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1952-02-13 第13回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十三日(水曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井手 光治君 理事 川本 末治君    理事 中川 俊思君 理事 並木 芳雄君    理事 前田 種男君       石原  登君    鍛冶 良作君       島田 末信君    中野 武雄君       野村專太郎君    多田  勇君       河野 金昇君    床次 徳二君       鈴木 義男君    立花 敏男君  出席政府委員         全国選挙管理委         員会委員長   牧野 良三君         総理府事務官         (全国選挙管理         委員会事務局         長)      吉岡 惠一君     ————————————— 二月五日  委員水田三喜男辞任につき、その補欠として  中野武雄君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員岡村利右衞門辞任につき、その補欠とし  て亘四郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公職選挙法改正に関する件     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それではこれから会議を開きます。  公職選挙法改正に関する件を議題にいたします。本日は全国選挙管理委員会委員長牧野良三さんから、選挙法改正に関する意見を承ることにいたします。牧野さんはさきに内閣に設けられました選挙制度調査会会長として、内閣総理大臣諮問に応じて国会議員選挙及び地方公共団体における選挙に関する制度について調査、審議の任に当てられ、その結果に基き衆議院議員選挙制度改正要綱をとりまとめられ、それを参考資料として皆さんのお手元に配付いたしてあります。つきましては、ただいまから同君より選挙法改正に関する御意見を承るごとにいたします。牧野さん。
  3. 牧野良三

