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1952-03-14 第13回国会 衆議院 外務委員会人事委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十四日(金曜日)     午前時三十五分開議  出席委員   外務委員会    委員長 仲内 憲治君       北澤 直吉君    飛嶋  繁君       並木 芳雄君    小川 半次君       林  百郎君    黒田 寿男君   人事委員会    委員長 田中 不破三君    理事 平川 篤雄君 理事 藤枝 泉介君       井之口政雄君  出席政府委員         人事院事務総局         法制局長    岡部 史郎君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君  委員外出席者         外務委員会專門         員       佐藤 敏人君         外務委員会專門         員       村瀬 忠夫君         人事委員会專門         員       安部 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  外務公務員法案内閣提出第四五号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会人事委員会連合審査会を開会いたします。  外務公務員法案を議題といたします。本案につきましては、審議の都合上各章ごとに一章ずつ区切つて質疑を行うことといたします。  まず第一章総則第一條ないし第四條について質疑を許します。御質疑はありませんか。
  3. 並木芳雄

    並木委員 この外務公務員法国家公務員法特例として設けられたのでありますけれども、それならば国家公務員法特例法として出せばいいので、單独法とする必要はないと思うのです。ちよつと拝見しただけではありますけれども、全般から見まして国家公務員法というものに対する非常な例外的な規定に終始して、それがあまりに極端なために、国家公務員法という母体の法律をないがしろにするという点などがうかがわれるのです。この点について、何ゆえにこれを單独法としてやつたか、それをお伺いしたいと思います。
  4. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま並木委員からお話になりましたように、公務員法実質特例法なのでありますが、先般御説明申し上げましたように、外務省に勤務しまする勤務員勤務地が非常に世界各地にまたがりまして、従いましてそれに関連して非常な特殊性を持つて来るということがあるのであります。それからもう一つ職務が非常に対外的でありまして、その責任とかいろいろの点についても非常に懸隔といいますか、異なるものであります。ことに特別職その他の大公使等に関する規定等も相当に織り込まれますので、結局一まとめにいたしまして外務公務員法というこうい形をとつたのであります。
  5. 並木芳雄

    並木委員 特例法として設けることはできないのかどうか、それでは何ゆえに支障があるのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  6. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま申し上げましたように特例的なことが多いのであります。名誉領事規定でありますとか、さらにまた外人の雇用のことまでもいろいろこれに入つておりますが、人事院その他ともいろいろ折衝いたしました結果、こういう名前で出す方がよかろうということにおちついたのであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 外務大臣権限がこれでは非常に強くなつておりまして、外務省勤務職員といえども身分保障について万全を期することがむずかしいと思います。その点について、国家公務員法をあずかつております人事院としてはどういうお考えをお持ちになりますか。あまりに人事院を無視するようなこういう法律ができるということは、国家公務員法精神からいつても、国家公務員身分保障する上から万全ではないと思うのですが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 岡部史郎

    岡部政府委員 並木委員の御質問にお答えいたしますが、この外務公務員法案はただいま石原政務次官からお答え申し上げました通り特別職に関する部分、それから名誉総領事名誉領事及び外国人の任用という條項に関する部分を除きましては、すべて国家公務員法特例を定めるものとなつております。しこうしてその特例につきましては、全体といたしまして国家公務員法精神及び制度に基きまして、特に特例を要する部分につきましてのみ特例を定めたものと考えておりますので、各章ごとに御審議いただけば、御理解がいただけるかと存ずるのでありますが、人事院といたしまして、これ全体といたしましては、国家公務員法が予想しているような外務公務員についての特例を定めたものと考えておるのでありまして、これによりまして、外務省に勤務する職員身分保障に特別欠けるものというような考えは持つておりません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 その点は以下章を追つてまた質問して行きたいと思います。しかし全体から受ける感じというものは、国家公務員という公の職務につくものの規定ではなくて、吉田家にでつち奉公する外務省役人身分扱つた感じが非常に強い、これは逐次質問をして参ります。  第二條におきましていろいろ外務公務員に関する定義を掲げておりますけれども、この中できようの新聞でございますが、首相特使として川越氏を独立後、国府へ派遣するかもしれないという報道がされております。首相特使というよろなものは、どの範疇に入るものでありますか、それをお伺いしておきたいと思います。またそういう川越氏を国府へ派遣するなどという話が、現里にあるのかどうか、それも質問しておきます。
  10. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま引例されました例示だけでは何ともはつきり申し上げられないのでありますが、この全権大使等の中にも、特使として参ります際に、大使資格を與える場合には含むのでありまして、そういう場合には特派大使といいますか、勤務地を持たない全権大使ということも考えておるのでございます。
  11. 並木芳雄

