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1952-04-24 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十四日(木曜日)     午前十一時二十二分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 田渕 光一君 理事 佐竹 新市君       天野 公義君    井手 光治君       岡延右エ門君    岡西 明貞君       黒澤富次郎君    志田 義信君       中川 俊思君    柳澤 義男君       木村  榮君    山口 武秀君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (広島日傭労         務厚生会会長) 久米  登君         証     人         (広島自由労働         者組合書記長) 吉田 治平君         証     人         (大韓民国居留         民団広島県本部         団長)     金  在賢君     ————————————— 四月二十四日  委員竹村奈良一君辞任につき、その補欠として  木村榮君が議長の指命で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  治安警備状況に関する件(広島事件)     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き治安警備状況に関する件中、広島事件について調査を進めます。ただちに久米登君より証言を求むることにいたします。ただいまお見えになつておられる方は久米登君ですな。
  3. 久米登

    久米証人 そうです。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知のことと存じますが、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御承知を願います。  ただいまより治安警備状況に関する件中広島事件について証言を求むることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人のこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人久米登朗読〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  5. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は証まを求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人久米登君は、現在広島県の日雇労務厚生会会長をしておいでになるようですな。
  7. 久米登

    久米証人 さようであります。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 会長におつきになるまでの略歴を述べてください。簡單でよろしゆうございます。
  9. 久米登

    久米証人 私は過去におきまして、自分で働いておつた人間であります。その後私の父親以来の運送店をずつと営んでおりまして今日に至つておるのであります。過去におきましては、ともに働き今日に及んでおるのであります。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 学歴等はどうです。
  11. 久米登

  12. 内藤隆

    内藤委員長 すぐ家業に従事されたのですな。
  13. 久米登

    久米証人 はい。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 広島市におきます日雇い労務者実態についてお聞きしたいと思うのですが、まず日雇い労務者として登録されておる数あるいは男女別年齢別等がおわかりならば述べてください。参考書類を見られてもようございます。
  15. 久米登

    久米証人 今日の日雇い労務者の、失業対策適格者としましては、約四千九百ぐらいと承知しております。なお失業対策就労申請者としましては、六千三百ぐらいじやないか、かように思うのでございます。それから男女別と申しますと、まず四分六、女が四分五厘くらいな見当じやないかと思います。的確なことは私はつきり存じません。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 年齢等はどうです。
  17. 久米登

    久米証人 年齢は、大体におきまして生活主幹者ということになつておりますから、これもはつきりはしておりませんのですが、中年以上の者が多いのじやないか、かように思うのでございます。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 登録されてからの年数等はどういうものですか。
  19. 久米登

    久米証人 これは日傭労務者でありまして、非常に変動がはげしいから、はつきり申し上げられません。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 その就職希望就労状況はどうです。
  21. 久米登

    久米証人 就労状況は、まず失業対策で申し上げますと、広島市の場合としましては、一箇月十八日ないし二十日ぐらいの見当であります。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 この厚生会設立になりました動機等簡單に述べてくれませんか。
  23. 久米登

    久米証人 終戰後全国日傭労務対策委員会、その次に日傭労務処理委員会というのが昭和二十三年三月まであつたのであります。このときには、日傭労務者に対しましていかにしたらいいかというふうないろいろな協議を、これは労務者業者学識経験者、この三者の協議会があつたのであります。ところが二十三年の三月にたまたまこれが廃止になるときに、私その当初から——最初労務者代表、後には業者代表というふうな関係で出ておりまして、御承知通り日傭労務者は非常に恵まれない状態にあるのでありますから、これは何とかしなければいけないというので、当時の業者並びに労務者代表または学識経験者とともにはかりまして、何とか日傭労務者のよくなることを考えてやらなければいけないじやないかというふうな見解のもとに、いろいろ当局にも相談を持ちかけまして、昭和二十三年の四月何日か、日にちははつきり覚えておりませんが、四月に大体規約等をつくりまして、これが発足したのであります。爾来今日に及んでおります。
  24. 内藤隆

    内藤委員長 その厚生会設立動機等はそれでわかりますが、その構成はどういうふうに構成されておりますか。
  25. 久米登

    久米証人 厚生会資料は一部提出はいたしてあるのでありますが、大体厚生会としましては、いわゆる福利厚生ということを第一の目標にしておりまして、現在行つております事業と申しますと、寄り場——寄り場と申しますと、これは日傭労務者の集合するところでありますが、寄り場の拡充とかあるいは施設の改善とか、または理髪所設置——現在広島では約八十円ないし百円近い理髪賃がかかるのでありますが、これなんかにしましても、直営でありますと約三十五円ないし四十円くらいでできるのであります。広島市の場合といたしますと、浴場の割引が、大体一般人が十円のところを八円くらいにやつておるとか、あるいは興行連盟に交渉いたしまして、映画館割引とかあるいは興行割引とか、こんな面とか、その他診療の割引、あるいは接骨の割引とか薬品の割引とか、あらゆる面にわたつてできる限りの手を伸べております。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 福利厚生に対しては相当に努力をしておいでになるわけですな。
  27. 久米登

    久米証人 はあ。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 この厚生会県労働部職業安定課及び職業安定所との関連はどうなつておりますか。
  29. 久米登

    久米証人 この関連につきましては、県の労働部職業安定課は御承知通りこれは国の出先機関でありますが、非常に御理解をいただきまして、一昨年でありましたが、広島県としまして、四十五万円の助成金をいただきました。その後昨年度もやはり四十五万円助成金をいただいております。それから今年度は助成金以外に——承知通り東京都と福島県でありますが、そこは就労資金貸付ということをやつておられます。東京都が昨年の十月からだと思います。福島県が昨年の十二月じやないか、かように思うのでありますが、広島県も日傭労務者常傭労務者に転換しますときには、その日その日が食いかねておる日傭労務者でありまして、その就労資金、いわゆる就労しましたときの資金、この貸付をするように申請をしまして、それも今年度は予算に通過させていただきまして、できるようになつておりまして、日傭労務者福利厚生という面でやつておりますものですから、非常に御理解をいただいて、非常な御援助をいただいているのです。
  30. 内藤隆

    内藤委員長 その就労資金というのは、予算はどれほどの額になりましたか。
  31. 久米登

    久米証人 予算広島県としましては、これに五十五万円計上していただきました。ところが広島市が六十万円の予算を計上していただいて、これは近く厚生会の方へやはり御寄託を受けるようになるのではないかと思うのでありますが、市の条例の関係上、さしむき違つております。広島市以外としましては、呉市が四十万円やはり厚生会に寄託せられるのではないかと思います。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 その貸付方法等は簡素化されておりますか。相当複雑なのですか。
  33. 久米登

    久米証人 資料が手元にありますから、一応何でございましたら御検討をお願いしていたださましたら……。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 これはあなたの県はどうか存じませんが、全国一般言つて日雇い労務者能率が非常に悪いということをよくわれわれ耳にするのですが、もしあるとすれば、そういう原因はどこにあるのでしようか。
  35. 久米登

    久米証人 失対事業と申しますと、相当高齢者もおります。また多少の不具な方もおりますししますから、広島としましては、かなりの仕事能率を上げておるのではないか、かように思うのでありますが、全般的に申しまして、そういうふうな者が一緒に入つておりまして、仕事能率いかんによつて給料とか何とかには関係ないということを考えますれば、自然と同じレベルに行くのではないか、かようなことも考えられます。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 日雇い賃金というのは、仕事いかんにかかわらずきまつておるから、そういうふうな関係もある。
  37. 久米登

    久米証人 そういう点もある程度あると思います。
  38. 内藤隆

    内藤委員長 ほかの請負制も加味した小間割制ですね。こういうものが非常に能率が上るということですが、それは実行しておりますか。まだ実行しておりませんか。
  39. 久米登

    久米証人 それはまだ実行せられておりません。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 どういう関係ですか。何か法規でとめられてでもおるのですか。
  41. 久米登

    久米証人 それははつきり存じませんが、小間割制というのは、私ら業者の面からいうと非常にいいのであります。ところが失対事業ということに、これを実施せられます上においては、非常にそこにむずかしいことがあるのではないかということが考えられるのであります。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 大体において賃金が幾ら働いても同一であるという関係において、やはり仕事能率的に進まぬという場合に、請負制をやつて、奨励的な意味でやれば、もう少し能率が上るということはお考えになりますね。
  43. 久米登

    久米証人 それはよく考えられます。
  44. 内藤隆

    内藤委員長 それでは小間割制を実施した方がいいとお考えになりますか。
  45. 久米登

    久米証人 いいと思いますが、しかしそれがはたして実効が上りますかどうか。といいますのは、仕事をやる上において請取制——小間割制というのは請取制のことでないかと思いますが、そうしますと、これだけの仕事を十人でやれ。ところ実際のわれわれ業者の面から見ますと、まず十人でやる仕事でありましたら、三人か四人おりましたらできる仕事でありまして、仕事に人がいなければできない仕事はこれは別といたしまして、普通の仕事の面でありましたら、これはなかなかむずかしいものであります。
  46. 内藤隆

    内藤委員長 いいとは思うが、その実施に当つては、相当困難なことがあるということですね。
  47. 久米登

    久米証人 さようでございます。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 広島労働省職安局失業対策課の統計によると、求職鬪争の件数が相当に多い県だと聞いておりますが、それはどういう理由ですか。
  49. 久米登

    久米証人 これはどうも私としてお答えする範囲でない、また私が的確なことを申し上げるのはいかがかと思いますが、日傭労務者の失対ということに言及しなければいけないということになる、かように思うのであります。  先ほど申し上げましたように、一箇月十八日ないし二十日、これが広島県の広島市の場合としまして、一日の手取金が二百二十円でございます。それから今度失業保險をいただきますが、これが百四十円か、百六十円であります。はつきり私覚えておりませんが、それをいただきましても、三日ないし四日しかいただけないわけであります。ちようど一箇月の收入がまず五千円かつかつになるのではないか、かように思うのであります。そうしますと、一箇月五千円で生活するということになりますと、適格者と申しますと生活保護法適用を受けるすれすれの人間である。食わんがために、完全就労させるということをしよつちゆう提唱しておるのであります。賃上げなんかも相当申し出ておるのであります。そういうふな点がいろいろあるのじやないか、かように思うのであります。
  50. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証言中に、求職鬪争が多いということに対して、ちよつと言いにくいがというような話があつた。これは日雇い労務者登録がありまするが、その日雇い労務者の中に、たとえばレッドパージにかかつたような人とか、あるいはまた他に目的を持つた、いわば悪質な扇動者、あるいはまた悪性な朝鮮人等までが登録をしておるようですが、この登録を拒否できませんか。
  51. 久米登

    久米証人 これは私のお答えする範囲でないとは思いますか、大体日雇い労務者といいますのは、定職のない者が登録をお願いしましたら、登録はそのまま受入れなければならないのでないか、かように思うのであります。かりに私がその立場でありましても、私がこの登録申請しましたら、それは一応全部受入れをせられなければならないのではないか、私かように思うておるのであります。
  52. 内藤隆

    内藤委員長 それを拒否する方法がないというお考えですね。
  53. 久米登

    久米証人 はい。それから、なおいろいろな悪質なことがありました場合には、それを拒否することができるのでないかということを承つておるのではありますが、ここらはなかなか私らとしましては、はつきりとしたことを申し上げる範囲でないように思うのでありますが、拒否することは、要するに本人が非常に悪質であるとかなんとかいうような場合には、できるのじやないかということも承つてはおりますが、これは、はつきり私存じません。
  54. 内藤隆

    内藤委員長 拒否する方法がないとすると、そういうレッドパージ人たちや、あるいは共産系人たち登録をされておるわけですね。そうして日雇い労働者の中に入つておられるが、そういう人々の指導力ということはどうです。相当に力を持つておりますか。
  55. 久米登

    久米証人 指導力と申しましても、実際に心からそれへ持つて行つて傾いておるかおらないかということは、はつきりは明言できませんが、日雇い労務者のそういうふうな面についての現実の実例を一言申し上げます。これは昨年の四月の広島市会議員の選挙でありました。そのときに、吉田君が立候補せられましたのでありますが……。
  56. 内藤隆

    内藤委員長 吉田君というと、吉田治平ですか。
  57. 久米登

    久米証人 はい。日雇い労務者で、要するに当時四千二百ぐらいじやなかつたかと、かように思うのであります。寄り場、すなわち日雇い労務者の集合するところでありますが、そこへ事務所を置きまして立候補せられまして、そうしてこの日雇い労働者対象としまして、まず最高点であろうというふうな予想のもとにやられておられたのでありますが、実際にふたをあけますと、得票数は二百何ぼであつたのであります。
  58. 内藤隆

    内藤委員長 四千何百の日雇い寄り場看板を掲げて、そうして実際は……。
  59. 久米登

    久米証人 寄り場のそばに看板を掲げまして……。
  60. 内藤隆

    内藤委員長 事務所を置いたわけですな。
  61. 久米登

    久米証人 そうです。それで得票数が二百何ぼであつたように思います。三百に足りなかつた。はつきりこれは記憶しておりませんが、確か供託金没收じやなかつたかと思うのであります。
  62. 内藤隆

    内藤委員長 そういう点から考えると、大した指導力はない、こう考えるわけですな。
  63. 久米登

    久米証人 指導力はないと思いますが、しかし先ほど申しましたように、実際に生活線かすかすにおる現状でありますから、彼らが食わんがためにここまで働いてくれておるというふうなことは、徐々に認識しておるのじやないか。できるできぬはとにかくとしまして、動いておることだけは、認識は順次浸透するのじやないか、かように思うのであります。
  64. 内藤隆

    内藤委員長 順次そういう指導力が浸透して行く傾向にある、こういうわけですね。
  65. 久米登

    久米証人 じやないかと思うのであります。
  66. 内藤隆

    内藤委員長 それから自由労働組合というのはありますか、広島に。
  67. 久米登

    久米証人 あります。
  68. 内藤隆

    内藤委員長 登録というのか、その組合の中に入つておる数は相当なものですか。
  69. 久米登

    久米証人 はつきりは覚えておりませんですが、広島に、自由労働組合と申しますか、それと、宇品地区日雇労働組合といいますか、全日土建の大体傘下というふうな形になつてつて、名称はとにかくとしまして、宇品地区の失対と自由労働組合日雇労働組合というふうなのが、一応はできておるのじやないかと思うのであります。
  70. 内藤隆

    内藤委員長 その組合員の数等は明瞭でない……。
  71. 久米登

    久米証人 はい。しかしこの労働組合ということについては、私いつも疑義を抱いておるのでありますが、お伺いしてよろしゆうございますか。
  72. 内藤隆

    内藤委員長 よろしゆうございます。
  73. 久米登

    久米証人 大体日雇い労働者というのは、読んで字の通り、そのひその日に雇われて行くのが日雇い労働者の実体であつて労働組合もていろいろ団体交渉するにしましても、要するにその対象というものがどこにあるかということを、私いつも考えるのでありますが、この点ひとつお伺いしたい、かように思うのでございます。会社、工場の労働組合でありましたら、会社が、要するに団体交渉対象はあるのでありますが、日雇い労働者といいますと、御承知通りで、どうも私この点はいつも疑義を抱いておるのであります。それでこういうふうな団体交渉権のない日雇い労務者というふうなものに対して、何かここによりどころがなければいけないということをしよつちゆう念頭に置きまして、こういうふうな厚生会というものを——いつも当局へ無理ばかり申して、そうして何か福利厚生、あるいは業者の方の援助を求めてというふうな線で、いつもこの点をはかつておるのであります。
  74. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、たとえばそういう自由労働組合というものがあつても、大した影響力はないというお考えですか。
  75. 久米登

    久米証人 いや、影響力がないというよりは、その組合というものが発達して行くということになりましたら、実際に対象がないということになりますと、あつちにもこつちにも、仕事の現場なんかにでも、いろいろお困りができるのじやないか、こういうふうなことも考えるわけであります。
  76. 内藤隆

