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1952-04-30 第13回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 近藤 鶴代君 理事 並木 芳雄君       大村 清一君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    飛嶋  繁君       守島 伍郎君    小川 半次君       林  百郎君    武藤運十郎君       小平  忠君    黒田 寿男君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月二十六日  委員成田知巳辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  水田三喜男君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十八日  未帰還同胞の引揚促進並びに在外戦犯者の減刑  内地送還に関する陳情書  (第一五四一号)  在外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する  陳情書(  第一五四二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際連合への加盟について承認を求めるの件(  条約第四号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    ○仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合への加盟について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 私は前々回委員会におきまして、政府との間の質疑が中途で打切られることになりましたので、その続き意味におきまして、きようは多少質問をさしていただきたいと考えます。  その前に、前会の質問の終りにおきまして、岡崎国務大臣が私に対して御答弁になりました御意見に対しまして、ちよつと私の意見を申し述べさしていただきたいと考えます。私は前々回委員会における政府との質疑におきまして、国際連合加盟した場合に、加盟国に課せられる義務内容いかんという問題について質問をしたのでありますが、その際特に国連憲章の第四十一条、第四十二条及び第四十三条に触れたのであります。そしてその際明らかになりましたことは、第四十三条による特別協定は、まだどの加盟国との間にもできていないということ、従つて第四十二条に基く軍事的措置は、現実には国連としてはとり得ない状態にある、この点が明らかになつたのであります。なおそれに付随いたしまして、私は、朝鮮における国連軍出動国際連合憲章上の根拠が、第四十二条及び第四十三条にないということを指摘いたしまして、政府国連憲章のどの部分に根拠を持つておるとお考えになるかという質問をしたのであります。それに対しまして岡崎国務大臣は、第三十九条である、こう答えられまして、そのあたりで質疑の時間が中断され、それ以上に質問を展開することができなかつたのであります。そこできようはその続き質問をしたいと思うのでありますが、私は国際連合軍朝鮮事変について出動しておりますのは、岡崎国務大臣よう国連憲章の第三十九条にその根拠を求めるという御意見は納得ができないのでありまして、第三十九条は、安全保障理事会勧告軍事的措置とを決定する権限のあることを示しておるのでありますが、この勧告軍事的措置とは別個のものでありまして、この勧告軍隊出動の問題は含まない。軍隊出動軍事的措置という方に当るのでありまして、軍事的措置をとる場合は、第三十九条にも規定してあります通りに第四十二条によらなければならない、私はそう考えます。そうでなければ勧告軍事的措置——軍事的措置ないし非軍事的措置も含まれておりますけれども、要するに勧告措置とをわけて第三十九条において規定してある意味がない、こう思うからであります。しかるに前に明らかになりましたように、現在では第四十二条による軍事的措置はとり得ない実情にあるのでありますし、かつまた私の解釈するところは、今申しましたように、第三十九条の勧告軍事的措置を含まない、こういうように理解すべきであると思いますから、国連軍朝鮮への出動が第三十九条の勧告に基くと解釈することは、第三十九条を歪曲して解釈するものである、不当であるというように私は思うのであります。しかしこのことは、日本政府がそのよう解釈しておるというだけではなくて、朝鮮軍隊を送つておりますアメリカ合衆国その他各国が同様な解釈をしておるのでありまして、日本政府といたしましては、その解釈従つておるにすぎないというように私は考えます。私はこの問題に関しましては、アメリカ等のそのよう解釈間違つた解釈であると思う。第三十九条を歪曲してアメリカなども解釈しでおりまして、第四十二条及び第四十三条に基く軍の出動はなし得ないから、無理な解釈をしまして、第三十九条に基く勧告によつてこれをなしておるのだとこう説明をしておるのだろうと考えます。さきに申しましたように、第四十二条及び第四十三条の適用は現在ではあり得ないのでありまして、また第三十九条に基く勧告は、私の解釈では軍の出動は含まない、措置というものは含まない、措置については別に第四十一条及び第四十二条できめてある。勧告はそういうものを含んだものではない、こういうよう解釈いたします。また朝鮮事変に際して各国軍隊出動しておりますのは、もとより国連憲章の第五十一条のいわゆる個別的または集団的な固有の自衛権の行使の場合でもないと考えますから要するに朝鮮事変におけるいわゆる国連軍出動には、何ら国際連合憲章に基く根拠がない、私はそのよう解釈したいのであります。第三十九条によつて出動さしておるというのは、私から見ればこれは無理な解釈である、こういうよう考えます。しかしこの問題につきましては、私はこれ以上政府と論争する気持はきようは持つておりません。日本政府現実に出兵しておるのではないのでありまして、従つてこの問題で政府を相手に議論することは、今別に差迫つた切実な問題であるとも考えておりませんので、岡崎国務大臣と私の意見が違うということだけをはつきりさしておきたいと考えます。  そこで私はこれだけを申し上げておきまして、きよう質問に入りたいと思います。それは日本国自身に直接関係する問題に触れて来る質問であります。それは国連に対する日本義務の問題でありますけれども、一昨日発効いたしました平和条約によりますと、その第五条の(a)によりまして、日本国際連合加盟してもしなくても、国際連合憲章第二条に掲げる義務、特に(i)、(ii)、(iii)されておりますよう義務を負わなければならぬということになつたのでありますが、こう考えざるを得ないことについては異論のないところであると考えます。そこでお尋ねしてみたいと思いますことは、この義務の中には国際連合憲章第四十一条、第四十二条及び第四十三条等の義務が一般的に見て含まれるかどうか。私は含まれるものと解釈するのが当然であると思いますけれども、念のためにお伺いをしてみたいと思います。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問にお答えいたします前に、憲章第二条の意味平和条約第五条によつて日本が受諾した義務性質についてちよつと申し上げておきたいと思います。その点について見解の相違がありますと、いつまで議論斗わせましても結論に達しないからであります。憲章第二条によりまして、国連加盟国国連のとる行動にあらゆる援助を与える義務と、国連行動対象となつておる国に対して援助をしないという消極的の義務とを受諾いたしております。しかしこの第二条によつて加盟国が受諾いたしております一般的義務が、具体的にいかなる内容のものであるかということは、憲章の第三項以下の国連機関その他、ことに第六章及び第七章に規定してあります国連憲章による平和的処理方法及び強制的処理方法に含まれている条項によつて、具体的にきまるわけであります。でございますから、先刻来黒田委員もおつしやつたように、問題といたしておられます第三十九条、第四十一条、第四十二条をとつてみましても、第四十一条、第四十二条に予見されているよう国連がとる措置、ことに第四十二条に規定いたしております軍事的措置なるものは、いまだ第四十三条によつて予定されております特別協定もできておらない結果、具体的には活動し得ない条件にあるということは、全然見解を同じくしておる点でございます。われわれも全然黒田委員と同意見でございます。平和条約第五条によつて日本が四十八の連合国との間に、国際連合憲章第二条にうたわれている原則をもつて行動の指針とするということを約束いたしております。その中には、国際連合がとる措置にあらゆる援助をするといこと、並びに国際連合措置をとる対象となつている国に対しては、実際の援助を慎む、こういう義務が含まれております。この関係におきましては、四十八箇国との関係において、日本はまさに国際連合加盟国と全然同一立場に立つことを、お互いに約束いたしておるわけであります。国際連合加盟国以上の義務日本政府は負うものではございません。換言いたしますれば、国際連合がある国に対して強制措置をとるために、日本がどの程度義務を負うかということは、先刻黒田委員一般議論としまして、国際連合憲章について持つておられる解釈論をお述べになりましたが、それと同じものと考えられればよろしいわけでございます。言いかえますれば、平和条約第五条の関係からして、日本に対する関係のみにおいて、すでに今日から第四十一条、第四十二条の義務を履行すべき具体的義務は、まだ発生していないと言えるわけであります。従つて主として具体的に問題になるのは、第三十九条による勧告、それに対して受諾をして協力をする、こういう義務が具体的には生れて来ることになります。それがまた現実の問題として、朝鮮における連合国軍事行動に対して日本政府が与えている協力性質もまた、その当時からしばしば政府の方で説明いたしておりますように、国際連合諸国に対すると同様の勧告に応じて、日本が喜んでこれに協力をしておる、こういう関係にある次第でございます。
  5. 黒田寿男

    黒田委員 では、次の質問に移りますが、日本平和条約の第五条によりまして、ただいま問題となりましたよう義務を、国際連合にまだ加盟していないにもかかわらず受諾するということになつたのでありまして、これを現実事態に適用して考えてみますと、平和条約第五条の(a)の(iii)で、わが国は「国際連合憲章従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え」るという積極的義務と、「国際連合防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。」という消極的な義務とを負担したのでありまして、現実の問題としては、ただいま朝鮮事変につきまして、国連のとつております行動について、日本はあらゆる援助を与える義務を課せられるということになる、こういう論理にならなければならないと思いますが、そのことを具体的に表わしましたものが、吉田総理アチソンとの安全保障条約締結の際における交換公文書内容、こういうことになると思いますが、この点はどういうようにお考えになりますか、念のためにお伺いいたします。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本政府考え方は、国連安全保障理事会及び総会が、朝鮮動乱について各連合国に対しまして、軍事措置をとり、また北鮮政権に対しまして援助を慎むように、という決議をいたしました。その決議は第三十九条によるものでありまして、性質拘束力を持たない勧告性質のものであります。その勧告に応じて協力をいたしておる次第でございまして、勧告に応ずるか応じないかは、これは国際連合加盟諸国政府と、全然同じ立場に立つておるわけであります。各加盟国勧告があれば、必ず勧告に含まれている事柄を全面的に実行すべきものとは考えていないのでありまして、決議それ自体に賛成した国は、私の記憶では五十三箇国あるかと記憶しております。その中に現実に、朝鮮における行動に積極的に協力をいたしておりますのは、私の記憶が間違いなければ、十七箇国であるかと考えております。日本も、従いまして吉田アチソン書簡で、吉田総理が明らかにされましたのは、朝鮮動乱において、朝鮮軍隊を出して行動をとつている国が、日本でこれらの軍隊をサポートするために必要な事柄について、日本政府協力をしておるけれども、この協力平和条約発効後もまた続けますという趣旨を述べられたのが、書簡趣旨でございます。国連決議がありまして、国連軍行動が開始して、そうして具体的に日本政府協力をいたしましたときには、国連軍司令官からの要請に基いて、日本がその要請された事柄を自分の可能と思う範囲内において受諾してやつて来ております。その関係が今後も続く、こういうことを意味しておるものと考えておりまして、国連側で決定の決議勧告される内容を、全部百パーセント日本で実行すべきものであるという立場には一度も立つたことはございません。
  7. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、百パーセント受諾しなければならないという立場に立つておるわけではないけれども、少くとも吉田アチソン交換公文内容における範囲においては、その義務を受諾しているのである、こういうことになるのでありますか。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そうはならないと考えておるわけであります。要するに、国連決議に賛成いたしました五十三箇国の例をとりましても、決議には参加し、これが成立に努力いたしましても、その決議はあくまでも勧告性質しか持ち得ないものでありますので、これが第三十九条によるものであるということは、理事会の論議で明らかにされておりますが、従つて勧告を成立させましても、その勧告に応じて、どの程度勧告内容を実行するかは、各政府の独自の見解で判断し得るわけであります。従つて十七箇国が積極的に協力いたしておりますが、この十七箇国の協力程度も、国によつてきわめて違つております。軍隊を出している国もありますし、単に病院船医療班を出しているだけの国もありますし、また看護婦班を派遣する程度にとどまつております国もあります。ないしは医療物資を提供するだけにとどまつている国もありますように、千差万別であります。ただ国連行動協力をいたすという精神のもとに、その国が妥当と認めている範囲内において、現に協力をいたしておるのが現状であります。日本政府立場も、当初から国際連合安保理事会または総会決議もそのたびに移牒されて、これに沿うよう協力願いたいという要請に接したときに、日本政府国連行動協力をするという精神のもとに、どの程度具体的にやり得るか、やるべきか、やるのが妥当であるかという見地から判定して協力をして来ておる次第でありまして、協力の方針は不動でありますが、現実的にいかなる内容協力を具体的にいたすかということは、日本政府の独自の判断によつて決定し得ることでありますし、今日までも決定して来ておる次第であります。
  9. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、この交換公文はどういうものであるかということになるわけですが、私は、この交換公文は、国連日本関係を表わしたものではないと思います。この交換公文アチソン吉田総理大臣との間の交換公文で、アチソン国際連合のどのような地位におるか私はよく存じませんが、国際連合を代表いたしまして日本国公文交換したものと解釈することは私はできないと思います。ところが、この交換公文内容を見ますと、国際連合軍行動に対しまして、日本施設及び役務を提供するのだというようなことになつておりまして、内容の実質から申しますと、国連軍行動と、日本のそれに対する援助ということになつております。ところが公文交換当事者は、国連当事者日本当事者ではないように私には思えるのであります。これはやはりそういうよう解釈するよりほかないと思いますが、これは念のためにお伺いいたしておきますが、そうでありますか。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この書簡は、黒田委員の御指摘の通り合衆国国務長官とわが総理外務大臣との間にとりかわされた書簡でございますから、むろん日米間における約束でございます。書簡趣旨も、むろん日本政府としては国際連合行動に対して現に協力しておるが、今後も協力をして行きますという趣旨のものでございます。この書簡合衆国政府あてにとりかわされることになりましたにつきましては、安保条約を結びまして、そのもとに行政協定を結ぶということになりますれば、この日本における米軍に関する限り、施設または役務の面について平和条約発効後における日米間の関係が明確になることになりました。しかし当時すでに国連軍朝鮮行動いたしてりおりまして、これらのもののあるものは、日本における施設または日本における物資買付その他によつて日本側援助を享受しておりましたので、平和条約安保条約発効後にもし何も文書がないと、その関係が不明になつて困るというので、安保条約付属文書としまして、日米の間にこの書簡がとりかわされた次第であります。従つてこの書簡合衆国国務長官日本総理外務大臣との間にとりかわされましたが、それは主として朝鮮における行動合衆国軍隊が主導的な役割を演じており、また合衆国軍司令官が、同時に国連軍司令官でもあつたよう関係から、合衆国日本政府との間にその点についてはつきりした了解があれば、その他の連合国との間においても、同一精神によつて行くということが内外にはつきりいたしまして、他の関係連合諸国も安心をいたすという事情にあつたから、こういう形式の書簡なつた次第であります。
  11. 黒田寿男

