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苅田委員 日本赤十字社法案に対しまして、日本共産党は反対の
意向を持
つております。
国際
赤十字の主要な任務は、国籍、人種、宗教、政治的見解の別なく、公平無私に人類の苦痛を救うことであるということが、明文に書かれておるのであります。こういう條約
義務を遂行するために、中立を重んじ、
日本赤十字社の
定款にも、特に自分の国に対する自主性を強調しておるのであります。ところが、
組織的には、総裁に皇后を置き、社長に元皇族を置き、各
府県の
支部長には
府県知事を充てるというような
方法で、国と政治に強く結びついておるのであります。これでは、国を越えた中立的な行動は、とれるはずがないのでありまして、朝鮮の動乱に対しまして、一方的に国連側を支持していたことにつきまして、
日赤は、北鮮には支援の
方法がなか
つたと弁解しておりますし、去るメーデーの事件には、人民広場に数百名の死傷者を出した際に、一人の
救護隊も出さなか
つたことに対しましても、同じように知らなか
つたと弁明しておるのでありますが、これはま
つたく言葉の上の弁解にすぎなく、アメリカ帝国主義の手先にすぎない。東京都
知事を
支部長としておる日本
赤十字が、このような一方的な行動しかとり得ないのは当然なんであります。このたびの立法につきまして、この点の根本的な改革を主張いたしたのでありますが、ま
つたくいれられろところとならないのであります。
また国際
赤十字の人道博愛の精神からいえば、今
赤十字が全力をあげて努力しなければならないことは、戰争の危機を防止することであり、各国間の平和の
條件をつくり出すことでなければならないのでありまして、これは国際
赤十字社の規約にうた
つてあるのであります。ところが、一千三百万人の
社員組織を持
つておる日本
赤十字が、どれだけの戰争反対、平和を守る国民運動を推進しておるかというと、私たちはま
つたくその事実を知らないのであります。知
つておるのは、逆に朝鮮の戰争に対しまして南鮮側を支援し、二十六年度中に百名に近い
看護婦を国連軍
病院に派遣し、血液を送り、また全国の学校の兒童を動員して、南鮮のみの罹災者に慰問品、慰問文を送るという運動なんであります。朝鮮におけるアメリカの干渉、侵略の
手伝いをしておる以外の何ものでもないと、私
どもはこう
考えるのであります。
かつ、現在、
日赤の年間四十億を越える厖大な収支の主要な部分は、日本
赤十字病院に
関連する経費であります。ところが、
日赤病院たるや、今日国民大衆、わけて生活困難にして苦しい者のための
病院ではなくて、逆に終戰後も、なお皇族、華族、元皇族等、一部の特権階級のために広い便益を提供する
病院であり、
日赤看護婦の
養成所では、戰前と同じように、昭憲皇太后が定めたという制服制帽を着用し、胸に階級章をつけ、元の
監督官庁であ
つた陸海軍の忠君愛国精神で凝り固ま
つた幹部が、そのまま若い
看護婦の訓練をしておるのであります。こういうような封建的な軍国的な精神を根本的に改革する処置が、今度の新しい
日赤法案では、全然問題にされなか
つた。こういう点も、私
どもの反対する大きな原因と
考えます。
日本赤十字社の会計につきましては、世上に多くの疑惑が生れておるのであります。
日本赤十字社の実権を持
つておる監事には、元宮内省、内務省、
従つて今の
厚生省畑の高官、それらの一部の
人たちによりまして
運営が壟断されておることは、周知の事実であります。また全国一千三百万の
社員の
社費と、年々年額の
募金をもちまして成り立
つておる会計が、
社員にも、また
監督官庁にも明瞭に報告されることなく、これらのために、多くの不正事件が世上に喧伝されておることも、また
皆さん御存じの
通りであります。また
監督官庁である
厚生省と
日本赤十字社の幹部の間にも、まことに不明朗が存在しておるということも、まだこの
委員会においても、
はつきりした解決ができておらないのであります。
以上のような実態を持つ
日本赤十字社が、今回吉田政府の再軍備体制に応じまして、民間
組織から特殊
法人組織にかわり、戰前と同じように、国と密接に結びついて、国や
地方公共団体から補助金を受け、税金とかわらないような
募金を、年に一回だけでなくて、臨時にも行うような権利を持ち、
日赤のための一切の催しものは全部無税となり、有形、無形の庇護を国から受けることになるのであります。そうして、これが軍国的な、封建的な古い
日赤精神と結びついて、吉田政府の向米一辺倒の再軍備に応じて、千三百万の
社員や四百万の
日赤奉仕団という、国防婦人会と同じような
組織を通じまして、物心両面の運動をすることになるのでありますから、国民生活の中にがんじがらめに戰時態勢を固めることになるのであります。これは国を越え、また思想を越え、広く人道を行うという
赤十字精神にも、ま
つたくもとるものでありますし、日本国民大衆の
立場から申しましても、ま
つたく害あ
つて益のないものといわなければならないと思うのであります。
私
ども日本共産党は、こういう
立場から、今回の
日本赤十字社法案に対しまして、強く反対の
意見を主張いたします。