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1952-06-16 第13回国会 衆議院 外務委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十六日(月曜日)     午後二時四分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 近藤 鶴代君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君       植原悦二郎君    大村 清一君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       中山 マサ君    飛嶋  繁君       福田 篤泰君    守島 伍郎君       山本 利壽君    林  百郎君       勝間田清一君    黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 六月十四日  委員大村清一辞任につき、その補欠として柏  原義則君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員柏原義則辞任につき、その補欠として大  村清一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月十四日  国際労働條批准促進に関する陳情書  (第二三七七号)  在外同胞引揚促進並びに留守家族援護に関する  陳情書  (第二三七八号)  海外移住促進に関する陳情書  (第二三七九号)  行政協定に基く富士裾野演習場拡張反対陳情  書(第二三八〇  号)  富士演習地拡張反対に関する陳情書  (第二三八一号)  米軍調達上の諸條件に関する陳情書  (第二四六五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太  平洋公海漁業に関する国際條附属議定書の  締結について承認を求めるの件(條約第一四  号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず国際情勢等に関する件について質疑を行うことにいたします。本件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 岡崎外務大臣国際連合軍当局日本とのとりきめについて質問をいたしたいと思います。最近の報道では、朝鮮動乱というものが、日本の安全を守るためであるというふうに伝えられております。私どもは今まで朝鮮動乱は別段日本の安全とは関係なく、ただ国際連合で決議をしてそれに基いて出動している、国連協力するという線で日本協力をしておつたにすぎないと了解しておつたのです。ところが最近国連当局日本政府との話合い過程において、これは日本の安全を守るものでもあるのだということが言われるようになつたということが事実であるとすれば、これは新しい事態であると思うのです。そこで最近大臣アレキサンダー英国国防相ともお会いしているのですが、朝鮮動乱というものが緊迫を加えて来ているのではないか。そうして朝鮮動乱はすなわち日本の安全と非常に密接な関係が出て来たのだということになるのかどうか。従つて満州爆撃というようなこととからみ合せて、もしかすると日本爆撃を受けるようなことがあり得るのではないかということが心配されるのでありますが、まずこの点についてお尋ねしたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アレキサンダー国防相等と会見をしましたことについては、前にちよつと触れましたが、具体的に別に何も話合いはいたしておりません。  それから朝鮮の問題については、これは私もしばしば言つているのですが、国連軍の目的は朝鮮平和維持にある。日本安全保障のために出動しているのではないことはもちろんでありますけれども、結果においてこれが非常に日本の安全に関連が深いことは申すまでもないのでありまして、この点は私もしばしば言つているのであります。たとえば国連軍が一時劣勢を伝えられて釜山の近くまで押し寄せられたときに、国内のことに山口県とか福岡県とか、あれに近接しているところの人心の動揺が非常にはげしかつたことがある、というようなこともこの席で申したことがあるのであります。従つて結果においてたとえば朝鮮全部が北鮮軍支配下に立つというような場合を万一仮定してみますれば、これは日本の安全にも非常に大きな影響があるということは、結果的にはもちろん言えることと思います。しかし日本安全保障のために戰つているというわけではないのであります。
  5. 並木芳雄

    並木委員 最近国連軍との協定の話が進んでいるそうですが、その内容を知らしていただきたいと思います。これはその過程において日本のための安全保障ではないが、日本の安全には関係があるということが強く押し出されて来て、これが費用分担の点に言及されているかどうか。言及されているとすれば、どういうふうに言及されているので、これに対して日本政府としてはこういう態度で臨んでいる、向うはこういうように言つているということが、最近具体化されて来ていると思いますので、お尋ねをしたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ話合いは具体的には進んでおりません。率直にいえば全然まだ話に入つておりません。従つてそういうことはもちろん話題の中に出ておりません。ただ私の了解するところでは、朝鮮において国連軍は十数箇国が共同して生命の危険を冒して働いているわけであります。それが日本にもどつた場合に、米駐留軍国連軍として向うで働いているわけでありますが、米駐留軍行政協定によつて各種の特権を與えられている、それと差別されるような待遇日本においてされるということは、これは国連軍として一緒に共同戰線を張つているほかの国々として、はなはだ理解に苦しむという意向が、間接には各所で起つていることを承知しております。
  7. 並木芳雄

    並木委員 おそらくそれはまあそうでしよう。そこで向うとしては日本に駐留するアメリカ軍と同じ條件がほしいというような申出はまだないのですか。今お話合いしたことはないということですから、あるいは全然具体的には話になつていないかもしれませんけれども、間接的でも何かそういうような意思表示はなかつたのですか。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだそういう意思表示はありませんけれども、個人的な意見としては——国連関係朝鮮から帰つて来た人もたくさんおりますが、個人的にはそういう気持で、ほとんど異口同音といつてはおかしいのでありますが、みなそう言つておるようであります。
  9. 並木芳雄

    並木委員 その場合、政府としてはどういう態度で臨むつもりですか。大体そういう意向をくんで、日米安全保障條約に基く行政協定の線で出て来る費用分担という線まで認めてやるつもりですかどうですか。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまそれはいろいろ研究中でありますが、私のいろいろ接触した今の個人的な各方面意見というのは、費用の問題については触れておらないのであります。裁判権の問題であります。
  11. 並木芳雄

    並木委員 それではその裁判権の点を詳しく説明していただきたい。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 裁判権については私ここでも一度申したことがあると思いますが、行政協定日本アメリカに頼んで、来てもらつております。従つてできるだけの特典を付與する。国連軍の方は日本から頼んだというわけじやないのです。ただ日本安全保障にも間接的には非常な寄與をしておるから、できるだけの協力をする。そこで行政協定に規定されておるものと多少違うべき筋合いのものである、こういうことを当委員会でも申したことがあるのであります。日本政府気持はそういう点にあるのであります。ところがそれに対して差別待遇でないことを強く希望しておるというのが、間接的に聞きました個人的の意見であります。
  13. 仲内憲治

    仲内委員長 並木君、簡単に結論を出してください。あと漁業條約の採決をいたしますから……。
  14. 並木芳雄

    並木委員 費用の点で、これは仮定のことになるかもしれませんけれども、もし駐留米軍と同じような分担方法にしますと、今の防衛分担金安全保障費ではまかなえないと思うのです。従つてもしそうなりますれば、新しい予算措置が必要になると思いますけれども、その点どうお考えになりますか。
  15. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ話合いができておりませんから、その点についてはまつた仮定の問題で、まだここでとやかく言明する時期に来ておりません。しかし私は別に予算措置を講ずるというほどの問題ではないような気がしております。たとえば政府所有の建物の使用を認めるとか、これに対して特に低廉な家賃をとるとか、そういう程度のことではないかと思つております。     —————————————
  16. 仲内憲治