    牧野政府委員 お言葉に従いまして、お手元に差上げておりまする要綱作成経過について申し上げたいと存じます。  ただいま委員長から御紹介のありましたように、昨年の五月、総理大臣のもとに諮問機関として選挙制度調査会が設けられ、できるだけ少数の委員で、かつ日を限つてすみやかに成案を得るようにということになりまして、五月の二十二日に第一回の委員会を開きまして、以来百日余りで成案を得まして、八月の二十二日、総理大臣講和條約調印のために渡米する二日前に答申書内閣総理大臣に提出し、その後総理府ではこの答申書に基いて一応これを條文化して御参考に資する努力をいたして参りました。  調査会調査方針として定めました第一のものは、新憲法の実施によつて選挙法には特別の注意を拂わなければならない、まず天皇主権選挙法から、国民主権選挙法に切りかえるということをいたさなければならないのではないか、それには公職選挙法の一部を改正するということよりも、むしろ根本から改めた新選挙法答申するということが必要であろうということに一決いたしたわけでございます。よつて新たに新衆議院議員選挙法要綱作成の任に当りまして、それができれば、参議院議員選挙並びにその他の選挙はすべてこの衆議院議員選挙法中心にそれぞれ立法することが適当であろうということになつて、その方針のもとに要綱決定することに相なつたのでございます。この点調査会がかような見解からまず衆議院議員選挙法作成しようということになつたことを御了承を請います。  いまさらここで申し上げるまでもなく、天皇主権のもとにおきましては、選挙権は官から国民に付與されたるもの、お上から国民に授かつたものという観念根本精神をなして来ております。従つて選挙権は神聖なもの、その取締りはよろしく厳格でなければならないといわれて来ておりました。これがいわゆる官僚思想と結びつきまして、選挙法に一貫した特別の観念をつくり上げて来ておると思うのであります。ところが新憲法のもとでは、選挙権は本来国民自身のものであつて国民固有の基本的な権利であるということが根本思想となつております。従つて官から特別扱いをしたり、またされたりするということであつてはならない。そこに私ども新旧立法基本的観念に相違があるということに着眼しなければならないと思う。次に第二には、これまでの選挙権は、国民国家のために行使するものとされて来た。従つてここにもまた特別な取扱いをする根拠があるもののようにされて参つて来た。しかるに今日の選挙権は、国民国家のために行使するのでなくて、自分自身のために行うものである。そしてそのために、そこに国民主権というものの本質的な意義があるとされて来ておるのであります。第三には、これまで選挙権は今申すように上から授かつたもの、それを国家のために行使するものとせられて来た当然の結果として、その行使にあたりましては、官憲の厳重な監督取締りとが当然視されて、選挙はすべての監督取締り規定中心となつて来ておる、このことはわれわれの深く注意しなければならない点だ。しかるに今日の観念では、国民自分選挙権自分のために使うというのであるから、外部から監督だの取締りだのという干渉がましいことをすべきでなく、かえつて選挙関係のそれぞれの役員を初め関係者一同は、有権者に対してはもちろんのこと、候補者運動員に対して常に親切を旨とし、かつサービスに努めて、選挙権が常に愉快に、まことに気安く行われるということに心を置かなければならない。以上が天皇主権時代選挙法国民主権時代選挙伝と基本的な観念を異にしまする点でありまして、ここに十分なる注意をして要綱決定をしなければならないということから取進めた次第でございます。そこででき上つた選挙法要綱には、お手元出しておりますように大体五つ基本的特色があります。第一は、選挙に関する各種基本観念を明らかにした点であります。ただいま申し上げたように、日本における選挙というものは官憲監督取締り中心で、その指揮命令、あるいは国家のためぜひこれは行使しなければならない、投票しなければならないというような、強要されるような観念がいつも裏に漂つて今日に至つたために、選挙というものはその指揮命令と強要とを内容としているような感じを受ける。そこでまず新しい選挙法は、第一章に総則として、一條から五條至つてこの基本観念を明らかにする。すなわち第一條には、選挙とはいかなるものであるべきかといつてその意義を明らかにし。第二條には、選挙権とはいかなるものであるべきか。第三條には、候補者はいかなるものであるべきか。第四條には、選挙運動はいかなるものであるべきかということを明らかにし、しかして第五條には、選挙管理委員会はどういうことをするものであるかということを明らかにして、以上選挙法根本をなしまする五つのものに関する基本観念規定し、すべての規定はこの基本観念からずつと流れ出る。選挙法の万般の規定はこの五つ基本観念からこう流れ出る。この基本観念にたがうものが違反を構成する。従つて流れてきて各種規定になつて、こう受けて立つて罰則制裁規定を設けまして、首尾一貫、簡潔明瞭な体制をつくり上げるということが必要である。従来選挙関係者の中で、こういうことをすれば違反になりますか、ああいうことをしてもさしつかえありませんかという問合せが非常に多い。それはあまりに常識とはかけ離れた選挙法のやかましい規定があるという結果でありますから、もう何人にもなしてはならないこと、なしてもさしつかえないということが、自分常識的に判断のできることを旨として選挙法というものをつくり上げなければならぬ。そんな国民通常の生活並びに常識をもつて判断のできないような規定をしてはならぬということを中心に進めたわけであります。  次に第二の点は、選挙手続の改善でございます。根本は金のかからない選挙のためにどういうことをすべきか、これについて考えられたことが、選挙期間を短縮しよう、短かい期間で徹底を期する。第二は、投票は従来のように自署主義をとらないで、あらかじめ候補者の名前を印刷してある投票用紙を使用する。いわゆる記号式投票に改めよう。第三には、不在者投票というものは、いろいろな面の便宜をはかるために親切に行わんとするその結果として、かえつて大きい弊害を来しておる。従つてこれには大所高所から、何人も正しいと見る思い切つた方針を定めようというのがおもなる点でございます。  第三は、政党の公認制度というものを法律上の制度として、これをりつぱに、公に、法律的に認めて行くことにしようじやないか、そして公認候補者というものに対しては十分な権威を持たせる、これがその一であります。二は選挙運動に関することでありますが、これはずいぶんいろいろの資料が出まして、各党各派より寄せられました意見中心委員会は熱心に検討いたしました。その結果皆さんの御希望、輿論の望むところに従つていろいろと規定はこしらえてみましたけれども、大体演説会中心に、演説会一本を原則とするように進めたらどうかというつもりで要綱決定しようということで、心を使いました。  次には選挙費用でありますが、法定金額というものをむやみに少くして、守ることができないことを原則のようにきめてはいかぬ。これも広く輿論を聞いて適当な金額に定めると同時に、審査委員会制度を置きまして、これを嚴重に守らせるような方針決定しようということにいたしたのでございます。  次に制裁及び罰則規定でございます。これについて、委員会にはよろしく厳罰に付すべしという厳罰論と、極度に処罰するのはやめようじやないかという罰則緩和論とが相当闘わせられましたその結果これまでの選挙法は、ただ違反を憎むの結果、むやみと重くさえすれば目的を達するように考え、非常に偏狭の弊害がある。こういうことはやめなければいかぬ。これは学問的見地と、実際上の立場と両方から見て、十分な規律、統制を法の上に明らかにしたいということから、まず自然犯的なものと法定犯的なものとをはつきり区別する。自然犯、すなわちいずれの国でも何人でもこれを犯罪だという刑法的な犯罪と、みずから選挙目的で定められた便宜上の規定、それに触れたというものとの間には截然たる区別をするということをりつぱに組織立たせることができました。そこで法定犯、すなわち規律違反方面に対しましては行政罰として軽い過料の制裁を認める。それから自然犯的なものには、すなわち選挙の自由公正を刑法犯的な行為をもつて妨げるもの、その中には選挙本質を害するものと選挙秩序を乱すものとの二つに学問的にも実際的にも区別することができる。そこで買収とか不正投票とかいうように、選挙本質を害するものには懲役刑を科することはやむを得ないが、秩序を乱したもの、公務員の運動であるとか、教育者の職にある人がなしてならないことをした、そういうような場合には、同じ体刑を科する場合ありとするも、これは禁錮にとどめるがよかろう。そしてともに罰金を科することを認める。かようにいたし、第三には、いやしくも選挙法違反をやつた者に対しては選挙権、被選挙権を停止させると同時に、実情に即するように、特殊の違反そのものに対しては連坐の制度をきわめて広く、明瞭に認めるということに相なりました。  しかして最後に第五として、これらの目的を達する上からして、選挙区制はどうしたらいいかということに至りまして、小選挙区制を採用せられることが最も好ましいということに議決されました。これは中選挙区、大選挙区、小選挙区、おのおのその利害得失議論した結果決定したというよりも、以上の方針を実現するがためには小選挙区制のほかないということで、小選挙区制というものを可とすることになつた次第であります。しかして委員会はただ小選挙区制を可とすると答申いたしましたが、その内容等に至りましてはむろん国会の手にかかるべきもので、採否と同時に、採用する場合には、いかなる区制をいかに取扱うかということはすべて国会のなさるべきことで、調査会の手にかけるべき限りでないということに相なりました。  以上根本となりましたものにつきまして概要を申し上げまして、御参考に供します。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際何か御質疑がございますれば御発言を願います。
  5. 立花敏男

