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1952-07-30 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月三十日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 岡  良一君       新井 京太君    高橋  等君       田中  元君    寺島隆太郎君       堀川 恭平君    松永 佛骨君       堤 ツルヨ君    福田 昌子君  出席政府委員         厚生事務官         (保險局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 六月二十五日  委員庄司一郎辞任につき、その補欠として根  本龍太郎君が議長指名委員に選任された。 七月三日  委員根本龍太郎辞任につき、その補欠として  平島良一君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員平島良一辞任につき、その補欠として根  本龍太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  清藤唯七君は死去された。     ――――――――――――― 六月二十六日  母子福祉法制定請願外一件(増田甲子七君紹  介)(第三九五二号)  同外三件(青柳一郎紹介)(第三九八三号)  立川市及び立川飛行場地区飲用水汚染緊急処  理に関する請願淺沼稻次郎紹介)(第三九  七一号)  社会保障制度強化に関する請願圓谷光衞君紹  介)(第三九七三号)  同(關内正一君紹介)(第四〇二七号)  島根県下にアフターケア施設確立に関する請  願(中崎敏紹介)(第三九七四号)  遺族援護強化に関する請願外一件(吉川久衛君  紹介)(第三九九一号) 七月二十三日  優生保護法に基く受胎調節普及実施に関する請  願(上林榮吉紹介)(第四一九〇号)  同(青柳一郎紹介)(第四一九一号)  同(若林義孝紹介)(第四二二二号)  同外二件(青柳一郎紹介)(第四二四四号)  同(金塚孝紹介)(第四二七八号)  同(大石ヨシエ紹介)(第四三〇六号)  大須賀吾妻会の集団移転問題に関する請願(  宮原幸三郎紹介)(第四二一六号)  元戦傷病者及び身体障害者に対する福祉措置強  化拡大に関する請願坂田英一紹介)(第四  二八七号)  戦争犠牲者国家補償に関する請願大石ヨシエ  君紹介)(第四三〇五号)  性病予防に関する請願長谷川四郎紹介)(  第四三六一号)  国立小倉病院存置請願淵上房太郎紹介)  (第四三六二号)  弔慰金受領者に関する請願青柳一郎紹介)  (第四三七七号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  国民健康保險事業強化確立に関する陳情書  (第二六四七号)  国民健康保險法による国庫補助増額に関する  陳情書(第二六  四八号)  児童福祉関係費特別補助に関する陳情書外一  件  (第二六四九号)  同(第  二六五〇号)  同(第二  六五一号)  同外七件  (第二六五二号)  同(第二六  五三号)  遺族補償に関する陳情書  (第二六五四号)  同(  第二六五五号)  遺族援護に関する陳情書  (第二六五六号)  同(第二六五七  号)  同(第二六  五八号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法施行に関する陳情  書(第二六五九号)  アツツ戦没者遺体調査並び収容促進に関  する陳情書(第二  六六〇号) 同月二十五日  遺族補償制度確立等に関する陳情書外五件  (第  二七八九号)  同  (第二七九〇号)  同(  第二七九一号)  同  (第二七九二号)  同(  第二七九三号)  同  (第二七九四号)  同(第二七  九五号)  同(  第二七九六号)  同(  第二七九七号)  同  (第二七九八号)  同(  第二七九九号)  同(  第二八〇〇号)  同外一件  (第二八〇一号)  同(第二八  二〇号)  同(  第二八〇三号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族国庫債  券資金化促進に関する陳情書  (第二八〇四号)  未帰還者留守家族並びに戦没者遺家族国家処  遇に関する陳情書  (第二八〇五号)  引揚者集団收容施設疎開に対する国庫補助存  続に関する陳情書  (第二八〇七号)  戦争刑死者遺族援護等に関する陳情書  (第二八〇  八号)  受胎調節指導団体日本医薬業連合会指定等  に関する陳情書  (第二八〇九号)  同(第二八一  〇号)  国立身体障害者総合福祉更生センター国立山  中病院設置陳情書  (第  二八一一号)  地盤変動に伴う下水道施設費国庫負担金のわ  く設定に関する陳情書  (第二八一二号)  同和問題解決に関する陳情書  (第二八一三号) 同月二十六日  遺族補償制度確立等に関する陳情書  (  第二九四五号)  同  (第二九四六号)  同外五件  (第二九四八号)  同(第  二九四九号)  同  (第二九五〇号)  同外十四件  (第二九五一号)  同外一件  (第二九五二号)  同  (第二九五三号)  同(  第二九五四号)  同  (第二九五五号)  同  (第二九五六号)  同外三件  (第二九五七号)  同外六件  (第二九五八号)  同(第  二九五九号)  同外四件  (第二九六〇号)  同外一件  (第二九六一号)  同(第二九  六二号)  同(第二九六  三号)  同外七件  (第二九六四号)  同外五件  (第二九六五号)  同外二件  (第二九六六号)  同外一件  (第二九六七号)  同外四件  (第二九六八号)  同外一件  (第二九六九号)  同外二件  (第二九七〇号)  同外四件  (第二九七一号)  同(第  二九七二号)  同(  第二九七三号)  同(  第二九七四号)  同(第二  九七五号)  同外一件  (第二九七六号)  同外一件  (第二九七七号)  同  (第二九七八号)  同外四件  (第二九七九号)  同(第二  九八〇号)  同(第二九  八一号)  同外一件  (第二九八二号)  同外一件  (第二九八三号)  同外一件  (第二九八四号)  同(  第二九八五号)  同(第二九  八六号)  同外一件  (第二九八七号)  同外五件  (第二九八八号)  同外十一件  (第二九八九号)  同外七件  (第二九九〇号)  同外四件  (第二九九一号)  受胎調節指導団体日本医薬業連合会指定等  に関する陳情書  (第二九九二号)  同(第二九九三  号)  同(第二九九  四号)  同(第二九九  五号)  同(第二  九九六号)  同(第二九九七  号)  アツツ戦没者遺体調査並び牧容促進に関  する陳情書(第二九  九八号)  結核予防法第三十四條の運用に関する陳情書  (  第二九九九号)  母子福祉法制定に関する陳情書  (第三〇〇〇号)  西海国立公園指定に関する陳情書  (  第三〇〇一号)  児童福祉関係費特別補助に関する陳情書  (第三〇〇二号)  生活改善に関する論告発布陳情書  (第三〇六一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  結核新薬に関する件  委員派遣に関する件   請 願  一 母子福祉法制定請願外一件(増田甲子七    