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1952-02-15 第13回国会 衆議院 経済安定委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十五日(金曜日)     午後一時四十六分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 志田 義信君 理事 有田 喜一君       岩川 與助君   小野瀬忠兵衞君       圖司 安正君    奈良 治二君       福井  勇君    福田 喜東君       細田 榮藏君    河野 金昇君       笹山茂太郎君    林  百郎君  出席政府委員         経済安定事務官         (貿易局長)  板垣  修君  委員外出席者         参  考  人         (第一物産株式         会社常務取締         役)      水上 達三君         参  考  人         (日本輸出銀行         専務理事)   山際 正道君         参  考  人         (伊藤忠商事株         式会社専務取締         役)      吉田卯三郎君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 二月十五日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として木村  榮君が議長指名委員に選任された。 同日  委員木村榮辞任につき、その補欠として林百  郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  貿易計画に関する件     —————————————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議開きます。  それでは貿易計画に関する件についてその調査を進めます。  この際御報告いたします。昨日の委員会におきまして御決定を願いました、参考人江商株式会社常務取締役高見重義君及び日立製作所理事原口武夫君より、ともに所用のため欠席いたしたいとの申出がありましたので御了承願いたいと存じます。  以上御報告いたします。  この際参考人追加招致の件についてお諮りいたします。ただいま調査行つております貿易計画に関する件につきまして、伊藤忠商事株式会社専務取締役吉田卯三郎君を参考人とし、その参考意見を本日の委員会において聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決します。なおその手続等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。  それでは参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず御出席をいただき厚く御礼申し上げます。ただいま本委員会行つております国政に関する調査事件のうち、貿易計画に関する件につきまして、その調査の慎重を期するため、それぞれの部門の立場から御意見を拝聴いたし、本調査参考といたしたいと存じておりますので、参考人各位には、それぞれの立場より忌憚なく御意見を御開陳くださいますようお願い申し上げる次第であります。  それでは参考人より参考意見を聴取いたすのでありますが、各参考人に対する質疑は、まず参考人より参考意見を聴取いたしました後、その都度これをお許しすることといたしたいと存じますので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。なお各参考人発言順位につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。  それではまず、第一物産株式会社常務取締役水上達三君よりお願いいたします。
  4. 水上達三

    水上参考人 ただいま御紹介にあずかりました水上であります。  安本の立案にかかります昭和二十六、七年度の日本経済総合見通しの中で、特に貿易に関する国際収支予想並びにこれに伴う現下貿易上の諸問題につきましての所見、並びに貿易業界におきまして現在取上げておりますところの問題をいささか述べてみたいと思います。  独立後のわが国経済は、貿易に生命をつないでおるというのが実情でありまして、この円滑適正な拡大を通じてのみ、わが国自立経済達成というものがあり得る、こういう考え方については何人も異存のないところであるわけであります。昭和二十六年度の国際収支見通しは、五億八千万ドルの受取り超過とされております。米国の対日援助が急速に減少したことを考えますと、国際収支は一応好転しているようであります。しかしポンドオープン勘定地域への輸出超過の増大していることは、ポンドドルとの兌換性が非常に不自由になつているというふうな現状から行きまして、われわれの商売からいいますと、不良債権を持つているというような状態に置かれているわけであります。ドル正常貿易は六億四千万ドル入超ではありますが、これを補つて余りある特需並びに貿易外収入がありまして、ドル不足は当面の急務とはなつていないのであります。しかし、昭和二十七年度の国際収支見通しにおきましては、差引受取り超過約一億ドルとはなつているものの、その内容現実には約二億ドルに近いポンドオープン勘定地域への輸出を含んだもので受取り超過を予想しているものであります。ドル収支のみを見ますと、差引八千四百万ドル入超も、特需の三億三千万ドル収入を想定しておるのでありまして、特需の前途は目下のところ相当期待できるようではありまするけれども、あくまで不確定な要素でありまして、これを当てにすることは許されないのであり、ドル不定を招来することは先行き必至の問題であります。この収支予想算定基準の背景に対しましては、いろいろ意見のあるところでありまするけれどもポンド輸入現状のような不振の折柄、六億五千万ドルスターリング地域よりの輸入達成には、われわれ商売人から見ましてもはなはだ疑問があるのでありまして、二十七年度の国際収支は決して楽観でき得ないと言えるのであります。これらはすべてわが国の宿命的な貿易構造特殊性から、輸出でかせぐも輸入進まず、原材料不足から消費水準は上らず、生産の伸長に比べまして投資過小となる、こういう輸出超過の続行は、ひいては貿易インフレの要因となるおそれもあるわけであります。現在外貨手持ちは、聞くところによりますと約九億ドルを越えているように伺つておりますが、そのうちポンド手持ちが二億ドル余り、すなわち九千万ポンドくらいあるように聞いております。さらにまたオープン勘定のものが一億二千万ドルで、これらは現実効率的使用の困難なる外貨でありまして、先ほども申しましたように、あたかも不良の債権を持つているような状態に置かれているのであります。こういうふうな貿易構造にありますわが国貿易を、通貨別拡大均衡させることは決して容易じやないのであります。政府におかれましてもいろいろ腐心されておるのでありますが、こういう困難な問題を打開して行くのには、はたしてどうしたらよいかというようなことに重点を置いて今後の施策を立てていただきたいと、われわれは要望しておるのであります。今申し上げましたドルポンド見通しにつきましても、いろいろ意見はあるのでありまするが、とにかく相当ポンドがたまつて行き、将来——さしあたりは米ドル相当ありますけれども、長い目で見ますと米ドルというものは非常に少くなつて行く、とりにくくなつて行くというふうな傾向一にあるということはもう明らかであります。しかもそのポンド価値たるや、イギリスの現勢から見まして、とうてい強くなり得ないというようなことを——これも異見のあるところがあるかもしれませんが、私どもはそういうふうに考えており、また日本政府としましてもそういう考えでやつて行かなければならぬと思つております。そうしてみますと、どうしてもさしあたりドルの獲得は特需により——正常貿易か、少くとも特需による収入はありましようが、あるいは駐留費その他から入つて来るドル収入があるにしましても、将来必ずドルは非常に減つて来るということになりまして、一方またポンドの方はふえて来るというふうなことになるだろうと思います。従いまして、この二十七年度の計画につきましても、つじつまは一応合わしてあるようでありますがこれよりもさらにドル減少ポンド過剰の傾向は強くなつて行くだろうと思われます。  そこでそういう傾向を少しでも阻止して、日本立場を幾らかでもよくしようというためにはどうしたらよいかという問題になるのでありますが、一口に言えば、ドル輸出を振興してポンド輸入をふやすということに帰するのであります。それをもう少し具体的に申し上げますと、それではドル輸出振興にはどういうことをしたらよいかという問題ですが、これはここではあまり直接の御関係もないと思いますから簡單に申し上げますけれども、いわゆるダラー・ドライヴとしてのいろいろの策があるのであります。しかしそのいずれもがまだ非常に小さい効果しか期待されないような問題だけにとどまつているような感じが私どもはしておるのでありまして、もつと思い切つた施策がほしいという感が深いのであります。たとえば、まず前に行われておりました優先外貨制度、今度改められました輸出振興外貨制度というのがあるのでありまして、これなども最高一割の外貨報償が得られることになつておるのですけれども、その報償額の全体も、計算してみますと、日本の総輸出額のおよそ二%弱にしかならない程度のものであります。従いまして、こういうものの限度をもう少し拡張するとか、その他いろいろの方法によりまして、報償的の意味をもう少し持たしたいという気がいたします。もちろんこういうものにはいろいろの弊害も伴いますから、そういうものももちろん考えなければいけません。それからまた輸出入個別リンク制度あるいは総合リンク制度というようなものが貿易にはよくあるのでありますが、こういうものも、運営のよろしきを得ますれば、非常に輸出意欲を盛んにいたしまして効果のあるものだと思います。それから保険制度一口保険制度といいましてもいろいろな保険制度があるのでありますが、たとえば生糸のようなものの輸出促進をはかる場合に、宣伝費広告費というようなものを考えなければいけないと思うのですが、こういうものにしましても、少数の業者だけが負担して生糸輸出を促進するというふうな大事業はなかなか困難であります。従いまして、こういうものをカバーするところの計画輸出保険制度、あるいは輸出促進費用保険制度というようなこと等、一連の輸出信用保険制度というものについて考えてもらいたいと思つております。今申しました生糸などにしましても、ちようどこの十数年の間、生糸アメリカ消費階級からうとんぜられているわけです。つまり、戦争の間日本生糸というものは向うにストックがなくなりまして、あつたものは軍が使いましたから、結局民需に出なかつた従つてちようどそのころ生糸を使いたい年齢の女性も、今おそらく二十五、六歳かあるいは三十歳近くになつているわけですが、そういう今生糸をほしがる年齢婦人連中なんかが、日本のほんとうの生糸の味を知らないということがかなりあるのであります。これを使わせるようにするには、やはりアメリカは特に宣伝の国でありますから、宣伝心要であります。非常に費用がかかる、そういう費用をどういうふうに求めるかというふうなことが、問題になるわけであります。こういうものの解決の一つ方法として、そういうことを考えてみたい、こう考えるのであります。  それからまた標準外決済の処理にあたつてドル払い取引の優遇措置というようなことも考えてほしい。またドルブロック向け貿手融資期間は今は四十五日でありますが、これを九十日くらいまで延長してもらうとか、あるいは現在倉庫証券担保金融の道はあるのでありますが、これをドルブロック向け輸出品限つて繊維品などにも及ぼしてもらうというふうなことも、ドルブロック向け輸出振興一つ方法だと思います。それからまたプラント輸出、ここに山際さんがおられますが、プラント輸出長期契約になりますと、為替の変動のリスクというのを、われわれ商売人が負担しておるわけでありますが、こういうものの補償の方法、そういうことも考えていただきたいのであります。それからまた輸出価格につきましても、ドルブロック向け輸出値段につきましては、物によつては、またときによつては、二重価格制というものをとつてもいい商品があると思うのです。こういうことについても考えて行きたいと思います。  それから次にポンドブロックからの輸入促進策でありますが、これはなかなか実際問題としてむずかしいのであります。大体この問題はポンド実勢価格といいますか、いわゆるやみレートというものが、二ドル八十の公定に対しまして、現在二ドル三十一とか四十前後しているわけでありますから、ここに大体二割見当の開きがすでにある。その二割の通貨価値のあるものを、何とかして引張つて来ようというのですかち、なかなかむずかしいのです。ですからこの問題は相当思い切つた腹をきめてかからなければ、ポンド価値というふうな根本問題にひつかかつて来るものですから、なかなかこれはむずかしいのであります。そこでわれわれは現在当局にお願いしておるのは、国内金融が非常に不円滑であるというふうな点から考えまして、ポンド貨そのものをわれわれ商社なり、あるいはたとえば機械輸入する場合に、その機械購入者であるところのメーカーなりに、ポンド貨そのものを貸付けてもらいたいというふうなことを言うておるのでありますが、なかなか技術的にもいろいろな問題がありまして、まだ実行されておりませんが、とにかく一億ポンド近い手持ちポンドを有効に使うことを考えなければいけないわけであります。それで私ども考えとしましては、これは少し端的に言い過ぎるかもしれませんが、現在の英国地位、並びに将来という点から考えまして、ポンドが強くなるということはちよつと考えられないのであります。従つて日本が持つておる現在の一億ポンドが、さらにさらにふえて行くことは当然でありますが、これは必ずいつかは切り下げのうき目にあうというふうに考えられるのであります。従つて先行つてその何割か損することを考えれば、現在二割足らずの表面の損で済むわけであります。ところが一方品物が入つて来て、それを原材料にしてさらに輸出もされて行くわけでありますから、そのことを考えますと、今から損したつもりでやつた方がむしろいいのではないかというふうに考えるくらいであります。しかしこの問題につきまして、相当損をする者が、いろいろ複雑な立場に置かれているのと、国際的な、英国との関係相当デリケートであるのですから、なかなかむずかしいのでありますが、しかしわれわれ商売人としてニューヨークやみ——やみというとおかしいのですが、ニューヨーク実勢ポンド相場を使いまして、ポンド圏から輸入する方法もあるのであります。ですからそうういうことは実行は可能なんです。要は政府腹一つだというふうなことに、あつさり言うとなるのでありますが、これはなかなか関係者の輿論がそうなりませんとむずかしいのです。  それからもう一つ貿易金融という問題がやはり大きな問題であるのであります。これは今も外貨の面については、少し触れたわけでありますが、国内貿易金融が非常にうまく行かないために、輸入が促進されない。従つて日本のような加工貿易のところでは、輸出が促進されていないというのが、特にまた最近の事情であります。安本当局の説明を新聞で拝見しますと、非常に輸入達成率はよろしいというような数字が出ておりましたが、これは考え方でありまして、現在の日本の置かれている地位、環境から行きまして、あの程度達成率は決して満足すべきものではないと考えております。もつと高いところに達成率の理想、目標をおいてやらなければいけないと思うのであります。それで日本製造業者を始め、商社その他非常に円金融に逼迫されて困つている実情なので、非常にそういう点から輸入が阻害されておるというふうな状態であります。これは結局日銀の信用政策というふうなことになるのですが、これはぜひ、あまり通貨の分量というものにこだわらないで、八千数百万の人口を養つて行くところの貿易量拡大というふうな見地から、ぜひ国内金融の面から輸入ができないというふうなことのないようにありたい、こう考えております。この点につきましては、ここに最近輸出入銀行に改組されるのでありましようところの、輸出銀行山際さんがお見えになつておりますから、山際さんからお話があると思いますので、私は金融の問題はその辺にしておきます。  それで少し具体的になりますけれども計画案を私ちよつと見たのですが、考えついたところの一つ二つを申し上げてみたいと思います。たとえば米でありますけれども、米が百一万トンつておるのであります。百一万トンのうち、私ども米輸入商売をしております者から見ますと、せいぜい九十万トンくらいが容易に確保される数量であつて、残りの十一万トンというものについては、ちよつと困難があるのではないかというふうな感じがいたします。それから値段につきましても、この計算よりも約一割くらいわれわれの計算ですと高くなる。御承知のように、米はいろいろ問題がなかなか深いのであります。米食というものに非常に執着し過ぎる日本人のくせがあるわけでありまして、これを何とかしてやつて行こうという政府の親心であるということはよくわかるのですけれども、御承知のように現在の外米の相場というものは、百六、七、八十ドルしているのでありまして、これをかりに小麦にすれば百ドルちよつとというふうなことで、そこに非常な開きがある。これだけの開きは、米と麦には本質的にはないという点から考えましても、当然米の輸入量というものは減らして、小麦そのものに、だんだんと振りかえて行かなければいけないということを痛感するのであります。そうかと思うと、ここにあります人絹パルプなどが五万トンつておりますが、これなどはあるいは五万トンはいらなくなるかもしれないという情勢です。それは日本パルプ会社生産が非常に順調でありますのと、値段国際相場に比べて大体二割くらい日本の方が安い。従つてみなが日本のものをできるだけ使おうといたしまするし、それにつれて増産も順調に行つておりますから、こんなに買わなくともよいのではないかと思います。石炭とか、鉄鉱石とか、油というふうなものは、大体こんなところではないかと思います。  一般的の問題はそのくらいにいたしまして、何かまた御質問がありますれば、あとでお答えすることにいたしたいと思います。簡單でありますけれども、以上で終ります。
  5. 前田正男

