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1952-04-22 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十二日(火曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 田渕 光一君 理事 福田 喜東君    理事 佐竹 新市君       天野 公義君    押谷 富三君       中川 俊思君    野村專太郎君       椎熊 三郎君    高倉 定助者       井上 良二君    竹村奈良一君       山口 武秀君    浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (法務府特別審         査局中国支局         長)      梶川 俊吉君         証     人         (広島市警察本         部本部長)   西村 徳一君         証     人         (国家警察本部         警備部第二課         長)      平井  學君     ————————————— 本日の会議に付した事件  治安警備状況に関する件(広島事件)  証人出頭要求の件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  治安警備状況に関する件中、広島事件について調査を進めます。  ただいまお見えになつておられる方は梶川俊吉君ですね。
  3. 梶川俊吉

    梶川証人 はあ、そうです。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、正式の証人として証言を求むることに決定いたしましたからさよう御了承願います。  これより治安警備状況に関する件中、広島事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律に上りまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことに相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士弁理士弁護人公証人宗教集たは祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者かその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人梶川俊吉君朗読〕    宣 誓 書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立願います。  梶川俊吉君ですな。
  7. 梶川俊吉

    梶川証人 そうです。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 俊吉君は現在特別審査局中国支局長をしておられますが、現職につかれるまでの経歴を簡單に述べてください。
  9. 梶川俊吉

    梶川証人 昭和九年司法官試補を拜命しまして、昭和十一年検事に任官、東京区検勤務昭和十二年甲府地検に転じまして、昭和十七年東京地検区検勤務でありまして、その後昭和二十年張家口高等検察庁勤務昭和二十一年から約二年間弁護士鳥取市において開業、昭和二十四年一月鳥取地検米子支部長昭和二十四年一月現職についております。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 昨年の十二月以降におけるあなたの管内日本共産党系団体動向と、日本共産党系団体主体とする暴行事件概略をひとつお述べ願いたい。
  11. 梶川俊吉

    梶川証人 その当時の文書資料がございますですが、それを……。
  12. 内藤隆

    内藤委員長 文書をごらんになつてようございます。
  13. 梶川俊吉

    梶川証人 昨年の十二月以降の動きといたしましては、昨年の十二月五日の早朝から、広島自由労組書記長吉田治平そのほか幹部自由労働者の一隊が広島市役所に集まりまして、午前八時半ごろに約千二百名ほどになりまして、その後それらのものが三階に上つて市役所幹部に対して越年資金要求を行いました。午前九時半ごろにはそのうち尖鋭分子五十名が、市長室の隣りの秘書室内部に居すわり戰術を行いまして、遂に市当局は午後五時十五分に退去命令を発したのであります。しかしながら、依然として退去しない。そこで午後八時五分に、広島市警は約百名の武装警察官を動員して、午後九時ごろ全員を退去せしめたという事件があります。なおその後三月一日のいわゆる三・一闘争——本年の三月一日でありますが、三・一闘争において、広島特審局中国支局の庁舎を襲撃して、催涙彈を投ずるとか、玄関ガラス戸をぶちこわすというふうな事件もありました。これは後ほどお尋ねによつて詳細御説明申し上げたいと思います。  なお宇部宇部窒素が二月以来争議をいたしておりましたが、その争議において、三月三十日の午後十時三十分ごろに、いわゆる第二組合事務所階下階上の寝室に爆発物を一個ずつ投じております。その当時階下に四名、階上に三名が寝ていたのでありますが、爆発物が爆発した結果、階下にいた三名の者と、階上にいた一名の者が、全治二週間程度の擦過傷を受けております。なお器物の損壞としては、事務室の机、いすをこわし、階上階下ともに直径約十サンチぐらいの爆薬の跡を残していたのであります。そうしてこの爆彈性能を見ますと、墨汁のあきカンを利用したものでありまして、その性能は十分に人を殺傷する効力があるというふうに認定せられております。  なお広島自由労組内部における一部急進分子は、今年の一月ごろから中核自衛隊結成に着手して、最近その結成がほぼ完了したのではないかというふうに見られております。そうして情報によりますと、それらの分子は、今年の一月ごろから、広島市役所広島市警職業安定所特審局のおもなる職員の住所、電話家族実態調査して、なお軍事科学の研究も指導しておるといわれております。彼らは従来の日和見主義を一擲して、市役所労政課員に対してテロを加えるという計画も持つておるという情報が入りましたので、これはすかさず市当局その他関係機関特審局の方から連絡いたしまして、現在警戒中であります。そのほか急進分子は、国警市警特審局職員に対してテロを加えるという計画情報もありました。その手段としては、火焔爆彈を投げる、情報機関職員を強制的に拉致し監禁して、拷問を加えてその調査活動の内容をとる、はなはだしきは、それらの職員家族子供を誘拐する、これが最もこたえるであろうというふうな計画をしておるという有力な情報があります。  なお武器といたしましては、それらの爆彈等のほか、拳銃も相当に収集しておるという情報がありますが、実際に起つた事例といたしましては、三月二十三日の午後十一時五十分ごろに、宇部市の特審局山口主任在官の私宅にれんが大の石を合計五個、しかも一斉に投げ、ガラス戸をぶちこわし、幸いにして家族がそこより少し離れたところにいましたために、負傷はなかつたのでありますが、そういう具体的な事件も発生しております。  なお三月二十五日には午後一時三十分、白晝であります、松江市において、島根特審局主任在官の宅の近所の家に、松江会議員川島喜代治、これは日本共産党員であるという報告を受けておりますが、この日本共産党員であるといわれている松江会議員川島喜代治という人物が、婦女子に対して特審局の家と間違えたらしくて、この家におれの敵がいる、そういうやつを置いておけば、お前もやつつけてやるぞというふうに、脅迫した事実があります。これは島根松江市の市警において現在捜査中であります。なお四月十八日には、岡山でいろいろのビラがまかれておりますが、そのビラの中には、特審局職員蜂谷事務官というものをさしまして「小坂東署平野東署小畑西署蜂谷特審)は惡質である」云々ということが書いてあります。そうして「日本共産党岡山地区委員会」というふうに、はつきりとそのビラに書いてあります。なお同時にまかれた文書によりますと、「破壞活動防止法こそすべての民主的活動を禁止する」云々と書いて、そうして「愛国者先頭に立つてつている日本共産党朝鮮人進歩的に対しピストルを発砲し彈圧を加えている」云々と書いて、やはり「小坂(東)、平野(東)、福間(東)、畑野(東)、小畑(西)、山口三成蜂谷特審)などは特に惡質な番犬だ」そうしてその末尾には「アメリカと吉田手先惡質警官の末路は白鳥と同じだ」ということが大きな字で書いてあります。大体管内で現在までに発生しております状況は以上の通りであります。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 現在あなたの中国特審局支局管内には朝鮮人はどれほどおりますか。
  15. 梶川俊吉

    梶川証人 約三万ぐらいおります。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 その三万ぐらいの朝鮮人の団体的な動向、昨年十二月から今日までどういうものが起つているか、ことに北鮮系朝鮮人集団主体とする暴行等事件があれば、それらの概略をひとつ……。
  17. 梶川俊吉

    梶川証人 中国地方北鮮系朝鮮人運動といたしましては、昨年の十一月ごろまず岡山県、それから広島県、山口県というふうな順序で、民戰県委員会結成されております。そうして各地ともその組織を拡充しつつあるのでありますが、広島県におきましては、実力闘争の訓練といたしまして、本年の一月二十一日に、広島県の安佐可部税務署で、北鮮系朝鮮人の崔羽振という人、そのほか三戸の密造酒を検挙したのでありますが、そういたしますと、北鮮系朝鮮人が動員されて、約一時間くらいで隣りの高田郡方面からもかけつけるというふうな状態で、二百名くらいになつて、これらの者が税務署襲撃するという計画で、こん棒であるとか、小石であるとか、目つぶしというふうなものを準備して、可部の神社で待機しておつたのでありますが、交渉が夜に入つたために、その襲撃目的を達しなかつたという事件があります。なおその事件あとで、二月十七日に海田市町民戰系指導分子約三十名くらいが、その批判会をやつておりますが、その結果、事件発生後きわめて短時間に二百名くらいが集合したということは、非常に大成功であつた。それから参会者がいずれもこん棒であるとか、小石であるとか、とうがらしの粉というふうな武器を用意したことも、平素の気構えがよくできておる。しかしながら交渉に手間どつて、結局敵の術策に陥つたことが失敗であつた。これからはそれを改めて、警察官との衝突に持つて行つて、そこで犠牲者が出たならば、さらにそれによつて紛争を拡大する。こういうふうな方針を決定したといわれております。そうして二月二日になりますと、広島の船越町の安芸民団団長である金龍鎬安佐郡の支部長である崔錫郷、その二人を反動分子であるといつて脅迫的なビラをその付近に張つて脅迫したという事実もあります。それからさらに三月一日になりますと、いわゆる三・一闘争に動員されて、各所朝鮮人実力闘争が行われております。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 三・一闘争については、いずれまたお伺いしたいと思いますが、そういう程度のやはり暴行事件があつたわけですね。
  19. 梶川俊吉

    梶川証人 はい。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 国警安芸安佐地区署管内で、ただいまちよつと証人が触れておりましたが、三月一日に決行したいわゆる三・一事件ですが、この事件において北鮮系朝鮮人集団はどういうことをやつたか、ひとつこれを伺いたい。
  21. 梶川俊吉

    梶川証人 三月一日の万才革命記念日において、大々的に闘争するということはかなり前から計画していたようでありますが、具体的には、二月の二十四日に民戰の中央の方から広島指導者が参りまして、指導してから表面だつて来たようであります。そうして二月の二十五日ごろから、前日の二月の二十九日まで、日本人側朝鮮人側で再三個別に、あるいは両者合同計画会議を持つております。その計画によりますと、広島総評系の開く彈圧法規反対大会を利用するということが骨子でありますが、それが通らなければ、広島市民広場で独自で無許可の集会を持つ、そこを陽動作戰として広島警察力を集中する。そして県内尾道であるとか、呉であるとか、可部であるとか、あるいは海田市、大竹、そういうふうな県内各所でそれぞれ朝鮮人行動を起す。そうして警察力の分散をはかつておいて、最後に広島に集結する。こういう方針を立てているのでありますが、その現われと申しましては、三月一日のまず、海田地区、これが安芸地区になるわけでありますが、海田地区では、一日の午前十時ごろから解放救援会事務所広島安芸可部方面北鮮系朝鮮人約百三十名が集合して、記念大会を開いて一応それは十一時ごろに終つておりますが、大会終つたあとで、一部の朝鮮人、六十名くらいが、広島に向つて出発しております。それから十一時三十分ごろに、海田市町税務署に七十名くらいの者が押しかけて、朝鮮人側代表者五名と、税務署署長間税課長、これらと面接しております、密造酒の取締りを撤廃しろということを交渉して、税務署側の二人の代表者をとり囲んで、約一時間交渉したのでありますが、拒絶されたために退去した。その際に催涙びんを二箇、税務署の屋内に投げて帰つております。それから一旦税務署引揚げた後に、約二十名くらいの者が、民団事務所襲撃する目的こん棒手おの催涙びんを持つて、午後四時ごろ民団安芸支部事務所襲撃して、事務所におりました団長金龍鎬議長李昌煕、李初鐘、この三人のいる二階に六名の者が土足で上つて電話線を切り、民団支部の旗を倒して、疊、ふすま、机、いすなどをぶちこわして、議長二名と格闘した上、李初鐘は前額部切傷一箇所、顔面打撲傷数箇所、李昌煕には後頭部に切傷一箇所、顔面打撲傷を與えて、午後四時二十分ごろ退散しております。国警安芸地区署では、ただちにこれが捜査に着手して、同夜すでに李龍文という朝鮮人と、金文禎という朝鮮人と、李点俊という朝鮮人、それから矢野町の金判守という朝鮮人合計四名の容疑者を検挙しております。  なおこの安芸地区署闘争で注目せられるものとしましては、そういうふうな襲撃事件終つたあとで、全部の婦女子まで朝鮮人を動員して、おのおの班をわけて、しつこく警察釈放運動に行く、そして署長釈放を聞き入れないと、署に子供を養えないから置いて行くというふうな態度に出る。検察庁に対しても連日班をわけて、数名あるいは数十名が押しかけて来る。検察庁にも約二週間くらい毎日来ておりました。なお海田方面におきましては、警察署長をたたき殺せというふうなビラを電信柱その他に張つて、相当警察署長に対して脅迫を加えておるのであります。検察庁に対しましても、三月十一日の勾留理由開示公判の法廷に、約三百名が押しかけまして、三百名の者が検察庁職員などに暴行を働いております。  なお当日はいわゆる尾道大竹等においてもデモが行われましたが、これらはいずれも平穏でありました。安佐地区署管内、地名で申しますと可部でありますが、可部におきましては、まず二月二十七日に安佐地区民団団長に対して、死にたくなければ民団を解散しろという脅迫文を投げ入れておりますが、さらに三月一日当日になりますと、午前八時半頃、北鮮系朝鮮人が百六十名くらい可部に集りました。型通り記念式をやり、町役場に押しかけて、朝鮮人自律教育を認めよ、生活困窮者保護法を適用せよ、同籍選択の自由を認めろという要求をしたのでありますが、町長不在のため、比較的おとなしく約二十分間で退去しております。これらの集合者が二つの隊にわかれまして、一隊三十名くらいは可部に、他の一隊は広島行つております。可部行つた者にはさらに三十名くらいが加わつて合計六十名くらいが可部税務署に押しかけ、そのうちの三十名くらいが税務署の二階に行つて署長面会を求めました。署長課長不在でありましたために、前のしようちゆうの検挙事件はどうするかというふうに脅迫をした後、帰る際に、催涙ガスびんを一個やはり税務署の中に投げて帰つております。それから可部税務署から引上げた六十名が、今度は町役場行つて町長面会を求めたのですが、これも町長がいないために引上げております。なお国警安佐地区署にも一部押しかけておりますが、その際は別に暴行はなかつたのであります。そうしてこの安佐地区デモ隊の百人あまりが、午後の四時半ごろ広島におもむいて、広島で行われた総評蹶起大会の流れの自由労組デモ隊の四十人くらいと一緒になりまして、そこで市警本部広島市の西警察署の前で無許可デモをやつた。そうして特審中国支局の前に来て、先ほどお話しいたしましたような暴行を加えたわけであります。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 その特審支局襲撃いきさつ等をひとつ述べてくれませんか。
  23. 梶川俊吉

    梶川証人 大体事前には、権力機関襲撃するのだということにきめていたようでありますが、西署通つて、それからどこをやるかというときに、特審をやろうということを唱道した者がいる。それから特審中国支局に押しかけて来たのでありますが、デモ隊は約百八十名くらい、数十本の赤旗、プラカードを持つております。これはあまり大きなものでなくして、振りまわすのに手ごろな大きさにつくつてあります。そうしてそのプラカードには五寸くぎが打出してあつて、けつこう兇器として使えるという性質のものであります。そうして支局の前に来ますと、ジグザグデモをやる。支局の車寄せのところを数回旋回して、そのプラカードその他で玄関ガラス戸をぶちこわす。全部で七枚こわれておりますが、そうしてなお支局特審局の者が写真をとろうとすると、その写真班に向つて石を投げる。なおその際、キリスト教系友和会の会員がそのデモにまじつてつたのでありますが、それが制止したところ、それを特審局員であるというように誤認して、石でもつてなぐり、前額部を割りましてなぐり倒した。それがぶつ倒れたあと引上げたのでありますが、一旦引上げあとで、ぶつ倒れたのが自分たちデモの中の一員であるということがわかつたために、それの収容にまた一旦引返した。それを収容して、午後五時半ごろ解散したのであります。特審局に来ましたのが、午後の四時五十五分ごろでありました。なお引上げあとで、プラカード自由労組組合事務所の中で燒き捨てるということをやつております。大体そういうふうな状況であります。
  24. 内藤隆

    内藤委員長 その当時、警官の警備状況が非常に稀薄であつた関係上、特審局支局の方が非常に奮闘されたようで、現場の写真等を大分とられたようですが、それをお持ちになつておりますか。
  25. 梶川俊吉

    梶川証人 持つております。なおその一番あと写真プラカードの分だけは、これはそのときに燒き捨てたために、その後のデモに使われたものを、それと同様なものであつたと現認者が現認しましたので、同様なものを表わすためのものであつて、一番あとの分だけは本物ではないのです。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 最初のかついでいるものは、これは本物ですね。
  27. 梶川俊吉

    梶川証人 それは本物です。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 写真等を見ますと、非常に武器にひとしいものを使つておるようですが、プラカード催涙ガス彈、それらからこの火焔彈というのはどういうものですか。
  29. 梶川俊吉

    梶川証人 そのときは火焔彈は使つておらないのであります。催涙ガスはかなり効力があつて、あそこは上下約四百坪の建坪のものでありますが、階上階下ほとんど彌漫する。相当効果があります。
  30. 内藤隆

    内藤委員長 そのプラカードのどこか先の方に五寸くぎか何かくつつけておつたということですが……。
  31. 梶川俊吉

    梶川証人 プラカードの板に五寸くぎを打抜いて、先を出して、それをもつてたたくというなものであります。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 事前情報、あるいは実際にやつた状況から判断して、この事件背後には強力な指導勢力事前に動いておつたというふうに推測されるのですが、事件後その実態が明瞭になりましたか。
  33. 梶川俊吉

    梶川証人 その三・一闘争の直後、三・一闘争に学ぶものという文書を私どもの役所で入手いたしております。その文書によりますと、ずつとその三月一日の前からの政治情勢と経過の概要というのが書いてあります。その次に党の工作という題名でいろいろ書いてありますが、そのうちに、「賃金を要求する春期賃上げ闘争の底流となつて高まつて来た、これをつかんで、党はこれまでの合法主義を打破し、全力を結集して実力行動に出、社会民主主義の影響を断ち切り、大衆とともに平和と独立の闘う行動統一を打ち出して行くことを決定した。朝鮮人労働者闘いと政治的に呼応し、実力行動をもつて先進的役割を果すこと、市内全党員は自労とともに労働者大会に参加すること」云々とずつとありまして、その終りに「県、地区がこの態度方針を決定して以来、五日の間に広島市を中心とする全党員にこの方針と具体的な任務が下され、全員漏れなく部署について工作が開始された。伝單朝鮮人五千枚、各S二千、流しビラ拠点経営中心に数千枚、民商より軍事予算惡税暴露のアツピール一万」なお当日の状況という項目がありますが、そのあとで三・一事件政治的評価として「また自労、朝鮮人隊労働者惡法紛砕大会の中で、彈圧フアツシヨ支配機構の中枢、特審、マルケを実力で攻撃し」云々、それからCの項目に「最大の成果としては、一年余りの党分裂闘い大衆との結合も弱まり、敵と生活に負け、孤立感日和見合法主義に毒されていた党が、この闘いを通じて県、地区細Sまでが一丸となつて闘い日和見合法主義を打破し、大衆の前に敢然と闘いの前衛として姿を現わし、その役割を果した。これによつて意思統一闘いの確信をとりもどした。なお朝鮮人及び自労の闘い、その中で中核として行動した〇〇隊の初陣の勇敢な闘い行動は称讃さるべきである。」さらに今後の方針というところに、「広島の三・一闘争の経験をただちに全県に一般化しなければならない。そのためにこの闘いの意義と正しい評価を全党、全大衆のものにせよ。」云々闘いの火ぶたは切られたのである、闘いを休めば敵は必ず反撃に出る。われわれの闘いは常に先手々々と攻撃し、敵を奔命に疲れさせなければならない。広島を孤立させるな」云々、以上で一番終りに、「闘いのために不滅のマル秘態勢闘いとろう」ということが書いてあります。なお祖国防衛全国委員会機関紙「新朝鮮西日本版というのに、社説的な欄として、「三・一闘争をさらに発展せしめよ、西日本民戰祖防呼訴文」というのがあります。その中では「この闘争における組織動員は兵庫の七千余名、大阪の五千二百三十六名を筆頭に、実に二万一千三十六名、当日のビラ撒布八十万四千五百、大会が八十箇所で決行され、その闘争先頭にいまだかつてないほど多くの受国青年が結集され、在日同胞中核隊祖防隊青年行動隊中心となり」云々とありますが、さらにその新聞の第四面のところに「二十キロのデモと五時間の乱闘、広島で〇〇〇彈も行使」という見出しで三・一闘争のことが書いてありますし、「古市同胞特番局へも〇〇〇彈」云々ということが書いてあります。大体以上によりまして、私どもとしてはその背後関係を疑わしめるものがあると思うのであります。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証人の陳述で、特審中国支局襲撃事件の内容はほぼ明らかになつたと思いますが、要するに三・一記念大会というものと、それから総評彈圧法粉砕大会というもの、これが同一に行われておつたのですな。
  35. 梶川俊吉

    梶川証人 はあ。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 これを機会にそこへ自由労組の連中がさらに割り込んだ、そうして朝鮮人と合流して特審局襲撃をやつた、こういうことなのですね。
  37. 梶川俊吉