    黒田委員 この交換公文性質に関しましては、私の考えておりましたのと、条約局長のお考えになつておりますことと一致しておるよう考えますが、ただ、先ほども申しましたように、交換公文内容を見ますと、朝鮮事変関係しておるアメリカ軍隊について言われておるだけでなくて、国際連合加盟国で、その軍隊国際連合行動に参加しておるもの、それに対して日本施設及び役務を供与する。従来も重要な援助を与えて来たし、現に与えておるというよう表現になつております。あるいはまた他の場所には「国際連合加盟国軍隊が極東における国際連合行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのよう国際連合行動に従事する軍隊日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にする」というような文句もありまして、どうも内容から申しますと、国際連合軍日本との関係を一般的に取扱つておるようにも思われるのであります。しかし交換公文性質といたしましては、ただいま条約局長も仰せられましたように、また私も解釈しておりますように、形式的にはアメリカ日本との間の関係を規定しておるにすぎない、こういうよう解釈するほかはない。そこで質問いたしますが、そうしますと、国際連合それ自身としましては、その軍隊日本において施設及び役務等の便益を受けるという問題について、国際連合日本との間にはまだ何らの話合いもできていない、こういうよう解釈してよろしいと思いますが、どうでありましようか。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 黒田委員の御質問のお言葉は、おそらく私が申すよう意味であろうと解しますが、念のためにお断りしておきたいと思うのであります。現在朝鮮動乱について朝鮮で作戦に従事しております軍隊を、普通国際連合軍と言つております。しかしこれは非常に不正確な、まぎらわしい、また従つていろいろな間違つた結論を導き出す表現だと思つております。現在は国連軍というものはないのです。これはサンフランシスコの国連憲章作成会議でも、国連軍を設けなければならないという主張が相当有力になされましたけれども、国際連合軍を設定することは時期尚早であるというわけで、否決いたされました。憲章の建前からいいますれば、わずかに各加盟国が、第四十二条に従つて国際連合安全保障理事会が決定する強制措置のために提供し得る軍隊を、国内において平時から用意しておくという義務だけが、加盟国義務として受諾されておる次第でございます。今日朝鮮において行動をとつております軍隊は、正確にいえば、国際連合当該機関勧告に応じて、その勧告を受諾した国の軍隊が、相互の間に協議の結果任命された司令官のもとに行動をしておるという性質にすぎないのでございまして、国際連合軍ではないのであります。国際連合のために強制措置をとつておる各国際連合加盟国軍隊であります。従つてそういう性質のものであります。御質問の点に参りますが、私の記憶では、正確ではありませんが、十七箇国の軍隊がこれに参加いたしております。それでございますから、純理論からいえば、この十七箇国との間に日本政府個々に、または総括的に、日本が与える援助具体的内容について協定するということが、一番穏当であろうかと思います。しかしそういつた協定は今日までまだできておりません。ただ、このアチソンあて書簡によつて原則的に、従来与えている協力を今後も続けていたしましようということがアメリカに対して言われ、その結果、反射的に、その他の十六箇国も、従来は日本において施設その他の役務について受益して来た関係にあるわけであります。この面は、平和条約発効後はできるだけ早く、ないしは発効前にその関係を明らかにいたしますように、このアチソンあて書簡精神に沿うて具体的な協定をいたそうと、ずいぶん努力をいたしましたけれども、先方の内部におきまする意見の調整に意外の時間を要しまして、今日までまだでき上つておりません。目下熱心に意見交換中でございまして、黒田委員御懸念の点が明確になる日ができるだけ早く来ますように、日本政府当局としては熱望しておる次第であります。
  13. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、俗に国際連合軍と申しておるものがありまして、その最高の指揮者マツカーサー元帥、その後リツジウエイ大将になつたのでありますが、しかし今条約局長の仰せられますように、いわゆる国際連合軍というものはまだ組織されていない。第四十二条並びに第四十三条において措置がとられます場合も、それらの軍隊はおのおの各国軍隊であつて国際連合軍ではない、そのことは私もよく理解できます。そこでそういういろいろな考え方なり、事態なりを総合いたしまして、要するに、わが国と、朝鮮軍隊出動させております国際連合加盟の若干の国との間で、わが国施設及び役務を提供するということについての何らかの話合いのできているのは、現在ではアチソン・吉田交換公文以外にはない。従つて原則はこれで示されるのであるけれども、具体的にアメリカ以外の個々の国との間には何らの話合いも今まではできていないのである、こういうふうに解釈してよろしいと思います。いわんや、国際連合それ自身との間の何らのとりきめもできていないと解釈すべきだと思います。そう解釈してよろしゆうございますか。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 黒田委員の御解釈通りであります。関係国際連合各国日本政府との間にも現に話合いはしておりますが、まだ何らの協定もでき上る段階に至つておりません。いわんや、国際連合日本政府との間に協定をするという性質のものではないと考えておりますつ
  15. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、わが国が、従来朝鮮出動しておりました他国の軍隊施設及び役務を提供しておりましたのは、何ら国際法上の根拠がなく、事実関係として行われておつたにすぎないものである、こういうふうに解釈するよりほかには解釈の仕方がないと思います。それに対する価値判断は別であります。よい悪いという判断はいたしません。要するに何らの根拠なくして、向うからいえば日本を利用しておりましたし、日本から申しますれば、何という理由もなく施設及び役務を用立てておつたのであるという事実関係があつたにすぎないし、現在もまたそういう関係にあるにすぎない。少くともアチソン・吉田交換公文というようなもののとりかわされていない国との関係につきましては、そう解釈するよりしかたがないと思うのですが、この点いかがでしようか。
  16. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは吉田総理兼外相のアチソン長官あての手紙をごらんになりますれば、はつきりわかりますように、日本政府といたしましては、公式の要請に応じて、公式に協力の意思を表明して協力しておりますので、事実関係ではなくて、法律関係である、公式の関係であると私は解釈しております。
  17. 黒田寿男

    黒田委員 そういたしますと、アメリカ以外のすべての国——すべての国と申しますのは、朝鮮動乱について行動をとつている国でありますが、それらの国と日本との間に、そういう公式な話合いというものがあつたのでありますか。私は実はきよう初めてそのことを伺つたのでありますが、私どもは単に事実上施設及び役務を提供するという関係が存在しておるというだけにすぎないもので、何らか国と国との間の話合いに基きまして、そういうことがなされておつたというようには解釈し得なかつたのであります。またかりにそういう話合いをすることになれば、これは私は非常に重大問題でありますから、少くとも国会に対して日本政府としては一応お諮りにならなければならないことだと思う。朝鮮事変に対して援助を与えるということは、これも先ほどから申します通り、その援助を与えるということの価値判断は別といたしまして、日本が戦争ないし戦争状態に巻き込まれて行くことになるのでありますから、そういう重要な問題について外国との間に何らかの話合いをする、日本が一方の側に立つ、というようなことになつて参りますと、これは私は国会にも御相談にならなければならないような重大な問題だと考えるのであります。そうしてまた私自身は、事実そういう話合いはできていなかつたと思う。アチソン吉田書簡において初めてわが国と他の国との間にこういう問題に関する、何といいますか、対外的に表明せられた関係の存在が示されたというふうに考えます。しかしこれは私の無知であつたかもわかりません。無知であつたとしましても、私ども国民として、ことに国会におる者といたしまして何らの相談をも受けておりませんでしたので、そういうものがなかつた考えておつたということは、私は決して議員として無理ではなかつたというよう考えます。そうするとただいまも条約局長がおつしやいましたが、やはり各国との間に私ども議員の知らない間に、日本施設及び役務を提供してもいいというよう話合いでもできておつたのでありましようか、もう一度念のために伺いたいと思います。
  18. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は黒田委員ちよつと見解の違いがあると思うのであります。日本が、朝鮮動乱につきまして朝鮮に兵を出しておる連合各国に、ある種の協力をいたしております。その協力関係は、当該連合国日本政府との約束の結果であるのではなくして、安保理事会及び総会のすべての国に対する勧告がございまして、その勧告を受けて、日本政府の方で国連協力精神から具体的に判断いたしまして、可能なる限度において便宜をはかつて来ておる関係にあるわけであります。その点御了解を得たいと思うわけであります。
  19. 黒田寿男

    黒田委員 そういたしますと、要するに日本はまだ国際連合加盟はしていないけれども、しかし国際連合憲章精神を守るという意味から、他の国際連合加盟国に対してなした勧告精神日本も受けて立つておるのだ、そういう関係にあつたのだ、こういうお話でございますか。——それではそれはそれとして政府の御意見はわかりました。
  20. 並木芳雄

    ○並木委員 ちよつと関連してお伺いいたしたいと思います。それは大橋前法務総裁のときにずいぶん問題になつたのです。飛行機が日本から飛び立つて朝鮮に行くときには、国際連合軍の飛行機として行くのではないかという質問が鋭く出たときに、大橋前法務総裁は、どこへ行くか知りません。日本の領海を離れるまでは日本に駐在する連合国の飛行機として日本政府は了解しております。それから先はどこへ行くか知りませんということで、別段国際連合軍に便宜を供与するということはなかつたのです。なかつたのですけれども、きようの局長の答弁ですと、勧告従つて行動した、こういうことでありますから、その勧告はやはり正式に文書によつてつたのですか。
  21. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国際連合安保理事会または総会によつて採択された決議、すべての国に対する勧告は、当初の決議が来ておるかどうかということは、事務当局の方では今ちよつと疑念を持つておりますが、その後の総会における決議は正式に送付して来たことを私は記憶いたしております。事変勃発直後の決議についてはちよつと答弁を留保させていただきたいと思います。並木委員が指摘されました問題は、私も前の大橋総裁が御答弁になられましたときにわきにおりましたのでよく覚えております。従来はその関係はきわめて判断がむずかしゆうございました。日本にいる米国軍隊、ことに空軍が朝鮮における作戦のために出動する場合に、それを占領軍として見るのか、ないしは国連決議に基いて朝鮮において軍事行動をとつておる合衆国軍隊と見るかどうかという問題についてはきわめてむずかしゆうございます。おそらく日本の領域内における限りは、二重の性格を持つておるといわざるを得ないかもしれません。だから今後はそういう問題が起りませんように、安保条約におきましては、日本におるアメリカ軍隊の駐在の目的が単に日本の防衛だけでなくて、極東の安全の維持のためにもある。この二つの目的を持つてアメリカ軍が日本におることを、日本は許諾するということを明確に規定いたしまして、その法律関係、いわゆる二重の目的を持つている軍隊であつて、従つて日本におる合衆国軍隊日本の防衛のために行動するのみならず、東亜における平和のために行動することもあるということを、条約面にはつきり出した理由もそこから来ておるわけであります。
  22. 黒田寿男

    黒田委員 今までの質疑の経過によりまして明らかになつたところを結論的に申し上げてみますと、要するに日本国際連合加盟国で今朝鮮において行動しております国に施設及び役務を与えて来、また与えつつあるのは、アチソン・吉田交換公文のことは別といたしますれば、日本国際連合加盟国でありませんから、正式に勧告を受けるということはあり得ないのであるけれども、しかし国際連合精神を尊重していわば自発的に協力しておるという関係にあるのである、こういうことになるのでありますか。それ以上に解釈できないと思いますが、私はそう解釈してよろしいと思いますがどうですか。
  23. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一点だけ訂正させていただきたいと思います。国際連合勧告をいたす場合に、加盟国だけに限られておるのではなくて、すべての国に対して勧告をいたすものであります。また第二条にもはつきりありますように、非加盟国が国際の平和と安全の維持のために、国際連合憲章従つて行動するように確保することがまたその義務とされております。従いまして、朝鮮動乱のごとき国際の平和と安全に関する重大な問題につきまして、世界の各国にある措置をとつてもらいたいという決議をする場合には、必ずその決議加盟国のみならず、すべての国に対して通達されるものと考えていてよいと思います。その点だけを訂正いたしておきます。
  24. 黒田寿男

