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1952-05-30 第13回国会 衆議院 外務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月三十日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 足立 篤郎君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    大村 清一君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       飛嶋  繁君    中山 マサ君       守島 伍郎君    小川 半次君       山本 利壽君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  外国領事官に交付する認可状の認証に関する  法律案内閣提出第二二四号)  国際植物防疫條約締結について承認を求める  の件(條約第七号)  千九百二十三年十一月三日にジユネーヴ署名  された税関手続簡易化に関する国際條約及び  署名議定書締結について承認を求めるの件(  條約第八号)  国際復興開発銀行協定への加入について承認を  求めるの件(條約第九号)  国際通貨基金協定への加入について承認を求め  るの件(條約第一〇号)  国際連合特権及び免除に関する国際連合と日  本国との間の協定締結について承認を求める  の件(條約第一一号)  千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署  名された経済統計に関する国際條約、議定書及  び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日に  ジュネーヴ署名された経済統計に関する国際  條約を改正する議定書及び附属書締結につい  て承認を求めるの件(條約第一二号)  中華民国との平和條約の締結について承認を求  めるの件(條約第一三号)  北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太  平洋公海漁業に関する国際條附属議定書の  締結について承認を求めるの件(條約第一四  号)  千九百四十八年の海上における人命の安全のた  めの国際條約の受諾について承認を求めるの件  (條約第一五号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件、及び千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴ署名された経済統計に関する国際條約、議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジュネーヴ署名された経済統計に関する国際條約を改正する議定書及び附属書締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。両件に関する質疑を許します。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員  けさ新聞報道によりますと、日本国際通貨基金加入関連しまして日本割当金が二億二千五百万ドルに大体きまつた、こういうふうな報道があるのであります。当委員会におきまする政府当局説明によりますと、日本割当——なるべく多い方がいいのでありますが、大体二億五千万ドル見当できまるのではないかということだつたのであります。ところがけさ新聞報道によると、さらにこれが減りまして二億二千五百万ドルということになつておるのであります。それからまた日本のごの通貨基金への加入が非公式に承認をされたというふうな報道があるのでありますのじ、これについて政府にお尋ねしておさたいと思います。
  4. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはあるいは大蔵省側から御答弁願つた方がいいかとも思うのでありますが、まだ見えておりませんので私から一応お答えいたします。まだ公式な何らかの報告といいますか、通報はございません。こちつでは二億五千万ドルという申入れと期待を持つておるわけでございまして、これが二億二千五百万ドルになつたというような正式な通知を何らまだ又けておりません。それから大体加入見通しにつきましては、この前の委員会でも申し上げましたように、七月一ぱいか八月十五日くらいまでには見通しがつくといいますか、加入が認めりれるものと期待いたしておりますか、ただいまのところ、そういう準備り過程にあるようでございまして、これまたまだ確報をもらつておるわけではございません。
  5. 仲内憲治

  6. 並木芳雄

    並木委員 国連の点で一つ聞いておきたいのです。政府国際連合軍との協定というものを取結ぶべく話合いを進めておるということたつたのですが、大分日がたつております。その後どういうふうに進展をしておるか、その点を確かめておきたいと思います。
  7. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまいろいろ交渉中でございまして、暫定的なものもまだ決定しておらないという状況でございます。     —————————————
  8. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは中華民国との和條約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  9. 並木芳雄

    並木委員 條約の第一條でございますが、これには、「日本国中華民国との間の戰争状態は、この條約が効力を生ずる日に終了する。」とございます。そこでソ連との関係その他の問題になるわけでありますが、「戰争状態は、この條約が効力の生ずる日に終了する。」とうたう以上は、ソ連などとの関係においては、戦争状態そのものはまだ終結していないと思いますけれども、その点まず確かめてみたいと思います。と申しますのは、最近外務省の中で、戰争状態の終結ということについて、たといソ連などがサンフランシスコ條約に調印をしなくてももう終つているのではないか、あのサンフランシスコ條約の締結によつて終つているのしはないかという説が出て来ているので、この点から私はお聞きしているわけです。それに伴つて岡崎外務大臣も昨日参議院でいろいろの答弁をしている模様でございますから、それと関連して、終局的には、ソ連占領管理をするという名目で日本進駐をして来た場合に、それが合法的であるかどうか。あるいは、これは合法的でなく侵略になるのかどうか、こういうことに質問を向けて行きたいと思うのです。従つて戰争状態ソ連との間ではなお残るのかどうか、まずこれを伺います。
  10. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはなかなかむずかしい微妙な問題でございまして、実は昨日の参議院外務委員会でも外務大臣からいろいろのお話があつたのでありますが、われわれといたしましては、現在の段階におきましては、法的には休戰状態関係にある。しかしながらそれは一般国際法原則に基く休戰関係である、こういう解釈をとつておるわけでございます。そこでただいまの御質問の、そういう場合にもしソ連日本同意なくして占領というような新たな軍事行動を起したとしたら——これはまつた仮定の御質問でございまして、仮定の問題にお答えするのはどうかと思うのでありますが、御質問でありますので一応申し上げます。そういう新たな軍事行動をとるということは、休戦に関する一般国際法原則からいたしましても、やはり一つ違反になることではないか、かように私は思います。
  11. 並木芳雄

    並木委員 ポツダム宣言降伏文書のごとき、占領管理に伴う法規というものは効力を失う、こういうふうに今までの外務委員会などにおける答弁では私どもは聞いておつたのですが、外相はこの点は昨日どういうふうに答弁しておられますか。たとえば、引揚げの問題などではソ連の方に義務が残る、拿捕の船舶を返すというような義務も残るということですが、そうなれば、ポツダム宣言降伏文書その他の効力が失われたというふうに解することも、少し行き過ぎのようにも思われるのであります。その辺のところを御答弁願います。
  12. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは従来の説明がやや不十分といいますか、意を盡してなかつたところがありましたので、昨日の参議院委員会において、いろいろ補足的説明があつたわけでありますが、日ソ両国の間におきましても、原則的にはポ宣言及び降伏文書は失効したと認められるのであります。ただいわゆる休戰状態関係は残る、しかもその休戦関係は、われわれは一般国際法原則に基く休戰関係であると解したいのであります。そこで、それに伴いまする日ソ両国の間の当然の義務である戰闘行為を行わない義務であるとか、あるいはまたソ連が完全に履行していない抑留者送還に関する義務、こういうものは残るのでありますが、それ以外のものは大体失効するという解釈をとつております。
  13. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、ポツダム宣言降伏文書等は、当時の連合国において、その義務を履行しておらない部分についてはまだ効力を持つておる、その他の部分については無効である、こういう解釈になりますか
  14. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体そういう解釈でいいと思います。
  15. 並木芳雄

    並木委員 休戰という言葉が出て参りましたけれども休戰状態ということはやはり戰争の一種であると思います。休職、停戰、降伏戰争状態、いろいろむずかしい文字が出て来て混乱を来すおそれもありますから、この際そういう点をはつきりしていただきたいと思うのです。日本はまず停戰をして、降伏文書調印をして休戦した、こういう状態はすべてこれ戦争状態つて、ただそこに戰闘行為がないにすぎない、こういうふうな了解ができるのではないかと思いますが、そういう点を明瞭にしていただきたいと思います。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはどうも国際法の勉強のようなことになるのでありまして、休戰ということにも、全面的の休戰とか部分的の休戰とか、いろいろあるのでありますが、現在のソ連との段階におきましては、全面的戰闘休止状態である、こういう意味の休戰状態であると思います。
  17. 並木芳雄

    並木委員 特に休戰状態にあるということを言い出したねらいはどこにございますか。今までは戰争状態にあるということを言われておつたのですが、特に休戰状態だと言われ出したことは、とにかく一つの変化であり、前進であると思うのです。私どもとしてはなるべくソ連との関係も、国交を調整するようにしたいという念願を持つておる点から考えて、休戰状態であると政府が言い出したことは、そこに一つの解決の曙光を見出すようにも思われるのです。その効果のねらい、望むところはどういうところにあるか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 休戦状態ということは、今度初めて言つた言葉ではないのであります。先ほども言いましたように全面的戰剛休止状態、それはすなわち休戰状態であるということと、それからソ連日本との関係降伏関係かどうかということについて、いろいろ検討を加えたわけでありますが、これがいわゆる世界の大多数の国との間に講和関係が結ばれ、なお結ばれんとし、連合国による占領関係が終了したのでありますから、そこで日ソの間の関係降伏関係ではない、普通一般国際法にいう休戰関係にあるのだ、こういう解釈であります。
  19. 並木芳雄

    並木委員 その効果一つとして、在日ソ連代表部に対する取扱いなども出て来るのではないかと思うのです。そういうような解釈のもとに、在日ソ連代表部を何らか別の代表機関に切りかえて、これを認めるというようなことを政府として考えておるのではないかと思いますけれども、このことはどういうふうになつておりますか。
  20. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ソ連代表部との関係は、もう今まで大臣その他からたびたびお話が出ておりますように、対日理事会終つた、そういうことから対日理事会に派遣されておるソ連代表部地位というものは、自然に消滅したのだ、こういヶ解釈でありまして、先まど申し上げました問題とは別に関連はございません。あとの問題はこれから検討される問題だと思います。
  21. 並木芳雄

    並木委員 先ほど答弁によりますと、ソ連日本管理をするための進駐申出をもしした場合に、日本同意がなければできないということでございましたけども、これは日本としては同意することができないのではないか。つまり日米安全保障條約にかかつて来て、アメリカ同意なくしてはできないのではないかと思いますけれども、それとも日米安全保障條約と関係なく、もし日本がこれに同意しようと思えばできる道もあるのかどうか、その点確かめておきたいと思います。
  22. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはやはり安保條約との関連におきまして、アメリカ同意ということももちろん必要であろうと思います。
  23. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、万一日本進駐することがあれば、それはやはり侵略ということになると思いますが、いかがですか。
  24. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほども申し上げましたように、休戦に関する一般国際法上の違反、こういうふうにわれわれは一応説明いたしておきたいと思います。
  25. 並木芳雄

    並木委員 ですから、やはり侵略になるわけでございましよう。その点ははつきりと政府としても言えると思いますが、いかがですか。
  26. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 侵略という言葉につきましては、ただいま参議院外務委員会でも、侵略定義について非常な論争といいますか、論議がかわされておるのであります。国連においても侵略という言葉定義とか基準というようなものは、はつきり下し得ない状況でありますので、そういう関係からいたしまして、私は一応休戰に関する一般国際法上の違反、こういう言葉で申し上げておきたいと思います。
  27. 並木芳雄

    並木委員 その言葉はとにかくとしても、日米安全保障條約の発動原因になる、こういうことははつきり言えると思うのです。その言葉はどうあろうとも、これは日米安全保障條約によつて平和を乱すものとの理由で安全保障條約が発動する、その原因にはなるということははつきり言えると思いますが、この点……。
  28. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 どうもそういうことは現実としてあり得ないと思いますし、仮定論議に対してあまり深入りすることもどうかと思われますので、仮定質問ということでこの程度で御了承願いたいと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 仮定の問題とおつしやいますけれども、やはり日米安全保障條約というものは現実にできておるので、私どもはいろいろな観点から極東の平和というものを念願しておるのです。ですからもしそういうことが起つた場合に、これが発動できないのだということになれば、日本としてはずいぶん不安なわけです。それははつきりおつしやつていいと思うのです。その点もう一度……。
  30. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 日本の安全や領土の侵害になることは、大体考えられると思うのでございまして、それがいわゆる安保條約による日本の安全その他を侵されるものと両国において認めることになりました場合には、やはり安全保障條約の発動原因になる、こういうことにも考えられるかと思います。
  31. 仲内憲治