    前田委員長 この際水上参考人に対する質疑があればこれを許します。
  6. 林百郎

    ○林(百)委員 米の問題ですが、米はどこから輸入されることになつておりますか。
  7. 水上達三

    水上参考人 政府の百一万トン計画内容は、シャムビルマ、それから台湾、これがまあ大きいのですね。あとイタリアとかアメリカとか、香港経由——大体シャム米ですが、香港経由のものというようなものを想定しおるようです。それでわれわれとしてここでひとつ申し上げたいのは、南米の米をもつと考えて行かなければいけないということなんですが、これは代金の決済条件で、今までもずいぶん交渉はしたのですけれども、現在のところは失敗しております。しかしやがて——今年中には成功するだろうと思つております。
  8. 林百郎

    ○林(百)委員 これは値段CIFでどのくらいになりましようか。日本の百姓のつくる米は、大体石当り七千幾らでありますが、値段はどのくらいの比率になりますか。
  9. 水上達三

    水上参考人 値段は、CIF価格——沖着以後の諸掛を私は今よく存じませんけれども、大体CIF価格にしますと、アメリカイタリアその他そういうところの米は大体二百ドル、それからビルマ……。
  10. 林百郎

    ○林(百)委員 これはCIF価格ですか。
  11. 水上達三

    水上参考人 CIF価格です。日本の、主要港の沖着値段です。
  12. 林百郎

    ○林(百)委員 七千二百円くらいですか。
  13. 水上達三

    水上参考人 そうなりますね。
  14. 林百郎

    ○林(百)委員 これは石ですね。
  15. 水上達三

    水上参考人 ビルマシャムなどは百六十五ドル程度と思います。
  16. 林百郎

    ○林(百)委員 トンですね。
  17. 水上達三

    水上参考人 トンです。
  18. 林百郎

    ○林(百)委員 石にするとどうなるか。
  19. 水上達三

    水上参考人 石にしますと、概算しますと、七石一トンです。七石ちよつと弱ですが、七石弱一トンです。  台湾は高くなつておりまして、大体百九十ドルから二百ドルといわれております。
  20. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると大体日本生産者価格より少し高いと見ていいわけですね。そうするとこれは、一方は石だし一方はトンですし、一方はドルで一方は円で、いろいろになつていますが、どういうようになるのですか。計算してごらんになつたことがありますか。これは私の方で計算してもわかりますが……。
  21. 水上達三

    水上参考人 それはこまかい計算はあります。現在私持ち合せておりませんが、しかし考えなければならないのは、先ほども私一般論の中でちよつと申し上げたように、米の品質があちこち違うのでございます。それでいわゆる日本人が米を食べたいという気持から考えているような米でないものが、かなりこの中にもありますし、また日本のあるところの米よりはいい質のものもあります。従つて一概には言えないのです。こまかい計算は私ども商売しているからありますが、私は今持つておりません。
  22. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで今もちよつと出ましたが、台湾の米が大体アメリカの米の値段と同じぐらいだというのはどういうわけでしようか。船賃は安くなるわけですから、少し割高だと思うわけですが、何か原因があるわけですか。
  23. 水上達三

    水上参考人 それはおそらくいろいろな理由があると思いますが、私はよく知りません。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 それから先ほどあなたの意見の中で、日本外貨資金計画からいつてドルを確保し、ポンドはなるべく輸入に向けて物にかえる方針だといいますが、このドルを確保するということは、具体的にどういうような方法でやるのでしようか。だんだんドルが先細つて行くという御意見つたですが、今も実は水産委員会で出たのですが、例の冷凍まぐろだとか、まぐろかん詰めなんというものは、関税を設けられてしまつてつて行けないとか、それから生糸のところを見ますと、生糸も二十五年度より二十六年度はちよつと減つていますし、やはりどうもアメリカとの貿易が必ずしもそう楽観を許さぬと思いますが、どういうふうな打開策がおありか。何かそういう点をお考えなつたことがありますか。
  25. 水上達三