君紹介)(第三九五二号)  二 同外三件(青柳一郎紹介)(第三九八三    号)  三 立川市及び立川飛行場地区飲用水汚染緊    急処理に関する請願淺沼稻次郎紹介)    (第三九七一号)  四 社会保障制度強化に関する請願圓谷光衞    君紹介)(第三九七三号)  五 同(關内正一君紹介)(第四〇二七号)  六 島根県下にアフターケア施設確立に関す    る請願中崎敏紹介)(第三九七四号)  七 遺族援護強化に関する請願外一件(吉川久    衛君紹介)(第三九九一号)  八 優生保護法に基く受胎調節普及実施に関す    る請願上林榮吉紹介)(第四一九〇    号)  九 同(青柳一郎紹介)(第四一九一号) 一〇 同(若林義孝紹介)(第四二二二号) 一一 同外三件(青柳一郎紹介)(第四二四四    号) 一二 同(金塚孝紹介)(第四二七八号) 一三 同(大石ヨシエ紹介)(第四三〇六号)一四 大須賀吾妻会の集団移転問題に関する請    願(宮原幸三郎紹介)(第四二一六号) 一五 元戦傷病者及び身体障害者に対する福祉措    置強化拡大に関する請願坂田英一君紹    介)(第四二八七号) 一六 戦争犠牲者国家補償に関する請願大石ヨ    シエ君紹介)(第四三〇五号) 一七 性病予防に関する請願長谷川四郎君紹    介)(第四三六一号) 一八 国立小倉病院存置請願淵上房太郎君紹    介)(第四三六二号) 一九 弔慰金受領者に関する請願青柳一郎君紹    介)(第四三七七号)   陳情書  一 国民健康保險事業強化確立に関する陳情    書(第二六四    七号)  二 国民健康保險法による国庫補助増額に関    する陳情書    (第二六四八号)  三 児童福祉関係費特別補助に関する陳情書    外一件    (第二六四九号)  四 同    (第二六五〇号)  五 同(    第二六五一号)  六 同外七件    (第二六五二号)  七 同(第    二六五三号)  八 遺族補償に関する陳情書    (第二六五四    号)  九 同    (第二六五五号) 一〇 遺族援護に関する陳情書    (第二六五六    号) 一一 同(第二六    五七号) 一二 同(第    二六五八号) 一三 戦傷病者戦没者遺族等援護法施行に関する    陳情書(第二六    五九号) 一四 アツツ戦没者遺体調査並び収容促進    に関する陳情書    (第二六六〇号) 一五 遺族補償制度確立等に関する陳情書外五件    (第二七八九号) 一六 同    (第二七九〇号) 一七 同    (第二七九一号) 一八 同    (第二七九二号) 一九 同    (第二七九三号) 二〇 同    (第二七九四号) 二一 同(第    二七九五号) 二二 同    (第二七九六号) 二三 同    (第二七九七号) 二四 同    (第二七九八号) 二五 同    (第二七九九号) 二六 同    (第二八〇〇号) 二七 同外一件    (第二八〇一    号) 二八 同    (第二八二〇号) 二九 同    (第二八〇三号) 三〇 戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族国    庫債券資金化促進に関する陳情書    (第二八〇四号) 三一 未帰還者留守家族並びに戦没者遺家族の国    家処遇に関する陳情書    (第二八〇五号) 三二 引揚者集団収容施設疎開に対する国庫補    助存続に関する陳情書    (第二八〇七号) 三三 戦争刑死者遺族援護等に関する陳情書    (    第二八〇八号) 三四 受胎調節指導団体日本医薬業連合会を指    定等に関する陳情書    (第二八〇九号) 三五 同(第二    八一〇号) 三六 国立身体障害者総合福祉更生センターを国    立山中病院設置陳情書    (第二八一一号) 三七 地盤変動に伴う下水道施設費国庫負担金    のわく設定に関する陳情書    (第二八一二号) 三八 同和問題解決に関する陳情書    (第二八一三    号) 三九 遺族補償制度確立等に関する陳情書    (第二九四五号) 四〇 同    (第二九四六号) 四一 同外五件    (第二九四八号) 四二 同    (第二九四九号) 四三 同    (第二九五〇号) 四四 同外十四件    (第二九五一号) 四五 同外一件    (第二九五二号) 四六 同    (第二九五三号) 四七 同    (第二九五四号) 四八 同    (第二九五五号) 四九 同    (第二九五六号) 五〇 同外三件    (第二九五七号) 五一 同外六件    (第二九五八号) 五二 同    (第二九五九号) 五三 同外四件    (第二九六〇号) 五四 同外一件    (第二九六一号) 五五 同(第    二九六二号) 五六 同(第二    九六三号) 五七 同外七件    (第二九六四号) 五八 同外五件    (第二九六五号) 五九 同外二件    (第二九六六号) 六〇 同外一件    (第二九六七号) 六一 同外四件    (第二九六八号) 六二 同外一件    (第二九六九号) 六三 同外二件    (第二九七〇号) 六四 同外四件    (第二九七一号) 六五 同    (第二九七二号) 六六 同    (第二九七三号) 六七 同    (第二九七四号) 六八 同(    第二九七五号) 六九 同外一件    (第二九七六号) 七〇 同外一件    (第二九七七号) 七一 同    (第二九七八号) 七二 同外四件    (第二九七九号) 七三 同(    第二九八〇号) 七四 同(第    二九八一号) 七五 同外一件    (第二九八二号) 七六 同外一件    (第二九八三号) 七七 同外一件    (第二九八    四号) 七八 同    (第二九八五号) 七九 同(第    二九八六号) 八〇 同外一件    (第二九八七号) 八一 同外五件    (第二九八八号) 八二 同外十一件    (第二九八九号) 八三 同外七件    (第二九九〇号) 八四 同外四件    (第二九九一号) 八五 受胎調節指導団体日本医薬業連合会を指    定等に関する陳情書    (第二九九二号) 八六 同(第二九    九三号) 八七 同(第二    九九四号) 八八 同(第二    九九五号) 八九 同(    第二九九六号) 九〇 同(第二九    九七号) 九一 アツツ戦没者遺体調査並び収容促准    に関する陳情書    (第二九九八号) 九二 結核予防法第三十四條の運用に関する陳情    書    (第二九九九号) 九三 母子福祉法制定に関する陳情書    (第三〇〇〇    号) 九四 西海国立公園指定に関する陳情書    (第三〇〇一号) 九五 児童福祉関係費特別補助に関する陳情書    (第三〇〇二    号) 九六 生活改善に関する諭告発布陳情書    (第三〇    六一号)     ―――――――――――――
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  まず請願日程審査に入ります。  日程第一、第二、第四及び第五の各請願は、去る六月二十日の当委員会において採択の上、内閣に送付すべきものと決しました請願同一趣旨のものでありますので同様の決定をいたしたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  3. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認めそのように決します。     —————————————
  4. 大石武一