    仲内委員長 本件につきましては後刻質疑を継続することといたします。  それでは先ほどの二件につきまして質疑を許します。林百郎君。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 簡單に、国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件に関して質問いたします。日本に今駐屯しておりますアメリカ軍隊以外にイギリスあるいはニュージーランドの軍隊もおりますが、これは連合国軍、要するに占領軍としての性格を持つと同時に、一方では朝鮮作戰をしておる、いわゆる国連軍としての性格を持つておる。この前たしか中山委員からの御質問かあつたと思いますが、総司令部の屋上には国連の旗も上つておるというような形で、これが日本占領軍なのか、あるいは朝鮮で作賎しておる国連軍なのかというこの性格が明瞭でないのでありますが、この点をまずお聞ましておきたいと思うのであります。二つ性格を持つておるわけなのです。
  33. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 英濠軍はもつぱら国連軍であろうと思います。何も日本駐留軍でも何でもないと思います。それから米軍安全保障軍であり兼国連軍である、こういう形になつております。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、講和條発効後は、そういういわゆる朝鮮作戰している軍隊が、日本に駐留している場合のその地位はどうなるのですか。
  35. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 英濠軍につきましては、講和條発効後はいわゆる吉田アチソン交換公文によつて律せられて行くということになるのであります。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、講和條発効後も朝鮮に作戦するところの国連軍が、日本に駐屯することは認めるということになるわけです。御承知の通り朝鮮休戰会談が非常に重要なる段階に来ておりまして、あるいはこれがもう決定的な段階に来るかもしれないというときに、日本に、朝鮮に作戦している国連軍がいて、これが軍事行動を起すということになると、日本は好むと好まざるとにかかわらず、朝鮮戦争に介入せざるを得ないことになりますが、これは講和條約の第六條によつて、九十日以内に去るということが原則じやないでしようか。
  37. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほど申しました吉田アチソン交換公文によりまして、「国際連合行動に従事する軍隊日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、」云々とあるのでありまして、国連軍日本に駐屯する、といいますか、おることはこの交換公文によりましてはつきり認められておる。この交換公文はすでに議会においても御承認を得ておる、こういうことになつております。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本に駐留する、要するに朝鮮作戰軍は、一体国連憲章の第何條に基いて行動している軍隊になるわけですか。第四十二條あるいは第四十三條ですか。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国連憲章の第三十九條に基いて、安保理事会勧告によりまして勧告を受けた国々が出しておる軍隊であるとわれわれは解釈しております。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると第四十二條ではないというわけですね。
  41. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 その通りです。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 この中に、「勧告をし、又は第四十一條及び第四十二條従つていかなる措置をとるかを決定する。」とあるが、これではなくて、ただ勧告従つて行動しておるというわけですね。
  43. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 その通りであります。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、この勧告従つて各国々の軍隊日本におるのであつて、これを統一して国連軍隊代表としてアメリカ日本交渉する資格はないと思うのですが、それはやはり国連憲章第三十九條に基いて日本に駐留しておる外国軍隊がおるとすれば、それが日本にとどまる條件というのは、それぞれの国々日本がとりきめをすべきものだと思います。そしてアメリカ代表して、あたかも国連憲章第四十二條、第四十三條に基いて軍事行動を起しておる。この軍隊代表のごとくアメリカ代表権を持つて日本交渉する権限を持つのでしようか。私はこれはないと思うが……
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは一九五〇年の七月七日の安保理事会の決議によりまして、米国が指名する統「指揮官のもとに置かれ、かつ国連旗の使用を許されておる軍隊、こういうことになつておるのでございまして、個々的に交渉してもそれはできないわけはありません。しかし先方において統一指揮官のもとにおいて交渉しようということになれば、これは統一指揮官のもとに交渉してもいいわけでございます。相手国都合、俗にいえば相手申出というか、相手方との都合、こういうことでいいのではないかと思います。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、目下朝鮮作戰軍日本——国連憲章第三十九條の勧告を実行するためにおる軍隊日本に駐屯することに対して、もちろんわれわれは根本的にこういうことは反対でありますが、しかし日本に駐屯するについては、何らかの條件がなければ駐屯できないが、これはどういう交渉を今しておるわけですか。個々的にしておりますか、それともアメリカとやるのですか。
  47. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま特別のとりきめをすべく、いろいろ交渉といいますか、折衝の過程にあることは、大体御案内のことと思うのであります。現在の段階におきましては、これは一般国際法による外国軍隊の駐在といいますか、そういう形で律せられておるものと思います。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 よくわからないのですが、だれでもわかつた人があればかわつて答えていただいてもけつこうです。そうするとこういうことは確認していいのですか。朝鮮で今後作戰する国連軍が、日本に駐屯することを認めて、そうしてその駐屯の條件について今交渉しておる。その交渉アメリカの要するに朝鮮作戰軍司令官ですか、これと交渉を目下続けているというように確認していいですか。もし確認していいというなら、それはだれですか。アメリカのどういう将軍と日本は今交渉しているわけですか。
  49. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在では大体同一指揮官と申しますか、朝鮮行動しております国連軍の総指揮官といいますか、司令官交渉しておる、こういうことでございます。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 それは具体的にはクラーク大将ですか。要するに行政協定あるいは安保條約に基いて日本に駐留する日本駐留軍司令官と同じ資格の人が、やはり国連軍司令官として日本交渉するわけですか。
  51. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 現在におきましては、つまり国連軍司令官であるクラーク大将と話を進めておる、こういうことでございまして、最後の調印者というか、結果はどうなるかわかりませんが、今交渉しているのはクラーク大将である、こういうことになつております。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今日本にいるアメリカ軍隊というのは、日本にいる駐留軍であると同時に、朝鮮作戰する国連憲章第三十九條に基く軍隊資格も持つているわけですか。これは実は非常に重要で、朝鮮作戰する軍隊日本にいるということになつて、そうして朝鮮休戰会談が妥結をしないということになりますと、これはもう当然中ソ友好同盟の対象にもなりますし、それから朝鮮戰争がただちに日本に影響して来ることになります。行政協定に基いてアメリカ軍隊日本の安全を保障するために、日本に駐留するということについては、われわれは反対しましたけれども日本国会では遺憾ながら承認を与えた。しかし朝鮮作戰する国連軍までが、日本に無期限に、無制限に駐屯するなんということは、われわれは国会で認めたはずはないのです。そうすると今日本にいるアメリカ軍隊というのは、一体駐留軍なのか、朝鮮作戰する国連憲章第三十九條に基く軍隊なのか、これをはつきりさせてもらいたいと思います。
  53. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 安全保障軍が全部国連軍であるかどうか、これは向らの内部のとりきめといいますか、われわれにはわからないのでありますが、総指揮官といいますか、司令官は先悟どあなたが言われましたように、同一人が両方の地位を兼ねておるということになつております。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 指揮官は同じだが部下は違うというのですか。指運目駐留軍最高司令官であり、朝鮮作戰軍最高司令官であるが、部下の中には別別の部下がいるというのですか。はつきりしてもらいたい。最高司令官がそうなら、その麾下の軍隊というものは、日本駐留軍という名はつけているけれども、実際は朝鮮作戰軍になると私どもには考えられるのですが……。
  55. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは指揮官が同じでありましても、安全保障軍というものと国連軍というものは、必ずしも観念的に同一でないのでありますから、純粋の国連軍だけの行動をするものもおり、また安全保障軍だけの使命を持つておるものもおるかもわからないのでありまして、理論的には指揮官同一人であつて二つ地位を兼ねておるということは、これは私はあり得るのではないか、かように考えます。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本にいる米軍の中で、駐留軍以外に朝鮮の作戦に従つている、要するに国連憲章第三十九條に基く軍事行動を起している米軍もいるわけですか。
  57. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 わが方としてよくわかりませんが、観念的には私はあり得ると思います。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 観念的にはではなくて、実際どうかということです。それでは次に、観念的にあり得るというなら、実際あり得ると思いますが、それじやそういう費用、要するに駐留軍以外の朝鮮に作戦しておる国連軍軍隊の費用というのは、どちらが持つような交渉を今しているわけですか。私たちはもちろんアメリカ駐留軍日本にいることも反対、あるいは朝鮮の作戦行動にももちろんわれわれは反対している立場ですが、しかし現実の問題として、あなたの言われるように、日本の国の中に、安全保障條約に基く駐留軍と、朝鮮作戰している国連軍——国連軍といつても正確にいうと、第三十九條の勧告を実行するためにいる各国の軍隊でありますが、これがいるということになりますと、一体その日本にいる国連憲章第三十九條に基く朝鮮作戦軍の費用というようなものはどうなるのですか。これは全然日本で持たなくてもいいと思いますが、それとも持つようなことになるのですか。その交渉はどうしているのですか。米軍の場合はややこしくなるかもしれませんが、フランス軍だとか、あるいはニュージーランドの軍隊、あるいは英軍などがいますと、こういうものの費用はどうするつもりですか。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 英濠軍とか、フランス軍であるとか、そういうものにつきましては、大体先方持ちということで、今折衝といいますか、話をしております。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、アメリカ軍については、両方の区別がわからないから、やはり国防分担金六百五十億円の方から出すわけですか。
  61. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 アメリカ軍の関係につきましては、これは先ほど引用いたしました吉田アチソン交換公文の末尾のところにおきまして、その間のことははつきりここに両者の合意ができておるわけであります。
  62. 仲内憲治

    仲内委員長 林君にちよつと申し上げますが、もうじき大臣が見えますし、あとこの議案は日華と一緒に午後もやりますから、一応いいところで打切つて、採決に入りたいと思います。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二点。そうすると今言つた英濠軍ですか、これに対する裁判の管轄権に対しては、どういう方針で今交渉しておるのですか。
  64. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいま交渉中の段階でありますから、ここで申し上げるわけに参りません。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 どういう方針で臨むかという日本政府の方針でいいのです。やはり行政協定と同じようなことになるのですか。軍人、軍属、家族を全部含めて……。
  66. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは大臣がお見えになつてからひとつ……。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 それからもう一つ。そうすると英濠軍の駐屯する基地、これはどうするのですか。やはり無條件で提供するのですか。
  68. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 基地という言葉はないと思いますが……。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 施設でもよろしゆうございます。
  70. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これもアチソン吉田交換公文の中に、「日本の施設及び役務の使用」云々と書いてあるのでありまして、「日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にする」という前提のもとに立つておるのでありまして、いろいろの便宜を与えるということは、これは日本の当然の責務であろうと思います。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いろいろ便宜を与えるというのは、要するに基地も提供する、あるいは公益事業についても、大体行政協定と同じような便益を与えるというように確認していいのですか。施設を提供するとか、あるいは日本の公益事業についても、大体行政協定の線で便益を提供するという方針ですね、日本政府としては。
  72. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは折衝の過程でありますから、何とも申し上げることはできませんが、いずれそういうような項目につきましても、いろいろのとりきめができることとは思うております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 その便益を提供するという、その便益の内容は、やはり施設の提供だとか、あるいは公益事業の提供だとか、そういうことが含まれているかどうかということです。要するに、大体日本政府の方針としては、日本を完全に朝鮮作戰の基地にするという基本方針もあるのであつて安全保障條約のときには、日本の外部からの侵略を防ぐということで、アメリカ軍隊を置くということだけに、政府側は説明したのですが、実際今日に至ると、むしろ積極的に、朝鮮作戰行動を起したその軍隊を、日本に置くということになつていると思うのです。だから消極的に日本を守るのではなくて、積極的に朝鮮の作戦行動を起す場合の軍墜、軍事基地や、いろいろの便益を日本が提供するというとりきめを、これから吉田アチソン交換公文の線に沿つてなさろうとしているように、われわれはきよう確認したわけです。そこで、あなたの先ほど言われた英濠軍についても、大体いろいろの便益を提供するということになるだろうという見通しですが、その便益を提供するということは、やはり行政協定の中における施設の提供だとか、あるいは公益事業の提供だとか、こういうものが当然含まれると思うがどうか、それだけでいいですよ。そうだと言われれば、それでいいと思うのです。
  74. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど委員は、何か確認されたとかどうとかいろいろ言われたのですが、何を確認されたのかわかりませんが、要するに世界の平和、極東の安全を保持するために、いろいろのことが行われておるのでありまして、かつてな確認をされては困ります。何ら確認はないと思います。  最後の点でありますが、これは先ほどから何回も申しておりますように、施設及び役務等に関して、いろいろの便益を供するということは、これは日本も約束しているのです。ただその條件が、行政協定のようなものになるかどうか、これはただいま交渉中でありまして、ここで何ら言うべき筋合いではない。それは行政協定の筋とは相当違うべきものではないかとわれわれは考えております。こういうことだけ申し上げておきます。     —————————————
  75. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは次に、国際植物防疫條約締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関しましては、質疑も終了しており、討論もないようでございますので、ただちに採決いたします。  国際植物防疫條約締結について承認を求めるの件を、承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議なしと認めます。よつて本件承認すべきものと決しました。     —————————————
  77. 仲内憲治

    仲内委員長 次に移ります。千九百二十三年十一月三日にジュネーヴ署名された税関手続簡易化に関する国際條約及び署名議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件につきましては、質疑を終了しておりますので、ただちに討論に移ります。討論の論告がありますので、これを許します。北澤直吉君。
  78. 北澤直吉

    北澤委員 私は自由党を代表して、本議定書に参加するに賛成いたします。
  79. 仲内憲治

  80. 並木芳雄

    並木委員 私も改進党を代表して、同じく賛成であります。
  81. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 社会党を代表して、賛成するものであります。
  83. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 私は共産党を代表して反対します。簡單に理由を申しますと、本條約の前提の條件は、自由なる通商と、輸出入制限の撤廃ということであります。しかし日本は現在アメリカ、イギリスその他いわゆる自由諸国から、貿易上の重大な圧迫や制限をこうむつておるのみではなく、行政協定によつてアメリカ軍とその御用商人たちに対しては、税関検査の手続すらなし得ないというのが現状であります。このような状態のもとで條約に加盟しても、益がないどころか、かえつて日本側に対しては簡易なる手続が要講され、日本から英米に対しては、思う存分の嚴重なる制限を受けるということは、今日の事態がはつきりしておるのであります。このようにして、日本のみが一切の関税の障壁を撤廃し、あるいは簡易化されることを要請され、日本側から英米に対しては、厳重な関税そのほかの手続の権利を与えるがごとき本協定に対しては、絶対に反対せざるを得ないのであります。
  85. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。千九百二十三年十一月三日にジユネーヴ署名された税関手続簡易化に関する国際條約及び署名議定書締結について承認を求めるの件を、承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  86. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本件承認すべきものと決定いたしまし玉
  87. 仲内憲治

    仲内委員長 次に移ります。国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件、国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件を一括議題といたします。両件に関しましても、質疑を終了しておりますので、ただちに討論に移ることといたします。討論の通告がありますのでこれを許します。北澤直吉君。
  88. 北澤直吉

    北澤委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題になつております国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件、及び国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件について賛成いたします。
  89. 仲内憲治

