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1952-04-01 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月一日(火曜日)     午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       新井 京太君    高橋  等君       堀川 恭平君    松井 豊吉君       堤 ツルヨ君    苅田アサノ君       青野 武一君    寺崎  覺君  出席政府委員         厚生政務次官  松野 頼三君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君         引揚援護庁次長 田辺 繁雄君  委員外出席者         議     員 奧村又十郎君         大蔵事務官         (理財局国庫課         長)      吉田 信邦君         国民金融公庫理         事       最上 孝敬君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 三月二十九日  委員新井京太辞任につきその補欠として守島  伍郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員田中元君及び福田昌子辞任につき、その  補欠として新井京太君及び青野武一君が議長の  指名委員に選任された。 四月一日  委員根本龍太郎辞任につきその補欠として小  玉治行君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十八日  国立病院等地方移管反対に関する請願(中野  武雄君紹介)(第一七五一号)  国立大分病院存置請願村上勇君外一名紹  介)(第一七五二号)  結核患者附添婦制限反対に関する請願(塩田  賀四郎紹介)(第一七七四号)  理容師美容師法存続に関する請願關谷勝利君  紹介)(第一七七五号)  国立療養所における給食費増額請願青柳一  郎君紹介)(第一七八〇号)  同(高橋等紹介)(第一七八一号)  生活保護法による生活扶助料引上げに関する請  願(松谷天光光紹介)(第一七八二号)  同(金子與重郎紹介)(第一七八三号)  同(堀川恭平紹介)(第一七八四号)  同(丸山直友紹介)(第一七八五号)  生活保護法による生活扶助料引上げ等に関する  請願岡良一紹介)(第一七八六号)  国立横浜病院存置請願苅田アサノ紹介)  (第一七八七号)  未復員特例患者医療給付に関する請願(内藤  友明君紹介)(第一八一五号)  国立病院地方移管反対に関する請願西村直  己君紹介)(第一八一六号)  同外一件(岡西明貞紹介)(第一八一七号)  国立川棚病院存置請願岡西明貞紹介)(  第一八一八号)  国立豊橋病院存置請願福井勇紹介)(第  一八一九号)  未帰還者留守家族国家補償強化に関する請願  (樋貝詮三君紹介)(第一八二〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十九日  厚生省薬務局存置に関する陳情書  (第一〇七六号)  同  (第一〇七七号)  同(第一〇  七八号)  療術師法制定反対に関する陳情書  (第一〇七九号)  国立札幌病院新築完成促進に関する陳情書  (第一〇八〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  戦傷病者戦没者遺族等援護法案内閣提出第六  六号)     ―――――――――――――
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法案を議題とし、質疑を順次許可いたします。  なお、質疑に入ります前に、委員の皆様に御了解を願つておきたいと存じます。本法案審査にあたりましては、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員その他の議員の方々を初め、本案に深い関心を持つておられる方が多く、今後の委員会におきましても、そういう方より発言を申し込まれる機会が多いと存じますので、その都度、委員長において発言を許可いたしたいと存じますが、そのように決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認め、以上のことにつきましては委員長において適当にとりはからいます。  次は、この援護法案の第二章第二節を審議いたします。丸山君。
  4. 丸山直友

    丸山委員 第二十四条の遺族年金を受けるべきものの遺族範囲でございますが、これはこれで一応「その者によつて生計を維持し、又はその者と生計をともにしていたもの」というふうにしぼつてあるわけであります。しかし、死亡の当時、その者によつて生計を維持しなくとも、あるいは生計をともにしておらなくとも、当然遺族年金を受け得る、また受けしめる方が適当であると認められるものが、相当あると考えるのでございますが、どういう理由でこういうふうにしぼらなければならぬか。その必要の必然性と申しますか、なぜしぼらなければならぬかということを、いま一応御説明願いたいと思います。
  5. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来の恩給法によりますれば、同一の戸籍内にあつた者ということが、一つ要件になつてつたわけでございます。現在民法の改正によりまして、家というものがなくなりましたので、これに該当する考え方といたしましては、一応同一生計ということが同一世帯に属するということを意味するものでございますので、そういう条件をつけることが適当であると考えましたことと、それからこの遺族年金を受ける遺族につきましては、もし戦没しました者が生きておりましたならば、その者に対する生計を助けたであろうということを、一つ前提とする必要がございます。つまり、その人が戦没いたされましたことによりまして、生計が困難になつたというふうに認められることが要件であろうと考えられますので、その一般的な場合であると考えられる場合をここに限定をいたしまして、この条文をつけたのでございます。
  6. 丸山直友

    丸山委員 さようにいたしますると、大体の考え方は、恩給法に合せるということの考え方前提になつておるわけですが、そういたしますと、この二十五条にいろいろ夫についてはこういうふうである、子についてはこういうふうであるというふうな条件が並べてございますが、二の「子については、十八才未満であつて」というふうにしぼつております。恩給法では二十才未満というふうになつておると思いますが、恩給法と合せるという意味におきまして、十八才ということのわくをきめたということは、なぜ恩給法が二十才であるのに、ここで十八才にしなければならなかつたかということをお伺いいたします。
  7. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは最近におきます一般年金等の場合におきまして、生活能力の点におきまして収入が得られるか得られないかということの基準といたしまして、十八才という数字を使つている例が非常に多くなつて来ております。大体そういうふうになつてつておりますので、この場合にも、その例をとつたものでございます。
  8. 丸山直友

    丸山委員 二十四条の場合には恩給法の精神をとつた、二十五条の場合には恩給法ではそうなつているけれども、ほかがそうなつているというように、何か特に制限を強くしようというような意欲が動いて、こういうことを考えられたんじやないかというふうに考えられるのですが、そういうふうなお考え方はなかつたのですか。
  9. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 必ずしもそういう趣旨ではないのであります。二十四条に言つております生計維持生計をともにしていたというのも、大体最近におきまする遺族年金等を給付いたします場合の条件といたしましては、こういう条件をつけるのが例になつておりますし、そういうような最近の一般の例によるということでありまして特に悪くするというような趣旨をもつていたしたのではないのであります。
  10. 丸山直友

    丸山委員 これは父母についても同様だと思いますが、恩給法においては、年齢制限はないはずであります。ここでは六十才以上である、あるいは不具廃疾であつて生活資料を得ることができないというような条件がついているのであるが、この父母年齢制限を撤廃することが、むしろ私どもとしては適当ではないかというふうに考えているのであります。その点について、御意見をお伺いいたします。
  11. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 その点は、御趣旨まことに、ごもつともでございまして、もしも予算の方が許しさえいたしますならば、その点はそういたしたかつたのでございます。御承知の通り、現在六十才未満父母と、六十才以上の父母とが、大体同数ぐらいおられます。従いまして、その数字が非常に多いために、この辺でもつて財政上の面より切らざるを得なかつたという点を、御了承願いたいと思います。
  12. 丸山直友

    丸山委員 第三十一条の八でございますが、また、母、祖父または祖母が婚姻したときは、失格することになつております。これは民法上の家という観念がなくなつたからというように、説明は聞いて、一応りくつはそうであつてもいいかのように考えるのでありますが、しかし事実といたしまして、自分子供等が戦死した場合に、その父母が当時自分配偶者がなかつた、あるいはその当時あつてもその後死亡した、それが婚姻したということのために失格する、後妻をもらつたために父が受給資格がなくなるというようなことは、どうも私どもとしては、ぴつたりと賛成いたしかねるような気持がするのでございますが、これに対して、これを何か改めるような御意思はございませんでしようか。
  13. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現行の新しい民法原則からいたしまして、そういう趣旨法律上はすべて相なるようになつて来ております。これがわれわれの国民感情に合うか合わぬかという点につきましては、いろいろと疑問があると存じますが、これにつきましては、民法そのものがそういう原則をとつておりますので、そういうような関係からいたしますと、やはりこういう形をとらざるを得ないのではなかろうか、かように考えております。
  14. 丸山直友

    丸山委員 やはり三十一条に、遺族年金を受ける権利の消滅、失格条件が書いてあります。これはさつき一時金の場合においても私から申し上げましたと同様な趣旨で、やはり三年を越える刑でありましても、その刑期が終了した場合においては復活するということの方が、適当であると考えられます。これはさつき一時金のときに申し上げましたのと同様でございます。  それから三十二条の併給を禁止する条項でありますが、これは先ほど来言われます通り恩給法趣旨が大分取入れられておるわけです。また将来この法律は、恩給法の復活ということを前提として一応考えられているので、恩給法に合せるということも必要であろうかと思われる点もあるのでありますが、恩給法においては、たしかに二つ以上の年金を受ける権利がありますれば、これを併給することになつていると思いましたが、いかがでありますか。
  15. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点も、確かに今おつしやつた通りに、恩給法におきましては、両方あります場合は、両方併給して行けるということに相なつていると思います。
  16. 丸山直友

    丸山委員 従つてこれは将来の問題としても、この法律恩給法に移行する場合に、なるべく恩給法に合せたいという趣旨から考えると、どうもさつき失格条件は、恩給法との間の調節がむずかしい。これは、やる方の場合は恩給法と合わなくてもいいのだということは、どうも私どもとしては割切れないのでありますが、この割切れない面に対してあなたはどうお考えになりますか。
  17. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点に関しましては、いろいろな御意見があろうかと思うのでありますが、現在のこの遺族援護法建前といたしまして、生活に対する援護の点をある程度考えておりますので、その点からいたしますれば、わずかな金額をわける場合に、なるべく公平にわけたいというようなことから、こういうようなぐあいになつているわけであります。これにつきましては、いろいろ議論の点はありますが、全体といたしまして、恩給程度に達しないというような状況でございますので、一応公平な生活援護をする、こういうわけで、こういうようにいたしておるわけであります。
  18. 丸山直友

    丸山委員 それから遺族の一時金でございますが、一時金を交付いたしました場合に—これは総括質問のときに、もうすでに数回質問が繰返されていることですから、再び申し上げるのもどうかと思いますけれども逐条審議でございますから、もう一度あらためて申し上げておきたいことは、遺族一時金というものを公債でもらつた場合に、実際困つている人は、これを現金にかえたいという必要が、かなり起つて来るのではないかと思います。その場合に、買上げ償還あるいは十年のものを五年間にするという御答弁は承つておりますけれども恩給金庫というような形のもの、遺族の一時金の金庫のようなものを別につくつて金融の道を講ずるというようなことに対して、何らかの御計画があるか、その御熱意があるかどうか承りたい。
  19. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、われわれといたしましては、できるだけそういう必要があります者につきましての金融的な措置について遺憾のないようにいたしたいと考えておるのでありますが、国民金融公庫につきましては、その方の資金関係、あるいはこれをどういうふうにするかという関係もございますので、これにつきましては、今後関係方面に折衝いたすようにいたしたいと思つております。なお地方都道府県当局につきましては、それぞれ特別な者に対して、これに対しまする資金の融通をするという計画もあるように聞いておりまするし、これらにつきましては、またわれわれとしまして、できるだけその方面もお勧めもするし、またそれに対しまして必要な便宜も供するように努力いたしたい、かように考えております。
  20. 丸山直友

    丸山委員 質問が前後いたしましてはなはだ失礼でございますけれども、また二十五条の方へもどりまして、二十五条の子についての年齢制限父母についての年齢制限孫等年齢制限があります。この年齢制限は、この法律効力を発生するその日のその状態支給せられる、こういうふうな意味なのでございまするか、あるいはその執行中、中途で十八才未満の者が、言いかえますと、十八才未満の者がその一年の年度内において十八才を越えたという場合には効力がなくなる、年度内において父母が六十才という年齢に達した場合には、その時から効力を発生するというふうに、月割計算でおやりになる意向であるか、あるいは支給の時期等は別に決定することになつておりますが、その時期ごとにこれを変更せられる御意思であるか、あるいは前払い制度をやる御意思であるか、その辺についての調節及びやり方についての具体的な御所見を伺いたい。
  21. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、大体その資格要件を得ました月、失つた月、その月までの間のものを支払うということに、今のところ考えておるわけであります。またこの支払いにつきましては、その権利を完全に取得いたしました直後にこれを支払うようにするというのが、現在の一応の考え方でございます。
  22. 丸山直友