    大石委員長 次に当委員会に付託になりました請願審査に入ります。  日程第三、立川市及び立川飛行場地区飲用水汚染緊急処理に関する請願について何か御発言はありませんか。——なければ本請願はその趣旨を妥当と認め、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認めそのように決します。     —————————————
  6. 大石武一

    大石委員長 次に日程第六、島根県下にアフターケア施設確立に関する請願について何か御発言はありませんか。——なければ、本請願はその趣旨を妥当なものと認め、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認めそのように決します。     —————————————
  8. 大石武一

    大石委員長 次に日程第一五、元戦傷病者及び身体障害者に対する福祉措置強化拡大に関する請願について何か御発言はありませんか。——なければ、本請願趣旨は適切妥当なものと認め、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認めそのように決します。  なお本日採択いたしました各請願に関する委員長報告に関しましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  11. 大石武一

    大石委員長 次に本日の陳情書日程全部を一括して議題とし、審査に入ります。以上の陳情書につきましては、採択の上内閣に送付すべきものと決しました請願と同様の趣旨のもの、及び妥当と認められるものにつきましては委員会において了承することとし、その取扱いにつきましてはすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認めそのように決します。  暫時休憩いたします。     午前十一時十九分休憩      ————◇—————     午前十一時二十二分開議
  13. 大石武一

    大石委員長 休憩前に引続き、会議を再開いたします。  丸山委員より、結核新薬使用について発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  14. 丸山直友

    丸山委員 保険局長にお伺いしたいのであります。御承知のように、先般結核新薬イソニコチン酸ヒドラジツドが公式に販売許可せられた。しかもそのとき私が公衆衛生局長並びに薬務局長にお伺いいたしましたところでは、この薬はあまりひどい危険なり副作用もないという事実及び相当に効力があるという事実は、政府としてこれを一応認めて、それを正式に販売許可したということであります。さよういたしますと、これの保険における使用ということが問題になつて来ると思うのであります。  御承知のように、結核患者というものは、各種各様のたくさんの治療法がございますが、その治療法の全部を一人の患者にただちにみなやるものではなくして、いろいろなものをやつて、その結果によつて、順次他の療法がまたそこに使われるということ、これは当然な話であります。その場合に、必ずしもその病気の経過が非常にいい経過のみをとるものではない、悪いものもある。そこで、こういうふうな新しいものが出て来た場合に、それを使つてみてもらいたいという患者の心理的の熱望が起る。これは無理もない。また医者も、今まではあまり経験がないかもしれませんけれども報告その他である程度自信を持つて、これを使いたいという意欲を持つておる人も相当あると思います。これを使います場合に、不幸にもただいまでは、健康保険対象なつておらない、禁止してある。医者もこれを使うべきものと考え患者も使つてもらいたいと熱望しても、たまたまそれが健康保険の被保険者であつた場合には、その使用を禁止せられる。その場合にこれをどうして使うかといいますと、自分が健康保険外自費負担して拂うから、これを使つてくれということを医者に申出をして、もしそれをやつた場合には、医者差額徴収というような名目をもつて処罰せられる、場合によつて除名処分を受ける、健康保険取扱いを停止せられるようなことになるのであります。一方、それなら、それを使うことは絶対にできないのだということになると、これはぜひ使つてもらいたいという場合は、被保険者はさしあたり健康保険の被保険者である権利を放棄して、まつたく自費患者として治療を受ける方法しかない。前段の方法をとりますと、医者が処罰せられる。その場合にどうしても使つてくれという熱望がある場合には、医者は施療をもつて、その経費を自己の負担において、ただでやつてやるよりしかたがない、医者犠牲によつてやるよりしかたがない。第二段の場合には、健康保険の被保険者たる利益を全部放棄してしまわなければ受けられない、こういうことになる。しかもこれを使うべき必要は、医者も認めておる、患者熱望しておる。これを禁止するということは、基本人権の蹂躙だ、憲法違反事項だと思う。そういうことに関する調整は、保険局においてはどういうふうにお考えなつておるか、どういうことでそういうことの障害が除かれるとお考えになるか、その確信のあるところをひとつお伺いしたい。
  15. 久下勝次