  90. 並木芳雄

    並木委員 私も改進党を代表して賛成いたしますが、政府にただしたところでは、これをいかように活用して行くかという計画について、準備ができておりません。そういう点については、とくと政府において十分準備を進め、計画を立てて、万遺憾なきよう善処せられんことを望んでおきたいと思います。
  91. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 社会党を代表して、両案に賛成するものであります。
  93. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 私はこの両協定に反対するものであります。反対の理由は、御承知の通りに、ブレトン・ウッズ協定は、一九四四年の七月、アメリカのニュー・ハンプシヤ州ブレトン・ウツズ市において、連合国四十四箇国間に、国際通貨基金設置草案、並びに国際復興開発銀行草案が承認されたのでありますが、しかしその後約八年の間の世界情勢は、非常に目まぐるしい発展をしまして、一方では社会主義あるいは人民民主主義諸国の平和的な経済の躍進、一方は米国を中心とする資本主義的な諸国が、戰争政策によつて自己の経済を維持しなければならないというような、鋭い二つの対立を示して来たのであります。それでこの国際通貨基金協定の中にうたつてあるところの、経済政策の第一義的目標たる全加盟国の高水準の雇用、及び実質賃金あるいは所得の促進というようなことがあるけれども、実際はこのような雇用の増大、実質所得の増進と一いうことが、まつたく逆の方向へ向つておるということは、明らかだと思います。これのみではなく、昨年の秋の総会における、トルーマン大統領の演説におきましても、この両機関が、大体アメリカの世界支配の政策に協力するものにこれを貸し出すというようなことで、この国際通貨基金国際復興開発銀行の実質的な運用が、アメリカの支配政策、あるいはソ同盟、中国その他の社会主義、人民民主主義諸国に対する侵略的な政策、これに裏づけをされた金融政策であるということは、トルーマン大統領の昨年秋の総会における演説においても明らかだと思うのであります、それでこれを見ますと、名前は国際通貨基金国際開発銀行というけれども、実際はアメリカの金融支配下に入るということになると思うのであります。第二の理由は、しかもこの両機関とも現在は実際何ら活動をしておらないのである。昨年秋の基金総会における年次報告によりますと、国際通貨基金の運営には、運営だけで毎年三百二十万ドルかかつているけれども、基金がこの一年間にした仕事は一千万ドルをブラジルに供給したことだけであるというのでありまして、実際的な運営はむしろ何ら活動しておらないという状態であります。そこで政府に対する質疑を通じて明瞭になつて来たことは、政府自体もこの両協定へ加盟することによつて金が入るということは考えておらない。ただ国際的な信用を高めるということだけであることは、大体池田大蔵大臣並びに岡崎外務大臣答弁によつても明確になつたと思うのであります。ところが国際的な信用を高めて、しからばどういうことをするかというと、おそらくそれによつてアメリカからの外貨導入を促進するという、この吉田内閣の一枚看板である外貨導入の二つの呼び水としてこれに加盟するのではないかというようにわれわれは推測し得るのであります。ところがわれわれの税金からこの二百億も金を出して両協定へ加盟して外貨導入を仰ごうとしても、この外貨導入がどういう状態になつているかということは、自由党の諸君もよく御存じだろうと思うのであります。電源開発に対する外貨導入、ちるいはマーケット声明におきましても、まつたく無残な結果となつておる。率直にいうと、アメリカ側の金融資本家にとつては、日本は準戰場にもひとしい地域であり、ここへどうして大事な長期の投資ができるかということが、彼らの率直な考えだ思うのであります。いかにわれわれが二百億の金を投じてこの両協定へ入つたところで、朝鮮戦争はまだ海のものとも山のものともわからぬ。それから極東の一般的な政治情勢は非常に危險だ。日本は明らかに軍事基地になつたけれども、ここから飛行機が飛び立つているということになれば、ここへ長期の資金を導入するということはあり得ないのであります。こういうことから見ましても、これに二百億もの金を出して加盟することは、基金からの金の借入れができないと同時に、それを呼び水として呼ぼうとしておつたところの外資導入ができないことも明瞭だと思うのであります。  このほかさらにこの基金に入ることによつて為替管理の制限を受ける、あるいは為替相場の変更もできないというようなことで、日本は重大な制限を受けることになるのであります。日本側が為替管理あるいは為替相場の変更の義務を負いながら、一方英米の側では、強力な資本力にものを言わせて、自由に関税あるいは為替を左右しておるというのが実情だと思うのであります。われわれはあのような協定に対して二百数十億もの金を出すことについては絶対に賛成できないのでありまして、この立場からわれわれは反対を表明するものであります。
  95. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件、国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件を一括採決いたします。両件を承認すべきものと議決するに言成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  96. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて両件は承認すべきものと決定いたしました。     —————————————
  97. 仲内憲治

    仲内委員長 次に外国領事官に交付する認可状の認証に関する法律案議題といたします。本案につきましても質疑を終了しておりますので、ただちに討論に移ることといたします。討論の通告がありますので、これを許します。北澤直吉君。
  98. 北澤直吉

    北澤委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました外国領事官に交付する認可状の認証に関する法律案につきまして賛成いたします。
  99. 仲内憲治

  100. 並木芳雄

    並木委員 私も改進党を代表して賛成の意を表明いたします。
  101. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 社会党を代表いたしまして、ただいまの案件に賛成いたします。
  103. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党は反対であります。(「理由があるのか」と呼ぶ者あり)重大なる理由がある。諸君がそう簡單にこれに賛成することはわからないのである。われわれの第一の立場は、第一に大公使館の設置、大公使の派遣に対して、中国、ソビエトを除外して、台湾、韓国、西ドイツというような、まつたアメリカ支配層の傀儡政権とのみ外交関係を結び、ここへ大公使館を設け、ここへ大公使を派遣する、こういう基本的な吉田政府の外交政策に反対するという立場が一つでありますけれども、さらにこれを具体的に申しますと、憲法によつて制限されておる天皇の権限を法律によつて拡張して、天皇の権威を強化しようとする意図を含んでおるのであります。せめて国会承認を得るというならば別として天皇の認証によつてこれができるということは、明らかに天皇の権限を法律によつて強化することであります。本来大東亜戰争に対する最高の責任者たる天皇が、何ら戰争の責任を問われないのみか、再びその地位をいろいろの法律によつて強化して、しかもそれが外国の支配勢力の片棒をかつぎ、さらに戰争政策を支持する方向に動くということに対しては、われわれはまつたく反対せざるを得ないのであります。このように、天皇の権限を法律によつて強め、実質的には国会の権限を狭めて行くということに対して、国会の各党が賛成することに対しては、われわれは理解に苦しむのである。ことに勤労階級の政党である社会党までが、これを無條件に賛成することに対しては、まつたく了解に苦しむわけであります。われわれは国会の権威のためにも、このようなことには断固反対するものであります。
  105. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。採決いたします。外国領事官に交付する認可状の認証に関する法律案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。なおただいま採決いたしました各件につきましての報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。     —————————————
  108. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは中華民国との平和條約の締結について承認を求めると件及び国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、質疑を継続することといたします。林百郎君。大臣はおつつけ参りますから、それまでは大臣以外に質疑願います。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 日華條約についてまず政府委員にお聞きしたいことは、御承知の通りに、朝鮮休戰会談が万一妥結を見るということになりますと、当然第五議題である政治的な問題、極東における一般的な平和の確立の問題ということで、中国の政権をどういう政権にするか、あるいは台湾、澎湖島の帰属をどういうことにするかということが、朝鮮休戰会談の当然の推移として議題になると思うのであります。そういう場合にわれわれは、中華人民共和国、要するに北京政権が中国の正統政権であるということが認められる可能性が、非常に強いと思うのであります。これは現実からいつて強いと思うのであります。ところがこの朝鮮休戰会談見通しも見ずして、今このような旧華條約を締結することを、なぜこのように急がなければならないかということについて、われわれは了解に苦しむのであります。何もそう急いで台湾と條約を結ぶ必要は私はないと思いますが、今このような條約を取急ぎ締結しなければならない理由をまず聞かしてもらいたいと思うのであります。というのは、朝鮮休戰会談の結果、もし中国の正統代表が中華人民共和国だということになると、日本が蒋介石のような残存グループと結んで置いたら、もう行先がなくなつてしまう、こういうことが考えられるのでありますが、なぜこういう條約を結ばざるを得ないのかということをここでお聞きしておきたい。
  110. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 日本は従来から中華国民政府に対して同情を示しておるといいますか、この政府承認いたしまして——承認というか、この政府といろいろの交渉関係にあるのであります。そうして善隣友好の立場というか、関係からいたしまして、なるべく多数の国と早く平和善隣の関係に入りたい、こういう関係からいたしまして、先方の申出に応じましてこの日華條約を取結んで行こう、こういうことなのであります。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると先方、中国側が申し出て来た。それに日本側が応じたという形ですか。
  112. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先方も希望いたしましたし、わが方といたしましても善隣友好の関係から、できるだけ早く平和友好の関係に入りたい、こういう気持で進んだわけであります。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた方は中華民国という政府を認められていますが、中華民国というあなた方の認められている政権の領土はどこにあるわけですか。
  114. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題はここで何回も繰返されたわけでありますが、今回の條約自体は、領土の問題に触れてないことはたびたび申し上げた通りでありまして、台湾、澎湖島を現実に支配しておるという、この事実に基いて條約が取結ばれたわけであります。ただ開き直つて中国の領土はどこかという御質問でありますが、これは結局中華大陸及びその附属島嶼ということに相成なると思うのでありますが、現実には中国大陸には支配力が及んでないというのが現実の事態であろうと思います。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、台湾、澎湖島は中華民国の領土になるわけですか。ここに「中華民国政府の支配下」とありますが、支配があるということと領土ということは同じと言つていいのですか、それとも違うのですか。
  116. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 たびたび申し上げましたように、台湾及び澎湖島については領土の最終的帰属というか、決定は見ておりません。しかしながら現実に台湾、澎湖島を中華国民政府が支配している、施政しているというこの事態は、ひとり日本ばかりでなく、いわゆる中華国民政府承認しております多数の国も大体そういう観念であるのでありまして、こういう前提のもとに今回の條約が取結ばれたものである、こう申し上げるよりいたし方ないと思います。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、中華民国の国民はどうなるわけですか。第十條に中華民国の国民は「含むものとみなす」とありますが、みなすというのと国民であるというのとどう違いますか。
  118. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは領土の最終的決定を見ておりませんから、みなすという言葉を使つておるのであります。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると台湾、澎湖島は最終的に中華民国の領土ということにもならないわけですか、あなたの見解だと……。
  120. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 同じことを繰返すようでありますが、領土の最終的帰属の決定は見てない、こういうことであります。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると台湾、澎湖島には領土権はあるのですか。
  122. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 法律的言葉の詮索は別といたしまして、いわゆる最終的帰属の決定を見ていないのでありますから、領土権というようなものもないと見るべきであろうと思います。しかもこの日華條約にはそういうことを書くべき建前にはないことは今まで申し上げた通りであります。現実に台湾、澎湖島を支配し、施政しておる、この前提のもとに條約が取結ばれた、こういうことであります。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣が来たから聞いていいですか。
  124. 仲内憲治

    仲内委員長 順序がありますから……。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 じや打切つておきます。
  126. 仲内憲治

    仲内委員長 山本利壽君。
  127. 山本利壽

    ○山本(利)委員 日華平和條約に関する今日までの質疑応答によりまして、岡崎外務大臣初め現政府の中国に対する考えを要約してみますと、中共政府は好ましくない、従つて今のところ中共貿易を緩和する措置をとる意思はない、中共貿易はとかく過大評価されているが、将来大して望みをかけるほどのことはないということ、さらにわが政府は国民政府に同情を寄せている、将来わが国が中共と交際するのは国府と中共とが一体になつたときであり、現在の日華條約がそのまま適用されるときである、つまり国民政府が中共を滅ぼしたときであるというようなことにあるように思うのであります。これは吉田内閣としては、その性格からもつともな考えでありまして、今日私はその考え方のよしあしを論議しようとするのではありませんが、かりにこの考え方を是認して、その基本方針の上に立つて外交を行おうとする場合に、今回の日華條約はすごぶるまずかつたと思うのであります。それで私は納得の行かない点の幾つかをお尋ねしてみたいと考えます。  先般岡崎外務大臣は、国民政府は法的に領土を持つていないけれども現実に台湾及び澎湖島を支配しているから、亡命政権ではないと言われております。それでは中国の一地方政権として認められたと解釈してよろしいのでありましようか、その点をまずお伺いいたします。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず山本君が今私の言つたことを概略して言われた中に、一つ訂正しておきたい点があります。それは、この前の委員会でありましたか、質問があつて、私は、そんな仮定の問題は今から議論してもしかたがないと、繰返し申したのでありますが、しいて言われたから申したのは、中共政府は、今のままではわれわれとおつき合いは困難である。じやいつからおつき合いができるのかというと、いろいろの問題が解決し、態度がわれわれに対して友好的である場合であることは、これは自然の話であります。従つて無理に質問されたから、そんな場合には、今の友好的な考えでいろいろの懸案が解決された場合というのは、要するに今の国民政府と同じような関係に立つものだから、その場合には、将来のことでわかりませんが、仮定の問題だからおかしいのでありますが、今の中華民国政府との條約のようなものが一つになつて動くであろうというだけの話で、何も国民政府が中共政府を征服してしまつたときだとか、あるいはまたこの條約がこのまま適用されるのだとか、そんなことを言つておるのじやない。これはまつた仮定の問題について、また仮定をつけてお話しておるのであつて、それを政府の方針というふうにおとりになる点は私はうなずけない。(「そう聞えたですよ」と呼ぶ者あり)それはそれとしまして、中華民国政府の建前としては、これは先方の建前としては、当然中国全領域に対する政府というふうに主張しておるのは、これは自然のことであります。われわれもこれはよく聞いて知つておるわけであります。領土があるなし、ということは、先方のクレーム、先方の主張からいえば、中国全部に領土がある、従つて中国の代表政府であるという建前を先方はとつて来ておる。これは御承知の通りであります。ただわれわれの方では、実際の事態は、中華民国政府の支配しておる地域が全部に行つておらないという現実の事態も見なければなりませんので、今度のようなかつこうの條約になつたわけでありまして、われわれは決して地方政府とか、あるいは何といいますか、よく変な言葉では、限定承認ですか、そんなことを言つておるのじやないので、ただ現実の事態と中華民国政府の主張とが食い違つておる場合もありますので、あとう限り現実の事態に沿つて中華民国政府と條約を結んだということであつて、決して地方政権とか、限定承認とか、そういう意味のことを言つておるのじやない。これはそうすると非常に性格があいまいじやないかと言われますでしようと思いますが、それは現実の事態がそうなので、これに沿う以上は、その点がはつきりしない場合もあり得ることは、御承知願いたいと思います。
  129. 山本利壽

