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1952-07-01 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月一日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君       新井 京太君    高橋  等君       田中  元君    寺島隆太郎君       堀川 恭平君    松井 豊吉君       松永 佛骨君    福田 昌子君  出席政府委員         総理府事務官         (特別調達庁労         務部長)    中村 文彦君         厚生事務官         (薬務局長)  慶松 一郎君         厚生事務官         (保險局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君  委員外出席者         総理府事務官         (特別調達庁労         務部労務厚生課         長)      渡邊 眞治君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ————————————— 本日の会議に付した事件  駐留軍労務者健康保險に関する件  寄生虫予防に関する件  結核新薬に関する件     —————————————
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  駐留軍労務者健康保険に関する件について、青柳委員より発言を求められておりますので、これを許可します。青柳一郎君。
  3. 青柳一郎

    青柳委員 私は駐留軍労務者健康保険の問題につきまして、質問をいたしたいと思うのであります。この問題につきましては、前々国会、前国会におきましても、問題になつたものでありまするし、最近当委員会陳情もあつた問題でございます。  それでまず第一に、これは労務部長にお尋ねするのは、ちよつとおかしいのかもしれませんが、お仕事を通じて御存じだろうと思うのであります。今国会に、非常に長い法律が可決されたのであります。すなわち日本国との平和條約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律案、この法律案の第八條に、駐留軍に雇われている人の身分を規定しておるのであります。これによりますと、国家公務員ではない、こういうこと七あります。国家に雇用されておることは事実でありますが、国家公務員でない。こうなりますと、一体その身分の実体はどういうものなのかということにつきまして、まず承りたい、こう思うのです。
  4. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまの御質問は、これは法案が上程されました際にも、いろいろと御質疑があつた点でございますが、従来、御承知国家公務員法におきまして、これらの労務者特別職扱いを受けておりましたが、この法律が提案されましたときに、国家公務員資格身分をはずそうという考えが出まして、その結果としまして、ただいまお読みになりました法案の第一條において、特別職身分切つたのでございます。さらに第八條で、再び国家公務員ではないというふうなことにいたしましたのは、格別他意があつたわけではございませんで、単に、御承知国家公務員法の第二條の第六項だと存じますが、あそこで政府支出制限されております。それらの面から見ましても、いろいろと国家公務員としての疑わしい疑義がありまするので、かりに国家公務員特別職をはずしますれば、逆説的な話でありますけれども、それでは一般職だというふうな結論になるのであります。それを避ける意味におきまして、国家公務員資格は全然ないのだ、一般職でもなければ特別職でもないのだ。それからまた国家公務員法の第二條の六項に、いかなる勤務者でも、政府は国費をもつて払つてはならぬという制限が、確かにあつたはずでございますが、これらの制限からも、これははずれておるのだという意味合いをとりましたのが、第八條でございます。それで、結局国と雇用関係にあることにつきましては、議論のないところでございます。ただ国家公務員法上の扱いは受けない、こういう意味でございます。
  5. 青柳一郎

    青柳委員 そういたしますと、国家が雇つておる人であるけれども公務員ではない、こういうことであります。そうして、この法律の第九條を読みますと、勤務條件は、調達庁長官が定めるというふうに、第九條の二節においてなつております。ところで承りたいのですが、調達庁事業主立場にある、こう思うのであります。そう考えてよろしいのでありましようか。
  6. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいま御質問通りでございます。雇用主立場において、たとえば労働三法その他におきましては、使用主としての立場から、いろいろと規制を受けております。
  7. 青柳一郎