    並木委員 この第二條によつて設けられる全権大使あるいは全権公使、これをどこどこにさしあたり設ける計画であるか、これをお伺いします。
  12. 大江晃

    大江政府委員 大使館を置きます位置につきましては、ただいま在外公館の名称及び位置を定める法律案を近く国会に御審議を願うことにいたしておりますが、その予定地といたしましては、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、大韓民国、フイリピン、オーストラリア、インドネシア、タイ、ビルマ、インド、パキスタン、トルコ、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、イタリア、スぺイン英連邦連合王国、以上が大使館を置く予定地であります。公使館につきましては、ドミニカ、ペルー、チリー、ウルグアイ、ニユージーランド、ヴェトナム、ラオス、カンボジア、セイロン、エジプト、ユーゴスラビア、スエーデン、ノルウエー、デンマーク、スイス、ヴアチカン、ポルトガル、南アフリカ連邦、以上でございます。
  13. 並木芳雄

    並木委員 今お伺いした中には大使館または公使館として台湾の国府というものが含まれておりませんが、中国に対するものはどうなるのですか、その点お尋ねしておきたいと思います。
  14. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国府との関係は、御承知のようにただいま平和交渉といいますか、條約締結につきましていろいろ折衝中でありまして、この條約の締結を見、国交回復の上においてあらためて考えるということになつております。
  15. 並木芳雄

    並木委員 その場合は大使館ですか。公使館ですか。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 その場合になつてみなければわかりませんが、おそらく今予定されておりますところとの比較等から考えましては、大使に相なるのではないかと思つております。
  17. 並木芳雄

    並木委員 総領事館の方はどこへ設ける予定ですか。
  18. 大江晃

    大江政府委員 総領事館につきましてはニユーヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ホノルル、サンパウロ、香港、シンガポール、カルカツタ、ボンベイ、ジユネーヴ、これが総領事館であります。
  19. 並木芳雄

    並木委員 第二條の第二項でございます。その中に政府代表とは「特定目的をもつて外国政府と交渉し、又は国際会議若しくは国際機関に参加し、若しくはこれにおいて行動する権限を付與された者をいう。」それと第三項の「この法律において「全権委員」とは、日本国政府を代表して、」というところまでは第二項の政府代表と同じでありますけれども、特に国際機関に参加するという点が抜けております。そのかわり「條約に署名調印する権限を付與された者をいう。」というふうになつておりますけれども、政府代表全権委員との違いをはつきりここでしておいていただきたいと思います。何ゆえこういう違いが出るか。
  20. 大江晃

    大江政府委員 第二項におきまして、「国際会議若しくは国際機関に参加し、」とありますのは、将来国際連合その他の国際機関に比較的恒久的に政府を代表して参加するという場合をうたつたものであります。第三項におきまして條約に署名調印する権限を付與された全権委員というものは、そういう恒久的の機関に参加して、なおかつ條約に署名調印するというようなことがなく、その場合は国際会議というふうな形をとるというふうに考えております。
  21. 並木芳雄

    並木委員 第二項の「若しくはこれにおいて行動する権限」というのは何ですか。何かつづり方にでも出て来るような文章で、法文としては非常に了解に苦しむのですが、「これにおいて行動する」とは何ぞや。
  22. 大江晃

    大江政府委員 この国際会議もしくは国際機関において政府を代表して意見を述べる、あるいは場合によりましては意思表示行つて投票する、その他いろいろな折衝を行うというようなことを含んでおります。
  23. 並木芳雄

    並木委員 第三項の方にはそれがないですから、三項の方はただだまつて参加して来なければいかぬということになるのですか。法文としては実につたない法文であると私は思うのですが、いかがですか。
  24. 大江晃

