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1952-04-11 第13回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月十一日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       大村 清一君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       飛嶋  繁君    守島 伍郎君       小川 半次君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 四月二日  平和條締結国代表を貴賓として歓迎に関する  請願花村四郎紹介)(第一八三八号)  元小笠原諸島在住者帰郷促進に関する請願(  菊池義郎紹介)(第一八三九号)  朝鮮人に対する出入国管理令適用等に関する  請願大矢省三紹介)(第一八四〇号) の審査を本委員会に付託された。 同日  抑留同胞の引揚促進及び留守家族厚生援護の強  化に関する陳情書  (第一一二六号) 同月十日  在外事務所を琉球に設置の陳情書  (第一一八九号)  在外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する  陳情書(第一一九  〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  千九百二十七年九月二十六日にジユネーヴ署名  された外国仲裁判断執行に関する條約の締結  について承認を求めるの件(條約第三号)  国際連合への加盟について承認を求めるの件(  條約第四号)  国際計数センター設立に関する條約の締結に  ついて承認を求めるの件(條約第五号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  千九百二十七年九月二十六日にジユネーヴで署名された外国仲裁判断執行に関する條約の締結について承認を求めるの件及び国際計数センター設立に関する條約の締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。両件に関する質疑を許します。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 私は一問だけ仲裁判断執行に関する條約の締結について承認を求めるの件について質問いたします。この條約に加盟することができます国は、議定書に署名した国のみということになつておるようであります。議定書に署名した国のみがこの條約の批准に署名することができることになつておると思いますけれども、そうしますと、たとえば将来日本といろいろ経済上の関係を持つと考えられますアメリカとか、あるいはフイリピンとか、あるいはインドネシアとか――インドネシアはその当時オランダ国に入つておりましたから別といたしまして、ビルマというような国は、いろいろと日本商事上の関係を生ずるようになるのではないかと考えられます。こういう国はこの條約には参加する方法はあるのでありましようか、ないのでありましようか、その点を承りたい。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 黒田委員の御懸念の点はもつともだと思います。しかしながらそういう結果になりました原因を申し上げますと、この條約は二三年の議定書で解決しなければならなかつた点が、その当時解決不可能で漏れておりましたので、それを補完する意味において、二七年の條約が締結されることになつた次第でございます。どの点が漏れていたかと申しますと、二十三年度は、締結国相互間においては外国でなされた仲裁契約を有効と認めそういう契約について自国裁判所に訴えが提起されたときには、訴えを受理しないで仲裁裁判にかけるようにするということと、それから自国仲裁約款従つて下された仲裁判断は、これを有効と認めて執行する。この二点だけを解決いたしたわけであります。そうしますと第二の点が問題になるのでございます。一つの国でなされた仲裁裁判によつて下されました判断は、その国では有効に認められ執行ができますが、他の締約国に持つて行つた場合に、その判断強制執行を認める法的根拠がないわけであります。そこまでも二三年の議定書は解決いたしておらなかつた次第であります。そういたしますと、二三年の議定書だけでありますと、一国の領域において仲裁裁判があり、仲裁判断を得まして、その判断によりまして他の締約国にある財産を目的とする強制執行をいたそうといたしましても、そのために今度は当該外国裁判を提起いたしますと、二三年の議定書によりまして、お前の訴えの基礎となつておる契約には、仲裁裁判約款があるから、二三年分議定書訴えを受理することはできない、こういう結果になります。でありますから、二三年のその欠陥だけを結局補完する意味において條約が締結された次第でございます。黒田委員の御指摘になりましたように、今後日本といたしまして、貿易関係が多く、従つてその関係仲裁契約相互に有効と認めるというところまで持つて行くことが有利な国は今後あり得ると思います。ことにアメリカその他の国があります。しかしそういう国との仲裁契約関係の問題を完全に解決いたそうとしますには、どうしてもまず二三年の議定書と、それを補完する二七年の條約に同時に相手国が入つてくれませんと、問題は解決いたさないことになります。従いまして二七年の條約は、その成立の経緯から見ましても、その目的から見ましても、まつたく二三年の議定吉一つ欠陷を補填するための倹約でございますので、この二七年の條約だけには加入することはできません。二三年の議定書に加入した国でなければ、二十七年分條約には加入できない、こういう原則が規定されることになつた次第であります。これは両條約の成立関係目的から見まことにやむを得ない結果だ、こう考えております。
  5. 黒田寿男

    黒田委員 そういたしますと、二三年の議定書に参加していない国については、たとえば今申しましたアメリカとかあるいはビルマフイリピンとか、そういうような国との間に、この條約の対象となつております国と同様の問題について同様な関係わが国が持とうと思いますときには、その国がこれに参加することになるのか、あるいは別個の條約をつくるということになるのでありましようか、ちよつとその点を伺いたい。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点はやはり二つの方法があると思います。一番理想的な方法は、そういう国々も二三年の議定書と二七年の條約に参加してくれるということでございます。そういう事態が実現すれば、まことにけつこうな結果になります。しかし各国とも二三年の議定書、二七年の條約に参加すべきかどうかということについては、国内の特殊の法制その他の関係から、必ずしも実現か可能であるとは考えられません。そういう場合は当該国との間の二国間の協定によりますか、ないしは二国間の民間団体の間の提携という方法によつて商事民事契約における仲裁制度の普及、遵守をはかるということが考えられると思います。
  7. 黒田寿男

    黒田委員 それはわかりました。  そこで最後にいま一つお尋ねいたしたいと思いますことは、この二三年の議定書に、私が先ほど申しましたような国が参加しなかつたのは、何かその国の国内法内容が、この議定書内容と抵触するというようなことでもありましたために、参加しなかつたのでありますか、それとも何かはかに政治上あるいは経済上の理由があつてこれらの国々が参加しなかつたか、その点をちよつと知つておきたいと思います。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 民事商事につきまして、仲裁約款をいかに国内法上認めるかという点につきましては、各国とも法制相当出入りがございます。二三年の議定書に参加しなかつた国々の不参加の理由は、私どもには今のところ書類を見ましてもはつきり出ません。しかし推察するところでは、おそらく自国法制と二三年の議定書協定いたしまする原則との間に、あまりに間隔が大きいから参加を見合せたと考えればよろしかろうかと思います。私どもとしてかりに一番関心の深いアメリカ法制を見ますれば、アメリカにおきましては、この民事商事に関する仲裁裁判制度は、各州法の規定にまかされておる次第でございます。それで各州の法制の間それ自体にすでに相当出入りがございます。従つて二三年の議定書アメリカ合衆国政府として入つて合衆国の四十八州でございますか、全体に対してまでも二三年の議定書原則を受諾させることは困難な法制のもとにあるように考えます。そこがおそらく合衆国がこの議定書には参加しなかつた一番大きな原因であろうか、こう考えます。合衆国としてはこの商事仲裁制度については、民間団体による国際協力という面で解決するように非常に盡力しているように私ども了解いたしております。
  9. 黒田寿男

    黒田委員 それでよろしゆうございます。
  10. 仲内憲治

  11. 菊池義郎

    菊池委員 文部省側にお伺いしたいのでありますが、この国際計数センター設立に関する條約に日本加盟することによりまして、どういう利益がありましようか。またこれに伴ういろいろの日本義務といつたようなことにつきまして、簡單に御説明を願いたいと思います。
  12. 稻田清助

    ○稻田政府委員 ただいまの御質問の第一点でございますが、御承知のように基礎的な研究あるいは応用的の研究の各分野におきまして、非常に複雑な計算を要するものがあるのであります。たとえば基礎的のものといたしましては、今日天文学等におきまして、もちろんわが国においてもいろいろ複雑な計算をいたしておりますけれども、非常に多人数が長年月を要してでなければ計算ができない。これによつていろいろ暦とかあるいは遊星の運行等研究いたしております。また応用研究等におきましても、これも場面が非常に広いのであります。たとえば造船などにおきましても、船の横ゆれあるいはそれに基きまする危険防止というような点におきまして、非常に復原曲線計算が必要でありますけれども、これらによる十分なる計算ができないために、たとえば先年緑丸転覆事件もあつたようなわけでありまして、ぜひ非常に進歩いたしました電子計算裝置等によりまする能率的な計算が、これらの工学の発達に非常に貢献せられると思います。そのほかたとえば建築土木関係におきましても、橋梁とか、あるいは建築安定率等計算いたします場合に、十分な計算ができませんために、多く安定率を見たために資材に非常に不経済があるというような問題等もあります。そのほか化学の側におきましても、あるいは電気関係におきましてもいろいろあるのでございます。ところが御承知のように日本におきましても、こうした計算機研究というものは早く着手いたしましたけれども、戰争中に非常にハンデイキヤツプを受けまして、アメリカあたりの非常な進歩した国において進歩した計算機ができているのと非常に懸隔があるわけであります。といつて日本におきまして、こうした進歩した計算機をつくりますことは莫大な費用を要します。またそれに対します技術もまた外から導入しなければならぬ。ところでこの国際計数センターができますれば、第一にはここの施設に依頼いたしまして複雑な研究をやつてもらうことができるのでございます。それから第二にはこうした進歩いたしました計算機をつくります技術をこちらから入れることができるわけでございます。そうした諸点につきまして、加入することによつて非常にわが国の学界に利益されると思います。  第二点のこれに加入いたしますわが国義務でございますが、さしあたりは負担金義務があるわけでございます。これは條約にございますように年間五千ドルでございます。さらに加入者といたしまして、規約によりまして会議に参加したりその他の義務があるわけでございます。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 そうしてこの依頼する場合に條約国にはみんな秘密事項なんかありませんか。
  14. 稻田清助

    ○稻田政府委員 秘密事項はございませんので、十分技術供與をせられる仕組みになつております。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 それで計算機というのは一体実際はどういうふうのものですか。
  16. 稻田清助

    ○稻田政府委員 非常に專門的なものでございまして、いろいろな計算機があるようでございますけれども、主として電子管利用いたします電子計算機、これらがその最も進歩し、利用の広いものと伺つております。
  17. 仲内憲治

    仲内委員長 両案について、ほかに御質疑はございませんか。――御質疑がなければ、ただいまの両件に関する質疑は終了することといたします。     ―――――――――――――
  18. 仲内憲治