    梶川証人 ただその総評大会とそのデモ隊との関係は、総評系広島県労働組合会議、当日の主催者でありますが、これは極左系のものは入れないという方針をとつてつたのであります。そうして自由労組系の者が来ました場合に、それの入場を拒絶したのでありますが、吉田治平という共産党員であり、自由労組の書記長が、労働者自由労組であるのにそれを大会に入れないのはけしからぬということで、二つの條件を付してその大会に参加することを容認したのであります。その二つの條件と申しますのは、一つはデモに参加してはならない、それから向うの指示に従うことというふうな條件があつたのでありますが、その中に入つてしまいますと、大会が明らかに市役所前で解散しておりますのに、その自由労働系統の者だけが無許可デモ行つて、特番局を襲撃したという順序になつております。
  38. 内藤隆

    内藤委員長 かような暴力革命の前衛隊のような北鮮人は大体何を根拠に生活しておるのですか。
  39. 梶川俊吉

    梶川証人 北鮮系だけでございますか。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 北鮮系だけです。
  41. 梶川俊吉

    梶川証人 これはいろいろの雑業に従事しておるのでありますが、最も注目せられるものとしては、密造酒に従事しておる者も相当おることは、今までの国税局方面の摘発によりましてもはつきりいたしておると思うのであります。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 中にはさような大会等にまじつて、暴力革命の前衛のようなそういう指導をするために、もぐり込んで来たような北鮮人はおりませんか。
  43. 梶川俊吉

    梶川証人 この襲撃事件をやります場合には、地元の者では顏を覚えられておる、そこで他地区朝鮮人を動員してこれにやらせるというのが最近の傾向になつておりまして、現に広島特審局襲撃しました者も、他地区から来ておる者が相当ある、こういうふうに見られております。
  44. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほど証人中国地方におきまして中核自衛隊結成され、それがほぼ完了した、このように言われたのでありますが、ここで証人の言われました中核自衛隊というのはどのようなものであるのか、これを御説明願いたいと思います。
  45. 梶川俊吉

    梶川証人 中核自衛隊は最近われわれの方で入手いたしております五全協の決定、それから、球根栽培法にも出ておりますが、中核自衛隊組織と戰術を発表するにあたつて、それからなお「当面の組織と戰術」というふうな文書を検討してみますと、日本において人民軍という軍隊を共産主義者がつくる。そこへ持つて行くまでの前提として中核自衛隊という、きわめて初歩的な、しかして軍隊の基本單位となるものをつくる。それが中核自衛隊の性格である、こういうふうに解釈いたしております。
  46. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、共産党が中核自衛隊を人民軍の初歩的なものとしてつくると決議されていることを、あなたは確認されておりますか。
  47. 梶川俊吉

    梶川証人 私は日本共産党という言葉は使用いたしておりません。ただ私は確立しておるという言葉は使つておりませんが、ほぼできておる、しかもある特定の地点にほぼできておるということは、はつきりと申し上げます。それは山陰Bというところから上部に報告をしたと見られる文書を、私どもは入手いたしております。それによりますと、島根県本庄、生馬、松江、安来の各地には中核自衛隊結成されており、党は二月十日うさぎ狩りに託して全員を動員し、集合、解散その他の訓練を実施したということがはつきりと書いてあります。大体さような根拠によつて、私どもとしてはそういうふうに推認しておるということを申し上げるのであります。
  48. 山口武秀

    山口(武)委員 推認されると言うならば、これはさらにお尋ねしても意味がないと思いまするが、こうした中核自衛隊というものが何者かによつてつくられつつある。その中核自衛隊というものは、單に人民軍がつくられるということの前提として、第一歩としてだけ生まれたものであるか、それとも中核自衛隊というものは、中核自衛隊として一定の目的を持つて生まれたものであるか、この点はいかがお考えでしようか。
  49. 梶川俊吉

    梶川証人 それはもちろん中核自衛隊をつくるには、そこにひよつこり無から有が生ずるものではありませんから、私どもがそれらの文書によつて検討しましたところによりますと、まず中核自衛隊をつくる前に、その前提として抵抗自衛運動を全国に巻き起す。あらゆる学校、あらゆる工場、あらゆる職場において、中核自衛隊結成できるような雰囲気を巻き起す。あらゆる問題に対して国民の不平、不満をとらえて、そこであらゆる闘争組織して行く。その闘争が巻き起つたところを基盤として、中核自衛隊をつくる。こういう順序であると私は解釈しております。
  50. 山口武秀

    山口(武)委員 そこで私お聞きしたいと思いまするのは、あなたは先ほどかりに推定だということを言われまして、共産党の名前をあげておりますが、共産党が一定の方針を決定する場合に、この方針というものはおそらく主観的にはきめられないだろうと思う。これは客観情勢というものが分析されまして、その客観情勢の中で方針というものがきめられる。そういたしますると、もしも中核自衛というものがあなたの推定通りであるといたしまするならば、ここで中核自衛隊というものが生まれる背景というか、社会的な基礎というか、そういうものがなければならないわけでありまするが、この点に関していかがお考えでしようか。
  51. 梶川俊吉

    梶川証人 それは一定の主義を持つた人の集団が策動すれば、できるだろうと考えております。
  52. 山口武秀

    山口(武)委員 これは特審局支局長の言とも思われないことだと思います。おそらく世界の革命運動あるいは民族解放運動を見ましても、一定の社会的條件の成熟というものがなければ、運動も起るものでもないし、またこれが成功するものでもないことは、自明のことであります。百年も昔に社会主義社会をつくろうという運動があつたわけでもない。これは資本主義の発展があり、その矛盾が累積いたしますと、労働階級の成長がありまして、そこで社会主義が論ぜられるようになる。私が聞きたいと思いましたのは、そういうような一つの実力的な闘争というものが起つておる事例を外国に見ますときに、その国が主権を失つて、外国の植民地になつておる。しかもその場合そこに軍事的な支配が行われておる。こういう状態のもとにおいて、そこの生活が脅かされ、民族の独立性を失つておる。このような状況において実力闘争が起つておる。こういう点から見まして、たとえばマレーにおける民族の独立運動、あるいはヴエトナムにおける民族の解放運動、いずれもそういうような社会的な條件があつて、このような実力闘争が行われておる。そうした場合において、日本におきましてそういうような方針がともかくどこからか出されておるといたしますならば、あなたはそういう條件を何らお考えにならないで、その対策というものを考えておられるだけなのか、この点をお伺いしたい。
  53. 梶川俊吉

    梶川証人 これはそのところによつてきまることでありまして、ただいまマレーがどうとかいうようなことをおつしやつたようでありますが、日本は日本で、私ども現在の日本においては、憲法を尊重して生活をしておるわけでありまして、また私ども行政官でありますから、憲法と法律のもとに私どもは職責を果しておるのであります。日本国民として、日本の国家公務員として職責を果しておるのであります。合法と非合法を使いわけて、巧みに結合し、統一するというふうなものの考え方では、私どもの気持はおわかりにならないだろうと思います。
  54. 山口武秀

    山口(武)委員 大分証人なまいきなことを言われたようですが、現在どこに憲法が擁護されているのですか。
  55. 内藤隆

    内藤委員長 山口君に申しますが、証人に議論を吹つかけては困ります。証人に議論を吹つかけずに……。     〔「そんなことを論ずる資格はないのだ」「行政監察の範囲外だ」と呼ぶ者あり〕
  56. 山口武秀

    山口(武)委員 範囲内じやないか。
  57. 内藤隆

    内藤委員長 あまり不規則発言に拘泥せずにやつてください。
  58. 山口武秀

    山口(武)委員 現実に長い間アメリカの軍事支配のもとに日本が置かれておる。そういう状況のもとにおいて、民族的な憤激が高まるということは、これは当然と考えられる事実である。さらに憲法の擁護というようなことをおくめんもなく言つておりましたが、あなたの使われておる吉田政府というものは、現に憲法に違反して再軍備を……。
  59. 内藤隆

    内藤委員長 山口君に申し上げますが、質問の線を逸脱しては困ります。
  60. 山口武秀

    山口(武)委員 さような状態のもとにおいて、これに対する国民の反抗、実力的な行動というものがあり得るということは、当然一応考えてみなければならないのではないか。さらに生活の問題についても、税金の徴収においても、国家権力がこれに強圧を加えて取立てを実行しておる。そういうように国家が実力的な支配を行つており、生活の貧困がある。その場合、国家の実力的な、あるいは場合によつては暴力的な支配に対して、これに対する国民の衝突というものが考えられるではないか、こういうような問題についてあなたは考えていないのか、こういうことです。
  61. 内藤隆

    内藤委員長 梶川証人に申します。あまり議論に答える義務はありません。
  62. 梶川俊吉

    梶川証人 ただ一点申し上げておきたいと思いますが、私は義務として、国会の国政調査権を尊重して証人としてここへ出席しておるのであります。そのことに対してなまいきだとかいうふうな人格をお認めにならないようなお言葉はいかがと考えるのでありますが、お答えする必要があるかどうか。すべて宣伝、扇動というふうなことは、相手の人格を認めない、相手を物として考える、機械として考える、そういうふうなものの考え方で私の言葉を解釈されましても、御理解願えないのではないかと思います。
  63. 山口武秀

    山口(武)委員 そうですか。
  64. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと申しますが、山口君、あまり過激な言葉を用いたり、攻撃にわたる点は愼んで。
  65. 山口武秀

    山口(武)委員 私が先ほど申しましたのは、証人として国会に呼ばれていながら、ヴエトナムがどうとか何とかと言われましたがという、その用語の使い方が、証人としてなまいきだというのです。それからさらに証人として委員の質問に答えるべき立場にありながら、合法、非合法を使いわけ、統一しというような、あなたにはわかりますまいということを言いおつた、これは一体はどうなんだ、社会的な基盤というかそういうことに気がつかないで、特審の仕事をやつているということは、特審の正体というものを最もよく現わしていると思う。それでそのことはまずよろしいのですが、(「よろしければいいじやないか」と呼ぶ者あり)明らかにしなければよろしいというのだ、ひとつここでお聞きしたいのですが、先ほどの言葉の中に、北鮮系朝鮮人集団あるいは北鮮系朝鮮というような言葉が大分出て参つたのでありますが……。   (「あばれているやつはみんな北鮮じやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  66. 内藤隆

    内藤委員長 質問を続けてください。——質問を続けてください。
  67. 山口武秀

    山口(武)委員 この場合に言いましたところの北鮮系朝鮮人というのは、北鮮に育つたとかあるいは家族を有するとか、そういう意味で言われたものであるのか、それとも日本にいる朝鮮人で、その出生地あるいは家族の住居というものが、北鮮、南鮮にかわらず、現在朝鮮にある二つの政府のうちで北鮮の政府を支持しているという意味で言われたのか、そのいずれで言われたのかをお尋ねしたいのであります。
  68. 梶川俊吉

    梶川証人 北鮮的なものの考え方をする朝鮮人、こういうふうに御理解願います。
  69. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人にお尋ねしますか、証人が本委員会において証言されました中国地方におけるところの非合伝活動に対しては、大体よくお聞きいたしたのでありますが、この種の破壞的な行動各所において行われておりますけれども、これは特審局において、こういう情報を入手して、これを取締られるということは、最も必要なことであります。しかし一面この破壞行動各所において行つておる、この非合法てきな行動は、われわれの考え方からするなれば、こういう行動を起せば起すだけ国民大衆から孤立する傾向になると思うのでありますが、特審局調査の範囲内において、その地方の民心との関係において、どういう影響を與えておるか、むしろ民衆は、こういうことをやるからいけないのだと、孤立化に置く傾向にあるのか、それともこういうことをやらなければ今の日本の情勢はいかないのだということを納得する情勢にあるのか、こういう民心の把握をどういうようにお考えになつておるか、御証言を願いたいと思います。
  70. 梶川俊吉

    梶川証人 これは私だけでありますが、新綱領の、大衆を獲得しようというあの綱領、あるいはまたただいま御質問になりました直接行動との関係、これはどういうふうに統一的に解釈すべきかという問題を考えてみたのでありますが、要するに結論から先に申し上げますと、威力によつて大衆を獲得する、つかんでしまう、要するにそういう組織、団体に反対するものに対しては、仮借なくテロを加える、過去の日本の軍閥が、日本でヘゲモニーを握りました経過のように、いつとは知らず、そういうものはおそろしくて反対できないというような雰囲気を釀成するというところに、ねらいがあるというように私は理解しております。
  71. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 ただいまの御証言は、私の質問いたしました点といささか違つたように思いますが、私が質問いたしたいと思いますのは、この中国地方においてこういうことを行う、こういう破壞活動をやる、非合法活動をやる。そのことはその地方の民心から離れるものである。民衆側の心持は、こういうことをやらなければ現在の日本の情勢というものは解決がつかぬということを納得する情勢にあるか、特審局においては民心をどういうように把握しておるか、こういうことをお尋ねしておる。
  72. 梶川俊吉

    梶川証人 私ども管内の民心としては、そういうふうな行動を支持しておるというふうな動向は、現在のところ決して見られないのであります。たとえば、私ども襲撃を受けましたために、役所の防衛としてバリケードをつくつておりますが、それらにしても、どうしてそういうふうな必要があるのかということが、一般の市民にはまだのみ込めていないのじやないかというふうに見られる節があるのであります。
  73. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そこで、山口委員は、私は別に行政の監察からはずれた質問をしたなどと思うのではありませんが、さつきの山口委員の質問によりますと、実力闘争を肯定しておるかのごとき御発言がありましたけれどもが、わが国の憲法は、国際的にも国内的にも平和憲法であります。決して破壞の伴うことを憲法は承認しておりません。こうした実力闘争の伴うことを、承認しておりません。わが国の憲法は、もとより言論、結社、集会、思想の自由は許しております。しかしそれは平和のうちに行われることを許しておすのであつて、破壞の伴うことを許しておるのでは断じてないと思うのであります。従つてこういうような火焔ビンを投げあるいはプラカードにいろいろな細工をし、あるいはこん棒でやる、そうして特審局とか警察であるとか、こうした思想的な取締関係に非常に深いところ、あるいは税金関係とかいうところを、集団的にねらつておるのでありまするが、これに動員される動員母体になるものは、朝鮮の人と、それから自由労組の人がほとんどそれに動員されておると思うのであります。一般的な総評に加盟しておる民主的な労働組合は、決してこういうことをやつておりません。いろいろな労働組合が全国にありますけれどもが、総評に加盟しておるところの民主的な労働組合において、かつてこういうことをしたことはない、しかし総評といえども労働者の経済の獲得のためには、あるいは賃金闘争をやらなければならぬ、あるいは政治闘争をやらなければならぬ、それはあくまでも民主的な行動の範囲内においてやるのであつて、破壞の伴うことは、決して指導しておらないと思うのであります。そこで、こういうような、いわゆる朝鮮の人々や、あるいは自由労働者の人々を動員するという母体、この動員の根拠にはどういう根拠があるか。この人たちを動員するところの根拠は、こういう人が主となつて各所においてこうした破壞活動をやつておりまするが、これにはどういう根拠があるかということを、特審局はどういうふうに御搜査になつておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  74. 梶川俊吉

    梶川証人 この自由労働者は、レツドパージになりました者が多数その中に入つておるために、自由労組の動きが相当尖鋭化しておると思います。北鮮系朝鮮人といたしましては、朝鮮人のいわゆる朝連、これらの終戰以来ずつと今日までのそういう団体の指導が、結局今日の情勢をもたらしたのじやないか、こういうふうに考えております。一般の労働者組合との関係は、先ほどもお話しましたように、広島の事例などを見ましても、総評はきれいに解散を宣して解散をしております。ただ一部の者だけが赤旗を歌うとか、インターナシヨナルを歌うとか、ごく一部の者だけがそれについておるというのが実情であると思います。
  75. 田渕光一

    ○田渕委員 特審局の前でデモをしてこわされたのですが、そこでバリケードを用意した、こういうわけですが、当時広島市警なり、あるいはそれに対する警備の方法として、またデモがやつて来て、車屋さんの前で分散行進をやつて、ガラスを破壞したり、プラカードに五寸釘が出ておるというわけで、出てはあぶないけれども、これはどういうぐあいにその当時防衛しようと思われ、またどういうふうな防衛対策をとられたか。私がこの二つを伺うということは、やがてわれわれの生命財産を守るべき諸官署、こういうところにテロがどんどん出て来ると、国民みずからがみずからを守らなければならぬというぐあいに、やがて愛国者が出て来て彼らを彈圧する時期が来ると思う。こういうことがわれわれのまことに危惧するところであります。警察が物を言わぬ、動かぬ。あるいは役所を襲われてもそのままである。ことに他地区から来た顏を知らぬ者が逃げてしまつて、犯人があがらぬ、あがつても、黙秘権を行使する。そしてこれがやみからやみへ逃げてしまうというのでは、やりほうだいということになつておるのであります。かようなことにおいて、制度、機構、法律の欠陥というものを直さなければならぬと思うのでありますが、こういうような大きなものの観点をつける上において、当時どういうような防衛態勢をとられたか。早い話が、水をぶつかけてもよろしい。われわれの税金で建てたところの官公署、そのガラスを破壞し、器物をころす場合には、みずから守るくらいの攻勢的に出ていいと思うが、こういうような場合に、どういうような態勢をあなた方はとつておられたか、伺いたい。
  76. 梶川俊吉

    梶川証人 当時そういう連中の計画といたしましては、一応紛争を起して、まず警察に逮捕させる、検束させる。そうして逮捕されたのをきつかけに、今度はまたそれを口実に紛争を巻き起すという計画がありましたために、私どももその前日、前々日、市警国警特審局検察庁、集まりまして、事前の対策協議会を開いたのであります。要するに厳重に対策を講ずるという方針をきめてあつたのでありますが、何しろ特審局の現在の実情を申し上げますと、広島の私どもの役所では事務官が全部で五十名であります。あとは女とか何かの雇用人、それを県内、また中国五県受持つておりますから、そこにばらまく。そうしますときわめて少数になるのでありまして、しかもその当日はあちこちでそういう行動を起すというので、広島県下のみならず、下関その他に派遣し、また市中にもばらまきますと、特審支局の役所に残つているものは十数名にすぎないのであります。そこでそういうデモが参りました際には、当日は土曜日でもありますから、玄関の戸を締めて絶対に入らせないようにする、そうして一方警察に警戒をしてもらうという方針であつたのでありますが、市警にも、デモ隊が向います際に、また実際にやつて来ました際に、連絡をとつたのでありますが、市警の到着は、デモ隊がもう帰つたあとで、検証をやるというような実情でありました。私どもといたしましては、いろいろ写真をとるとか、その証拠保全に努めるという処置をとつたのであります。
  77. 田渕光一

    ○田渕委員 つまり緊急な警戒を電話で要請しても、結局デモ隊が退散したころでなければ出て来ない、こういうことでは、それは時間的にどういう連絡があつたか、あるいはまた招集する手間もかかつたかもしれませんが、これを一方逆に考えるならば、まあまあなるだけ事なかれ主義で、今の証人の言われる通り、一人、二人のものを検挙することにおいてさらに大勢が襲撃して来る。これは彼らの常套手段なんです。そんなものは別にもつと大きな線から考えてみたらどうか。北鮮系統といわれるのはわずか四十五万、わが日本国民、愛国心を打つておるものは八千三百九十何万おるのだから、警察が無能ならば、一人ずつ出て行つてもひつくくれるのだ。こういうような大きな線から、ばたばたするな、内地におる四十万かそこらの朝鮮人——日本の法律を守り、日本の風俗習慣に従つて、日本の再建に協力する者は、これを居留民として保護をし、職業を與えて行かなければならぬが、日本の官庁を破壞し、テロ行為をやつて畏怖せしめようという不逞のやからは、まるつきりひつくくつてしまつても四十万か四十五万じやないか。八千三百万という、三十倍、四十倍の力を持つておるものが、何がゆえに弱いか、私は非常にふしぎでならない、なぞの解けないものがある。何をばたばたしている、三十万や四十万の朝鮮人くらい、ぐずぐずするなというような大きな決心で国民が一致団結するならば、ちよつとも不安はないと思う。こういうような意味において、警察そのものも、特審そのものも畏怖しておるのではないけれども、要するに現在の制度、機構、法律によつて縛ることはできないといつても、現行犯——官庁の器物をこわした者は、器物毀棄罪でつかまえられる。なぜつかまえないか、なぜみずから防衛していけないか。ほんとう言うならば、国の財産を防衛するのだから、デモが来るなら、煮え湯をぶつかけてもよろしい。やむを得ないでしよう。このくらいの気魄がなければ、各官庁は守つて行けないと思う。彼らは糞尿をバケツに入れて来たり、催涙彈を持つて来たり、石瓦をもつて脅迫して来る。こういうような意味において、あなた方が将来そういう場合にあつたら、みずから出て行つて対抗するだけのほんとうの信念を持つてやるのもやむを得ないでしよう。みずからを守るのだから、緊急防衛だ。ほつておけばあなた方はやられてしまう。われわれがやられてしまう。さつきから山口君が気のきいたことを言つているけれども、(笑声)共産党政党によつてわれわれはやられる。こういうものは今のうちにつぶしてしまわなければならぬ。こういうことから考えて、なぜ当日暴れるがままにまかしたか。それは警察の出動がおそかつた。この点についてはあとで調べましよう。けれども、実際から言うて、治安に当つている警察当局としては、かわいそうに、現在の制度では、死んでもお葬式もできますまい。これに対して本日の新聞などに、国警に対して百万円ということが出ておつたが、まつたくそうだ。あなた方でもそうだ。国警ばかりではありません。特審の諸君も、あるいはまた自治警にしろ、この治安対策にあたりテロが起きて来るのに対しては、十分なる家族の保護の道を立ててやらなければならぬ。生活の保障、死んで行つても心配のない、りつぱなお葬式もできて、十分子供も遺族もやつて行けるだけのことを政府も国会も考えなければならぬでありましよう、考えるでありましよう。こういうようなことのもとにおいて、実際において将来こういうことがあつた場合には、あなた方が自分の身体を守ると同時に、その預けられている役所、国民の税金で建てた器物であり公共物である官公署の窓ガラスを破壞し、あるいは机を破壞し、こういうようなぐあいのテロ行為に出たときには、その職場におる者は自分の身体の危險と同時に、この国家の造営物を守るという精神、そのくらいの気魄を示してもらいたい。それでなければやつらは山犬だから、弱いと見れば幾らでもやつて来る、強いと見れば来やしない。その意味において伺つてみたい。
  78. 梶川俊吉

