をして入れたらどうか知りませんが、私どもの目の届かぬものも若干あつたということは言えるでしよう。もちろんやりを持つて来ることを奨励したわけではないし、そういうことのないように極力手配をしましたけれども、四十万の人間のうちに三人や五人何か持つて来た者があつた。それをぼくの責任であるかのように言いますけれどもメーデー実行委員会事務局長というものは、四十万人の人間が持つて来るものを一々調べて、それがいいから悪いからと言つてやる、こういうようなものではないのです。それは、メーデーをどういうふうにやつているか、メーデー実行委員会責任というのはどういうものであるかということをお知りにならないへりくつだと思うのです。
  80. 田渕光一

    ○田渕委員 そういうのならひとつ聞こう。君は専門家で、われわれはそういうことは知らぬ。知らぬが、東京都の特別公安委員会が君に対して、昭和二十七年四月二十八日に出した別添えの何において、條件を付している。この條件に違反した場合には君は責任をとるのか。きようはこの五月一日事件に対して初めてのあなたは証人である。これからどんどん証人が出て来る。まだ、むしろ君らの内部を知つている者をこれから調べて行くんだ。はつきりわかつて来るのだ。この、あなたと東京都特別公安委員会あるいは警視庁との打合せのみならず、この許可條件に対する違背行為に対して、あなたは責任を持つのか持たぬのか、これはどうだ。
  81. 島上善五郎

    島上証人 許可條件に対して私が違反したならば、私は責任をとります。
  82. 田渕光一

    ○田渕委員 違反しておるのは事実じやないか。そこまでしらじらしいのなら読んであげよう。こういうことが書いてある。委員長、これは記録に残す関係上読んでおこうか、あとで載せようか。
  83. 内藤隆

    内藤委員長 読んでください。
  84. 田渕光一

    ○田渕委員 読んでみましよう。こういうことになつておる。  別添  昭和二十七年四月二十八日       東京都特別公安委員会  島上善五郎殿 ——これはもちろん個人あなたではない。この点はあなたも認めておると思います。何も肩書がない。ただ島上善五郎殿としてある。  昭和二十七年五月一日行われる標記の集会、集団示威行進に対して東京都條例第四十四号「集会、集団行進及び集団示威運動に関する條例」第三條の規定により左記の條件を附する     記 一、官公庁の事務の妨害防止に関する事項、大会決議文手交陳情等の各班代表者は十名以内とし官公庁事務の妨害をせざること 二、じゆう器、きよう器その他の危險物携帯の制限等危害防止に関する事項   1 じゆう器その他の危険物を携帯しないこと   2 プラカード、旗幟の類は一人で自由に持ち歩き出来る程度のものとすること   3 旗幟等の先端に金具類を附したものを携帯しないこと   4 会場に於ける投石暴行等不法行為の発生防止に努めること 三、交通秩序維持に関する事項   1 蛇行進及び駈足行進を行わないこと   2 集団行進に自転車その他の車馬を用いないこと   3 現場警察官の指示に従うこと   4 行進中濫りに隊列を離れしめないこと 四、集会集団行進又は集団示威運動秩序保持に関する事項   1 会場内に於て濫りにビラ等を撒布しないこと   2 行進隊形は六列側面従隊とし一隊の人員は概ね一、〇〇〇名以内として各隊の距離は必ずその隊の長さを保つこと   3 行進中隊列内又は隊列外より道路に於てビラ等を撒布又は配布しないこと   4 各隊毎に責任者一名及び補助員二名を付し主催者及び責任者並びに補助員はそれぞれ参加団体名を標示した腕章を附すること   5 行進中各地区部隊の責任者は最先頭及び最後尾に位置しこれが秩序維持につき警察官との連絡を密にすること   6 解散は到着順に各隊毎に行い現場に停滞しないこと  この、私が今読みましたことが、あなたが公安委員会から附された條件なんです。そうでございますね。そうするならば、そういうものが、一人で自由に持ち歩きできるとはいいながら、これを凶器とあなたは見なかつたのか。一つの旗ざおと見られたのであるか。あるいは四十万とあなたの方でいうておるが、われわれは大体二十万と聞いておる。二十万のあの大衆が外苑に入つたのであるから、全部に向つてあなたは目が届かないとしても、あなたが事務局長として、責任の部署部署につかせて、東西南北——中央班に対してはこれこれが指導に当る、その労働組合の何にはこれが当る、班長はこれだ、それが絶えず緊密に連絡をとるということになつておるのに、それがあなたに報告があつたか、忠実なら、相当危險な分子が入つて来ておりますよ、あるいはこういうものをどうしましようということに対して、あなたが決裁しないまでも、こういうものは取締らなければならぬということが徹底しておつたならば、こういうものは持つて行かなかつた。こういうものを持つておるから、皇居前で——私は見ておつたが、突撃という命令でこれを持つて警官に向つてつた。だからあぶないというので警官がピストルを撃つた、こういうことになつておる。こういうときに、あなたはこの公安委員会の條件にことごとく反しておる、これでも責任をとらぬというのか。
  85. 島上善五郎

    島上証人 まあ、こういうものを持つて来たことを私は別に承知していなかつた承知しておれば、承知しておるような処置をとるのですが、そういうものに十分目が届かなかつたということが責任であるということならば、その責任は負います。
  86. 田渕光一

    ○田渕委員 目が届かないことはもちろん責任です。少くとも総評政治部長であり、三十年の経験をもつたあなたを、警視庁でも甘かつた、実際信頼した。また公安委員会もあなたの人格というか、あなたの経験というか、島上君のやることならば、どうやらこうやら押えるだろうくらいのことは思つたと思う。けれどもこれがすつかり裏でかきまわされるということは、京都の二月二十三日事件、三月二十日事件を見ても、総評が完全に済んだあと、この共産党分子がかきまわしておるし、ほんとうにまじめな学生を扇動し、尖鋭分子がかり立てておることは、京都ではつきりしておる。この二の手が東京でモデルケースにやられることはわかつてつた。われわれ当委員会で委員長はつきり言つておる。それをあなたが、知らぬ、多少の不安があるだろうというぐらいに、つまりあなたは時局を平穏に考えておつたかどうか。私は決してそういうあなたの見方と——いや、所見の違いだといえばそれつきりだが、われわれとして見れば、できる限り最善——の自由党としては、吉田内閣は——あなたは政策  が悪いからこういうことになるだろうという証言をきのうやつておるが、最善のことをやつておる。これ以上のことは何人がやつてもできやせぬ。もちろん人間であるから完全ではなかろうが、絶対多数をもつて、最善の方法でやつておるのに、こういうことしかできない。けれどもこれに不平のあるものもありましよう。だからこういう問題が東京において起ること、ことに皇居前を使わせれば起るということは、あなたはそれだけの観察力というか、見通しというか烱眼がないあなたではない。それを、何かというと、党が左派に所属しておるかために、こういうものを知つておりながらも、知らぬふりをして、暗にこれをやらしたというところの責任は、あなたは免れないと私は思う。政党の所属を言うのではありません。今でも総じて社会党の左派というものは政策が共産党に近いじやないか。むしろわれわれから言うならば、あなたは六区の選挙に出ていなければ、今日そこまでは言わぬ。六区の選挙に堂々と社会党の左派として……(「脱線々々」と呼ぶ者あり)脱線じやない。(「やめろやめろ」と呼ぶ者あり)だまれ。
  87. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。     〔発言する者あり〕
  88. 田渕光一

    ○田渕委員 うるさい。だまれだまれ。     〔発言する者あり〕
  89. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。田渕君、質問を続行してください。
  90. 田渕光一

    ○田渕委員 お前たちのやじくらいで頭の狂うおれじやないよ。少くとも一回衆議院の議席を持つておる島上君ならば、一片の責任は感じておるだろうと思つてつたが、遺憾だということで逃げておるから、やはり左派らしいということになる。これだけの大きな事件はかつてない。しかも八千四百万人の日本民族が世界の信用を失うようなことを起したということは、近因は皇居前の暴動にあるかもしれないが、遠因は実行委員会からたくらまれておつたと見てもさしつかえないと思う。自由党本部に石を投げたり、警官に傍若無人のふるまいをして、それから日比谷解散をしておる。その責任はあなたは外苑におつたからないと言う。これは取締り当局から上つて来るだろうから、そのときに責任を追究するが、少くとも総評政治部長ともあろう者が、全部に目が届かなかつたから遺憾だというようなことでは、この責任は私はのがれられないと思う。老練な君がほんとうに三十年の体験を生かして、男らしくこの点についての責任は負う、この点は責任を負えないということをはつきり証言してもらいたい。まだありますけれども、まず今言つただけのことについても責任を負わなければなるまいと思う。これに対してどう考えるか、共産党のやじなんか、そんなものは考える必要はない。
  91. 島上善五郎

    島上証人 社会党左派は容共であるから暗にやらせた、こういうようなことに対しては、私は全然認めません。暗にやらせたなどということはとんでもないことです。私はあのような事態に、少くとも自分たち統制のきく団体を巻き込ませないようにどんなに努力をしたか、それこそあなたが今おつしやつたように、人間であるから足らなかつたこともあつただろうけれども、最善の努力をしたということは事実です。(「それはほんとうか」と呼ぶ者あり)天地神明に誓つてほんとうです。最善の努力をしたのです。実行委員会という機関の責任を言われれば、あくまでも実行委員会というものはメーデー行事が終了するまでの責任である。広い意味で道義的な責任といえば、私はまことに遺憾である、残念であるということを言つておることでもつておわかりかと思う。
  92. 田渕光一

    ○田渕委員 広い意味も狭い意味もありはせぬ。広義も狭義も聞きたくない。それよりも少くともこの公安委員会から付された條件をことごとく破つたというのはあなたの責任です。赤坂見附あたりからずつとかけ足で来て、自由党本部前で石をほうつたり何かして、日比谷解散をしておる。これは京都の二月二十三日、三月二十日事件とちつともかわらない。同一のことをやつておる。これを京都でやつていなければぼくは島上君にここまで言わぬ。京都の加賀田書記長が東京へ来たとき諸君に会つていると思うのです。この委員会でも証人として証言を求めておる。それでおそらく加賀田君と会われたとき、政治部長、京都ではこういうことをやつておる、だから今度のメーデーにはよほど気をつけぬと、四月二十八日に講和が発効するその直後の間隙に乗じて、共産党一つのモデル・ケースとして同じようなことをやるだろう、そしてまず警官に打撃を加えるだろう、これくらいの話はしたに違いないと思う。京都にはつきり手本があるのに、それを知らぬ存ぜぬ、全然想像せぬと言うところに、島上君のふてぶてしさがあると思う。私は炭鉱をやつて労働者を使つておるけれども、そういうことぐらいは使つてつてもわかる。いわんや勤労階級の代表者であるあなたが、そのくらいの大衆労働者の心理を把握できない、あるいは客観情勢を把握できないようなことで、どうして政治部長が勤まるか、私はそれを聞きたい。この責任には挾義も広義もありません。隊列を乱し、これだけの凶器を持つていても、何十万という者の中に入つているのだから、それは一々目が届かぬというのならばそれまでです。少くとも私は公安委員会はあなたを信じて許したのだと思う。それは吉武労働大臣も言つておるのです。これはわれわれ率直に言えば、吉武が甘かつたからだとも言えるが、総評島上君と話合いができて完全にうまく行きましたなどと、堂々と総務会で報告しておる。君の徳が完全無欠であれば、議長団のところに迫ることもなかつたろうと思う。完全無欠でないということは、お互いに人間だからやむを得ぬとしても、君の徳がほんとうに高く、ほんとうに公平に行つておるならば、議長団の席でマイクをとられてあばれられるようなことはなかつたであろう。宣言がわからなかつた、それで中部や南部の後尾に入れた、こう言つて逃げておるけれども、そもそもそんなことは百も承知でやられたとしか思えぬ。私としてはひねくれて言うのではない。私はほんとうにすなおにそう思う。一例を言うならば、赤坂見附あたりで、こういうものを持つておる者がある、どこか襲撃するかもしれぬから注意してくださいという報告があなたの方になければならぬ。これもない。あつたかもしれぬがこれを抹殺してしまつたのか、君は統率しておると言うが、統率しておりはせぬ。結果においてはこういう不祥事を起しておる。これだけ申し上げても責任がない、広い意味の道義感とか遺憾の意を表するというようなことで済むわけはない。君らの不始末のために、日本政府を代表するところの外務大臣が米国大使館に陳謝に行つたということだけでもはずかしい話じやないか。     〔発言する者あり〕
  93. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  94. 田渕光一

    ○田渕委員 かようなふしだらなことをして、平和條約発効の四日目に、外国の大使館に日本政府を代表してあやまりに行かなければならぬようなことをしでかした。これでも責任を負わぬ、遺憾だけで済ますのか。そういう君ならぼくらとしては君を信ずるわけに行かない。ぼくはなおあと追究するか、あるいはここらで君の人格というものを認めて、もう証言を求めないかをきめるのだから、下つ腹に力を入れてはつきり聞かしてもらいたい。
  95. 島上善五郎