    仲内委員長 次に、国際連合への加盟について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関して質疑を許します。北澤直吉君。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 岡崎国務大臣に二、三お尋ねしたいのでありますが、第一点は、御承知のように、この国際連合というものは、米、英、ソ連、フランス、中国、この五大国が、実際的には国際連合活動をささえておる、こう申してもさしつかえないと思うのであります。ところが、御承知のように、この五大国間の関係が、必ずしも円滑に行つておらぬ。むしろ冷たい戰争が、この間で行われておるために、国際連合活動が、半身不随のような状態になつておるということは、御承知通りであります。そこでこの国際連合活動が十分に発揮されるためには、この五大国の間の関係が円満に行き、五大国の間の協力が十分に行われて行くことによつて、この国際連合活動が十分に発揮されることと思うのでありますが、最近五大国間の関係につきまして、何とかこれを調整しようというふうな動きが、ソ連側にも米英側の方にもあるのであります。最近アメリカの駐ソ大使に任命せられましたケナン大使の就任のときのお話におきましても、自分は何とかして米ソ間の緩和に貢献したいというようなことを言つておられます。またイギリスのチヤーチル首相も、もしできるならばスターリンと直接話してもよろしいというようなことも言つております。またソ連側の方でも、最近スターリン首相アメリカ新聞記者に対するメツセージの中でもそういうような、米ソ間の関係緩和するために、首脳者会談を開きたいというふうなことでございまして、双方の面におきまして、この米ソ間の関係を何らか緩和するために資したいというような動きがあるのでありますが、大臣におかれましては、こういうふうな五大国間の協力の増進というものにつきまして、どういう見通しを持つておられますか、その点をまず第一に伺つておきたい。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話のような情報は私どもも見ておりまして、最近の情勢については特に注意をして研究をいたしておりますが、むろんうまく行けばけつこうだということは申し上げるまでもないことであります。もう少し事態はつきり、つまり具体的の問題でどういうふうに動くか、朝鮮の問題はどうなるか、ドイツの問題はどうなるか、こういう点が具体的に事実として現われて来ないと、はつきりしたことは、ただ抽象的な声明等だけでは、なかなか判断ができないのじやないかと思つております。どうなるかという見通しについては、まだ私自身はここで申し上げるようなところまで材料がはつきりしておりません。引続いて注意いたして行きたいと、こう考えております。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 そういたしますと、大臣のお考えでは、この五大国間の関係を、調整するということは非常にむずかしい問題である。具体的にいろいろ問題が出て来ないと、なかなか見通しがつかぬというふうなお言葉でありますが、日本がいよいよ国際連合に加入するということによりまして、結局国際連合というものがその設立の趣旨に従つて十分の活動をしてもらうということは、日本人としても希望にたえないところであります。政府におかれましてもこういう五大国間の緩和協調ということにつきましては、この上とも御注意を願つておきたいと思うのであります。  次に伺いたいのは、ソ連国際連合に対する態度であります。ソ連国際連合に加入し、そして国際連合專門機関たる万国郵便連合あるいは国際電気通信連合には加入しておりますが、そのほかの国際連合專門機関には参加しておらないのであります。ソ連側におきましては、国際連合というものは米英手先であつて、必ずしも世界全体の国を代表するものでないというふうな態度をとつておりまして、必ずしも十分に国際連合協力しておらぬと思うのでありますが、ソ連国際連合に対する態度は、将来どういうふうに動いて行くのでありますか、この点を伺つておきたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点につきましても、ただいま申し上げたと同じようで、五大国間の話合いをする意思ありと、う声明だけですぐ平和の方に世の中が向いて行くというふうにとるのはどうか。要するに具体的事実を見てから判断すべきであろうというのと同様に、国際連合英米手先であるというようなソ連の意向が出ておつたとしましても、またそれだけでソ連国際連合を敵視しているのだとか、協力しないのだとかいうふうに判断すべきものでないと思います。やはり具体的事態を見て実質的な判断をいたすべきものだと思います。ソ連ソ連考え方、これは英米とはずいぶん違いますけれどもソ連なり考え方国際連合についてもいろいろの発言もいたし、提案もいたしており、思想は違いますけれども原子力管理等についても発言をいたしておるのでありますので、ソ連の建前からいつて、いろいろの委員会等に人を出しておらぬといたしましても、総会等には常に代表が出ておりますから、必ずしも国際連合に非協力というわけでもないものと考えております。お話のように日本も将来加入することにしたいと考えておるのですから、将来はもし機会さえあれば、われわれ豊大国の間の関係をよくするよう、またそれが世界の平和に寄與するように、できるだけ積極的な努力をいたしたいとも考えております。いずれにしても、ただいろいろの声明等だけで判断をいたすべきものばかりでもない、実際の事態はまた違う場合もあり得ると考えますので、いろいろ研究をいたしておるような事情であります。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 では次に伺いたいのでありますが、この国際連合憲章の第四條を見ますと、「国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受諾し、且つ、この機構によつてこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。」こういうふうになつております。御承知のように今日本兵力を持つておらないのでございますが、兵力を持つておらなくてもこの第四條の、いわゆるこの機構によつてこの義務を履行する能力がある、こういうふうに認められるのでありますかどうか、この点をひとつ念のために伺つておきたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この問題は條文をいろいろな方面から解釈しまして結論を出さなければいかぬと思います。たとえば国際連合憲章の第四十三條などもその考慮の一つに入るべきだと思います。この第四十三條にあるような兵力とか、援助とか便益の提供とかいうことについての特別の協定があつた場合には、当然義務を負うわけであります。しかしそれはこまかい條文の解釈になるのでありますが、日本憲法上できないような義務を負うことはあり得ないし、また日本憲法というのは原則的には平和を所念してつくられたものでありますから、いわば国際連合の方からいえば、むしろ理想的な国とでも言い得るかもしれないのでありまして、日本のような場合に、兵力がないから国際連合に入る資格がないというようなことは私はないと考えております。いろいろ援助を求められる場合もありますが、勧告による場合もあり、それから義務づけられる場合もあると思います。安全保障理事会決定等がある場合には、加盟国援助義務を負うことになると思いますが、兵力その他についてはやはり特別の協定従つて安全保障理事会は要求し得るものと考えますので、国際連合加盟国なつたからすぐにそういう義務を負うということではないと思つております。従つて国際連合に入ることについては、日本のような特殊の憲法による制約のある国であつても、加盟資格はあるのである、こう私どもは考えております。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 第四十三條の場合は、今お話のように特別協定ができなければ、そういうふうな兵力援助その他をしなくてもいいということと思うのでありますが第四十五條を見ますとこう書いてあります。「国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにるために、加盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割当部隊を直ちに利用に供することができるように保持しなければならない。」こういうふうになつております。これは必ずしも特別協定を必要としないというふうにふうのでありますが、この第四十五條を見ますと、日本国際連合に加入すると、国内空軍部隊を持たなければならぬというふうなことになりはせぬがというふうに私は疑いを持つておるのでありますが、この点についてもう一度四十五條との関係について御説明を願いたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はこの第四十五條の場合にも、このあとに「第四十三條に掲げる一又は二以上の特別協定の定める範囲内で、」ということがあります。ので、やはり特別協定があつての上のことと考えております。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの大臣の御説明を了承いたします。そこでこの問題について関連して伺いたいのでありますが、過般の日本との平和條約におきましては、日本国際連合に対してあらゆる援助を與えるという義務をあれによつて負担するわけであります。しかしながらあらゆる援助内容は、政府のたびたびの説明のように、日本能力範囲内である。日本憲法の許す範囲内で援助を與えるのだ、こういうふうに政府説明されておるのでありますが、いよいよ日本国際連合に加入した場合におきまして、ちようど現在の朝鮮動乱のような場合に、国際連合が軍事的な措置をとるというふうなことで関係加盟国勧告をするというふうなことが考えられるのでありますが、そうしますと、日本兵力を持つておらぬでも、たとえば警察予備隊とかああいうふうなものを持つておるので、日本国際連合に加入したあかつきにおきましては、国際連合が軍事的な措置をとる場合に、警察予備隊等派遣を要求されはしないかというふうな点を、国民の中でいろいろ心配する向きもあるのでありますが、国際連合加盟しましても、こういう警察予備隊というふうなものは、国外に派遣を要求されないのだという点について、はつきりした政府の御答弁を承つておきたいと思います。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは朝鮮の場合におきましても、国際連合加盟国援助を與えるような勧告をいたしたわけでありますが、その勧告に応じまして朝鮮に人を出した国は十何箇国であります。ほかの国はまだそういう措置をとつておらないのでありますが、しかしこれはむろん勧告であるからでもありますが、別に国際連合義務違反ということにはならないわけであります。またその援助を実際にしておる国の中でも、たとえばデンマークのごときは、たしか医者だとか看護婦とか病院船とかそういうものを出して援助をしておるので、軍人は送つてはおらないと思つております。日本の場合もいろいろの援助の仕方はあると思います。これもかりに警察予備隊を外へ持つてつて使うことができるような国内法制であつても、それを出すか出さないかは政府のきめることでありまして、出さなくても国際連合義務違反にはならないと考えております。いわんや警察予備隊のごときは、現在において国内治安維持に当るということに法制上なつておりますから、これをほかへ使うということは法律違反とも考えられるのでありまして、法律的にもこれはやれないことであるが、政府としては警察予備隊を海外へ出すというような意思は、こうもないことは再三申し上げた通りでありますから、今後もその方針で行くことはここではつきり申し上げることができるわけであります。
  29. 北澤直吉

    北澤委員 それでは次の問題に移りたいと思います。日本国際連合加盟する場合におきましては、日本加盟申請に対しまして、国際連合安全保障理事会勧告に基いて国際連合の総会がこれを決定するというふうになつておるわけでありますが、御承知のようにこれまで安全保障理事会におきましては、ソ連の拒否権行使のために、イタリアのように加盟申請しましても、加盟承認されない例があるのであります。特にトランスジヨルダンに外国の軍隊が駐屯しておるという理由によつてソ連が拒否権を行使しておるような例もあるのであります。そうしますと、日本には日米安全保障條約によつてアメリカ軍が駐留するというふうになつておりますので、結局ソ連が拒否権を行使して、安全保障理事会におきましては、日本の国連加盟承認しないという公算が相当大きいと思うのであります。あるいはソ連側国際連合加盟さしたいと思う、たとえばアルバニアとか、そういう東ヨーロツパの国々もあり、また米英側の参加さしたい国もありますので、ソ連側米英側の間に妥協ができて、両方の希望するものを加盟させるというふうなこともあり得るかと思うのでありますが、どうもこれまでの経緯から考えますと、ソ連側の拒否権の行使によつて日本の国連加盟という前途には、非常な困難が予想されると思うのでありますが、これに対する政府のお考えを承りたいのであります。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ今お話がありましたが、第の外国の軍隊が駐留しておるということは、私は国連の憲章義務受諾の能力が欠けておるということにはならないと思いますので、この点は別に加入の支障にはならないと考えております。もつともお話のようにジヨルダンに対しては、ソ連は英軍が駐留しておるからといつて、独立国たる資格に疑問を表したということはありましたが、西欧諸国はソ連の見解には反対したのであります。またソ連自身も本年初め、二月でありましたか、ジヨルダンを含めた双方の国――西欧側とソ連側の推薦する加盟を申請した十四箇国でしたかを緒に加入させようじやないかという中に、ジヨルダンも含めておつたような事情もあります。ただ拒否権を用いて、ソ連が気に入らない国に対して、ずつと加盟を阻止しておつたという事実はあるのでありますから、日本の場合に、はたして無事に行くか、あるいは拒否権を用いられて加盟ができないか、これはやつてみないと実はわからないのであります。たしかインドネシアでありましたか、あれは申し入れてから四日目か五日目に加入を認められたこともあります。そういう早く加入できる場合もあり、またイタリアのようになかなかむずかしいという場合もあります。ありますが、日本としては拒否権を用いられて加入できないかもしれぬという疑いを持つているから、加入申請をしないという理由にはならないと思います。拒否権を用いられようが何しようが、正しい措置であると思えば、当然加入の申入れをやつてみるということは、正当な方法であろうと思いますので、どうなるかわかりませんが、加入の申請をしたい、こう考えておるわけであります。
  31. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは、連合憲章第八十六條によりますと、信託統治理事会というものがあるのでありますが、御承知のように対日平和條約によりますと、将来琉球、小笠原は、アメリカを施政権者とする国際連合の信託統治になる、そういうふうなことについてアメリカが提案する場合には、日本はこれに同意するということになつておるのであります。そういう問題を考えまして、将来沖繩とか小笠原がアメリカを施政権者とする信託統治になりました場合において、日本が信託統治理事会に入つて、そうして間接ではありますが、沖縄あるいは小笠原におきまするアメリカの信託統治について、何らかの発言権を持ちたいというふうにわれわれは考えるのでありますが、この信託統治理事会に関する構成によると、信託統治の施政を行う加盟国と、それから五大国の中で信託統治をやらぬ国、それと同数のよその加盟国理事国になるのでありますが、そういうふうな形において日本が信託統治理事会に入り得るかどうか、われわれはぜひ入るようにしてもらいたいと思うのでありますが、そういうふうな可能性があるかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思うのであります。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ国連に入れるかどうかも実はわからない問題でありますから、その先のことをここで見込みとしても申し上げる立場にないと思います。しかしお話の趣旨はよく了解いたしましたから、できるだけお話の趣旨のようなことで今後も行動する心組みでいろいろなことを行いたいと思います。
  33. 北澤直吉