    仲内委員長 次に北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  17. 並木芳雄

    並木委員 問題になつております例の百七十五度線の点でお尋ねいたしますが、まず第三條に五年間という期間が出て参ります。「効力発生後五年間は、当該魚種自発的抑止のための條件を引き続き備えているかどうかについての決定又は勧告をしないものとする。」ということが第三條(a)できめられております。この「五年間」が全部附属書及び附属議定書を縛るのかどうかという点に疑問があるのでございます。と申しますのは、附属議定書の中に「この條約に基き設置さるべき委員会は、カナダ及びアメリカ合衆国の川に発生するさけがアジアの川に発生するさけと交錯する区域があるかどうかを決定するために、できる限りすみやかに條約区域の水域を調査するものとする。」と書いてあります。この「できる限り」というのは五年を待たずして、これが発効したらすぐにでも当然とりかかれるというふうに私どもは解しているのですけれども、その点が一つ疑問でございます。それからその少しあと行つて「もつとも、委員会相当期間内に前記の一又は二以上の線を全会一致で勧告することができないときは」云々とありますが、「委員会相当期間内に」という、この「相当期間」というものがやはり問題なのであります。これも五年間たつてから、それから相当期間だとすれば、これは長くて待ち切れないわけでありまして、もしこの二つとも五年たつて後のことであるとするとわれわれは問題であると思います。この点をまずお確かめしておきたい。
  18. 土屋隼

    土屋政府委員 これは條約自身の会談を重ねている際に問題になつたことでございますので、事務的に私から返事をさしていただきます。五年間の免疫期間は、附属書に掲げました三つ漁種について全部当てはまる問題でございますが、これは一応資源満限に達したという現在の材料が、五箇年間に更訂されるという見込みがありませんので、長年かかつてこしらえ上げました事実を現在でとらえまして、少くともこれから五箇年の間に、これらの資料をくつがえすに足る新しい資料が出て来ないという断定をつけまして、五箇年間という期間が大体きまりました。ただこの五箇年間は、お話にもございましたように、今後全然手をつけないという点で一つの制約を受けますが、その実際につきましては毎年委員会調査を重ねるわけでありまして、今後、五年後に本件を取上げる際の材料は今から、委員会ができますればすぐ調査にとりかかるわけであります。暫定線百七十五度は、今お話でございますが、これは委員会ができましてすぐかかる問題でございます。かかりまして委員会としてはこの百七十五度か、あるいはほかのどこかの線が正しいかという実とを決定するために、最も早き期間におきまして会合をし、調査して行くわけであります。ただ私ども関與をいたしました者の印象といたしましては、三国の関係官が集まわまして調べて画定線をきめようとしたが、なかなか決まらないという現実からいたしまして——国際委員会は御承知通り全会一致でありますから、各国を代表する委員が一票を持つ会議でありましては、どこの会合でもなかなかきまらないということが予測されるところであります。そこで「相当期間」と申しますのは、委員会で一応そういう材料もしくは現地に当つて調べましても、結局どうもこの委員会ではむずかしいという期間を常識的に「相当期間」ということで表わしました。相当期間は五箇年間より短かい、ということは今度の会議の空気からいいまして、とても半年やそこらできまるという問題とも思えませんので、ひとつ長期に新しい実地調査をいたしまして、この実地調査の結果において画定線がきまればよし、相当期間内に国際委員会できめられなかつたら来年繰返す。来年ということを必要としないならば第三国に頼んで画定線をきめるというふうに解釈するわけでありまして、五箇年間は百七十五度線にはかかつておるわけではございません。
  19. 並木芳雄

    並木委員 質問の角度をかえて逐條でなく、日米加会議段階において特に三国の間の意見が対立して解決ができなかつたような問題、つまり意見の最も相違した点を二つ三つあげてもらいたいと思うのです。と申しますのは、いただいた議事録を読んでみたのですが、どうも読み返してみてなかなかこれは理解に苦しむのでございます。そこで実際に会議に臨まれた政府の方から、どういう点が特に問題になつて意見の対立を来したか。それがりういうふうに結ばれたかという点を御説明願いたいと思います。
  20. 土屋隼