    久下政府委員 結核新薬健康保険に取入れることにつきましては、私どもも、ただいま御質問の中にありましたような事実の起りますことを予測もし、また同時に心配もいたしておつたのであります。ただ健康保険でこれを取上げますためには、過去の事例から考えましても、また実際に健康保険制度運用の面から考えましても、もう一歩進んで、医学的な使用基準につきましての確たる方針がきまりませんと、これを取上げられないと考えたのであります。この点につきましては、公衆衛生局の所管をしております結核予防法において、この結核新薬を取上げるかどうかということと性質を同じくしておりますので、厚生省におきまして、新築の製造販売許可が行われました直後において、ただちに関係者が集まりまして、ただいまお話にありましたような事柄も、もちろん話題に供し、重点を置きながら対策を検討いたしたのでございます。結局、結論的に申し上げますと、お話のような事態が、ある程度経過的には起ることはやむを得ないとして、少くとも新薬許可なつたから、ただちにこれを健康保険なり、あるいは結核予防法治療対象として取上げるということは、現段階では少し早過ぎる。至急に医師会を通じて学会に諮問をいたしまして、中間報告でもよろしいから、一日も早く学問的な回答をいただいて、その上で処置をするようにするのが妥当であろう、そういうようなことによりまして、ただいま御懸念のありましたような問題につきましては、この経過期間を極力縮めるような措置をとる以外にはないのではないかということで、部内の話合いが一致いたしまして、公衆衛生局長と私の名前をもつて日本医師会長あて、即刻学問的な使用基準についての回答をお願いしたのであります。その後公衆衛生局長が主として関係しておられる、この問題を研究しておられるお医者さんのおもだつた方々、あるいは医師会等とも連絡をとりましたところによりますと、その当時、先月の中ごろでありましたが、そのころの状況におきましては、八月中旬ころには中間報告ができるであろうというような話であつたのであります。それ以上に期間を縮めることは無理であるという、医師会の非公式の回答がありました。私としては、そのようなことでありましたので、やむを得ないものとして、極力中間報告をお急ぎ願うようにということを、公衆衛生局長を通じてお願いをしておつたのであります。その後のお話によると、若干時日も、十日か二週間ぐらいずれるようなお話もあるのでございますけれども、いずれにいたしましても、私たちも日本医師会長に二度ほど口頭で、この問題はこういう事情がありますので、中間報告でもいいからいただいて、御懸念のような問題を少しでも少いことを極力期したいということで、御了承いただいておるような次第でございます。  そういういきさつでありまして、現在の経過期間におきまして、さような御懸念のような問題が起りますことは、私どもとしてははなはだ遺憾ではありまするけれども、やをむ得ないのではないかというふうに思つておる次第であります。ただこの経緯につきましては、さような方針厚生省として決定をいたしましたときに、御承知のごとく当時新聞等もいろいろと論議の種になつておりましたことでもありましたので、保険における取扱い方針についてはこういうことでありますので、診療担当者並びに被保険者の方面に対しては、こういう態度であるということを、十分徹底をしてもらいたいというような意味の通牒を、ただちに出しておきましたような次第でございます。  御質問に対しているいろいろくだくだ申し上げましたけれども、私ども考え方といたしましては、事柄の性質上、過渡的な期間におきましての問題は、心配はしながらも、それ以上の措置をとることができない。ただ、できるだけその期間を短かくいたしまして、私どもの今後の事務処理のやり方にいたしましても、極力短縮をいたしまして、そうして御懸念のような問題の起る期間を最小限にしたいというのが、ただいま考えております方針であります。
  16. 丸山直友

    丸山委員 私が先ほど申しましたような懸念が起るということは、お認めになつておると思う。またその期間を短縮したいという御意思もわかります。またその他の経過も、一応了承したのであります。しかし病人は、その期間というものは待つておられない。心理的にも待つておられない事情上、そういつたことは刻々に起つておるのであります。それはやむを得ないのだということになつたのでは困る。これは患者も困り、医者も困る。やむを得ないじや困る。それはしかたがないのだ、かつてにしろということでは、これはまた別問題です。しかし、私が今考えておりますことは、大体健康保険給付というものは、ただいま御説明になつたように、一般の医療というものと違つたある一つの規制がある。保険というものに関する規制がある。つまり一種の制限があるということなんです。ところが、あなた方は、健康保険の診療というものは、制限はないということを常に言つておられる。私は常に制限があるということを言つておる。現在制限がある。ただいまヒドラジツドを使つてはならぬという制限がある。自由診療においては使つてよろしいのです。健康保険において使つた場合には、医者がただでこれを給付するか、健康保険の資格を放棄してやるか、あるいは法律違反を隠れてやるか、そういう危険を冒さなければならぬように追い詰められておる。私はこういう場合もしばしば起ると思う。これはストレプトマイシンとパスの併用の際もあつた。初め健康保険ではそれを認めなかつた。しかもその認めないのは、学問的に何とかということで、一応理由づけられておつた。しかし、自由診療においてはどんどんやつておつた。その結果から見て、遂に健康保険法においても認めざるを得なくなつて、これを認めた。そういうずれというものが始終ある。そういうずれを始終押えて行く。そうして、もし将来国民保険が強制設立となり、全国民がその対象なつた場合にどうなりますか。今のような事態で保険というものの給付を取扱つて行く場合、医療の準歩は停止してしまう。できないのだから、やつてはならぬのだから、停止してしまう。やれば法に触れるのだから、できなくなります。健康保險というものが、国民全体被保険者なつた場合には、医療の進歩がそこで停止するということを、私は心配する。そういう場合において、患者及び医者というものがそれを要望し、また適当と認めた場合には、たといそれが被保険者であつても、自費をもつてそれをやるという場合には、禁止すべきものではないと思う。一部の自由意思というものを、健康保険法において束縛するということそれ自体、誤りがある。それをおやりになる気はないか。それをひとつ承りたい。
  17. 久下勝次

