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黒田委員 私が今中立という言葉を使いましたので、
条約局長からただいまの
ような御答弁がありましたが、私は
条約局長の仰せられることはごもつともな御
議論であると
考えます。しかし私の
質問はそれで解消したのではなくて、重大な問題が依然として残
つておるのであります。私が中立という言葉を使いましたので、ただいまの
ような御答弁がありましたから、別な角度から、同じ問題を取上げてみたいと思います。
日本はいわゆる
国際連合軍に
朝鮮事変において便宜を与えております。たとえばもつと具体的に申しますれば、B二九が
日本を基地といたしまして、交戦の相手方に対して爆撃を加えております。これはだれも知
つておる
通りであります。これについて今価値判断するのではなくて、事実そういうことが行われておることを指摘したい。そういう
立場に
日本は置かれているのであります。
施設及び
役務を提供することにな
つて参りますと、そういう
事態が現われることになるのであります。
日本を相手方に対する爆撃の基地として提供するということになりますれば、これは的確な言葉かどうかわかりませんが、ここで
日本の中立性ということはなくなるのでありまして、要するに交戦の相手側からは、
日本も交戦国の一つであるという
ように見られる。このことを中立性の放棄と申したのでありまして、いわゆる
国際法上の中立性云々の
意味で中立ということを申したのではありません。要するに
日本が戦争ないし戦争状態の一方に立つということに
現実にはな
つておる。幸いにして、相手国が
日本のB二九の基地に対して爆撃を敢行いたしませんでしたから、
日本は安全にや
つて来られたのであります。これは事実問題といたしまして、その
ような
事態が幸いにも発生しなか
つたというだけのことでありまして、そしてまた
朝鮮事変は今は休戦の交渉の過程にありまして、やがて休戦が成立するものと思いますから、将来心配はないものと思いますけれども、しかしりくつから申しますならば、
日本は相手国の爆撃を受けても文句は言えない
立場に置かれているのである。私が中立性放棄というのはその
意味です。文句を言えない
ような
立場に
日本が入り込んで行くというこの事実だけは、理論上からも否定することはできないと思います。事実上そういう不幸が発生しなか
つたので、
日本は救われておるというだけのことでありまして、下手に行けば、相手国がB二九の基地たる
日本のこれらの場所に対して、爆撃を加えることも十分あり得ることであります。こういう
立場に
日本が立たされるということを、中立性の放棄という言葉で申し上げましたので、それ以外の
意味ではなか
つたのでありますから、そういうふうに御
解釈を願いたいと思います。さて、そうな
つて参りますと、私は
日本の憲法との問題が起ると思うのです。これも今日は、それを価値判断の問題とするのではありません。私は一人の
日本人として研究してみたいというつもりで申し上げておるのでありますから、そういう
意味でこれにお答え願いたいと思います。
日本は
朝鮮に
出動しております
国際連合軍に基地を提供し、物資を提供し、それから事実人夫も提供しておる。これは
朝鮮に連れて行かれた人夫から、われわれ
陳情書なども来ておるので、この事実ははつきりしておるのであります。要するにそういう基地を提供したり、物資を提供したり、通過権を与えたりする
ようなことにな
つて参りますと、
日本が
国連憲章にいうところの制裁的
措置、いわゆる制裁戦争に参加するということになるのであります。
国際連合の
精神からいえば、このことは肯定されることであると見られております。相手国が侵略国であるならば、それを制裁するということは、これはあたりまえではないか、
国際連合の
精神からいえばそうであると思います。今はそう見ることのよしあしを言
つておるのではありませんが、
日本がそういう制裁
措置に、もつと露骨に申しますれば、制裁戦争に——今次の
朝鮮への
出動を制裁戦争と
解釈するかどうかということにつきましても、実際は争いがあると思いますけれども、かりに私はこれを制裁戦争と
解釈いたしまし
よう。
議論といたしましては、そういう前提で話を進めてみたいと思うのであります。そういう制裁戦争に
日本が参加するということは、単に
日本の地理的地位から申しまして、非常に危険な地位に
日本を置くということだけでなしに、私は
日本の憲法がそう
ようなことを許すかどうかという問題があると思う。
日本の憲法が、
日本は戦争をしないという
意味で排斥しております戦争は、単に侵略戦争だけではありません。自衛戦争のためにも
日本は再軍備をしないということに憲法で規定をしております。ただ外国が不正に侵略をした場合に、これに抵抗するという
ような
意味の自衛はあり得ると思いますけれども、平素から外国の侵略を予定いたしまして、一定の系統的な軍事的な組織を持つということは、
日本の憲法はこれを禁止しております。それから
日本が交戦権を放棄しておるという、その交戦権の放棄の中には、制裁戦争に
日本が引き込まれて行くということも、禁止しておる
趣旨と
解釈しなければならないと私は思うのであります。これも、そういう憲法を
日本が持
つていることが、いいか悪いかということについては私は今は
議論はいたしません、現在の憲法の公平、冷静な
解釈からいたしますれば、
日本は単に侵略戦争だけでなくて、制裁戦争にも加わらない。憲法の
趣旨から申しますれば、交戦権の放棄ということはそういう
趣旨であると私どもは
解釈しなければならないと思うのであります。しかるに
日本が交戦国の一方に基地を提供したり何かいたしまして、事実上、私の申しますいわゆる中立放棄、すなわち相手方から爆撃されても、
日本は文句は言えないのだという国際的地位に置かれる
ようなことをすることは、交戦権を放棄いたしました
日本の憲法の
精神から申しまして許されないことではないか。これを私は疑問として提出するのでありますが、そういう疑問も起りはせぬかと思うのであります。もう時間がございませんからついでに申しますが、元来私は
国際連合加盟論者であります。ぜひ
日本を
国際連合に入れたいと
考えております。けれども現在の
ような憲法がありますと、私が今申し上げました
ような
意味において、
国際連合の
勧告を
日本が受けることができない。受ければ憲法違反になる。そういう矛盾が起りはしないか。そこで交戦権を放棄した憲法を持
つております
日本は、私ども
日本として
国際連合に入りたいのでありますけれども、こういう
ように
考えて参りますと、憲法がこのままである限り、
日本の
国際連合加盟が簡単に申し出られるかどうかという問題が起りはしないか、私はこう
考えます。
日本が
軍隊を持たなければ
国際連合に入れないのではないかという
議論、その
ような
議論が成り立たないということは
政府がしばしば御説明に
なつたところで明らかであります。私はその点は
政府の御説明の
通りでよろしいと思う。けれども
軍隊を持たぬというだけではなくて、現在の憲法がある限りは、
国際連合に
加盟しても、その
義務を受諾することができないという
立場に置かれるのであるから、その
意味において、現憲法の存在する限りは、
国際連合に入ろうと思
つても、入りがたい
関係にあると
解釈せざるを得ないのではなかろうかという疑問があるのであります。この点についてひ
とつ政府の御所見を承りたいと思います。
なお私は
国際連合加盟の問題につきましては、もつと他に重要な問題で
質問申し上げたいと思うことがありますけれども、私はき
ようは非常に、予定以上の時間を費しまして、また
委員長もそれをお認めくださいまして感謝しておりますが、最後にこの点について
政府の御所見を承
つておきまして、もし
議論になる
ようなことがありましても、き
ようは私
自身も時間がございませんので、これ以上
議論をすることができないのでありますから、これだけでき
ようの私の
質問は終りたいと思います。
なお
委員長にお尋ねいたしますが、
国際連合加盟の問題はまだ……。