    水上参考人 それは結局一番大きな問題で、この全般を制する問題なんですけれどもドルをできるだけとつてドルを節約して、ポンドをその逆に行けばいいわけなんですが、ドルをよけいとる方法としましては、日本としてはやはり金額のあがるものは生糸が第一だと思います。その生糸輸出増進ということにつきましては、日本官民ともこれはあげて大いに努力しなければならぬことだと思います。そこで特に私が生糸の例をあげてさつきも申し上げたのでありますが、最近のアメリカ生糸消費というものは、大体日本の総輸出高の半分もしくは半分弱であります。そういうあり方はむしろ不自然である。アメリカが大半を使つてくれるのでなければいけないと思います。そういうふうに持つて行かないと——そのためにはやはり宣伝も必要ですし、値段変動でも、あまり大きな変動を避けるとか、いろいろな問題があるわけです。ことにまた生糸は一〇〇%が輸出であります。原材料はほとんど円で日本でできたものですから、そういう意味からも生糸輸出というものは大いにやつて行かなければいけない。それから節約の面は、これはやはりポンド区域からよけい輸入する。ドル地域からの輸入品ポンド区域にできるだけ振りかえるということであります。一口に言うとそれだけですが、なかなかこれは困難であります。しかしこれを短期の政策長期政策考えて行きますと、さしあたりはなかなか困難でありますけれども、今ここに五年、十年の計画を立てまして、たとえば鉄鉱石石炭、油、塩、燐鉱石、食糧、そういうふうな非常に大きな数量のものを、日本はずいぶんたくさんの分量を、アメリカその他のドル・ブロツクから輸入しておるのですが、こういうものにつきましては、ゴアの鉄鉱石でやつたように、施設を向うに施す、たとえば塩の積込み設備を現地に送つて日本が投資したような形にしてやる。鉄鉱石でも石炭でも、いろいろそういうことができるのでありますが、これは現在のいろいろな政治、外交事情から考えまして、やはり日米経済協力の線に沿つて、東南アジア開発計画の一端として、日本がそういう役割を務めるということによつて、多少そこに積込みの設備をすれば、非常に安くその品物を船に積み込めるというために、先行き今アメリカから買つている百万トン鉄鉱石を、ポンド地域に振りかえることができるということは、十分可能性があると思います。こういうふうなことは、ゴアの鉄鉱石のみならず、今申し上げたような商品についてもやる余地は十分あるし、これはぜひやらなければならぬと思います。現在の中共貿易が杜絶されておる状態が続いても、数年後にはそういう方法によつてかなり改善されて行く見込みが十分あると考えております。
  26. 林百郎

    ○林(百)委員 私たちは、大陸貿易を促進して、大陸から鉄鉱石石炭、工業塩を入れて行きたいという主張の側なんですから、これは立場が違つていると思いますが、そこで東南アジアから鉄鉱石石炭燐鉱石、工業塩が入る余裕はありますか。たとえば工業塩でポンド地域から入れるとすると、どこから入れるのでしようか。
  27. 水上達三

    水上参考人 地中海方面、紅海方面その他大体ポンド圏でございます。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、わざわざスエズ運河を渡つて、向うの方から持つて来ることになりますか。それよりしかたがないのですか。
  29. 水上達三

    水上参考人 さようでございます。
  30. 林百郎

    ○林(百)委員 それからたとえば石炭などポンド地域から入る可能性があるというと、どこにあるのですか。
  31. 水上達三

    水上参考人 石炭はこの計画でも、約三百万トンのうち三分の二はアメリカ、その他はポンド地域のインドだと思います。強粘結炭はアメリカとインド、それから無煙炭が仏印とアフリカということになつてつたと思います。従つてポンド地域からの輸入相当あるわけであります。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 地理的に非常に遠いし、船賃が非常にかかるということで、日本経済の原料としては割高になるということが心配になるし、また将来それが確保されるかどうかということも問題ではないかと思う。その問題は別といたしまして、先ほどからのお話で、ポンドの切下げは必至であるということを伺つたのですが、それは確かにそうなんでしようか。もう一度聞いておきます。
  33. 水上達三

    水上参考人 それは私自身、商売上そういうふうに考えてやつておるという意味であります。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、将来大体どのくらいの切下げがあるということですか。それとも現在それをそろばんに入れて商売しているということですか。将来政策的にポンドの価格の切下げがあるというようにお考えになつているのでしようか。もしそうだとすれば、大体どのくらい切り下げて、いつごろそういうことがあるというふうにお考えになつておるのですか。もしおわかりだつたらお答え願いたい。
  35. 水上達三

    水上参考人 それはもちろん将来の問題であります。それから切下げということにとらわれてお考えになりますと、おわかりにくいと思いますが、現在すでに実際の相場は一割八、九分下で取引されているのが実情なんです。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたの言う切下げという問題は、将来そういう切下げという措置を、イギリスの政策としてはつきりとるというように見込んでおられるのですか。実際の取引がそうなつておるということですか。
  37. 水上達三

    水上参考人 それは日本では許されておりませんから、もちろんないのですが、世界の半分以上のところでは、もうそういう取引が実際行われているのであります。それからイギリスの政府として公定値段を下げるか下げないかということは、私にはわかりません。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一、二点。東南アジアの貿易ですが、私たちの見解ですと、東南アジアに今割合に華僑の力が経済的に強い。華僑の政治的な立場も必ずしも日本に好意的だとも言い切れないと思います。それからマレーだとか仏領インドシナでは、民族の独立運動が盛んに起きて、討伐運動などが行われている。ああいう情勢であるのに、大陸貿易の全部を東南アジアに切かえるという形で、日本貿易の将来を全部東南アジアにかけて、日本の大陸貿易で失つた立場を回復させるとか、あそこに期待を持つということが、専門的な立場から何らの不安もなく確信が持てるのでしようか。その点はどうですか。われわれは華僑の力が強いということと、民族の独立運動があるということで、日本と正常な貿易が、ますます発展的に行われるということについては、少し先行き楽観を許さないものがあると思うのですが、その点はどうでしようか。
  39. 水上達三

    水上参考人 私は現実を基礎にして申し上げたのでありまして、議論をすればこれは幾らもあるのです。よくことわざにもある通り、遠くの親類よりも近くの他人かもしれません。ですからそういう意味から申しますと、専門的に見まして、中共貿易というものはある方が好ましいことは当然でございまして、それが自然の姿ですが、しかし自然のことをやらないのが現実になつているわけです。ですから私は、現状から推してやむを得ないから、そういう政策を推進するよりしようがないということを申し上げたわけであります。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどあなたの御意見の中にもあつたと思いますが、ポンドドルの交換というか、この前の日英支払協定前に行われたような、ポンドドルに切りかえるという方針は、今後何らかの努力がされなければならぬと思いますが、その点についての見通し、あるいは希望というものがありましたら、お聞きしておきたいと思うのです。やはりあなたのおつしやるように、あまり利用されないポンドが過剰になつてドル不足になつてしまつた、できればこのポンドドルに切りかえて貿易をしたいというのが、日本業者の皆さんの一つの希望だと思いますが、その辺はどうなんでしようか。もしポンドが過剰になつて、そのポンドの使い途が十分開かれないということになると、東南アジアと幾ら貿易をしましても、ますますポンド価値がなくなると思うのですが、その点はどうでしようか。
  41. 水上達三

    水上参考人 ポンドは余るには余るのですが、別に使えないわけではないので、その使い方を、今すぐの使い方、それから将来への礎石としての使い方というふうなことをよく考えてやつて行きましたならば、ポンドの利用価値ももちろん大いにあると思います。それからもう一つ、御質問の日英支払い協定に関する問題につきましては、もちろん前回のように、ある金額に達したらドルにかわり得る規定がある方が好ましいことは当然であります。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 これで打切りたいと思いますが、私実は長野県でして、生糸の問題について非常に関心を持つておるわけなんです。あなたの言われるように、アメリカがどんどん買つてくれればいいのですが、最近はむしろアメリカ輸入が減つて、ヨーロッパ、フランスの——東南アジアもそうですが、あちらの方に関心を持つておるようですが、生糸の先行きはあなたとしては相当強気で見られているのかどうか。先ほど宣伝すれば可能性があるということでしたが、生糸の将来はどう行くか。政府の統計を見ましても、二十六年度は二十五年度より輸出量がずつと減つておるわけです。十分アメリカで買入れる可能性があるかどうかということが一つと、それからもしアメリカが悪い場合には、どういう方面が考えられるかというのが一つ。それから私たちはしろうとで、あなたの方は専門家でありますが、昨年の繊維貿易業者が破綻を来した大きな原因は、仏領インドシナから繊維製品の輸入に対するキャンセルが来たためである、あるいは地方の銀行から支払いが停止されたことが一つの原因だつたというようなことを聞いております。あるいは最初の話合いよりも以上のものを見込んで日本貿易業者が買つていたために、これが破綻の一つの原因になつたというような話を聞いておりますが、昨年輸出業者、ことに繊維関係輸出業者の破綻の原因がどういうところにあつたか、その後それの影響はどういうふうになつておりますか、この二つだけを聞いておきたいと思います。
  43. 水上達三

    水上参考人 第一の生糸の見込みでありますが、これは見込みですからなかなかむずかしいのですが、ただこういうことだけは言えるのです。アメリカに適当な宣伝なり広告なりして行けば、必ず相当の数量は——昔のような五十万俵近いものは出ないでしようけれども、少くとも現在の数量を倍にするくらいのことは可能だと私は確信しております。それにはいろいろな方法がありますが、これをぜひ実行しなければいかぬ。それからアメリカ以外の先は大体フランス、イギリス、スイス、インド、こういうところが多いのですが、イギリスは別としまして、各国とも漸増傾向にあります。濠州あたりにも多少行くようになりつつあります。増進方法としては、生糸そのもので出す方法と、織物にして出す方法とありますが、織物はたいていの国が目方によりますけれども、税金が高いのです。従つて高級の織物として日本で加工して出すということは、現在の世界情勢においてはちよつと困難じやないかと思うのであります。従つて生糸そのものの輸出だけを考えても、相当伸び得るものと思つております。  それから第二は、特に繊維貿易商社の損害の原因は何かという問題のように伺いましたが、私は実は繊維をあまりやつておらない会社をやつておりますので、これにつきまして的確なことは申し上げられませんが、パキスタンへ売つた繊維、特に綿製品のキヤンセレーシヨンというものが主たるものだと思います。仏印ではありません。どうしてそういうことが起つたかということをついでに申し上げますと、戰前のああいうところにおける貿易は、三井物産とか、三菱商事とかいうような、大貿易会社が向うに自分の支店を持つてつて、その自分の支店に対して荷物を送り、そこで現金引換えにぼつぼつと荷物を出しておつたというのが実情なんです。それが最近、敗戰後の日本貿易のやり方はそうではなくて、電信、手紙などで照会して、向うから信用状が来て初めて実施する、契約が成立するというふうな実情である。従つて向うから信用状を送つて来なければ、こちらでは契約したつもりでも契約が契約にならない、売つたが売つたにならないというのが実情であります。その結果繊維商社がああいうふうな非常に不幸な目にあつたのであります。これは繊維商社のやり方が悪いのではなくて、むしろ国がそういう立場に置かれたというふうなことも言えるだろうと思います。
  44. 前田正男