    黒田委員 よくわかりました。これは私の考え違いであつて加盟国でなくても勧告はできるという御趣旨でありますから、私の考えを訂正いたしておきます。ただそこでお伺いしたいのは、具体的に日本の場合はどうか、日本は今までは独立国でなかつたのでありまして、連合国司令官の支配を受けておつた国でありますが、国際連合加盟国ではないけれども独立国であるという国と、それから従来の日本の地位のように、加盟国にあらずして、しかもまた独立国でもないというような国に対しても、正式に勧告があつたのでありますか。あつたかないか、事実関係をお尋ねいたすだけであります。つそんな国に対しても勧告したのだということであればそれがわかるだけでけつこうでありますが、事実上あつたとしますればいつごろあつたか、きよう具体的にこまかいことまでわからなければ、次会でもけつこうでありますが、とにかくそういう勧告が占領下の日本に対してもあつたということが事実であれば、そのことをお聞かせ願えますればけつこうであります。この点をちよつとお尋ねいたしたい。
  25. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点今日資料を持ち合せませんので、事務当局で詳細調査いたしまして、後刻資料として差上げたいと思つております。私の頭にありますのは、中共向け武器禁輸勧告決議は、確かに国際連合の事務総長を通じて正式に通達を受け、協力方の要請を受けております。それ以前のことは長期間にわたりますので、経緯がはつきりいたしませんので、後刻わかり次第提出いたすということにしておきます。
  26. 黒田寿男

    黒田委員 それでけつこうでございますから、次会までにいつごろ、いかなる勧告があつたかということを具体的に、私だけにでなくて、委員会に対してひとつお示しくださるようにお願いをいたしておきます。  それからさらにそうであるといたしまして、私は重要な問題があると思うのでありますが、ただいままでの御答弁によりますと、先ほど申しましたよう勧告を受けて、そうしてそれに応じて朝鮮軍隊出動させておる国際連合各国に、日本の国の施設及び役務を提供しておつた、こういうことが明らかになつたのでありますけれども、この施設及び役務を提供するということは、私は単に施設及び役務を提供するというだけでは済まないことで、このことは日本が戦争——朝鮮事変のことを戦争と申すのは国際法上の言葉としましては、当らないかわかりませんけれども、戦争ないし戦争状態に参加することになると思います。少くとも国際法上中立と見らるべき立場日本は離脱するのである。その価値判断は別問題といたしまして、とにかく施設及び役務を戦争しております一方の側に提供することになれば、日本が中立的地位を放棄することになるということだけは明らかであると考えるのであります。この点はいかがでございましようか。価値判断ではありませんから、いい悪いの議論をするのではありません。国際法上そうなるかどうかということだけをお聞きいたします。
  27. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 従来朝鮮に作戦いたしております連合国軍隊関係において、日本側で提供しております協力は、簡単に申すと施設役務、こういうことで言い表わせると思います。しかし施設の面につきましては、実際は合衆国軍隊と連合軍隊とは占領軍として昨日まで日本に駐屯いたしておりまして、十分な施設を確保いたしておつたわけであります。米国軍及び連合軍に占領軍としての使用に充てるために提供いたしてありました施設以外に、特に朝鮮における連合各国行動のために追加的な施設が提供されたということは、私は聞いておりません。ただしかし観念上は、ほんとうからいえば日本の占領管理のためにのみある軍隊が、時たまたま同時に朝鮮における行動のために作戦をするという関係になりましたので、これらの施設がそういつた朝鮮動乱における国際連合各国軍事行動のために便益を供与した、都合もよくなつた、こういう関係はあろうかと思います。サービスの面につきましては、これは主として今日までわれわれが了解する範囲におきましては、朝鮮に作戦いたしております関係各国軍隊の給養のために必要とする物資の日本内地における調達でございました。これは全部ドル資金で調達をされております。この面において日本協力いたしておる、こういうふうに考えておる次第でございます。なおこういうふうな措置をとるということが、日本朝鮮動乱の渦中に巻き込むのではなかろうか、こういう御懸念でございますが、国際連合憲章考え方には、国際連合憲章従つてある国に対する強制措置をとる場合に、加盟国はすべてそれに協力をいたし、その対象となつている国に対しては援助を慎むというのが大原則であることは第二条にうたつてある通りであります。でございますから、国際連合というような普遍的な平和機関ができました今日におきましては、従来の中立という観念はきわめて不適当になつております。その点から永世中立であるスイスなどは、国際連合加盟国にはなれないという公式解釈が、サンフランシスコ会議で採択されたというような次第でございまして、こういう不幸な事態が起りましたときには、国際連合憲章といたしましては、すべての加盟国国際連合のとろうとする措置協力をすることを期待いたしておるわけであります。国際法学界ではこういうふうな行動を国際警察軍事行動というよう考えるべきであつて、従来の戦争法規というもので律するのは当らないであろうという解釈をしておられる向きが多うございます。とにかくこの面は従来の中立法規、戦時法規では律せられない事態だと思うのでありまして、日本が今回のよう措置をとるということは、中立の観念にもとるというようなことは微塵もないことであります。平和条約の第五条にもありますし、国連憲章の第二条にもありますように、むしろ協力をすることを日本は期待されておる、日本のみならず、世界全部の国が協力することを期待されておる、その期待のもとに日本はやつておる、こう考えた方がよいと思います。
  28. 仲内憲治

    ○仲内委員長 黒田君もう一時間たつておりますし、ほかにも大分質問がありますから、どうぞひとつ簡単に……。
  29. 並木芳雄

    ○並木委員 ちよつと関連して外務省に聞いておきたいのですけれども、そういうところからやはり国民の間で不安があると見えて、警察予備隊で今朝鮮の動乱へ送られているのがいるのじやないかとか、進駐軍の労務者で朝鮮へ連れられて行つている者があるのじやないかということが真剣に質問されるのです。よもやそういうことはないと思うのですけれども、実際そういうことはどうなつておるのか、日本人として一人も朝鮮の動乱へは行つていないのかどうか、もし行つているとすれば、どういう者が行つていて、それがどういう誤解を受けておるのかというようなことがおわかりだとり思いますから、この際聞いておきたいと思います。
  30. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 並木委員の御懸念のよう事態は、決してないということを明言いたしたいと思います。冒頭からたびたび申し上げておりますように、現在の朝鮮動乱に対して国際連合がとつておる措置というものは、根本的において、勧告に応じてこれを受諾した各国がとつておる措置であるということを、よく理解していただきたいと思うのであります。従つて勧告である場合におきましては、それを受けた加盟国にしろ、あるいは非加盟国にしろ、その勧告に応ずるやいなや、応ずるとすれば、どの程度にその国として協力をいたすかということは、まつたく独自の判断でいたせるわけであります。これからして、現在積極的に参加いたしております十七箇国の協力程度についても、国によつて非常な差異があることは、たびたび説明した通りであります。従つて日本政府といたしましても、勧告に感じて協力措置をとる場合に、日本政府としては事実上可能であり、かつ法的に可能なる限度において、国際連合協力をするという精神のもとに判断が下されて、従来も来ておりますし、将来もそうして行かれるものと考えております。従いまして、私は当該責任者ではございませんけれども、警察予備隊のように、第一条において、明確にその目的を、わが国の平和と秩序の維持のために、警察力を補うものとして設置すると明言してありますよう機関は、いかなることがありましても、その法によつて定められた目的に違反するような目的に使われるということは、立憲政治のもとにおいては考えられないということは、おこがましいようでありますけれども、言えると思うのであります。
  31. 黒田寿男

    黒田委員 私が今中立という言葉を使いましたので、条約局長からただいまのような御答弁がありましたが、私は条約局長の仰せられることはごもつともな御議論であると考えます。しかし私の質問はそれで解消したのではなくて、重大な問題が依然として残つておるのであります。私が中立という言葉を使いましたので、ただいまのような御答弁がありましたから、別な角度から、同じ問題を取上げてみたいと思います。  日本はいわゆる国際連合軍朝鮮事変において便宜を与えております。たとえばもつと具体的に申しますれば、B二九が日本を基地といたしまして、交戦の相手方に対して爆撃を加えております。これはだれも知つておる通りであります。これについて今価値判断するのではなくて、事実そういうことが行われておることを指摘したい。そういう立場日本は置かれているのであります。施設及び役務を提供することになつて参りますと、そういう事態が現われることになるのであります。日本を相手方に対する爆撃の基地として提供するということになりますれば、これは的確な言葉かどうかわかりませんが、ここで日本の中立性ということはなくなるのでありまして、要するに交戦の相手側からは、日本も交戦国の一つであるというように見られる。このことを中立性の放棄と申したのでありまして、いわゆる国際法上の中立性云々の意味で中立ということを申したのではありません。要するに日本が戦争ないし戦争状態の一方に立つということに現実にはなつておる。幸いにして、相手国が日本のB二九の基地に対して爆撃を敢行いたしませんでしたから、日本は安全にやつて来られたのであります。これは事実問題といたしまして、そのよう事態が幸いにも発生しなかつたというだけのことでありまして、そしてまた朝鮮事変は今は休戦の交渉の過程にありまして、やがて休戦が成立するものと思いますから、将来心配はないものと思いますけれども、しかしりくつから申しますならば、日本は相手国の爆撃を受けても文句は言えない立場に置かれているのである。私が中立性放棄というのはその意味です。文句を言えないよう立場日本が入り込んで行くというこの事実だけは、理論上からも否定することはできないと思います。事実上そういう不幸が発生しなかつたので、日本は救われておるというだけのことでありまして、下手に行けば、相手国がB二九の基地たる日本のこれらの場所に対して、爆撃を加えることも十分あり得ることであります。こういう立場日本が立たされるということを、中立性の放棄という言葉で申し上げましたので、それ以外の意味ではなかつたのでありますから、そういうふうに御解釈を願いたいと思います。さて、そうなつて参りますと、私は日本の憲法との問題が起ると思うのです。これも今日は、それを価値判断の問題とするのではありません。私は一人の日本人として研究してみたいというつもりで申し上げておるのでありますから、そういう意味でこれにお答え願いたいと思います。日本朝鮮出動しております国際連合軍に基地を提供し、物資を提供し、それから事実人夫も提供しておる。これは朝鮮に連れて行かれた人夫から、われわれ陳情書なども来ておるので、この事実ははつきりしておるのであります。要するにそういう基地を提供したり、物資を提供したり、通過権を与えたりするようなことになつて参りますと、日本国連憲章にいうところの制裁的措置、いわゆる制裁戦争に参加するということになるのであります。国際連合精神からいえば、このことは肯定されることであると見られております。相手国が侵略国であるならば、それを制裁するということは、これはあたりまえではないか、国際連合精神からいえばそうであると思います。今はそう見ることのよしあしを言つておるのではありませんが、日本がそういう制裁措置に、もつと露骨に申しますれば、制裁戦争に——今次の朝鮮への出動を制裁戦争と解釈するかどうかということにつきましても、実際は争いがあると思いますけれども、かりに私はこれを制裁戦争と解釈いたしましよう議論といたしましては、そういう前提で話を進めてみたいと思うのであります。そういう制裁戦争に日本が参加するということは、単に日本の地理的地位から申しまして、非常に危険な地位に日本を置くということだけでなしに、私は日本の憲法がそうようなことを許すかどうかという問題があると思う。日本の憲法が、日本は戦争をしないという意味で排斥しております戦争は、単に侵略戦争だけではありません。自衛戦争のためにも日本は再軍備をしないということに憲法で規定をしております。ただ外国が不正に侵略をした場合に、これに抵抗するというよう意味の自衛はあり得ると思いますけれども、平素から外国の侵略を予定いたしまして、一定の系統的な軍事的な組織を持つということは、日本の憲法はこれを禁止しております。それから日本が交戦権を放棄しておるという、その交戦権の放棄の中には、制裁戦争に日本が引き込まれて行くということも、禁止しておる趣旨解釈しなければならないと私は思うのであります。これも、そういう憲法を日本が持つていることが、いいか悪いかということについては私は今は議論はいたしません、現在の憲法の公平、冷静な解釈からいたしますれば、日本は単に侵略戦争だけでなくて、制裁戦争にも加わらない。憲法の趣旨から申しますれば、交戦権の放棄ということはそういう趣旨であると私どもは解釈しなければならないと思うのであります。しかるに日本が交戦国の一方に基地を提供したり何かいたしまして、事実上、私の申しますいわゆる中立放棄、すなわち相手方から爆撃されても、日本は文句は言えないのだという国際的地位に置かれるようなことをすることは、交戦権を放棄いたしました日本の憲法の精神から申しまして許されないことではないか。これを私は疑問として提出するのでありますが、そういう疑問も起りはせぬかと思うのであります。もう時間がございませんからついでに申しますが、元来私は国際連合加盟論者であります。ぜひ日本国際連合に入れたいと考えております。けれども現在のような憲法がありますと、私が今申し上げましたよう意味において、国際連合勧告日本が受けることができない。受ければ憲法違反になる。そういう矛盾が起りはしないか。そこで交戦権を放棄した憲法を持つております日本は、私ども日本として国際連合に入りたいのでありますけれども、こういうよう考えて参りますと、憲法がこのままである限り、日本国際連合加盟が簡単に申し出られるかどうかという問題が起りはしないか、私はこう考えます。日本軍隊を持たなければ国際連合に入れないのではないかという議論、そのよう議論が成り立たないということは政府がしばしば御説明になつたところで明らかであります。私はその点は政府の御説明の通りでよろしいと思う。けれども軍隊を持たぬというだけではなくて、現在の憲法がある限りは、国際連合加盟しても、その義務を受諾することができないという立場に置かれるのであるから、その意味において、現憲法の存在する限りは、国際連合に入ろうと思つても、入りがたい関係にあると解釈せざるを得ないのではなかろうかという疑問があるのであります。この点についてひとつ政府の御所見を承りたいと思います。  なお私は国際連合加盟の問題につきましては、もつと他に重要な問題で質問申し上げたいと思うことがありますけれども、私はきようは非常に、予定以上の時間を費しまして、また委員長もそれをお認めくださいまして感謝しておりますが、最後にこの点について政府の御所見を承つておきまして、もし議論になるようなことがありましても、きようは私自身も時間がございませんので、これ以上議論をすることができないのでありますから、これだけできようの私の質問は終りたいと思います。  なお委員長にお尋ねいたしますが、国際連合加盟の問題はまだ……。
  32. 仲内憲治