    島上証人 さつきから言つておりますように、私がやつたことは私が責任を負います。総評がやつたことは総評責任を負う。実行委員会がやつたことは実行委員会責任を負う。メーデー行事が終了した後に起つた事件実行委員会という機関に責任を負えと言つても、これは責任を負えないわけです。ただあの事件がいろいろな意味で非常に不祥事件であるということは私も認めておる。広い意味における道義的な責任というものは十分感ずる。だから今後そういうような問題の起らぬように、あらゆる面において手を打つておくということに対しては、この総評声明書にもある通りです。しかしあの事件承知しておつて暗にやらしたというような責任はもちろん負いません。暗にやらしたのではないのです。
  96. 田渕光一

    ○田渕委員 あとあと証人も調べましようし、いずれ取調べ当局の調査の結果も現われましよう。そのときに総評として責任を負うべきところが出て来たならば確然として来ましようから、その際あなたに責任を追究します。ただ遺憾だという言葉はいかようなことにも使われるのであります。御承知通り、政治的な意味にもはなはだ遺憾だという。しかし私が先ほどからるる申し上げた通り、平和條約発効四日目においてこういう問題を起したことによつて、国際間に、日本の非常な矯激分子共産党があたかも大手を振つておるかのごとく見られ、今検挙されておる八百何十人あるいは千人になるかもわからぬが、それらの不逞のやからが動いて総評二十万の名誉を傷つけたことも、私ははなはだ遺憾だと思う。こういう点に対して私は調べの結果においてはあなたに責任を問うということがあれば問いましよう。しかしあなたがこれを道義的とか、あるいは今日の信條として、こういう結果を起したことは自分の不徳のいたすところだとお考えなさるかどうか、それをひとつ伺いたい。
  97. 島上善五郎

    島上証人 私の不徳のいたすところだというその言葉がずいぶん抽象的な言葉だと思いますが、実行委員会事務局長として、私がああいうことをまつたく起さぬで済むことになれば、これは非常に幸いだつたと思いますけれども、実際上起つてしまつたので、これは私の不徳のいたすところだということを広い意味でいえば確かにそうでしよう。私が非常な力を持つて非常に信頼を持たれておつて、私の言いなり次第に五十万の労働者が動く状態になかつたことは事実ですから、そういう意味においてあるいは私の不徳のいたすところでありましよう。
  98. 田渕光一

    ○田渕委員 これであとあとの証人に対するかぎを握つたのであります。かような人物を警視庁ともあろうものが、東京都の公安委員会というものが信じてやつたために、こういう不祥事が起つた。ただ一点伺つておきますが、こういう凶器を持ち込んだということは、これは一部の者で、ことに七百何十名のわれわれの治安を守つているところの警察官に負傷者を出し、またほんとうにとばつちりを受けて気の毒に学校を休んでおるというような学生もございましようが、こういう問題については、私はこういうことを再び起さないようにすることのためにも、あなたもひとつ十分研究してもらう、われわれもなお今後において研究するということで私はこれで一応質問を終つておきます。
  99. 内藤隆

    内藤委員長 鍛冶良作君。     〔「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり〕
  100. 内藤隆

    内藤委員長 鍛冶良作君に発言を許します。鍛冶委員
  101. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大体これまでの質問で盡きておるようですが、島上さんの一言でちよつと聞かなければならぬと思うが、道義上の責任は負うが、そのほかの責任は負わぬと言われるその点でございますが、道義上の責任ということはおそらく私には故意がない、さらにまた私としてやるだけのことはやつたんだが、それ以上目が届かぬから、われわれ直接の責任はないけれども、大会の際にかようなことの起つたことが遺憾だからその責任を負う、こういう意味だろうと思うが、さようなことですかいかがです。
  102. 島上善五郎

    島上証人 その通りです。
  103. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこでお聞きしたいのは、先ほどからも出ておりましたが、私はそれでは済まぬと思う。あなたは東京都特別区公安委員会からこの指示事項を示されまして、これを御承知になつたに違いない。そうしてみると、この指示事項に違反しておると思われるか思われぬか。この点をお聞きしたい。
  104. 島上善五郎

    島上証人 参加した団体の中でその指示事項に若干違反した行為があつたということは認めます。そこへ実行委員会が十分に目が届かなかつたということも認めます。
  105. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたが直接これに違反しておるとは思わないのですね。そこで私は聞きたい。きのうからの言葉を聞いていると、今の言葉を聞いても、あなたは大体六本木から溜池へ来るまでに正当なるデモ行進以外の先鋭分子行動を見ておられたとこの間言つておられますが、間違いなかろうと思う。それを見たときにこの條例に違反しておると思われなかつたのですか。いかがですか。この点ひとつまず聞きましよう。
  106. 島上善五郎

    島上証人 ほんの少しの道でありましたけれども、所定のコース以外のところを通つたことがあつたことは認めます。ですからその所定のコースを守れという條項に、一部若干ではありますけれども違反した団体のあつたことは認めます。
  107. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 認めるのではない、あなたはごらんになつたのでしよう。直接その行進を私も見ておつたのでありますが、この蛇行進、かけ足行進、俗にいうジグザグ行進、これはごらんになつたでしよう。これをごらんになつたら、これに違反しておるに違いないのだが、そのときにあなたはこの責任者としてどういう処置をおとりになつたか、これをお聞きしたい。
  108. 島上善五郎

    島上証人 それは行進中のそういう統制連絡につきましては、それぞれの団体責任者あるいは警備員の諸君が直接に処置をする、こういうことになつている。実行委員会事務局長が全部の行進に全部目が届くわけではございませんので、そのために実行委員会というものの下に警備員、連絡員というものがあり、そのために各団体責任者というものがある。私どもはそういう際に直接各団体人々に臨機の処置をとつてもらうことにいたしております。
  109. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は全体のことを言うておるのではありません。あなたは六本木から溜池まで来るのを見られたときに、あなた自身が見たのですか。責任者自身が見たら、そこで責任者たるあなたがどのような処置をとられたか、これを聞いている。
  110. 島上善五郎

    島上証人 南部地区の行進の責任者に所定のコース通り行くように、こう連絡をしました。
  111. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 所定のコースだけじやないですよ。ジグザグ行進をやつたり、かけ足しているのをどうしましたか、これに対して何と言われた。
  112. 島上善五郎

    島上証人 私は直接に南部地区ではかけ足行進、ジグザグ行進は見ません。溜池からまわるところではそういう場面は見ません。
  113. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 だけれども、溜池から正規の団体はこつちへ来るし、尖鋭分子は横へまわつてこう来たでしよう。かけ足やつた。私は見ておつた。みなかけ足で、ジグザグで通るのに会つて私はやつと通つた、通れない。私はそんな六本木から溜池まで来て、全部ジグザグでかけ足で来ているのを見ておらぬというに至つては、これ以上聞いてもしようがない、何人が言つてもそういうことは通らぬことだ、見ぬというのならば私は遺憾だと思う。  その次にはこのような什器、——凶器——直接やりがある、竹やりだけでなく本物のやりがある。隠して歩けません、長さ二間あるでしよう。このようなものを持つている者は隠すわけに行かぬのだから、もう行進しているときに持つて歩いたのだから、一目瞭然に見えると思うが、さようなものはごらんにならなかつたのですか。
  114. 島上善五郎

    島上証人 私は直接見ませんし、不幸にしてそのような連絡もありませんでした。
  115. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたも見られないし、連絡もなかつたということは、あなたの下におる指導者も見なかつたということでしよう。そこで私は聞きたい。かようなものは隠して歩けないのだから見えぬわけはない。あなたは公安委員会の指示に従わなければならない。これを忠実にやらなければならぬと思えば見えなければならぬものだ。それを見てなかつたというところにあなた方の手落ちがないか。手落ちだけじやない、調べようとする意思があつたかなかつたか。この点もう一ぺんあらためて伺いたい。
  116. 島上善五郎

    島上証人 連絡員、警備員というものは、そういう方面にも任務を持つているわけですが、要するに私が言いましたのは、私ども実行委員会の下にある連絡員がそこまで目が届かなかつたということです。
  117. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 目が届かなんだで済みますかと私は言いたい。こんなものを持つてつて、これが見えなかつたで済むか。見る気があれば見えないはずがない。見る気がなかつただろうと私は言うのですよ。それにもかかわらず、それは道義上の責任だけで何もほかに責任がないのだといわれるところに、われわれは合点の行かぬところがある、これはどう思う。私の言うことが無理か、それともあなた方はやるだけのことはやつたが、まことにやむを得ざる、いわゆる不可抗力であると言い切れますか、いかがです。
  118. 島上善五郎

    島上証人 最善を盡しましたが、そういう点に手落ちがあつたということは認めます。
  119. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 手落ちがあつたと言われればよろしいが、道義上の責任ということは、手落ちもない、やむを得ざる不可抗力だと聞えることになる。手落ちがあると言われるならまだよろしいが、私はジグザグ行進やかけ足が見えなかつたの、こういうものが見えなかつたのと言われるあなたの証言に、私はまことに遺憾の意を表して私の質問を終ります。
  120. 田渕光一

    ○田渕委員 先ほど改進党の椎熊委員から島上証人に対するとかくの何がありましたが、それあるがゆえに、私は別に島上君とは縁故がありませんけれども、ここまで追究したのであります。しかしながら道義上の責任とか、あるいは広義のいかんとか、まだあいまいでありまして、終戦後の長い間いばらの道を踏んでようやく独立したわれわれとして、これから行く上において、国際上の信用も考えなければなりません。ここらにおいて、私はこれで島上証人証言を打切らずに、あと調べた上において再び伺わなければならぬことがあるかと思いますので、島上証人に対する質問を打切らずに、一応この程度にとどめておいていただいて、あとあとの証人を尋問した上において、再びおいで願うことがあるかもわかりませんから、留保しておきたいと思います。ただ私が申し上げるのは、事務当局あるいは委員会においても、この大きな問題に、総評島上君を一番最初に取上げて、その証言を求めたことがいいことであつたか、悪いことであつたかということはあとで批判いたしましよう。ともあれ責任の所在がはつきりしない限りは、われわれはどこまでも事を信じられぬ、公安委員会からこれだけ明らかにされた條件を付されてやつた。私がもし島上君の立場であつたならば、私は責任をとります。負うべき責任を私ははつきり負います。しかし島上君と私とは思想も違い、あるいはまた観念も違うかもしれぬ。かような意味において、あとあと証人を調べた上において、再び証言を求めることを私は要求しておきます。
  121. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ただいまの田渕君の意見反対です。それは田渕君の質問に対して、田渕君の望むような証言証人から得られなかつたことに対する腹いせであつて質問を保留しようというのは証人に対する脅迫行為です。なおさらに申し上げますならば、それは明らかに当委員会の内容を自由党の党利党略に利用しようとするものだ。     〔発言する者あり〕
  122. 内藤隆

    内藤委員長 御静粛に願います。
  123. 山口武秀

    ○山口(武)委員 当委員会を利用しようという職権濫用だ。そのようなばかばかしいことに当委員会が納得できるものではありません。納得してはならないことです。当然田渕委員の御意見を採用しないようにお願いいたします。
  124. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はこの委員会で静かに聞いておるのでありますが、この委員会はいわゆる行政を監察するところの超党派的な委員会であります。従つて委員会が証人を呼んで証言を求めておるのは、いわゆる宮城前におけるところのあの騒擾事件に対しての証言を求めておるのであります。島上証人証言を聞いておりますと、むしろ総評はそういう秩序あるメーデーが行いたかつたということで終始一貫これを堅持して来た。しこうして島上君一人の責任でなく、これは各種団体から選ばれた当日のメーデー実行委員責任であります。従つて島上君はその代表的立場においてここに呼ばれて証言を求められておるのでありますから島上君の責任の追究ということよりも、われわれはむしろあの取締りに遺憾はなかつたかという行政方面をよくよく調べてみなければならないと思います。そういう意味におきまして、田渕委員の言われるように、一応この証人に対する質問はこれで打切られて、保留しておいて、もしさような責任を実際上に負わさなければならぬような事態があるならば、いつでもこの委員会は証人を喚問してさらに証言を求めることができる、そういうふうにおとりはからいを願います。
  125. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの田淵君の御発言は、田淵君の希望でありますから、委員長としてはさように聞きおきます。他に御発言がなければ、島上証人に対する尋問は本日は一応この程度にいたしまして、なお理事諸君と協議の上、再び喚問することがあるかもしれないから、さよう島上君に御承知を願つておきます。証人には長時間にわたつて御苦労でありました。  午後は二時より再開いたします。それまで暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  126. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいまお見えになつておられる方は瀧田實さんですな。
  127. 瀧田實