    丸山委員 権利を取得した直後に払うといたしますと、これは大体年に何回ぐらいにわけて交付せられる今の御予定でありますか。
  23. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在の恩給法におきましては、四回ということになつておると思います。これを四回にした方がいいか、二回にした方がいいかという点につきましては、いろいろと問題があると思います。あとから払うと申しますか、その権利が完全にでき上つて後に払うといたしますれば、回数の多い方が、割合に早く権利者の手にくるということになりますし、また金額の問題もございまして、金額がきわめて少いという現在の事情も考慮しなければならないのでまあ四回あるいは二回というところが、現在のところ適当なのではなかろうかと考えております。ただいまのところは、一応二回ということが適当ではないかと思つております。
  24. 丸山直友

    丸山委員 少しくどくなりますが、もし二回と仮定いたしますと、一回払つてしまつた、その時はまだ十八才未満であつて、もらつた、その次の支払い時期までの間に十八才を越えるというようなことが起つた場合には、その人が効力がなくなる、満十八才になつたそのとたんに払われるのか。あるいは効力がなくなつた十八才を越えたけれども、しばらくその次の支払い時期まで待つて、その月割で払われるのか。六十才以上の場合は、また逆になると思いますが、その辺の操作をひとつ伺いたい。
  25. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一応の建前といたしますれば、やはりその次の支払い時期に支払われるということになるわけであります。
  26. 丸山直友

    丸山委員 一時金でございますが、一時金を支払われる遺族範囲は、三十五条に規定してあるわけでありますが、この中で兄弟姉妹というものが入つておらぬのです。この前の日華事変満州事変等遺族給与等においては、兄弟姉妹が入つております。今度はそれが落ちております。一時金というものの性格は、大体これは死亡せられたという事実に対する弔慰意味をもつて出される金であろうと思います。援護というような意味でなく、弔慰金というような意味が強いものであると考えられるのであります。国家弔慰の意を表するときに、ただいまの定められた妻、子、あるいは夫、孫、父、母、これ以外に兄弟、あるいは場合によりますと姉妹がその生計を維持する主体であつて、そしてその人がなくなられた人の祭祀を営んでおる。こういうような場合には、当然弔慰という意味を持つておる一時金でございますから、該当者がないからやらないということでなく、たとい兄弟姉妹でありましても、その祭祀を営んでおる者には与えるということの方が、弔慰金というふうな意味を持つておるということから言うと、非常に合理的であると考えられる。これが除かれておるということは、私ども非常に不都合じやないかという考えを持つておりますが、その点についての御意見を伺いたい。
  27. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この遺族一時金の性質につきましては、弔慰性質もございますが、援護性質も含んでいるというような趣旨をもちまして、一応予算的な措置を講じてあります範囲内において、その当時考えておりました数の範囲におきましては、この程度にまでしか及ぶまいというふうに一応考えて、このような規定にいたしたわけであります。
  28. 丸山直友

    丸山委員 予算範囲というお話を今承つたのですが、一時金は利子で計上してあります、公債発行総額で押えておりません。ところが実際のあれを調べてみたり、またあなた方の方から来ました資料を見ましても、この利子支払いというものに関しては、若干の余裕を置いているような、最初の予算額よりは、実際の支給においては余るというような計算でやつておるようです。また実際やつてみると、そういうようなことが起るのじやないか。私がこの書類から拾いました兄弟姉妹世帯数というのは、九万四千二百七十世帯になつております。緑風会では一万六千世帯のように計算しておる。これは食い違いが生じておる。いずれが正しいかわかりませんが、あなた方の一応出されました資料を信頼いたしまして、兄弟姉妹世帯数は九万四千二百七十と押えましても、これに一時金と公債支給いたしました総額が四十七億一千三百五十万円になるように思います。そうしますと、この利子を六分といたしますと、大体二億八千二百八十一万円の数になる。予算によりますと、三億三百九十三万四千円の剰余が生ずるような計算になつておりますので、この兄弟姉妹にこれを与ええましても、予算面から言うと、何も予算に縛られてやれないのだというような御答弁は、必ずしも当らぬじやないかと考えられます。この点を伺いたい。
  29. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法律を立案いたしまして、これができ上りました当時におきましては、兄弟姉妹世帯数というものが、明らかになつていなかつたのであります。その後戦没者の数と、それからここに書いてありますところの遺族のあります世帯の数とを比較いたしますと、相当大きな開きがございまして、その中でどの程度兄弟姉妹の属する世帯でありますかということが、明らかでなかつたために、これを入れました場合に、はたしてこの予算範囲内で済むかどうかという点につきまして、若干疑問があつたのであります。ただいま御指摘になりましたように、現在われわれが持つておりますその後調査いたしました数字によりますれば、一応兄弟姉妹世帯まで入れましても、何とかなるというように考えております。
  30. 大石武一

    大石委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止
  31. 大石武一

    大石委員長 速記を始めて。  岡良一君。
  32. 岡良一

    ○岡(良)委員 国民金融公庫の方が来ておられますので、二、三お尋ねをしたいと思います。  遺族に対する国家補償と申しましようか、一時金なり、あるいは年金等支給いたしましても、やはり生活自立性を与えるという意味から、自活のための具体的な職業に立たしめるという措置が、何と申しましても一番大切なことだと思いますので、遺族に対する生業資金を供与するということは、この法案の運営の万全を期する意味においても、何らか責任ある政府の御措置をお願いいたしたいと思いまして、先般予算委員会においても、大蔵大臣に対して、今度金融公庫の方へ政府から三十億の出資をいたされますが、その中で、遺族生業資金あるいは戦傷病者のための生業資金、こういうものをその出資金わくの中においてでも、しかるべく設定をしてもらいたいということについての政府考えをただしましたところ、何らか適当な方途は講じたいと思うが、金融公庫理事者と相談した上で、たとえば何十パーセントを設定するかという点はきめたい、こういうふうな御答弁であつたのであります。従いまして、この法律案もいよいよ審議が進んでおりますので、この法律案の運営上、密接不可分な生業資金の供与について今度の政府出資三十億の中で、何十パーセントを遺族あるいは戦傷病者生業資金として振り向けられるように、あなた方の方で御相談ができたかどうかという点をまずお伺いいたします。
  33. 最上孝敬

    最上説明員 ただいまの御質問通り、私どもにおきましても、大蔵省の当局方々と、いろいろお話合いをしておるのでございますが、ただいままでのところ、まだそのどれだけのわくをきめて設定するかというようなことにつきましては、はつきりした結論か出ておりません。その事情ちよつと御説明申し上げたいと思います。それは今回三十億という増資をいただくことになりました。そのほかに預金部資金二十億を借り入れ得るようになつております。全体で五十億という貸金がふえて参るわけであります。このほかに、従来の貸付金回収取立が、これが約六十六億ほど見込まれておりまして、全体で百十六億、私どもといたしましてはこれまでにない大きな資金を利用できることになつたわけでございます。ところが、一方需要の方が非常にふえて参りました。それは昨年度中に支所を十箇所増設することになりました。また本年度に入りまして十箇所設けました。従来、大都会ないしそれに準ずるような都会地だけしか十分なお貸付ができませんでしたのに、今度広く各都道府県一つ中心地を置いてお貸付をしよう、そのほかに、さらに辺鄙な土地におきましても、代理所を利用しまして、従来あまり資金をおまわししませんでしたのを、今度は、十分とは参りませんが、よほど円滑におまわししようと考えておりますので、そういう点から申しまして、この百十六億というふうな資金も、実はこの要求に対しましては、はなはだ心細いと思われる状態なのであります。今までのお申込み金額考えてみましても、昨年の今ごろは、ちようど十億そこそこの月々のお申込みを受けておつたのであります。それがだんだん各地に店が行きわたつて、手広く仕事をいたすようになりましてから、次第にふえまして、最近におきましては一箇月約三十億を下らないお申込みになつております。年間三百六十億というふうなお申込みになりました。これに対しまして百十六億と申しますと、実は三分の一にも足らない。従来も大体その程度の率でお貸付をいたしおりました。足らない足らないといつて、お申込みの方が詰まつて参りまして、なかなかその順番にまわらないというお声を方々で伺つて、非常に苦慮しておつたのでございます。今後も、そういう事態はまだ改まりそうにもないわけでございます。その中から、さらにこの方面にあるわくをさくとなりますと、ごくわずかに限れば別でございましようが、そういうふうなこともできませんで、相当のことを考えますと、これはなかなか決断がつかないわけでございます。いろいろお話合いをしておりますが、今のところ、現状のままでは、まだはつきりこれだけということは申し上げられない状態になつております。
  34. 岡良一

    ○岡(良)委員 今の御答弁を伺つて、私どもも実は非常に遺憾に思つておるわけなんです。これは、もうすでに二箇月有余前、二月五日の予算委員会の席上における大臣の言明であつたのでありまして、この間政府出資等についても、はつきり予算措置も決定をしておりますので、何らか適当なわくが、遺族の諸君の生業資金のために優先的に設定されることを期待しておつたのでありますが、まだ御相談がまとまらないということでは、私どもまことに遺憾に思います。それはそれといたしまして、しかし遺族のために、あるいは戦傷病者のために、この援護法案等によつて年金なり一時金なりの給与を受けておる世帯が、ぜひとも生業資金を借り受けたいという場合には、わくは設けないまでも、そういう特殊なる事情にかんがみて、優先的に貸し付けるという措置を講ずるということはできないものでしようか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  35. 最上孝敬

    最上説明員 優先的ということは、実はいろいろな方面から御要望がございまして、一方をお立てして、ほかの方を押えるというわけには、なかなか行かないものですから、これもまことに遺族方々にはお気の毒に思うのですが、今のところ、どうもそういうふうな措置をはつきり講じ得るという段階になつていないと、遺憾ながらお答え申し上げざるを得ない状態でございます。
  36. 岡良一

    ○岡(良)委員 御存じの通り、これまでは金融公庫の窓口でお取扱い願つてつた例の更生資金も、打切りのような形になつております。あの更生資金も、当初は引揚者に対象を限定しておりましたが、その後未亡人等に対しても貸し付けようというところまでわくが広がつた。ところが、それが打切りになりまた。そこで、この法律案が出て、遺族に対する国家補償という立場からするところのいろいろな保護の手が、あるいは補償の手が差延べられるというときには、何と申しましても、自活能力を与えるための最も大事な誘い水としての生業資金が必要になつて来るのは当然であつてこの点について、そういう事情を勘案せられるときには、金融公庫の窓口においても、地方金融公庫の支所の方においても、何とかあなた方の方で、こういう遺族たちの生業資金については、優先的に取扱うというふうなことについての御指示を出していただき、また理事者等においても、御研究の上で、そういうようにとりはからつていただくわけには行かないものでしようか、もう一ぺんお伺いいたします。
  37. 最上孝敬

    最上説明員 その点につきまして、なお今後ともいろいろ各方面の御都合も伺いまして、できる限りのことはしたいと思つております。たとえばお申込みになります際に、遠方へわざわざお出かけになるというようなことでは、非常に御不便であろうと思いますので、そういうときに市町村の窓口を一利用される—現在更生資金などについて、そういう方法をとつておるのでありますが、そういうようなことはあるいはできるかと思つております。この点も、まだ実は具体的なことをはつきりお答え申し上げる城に達しておりませんので、はなはだ残念でございますが、この程度のことしか申し上げられません。
  38. 岡良一

    ○岡(良)委員 国民金融公庫のこれまでの貸付の方法では、原則としては、大体担保はおとりになりませんが、保証人を立てて信用でお貸しになる—事業計画等について十分御調査の上、大体において保証人の信用等を中心としてお貸しになるのですか。たとえば障害年金証書とか、遺族年金証書なり、あるいは交付公債等は、将来国民金融公庫としては、これを担保物件乏してお取扱いになつていただけるでしようか。
  39. 最上孝敬

    最上説明員 先ほどよく申し上げるのを忘れましたが、そういう点は何とかしたいものだと思つて、実は考えておるのであります。今でも、公債は担保としてとつてもいいということになつておりますが、もし担保としていただけるようになりますれば、それだけ調査などは簡単に行くことになります。この点は、御利用になる方も、非常に好都合になるだろうと思います。ただ、担保としていただきます前に、いろいろな問題がまだたくさんございます。たとえば、いよいよその担保を一切処分せねばならないということになつたとき、さまざま処分の制限について、いろいろ制限をを緩和していただくようなことをお願いせねばならないだろう、こう考えております。
  40. 岡良一