    内藤委員長 三月一日に広島市で突発しましたいわゆる特審局襲撃事件は、広島市内自由労働組合員四十数名と、安芸、安佐地区北鮮系朝鮮人が合流して、組織労働者のやつておりました彈弾圧法粉砕蹶起大会というものを運用して引起された事件と思いまするが、この事件について証人はどういう御見解を持つておられますか。
  77. 久米登

    久米証人 私その事件のあつたということは知つておりますが、これに対する見解としては別に持つておりません、あまり行き過ぎでないかということは考えられますが、私は別にこれについてどうこうという何は持つておりません。
  78. 内藤隆

    内藤委員長 行き過ぎだという程度見解を持つておる、こういうわけですな。
  79. 久米登

    久米証人 はい。
  80. 内藤隆

    内藤委員長 労働省職業安定局失業対策課等を中心に、現在実施されておりまする失業対策事業について、福、利厚生事業立場から、あなたは何かこれに対して御見解がありますか。
  81. 久米登

    久米証人 実はこの点につきまして、どこの事業場におきましても、ある程度福利厚生というものを加味せられておるのであります。ところが、これだけ大きい失業対策の中に、自由労務者に対する福利厚生の面というものが何ら加味せられてないということは、まことに当を得てない、私かように思いまして、事務局長を帶同しまして、今月の十二、三日でありましたか上京しまして、いろいろ願いいたしたのであります。
  82. 内藤隆

    内藤委員長 單に職業を與えるという点にのみ重点を置いて、いわゆる福利厚生という面にはあまり関心を払つていない、こういうわけですね。
  83. 久米登

    久米証人 はい。昭和二十五年まで労働省の方から日雇い労務者寄り場管理維持費としてたしか三十何万円ですかいただいておつたのであります。ところがこれも二十六年度からなくなつております関係上、そんな方面にも厚生会として相当経費を払わなければいけない。厚生会の会費としましては、日雇い労務者から一箇月五円しかとつていないのであります。それから業者から一人に対して二十円以上というふうなまことに零細なもので、事務費というようなものもほとんど使わないくらいな程度でやつておるのです。ここに名簿もありますが、幹部の役職員というものはほとんど無報酬、無給で自弁でみなやつておるような状態であります。何とかこういうような点につきましても御配慮をお願いしたい。
  84. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質疑ありませんか。
  85. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 証人にお尋ねしますが、広島自由労務者が、市役所に対して、十二月になればもち代であるとかあるいは年末賞與というようなことで大挙して押しかけて行つて市役所市長室あるいは厚生局長の部屋、その辺を十重二十重に取巻いてすわり込み戰術をして、市の警察から退去命令を受けたり、また屋外にあつては猛烈な波状デモを行うというようなことがひんぴんと起つておるのであります。これはもちろん日雇い労務者の年末鬪争一つということにはなりましようけれども、その他の場合においてもしばしばこういうことが行われた。そういうように一つの市なら市で団体交渉をする場合に、国から失業対策予算というものは市の方に渡されて、その予算に基いてやつておるのであるから、市に大挙して押しかけて行つても、市長にそれができることであるかできぬことであるか、証人はどういうふうにお考えでありましようか、その点をお尋ねしたいと思います。
  86. 久米登

    久米証人 ただいまの御質問の、失業対策経費というものは、私今回こちらへ上京しましていろいろ福利厚生経費を出していただきたい、一部分でも振り向けていただきたいというふうにお願いしましても、それすら自由にならないような切り詰めた予算のきまつたわくの中でやられるとすれば、これは無理じやないか、かように思うのであります。しかしその無理じやないかということは一応私考えられますが、先ほど申しましたように、実際に保護法適用を受けるかどうかのすれすれの人間でありますから、もらえるものなら何ぼでももらいたいというのが心理じやないかと思います。ただいまの御質問に対しましては、これは実態を知らないで言つておるのじやないか、かように思うのでありますが、ただいま申しましたように、食いかねておる者ということになりましたら、結局そういうふうなことも出て来るのじやないか、かように思うのであります。
  87. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そういたしますと、そういうようにすわり込み戰術やデモをやる、押しかけて行つてつて市に交渉して、市の方でそれならこうしてやろうというようなことで、年末資金なりあるいはもち代なりを市から出したのですか出さぬのでありますか、その点を伺いたい。
  88. 久米登

    久米証人 これは私はつきり覚えておりません。
  89. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、こういうように団体でやる場合に、絶えずこの団体の中心になるのはどういう人ですか、あなたは御承知ですか。
  90. 久米登

    久米証人 団体の中心と申しましても、実際個々別々の者が日雇い労務者でありまして、先ほど申しましたように、組合と申しましても、はつきりした組合というものは少いじやないか、かように思うのであります。結局この組合の幹部になつておられるような方は思想団体の方が相当おられ、こういう方の指導のもとに行かれるのじやないかと思いますが、これもはつきりしたことはわかりません。
  91. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 日雇い労務者一つに団結して市役所なんかに行くときには、偶然に行こうというようなことはあり得ない。それにはいつも指導者がおつて、その指導者が指導しなければなかなかそういう大衆行動はとれないと思うが、指導者がおらずに日雇い労務者が自発的にみな集まつてやろうというのですか、指導者がおつて、指導者のもとに計画されて集団行動が行われるというのですか、どちらですか。
  92. 久米登

    久米証人 この点は当初から私見ておつたということはありませんが、交渉せられておる現場はよく私見ております。交渉せられるのは組合の幹部というふうな方であります。その出発の初点から見ておつたことはありません。
  93. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、そういう交渉するときに、千人なりあるいは五百人なりの人が大衆的に行かれますが、みんなの人が交渉の目的を知つて行かれるのであるか、付和雷同して行かれるのであるか、あなた方は厚生会福利厚生施設をやつておるので、日雇い労務者のほんとうの気持というものはよく御存じでありましよう。たとえば五百人なり千人なり押しかけて行く。押しかけて行つて、交渉したてんまつの報告を聞いてこれが無理であるか無理でないかということを考え労務者はおられるか、そういう労務者の気持はどうですか。
  94. 久米登

    久米証人 お答えします。日雇い労務者が、ただいま申しますように切実な要望をして知るということはよくわかります。しかし日雇い労務者の中でも、国家が生活を保障しておるというても、補いつぐなう補償は無理ではないか、何とかもう少しやつて行ける方法はありますまいかと言つておるのを聞いたこともあります。全部が全部食うに困つておるのでありますから、何とかこの点を当局としても御勘案をお願いしたいと思うのであります。日雇い労務者があそこへ行つておるという心情は、もらえるものならもらいたいという心情で行つておるのは、これは間違いありません。
  95. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと聞きますが、あなたは実際に広島市においでになつて厚生会の中心人物としておやりになつておるのだが、市役所なんかに居すわりをやるには何か指導者がなければならぬ。それは御承知ありませんか。どういうような系統の人で、もし具体的にお名前がおわかりならばおあげになつてもよろしゆうございます。
  96. 久米登

    久米証人 その点につきましては、私当初からそれにタッチしておりませず、と同時に、この厚生会福利厚生のみ目的にしておるのでありまして、その点についてはつきり私覚えておりません。
  97. 山口武秀

    ○山口(武)委員 労務厚生会というのは、構成人員はどのくらいなのですか。
  98. 久米登

    久米証人 広島市の人員が本年初頭の数で三千何ぼおります。
  99. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど私はつきり聞きとれなかつたのですが、そうすると、日雇労務者が四千人くらいおつて、そのうち大半の三千五百人が入つておるわけなんですね。
  100. 久米登

    久米証人 さようでございます。
  101. 山口武秀

    ○山口(武)委員 これはできましたのはいつです。
  102. 久米登

    久米証人 発足は昭和二十三年の四月であります。
  103. 山口武秀

    ○山口(武)委員 できてから、そのあとであなたは市会議員の選挙に立たなかつたのですか。
  104. 久米登

    久米証人 立つたことはありません。
  105. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ほかの選挙にも立たれなかつたですか。
  106. 久米登

    久米証人 私は政党方面に一度も出たことはありません。
  107. 山口武秀

    ○山口(武)委員 政党何なく、選挙です。
  108. 久米登

    久米証人 出たことありません。
  109. 木村榮

    木村(榮)委員 証人にお尋ねしたいのですが、あなたは運送店を経営とおつしやいましたが、その運送店経営の内容、たとえばトラック何台とか……。
  110. 久米登

    久米証人 運送は海陸運送、労務供給、あらゆることをやつておりました。
  111. 木村榮

    木村(榮)委員 そうしますと、戰争中はおもに人夫供給を目的とした運送業、こう理解してよいですか。
  112. 久米登

    久米証人 労務供給のみでなく、あらゆる運送であります。労務供給に関しますこと、あらゆることをやつておりました。
  113. 木村榮

    木村(榮)委員 職業安定法ができましてからは、いわゆる人夫の供給といつたようなことが法律上禁止になつているということは御承知ですか。
  114. 久米登

    久米証人 承知しております。
  115. 木村榮

    木村(榮)委員 さつきあなたの証言の中に、厚生会関係から日雇いとして行つた場合、労働者は一日五円の割合で金を出す、業者といいますと、これは使用人だと思いますが、これが二十円の割合で金を出す、こうおつしやつたと思いますが、間違いございませんか。
  116. 久米登

    久米証人 一日でありません。正会員一箇月の会費が五円であります。それから賛助会員というのが、いわゆる業者であります。業者が一箇月——半常用的に使つている業者であります。自分のうちにいつも十人なら十人使つている。そうすると一人二十円、二十円以上ということになつております。が、十人使つておれば二百円、あるいはそれ以上のものというふうなものをこの会で徴収しているのであります。
  117. 木村榮

    木村(榮)委員 今の賛助会員ですか、業者は大体どのくらいございますか。
  118. 久米登

    久米証人 この数ははつきり覚えておりません。
  119. 木村榮

    木村(榮)委員 なぜこのことをお尋ねするかといいますと、あなたを疑つているわけではありませんが、あなたの方は間違つていないと思いますけれども——私もあなたと大体同一な商売をやつておりますが、職業安定法が出ましてからの状態を見ますと、かつての人夫供給業者は巧みにこの法の裏をくぐつて頭はねをやつているということがあるわけです。そこで二十円の会費というものは、名前はどうであつたとしても、内容から検討いたしますと、人夫賃の上前をはねるものであつた場合は問題になるのです。その間のやり方をお聞きしているわけなんです。そういう点でもう少し詳しく御説明できればしていただきたいと思います。
  120. 久米登

    久米証人 決してこの点はないように思います。厚生会というものは、そういうような供給とかいう方面には全然タッチしておりません。それから厚生会は任意加入でありまして、業者の方も、広島支部の点を取上げて申しますと、広島支部は賛助会としないで、厚生会に対する助成金として一箇月三百円、五百円、また千円というように別途に出されております。そしてこれは中間搾取といいますか、ピンはねといいますか、そういうふうなものと全然関連がないように私思つております。
  121. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ久米証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。  それでは一時まで暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  122. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  引続き治安警備状況に関する件中、広島事件について調査を進めます。ただいまお見えになつておられる方は吉田治平さんですね。
  123. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  124. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ書面をもつて承知のことと存じまするが、本委員会において正式に証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  これより治安警備状況に関する件中、広島事件についての証言を求めることになりまするが証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人吉田治平朗読〕     宣誓書   良心に従つて、質実を述べ、何事  もかくさず、又何事もつけ加えない  ことを誓います。
  125. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  126. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。吉田治平君は現在広島自由労働者組合書記長をしておられるようですな。
  127. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  128. 内藤隆

    内藤委員長 この書記長になられるまでのあなたの経歴を述べてくれませんか。
  129. 吉田治平

    吉田証人 経歴というのはどのくらいの範囲ですか。
  130. 内藤隆

    内藤委員長 生年月日、それから中学を出られた後の学歴とか、その後の職場におけるあなたの立場、そういつた現在までのものを述べていただきたい。
  131. 吉田治平

    吉田証人 昭和十四年三月広島県立広島第一中学校卒業、同四月中央大学予科に入学、それから昭和十八年の十二月学徒出陣まで、同大学経済学部二年に在学しておりました。十二月にあの学徒出陣によつて兵隊に出ました。それから終戰後九月に復員しまして、九月にすぐ広島市にあります中国新聞社に入社しました。ですから中国新聞社入社は昭和二十年九月。それから昭和二十一年六月に中国新聞社の傍系社であります夕刊広島新聞社ができましたときに、中国新聞社より出向いたしまして、夕刊新聞社の社員となりました。それから昭和二十四年の十一月に、夕刊広島新聞社の経営困難の理由による、企業整備によりまして、解雇されました。越えまして昭和二十五年の八月より、広島市において行つております失業対策事業に就労して、今日に及んでおります。
  132. 内藤隆

    内藤委員長 この自由労働者組合というのをつくつたのはいつごろです。
  133. 吉田治平

    吉田証人 自由労働者組合は、私が自由労働者となつたときにはすでにあつたんで、私がつくつたわけではなく、創立の事情については詳しく知りません。
  134. 内藤隆

    内藤委員長 あなたがつくつたわけではないんですな。書記長になられたのは。
  135. 吉田治平

    吉田証人 二十五年の十二月の初旬だつたと思います。
  136. 内藤隆

    内藤委員長 これは事務所などはありますね。
  137. 吉田治平

    吉田証人 現在広島市基町一番地にあります。
  138. 内藤隆

    内藤委員長 事務員などおりますか。
  139. 吉田治平

    吉田証人 専従職員としては一人もおりません。
  140. 内藤隆

    内藤委員長 あなたが書記長で一切のことをやつておられるのですか。
  141. 吉田治平

    吉田証人 書記長としての範囲内においてはやつております。
  142. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの自由労働組合に何か機関新聞をお持ちでありますか。
  143. 吉田治平

    吉田証人 組合の機関紙を持つております。
  144. 内藤隆

    内藤委員長 それは何という機関紙。
  145. 吉田治平

    吉田証人 がんづめ——土方作業をやるときの道具の一種です。方言だろうと思います。何でもこちらでは三つ又とか四つ又とか言つておるそうですその道具の名前からとりましたがんづめという機関紙を持つております。
  146. 内藤隆

    内藤委員長 これは、「自由労働者」というような週刊か旬刊か月刊かありますが、そういうものとの関係はどうですか。
  147. 吉田治平

    吉田証人 広島自由労働組合は全日本土建一般労働組合に加入しておりまして、その全日本土建一般労働組合広島県連合会の機関紙として「自由労働者」というものを持つております。
  148. 内藤隆

    内藤委員長 それは広島県全体の自由労働組合の機関紙ですな。
  149. 吉田治平

    吉田証人 全日本土建一般労働組合広島県連合会の機関紙で、それ以上のものでもなければ、それ以下のものでもない。
  150. 内藤隆

    内藤委員長 連合会の機関紙ですな。
  151. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  152. 内藤隆

    内藤委員長 ここにあなた執筆したことはありますか。新聞記者の経歴をお持ちになつておるから、相当筆もお立ちになると聞いておるが、そういうことはありますか。
  153. 吉田治平

    吉田証人 失礼ですが、それは尋問事項に入るのですか。
  154. 内藤隆

    内藤委員長 私が聞いておるから尋問事項なんです。
  155. 吉田治平

    吉田証人 書いたことはあります。
  156. 内藤隆

    内藤委員長 最近どういうものを書きましたか。
  157. 吉田治平

    吉田証人 最近ですか、最近はこういうものです。委員長のお手元にある通りです。
  158. 内藤隆

    内藤委員長 一九五二年三月十七日付の第一号ですな。
  159. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  160. 内藤隆

    内藤委員長 これをあなた書いた。
  161. 吉田治平

    吉田証人 書きました。
  162. 内藤隆

    内藤委員長 この機関紙に書いたものによりますと、こういうことがある。「三月一日開催された彈圧法粉砕広島県大会会場へ入ることをしぶる悪質な県労幹部も、大会場の内と外で統一を求める大衆の声に守られて入場、デモ行進には入つてくれるなという妨害もはねのけ、国鉄につづいて堂々のデモ行進にうつり」云々ということがあるが、こういうことを書きましたか。
  163. 吉田治平