    大江政府委員 第三項におきまして、「特定目的をもつて外国政府と交渉し、」とございまして、第二項におきましても、「交渉し」とあるのでございますが、もちろん第二項で先ほど説明いたしましたような意見を述べ、あるいは投票するというようなことは含んでおる、こういうふうに解釈いたします。
  25. 仲内憲治

    仲内委員長 委員長より申し上げますが、人事委員の方は、井之口政雄君だけが御質問だそうですから、この機会に井之口君に全般的な質問を許します。井之口政雄君。
  26. 井之口政雄

    井之口委員 外務公務員法を特別に制定して、この機関にいろいろ従事されるところの公務員に関する諸問題と規定されようとしておられますが、しかしもしそういうことになつて来ますと、今日存在しておる人事院権限が、これにどういう作用を及ぼし得るのか。もう人事院は何も必要ないものとなつて来はしないかということが、まず第一に考えられるのであります。先ほど並木さんからも御質問があつた通り、これは当然起るところの疑問であります。さらに最近においては、吉田政権の行き方は、人事院をもはや不要とし、公務員としてのみずからの権限を守るための団体運動は禁止せられておるし、その上に人事院も廃止されるというような傾向に進んでおるとき、やはりその一翼に合流して行くような傾向を、この外務公務員法が持つておるのではないかという点を非常に強くわれわれは疑うのでありますが、これに対して政府は一体どういう考えを持つてこうした特別のものをつくられるか。今申し上げたような傾向が高進せられると、民主主義的な方向というものは逆転して来ると思うのでありますが、その点についてどう考えておるか、聞いておきたいと思うのです。
  27. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は先ほどもお答えいたしたのでありますが、外務公務員勤務地であるとか、職務責任とか、そういう特殊性から割出されて来たものでありまして、そのほか特別職関係のもの、あるいは名誉領事外国人雇用とか、いろいろの特殊性からこういう形をとつて来たのであります。この法律をごらんになつてわかりますように、国家公務員法をあくまで原則としては立てておるのでありまして、国家公務員法は、人事院を重点といいますか、中核として運営されておるわけでありまして、われわれといたしましては、国家公務員法なりあるいは人事院を軽視、無視するという形でこういう法案考えたものではないのでございまして、その点を申し上げておきます。
  28. 岡部史郎

    岡部政府委員 人事院の方からも一言け加えて説明さしていただきますが、第一回の国会におきまして国家公務員法が制定されました際におきましても、この国家公務員法をそのまま適用するについては、特例を要するグループが非常に多いだろうということが予想されておりましたものですから、その当時におきまして公務員法の附則の十三條で列挙いたしまして、外交官領事官、その他の在外職員学校教員裁判所職員検察官を並べまして、これらにつきましては特別法をやがて制定する必要があるということを認めておるわけでございます。それに基きまして、御承知通りすでに教育公務員特例法が出ておりますし、検察官につきましては検察庁法におきまして、これは国家公務員法特例を定めるものだということをうたつております。それで外務職員につきましても、早くから特例法を制定することが予想されて曲るわけであります。国家公務員法自身がその特例法予定しているのだと私ども考えておる次第でございます。
  29. 井之口政雄

    井之口委員 人事院特例によつて、これらの外務公務員を将来規定するのだというふうに、前になつていたといたしますれば、むしろ今日の国家公務員法部分として改正するなり、いろいろな方法をとつて、やはり人事院の管轄内において、これらの外務公務員に関する諸法令規定したならばどうかと思うのですが、これでは人事院はどの程度これらの公務員に対して働きかけ得る余地が残されておるのですか。全然ないのか、また全然なしとしてもそれで満足されますか、どうですか。
  30. 岡部史郎

    岡部政府委員 先ほど申し上げました通り内容につきまして御審議いただきますればわかる通り、たとえば第二章は職階制をきめておりますが、職階制の問題につきまして、その職種を決定する、職級を決定するというようなことは、これは当然人事院権限になつておる。それに対しまして、軍に格付仕事はこれも一般職員におきまして、人事院が全部行うわけでないのでありまして、各省に広く委任してやる建前になつております。それをこの際特例法を制定するに際しまして、外地におる外務公務員につきまして、人事院格付を行うということは事実問題として困難でありますから、外務省の方に委任するというような、これが特例の一例でございます。そういうように制度全般につきましては、人事院国家公務員法及びそれに基く人事院規則がすべてカバーするわけでございまして、この法律規定しております特定事項についてのみ国家公務員法特例となる、こう考えております。
  31. 井之口政雄