    土屋政府委員 各三国の立場簡單に申し上げまして、それがこの條約どう盛られているかという点を御説明申し上げたいと思いますが、三国間の主張最後調節を見なかつた問題というのは、この百七十五度線を除いてはなかつたわけでありまして、一応現在お手元に差上げてございます條約案は、三つの国の主張をある程度まで取入れて、大体その妥協案と申しましようか、一つの、三国間に受け得らるべきと考えられる案を立てたというふうに御承知を願いたいと思います。そこでアメリカ最初の案は、大体第三條並びに第四條に盛られました資源満限の際、科学的調査により、実際上完全に利用されているという事実をとらえて、これをいわば保存措置のモデル・ケースとして、この保存措置としては例外として、実績のある国、それからその魚種が回遊する沿岸を持つている国、つまり沿岸国でありますが、沿岸国保存措置の中におきまして漁業するという規定を、アメリカの案は最初に出したわけであります。そこでわれわれは、この沿岸国が特殊な権益を持ち、実績があるとないとにかかわらず、沿岸国であるというだけで、実際保存措置についての制限を受けないというのは、日本としてのみ込めないというので、この点は会議最初から会議最後に至るまで、日本アメリカの問で意見調節を見ず、最後までかかつた問題でありますが、結局におきまして、アメリカ側沿岸国の特殊的な利益を認めること自体が、日本が今後東南アジアその他の国との漁業協定を結びます際に、日本にとつて大きな痛手となるであろうという点につきましては、アメリカもよく事態を了解いたしまして、沿岸国主張アメリカ側最後に落したのであります。  カナダの特に主張した点は、この條約に盛られております第四條の但書の際に、第三の但書といたしまして、関係締約国漁獲操業歴史的交錯云々とありまして、アメリカカナダとの間の漁業というものは、長期にわたつて確立した歴史があつて二つにわけることがむずかしいということをうたつておりますが、これが実はカナダ最初から主張した点で、アメリカカナダとの海岸というのは、ほかの世界のどこの海岸よりも違うのであります。魚種において、漁獲方法において、歴史的な事実において違うのであります。この点をぜひ認めてくれというので、この点は日本としては直接の利害関係はなかつたのでありますが、将来他国との漁業協定を結びます際に、またこの歴史的交錯を持ち出されるということは、非常に日本にとつては不利な点もあろうかと思いますので、最後まで反対をしたのでありますが、最後に結局これは、カナダ主張アメリカにこれを認めさせることが意図であつて日本自身は直接の利害関係はないということが第一、第二には、世界漁場のどこを見まわしてみましても、カナダアメリカの錯綜している状態のように錯綜している沿岸はないという、二つの事実が判定いたされましたので、日本といたしましては、カナダ意向をいれまして、この点について讓らざるを得なかつたということになります。  それから第三といたしましては、附属書に載つております魚族についてでありますが、これはおひよう、それからさけ、ますなどにつきましては、向うの持つております調書もかなりはつきりしたものがございましたし、日本側といたしましても、従来研究せられた範囲内で、大体資源満限に達しているという事態は認められたわけでありますが、第二に掲げてございますにしんにつきましては、必ずしもこの資料が完全な資料だと言いにくかつた事情もありますので、この点は日本最後までにしんを一応落して、将来国際委員会決定にまつたらどうかということも主張したのでありますが、実際上から考えまして、日本がこの沿岸にしん実績を持つていたことはありませんし、また今後もにしんなど、わざわざあそこまでとりに行くということでは、採算もとれませんししますので、これもカナダ要求をいれまして、にしんを入れるといういきさつになつたことが、この條約におきまして現われておる点だと思います。  最後日本側主張。今はアメリカカナダ主張を申しましたが、日本側主張はどの程度取入れられたかという点を申し上げてみたいと思いますが、これは水産委員会からも当時連絡がございまして、公海自由の原則を認めさせない條約であるようなことがあつては、一切この條約は日本側で応ずるわけに行かないから、公海の自由ということを必ず確認しろ、これが第一。第二は、締約国の間に非常に不平等を来すことがあつてはならない、すなわちあくまで平等な立場において権利を持ち、義務を負うというものでなければならない、この原則を通すようにというのが第二の要求。第三の要求といたしましては、過去において実績のあつた漁場から、日本が締め出されるということにならないように、どこの国も締め出すことにならないように、従つて実績というものを必ず尊重するようにという、この三つ要求が、大体業者並びに水産庁側意向で、ございましたし、また私どももこれに同意いたしましたので、外務省、水産庁並びに業者関係者がこの会議に出まして、この三つ原則を貫くことには一番の努力を拂いました。  まず第一に公海自由の原則は、これについても実は異論がなかつたわけではないのであります。公海の自由というこの自由は、公海をある一国だけが独占的に使用しないという意味であつて使用の自由というものについて、世界歴史にいろいろの制限がついている、従つて日本だけにこれを主張させるのは困るという一つの抽象的な議論も会議初期には出たわけであります。しかも私どもといたしましては、従来一応認められていると思われる公海自由の原則、これは公海漁業を含んでの問題でありますが、これが認められない限り、この條約にはわれわれは参加できないという点をはつきりいたしまして、條約前文の第二節に、言葉は非常に簡單でございますが、「主権国として、国際法及び国際慣習原則に基く公海漁業資源を開発する各自の権利に照らして行動し、」というところに、その趣旨をうたいましたし、また私ども会議議事録に、この條項は従来の公海の自由の原則を認めたものと解釈するという注を残しまして、日本側の主義を通しました。  各国が平等であるという日本側主張でありますが、この点につきましても、ある魚族資源満限に達したという現実科学的証拠その他によつて保存措置を講ずるという必要を認めますと、どうしてもそこに実績のない国は手を引かなければならないという結果に必然的になつて来るわけであります。従つて実績主張し、また満限になつ魚種については濫獲をしないという公正な原則を認めて来ますと、実績のない国は、保存措置をされている漁場とその魚種から手を引かなければならないという結果が、必然的に出て来るわけであります。この点私どもといたしまして、何とかその点を不平等にならないようにということを考えました結果、保存措置によつて、従来実績のある国は依然として保存措置を講じて行くという義務を負い、実績のない国は、これに対して抑制して行くという義務を負うのでありますが、さらに今後の問題といたしましては、その保存措置をしておる国も十分に調査と、その漁業の実際とにつきまして報告を委員会にいたしまして、委員会はこれを抑制している実績のない国にも、ある国にも通知して、これらの国が将来保存措置について再考慮するようにという材料を提供する義務を負つておるのであります。そういうところから、一応不平等になるという点を省き得たかと思うのであります。  さらに日本側主張する実績は、過去二十五年間、條約締結の当時からさかのぼりまして二十五年間、つまり昭和初期にもどりまして、そのころからの日本実績が認められるわけであります。日本漁業界は御存じの通り、大体この期間に発展を見まして、この期間日本が手をつけられなかつた国際市場で大事な漁場というものは、まず考えられないと思いますし、また今後もこの原則を通すことによつて日本は新しい漁場にいつも実績をつくることができるわけでありますから、この点から、日本のこの三つの、公海の自由の原則各国が平等でなければならないという原則、それから実績を認めるという原則、この原則は必ずしも完全な形でないかもしれませんが、この條約に盛られていると考えられます。  こういう点から私は、お手元に差上げてございます御審議を願う條約案は、三つの国からそれぞれの主張がございまして、これを調整して、一応のみ込み得るだろうという案に持つて来たものでありまして、日本国主張だけが通つたということは申しませんが、同時にアメリカカナダ主張だけが通つたというわけでもないわけであります。
