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1952-03-04 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月四日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 鍛冶 良作君    理事 高木 松吉君 理事 田渕 光一君    理事 福田 喜東君 理事 小松 勇次君    理事 佐竹 新市君       岡西 明貞君    志田 義信君       篠田 弘作君    野村專太郎君       大森 玉木君    久保田鶴松君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (労働事務次         官)      寺本 広作君         証     人         (厚生事務次         官)      宮崎 太一君         証     人         (文部事務次         官)      日高第四郎君     ————————————— 三月四日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として竹村  奈良一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  女子及び年少者人身売買に関する件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  ただちに女子及び年少者人身売買に関する件について調査を進めます。ただいまお見えになつておられる証人寺本広作君ですな。
  3. 寺本廣作

    寺本証人 はい。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件について証言求むることになりまするが、本委員会人身売買に関する件につきまして調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者人身売買事件全国的に激増の傾向にありまして、これが取締り並びに保護救済機関運用に対する総合的観察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要するものと思料することにあるのであります。証人におかれても率直なる証言により、本委員会調査に御協力されんことを期待する次第であります。  それではただいまより証言を求むることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。かして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が、職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申出を願いたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人寺本広作朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。寺本広作君は現在労働省の事務次官でありますか。
  7. 寺本廣作

    寺本証人 その通りであります。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 現職におつきになるまでの経歴をちよつと述べてくださいませんか。
  9. 寺本廣作

    寺本証人 昭和七年に学校を出まして、内務省関係役人をずつといたしておりました。厚生省勤労局監理課長労政局労働保護課長労働省労働基準局監督課長労働基準局長などを経まして、一昨年八月から現職についております。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 人身売買事件につきまして、労働省所管行政関係を少し述べていただきたいと思います。
  11. 寺本廣作

    寺本証人 人身売買と俗に言つておりますものは、私どもの了解しておるところによりますれば、前借金をとつて人身拘束を受けるような仕事につくということであろうと思いますが、そういう仕事につくことについての労働省行政関係は、そういう仕事につく経路に当ります職業紹介、あつせんを取締まるということが一つ。それからその仕事についている者については、前借金の相殺ないしは人身拘束というようなことについて、労働基準法規定従つてこれを取締つて行くというようなことが一つ。それからもう一つといたしましては、さような事態が起らないように調査を行い、宣伝活動行つて民衆に働きかけて行くというような仕事一つであろうと存じます。
  12. 内藤隆

    内藤委員長 全国職業安定所の現在の事情は、農村労務需給調整等についてはあまり用をなしていないというような証言も先日来あつたのですが、悪質なブローカーが跋扈しておるとかいうような証言がいろいろここで出ましたが、これについて何か対策でもあるのでございましようか。
  13. 寺本廣作

    寺本証人 労働省出先機関として職業安定所四百余箇所を全国に設けてあるわけでございますが、その設置場所はどうしても大体都市中心になりやすいのでございます。農村関係では、一つ安定所が広汎な地域を受け持つて仕事をやつているという関係で、農村に対する職業安定所の働きというものはどうしても弱化せざるを得ないというような状況にあります。しかしながら農村から出て参ります求職者職業あつせんについてはできるだけの努力をいたしております。現在におきましても、新潟、長野方面から東京、横浜、埼玉、栃木方面への季節的な労務のあつせんであるとか、それから岡山、広島方面に対する四国方面からの季節的な労務のあつせんであるとか、ないしは東北から北海道に出て参ります水産とか林業関係の季節的な労務などについて相当の成績を上げておるのであります。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 全国で四百幾らあるのですか。
  15. 寺本廣作

    寺本証人 四百十六だと思います。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 それが都会中心に配置されているというわけですな。
  17. 寺本廣作

    寺本証人 私、都会中心と申し上げまして、ちよつと誤解があると思いますが、労働市場中心と申しますか、労務需給関係の多く集まるところにありますので、どうしても農村関係に対する配置が自然まばらになつて参るわけであります。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 わかりました。農業使用人作男と申しますか、それから漁業使用人、これは一名かじこと言つておる、あるいは特飲店従業婦、こういつたものに対して労働基準法適用はどういうふうになつているのですか。まず作男かじこ、それから特飲店におけ従業婦、この三つについてひとつお述べを願いたい。
  19. 寺本廣作

    寺本証人 農業労働者についての労働基準法適用は、基準法上、労働時間とか深夜業とか特殊の規定を除いては、やはりその適用を受けることになつております。漁業関係労働者についても、それがはつきりした雇用関係の中に入つてくものであれば、やはり労働基準法適用がある。労働時間とか深夜業のような規定を除いては原則として適用があるということになつております。ただ漁業関係には複雑な形態がありまして、雇用関係であるのか、それとも独立営業者であるのか、なかなか判定の困難な問題があることは御承知通りであります。特殊飲食店に働いております従業婦関係も、原則としては労働基準法で、料理店、旅館、飲食店接客業娯楽場というものが基準法上の適用事業になつておりますので、特にその者が独立営業者であるという明らかな反証がない限りは適用があると解釈するのが適当だと思います。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 これは朝日グラフの「情島の梶子物語」という見るからにどうもかわいそうな場面を写してあるのですが、そういうものに対してはどうですか。
  21. 寺本廣作

    寺本証人 ただいま記事を読んでみたのでありますが、建前としては、これは兒童保護建前から里子に出してある事例ではないかと思います。その里親里子関係が、本来の兒童福祉のねらいである里親里子関係を逸脱して、使用者労働者者関係にかわりつつある事例ではなかろうかと思う。実態の認識の問題でありますが、里親里子関係が破れて、労使関係に近い使用者労働者関係になつているというものには、当然基準法適用されるものと考えます。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 適用するとすれば、そういうものの取締りは一体どういうふうになつておりますか。
  23. 寺本廣作

    寺本証人 本来であれば、兒童福祉建前から——この記事には兒童相談所の手を経て里子に預けられた事件だ、こう書いてあります。従つてこれは行政系統から言えば、厚生省方面の、子供の福祉を願つて里子に出したという事件であろうと思います。こういう事件については、これは当然基準局出先機関としては、兒童相談所連絡をとつて、この程度になつている事件は、当然基準法上の問題にして処理せざるを得ぬということになるからということで、本来兒童相談所の発動を促して、これの解決をはかつて行くべきものだと思います。
  24. 内藤隆

    内藤委員長 今証人証言中にありました里親制度ですが、どうもこの制度はむしろ悪用されておるような証言もありましたが、里親制度に隠れて、可憐なる児童労働力を使つておるというような印象を証言から受けておるが、それに対してはどうですか。
  25. 寺本廣作

    寺本証人 一般的に里親制度が悪用されておるということは申しかねると思いますが、そうした例外的な事例もあろうかと思います。その間の弊害は、やはり国の各種の出先機関の間の連絡をとつて防いで行くべきであると思います。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 特飲街の従業婦は、職業安定法第六十三條の公衆衛生上または公衆通徳上有害な業務とお認めになりますかどうか。
  27. 寺本廣作

    寺本証人 労働省としてはさように考えております。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 従業婦募集、そういうことはできるのでしようか。
  29. 寺本廣作

    寺本証人 従業婦募集紹介ないしは供給は、六十三條の一号、二号に該当する事項については禁止されております。
  30. 内藤隆

    内藤委員長 もちろん新聞広告などもできないわけでしような。
  31. 寺本廣作

    寺本証人 募集は禁止されております。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 農家が十五歳未満の者を作男として雇い入れた場合、労働基準法罰則適用が行われていないと聞いているのですが、そういう事情について少しお述べを願いたいと思います。
  33. 寺本廣作

    寺本証人 罰則適用が行われていないという委員長の御質問の趣旨が、ちよつと受取りかねるのですが……。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 要するに基準法罰則があるけれども、実際にはそういうものに対しては罰則をやつていない、こういうことなんです。
  35. 寺本廣作

    寺本証人 基準局監督署がさような事実を承知いたしておつて事件を放置している、こういう意味でございますか。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 そういう意味です。
  37. 寺本廣作

    寺本証人 そういうことがあれば、具体的にその監督署を督励して措置させて行きたいと思います。
  38. 内藤隆

    内藤委員長 先般来の証人証言から見ますと、そういうことを明瞭に述べている。  それから紡績工場の女工の募集は、労働契約に今なお人身売買的違反が行われているのですが、法令の運用上あるいは何かそこに不備があるのじやないですか。
  39. 寺本廣作

    寺本証人 現実に小さいガラ紡関係その他で、前借金で住込みの労働をやつているとか、あるいはある程度基準法の予定している期間以上の期間を定めた基準法違反が、ときどき発見されるのでございます。そういう違反が発見されるまでそういうことがわからずにおるということに、法律上ないしは行政上欠陷があるのではなかろうかというお尋ねでございますが、法律自体としては禁止しております事項でございますので、法律上の欠陷は一応ないものと考えております。ただそういう労働者は、従来の長い間の募集関係、新しい労働立法が行われまする以前の周旋人とか、そういうものを使いまして、隠密の間に労働者を雇い入れて来るという関係がございますので、従来は主として警察がこういうものを取締つてつたわけでございます。終戦後基準局とか安定所とか、新たなる労働機関がこういうものの取締りに当るということになつております。何分にも隠密の間に行われる事件でありますだけに、発見が容易でありません。なお一段と努力して行かなければならぬ問題であるとは考えております。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 婦人あるいは少年の問題の管轄は、労働省婦人少年局にあるのですね。
  41. 寺本廣作

    寺本証人 行政機構がやや複雑になつておりますので、申し上げたいと思いますが、女子年少者現実に働いておる労働條件保護して参る、そうしてその違反があつた場合にこれを取締つて行くということは、婦人とか、労働者が年少であつても、私の方としては基準局出先機関がやることになつております。基準局は特にこの問題について専門家を集めまして、女子年少者以外の安全であるとか、衛生であるとか、一般的な問題を扱つておりますために、婦人局はややともすればその方の関係が抜けやすいということから助言勧告をやつて行く。専門調査を行い、それから基準局出先機関に激励を加えて行くというような仕組みに、行政としてはなつております。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 厚生省には児童局というものがあるし、各省にいろいろ機構が複雑になつていると思うが、そういう機構割拠主義で、連絡が不十分で、一貫性を欠いておるのではないでしようか。
  43. 寺本廣作

    寺本証人 女子年少者に関する問題が各行政官庁にわかれておると申されますことは、お尋ね通りでございます。しかしこれはそれぞれの行政の立場でやつているのでございまして、教育の面から女子年少者を見て行く場合には文部省、それから雇われている労働者雇用関係から見て参ります場合には労働省、しかし雇用関係以外の問題、親子の問題としての子供の問題は厚生省が見て参るということで、それぞれの行政の面から女子年少者の問題を取扱つて行くという建前になつております。その関係で、ややともすればそれが重複したり、あるいは穴ができたりするという危險がありはしないかということで、各官庁相互連絡をやりながら行政を進めておるわけでございます。現在までのところ、たとえば厚生省所管に属します問題について労働省から見て申入れをする。例として申し上げますれば、子供新聞配達であるとか、花売りであるとか、靴みがきであるとかいうような、雇われている子供については深夜業が禁止されている。しかし雇われていない子供については、深夜でもそういうことをすることが認められている。そういうことがやはり子供保護という面から、雇われておる子供であるといなとにかかわらず遺憾なことだということであれば、労働省から厚生省申入れをして、すぐ法律改正の手続をとつてもらうということで連絡をいたしております。この関係はしごく円満で、労働省から申入れをすれば厚生省は受付けてくれる。厚生省からまたこちらに申入れがあれば、こちらとしてはただちに動くというようなことで、今のところ運営連絡はうまく行つていると考えております。
  44. 内藤隆

    内藤委員長 連絡上不十分なことはないと思われるというわけですな。
  45. 寺本廣作

    寺本証人 はい。
  46. 内藤隆

    内藤委員長 それからこれは政令できまつておるのですか、全国青少年問題協議会といううものができておるようですが、これの運営あるいは実績等について少しお述べを願いたいと思います。
  47. 寺本廣作

    寺本証人 御承知のように、その委員会は各官庁代表者並びに学識経験者全国単位または府県単位組織して、常時連絡をしている委員会でございますが、各官庁から情報を持ち寄り、問題を持ち寄りして、絶えず会合を開き、青少年問題につきましては相当の成果を上げている委員会だと考えております。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 これは今年二月の十二日付で、中央青少年問題協議会委員長保利茂君の名において内閣総理大臣あてに出ておる書類ですが、これなどを読んでみると、やはり今あなたがおつしやつた連絡等をさらに強化して、そうして嚴密な監督取締りをもつて悪質のものを処分しなければならぬということを強く主張しておるようです。今青少年問題協議会というものは、相当実績を上げておるという御証言ですが、昨日も山形県の民生部長を喚問して証言を求めましたところ、どうもその内容等が依然として役人中心組織であつて、この点他の委員からも質問が出ようと思いますけれども、どうも今あなたのおつしやつたような実績が上つておるように思われない節もあるので、こういう質問をしたわけであります。——他に御質疑ありませんか。
  49. 田渕光一

    田渕委員 昨日の証人横浜だけで大体七百十人、約七千五百万円の予算を計上されておると証言されております。そこで先ほどの証言の中に、四百十六箇所の陣容を持つてつておる、こういうふうに伺いましたが、本年度の予算では大体予算的措置としてこの裏づけが何百億の予算をとつておりますか、それを伺います。
  50. 寺本廣作

    寺本証人 ちよつと何の関係予算でございましようか、委員長
  51. 内藤隆

    内藤委員長 職業安定関係だろうと思います。
  52. 寺本廣作

    寺本証人 予算関係の資料を持ち合せておりませんが、安定所関係全国で働いておる者は一万一千八百名だと考えております。
  53. 田渕光一

    田渕委員 四百十六箇所で一万一千八百名、そうすると、これは私は予算的には相当高額なものだと思います。少くとも十億台じやない、百億台を超過しておると思いますが、この大きな予算をとつてつて、その取締り官憲が、地方庁では結局机の上のおざなりの仕事だけで、実態を把握しておらぬ、こういうような結果が証言でだんだん現われて来たのであります。そこで今委員長の御質問に対して、一番末尾から二番目でありますが、運営でうまくやつておるというお話を伺いましたが、私はこの運営でうまく行くということに疑点を持つのであります。たとえば厚生省兒童局、労働省基準局、あるいはこの違反を見つけるところの自治警国警、あるいはまた県当局民生部、こういうような横のくもの巣学的な非帶に複雑な機構でもつて、だんだん当委員会が突いて行くと、各省とも、兒童問題ばかりでもございませんが、結局他省責任を転嫁しておる。労働省へ行けば、これは厚生省関係でとか、あるいはまた厚生省へ行けば、労働省の方から発動してもらつておるとか、逃げる機構ばかりできておつて、一向効果を上げておらぬ。こういうような点で私は非常に疑念を持つのでありますが、運営でうまく行つているという実績があるならば、今日のようなこの不祥事、人身売買というようなことは起らなかつたであろうと思う。結局実態を把握しておらぬ。机の上でタバコを吸つてぶらぶらしているなまくら官僚が多いからこういうようなことになつていることが、だんだん現われて来たのであります。きのうの山形県の経済部長民生部長とを兼ねた者を調べてみてもその通りである。こういうような意味で、私はうまく行つているという点に非常に疑問を持つのですが、こういう複雑な、くもの巣学的に各省のセクシヨナリズムがあるにもかかわらずうまく行つているということはどういう意味か。これを時間的にあるいは事務的にどんなぐあいにうまく行つているかということを、納得するようにお聞かせ願いたいと思います。
  54. 寺本廣作