    梶川証人 ただいまの御質問ごもつともでございまして、非常に私どもとして遺憾であつたと思います。私自身もちろんそういう心構えで対処しなければならぬと思いますし、将来においても職員に対してその趣旨を徹底したいと考えます。
  79. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人にお尋ねいたしまするが、この在日朝鮮人祖国防衛委員会、略称祖防というものの組織とか性質とかいうものは詳しくおわかりだろうと思いますが……。
  80. 梶川俊吉

    梶川証人 祖国防衛委員会は、朝鮮における戰争が継続する間、彼らの称する祖国である北鮮を守るために、日本において実力行使を行うというのがその任務でありまして、そのために行動隊を組織して、それを指揮するという関係にあると考えております。
  81. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると、この中核自衛隊とか抵抗自衛隊というのは、祖防の下部組織と見てよろしいですか。少くとも祖防の指揮命令を受け、その指令系統に服するもの、こういうふうに見てよろしゆうございますか。
  82. 梶川俊吉

    梶川証人 そこのところが非常に微妙な関係にあるのでありますが、中核自衛隊は本来軍事委員会がこれを指導するということになつておりますので、やはり軍事委員会の指導を受けておると見るのが至当ではないかと私考えております。
  83. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 しからばその軍事委員会というのはどういう性質のものでありますか。
  84. 梶川俊吉

    梶川証人 軍事委員会は、先ほど申し上げましたように、終局的には人民軍、その中間のものとして。パルチザン、そこに至るまでの初歩的な、基本的な單位として中核自衛隊をつくる、その指導をするのが任務であると思います。
  85. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうするとこの軍事委員会というのは、あたかも祖防の作戰本部みたいなものですか。
  86. 梶川俊吉

    梶川証人 純然たる軍事組織の指導と、祖防はまた祖防としての任務を持つておる関係にあるんじやないかと思います。
  87. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると、中核自衛隊、抵抗自衛隊というふうなものは、——第一その組織でお尋ねいたしたいのは、これは散在的であるかもしれませんけれども、少くとも人民軍というものを日本国内において結成する準備の中核として各地にある。これだけは單に中国地区のみならず、日本全国から見て、そういう事実は各種の資料からして推定できるわけですね。
  88. 梶川俊吉

    梶川証人 各地においてつくられつつあるという状況でございます。できたところもあるでしようし、まだできないところもあるでしようし、ところによつて違うと思います。
  89. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 組織、指揮系統、指令、編成というふうなものは、軍隊組織並びにその軍隊組織の予備的組織としてできつつあるということも、これは証人お認めいただけるわけでございましようね。
  90. 梶川俊吉

    梶川証人 はあ。この中核自衛隊は、五名から十名くらいで一小隊をつくる。そうしてその二小隊、三小隊でもつて中隊をつくる。二中隊、三中隊でもつて大隊をつくるという軍隊的な組織になつております。なおその中に政治委員がおつて、そうしてこの政治委員が隊内の政治教育その他を行う。これは完全な赤軍組織であると思うのであります。
  91. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると、この中核自衛隊、抵抗自衛隊でもつて組織する人民軍は、大体北鮮系の人間がおもでございますか。
  92. 梶川俊吉

    梶川証人 これはその場所によつて違うのでありまして、北鮮系の者で組織しておるものもありましようし、また日本人ばかりでつくつておるのもあり、いろいろなものがあるというふうに思います。
  93. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 全国的に見ましてこういうものは、数から見て北鮮系が大部分でございますか、日本人の数が多いようでございますか。その比率は……。
  94. 梶川俊吉

    梶川証人 そこのところはちよつと……。私は中国管内だけのものでございますから……。
  95. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 中国管内だけではいかがですか。
  96. 梶川俊吉

    梶川証人 中国管内では、私ども日本人の方が多いというふうに見ています。
  97. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういう事態が判明いたすとすれば、この人民軍みたいなものを国内に置いて、しかも北鮮系の人間が組織して、少くも軍隊組織中核となるべきような、そういう行動隊があるということは、これは單なる警察問題ではない。これは一つの、何と申しますか、あたかも国内において外国軍隊の指揮命令に服し、国内の撹乱を画する、こういう集団があるということは、警察問題だけでなくて国内的の治安の問題として、これに対抗する手段は警察力だけでは足りない、こういうふうにお考えにならぬでしようか。
  98. 梶川俊吉

    梶川証人 結局将来の発展性いかんにあるのじやないかと思います。
  99. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 広島に起つた事件だけで見ましても、警察とか特審が、はなはだ遺憾でございまするが、弱体と申しますか、それに対する措置はまことに彌縫的なものである。これを拔本塞源的な強力なる措置と申しまするか、徹底的な措置というものが、これは人員の関係もありましよう、予算の関係もありましようし、その他のいろいろな関係もございましようが、はなはだ遺憾にたえなかつたということは認めざるを得ない。しかもこういう事件か発生するにあたりまして、証人のところにおきましては、今まで証人の陳述によりますと、いろいろな情報行つてつた。それに対して、これ自身が刑法におきまして犯罪が明らかに成立するにもかかわらず、少くとも十分なる事前防衛の手段が講じられておらないように見受けられまするが、この点に関する証人の御意見を承りたい。
  100. 梶川俊吉

    梶川証人 その当時、もちろん事前に再三検察機関とも連絡をとりまして、広島市警においても、——後ほど証人としてお呼びになるようですが、私どもの聞いておりますところでは、非常態勢をとつて、いつでも出動できるような態勤がとられてあつたというように聞いております。ただ私どもが現在——私は警察機関の者ではありませんが、外部から見ますと、地方における警察力は、たとえばいろいろな事件などが起きますと、東京の警視庁のような、自由に機動できる機動部隊と申しますか、そういうふうな警官隊を持つていない、それがやはり現在治安の面において一番考えていただかなければならない点じやないかと思うのです。たとえば広島にしましても、わずかでもそういうふうな機動できるところの機動隊と申しますか、機動警官隊と申しますか、そういうふうなものがありますれば、先ほど来再三御質問のように、一挙にけ散らすことはきわめて易々たるものであると思います。
  101. 内藤隆

    内藤委員長 福田君に申しますが、その点は午後直接の責任者が証人として参つておりまするから……。
  102. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は特審局梶川証人にもう一点お聞きいたしたいと思うのです。これはあなたが特審局支局長として、こういうあなたのところに集つた情報によると、今後こういう事件は必ず起り得る可能性があるということを認定されて、その意味の証言をされておるわけですが、これは先ほど田渕委員からもその意味において発言があつたことと私は解釈しておるのであります。これは單なる警察力だけの問題ではない。平たく言うならば、国内において外国の人民軍というのが暴動を行つている。少くとも暴動の予備行為を行つていると見てさしつかえないような状況でありますが、この点に関して、今後これに対抗する手段、つまり治安力と申しますか、自衛力と申しますか、この点において、警察予備隊の動員なり、日本国民の組織的なこれに対する防遏方法なりについて何か御意見があつたならば、国会に対する意見としてお伺いいたしたいと思う。
  103. 梶川俊吉

    梶川証人 ただいまの御質問でございますが、私どもの意見を率直に申し上げますならば、先ほどお話しましたように、随時いつでも機動できる機動的な警官隊というものを組織していただきたいと思うのであります。現在警察予備隊はありますが、これは相当大きな事態に初めて出動し得る態勢のようであります。それはまたそれの任務があるのでありますが、それでなくて別個な機動的な警官隊というものが——警視庁は持つておいでのようですが、地方においても必要であるということを私は痛感いたしております。なお私ども一線にある者の経験から申しますと、現在いろいろの事件が起きております。たとえばこの広島事件にいたしましても、私ども役所その他で目撃していた者もありまして、当時指導者であつた書記長の吉田治平、それから池田、加太というふうな者がいずれも検挙せられておりますが、この事件は別といたしまして、すべて実際に背後で指令を下し、また命令を下したという者は多くつかまらないで、結局実際に行為をやつた者、いわばおどらされた者だけが処罰される。そうしてその者は黙秘権を行使しておりますために、背後関係というものが処罰できない。そこで私はこういうふうな事案に対しましては、どうしても扇動をした者を処罰する法規、人を殺すというふうなことを協議した者を処罰する法規が必要ではないかと思うのであります。実際に拳銃が火を吹いてからではおそい、それまでに取締るという意味におきまして、私ども一線におります者は、刑法だけではやはり取締りがむずかしいのではないかという考えを持つおります。そのほかいろいろと考えておることもございますが、また……。
  104. 田渕光一

    ○田渕委員 実際現在の刑法で行けるではないかという論もあるのでありますけれども、行けません。というのは、たとえば現行犯でなければ逮捕できないということがある。要するに、今言う通り、扇動した者、陰に隠れたものが共産党であるが、共産党は霞の上に黒いものをかぶつてつている。結局日本の共産党の指令はクレムリンからずつと来ている。そしてこれが地方支部へ流され、地方支部から地区細胞へ流れる。(「一体何を質問しているのだ」と呼ぶ者あり)そして共産党の暴れた連中がつかまつても、これが黙秘権を行使する。これは札幌の白鳥事件を見てもよくわかるが、逮捕してみても、ぶち込むというと黙秘権を行使する。現在の刑法はそういうようにできているのである。まつたく共産党の暴れる者にはもつてこいだ。調べるときに、都合の惡いことはあなたは言わないでもいいですよとあらかじめあるから、黙秘権を宣言する。だから都合の惡いときには黙秘権を行使して黙つてしまうというわけで、二日間ならば二日間の警察の勾留期間内には何もあがらない。あがらないならばそれもいいとして、あがらないままにこれを検察庁に送る。権察庁へ送ると、また十日間の間黙秘権を行使して默つているから……。     〔「何を聞いているのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  105. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。
  106. 田渕光一

    ○田渕委員 検察庁は、十日間ならば十日間の勾留期間内に黙否権を行使した者はいいとして、結局黙秘権のままで犯罪を犯した者を釈放してしまう。これはまるでやみから牛を引き出すような制度だ。暗がりから牛を出すような制度で、犯罪を犯して入つてもすぐ出てしまうから暴れほうだいだ。結局現在の刑法では取締れないから、こういう場合に、扇動とか、あるいは殺人その他の教唆罪は断然やるという方向に破防法案を持つて行きたいと思うが、これはわれわれも考えましよう。しかしそれは別として、少くとも私が伺いたいのは、あなたの管内にいるところの三万人の朝鮮人のうちで、生活保護法の適用を受けている者がどのくらいあるという情報をおとりでありますか。おわかりでありましたならば、その数字を統計的にお知らせ願いたい。
  107. 梶川俊吉

    梶川証人 生活保護法を受けております者は調査いたしておりますが、かなりの数字に上つたという記憶であります。ちよつと私は資料を持つておりませんが、相当な数に上つております。日本人の比率よりも、朝鮮人生活保護法の適用を受けている者の方がはるかに多い、しかも北鮮系に多いという統計が出ております。
  108. 田渕光一

    ○田渕委員 われわれは京都で調査いたしましたが、たとえばウトロ部隊というものがある。これは警察調査で行くと四百人、市役所調査で行くと六百人で、そこに相当の食い違いがあるが、朝鮮人というものは、米の配給でも二重三重にとつているからである。これらはほんとうを言うならば米食い虫である。そしてこの大部分が生活保護法で一箇月二千円の保護を受けている。しかも脅迫してとつている。これらが密造してやみをしている。職安に行けば職安に行くで仕事をやかましく言う。こういうようなぐあいですが、こういうことはおそらく広島でも相当あるだろうと思う。こういうようなことを考えなければならぬのでありますが、たとえば、生活保護を受けるために脅迫をして無理に生活保護法の証明を書かしているというような点、あるいは、あなた方に脅迫状が来ているというような点、こういうようなことがあつたらそれを伺つておきたい。
  109. 梶川俊吉

    梶川証人 市役所あるいは町村役場に対するただいま御質問のような強要は相当頻発いたしております。なお脅迫状の点でありますが、具体的には広島検察庁の公安係の検事の所へ数通参つておりますのと、なお警察官方面には二、三ありますが、特審職員に対しては、そういうふうな脅迫状はまだ聞いておりません。
  110. 田渕光一

    ○田渕委員 かりに特審局に来ておらなくとも、公安官に対する脅迫状によつて、その妻子父母あるいは年寄りといつた家族たちに畏怖の念を起さしめていないかどうか、そういう情報は入つておりますか、どうですか。
  111. 梶川俊吉

    梶川証人 私どもで実際に体験しましたのは、山口市の駐在官の所に、煉瓦を五つ一斉に投げ込んだという事件でありますが、その事件におきましては、やはり妻子が夜恐ろしくて眠られないという現象が起きておりまして、その点私どもといたしましては、最も重大視しておるのであります。広島におきましても、先ほど申し上げましたが、場合によつて子供を誘拐する、これが番効き目があるだろうというようなことをいつて脅迫されておるというような情報もありますが、こういうふうなことは、私どもおそらく世界の歴史にもまれな残酷な行為だろうと思うのであります。私どもとしては、そういうふうな問題を一番重大視しておるものでございます。
  112. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人に、情報と警備の点についてお尋ねしたいと思うのでありますが、証人は先ほどの証言で、二月二十四日に日系の人と朝鮮系の人が集まつて、三月一日に行われる総評彈圧法反対瞬起大会に対しての対策を講じた。それについて、特にその大会に入つて行つて非合法活動をやろうとした。その二月二十四日に中央から朝連の指導者も来て協議されておると証言されましたが、この協議されたことを特審局の方では、ただちに特審局管内広島自治警察、あるいは古市の警察可部警察、こういう直接被害を受けたところの管轄の警察に連絡をとられたのであるか、と申しますのは、こういう協議に基いて、三月一日の総評蹶起大会行つて吉田治平というのが、自由労組総評では加えないというのを、條件をつけて蹶起大会に参加して、市役所方面デモ隊が出発すると同時に、この協議に基いた連中が、可部なり特審局へ、行動を別にして、いわゆる非合法デモ行つて、そういうものを破壞しておる。特審局なり、可部税務署を襲つておる。こういうことになりますと、二十四日に協議したのが、ずつと後になつてわかつたのか、事前にわかつてつたのか知りませんが、もし事前にわかつたとすれば、管内警察と緊密な連絡をとられて取締りの完璧を期せられたら、こういう事件も未前に防げたではないかと思うのでありますが、いわゆる情報と警備との関係において、どういう連絡をとつておられるか、その点を承りたい。
  113. 梶川俊吉

    梶川証人 情報は私としては、的確に入つておりました。それでまず二月二十八日の午後一時から、広島市警本部で国警の管区本部、広島県本部、広島市警本部、市内の各署長特審局、高検、地検、この関係者が集まりまして協議をいたしております。対策協議会を開いたのでございます。なお二十九日の朝には、広島地検において、特審局国警市警でやはり協議をいたしております。なお当日の三月一日には、広島市警の奥迫警備課長支局に来てもらいまして、やはり向うは真劍に計画しておるから、実行力の問題ではあるが、何らかの実力行動に彼らとしては出るから、お互いに警備を嚴重にしなければいけないという連絡がしてございます。以上のようなことであります。
  114. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 重ねてお尋ねいたしますが、それだけ事前に相当周到に会合せられて、警備対策を情報に基いて協議されていたのだつたら、そういうようなことはできるということを予想されてやられたのでありますか、警備対策を十分にやられたら、それを未然に防ぐことがどうしてできなかつたのか、その点を伺いたい。
  115. 梶川俊吉

    梶川証人 これは警察自体の問題でありまして、私自身非常に説明に困るのでありますが、私の理解しておるところによりますと、向うが何しろ、まず紛争を起して、それをきつかけにして検挙者を出して、さらにそれをきつかけにして紛争を拡大するという計画がありましたために、広島市警といたしましては、なるべくその術策に陷れられないように自重されたのではないか、と私ども解釈いたしておるのであります。
  116. 中川俊思

    ○中川委員 私、先ほど来梶川証人証言を聞いておりますと、まことに同情にたえない点が多々ある。そこらで憲法とか何とか言つてつたけれども、大体憲法なんか考えるやつはおりはしない。そこで証人にお伺いしたいのでありますが、現在の特審局の人員は五十人とか先ほどおつしやつたですが、五十人くらいで中国全般の事務を統率することは不可能であろうと思うのですが、そういう点について、支局長として、中央に対して人員の増加を要求されたことが従来あつたかどうか。また手薄であるけれども、やむを得ぬ、こういうことであるならば、これは一種の職務怠慢とでも言いたいところでありますが、そういうような点についてどういう方策をとられたか、また今後とられんとしておるかどうか、この点をお聞きしておきたい。
  117. 梶川俊吉

    梶川証人 私就任いたしましたのは、昭和二十五年八月末でありますが、着任して間もなく、特審の機構があまりにも貧弱であるということを認識いたしましたので、その後における全国の支局会議の席上あるいはその他機会あるごとに、私は中央に対して、現在の機構では貧弱である、そうして相手は何しろ組織を持つておるのだ、組織を持つておるものに対しては各個ばらばらの町のごろつきのようなものは、これはすこぶる簡單であるけれども組織を持つておるのであるから、これに対しては、やはりこちらの方も相当な組織を持つて情報の入手もやる、向うの組織を明らかにする、向うの動きを明らかにする、事前にキヤツチする、そこで初めて警察その他の活動ができるのであつて、私はその必要性につきましては、ほとんど口をすつぱくして申しているくらい上申いたしております。私ども政治活動はできませんが、現場の体験者としての意見具申は、中央に再三再四申し上げてあるのであります。
  118. 中川俊思

    ○中川委員 委員長に特にお願い申し上げておきたいと思うのであります。今局長から御答弁がありましたが、こういう点につきまして、一度機を見て、法務総裁並びに特審局長を本委員会に呼んでいただいて、これらに対する将来の対策もあるのでありますから、この点についてわれわれとして十分質問をしておかなければならぬと考えますので、この点については委員長において御善処を願いたい。
  119. 内藤隆

    内藤委員長 午後の理事会において、次会の証人をどうするかという問題を討議しますから、その際にあなたの御意思もよく含んで、証人として考えましよう。
  120. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私はまずお伺いいたしたいのは、特審局法律で規定された職務の種類は一体何と何であるか、それをひとつ先に伺いたい。
  121. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとお答えになる前に申し上げますが、まだ他に二人の証人がありますので、どうぞひとつ簡潔にお願いしたい。
  122. 梶川俊吉

    梶川証人 マ書簡に基きます追放の監査業務、団体等規正令に基きます諸団体の暴力主義的、秘密主義的、反民主主義的、軍国主義的、極端なる国家主義的団体の調査をいたしております。なお占領軍総司令官の指令に基くアカハタ、その同類紙の発刊停止処分をいたしております。
  123. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは中国地方におきますいわゆる国家主義的団体というようなものの調査において今までそういう団体が、中国地方管内において一体何団体があつて、その構成は一体どうなつておるかというような点を、この際私は特にいろいろ治案対策の面からまた行政的な面からも伺つておきたい。
  124. 梶川俊吉

    梶川証人 中国支局管内にはさような団体は現在ございません。
  125. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは中国地方におきましては、たとえば再軍備をしなければならないというような運動をしておる団体が私はあると考えておるのでございますが、また二、三聞いてもおるのでございますが、そういう点については調査はなされておらないのでございますか。
  126. 梶川俊吉

    梶川証人 私ども常に調査はいたしておりますが、中国管内において、そういうふうな団体の存在は現在認識せられておらないのであります。
  127. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは伺いますが、結局中国地方におきます特審局の仕事というのは、たとえば追放者に対するいろいろな調査等を言つておられますけれども、先ほどから各委員の質問に対して答えられておるところによりますならば、たとえばマ書簡によるアカハタ類型紙の調査あるいはその他の民主的な団体としての労働組合、あるいはその他のそういう民主的な団体の調査に重点を置いておられる、こういうふうに考えてよいでございましようか。
  128. 梶川俊吉

    梶川証人 私どもは民主主義を擁護し、平和主義を擁護するための団体等規正令であるというふうに理解しております。
  129. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは伺いますが、たとえばこういうような民主的な団体がいろいろな行動をするその社会的な状態に関して、先ほどの山口委員の質問に対しましては、お答えにならなかつた。そこで今日こういう労働組合あるいはその他の団体が、たとえば労働三法の改惡とか、あるいはその他のいろいろないわゆる民主的な団体を彈圧するような法律が次々と出される今日の現状に対して、これに反対するためのいろいろな集会、集合等を持たれる前に、その団体が当然行うところの国民の権利を守るための集会を催すのに、その団体の情勢をなぜ情報として収集されておるのか。このことはかつての特高警察と同じ役割を果しておられると思うのでございますが、なぜそういうような民主的な団体のする集会の前に、その団体の情報を収集されておるのか、この点をひとつ伺つておきたい。
  130. 梶川俊吉