  21. 並木芳雄

    並木委員 それでは最後大臣にお尋ねしたいと思います。今説明もありましたが、なお各方面反対も起きて本條約は相当の物議をかもしておるものでございます。そこでこの條約の調印までには、岡崎外務大臣としては直授携わつておらなかつたのでありますから、岡崎外務大臣としては、できるだけ近い機会に、この條約の改訂を申し出でて、そうして国内における不平不満を解消し、その要望にこたえるべきであると私は思うのですが、その御意思があるかどうか。それから、なぜ私はそれを申しますかというと、やはり形式的には一応今言つた公海の自由、不平等立場を除く、あるいは自主的な漁業権というものが認められておるようであつても、これは実質的なところを検討すると、やはり片務的な、日本だけが義務を負わされるような点が多いのです。従つてこれで條約を締結してしまいますと、やはりまぐろ関税その他の、日本からアメリカへ輸出する関税などに影響を及ぼして来るのです。そこでお伺いしておきたいのは、まぐろその他のアメリカにおける輸入関税の問題が起つておりますが、これに対して政府はどういうふうに今まで対処して、現在いかなる段階にあるかということ、それと例のガツトへの加入でございますが、その話はどういうふうになつておるか、これをもつて私の質問を終ります。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ水産委員会等意見があつて、それは私どもよく聞きましたが、結論はこの條約自体というよりも、むしろこういう條約をつくると、たとえば李承晩ラインとかなんとかいうことで、よその国に今後日本立場を悪くするような影響を及ぼす点を心配しておられたようであります。従いまして私は、こういうものは専門家でありませんからよくわかりませんが、しかし私の見るところでは、この條約を改訂する理由はないと考えております。ただ将来ほかの国といろいろの漁業に関する条約を結ぶときに、よく水産委員等意見も取入れて、国民として漁業の大切なことはもちろんでありますから、十分満足の行ような條約を結びたい、こう考えております。  それからまぐろのカン詰の問題は、いまなお、上院の委員会通りましたけれども、本会議にはまだ上程の日程は、出ていないようであります。アメリカの上院も会期は余すところそうたくさんないのであります。今後どうなるか、われわれも注意しておりますが、今のところまだはつきりいつかかるということもわかりませんし、どうなるか、模様はもう少したつてみないしわからないと思います。  ガット加入の問題は、日本政府としてもこれを希望して、なるべく早く実現したいと思つておりますが、いろいろ利害関係のある国がありまして、必ずしもただちに加入できるという見通しはないようであります。できるだけ将来早く加入するように努力をいたすつもりでおります。
  23. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて本件に関する質疑を終了することといたします。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。佐々木盛雄君。
  24. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はただいま議題となりました北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件に関し、自由党を代表して賛成の意見を申し述べんとするものであります。  本條約及び議定書の内容とその特質は、あくまでも公海自由の根本原則を確認しつつ、しかも常時資源の満限状態を維持するために、特定魚種保存措置漁獲自発的抑止及び広汎な科学的研究を規定いたしておることであります。この條約を締結することにより、日本カナダ及びアメリカ合衆国の地先沖合いの北太平洋水域における、おひよう、にしん及びさけ漁獲を自発的に抑止し、また日本及びカナダはともに、西経百七十五度の暫定線以東のべーリング海におけるさけ漁獲を、自発的に抑止する義務を負うものでございます。しかしながら、これらの水域以外においては、日本が自由に漁業に従事することが認められることは、言うまでもないのであります。またカナダ及びアメリカ合衆国沖合いの北太平洋水域においてはカナダ及びアメリカ合衆国が、さらに西経百七十五度以東のべーリング水域においてはアメリカ合衆国が、それぞれただいま申し述べた魚種について、必要な保存措置を実施する義務を負うのでありまして、本條約の反対論者が言うがごとく、わが国に対してのみ、一方的保存措置を強制するものではなく、まつたく双務的原則に立つものであります。これらの水域における、おひよう及びにしんに関しては、日本漁業実績がなく、さけ漁業についてもまた、過去において日本がこれらの水域にまで進出したことはないのでありまして、従つて本條約の締結は、日本にとつて何らの実質的損失をもたらすものではないのであります。しかも本條約により構成される国際委員会が、いかなる決定や勧告をなす場合にも、締約各国全会一致が必要とされ、締約国は平等な主権国家として、自由な協力の基礎の上に立つものてありますして日本意見も十分尊重されるのであります。サンフランシスコ平和條約第九條により、「日本国は、公海における漁猟の規則又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定締結する」義務を負つております。従つてわれわれは、本條約を締結することにより、サンフランシスコ平和條約所定の義務アメリカ及びカナダとの関係において、ここに完全に果し得ることは、まことに御同慶にたえないところであります。本條約に規定する漁獲自発的抑止は、保存措置及び広汎な科学的研究を前提條件とするものでありまして、今後日本がアジア諸国との漁業條約を締結する場合に、日本立場を特に不利に導くようなことは考え得られないのでありまして、むしろ私は好ましき前例となるものと確信いたすわけであります。  以上申し述べましたごとき理由によりまして、本條約及びその議定書は、まことに公正妥当であり、平和條約によつて国際社会に第一歩を印した日本外交の進路としては、きわめて望ましい措置であると認めまして、賛成の意を表明する次第であります。
  25. 仲内憲治