    前田委員長 ほかに御質問ございませんか。——それではちよつと委員長からお聞きしたいと思います。きのう木内外国為替管理委員長が述べられました意見の中に、ドルポンドももう少しクレジットとして与えて行つたらどうかということがあつたのですが、こういうことに対して商社の方の立場としてはどういうふうにお考えになつておられますか、御意見を承りたいと思います。
  45. 水上達三

    水上参考人 どこへやつたのですか。
  46. 前田正男

    前田委員長 地域は南米その他どこでも。
  47. 水上達三

    水上参考人 商社に対して与えたのですか。
  48. 前田正男

    前田委員長 その点はつきり言つておらなかつたのですが、ドルポンドを外国に与えたという……。
  49. 水上達三

    水上参考人 もう少し詳しく伺わないど返事ができませんけれども、研究しておきます。
  50. 前田正男

    前田委員長 それからもう一つ先ほど触れられたことの中に、ポンド打開策として円金融の問題があつたように思います。実はわれわれの聞く範囲では、貿手の割引が、日銀の高率適用とかいろいろな関係で、なかなか円滑に行われていないということでありますが、こういうことに対して貿易商社側としては、どういうふうな希望を持つておられるか、御意見があつたら伺いたいと思います。
  51. 水上達三

    水上参考人 結局市中銀行の手元に金がないということに帰着するわけでありまして、つきつめて言いますと、オーバー・ローンを、解消まで行かなくとも改善するというふうなことになれば、われわれの貿手金融の円滑化もはかれると思います。
  52. 前田正男

    前田委員長 実情相当苦しいのですか。
  53. 水上達三

    水上参考人 銀行の手元によつて断わられることが非常に多いのです。ことに昨年の暮からそういう事実が非常に多かつたのです。
  54. 前田正男

    前田委員長 もう一点お聞きしたい。昨年の暮から今年の初めの危機に、銀行の融資あつせんが行われたというような関係から、金融界から、商社の合併とかその他商社の整理統合とかいうような意見相当出て、それがぼつぼつ行われかけているというふうなことも聞くのですが、貿易商社自身は、金融による圧迫ということでなく、商社自身、自分たちの商売を伸ばして行く立場からいつても、もう少し大きく整理合体しておいた方がよい、こういうふうにお考えになつているのか、やはり銀行側の意見でやむを得ず整理統合して行こうというふうな空気になつているのか、この辺に対して御意見があつたら……。
  55. 水上達三

    水上参考人 最近の合併というものに対しましては、二つの力がある、一つ金融界その他からの要望と、それからもう一つは、そういうことに関係なく、やはりもう少し合併して大きな力になつておかないと、国際場裡に立つて競争がはなはだ困難だというふうな立場からそういうことを考えておるのと、大体二つあるわけであります。それで現状は、こと三井物産系統、三菱商事系統の新会社同士における合併というものが、だんだんと具体化しつつあるようであります。どうしてもそういうふうに大きくして行きませんと、たとえば三井物産が昔たしか一億の資本だつたと思いましたが、あのころからの通貨価値考えても、優に百億以上に該当すると思うのです。現在の商社では一番大きい資本金が、第一物産の四億円、それからその次は伊藤忠、丸紅が三億円、あとずつとそれ以下になつております。それで借入金の額は、少いところで十倍、多いところは何十倍にもなつておると思います。ですから従つてそういう方向が望ましいし、また現にそういうふうに動いておるようでございます。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの、昨年の暮れのパキスタンの綿布のキャンセルですが、これはどのくらいの量がキャンセルされたのか、綿布の量と金額、それからそれが波及して倒産した商社の数、その後それが業界にどういうふうに影響を及ぼしているか、その辺をひとつお聞きしておきたいと思うのです。  それからあなたの言われた、今盲貿易で、出先で全然こちら側の利益を代表する機関がないために、電報一つで、商談が成立したと思つたのがキャンセルされるというようなお話であります。ことにパキスタン、インドというところは、貿易の皆さんから言えば、相当警戒される地域だと思いますが、将来どういうことをするのが政府政策としては好ましいか。要するに外交的な貿易関係の出張所を設けてこちら側の利益を代表するものを、そういうところへ置くというような、在外事務所などもすみやかに設けるということが一つ方法だと思いますが、それについての御意見があつたら、ついでに聞いておきたいと思います。
  57. 水上達三

    水上参考人 盲貿易とよく言いますけれども、盲貿易でもないのです。たとえばパキスタンにも、多いときは数十名の日本貿易商社の人が行つてつたのです。現にかなりおります。盲貿易ではないのですけれども、わかつておるのですけれども、向うが要するにそれだけの能力しかない、小さいところがたくさん買い過ぎたというのが実情ではないかと思います。従つて商社自身にも大いに罪はあるわけですが、しかしこつちが足元が弱いから、平たく言えばなめられたという点がかなりあつたようであります。それからそういうものを是正するためにどうしたらいいかという問題ですが、これは当然ある程度やはり国力というものが物を言うのでありまして、従つてまた在外事務所のようなものは、現在もあるのですけれども、もつと予算をふやして拡充しないと、なかなか活動もできにくいということじやないかと思うのです。もちろん商社は、そういうふうになつて来れば、それに伴つて陣容も強化し、支店的の活動もできるようにしていいわけでありますが、現在は支店のような活動を向うでしますと、税金を相当とられるおそれがあるので、あまりそういうふうな、のれんを大きくしないというような立場に置かれているのが実情であります。
  58. 前田正男

