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1952-05-21 第13回国会 衆議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十一日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 近藤 鶴代君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       中山 マサ君    守島 伍郎君       松本 瀧藏君    山本 利壽君       林  百郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外国為替管理         委員会委員長  木内 信胤君         外務政務次官  石原幹市郎君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第二課         長)      東郷 文彦君         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      宮川新一郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月二十一日  戸叶里子君が理事に補欠当選した。     ――――――――――――― 五月十七日  未帰還者救出並びに戦犯者減刑等に関する陳  情書  (第一八三六号)  引揚問題根本的解決に関する陳情書  (第一八三七号)  真珠貝採取事業に関し濠州政府漁業条約早期  締結に関する陳情書  (第一八三八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  外国領事官に交付する認可状認証に関する  法律案内閣提出第二二四号)  国際植物防疫条約締結について承認を求める  の件(条約第七号)  千九百二十三年十一月三日  にジユネーヴで署名された税関手続簡易化に  関する国際条約及び署名議定書締結について  承認を求めるの件(条約第八号)  国際復興開発銀行協定への加入について承認を  求めるの件(条約第九号)  国際通貨基金協定への加入について承認を求め  るの件(条約第一〇号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会します。  国際植物防疫条約締結について承認を求めるの件、千九百二十三年十一月三日にジユネーヴで署名された税関手続簡易化に関する国際条約及び署名議定書締結について承認を求めるの件、国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件、国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件、外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案、以上五件を一括議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 通貨基金関係木内委員長が見えておるとのことでありますから、質問をしておきたいと思います。  外資導入関係でございますけれども、一万田日銀総裁がこの間、金でなく物の輸入によつて外資導入すべきであるという演説をしております。為替から見た場合に、委員長はそれをどういうふうにお考えになりますか、主力をつまり物輸入によつて外資導入というものをやつて行くべきものだ、という重点的な説に対しての委員長の所見をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  4. 木内信胤

    木内政府委員 お答えがむずかしいのでありまして、と申しますのは、御質問意味並びに一万田総裁が言われた意味というものが、私にはつきりのみ込めないのでありますが、外資導入というものは外貨を借りるということでありますから、一応外貨が手に入るのです。それをただ向うへ積んでおくということはない、必ずそれは物になつてつて来るはずのものであります。ですから外資導入である以上は必ず物の形で入つて来るものでありますが、そこに問題が起るのは、借りる場合、直接にあるAという会社外国のBという会社から借金の契約をした、そのときにそのAという会社が必ずしも直接に輸入しない場合がある。たとえば電源開発のごときは電源開発を担当する会社というものは、砂利やセメントや労力というものがたくさんいるのであつて向うからの輸入品というものは必ずしも多くはないのです。そういうような会社が多額の外資を借りてくれた場合には、それは日本国外貨というものはふえることになる。それを別途違う人間が輸入することによつて、いずれは物が入つて来る、こういう関係になつて来る。その関係のどこをとらえて一万田総裁がおつしやつたのかよく存じませんが、外資というものはそういうわけであります。私の考えとしては、何も直接にその外資を使う関係者が借りるばかりが外資導入ではない、こういうふうに考えております。
  5. 並木芳雄

    並木委員 一万田総裁が言われた意味は、日本の商社が国内資金として使うために、金そのもの輸入する、国内だけに使うということではインフレを助長ずるということを心配したのだろうと考えます。従つてもつぱら物によつて外資導入をはかるべきだという趣旨だろうと思うのです。ただいまのお答えによつて政府としては特にそういう色をつけて外資というものを扱つておらないというふうに承つたのですが、それでよろしゆうございますか。
  6. 木内信胤

    木内政府委員 この点は私どもの見ておりますところでは、政府部内にも必ずしも意見が明確に一致していないのでありまして、今申しましたことは私の考え方でありまして、他の席でも問題になつているのですが、外国為替管理委員会というものの職責いかんということであります。どういう外資輸入すべきかという問題に対しては、私は外国為替管理委員会というのは概して意見を述べる立場にあつて、決定する立場にございませんので、私は意見を申し述べておりますが、その決定者は別途大蔵大臣であるか、安本長官であるか、あるいは通産大臣であるかは存じません。その辺のところでおきめになることであります。ですから私の申し上げましたことは外国為替管理委員会意見とおとり願います。
  7. 並木芳雄

    並木委員 もちろんそれでけつこうです。そこで通貨基金加盟したあかつき、日本として外貨を買い入れるわけですが、それに対する計画はできておりますか、日本政府としての機構計画でございます。
  8. 木内信胤

    木内政府委員 その問題はまつたく私の管掌外でありまして、私は存じません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 ポンドドル関係でございますけれども、今ポンドドル関係手持ち外貨についての問題がいろいろとりざたされておりますが、現在どういうような状態になつておりますか、ドル不足ポンド過剰というようなことの解決方法などについての委員長の御意見を承つておきたいと思います。
  10. 木内信胤

    木内政府委員 現在は御承知の通り、昨年八月三十一日に締結しました日英支払協定によつてドル・クローズを撤去しまして以来、ポンドは非常に受取り超過になつております。その傾向はいまだにとまることはないのでありまして、現在は一億一千万ポンドをはるかに越したという、支払協定締結当時思いも寄らなかつた事態になりつつあります。しかしながら一方、そのために外貨の受取りがドルからポンドに移つてしまつたというところまではまだ来ていないかのごとくでありまして、ドルもまた依然として増加傾向を加えております。従いましてこの問題はいろいろな観点からながめなければなりませんが、解決策として打たれたものは、日本政府側としては格別根本的なものはまだないのでありまして、為替管理委員会意見としてはそれは嘆くべき状態だと考えております。しかるに一方英国政府の方におきましても、諸外国に債務が重なるということは好ましくないともちろん考えておりまして、彼みずからの方から輸入制限処置をだんだん強化して参つた関係上、先方措置によつてポンド累積ということだけはあるいは今までのような調子ではなく、減つて来るのかもしれません。そういう徴候がやや見え出したというのが現状であります。しかしながらポンド問題と称するものは、ポンド累積ばかりではないのでありまして、ポンド公定相場というものはポンド圏の実際相場、実際の物価状態を必ずしも反映していない、いわゆるポンドの実際相場公定相場の下にあるのではないかというふうに思われる点があるのでありまして、よしんば貿易の出入りは均衡いたしましても、実際相場ならざる公定相場で取引することの害というものはやはりとまらないのであります。かりに先方措置によつて累積というものはとまるにしても、この問題は決して解決したのではないのでありまして、私はその問題に対して日本政府はしかるべき措置をとるべきである、その措置はまだとられていない、それは嘆くべきことだと考えております。
  11. 並木芳雄

    並木委員 為替レートの問題ですが、委員長としては、日本為替レートを動かすべきものでないという御意見であるか、あるいは将来動かす必要があるのではないか、どんなような御意見を持つておられますか、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  12. 木内信胤

    木内政府委員 為替レート三百六十円の基準相場を現在動かす必要は少しも感じられません。また将来もその必要が起らないように経済政策をあんばいして行くべきものである、将来ともかえてはならないと思います。また経済政策を適当になすなら、かえる必要はないと考えております。
  13. 並木芳雄

    並木委員 それでは外務当局質問しておきます。それは領事官に交付する認可状のことについて、一点お尋ねしておきたいことがございます。外国領事官に交付する認可状認証天皇がおやりになるというのですが、これに関連して私は国際連合加盟を申し込むに際して、天皇認証があつたかどうかということをお聞きしたいのであります。まず国際連合への加盟はもう申し込まれましたかどうか、それをお尋ねいたします。
  14. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは国会の承認を得ましてから正式に申込みをする、こういうことであります。
  15. 並木芳雄

    並木委員 その場合に、申込書に対して天皇認証を必要とするように私ども考えるのですけれども外務省としてはどういうふうに扱うつもりですか。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところでは加入書には天皇認証はいらない、こういう解釈であります。
  17. 並木芳雄

    並木委員 それはどういう理由に基くものか。私がこれに関連すると申しましたのは、外国領事官に交付する認可状、これくらいなものに対して、天皇認証をするくらいなら、国連加盟その他外国に対するいろいろの申込書申入書、そういうものは重要文書でございますから、天皇認証を必要とするのではないかという見地からお尋ねをしておるのであります。どういう理由から必要でないとおつしやるのか。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは憲法第七条におきまして、第八号に「批准書及び法律の定めるその他の外交文書認証すること。」、こういうことになつておりますので、法律に定めてあれば格別でありますが、まだその法律が現在ではないのでありまして、そういう関係で、重要性というようなことにつきましては、さらに今後の問題として研究しなければなりませんが、ただいまのところでは憲法第七条の条章に該当していない、こういうことになると解釈します。
  19. 並木芳雄

    並木委員 研究しなければならない問題であるということがわかつておれば、まだけつこうなんです。この場合は、外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案というものをつくつて出してわざわざ法律をつくつて出すくらいなら、国連加盟とかいうような重要な申込書に対しては、当然法律案を提出して、天皇認証を得るようにするのが、法律趣旨にも合致するのではないと私は思うのですが、この点いかがですか。
  20. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 外国領事官認可状認証の問題は、これは提案理由でも御説明申し上げておりますように、一つ国際慣習上の儀礼になつておりますので、取急いで法律の御審議を願つておるわけでありますが、こういう加入書認証するかどうかということにつきましては、外国の例におきましても、必ずしもそういうことをとつていないようでございまして、これは将来の問題としてひとつ研究さしてもらいたいと思います。
  21. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、申込書はどういう性質を持つものと外務省解釈しておられますか。つまり憲法第七条の批准書外交文書に該当しないという説なのですけれども、しかしながら国連加盟申込書というようなものは、やはり重要な外交文書に入るのではないかと思うのです。どういう性質解釈していますか。
  22. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 申込書は文字通り申込書でありまして、つまり加入をしたいという一つ意思表示をする文書でありまして、諸外国でも大体外務大臣がこれをやるということになつております。ただいまそういう解釈から、この問題は具体的に法律をつくるかどうかというところまでに行つておりません。
  23. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 木内委員長は忙しいと思いますから、おいでになる間にちよつと聞いておきたいと思います。今後の貿易見通しですが、為替管理の面から見た大体の貿易見通し、ことにさつきポンドドル現状をお聞きしましたが、今後そういう問題がどういうように調整されて行くかという見通しを、為替の面から説明してもらいたいと思います。
  25. 木内信胤

    木内政府委員 貿易見通しは非常にむずかしいのでありまして、国際情勢はかくのごとく変転はなはだ急であります。非常に輸出ができるかと思うと、急にとまるということもあります。長い見通しはできません。できませんが、為替の面とおつしやるのは、外貨資金の面というお言葉と思いますが、外貨資金の面から見ますと、日本は非常に都合のいいことになりまして、今のところはかなり豊富な外貨資金を蓄積できました。従来は出超を続けておりますが、よしんばこれから出超でなく、入超のときが来たといたしましても、そう困ることはない。十分将来に備える用意をする間、つまり一年なり二年なりは、金額をあげて言うことはむずかしいですが、一億ドルか二億ドル程度入超がありましても、外貨資金の面としては十分に耐えられる状況になつております。旧債の支払い、これはそう申しても大したことはないと思いますが、賠償関係であるとか、そういうものがどういうことになりますかによつても違うことでありますが、それが普通の常識で考えられる合理性と申しますか、経済的合理性範囲でとどまつているものと仮定してよいならば、今申し上げました通りであります。
  26. 林百郎

    ○林(百)委員 現在手持ちポンドドルはどのくらいありますか。
  27. 木内信胤

    木内政府委員 ドルは最近の数字で六億八千万ドルくらいになつたかと思います。ポンドは一億一千数百万ポンド、一億二千万ポンドに近い数だと思います。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 この手持ち外貨の方の今年の見通しは、漸減の方向ですか、それともふえて行く見通しですか。
  29. 木内信胤

    木内政府委員 ことしの外貨計画考えられましたものは、ドルにしまして全部合せまして——ドルポンドオープンアカウント——ついでに申し上げますが、オープンアカウントは一億四千万——一億三千何百万ドルということです。その三つを合せまして一億数千万ドルふえる計画であると思います。実はそれよりももつと早いピツチでふえるらしく今のところは動いております。それが最近の情勢では少しとまるではないか、予想とは相当違う状況が展開するかもしれぬきざしが見えているという程度であります。でありますから、総体としまして暦年で行けば、今年一ぱいは手持ちはふえるであろうと思つております。
  30. 林百郎

    ○林(百)委員 国際通貨基金関係政府委員がいたらちよつとお聞きしたいのですが、日本加入するための投資と、それから割当額はどのくらいになつておりますか、参考までに聞きたいと思います。
  31. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 基金の方は二億五千万ドルになつております。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 二億五千万ドルで、為替バランス調整するために、日本がもし持ち得ることができるという場合には、これはどのくらいの幅で動くわけですか。やはり二億五千万ドル加盟して二億五千万ドル調整しかできないのですか。それとも幅があるのですか。
  33. 東郷文彦

    東郷説明員 私から御説明いたします。私ちよつと御質問趣旨を間違えておるかもしれませんが、二億五千万ドルというのはいわゆる割当額でございまして、そのうち日本加盟いたしましたあと、為替関係日本が使い得る額というのは、最高限度は全体の倍、五億ドルでございます。そのうち日本自国通貨、すなわち円貨で二億五千万ドルの七割五分を払い込むことになりますので、二億五千万ドルの一二五%を最高限度として買い入れることができるわけであります。但し、なおもう一つ制限がありまして、一年間における買入れの最高限度というのは割当額の二割五分を越えてはならぬという制限がありますから、具体的には年々六千二百五十万ドルまで買い入れることができる、こういうことになるわけであります。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと木内さんにお聞きしたいのですが、今日本手持ちドルが相当潤沢にある場合に、国際通貨基金にわずか六千二百五十万ドル程度バランス調整をしてもらうために、今これに入る必要があるのでしようか、その為替の現実の操作の面で……。
  35. 木内信胤