    仲内委員長 山本利壽君。
  26. 山本利壽

    ○山本(利)委員 私はただいま議題となつております北太平洋公海漁業に関する国際條約に対して、改進党を代表して反対の意を表明したいと考えます。  この條約を審議するにあたりまして、われわれ外務委員としては、まずその内容がいかなるものであるかということを検討しなければなりません。さらに第二には、この條約が他の條約といかなる関係を持つか、あるいは日本の外交にいかなる影響を及ぼすのかという点も考慮して、賛否をきめなければならないことであります。  まず第一に、その内容について考えます場合に、水産委員会意見を、專門的意見としてわれわれは考えなければなりません。本條約が公海漁業資源を開発したり、その保存措置の確定に必要な科学的研究の推進したり、その結果に基き、締約国に勧告したりすること、及びこれらのことをするために、関係国で漁業国際委員会を設置すること等を定めた点は、まことに趣旨としてけつこうだと考えるのでありますけれども、本條約に関する水産外務合同委員会における審議の状況及びその後衆議院水産委員会理事会によつて発表せられたる意見書等を見ましたときに、この條約の内容というものについて、幾多の疑問を持つのであります。  まず漁獲を抑止する魚の種類あるいはその抑止する年限等については、国際委員会が設置されて、その調査の後においてなされても一向さしつかえないものだと考える点がまず第一点であります。  さらに第三條の第一項(a)項但書において、この條約の効力発生後五年間は附属書に明記された魚種については、北太平洋漁業国際委員会自発的抑止のための條件を備えているかどうかの決定も勧告もしないことになつていること、この点であります。この点については、日本側が自発的に出漁を抑止している間に、他の国によつては非常な実績をかせがれるわけでありまして、この点がまず平等互惠の條約とは言えないという点であります。  さらに第一條第二項による領水の範囲に関する領海を認めるということは、国際的に認められております沿岸三海里の原則を破るものであると考えられる点であります。  さらに一九四九年に締結されました北大西洋における漁業国際條約と比較してみます場合に、北大西洋漁業條約においては、生物学的適正漁獲を主眼として、明確に国際平等の海洋自由の原則が認められておるのであります。すなわち水産資源保護のために、締約国すべてに平等に適用される操業制限を課しておるのでありまして、これと今回の條約を比較いたします場合に、わが国にとつてはなはだしき不平等なものであると考えられるのであります。  さらに西経百七十五度の線の問題について考えまして、しばしば委員会で論議されましたように、今後韓国であるとか、フイリピンであるとか、その他日本と隣接しておるところの諸国とのこの種外交交渉において、すこぶる不利な点をかもしやすいということであります。これは現実の問題といたしまして、本年の二月九日に韓国の李承晩大統領が、海洋主権に関して重ねて声明書を発表しておるのでありますが、その中において李承晩大統領は、「海洋上の画定線を確立した主目的は韓日両国間の平和維持にあり、日本はもちろんこれに応ずることと思う。もしも日本がわれわれの真意を解しなければ、それは日本の野欲を暴露するものにほかならぬ。太平洋沿岸各国日本の大漁船団に対抗するため、同じような海上画定紡をもつて各自の漁業権を救護して来ているのである。」云々と申し述べておるのであります。これは單なる杞憂ではなくて、すでにかくのごとく他の国々が海上にかつて画定線を設けて、これを当然のこととして主張することは、今後のわが国における漁業に対する非常な脅威であると考えるのであります。  さらに今回條約を結ぶにあたつての外交交渉は、まことにわれわれから申しまして遺憾の点があつたように思うのであります。先般の委員会におきましても、與党の長老植原委員もおつしやいましたように、まことに秘密外交あるいは腰抜け外交とも申すべきであると考えられるのであります。日本漁業の問題は、アメリカあるいはカナダの事情と異なつておるのでありまして、実にわが国の食糧問題を解決すべき重要なる企業であると言えるのであります。この大東亜戰争におきましても、その後の国際問題におきましても、わが国の人口問題というものは非常な影響があると考えるのであります。人口問題はすなわち食糧問題に通ずるものでありますから、わが国の特殊事情を十分に外務当局としては申し述べられまして、今度のような不平等な條約は結ぶべきではなかつたと考えるのであります。  ことにあれほど強く衆議院の水産委員会等において紛糾を来しました結果を見ましても、これらの問題については、この国会の意見、ことに水産委員会あるいは専門家を招集してこの公聽会等が開かれるべきでありましたのに、これをただ独善的に一方的にこの交渉を進められ、しかも日本とのサンフランシスコにおける条約におきましては、條約発効後できるだけすみやかなる期間に、この問題についての交渉に入るという了解ができておりますのに、まだ平和條約の効力も発生せざる間において、かようなことが進められたということも重大なる手落ちであつたと考えます。  また議論の中間におきまして、アメリカ等におきましては、さけその他の保護のために特別なる手段が今日まで講ぜられたということでありますけれども日本においてもこのことは非常な努力をいたしておるのでありまして、北海道等においても、これら保護協力に対するところのいろいろな協力会ができておりまして、年々日本においても二億ないし三億粒の卵が放流せられており、過去五箇年を総計いたしますと、十三億三千万粒からの卵が放流せられておるのであります。これらのを考えますと、日本で放流しましたこれらの魚が、アメリカカナダ沿岸行つておることもありましよう。あるいはアメリカカナダにおいて育成したところの魚がこちらに来ることもありましよう。これらの点を考えますときに、取急いで今回のような條約をきめることなく、まず最初に申し述べましたように国際漁業委員会というものを設立して、その調査研究の結果において定められるべきであつたと考えるのであります。(拍手)  さらに最初申し述べましたように、この條約の内容に関する点以外に、われわれが最も留意しなければならないことは、この條約をもし否決することによつて、いかなる影響が起るか、あるいはこの條約においてはまことに不完全であるけれども、他の條約と関連してわれわれはこれに忍ばなければならぬというようなことも、一国の外交においてはあり得ることだと考えるのであります。もしそうでありますならば、それらの点をわれわれはよく了承いたしますから、外務大臣あるいは政府当局においては、その点を指摘されまして、それらの問題について了承を與えて、この條約は独立国家としてまことに遺憾な條約であるけれども、これこれの事情よつてわれわれはしばらくこれをのまなければならないというその了解がなければならなぬと考えるのでありますけれども、そういうことは今回の委員会においては少しもなく、今日並木委員質問に対しても、この條約が近く改訂される必要がないという意味の外務大臣からの答弁がありました。これによつて見ますと、外務大臣及び外務当局におかれましては、この條約はまことにりつぱなものであつて、これが否決されましても、決して他の外交問題についても影響はないという立場にあるとわれわれは考えるものであります。  そこで私どもはそのおもなる観点をその内容に置きまして、しかもその内容は専門家の集まりでありますところの水産委員会のその主張を取上げまして、まことに遺憾ではありますけれども、今回の條約に改進党は反対するものであります。(拍手)