    寺本証人 昨日の議論を私実は承つておりませんので、どうもおつしやることがぴんと来ないようですが、私の方の出先が一万一千人——これは安定所と県の職業安定課、それから本省の職業安定局を通じてでありますが、それが出先として四百十六箇所の安定所を持つて仕事をしているわけであります。予算はただいまおつしやられる百億とは頂戴いたしておりませんけれども、相当頂戴しております。しかし安定所がやつている仕事は、御承知だと思いますけれども、いろいろたくさんの仕事がございます。新しく職業を求めて来る求職者会つてその求職條件をいろいろ聞いてみる。それから新しく人を求めて来る求人者会つてその求人條件を聞く、それを結び合せてやつて行く職業紹介的な仕事、これが第一義的な仕事です。それから失業者に対して失業保険金を給付する、それから失業対策事業紹介、あつせんをして行く。それから職業補導をやつて行く。学校の卒業生などに職業指導をやつて行く。そういう仕事にあわせて、ただいまお話もぐり職業紹介をやつている者を取締つて行くというような仕事も、やつているわけでございます。安定所を御視察になりましてよく御承知のことと思いますが、非常に多くの人が出入りする役所でございまして、安定所の職員一人当り平均しまして、一日に何十人という人間に会つて、非常に多忙な目にあつている。そんな関係から、外まわりの仕事というものは自然抜けやすい欠陷はございます。そういう点で、もぐり紹介業者取締りという点に従来手抜かりがあつた、十分でなかつたということは、これは認めなければならぬ、こういうふうに考えます。しかし、先ほども委員長の御質問に対しましてお答え申し上げましたように、もぐり紹介業者と申しますものは、隠密の間に事を運んでおるのでございまして、聞き込みとかいろいろな投書とか届出とか、そういうものを利用して動いているわけでございますが、どうしても警察のようにああいうこまかい組織網、網の目の小さい組織網を持つているところ、そういうところの御援助を得ませんければ、十分な効果を上げにくいわけであります。これは決して私の方が警察責任をつけて、自分の責任をのがれるわけではございませんが、何と申しましても、安定所仕事は所内の仕事中心になりやすいものですから、どうしても外をまわつている、網の目の小さい組織を持つている警察などの御援助を得なければ、もぐり紹介業者取締りというものはうまく行かないということをひとつ御了承いただきたい。
  55. 内藤隆

    内藤委員長 それは証人田淵委員質問の要旨は、あなたはきのうの証人のことを聞いておられないからぴんと来ないかもしれませんが、きのう出て来た証人神奈川県の職安課長証言中にも、要するに今問題になつておりまする神奈川高座地区人身売買事件のごときは、本委員会が活動して新聞に出るまで知らなかつたというような証言をするから、ああいう質問が起るのだと思います。
  56. 田渕光一

    田渕委員 私の伺うのは、結局各省が非常に複雑多岐になつておる、あまりに制度厚生省にも責任を持たし、労働省にも責任を持たし、また取締り面においては警察、そういうようなぐあいになつておるというので、私は運営がうまく行かぬのではないか、いつそこれを厚生省なら厚生省労働省なら労働省というようなぐあいに、一つ機関においてやつて行くような線がいいのではないかということ、そういうような点について、現在の機構運営がうまく行つているというよりも、むしろこういう問題が起きたのを契機として、何とか取締りをどこかで握らなければ、いわゆる本尊がなければいかぬ、こういう割拠主義ではいかぬというようなお気づきが出ませんかどうかということを伺いたい。どうもこのままではやつて行けない。いろいろあなたの方は範囲が広いからあちらこちら手わけもしておるし、都市中心である。であるから、結局職業安定所というものが都会中心に行くから、地方農村作男とか、そういう方面に行くものがどうも今まで完全でなかつた。こういうようなことになつて来ると、結局私は思うのに、この際一つの嚴然とした兒童あるいは青少年というものを兒童福祉法に基いてはつきり取締つて行くなり、行政面一つに、あなたの方とか厚生省とかにする方がいいのではないか。こういうような点を私は考えておりますが、この点についていかがですか。
  57. 寺本廣作

    寺本証人 ごもつともなお話だと考えますが、ただ役所の権限争議と申しますか、できるだけ権限をほしがるというような問題のために、この問題が非常に行政がゆがむとか、ないしはいやな仕事をみなが逃げまわつておるというために、どこかにギヤツプができる。消極的な権限争議でありますが、そういうようなことのためにこの問題の処理が非常にまずくなつておるのではないかというようなお話でございますが、委員長の御質問にもお答え申し上げましたように、今のところは青少年問題協議会連絡場所にいたしまして、各方面から情報を持ち寄り、意見を持ち寄つて対策を立てておる次第でございまして、各官庁でなわ張り的にこの問題を争つているというよりは、各官庁それぞれの受持の面からこの問題にみなが力を出し合う組織をつくろうという方向に向つているのではないかと思つております。この問題に関する限り労働行政から切り離して厚生省に持つてつた方がいいじやないかとか、または厚生省から切り離して労働省に持つて来て一元化した方がいいじやないかというようなお話でございますが、やはり目の多い方がこういう問題は届きやすいのではなかろうか、目が多いために責任観念が、自分が全責任を負つておるという感じがみなに出て来ないという欠陥は確かにあると思いますが、もしそういう点を内閣の今の協議会の運営その他で補つて行くことができれば、たくさんの目で見て行つた方が子供保護というものはうまく行くのではなかろうかという一面もあろうかと考えます。
  58. 田渕光一

    田渕委員 そこで伺いたいのですが、次官は、この青少年問題協議会で、こういう問題がこういうぐあいに行政機構をかえてもらいたいというような話が出たか、あるいはまたそういう案が芽ばえておらぬか、芽ばえておるかということを、お聞きになりましたらお知らせ願いたい。
  59. 寺本廣作

    寺本証人 まだそういう具体案が出ておるということを承知いたしません
  60. 田渕光一

    田渕委員 昨日の山形県の経済部長民生部長証言によりますと、ちつとも実情を把握しておらぬ。おひざ元でああいうものがどんどん出ておるということを知らず、かつまた下僚からもその報告を受けたくらいで実地調査をしておらぬ。これはどうかというと、つまり民生部長経済部長を兼けておりますが、結局私思うのに、労働省基準局あるいは厚生省兒童局、そういうような関係が末端においては横の連絡が非常にうまく行かない。これが一元化して、あなたの手元なり、厚生省兒童局長のところに来て敏速に処理されるならばいいけれども、私はそうではないと思う。たとえば神奈川県の例をとりましても、神奈川県の国警高座地区が一応発見した、そこで神奈川県の職安、あなたの方、あるいは兒童局、民生部、こういうようなことで横の連絡をとるのに時間的に一月や二月はかかる。これが中央にやつて来て各部に報告されて来る。たとえば労働省あるいはまた厚生省、あるいはまた検察庁の手にまわしたものは法務府の方に来るであろう、こういうぐあいに地方から吸い上げて来る。これがまた地方で横の連絡が非常に時間がかかるということになると、一つの問題が起きて、これを決裁するあなた方の手元に具体的な資料が上つて来るのにまず一月や二月かかる、それだからきのうの証人が実情を把握しておらぬという結果になるのではないか、一地方においてそうだから、中央においてもそうなつて来て、中央の指令が出ない、それだから依然としてもぐり周旋屋は裏々をくぐつて来る。どうもそういうような欠陥があるのではないかと思うのですが、こういうような事務上の処理として、地方から横の連絡をずつとして行つて中央に行く、これをどこか一つにまとめて処理して行く、いわゆる一元化しよう、少くとも地方の出先機関に対してびしつと骨身に徹するような指令がどうしたら行くかというような点をお聞かせ願いたい。
  61. 寺本廣作

    寺本証人 神奈川県の高座地区事件については、国警が発見して、私の方の出先機関がこれを承知しなかつた神奈川県内における連絡も非常にまずかつたし、それが中央に報告になつて来るのも非常にまずかつたというので、組織欠陷ではないかという御指摘でございますが、さようなこともあろうかと存じます。ただこうした事件の処理の権限でございますが、こうした違反事件を司法事件として取上げる、基準法違反ないしは職業安定法違反として取上げます権限は、出先機関に全部まかせてあるわけであります。どういう違反を徹底的に取締れ、今はどういう問題に重点があるから、どういう点に力を入れてやれというような指揮を中央がいたすわけであります。従つて中央には個々の事件の指揮と申しますか、そういうものはあがつて来ないのでありまして、中央に来ますのは報告が来るわけであります。そういう報告を見ながら、全国の動きを察知して、一つの方針を立てて、こういう事件取締りに行くべきだという方針を授けるのが中央の仕事になつておるわけでございます。人身売買につきましては、出先でそういういろいろの不都合があつたということは非常に遺憾に思いますが、出先相互連絡はやはり出先連絡協議会というものを活用して、警察が発見した、それに基準法上の援助とか、それから安定法上の援助ということについての協力をやつて行くのは出先がやつて行く。そして多少情報か遅れても、やはり中央に報告が来て、そういうものを全国的に見て一定の方向を見定めて、中央から全国に、さらに神奈川県のような事件をなまなましく感じていないような地域にも及ぼして行くというところに、中央機関の働きがあろうかと考えるわけでございます。人身売買につきましては、御承知のように報告がずつとまとまりまして、そしてこれはやはり二十三年以来起つて来ましたああいう事件を個々に扱つてつてはいかぬ、全国的に広がつている問題だから、各機関協力して、これに重点を置いてやつて行かなければならぬというようなことで、各省から意見を持ち寄り、民間の経験者も入られまして、案が出まして、先ほど読み上げになりましたような青少年問題協議会からの報告に基いて、次官会議にかけまして、そうして各次官からそれぞれ出先機関の活動を促す通牒をさらに出先へ流して行くわけであります。現在の組織としては、それでやつて行くということで、この事態に対処して行きたいと考えております。
  62. 志田義信

    ○志田委員 ちよつと次官にお尋ね申し上げますが、労働基準法の第八條の家事使用人というのはどの程度の仕事をする人を意味するのでありますか。
  63. 寺本廣作

    寺本証人 労働基準法適用が除外されております家事使用人というのは、普通俗にいう子もりとか女中とかいうものがこれに該当すると解釈いたします。
  64. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、農家が十五歳未満の者を雇い入れる場合に、それが作男として雇い入れずに、子もり程度のものに使つた場合においては、家事使用人として労働基準法適用は受けない、こういうふうに解してよろしうございますか。
  65. 寺本廣作

    寺本証人 仰せの通り、そこが現在の基準法一つの穴だと思います。ただ雇い入れる際子もりとして雇い入れても、あとで農事に使つたということであれば、これは基準法上の取締りを受けます、
  66. 志田義信

    ○志田委員 本件につきましてはいろいろな問題が條件としてあげられると思いますが、その中でそれらの子供たち、あるいはその家庭というものが、東北の僻陬の地にありまして、東京ないし神奈川県というような暖地の、文化的にも相当高く、日ごろ新聞雑誌等によつてあこがれを持つておる地方に、その子供たちが甘言によつて出て来るということが、相当精神上に與える大きい影響があろうと思いますが、そういう場合に労働基準法第五條の暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束するという條項に該当するものと認められるかどうか。その点をひとつお尋ねいたします。
  67. 寺本廣作

    寺本証人 東北の山間僻陬の地に育つた子供に対して、東京の生活程度の高いところの話をして、甘言をもつて誘い出して来るということが、第五條の強制労働の禁止の違反になるかどうかというお尋ねでございます。ただいまの質問だけではちよつと結論が出しにくいのでありますが、もしその山間僻陬の地から子供を誘い出して来るのに、その誘い出して来る人間が不法の紹介者であり、不法のあつせん者であるということであれば、その点でまず第一に職業安定法違反になつて来るわけであります。それからその者が不法のあつせん者でないといたしましても、その者が話していることに誤りがある、東京に行つたらこれこれの給料でこういうところに住まつて、こういう労働時間で、こういう待遇が與えられると明示した場合に、誤りがあるということであれば、やはり基準法違反になるわけでございます。そうした手段で東京に連れて来て、そうして山形に帰りたい、ないし秋田に帰りたい、自分の郷里に帰りたいというのを阻止しているということであれば、第五條違反、強制労働禁止規定違反を構成する、こういうことになると思います。
  68. 志田義信

    ○志田委員 そういう場合に労働契約の相手方というものは、十五歳未満の場合におきましては、両親がかわつて契約するものかどうか。そういう契約が両親において契約された場合においては、子供がそれに対して現地に行きまして不服な状態があつた場合に、不服を申し入れるといような場合におきましても、やはりこの第五條が結論的に適用されることになると思いますが、それをひとつ伺いたいと思います。
  69. 寺本廣作

    寺本証人 親が子供にかわつて労働契約を結ぶということは基準法上禁止されております。従いまして親が子供にかわつて契約を結んで、それに基いて子供労働させられておつて子供が契約を破棄して帰りたいという場合は、もちろんその契約は無効なわけでございますが、それに拘束されないで、ほかにかわりたいというような場合に、それを拘束しておるということであれば、第五條の強制労働禁止の規定違反するわけであります。
  70. 志田義信

    ○志田委員 さようでございますれば、第五條、第六條の問題よりもさらに労働基準法総則第二條による均等の待遇という問題で、労働者使用者が対等の立場で労働條件を決定すべきである、これは今次官もおつしやられた通りでありまして、親が子供にかわつてつたり何かすることができないということが明らかであるとすれば、そういう十五歳未満の子供労働條件を決定することはできない、無能力者でありますから、そういう場合においてはこれも違反になる。かように考えてよろしゆうございましようか。第二條の違反になりますか。
  71. 寺本廣作

    寺本証人 労働契約の締結につきしては、基準法子供に契約の能力を與えるわけであります。しかしながら御承知のように未成年で思慮の熟しない者でありますので、非常に不利な契約を結びやすいということで、契約ができたあと法定代理人なり、親権者にこれを解除する権利を基準法上與えております。未成年者の保護上與えておるということになつております。
  72. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、本委員会で今取上げられておる人身売買の対象となつておる子供たちというものは、十分労働基準法職業安定法、その他紹介法といいますか、そういうものに抵触すると思うのですが、昨日来の当委員会における説明によりますと、いずれも抵触しないのだということを証人として出席の方々が言つておりまするが、先ほど次官は罰則があるから適用されておるのである、こういうお話でありました。そこでまあいろいろ食い違いがあるのであります。私は次官の話の方が正しい解釈だと思うのでありますが、そういう事実が明らかになつた場合におきましては、労働省といたしましては、どういう処置をとられるのでございましようか。
  73. 寺本廣作

