○岡(良)
委員 私はただいま御提案にな
つておるこの
栄養改善法案に対しましては、心から賛意を表する次第でありまするが、この機会になおわが党の立場からの二、三の希望を付したいと思います。
この
国民栄養の不合理ないし矛盾を解決しなければならないという声は、いまさらのものではなくして、すでに両三年前においても、
厚生省の進歩的な官僚の諸君から、すでに
法律案としての原案を作成されて参考資料としてわれわれもこれを配布を受けておつたのでありまするが、それがいろいろな事情によ
つて、今日まで延び延びにな
つておる。ところでいよいよ
栄養改善法として、この
法案が提出されましたが、しかし日本の
国民の栄養を
改善せんがためには、この
法案をも
つてしてはまだまだ十分にその
改善なり、向上の目的を達することができない。なぜできないかというと、
提案者の提案理由の御
説明になり、また
栄養改善法の目的としてうたわれておるところのものが、
国民の
栄養状態を明らかにし、
栄養改善思想を高めまた栄養を
改善する方途を講じて、
国民の健康や体力の維持向上をはかる。
国民の
栄養改善について、こういう認識をしておられるというところに、この
法案が真に
国民栄養の
改善に対する正宗の名刀ではあり得ない、この弱さあるいは低調さがあろうと思うのであります。わが党の立場からは、今日御存じのごとく莫大な輸入食糧を仰いで、本年度においてもわが国の外国に支払うところの輸入総額の金額のうちの二割三分は、主要食糧に充てられておる。ところで日本が経済の自立を達成しようとするならば、国際収支の
改善をはかり、貿易の不均衡化を是正するためには、このような消費財の輸入というものは、徹底的にこれを抑制するということは当面の至上命令でなければならぬ。そういう
意味において今の
国民の澱粉偏重の栄養を
改善することは、独立日本の経済自立の大前提であるという認識が、まず欠如しておるということ、ひいてはまたこのように主要食糧が
不足しておる状況において、万一世界に大きな異変、戰争等が勃発いたしました場合に、船舶
不足の日本は食糧そのものの
不足によ
つて、生活の不安が社会不安となり、あるいは政治不安を惹起することは火を見るより明らかであります。この
意味において、厖大なる
予算が、あるいは国家保安隊等に用いられるよりも、食糧自給のための食糧増産に用いられ、同時に並行的に
国民の栄養内容の合理的な
改善がはかられるということが、国の安全と独立のための大前提でなければならぬ。現にすでに本国会においても、酪農の普及のための
予算が三十七億も可決されておるのでありますが、今日低米価と重い税金にあえいでいる農家の経済力を向上せしめるがために——單に農家に酪農を普及し、有畜農業を普及し、無畜農家を解消するだけでなくて、また受入れる市民の食生活の中に、これらの蛋白質なり脂肪分なりを、農村を供給源として受入れ態勢を進めて行くという、單に都市におけるわれわれ市民の栄養や体力の
改善のみではなく、農村の経済を一段と安定にし、また向上せしめるための重大な役割を持
つている。こういうような事情を
考えますときに、
栄養改善は
提案者が着眼されたような、單に個々の
国民の台所なり、あるいは
国民の健康につながるものではなく、日本の経済自立のために、日本の安全保障のために、ひいては日本の農村経済の安定と向上のために、これは国家独立の必至の要請であるという、この認識が足らないことが、われわれをも
つてすればこの
法律案はまだまだきわめて低調であるということを率直に申し上げざるを得ないのであります。従いまして、たとえば先ほど来金子
委員によ
つても指摘されておりますように、長い伝統と翌慣によ
つて固定しているところの農村の食生活の
改善、栄養の
改善というものは、口へ持
つて行かなければ
ほんとうの
改善はできない。そういう点から、これらの手足をできるだけ多く
養成するという
意味において、資質の充実した
栄養士を、一日も早く、一人でも多くつく
つて行くというふうなことについての具体的な用意が明確にうたわれないことは遺憾である。あるいはまた今日、日本の
国民の栄養は、農林省に
生活改善課あり、あるいは
文部省に学童給食の所管課あり、あるいはまた
厚生省に栄養課ありということで、いろいろな省がそれぞれ所管を別にしておる。その結果として
調査は
調査、農村は農村、学童は学童というふうに、真に
国民全体を一体として対象としたところの充実した、統一した
栄養改善の方途というものが、機構的に非常に実を結びがたい状況にあるのであります。こういう点は、この
法案によ
つて栄養改善のための審議会が設けられるのでありますが、審議会というものはともすれば各省のセクシヨナリズムの犠牲とな
つて、何ら明確にして強力な施策を進言し得ない、あるいはたといいたしましても、それが実際に遂行されるかどうかということにおいては、今日までのいわゆる審議会の答申案なるものが、具体的な施策に生きた実績が非常に芳ばしくない、こういう諸事情を
考えますときにもし
政府がこれらのいろいろの栄養改養に関するところの
指導的の所管課の一本化ができないといたしましても、この審議会がよほど強力に各省にまたがるところの
栄養改善の所管課を統一して、全
国民を対象としてそれぞれの職業なり、それぞれの地域に於ける立地
條件を十分に考慮いたしまして、統一ある組織的な強力なる栄養
指導を手から口へという方式において、ぜひとも
国民の
栄養改善に臨んでもらいたい。そういたしますためには、先ほど
苅田委員の発言もありましたが、やはりわれわれは少くとも一日百食以下のものにおいても、効率的な栄養を攝取せしめるがごとき
集団給食施設の拡充を、ぜしともやるべきであると思います。もちろんこれにはそれぞれ
栄養士の配置がなくても、また別々な
工場が別々に
給食施設を持たなくても、それらの中小企業体が協同組合によ
つて共同
給食施設を持つことは容易にできるのでありますから、そういうような
方向においてでも、できるだけごく小範囲においてでも、
集団給食を、特に
工場における労働者の諸君に対してはお願いしたい。あるいは農村におきましても、これは当然
法律化するくらいの意気込みをも
つて、特に農繁期を対象として——農村協同組合の厚生部面における活動の第一点は、農民の
栄養改善である。自分たちがつくつたバターや牛乳を、自分たちが消化し得るというところまで、農村の経済力を高めると同時に、農村の栄養、特に健康を生産と生活の唯一の元手として農民のためにも、かかる措置は協同組合の重要なる厚生事業の一環として、ぜひとも推進すべきであるということ、あるいはまた学童給食にいたしましても、
文部省が所管をし、最近はそれも
予算が削られたということで、全国の父兄諸君から物議をかもしておりましたが、こういうことも先進国の例になら
つて、当然全額国庫負担によるところの全学童を含む給食というものを
実施すべきものである。そういう形において、あるいはお母さんの負担を防ぎ、また
子供たちが
一つかま、
一つなべのものを、お互いが一緒に食べることによ
つて、協同親和の精神を養い、小さいときにみずからが献立をつくり、みずからが従事することによ
つて、みんなに栄養の知識をつけることができる。これは一石四鳥の策でありまするが、こういう具体的な方針を、歩一歩でもさしつかえないが、当然これは
政府の
責任について
実施してもらいたい。
工場に働くものにおいても、農村に働く農民においても、あるいはまた
子供たちにおいても日本のように、お互いが働かなくては国を守り、家を守ることのできないわれわれの環境においては、その唯一の元手である健康の最大の源泉であるところの栄養というものについては、もつと真剣な
とつ組み方をし、もつと徹底的な栄養の
改善の方途を講ぜられるべきことを、私は心から主張いたしまして、この
法案に賛成をいたす次第であります。