○林(百)
委員 時間もありませんからこの問題をもう少し深く入りたいと思います。この問題については先般来
黒田委員も執拗に質問しているのでありますが、先ほどの
岡崎国務大臣の答弁によりましても、第七十七條のb項に基く敵国から分離される地域であ
つたものが、潜在的な主権だけでもとりもどしたことは、自分の手柄だというような言い方については、われわれは唖然とせざるを得ないのであります。一体敵国から分離さけなければならないというとりきめは、どこで国際的にされたのでしよう。ま
つたく
アメリカの一方的な
考え方だけだ。分離されること自体を防ぐことが、
日本の
政府の責任ある地位の人々のなすべきことだ。それができなか
つた、ただ潜在的な主権をとりもどしただけが手柄ではないかということは、これは三歳の章十をだますこともできないことだと思うのであります。しかもあなたの言う潜在的な主権というのは一体実質的には何なのでしよう、何
一つないじやないですか。すでにあそこには立法院、行政院、
裁判所ができて、その最高責任者は
アメリカの司政官だ。あそこには
アメリカの恒久的な軍事基地がつくられており、原爆の基地としては最も優秀な條件がある。もうハワイよりはむしろ沖繩の方を重要視しなければならないということを、公然と
アメリカの軍の首脳部が表明しているじやないですか。一体ここで
岡崎さんは何の手柄をしたのでしよう。私はここでもう少しこの問題をあなたに反省していただきたいと思うのであります。
ソ連の拒否権の問題を申しますと、イタリアのときも、
ソ連が拒否権を行使することによ
つて、イタリアが国連に
加盟できなか
つたと誇らしやかにあなたは
説明している。おそらく
日本の場合にもそれを使おうとして、あなたはこの問題を国会に提起しておるのだと私は考えておるが、あなたが御
承知の
通りに、
ソ連では、イタリアを
加盟させるならば、ルーマニアそのほかの民主主義人民共和国も一括して
加盟させよう。最近のイタリアの動向は、北大西洋同盟等に
加盟し、
ソ連等を仮想敵とするような方向へ行
つておるから、イタリアを
加盟させるならば、同時に均衡上ルーマニアそのほかの東欧諸国も
加盟させようという一括
加盟の提案を国連にしている。ところが
アメリカの方では、イタリアあるいは自分の
意思に従う国だけは国連に
加盟させよう。しかし自分の
意思で動かない国の国連
加盟は拒否しよう――最もはなはだしいのは中華人民共和国の国連
加盟拒否の問題であります。だれが考えた
つて、中国四億五千万の人民が今中華人民共和国を支持しているのは当然である。ところがこの国連
加盟を拒否しているのはだれですか、
アメリカそのものではないですか。この点から見ましても、
ソ連の拒否権は、あたかも
ソ連は
日本を不利に陷れているのだというような立場からあなたは
説明しようとしている、その魂胆こそが、この国連
加盟の問題を国会へ提案しているあなたの本意だ。あなただ
つてまさかほんとうは国連へ
加盟できると考えてはいないだろう。全面講和の努力も何もしなくて、中国を仮想敵にしておきながら、そういう講和を結んでおきながら、やすやすと
日本が国連
加盟ができろということは、常識ある人ならば考えていない。ところがそれにもかかわらず、いまさらこういうことを持ち出すのは、
ソ連が
日本の仮想敵であるという宣伝のためだと私は考えざるを得ない。そこでその次の問題としてあなたにお聞きしたいことは、
アメリカは国連
憲章に忠実だ、ソ同盟はいつも国連
憲章に違反しているというような
意味にあなたの
説明ではとれるが、一体その次の国連
憲章の
原則ということは何かという問題で、これを私たちは検討して行きたい。これは明らかに
大国一致の
原則である。国連
憲章の第五十三條によりますと、「
安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を
利用する。但し、いかなる強制行動も、
安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によ
つてとられてはならない。もつとも、本條2に定める敵国のいずれかに対する
措置で、第百七條に
従つて規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、
関係政府の要巽南に基いてこの
機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。」「本條Ⅰで用いる敵国という語は、第二次
世界戰争中にこの憲草のいずれかの署名国の敵国であ
つた国に適用される。」とあるが、
国際連合憲章を貫いている精神の第二の
原則は、明らかに、第二次
世界大戰における旧敵国の侵略的な勢力の再現を防ぐということだと思うのであります。ところが、共同一致の
原則、
大国一致の
原則が安保
理事会の常任
理事国の運営に貫かれている方針であるにもかかわらず、その常任
理事国はソ同盟諸国を仮想敵として、
アメリカが旧敵国たる
日本と安全保障とりきめをするということ、このこと自体
アメリカが国連
憲章の基本的精神を破
つていると考えざるを得ないのであります。そこでこの問題について少しお聞きしておきたいと思うのでありますが、一体
日本は本心から、
国際連合憲章に基いて
大国一致の
原則を尊重しながら、ソ同盟、中国等の
国々と平和的なとりきめをしようとする
意思があるのかどうか。そういう自信があるというならば、具体的にどういう努力をされるのか、この点をきようは
岡崎国務大臣から、責任ある言明を
とつくりとお聞きしておきたい。