    北澤委員 もう1点お伺いして私の質問を終わります。国際連合の国際司法裁判所の問題でございますが、日本国際連合に加入しますれば、当然国際司法裁判所に入るわけでありますが、従来の歴史から申しますと、こういうふうな国際裁判の場合に、日本人の裁判官がおらないというと、ともするとその判決が日本に有利でない場合があつたのであります。たとえば、明治三十八年に家屋税の問題で常設仲裁裁判にかかつたのでありますが、とうとう日本は負けたのであります。そういうふうなことがありまして、日本関係する問題が国際裁判にかかる場合におきましては、その裁判所に日本人の裁判官が入つておるということが、やはり日本側の主張を徹底させるにおいて相当効果があるというふうにわれわれは考えております。国際連盟時代の常設司法裁判所には日本人の裁判官がおつたのでありますが、今度の国際連合の国際司法裁判所の裁判官におきましても、ぜひとも日本人の裁判官を入れてもらいたいというふうなことは日本人全体の希望だと思うのであります。先ほど大臣お話のように、まだ入らぬ前からそういう将来のことはよくわからぬと言われるかわからぬのでありますが、ぜひ将来ともそういうふうな方針で、あらゆる機会にひとつ政府の御努力をお願いしたいと思うのであります。一応その点について政府のお考えを伺つておきたいと思います。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この裁判所の規定を見ますと、「裁判所は、徳望が高く、且つ、各自の国で最高の司法官に任ぜられるのに必要な資格を有する者又は国際法に有能の名のある法律家のうちから、国籍のいかんを問わず、選挙される独立の裁判官の一団で構成する。」というようなこともあります。日本におきましてもこういう資格を有する人は私はたくさんあると思います。過去におきましても、国際連盟時代にはお話のように日本裁判官も入つてつたのでありますから、私は将来日本裁判官も当然この中に参加できるものと確信しております。できるだけそういう趣旨でやりたいと考えております。
  35. 仲内憲治

    仲内委員長 並木芳雄君。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 国際連合加盟を申し込んだ場合と、申し込んでない場合との相違というものについてお尋ねしておきたいと思います。  ただいままでの北澤委員の質問に対する答弁によつても、政府としては別段特に国際連合加盟実現の成算があるものとも思われていないようであります。そこで私どもは、それならば、全然申込みをしないでおる場合と申込みをした場合との間に、何か相違があるかどうかということについて知つておきたいのであります。たとえば、今政府は、国際連合軍との間で、例の行政協定相当するようなとりきめを進められておると思うのですけれども、そういうものに対する関係がどうなつて来るか。国際連合に申込みをしていない場合と申込みをした場合との国際法上の日本の地位というものについて、まずお尋ねいたします。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国連へ加入申込みをしてもしなくても何も違わないと私は考えております。法律的にいいましても、ただ加盟の申込みをしたということが別に法律的の効果は起さないものでありますから、変化はないと思います。特に、ただいまお話の国連軍との協力関係は、サンフランシスコにおける吉田・アチソン交換公文というものがありまして、これは特に朝鮮の事変が継続中のこともしるしてありまして、従つてさしあたりはあの交換公文に基いて措置される、また措置されるべきものだと考えております。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 国連軍との協定の話合いはどういうふうに今進行しておりますか。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちらでは、今申した交換公文もありますので、国連軍の方でいかなる希望を有するものであるか、またどの程度の話合いをするものであるかという点について、照会をいたしておるのでありますが、先方ではいろいろ研究すべき問題があると見えまして、まだ協議中だと聞いております。こちらにはまだ先方からの意思表示かないのであります。ありましたならば、その上話合いを進めて行こうと考えております。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 條約発効後九十日以内にその協定ができない場合には、アメリカ軍以外の軍隊は当然撤退することと思いますけれども、その通りであるかどうか。そういうことを防ぐために、引続きアメリカ以外の軍隊も国連軍として日本に駐屯ができるような道を開くために、平和條約の効力発生をアメリカにおいて遅らしているのだという説もありますけれども、それとの関連などについて御答弁をお願いします。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはむろん法律的 に申しますれば、占領軍のステータスは講和條約発効のときにほんとうはなくなるわけであります。あとは九十日間の清算といいますか、残務処理期間といいますか、その間だけは、その必要な範囲内において、占領軍たる資格において行動するわけであります。原則的にはむしろ九十日を待たずして占領軍という資格はなくなるものであろうと私は考えております。しかし九十日という期間があるのでありますから、その間に話合いをつければつけてもできるわけであります。そこで平和條約の批准をこの話合いのために延ばして、おるなんということは、私は絶対にないことと信じております。あり得ないことだと思います。またこの話合いというものは、そうむずかしいものではないと私は考えております。九十日もありますれば、十分に話合いはつくものと信じております。また先方でもそう考えておると思いますから、この話合いを條件にして批准をどうこうするということはないと確信いたしております。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 英国とか濠州軍というものは、引続き日本に駐留をしたいという希望を持つておるのですかどうですか。政府はその点わかつておるかどうか。それからただいまのお話ですと、平和條約はそんなに遅れずに効力を発生する見通しであるかどうか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 英濠軍の問題は朝鮮事態にもよることと思います。御承知のように、朝鮮の方はかなり話合いが進んでいるような形勢もあるのでありまして、かたがたどの程度の施設なり便益なりを必要とするかについても、朝鮮問題の見通しによつてもこれは動くものだというので、先方でも今いろいろ協議しておるのだろうと思います。先方としても、日本側になるべく迷惑をかけないで行きたいという気持はあると信じております。そこで平和條約発効の見通しですが、これも見通しでありまして、どうもはつきりわかりませんが、トルーマン大統領も言つておりますように、約十日間の予告期間を設けるということは、これは諸般の準備上も必要でありますので当然と思つております。そこでいつ各国の批准が出そろうかということですが、今批准を終りもしくは終らんとしている国もありまして、アメリカとしては、一両日ずらしても、なるべくならば、批准寄託がよけいあればあるほどいいと考えておるのは当然と思いますから、予定よりは多少ずれておるということも事実であります。またイース夕ーの休み等もありますので――これは予想でありますから、違うじやないかといつてあとでしかられても困りますが、今のところは今月の二十五日と月末の間に効力を発生するというよりに、常識的には考えられるのであります。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 国連加盟実現の成算についてでありますけれども、先ほど北澤委員からも質問がありましたが、最近のソ連のいわゆる平和攻勢というものが国連に対してどういうふうに態度をかえて来るか、府政として、何かそれに対する見通しはありませんか。たとえば拒否権行使というものをゆるめて行き、そうして日本加盟を容易ならしめる、こういう曙光が見えないかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 一般的に申しますれば、平和攻勢というのですか何というのですか、ソ連の方にも平和を希望するという態度が見えているようであります。ただそれがどういう具体的の事実に基礎を置いているかというところになると、多少問題であろうと思います。しかしたとえば具体的に、ただ平和を希望するとか、平和的に行けるものであるとかいう声明は別としまして、先ほど北澤委員に申しましたように、具体的事実において判決してみますと、第六回の国連総会におきましても、軍縮問題だとか、全独の自由選挙の問題であるとか、あるいは集団措置の問題であるとかいうような重要な問題についての根本方針は、一向譲歩がなかつたように思います。またソ連が拒否権を行使することを控えるというような兆候も、今のところ私は見えないと思つております。現に今年の二月でありましたか、ソ連は第五十何回目かの拒否権を使つて、さらにイタリアの加盟を拒否したという事案が、つい二箇月余り前にあつたわけでありますから、こういう具体的の事実から見ますと、どうもソ連側で多少譲歩するのじやないかという今の御希望は、あまり現われて来てないようにも思いますが、まあこれは将来のことはわからないのでありまして、今もいろいろ経済会議をやつておりますし、また三頭会談といいますか、四頭会談といいますか、とにかく大国間の話合いもやるべきであるという議論もあるよりなわけでありまして、国際間の情勢はだんだんかわつて参りますからわかりませんけれども、今までのところは、根本的な問題について特に譲歩しておるというような兆候はあまりない、こう私ども判断しております。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま具体的の事柄をあげて答弁かありましたが、そういう具体的なことがあつたとするならば、ソ連というものを国際連合から除名したらどうだというような話が今までおつたのじやないかと思うのです。その点いかがですか。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそういうことは聞いておりません。また国連の精神からいいますと、ソ連も含めた世界中の国によつて協力を確立して、これで国連を運用して行こうというのでありまして、一時それは意見の相違があるにしても、それで短気を起してソ連をどうということは、各国も考えるわけはないと思います。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 国連へ加盟が実現いたしましたら、日米安全保障條約が不要となるのではないか、この点いかがですか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国連の憲章によりますと、地域的とりきめということをやることを認められております。現にこの規定によつて北大西洋條約というものも結ばれておるのでありまして、北大西洋條約を結んだ各国といえども国連の傘下にあるのでありますし、また国連の加盟国であることは間違いないのであります。日本の場合におきましても、安全保障條約というものは、かりに日本が国連加盟国となりましても、それで不要になるとは考えておりません。むしろますます国連の憲章の実現のために、こういうものはあつてもよろしいものである、こう私は考えております。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 国際連合憲章にいう地域的とりきめであるならば、今のお説は正しいと思うのです。それならば日米安全保障條約が、国際連合憲章第五十二條にいわゆる「地域的取極」であるかどうか、もしとりきめでないとするならば、早晩「地域的取極」にこれを変更して行く意思政府にあるかどうか、お尋ねします。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり私は一種の地域的とりきめであると考えております。でありますが、御承知のように日米安全保障條約というのは、日本側に軍隊がないという事実に発足しておりますから、完全なる相互的な安全保障條約というものでないことは事実であります。そこで、安全保障條約の中にも、第四條ですか、国連の措置ができ上るとか、あるいは集団安全保障措置によつて安全になつた場合には、この協定は効力を失うというふうに書いてありまして、また前文には自衛力の漸増ということもうたつておるのであります。でありますから、そういう趣旨で今後進むつもりではおりますけれども、しかしそれにしましても、安全保障條約は一種の広義のやはり国連憲章下の條約である、こうわれわれは考えております。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 いろいろそういうふうに、例外と申しますか、完全なメンバーでなくても、国際連合加盟の道が開かれる。しからば今日、永世中立国といえども国連加盟の道が開かれてもいいのではないかと思われます。国連加盟と永世中立とは両立しないといわれておりますけれども、その実情と、理由はどういうようなものですか。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国連憲章をつくりましたときに、たしかフランスから提案がありまして、初めは、いかなる国もこの義務を免れるため中立の地位を援用することはできないという字句を追加するはずであつたわけであります。そのときに、この中立の地位というのは永世中立の地位であるという説明もあつたのであります。ところがサンフランシスコの国連憲章に関する会議では、永世中立の地位は第五の原則と両立しない、いかなる国も永世中立の地位を援用して憲章義務を免れることはできないと了解されるということになりましたので、特にこういうフランスの提案の字句は入れないことになつたのであります。それで、スイスは国際連盟には加盟していたが、国際連合には加入できないというので、加入しておらないわけであります。こういうような事情がありまして、これは国際連合一つの特に論争となつた点でありますから、この点は私はやはり依然として原則的に確立しておる点であろうと思います。従つて国際連合と永世中立というものは、やはり原則的には両立しない、こう考えます。
  54. 並木芳雄