    久下政府委員 御質問の問題は、考え方においては、非常に基本的な問題であると考えております。ただ、ただいま結核新薬につきまして御説明申し上げましたような取扱いが、制限診療であるということでありますれば、あるいはそうであるかとも思います。しかし私どもは、少くともこの結核新薬につきましては、製薬許可になり、また現段階において結核症のどの種類のものにどういう程度に使つたならばどういう効果があるか、どの種類の結核症には使つてもあまり効果がない、あるいは抵抗性がどういう期間で出るかというようなことにつきましては、少くとも現段階においては、学問的なデータはわが国にはないと聞いておるのでございます。そういう段階におきまして、健康保険はこの給付を無制限に認めるということになりますと、これはかえつて患者のために幸福であるかどうかということさえも問題になると思うのでございます。もちろん、医療の本旨は私もわきまえておるつもりであります。しかしながら、こうした社会的な国家的な制度として、公衆衛生の問題を取上げます場合には、従来の取扱いのように、パスとストレプトマイシンを取上げました場合、あるいはバスとストレプトマイシンの一時的の併用を取上げました場合、いずれも学会の意見を徴しまして、その権威ある結論に基いて処置をする。権威のある結論を私どもで曲げたりすれば、どれは文字通り制限診療であるかもしれません。私どもとしては、過去においても、現在においても、将来においても、そういうことをする意思はないのでございます。これは私の一存で申し上げておるのではございませんで、公衆衛生局長その他関係者とも十分打合せました上で、そういう態度をとるのが厚生省としては至当であろうという結論に基きまして、やつておるのでございます。この辺あるいは見解の相違になるかとも思いますが、私どもとしてこうした態度をとりますことは、決して健康保険が制限診療であるということには、ただちには行かないと考えておるものでございます。
  18. 丸山直友

    丸山委員 御趣旨はよくわかります。健康保険でこれをもし無制限に許す場合においては、患者に不幸になるというお話であつたのであります。そうしますと、これは薬務局長並びに公衆衛生局長がおいでになればたいへんけつこうだと思いますが、薬務局長はおいでにならない。公衆衛生局長だけで、ちよつと私は困ると思いますが、一方において、自由診療においては一応発売使用許可されておるのであります。そうしますと、普通の医者は自由診療において、ただいま保険局長の御心配になつたような無制限な使用ということが起り得ると思います。そうするとこれは患者の不幸になる。そうしますと、あなた方は結核新薬を発売させるのは、そういう国民に不幸を与えてもいいという御趣旨で発売許可になつたのかどうか、その点をひとつ御説明願いたい。
  19. 久下勝次

    久下政府委員 お言葉を返して、たいへん恐縮でございますが、私の申し上げましたのは、学問的なデータがそろつておりません段階におきましては、そういう場合もあり得るというふうに申し上げましたので、無制限に使用することが、ただちに患者の不幸になるという意味ではございませんので、その点は弁明をさせていただきます。
  20. 丸山直友

    丸山委員 そういう意味におきましても、不幸になる部分があるはずであります。そういう不幸な部分を取去るということをお考えなつておるのかおらぬのか。公衆衛生局長——薬務局長がおいでになるといいのでございますが、不幸になるということを保険局長は認めておいでになりますが、そういうことに関してはどういう処置をおとりになりますか、これを一つお聞きいたします。
  21. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 たいへん遅刻して参りまして申訳ございません。  今回の処置につきまして、販売許可しておきながら、社会保険あるいは結核予防法でただちに取上げないその理由について、先ほど保険局長からお答え申し上げたそうでございますが、私どもといたしましても、今までのいろいろな資料から考えまして、副作用があまりないということがわかつて参りましたので、先般薬事審議会において審議されました結果、発売を許可されたという措置がとられたのでございます。しかし、まだこれの適応症の詳細な問題あるいは抵抗性の問題などで、科学的なデータを求めなければならない部面も残つておりますので、それを得ましてから結核予防法あるいは社会保険法で取上げたい、そういう措置で進んでおるのでございます。それは先ほど保険局長からお答え申し上げた通りでございます。ただ丸山先生から御指摘の、あるいは患者に対して不幸なことが起るかもしれない、それに対して厚生省としてどういうふうに考えておるかという御質問でございますが、その不幸なことという問題につきましては、保険局長の申し上げました点は、無制限に今これを使いますと、経済的な面もございますし、また抵抗性が非常に増加して来るというようなことにもなつてはいけないという点を考慮いたしまして、もう少し詳細なデータを得ましてから社会保険あるいは結核予防で取上げたい、そういう方針で進んでおるわけでございます。
  22. 丸山直友

    丸山委員 保険局長は、ただいまの御答弁をそのまま御承認になつておりましようか、どうでございましようか、御意見を伺つておきます。
  23. 久下勝次

    久下政府委員 私は結論的に申し上げますと、大体同じでございますが、ただ医学的な知識がございませんので、公衆衛生局長その他の関係の技官の方々から話を聞いて申し上げたのであります。その意味で、抵抗性の問題などが非常に早く出るというような話も耳にいたしております。その辺のことを考えて、先ほどのようなことを申し上げたのであります。
  24. 丸山直友

    丸山委員 ただいまの御答弁の中には、経済的な理由もあるからということでございます。そうしますと、保険の経済的な理由によつて一応承認しないのだというふうな意味に私はとれたのですが、これは保険局の責任者でない方からのお言葉なのですから、保険局も同様にお考えになるかということで、私はお伺いいたしたのであります。
  25. 久下勝次

    久下政府委員 これは少し御説明を申し上げませんといかぬかと思いますが、確かに経済問題も、私どもとしては考えなければならぬと思つております。しかし結核新薬を取上げるかどうかということにつきましては、学問的なデータが出れば、私どもとしては、その学問的なデータに従つて取上げるつもりでおります。そういう意味合いにおきましては、経済を考慮するつもりはございません。ただ、無制限に患者の希望に従つてこれを使うということになりますと、経済の問題も考えざるを得ないであろうと思います。そういうふうに考えております。
  26. 丸山直友