    ○岡(良)委員 担保物件として公債等をお受取りになつて、扱つていただくような場合には、たとえば、貸出しの額面はどういうところに限度を押えられますかという点と、さらに、昔は、恩給金庫は、恩給の証書を担保といたして貸付をいたしておりましたが、たしかあのときには七箇年間に受領し得る恩給金額を限度として貸付をしておつたと思います。この場合にも、やはり障害年金なり、また遺族年金等の諾書を、担保物件としてお取上げになつていただくということについての御考慮をお願いしたいので、この点の御構想を承りたいということと、またそういうふうにしていただけるものとすれば、これはあなたの個人の腹蔵のない御見解でもよろしいのでありますが、一体何箇年ぐらいのものを担保として貸し付けていただけるものかどうか、承つておきたいと思います。
  41. 最上孝敬

    最上説明員 ただいまお話のような細目にわたりましては、実はまだ考えておりません。私ぼんやり考えておりましたのは、公債の場合だけを考えておつたわけでございまして、今の年金のごときを現金化する点は、まだ考えておりませんでしたが、今後研究いたしたいと思つております。
  42. 岡良一

    ○岡(良)委員 これは将来大蔵委員会等でも問題になる点でありますが、金融公庫の方でも、大蔵当局等とも十分お打合せをせられて、できるだけ早い機会に、この対策については具体的なものをおまとめ願いたいと思います。いずれまたあらためて適当な委員会等において、皆さんの御見解なり、あるいは具体的なやり方についてお伺いすることにして一応終ります。
  43. 高橋等

    高橋(等)委員 関連してお伺いいたします。国民金融公庫に、遺族生業資金わくを設けて貸出しをするということは、先ほど岡委員が指摘されましたように、二月五日の予算委員会で、私の大蔵大臣に対する質疑に対する答弁として、はつきりと承つているのであります。岡さんも、それを聞かれて質問されているのでありますがお話を承りますと、爾来相当の日数がたつているにかかわらず、この問題について、まだ見通しも何もついていないというお話であります。大蔵当局との話合いといいますか、あなたの国民金融公庫内部で、どういういきさつでもつておやりになつているか、その点を承らせていただきたいと思います。
  44. 最上孝敬

    最上説明員 私どもの方では、先ほど申し上げた通り、現在認められております資金量をもつてしては、はなはだ心細い。せつかく窓口を開いて大勢の方がおいでになつても、御満足を与えられないという点を、非常に心配しておりますので、何とか資金をもう少しふやしていただく方法はないかということに主力を注いで、お話を続けているわけであります。
  45. 高橋等

    高橋(等)委員 そうすると、国民金融公庫の方では、そうしたわくを設けること、しかも、設けてそれを十分に活用ができる程度わくにしたいという熱意を持つて努力している、こう承つてよろしゆうございますか。
  46. 最上孝敬

    最上説明員 できればそういうことを希望しているわけであります。
  47. 高橋等

    高橋(等)委員 できればというお話でありますが、われわれは、こうした措置について強く要望いたしております。自由党としましても、遺族対策の一つの大きな政策としましてこれを確認し、党の態度を決定いたしております。各党ともにこの点は同様お考えになつておることと思うので、どうぞわれわれの熱意を十分勘考くださるとともに、遺族——もつとも世の中には、遺族さん以外に気の毒な方もたくさんあるのでありますけれども遺族、未亡人の立場というものを、十分に同情ある立場でお考えつて、ぜひひとつ実現するような熱意をお示し願いたいと思います。希望を申し述べて終ります。
  48. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ただ一点だけお聞きしたいのです。公債を担保にして貸出しは考えてもいいというお話であつたのですけれども、その場合に、担保としてはとるけれども、たとえば優先的には、ほかのものがあるから、担保としては認めるけれども、貸出しはお断りするというようなお話ですが、担保がありさえすれば、すぐたいてい無条件に金になるかどうかということ、この点につきまして、ちよつとお考えをお聞かせ願いたいのです。
  49. 最上孝敬

    最上説明員 ただいまの点は、実は私ども法律を厳重に守りますと、非常にむずかしくなるのでございます。と申しますのは、あくまで私どものお貸しするのは生業資金で、仕事が成り立つというはつきりした見通しがなければ、お貸付けできないということになつております。担保は、それはただ背後にあつて、回収を確実にするということだけのものでございます。法律の上から行きますと、今のお話のように、担保さえあればすぐお金をお貸しできるというわけには、どうも参らない状態でございます。
  50. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ただいまのお話では、法律を厳重に守ります。という、お含みのあるお言葉があつたわけですが、たとえば、こういう特別な人たちに対する場合に、そういうことをあまりやかましくせんさく立てしないで、大体の条件がそろつていれば、これはなるべく資金化するというお考えがおありでしようか、しつこいようですが、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  51. 最上孝敬

    最上説明員 そういうようにしなければならない状態にあるいは至りはしないかというような懸念を持つております。そういうような点なども、先ほど申し上げましたように、まだ確定案ができないという事情一つになつておるような次第であります。
  52. 丸山直友

    丸山委員 先ほど議事の都合で質問を中断されましたので、続いてお伺いしたいのです。やはり三十五条の関係でありますが、夫の場合は第二十五条の一号の不具廃疾、子は第二十五条の二号の年齢的な制限、孫は第二十五条の四号で、やはり年齢的な制限があるわけであります。     〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕  これもやはり一時金の性格が、当然弔慰金であるというふうな考え方から言いますと、これも予算からしぼつたといえばいわれるかもしれませんが、どうも私どもにはぴつたりのみ込めないのです。夫が不具であろうがあるまいが、国家弔慰の意を表するということに差があつてはならぬと思いますし、子の年齢がどうあろうとも、国家弔慰を表するというのには——弔慰というのは、おとむらいの意味を表わすので、それは年齢によつて差があるわけがないと思います。こういうことは当然撤廃せれるべきものだと、私ども考えておるのでありますが、これはただ予算だけの御都合でありますが、御見解はいかがですか。
  53. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは立法の際の考え方及び経過につきまして、先般大臣からも御説明がありましたように、当初の考え方では、やはり援護の一環といたしまして始めたものであります。そういうことでもつて援護の一環として弔慰の意を含めるというところから、この規定ができておるのであります。そういう法律の精神からいたしまして、一応こういう対象に限定したのであります。なお、これを広げようという場合には、先ほど申しましたような考え方がございましたので、一応そういうところにとどめたというふうに御了承願いたいと思います。
  54. 丸山直友

    丸山委員 ただいまお話のように、年齢制限あるいは不具廃疾制限というようなことは、非常に不合理だと思いますので、予算とにらみ合せて、私どもはこれを何とかしたいと考えておる次第であります。それからいろいろな状態を決定する条件があつたはずだと思います。また元へもどりますが、たとえば三十一条によりますれば、配偶者は、婚姻をいたしますと失格することになつております。ところが、婚姻をしたという事実は、一体いつを標準にしてお考えになる御意向であるか。この法律効力の発生した時に、現在婚姻をしておらなければよろしいのか、あるいはその時には婚姻していなくても、この法律効力を発生する前に、なくなつ遺族以外の人と一旦婚姻したという事実があつた場合には、失格条件になるのか、どうもその辺が不明確であると思いますので、もう一ぺん答弁をしていただきたいと思います。
  55. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 「配偶者については、婚姻したとき」こういうふうにありますのは、配偶者が、戦没者の戦没した後婚姻をしたという事実があつた場合の、すべてを含まれると考えてます。
  56. 丸山直友

    丸山委員 そうしますと、婚姻ということは、届出をしないが、事実上の婚姻関係と同様の事情に入つていると認めたときは、みんな婚姻になると考えられますが、そうしますと、これの立証をどういうふうにしてなさるかということであります。この法律効力を発生したときに、事実上婚姻しておらなくても、過去においてある日数、あるいはある時間でもいいかもしれません、何も規定がないのでございますから。またその対象になる人が単数であつても複数であつても問題でないと思います。従つて、妻である場合においては、夫が戦死したという場合に、その後数年間、この六年か七年の間に、事実上婚姻と同様の関係があつたかなかつたかということは、一体どうしてあなた方はこれを立証なさるおつもりであるか。
  57. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 「事実上婚姻関係と同様の事情に入つている」というのは、いわゆる内縁関係を指すものでございまして、それは世間一般が婚姻関係に入つたということを公認した場合に限られるわけであります。従いまして、ただそういうような婚姻関係は、実際世間が認めておるという事実でございますから、その立証につきましては、割合に容易なのではなかろうか。しかし疑わしいようなものにつきましては、事実上婚姻関係同様に入つておると認めることが、おそらくできないのじやないかと思います。
  58. 丸山直友