    前田委員長 他に御質疑はありませんか。——質疑がなければ、次に日本輸出銀行専務理事山際正道君にお願いいたします。山際参考人
  59. 山際正道

    山際参考人 私ただいま御紹介にあずかりました輸出銀行専務理事をいたしております山際でございます。本日は広く貿易計画に関する所見を申し上げるようにということでございますが、私の関与いたしております仕事は、貿易のうちのまたきわめて制限された狭い部分でございます。一般的の事柄につきましては、私特に申し上げるべきほどの知識経験も十分ではございませんから、従事いたしておりまする輸出銀行の業務を中心といたしまして、その最近の状況を御紹介かたがた、いささか将来のこの輸出銀行が担当しておる貿易面のことについて申し上げたいと存じます。  輸出銀行は御承知のように、一昨年の十二月に法律を御制定になりまして、昨年の二月一日から業務を開始いたしました。その仕事は、日本輸出品の中で俗に言うプラント輸出、すなわち工場設備でありますとか、重機械類でありますとか、船舶とか車両、重工業並びに重機械工業方面の輸出品について、やや長期の運転資金を供与することによつて、その貿易の伸張をはかるというのが目的になつているのでございます。ちようど去る一月三十一日で満一周年に当るのでございますが、その間の実績をちよつと御参考までに申し上げますと、輸出銀行が昨年の二月一日業務開始以来先月末まで一箇年の間に、それらの輸出を目的といたしまして、資金の融通を承諾いたしました金額が八十九億円でございます。その中に現実に資金を放出いたしました金額が七十五億、すでに回収になりました金額が約十四億ございますので、一月末の残高は六十一億二千四百万円になつているのでございます。この実績が、はたして過去一年間において、日本貿易計画されておつた予想とどうであつたかということを考えまするのに、私は一昨年の末輸出銀行の法律を国会で御審議になりました当時の予想に比べますれば、今申し上げました過去一箇年の実績は、いわば十分でないというように申し上げねばならぬかと思うのでございます、安定本部がお示しになつております国際収支見通しの表によりますと、二十六年度の機械輸出の見込みは一億二千五百万ドルということになつております。機械類の輸出の中で今申し上げましたプラント物が占めます割合は、大体において五割と見られておりますから、六千数百万ドル輸出が行われるというお見込みになつているわけでございます。二十六年度に関します限りは、私どものただいま申し述べました実績にも照し合せまして、この程度輸出は可能であろうと思います。しかしながらこれはおそらく一昨年国会において輸出銀行法をおつくりになるときに御審議になりましたお見込みに比べますれば、比較的低い数字でありまして、なお計画に対してはどのくらいの割合と申しますことも、非常に困難でありまするけれども、おそらくせいぜい七、八割の実績ではなかつたかと思うのでございます。  なぜそれでは日本プラント輸出というものが、昨年中において予期のごとく伸びなかつたかということを考えてみますると、いろいろそれには原因もございましようが、一番先にわれわれが目につきますることは、やはりその価格の問題でございます。プラント物の輸出に関しましては、これを購入いたします各国は、おおむね国際入札によつて契約を結んでおりますが、その入札は、ずいぶん各地において行われたのでありまするけれども日本がこれを落札したというケースが割合に十分でなかつた。その一番おもな点は、その価格の問題であつたと思うのであります。なぜしからば価格が高いかということになつて来るわけでございますが、これはまたいろいろな原因を包含しておると存じます。プラント物の輸出につきまして一番考えられますることは、何と申しましても鋼材の価格の問題でございます。ごく大体論を申し上げますと、日本と競争になります国は、ドイツ、イギリス、ベルギーなどがおもな競争国でございますが、これらの国における鋼材の国内の価格と、日本の鋼材の国内価格と比較いたしますと、大ざつぱに言つて日本が約倍であります。倍の値段の鉄材を使つて、それに加工をして輸出するのでありますから、価格の点において、すでに出発点において相当のハンディキャップがついておると思うのであります。そのほか單に鋼材に限らず諸種の原材料につきましても、やはり物価が割高になつておるということが、プラント輸出の振興について、相当な妨げになつておるということは、おおい得ない事実であろうと思います。そのほかプラント物を製作いたしまする機械設備が、すでにわが国においては国際設備に比べますれば遅れておりまして、能率も十分でないということが、また価格面に相当の影響を持つておることと思うのであります。それに加えまして、御承知のように日本は、従来機械類の輸出ということはあまりいたさなかつたのであります。それは国内の建設、また外地の建設などに追われておりまして、機械類はむしろ輸入国として立つてつたのでございますが、終戰後経済情勢の一変とともに、日本が現に持つておりまするところの、重工業設備、また各種の機械工業設側を十分に活用して参りますためには、どうしてもこれは輸出の形においてその設備を活用するより仕方がないという場面に遭遇いたしましたので、プラント物の輸出ということが戰後の新しい輸出品として行われるようになつたわけでございます。そういたしますと、プラント物の購入と申しますことは、簡單な消費材の購入と違いまして、買います方でも一定の産業計画、事業計画に従いまして、一旦輸入をいたします以上は将来長きにわたつてそれを使わなければならぬという関係にありますので、どういたしましても従来から信用の高い欧州物などに依存するという傾向になりがちなのは、当然想像されるところでございます。それに対しまして日本の重工業なり機械工業なりの状況というものは、まだ世界の国々には十分知られておりません。ただいま申し上げましたように、戰前においてはその機会がなかつたのでございまするから、従つて、今後の努力によつて日本ではどういう種類の機械がどの程度できるということを知らせて参らなければ、なかなか注文が来ないということになつておるわけであります。それらのいろいろな原因が重なつて参りまして、プラント輸出はなかなか思うように進展いたしがたい状況にあるわけでございます。  そのような情勢のもとに、経済安定本部のお示しになつております表によりますと、二十七年度は機械類の輸出を二億四千万ドルと見込んでおられます。もし従前の通り約半分がプラント輸出であるということになりますと、一億二千万ドルからのプラント輸出をせねばならぬということになるわけでございます。最近プラント物の引合いの状況を見ますると、今申し上げましたようないろいろな理由のために、あまりその引合いは活溌でないのでございまするが、わずかに二十六年度のこの見通しの数字を保つておりますのは、現在の特殊な現象といたしまして、アメリカからの船の注文が相当たくさん参つておるのでございます。このゆえにプラント物の輸出の数字が相当伸びておる状況になつておるのでございます。現に輸出銀行といたしましてアメリカの注文による船舶、これは全部タンカーでございますが、すでに資金の融通を承諾いたしておりますものが、六隻で十一万トンになつております。なお現在申込みを受け、または内談がありますタンカーが、十一隻二十三万トン、これを両者合計いたしますと、今日まですでに資金を融通し、もしくは内談が参つております程度のものは、三十五万トンに近いということになるのでございます。この数字のゆえにプラント輸出の数字がやや今日示されたような数字を保つておると思うのでございまして、それらの特別のものを除きました一般機械類に関しまして情勢を考えますと、なかなかこれは将来楽観を許さぬ状況にあると考えるのであります。先ほど来、日本の物価水準が比較的高いために、国際競争上不利であるということを申し上げたわけでありまするが、さらばさような状況のもとにおいてなぜ船がさように注文されるかということになりますが、これはもうすでに御承知の通り、世界における、ことにタンカーの建造需要というものは非常にたくさんでございまして、ヨーロッパの目ぼしい造船国の船台は、すでにここ三年、四年の注文は全部とつておるという状況であります。やむを得ず日本の方へその注文がまわつて来ておるというのが実情になつておるのでございます。日本のタンカーの問題にいたしましても、なおある程度出ておりまするプラント物の輸出につきましても、要するに値段の点では、そのように比較的不利益ではあるけれども、ヨーロッパ各国と違いまして建造の期間が短いということが、唯一のとりえになつておるのでございます。でありますから価格は比較的高くても、早くその品物を受け取つてかせがした方がそろばん上有利だというときには、日本物を買つてくれるわけでありまして、それらが相まつて今日示された数字を維持しているという状況になると言えるのであります。  ただ過去一箇年間における輸出銀行の業務の面を通じまして、それがかねて問題になつておりまするドル地域ポンド地域関係において、どういう数字になつておるかと申しますと、比較的ドル払いが多いのでございます。すなわちドル払いは全体契約の六四%、ポンド払いが二八%で、他の八%がオープン・アカウントということになつております。これはしかし、先ほど来申し上げております輸出船の建造が相当まとまつており、しかもそれが全部アメリカから参つておるということのために、生じておる現象なのでございまして、将来だんだん継続発展を予想されるところの、その他の機械類ということになりますと、なかなかドル払いが、このような調子には参らぬのでございまして、日本の工業水準の発達の現段階などから考えましても、やはりこのアジア地域における輸出市場というものが、日本機械類のプラント輸出のおもなる先ということに考えざるを得ないと思います。そういたしますと、先般来問題になつておりまするドルポンドの問題にも当然響いて参ることになろうと思います。今後の問題といたしまして特に私どもの方では、本年の新しい場面といたしまして、單にプラント物の輸出ということのほかに、先ほど来からも問題になつておりましたアジアの経済開発に対する協力の問題が、やはり今年の新しい課題として取上げられて行くことになろうと思うのでございます。これは一面におきましては、日本輸出を継続いたしますための原材料を、アジアの市場において確保することによつてその事業の永続性を確保し、またものによりましては、比較的安い原価で、この輸入ができるということにも役立ちましようし、またある場合におきましては、従来ドル地域において購入いたしておりましたものを、ポンド地域から購入できるという輸入市場の転換ということも期待し得るかと思うのでございます。先ほども例にお引きになりましたが、インドのポルトガル領であるゴアにつきまして、鉄鉱石の開発の設備をこちらからプラント輸出いたしまして、その代金の決済は、よつて生じた鉱石によつて支払いを受けるという方式は、これはポルトガルのゴアは、ドル地域でございますけれども、やはり原料をアメリカよりも比較的安く確保できるという意味合いも含めて、今後行われるアジア経済協力の一つの例になろうかと思うのでございます。なお本年はかような輸出金融方法によつて、原料の確保をはかるということのほかに、輸出金融、これは輸入と申しましても、一般の商品の輸入ではございませんで、開発を伴つて、こちらから輸入の前金の形で資金をあらかじめ出してやることによつて、その生産物を日本へ継続的に輸入できるような輸入金融をやる、こういうねらいなんでございまするが、今年の課題といたしましては、ぜひこれをやりたいということで、それには法律の改正を要しますから、ただいま政府当局と相談をいたしております。おそらく不日御審議を願うような段階になろうと思いますが、この方式による輸入金融と、従前の方式による輸出金融と、両々相まつてアジアの経済開発に協力するという方式で、さらに本年は進むことになろうと思うのでございます。  そのほかに現在問題となつておりますところの日米経済協力の現われとして、日本機械類をアメリカが、臨時的ではありましようけれども、とにかく買おうという状況になつておりますが、あれなどもやはりプラント物の輸出一つの項目になつて来ようかと思うのでございます。さらにまたこれは将来の問題でございますが、考えられますことは、たとえば役務賠償と申しますか、日本が役務によつて賠償を支払うというような場合に、その役務によつて建設すべき設備等の資材を、日本からもし輸入してもらうことができますならば、そこにまた一つプラント輸出のチャンスがあるということになろうとも思われるのでございます。これらいろいろな将来伸びて行く方面を考え合せまして、ぜひとも日本に現在能力として過剰になつておりますところの重工業なり機械工業なりを、この輸出貿易の面において大いに役立たせたいと考えておるのでございますが、しかしながらこれら各種のものを動員いたしましても、前に申し上げましたような物価の関係その他におきまして、はたして二十七年度は、ここにありますような今年に倍加する二億四千万ドル機械輸出が可能であるかどうかという点になりますと、私どもは率直に申しまして、よほどこれは努力を必要とする数字であろうと思つております。全体といたしまして日本貿易経済自立の基礎を置き、その貿易の一環といたしまして重工業、機械工業の製品の輸出考えるという立場から考えて参りますと、どうしても私は本年において特に皆様方に御留意を願いたいと思いますことは、日本の重工業、機械工業というものを、輸出産業の体制に切りかえるということであるのでございます。すなわち厖大な内需を控えておりました日本の重工業、機械工業というものは、能力がそのまま残つているのでございまして、もし将来内需のみを満たすということに考えますならば、今日ほどの重工業設備や機械工業設備は必要ないのでございます。しかしながら貿易に基礎を置いて八千万の国民が生活を立てて行くという見地から申しますと、どうしてもこの貴重な設備と知識、経験を動員いたしまして、重要なる輸出品としてプラント物の輸出を促進せねばならぬと思うのでございまして、これにはその根本の考え方を、重工業、機械工業が輸出産業であるという頭に、官民切りかえることが必要ではないかと思うのでございます。これは政府施策のみではありませんで、従事いたしております業者自身も、この点について十分な将来の見通しを立てる必要があろうと思うのであります。現在、先ほど水上さんからお話がございましたように、国際収支の上におきましてはバランスが好調であるとは申しますものの、内容的に検討いたしますと、特需であるとかあるいは在留外人の散布するところの外貨資金などによつて相当の分がカバーされておる国際収支でございます。貿易部分をこれらの臨時的な要素にとつてかわらせまして、拡大された、安定された状況まで持つて行くためには、非常な努力が必要ではありますけれども、ぜひともそうして行かなければ日本経済を維持する程度貿易企業にまで伸ばすことはできないと思うのでございます。なお重工業、機械工業を輸出産業として考えるということにつきましては、たとえば外国へ売り込んでおりますこちらの機械類メーカーのごときも、内需がありませんと、どつと外国へ人を出したり注文をとつたりいたしますけれども国内でやや大きい特需が出るとか、何らかの形で国内需要がふえたとなりますと、すぐに対外的に働きかける努力をやめてしまうのでございますから、これはやはり将来長い見通しのもとにおいては、輸出しなければだめだというところの精神が徹底していない結果のように思うのでございまして、この機会に私はその点について十分な考え直しを必要とするのではないかということを、最近痛感いたしておるのであります。なおその実行のために必要なことは、先ほど申し上げました国内物価の問題でございますが、これはなかなか重大な問題でございまして、おそらく経済政策の総合的な結果がそこに現われておるのだろうと存じます。單に貿易の見地からのみ論ずるわけには参りませんけれども、これらも貿易の点と関連いたしましてだんだん解決されて行くことを願つておる次第でございます。  あまり関係いたしておりますものも広くございませんために、御参考にならぬことも申し上げたのでありますが、私の担当しておりまする仕事の分野につきまして、一応所見を申し上げた次第でございます。
  60. 前田正男