    立花委員 最初経過報告についてお聞きしたいのですが、総理諮問機関として調査会は去年の五月にできて、答申は八月にお出しなつたようでございますが、今この委員会に御提出になつている衆議院議員選挙法案自体答申とどういう関係があるのでございましようか。またこれが全国選挙管理委員会事務局法案として出て参つておるわけでありますが、全国選挙管理委員会は、こういうものをどういう考えでお出しなつたか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  6. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 私からお答え申し上げますが、答申基礎にして私ども手元参考につくつてみた案でございます。
  7. 立花敏男

    立花委員 参考と申しますと非常に広いのでございますが、諮問機関として正式にこういう法案を御決定なつたのか、単なる資料的な意味での法案なのか、こういうものを政府決定案として法案としておつくりになつておるのか、その辺が非常に不明確なんですが、この案をお出しなつた以上は、これをどこまでも政府として正式に推進なさるお考えなのか、その点を承りたい。  それから御承知でございましようが、この選挙法改正特別委員会としては申合せがございまして、お出しになつているような問題、この小選挙区制とか、そういうものは今度は扱わないという決定をしておるのでございますが、そういうことを御承知の上でこういう法案政府として決定されて、どこまでも推進しようというお考えなのか、その点が非常にあいまいなので、明確にしておいていただきたいと思います。
  8. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 これはもちろん調査会としての案ではございませんで、事務局の案でございます。政府がどう扱うかということは、まだわれわれはつきり伺つていないので、事務局だけの案で、各方面へ発表しまして、各方面意見も聞きたいというつもりもあるわけであります。
  9. 立花敏男

    立花委員 それは、選挙管理委員会事務局はそういうお答えでわかるかと思うのですが、この総理諮問機関としての調査会牧野さんが会長だということですが、牧野さんがこの法案を御説明になると、どうもやはり政府としての決定的な法案だというように理解できるのです。特に選挙制度に関する調査会として設置された。当局責任者法案を御説明になりますれば、これはそう理解せざるを得ないと思うのですが、その点はやはり政府として、この案を正式に法案として決定なつたのかどうか。その点牧野さんからひとつ御答弁願いたい。
  10. 牧野良三