    ○山本(利)委員 一地方政権として交渉相手にしたのではないという今のお言葉でありますが、それでは国民政府を全中国の政権として相手としたのだということは言い得ますか。非常にあいまいではあるがということで、あいまいな御回答でありましたが、私は日本政府の立場を聞きたいのであります。一亡命政権ではないということはこの前はつきりおつしやつた、きようまた一地方政権ではない……。それでは台湾の国民政府というものを全中国の政府として相手としたということははつきり言えますでしようか、その点ひとつ
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 でありますから、今の現実の事態がはつきりしておらないから、従つて條約もはつきりしない点が出て来るのでみつて、これをここだけで割切ろうとするのは無理なのであります。本来ならば、一つの領土の上に一つ政府があるべきものなので、それが今では争つておる二つ政府があるのですからして、そこにいろいろのステータスがはつきりしない点があるのは、これはやむを得ないところであります。先方はむろん中国の代表政府という建前でいろいろの話をしておる。われわれも国民政府代表国際連合にも派遣されておりますし、またいろいろの国際機関にも出されておりますし、過去において独立までは中国代表部というのが対日理事会にも席を置いておつた従つて中華民国の正統政府と認めてこれと話をいたしておるのであります。その話の結果がこの條約でありますが、しかし同時にこの中華民国政府というものが、現在現実に支配しておる地域は限られた地域でありますから、その現実の事態も無規するわけに行かないからして、両方つきまぜだ実際的の條約をつくつた、こういうことになるのでありまして、今までのようにこれが地方政権でなければ中央政府だ、限定承認でなければ全面承認だというふうに、割切つてお考えになり得ない場合が多々あるのであります。これは国際法というものは始終動くものであります。また国際慣例も始終動いて来るものでありますから、現実の事態に沿うよりしかたがない、これが吉田書簡の述べておる点であります。
  131. 山本利壽

    ○山本(利)委員 私が今回の條約にあたつて、その交渉がまずかつたのではないかと思つて疑問を抱いたのは今の点であります。現実に即して、まことにあいまいなる政権であるから、あいまいに扱わなければしかたがないではないか、そういう立場から、この中華民国に関しては、その支配下に現にあり、または今後入るべき領域といつたような言葉を挿入する必要が起つて来ている。ところが私はこれはまつたくいらざる努力であつて、今の政府性格からいつて、中共政府というものは全然相手にしないのであつて、国民政府に好意を持つておるからには、国民政府の言う通りにこれを全面的な中国の政権なりとしてお扱いにならなければならなかつたと私は思う。そうすれば條約というものが非常にはつきりして来る。もう日本政府、今の吉田内閣は、中共政権というものは全然無視して、これこそ正統なる、ことに国際連合代表も送つておるのであるから、だからこれこそ中国の正しい政権であるから、これと條約を結んだ。領土がどちらこちらというようなことは、国に内乱が起つた場合はそれはあり得ることである、だから日本国相手、つまり現内閣の相手としては、これが正しい中国の政権であるという向うの主張をそのままに受入れて、堂々と向うの顔も立てながら、こつちの要求も通すところに私はよい外交があつたのではないか。ところがいかに日本政府が遠慮して、今現実がどうだといつたところで、共産主義の政権あるいは政府、人々が、吉田内閣や岡崎外務大臣を将来少しも援助はしないのである、徹底的にこれを否定して来るのはわかり切つたことである。だからわが方もこれを否定して、そしてこちらにすがろうとする国民政府を、これをまともなものなりとしてやられなければ、ちようど今回の交渉にあたつてのように、大事な味方であるべき台湾政府までが、非常な不満を感じたのではないかと私は考える。台北から来ているところのニューズ・レターなんかを見ましても、吉田のパズリング・アテイテユードとして非常に不満の意を表しておるのであります。だから初め申しましたように、現政府の基本的な観念に沿うて外交をやるならば、あくまで中共政権を否定して、国民政府を唯一の政権として交渉をし、條約を成立させる、そのことが、全台湾はもちろんのこと、中国本土におきましてもまだまだたくさんな反共産主義的な民衆がおると考えますがゆえに、その人たちに与える影響というものは非常に大きかつたであろうと思う。今すべての報道を断ち切つて、本土において中共政府というものが弾圧を加えておるかもしれないけれども、やはり世界場裡においては、台湾に行つておる国民政府が正統なものであるということを、中国の民衆に認識させるのが、吉田内閣が今これから進んで行こうとするその方針を最もよく私は表わすものであると考えるのであります。それをわざわざ言葉は濁されますけれども、一地方政権としての扱いをなされるから、国民政府というものの力が非常に弱くなつてしまう。反面において、認めないと言いながら、中共政府を認めだことになる。こういう外交は、どちらを援助しておるのか、結果においては私はわからぬように考えるのでありますが、この点に対する岡崎国務大臣のお考えを承りたいと思います。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まあいろいろ御意見は承りましたが、條約は、御承知のように平和條約という名前もついておりますし、それから條約の中には、内容としてはサンフランシスコできめたようなものがずつと出ております。ただ適用の範囲において新しい規定があるとお考えになつてくださればけつこうだと思います。中共政府を無視しろといいますが、こちらが無視しなくても向うが無視するかもしれぬので、これはどうということはありませんが、要するにこの條約は、いろいろ経過においては意見がありましたが、結局双方の最も満足すべきところに到達して、中国側もたいへん満足しておると私は了解しております。でありますから、結局この程度でまとめたのが一番よかつたのじやないか、こういう気がいたしておる次第であります。
  133. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今岡崎国務大臣は、中国側においても今度の條約には非常に満足すると言われましたけれども、私が入手したところでは、非常に今度の條約には相手方は不満足である、その一番根本の点は、先ほどのような一地方政権としての扱いを受けたということであります。ここで私は外交上考えたいことは、とかく條約文をつくり上げて、お互いに署名捺印したら、それで事終れりというのでは——相手政府のみを見て、そうしてあとから書き上げた條約文だけで、さあこれで自分の方は勝つたと考える外交はどうか。常にその條約によつて、その向うにいるたくさんの民衆を相手に、その民衆に喜びを与えるところの外交でなければならぬ、條約文でなければならぬと私は思う。だからその交渉の途中においても、日本の全権、随員たちでしようが、笑いを知らざる外交官どもだということも新聞記事に載つてつた。それに対する感情は、一般にはあまりよくはなかつたらしい。ことに秘密外交というものは、吉田外務大臣、現総理大臣のおはこでありますけれども、それが今回の交渉の途中においては、秘密を守らなければならない途上において漏れたという事件があつた。三月の八日の日本の各新聞には、支那側の出したところの條約案が全部出ておつたと思うのですが、これに対して国民政府では非常な不満を表わしておる。ことにそれは三月八日のユーナイテッド・プレスの通信によると、明瞭に日本の外務省から発表されたものであるというふうに聞き及んでおるのであります。こういつた條約の過程においても相手方の心証を害するような、不信を招くような拙劣なことがあつてはならぬと思うのでありますが、そこらの御事情を承りたいと思います。
  134. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや、それはお話通り、国民を相手にし、長く條約がお互いに守れるようにするのが最もいいのでありますから、われわれもそのつもりでやつておるのであります。なお今の案文が漏洩したというようなことは、少くとも私がここで申し上げられるのは、日本側の関知したことじやない、日本側から漏れたという事実はないのです。
  135. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは次の点について承りたい。今回の條約の中には、ある條項においては「中華民国」という言葉が用いられ、ある場合においては「中国」という言葉が用いられておりますが、交渉にあたつてのそこらの使いわけはいかように考えられたものであろうか承りたい。
  136. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは政府委員から御説明した方がいいと思いますが「中国」と書いてあります場合は、もつぱらサンフランシスコ條約の條文を取入れた場合であります。それ以外は「中華民国」といつておるわけであります。中国ということは一種のはつきりした観念と言えない場合もあるわけであります。中華民国というのが正当かもしれません。たとえば今では、昔ずつと前に帝政時代に結んだ條約についても、中国との間に結んだ條約というようなことを言つておる場合もあります。ほんとうは清国というのが正しいのかもしれません。いわば俗称とお考えになつていただいてけつこうだと思います。それで要するに、サンフランシスコ條約の第二十一條に「中国」という字がありますが、この條約の第四條ではやはりそういう意味で中国といつたのだと御了解願います。
  137. 山本利壽

    ○山本(利)委員 二つの国の間の條約には、使われる用語は一々正確でなければならぬと思うのであります。ただいまの御答弁では少しあいまいな点があると思いますが、逐條的にまたいろいろ研究きしていただきたいと思います。さらにその次には、この條約に対して両国解釈の相違は英語によるとありますけれども、こういうのは国際上当事国以外の、また一つの、たとえたら英語国家である場合には、英国と米国とがやる場合にはフランス語であるとか、あるいは日本アメリカとの場合にはまたほかの国の言葉でやるとか、こう用いるということが慣例なのでありますか。われわれから考えれば、日本中華民国との條約であるから、日本なら日本語というふうにあるのが当然だと考えるのですが、その点慣例上、あるいはこうなさつた意味についてのお考えを承りたい。
  138. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは主としてお互いに平等の立場でつくつた條約でありますから、日本文を元とするということも、あるいは中国文を元とするということも適当ではないと考えまして、そこで両国政府の相談してきまつた第三国語を元として、もし議論があつた場合にはそれによつて解決する、こういう方法をとつたわけであります。またサンフランシスコ條約の條文もいろいろ引用しておりますが、サンフランシスコ條約の正文というのが、中国語の正文というものがないものでありますから、やはり一番争いがあつたときに解決する元としては英文がよかろうということで、いわば仲裁のときに第三者を立てるような意味で第三国語を元としたわけであります。これは例もしばしばあるわけです。
  139. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今回の條約の第二條に、「台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。」という言葉があるのでありますが、今度はこの條約の説明書を読んでみますと、その中に「西沙群島は、インドシナ半島の東方約六十マイルの洋上にある一群の島で、フランスと中華民国政府との間では領有問題が起つていたが、日本国は、この島に対して領有権を主張したことはない。」と書いてある。日本側の領土でもなく、領有権を主張したこともないような島のことを今回のこの平和條約の中になぜ放棄すると取上げられたか、その理由を伺つておきます。
  140. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは権利、権原及び請求権の放棄ということになつておりまして、別に領土権というようなものを日本は主張しないにしても、サンフランシスコ條約の中でもそういう文句がありますので、これははつきりさしておいた方がいいという先方の希望もありましたので、その通り引用したわけであります。
  141. 山本利壽

    ○山本(利)委員 前回の委員会で、中国関係の戰犯は日華條約成立の日、すなわち四月二十八日に釈放された岡村大将以下八十八名で全部であると政府委員の方から答弁がありました。中国関係の戰犯の数としては少し少な過ぎるような感じを受けるのですが、その点は間違いありませんでしようか。
  142. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も正確な数は知りませんけれども、初めに服役させられた者はそれよりもはるかに多かつた、おそらく二百五十名内外でなかつたかと思います。しかしそれはその後いろいろの事情で釈放されておりまして、結局今残つてつたのが今あげられた数字、こういうことであります。
  143. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それは前回の説明でも、この條約文には書き込んではないけれども、今回の條約を結ぶにあたつて交渉過程において、日本政府が自由にするということを了解済みである、その結果行われたという御答弁があつたのでありますが、今回の平和條約は、もちろん批准を要するものでありまして、條約は成立したけれども、まだ効力は発生していない、だから、今度の交渉に基いてのこの戰犯の釈放ということであるならば、少くとも法的にいえば、この條約が効力発効してから釈放されなければ、万一批准がされないというような場合に、それではちよつと俗な言葉ですが、ただ食いをしたような感じを私は相手国に与えるように思うのでありますが、少し早まつた処置ではなかつたかどうか、承りたい。
  144. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはお説の通りでありまして、まだ実は実施しておらないわけであります。條約が発効しましたら、ただちに実施したいと考えております。
  145. 中山マサ

    中山委員 ちよつとお伺いします。その中国関係の戰犯八十八名とございますが、ソ連の方の言い分を聞いておりますと、中国関係の戰犯はソ連にあつた者を向うへ逆送したということを私は記憶しておりますが、その人たちもまたその八十八名の中に入つておるのでありましようか。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国民政府の当時に刑の量定がありまして、その後日本に送り返されて巣鴨に服役しておる人たちであります。
  147. 中山マサ

    中山委員 それではソ連から逆送されたという人たちの数は、いまだはつきりしておらないでしようか。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これははつきりしておりません。要するに正式の通知とか、発表とかいうものはないのでありますから、タスだとか、ああいうものに出ておることであります。それによりますと、九百名近いもののように聞いておりますが、数字ははつきりいたしません。
  149. 山本利壽