    青柳委員 そこで使用主たる調達庁は、健康保険保険料負担することになると思うのでありますが、その健康保險負担はどういうふうになつておりますか、承りたい。
  8. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまの御質問につきましては、先ほどのことにも触れるのでございますが、御承知通り進駐軍関係労務と申しますのは、従来の労働三法その他から判断いたしますと、きわめて型がわり関係でございます。と申しますのは、政府は御承知通り占領下におきましては、連合国軍司令官の指令第二号に基きまして、また昨年の四月からは契約に基きまして、労務の提供の責めは負うておりますが、作業上の指揮監督その他複雑な関係につきましては、責任を負い得ないような姿になつております。ただ法律上さような使いわけも非常に困難でありますので、この点につきましては、労働省方面におきましても、非常に異論のあつたところでありますけれども実態がさような姿にありますので、法適用その他におきましても、きわめて遺憾な点が多々あつたのでございます。今日におきましても、やはりその点につきましては、相当異論がございます。この六月三十日をもちまして、従来の契約期間満了なつたりでございまして、本日より新たなる契約効力が発効することを予想いたしまして、その問いろいろと折衝して参つたのでございます。この折衝の過程におきましても、ただいまの御質疑りような事業主、あるいは使用主という姿の不合理さを、何とかして直したいというふうなことで努力して参つたのでございますけれども、国といたしましては、法律実施相当善意をもつて協力しまた万全を期したいという意向でございますけれども、何にいたしましても外国軍隊でありますので、この点について、相当異論がございます。われわれといたしましては、これらをできるだけ実態に即した姿に持つて行きたいと思いまして、努めて参つておるのでございますが、さような事情にありますので、ただいまの最後の御質問の、保険料負担の問題につきましても、単純に事業主であるがゆえに、法律の定めるところに従つて行くというふうには、ただちには行きかねる事情にございます。打砕いて申し上ますれば、なるほど調達庁は、事業という立場にありますので、保険料負担は、法律の定めるところに従つて負担しておりますけれども、その裏は、それだけただちに償還される、補償されるものがあるのでございます。これがなければ、事業主といたしましては、ただちに実施ができないというのが今日の実情でございます。と申しますのは、言葉をかえますれば、これは労務者のための契約の一切は、ドル米国政府から償還される形になつております。従いまして、償還されました範囲内で措置するという以外には、方法がないのであります。従いまして、保険料の話でございますが、かりにいかような結論が出ましても、軍が承諾を与えぬ限りは、調達庁といたしましては、ただちに簡単にお受けができないというのが実情でございます。これらのことにつきましては、ひとり保険料だけではございませんので、給与、基本給の問題につきましても、昨年の十月、一般公務員が全部約二割近い給与引上げを行われたのでございますけれども、これらの労務者給与引上げにつきましては、相当難航いたしまして、最終的な結論が出ましたのは今年の二月でございます。さようなわけで、政府並びに調達庁だけが考慮いたしまして、適当な措置を取進めようといたしましても、なかなかさように簡單に行かないというのが今日の姿でございます。この辺のところをお含み、御了解願うために、実は雇用関係の姿につきましても、くどくどしく申し上げたわけでございます。
  9. 青柳一郎

    青柳委員 事情は今の御答弁でだんだんわかつたのでありますが、七月一日からアメリカの方の予算が始まるということになりまして、契約はこの六月末で一応済んだのでありますが、新しい契約は、すでにでき上つたのでありますか。
  10. 中村文彦

    中村(文)政府委員 新しく七月一日から始まります契約につきましては、すでに三月初めごろから交渉いたしておつたのでございますが、軍の意向がはつきりいたしませんで、ようやく明確になりましたのが、六月のたしか五日だと存じます。六月の五日付をもちまして、書面をもつて契約締結について研究いたしておりますけれども相当日時を要するので、九十日間の延長を取結びたいという申入れがありました。われわれといたしましては、今日のままの契約では、平和條約の発効後の新しい事態に対応しないようなこともありますので、別途の視野からこれらを検討いたしまして、新たに契約を結ぶ考えをもつて折衝いたしたのでございますが、それらの議がとうとうまとまりませず、二十日付をもちまして、一箇月間の延長契約だけ取結んだわけであります。
  11. 青柳一郎

    青柳委員 ところで、前の国会の際に、この委員会大蔵省当局に、駐留軍、その当時の進駐軍労務者健康保險に関する事業主負担割合について、質問をいたしたのであります。その当時は、公務員であるために一対一、すなわち事業主負担労務者負担が同額であるべきであるという御意見でありました。それは表面的形式的には、いかにもごもつともであろうと存じたのでございます。しかるに今回は、先ほど読み上げました法律によりましても、公務員ではない、こういうことになつて来まして、国家が私においてと申しますと、ちよつとまた行き過ぎらしいのでありますが、まあ私的に雇用する労務者ということに相なつて来たのであります。ところで、一般健康保険組合におきましては、事業主負担する保険料割合は、相当大幅のものである。すなわち一対一ではないと思いますが、その状況につきまして保險局長に伺いたいと存じます。
  12. 久下勝次