    木内政府委員 国際通貨基金加入するのは、日本では何か借金をするためということが非常に大きくクローズ・アツプしているようでありますが、必ずしもそうでないと思うのであります。その問題は別にしまして、今現に国際通貨基金加入を急いでしておいて、それを借りなければ貿易の繰りまわしができないという状態では決してないのです。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで為替管理関係ですが、私はかりにこの国際通貨基金加盟した場合、向うから国際通貨基金割当額日本が借りるとかなんとかいう問題が出て来ると思いますので、将来ともこの為替為替管理委員会という形で管理して行くわけですか、それとも自由な操作に移すわけですか。この前木内さんに聞いたら、やはりこうした為替管理関係を、為替管理委員会という形で継続する必要があるのじやないかという見通しのようですが、大体その後はどういう動きか。委員長ですから自分から廃止するということを言うこともできないと思いますが、しかしそういうような動きもあるのか、為替管理は今後どういうような形で続けて行く見通しなのか、それが一つと、それから将来国際通貨基金だとかあるいは国際復興開発銀行から借り入れる場合もあると思います。そういう場合にはその管理はどういうように行われて行くのか。為替管理委員会が継続すればその手を通じて管理されて行くのか、あるいは国際復興開発銀行日本出張所とか、何か特殊の銀行——輸出入銀行というようなものができて、これがこういう特殊なものについてはかわつて管理を継続して行くのか、その辺の技術的な面を聞いておきたい。
  37. 木内信胤

    木内政府委員 国際通貨基金加入いたしましても、日本為替管理必要性は少しも減じないと思うのです。これがなくなつて来るのは、日本のみならず、世界情勢がよほどかわらなければならない。為替管理は相当部分緩和はいたしましよう。できれば幸いでありますが、管理がなくなることはないと思います。  さて為替管理委員会の廃止問題にお触れになりましたが、為替管理はやつて行くのでありますが、それをいかなる機構でやるかということは別論であります。私は今度為替管理委員会の廃止を含む機構の変化があることは賛成できないと申しておつたのであります。それはここでは別問題として……。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 それも聞きたいのです。どういうわけで賛成できないか、あなたの御意見を聞かしてもらいたい。
  39. 木内信胤

    木内政府委員 それでは簡単に申し上げます。今度の機構改革というものは、私の印象では、責任者がかわるとか政府の仕組みがかわるということには違いありませんが、その意味はもう少し深いのだと思います。私は現在の機構が必ずしも全面的にいいと思つているわけではありません。直していただきたい点もたくさんあるのでありますが、現在の機構の中には一つ精神が化体されているのであります。その精神をこの間予算委員会でも御説明申しましたが、簡単にこの原則を拾つてみますと、五つばかりの大きな見方に立つて今の管理機構が統一されているのであります。  その五つと申しますのは、第一は貿易管理為替管理とは表裏一体、不可分のものである。これを扱うものがわかれることはやむを得ないかもしれませんが、これは一体のものとして考えて行くようにせよということであります。でありますから現在の為替管理法——通常為替管理法と呼んでおりますが、実は外国為替及び外国貿易管理法でありまして、これを一体的に行こうということであらゆる面にその労力が払われているのであります。  第二の原則——原則と申しますか、根本的見方でありますが、それは為替管理という事務は非常に広汎な範囲にわたるのでありまして、とうてい一省一局の専管事項とは考えられない。よしんば貿易というものを切り離して考えるとしましても、そういう認識であります。従いまして、いわんや貿易と一体的に管理するのでありますから、これは多くの人が責任をわかち合わなければならない、こういう考えに立つております。わかちます以上はこれを総合調整しなければならない。その総合調整機関として為替管理委員会が構成されておるわけであります。為替管理委員会はほかにも任務がありますが、総合調整という任務を託されておるわけであります。  第三は、そういうように責任を分担してやるということは、これ同時にデモクラシー——デモクラテイツク・ガヴアメント原則考えられておる。仕事はすべて、あまりにも大きな権力が一人、一局、一省に片寄ることはよくない。これはわけ合つて、かつチエツク・アンド・バランスというので、相互に牽制し合うことによつて民主的政治というものを確保できる、こういう考え方であります。  第四は、為替管理委員会というものはその総合調整をやる、いわば中心的機構考えておるのであります。その責任者はすべからく専門家をもつて充てるべしということであります。  第五は、その中心機構である為替管理委員会は、ある程度政治問題から超越してある、こういう考えであります。この点を達成するために私どもには身分保障が与えられていて、よほどのことがなければ免職されないことになつております。  いかようにも説明方法はあると思いますが、大体こういう五大原則機構には化体されておるのであります。その機構一つ機関として為替管理委員会があるのだ、これが現状であります。今度の改革によつてそういう原則が流れてしまうということがあるかないか、私は新機構のことはあまりよく知らないのでありますが、どうも流れてしまうように見えますので、私はそれは賛成し得ない、為替管理委員会はそう考えております。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二問ほどで打切りたいと思います。先ほど木内委員長ちよつと触れられたのですが、為替関係から見て外資関係に少し変動するきざしがあるのではないか。これはどういう意味か、ちよつと出ただけでよくわかりませんが、私たちの調査したところによりますと、貿易が、ことに輸出が大分縮小して来た、去年の十二月ごろに比べて非常に縮小しておりますので、何か貿易関係でやはり将来そういうように縮小するきざしがあるかどうか。それから先ほどあなたの言つた外資関係が少し変動するのではないかというきざしがあるというのはどういう意味なのか、その点を聞いておきたい。
  41. 木内信胤

    木内政府委員 貿易は世界的に縮小傾向にありまして、日本もその例外たるを免れないのでありまして、従来のような非常な急ピッチの拡張は少くともない。昨年と同じくらいのレベルでとまるか、あるいは下るかわかりませんが、今までは毎年倍々と進行して、非常な急ピッチでかけ出して来たのでありますけれども、それはとうてい望めない。場合によつては昨年のレベルよりも下るかもしれませんが、とにかくその意味で従来のような早い拡大はない、あるいはとまる、あるいは少し下るというふうに考えられます。これは先ほど申しました通りに先の予想はできません。それから資金の方の関係は、ポンドの非常な急ピッチの増加は先方輸入管理によつて様子がかわつて来る、急ピッチの増加はあるいはとまるかもしれない。これもきざしの程度でありますが、きざしが見えておる。しかるにもかかわらず外資としては当分困ることはない。逆に入超になつても耐えられると私は考えております。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一言だけ。これはちよつと木内委員長のほかの政府委員から聞きたいのですが、この国際復興開発銀行日本の出資額が幾らで、借入れ限度が大体どのくらいかという問題が一つと、それから実際借り入れる場合の条件、手続、これはやはりいろいろ調査するとか、あるいはその投資については条件がついて来るように思うのであります。ただ無条件に何に使つてもいいという貸出しじやない。しかし具体的にそれが日本へ投資される場合、日本にはこれを扱うような機関が設けられるのかどうか、その辺をひとつ説明願いたいと思います。
  43. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 お答えいたします。復興開発銀行に対しましての出資金は二億五千万ドルであります。現実に日本が復興開発銀行から借り入れます場合は、政府が借り入れる場合と、民間が借り入れる場合がございます。両方について復興開発銀行からの借入れにつきまして特定の機関を設けるという考えは持つておりません。なお開発銀行からの借入れにつきましては、無条件に貸してくれるものではございませんで、どういう事業にどれくらいの金額がほしい、何年間くらい貸してほしいというようなことを申し出まして、それにつきまして具体的に向うの方で、はたしてその事業が必要なものであり、またこれを貸与しなければその事業ができないという性質のものかどうかという調査をいたします。それに貸した場合に、はたしてその元金の回収が十分行えるかどうかという見通しについての調査も行われるものと思います。さようなわけでありまして、無条件に貸してくれるものではございません。こちらから具体的に問題を提供いたしまして、向うの方の調査をまつて貸してくれるものと考えております。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 かりにそれを運用する場合、しばらくはこつちで出資するだけで借りるという問題は具体性がないと思いますが、将来の見通しを参考までに聞いておきたいのです。国際復興開発銀行からの投資がかりに具体化するとする、そうすると——先ほど政府がこれを管理すると言われたのですが、政府管理するというのは、予算の中に繰入れて国家財産の中に入れるわけですか。それとも輸出入銀行というものがありますから、それと向う国際復興開発銀行と結びつけて運用するとか、あるいは管理するとかいうようになるのですか。
  45. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 政府といたしましては、出資する関係におきましては、一般会計から予算をとりまして出資いたします。しかしながら復興開発銀行からの資金の借入れにつきましては、民間が行います場合は関与をいたしません。あつせんはいたすかもしれませんが、直接これに関与いたしません。政府がやるという場合にしましても、やり方につきましては別に予算を組む必要はないのではないかと考えております。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると民間がやるというのですか、あなたの説明はよくわからないのですが……。
  47. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 復興開発銀行からの融資を受けます対象といたしましては、政府がその事業を営みますために借りる場合と、民間の企業家が直接復興開発銀行から借りる場合がある、かように申し上げたわけです。従いまして、民間が借り入れる場合につきましては、特定の政府機関が関与する必要はないのでありまして、個々の営利会社なり営利銀行なりが直接復興開発銀行に申し入れればいいわけであります。但し協定の規定によりますと、国際復興開発銀行は、政府、中央銀行その他これらに類する機関を通じてのみ取引を行うことになつておりますので、民間の会社が借りる場合にも、手続的には政府なり中央銀行なりの一定の機関を経由する必要はございます。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、そういう民間がたとえば向うの開発銀行と交渉する場合には、どこの銀行でもできるという構想ですか、それとも特定の銀行か何か設けて、これを折衝に当る銀行にするのですか。
  49. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 ただいまのところでは別に特定の銀行を通しませんで、直接事業を行つております会社なりあるいは銀行なりということになりますが、実際問題としては会社だけが直接申し込むことになるわけであります。特定の銀行が復興開発銀行から借りるということはないと思います。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとその会社というのはどこの会社でも自由に申し込ませるのですか。何かそこをコントロールする機関があるのですか。あまり具体性がないからあなた方も考えていないかもしれませんが……。
  51. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 民間が借ります場合には政府が保証いたさなければなりませんので、そういうときにおきましては政府が関与することになりますが、直接申し込むのは民間がやつていいことになります。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、昨年度二百億の出資金、これは国際通貨基金と復興開発銀行と両方合せて二百億ですか。これは国際通貨基金と復興開発銀行と別に出資するのかしないのか。それから、これは幾ら出資したならば具体的に交渉が持てるようになるのか。また、出資してもすぐ復興開発銀行あるいは通貨基金の借入れができるのではなく、そうしておいて、また具体的に貸出しができるかどうかということは、向う審議するのではないかと思いますが、そうなりますと、これを出資しても、その出資が、ただ国際的に信用をかち得るという程度だけで、実際は借り出すこともできないようなここになるのではないかというように思いますが、これはどうなりますか。そこで質問を三つにわけます。昨年二百億組んでありますが、これは両基金に対してどういうふうに作用するのか。今後さらに幾ら積むことによつて具体的に借り出すとかいろいろの交渉ができるのか。そういうように割当額のあるパーセントだけ出資した場合にも、それが確実に今度は融資できるのかできないのか。こういう問題、この三つをとりあえず聞いておきたい。
  53. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 前国会において御協賛を経ました二百億の予算は、通貨基金並びに開発銀行の出資に必要な金額を全部計上いたしおるのであります。二百億円の使用につきましては、まず通貨基金につきましては、割当額二億五千万ドルの二五%に当る六千二五百十万ドル相当額、二百二十五億円相当額は金で加入前に支払うことになります。残額七五%に当る一億八千七百五十万ドル相当額六百七十五億円を円で加入後に支払うことに相なつております。予算の関係でありますが、ただいま申し上げましたように、二百億の予算では、通貨基金関係分のみですでに不足するようなことに相なりますので、別途ただいま国会に提案いたしておりますところの出資に伴う法律の方で調整いたしておるわけであります。その法律に盛られておる構想によりますと、予算の使用といたしましては、百八十億円で外国為替特別会計保有のドル五千万ドルを買いまして、うち五百万ドルドルで復興開発銀行の出資に充てまして、残額四千五百万ドルで金地金をアメリカで購入して基金の出資に充てます。金または米ドルで出資を要する六千七百五十万ドル——復興開発銀行の五百万ドルと、通貨基金の六千二百五十万ドルからただいま申し上げました五千万ドルを差引いた残額一千七百五十万ドルに相当する金につきましては——この金塊は数量にいたしまして約一五・六トンになりますが、この金塊につきましては日本銀行の保有金から買い入れたいと思つております。この価格は、帳簿価格で買いますので約五千四百万円に相当する金額になります。第三に、基金に対しまして十億八千万円、銀行に対しまして一億六千二百万円を円価で支払う必要があります。残額約七億五百万円は金地金の輸送費、アメリカで買いますところの金の輸送費並びにこちらから送りました金の解鋳費等に充当いたす考えであります。予算の使用方法は今申し上げた通りでございますが、通貨基金との取引につきましては、向うに六千二百五十万ドルに相当いたしますところの金塊を払い込みまして、加入に伴うところの文書を寄託いたします。そのあと日本の円の平価がきめられる、平価がきまりまして、円払い部分に相当する額をこちらで払い込みますと、基金との取引が行われる。銀行につきましては、ドルで支払うべき五百万ドル相当額、円で支払うべき一億六千二百万円の払込み及び一定の証券による払込みが完了し、銀行に正式に加盟いたしますれば、ただちに銀行との取引ができるわけであります。
  54. 仲内憲治