    ○山本(利)委員 もう一点だけ。今回の條約の結果、平和條約の正文のほかに交換公文とか、議事録とか、議定書とかいろいろありますので、ちよつと読んでみてわれわれにまぎらわしいのでありますが、結局日本中華民国に対して支払わねばならぬ賠償というものはどういうものでありましようか。全然ないのでありましようか、これだけは払わなければならぬというのでありましようか、そこのところをお聞きしたいと思います。
  150. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは議定書にあります通り、「役務の利益を自発的に放棄する」、こうなつております。従いまして、中国本土等にあります日本の財産は、サンフランシスコ條約等によりましても、これは結局今現実に支配しておる政府が違いますから、はつきりいたしませんけれども、われわれとしてはいわゆる在外財産として取上げられる、こう考えております。要するに、役務賠償という種類のものは、先方は放棄する、こうなつております。
  151. 山本利壽

    ○山本(利)委員 そういたしますと、中国にあります日本政府または日本人の財産というものは、向うで没収せられるという点はわかりましたが、日本から賠償として幾ばくかの物あるいは金を国民政府に渡さなければならぬという義務がありましようか、それはないのでありましようか。
  152. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは何もないということになつております。それはこの正式の議事録の中に、「サンフランシスコ條約第十四條(a)に基き同国に及ぼされるべき唯一の残りの利益は、同條約第十四條(a)2に規定された日本国の在外資産であると了解する。その通りであるか。」と日本代表が聞いたら、中華民国代表「然り、その通りである。」こうなつておりますから、日本国の在外資産というものだけが残りまして、その他は一切ないということになつております。
  153. 山本利壽

    ○山本(利)委員 もう一点だけ。今のでわかりましたが、但し議事録の中に、満洲国及び汪精衛政権のような協力政権の日本国における財産、権利または利益は、中華民国に移管されるという了解があるように思うのですが、これも含めてもう消されたわけでありますか。これはまた別途のものでありますか。別途のものであれば、どういうものであるか、どのくらいな金額になるかということを、係官の方からでも承りたいと思います。
  154. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは賠償とは全然違うのでありまして、いわゆる傀儡政権の資産の継承者がだれであるか、こういう問題になるのです。そこでこれにもあります通り、これは非常にいろいろ議論があつたのでありますが、第一にこういう資産は、主として建物でありますが、日本に多少あるのであります。それは当然に中華民国政府に移管されるのでなくして、日本政府中華民国政府との間に同意があつた場合には、サンフランシスコ條約と本條約の規定に基いて、中華民国政府に移管され得るものである。移管され得るものであつて現実に移管されるかどうかということについては、これはまだ将来の問題でありますが、要するに移管され得るものである、こういうことになつております。
  155. 山本利壽

    ○山本(利)委員 終ります。
  156. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 台湾、澎湖島の帰属の問題について、先ごろからいろいろ意見が出ておりますが、ともかく日本がその主権をサンフランシスコ條約において放棄したということは認められているのですけれども、その主権の継承者が国民政府にあるか、あるいは中共が継承するかという問題が、国際法上あるいはまた政治学上いろいろ問題があると思います。そこで私は一九四一年に発せられました大西洋憲章の中の二項に、「両国関係国民の自由に表明せる希望と一致せざる領土的変更の行わるることを欲せず」とあります、こういくような方針によつて台湾、澎湖島の処理を行うのが合理的ではないかと思うのですが、それに対する政府のお考えを伺いたい。それによりますと、つまり住民投票によつて台湾が独立するか、あるいは国連の信託統治に入るか、あるいは日本と提携をするか、あるいは中共の統治下に入るか、あるいは国民政府の統治下に入るか、そういうようなことについては住民の意思によつて決定すべきであり、その住民の自由の意思を表明する住民投票というものは、国連管理のもとにおいて、自由投票によつて台湾の帰属を決定する手続を日本が独立国となつたあとでとるべきことが最も合理的であると思いますが、それに対する政府のお考えを伺いたいと思います。
  158. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれとしては、サンフランシスコ條約ですでに御承認を得ておる通り、これらの地域に対する権利、権原等を放棄しておるのでありまして、これをどういうふうに帰属させるかというのは、今後は連合国の決定する問題であります。従つて日本政府としては、今せつかくお話でありますが、これをどうしたがいいかというような意見を述べることは差控えるべき立場にありますので、ちよつと申し上げることはいたしかねるのであります。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは連合国の間にはそういうような考えもあり得るとお考えになりましようか。それともまた日本ではそういうようなことがいいとお思いになるでしようか。
  160. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としては、今申した通り、この問題についての言明は一切避けたいと考えております。連合国でどうするかということについては、まだ私は何ら正確なものは聞いておりません。
  161. 戸叶里子

    戸叶委員 では次に移ります。聞くところによりますと、一九四七年の二月に台湾の七百五十万の民族が国府官憲の暴力に対抗して、自由と民主主義を守るために全国内に蜂起しましたが、国民政府の軍事的弾圧のもとにその一部が虐殺されたということを聞いておりますけれども、台湾人の台湾をというスローガンとして、高度の自治あるいは独立を欲する人たちと、国民政府側に属する人たちとの関係はどういうふうになつているか、伺つておきたいと思います。
  162. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これもただいま友好関係の條約を結んで御承認を得んとしつつあるまぎわの相手国政府と国民とがおかしいというような議論をわれわれがいたすべき立場にないのでありますが、事実初めは誤解があつたかもしれませんけれども、最近は台湾の住民と政府との間は、非常にうまく行つているということを聞いております。
  163. 戸叶里子

    戸叶委員 私がそれを心配いたしますのは、けさの新聞に、李承晩政権に対する爆発の件が出ておりましたが、もしも国民政府が島民の意思を無規しておりますと、ちようどそれと同じように不満の爆発が起らないとも限らないものですから、この條約を結ぶについて、よく事情を調べて、そして民心の動向を調査した上に、こういう條約を結ばれようとしたかどうかを、もう一度確かめておきたいと思います。
  164. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点は御心配はないようであります。
  165. 戸叶里子

    戸叶委員 御心配はないといつてあつさり片づけられますと——政府の考えがそこにあるからしかたがないかもしれませんけれども、こういうような台湾の島民と国民政府の人たちとの間に調節がよくとれておらないときに、もしも日華條約が結ばれた場合、台湾の全体がこれに納得することができるか。全部が納得しなかつたときには、いろいろそこに問題が起きて来ると思いますが、そういつたことに対しましては、岡崎外務大臣は確かに自信があると言い切れるのでしようか。
  166. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそう考えております。
  167. 戸叶里子

    戸叶委員 では参考までに伺いたいのですが、台湾に今どのくらいの人口があつて、そしてまた大体どのくらい国民政府軍隊がいるかを承らしていただきたいと思います。
  168. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは非常に正確な数字は私も知りません。これはいずれ人口調査、センサス等がなければはつきりしたことは言えないと思います。かなり想像の数字になると思いますが、台湾におきまする人口は六百万人余りと考えております。そして軍隊は約六十万人くらいおるのじやないかと思つております。
  169. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点伺いだいのですが、けさの朝日新聞で、帆足さんたちが三千万ポンドの中共との貿易の仮調印を行うことが出ておりました。政府の中共に対する貿易の考え方は、どうも通産省と外務省との間に食い違いがあるように思いますが、そのことは別にいたしまして、こういうような民間の貿易に対して、外務省としてはこれを援助するお気持でしようか、それともこれを阻止しようとなさるお気持であるかを伺いたいと思います。
  170. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 問題はそういうふうにはつきり割切つて言えないところに、いろいろ複雑なるところがあるのでありまして、要するに何もほかの條件がなければ、民間の貿易を奨励して、できるだけ盛んにさせるのはあたりまえな話であります。それを政府が阻止する理由はちつともない。他方現状におきましては、国連が一定の措置をしておる。また北大西洋條約の関係国もいろいろの制限措置をとつておる。民主主義国家としての足並をそろえるために、われわれとしてはできる限りのことをいたすべき立場にあり、かつ朝鮮の問題は、日本のすぐ目の前で行われておるのですから、利害はほかの国よりもさらに日本の方が大きい、こういう関係がありますから、私としては連合国の足並を乱すような措置は一切とりたくない、こういうつもりでおります。
  171. 戸叶里子

    戸叶委員 では具体的にこの帆足さんなんかの仮調印のことに対しましては、岡崎外務大臣はどうお考えになりましようか。
  172. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは帆足さんがどれだけの物資を自分で持つてつて、そしてどういうふうにそれを輸送するのか知らぬけれども、仮調印というの場は何だかおかしな話だと思います。こういうものは、最近でも御承知の通り日本における共産党の方々もそうでありますが、何とかして日ソの間の貿易、中共との間の貿易をやらせろという立場で各種の宣伝が行われております。われわれとしてはこういう点については最も愼重な考えを必要とするのであります。その一番愼重な考えの根本の原則は、民主主義国家の足並を乱さないことであります。日本が抜けがけをするような印象を一切与えない、これが私の方針であります。
  173. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎外務大臣の中共との貿易に対する態度はきのうからで大体わかりましたが、ただ中共貿易は共産党だけがやろうとしておるのだというお考えだけは、間違つていることを一応訂正していただきたいと思います。
  174. 仲内憲治

  175. 並木芳雄

    並木委員 大臣にお伺いしておきたいのですが、この前大臣は英米の足並をむしろ日本の方に引寄せて、日本の足並にそろえさせるのだと意気軒昂たるところをくこで見せたところが今日本ではバトル法以上の輸出を禁止しておりますけれども日本が輸出禁止しておるところまで、英国やアメリカに対しても足並をそろえるようにこれから申入れをするつもりでありますか。
  176. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今いろいろ事実上連絡もするし、情報も交換しております。私の気持としてはなるべくそうしたいと思つておりますが、これは気持であります。
  177. 並木芳雄

    並木委員 それから通産省と外務省との間で食い違いがあるように報ぜられるのは、はなはだ遺憾でございますが、中共貿易に関してはどつちがイニシアチーヴを持つているのですか、最終的の権威ある機関はどつちなのですか。
  178. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共貿易によらず、何事もすべて内閣できめるのであります。各省はその内閣のきめた方針によつて自分の担当の事務を行うのであります。従つてこの問題も通産省がきめるのでもなければ、外務省がきめるのでもない、内閣できめるのであります。
  179. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、今までのところでは、外務省と通産省とで意見の食い違いがあつたということは、大臣はお認めになりますか。
  180. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 意見の食い違いは全然ございません。ただ表現が多少誤解を招いた点があつたかと思いますが、意見の食い違いは全然ありません。
  181. 並木芳雄

    並木委員 中共との国交にこれは非常に関係して来るのですが、この前確かに大臣はこの席で、中共は相手にするものではない。もし相手にするときが来れば、それは今の日華條約がそのまま適用されるときであるということを言明されたのであります。私はそれを聞いているときに、政府の態度としてはそれ以外にない、これはけつこうだと思つたものです。政府の方針も、ダレスあての吉田書簡によつてはつきり中共政権とはやらないのだということを言つております。ですから岡崎さんも腹をきめて、これははつきり具体的に表面に出したのだと思つて政府の基本方針というものが受取れたのであります。ところが、きよう冒頭それを取消し、少くとも訂正されたように思うのですが、もしそうだとすれば、場合によつてはまた中共との国交回復の余地があるのだというふうに逆もどりをしたのですか、どうですか。
  182. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはまず速記録でもごらんになつてから御質問願いたいのですが、私はそう言つているのではない。将来のことはこの條約がそのまま適用されるという、そういうことを言うわけがないのでありまして、また将来どういうふうになるのか、さつき山本君はいかにも私が国民政府が中共を征服したときに話がつくのだ、こういうことを言つたように言われるから、そうじやないのだ、これは仮定の問題に仮定を加えて言つておるのであつて、要するにいろいろの懸案事項が改まつて、先方が友好的な態度になれば、国民政府と同じように立つ政府が向うにあるのであるから、自然こういうことで詮議立てする意思はなくなつて来るのではないか、こういうことを言つただけで、要するに現在の中共政府の態度なり、立場においては、われわれとしておつき合いできかねるということは、何べんも繰返して言つておることであつて、何ら方針はかわりない。ただそんな先の先の先のことまであなたに聞かれてもお答えするわけに参らないのであります。無理にお答えさせられたことで、それを政府の方針のように聞き取るのはおかしい。あなたは何かしら無理に言質でもとつて振りまわそうとする。事実常識から考えても、そうじやないのですか。先の先の先まで今からああだろう、こうだろうと仮定を立ててお聞きになつても、そうなるかどうかわからない。そうでなく現実の問題ならお答えできるけれども、先の仮定のことをお答えすることが無理な話なのです。
  183. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、大臣ですからこれは大事なところですが、大臣の主観としては、この日華條約に入る以上は、日本政府としてはなるべく中華民国政権が中国を統一することを希望するのはもつともだろうと思うのですが、その点いかがですか。
  184. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうことはかりにどつちの場合におきましても、他国の内政に干渉するようなことで、一国の政府として言うべきではないと思います。私は現実状態として中華民国政府とこういう條約を結んだ、中共との間は現実状態はこうだ、それ以上のことは御説明できない。
  185. 並木芳雄

    並木委員 もう一点だけ確かめておきます。中い友好同盟條約があつて、中共とソ連との関係は表裏一体をなすものでありますが、ソ連との関係において不幸にしてこの間のサンフランシスコ会議では、ソ連の提案した條約というものはこれは問題にならなかつたのでありますが、しかしあれをソ連が訂正をして日本に條約を申し込んで来る場合、これは考えられると思うのであります。その場合に平和條約第二十六條によつて日本としては実質的に同一の條約の提案があつたときには、これに応ずる義務があるとあります。この実質的に同一の條約が提案されたときには応ずる義務があるということは、たとい実質的に同一でない場合でも、日本がこれに応ずるつもりならできるというように了解しておりますけれども、第二十六條のこの解釈をめぐつて多少疑問があるようであります。そこでソ連からそういう申出があつた場合の政府の態度、そうして第二十六條の適用に関する解釈、それをお確かめしておきたい。
  186. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 またこれも先の問題でありますが、私は第二十六條の規定の通り解釈しております。規定の通りのことを実行するつもりであります。
  187. 並木芳雄