    牧野政府委員 その点を明瞭にお答えいたします。選挙制度調査会要綱決定して、内閣総理大臣答申をいたしました。内閣は、事務当局がこの答申に基いてかりに條文化をいたしました。そうしてこれを国会の諸君並びに社会一般参考に資して、広く輿論批判を求めんとしたもののようでございます。要綱のみをもつてしては、専門家以外の人にはのみ込めない。それでかりに條文化をするとするならばどういうことになるかということで、苦心をして形を整えて、もしも要綱をそのまま御採用になるとすれば、かような法律の形になりますということにして、何人にも批判をしやすいようにいたしたのがこれ一つ。  第二は、むしろ衆議院委員会の御参考になるようにと、非常に急いだので、そこで早く出したのでありますが、その後衆議院でもりつぱな改正案を御作成になりました。これを比較して調査研究する場合にも御便宜でなかろうか、従つて委員会へこれを提出し参考にしていただくことの方がいい、こういう考えからお手元出したわけでございます。どうぞ御了承を請います。
  11. 立花敏男

    立花委員 私どもは、この委員会でつくりました小委員会の案もすでにできまして、先ほど理事会で、これは二十日にやるということに決定いたしております。これは去年から大体でき上つておりましたので、おそらく皆さん御存じだろうと思うのですが、そういう国会空気、これは申合せになつてつたわけでありますが、そういう空気を、御存じの上で、こういうものを單に参考資料としてだけではなしに、はつきりした法案の形で、しかも管理委員会がお出しになるということは、何か非常に奇異な感じを持つのですが、きようは單なる参考程度でございましようか、今後やはりこれを正式に政府の方から法案として国会にお出しになるような御意思があるのかどうか。委員会としてはこれを單に参考としてだけ見ておけばいいのかどうか、その点政府の決意をひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  12. 牧野良三

    牧野政府委員 お答えいたします。ただいまの最後の御質問に対しては、内閣総理大臣が適当な機会に御答弁をいたします。私よりはただ経過を述べました。しかしてつけ加えて一つ参考に申し上げたい。衆議院内に設けられましたる委員会は、現行公職選挙法をいかに改正すべきかということを目的にしてお進めになつたと承つております。選挙制度調査会は、日本選挙制度はいかにあるべきであるか、占領下においてなされた法律を、根本的に立ち直つてほんとう日本のためにはどういう選挙法であるべきかとあらためて根本から見直すべきだということから、全体に向つて手を染めたわけであります。従つて衆議院目的とされるところと選挙制度調査会目的とするところとの間には、截然明瞭な区別あるものと御理解願います。従つて公職選挙法一部の改正に対しましては、選挙制度調査会の案は非常にお役に立ちはせぬか、かように考え出したのでありまして、その間に別な考えや、しいてこの反対をもつて対抗せんというような心持一つもございません。もうまつた国民主権なつたのに、依然として天皇主権のときのような選挙法であつてはならぬと同時に、ポツダム宣言に基くポ政令のもとにおいてなされた立法をもう一ぺん見直してみたらどうかという、きわめて自由な立場に立つてつくり上げたものだということで、御理解を賜わりたいと存じます。
  13. 立花敏男

    立花委員 内容を一点だけ、ひとつそれと関連いたしまして聞いておきたいと思いますが、問題の一番大きいのは、内容では小選挙区制の問題だろうと思います。今委員長が申されましたその天皇主権から国民主権への選挙法改正だ、これと小選挙区制と具体的にどういうふうに関係があるのか、現在公職選挙法における選挙区の問題が、どういう点でこの国民主権と衝突するのか、その点をひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
  14. 牧野良三

    牧野政府委員 お答えをいたします。どうかあまり、欠陥はありましようが、欠陥をつつつかないで、ほんとうの私らの心持趣旨とするところを了としていただきたい。それはただいま述べた一、二、三、四、これらのことを有力適切に実行して、日本国会制度基礎を確立するためには、小選挙区の方がいい、いや小選挙のほかはあるまいという結論なつた。これだけでございます。議論も何もなかつた。ただ事実を申しますと、総会の席上では議論がありました。反対論がありました。小委員会の各委員会では、どうも小選挙区を実行するということのほかにこの目的は達せられないという結論に達しただけでございます。さように御承知願いたいと思います。
  15. 河野金昇