    丸山委員 この問題は相当デリケートなので、一々掘り下げておつたら、たいへんなことが起つて来ると思います。ただ、これを運用なさいますときに、よほどお考えくださいませんと、いろいろ文句がつくと思います。また事実上非常に不行跡な人があつて、とても遺族年金とかそういうものを上げるのに、ふさわしくない人もないとは申されません。しかし、そういうような場合でも、この精神をよく生かして、よくこの法の運用を誤らないようにせられたいということを、特に私は希望しておきたいと思います。  ただいまちよつと思いつきましたことは、大体それで尽きておりますから、これで終ります。
  59. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは委員外質問を許可いたします。奧村又十郎君。
  60. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 私は委員長の許可をいただきまして、ただいま議題に供されております遺族一時金に関連いたしまして、特に上海事変、日華事変当時の遺族は、この一時金が交付されない、この事情についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。昭和十二年七月七日以後、太平洋戦争までの約四年間に、十九万人余り戦死しております。人数で行きますと、太平洋戦争後の戦没者と比較すると、約一割であります。この一割の遺族の方に交付せられないということについては、全国的に非常に不満があるように承つております。特に元の金沢にあつた九師団管下などは、これは日華事変当時非常に勇名をとどろかした師団でありますが、この師団管下などにおいては、戦死者の過半数が上海事変、日華事変において戦死しておる。そこで全国的に見て地区的に非常に不公平な観念を持たせるというふうに考えるのであります。そこで、今日までにこの点もいろいろ御審議があつたと思いますが、少しこまかくわたりますが、政府のお考えをお尋ねしておきたいと思うのであります。なぜ十九万人の、太平洋戦争以前の戦没者方々に対して、一時金を交付せられないのかという理由であります。これにつきましては、今日までもすでに御答弁があつたことと思いますが、私は、これについて十分御説明をいただきたいと思いますから、恐縮でありますが、あらためてこの理由をひとつお示しを願いたいと思います。
  61. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この遺族一時金の考え方につきましては、前に大臣からも御説明があつたのでございますが、これは当初の考え方と、この法案のできまする過程におきまして、考え方がかわつてつておるのであります。当初におきましては、遺族の一時金は遺族援護一つの手段として年金でやりまする場合と一時金で援護いたします場合と、二つの場合を考えたのでございます。年金でやります場合には年金だけ、その年金の行かない部分につきまして一時金を出すという考え方でもつて予算が組まれたわけでございます。その後になりまして、いろいろな情勢からいたしまして、これが変更になりまして、一時金は全部に出しまして、そのうちで特に生活援護等の必要であると認められるような状態にありまする者につきまして、遺族年金を出すことにするというような形に、形がかわつて参りまして、現在の法案に相なつて来たわけであります。そこで遺族一柱につきまして遺族一時金を出すということになりますと、その後できました資料からいたしますれば、全部の遺族に対しまして遺族一柱に一時金を出しますことは、予算の上からできないという結論になりまして、これに対して、どこかで線を引かなければならないということに相なつたのであります。そこで、どこに線を引くかということになりますと、これにはいろいろなりくつがつくのでありますが、その線の引き方について太平洋戦争以後の者についていたすということが、一番適当ではなかろうかということが考えられたわけであります。と申しますのは、太平洋戦争以後のものにつきましては、先ほどもちよつとお話がございましたけれども、死没特別賜金が出た者も若干ありますが、大部分出ていないというような状況でございます。それまでのものにつきましては、一応各種の援護措置が、その当時いろいろな方法でもつて講ぜられて来たというような関係もありまして——太平洋戦争以後の者につきましては、これらの措置が講ぜられた者もありますし、講ぜられない者もありますし、戦死の公報等の入りますのも非常に遅れた、特に戦没者がその最後の時期において非常に多かつたというような事情もございまして、結局どこに線を引くかと申しますれば、そこに線を引く以外にない。その前の日華事変までこれを入れますと、現在持つております予算では、ちよつとまかない切れないということになりましたので、そこに線を引いたというような実情でございます。
  62. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 遺族援護対策は、国家の財政上まことに不十分であるが、これは今しばらくやむを得ないということで、遺族の方にしんぼうしていただくわけでありますが、しかしそれにしても、不公平があつたのでは、これはしんぼうしきれないことになろうと思います。ただ、予算上金が足りないから一線を引いたのだというふうなことで、遺族を納得させることはできぬと思う。一線を引くならば、なぜ満州事変で一線を引かなかつたか。ここでかりに予算を増額するにしても、この十九万人の方全部にお上げして九十億円である。八百八十億円の予算を、もう九十億円ふやせないということはないはずである。しかも政府資料を見ますと、当初八百八十三億を見積つておる。ところが実際は八百三十二億でよろしい、あとは五十億は不用になつたということになつておる。そうすれば、これにもう四十億加えれば、一応満足させることができる。その九十億がどうして見積れなかつたか。しかも、これは公債でありますから、ただちに財源を求めねばならぬということはない。そこの点はどういうわけですか。
  63. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先ほど申しましたように、金が足りないという点だけではありませんが、金のわくがはまつておるということも、一つの理由でございます。そこで、どこで線を引くかということにつきましては、先ほど申しましたように、特別の一時金が出ている者と、出ていない者、援護が割合に十分行きました時期と、それが行かなかつた時期、この間に線を引くのが一番よかろうという二つの理由からでございます。  なお、先ほど御指摘がございましたように、政府予算は若干余るような形になつておりますが、これにつきましては、それならば、それをどこに入れるかという場合に、兄弟姉妹の方にやる方がいいのか、あるいはどうしたらいいのかというような点の問題もございますので、現在のところ、一応そこで線を引いたということで御了承願いたいのであります。
  64. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 兄弟姉妹の方に上げるということですが、兄弟姉妹に上げるとして、たしか十億あれば行けるのじやないかというふうに聞いておるのですが、兄弟姉妹にどのくらいいることになるのですか。
  65. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 兄弟姉妹にいりまする額は、四十七億幾らかと思います。余つておりますのがそれでちようど埋められるくらいというところだと思います。
  66. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 私は九十億の公債は、この際増額して、上海事変以後の戦没者遺族の方にも差上げるべきだと思いますが、これはしかし政府にお尋ねいたす問題ではなかろうと思うので、国会として今後努力すべき問題であろうと思いますから、この問題はこれ以上お尋ねいたしません。  さて、そこで第二段に、一応太平洋戦争以後ということに一線を画した。そこで、その理由としては、それ以前の戦没者に対しては、それぞれ死亡賜金などを与えてあるからと、こういうことでありますが、はたしてそれでもつて遺族方々を納得させることができるかどうか、この面を私は不安に思いますから、その点をつつ込んでお尋ねいたしたいと思います。そこで、昭和十二年七月七日の上海事変以後太平洋戦争開始前までのこの十九万人の死没者の方々に対して、一体政府はいかなる処置をとられたのであるか。死亡賜金を上げられたというのなら、どういう程度に処置をなすつたのか。これをよくお伺いいたしておきませんと、太平洋戦争以後の方に対する取扱いの公平な判断ができぬと思いますので、その点を詳しくひとつお答え願いたいと思います。
  67. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 戦争によります戦没者に対しましては、特別賜金が出るように、明治二十八年以来そういう規定ができておりまして、日華事変におきましては、これによりまして死没された方に出ました賜金は、その当時の賜金といたしまして、大将では戦傷死の場合は八千五百円、伍長で千六百円、一、二等兵で千三百円というような数字になつております。戦病死の場合には、大将で五千六百円、伍長で千二百円、一、二等兵千円というような賜金が出ておつたのであります。なお、その他、その当時におきましては、各種の軍人援護事業というものが非常に盛んにやられておられたのでありまして、十分なる措置が軍人援護といたしまして講ぜられておつたということは、御承知の通りだと思います。
  68. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 しかし、政府が一線を画されたという理由となるものは、これらのうちで、どういう点をとられておるのでありますか。
  69. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは先ほど申しましたように、今度の遺族の一時金というものが、この特別賜金と同じものであるという考え方から出ておるのではないのでありまして、一時金は、やはりあくまでも援護というものが建前で、援護弔慰考え方を加えておるという考え方でこの法案は立てております。従いまして、これと比較いたしまして、同じであるというふうな考え方のもとにいたしたのではない。一応前の方のものにつきましては、その当時の考えといたしまして、いたすべきことを一応いたした。従つて、それが十分に済まされていない特に大部分の戦没者がありましたとき、あるいは戦没者が確認されましたとき以後が、国内の非常な混乱状態でありまして、適切な措置が講ぜられなかつたという太平洋戦争以後というものにつきまして、特別な措置を講ずるということにいたしておるわけでございます。
  70. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 それでは先ほどお話になつた特別賜金なるものは、現金で渡されていないと思うのでありますが、どういう条件公債で渡されておるか、お尋ねいたします。
  71. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この公債は、三分半利五年すえ置き、三十年以内の償還ということに相なつております。
  72. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 それ以外に現金などを渡されておるのではないですか。
  73. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 その当時におきましては、いろいろな援護措置がとられておりましたことは、御承知の通りでございます。ただ、これは特別賜金として出ましたものを一つの例としてあげただけであります。そのほかにも、各種の措置が講ぜられておつた。軍その他におきましても、いろいろな措置を講じておつたわけであります。
  74. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 次にお尋ねいたしたいのは、この公債で渡された特別賜金は、当時現金で受取つておる遺族は、ほとんどあるまいと思います。政府の御答弁では、これは別にこの特別賜金のかわりに今度一時金を渡すわけじやないのだ、こういう御答弁ではありますが、その遺族の受取る感じとしては、やはりその当時の特別賜金と今度の一時金を比較するのであります。そこでお尋ねするのでありますが、この特別賜金なるものは、当時の金で一、二等兵なら千円ないし千二百円、しかし戦死の当時にこの金を受取つておるならば、これは今の五万円以上の値打がある。しかし、これは公債であつて、その時現金化されていない、そこに問題がある。そこで、この公債は一体どういうふうにその後現金化されておるか、その点を国庫課長にお尋ねいたします。
  75. 吉田信邦

    ○吉田説明員 今のお話の国債は、普通の国債と大体同じの三分半利公債で発行されております。その公債の券面上に、スタンプで特別賜金公債であるという旨が表示されておりますだけのものでございますから、その後の処理につきまして一般の三分半利公債の中で特別に区わけをいたしておりませんので、そのうちどれだけの部分が買い上げられておるかということは不明でございます。ただ、この三分半利公債全体につきまして、実は一昨年四月に銀行等の金融機関の持つておる部分は除きまして、一般大衆の持つておられるこういつた小額の国債につきましては、全部買上げ償還をすることにいたしまして、この公債については二十五年の七月以降から買上げをいたしております。それで、買上げは、発行価格で買い上げることになつておりまして、別に特別な条件はございませんが、持つていらつしやつた分は、すべて買い上げるという方式でやつてつております。従いまして、それ以前にあるいは証券業者等に売却なさつた方もおありかと存じますが、この買上げ償還によつて、大部分の方は買上げをなさつておるのじやなかろうか。実は私どもの方としまして、戦前に発行いたしましたあらゆる小額の国債につきましては、券面も小そうございますし、また利払い等の手続も、わずかな利子を一々銀行にとりに行くというようなことも非常に煩雑でもございますので、一応戦前の大衆の持つておられた公債については、全部買い上げることにいたしまして、その当時いろいろと宣伝をして買上げを開始いたしました結果、大体昨年の夏ごろには、もう買上げに持つて来られる方が非常に減つて参りました。ただ、これをいつまでもだらだら買い上げしおりましては、なかなか持つていらつしやらないのですから、八月末でございましたか、一応形式的には全国的な買上げは打切ることにいたしたのでございます。しかし打切ると申しましても、絶対的に打切つたわけではなくて、国債代理店等で買い上げるのを打切りましただけで、日本銀行の本支店におきましては、今でも持つていらつしやれば、いつでも買い上げるということにいたしております。その結果幾ばくが残つておるかということが実は明瞭でないので、はなはだ申訳ないのでございますが、現在でも日本銀行の本店または支店にお持ちいただけば、いつでも買い上げることになつておるということをお答え申し上げたいと思います。
  76. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 一昨年から買上げをしておるということであります。そういたしますと、この特別賜金が現金化されたのは一昨年以後—大部分は一昨年以後に現金化されておるというふうにお伺いしていいわけでありますか、そうでありますか。
  77. 吉田信邦

    ○吉田説明員 その点につきましては、これは何とも申し上げられないのでございますが、まあ戦時中におきましても、いろいろな社会的な制約はございましたけれども公債の売買は一応自由であつて、あの当時としては小額国債などを金融機関なんかで買い上げると申しますか、困つておる方のを買い上げたりなんかすることもあつたかと存じますが、また証券業者等が買うことも、その当時は自由でございましたから、実際遺族の方がそれをいつ現金になさつたかということは、判定がつきかねる次第でございます。ここで、この前一昨年の四月に告示して買上げを始めた結果は、これは直接の遺族の方のみならず、証券業者——まあ遺族の方ばかりではなくて、それを譲り受けた方のも買い上げる。いわばこちらの買上げの対象外に置いたのは、金融機関なんかが持つておるものだけを買上げの対象外にしたわけです。で、一般のそれを商売にしていらつしやらない方が持つていらつしやる分は、買い上げております。また商売人と申しますか、金融機関などの持つておられる分については、買上げをいたしておらないわけでございます。そういう関係で、何分にも転々流通いたします公債性質といたしまして、この幾ばくがだれにいつかえられたかということについては、ちよつと推定すら困難ではなかろうかと思うのであります。
  78. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 この特別賜金は記名公債であつて、そう簡単に転々流通することは許されていなかつたのじやないか、こういうように考えるのですが、その点どうですか。
  79. 吉田信邦

    ○吉田説明員 その点につきましては、この公債は記名ではなかつたかと思うのであります。私、実はもう一度確かめて見ますが、普通の公債で、その中にスタンプを押しただけといような記録になつておりますので、記名公債であつたかどうか、ちよつと調べて申し上げます。
  80. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 厚生省の方で、それはおわかりになりませんか。つまり、これは流通できるかどうかという点も、問題になろうかと思うのです。遺族のふところに去年やおととし、二千円や千円入つたからといつて、おそらくこれで遺族を納得させることはできぬ。そこの点、どうも政府の御答弁と実際地方における遺族の実情とは、非常に食い違つておる。その点、厚生省の方でお調べになつておられますか。
  81. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点は、私の方といたしましてはわかつておりません。ただそういう三分半利付の五年すえ置きの公債であつたということだけであります。なお、私の方としましては、一応その当時々々のことでもつてけりのついた事件につきましては、一応けりがついたものと考えて処置しております。この際けりのつかない部面につきまして考えるというのが、筋をひつぱる場合におきましては、最も妥当ではないか、筋を引かないとすれば、これは引かない方がいいのであります。筋を引くとすれば、そういうところで引ける一応のりくつがつくというだけであります。どれが妥当であるか、どこが公平であるかということになると、なかなかこまかい問題でありまして、たいへんでございますので、一応現在のような不完全なやり方でやりまする場合におきましては、その程度の誤差があるということも、やむを得ないのじやないかと考えます。
  82. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 遺族に対してあたたかい思いやりでもつて、不十分ながらも、せめて納得させる努力はなければならぬ。おそらくただいまのようなお言葉で、遺族を納得させることはできぬ。それは政府のお立場もよくわかります。わかりますが、われわれ国会議員としては、一線を画するこの理由については、少くともこの特別賜金を、これが記名公債で渡したか渡さないか、これが譲渡ができたのかできないのか、現金化されたかされないのか、それがわからずして一線を画するというその行為そのものが問題だ。そんなことでもつて遺族を納得させることは私はできぬと思う。そうすると、ここでは記名公債であつたかどうか、またその公債が譲渡ができたかできないか、譲渡を禁じておつたかどうかということはわからぬのですか。実は私ども受取る遺族からのいろいろな手紙によりますと、記名公債であつて、その当時現金化はできないのだ、ほとんど大部分の遺族はいまだにこの債券を持つておるということで、いろいろな陳情を受けておるのでありますが、この点はもうさらに御答弁はありませんか。
  83. 吉田信邦