    寺本証人 昨日来のほかの証人の方のお話を承つておりませんので、その間矛盾があつては恐縮でございますが、具体的な問題について、労働基準法違反の事実が明らかでありますれば、労働基準法の施行に当つております監督官には司法警察権が與えられておりますので、取調べを行つた上、これを検事局の方に送検するという手続をとらしております。
  74. 志田義信

    ○志田委員 あなたは、先ほど個々の問題については、事件が中央に報告されてから、中央はそれをまとめて概括的な方針を地方に授けるのみである。出先機関に対してその処置についてはまかせておる、こういうようなお話でありましたが、その通りに拝承してよろしゆうございますか。
  75. 寺本廣作

    寺本証人 誤解を招いては困ると思いますので、若干敷衍さしていただきたいと思いますが、基準法違反事件ないし安定違反事件出先で処理するようにまかせてあると申しますのは、その通りでございます。しかしこういう事件を特に力を入れてやれとか、今こういう違反が非常に広がりかかつているから、こういう面に気をつけろということは、たえず中央から指示しておるわけであります。また特に出先機関がある種の事件を取扱うのに非常に臆病であるとか、ないしは躊躇しておるというような場合には、中央から具体的な事件についても直接指揮することがございます。
  76. 志田義信

    ○志田委員 本件をわれわれ委員会において取上げて、いろいろ各角度から考究いたして見ますると、問題の中心は、いろいろわかれておりまするが、その中でも特に目立つものは、職業安定所は、どうも農家の求人あつせんに対しましてはきわめて熱意がない、むしろその場の役に立たない。時間的にもまた同様である。従つていわゆる私的の職業あつせん者が現われて、そのために人身売買が構成されておることが非常に目立つのであります。こういう事実に対する監督の立場における次官のお考え、及び今までにそういう事案に対して懲罰戒告を與えた事実があるかどうか、ひとつお尋ねしてみたいのであります。
  77. 寺本廣作

    寺本証人 私どもの方の出先職業安定所が農家の求人あつせんについて非常に活動が鈍いというお話でございます。求人は御承知通り求職に比べて非常に少いわけでございまして、求人に対しては安定所としては相当鋭敏に動いておるというふうに一般的は承知いたしております。ただ農家が人を求めるという場合に、その農家に働きたいという求職者の方が、たとえば東北なり、そういうところであるかどうかの問題でありますが、求人について安定所が非常に動きが鈍いというのは、比較的一般的には考えにくいことでございまして、安定所求職者に満足を與えないというような非難は非常に受けるのでございますが、求人について満足を與えないということで非難を受けるというのは比較的例が少いかと存じます。
  78. 志田義信

    ○志田委員 次官は実情をほんとうに知つてそういう御発言をしておるのかどうか、私はやや疑問に思うのであります。というのは、もしかりに職業安定所機構並びに現在の設備能力をもつて農家の求人あつせんがスピーデイにやられておるならば、何も好んで手数料までとられる——公立の職業安定所は手数料はとつておらないだろうと私は思う。しかるにこうした私的の職業安定機関もぐりのやみの安定機関は手数料をとつておる。そういうものを特に求人側の農家の方で利用するということは、いわゆる農繁期に間に合うように、作男にしましても子守にしましても、農繁期に間に合うように、自分の仕事がそれによつて幾らかでも手助けされることが早く実現できるように、ということを考えることが、非常に大きな私的な職業安定機関を利用する原因になつてあります。これは私は一昨日高座郡に参りまして得た私の実地の調査の結果であります。次官はただいま求職の方は人間が非常に多いので、これに満足を與えることはできないが、求人に対しては十分な満足を與えられるのだと言われますが、それではなぜこういう人身売買がそういう私の機関において行われるとお考えになつておりましようか、その点をお尋ねいたします。
  79. 寺本廣作

    寺本証人 私の実情認識が不足ではないかというお話でございますが、御承知通り安定所を通して雇い入れる者には、前借金とか、長期の雇用契約とか、要するに安く乱暴に人を使えるといつたような仕組みの人の紹介というものは、一切安定所の窓口は通らないのでございます。そういう意味で、あるいはこの今問題になつておるような人身売買と目されるような事件が、安定所の窓口を通りにくいという一面があるのではなかろうかと考えます。ただ、ただいまお話のように、安定所が農家の求人活動に対して非常に活動が鈍い、そのために、本来であれは同種の労働條件安定所通り得るものが、なお私的のもぐり周旋業者を通つておるということが御指摘になつておりますので、この点につきましては、私ども十分安定所の方に、出先の活動を促して弊害をなくして参りたいと思います。
  80. 志田義信

    ○志田委員 あなたはこういう人身売買事件は、今度初めてお知りになつたのでしようか、それともあなたが労働省に勤務するようになつてから、幾多こういう事件があるということを知つておりましたでしようか、その点をお伺いいたします。
  81. 寺本廣作

    寺本証人 昭和二十一年に労働基準法の草案をつくりました際は、実はこうした人身売買的なものはもうなくなるのではなかろうかということで、草案をつくりました際は、今の強制労働であるとか、前値金相殺であるとか、労働條件の明示ないし中間搾取の排除、年少労働者の直接雇用の原則及び親による賃金受取りの禁止などという條文は不要ではないかという議論が相当にあつたのでございます。しかしながら昭和二十一年、二十二年のああいう混乱した経済のもとに行われておる現象をそのままに見て、将来永久に日本に人身売買ということが起らぬとは言えぬだろうということで、ああいう予防的な條文をつくつてつたのであります。あのころは、御承知通り、日本の疲弊した国民生活の中で、農村は比較的恵まれておつたのでありまして、人身売買というようなことも表にはほとんど出て来なかつたのであります。ところが昭和二十三年の暮れに、これは栃木でありますが、東京の戦災孤児が売られて行つているというような情報がありまして、これをもとに調査いたしましたところ、当時私は基準局長でありましたが、東京の戦災孤児の問題よりも、むしろ福島、山形方面から栃木の稲作地帯に子供が前借金で長期契約に縛られて出て来ておるというような事実がわかりまして、第一回のこういう事案の取締りに関する方針を中央から授けたような次第でございます。その後調べておりますと、農村だけでなく、小さな織物工場であるとか、ないしは特殊飲食店の方にそういう事件が起つて来たということで、基準法施行約一年、二年の間にたくさんこういう事件を手がけておりますので、この問題はきよう初めて承知したわけではございません
  82. 志田義信

    ○志田委員 私は今度びつくりしたことがあるのですが、次官は今きよう初めて知つたわけではないというので、私は次官も知つておられるのではないかと思う。あの地方では二十五、六年前から山形県、福島県から人身売買をして来ておるそうです。二十五、六年——去年やおととしの話じやない。年々歳々子供はかわつておりますけれども、東北地方の僻陬の地から連れて来るということはもう習慣になつておしる。別にわれわれはそれで悪いことをしているように思われないというのが用者の言葉であります。二十何年間そういう事実があつて、たまたま国会がこれを取上げたことによつて、社会的にも注目されるような事件なつた。二十何年間、二十五年以上になつておるといいます。二十五年以上前からそういうことがあつたということは、これに対する政府の予防的処置というものが何らなされておらなかつたのではないか。あなたは今昭和二十一年に初めて予防的條件というものを考えて、前借長期契約というものをやめさせるような訓令を発しておる、こうおつしやられましたが、その前すでに数十年にわたつてそういうことが継続されておる。そうしますとこれは政府の責任ではないか。二十年も三十年もの久しきにわたつてこういう悪習慣が行われておる。それを監督しなければならぬところの政府の立場において、これに対して何ら手を打つておらない。高座郡方面におきましては、こんなことは悪例とも何とも思つておりません。当然なことを当然になして、しかも人身売買をやつておるといわれればやむを得ないという考え方であります。これに対して次官はどういうふうにお考えになりますか。やはり政府として責任があつたと思いますか。ないと思いますか。あなたは労働省における事務次官でありますから、その点をひとつお尋ね申し上げます。
  83. 寺本廣作

    寺本証人 政府として非常に責任のある問題だと痛感いたしております。
  84. 志田義信

    ○志田委員 政府に責任があつたということをお認めになりましたので、さらに私はお尋ね申し上げたいのですが、出先機関にあまりまかせ過ぎておるのではないか。先ほどあなたは、職業安定所は、農家の求人であろうとその他の求人であろうと、十分やつておるというような御認識のようでありましたが、なるほど工場その他に対しましては職業安定所の人はよく行きます。労働基準局監督の方々もよく行きます。うるさいくらい行くそうです。来なくてもいいくらいに来るそうです。ところが農家には一向来ない。なぜでしようか。工場に行けば酒の一ぱいくらい出るのです。これは卑近な例でありますけれども、よくおいでくださいました、まあ一ぱい、といつて茶わんで酒の一ぱいも出される。夕方近くになると飯の一ぱいくらい、これは人情として出すのですが、農家はそんなことをいたしません出先機関にそういうことをまかせておくということだけでは、私は処理を十分にしておるようには受取れない。もしそういう必要があるとするならば、工場に基準局なり職業安定所の方々がまわつておるのと同様の熱意をもつて、農家にも立ちまわつていただきたい。農家に一歩入れば、それが子もりであるが作男であるかということは一目瞭然です。いやしくも目のある者にはすぐわかる。労働基準法違反であるか、あるいは兒童福祉法違反であるか、その子供の姿を一目見ればすぐわかる。子もりであるか作男であるかということもわかる。子もりと作男をちやんぽんにやつておるかどうかということもはつきりする。その子供の手と足を見ればわかります。そういう実態に対して職業安定所の方々や労働基準局の方々は職責を全うしておるというふうには私は思わないのでありますけれども、部下監督の任にある次官はどういうふうにお考えになつておるか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  85. 寺本廣作

    寺本証人 農村方面のこうした労働問題について、従来非常に手抜かりがあつたということは御指摘の通りであります。今後は農村の方に十分力を入れてやつて行くようにいたしたいと思います。
  86. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、寺本証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人は長時間御苦労さまでございました。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後三時七分開議
  87. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいまお見えになつておられる証人は宮崎太一君ですね。
  88. 宮崎太一

    ○宮崎証人 はあ。
  89. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件について証言を求めることになりまするが、本委員会人身売買に関する件につきまして調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者人身売買事件全国的に激増の傾向がありまして、これが取締り並びに保護救済機関運用に対する総合的観察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思料いたすためでありますので、証人におかれても率直なる証言により、本委員会調査に御協力されんことを期待する次第であります。  それではただいまより証言を求むることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人証人公、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申出を願いたいと存じます、  それでは法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読してください。     〔証人宮崎太一君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  90. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  91. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  宮崎太一君は現在厚生省事務次官でありますね。
  92. 宮崎太一

    ○宮崎証人 さようであります。
  93. 内藤隆

    内藤委員長 現職になられるまでの経歴を、簡單でよろしゆうございますから、述べてください。
  94. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は昭和五年に内務省衛生局へ入りまして、衛生仕事をやりまして、昭和八年に和歌山県の事務官、会計課長、農務課長をやりまして、それから昭和十年に広島県の農務課長、企画課長になりまして、昭和十一年に内務省へ帰りまして、内務省の衛生局の事務官となり、昭和十三年に厚生省が設置されましたので、厚生省の官房の事務官になり、昭和十六年に、当時ございました厚生省保険院の社会保険局の管理課長になり、昭和十七年に厚生省勤労局の動員課長をやり、昭和十八年に内務省防空総本部の業務局救護課長をやり、続いて昭和二十年に防空総本部の総務局総務課長をやり、終戰後埼玉県警察部長になり、マツカーサー指令で昭和二十年の十月に罷免せられまして、それから昭和二十一年に財団法人結核予防会の庶務部長、常務理事をいたしまして、昭和二十二年にマツカーサー指令が取消されて、厚生省の医務局次長をやり、続いて保險局長をやり、昭和二十四年でございましたか、引揚援護庁の次長になり、昭和二十五年に引揚援護庁長官をやり、昭和二十六年の五月に引揚援護庁長官と厚生事務次官とを兼ねまして、この一月に引揚援護庁長官をやめて、厚生次官一本になつた次第でございます。
  95. 内藤隆

    内藤委員長 本委員会が今取上げておる人身売買事件厚生省所管行政との関係を述べてもらいたいのですが、児童福祉法に対することと、あるいは社会福祉事業法ですか、こういつたものの関係等を少し述べていただきたい。
  96. 宮崎太一

    ○宮崎証人 本委員会が取上げておられますいわゆる人身売買事件につきましては、厚生省行政ときわめて関係が深いのでありまして、御承知のように、私の方では児童局がございまして、児童福祉の問題を取扱つておるわけであります。また同時に、社会局におきましては生活保護法の問題を取扱つておる。それから公衆衛生局におきましては人身売買と関連の深い性病予防問題を取扱つておる、こういう関係でございまして、まず第一に私ども最も力を入れなければならぬと思つております兒童福祉思想高揚という問題につきまして、厚生省が担当いたしておるわけでございます。児童福祉思想の高揚につきましては、児童福祉法がございますし、それから兒童憲章等がございまして、これに伴ういろいろな行事を行い、また地方を通じましてこの仕事をいたしているわけであります。それから。生活保護法の運用によりまして、貧困世帯についての生活安定の策を講じ、全身売買等が行われないように経済的方面の防止に当つておるわけでございます。また兒章福祉関係機関といたしまして、児童委員、社会福祉主事あるいは兒童福祉司がございまして、この人たちによりまして、この原因、実情の調査発見等に努めさしておるわけであります。また爾後の保護につきましては、親元へこれを返すことを原則といたしまして、必要に応じまして、あるいは兒童福祉施設あるいは里親等に委託いたしまして、保護の万全を期する、こういう問題につきまして、都道府県を指導し、実施をいたしておるのが厚生省でございます。
  97. 内藤隆

