運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-04-23 第13回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十三日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 近藤 鶴代君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    北澤 直吉君       栗山長次郎君    飛嶋  繁君       水田三喜男君    松本 瀧藏君       林  百郎君    黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局外国財         産管理課長)  佐々木庸一君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 四月十六日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  水田三喜男君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員川崎秀二君及び林百郎君辞任につき、その  補欠として中曽根康弘君及び横田甚太郎君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員横田甚太郎辞任につき、その補欠として  林百郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十六日  在外同胞引揚促進並びに留守家族援護に関する  陳情書(第一三  〇九号)  同  (第一三一〇号)  朝鮮人強制送還反対に関する陳情書外一件  (第一三一一  号)  出入国管理令適用に関する陳情書  (第一三一二号)  出入国管理令反対に関する陳情書  (第一三一三号)  行政協定により駐留すべき米国軍部隊に関する  陳情書(第一  三一四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際連合への加盟について承認を求めるの件(  條約第四号)  日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生  ずる紛争解決に関する協定締結について承  認を求めるの件(條約第六号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    ○仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合への加盟について承認を求めるの件及び日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争解決に関する協定締結について承認を求めるの件を一括議題といたし、両件に関する質疑を許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    戸叶委員 この日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争解決に関する協定の第一條に、「日本国政府は、その請求が提出された日から十八箇月以内に、」と書いてありますが、この十八箇月というふうに規定したのは何か根拠があるのかないのかを承りたい。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 十八箇月ということになりましたのは、平和條約の第十五條の(a)の規定によりますと、連合国人が問題になりますような申請をする期間は、当該連合国との間に平和條約の効力を発生しましたあと九箇月以内、こういうことになつております。そうしてその次にさらに九箇月以内に申請がありましたら、その後さらに六箇月の間に日本返還をする、こういうふうな措置をとる。こういうふうになつております。それで九箇月足す六箇月、それに幾分の余裕の期間を見て十八箇月、一年半、こういうふうになつたような次第であります。
  5. 戸叶里子

    戸叶委員 次に第二條と、これは第五條にも関係がありますが、ここに連合国政府任命する委員一人、日本国政府任命する委員一人及び両政府の合意によつて任命される第三の委員の三人の委員からなる財産委員会というものがつくられるわけです。この日本国の中から日本国政府任命する委員というのは、どういうふうな資格の人を委員任命されるのですか。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問に対しましては、この協定の実施の衝に当られます大蔵省の係官から御答弁申し上げるのが妥当かと存じますが、今見えておりませんので、私から答弁いたす次第であります。この委員会性質は、要するに日本にある連合国財産、それを返さない場合ないしは不完全な形で返す場合に日本補償をする、その補償額が妥当であるかどうかということについて紛争があります場合に、最終的な解決を行う機関でございます。事柄の性質上、法律上の知識も必要といたします。平和條約の規定意義ないしは連合国財産補償法意義などについても精通いたしておる必要がありますと同時に、問題は補償関係でございますので、財政経済面の実際的の知識も必要とされる仕事でございます。それでございますので、おそらくは法制にも通じ、財政経済の面にも精通しておられる人々の方面に適任者をお探し中でなかろうか、こう了解しております。
  7. 戸叶里子

    戸叶委員 法律上の知識もあり、そうして財政経済にも通じた方を選ぶということは当然必要なことでしようし、けつこうなことなのですけれども、この委員会構成メンバーが三人でありまして、しかもこの委員会の役割というものは、非常に国際的な意味を含んでおると思うのです。それと同時に日本から選ばれた委員というものは、日本の国の利益になるようにもして行かなければならないと思うのです。ところがもしも――その人を疑つては悪いですけれども任命された人がたとえばアメリカならアメリカに非常に好意を持つている人でありまして、そうしてアメリカ側意見にたまたま説き伏せられるというようなことがあるとか、あるいはもつと進んで何かそこに、アメリカからの買収といつてはおかしいですが、そういうようなことがあつてそちらの方へ動いたような場合、あるいはまたこの人が不当なことをしたような場合に対して、その人を取締るような法規が何かあるでしようかどうでしようか、伺いたいと思います。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 戸叶委員指摘通り、この委員会の事業の性質から見まして、日本政府任命される委員の方が、法制に通じ、経財財政に通ずると同時に、国際的問題についても理解がありまする上に、戸叶委員が御指摘になりましたような憂うべき事態を生じないがために、人格的にりつぱな日本人でなくてはならないという御趣旨は、全然同感でございます。大蔵当局だけでなく、政府当局におかれましても、御指摘のような要件を兼ね備えた方を委員に御任命になることと存じておりますので、御懸念のような事態に立ち至つた場合に、委員処罰する法的根拠などがあるかどうかという問題は、今日までのところまだ私ども研究いたしておりませんので、ちよつと御答弁を差控えさしていただきたいと思います。おそらく処罰のための法的処置などを必要としないような委員が必ず御任命になる、こういうふうに信じておる次第でございます。
  9. 戸叶里子

    戸叶委員 法的処罰を必要としないような委員任命されるという言葉を、そのまま信じれば安心ですけれども、よく官吏の汚職事件とかいろいろなことが起きておりますので、それではあまりに不用意に過ぎると思うのです。そういう点をもう少しお考えになつておかなきやいけないと思うのですけれども、そんななまぬるいことでいいかどうか、確信がおありになるようですけれども、どうも私は確信を信じることができないように思いますが、いかがでしよう。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御懸念のような事態は決してないと信じております。しかし、もし委員行動に、現存刑罰法規によつて処罰し得るような行為がかりにあつたといたしますならば、当然それは現存刑罰法規従つて処罰されることになると思います。それ以外に公務員法上の資格というものは、今ちよつと結論を下し得ないでおりますので、その面から見て、行政的の措置がとれ得るかどうかという問題もございましようし、この第二の点はちよつと結論を下しかねますが、なかなかむずかしいのではなかろうか、こう考えております。ですから一般刑罰法規によつて処罰し得るような行為が、もし任命した委員によつてこの委員会における職務遂行上行われた場合には、言うまでもなくその適用によつて処罰されましよう。この点は確信を持つて答え得るところでございます。
  11. 戸叶里子

    戸叶委員 私の懸念しておりますのは、一般刑罰法規でもつてその適用を受けるような場合でないことを、私案は懸念しているわけなんです。そういうことに対しまして非常にあいまいであるように思いますので、この法案は非常に不備だといわざるを得ないと思うのです。私角度をかえて御質問申し上げますが、それでは何かこの委員に似たようなものがほかにあるかどうか、たとえばこの委員のような、職務は国際的であつて、しかも日本利益を擁護しなきやならないというような、こういう委員がほかにあるかどうか、あつた場合の処罰規定があるかどうか、そういうようなことを少し伺つてみたいと思います。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この委員日本政府によつて任命されるものでございますので、任命委員行動につきまして、政府において不満であるような事態に立ち至りましたような場合には――そういうようなことはよもやないと存じますが、政府としてはいつ何どきでもこれを罷免することは言うまでもありません。委員は、罷免するだけでなくて、その行為について何か処罰的なことができるかという御質問でございます。一般刑罰法規処罰し得る場合には、むろんそれによつて処罰いたしますという答弁を申し上げました。それ以上に公務員的な資格において何か処罰の方途はないかという点でございますが、それは今申し上げましたように、ちよつとそこまで私としては考えられない、こう考えておる次第であります。  最後の御質問の、ではこれに似た機関委員というようなものが現にないかということでございますが、ちよつと見当りません。一番近いのはへーグ常設仲裁裁判所裁判官日本政府は最近二名の方を任命いたしました。こういう方がかりに日本関係のある事件について裁判官になられた、そして裁判の衝に当られたという場合が考えられますが、この仲裁裁判所の場合は、これは必ずしも国家利益を代表して裁判官地位に立つものではないのでございまして、むしろそういうことは排除されるべき性質立場でございますので、例としては不穏当だと存じます。むしろ国際会議などで、日本利益を代表して会議に臨まれる委員などの立場か、ややこの混合委員会における委員の職責に似たところがあると思います。しかしその場合にもまた違つておると申しますのは、この條文規定してありますように、混合委員会委員は、衡平正義原則にして、解決に当らなければならないという考え方に立つていまして、いわゆる国家利益代表としての委員として行動することは表面的には出ておりません。むしろ当該問題が紛争になる場合には、要するに日本当局が査定いたしました補償額が、主として日本利益を保全するという意味において、最小限度のところにとどめようという見地からおそらく裁定いたされましようし、相手国の方では、最大限度補償を得たいという要求に立ちますので、そこに争いが起つて解決しない、そこでこの混合委員会に来る、こういうことになります。従つてこの最終的に解決する混合委員会指導精神というのは、一国の利益を代表して、お互いに議論するというよりも、その見地から離れて、むしろ正義衡平の観念に立つて妥当なる解決を決定する、こういうことにございますので、その面からいいましても、戸叶委員の御指摘されたような問題を、あまり大きくここで論議するということは、おもしろくないと考える次第でございます。
  13. 戸叶里子

    戸叶委員 どこの委員会でも、正義衡平に合致しないような委員会というものは、私はあり得ないと思うのです。ですから、ただいまの局長の御答弁はどうも私は満足できません。結論として、結局今のところはそういうものがない、それに任命されるような委員は、完璧な神様に近い人を任命する、もしもあやまちを犯したときにはやめてもらう、その程度しか今のところ考えていない、そういうような不備なものと了承してもさしつかえないでしようか。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 決してさように考えておりませんので、任命いたすと同時に、一般現存法規処罰し得る場合に該当するような行動委員によつてとられました場合には、委員は当然処罰対象となるということを御答弁申し上げておる次第であります。委員であるがゆえに、現存処罰規定からの免除というような特権的な地位には、全然立たない性質のものでございますので、現存法制適用し得る限りの処罰法規は、当然委員にも適用され、それによつて十分カバーされておると考える次第でございます。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 関連して。この委員会日本政府任命する委員は、民間の人を任命するわけですか、それとも日本公務員任命するわけですか。もしこの公務員任命するときには公務員法適用されると思いますが、この委員民間の人を出すという方針ですか。
  16. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 最終的な方針を決定されておらないそうでございますが今日のところ大体民間人から適任者を選定する考えでおられるということでございます。
  17. 戸叶里子

    戸叶委員 今の條約局長の御答弁には、私はどうしても満足できませんけれども、これ以上やりとりしていても同じことだと思いますから、次に移ります。  第六條に、この委員報酬を支払わなければならないということと、もう一つは、委員会経費連合国政府及び日本国政府が決定し、かつ均分して負担しなければならないとありますが、この報酬というのはどこから出すのでございましようか。たとえば連合国財産補償法の中に、補償金支払いは一会計年度における支払い限度を百億に限定するということがありますけれども、この中から、補償も、またこの人に対する手当も、経費も支払われるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  18. 佐々木庸一

    佐々木説明員 御説明申し上げます。御指摘になりました百億という経費は、大蔵省所管連合国財産補償金として計上されておりますのは、本来の補償金のみを計上したのであります。従いまして、お話になりましたような委員報酬その他は、平和回復善後処理費の中から支弁されることに予定されております。
  19. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは補償の総額を大体どのくらいにお見積りですか、その内訳ちよつと伺わせていただきたいと思います。
  20. 佐々木庸一

    佐々木説明員 推定いたしております補償見込額は、大体三百七十億でございますが、推定でございますので若干の変動はあるかと思います。内訳で申しますと、建物補償といたしまして約十六億円、動産補償といたしまして八十七億円、株式の補償といたしまして百十四億円、工業所有権補償約五十億円、その他預金の補償、債権の補償等でございます。
  21. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これは百億だけ計上されておりますが、大体二百七十億の推定といたしますと、それは何年間かにわたつてなさるおつもりなんですか。
  22. 佐々木庸一