    梶川証人 労働組合の健全な活動は、民主的な態勢がとれて、その秩序が保たれなければ、私どもは将来おそらく伸びないと思うのでありまして、私どもとしてはむしろ健全な労働組合を守るために、直接行動、暴力行動、破壞行動というものを取締るために、そういち調査活動をしておる、こういうふうに解釈しておるのでありまして、以前の特高というふうなものとは似ても似つかないものである。これは明らかに違つております。
  131. 内藤隆

    内藤委員長 ひとつ簡單に願います。
  132. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは伺いますが、似ても似つかないと言われましたけれども、最もよく似つていると思う一つの問題がある。たとえばマ書簡によつてアカハタ類型紙等の取締りをやつておる。それは占領下でマ書簡に基いてやつておられると言いますけれども、問題は、日本の憲法から申しますならば、たとえば言論、出版、集会というものは全部保障されておる。しかるにいわゆる新聞で出すところの言論、そういうようなものも取締ろうとすること、しかもそういうことをも査察するということ、その情報を得ようとすること、これは何ら特高とかわりないと思うのです。そういうことが公然とあなた方の方でやられておる。そのこと自体が、意思は違うと言つておられますけれども、事実は昔の特高と違わない。こういうふうに私は思うのですが、あなたの行動において、実際問題として特高と同じでないと言われても、事実は特高と同じことをやつておるというような矛盾をお考えになりませんか。しかも私は当然矛盾と考えられると思いますが、それは自分の職務上矛盾を感じているとは言えないだろうけれども、問題は、あなた方は先ほど田淵君かたれかの質問に対して、たとえば今度の破壞活動防止法というようなものについて、扇動を取締るなどとか言われますけれども、実際はそれは人民のためにならない。国民がそれに同感しなかつたならば、單なる扇動の文字は扇動にならない、ほんとうに人民が受け入れる素地があるところに問題がある。つまりそれが言論、出版やその他のものを取締ることだけにおいて本質は決して解決するものでない、こういうふうにお考えになりませんか。
  133. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に申しますが、本日の尋問いたしておりますることに関連のないものはお答えにならなくてもよいのです。
  134. 竹村奈良一

    ○竹村委員 何を言うか。
  135. 内藤隆

    内藤委員長 私は関連性がないと思つておりますので、あまり議論を中心にしていては……。
  136. 竹村奈良一

    ○竹村委員 扇動というものを入れてもらわなくちや困ると言つておるから、それを聞いておるのです。
  137. 内藤隆

    内藤委員長 それはある委員の質問に対する私見を述べておるので……。
  138. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私見を述べているからそれを聞いておるのです。
  139. 内藤隆

    内藤委員長 本日の問題とは違つております。
  140. 田渕光一

    ○田渕委員 先ほど重大な発言がありましたが、同僚諸君から質問があつたので打ち切つたのであります。取締り公安官あるいは取締り当局の子供までも拉致するというような脅迫状をよこすに至つては、もうそれは言語道断、人道上許されない問題であります。ことにこの中核自衛隊はだんだん進んで行くと、これがパルチザンと人民軍になつて行くのだと球根栽培法には書いてある。このパルチザンのやり方というものは、あのニコライエフスクのような残虐なことをするのである。当時は竹村君はまだ子供であつたからわかるまいが、われわれは青年時代であつた。こういう非人道的な線まで進んで来るということが球根栽培法に書いてある。これはあの時代から一歩進んで、家庭の婦女子ならいざしらず子供までも拉致するというような問題にまで脅迫状が発展して来ておる。たとえばこういうような脅迫を受けたその官舎なりあるいは私邸なりに対して、中国特審局情報では、国警なり、市警なりがこれを監視する配置手続をとつておるかどうか、これをひとつ伺いたい。
  141. 梶川俊吉

    梶川証人 その問題につきましても、市警国警検察庁と常時連絡いたしまして、警戒態勢をとつていただいております。現に私どものうちの警戒もやつていただいておりますし、警戒態勢はもう大体できておると思います。
  142. 田渕光一

    ○田渕委員 そういうようなぐあいで、徹底的に公安官あるいは取締り当局の取締りができるように、一層の善処をされんことを要望いたしておきます。ことにまた国民の輿論として、これは御参考に申し上げておきますが、昨日来私どもの方に参つており、委員長のところにも行つておると思いますが、国民の方では、憂国の士はこう言つております。何だ、三十万や四十万の北鮮系統の者には、日本人の愛国心を発動して、不売同盟をやつたらどうだという声まで参つて来ております。ここまで国民がついて来、国会もついて来ておりますから、後顧の憂いなく、どうかしつかりと治安対策については善処されんことを要望いたしておきます。
  143. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、梶川証人に対する尋問は終了いたしました。証人には長時間ごくろうさまでございました。引続き理事会を開きますので、理事の諸君はそのままお残りを願います。  午後は二時より再開することにいたします。それまで休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  144. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。治安警備状況に関する件につきまして、四月二十五日、警視総監田中榮一君、国家地方警察本部長官斎藤昇君、法務総裁木村篤太郎君以上三名の諸君を本委員会の証人として決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 内藤隆

    内藤委員長 異議なきものと認め、さように決定いたしました。     —————————————
  146. 内藤隆

    内藤委員長 なお、午前中の証人梶川俊吉君より、証言の一部訂正願が委員長あてに参つておりますので、先例に従い、朗読の上速記録にとどめたいと存じます。  昭和二十七年四月二十二日   衆議院行政監査特別委員会    委員長内藤  隆殿    法務府特別審査局中国支局長          梶川 俊吉印     証言の一部訂正願  昭和二十七年四月二十二日貴委員会に於て特別審査局中国支局襲撃事件について証言を行いましたが貴委員長からの質問に対し証言の中下記の通り御訂正願います     記  中国管内在住朝鮮人の数は約三万人と申し上げましたが約五万人の誤りです。  以上であります。     —————————————
  147. 内藤隆

    内藤委員長 これより治安警備状況に関する事件中、広島事件について調査を進めます。  ただいまお見えになつておられる方は西村徳一さんですな。
  148. 西村徳一

    ○西村証人 はい。
  149. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。  これより治安警備状況に関する件中、広島事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人西村徳一君朗読〕    宣 誓 書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  150. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  151. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長許可を得て答えるようお願いいたします。なお、こちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  西村徳一君は現在広島市警本部の本部長でありますな。
  152. 西村徳一

    ○西村証人 そうです。
  153. 内藤隆

    内藤委員長 現職につかれるまでの経歴を簡單に述べてください。
  154. 西村徳一

    ○西村証人 私は大正十二年東京帝大法科を卒業いたしまして、台湾総督府に奉職し、台南、台北各州の警察部長、総督府人事課長兼総督秘書官等を歴任いたしまして、昭和十七年末陸軍司政長官、ジャワ軍政監部の警務部長になりまして十九年の末までおりました。昭和二十年初頭、台湾総督府へ復帰いたしまして、台湾総督府文教局長となり、終戰を迎えまして退官いたしました。そうして二十五年一月、郷里広島市警本部長に就任して今日に至つておるものであります。
  155. 内藤隆

    内藤委員長 本年三月一日、広島市で決行されました広島県労組会議主催の彈圧法粉砕広島大会というもの、及びそのデモ行進の実情についてお述べ願いたい。
  156. 西村徳一

    ○西村証人 三月一日の広島市における労働者大会並びにそのデモ行進の状況でございますが、その前に、この大会がどうした性格のものであつたかという点を申し述べてみたいと思うのでございます。
  157. 内藤隆

    内藤委員長 その大会が開催されるまでの状況から述べてください。
  158. 西村徳一

    ○西村証人 大会が開催されるまでの状況でございますが、広島県下における労働組合の状態は、二十四年にいわゆる日鋼事件が起りまして、それを契機として、県の労働組合が二つにわかれて広島県労働組合協議会、県労協というものと、広島県労働組合連絡協議会、県連協という二つになつてつたのでありますが、最近に至りましては、後者の民同系の県連協が労働組合中心勢力になつておるのでございます。名称も広島県労働組合会議というふうに改称しております。今回の労働組合の会合も、この県連協の方から開催の願出があつたのでございまして、三月一日に広島において、労働法規の改正反対等を主とした題目といたしまして、傘下の各労働組合に呼びかけて、この大会を持ちたいという公安條例による届出がありました。公安委員会といたされましては、これを許可するに何ら支障ないものというふうに認めて、この大会許可があつたわけであります。ただ組合幹部の方々とも従来も連絡がございますので、この会を持ちますにつきまして、治安上遺憾のないようにという面は、十分打合せをいたしまして、お互いよいよ打解けた形においてこの会が持たれたわけでございます。
  159. 内藤隆

    内藤委員長 そこで三月一日、いよいよ大会を開いた。その大会状況等を少し述べてください。
  160. 西村徳一

    ○西村証人 大会は三月一日の午後一時から五時までということになつてつたのでございますが、事実はそれよりも多少時間が遅れまして、一時四十五分に開会になりました。そうして三時四十五分に終了いたし、それからデモ行進に入つたわけであります。集会における参加人員は約一千名でありまして、司会者のあいさつ、議長のあいさつ等がございまして、それに引続き来賓の祝辞とか、また祝電の披露といつたようなものが済んで、議事に入つた。議題としましては、彈圧法規をストで粉砕せよ、労働法規改惡絶対反対その他のスローガンを掲げてありましたものを議題として、これらの点も満場異議なく可決されました。すべてきわめて平穏裡に終了いたしたのであります。ただこの間に自由労組の方から、この会へわれわれも参加させろという交渉がありまして、その押問答が行われたのでありますが、その結果は、大会参加を認められまして、これが入つて来たということが特異の事情であつたかと思います。
  161. 内藤隆

    内藤委員長 それは、大会からデモ行進に移つたときに、自由労組がさような申込みをしたのか、それとも大会中にそういう申込みが来たのですか。
  162. 西村徳一

    ○西村証人 それは大会の中途においていたしたのでございます。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 そうしてそれを何か條件付で認めたのですね。それからデモ行進に移つた、こういうわけでございますか。
  164. 西村徳一

    ○西村証人 さようでございます。
  165. 内藤隆

    内藤委員長 そのデモ行進をやつておるときに、自由労組員はもちろん、北鮮系朝鮮人の集団がその行進の中へ加わつて来たわけですか、また別個なものかあつたのですか。
  166. 西村徳一

    ○西村証人 デモ行進におきましては、ブラス・バンドを先に立てまして、その参加団体が行進を所定のコースで行つたのであります。それの中には自由労組の四十名余りというものが、中ほどに加わつて進行して行つたのであります。行進そのものとしましては普通のものでございまして、自由労組の者が途中ジグザクの蛇行行進等をいたしましたけれども、行進自体としましては大したことなく、目的地である広島市役所横の広場まで参つたのであります。問題はその後において発生したわけでございます。
  167. 内藤隆

    内藤委員長 あなたは北鮮系朝鮮人の三・一記念大会の様子は、御存じないわけですな。
  168. 西村徳一

    ○西村証人 私の方ではございませんので、存じておりません。
  169. 内藤隆

    内藤委員長 三・一記念大会には、散会後可部税務署、古市町役場、祇園町役場等を襲うた一隊があり、他の一隊が海田税務署、それから船越町の民団等を襲うて、そのくずれが広島市内に合流して来た、こういうことに当委員会の調べはなつておるのですが、径路はどうですか。
  170. 西村徳一

    ○西村証人 さようでございます。当時としましては、大会デモ行進は無事に終つたのでございます。ただ、それが終りまして散会したのでございますが、その中に自由労組の四十名余りというものが、依然として体形をくずさないで、デモ行進を引返して参りました。そうして主として安佐可部方面でありますが、この方から参りました朝鮮人大体百五十名——推定でございますが、女、子供それぞれ五十名ぐらいずつ、その百五十名ぐらいのものと途中で合流いたしまして、それからまた市内のデモが行われたわけでございます。
  171. 内藤隆

    内藤委員長 そうして広島市内にそういうものが合流して市役所を襲うような形を見せておつたが、それが今度は方向を転じて特審支局襲撃になつた、こういうわけですね。
  172. 西村徳一

    ○西村証人 その点ですが、主としてわれわれとしましては、警察なり税務署市役所——市役所は当日ちようど土曜日でございましたので、午後はすでに門を閉じておりましたが、そうしたところがデモの対象になるというふうに存じておつたのでございます。それでその一隊が双方で二百名ばかりになりまして、最初通りました道を逆に戻りまして西警察署デモをかけた。このときは警察としても、一応警察官は待機して、その動向を見ておつたのでございますが、蛇行行進があり、気勢を上げておるという程度のことでございまして、警察としてはそれを見送つたわけでございます。そうしてそれが西警察署を済ませまして、東へ向つたということになりまして、従来警察が対象になつておるというように承知しおりましたので、われわれとしては東警察署へ向うなというふうに考えたのでございましたが、途中急に道をそらしまして、特審局へ向つたわけであります。
  173. 内藤隆

    内藤委員長 あなた方の警備のいわば裏をかいたわけですね。
  174. 西村徳一

    ○西村証人 結果的にはそういうことになつております。
  175. 内藤隆

    内藤委員長 その特審局襲撃した状況等を聞きたいのですが、その前に特審局襲撃されておるということを特審局の方からあなたの方へ連絡かあつたが、相当時間がかかつたので、いわゆる救援隊というか、あなた方の出動が遅れておつたというようなことでありますが、そういう点もひとつ説明願います。
  176. 西村徳一

    ○西村証人 特審局デモ隊が参りましたのは、途中電車通りを東に向つたのでございますが、その電車通りから特審局までというのは、そう遠くない距離なのでございます。そこまでは特審局というふうにはわれわれは感じなかつたのでございますが、それが急にそちらにまわつて特審局前で蛇行行進をし、いろいろな乱暴狼藉が行われたわけであります。特審局の窓ガラスも五、六枚こわれた、催涙ガスも二個投擲されたのでございます。これに対してわれわれとしまして、ただちに手当ができなかつたということをまことに残念に思つておるのでございます。特審局の方からも、自分の方にまわつたという連絡がございました。ただそれを救援するという措置が事実上においてできませんでしたことを残念に思つております。
  177. 内藤隆

    内藤委員長 襲撃の現場に救援のためにかけつけられたが、その朝鮮人団体、自由労働組合員等はどういう武器を持つておりましたか、またどういうふうにその武器を使つて特審局襲撃したか、詳細に……。
  178. 西村徳一

    ○西村証人 特審局の現場は私の方で直接立会つておりませんので、十分にわかりかねるのでございますが、爾後警察から派遣をいたしまして調査をしたのでございます。この際には相当プラカードも用意しておりました。その裏にくぎが打ちつけてあつた。それで物を叩くようなかつこうになつてつたと思います。また催涙ガスをどうして持つてつたかということは、事前にはわからなかつたのでございますけれども、ポケツトなどに入れておつたものと推定いたします。
  179. 内藤隆

    内藤委員長 そのプラカードなんかには五寸くぎを突き出して、それをもつてドアを破つたように支局長から聞いておりますが、そのような事実はあるのですか。
  180. 西村徳一

    ○西村証人 大体あつたことと存じております。
  181. 内藤隆

    内藤委員長 催涙ガスというのは、今の証言で二個とありましたが、二個とも爆発しましたか。
  182. 西村徳一

    ○西村証人 二個とも爆発したのだと承知しております。
  183. 内藤隆

    内藤委員長 広島市内に日雇労務者はたくさんおると思うが、そういう人人の動向等を少しお伺いしておきたいと思います。  昨年の十二月以降県内自由労組職業安定所に対する闘争等に見られる顯著な特色というものがあつたとしたら、どういうふうな特色があつたでしようか
  184. 西村徳一

    ○西村証人 広島市における日雇い労務者の数は、大体四千九百というふうに承知しております。これは年々少しずつ増加の傾向にあると思うのであります。この一部の人によつて自由労組が持たれて、従来賃上げあるいは年末越年資金闘争といつたようなものも、大体この自由労組の人たちの指導によつて行われておる傾向が強いように思つております。昨年の暮れにおきましてももち代よこせ、また年末年始の休暇の資金を出せといつたような交渉市当局にいたしまして、この際は午後から相当数の日雇労務の人たちが押し寄せました。夕方に至るまで、なかなか交渉がらちが明かなかつたのでありますが、最後には市の方から要請がありまして、私の方で警察力を発動させてこれを解散させました。そうしてその際首謀の三名を逮捕しております。その中に今回のデモの首謀者であつた吉田治平氏も同じく加わつております。そうした人たちによつて扇動されるといいますか、その人たちが主になつての賃上げ闘争等が行われたというのが特色であろうと思います。
  185. 内藤隆

    内藤委員長 これは富山県の例ですが、富山県のごときは、昨年暮の賃上げ闘争を私も現実に見ておるのですが、煙突に上つて赤旗を振りまして、あるいは知事室へあばれ込んで什器を破壞しておつたという事実を私目撃しておるのだが、そのような乱暴なことはどうでしたか。
  186. 西村徳一

    ○西村証人 去年の暮れの騒ぎのときは、今お話のようなことはございませんでしたけれども、多数の者が市役所の廊下へ一ぱい詰まりまして、そうして代表者を出して交渉するということになつておるのでございますが、なかなかその通りに参りませんで、どやどやと一ぱい部屋へ詰めかけて、市理事者がカン詰状態で動きがとれないといつたような、時間を長くとるという状況がございました。
  187. 内藤隆

    内藤委員長 一体自由労組といいますが、あなたの広島市の場合には、そういう組合は正式にできておるのですか。またその事務所等もあるのですか。
  188. 西村徳一

    ○西村証人 正式と申しますか、届出的なことにはなつてございませんけれども事務所としては寄場のそばに事務所を持つて、看板を掲げております。
  189. 内藤隆

    内藤委員長 そこには何か事務でもとつておる者がおりますか。
  190. 西村徳一

    ○西村証人 そこにしよつちゆう出入りしておる者がございます。
  191. 内藤隆

    内藤委員長 私の聞きたいのは、事実は大した自由労働者もいないのに、看板だけは大きく掲げて、しかもその中心になつておる者は、レツド・パージによつて日雇い労務者の群れへ割込んだ者だ、こう聞いておるので聞くのですが、広島の場合はどうですか。
  192. 西村徳一

    ○西村証人 お話のように、レツド・パージ——今度の吉田治平氏もレツド・パージ組でございますが、そうした人たちがそうしたところへ出入される傾向はあると考えております。
  193. 内藤隆

    内藤委員長 組織労働者大会及びそのデモ行進を混乱に陷れ、あるいは特審支局襲撃するような暴徒の大多数は、国警側の警備地区から流れ込んでいると思われるが、本件に関して広島市とその周辺地域との警備の一体化について、事前に何か国警側と協議したことがありますか。
  194. 西村徳一

    ○西村証人 今回の騒擾になりました問題につきましては、事前に十分連絡をしたのでございます。大体三月一日の大会を認めるということになりまして、われわれとしましては、この大会は無事に済むというふうに大体見通しをつけたのでございますが、反面三月一日はちようど万歳事件の記念日でもございますし、朝鮮人の動きが相当あるだろうということが予想されたのであります。それがどういうところで行われるかという点につきましては、私たちの判断では、警察力の割合に充実しております広島市内を避けて、その周辺の、割合に手薄なところで行われるだろうというふうな判断をしたのでございます。しかし大会自由労組の人たちがこれに合流して、その人たちによつてどんなふうな形にかわつて行くかわからないという点もわれわれとしては懸念された点でございますので、そうしたことに対しましては、警備の態勢を十分整えておく必要があると考え、国警とも事前の打合せをいたしましたし、また特審、検察関係とも事前連絡をして、そうした場合の状況判断等をいたしております。
  195. 内藤隆

    内藤委員長 午前中の特審局中国支局長の梶川君の証言にもありましたが、市警もしくは国警としては、なるべくデモ行進に刺激を與えないようにしておつた。すなわち彼らは検束等をされれば、それを奪還するためにまたさらに新たな襲撃をするということを計画しておるのだから、これに乗じられないようにしておつた。こういう証言があつたのですが、しかし一面から見て、市警なり国警なりがこういう非合法的なデモそのものに恐怖しているじやないですか。
  196. 西村徳一

    ○西村証人 恐怖しているといつたようなことは断じてございません。ただ事前情報として、先ほど特審支局長からそういうお話があつたそうでございますが、その通りわれわれとしましても聞かされておつたのでございまして、警察が手を出すことによつてかえつて全体の人たちを激化させ、事態を惡化させるという危險が非常に多いのだ。従つてそうしたことに対して下手に乗ぜられないようにということは、われわれの会合のときにも十分な注意をしたわけでございます。それでその結果が、私どもとしましてそうした完全な暴徒的な形になるようになりますれば、これはもつと違つた考え方があると思うのでございますけれども、この場合の判断としましては、そこまでを予想しなかつたわけでございます。
  197. 内藤隆

    内藤委員長 終戰以来第三国人としての朝鮮人等の行動については、国民が非常な憤懣を感じていることは間違いない。だから警察の方においても、あの当時のようないわゆる第三国人としての、われわれ敗戰国民に対する彼らの態度から見て、私は国警なり市警なりがそういう恐怖を抱いておつたとすると、これはすこぶる重大問題だと思うのでお聞きしたのだが、ただいまあなたの証言ではさようなことは断固としてないということで、一応安心するのでございますが、さらにこの特審局等の暴行を現実に見られた場合、あなたの方の市警としては、これに対して一体どういう態度をとられましたか。
  198. 西村徳一