    ○仲内委員長 この次くらいに……。     〔「この次とはいつです」と呼ぶ者   あり〕
  33. 仲内憲治

    ○仲内委員長 来週の水曜日。午前中質疑でもやつて、一日で討論採決まで……。
  34. 黒田寿男

    黒田委員 私は時間を急ぎましたので、問題の提出の仕方が粗雑であるかもしれませんが、とにかく私はこういう意見を持つておりますので、一応政府の御説明を承りたいと思います。
  35. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私ども黒田委員と同様に、国連のとる措置協力をいたす大方針をとつている日本といえども、やはりこの協力は現在の日本の憲法の制約のもとに初めて行われるべきものであると考えております。憲法では軍隊を持たないということのほかに、交戦権も放棄いたしておりますから、国際連合勧告に応じて日本が提供し得る協力は、絶えず兵力の行使を伴つてはいけない。またその協力の結果、日本に交戦権の行使を強制する行動をとるがごとき協力は許されないものである、こう考えておる次第であります。この点については全然同感でございます。  御質問の第二点は、その限度に至らない協力をいたす場合に、日本が、黒田委員はいわゆる制裁戦争というようなことをおつしやいましたが、そういうようなものに巻き込まれるのではなかろうかという御質問つたように思いますが、これは私は法律問題というよりも、事実はないし政治上の問題であろうかと思うのであります。(「その通り」)爆撃問題を御引用になりましたが、やはり黒田委員が御指摘になりましたような懸念は、国連のために行動をとつておる連合国側にもあるようでございまして、満州の基地爆撃問題などずいぶん問題になりましたが、それをやれば結局朝鮮動乱から、国連としては絶対に回避すべき世界的動乱を誘発する危険ありというふうな政治上の考慮からして、大体それを行わないようなつようでございます。今度は反対側から日本の方に対して報復的な爆撃があり得るのではなかろうかというような御懸念でありますが、これまた事実問題または政治問題でありまして、私はそういうふうな事態に至らないことを切望いたしますし、国際連合安保理事会なり総会なりが朝鮮動乱に際しまして、いわゆる多数の国の協力を得て、侵略行為を阻止するために共同の措置を得て、それによつて国連憲章の期待する平和と安全を確保するよう努力いたしておる目的も、主としてそこにあるのであると私は考えておりますので、むしろそういう事態に至らぬこと、黒田委員の御懸念になるようなことに至らぬようにするためには、やはり国連勧告に基いてとられておる措置が成功をするということが一番望ましいと思う次第であります。日本の憲法はまことにりつぱな、理想的な憲法だと考えております。この憲法がほんとうに生き得るためには、やはり国連が目ざしておるように、国連憲章原則に基く平和と安全が確保されて、初めて軍隊も持たない、また戦争もしないという性格の国家の存在が可能であるし、発展も可能であると私は信じますからして、日本は憲法護持の見地から見ましても、国際連合のとる制裁的措置には、日本としては事実上または法的に可能な範囲内において協力して行くことが、一番妥当な行き方であろうかと考えておる次第であります。
  36. 黒田寿男

    黒田委員 私はまだ重要な問題を残しておりますし、今の御説明に対しましても多少申し上げたいと思うのでありますけれども、(「一時間半だ」と呼ぶ者あり)ただいま他の委員から御注意がありましたようにたいへん時間をとりましたので、きようはこれで私の質問は打切ります。
  37. 仲内憲治

    ○仲内委員長 菊池義郎君。
  38. 菊池義郎

    ○菊池委員 私は主として世界各国から外務省に集まつて参ります情報についての質問をいたしたいと思うのであります。米国を初め国連各国でもつて日本に軍備を要望している国と、また反対している国がありますが、その軍備の要望しておりますところの国国は一体どのくらいの兵力を持たせたいというよう考えでありましようか、政務次官からこのことをお伺いしたいと思うのであります。
  39. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 この問題につきましては、ただいまのところ、別に日本に対しまして責任あるような要求をしておるところもございません。そこでまたこういう問題をわれわれの方から答弁申し上げまする資料も、ただいまのところ何も持つておりません。
  40. 菊池義郎

    ○菊池委員 要求はしておりませんでも、希望している国が相当あります。米国のごときははつきりとそれを漏らしておるように聞いております。総理大臣も、講和の発効とともに、国力の許すときにおいては防衛力を持たなければならぬということを言つておりますが、あれは憲法を改正して軍備を持とうというのでありますか、警察予備隊の強化ということでありますか、いずれでありましようか。
  41. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 ただいまのところ政府考えておりますのは、御承知のように、国力の充実をはかり、自衛力の漸増を講じて行くという点でございまして、御指摘になりました点からいえば、警察予備隊であるとかあるいは海上保安隊の充実をはかつて行きたい、こういう段階だろうと思います。
  42. 菊池義郎

    ○菊池委員 それで、アメリカその他日本の防衛力の増強を希望しております国々は、警察予備隊で満足し得るであろうというような情報がありましようか。警察予備隊で満足するか、軍隊を持たなければ彼らは承知しないか、この点をひとつ外務省のお考えを伺いたいと思います。
  43. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 先方の希望すると申しますか、期待する真意はどこにあるか、われわれはよくわからないのでありますが、ただいまの日本といたしましては、大体申し上げますように、国力の充実をはかつて、まず自衛力の漸増を期して行かなければならない、こういうところであろうと思いますので、その線に沿いましていろいろの方途が講ぜられておる段階でございます。
  44. 菊池義郎

    ○菊池委員 改進党の芦田さんあたりが、日本が軍備を持とうとするならば、アメリカ援助してくれるだろうということを言つておりますが、この考え方はどうでありましようか、可能性があると考えられますか。しきりと至るところでもつて宣伝しておりますが、国民は相当芦田さんあたりの言うことにおどらされておるのであります。
  45. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは現実の問題といたしまして、現在の憲法のもとにおきましては、日本は再軍備とか軍備を持つということはできないのでございます。この問題をここで論議を繰返すということはどうかと、われわれはただいまのところ考えます。
  46. 菊池義郎

    ○菊池委員 軍備を持つにはもちろん憲法の改正が必要でありますが、外務省としておつしやることができなければそれでよろしいです。それで、現在の朝鮮の戦いは警察隊の戦いであつて、戦争ではないということをはつきりうたわれておりますかこの朝鮮の動乱に日本協力いたします場合、先ほど黒田君が指摘しまして、日本もこの動乱の渦中に巻き込まれるおそれがあるということを言われましたが、われわれはそういうふうには考えません。何となれば、ソ連は今日第三次大戦を非常に恐れております。聰明なスターリンは、第三次大戦の動因となるよう行動には出ない。しかもアメリカ軍隊によつて守られておりますところの日本に対して爆撃をやらせるような——第三国を扇動して爆撃をやらせるようなことも、まずないと私には考えられるのであります。(「慎重にやつてくれ」と呼ぶ者あり)私は慎重居士でありまして、諸君のような軽挙妄動はしない。与党はあくまで責任を持たなければならない。(「責任が重大だ」と呼ぶ者あり)責任が重大だ、その通りであります。きように限つて林君が初めてほんとうのことを言つた。この日本が、一旦事ある場合には、警察予備隊で国連に対するところの義務が果し得るとわれわれは考えておるのでありますが、この予備隊を海外に出さないということを政府はしきりに繰返し繰返し言われております。ところで、現在の朝鮮あたりの戦闘は、これは警察軍の闘争であつて、ほんとうの戦争ではない。戦争でなければ予備隊を出したところでちつともさしつかえないと私は考えております。予備隊を海外に出さないという条文はどこにもありません。何ゆえにこの予備隊を海外に出さないということを常々言つておられますか、その意見根拠を私は伺いたいと思う。
  47. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これはもう議場でもたびたび論議されていることでございまして(予備隊関係法令の第一条におきましても、予備隊は日本国内の治安確保に当るということが明定されておるのでございまして、日本国内の治安確保でございます。それから反面解釈をいたしましても、予備隊が海外に出て行くというようなことは、断じてとり得ない解釈であろうとわれわれは考えております。
  48. 菊池義郎

    ○菊池委員 国内の治安確保と申しましても、国内の治安を確保せんがためには、進んで海外からの侵略も予防せんければならぬ。予防のためには海外に進出するということも当然考えられることである。クラウゼヴイツツの大戦法を見ますと、防衛ということは何も国にとどまつて守ることのみではない。敵国に進んで敵を撃破することも防衛の一つであるということも言つておる。動乱にいたしましてもその通りである。何も国内に踏みとどまつてのみ守らなければならぬということはない。海外に進出してこれを予防するということが、時によつては最も大事なことであろうと思うのであります。この意味において、予備隊が国連の警察隊と協力して海外に出ることが、最も適当であるという場合がしばしばあるであろうと思うが、こういう点についてどういう考えを持つておられますか。
  49. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは字句の解釈からいたしましても、また予備隊関係法令制定当時の関係者の意図からいたしましても、そういうことは予備隊としては考えていないところでございまして、菊池委員の御意見は御意見としては承つておきますが、菊池委員よう解釈は断じてとり得ないということを重ねて申し上げておきます。
  50. 菊池義郎