    並木委員 それが実質的に同一條件だということは、日本相手方に平和條約よりも有利な條件を与えてもさしつかえないような條項がそのあとにあるのです。ですから他の連合国に与えた條件と同じではないけれども日本としてはややこれより不利になるけれども、その不利を忍んでもソ連とこの際條約を結んだ方が適当だという場合もあり得ると思うのであります。そのために聞いておるのでありますが、この解釈そのものについても疑問があるのであります。その通りと申されるけれども日本に対して不利な條件という場合でも、日本はこれに応じようと思えば応じ得られる、こういうふうに解釈されますかどうか。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは條約審議のときにすでに論議し盡された問題であるし、また私の非常に驚くことはこの、條約に賛成されました、改進党の最も外交通である並木君がこの條約に賛成されまして、白票を入れられた上でまだよくわからないとおつしやるのは、はなはだ私は当を得ないと思うのであります。この点は技術的問題でありますから、十分関係政府委員から御説明をいたします。
  189. 並木芳雄

    並木委員 ただいま外務大臣から基本的のことを聞いたのでありますけれども通産省として現在中共貿易における輸出制限品目を緩和するということを計画し、努力しておるということを聞いておりますが、その状況をまずお聞きしたいと思います。
  190. 牛場信彦

    牛場政府委員 お答えいたします。今日本の行つております輸出制限の品目が、いわゆるほかの民主陣営の国の行つておるところとやや食い違いがありますので、その食い違いを調整したいと思つておることは事実であります。これを緩和と申しますのはちよつと行き過ぎじやないかと思います。と申しますのは、私の考えておりますのは、結局ほかの国がやつておるところと同程度にしたいということであります。出過ぎているところがあればひつ込めるし、ひつ込んでいるところがあれば前へ出してそろえるという意味で、ただ一般に緩和するということではないので、調整するといつた方がいいではないかと思います。
  191. 並木芳雄

    並木委員 先ほど岡崎さんは、英米の足並を日本の足並にそろえる、そういう意気を示されておるのです。今の局長の御答弁では、やはりそこに食い違いが出て来るのです。局長としては、具体的に言つていただきたいのですけれども、バトル法のところまで日本の輸出制限というものを調整するつもりですかどうですか。
  192. 牛場信彦

    牛場政府委員 バトル法につきましては、タイトル・ワン、タイトル・ツーという二つのリストがありまして、公表されているのはそのタイトル・ワンの方ですが、タイトル・ツーの方は例示的な表になつております。これは秘密になつておりますが、アメリカ側の解釈によれば、不特定多数を含むということです。ですから考えようによつては、どういうものでも含み得ることになつております。従いましてそういうものを中共地区に対して出すのでも、やはりアメリカから援助を受けているなら、アメリカ政府とそういうものを出す場合は協議をしてくれということになつております。従いましてバトル法の線というものも突き詰めて参りますと、不特定多数のものでありまして、協議しなければならぬ面が非常に多いということになつております。
  193. 並木芳雄

    並木委員 それでは今まで禁止されておつたもので、今度それを解除しようと予定されておる品目だけあげてください。
  194. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは全部はつきり申し上げることはちよつとさしつかえがありますが、例示いたしますれば、紡織機みたいなものです。
  195. 並木芳雄

    並木委員 日本で今繊維製品、特に綿糸布というものは非常に関心を持たれているのですが、これに対する中共貿易の見通しを局長として示していただきたいと思います。
  196. 牛場信彦

    牛場政府委員 綿糸布の中共向け輸出は何も制限はございません。実際に行かないのは、これは中共が香港を通じて買い付けておるからであると思うのであります。直接に行つておりませんで、中共は主として香港を通じてやつております。ことに昨年の暮れには非常に大量に買いまして、そのために非常に日本の香港貿易が出超になつたことがあります。その後一時とまつておりますが、あるいはまたそういう買気が出て来るのではないかという観測をしております。
  197. 並木芳雄

    並木委員 今まで香港貿易というものは大部分が中共貿易であつたかどうか、あるいは香港経由で香港地域以外にどのくらい行つてつたか、その辺のところをひとつ伺いたい。
  198. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは中共向けの禁輸が一昨年の暮れに施行されまして、それ以来は中共向けに流れるもののパーセンテージは非常に減つているわけですが、最近でも約二割くらい中共に行つているのではないか。それからそのほか東南アジアに行つておるものもその程度あるじやないかというように考えられます。
  199. 並木芳雄

    並木委員 香港貿易と称せられるものの決済方法はどういうふうになつておりますか。いろいろあると思いますけれども、その実情について伺いたい。
  200. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまボンドで決済しております。
  201. 並木芳雄

    並木委員 全部ポンドですか。
  202. 牛場信彦

    牛場政府委員 そうです。
  203. 並木芳雄

    並木委員 いわゆる香港政庁と日本とで貿易の協定を結ぶような計画はありませんか。そのことを英国政府交渉するとか、香港政庁との関係について……。
  204. 牛場信彦

    牛場政府委員 香港はイギリスの植民地になつておりまして、従いまして本国の統制に服しておりますので、たとい日本がそういう希望を持ちましても、なかなか実現はむずかしいと思います。現に昨年の日英支払協定交渉の際にも問題になりまして、イギリス側はがんとして英帝国と同じ地位で、ほかと区別した取引を結ぶことは反対であるということを申しております。
  205. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、やはり日本の商社が香港に支店であるとか、出張所を持つことはわれわれ困難なことであると思いますが、その点はいかがですか。
  206. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはイギリス側として現実には制限しないと申しております。ただいわゆる永住許可証みたいなものはまだ出す運びに至つておりませんが、現在たしか六箇月だと思いますが、その滞在許可証を切りかえることは何も照会なく行われておりまして、現にたしか三社ばかり出ておると思います。
  207. 並木芳雄

    並木委員 中共との貿易で期待されるものの一つに大豆があるのですが、最近アメリカから輸入された大豆が非常に品質が悪かつたということを報ぜられております。この点調査の結果を御報告願いたいと思います。
  208. 牛場信彦

    牛場政府委員 大豆はおつしやる通り中共から買えば一番品質もいいし、安くなるのですが、アメリカの大豆というものは戰前からあまりよくないという定評がありまして、これはいろいろな事情があるのですが、とにかく機械で収穫いたしますために、非常に來雑物が多いということでありまして、最近トラブルが起つていることは事実でありますが、契約上検査が揚げ地、つまり日本に着いたときの検査でなくて、積み込むときの検査がフアイナルになつておる関係で、契約上の立場から申しますと、日本の業者の立場が弱いのです。それで将来の問題としては、いろいろ改善の方法を考えおりますが、まだ政府として取上げるところまで至つておりません。
  209. 並木芳雄

    並木委員 そういう場合、政府としては損害賠償について力を添えてやる方針はないかどうか。
  210. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは民間貿易でございますから、まず民間商社がやるはずでございます。その上で政府に持ち込んで参りましたら、何か政府としてはできないかということを研究することになるわけでありますが、まだそういう段階まで来ておらないわけであります。
  211. 並木芳雄

    並木委員 さつき岡崎国務大臣質問いたしましたとき、中共との貿易で帆足さんは何か契約をしたという報道が伝わつておりますが、岡崎さんは大分興奮して、あれについてはわれわれは知りませんといつて答弁をしませんでした。けれども通産局長としては、ああいう契約をして来て、いずれ日本政府の方にも報告なり、申請なりあると思いますが、あれはやはり実を結べばけつこうではないかと思いますけれども、ああいう契約をしたあとのこれからの手続というようなもの、それに対する政府の方針等というようなものをこの際お尋ねしておきたいと思います。
  212. 牛場信彦

    牛場政府委員 私も新聞で拝見しましたわけで、実際どういう話が行われておるか存じませんが、とにかく現在日本から中共地区へ輸出できますものは非常に少いのでありまして、きようの新聞に例示的にあがつておりました品目でも、ミシン、自転車というものは出ますが、あとのものは現在出ないことになつております。従つてあれはどういうふうにして今後やつて行かれるつもりなのか、ちよつと私としてはわかりかねます。
  213. 並木芳雄

    並木委員 では今後の対策として通産省としてはバトル法の中にきめられておる範囲のものでも、できればこれを日本としては解除して行きたい。通商の見地から解除して行きたいという態度を持りておられるかどうか。あるいは先ほど岡崎さんの言う通り、むしろこれを引締めて行きたいという心構えであるのかどうか、独自の立場からの見解を表明してもらいたい。
  214. 牛場信彦

    牛場政府委員 貿易の統制ということになると、これはただ輸出品目の統制以外にいろいろなほかの問題が含まれておりまして、従いまして私どもは品目の調整だけはやりたいと思つておりますが、ほかの点は政府先ほど岡崎外務大臣がおつしやいましたと同じような方針で行くべきではないかと考えております。
  215. 並木芳雄

    並木委員 ほかの点というのは、もう少し具体的に言つてもらいたい。
  216. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはもういろいろあると思いますが、船の問題でありますとか、決済の問題でありますとか、つまり実際に物を売買する場合に付随して起つて来るいろいろな現象はすべて含まれると思います。
  217. 並木芳雄

    並木委員 それは品目の調整をすれば、それに応じて中共貿易が発展をする線に沿つて通産省はやる意思であると思いますけれども、その点もう一度確かめておきます。
  218. 牛場信彦

    牛場政府委員 その点は現在以上に緩和して行くという考えは今のところございません。
  219. 仲内憲治

  220. 北澤直吉

    北澤委員 私は中共貿易に関する技術的な面につきまして、通商局長に二、三お伺いいたします。  第一点は、中共に対する貿易につきまして、三つの方式がある。西ヨーロッパ諸国は米国から軍事上、経済上の援助を受けておるので、いわゆるバトル法によつて中共貿易というものを処理しておる。それから日本占領中から輸出貿易管理令ですか、それによつてある品物は禁止し、それ以外のものは許すということになつております。それからアメリカでは大統領令によつてこれも処理しておる。そうしますと、アメリカのやつておることと、西ヨーロッパ諸国でやつておることと、日本でやつておることとの三つの間に差異がある、こういうふうに私は思うのであります。一番厳格なのが日本のやつておることであり、その次がアメリカであり、その次が西欧諸国、こういうように私は思うのでありますが、その三つの間の違いは一体どういうことになつておりますか、具体的に伺えたら伺いたいと思います。
  221. 牛場信彦

    牛場政府委員 今のお話ちよつと違うと思うのでありまして、一番厳格にやつておるのは、何といいましてもアメリカでありまして、これは中共とは全然貿易いたしておりません。その次に日本が位しておつて、西欧諸国は日本よりやや緩和された形でやつておるというのが実情だと思います。
  222. 北澤直吉

    北澤委員 私の聞いたところによると、アメリカではやはりセキュリティ・リストというものがあつて——ちよつとその点わからぬのですが、私の聞いておるところでは、アメリカの方が日本よりもゆるやかであると聞いておるのですが、その点は間違いありませんか。
  223. 牛場信彦

    牛場政府委員 セキュリティ・リストというのは、これは私ども聞いておりますのは、対ソ貿易——中共を除くソ連圏との貿易に大体それが適用されておるという話でございまして、中共に対しては、全然輸出はしないという方針だと聞いております。
  224. 北澤直吉

    北澤委員 それから西ヨーロッパ諸国ですが、いわゆるバトル法にのつとつてつておるのか、あるいはバトル法というものを最低限にして、それよりもつと進んだ輸出禁止の措置をとつておる国もあるのか。西ヨーロッパ諸国は全部バトル法そのままでやつておるのか、あるいはバトル法というものは最低限であつて、もつと進んだ輸出禁止をやつておる国が西ヨーロツパにあるのか、これを伺つておきます。
  225. 牛場信彦

    牛場政府委員 西ヨーロツパ諸国はアメリカと共同に会議をいたしまして、一定のリストをつくつて、それによつてつておるようでありまして、そのリストはでこぼこがございますが、大体においてバトル法のライン、これも先ほど申しましたように、相当不確定な要素が多うございますが、大体そのラインに近いところじやないかと思います。
  226. 北澤直吉

    北澤委員 この前の委員会における岡崎外務大臣答弁では、結局日本が中共に対して一番厳格な態度をとつておる、英米はそうでもない、むしろ英米を日本の線までひつぱつて行きたい、こういうふうな答弁をしたように私は新聞で寿見したのであります。今の局長のお話によると、アメリカの方が一番巌格である、その次が日本であるということになると、どうも外務大臣答弁と非常に違うのでありますが、一体その点はどういうふうになつておりますか、はつきり伺つておきたい。
  227. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは私どもの調べた範囲では、アメリカが一番厳重になつております。
  228. 北澤直吉

    北澤委員 それではその点はあとにしまして、次にバトル法の問題ですが、きようの新聞によると、上院で対外援助法の法案を通したときに、その修正條項としていわゆるケム修正條項というものを出した。このケム修正法によると、バトル法よりももつと厳格な共産圏に対する輸出制限の措置がとられておる。そこで第一に伺いたいのは、バトル法による禁輸品目と、ケム修正法による禁輸品目との間にどういう違いがあるか聞いておきたい。
  229. 牛場信彦