    前田委員長 この際、山際参考人に対する質疑があればこれを許します。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 輸出銀行輸出入銀行になる性格を持つているというお話でしたが、そうしますと、資本はいずれ増加するような予算的な措置をとるつもりですか。今の政府出資の範囲内でそういう機能を果すようにするのですか。その点はどうでしようか。
  62. 山際正道

    山際参考人 資本の点につきましては、現在の資本金は百七十億円でございますが、別途ただいまの輸入金融の問題をも含めまして、二十七年度の予算といたしまして、百七十億の上に、さらに一般会計から四十億円の資本の追加と、見返り資金特別会計から三十億円の借入金、合計七十億円の資金の充実案が予算面に掲載されて提出になつておるように承つております。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 これはアメリカ輸出入銀行と何か特殊な関係を持つようなことになりますか。それともこれとは別に関係ないわけですか。
  64. 山際正道

    山際参考人 アメリカ輸出入銀行は、御案内の通りアメリカから輸出されるものについて、買手の方に購買力を与えて、いわゆるアメリカ輸出産業を助長する方途に出ております。もし何らかの形において日本アメリカから輸入を便利にするために、アメリカ日本にクレジットをくれるというような場合におきましては、その種類によつてはひとつの受入れ機関にもなろうかとも思いますけれども、現在のところでは何らまだそこまでの話合いもございませんし、また具体的にそこに行こうとする計画も現在のところ持つておりません。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 将来ブレトン・ウッズ協定に基いて、国際金融機関に参加した場合のそ資金のいろいろの用途について、あなたの方の銀行がこれを掌握するというような見通しはないですか。
  66. 山際正道

    山際参考人 現在のところまださような見通しは持つておりません。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 それからこの前輸出銀行法の審議に際して、これがまた復金の再現にならないかという意見が大分あつたのです。これは長期資金ですから、回収が長期にわたることは当然でありますが、こういうことについて何か理事者としてお考えになつておりますか。
  68. 山際正道

    山際参考人 輸出銀行法は、輸出銀行の行います資金の融通につきまして非常にこまかい条件をきめております。その条件の中には、たとえばすでに輸出契約のできたものについて、その輸出契約の限度でなくてはならぬとか、あるいは、これは当然のことでありますが、償還確実と思われるものでなければならぬ、あるいは、ただいまやつておりますのは協調融資になつております。従つて市中銀行と協調して資金を放出するということになつておる関係もございます。さまざまな条件がそろつておりますために、むしろ消極的であるというそしりを免れぬぐらいのこまかい条件に縛られております。これが回収が困難になるというような事象は、ただいまのところでは考え得られませぬ。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 プラント輸出の問題についていろいろ御意見をお聞きしたのですが、原材料が高いということがプラント輸出の阻害の原因の一つになつておるということです。これはやはり鉄鉱石石炭輸入価格が、船賃その他がかかりまして割高だというところから来ておると解釈してよろしいでしようか。そのほかの原因があるのしでしようか。
  70. 山際正道

    山際参考人 日本の競争国であるところのドイツ、イギリス、ベルギーその他欧州の各国に比べますと、日本の置かれております環境は、鉄材をつくる原材料の入手に非常に不利益な立場にあることはおおい得ない事実でございます。従いましてその限度において原材料の入手も割高になつておることもまたやむを得ない結果だろうと思います。しかしながら私は單にそれだけでもないと思うのでありまして、たとえば製鉄設備が非常に古いというようなことも、欧州やアメリカの製鉄会社に比べますと非常に能率を害しておりまして、割高になつておると思うのでございます。御承知のように、終戰後アメリカの会社や、ヨーロッパ主要国の会社におきましては、ほとんど戰前の機械を一新いたしておりますのに、日本ではまだまだ昭和十二、三年ごろアメリカやドイツから輸入いたしました機械が、第一線の機械として一流の能力ということになつております。その能力設備の点において相当なハンデ・キヤツプがあることも否定できない。これを合理化することがまた緊要な点になろうかと思います。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどプラント輸出で、資金を貸し付けた問題について、アメリカからタンカーの注文があつて、これに対して資金を融通したというお話ですが、どこかから何かプラント輸出の引合いがあつて、それに対して資金を貸したというような例があるのなら、大どころだけでいいから聞かしていただきたい。どんなものがどこから注文があつたか。
  72. 山際正道

    山際参考人 先ほどタンカーの問題を申し上げましたのは、むしろ最近だんだん申込みが先細りのような状況になりつつある際に、特にアメリカからの申込みが目立つておるということを申し上げたのであります。今まで融通いたしましたその品目並びに仕向地別に申し上げますると、相当広範囲にわたつておるのでございます。まずその第一種類のものは電気関係機械、これが今まで融通いたしましたもののうちの約二六%に当つておりますが、仕向地はアルゼンチン、沖縄、フィリピン、インド、台湾、タイ、オーストラリアで、これは主として発送電設備でございます。次に繊維機械、これは台湾、香港、パキスタン、ベルギー領コンゴ、インド、朝鮮、インドネシアなどに向けたものでありまして、紡績の機械がその大部分でございますが、全体の約二五%を占めております。次は船舶でございますが、これは大きなものは全部アメリカからの注文でございます。御承知のようにアメリカの船主は、船籍をアメリカに置くことはめつたにございません。パナマであるとかあるいはリベリアであるとか、外国に置いておる例が多いのでございます。ことに相当多くの部分はパナマに船籍を置いております。従いまして今まで融通しました先といたしましても、パナマ向け、リベリア向け、タイ、沖繩、朝鮮、仏印で、これを合計いたしまして一月末現在では三四%になつております。その次には鉄道車両がございます。これはパキスタンへ向けまして二件出ておりますが、これが全体の七%、次は東南アジア開発、これは先ほど申し上げましたポルトガルのゴアに向けておりますもので、これが五%、その他雑件合せましてビルマ、沖繩、インドなどへ向けまして三%が出ておるような状況でございまして、割合に種類及び地域は広がつてはおりますけれども、いかにも量が少いということになつておるのでございます。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 それから輸入に対する資金の融通ですが、先ほどゴアの鉄鉱石の開発に対して、輸出資金を融通したというお話がありました。これはゴアの鉄鉱石輸入を見返りとして資金を融通したというように聞いたのですが、その点もう少しはつきりしておいていただきたい。そのほかにこういう意味で、輸入を見越しての先行きの資金貸出しというのですか、そういうのがあるなら、どういう地域で、どういうものがあるか聞かしてもらいたい。
  74. 山際正道

    山際参考人 先ほど申し上げましたゴアの例は、こちらから開発設備を、プラント輸出をいたしました。その代金は、その開発設備によつて採掘した鉄鉱石輸入代金によつて決済する、こういう仕組みになつておりますので、銀行の立場から申しますと、最初の開発設備を輸出するための金融をした輸出金融であるということになつておるのでございます。同じようなことを輸入金融の面で実行したいということを先ほど申しましたが、これはつまり、たとえばフィリピンならフィリピンにおいて現在鉄鉱石を掘つておる所がある、しかし日本へ供給するためには設備を拡充しなければならない、その設備は、プラントそのものは必要でないけれども、人を雇い入れたり何かする運転資金が必要である、こういう状況にある場合がある。そういたしますと、こちらから何も物は輸出いたしませんけれども、将来の輸入を期待するためには、運転資金をこつちから供給してやらなければうまく行かぬということになります。そこで将来入つて来る鉄鉱石の前金という形においてあらかじめ資金を出してやる。それで向うは人を雇い入れたり、あるいは土木工事をしたりしまして、そうして、増量になつたその採掘鉱石がこちらへ輸入されることになり、その輸入された鉱石によつて前に払つた前金が決済されて行く、こういう仕組みになります。現在アジア経済開発と称せられておる案がいろいろ各地にございますが、そのうちでこれに該当する場合は、だんだんに出て参ろうかと思いますので、ぜひともこの種の輸入金融ができますように、この機会に法律を御改正くださるようにお願いしたいと思います。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 今具体的にフィリピンの例が出ましたが、あとどんな地域をお考えになつておられますか。それからその場合の投資は外国の会社へ直接ドルというような形で投資するというか、貸し付けるという形になるのですか。それとも日本の利益代表が行つて、それがその会社へ参画して、これを通じて投資するという形になるわけですか。その辺をもう少し説明を願いたいと思います。
  76. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねの点の第一の、どういう地方でどういうような案があるかという点でございますが、新聞にちよちよい現われております限度でも、たとえば香港に馬鞍山という鉄鉱石の山があるのですが、これも輸出金融なり、輸入金融なりに乗るような方式で開発して、その鉄鉱石日本に入れたいという話が進められつつあります。あるいはマレーにおきましても、すでにズングンであるとか、その他一、二の話があるように聞いております。その他フィリピンにおきましては、ララップ鉱山が鉄鉱石輸出するために今話題に上つております。またインドのビハール、オリッサ両州の鉱山につきましても、なるべく増産をして日本輸出する計画を立てようということで、関係者が研究中であるように聞いております。また銅につきましても、フィリピンのラプラプ銅山が話題に上つております。また塩につきましても、タイであるとか仏印であるとかいう所でも、増産をして日本に送りたいという計画を持つているように見受けられるのであります。しかしてこれらのものに対しましては、輸入金融なり輸出金融なりの方式で資金を融通いたす場合に、私ども考えておりますのは、当分は直接外国自身に対し金を貸すことは考えておらないのです。むしろ日本でその輸入品を直接消費するところのメーカー、製鉄会社であるとか、製錬者であるとか、鉱石の輸入を取扱うところの輸入業者それらの者を一体といたしまして、その一体に対して資金の融通をしたい、そういう考え方を持つておるのであります。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 メーカー、輸入業者を一体としてそれに貸し付けるというが、そうすると、何かそういうようなグループをつくるわけですか。一体としてというのはよくわからないが、メーカーと輸入業者と一体というのはどういうわけですか。  それからメーカーや輸入業者が、輸出銀行から金融を受けたものを、外貨にして先に渡してしまうのですか。その辺もちよつとわからないのです。
  78. 山際正道