    仲内委員長 北澤直吉君。
  55. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は国際通貨基金及び国際復興開発銀行につきましてお尋ねをしたいのでありますが、独立によりまして、日本が全面的に国際経済社会に復帰することになりまして、この機会に世界的な金融機構として非常に重大な役割を果しております国際通貨基金及び国際復興開発銀行日本が参加できますことは、非常に重大な意義を持つておるのでありまして、今日に至るまでの政府の努力に対しましては敬意を表するのであります。しかしながら、この機会に外務大臣にひとつお尋ねしておきたいことは、政府はたびたび、今後日本の外交は経済外交に重点を置くということを言われたわけであります。ところが現実の事態は必ずしもそういうふうに行つておらぬというふうに、われわれは見ておるわけであります。たとえば日本と非常に経済上密接な関係のある東南アジアあるいは南米というものに対しましても、日本の大公使の人選もきまつておらない、こういうふうな状態になつておる。それからまた通商航海条約日本と各国との経済関係を樹立する上につきまして最も重要な通商条約も、遅々として進んでおらない。戦時中に結んだ貿易協定あるいは金融協定というものを、一時延長して間に合せておる、こういう状態なのであります。そういうふうなことからして、イギリスを初めパキスタンとか、あるいはオーストラリア、インドネシアというふうな方面におきましても、いろいろ輸入制限措置が講ぜられておりまして、こういうものがだんだん最近の日本貿易実績の上に現われておる。またアメリカにおきましては、御承知のように、日本の対米輸出の中で最も大きな部分を占めておるところの生及び冷凍まぐろに関する関税引上げ問題というものが、今上院の本会議にかかつておる。下院を通過して、上院の財政委員会を通過して、上院の本会議にかかつておるというふうなことであります。ことしはアメリカは大統領選挙の年であります。従いまして、業者のそういうふうな希望が、議会に相当の圧力を持つておるということは、われわれの考えなければならぬことであります。そういうわけでありまして、アメリカにおきまして、日本輸出に対する関税引上げというふうな問題が起り、もしことしの秋に共和党が選挙に勝つということになりますと、共和党は伝統的に保護関税政策をとつておりますので、こういうふうな外国からの輸入に対するアメリカ国内の関税引上げ運動というものも、今後われわれは注目しなければならぬのであります。こういうふうな状態におきまして、一体政府は、日本の経済自立の達成のために最も大事な貿易の進展というふうなものにおいて、一体どういう考えを持つておられるか、この機会にひとつ外務大臣からはつきりお示しを願つて、国民が迷わないようにしてもらいたい、こう思うのであります。世間ではいろいろ中共貿易というものにつきまして、甘い考えを持つておるようでありますが、最近の中共地区におけるところのイギリスの商社の撤退というふうなことで、中共貿易というものがそう簡単ではないということがはつきりわかつたと思うのであります。従いまして、日本としてはどうしても、今後共産圏以外の地域に対する日本貿易を大幅に増進するという以外に、日本の経済自立の道はないと思いますが、こういう点につきまして、外務大臣は経済外交に重点を置くというふうな観点から、どういう考えを持つておるか、はつきり大臣のお考えをこの機会に承つておきたいと思うのであります。
  56. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今おつしやるようなことは、一々お話の通りでありまして、われわれもいろいろ努力いたしております。通商航海条約につきましても、いろいろただいま研究いたしておりまして、これも一つはつきりした型ができますと、他は案外早く進むのじやないかとも考えております。ただこれは一時的のものでありませんので、いろいろ利害得失、長い間のことを考えてきめなければならないと思いますので、もう独立前から話をいたしておりましても、まだなかなか双方の意見が一致しないような点があるのであります。これは日本の長い先を考えますと、早くつくるだけがいいとも限りませんので、時をかなり費しておるような次第であります。また大公使の問題につきましても、東南アジアその他南米地域等にも急いで派遣すべきは当然でありますので、今人選を急いでおります。ただこういう地域につきましては、たといある国に対してはきまりましても、その国だけに任命していい場合もございましようが、やはりほかの国が何かないがしろにされたような感じを持つおそれもありますので、そういう点も考慮しまして、ある程度陣容がそろつたようなかつこうにいたしたいと思つて、それで延びて来ておるような次第であります。それから通商航海条約について申し落しましたが、これにつきましても、新たに結ぶべき国もむろんたくさんありますが、たとえば中立国等につきましては、戦争が行われたわけではありませんから、前の通商航海条約が自然また適用になるというふうにわれわれは考えおりまして、その方面にも話合いを進めております。経済外交といいましても、特に手品の種はないのでありまして、要するに重点を日本の経済の復興に置くべく、外交官の人員にしましても、またその仕事の分野にしましても、なるべくそちらの方に重点を置く、従つてまたある在外公館の長にそういう経済人を充てない場合にも、その次のところに経済人を充てるというふうに配合をして行きたいと思つております。それで今おつしやつたように、今度スターリング地域の国々のいろいろの輸入制限あるいはアメリカのまぐろの関税の問題等ありますが、これは何も日本に対して締出しをしようというような直接的の意図であるとは私考えておりません。ただたとえばドルの保有高が減つておるとか、あるいは国内の産業を奨励しなければならぬとか、いろいろの立場から行いました措置が、日本貿易に影響するわけでありまして、これらにつきましては、すでに在外事務所のある国もあり、あるいは大使館、公使館等のある国もありますので、できるだけ日本の実情を説明していろいろの努力をしております。直接日本を目的としたものであれば話合いも比較的簡単に論点が集中されるわけでありますが、一般的の問題で、それで日本も影響を受けるというような立場になつておるのでありますから、日本の方をよくしてやろうという気がかりにありましても、ほかの方面との調整がなかなかとれないので遅れておるようなこともあるようでありまして、要するにできるだけ経済方面に重点を置いて努力して行きたいということで、ただいま進んでおるわけであります。
  57. 北澤直吉

    ○北澤委員 通商航海条約という問題は、恒久的な性質のものでありまして、早くつくるだけが能ではない、慎重にやらなければならぬ、これはごもつともであります。しかしながらこの通商航海条約ができるまでのギヤツプを一体どうするか。大臣の先般の御説明では、貿易協定なり金融協定を臨時に延長して、それで間に合せるというようなことでありますが、私はそれでは不十分だと思うのであります。だからこそイギリスなりインドネシアなり、各地で日本品の輸入に対して制限が設けられておるというふうなことでありますので、そのギヤツプを埋めるためにも、今の貿易金融協定のほかに、何か互恵通商協定とか、あるいは互恵関税協定とか、そういうようなものを設けて、そうして日本品の輸出に対して制限をなるべく加えないようにする措置を、通商航海条約ができるまでの間にとる必要がないかという点をお聞きしたいのでありますが、その点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点につきましては、外務省は通産省その他と相談しまして、いろいろ研究いたしております。ただ御承知のように、スターリング地域に対しましては、日本の商社からいえば、輸出することは非常に利益であるけれども、その地域から輸入することはあまり利益ではないわけでありますというのは、実際上の物価が二、三割ドル地域のものよりも高いわけでありますから、ドル地域から品物を輸入して来て、その品物でつくつたものをポンド地域に輸出するというのが、一番利益なかつこうになるものでありますから、どうも輸出ばかりがふえて、輸入がなかなか伴わない。そうすると相手方からいえば、ポンドがいたずらに集積するということになるのでありますから、ついそういう線で制限措置が行われやすいのであります。今おつしやつたような点につきましても、いろいろ今研究中でありまして、われわれも何とかして総合的にやりたいと考えておりますが、つまり先方からいえば、日本輸出することは日本の商社が好まないものですから、総合的というのがなかなかうまく行かない。この点は何らかの調整をしたいと思つておるような次第であります。
  59. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府貿易の振興についていろいろ御努力の点はわかるのでありますが、何分にも先ほど申し上げましたように、日本貿易状態というものは、これは決して楽観を許さない状態になつておる。そこでこういう状態につけ込んで、共産陣営がモスクワ経済会議とか、あるいは北京でアジア経済会議を開いて、そうして何とかして日本の人心をひつぱろうというふうな謀略攻勢をやつておるのでありますから、国民がこういうふうな共産側の謀略に迷わされないようにするためには、民主陣営の間の貿易の増進ということについて、はつきりした見通しを国民に与えないと、国民の間に共産側の宣伝に乗ぜられる危険が非常にあると思うのであります。政府におかれましても、国民が日本貿易の将来について決して迷わないように、はつきりした政策を立てて今後進んでもらいたと思うのであります。  次に伺いたいのは、今度の国際通貨基金協定におきましても、また国際復興開発銀行におきましても、これにはソ連は調印しておりません。それからまた中共も入つておりません。それからポーランドは入つたが、脱退しておるというわけであります。日本に最も関係の深い東南アジアの国の中で、これに入つていないと思われるものは、インドネシアと仏印の三国であります。この協定にはオランダとフランスが入つておりますが、これによつてインドネシアと仏印の三国も入つている、こういうふうに解釈していいのでありますか、その点をお伺いしたいと思います。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今ちよつとだれか知つているかどうか、調べてみます。
  61. 北澤直吉

    ○北澤委員 私の解釈では、どうもインドネシアも仏印の三国も入つておらぬ、こういうふうに思うのであります。そうしますと、日本の周囲の国々で、これに入つておらぬ国が相当ある。こういう国はこの協定によつて拘束を受けない、従つて為替のダンピングもできる、こういうふうにわれわれは思うのであります。そうすると、日本はこの協定に縛られ、日本のまわりの国々はこの協定に縛られないというふうな状態になるのであります。一つの著しい例を申しますと、ポルトガルが入つていない。ところが支那のマカオにポルトガルは領土を持つておる。従つてポルトガルはこの協定に拘束されないので、マカオは世界の金のやみ市場になつておる。この協定に参加すると、金の買上げ価格というものは、各国とも制限を受けますが、ポルトガルはこれに入つておらぬので、拘束を受けない。それであのマカオは世界の金のやみ市場になり、非常な繁栄を続けておる。こういうふうに周囲の国が協定に入らないために、そういう事態もあるのであります。もちろん日本がこれに参加することは必要であると思うのでありますが、そういうように日本の周囲に入つていない国があつて、それに拘束されないで、為替その他の問題について自由な行動をとる場合におきましては、日本は相当な影響を受ける、こういうふうに思うのでありますが、それについて大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  62. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどのインドネシアは、ただいま基金に申請中のようであります。仏印の方は、まだその手続はとられていないようであります。
  63. 北澤直吉

    ○北澤委員 それではその点は後ほど御調査の上、お答えを願うことにいたしまして、次に移ります。  国際通貨基金協定、それから国際復興開発銀行に参加している国におきましても、その機関の総務会ですか、それには日本は投票権を持つ。大体二百五十票のほかに、アメリカの十万ドルに対して一票ずつ持つというのでありますから、そういうようなものを持つのでありますが、しかし何分にもアメリカその他の投票権が非常に多い。のみならず、理事会におきましては日本理事になれない。こういうわけでありまして、総務会においても投票権の多数は外国が持つてしまう。理事会にも日本は入れない。しかもこの協定は日本の通貨信用政策に相当の拘束力を及ぼすものであるというふうに考えますと、日本国内の通貨信用政策についても、外国の圧力を受けることが多いのではないかというふうに私は考えるのであります。将来日本はこの協定に基いて割当額をふやしてもらえればいいのでありますが、それでなくても、そういう理事会なんかに日本の人が入る、あるいは理事会の職員に日本人を入れる、そうして日本の発言権を確保するというふうなことができるかどうか、これは大臣にひとつ御答弁を願いたい。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう心配もおありだと思いますけれども、元来こういう通貨基金とかいうような制度は、やはりお互いが、何といいますか、政治的の安全保障条約のようなものが経済的にできたとわれわれは考えております。従つて、お互いに主権をむやみに主張してやり合つては円満には動かないのであつて、やはり一部には自分の独自の考えも相手方に譲つて、お互いに助け合つて行くというところに、運営の妙味が出て来るのだと思います。従いまして、われわれはまず入つて、そうしてその中で各国と親しく融和して、だんだん日本経済についても有利な情勢をもたらしたいと考えておるのであります。すでにこの加入問題につきましても、仄聞するところによりますと、日本理事国になるのじやないかとかいう面で、むしろ懸念を起したようなこともあつたように聞いておりますので、入る前から、理事国には結局なつてみせるとか、伺とかして発言権を増大するのだというようなことを、あまり私としては言いたくないのでありまして、ただ実際的には日本の経済力、まただんだんに外貨保有高とか金融力というものが、東南アジアにおいては少くとも相当他国よりすぐれておりますから、自然重要な地位にはだんだん認められて来ると私は確信しております。しかし初めからそういうことをあまり大上段に振りかぶつて行くべきものでないと思いますので、この際は静かに入つて、実際上の運営に参加するということで行きたいと考えております。
  65. 北澤直吉

    ○北澤委員 外務大臣にもう一点伺つておきますが、この協定によりますと、この協定に参加した国は、為替制限を撤廃するとか、あるいは差別的な通貨措置を回避するとかいうふうに書いてあるわけであります。ところがこの協定ができて、各国がこれに入りました後におきましても、もちろんいろいろな条件はありますが、なかなかこの各国は為替管理をやめない。それからまたいろいろの差別的な通貨措置をとつておる。もちろんこの協定におきましても、戦後の過渡的の期間においては、それがなし得るというふうになつておるのでありますが、いつまでも過渡的ということで、そういうふうにやるのでは、せつかくこれに入つて意味がないと私は思うのでありますが、イギリスその他がやつておりますいろいろの通貨上の差別的な措置、あるいは為替制限に関する措置というふうなものは、一体いつごろになつたらこの協定に従つて是正するというふうな見通しがありますかどうか。この点を伺つて大臣に対する質問をやめたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は正直に申しますと、その見通しというものは、ここで申し上げるほどはつきりしておらないのであります。ただ考えますことは、われわれは通貨基金なりその他の国際機関加入をしつつありますが、これは私は単に日本の利益のためとか、あるいは日本に都合がいいからといつて加入すべきものでもないし、またそういう性質のものでもないような立場日本は置かれておると思うのであります。というのは、要するに一等国とか三等国とかいうような妙な議論は抜きにしましても、日本の国際社会における立場というものは、相当これは重要なものであります。従つて通貨基金どもその一つでありましようが、これに入りまして、要するに世界的に見て、いろいろ世話係、調停係というようなことは、たとえばアフリカに事が起つても、日本は進んで参加して、それの円満な解決に努力するぐらいの気持を持つべきであろう。従つて今おつしやつたような問題につきましても、単に日本の利害関係ということでなくして、通貨基金を円満に運営する上において、また世界的に見てどうすれば一番利益かという立場に立つて協定も行いましようし、提案も行うというつもりで行くべきであろうと考えております。こういう意味で、まだそういう見通しもありませんけれども、お説の通り過渡的の措置というのは、なるべく早く終らせて、安定した形になることは望ましいのでありますから、その方面についても、将来努力を重ねたいと考えておるわけであります。
  67. 北澤直吉