    牛場政府委員 このケム修正法というのは一体何を意味するのかということを、けさもアナリカの大使館とも話して来たのですが、まだ向うにも全然情報が入つておりませんで、どういうことかよくわからないということであります。バトル法が出ます前にケム法というものがあつたのでありまして、それはバトル法ができましたときに廃止しまして、今度の話はそれを復活するということではないように思います。従いましてどういうことになつておりますか、わかりませんが、バトル法ができます前のケム法によれば、その品目はバトル法よりもやや厳格になつております。
  230. 北澤直吉

    北澤委員 それではその問題は、もう少し政府の方でおわかりになつてから伺いたいと思いますので、次の点を伺いたいと思いますが、中共貿易——中共貿易と申しますと、結局香港経由の貿易が相当多いと思うのでありますが、香港と中共との貿易は、バトル法を施行してから非常に減つておるというふうにわれわれ見ております。大体年間に三億ドルあるいは三億五千万ドル、こういうふうに見るのでありますが、——今の三億五千万ドルは違いました。これはイギリスの香港に対する貿易、これが年間三億六千万ドル、こういうふうに存じておるのでありますが、このイギリスの香港貿易というのは、大体増加の傾向にあるものかあるいは減少の傾向にあるものか、この点を伺つておきたい。
  231. 牛場信彦

    牛場政府委員 香港につきましては、これは中共に対する一番大きな中継港になるわけでありますから、アメリカは当初から非常に厳格な態度をとつておりまして、たとえば綿花のごときも、香港には一切売らないという方針でございました。最近になりましてから、製品を中共に輸出しないという條件のもとに、幾らか綿花も売るようになつたようでありますが、そういう状況でありますから、香港の中共に対する貿易というものはずつと減つて来ております。従いましてイギリスの香港に対する貿易もうんと減つてつております。
  232. 北澤直吉

    北澤委員 この香港との貿易でございますが、最近通産省においては、香港向けの輸出については、多少緩和する措置をとることを考えまして、六月一日からこれを実行するというような報道もあるのでありますが、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  233. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはその方針の緩和というような問題ではないのでございまして、従来ある一定の品目の香港に対する輸出につきましては、香港政庁から出しますところの、ESCと普通申しておりますが、香港の地場でもつて消費するという証明をとつてから出しておつたわけであります。その中にカメラでありますとか、その他二、三小さな品目がございまして、これについてはほかの国はそういうものを必要としないで出しておる。日本だけそういうものを必要としておつたわけでございますが、香港政庁の方では、そういうものについては地場消費の証明は出さないということを申して参りました。そこでそれではこちらもはずそうということにして、二、三はずしたわけでございますが、決してその後は方針を緩和するとか、ないしは香港を通じて中共に物が流れやすいようにしようという意味ではないわけでございます。
  234. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけでございます。従来、朝鮮動乱の前は、日本と中共の間にいろいろな形で貿易があつたと思うのでありますが、その場合に中共側の方で、実際には約束しておりながら、その約束を破つたというふうなことで、だんだん中共貿易というものに対する日本の業者の信用が減つて来ておる、そのために貿易量が減つておる、こういうふうに私聞いておるのであります。この朝鮮動乱以前の中共貿易において、中共がそういうふうな約束を守らなかつたとか、そういうような例はどういう状態でありましたか、この点を承りたいと思います。
  235. 牛場信彦

    牛場政府委員 私はそういう例は存じません。
  236. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  237. 林百郎

    ○林(百)委員 石原外務政務次官にお聞きいたします。先ほど安全保障條約に基いて日本に駐留する米軍は、観念的には国連憲章第三十九條に基く朝鮮作戰軍としての米軍も含まれておるということを言われましたが、そうすると、日本に駐留する駐留軍が将来国連軍として、いわゆる国連憲章第三十九條に基いて朝鮮軍事行動を起すということも考えられるわけですか。
  238. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国連軍としております関係におきましては、それは当然あり得ることであろうと思います。
  239. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、先ほど言いました通りクラーク大将日本駐留軍司令官であり、同時に朝鮮作戰軍最高司令官であるという二つ性格を持つておる。同時に日本に駐留する米軍も、日本に駐留する駐留軍である同時に、国連憲章第三十九條に基く国連軍という資格二つ兼ね得る。そうすると、日本におる駐留軍が、国連軍という面においては、将来そのまま朝鮮の作戦軍として行動し得ることも考えられるというように解釈していいですね。
  240. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 その通りであります。
  241. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。  その次に、日華條約の問題についてお尋ねしたいのですが、中国の主権者をだれに選ぶかということは、英米の間では日本に選択させるというし、日本吉田総理は、これは英米で決定すべきだということで、お互いに火中のくりを拾うことを避け合つていたように考えられていたのであります。ところがダレスに対する吉田氏の書簡以来、これが遂にこの火中のくりを日本政府みずからが拾わなければならないようなことになつた。このことについてはアメリカ側の圧力があつた。むしろ吉田政府としては、この問題は英米の間で決定してもらいたかつた。ところがこの火中のくりを遂に米国側の圧力によつて日本がみずから拾わざるを得なくなつたということについては、イギリス側もこれを認めておる。また周恩來中華人民共和国外相も、米国政府日本吉田政府を強制して、台湾の国民党残存集団といわゆる平和條約を締結させたというようなことを言つておるのであります。おそらくソビエト側もそういう見解だと思うのであります。そこでなぜ日本がこの火中のくりを拾わざるを得なくなつたのか。これは明らかに国連あるいは少くとも英米側が決定してから、日本が英米側の決定に基いて交渉すればいいのであつて——アメリカは中共を認めない、イギリスは中共を認めておる。連合国軍の間にもこういう意見の相違があるのに、なぜ日本が火中のくりを拾つて連合国側が決定しないうちに、みずから国府政権と手を握るようなことになつたのか、その経緯をひとつあなたからお聞きしたいと思います。少しむずかしいかもしれませんが、あなたからひとつ答えてください。大臣は逃げて行つてしまつたからしようがない。
  242. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は、この前の委員会で一応答えが済んだと思つておりますが……。
  243. 林百郎

    ○林(百)委員 それがまだどうもはつきりしないのです。
  244. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはたびたび言われておりますように、日本の同情は従来から国府にあつたのでありまして、同情といいますか、国民政府を認めて来ておるのであります。今回も日本独自の判断によりまして、国府側と折衝する、こういうことになつたのでありまして、何らの圧力によつたものでないということは、この前も申し上げた通りであります。
  245. 林百郎

    ○林(百)委員 何で台湾に逃げて行つたような蒋介石に、日本政府はそんなに同情するのか私にはわからない。四億五千万の中国のへ民の支持を得て、実質的に広大な中国の領土に善政をしいて、今や国運隆々として栄えておる中華人民共和国に、なぜあなたは同情しないのですか。こんなアメリカの手先である国府なんかに同情して、今や、————————————————情けない吉田内閣の外交政策は、私は遺憾だと思う。それについては、なぜ国府側にそんなに同情をあなた方は持つのか、その点が一つ。  それから倭島局長にお聞きしたいのは、一体国府政権、国府政権というが、亡命政権というのは、外国軍隊によつて外国軍隊の圧力によつて、その国を追い出された政権が、一時よその国に逃げて行くのが亡命政権だと思いますが、国内の革命が起きて、逃げるところがなくて、台湾に逃げて行つておる、これは政権の実質も何もないものであります。これがどうして独立した政権の資格を持ち得るのか。領土もない、国民もない。国民については、これは住民を国民とする——台湾、澎湖島におる住民を国民とみなすというような苦しい言葉を使つておる。私はこれは独立した政権の資格はないと思う。一体国府に独立した政権の資格があるというならば、領土はどこにあるのか、国民はどこにいるのか、どういう実質的な政体を持つておるのか、これを私ははつきりしてもらいたいと思うのです。石原さんはどうしてそんなに国府に同情するのか。そんなにあなた、台湾に逃げて行つておる人に同情する必要はないじやないですか。
  246. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国府との関係は従来からの交渉でありまして、ここで初めて認めたとか認めぬとかいうことではない。従来からの交渉相手でありまして、それを引続きやつてつたということであります。それから中共政権に対しまして、これを認められないといいますか、交渉相手にできないということについては、吉田・ダレス書簡にはつきり出ておるところでありまして、ここで私から申し上げるまでもないと思います。
  247. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなた方は中華へ民共和国という政権が中国にあることは認められるのですか、しかしそれとは外交関係を結ばないということなんですか。
  248. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 中国に一つの共産政権があるというこの事実は、事実として認めております。事実はあるのであります。
  249. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、その事実ある中華人民共和国の領土と国民とは、どこに支配力を持つておると考えられますか。
  250. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは、日本においては別にその共産政権を政府とかなんとか認めていないのでありまして、日本が認めております中華国民政府は、現実には大陸に支配力が現在及んでいないということを、たびたびここで申し上げておるのであります。
  251. 林百郎

    ○林(百)委員 はつきりしないです。外交上その政権を吉田政府相手にするしないは別としましよう。あなた方とわれわれとは根本的に立場が違うから……。しかし事実上北京に中華人民共和国という政権があることは、この事実は認められるのですか、それともこれは否認なさるのですか。
  252. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これを国家として認めるとかどうとかという外交的な問題は別問題でありますが、共産政権があるということだけは、これは現実の事案であろうと思います。
  253. 林百郎

    ○林(百)委員 その共産政権というのは、領土だとか人民はどういう範囲に支配力を持つておる、あるいは政権の支配力を持つておるというようにお考えになるのですか。
  254. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは、日本といたしましては、この共産政権を国家として認めておるわけではないのでありますから、その国家の領土、人民がどこにあるかというようなことは、私はここで私から言うべき限りではないと思います。
  255. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは政権があることは認めるけれども、その政権がどこにどの程度の国土と国民を持つておるかということは認めない、そんなばかな話がありますか。政権というのは、国土と国民と一定した政治体系を持つておるのが政権なのでしよう。政権が事実上あるということを認めるならば、その政権が支配力を持つておる国土と国民はどういうものだということを認めなければ政権にならないじやないですか。
  256. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 一つの事実として政権があり、現実には中国大陸を方配しておるようでありますが、現段階におきましては、日本としては別に国家としても政府としても認めておるわけでも何でもないのでありまして、ただそういう事実があるということは韻実の事態でありまして、これは認めぎるを得ないのであります。
  257. 林百郎

    ○林(百)委員 ようであるというところまで行きましたから、今日はこの程度までにしておきまして、この次に伺いたいと思います。  そこであまり石原さんをいじめてもどうかと思いますが、日本が国府とこういう條約を結ぶごとによつて、中華人民共和国を認めているところのイギリスだとか、あるいはインドだとか、そのほかずつと中華人民共和国を認めている国々があります。こういう国々に対しまして、日本の外交的な関係がむしろ不利な立場になるのではないかというように思われます。同じ連合国側でも一方では中華人民共和国を認あている国々があるのであります。たとえばインドだとかビルマとか、パキスタンもそうかと思いますし、イギリスもそうであります。こういうものに対して、むしろ日本がみずから進んでアメリカ側の意を迎えて国府と手を握ろということは、こういう国々に対して外交的にむしろ不利な立場に立つのではないかと思いますが、この点についてはどう考えますか。
  258. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 独立国家としての日本の外交でありますので、これけ他国からどうこう言われることはないと思います。しかし現在これが別段不利になつておるとも考えておりませんし、外交上の利益、不利というようなことは、総合的に全体として判断して行かなければならぬ問題ではなかろうかと思います。
  259. 林百郎

    ○林(百)委員 その次の問題ですが、周恩來中華人民共和国外相のこの日華條約に対する声明を見ますと、これは将来の北太平洋同盟の一つの布石だ、日本、フィリピン、韓国、国府の間に北太平洋同盟を締結することをアメリカ側では考えているらしいというのです。現に台湾にはアメリカ側の艦隊と空軍基地はあるけれども、陸軍の人的要素は国府並びに日本側の人的資源でこれをまかなつてアメリカとしては海軍、空軍だけの責任を持ちたいということで、アメリカの軍の司令官も海軍の司令官にしているという点も見られるのであります。また国府側の意向としても、将来日本と集団安全保障とりきめをしたいという意向が強いようであります。こういう集団安全保障、要するに北太平洋同盟を締結するためには、日本と国府との間に何らかのとりきめがなければならないということで、このたびの日華條約が締結されたのではないかということを、周恩來外相も言われ、われわれもそれを信ずるいろいろの資料があるのであります。ということは、当初日本の新聞に発表されました国府側の対日講和條約の草案を見ますと、サンフランシスコ條約第五條の(C)項、要するに将来日本と国府側とが自発的に集団安全保障のとりきめを締結することを承認するという條項が確かに入つていたのであります。ところが今度とりきめられました日華條約では、ただこれが第六條で国連憲章二條という形にかわつているのでありますが、これはやはり将来の北太平洋同盟の一つの布石として日華條約が結ばれたのではないかというようにわれわれには考えられるのでありますが、これは絶対しないならばしないということを言つてもらいたい。そういうことも考えられるならば考えられるということを、政治的な立場から次官にお聞きして、なお局長には、当初国府側から出ていた草案には、地域的な集団安全保障とりきめをするという條項が確かにあつたと思うのですが、これがどういう経過から第六條の国連憲章二條という形にかわつて来たか、その経過を聞いておきたいと思います。
  260. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまいろいろのことを援用されたり想像されたのでありますが、この條約は一日も早く善隣とは友好関係に入りたいということからできておる條約でありまして、林委員が言われたような問題とは何も直接関連は持つておりません。
  261. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今お尋ねがありましたのでお答えいたしますが、中国側の元の草案には、今想像せられたような地域的の安全保障とりきめをやるというようなことはありません。
  262. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、地域的安全保障とりきめの話は、日華條約の交渉中には全然出なかつた、お互いの集団的な安全保障とりきめの話は全然出なかつた、また将来そういうとりきめをする意思もないということを、政府代表して石原次官ははつきり答弁されますか。それから局長から、この日華條約の交渉中そういう話はなかつたならなかつたということを、はつきりここで言つていただきたい。
  263. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 交渉中には全然そういうことはありません。
  264. 林百郎