    ○並木委員 義務や責任の免除ないし軽減ということが起つて来ている今日ですから、将来のことを考えますと、永世中立という態度をとりつつ国連に加盟することが考えられることは、考えられるのじやないか、この点、くどいようですが、もう一度政府の考えを聞いてみたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはむろん国連の決定するものでありますから、将来考え方がかわれば別でありますけれども、現在のところは、永世中立と国際連合憲章は両立しないという建前で来ておると私は信じております。従つて今のところは永世中立国は加盟できない、こう思つております。もちろんお話のように、これは、法律は人のためにあるので、法律のために人が縛られるような結果になるのは正しくないことと同じように、国際連合というものも、各国のためにつくられたものでありますから、各国の一番都合のいいように将来改訂されるということはあり得ると思いますけれども、今までのところ特にこの永世中立の問題につきましては、もう国際連合の方で原則的にそのプリンシプルを認めて、両立しないものであるということになつておりますから、やはり現在でもその通り解釈するよりしかたがない、こう思つております。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 もう二、三点お尋ねしてきようの質問は終りたいと思います。国連にあらゆる援助を與えることが義務づけられるのでありますけれども日本憲法と異なる義務を課せられることはないであろうという先ほどの御答弁でございました。しかし、ないであろうけれども、求められることがあるかもしれない。その求められたときに、その援助を與えることを日本が断つたとしたら、これはどうい、ことになりますか。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど北澤君に御答弁しましたように、援助を求められる場合には、勧告として、やつた方がいいという勧告を受ける場合と、それから義務づけられる場合とあるわけであります。たとえば朝鮮のときのような場合は総会の勧告による、あるいは安全保障理事会勧告による場合もあるでありましよう。それから安全保障理事会の決定に基いて義務づけられる場合があります。勧告の場合は、これは勧告に応ずるとも応じないともその国の国情にもよりますし、考え方にもよるのでありまして、これは義務づけておりませんから、その通りしなくとも義務違反にはならないわけであります。それから安全保障理事会の決定によつて義務づけられるという場合があるのでありますが、この場合は、先ほど申しましたように憲章の第四十三條の特別協定従つてのみ安保理事会は要求ができるのでありますから、国連加盟国なつたからといつて、すぐにそういう義務負担ができるわけじやないと考えております。従つて国連加盟国になつて、そういう兵力援助とか、あるいは便宜供與ということについて特別の協定をいたしますれば、それで義務が将来できるということになるのであります。ところがこの特別の協定をすることには、加盟国としては憲法上の手続に基いて批准されることが必要であるので、従つて日本の場合に、もしそれが憲法上批准を要する――というのは要するに国会の承認を得ることが條件であります。その場合に、そういうことが憲法上できないとなれば、かりに政府がそういう特別協定をつくりたいと思つてもできないわけであります。また政府としては、憲法上の制約がある現在において、かりに加盟したからといつて、こういう特別の協定をつくる立場にないわけでありますから、結局そういう義務は負わなくてさしつかえない、こういうことになると思います。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 国連は国内事項には干渉しないという建前をとつております。ところがその国内事項であるかどうかということをきめる機関がきまつておりません。国内事項であるかどうかというのは、だれがきめるのであるか、どの機関できめるようになるか、お尋ねしておきます。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国内事項かどうかということをきめるのは、国連では理事会がやることになると思つております。しかし国連憲章ではこれを決定する権能がどこにあるのか、たとえばその当該国にあるのか、理事会にあるのかということについて、明らかにいたしておらないのであります。従つて国際連合の機関である理事会その他のものも、また加盟国である各国も、ある問題が国内事項であるかどうかという解釈は、どつちも持つておるというふうに説かれておるのが大体多数説だと考えております。実際問題となつてどうなるかといいますと、両方に権能があつておかしいじやないかということになりますが、実際上は、大きく国連のいろいろの問題をわけますと、強制措置を適用する場合とそうでない場合がある。強制措置をする場合以外のことは、国連の措置は常に勧告ということが限度でありますから、勧告である場合には、実際問題としては、その当該国国内事項であると考えれば、その勧告に従わないことになる、従つて当該国が結局最後の認定権といいますか、日本なら日本が考えて、これは国内事項であるといえば、勧告でありますから、その勧告に従わなくてもいいわけであります。従つて両方に認定権があつても、最終的にはその国が認定することになると思います。それから強制措置の場合につきましては、これはまた別の観点から、国内事項とある国が認める事柄については、事実上強制を受けることはない、つまりこの原則は適用がない、こう考えております。従つて早く言えば、国内事項であるかどうかということについて認定することは、いろいろの国がやるであろうけれども、その当該国の認定が、結局は実際の事項を支配する、こう考えられるのであります。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 国連が持つておる特権と免除ということについて、第百五條に規定があるようですが、これは国連軍と日本などとの協定を結ぶ際にも参考になる條項ではないかと思います。そこで国連が持つておる特権及び免除について説明をしておいていただきたいと思います。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今のお話は、国連憲章第百五條のことかと思いますが、もしこれでありますれば、加盟国中で特権及び免除を享有するわけであります。このこまかいことについては、国連の特権及び免除に関する條約というのがありまして、たとえば国連の機構自体が享有する特権及び免除、国連の構成員である人間が享有する特権、こう二つにわかれておるようであります。それで機構としては国連加盟国内では、たとえば法人格を有するとか、あるいはその財産及び資産は金融上、経済上の制限を受けないとか、それから公信については料金、優先権、あるいは秘密保持については外国政府並の待遇を受けるとか、こういうことがありますし、また国連の人員ということについては、加盟国代表者であるとか、職員、專門家等がありますが、これは外交官に準じて裁判手続とか租税、出入国あるいは為替及び輸出入等の制限を免除される、こういうようなことがあります。また国連が職員に対して発行する通行証等は、有効な旋行の証明書と認められて、通過の便宜が與えられる、こういうような種類のことがあると考えております。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま話が進められておる国連軍との協定というものは、大体この原則に基いてつくられるものと考えられるかどうか。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはそれと性質が違いまして、国連軍が現に朝鮮において国連の総会の勧告に基いてとつておる措置については、日本政府はアチソン・吉田間の交換公文によつて、これに協力するということになつておりまして、これは一つの別の問題であります。日本は国連にはまだ加盟しておりませんけれども、しかし国連の機関なりあるいは国連の代表者なりが、現に日本に駐在しておる、これは国連の人員であります。こういう人員なりあるいは将来国連の何か機関がここに来るという場合には、こういう問題に対する特権及び免除と申しますか、それと多少性質が違いまして、朝鮮問題について今現に警察措置をとつておる国連軍に対する協力という問題は、これはまた別個に考えるべきものである、こう考えております。
  64. 並木芳雄

    ○並木委員 最後に一つ、国際仲裁裁判所というものと、国際司法裁判所との関係についてお尋ねしておきたいと思います。国際仲裁裁判所というものと、国際司法裁判所は、どつちが第一審で、どつちが第二審であるというような関係があるのかどうか、私どもちよとつまびらかにいたしませんので、この際国際問題解決のこの二つの機関の関係などについて質問をしておきたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今おつしやつたような第一審とか第二審とかいうような関係のない、全然別個のものであると考えておりますが、これはごこにおる條約局長が非常に詳しいと思いますから、條約局長からお答えいたさせます。
  66. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ごく簡単に御説明申し上げます。常設国際仲裁裁判所は一九〇七年へーグの万国会議締結されました国際紛争の平和的処理條約の中の規定に基いて設けられてある国際裁判所であります。裁判所と申しますけれども、常時へーグに裁判所があるものではございませんので、へーグにありますのは常設国際仲裁裁判所の事務局と、この裁判所に加盟しておる各国が任命いたしまする四名以内の裁判官の名簿があるだけでございます。それで事件が起りましたときに、この仲裁裁判所にかけるということを紛争当事者が合意いたしますと、その合意の中でへーグの事務局にある裁判官の名簿の中から適当な者を選任して、そこであらためて裁判所を構成して裁判をしてもらう、こういう仕組みのものでございます。仲裁裁判所と申しますから、その取扱う事件は法律問題が中心にはなりますが、必ずしも法律問題とは限らないで、やや政治的意味を含む事件にも適するような構成準則になつております。常設国際司法裁判所は、国際連盟のもとに設立されました裁判所の名前でございます。ここにありまする国際司法裁判所は、国際連盟のもとに設立されました常設国際司法裁判所の規定にさ少な修正か加えて新たに国際連合のもとに設立されました国際裁判所であります。この裁判所では十五人の裁判官が常置されております。そうしていつでも裁判ができる態勢にあります。そうしてその考え方は、主として司法裁判に適する事件を処理するに適当な構成になつております。準則もそうなつております。この両裁判所の間はそういうふうに全然別個の裁判所でございますので、片一方は單に裁判官の名簿があるだけの裁判所であるし、他方は常時構成されておる裁判所という性格上の差もございますが、とにかく成立の経緯から全然別個の裁判所でありまして、両裁判所の間に上級、下級の関係もございません。どちらの方に付託するかということは 一に紛争当事国政府の合意によつてきめ得る、こういう関係になります。ただ事実上幾分関係があると申します点は、国際司法裁判所の裁判官の任命の方式、手続の中に、国際司法裁判所の各加盟国裁判官の候補者を推薦する、その推薦手続の中に、自国の常設国際仲裁裁判裁判官団の意見を聞くような仕組みになつております。その点からわずかに関係が生れて来る点があるだけでございますから、まつたく別個のものとお考えくだすつてよろしいと思います。
  67. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこの問題に関して一、二点岡崎国務大臣に質問したいと思います。この前の委員会ときようの委員会で、はつきり国連加入に対して何らそこに義務規定がいらないということをおつしやいました。ところがそういう考え方はごく最近にお持ちになつたであろうと思います。その証拠には参議院の委員会におきまし吉田外務大臣はつきりこう言つておられます。「さて、国連に加入するとしそれでは加入の條件でありますが、その條件は何か、例えば軍隊、軍備のことは日本はこれを禁じておりますからできない事柄でありますし、望むべからざることであります。そうすると国連に加入するとしても、国連が日本に対して特別な條件を許して呉れるか、呉れないかという問題が起りますが、とにかくこのままでは国連に入ることのできないことは御承知通りであります。」こういうふうに、はつきりとお答えになつていらつしやいます。また国民もそれを信じていられると思いますが、それに対しての吉田さんの失言をどういうふうにして取消そうとなさるかどうかをまず一点。  それから、岡崎さんはじきに外務大臣と予想されておる方ですから、その立場から伺いたいと思いますが、もう一つは、私どもが国連の集団安全保障を受けることに反対でないというようなことを申しますと、社会党は、義務を盡さず、国連からの保護のみを要求している。そんな虫のいいかつてなことはないじやないかというようなことを、ある人たちは宣伝をしており、そうしてまたある人たちは、ある再軍備論者は、国民を自分の方に納得せしめるために、自分の言い訳のために、非常にこれを悪用していたと思うのでございます。こういうことに対する政府の責任をどういうふうにしておとりになるかをお伺いしたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの吉田総理の答弁につきましては、私は実はまだよくその点を調べておりませんから、さらに速記録等で、よくおつしやるような点を調べてみます。しかし常識的に申しますと、私なども、初めは、国連に対してはあらゆる援助を與えなければならぬという條項から、軍事援助も含まやえるのだ、そこで日本の場合は、何かそこのところに、国連の方でそれはいらないということになるか、あるいは何か日本の方の体制がかわらなければ入れないのじやないか、正直に申しますと、そういうふうに考えておつた時期があるのであります。ところがだんだん最近になりまして、国連に関する資料をいろいろ入手したり、あるいは規定に対する論議等も、速記録等が入りまして、いろいろ調べてみますと、以前の考えは、私などは間違つてつた。で、ただいま申したような答弁が正しいと思つて、今答弁しておるわけであります。あるいは吉田総理も初めはそういうふうに考えておられたのかもしれません。そういうことでありましたならば、これはいさぎよく訂正をいたしますが、事実正直に申しますと、私ども研究も不十分であつた。これは資料も入らなかつたのでありますから、御了承願いたいと思います。そこで、ただしかし国連に加入しますれば、義務は当然あるのでありまして、ただ義務内容が軍事援助まで含むかどうかという問題であつ義務は負担しないで、利益ばかり享有するという、こういう意味でないことは、これは当然であります。私どもは社会党が、そんな利益だけ得義務を負担しないと考えておるとは、決して思つておりませんから、その点は御心配ないのでありますが、そういう点は、今後とも政府はこういう問題は国際的の問題でありますから、自由党も社会党もみな一緒になつて、正しい方向に国民を持つて行かなければならぬ。(「改進党は別か」と呼ぶ者あり)改進党には特にそういう点をお願いしなければならぬと思つております。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま速記を調べてみますと、おつしやいましたけれども、速記はここにございますから、もしごらんになるのでしたら差上げます。それから岡崎国務大臣も前にはそう思つていた、そういう時期もあつたけれども、だんだん今日御答弁になつたような結論に達したとおつしまいましたが、一般の国民はまだそういうことを知つておりません。ですからどこへ参りましても、それに対する質問、たとえば国連に入るというようなことが問題になつていますけれども、一体それは再軍備をしないでどうするのですかという質問を私は非常によく受けます。こういう点に対して、今まで発表して参りました、と申しますか、委員会などの御答弁などによつて国民はそういう考え方を得たと思うのでございますから、そういう点を至急に声明書を出すなり何なりはつきりとここで御訂正を願わなければならないと思うのです。その点に対してどういう具体的な方法をおとりになるか、もう一度伺いたいと思います。  それから義務規定のことでございますが、義務規定は、もちろん私どもはほかの義務のことを申しているのではなくて、軍事援助のことを先ほどから申しておりましたので、その点も私つけ加えて申しておりきたいと思います。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話はもつともでありますが、これはただ委員会の答弁によつて国論がそつちの方に向いたというのではなく、一般にそういうふうに、たとえば私も今白状しましたが、あるいは国際法の学者であるとか、そういうような人々も、そう考えておつて、自然そういう考え方が国民の中にも影響を持つたのだろうと思います。しかし原則的にはそれは各国は独立国である以上は、普通軍隊を持つのはあたりまえでありますから、これはごく例外的なものであるわけであります。そこで委員会等の答弁につきましては、さらによく研究をいたしまし必要とあらば直すのにやぶさかではないのでありますが、その他適当にもし国民の間に誤解がありとすれば、それは誤解を解くような方法は講じたいと考えております。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう点はなるべく早くしていただきたいと思います。  次に私の知識の足りないせいかもしれませんが、たとえばこの前朝鮮に国連軍が行つたような場合に、多分これは安全保障理事会の問題となつて、そうして朝鮮へ国連軍が行つたのではないかと思いますが、そうした場合に、ソ連が拒否権を使わなかつたかどうか、またそういうような場合が今後起きたときに、安全保障理事会の拒否権というものはあり得るか、あり得ないかということをお伺いしたい。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あれはたしかそのとき非常に新聞等にも出ておつたと思いますが、たまたまソ連が欠席しておりました安全保障理事会できまりまして、勧告を行われ、その勧告に基いて各国援助をいたしておる、こう了解しております。将来の問題につきましては、これはどうなりますか、ソ連考え方もありましようし、そういつも安全保障理事会に欠席するわけでもないでありましようから、これはわからないのであります。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう場合も、拒否権を使われた場合には、国連軍というのは出動できないわけなんでしようか。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 拒否権を使用されますれば、安全保障理事会の決定なり、あるいは勧告なりは成立いたしませんから、その限りにおいてはそういうことは行われなくなると思います。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺います。これは非常に小さい問題かもしれませんが、第十九條の国際連合加盟国であつて、この機構に対する分担金の支払いが遅滞しているものはというふうに書いてありますが、この分担金の支払いが遅滞するというほど、それほどこの分担金というものは多額なものになるかどうか、これは言葉をかえていいますと、日本がもしも国連に参かできたといたしましたならば、日本はどの程度分担金を負担しなければならないのかを承りたい。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ今のところわかりませんが、分担金につきましては、大体各国の間に、五二年度における分担金の比率というのがずつとこまかく出ております。それを見ますとアメリカ合衆国が、全体を一〇〇としますと、そのうちの三六九、つまり三七%ばかり負担しております。イギリスは一〇・五%というような大口なのがあります。フランスが五%、そういうふうになつておりまして、大体この割合でいろいろ考えてみるわけでありますが、そうすると日本の場合は、多分国民所得とかいうような点から勘定しまして一・六%ないし一・七五%程度になるのじやないかと思います。そういうふうな勘定で行きますと、五十二年度の予算の総額は四千八百九万ドルばかりになつております。それの一・六もしくは一・七ということになりますと、七十六万ドルないし八十四万ドル、こういうことになりますが、こまかく言いますと、日本がそれだけ出しますと、予算が超過しますから、また多少全体平均して減らすということもあり得ると思いますが、普通に考えまして大体一・六%か一・七%、こういう勘定になるかと思つております。
  78. 小川半次