    丸山委員 保険局長の御心配になつておるのは、患者が要望して、医者があまり必要と思わないのに、患者の要求によつて使う、しかもその使用方法が無制限であるということを御心配のようでありますが、私はそういう場合を質問してはいない。医者が使うべきであると考え患者も希望しておつて、無制限でなく、ただいま示されておる基準に従つて使う場合のことを申し上げておるのであります。そういうふうなことも、やはり経済的理由によつて禁止なさろうというのであるか、そういうことはまた別途の考え方でなされるのか。私はそういうものに対しては、一応の基準を示すことが必要であろうと思う。従つて学会方面の指示ということも、やはり必要だと思います。しかし、今までのあらゆる薬品は、それではそういうことで発売を許可なつておるかというと、私はそうは思わない。あらゆる薬品が、すべてそういう経過をとつて健康保險の使用が認められておるとは私は考えておらぬ。現在その他のもので、副作用のある薬品も相当ある、しかもそれは濫用せられて、経済的な負担を重くしておる場合もあるわけであります。大石先生なども、しよつちゆう言われておるザルソブロカノン、ああいうものを結核に使うのは全然無意味であると言うておられる、そういうこともあつた。しかし一応は、ある部分においては認められておる。そういうものを今の健康保險では規制する道が開かれておる。ですから、いたずらな濫用あるいは患者の要望のみによる濫用ということは、健康保險で取上げても規制する道がある。そういうことに対して、経済的な圧迫をお考えになるというために取上げないということは、理由にならない。私はそういうことを言つておるのではない。医者も必要であると考え、使いたいと思い、患者も希望しておる。しかも、その使用方法基準に従つたものでも、今は禁止せられておる、それが困るのじやないか、こういうことです。それがなお経済的理由であるということになると、健康保險の給付は、経済的な理由によつて、当然なすべきものに制限が加えられるようになるという結論になるのですが、その点はいかがですか。
  27. 久下勝次

    久下政府委員 私の言葉が足りませんために、御了解いただけなかつたようでありますが、そういうふうではございませんで、製薬許可が行われましたときの理由として、先ほど公衆衛生局長から申し上げました通り、相当な効果がある、副作用もあまりないようだという程度で製薬許可が行われているのが事実でございまして、それ以上具体的にどうであるかということにつきましては、実はデータがまだ出ておらないのでございます。そういう段階におきまして、これを健康保險で取上げるということにつきましては、財政の問題も考慮しなければならぬであろう、こういうことを申し上げたのでございます。それで、今御引例の、現段階におきまして個々の医者が必要と思つて使う場合にどうするのかということでございますが、私ども考えといたしましては、医学界の現在の段階におきましては、結核新薬使用基準等につきまして、明確な結論が出ておりません段階でありますので、個々のお医者さんが必要だとごらんになられたといたしましても、それは全般の学問的な結論に従つてつていただく方が妥当であろうという考え方でおる、少くとも健康保險の立場として考えます場合には、そういうふうにしていただくのが妥当であろうと思つておるのでございます。
  28. 丸山直友

    丸山委員 健康保險の医療は、必要の限度で、しかも現在認められておるものは全部給付する、差別はないということに一応はなつておる。そうしますと、今のお話によりますと、学会がそういうデータを出さないうちに医者が使うのは少しおかしいではないかということでありますが、自由診療において当然同様なことが言えると思うが、それも使うのはおかしいじやないか。学会のはつきりしたデータが出ていないのに使うのはおかしいということになる。そうすると、発売を許可してこれを一般に売るということは、ちよつとりくつに合わなくなる。一体こういうのをどういうふうに調整されようとしますか。
  29. 久下勝次

    久下政府委員 私はそういうふうには考えておらないのでありまして、医療法なり医師法なりの建前から申しましても、学問的に学会で明らかに承認せられたもの以外の治療方法を講じ、あるいは診断の処置をなすというようなことは、必ずしもただちに医師の義務に違反したものとは少くとも私は考えておらないのでございます。その辺のところになりますと、医療の本質と申しますか、医師の倫理原則と申しますか、そういうようなところからおのずから批判せらるべきものでございます。私はその問題に触れて申すつもりはないのでございます。ただ、健康保險制度という今日においては相当幅の広い大きな問題でもございますので、この制度において結核新薬を取上げようとします場合には、その辺のところにある程度の制約が加わりますこともまたやむを得ないのではないか。その方が、また見ようによると、少くとも私どもの立場におきましては、妥当ではないかということを申しておるのでございまして、個々のお医者さんが法律上許されております権能の範囲内におきまして診療上の判断をせられるということは、おのずから別問題であると存じております。
  30. 丸山直友

    丸山委員 大体お役人様は非常に御答弁がうまいので、そういうようなことをいろいろ言われます。これはこの前のパスの問題でもあつた。結核予防法ではパスの使用が認められておる。健康保險でも認められておつた。ところが、生活保護法では認めなかつた。そのときの理由は、社会局長の説明によると、学問的のデータがまだ出ていないからと言われた。これは速記録をごらんになるとわかります。一方は、健康保險でも結核予防法でもパスが認められておるのにもかかわらず、生活保護法では認めなかつた。後に認めましたけれども、ある期間は認めなかつた。他の進歩した考え結核予防法等において認めておるのに、なぜ認めなかつたかということの御答弁は、まだ学問的のデータを出しておらないからという答弁であつた。その次に許したときに、どうして許したのかと聞くと、学問的の答弁書が出たからということで、省内においても、局々によつて、もうすでにそれを使用する許可基準というものがかわつて来ております。私はそれを今あくまで追究しても、結局水かけ論になると思いますから、いいかげんのところでやめますが、現実の問題といたしまして、医者使用が必要だと考え患者も希望し、これを適正な使用法でやるという場合には、どうしても医者負担においてただでやれとおつしやるのか。あるいは患者に対して、許すまでの期間のずれは、こういう理由でしかたがないのだから、お前は被保險者の資格を放棄してかつてにやれとおつしやるのですか、どちらなんですか。
  31. 久下勝次

    久下政府委員 結論的に申しますと、お話のようになることと思います。しかし、私はそういうようなものの言い方もしたくございませんし、極力そういうことでないように努力をしておるということで、立場を御理解いただきたいと思います。
  32. 丸山直友