    久下政府委員 健康保険法に基きます組合管掌健康保険におきましては、御指摘のように、事業主負担と被保険者負担は、平等になつておらないのが通例でございまして、ただいま正確な数字を手許に持つておりませんけれども、概括的に申しますと、事業主負担が三分の二、被保険者負担が三分の一というのが、大多数の例でございます。
  13. 青柳一郎

    青柳委員 ところで、中村労務部長に伺いたいのであります。この駐留軍労務者公務員ではなくなつたという事実。  それから現実の問題といたしまして、駐留軍労務者陳情模様を聞きますのに、公務傷病によつて労災適用を受ける者が、非常に少いという現実を聞くのであります。駐留軍を監督する米軍立場から申しまして、公務による傷害が多いということは、その駐留軍の成績にも関しますから、どちらかといいますと、公務であるか、私のものであるかという区別をするときに、公務であるということにしたがらない傾向が、現実の問題としてあると存ずるのでございます。それがはたして事実とするならば、労災によつて給付を受けることができないとすると、その負担健康保険の方にかかつて来るのでございます。従いまして、一般健康保険組合負担する傷病給付よりも、相当大幅な傷病給付負担しておることとなるのであります。これが第二の事実でございます。  第三の事実といたしましては、駐留軍労務者が、病気などでもつて休みました際には、やはり陳情趣旨によりますと、三箇月休むと首になつてしまう。普通の労務者などは、一年なり一年半なり、あるいは二年なり病気で休みましても、同じ給料をもらつておるのが現実だと思うのであります。それが駐留軍労務者は、三箇月にして首になつてしまう。そうなると、健康保険として傷病手当金を出す額が多くなる。これも陳情趣旨を実際の模様と勘案して考えるのに、そういうことに相なつておろうと思うのでございますが、そういうふうなこと、それが第三の点であります。  さらに第四の点、ただいま保険局長が答弁せられましたように、一般民間健康保険組合におきましては、事業主労務者との負担は三と二の割合なつておる。これが第四の事実でございます。  こういう事実から勘案いたしまして、駐留軍労務者保険料事業主負担部分は、大体三対二程度のものといいますか、一対一よりもよけいのものであるべきであろうと思うのであります。その点についての御意見を承らせていただきたいと存じます。
  14. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまの御指摘事項、いろいろあつたのでございますが、一例を申し上げますれば、公務災害事項につきましてもお話が出たのであります。公務災害事項につきましても、われわれも、さような声をしばしば聞きますので、取調べてはいたのでございますが、軽微な傷害になりますと、なかなかその判断がつきかねます。従いまして、これはいかような事態になるか、集計いたしましても、なかなか出て来ない次第でございます。われわれといたしましては、さようなことは極力避けたい。なるほど災害保険法適用はございませんけれども基準法の線によりまして災害補償はありますので、その線でおおむね救われておりますから、これらにつきましては、われわれとしましても、別途に当然措置すべきものだというふうに考えておるのでありまして、できるだけさような混淆は避けたいという考え方を持つております。  ただいろいろ具体的な事例を一、二調べてみますと、必ずしもさようなわけでもないのでございまして、たとえば——もちろんこれは議論のあるところでございましようが、結核なつた場合に、はたしてそれが公務上の結核であつたか、あるいは私病的な結核であるかわからない場合におきましても、事情によりましては、公務的な扱いをやつておるという事例もあるのでございます。これは、私どもの方でも、議論にしようというわけではございませんけれども、一、二事例を申し上げますれば、さような事例もあります。さようなわけで、なかなかいずれが公務上の災害かということについては、判定が困難でございます。われわれは、できますれば、それは極力避けたいという考えは持つております。  それからなお、民間健康保険事業主労務者との負担の比率が三対二という、先ほど保険局長の御説明であつたのでございます。これらにつきましても、われわれもいろいろ調べてみたのでございますが、大部分のものが、さような事態にあるように承つております。われわれとしましては、かねがね健康保険組合事業主負担金増額方について問題がありますので、調べておつたのでございますが、実はいわゆる公務員として政府職員並に扱われて参りました時代のことは、先ほどお話が出た通りでございまして、今日、なるほど公務員ではないのでございますれども、とにかくいろいろな頭の置き方は公務員並という——これはまことにはつきりしない言葉でございますけれども公務員並扱いをとつております、というのは、やはり同じ政府雇用関係にあるのでございますから、政府給与政策その他各種の保護政策的なものは、やはり政府並扱いをすれば、およそ穏当な扱いができるのではなかろうかというふうな考えを持つております。従いまして、先般問題になりました夏期手当などにつきましても、やはり国家公務員に〇・五十出す場合におきましては、駐留軍労務者にも〇・五出しております。また昨年のように、年末手当〇・八出ております場合におきましては、やはりそれに準じて〇・八の措置を講じておるというようなことで、とにかく今後といたしましても、そう公務員扱いとかけ離れた扱いは、なかなか期待しがたいものだと考えております。これは先ほども申し上げました通り政府自体の経費でやるのではございませんで、向うからドルで償還されます、ドルの裏づけのあります金の支出でございますので、一応事ごとに先方の了解を通さなければならないというふうな、非常に特殊な事情がございます。従いまして、それらの事情を打明けまして、了解をつける際、相当困難な問題が起ると思います。軍といたしまして、なるほどもつともであるという納得が行かなけば、なかなか話がつかないというのが実情でございますので、かりに三対二というふうなことにつきましても、それが法律的な根拠がありますれば、もちろん異存はなく、われわれも強硬に主張し得るのでございますが、とにかく何分いたしましても、計数的には半々というのが根本思想でございまして、それらに対処いたしまして、さらに臨機の措置として別の條項が設けられておるというふうなことでございますので、非常に困難だと存じます。なお念のため申し上げますが、御承知通り政府管掌は千分の六十でございます。これらの負担が、従いまして三十、三十ということになりますが、当組合は千分の五十でございまして、政府管掌にもまだ及ばない次第でございます。しかも、そのほかに特別附加給付等相当にやつております。他の民間にも、もちろん政府管掌にもないような附加給付をやつております。さような次第でありまして、なお労務者負担がそれに耐えないというふうな説明は、非常に困難なことではなかろうかというふうな、これは私自身が携わりながら、さような感じを抱くのであります。この辺の説明を、十分に盡し得る自信がありますならば、もちろん先ほどお話のような線も可能ではないかというふうな気もいたしますけれども、何分いたしましても、さようなことでありますので、相当われわれも苦慮する次第であります。
  15. 青柳一郎