    佐々木説明員 お話通りでございます。
  23. 戸叶里子

    戸叶委員 次に伺いたいのは、この委員会をつくる場合に、日本との平和條約に署名した全部の国にこれができるのでしようか。大体幾つくらいできる御予定ですか。
  24. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この協定建前は、連合国の方で設置したいという要請出した国との関係において、要請があつたときに設置する、こういう建前になつております。と申しますのは、連合国財産補償法によりまして補償を受ける連合国は、四十八箇国のうちのごく一部でございます。おもなる利害関係国といたしましては、イギリスアメリカオランダでございます。おそらくこの三つの国とは当委員会設置ということになるかと思いますが、爾余の国との関係はきわめて少数でございますので、おそらく委員会設置までに至らなくて済むのではなかろうかと一応推測いたしております。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 深刻な被害をこうむつたアジア諸国との委員会というようなものは何かできないのですか。
  26. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御承知の通り第十五條(a)及び連合国財産補償法によりまして補償を受け得る人につきましては、種々限定されておるわけであります。簡單に申しますと、戰時中敵国人として行動の自由を束縛された人のもの、または戰時中日本政府がとつた戰時措置対象なつ財産についてだけ補償をすることになつております。御指摘のような東亜諸国の諸民族の方々は、戰争中日本におきましてさような戰時措置対象になつておりません。敵国人にもなつておりませんし、そういう人の持つておられました財産特別措置対象になつておりません。従つて第十五條(a)の適用の外に落ちるわけでございます。従つて指摘のような問題は起らない、こういう結果になります。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して一つだけ。二百七十億の損害内訳ですが、先ほど聞きますと、英、米、オランダ補償される国のおもなるものだといいますが、二百七十億を大体各国別にするとどうなるかということが一つと、それから講和は別として、中国に対する補償はどうなるのか、将来講和締結された場合にはやはり補償対象になり得るのか、この二つをお聞きしたい。
  28. 佐々木庸一

    佐々木説明員 各国別補償見込みをまずお答え申し上げます。米国につきましては約百五十億円になりはしないかという見込みであります。イギリスは八十億円になろうかと思います。その他の国々合せまして約四十億というふうに考えております。従つて一番大きなのが米国になるだろうと考えております。
  29. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 中国につきましては、林委員も御指摘になりましたように、サンフランシスコ平和條約の規定をそのまま適用するという問題はございません。今後中国との間に結ばれます平和條約の規定いかんによることでございます。しかしながら、かりにサンフランシスコ平和條約第十五條原則によるといたしますならば、中国人は戰争中日本におきましては、いわゆる友邦国人として何ら戰時措置対象になつておりませんし、その財産もまた何ら特別措置対象になつておりませんので、サンフランシスコ平和條約の原則によれば、日本補償をする責任はないということになります。
  30. 戸叶里子

    戸叶委員 連合国財産補償法第四條第一項第一号の中に「日本国又は日本国と戦争し、若しくは交戰状態にあつた国の戰鬪行為に基因する損害」とありますけれども、これは戰時中アメリカの空軍の無差別爆撃によつて受けた被害、その被害の中に連合国財産被害がありますけれども、その補償まで全部わが国の国民負担になるということは少し苛酷のように思うのです。で日本民間人に與えた損害に対して、当然日本として補償を要求してもいいのではないかと思います。しかし負けた国だからしかたがないとおつしやれば、それまでですけれども、こういうような気持で交渉すれば、いくらか日本に有利になると思いますが、その点をお考えになつて協定であるかどうかを承りたいと思います。
  31. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 戸叶委員の御指摘の場合は、補償の義務を負うという結果になります。この連合国財産補償法によつて日本政府から補償を受ける連合国人と、ひとしく空爆犠牲者となつている日本人との間に、結果的に見まして非常な差異があつて公平を欠くという御意見でございまして、結論的に見ましてまさにそうなつておりますが、これは敗戰の結果やむを得ずわれわれとしては受諾せざるを得なかつた点でございます。むろん平和條約の交渉にあたりましては、第十五條(a)に基く日本責任が軽くなるようにということは、極力要請いたした次第でありますが、平和條約のような規定になりましたことは、この交渉責任の一部を負つた者としては残念に存じております。しかし御指摘の点は、單に日本人とこの補償法適用を受ける連合国人との間に、非常な差異を生じておるというだけではなくて、連合国人の間にも同じ差異が生じておるという点に戸叶委員も御留意願いたいと思います。戰時中日本において何ら特別措置対象とならなかつた連合国人につきましては――この連合国人もひとしく空爆その他によつて損害を受けておりますが、これらに対しても平和條約上は日本として補償責任を負つておりません。この点もまた御考慮を願いたい点だと思います。
  32. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもは和解と信頼による講和條約というので、その辺のところは少し考慮せられてあつていいと思つたのですけれども、今の御答弁のようではしかたがないと思います。  次に伺いたいことは、この協定を急いでお出しになつて国会承認をお受けになろうとするのは、つまり講和條約が発効すると同時にこれが効力を発するようにお出しなつたのだと思いますけれども日本の国がこれを承認いたしまして、他の連合国に出されましたときに、もしもその連合国でこの協定を修正するような場合がありましたときには、一体どういうことになるのでしようか。またその修正したのが日本国会へ来て、日本国会で審議されるということになるのでしようか。そうすると非常に日本国会を侮辱したものになると思うのですが、その点はどういうふうになつているか伺いたいと思います。
  33. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点はこの協定締結に至りまする経緯を御説明申し上げれば、御了解が行くと思います。昨年の春平和條約の交渉の当初におきまして合衆国から提示されました先方の考案は、平和條約第十五條適用並びに解釈に関しまする紛争解決機関といたしまして、へーグの国際司法裁判所の所長が任命いたします中立国裁判官からなる中立法廷を設定する。そうしてその中立法廷裁判官の俸給、並びに経費は全部日本政府負担もする。そうして同仲裁裁判所は――正確なことは今記憶ございませんで、たしか十年間だつたと記憶しておりますが、――十年間これを存置するという構想で行きたいという話があつたわけであります。その当時は、この平和條約の一部をなす文書としてそれを協定したいという話がありました。それに対しまして私どもといたしましては、日本におけるこの連合国財産返還補償の問題は、過去六年以上にわたる占領管理期間中に、スキャツプの指令に基いてすでに大部分解決済みである。そうして日本側としては、一日も早くこの問題を完了したいと思つておるのであるという立場に立つてつたわけであります。それでありますから、中立法廷というような大げさな裁判所を設ける必要はないと思う。それからもう一つの点は、こういう問題に関する紛争というようなものは、裁判官任命して裁判官によつて裁判をさせるには不適当な事件であると思う。実は、むしろ、ある建物やある動産などが受けました損害に対して、どれだけの補償を出せば妥当かという事実認定の問題であるし、その認定につきましては、率直に申せば裁判官ではできないのであつてむしろその道のエキスパートに当らせることが必要である。従つて、もしかりにそういう解決機関を設けるといたしますならば、裁判所は不適当である。むしろ関係相互政府がおのおの任命する委員をもつて構成する混合委員会というものをつくつて、その委員会で、衡平正義原則従つて最後的に解決を與えるという考え方が、最も妥当であろうと思うという対案をもつて臨んだわけであります。その話が、ほとんど過去一年断続的に続きまして、平和條約の條文をつくると同時に、われわれ事務当局の間におきまして、この混合委員会で行こうじやないか、混合委員会行つた場合にはどういうような構成がいいだろうかというような話をいたしておつて、最近やつと委員会構成その他について最終的に意見が妥結いたしまして、この案文で行くということにごく最近最後的決定を見た次第であります。最後的決定を見るについて非常に意想外の時日を要しましたのは、合衆国当路者と私どもと話をいたしまして、一応まとまりましても、やはり合衆国としては、ひとしくこの問題に関係を持つておりますイギリスオランダその他の国にその案文を配付いたしまして、その政府意見も聞かなくてはならないということになりまして意想外の時日を要したような次第であります。従つて当初からできれば平和條約と同時に妥結すればよかつたものを、そういうふうな日本側からまつたく違つた構想を出し、その日本側の構想が合衆国側、また連合国政府の同意を得るというようなことになりまして、一応平和條約とは離して別個の文章にするというようなことになつた次第であります。むろん事実問題といたしましては、平和條約が発効しましてから、利害関係人から補償申請が来るわけでございますが、その期間も九箇月ございますし、その後六箇月のうちに日本措置いたしますので、いかに順調に行きましても、今後一年近い年月を経て、具体的に日本政府において補償の額を査定するケースが生れましよう。それに対して異存があつた場合に、初めてこの委員会にかけるという問題が起りますので、今日からすぐ設置する必要はないということになります。ですから、この條約も平和條約と同時に効力を発生させておきまして、すぐ委員会をつくるというのではなくて、必要があるようになつたときには、連合国の方で日本政府に対して書面で設定の要請出し、そのときにこの委員会を設定する、こういう構想でございます。以上のような次第で、平和條約発効の間近になりまして、国会の御審議をお願いするようになりました点は相済まないと思いますが、日本政府といたしましては、十分前から御審議を願えるように、絶えず案文最後的妥結を督促するに努めたということは申し上げてさしつかえないと思います。それでよろしゆうございますか。
  34. 仲内憲治