    山際参考人 一体と申しますのは、たとえばゴアの例を申し上げますと、一直接輸入を扱うのは、日本鋼管の傍系会社である鋼管工業という会社であります。それが直接の借手になりますが、その入つて来た鉱石を使うのは八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管の三社であります。そうすると、その三社は全体の計画について、共同して責任を持つという意味において、保証の地位に立つ扱いをいたしております。それが私の申しました一体として扱つているという実態であります。  それから貸します金は、輸出設備の点でありますと、外貨関係なしに円資金をやりまして機械をつくつて送ります。輸入金融の方で前金の形でやりました場合は、やはりそれらの団体に円資金を貸しますけれども、それはあらかじめ外為委員会などと連絡いたしましてすぐそこでその資金を借りた者が為替にかえて、外貨として向うに送つてやるということになります。
  79. 前田正男

    前田委員長 ほかに御質疑はありませんか——。なければ次に伊藤忠商事株式会社専務取締役吉田卯三郎君にお願いいたします。吉田参考人
  80. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 私は、ただいま御紹介をいただきました伊藤忠商事の専務取締役をしております吉田卯三郎であります。  私どもの会社は資本金が一億五千万円で、毎月の輸出入並びに内地の取引を合せまして、月額の取引高は、現在において大体九十億円であります。昨年の十二月までは大体百三十億ないし百四十億円取扱つてつたのでございますが、御承知のような業界の不振のために、かように減額いたして参りました。このうちの約七割が繊維関係原材料輸出入に匹敵いたします。前の参考人のお話がございましたように、われわれ貿易業者といたしまして特に繊維の輸出にあたりましては、終戰以来非常に努力して参りましたのですが、盲貿易時代もございまして——これはようやく過ぎ去りましたわけでありますが、ただいまでもアメリカを除いては一時的の旅行者、テムポラリイ・ヴイジターということで、旅券を受けて、ようやくその国々へ入ることができます。しかもアメリカ自身といえども、ここに非常に矛盾がございまして、私ども一月四日にニューヨークで支店を開設いたしましたのですが、たとえばその支店の経費について、どういうぐあいに支弁するかと申しますと、これはアメリカの銀行から資金を借り入れまして資本金にいたしましたのが一部と、私ども外貨保有を大蔵省、日銀に申請いたしまして、集中排除の許可を得まして資金に繰入れたものでやりますので、この会社の役員に対する役員手当は、向うの新会社で当然支弁せらるべきでありますが、送つております社員の旅行免状が、やはりテムポラリ・ヴイジターということでありますので、それはアメリカ国内では給付は受けることができない。こういう矛盾が生じておるようなぐあいであります。一番よいのがアメリカでありますが、その次には、支店らしきものをつくつてよろしいというのはパキスタンだけで、その他のところはやはり三箇月ずつの入国許可だけでありますので、われわれ一日も早く講和条約の批准が済むのを待つておる次第であります。  われわれ貿易業者が一番困ることは、物価はすでに三百倍に達しております。それにもかかわらずわれわれの資本金の高は、戰前に比べてようやく十倍、多いところで二十倍にすぎません。しかるに銀行の方は、やはり新聞紙上報道いたします通りに、オーヴアー・ローンになりまして、われわれとしてもこれ以上借入れもできなければ、これ以上貿易を伸ばすこともできません。先刻お話にありました通りに、パキスタン、インドネシヤその他の国々からキャンセルの問題を食つたわけでありますが、これは貿易業者も悪くなければ政府も悪くありません。ただ敗戰の結果でありまして、軍艦が一隻あるわけでなし、大砲一門持つわけでなし、当然問題にならないようなことが問題になりまして、こういう事態が起つたのであります。パキスタンのお話を申し上げますと、パキスタンはやはり独立後非常に国粋主義が発達いたしましたために、従来貿易業は英国とかインド系の商社が占めておりましたにもかかわらず、その国粋主義のために、何でも自国の者でなければ輸出入の許可を与えないという方針から、歯医者も許可を受ける、散髪屋も許可を受けます。従つてその他の有能な経験、資力のある貿易業者は、政府から許可を受けることができませんために、自然にこういう者を相手にしなければなりませんし、そういう者を相手にしては非常に危険であるので見合せようかといたしますと、これを見合しておりましては、とうてい日本輸出ができぬようになりますので、われわれは非常な危険を負担いたしまして、この歯医者、散髪屋で許可を得た者と取引しなければならないような情勢に立ち至つた次第であります。  またインドネシヤの方はどうかといいますと、これは従来オランダ系の商社が十分の資本と経験を持つてつてつたのですが、これも同じく非常に資力も簿弱なれば経験もない者が扱つておりますので、この国際政局と物価の、変動の激しいときにあたりまして、どういう処置をするか、その方法すらも知らない者が貿易に当つておりますために、われわれの方へキヤンセル問題なんかが起りまして、最近数日来非常に新聞紙上をにぎわしております紡績、貿易業者の問題が発生したような次第であります。われわれ貿易業者といたしましては、一般新聞紙上や、また世間では暴利を食つたともいわれますし、損をすると、思惑を間違えて莫大な損失をこうむつたからといつて融資を懇請するのはけしからぬといわれるわけでありますが、私どもからしますと、なぜ政府が適当な輸出入機関をもつてこれに当られなかつたかということを、痛切に申し上げたいと思います。これはかりに貿易公団とか何とかがございましたら、政府の手によつて物資の輸入輸出に当られたと思いますが、おそらくそこは非常に大きな赤字をただいま計上していたのではないかと考えられます。参考人自身は、一昨年四月から昨年の五月まで、政府並びに司令部の代表者として、三箇月ほどワシントンニューヨークに駐在いたした者でありますが、当時対日感情は非常に悪かつたのでありますが、朝鮮事変が起きまして、米軍が非常に不利な状況に立ち至りまして以来、ようやく対日感情が良化いたしまして、その後にいわゆる国際物資がやかましくいわれ、日本原材料輸入が、政府においてもまた為替委員会においても、また新聞雑誌の上においても非常にやかましくいわれましたので、私どもは実は内地からしりをたたかれて、非常な努力のもとに買い付けたのでありまして、一億五千万円の会社が百億円の貿易をするのはけしからぬとか、百五十億円の取引をするのは過大であるとかいわれました。しかしただいまの日本経済機構の上からいいますと、私どもが扱わなければ扱うものがないかと考えておるわけであります。それにもかかわらず国際相場が下りましたのでわれわれが困りますと、思惑に失敗して政府金融を懇請するのはけしからぬといわれますが、政府の機関で輸出入をやりましたならば、やはり同じような結果が起つていたのじやないかと私ども考えております。  ここで問題になりますのは、国力の低下に伴つて、海外から盛んにキヤンセルを食いました。この結果は当然メーカと貿易業者に当つてつたのですが、メーカーは紡績業者にしろ他の業者にしろ、すべてただいまは短期資金をもつて自己の生産設備を拡大いたしたので、その設備は残つておりまして、またその設備自体から利益を生んでおる次第でありますが、貿易業者はただオフィスがあつて人間がいるだけのことでありまして、利益を生めばこれは莫大に税金として政府へ納入いたしております。残つているものは何もないのであります。ただもうければ税金にとられ、損すれば世間から攻撃されるということは、私ども貿易業者といたしましてはどうも当らない御意見だと世間に申し上げたいと思います。しかも貿易業者は多額の借入れをしているといわれますが、ただいまは市中銀行は中小企業者に対して一向金融をしておりませんので、われわれ貿易業者がいわゆる市銀から借入れをいたしましても、ちようど水源地のようなもので、これを中小商工業者の方に金融いたしておりますので、いわば市中銀行の危険を貿易業者が負担いたしているようなぐあいでありまして、一たび貿易業者金融の道をふさがれましたり、あるいは減額されますと、たちまちその影響は中小企業者に及びますので、この点はひとつ皆様におかれましても十分御同情の上、御理解を願いたいと考えております。しかもただいまの貿易状態といいますと、ドル地域から原料を仕入れてポンド地区に輸出いたしおりますので、ますますドルは足りなくなり、ポンドは累積する。非常に問題が大きくなりますので、これはまた他の方面で十分御研究になつていると思いますが、このポンドアメリカにとつてもらう以外に現在のところ方法がないだろうと考えております。話が横道へそれますが、先刻申しましたいわゆるただいまの貿易業者の危機というものは、何にいたしましてもメーカー関係においては、短期資金をもつて莫大な増産施設に当つておられますがために、六十日あるいは九十日ごとに危機が叫ばれます。ただいまは二、三月危機でありまして、おそらくこれが過ぎるとまた四、五月の危機がやつて参りますが、これはぜひ長期資金にお振りかえを願いたいと思います。そして一日も早く講和の批准が終り、われわれが海外に適当な人間を長期に派遣して支店を出し、相互の貿易を進めたいと考えております。  以上が私どもの現在考えておる条項でありますが、これにつきまして何か御質問がございましたらお答え申し上げたいと思います。
  81. 前田正男

    前田委員長 この際吉田参考人に対する質疑があればこれを許します。志田君。
  82. 志田義信

    ○志田委員 私は今予算委員会に参つておりまして、共産党の諸君からいろいろ質問が出たり何かしたので、ちよつと席を抜けられなかつたものですから、せつかくお越し願いましたにかかわらず、吉田さんの御抱負のある御意見を拝聴できなかつたことはまことに遺憾に存じております。  そこで日本貿易振興の建前におきまして、最近は政府においても輸出信用保険法をつくり、輸出信用保険をやつているわけであります。ところがたまたま最近におきまして、日本輸出は戦争後におけるいろいろな事情はあるといたしましても、盲貿易の不利益という点から、輸出業者を保護する目的でできている輸出信用保険が、実際は保護されていない状態が非常に出ているのでありますが、それに対してはどういうお考えを持つておられますか、承りたいと思います。
  83. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 輸出信用保険制度につきましては、もちろんその趣意と実効の面においてわれわれ非常に感謝して、ぜひこれを実用的にいたしたいと思いますが、私自身ただいまよく記憶しておりませんが、幾分料率が高いために、あまり実用的でないと係官から聞いております。しかし幾らが適当で幾らが高過ぎるかということにつきましては、お許しを願えれば書面をもつて申し上げたいと存じます。
  84. 志田義信