    内藤委員長 大体わかりましたが、そういつた機構制度から見ますると、この人身売買という問題に関しましては相当な防止ができておるはずだが、あまり効果が上つていないと思うどうですか。
  98. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私どもただいま委員長の仰せになりました点につきましては、深く責任を感じておるのでありますが兒童委員あるいは社会福祉主事、兒童福祉司によりまして、この身売り防止につきましての予防的措置を講ずることに努力はいたしておるのでございます、何分にも一つは今日における国民の人権尊重と申しますか、兒童を人としての人格を尊重し、その成育をよくしてやるというような考え方に対する思想がいまだ十分でないと思うのございまして、そういう子供をりつぱな次の国民として、あるいは人格として尊重し、これを伸ばして行くという考え方がまだ足りない点が一つの根本の点だと思うのであります。しかしてこれを伸ばして行く、そしてこれを改めさして行くということにつきましては、努力はいたしておりまするけれども、これらの制度が戦後の制度であり、二、三年を経過いたしておりまするけれども、いまだ十分なる連絡と申しますか、活動と申しますか、そういう点において足りないじやないかという気が私はいたしております。各職員の人々あるいは兒童委員の人々がいずれもよく努力しておられるのですけれども、その努力が全体として百パーセントの効果を発揮するまでに至つていないということであると思います。でありますから、国民の人権尊重思想の高揚と同時に、職員がこの組織をうまく生かして参りまして、困難なる問題でありますけれども、これをよくひもときまして、ぴつたりとやつて行くようにいたしたいと思つているのであります。厚生省といたしましては、しばしば地方へ出かけて督励もいたしておりまするし、また地方の担当職員の方々のお集まりをも得まして、よくこの点の指示をし、また指導いたしておりますが、御承知のように、社会福祉法にいたしましても、あるいは兒童憲章にいたしましても、理想は非常にいいのでありますけれども、その理想を咀嚼する域にまで行つていないという点に、委員長が仰せになりましたような点があるのではないかというふうに思つておるのであります。今後におきましては、その職員につきまして、よく専門的な技能を備え、そして子供を人間としてりつぱに育てて行くことについての理解と熱意とを持つている方々をもつて固めて、能率的な活動をいたして行きたいと思つております。
  99. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証言で、よく熱意のほどもわかりますが、要するに人権尊重に関する啓蒙運動がまだ足らないように思われます。その点はどうですか。
  100. 宮崎太一

    ○宮崎証人 啓蒙運動につきましては、私の方ばかりではございませんので、御承知のように、青少年問題の協議会等におきましても、また各官衙あるいは各地方庁の下部機関、あるいは国家の出先機関等におきまして、やつてくださつておるのでありますけれども、まだ国民に強くそれが映じておらないということは、私は事実だと思うのであります。努力はしても、その努力が十分浸透していないという点につきまして、私どもきわめて遺憾に存じております。
  101. 内藤隆

    内藤委員長 里親または職親という制度がありますね。この里親あるいは職親というものはどうです。うまく運用されておるとお思いになりますか。
  102. 宮崎太一

    ○宮崎証人 里親の点でございますが、これは古くからありました制度でありまして、御承知のようにこれは封建時代からあつた制度であるわけでありますが、兒童問題といたしまして、一つは農業の関係里親に預ける、作男というような関係がございますし、またよい家庭において子供を健康に育てたいという意味において、里親に出したというようなことがあつて、一面からいえば非常にいい制度であるわけであります。そこで政府といたしましては、兒童福祉法にこれを取入れまして、里親制度を設け、その里親につきましては、厳重な知事の審査をし、また審議会等にはかりまして、これはりつぱな里親であるということで、これを登録し、また里親に預けます子供につきましても、よく事情を調べてやつておるのであります。昔のよい制度を考えて、新しくこれを採用してやつておりますが、何分新しい仕組みでもございますので、この点につきまして、思つたよりも里親の数も少いし、また委託しておる兒童の数もまだ十分ではないのでありますが、これは今後において十分私どもは伸ばして行きたい制度であると思うのであります。もちろん制度の反面においては、目の届かない点もあるかと思いますけれども、私どもとしては今後これを伸ばして行きたい、こういうつもりでおります。
  103. 内藤隆

    内藤委員長 職親というのはどういうのです。
  104. 宮崎太一

    ○宮崎証人 職親と申しますのは、子供を委託しまして、ただ養育するだけでなしに職業を仕込む、こういう意味のものでございます。
  105. 内藤隆

    内藤委員長 何か年齢的制限でもあるのですか。里親制度と職親制度に関して……。
  106. 宮崎太一

    ○宮崎証人 その点は私存じておりません
  107. 内藤隆

    内藤委員長 大体里親というのは十五歳未満、それから職親というのは十六歳以上ですか、そういつた者職業を與える、教えてやるという、いわゆる保護委託の制度じやないかと思われます。そこでただいま、里親制度は昔からあつたことで、いいことだと思われるので、これを将来ともに助長して行きたい、かように今証言がありましたが、私どもは昨日まで、神奈川県の高座地区里親の問題の実際を聞きました。どうです、あなたはそういう証言をされるが、実際に里親というものはいいということを、事実についてごらんになつたことがありますか。
  108. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は直接見ておりませんが、私のところの兒童局の局長あるいは課長、職員等から聞いて、私は現実としては非常にいい運用をしている。ことに神奈川県の方につきましては、先ほど神奈川県の担当の人からも聞いたのでありますけれども、里親については間違いがないということを、私も聞いておるのでございます。
  109. 内藤隆

    内藤委員長 大体今取上げている事実の問題から考えてみますと、神奈川県の高座地区里親は、約六十名ほどのいわゆる里子と申しますか、預かつておるというが、その中で就学させている者がたつた一人だということです。そうすると、そういう就学の方面からみますと、そういい制度であるということも考えられないが、その点いかがですか。
  110. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私が聞きましたところによると、神奈川県へ参りました者は、大体農業関係労務に従事することになつておりまして、学校を卒業して来ておつて、まだ義務教育を終つておらぬ者は少数であつたということでありまして、学校関係については心配ないように私は聞いておるのでございます。
  111. 内藤隆

    内藤委員長 その点当委員会における証言と、あなたの報告を聞かれたことと、相当食い違つております。どうです、一体里親制度というものは、むしろ人身売買の事後処置として、この制度を悪用しておるというような証言もあるのですが、そういう点お気づきありませんか。
  112. 宮崎太一

    ○宮崎証人 大体人身売買の点で心配なのは、婦女子をいかがわしい職業に従事させる問題であろうかと思うのでありますが、里親制度につきましては、それとの関係はございませんので、里親となりまする者は、きわめて厳重にこれを調査し、そして所要の審議機関の手を通じまして、これを登録いたしておるのでありまして、また里親に委託いたしましてからは、兒童福祉司なり、あるいは兒童委員なりがよくこれに連絡をし、また兒童相談所長等もよく連絡をし、かつまた社会福祉主事等もこれに関係をしておるというような次第でございますので、登録された里親に委託いたした場合におきましては、委員長の仰せになつたようなことは、私はないと信じておるのであります。
  113. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま宮崎証人は、人身売買というのは婦女子関係だと、こうおつしやるが、そうじやない場合もある。労働力、たとえば農家に子もりとかあるいは作男というような形式で売られて行く事実がある。そこで農業労働を実際において里親がさせながら、そしてまた里親として、国から多少の金ももらつておるのだと思うが、その点どうです。
  114. 宮崎太一

    ○宮崎証人 もちろん人身売買一つのケースといたしまして、農業労働の補完のために、年少者を農家にもらい受けまして、そして労働に従事させている点はございます。ただ私の言う里親というのは、人を使役しておるというのではないのでございまして、私どもの申します里親というのは、事実上公に登録されて、公の機関がこれを確実なものとして取扱つて、そしてそれが親子のような形態をとつておるのが里親ということでございます。公の手を通じない、私でやつておりますものについては、私どもは里親と称しておらないのであります。
  115. 内藤隆

    内藤委員長 なるほど、あなたのおつしやるのは、審議会その他にかけて、これなら適当だと思う、いわゆる登録済みの里親のことをおつしやる。しかし事実はその里親に名をかりた制度が、神奈川県の高座地区にはたくさんあるように証言されている。いずれその点は各委員の方からも御質問があるでしようからこの程度にしておきましよう。  それから労働省系統の職業安定所あるいは労働基準監督署、あるいは厚生省系統の児童相談所、社会福祉事務所等、こういう下部組織はどうですか、円滑に事務が行つておりますか。
  116. 宮崎太一

    ○宮崎証人 これは私は、役所がわかれておりますために、わかれておることに伴う一つの不円滑さはあると思いますけれども、労働省関係婦人少年局の下部機構、私の方の児童局の下部機構及び職業安定関係の下部機構等につきましては、十分連絡を地方にもいたしております。また中央でもいたしておりまして、ことに都道府県の青少年問題協議会等を活用いたしまして、よく連絡をはかるようにいたしております。またお互いに通報し合い、お互いに協力し合うようにいたしておるのであります。ただ役所が違つている関係上間々連絡を欠くことがあるかもしれませんけれども、組織としては私どもは十分連絡をするようにいたしております。ことに厚生省と申しましても、労働省と申しましても、これは昔は一本の役所でございまして、お互いの仕事の内容もよくわかつておりまするし、また職員におきましてもあるいは両方の関係をやつた人などもおりまして、その辺の関係は私は非常にうまく行き得る形になつておると思うのであります。しかしながら委員長が御指摘になりますようなことがかりにあつたといたしますれば、役所が違うために起る問題でありまして、私はこれらは今後緊密に連絡をとり得るものだと存じております。
  117. 内藤隆

    内藤委員長 こういう問題になりますると、中央や地方に青少年問題協議会というものを置かねばならぬことになつておりまするが、この取扱い機構があまりに複雑であるというようなことも聞きますが、どうですか、これを簡素化するの必要はないでしようか。
  118. 宮崎太一

    ○宮崎証人 児童問題は実はこれは最初に申し上げましたように、非常に多岐にわたる役所も関係し、また多岐にわたる法規を持つておりまして、しかも根本は封建思想を拂拭いたしまして、人権を尊重するという国民の精神をまず直さなければならぬ問題でございますので、これらの関係は御承知のように、私の方の関係もございまするし、また労働省職業あつせん関係もございまするし、また法務府関係のものもございまするし、警察関係もございまするし、あるいは教育関係のものもございまするので、その仕事そのものが複雑であるわけであります。そこでこれらの複雑なるものをどうして渾然一体となさしめて運用するかということであるのであります。そこでこれは青少年問題協議会という一つ機関を通じまして、各省各局にわかれております問題を中央で討議して、そこへ関係の深い役所の者あるいはこれに非常に熱心なる民間の人とかが入りまして、そうして連絡協調を保つて重点的に一つのケースをほぐして行こう、こういう問題でございますので、複雑ではございますけれども、これは事の性質上やむを得ざるものでありますので、これをこの協議会等の会議機関によりましてまとめて行く、こういう考え方であります。
  119. 内藤隆

    内藤委員長 証人は、東京都内、あるいは全国的でもありますが、とにかく東京都内に赤線地帶というものがあるということをお聞きですか。
  120. 宮崎太一

    ○宮崎証人 赤線地帯と申しますものは、私はあることは存じておりましたが、赤線地帶という名前を聞いたのは最近でございまして、そうでなしに、そういう集団的なものがあるということはよく存じております。
  121. 内藤隆

    内藤委員長 このいわゆる赤線地帶というものは、人身売買の温床になつておるといわれておる。われわれは公衆衛生上からも、あるいは社会道義の上からも、まことにどうもおかしな存在のように考えられるのであるが、この取締り上から考えましてこの存置をあなたはどう思われますか。
  122. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私の方の関係は、先ほど申しましたように、第一は児童の福祉の問題であります。もう一つは性病予防の問題でございます。そこで性病予防の問題から申し上げますと、売笑婦というものをなくすることができますならば、これはもう非常にいい方法でありまして、これがなくなります社会ができますればきわめてけつこうでございますが、この売笑婦による性病の伝播ということが非常に困るわけなのでございます。そこでこれらの売笑婦というものをよく注意をいたしまして、そうして健康診断を受けさせたり、あるいは治療をなさしめて、常に安全な売笑婦にしておくということができますれば、これはきわめてけつこうなのでございます。そこで戰争前におきましては公娼等がございましたけれども、今日は公娼はないわけでございます。それで従来私どもの花柳病予防という点から見ますと、一番楽なやり方といたしましては、ある場所に集まつておりまして、それに目が届いて、病毒伝播の危険をなくし得るということが一番いいと思います。しかしながらそれは單に花柳病の予防という見地から見まればそうでありますけれども、そういう地帶がありまして、それが風紀上、あるいは今日のような権尊重の上におきまして非常に困るしいう点がございますので、私はこういう赤線区域というものがなくなる、なくするということがいいとは思います。しかし一面また花柳病の予病というような点から見ますと、これらの人たちが町に散りまして、あちらこちらでかえつてまた風紀上の問題を起したり、あるいは病毒伝播のおそれがあつたりすることを非常に心配するわけでありまして、両方の見地からこれを見ますれば、今日としてはしかたがない。しかしこれをなくし得るように、国民の道徳も向上し、またその婦人の人たちがみずからを守るだけでなしに、他人に病毒をうつさないという道徳心まで上りますならば、この区域というものがなくなつて、そうして自然にこの売笑というものが減つて行くということにもなりますれば、非常にけつこうであるという考えでございまして、赤線区域と申しまするものはないに越したことはないけれども、今日としてはやむを得ない。こういうふうに私は思つております。
  123. 内藤隆

    内藤委員長 そこでただいまの証言中にもありましたが、性病予防の関係からいうと、そういう集団さしておくことが、非常に取扱い上、あるいは対策を立てる上からも便宜であると思うが、これは人身売買には関係がないようにも見られますけれども、ひとつあなたの御意見を伺つておきたいのは、新潟地検における新宿の小島某を被告とした事件がありまして、その事件証人として東京都の衛生局予防課長與謝野という人が法廷に立たれまして、その証言にこう言つておる。赤線地帯の検診は一週一回やれば性病の安全圏にあると判断するという証言をしておるわけです。ところがこれに対しまして、医学博士で皮膚病の大家であるそうですが、市川篤二という、これは東大医学部の教授ですが、この証言によると、一週一回という程度の処置では性病の蔓延を防止することはできないという証言をしておる。これは対立しておる。そこでこれは医学上の見地でしようし、また実際臨床上の経験から来ておるかもしれませんが、しかしどうです、あなたは厚生省の次官としてこの両説のいずれをおとりになりますか。
  124. 宮崎太一

    ○宮崎証人 この問題は與謝野君も医学博士でありまするし、それからその大学の先生も医学博士のようでありまして、学問上の争いになるのかと思いますが、私はそういう点については専門家ではございません。けれども行政的な見地から見まするならば、一週間に一回の検診をもつて安全なりとは言えないと思います。と申しますのは、参りまする女子が検診を受ける前に自分でいろいろな操作をいたして参りますので、そのときの検診において無事であつたからといつて、一週間持つということは、私は言えないと思います。要するにそういう女子が、ほんとうに性病というものを人にうつすことは悪いことである、それはいけないのだという考えを、自分で持つてもらわなければ、この問題は、一週間の検診で安全なりとは言えないと思います。
  125. 内藤隆