    河野(金)委員 議事進行について……。今私たちは、これは参考として聞いておるだけであつて委員長はかわりましたけれども、前の委員会としては申合せがあるはずであります。だから牧野さんの御説明なつたことに対して質問があるなら別だけれども、ここで小選挙区がどうのこうのと論議すべき段階ではないと思います。もし論議するなら、委員会申合せ委員長もかわつたということであるから、あるいは方針がかわつているなら、これはもう一ぺん相談して、その上でもう少し具体的に入つて行くようにしたらいいと思う。だからまずわれわれは、われわれとして方針通り行くかどうかをきめたらどうかと思うのです。何だかむだなことをやつているような気がいたしますから、委員長に一応御忠告を申し上げます。
  16. 小澤佐重喜

    小澤委員長 河野君の趣旨は大体私と同じ考えでありまして、従来の方針を変更する考えはございません。ただ牧野さんの説明はあくまでも参考として聞いておるのでありまして、従つて質問される皆さんの方でも、そのつもりでどうかひとつ、河野さんのような趣旨質問を願いたいと思います。
  17. 立花敏男

    立花委員 小選挙区の問題についての御説明は、やはり非常に漠然としておりましてわからないのでありますが、最初五つ原則と申しますか、五つ総則からすなおに結論をして、小選挙区制が出て来るとおつしやるのですが、それだけではちつとも説明になりません。たとえば第三條で候補者たる要件がきめられておりますが「候補者は、国民代表者として、高い識見を備え、公共のために盡す熱意を有する者でなければならない。」こういう原則から、小選挙区制が出て来る。こういうのが五つあるわけでありますが、その五つの中の一つ、こういうものからも小選挙区制が出て来るというようにおつしやるように聞えるのですが、どういう意味でこの三條から小選挙区制がいいということが出て来るのか、こういう点が非常に不明確なので、御説明が納得が行かないのですが、この点をひとつ……。
  18. 牧野良三

    牧野政府委員 ただいま第一條ないし第五條について御疑問がおありなさるようですが、それは別といたしまして、これが第一項。次の第二項には、金のかからない選挙をやろう。それにはなるべく選挙期間を短縮しようじやないか。それにはもし大選挙区であり中選挙区であれば、三、四十日はどんな最小限度でも要する。小選挙区制なら十五日くらいでよくないか。それから不在投票の問題なども、きわめて簡單に処理ができるのではないか。また第三に申しました演説会開催等に関して便宜を供するというようなことも、小選挙区ならば非常に容易にできるのではないか。そうして立合い演説その他のことも、まことに簡易にできはせぬか。それから大切な選挙費用の制限を実施するのに、中選挙区以上ではなかなかむずかしいし、金もかかる。だから小選挙区ならばこういうことの監視もきわめて容易じやないか。こういうふうになつたのでありまして、だから第一條から第五條にのみ拘泥したわけではありません。御参考になろうからと御説明申し上げたわけであります。
  19. 並木芳雄

    並木委員 私もただいま河野委員から言われたように、さつきの理事会で、大体何の必要があつてこの際牧野さんに来てもらつて意見の開陳をしてもらうかということを申し上げたのであります。参考までに聞こうということですから、参考までに聞きたいと思つて聞いておつたわけでございます。しかし今お聞きしている間に、どうしても聞きのがせない御報告がありましたので、その点について質問をしておきたいと思います。それはあたかも今までの公職選挙法が、天皇主権のもとにおける精神に基いてつくられておるやの感を與える。選挙制度調査会答申した要綱に基いてつくられた選挙法天皇主権のもとにおいてつくられた選挙法であるというふうな、少くとも私は誤解を與えるのではないか、そういうふうに聞いたのです。そこでお伺いしたいのですけれども、私ども苦心さんたんしてつくつた現在の公職選挙法というものは、どういう点において天皇主権のもとにおける流れをくんでおるように牧野さんはお感じになつておるか、それを御説明願いたいと思います。
  20. 牧野良三