  27. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党を代表して、もちろんこの三国漁業條約に反対するものであります。  第一に本條約は自由党の植原委員もこれまでの外務・水産委員会で言われておりますように、これは吉田、岡崎の腰抜け外交を暴露したものであることは疑いないのでありましてまた本條約は公海における漁業権をみずから放棄したものでありまして、フイリピン、インドネシア、韓国等の将来の協定にも重大な影響を及ぼすものであろうし、また現に影響を及ぼしていることは、韓国側の一方的な領海の宣言によつても明らかであります。この点につきましては野党委員がそれぞれ詳細に述べておりますので、わが党はこの点では野党委員を支持するとともに、さらに本條約の根底に横たわつておるものを指摘して、日本漁業の発展の大道をさし示したいと思うのであります。  そもそも吉田政府は何ゆえにこのような屈辱的な漁業條約を締結したかと申しますと、その理由は昨年の二月吉田・ダレス書簡によつて示されました通りに、吉田首相は本書簡の中で日本が一九四〇年当時操業していた海域のほかには出漁しないということを、米国に対してはつきり約束したのであります。ところが一体一九四〇年とはどういう時期であつたかといいますと、ちようど一九三九年三月、日本政府は米国に一札入れまして、今回の三国條約とまつたく同じように北太平洋さけ、ます、ハリバツト漁業をみずから中止するという屈辱的な声明を発したのでありますが、この当時の日本政府は、一方で中国に対する侵略戦争を遂行しておつたために、他方で米国と事を構えることを恐れまして、この屈辱的な申入れをしたのが一九四〇年のアメリカヘの申入れであつたのであります。かつて列強のうちの一国であり、独立国であつた当時の日本ですら、米国のこの恫喝に屈服しなくてはならなかつたのであります。ところが今日米国は、御承知通りに占領を幸いとして、吉田、岡崎外交についてはあらゆる強圧を加えて来ておるのでありまして再び日本が前に歩んだと、同じ道を、すなわち米国には屈服し、中国あるいはソ連に対して新しい侵略的た道を推し進めさせようとしておるのであります。これが本條約の本質であります。  従つてこれは単に漁業の問題ばかりでなくして、中国、ソビエトに対する漁業を通じての新しい侵略的な意図を含んでお場るというこれは、全国民の重大な問題であります。その証拠には現に政府は東支那海及び北洋でどんな政策をとつているかといいますと、北海道の漁民はひんぴんとして拿捕を受けるために、安心して出漁ができるようにしてもらいたいということを言つておるのであります。ところが政府は漁民に何を示しているかというと、ソ連の領海十二海里の線に入つてはならないと海上保安庁が言うかと思うと、すぐそのあとから外務省の方ではソ連の領海十二海里は認めがたい、従つて見つからないように、拿捕されないようにうまくソ違の十二海里の中へ入りたまえという趣旨のことを言つておるのであります。一体これでは漁民を惑わし、みずから拿捕させるも同然だと思うのであります。ことに政府は、ソ連に対しては降伏文書を一方的に否認し、日ソ関係は単なる休戰関係だと言つておるのであります。一体降伏関係がない休戰関係というのはどういうことでありましよう。これは言いかえれば、いつでも戰線の後方で戰闘の準備を進めるということであります。こういう危険な状態のもとに、相手方の主張は十二海里の領海も認めなくて、しかも出漁しろということになるならば、これは拿捕されるのはあたりまえのことになるのであります。北海道の漁民は実に困り抜いておるのであります。何とかソ連代表部と協定してもらいたいということを、現に国会に陳情に来ておるのであります。しかるに政府は、ソ連代表部を認めないと言つて交渉をサボつておるのであります。アメリカの方に対しては六百海里に及ぶ漁区の禁止区域を認めながら、ソ連の方に対しては十二海里も認めないというところに向米一辺倒、対ソ侵略的な態度、これが二の條約の背後にある吉田内閣の根本的な性格であります。(「笑わせるな」と呼ぶ者あり)笑わせるなと言つていますが、しかし笑わせるなという自由党の水産委員全部が、この漁業協定反対していることは、どちらが一体笑わせるなであります。これでは拿捕される漁船の責任は、吉田政府が負わなければならないのであります。ところが政府はみずからこのような紛争の種をまき、反ソ、反中国の口実を設けながら、漁民を安心して出漁できないような状態に追い込めまして、しかも漁船が拿捕されました場合の漁船の損害保険と称しまして、拿捕の負担を船主と漁民におつかぶせて来ておるのであります。  ところが漁民のこうむる損害はこれのみにはとどまらないのであります。政府はこのように中ソ両国に争いをしかけ、中ソ両国が侵略すると称しながら、日本に米軍を駐屯させて、日本の広大な沿海を演習地として四十箇所の漁場が今や取上げられておるのでありまして、太平洋の方には行けないわ、中ソ両国は協定がないから行くと拿捕されるわ、日本漁場は四十箇所米軍の演習地として取上げられるわということになると、日本の漁民はまつたくその向うべきところを知らず、漁民の苦しみはまつたく塗炭の苦しみになつておるのであります。九十九里浜でありますけれども、ここへ行きますと、御承知通りに吹流しをつけた飛行機が飛んでおりまして、この吹流しをつけた飛行機に対して沿岸に高射砲をすえつけまして、これを正午から六時の間実彈でどかんどかん打つておるのえあります。九十九里の漁民たちは、どかんでは砂利もとれない九十九里、要するにどかんどかんとやられるので、もう砂利もとれなくなつたということすら言つておるのであります。ところが政府はこの九十九里浜の漁民に対して、二年間に九千七百万円の補償金、しかもこれは日本政府で補償しております。アメリカが実彈射撃をやつて九十九里の魚がとれなくなり、この補償を日本政府がやつておる。しかも九千七百万円では漁民の受ける補償というのは、最高三、四千円から最低は三百円から五、六百円です。まつたくすずめの涙ほどの補償金すら受けておらないのであります。しかもこの漁民の受ける補償金は、船主の借金の元利としてさつ引かれるのであります。一切の吉田内閣の政策のしわ寄せが、まつたくか弱い漁民の生活にしわ寄せされておるのであります。漁民たちは歩合制度のために、出漁できない限りは一銭の収入もなく、借金から借金に追われて、債務の奴隷になつている。船主に縛りつけられておるのであります。現に九十九里浜では人身売買が公然と行われ、至るところに外国人に身を売らなければならない娘の姿が見られる。一見漁民のうちのように見える家の中では、われわれが顔をそむけるような事態が行われているのであります。これが日米加三国漁業條約の正体であります。日本漁民を中ソ両国にけしかけて、その負担を一切漁民にひつかぶせて、残虐きわまる侵略的な條約のこれが正体であります。  明らかにこのように日本をして中ソ両国に侵略的な方向に向かわざるを得ないようにしているのは、アメリカであります。このアメリカの手先となつておるのが腰抜けの吉田、岡崎外交といわざるを得ないのであります。そうしてこの腰抜けの吉田、岡崎外交の一切のしわが弱い漁民にしわ寄せされておるのであります。自由党の諸君があれほど騒いで反対した本條約にあつさり賛成しているのも、このアメリカ側の圧力に屈した吉田、岡崎外交、これにまた自由党の諸君はあつさりと屈服しておるのであります。自由党の諸君は魚のことをいえば非常に騒ぎ立てる。戰争と平和ということをいうと黙つてしまう。自由党の諸君はつまり自分の商売の利害には目がないが、戰争か平和かという全国民の利害は、どうでもよいということになつてしまうのであります。この自分の選挙とからんで来、自分の商売の利害にからんで来る自分の問題ですら、水産委員会反対しているのに、外務委員会はげらげら笑いながらこれが満場一致である。このようなふまじめな態度なのであります。  諸君、今日中ソ両国の平和政策を理解せず、中ソ両国に少しでも敵意を持つ者は、アメリカの言いなりになるのであります。三国漁業條約以上の屈辱を、今後とも必ず強要されることを諸君は知らなくてはならないと思うのであります。諸君、真の独立は、ただ中ソ両国をも含めての友好関係を結ぶ、全面講和を結ぶということ以外には実現されないのであります。漁業問題についても同じことであります。わが党はこのような漁業を通じてアメリカに屈服し、中ソ両国に敵対的な関係を持たせる侵略的の意図を持つた本條約には絶対反対するとともに、日本の平和と独立と、日本漁業の発展と漁民の安定生活のために、われわれは次のことを主張するのであります。  第一には、やはり中ソ両国との交渉をすみやかに持つて、中ソ両国との間の漁業問題の円満なる妥結点を見ますこと。第二点は、日本に駐留しているアメリカの軍隊に、一日も早く撤退してもらつて、軍事基地のために取上げている漁場は、一切日本の漁民に返還してもらうこと。封建的な漁業制度を完全に改革して、歩合制度を撤廃して、軍事予算をやめて、低利資金で、まつたく自分の娘をアメリカに身売りさしているような、この貧しい、生活に苦しんでいる漁民の生活を保障してやること。このことを要求しながら、私はこのような屈辱的な、侵略的な條約に対しては、共産党を代表して断固反対するものであります。
  29. 仲内憲治