    ○志田委員 輸出信用保険の法律が施行されましてから、損失の防止あるいは軽減の方法につきましては、いろいろとわが党の政調会においても検討して、現にこれが改正もしなければならぬということになつて、本国会のうちにおいても相当の期間を割いてやつております。ただわれわれとして特に心配になりますことは、保険契約者が善意であつて、しかも輸入しようとする国が突如としてその品物を輸入禁止をするというときに、日本の在外事務所、通産省、日本政府等におきましては、それを事前にも直後にも知り得ないために、何ら業者は通告を受けることができないで、保険契約を締結して輸出したにかかわらず、この保険契約が効果をなさないばかりでなく、非常な損害を業者に与えているという実情があるやに聞くのでありますが、それにつきましてお心当りのことがありましたら、この際承りたいと思います。
  85. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 御質問のことにつきまして御返事申し上げたいのでございますが、ただいま参考人は御返事申し上げる資料を持ち合せておりませんので、お許しを願いたいと思います。
  86. 志田義信

    ○志田委員 それでは私の方からひとつお話を申し上げますと、輸出信用保険法の中に免責条項がある。これは読んで字のごとく、業者輸出をする場合にあたつて輸出保険をかけたときに、何らかの事故によつて輸出業者が受ける損失は、政府が填補する責任を負わなければならぬという条項でありますが、これに対して、皆さんは、今までこれは不当であるというふうにお考えなつたことがないかどうか、あるいはそういうお話が業界にあるかないか、それをひとつ承りたい。
  87. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 参考人は時折耳にいたしておりますけれども、実際に今日御返事をよう申し上げませんことをお許し願いたいと思います。
  88. 志田義信

    ○志田委員 業界の参考人にお尋ね申し上げましたけれども、時折耳にするということだけで、詳しいことはわからぬようでありますし、安本貿易局長も同様にこの問題については知らぬようでありますから、私の質疑はこれで留保しておきまして、また機会あるときにいたしたいと思います。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど参考人にお聞きをしたところ、吉田さんがおいでになるまで、待てと言われたので、待つていたのです。昨年の暮れのパキスタンのキャンセルが原因になつて、大分業界は大きな打撃を受けたようでありますが、一体どのくらいの量を、どういう事情でキャンセルを受けまして、そのために日本の業界がどういうふうな影響を受けて、現在どういうふうになつておるか。私は長野県ですが、長野県の関係者でも大分音を上げておるようでありますが、それをひとつお聞かせ願いたい。  それから実は生糸会社でニューヨークヘ支店を設けるということが、長野県の片倉なんかの例でも、今簡單にできないので、一時の旅行者という資格でそこにいるよりしかたがない。これではとうてい支店などを設けることは困難です。要するに、支店は設けられないので、一時の滞在者という形で仕事をして、三箇月たつと、また旅券の期限の切りかえをするのですか、どうするのですか。この二つの点をお聞きしたい。
  90. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 申し上げます。昨年末のパキスタンのキャンセルの被害は、業界にとりましてきわめて甚大でありましたと同時に、日本経済にとりましても非常に大きな影響を来していると思いますが、これがために何軒倒れて、何億ヤードの滞貨ができたといいますことは、業者も秘密にいたしておりますので、的確な数字を申し上げかねるのであります。ただいま新聞紙上に伝えられておりますのが、その結果でありますが、被害は百五十億ともいい、三百億ともいい、あるいはまたもつと多いだろうともいつております。大体三百億円を少し上まわる見当ではないかと思います。何軒倒れたということは、参考人はよく記憶しておりませんが、なお今後増加する現況にあると私は考えおります。いわゆる二・三月危機といいますが、まだ終了いたしておりませんので、どういう方面に波及いたしまして、どういう結果を来すかということにつきましては、非常に業界は憂慮いたしておるそうでありますので、ぜひ適切な方法をとつていただきたいと思います。その適切な方法は、現在のそういう損失の一部を、長期資金に振りかえて、償還いたしますよりほかに、方法がないわけであります。そういうことをしていたださましたら、業界は大いに安定いたしまして、貿易も伸びると私は考えております。  次にアメリカにおきます支店開設の模様でございますが、支店は資本金を持たなければなりません。資本金は日本人には、対日感情といたしまして、あまり多くの額を資本金といたしますことは、アメリカ人があまり好まないだろうと思います。私自身アメリカに一年有余おりまして、その間銀行業者と絶えず連絡いたしておりましたが、大体一、二万ドル。一、二万ドルじや少いじやないか、と言いますと、三万ドルかということで、三万ドルぐらいまでが普通の資本額だと思います。私どもの会社は十万ドルの資本金でやつております。ただいまアメリカの銀行から百万ドル限度の融資を受けておりますが、実質的に使つておりますのは、手前どもくらいじやないかと考えております。本日商社の外貨借入のわくは、日銀並びに通産省、大蔵省、安本とそれぞれ御関係のところから許可はいただいておりますが、アメリカ銀行は日本の商社に金融はいたしません。つまり許可だけであつて、実質は動いていないというのが現在の状況であります。兼松株式会社が三十七万五千ドルか、たしか金融を受けておられると思いますが、他には日本政府の許可はありましても、アメリカ政府の貸出しはなかなか得られそうにありません。  支店を設けますのは、比較的たやすいのであります。三人以上の発起人がいまして、ニューヨーク州ならニューヨーク州に居住いたしております者が、そのうち一名加わらなければならぬのであります。現在ではこの新会社の運用はニューヨーク・ステートの法律により縛られておりますが、なお日本銀行並びに日本政府の監督、指導を必要といたしておりますので、十回目ごとにレポートを出すことになつております。支店開設はむずかしくはございませんが、資金の面におきまして困難があるかと考えております。ただ旅行者の滞在期限の延長は、支店開設のためでございましたら、六箇月ずつの期限延長でできるようになつておりますが、日本政府から発給されます旅行免状は、テンポラリイ・ヴイジターと書いてございますので、この点に海外支店設置のための永久居住という条項が加わるようになりましたら、こういう不便は除かれると思います。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどのパキスタンのキャンセルのことですが、これはどういうことを理由にしてキャンセルされたんですか。ただ値が引合わないということで、一方的にキャンセルして来たんですか。どのくらいの量を向うが買い付け、どういう条件であつたものを、何を理由にしてキャンセルして来たのか。
  92. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 別に理由はございません。国際水準価格が下落いたしまして、たとえば綿布の原料の綿花は、当時は一ポンド八十セントいたしておりましたのにかかわらず、現在では四十セントないし五十セントになつております。国際水準価格が下がります前に契約した分を、理由なくしてキャンセルすることを、われわれはマーケット・クレームと申しておりますが、向うが相場に負けたために、信用状を開いて来ないようになりました。日本の国力が非常に強固でございましたら、こういうことは起らなかつたとわれわれは考えております。  どのくらいの量でございますか、百五十億円から三百億円と申します。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 注文のあつたのはどのくらいの量ですか。金額でもいいし、ヤードでもいいが、記憶はありませんか。
  94. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 ただいまはつきりいたしておりませんので、文書をもつて御返答申し上げたいと思います。
  95. 前田正男

    前田委員長 それでは委員長から一、二お聞きしたいと思います。吉田さんは大部分大阪の方においでのように思うのですが、大阪の貿易界として特に強く政府に要望された事項というようなことで、いまだ解決の曙光を見ないというような貿易業者の対策のようなものがございましたら、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  96. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 私は大阪に半分と、東京支店長といたしまして東京に半分いるのでございますが、現下の一番大きな問題は、先刻来申し上げました、この海外からの契約破棄によります損失が莫大に上つておりますために、こういうものをぜひとも長期金融にお振りかえ願いたい。これは決してインフレーシヨンを意味するものでもありません。たとえばそれが日銀から出、市中銀行に流れ、業者に流れ、メーカーに流れしましたら、やはり市中銀行を通じましてまた日銀に返りますので、一向インフレーシヨンは起さないと考えております。これが相当長期の償還ということに願えれば、業界はきわめて安全になります。現在海外は日本の財政危機を叫びまして、東亜諸地域のみならず各国におきまして、日本からの繊維製品のみならず、すべてのものを買い控えている現状でありますので、そういう措置がとられて安定を得ましたならば、海外からの引合いも増加し、貿易も非常に振うだろうと考えております。
  97. 前田正男

    前田委員長 実は昨日でありますが、日銀の副総裁の二見さんがおいでになりまして参考人として述べられました意見の中に、二、三月危機に対する打開策としては、具体的な例によつてあつせんをして行きたいといようなことがありましたが、具体的に皆さん日銀その他に交渉せられまして、現在具体的にあつせんを受け、あるいは皆さんの困つておられた問題が打開されつつあるかどうかとい交渉の状況がおわかりでしたら、教えていただきたいと思います。
  98. 吉田卯三郎

    ○吉田参考人 私も今日まだ上京いたしたばかりで詳しくは存じません。われわれもきよう新聞社からもいろいろ問合せに接したわけでありますが、大体こういうものはなかなか日がかかります上に、今日までは大蔵大臣も日銀総裁も、そういうことの融資につきましては、どちらかといいますと消極的であり、反対的な御意見を述べられておるやかに新聞紙上を通じて了解いたしておりました。ところが最近はよやく業界の実態も考えられましてか、幾分具体的の処理なり状態なりが判明すれば、何かの措置をとられるようなことを伝えておられますが、まだ相当の日数がかかるものと考えております。
  99. 前田正男

    前田委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせすることにし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五分散会