    青柳委員 いろいろお話つたのでありますが、政府公務員であるならば、あるいは公務員らしいものであるならば、やはり政府共済組合で行くべきであると思います。そういたしますと、事務費ども非常に助かる。それを健康保険でやつておるというところに無理が出ておる。健康保険でやつておるということについては、勤労者立場考えてみまする場合には、ことに公務員でもなくなつたのでありますから、これはやはり一般労務者のために、一般健康保険の方向でもつて考えていただくべきものではなかろうか。それができないならば、政府共済組合でやるべきである、こう私は考えるのであります。いかにも保険料率の問題もございます。千分の六十でも私はいいと思います。ただその際に、健康保険組合で行かれるならば、普通の健康保険組合と同じように、保険料負担についても考えて行くべきである、こう存ずるのであります。駐留軍のことでありますから、労務部長におかれては、非常な御苦労であると思うのであります。しかし、先般もこの委員会陳情がありまして、当委員会といたしましても、大体しかるべきものである、こう考えられておるのであります。また本日の私の質問も、そういう点に触れておるのでございまして、いろいろむずかしい点はおありでございましようけれども、大体国会意向がそういうところにあるということを御存じおきの上、まだ契約もきまつておらないということでございますので、十分なる御努力を払われんことを切にお願いいたしまして、この問題についての私の質問を終ります。
  16. 大石武一