    ○仲内委員長 岡崎国務大臣が見えておるのですが、大臣は十二時ちよつと過ぎまでしかおられないそうですから、大臣に対する質問を中心として……。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎大臣がお見えになりましたから、一点だけ伺いたいと思います。国連加盟の問題に関連いたしまして、たしかきのうの夕刊に出ていたと思いますが、マーフイー氏の語るところによりますと、日本に駐留する国連軍の協定は今別にとりきめられなくても、平和條約の第五條の(a)の(ⅲ)によつていいというようなことを言われていたように思いますけれども、それならば朝鮮に出動している国連軍の日本にいる場合の扱い方というものは、講和條約が発効しましたあと、どういうふうなことになるかを伺いたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第五條の(a)というのは、非常に抽象的な規定でありますから、かりにこの趣旨でやるにしましても、実際に国連の軍隊が日本におるということにしたいという希望が向うにありますれば、かなり詳細に規定をしなければならないと思います。もつともそれが非常に簡單なもので、向うの希望が、ただ今朝鮮におりますギリシヤの兵隊とか、あるいはデンマークの病院船の人だとかいうふうに、ここに人が帰つて来て、アメリカの施設の中でもつて療養するとか、休息するとかいう程度でありますれば、これは大げさな協定はいらないと思います。しかし国連軍として、国連軍の一部として、日本に軍としていたいという希望になりますれば、軍に伴ういろいろの権利義務の問題がありますから、やはり協定はいるのじやないか。そこで先方がどういう考えを持つておるか、それによるわけであります。こちらでは早く先方の意見をまとめるように言つておりますが、おそらく一つは休戰会談が非常に進捗しておる。それから国連軍としますと、ほんのごく少数の援助をしておる国もあり、英濠軍のようにかなり大部隊を出しておるところもあるものですから、個々に話をすれば別ですが、一体としてというと、なかなか内部でもどの程度ということはきまらないのじやないかと思います。それで先方の意見がまとまらずに遅れているのだと思いますが、今言つたように向うの希望によつては、それはこの三項によつてでもいいかもしれませんが、希望がかなり大きい場合には、やはり協定がいるのじやないか、こう考えております。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、日本政府といたしましては、当然何らかの協定が早く結ばれた方がいいとお考えになるわけでございますね。
  38. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今申しましたように、向うの希望が非常に簡單なものでありますれば、協定はいらないわけであります。そうでなければ、早くやつた方がいいと考えております。というのは、現に英濠軍等は、呉地区におきまして、相当広範囲の施設を使つております。これは占領軍として使つておるわけであります。この中でいらないものは早く返してやつた方がいい。しかし協定ができなければ、九十日の間は法理的にいえば占領軍としてまだ残り得る可能性がありますが、そうすると時間がおそくなりますから、どうせ何らかの協定をするものなら早くして、いらないものは返してしまうという方がいいのじやないかと思つて、むしろ早く先方の意向を知りたいと思つております。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺いたいのですが、こういう国連軍に対する費用は日本政府で負うているのでしようか、これから負うのでしようか、その辺をちよつと伺つておきたい。
  40. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今までのところは、これは厳格にいいますと、私もはなはだ自信がないのです。といいますのは、今までのところは、国連軍としての費用は全部ドルで払うということになつております。なつておりますが、たとえばここにおりますアメリカの軍隊が、朝鮮に出かけて行けば国連軍です。こちらへ帰つて来ても国連軍である場合もある、ない場合もある。そこでそうすると、たとえばある建物を使つておる。これは何パーセントが国連軍として使つており、何パーセントがということになりますと、なかなかわかりません。しかし特殊の、たとえばその建物にいる部隊が汽車に乗つて国連軍として福岡へ行く、朝鮮へ行く。そうすると、その汽車賃等はドル払いで出すことになります。しかしここに建物の中にいて電話を使つた場合には、これは国連軍の電話だとか、これは司令部の電話だということはなかなかむずかしゆうございますから、これは大まかに大体何パーセントということになつております。そこで今まではそういうふうで、建前上は国連軍のものは全部ドルで国連軍が別に払うということになつております。吉田・アチソン交換公文で、サンフランシスコで国連に対する協力を約束した。その中には費用の点は、特別の合意がない限りは従前の例によるという趣旨になつておりますから、特に日本側負担するという合意がなければ、今まで通り建前上国連軍の費用は全部ドルで払う、こういうことになると思います。
  41. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 関連質問をできるだけ簡單に若干したいと思います。一番最初に確かめておきたいことは、新聞の報道によりますと、二十八日に講和條約が効力を発生する。その時間につきましても二説あるようでありますが、政府筋に権威ある向うから伝達か何かありましたか、その点につきましてひとつお知らせを願いたい。
  42. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれの方に正式に在外事務所長から連絡がありましたのによりますと、日本時間の午後十時三十分、アメリカのワシントンの時間では午前九時三十分ということにきまつたと了解しております。
  43. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 そうしますと、いよいよ二十八日から独立国になるわけでありますが、先ほど戸叶委員から質問がありました中で、一点もう少し詳しく承つておきたいと思います。国連軍の駐留に対するところのとりきめでありますが、この問題に関しましては、先ごろの委員会におきましても質問がありまして、いろいろとこれについては説があるようであります。また一説によりますと、政府の見解として、これは国会に諮ることなく、かつて政府がとりきめられるのだということ、また目下そういう準備中であるというようなことでありますが、国民ひとしくこの問題に関しましては深い関心を持つておりますので、その点の事情をひとつお伺いしたいと思います。
  44. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど戸叶さんにお答えしました通り、まだ先方から言つて参りませんから、どういうとりきめになるかわからないのであります。そこで原則的にいいますと、吉田・アチソン交換公文は平和條約審議の際に国会承認を得ております。従つて国連軍が日本においてその一部の軍隊を維持したいという希望があれば、日本はこれに対して便宜を供與するという原則は、承認されておるものと政府考えております。そこでその原則に基きましてどういう協定をするかということになるのですが、これは今申した通り先方の希望にもよるわけであります。希望がありましても、日本政府として応じられない程度のものがある場合もありますが、主として先方の希望によつて考えてみるわけであります。その希望が、私今申しましたようにごく簡單なものであつて日本に国連軍の将兵が病気なり、あるいは負傷したり、あるいは單に休息のために来ることを認めてくれという程度のものでありますれば、これは入国管理の問題になります。入国管理令の規定に基きまして、そういうものを認めるという程度のことでありまして、その人たちが日本に来た場合には、たとえばアメリカの軍隊が使用する施設等を利用してその中に入れるという程度のことであつたならば、私はこれも詳細に研究してみなければわかりませんが、国会承認を求めずして、行政上の措置でもつてできるのではないかと思つております。しかしながらそうでなくて、軍隊としてもつとここにいたいのだ。そうすると、軍隊に伴うある種の特権というようなものは当然認められなければならない。それも日本に駐留する米軍と同じような特権ということはないと思いますが、軍隊というものはやはりある種の特権を認めなければならないというような場合になりますと、これは協定の内容によりますが、国会承認を得ることを必要とする場合も当然あろうかと考えております。要するに先方との話合いの結果、どういう程度のものであるかということがきまりますと、従つて国会にかけるか、かける必要がない程度のものであるかがきまると思うのでありまして、今原則的にどちらということはちよつと言いかねるのじやないかと思います。
  45. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 事実朝鮮にあれだけの国連軍隊が出動しておりまして、日本におけるアメリカの軍隊も国連軍と表裏一体みたいになつておりますが、一般国民の考えから申しますと、これは小さな問題でなくして、大幅に国連軍の駐留の問題が取上げられておるわけであります。先ほどの御説明によりますと、小さな問題だつたならば、協定政府がとりきめることができる、内容いかんによつては将来国会に諮らなくちやいかぬ。私どもは現段階におきまして、国会に諮らなければならないような問題がすでに起つておるというように感ぜられるのでありますが、その間のお考えはいかがでありましようか。
  46. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のところは先方から全然意思表示がまだありませんので、何ともわかりません。どう考えておるかわれわれも知りたいと思つて督促もいたしておるわけであります。またこちらから話合いを早くやろうじやないかというようなことを、非公式ながら申しておるのであります。先方では何も言つて来ませんが、何か向うで相談はしておるということであります。従つてちよつと今のところ見当がつかないのです。
  47. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 なお九十日間の余裕があることでもありましようから、いろいろと今後この問題も起つて来ると思いますが、これはこの程度にいたしまして、次にお伺いしたいことは、けさの新聞でしたか、国連に外交上の特権を與えるとりきめの仮調印が明二十四日に行われるというニユースがあつたように思います。これもまた仮調印の後に国会に提案するというニユースであつたと思いますが、事実でございましようか。
  48. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは事実であります。事実といつても、どの程度新聞がはつきり伝えているか知りませんが、これは国連軍というものでなくて、国連自体の機関の代表者がここに事務所を持ちたい、こういうときは、各国にもそういう例がありまして、それに対していずれもある種の特権を認めているわけであります。ごく簡單なことでありますが、たとえば電話局とその事務所との間に直通の電話を引いて連絡をよくするとか、入国を楽にするとか、いろいろのことがあるわけであります。これは話合いが大体できましたが、これは調印と同時に効力を発生することが各国とも例になつているようでありますので、一応話合いの下話ができましたところで、仮調印というほどのものではありませんが、イニシアルをしております。そして政府がそのイニシアルをしたものを、日本とすれば、政府の了解、それから向うとすれば、国連本部の了解、それが両方ともいいということになれば、調印をする前に国会に提出して、国会承認を求め、その上で調印をする、こういう段取りになるわけであります。
  49. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 日本が国連に加盟しておりますれば、今のような程度でこれはとりきめられると考えられるのでありますが、まだ加盟を許されておらない日本に対しまして、ただいまの国務大臣の御答弁は多分協力するという精神の原則にのつとつての解釈ではなかつたかと思うのであります。法律的にはやはりただいまの説明で通用することになるのか、あるいはまた外交上の今日までの慣例上、国連に加盟していない国との国連の外交特権の問題等で何か前例がございましようか。
  50. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは前例はいろいろあると思います。今正確には記憶しておりませんが、たとえば国連の事務所は南朝鮮にもあるのでありまして、実は今度の先方の希望は、朝鮮の復興を援助するための事務所、その連絡の事務所を日本に置きたいというのでありまして、やはりこれは朝鮮に対する国連の措置の一環としての問題で、国連の本部の代表者というのじやないと了解しております。それで加盟してない国でも、国連が問題をいろいろ仲裁したりなんかするためには、やはりそこに事務所を従来持つておりますから、前例はあると思います。しかし現在のは朝鮮のUNKRAとかいうような事務所であると思います。
  51. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それではただいまの問題はその程度にいたしたいと思いますが、われわれが国連に加盟したいことはひとしく念願しておるところであります。もしこの国連加盟ということが許されました場合、自衛力の問題にも関係があるのでありますが、その場合に、日本は外国に出兵を義務づけられるかどうかという問題、この質問をかつてしたことがありますが、はつきりした御答弁がなかつたので、あらためてお伺いしたいと思います。
  52. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国連憲章は非常に長うございますが、国連憲章を常識的に申しますと、国連が何かの措置をとろうとする場合に、勧告をする場合と、それから義務としてその措置に応じなければならぬ場合と二つあると思います。勧告である場合は勧告に従わなくても義務違反ということにはならないわけであります。そして今度勧告でなくて義務としてやらなければならぬ場合、これは国連との間に特別の協定を結んだときのみそういう事態が起る。従つて特別の協定がなければそういう事態は起らないはずであります。従つてわれわれの考えでは、国連に加盟を認められましても、日本の特殊の事情からそういう特別の協定を結ばなければ、いついかなる場合でも義務づけられることはないと考えております。
  53. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 私ども講和会議日本から全権が派遣されますまでのいろいろな折衝の過程におきまして強く印象づけられたことは、日本が簡單に国連に加盟することは許されないであろう。その場合にこれに次ぐ最もいい集団安全保障の形を持たせなければいけない。特にダレス特使はそれを念願しておられたようでありますが、その一番いい方法は太平洋の集団安全保障である。これを一気にここまで持つて行きたいというような希望を持つておられたように私は印象づけられておつたのでありますが、この太平洋集団安全保障の機構というものは政府の見通しでは成立するものでありましようか、またただいま成立さすべく努力が払われておるのでありましようか、その間の御事情をお伺いしたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは安保條約の第四條にも、この安保條約が効力をなくする場合として、国際連合措置もしくは一または二の個別的もしくは集団的の安全保障措置ができて、アメリカの駐屯軍を必要としないような事態なつたら、この安全保障條約が効力を失うということで、集団的の安全保障ということも考えられておるわけであります。しかし日本としましては、いまだ独立もいたしておりません時期において、太平洋の集団安全保障というような問題を、ほかの国と討議する立場にないものでありますから、今まだ何もそういう話をいたしておりません。また現実の状態から見ましても、太平洋における集団安全保障というのは、いろいろ利害関係がありましてつまりこれは共同防衛でありますから、ある国が、自分の国は安全だと思えば、共同防衛の場合にはよけいな負担をほかの国のためにするということになります。非常に危険な国でありますれば、共同防衛をしてほかの国から援助を受ければいいということになりますが、利害関係が自分の国はいかなる程度に安全であるかということに関連して厚薄があるわけであります。それで私はななかむずかしいだろうと思います。それであればこそアメリカはフイリピンと條約を結んだ。濠州、ニユージーランドと條約を結んだ。日本ともやつた、こういうふうにやつておるのであります。こちらの方のまとまつた集団安全保障というのは、いろいろな意味である国にはよけいな負担がおぶさり、ある国には利益が多くて負担が比較的少いじやないかということも、理論的にいいましてあり得るのじやないかと思います。そこで事実上なかなかそう早くできるかどうかちよつとわかりません。できればけつこうだと思います。またそれについてはお互いに助け合うというのでありますから、その国の防備力というような問題に関連して来るわけであります。日本としてはただいまのところ憲法の規定もありますので、ただちにそういうことに入り得る資格がありやいなやも疑わしいわけであります。現在のところは、私は、日本にとつてそういう話は進んでおりませんのみならず、ほかの太平洋の各国の間にもまだ話は進んでおらないと了解しております。
  55. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 横文字でプロヴイジヨナル・バイラテラル・トリーテイという言葉をしばしば聞かされておりますが、これはプロヴイジヨナル・バイラテラル・トリーテイであつたとしたならば、暫定的のものであり、将来太平洋集団安全保障の形に持つて行きたいという前提のような気がするのでありますが、その観念は誤つておりましようか。独立後に政府はそういう方向に努力を払うというような意図がございましようか。
  56. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは常識的に申しますれば、太平洋の安全保障と言われますけれども、場合によつていろいろの点があると思います。たとえば国連の措置が非常にはつきりできるような事態になれば、国連の安全保障でもけつこうなんでしようけれども、それが十分でないので、今度は地域的な集団保障ということになりましようが、地域的安全保障といいましても、太平洋をはさんでアメリカも加わる安全保障という場合もありましようし、太平洋だけの安全保障という場合もありましようし、またこちらの場合にしましても、大陸にある国が入るか、島だけの方の海の方にある国だけが入るかといういろいろの問題もあろうかと思います。そこで一口に太平洋安全保障と申しましても、内容は区々であろうと思います。必ずしも一定した概念がきまつてつてそれで行くんだということではない、ただ何らかの地域的な集団安全保障が必要であるということは確かだろうと思います。ただ先ほど申した通りに、日本としてはそれに入る資格ありやいなやという点ではまだ疑問があろうかと考えます。
  57. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 講和発効後のミツシヨンはどうなりますか。たとえばフイリピン・ミツシヨン、インド・ミツシヨン、あるいはソ連のミツシヨンのステータスはどういうふうになりましようか。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは講和條約が必ずしも発効しなくても、講和條約発効前でも、いずれは講和條約の批准はできるのだが、国会等の関係で通過が遅れるというような国との間には、條約発効をまたずして大使なり公使なりを交換する書類をとりかわしまして、そうして大使館なり公使館なりをまず設置するということはあり得るのでありまして、またこれは先例もありまして、イタリアが同様のことをいたしておつたこともあります。現在でも日本としてはそういうような話合いをして、かりに條約発効までに批准が済まない国に対しても、大公使を交換しようという話合いをいたしております。ソ連につきましては、これは何とも意思表示がありませんが、これは全体講和條約そのものを批准しようということは今のところないわけであります。というのは、調印しておりませんから、従つて平常状態の回復がちよつと遅れておりますから、大公使を先に派遣する話合いをしようという国には入つていないわけであります。そうしますと大分問題がかわつて来ます。元来ソ連代表部というのは、連合軍最高司令官に派遣されました対日理事会の代表者として来ておられるものであります。その対日理事会というものは、事実上講和発効と同時になくなつてしまうものと了解しております。正式の通告はまだありませんけれども、そういう場合にソ連代表部というステータスは当然なくなるものと考えております。そのときにどういうふうにいたしますか、この措置等はただいま慎重に研究いたしておりますが、ソ連の場合はしばらくおきまして、ほかの国、たとえばインドであるとか、ベルギーであるとか、オランダであるとか、いずれ條約は調印するのだという国に対しましては、それに先だつて大公使を派遣する、従つてここにおるミツシヨンも、大使なり公使なりの資格で依然としてとどまるということが当然予想されるわけであります。
  59. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 ただいまの説明によりますと……。
  60. 仲内憲治