    井之口委員 かんじんなところを外務省に一任してしまつて人事院としてなさねばならぬ中心点はよそに預けて、まるで下請みたいなごく形式的な点だけやるということになつたならば、人事院存在それ自体が無意味になつて来ることはこれは明らかであります。たとえば査察使の派遣の点をとつてみましても、人事院は何ら関係なく、総理大臣吉田氏が自分自身で任意に專断をもつてこれを任命し、派遣し、それに対しても何ら国家公務員としての独自の立場が守られないというふうになつておる、これは吉田天皇の思うようになるような任命であります。この間アメリカから日本に参りまして行政協定国務大臣の岡崎氏と結んだというあのラスク氏なんかも、向う大統領の何か特使というのですが、大統領の手先みたいなもので、全体の国家的な一切の機構権限のもとにきちんとしてきめられていて、そして人民の統制のもとに存在しておるそういう大事な役人ではない。ところがそれがやつて来まして重大なものは決議してしまつた。そういう決議をなす権限を持つものなりやいなやも不明のまま決議された、その決議されたものが国家として大きな制約を受けるというふうになつていますが、この査察使のようなものでも、一例をとつてみても、人事院はまるでこれと無関係になつてしまつて、結局結果においてこの独善的な行動が行われるようになると思うのですが、これらの査察使というものの権限なり、構成なり、その任命、罷免等々についてどんなふうな構想を持つておられますか、もつと詳しく御説明を願いたいと思います。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどお話ラスク氏は、これは答えなくてもいいことだと思いますが、向う大使という資格で来られておりますから、大使とこちらの国務大臣が協定したのであります。これは当然の筋道だと思います。  それから査察使のことですが、これは何と申しますか、いわゆる行政監査のようなことであります。ことに外務関係は、世界各地在外公館がずつと散らばつておりまして、一々こちらの人事院から正規に出て行くというようなことも、これは能力において、また事務上において困難であろう。そういうことで今回こういうきりな制度を設けたわけでありまして、場合によりますれば、在外における大使なら大使の適当の人が、その周囲を査察することもあるでありましようし、この査察使の詳細の職務権限といいますか、規定、準則のようなものはこれから立てて行きたいと思うのでありますが、置いた趣旨なり仕事は、ただいま申し上げたような点であると思います。
  33. 井之口政雄

    井之口委員 たとえば査察使はいろいろな報告をすることを任務としておりますが、こういう報告が一ぺん行く、しかるにそこにおける公使館なり大使館からの報告が出て来る。こつちは個人的に報告して来るが、一方においては、正規機関を通じて一つ報告が行く。二つの報告矛盾した場合に、これを派遣しているところの外務大臣は一体どつちをとつていいかわからぬようなことになるし、この査察使が自由かつてにあつちこつちはいまわつて歩いて、一方においては、義務を負つていないところの自由な行動をやつて、片方においては、一つ機関として、大使館なり公使館から正式の報告が行くというふうになつて、これはおもしろくない結果に到達するのではなかろうかと思うのですが、その点についてどうお考えになりますか。しかも査察使なるものは、外務大臣——今にいたしますと、吉田総理大臣でありますが、そういう人たち側近を派遣することになる。そしてあなた方が役人として行つておいでになつても、あなた方は重要な報告もできなければ、重要な決定にも参加できない。この側近の人が行つて、かつて次第なことをすると、まるで今日の機構を破壊してしまうフアツシヨ的な形態がここに成立して来ると思うのですが、どうでしようか。
  34. 大江晃