    大石委員長 他に本件についての御発言はありませんか。     —————————————
  17. 大石武一

    大石委員長 それでは次に、寄生虫予防に関する件について、青柳委員より発言を求められておりますので、これを許します。青柳一郎君。
  18. 青柳一郎

    青柳委員 私は国民健康保険事業に携わつておる者でございます。昨年毎日新聞文化章を受けた京都のある村の話でございますが、その話は、何でも質美村と申したと思います。この村では、国民健康保険療養給付が非常に重なつて、経済的に困つたものでありますから、いろいろ村人が相談いたしまして、まずやはり寄生虫の駆除から始めようじやないかというので、二回、三回に及んで集団駆虫を行つた。その結果は非常に良好でございまして、病気にかかる者も少くなつたというような事実を知つておるのでございます。それがために、毎日新聞文化賞を授与されたということも事実でございます。また先般この委員会におきましても、栄養改善法の御審議がございました。いくら栄養を多くしようとも、人間のからだの中に寄生虫を持つてつては、何にもならないというような点から、本日は寄生虫問題につきまして少しく承つてみたい、こう思うのであります。  何でも私が聞くところによりますと、戦後これが非常に蔓延をしておる。回虫による病気も漸次増加の傾向にあるそうでありますが、ことに命に関係のおそれのある十二指腸症は、非常な蔓延である。予研の小宮博士調査を聞いたことがあるのでありますが、それによりますと——これは私非常に疑わしいと思うのでありますが、人口百人について八十人ないし九十九人という結果が出ておるということを聞くのでございます。これらの寄生虫症というか病というか、その蔓延状況につきまして、まず承りたいと思います。
  19. 山口正義

    山口(正)政府委員 寄生虫の問題は、わが国では古くから問題になつている事柄でございましてあまり名誉なことではないのでございますが、日本寄生虫が非常に多いというので、有名なのでございます。ただいま青柳先生からもお尋ねの、蔓延状況の点でございますが、これは毎年私どもの方で、各府県から相当数検査人員によります虫卵保有率、つまり寄生虫卵をどれくらい持つているかというふうな調査を、各府県からとつておるのでございます。その数字に基きまして、大体御報告申し上げたいと存じます。  調査されました人数は、各年によつて異なるのでございますが、昭和二十五年では約七十万人、全国調査されております。大体それくらいの人数について調査されておるということを、最初に申し上げておきます。昭和十三年から昭和十九年までの虫卵保有率が、全部平均いたしまして大体四〇%台でございます。それが昭和二十年以後の数字を申し上げてみますと、少しく煩雑にわたるかも存じませんが、昭和二十年が七八・四%、二十一年が六六・七%、二十二年が六二・五%、二十三年が七一・一%、二十四年が六八・八%、二十五年が六〇・一%、二十六年の概数が大体六五%でございます。ただいま青柳先生がおつしやいましたように、終戦前に比べまして、終戰後虫卵保有率は、私どもの方に参つております報告によりましても、終戰後相当ふえて参つておるのでございますが、しかし二十五年にはやや減少いたしております。二十六年にはまた少し増加して、六五%というような状況でございます。  ただいま特に仰せになりました、十二指腸虫の卵の保有率でございますが、これは昭和二十五年の全国統計によりますと、非常に数が少うございまして、約四%でございますが、地区によりましては四〇%ないし八〇%というような、非常に蔓延度の高いところもあるのでございます。十二指腸虫は、特に地域的によつて非常に大きな差が現われておるのでございます。以上蔓延状況の概略を申し上げておきます。
  20. 青柳一郎

    青柳委員 私はしろうとで、よくわからぬのですが、これらの寄生虫によつて死亡するという人の調べが、あるのでございましようか。
  21. 山口正義

    山口(正)政府委員 最近出ております死因統計は、あまり新しいのはまだ参つておりません。二、三年前の統計でございますが、約八千名であります。
  22. 青柳一郎

    青柳委員 結局、今のお話を承りますと、戰後日本寄生虫問題の特質は、全国的に蔓延状況にあるということと、今難物視されている十二指腸虫がふえて来た、こういうことであると思います。私は先ほど冒頭に申し上げましたような、私の聞いたことから申しましても、結核対策は、りつぱに充実せられておりますが、やはりこの際日本の国としても、はずかしいことでもありますし、栄養問題が非常にむずかしいときでもありますし、国民健康保険が経済的にも困つているときでございますので、同様にこの寄生虫の問題を、相当価値高く対策を講じていただきたいという気持を十分持つているのでございます。もちろんこの問題を解決するためには、糞尿の処理だとか、食生活の改善というような、総合的な対策をとらなければならないと思うの百ありますが、この際効果的で実行が容易な、体内駆虫だけでも、ぜひとも普及徹底せしめたい。このために、国や地方公共団体の負担で、農山漁村であるとか、あるいは鉱山であるとか、あるいは学校の児童、そういうような者に集団駆虫実施してはどうかと思うのであります。比較的少い経費でもつて短期間に成果をあげ得ると思うのでありますが、それにつきましての方針なり御所見を承りたいと思います。
  23. 山口正義