    ○林(百)委員 将来はどうですか。
  265. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今私がここで将来のことまで言うことはできないのであります。
  266. 林百郎

    ○林(百)委員 その将来のことが国民は心配なのです。大体外ぼりを埋めて内ぼりを埋めて、それから本丸をとるというのが、昔からの作戦であり、歴史的な戰術ですから、日華の講和條約を結んで、その次には北太平洋條約を締結するという布石になるのではないか。現に周恩来はそう言つている。それから国府側も、日本と集団安全保障とりきめをしたいということを言つておれば、国民とすれば心配するのは当然だと思うのです。だから将来もそういうとりきめをするのか、しないのかということを、あなたに聞くのはあたりまえだと思う。  それから時間がありませんから、ついでに次の問題を局長にお聞きしたいと思うのです。議定書の一項の(b)によりますと、サンフランシスコ條約第十四條(a)に基き日本国の提供する役務賠償はこれを放棄すると、あなた方のいう中華民国は言つているのでありますが、これは中国大陸全部に対する役務賠償を放棄するということを言つているのですか。
  267. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 重ねて申し上げますが、この條約には林委員が言われたような予見とか予定とかいうようなことは何らいたしておりません。
  268. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今御指摘の議定書一の(b)の関係でございますが、これは中華民国に関する限りこういう合意に達したということであります。
  269. 林百郎

    ○林(百)委員 それは交換公文の第一号には、本日署名された日本国中華民国との間の平和條約に関しては、中華民国政府の支配下に現にあるということで、要するに現在では台湾、澎湖島に関する限りですか。そうするとこれは意味をなさなくなる。
  270. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この前もその点は御説明を申し上げたと思いますが、台湾、澎湖島の関係では賠償の関係は起つて来ないとわれわれは了解しております。
  271. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなた方のいうこの條約で、将来支配下に入つたときのことをここでは言つているわけですか。
  272. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その通りであります。
  273. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうとりきめをする権限は私としては全然ないと思う。先ほどつたように、本土は現に中華人民共和国が支配しているのでありますから、人の支配している所の役務賠償までかつて中華民国が放棄しますというようなことを——いかに自分にはどうせ一文の損にもならないからといつて日本をつるような形でこんな欺満的な條項を入れることについてはわれわれ納得できないのでありますが、この條約は台湾、澎湖島に関する限り現に支配下にあるということでここではとりきめたと思うのに、場合によると本土に及ぶようなことまでとりきめてあるということは非常に矛盾だと思います。たとえば議事録の二でありますが、議事録の二にある満洲国及び江精衛政権の権限のことにつきましても、これは大陸に関することですから、これもやはり現在すぐ効力が発生ずるというのではなくて、将来本土があなた方の言ういわゆる中華民国の支配下になつたときはこうなるということなので、今すぐ本土に関係する満洲国あるいは圧精衛政権のとつた処置に関して、現実に支配しているのは台湾、澎湖島に限るとあなた方が言つている中華民国代表がこれをとりき折る権限はないと思いますが、これはどういうことなのです、議事録の二は。
  274. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この條約はまず第一に欺購的だという御意見のようですが、われわれそう考えておりません。  それから賠償の問題に関しまして、台湾、澎湖島の関係先ほども申し上げたのでありますが、交換公文の第一号のところにありますように、「支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域」という二つの建前になつておりまして、「又は今後入るすべての領域」のうちで支配に入ればそれの関係事項がおのずからこの條約の條項に従つて適用せられるというのでありまして、中華民国政府に関する限り、中華民国政府が支配を現に持ち、将来も持つ関係において、この議定書の一の(b)が生きるわけであります。従つて何らわれわれは欺瞞的だとは考えておりません。  それからもう一つは議事録の二の点に言及せられたのでありますが、この点は先ほど大臣から御説明をいたした通りでありますが、さらに一言敷祈をいたしますれば、この点は直接この條約の條文には関係ございませんが、しかしこの了解に達しました事項については、わが国でも関係がある事項であります。向うにも関係があると思つている事項であります。そして両国がこの関係のある事項について今後いろいろ交渉をやる。それで合意に達した際にこれを移管し得る。先ほど大臣が御説明いたしましたが、そういう建前の了解であります。従つてこれは大陸に関係あるとかないとかいうことと離れまして、ここに書いてありますような財産の処理に関して今後交渉を行つて両国間の同意がある際に、同意のある限りにおいて処分をする、あるいは移管をするというようなことが起き得るということが書いてあるわけであります。
  275. 林百郎

    ○林(百)委員 この点私はおかしいと思うのですが、満洲国及び汪精衛政権というのは中国本土に関しての問題でありますから、これはやはり中国本土が——これはあなた方の立場に立つて言う。われわれはこの條約は初めから無効だと思つています。中華民国なんというものは残存グループで政権の対象になつていないと思いますが、かりにこの條約の立場に立つても、満洲国、圧精衛政権のやつたことに対しては、中国本土に今事実上支配権を持つている中華人民共和国と話し合うのならわかりますが、あなた方ですら台湾、澎湖島にしか支配力がないというこの蒋介石政権と、満洲国、汪精衛政権のとつた処置についてとりきめる権限はないと私は思いますが、この点をもう一度念を押しておきます。
  276. 倭島英二

    ○倭島政府委員 そこの同意ざれた議事録の中に、「日本国における」という字があることに御注意願いたいと思います。日本にある財産について中華民国政府一つの意見なり希望を持つている、日本政府一つの意見と希望を持つているという場合において、双方が交渉同意をした際に、同意した範囲の処理をし得るという了解を書いただけであります。
  277. 林百郎

    ○林(百)委員 なお住民の国籍問題について私聞きたいことがありますが、きようは時間の関係上割愛したいと思います。最後に牛場通産局長にお聞きしたいと思いますが、一体バトル法が適用になると、日本の国が停止されるという軍事的経済的財政的援助の供与というものはどういうものですか。
  278. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはバトル法ができましたときにアメリカはつきり申しておりますが、たとえば輸出入銀行の借款でございますとか、ああいうようにアメリカの財政資金を使つて借款を外国に与える、そういうものは援助の中に入るということであります。そのほかもちろん現在MSAでございますか、あれのやつております軍事援助、これはもちろんみな入ると思います。
  279. 林百郎

    ○林(百)委員 アメリカ日本に供与している軍事的援助というのは何ですか。
  280. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは今日本がもらつてるのでなく、そういうものが理論的に入るということを申したのであります。
  281. 林百郎

    ○林(百)委員 これは具体的に何を援助しているか。日本軍隊がないのに軍事的援助というものはあり得ない。それから日本は借金をしているのでなく、向うが駐留している間駐留費を出している。それから物を買う場合にはちやんと金を払つているので、どういうことになるか。それが一つ。それからバトル法、中国貿易の方についてもアメリカと相談しなければならないということはないと思いますが、何かそういう義務があるのですか。
  282. 牛場信彦

    牛場政府委員 今日本が具体的にもらつているといいますか、受けている援助といえば、現在におきましては輸出入銀行の例の綿花借款だけだと思います。それからバトル法に関しまして何も日本義務を負うわけじやないのでありまして、援助を求めるならば相談しろということでありまして、決してこれは日本が一方的に向うから義務を押しつけられているというものではないと思います。
  283. 林百郎

    ○林(百)委員 それならそんなに遠慮しないでいい。どうも遠慮している。  それからもう一つ。たとえばイギリスは中共とどんどん貿易をしているのでありますが、イギリスに対してバトル法が適用になつたということは聞いたことがないし、きようのラジオによると、ケム修正法をアメリカの上院で通過させるのは、これに対してイギリスの援助をますます強めたいためにケム修正法をつくつて、よその国の援助を制限する。ところがそのイギリスは御承知の通り中共と貿易している。そうしたら何も中共と貿易することは、必ずアメリカのいろいろな援助の供与を拒否されることには私はならぬと思いますが、あなたはイギリスに対して中共との取引をしたということを理由に、アメリカがバトル法を適用したというようなことを聞いておられるかどうか、その点が一つ。それから先ほど並木君からも話がありましたように、私はこれは明らかに政府部内の意見が一致してないと思いますが、一昨日の岡崎外務大臣は、日本のような厳重な線まで英米の禁止を厳重にするように努力すると言つている。それから日本の通産省は、わざわざ香港まで行つて、何とかして中共の貿易を広げるように、これは通産省の事務官の人がわざわざ行つて交渉しているのに、これをぶちこわすような声明を岡崎外務大臣がしており、通産省と外務省との間に明らかに意見の相違があると思います。岡崎外務大臣の、日本の貿易管理令の線まで英米、ことにイギリスの輸出制限を厳格にするという方針と、今通産省が行おうとしている、何とかして貿易管理令の第一表を緩和しようとしている方針と、これは全然違うと思いますが、その点岡崎外務大臣答弁について通産省としてはどう考えられるのか。あなたに聞いても無理かもしれませんが、通産省として努力していることに水をかけることになると思いますが、この点についてどう考えますか。
  284. 牛場信彦

    牛場政府委員 最初のイギリスの問題でございますが、イギリスはアメリカともよく協議いたしまして、大体バトル法のラインで輸出品目をきめましてやつております。従いまして、アメリカも十分了解してやつておることでございますから、中共貿易をしたためにアメリカが対英援助をとめたというようなことは私は聞いておりません。  それからあとの問題は今おつしやいましだ通り、私にはちよつと答えるのが無理な問題でございますからごかんべん願います。
  285. 仲内憲治

    仲内委員長 先ほどの林君の発言中、不適当と思われる箇所がありますれば、後に速記録を取調べた上、委員長において適当に処置いたします。     —————————————
  286. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは次に移ります。北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件、及び千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件を一括議題といたします。政府側より逐次提案理由の説明を求めます。石原政務次官。
  287. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま議題となりました北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、昨年署名された平和條約第九條で、公海における漁猟の規制または制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始することを約束いたしました。この趣旨に基いて、日本国政府の主催のもとに、日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の間の三国漁業会議が、昨年十一月から十二月まで東京で開催され、この会議において、北太平洋公海漁業に関する国際條約案及び北太平洋公海漁業に関する国際條約案附属議定書案が採択され、かつ勧告されました。日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の政府は、これらの條約案及び附属議定書案について、軽微な字句の修正を行つ走上、これらの案により、條約及び附属議定書締結することに意見が一致しましたので、本年五月九日に東京で各自の全権委員を通じてこの條約及び附属議定書署名いたしました。この條約及び附属議定書は、日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の三国の共通の関心事である北太平洋の漁業資源の最大の持続的生産性を確保するため、三国の間で有効かつ適切な措置を講ずることを目的とし、わが国にとつて適当なものと認められます。  よつて、ここにこの條約及び附属議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に議題となつております千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約につきまして、提案理由を御説明いたします。  千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約は、政府間の合意により、画一的な原則及び規則を設定することによつて海上における人命の安全を増進することを目的とし、一九二九年の同名の條約を改正してこれにかえるため、一九四八年四月二十三日からロンドンで開催された海上における人命の安全のための国際会議で作成された條約であります。一九二九年の條約作成のための会議には、わが国は、これに参加し、一九三五年これを批准してその当事国となり、爾来第二次世界大戦の勃発まで忠実にこの條約の規定を遵守して参りましたが、戦時中及び戦後は、一時この條約の適用を停歩せざるを得なかつたのであります。その後昨年八月、わが国はあらためて同條約の履行を宣言し、條約に基く証書の発行を行つて今日に至つているので、現在では、同條約の加盟国としての地位が保たれているものと考えてよいのであります。一九四八年の條約は、前述の一九二九年の條約成立後の航海学の進歩、及び第二次世界大戦中の著しい技術の発達の結果、かもし出された機運により作成されたものであつてその趣旨において一九二九年の條約と差違あるものではありません。  およそ国家として、自国の船舶に対し、人命の安全を確保するための措置をとらせることは、條約の締結をまたずとも当然のことでありますが、さらにこの條約は、その当事国となるごとにより、海上における相互扶助の精神を発揮させることを義務づけており、この條約に加入することによつて外国の港において不当な検査を受けて、船舶の運航に支障を来すことのないようにすることは、きわめて重要なことであり、この一事のみからも、このような国際條約に加入することの意義は、はかり知れないもの、があります。  なお、わが国は、昨年九月八日サンフランシスコにおいてこの條約に加入することを宣言しておりますので、一日も早くこれを受諾して、この分野における国際協力に積極的に参加することが、わが国の国際的信用を高めるゆえんであるとともに、一方、この條約そのものの効力発生の日が、本年十一月十九日である点から見て、わが国の受諾がこの目の前に行われていることが望ましいのであります。よつて、この国際文書の受諾について御承認を求める次第であります。  右の事情了承せられ、何とぞ愼重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを切に希望いたす次第であります。
  288. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまの両件につきましては、次会に質疑を譲ることといたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
  289. 並木芳雄

    並木委員 日華條約といい、この漁業條約といい、非常に重要な條約でございます。先ほど質問応答でもわかります通り岡崎外務大臣だけではやはり答弁し切れない点もありますので、できるだけ早い機会に一度総理大臣の出席を求めてその意見を徴したいと思いますから、さようおとりはからいを願います。
  290. 仲内憲治

    仲内委員長 よろしくとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十九分散会