    大江政府委員 ただいまのお話の中に、報告が二本になつて来るがどうかという御質問がございましたが、在外公館一般報告と申しますのは、主として政務関係あるいは情報関係で、もちろん行政的の事務報告もございますが、第十六條で予定しております査察は、主として行政的の内容監査するという意味で置かれておるものでありまして、その点におきまして、報告が二途に出るというようなことはなかろうと存ずるのでございます。たとえば定期的にいたします行政報告というようなものの中に、監査を要するような事項がありますれば、それを坂上げて査察の対象にするというようなことでございます。  また査察使外務大臣がかつてにきめてやるというようなお話もございましたが、第十六條には、外務公務員のうち適当と認める者を派遣するということになつておりまして、これは民間、あるいはそういうお話のようなところから行くことはなかろうというふうに思つております。
  35. 井之口政雄

    井之口委員 そういう矛盾は起らないだろうというのだから、実に甘い考えだと思うのであります。  その点はそれくらいにいたしまして、次にこれらの外務公務員ですかの人たちが、いろいろな機密漏洩に対して責任を負うていることになつております。しかし機密漏洩ということは非常に重大なことでありまして、一例を申し上げますと、今日本は再軍備していないということは、これは総理大臣も再軍備していないとつつばつておる。しかるに労働者の中には、日本の軍機を漏洩したという意味で、裁判にかかつているような人たちがおる。また今度の講和條約その他の條約を見てみましても、この條約の中に、たとえば日本はこれより有利な條約を、今まで結んでいない国々と新しく結んではならぬというような規定もある。その有利といつた場合、一体日本にとつて有利なのか、アメリカにとつて有利なのか、これは非常にあいまいなことなのです。実質上は、有利ということはどうしてもアメリカにとつて有利ということになる。そこで今度の場合でも、機密漏洩に対して日本公務員責任を負うのでありますが、この場合に、まつたアメリカ日本を支配しており、しかも講和後においても引続いて支配の存在は残るというようなときになつて来ますと、アメリカ軍事上の機密アメリカにとつて一つの隠さなければならぬ性質のものを日本公務員が漏らしたというので、責任を負わされるような結果にも立ち至る場合があると思う。日本公務員日本のことについての機密を漏らしたというならいざ知らぬこと、外国機密アメリカ機密に一対して、それを漏らした場合に責任を問われるようなことに立ち至つたならば、これは日本外交官としてまつたく不合理なことに立ち至ると思うのですが、この機密漏洩ということに対して、その辺のはつきりした具体的な説明が願いたいものだと思います。
  36. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは第九條にもありますように、「外交機密の漏えいによつて国家の重大な利益をき損したという理由で」云々と、国家の重大な利益毀損ということになつているのでありまして、ただいま御質問のようなことは、当らないといいますか、考えられないと思います。
  37. 井之口政雄

    井之口委員 まるでその返事はわけのわからぬことになる。もとより機密であるから、アメリカ機密に対してこれを漏洩した場合はどうなるのですか。日本に多くのアメリカ軍事基地ができている。この軍事基地に対して、外交官は当然いろいろな国際関係で知つている。しかるに日本においては軍隊を置かぬ、平和な国でありますから、その平和な国として、アメリカ軍事基地に関するそれらのことが外国に発表されようと、どうしようと、そんなことはかまわない。しかるにそれはアメリカの国にとつて重大な不利益になつて来るような場合が発生して来るのであります。そういう場合に、日本外交官アメリカ機密までも国家の重大な利益としてどうしても守らにやならぬのか。その点日本が将来アジアに存在する上において、平和国家として立つて行くか、アメリカ軍事基地として立つて行くかという、重大な岐路に今立つている関係上、これらの問題は大きな意義を持つのでありますが、その点はどうでありますか。
  38. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは日本外務公務員法——日本法律でありまして、国家の重大な利益を毀損したということになつておるのでありますから、日本国家の重大な利益をき毀損した、こういうふうに解釈しなければならぬと思います。
  39. 井之口政雄