    ○小川(半)委員 ちよつと関連して。どうも先ほどからの岡崎国務大臣の御答弁、御説明を聞いておりますと、私とは解釈が多少違うところがあるのです。私はこの国際連合憲章、特に第四十三條、第四十五條その他全般を通じてこの條約を通覧してみるときに、国際連合加盟する資格は、少くとも自己の力で自国を守り得るものが加盟できるという一つのやはり資格を備えなければならぬという点が見出されると思うのです。その資格とは何であるかといえば、やはり自分の力で自分を守り得るもの、要するにやはり武裝しなければならぬ、これが国際連合加盟する前提條件ではないかと思うのです。この私たちの前提條件と岡崎国務大臣のお考えとは全然違うのですが、はたしてあなたのその御解釈でよろしいのですか、どうですか。国際連合委員会においても、武裝なくとも国際連合加盟できるという、あるいはその委員会の記録か何かありますれば――これは明らかにしないと私は重大問題ではないかと思うのですが、この点についてお示し願つて、私はさらにお尋ねしたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こまかく申しますと、なかなかむずかしいのでありまして、たとえば自分の国を自分で守れると今言われましたが、自分の国を自分だけで守れるという国は、世界に何箇国あるか、そうたくさんはないと思います。従つてこの集団安全保障というような考えが出て来るわけであります。しかしそれにしても原則的にいえば、今おつしやつたように独立国たるものが、十分である、不十分であるは別としまして、自分の国を自分で守るという意思とその能力があるべきが当然と思うのであります。しかしながら、日本のような場合には、これは特殊なものでありまし国際連合憲章から見ますと、軍隊がなければだめだということもないのでありまして、また過去におきましても、たしか国際連盟のときに、ルクセンブルグでありましたか、あれはロンドンの條約で、たしか要塞をこぼち兵力を廃止するという協定に基いて、軍備が全然なかつた、そこで国際連盟に入り得るか入り得ないかという問題も起つたと思います。そのときに、たしかルクセンブルグは、軍事的な協力は自分の国はできないが、国際連盟の軍隊の通過を援助したり、あるいは金融上、経済上の制裁に加入することもできるから、国際連盟に加入する資格はあるんだということで国際連盟に入つたと記憶しております。これはもちろん国際連盟のことでありまして、国際連合ではありませんけれども、やはり思想はそういうことで、原則的にはむろんおつしやる通りだと思いますが、特に特別の国につきましては、必ずしもそれがなければ絶対に入れないという問題ではないと思います。そこで今まで御説明したようなことになるのでありますが、ただ日米間の安全保障條約においても規定がありますように、アメリカ側でも日本の自衛力の漸増ということを期待いたしておるのでありまして、普通の常識から申しますれば、独立国、ことに日本の場合のごとく世界経済上その他の関係におきまし相当に主要国とも目される国が全然国を守る力がないというのもおかしな話ではありますけれども、これは憲法その他の関係上、現在のところ、やむを得ぬことであるのであります。ただ、法律的に申しますれば、必ずしも軍隊がなければ入れないという国際連合憲章の條件はない、こう私どもは考えておるのであります。
  80. 小川半次

    ○小川(半)委員 解釈が違うのです。私たちはこの国際連合憲章を読んでみますと、武裝しなければ国際連合に加入できないという解釈になるのです。私は国際学者にも会つて、この国際連合憲章の各條項にわたつていろいろ相談したことがありますが、やはり私たちと同様の意見を持つておるのであります。岡崎国務大臣の御説明は、これは国際連合のあるいは理事会とかあるいは委員会において、そういうことが正式に一体きまつておるものかどうか。あなた一個人の御解釈であるか、あるいは日本の外務省だけがかつてに自己に有利なための單なる解釈ではないのか。いやしくも国際連合憲章は、やはり世界の平和を維持しようとするところの世界の最高機関の憲章であつて、解釈はそう私はあいまいなものではないと見ております。日本政府は、ややもすれば法律をあいまいに解釈する。どちらか有利な方に解釈しますけれども国際連合憲章というものは、かつてにあいまいに解釈すべきものではないと思う。世界日本以外の国は、ほとんど法律というものをはつきりと割切つて解釈をしている。ただ日本においてのみ法律をそのときその場にあいまいに解釈する、そういう悪い習慣があるのですが、国際的な問題においては、私はそういうことはあり得ないと見ておる。第四十三條、第四十五條を解釈するときに、あくまでもここに兵力のやはり援助が必要である。援助しなくて兵力援助を得られるかどうか。こうした根本的な立場に立つて考えてみなければならぬと思う。そこで私ははつきりしたことを申し上げますが、日本がそれでは国際連合兵力援助せずして、日本の危機の場合に兵力援助を得られるかどうか、こういう点をひとつ明らかにしていただきたいのです。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは決して政府なり私なりがかつて憲章を解釈してつおるわけじやないのでありまして、多少の根拠はあるのであります。というのは、サンフランシスコで一九四五年に初めて国連の総会を開いたときに、入つた国は、原加盟国といいますか、オリジナル・メンバー、それは五十三箇国かあるのでありますが、その中には軍備の全然ないパナマ及びコスタリカの両国が原加盟国として入つておるのであります。またその後におきましてアイスランドが加盟したのでありますが、その際アイスランドは軍備を持つていないということを明らかに述べたのであります。しかしそれを述べた上において加盟を認められておるのでありますから、少くともパナマ、コスタリカあるいはアイスランド、これは日本と比べればもつと小さな国ではありましようけれども、とにかく軍備の全然ない国であります。従つて国連に対する義務の履行ということは、たとえば基地の提供であるとか、あるいは国連軍の通過を許容するとか、あるいは物資の調達に援助を與えるとか、こういう種類の義務の履行はできるけれども、軍事的の義務は履行できない。軍備はないのであるということを明らかにして、その上で加盟を認められておるのでありますから、ただいま私の申したように、日本の場合においても国の大小はありましようけれども原則的には軍備がないから加盟できないということにはならない、こう私は考えておるのであります。
  82. 小川半次

    ○小川(半)委員 パナマ、コスタリカあるいはアイスランドが軍備を持たずして国際連合加盟していることは私もよく存じておりますが、しかしこれは今岡崎国務大臣がおつしやつたように、日本の愛知県か岐阜県程度の国なんです。そういう国と日本が同じように解釈されるということは、これは日本国民が許さないと私は思うのです。特にパナマ、アイスランド、コスタリカが国連に加入したときの書類を私は今持つておりませんが、今おつしやつたように基地の提供、それから連合国軍の通過の際の便宜を與える、あるいは国連の兵力に対する分担金を受持つ、こういうこともあつたと思います。結局兵隊を持つことができない、国に兵隊がないから、兵隊を出すだけの分担金を負担する、こういう條件のもとに加入を認められたと私は記憶しております。これは今申し上げましたように、こういう小さな国と日本とは全然立場が違うのであります。日本の場合にはもちろん連合軍に軍事基地を與えるとか、あるいは軍隊の通過を認めるとか、この程度で、実際国連がそれを認めて、なおかつ日本の場合、国際連合軍が徹底的に兵力援助してくれれば、これは日本国民としてこれほどありがたいことはないけれども、はたしてそういう不安な状態でいいのかどうか、私は非常に不安に思うのです。やはり援助してもらうものは、こちらからも援助をしなければならぬ、そこに国際連合の精神があるのですから、あいまいでなくこれははつきりしておきたいと思うのです。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今おつしやつたように、それは国の大きさは違いますけれども、この国連憲章の前文の一番大事なところに書いてあります原則におきましては、国連は「基本的人権と人間の尊嚴及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、」とあります。その国の大きい、小さいによつて権利、義務が違うということではないと私は思つております。これは政治的の問題は別でありますが、国連憲章という一つ原則がありまして――軍備がある国でなければ、加盟できるかできないかということは一種の法律論と思います。それについては国の大小によつてむろん区別はないのであります。軍備のない国がすでに加盟しておるとすれば、法律的に考えて、日本加盟して一向さしつかえないものである。ただ政治的に見て、こういう大きな国が何も持つていないで、人のごやつかいになるばかりではよくないではないかということになれば、これは政治論として別な観点から考慮される問題と思います。なお分担金の問題につきましても、アイスランドは全体の〇・〇四%、つまり一万分の四を負担しておるわけです。ハイチとかホンデユラスという国と同様の一万分の四の負担をしておるのでありまして、特に軍備かないからよけい負担をしておるようなことはなく、原則によりまして一様に国民所得その他の計算方法によつて分担しておる、こう考えております。
  84. 小川半次

    ○小川(半)委員 それではそういう場合に日本の分担金はほぼどの程度であるか、お示し願いたいと思います。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほどちよつて戸叶さんにお答えいたしましたが、大体いろいろの考慮がありまして、たえば国民所得の総額あるいは外国通貨確保の能力とか、いろいろな計算の基礎があるわけであります。その計算の基礎によりまして、先ほど申したようにアメリカは全体の約三七%近くを負担しておるし、イギリスは一〇%余りを負担しておる。この計算によりますと、日本の場合は少し前の国民所得になりますが、たとえば一九四九年の国民所得は全体として八十二億ドル、それに基いて計算しますと、先ほど申し上げたように一・六%ないし一・七五%、これをアメリカ・ドルに計算いたしますと七十六万ドルないし八十四万ドル、こういう計算が出て来るのでありまして、もし加入を認められるとすれば、加入した年の一番近いところの国民所得を基礎にしまして、この割合で計算しまして幾らということが出て来る。要するに全体として約一・六ないし一・七%、こういうふうに考えられるのであります。それ以上のほかの考慮はないと思います。
  86. 並木芳雄