    ○瀧田証人 はい。
  128. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたからさよう御了承願います。  ただいまより治安警備状況に関する件中、五月一日皇居広場騒擾事件について証言を求むることになりまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていだたきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人瀧田實君朗読〕     宣 誓 書    良心に従つて真実を述べ、何事かくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  129. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  130. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  瀧田實君は現在全国纎維産業労働組合同盟の会長をしておいでになるようでありますな。
  131. 瀧田實

    ○瀧田証人 その通りであります。
  132. 内藤隆

    内藤委員長 現在の会長におつきになるまでの経歴を簡單に述べてくれませんか。
  133. 瀧田實

    ○瀧田証人 昭和六年三月、富山県立高岡工芸学校を卒業いたしまして、日清紡績株式会社高岡工場に入社、爾来同社各工場を転勤、終戰後労働組合運動に従事、日清紡労働組合の結成並びに全国纎維産業労働組合同盟結成に努め、日清紡労働組合長二年、全国纎維産業労働組合同盟会長四年、中央労働委員委員三年、国際自由労連評議員二期二年、日本ILO協会理事、さらに中央賃金審議委員委員、こられを勤めて現在に至つております。
  134. 内藤隆

    内藤委員長 五月一日のメーデーの前、前夜祭というのが四月二十六日かにあつたようですが、その前夜祭にあなたの全纎同盟からたれか御参加になつた人がおいでになりますか。
  135. 瀧田實

    ○瀧田証人 お答えいたします。前夜祭には正式に代表を送つておりません。
  136. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの組合からはどなたもおいでになつていなかつたのですか。
  137. 瀧田實

    ○瀧田証人 正式に参加しておりませんが、組合員として行つたかどうかは、私存じません。
  138. 内藤隆

    内藤委員長 そういうことがおわかりにならぬ以上は、その前夜祭なるものがどういうものであつたかということ、模様等ももちろん御存じないわけですね。
  139. 瀧田實

    ○瀧田証人 結果については聞いておりますが、正式にここで責任を持つてお答えするという状態ではありません。
  140. 内藤隆

    内藤委員長 その前夜祭というものが行われたその散会直後、水道橋の交番を襲うたトラブルがあつたようでありますが、そういうことは御存じなければよろしい。そこでこの五月一日のメーデーに対しまして、あなたの全纎同盟としてはどういう対策を持つておられましたか。あるいはまたあなたは実行委員会に御関係がありましたかどうか。もし実行委員会等に委員としてお加わりになつておられるならば、その実行委員会等の内容、あるいはあなたの全纎同盟としてのこのメーデーに対する対策等を御説明願いたいと思います。
  141. 瀧田實

    ○瀧田証人 実行委員には私は参加しておりません。但し全纎同盟として実行委員を一名送つております。富田というものを一名実行委員に送つております。なお五月一日のメーデーについての対策というものは、別に全纎同盟として特に決定いたしておりません。実行委員を通じて実行委員会の模様を聞き、われわれが実行委員を通じて発言したにとどめておつて、特に実行委員会できめられた以外に対策というものは練つておりませんが、動員計画については、あらかじめ実行委員会できめられた動員数になるべく歩調を合せるように、われわれは動員に対しては考慮を払つてつたのであります。
  142. 内藤隆

    内藤委員長 その実行委員会に富田という人を代表としてお送りになりましたか。そのときに何か実行委員会へ全纎同盟としての申込み等がありましたか。
  143. 瀧田實

    ○瀧田証人 それは実行委員会に特にこういう問題について発言しなさいというふうには、別段正式機関では決定いたしておりません。しかし全纎同盟から出ている執行委員は、全纎同盟の組合の従来とつて参りました運動方針、あるいは機関の決定に従つて発言してくれたもの、こういうふうに解釈しております。その方向と申しますのは、基本線は民主的な労働組合としてのメーデーを催すべきである。それから組織的には国際自由労連に近づくような日本労働組合の前進を願つた意味においての発言をしている、こういうふうに思います。別段メーデーのことについて指示をしたということはございません。
  144. 内藤隆

    内藤委員長 そこで証人はこのメーデーの騒擾が起つた直後、談話を発表しておいでになるようです。その談話の内容を、もし何かあなたの談話が印刷物等になつておれば、それをお読みになつてもよろしゆうございますが、それをひとつ御説明願います。
  145. 瀧田實

    ○瀧田証人 私どもは機関紙の合纎新聞というものを、組合員に購読を勧め、発行しておりますが、一九五二年の五月十日号に談話を発表いたしております。しかしこれは二十七年五月二日に発表したもので、印刷は五月十日になつておりますが、発表の時期は五月二日であります。二日謄写版刷りにいたしまして、加盟組合責任者あてにこれを発表送付いたしました。その前五月一日に若干このメーデーの問題について触れた記事を五月三日号に出しております。この五月三日号に「独立と全繊同盟、中央メーデーの失敗を反省しつつ」ということで、私は署名入りで一文を草しておりますが、これを発表するに至りました経過を若干申し上げますと、当日私は労働代表の代表あいさつをすることに予定されておりました。これは労働代表として各単産の有力なものが十一名あいさつすることになつておりまして、祝辞が終りましてから、労働代表のあいさつが逐次進みまして、私が最後の十一人目にあいさつする順序になつてつたわけです。ところが私があいさつする一人置いてその前は、衆議院の議員をしております熊本虎三氏が総同盟代表としてあいさついたしましたが、熊本氏があいさつをするころに、演壇の周囲がかなりざわつきまして、そしてマイクがややその当時からそこなわれておつたような傾向で、熊本氏が終りましてから、次に一人あいさつをし、私の番になりますときは、数十人の人々が演壇の奪取にかかりました。かけ上り始めたわけであります。それで私があいさつしているときは、もうすでに演壇に並んでおつたマイクは、主催者側で切つたのかその他の人が切つたのかはわかりませんが、マイクはほとんど通じない、断ち切られた状態にありました。そこで話が終るころは、もうほとんど演壇は占領された状態になつてつたわけです。
  146. 内藤隆

    内藤委員長 その間の事情はあとでまたお聞きしたいと思いまするか……。
  147. 瀧田實

    ○瀧田証人 それがここに関係があるわけですから、それだけで模様は終りますが、そういつた状態で混乱が起りましたので、私の加盟組合組合員約三千名ばかり参加いたしておりますが、その者の安全を保護するために、私も演壇から下りて動員部隊の方へ行きまして、危険な状態が来た場合には、デモ参加しなくてもよろしいから、早く散会してもよろしい、こう残留の者の責任者に言いつけましてから、ただちに全繊同盟の三田の本部に帰つて、この五月三日ごろ「メーデーの失敗を反省しつつというのを書いたわけでございます。この中に書かれておることは、「私は、今、明治神宮外苑で開かれた中央メーデーから全繊本部へ帰り、たつた今、中央メーデーの演壇に立ち、代表演説のさなかに、すでに計画された如く、数十万の労働者監視のうち、にくむべき暴力を以て演壇のヤグラを占拠され、マイクは断ち切られてしまつた、自由と秩序を失つた労働組合の祭典をふみにじられ、共産党に完全に利用され、支配された今年の中央メーデーの失敗をかえりみて、自由にして民主的な労働組合独立後に歩むべき道を組合員諸君とともに真剣に考えてみたいとあえて筆をとることにした。」こういう前文につけまして、若干あと「経済鬪争より政治鬪争へ」「政党労働組合はつきり区別せよ」「民主的労組の確立が急務」「全繊同盟の役割」「問題解決の焦点」の各項に筆をとつた。前文以外のことについては、主として労働組合の内部の問題について言及いたしておりますから、ここでことさらに申し上げる必要はないかと思います。   次に五月の十日に「メーデー騒擾の実態をつく」という談話を発表いたしておりますが、これはすでにお手元に持つておられるようですから、読み上げましようか。それとも省略いたしましようか。
  148. 内藤隆

    内藤委員長 速記にもとめておきたいと思いますから、読んでください。
  149. 瀧田實

    ○瀧田証人 前文を読みますか。
  150. 内藤隆

    内藤委員長 ひとつ全文を読んでください。
  151. 瀧田實

    ○瀧田証人 前文はこれは機関紙の事務当局として載せてあるのですから、必要がないように思いますが……。
  152. 内藤隆

    内藤委員長 あなたは必要なくとも、読んでくださいと言つたら、読んでくれればいいのです。
  153. 瀧田實

    ○瀧田証人 そうきつく言わないでください。おつしやる通り読みますから……。     「戰後初の独立メーデーとして幾十万の勤労大衆の参加をみた第二十三回中央メーデーは、示威行進解散後における一部共産系の暴力主義者のため、遂に未曽有の騒擾事件を引起し、栄えある労働者の祭典に一大汚点を印し、独立回復直後の日本の国際信用を大きく失墜させるに至つた。健全労働組合主義の立場を堅持するわが全繊同盟では、事態を重大視し、二日瀧田会長は特に談話を発表して、傘下全組合員の注意を喚起した。  (一)独立後、初のメーデー、しかも、労働者の嚴粛な祭典たるべきメーデーが、外部勢力に完全に利用され、ふみにじられた。中央演壇付近は計画的に共産党員と朝鮮人によつて占められていた。  (二) 祝辞の人選が民主的な労働組合の域をまつたく逸脱して共産党、労農党とそれらに同調する   人々に重点を置き、労働組合としての本来の姿を失い、政治的、極左的アジに終始したことが共産党の計画的暴力に油を注いだ。  (三) 大衆動員に対する指導と計画に愼重さを欠き、混乱が起きた場合の対策がきわめて不十分だつた。特に警備に関しては実行委員会責任が大きい。  (四) メーデーに直接参加する資格のない全学連デモ隊(数千名)を会場に入れたことが混乱を一層助長した。全学連は、明らかに共産党の細胞組織としての行動をしていた。スターリン、金日成、徳田球一らの像を入れたプラカードが彼らの手に掲げられていたことが全体の動向を如実に表明している。  (五)宮城前広場と神宮外苑の会場とは、メーデーとしては無関係だ。ただ、それを口実に暴力行為の動員へ大衆をかり立てようとしたものとしか考えられない。竹やりやしない、目つぶし、小石、火災びんなど、労働者の祭典にまつたく不必要なものを所持していたことからも明らかである。  (六) かかる暴挙をもつて、あたかも小戰場化したことが、折から破防法の審議が国会でなされつつあるとき、政府をしてますますその必要性に口実を與え、世論もまた組合に不利を招来したことは事実である。  (七) 以上の事態を惹起したことについて、中央メーデーの主役をなした総評日共統一メーデーをしたことに大きな誤りがある。大会はその誤りを拡大して、利用され牛耳られたのである。  右のごとき実情を真実として組合員に知らせることが将来労働組合をして健全に育てるゆえんであると考える。総評実行委員会の主体的役割をしているから、いずれ委員会としての声明を発するであろう、問題の焦点をぼかしては今後の民主的労働組合の発展はあり得ないので、赤裸々に、全組合員に知らせ、今回の不祥事件の反省のかてとしてこの見解を述べるものである。(昭和二十七年五月二日)」以上であります。
  154. 内藤隆

    内藤委員長 大体において、あなたの「メーデー騒擾の実態をつく」という内容はわかりました。そこでこの談話を読んでみますと、メーデーが外部勢力に完全に利用されていたと述べてありますが、その状況について少しく述べてください。
  155. 瀧田實

    ○瀧田証人 状況と申しますと、私は神宮外苑の中央メーデー会場には参加しておりますが、デモ除には参加しておりませんから、中央会場の空気でお話いたします。
  156. 内藤隆