    ○北澤委員 大蔵当局及び通産当局がおいでになるようでありますから、その方に対して質問を続けたいと思いますが、この通貨基金協定及び復興開発銀行協定に参加するについて、日本国内の準備は一体できておるかどうかという点を、ひとつ伺つておきたいのであります。  第一点は、この協定に入りますと、日本日本の平価の変更についていろいろな拘束を受ける。今のところは一ドル三百六十円という為替レートでありますが、通貨基金に入りますと、なかなか今度はこれをかえにくいというふうになるのでありますが、政府は一ドル三百六十円というこの平価で将来全然かえる必要はない、従つてこの点については国内の準備はできておる、こういうふうに見ておるわけでありますかどうか、伺つておきたいと思います。
  68. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 現在の三百六十円のレートは妥当でありまして、将来これを変更する必要はないと考えております。
  69. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府の方針はわかりましたが、これに関連しまして巷間では、どうも今の日本の円では国際的な信用がいまだ十分でない、従つてこの通貨基金に入るについてはもつと国際性を持つた通貨にしなければいかぬ、従つて通貨の発行準備とかあるいはそういうものについて、もつと改革を加えた方がいいというふうな意見も巷間には伝えられておりますが、政府はこの為替レート三百六十円を今後も堅持するのみならず、日本の通貨の発行制度というものについても、全然これに変更を加える意思はないことと思うのでありますが、この点を明確にしておきたいと思うのであります。
  70. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 三百六十円のレートは堅持いたしますとともに、現在の通貨制度に変更を加えることも考えておりません。
  71. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に伺いたいのは、この通貨基金加入する場合には、日本として相当の金を持つていることが必要である。たとえばこれに出資をする場合にも、金で出資をする必要があるし、それからまた通貨基金の持つております日本の通貨を買いもどす場合には、金がいる。それからまた通貨基金日本に課しますいろいろの賦課金、手数料とかそういうもの、これも金で支仏わなければならぬ。それからほかの加盟国の持つております日本の通貨の残高を、日本が買い入れる場合にも金が必要である。こういうふうにこの通貨基金に入る場合におきましては、日本はいろいろな面において金を持たなければならぬということになりますが、現在日本はそれに応ずるだけの十分の金を持つておると思うのでありますが、この点もはつきりした政府の所信を伺つておきたい。
  72. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 通貨基金加入並びに国際復興開発銀行加入に必要な金その他将来の外貨の買入れ等に必要な金は、接収を解除いたされました金によりまして十分であると確信いたします。
  73. 北澤直吉

    ○北澤委員 きのうですか、大蔵省の発表によりますと、接収解除になつた金は百二トンということになつております。この百二トンというのは民間のものも入つておると思うのでありますが、この中で日銀が所有権を持つております金はどのくらいありますか、この点について……。
  74. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 正確な数字は、ただいま資料がございませんので、お答えいたしかねますが、約百トン程度あるかと記憶いたしております。
  75. 北澤直吉

    ○北澤委員 この通貨基金協定によりますと、これに日本が出資をする場合でありますが、先ほどの説明日本に対する割当額は、二億五千万ドルというふうにきまつた、それに対して日本が金で払い込むのが六千二百五十万ドルということになつておるのでありますが、これは通貨基金協定の中の一体どれによるのか。自国の割当額の二億五千万ドルの二五%と思うのでありますが、この点を念のために伺つておきます。
  76. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 国際通貨基金協定第二条第二項によりますと、「その他の加盟国」と申しますのは、原加盟国以外の加盟国でございますが、「その他の加盟国」につきましては「加盟国の地位は、基金が定める時期に、且つ、基金が定める条件に従つてその他の国の政府にも開放される。」とありまして、第三条の第三項におきまして、出資に関する規定を準用いたしております。
  77. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと、第三条第三項によつて日本割当額の二五%を日本は金で出す、こういうふうに私は了解いたします。そうしますと、残りの七五%は、日本自国通貨または公債で払い込んでよろしいというふうになるのでありますが、残りの自国通貨及び公債で払い込む時期は、いつになりますか、その点お伺いいたします。
  78. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 金払い部分を除きました分は、加入後平価を決定いたした後に払い込むことに相なります。
  79. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと、平価を決定するのはいつごろになりますか。もしそれが早くなりますと、この自国通貨で払い込む金があるいは今年度中に出る。そうしますと、ことしの補正予算ででもそれを組むというふうなお考えでありますか、その点を伺つておきたいのであります。
  80. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 基金加入いたします見通しでございますが、ただいま各国の表決を求めておりまして、金を払い込みますのはおよそ六月くらいになるのじやないかと想像されます。その後、平価を向うの方で幾らにするかという意見を求めて参りまして、三十日以内に日本からこれを回答いたしまして、六十日以内にこれを決定するということに相なつております。従いましておそくも九月ごろまでには、これが決定するのではないかと考えるのであります。しかしながら予算関係につきましては、先ほど委員の方に御説明いたしましたように、さしあたり必要な金額につきましては、金で払い込みます分と現金で出資する分だけでありまして、これは二百億の予算で十分まかなえるようになつております。残額は代用証券でいいことになつておりまして、これは代用証券に相応するところの国債を発行することにいたしまして、別途法律を提出いたしておる次第でありますので、予算の補正の必要を生ずることはございません。
  81. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府が別途国会に提案いたしておりますこの両協定の加盟に伴う措置に関する法律案によりますと、国際通貨基金との取引は、日本では外為管理委員会大蔵大臣の同意を得てこれに当るというふうになつております。ところが先ほど外為委員長からお話がありましたように、今回の行政機構改革で外為はなくなるというふうになるのでありますが、そうしますと外為がなくなつた後のこの国際通貨基金との取引に当る日本国内機関はどれになるか。日銀になるのか、あるいは大蔵省になるか、それをお伺いいたします。
  82. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 ただいま国会で審議されておりますところの機構改革案が原案通り通過いたしますれば、大蔵大臣がこれを運用するということに相なります。
  83. 北澤直吉

    ○北澤委員 それは関連して大蔵当局及び木内委員長に伺いたいのでありますが、為替の問題というものは、御承知のように対外信用が非常に大事であります。ところがこの為替に関する行政機構がときどきかわるということでは、なかなか対外信用を保持する上において支障があるというふうに私は思うのであります。でありますから、もちろん政府が外為を廃止するということにつきましては、われわれ反対ではないのでありますが、問題はその場合の国際信用が、それによつて傷つけられる。あるいは通貨基金等との関係におきまして、日本為替に対する信用が減少するというようなことをわれわれは実は心配するのであります。従いまして政府は、こういうふうな日本国内為替行政機構の変更によりまして国際的な信用をそこなわないように、一体どういう措置をとつておるかということを、この機会に大蔵当局と、それから木内委員長に詳しく伺つてみたいと思うのであります。
  84. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 大蔵当局といたしましては、外国為替管理委員会を廃止いたしまして、大蔵大臣為替管理事務を所掌いたしましても、対外的に信用を落すようなことはないと考えております。
  85. 木内信胤

    木内政府委員 私にも御質問でありますが、私はどういう措置をとつておられるか存じません。
  86. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府はそういうお考えと思うのでありますが、とにかく終戦以来、為替の問題につきましては外為がやつておる。この外為があるいは国際通貨基金あるいは外国の銀行と関係を持つて来た。ところがぽかつと行政機構改革によつてやめるというふうなことになつたわけであります。もちろんそれは行政機構改革という大きな見地からやられるのでありますから、私は反対しませんが、ただ問題は、そういう場合に、日本国内的な事情によつて日本為替機構というものが二、三にかわるということになると、外国の銀行とか、あるいは国際通貨基金とか、そういうものとの関係において、日本為替行政に対するある程度の心配というものが起りはせぬかというふうに思うのであります。従いましてこういうものを取除くために、政府は一体どういう措置をとつたかということを大蔵当局にお伺いしたいと思います。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 一問だけ関連して。今の木内委員長の答弁は非常に重要だと思います。私たちも先ほどからそれを聞いていたのですが、為替関係がこういうふうに国際通貨基金とか国際復興開発銀行への加盟というようなことで国際的な関係を持つて来ているときに、従来為替管理をしておつた管理委員会を廃止して、大蔵当局がこれを掌握するというようなことが、すでに機構改革の法案では出ておる。一方、国際通貨基金に対する国内的な処置の法律の方では、依然として為替管理委員会がこれを管理するという形の法案が出ておる。しかもその後の処置について、行政改革によつて為替管理委員会が廃止された場合に、どのような措置をとるかということについて、政府が十分管理委員会と連絡をとつていないということになると、非常に重大な問題になると思いますが、その点については、どうして為替管理委員会の方へ委員長として納得できるような、また国会で十分説明のできるような連絡と了解とがなされていないのか。これは非常に重要な問題と思いますから、外務当局木内さんにもう一度聞いて、何でしたらやはり大蔵大臣を呼んでもらつて……。
  88. 仲内憲治

    仲内委員長 要求しておるのですが、きようは都合で来られないのです。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 私、そういうわけでもないのですが、とにかく長い間為替関係でいろいろやつて来た木内委員長が、その後の措置についてまだわからないというような答弁をされて、すでに法案では廃止することになつておる法案が出ていることになると、ゆゆしい問題と思いますが、もう一度両方聞いて、どうしてもいけなければ、岡崎国務大臣、これは外務大臣ですが、国務大臣としてそういう間の連絡調整はどうなつておるのか、あなたからも一つ聞いてもらいたい。これは非常に重要な国際的な信用にも関係する問題で、北澤さんと同じように私もまた非常に気になることですから、聞いておきたい。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 私は国際通貨基金加盟一つの条件として、時の政府に支配されないという形で為替管理委員会が設けられて、その上で国際通貨基金加入方法が促進されていたと思うのです。そういう意味からいいましても、今ここで機構改革をして為替管理委員会が廃止されるということになりますと、国際的な信用を失うことになると思いますが、そういうことに対して国際的な信用を失わなくて済むかどうかということと、それからまたそういうふうな機構改革が行われても、加盟は不可能でないかどうかということを外務大臣に伺いたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろ御質問がありましたが、私もそうそういろいろ知つているわけじやないのです。ただこれだけのことは言えると思います。外国為替管理委員会木内委員長以下非常に努力されまして、今日まで成果を上げて来たことは、これは万人の認めるところであります。しかしながら外国為替管理委員会のような、時の政府の方針に影響されないといいますか、そういうような外貨のコントロールの仕方でなければ通貨基金等に入れないなんということは、全然ないことは確かであります。多くの国は私は大蔵大臣外貨管理権を握つておると考えております。むろん大蔵大臣は時の政府がかわるに従つてかわり、また時の政府の方針によつてその方針もかわるわけでありまして、外国為替管理委員会のような性質を持つた管理機構もありますが、大蔵大臣というか、時の政府というか、これが管理しておる制度もたくさんあると思います。どつちかでなければならないということはないと思います。  それから外国為替は、これは外貨の問題ではありますが、すぐに国内の通貨に影響するものであります。外国為替を買つたり売つたりすれば、国内の通貨がふえたり減つたりするのは当然であります。従つて国内の金融と密接不離の関係がある、こういう意味からいうと、大蔵大臣管理する方が有効適切に行われるという考えをわれわれは持つております。大蔵大臣がやればかつてなことをやるだろうというお考えがあるかもしれませんが、そんなことは決してないのであります。事実かつてなことをやれば、それこそ国際信用を失うのでありまして、政府としては自滅行為になる。従つて決してそんな国際信用を失うような方法をとるわけはないのでありますから、それは御心配なく安心していただいてけつこうだと思います。
  92. 植原悦二郎