    吉田証人 書いてないでしよう。
  164. 内藤隆

    内藤委員長 書いてあります。
  165. 吉田治平

    吉田証人 どこに書いてありますか。これが現物ですが……。
  166. 内藤隆

    内藤委員長 三・一蹶起大会の一番最初に書いてありますね。
  167. 吉田治平

    吉田証人 委員長の言われたのと若干字句が違つておると思いますが、今言われたことと似たようなことは書いてあります。
  168. 内藤隆

    内藤委員長 似たようなことが書いてある……。
  169. 吉田治平

    吉田証人 字句は正確ではなかつたと思います。今の委員長の言われたのは……。
  170. 内藤隆

    内藤委員長 もう一ぺん正確に読みましようか。この日「大会会場へ入ることをしぶる悪質な県労幹部も大会場の内と外で統一を求める大衆の声に守られて入場、デモ行進には入つてくれるなという妨害もはねのけ、国鉄につづいて堂々のデモ行進にうつり」云々とあります。
  171. 吉田治平

    吉田証人 あります。
  172. 内藤隆

    内藤委員長 間違いないな。
  173. 吉田治平

    吉田証人 はい。
  174. 内藤隆

    内藤委員長 一体県の労組の幹部はなぜ自由労組の入場を拒んだのですか。
  175. 吉田治平

    吉田証人 それは県の労組に聞いてみないとわからない。
  176. 内藤隆

    内藤委員長 きみだつてわかるだろう、どういうわけで拒まれたぐらいのことは。じやこう聞こう。自由労組か入場を許可されるよう県の労組へ交渉したでしよう。
  177. 吉田治平

    吉田証人 しました。
  178. 内藤隆

    内藤委員長 その交渉のいきさつは……。
  179. 吉田治平

    吉田証人 それはこの機関紙に書いてある通りですが関係部分を読みますと『三月一日組合旗を先頭にプラカードを手にした自労組合員五十名が会場につき入場をもとめると、運営委員会の決定をまたなければといれてくれない。彈圧粉砕大会であるのに寒い屋外にいつまでもまたすとはケシからんと抗議すると、運営委員会の決定だといつて「来賓として一名だけ入れ」という、そんな話があるかと抗議して、大会も終りかけたころようやく入場を「許可」され』ました。
  180. 内藤隆

    内藤委員長 それが交渉なんですね
  181. 吉田治平

    吉田証人 ごく簡單に言つたらそういうことなんです。
  182. 内藤隆

    内藤委員長 そのほかに大分騒いだのではないか。
  183. 吉田治平

    吉田証人 騒ぎやしないです。
  184. 内藤隆

    内藤委員長 おとなしくその大会に入ることを要求したんだな。
  185. 吉田治平

    吉田証人 今読み上げた通りです。弾圧粉砕大会であるのに寒い屋外にいつまでも待たすとはけしからぬと抗議しました。それに対して大会運営委員会は、運営委員会の決定だといつて来賓として一名……一名というのは私のことですが、来賓として一名だけ入れといつて来た。それに対して、そんなばかな話があるかと抗議しました。
  186. 内藤隆

    内藤委員長 抗議をして無理やりに入つたのか。主催者の許可を得て入つたのかね。
  187. 吉田治平

    吉田証人 それもこれに書いてある通り、大会も終りかけたころようやく括弧づきで入場した……。
  188. 内藤隆

    内藤委員長 何か条件がついておつたんだね。
  189. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  190. 内藤隆

    内藤委員長 どういう条件ですか。
  191. 吉田治平

    吉田証人 デモ行進には参加しないという一札を入れてくれということを条件で、入れてやろうということでした。
  192. 内藤隆

    内藤委員長 そこでその一札を入れたんですか。
  193. 吉田治平

    吉田証人 入れません。
  194. 内藤隆

    内藤委員長 入れないで大会場へ入れてくれましたか。
  195. 吉田治平

    吉田証人 入れてくれました。
  196. 内藤隆

    内藤委員長 そういうことを要求したけれども君の方で断つたら、じや入れなくてもいいというので入れましたか。
  197. 吉田治平

    吉田証人 そういうことを一札入れることには疑義があるということを私たち申し入れましたら、とにかく入つてくれというので、入れてもらいました。
  198. 内藤隆

    内藤委員長 入つてくれというのは何ですか、おとなしくそれを許しましたか。
  199. 吉田治平

    吉田証人 おとなしく許しました。おとなしく入りました。
  200. 内藤隆

    内藤委員長 デモ行進には加わつてくれるなということを条件としておつたにかかわらず、デモ行進に君らの団体が加わつておるようですな。
  201. 吉田治平

    吉田証人 デモ行進に参加しないというのは、一札入れてくれという条件だつた。私たちは一札入れるについては疑義があると言つたんです。そしたら、そうかというのでうやむやに入れましたので、一札入れるという条件もそこでうやむやになつてしまつた。
  202. 内藤隆

    内藤委員長 うやむやになつたが、その後デモ行進に移つたときに、そういうことがうやむやになつたのを幸いに君らは行進に入つたわけですか。
  203. 吉田治平

    吉田証人 その前に三・一大会の準備会が二月の二十一日に開かれたのです。そのときに三・一の大会は二月二十一日のこの会議に出席しておるすべての組合、すべての団体をもつて開こうという決定でありましたから、私は当然の権利として入りました。
  204. 内藤隆

    内藤委員長 二月二十一日のそういう大会の準備会というか協議会というか、そこには君は参加しておつたわけですね。
  205. 吉田治平

    吉田証人 参加しておりました。
  206. 内藤隆

    内藤委員長 デモ行進に入りました目的は何ですか。
  207. 吉田治平

    吉田証人 一番大きな目的は、文字通り彈圧粉砕の蹶起大会でしたから、彈圧粉砕の集団示威をするのが目的です。
  208. 内藤隆

    内藤委員長 その他目的がありましたか。
  209. 吉田治平

    吉田証人 現在の反動政府がやつておりますいろいろな彈圧図、これに付随して私たちに対するいろんな圧迫が加わつております。賃金が非常に安い。こういうことをわれわれ組織された労働者だけでなしに、全市民にも知つてもらおう、そういうような意味のプラカードを持つて歩きました。
  210. 内藤隆

    内藤委員長 一日のデモ行進が解散したのは何時ごろですか。
  211. 吉田治平

    吉田証人 正確には覚えておりませんが……。
  212. 内藤隆

    内藤委員長 大体でよろしい。まつ暗かつたかね。
  213. 吉田治平

    吉田証人 いや、そんなものではないのです。三時ぐらいでしようか。市役所前では一応解散しました。
  214. 内藤隆

    内藤委員長 さらに同紙を読んでみますと、こういう記事がある。「デモ行進は、市役所横で一応散会したが、ひきつづき自労組合旗と友和会の緑に白十字の旗を先頭に、電車道を北上、白神神社付近で、はるばる安佐郡からやつてきた二百名の朝鮮の仲間たちと合流し」云々と書いてある。一体、友和会というのはどういう会なんですか。
  215. 吉田治平

    吉田証人 イギリスに本部があります反戰インターといわれておりますFOR、フェローシップ・オブ・リコンシリエーシヨンですか、よく知りませんが……。その象徴が緑に白十字の旗だろうと思います。その友和会の広島のメンバーの方が、その旗を持つてお見えになつておつた。
  216. 内藤隆

    内藤委員長 そういう国際的な関連を持つた会の支部か何かですね。
  217. 吉田治平

    吉田証人 国際的な反戰インターです。
  218. 内藤隆

    内藤委員長 それから自由労組が朝鮮の人たちと合流したのは何時ごろでしたか。
  219. 吉田治平

    吉田証人 市役所前で一応解散されたのが三時ごろとしますと、それから二十分前後だろうと思います。
  220. 内藤隆

    内藤委員長 三時二十分ごろ……。
  221. 吉田治平

    吉田証人 そんなものでしよう。
  222. 内藤隆

    内藤委員長 その合流はあらかじめ打合せがあつたのではないですかね。
  223. 吉田治平

    吉田証人 全然そういうことはない。
  224. 内藤隆

    内藤委員長 偶然に会つた……。
  225. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  226. 内藤隆

    内藤委員長 偶然にそういう合流があつて、さらにまたデモを続けたわけですね。
  227. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  228. 内藤隆

    内藤委員長 そのデモは無届でやつたわけですな。
  229. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  230. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとそれは非合法のデモなんだね。
  231. 吉田治平

    吉田証人 そうじやないでしよう。
  232. 内藤隆

    内藤委員長 どうしてです。
  233. 吉田治平

    吉田証人 どういう法律に反しますか。
  234. 内藤隆

    内藤委員長 おそらく広島市には公安条例というものがあるでしよう。
  235. 吉田治平

    吉田証人 はあ、あります。
  236. 内藤隆

    内藤委員長 その公安条例に従つて届出の上でデモをしなければならないことになつておるでしよう。
  237. 吉田治平

    吉田証人 公安条例そのものが違憲条例です。
  238. 内藤隆

    内藤委員長 それは君の考えで、それを聞いておるのではない。違憲だろうが何であろうが、そういう公安条例があるにかかわらず、無届でやつたからには、それは非合法のデモでしよう。
  239. 吉田治平

    吉田証人 いや、それは私の考えでなしに、最近行われました京都地方裁判所ないし福岡の高裁か地裁かの判決にもありましたように、勤労者の団結権及び団体行動をとる権利、これは憲法に保障された人民の権利です。だからこれを制限するような公安条例は違憲です。そういう判決を下しております。私の考えでなしにですね。
  240. 内藤隆

    内藤委員長 君の意見を聞いておるのじやない。そこまで何も聞いていないじやないか。こちらの聞いた範囲に答えてもらえばいい。要するにそういう公安条例というものを無視して無届でやつたことは間違いないね。
  241. 吉田治平

    吉田証人 無視するもしないもないと思うのです。そういう憲法に違反した条例にわれわれは従う必要はない。
  242. 内藤隆

    内藤委員長 その点を聞いているのじやない。広島市には公安条例というものがあるでしよう。その公安条例によると、デモは届出をせよということになつておるでしよう。
  243. 吉田治平

    吉田証人 そうだそうです。
  244. 内藤隆

    内藤委員長 そうだそうですつて、君ははそれを知らないのか。君はそういうものがあることを知らないのか。
  245. 吉田治平

    吉田証人 あるということは知つておりました。
  246. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、その条文に、デモをやるときは届出をせよとなつておるのを、届出をしなかつたのだろう。
  247. 吉田治平

    吉田証人 詳しくは知りません。
  248. 内藤隆

    内藤委員長 知らぬとはどういう意味です。
  249. 吉田治平

    吉田証人 今委員長が言われたようなことを……。
  250. 内藤隆

    内藤委員長 君自身はこのデモの中におつたのでしよう。
  251. 吉田治平

    吉田証人 おりました。
  252. 内藤隆

    内藤委員長 そうして君はリーダー格じやなかつたのか。
  253. 吉田治平

    吉田証人 というほどでもなかつたです。
  254. 内藤隆

    内藤委員長 どういう役割をしておつたね、このデモの中では。
  255. 吉田治平

    吉田証人 どういう役割といつて、やはり組合の幹部ですから組合の幹部らしい位置におりました。
  256. 内藤隆

    内藤委員長 幹部らしい位置におれば、幹部として届出をしたかどうかということは、君はわかるだろう。いわんや君の組合には君一人しかいないんだろう。君の組合には事務員もいなければ小使もいない。小使兼書記長兼一切君がやつておるんだろう。(笑声)そうすれば君が届出をしたかどうかわからぬはずはないじやないですか。
  257. 吉田治平

    吉田証人 届出をしたかしないかとおつしやるのですか。
  258. 内藤隆

    内藤委員長 そうです。
  259. 吉田治平

    吉田証人 それはしませんでした。
  260. 内藤隆

    内藤委員長 それからさらに読んで行くと、「プラカードを手に手に三百の実力デモをくりひろげ。中国新聞、放送局で激しい蛇行デモをくりかえし、最後に特審局中国支局で五回にわたる波状デモを行い、市民たちに守られ「外国軍隊の徹退」「悪質労働ボスの排除」「民族解放国民政府の樹立」などを決議」云々と書いてあるが、三百のものがみなプラカードを持つてつたのか。
  261. 吉田治平

    吉田証人 いいえ。持つていた人もおりました。
  262. 内藤隆

    内藤委員長 何本ほどあつた。
  263. 吉田治平

    吉田証人 さあ、詳しくは覚えていませんが、大小十本か二十本ぐらいだろうと思います。
  264. 内藤隆

    内藤委員長 それはあらかじめ用意してあつたのだね。
  265. 吉田治平

    吉田証人 それはもちろんそうです。
  266. 内藤隆

    内藤委員長 にわかにデモをやるからといつて、つくれるものじやないからね。
  267. 吉田治平

    吉田証人 それはそうです。
  268. 内藤隆

    内藤委員長 その際使用したプラカードは、五寸くぎか何か打ちつけて、これを凶器に利用し得るような形になつてなかつたかね。
  269. 吉田治平

    吉田証人 そんなことはないです。
  270. 内藤隆

    内藤委員長 五寸くぎが出てなかつたか。
  271. 吉田治平

    吉田証人 そんなことはないですよ。
  272. 内藤隆

    内藤委員長 それではデモがいよいよ特審局前まで行つて決議をしたようだが、どういう決議をやりましたか。
  273. 吉田治平

    吉田証人 今委員長が読まれた通りです。「外国軍隊の徹退」「悪質労働ボスの排除」「民族解放国民政府の樹立」などです。
  274. 内藤隆

    内藤委員長 そういう決議をやつたわけだね。
  275. 吉田治平

    吉田証人 はあ。
  276. 内藤隆

    内藤委員長 この決議をやるときには、座長なり何なりというものをきめなくちやならぬが、それはどういうふうにしてやりましたか。
  277. 吉田治平

    吉田証人 私がやりました。
  278. 内藤隆

    内藤委員長 君が座長になつて…。
  279. 吉田治平

    吉田証人 私が提案しまして、皆さんの御意見を聞きまして……。
  280. 内藤隆

    内藤委員長 座長として君が提案をし、そして賛成を得て決議をしたというわけだな。
  281. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  282. 内藤隆

    内藤委員長 この記事によると、「市民たちに守られ」と書いてあるが、どういう市民が守つたのかね。
  283. 吉田治平

    吉田証人 それは近所の人たちを含めた、それからデモ行進をやつている間にやはり平和を愛する人たちで入つて来た人たちもおりました。そういう人たちのことです。
  284. 内藤隆

    内藤委員長 途中でデモへ入つた者もおる。
  285. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  286. 内藤隆

    内藤委員長 守られたというから、沿道から君らのデモを非常に謳歌して守つたようにとれるが、そういう意味ですか、守られたというのは。
  287. 吉田治平

    吉田証人 市民たちは心の中では拍子喝采を送つていたと思うのです。しかしやはりそとに出して現わすと、非常に現在の反動政府はやかましいですから、よう入つて来ない人もあつたでしよう。しかしそういうことも含めて、心の中では確かにわれわれの実力デモに対して拍手を送つていたと思うのです。
  288. 内藤隆

    内藤委員長 それは君の考えじやないか。人の心まで見えたか。(笑声)
  289. 吉田治平

    吉田証人 私らは愛国者ですから、愛国者か売国奴かの見わけぐらいつくのです。
  290. 内藤隆

    内藤委員長 愛国者とは、どういう意味ですか。
  291. 吉田治平

    吉田証人 愛国者というのは、文字通り国を愛する者です。
  292. 内藤隆

    内藤委員長 どこの国を愛しておるのか。
  293. 吉田治平

    吉田証人 日本の国です。
  294. 内藤隆

    内藤委員長 間違いないな。
  295. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  296. 内藤隆

    内藤委員長 そこでどこで解散しましたか。
  297. 吉田治平

    吉田証人 町名はつまびらかでないのですが、特審局の中国支局からほど遠からないところです。広島女学院という学校があります。その横手の道路上です。
  298. 内藤隆