    ○仲内委員長 松本君、時間の割当がなくなりましたから、簡單にひとり……。
  61. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 あと二、三分でやめます。  ソ連の場合ですが、ソ連の方から大、公使館設置の申出があつても、これは特殊の場合であるからというようなお考えのようであります。これは議論する時間がないそうでありますから、しばらくそのままにしておきますが、一点お伺いしたいことは、明示の講和ではなくて、黙示の講和なつた場合、このままステータス・クオーのままで推し進められた場合、国法学者の一説によりますと、歯舞、色丹島あたりの占領されておる所では、そのままステータス・クオーになつて、ソ連の領土になるという説がありますが、それに対して政府はどうお考えになりますか。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国際法等の書いたもの等を読みますと、むろんこの黙示といいますか、デフアクトの講和というものもあり得ると思います。その場合は、つまり平和條約は特別につくらないけれども、実際上の通商條約をつくるとか、その他の重要な條約をつくる、またそれに基いて代表者を派遣するというようなことがありましたときに、事実の講和が成立したものと認められると了解しております。そこでそういうことになる前に、われわれの方としては、歯舞、色丹の問題もありますし、あるいは抑留者の問題もありますし、そういう問題がうやむやになつてしまつた事実上の講和ということは、今のところ希望しておらないわけであります。従つて、そういう趣旨の通商條約等をまずあらかじめ締結して、事実上の講和に入るというような措置は、政府としてはとりかねると考えております。
  63. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それでは最後に一点だけ御質問したいのであります。国連加盟にいたしましても、すべて、今後日米関係を円満に持つて行かなければならぬということを私ども平素から考ておるのでありますが、このときにあたりまして、いよいよ講和発効と同時に、アメリカからはマーフイー大使が日本に二十八日就任することになつておるというニユースを私ども聞いております。しかもこのマーフイー大使の日本就任に関しましては、ずいぶん長い間いろいろとこの問題が取上げられまして、しかもこのマーフイーという人は、私どもの記憶によりますと、ルーズヴエルト大統領のパーソナル・レプレゼンタテイヴとして、北阿作戰のときにも非常に活躍したほどの大物であります。日本の場合、まだ二十八日にワシントンに大使を派遣する準備もできておらないようでありますが、こういつた段取り、準備というものも、どうも向うとうまく調子が合つていないような感じがするのであります。そればかりでなく、リツジウエイ司令官が出しました二回にわたるパンフレツトを読んでみましても、早くから、占領から独立国に駐留するところの軍隊の心構えというものに関しまして、いろいろと教育をやつております。にもかかわらず、日本の場合を考えてみますと、どうも新聞、ことに雑誌あたりを読んでみますと、進駐当時、いわゆる占領当時におけるところの米軍のエクスポジユアと申しますか、暴露記事みたいなものが氾濫いたしまして、いろいろと反米的な思想というものが沸き立つております。これに対しまして日本政府がほんとうにこういう新しい事態に備えるべく、国民に対するところの指導並びにその努力が非常に欠けておるように感ずるのでありますが、これに対して政府の見解を求めまして、私の質問を打切りたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず第一に、大使等の派遣でありますが、これは私の考えは間違つておるかもしれませんが、この大使、公使等については、まずアグレマンを求めるということが必要なことは御承知の通りであります。そこでアグレマンを求めることにつきましては、私個人の考えから申しますれば、独立しない前にそういうことをなるべくしないで、独立してからアグレマンを求める段取りにしたい――こういう気持も、そんなにこだわらなくていいとおつしやるかもしれません、そうしたら考え直しますが――と思つております。これはそういう事情の違いはほかの国も了解しておりますから、多少時日が前後することについては、その誤解はないと考えております。  それから最近の日本の暴露記事等の今のお話でありますが、これは私もまつたく御同感でありまして、はなはだおもしろくない方向であると考えますので、今後、松本君のような方と協力して、なるべくそういう方向に行かないように、またあんな妙なことでなく、今後の独立に処する道というようなことについて深く論議をし、深く研究をして行くという方向にぜひ持つて行きたいものと考えております。外務省としてはできるだけそういう方向で、求められさえすれば講師等も派遣してその国際情勢下の日本の置かれた立場等の説明に努めておりますが、まだ決して十分とは言えませんので、これについては御注意も願いますし、また御協力も得まして、できるだけ正しい方向にこれを発展させて行きたい、こう強く考えております。
  65. 仲内憲治

    ○仲内委員長 黒田寿男君。
  66. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は日本国際連合加盟し得るための要件について疑問点がありますので、それをお尋ねいたします。  第一に、国際連合は言うまでもなく、国をもつて構成されておるのでありますが、この国際連合構成しておる国、国際連合加盟を許される国は、独立国でなければならないのではなかろうか、こう私は考えます。ところが日本の場合は、平和條約が発効いたしまして、世界のある国々に対しましては独立国たる地位を回復いたしますけれども、ソ連等の有力な国に対しましては、依然として降伏関係にある。そういう国際的地位に依然として置かれるのであります。そのような、完全な独立国ではない、世界のある国国に対してのみ独立の地位を持つておる、こういう不完全な独立状態で、はたして国際連合加盟国としての要件を満たすことができるかどうか、私はそれに疑問を持つておるのであります。国際連合加盟するということは、私どもひとえに希望しておるのでありますが、しかしこのように不完全な独立状態をもつてして、はたして加盟資格があるものか、この点について疑問を持つておりますので、まず第一にこれについてお伺いいたします。
  67. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は、日本が独立国であるということ自体は、ソ連と平常関係を回復するかしないかということには関係ないと思います。独立国であることには間違いないのでありまして、ただまだ平和條約のできない国とは国交が回復できない、平常関係が回復できない。従つて技術的にいえば、戰争状態の継続とかいろいろいいますけれども、それも私ははなはだ疑問があると考えております。世の中には独立しましても承認をされないでおる国もずいぶんあるのであります。しかしながらそうかといつて、その場合に独立国でない、こうは私は言えないと思います。もつともこれは日本側の見解でありまして、国際連合の大多数の国がどう考えるか、これは私にはわかりませんけれども、独立国でないとは講和條約後は、常識的に言えないと考えております。
  68. 黒田寿男

    ○黒田委員 私には理解できない御答弁を承りました。なるほど平和條約の成立する国との間では、日本は独立国の地位を回復いたしましようし、また日本と交戰関係になかつた国に対しましては、もとよりそういう関係になつて行きますけれども、降伏関係にあつて、その状態から脱することができない、その関係の存続する限りは、日本がその国に対して、独立した関係にあると言えるでありましようか。この点はどうお考えになつているのですか。
  69. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろな事実りからも考えなければなりませんので、たとえば二国間において両方でもつて宣言して戰争した。しかし百年たつても戰争が終らないので、くたびれて戰争をやめてしまつた。どちらも戰争をやめるとはいわぬが、自然にやめてしまつた。そうすると、あなたの議論によれば、やはり両国の間に戦争状態が継続しておるのだといわなければならぬと思いますが、国際法上では、これはやはり戰争が終了した一つの形である、こういうふうに見ております。日本の場合におきましても、降伏條約に調印しましたのか六年余り前、そして戰鬪状態はそれで終了したわけであります。そして連合国と称するものの大多数の国が、日本平和條約を調印しまして、それが続々として批准をいたして来る。世界の大部分の国が日本と平常関係に入り、日本の独立を認めたという場合に、数箇国がいまだ調印しないからといつて日本の独立は、それらの国に対しては認められないのだということは、常識的に私はおかしいと思います。そしてなお実際上別にソ連、あるいはソ連以外の国でもそうでありますが、日本を占領することもありますまいし、また日本に対していろいろ指令を出すということも、事実上考えられないことであります。日本はそれらの国の属国でもありませんし、ただ平常関係がまだ設定されておらない、こういうだけのことと考えております。現にソ連もサンフランシスコには出席したのでありまして、ただ條約に意見が合わないで調印せずに帰つたということであり、日本との平和條約をつくり上げようという意思は、明らかに現われたのでありますから、実際上の條約ができていないというだけであります。そしてほとんど世界の大多数の国が、日本の独立を認めた場合に、日本は独立国でないのだという議論は成り立たないと考えます。
  70. 黒田寿男

    ○黒田委員 ソ連の関係につきまして、岡崎国務大臣は、極端な例を引用されました。五十年も百年もある一定の状態が続いた。その間に両方の国が、戰争状態の終了こそ宣言しなくても、事実上は戰争状態を脱した状態になれば、常識上戰争状態は終つたと見るべきである、そういう例を引用されましたが、私はその場合はそれでよろしいと思います。けれどもそういう場合と、現在の時期におけるソ連と日本との関係を同一のものとして解釈することは、私にはちよつと意外に考えられます。私は繰返して申しますように、日本国際連合加盟すべきであるという意見を持つておりますが、しかしソ連との関係等におきましては独立国でないというような状態では、加盟資格につき欠格條件がある。そのような難点が、そこに起つて来るのではなかろうかという心配をいたしますから、このことをお伺いしてみたのであります。岡崎国務大臣の御説明では、私は納得ができませんけれども、これ以上はこの点については質問を続けないことにいたします。私は疑問を持つておるということだけを申し上げておきたいと思います。  それからその次に国際連合日本加盟することになつて参りますと、この憲章に含まれた義務を受諾し、かつその義務を履行する能力と意思とがあると認められなければならぬ、そういうことになつておるのであります。けれどもどうでありましようか。日米安全保障條約というものができて、外国の軍隊が日本に駐屯しておりまして、そのことが国際連合措置と矛盾しないことになれば問題はありませんけれども、場合によると、あるいは矛盾するということが起るかもわかりません。これは仮定の問題でありますが、そういうことも考えられるのでありまして、外国の軍隊が日本に駐屯しておるというような状態であります場合に、はたして日本が憲章で定められました義務を履行するだけの能力と意思とがあると認められるかどうかという点について、疑問が起るのであります。たとえば国際連合が、第四十三條の特別協定加盟国と結びますような場合に、その加盟国といたしまして、日本のように兵力のない国は、便益、援助というものを提供しなければならぬと考えられるのでありますが、この便益には、通過の権利が含まれるということになつております。安全保障條約の第二條には、陸軍、空軍もしくは海軍の通過の権利を、アメリカの同意なくして第三国に許與しないということになつております。第三国と国際連合とは違うとは思いますけれども、とにかく、一方において、日本の国としては、通過の権利を国際連合軍に與えなければならないという義務が発生することになる。しかるに他面には、ある国の軍隊が日本に駐屯しておりまして、その他の国の軍隊の通過する権利は、日本は與えてはいけないというような制限を付せられている。こういうように外国の軍隊によりまして、日本が自由にふるまえないというような状態に置かれておるのであります。これは第三国であるから、国際連合軍のことではないといえば、そういうりくつも通るかもわかりませんけれども、しかし日本がある国の意思によりまして、日本の国をその他の国の軍隊が通過するということについて、條件を付せられてしまつておるというような状態にあるのでは、私は国際連合の義務を履行する能力と意思が日本にあるかどうかということについての、疑いを受けるようなことになりはしないか、こういう懸念を持つのであります。この点につきまして、安全保障條約第二條等とも関連させて御説明願いたいと思います。
  71. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外国の軍隊を国内に置いたから、国際連合の義務を完全に履行することができないかどうかという御質問に対しては、私は、イギリスにもアメリカの一部の軍隊がおるのでありまして、イギリス国際連合の義務を実行できないと考えている人は一人もいないと考えるわけでありますので、外国の軍隊が国内にいるということについて、これが国際連合加盟の故障になるとは、私は考えておりません。  それから安全保障條約第二條の問題については、もうすでに安全保障條約を締結しましたときに、アメリカ側からアチソン国務長官の名前において、「本長官は、平和條約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、また、日本の施設及び役務の使用に伴う費用が現在どおりに又は日本国と当該国際連合加盟国との間で別に合意されるとおりに負担されることを、貴国政府に代つて確認されれば幸であります。」向うから、すでに国際連合の軍隊を、日本に置くことを認めてくれれば幸いであるということをいつておるのであります。安全保障條約第二條の第三国云々の問題と、国際連合の軍隊との関係は、全然違うということは、これでも明らかであろうと思います。国際連合の軍隊の通過等を、日本が認めることが、安全保障條約の規定に反するとは、全然考えられないのであります。
  72. 黒田寿男