    牧野政府委員 お答えを申します。公職選挙法全体の立案の基礎調査会は非常な疑いを持つたのであります。調査会の抱いた疑いが正しいかいなか、これは別でございますが、調査会としては、従来の選挙法を統一して、形を整えたというような感じがきわめて深い。であるから、ここはひとつ新たに国民主権ということの中心に立つて考えてみようということになつたわけであります。でありますから、その点に関して一々指摘し、ここが旧思想だ、ここが新思想だなどというわけには参りませんが、全体の構成がさようになつていない。ことにはなはだしきものは罰則規定において感じたわけでございます。この程度で御了承願いたいと思います。
  21. 並木芳雄

    並木委員 これは牧野さんの人物をもつて、それで全国を押しまくられた日には、国会議員立場というものは非常に私は悪くなるのではないかと思います。つまり今の国会議員がぼやぼやしているから、こんな天皇主権に基くように統一した形式による選挙法をつくつたのだ。現議員がつくつたのだ。だからわれわれがしつかりしなければだめなんだというふうに、私は国民に印象づけるのじやないかと思うのです。そういうお考えがあることを今知つて、初めて先般来、あたかもわれわれがこちらで公職選挙法を審議しておる際にも、片方から小選挙区を断行するのだとか、これこれのやり方をやるのだというふうに、命令の意図に出るような報道が行われた。その理由を今発見したわけです。この点は私ははなはだ遺憾であると思う。今のお話の統一した形式ということはどういうことなんでしようか。公職選挙法をつくるときに、私どもはばらばらになつておる選挙法というものでは不便だから、便宜上一本にまとめて、そうしてその中で共通する点は最大公約数として総則にうたつて、あとは各項目で、市町村の村会議員の選挙は市町村の村会議員の選挙で、その都度第何條なら何條と項にわかつて詳しく規定しているわけです。そういうものをとらえて、これが天皇の主権から現われたというふうに論ぜられたのでは、これは現にわれわれは国民主権、民主主義に基いて審議しておるのでございますから、国民の受ける印象というものは、はなはだ奇異に感ずるのではないかと思う。特に現議員と追放解除者との間にややもすればみぞができることを私どもは遺憾に思つておる際、そういうことを吹聽されたのでは私ども立場はなくなると思うのですけれども、もう少し納得の行くように説明していただきたいと思います。
  22. 牧野良三

    牧野政府委員 お答えをいたします。さように御解釈くだすつては、調査会の心に沿いません。調査会は、すべて法律改正というものはさように特別な心あつてするものであつてはならぬ、虚心坦懐、きわめて打解けた心持で、過去の法律の及ばないところ、至らないところ、誤れるところがあればこれを指摘して直したいというのがあなた方、私どもの志でございます。従つてそんなやかましいお考えでなく、新しい時代に処して、新しい法律をこしらえて行きたい、どれだけでもベターな方へ進みたいという心のほかには何もありません。だからそんなふうにおとりくださいませんで、調査会自分らがベターを盡して、ベターな法律をつくるために全力を注いだのだということに御理解くだすつて、どうぞ御寛容をこいます。
  23. 並木芳雄

    並木委員 その気持はよくわかるのです。わかりますけれども、ただほんとう公職選挙法天皇主権のもとの流れをくんでいるんだと言われたのでは、私どもはその点では引下れない、こういうわけです。ですから統一された形式についてそれをお感じなつたとしても、罰則つて、何もいいじやないですか、国民から選挙された国会議員が堂々とここで審議をして可決したものであつて、どう天皇主権の流れが罰則につながつているか、その議論は飛躍されているのではないかと思う。先輩である牧野さんにこういうことを申し上げるのは、私としては快しとするものではないのですけれども天皇主権のもとにおいてつくられたということですが、これはとんでもない誤解を與える、こういうわけなんです。ですから統一された形式、これもわれわれの発意に基いて行われたもので、天皇主権に拘束されてやつたものではないのです。どうかもしそうでないとしたらば、はつきりここで自分の誤解であつたということを明言していただかないと、私ども立場はなくなります。
  24. 牧野良三