    内藤委員長 特審局前に到着した時間は何時でしたか。
  299. 吉田治平

    吉田証人 五時前後だろうと思います。
  300. 内藤隆

    内藤委員長 その時分は暗かつたかね。
  301. 吉田治平

    吉田証人 いや、明るかつたです。
  302. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、この記事によると、そこまで、五回の波状デモをやつておるようだが、相当時間がかかると思うが、その時間はどれほどかかりましたか。デモ行進は波状だから相当かかつたと思うが。
  303. 吉田治平

    吉田証人 それは最後に特審局中国支局前で波状デモをやつたのです。前での波状デモを五回やつたのです。
  304. 内藤隆

    内藤委員長 特審局前で行つたり来たりぶらぶらしておつたことを波状デモというのですか。
  305. 吉田治平

    吉田証人 車寄せがありますから、車寄せをぐるぐると……。
  306. 内藤隆

    内藤委員長 まわつて歩くのだね。
  307. 吉田治平

    吉田証人 そうです。
  308. 内藤隆

    内藤委員長 それを波状デモと君らは言うのだね。
  309. 吉田治平

    吉田証人 その点言葉の使い道は正確でないと思うのですが、一応波状デモと表現しております。
  310. 内藤隆

    内藤委員長 そこでそのときに、その波状デモと称するものをやつておる間に、警備の警官は来ましたか。
  311. 吉田治平

    吉田証人 さあ、私の目には制服の警官は見当りませんでした。
  312. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると君らのデモは整然とやつてつたのだね。
  313. 吉田治平

    吉田証人 そうです。文字通り、一糸乱れず。
  314. 内藤隆

    内藤委員長 一糸乱れず。そうすると、一糸乱れぬものが、ドアをたたき破つたり、ガラス戸を破つたり、催涙弾を投げ込んだり、それが一糸乱れていないのか。
  315. 吉田治平

    吉田証人 ドアをたたきこわしたり、何でしたか。
  316. 内藤隆

    内藤委員長 窓ガラスを破つたり、備涙彈を投げたり、それが一糸乱れない君らのいわゆる行進なのか。
  317. 吉田治平

    吉田証人 私は最後まで特審局の前におりまして、デモ隊が全部道路を北の方へ去つて行くのを見届けましたが、それはおそらく近所におりました売国奴の手先だろうと思うのです。やじ馬が投げたのじやないかと思うのです。
  318. 内藤隆

    内藤委員長 それは君らじやなく、やじ馬が投げたのか。
  319. 吉田治平

    吉田証人 やじ馬といいますか、売国奴の手先、挑発分子がこういうときにはおるものです。それじやないかと思うのです。
  320. 内藤隆

    内藤委員長 まことにどうも奇怪な者がおるものだな。(笑声)
  321. 吉田治平

    吉田証人 まつたくです。
  322. 内藤隆

    内藤委員長 このドアを破つたというものは、逃げていないのだね。どこかに隠れて。
  323. 吉田治平

    吉田証人 いやおりました。
  324. 内藤隆

    内藤委員長 いたのか。
  325. 吉田治平

    吉田証人 おりました。
  326. 内藤隆

    内藤委員長 そのとき君は整然とやつたものなら、かような暴行があつた場合に、一体これをどういう態度をもつて見ておつたか。制止しましたか。売国奴だからやるままにやらしておいたのか。
  327. 吉田治平

    吉田証人 だれがやつたのか確かめようと思つて一生懸命見ておりましたが、下手人がわからないのです。うまいですからね、そういう挑発分子というのは。(笑声)
  328. 内藤隆

    内藤委員長 挑発分子がやつたのだね。
  329. 吉田治平

    吉田証人 だろうと思うのですよ。とにかくだれが手を出しているのかを見ることが私の責任だと思つたのです。だから、だれかなと思つて見ていました。
  330. 内藤隆

    内藤委員長 そうだろう。君の言う売国奴がそういうことをするというなら、そういうじやまをする者がいるというなら、君らのまじめな労働組合立場において、しかも君は今明るかつたと言う。何人がやつているかくらい見るのがほんとうだろう。それが見えなかつたのかね。
  331. 吉田治平

    吉田証人 見えなかつたです。残念ながら……。ただ特審局の玄関に近いところに五人くらい、おそらく私服の警官みたいな風采の人、古いセビロを着た人がおりました。それでどうもこいつ臭いなと思つたので、君たちはだれだと言つたら、脱兎のように飛んで逃げた。そうして道路の向い側——ちようど四間くらいの道路ですが、道路の向いにそれの仲間らしいのがいて、そこへかけ込んだから、おそらくそういう連中だろうと思うのです。
  332. 内藤隆

    内藤委員長 昨年の十二月二十五日に広島市で開催された自由労組の細胞会議というのに、あなたは出席しましたか。
  333. 吉田治平

    吉田証人 出席しないです。
  334. 内藤隆

    内藤委員長 その会議というものがあつたようですがね、もう一ぺん記憶を呼び起してください。
  335. 吉田治平

    吉田証人 しません。
  336. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、結局そういうようにガラスを破壊し、ドアを破つてつても、その間警官は一人も来なかつたわけだね。
  337. 吉田治平

    吉田証人 そうです。少くとも制服の警官は来なかつたです。私服の警官はいたかもわかりません。
  338. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今の証言でやや明瞭になつたのでありますが、当委員会の事務局の調査によれば、あなたたちの自由労組、それに朝鮮人の集團のデモが特審局の前に来ましたとき、催涙ガスを投入した、こういうような事務局の調査というものが出て来ているのですが、これはまつたく関係がなかつた、あるいはあなたの責任においては少くも知らなかつた、こうはつきり明言できるのでしようか。
  339. 吉田治平

    吉田証人 全然ありません。催涙ガスを投げたという事実も全然知らないし、そういう話を聞いたこともないのです。
  340. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この彈圧法粉砕の大会、それからそれに引続くデモの問題につきまして、自由労組としてそれぞれ対策があつたと思いますが、そのときにこの催涙ガスというような問題、そうした問題が出たこともなかつたかどうかということを、さらに念のためにお尋ねしたい。
  341. 吉田治平

    吉田証人 山陰大会以前に、私たち全力をあげて山陰大会に参加しようということを、組合として決定しました。そうしてそのことを全組合員大衆に訴えました。そうしたら、これを大衆に訴えたはね返りとして、組合員大衆から二、三私のところに、実は私服の警官が夜な夜な来て、何か組合が秘密の行動をやるのじやないかということを、根掘り葉掘り聞いておつたそうです。とんでもないということを組合員はみんな言つておりました。で、今言われましたようなことについては、もう徹頭徹尾われわれは関知しない。
  342. 山口武秀

    ○山口(武)委員 さらにお尋ねしたいと思いますのは、やはり当事務局の調査でもそうであり、なお一昨日の特審の中国支局長の証言によりますと、この特審の支局長は写真を持つて参りまして、プラカードに五寸くぎが出ていて、何か特別製のプラカードというような感じを與える写真をここに示したのであります。それはもつともそのときの証言によりますと、これは現場において現実に使用したものを写真にとつたのではありません。特審において大体のものを想像してつくつて、これを写真にした、こう申していたのです。しかしながら特審がそこまでのことをやるというのは、これは容易ならないこととも思います。あるいはそうした疑いがあつたのではないかということが、一般の常識から見ると考えられるわけであります。使用したプラカードを凶器に使用するというような、そうした五寸くぎを打ちつけてあつたのかどうかということを、さらに念のために明確に御答弁願いたい。
  343. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとその答弁をする前に、最前あなたの証言の中に催涙弾等は関知しない、こういう答弁でありましたね。関知するせぬを山口委員は聞いておつたのじやないと思います。そういうものが投げ込まれる現場を見たことがないかどうか、あるいはそういうものが爆発する音を聞かなかつたかという意味だろうと思います。
  344. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私はそうじやない。
  345. 内藤隆

    内藤委員長 それでは委員長から聞きますが、関知しないとはどういうわけなんですか。
  346. 吉田治平

    吉田証人 言葉のその通りであります。関知しないのです。
  347. 内藤隆

    内藤委員長 言葉のその通りとは……。
  348. 吉田治平

    吉田証人 関知しないから、関知しないのです。     〔「その態度は何だ。この委員会を何と心得ておる」「何を言うか」と呼ぶ者あり〕
  349. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に……。関知しないというのは、もう少し明瞭に言つてみたらどうです。
  350. 吉田治平

    吉田証人 関知しないというのは、それ以上でもなく、それ以下でもない。関知しないのです。
  351. 内藤隆

    内藤委員長 それを見たこともないのか。
  352. 吉田治平

    吉田証人 ありません。
  353. 内藤隆

    内藤委員長 音も聞かないのか。
  354. 吉田治平

    吉田証人 もちろん。
  355. 内藤隆

    内藤委員長 全然知らないのか。
  356. 吉田治平

    吉田証人 知らないのです。
  357. 内藤隆

    内藤委員長 では現場を監督して見ておつたというのは、どういうわけですか。さつき言つたろう。そういうものが間違いがあつては困ると思つて、現場を嚴重に監督しておつたと君は言つておつたろう。なぜ関知しないのか。もつと明瞭に答えてください。
  358. 吉田治平

    吉田証人 いくら言われたつて関知しない。私は見たこともない。聞いたこともない。
  359. 内藤隆

    内藤委員長 この玄関から君はどの辺におつたか。
  360. 吉田治平

    吉田証人 五、六メートルくらいでしよう。
  361. 内藤隆

    内藤委員長 何か上にでも上つてつたのか。
  362. 吉田治平

    吉田証人 いいえ。
  363. 内藤隆

    内藤委員長 デモのうしろにおつたのだね。あばれておる人間のうしろにおつて、君は教唆しておつたのか。
  364. 吉田治平

    吉田証人 いや、大体特審局に対するデモ、これの全般を見られやすいような場所にと思つて、おりました。
  365. 内藤隆

    内藤委員長 そうすれば見えるはずだ。
  366. 吉田治平

    吉田証人 それで見えない。
  367. 内藤隆

    内藤委員長 それは見えないんじやない。わざわざ見なかつた。また見ても、見なかつたと、ここで偽証をしているのじやないか。見えないはずはない。五メートルくらいのところにおつて、催涙ガスの煙が上つたのが見えないはずがない。あるいはまた爆音が聞えないはずがない。     〔「君は近視眼かひが目か」と呼ぶ者あり〕
  368. 吉田治平

    吉田証人 ごらんの通り近眼です。
  369. 内藤隆

    内藤委員長 よけいなことを言つちやいかぬ。委員長に答えなさい。委員長質問に答えればいいのだ。五メートルほどうしろにおつて、催涙弾が煙あるいはまた音響を発する、それがわからぬはずがないじやないか。関知しないはずはないじやないか。
  370. 吉田治平

    吉田証人 催涙弾というのがどういうものだか見たことも聞いたこともないのに、わかるはずがないじやないですか。
  371. 内藤隆

    内藤委員長 催涙弾を……。
  372. 吉田治平

    吉田証人 はあ、見たことも聞いたこともない。
  373. 内藤隆

    内藤委員長 催涙弾を知らなくとも、催涙弾を投げられた場合に、煙が出たり、音がしたり……
  374. 吉田治平

    吉田証人 どういう化学作用を起すのか、そういうことも知らないのに、わからないですよ。
  375. 内藤隆

    内藤委員長 ばかにするな。
  376. 吉田治平

    吉田証人 わからないものはわからないですよ。
  377. 内藤隆

    内藤委員長 現場の写真を見せてやれ。     〔写真を証人に示す〕
  378. 吉田治平

    吉田証人 写真を見せてもらいましたが、どこに一体煙があるのですか。どこに音が発しておるのですか。
  379. 内藤隆

    内藤委員長 そこにちやんと催涙ガスが爆発した痕跡があるじやないか。
  380. 吉田治平

    吉田証人 あれが痕跡ですか。
  381. 内藤隆

    内藤委員長 そうだ。
  382. 吉田治平

    吉田証人 知らんですな。
  383. 内藤隆

    内藤委員長 しらばつくれるならそれでよろしい。
  384. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私はさきほどプラカードに五寸くぎが打つてつたのか、そういうことがあつたかどうかということを確かめたわけです。
  385. 内藤隆

    内藤委員長 それはさいぜんの委員長に対する答弁にもそんなことはないということを言つておる。
  386. 山口武秀

    ○山口(武)委員 特審の方でそういう写真までつくつて来たので、なお念のために確かめたい、こう思つたわけです。
  387. 吉田治平

    吉田証人 おそらく特審が想像によつてでつち上げたものでしよう。特審の但書にある通り、おそらく全然見たことも聞いたこともない……。
  388. 内藤隆

    内藤委員長 けれども、プラカードを持つておつたことは先ほどの証言でわかつているね。十箇ないし二十箇……。
  389. 吉田治平

    吉田証人 はあ、持つておりました。
  390. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 証人に三、四点お尋ねしたいと思うのでありますが、証人は現在ここにおいでになるまでに広島検察庁で体を拘束しておられたということですが、その通りでありますか。
  391. 吉田治平

    吉田証人 その通りであります。三月二十八日不当に逮捕され、勾留されて、二十二日まで及んでおります。
  392. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 逮捕したいわゆる判事の勾留令状では、どういうことで逮捕したのですか。
  393. 吉田治平

    吉田証人 ごく簡單に申しますと、この三月一日にいわゆる無届のデモ行進を指導したということ、それから第二点は、今問題になつておりますこの特審局前で、特審局支局員大森玄口外数名に対してけがをさせたとかいうような、何か架空の被疑事実によつて逮捕されたのであります。
  394. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 あなたは今までにやはりこういうふうな事件で検察庁か裁判所で調べられたことがありますか。
  395. 吉田治平

    吉田証人 検察庁のお世話になつたのは生れて初めてです。
  396. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そこでお尋ねしたいと思いますのは、今回あなたに本委員会において証言をしていただくことになつているのは、要するに広島地方における三・一のときに、広島で総評主催の大会を開いて、その大会において、要するにあなたがその大会に参加を要求されて、大会であなたの入られることを認めて、そしてデモに移つた。そのデモに移つて市役所までは——これは公安条例をあなたは認めないと言われます。が、とにもかくにも広島には公安条例があつて市役所までは解散の地点として許可しておつたのですか。
  397. 吉田治平

    吉田証人 その通りです。
  398. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、それから後にやられたのは、要するに俗に言う非合法デモということになるのですか。
  399. 吉田治平

    吉田証人 その通りです。
  400. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 いま一点お尋ねしたいのは、昨年の年末鬪争のときに、市役所に多数の自由労働者と行かれて、数百人か数十人か市長室その他助役室ですわり込み戰術をされて、市長に年末の越年資金とそれからもち代ですか、そういうようなものを要求して、相当根強く市長室にすわり込み戰術をされたと聞いております。が、事実そういうことがあつたのですか。
  401. 吉田治平

    吉田証人 昨年越年鬪争を鬪つたことは事実であります。それから十二月五日に千数百名と一緒にすわり込みをやつたことも事実であります。
  402. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それは今言つたように、いわゆる越年資金というか、年末手当ですか、それを出せということなんですか。
  403. 吉田治平

    吉田証人 その通りです。
  404. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、これはその点あなたと私どもの見解の相違になると思いますが、大体失業対策予算というのは、市が組むのですか、国が組むのですか、どちらですか。
  405. 吉田治平

    吉田証人 三分の二の国庫補助で、三分の一の地元負担による国営事業である。われわれは市営の失対事業、県営の失対事業といつておりますが、そのように聞いております。
  406. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、国の方の予算が多いことになるのでありますか、このいわゆる失対に対する賃金が安いということは首肯できるが、目標を市長に強く追つて市長の権限でそういうことが実現できるかどうかということはどうでしよう。
  407. 吉田治平

    吉田証人 市営事業に就労しておつて市役所から給料、日当をもらつておる。そして市役所からもらつておるものは、政府が予算をくれないから非常に安い。だから、従つて平常お世話になつておる市役所から越年のお金をもらいたいという要求を出すのは当然だと思います。
  408. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、当然の要求をされたことと一応しまして、市役所の方ではそれを出しておりますか、出しておりませんか。その結果において成功しておりますか、しておりませんか。
  409. 吉田治平