    ○植原委員 今の問題はかなり重要だと思います。こういう法案を出すにつきましては、今までの為替管理委員長大蔵大臣との間にかなりの了解があつてやるべきだと私ども考えます。今の話を聞くと、まつたく了解がなくてやつておるようです。外務大臣のお話の通り、あるいは大蔵大臣がすべて専管する方がいいかもしれませんけれども、それに対しては、今まで為替管理委員があつてちやんと管理して来たのですから、その了解なしにこういうことをなされたというのならば、せつかく政府のいい目的でも、議会ではかなり支障を起すようなおそれがあることを気づかうのであります。ですから、外務大臣が何でも知つておるとは私は思いませんけれども外務大臣立場で、外務大臣責任でこの法案を取扱う以上は、どうか為替管理委員長大蔵大臣の間の話合いをつけて、そうしてすべての問題の了解ができるようにしてこの案の取扱いをしていただきたい。外務大臣の言う通り、この法案がいいのかもしれませんけれども、国会として責任を持つている以上は、そういう点がきわめて明瞭にならなければならない。こういう重大な問題を取扱うについては、同じ政府部内で十分了解を得た上でやられるようにして、この会議の進行を外務大臣がひとつおはからいを願いたいと思います。これは私の希望であります。  それからもう一つ、立ちましたついでに申し上げます。最近外交は経済外交でなければならないというようなことを盛んに新聞に宣伝なさるけれども政府は政治と外交と一体どういう区別をすることができるか、アメリカにやる大使だから経済外交でなければならないということは、私のどうも了解できないところで、あるいは新聞の誤報であるかもしれませんけれども政府から何かそういうことが伝わるように私の耳に響いて非常に奇怪に思うのであります。なぜさようなことを申すかというと、御承知の通り、チヤーチルがアメリカに参りましたとき、チヤーチルは金借りに来たのだろうということで、アメリカ人は非常に反感を持つた。チャーチルはアメリカの上下両院の連合委員会においても、私はわざわざ大西洋を横切つてアメリカに金借りに来たのじやないと弁明した。英国の総理大臣が連合委員会における演説会の劈頭において、アメリカ人全般の誤解を解かなければならないほど、私は国際関係は微妙だと思います。日本がアメリカの経済的援助を受けなければならないことはその通りでありますけれども、表から日本のアメリカとの外交は経済に限るのだというようなことを言うと、アメリカの民心に悪い影響を及ぼして、かえつてその目的を達しないようにするおそれがあるので、ほんとうに日米両国の将来の政治的関係、経済的関係考えるならば、経済外交というようなことを政府の中から言つたりすることは、私は非常に悪い影響を及ぼすのではないかと思う。日米関係は経済の問題が重大でありますけれども、アメリカ人が日本に対して気づかうことは、日本にほんとうに徹底的に民主政治が行われるか行われないか、これより大きな問題はないと思います。これをアメリカ人に説明することこそ、また説明し得る材料を持ち、説明するような国内の態勢を整えることほど、日米両国の関係に重大なるものはないと思います。その基礎の上に立つてこそ、初めて経済的の密接な関係もできるのに、国内の態勢をほんとうに民主政治を行うような方向に持つて行かないで、ただ経済的の外交などといつたつて、決していい結果をもたらさないものである、こういうことを痛切に感じますゆえに、この点特に私は申し上げておきたい。  もう一つ、テユーナの問題であります。テユーナの問題は日本が主であります。なるほど一般に関係することも多いのでありますけれども、これは加州において、ことにサンジエーゴからあの付近においてこの問題をかつぎ出して、加州の議員が死にもの狂いになつて上下両院を通過せしめようとしたのは、日本のテユーナの輸入に対することが眼目である。これは全般にわたることであるのに、日本がその中にただはさまつたように——私の誤解かもしれませんが、そういうふうな外務大臣の御説明があつたとするならば、それは間違いである。それだからして、日米両国の関係を思うアチソンは、はつきりとした声明を出して、日米両国の将来の国交を考える場合において、今さような経済問題を議会で取上げることはならぬと言われたところを見ても、これは日本に対する目標が主であることがわかります。私はアチソンがこういう声明を出す前に、むしろ日本の絶対多数を持つている自由党あるいは政府が、こういうものを今アメリカの国会に出されることは、むしろ日米の国交の将来の上に非常な障害がある。経済問題よりは、日本の国民の感情を痛めることが非常に大きいだろう、私はむしろこういう立場をとつてもらいたかつたのであります。その方かもつといい外交上の効果をもたらすもので、アチソンに言つてもらうよりは、日本国民はこれからほんとうに日米両国の間で協力をして行こうと思うのだ、その場合にわずかのテユーナの問題に対して、それもテユーナの問題は加州における実に一局部の問題であつて、むしろオレゴンの方ではテユーナの輸入を歓迎しているような向きもあるのだから、そういう点を日本の議会、日本の政党がはつきりして、そうしてアメリカの国民に訴えることの方かむしろ効果的であつて、こういう点も外交上聰明なる外務大臣が指導して、そういうふうに日本の国論をまとめて政府がおやりくだされば、もつとよかつただろうと思う。  もう一つ、経済問題に対しては、アメリカばかりが重大ではない。今日恐ろしくスターリングのレートが大きくなつておるけれども、これは実際日本か占領国家である場合にはしかたがないが、独立国家としたらマーケツト・プライスより高いところの為替レートを設定されて、そうしてそれをがまんしているというようなことは、これは第一に外交上手をつけなければならぬ問題だと思う。こういう問題こそ、ほんとうに経済問題として重大なことで、現在日本が占領国家であるならば、しかたなく英国で設定しておるところの為替レートでがまんして損してもやつて行かなければならないこともあり得ることだけれども、今日独立国となつて経済の問題を政府がほんとうに主眼として考えるならば、まずスターリング・レートをマーケツト・ヴアリユーで取扱いのできる方に外交上の努力をすることこそが、経済的外交の主眼であると私は考える。こういうことを私は——これは質問でなく国を思うために老婆心と申しますか、苦言を呈するような形になりますが、国際通貨基金の協定とこの国際復興開発銀行に対しては、ただ経済問題ばかりではなく、自由国家が今日世界的に協力しなければならないという立場からも、これに私は協力すべきであると思います。簡単に経済問題でこの問題を論ずべきではなく、世界中が協力するという立場からこれをすることは私は賛成であります。その手続をとるにいたしましても、為替の問題や大蔵大臣のマネー・マーケツトをコントロールしようとする立場に対しても、政府内において十分了解を得てかかる案を取扱つていただきたい、こういうことを私この機会に申し述べて政府の御考慮をお願いしたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 簡単に今の点についてこちらの意見を申し上げますが、第一に、為替管理委員会の処置の問題、これはただいまここにかかつておる法案とは直接関連がないのであります。これは別途に出しまする行政機構改革の問題であります。私どもが言い得ることは、ただ為替管理委員会があつても、あるいはそれが大蔵省の所管に移つても、国際信用上影響はない、こう考えることと、従つて国際通貨基金加入する問題について、外為の委員会がなければ加入できないというようなことはないということをここで申し上げるわけであります。別の法案でこの外為の廃止ということがありますが、これはまたそのときに御議論を願いたいと思いますが、今植原委員のおつしやつたように、これについては関係者一同みな了解済みなのでありまして、ただ今木内君の言われたのは、外国の信用を維持するためにどういう処置を政府ではとつておるかということについては、自分はどういう処置をとつておるかは知らないということを言われたのだと思います。  それから第二に、駐米大使の問題等をお話になりましたが、私はこの委員会でも申し上げました。あるいは植原委員はおいでにならなかつたときかもしれませんが、要するに大使の人選につきましては、何を主眼とするということは考えない。従つて外務省出身の人もありましようし、その他の実業界なり金融界なり、あるいは工業方面もありましようし、学者もありましようし、いろいろの方面から、どこ出身ということを考えないで、人間として高い教養のある、すぐれた常識を持つた、つまり外国へ行きましても、何ら日本を代表して心配のないような人を広く選ぶという趣旨で選考いたしまして、たまたま駐米大使には金融界に長くおられた人が選に当つた、こういうことであるということを御説明をいたしたのであります。むろんこの経済の問題が重要であるということはお話の通りでありますけれども、大使の任務というのは経済問題ばかりでないのでありまして、両国民の理解を深めるという観点から申しますれば、経済もありましようし、文化の方面もありましようし、その他各般の方面があると考えております。そういう点について適任者を選ぶという趣旨から、出身のいかんを問わない、何も外務省だけにして門戸をとざしてしまうという考えもない、がしかしそうかといつて経済人ばかりを起用する考えもないのであります。  それから第三に、まぐろの問題はお話の通りでありますが、私が先ほど申しましたのは、主としてスターリング地域における制限措置に関して申したのでありまして、まぐろはむろん日本が直接関係のあることでありますが——もつともペルー等もかなり関係があるようであります。そうして政府としては従来からこういう問題については、下院で討議がありましたので承知しておりましたからして、国務省その他にも常に日本の材料を提供し、また日本立場説明して来たのでありますが、また民間の業者にも頼んで、啓発と申しますか、よく理解してもらうように努力して来たのであります。その結果かどうか知りませんが、アチソン長官の声明があつたというわけであります。ただあまり日本国内の輿論を動員するとか、非常に宣伝をやるとかいうことは、かえつて相手方を刺激しまして逆効果になるおそれもありますので、そういうことのないようにできるだけ注意をしながら、日本立場を理解してもらうように努めた次第でありますから、ひとつさよう御了承を願いたいと思います。
  94. 植原悦二郎

    ○植原委員 私は経済人を大使に選んだことは歓迎します。けれどもただあまりに日本の外交は経済外交だ、経済外交だと外務省から放送されるから、それはとんでもないことだ、こういうことを私は言いたいので、私は外務省の人はなるべく大使にはしない方がいいというくらいに思つておる。率直にいえば、もつと大きな型の人を全部各国に派遣した方がいい、役人の小さな事務的の人よりは、もつと大きなものを採用するようにしていただきたいと思つております。私は経済人を採用したことは何も反対ではなくて大歓迎である。大歓迎であるけれども、ただいかにも日本の外交は金を借りるのだとか経済だとか、そんなことのように外務省が放送されることはとんでもない間違いです。こういうことなのです。  それから為替管理と大蔵省との問題は、なるほど行政機構の改正法のこともありましようが、その案でもその問題がかなり重要だから、為替管理委員長と大蔵省との間で、すべてこの問題を協力して行けるようになごやかなふうに外務大臣がとりはからつて、この案の通過をおはかり願いたい。私はこの案はただ経済的の問題ばかりではないと思う。日本が独立国となつた以上は、自由国家に協力するという立場からも、こういう手続をとることは必要だから、そういう必要を考えれば、なるべくこの案がほとんど満場一致で成立することを私は希望いたしますがゆえに、どうか政府部内でちぐはぐの答弁の起らないように、ひとつ外務大臣として御配慮を願いたいということであることを御承知願いたいのですよ。駐米ばかりではなくどうか世界中に、外務省の熟練した人ばかりでなく、もつと大きな人間を大使にして、日本の政治的の世界的の立場をよくするようにひとつ特に御考慮願いたい。あなたが経済人を採用したことは大賛成で、外務省の人だけに大公使を限るなんという狭苦しいことはやめていただきたい。こういうことです。
  95. 北澤直吉

    ○北澤委員 時間がありませんから、あと二点だけ質問して終ります。  政府にひとつ資料として提出をお願いいたしたいのでありますが、それはこの通貨基金に対する払込済みの出資額、それから各加盟国でこの資金をどういうふうに使つているか、その現況、それから国際復興開発銀行の今申しました資金量ですね、資本とか剰余金とか、そういうのはどれくらいまであるか、各国はそれからどのくらい金を借りたか、その実績を資料としてこり委員会に御提出願いたいと思います。  それからあと二点ほど伺いたいのでありますが、一つは、日本がこの通貨基金加入すれば、日本外国と円建の貿易ができるかどうか。この協定に加入して日本の通貨が国際的に信用を得るようになれば、円建で貿易ができるようになるかどうかという点と、もう一つ通貨基金協定の第一条第四号によりますと、多角的な支払い制度をつくるように援助する、こういうふうになつておりますが、現在ヨーロツパでマーシヤル・プランに関係して欧州決済同盟というものができて、二国間の決済でなく、多数国間の決済で貿易じりを決済するということでやつておりますが、こういうふうなことがアジア方面でもできるかどうか。現に日銀総裁がアジアにおいてもそういう決済同盟をつくつた方がいいという議論をしておりますが、一体日本と東南アジアとの貿易の決済をよりよくするために、政府は決済同盟というようなものを考えているかどうか。この二点だけ伺つて私の質問を終ります。
  96. 木内信胤

    木内政府委員 円建の貿易という問題は、実は国際決済機構、ブレトン・ウツズ機構というものへの加入のいかんにかかわらない問題だと思います。しかし今でもやつて悪いというものではないのです。種々の観点から円建でない方が利益だと考えて、現在のドル建及びポンド建の貿易をやつております。この説明は長くなりますからまたの機会にさせていただきます。  それから第二点のアジア決済同盟というのは、日銀総裁のお考えがどういうことか私はつまびらかにいたしませんが、これはまた非常な大問題でありまして、地域的に小さな連合をつくるということは、いいようでもありますし、悪いようでもあるのです。現に欧州決済同盟というのが欧州にできましたが、これは国際通貨基金から見れば反逆であるという考え方と、今国際通貨基金というものは思うようにはうまく行つていないのは事実でありますが、思うようにうまく行つていないその間の過渡的処置としてやむを得ない、むしろそれを通つて国際通貨基金、プレトン・ウツズの機構というものの理想が実現するということ、この二つの考え方が現に欧州の決済同盟についてもあるわけであります。従つてアジアにおいては欧州と大分違う状況下にあるので、これが決済同盟的なものをつくるかということについては、なかなかこれはむずかしい問題だ、かつその方がいいか悪いかについても議論があることだ、こう思つております。
  97. 仲内憲治