    井之口委員 アメリカ日本との今度の條約によりますと、アメリカにとつて不利なるもの、日本にとつて有利なる條約は、将来締結してはいかぬというのですから、日本にとつて有利なものが必ずしもアメリカにとつて有利とならぬ場合がある。アメリカにとつて不利なものが、日本にとつて非常に有利なる場合がある。そうしたときの矛盾、少くも日本一つ独立国家として存在する以上は、機密というものに対しては、こまかないろいろな問題が将来出て来るのであつて、そのたびに公務員日本のためを思つてつたことでも、他国からの干渉によつて、この人たちが犠牲となつて上らなければならぬという場合が発生して来るのでありますが、そういうことに対して、外務省の方ではどういうふうに——どうもアメリカの属国になつてしまつたのだから、しかたがないのだ、アメリカの言うことは一から十まで守らなければしかたがないのだと思つて、ころした法案をおつくりになつたのかどうか、それを聞いてみたいと思います。
  40. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどから講和條約をいろいろ引用せられて、有利な條約をどうこうというようなことを言われますが、そういうことはこの平和條約にはございません。この條約できめたより、より利益を與えるような條約をつくつた場合には、すべての国に及ぼさなければならぬということが第二十六條にあるだけでありまして、先ほどから言われていることは條約のどこにあるのか、ちよつとないように私は思うのであります。  それから機密の保持、漏洩というのは、これは昔から、いわゆる官制といいますか、服務紀律等にもずつとある條項でございまして、ことに外交につきましては、機密の保持というようなことは特別に必要な場合もあるわけでありまして、そういう意味で第十九條に特別に規定されておるということになつておるのであります。先ほどからいろいろ言われますことは、どうもわれわれの方にはよくわからないのであります。
  41. 井之口政雄

    井之口委員 それではあまり政治の根本に触れるとあなたはおわかりにならないから、ここに具体的に現われている言葉をつかまえて、そうして具体的な例を引いてひとつお尋ねしてみたいと思います。たとえば外務公務員の中に——これは外交上のいろいろな機密を知つておるのであります。そういう機密を、日本の国内のいろいろな民主主義的な傾向を持つた政党に漏らすというふうなことになつた場合には、ただちにこれが罪にひつかかる。しかるに他方においては、外務大臣のお気に入りとなつて派遣される査察官のような人たちつたら、外務大臣と同じ党派、または同じ傾向に所属する者に漏らした場合には何ともないけれども、片方の民主主義的な団体に漏らせば、これが機密漏洩として処罰されて来なければならぬというふうになつたならば、官吏としての地位さえも維持できなくなつて来るのではないか。この具体的な例についてはどうです。これに対しては御返事ができないはずはない、できるだろうと思うのであります。
  42. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは機密漏洩によつて国家の重大な利益を毀損した、こういうことになるのでありまして、「機密の漏えい」と「国家の重大な利益を毀損」ということになるので、今いろいろ例を引かれましたが、これは一々答えるのもどうかと思うのでありますが、これは漏洩ではないのでありまして、査察使はいろいろなことを知つていなければならぬ場合もあるかと思うので、機密漏洩で重大な利益を毀損したという場合に、懲戒とか、こういう処分が行われるのであります。
  43. 井之口政雄

    井之口委員 その例はさきに井口次官が——ぼくは井之口で、ちよつと似たような……(笑声)この人は、国府関係のことを国会において漏らしたというたけで、おれのまた許しも得ないで漏らしたというので、大分吉田総理におきゆうをすえられたそうでありますが、こういうようなことが間々起る。そうすると、日本の官吏として自分で正しいと思うことを国会報告さえもできない。いわんや、あるいは大衆に向つての講演会なり何なりにおいて正しい意見を発表もできない。まるで個人的に外務大臣の主観的な考えに支配されるということが起つて来る。せんだつても、何か外国に派遣ざれる外交官が吉田総理とごちそうを一緒に食べに行つて、そうして吉田総理が立たないうちに立つてつた、エチケツトを知らない、けしからぬというので首になつたということを新聞で報じておる。こういうことは機密漏洩問題についてはもつと深刻な問題が起つて来ると私は思うのであります。そうしたならば、外務公務員が自分の職責も全うすることができない。はらはらして、ただ上のものにお伺いを立てているような、茶坊主式の人間しかできて来ない。こんな人間が外交官として外国に派遣されて一体どんなことができるのか。四方八方気がねばかりして青くなつて、それこそインテリの青びようたんみたいになつて……(笑声)日本において外務省の方々がそうなつているとは私は言わぬが、自由党の方が、そうなつていると考えておる人もあるらしい。それでは強固なる外交方針というものは貫けない。この点はどうです。
  44. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどからお答えしているところを重ねて申し上げることになるのでありまして、それ以外にないのであります。  それからまた不利益処分をとられたと思うような場合には、審議会の公平な調査にも付せられるのでありまして、今いろいろ言われたような、大臣のかつてでいろいろなことができるというようなことは、私ないと思います。
  45. 井之口政雄