    ○西村証人 特審局の事態のようなことは全然予想しておりませんので、今回は遺憾な結果になつたのでございますけれども、将来としましては、こうした面につきましてまた違つた考え方をして行かなければならない事態になつておるように考えております。
  199. 内藤隆

    内藤委員長 ともかくもう国家独立の日も近いという今日、かような国家の建物に向つていわゆる第三国人から襲撃をされるようなことは、これは決して独立国家の名誉ではありません。かような点において、将来十分に決意のほどをお願いしておきたいと思います。——他に御質問ありませんか。
  200. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人に二、三点お伺いしたいのでありますが、きようの午前中の特審局中国支局長の証言によりますと、いわゆる三・一事件の前に、大体朝鮮人並びに日本人の左翼系の人々によつて会合が持たれ、しかも朝鮮人の方では中央から指導者が来まして会合を持つて、三月一日に行われる総評主催の断圧法反対の大会についての協議をした。その協議に基いて大会に発言を求め、メツセージを読み、そして大会では二つの條件を付してこれに参加することを許した。これがたまたまいわゆるデモ行進に移ると同時に、一つの非合法デモ行つて特審局襲撃し、あるいは安佐地区税務署あるいは役場を襲撃しておるのでありますが、特審局支局長の証言によりますと、こうしたことが行われるであろうという情報に基いて、事前に二十八日と二十九日の両日にわたつて検察庁、自警、特審局が集まつてこれに対する対策を練つた、そうして万遺憾なきを期して、その警備の対策を協議した、こういうように証言をされたのであります。そこで私が、それほどまでに警備をすることについて対策を十分講じておられたにもかかわらず、こうした非合法的な問題が起きたということの根拠は、一体どこにあるのかということを証言を求めましたところが、証人は、この点はわれわれは情報活動の面であつて、警備という面は警察関係にあるので、その点では私から言いにくい点がある、かように証言をせられておるのでありますが、ただいま委員長からも御発言がありましたように、国警並びに自警間、あるいは特審局、これらの総合的なこうした問題に対する警備の対策が、完璧を期せられておつたのかどうか、この点を質問したいのであります。実は一昨日、京都市の事件について、本委員会において京都市の公安委員長、京都市の警察本部長の証言を求めましたときに、京都市の警察本部長は、国警と自治警察の間におけるいろいろな警備の連絡等が、どうも統一を欠くので、将来は警察を一本の形においてやることが最も理想的であるように考える、こういうように証言をされたのであります。一方公安委員長はそれと反対に、決して自治警察といえども国家警察に劣らない十分な機能を発揮することができる、こういうように自信をもつて証言されたのでありますが、この広島事件のいろいろな関係を総合してみますと、安佐地区におけるところの国家警察と、広島地区におけるところの広島の自治警察あるいは特審局その他の連絡の統一が欠けて、その統一の裏をくぐつて波状デモ行つて税務署特審局その他を襲撃しておる、こういうように見受けられるのでありますが、特審局長の言いましたように、そういう警備に何かもう一つ足りない点があるのかどうか、その点を御証言願いたいと思います。
  201. 西村徳一

    ○西村証人 自警と国警との警備、また特審局その他の機関との警備についての連絡が緊密に行つておるかどうか、またその点に欠陷はなかつたかという御質問であつたかと思うのでございますが、平素における警察事務といたしましては、現在の自治警国警の建前で決してそれによる欠陷はない、十分やつて行けるものと信じております。ただ相当大きな事態、また社会情勢が惡化して来るといつた傾向が増しますならば、従来の行き方をもつと強化したものが必要になつて来るのではないかと考えております。今回の場合におきましても、今回の事件が連絡が惡かつたために起つたというふうには私は考えておりません。相当連絡は十分にいたしたつもりでございます。この点は国警とも、また特審局検察庁とも、平素から十分連絡がつくように、首脳者の会合もいたしますし、また事務を担当しておる方面も、しばしばいろいろと連絡をとつておるのでございまして、今回の事件におきましても、事前の連絡として欠けるところはなかつたと思つております。  それではなぜああした結果になつたのかということがあるわけでございますが、この点につきましては、私どもいろいろ話し合つた結果、市内においては朝鮮人デモ等は行われない、これは国警管内で起る、またわれわれの方としましては、自労が入つて来る、これがどの程度出るかということの予想をしたわけであります。この点につきましては先ほど申しましたように、警察が下手に手を出すと、かえつて作戰に乗ることになるから、これは注意し合おうというふうに考えたわけでございます。しかし国警とも、どういう事態になるかは保しがたいのでありますから、事態が惡化した場合には、自警の方へも応援をすぐ出してもらいたい、また国警管内において事態が大きくなるようなことになれば、自分の方からも出そうといつたような話合いをしておつたのでありまして、そうした行き方で行きますならば、たいていのことは片づき得るものと考えるのでございます。但し先ほど申しましたように、情勢がきわめて險惡になつて来るという場合においては、これはまた違つた考え方をして行かなければならないと考えております。
  202. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 本委員会において京都市のこうした問題を調査いたしますと、広島市と同じように、京都市においては圓山におきまして、いわゆる総評主催の彈圧法上反対の大会が持たれ、それから広島市においても、総評の主催で彈圧法反対の大会が持たれた。京都市におきましては、京都府議の灘井五郎というのがこの大会に出て来て発言を求め、そうしてデモ行進に移つてから、左翼系の学生並びに労働組合の一部の人が入つて、非合法デモ行つて、それが京都市の各地における騒擾事件となつておる。広島市におきましても、やはり同じような総評大会が、民主的な大会として行われたが、それに同じく吉田治平という共産党の人が発言を求めて、そうして條件を付して入つておる。京都市でも條件を付して入つておる。大会をやりますときには、合法的、民主的、穏健的な団体が大会をやつて、今度大会デモ行進に移つたときに、波状的にいろいろな襲撃事件が起きているのは、同一の方向をたどつておるのでありますが、そういう非合法な活動をする目的をもつて大衆の集会をするところに入り込んで来るようなことが、今後しばしば行われ、こういう不祥件を起すということに対しましては、取締りの警察としての立場から、今後どういうような対策を講ぜられようとするか、その点を御証言願いたい。
  203. 西村徳一

    ○西村証人 先ほどお話ございましたように、非合法な分子が入り込んで、せつかく正当に行われつつある大会が混乱されるというようなことは、警察としても非常に困つた問題と考えるのであります。こうした面でわれわれとしましても、大会の進行につきましてよほど注意をしなければならぬ問題だと考えます。ただ大会そのものはあくまでもわれわれの干渉すべき筋合いのものでないと考えます。われわれとしましては、非合法的なものが現われたときにしかどうすることもできないのでございます。大会の進行をされる方においても、そうした面の措置は切におやり願うということにしたいと思つております。
  204. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言……。
  205. 田渕光一

    ○田渕委員 この吉田治平の指導しておる自由労組、これが昨年の十二月四日から本年の二月二十九日までに三十八件という事件を起しておるのであります。こういうものが再々起るについて、私は今回の京都事件調査をして、相関連するところがありはせぬかと思われるのは、警察当局は、始終、再三あるので、またかと不感症になつておるのじやないかと思うのであります。というのは、京都では、天皇の御旅行先ああいう不祥事があり、その前においては舞鶴の引揚げからずつと来ておるから、またかまたかと思つておりますというようなことを率直に言つてつた。こういうような点があるので、ああいうような一つの大きな事故を起した。広島もそうである。三十八件も今日まで起しておる。これは始終あることだから、手をもてあそばしているのじやないかという点が一つと、非常に全国的な、北海道から九州までの一連の日本共産党の指揮する球根栽培法、共産党の五全協の軍事行動から来た中核自衛隊、あるいは進んで行つてパルチザン戰法、あるいは人民軍というところまで進んで行こうとする一連の線が出ておるが、広島だけの一つの井の中のかわずで見ておるから、またかまたかと小さく見ておる。なめていたから今日までこういうように起つて来たのだと思うのですが、またかまたか、また起きたかと、絶えずもてあましておるのか、それとも不感症になつておるのか、こういうような点はどうです。京都と相似たような点があると思うのですが、あなたの証言から出なかつたのですが、あなたは本部長として最高指導部においても、一線の警察官というものは、また始まつたか、大したことはないよという安心感が最後に乗ぜられたのじやないだろうかと思うのですが、いかがですか。
  206. 西村徳一

    ○西村証人 三十八回というのは、私、初めて承知するのでございますが、これはどういうような事情であつたか私はわかりません。ただ想像しますのに、ある程度職安等へ交渉に行つた数というのではないかと思うのでありまして、警察自体が取扱わなければならぬ事件としましては、われわれはそういうようにあつたように考えておりません。  それからただいまお話ございました、またかというふうになりはせぬかというお言葉でございますが、この点は決してさようなことがあつてはならないのでございまして、われわれとしましても、またかどころか、そうした面にはきわめて神経を使つておるのでございます。そうしたことの未然防止ということには十分努めておるつもりでございます。
  207. 田渕光一

    ○田渕委員 この三十八件というのは、あるいは職安事故かもわかりません。けれども、北海道の、たとえば旭川の職安係をおどかしておる。そうして帰りに橋の上でこれを待つてやつけて橋の下に捨てておる。こういうことをやつて機を見て逃げる。それでどうかというと、職安でやかましく言う、あるいは十分な就労をさせぬとそれを脅迫する。そうして十時ごろ出て来て一時か二時ごろ引揚げる。これで二百五十円か二百七十円という金が食われておる。自由労組というものは、普通は完全な日雇い労働者というものが少い。ほとんど擬装共産党員が入つて指導しておる。国家を食いつぶしておる。完全に働くものはありません。十時ごろ出て、職場に行つて十一時、書飯を食つてぶらぶらして一時ごろ引揚げて、ほかの仕事をやつておる、こういうようなことで、やれないやれないといつておどかしておる。こういうのが三十八件。こういうのが北海道の旭川その他の職安を見てもわかりますが、たとえば広島の職安の監督あるいは仕事の割振りをしておる人たちにおいて自由労組からおどかされたとか、脅迫されたということを聞いたことはありませんか。
  208. 西村徳一

    ○西村証人 今お尋ねのような件は、われわれもちよいちよい聞くのでございます。従いましてこうした面には、ずいぶん職安関係の人、そうした事務にかかつておられる人はいやな思いをされておると承知しております。こうした点につきましては、そういうことがあつてはならないのでございますから、われわれとしましても、あるいは暴行があるとか、脅迫があるとかいつたようなときは、遠慮なく連絡してくだされば、すぐ出かけて行つてそうした点の処置はつけるからということをいつも申しておるのでございます。県の労働部とか、また職安、市の労政課といつたようなところとの連絡は、われわれとして相当気をつけておるつもりでございます。
  209. 田渕光一

    ○田渕委員 この図面で見ましても、古市から広島までは大体二里、彼らがこの特審局を襲うのは、安芸地区安佐地区において連絡をとつてつたので、これが裏をかかれたわけでありますが、二里も来た結果が、何しに来るかということがわかつていなければならぬことが一つ。もう一つは、特審局から電話をかけておるのに、行つたのデモが去つてしまつたあとつた特審局におつた五人ないし十人ぐらいの当時の職員は、表にかんぬきをかけてしまつて、中で待つてつた、こういうようなことで、相当来るということもわかるし、あるいはまた特審局から電話がかかつておるのに、特番局と広島市警との間の距離はどのくらいあるか知らぬが、デモがちらばつてしまつたあとだということは、私たちははなはだ納得できないのであります。今日の警察官にはそんなことはなかろうと思うけれども、終戦直後におけるあのどさくさなどに、どろぼうなどが入つても巡査は来はせぬ、火事だと言わなければ——済んたころになつてつて来るというありさまだつた。今日はそんなことはありますまいが、この事件はたまたま事なかれ主義で、一つは君らが早く出動すると、そこで事故を起す、入れるとこれの奪還に来る、それが一つの刺激剤になつて大きな問題になつては困るから、そこでゆつくりしようということであつたなら重大問題です。われわれの思うところでは、そういうことはなかろうと思う。けれども、ここで私が伺いたいのは、国警市警と緊密にやつているというのは実際は表面だけであります。おそらく広島市の市民の負担における市の公安委員会が市の公安を管理しておる、その執行機関と言われておる市警が——国家に関するような全国つながりのある問題は国警の範囲で行われておる。広島の数里先で行われておる。広島市警でもつて財政的にこれを補うて行けるわけはない。ことに本日の新聞に出ておるが、国警は、殉職警官に対して百万出そうということであると、国警でもしも間違いが起きた場合には百万もらえるが、市警にそれだけの裏づけがなければ、人間として市警国警と同じように行けるわけがない。こういうような財政的な裏づけが市警にないのに、小さい広島市の市民たけの負担におけるところの市の公安委員会の執行機関である市警が、どうして国家警察の機関と同一の歩調で行けるか、同じに行ける道理がない。私はこういうところは、市警国警の摩擦をなくするとか、現在の治安をより以上しつかりしてもらわなければならぬけれども、大きな財政的な裏づけがなければ、あなた方は行けないじやないかと思うのであります。装備の点においても、たとえばオートバイや自動車も、自警よりも国警の持つている方が多い。自治警というものはよしてしまつて国警一本にしてしまつたらどうかという論も実際問題として出て来る。それは制度上しかたがないといつても、国会の承認を受ければかえられる。私どもはかえるのにやぶさかでないのだ。財政的な裏づけがない、装備も劣つておる、あるいは人員においても劣つておる。それは市の財政上やむを得ないところだ。広島では三千人か四千人か知らぬが、国家の大きな財政を持つておるところの国警と、小さい広島市という一地区の財政をもつてつている自警が、こういう国家的な事件に対して同一の歩調をとつて行けるとおつしやる点において、現在の広島市の財政とにらみ合せてはなはだ疑問を持つ。札幌のようなところで白鳥事件が起きて、その捜査のために一日三十万円使つておる。これはわれわれ調査に行つたときに、一箇月九百万かかるということであつた。これでは札幌市の費用はなくなつてしまいます。それで国庫補助を出してもらいたいと援助を求められておる。こういう事件広島では起きないからいいが、もしもこういう大きな事件が起きて、捜査費用が大きくなつて来れば、あなた方はやつて行けない。こういう点において、制度、機構は別として、財政的な裏づけの面からいつて、自警と国警とが円満につながつておるという点は、この委員会における証言の事なかれ主義の現われだと思う。もつとわれわれとしては深刻な線を考えて行つて、治安の乱れて行くのを未前に防止しなければならぬと思うのですが、まず財政的な点において心配はないのか、事故が起きたときに警察官に幾らやるというしたくがあるのか、こういうような点を本部長として率直におつしやつていただきたい。
  210. 西村徳一

    ○西村証人 自治体警察が財政的に非常に苦しい立場にあるということは否定いたしません。しかしそれだからといつて、自治体警察がだめなんだという御議論には、私は承服いたしかねます。私どもとしましては、そうした面の苦しさはございますが、自治体警察とか国警とかいう区別をつける必要はない、ひとしく日本の治安を担当しておるんだという気持でやつております。従つて国警との間もこういう気持でつき合つておるのでございます。よそは知りませんが、しかし私のところにおいては国警と自警との間はきわめてうまく行つておると実は私は自負しております。それで今回のような場合も、その国警と自警との間がうまく行かなかつたから起きたのだというふうにおとり願うと、私は違つておると思うのでございます。それから財政的に裏づけがなくて、自警の連中が困るじやないかというお話もございましたが、これは私の方としては、この間も管区本部の方と話合いをしまして、殉職等の場合には国警も自警もないんだ、同様にそれぞれのものを出して見て行こうじやないかという話もつけております。そうした面で私たちは自警だ、国警だといつたような立場をあまり考えておりません。しかしそれぞれの管区を持つておるのでございますから、この立場ははつきり守つてつております。ただ大きな問題が起きましたときには、これは一体になつてつて行かなければならぬと考えております。またそれが実際の上で各階を暴露して来たというふうには考えておりません。ただ今回の問題は、これは国警と自警との関係でなしに、われわれの判断において多少違つた点もありまして残念に思うのでございますが、これがしよつちゆう繰返されるというようなことがありましては、私たちの責任でございまして、そういうことの絶対ないようにやる覚悟でございます。
  211. 田渕光一

    ○田渕委員 大体わかりました。それはもちろん国警と自警との間において、国家を憂え、職務に忠実であるということには差別ありません。またむしろしつかりやつてくれておりましようが、こういうような場合に、もしも国警の第一線の連中とほんとうに密接に連絡がついておれば、国警地区から流れ込んでおるから、これに対して国警あとをつけて特審支局の方までも行かなければならぬのでありますが、この目には国警と自治警との間の連絡はどんなぐあいで、この問題に対して国警がどんな態度国警地区から広島市警管内に入つて応援したか、この二つの問題について伺いたいのであります。
  212. 西村徳一

    ○西村証人 国警管内でどういうような事件が起つたかといつたようなことは、われわれとしても報告を受けております。そうして私たちはそれが像を組んで来ますと大体わかるのでございます。三々五々あるいは歩いて、あるいは電車に乗り、あるいはバスに乗つて広島地区の方へ出て来ておるということもわかつております。ただこれがどういう形で広島市内で行動するのかということにつきましてはよくわかりませんでした。結果的にはそれが三々五々入つて公安條例にも違反にならないような行き方をして、あるところで合流するという形をとられたので、ちよつと手がつけられないようなかつこうになつたのであります。
  213. 田渕光一

    ○田渕委員 そうすると、広島市警の人員能力というのはどれくらいありますか。
  214. 西村徳一

    ○西村証人 市警の定員は五百七十八名でございます。
  215. 田渕光一

    ○田渕委員 そうすると、五百七十八名の市警において相当警備をしておつたでありましようが、この特審支局の問題に対して、デモ隊が逃げた後の捜査に対して国警が応援いたしましたか、もし応援いたしましたとしたら、幾らくらい国警本部から応援がありましたか。
  216. 西村徳一

    ○西村証人 この際には国警の応援は求めておりませんでした。国警の応援を求めるのにはそれぞれ手続がいるのでございますが、この場合すでに解散をしておりましたあとでありますし、私どもといたしましては、事後検挙の措置をとりました。なお市内であばれておるといつたような状態でありましたならば、まず私どもの力でやります。そして及ばないというふうな判断をいたしますれば、国警の応援を求めるのでありますが、今回の場合は応援は求めておりません。
  217. 田渕光一

    ○田渕委員 そごがどうもおかしいですね。国警地区の古市から広島市へ流れ込んで来て、広島自警管内特審支局をぶちこわして、そして国警地区の古市とか可部に逃げ込んでしまう。そういう場合に、今度自警側として事後検挙の措置をとるというときは、自警として広島市ですら守るのに十分でないのに、よその安芸地区あるいは安佐地区にどういう手続をもつて事後検挙に行くのでありますか、これが広島自警として非常な費用がかかる問題になつて来るのです。この場合にもしあなたの方で事後検挙に十人も二十人も逃げておるのを追いまわすということでは、広島自警ではたまりますまい。ガラスの二枚や三枚こわされたからと、これを安く見てはいけません。御承知通り特審支局の建物はわれわれの税金で建てた国の造営物であります。こういうように国家のものをいためた者を、広島自警がすぐに数十里離れたところの犯人の事後検挙に行く場合には、どういう手続をとつて行くのか、またその費用は国警からあなたの方に負担するのか、この点お尋ねしておきたい。それでなければ私はほんとうに事後検挙なんというものはできないと思う。
  218. 西村徳一

    ○西村証人 今回の場合について申しますと、この件は自警と国警の両方の管内にまたがつておりますので、検察庁とも打合せまして、三者が一体にな  つて捜査をいたしております。そうして私の管内は三名逮捕しております。国警管内のがまだつかまらぬように聞いております。こうした場合は、お話の通りいろいろな不便があることは間違いございますまい。しかし私どもの気持としましては、こういうときこそ国警も自警も一緒になつてやる、そういう気持でもつてつて行けば、この措置はどこでもできるんじやないか、ただその気持がそろわないと、これはうまく行かぬことがあるかもしれませんが、大体そうした面はうまくどこでも行つているんじやないかと私は思うのでございます。
  219. 田渕光一

    ○田渕委員 この点なんです。費用の分担をあとでするのか、あるいは人的にあなたの方から警官を警備に三人出す、国警の方から三人出す、あるいはまたこういうような意味において検察庁捜査の費用を分担する、いわゆる金銭的な分担で行くのでありますか、人的な配分によつてこういう捜査に当つて行くのでありますか、この点をひとつ承りたい。
  220. 西村徳一

    ○西村証人 私の方から出て行きますときには、もちろん私の方の費用でやります。しかし今回の場合などは、私の方も出ますが、国警の方でも一緒になつてつてつてくれるのであります。そうしてまた今度のは、私のところで特審が襲われましたが、同じような連中が国警管内自体でもやつておるのでありまして、同一のものでありますから、なおさら国警としては一生懸命やつておる、そういうふうに考えております。
  221. 内藤隆

    内藤委員長 押谷委員。
  222. 押谷富三

    ○押谷委員 証人証言から大体わかるのでありますが、広島市において、かような不法な集会あるいはデモの取締りに対しまして、公安條例というよろなものが制定されていると思いますが、さように承知をしていいですか。
  223. 西村徳一