    ○黒田委員 今岡崎国務大臣は、第三国とは国際連合軍を含まないのだから、問題は起らない、こういうような御解釈のようでありますが、それはそのように承つておきます。それからアチソン並びに吉田総理の交換公文のことについては、実はあとで質問してみたいと思つておりましたが、今ちようど岡崎国務大臣はそれにお触れになりました。しかし、これについてはあとでお尋ねすることにいたします。  それからいま一つ伺いたいのは、加盟の條件としまして、平和愛好国でなければならないということになつております。日本は元来樞軸国の一つとして、第二次世界大戦を戰つた国でありますので、さなきだに平和愛好的な国ではないという誤解を受けるおそれがある国であります。よほど日本の平和主義を徹底させないと、このような條件に当てはまらないように解釈されるおそれがあるのであります。いわんや先ほども申しましたように、連合国に対しファツシヨの国、軍国主義の国、平和愛好の反対の国であるというように見られ、しかもその結果がまだついていないのです。これは前と同じような問題になりますけれども、たとえばソ連などとまだ平和條約が結ばれていないのであります。他の国なら別として、常任理事国、五大国の一つであるような国に対して、まだ平和條約が成立していないというような状態のもとで、国際連合加盟申請いたしますときに、平和愛好国たることについての疑問を提出されるおそれはないかという心配を持つのであります。條約ができておればよろしいのですが、條約ができておりませんから、そういう心配があるのですが、これについて政府は、私のような懸念を持つておいでにならぬでしようか、念のためにお尋ねしておきます。
  73. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常に多数の国と戰争行為をし、もしくは戰争状態にあつて、現に五十何箇国という国が平和会議に参集したのでありますから、その多数の国の間には、一、二意見の違う国があることは、これはやむを得ないことで、そのためにその国とは平和條約ができないという場合もあり得るわけであります。現にヴエルサイユの講和條約にしましても、その中の主要なる国としてアメリカ及び中華民国は、これに署名をいたさなかつたような事例もありますけれども、しかしながら連合国の多数がドイツと平和條約を結びますれば、ドイツは当然独立国として、また元の体制を捨てた新しい国として、世界の国際社会に受入れられたのであります。その結果また二年余りたちまして、アメリカも中華民国も別の平和條約を締結した、こういう経緯もあるわけであります。今度の場合におきましても、日本国連合国との平和條約の中には、「連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、」とあり、また「日本国としては、国際連合への加盟申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し、」云々ということの意思があつて連合国は、前項に掲げた日本国の意思を歓迎するので、よつて連合国及び日本国は、この平和條約を締結する」こういうことになつておりまして、しかもこの平和條約は、四十八箇国という多数の国によつて調印されたのでありますから、私は一、二の国が意見が合わなくても、世界の大多数の国がこういうふうに認めてくれている以上は、実際上ヴイトウの権利を行使するかどうか、これは別問題でありますが、日本としては、当然国際連合加盟する資格もあり、連合国もこれを大多数で認めている、こう考えざるを得ないのであります。
  74. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、日本がヴエルサイユ條約における中国と同じ立場なら、こういう質問はしなかつたのです。ヴエルサイユ條約における中国立場と、樞軸国の一つとして第二次世界大戦を戰うた日本立場とは、これは違うのであります。そういう日本が、すねに傷を持つている上に、常任理事国の一つに対して平和條約を締結しておりませんから、私の申しましたような問題が提起されるのではないか、そういうことが、日本の国連加盟を拒否する條件にされるのではないか、そういう懸念を持つのであります。私はそういう懸念を持つておりますが、岡崎国務大臣は、ただいまのような御意見ですから、私は、それはそれとしてただ承つておきます。  それから、日本国際連合加盟することにつきまして、憲章に含まれる義務を受諾し、かつその義務を履行する能力と意思とがあるということが、加盟の要件になるのであります。その義務はたくさんあると思いますけれども、少くとも第四十一條及び第四十二條の、非軍事的措置あるいは軍事的措置に、安全保障理事会の決議がなされた場合には、選択の自由がなくて、当然加盟国である限りは、その措置に協力しなければならぬ、そういうような義務が、最も大きな義務として課せられると考えます。その場合に、そのような措置への協力については、安全保障理事会が一定の決定をすることが前提條件になると思いますし、これが現在まではできていないと思いますけれども、かりにできたとしても、その次に第四十三條の特別協定に入るという順序になると思います。その特別協定日本が入る義務はどうしても負わなければなりません。ただ原案ができていないから、これをまだ問題にする時期になつていないというたけのことでありまして、抽象的、一般的にいえば、この特別協定をも、申出がある限り受けなければならない。ただし憲法上の手続によつて、批准しなければならぬということになつております。そこでこういう第四十一條及び第四十二條の措置をとるための特別協定の申出が日本に対してありましたときに、憲法上の手続に従つて、批准する、あるいは批准することを拒絶するという自由があるのでありましようか、どうでしようか。内容についてはいろいろと議論する余地があるかもしれませんが、とにかく特別協定の申出を受けた以上は、これを拒むことはできないのではなかろうかと思います。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  75. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず先ほどのお答えを補足しますが、黒田君は常任理事国の一つと條約ができていないから、国際連合に入る可能性が非常にむずかしいのじやないか、こうお話になりましたが、私はそれは條約ができている、できてないということは問題ではないと考えております。というのは、イタリアのごとくソ連が調印しまして、しかもその條約の中には調印国はイタリアの国際連合加入を支持すると書いてあるにもかかわらず、ソ連は拒否権を使つてイタリアの国際連合加入を拒否し続けておるのであります。従いましてソ連の考えからいいますと、おそらく條約に調印しようがしまいが、いやなものは拒否する、こういうようなことになるのじやないかと思います。従いまして條約ができていないということが特殊の理由にはならないと考えております。なお今御質問の点につきましては、私はこの憲章にうたつてありますのは、協定締結するための交渉をする義務を負つておるだけでありまして、この協定なるものは国際約束でありますからして、交渉ができない場合もありましようし、また交渉してできても国会承認を得られない場合もありましようし、それは特にこの協定をどうしてもつくり上げなければならぬのだという義務は負つていないと考えております。
  76. 黒田寿男

    ○黒田委員 その点は重大でありますから、なおもう少し質問してみたいと思います。解釈をはつきりさせさえすればよろしいのです。私自身が別に何らかの成心、一定の下心を持つて質問しているのではないのです。ただ疑問を疑問として提出しておるのであります。憲章の第二十五條によりますと、「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従つて受諾し且つ履行することに同意する。」ということになつておりまして、第四十一條及び第四十二條の決定が安全保障理事会においてなされました場合には、加盟国といたしましては、これに従う義務が私はあるのではなかろうかと思うのであります。自由だというのでなくてやはりこの決定には拘束力があるというように解釈すべきではなかろうかと考えます。ただ当事者はいずれも主権国でありますから、無理やりに一定の條件を押しつけるということはできませんでしよう。そこで協定をするということになつております。けれども、根本的にこれを拒否してしまうということができるのでありましようか、どうでありましようか。もしできるとしても、しなくても、ある国の国会がこれを承認しなかつたとか、批准しなかつたということになつて参りますれば、そういうときには新しい事態が発生する。その場合には国際連合から脱退するという問題が起る、そういうことになるのではないかと思います。これは私は重要な問題だと考えますので、お伺いしているのであります。根本的にこれを拒絶する自由がないのではないか、その自由を行使しようと思えば、脱退するという道を選ぶよりしかたがないのではないか、これは反面からいえば、加盟国である限りは――協定の内容についてはいろいろと交渉の余地があるといたしましても、とにかくある程度の援助及び便益を提供するという協定は、ある国が国際連合加盟国である以上は、これを締結するという義務があるのではなかろうかと私は考えるのです。この点をもう一度念のためにお聞かせ願いたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本としては、もうすでに現に、加盟してなくても国連軍に協力しようという意思を発表してこれを交換公文にまでいたしておるのでありまして、国連に協力したくないから、できるだけそういうことを拒否したいという考えは少しも日本政府は持つておりません。できるだけの協力を、加盟してなくても、しようというのでありますから、加盟すればますますできるだけの協力はいたすのであります。何でもかでも拒否したいから何か根拠はないかといつて探しておるようなことは決していたしておりません。そこで義務は、この第二十五條にありますように、安全保障理事会がきめましたことはできるだけ遵守するのでありますが、ただそれにはたとえば兵力の行使とか、いろいろ重要な問題がありますから、国際連合憲章の中でもすでに特別のとりきめを結んだ場合にそれが行われるということになつておるのであります。特別のとりきめはできる国もありましようし、国力その他によつてできない国もありましよう。できてもその範囲がいろいろ違いましよう。しかしわれわれもできる範囲ではそういうことをいたして協力をしよう、こう考えておるのであります。ただその場合、日本が兵力を持つていなければ、当然兵力を供出するということはできないわけであります。そのできる範囲内でやるのであつてできるだけやるつもりであります。ですから脱退とかなんとか、そういうことを考えるのではなくして、あらかじめ日本の国力に応じたできるだけのことをするという考え方で進んで行けば、先方でもそれ以上のことを要求したつてできないことでありますから、するはずもない。そこで義務履行もできるだけの範囲ではできる、こういう考えを持つております。
  78. 黒田寿男

    ○黒田委員 岡崎国務大臣の御答弁によりまして、政府の意思はよくわかるのであります。政府の意思はよくわかりますけれども、しかし私が疑問に思いました点はまだはつきりしていないと思います。私が質問いたしましたのは、その国においてできないことを、特別協定においてなおもこれをなすようにというような申出が、安全保障理事会からあるわけはないと思いますが、その国に相応した便益あるいは援助はこれを提供しなければならぬということになると思うのでありまして何らがの援助及び便益は国際連合加盟しておる以上は提供しなければならぬ、このことが、国際連合加盟しておるものがその義務を果すということになるのであつて、その能力及び意思がなければ、国際連合に入る資格がないということになると思うのであります。そこで私がお尋ねしておりますのは、日本日本なりの援助及び便益は、これはどうしても提供しなければならないのだ、全然拒むということは、国際連合加盟する以上は、できないのだ、この点をはつきりしていただければけつこうだと思うのでありまして、何だか先ほどの岡崎国務大臣の御説では、拒絶することもできるというように仰せられたと思います。私は政府が拒絶する意思があるというふうに疑つているわけではない、政府は進んで協力しておるのでありますから、そういう疑いを持つておるわけではありません。ただ理論としては拒絶することもできるというような御議論であると、私ども考えております解釈と違いますので、その点を、しつこいようでありますが、お尋ねしているのであります。やはり国際連合加盟している以上は、何らかの援助並びに便益は提供しなければならぬ、そのことは義務づけられておるのである、こう解釈しなければならぬと思いますが、念のためにもう一度お伺いしておきます。そうであるかどうかということだけ、簡單にお答えくださればよろしゆうございます。
  79. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはもう当然であります。
  80. 黒田寿男