    内藤委員長 それからもう一つ、この赤線地帯というものは、これは公認されたものでないことはもちろんですが、あなたは厚生省の立場から、これに対して何らか処置をとるというお考えでもありますか。
  126. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私ども赤線地帯そのものを公認しておるのでございませんが、ただそこにおります婦女子現実に存在しているのであります。そしてまた性病の伝染の根源をなしておるのでございますので、それらの婦女子がみずからをもつてみずからを守るというようにいたしたいという意味で、その婦女子の人たちに進んでこの検診を受けさせる、そうして性病の上からは清浄にするようにしつけて行く、こういう意味で、この地帶の人たちには、この性病予防を大いに勧めておる次第でございまして、赤線地帯そのものにつきましては、これは警察の問題でもございますが、私の方は先ほど申しましたようにやむを得ないと思つておりまして、これをつぶすという考えはまだ持つておりません
  127. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はありませんか。大泉君。
  128. 大泉寛三

    ○大泉委員 二、三お伺いしたいと思います。少年少女が親の手元から離れて奉公する際にはいろいろありましようが、少年少女がみずからの判断で行く場合は私は少いと思うのであります。たいてい親の都合で他に出られると思いますが、そういう場合には、親の生活経済から、女の子を何とか手伝わせるというような場合もありましようし、また少年の将来——職業でも、あるいは技能でも授けて、これを育ててもらうというような、少年のほんとうの将来を考えて出す親もありましようし、またその子供を食わせることもできない、あるいはどうも学校にやることもできないというような状態、ほんとうの生活困窮から他の養育にゆだねるというような場合もありましよう。そこで厚生省としては、こういういわゆる子供を育てることのできないというような貧困な一家を、どういうふうに見ていられるか、救済するような対象として考えておられるか、あるいはどうもこれは東北地方の、特に雪害地方においてはあまり数があるからどうにもしようがないというような考えを持つておられるか、厚生省としてその打たれる一つの手をどういうふうに考えていられるか、まず第一に承る次第であります。
  129. 宮崎太一

    ○宮崎証人 ただいまの問題でございますが、厚生省といたしましては、各家庭につきまして、よくこれをつかむようにいたしておりますが、それは大体御承知のように、生活保護法の関係がございまして、民生委員の人たちがその地元におられてよく家庭の状況を見ておられるわけでございます。また同時にその民生委員兒童委員をかねておられまして、その家庭の状況を見ておられるわけでございます。そういう人たちがよく見ておつて、これはほんとうに貧困だという人に対しましては、生活保護法の適用をいたしておるわけでございます。ところが問題になりますのは、その生活保護法の適用よりはちよつと上であつて、そうしてたとえば姉がどこかのカフェーとか待合とかそういうところに行つている。そこへ妹も出そうというような考え、あるいはその家庭で、よく子供をほかに出して親が暮しておるというような家庭において、そういう事件が起るようでございますので、ほんとうに貧困な方につきましては、よく目をさらしておるわけでありますが、それよりちよつと上であつて、何と申しますか、そういう慣行のあるというような家庭につきまして、非常に今事件が起りやすいわけであります。そういう家庭につきましては、特にマークいたしまして、それに注意をして、そういうことの起らないように事前に考えるようにということをいたしておるのであります。そうしてその家庭がほんとうに生活保護法を適用すべき家庭であるといたしますると、社会福祉関係連絡をいたしまして、これに生活保護法を適用するようにいたしておるわけでございます。そういう仕組みで、貧困によつて子供をいわゆる売買するというようなことのないように、注意をいたしておるわけでございますが、東北地方においてそういう点が見られるのでございます。これはもう数年来からのことでございますので、東北地方の民生部の方々によくこの点を注意いたしまして、いたしておるわけでございますが、やはりそういう人権尊重の考え方が薄いという点もありましようし、あるいは土地の気候関係その他で農業の收入が少いとか、そういうようないろいろな問題でこういうことが起つておるのだと思うのでありますが、この辺をよく啓蒙いたしまして、この生活保護法というものは国民の権利である。これをもらつておるからといつてはずかしいというようなことでなしに、これをもらつておることは国民の権利であるから、ほんとうに貧困であるならばもらう、子供を売るようなことをしないで、生活保護法を活用する、そういうところへ心を向けて行くように指導しなければならぬと思つております。
  130. 大泉寛三

    ○大泉委員 昨日神奈川県の方の証言によりますと、がんぜない少年がみな農家の方に働いておられる。農家に労力をもつて奉公するといつても、このがんぜない子供が何が農業の手助けになるか。自分の食うだけで手一ぱいだのに、そのほか学校にやらなければならないとするならば、とてもこれは農家には計算上引合わないということになるのに、それをとにかく雇い入れて養つて行くということは、将来農業をもつて一家をなされるならけつこうですが、今日の農業は、もうどこでも農地が足りなくて困つているのに、その農家に奉公にやるということは、これはほんとうに人身の売買ではないだろうけれども、とにかく子供をくれてやつてしまつて、そして将来のない農業に従事さすということは、金銭の授受はなくても、これは結果においてはやはり人身の売買に落ちて行くのではないかと思いますので、これに対して、将来のないこういう農業の徒弟としてというか、がんぜない子供が労力に携わるということは、厚生省としては、こういうことは正しい一つ労務需給関係と思われるかどうか、これに対する御判断を伺いたい。
  131. 内藤隆

    内藤委員長 宮崎証人並びに委員各位に申しますが、あとにもう一人証人が残つておりますので、時間の関係もありますから、なるべく簡潔に願います。
  132. 宮崎太一

    ○宮崎証人 東北地方の農村子供が農業に出かけるということについて厚生省はどう思うか、こういうお尋ねでありますが、私どもといたしましては、やはり将来見込のない職業に親がつかせるということは間違いだと思うのであります。しかしながら。現実の姿といたしまして観たちは将来その子を何にさせるかということについて深く考えていないのではないかと思います。職業の選択等について考えていない。そこでだれかが甘言をもつて勧めると、それにつられて出す、こういうことであろうと思うのでありますが、この子の職業は何であるか、そしてこの子がそこへ行くことによつて将来どうなるかというような点につきましての相談にあずかるのが私どもの機関であろうと思うのであります。     〔委員長退席、福田(喜)委員長代理着席〕 そういう点につきまして、やはり十分目の届いた措置がいまだなされておらない点があるのではないかと思いますが、私どもといたしましては、そういう家庭の子供につきましては、十分手を届かせて、そうして将来農業をやらない者が農業に従事するようなところへもらわれて行くというようなことはなるべく少くしたいと思つてあります。
  133. 志田義信

    ○志田委員 簡單にお尋ね申し上げます。先ほど、里親制度というものが悪用されていないかということについて、いろいろお話があつたようでありまするけれども、第一番にお尋ね申し上げたいことは、兒童福祉法の三十條によりますと、これらの子供というものは、親権者の手から離れた場合には届出をしなければならぬということになつておりますが、これは励行されておるのでありましようか。あるいは励行せられてない場合には、これが観察の立場にある厚生省兒童局としては、どういう観察をしておられるか、お尋ねします。
  134. 宮崎太一

    ○宮崎証人 この規定は、三年ほど前に栃木県の事件が起りまして、これではいけないといので、届出の規定を置いたのであります。励行という点に至りますと、私はまだ十分でないと思つております。届出も相当ございますけれども、これは励行されておらない。しかも届出のあるのは、心配のないものが届出がありまして、心配のある方は届出がないのであります。そういう点がございますので、この点につきましては、やはり役人といたしまして十分——たとえて申しますと、学校へ行つている子供でありますならば、学校を休んでいるときに、この子はなぜ休んでいるのか、これはその保護者とどういう関係にあるかというようなことにつきまして、そういう届出があるか、ないかというような点をよく調べる、あるいは労働の状態等を見まして、この子はどうも苛酷なる労働をいたしておるが、これは一体ほんとうの親子の関係にあるのかどうかというような点をよく調べて、そうしてこれの励行を促さなければならぬと思つております。そういう点におきましては、まだ励行されておらない、届出のある方は心配のない方が多い、こういうことでありますので、この点は罰則があるようでありますので、私は励行方をはからなければならぬと思つております。
  135. 志田義信

    ○志田委員 里親制度、つまり保護委託制度というものが法律規定せられましてから今日まで、一体どのくらいの里子というものがございますか。そのうちどのくらいが届出されておりますか。届出されてないものがあるとすれば、どのくらいの数と推定しておりますか。
  136. 宮崎太一

    ○宮崎証人 里親でございますが、昭和二十五年の十月末現在で見まして、里親の申込みが一万三百八十九人ございまして、里親の登録が七千四百二十九人、現在兒童を委託しております里親は四千八百五十九人、そうして委託をいたしております兒童は五千四百八十八人でございます。このうちで届出が何人あつたかということにつきましては、私、今承知いたしておりません
  137. 志田義信

    ○志田委員 この里親という制度が悪用されているかどうかということを端的に調べる方法は、こういう里親里子との届出がどの程度まで行われているか、届け出ないものがどの程度あるかということを調べることが一番必要だと思いますが、保護観察の立場において、あなたの省といたしましては、そういうことをなさつたようなことはございませんでしようか。
  138. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は先ほど委員長に申しましたが、里親と申しますのは、私どもの公認しているものなんですが、今仰せになりましたのは、もぐり里親だろうと思います。その方はやはりよく観察をして、不正なるものは摘発しなければならぬのでありますが、これは各地方々々で、私どもの方針によりまして、よく調べておるはずでございますが、どのくらい、どうなつておりますか、私もまだはつきり知つておりません
  139. 志田義信

    ○志田委員 一体こういうことというものは、もぐりであると、いなとにかかわらず、実際上里親制度というものがあつて、それに対して国の扶助料というものが出ておるのでありますから、精神的にも、また経済的にも、里親としては、隠しておくよりも、届け出た方がよかろうと思うのですが、それを特に隠して、やみの里親になつているのは、そこに何か事情がなければならぬ。そういう事情について、厚生省兒童局としては、保護観察する建前から究明したことがあるか。あつたら、その実例をお示し願いたい。
  140. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私はまだその辺聞いておりません。ただ里親の問題でなしに、届出の問題につきましては、今回施行になります住民登録法等の場合におきまして、戸籍の関係とよく連絡をとりまして、この点を明らかにして、届出あるいはそういう里親類似の問題につきまして予防をはかりたいと思つておりますが、私の方でそれを一斉に調べたかどうかというような点につきまして私は聞いておりません
  141. 志田義信

    ○志田委員 証人は、瀬戸内海方面で習慣的に行われておるかじ子という制度の存在を御承知でございましようか。
  142. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は存じておりません
  143. 志田義信

    ○志田委員 私はあとから来てよくわかりませんが、証人厚生省における担当所管事務は何でございますか。
  144. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私の担当は厚生省の全般でございます。
  145. 志田義信

    ○志田委員 事務次官でございますね。
  146. 宮崎太一

    ○宮崎証人 さようでございます。
  147. 志田義信

    ○志田委員 厚生省の主要の仕事の中には、兒童福祉の問題が大きい問題だろうと思います。制度としても局があるくらいであります。そういう局、課を持つておられる厚生省の次官としてあなたが、瀬戸内海でかじ子という制度があつて、それが非常に悲惨な状態であるということをかつて聞いたこともないということは——それは今ちよつと忘れたという意味ですか、それとも全然今まで聞いたとこがありませんか、お尋ねいたいたします。
  148. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は、かじ子については聞いたことがございません
  149. 志田義信

    ○志田委員 一九五一年の十月十日号のアサヒグラフによりますと、梶子物語として悲惨な状態が、グラビアになつて紙面を費しております。これは山口県大島郡油田村の瀬戸内海に浮ぶ一つの島で、戸数九十五、住民五百四十人、昔ながらの漁師仲間でありまするが、これを一般の人が呼んで奴隷島と言つておる。人買いから子供を買つて来て、沖の一本づりにろとかじを扱うかじ子の役をさせて、島民の生活を維持して来たというのがこれなのでありまするが、昭和二十二年八月に酷使に耐えかねた三名のかじ子が島を脱走しまして、この問題から実情が明るみに出て問題化しまして、はしなくも兒童相談所の手を通じていろいろと合法的な里子制度に転換されておるという実情があるのであります。これを厚生事務次官としては御承知ないのでございましようか。
  150. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は存じておりません
  151. 志田義信

    ○志田委員 知らなくてもよろしいのでございますか。
  152. 宮崎太一

    ○宮崎証人 よく私はわかりませんので、あとで調べてみたいと思います。
  153. 志田義信

    ○志田委員 今私が申し上げたことに対して、知らないでもあなたの職責は勤まるというふうにお考えですか。それともうつかりしてそういうことを今まで知らなかつたということですか、重ねてお尋ねいたします。
  154. 宮崎太一

    ○宮崎証人 今仰せになりましたようなことがあるといたしますならば、よく調べまして何らかの方法を考えなければならぬと思つておりますが、知らなかつたことは私の不敏でありまして、知らないのがいいのじやございません。私の不敏であるということを申し上げます。
  155. 志田義信

    ○志田委員 それぞれ各地には、相当兒童福祉相談所というものがあると思う。ところが、このかじ子を里子に転換利用して、そうしてかじ子で持つているよりは、国の扶助をもらつた方がいいというので、扶助料を当てにするような里子制度ができておる。しかもこれは非常に悲惨な状態にある。この扶助料をもらえない立場にあるいわゆるかじ子というものは、それ以下の悲惨な状態に置かれておる。しかもかじ子を置くよりは里子をもらつた方が、お上の費用をいただいて、しかも労働力に転用できるという意味から、従来のかじ子はさらに悲惨なミゼラブルな状態を続けておる。こういうことを少くとも厚生省の各機関を持つておられるあなたが、各機関を通じて報告ないしは上申を今まで受けなかつたということは、私はふしぎな気がするのでありますか。
  156. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は受けておりませんが、私の方の機関の者が受けておるかもしれません。すべて私が知つていなければならぬはずでありますけれども、次官はいろいろなことがございますので、大体は局長の方で心得ておると思つておりますが、帰つてよく調べてみたいと思います。
  157. 志田義信

    ○志田委員 あなたは日本にアサヒグラフというものがあるのは御存じでございましようね。
  158. 宮崎太一

    ○宮崎証人 よく知つております。
  159. 志田義信

    ○志田委員 そのアサヒグラフに載るような事実というものは、虚偽の事実よりは実際に近いものが報道されておるとお考えになりますか。
  160. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私はそのアサヒグラフを見ておりませんので、何とも申し上げられませんが、アサヒグラフでございますから、大した間違いはないだろうと思います。しかし役所でございますので、よく慕情を聞いてみなければならないと思つております。
  161. 志田義信

    ○志田委員 私は何もあなたのやる行政事務を、アサヒグラフだけでもつてやれという意味ではないのでありまして、少くともこういうようなことが社会に報道される以上は、よつて来るところがある。そのよつて来るところが——あなたの方の行政機関であるところの兒童福祉相談所その他の機関があるにかかわらず、国の費用をもつて予算をとつてその機関が設立されておるにかかわらず、そういうところから報告もしくは上申、あるいは指示を受けたことがないといたしますれば、せつかく今婦人少年問題について、厚生省としては、婦人少年局兒童局と各省にわかれておるけれども、一生懸命やつておるのだということが、口頭禪であるとのそしりを免れないと思います。それに対していかがお考えになりますか。
  162. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は、先ほど申しましたように、みな熱心にやつておると信じております。ただこの問題につきまして、私の耳に入つていないことについては私の不敏でありますが、私の関係の職員におきましては、非常に熱心に仕事をしておることは私もよく存じておるのでございます。
  163. 志田義信