  98. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本日の議題であります外国領事官認可状認証の問題に関連をいたしまして、少しく外交官の身分の問題等に関連して承つておきたいと思う。  それは今日東京にありますソ連の代表部が、講和条約の発効と同時にすでにその存在する法的な根拠を喪失する、従つてそこには何らの外交特権というものは認められないという意味のことを外務当局は再三言明されました。そうして昨日の参議院における外務委員会の議事録を見ますと、すでに政府はその旨をスエーデン政府を通じてソ連への伝達方を申し入れた。ところがスエーデン政府はその伝達方を拒否して来たという意味のことが記録されております。しかりとすれば、すでに法的根拠を失つてはおりますが、麻布の狸穴には依然としてかつて代表部だつた建物と館員が依然として存在しているわけでありまして、そういたしますと、すでにその法的根拠を失つてから後今日までの間、これらのかつての代表部なるものは一体どういう法律上の根拠に基いて日本に存在するのであるか。どういう立場によつてこれが依然として外見上は継続しているものであるか、という点をまず承つておきたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは新聞等に非常に大きく取上げられておりますが、私はそんなむずかしい問題ではなくして、要するに対日理事会に派遣されておつた代表が、対日理事会がなくなれば自然になくなるというだけのことで、事実をただ事実として言つているだけのことにすぎない。なお従来の大使館は戦前からありますもので、これはソ連の国有の建物でありまして、その中に今まで代表部の人が残つている。これに対しては一般に外国政府に対する国際礼譲としまして、これを追い立てるようなことをしないのは当然であります。しかし事実特権等を要求していることもありませんし、また別段強要していることもないのでありまして、要するに大使館の中に今までの人がいる。これもまあ無制限にいるかどうかわかりませんが、今のところ急にどうと何かの措置をとる要も認めませんし、またそういう点については過去にも国際慣行を見ましても、黙つているものに対してこれを追い立てるようなことはしないのが普通だと考えます。
  100. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより国際関係には外交礼譲もあるのでありますが、さりとてすでに主権を獲得した独立国、この法治国の中に法律的根拠を持たない人間あるいは機構が存在するということは、近代文明国家のわれわれといたしましては、なかなか了承し得ないことであると思う。従つてそれでは一体それらのかつての外交部に従事しておつた職員と申しますか、代表部の部員と申しますか、そういう人々の国際法上の身分というものは一体どこにあるのかという点を承りたい。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国際法上は別にそういうものに対して身分をとりわけ認めていることはないと思います。他の例を申していえば、たとえば講和条約にまだ参加しない国であつて、従来から占領中に大使なり何なりを派遣しておつた在外公館的な性質のものもありまして、それが独立後は条約なりあるいは大使交換という協定みたいなものがなければ、やはり同様に身分は喪失するわけであります。しかしソ連ばかりではありません。現にほかの国に対しても、法的根拠がないからといつて、別にこれをどうするという措置はとらないので、しばらく事態を静観するのが普通だと考えております。
  102. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ソ連代表部の職員たちが日本へ入国する際には、当時の連合軍総司令部の許可を得て入国したものであろうと考えます。詳しいことは私は知らないのですが、その入国には期限があつて、六箇月間と限定されておるということでありますが、その点は一体どういうふうなことになつておるのか。また当分の間見送ろうというわけですが、しからば一体当分の間というのはいつごろまでという見込みなのか。漫然とあいまいな状態で存在されることは、われわれの感覚から申しましても、許し得ないところであると考えるわけであります。その辺をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 六箇月というような期限があつて入国しておるのは普通と考えております。しかし現実にそれがソ連の代表部の従来の人たちに対してとうなつておるか、私は一々は知りませんが、原則はそうであろうと思います。しかしそれは占領中のことでありまして、独立後の問題については日本政府が自分で考えてきめるべき問題であります。しかし過渡的のそういう措置は一応あることはあるわけであります。そこでいろいろ妙なこともあり得ると思いますが、これは過渡的の問題でありまして、独立とともに全部解決するということにも行かないし、またそう無理やりに措置をするという必要も私は認めておりません。常識上いつか適当の時期であるかということは、別に規定もありませんからはつきり言えませんけれども、常識的に見て適当の時期までは見送つておくべきものであろう、こう考えます。
  104. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その大臣の言う常識なるものを具体的な時間によつて申しますと、すでにある新聞には外務当局のスポークスマンの言として、講和条約発効後九十日間——これはあたかも連合軍の日本からの撤退の期限とちようど符合しておるようでありますか、九十日間というものに継続期間を認めようという説もあるようであります。さらに一説によりますと、日本政府はその常識で、さらに六箇月間の猶予期間を置こうということを申しておる。従つて四月二十八日の講和条約の発効から六箇月の後、十月の二十八日をもつてその存在する期限は切れるのであるというふうに見ておる向きもあるようでありますが、その辺はいかがでありましようか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいずれも臆測でありまして、外務省としては何も聞いておりません。これは国内の輿論の関係もありましようし、国際的の一般の各国の動きもありましようから、できるだけ常識的に、かつ円満なる方法で適当な措置を講じよう。こういうものにつきましては十分慎重な態度をとるべきであると考えております。常識というのはそういう意味の常識であります。九十日というのは、これは船待ちの期間、占領軍のいろいろな集積物資の処理とか、いろいろの技術的な観点から見て結論が出たもので、九十日はまつたく占領軍撤退という意味の数字上に出て来た結論でありますから、これとはまつたく関係がありません。また六箇月ということもまつたく意味がないので、要するに適当な時期にということであります。
  106. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると常識上の判断といたしまして、実際上われわれとして具体的にいつごろということを想定することは、きわめて困難なことでありますが、先ほどの御説明にもありましたように、今日日本におりますかつての代表部の職員たちは、すでに外交官としての特権がないといたしますと、これは一般の在留民としての資格としかわれわれは考えることができないわけであります。一般在留民だとすると、先般当委員会において審議をし、かつ可決をしたところの外国人登録法であるとか、あるいは出入国管理令といつた、外国人に対して適用される法律に従うべきものであると考えるわけでありますが、その法律上の根拠はいかがなものでありますか。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今お話のように出入国管理会なり登録法なり、そういうものを適用される状況というのは、つまり常識的に一定の時期が過ぎたときであります。もしそれをただちに適用するということでありますれば、その猶予期間のようなものは全然ないことになるわけであります。しかしながら外交官の特権というもののほかにいろいろの種類の、たとえば政府の代表——それは政府の代表といつても元首の場合もありますれば、政府の各大臣の場合もあります。またただの政府の役人が来る場合もあります。こういう場合にもそれぞれ相手国政府との関係に立ちまして、外交官ほど認めないにしても、ある程度の礼遇をするということは、日本外国においてさようにされておりますし、外国の人も日本においてさようにされることは常識であります。つまりそういう種類の一種の政府機関がおるのでありますから、ある程度の礼遇はいたしたいと考えております。それをいつまでするかという問題は、つまり常識的に判断されたある期間の間ということであります。それ以後は今言われたように普通の日本の法規がそのまま適用される、こういう次第になろうかと考えます。
  108. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 すでに対日理事会の解消に伴つて、ソ連の日本にある代表部の法的な根拠は失われたという意味のことを、スエーデン政府を通じてソ連政府に伝達せんと政府は試みた。そしてスエーデン当局から、その伝達方を拒否されたというふうに承つておるわけでありますが、すると政府がそのように試みられた日本政府の意思伝達ということは、今後はどういうような方針でソ連側に伝達するおつもりなのか。スエーデン政府から拒否されたとすれば、日本政府の意向はソ連政府に正しく伝わらないと思いますが、日本政府の今おつしやつたソ連代表部に対する取扱いの方針を、いかなる方法によつてソ連の政府に伝達するお考えを持つておられるのかということを承りたい。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私どもは、スエーデン政府にこういうものを取次いでくれということを要求したのではなくて、何らかソ連政府に取次ぐようなことがあつた場合に、スエーデン政府がそれを引受けるかどうかという内意を聞いたのでありますが、いろいろな事情があつたらしくて、そういうものはスエーデン政府としてはやる立場にないという説明のようであります。それからソ連側に通告したいと思つておることは取扱いの点でなくて、要するに対日理事会も消滅して、最高司令官もなくなつたのだから、ソ連代表部も従つてまた存在の理由がなくなつている、これだけの事実を知らせようと思つておつたわけであります。ところがスエーデンに拒否されたとかいろいろなことで、新聞にも非常に大きく出ておりますから、実は政府の目的を達したようでありまして、はなはだけつこうだと思つておりますが、しかしさらに何らかの適当な方法でやろうと思いまして今研究中であります。
  110. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 新聞はきわめて公式なものではないのでありますから、当然日本政府の意向は何らかのルートを通じて相手国に伝達されるべき性質のものであると存じます。これは私たちの考え方から申しますと、きわめてすみやかな機会に、というよりは、むしろ代表部の存在理由の喪失と同時に、その旨のことを通達すべき筋合いのものであるとすら考えておるわけであります。従つてすみやかにそのような措置を講ぜられんことを特に希望いたしておきます。  さらにこの際承つておきますが、ソ連側におきましては、今日東京にある代表部を、ややその性格をかえまして、通商部とかあるいは通商代表というような形として残しておこう、あるいはそういうふうに切りかえて行こうという考えを持つておるともいわれておりますし、もしまたソ連からそういう要望があつた場合においては、日本政府も、その交換条件としてソ連国内日本の通商代表部とか通商代表とかいうようなものを、設置したいという希望を述べられたやに承るわけでありますが、それらの点についての当局の今後の方針はどうかということを承りたい。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ソ連側からは公式にも非公式にもそういうような何らかの提案等は全然ありません。従いまして、通商代表部を置く意向であるとかなんとかいうことは、私から見ればすべて臆測であろうと思います。そこで、そういう仮定の問題についての質問がありましたから、参議院の外務委員会で昨日答弁しましたのは、そういうことはそのときになつて具体的の提案があつたときに考えるべき問題であつて、今からイエスともノーとも言えないのである。ただ言えることは、すべての問題が、国際的の協定というものは相互主義でなければならぬということである。しかしそういう提案があつたときに、日本がそれを受入れるかどうかということはまつたく別問題であります。ただそれについて何とも言えないのは、具体的提案が何もないのでありますから、仮定の問題であれやこれやと議論してもいたし方がないと思いまして、それについては言及を差控えておるのであります。ただソ連ばかりでなく、どこの国に対しましても、いろいろの国際間のとりきめというものは相互的であるべきが原則である、こういうことは言えると考えております。
  112. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 さらにもう一つつておきたいと思いますことは、今の日ソの関係から申しますと、いろいろな懸案の解決にも、交渉する立場でも、正常な交渉のルートがないために、まことに不規則な状態にあるわけでありますが、それでは日本におるソ連人の刑事上の問題等がかりに発生したというような場合におきましては、その問題をどんなふうにして相手国と交渉するかという具体的な——最も根本的な懸案の解決だとか国交という問題は別といたしましても、いつ起るかわからないようなこういつた問題が起つた場合においては、どういう措置をとられる方針であるかという点を伺いたい。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これも考えないではないのであります。今まで各国でもそういう不規則の事態が過渡的にはあつたのでありまして、その当時のいろいろのやり方を見てみますと、要するにこういうものは根本的の協定等がない場合でありますから、その事件がどういう事件かによりまして、ケース・バイ・ケースで事件だけを解決するような方法を講ずる以外にない、また従来各国ともそういう方針でやつて来ておるように思いますから、日本でもケース・バイ・ケースで考慮して行くということになろうかと考えます。
  114. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に私はきよう質問いたしましたことについて、もう一回確認いたしておきたいと思います。要するに今日東京にあるソ連代表部というものはすでにその存在の根拠を失つておる。従つてソ連代表部職員に対しては何らの外交特権も与えていない、また先方からも要求していない。しかしながら国際礼譲の関係もあつて、当分の間は従来通りの取扱いをいたしたい。しかしこれが六箇月になるか九十日になるかわからないが、とにかく常識的に判断をして、一定の期間が過ぎたときにおいては、もしそのまま残つておるならば、これは外国人登録法であるとか出入国管理令という法規の適用を受けるべきものである、こういうふうに解釈してけつこうでありましようか、どうでしようか。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りでありますが、ただ従来のような取扱いをして行くという点は多少異なると思います。従来は対日理事会のメンバーとしまして占領軍から各種の特権を得ておつたと思います。しかし、ただいまのところはソ連代表部は日本政府から何も特権を享有しておらないのであります。たとえばガソリンの配給というようなこともやつておりません。食糧についても何もめんどうを見ておらないのであります。電気やガス、水道その他の問題は、これはおのおの料金を適当に払つておる。ただ、ソ連の所有物である大使館の中に人が住んでいるという事態だけでありまして、従つてわれわれはその事態までも打ちこわそうとしてはいないということであります。もしこれが、何らかの特権でも必要になるような事件なり行動がありました場合には、ケース・バイ・ケースでそれを適当に処理する。要するにその根本観念は、ソ連代表部というものは存在がないのであるという考えから処理いたしますけれども、そういう事態が今のところ何も起つていない、従つてそのままにしておく、こういう建前であります。
  116. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一点だけ質問して終ります。そうすると、今までのような公館への不可侵権——日本官憲の立入りというようなことは、ただいまの国際礼譲からいつて、いわゆる大臣の常識からいうならば、すぐにやろうという意図を持つておるわけではないのでありましようが、法律上はもちろんそのようなことは可能となる。何らかの外交上の特権、免除もないということになるならば、そういうこともできるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 法律上はそういう解釈も成り立つかもわかりませんけれども、要するに、独立したからといつて、すぐに主権をめちやくちやに振りまわすということは、すべきでないと私は考えているだけであります。たとえば、不可侵権というものはないのでありますけれども、事実上何も事件がないのに外国政府の建物の中に踏み込んで行くという必要もないわけであります。むしろ、万一何かあつた場合に、先ほど申し上げましたようにケース・バイ・ケースで適当にそれを処理するというつもりでおります。
  118. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して伺います。これは非常に重要な問題です。ことに、警察権まで行使する場合もあり得る、というような含みのあるような答弁だということになりますと、これはゆゆしい問題でありますから、ひとつ日ソの関係を明確にしておきたいと思うのであります。  第一に、日ソの間に講和条約締結されていない限り、日本の対ソ関係はやはり降伏国の関係にある。講和条約締結されていない限り、戦闘状態は終結しているけれども、戦争状態にあり、その国際的な法律的な関係は降伏国としての関係にあると思いますが、その点については外務大臣はどうお考えになりますか。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 講和条約が成立いたしましても、これは非常に多数の国との間の講和条約でありますから、ある国がこれに調印しないというような場合もむろんあります。例を考えてみますと、たとえば第一次欧州大戦のあとでは、理由は違いますが、アメリカも中国もヴエルサイユの講和条約には参加しなかつた。しかしながらドイツの独立ということは国際的に認められておりまして、またそれらの国もドイツを独立国として見ておつたことは疑いない事実であります。事実上二年半ばかりの間は講和条約に参加しなかつたという事態があるのであります。今度の場合でも、非常に多数の国との間の条約でありますから、数箇国これに参加しないものがありましても、もう日本の独立は完全に回復されまして、降伏国と戦勝国というような関係はないものと信じております。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、アメリカ、イギリスと講和条約締結すれば、ソ連との間にも当然降伏関係は解消する、その講和関係の効力が及ぶという根拠はどこにあるのですか。われわれが全面講和を主張したのは、ソ同盟、中国が入らないと全面的な講和にならない、日本が完全にソ同盟、中国との関係においても独立関係を保つためには、これをも含めての講和関係を結ばなければならないというのが、われわれ全面講和論者の主張であつた。ところがあなたはいつの間にかアメリカ、イギリスと講和を結べばソ連、中国に対しても、すでに降伏関係あるいは戦争状態がなくなつておるという主張をなさつておるようでありますが、その根拠はどこにおありでしようか。私はやはりソ連との関係については降伏関係にある、これは将来の外交問題として調整して行かなければならない問題だと思いますが、この点はもう一度念を押しておきます。降伏関係にもない、もう対等な関係にあるということは、私は講和を結ばない限り発生し得ないと思いますが、その点はどうです。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 平和条約によりまして日本は完全に主権を回復したのでありまして、これは世界の四十八箇国の国々が調印したところを見ても、世界の大多数の意向であることははつきりわかるわけであります。そこで降伏文書等はこの平和条約によつてとりかえられておるのでありますから、日本の独立回復ということは動かせない事実と考えます。ただこれは、たとえば中共政府でもよろしゆうございますが、例をある国にとつてみますと、ある国が新しい政権をつくつたというときに、それはどこから見ても独立国であつても、何かの理由承認しない国が数年間はあり得るのが例であります。しかしながら承認するしないは、国交の回復のあるかないかということに関係あるだけでありまして、そのある国が政府があり、領土があり、そして国民がある、完全に統治を行つておる場合には、それは独立国であるという事実は動かせない事実であります。ただこれを承認しない国があれば、その国とは関係ができて来ない、こういうことであります。私どもは、平和条約の批准が行われまして、今だんだん各国との間に平和関係が樹立されつつあるのでありまして、これはもう間違いなく世界の大多数の国、ほとんど大部分の国と平和関係に入ると信じておりますが、そういう場合に、まだ数箇国が承認しないという場合でも、日本の独立ということは動かせない事実である、ただそれらの国とは平常関係が回復してないだけである、こう私は考えております。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 時間の関係がありますから進めて行きたいと思いますが、もう一つ根本的な問題でお聞きしたいことは、多数の国と講和したから少数の国がそれに異議をはさんでも、その少数の国の異議は無効になるという根拠はどこにあるのですか。たとえば会議でも開いて、その会議の規則の中に多数決できめるということでもあるならば別として、少くとも外交関係をそれぞれの国の立場から交渉が進められ、とりきめられているときに、中国、ソビエトあるいは東ヨーロツパ諸国が、日本とはまだ講和関係を結んでおらないといつている場合に、アメリカ、イギリスと講和関係を結んだから、その関係がソ同盟、中国の異議を無効にするという何か国際的な根拠がおありなのでしようか。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そんなことを私は言つておるのではない。何もイギリスとアメリカとだけ講和を結んだのでないことは、林君御承知の通りであります。おそらくことしの終りころまでには各国の準備が整いますから、五十なり六十の国と講和が結べて平常関係に入りまして、あと残るのは数箇国だけだと思います。そのときその数箇国ががんばつておるから日本は独立できないのだということは、常識的にまことにこつけいな議論でありまして、そういうことはとうてい考えられないことであります。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 講和を結んだ国とは、あなたの言うようにかりに独立したとおつしやつてもいいでしよう。しかしその講和について、自分はこの講和には反対だから、日本とは講和を結ばないという国に対しては、講和関係は発生しないと思います。あなたは多数国と言われますが、中国・ソビエト・インド・フイリピンあるいはパキスタンもそうであるが、こういうアジアの実質的な大国は、ほとんど講和関係を結んでいない。それにもかかわらずキユーバだとかグワテマラだとか、聞いたこともないような国々を集めて来て、四十八箇国だから、日本は中共・ソビエト・インド・フイリピンなどとも講和関係締結したとは言えないと思う。だからあなたの言われるように、日本と講和関係締結したのは四十何箇国か知りませんが、かりにそれらの国と日本との間に対等な国際関係が復活したとしても、それに反対しておるソ同盟、中国に対しては、まだ講和関係は発生しないと私は考えるのでありますが、その点はどうか。  それから実質的に講和が締結されないということになりますと、「連合国最高司令官又は其の他特定の連合国代表者が要求することあるべき一切の命令を発し且斯る一切の措置を執ることを天皇日本国政府及其の後継者の為に約す」という降伏文書精神によつて、ソビエト側が降伏文書あるいはポツダム宣言を十分日本に履行させるため、一定の監視機関を置くことを要求することが当然あり得ると思いますが、その点はどうか聞いておきたいと思います。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の点につきましては、インドはすでに外交関係の設定を了承しまして、今平和条約の草案を完成せんとしており、大使の交換も、こちらからはまだ送つておりませんが、先方はすでに大使を出しまして信任状を捧呈しております。パキスタンにつきましても同様でありまして、外交関係は設定されつつあります。ビルマも、これは新聞報道でありますが、もう近いうちに平和条約草案を脱稿するといわれております。従つてインドやパキスタンと日本との間には平和条約はまだできておりませんが、インドとの間にはもう外交関係は回復されて、平常関係に入つておるわけであります。入りませんのは、結局ソ連と中共ということになろうかと思います。  それから降伏文書には、なるほど連合国最高司令官という今林君の読まれた文字がありますが、連合国最高司令官はすでになくなつております。従つてそういう命令を出す元がなくなつておるのであります。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 降伏文書によると、「連合国最高司令官又は其の他特定の連合国代表者が要求することあるべき一切の命令を発し且斯る一切の措置を執ることを天皇日本国政府及其の後継者の為に約す」とあります。要するに「連合国最高司令官又は其の他特定の連合国代表者」とある。だからソビエト側の意向は、まだ講和条約締結されず、降伏関係にある限りは、これを無視するわけにいかないと思う。私はこれを聞いておるのであります。  それからもう一つ、対日理事会と極東委員会の問題ですが、これは今まで岡崎外務大臣は、対日理事会と極東委員会の解消の問題、これは連合国が決定すべき問題だ、日本国がこれに対して判断をすべき問題ではない、と今まで外務委員会で答弁されておる。ところが最近は、外務委員会で、あなたはもう対日理事会も極東委員会も解消したと、あたかも対日理事会の連合国であるかのごとき判断をしておる。これは非常に従来の態度と違つて来たのでありますが、あるいはアメリカあたりから、これは日本解決しろとでも言われたのであるか、その点を聞いておきたい。ということは、もしもあなたが対日理事会が解消したという判断をなさるならば、こういうことがあるのです。「日本国管理制度の変革、憲政機構の根本的変革及び全体としての日本国政府の変更に関する問題に付ての極東委員会の政策決定の執行に関し、理事会の一委員が最高司令官と意見一致せざるときは、最高司令官は極東委員会に於て意見一致が達成せられる迄右問題に関する命令の発出を差控ふべし」とあります。従つてすでに日本がポツダム宣言を完全に履行して、降伏文書の要件ももう完成したという連合国最高司令官の見解と、対日理事会を構成しておる理事会の一委員であるソビエト側のこの問題についての意見が一致しない場合には、これを極東委員会に持ち出すべきである。極東委員会において意見の一致の達成せられるまでは、連合国最高司令官はその命令を出してはならない。対日理事会の解消というような重要な問題について、理事会の一構成国であるソビエトとそれから連合国最高司令官との間に意見が違つたならば、これは当然私は極東委員会へ持ち込むべきものだと思うのであります。そこで極東委員会はどういうようにして決定されるかというと、「委員会は全員一致に満たざる投票に依り行動を執ることを得、但し右行動は次の四国即ち合衆国、連合王国、ソヴイエト社会主義共和国聯邦及び中華民国の代表者を含む一切の代表者の少くとも過半数の同意を得べきものとす」、明らかにこれはソビエト側の拒否権が認められておるのであります。ところが御承知の通り、極東委員会ではパニユーシキンが拒否権を行使して、また対日理事会並びに極東委員会の解消は不当であるということを言つておるのであります。そうすると少くとも対日理事会並びに極東委員会の連合国間では、対日理事会の問題と極東委員会の問題は解決しておらない問題だと思うのであります。それだからこそ、私は岡崎外務大臣は、今まで当委員会においても、その問題は連合国で決定すべき問題だということを言われたと思うのであります。そうすると、あなたがこの問題について、まだ日本国側の外務大臣として決定的に対日理事会が解消した、あるいは極東委員会までが解消したということをここで言い得るはずはないと思うのでありますが、この点についてどういう見解を持つておられるか聞いておきたい、この二問です。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 対日理事会はもう存在を失つたという通告を、連合国最高司令官は各対日理事会のメンバーに通告したと了解しております。従つて対日理事会はなくなつたものであると私はかたく信じております。従つて先ほども言つたように、ソ連の代表部も存在する理由はなくなるということであります。極東委員会の場合におきましても、極東委員会がかりに何か決定をしたところで、それを遂行する最高司令官はなくなつてしまつておる。また極東委員会も、ソ連は拒否権を行使したかどうか知りませんけれども、ほかの国の代表は全部極東委員会は消滅したと思つている。従つて常識的に見ても、一人で委員会を構成するわけには行きませんから、それもなくなつたものであると考えるのは当然であろうと思います。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは対日理事会でソビエトのキスレンコが対日理事会の解消について重大な異議を申し述べたことは、これは日本の新聞にも出ておるから、私はあなたは知らないはずはないと思います。従つて、もし対日理事会の解消をあなたが主張するならば、この一九四五年十二月二十七日のモスクワ会議の決定によつて、対日理事会における最高司令官と理事会の一委員意見の一致しないときには、最高司令官は極東委員会におして意見一致が達成せられるまで、右問題に関する命令の発出を差控うべきだ。少くともこういう問題が解決するまでは、あなた自身が対日理事会が解消したとアメリカと同じような見解を言うことはできない。あなたがアメリカの国務省の一出張員ならこれはわかります。しかしあなたは日本外務大臣であります。日本外務大臣がアメリカと同じようなこと言つて、そしてわれわれが最も国際的に今後調整をとらなければならない重要な一国であるところのソビエトに対して、あたかも挑戦状を突きつけるような、もうソ連の代表部は法律的な特権がないのだ、場合によつてはあの中へ警察を入れるかもしれない、あるいは実力を行使してまで追い出すかもしれないというような口吻まであなたが漏らすということは、これは非常に重要な問題だと思うのです。それから極東委員会の決定についても、少くとも次の四国、すなわちアメリカ、ソビエト、中華民国、それからイギリスと、この四つの国の一致を見た多数決でなければならないということをはつきりうたつてあります。そして。パニユーシキンがこれを反対したことは明らかだ。そうすると、これは国際的に問題が残つておる。その際あなたがあたかもアメリカの代表者のようなことを言うのは、これは国を誤るもはなはだしい。(「君はソビエトの代表者のようなことを言うじやないか」と呼ぶ者あり)そうじやない。私はこの条文を忠実に読んでいるだけだ。そして私はあなたにお聞きしたいのでありますが、なぜこの問題を連合国間できめるように要請しないのか。日本がみずから進んで対日理事会は解消した、極東委員会も解消した。だからソ連代表部は日本にいる法律的な根拠はないというようなことを、日本外務大臣としてあなたがなぜ言わなければならないのか。その問題は対日理事会あるいは極東委員会、連合国間で決定すべき問題でありますと、なぜあなたは言えないのか。従来はあなたは言つていた。しかし最近そういうことを言い出したのは、何か根拠があるのでありますか。少くとも私はその問題は連合国間で決定すべき問題だということで、日本外務大臣としては、それで十分国際的な正しい判断でありますから、それをしていただいたらいいと思いますが、どうして最近はつきり対日理事会が解消した、極東委員会が解消した、対日ソ連代表部の法律的根拠はないというようなことを言われるのか、お聞きしておきたいと思います。  それから先ほどの警察官の立入りとかなんとかいう問題がありますが、外交特権がないということならば、あの中へ警察官が入るとか、あるいは場合によつては警察予備隊でも入れる、(「あたりまえじやないか」と呼ぶ者あり)あたりまえというなら、それをはつきり答弁しておいてください。こういう実力行使をしてまで、対日ソ連代表部を日本から追い出すということを、自由党の菊池委員はあたりまえだと言つておりますが、与党の菊池委員がそう言つておるのですから、おそらく自由党の外務大臣もそう思つておられるかもしれませんが、そうなつたら私は国際的な重要な問題だと思います。から、はつきり答弁して、ここに速記に残しておいていただきたい。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は日本の国会議員である林君が、どうしてそういうふうにソ連の代表のような意見を述べられるかわからないのですが、私は連合国がもう決定したとかたく信じております。そして対日理事会が消滅したという通告も受けておるとかたく信じておりますから、対日理事会は消滅したと考えておるのであります。またソ連代表部の今までおりましたソ連の前の大使が——これに対する問題については、先ほど詳しくお話しまして、速記に残つておるから御安心願つてさしつかえないと思います。
  131. 仲内憲治