    ○黒田委員 わかりました。そう初めからおつしやつていただけば、私はそうしつこくお尋ねしなかつたのであります。私もそういうように解釈しておるのであります。  そこで、そうであるとして、次に問題が起つて参りますのは、しからば国際連合構成しております各国と安全保障理事会との間に、この第四十三條の特別協定締結されているかどうかということであります。この問題になつて参りますと、現実には全然締結せられておる例はない、私はこういうことになつておると考えます。これはしかし私の勉強不足でそう思つておるのかもわかりませんので、お尋ねいたします。特別協定はできておるかどうか、私はできていないと思います。常任理事国の意見が十分に一致しないので、安全保障理事会の決定に基く特別協定締結は、まだできていないと思います。念のためにちよつとこの点をお伺いしておきます。これもあるかないか、簡單に御答弁願えばけつこうであります。
  81. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 できておりません。
  82. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、次に起ります問題は、そういう特別協定ができていない以上は、第四十二條による軍事的措置を現実にとるということは、少くとも第四十三條によつてはできないというように、私ども解釈しなければならないと思います。そうしますと、朝鮮事変のような場合は、第四十二條及び第四十二條に基いて国際連合軍が出動しておるのではないという解釈が、私はできると思います。それではほかにどういう根拠があるかといえば、私は、政府はほかの根拠を御提示になると思います。私もまた別個の議論をなすものがあるのではなかろうかと考えますけれども、少くとも現在朝鮮に出動しております国際連合軍は、第四十二條及び第四十三條に基いて出動しておるのではないということだけははつきりと言い得られると思うのでありますが、この点いかがでありますか。
  83. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第三十九條で勧告をいたして、それの結果であります。
  84. 黒田寿男

    ○黒田委員 第三十九條でとおつしやるのですか。(「勧告だよ」と呼ぶ者あり)しかし私はその点はちよつと理解できないと思うのですが……。
  85. 並木芳雄

    ○並木委員 黒田さん、そこでちよつと考えていてください。その間を利用してぼくは関連質問がある。
  86. 仲内憲治

    ○仲内委員長 黒田君の質問に関連して並木君。
  87. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣は今の問題で巷間にかなり誤解を與えておるようです。実は有力な與党の議員が私の近所に来ましてこういう演説をしておるのです。警察予備隊ならば朝鮮に派遣されないで済むけれども、軍隊を持つと朝鮮に派遣されるようになるだろう、この近所に改進党で再軍備論を唱えておる代議士がいるけれども、わが党が再軍備をしないといつておるのはこの理由だ、ということで演説をしておる。(「個人的な意見だよ」と呼ぶ者あり)むろん個人の意見だろうけれども、これは非常に……。
  88. 仲内憲治

    ○仲内委員長 簡潔に願います。
  89. 並木芳雄

    ○並木委員 選挙対策としてはこれはとんでもないことだ。これは実は外務委員です。名前を言つてもいいのですけれども、この間からそのことでわれわれが真剣にやつておるのに、大臣も繰返し繰返し御答弁通り、どんなことがあろうとも、勧告での場合であるから、これは出なくてもいい、出したくなければ出さない。それからまた特別協定であるならば、それに参加しても、軍隊の派遣あるいは警察予備隊の派遣というものは断ることができるのだ、こういう答弁ではつきりしておるのです。にもかかわらず、そう言つて国民に偽りの演説をするということは大問題だと思うのです。そこで警察予備隊であろうと軍隊であろうと、その間に何も関係がないということをもう一度はつきり言つていただきたい。それからどんなことがあつても、政府は従来の主張通り、特別協定に参加しても、軍隊の海外派遣は拒否するかどうか、必ず拒否するかどうか、それをはつきり言つてもらわないと、こういう誤解が解けないと思うのです。その点お尋ねいたします。
  90. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 現在の状況では勧告であることは間違いありません。そして勧告を受けて、派遣した国と派遣しない国があるのであります。それから日本の場合には、警察予備隊というものは、法令で国内の治安維持ということにきまつておりますから、これは外へ出ることはないのであります。そこで軍隊の場合とおつしやいますが、軍隊をつくるという場合は、まあ並木君のお考えはどうか知りませんが、一般には憲法を改正してつくるとい……。
  91. 並木芳雄

    ○並木委員 もちろんそうです。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 従つて憲法を改正して軍隊を持つということは、今の問題じやないのでありますが、その場合に、一体地域的な安全保障條約を結ぶかどうかというような問題もいろいろ出て来ます。それを今からこれはこうするのだというようなことは、私では答弁いたしかねるのであります。現在の状況としては、今は国内に警察予備隊がある。警察予備隊は国内の治安維持に当つておるものである。そうしてこれを海外へ派遣するということは考えられない。これは私は当然だと思います。しかし憲法を改正してどうするというような問題になつて来ますと、これはその改正の仕方にもよりましようし、どういうふうになるのか、将来のことでありまして、まだできるのかできないのかそれもわかりませんので、それまで予想して御答弁をすることは、私にはちよつとできかねるので、お許しを願いたいと思います。
  93. 並木芳雄

    ○並木委員 これは警察予備隊のことなので、江口さんが見えておりますからあとでお伺いしたいのですけれども、リツジウエイ司令官が当然これはもう軍隊に発展して行くべきものだと語つておられるのです。ですから私はどうしても連合国の方では、警察予備隊は軍隊の卵であるというふうに解釈しておると思うのです。ですから日本では国内の治安に当るといつていても、やはり連合国側で警察予備隊を見る場合に、軍隊の一種と見ているのじやないか。従つて今の国連の勧告、あるいは特別協定、こういうものができた場合に、日本として、政府としてもし派遣する意思が生じた場合には、警察予備隊といえども海外に派遣することはあり得るということになるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府は憲法及び法律等を忠実に守る義務を持つております。この警察予備隊をつくりました法規によりますと、国内の治安維持ということになつております。それ以外のことは何も書いてございませんから、政府としては国内の治安維持以外にこれを用いることはできないのであります。
  95. 仲内憲治

    ○仲内委員長 並木君、簡單に……。
  96. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣は、それでは一体いつごろ警察予備隊をリツジウエイ総司令官その他の、安全保障條約に予定せられておる陸軍というもの、地上部隊に発展せしめる意思であるか、この意思がないということは、政府は言えないのですから、警察予備隊をどのくらいの計画で陸軍あるいは地上部隊に発展させるか、これは現実の政治問題でございます。この点を御答弁をお願いして私の質問を終ります。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは国民多数の意思による以外に方法はないのであります。
  98. 仲内憲治

    ○仲内委員長 黒田君に申し上げますが、岡崎国務大臣は初めから申し上げたように、十二時過ぎには他用で出なければならぬいろいろな関係から、ほかに林さんも、並木さんも質問順位になつておりまして、いずれにしても終えませんから、大臣に対する質問は次会に讓りたいと思います。ただ林君から特別何か問題があるそうですから、五分間に限つて……。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 おれだけ五分間というのは不公平ですよ。
  100. 仲内憲治