    ○志田委員 時間がありませんからあまり詳しく申し上げられないのは残念ですが、あなたは兒童福祉失策三十條の法文の存在しておることは御承知ですか。
  164. 宮崎太一

    ○宮崎証人 承知しております。
  165. 志田義信

    ○志田委員 それによつてこれらの兒童が親権者を雑れた場合におきましては、届出の義務があるということも知つておられるようでありますが、そういう届出のあるかどうかを調査するのには、どうい機関調査をなさいますか。
  166. 宮崎太一

    ○宮崎証人 これは先ほども申し上げましたが、現実問題といたしましては、届出のあつたものにつきましてはこれは明瞭ですが、届出のないものにつきましては、出かけてよく調べなければならぬわけであります。それには私どもの機関といたしまして、兒童委員なり兒童福祉司なり、あるいは社会事業主事等がございまして、よく各方面連絡をしてこれを見ることになつておるわけでありますが、     〔福田(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 それらの問題を調べるのには、あるいは学校の就学兒童でありますと就学の状況、あるいは労働に従事しておる者は労働従事状態等によりまして、その形態から見て行つて、これが四親等内の親族であるかどうかということを見て、そうして届出がなくてそういうことがありますならば、これの届出を命ずる、こういうことになると思います。
  167. 志田義信

    ○志田委員 この島の島民の一箇月の収入は、当委員会の調べによりますと、平均一万六千円くらいであります。かじ子に対して拂つている金は、月三百円平均だと思います。三百円の金を——これはほんの小づかい程度のものであろうと思いますが、かじ子に拂つておるのであります。それに対してこれを里親としての立場でやりますると、先ほど申し上げましたように、大体一人について一千五百円程度政府から助成金が来る。その助成金は国の予算をもつてやるものですが、その金を與える場合に、皆さんの方では実態調査しないで金を渡しておつたのでしようか。そういう報告があなたの方には来ないのでしようか。
  168. 宮崎太一

    ○宮崎証人 里親にいたしますためには、知事が非常によく調査をしまして、そして審議会等にかけて、この人が里親として適当であるかどうかということを見まして、同時にその子供がそこに適当であるかどうかということを見てやるわけでありますので、今仰せになりましようなことにつきまして、これを里親にするこということは私は適当ではないと存じております。
  169. 志田義信

    ○志田委員 いやそうじやなく、あなたの方でそういう里親に対して予算をさいて、里子一人について千円なり千五百円の金をやるわけですね。そういうときに知事が厳選して申請して来たという子供たちに対しては、厚生省兒童局では何らそれを調べないで知事の稟議に従つてそのまま金を出すのですか。
  170. 宮崎太一

    ○宮崎証人 そういう問題につきましては、私どもとしては知事を信用して金を出したわけであります。
  171. 志田義信

    ○志田委員 信用してあなたの方で一応予算の配分をすることはけつこうでありますが、それがどういうふうに使われて、どういうふうに配分されているかという報告はとつておりますか、とつてないのですか。
  172. 宮崎太一

    ○宮崎証人 それは予算をやります際におきましては、基準をきめ、その基準に該当したものに予算を出すことになつております。しかしてその基準に違反するようなことがわかりますと、予算を返させることになつておりますので、その後の問題につきましては、私ども監査に出かけまして実情をよく調べることになつております。しかしながら全国一ぺんにやるわけではございませんので、順繰りに名府県の仕事の監査をいたしまして、間違いなきを期しておるわけでございます。
  173. 志田義信

    ○志田委員 その予算基準に違反したという場合には、どうして違反しているかということを調べなければならぬのですが、皆さんが全国へ監査に出かける、全国一緒にはたいへんだから監査は不十分である、それでそういう問題が起きる、こういうわけですか。
  174. 宮崎太一

    ○宮崎証人 そういうことでございます。監査は私どもだけではございません。会計検査院もやつておりますし、関係のところでやつておりますが、予算の條件に違反するような問題は監査の結果わかるわけでございます。
  175. 志田義信

    ○志田委員 会計検査院のことを私は今申し上げておるのではない。知事が厳選して申請して来たものに対して、あなたの方で予算をさいて、それらの子供の扶養料として国が里親に対して與えている。それがどういうふうに適正に使われておるか、あるいはそれが予算基準の違反になつていないかどうかということは、あなたの方の部内監査でわかる。その部内監査をやつておりますか。
  176. 宮崎太一

    ○宮崎証人 やつております。
  177. 志田義信

    ○志田委員 どういうふうにやつておりますか、御説明願いたい。
  178. 宮崎太一

    ○宮崎証人 これは私の方といたしましては、児童局におきまして毎年場所をきめまして、ことしはここをこういうふうに見るということで監査をいたしております。
  179. 志田義信

    ○志田委員 そういう監査の結果、予算基準に違反して、兒童福祉保護の目的が達せられないというような違反事件が今までございましたかどうか、あつたらその内容をお知らせ願いたい。
  180. 宮崎太一

    ○宮崎証人 監査の結果復命書等も出ております。確かにあつたと思いますけれども、私はどういうぐあいであつたか、記憶いたしておりません
  181. 志田義信

    ○志田委員 確かにあつたと思いますが記憶がないというのは、一箇所もないのですか。全国数十箇所にわたつて監査をなされておると思うが、そういう監査の結果、一箇所も厚生次官としては記憶がないのですか、何か一つくらい記憶ございませんか。
  182. 宮崎太一

    ○宮崎証人 記憶がございません
  183. 志田義信

    ○志田委員 それで監査は十分だと言えるでしようか。
  184. 宮崎太一

    ○宮崎証人 その十分と言えるかどうかという点でありますが、私は復命書等を見まして監査をよくやつて来た、こう思つておりますけれども、どこにどうあつたかということについては私は記憶しておりません。何せたくさんの職員の監査でございましていろいろございますので、私自身が今記憶しておらないというだけのことでございます。
  185. 志田義信

    ○志田委員 どうも次官の答弁には私はなかなか満足できない。あなたが立場をかえて議員の立場になつたときに、あなたはそれで満足するかどうか、その点私は非常に疑う。何か全国で大きな事件が起きておればあなたは記憶しておらなければならない。少くとも里親制度というものは、あなたが申しておるように、二十五年以来新しい制度として、あなたの方は予算相当政府に要求して、国会の審議を受けてとつておる。この里親制度をよく利用することによつて人身売買その他を防ぐ上においても非常に効果があるということは、あなたたちの主張せられておるところである。そういう新しい制度に対して部内監査をやつて、その部内監査の結果に何も記憶がないということは、私は不可解に思う。あなたは徳山市における保護授託制度について、兒童相談所の問題で何か報告を受けた事実はございませんでしようか。
  186. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は記憶しておりません
  187. 志田義信

    ○志田委員 昔よく軍国時代には、記憶していないと言えば、そうかといつてつたのであります。そういう気持でここで記憶がないとか、何とか言われたのでは困る。もしあなたが今まで知らずにいたとすれば、あなたの怠慢ではないかと思うがどうですか。
  188. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私はその点記憶しておりませんので、証人として知らないことを知らないと申し上げるよりしかたがないと思います。
  189. 志田義信

    ○志田委員 私は知らないということを聞くのではない。あなたは職務上の怠憶のそしりを免れないと思わないか、それを聞いておるのです。
  190. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私としては十分やつているつもりでありますが、この件につきまして、知らないことを怠慢だと仰せになるとすれば、あるいは怠慢かとも存じます。
  191. 志田義信

    ○志田委員 どうでしよう、この機会に、私はあなたの言うことを善意に解釈しまして、何も知らなかつたとして、こういう問題があるということがこれで明かになつた場合におきましては、十分実態調査もして、都内監査も十分厳重にして、その結果がどうなつておるか、それが従来のかじ制度に対してはどういう影響を與えておるか、こういう点について詳細なお取調べをする必要があると思うが、あるいはそういうことはやらなくてもいいと思うか、その点をお尋ねしておきたい。
  192. 宮崎太一

    ○宮崎証人 非常に御熱心な御質問でもありますし、私も御質問によりまして非常に心配になりますので、よく調査したいと思つております。
  193. 志田義信

    ○志田委員 けつこうです。どうぞよろしく調査をして、その結果を委員会に御報告願いたいと思いますが、いかがでしようか。
  194. 宮崎太一

    ○宮崎証人 承知いたしました。
  195. 内藤隆

    内藤委員長 浦口鉄男君。——ちよつと浦口さんに申し上げますが、もう一人おいでになるので、どうかひとつ簡潔に要領よく願います。
  196. 浦口鉄男

    ○浦口委員 大体結論が出たようでありますが、二、玉簡單にお尋ねしておきます。  先ほど志田委員の御質問によつても明らかになつて来たわけであります。次官は非常にいろいろお仕事をされて  いるので、こまかいところまでわからないということも一応了承できないこともないのでありますが、しかし兒童福祉の全体に対する責任者として、私は一つ例を申し上げて次官の意見を聞いておきたい、こう思う。それは昨日ここへ証人に参りました神奈川県の高座郡の人身売買の問題でありますが、これは数十名の集団人身売買というような事件、これに対して県の職安課長は、昨年の一月にこの事件が表面に出るまでは全然知らなかつた。ところがこの事実は、先ほど他の委員からもお話があつたと思いますが、二十数年にわたつて神奈川県と山形県の間には行われて来た事実なんです。それを昨年の一月まで全然知らなかつたということを職安課長はつきりおつしやつております。また昨日の山県形の民生部長はみずからやはりこれを肯定されておりまして、役人というものは元来事が起つて、起つたあとでなければ解決に乗り出さない、ほんとうは事前にこれを解決すべきなんだが、役人は事が起らなければどうも乗り出さない、これは非常に遺憾だということをみずから率直に申し述べられた。そこで私は、先ほどから次官は法律的に、あるいはいろいろ機関が整然と整備されて、みな非常によく活動されているという確信をお持ちになつているにかかわらず、いろいろ事態が起きて、結局行政監察委員会に取上げられるようなところにまで発展したというところに、私は事実上の問題があると思うのであります。そこでこの問題は、先ほどもお話の中にありましたように、日本国民の兒童を大切にすると申しますか、人権を尊重する、そういう意識が高まつて行く、あるいは経済上の、日本全体としてそういう問題を解決して行くという大きな線で行かなければならぬということは、われわれも承知するわけでありますが、少くともこの神奈川県の問題について委員会の事務当局の調べました報告によりましても、里子なりあるいは作男に出ている子供を調べましたところ、全体の数ははつきりいたしませんが、ほとんど現在の境遇に満足しているということが報告されているのであります。  そこで私がお伺いしたいのは、役所としては法律的にいろいろ疑義がありましても、現実にそこに悲惨な子供の問題が警察に取上げられてそういう事態が起きなければ、おそらくはこれは特別の関心を持たないのではないかということを考えますが、その点いかがですか。
  197. 宮崎太一

    ○宮崎証人 今の仰せになりましたような点は確かにあらうかと思います。事件が起つて、初めて驚いて手をつけるということがあろうかと思います。この点につきましては私ども役人といたしまして各方面に目を配り、各方面連絡をとりまして、予防措置を講ずるということが建前でございます。ところがよくやつている点につきましては、これが現われませんで、すきがございまして、ぬかつてつた点に、ときどき問題が出て来るのでございます。それじやみんなが悪いのかというと、そうでもございませんのでありますが、これはやはり私は人手が足らぬとか、あるいはその仕事についての、何と申しますか、感度が鈍かつたとか、いろいろな点があろうかと思います。そういう点で、ある方面に力が入り過ぎて、ある方面に力が抜けておつたとか、あるいはこの方面では上手にやつてつたけれどもこの面は粗雑に扱つてつたというようなことで、ときどき問題が起つて来るのでございます。そこで神奈川県の例につきまして、私きのうも聞いたのでありますが、この具体的の内容につきましては、私は実際見ておりませんから存じませんけれども、大体農業労働に従事しておつた、そうしてそれが学校を卒業した子供が多い、こういう状態のようでございますので、これはいわゆる人身売買に当るか当らぬかの、すれすれの線のものが多かつたのじやないかと思うのであります。それでその人数につきましても、お調べになる方によりまして、違つて来る、こういう状態ではないかと思うのであります。三十名が四十名というような数字が上つて来たりするのは、そういうことじやないかと思います。それから中には非常にひどいのがございまして、仰せになりましたように相当なる金をもらつている。そうしてブローカーのようなものがおつてつているという点もわかつてつたのでありますが、かくのごときことは役所の組織としてはきわめて下の下であります。こういうことのないように努力することが、この法規を円満に執行するゆえんでございますので、ぬかつてつた点につきましては、よく改めて参りたいと存じております。
  198. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういう事実のこまかい点は、この際時間もありませんし申し上げません。この問題でわれわれは役人だけを責めるという気持はありませんが、そこで考えられますことは、協力機関として青少年問題協議会というのがあるのであります。これは一体どういうメンバーでできておつて、具体的にどういう運動を展開しておりますか、それをちよつと御説明願いたい。
  199. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は的確なものを持つて来ましたけれどもちよつと見当りませんが、中央のメンバーといたしましては、この関係の役所の人たち、それから民間の熱心な方々を入れております。地方におきましても県庁の兒童課の関係中心にいたしまして、あるいは裁判所の関係の方々、あるいは労働省婦人少年局関係の人や、それから教育界の人たち、あるいはPTAの人たち、あるいは民生委員の会長とか、そういう方面関係の深い、役人を主として民間人が入つてつております。
  200. 浦口鉄男

    ○浦口委員 具体的にどういうことをやつておるかということ。われわれとしてはその効果をあまり認めることができないのであります。もちろんこれはそう的確に具体的に効果のあがる仕事ではないのでありますが、どういう活動をしているか、御説明願いたい
  201. 宮崎太一

    ○宮崎証人 この協議会は私も出かけたことはございますが、少くとも月に一回開いておりまして、そうして委員会だけでなしに幹事会がございます。幹事会には局長、課長級の人たちが入つておりまして、これもしばしば開いております。そうして本人が出られぬときには代理者が出まして、それぞれの報告を求めております。大体今の問題になつておりまする人身売買対策とか、あるいは長期欠席している兒童対策、あるいは春秋二回の青少年保護育成運動等の仕事をいたしております。それからあるいは不良な図書等をやめさせたり、あるいはいい図書を奨励したり、そういうようなことも考えてやつているはずであります。
  202. 浦口鉄男