    吉田証人 当初出せないというのを、とにかく名目はともあれ、五百七十円ほどもらいましたから、成功いたしました。
  410. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それはどういう名目で出しておりますか。
  411. 吉田治平

    吉田証人 年末十九日間における賃金の割増しという形で、一日三十円ずつ十九日、合計五百七十円、こういう形でもらいました。賃金の割増しという形です。
  412. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 もう一点お尋ねしたいのでありますが、あなたの全日本土建の機関紙ですが、「自由労働者」という機関紙の中に、外国軍隊の撤退、悪質労働ボスの排除、民族解放、国民政府の樹立ということが書いてありますが、そのことでお尋ねしたいのは、民族解放、国民政府の樹立という、この国民政府樹立とは、どういう方法によつて国民政府を樹立されるお考えですか。
  413. 吉田治平

    吉田証人 方法についてのこまかいことまでは、不肖にして知つておりません。
  414. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 われわれは、要するに平和的に議会を通じて、今日の日本の憲法で許された選挙によつて、国民の多数の投票を得たその政党が国の政権をとる。議会制度を通じて政権をとる。こういうように考えておるのですが、あなたの考え方は、やはりそういう考え方ですかどうですか。
  415. 吉田治平

    吉田証人 佐竹委員の言われた方法では、佐竹委員の言われるような政府はできないと思うのです。この点は見解の相違であろうと思います。
  416. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、そういう選挙たよつて、多数党が政権をとるという方法によつてはできないということになれば、何かほかの方法で政権をとるのですか。ほかの方法とは、どういう方法で政権をとるのですか。
  417. 吉田治平

    吉田証人 いろいろな方法があると思います。一々については私もわかりません。
  418. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 あなたが執筆されて、あなたが民族解放をするために、いわゆる国民政府を樹立するということを書かれている以上は、その具体的の方法がなければならぬ。われわれ日本社会党としては、あくまでも選挙を通じて、そして民主革命を行い、そして議会を通じて政権をとる、日本の憲法に許されておるのはこれ一つであると思う。あなたは国民政府の樹立と書いておりますが、選挙で多数を得て、多数によつて、議会主義を通じて政権をとる、こういう考え方とは違うのですか、その点どうですか。
  419. 吉田治平

    吉田証人 条件が許せば、それもあるいは一方法ではないかと思います。
  420. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 条件が許せばという言葉はわからないのですが、条件は許されておるのであつて、選挙をすれば、選挙において……。     〔発言する者あり〕
  421. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  422. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 あくまでも国民の意思を議会に反映し、国民の気に入らない政権は国民がとらせない。あくまでも国民が選挙をする。そういう議会主義の方法によつてやる。その方法をあなた方はやられるのか、あるいは別個の方法かということを質問しておる。
  423. 吉田治平

    吉田証人 非常にむずかしい問題で、私も正確にはお答えできないかと思いますが、やはり佐竹委員の、いわゆる民主的な手続による、議会主義を通じてと言われる、それにはやはりそれにふさわしいだけの前提が必要だろうかと思います。といいますのは、民主主義の徹底、それから国民に完全な自由が保障されるしいうような前提があろうかと思います。しかし現在のような反動政府の下においては、いかんながらその前提が得られないと思います。現に……。
  424. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 いわゆる反動政府の下では、その前提が得られない場合には、別個の方法をとるという考え方ですか。
  425. 吉田治平

    吉田証人 別個の方法と言われるのがよくわからないのですが、少くとも佐竹委員の思つておられるような方法ではないということは、わかるような気がするのです。
  426. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私ははつきり言つておきますが、民主主義の立場において、議会を通じて、議会主義によつてやる。そしてその制度が悪かつたら、議会によつて改めて行く。あなたは、反動政府であるから、いろいろな勤労大衆を抑圧するところの悪法をつくる、こういうふうに言われるが、しかし一たび選挙を通じて、われわれが多数をとつたらいいじやないか。そしてその悪い法律は、われわれ国民大衆にいいような法律にかえて行けばいい。制度にかえて行けばいい。制度はあくまでも議会を通じてやるということを、あなた承認されますか。議会を通じてやるということが、日本のいわゆる民主革命である。こういうように考えられますか。議会の外において、何か別に方法があるのか、その点を私は聞いておるのです。議会主義を認めるか認められないかということです。
  427. 吉田治平

    吉田証人 議会主義を認めます。非常にけつこうだと思います。議会でのそのような反動政府に対する鬪いをどんどんやるべきだと思います。しかし議会の中の鬪いのみでは、不十分ということは言えると思うのです。
  428. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それはもちろんわれわれも議会の中の鬪いをやるし、国民大衆も啓蒙しなければならぬのですが、しかしまつたくあなたは、議会主義ということを前提にした、議会主義において国民政府を樹立するという考え方であるということを、はつきり認めてさしつかえないわけですね。
  429. 吉田治平

    吉田証人 議会主義によつて政権をとるということ、これも一つの大きな手段であるということは認めます。
  430. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと吉田君に聞きますが、議会主義によつて政権をとるということも、一つの手段だといわれるが、もう一つ何かありますか。
  431. 吉田治平

    吉田証人 われわれが知つている範囲内の歴史においては、やはり議会制度、議会主義のみによつては、政権を獲得されておりません。
  432. 内藤隆

    内藤委員長 どういうものによつて獲得されておりますか。議会主義以外ではどういうものによつて政権が獲得されておるか、明瞭に答えてください。——君は機関紙に堂々と、国民政府樹立などということを書いておるほどの博学な、しかも偉いお人が、こういう簡單な問いに答えられないということはない。君はああいう文字をただ軽率に書いておるのかね、無責任に書いておるのかね。
  433. 吉田治平

    吉田証人 この機関紙に関して、また私が執筆した範囲内においては、責任を持ちます。
  434. 内藤隆

    内藤委員長 そうすれば、議会主義以外の他の方法というのは、どういうのですか。
  435. 吉田治平

    吉田証人 われわれが知つている今までの革命の歴史、これはすべて暴力によつて政権をとつております。
  436. 内藤隆

    内藤委員長 そうすれば、君はその他の方法というのは、暴力を肯定しておるのですか。
  437. 吉田治平

    吉田証人 肯定します。
  438. 内藤隆

    内藤委員長 肯定するんだね。
  439. 吉田治平

    吉田証人 肯定します。
  440. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうすると、われわれは、あなたは日本共産党員であられるというように聞いておりますが、球根栽培法で出しておる中核自衛隊の組織、目的、これはどういうものであるかということを、知つておられる範囲内で教えていただきたいと思います。
  441. 吉田治平

    吉田証人 残念ですが、知つていないのです。
  442. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 ただいまあなたは暴力を肯定されると言いましたが、その暴力とはどういう暴力ですか。
  443. 吉田治平

    吉田証人 たとえば私がここへこうして立つているのも、今まで不当に二十五日間も拘置所に拘留されていたのです。反動政府の暴力的な機構によつて隔離された。だから十分な証言——それだけの時間も余裕もなかつた、だからこういうような前提、このような暴力的な国家の機構、これに対してはやはりわれわれはあらゆる機会をとらえてこれを排除して行くという方法については、そのとき最も適当だと思われる方法によります。
  444. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 そうしますと、要するに自由労働者やあるいは朝鮮の人々をもつて押しかけて行つたり何かするときも、あなたの意に沿わなかつたら、それを暴力の方へ向けてさしつかえないという考えをあなたはお持ちになるのですか。
  445. 吉田治平

    吉田証人 必ずしもそうは思つておりません。
  446. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 目的が達成されない、いわゆるデモ行為の目的が達せられない、そうするならばあなたは暴力を肯定するとするなれば、暴力を使わなければ目的が遂行されぬという結果になりはしませんか。あなたが暴力を肯定されると言うから、私はそういう考え方をする、暴力を否定されるというなら、私はそういう考えは持たぬ。
  447. 吉田治平

    吉田証人 そういうことをおつしやられると、非常に残念なんですが、暴力とは何ぞや、暴力一般ということになつて、非常に問題は廣汎になろうかと思います。ただわれわれが言つているのは、やはり前提として、非常に暴力的な国家の機構が、人民のすみからすみまで拘束している。こういうような前提を取除くために、われわれはそのとき最も適当と思われる方法によつてつて行く、そのことは必ずしも一から十まですべて暴力だ暴力だというような、反動政府のデマ宣伝とは違う。
  448. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それはあなたの言われることは私は一応了解できる。しかしながらいわゆる今の政府がかりに暴力政府だとすれば、暴力政府というものは、一体だれがつくつたのであるか、吉田さんがかつてにつくつたのか、あるいは社会党のボスがかつてにつくつたのか、いわゆる暴力政府というものはだれがこういう政権を持たしたのか、こういう問題をあなたはどう考える。
  449. 吉田治平

    吉田証人 金と権力に迷わされた国民がつくつておると思います。
  450. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それではあなたは国民を信頼されぬのですか。国民は金と権力にいつも迷わされておるのですか。あなたは金と権力……。     〔発言する者多し〕
  451. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  452. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 重要な点だ、君の考えとぼくらの考え方は違う。     〔発言する者あり〕
  453. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  454. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 国民は金と権力に迷わされるものなんですか、いわゆる国民がつくつたとしたならば。
  455. 吉田治平

    吉田証人 残念ながら非常に国民は疲労困憊しております。(笑声)賃金は安いし、それから戰争反対だ、平和だと言つたら、すぐほうり込まれるというような状態ですから、ほんとうを言えばやはり働く者の政府をつくりたい。しかし選挙のときに、——今も自由党の議員さんは非常に選挙の方で忙しいようですが、そうやつて金をばらまいだりなんかされる。そういうもので迷わされやすいと思つております。迷わされた国民が現在の自由党政府をつくつておると思います。
  456. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 結論をつけると、議会主義はいけない、議会主義でもつて、金や権力に迷わされた国民相手に政権をとつたのではいかぬから、そこであなたの言われるように、政権をとるのに暴力以外に仕方がない、こういうようにお考えになつておられるのですか。そう認めてもさしつかえないですか。
  457. 吉田治平

    吉田証人 そこまではまだ思つておりません。
  458. 山口武秀

    ○山口(武)委員 少し重要な発言がありましたので、念のために聞いておきたい。先ほど議会主義一般を否定するのかどうかというような佐竹君の質問があつたのでありますが、その際あなたの言われたのは、前提が問題であるということを言われましたが、これはもちろん現在の社会情勢は佐竹君の認めているようなものではない。單に議会主義ということを言つております。日本にあたかも民主主義と自由があるがごとき言辞を社会党の佐竹君は弄しておりましたが、実際問題としては今議会主義というものは無視されている。憲法も無視されている。こういう状態において再軍備も強行されている。あるいは地方の状態を見ますと、これはあなたたちのデモにおきましても、デモの自由やあるいはあなたたちの言論、出版の自由まで拘束されている。憲法無視の行為が行われている。さらに言いますならば、たとえば税務署における税金の徴収方法も、所得税法を無視した徴收、あるいは国税徴収法を無視した徴収が行われている。こういうものが解決されなければ、いわゆる民主的な方法による日本の人民政府の樹立は不可能である。こういう意味で言われたのかどうか、この点をお聞きしておきたい。
  459. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと山口君に申しますが、この程度の人をとらえて、あなたともあろうものがそういう一体わかり切つたようなことを聞いておるのは少し……。
  460. 山口武秀

    ○山口(武)委員 委員長、ごまかすな、これは必要だ、証言を要求する。簡單だ。
  461. 内藤隆

    内藤委員長 いや、証言させますが、あなたもこの程度の者をとらえて、何だか誘導尋問をして証人のほんとうに述べたことを取消さすようなことをすべきものじやないと思います。それでは吉田君、答えてください。
  462. 吉田治平

    吉田証人 はい。山口委員の言われた通りです。前提が、すなわち議会主義を破つているものの本拠本元が現在の反動政府だと思うんです。
  463. 内藤隆

    内藤委員長 ばかばかしくて……。もうここらにしようじやないか。どうです山口君。
  464. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ごまかすな、ごまかすな。あなたは先ほど暴力という言葉を使用をされましたが、一般に言われている暴力と、あばれる力という意味においての暴力と言われておる。さらに私は歴史の上における変革の原動力となつたものは、あばれる力というものではなかつたろう。これはやはり実力という言葉ではなかつたろうか。この点の正確な言葉の意味を言つてください。
  465. 吉田治平

    吉田証人 暴力一般についてここでつまびらかにするだけの私は能力を持つておりません。
  466. 内藤隆

    内藤委員長 それでよろしい。
  467. 吉田治平

    吉田証人 しかしですよ……。
  468. 内藤隆

    内藤委員長 能力ないものは、しかしと答えなくてよい。(笑声)
  469. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたがまさか、いわゆる暴力という言葉で使つた言葉は、あばれる力という意味で使つたというよりも、実力という意味で使つたんだろう、これは常識です。さらにあなたが先ほど、このいわゆる私の言う意味における実力が歴史の原動力になつていることを認めると言いましたのは、世界の歴史において、あるいは日本の歴史においてそうした力というものが社会の発展の原動力になつて来たのだ、この一般の問題として認められたのかどうか、この点をお伺いしたい。
  470. 吉田治平

    吉田証人 その通りです。今までの歴史上におけるいわゆる革命というものが実力によつて、暴力によつて行われて来た。
  471. 田渕光一

    ○田渕委員 先ほどいかにも現政府が、あるいはまた政府の與党たる自由党が、金銭とその他のものによつて国民を愚弄してやつておる政治だというようなお話がありましたが、あなたが広島市の自由労組の四千人からあるこのたまりの前に、堂々と事務所を持つて、その選挙の結果は二百票しか入つておらぬじやないか。これをあなたはどう考えますか。
  472. 吉田治平

    吉田証人 どう考えますかつて、その通り考えます。
  473. 田渕光一

    ○田渕委員 どう考えるかということです。買收が行われて、君が二百票とつたのであるか、あるいは買收をしないために入らなかつたのか。自由労働者の人たちは買收によつて投票したのであるかないか、あなたはこれをどう考えるか。
  474. 吉田治平

    吉田証人 おそらく買收によつて他の候補者に投票したものと思います。
  475. 田渕光一

    ○田渕委員 君はそう独断してもよろしいが、大衆はもつとりこうなんだ。君が見るほどではない。そこで先ほどからあなたの証言で、いわゆる暴力革命に持つて行くということがわかつたが、さてそこへ来るまでには五全協の十月会議以来発せられたところの軍事行動、それに基くところの球根栽培法には、あなたが先ほど証言されたことがずつと書いてある。この球根栽培法に基くところの中核自衛隊あるいはまた取締り官憲に対する畏怖、こういうような線をやる前提としてこのデモをやつた、こういうことになつて来るのでありまするが、あなたはどう考えるか。自分から割出したところの思想でやつたのであるか。あなたの証言であなたの人となりあるいは能力というものをわれわれは判定できまするが、結局ここに持つて行くということは、陰におどらす者があつてこういうふうにあなた方はおどつておると私は思うのだ。要するにあなたの行動の羅針盤とも言うべきもの——中核自衛隊によつてつていること、あるいはその他の行動は、球根栽培法の指示に基いてやつておるのであるかどうか、これを伺いたい。これから思想をとつておられるか、それとも吉田独想の暴力革命で行こうというのであるか、これをはつきり聞きたい。
  476. 吉田治平

    吉田証人 少くとも当日に関する限りは、当日デモに参加しました大衆の意見によつてつたのです。
  477. 田渕光一

    ○田渕委員 大衆を指導したのがあなたなんだ。そこであなたの思想というものが、こういう球根栽培法から来ているのであるか、あるいはそうでなく独想したものであるか、あるいは過去は知らず、今日までは知らず、将来はこういう方式で行こうというのであるかどうか伺いたい。
  478. 吉田治平

    吉田証人 ……。
  479. 田渕光一

    ○田渕委員 もう一度はつきり言いましよう。それならばこう伺えばいいでしよう。これからもあなたの独想的な暴力主義で行こうというのであるか、暴力革命に持つて行こうというのであるか、そうでなく党の指導による統一的な方法によるところのもので大衆を指導して行こうというのであるかどうか。
  480. 吉田治平