    山口(正)政府委員 寄生虫対策といたしましては、ただいま青柳先生のおつしやいましたように、根本的には屎尿の処理ということが問題になつて来ると思うのでございます。そういう点から考えまして、政府におきましては、はるか以前から改良便所——当時内務省式の改良便所、その次に厚生省式の改良便所というようなものを考案いたしまして、それを各国民に普及させようというので、一時はこれらの改良便所の普及に対しまして、国庫補助を出していただいたときもあつたのでございますが、その後個人のそういう施設に対して、国庫補助はどうも理論上おかしいというので、なかなかお認め願えないのでございます。われわれといたしましては、でき得る限り農村地区などにおきましては、この改良便所を普及するように指導をいたしております。もちろん、都市におきまして下水の整備しておりますところにおきましては、水洗便所を普及させるように指導いたしておるのでございます。それからなお、研究の途上にある問題でもございますが、屎尿の分離というようなことも考えられております。また農村におきましては、特に屎尿を腐熟させて肥料に使うようにするというようなことを、指導しておるのでございますが、なかなか実際にそれがうまく行き渡らないといううらみもあるのでございます。  また先ほど指摘になりました食生活についての注意、これも非常に重要なことでございまして、食品衛生の立場から、あるいは寄生虫予防立場から、生野菜等に対する注意もいたしておるのでございます。先ほど指摘になりました集団駆虫につきましては、これは御説の通り、実際にやつてみますと、非常にいい効果を収め得るということが判明して来ておりますので、厚生省におきましても、昭和二十四年に回虫の集団駆虫要領というものをつくりまして、全国府県に流しまして、それに基いて回虫に対する集団駆虫をやつてもらいたいということを指導いたしております。また昨二十六年度には、先ほど指摘になりましたように、最近十二指腸虫が非常に地区によつてふえて参つておりますので、十二指腸虫集団駆虫要領というものを設定いたしまして、これを回虫の要領と同じように全国に流しまして、それに基いて集団駆虫をやつてもらいたいということを指導しているのでございます。以前は、この寄生虫対策に対します経費が、補助金として各府県に流されておつたのでありますが、平衡交付金制度ができましてから、この寄生虫対策に要します。費用は、特別な日本住血吸虫というようなものを除きましては、一般に平衡交付金に計上されるようになつてしまつておりますので、その点で私どもの方から直接にいろいろ補助を出して集団駆虫その他の寄生虫対策を実施するということが現在できないような状態になつておりますので、この点につきましては、私ども来年度の予算などにつきましても、いろいろ現在検討いたしている次第であります。
  24. 青柳一郎

    青柳委員 もう申し上げることはないのでありますが、何とぞ集団駆虫につきましても、その他の対策につきましても、現状以上に強力なる厚生施設を切に希望いたします。
  25. 大石武一

    大石委員長 他に本件に関して御発言はありませんか。     —————————————
  26. 大石武一

    大石委員長 なければ、次に結核新薬に関する件について丸山委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。丸山直友君。
  27. 丸山直友