    仲内委員長 もう時間が来ましたから……。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二問だけ。一問は先ほど佐々木委員質問されたのでありますが、スエーデンを通じて交渉を持とうとしたところが、これが断られたというように新聞に出ております。スエーデンに断られたから、今度はスイスへ持つて行くとか、その前には何かインドに頼んだということでありますが、インドにも断られたということであります。こんなことは国際的に不体裁きわまることだと思うのであります。かりにスイスの立場に立つても、スエーデンに断られたからおれのところに持つて来た。それでは言うことを聞きましようというはずがないと思います。それからスイスにいたしましても、こういう国際的な微妙な問題を、あえて火中のくりを拾うはずはないと思います。あまり日本の国の恥さらしみたいに、インドへ持つて行つたり、スエーデンに持つて行つたり、スイスに持つて行つたり、それを持ちまわつて日本の恥を対外的にさらしたくないと思いますが、スエーデンとどういう交渉をして断られたのか、あるいはスエーデンに断られたから、今度はまた他国を通じて頼もうとするのか。そんなことをするなら、ソ連の代表部が目の前にいるのだから、それとなぜ直接交渉を持たないのか。スエーデンに断られたという問題と、それからスエーデンに断られたから、他国に持つて行くというような考えがあるのか。それから、なぜ直接の交渉を持たれないのか。たとえば拿捕船の問題あるいは引揚げの問題、そういう具体的な問題だけでいいから、そういう問題を通じて直接交渉を持たれるような努力をなぜしないのか、こういう点を聞いておきたいと思います。  それからもう一つつけ加えたいことは、要するにスエーデンでも、スイスでも、結局日本の背後にはアメリカがある、そのアメリカみずからが解決するのを避けて、日本政府にこういう非常に困難な問題を押しつけておるのではないかというように、国際的に判断できるのではないか。これは私の考えでありますが、そう思われる。なぜあなたが最も信頼しておられるアメリカを通じて——アメリカはあなたの最もいいパトロンなんですから、スエーデンだのスイスだの、そして新聞によるとインドだとか、そういうものに持ちまわつて行けば、これはまつたく恥の上塗りだと思う。そういうことをなぜしないのか、それを参考までに聞いておきたい。  もう一つ委員長に申し上げておきたいことは、大村の収容所の問題がありますが、これを最後に聞きまして終りたいと思います。
  133. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 別に持ちまわりをするつもりはありません。もうスエーデンで新聞にはつきり出ておりますから、日本政府立場は非常によく宣伝されて、世界中にわかつたと思いますので、非常にけつこうだと考えております。あとはどういうふうにしますか、適当な方法考えようと思つております。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、スエーデンで断られたから、第三国を通じてのソ連との交渉ということは、もうこれ以上はしないというように判断していいかどうか。あるいは最後に泣きつくところはアメリカだから、アメリカあたりでもまた頼もうというのか、あるいはもうそういう三国を通じての交渉というものは考えないのか。考えないとすれば、この問題はどういうふうに今後処理して行くのか。具体的に、拿捕船の問題、引揚げの問題そのほかあるわけでありますから、こういう問題の交渉は、どういうふうになさるのかということを聞いておきたい。それから最後に、時間の関係から一括して御質問いたしますが、今朝のラジオで聞いたのでありますが、大村における朝鮮収容者の問題について、騒擾が起きておる。これはこの前韓国へ送還された人が、何の理由か明確でなくして返されたという話を外務大臣から聞いておりましたが、その後理由がはつきりしたのかどうか。なぜまた日本へ送還されたのか。そのことのために騒擾が起きているというのは、どの程度のことが起きているのか。私は大村付近の情勢が非常に緊迫しているようなことを聞いておるのでありますが、その内容を聞いておきたい。これは、理由なくして収容されては、また収容所の待遇によつては、そういう問題が起るのは当然のことであります。  要するに第一問は、スエーデンで断られたということになると、あと第三国を通じての交渉ということはもう考えないのかどうか。かりに第三国を通じてという方法がないとすれば、どういう方法で具体的な問題を交渉する糸口を持つているのか。これが第一問。  第二問は、大村の収容所の騒擾問題について、その後外務省に入つた情報を知らしていただきたいということです。念のために私最後に申し上げますが、先ほど外務大臣は、私がソ連のことを弁護するというようなことを言われておるのでありますが、私はここに配られました、外務省で検閲を受けて国立国会図書館調査立法考査局から出ておる連合国対日政策に関する基本文書というのがありまして、これに基いて私が聞いておるのでありますから、決してソ連から来ておる資料で私は聞いておるのではありません。これを見ましても、明らかに極東委員会におけるソ連の拒否権は認められておるし、対日理事会で……。     〔「同じことを繰返すな」「委員長注意」と呼ぶ者あり〕
  135. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、早く質問を進めてください。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 この委員会委員の中に、実力行使をしてもいいという委員がいて、これを黙つて——そういう立場から私は言つておるので、何もソ連の立場から言つておるものではありません。また降伏国であるからといつて日本をどうしようこうしようというわけではないので、貿易関係その他において日本と友好関係を結びたいという動向が見えるので、私はそういう立場から質問しているのでありますから、そういう立場を十分納得の上で、私の一番最後の質問である二問の答弁を聞いておきたいと思います。
  137. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれの方はもうはつきりソ連代表部に対する立場はここで明らかにしております。これをどういうふうに先方に通ずるかということは技術的の問題でありまして、これは外交の処理をまかされておる政府におまかせを願いたいと思います。政府としてはいろいろ考え中であつて、どうするということはまだきめておりません。  それから朝鮮人の送還の問題でありますが、これはまずどうして返したかということについては、実は昨日もその説明をすると韓国代表部は言つておりましたが、まだ説明をいたしておりませんので、はつきりしたことはわかりません。あるいはなかなか説明も困難で、できかねておるのかもしれません。  それから騒擾事件というのは、別に今のところないようでありますが、何かそれを外部の韓国人が騒ぎ立てるかもしれぬという報道を聞いております。そこで私は入国管理庁にもその他にも連絡をいたしまして、いやしくも法を破るような者がおりましたら、容赦なく措置しろと厳重に命令しております。
  138. 仲内憲治