    ○浦口委員 お聞きしているとたいへんうまく行つておるようなのですが、実は三月一日の東京新聞を見ましても、ここに人身売買事件が衆議院行政監察委員会で取上げられている、警視庁少年一課では、福島県郡山市を根城に東京の魔窟、温泉場などに百数十名の人身売買を行つていた一味五名を検挙したという記事が出ている。あるいは先ほどの志田委員お話によりましても瀬戸内海の問題、あるいは徳山市の問題、こういうように、突発的な事件に限らず、継続的にこうした集団的のものが起つている。そういう具体的な問題が協議会などの話題にどうして上らないか。ただポスターを張つたり、講演をするというふうなことにしか出ないのではないか。そういう機構の実際の運営というものに非常な疑問を持つのですが、そういう点どうでしようか。
  203. 宮崎太一

    ○宮崎証人 仰せの通りそういう突発的な問題は、先ほど申しましたように、制度が備わり、また会議等でやつておりますけれども、まだ国民の人格尊重の考え方が足りない関係上、及ばないという点だと私は思います。それで、そういうのがあつちこつちにまた出ておる、それらをなくすることが今後のわれわれの努力ではないか思います。
  204. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そこで兒童委員は民生委員が兼任していると思うのでありますが、民生委員制度について欠陷がないか、御意見を伺つておきたいと思います。ということは、民生委員はかつては、自分の受持ち区域において自発的にいろいろの問題に対して非常に熱心にやつていたわけなんです。ところが一昨々年と思いますが、民生委員法が改正になりまして、実際の仕事は自治体の社会課がやる、民生委員はそれに対して意見を述べる、あるいは申出があつたときに協力するというふうな、非常に弱い機関なつた。民生委員の活動というものが非常に弱まつたということをわれわれは実際に見ている。あの法律案の改正のときにも、民生委員の中央委員会の原委員長が非常に遺憾の意を表したということは御承知と思います。そこでこうした民間の協力機関にもう少し熱意ある動きをさせるような組織が私は非常に必要だと思う。先ほどからお聞きしておりますと、民間の協力々々ということをおつしやいますが、そういう協力機関があつても、結局熱情をはばむような政府のやり方であるように考えるのですが、その点いかがでしようか。
  205. 宮崎太一

    ○宮崎証人 この問題はきわめて重要な問題でございまして、戦後の社会事業と申しますか、あるいは社会福祉事業と申しますか、これが戦前と違いましたのは、戦前は仰せの通り民生委員——方面委員と申しましたが、この人たちの献身的な努力によつてつてつたのでありますが、戦後こうした社会福祉、兒童福祉の問題が国家の義務であり、あいは自治体の義務であるというふうに公の義務になつて来た。しかしてそれは国民の権利であるという新憲法の福祉思想が出て来たわけでございます。そこでそういう問題を扱うといたしまして、民間の民生委員の方々にやつていただくにしては非常に責任が重過ぎるということが出て来たのであります。と申しますのは、国家の責任、地方公共団体の責任においてこの福祉事業をやるということになりますと、片手間の仕事ではいけないということが起つて参りました。同時に兒童問題にいたしましても、やはりあらゆる方面の必理学だとか、経済学だとか、いろいろの問題の相談が出て来るわけでございますので、それらを専門にやる者が必要でないかということにかわつてつたのでございます。そこでもう一つ、権利ということになりますと、これに対する訴願、訴訟の問題が起つて来るわけでございます。そういたしますと、その責任を負うてもらうのは民生委員の方々に相済まぬ、こういう問題が出て参りますので、公務員に切りかえたわけでありますが、しかし民生委員という制度は、これはもう自然に発足したわが国のりつぱな制度でございまして、しかも民生委員の中には土地の名望家であり、きわめて熱心な方々がおられるわけであります。この方々の協力なくして役人がやれるかと申しますと、これは私はやれないと思う。そういう意味でこういう方々に心からこの仕事に協力してもらう、そういう態勢にしなければならぬと思つております。今日民生委員制度は、御承知のように、中途半端なことになつております。これらにつきまして、私どもとしては民生委員制度をいかに持つて行くか、そうして熱心な民生委員の方々の心からなる御協力をいかに求めるかという点については真劍に検討したい、こういうつもりで、民生委員法の改正等の問題も目下研究しておるような次第であります。
  206. 浦口鉄男

    ○浦口委員 その点私もいろいろ意見がありますが、時間がありませんから、御意見で了承はできます。そういう方向へひとつ願いたいと思います。  それから最後にお聞きしておきたいことは、先ほどちよつとお話に出ました東京都の赤線区域の問題、これについては新宿カフエー協同組合理事長の野本さんがここへ見えられて証言されております。これは非常に微妙な問題でありまして、業者としては飲食物を売つたあとは女の人は自由なる意思で客と接する、そこに何の束縛もない、こういうことを言つておりますが、言葉の通りとれるかどうか、これはたれしもわかるのであります。ところが先ほど次官のおつしやつたことは、結論すればこれは一つの必要なる社会悪だ、だから今これを廃止するつもりはない。性病についての御見解がありまして、これはあとで、またこの委員会でも問題になつておりますが、御承知のように職安法の六十三條で、そういう衛生上の問題ばかりでなしに、道徳上の問題においてもこれが罰せられる、こういうことになつておる。そこでこの問題とからみまして——この赤線区域に事実上の人身売買という事件が非常にたくさんあるということをどの委員も認めておられる。そこでこれに対しては勅令第九号あるいは兒童福祉法によるものもありますが、聞くところによると、この罰則が非常に軽過ぎる。この勅令第九号の中の第三條には「前二條の未遂罪は、これを罰する。」ということになつて、非常に嚴重なる罰則のようであるが、事実適用されることが非常に少いということを聞いておるのであります。先ほど次官の、これは当分廃止するつもりはない、必要なる存在であるというふうな御答弁とからんで、私はどうもちよつと納得が行かないのです。もう一度その点をお聞かせ願いたい。
  207. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私は赤線区域というようなものにつきましては、なくて済めば非常にけつこうであるけれども、伝染病の予防等から行くと、ある方が予防しやすいという点がある。しかし道徳的の見地なり、あるいは兒童保護の点から見ると、これはない方がよい、しかしながら今日においてはやむを得ない、こういうことを申し上げたのであります。今日は赤線区域と言うておりますけれども、これは昔からの集娼制度をどうするかという、いわゆる散娼にかえるかどうかというようなことについて、私どもこれは非常に苦労したものでありますが、今日公娼制度をなくいたしまして、そうして人権を尊重して、その婦人の自由によつてやることになつておりますけれども、実際問題としていろいろな弊害を起しやすい点は確かにございます。これらをどうしたらいいかという点につきまして、私どもいまだほんとうに的確な策を持たない。そういう意味におきましてやむを得ないと申し上げたのでありまして、これはなくできれば一番よいと思いますけれども、しからばこれをどうしたらよいかということになりますと、私どもとしてはいまだ策がない、こういう意味においてやむを得ないと申し上げたのであります。
  208. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういうお話になると、役所の指導的立場にある方がそういう安易な気持でいられることは、私はちよつと困ると思う。われわれもこれをなくすることは非常に困難だと思う。国民全体が必要でなくなる状態になれば、これは自然なくなるのですが、おそらく国民が神や仏になるということは私は考えておりません。これはどんな形かでなくなるものではないということは、われわれ承知しております。しかしここに人身売買という問題を考えましたときに問題になるのは、そういう人身売買を必要とするような受入れ態勢があるということが非常な問題になる。そこで私は、今法律を厳重にしてこれを罰しろと、こういうことでは決してないのでありますが、今の次官のような気持で、しかし自分はなくすることに努力するではちよつと納得行かない。でありますからそういう考えで指導されていると、この間の業者の代表のように、われわれは性病予防のために大いに貢献して、新日本再建のために盡すんだというような演説を始める。そうなると私はどうもこれはたいへん困ると思う。そういう意味でひとつもう少しお考え願いたいと思いますがいかがでしよう。
  209. 宮崎太一

    ○宮崎証人 これは私どももよく検討いたしまして、またこれはいろいろの方面に関連いたしますので、関係方面とよく……。
  210. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 ちよつと、ただいまの赤線区域に関連して証人に簡單にお伺いいたしますが、証人証言は非常な重大な影響を持つておると思います。と言いますのは、既存のものはこれは常識になつております。しかしながら現在東京都においても、全国各地で問題になつておりまするところのいわゆる特殊飲食街の集団的に設けられるところは方々にあるわけであります。これは次の文部省関係にもなりますが、学校の付近なんかに集団の赤線区域ができる、こういうことになつて来きますと、むしろ今の証人の言われるようにやむを得ない、公衆衛生の上からの取締り上、むしろその方かいいんだというように考えられるような証言をいたされますと、こういうものが今後続々とできて来るわけです。あなた方公衆衛生行政面を担当される方としましては、むしろ今後に続出しようとするこういう受入れ態勢のものは、あらゆる関係機関にわたつておるから、そういう関係機関と協議してできる限りこれ以上ふやさない、これ以上ふえないように努力すると証言されるべきだと思いますが、証人はいかように考えますか。
  211. 宮崎太一

    ○宮崎証人 この問題は、私ども昭和二十三年ごろにおきましても、これをどうするかということを検討して、なくしたいというつもりで研究したのでありますが、なかなかそれがむずかしかつたのでございまして、私どもは決してふえることを好んでおりません。ただ現実といたしまして病気の関係から行きますと、集つてつて、それが自発的に治療しておる方がいいというだけでありまして、これが必ずしもよいと私は言つているんじやありません。ただ散娼というような問題が前にもございましたが、散らばつておる方がいいか、集つておる方がいいかということから申しますると、集つた方が病気の予防からはいいというだけのことでありまして、その方が国の政策としていいとは私は言つておるんじやございません。それでそういうものがふえないようにすることは私は御同感でございます。
  212. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 売淫というものは法的にも認められていない。病気の予防というあなたの所信事項だけにとらわれてそういう考えを持たれることは、むしろ逆に考えれば、こういうものを奨励するというような考え方にも受取れるのです。今日まではこうして現実にこれを取締るということになり、撲滅するということになれば、大きな政治的な問題にまで発展いたしましよう。しかし今後においても、表は社交喫茶は許可営業である、また下宿営業、こういう名目にしておりますが、実際にはそこで集団売淫をやる、こういうものをだんだん許可して行くということになりますると、またこれが受入れ態勢になる。従つて今あなたが言われるように、集団して、また公衆衛生上いいということになると、際限なく労働省なり文部省なりあるいはあなたの省なり、あるいは公安委員会等、各方面取締り関係がまたがつております。だから一つの協議会か何か持たれて、今後においては全国的にこういういわゆる特殊飲食街といつて、表はりつばであるが、そういう名目によつて売淫行為をする者は許さない方針であるというようにお考えになつていただく方がいいんではないか、私はかように思うのですが、いかがですか。
  213. 宮崎太一

    ○宮崎証人 私の所管と申しましても必ずしも病気だけじやありませんので、兒童の福祉の方から申しましても、仰せの通りこういうものはない方がいいのでございまして、人身売買の根源になるようなことはない方がいいのでありまして、私の所管だけでもこれはあつていいとは申さないのであります。ただ病気の予防ということだけから言えばそういうことであると申し上げただけでありまして、その点につきましては今仰せのように、私どももよく検討して悪いものはなくしたい、こう思つております。
  214. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ宮崎証人に対する尋問はこれで終了いたしました。証人には長時間御苦労でありました。     —————————————
  215. 内藤隆

    内藤委員長 引続き日高証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつておられる証人は日高第四郎君ですね。
  216. 日高第四郎

    ○日高証人 そうです。
  217. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件について証言求むることになりまするが、本委員会人身売買に関する件につきまして調査を行う理由は、最近女子及び年少者人身売買事件全国に激増の傾向にありまして、これが取締り並びに保護救済機関運用に対する総合的監察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思われますので始めた次第でありまするが、証人におかれても率直なる証言によりまして、本委員会調査に御協力されんことを期待する次第であります。  それではただいまより証言を求むることにいたしますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求むる場合には、その前に宣誓をさせなければならないことに相なつております。  宣誓または証言を拒むことができるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このとこを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申出で願いたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人日高第四郎君朗読〕   宣誓書   良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  218. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  219. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求むることになりますが、証言は、証言を求められた範囲をこえないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いしておきます。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆございますが、お答えの際は起立をしてお答え願います。  日高第四郎君は現在文部省の事務次官でございますね。
  220. 日高第四郎

    ○日高証人 さようでございます。
  221. 内藤隆

    内藤委員長 現職におつきになるまでの経歴を簡単に述べてください。
  222. 日高第四郎

    ○日高証人 大正十五年三月に広島高等学校の教授になりまして、昭和十年十二月に第三高等学校生徒主事兼教授になりました。十三年二月に京都帝国大学学生主事になりました。十八年三月に第一高等学校教授になりました。二十一年五月に文部省の学校教育局長に任ぜられました。二十四年六月に国立教育研究所長に補せられました。昨年三月に文部事務次官に任命いたされました。
  223. 内藤隆

    内藤委員長 本委員会が今取上げておりまするこの人身売買事件と文部省所管行政との関係について、簡單にお述べを願いたいと思います。
  224. 日高第四郎

    ○日高証人 現在の文部省の規定によりますと、文部省は教育委員会、大学研究機関等に対して、専門的、技術的指導と助言とを與える行政機関と定められておりまして、別に教育委員会法によりますと、法律に別段の定めのある場合のほか文部大臣は都道府県の教育委員会に対し行政上及び運営上指揮監督をしてはならない、こういう規定になつておりますので、お話の若い人たちの人身売買のことにつきましては、文部省は間接に責任があると存じますけれども、直接の執行機関ではないと理解しております。
  225. 内藤隆

    内藤委員長 新制中学の卒業生の就職あつせんにつきまして、労働省職業安定局との協力状態を簡単に述べてください。
  226. 日高第四郎

    ○日高証人 昭和二十三年二月七日の文部次官、労働次官共同の通牒によりまして、子供たちの就職あつせんについては、大体次のような話合いができております。  一、学校においては職業知蔵の啓培、職業実習、個性に関する調査及び諸検査、進路指導(進学及び就職)、卒業後の補導等を行い、就職あつ旋及び就職後の補導については公共職業安定所に必要な資料を提供する等緊密なる連絡をとり、これに協力しなければならない。  二、公共職業安定所においては学校連絡の上職業に関する資料の提供、職業適性検査の援助、工場、事業場等における職業実習に対する協力、職業相談、就職あつ旋並に就職後の補導等職業安定に関する事項を行わなければならない。職業指導は前述の両機関の各内容を一連的に実施することによりその成果を收めうるものであるから、これを行う学校及び公共職業安定所は互に協力援助し、その実績をあげねばならない。  こういうような通牒を各都道府県知事あてに出してございまして、その後この精神に基きまして、公共職業安定所学校の卒業生の職業紹介に協力するほか、学校もまた職業安定法によりまして、学生生徒の職業紹介についてその業務の一部を分担しておるのが現状であります。
  227. 内藤隆