    ○吉田説明員 私今ちよつと書類をよく見ておりませんので、お答えが怪しいのでありますが、資料によりますと、これは譲渡制限なきをもつて転々流通して、というような説明がついておりますし、それからまた実際現実にも普通の三分半利付公債として出ておりますから、転々流通する普通の国債であつたということは、事実であつたと思います。その当時の一時賜金——賜金公債と申しておりますが、生存者に渡したものにつきましては、これは記名で譲渡禁止という形で出ております。それで、今の特別賜金公債につきましては、転々流通し得る普通の公債だと、こう見なしておつたわけでございます。
  84. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 終りました。
  85. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは次に堤委員
  86. 堤ツルヨ

    ○堤委員 これは総括質問の当初に、私厚生大臣にも伺つたのでありますが、今日はもう一度最後に念を押して長官に六箇条ほど最後の質問をしておきたいと思うのでありますが、それはこの法案の名称についてであります。あなたも御存じの通り、公述人は、だれ一人残らずといつてもいいほど、まあ末高教授のように、こんなまずいものは捨ててしまえと言つた人さえある。で、このまずい法案につきましては、あくまでも昭和二十八年度はもつと充実したもので援護されるべきであつて、昭和二十七年度限りの臨時措置ということにされたいという希望があつたのも御存じの通りでありましよう。これは委員各位も、ほとんどその御意向ではないかと思うのでありますが、この法案を臨時措置法として認めて、その名も戦傷病者戦没者遺族等に対する臨時措置法案というふうにお改めになる意思は、やはり今もないか、この点をひとつお伺いしておきたい。
  87. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法案は、すでに提案されておるのでございまして、提案された後におきまして、こちらでもつて訂正する意思は毛頭ないのであります。かえつてそういたすことは、適当でなかろうと思います。
  88. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ちよつと最後のところをもう一ぺん……。
  89. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法案は、政府といたしましては、国会にすでに提案いたしてあるのであります。従いまして、政府におきましてこれを訂正する意思は毛頭ないのであります。
  90. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは次に、年金の問題について、ちよつとお尋ねをいたしておきたいと思います。未亡人一万円、それから子、父、母、孫、祖父及び祖母は一人につき五千円とするというふうなこの算定基準につきましては、私の方からその説明を求めましたが、はなはだ不可解きわまる、詭弁にひとしい答弁をなさつておるのでありますが、これにつきましては増額する意思はございませんでしようか、またできないか。またするならば、幾らくらいまでするか、この点をひとつ……。
  91. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この一万円、五千円という金額につきましては、最初の案といたしまして予算を組みますときの考え方と、その後の考え方でかわりまして最初は妻子のみにこれを出すという考え方予算を組んだことは御承知の通りでありますが、その後に父、母、孫、祖父及び祖母につきましても年金を出す方がいいじやないかということになりまして、予算範囲内において計算いたしまして、逆算して出た数字でございます。従いまして、この金額につきましては、きわめて不十分ではございますけれども予算の額の範囲内におきましては、これ以上に増すことは、おそらく不可能ではなかろうかと思います。
  92. 堤ツルヨ

    ○堤委員 せつかく子、父母、祖父母を加えられたのでありますから、予算をふやしてでもこれを御増額になるのが、ほんとうの誠意ある方法ではないかと思いますが、もう一歩どうしても考えられませんか。
  93. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 予算につきましては、すでに国会で御審議を終つたはずでございます。従いまして、予算範囲内におきまして法律を出すといたしますれば、こうするほかいたし方がなかつたのであります。なお本法案につきましては、国会に提案になつたのでありまして、われわれといたしまして、提案になりましたものを、あとでふやして修正するということは、おそらく困難ではなかろうかと思います。
  94. 堤ツルヨ

    ○堤委員 予算がすでに通つてしまつたという既成事実をつくつておいて、そして国会におけるところの予算審議権はほとんど無視にひとしいところの政府のやり方というものに対しては、議会の民主的な運営という点を考えましたときに、私はこの点は政府に強く反省していただきたいということをつけ加えておきたいと思います。われわれはあくまでもこれが増加を必要とするという主張を持つておるものであります。  その次にお尋ねいたしたいのは、対象の範囲でございます。昭和十二年七月七日以降のものについてという希望が多いのでありますが、この点は、やはり先ほどから奥村議員の発言に答えておられたように、予算の面からこれを一線を引いて、十六年の十二月八日にしたという理由が多分にあるとおつしやいましたが、半分くらいその理由があるということを再確認してよろしゆうございますか。
  95. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一時金の問題につきましては、予算範囲内におきまして措置いたすといたしますれば、全部に出すことができないということは事実でございます。それではどこで線を引いたらよいかという点につきましては、先ほどお答えいたしました通りでございます。
  96. 堤ツルヨ

    ○堤委員 そこで公聴会におきましても、御存じの通り学徒、船員、徴用工の問題については、軍属としての取扱いを受けたいという公述がございました。政府と問答の結果、一時金については、もちろん扱われておらないものもあつて、どうかと思う点があるけれども、船員でございますれば、一応船員保険、それから厚生年金—徴用工にいたしましても、学徒にいたしましても、一時金をもらつている人がなきにしもあらずということがはつきりいたしましたので、百歩譲つたといたしまして、ここで私どもが特に主張いたしたいのは、この学徒、船員、徴用工の遺族に対して、やはり軍人軍属並の年金支給されてしかるべきだと考えるのでありますが、この点についてお伺いいたします。
  97. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この遺族範囲、対象の範囲でございますが、これにつきましては、できるだけ広い範囲でやるのが適当であろうと私も考えております。個人的には、そういうふうに考えておるのでございますけれども、この問題につきましても、先ほど申しましたように、もし今やるとして、どこで線を引くかという点の均衡の問題でございます。全部やれば、やるに越したことはないのでございますが、今のように非常に不完全な状態でやる場合には、どこかで線を引いて、不完全ながらも、ある程度のものにする。もう少し金額を割るということになりますと、これはますますひどいことになるのでございまして、現在のこの額も、はなはだ不十分であると思いますのに、わくを広げることによりまして、金額が非常に減つて来るのではないかということも考えられます。そこで、どこで線を引くかということで、一応現在はそういう線の引き方をした、その線を引きましたにつきましては、ただいま一時金の方は一応済んでいるというようなことでございますが、この一時金の算定の際におきましては、その当時といたしましては、単なる一時金としての考え方でなしに、一応それで済ませる考えでやつたもののようでございますが、現在考えまして、それがはなはだ不当であるということは考えますけれども、その当時は一応それで済ますつもりでやつたのでございます。そういうふうなところからいたしまして、そこに線を引いたということに相なるのでありまして、これが妥当でないということは、今後の援護措置がどうなるかということとも比べまして、あわせて考えて行かなければならぬじやないだろうか。従つて今後この遺族に対する措置がどういうふうになるかということにつきましては、その状況を見まして、あわせてわれわれとしては考えて行かなければならぬと思つております。
  98. 堤ツルヨ

    ○堤委員 長官は、少し解釈をし間違えておいでになるように思います。私は一時金について、学徒、徴用工、船員を、この法案において軍属の中に入れてやらなければならないということを言つているんじやなくて、その点は百歩譲つて年金について私は言つているのでありますから、そこのところを少し解釈を間違えておいでになる。年金でございます。
  99. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私別に間違えなかつたつもりでございますが、この前にそういう人たちに一時金が出してある、あるいはその人たちに対して非常に不完全ながらも補償の措置が講じてある、そういうことにつきましては、一応それで済ませるという当時の考え方でやつて来たものでございます。それが妥当であるかどうかということにつきましては、今日考えなければならぬ問題がございますけれども、そのときには一応それで済ませるつもりでいたしたわけであります。その当時済まないものをこの際取上げるのが、まず急ではないか。従いまして、これと比較いたしまして従来のものをどうするかというような問題につきましては、今後十分考え措置しなければならぬと考えております。
  100. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは次に参りましてしばしば問題になりました生活保護法との関連でございますが、この法律の適用を受けます人たちが、生活保護法の適用を受けているといたしまして、年金、一時金から生ずる所得は収入とみなさないということをお認めになるかどうか、その点についてもう一度お伺いします。
  101. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点につきましては、社会保障の全般的な体系というものにつきまして、十分に考えなければならぬ問題があろうかと思つております。御承知の通り生活保護法と申しますものは、これは生活権の保障に対します最後の手段としてこれが立法されておるのであります。最後の手段よりも最後の手段があるということは、法の精神を殺すものでございます。従いまして、生活保護法でもつて説明のつく限りにおきまして、これに対します措置をとらなければならぬ。従つて、どういう措置をとるかということにつきましては、十分に考えまして、生活保護法の精神を殺さないという趣旨をもつてつて行かなければならぬのじやないかと思います。もしこの生活保護法の精神を殺すことになりますと、今後最低の生活にあえいでおりますものに対しまして、必ずしもよい結果をもたらすものとは考えられない。われわれといたしましては、生活保護法でもつて、最後の線だけはどうしても守らなければならぬというのが、厚生省としての強い考えであります。従いまして、それをこわさない限度におきまして、その問題につきましては処理いたしたいというふうに考えております。
  102. 堤ツルヨ

    ○堤委員 これは大臣のお答えの中にも、運用よろしきを得て、何とかできるだけわれわれの主張を生かしたいというようなことがありました。それから、ただいまの長官の御答弁はよくわかりますが、運用よろしきを得て、しかもこの法律の中に特に一条を起さないでそれを実施して行くことは、なかなか困難であるということを、公述人も申しておりますし、われわれも現在の生活保護法の運用状態から見まして非常に危惧の念を抱くものでございます。私たちは、どうしてもこの点は、この法律の中に明文化しなければならないものであるという主張を持つておるのであります。できるならば、政府はそういうごまかしを言わないで、ひとつ御反省を願いたい。  それから次に、もう一つお伺いいたしたいのは、育英資金の問題でございます。遺児の育英の問題が、この法律案の中に取上げられておらないということは、まつたくこの法案の致命傷だということを、私はかつて指摘いたしました。はなはだ遺憾であります。老人や遺家族未亡人世帯が、子供をかかえて、子弟の教育にいかに困つておるか。遺族の子供なるがゆえに、また非常に重い戦傷者の子弟なるがゆえに、今日その能力を持ちながら、上級学校に進み得ないということは、国家の人材を養成する見地から、はなはだ遺憾でございまして、遺児の育英につきましては、この中に当然一条を起したいと思うのでありますが、この点は、政府としてはどうしても私たちの主張に同調できませんか、お伺いいたします。
  103. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私も、一応形といたしましては、この中に入れた方が、かつこうがつくのではなかろうかと思うのでございますけれども、それでは、この中に規定がないからといつて、うまく運用されないかと申しますと、そういうものではないのでありまして、この中に規定しなくても、文部省といたしましてはうまく運用する、こういうようなお考えのようであります。厚生省といたしましては、ここに入りましたから、そのために非常によくなるということは、必ずしもございませんし、またこれの中に入らなければできないというものでもございませんので、しいてこの中に入れなかつたということでございます。現在、予算範囲がきまつておりますから、その予算範囲内でおやりになるわけでございます。従いまして、この予算をふやせば、だんだんその範囲もふえて来まして、徹底して来るようになると思います。法律よりも、むしろ予算の額をふやすということが、最も大切なことではなかろうかと私は考えております。
  104. 堤ツルヨ