    吉田証人 暴力々々と言われますが、先ほども言いましたように、われわれはそのとき考えられる最もいい方法によつてやる。議会主義も非常にいい重大な方法一つに違いない。それからそのほかにも方法があるということを言つておるのです。現在一から十まで、何をやるのも暴力々々——委員さんが言われた暴力というのとわれわれが考えている暴力というのとはおそらく違うのだろうと思いますが、少くとも何からかんからみな暴力でやる。それからこれからもやるのか、必ずしもそうじやないのです。
  481. 田渕光一

    ○田渕委員 必ずしもそうじやなかつたら、現在の議会というものがある以上はとうていあなたの目的が達せられないわけじやないですか。
  482. 吉田治平

    吉田証人 さつきも言いました通り、議会主義が非常に大事な方法であるということは先ほども証言した通りであります。非常に大事な方法です。われわれは重大な関心を持つております。
  483. 田渕光一

    ○田渕委員 それならば球根栽培法に書いてあるところの、議会主義を否認し、暴力を否認し、石ころであろうが何であろうが、そこにあるものがわれわれの武器であり、やがて中核自衛隊の活動から、さらに人民軍をつくつて、国民政府を樹立するのだ。いわゆる実力でやるのじやなく、暴力で行くのだ、暴力革命に持つて行くのだとあなたは証言されておる。そうすればこの球根栽培法にあるとこらの実践をあなたはしておられるのだから、そして今後も球根栽培法によつてやるのかどうかということ。それともそういう日共の指導あるいはそれらの指導を受けなくても、吉田イズムで、吉田独想の方法で行くのかと聞いているのです、
  484. 吉田治平

    吉田証人 独想によつてやることは絶対にないです。われわれは自由労働組合として行動するときは、自由労働組合の正式の機関の決定に従つてやります。
  485. 内藤隆

    内藤委員長 正式の機関というのは何です。
  486. 吉田治平

    吉田証人 労働組合には労働組合として会議を運営するための機関があります。日常の業務は執行委員会の決定によつてつております。
  487. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると執行委員というものがあるのですか。
  488. 吉田治平

    吉田証人 おります。
  489. 内藤隆

    内藤委員長 何人ほどですか。
  490. 吉田治平

    吉田証人 現在八名です。
  491. 内藤隆

    内藤委員長 それは日本人だけですか。
  492. 吉田治平

    吉田証人 全部日本人です。
  493. 内藤隆

    内藤委員長 朝鮮の人は入つておらないのですね。
  494. 吉田治平

    吉田証人 入つておりません。
  495. 田渕光一

    ○田渕委員 どうも自由労働組合の執行機関で決定して行くといつても、球根栽培法の通りつておるのでありますから、あなたのやつて来たのはその通りずつとやつて来ておるのです。だから吉田独想で行くのかということを聞いておるのです。あなた方の自由労組において決定していることは暴力革命である。看板は全国の統制をとつて行かなければならぬ。ここには一つの指導というものがなければならぬ。その指導はあなた方がきめたものでやるのか。それとも全国的な指導によつて、つながりを持つてやるのかどうかということを聞いておるのです。
  496. 吉田治平

    吉田証人 われわれは組合委員ですから、組合の機関の決定によつてやるのです。組合の機関の決定以上にもやらないし、以下にもやらない。組合の決定すなわち大衆の意見の決定に従つて忠実にやります。
  497. 田渕光一

    ○田渕委員 そうすると組合では、そういう意見が暴力革命へ行こうという、先ほどあなたが証言されたような意向に今なつておるのかどうか。組合の執行委員か八名おると言つたが、それらがそういう決議をしておるのかどうか。
  498. 吉田治平

    吉田証人 今そういうことを言つておるのではありません。
  499. 田渕光一

    ○田渕委員 今言つていないとすれば、これから言うのであるか、それはどういうわけですか。
  500. 吉田治平

    吉田証人 何べんも申し上げます通り、われわれがわれわれの目的とするところまで到達するのに、一から十まであなた方の言われる暴力々々ということではない。繰返して申し上げますが、議会主義も非常に重大な方法一つである。それからもう一つ方法もある。それを大衆がその通りやれと言つたわれわれはその先頭に立つてやります。
  501. 田渕光一

    ○田渕委員 大衆が言わなければやらないというのですか。
  502. 吉田治平

    吉田証人 われわれはワン・マンじやないのです。大衆の要求を忠実に実現する闘いの先頭に立つ愛国者として行動するのです。われわれは大衆の要求する方法によつて、大衆の要求する手段によつてやります。
  503. 田渕光一

    ○田渕委員 これは広島自由労組の重大な問題だから私は伺うのです。大衆の討議にかけてやるのであるが、まず執行委員会で決議し、しかも君が一人で独創でやるのじやない、しからばこの広島の自由労組というものは、暴力革命へ持つて行こうという。要するに非合法なものを決議しておるのかどうかということを伺いたい。
  504. 吉田治平

    吉田証人 一から十まで暴力々々と言つている人は一人もおりません。
  505. 内藤隆

    内藤委員長 吉田君に聞きますが、君は口を開くと大衆と言うが、大衆はともかく、君を支配しておると見られる自由労働者すら君に二百票しかくれないんだ。君は大衆からあいそをつかされておるということを自覚しないのか。     〔「委員長侮辱しておるのか」と呼ぶ者あり〕
  506. 内藤隆

    内藤委員長 侮辱していない。選挙の結果を見ているんだ。
  507. 吉田治平

    吉田証人 何ですか。
  508. 内藤隆

    内藤委員長 君は大衆々々と口を開けば大衆の先頭に立つとか何とか大衆の名に隠れんとするが、君が市会議員の候補に立つたとき四千からの君の称する大衆がおられて、しかも自由労働者なんだ。その人々はやつと君に二百票程度の票しかくれないということは何を意味しておるのかということなのだ。
  509. 吉田治平

    吉田証人 非常に不正確なんです。委員長の言われる二百票の約二倍、三百七十八票あつたのです。
  510. 内藤隆

    内藤委員長 だけども四千票から比べるとものの数でもない。
  511. 吉田治平

    吉田証人 その三百七十八票しか得られなかつたのは、先ほど申し上げました通り、おそらく自由労働者は一人残らず私に出てもらいたいと思つておりました。しかしわれわれの生活があまりにも苦しいから、そうして選挙の前になつたら自由党の人がよくやつているような買収によつておそらくごまかされたんでしよう。
  512. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると三千七百というのはみな買収されたのか。
  513. 吉田治平

    吉田証人 おそらくそうだと思うのです。
  514. 田渕光一

    ○田渕委員 大衆々々というが、実際いつて日本の国民の大部分の意思をみな代表しておるこの政府が——あなたが大衆というあなたの党である共産党というものは十万の党員しかない。あるいはまたこれらをシンパする者においても二十万しかない、これらに向つて八千四百万の日本人口があるとするならば、十万や二十万の人をもつて大衆ということはどこから出る。つまり八千三百八十万の大衆を見なくちやならない。その大衆をわずか十万や二十万をわれわれの大衆々々ということは、ぼくはあなたが共産党の宣傳に乗つておると思う。大衆というものは少くとも日本の国民の大部分でなければならぬ、それをあなたが大衆というのは、共産党を支持するだけを、共産党員だけを大衆といつておるのか、日本国民全部をつかまえて大衆といつておるのか、それを聞きたい。
  515. 吉田治平

    吉田証人 少くとも日本国民の大多数は現在の自由党を支持しておりません。(笑声)     〔「委員長、これはお話にならぬ」と呼ぶ者あり〕
  516. 内藤隆

    内藤委員長 諸君にお諮りいたします。あとにもう一人証人がおりますから、この程度証人をとらえて貴重な時間を費す……。     〔「この程度とは何だ、取り消せ」と呼ぶ者あり〕
  517. 内藤隆

    内藤委員長 いや取消さぬ。この程度で次の証人に移つてはどうかと思います。     〔「そんなばかな侮辱したことがあるか、委員長いけないぞ、この程度というのを取消せ」「この程度でたくさんだ、不逞の徒だ、国賊だ」と呼ぶ者あり〕
  518. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ吉田証人に対する尋問は終了いたしました。証人には御苦労でした。     —————————————
  519. 内藤隆

    内藤委員長 引続き金在賢君より証言を求めることにいたします。金在賢さん、朝鮮のほんとうの呼び方を知りませんから、日本の呼び方で申し上げますが、御了承願います。
  520. 金在賢

    ○金証人 けつこうでございます。
  521. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまお見えになつておられる方は金在賢君ですか。
  522. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  523. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ書面をもつて承知のことと存じますが、本委員会において正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御承知を願います。  これより治安警備状況に関する件中、広島事件につき証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科師医、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて默秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読してください。     〔証人金在賢君朗読〕    宣 誓 書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  524. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  525. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  金在賢君は、現在大韓国居留民団広島県本部の団長をしておいでのようですな。
  526. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  527. 内藤隆

    内藤委員長 団長になられるまでのあなたの略歴を述べてください。
  528. 金在賢

    ○金証人 私は、終戦前までは学生生活を送つておりました。終戦後日本に在留する朝鮮人全体の生命財産を擁護する目的をもつて結成された朝連の方に加盟しました。そしてその団体の呉支部の外務部長を約二年間勤めて、今から四年前に、朝連がだんだん在日韓国人全体の生命財産を守るどころか、むしろ共産系の一手先として行かんとするがゆえに——私たちの真の目的は在日朝鮮人の生命財産を守るにあるのであつて、在日朝鮮人全体が共産党一党を支持し……。
  529. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとお待ちください。そうなると略歴というよりか、あなたの主張になりますから、団長になるまでにどういう経歴を経て来たか。
  530. 金在賢

    ○金証人 約二年間朝連の幹部を勤め、後に大韓民国広島県本部の結成をし、同時にその団長になりました。そして今日に至つています。
  531. 内藤隆

    内藤委員長 学校はどこをお出になりました。
  532. 金在賢

    ○金証人 京都の立命館大学理科を出ました。
  533. 内藤隆

    内藤委員長 広島県本部というものは、あなた自身がつくられたのですか。
  534. 金在賢

    ○金証人 私自身でなくて、みんな大衆がつくつて、最初首唱したのが私、同時に選挙の結果私が団長になりました。
  535. 内藤隆

    内藤委員長 首唱をしてこういう民団をつくつて、最初の団長に選ばれた、こういうことですね。
  536. 金在賢

    ○金証人 そういうわけです。
  537. 内藤隆

    内藤委員長 広島県には大体朝鮮のお方はどれほどおられますか。
  538. 金在賢

    ○金証人 約二万人おります。
  539. 内藤隆

    内藤委員長 安芸、安佐両部には一体どれほどの人がおいでになりますか。
  540. 金在賢

    ○金証人 両方合せて約四千ちよつと突破するのじやないかと思います。
  541. 内藤隆

    内藤委員長 その四千の方々の生活の状況をひとつ述べてくれませんか。
  542. 金在賢

    ○金証人 御存じのように、今日本におる韓国人は、終戰直後いろいろ職業問題において朝鮮人、すなわち第三国人というような立場で、日本の各職場から締め出されておりまして、ほとんどが今無職状態にあり、同時にその生活を確保せんがために、どぶろくもしくは密造、そういうような関係において従事しております。日本の各職場に行つたところで、朝鮮人という一つのレッテルのために使つてくれません。日本のすべての職場は、ほとんど日本人が占めておる。朝鮮人はどこも働く場所がありません。
  543. 内藤隆

    内藤委員長 そこであなたの証言によると、四千人ほど安芸、安佐におるというか、この中には未登録の者がおりませんか。みな登録されておりますか。
  544. 金在賢

    ○金証人 登録とは、どつちの登録ですか。
  545. 内藤隆

    内藤委員長 外国人登録です。
  546. 金在賢

    ○金証人 ほとんど登録しておるでしよう。していない者もおるらしいが、詳しいことはわかりません。
  547. 内藤隆

    内藤委員長 生活状態のことは今大体お聞きしましたが、生活保護法を受けておる数はわかりませんか。
  548. 金在賢

    ○金証人 大体わかつていますが、本部の方の統計におきましては、約一割近く保護を受けています。
  549. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、四百人ほどの者が生活保護法の保護を受けておるというのですか。
  550. 金在賢

    ○金証人 そうです。一割近くです。
  551. 内藤隆

    内藤委員長 民戰とか、あるいは祖防隊とか、中核自衛隊とか、あるいは抵抗自衛隊などといういろいろな名前をわれわれ聞きますが、こういう団体組織あるいはその数、その性格等を御承知ならば、ひとつ詳細に述べてください。参考のものがありましたら、それをごらんになつて答えられてようございます。——まずこう聞きましよう。民戰というものから説明してください。
  552. 金在賢

    ○金証人 民戰と祖防、これは簡単に略歴を申しましたならば、終戦直後、さつき私が申し上げたように、最初の二年間は、純然たる日本に住んでいる朝鮮人の生命財産を守るという一つの目的において結成された団体でありますが、中間において、約二年後において、これは完全に左翼化しつつあつたのであります。そうすると同時に、むろん皆さんも御存じであるように、大韓民国居留民団、同時にそれに反対して純然たる朝鮮人の生命財産をほんとうに守らんがために結成されたのが居留民団であります。大体あの人たちが今動いているのは、歴史になりますが、終戦前、日本が朝鮮を植民地化しておるときに、朝鮮の愛国者、つまり朝鮮の独立者たちが、独立せんがために日本政府と闘争しておつたのであります。同時に、日本の共産党もそのとき日本政府と闘争しておつたのであります。そうして、結局日本政府を倒す一つの目的においてある一致するところがあるがゆえに、ほとんど愛国者という人たちの主要なものが同じく刑務署につながれておつたのであります。そうして以心伝心でそこにお互にあるラインができたのであります。その後マ司令部の命令によつてこの留置されておつた人たちが皆釈放されると同時に、各地方でこの人たちが一ぺんに英雄になり、一つの愛国者のごとく見られたのであります。そうして朝連で一つの選挙をしたときにどうなつたかというと、この人たちが当選されたのであります。従つておのずから左翼化して行くのは言うまでもなかつたのであります。そうしてそのときに反対して内部的にいろいろ軋轢があり、闘争があつたのでありますが、現段階において、民戰の目的自体は完全に日本国の破壊にあり、日本において共産党に反対する思想団体を破壊するということが目的であります。それはいろいろ質問がありましたら順々に例をあげて申し上げてもけつこうであります。同時に、この人たち生活状態はどうであるかといえば、なるほど朝鮮人の場合、おのおのがまじめに、一生懸命に自分の定安した職業を探そうという気持があれば、ある程度失業問題も解決づける余地が全然ないとは言えないのであります。しかるに、結局私たちが生活に困るのも、今の吉田反動内閣のせいだ。同時に、ありとあらゆる、不満、つまり本国を愛する愛国心を利用し、また生活から来る不満、すべてが反動内閣吉田のせいであつて、反動内閣の吉田を倒すことによつてのみ私たちの生活は完全に解決し得るのだということを無知な——八割近くが義務教育を全うしていない現状のレベルにおいて、その人たちに思い込ましておるのです。それは第三者の日本の皆様から見た場合に、ある程度不審な点もあるかもしれませんが、しかし現状の朝鮮人の場合にはどうであるかといえば、朝鮮人のほとんどが新聞も読めない。また日本人からいろいろ話を聞いても、過去の苦いいろいろな経験において反感を持つております。ただ信頼できるのは同じ民族のことで、朝鮮語によつて耳に伝わつて来る、入つて来ることが唯一の信用できることであります。この人たちの悲痛な叫び、生きんがために生活しておるのに、日本の警官が検挙することは、明らかにお前たちの生命を取上げるのだ、責任は日本政府にあるのだ。むろん日本政府の責任もないとは言えないが、全体のほとんどが本人の責任であるということは言うまでもありません。私たちは日本に来て日本は法治国であり同時によその家にお客に行つたような状態にあります。日本の法律を守り、日本自身の建設と日本自身の安全を守るときにおいてのみ、日本に住む資格があると思います。しかるに今民戰がやつていることは韓国と日本の国を刺さんとしておるのであります。理由は日本人に対する不満、生活の不満、これはすべて日本政府が悪いのだ、日本人が悪いのだ、そうしてその気持を助長さして、今左翼系の勢力範囲にある朝鮮人の場合、すべての日本人を徹底的に憎んでおらぬのはほとんどおらぬ。ただ日本共産党員を憎んでおりません。こういう現状においてちようど油のごとくいついかなる場合においてもマッチ一本つければすぐ爆発します。皆さんがニュースで見るようなまき割りを持つて日本政府と闘う。徹底した敵愾心に燃えておる。
  553. 内藤隆