    内藤委員長 新制中学あるいは高等学校において、純潔教育というようなものを実施しておられますか。
  228. 日高第四郎

    ○日高証人 学校では特に純潔教育という名を與えてはおらないのでありますけれども、学校教育の中で性教育に関する配慮、兒章憲章に盛られているような精神での教育はいたしております。純潔教育につきましては、対象を一つに集めて性教育というようなことをするのは一利一害がありますので、おもに個人指導にゆだねられるべきものが多いと思つております。これについては各教育委員会及び学校の識見によりまして、その学校並びに教員、生徒の実情に即してやるようになつておりまして、文部省から特に指揮監督することはいたしておりません
  229. 内藤隆

    内藤委員長 集団的にさような教育をすることに弊害というのはどういうことなんです。
  230. 日高第四郎

    ○日高証人 これは年齢の相違により、また子供たちの環境によつて、性的関心というものが非常に強い者とそうでない者がある。強い者に対しては教育の必要があつても、弱い者に対してはあるいは意味がわからないというようなこともありますので、性の事実についての生物学的の知識は與えることになつております。そうして道徳的な面においては、各教科の具体的な事情に応じて道徳的に指導する、こういう考え方に現在ではなつております。
  231. 内藤隆

    内藤委員長 この人身売買関係のある兒童を調べてみますると、義務教育を満足に受けていない者が多いのですが、これらに対する積極的な、義務教育を受けるような、いわゆる就学奨励の方法を文部省としては何か講じておられますか。
  232. 日高第四郎

    ○日高証人 これにつきましては、二十四年の五月一日に厚生省発でございますが、厚生次官、法務刑政長官、労働次官、文部次官等の連名の通知がありまして、親元を離れ他人の家庭に養育されまたは雇用されている兒童保護についてという通牒を出しまして、そこでは兒童の人権を尊重すべきこと、兒童の最大の幸福というものは、原則として両親のもとに健やかに育てられること、兒童の基本的人権を尊重しなければならないこと等を強調して、義務教育をぜひ受けさせるように、教育委員会、市町村、学校、PTA、兒童福祉司、兒童委員等の協力を求めてございます。そのほか最近には人身売買の問題につきまして、次官会議各省の協力を求められましたので、それに対する文部省の見解を披瀝して、義務教育に力を入れるように、ことに学校か家庭とよく連絡をして、長期欠席等の生徒の中にそういう犠牲者の出ないようにすることを求めております。
  233. 内藤隆

    内藤委員長 ほかに何かございますか。——佐竹君。
  234. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人に私がお尋ねしたいと思うことは非常に証人行政所管関係の深いことでありますが、最近いわゆる特殊飲食街——最近の新聞では赤線区域というて出しておりまするが、これがきわめて学校の付近につくられたり、あるいは兒童の頻繁に通る通路の付近につくられたりして、きわめて風紀を害しているというようなことがあるのであります。東京都内にもありますし、全国各所にあるのでありますが、これに対して証人はいかように考えておられるか。
  235. 日高第四郎

    ○日高証人 それは非常に残念なことだと思いますので、現実の障害を何とかして取除きたい、こういうふうに考えております。
  236. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 もつと何か具体的にお考えになつたことがありますか。
  237. 日高第四郎

    ○日高証人 これは根本的には兒童憲章にありますように、よい環境の中で子供が育てられなければならないという精神を社会的に理解してもらわなければならない。それから学校の所在地等については環境をよくするように努めなければならない。それには必要があれば何らかの法的措置も考えなければならないのではないかというふうに考えております。
  238. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 この特殊飲食街は現在参議院の厚生委員会でも——東京都内にまた二、三箇所新たに問題を起しているらしいし、全国からもそういうことを持込んで来て厚生委員会で取上げることになつているのでありますが、私考えますのに、既成のものはこれはいわゆる従来の遊郭という地帯にあつたのでありますが、現在に至つて相当広い空地、またはそういう集団に都合のいい所があるならば、そこへ持つて行こうとする、きわめて簡易な商売でありますので、やろうとする可能性があるのであります。そこでこの取締り労働省あるいは厚生省あるいは都道府県の公安委員というように、多岐にわたつておりますが、これを何とかして今後の分は、そういう学校関係から見ますときわめて遺憾なので、そういう点に対して証人は中央の方で何か一本の線で打合せして、地方の末端に至るまで、そういう学校付近とか、あるいは小学兒童が頻繁に通行して、兒童に悪影響を與えるというようなことに対しまして、これを阻止するような何か具体策を考えておられるかお聞きしたい。またこれをやろうとしておられるかどうか。
  239. 日高第四郎

    ○日高証人 それは必要な処置であると思いますけれども、いろいろな障害がありますのでまだ具体化はしておりません
  240. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 これは非常に問題になつておりまして、この委員会でもあるいは参議院の厚生委員会の方でも相当問題にしておられますが、文部省の方でも直接これは関係のあることでありまするから、至急に何とか具体化されるように要望したいと思います。
  241. 浦口鉄男

    ○浦口委員 日高次官は人身売買の問題、とりわけ山形県、新潟県、ああいう東北地方に何十年来行われているこういう人身売買問題について、過去においてその事実を以前から御承知ですかどうか、そのことをお聞きします。
  242. 日高第四郎

    ○日高証人 うわさは前から聞いておりましたけれども、事実の報告は、前に学校教育局長をしておりましたときに、こういう事実があるというふうな報告を聞いております。
  243. 浦口鉄男

    ○浦口委員 大分前から御存じのようでありますが、その間において——山形県なら山形県を例にとりますと、なぜ少年が売られて行くかということについては、もちろん少年の意思において売られて行くということよりも、むしろわれわれの考えるところでは、家庭の貧困あるいは兄弟の手引きというふうなものによつて売られざるを得ない、こういうふうに考えるわけであります、しかしこのたびのこの委員会で取上げました神奈川県の方へ売られて行つた少年実態調査が、事務当局から出ておりますが、そういうところに里親制、あるいは作男として行つている少年は、必ずしもこれに不幸を感じていないというものが八、九割、大部分は自分の家庭にいるよりも食べ物がまだ幾らかいい、あるいは着物も割合よく着せてもらえるというような幸福感を持つておる者の方が多い、こういう報告が出ておるのでありますが、幸福感は結局主観的な問題でありますので、人間一律にこれを律するということはできませんが、少くとも山形などというふうな、伝統的にこうした事実の多いところにおいては、やはり兒童福祉法によりましても、兒童憲章によりましても、日本国民として同様な人権の尊重、第二の国民の大切さということから、何か教育上特殊な対策が講ぜらるべきだ、こう考えるのが常識と思いますが、その点現在まで何か教育上特殊な方法を講ぜられて来たかということと、また今後どういう方策をお持ちであるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  244. 日高第四郎

    ○日高証人 ただいまの御質問の中にございましたような事実は、一面には経済的貧困というようなことがありまして、これは間接には関係があるかもしれませんが、直接には教育ではいかんともなしがたいというような事実であるというふうに考えております。教育的の場面からは、私は従来の封建的な、親のためあるいは家庭のために身売りするのは美風だというような考え方を打破してしまわなければいけない個人が人格として生きるということは、單に動物として生存するというのとは意味が違うのだ、自分の人格の尊厳ということと、人間の自由というものに対する尊重の体験を與えることが必要なのであります。これは遺憾ながら現在のところでは、先生そのものも必ずしもそれを体験していないのでありますから、子供にそういうことを徹底させるということは時を要すると思うのでありますが、これは教師と養成期間において特にその点を強調して、民主主義の背景に人格主義という根がなければ民主主義は育たないという事実をよく納得させるところに、ひまはかかりますけれども、根本的な対策があるのではないか、そういうふうに考えております。
  245. 浦口鉄男

    ○浦口委員 人身売買に関連の多い、たとえば特飲街に勤めるようになる若い女の人の経過を聞きますと、大体正式な機関を通じて来るのではないことは当然でありまして、もぐり周旋屋というような手を通じて、そうした仕事に携われば非幣にお金がもうかる。——この間新宿の業者が参りましたが、その証言によつても、最低月に八、九万から十五万くらい、そういう無形の収入を得られる、こういうことを言つております。そういうところにやはり文化的に低いと申しますか、経済の貧しい地方、あるいは封建制の非常に強い地方に育つた子供が、そうした甘言によつてこうした不幸なところに陷つて行くということが非常に多いのであります。そういう点について、教育が現実を離れて單なる理想を説いても、これは子供には浸透しない、こういうことも当然考えられることでありますが、今次官のおつしやつたような基本的な意味において、そうした子供の人生観と申しますか、幸福感に対してやはり何か特殊な指導があるべきではないか、こういうふうにも考えますが、その点いかがでございますか。
  246. 日高第四郎

    ○日高証人 お説の通りでありまして、そういう面にりつぱな人生観を持たせるということが民主主義的な社会をつくるのに一番必要である、そういうふうに考えておりまして、そういう点においては、さきに天野文部大臣が、高等学校で道徳思想史あるいは倫理、そういつたようなものを教える必要があるということを言われたのは、そういう判断の一つの現われではないかと私は考えております。
  247. 浦口鉄男

    ○浦口委員 いま一つ。私も文部委員で、社会教育の問題はいつも委員会で問題になるわけでありますが、こうしたことは親の民主化と申しますか、親の教育が非常に大切だと思うのであります。社会教育の面において、これは成人学校という形になると思いますが、文部省は、とりわけ山形県というふうな例をとりましても、そういう地方の親に対して特別な指導方法を考えておられるかどうか、これをお聞きしておきたいと思います。
  248. 日高第四郎

    ○日高証人 社会教育は、全般的に申しまして、公民館を通ずるのが一番適切ではないかというように考えております。公民館等に対しては、たとえば定期に講座とか、あるいは講演とか、展示会とか、そういうような面においても、人身売買等の趣旨をよく徹底させて、そういうものがいかに恥ずべきものであるかというようなことを認識させる必要があるというふうに考えておりまして、そういう点では、先に申しました純潔教育等とも合せて、社会教育の普及をはかりたいというふうに考えております。
  249. 浦口鉄男

    ○浦口委員 いま一つ。先ほどの性教育と純潔教育の問題に関するわけでありますが、結局科学的に性知識を與えるということだけではむしろ危険がある。そこにどうしても純潔教育を徹底させるには、その背後に倫理性というものが強調されなければ、むしろ知らないよりも危険がある、こういうふうに考えるわけでありますが、純潔教育と関連いたしまして、文部省はどういう倫理性の具体的な裏づけをもつて教育をされているか、その御方針をお聞きしておきます。
  250. 日高第四郎

    ○日高証人 先ほど性教育というもののむずかさを申しましたのはまさにその点でありまして、教師自身がそういうことに対して十分な資格を持たなければ、かえつて効果がある。そういうのと同じように、倫理的の価値判断というものを明確に教えておかなければ、かえつて少年の無思慮な、本能的な、衝動的な興味を助長するような悪結果が起るのではないか、そういう意味で純潔教育というものは、軽率には実施できない、そういう見解をとつておるわけであります。
  251. 田渕光一

    田渕委員 次官はずつと文教の経歴を持つておられるので、こういう点を特に伺つておきたいと思うのであります。学校教育法は二度改正されておりますが、現在の学校教育法の十六條においては、子供の雇い主に、義務教育を義務として課するという規定があるのであります。しかしながら、この二十二條では保護者の義務を規定しております。ここに何とか抜け道があるように思うのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになつておりますか。学校教育法の十六條と二十二條の関係で、雇い主の義務教育の逃道、二十二條の保護者に対する規定、この点に対する御見解を伺つておきたいと思います。
  252. 日高第四郎

    ○日高証人 二十二條には「保護者は、子女の満六歳に達した日の翌日」云々というようなことになりまして、義務教育をする義務を負うておるのきあります。その保護者の注の中に「子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、後見人又は後見人の職務を行う者」こういうふうに規定してございますので、保護者のような場合には、たとえば里子に行つたというようなときには、里親保護者と見ることができるのであります。また実際において教育を行えないようなところに親がおりまして、子供の預けられておるところ、あるいは雇主というものも、法律で十分明確とは言えませんけれども、この保護者の範疇に入れることができるのではないか、そういうふうに解釈いたしております。
  253. 田渕光一

    田渕委員 これは非常に次官が善意に解釈されておるので、里親はもちろんそうです。表向きにそう行けばそうあつていい。その通りです。ところがこれが裏から行われて、「子女を使用する者は」という点で逃げているのではないかと思うので、これらの点に対しては御研究願つて改正しなければ、もぐりが跋扈して困るのであります。  それからもう一つ先ほど浦口委員の御質問の、純潔教育と倫理教育であります。もちろんいろいろありましようが、少くとも教科書や社会科の指導要領の中に、この問題を認識させるような必要があると思うのでありますが、この点についてどうお考えでございますか。
  254. 日高第四郎

    ○日高証人 指導要領の中には多分そういうことが書いてあるだろうと思いますけれども、私は承知いたしておりません
  255. 田渕光一

    田渕委員 この性教育というのはまつたく教師そのもの、教員そのものの資格がなければならぬ。相当年配も行き、そして人格的に陶冶された人ならばいいのであります。そういう辺はもちろん若い教官は携われないと思いますけれども、往々にして学校の教官と生徒との間に、キヤンプなどにおいて問題が起るのであります。こういうような点については、そういう方面に行くというので、納得し安心したのでありますが、もう一つ、たとえば純潔教育と倫理教育とのほかに、さらにもう少し進んだ信仰的な方面から行くような方法はないか。ただ学校教育ばかりでなく、家庭教育においても、やはり祖先の崇拝、またそれから来る祖先の名誉の維持、あるいはまた家名を傷つけないというような点において、宗教的な方面にもう少し食い入つて来る方法はなかろうか。ただ公民館などにいろいろ依存をして行くということもけつこうであるが、もつと宗教団体を活動させると同時に、宗教団体方面からもう少し啓蒙的な運動をやらしてみたらどうか、こういうことを考えるのでありますが、こういう点についてもし対策があれば伺つておきたいのであります。
  256. 日高第四郎

    ○日高証人 お話の点はもつともでありまして、道徳といいますと、人間と人間とのあるべき関係というようなことが主になりまして、目に見えないものに対する関係ということは、ほとんど説かれないのが普通でありますから、そういう意味においては、宗教家が宗教的の立場からりつぱな人生観を與える。それに基く守りどころある人間にするということは、非常に願わしいことでありまして、それは最も強固な礎であると思いますけれども、学校教育においては、宗教的情操をとうとぶということだけは規定してありますが、特定の宗教による教育ということは、公立のものには許されておりません。これは率直に申せば家庭と社会の問題ではないか。学校においては道徳的な教育、昔のいわゆる修身とは違いまして、意思を強くしてわれわれの本能や衝動を統率するような、そういう意味の人格的な教育、あるいは意思の教育というようなものに、もつと力を入れなければならぬのではないか、そういうふうに考えております。
  257. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、日高証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。  次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十六分散会