    ○菊池委員 それでは西村さんにお伺いいたします。
  51. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 政務次官からお答えがあつた通りでございます。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して、今菊池さんの言われる、朝鮮行動は警察行動であつて、まだ戦争まで立ち至つておらないというのですが、われわれから見ると、もう爆弾は落すし、大砲は撃つているし、鉄砲は撃つているし、一体警察行動というのと戦争とは、どういうように違うのですか、西村さんにまずお聞きしたいと思う。一体国際連合の第何章に基く行動なんですか。朝鮮で行つている行動は、だれが見たつて、戦争といわざるを得ない。宣戦の布告のない事実上の戦争だとわれわれは解釈せざるを得ないのです。
  53. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国連加盟各国がとつておる措置は、第三十九条に基く国連勧告に応じてとられている措置であります。現在行われているあの軍事行動を目して、戦争と見るか、あるいは国際警察行動と称するかという点については、世界各国におきまして、学者の間にも、あるいは政治家の間にも、いろいろ議論があります。通例の戦争だと言う人も出て参りますし、また学術的に考えて戦争は当らない、国際警察行動である、こう言う人もありますが、これは要するに、当事者の意思と状態と両方の条件がありますので、一概にこれは戦争である、ないしは戦争ではない、動乱である、こういうふうに規定することは困難だと思います。当事者の意思と状態、——状態はまさに武力闘争の状態でございますから、戦争にほうふつたるものがあります。当事者の意思がどこにあるかということが、この規定をする大きな条件になると思いますが、その点が現在はつきりされておりません。おそらく今後発達して行きます国際法の面において、その面が漸次明らかにされて行くだろう、こう思つております。はなはだ不満足な答弁でございますが、この程度で御了承願いたいと思います。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 西村条約局長も御承知の通りに、戦争というのは、何も宣戦布告のない事実上の戦闘行為から、戦争が開始されるという定説のあることは、明瞭だと思うのであります。そこであなたにお聞きしたいのですが、一体朝鮮のいわゆる警察行動が、あなたのお考えで、戦争となるには、どういうようなつたら、戦争になるのですか。ただ第三十九条の勧告に基くから戦争でないと言われるが、実質的にはすでに戦争だ。あれが戦争でないというのなら、一体何が戦争か、この点をわれわれは聞きたいのです。「戦闘だ」と呼ぶ者あり)それでは戦闘と戦争という区別を聞きたい。海軍が出動し、空軍が出動し、地上部隊が出動し、爆弾が落されて、これが戦争でないというなら、われわれはどんなことが戦争かお聞きしたいと思うのです。要するに、勧告だとかなんとか言つておるけれども、実際事実上はわれわれは戦争と解釈せざるを得ないと思うのですが、その点、一体どうなつたら戦争になるのか、念のために聞いておきたいと思うのです。それから連合憲章の第四十一条の共同措置加盟国に対する協力措置、それから第四十九条、この勧告は出ておらないのか、出ておるのか、また出ておるとすれば、日本国にもあつたのか、なかつたのか。朝鮮動乱あるいは朝鮮戦争について、勧告があつたのかなかつたのか、これをお聞きしておきたい。日本の国にないとするならば、各連合加盟国にあつたのかないのか。
  55. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第四十一条に基く勧告も、第四十九条に基く勧告も、出ておりません。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、何もわれわれは、国連の要求に基いて国際連合朝鮮戦争に協力する必要はないのであつて、これは日本の国とアメリカとの間の話合いだけできまつたのであつて国連憲章要請に基いておるのではない。もちろんこれは加盟国でないのだから、当然加盟国としての義務はないにしても、あなたの先ほどの答弁によると、加盟国、非加盟国に対して勧告をなし得るというのですが、国連軍協力する勧告も出ておらないのに、なぜ日本の国はアメリカとの間に協力のとりきめをしたのか、それをお聞きするのが一つ。それから、事実上は戦争をしておるにかかわらず、警察行動だ、警察行動だというようなことを言うのは、おかしいと思うのです。だから、実際軍隊でありながら、警察予備隊というような形でごまかされる場合もあるわけです。警察という言葉があるから、言葉だけでごまかして、実際は軍隊をつくり、実際は戦争をしておるように、われわれは解釈せざるを得ないのでありますが、そうすると、朝鮮の動乱というものは、あなたに言わせるならば、動乱が戦争になるにはどうなつたら戦争になるのでしよう。あなたから、戦争の定義をよくお聞きしておきたい。われわれどう考えつて、近代的な感覚からいつたら戦争であつて、どろぼうやすりをつかまえる警察という概念、行政的な概念では、とうてい規定することのできない事態だと思います。それをはつきりあなたに聞いておきたい。
  57. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 第一の御質問の点でありますが、それは憲章第三十九条に「安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、」とありますが、この第三十九条の規定に基いて、加盟国、非加盟国、そういうすべての国に対して勧告をいたしておるわけであります。その勧告に応じて、国連協力精神から、日本がある程度協力をいたしておる次第は先刻るる御説明の通りであります。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 さつき勧告は受けていないと言つたでしよう。第三十九条は第四十一条、第四十二条に従つてというのでしよう
  59. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その第三十九条の前段であります。後段は第四十一条、第四十二条によつて、いわゆる本来の強制措置を決定して、これを実施することができるということであります。その段階に至つていないわけであります。何となれば、第四十一条はともかくとして、第四十二条は現在の状況においては、運用が可能な事態にまだ立ち至つていないからであります。その点は林委員の方がよく御存じの点だと思います。  第二の点は、戦争の定義の問題でありますが、これは私も先刻申し上げましたように、現在は戦時法規、中立法規というものが非常な転換期にありまして、従来ありました国際法の観念をそのまま当てはめては説明しにくい時代が来ておる、まさにその方面の国際法自体が、普遍的平和機構の発達、その機構の条章に基いてとられる武力措置によつて平和が確保されるという、国際法の大原則が打ち立てられた今日、新たなる国家間の斗争に関する法規が生成しつつある時代だ、こう私は見ております。従いまして、私自身も、先刻たびたび申し上げましたように、戦争と断定することも、私はいたしかねますし、また国際警察行動であるという新しい理論でそれを説明することもいたしかねます。今後の世界各国における学説の発達、法的解釈の確立によつて、おもむろにその点に対して解答が与えられるのではなかろうか、こう思つております。これ以上林委員において質疑をいただかないようにお願いいたします。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 これだけで打切りますが、どうも西村条約局長の言うことはおかしいので、実際はすでに——第四十一条は鉄道、航海、航空、郵便、電信、ラジオ、その他の運輸通信の手段の全部または一部の中断、外交関係の断絶だけで、第四十二条は空軍、海軍、陸軍の行動をとることができるとある。第四十一条の外交の断絶あるいは鉄道、航海、航空、郵便、電信、ラジオの一部中断等によつては効果が生じない場合には、陸海空軍の行動をとることができるとある。これはどう考えても、すでに第四十二条の段階に入つておると思われるのであります。しかも実際第四十二条以上の戦争状態に入つていると思う。ところがあなたは、この第四十二条の軍事的な処置をとられておらないということになると、一体現在とつている行動は第三十九条の前段のどういう行動なのですか、私はどうしても第四十二条あるいは第四十二条以上の行動がとられておるのであつて、実際は戦争していながら、それをごまかすために警察行動とか、あるいは第三十九条の前段だけであつて、まだ第四十二条までは行つていないというあなたの苦しい答弁が出て来ると思いますが、実際は第四十二条の行動に移つておる。第四十二条の、陸海空軍の行動をとることができる——陸海空軍の行動をとつておらなくて、今出ておる陸海空軍は、それでは何に基いてどういう行動をとつていることになるのですか。
  61. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は林委員の非常な認識不足でございます。——いやほんとうなんです。なるほど現実には第四十二条を発動すべき段階に事実上はあつたのでございますが、第四十二条は二つの原因のために発動不可能なのが今日の国際連合の現状であります。一つは安保理事会における五大国一致の原則、これによつて安保理事会の運営が麻痺状態にあります。第二の原因は、それがゆえに当然もうできておるべかりし第四十二条に基く各連合加盟国の兵力的協力具体的義務を規定する第四十三条に予定されております特別協定が一つもでき上つておりません。この状況のもとにおきましては、第七章の第四十二条、第四十三条は実際上の運営はできないのが現状であります。そこにまた今日の世界の平和、安全が脅かされている理由もあるということは、林委員だれよりも御承知のことだと思うのです。従いまして朝鮮動乱が起つたときに、第四十一条に行く余裕がなくて、すでに第四十二条に行かざるを得ない事態にあると多数の国は認めたのでありますが、第四十二条を発動させるためには、第四十三条による特別協定もありませんし、また安保理事会におきましてはソ連代表はいないし、またいても拒否権を発動いたしましよう従つて第四十二条は絶対に動かせない事態にあつたわけであります。この状態のもとにおきまして、安保理事会はその当時の議事録にもありますが、安保理事会が武力攻撃を撃退するためにとる行動は、第四十二条に基くべきことは疑いをいれない、しかし現実の事情のもとでは、理事会は第三十九条に基いて行動するほかはない。理事会は第三十九条に基いて、国際の平和と安全とを回復するためにとるべき方法を勧告することができ、必要な勧告はすでに六月二十五日と二十七日にとられたとありますが、そのように残されたる唯一の道である平和の克復のため安保理事会に許されておる勧告権、この勧告権に基きまして連合各加盟国に対して南鮮政府にはこれを援助し、北鮮当局に対しては援助を慎むようにという決議をいたしたわけであります。その決議を受けまして、これに応諾の意思を表した国が約五十三箇国ありました。そうしてその決議趣旨従つて程度の差こそあれ軍事的行動に積極的に協力いたしておるのが十七箇国あると私は記憶しております。これが現状でございます。国連憲章との関連におきましては以上のよう関係にあります。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、御承知の通り朝鮮問題についての安保理事会決議の際にはソ同盟が参画しておらなかつた。それから七箇国の理事国の決議のうち、中華民国が一つ入つてつた、実際は六箇国の決議だということで問題が起きたわけです。しかし実際やろうと思えば、第四十一条も第四十二条もできたわけです。この採決の問題については、第三十九条しかできなかつたというその英米側の説明を聞くとしても、そうすると第四十二条の決議がされなかつた。第四十二条の決議がされないにもかかわらず、実際は第四十二条と同じように、国連の名のもとに空軍、海軍、陸軍が行動しているということになれは——第四十二条ができなかつたというけれども、実際は第四十二条の行動をしているとすれば、今行つている英米の軍事行動というものは、実質的には第四十二条の違反になるのじやないですか。それじや南鮮を応援するためにどういう形で英米の軍隊は出ているわけですか。明らかにアメリカ側の国会の決議に基いて、あるいは国策の決定に基いて軍隊を出しているわけです。そうするとそれはどういう性質軍隊になるわけですか。しかも停戦協定も、国連軍の名のもとにジヨイ中将みずからが当つているじやないですか。南鮮を応援しているという形じやないでしよう。もし南鮮を応援しているならば、交渉は南鮮の代表と北鮮の代表とにさせたらいいじやないですか。ジヨイ中将みずからが交渉に当るというその権限がどこから出て来るのですか。だから口では第四十二条の決議ができなかつたというが、実際は第四十二条の行動をしているから、私は国連憲章違反だといわざるを得ないと思う。それじやただいま英米の行つている行動はどういう条項に基いて、どういう権限でやつておられるのですか。あくまで南鮮側を支持するというなら、交渉の主体も南鮮側にさせたらいいじやないですか。交渉の主体は南鮮でなくして、南鮮はただ随員として行つているだけの形じやないですか。明らかに国連軍と北鮮軍との戦争ということになるでしよう。そうすれば第四十二条の決議がなかつたら私はできないと思う。実質的にそうじやないですか。その根拠を明らかにしていただきたい。あなたの言う認識不足だというくらいは、私はよく知つている。実際は第四十二条の行動がとられているから、私は国連憲章違反じやないかというのです。
  63. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 林委員が認識不足であるということを承認をされたことはたいへん愉快に思います。たびたび申し上げましたように、連合各国朝鮮に兵を出して軍事的行動をとつておりますのは、憲章第三十九条の前段に基きます勧告に応じて処置をとつておるのでございまして、憲章上の確固たる根拠があるわけであります。林委員の立論をとりますれば、安全保障理事会において拒否権を有するものが拒否権を発動いたして、安全保障理事会の機能を麻痺させる限り、いかなる明白なる侵略行為があり、国際の平和と安全に対する破壊行為があつても、国際連合としては何ら措置がとり得ないという結果になることは、きわめて恐ろしいことだと思うわけであります。第四十二条によらなければ軍事的措置国連加盟国はとれないという前提に立てば、そういう恐ろしい結果になります。幸い第三十九条は、安保理事会に平和の克復のために勧告する権限を与え、その勧告内容につきましては、要するにその目的が、国際の平和の回復ないしは破壊防止のためでなければならぬという制限はございますが、それ以外に制限のない勧告権を与えております。その勧告に基いて、連合各加盟国が平和の確保のために協力いたすということは、私はけつこうなことだと存じます。
  64. 菊池義郎

    ○菊池委員 国力が充実した場合、再軍備を世界からして慫慂せらるる場合の憲法との関係でありますが、今日本の識者が最もおそれておりますのは、国際義勇軍——ソ連が各国の共産党をけしかけて、そうして各国に戦争を起させる。それは国際義勇軍という形で侵略をやらせるわけです。現在も国際義勇軍というのがあるはずでありますが、それと同じに、日本にも国を守るための義勇隊というものがもしかできまする場合、またある一部の人は、憲法を改正する手数を省くために、事実上の軍隊を、義勇隊という名のもとにこれをつくり上げてはどうかという意見もありますが、西村さんはもしそういう義勇隊というものが生れましても、憲法を改正する必要がないものか、あるものか、そういう点について、参考のためにちよつと御意見を聞かせていただきたいと思います。
  65. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 深く考えたことはございませんけれども、義勇隊といえども憲法第九条第二項にいうように、日本は陸海空軍その他の戦力を保有しないという条項が厳存しておるわけで、憲法改正なくしてできないのではなかろうか、こう考えておる次第であります。
  66. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからわれわれは国際連合加盟することができないなどということは、考えたくないのでありまして、あくまでできるものと思わなければならぬのでありますが、今までのソ連の態度に徴しまして、ここに危惧なきを得ないのであります。加盟することが万一できない場合におきまして、次善の方法としてはどういう方法、つまり正式に加盟しなくても、加盟したと同じような効果を生ずる方式が何かありますならば、それをお知らせ願いたいと思うのであります。
  67. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 不幸加盟が延びます場合には、これもたびたびここでお話が出たと思うのでありますが、オブザーヴアーを本部に派遣する、あるいはこれは大、公使の形でそこへ常駐するというようなことも考えられるかと思います。またその他のいろいろの専門委員会的なものが多数ございますが、これらには場合によりましては準加盟というような形もとれることがあると思います。現にエカフエのごときは準加盟が認められております。それからその他の特別委員会等にも、オブザーヴアーでなくて、すでに公式の代表派遣が認められておるようなことも幾多事例があるのであります。今後そういう方法を通じまして、不幸加盟が延びまする際には、いろいろの方法でもつて加盟と同じような効果が上りますように努力いたしたい、かよう考えておるわけでございます。
  68. 仲内憲治