    内藤委員長 それでけつこうです。
  157. 瀧田實

    ○瀧田証人 演壇に私どもが上りまして、祝辞が始まりましたが、島上事務局長の司会によつて、鈴木左派社会党委員長があいさつされ、続いて加藤勘十氏の演説になりましたときに、非常に会場の周囲がざわめきました。これは全祝辞者、全あいさつ者のうちで、最もやじ喧躁が多かつたものと認めます。しかし会場の周囲には、これは従来の中央メーデーには見られなかつた特色として、共産党の内外の指導者のプラカードが非常に多かつたこと、そしてこのプラカードの周囲に集まつておる人たちが、このやじ的な喧操について非常によく連絡がとれた状態で動いておつたこと、これらが会場の空気を——われわれはだれがどういう思想の持主であるかということは、個々についてはわかりませんが、少くとも演壇に立つて、大衆の前にいつも立つ者としての感じからいいますと、これは相当警戒すべき状態であるのではないかという印象を受けたわけであります。  なお演壇が占領される前後の模様については、石川島の組合員が緊急動議を持ちかけたわけでありますが、それを制止する実行委員あるいは警備員との小ぜり合いが始まつておるときに、今まで演壇に立つていろいろアジ的な演説をされたときに、相呼応しておつた人たちが、だんだん演壇の周囲に輪を小さくしておつた状態で、石川島の労組員の相当数の人が合流して、演壇にかけ上る様相があつたわけであります。これらが非常に会場を混乱させたわけです。なおこの演壇が占領されて、演壇には赤旗がひるがえり、むしろ旗がひるがえつた。そしてマイクは切られたので、もうデモに移す以外にはこの大会としては議事進行が進まないのではないかということで、マイクは聞こえても聞こえなくても決議文だけやつてしまおうということで決議がどんどん進んで行つたわけです。そしてデモ行動開始をしようとする前後に、学生のデモが演壇の周囲を練り歩いて行動を開始したわけです。なお祝辞の中で、共産党を代表された代表演説の途中に、アカハタ復刊ということで、大きな声を上げてアカハタを小わきにかかえた人が演壇に一度かけ上つて来ました。これがアカハタをばらまいておられた。それからやはりその前後に、むしろ旗を持つた自由労働組合の人と思われる人が一人、やはり警備の間をくぐつて演壇にかけ上つて、一度引きおろされた事実があつたのであります。こうした一連の、このメーデーの演壇をめぐつて占領されるまでの状態というものは、祝辞、代表演説ともに非常に政治的な問題に言及する言葉が多い。そしてわれわれはかねがね自由なそして民主的な労働組合を願つておるが、そういつた組合が当然発言すべきであるという問題については、あまり触れられていない。何しろ二十万人近い人が集まつておる中で、そういつた政治的な問題、アジ的演説がなされる。そこに一部の人がかけ上つて相呼応して一部の人が立ち上つて行くということになれば、とうてい少数の警備員では警備ができないという状態に置かれてしまつたわけです。  それから学生のデモが動き始めたときに、学生諸君の持つてつたプラカードというものは、たとえば日大の共産党細胞と書いたプラカードを持つた学生たちは、徳田球一氏の似顔を書いて、われわれの偉大なる先輩というような意味の徳田球一氏のあれを掲げておつた状態です。それからまだ——これは意見になるから差控えますが、毛澤東氏あるいは金日成、こういつた人の肖像らしきもの、あるいはスターリンといつたような人の肖像のプラカードを持つて歩く人があつた。それと一緒に「民族独立」と書いて掲げておる人については、われわれはどういう関係があるのか、およそ了解に苦しむような状態で歩いておつた。そしてまたそこには何々大学細胞ということをはつきり書いておる。ですからこれが計画的であるかないかということは、なかなかその人の感じによつてつて来ますけれども、全体私の受けた感じは、やはりある程度計画的連繋がとられて動いているなというふうにしかとれなかつたわけで、そのままその感じを書いたわけです。この文章が非常に短かいものですから、あまり短か過ぎて誤解を招くおそれがあるかもしれないが、その当時そのまま書いたもので、御質問があればまたお答えしたいと思います。
  158. 内藤隆

    内藤委員長 そこでこの中央演壇はともかくも、共産党並びに全学連あるいは朝鮮人等が、その演壇のまわりをぐるぐるまわり歩いて、そして皇居、人民広場ですか、人民広場を奪還せよというビラをまいたという……。
  159. 瀧田實

    ○瀧田証人 それは、委員長質問されたそういうことではありません。そういう演壇を巻いてぐるぐるまわつたということではなくて、演壇の周囲を、周囲といつてもうしろの方を、学生連中がちようど通つてつたというような形であります。だからそう取巻いてまわり歩いた、そういう状態ではないわけです。それから人民広場へ行こうということは、これは各組合からかなりの人たちが動員されて中へ入つています。人民広場へ行こう行こうということを連呼して歩いたことは、私自身も目撃したわけです。
  160. 内藤隆

    内藤委員長 そこであなたの談話の中に、またこういうことが簡單に書いてありますが、大会の祝辞の人選と内容が、労働組合の民主的な域を脱しておる。人選等においても失敗で、そこに考うべきものがあつたというようなこともここに載つておりますが、それは一体どういうふうな意味でありますか。
  161. 瀧田實

    ○瀧田証人 この二項目ですね。私は今の質問に対して、これは実行委員会がプログラムで組まれたもの、こういうふうに了解してお答えするわけですが、実行委員会は何によつて構成されておるかということになりますと、これは総評労鬪中心になる、こういうふうにやつておるわけです。そうして外部団体は、原則的にはこれに参加させないという態度を、初頭実行委員会方針としてきめておつたはずであります。そこで労鬪あるいは総評は、特に労鬪の中の主体的な役割を総評がしておるわけでありますから、総評の性格がやはりこの中に出て来なければならない。総評行動綱領にもはつきり書かれておりますが、民主的な労働組合、民主主義を守ろうという立場に一応思想的には立つておる。そうして組織的には国際的に提携を深める、その国際的な提携は、国際自由労連に前進する意味行動綱領に書いているわけです。従つて総評の性格というものは、民主主義と組織的な国際自由労連との提携という線が出て来る。この総評の持つておる役割とこの行事が当然合つて来なければならない。もつと具体的に言えば、私はこの組合共産党一線を画すということを絶えず主張しておるわけであります。そうしますと、共産党一線を画して、自由な労働組合を求めるということは、やはりその一線が具体的にスローガンの中に出て来るとか、あるいは行事の進行についてその配慮がなされておるとか、あるいは行動を起す際に、その行動の中に区別があるということが現われて来て、私はふだん言つておる一線というものが現われて来るのだというふうに解釈するわけです。しかし現実に、もうすでにここにお集まりの方は御承知のことと思いますが、祝辞の人選については、今申し上げた線とは若干違うことはみずから御判断がつくだろうと思います。特にこの二十七項にわたるメーデースローガンなるものを見ますと、この中には民主的な労働組合として当然掲げなければならないスローガンに欠けておるというふうに考えられる点も、やはり考慮に入れなければならないと思います。そういう意味の批判であります。
  162. 内藤隆

    内藤委員長 このメーデーが混乱に陷つた原因はたくさんあるでありましようが、あなたの談話の中に、特に全学連参加したことがこのメーデーをかような混乱に陷れたということを述べてありますが、この全学連共産党の細胞として行動しておつた、かようにお述べのようですが、それについて少しくお述べ願いたい。
  163. 瀧田實

    ○瀧田証人 それは持つてつたプラカードにちやんと書いてある。何々大学共産党細胞というはつきりした文字を書いたものを持つて多くのですから、それが全部であるかどうかはわかりませんけれども、その点はわかりません。
  164. 内藤隆

    内藤委員長 そこでそのプラカードなりあるいは赤旗なりは、そこに立てかけてありますが、こんなようなものにつけてあつたのですか、現実的に……。
  165. 瀧田實

    ○瀧田証人 それはどんな長さだと今ここで言われてみてもはつきり記憶がありませんが、そう大きな、こういう長いものはなかつたように私は見ておりました。全部見たわけではありませんが、短いもので、小さなものしか持つていなかつたように思います。大体大きさはこれくらいのプラカードしかなかつたようであります。
  166. 内藤隆

    内藤委員長 会場内はそうであつたとお認めなんですな。
  167. 瀧田實

    ○瀧田証人 そうです。
  168. 内藤隆

    内藤委員長 この写真なんか見ると、相当にこれに類似のものをみな持つておるようですがね。
  169. 瀧田實

    ○瀧田証人 全部の学生のあれを見たわけじやありませんから、私は責任のないことは言えません。
  170. 内藤隆

    内藤委員長 午前中の証人はさような大きなものは持つていなかつたという証言をしておるのでありますが、あなたはそうすると、部分的に持つてつたものを見たけれども、全部のものを見たわけではないから……。
  171. 瀧田實

    ○瀧田証人 その点ちよつと委員長のは違いますから、訂正いたしておきます。部分的に大きなものを持つてつたとは私は言つていない。一部の人がプラカードを持つてつたけれども、こういう大きなものは持つていませんでした。こういうのです。
  172. 内藤隆

    内藤委員長 そこでそのあなたの談話を中心にお尋ねしておるのですが、大会のデモ行進あるいは解散前後の総評自体の警備が不十分であつた。これが混乱した原因の一つの大きなものであるということを、警備のいわゆる不十分ということをあげて指摘しておいでになるが、その警備がどうして不十分であつたか、どの程度であつたか、ひとつその警備の状況を述べてください。
  173. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは私はやはり結果的に論じておりますから、とられたことが不十分であつたという結論になつておるわけです。ただこのメーデーに対してどのような情勢の判断をしておるかということが、やはり実行委員会としては考えておくべきことであつた、そういう意味で書いておるのです。少くとも実行委員会が、独立後のあらゆる労働者を集めての祭典という意味で、労働組合員でない人たちもやはりこの祭典に参加することを拒否しなかつた状態においては、いろいろな混乱が起つても、それに対処するだけの警備の考慮が必要であつたのではないかと思うのですが、そういう点が結果的に破られたことは、やはりその情勢判断と警備の人数というか、あるいはその配置の問題が不適当ではなかつたかというふうに考えます。
  174. 内藤隆

    内藤委員長 それからこの皇居広場を使用させなかつたということが、この騒擾事件の大きな原因のごとくいわれてもおりまするが、あなたの談話を見ますると、皇居広場と神宮外苑の会場とは、メーデーとしてはまつたく無関係だということをお述べになつておりまするが、総評では午前中の証人島上君も、もし皇居前においてメーデーを許しておるならば、かような恐るべき程度の騒擾には至らなかつたであろう、という証言をしておるようで、総評でもこれは相手重大な関係があると思いますが、この点についてあなたのひとつ御説明を願いたい。
  175. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは非常に短い文章で書いてありますから、解釈のしようによつてはいろいろ違うと思います。私はここでせつかく質問でありますから、お答えいたしますが、背景としては、今度のメーデーがかなり意気が上り、その意気がいろいろな意味におきまして間違いもしでかしたということは、やはり独立が宣言発効した直後であつたという一つの解放感というようなものが手伝つてつたし、それからどだいもう政府が労働者の言うことをちつとも取入れない政治を現在やつておるということについての憤激が、このときに出て来ておる。こういつた背景にさらに花を添えたものが、裁判所で認めたあの宮城前を貸すということが、貸さないといつたような、労働者に明らかに彈圧だと目されるような態度を示したことが一つの背景になつておる。しかしこれは一応われわれはあくまで主張しなければならぬ背景でありますけれどもメーデーの騒擾そのものは、この背景があつたからああいうものを起してもいい、というふうには考えない。この点は切離して考える。こういう意味の無関係だという意、味を言つておるわけです。
  176. 内藤隆

    内藤委員長 御質問はありませんか。——山口君。
  177. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ただいま委員長からの質問に、証人は、メーデーが外部勢力に完全に利用されていたというが、その状況いかんと問われましたとき、それに対してお答えになつたようですが、あなたの先ほど答えた証言というものは、組織的計画的に調査をしてこのような結論を出されたのでなくて、印象でこのように言つたのだ、このように言われましたが、その通りでしようか。
  178. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは先ほど私がるる申し上げました通り、一日、二日に発表しております。従つて今御質問になりました通り、何かの証拠があるとか、あるいはこれは明らかに共産党員であるという何の証拠も私はないわけであります。私は、申し上げたように、全体の動きでそういう印象を與えられた、そのままを伝えた、こういうことであります。そういうふうに御了解願います。
  179. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この印象ということでありまするが、私は先ほど証人の読み上げられました談話を聞きまして、私の印象でありますが、これは政府の声明あるいは政府の談話よりも右を行くものである、労働組合がこのような談話を発表したということはきわめて珍しい事態である、このような印象を受けたのであります。  それで次にお尋ねいたしたいのでありますが、この文章を読みますと、「独立回復直後の日本」ということが書いてある。あるいは「独立後、初のメーデー」という言葉が書いてある。自由党の諸君はこれを認められる、(「その通り」)それは自由党の諸君立場でけつこうなんでありまするが、しかしながら日本東京における全労働者の集合したメーデー会場におきましては、メーデー参加者の全員の意思だと私は思うのでありまするが、メーデーの宣言を行つておる。この中には、わが国は屈辱と隷属への道を転落しつつある、このように書いてある。従つて独立を戰いとらなければならないということを明白に表明しておる。こうなると、あなたの考えていられる独立回復という理解と、メーデーの大会に参加したところの参加者の大多数の意思、ほとんど全体の意思というものには食い違いがありはしないだろうか、これはいかがなものでしようか。
  180. 瀧田實

    ○瀧田証人 ただいまの御質問ですが、私は全繊同盟の責任者として、自分組合員に、自分組合の主義主張に基いて意見を発表しておるのでありまするから、私の組合は、現在やはり国会で批准を承認した、しかも諸外国がこの独立を認めて、條約がやはりわれわれの尊重する議会政治を中心にしてすでに効力が発生する限りにおいては、一応独立は回復したもの、こういう解釈を全繊同盟自体がとつておるわけであります。しかしこの独立が非常に不完全なものであるという点については、われわれも十分鬪つて行かなければならないと考えておりますが、独立でないというふうにはこの問題を了解しておりません。そういう意味自分はこの問題を取扱つております。
  181. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの見解は自由党の見解とは一致すると思う。ただメーデー参加した大衆の意思あるいはこのメーデーの宣言とは一致していない、この点は確認なさるでしよう。
  182. 瀧田實