    牧野政府委員 すこぶる不本意なお言葉をいただきまして、私としては残念であります。法律改正するということに国会はもつと虚心坦懐であるべきだと思います。きわめて虚心坦懐な大きな心持ちで、過去におれが努力したの、われわれはこういう考えであつたのということに拘泥しないで、いいものはいいようにしようじやありませんか。悪ければよそうじやありませんか。そこでどうか調査会はいいものだと思つてつたのですから、それはそれを御批判くださつて、御参考にしてください。これ以上申しますと議論になりますが、私はほんとうに現行の罰則には非常な遺憾を持つのです。学問的体系がないのです。日本選挙法に学問的体系をつけるということは非常に大事なことです。違反すればすぐ牢の中へぶち込む、こういう考え根本的に誤つておる。これは選挙をやらない人、候補に立つたことのない人、選挙運動をやつたことがない人が、ただ憎むのあまり厳罰にしようという思想の流れから来ている。その思想の裏には何があるのか、古い思想がある。その古い思想とは何であるときわめて行けば、これを学問的に説明すると、天皇主権時代という言葉になると思います。でありますから、言葉に拘泥しないで、どうかもつと気やすい心持で、お互いに法律改正その他にお心を入れていただきたい。どうぞさように御了承願いたいと思います。
  25. 並木芳雄

    並木委員 先輩の牧野さんとこれ以上私は論争しようとは思いません。お言葉はお言葉として承つて、私どももよくその点は研究してみたいと思います。  そこでもう一つお尋ねしておきますが、それは、それほどの自信を持つて全国選挙管理委員会事務局の方でこういう法案をおつくりになつたわけです。ひな型としてつくられたわけですが、それならば選挙制度調査会答申案をやはりあくまでも貫くべきであると思うのです。この熱意がなければ、選挙制度調査会の方々としても職務の全斑を盡されたとは思われません。ただどういうものかと聞かれたから、それに対して諮問をしたというだけでは、御本人も物足らないでしようし、またそれをつくらした方の側でも満足の行かないものがあると思うのです。そこで先般来伝えられるように、いろいろ画期的な案を盛られておる選挙法改正、これをあくまでも実現するように努力する考えがあるのかどうか、これを当面の責任者である吉田総理大臣にも申入れをしているかどうか。そういう点は選挙制度調査会会長であり、また全国選管長である牧野さんは御承知だろうと思いますが、お答えを願いたいと思います。
  26. 牧野良三

    牧野政府委員 明瞭に御答弁申し上げます。内閣総理大臣をしてそのことは答弁させます。どうも私は政府委員ですから答弁できぬのです。私が今度大臣になるか何かでここへ出ますと、責任を持つて答弁するのですが、これは答申案です。総理答申したのです。だから総理をして答弁させます。それで私と総理との間には意思の疏通はありますけれども、私の答弁する限りではないから、この点はかんべんしてください。
  27. 並木芳雄

    並木委員 それではひとつ私がちまたに聞いた声をお伝えします。それは、あたかも牧野さんが選挙法をつくつてしまうのだというような印象を持つているのです。だから一言牧野さんが、今度の選挙は小選挙区になるだろうと言うと、いつからなるのだ、どこの区はどつちにつくのかという質問が出るのですから、もし今のように、吉田総理をして答弁させますと言つて逃げを打たなければならないのであるならば、今後牧野さんとして発言し行動をされる場合に、やはりその分に応じてやつていただかないと世人をして誤らしめるものがあると思います。これは私のお願いでもありますし、牧野さんのお感じも伺つておけばなおけつこうであります。
  28. 牧野良三

    牧野政府委員 申し上げます。国会に出ましては、総理大臣以外には御質問に対して答弁する権限はございません。ちまたに出れば牧野良三も一人の政治家であります。どうぞ自由な発言をお許しを願います。
  29. 小澤佐重喜

    小澤委員長 他に御質疑はございませんか。
  30. 立花敏男

    立花委員 私ども委員会として、小選挙区の問題並びに一般の選挙調査にこの間イギリスに行かれた方があるのですが、その報告委員会としてお聞きになつたのかどうか、何かその結論を得ませんと、せつかく国費を使つて向うに行かれて、報告もないし資料もいただけない……。     〔「資料は配付してある」と呼ぶ者あり〕
  31. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それでは他に御発議がなければ、本日はこれで散会いたします。     午後二時十九分散会