    ○西村証人 公安條例の制定がございます。
  224. 押谷富三

    ○押谷委員 公安條例は全国の都市必ずしも同一ではございません。いろいろな形において、またたいへん不備なものもありますが、広島の公安條例は、今日の集会、デモの取締りにあたつて、それで十分だとお考えになつておりますか。
  225. 西村徳一

    ○西村証人 ただいまの公安條例で間に合うというふうに私は考えております。
  226. 押谷富三

    ○押谷委員 証人は全国の公安條例はもちろん御承知——全体とは言えますまいが、おもなものは御承知だと思いますが、これはいろいろまちまちまちになつておるのであります。日本の治安、公安を守るという立場から、かようなまちまちになつている公安條例は、全国的に見てこれでいいのかということが考えられるのでありますが、証人はどう考えておられますか。
  227. 西村徳一

    ○西村証人 この点につきましては、公安條例が出ましたときからわれわれの間でも話があつたのでございますが、これは全国的に法律において制定される方が統一もされもし、都合がよいという意見が多かつたのでございます。
  228. 押谷富三

    ○押谷委員 広島の公安條例では、不法な集会あるいはデモに参加をした者は、参加人員全体に対して処罰あるいは取締りができるごとになつておりますか。あるいはその首脳者、指導者だけをやることになつておりますか。
  229. 西村徳一

    ○西村証人 その後の方で、全体というふうにはなりません。
  230. 押谷富三

    ○押谷委員 その点が重大な問題と思うのですが、指導者あるいは指揮をしている者、こういう者だけが取締りの対象になつて、そうしてその不当な集会あるいはデモに参加をした全員は見のがさなければならぬという條例と、参加者もやはり取締りの対象になり、取締りすることができるんだという條例と二つになつておるのでありますが、あなたは今日までの公安條例を用いて、さような取締りをするにあたつて、その点について重大な不便を感じられたことはございませんか。
  231. 西村徳一

    ○西村証人 参加したから、それだけでというのでなくして、参加して、その人たちが現実に傷害とかあるいは公務執行妨害とか、そうしたことがありますのを処置して行くということになつておりますし、一応それでいいんじやないかと私は考えます。
  232. 押谷富三

    ○押谷委員 これは京都事件で現われたのでありますが、京都の公安に当つておられる警察当局においても、この條例が非常に災いをいたしまして、京都事件の取締りあるいは検挙にあたつて、たいへんこの公安條例では不備であつたということを告白しているのでありますが、この点について証人は特に御考慮を願いたいと思います。  なお本件の問題で、これは結果から見てでありますが、市警国警との間においては、少くとも連絡の点に遺憾な点があつたかどうかという点についてはどうお考えになつておりますか。
  233. 西村徳一

    ○西村証人 今回の件につきまして、市警国警との連絡が遺憾な点があつたというふうには私は考えておりません。
  234. 内藤隆

  235. 山口武秀

    山口(武)委員 特審への襲撃があつたということでありましたが、このいわゆる襲撃というものに参加した人員はどのくらいあつたでしようか。
  236. 西村徳一

    ○西村証人 約二百名と存じております。
  237. 山口武秀

    山口(武)委員 この二百名の人たちというのは、ただ自由労組の人たちだけであつたということではないだろうと思いますが、その内訳はどうでありますか。
  238. 西村徳一

    ○西村証人 その数の割振りは、自由労組が約四、五十名、残りは朝鮮人です。
  239. 山口武秀

    山口(武)委員 この特審へ行くことにつきまして、いわゆる襲撃なら襲撃でよろしいのですが、どのようなことで特審襲撃されるというようなことが意思表示されなかつたでしようか。たとえば、特審まで行くデモの中において、こういうわけだから特審に行く、あるいは特審の支所へ行きまして、そこにおける交渉なりあるいは言動なりから推察できるものはなかつたでしようか。
  240. 西村徳一

    ○西村証人 私たち、特審へ行く事前にそうしたことを聞いておらないのでございますが、西警察署が襲われまして、西警察署は相当警察官も待機させてございましたから、ここでは手出しをようしなかつたと考えるのでございます。そこで特審へ行けというふうになつたようでございますから、手薄な所がデモの対象に選ばれたのだろうというふうに考えております。
  241. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたの言われるように、そういう一つの事情があるいはあつたのかもしれません。しかしながら学校がねらわれたわけでもない、病院が襲撃されたわけでもない、特審というものが襲撃されたのだ。そうしますと、なぜ特審が攻撃の対象になつたのか、ここには何らかの理由がなければならないわけですが、これにつきましては、いかなる調査をなさつて、いかなる結論が出ているのでしようか。
  242. 西村徳一

    ○西村証人 警察が対象に選はれ、特審が対象に選ばれたといつたふうになつておりますので、そうした方面に対する反対デモというふうに考えるのでございます。
  243. 山口武秀

    山口(武)委員 ちよつと今お答えがわからなかつたのですが、特審が国民から恨みを受けているような対象になつていなかつたかどうか、この点があつたかどうかお聞きします。
  244. 西村徳一

    ○西村証人 その点私にはよくわからないのでございます。
  245. 山口武秀

    山口(武)委員 それではその点につきましてさらにお尋ねしたいと思います。大体朝鮮の人が参加したということを言つておりますが、ここでわれわれ考えなければならないことは、決して先ほどの田淵君のような無鉄砲きわまるばかばかしい議論の展開ではないと思うのです。実際問題として朝鮮の独立を奪いとつて朝鮮人を……。     〔「朝鮮の独立を日本が奪つたのじやない」と呼ぶ者あり〕
  246. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、他の委員の質問を批評しては困ります。さようなことは愼んでもらいたい。
  247. 山口武秀

    山口(武)委員 さようなことを明らかにしているだけなのです。朝鮮の独立を日本が奪つたのでないというような人もありますが、決してそうではない。そういうことを言うのは軍閥以外の何ものでもない。しかもそのために朝鮮人が民族的な屈辱を受け、生活的な点においても困窮をしいられていた。そういう状況のもとにおいて、あれだけの戦争の間に戦争に対する協力を強制されていた。こういうようなところから朝鮮民族の日本の国家権力に対する憎しみというものが起るのはやむを得ないのではなかつたのか。
  248. 内藤隆

    内藤委員長 御注意申し上げます。第三国人の意見をあなたから御質問になられても、証人はこれに答えられるはずがないのであります。証人がもし朝鮮人であるならばあるいは答えるかもしれませんが、不幸にして証人朝鮮人でないから、さような独立云々というような、軍閥時代の問題にまで答えられるはずがありません。
  249. 山口武秀

    山口(武)委員 そうではなく、そういうことが原因になつていはしないかということを言つているのです。
  250. 内藤隆

    内藤委員長 証人としてはさようなことがわかりはしません。
  251. 山口武秀

    山口(武)委員 委員長に聞いているのではない。
  252. 内藤隆

    内藤委員長 聞かなくてもわかる。
  253. 山口武秀

    山口(武)委員 行政監察委員会というものはそういうものなのか。自由党の発言だけはかつてに許して、われわれの意見の展開を許さないのか。
  254. 内藤隆

    内藤委員長 第三国人の持つておられる思想その他について証人が答えるはずがないから、委員長は議事の整理上さように申している。
  255. 山口武秀

    山口(武)委員 違うのだ、第三国人の問題を聞いているのじやない。
  256. 内藤隆

    内藤委員長 山口君、簡単に質問を続けてください。
  257. 山口武秀

    山口(武)委員 それからもう一つ、特審が国民の恨みを買つていないかという点についてはこういうことがある。一つは、特審がやつて来たことはアカハタの発刊停止の問題であり、その類型紙の発刊停止の問題である。これはどこの意向でやつたかといえば、アメリカの意向でやつたものである。そうすると、特審というものはアメリカの意向で動く機関であるこいうことも、直接的に国民が感じなかつたかどうかという問題。それからこのアカハタの発刊停止、類型紙の発刊停止というものは、一方的な認定によつてなされている。これは国家の機構に、実力が伴つているのだが、ここで一方的な暴力行為を許しているということ、国家の持つている機関の暴力的な本質が発動されているということ、これが集中的に現われ、直接的に実際行動をやられたのが特審であるとすれば、これは国民の恨みを買い、襲撃の対象というような一つの條件を生み出したのではないかと思う。この問題が解決されなければ、いかに他に警備力を強化したところで何にもならないが、この点はどうなんですか。そのために特審が攻撃されたことにつきましては、何らか明らかになる点がないかどうか、これを私は聞いておるのです。
  258. 内藤隆

    内藤委員長 山口君に申し上げますが、証人広島市の市警本部長でありますから、アカハタの発刊停止等については何の責任もございませず、またこれを知るはずがない。それは問題外だと思います。
  259. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほど田淵君は国際問題としても容易ならざることを口走つている。国会議員の常識から見ても許すべからざることをしやべつている。それに対して委員長は何らの忠言もしていない。しかるに私の当然に聞くべき問題については、証人の答弁がある前に委員長が答弁を拒否している。これは一体何のためだ。
  260. 内藤隆

    内藤委員長 委員長は決して証人の答弁拒否の援助をしてはおりません。問題外だと申しておるのであります。
  261. 山口武秀

    山口(武)委員 それでは今言つたことは何だ。何が問題外だ。
  262. 内藤隆

    内藤委員長 議事の進行上問題外だと認められるから問題外だと委員長は申しておるのであります。
  263. 山口武秀

    山口(武)委員 病院が襲撃されたのでもなければ、学校が襲撃されたのでもないのだ。特審襲撃されたことについてはそれなりの理由があるのではないか。この理由が明らかにならなければこの問題の解決ができないではないか、私はこう聞いておるのだ。
  264. 内藤隆

    内藤委員長 広島市の警察本部長としては、さようなことまでも何も考える必要はないと認めておるのです。
  265. 山口武秀

    山口(武)委員 この問題に対する結論を出す責任がある。
  266. 内藤隆

    内藤委員長 責任はありません。
  267. 山口武秀

    山口(武)委員 証人、お答えを願います。
  268. 内藤隆

    内藤委員長 答えなくてよろしい。答えられないことは答えられないと言つてよろしい。
  269. 西村徳一

    ○西村証人 お答えできません。
  270. 山口武秀

    山口(武)委員 国会の規定によれば、委員の質問に対しては証人は答弁の義務があるのです。職務上特に答えられないという問題についてはよろしいですが、あなたは、職務上その問題について答えることができないから、その関係において答えられないと言うのですか。この点を伺つておきたい。
  271. 内藤隆

    内藤委員長 申し上げます。証人広島市の警察本部の本部長ですから、その職権以外のことには答えられない——とあなたが言つても、これは答弁拒否ではないと委員長は見ております。
  272. 山口武秀

    山口(武)委員 私は委員長に聞いているのではない。
  273. 内藤隆

    内藤委員長 委員長証人に対して参考までに申し上げる権利を持つております。
  274. 山口武秀

    山口(武)委員 何の権利があるのか、それが自由党が持つている権利だというのか。
  275. 内藤隆

    内藤委員長 自由党ではない。委員長の持つておる権利だ。質問を続けてください。——質問を継続しないならば、次の質問者に許しますよ。
  276. 山口武秀

    山口(武)委員 証人は答えてないよ。
  277. 西村徳一

    ○西村証人 私にはわからないのであります。
  278. 内藤隆

    内藤委員長 証人は、今喧騒しておつたから申しますが、あなたの質問の趣旨もわからなければ、それからまたそういうことを答えるだけの立場にもいないという、こういうことなんです。
  279. 山口武秀

    山口(武)委員 委員長は、質問の趣旨がわからないから答えられない。さらにそれからそういうことに答える権限がない、こういうことを言われますが、質問の趣旨がわからないで、どうしてその問題に答える権限以外のものだということが判定できるのです。
  280. 内藤隆

    内藤委員長 質問の趣旨がわからぬことにどうして答えられます。
  281. 山口武秀

    山口(武)委員 権限外だという判定はどこでくだすのです。
  282. 内藤隆

    内藤委員長 あなたは特審局の問題について質問しておられる。ところが証人広島市警の本部長である。だから答えられないと言つておるのだ。
  283. 山口武秀

    山口(武)委員 委員長に聞いておるのじやない。
  284. 内藤隆

    内藤委員長 委員長は議事整理の権限を持つておる。
  285. 山口武秀

    山口(武)委員 よけいなことを言うな。
  286. 内藤隆

    内藤委員長 よけいなこととは何だ。委員長の権限に向つて何を言うか。発言を停止いたします。田淵君。     〔離席する者多く議場騒然〕
  287. 内藤隆

    内藤委員長 御着席願います。     〔「着席をしない者は退場を命じろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  288. 内藤隆

    内藤委員長 田渕委員に申します。今証人の口を通じて聞きたい、こういう要求ですから、証人の口を通じて答弁させます。その次にあなたの質問を許します。証人
  289. 西村徳一

    ○西村証人 御趣旨の点は私としてはよくわからないのでございます。それでわからぬと申し上げたわけであります。
  290. 田渕光一

    ○田渕委員 証人に伺います。証人は先ほど、いわゆるこういうデモ行進などに対しましては、事前もしくはその初動制圧が最も必要だと私たちは思うのであります、しかるに事後検挙において片づけたいというような、一つの治安警備の取締りに対する理念とも申しましようか、伺つたのであります。かような意味において、かりにそれでは事後検挙において収拾しなければ、事前あるいは初動制圧をやるために、犯人の奪還あるいは検挙者の奪還ということでもめるからこわいというような意味から、事後検挙というような線で行くという、もししかりとするならば、この吉田並びに池田、加太の三人を検挙いたしておりまするが、この罪名は何として取調べられたか、罪名をまず伺います。そして大体取調べの調書の結果送検した一件書類の罪名というものと、それからあなた方のこの方針というのを、どういうぐあいに治安取締り上、検察庁に求められたか、送検したか、こういうような点をひとつ伺いたいと思います。
  291. 西村徳一

    ○西村証人 お答えいたします。事後検挙をいたしますのと、それからその場合ただちに警察力を出動させまして解散その他の処置をとりますのと、これはその場合場合に実情に即しての私の方の判断で進むのでございます。今回のは事後措置になつておりますけれども、これは情勢によつてはそんな手ぬるいことではできないと思います。いかなることになりましようとも、警察力で断固押えて行かねばならぬ場合もございます。今回の場合はいきなりああしたような形になつたものでございますから、事後検挙という手続をとるよりほかしようがなかつた。今罪名は何であつたか、はつきり記憶しておらないので、あるいは間違うかもしれませんが、たしか暴力行為の取締り、あれだつたじやないかと思います。今はつきり存じておりません。
  292. 田渕光一

    ○田渕委員 われわれはこの際に、特にどこの検察庁あるいはどこの高等検察ということは申し上げませんが、たとえばかかる事件を事後検挙の手段に訴えられてやる。そうしてこれは仮定でありますが、この吉田治平、池田、加太をかりに暴力行為あるいは建造物破壊というような罪名で送りましても、現認している者がないのであります。デモがしまつた後で、むろんこれを何かの証拠によつてあげたのでありましよう。こういうような確認のないものをあなた方が市警から検察庁へ送りましても、検察庁はこれを起訴したかどうかという問題であります。かりに起訴できるような材料がはつきりついていればいいけれども、ただ現行の法規上から行きますと、こういう場合は多多よそにあるように、たとえばこれに共産党の弁護士団がつく。よほどしつかりした材料の裏づけがないというと、われわれはその起訴ができない。公判が維持できない。公判を開始すれば開始するで、またデモでやつて来る。裁判所まで破壊しようとしてやつて来ているのだから、そこはよほどしつかりした裏づけがなければ送検できない。送検できないのに、こういうようなデモの散つてしまつたあとで暴力行為あるいは破壊等でやつても、必ずこれは黙否権を行使する、あるいは否認するでありましよう。結局やみからやみに葬られてしまう。検察庁も完全なる材料が上つておらぬと公判が維持できないから、起訴しない。起訴するにはよほどの確証がいるでありましよう。こういうように法の裏をかいて抜け道を万ような事犯に対しては、初動制圧で片つぱしから引つ張つてしまわなければならぬ。われわれ検察、特審国警あるいは公安委員会、あらゆる面をずつと調べた結果、制度の欠陷、法規の欠陷がわかつて来たのであります。その意味において、これは初動制圧を取締り当局はやつてよろしい。検挙者の奪還などで暴れるというようなことで、よけい騒動が大きくなるから、二十人でも三十人でも一ぺんにひつくくつてしまえば、やつらはふるえ上つてしまう。北鮮のやつらは、こつちが弱ければつけ上つて来る。これは私たち京都事件を調べてわかつたことだが、四十五万の北鮮のうち、まず一万送還してしまえば治まると思う。日本の風俗習慣に従わず、法規を犯し、やみあるいは密造をやるような不逞のやからは送つてしまえばいい。     〔「質問をしろ「委員長注意」と呼び、その他発言する者多し〕
  293. 内藤隆

    内藤委員長 田淵君に申し上げます。——ほかに御発言の方ございますか。竹村君。
  294. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私ひとつ。
  295. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとその前に申し上げておきます。もう一人証人がありますので、なるべく簡潔に願います。
  296. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私の伺つておきたいのは、この事件の中にも、また先ほどからの質問の中にも、いつも問題になつておりますが、いわゆる自由労働者の諸君がいろいろな形において騒動を起しておることが常に問題になつておるので、そのことについてまず私は伺つておきたい。というのは、たとえば自由労働者の諸君が、職業安定所においていろいろ問題を起しておる、あるいはまた、年末には市役所等にもち代その他をくれという要求をしておる、これは常に言われておるのでございますが、それについて、そういうことをする者を警察力で取締れというようなことが、先ほどからいろいろ言われておる。しかし問題は、単に警察力の増強だけでは片づけられないのではないか、あるいは取締りだけでは問題にならないのではないか。人間が生きる権利を持つておる以上は、また生きんとする以上は、やはり仕事を與え、しかも生活を保障するということが、私は第一じやないかと思う。従つて私の聞きたいことは、ただいま問題になつておりますところの広島自由労働者の諸君は 一体職業安定所において、一箇月どれだけ就労しておるか。こういうような点から考えて、もち代をくれということは、私は当然だと思うのですが、たとえば職業紹介所においていろいろ騒ぐということは、仕事をさせろと騒いでおる、仕事をくれということを要求しておる。従つてそれが騒動のもとになる。そこに特番局等が行つて、こういうことを要求するところの動勢を調査して、しかもそれに対するいろいろなことをやるから、そのことが原因になつて、私は特番局等が襲われるのではないかと思います。またたとえば警察におきましても、こういう人たらに対して、単に取締りだけでは私は問題にならないと考えておられると思いますが、この点はどういうようにお考えになつておりますか。証人からひとつ聞いておきたいと思います。
  297. 西村徳一

    ○西村証人 日雇い労務の人たちが、いろいろ押しかけて問題が起つておるのは、お話の通りでございます。そうしてそれは別途に、根本的なといいますか、対策が立てられなければならぬたろうということも、私はそうたろうと思います。ただわれわれとしましては、法規を越えた行動に出られましては、当然われわれの職務として放置するわけに行かない。これはもう断固として法規に照しての処置をとります。それ以外の問題は、私の範囲でございません。いろいろ私個人としては意見を持ちますけれども、これはお答えする範囲じやないと考えます。
  298. 内藤隆

    内藤委員長 他に発言がなければ、西村証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでありました。     —————————————
  299. 内藤隆

    内藤委員長 引続き、平井學君より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになつておる方は平井學君ですね。
  300. 平井學

    ○平井証人 はい。
  301. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、正式の証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。  これより治安警備状況に関する広島事件について証言を求むることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりましてそれ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人平井學君朗読〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  302. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してくたさい。     〔証人宣誓書署名捺印
  303. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしうございますが、お答えの際は御起立を願います。  平井學君は現在国警本部警備部第二課長でありますが、実は証人としておいで願つたのは、現職におつきになる前に、広島管区本部警備部長であつた関係においてお呼びをしたのでありまするから、さようひとつ御承知を願います。現職につかれるまでの簡単な経歴をひとつ……。
  304. 平井學

    ○平井証人 私は昭和十四年大学を出まして、ただちに内務省地方局行政課属官として入りまして、十五年二月現役として軍務に服し、昭和十八年四月除隊になりまして、五日福井県人事課長、引続いて内政部地方課長、続いて経済部農政課長をやりまして、昭和十九年八月北海道庁警視に任ぜられまして、保安課長を拝命いたしました。昭和二十年十月大阪府経済保安課長を命ぜられ、同十一月内務省警保局防犯課経済係事務官を拝命、昭和二十一年五月総理大臣秘書官、昭和二十一年十一月行政調査部公務員部員、昭和二十二年六月内務省警保局防犯課経済係事務官、昭和二十三年二月高知県警察隊長、昭和二十五年九月広島管区本部警備部長、本年四月九日現職につきました。
  305. 内藤隆

    内藤委員長 さいぜんの特番局の中国支局長の梶川俊吉君の証言によりますると、中国支局管内に大体五万の朝鮮人がおるという証言がありましたが、この五万のうち広島国警安芸安佐地区署管内における朝鮮人状況について、簡單にひとつ説明を願いたいと思います。
  306. 平井學