    ○並木委員 ちよつと関連して。ただいまの小川委員の関連質問から私思いついたのですが、どうも日米安全保障條約をめぐつてアメリカの了解が、日本政府日本国民に向つて言う場合と、違つておるのじやないかと感ずるのです、それは警察予備隊についてでありますけれども警察予備隊をこの十月ごろから防衛隊あるいは保安隊にかえて行く、その了解はアメリカの方ではつまり地上部隊として了解しておるのじやないか、空軍と海軍というものはアメリカが分担するけれども、行く行くは日本が地上部隊を受持つべきである、それへの前進である、こういうふうに了解しておるのではないか。それにもかかわらず、政府日本国民の方へ向つては、これはあくまでも警察予備隊である、名前は保安隊か何かにかわつても、実質はかわらないのだというふうに説明されておりますけれども、その間に食い違いがあるのじやないかと思います。そこで食い違いがあるかどうか、これをお尋ねするのですが、今度の保安隊あるいは防衛隊となる場合に、これを英語に訳してアメリカの方の了解ではどういうふうになつておりますか。私が聞いたところではデフエンスという字が使つてあるということですけれども、そういうことで両者の間に思わぬ不一致があると、これはただいまの小川委員の質問に関連して来るのですけれども、やはり国際連合の責任分担という見地から、相当大きな問題になろうかと思いますから、関連して尋ねておきたい。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は警察予備隊等の担当をいたしておりませんから、詳しいことはわかりません。しかし保安隊とか防衛隊とかなんとかいう名前にしようということは私どもも了解しておりますが、それを英語に直してアメリカに話したかどうか、私はまだそんなことを言つたことはありませんが、担当大臣に話されたかどうか、それは知りません、名前はこちらでもまだ決定しておらないのでありますから、それを英語に直したつて、別にどうもまだ元が決定しておらないのですから、どうということはないと考えております。アメリカもこの連合国の中の主要占領事務を担当した国として、日本憲法がどうなつておるか、また日本憲法がどういうふうにしてつくられたか、これはもうよく知つておるわけです。その中に第九條というものがあるということもよく知つておるわけであります。その点について何ら誤解はないと思います。ただ日本側から申しましても独立国になりまして、ほんとうをいえばいつまでもよその国のごやつかいになつて、安全保障を頼まなければならぬというのは情ないわけでありまして、実はできれば自分の国は自分で守りたいという気持は、ひとり改進党のみならず、われわれも考えております。ただ諸般の制約がありまして、ことに経済上の状況等がこれを許しませんし、国内においてもそういう点については、いろいろ輿論調査等を見ましても、まだ必ずしも国論が一致しておるというわけでもないのであります。従つてただいま政府としては軍隊は持たない、再軍備はいたさないという建前をとつて来ておるのでありますが、これと国連加入の問題は、この間も申した通り、軍隊がなくても加入しておる国が現にあるのでありますから、別に支障はない、こういうふうに説明をいたしておるわけであります。
  88. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はきわめて簡單に一点だけ関連して質問しておきますが、ただいまの戸叶委員並びに小川委員に対する政府の答弁が、ややともすると誤解を招きはせぬかと私は考えますので、この際あえてこれを明確にする意味において、政府の見解を再確認しておきたいと思います。  先ほど小川委員国際連合に加入する條件として、自分で自分の国を守るだけの軍備が必要ではないかというような御説でごさいましたが、これには私たちは賛成することはできません。なぜならば、一体国際連合ができた趣旨は、先ほど国務大臣が指摘したことく、近代戰争の性格からいつて、一体世界のどこに自分で自分の国をほんとうに完全に守り得る国がどれほどあるだろうかという御説には、私は近代戰争というものの特殊な性格から見て、その点に関する限りは私はまつたく同意をいたすわけであります。従つて自分で完全に守り得ないからこそ、集団の力によつて個別的ないし集団的な安全保障というのが、けだしこれが国際連合の特殊な性格であり同時にまたこれが二十世紀後半の国際関係の特徴であり、歴史の特徴であると私は考えております、そういう観点から申しますと、必ずしも自分で自分の国を防衛するに十分な軍事力を持つことか、国際連合に参加する前提條件ではないということは考えるわけでありますが、さりとて一面また戸叶委員の指摘したような、日本の軍事的な協力なくしても、国際連合加盟することかできるのだということは、これはあくまでも国際連合の例外的な適用であろうと私は考えます。国際連合の本質からいうならば、これはあくまでも侵略者があつた場合において、共同の力によつて、集団の力によつて、その侵略者から防衛するというのでありますから、そこに軍事的な協力規定のできることは当然のことであります。国際連合憲章の何條でしたかに、もし侵略者があつた場合においては、加盟国は共同の軍事行動をとらなければならぬということが規定してあつたと考えます。従いまして自分で自分を守るほどのそういう高度の軍事力というものは、国際連合へ加入する前提條件ではありませんけれども、しかしながらともに軍事的な協力をし得るというその軍事的協力の単位となる程度の力――防衛力と申しますか、これは私は絶対に原則的に必要であろうと考えるわけであります。たとえて申しますならば、たまたま今日の日本のような立場において、そういう十分な防衛力はないけれども、それにかわつて、たとえば基地の提供であるとかあるいは施設の提供であるとか、あるいは今ただちにそうだというわけではありませんか、人的資源の提供、そういつたことによつて、広範囲意味におけるところの軍事的協力をし得る単位となるだけのものを、加盟国が持たなければならぬということは、私は国際連合の本質からいつて、当然のことであると考えるわけであります。しかるにただいまの戸叶委員に対して政府が繰返しおつしやつている答弁などを聞きますと、あるいはアイスランドの例をとつて来る、あるいはルクセンブルグの例をとつて来る、アイスランド、パナマにいたしましても、これは小川委員の指摘した通り、こういう弱小国と今日の日本とが比較にならぬことはもとより当然のことであります。これこそまさにまつたくの例外的な存在であります。ルクセンブルグの例をお話でありましたが、これは国際連盟当時であります。国際連盟が遂に砂上の楼閣となつてつぶれ去つてしまつたということは、国際連盟には軍事的制裁力がなかつたからであります。戰後新しくできたものは国際連合であつて、これがすなわち国際警察力、軍事力を持つことによつて、侵略国から個別的な集団的な安全を守ろうというのが、この時代の特徴であろうと考えるわけであります。従つてアイスランドのような変則的、例外的なことを大きく取上げて、あるいはすでに失敗したルクセンブルグの問題などを取上げて今日説明されるということは、ややもすれば国民に間違つた印象を與えはせぬかということをおそれるわけであります。従いまして、どうしても軍事的な協力をしなければならぬということは、国際連合憲章を通じてそこに流れておるところの精神であると私は考える。その協力の度合いというものにはいろいろ例外もあるでありましようが、いずれにいたしましても、その国際連合の規定に従つて、万一の場合に侵略国に対して個別的、集団的な防衛をするために必要な何らかの軍事協力をしなければならぬということは、これは原則的に申してこの国際連合に流れておる鉄則であると考えますが、これに対する政府の見解をこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の佐々木君のお話はまことにその通りと思いますか、私どもが今説明しておりましたのは、決して大いにいばつてアイランドかこうだから日本もこうだというのではない。繰返して申しますように、政治論は別であるけれども、法律的にこれを見れば、小さい国だから大きい国だからといつて法律の解釈が違うわけではないのであるから、法律的にはとにかく軍隊がなければどうしても加盟できないというわけのものではない、こういうことだけを申しておるのであります。日本もかりに国際連合に入らなくてもそうであります、入つても当然でありますが、第五十一條にありますように、個別的または集団的自衛の固有の権利を持つておるということは当然であります。また日米安全保障條約の中にも、日本が自衛の権利を持つておるということはちやんとうたつてあるのであります。ただ、ただいまのところは、これを有効に行使する手段がないのであるというのが実情であります。同時にでき得る限り自衛力の漸増ということも、すでに日米安全保障條約の中でうたつておるのでありまして、経済的に、また国民の考え方がこれを許すならば、自衛力はなるべく漸増して――不十分であるとも自衛の力はとにかく増して行きたい、これは当然であります。しかし今はそういういろいろの政治的な日本の立場とか、日本大国としての義務であるとかいうことをちよつとわきにはずしまして、この憲章の国連加入の問題を議論されておるのでありますから、そこで国連加盟については、軍備がなければ絶対的に入れないかという質問に対して、必ずしもそうでない、こういうことだけを申しておるのであります。
  90. 仲内憲治