    ○堤委員 なるほど、理想論をおつしやいますけれども、現実において、各都道府県の県庁を私たちがのぞいたところによりますれば、私たちがつくつた法律というものが、最小限に評価されまして、きびしいお達しが、なるべく金を使わないようにという方向で本省から出ておりますので、末端に行きますれば、法の精神を曲げておるというような実情であります。生活保護法の適用、育英の問題などを検討してみますと、はなはだその運用よろしきを得ておらないのでございます。何も法律にうたつたからできるものではないとおつしやいますけれども法律にうたわなければ、現在においては末端まで誠意が届かない現状であるということを、ひとつ御反省願いたいと思うのでございます。私たちとしましては、あくまでも法律にうたうべきであるという主張を持つておることを、はつきりいたしておきます。具体的に申しますれば、義務教育については、当然金額国庫負担があたりまえでございますけれども、給食の問題、教科書の問題などは、無償で学童に国家支給すべきものである。いろいろな寄付の問題は、特例としてこれを免除されるべきではないかと思います。さらに高等学校、国立大学に進学しておる者につきましては、1授業料等も免除するというような規定が、具体的にうたわれなければならないと思うのでございます。政府も、できるだけ額をふやして、今後私たちのこの主張に沿つて実施されるように努力していただきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、身体障害者の子弟の問題であります。特項症、一項症というような非常に重い障害者の子弟も、やはり遺児と同じ扱いを受けるべきものであると思いますので、参考のために申し上げておきます。  それから、もう一つお尋ねいたしたいのは、身体障害者年金の特別項症から六項症までの支給額でございます。私たちが質問したところによりますれば、また公述人の公述、あるいはわれわれの常識から申しますれば、はなはだ不十分な額でありまして、この点非常に遺憾に思うのであります。木村長官は、すでに予算が通つてしまつた以上、どうにもならない、これを増額できないとおつしやるであろうと思いますが、念のために、この点平気でいらつしやるか、伺いたいと思います。
  105. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 こういう金額は、多ければ多いほどいいだろうと思います。また私も、それが非常に多いことを望むわけであります。生活保護法の基準にいたしましても、これは高い方がいいにきまつております。ただ、どこに線を引くかという問題でありますので、これで満足であるとは思つておりません。従つて、全体の均衡から申しますと、障害年金の方は、遺族年金に比べますと、非常に有利になつております。従いまして、この際障害年金をこのくらいにしておくということは、これはやむを得ないのではなかろうか、もちろん各項症の間における均衡の点についても、若干問題があるのでございますが、大体これにつきましては、一応これで行かなければしかたがないのではないかと思います。もちろん、これにつきましては、国会に審議権があるわけでありますから、十分御審議を願いたいと思います。
  106. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは、もう一つお尋ねいたしますが、年金をもらう対象に、私先ほどちよつと落しまして前後しますが、子供十八才未満父母、祖父母六十才以上と、年齢制限を加えておるのであります。しかし十八才未満の子供または就学中の者は、その業を終るまで、私たちは適用すべきであるというふうに考えるのでありますが、この点政府のお考えを伺いたい。父母・祖父母に対するこの年齢制限は—先ほどの御発言に、六十以上と六十以下が半々であるとおつしやつておりましたが、つけるべきではないと思いますが、これはどうにもなりませんか。
  107. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 年齢を十八才にするか二十才にするかという点につきましては、いろいろ問題がありますが、現在の社会保障関係のいろいろな制度といたしましては、十八才をとるのが非常に多いのでございます。従いましてこの際これをとつたのでありまして、全体として予算わくが非常に少いというところからいたしまして、どうしたら最も公正に行くかということを考えますれば、この年齢を社会保障の程度に下げる以外にないのではないか。また父母にいたしましても、六十才以上の者と以下の者に区別をつけましても、金額を減らさないようにする方がいいのではないかという考え方をいたしたわけでありまして、これが妥当であるというふうに考えたわけではないのでございます。
  108. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それではもう一つお尋ねします。再婚した妻の場合—これはいろいろなケースがあるのですが、あくまでも英霊を守つて、子供を連れて再婚しておるというような妻の場合は、私は再婚をしたということによつて、補償し、また政府のいうところの援護をする必要がなくなつたということは、言えないのじやないかと思いますが、どうですか。再婚をしたということは、夫を戦争でなくしたというこの現実を、抹消することができるのかどうか。法律で行きますれば、再婚した者は絶対に権利がないということになつておるのでありますが、再婚したら、前に公務によつて御主人を死なしたということは御破算で、何もなかつたのだということになるのでは、まことに悲しき人生ですが、そういう解釈をしなければならぬのですか。再婚しようがしまいが、過去において夫を戦争で殺し、遺児をかかえておるという現実にかわりはないという考え方をしたときに、当然再婚の人も認めてもらわなければならないのじやないかと、妻の立場から考えるのですが、いかがでしようか。
  109. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 再婚いたしました者につきまして、どういう取扱いをするかということは、法の立て方じやないかと思うのでありまして法の立て方によりましては、再婚いたした者に援護をいたすということもできないことはありませんし、そういうふうにいたすことが、必ずしも悪いという趣旨ではないのでありますが、現在のこの法の立て方から申しますれば、再婚いたしましたならば、その者の経済単位というものが別に移つたということに、一応考えなければなりません。この全体の体系からいたしますれば、再婚いたしました者にこういう取扱いをしておるということは、あながち不当なことではなかろう、こういうふうに考えます。
  110. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それから支給方法でありますが、法律できめ、そして金を支給した場合に、ほんとうにもらうべき人が金をもらつてこの金が生きなければ、私は目的を果さないと思う。ところが、地方へ参りますと、このごろは、さてこの法律が出て来ると、死んだむすこの嫁がじやまになるという例が非常に多いのです。ですから、金が出るならば、まず石碑を立てるからということを口実にして、妻の手の中に金を渡してやらないで、これを老母が先にとつてしまう、またはなはだしきに至りましては、嫁を呼びもとして金をもらえるようにしておいて、金をもらつてからまた嫁を返してしまうという、えげつない例があるのです。このように非常に封建的な過去の日本の家庭内の葛藤の犠牲になつて来た妻の立場というものに、この法案をめぐつて悲劇がかもし出されるのでありますが、実際支給される場合に、配偶者のある場合には、父母に手渡さないで、まず妻に渡すということを、確実にこの法律の中にうたつてもらうべきじやないか、かように思うのですが、この点どうでございますか。
  111. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法律におきましては、建前は、御承知の通りに一人々々に幾らということがきまつておるのであります。従来の恩給扶助料のように、なくなつた方に対してどうというふうになつていない。その世帶に対してじやなしに、妻は一万円、父は五千円、こういうふうにきまつておるわけであります。従いまして、その両者の間に争いがない限りにおきましては、これは一括して受取る方法はとれると思います。もし両者の間に争いがありましたならば、これは別々に請求してとることができるようになつております。従つて、今おつしやつたようなけんかが起りますことは、妻がだまされたような場合はどうか存じませんけれども、普通には起り得ないというような建前をとつております。ただ、一時金の場合が問題でありますが、一時金の場合は記名でございまして、妻がおりますれば、妻の名前でもつてこれがもらえるようになつております。従いまして、今御指摘になりましたような御心配は、起らないじやないかと思います。
  112. 青柳一郎

    青柳委員長代理 通告順によりまして青野委員
  113. 青野武一

    青野委員 私は昨日一般質問をさせていただきたかつたのでございますが、小委員会関係で、委員長から明日にしてくれという話がございましたので、これよりお伺いいたします。  今、逐条審議をしております二十三条から三十九条までの間に、私の条文に関係のある質問といたしましては、遺族年金支給を受けることができない者、遺族年金受給権の消滅、この二つに直接関係のあることで、ぜひ承つておきたいと思います。それは、聞きまするところ、過ぐる厚生委員会で、堤委員から大体の御質問があつたものを、むし返すようで、まことに恐縮でございますが、質問の内容が少し掘り下げてございますので、できるだけこの点を明確にしていただきたい。それは「日本の国籍を失つたとき」ということでございますが、遺族年金を受ける権利が消滅する。この点について、小笠原、沖縄諸島その他の信託統治になりましたところにおる日本人の諸君は、これから除外をされておる。私は一つ例をとります。小笠原は、統計に出ておりませんから正確な数字は申せませんが、沖縄諸島から太平洋戦争に関係をして戦死をした人が、大体三十万人、奄美大島は大体一万五千名の戦死者で、遺族が六万名おるといわれております。われわれと同じ日本人の立場から、やはり戦争に多かれ少かれ協力したために、これだけの遺族と戦死者を出した。ところがアメリカの信託統治によつて日本の国籍を離れた。これは日本以外の外国の一つの行き方によつてやむなくそういう立場にされた人たちで、年金も一時金ももらうことができない。こういうことについて、将来大きな問題が残るのじやないかと私は思います。いわんや、これは永久にアメリカの領土にするのじやなくて、国際情勢が好転すれば、適当な時期に奄美大島その他沖縄、小笠原諸島は、もどすのだということになりますと—これは南樺太や千島のように、はつきり日本の領土から切り離されたのではない。そこに住んでおるわれわれの同胞を、この援護法案から除外されるということは、こういうところに住んでおる人たちにとつては、非常に気の毒であるし、本人たちにとりましても非常に残念だと私は考えておる。この点についてどういう考えを持つておられるか、何かそれに適当な具体策でも政府は持つておられるか、一応お伺いしておきたいと思います。
  114. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 沖縄、奄美その他の南西諸島、それから小笠原など、一応米国の信託統治になるところでございますが、そこの住民の国籍がどうなるかということは、現在きまつておりません。一応現在のところ、日本の国籍を持つておるものと考えていいのじやなかろうかと思います。将来、これがどうなるかということは、今後の折衝にまつものじやなかろうかと思います。われわれといたしましては、これが日本の国籍にいつまでもあるということを期待いたしております。そういうふうになりますならば、この法律そのものが事実上施行できない、つまりこの法律による権利はありながら、受けることができずにおるというような状態が続くのではないかと思うのでありますが、それに対して今後どういう処置をとるかということは、日本といたしまして、いろいろ考えなければならぬ問題じやないかと思います。ただ、さしあたりの問題といたしましては、この法律が、向うに事実上施行できないという状態に置かれるわけでございます。従いまして、日本の国籍を失つたということには、必ずしもただちにならないのでありまして、この法律でもつて権利を失つたものにすぐになるとは言えないわけであります。そういう趣旨をもちまして、今後われわれといたしましては、できる限りこれによりまする援護が向うにできまするようにいたしたい、かように考えております。
  115. 青野武一

    青野委員 私は外務委員会に一ぺん出ましたときに、この問題について、日本の産業の上から質問したことがございます。聞くところによりますと、例をまた奄美大島にとるようですが、南北直線にして三十里—相当の島であります。年間三千万斤の黒砂糖、大島つむぎ、鉄道線路に必要なまくら木等ができる。それを二百海里隔つたところ、全速力で船を飛ばして十二時間かかる鹿児島に持つて行かなければ、生活必需品とこれをかえることができない。信託統治になつて、アメリカの方が生活に必要なる物資を支給してくれればけつこうですが、そうでなければ、主食というものを持たないこの奄美大島の諸君は——在島民が二十三万、日本本土に来ております奄美大島出身が十八万人、合計四十一万人という数字が出ております。これは鹿児島との、大言・申しますると貿易、いろいろな物々交換によつて生活して来た人々であります。最近調べたところによりますと、製鉄事業に必要なマンガン鉱石は、非常に高い金で、インドから買つておるのを、北九州の八幡製鉄の調査団が、司令部の許可を受けて大々的に調査した結果は、全島マンガン鉱石で固まつておるということである。真偽のほどはよくわかりませんが、そういう報告がもたらされておる。そこで、信託統治になつておるものが、日本の製鉄産業に必要なるマンガン鉱石をば、適当なる方法で日米間の協定によつて、これは日本の鉄鋼産業に必要な原料だけはとつていいことに認めてもらいたい、こういう交渉が最近行われておると私は推定いたします。そういたしますと、これは日本の政府が、わざとこれらの小笠原、沖縄、奄美大島の諸君を日本人から除外をする、ニユージーランド、フイリピン、濠州あたりと安全保障条約や相互援助条約を求めて、日本の軍国主義を監視する目的で一種の軍事基地をつくるために信託統治にされたということは、これは世界の常識になつている。そういう約束をしなければ、ニユージーランドと濠州とフイリピンはサンフランシスコに出て来そうもない。アメリカの一方的考え方のもとに、これらの日本の諸島は遂に信託統治、しかも国際情勢を考慮して無期限—無期限で信託統治になつておりますときは、一応国際情勢が緩和して、日本に復帰が許されるまでは せんじ詰めてみますと、一時金も年金も、結局空白時代が何年か起る。まごまごすると五年も六年も続く。同じ日本人で戦争に大きな犠牲を払つた日本人が、遂にアメリカの都合で日本の国籍を除外せられて、まま子扱いせられるということは、われわれにとつて忍ぶことができないことなんだ。この点について おそらく日本の国籍はまだ離れておらないと、長官は御答弁になりましたが、今のままで行けば、いやでもおうでもわかれるのです。ポツダム宣言では、日本復帰を正しい輿論と方法によつて表明すれば認めると、承知している。そういうことを書いておりながら、去年の八月ごろ、奄美大島あたりは、男女を問わず老幼を問わずハンガー・ストライキをやつて日本復帰を嘆願したが、遂にいれられなかつた。二十三万人、日本本土に来ておるのが十八万人—そうすると、私のお尋ねしたいのは、十八万人の諸君が奄美大島に本籍を持つておるときには、日本に居住しておつても、それらの諸君は年金も、あるいは障害年金も、あるいは一時金ももらえないのである。向うから、そういうことが議会を通過して一応決定して、条約も発効した後に、二十三万の島民が続々と日本本土に移転して来たときには、それは当然日本の国籍に入るのかどうか、こういう点をはつきりしておいてもらわないと—これは千島や樺太の問題、あるいは朝鮮の諸君との問題と関連をしますが、非常に大きい問題が出て来るわけである。この点について、やはり立案した当局としては、相当の具体的なことをお持ちになつていると思いますが、ひとつ詳細にお伺いしておきたい。
  116. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 われわれといたしまして、奄美大島、沖繩等の方々が、日本国籍を失わないことを希望していることも存じておりますし、また本籍をずつと続けていただきたいと思つておりますし、さらにまた今後できるだけ早い機会に、これが実際に日本の中に入ることを期待いたしているのでございます。従いまして日本の国籍を今ただちに離脱するということになろうとは思いませんし、今後もならないようにいたして参りたいというように考えております。従いまして、先ほど御質問のありましたこちらにおりまする向うの在籍の方でございますが、これにつきましては、われわれといたしましては、一応この法律でもつて援護ができるものと考えておりましてその手続等につきまして、ちようどそれに当りますところのいろいろな機構の問題等もございまするので、これらについて十分考えまして、その手続等につきましては遺漏のないようにいたしたい、かように考えております。
  117. 青野武一