    内藤委員長 大体それは民戰の説明なんですね。
  554. 金在賢

    ○金証人 簡単に言いますとそうです。
  555. 内藤隆

    内藤委員長 ずつとあとに行くとそれを聞く場合があります。祖防隊というのはどういうのです。
  556. 金在賢

    ○金証人 祖防隊イコール民戰であります。祖防隊の場合は、これが純然たる民戰を擁護するところの団体であります。この中には婦人もいるし、純然たる訓練を受けない人たちもおります。しかしこれを擁護し守るのは祖防隊、つまり青年であつて、訓練を受けることによつて、もしそこに警官がおつて逮捕するときなどそのじやまをしたりするために、つまり彼ら自身が政治的に大衆を誘導して行くときに、そういう迫害つまり警察官が検挙に来たとか、もしくはそれをじやましたりするのを未然に防止するのが祖防隊であり、同時に一つの役割は日本の国土破壊にあります。
  557. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、祖防隊の目的とするところは日本の国土破壊にあるのだね。
  558. 金在賢

    ○金証人 しかりです。
  559. 内藤隆

    内藤委員長 そうしてそれは民戰の前衛隊をなすわけですね。
  560. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  561. 内藤隆

    内藤委員長 中核自衛隊というのは……。
  562. 金在賢

    ○金証人 中核自衛隊は日本共産党においてこれを何しておるが、しかし中核自衛隊は祖防隊にひとしいのです。日本共産党がつくつておる中核自衛隊があります。それは国家に対する愛国心を持つております。つまり国家を防衛することにおいては、結局は同じ役割をなしながらも、表向きの宣伝をやつておるのか祖国防衛隊あるいは中核自衛隊であります。
  563. 内藤隆

    内藤委員長 それから抵抗自衛隊というのがあるそうですね。これもそういうような性格を持つておるのですか。
  564. 金在賢

    ○金証人 結局人間は一緒です。ただ名前をいろいろかえる。民戰とか祖防隊とかいろいろ名前をかえる。便宜上かえただけであつて、実質上は同じ人間です。
  565. 内藤隆

    内藤委員長 民戰といい、祖防隊といい、中核自衛隊といい、抵抗自衛隊というも、名前だけをかえて中身は同じ人間がやつておる……。
  566. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  567. 内藤隆

    内藤委員長 その組織をもつてどういう闘争をやつておりますか。その闘争の実情を御承知範囲でお答えを願いたい。
  568. 金在賢

    ○金証人 今日本におる、特に日本人の関係は私が言及するまでもなく、朝鮮人の問題に特に重点を置きます。すなわち民戰、祖国防衛隊、彼らが主張するところについて来ない朝鮮人すなわち韓国人を迫害し、あらゆる手段をもつて自分らについて来るようにするのが目的であり、それには脅迫もあるし、また暴行もあるし、またありとあらゆる行為があります。そういうありとあらゆる行為をなすのが彼らの目的であり、それによつて恐怖心にからせ、同時にわれら民団自身がなさんとするありとあらゆる行為を妨害するところにこの目的があるのであります。
  569. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとそういう団体から生命の危険までも感じつつあるのですね。
  570. 金在賢

    ○金証人 あります。今私たちはありとあらゆる迫害を受けつつあります。しかし私たちは日本の政府、日本の諸機関を信頼するがゆえに、今日まで何もそれに対する対策を持つておりません。むろん私たちがその対策を持つということは、一例をあげましたならば、三月一日にこういう例があります。広島県においては、あしたは三月一日でいろいろ事件が起る。その前に支部の幹部の家に催涙彈を投げつけられた事実があります。同時に……。
  571. 内藤隆

    内藤委員長 その点はまた聞きましよう。よくこちらでも調べがついておりますから……。そうするとこれを端的に申し上げると、日本の国土の内に朝鮮の皆様が韓国系と北鮮系にわかれて抗争を継続しつつあるというのは事実なんですね。
  572. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  573. 内藤隆

    内藤委員長 三月一日に安芸と安佐両地区で決行された三・一闘争の実情をこれからお聞きしようと思うが、今あなたの証言中にあつたが、民団支部が襲撃されたその実情から述べてください。
  574. 金在賢

    ○金証人 結局私たちが特に三月一日警戒したのが安芸、安佐であつたのであります。なぜならばここには公安条例というものがないのです。集会ができるのです。いつでもデモなどはできるのです。その前に特に不穏の空気があつたのが脅迫状、ビラ、同時に催涙彈を投げつけたという事実にかんがみ、この二つが一番危ぶないという状況にあつたが、そのとき私たちは——かれたちが今使つている戰法はゲリラ戦法を使つております。私たちは防衛するのだ、何とかやつつけなければならぬ、私たちがじつとしておつて命殺すのを待つているわけには行かぬ、それではどうすればいいか、竹やりをこしらえるとか、防衛隊をこしらえるというお話もあつたのですが、それでは結局けんかになる。私たちは日本というよその国であるだけに、そういう問題を避けたい気持で、いろいろ刺激をさせる行為を避けたんであります。結局何もしない。ただ使嗾、あおる条件があるから、何とか警備してもらいたいということを依頼した範囲で、ほかには何にもしなかつたのであります。しかるにこのときどういう状況にあるかといえば、午後四時、その前にいろいろ何があつたのですが、午後四時前に、安芸警察から用件があるという電話があつた。だから民団の人たちは幹部が四、五名、ごはんを食べずに待つておつたが、結局警察が来れば大丈夫だというので、一応解散した。その解散してものの十五分か二十分以内に、向うから約五十名がさつと来て事務所を取巻いた。その中から六名が、民団の階段がありますが、その階段に上つて来たんであります。上つて来て、結局そのときみな解散したあとですから約五、六名民団の幹部しかおらぬときに来て、大きなプラカード——プラカードは武器なんです。その武器を持つて来て、机の上に上つて、たたき出して、団長を出せ、従つて団長は、結局そういうことは予期したことなんだけれども、油断したときに急にぱつと来たのだから、あわてたのです。あわてて団長はどうすることもできなかつたのです。結局めちやくちやにやつた。彼らは棒を持つて来て、ガラスを破り、電話線を切り、机をこわし、ありとあらゆる器具をたたきこわして、ちようどそれから十五分から二十分続いて、警察が来るという情報を聞くと、すぐさつと逃げ帰つたのです。
  575. 内藤隆

    内藤委員長 そういうことで六名ないし七名なりが五十名のうちからつき進んで来る、それを中核自衛隊というのですか。
  576. 金在賢

    ○金証人 それを中核自衛隊というか、それは防衛隊といつた方がいいでしよう。結局これには三種類あると私は見なしています。私たちが知つておる範囲ではどうかというと、これは去年の一月五日から約二月間訓練をいたしておるのであります。そのとき来た人たちは、あれは純然たる自衛隊ではありません。今使つている連中は、もう一つ下の人たちを使つています。純然たる自衛隊として訓練した人は、今大事にとらの子にしてしまつております。その下におります者がそのときに……。
  577. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとその入つて来た連中は、ほんとうの軍事訓練なんかを受けていないで、軍事訓練等を受けている中心となる者は、まだ表面に出していないわけですね。
  578. 金在賢

    ○金証人 いないでしよう。しかしその点は、彼らが必死でかくしておりますから、もう少し詳しいことはわかりません。
  579. 内藤隆

    内藤委員長 そういう連中が、軍事訓練等をやつておるというような事実を、あなたはつかんだことがありますか。
  580. 金在賢

    ○金証人 物的証拠と言つたら困ります。私たちは録音機や写真機を持つておらないから、物的証拠を出せないのですが、事実共産党の組織内においてやつている状況を把握しております。
  581. 内藤隆

    内藤委員長 それを述べてください。
  582. 金在賢

    ○金証人 去年の二月に、このときは行動隊という名目でやつたのです。自衛隊とか防衛隊とかの前ですが、このときにやはり広島県下で行われておる。約二十名可部において、この訓練を二箇月受けた事実があります。これは変装術だとか、尾行術とか、ありとあらゆるそういうこと、そして同時に精神的にマルクス理論を教える、こういうことを約二月間合宿訓練をやつた事実があります。私たちは支部からそういう情報を把握していますが、そこにはだれもその当時は入れなかつたのです。それから純然たるそのグループだけの部落がございます。そこにおいてそういう事実があつたということは、情報が入つておりますが、はなはだ残念なことには、私たちは録音機も写真機も持つておりませんし、私たちは警官じやないから、それはできなかつたのです。
  583. 内藤隆

    内藤委員長 そういう事実を……。
  584. 金在賢

    ○金証人 もちろんそういう事実ははつきりしております。
  585. 内藤隆

    内藤委員長 それで軍事訓練とともに、武器の製造等をやつておりますか。
  586. 金在賢

    ○金証人 その当時は武器の製造はやつていないでしよう。だが今武器の製造は明らかにやつております。
  587. 内藤隆

    内藤委員長 武器というとどんなものですか。
  588. 金在賢

    ○金証人 つまり武器として製造したのは、催涙彈もしくは拳銃、それ以外の可能な範囲においての武器をつくつておるのじやないかと思います。
  589. 内藤隆

    内藤委員長 昨年の十二月以降、密造酒取締りに対する朝鮮人の反撃鬪争には、全国に顯著な一つの特色が出ておると思いますが、安芸地区あるいは安佐地区はどうでしたか。
  590. 金在賢

    ○金証人 広島県においても、特に安芸地区、安佐地区の場合は、一番彼らの盛んなところでありますが、むろん一地区がやられた場合、みんな一緒になつてそれに反撃しようというので、それには、彼ら自身が、全部ちやんと連絡をとつてつております。
  591. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、そういう全国的に顯著な一つの特色が発見されるが、それは何かどこか背後に、これを指導しておる指導力があるということをお認めになりますか。
  592. 金在賢

    ○金証人 むろん認めます。
  593. 内藤隆

    内藤委員長 どういうものだと思いますか。
  594. 金在賢

    ○金証人 私が思うのに、むろんこれは朝鮮人だけの力だけでなく、朝鮮人のみの別派行動でもないのです。これはどこまでも日本共産党の一つの手先として、日本共産党の指令によつて動いておるのではないかと思います。ただはなはだ残念なことには、日本共産党から朝鮮人に與えた指令書は、いまだに私たちは把握できないのであります。それは官吏でなければできませんが、結局朝鮮人自身に対しては、色彩をかえて煽動しているような印象を受けられますが、結局本筋は絶対一緒であります。なぜならば、朝鮮人には朝鮮人に向くような、同じ指令が出たときにも、朝鮮人に向くように着色して朝鮮人を煽動しております。
  595. 内藤隆

    内藤委員長 そこで昨年の十二月以降、北鮮系の朝鮮人と思われるような人々が、集団的な暴行事件を各所に起しておりまするが、そういう原因は一体どこにあると思われますか。
  596. 金在賢

    ○金証人 むろんその原因は、日本共産党にあるのではないかと私は認めます。私たちは直接彼らと政治鬪争をして来たのでありますが、共産党を支持しない者は、一から十まで全部反動分子としている。彼らの理論で行けば、共産党を信じない者は、日本に住んではいけないことになつています。彼ら自身の口では、言論、思想は個人の自由だということを常に言つていながら、共産主義を持つておる者のみが言論、思想の自由があつて、それ以外の者は、片はしから全部反動分子となつている。こういうような一つの国際的な色彩を持つたところの大きな力、これはやはり北鮮にもつながれておるし、それから中共にもつながれておるし、すべてにつながれておるでしよう。それと同じようなやり方です。そこで結果的に見て、ほんとうにあの人たちが日本人であるかどうかということまでも、私たちは疑わざるを得ないような状態でありまして……。
  597. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、ただいまの証人の御証言を総合してみますと、北鮮系の朝鮮人が、そのような集団暴行をする裏には、共産主義もしくは共産党の、いわゆる背後関係があるということをお認めになりますね。
  598. 金在賢

    ○金証人 認めるどころか、確証をあげ得ます。かりに朝鮮人が日本共産党に入党します。この入党した共産党員が、今自衛隊とか、ありとあらゆるものを指導し動かしつつありますが、この日本共産党に入党した朝鮮人、この人たちがやつたことは、日本共産党がやつたことと、絶対認め得ることができると思います。
  599. 内藤隆

    内藤委員長 そういう一例から見て、さように断言し得ると思いますか。
  600. 金在賢

    ○金証人 思います。
  601. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、共産党というものは、北鮮系の人にこういう集団暴力を裏面においてやらして、みずからは背後であやつつて知らぬ顔をしておるということが、広島における現実ですか。
  602. 金在賢

    ○金証人 一例をあげます。ある親分がたくさんの子分を持つております。そしてどろぼうをして来いと言つてさせて、その品物は自分がとつて、それで検挙された場合、いつもどろぼうをした者のみ検挙される。そしてその親分は何にもしない。実際上日本の今の法律においては、どろぼうした犯人以外、その親分はつかまえることができないのです。そうすると、現状の段階では、どろぼうの手先は何ぼでも養えるのです。私は率直に後ほど申し上げますが、現状の段階では、日本の司法当局が、共産党を養つておるのではないかということを疑わざるを得ない状況であります。なぜならば、こういう段階にあります。たとえば三月一日に事件があつた。そうして検挙されて一週間か二週間のうちに出て来ます。この人たちが今度出て来るときには、英雄となつて出て来る……。
  603. 内藤隆

    内藤委員長 英雄ですか。
  604. 金在賢

    ○金証人 英雄視されるのです。彼ら自身においては、刑務所に行つて前科者だというので英雄視される。それで日本共産党が明らかにこういう破壊分子、殺人、強盗をした悪質分子を擁護し、養成する限りにおいては、これはほんとうに日本を思うところの同志であるかどうかということを私どもは思わざるを得ないし、同時にそういう日本国家において、私たちは私たちの生命、財産を日本の政府にまかせられないと感じております。
  605. 内藤隆

    内藤委員長 現在の心境から言うと……。
  606. 金在賢

    ○金証人 結果的にそうです。
  607. 内藤隆

    内藤委員長 日本の検察なり警察のやり方があまりにも手ぬるいので、自分たちの生命財産を守つてもらえるかどうか不安なんですね。
  608. 金在賢

    ○金証人 手ぬるいというのは根本的に間違つておる。その理由は、現在の法律では、捕縛した者は一応出さなければならぬ釈放せねばならぬ、だから釈放する。これでは結局あなた方が共産党員を養成しておるのじやないか。今の共産党のやり方にはマルクス理論があるが、明らかに一つの暴力団体もあるし、破壊団体もある。しかし捕縛したものは一応出さなければいかぬ。出て来たときには英雄になつて、まつ赤になつて、またこれがやる。それでは私どもはどうして守れるか。私どもの生命はしよつちゆう脅迫される。しかしここでどうするか。ここに一万の自分の輩下を持つておるが、自分の生命を守ることができない。向うは武器を持つておる。これが明らかに日本の法律なんです。こういう法治国日本において住む限りにおいては、法律を尊重しなければならぬ立場にある。しかしこれ以上私どもが法律を守ろうとする気持をどうしても許さない状態である。私どもは今自身の生命財産がある以上、やはり彼らと同じような鬪争をしなければならぬ立場にある。日本は無法国じやないかと思うのです。
  609. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、あなたのおつしやることは、日本の国内において住んでおる以上は、法治国の日本の法を守つて行きたいから、向うが武器を持つてつて来ても、今そういう武器を持つて対抗することはしない。しかしながら自分たちは……。
  610. 金在賢