  91. 林百郎

    ○林(百)委員 国連の加盟の問題について、私たちがこれの賛否の態度を決するについて重要な事項が二つあると思うのであります。一つは国連に加盟することによつて日本の民族が完全に自主性と独立を確立することができるかどうか、第二の問題は、われわれが念願しておる中国、ソビエトを含めアジアの諸国との全面的な講和の実現が可能であるかどうか、この道を切り開いてくれるものであるかどうか、この二つの可能性が確保できるかどうかによつて、われわれが国連に加盟するかどうかという問題の態度を決するべきだと思うのであります。でこの二つの條件が満たされない限り、われわれか新たに国連加盟という問題を提起することは、かえつてわれわれの将来の方向を、国際的にむしろますます孤立化する方向へ持つて行くのではないかと思われるのであります。  そこで第一にお聞きしたいことは、憲章の第一の原則は、加盟各国の主権が平等であるという原則だと思うのであります。これはもう各委員から質問がありまして、また国連憲章の第二條には、「そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。」ということか明記されておる点であります。しかも各加盟国もまたこの原則を遵守しなければならないことは当然だと思うのであります、現に第六回の国連総会において、アジア・アラブ十一箇国の提案に基いて民族の自決権、それから基本的人権の確立という決議案かソ同盟を初め四十二箇国の支持を得て総会で多数をもつて可決され、反対をしたのは米英仏の三国だつたということは、これは先般政府も御承知のことだと思うのであります。そこで一体政府の考えとしては、日本が国連加盟の問題を提唱するときに、アメリカが国連憲章に規定してある日本の主権を尊重するという原則のもとにこれを支持すると考えておられるかどうか、まずこの問題を聞いておきたいと思うのであります。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もちろんアメリカは、アメリカのみならず自由国家群は全部、少くともわれわれの知る範囲では、日本の主権を完全に尊重するということになつております。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、もし自由国家群――アメリカをも含めて自由国家群が、日本の国連加盟の提案をする際に、積極的にこれを支持するということになれば、少くとも国連憲章に規定しておる諸原則を厳守する二とは間違いないと思います。そこで国連憲章の第七十八條を見ますと、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国なつた地域には適用しない。」とあるのであります。もしアメリカが、日本の国連加盟について主権平等の原則に基いてこれを支持するとするならば、みずからまず日本アメリカとの間に国連憲章の精神を実現すべきものだと思うのであります。従つてこの西南諸島の信託統治の問題については、日本の国連加盟を積極的に支持するアメリカとしては、当然主権を日本に完全に復帰させるべきものだと思いますが、この点については政府はどういうようにお考えになつておりますか。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府は、南西諸島につきましては、すでに平和條約を調印いたしまして、これを国会の承認を得て批准をいたしアメリカに寄託をいたしております。この平和條約の條項に基いて、日本アメリカの提唱する信託統治に対して同意することにいたしております。その通りするつもりであります。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 私は岡崎国務大臣並びに西村條約局長にお聞きしたいのでありますが、一体講和條約第三條の信託統治というのは、国際信託統治制度第七十六條の第何項に基く信託統治になるわけですか。
  96. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 岡崎国務大臣の先刻の御答弁を補足させていただきます。第七十八條がサンフランシスコで入りました理由は、サンフランンスコ会議にシリア、レバノンがすでに参加いたしておつたのであります。このシリア、レバノンは大戰末期まではフランスの委任統治地域であつたわけであります。フランスとこの両国との間のいろいろないきさつがございまして、委任統治地域から独立国へ移行せんとする過程にありました。それでこの両国から、国際連合成立したあかつきにこの二国が憲章に署名いたすことになりますと、加盟国でありつつ、なおかつ委任統治地域というような地位に置かれることはなかろうかという不安を持つていたわけであります。この不安を一掃するために、その当時委任統治制度に――今は信託統治制度でございます――あるような地域が、他日国際連合加盟国なつた場合には、国際連合の基本原則は主権平等の原則であるから、信託統治制度とは両立いたさないという規定を設けた次第でございまして、これはまつたくこの條項を置かれました由来から考えまして、ある一つの地域が信託統治制度ないしは委任統治制度のもとにあつたものが、だんだん発展して参りまして独立国の地位に近づき、そうして国際連合加盟する場合のことを予想して、そういう場合には信託統治制度を用いてはいかないぞ、こういうのであります。でございますから、決して国際連合加盟国の領域であつたところの一部が、国際連合憲章によつて信託統治制度に置かれるということを排除する趣旨日のものではございません。この点は御了解を得たいと思います。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 私は西村條約局長の他国の例をひつばつて来ての話では納得できないのでありまして、少くとも第七十七條、第七十八條等によりますと、信託統治下に置かれる地域というのは、自治能力のない地域であります。自治能力のない地域に、自治能力を高め、民度を高めるということのために、国際連合憲章に基く信託統治制度というものがあると思うのであります。ところが高度の自治能力を持ち、日本への完全なる復帰を心から望んでやまない南西諸島を、国際連合憲章を尊重するというアメリカが、国際連合憲章に基く信託統治制度のもとに置くということは、われわれ了解に苦しむのであります。しかも最近では、沖繩に沖繩統一政府をつくりまして四月一日から憲法が施行され、行政院が設けられ、立法院が設けられ、しかもこの行政院の長官の諸権限は、アメリカの司政官によつてどうにでも変更できる。立法院の決定した諸法律も、アメリカの司政長官によつてどうにでも変更できる、裁判所の判決も変更できる、こういう趣旨の憲法が施行され、選挙が実行され、すでに沖繩の統一政府ができたことは先般御承知だと思うのであります。もしアメリカが国連憲章の精神を真に尊重するというならば、いかなる点から見ても、これを恒久的な信託統治に置くということは、国連憲章違反だと思うのであります。しかも最近われわれが入手したいろいろの新聞記事その他によりますと、恒久的な軍事基地がつくられているということは、否定できない事実だと思うのであります。そうすると、これは明らかに戰略地域に該当すると思うのであります。ところが信託統治地域を戰略地域にするということは、これは安全保障理事会の決定にまたなければできないことであります。従つて岡崎国務大臣は、口ではアメリカ日本が国連に参加することを積極的に支持すると言つているのですが、実際のアメリカの政策は、すでに日本が国連に加盟することについては関心を持つておらない。むしろほとんどできないということを前提として信託統治制度を固め、しかも安保理事会の決定を無視して、戰略的な信託統治地域にしているということは、否定できないと思うのであります。口では支持すると言いながら、実際には日本加盟することを無視して、みずからは自分の好むことを、憲章を無規し違反して行つているといわざるを得ないのであります。そこで私は、西村條約局長にもう一度お聞きしますが、一体第七十六條の第何項に基く信託統治になるわけですか。
  98. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 先刻の御質問に対して御答弁申し上げることを忘れまして失礼いたしました。御質問の点に対する答弁は、第七十七條1のb項によるものであります。このことは昨秋平和條約が国会で御審議を得ましたときに繰返し繰返し御説明申し上げたところであります。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 信託統治にする根拠が第七十七條のb項であることはわかりますが、国際的な信託統治制度にする目的は、第七十六條の第何項の目的を実施する必要から信託統治にするというわけですか。
  100. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 これは第七十六條にa・b・c・dとございますが、この全部を勘案して考えるべきものだ、この考える次第でございます。申すまでもなく、繰返し昨秋御説明申し上げましたように、日本政府といたしましても、日本国民というたしましても、第七十七條1のb項による南西諸島の解決方法が必ずしも好ましくないものであるということは繰返し申し上げたところろであります。しかし平和條約で言つておりますことを、林委員は少しゆがめて御質問になつておるように思うのであります。平和條約は、アメリカが信託統治制度を提案することに日本が同意するということが前段の條項であります。後段は、そういう提案をしそれが成立するまでの間南西諸島の立法、司法、行政、三権を合衆国が行使することができるという規定でございます。しかもこの規定につきましては、当該條項第三條によりまして、合衆国としてはこれらの島々を日本から確定的に引離す意思はない。日本は依然として主権を保留し、当該諸島におけるわが同胞諸君が依然として日本人であるということに異存はない。なおまたこういう制度に置くということが決して永久の事態でなくて、合衆国としては一日も早くこれらの島、並びにわが同胞が日本に完全に復帰する日の来ることを期待するということをはつきり言つてくれております。ですから平和條約発効後におきます第三條の実施の経過をごらんくださいましてから林委員から御批判をいただきたい、こう申し上げたいのであります。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 西村局長の言うことは何から何までみんな矛盾だらけであります。たとえば第七十七條のbを見ますと「第二次世界戰争の結果として敵国から分離される地域。」に政府は主権があると言う。しかしこれによれば、敵国から分離されたということは明らかに主権がなくなるということであります。常識的に考えて、主権がありながら分離されるということは考えられないのであります。従つて、もし第七十七條のbによれば、政府は潜在的な主権があるとかなんとか言つているけれども、実際は日本の国の領土から引離されると解釈せざるを得ないのであります。また第七十六條の目的を勘案すると言いますが、一体「国際の平和及び安全を増進する」ために、あそこに恒久的な軍事基地が設けられるということ、また「自治又は独立に向つての住民の漸進的発達を促進する」といいますが、しかし、少くともあなたが日本人であるならば、日本の統治下に沖繩、琉球のあることが、自治または独立に向つて、住民が漸進的に発達することを妨げるものとは言えないと思うのであります。しからばいかなる理由からいつても、沖縄が国際連合憲章に基いて信託統治にされなければならないという理由は完全にないと思う。これは明らかに軍事的目的以外ではないと思う。しかもあなたは、講和発効後第三條に基く暫定的な措置であつて、将来は日本に返還されるというようなことを言われておりますが、しかしあそこには恒久的な軍事基地をつくられていることは否定できない。そうすると、これは何と口をきわめて抗弁を盡そうと、戰略地域として実際的にはアメリカがここを支配していることは否定できない。そうすると、安全保障理事会によつてその方針が決定されなくて、戰略地域としてかつてに使つているということは、明らかに国際連合憲章違反である。信託統治にするということ自体が国際連合憲章違反である。それからこれを戰略的な目的に使うこと自体が国際連合憲章違反であめる。アメリカが実質的に日本国際連合加盟することを支持するならば、みずからが犯しているこの国際連合憲章違反をどうしても直さなければいけない。口では支持すると言つても、実質的には妨げている。実際はソ同盟の拒否権によつて日本国際連合加盟できないだろうということを前提とし自分は着々と行動して既成事実をつくつているということになると、政府が今提案している日本国際連合加盟というのは、実際はソ同盟が拒否権を行使した場合に、日本国際連合加盟をソ同盟はじやましているのだという反ソ、反共の宣伝の具に供するだけであつて、ほんとうに国際連合加盟するということのために、実質的に日本資格をとるための努力は何らしていない。岡崎国務大臣はにやにや笑つておいでになりますが、それではあなたは琉球に対して、日本が国連に加盟するということを前提としてどういう交渉をアメリカとなさつているか。暫定的な措置といいますが、一体いつ完全に日本に主権が復帰しておりますか。そういう中交渉と、今後のあなたの構想をまず説明していただきたい。そんなにあなた一人でにやにやしていたつてだめだ。それを聞いてからまたあなたにいろいろお聞きしたい、どういうことを考えているのですか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや決して笑つたわけではないのですが、あなたのおつしやることが、アメリカは口では日本国際連合加盟を支持するが、実際はそうしていないのだとおつしやるので、ちようどイタリアの例を思い出したのです。イタリアの條約はあなたのおつしやるいわゆる全面講和でありまして、ソ連アメリカもイギリスも調印しており、その條約の中には、署名国はイタリアの国際連合加入を支持するという明文があるのであります。ところがイタリアは何べん国際連合に加入を申請しても、ソ連の拒否権によつて加入は認められていない、こういう事実を思い出して何だか妙な感じがしたのであります。それだけ弁解をいたしておきます。決してあなたのおつしやることを笑つてつたわけではありません。  そこで沖繩島につきましては、あなたの考え方は、主権があるのになぜこうなつているのだということですが、われわれの方では、本来は旧敵国の領土の一部として、この第七十七條のb項によつて日本から分離される地域ということで、あなたが言われるように完全に分離される地域であつたのを、国民のいろいろの願望もあるし、沖繩島民の希望もあつて、とにかく主権だけはとりとめた、こういうことなのであります。それはいろいろ矛盾はありますけれども、矛盾があつても主権がなくなるよりは主権があつた方がよろしい、こう思つて努力してここまで来たわけであります。実際上はリツジウエイ最高司令官が今年の初めに声明を出しましたように、沖縄島の政治的の分離は従来の文化的、経済的の結びつきを切り離すことを意味しない、むしろ軍事的の安全に反しない限りは、右地域と日本との間の旅行、通信、交易の不必要な制限を除去するように努力したい、こういうことを述べておるのでありまして、今後も、文化、経済、教育等の部面におきましては、できる限り密接な連絡関係を保持して行こうというつもりで、現にいろいろ話合いをいたしております。国際情勢が、現在のようなことで、はたしてこれがほんとうに平和になるのかならないのかまだわかりませんが、安全保障條約の精神も、こういう沖繩島の問題も、いずれ国際情勢が平和になりますれば、すべて一挙に解決するものでありますが、それまでは日本としてはできるだけこれらの国々と密接な関係を維持して、他日国際情勢が許すならば、潜在的の主権が顯在的の主権になるように今から用意いたしておこう、こういうつもりでいろいろやつております。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 時間もありませんからこの問題をもう少し深く入りたいと思います。この問題については先般来黒田委員も執拗に質問しているのでありますが、先ほどの岡崎国務大臣の答弁によりましても、第七十七條のb項に基く敵国から分離される地域であつたものが、潜在的な主権だけでもとりもどしたことは、自分の手柄だというような言い方については、われわれは唖然とせざるを得ないのであります。