    ○仲内委員長 特別にあれしたのですから、あとはこの次に……。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 恩に着せることはない。なるべく五分で済ますつもりですが、少し延びるかもしれない。というのは対日理事会と極東委員会の問題、それからソ連の代表部のサンフランシスコ條約後の日本における地位であります。この問題は非常に重要だと思うのです。きようもおそらく対日理事会ではこのことが国際的にも論議されておると思いますので、私は日本政府の見解も明らかにしておかなければならないと思つて実は質問するわけであります。  実はモスクワ協定をよく検討し、また岡崎国務大臣が私にくれましたこの資料も、先ほどからいろいろ検討してみたのでありますが、モスクワ協定によりますと、「極東委員会の政策決定の執行に関し、理事会の一委員が最高司令官と意見一致せざるときは、最高司令官は極東委員会に於て意見一致が達成せらるるまで右問題に関する命令の発出を差控ふべし。」とあるのであります。政府は、ポツダム宣言によつて日本に平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立されるかどうかという認定は、日本アメリカの見解だけで決定し得るようなことを言われ、また最高司令官の指示だけで可能なようなことを言つておりますが、しかし現実の問題として、全面講和で、ソ同盟をも含めての同意がなき限り、完全な日本の国の国際的独立ということはあり得ないということは、この極東委員会についての決定によつても明らかだと思います。従つてソ連がサンフランシスコ條約に反対しておる限り、対日理事会を解消するかどうか、それから日本の国際的な諸任務が達成されたかどうかということは、当然極東委員会によつて決定されるべきものだと私は思うのであります。従つてサンフランシスコ講和條約が発効したとしても、日本アメリカとの考えだけで対日理事会の解消、あるいは極東委員会の解消ということは、当然これはあり得ないと思います。このサンフランシスコ條約発効後の対日理事会並びに極東委員会法律的な立場というものがどうなるかということを、岡崎国務大臣と西村條約局長と、二人からよく聞いておきたいと思うのであります。岡崎国務大臣が私にくれました一九五二年の二月二十五日の資料によりますと、これはシーボルド氏が出した、各国のミツシヨンの今まで司令部から與えられていた便益、あるいはオフイスだとかあるいはハウスだとか、そういうものに対する処置が中心のようであります。これは連合国最高司令官が対日理事会に諮問をし、極東委員会の決定に基いて、日本が完全に各戰勝国の間から独立を認められたということにはこれではならないと思う、これをしてあなたが完全に、連合国各国がサンフランシスコ條約発効後は、日本が完全に独立したことを認めるという証拠にしようとしても、このシーボルド氏のオフイス、ハウスの解除の問題だけでは、やはり国際的にはそういう権威をこれによつては認められないというように考えるのであります。私たちは全面講和によつてのみ初めて達成されるという見解を持つておるのでありますが、その見解はどうか。  それからもう一つは、これは西村條約局長も認めておるところでありますが、日本とソ同盟との間が戰勝国と降伏国の関係にある限り、その降伏文書あるいはポツダム宣言の履行を完全に達成するための監督機関、あるいはこれの監視機関というような足がかりというものは、これは当然日本の国に持ち得るべきものであつてこれが日本アメリカとの間の講和條約によつて解消するということは暴論だと私は思います。この三つの点、一つはサンフランシスコ講和條約発効後の対日理事会並びに極東委員会法律的な地位立場、これはどうか。第二は岡崎国務大臣が私によこしたこの資料によつては、対日理事会に諮問して、極東委員会の政策決定に基いて連合国最高司令官が、日本の国にポツダム宣言の第十二項、平和的傾向を有しかつ責任ある政府が樹立されたという認定とするには、これは私は不適当であると考える。この点が第二点。第三としては、ソ連代表部が、やはり戰勝国と降伏国という関係がある限り、将来の日本の平和的な発展に寄與するためにも(「逆だ」と呼ぶ者あり)当然足がかりを日本の国に持ち得るということは、これは当然であります。マーフイー駐日大使の昨日の夕刊の話を見ましても、この点について大分皮肉つたことを言つているようでありますが、しかし法律的に当然解消するとはさすが彼も言い切れない。一片の良心がある限りそういうことは言い得ないのですが、これを私もよく検討した結果、そういうことはよう言つておらない。この三つの点について、非常に重要な問題でありますから、この際はつきり政府責任のある答弁を聞いておきたいと思うのであります。
  102. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 はなはだ残念でありますが、実は私は放送をする約束をしておりまして、その時間の関係できようは急ぐのであります。またあらためて参ります。  今お話の点は、第一には極東委員会とか対日理事会は日本とは直接関係がないのであります。これは諮問機関なりあるいは政策決定機関なのであります。日本と直接関係があるのは連合国を代表する最高司令官であります。そこで極東委員会とか対日理事会とかいうものは、われわれは直接関係がないのみならず、そこに委員も何も出しておりません。従つてこれを廃止するかしないかは、連合国側の決定にまつのでありまして、その決定に林君がもし不服であるならば、連合国へお申出になるよりしかたがない。われわれはその決定があつたときにその決定に従うということになるのであります。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 連合国の決定があつたかどうか聞いているのです。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 連合国の決定はまだありませんが、そのうちあるだろうと思います。  それから先ほど差上げた書類は、私が最高司令官はこう言つているということを言つたときに、その証拠をよこせと言うから上げたのであります。最高司令官、すなわちシーボルドはその外交局長であります。われわれの言つている日本の独立とか平和回復とかということは、平和條約、世界の四十八箇国が調印してきたこれによつてであつて、最高司令官も言つているという、その証拠を上げただけであります。(林(百)委員「これはシーボルド議長だ。」と呼ぶ)シーボルド議長はすなわち最高司令官の命を受けてやつたのです。(林(百)委員「そうは書いてない。」と呼ぶ)そうは書いてなくても何でもあたりまえであります。  他のことは西村條約局長からお答えいたします。
  105. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点につきましては従来たびたび私から説明しておりますが、また今後国務大臣から御答弁する機会があることと思いますから、私からの答弁林委員の御好意によつて御寛恕願いたいと思います。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたに條約の解釈を聞いているわけです。あなたは條約局長で、日本の国では條約の神様だといわれておりますから、参考までにあなたに聞きたいわけです。そこでモスクワ会議の決定によりますと、対日理事会の一委員が最高司令官と意見の一致を見ない場合には、極東委員会意見の一致があるまでは、右問題に関する最高司令官の命令の発出を差控えるべし、とあるのです。それから極東委員会の決定の方法は御承知の通りにこの理事国の一致を含めての多数決でなければいけない。「委員会は全会一致に満たざる投票に依り行動を執ることを得但し右行動は次の四国即ち合衆国、聯合王国、ソヴイエト社会主義共和国聯邦及び中華民国の代表者を含む一切の代表者の少くとも過半数の同意を得べきものとす。」四箇国はこれは当然全会一致を見なければならないということになつておるのです。そうすると、やはり日本の国が完全にポツダム宣言の諸任務を達成したかどうか、従つて完全に占領が解除されるかどうか、対日理事会が解消されるかどうかということの最終決定権は、極東委員会にあるとわれわれは解釈せざるを得ないのであります。これは單に連合国最高司令官の命令だけでは、この問題は決定し得ないと思う。これがモスクワ協定の精神だと思うので、それをあなたに聞いているわけです。このモスクワ協定はどういう解釈ができるかという法律的な解釈をあなたに聞いておる。政治的な問題は別として、あなたに聞くよりほか日本で條約のことを聞く人はないわけです。だから聞いているわけです。どうなのです。はつきり答弁してください。
  107. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 問題が非常に具体的ですから、きわめて答弁は容易でございます。モスクワ協定は連合主要四箇国間の協定でございます。林委員の問題にされる点は、同協定の條項の解釈の問題でございます。言いかえれば、純粋に主要四連合国間の問題でございまして、先刻国務大臣が答弁されましたように、これは四連合国政府が解釈を下す立場にありまして、日本政府としてはその解釈を下すべき法的な地位にない次第であります。條約局長として意見を述べることを差控えます。解釈を述べる権限を條約局長は持たないのであります。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 実は私がお聞きするのは、本日の正午のニユースで、対日理事会でポンド議長代理は、この対日理事会の任務の終了を宣言した。それに対してソ連代表部は反対し、しかも日本が依然として被占領国の地位にあるのは、日米の間に軍事的なとりきめをしたからだ、この責任は一にアメリカ側にあるというような発言があつたということが放送された。この問題は、講和條約が締結されたとしても、日本の国に残された重要な問題であります。従つてわれわれとしてもこの問題については、できるだけ真剣に検討せざるを得ないのでありまして、従つて條文の解釈ではどうなるかということを私は聞いておるのであります。これは條文で明らかなごとく、理事会の一委員と最高司令官との意見が一致しない場合には、当然極東委員会に持ち込まれる。極東委員会は少くとも四国の一致をまつての多数決によつて決定されるということになれば、ソ同盟がこれに拒否権を行使するならば、そうした日本アメリカとの見解だけをそのまま押しつけるわけに行かないとわれわれは解釈せざるを得ないのであります。だから事実上はどうなるかこうなるかという問題は別として、法律的にはどうなるかということをお聞きしておる。もし答弁がむずかしければ、事実上はどうなるかということのあなたの意見を聞いておきたいわけです。  それからもう一つは、そうするとあなたたちはよくポツダムの宣言のこの第十二項について、平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立された場合、連合国の占領軍はただちに日本国から撤収せられるべし、この解釈を岡崎国務大臣はよく言つておる。もうわれわれはポツダム宣言の第十二項は十分達成されたと考えるということをあなた方は言つておる。あなた方は自分の都合のいいときはかつてに解釈して、都合が悪くなると解釈する権限がないと言つて逃げることは、これは卑怯だと思う。これはやはり筋は筋で立てておく、事実は事実でこうだ、そういう困難な中で日本はどうして国際的な親善関係と平和の道を切り開いて行くかということを考えざるを得ないのでありますから、條約局長は非常に苦しいかもしれません、同情に値するところでありますけれども、やはりこのモスクワ協定の解釈、それから事実上はどうなるかという問題を、重要な問題でありますから、誠意をもつて答弁していただきたい、かように思うわけであります。
  109. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 従来たびたび御説明申し上げましたように、日本における占領の管理が終了することは、平和條約の発効の当然の結果でございます。この点はたびたび御酷申し上げた通りであります。今私が條約局長として答弁する権限を持たないと申しましたのは、四箇国間の協定であるモスクワ協定の一條項の意義を問われたからであります。これは純粋に連合国間の問題でございまして、もし四箇国間に協定があれば、平和條締結前といえども日本における占領管理を終了することができる次第であります。私が申しましたのは、平和條約の発効によつて日本連合国との従前の関係を規律する根拠なつた諸種の協定平和條約にとつてかわられる、こういうことになります。その平和條約に明らかにされておるように、平和條約の発効のときにおいて戰争状態は終了するといい、また日本にいる連合国軍は九十日以内に撤退しなければならぬといい、また第一條の(b)項におきまして、「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」という、三つの方法によつて明白に日本における占領管理という事態は終了するということになつております。日本政府はその見解に立つて処置をしておる次第であります。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと先ほど声が低くて重要な点が明確でなかつたのでありますが、そうすると、ポツダム宣言あるいは降伏條項等はサンフランシスコ会議の條約でとつてかわられたというわけですか。そうすると、そういうポツダム宣言あるいは降伏條項のごとく、国際的にすべてが大国一致の原則で貫かれ、すべてが少くとも四大国の一致を含めての――かりに多数決の場合でも、四大国の一致を含めての多数決で決定されるべきことが明記されている問題が、日本アメリカ――あるいはイギリスを含めてもけつこうでしようが、ソ同盟あるいは中国を除いてそういう問題が――いわゆる單独講和という名前でもけつこうですが、そういうところだけで決定し得るということは、どこにその根拠があるのでしようか。私はそれがどうしてもわからない。どうしても全面講和によつて、ソ同盟も中国も含めた四大国の一致によつてその結論を出さない限り、これは日本アメリカの希望ではあつても、国際的には決して効力を生じない。要するにポツダム宣言、降伏條項の完全なる国際的な解消、日本のそれらの任務の達成ということが、国際的に確認されるわけにはどうしても行かない。もしあなたがサンフランシスコ條約によつてそれらの諸とりきめがとつてかわられたというなら、根拠がどこにあるのか、示していただきたい。
  111. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は先刻あげました平和條約の三個の條項であります。林委員が問題にされている点は、四大国一致の原則のもとに作成されているモスクワ協定が、平和條約発効後いかなる運命をたどるかという問題でございます。その点は、先刻申しますように純粋に四箇国間の問題なのであります。その四箇国の間にソ連と他の諸国との間に見解の相違があるであろうということは、今日までわれわれも予想しておりましたし、おそらく平和條約発効後におきましては、ある時期においてそれが明確になつて来ましよう。しかしその点は日本の関與するところではなくて、その問題は純粋に四箇国間においておそらく討議を続けられる問題でありましよう。日本といたしましては、平和條約によつて連合軍の対日占領管理は終了すると考えておるわけであります。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 だからこの問題は、非常にかつてな解釈で、日本アメリカとだけでポツダム宣言や降伏條項全部を解消することのできる権限を持つというようなことは、西村條約局長もお立場とはいえ、非常に苦しい答弁をされている。これは国際的な諸関係を調べてみれば、すべてが少くとも四大国が一致のもとに、かつての敵対国との戰争の終結をするということは、もう何回かの国際的な会議で決定され、モスクワ協定にも明記され、ポツダム宣言にも明記されておる。それを日本アメリカとの希望だけで、このサンフランシスコ條約の第六條だけで、全部解消したということは、乱暴もはなはだしいと思う。しかしこの点については、今後われわれはもつと緻密な論法によつて、ひとつ西村條約局長とはつきり対決したいと思いますから、きようはこれでやめます。  もう一つ最後に石原次官――石原次官がいなければだれでもいいのですが、伺いたい。五月一日の北京のメーデーには、もうそろそろ船に乗らなければどうにも北京に行けないという……。(「これと関係ないじやないか」と呼ぶ者あり)国際連合加盟する件について、日本地位を高揚する問題で重要な問題です。ことに労働者の者たちも、みなその点で熱心に考えておるし、昨日は横浜で北京のメーデーに行きたいという労働者が集まりまして、非常に重大な関心を持つておるわけです。こういうことを通じて実際は全面講和だとか、日本の占領状態の終結の問題も進められるので、ただアメリカとあなた方が握手しただけで、すべてオーケーというわけには行かない。そういう意味で、われわれもあなた方も心から望んでいる全面講和、あるいは日本が国際的にだれが見ても完全に独立したという形にするためには、モスクワ経済会議にも代表を派遣する、北京のメーデーにも、招請状が来ているのでありますから、ここへわれわれの代表を送つて、われわれが参加するということで、事実上の講和関係を広げて行くというところに、われわれの希望する日本の国際的な完全な独立ができ得ると思う。りくつの上から行きましても、どうしてもメーデーの旅券というものは出さざるを得ないのであります。生命の不安だとかなんとかいうことはあり得ない、現にそういう理由でモスクワ経済会議に旅券を出さなかつたのでありますが、高良さんは今現にスターリングラードかどこかを国賓として視察しておる。終戰後日本が国賓として取扱われたのは初めてです。(「抑留邦人もそうか」と呼ぶ者あり)抑留邦人のごときはだれもいない。北京のメーデーも国賓として待遇される。これこそほんとうに日本の国威を国際的に高めることだ。こんなに日本の国威を国際的に高揚できる機会は絶対にないと思う。しかも高良さんはモスクワに行つてよかつたと言つている。かりにイギリスは国連軍の一環として朝鮮では中共と対決しているにもかかわらず、商業上の取引では、一千万ポンド以上の取引をし、しかも今通商代表は北京に行つて、通商の話を進めている、これが外交であり、実際の政治であると私は思う。あなた方のやる政治は、女学生の恋愛みたいに、アメリカならアメリカばかりで、そのほかのものはないようなことを言つている。これは私は非常に遺憾だ。ここには大臣もいないし、事務当局の方ですから、政治論を言つてもどうかしれませんが、しかし外務省の方たちは、そういう大きな外交の責任を負つているのだから、ぜひ旅券を出すように考慮してもらいたい。
  113. 仲内憲治