    ○金証人 これ以上はもう信頼できません。これ以上このまま継続する場合においては、私どもがあぶない。海田市の例を見てもわかる。
  611. 内藤隆

    内藤委員長 あぶないから、自然自分たちも自衛上武器を持たざるを得ないことになる……。
  612. 金在賢

    ○金証人 そうなんです。自分たちも持たなければならぬ。
  613. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、今のあなた方の生命財産を守つてもらうために、日本国政府に対してどういうような御希望がありますか。
  614. 金在賢

    ○金証人 法律をこしらえることは日本の国会、代議士諸君にやつていただくことにして、要はいかにすればこの目的を達し得るかという問題です。どろぼうをしたとか、もしくは計画的に破壊せんとする場合には、それに対してはしかるべき方法をとらなければならないと思います。かりに日本の体内に菌があつた場合、ピンセツトをもつて摘出することができる場合と、のこぎりのような、骨を切る道具を持たなければならぬ場合では、しかるべき方法を持つて行かなければならぬと思います。
  615. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問がありませんか。
  616. 浦口鉄男

    ○浦口委員 安藝、安佐地区両郡に在住しておられる朝鮮人の数が四千人と言われましたが、そのうち大部分は登録されている、こういう先ほどの証言がありました。その登録されている朝鮮人のうちで、北鮮系と南鮮系はどういう割合になつておりますか。
  617. 金在賢

    ○金証人 半分々々であります。
  618. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これは現在の登録の数字によつて半分々々ということだろうと思いますが、終戰後の傾向からいいますとどういうことになるか、お尋ねしたいのであります。われわれの見ているところでは、終戰後は非常に南鮮系が多かつたが、だんだん北鮮系が多くなつて来たように考えておるのであります。その点いかがですか。
  619. 金在賢

    ○金証人 これは北鮮系がはでに活動するからそういう印象を受けるのでしようけれども、事実今朝連系の中に入つている同胞の場合においても、脅迫されてやむなく入つて来ておる。実際内心はそうしたくないけれども、皆さんにはわかりませんが、朝鮮語で悪口を言うのです。日本語でばか野郎というよりも以上に朝鮮人にとつては精神的に響く言葉なんです。そうしてその人をみんな一緒にいじめる。かりに朝鮮部落においてそういう人が一人おつた場合に、これが冠婚葬祭の場合にも何とかしてそれを突き出すように妨害する。それでやつて行けない。やつて行けないからやむなく出て行くが、全体が絶対にそうではありません。良心ある韓国人の場合には決して……。
  620. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、安藝、安佐で二千名が北鮮系と見てよいのでありますが、その中でいわゆる共産党員としてはつきりした人はどのくらいおるというふうに考えておりますか。
  621. 金在賢

    ○金証人 私の方で実際に共産党員といつてシンパになつておる人間は、その全体の一割足らずしかないと思つております。これが結局煽動してその全体を動かすのであつて、ほんとうは党員として入つておる人数はそう大した数字ではありません。
  622. 浦口鉄男

    ○浦口委員 先ほどのお話の中にありました祖防隊は、いわゆる民戰の擁護的な役割をするものであつて、その中には青年、女子、子供すべて含む、こういう証言があつたのでありますが、そういたしますと、この二千人の北鮮系に登録された朝鮮人は、全部といつては何ですが、その大部分はこの祖防隊に組織されて、いつでも指令によつて動き得る態勢を整えている、そういうふうに見てよろしゆうございますか。
  623. 金在賢

    ○金証人 けつこうでしよう。
  624. 山口武秀

    ○山口(武)委員 議事進行について——先ほど証人証言中に、これは民団の襲撃の際であつたのか、特審局の支局の襲撃のときであつたのか明らかでなかつたのでありますが、これは速記録を見れば明瞭になると思いますが、窓をこわし、机をこわして、ありとあらゆるものをこわし、さらに電話を切り、こういうような証言があつたのですが、これは私たちのこれまでの事務局の調査、さらにこれまでの証言においては全然出ていない事実でありますので、事実はいかがであるか。その証言が偽証であるかどうかということを念のために委員長においてよく御調査願いたいと思います。
  625. 浦口鉄男

    ○浦口委員 今お尋ねするのをちよつと忘れたのですが、この二千人の、大体祖防隊に組織されていると見られる人たちは、先ほどの証言の中にも大体説明があつたように思うのでありますが、いわゆるそれは終戰前からあつた、日本から独立する、あるいは終戰後のいろいろな経済問題を団結して打開して行く、そういうふうな氣持であるものか、あるいは共産主義を支持して、共産党による何か新しい政府を立てるというふうな氣持でいるのか。大体の皆の氣持はどういう氣持で団結していると考えておりますか。
  626. 金在賢

    ○金証人 むろん全部が全部共産政府を樹立するという意味ではありません。最初は何か国家を愛する愛国心と、自分の生活から来る不満、これをどう解決するかということ、これは吉田反動内閣を倒すことによつてのみ実現するのだという話から、これにみんな共鳴したのですが、事実上においてこの人たちが決して共産主義政府を樹立せんがために、共産政府でなければいけないという観念のみではありません。ほとんど九割近くは現在そういう状況にありつつあるのであります。一年前は半分もまだそうでなかつたが、だんだんそういうふうに宣伝啓蒙、また同時にいろいろな刺激によつてそういうふうになりつつあるのであります。
  627. 浦口鉄男

    ○浦口委員 登録の問題についてお尋ねいたしますが、われわれの知るところでは、全国的に見ますと、大韓民国、いわゆる南鮮系として登録しておるものは約二割と考えておるのであります。広島は五割々々というお話がありましたが、登録過程において北鮮系として登録をすると、日本政府からすぐ共産党だ、赤だとにらまれる、仕方がないので大韓民国に登録をする。こういうような情報も聞いているのであります。しかもそれもいやなら結局登録しない、要するに未登録という結果が出るのだ、こういう情報もあるのでありますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  628. 金在賢

    ○金証人 それは根本的にデマじやないかと思います。なぜならば、民団の方針は、できるだけ一人でも多く登録をさせたいのであります。この登録をやる上においては、結局写真もとらなければならぬ、そしてうちの事務所に来なければならぬ、こういうやつかいな手間がいる。同時に距離が遠くて、今その日その日の生活をやつておる人たちは、一日二日の日にちをとるということはできません。こういう者でも、決して登録しないから共産党になれというような卑劣な幹部は民団にはおりません。一人でも共産党について行つて、共産党の犠牲になる必要はない。一人でも多く登録することが民団の幹部の義務であるし、一人なりとも、登録しないからおまえは共産党だどうだというような者はありません。民団内においても審査会があり、ある意味において、かりに泥棒やつた、殺人やつた、そういう行為があつても、本人が登録してくださいという場合には、むろんそれを審査して、これはほんとうに今後反省すれば、今までのことはいい、というような方針においてやつて行くのです。だから、そういう登録をしないから何するというようなやり方は絶対にしません。
  629. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと山口君に申しますが、さいぜん金証人が答えられたのは、船越町にある民団の支部が襲撃されたときの光景であつたと私は聞いておりますが……。
  630. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  631. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは前の速記録を見てもらえば、よくわかるでしよう。
  632. 内藤隆

    内藤委員長 それでは速記録を見て、いずれお答えします。他に御発言は——田淵君。
  633. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで現段階の制度機構、日本政府の法律では、あなた方はもう自分の身辺を自分で護らなければならぬという段階に来ておる。
  634. 金在賢

    ○金証人 そうです。
  635. 田渕光一

    ○田渕委員 そこまで来ておるということについて、日本の風俗習慣をよく守つてくださる、また日本の法律を守つてくれる、お互いアジア民族であるから……、私はこう思うのです。これは今度の日韓条約会議において、少くとも日本の法律に従わず、また日本の治安を撹乱し、結局生活が困窮であつて、このまま置いておけば……、これは善意な者は職業も與え指導もして行かなければならぬが、もつとも日本共産党に入党している党員しかも破壊する党員というものに対して、強制送還をするというような一つの外交上の手段もあり、もう一つはまたここで破壞活動防止法案などによつて、煽動した者を逮捕するということになつて参りますれば、これらの法律をまつてもまだ手ぬるいかどうかという問題、ともあれここに立法的な措置を、——講和発効ももう四、五日でありますから、独立した日本として、自主的な立法をやつて行くような場合に、これは私の私見でありますが、少くともこのアジア民族の安寧秩序を破壊するところの、つまり破壞分子がこの北鮮系統にあるとするならば——現在あるのであります。これらを二船でも三船でも一応韓国政府に送り届けるという強制手段をとれば、びつくりしてかれらの活動が現在より以上進まずに、一つの薬になるか。帰されれば、釜山に上れば、いずれも裁判を受けるでありましよう。そのくらいのことは韓国政府がやるでしよう。帰れば殺されるというようなことになれば、日本の法律に従うと思うが、そうして送つても、日本国を破壊する者は、主義として鬪うのであるから、彼らは反省せぬか、見通しはいかがでしよう。
  636. 金在賢

    ○金証人 強制送還の問題は、日本政府が騒ぐまでもなく、三年前に民団自身が主張した問題であります。しかしこれには条件があり、技術があります。それは日本政府が強制送還をやるよりか、朝鮮人の私たちの立場において考えた場合、韓国と日本とは今後親善を保ち、一体になつて動かなければならぬ、アジアにおける大きな運命をになつています。しからば韓国と日本との親善は何か、日本人が韓国人を尊敬することによつて親善はでるき。軽蔑するところに親善は絶対にありません。しからば日本に残るべき朝鮮人は韓国人としての自分の体面を維持するところの韓国人でなければならぬのじやないかと思います。もつとも過去における日本の帝政の犠牲者となつて、今日の生活にあえいでいる人たちは、これは日本政府において誠意的に援護して善導してくれることを願わなければなりませんが、むろん意識的に日本国を破壞し、韓国人の面子を傷つける分子たちは、一日も早く韓国の地に帰るべきであります。なぜならば、そんないやな日本だつたら、日本に住む必要はないのです。日本は韓国ではありません。私たちは日本の国内にお客に来ておる。よその家にお客に行つて、その戸主の言うことをきらつて、家風に従わぬで、自分だけかつてなことをして、どうして親善を保てるか、絶対に保てません。皆さんも知つておる。血は水よりも濃いのです。私たちは私たちの同胞がかわいいのです。かわいいために、大を生かすために小はやむなく切りすてなければならぬ段階にあります。
  637. 田渕光一

    ○田渕委員 そこでこれは私の私見でありますが、先般私たちが白鳥事件を調査いたしまして、取締官憲の不備、いけないところ、あなたの不満なところは全部わかつてつたのであります。ここにおいてまずわれわれとして、私個人の私見といたしましてはやはり強制送還以外にあり得ない。ここでどのくらい送るならば片づくかというような問題も起きて来るのであります。まず在日朝鮮人の方々が六十万ないし七十万と伺つておりますが、そのうち七五%までは北鮮系だと調査によつて出て来ておりますが、今の御説を伺えば、付和雷同し、脅迫のもとにやつておるので、個々の者について言えば、こちらについて来る者もおる。われわれとすれば、ここで最も急進分子を措置しなければならぬ。この措置によつて、日本の取締り官憲も私は非常に深い決心を持つて来ると思う。私自身で調べて来たものを見ましても、取締り当局がはがゆがつておるというほど、現在の立法的な措置が行われないでおる。これは大韓民国の居留民団の方々でなくわれわれ日本人そのものが取締りに当る。それがねらわれておるのでありますから、これに対する措置も講じなければならぬ。但しどこまでもわれわれはアジア民族として、ほんとうに日本の風俗習慣を尊重し、また日本の法律を守つてくれる人を、お互いにアジア建設のために鬪つて行かなければならぬ。この意味においては非常に私はあなたの意見と合うのでありますが、これを破壊するところの、いわば日本において在日鮮人のつらよごしである北鮮の共産分子、いわゆるこういうテロをやる連中は、一日も早く何がしかを送還してみるならば、私は北鮮系に入つておる七五%の者がふるえ上つて、この立法的な措置によつて、政治的に効果があるかどうか、これです。いやどうもそれくらいでは、みな送られなければいかんというのか。ある程度までやつてみればと、私たち個人としてはこう考えるのであります。
  638. 金在賢

    ○金証人 答弁します。ちよつと今御説を聞きましたが、ある程度私の共鳴するところもあります。しかし絶対的に共鳴できない点もある。なぜならば、この強制送還問題については日本政府は大きなミスをしております。率直に申し上げるならば、日本政府はなぜ騒いで朝鮮人を強制送還するのであるか。朝鮮人が聞いたときに、日本に対していい感じがしません。だからこれが共産党のいい宣伝になります。今大韓民国をつくつているのですからそういう人のために、国際社会の民衆の責任において、その国の国民、その国の意思を尊重しなければならぬのが日本政府の義務じやないか。あなた方が送還するとなれば、日本人自身において朝鮮人を追い出すしかありません。それが韓国政府において、私たちのつらよごしだから、私たちでつれて帰るとなれば、韓国と日本とはお互いに美しい気持において結合し得るものを、日本政府で強制送還すると、日本政府が韓国人をやるのだと、韓国人自身が考えております。何か日本政府が圧力をかけて、従来の帝政時代の日本人が朝鮮人を扱つておるような印象を與えておる。これに対して今共産党の宣伝に、つけ込むすきを與えておる、だから強制送還絶対反対だ、しかもそれにはうそがある。みな言つておることが全然違う。お前も国民登録をしていないから追い出されるぞ、お前も……、みなこわいからこの人の言うことを聞かなんだら自分は追い出される、そういう恐怖心にかられて、その手先になつて犠牲になりつつある。なぜそうするか、今民団で考えていることは、純然たる、言うてなお直らない、こういうような破壞分子のみをわれわれが何するのであつて、わけがわからぬでついて行つておる無知な、かわいそうなこういう同胞までも犠牲にしたくない。しかし日本政府のやつていることは、何かしらそういう印象を受けるのです。だから一般大衆から、韓国人から、何かといえば従来の日本になりつつある、そうした反感心を買う、反感心を買えばなおそれは共産党が宣伝しやすい絶好のチャンスになる。そうすると、民団が建設しようと一生懸命努力していることを、日本政府は破壊しているといわざるを得ない。だからどこまでも韓国政府、韓国民団がある限りにおいて、その意思を尊重してやるべきなんであつて、日本政府が幾ら騒いでもできる問題じやないし、同時に日本自体が全世界の信用を失うと思います。お互いアジア民族なんですから、お互いに理解の気持と誠意をもつてつていただきたい。
  639. 内藤隆

    内藤委員長 金君の言うのは、強制的に向うへ帰すよりも、民団の自治にまかしたらどうだ、こういうのですか。
  640. 金在賢

    ○金証人 韓国政府の意向を尊重してもらいたいのです。今日本政府で騒いでいるのは、何か日本政府が一方的に騒いでいるんじやないかと思う。そうすることによつて、心要以上に朝鮮への誤解を招き、必要以上犠牲者を出さんとしつつあるがゆえに、あえて申し上げます。
  641. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとそういう不健全分子を帰すには相当に強力な何かがなければならぬが、あなたは韓国政府は強力なる国権を発動して必ずやる、こう信じておられるのですか。
  642. 金在賢

    ○金証人 いや、韓国政府がやるんじやなくして、韓国政府自身の意向がいるわけです。これはこういうことがあつたから、私たち体面上悪いから、日本政府も私たちに帰すなら帰さしてもらいたい。今韓国は戦争しておりますので、軍隊も警官もさくわけにいかないから、それは韓国政府の依頼によつて日本政府がやる。こうやれば同じ目的を達しながらりつぱなものになる。それは今少くとも良心的な日本の人たち、特に日本の代議士諸公におきましては、今韓国政府が考えておることと同様のことを、以心伝心でおのずから知つておるんじやないかと思います。
  643. 内藤隆

    内藤委員長 わかりました。  他に発言がなければ、金証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労でありました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十三分散会