    ○仲内委員長 北澤直吉君。
  69. 北澤直吉

    ○北澤委員 前回の委員会におきまして、日本国際連合加盟する問題につきましては、日本とソ連との国交関係を改善することが非常に必要であるという問題につきまして、岡崎国務大臣から伺つたのでありますが、どうも日本政府のソ連に対する態度が、国民の間にはつきりしておらぬということから、いろいろな問題が起きて来る。その一つの具体的な問題が、たとえばモスクワ経済会議に対する日本代表の参加というような問題に現われておるわけでありますが、私はまずその第一段といたしまて、いよいよ日本も講和が効力を発生しまして、外交についても自主権を持つて来たのでありますので、ひとつソ連に対する日本のはつきりした政策を立てて、そして国民によく納得させて、政府の政策に国民が協力するよう措置をするということが必要だろうと思うのであります。どうもこの点がはつきりしない。どうも政府のソ連に対する政策というものについて、国民の間に納得しない部分がありますので、いろいろな面に行き違いが起ると思うのであります。きようは大臣もおられませんからあまり申しませんが、いよいよ講和が発効されたのでありますから、今後の日本のソ連に対する政策につきまして、はつきりした見解を国民にお示し願いたいという要望を申し上げます。  それに関連して伺いたいのでありますが、例のモスクワの経済会議に関する問題でございますが、政府はあの経済会議に対する日本代表の参加はおもしろくないという見地から、あの会議に行きたいという人に対しまして、旅券の発給を差控えたのであります。ところがこの政府の政策にもかかわらず、参議院の高良議員はそういう旅券がないにかかわらず、これに参加した。それからまたきようの新聞によりますと、改進党の宮腰喜助君と、それから帆足君ですか、この両君がソ連に入つたということで、問題を起しておるようであります。そこで私伺いたいのは、一体政府はそういう日本の人がソ連に入ることについて反対である、こういうの政策を立てて、旅券の発給もしておられないにもかかわらず、この政府の政策に反して入つた者に対しまして、一体どういう措置をとるのか。私はここではつきり申し上げたいのは、もし政府の方針としまして、絶対に日本人はソ連に入つてはいかぬというならば、徹底的にその方針を貫徹していただきたいのであります。また許すというならば、許した方がいいのでありますが、どうも今の状態で表面上は許さないでおりながら、それに反して入つた者に対して、実際何にも措置をとらぬということでありますならば、どうもそれはわれわれにもはつきりわからぬのでありまして、もし政府が、日本人がソ連に入ることは絶対にいかぬということでありますならば、今度政府の政策に反しまして入つた人に対しましては、一体どういう措置をとるのか、この点はつきりお伺いしたいと思います。
  70. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 ソ連に対する今後の外交方策につきましては、これはいずれ岡崎新外相から宣明される機会があろうと思うのでありますが、ただいま旅券問題に関連していろいろお話もありましたので、ただいまのところ一応とつております考え方は、第一は多数の未帰還者、抑留者がまだ返してもらえない。返さないばかりじやなく、何らの情報をも提供しないということは、まことに遺憾であるということを一つ考えておるのであります。それから海上におきまして、東支那海あるいは根室その他の北辺において、多数の漁船の拿捕が行われておる。しかも拿捕された者の取扱い方についても非常に不当なことがあるようである。また歯舞、色丹、これは日本におきましてはあくまで日本の領土と解しておるのでありますが、これらに対する不法占拠が行われておる。こういう事実をまず解決するなり、誠意をもつて話合いが行われない限りにおきましては、ソ連に対する入国でありますとか、いろいろな問題について、わわれわれ当局といたしましては普通の措置をとることができないという前提のもとに、先般の旅券の問題の解決をしておつたのでございます。ところが、ただいま御指摘のごとく、まことに遺憾でありますが、先般高良参議院議員が入ソしております。また新聞報道でありますので、まだ正確なところはわかりませんが、宮腰、帆足両氏がこれまた入ソしたという記事も出ておるのであります。高良議員の問題につきましては、すでにソ連行きの旅券の問題は国会の委員会等においてもしばしば論議されまして、政府としては旅券は出さないという線を知りつつ入ソしたということは、これは法をつくり、法を守つて行く先頭に立たねばならない国会議員といたしまして、法律上の制裁問題は別といたしまして、これは良識的に相当批判されることではないかと思つております。ただ法の措置につきましては、現行の旅券法からいたしますと、大体第二十三条によつてどうするかという問題になると思うのであります。この解釈からいたしますと、本人が当初旅行に出るときからいたしまして、はつきりソ連に行くのである、モスクワ会議に行くのであるという意思を持ちつつも、それを偽りまして、フランスなりその他へ行く旅券の形で行つた。これがもしはつきり立証されましたならば、これは旅券法第二十三条違反として相当の制裁が考えられるのであります。その点がはたしてはつきり立証できるかどうかということが第一の問題であろうと思います。そこで、これは本人が日本に帰つて参りました際に、よく高良議員等からも事情を承りまして、その間の経緯によりまして、法務府等とも打合せまして、善後措置を講じたいと思うのであります。  それから帆足、宮腰両氏につきましては、これはその問題のあとでもありましたし、特にソ連には行かない——宮腰氏のごときは、旅券にソ連には行かないということが記載されてあります。それから帆足氏はソ連における国際経済会議には出席しないということが付記されてあるのであります。にもかかわりませず入ソしたということは、ただいまのところでは、一応虚偽の記載なり、不正の行為によつて旅券の交付を受けたものであるという解釈をわれわれはとらざるを得ないと思うのであります。これまた法務府とともに慎重に検討いたしまして、この旅券法第二十三条の運用の問題につきまして、今後考究し、対処して行きたいと、ただいまのところ考えております。
  71. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま次官がお述べになりましたように、ソ連との間にいろいろの問題がある。抑留邦人の未帰還の問題あるいは歯舞、色丹島の返還等いろいろな問題がある。従いまして、こういういろいろの懸案を解決しなくては、日ソの国交調整はできないという御意見でありますが、私もそれには同感であります。ただ問題は、国交調整について、そういういろいろの懸案を解決するということもわかるのでありますが、しからばそういう懸案を解決しない限りは、日本人は絶対にソ連に入つてはいけないというところまで行くことについは、私は理解はできますが、いろいろな問題があると思う。国交調整の問題と関連して、日本人のソ連に入ることまでも絶対に禁止するということが妥当であるかどうか、その間には疑問がありますが、しかしながら、政府の方としましては、国交調整の問題があつて——現にたくさんの人が帰つて来ないし、歯舞、色丹の問題があるから、日本人の入ソは拒否する、こういう方針であることにつきましては、私も反対いたしません。ただ問題は、そういうふうに政府が方針をきめて、日本人がソ連に入ることはいけない、こうきめたにもかかわらず、それに反した者に対しましては適当な措置がとれないということでありますと、一体日本政府の権威はどこにありやということを非常に心配するのであります。いよいよ占領も終つて、ここに日本の政治というものは日本政府の権威で行われなければならぬ。占領中は占領軍の権威によつて日本の政治は行われたのでありますが、今後独立国となつた以上は、日本政府の権威なくしては日本の政治は行えない。従いまして、今後最も大事なことは、日本政府の権威を保つことでありますが、こういう日本人の入ソの問題につきまして、政府の立てた方針につきまして、国民がそれに反した場合におきましても、政府は適当な措置をとれないということになりますと、日本政府のかなえの軽量を問われるわけでありまして、私はこれを非常に心配するのであります。従いまして、もし政府がそういうふうに日本人の入ソはいかぬということをきめられた以上は、方針を一貫いたしまして、国民がそういうことは反しないように、権威ある態度、措置をとつてもらいたいと思うのでありますが、その点につきまして重ねて伺いたいと思うのであります。
  72. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 先ほど、政府がただいま考えておりますことは申し上げた通りでありますが、ことに今回の帆足、宮腰君のごときは、渡航先の変更をしておるのであります。渡航先の追加、変更をいたしますにつきましては、それぞれの手続をとらなければいけないのであります。これは旅券法の第八条に規定されておるところでございます。この手続をとらないで渡航先をかつてに変更しておるということは、明らかにこれは第八条違反でありますが、第八条には遺憾ながら罰則の規定がないのでございます。それから第二十三条の運用の問題につきましても、いろいろ字句の解釈その他についても検討を要するところがあるかとも思います。旅券法全体につきまして、これは国会の協賛を経て昨年制定されたものでありますが、今後相当検討を加えなければならぬ点もあると思いますので、国会の皆様方にいろいろ御協力いただきまして、互いに検討をして行きたい、かよう考えております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して……。弁護士として聞き捨てならぬことがいろいろ起きましたが、石原政務次官にお伺いいたします。元来われわれの考えでは、憲法第二十二条によりますと、「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」とありまして、外国への移住の自由が保障されておる。それからあなたの言うように、一体抑留者のいる、いないということが問題で、どつちにしても、水かけ論であつて、これは実際行つて見なければわからないのでありますが、かりにいるとしても、それはソ連へ行つて交渉することが必要だと思うのでありますが、一体そういうことで旅券を出さない理由がどこにあるか。そこが問題じやないか。正当の理由なくして旅券を出さなくて、政府の方が憲法違反や、法律違反を行えば、これは国民としては自救行為をするのは、これは当然だと思います。それが一つと、欧米局長は見えていますか。——見えているのならお聞きしたいのですが、ソ連へを行かないとかなんとかいうのは、それはあなたの方で書き込んだのではないでしようか。あなたの方が書き込んだのであつて、本人は別にそんなことを書き込んだのではないというようにわれわれは聞いているのです。第一は、抑留者がいるからといつて、それを理由にして旅券を出さないという権限は、政府にないと思うのです。政府は公僕なんですから、われわれがソ連へ行きたいと言つたら、それを出す方が、むしろあなた方がやらなければいけないことだと思うのです。政府がかつてに、吉田さんがソ連がきらいだから、国民がソ連に行くことを拒否すること自体が、旅券法違反であり、憲法違反であると思うのです。だから国民としては、自救行為で、あるいは正当防衛として適切な措置をとるよりほか道はない。これは私がしばしば言うように、国民外交で、あなた方は霞ヶ関にとじこもつていい気になつておるが、国民は国民の外交を展開するより道がないというのが、今の一つの大きな動きだと思います。これに対してどう考えるかということが第一。それから第二は、どこそこへ行くと書いてあつたとか書かないとか言われるが、これは外務省の方で追加したので、本人が申請するときは、そんなことを書いて申請してはおらないということが新聞に出ておりますが、そのことが第二。それから第三は、帆足君に関しては、国際経済会議に出席しないというが、国際経済会議はこれは済んでおるから、これも理由にならないと思いますが、一体そういう理由があつたのか、その事実関係からまず聞いておきたいと思うのです。私の考えとしては、第二十三条の罰則の規定は、私は適用にならぬと思う。虚偽の記載とかなんとかいうことは、私は適用にならぬというよう考えますが、その点の結論を出す前に、事実関係をあらかじめ聞いておきたいと思います。
  74. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 最初の点は私からお答えしておきます。これは旅券を出すか出さないかということについて、こちらにおいてもあるいは参議院においても、もう何回となく論議が繰返されたところであります。重ねて申し上げるまでもないと思うのでありますが、われわれは旅券法第十九条の精神によりまして、これは旅行者の身体、生命、財産が適当に保護されるかどうかということが、やはり旅券法の一つの大きな目的であります。先ほど申し述べましたような事情からいたしまして、こういうところへ行く人の旅行者に旅券を出すことは適当でない、こういう考えのもとに旅券を出さなかつたのであります。これは林委員もその間の論議は十分御承知のことと思いますので、省略いたします。あとの事実問題は、他の政府委員からお答えいたします。
  75. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま外務省が旅券もしくは旅券申請書に、当人の記述でない記載を書き加えたのではないかという疑いを、林委員からお話がございまたが、おつしやる通り、われわれは国民の公僕でございます。従つて国民が申請された旅券と、旅券申請書に一つの点をも加えることは、われわれの良心に反することで、従来もいたしておりませんし、今後もいたす意思はございません。従つてそういう新聞記事がかりに出たとしても、林委員において、そういうことを御信頼されるということが、はなはだ私どもとしては理解できないことで、そういう事実はございません。  第二に国際経済会議に行かないということを書いたので、ソ連に行かないということを書いてないというお話でありますが、それはその間の情勢によりまして、御存じの通り、帆足、宮腰両氏は、ソ連行きの旅券の拒否をいたしましたのが三月十五日でございまして、十六日に私のところに見えまして、新しく旅券を申請いたしたい、どこへ行くのですかと言つたり、デンマークへ行くのだ、何しに行くのですかと言つたら、農業視察に行く、こういう事情なので、どうもきのうからきようで、時間が非常に短かいのですが、その間どうしてそう気がおかわりになつたのですかと言つて聞きましたのに対して、ソ連に行かないということになつたので、われわれは絶対に行かない、もし外務省がそれが御不審だというなら、一札入れます。ソ連に行かずにデンマークへ行きますと言われた。どうしてデンマークへ行くのですかと言つたら、東京にいるアメリカの商社が金を出してくれるので、その保証によつて行くのであります。こういうお話で、帆足さんと宮腰さんとアメリカの商社との関係がどういう関係であるか、私はつまびらかにいたしませんが、一応ごりつぱなお二人がおつしやることに間違いなかろうというので、私どもはあえて一札を要求いたしません。お言葉をそのまま御信頼申し上げますというので、旅券をすぐ出すことにしました。ところがアメリカの商社の申請書なるものがなかなか届かないのであります。そしてようやく三月二十六日に、アメリカの商社のギヤランテイ・レター、つまり保証書なるものが届きましたので、翌二十七日にお二人に対して旅券をその了解のもとに渡したというのが事実であります。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、デンマークへ行つたことは、あなた方は認めるのですが、デンマークへ行つて、それからデンマークの事情を見たところが、なおこれはソ連へ行つて研究した方がいいだろうということになつて、向うが査証を出したので、査証を出したところへ行つた。それは領事館があれば別として、そういうものがないのですから、デンマークでそういう手続をすぐするわけに行かないわけですから、それは私は何も罰則に違反して来ないと思う。それはデンマークへ行かなくて、直接モスクワへ行つたらとにかく、デンマークへ行つたのですからね。ただあなたの言うように、旅行先の追加とかいうことになつているわけですから、(「追加していない」と呼ぶ者あり)追加する手続のしようがない。領事館も近くにないのだから、どうやるのですか。
  77. 土屋隼