    ○瀧田証人 これはメーデーの確認されたことと違つておれば、私違つてつてもやむを得ないと思つております。またメーデーに決議されたと言いますが、すでにマイクは全然聞えないし、乱闘騒ぎの中で読み上げたので、だれが決議したのか、あそこへ集まつた大衆は知りません。これも事実であります。
  183. 山口武秀

    ○山口(武)委員 メーデーの宣言を読み上げたが大衆は知らないだろう、こういうことを言つておりますが、おそらくメーデーの宣言というものは、メーデー会場でそそくさとつつたものではなくして、あらかじめ実行委員会で用意され討議され、その上に決定されたものであるということは当然推量できるわけであります。従いましてあなたの答弁では私には了解が行かない。どなたにも了解が行かないだろう。それでその点がきわめて明瞭になつたのでやめます。  さらにお尋ねいたしたいのは、この宮城前広場と神宮外苑の会場とはメーデーとしては無関係だ、このように言われております。またそのごとく書かれておるのであります。しかもあなたは先ほど多少これに対して説明をつけ加えてはあつたようですが、しかしながら全繊の新聞に掲載され発表されたのは、無関係であるということである。これだけの字体に書かれておる。これはおそらくどなたが聞きましても、これほど大胆な発表の仕方というものは、これまで政府当局すらもやつていないじやないか、このようにすら考えられるのであります。メーデーと宮城前広場と神宮外苑は無関係だとは申されますが、しかしながらメーデーの大会におきまして、この会場問題が問題にならなかつたでしようか、人民広場の問題が問題にならなかつたのでしようか。
  184. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは無関係だという意味は、実行委員会であらかじめ計画を練つております。その計画については確認事項がつけられておりまして、それをここで読み上げたいと思います。実行委員会は確認事項を三項にわたつて決定しておりますが、これは四月二十八日に決定したというふうに文書をもつて実行委員会から私は受けております。「確認事項。1、メーデー式典は実行委員会決定のプログラム通り行い、変更追加は行わない。2、メーデー行事デモ終了までとし、この間は実行委員会方針通り行動し、指揮者、警備員、連絡員の指示に従うこと。3、(1)項の行事進行を著しく妨げ若しくは(2)項にそむいて逸脱行為のあつた団体に対しては実行委員会責任をもつて対処する。」この三つの確認事項がきまつておりますので、これに基いて東西南北、中部と五つにわかれた行動プログラムというものが確認事項通りとすれば、宮城前へ行くプログラムは組まれておりません。この確認事項通りに行けば、日比谷のところで集団になりまして、そこで解散したとメーデー実行委員会が確認しておる以上、実行委員会はその後の起きた問題については責任を負わないという態度をとるのがあたりまえではなかろうか、私はそういうふうに了解しております。
  185. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの見解がきわめて明瞭に表明されますので、たいへんけつこうだと思う。しかしながらそれが労働組合の代表の意見であるというふうになりますと、これは少々労働組合立場から見ますと問題があるのではないか、このように考えられます。それで今あなたはそのようなとりきめの確認事項ということを申されましたが、なおそれよりも重大な事柄であるところの人民広場の使用の問題について、メーデーでは何らかの決議がなかつたでしようか。
  186. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは代表あいさつ等に述べております通り、まことに不満であります。政府がそのような態度を再び繰返してはならない、これは全労働者の声である。私もそのように信ずるのであります。従つて大きな背景としては、政府が労働者をどう考えておるかということについての不満は十分にあります。私自体も持つております。今御質問になつたような形で、自由党にどうだとかいうことは私は毛頭考えておりません。われわれはあくまで鬪わなければならない。しかしこれがいれられなければ暴力に訴えなければならない、このようには考えておりません。これだけの相違であります。
  187. 山口武秀

    ○山口(武)委員 メーデーの際に、人民広場獲得のために闘い続ける、こんなような決議があつたことは御存じないのですか。
  188. 瀧田實

    ○瀧田証人 あとで承知いたしました。また事前にもそういう意見が強力に出てあつたことを承知いたしております。われわれはやはり裁判所に控訴して認められるようになるまで闘争しなければならぬような政府の立場というものはないだろうと思つております。そういう意味においては、私はあくまで政府としての責任を追究し、闘わなければならぬと思つております。
  189. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは政府の責任ということを今日に出しましたが、この談話には政府の責任ということは書いてないじやないですか。
  190. 瀧田實

    ○瀧田証人 ただいままでお答えしたことで盡きておるように思いますので、同じことはお答えいたしません。
  191. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は同じことを聞いておりません。初めて聞いたことです。それとも証人証言を拒否なさるというのですか。
  192. 瀧田實

    ○瀧田証人 この点は今御質問なさつた通り、私先ほどから大きな背景があつたということをもう十分言つておるのです。     〔発言する者あり〕
  193. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  194. 瀧田實

    ○瀧田証人 政府の責任という問題については、ありとあらゆる問題、労働者の声からすれば、ここでいくら言つても言い切れないほどたくさんあると思います。しかしこれはメーデーそのものだけを論じておりますので、言及しないでいただけであります。
  195. 山口武秀

    ○山口(武)委員 メーデーそのものだけを論じてもその問題が出て来る政府の責任というものはなぜ書かれないかということです。
  196. 瀧田實

    ○瀧田証人 これはメーデーの騒擾というものが、やはりプログラム以外で起つた問題で、そのプログラム以外で起つた問題がどうして起つたのかということのみに、重点を置いておりますので、今御質問がありましたような形において、労働者対政府という問題については、この問題に限つては言及いたしておらないのであります。しかしここに発表しておらないから、政府に責任がないとか、あるいは政府が労働者に対して非常に民主的な方法で政治をやつておるとか、議会はまたそうであるとかということは、われわれは毛頭拘泥いたしておりません。このことは別問題として、われわれはあくまで闘うということでございます。
  197. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この談話を見ますと、警視総監の談話としてなら了解できる。なおその問題はわかつているからということを言つておりますが、総評あるいはメーデー実行委員会における声明というものを見ましても、政府の責任というものをきわめて強くついている。あなたの談話だけがないのです。これはどういうわけかというのです。政府の責任というものを感じなかつたかというのです。
  198. 瀧田實

    ○瀧田証人 この問題は、御質問者が私にお聞きしたいという点は私も非常にわかるわけです。この点は私ども十分考えております。日常やつておることを御判断になればよくわかると思うのですが、私どもは今日本労働組合にとつて危機であるという面は、大きい意味においては反動勢力が非常に労働組合を強く圧迫しておる、これは一番大きな問題である。しかしそれと同時にわれわれが悩み扱い七おる問題は、民主的な労働組合、自由を愛好する労働組合をどう育てるかという問題であります。われわれはこの後者の問題について言及しておる。従つて前者に申し上げたもつと大きな反動性については、別の機会でわれわれは鬪いたい、また別の機会で十分触れておりますから、他の資料もごらんになつていただきたいと思います。
  199. 山口武秀

    ○山口(武)委員 反動派との鬪争の問題はあとまわしにするというような答弁でありましたが、あとまわしあとまわしで、これを忘れてしまわなければけつこうだろうと思います。  なおさらにお尋ねしたいのは、皇居広場を政府が使わせなかつた、これに対して人民広場獲得のために闘い続けるというようなメーデー大会における決議もあるわけでありますが、このことに対してあなたはどのように考えているのか、皇居広場の獲得のために闘い続けるような考えでおられるのかどうか、それとも政府の言うことに対しては一も二もなくこれを承諾しようというのか。
  200. 瀧田實

    ○瀧田証人 その点についてはあくまでも私どもは鬪つて行かなければならないと確信をいたしております。そう、してあとまわしあとまわしと仰せられましたが、この談話の載つている新聞のトップの記事は、政府反動立法に大童、これにわれわれは闘うということを五段抜きにして書いておりますが、われわれは一貫して蘭つております。
  201. 山口武秀

    ○山口(武)委員 人民広場獲得のために今後も闘おうとしておられるのかどうか、このことを聞いておる。
  202. 瀧田實

    ○瀧田証人 その点はあくまで鬪います。
  203. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そういたしますと、昨年並びに本年のメーデーの大会におきまして、人民広場を使わせなかつたところの力は何だと思いますか。
  204. 瀧田實

    ○瀧田証人 私の考えを述べろということでありますが、私はやはり一つは占領政策がわれわれを縛つてつたでしようし、それにまた便乗する政府があつた、この点は考えております。
  205. 山口武秀

    ○山口(武)委員 占領制度といいますと、これはアメリカ軍並びにそれに結ぶ吉田政府ということになるのでありますが、このアメリカ軍と吉田政府というものは、いかなる力をもつてこの人民広場の使用を禁止して来たのでしようか。
  206. 瀧田實

    ○瀧田証人 いかなる力と言われますと、私ちよつと了解しないのですが、もう少し質問してください。
  207. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私はこう言つているわけです。人民広場を使わせないというような法律の上の根拠は何もないということです。使わせないという事情は何も存在していなかつた。そこでこれを使わせなかつたという力は、政府の不法な権力にあつたんだ、これを使わせなかつた力というものは、政府の警察力と日本を占領しているアメリカの武力、これが不当に使用させなかつたんだ、こう思つているわけですが、あなたの考えを聞いたわけです。
  208. 瀧田實

    ○瀧田証人 その点については、われわれはやはり政府が法律的な根拠が十分なくてやつた場合には、われわれはやはりその政府の責任をどこまでも追究しなければならない。場合によつては今度の立法化の場合のようにゼネストまで計画して鬪わなければならぬときが参ります。そういう場合もありますが、やはりわれわれはここで法治国家の国民として、議会政治を一応尊重する立場に立つておりますから、その行う行為そのもの、行動そのものもおのずから限界点があります、限界点を越した暴力的な労働組合の反抗というものはできるだけ差控えたい、こういうことでございます。
  209. 山口武秀

    ○山口(武)委員 法治国家、議会政治、従つて暴力的な行為に訴えたくない、このようなことを言われたのでありますが、現に……。     〔発言する者あり〕
  210. 内藤隆

    内藤委員長 御静粛に願います。
  211. 山口武秀

    ○山口(武)委員 アメリカという国、それから日本の吉田政府というものが不法に権力を暴力にかえて来る場合にも、これに対しては議会政治だ、法治国家だといつて、泣寝入りをして従わなければならないというのですか。
  212. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと山口君に御注意申し上げますが、なるべく皇居前の騒擾事件に関することを聞いて……。
  213. 山口武秀

    ○山口(武)委員 関することを聞いておる。
  214. 内藤隆

    内藤委員長 関すると言えば、いろいろあるでしようけれども、それは事前の問題でありますから、あまりこれには関係がないと私は認めております。  それから委員諸君にお願いしておきますが、証人は三時間以上も待たされて、なおなかなか多忙な会合等もあるそうでありますから、なるべく簡潔に重複を避けて質問を続けられてください。
  215. 山口武秀

    ○山口(武)委員 まどお答えがないようですが、現に人民広場の使用を禁止したものは、アメリカ軍の武力であり、これに便乗する吉田政府の不当な暴力行為です。権力というものが不当な暴力行為として現われて来たのです。従つてこれに対して国民大衆が、あるいはメーデー参加した労働者の大衆が、実力でこれに行動する、こういうようなことが起るのは当然である。こういうようなことを考えられるときに、証人はどう考えておられるのか、これを聞いたのです。     〔発言する者あり〕
  216. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。証人が答弁しておりますから……。
  217. 瀧田實

    ○瀧田証人 私きよう証人として喚問されておるのは——私むしろ委員長に伺つておきたいのですが、メーデーの問題について私に質問されておるものと思います。ですからほかの問題について考えを述べろというような質問ではなくて、メーデーの直接の問題に限定していただきたい。  そこでメーデーの問題についてアメリカの権力、連合軍としての権力、あるいは政府の権力というものが、どんな形でも、お前たちはただ鬪う鬪うで何もしないのか、こういう御質問だと思いますが、私ははつきり鬪うと言明しておるわけです。そうしてまたメーデー実行委員会、また私ども全繊同盟の責任としては、広場を貸さなかつたから、これに対して実力行使をもつてやるということは、実行委員会自体もきめておりませんし、特にさような決定をしておりませんからやらないだけであります。
  218. 大泉寛三