  30. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本社会党二十三控室を代表しまして、ここに提案されております三国の漁業協定及び議定書に対して反対をいたすものであります。  その理由とするところは、もうすでに輿論は一致いたしておると考えるのでありますが、なかんずく私は国会における水産委員会の一致した意見に賛同すべきであると確信をいたすものであります。なお日本の外交が、特にいわゆる外交に陥ることなく、産業の実態というものと結びついて今後行わるべきものであるということを私は痛感いたすものでありまして、今後の日本の独立と自由のために、日本の自主性に基いて、なかんずく日本の産業の実態に結びついた今後の外交が行わるべきであると私は確信いたすものであります。このたびにおける水産委員会の見解と、この外務委員会の見解との間に、一部差のあることは私は遺憾に存じます。私は、水産委員会の趣旨にのつとつて外務委員会はこれに対して否決をすべきであると考えております。
  31. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  32. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は労働者農民党を代表いたしまして、本條約の承認反対をいたします。  この條約が、公海自由の原則を無視したものであるということは、本降約審議の過程におきまして、十分明らかにされたことであると私は信じます。條約承認反対する最大の理由がここにあることも、私の前に反対討論に立たれました委員諸君の論旨から見て明瞭であると考えます。私も同様な論拠に立つものでありますが、多少その論拠をこまかく分析して説明してみたいと思うのであります。  私がこの條約の承認反対いたします第一の理由は、政府はこの條約の締結において国家として義務のないことをあえて行つて日本国家に不利益を與えるような結果を招くものである、こう私は見るので、これが理由の第一であります。サンフランシスコ條約第九條の漁業協定に関する條項をもととして本條約はできたものであると思いますが、そのサンフランシスコ條約の漁業に関する條項によりますと、漁業問題につき漁猟の制限または規制並びに漁業の発展と保存のために公正な協定締結する目的をもつて、連合国と交渉を行う義務があるということは規定されてありますけれども、希望する連合国と交渉をなせば足りるのでありまして、漁区制限協定を作成する義務日本は負担させられておるのではありません。しかるにこの條約は、日本の海洋漁業制限を定めております。なるほど條約の字句から見ますれば、自発的抑止という言葉を用いておりますけれども、実質上は漁業権放棄であると私ども解釈せざるを得ないのであります。このように、義務のないことを政府はしております。しかもそれによりまして日本の利益を損じておるのでありまして、これが私が本條約に賛成しがたい第一の理由であります。  それから第二の理由は、本條約によりますと、わが国の出漁に対し、一定の海域の制限を規定しておりますが、私はこれは国際法上の観念としても不合理でありますし、同時にわが国に差別待遇を與えたものであると考えますので、このような條約に私ども承認しがたいのであります。元来アメリカ及びカナダの両国の共同原案には、日本をして漁業権利の放棄をなさしめるという文字があつたように私どもは伝え聞いております。それを自発的な抑止という言葉にかえたのでありますから、ある程度政府の努力がそこに現われておるというように、認められないこともないという見解も成り立つかもしれません。しかしながら公海漁業資源の保存を主張し、独占的漁獲を求めておりましたアメリカ及びカナダの提案は、実質的にはそのままに容認せられておるのであります。ことにべーリング海峡におきまして、西経百七十五度付近で、ある一定のラインを描いて海域の制限をしておりますことは、私は、海洋を自由な海洋からとざされた海洋に変化させることになると考えざるを得ないのでありまして、私どもは、このようなことをするのは、過去においても、不合理なやり方であるとして排斥されていたと思います。今回の條約によりますと、これはさけ等の一定の漁類に対しまして、特殊な権利を——その特殊な権利というものはどういうものであるかと申しますと、海の中を泳いでおる不特定な魚の群という一つの動産集団に対しまして、アメリカ並びにカダのために、日本は所有権を承認するということになるのでありまして、私はこのようなおかしな権利はあり得るものでないと思います。このようなおかしな特殊な権利を、領海の限度である三海里以外の海域においてアメリカ主張し、日本はこれを認めるというようなことは(「これは法律ではないよ」と呼ぶ者あり)これは法律ではないというお言葉がありますけれども、過去において、こういうやり方に対し、これを否認する例があつたと私は思います。これはベーリング海におけるオツトセイの捕獲事件に関しまして——これは私はある本で読んだのでありますが、特別国際仲裁裁判所の判決で、このような領海の限度たる三海里以外の海域において、このような特殊な権利主張するということは正当でないといつて、判決においてこの主張が否定せられた例が、私はあると思います。私は無学でありますから、まだほかに例があるかもしれません。少くとも私の読んだ本の中には、研究しました範囲内では、こういう事例があるのであります。どう考えましても、この條約は不合理なとりきめで、そして不公平なとりきめであるというふうに解釈しないわけには、私には行かないのであります。  それから第三の理由といたしましては、大体私はこの條約は、公正な條件、自由な環境のもとで締結せられたものでない。日本の側から申しますと、まだ一種の意思の拘束を受けておる、自由な行動並びに意思の表明のできないような状態のもに置かれておる、そのような状態のもとで、無理やりに締結させられたところの條約である、そういう性質のものでありますから、その意味におきましては、私どもはこれに賛成することができないのであります。なるほど形式的にはこの條約の署名は、今年の五月九日になつてなされたのであります。しかしながら実質上は昨年の十二月に、すなわち平和條約の発効以前に仮調印されておるのであります。それが本條約の基本になつておるのでありますから、やはり私は他の若干の條約の例と同じように、平和條約発効前に無理やりに日本締結させた條約だこう私どもは解釈せざるを得ないのであります。私は事がここに至るまでには、アメリカの非常な深謀遠慮があると考えます。元来私ども日本人は、李承晩ラインのことを猛烈に攻撃しておるのであります。李承晩が一九五二年一月十九日でありましたか、いわゆる李承晩ラインというものの宣言をいたしまして、マツカーサー・ラインとややひとしいような線におきまして、一方的に公海に対して韓国の主権の行使を主張いたしましたときに、わが日本国民は、それは国際法上許しがたい声明であるとして、このやり方を痛烈に非難しております。しかるに大体これと同じような思想に基く宣言が、数年前にアメリカにおいてなされておるのであります。必ずしも全部が同じとは申しませんけれども、基本的構想において私は一致しておると思います。それは一九四五年九月二十八日に発表されましたトルーマンの大洋漁業政策に関する宣言であります。これは合衆国に隣接する公海の若干の区域における漁業保護のための保存海区の設定をはかることを意図してなされた宣言でありまして、この宣言は、一方的な宣言によりまして、保存海区がアメリカのために設定できるという考え方の上に立つておるのであります。その海区が公海であることを認めながらも、なおその海区に入つて来る他国の船舶に、アメリカとしての統制を加えようとする宣言でありまして、このような宣言は国際法上の根拠が私どもにはあるとは考えられません。しかもこのトルーマン宣言が、米国の行おうといたしました対日漁業政策の基本的方針になつておるのでありまして、着々と手を打ちつつ、まだ自由な意思を表示することができない日本、すなわち平和條約発効前の状態にあります日本に対しまして、遠慮なくこの方針によるアメリカ漁業政策が推進せられて参りまして、それが今日の事態を招来したのであると私は考えるのであります。元来アメリカ人及びカナダ人が、日本人の東北太平洋にどんどんと進出して行くということをきらつておる気持は、私どもにもわからないことではないのであります。それは各国が、自国の利益という考え方に基いて抱く気持で、そういう気持アメリカ人及びカナダ人が彼らの立場から持つということも、私は当然であるとも考えますけれども、しかしそこが必ずしも彼らの思うようには行かないというところに、公海自由の原則の適用があるのであります。しかもなおアメリカは、海洋漁業の規制という問題につきましては、特別な関心を持つておりまして、これを対日漁業條約の中に織り込めよう、こういう意図を彼らは最初から持つておりました。その現われの一つの例を申し上げてみますと、一九四九年にマツカーサー元帥の招請に応じてわが国に参りましたアメリカ漁業使節団が、私どもから聞けば、非常に不愉快に感ぜられることを言うておるのであります。日本が他国の沿岸において無制限に漁撈するというような、戰争前に考えていたようなことをいつまでもやれるように思うておるならば、講和條約などというようなものは、とうていできはないぞと、こう言うておるのであります。私は実にこれは、講和発効前におけるアメリカ日本に対する恫喝的態度であると、日本人として考えざるを得なかつたのであります。その後一九五一年の二月七日に、吉田総理のダレス氏に対する文書となりまして、アメリカ及びカナダ沿岸漁区の制限をわが国が声明いたしましたのも、これはダレス大使が太平洋沿岸漁業者の意思を、アメリカの政策の中に入れて、その意思日本政府に伝えて参りましたので、吉田総理がそれに応じてこのような書簡を出したものであると考えられます。それに続きまして同年の七月十三日に、カナダ及びアメリカのみならず、他のすべての連合国に対しましても、同様の漁区制限の方針に出るということを吉田声明によりまして確認いたしましたのも、ダレス大使が太平洋諸国を歩いてみた結果、それらの国々が、日本に対し漁区制限要求を持つておるというように見てとりまして、これを日本政府に伝達し、そうして日本政府に、このような声明をさせたものであるというように、私どもは考えざるを得ないのであります。このような経緯を通じましてサンフランシスコ條約の第九條が生れたのであります。そして、この第九條によりましてこの條約が生れたのであります。しかしながら、先ほども申しましたように、この條約はサンフランシスコ條約の規定以上のことをやつておる。サンフランシスコ條約によればこれほどまでのことをやらなければならぬ義務が課せられておるのではありません。しかるに、あえて海洋漁業制限を甘受するというようなことをやつておるのでありまして、私ども、どうしても日本人の気持といたしまして、このような條約に賛成することはできないのであります。先ほど申しました通りに、日本がまだ正式に独立の国にならない前に、アメリカはあえてあようなことになるようにどんどんと事態を推進さして来たのであります。そこに私どもは非常な不愉快さを感ずるのでありまして、これは安全保障條約と行政協定締結についても同様であつたと思います。それから昨年の十二月二十四日に吉田首相が台湾にいる蒋介石政府を中国との平和條約の相手とするという書面を出したこれも私は同様の環境のもとに出させられたものと考えます。そしてまたこの漁業條約の昨年十二月十四日における仮調印も、私どもは同様なできごとであると見ないわけには行かないのであります。このように日本が独立してからやればよいものを、なぜアメリカは平和條約発効前にそれを日本にしいたのであるか、そこに私ども日本人としての不満があるのであります。平和條約が四月ころに発効するとアメリカは考えていたのでありますから、それから後にやつてもよろしい、しかるに、いわゆる独立回復の状態になる前に、あえてこのような重大な條約、協定等について意思表示日本にさせたというところに、私は日本人として真劍に考えなければならぬものがあると思います。和解と信頼の條約などといつておりますが、一体この條約がそういう精神に基いた條約でありましようか。私は日本人として真劍にこのことを考えてみなければならないと思います。  それから第四には……。
  33. 仲内憲治