    ○丸山委員 結核の新薬であるイソニコチン酸ヒドラジツド、これの許可をめぐつて、いろいろ世間で評判が立つておる事実があるのであります。本日の読売新聞であつたかと思いましたが、日本医師会が、この早期の許可について異議をとなえて、これに反対の意向を表明しておるというようなことが、非常に大きな活字をもつて報道せられているのであります。私、これは多少私見にわたりますけれども、この新薬を早期に許可をするということは、今までの私が見ておつた段階においては、これは非常に適当の処置であつたのではなかつたかと、私自身は考えておりますが、しかし先般清瀬の病院において、これの中毒と認められる死亡例があつた。それを解剖した結果等のものが、新聞紙に報道せられておつたのであります。もちろん、厚生省がこれを許可せられますについては、学会の中間報告をとられたはずであつたと思つておりますし、また大してひどい副作用があつたという報告は、実は私どもの耳には寡聞にしてあまり入つておらないのであります。また御承知のように、結核患者というものは、今までのいろいろな新しいストレプトマイシンその他の治療法におきましても、百パーセントいい結果が見られるとは限りませんので、あまりいい結果を見られなかつた患者は、何かわらにもすがりたいような、新しいものが出たときには、それに飛びつくというのが人情の常であります。従つてこういうものが新聞紙上に報道せられた場合には、一刻でも早くこれを入手して、それを自分のからだにためしてみたいという熱望がある。これも無理もない。従つて、その間に奸商があつて、にせものをつかませますとか、あるいは不都合なルートで不純なるものをつかませるとかいうような弊害がありますので、私は大したひどい副作用があるという積極的なこれを否定するような材料が出ない限りは、なるべく早く許可せられることが私としてはいいのじやないかというのが私の私見です。それで私は、これに対してとがめようとも思つておりませんし、何とも思つておりませんが、しかし、たまたまこの問題がそういうように世間にやかましく言われ、参議院においてもやかましく言われた。また清瀬の病院においては死亡例が出たというようなことがありましたので、日本医師会がこれに対して——承知のように、日本医師会というものは、近来学会を包含しておるのであります。学会が全部その傘下にある日本の最高の医者の団体であります。このものが新聞紙に伝えられておるような反対の意向を表明したということになると、これは私としても看過することのできない問題だと考えましたので、今朝日本医師会の事務局長を私のところに呼びまして、こういう事実があるかないかを調査したところが、あれは全然誤聞でありまして、ああいう早期の発売に対して医師会が反対の意向を表明した事実はないということであります。しかし、世間のいろいろな疑惑もありますので、その点明瞭にしたいわけでありますが、この清瀬の病院において直接死亡例と考えられ、中毒死と考えられるというふうに新聞に発表せられておりますので、その間の事情と、それから急いで許可せられるに至つたその間の事情と、どれだけの注意を払われたのか、それに対する御信念あるいは今後の処置等に対しての御報告を一応承りたい、かように考えております。
  28. 慶松一郎

    ○慶松政府委員 私どもといたしましては、結核新薬の許可に関しましては、最初これがわが国に伝えられました当時におきまして、まつたく世界情勢その他がわかつておりませんでしたが、その後漸次このものに関しましての世界の情勢がわかつて参りまして、それによりますれば、ヨーロツパにおきましては、すでに各国においてこれを使つておる。またアメリカにおきましても、六月四日付をもちまして、連邦政府はこの発売を許可した様子でございます。一方わが国におきましても、製薬会社におきましてこの品を試製をいたしまして、これを各臨床家その他にまわしましていろいろな試験が行われ、これに対しての報告等もかなりな数が出ておるのでございます。それらによりますれば、ある程度の効果があり、しかも副作用については、これがきわめて少いということがだんだんはつきりして来たのであります、と同時に、このものにつきましては、実はあまりこの点私はこれまで触れておらないのでありますが、世界的に申しまして、このものがいろいろな点で国際的に問題になつております。という意味は、わが国に対しまして、ドイツ及びアメリカから、このものをいかにして売り込もうかということに、非常な各国間の関心が寄せられているのでありまして、値段につきましても、両国において極端なたたき合いがあります。その意味におきまして、わが国においても、これをストレプトマイシンその他の薬において見たような、遅れてつくるということは、従つて非常にものの値が高くなり、高いものを患者に供給しなくてはならないということが、国産でもつてこれをまかなうとすれば、起るおそれもございますし、また一方このものを非常に望みます結果、やみの品、あるいはにせものをつかまされるというようなことになりまして、現在正式なルートで入つておりますものは、航空便で参りましたものは一本百錠入り二千四百円ぐらいでありますのに、最も高い、しかもにせものが、すでに二万三千円でもつて売られたという状況でございます。その意味におきまして、もしもこれが正しいルートで発売され、しかも国家の検定を受けたもので発売されますならば、正しい品が、しかも良質な品が安く手に入る。しかも、この値段は、おそらくどんどん下つて行くという見通しがございます。と申しますのは、アメリカにおきましても、四月初旬は一キロが大体千ドルぐらいいたしましたのが、すでに今日におきましては七十ドルぐらいになつておるという状況でございます。それらの点からいたしまして、この値段も当然下るという意味から、許可をしたらよかろうということになつた次第でございます。なおその間におきまして、私設の療養所関係その他からも、盛んにこのものを使えるようにしてほしいという御回答もあつた次第でごいます。そういう次第で、私どもといたしましては、これを許可する方針にいたしたのでございますが、もちろん、このものにつきましては、結核療法研究協議会の結果を待つて判定しようということ等もございましたので、その点につきましては、行政的な意味でこれを許可するという点で、結核療法研究協議会の御了解も得、またその委員の中には、これを金持ちばかりがやみで買うよりも、貧乏人も手に入るようにした方がいい、そういう意味で早く許可をしたらよかろうという御意見もあつた次第でございます。それで薬事審議会に諮つて、これを許可することにいたしたのでございます。しかるにこのものに関しましては、各製薬会社が、これを早急につくりたいということをねらつておりましたために、巷間いろいろなことが伝えられておりますが、これに関しましては、すべてのことが、まつたく事実無根でございまして、私どもといたしましては、信念を持つてこれが製造を許可した次第でございます。またこのことは、少しく長い目をもつてごらんになれば、必ず正しかつたということが言えると私どもは信じておる次第でございます。なお先ほど仰せになりましたこのものによる中毒死云々の問題は、この件につきまして担当をされております山口局長から御答弁があると存じますが、しかし本日の他の二、三の新聞には、あれはまつた結核による死亡でなかつたということが出ておることを、私は承知いたしております。
  29. 山口正義