    ○土屋政府委員 デンマークの隣にございますスエーデンには、御存じの通り在外事務所がございますし、ここに電話なり電報なりで問い合せることもできますし、デンマークへ行く間には、日本在外事務所のあるところもたくさんあるのでありますから、そこにおいでになることもできると思います。またかりにそういう事実がないにいたしましても、私どもとしては、あれほどソ連問題が紛糾いたしておる当事者でありますし、また政府が旅券法に違反して旅券を出さないというので、現に提訴中のお二人でありますから、この方々が旅券法が何であるか、どういうことを書いてあるかということは、十分御承知のはずであります。従つて第八条にございます追加も、当然当人はでき得るにかかわらず、しなかつたという点は、認めて行かなければいけないと思います。また虚偽の記述云々の問題についてお話がございましたが、およそああいう身分にあり、現議員であられる方が、国民の選良として、その議会の事務を一応やめられて、そして海外に旅行されるのでありますから、自分がどこに何しに行くかということは、十分明瞭に御存じで出たはずであります。従つて外務省に対して、ソ連に行かないという記述をしたことは、当時事実の考え方であつたというふうにわれわれは考えたいのでありますが、事実はソ連に初めから行くという意向を持つて、われわれにデンマーク行きを、ただ擬装されたというふうに解釈いたしまして、第二十三条の項を適用することが、おそらく可能ではないか、こういうふうに考えております。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 それはおかしいので、一体ソ連に行かないでしようというようなことを、外務省の役人が言う権限がどこにあるのでしようか。そんなことは本人の自由であつて、本人が申請したりいろいろした場合に、あなた方がいろいろの意見を述べることは、それはいいのですが、国民がどうしても、日本の国際情勢からいつてモスクワへ行きたいと言つているときに……。われわれから言わせれば、憲法に違反し、旅券法に違反し、まつた吉田内閣の都合で、共産党が憎いからといつて、モスクワへ国民をやらせないというところに、根本的な原因があると思います。この点はあなた方といくらりくつを言つてもしかたがないが、外務省の欧米局長が、モスクワへ行かないでしようねというようなことを確かめること自体越権です。そんなことを言えば、デンマークの旅券すら君たちはやらぬじやないか。だからそういういきさつは別として、とにかくデンマークへ行つた。デンマークへ行つて見たところが、なお自分の研究を確かめたいということでモスクワへ行くことになつた。これはだれでもあることです。そこで向うから査証が出たということになれば、現地で手続をするのが遅れたとか遅れないとか、そういう事情がはつきりしなかつたら、欧米局長がモスクワへ行かないでしようねと言つて、そのとき行きませんと言つたということたけで罰則になるというようなことは、絶対にないのですよ。あなたにそういうことを言つたら、どうして第二十三条の罰則が適用になるのですか。それはそのときの情勢で、現地へ行つて見た結果、もう一歩自分の足をよそへ伸ばしたい、遠くへ伸ばしたいという気持を持つこつとは当然じやないでしようか。デンマークでどういう手続をしたかどうかということを確かめないうちに、罰則を適用するとかなんとか、欧米局長が言う権限はどこにあるのですか。
  79. 土屋隼

    ○土屋政府委員 旅券法第二十二条によりますと、一般旅券の申請者は一般旅券の発給申請書を出すことになつております。この申請書は行く目的と、また現在のことでございますから、行くについての経費の出所と、第三にはその径路とを明示しなければならないことになつておるわけであります。従つてこの申請書に対しまして、われわれが、ここに書いてある以外のことはなされませんかと言うことは当然の義務であると心得ております。従つて今越権云々のお話がありましたが、ちよつとそれはお当りにならないと思います。また現にこの帆足並びに宮腰両氏の申請書には、ソ連に行かないことは当人が明示したわけでありますから、それについてわれわれは強制したことも何もありませんし、自分たちが明々白々に行かないということを書いただけにとどまるのであります。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは結論を出します。ソ連へ行かないということを約束しながらデンマーク行きの旅券を出すということは、私は越権だと思うのです。そんなことはあなたの方で言わなければならぬことはない。しかも帆足氏や宮腰氏がそんなことをやるはずはないのです。しかもモスクワへ行くことを許さないこと自体が根本的に——これはいくらあなた方と議論してもしかたがないからやめますが、実際高良さんはどういう不安を持つているのですか。明らかに政府が間違つていたということです。高良さんは国賓待遇を受けているじやないですか。あなた方は自分で間違つている。しかも吉田さんが共産党がきらいだからといつて、憲法で保障されている、旅券法で保障されている海外の渡航権を制限しておきながら、なお本人にモスクワに行かないでしよう、そう書いたら出しましようということ自体が大きな越権だ。あなた自体が大きな憲法違反をやつておる。だからあなた方がそんなことを言つたといつても、出先のデンマークでどういうことをやつた、どういう手続をしたということを調べないで、もうここへ来て処罰するという権限はどこにあるのですか。一体デンマークでよく事情を調べたのですか。どこかにあなたの方の在外事務所があるというのですが、在外事務所でお問合せをしたことがあるのですか。そうでなく、あれは約束を破つたから牢屋へ入れてやろうというようなことでは官僚の暴論です。もしデンマークに問い合せたというのなら、その結果を報告してください。
  81. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま聞く権限がない、越権だというお話でございますが、先ほどの答弁で一応申し上げておりますが、参考のために申し上げますと、お二人に対して私はソ連においでになる意思があつて書かないのではありませんかということはお聞きしませんでした。向うからきのうまでは実はソ連行きの旅券を申請していたが、きようはデンマークに行くのです。ソ連に行く意思は全然ないと向うから言われた。(林(百)委員「さつきあなたは聞いたと言つたじやないか」と呼ぶ)だから聞いたのです。まさか子供ではありませんから、ただ書いたことをそのまま信ずるわけに行かない。聞くのは当然だと思います。聞いて悪い理由は何もないと思います。憲法違反でも何でもありません。それからデンマークの事情を確かめずしてというお話でございましたが、私どもが今旅券を出しております旅券の渡航者が、その渡航先に参りまして追加の必要その他を認めました場合におきましては、もよりの在外事務所に——帆足、宮腰両氏は今日の場合ですと、おそらくデンマークに事務所がありませんから、あるいはスエーデンとかあるいは西独なりにお話になつて、ここに追加を申し出るわけでありますが、そうしますと海外からはこの追加につきまして、追加の手続が来ましたから追加していいかということが本省に来るのです。今日のところお二人についての追加の申請がございませんから、おそらく追加の申請をせずして行かれたのだろうと断定してよいと思います。
  82. 並木芳雄

    ○並木委員 ちよつと関連して……。私はこの点政府から聞いておきたいのですけれども、身体、生命財産に危害を加えられるおそれがあるからということが眼目であるとするならば、本人が身体、生命財産に危害を加えられる等のおそれがあつてもさしつかえない、こういう意思表示をした場合には政府は許しますか、それまで私は政府として個人の意思というものを束縛することは、これこそ憲法違反であると思います。その点はいかがですか。
  83. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 国家はやはり国民の身体、生命財産保護の責を持つておることは当然であろうと思います。そこでかりに本人が身分はどうなつてもかまわないからというようなことがありましても、国の考え方として、そこは保護が十分じやなかろうという場合には、これは出さないのが至当であろうと私は思います。
  84. 並木芳雄

    ○並木委員 実際問題として私心配しておるのは、たとえば悪いかもしれませんが、行きたい行きたいといつてようがないというのを、親が行かせない、そうするとやはりその目的を達するために自衛権の発動、正当防衛という見地から、そういう場合も考えてやらなければならない。つまり国交が断絶しておるとかなんとかいう国策として大きくきまつておるならば、これはまた別です。あるいは閣議で決定しておるよう事柄であるならば別でありますけれども、ただ政府としては先ほど言われたように、未帰還者の点とか、そういういろいろな問題をあげて、どうも好ましからぬという方針なのです。その程度のときにおいて、個人の熱望というものをあまり押えることは、私は行き過ぎではないかと思います。もし押えつけますと、今後もこの種の例というものが出て来るというおそれがあると思いますが、ほんとうに行きたい人は、罰則を無視しても行くというようなことがあると思います。法に従うことは、もちろん絶対必要なことであつて、法を犯したものは、われわれはやはりそれに従つて罰してもらわなければなりませんけれども、そういう本人の意思と国家の意思とが、先ほど与党の北澤委員でさえも指摘したように、どうも政府ははつきりしないから、国民も躊躇するのだということがあるので、ぴつたり来ないわけです。だからどうしてもいけないものならいけないというので、旅券法で制限しないで、もつと国策としてはつきりしたものを出すべきじやないか、国策としてはつきわしたものが出ていないのに、旅券法でそこまで触れて行くということは、私はやはりを行き過ぎだと思うのです。ですから、生命、身体、財産、そういうものに万一のことがありましても、私は決して異議を申し立てない。ちようど飛行機へ乗る、飛行機は絶対に事故が起らないかといえば、飛行機だつて事故が起ることがあるのです。それなら国家は日航の飛行機に乗ることを全部禁止した方がいいと思うのです。われわれにとつては万一のことがあつても、会社に対して異議を申し立てないという一札を入れて乗つて行く、それと同じよう考えてもらいたい。そうしませんと、法を犯して行く人が跡を断たないようになる。これはもう法の権威のため、法の威信のために、私は政府に忠告的に要望し、また質問するのですが、その点もう一応お聞かせ願いたいと思います。
  85. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 いろいろお話がございましたが、旅券を出すか出さないかという問題は、これはやはりその時にどの法律でやつても、これは旅券法に従つて決定して行く以外に方法はないと思うのであります。それでたびたび繰返されておりましたことでありますので、私は論議を省略したのでありますが、ソ連、中共に対しての旅行をわれわれがただいまとめておりますことは、この旅券法第十九条、それから第十三条の精神、この二つから来ておるものであるということは、たびたびここで申し上げた通りであります。それから今回の両者の問題につきましては、これは帰国後十分事情を聴取いたしまして、法務府とも打合せの上、これは処断を進めて行きたいと思いますが、欧米局長が申しておりますように、ソ連に行かない、ソ連には旅券を出さないということがあれだけ論議されました直後のことであります。これは明らかに第二十三条の違反であると一応われわれはただいまのところ考えておりますが、しかしこれは帰国後十分事情を一応承りまして、さらに実情をはつきりいたしましてから、法務府とも検討の上、第二十三条の運用を考えて行きたい。私は先ほどさように申し上げているのであります。何もこの際両者をただちに違反者扱いをここでしているわけではないのであります。
  86. 並木芳雄

    ○並木委員 その場合に、当時の審議の経過を私はよくここで聞いておつたのですけれども、政府としても実際断固たる態度をとつておらなかつたということは十分心にとめておいてもらいたい。そうしないと苛酷な処罰が行われるようなことになるとたいへんですから……。確かにいろいろな質問が出たときに、荏苒日をむなしゆうして、何か出すような出さないような歯がゆいような態度を示された。これは北澤委員の指摘された通りであります。ですから、今まで起つた三つの件に対しては、私はたといそこにどういうことがあろうとも、情状酌量して最も軽いところの処置をとつてもらいたい、とるべきだ。(「処罰されてもいいようなことを言つちやだめだ」と呼ぶ者あり)もしそれに抵触するようなことがあつても、私どもの方でも十分事情を調べないとわからないから、そういうことを要望しておきたいと思います。
  87. 小平忠

    ○小平(忠)委員 先ほど欧米局長から旅券法に関連しまして、本日の新聞に帆足君と宮腰君がソ連に入国しているという情報があつたこの問題に関連して、これは林君からも先ほど質問があつたのですが、私は欧米局長の言はまことに遺憾であると思う。なぜかというと、旅券の下付申請をしたときのいきさつから見ると、明らかにソ連に行く目的をもつてこの申請を出して来た。従つて旅券法第二十三条に抵触するものである。だからこれは処罰すべきであるということを先ほど明らかに言つた。これに対して政務次官の、事情がわからない、だから帰国の上事情を調査した上で善処をしたいという答弁は要を得ていると思うのでありますが、欧米局長の言は——少くとも宮腰君の場合には、いわゆる現国会議員であります。帆足君の場合においても前参議院議員であります。少くとも向うで、はたしてどういう事情になつておるか、これはわからない。それを事前に、ソ連に入国する考え方を持つて、いわゆる虚偽の手続、虚偽の行為をしておるというようなことは、少くとも国会の本委員会において言うべきことではないと私は思う。この問題について一身上の弁明なり取消しがなければ私は断固承服できない。この点を欧米局長に伺います。
  88. 土屋隼