    大泉委員 証人意見を聞いて大体了解されますが、先ほどの島上証人証言とはよほど違つてつた。だれでも想像した実体と大体合致しておるようであります。また証人はきわめてまじめで信頼感を持てる。こういう立場から私は、繰返すようでありますけれども、もう一ぺん伺つておきたいと思います。  今度の事件は、国際的にも非常に大きな問題として取上げられておる。私どもは、メーデーを主催されるところの労働運動諸君一つ行動一つの結果として見ておる。あなたはたいへんどうもメーデーの不始末に対して違つた批判をされておるようでありますが、これは内部的にはそうあるべきだと私は思うのです。しかし私どもは、外部から見た場合には、やはりメーデーを主催するところの各団体一つ行動として、一つの結果としてこれを取扱う。中に反対があろうと、あるいは意見違つたものがあろうと、結果においては、結局その総体的な批判を受ける。従つて、今度の事件で、国際的にきわめて日本の産業あるいは政治上に不利益をこうむつておる。また日本労働運動に対してもきびしい批判を受けておるということになつておりますが、内部から見られたところのあなたの意見は、やはり外部から見たところのわれわれの意見とどういうふうに違うか、これを一応聞いてみたい。あなたは労働運動の中にあつて、相当批判的な意見をもつておられるようでありますが、この運動に対する結果についてどういう意見を持たれるか。いわゆる一つに見るか、あるいは二つの労働団体かあつた、いわゆる目的が反したところの団体があつた、こういうふうに見られるか。
  219. 瀧田實

    ○瀧田証人 ちよつと焦点が、私にも答えにくいように今質問を受取つたのですが、労働組合の中に、何か勢力がはつきり対立する二つのものがあるのかというような御質問のように受取つたのですが、労働組合はたくさんあります、何百もあるのですから、いろいろな主義主張があるのは当然だと思います。ですから、これは幾つあるかと言われても、私はお答えできない状態であります。ただ……(発言する者あり)私が発言することが不適当ならば、委員長においてお知らせいただきたいと思います。先ほどから御質問に出ておる通り、これはメーデーという限られた現象を対象にして現われておりますが、一体政治をやる立場に立つて労働組合をどう扱うか、労働者を一体どう扱うかということであります。議会政治を尊重するということは、私はこの国会の委員室で主張しておりますが、その裏づけとなるべきものは、  輿論を政治に反映するということでなくちやならない。特に平和というものは、労働者の生活の安定のないところには平和はあり得ない。この大前提を政治の中に入れないで、そして反動的な立法をたくさんならべて来る。皇居前も貸さないというようなことに対して労働者は非常に不満を持つておる。その不満がいろいろな形に利用されやすい。このことを政治をやる者がけじめをつけて政治をやらないからこんなことになるのである。私は、意見がましいことになりますが、せつかくのこの機会ですから特に申し上げておく。今度の国会にいたしましても、われわれからいたしますると、実になつておらぬ点が非常に多いわけです。ここでどうして、民主的な労働組合を育てようとしないのか。自由な労働組合を育てないで、労働者の生活をなぞもつと保障することに努力しないのか、このことを私は申し上げたいと思います。
  220. 大泉寛三

    大泉委員 あなたの、メーデー目的は暴力の行動ではなかつたということはよくわかる。いわゆる暴力団体参加したことによつてあのメーデーがああいう大きな事件を起したのである。そこでメーデー目的と相反する  一つの暴力行為の団体参加しておつたということは、外部からもよく見られる通りだが、しかし内部から、あなたはどういうような批判をもつてこれを迎えておられたか。相当あなたは批判的な立場において新聞やその他証言においてなされておるから、それをはつきり聞いているのです。
  221. 瀧田實

    ○瀧田証人 先ほど二つの点で申し上げました。一つは、政治の反動化しているということ、一つは、労働組合が非常に民主的な線を離れて行く危険がある。この点をわれわれはどう正常な民主的な組合に発展させるかという問題について悩んでおります。それが現在労働組合がかなり危機に瀕しているという印象であります。
  222. 大泉寛三

    大泉委員 いわゆる労働運動目的と相反した団体が加つてああいう結果を及ぼした。しかしそれが力及ばすして、とにかくそれは政府の施策の悪かつた点もひつくるめて、そうしてこれに対する批判的な態度にあなたは出ておられる。あなたの証言あるいはこういう意見の発表から見ると、いわゆる運動というものはあまり正常状態ではなかつたということを言つておられる。しからばそれに参加しておられるあなたの労働組合団体というものは、私はどうも二つ意見を持つていられる一つ団体のように見られる、こういうことについて、あなたはそれではこういう団体労働運動に対して、脱退をしても自分の意思通り行動をなぜしなかつたかということになるのであります。そういう点についてあなたの自己反省的な意見を聞きたい。
  223. 瀧田實

    ○瀧田証人 お答えいたします。昨年までやはりあらゆる勢力が、みんなそろえて統一メーデーをやるということで、経過が終戰後ずつと来ておるわけであります。私どもはやはり統一でやるべきでないという主張に立つておりました。やらなかつたことがいけなかつたというふうにここに明確に書いておるわけですから、別にしなかつたことがいけなかつた。その情勢分析がいろいろ異つてつたのですが、総評実行委員会の主体的な役割をしておりながら、その情勢の判断が不十分であつた点、そこに私は統一メーデーをしたところの失敗があるではないか、こういうふうに言つているわけです。だからまじめな労働者は、こういつた労働者の祭典に政治的な目的で特に利用されて、自分らの声が反映しないことについては、これに今批判的になつております。ただ組織を割るとかどうとかいう問題については、これはやはり機関で決定しなければならぬ問題でありますから、私は今ここで申し上げるわけに参りません。
  224. 大泉寛三

    大泉委員 もう神宮広場においてすでに演壇を占拠され、そうしてそうした暴力行為が前提に見え出しておる。それが今度はデモ行進になつて、もう日比谷に来られたそのあとは、推して知られるように、必ずやそこに暴動ということが想像されておつたろうと私は思う。すでにもう神宮広場においても暴動のきざしがあつたのだから、これが散会したならば必ずこういう結果になるとあなたは想像しなかつたかどうか。
  225. 瀧田實

    ○瀧田証人 想像したかといわれると、そういうことは予想しかねないということであります。起るかもしれないと思つておりました。先ほどから申し上げておるように、非常に危險を感じましたから、自分の傘下組合員三千人余りの者に対しては、危険になつたらすぐ退避するようにという申渡しがしてございます。そのこと自体がすでに、あとに起りかねないという状況を察知しておつたからであります。
  226. 大泉寛三

    大泉委員 それから島上証人と違うところは、島上証人は、自動車を燒いた行動に対して、どうも皇居広場において警察官が不法な行為をとつたから、感情的にそうした行動に移つたと一部の人が言われておるというようなことを証言されておられますが、あなたはどういうふうにお考えになつておりますか。いわゆる警察官の弾圧的な行動を見て、反動的に外国人の自動車を燒いた、こういうようなことを——これは自分証言しているのではなく、他にそういう人があるということを、島上証人が言つておられるのでありますが、あなたはどういうふうにお考えになりますか、繰返してお聞きいたします。
  227. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは、私は神宮外苑だけしか行つておりませんし、デモ参加しておりません。実況を見ない者がよけいな推測をして言及することはよろしくないと思いますから、証言拒否という意味でなくて、申し上げかねます。
  228. 椎熊三郎

    椎熊委員 ごく簡単なことを二、三、しかしながら重要な点を承つておきたい。あなたのメーデー直後における新聞に発表した御意見を、私は持つておるのです。これを仔細に検討してみると、今度のメーデーの騒擾事件というものは、日本の正純なる労働組合員ではない、そういうことを断定しているように私には見られる。そこで具体的にあなたの引用している言葉を言いますると、これは第一から第七まで項目にわかれて、あなたが秩序整然と論拠を立てておる。その第一の中に、「中央演壇付近は計画的に共産党員と朝鮮人によつて占められていた。」それから第四の項目には、「メーデーに直接参加する資格のない全学連デモ隊(数千名)を会場に入れた。」しかも「全学連は、明らかに共産党の細胞組織としての行動をしていた。」その証拠として、あなたは、「スターリン、金日成、徳田球一らの像を入れたプラカードが彼等の手に掲げられていたことが全体の動向を如実に表明している。」これらの点と、その他にもありますが、重要な点は、この出発点、中央演壇付近を計画的に占拠していた共産党員と朝鮮人、それからメーデーの騒擾の第一線に直接に参加した者は、メーデー参加することの資格のない全学連デモ隊、しかもこれらは共産党の細胞組織行動をとつておるという証拠をあなたはあげておる。従つてこの騒擾事件をかもしたる者たちは、あなたの識見からすれば、日本の正純なる労働組合員ではないのだ。もつと率直に私が言うならば、いわゆる職業革命家のごとき、共産党の宣伝隊のごとき、共産主義の狂信者のごとき、労働組合員にあらざる者の革命予行演習のごとき行動をとつたと断じてもいいのかどうか。その形容はあるいはあなたの見解と違りかもしれぬ。要点は、この騒擾事を起した中核隊は、日本労働組合員でないのだというふうに、この文章を解釈してよろしいかどうか。
  229. 瀧田實

    ○瀧田証人 先ほどすでにこの問題についてはお答えしました。一人々々について、どういう証明書を持つているものでもないし、どういう記章をつけておるわけでもないからわかりません。しかしこの会議全体を通じて受ける感じは、こう考えざるを得なかつた。その前後にこれを書いております。これで御了承願いたい、ごう言つておるわけであります。それからあとのことは、あまりたくさんいろいろ文句を言われたのでわかりませんが、今これについてはどれに該当するかは申し上げられませんが、私は正しい労働組合運動の姿としては考えられません。
  230. 椎熊三郎

    椎熊委員 もとよりこれが労働組合員であつてもなくても、この行動日本組合法が擁護すべき組合行動じやないことは、自明の理だ、明白な事実だと私は思う。私の聞きたいというのは、今度やつた連中というものは、組合員を装うところの擬装隊であつてメーデーを利用して、他の目的のためにあの騒擾をかもしたのである。従つて世間のいうところの、警察官労働組合に暴力をもつて対抗したということは、当らないのではないか。それは労働組合に対抗したのではなくして、労働組合を装つてメーデーに闖人したところの、擬装労働者団体員のごとき革命主義者にやつた行動ではないのかと聞いておるのです。あなたはそう考えないのかと聞いておるのです。あなたの文章にもあるからです。
  231. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは、擬装的な革命とかなんとかいうことになると、ここでそういつた言葉を肯定するというわけには行かぬと思います。しかしながら、ここに書かれてあることは、少くとも計画的に動いておつたと解される、こういうふうに言つております。これはメーデーそのものも計画なんです。しかしここで演壇を奪取してあそこらを混乱に陷れようという計画だつた。しかしそれらの計画がただちに、今言われるような革命だというふうに断じていいかどうかということは、今は申し上げられない。そこまでは考えていません。
  232. 椎熊三郎

    椎熊委員 もう一度言葉をかえて聞きますが、第一項に書いておる、中央演壇付近を計画的に占拠しておつた共産党員並びに朝鮮人というものは、あなたが見て、日本労働組合員ではないと断ずることができないのですか、そこまでは言えないというのですか。
  233. 瀧田實

    ○瀧田証人 そこは法律的にどういうふうになるか、私はよくわかりませんが、これは朝鮮の人であつても、労働組合員であればそれでいい。労働者であれば、労働者の祭典に参加して一向さしつかえないと思う。
  234. 椎熊三郎

    椎熊委員 いや、このたびのあれが、ほんとうに日本労働組合員ではないのだということを断言できないかというのです。
  235. 瀧田實

    ○瀧田証人 みな日本労働者でしようけれども……。
  236. 椎熊三郎

    椎熊委員 その次に書いているところの学連の問題では、メーデー参加の資格のないとまで書いているのですから、これはまつた労働組合員でないということは明らかなんです。そうしてその次には、これらは共産党の細胞組織だと断ずるがごとき、あなたは証拠をあげて言つておるのです。従つてこれはあなたが考える正純な日本労働組合員ではないのだ。今度のあの騒擾というものは、あなたの考えでは、労働組合ではなくして、他に政治的目的を有するところの、たとえば政府を転覆するとか、政権を奪取するとか、いろいろありましようけれども労働組合それ自身が本来持つておる目的とは逸脱した、別な感覚をもつてメーデーを利用したるやからのやつた仕事だということになるのですか、ということを言つておるのです。
  237. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは四項で明確になつておりますが、特に、はつきりプラカードに何々大学細胞と書いてあつた  のでありますから、これは明らかなんです。学生服を着ておりますし。もつともアルバイトという意味で、労働者かどうか問題がありますけれども、いわゆるわれわれが考えている、労働組合法にいう労働者でないことは明らかだと、私は思うのです。
  238. 田渕光一

    ○田渕委員 私は、お疲れのようですから、簡單にいたします。あなたは四月十九日に、近ずく第二十三回メーデーについて、こういう警告を発しておるのです。いわゆる平和鬪争の名のもとに共産党及び同調者が、来るメーデーを武装蜂起のメーデーとして、国内騒乱を企図せんとすることに断固反対し、極左極右の反動勢力と対決して、このメーデーを鬪い抜くべく万全の準備を進めるよう要望しておる。これはもう四月中旬にあなたがこれをお気づきになつてつた、こう伺つておるのです。それからさらに四月の二十六日、それから十日間たつて——これは旬刊新聞ですか。
  239. 瀧田實