    青野委員 それを私今お尋ねしまして、もう一つの逆の方をお尋ねしておきますが、この法律案が、衆参両院を通過して発効せられますと、いろいろな関係で、鹿児島を通じてある程度の交通は、アメリカもおそらく認めると思います。認めなければ、島民の生活はできない。そうすると、行つたり来たりするうちに、遂に日本に国籍を移したいために、この島民の諸君のある部分は、やはり日本に移つて来て住む。そのときその国籍を日本に移すことを認めるか。こつちにいる者はいいが、向うから入つて来る者をどうするかということになると、これは北鮮、韓国の独立した国と違いまして、何も小笠原諸島、奄美大島その他は、独立したのではなく、外国の必要上、一時日本から向うさんが預かる。そこで、その点についてはつきりしないと、また縁故をたより、やはり親子がわかれる。日本に来ている者は日本人だが、お父さんや兄弟は小笠原あるいは沖繩、あるいは奄美大島で生業を営んで、わかれている。そちらは日本人でなく、日本にいる者は日本人だ。そうなると、家庭的ないろいろな悲劇も生れて来る。二年や三年では、ちよつと日本に復帰することは、今の国際情勢からいつてみても、むずかしいじやないか。そこにいろいろな問題が起つて来ると思います。それで、今そういう信託統治になつたところに生活している日本人の諸君が、自分の希望で日本の本土に来ましたときは、はつきりそれが日本人の国籍に入るのかどうか、これをひとつ承りたい。
  118. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 その問題につきましては、それぞれの関係法律のところでお聞き願いたいと思います。私、その方の所管でございませんから、そういう点につきまして、御答弁いたすことはできないのであります。こちらといたしましては、日本の国籍は、一応なくならないものと考えている。もしなくなつた場合につきましては、当然これははずれるのであります。これらにつきましては、私がどういたしましても、事務的に何ともなるものではございません。事務当局に御質問になるのでありますから、われわれとしては、それ以上のお答えはできないのであります。
  119. 青野武一

    青野委員 これは、そうおつしやればそれまでですが、大体この法律案というものを、責任を持つてわれわれの方に提案せられた人たち、その責任者の諸君が、はつきりこの条文の中に、日本の国籍を失つた者には遺族年金、一時金等をやらないと規定しておる以上は、そこに日本人か日本人でないかという区別は、具体的にはつきりとお考えになつておるはずである。そうすると、日本におる者は、奄美大島、小笠原諸島の諸君でも、さしつかえないが、向うから入つて来る者は認めないとか認めるとかという考え方が、この法文をつくるときに、すでに出て来ていなければならぬ。それは司法関係の事務とか、特別な法律家に聞くまでもありません、長官としての責任者として、それぐらいな答弁の御用意があるはずなんです。これは重大な問題になつて来ると思う。どうしても御答弁ができなければ、できないで、私はそれを承知しておきます。
  120. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 国籍法の関係が、双方の間にどうなるかということが未確定な現在の状態で、これに対してお答えはできません。
  121. 青野武一

    青野委員 私は、明日障害年金のことについて質問をしたいことを、保留します。先の方でございますので、保留させていただいて、もうあと一つで終らせていただきたいと思います。これは木村長官と私の意見の相違になるかもわかりませんけれども、相当可能性があると思います。仮定かもわかりませんが、私は仮定ではない、早晩一箇月を出ずして、これが現実の問題となつて出て来ると思いますので、特に御考慮を願いたいと思いますことは、この信託統治になつておりますところに移住しておるわれわれの同胞のために、ここで差別することなく、戦傷病者戦没者遺家族等のこの援護法を、もし日本の国籍を失つたために、この保護立法から除外せられるようなときが来れば、国会でも相当大きな問題になる。人道上からいつてみても、国民感情からいつてみても、これを切り離されることは非常に困る。将来の問題を考慮しても、総司令部ということよりも、むしろアメリカ当局を相手にして、戦傷病者戦没者遺族援護法に関する特別の日米協定を結んで、日本の国内におる援護者と同じ援護の手を差延べて行く。工業の原料、交通等あるいは文書、そういうものは、ある程度認められるという自信を私は持つておる。これだけが認められないということはありません。日本の政府が強く向うさんと交渉するなり、それができなければ、一応これで切つて、この次にはこの援護に関することだけで日米協定を結んで、米国軍に一応援護費をやる、とにかく一時金を預けて、向うの手ででもまかないをしてもらうということは、私はできないことはないと思う。そういう方法でもとるようにお考えになつていただけるならば、この法律案にそういうことを挿入してもらいたい。それを挿入することができなければ、やがて八月ごろと想定いたされます補正予算のための臨時国会のときには、この法律案に対しては、やはりそのときの情勢によつて、相当改正をしなければならない問題が出て来ると思います。その点について最後にお尋ねをしておきまして、私の質問を終らせていただきます。
  122. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 すべて仮定の上に立つての御質問のようで、ございまして、私どうもその辺がはつきりわからないのでありますが、われわれ事務当局がお答えいたします筋といたしましては、政治的な問題につきましての答弁は、ちよつとできかねるわけであります。従いまして、事務当局としての範囲でお答えする以外には、お答えのいたしようがないのであります。今お話になりましたような問題につきましては、もちろん、われわれといたしましても、そういうふうになりますことを希望いたしております。従いまして、そういうふうな事態が出て来ました場合におきましては、そういうことになりますように努力はいたすつもりでおります。
  123. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは委員外発言を許可いたします。奧村又十郎君。
  124. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 先ほど私御質問して参つたのでありますが、どう考えても納得のできない重大な一点だけ、重ねてお尋ね申し上げます。太平洋戦争以前の上海事変、日華事変の死没者十九万人に対して、遺族一時金を交付しないということは、政府予算わくで縛られておるからと、こういう御答弁でありますが、予算わく八百八十億というものは、どういうわけでそういうわくをつくつたか。つまり、頭から太平洋戦争以前の死没者に一時金を支払わないということで八百八十億というものをつくつた、あるいは八百八十億というものができておるから、しかたなしに太平洋戦争で打切つて、それ以前のものは払わないとしておるのか、そこはどちらが原因であるのか。その御答弁によつて、国会で修正する態度に非常に影響があると思うので、その点を特に重ねてお尋ねします。
  125. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点につきましては、予算を立てるときの立て方と、それからあとで法案を立てますときまでの間にいろいろの変化がございまして最初予算を立てましたときの計算の基礎というものから、八百八十三億という公債の発行額がきまつたわけであります。そうしてその範囲内でもつて措置をするようにということでもつて、いろいろな措置考えられて来ておるのです。それにつきまして、その八百八十三億の公債がふやされ得るものであるが、あるいはふやせないものであるかということにつきましては、われわれといたしましては、一応ふやされないものという前提でもつて、この作業をいたして来ております。この八百八十三億の公債は、これに伴います歳出といたしまして、利子予算の中に組んであるのであります。その予算範囲内でもつて制限されておりますので、その範囲内でもつてできますことならば、これはできるのでございますが、その範囲を越えますものにつきましては、一応現在のところは、この法案を立てましたときまでの間には、それができなかつたわけであります。それで、今後どうなりますかということにつきましては、予算も国会に付議されて議決になりましたことでありますから、また法案につきましては、これは御審議中のことでありますから、われわれといたしましては—われわれがこの立てましたときには、それでもつて制限されておつたということを申し上げます。  それから、なおそれだけではないのでありましてそうした場合にどこで線を引くか、その場所でありますが、これにつきましては、先ほど申しましたように、そこで引く方がいいのじやなかろうか、こういうふうに考えたわけであります。
  126. 奧村又十郎

    奧村又十郎君 どうも頭から予算に縛られて、その予算わく内で、厚生省の方であとからりくつをつけておる、言い訳をしておるというような感じがしてならぬのでありますが、これはもうしかたがないので、いずれ別の機会に、大蔵大臣なりその他の方の御答弁を要求したいと思います。
  127. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは次に第三章不服の申立、第四十条、第四十一条、第四十二条を議題に上せます。
  128. 岡良一

    ○岡(良)委員 木村さんにお尋ねしたいのですが、実は先ほど堤委員の御質問に対して、一時金の支給については、記名公債で、その名前をちやんと書いて渡すから、問題はないというのですが、だれの名前を書くかというところに、問題が起り得ると思うのです。そこで、その場合、不服の申立てをし、裁定を得るための手続については、この第三章では、一年以内に、書面で厚生大臣に不服の申立てをすることができる。そこで厚生大臣は、この不服の申立を受けたときは、裁決をし、これを通知する。「裁決を行うにあたつては、援護審査会の意見をきかなければならない。」こういう取扱いになつております。そこで、もしそういう場合、その厚生大臣の裁決に対してさらに異議があるという場合、あるいはさらに不服であるということがあり得ると思うのですが、そういう場合は、どういうふうな取扱いになりますか。
  129. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは裁判所に出訴ができることになつております。
  130. 岡良一

    ○岡(良)委員 問題は、その裁判所へ出訴するということが、非常に遺族の家庭としてはめんどうでもあり、お金のかかることでもあり、そこでせつかくの援護なり処遇なりが、公平に適切に行き渡らないうらみを残しはしないか、こう思うのです。たとえば、そういう裁判所に弁護士を頼んで厚生大臣の裁決についてさらに不服の申立てをする場合に、何かもつと簡易な方法で、しかも法によつて権威づけられた審判を与えられる道はないか。たとえば、家事審判法による家庭裁判所等についても、御研究になつたと思うのですが、ああいう機関を活用して、そこで合意というか、示談と申しましようか、実際に即した解決をさせる。これは書面ですから、書面ではなかなかたいへんなことなんです。やはり現地に出かけて聞くなり、証人を呼ぶなりという形で、家庭裁判所が離婚訴訟等を取扱つておるような行き方で裁決をするということを、はつきりうたつておいた方がいいと思うのですが、どうでしようか。
  131. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員  「書面で」と申しますのは、御承知の通りに、書面でもつて出させるということでございます。従いまして、これにつきまして必要がございますならば、実地に参りまして調査もしなければならぬじやないかと思います。これは不服の申立てを書面ですることができるということにいたしておるわけでありまして、それだけでもつて、非常に形式的にやるという趣旨でないことは、申すまでもないことであります。ただ、これをやりました上で、さらにもう一つ適当な機関をつくるかどうかということでありますが、これにつきましては、それだけ機関をつくるのがいいかどうかという点につきましても、相当問題があるわけでありまして、むしろ裁判上の請求をいたしますのが普通でございますけれども、その前に一応再審をするという制度を設けたらということで、この法ではそういうふうにいたしております。  なお、先ほど申し上げましたもらうべきものの範囲は、法律でもつてはつきりいたしておるわけでありまして、この点につきまして事実の認定、つまりほかに遺族がおる時に、どういう順位かということにつきましては、遺族の身分を明らかにするものさえございますれば、一応明らかになることであります。問題になりますのは、むしろ公務による死亡であるかどうかというような点であります。あとは遺族であるかどうかという点につきましては、内縁関係を除きましては、一応身分上のはつきりいたします証明になるものがございますれば、一番最近のものをとりますれば、これではつきりいたすのであります。従いまして、これにつきまして、御心配になるようなことは、特に故意でもつて厚生大臣がいいかげんなことをするということがない限りは、その点は御心配はないんじやなかろうかと、一応考えております。
  132. 岡良一