    井之口委員 そこで大分審議会に大きな期待を持つておられるようでありますが、これは附則第十四條の二に当る問題であります。ここをごらんになればよくわかる。二の中の「3審議会は、委員五人で組織する。」と、りつぱに出ております。同時に、その内部の構成を見ますと、「一人及び学識経験のある者のうちから三人を、外務大臣任命する。」五人のうち、学識経験ある者として外務大臣が五名を任命するのであります。五名のうち三名を外務大臣任命するとすれば、すでに外務大臣の個人の主観によつてこの三名が選ばれるわけであつて、この審議会なるものがいかに正論を吐いたところで、多数決によつてこれは否定されてしまう。現に今日日本の衆議院はどうなつているか。衆議院の中において見たら、自由党絶対多数で、その絶対多数が何でも押し切つてしまう。川上貫一君のごとき、ああいう愛国者でさえも追放しているし、今また風早君を懲罰にかけている。こういうふうでどんな簡單なことでも絶対多数が支配して来るのがアメリカ式の民主主義なんだそうですが、そういうふうにやられましたならば、この審議会なるものが実にたよるに足らぬもので、五人のうち三名が外務大臣の主観によつてきめられるという結果に立ち至つたら、これをどうして防ぎ得るか。あなた方が今大きな期待を持たれたところの審議会が、そういうふうなものであるということをひとつ認めた上で、それを防止する方法があるならば、これにひとつ意見を出してもらいたい。
  46. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 どうもこれは頭からすべてを疑問に思い、疑つてかかるならば、いろいろのりくつは立つと思うのでありますが、この審議会も外務省としては官房長が出る、人事院からは給與局長が出る、こういう役所側では建前になり、それからあとはこういう問題について学識経験あるそういう人を選ぶにつきましても、やはり外務大臣が広い範囲から選ばれるでありましようし、一番適切と思われるところから選ばれる、こういう建前になつております。
  47. 井之口政雄

    井之口委員 ただいますべてのことを疑つてかかればそうだということを言われましたが、これは売り言葉でありまして、この言葉を聞くと私も黙つているわけに行かぬ。法律というものはあらゆる場合を考えて、あらゆる場合の想定の上に立つて、そうして正しく目的とするところは貫けるように考慮するのが法律である。しかるにあらゆる場合の立法を考えないで、初めから疑つてかかるというふうなことを抜いてかかつて、そういう抜け道をこしらえておいたならば、その抜け道ばかりへ絶対多数は食いついて来るのだから、これは結局法があつて、ないものとなつて来る。この結果はあらゆる面に現われているのであります。こういうような考え方であなた方が法を制定されるならば、トンデモハツプンである。(笑声)今アメリカ式の英語が非常にはやりますから、そういう言葉ならば、あなた方は理解できるだろうと思う。そうしてその理解の助けのために使つたのだから、その点は恕していただきたい。さてそういう状態でありますから、こうした欠陷がないように、悪いように運営されないように、これがもつと改正せられる必要があるのじやないか、この点については考えたことはないでしようか。これを逆に各野党から絶対多数をとるようにしておいたならば、それは正しい方法もこれに反映して来ると思うのでありますが、外務大臣の気に入るような人間を三人もとつて来るというような審議会でやつたならば、これは審議会の役割を勤めないと思う。大衆団体から出て行くとかなんとか、それを改められる意思はないかどうか。
  48. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほども申したのでありますが、役所側からとる者も、つまり外務省から外務公務員の官房長、それから人事院職員、給與局長が大体予定されるのじやないかと思うのでありますが、こういう建前から見ましても、学識経験者の三人を選ぶ場合にも、やはり十分な考慮がめぐらされるということはお考えを願えると思うのでありまして、その他のことにつきましては意見の相違もあるようでありますし、御意見として承つておきたいと思います。
  49. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて連合審査会を散会いたします。     午前十一時二十五分散会