    山口(正)政府委員 丸山先生のお尋ねの、清瀬病院における死亡例について、新聞紙上にも報道されましたので、私はさつそく島村院長に直接会いまして話を聞いたのでございますが、いろいろ学問的な検査結果のこまかいデータは「日本臨牀結核」に発表するというふうに言つておられましたが、昨日私が聞きましたところによりますと、あの三例の死亡例は、いわゆるヒトラジツドの直接の作用によつて死亡したのではない、そういう話でございました。一例は、約三週間使つてつたあとで肺切除をやりまして、その肺切除の手術の済みました晩に死亡したのでございまして、剖検例から見まして、ヒドラジツドのために死亡したとほ考えられないというふうな話でございました。あとの二例は、相当の重症の者だつたのでございまして、ヒドラシツドを使用いたしましたけれども、死亡いたしたということでございまして、その剖検例は、重症の結核でございますので、心臓、肺臓あるいは肝臓寺に相当の所見が出ておる。ただ一般り化学療法の際に見られるように、充血が相当つたということだけでございまして、あの死亡がヒドラジツドのために惹起されたものとは考えられないというふうに、島村院長は私に言つておられたのでございます。それで、さつそく島村院長といたしましては、他にも一相当数の患者に対してヒドラジツドを使用しておりますので、療養所内にアナウンスいたしまして、新聞にはああいうことが出たけれども、決して直接その結核の薬によつて死亡したのではないから、心配せずに服用を続けるように、万一副作用が心配されるというような場合には、主治医からその服用を中止するように注意するから、安心して服用を続けるようにというようなアナウンスをした、そういう話であります。  以上島村院長に私が直接聞きました点を御報告申し上げます。
  30. 丸山直友

    ○丸山委員 清瀬病院の三例の死亡例か、ヒドラジツドの副作用によるものではないということを今明確にされたことは、私どもとしても、たいへん喜ばしいと考えております。しかし、最初この薬が新聞で宣伝せられたときには、非常にはなやかなものであつて、患者等は、これを過信するというふうな傾向まであるんじやないかというようなことを実は心配しておつた。ところが、今度清瀬病院にああいつたことかあると、ただちに非常に危険なものだというような誤つた印象を与えるよりな報道が出て来る。それから一方かりはどういう筋かよくわかりませんか、これはおそらく前にあつたいろいろな事件から連想したことと思いますが、許可をめぐつて製薬業者と厚生省との間に何かあつたのではなかろうかというふうなデマ的な話も出て来る。これらの報道は、まことに困つたことだと思います。しかし、厚生省はこういう場合に傍観的な態度に出ないで、なるべく正式の機関をもつて、世の中の人が迷わないような発表をせられることが、やはり行政を受持つておられるあなた方としての一種の責務であると私は思う。たとえば、今のようなヒドラジツドの副作用でなかつたということを言われて、私どもでさえも、初めてなるほどと思う。世間の人は、やはりあれはヒドラジツドの副作用であつたというようなあのときの新聞記事を一応信じている人が相当多いと思う。早期に許可せられたことは、非常によかつたと私は思つておりますから、私はそれを言うのではありませんが、こういうような場合、常に厚生省は権威ある発表を、正式に新聞紙上等において周知せしめることに御努力願いたい。そうしませんと、世間にいろいろな疑惑が飛びまして、弊害があると思います。どうぞそういう御処置をとつていただきたい、それをお願いいたします。
  31. 大石武一

    大石委員長 他に本件についての御発言はありませんか。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時八分散会