  139. 並木芳雄

    並木委員 自由党と共産党にまかしておくとどうしても尖鋭化して治まりそうもありません。改進党が出なければやはりだめです。岡崎外務大臣質問いたします。ソ連代表部の職員にはどういう者がいて、その期限はいつまでであるかということは、前の総司令部の当局者にはわかつておるはずだと思います。従つてこの点をアメリカの方へ照会することが一番近道じやないかと思うのでありますが、そういう方法をとられるかどうか、お聞きしたいと思います。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 問題はそういうささいのことではなくて、代表部全体をどうするかということになるのであります。これは今まで、たとえば代表部員としてアメリカの占領軍最高司令官から入国の許可を得ておりましても、代表部なるものの存在がなくなれば、従つて入国許可というものも存在がなくなるわけでありますから、それが何箇月の期限があろうともなかろうとも、それは直接関係がないのだと思います。要するにこの代表部なるものをどういうふうに取扱うかという全体の問題なのです。それは先ほど申しましたように、常識的に考えて、国際的にもうなずけるようなところで、適当な措置をいたしたい、こう考えておる次第であります。
  141. 並木芳雄

    並木委員 中共貿易についてお尋ねをしておきたいと思いますが、英国の商社が中共を引揚げるという報道が入つております。先ほど北澤委員もこの点に触れられたようでありますが、北澤委員は、だから中共貿易はだめなんだという結論に導くように言つております。私どもはそういう単純な考え方をしないで、英国の商社というものは、中共の国内での商活動を引揚げて来たにすぎない、貿易というものはおのずからそこに残る、こういうふうに見たいのです。従つて英国の商社が中共から引揚げれば、かえつて日本にとつては、中共貿易の糸口というものは有利に展開するのじやないか、こういう見方も出て来るであろうと思います。そこで英国の商社が中共から引揚げられた状況、そういうものに対して外務省はどういうふうにお考えになつておるのか。これと相呼応して日本の中共貿易というものに対する外務大臣の所見を承つておきたいと思います。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 英国の商社を見ますと、ジヤーデイン・マジソン、バターフイルド・アンド・スワイヤーとか、あるいは元の英米タバコとか、あるいはエーシアテイツク・ペトローリアム——アジア石油であるとかいうようなものでありまして、多くが貿易に依存しておる会社であります。また輸送に関係している会社のようであります。それが今まで持ちこたえて来たのが、とうとうとてもいかぬというので引揚げることになりました。先般モスクワ会議で英国と中共との間に、一千万ポンドの契約ができたというようなことを、しきりに伝えられておりますが、それができておればそういう商社が撤退するというのは、はなはだふしぎでありまして、どうも非常にこれはモスクワ会議の議決のあと、こういう決定を見たということは、まことに皮肉な現象であると見ております。私どもは従来から中共との貿易を一部はこれを認めておりますけれども国際連合制限措置その他によりまして、日本制限をいたしており、従つて貿易が実際上相当程度とめられているときに、中共貿易なんかをやつても大したことはないのであります、過大評価をしてもしかたがないのだということを政府なり私も言つておりましたが、実際貿易をやらしてみて、なるほど大したことはないのだとわかれば、国民も納得するでしようが、やらせないで大したことはないのだと言つても、なかなか納得ができないので、問題がむずかしかつたのであります。ところが今回のイギリスの状況を見れば、おそらくなるほど政府の言つたことにもりくつがあるとお考えになる人もたくさんあると考えております。実際私は貿易はできにくいだろうと思います。また多少はできても、それに見合う経費の方が非常にかさんで、利益がない、むしろ欠損にみななつておるという状況で、とてもかなおないで引揚げたのだと思つております。こういう次第でありますから、ますます私は今までとつた政府立場を変更する理由を認めないのでありますが、同時に、英国側がひつ込んだ、そらそこへ乗じて出て行けというようなことは、むろんわれわれとしてはいたすべきものではないのでありますが、かりにそういうことをやつてみたところで、英国でさえ引揚げた、中共を承認しておつて、大使こそまだ送らずにおりますけれども、代理大使も送つており、領事もある、そうしてかなり大きな商社がたくさん残つておる、そうして香港も持つてつて、中共との貿易を一生懸命やろうとしておるイギリスでさえ、商社を引揚げざるを得ないというような状況でありますれば、日本考えているような中共貿易日本との間に行われるとは、とうてい私は想像できないのであります。
  143. 並木芳雄

    並木委員 議論になりますから御意見として承つておきますが、それは岡崎外務大臣考えであつて、実際にはやはり日本の商社が希望すればやらしてみてもいいのじやないかと思う。ですからバトル法は、日本はこれに拘束されないと思います。さるべきでありませんけれども、今までバトル法も、日本自体が中共方面への輸出制限しておつたのですから、そういう制限などによつて今まで開かれなかつたということも冷静に考えなければいけないと思います。その制限を緩和してやれば、あるいは案外中共貿易もやれるのじやないか、やつてみて実際失敗して、体験をさしてからひつ込ました方が民主的じやないですか。大臣の考えだけで、外国の例を見て、それ見たことかというのも、それは考え方でしようけれども、英国が中国の中に得ていた特権というか、優遇というのは相当大きかつた、ところだそれがだんだん中国が平等を回復して、むしろ今まで甘いしるを吸つていた英国の商社というものが、マージンが得られなくなつた、そういう意味での困難の方が大きな原因じやないかと思うのです。そういうことを考えますと、とにもかくにも制限を緩和して、そうして中共貿易をとにかくやらしてみたらいかがですか。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点につきましては、私はたびたび言つておりますから簡単に申しますが、日本はもつと大きな特権を過去において中国、満州地区に持つておりまして、それで非常に今でもそういうことができるような考えを持つておるのが私は間違いで、今となつては非常な、過去の夢は夢にすぎないのだということを申しておつたのであります。そこでそれは別問題といたしまして、ただいまわれわれの一番努力してやらなければならぬことは、先ほど植原委員もおつしやつたように、自由国家群と緊密な連絡を持つて、相ともに携え、世界平和の維持に当るということであろうと思います。いやしくもこの陣営の足並をくずすような措置をとるべきでないことは、私が申すまでもないと思います。そこで朝鮮におきます事件に基いてではありますが、いろいろの国連の制限措置もあり、また各国も自発的に制限している向きもあり、また北大西洋同盟諸国はコーコムといいますか、ああいうものをつくつて、いろいろ制限措置を講じておる。それに対してわれわれが多少の利益ありとしても、この自由国家群の足並を乱すというような大きな問題をあいまいにすべきではないと考えます。従つてこつちの方が前提であつて、この範囲内における無害な貿易なら別問題でありますが、それ以上のことをするつもりは政府としてはないのであります。
  145. 並木芳雄

    並木委員 岡崎外務大臣の方針に従つて自由主義陣営の国々と足並をそろえると申しますならば、われわれはやはりよほど通商貿易において、それらの国々との間の活発を期待しなければいけないと思います。そこで今度駐米大使に新木さんが行くことになりましたけれども政府として外資導入の一環である政治借款、これをどういうふうに具体化して向うへ持つて行かせるつもりなのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 新木大使は決して金を借りに行く大使ではないのでありまして、ほかの方面、つまり人間として非常にすぐれた素養のあるりつぱな人格者でありますから大使としたので、たまたまそれが経済人であつたというにすぎないのであります。そこでただいまのお話の政治借款と申しますか、政治借款という定義はいろいろあつて、私もよくわかりませんが、私はそういう借款などというものは起すべきものでないと考えております。これはちやんとコマーシヤル・ベースに乗つた借款ならば、これは利子も払う、元金も償還するというので、堂々たる取引でありますから、いくら借款してもこれはさしつかえない。そうでない何か政府の資金が足りないとかなんとかいうことで、金を借りて来るというような方法は、これは極力避けるべきものであり、またアメリカとしてもそういう借款供与というようなことは、決して考えておらぬのじやないかと思つております。われわれの考えておりますのは、先方も貸して利益である、こちらも借りて利益であるというような、いわゆるコマーシヤル・ベースに立つた借款を考えております。
  147. 並木芳雄

    並木委員 そういう話を進めて行く上においても、また国際通貨基金、あるいは国際復興開発銀行からの借款についても、われわれ日本として今後もドツジ・プランとかシヤウプ勧告、こういうものの制肘を受けるかどうかという問題であります。もちろん形式上はもうドツジ・プランとかシヤウプ勧告は、全然われわれは干渉を受けないと思いますけれども政府としても今後こういう通貨基金とか銀行との関係を維持して行く上において、ドツジ・プラン、シヤウプ勧告に対していかなる方針をもつて臨むつもりであるか、それを聞いておきます。
  148. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 別にドツジ・プランとかシヤウプ勧告をどうということは私も考えておりません。ただ今まで行われました種々の統制あるいは財政方針、これはインフレ阻止の上からいつても、非常に役立つたことが多分にありますから、税制にしましても財政方針にしましても、政府としてむやみにこれを変更するという気持はありません。また原則としてはインフレーシヨンにならないようなあらゆる措置を講ずる、これは当然であります。従つて自然にドツジ・ラインとかシヤウプ勧告とかいう線に沿つたものになるかもしれませんが、それは結果論でありまして、方針は今申した通りであります。     —————————————
  149. 仲内憲治

    仲内委員長 お諮りいたします。理事戸叶里子君が去る五月七日一度理事を辞任せられましたので、理事が一名欠員となつております。それゆえこの際理事の補欠選挙を行いたいと思いますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければさように決定いたしまして、戸叶里子君を理事に指名いたします。  次会は明後二十三日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十二分散会