    ○岡(良)委員 それに問題は、やはり内縁関係の問題が、まず一番出て来ると思うのですが、事実婚を認めるといたしましても、はたして事実婚であつたかどうかということについては、そのことを否定するという場合にはやはり受給権を主張するのは親の側なんです。そこにやはり問題は起つて来ると思うのです。それからまた、本人の意思に反して、やはり受給権の優先順位が、何らかの形で故意に下げられるということも、妻の場合あり得るんじやないかと思うのです。たとえば、ここでは「援護審査会の意見をきかなければならない」となつてつて、おそらく援護審査会等については、政令で定めらることになると思いますが、家事審判法によれば、家庭裁判所は、いろいろ審判すべき事項を書いてありまして、そのほかに第九条には、はつきりと他の法律によつて定められたるものについての審判を行う権限を有するということが書いてあるのであります。そこで援護審査会よりも—援護審査会もけつこうですが、何かあれを利用して、家庭裁判所というふうな司法機関を—司法の実情については、ある程度までの証言等を立証し得るよう機関に意見を聞くというふうな取扱いにした方がいいんじやないかと思うのですが、どういうものでしようか。
  133. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、いろいろ御意見もあろうと思うのでありますが、「援護審査会の意見をきかなければならない」ということにいたしておりますのは、恩給の裁定の場合と同じように、公務死亡であるかどうかという認定が、非常にむずかしい問題でございますので、これらの点につきましての認定をするために、この意見を聞くことにいたしておるわけであります。従いまして、この構成につきましては、先ほど申しましたように、恩給の審査会と同じような構成でもつて行きたい、かように考えておるわけであります。身分関係の問題につきまして、身分関係を擬装すると申しますか擬制いたしまして、いろいろな問題が起るような場合におきましては、当然その問題をまず解決いたしませんと、何とも処理できないのであります。これらにつきましては、当然家事問題でございますから、そちらの方でお扱いになるものであろうという考えでございます。
  134. 岡良一

    ○岡(良)委員 政令への委任ということで、裁決に関する手続その他必要なことを政令に委任されておりますが、何と申しましても、一時金はやはり財産権ですから、その発生、その移転、その失権、消失等について、やはりはつきりと何らか法律の根拠のある機関が裁定をするという道については、十分御考慮を願いたいと思います。
  135. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは、第三章につきましては、他に御質問もないようでありますから、次に移ります。第四章雑則、第四十三条ないし五十一条を議題に供します。御質問がありますか。
  136. 丸山直友

    丸山委員 これは先ほども一度お尋ねしたことに関連しておりますが、四十六条に「権利は、譲渡し、又は担保に供することができない」ということになつておるのであります。これでは、国民金融公庫というような公の機関がこれを担保にとることも、自然禁ぜられるわけになるものと思うのでありますが、国民金融公庫というようなもので金融の道が講ぜられる場合には、この条文はどういう形でお取扱いになるおつもりでありますか。
  137. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ここにございます「障害年金遺族年金又は遺族一時金を受ける権利」と申しますのは、そういうものを一般的に受ける権利でございまして、受けたあとの公債等の担保の場合ではないのでございます。これは別になります。
  138. 丸山直友

    丸山委員 そうしますと、今度逆に、その公債を担保にとる悪金融業者等は、これをむやみに安く担保にとつて買い取つてしまうというようなことが起るかもしれないと思うのですが、それに対する何らかの御措置は、お考えになつていないのですか。
  139. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、第三十七条第四項に「政令で定める場合を除く外、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない」とありまして、その政令でもつて、そういうことができないように規定いたすつもりであります。
  140. 丸山直友

    丸山委員 次に四十八条でありますが、四十八条では、これこれのものに対しては所得税を課さないということに相なつております。そこで、遺族一時金の公債を受けておる者が死亡して、相続人がこれを相続する場合があると思うのですが、その場合の相続税につきましては、何らのお考えはないのですか。
  141. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 遺族一時金につきましては、一応相続税は課せられないというように、大蔵省の主税局の方では申しております。ただ、どういう根拠でありますか、今ここではつきりわかりませんが、そういうことを主税局の方から言つて来ておりますので、その点については調査いたします。
  142. 丸山直友

    丸山委員 当該国債の譲渡による所得について所得税を課さないくらいでありますから、相続税を課さないのは当然であろうと私は考えております。そういうふうに国税庁でお取扱いになるということであるならば、けつこうでありますが、わかりましたら、その根拠をお示し願いたい。法できめてないことをやるということは、何らかの理由があると思いますから、それを伺いたい。それから所得税を課するということは、所得税法によつて税を納めなければならない義務が国民にある。憲法の三十条には「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」ということが明瞭に規定してある、その「法の定めるところ」というのは所得税法である。従つてその所得税法に従つて所得税を納める義務があるのですが、その義務を除外して、四十八条で「課さない」と規定しております。そうしましたら、先ほど来しばしば問題になつてつた生活保護というものは、所得のあつた場合においては、それを差引くのが原則になつておりましても、憲法に規定しておろうがどうしようが、ここに除外規定を設けて、生活保護の場合は、所得とみなさないということが、理論的に対立して成り立ち得ると思うが、それに対して、どうして所得税だけの除外規定を設けて、生活保護の除外規定を入れなかつたのか、これを承りたい。
  143. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 生活保護法に書いてあります通りに、あらゆる収入の手段を講じた最後の処置として生活保護法があるということが、生活保護法の精神でございます。それがなくなりましたら生活保護法は成り立ち得ない生活保障のための最後の手段であるというところが、生活保護法の精神でございます。その点がくずれるということは、生活保護法の精神がなくなるわけでありますから、所得税を課する、課さないということとは、全然別のことでございます。
  144. 丸山直友

    丸山委員 どうも私には納得行かない。所得税法によつて所得税を課するということは、最後の線なんだ。その最後の線がここに除外せられると、所得税法はこの規定によつて体をなさぬということになる。今の御説明のように、生活保護法の形がくずれるということであれば、所得税法がくずれて来る同一の理由がここに成り立つと思う。どうも納得行きませんが、これは議論でありますから、これ以上は申し上げませんが、私はそう信じております。  これで質問を終ります。
  145. 岡良一

    ○岡(良)委員 ちよつと関連してお尋ねしたい。担保に供することができないという御説明が、はつきりわかりかねたので、もう一度御説明願いたいと思います。金融公庫との関連において。
  146. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 第四十六条にあります「担保に供することができない」というのは、これから障害年金遺族年金または遺族一時金を受けようとする権利であります。一般的なと申しますか、抽象的なと申しますか、そういうものを受ける権利であります。従いまして、その権利が確定いたされまして、実際に現金なり物件なりが手に入つた、それを言つているのではなくて、それを請求して受取る権利であります。
  147. 岡良一

    ○岡(良)委員 そうしますと、国民金融公庫がこの交付公債を担保のような形に取扱い得ると言われますけれども、問題はそこにあると思うのです。その公債を預かつて、ある程度金融に応じて金を貸し出した。ところが、約束通り二十箇月なら二十箇月の月賦償還をしないので、この交付公債金融公庫の手持ちになつたという場合、この公債から生ずるいろいろな物件が、金融公庫の方に移転しなければならぬことになる。そうすると、完全に担保としての物件が移転して来ることになる。そこで、たとえば日本銀行が買い上げるとかなんとかいう措置がないと、金融公庫も、これを担保物件として活用しないのではないかと思うのですが、そういう点について何かお考えがありますか。
  148. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一時金を受取るまでの—請求して、きまりまし、受取るまでの権利でございます。従いまして、受取つて公債が本人の手に入りましたならば、そのものにつきましては、第四十六条の規定につきまして、もう担保に供したりするような権利は全然存在しなくなつて来る。従いまして、その担保にとりました国債そのものにつきましての制限につきましては、第三十七條第四項に規定をいたしてをりますので、全然別に国債そのものの取扱いについての規定をいたしております。
  149. 岡良一

    ○岡(良)委員 そうすると、担保権の設定が、国民金融公庫に対してはできないのですね。
  150. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 「政令で定める場合を除く外」と書いてあります。この政令の書き方によつてきまつて来ると思います。
  151. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは、政令で、国民金融公庫に担保にできるということを、はつきり書いてもらえますか。
  152. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私どもといたしましては、そういうふうにいたしたいと思いまして、その方面に連絡中でございます。
  153. 岡良一

    ○岡(良)委員 ぜひ御努力をお願いします。
  154. 青野武一

    青野委員 議事進行について……。明日、厚生委員会があると思いますが、明日はひとつ渉外の岡崎国務大臣とそれから、できれば大蔵大臣、厚生大臣に、ぜひ御出席を願います。御質問いたしましても、納得の行かない箇所が相当ございます。本会議の討論その他の関係で、ぜひ承つておきたいこともあります。質疑をここでこの人数で打切るというわけにも行きますまいから、一応きようはこの程度質疑を打切つていただいて—やりましても、また明日やれば同じことですから、今のところで、ひとつきようは散会していただきたいということをお願いいたします。
  155. 青柳一郎

    青柳委員長代理 お答えいたします。明日の大臣などの出席につきましては、承知いたしました。  ただ、残つておりますのは、附則だけでございます。私の考えをもつてしますれば、これは大した問題もなし、今まで委員会で御論議もあまりなかつた部分であります。簡単に済むと思いますので、これだけを済ませて、本日散会いたしたいと思います。  それでは第四章の雑則を済ませまして、次に附則全部を議題に上せます。御質問ございますか。
  156. 丸山直友

    丸山委員 四十二ページに出ております所得税法の第十五条の三の、四千円の下に当該老年者が云々という箇条であります。これはこの前お伺いしてあつたかもしれませんが、所得税法における当該老年者とは、六十五才以上を示す。この法律では六十才以上と書いております。この間に五才の食い違いが出ている。この辺の調整は、どういうふうになさるつもりでございましようか。
  157. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 所得税法におきましては、老年者というものを ともかく六十五才にきめておりまして、これにつきまして、この法律措置はとりませんけれども、所得税法の中で、これをもう一つ別のような線で、六十五才と六十才二つつくるということは、どうも私どもとしてできにくい所得税法といたしましては、老年者を六十五才と認めているというところから、こういうことに相なつているのでございます。
  158. 丸山直友

    丸山委員 こういうことになつていることは、その通りでわかつている。その食い違いをどういうふうに御処理なさるか。この法律では六十才以上となつているのですが、その六十才から六十五才までの者が、この控除を受けられぬということになるのです。
  159. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点につきましては、所得税法におきましては、所得税法の体系をとつているのでございまするし、こちらの方のものにつきましては、年金を給するとか給しないかという点についての問題になつて来るわけであります。従いまして、その間において食い違いがございましても、そのために支障を生ずることはないのでございます。片方におきまして年齢を六十五才とし、片方の法律で六十五才とするということは、往々にしてあり得るわけでございます。これにつきましても、どういうことでわけたかということは、所得税全体がこういうふうにしているということ以外には、理由がないのであります。
  160. 丸山直友

    丸山委員 そうしますと、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。この法律がこのまま通過した場合に六十才以上になれば遺族年金はもらえる。しかし、それは所得税法の恩典には浴することはできない。六十五才を越えた場合に、初めて所得税法の恩典を受ける、こういうことになるのですか。
  161. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 所得税法の免税の方を受ける場合につきましては、その通りでございます。遺族年金そのものは、六十才になれば出ることになります。
  162. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に御質疑もないようでございますので、本日はこの程度で散会いたします。  明日は午前十時から会議を開きます。     午後五時十七分散会