    ○平井証人 広島県には県全体約一万六千人の朝鮮人がおりまして、そのうち安佐地区署の管轄区域である安佐郡には朝鮮人が約一千九十七名、それから安芸地区警察署の管内である安芸郡には大体千五百名の朝鮮人が居住しております。そのうち安佐地区署管内の千九十七名の朝鮮人のうち、本日問題になつておりますところの可部町に百五十名、祇園町、これは安佐地区警察署があるところでありますが、ここに二百五十名、それから同じく問題になつている古市町に三百三十名が住んでおります。その大半が、いわゆる北鮮系と申しましようか、普通にいわれる民戦系の朝鮮人であります。職業は古物商あるいは農業あるいは密造酒等によつて生活を営んでおります。しかもこの安佐郡下の朝鮮人には、広島県下の最も尖鋭な活動的な分子が含まれております。次に安芸地区署管内朝鮮人の詳細を申しますと、本日やはり問題になつておりますところの船越町、ことに大半の八百三十七名が居住しております。次に税務署関係で出て来るところの海田市町には百七十四名が住んでおります。これは前に申し上げました安佐郡の朝鮮人に次ぐ有力な活動的な朝鮮人の団体でございます。大体以上でございます。
  307. 内藤隆

    内藤委員長 この国警地区安芸安佐地区管内で、三月一日に決行された北鮮糸の朝鮮人集団のいわゆる三・一闘争、この事前の警備あるいはこの大会当日の状況等を簡単に述べてください。
  308. 平井學

    ○平井証人 三・一記念日の事前情報を簡単に申しますと、二月二十七日、当時の朝鮮人の不穏な活動を察知すべき事件として、安佐地区警察管内可部町に民団安佐郡の支部長がおりますが、その宅に対して午後十一時ころ何者かが催涙液の入つたびんを投げ込んだ事件があります。同じく二十七日の夜、催涙液を投げ込まれた民団支部長の家並びにいま一人の民団員の宅へ、民団を解散せよ、履行せぬ場合には殺すというような脅迫的記事を記載したビラを投入しております。そういう事実から、当日民団幹部が襲われるかもしれぬという情報がここに出て来たのであります。続いて安芸郡の安芸地区署管内の船越町並びに安佐地区署管内の古市町、こういう方面中心に二月下旬民戦側の朝鮮人幹部の動きが活発になつて、ほとんど連日会議を催しておつたような様子が出ておりますが、内容はわかつておりません。わかつておりませんが、諸般の事情から総合しまして、三・一記念日に朝鮮人中心となつて警察あるいは税務署、役場、こうしたいわゆるかれらの権力機関に対して襲撃をかけようという企図が大体察知されておりました。それで国警広島県本部としまして、どういう対策ないしはどういう事前の警備措置をとつてつたかと申しますと、事前に——三月二十八日に、広島市警察本部において広島警察管区本部、広島県本部、広島市警特審局、高等検察庁並びに広島地検、この関係者が集まりましてお互いに情報を持ち寄つて対策を協議いたしております。大体各機関とも私がただいま申し上げたような、朝鮮人についてどうも不穏な計画があるらしいという情報におおむね一致しております。同じく翌  二十九日、広島地検におきまして、ただいま申し上げましたような関係機関をさらにもう一回集まりまして、対策を協議いたしました。問題になつたのは、必ず集会デモ行進があるはずであるけれども、これをいかに取締るか、事前に禁止するか、あるいは許可するかというような点でありますが、国警管内におきましては公安條例のあるところは全然ありません。そこで国警としましては、事前禁止の措置はとらない、不法行為をやらない限りは集会もデモ行進も禁止すべき筋合いのものではないということで、一応集会並びにデモ行進をやらせる、そのかわりに不法行為をした場合には断固これを取締る、こういうふうにこの協議会で意見を申しました。ところが市警の方でも、市警にはむろん公安條例がございましたけれども国警がそういうふうに、不法行為を働かざる限りは、一応集会並びにデモ行進を許可する、こういう方針をとるならば、市警も公安條例はあるけれども、できるだけ許可する方針をとつて行こう、こういうふうな協議がありました。但し国警としましては事前情報のいきさつもありまして、この問題になつたところの安佐地区署並びに安芸地区署に対して、県下  の他の比較的事件の起りそうもない警察署から少数ずつ拔きまして、総勢二百名余りの警察官を、この安芸地区署安佐地区署に当日臨時応援警察官と  して派遣することにいたしたのであります。広島市警からは、一応自力で警備ができる見通しのもとに、格別の応援の要請はしておりませんでした。  大体以上が事前情報並びに警備対策であります。
  309. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとあなたの今の証言によると、安芸地区あるいは安佐地区国警管内には公安條例というものがないから、この大会を禁止するという方法がないので、大会並びにデモ行進は認めた、こういう証言ですが、安佐地区におる千九十七名という北鮮人は、最も尖鋭分子であり、闘争の経験を持つておるという御証言で、そういう者に許せば、その大会理由にして暴力行為、いわゆるこういう各署を襲撃するような恐るべき計画なり、実行をするということを事前においてお考えにならなかつたですか。
  310. 平井學

    ○平井証人 事前情報によりまして、そういう不法行為を働くかもしらぬということは考えておりましたが、現在の取締り法令の点から申しますと、われわれ警察官としましては、はつきりした取締りの根拠法規がない以上は、事前の禁止、そうしたものは公安條例があればいざ知らず、ない以上はできないという事情でありますので、警戒態勢はとりながら、禁止措置はとらなかつた、こういうのが事実であります。
  311. 内藤隆

    内藤委員長 それで当日すなわち三・一記念大会ですね。  この大会場に、あなたの方から警備の関係において国警警察官が派遣されておつたわけですな。
  312. 平井學

    ○平井証人 大会と申しましても、これは御承知のように尾道市あるいは呉市、大竹町、それからただいま申しました船越、古市、そういうところで、少いところは五十名程度、多いところで大体二百名程度の記念式典というようなものでありましたので、一名、二名の警察官が様子を見に行きました。これは屋外の場合は別に問題がございませんので、私服警察官が警戒の意味で様子は見に行つております。
  313. 内藤隆

    内藤委員長 しかし大会はどこか一箇所に集まつてつたのではありませんか。
  314. 平井學

    ○平井証人 私ども広島県本部から受けた情報では、一箇所ではありませんで、ただいま申しましたように、大竹町、呉市、尾道市、古市町それから船越で、それぞれわかれてやつたように報告を受けております。
  315. 内藤隆

    内藤委員長 そこで大会というようなものが終つてデモ行進に移つたわけですね。そうして襲撃された場所は可部税務署海田市の税務署税務署二箇所、役場が古市町の役場、祇園の役場、それから船越町の居留民団、約五箇所を襲撃しているのですが、この襲撃した場所について、御承知ならば簡単にその襲撃状況をひとつ御説明願いたい。
  316. 平井學

    ○平井証人 わかりやすいように簡単に地理的な関係を申しますと、可部町というのは広島市から大体十六キロの地点にある町であります。古市町というのは可部に行く途中でありまして、広島市から大体十キロ程度のところにある。祇園町は安佐地区警察署のある町でありますが、これが大体八キロの地点、これは大体広島市から一直線に並んでおります。それから安芸地区署管内海田市並びに船越の関係を申しますと、船越町というのは広島市から大体六キロの地点にある町であります。海田市というのは船越町からわずか一キロも離れておらない程度のほとんど隣接の町であります。  そこでまず可部税務署襲撃事件から申しますと、当日三月一日午前九時ごろ、古市町の朝鮮人中心地である部落に、朝鮮人が大体百八十名くらい集合いたしまして、朝鮮語で演説をして気勢をあげております。十時ごろからプラカード六十本くらいを手に手に持つて古市町の役場にデモ行進をしております。役場で何をしたかと申しますと、別に不法行為を働いておりません。朝鮮人子弟のみの小学校分校を設置してくれ、朝鮮人の専任教師を雇つてもらいたい、教育費の負担をしてくれ、こういう三点を中心要求をいたしまして、十一時三十分ころ引揚げております。ところがその後約六十名くらいが三々伍々、この古市町から可部町へ来る——距離が五キロくらいあると思いますが、バスまたは電車等によりまして可部町に行きまして、可部税務署に押しかけた。そこで署長がおらなかつたものでありますから、署員に対して密造配の取締りの不当をなじり、一応合法的な談判——陳情と申しましてもはげしい陳情であります。談判をやりまして、そこまではよかつたのでありますが、帰りぎわに百五十CC程度びんに入つた催涙液、これは後ほど鑑識で分析してみますと臭素クロームとアセトンの混合液だそうでありますが、これを帰りぎわに事務室の机の上に投げつけて、さつと引揚げてしまつたのであります。この液は後ほど税務署員が医師の診断によつて見てもらいますと、急性眼瞼結膜炎、急性刺激性咽頭炎を起させる液体だそうであります。そこへ私服警察官が二、三名、警戒と署に対する連絡の意味で派遣されておつたそうでありますが、帰りぎわにびんをいきなりぱつと投げてそのままさつと引揚けたので、警戒員が本署へ連絡して本署から警察官が来たときには、すでにもう引揚げて逮捕できなかつた、こういうのが実情であります。  次にこの可部税務署襲撃した一隊と思われる者が、今度可部からただいま申しました四キロないし五キロばかり離れておるところの古市町に現われまして、古市町から今度はさらに約一・五キロほど離れた祇園町、ここは警察署の所在地でありますが、祇園町の役場に行きましたけれども町長がおらなかつたために事なく引揚げております。  次にこの一隊が、さらに午後一時半ごろ安佐地区警察署へ押し寄せております。これは密造酒取締りの不当について署長に談判するというので、署の前へ集まつたそうでありますが、署長の方で解散を命じたので、これは何らなすところなく解散をいたしましたけれども、それから先約百三十名の者が、徒歩で広島市に向つて出発をしております。これは午後二時五十分ごろ解散したという報告でありますので、およそ距離が八キロ、約二里少々の距離でありますが、徒歩でぞろぞろと広島市に向つたのであります。しかもこの半分以上は女子並びに子供の一隊であります。それで警察の方でも、いわゆる型にはまつた集団デモ行進というふうには見ずに、いささか軽く見た節があつたのではなかろうかと思つております。この旨は同時に電話広島市警の方には通報はいたしてあります。  次に安芸地区署管内状況を申しますと、やはり午前十一時半ころ、安芸地区署朝鮮人部落の中心地である船越町、この民線の地区事務所朝鮮人約六十名が集まりまして演説を行い、気勢をあげまして、正午前ころプラカードを四十本くらい立てまして、海田税務署に参つております。この海田税務署というのは、この部落から徒歩で約二十分くらいのところであります。海田税務署に参りましてこれは税務署長がおりまして、これに対して密造酒取締りを緩和せよ、われわれの生活を破壊するなというような要求をしたのでありますが、午後一時半ころになつて税務署の方で退去要求をいたしました。それまでは合法的な談判に終始したのでありますが、署長が退去要求をいたしますと、この六十名ばかりの朝鮮人引上げぎわに、玄関のところと応接間のところに二本同様の催涙液入りのびんを投げつけてぱつと退散したのであります。当時警察の方でも不法行為を予期しておつたのでありますが、彼らの行動は、いわゆる合法と非合法のすれすれのところを巧みに行くという戦法と思われますが、談判に終始すると見せかけておいて、帰りぎわにさつとこういうびんを投げつけて行くという、実にすばやい巧みな行動に対して、実は警察の方で逮捕するのが間に合わなかつたように聞いております。それでこの税務署を出た一隊は、午後一旦部落に帰つたような様子でありますが、それが再び午後四時ごろ、部落から三、四十名程度の者が出て参りまして、広島方面に向つたのであります。ところが広島方面に向うと思われたその一隊のうち約三十名程度が、いきなりぱつとこの同町にある民団安芸支部事務所に押し入りまして、そこにやはり催涙液の入つたびんを室内に投げ入れ、窓ガラス等を破壊し、民団支部長を殴打暴行を加えて引上げたのであります。警察の方でも、支部長の宅に対して襲撃があるかもしれないというので、かねて警戒はいたしておりましたが、これまた現場で逮捕するに至らず、わずかに道を迷つたとおぼしき一名を逮捕したのみで、その当日は逮捕しておりません。これは翌日逮捕しておりますが、当日は逮捕しておりません。この人間が、約二、三十名だと思いますが、これが徒歩で広島市に向いまして、後ほど申し上げたいと思いますが、可部から参つたこの三十名程度婦女子を交えた一隊と広島市において合流しまして、市内をデモ行進した、こういうわけであります。
  317. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、三・一記念大会というものを各所で開いて、そうして安芸地区安佐地区の両方から、暴動化して広島市内に流れ込んで来た、こういうことなんですね。そうしてこれが合流して特審局の方に襲撃をして行つた、こんな径路になりますね。そこでその襲撃に使つた武器北鮮系朝鮮人が集団的に使つた武器というものも、大体当委員会から派遣して行きました委員各位のお調べ、事務当局のお調べでよくわかつてはおるのですが、そのうちのたとえば催涙弾とかいうのは、どういう径路でこれが製造され、あるいは入手されたか、おわかりになりますか。
  318. 平井學

    ○平井証人 催涙液は分析の結果、臭素クロームとアセトンのまじつたものであることはわかつておりますが、どこからだれが入手したかということは、確信を持てる程度にはわかつておりません。むろんこれがわかれば、現在起訴されている人間の公判上まことに都合がいいのでありますが、ただいま確信をもつてお答えできるほどはつきりわかつておりません。この薬品は市内のどこでも売つている薬でありまして、別に証明書をいらないように聞いております。いろいろどこそこの薬品店で買つただろうといううわさ程度はわかつておりますが、しかし現在のところ、それを買つた者が、その当日襲撃に使つた催涙液に使用したかどうかというその結びつけはできません。
  319. 内藤隆

    内藤委員長 大体そういう科学的な知識を朝鮮人がみながみな持つておるとは思われませんが、結局どつか背後関係があつて、さような者を指導しておるという推定はできるわけでありますね。
  320. 平井學

    ○平井証人 ええ。
  321. 内藤隆

    内藤委員長 そこでこの各地に起りました事件をずつと一貫してながめてみると、もうほとんど同じ形において進行し、また同じような方法で襲撃等をやつておるのでありまして強力な指導勢力がこの背後に動いているのではないか、こういうふうにわれわれは考えるが、あなたの方ではその点はどうです。
  322. 平井學

    ○平井証人 結論から申しますと、背後組織的な指導勢力があるということは確信を持つて申し上げられません。むろんこれが証拠の裏づけによつて申し上げる程度であれば刑事事件にできるのでありますが、単にわれわれの方では、全国的に同じような性質の事件を総合し、諸種のうわさ等によつて、あるいはビラ、あるいは関係者の機関紙、印刷物、こうしたものによつて帰納的に推論することができるだけでありまして、はつきりした証拠に基いて断定することはできません。できませんけれども、常識的な推測として、ただいま委員長の言われたようなことはできると思います。
  323. 内藤隆

    内藤委員長 その後の処置としまして、事件後の処置として、相当警察にひつぱつて来た者がおるのですが、これを奪還しに来なかつたですか。
  324. 平井學

    ○平井証人 奪還には来ておりません。但し奪還に似た行為としまして、ただいま申した安芸地区署管内において民団支部長の宅を襲つた朝鮮人数名を翌二日検挙いたしましたが、それについて地区警察署に対して、婦人子供が連日のごとく署へすわり込み戦法的な方法で、繰返し繰返し陳情運動をやつた事実があります。安佐地区署管内可部税務署襲撃した被疑者、これまた数名十日過ぎに検挙されましたが、これに対しては、奪還運動は起つておらないように記憶しております。なお三月十一日民団支部長を襲つた被検挙者の勾留理由開示裁判が開かれた際に、多数の婦女子を交えた朝鮮人が法廷に詰めかけて、いわゆる法廷闘争とおぼしき行動をした事実があります。以上でありまして、いわゆる典型的な奪還行動というものはやつておりません。
  325. 内藤隆

    内藤委員長 安芸地区の署員に検挙された暴行容疑者を返してくれという運動というか、そういう人々が来て、そうして安芸地区署長の飯田久都という人に面会を求めて、その検挙者の赤ん妨を警察署長の部屋へ放り込んで行つて、これで困らせようというような戦術をやつたという調べがあがつておるのですが、そういうことはお聞きになりましたか。
  326. 平井學

    ○平井証人 私ども広島県本部からの報告によつて事実を知つておるのでありまして、女ども子供を連れて来て、いやがらせ的な陳情運動をしたという報告を受けておりますが、ただいま委員長がおつしやいましたように、いやがらせ運動の具体的な点については、報告を受けておりません。女子供が来たと言いますから、あるいはそのような行動もあつたかもしれないとは、推測いたします。
  327. 内藤隆

    内藤委員長 もしさような事実があるとすれば、これは人道上まことに恐れ入つた新戦術であると思つてお聞きしたのであります。それから広島市で三月一日に開催された組織労働者大会及びそのデモ行進を混乱に陥れ、そうして特審支局襲撃した暴徒の大多数は、国警警備の地区から侵入したのば事実でありますが、国警側としては、大都市とその周辺地区の警備の結合または一本化について、市警側と協議をし、何らかの措置を講じたことがありますか。
  328. 平井學

    ○平井証人 その点につきましては、かねて事前に二日間にわたつて市警を交えた関係機関と連絡はいたしておりましたし、また当日も安佐地区署並びに安芸地区署から、鮮人が広島市に向つた事実は、広島市警に対して通報はいたしておりますが、あとから私どもが反省をいたしてみますと、やはり市警との連絡において、必ずしも十分であつたとは申し得ないと思つております。できれば単に通報するにとどまらず、それに対して市警側の対策を折返し聞き、さらにそれに対して国警の応援を出すべき必要があれば、あるいはまたそういう要論があれば、これに対して出す、さらに国警管内でこういう行動をしたから、この点を気をつけてくれというふうに、ある程度連絡員を派遣して、市警と協同して綿密な対策を応急的にはかるといつたような、さらに一歩、二歩進んだ緊密な連絡をとるべきであつたということを痛感しております。従つて今後こうした事態に対しては、われわれが従来考えておつたより以上の、さらにつつ込んだ連絡をはからねばならぬということを痛感しております。
  329. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はありませんか。
  330. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 一点だけお聞きいたします。この襲撃いたしましたいわゆる団体の構成は、主として自由労働者朝鮮人でありますが、この朝鮮人自由労働者のいわゆる組合だとか全部が、そういうような指導をし、そういうような計画をもつてつたのではなくして、おそらく附和雷同して起つたものと私は考える。たとえば朝鮮の人であつたならば、密造を取締られたというようなことに反感を持つた者を扇動して、そういう者が飛び込んで来た。自由労働者であつたら、いろいろな職場の條件などについて最も不平不満な者を中心につかまえて、それをアジつて、そうして動員する。こういうのが、この団体をこういう襲撃的に動かしたところの原因をつくつておるのだと思います。そういう人は自由労働組合組織、あるいは朝鮮人の中でも特定な人であつて、ごく少数だと私は考えておるのでありますが、警備状態から、日ごろこういう人はそういうことを指導する人であるという、そういう人の氏名、身元調査などはあなたの方でしてありますかどうか。
  331. 平井學

    ○平井証人 お答えいたします。御説のようにこうした不法行為を敢行する者は、ごく一部の活動的な人間であろうとわれわれも推測をいたしております。ただ残念ながら朝鮮人関係につきましては、居住地の環境、條件、そうした点から、なかなか個人別にそうしたおそれのある者についての調査がやりにくいのであります。また自由労務者につきましても、これは市警の方でやつておられると思いますので、そういう前科のある者、一度そういう不法行為を犯したことのある者、そうした者につきましてはわかつておりましようけれども、これを完全に警察の方で知り置くということは、現在の與えられた條件下ではなかなか困難であると思つております。
  332. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人に二、三お尋ねいたしまするが、この中核自衛隊とか、抵抗自衛隊というものの内容につきまして、証人の知つておる限りお答えいただきたいと思います。
  333. 平井學

    ○平井証人 私ども中核自衛隊というものは、現にこの目で見たことはありません。国警本部から送つていただくところの資料あるいは新聞、特殊団体の機関紙、印刷物、こうしたもので、文学の上で承知しておるたけであります。ただ今回の三・一記念日の朝鮮人の活動に照し合せてみると、ややこういう活動形式またはこれを指導した一部の活動分子、これがいわゆる中核自衛隊の隊員であろうか、こういう推測ができるだけでありまして、はつきり広島のどこそこ地区朝鮮人の自衛隊員はだれとだれであつて、だれが班長であるというようなことはわかつておりません。ただ当時特審局襲撃した大多数の者は婦人子供であつて、実際に破壊活動をやつたのはそのうちの限られた一部の者であるという点から考えましても、御説のように、中核自衛隊と推測されるような者がおつただろうとは思われますけれども、はつきりこれが中核自衛隊員である、それが何名であるということは、私の在任いたしました広島管区内ではわかつておりません。
  334. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人は、広島事件におきまして、この中核自衛隊とか抵抗自衛組織と申しますか、こういう組織団体の構成員が、女であろうと子供であろうと、そういう組織のもとに動いたという、いわゆる証拠がございまするか、それとも単なる騒動である、こういうように思われますか。
  335. 平井學

    ○平井証人 私はやはり少数の、ある程度の訓練なり経験を持つた活動分子の扇動、指導によるものであろうと推測をいたしております。
  336. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういうものは軍事委員会とかという組織のもとに、指導方針と申しますか、その任務が授けられているというものでございますか。
  337. 平井學