    ○瀧田証人 週刊であります。
  240. 田渕光一

    ○田渕委員 四月二十六日、平和條約発効の二日前であります。その二十六日のあなたの方の社説の「主張」という欄で、「自由と独立メーデー」の第五項の末尾にこういうことを書いておられる。「平和と自由と独立を破壊ける国際共産党活動に対しては十分に警戒し、はつきりした態度で鬪わねばならない。今年のメーデー武装峰起の機会にしようなどとたくらむ共産党の策動は「健全なる労働組合」の堂々たる歩調によつて一蹴せよ。」こうさらに語調を強くされて来ておる。かようなぐあいに、あなたが全繊維の、いわゆる單産の責任者として、すでに四月の中旬ころからこういうことに気がついておつた。私たちもそう思うのであります。     〔委員長退席高木(松)委員長代理着席〕 ことしのメーデーこそは平和條約が発効したからあぶない。何事か起るだろう。それは北海道の白鳥事件以来ずつと全国に起つておるところの対警工作、あるいはその他に対するところの襲撃、もう一歩進めるならば、昨年の十月の五全協から来た共産党の軍事革命、いわゆるパルチザン戰法による人民軍を編成して、これによる暴力革命によつて政権を奪取しよう、この一連のものに中核自衛隊を考えてずつと来ておると私たちも思うと同時に、あなた方も、健全なる労働組合を指導する者はこういうものに巻き込まれてはならないということをつくずくお気づきになつておるから、こういう四日二十六日の社説が出たものと思うのであります。こういうぐあいにあなたが感じられて来て、その結果が、あなたは出られないけれども、富田君をこの実行委員自分の代理として出した。出した富田君はいわゆる左派勢力というか、尖鋭分子に引きずられてこういうようなぐあいになつてしまつたメーデー責任をどうこう言うのではありません。少くともあなたが單産の責任者として、全繊維組合責任者として、こういうような警戒をして来ている、そのあなたの意思を代理されたところの冨田君が、実行委員長といいましようか、このメーデーの議長に対してこれらの注意があつたかなかつたかは私はわかりませんけれども、結果は大きな不祥事を出して、七百二十何人という警視庁の警官の負傷者を出した。これは国内的な問題とはいえ、まことに遺憾なことである。これほどの遺憾なことはありませんが、さらに大きなことは、アメリカの駐留軍の自動車を十三台も焼き、三十幾台かのガラスをたたきこわし、アメリカの水兵をほりにたたき込んだ。こうして国際的の信用をも落すようなことをしたこの責任は、やはり左派系の強い総評というものに対するあなた方の関心と言おうか、発言と言おうか、もう少しくしつかりとこれに対処すれば、こういう不祥事は起きなかつたという結論になつて来るのでありますが、これに対して実行委員の代理を送つたあなたの責任についてはどういうふうに考えておられますか、これを伺いたい。
  241. 瀧田實

    ○瀧田証人 それは私も労働者の一人として十分道義的な責任を感じております。また総評責任を回避しないで、やはり主体的な主催者としての道義的な責任を感ずべきだ。私はすなおに悪い点は悪いと反省すべきだと思つております。
  242. 田渕光一

    ○田渕委員 瀧田さんがすなおに責任を感じられましたので、責任はこれ以上は申し上げません。  しかし今度は私はさらに将来を考えなければならぬ。日本のみならず、世界の将来を背負つて行くところの第二、第三の国民というのは、現在の大学の学生であります。もちろん私も宗教を信じ、一つの何を持つておりますから、人格というものは胎教のうちにすでに人格をつけて行かなければならぬ、腹の中にあるうちに人格というものがあると見ておりますから、学生の人格を私は無視するのではありませんが、少くとも大学を出るまで——相当の苦労しながら苦学して出る者もありましようが、往々にして親の送金を受けて、一箇月一万円近い送金を受けながら大学へ行つている、いわば親父のすねかじりどもであります。このすねかじりどもが、学生の本分を逸脱して、労働組合メーデーなどに参加して、不法に警官と鬪つている。そしてその飛ばつちりを受けている者もある。私もせがれを二人大学にやつておりますが、いつもすねかじりと言うのですが、こういうようなものが、全学連の名のもとに、しかも北鮮の者等が入つて来たということを許したところに大きな責任があると私は思う。私はもう臭いものは臭いとはつきり申し上げてよろしいと思う。とにかく学生の分際で行き過ぎたということについては、あなたはどう考えているかということが一つと、それから総評実行委員長が日本社会党、つまり左派だ。これははつきりしております。左派を標榜してやつている。日本共産党もその通り、こういう連中になつて来ると、臭いものを知らないのであります。これは私は率直に申し上げる。この委員会でこういう言葉はまことに失礼な言葉かもしれませんが、社会党の左派や共産党にはこのくらいの言葉の表現を使わないとわからない。ちようど━━━━━━━━みたいなもので、臭いことを知らぬ。(「━━とは何だ」、「懲罰だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)これはそれでたくさんだ。それでよろしい。共産党は━━━━━━━━でたくさんだ。臭いものを知らぬ。臭いものを知らぬから、━━━にひとしいというのだ。少くとも左派の島上君は非常にこういう危險性というものに鈍感であると私は言う。もう一つ言葉を上品に言うならば、たで食う虫も好き好きといつて、たでのような辛いものでも、その葉についておると、甘い葉を知らずに、辛い葉を辛いと知らずに食つておる。これがたて食う虫も好き好きだというのだ。左派の島上君は要するに危險性に鈍感だということになる。それであるから、あなたがこれだけ警告して来ておるのに、何ら警戒準備をしなかつたという点がある。この二点についてあなたはどう考えなさるか。  この際言つておきたいことは、私は議員としてこういうような言葉を使いたくはありませんけれども、簡便にしようと思うから、こう言うのです。彼らに向つてはこのくらいの言葉を使わなければ彼らはわからぬ。わからぬから私は言う。
  243. 瀧田實

    ○瀧田証人 わからぬといつて、私はわかつておるのです。まず学生運動については、私はここで言及すべき問題でないではないかと思う。ただ学生運動は学生運動としての限界があるのではなかろうかと考えております。  それから先ほど私どもの機関紙のことを取上げてずつと例証されたのですが、私は責任者だから答えているのであります。私の署名があるなしにかかわらず、これは一応編集会議、あるいは論説委員的な者を集めて起草しておるわけでありますから、責任者として答えておるので、あそこに書かれておるのが全部私が書いておるというふうにとられると非常にむずかしい。責任者として答えざるを得ないものをお答えしておるわけですから、その点ひとつ了解していただきたい。  先ほど私の方から実行委員を出しながら、実行委員が力及ばずこういうことになり、また結果的に見れば、いろいろこういつた問題を起したことについて責任を感じますと言いましたが、これは労働組合としての非常に謙讓なところを言つておるのであつて、さつき言つた背景のことをここで忘れないでもらいたい。そのことをつけ加えておきたいと思うのです。労働者がこうならざるを得なかつたというところに、やはり反省せなければならぬものが、政府自体にあるということをつけ加えざるを得ないのです。この問題では書いておりませんけれども、われわれとしてはそのことを毛頭忘れていませんから、つけ加えておきます。
  244. 山口武秀

    ○山口(武)委員 議事進行——田淵君がただいまの証人に対する質問の中で、社会党左派並びに共産党は━━━である。このような言葉を言われているのであります。これは当委員会の体面から申しましても、あるいは国会の品位から申しましても、問題になる言葉ではないかと思う。たとえば現在風早君が、本会議でただいまの田淵君の言葉よりは数等上等な言葉を使つているにもかかわらず、これが懲罰にかかつているわけです。当委員会として田淵君のただいまの発言というものをどう処置されるかということは、これは風早君に対する処置においても当然考えられなければならないことであります。ただいま代理委員長ではありまするが、委員長の田淵君の発言に関する御意見を伺つて、なお委員長としてどのように処置されるのか。この点をお伺いしておきます。
  245. 高木松吉

    高木(松)委員長代理 いずれ速記録を取調べた上で、適当の処置をとります。井上良二君。
  246. 井上良二

    ○井上(良)委員 証人は、考え方なり行動が違いますものが一緒にメーデーを開くということは、決して円満なる運営ができないということが予想されておることを、事前に関知されておられたと思います。     〔高木(松)委員長代理退席委員   長着席〕 つまり最近のような共産党中心にする左翼運動が非常に活発になつて来、一方民主主義の立場に立つ労働組合の運動を守つて行こうとするものとの二つの流れが次第に明確化して来ておるときに、統一メーデーがはたしてうまく行くか行かぬかということは懸念されておつたじやないかと考えられるのです。そういうときに、メーデー実行委員会に全繊同盟から委員を派遣をいたします場合、その参加する団体に対してこうこういう団体参加するという場合は、民主的労働団体としては一応考えるべきではないかという注意を発したかどうか。これが一点。  それから、もしそういう注意を発したけれども、やはり労働者の祭典としてできるだけ大規模に行うことの必要があつて、警備その他万端の処置がとられる場合ならば円滑に行けるだろうと考えて、統一メーデーに賛成をされた結果になつたかどうか。この点について伺いたいことが一つ。  それからこの事態にかんがみて、今後の示威運動及びこれに関連するいろいろの行動について、少くともこの際あくまでわれわれとしては、民主的労働組合を健全に育成して行く、守つて行くという建前から、明確に一線を画する必要がありはしないかどうか。この点に対する今後の見通しについて伺いたいと思います。
  247. 瀧田實

    ○瀧田証人 統一メーデーをして参加団体が非常に広範囲にわたつた場合には、危險を察知しておつた全繊として、何か忠告を発し阻止すべきではなかつたかということでありますが、実行委員会が準備会の過程において持たれたときに、実行委員の中には全学連とか他団体は入れないということをきめておるのです。こういうわけで実行委員会に入れないということですから、われわれは入れないものだというふうに了解しておつたわけです。ここにわれわれとしても若干手抜かりがあつたと思うのですが、実際問題として何千人も来るのに対して、参加するものは拒否できないではないか。他団体参加する場合には、地区のメーデー実行委員がその申込みの受付をしようということにかわつたのだというふうに私は聞いております。従つて中央メーデー実行委員会としては、他団体の人を入れておりませんから受付けなかつたというのですが、地区の方で受付けたということ、たとえば北部の学生が北部地区に加盟を申し込んだときに、一札とつたそうであります。指揮者の命令に従いますという一札をとつて北部地区の参加申込みを受けた。ところがそれが守られなかつた。こういうことが各地区で起つたのではないかというふうに聞いておるのです。中央では一応そういつた学生あるいは他団体を入れないということをきめておりましたので、いわば安心した状態になつた。その点は実行委員会でしかるべくやつているのだろうというふうに了解しておつたのです。この点はやはり若干甘さといえば甘さがあつたのではないかというふうに私も感じておるわけです。  それから二番目の、今後の示威運動については明確に一線を画すべきではないか、またどう考えておるかということですが、これは私の意見を申し上げる以外にないと思いますが、私はやはり一線ということは、先ほど申し上げたように、行動に対してもあるいは政策に対しても一線が出て来なければいけない、このように考えております。
  248. 内藤隆

    内藤委員長 浦口鉄男君。
  249. 浦口鉄男

    ○浦口委員 大体今までの井上委員質問でわかつたようでありますが、私もその点もう一度確かめておきたいと思う。先ほどの島上証人は、情勢判断について私が質問いたしましたときに、なおまた委員長からの質問に対して、多少のトラブルは予想された、こう言つているわけです。そのトラブルというものはどういうものかといえば、実行委員会できめたスケジユール以外に発言を求めるとか、幾らかの小ぜり合いはあるだろうということは予想しておつたということを証言されておりますが、実体はそういう多少のトラブル以上の大きなものが起きた。そこで私は実行委員会が事前の情報判断に欠けているところがなかつたか、こういう質問をしましたところが、島上証人は、自分たちは警察でもなかつたから、必ずしもその責任もなし、またとるべきでもない、こう言つた。もちろんわれわれは警察だとは思つておりませんが、しかし何と申しましても情勢判断、警察の情報などとは別に、そうした大きなメーデー集会などについては私は当然なさるべきであつた、こう思う。そこでただいまの証人証言を承つておりますと、先ほど委員長の問に対して、やはり情勢判断の相違が結局警備の不十分というところにその原因があつた、こういう証言があるのも私は当然だと思うのであります。そこでその情勢判断の根本的なものについてお尋ねをしたいのです。ということは、先ほどの証人証言では、自分が演壇に立とうとした以後の情勢によつて、これは相当の事態が起きるということで、自分の率いる全繊に対して、場合によつてデモ参加しなくてもいいという宣言をしたということをおつしやつておりますが、その以前実行委員会の当時において、そうした現実の一つトラブルではなしに、全体に対する大きな情勢のつかみ方というものを証人はどういうふうにつかんでおつたか、その点をひとつお伺いいたします。
  250. 瀧田實