    仲内委員長 少し簡単に結論をお願いいたします。ずいぶん長くなりました。
  34. 黒田寿男

    ○黒田委員 簡単に申し上げますが、大体事はできてしまつたものでありますけれども、私は二の條約は大体大西洋憲章の精神にも反しておると思います。大西洋憲章は、一切の人は妨害を受けることなく公の海洋を航行することを得せしめるという趣旨を宣言しておるのであります。ここで航行するというておることは、單に船舶が通行するということだけを意味するものではなくて、もとより海底電信を付設する権利も含まれておりましようし、また漁業をする権利も含まれておるのであります。こういう大方針をルーズヴエルトとチヤーチルは、戰後の多くの問題の処理方針の中の一つとしてきめております。私はそういう精神にもこの條約の内容は反すると思います。  それからまた世界人権宣言の精神にもこの條約は反しております。この宣言は国境を越えての各人の基本的自由と人権の擁護をうたつております。日本に対する制限は、やがて日本の個人業者に対する制限になるのであります。世界人権宣言は、すでに世界各国によりまして採択されております。これを無視するような條約を締結することは、これまた私ども承認することができないものであります。  その次にこれも簡單に申し上げますが、要するにこの條約はうそで固めている。私は政府に対する質問はこの條約についてはいたしませんでした。しかし他の議員諸君の質問に対して、政府漁業協定締結に関し、日本として主張すべき諸原則を貫いているのだというように答えられた。日本のために決して不利な條約ではないと強弁しておられます。私どもはこの気持がわからぬ。なるほどアメリカ要求いたしました漁業権利の放棄というような表現は捨てられておりまして、自発的抑止というような言葉にかえられております。また隣接水域の権利というようなものをにおわせるような表現も避けられているように思います。そうしてまたそういう言葉を避けてあるから、何だか海洋の自由の原則は尊重されているのだというように、政府は御主張になるのでありますけれども、私は実はこういは表現の方が、アメリカにとりましては賢明でもあり、悪い言い方をすれば、アメリカはずるいのであります。かりに公然と漁業権を放棄させる、最初アメリカカナダの原案はそうであつて、そういうふうに公然と漁業権を放棄させるとか、隣接水域の権利の存在を明らかにするとかいうような言葉を用いれば、だれが見ても、アメリカから日本公海の自由の制限を受けたのだ、と見られるような條約になる。このようなことをすれば、それはかえつてアメリカ世界各国の輿論の餐蹙を買う以外の結果にしかならないのであります。アメリカはりこうでありますから、さすがにこのようなばか正直なことはしなかつたのであります。そこで表面では海洋の自由を尊重しておるかのごとく見せかける言葉を用いておりまして、しかし実際上は、海洋の自由を制限している。これが私は今回の條約の文字上の表現の仕方であると思います。私は実にアメリカは巧妙なやり方をしていると思います。これも惡く言えば、実にずるいやり方をしていると言えるのである。政府はこれでよろしいと言われるのでありますけれども、ほんとうにそう考えているならば、それはうまくひつかかつたことになるのである。私は政府にはそれほど物のわからない人はないと思います。おそらくわかつているけれども、国民の前にそう言わざるを得ないのでそう言つておいでになるのだと思うのであります。しかし、私どもはだれにも遠慮する必要はない。私どもは国民の意思や感情を率直に言うたり表わしたりすればいいのでありますから、私はこういう條約に対しては、政府の御主張になるように、日本として主張すべきであつた原則が貫かれておるとは言い得ません。巧みな表現がなされているということだけのことであります。日本がこのような條約を締結させられたということに、私ども反対せざるを得ないものであります。  先ほど佐々木君はこの條約が今後の他国との漁業條約の模範になると言われましたけれども、こんなものを模範にされては困る。実はこんなものを模範にしようとインドネシアも思うており、フイリピンも思うておる。他の太平洋諸国はみなそれをねらつております。海区の制限というものをねらつているのであります。それがダレスの要請によつて吉田首相の第二の書簡になつているのであります。このような例をつくることに、すなわち日本人に不利益な條約の例をつくることに私どもは賛成しがたいのに、佐々木君はその反対の思想を表明されましたので、私は非常に不可解であると思いました。私どもはこういう條約ができることが、今後のわが国の残されたる国との漁業條約の締結の惡例になるという意味において、これに反対せざるを得ないのであります。元来、海洋の自由の原則というものは、もとより絶対的な法律上の概念ではありません。歴史的な……。
  35. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君に申し上げます、結論を急いでください。あまりに時間をとり過ぎますから……。
  36. 黒田寿男

    ○黒田委員 歴史的な概念でありますから、私はこういう内容の條約といえども、それができた以上は、これを非合法だということは残念ながら言えないと思う。海洋の自由は絶対な法的概念ではなく、歴史的なものでありますから、国際慣習法上の海洋の自由の原則によりたいという気持をどんなに強く持つておりましても、個別的な條約で、ある国にとりましてこの自由が制限せられるような内容の條約を締結しようとすれば、それはできなことではないのであります。私は今回のこの漁業條約はこの惡い條約の例であると考えます。法律的に見てこれは無効であるというような議論はいたしません。残念でありますが政府がこれを締結し、国会がこれを承認する以上はしかたがない。しかし、私は今申しましたように、各国が本来主張すべき原則として、英米もまた多年主張して来た原則としての海洋の自由の原則を、ここでアメリカが自国の利益のために平気で蹂躪する、われわれ日本人の権利を蹂躪をする、こういう條約でこの條約はありますから、そういう意味におきまして、われわれとしてはその承認には断固として反対せざるを得ないのであります。これで私の反対理由の説明を終ります。
  37. 植原悦二郎

    ○植原委員 一身上のことで、ただいま討論中に山本君とそれから林君が、過日私がこの委員会において発言した言葉を引用なされて御討論になりましたが、その趣意がまつたく違つているのでありまして他の委員とか他の場所でならば私はあえて問題にいたしません。同じ委員会で私の言葉を直接お聞きになつておりながら、特にその言葉を曲解するようになさつて引用されたということは、はなはだ私は遺憾であります。林君は私同国であり、非常に長い友人でありますが、普通のときにはまことにいい人ですけれども、一たび共産党の議論をすると、とんでもないことをおつしやる方だから、この方のことは私あまりとがめません。けれども條理を整えて議論する山本君が、今日のごとき議論をなさることははなはだ遺憾でありますから、そのことを一言申し上げておきます。
  38. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  39. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本件承認すべきものと決しました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければさように決定します。  次会は明後十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十二分散会      ————◇—————