    丸山委員 そういうことでなく、処理するには、具体的にはどういうような取扱いをすればよろしいのですか。
  33. 久下勝次

    久下政府委員 先ほども申し上げましたように、これからも各学会の研究をしておられる方々にお願い申し上げまして、一日も早くデータを出していただくという努力を続ける以外にはないと考えております。
  34. 丸山直友

    丸山委員 その努力の期間はどうなさるかということを聞いておる。その期間内のことは、一体どう処理なさるか。医者が、それを施療でなく、患者から実費をもらつてやつた場合には、処罰なさる御意向なのか。あるいは患者が被保險者たる資格を放棄して、全額本人の負担においてやらせようとなさるのか、どういうふうになさるつもりか。
  35. 久下勝次

    久下政府委員 そういう問題につきまして、予想はいたしておりましたけれども、具体的にこれをどう取扱うか——お話になりましたのは、保險医の指定取消しなどの処分をするのかというお話でございますが、そういう点につきましては、実は私どもとしては、まだ具体的な事案によつて判断をする以外にないということであります。特にこの結核新薬の問題は、丸山先生非常に御心配になつておられますが、私自身も、今までの新薬の社会的なと申しますか、いろいろないきさつから考えまして、普通の場合と違つたいろいろな問題の起ることも予想はいたしておつたのでございます。従いまして、具体的にさような事案が起りました場合にどう処理するかということは、こうした結核新薬のここ数箇月のいきさつの問題もございますし、また製薬許可から実際に健康保険で取上けられますまでの間の時間的なずれ等の関係もありますので、私どもとしては十分それらの点を考慮に入れまして、処置をいたしたいと思います。結局お答えにはなつておらぬかもしれませんけれども、今処分するのかしないのかというような意味合いにおきましては、その程度のお答えしかできないのであります。
  36. 丸山直友

    丸山委員 いろいろ巧妙なる御答弁を承りました。しかし、私が考えておることは、結局今までの御答弁を総合いたしましても、健康保険あるいはその他一定の経済のわくを持つておるものには、これを許可する場合においては、何らかのりくつをつけて相当考慮しなければならぬ必要があるということはこれは私はよくわかる。しかしその間に、私が先ほど来申し上げておるような具体的な困難が起つています、こういう事態が始終起り、その事例が多くなつて来ますと、医者健康保険医たることをいやがり、被保険者は健康保險の被保険者たることをいやがるようになります。そういう事態が多くなつて来ますと これは健康保険の普及徹底あるいは発達ということに対して阻害になる。私はそれを心配する。今実際問題として医者がどういうふうに取扱つているか、私はせんだつて二、三まわつてみたのでありますが、結局、医者が全部ただでこれをやつてやることは、経済上の負担に自分でも耐えられぬから、処方箋のような紙に書いたものを持つてつて薬店からそれを買わせまして、そのびんのレツテルに、これはだれだれ用という名前を書いて薬局に並べておいて、患者自費で買つて来たものを調剤してやつている。つまり調剤手数料その他のものは無料で、本人がかつてに薬店から買つて来たものでやる。これが実情なんです。実情を申し上げますと、こういうことで糊塗しているのですが、こうい巨とがこれからもどんどん起る。医学というものはどんどん進歩しおりますから、これはこの問題だけではない。今後またどんなものが出て来るかわからない。そのときに、一々こういう事例が起つて来ますと、常に健康保険の医療は一歩一立ち遅れた医療になる。すでに今の日進月歩の医療から、実は一歩ずつ遅れている。それはどういうわけか。一々りくつはおつけになるけれども、経済的の理由があるということはいなめない。また経済的理由を無視してそういうことを許すべきでないことはわかる。しかしそういうことの処理は、ただ表面のりくつを糊塗することだけで納まるものではない。実際の国民の感情、医者の感情というものも考えて、その間に無理のない人情味のある処理というものがとられて行きませんと、健康保険制度そのものに疑義が持たれて来るという危険がある。だから、私はそういうことに関して今具体的な御答弁を求めることは無理だということも承知して言つていることなんです。ですから、健康保険の給付には、一歩ずつ立ち遅れる面は始終ある。それはいろいろの理由がある。経済的の理由も一つはある、そのほかの理由もありましよう。しかし、これに対する処理方法は、ある部分はやはり自由診療、保険外の診療というものも一応承認する形で参りませんと、これは健康保険そのものの進歩発達を阻害します。私はさように信じております。私はそれだけ申し上げておきたい。  これは水かけ論になりますから、それ以上のことを申してもしかたがないのですが、これは私の信條なんです。健康保険制度を愛し、これを発達、普及させたいと思うのです。それには今のやり方では少し無理がある。そういうやり方であまりに官僚的なデスク・プランではならない。人の感情を無視したものであつてはいかぬと思います。これだけを申しておきます。     —————————————
  37. 大石武一

    大石委員長 次に、本日の請願日程第八ないし第一三優生保護法に基く受胎調節普及実施に関する請願六件を一括して議題といたします。紹介議員より請願趣旨の説明を聴取いたしたいと思います。
  38. 青柳一郎

    青柳委員 この請願の要旨は、日本医薬業連合会——薬種業者でありますが、それが、避妊用医薬品及び用具を販売することを許されておるのであります。ことに受胎調節を必要する地方農山漁村に相当開業しておりますから、これが指導も可能であるばかりでなく、毎年一回は講習会を開催し、研究並びに正しい取扱いに精通しておると存ずるのであります。しかるに、これらの指導も、厚生省当局の指示によりまして禁止せられておるようにも考えられるのであります。つきましては、優生保護法に基く受胎調節普及実施要項による民間協力団体として日本医薬業連合会を指定されるとともに、本会員で特別講習会を受講した者には、受胎調節相談所の看板を出し、業務の範囲内で指導できるように特別に考慮されたい、こういう趣旨でございます。
  39. 大石武一