    ○平井証人 軍事委員会から任務を授けられておるかどうかは私はわかりません。また広島管区内におきまして、軍事委員会というものがはつきりあるということを認めたこともございません。他の大阪、東京方面では、軍事委員会があるという話は聞いておりましたが、広島管内でははつきりこれが軍事委員会であり、メンバーはだれであるという事実はつかんでおりません。
  338. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それでは抵抗自衛闘争とか、あるいは大衆闘争本部の組織とかいうものについて、何かお聞きのことはないですか。
  339. 平井學

    ○平井証人 抵抗自衛組織というものは、これまた私は文字の上で承知いたしておるだけでありまして、これは何でも大衆組織して、政府あるいは占領軍に対する妨害鬪争をやるのがその使命だそうでありますが、私どもの関係した地域においてはただいまの密造酒取締り反対闘争があるいは抵抗自衛組織に当るかと考らえれるだけでありまして、それ以上はつきりした形の出ました組織というものは認めておりません。
  340. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたが広島在任時代に、自己の所管地域以外に抵抗組織とかあるいは中核自衛隊組織とかいうもの、あるいは何だかそれらしきものについて、いろいろな情報を得られたことはありませんか。
  341. 平井學

    ○平井証人 これは国警本部から送つていただいた資料によつて話を聞いただけでありまして、私の記憶によりますれば、抵抗自衛鬪争としまして、米軍関係のいろいろな武器の修理工場等において、機械をこわれやすいようにしておくとか、あるいは朝鮮向けの石炭の荷役において、石炭を盗むとかいうことをやつておるらしい、こういう話を聞いておるだけでありまして、自分ではつきりそれを見たことはありません。
  342. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 午前中の特審中国支局長の証人としての話によりますと、特審におきましてはその闘争方針というか、三月一日の三・一闘争でございまするか、特審はその闘争方針概略判明しておつた事前によくわかつてつたということでございました。その中において、こういう組織体のことにつきましても触れておられまするが、あなたのところでその点はどういうような情報がわかつてつたのでございますか。あるいはまた闘争方針それ自身についても、特審と打合した以上は、そういう点についても情報がわかり、事情も相当わかつてつたんじやないでしようか。
  343. 平井學

    ○平井証人 警察税務署あるいは特審局等、いわゆる権力機関に対する闘争をやるということはわかつておりましたが、それが中核自衛隊というものがあつて、それを中心としてやるということははつきりしておりません。とにかく警察税務署特審局等、権力機関に対する闘争をやるということは、国警の方でも大体わかつておりましたし、また特審局からも同様のことについて連絡はいただいております。
  344. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 特審並びにあなたの方にそういう闘争方針が判明し、かつまたそういう三・一闘争についてのおおよその組織と申しますか、組織的な暴動の方針についても御承知であるのにかかわらず、これに対して事前に防遇する処置に出ずして、事後に至るま  で、つまり事の起るを待つてつたというのは、いささか私には解しかねる  ところがありますが、その点はいかがお考えになりますか。
  345. 平井學

    ○平井証人 これはただいまから考えますれば、私どももはつきりどちらがいいのかということは自信が持てません。当時の私ども並びに国警広島県本部の方針は、ともかくも公安條例があるわけではない、従つてたとい不法行為を犯すおそれがあつたとしましても、言論、集会の自由という大原則がある以上、よほどはつきりした法的根拠がない以上、事前にこれを禁止するという措置はできませんし、また税務署等で談判の後催涙びんを投げて逃げという場合にも、多数のうちのだれがやつたかということは、なかなかこれはすぐその場ではわかりません。彼らが一旦退去して、現行犯としてこれを押える時機を失した場合に、部落に乗り込んで、だれがびんを投げて帰つたということを突きとめることは、なかなかむずかしいのでありまして、現在の訴訟法規上事実困難であつたろうと思います。これも事実この現場におつた税務署員らの証言によつて、たれそれらしいということがわかつて、後ほど検挙したような事情でありまして、ある程度の、現在の刑法以上に、事前の措置がとれるような根拠法規でもあればいざ知らず、現在の法規上、警察官に対してはつきりかくかくの根拠に基いてこれを事前にやる、あるいは被疑者のはつきりわからない場合でも、それを含んだ一定の集団に対してただちに逮捕せよということは、これはちよつと命じかねるような節があると私は考えております。
  346. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 これは午前中の特審局支局長の証言でもよくその点は言つておられましたが、いわゆる人民軍の組織が何らかの形で動いておる。今のあなたの証言の中におきましても、明確ではないが、抵抗自衛組織というか、中核自衛隊行動というものが散見せられる。こういう証言がありましたが、こういう事態を総合して判断いたしますと、私どもはこれは刑法上並びに刑罰法規の各條に該当して扱うには、あまりに事件が全国的組織に過ぎる。国内においていわゆる国外の指令に服する。何と申しますか、人民軍的な暴動、組織というものができつつあることは、これによつて散見されるのであります。この点、刑罰法規をもとにした、国内における国内法的な刑法典をもとにした、あるいは刑罰法規のみを当てにした取締りなり、これに対する治安組織というものに、私は根本的な欠陷があると思う。あなた方がそれに基いてその対策を講ずるというのは、いささか鶏を裂くに牛刀ではない、その逆のような感じがいたしますが、この点はあとでこの事件に当面した当事者としてのあなたの御意見を承りたいと思います。
  347. 平井學

    ○平井証人 私どもは法規に基いて執行するのが職務でありまして、立法問題というような大したものは申す資格はありませんが、ただ今回の事件を通じて申し上げられることは、第一線の警察官職務執行上、戦前の警察に比べてまことに苦心をしておる。訴訟法初めその他法規の面から申しましてもしかり、また犯罪の形態から申しましても、今までに経験しない新しい新機軸の犯罪形態でありまして、まことに第一線の警察官が苦労をしておるという事実だけを申し上げておきます。
  348. 内藤隆

    内藤委員長 田淵君ありますか。
  349. 田渕光一

    ○田渕委員 この公判闘争のときにまいたビラの中にこれがあるのであります。「安芸署長らは、自分がしたことに自分が陷り、自分の手でした検束者たちを即時釈放してくれという陳情文を書いて検察庁に提出する等醜態を演じている。」というビラをまいているのであります。まことにこれはけしからぬことで、先ほど委員長証人にお問いになつた署長の飯田君に赤ん坊を置いて行つたということも、これも重大な問題だ。こういうような結果、署長がそこで脅迫されて、この陳情文を書いたのであるか、あるいはまたこういうようなことがなかつたのであるか、あつたのであるか、まずそれからひとつ伺つてみたい、
  350. 平井學

    ○平井証人 結論から申し上げますと、それに似た事実があります。私が広島県本部から受けた報告によりますと、飯田署長は前日その女、子供の執拗な陳情運動にいささか迷惑したような節があります。それであとから、署長の言によりますと、うるさいから一つの手として、一筆形式的なものを書いてやろうというような意味で、陳情書のようなものを書いたようであります。その内容はやや違つておりまして、決してただちに釈放してくれとは書いてありません。「各被疑者ともそれぞれ家庭に妻子もあつて生活に困難していると思われますので、取調べを一日も早く終了し、おのおのあたたかい家庭に帰つて生業に励めるようおとりはからいをお願い申し上げます。」という式で、もしこれが警察官でなかつたならば、しこくこれは当然なことで、取調べを済まして早く帰してくれろ、当然なことであります。しかしながら飯田警視が当該地区署長として、このような朝鮮人に運用されるような文句を、たとい好意からであるにせよ、温情からであるにせよ、書いたということは、やはり警察全体の活動上いかがかと思われる点がありまして、私どももまことにこれは遺憾千万に思つております。県の隊長の方におきましては、本人をただちに本部付にかえまして、三月三十一日付をもつて旨をさとして免職にしております。ただ三十年近く、長く模範的に勤めた温厚な署長でありましたので、懲戒免にするのはかわいそうでありましたから、特に懲戒はかんべんして、旨をさとして免職で処置をつけたのでございますが、これはまことに私ども国警の一員としましては遺憾に思つております。真実はさような点でありまして、署長は自分は別にそう深い意味はなかつたが、女子供をさとすといいましようか、適当にいなす方法として、一筆書いた、こういうふうに言つてつたのであります。以上でございます。
  351. 田渕光一

    ○田渕委員 これは重大なことなんだ。おそらくあらゆる五全協の軍事活動、球根栽培法、それに基くところのいろいろな中核自衛隊、あるいはパルチザン職法、あるいはまた人民軍に行こうという道の過程において、最も尖鋭分子が入つている、広島からわずか一里半くらい離れたところのこの船越町、その船越町には安芸地区の千五百人のうちの五〇%を占める八百三十七名の鮮人がおつて、そこが最も尖鋭化しておるところだ。その尖鋭化しておるところを取締るところの安芸地区署に、そういう警察官を置いておいて、どうしてこの治安が保てて行けたか、私はあなたがその当時の広島管区本部の警備部長であつたのかどうか。まずこれから承つてみたい。
  352. 平井學

    ○平井証人 実を申しますと、この飯田署長海田安芸地区署長を拝命する半年近く前、本部の刑事部長を長らくしておつた人でありまして、私どももさような朝鮮人に乗ぜられるようなことをしでかす人とは夢想だにしておりませんで、まことにびつくりいたしたようなわけであります。第一線署長を見る明のなかつたと申しましようか、そういう点につきましては、私ども監督の立場にあつた者といたしまして、まことにこれは遺憾千万と申しましようか、申訳ない点でありますが、特にそうした尖鋭な地区署長につきましては、今後単にそうした頭がいいとかあるいは練達であるとかいうより以上に、気魄と申しましようか、信念と申しましようか、そうした点からも、現場の最高責任者になる人は十分な人選やりまして、われわれとしましてもこの失敗をひとつ今後十分に生かして償いをせねばならぬということを痛感いたしております。
  353. 田渕光一

    ○田渕委員 これは二十五日に齋藤君が来ますから、私は厳重に追究したいと思う。こういう署長をこの尖鋭的なところに置いておくから、ここが甘いからだんだん鮮人がふえた。こういうようなことをして、しかも署長だけ諭旨免官というようにしたか、あるいは手続をとつたかしらぬけれども、こういう甘いものを置いておくから、ここへ大勢が集まつて、そこに危険分子がますます集まつて来るというようになつたのだと思います。そこでこの国警本部の警備部の第二課長という職務は——一体権限はどういうものをやつておるのか、あなたにまずこれから伺いたい。それから今あなたの言つた思想というものについて、重大であるから関連して伺いたい。
  354. 平井學

    ○平井証人 本部の警備第二課長と申しますのは、外国人登録令、それから外国人登録令違反、それから密貿易違反へそれから密入出国違反、それから朝鮮人に関する犯罪、こういうことが基本規程にうたわれております。私も実は最近来たばかりでまだ本格的な業務は開始しておりませんが、国警基本規程上はおおむねそういうことが示されております。
  355. 田渕光一

    ○田渕委員 社会人であつたならば、これはまあもつともなことであるし、問題にならなかつただろうというようなお話がありましたが、私たち日本の再建を願う議員の地位を去つて個人として考えましても、かような、つまり集団をして、しかも尖鋭分子で密造をやつておる、日ごろ正業についておらぬ連中がこの中にまじつて、しかもそれが自分のしている不正な仕事の密造の取締りの税務署に催涙弾を投げて、それが検挙された。それは税務署が勇敢に行つたから、協力があつたから、検挙できたのだろうと思うのであります。そうして検挙して来たものを、子供を預けたからというので、まず書いたのだろうと思うというような弁護的な言葉を、この最も治安の大事な国警本部警備部の第二課長から伺うということは、はなはだ私は心もとないのであります。もし愛国心のある日本人ならば、そういう不届きなやつは厳罰にしてくれ、そうして再びこういうことをせぬようにしてくれ、こういう観念であるならば、拒否できる。子供を置いておくなら託見所がある。いわゆる児童保護所に預ければよろしい。それを肯定するような御口吻に私は聞いたのですが、要するに日本の取締り当局である特審局であばれておる、あるいは税務署行つてつた。こういうような連中に対して、いかなることがあろうとも、警察の諸君、しかも署長の職におる者が陳情書を書いた、こういうことは、私はおそらく他になかろうと思う。こういうようなことをやつて、みずからやつたのだといつて逆宣伝に使われるというようなことは、いかに脅迫されても、こういうことはやるべきことではないと思う。三十年勤めておろうとも、論旨免官だけで許すべきものでない。これがために広島県におけるいわゆる北鮮系統がますます図に乗つて来る。こういうような意味からいつても、こういうようなことが、あなたのように、一国民として書くことならあたりまえだというような観念は、一体どこから出ているか。まじめに仕事をしている者を、警察官があやまつて検挙したというのなら、これはまた許すべし。自信を持つて検挙したものであるならば、こういうことを書くべきものでない。そうすると、自信を持たないで検挙したのかどうかということも伺わなければならぬ。これらをひとつ鮮明にしていただかないと、これは全国の国家警察のつらよごしだと私は思うのであります。
  356. 平井學

    ○平井証人 申し上げます。飯田署長の行為は決して私は弁護しません。ただ私の言葉が足らなかつたせいかもしれませんが、一私人としてならばというお話でありましたが、これはこういう意味であります。私ども法律に基いて仕事をするのでありまして、この法律に基いて仕事をすることがいいか悪いかは存じませんが、現在の私どもの教育を與えられている趣旨は、人の自由を拘束する以上は、法律によらなければできない。これ戦後われわれはやかましく言われております。そこでいかに凶悪な犯人であろうとも、刑事訴訟法の定めるところによつて取調べし、釈放する場合は釈放する。そうなつておりますので、罪は私どもも憎みますけれども、飯田署長は決してそのまま釈放してやつてくれと書いたのではありませんで、取調べを一日も早く終つて帰してやつてくれ、こう言つております。ただ私は決して弁護しません。従つて署長としてはむろんいけないことはわかつておりますが、こういう法律の立場から言えば、取調べを終つて一日も早く帰してくれというのは、私人ならばそう強く言うべきものでないかもしれませんが、署長であるという点を考えるとはなはだ遺憾である、こういう意味でありまして、誤解されないために一言申し上げます。
  357. 田渕光一

    ○田渕委員 もしこういうような国警署長がいるならば、検察当局は起訴できません。取調べをしているうちに、あの手この手、あらゆる手をもつておどかされて陳情書のようなものを書く。それでどうして検事が信念を持つて起訴されましようか。何のためにやつたか。ただ申訳的に連れて来て、送つて、自分はこれ幸いというような、もしそういう国警警察署長がありとすれば、重大な問題である、こういうような問題があるとすれば、これこそわれわれは国警を信じなくなる。こういう広島安芸地区の飯田署長のような、信念がないといおうか、能力がないといおうか、脅迫に驚いて陳情書を書くような署長を配置しているのかどうか。現在の一線の署長ははつきりしているかどうかということを、この際明瞭にしていただきたい。そうせぬと、国警に対する信用と申しましようか、感謝しておつた念というものが——、今日この事実が現われて来て私はびつくりした。署長ですよ。しかも三十年も刑事をやつてつたという人、こういうようなことを書くものが一人でもあるようなことでは、これはむしろ赤が入つているよりかこわい。こういうものを全国的に配置がえをしたかどうか。あつたならばあつた、なければしなかつた、こうひとつお答え願いたい。
  358. 平井學

    ○平井証人 当時広島県におきましては、広島県内署長について種々検討いたしまして、とりあえずこの飯田署長のおつた安芸地区署につきましては、先ほど申しましたように、三月三十一日をもちまして、信念のある、しつかりした署長を配置して、本人を罷免したという報告を受けております。なおこの点は上司にも、こういうもののないようにということは報告をいたしております。
  359. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ただいま承つておりますと、この飯出署長が陳情文を書いた、しかもその陳情文は、被疑者に対して取調べを早くして、済んだならば釈放してくれというのである。しかもこの二十年にわたつて長い問いわゆる重要な地位についておつた人が、そういう陳情文を書いた。このことは、結局自分は検挙したけれども、検挙するにあたつて、相当自分の職務より以上にいろいろな点であやまちを犯している、従つて良心の呵責に耐えかねてこういう陳情文を書いた。あるいはそうでなかつたとしても、当然被疑者を早く調べてそうして事件を明らかにして、早く出すということは、これは法律の命ずるところであると思います。それを免職されるというようなことはどうか。これは免職する理由がはつきりしていない。こういう点について今後あなたの考え方では、もし被疑者があつた場合に、それを早く調べて早く出すということについて反対であるのかどうか、この点を伺つておきたい。
  360. 平井學

    ○平井証人 私は良心に誓つて申し上げますが、この検挙は絶対に不当ではありません。明らかに十分な証拠のもとに、民団支部長に殴打暴行を加え、建造物を損壊した、傷害罪並びに建造物損壊罪を明瞭に働いた人間を検挙したのでありまして、何らこれは不当な検挙でありませんし、また公判廷で朝鮮人ビラ等で虚偽の事実を宣伝しておりますが、不当な検挙をしたために、本人が良心の呵責に耐えかねて云々というようなことは、これはうそであります。以上のことを確信を持つて申し上げます。
  361. 山口武秀

    山口(武)委員 ただいま飯田署長を馘首した問題についてあなたの説明がありまして、証拠があり、信念に基いてなされたこととは思いますが、私少しここで懸念いたしましたのは、たとえばただいまの陳情文を見ましても、一日も早く取調べを済ませて、早く家族のもとに返してくれ、こういうことは、それ自体がどうして悪いのだろうか。田淵君は大分神経質になつておりますが、たとえばかりに一つの誤りを犯した場合がある。こういう場合に、そういう温情をかけるというようなこともあり得ると思います。たとえば窃盗事犯というような場合に、そういう温情をかけなければならぬ場合もあり得ると思うのですが、單にそれを厳格にするということだけを方針として進みますと、結局は再び戦争中の警察国家を生み出すことになるのではないかと考えられないだろうか、こう思いますので、先ほどのあなたの信念という点に触れまして、その点もお尋ねしておきたいと思います。
  362. 平井學

    ○平井証人 私は先ほどからたびたび申しましたように、お説のようには考えません。
  363. 山口武秀

    山口(武)委員 お説のように考えませんというのは、警察国家が再現するということは考えないというのですか。
  364. 平井學

    ○平井証人 警察国家が再現されるというふうには考えません。
  365. 山口武秀

    山口(武)委員 それではさらにお尋ねいたしますが、こうした税務署あるいは特審局支局に対する襲撃事件というものが起つた、こういう問題は今後あなたの見通しでは数が多くなつて来ると思いますか、それとも今回限りのものだというふうにお考えになるのでしようか、いかがですか。
  366. 平井學

    ○平井証人 私は数が多くなるかどうかは知りませんが、今回限りで終るものとは必ずしも思いません。
  367. 山口武秀

    山口(武)委員 そういたしますと、今回限りとは思わないと言いまするが、見通しにつきましてはお考えがないという意味ですか。
  368. 平井學

    ○平井証人 今後もこういう事件が起る可能性がある、こう考えておるという意味であります。
  369. 山口武秀

    山口(武)委員 今後こういう問題が起ると言われますが、起るという原因をあなたはどこにお求めになつているのでしようか。
  370. 平井學

    ○平井証人 私は個人といたしましては、原因について仕事のひまひまに考えることはありますが、本日は国警職員としての平井で来ておりますので、そこまでのお答えは、冒頭の委員長さんの御指示通り責任はないと思いますから、ごめんこうむりたいと思います。
  371. 山口武秀

    山口(武)委員 この治安の問題につきまして、このような問題か今後にどういう見通しであるかということは、当委員会の聞かなくてはならない事柄であります。あなたはこれに対して答弁する義務があるはずです。
  372. 平井學

    ○平井証人 繰返し申しますように、私ども警察官は、法律で定められたところに該当するような不法事犯が起つた場合に、これを取調べるのが目的であります。その原因等につきましては、議会なり政府のその部局でお考えになつていただく以外に、私どもの立場はございません。
  373. 山口武秀

    山口(武)委員 そういたしますと、警察というものは、そういう問題についての原因あるいは見通しというようなものには関知しない、こう言われるのですね。それに目をおおうて知ろうともしない、こう言われるのですか。あるいはその必要は、今の職務から見て、そういうものは與えられていない、やるべきでない、このようにお考えになつておるのですね。
  374. 平井學

    ○平井証人 問題が微妙でありますからはつきり申せませんが、大体そういうふうに考えます。
  375. 山口武秀

    山口(武)委員 確かにお聞きいたしました。国警長官あるいは警視総監にあなたの見解を申し述べまして、警察のあり方あるいはそういう問題についての原因の探求、見通しというような問題についてあらためてお伺いすることにいたします。
  376. 平井學

    ○平井証人 念のために申し上げますが、国警の責務というものについては、数分間の簡単な質問応答では私の責任あるお答えはできません。従つてもし私の言を前提として私の上司に御質問されるとすれば、もう少し長い時間をかけて、私が責任を持つて御答弁できるだけの余裕をお與え願いたいのであります。
  377. 山口武秀

    山口(武)委員 私の聞いたのは具体的な簡単な問題です。しかもあなたは数分間ではお答えできないと言われましたが、これまでの各委員の質疑には全部数分間のうちに一問ずつお答えになつたのです。もしもあなたの言う通りだとすれば、あなたのここにおける証言というものは、全部権威のない、責任のないものであると思います。
  378. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言はありませんか。——御発言がなければ平井証人に対する尋問は終了いたしました。証人には長時間にわたつて御苦労さまでございました。  本日はこの程度にいたし、明後二十四日午前十時より委員会を開きます。  これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会