    ○仲内委員長 簡單に願います。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 現にきのうときようの朝日新聞の投書を見ますと、平和運動や全面講和運動は赤の手先だという講演を、堂々と外務省の役人がやつている。これは明らかに公務員法違反です。外務省の役人だということをかさに着て、吉田内閣の言うことをそのまま講演している、こんなことはあなた方は公僕として嚴に慎まなければならぬことです。共産党の方のことをちよつと言えば、みんな首にしておいてそうしてソ連の悪口を言う者はどんどん地位が上つて月給が上つて行く。そんなことは日本の国民はあなた方にまかせておりません。こんなことは不届きだ。だから事務当局として、事務的な観点からいつて、北京のメーデーに旅券を出さないわけに行かないと私は考えるのでありますが、その点をひとつ明確にしておいてもらいたい。  それからもう一つ委員長にも注文があるのであります。私はこの前特番局の吉橋次長に細菌戰に関する石井、北野、若松のこの三人の人たちの現在の職務、それから就職している会社の状況、著述の内容、資料一切を当外務委員会出してもらいたいということを、再三お願いしてあるのですが、今もつて何らの音さたがない。戰犯の問題だとか、反共の問題なんかについては、全然故意に顔を向うに向けてやらせておいて、そうして少しでも中国、ソビエトの友好関係の問題を持ち出しますと、猛然としてブルドツグのごとく食いかかつて来るというのが、今の外務省や特審局の連中のやり方だと思う。それは慎んでもらいたい。それでなかつたらいつまでたつて日本は国際的な完全な独立国になれない。政治的な立場は別としても、公平にやつてもらいたい。従つて委員長にはぜひ特審局に外務委員会で要求した石井、北野、若松に関する資料を、至急次回の外務委員会までに提出するよう言つていただくことが一つと、外務当局には北京のメーデーに招待された三十人、四十人の人が日本の代表として中国に行つて、国賓の待遇を受けるということは、実に終戰後、日本の国威を高めること、これ以上のことはないと思う。あなた方はよくアメリカに行くけれどもアメリカに行つても国賓の待遇を決して受けていないことは明らかだ。われわれは、国際的に国賓の待遇を受けるというならば、喜んで代表を出して、日本地位を高めることに努力すべきである。そういう点で事務的な観点からいつて一体北京のメーデ―の旅券をどうしてくれるのか、出さないなら、これは出さないなりに鳴かせてみせるほととぎすで、何とかわれわれも覚悟をきめなければならない。日本の外交問題は外務省なんかを当てにしない、国民の外交を展開しなければならぬ、そういう決意を労働者諸君にしている。もうあなた方なんか問題にしない。だからここではつきりしてもらいたい。出さなければ出さないでけつこうだ。歯にきぬを着せたような答弁は、われわれはほしくはない、はつきり答弁してもらいたい。
  115. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 ただいま林委員からのお尋ねでございますが、林委員の御趣旨に従いまして、私は事務当局でございますから、政治論を抜きにいたしまして、事務的な明確な答弁を申し上げます。  それは中共地区にもやはりソ連と同様多数の旧軍人及び文人が抑留されております。それからなお東支那海におきましても漁船の拿捕がひんぴんと行われております。従いまして中共地区もソ連と同様、日本人の生命、身体、財産の保護について、安心のできない地域であるというふうに認められますので、ソ連行きの旅券の下付をいたさなかつたと同様の理由をもちまして中共行きに対しましても、旅券は下付しない。こういう方針になつております。
  116. 仲内憲治

    ○仲内委員長 資料の方は催促しておきますから……。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは結論に行きます。あなたに申しますが、何でもかんでも中国、ソビエトは抑留者々々々と、もう日本の外務省はこれよりほか能がない。それでは何人抑留者がいるのか、あなた方だつていないのを知つているじやないか、外務省が一番よく知つているはずだ。それを実際ないものをあるがごとくにして、ただこれによりすがつて日本の外交関係を左右しようとすることは、非常に危険だと思う。そういう無実なことで日本の大きな外交方針をとざしておるということは、抑留問題は日本の国の前途に対して重大な支障を来す問題になると思う。あなた方はこれ以上われわれが納得する理由を、何らわれわれに示しておらない。現に抑留者があるから生命、身体に不安があると言つても、高良さんの例がはつきり示している。われわれがもし中国、ソビエトに行つてわれわれの生命、身体の安全が保障できるということを、十分あなた方に納得できる資料を出したらどうしますか、その点が一つと、それから中共に抑留者がいるというなら、次回の外務委員会にその抑留者の数と姓名、日本の外務省が持つている限りの資料をはつきり出してもらいたい、この二つを私は要求しておきます。
  118. 仲内憲治

    ○仲内委員長 並木君。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 江口さんは警察予備隊の募集で非常にお忙しいところを朝の十時からおいでいただいておりますが、特にきようは私は注文をしておきます。さつき岡崎国務大臣の答弁によつて政府がなまぬるい態度をとつているので、今度の予備隊の募集方法あるいはその現況などについてうまく行つていないのじやないかと思う。私はどうしてもやはり警察予備隊というものはリツジウエイ総司令官の言葉ではありませんけれども、なるべく早く軍隊というものにして、自衛軍に切りかえて行かなければならぬという見地からお尋ねするのです。予備隊の応募の現況はどういうふうになつておりますか。志願者が非常に少くて不振を伝えられておりますけれども、その状況、不振の原因など、どう考えておられるか。どうしても集まらなかつた場合は、その対策をどういうふうにされるつもりであるか、まずそれを伺いたいと思います。
  120. 江口見登留

    ○江口政府委員 時間の関係上簡單に御説明申し上げます。ただいま警察予備隊におきまして幹部及び一般隊員の募集をいたしております。幹部の募集は採用者約二千名に対しまして、四月二十一日現在で九千二百名の志願者があります。この方は非常に順調であります。隊員の募集は採用者三万二千五百名に対しまして、四月二十一日現在で志願者は約三万五千九百名であります。毎日の志願者数はおおむね三千五百名でありますので、締切日の四月末までには四万名以上の志願者を期待し得るものと考えております。今回の募集は種々の事情で周知徹底が遅れまして、実際の募集の開始は一週間くらい遅れて地方においては発足したものと、かように考えられますので、出足ははなはだおもしろくなかつたのでありますが、最近はこの徹底によりまして、だんだんしり上りの状況になつております。その点から申しますと、去年の募集の数日後におけるしり上りの状況から比べましても、ことしの方がむしろいいくらいでありまして、その状況から申しますと、それほど不振だとも実は考えていないのでございます。従いまして三万二千五百名の採用は大体十分になし得るものと考えております。万一今のお尋ねのように、三万二千五百名の採用が不可能でありまする際には、この秋隊員が交代いたします補充の際に、その足りなかつた分を補充するという方策も一つあるのではないかと考えて、ただいま研究いたしておる次第でございます。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 今度募集する者の配備の計画、それからいわゆる士官学校とかりに称せられているものの構想、それから今度募集する者の給與その他に対する條件と従来の條件との違いのおもなもの、それについてお尋ねしてみたいと思います。
  122. 江口見登留

    ○江口政府委員 最後の点からお答えいたします。待遇の点でありますが、一昨年募集いたしました際には、六万円の特別退職金を出すということになつておりました。しかし今回はその特別退職金は出さないで、二年を無事に勤務いたしました者には特別退職金ではない、最終俸給日額の百日分に相当する――約二万円になろうかと思いますが、その程度の退職金を支給する。そのほかに勤務成績の優良な者につきましては、従前はあまり行つておりませんでした特別昇級制度をもう少し広げて、今後の入隊する隊員にはそういう特典を與えようではないか、かように考えておるのであります。それから従前にはなかつた待遇でありますが、年二十四日の有給休暇がございますが、この休暇によつて帰省する者に対しまして、片道百キロ以上の者には一年一回つまり二年ですから二回、汽車賃を支給して帰省させるという特別の待遇を考えております。  それから学校の問題でありますが、警察予備隊の幹部警察官につきましては、今までの間は従来の公務員の経歴を有する者とか、あるいは旧正規将校であるとか、あるいは特別の技術を持つておる者の中から逐次充員いたして参りまして、現在五千人ほどおるのでありますが、将来は予備隊自身において将来幹部になるべき者を養成いたしたいと考えまして、ただいまお話のありました幹部養成学校の構想を練つておるのでございます。大体の構想を申しますと、予備隊の幹部警察官になろうとすることを志願する新制高校卒業程度の学力を有する、つまり二十歳前後の発刺とした一般青年並びにすでに隊にありましてほぼ同様の條件を有しまする者の中から競争試験をもつて選抜した者に対しまして、その数は一箇年三百ないし五百と考えておりますが、それを四年間教育いたしまして初級幹部として勤務させるようにいたしたい、かように考えております。  それから三万五千増員いたしました際の配置の問題でありますが、現在の予備隊は御承知のように四つの管区と管理補給諸部隊、学校とからなつております。この管区隊と管理補給諸部隊との均衡が少しおもしろくありませんので、むしろ重点を管理補給諸部隊の方に置いて、その方の人員を少しふやす必要があるのではないか。それからただいま申しましたような学校の問題におきましても、これは十分拡充徹底して行きたい、かように考えますので、学校の方の充員も相当広げて行かなければならぬ、かように考えております。その四つの管区隊のほかに、方面総監部というものを設けまして、方面総監部直轄の部隊を新設し、その方面総監部の直轄部隊とその管下に入る管区部隊を統一しておくような体制に持つて行く方が、最も有効に出動の場合に予備隊を使用することができるのではないかと考えまして、そういう方面の充員をするために三万五千名の増員を計画いたしておる次第でございます。
  123. 並木芳雄

    ○並木委員 そういう点についてのつつ込んだ質問応答はまた後日に讓つて質問だけ簡單に続けて行きます。  装備の点でございますが、装備の充実計画についてお尋ねしでおきたい。今までアメリカから借りておつた装備を日本独自の装備に切りかえる計画はないかどうか。もし引続きアメリカから貸與を受けるならば、今度ははつきり協定を結んで、費用などの点もとりきめるべきものであると思うのです。そういたしませんと、いつまでも日陰者のような予備隊で終始しなければなりませんが、その辺のところはどうなつておりますか。
  124. 江口見登留

    ○江口政府委員 現在の予備隊の武器は米軍から借りておるのであります。これが講和條約の発効後どういたしますかという問題につきましては、ただいま研究中でございます。われわれといたしましても、当初は明確な協定みたいなものをつくらなければならないかと、かように考えておりましたが、最近に至りまして、日本には軍隊がない、軍隊のない国にアメリカの武器を正式に貸與することはできないというようなアメリカ側の国内法上の問題があるということがわかつて参りました。それではどういう方法で今後米軍の武器を借りて行くかということにつきまして、目下研究いたしておる次第でございます。日本側自体として武器を生産するとか、あるいは正式にどこかから買うというような問題は、日本の財政ないし経済事情とにらみ合せて今後研究して行くべき問題だと考えております。
  125. 並木芳雄

    ○並木委員 それは新しい事態でその点は非常に重要な点だと思う。軍隊ならばつまり武器貸與の方法があるという意味でございますね。
  126. 江口見登留

    ○江口政府委員 お尋ねの通り軍隊でございませんので、正式なアメリカからの武器貸與というものは、国内法上アメリカ側に難色があるというふうに聞いております。
  127. 並木芳雄

    ○並木委員 名称を今度保安隊にかえるのはいつから実施いたしますか。そうしてこれはむろん自衛力漸増の線に沿つているものと思うのですけれども、特に国内治安のためならば、名称をかえなくてもいいように思うのです。これをかえることはつまり自衛力漸増のためであろうと思う。従つてそれならば、私どもは来年度も逐次警察予備隊というものを増強して行くべきものであると思います。このことはやはりリツジウエイ大将の予備隊を陸軍に発展さすべきものであるという線に沿つて行くべきものであると思うのですが、その辺の計画はどうなつておりますか。
  128. 江口見登留

    ○江口政府委員 警察予備隊を近く保安隊というような名称に切りかえたいというふうに考えておりますが、これは従前警察予備隊と申しておりましたために、警視庁の予備隊と間違えられた事例をしばしばございまし、また海上保安庁と一緒になりまして、新しい海上保安庁関係の警備隊というものを吸収することになりますので、この際保安隊というような名称にいたした方が都合がよい、このように考えておるのであります。この警察予備隊を保安隊に切りかえます時期は、この十月従来の警察予備隊員の任期の切れますときにいたしたいと思つております。但し保安庁は七月から発足いたし、その中に予備隊と警備隊を吸収するというかつこうで進みたいと思います。今年度十一万に増員する以外の計画はただいまのところございませんし、これを保安隊以外の何かにかえて行こうという構想は、政府は目下のところ持つておりません。
  129. 並木芳雄

    ○並木委員 さつきの点でちよつと聞いておきたいのですが、そうすると予備隊に貸與される装備というものは、大体国内の工場や何かで製造されるようになる予定ですか。そうすれば、日米経済協力の線とか、今度賠償工場を興して、日本で純軍需品あるいは武器というものを製造する構想と一致して来るのですけれども、大体そういうふうになつて行きますかどうか。
  130. 江口見登留

    ○江口政府委員 当分の間日本自体で、こういう高性能武器を製造することは困難かと考えておりますので、時期はいつとお答え申し上げかねますが、ここ当分の間は、あるいは数年間は、やはり現在の米軍の武器を、先ほど申しましたような適当な方法を講じて、使用させてもらうという方向で進みたいと考えておりますし、その後の問題は、いろいろな事情とにらみ合わせて研究しなければならぬ問題だ、かように考えております。
  131. 仲内憲治

    ○仲内委員長 それでは本日の質疑はこの程度にとどめまして、次会は来る二十六日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十二分散会