    ○瀧田証人 これは講和が発効する以前から、私どもたびたび発言をし、いろいろな機会に宣伝もしておつたのでありますが、今年の労働運動は、経済闘争から政治鬪争に移行せざるを得ない年だ、その必然性を持つておる。あらゆる情勢からそういうことが考えられる。そこで労働組合が経済闘争から政治的な闘争に必然的に動いて行くときには、政党労働組合との関係というものは非常にむずかしくなつて行く。ここらに労働運動としての一つの転機、また積極的な意味においてはチヤンス、危機がある。こういう意味で、政治的に動けば動くほど、今の幼稚な労働組合では危險が感じられる。これは概念的には大体そういう感じを受けておつたのであります。しかしそうであるからといつて、ただちにあのようなことが起きるとは、われわれは予想していなかつた。ですから傾向的には警戒気味ではありましたけれども、あれほどの大きな事故が起ろうとは私自身も考えていませんでしたし、実行委員会もその点はやや楽観視といいますか、甘く考えておつたのではないか、こういうことでございます。
  251. 内藤隆

    内藤委員長 竹村君。
  252. 竹村奈良一

    ○竹村委員 簡單にお伺い申しますが、先ほど証人は、メーデーを政治的目的に利用されるということはいけない、こういうような証言をされたと思いますが、あるいは私の何か聞き間違いかもしれません。しかしメーデーの決議を見ておりますと、この決議に掲げられたものには、いわゆる日本労働者が一応要求する政治的な目標というものがはつきり出ておるわけです。御承知のように、たとえば再軍備反対民族独立を守れ、これは一々読みませんが、その他には破壊活動防止法反対、あるいは言論、集会、出版、結社の自由を守れ、あるいはまた全面講和の推進、行政協定の破棄、しかもその次には平和憲法を守れ、吉田反動内閣を倒せ、とはつきりメーデーの決議に出ているわけです。従つてこういう決議がメーデーにおいてなされなければならないところの、さつきからあなたもおつしやつておりますけれども、世界的な状態、そうしてまた日本の置かれている状態、この中にはつきり植民地とは書いてありませんけれども、しかしもろもろの行政協定の破棄ということがうたわれているということは、日米行政協定において、日本が完全にアメリカの軍事基地と化し、あるいは植民地化しているということを労働者は自覚して、そうした一連の法的措置であるところの行政協定を破棄しなければならないという意図が、はつきりと参加者四十万の労働者によつて、私は満場一致決定されたものだと考えておるわけであります。従つて運のメーデーにおけるところのいろいろな問題もこういうような一つの反動的な政策に対するところの全人民の憤激というものが、たまたま人民広場の使用を禁止したのを契機として起つたのではなかろうか。われわれはそういうように見るわけでありますけれども、あなたは、メーデーに対しては、いわゆる政治的目的に利用されることは労働組合としては困るというような感想を漏らしておられるのでありますけれども、事実はあなたの考えであつて、四十万労働者はこういう問題をはつきり打出しておつたのでございますが、これに対してあなたはあくまでもやはりメーデーはこういう政治的な目的に利用されることは反対であるというお考えであるかどうかを伺つておきたいと思います。
  253. 瀧田實

    ○瀧田証人 その点は、労働組合が政治活動をやるということについては、私はいささかも異論を持つておりません。当然政治活動に入つて行く。やがてはわれわれが自分たちの政権を持つというところへ行くことは、異論のないところであります。ただあのような楽しかるべき労働者の祭典が、労働者みずからの手によつて暴力で支配されるということは、私は避けなければいけない、こういう意味で言つておるのでございます。それから人民広場に行こうということについては、実行委員会自体がきめていないのに、メーデー参加して、秩序を守ろうといつて集まつた人たちが、それを守らなかつたということは、やはり私は遺憾なことだと思つております。それからプラカードにも大分ありましたし、祝辞の中にも、言葉は違いますけれども、そういう意思表示があつた。いわゆるアメ公帰れというプラカードもかなりあつたわけであります。この主張をする人、あるいはそのプラカードを持つてつた人たちが、——私どももアメリカの政策についてはいろいろな不満もあり、反感もあり、悪い点はたくさん指摘できます。しかし、アメ公帰れと言う人たちが、日本独立を主張するときにはどうか、それでは、外国の者はみな出て行けということになつて、他の外国人についてはどうかということになると、あまり言及していない。     〔発言する者あり〕
  254. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  255. 瀧田實

    ○瀧田証人 この点は大事なことでありますから……。私は決してどこそこの人は帰れという主張をここで毛頭申し上げるつもりはありません。私は、朝鮮の人朝鮮に帰れと、そういう暴言を言うのでもなし、そういう意思をここで発表しておるのでもございません。この点誤解のないように願いたいと思います。そういうあまり片寄つた行動をするということは、私どもとしてあまり相いれない考え方であつたというふうに思つているわけですが、批判は批判として大いにしなければならないと考えておつたわけです。
  256. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もちろんメーデーにおいては、皇居広場へその日すぐ行けという決議がなされたかどうかは、私は知りませんが、しかし先ほども山口委員質問に対して、一応メーデー広場を、われわれは実力において使わなければならないという決議をされたことは事実である。従つてまた祝辞の中にも、たとえば朝からの録音を聞いておりますと、加藤勘十氏も祝辞の中では、皇居広場を使わせなかつたことは不当であるということをはつきり言つておられる。このことはやはり、皇居広場、いわゆる人民広場を使用させなかつたということに対する、全労働者の不満の意思を代表して言つておられるのではないかと思う。従つてそのことに対する全参加労働者四十万人の不満は、やはり現在の吉田政府のやり方に対して極度に反抗しておるということははつきりしていると思う。またいわゆるアメ公帰れという端的に表わされたスローガンについて、今御意見がありましたけれども、しかしおそらくあのスローガンを掲げた人の考え方というものは、日本にアメリカの軍事基地がつくられる。従つてアメリカの兵隊さんが日本の全国内至るところに治外法権的な活動をする、このことに対するところの反対の意思表示であつて、單なる平和的の一市民のアメ公帰れではなかつたのではないか、私はそう考えておる。少くとも全日本がそういう形において植民地化されている、従つてそれに対する反対の意思表示として、いわゆるここに掲げられておるところの日本民族独立、これをかちとるというかわつた形における意思表示として書かれたのではなかつたのか。やはりこういうことは日本労働者として当然なことでありますが、しかしああいう問題になつた背後的な、いわゆる社会的な状態というものは、先ほどあなたの指摘しておられるように、いわゆる現吉田政府の反動性であり、少くとも労働者の生活を保障しないところに問題がある。日本を植民地化しようとするところにあの問題があつたのではないかと思うのでございますが、証人としてはその点、これは意見が違えば別でありますけれども、たとえばアメ公帰れというあのプラカードにしても、日本から全占領軍は撤退してもらいたいという意思表示であつたと私は思うのでありますが、そういうふうに理解してもらえるかどうか伺いたい。
  257. 瀧田實

    ○瀧田証人 若干むずかしい問題になりましたが、独立を望んでおるわれわれとしては、外国軍隊がいないということが一番いい。そのことは考えております。しかしわれわれの独立がそのことでほんとうに確保されるかどうかということについては、いろいろな批判がまたあります。時間がございませんから、また範囲外でありますから、申し述べませんが、そういう心配はわれわれたくさん持つておるわけでございます。行政協定、むろん私ども反対でございます。安全保障條約についても反対態度を示して参りました。しかし現在国と国とがそれを條約で結んで効力を発生いたしております。この事実はやはり事実として認めなければならないと考えております。そこでプラカードに書くようなことは、来ておる人たちについては国と国とがとりきめたから来ておるのですから、その人に帰れと言つてみたところで、これはちよつと的がはずれておるのではないか。むしろわれわれはそのようなことは、政府がやはり考え直さなければならない、われわれはそのようなことをやつた政府を直させる方向に向うべき運動を起すのがいいのではなかろうかと考えておつたわけであります。
  258. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今の御答弁でよくわかりましたが、もう一点簡單に聞いておきたい。というのは、それではこのメーデー大会で行政協定破棄という決議をされておる。この決議にはあなたは反対でございますか。ここには行政協定破棄と書いてあるのでありますが、これには反対でございますかどうかということだけ聞いておきます。
  259. 瀧田實

    ○瀧田証人 委員長に伺いますが、今の御質問にお答えするわけでありますか。こういうことまで私がきようの証人としてお答えすることはどうかということについて、証人としては私はその必要がないのではないかと思つております。
  260. 内藤隆

    内藤委員長 どうでしようこの程度でひとつ……。佐竹君。
  261. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 一点お尋ねいたします。あの宮城前の問題は、この行政監察委員会で重大視して取扱われておるのでありますが、私は今後のいわゆる日本の民主的労働組合のあり方について質問してみたいと思うのであります。島上証人なりあなたの証言の全体を貫いてみると、秩序あるところの形で、いわゆる民主的な労働組合を育成して行かなければならないということに中心を置かれているのであります。しかし議会においては昨日も御承知のような法案が通過いたしております。また労働立法の改正もやろうとして議会に提案されておるのであります。そういうようになつて参りますと、だんだんに右と左の対立が激化して参りまして、どうしてもそういう事件が頻繁に起る可能性が実際上好むと好まざるとにかかわらずできて来るわけでございます。そこであなた方の方では、そういつたような直接行動に移るいわゆる暴力的な行動に対しては、嚴に戒めなければならない。組織を通じてそういうふうにしておられますが、そういうような民衆を押えるような法律が議会ではどんどんつくられております一方では、それに対して反動的に立ち上つて来る。そこで右と左との大きな衝突がああいう事件を生み出す結果になるのではないかと私は考えるのでありますが、これがだんだんそういうことになつて参りますと、たとえば例をとりますと、そういうようなことがあつたかどうか知りませんが、日本共産党というような政党を地下に追い込むというようなことにかりになつて参りますと、勢い上今度は合法組織の中に入つて来る。そこで下部組織の中にずつとオルグが入つて、そうしてそういうような地下勢力が総評の下部組織にだんだん広まつて来て、総評自体は民主的な労働組合でありたいと思うけれども、輿論に押されて組合がそれとは反対の方向に向つて行く可能性が多分にある。これは私は例をもつて申し上げますならば、御承知のように炭労の大会におきまして、武藤委員長は遂に委員長たるの職を奪われてしまつた。この五十何票の武藤君不信任のいわゆる表決の票はどこから出たかというと、日炭高松の代表者、代議員、これがほとんど投票した。日炭高松は御承知のように、この支部長は彦島で、北京のメーデー参加するために密行するという——これは事実かどうか知りませんが、そういうことが報道されております。そうすると、あなたは総評であるが、下はもう完全にあなた方の考え違つた方向に向つて行つて組合員というものは、さつきもあなたが言われたように、経済的な鬪争から政治ストに移行せざるを得ない、これは私も認めます。そこで移行すればするだけ組合員の末端までこの政治ストの目的が何であるかということをよく理解させ、そうして秩序あるところの政治ストの目的を達成することがはたしてできるかどうかという点について、どういうように組合の教育をしておられるのか。末端の教育をどういうふうにしておいでになるのか、この点をお伺いしたい。
  262. 瀧田實

    ○瀧田証人 大分御意見が多かつたようでありますが、左右の対立が激しくなつて来ると、そこにむしろ暴力的なものが入りやすくなるのではないか。それからまた政府がいろいろやり方が悪いから、それを激化するのではないか。現在まさにその通りになつておるわけであります。そこで私は総評組合員でありますし、加盟組合責任者でありますので、ここで組織の批判はなるべく避けさせていただきたいと思います。その意味でお聞き取り願いたいと思うのでありますが、今ここに反動的な立法化が非常になされることが、日本労働運動をしてますます政府に反抗させる運動に追い込んでいる。これは政治がよければ全労働階級を敵にまわさなくても私は済むのではないか。ここに現実と政治が一致していない点があるのではないか。このことを早く発見しなければいけない。そうして故意に労働運動を別の目的に持つて行くものがあるとすれば、この点はおのずから切り離されるのではないか。これが政治の上に現われて、労働者もこの運動になぜ真劍にならないのかということについては、私どもは私どもとして、その民主的な労働組合を守る努力をします。しかしこの努力をまた受入れるだけの政治がなくてはならない。これと相まつて勧めて健全な労働運動が発達するのだ、そうしてそこに初めて公共の福祉と社会の発展があるのだ。こういうふうに私ども考えております。こういう点で労働運動をながめていただきますならば、きよう御質問になつた一端もおのずから何らかの活路が見出されるのではないか。せつかくここへ来て発言した意義も生きて来るのではないか。むしろそれを望んでおるわけです。  それから先ほど私が答えなかつたのが卑怯だという御意見もありましたので申し上げますが、行政協定を破棄することには反対であります。廃棄という意思表示を全繊同盟はいたしておりません。その点を申し上げておきたいと思います。
  263. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、瀧田証人に対する尋問はこれで終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでありました。  なお本日午後一時出頭を求めておりました吉河特審局長は、明日午前十時に変更いたしたいと存じますので、御了承を願います。  次会は明十七日午前十時より委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十一分散会