    ○土屋政府委員 私の言葉がもしそういう御質問の御趣旨に受取られたとすれば、私はここで取消します。次官の言われたところと何らかわりません。私の申しますのは、第二十三条による虚偽の申告ということを一応推定する事由があるのではないかと思います。こういうことであります。
  89. 並木芳雄

    ○並木委員 きようは岡崎大臣は……。
  90. 仲内憲治

    ○仲内委員長 大臣は要求しておりません。
  91. 並木芳雄

    ○並木委員 岡崎大臣にこの次質問する材料として一つだけ確かめておかなければならぬことは、外務省の情報文化局というものは、とんでもないものを出してくれたものと思うのです。「独立日本と世界の動き」、これを拝見しますと、国際連合に申し込む日本政府の意思というものは、一体どこにあるのだと思うのです。ちよつと見ただけでも、一方的な主観を交えたことが多いと思います。それでしらじらしい顔をして国際連合加盟を申し込むということは、那辺に世界平和を念願する日本政府の意図があるかということを疑うわけです。そこで資料としてお伺いしておきたいのですけれども、この四ページに「また原子力や生産力について米国に遥かに劣るソ連が」云々ということがあるのです。それで注の五を見ますと、生産力の比較というものが、石油、石炭、鋼鉄について出ております。この資料は一九五〇年ですから、参考になりません。そこでこの資料を最近のものに直してもらいたい。それから原子力に格段の違いがあるというのですが、どのくらい違うのですか。これがわかつていたら今お答え願いたい。原子力がソ連はアメリカにはるかに劣つておるということは、資料がなければむろん言えないのですから、その資料をいただきたいと思うのです。
  92. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは答弁の正確を期しますために、次の機会にお答えしたいと思います。
  93. 並木芳雄

    ○並木委員 必ずそれをこの次出していただきたい。  それから条約局長ちよつとお尋ねしておきます。国際連合加盟に便法があるということを言われたが、その便法というのは、先ほど次官のお答えになつた、オブザーヴアーの派遣とか、大公使の派遣ということでなく、加盟そのものに何か便法がある、そうして加盟になるというふうに私どもは考えたいのですけれども、そういう便法は全然ないのですか。何かありませんか。
  94. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ずいぶん考えてみましたし、また研究もいたしましたけれども、結論は便法というものはないという結論でございました。
  95. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、ソ連が拒否権を行使すれば、絶対に国際連合には加盟ができない、こういうことになりますか。
  96. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現在の憲章のもとでは、そういう結論になります。
  97. 並木芳雄

    ○並木委員 将来どうですか。先ほど局長の答弁によると、戦争の定義などというものも、これから国際間で逐次新しいものが形成されて行くのではないかというお答えもありましたし、その点からいうと、将来どういうことが考えられますか。拒否権というものを行使されれば加入できないのですから、それを避けつつ国際連合加盟国になる方法として考えられるものはどういうものですか。
  98. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 問題はいろいろございましようが、何分将来のことでございますので、具体的に考えを申すのもむしろこつけいであろうかと考えるわけであります。ただ国際連合への加盟につきましては、サンフランシスコ会議におきましても、ソ連が条約に対する十三ばかりの対案がございましたけれども、全然それに触れておりません。察するところ、従つてサンフランシスコの前文にありました日本国連加入の要請、それに対する連合国の意思表示、それ自身については私はソ連の方においては決して反対はないものだと、あるいはひとり思いかもしれませんが、考えておる次第であります。国連ような普遍的平和条約が健全に発達いたしまして、そこに世界の現存国が全部入つて、お互いに討論審議をいたして相互間の問題を解決して行くということは、おそらく世界のどの国といえども、今日最も希望する平和維持の方法であると私は存じております。従つて当面の問題としては、客観情勢からしてソ連の拓否権を非常に云云いたしますし、また懸念いたしますが、私は必ずしも日本国連加盟憲章の条章に従つて堂々と実現する日が決してないとは考えないのでありまして、客観情勢の変転によつて、われわれの考えというものも正式に認められる日が必ずあると期待いたしておりますし、またその方向に国連の内部における各種の機関加盟国が、非常な努力をしておるということを私ども知つておりますので、絶望はいたしません。楽観はいたしませんが、絶えず希望を持つそおる次第であります。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど並木委員からも出ましたように、「独立日本と世界の動き」という外務省の情報文化局で出している出版物ですが、これを見ますと、「いわゆる全面講和が単なる理想にすぎなかつたことは、いわゆる全面講和を結んだイタリアが、去る二月九日ソ連に対して条約上の義務を廃棄する旨を通告して、事実上多数講和の途を選んだのをみても明かである。」こういうような言葉、あるいは憲法第九条の問題について、自衛権による戦力すらないのだということを国会で主張している人があるにもかかわらず、そのような「自衛権をすら放棄することは、国家自体の生存を否定し、ひいては憲法そのものの尊厳をも否定するという矛盾に立ち至るであろう。しかし長年にわたつて封建的憲法を墨守することに慣れ、かつ軍部の支配に苦汁をなめてきたわれわれ日本人の多くに対して、「民主主義擁護と違憲の名のもとに、自衛力の完成に反対する宣伝を行うことはきわめて容易なことである。」というような、全面講和論者あるいは再軍備反対論者に対して、これはまつたく一方的な批判を行つている。われわれ国会の中には、全面講和を主張する者があり、憲法第九条に対しては、自衛権の名のもとに再軍備することについて反対だという者もあるのは明瞭であります。そういう国会の中のいろいろな論議があるにもかかわらず、外務省の情報文化局がこのような出版物を出すということ、これは明らかに公務員法違反だ。どういう必要があつて外務省情報文化局がこういうようなものを出したのか。これは外務省としては、こういう資料もある、こういう資料もあるという資料を出すことなら、私はいいと思うのです。しかし今国会で論議になつている全面講和、再軍備反対に対して、外務省情報文化局が、これに対して、このようなものは単なる理想にすぎない、夢のような話だ。憲法第九条の解釈のごときは、おそらく認識不足だというようなことを、外務省の情報文化局が言う権限はどこにあるのですか。(「外務大臣の命だ」と呼ぶ者あり)外務大臣の命をもつてしても、そんなものを出す権限はない。それは外務省として資料を出すことならいいのですが、こういう微妙な立場にある国際情勢の中にあつて、情報文化局がそういう政治的な判断をして、しかも指導的な理論にするという、こんなものを出す権限はない。これはだれが書いたのですか、何のために使うのですか、はつきりさせてもらいたい。これは国会の重要問題にしたい。(「外務大臣が出した」と呼ぶ者あり)外務大臣が国務大臣として国会で答弁するならいいでしよう。文化局の名でこんなものを出して広める権限はどこにあるのか、だれがつくつたのか、はつきり言いなさい。
  100. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 そういう資料は、今までも、つまり国際情勢なり、外交情勢の判断資料、知識を国民に知らしめるという意味で幾多出ておるのでありまして、そういう資料の一つとしてやはり出したのでありまして、権限があるとかないとかいうことは、私は言えないだろうと思います。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこれについてはだれが書いて、だれが責任を持つのですか。外務省として、もちろん資料を出すことはいいのですが、こんな国際的に大きい影響を及ぼすような判断をかつてに出している役所がどこにありますか。これは明らかに外務省の行き過ぎです。反共の総本山になつて吉田氏のお気に入るために、こういうお茶坊主的なことをやつている。このためにいかにこれが国際的に悪い影響を及ぼすかということは明瞭です。われわれも国連に入るにしても、中国、ソビエトと国際的の関係を一々改善して行こうと、みな真剣に考えているときは、文化局がこんな判断がどうしてできますか。中ソ友好同盟条約というようなものを一方的に判断してみたり、われわれが国会でそういうことを慎重に論議して、なるべく国際関係を親善に移して行こう、改善して行こうと考えているときに、一体これはだれが書いたんです。それを聞かしてもらいたい。
  102. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは外務当局が書いたものでありまして、責任は外務大臣にあるものと思います。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、外務大臣はどういう必要からこういうものを出したのです。(「政策だ」と呼ぶ者あり)これが自由党なら自由党の政策なら、いいかもしれない。しかし少くとも文化局なんというものは、自由党の手先じやない。これは国家の機関だ。自由党も、共産党も、社会党も、みんなの上に立つたのが外務省です。それを一方的な判断を書く権限はない。
  104. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、国際情勢なり、外交問題の資料として、そういうことは次々と出しておるのでありまして、その一つとしてそれは出ているのであります。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 資料の域を脱している。あなたはこれを読まれましたか。資料でなくて、明らかにこれは政治的な判断です。公務員がこんなものを書く権限はない。(「外務大臣だ」と呼ぶ者あり)外務大臣ならいい。外務省情報文化局とあるじやないか。よく読みなさい。大臣の命によりなんて書いてない。こういうことは明らかに行き過ぎだ。私はこの次に外務大臣が来ましたら、これを十分検討してみるつもりですが、今言つたこの中に書いてあること自体も、原子力についての生産力はどこがどうで、ソ連がはるかに劣るというような、こんなことを外務省の情報文化局が出す権限がどこにありますか。こういうばかなことを書いて、これで資料だというなら、それでいい。私どもはこの次に外務大臣に聞きましよう。  それから西村条約局長に申し上げたいのですが、たとえば私が第四十二条の説明をしたときに、あなたは認識不足もはなはだしいという言葉を使つておる。しかし、あの国連勧告のときも、ソ連が休んでいた。それから中華民国は国府代表が七票の中に一票入つていた。これは国際的な問題になつている。しかも第三十九条の権限が、ソ連が拒否権を行使することができないような欠席した状態で、しかも北京政権でなく、国府を出して七票の中の一票としてやつている。そういう方法でいいというなら、第四十一条も第四十二条も、きめようと思えばきめることができる。しかし第三十九条でとめておきながら、拒否権やいろいろあつて第四十一条、第四十二条はきめることができないといいながら、実際は第四十二条と同じ行動をとつているから、この行動国連憲章違反でないかと聞いているのです。それをあなたは認識不足という。これは国会議員の名誉のためにも取消しなさい。君の言つていることくらいは知つている。君はいつでも英米側に立つてものを言つている。しかし何も国連というものは英米側だけじやない。中国もソ連も入つているのだから、われわれがその場からものを言うときに、認識不足だと言われる理由がどこにあるか。それを取消しなさい。ソ連が拒否権を行使して、こういう事態を起してはいけないというのに、第四十二条と同じように、陸軍、空軍、海軍を国連の名のもとに行使している。そうすれば、拒否権を行使されれば第四十二条はきめることができないといいながら、実際は同じことをやつている、それは違反ではないかと聞いている場合に(「違反じやないよ」と呼ぶ者あり)違反である、ないとは別として、認識不足とは何だ。さつきからがまんしているが、旅券の問題も、この「独立日本と世界の動き」も、第四十二条の解釈の問題にしても、あなた方は少しいい気になり過ぎでいる。イタリアでは全面講和をやつても、講和のときには、みな喪章を掲げて、これはイタリアにとつては国家の運命にとつて重大なときだといつている。あなた方はビールや酒を飲んで喜んでいる。しかも、いかにも和解と信頼で独立日本が完全になつたといつてわいわいやつて、そうして国会へ来て国会議員をばかにするようなことをしていたら、日本の外交はどうなりますか。少くとも、西村条約局長ような日ごろ慎重な人がそういうことを言うから、私は許しがたい。
  106. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 先刻私が林委員に対して認識不足云々と申しましたことについて、同委員の非常なおしかりをちようだいいたしました。坦懐率直に私は取消します。林委員が述べられた、朝鮮動乱について国連安保理事会または総会がとりました措置の法理論につきましては、ソ連代表からその後公式見解が表示されております。その見解はまさに林委員のおつしやる通りのものでありまして、その点は私どもも実際問題としてのみならず、また憲章解釈問題として非常に興味を持つて読み、かつそのよつて来るところを理解しておるつもりでございます。その意味におきましては、林委員が立たれる立場から来る批判につきましては、私は、林委員が英米の陣営の立場から来る理論に対して持つておられる理解と同程度の理解を持つておるつもりでございます。申すまでもなく第四十二条による措置は、これは拘束力を有する措置でございます。安保理事会がそれを決定すれば、国連加盟国はそれをただちに実行しなければならないものであります。第三十九条の前段に基く勧告は、これは勧告でございますから、それに応ずるといなとは、各加盟国ないしはその勧告を受ける非加盟国の自主的判断にまつ次第でございます。従つて第三十九条の前段に基く勧告に応じましてとりました措置の具体的結果が、あたかも第四十二条によつて決定がなされたかのごとき事態に至るということはあり得るわけであります。ただ第四十二条の場合には、全加盟国についてしかあるべきでありますし、第三十九条前段の場合は、国連側勧告に応ずる国に対してその政府が応諾する限度においてかくのごとき事態を生ずるという、法律的に見れば大きな差違があると思います。こういうふうな国際連合憲章の運営がなされたことの可否につきましては、それは法律論から政治論からもいろいろな批判があるということはその通りでございます。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 私はきようはこれで終ります。
  108. 仲内憲治

    ○仲内委員長 本日はこれで散会いたします。次会は五月七日午前十時から開きます。     午後一時三十四分散会