    大石委員長 次に、政府の意見をお聞きします。
  40. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 ただいまの請願の薬種商が受胎調節に関しまして受胎調節用の器具、薬品を販売いたします際に、その使い方等につきまして、許された範囲内で指導して行くということは、ちつともさしつかえないのでございまして、これを政府として禁止しておるというようなことは決してないのでございます。ただ、一定の講習を受けたあとで受胎調節相談所というような看板をかけるということにつきましては、優生保護法の関係もございますので、軽々には取扱えない、そういうふうに考えておる次第でございます。     —————————————
  41. 大石武一

    大石委員長 次に岡良一君。
  42. 岡良一

    ○岡(良)委員 大したことではないのですけれども、先ほど来丸山さんから、イソニコチン酸ヒドラジツドの問題で、いろいろお尋ねがつたのですが、この前やはり山口さんにお尋ねして、その効果の検定等に要する時日、また効果の検定がいつごろわかるのか、わかつたらどういうふうに取扱われるのかということをお伺いしたのですが、今お話を承つておりますと、どうも最近はイソニコチン酸ヒドラジツドの製造が、当初一般から期待されたほどのものでもないような事例も報告されておるということで、そういうことになつておると、あれの発売を非常に軽々に許可されたということに、やはり問題があると思うのです。これはあなた方の方と薬務局の方で、相当緊密な連絡をとつて善処したいというようなお話があつたのですが、その後、あれは一体どういうふうな経緯で、発売してさしつかえないという臨床実験等、確かなデータを集らめれて発売を許可されたものであるかということを、お伺いしたいと思います。
  43. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 イソニコチン酸ヒドラジツドの発売につきましての経緯でございますが、これは最初に本問題が三月国会においても取上げられました際に、厚生省当局といたしまして、結核療法研究協議会に研究を委嘱いたしまして、その研究の結果に基きまして、いろいろ行政的な措置をとつて参りたいという方針をお答え申し上げたわけでございます。爾後その方針で進んで、おつたのでございましたが、六月上旬になりまして、それまで製造販売を正式に許可しておりませんでしたアメリカにおきましても、製造販売許可されるようになり、また三月当初は、アメリカからの情報などは、いわゆる通俗雑誌に出たもの等でございまして、学問的な成績が詳細に得られておらなかつたのでございますが、その後アメリカの状態も、学術雑誌等によりまして相当詳細にわかつて参りましたし、またドイツ等におきます実験成績が出て参つたのであります。一方、国内におきましても、結核療法研究協議会の方の研究は、材料をおわかちするのが非常に遅れておつたのでございましたが、これが結核療法研究協議会以外の方々の、研究協議会としてでなしに、ほかのいろいろの国内の資料もぽつぽつ出て参りました。それこれ総合してみましたところ、相当の効果が認められ、大した副作用もないというような、総括的なことが考えられるようになつて参りました。また一方、国内におきます療養所の先生方の、これを早く正式に使えるようにしてほしいというような御希望も非常にふえて参りました。それで、最初は、結核療法研究協議会の成績を待つて製造販売許可するような行政措置をとりたいというふうに考えておりましたのが、途中で結核療法研究協議会の先生方に御了解を得まして、方針を変更いたしまして、それまで出ました内外の成績を基礎にいたしまして、薬事審議会に諮りまして、そうして薬事審議会の答申を得て、それに基いて厚生省として製造販売許可をするというような行政的の措置をとつたわけであります。
  44. 岡良一

    ○岡(良)委員 これは私不敏な話なんですが、あれは一クール何グラムのもので、そのクールに要する費用などはどれくらいになるのですか。
  45. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 これは、岡先生も専門の方でいらつしやいますが、結核に対して一クールどれくらいというようなことにつきましては、ストレプトマイシンにつきましては、一応四十グラムというようなことを考えておりますが、イソニコチン酸ヒドラジツドにつきましては、一クールどれくらいというふうに、はつきりはまだデータが出ておりません。ただ一日の使用量が体重一キログラム当り——ないし四ミリグラムというようなことで、効果を観察しつつ継続的に使つて行くというようなことをやつておるのでございます。価格につきましては、大体現在のところ一グラム二百円前後でございますから、体重五十グラムの人でございますと、大体一日に四ミリグラム使いますれば、〇・二グラム、ですから二百円の五分の一で四十円ということになるわけであります。
  46. 岡良一

    ○岡(良)委員 あれは死体の剖検例などでは脂肪変性などが非常にありますね。そうすると、かなり毒性が強いというか、中毒症状があるのだから、ある程度のグレンツエが必要だと思うのですが、そういう検定をはつきりしておきたいと思うのです。それから結核予防法で、パスやその他特殊な治療は、半額を地方か負担するようなことになつておりますが、これも大した金もかからないことだが、特殊の治療のわく内に入るわけですが、これはどういうふうに取扱われますか。
  47. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の剖検例につきましては、今までいろいろな資料が出ております。今後も十分そういう点注意して参りたいと存じております。  結核予防法の点につきましては、先ほど丸山先生からの御質問にもあつたのでございますが、従来私どもはいろいろ結核予防法対象として取上げます場合には、一応学会の意見を聞きまして、それに基きまして結核予防審議会に詫間いたしまして、しかる後行政的に正式に取上げるという道をふんで来ているのでございまして、今回の結核新薬イソニコチン酸ヒドラジツドにつきましても、そういう方針を踏襲して参ることにいたしておりまして、今結核予防法に取上げますについての学会の意見を伺つているところでございます。なお、これを取上げまして、ただちに本年度から実施いたしますかどうかということにつきましては、財政的な問題もございますので、大蔵省とも折衝をいたさなければならない、そういうふうに考えている次第でございます。     —————————————
  48. 大石武一

    大石委員長 次に、閉会中の委員派遣に関しましては、先般委員会において委員長に御一任願つてつたのでありますが、この閉会中に、できますれば、北海道、東北、近畿、北陸、中国、九州、信越方面に委員派遣をいたす予定でありますから、御希望等おありの方は専門員室まで御連絡願います。  暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた〕