一体敵国から分離さけなければならないというとりきめは、どこで国際的にされたのでしよう。まつたアメリカの一方的な考え方だけだ。分離されること自体を防ぐことが、日本政府の責任ある地位の人々のなすべきことだ。それができなかつた、ただ潜在的な主権をとりもどしただけが手柄ではないかということは、これは三歳の章十をだますこともできないことだと思うのであります。しかもあなたの言う潜在的な主権というのは一体実質的には何なのでしよう、何一つないじやないですか。すでにあそこには立法院、行政院、裁判所ができて、その最高責任者はアメリカの司政官だ。あそこにはアメリカの恒久的な軍事基地がつくられており、原爆の基地としては最も優秀な條件がある。もうハワイよりはむしろ沖繩の方を重要視しなければならないということを、公然とアメリカの軍の首脳部が表明しているじやないですか。一体ここで岡崎さんは何の手柄をしたのでしよう。私はここでもう少しこの問題をあなたに反省していただきたいと思うのであります。ソ連の拒否権の問題を申しますと、イタリアのときも、ソ連が拒否権を行使することによつて、イタリアが国連に加盟できなかつたと誇らしやかにあなたは説明している。おそらく日本の場合にもそれを使おうとして、あなたはこの問題を国会に提起しておるのだと私は考えておるが、あなたが御承知通りに、ソ連では、イタリアを加盟させるならば、ルーマニアそのほかの民主主義人民共和国も一括して加盟させよう。最近のイタリアの動向は、北大西洋同盟等に加盟し、ソ連等を仮想敵とするような方向へ行つておるから、イタリアを加盟させるならば、同時に均衡上ルーマニアそのほかの東欧諸国も加盟させようという一括加盟の提案を国連にしている。ところがアメリカの方では、イタリアあるいは自分の意思に従う国だけは国連に加盟させよう。しかし自分の意思で動かない国の国連加盟は拒否しよう――最もはなはだしいのは中華人民共和国の国連加盟拒否の問題であります。だれが考えたつて、中国四億五千万の人民が今中華人民共和国を支持しているのは当然である。ところがこの国連加盟を拒否しているのはだれですか、アメリカそのものではないですか。この点から見ましても、ソ連の拒否権は、あたかもソ連日本を不利に陷れているのだというような立場からあなたは説明しようとしている、その魂胆こそが、この国連加盟の問題を国会へ提案しているあなたの本意だ。あなただつてまさかほんとうは国連へ加盟できると考えてはいないだろう。全面講和の努力も何もしなくて、中国を仮想敵にしておきながら、そういう講和を結んでおきながら、やすやすと日本が国連加盟ができろということは、常識ある人ならば考えていない。ところがそれにもかかわらず、いまさらこういうことを持ち出すのは、ソ連日本の仮想敵であるという宣伝のためだと私は考えざるを得ない。そこでその次の問題としてあなたにお聞きしたいことは、アメリカは国連憲章に忠実だ、ソ同盟はいつも国連憲章に違反しているというような意味にあなたの説明ではとれるが、一体その次の国連憲章原則ということは何かという問題で、これを私たちは検討して行きたい。これは明らかに大国一致の原則である。国連憲章の第五十三條によりますと、「安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によつてとられてはならない。もつとも、本條2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第百七條に従つて規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要巽南に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。」「本條Ⅰで用いる敵国という語は、第二次世界戰争中にこの憲草のいずれかの署名国の敵国であつた国に適用される。」とあるが、国際連合憲章を貫いている精神の第二の原則は、明らかに、第二次世界大戰における旧敵国の侵略的な勢力の再現を防ぐということだと思うのであります。ところが、共同一致の原則大国一致の原則が安保理事会の常任理事国の運営に貫かれている方針であるにもかかわらず、その常任理事国はソ同盟諸国を仮想敵として、アメリカが旧敵国たる日本と安全保障とりきめをするということ、このこと自体アメリカが国連憲章の基本的精神を破つていると考えざるを得ないのであります。そこでこの問題について少しお聞きしておきたいと思うのでありますが、一体日本は本心から、国際連合憲章に基いて大国一致の原則を尊重しながら、ソ同盟、中国等の国々と平和的なとりきめをしようとする意思があるのかどうか。そういう自信があるというならば、具体的にどういう努力をされるのか、この点をきようは岡崎国務大臣から、責任ある言明をとつくりとお聞きしておきたい。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も決して別にアメリカを弁護しておるわけではありませんから、林君も特にソ同盟のことについてむきになられなくてもいいと思います。そこで今いろいろおつしやいましたが、私どもは善隣友好――といいますと何か非常に常識的なことになりますが、いかなる国ともできるだけ正常な平和関係で進みたいということは当然であります。しかしながら、たとえばソ連とそういう平和関係に入りたいという希望は持つておりますが、平和関係に入るということは、実質的に平和な状況のもとになければならないわけであります。先ほども林君が指摘されましたように私の手柄とは決して言いませんが、本来は主権も引離される沖縄に、ようやくにして潜在主権だけはとり得た。これを大して手柄とも私は思つておりません。現に私どもは樺太や千島についても、ことに千島と何ら関係のない歯舞、色丹等の島について、従来の住民の希望もあるから、なるべくこれも日本の主権のもとにとどめたいと思つて努力をいたしたのでありますが、これについては全然効果がなかつたことを恥入るような次第であります。そこでソ連との間には、たとえば今申した歯舞、色丹という日本固有の根室に属しておる鼻の問題もありますし、また例の三十数万という抑留者の問題もある。あるいは日本の漁船や漁夫が抑留されて帰つて来ないという問題もある。いろいろの問題がありまして、これをそのままにして平和條約をかりにつくり得たとしても、その平和條約は意味をなさないものであります。まずこういう懸案が解釈されるのが先決問題であると思つております。この点については、多少性質は違いますが、中共についても同じように考えております。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 これはこの前西村條約局長の答弁の中でも問題になつたのでありますが、講和條約が締結された後は、極東委員会並びに対日理事会が当然に解消するというような説明を聞いたのであります。しかしモスクワ協定を検討してみますと、極東委員会が解消するのは「極東委員会は四国即ち合衆国、聯合王国、ソヴイエト社会主義共和国聯邦および中華民国の代表者を含める一切の代表者の少くとも過半数の同意に依り其の趣旨の決議が為されたるとき任務遂行を終止すべし。」すなわち少くとも合衆国、グレート・ブリテン、ソビエト、中華民国――中華人民共和国、この四箇国の代表を含むそのほかの極東委員会代表者の少くとも過半数の同意によつて、初めて極東委員会の任務は終了するものだ、日本アメリカとだけが講和條約を締結したから極東委員会も解消する、極東委員会の指示に基いて行動する連合国最高司令官もなくなる、この連合国最高司令官の諮問機関である対日理事会も解消する、こういうことはモスクワ協定のどこを見ても出て来ないのであります。そしてわれわれは日本とソビエトとの関係は、戰闘状態の終了した戰争状態が継続しておる、要するに戰闘のない戰争状態が継続しておる関係である、降伏條項に基く降伏国の関係にあるという話を聞いておる。しからば明らかにソ同盟としては、この降伏條項を実践するための足がかりあるいはこれを監督するための機関を講和発効後も日本に持ち得ることは、モスクワ協定によつても明瞭だと思うのであります。日本アメリカとの間に講和條約が締結されれば、従来の国際的な諸とりきめは一切雲散霧消してしまつてソ連日本に何らの足場も持ち得ないのだという暴論は成り立たないと思うのであります。ただ私がこういう質問をするのは、何もそれだからといつてソ連が戰勝国として日本に何らか指示をするとかいうことではないのであります。先ほど自由党の北澤委員すら、最近新しい平和的機運が世界的に台頭して来た、たとえばスターリンのメツセージであるとか、あるいは国際経済会議の招請の問題であるとか起きておる、これにやはりわれわれは注意を喚起すべきだということを言つておるのであります。何も国際的な法律関係があるからといつてソ連日本に新しい何らかの指示要求をして来るとは思わないと私は確信しておりますけれども、少なくとも国際的な関係としては、明きらかに極東委員会は存続し得るし、また極東委員会が存続し得る限り、この極東委員会の諸決定を実施しなければならない連合国最高司令官、並びにその諮問機関である対日理事会は、日本アメリカとの考えだけで解消するはずは絶対にないと思う。この点について岡崎国務大臣の答弁をお聞きしておきたいと思います。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 非常にソ連お話を聞きましたが、モスクワ協定というものは米・英・ソ・中国の四箇国の間の協定と了解しております。従つてこの四箇国の間で解決すべき問題であつて、われわれは直接には関知しないものであります。われわれの関知するのはポツダム宣言及びそれに基く諸種の指令でありまして、ポツダム宣言の第十二項によりますと、「前記諸目的が達成セラレ且日本国国民ノ自由二表明セル意思二従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府が樹立セラルルニ於ナバ聯合国ノ占領軍バ直二日本国ヨリ撤収七ラルベシ一こう書いてあります。平和條約が締結せられますと、連合国のいわゆる占領軍は、御承知のように今アメリカ及び英濠の両国の軍隊になつておりますが、これは撤退すると了解いたしております。従つて日本の占領なるものはなくなつてしまう。それに対しかりに文句がソ連にあるならば、ソ連がモスクワ協定違反だというならば、そのモスクワ協定締結国に言われるのはけつこうでありますが、日本国に対しては直接関連はない。われわれの方は平和條約に基きまして占領軍が撤退するということになりますから、そこで対日理事会というものは少くとも占領軍最高司令官の諮問に対する機関であると了解しておるから、これはなくなつてしまう。極東委員会の方はアメリカに置かれました政策を決定する機関で、これはなくなるか、なくならないか、私はなくなると聞いておりますが、これはまたその関係国できめることであるのであります。何もそれは別にふしぎなことはないのであめて日本としては何も四箇国の協定内容にまで首をつつ込んで、これの違反であるとか違反でないとかいうことを言う必要もないし、言う権限もないし、何ら関係はない、こういうことであります。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に重要な発言を聞いたのでありますが、ポツダム宣言の第十二項の前記諸目的が達成され日本国国民の自由に表明された意思従つて、平和かつ責任ある政府が樹立せられるということは、日本国の判断によつて決定されるように岡崎国務大臣は答弁されておる。しかしこれは明らかに極東委員会が決定することなんです。日本がそうなつたからもうソ連も出て行け、どこも出て行けということが言えるはずはないと思う。ポツダム宣言を実施することを監督する機関はどこであるか。ポツダム宣言の諸目的が達成されたかどうかということを認定する権限は、どこにあるかということをまず私はあなたにお聞きしたい。これは明らかに極東委員会が決定することである。日本アメリカと講和を結んだからといつて、ポツダム宣言の諸候項が、全部アメリカとの話合いだけで完全に達成されたのだということを言う権限は、絶対にないと思います。これはモスクワ協定をお読みになつてはつきりしている。少くとも四箇国を含む多数決によつて、極東委員会の運営は決定されるということが書いてある。この四箇国の間に大国一致が達成せられなければ、これはまだまだ極東委員会が、日本にポツダム宣言の目的が完全に達成されたと認定されることはできない。私はそう解釈するが、その点についてあなたによくお聞きしておきたい。  それから西村條約局長にお聞きしたいのですが、これは四月九日の産業経済新聞に出ておりますが、あなたは国会では、日本とソビエトとの間は、戰勝国と降伏国という関係に法律的にはあるのだということを説明されたにもかかわらず、これで見ますと、これはあなたの談話のような形式になつておりますが、はたしてあなたが談話されたかどうかわかりませんけれども、この関係ではなくして、対等の無條約状態の方が有利だから、今後はこういうようにしたいものだということが、これに述べられておるのであります。「しかし戰争状態の継続は一応戰勝国と戰敗国の関係に立つので、これよりは無條約関係とした方が対等の立場に立ち得るとの見解からこの考え方の変更が行われるようである、」ということが書いてあります。これはあなたの写真まで念入りに出ておりますから、何かあなたがこれに関知しておられるのかどうか。だんだん思い上つて来て、国際的な関係日本だけできめるようなことになると、これは非常に危険だと思います。私も日本人である限り、日本が国際的に平和的な地位に立つことを心から望んでおりますが、あまり思い上つたことを言つて、国際的に笑われたら、これはかえつて日本の外交関係からいつて不利だと思いますから、私は常識ある答弁を実はお聞きしたい。もしあなたがそんなことを言つているかどうかというなら、ここに新聞があります。あなたの写真も入つておりますから、全然あなたに縁のないことが写真入りで出るはずがないと思います。また岡崎国務大臣の先ほどの答弁を聞くと、だんだん思い上つて、口先だけで日本政府がかつてにどうでも国際関係は決定できるのだというような方向へ行く危険も感知されますから、お二人にはつきりその点の答弁を求めたい。岡崎国務大臣からまずお聞きしたい。ポツダム宣言の十二項を、日本政府だけで、もうわれわれは目的を達成したということが言えるかどうか。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 速記をあとでごらんになればわかりますが、私はむろん日本政府がそういうふうに解釈するとは言つておらない。ただ連合国最高司令官は、連合国の占領軍は、日本の講和條約が発効したときにはもうその形態をなくす、つまり占領ということはなくなるのだ、こう最高司令官が言つておるから、そう言つておるのです。最高司令官が言うのは不都合だというなら、それは最高司令官に抗議をなさるのがいいのであつて、私は最高司令官は、占領軍の一番最高の人間であつてこの人が言うことは、連合国を代表していると了解するということは、何ら間違つていないと思うのであります。けしからなければそつちへ言われるよりしかたがない。それで私は決して自分で解釈しておるわけではない。現に連合国の占領がもうなくなつてしまうということになつておる。ですからなくなるということを言つておる。そうすると占領軍の最高司令官に対する諮問機関である対日理事会なるものは、最高司令官がなくなつてしまえば当然なくなつてしまう、こう考えざるを得ない。それから極東委員会の方は、先ほど申し上げたように、極東委員会それぞれの国の話合いでどうなるか、それはその関係国の話合いによる。しかし特にわれわれが、モスクワ協定が正しく守られているか守られていないかということを、そこまで首をつつ込んで話をする立場にもないし、またする必要もない、こう言つておるのであります。
  109. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま御指摘になりました新聞の記事は、初めて承知いたしました。私は全然同新聞の記事に対して関係がございませんということを明白に申し上げます。内容を見ましても、私の考えとは全然違つておりますので、一に書かれた新聞社の方の御責任であると御了解願いたいと思います。過去二年、私は原則といたしまして、新聞社の方と直接お話をするということは、あらゆる場合にかんべんをしていただいて来ております。最近に至つてもなおかつそれをかえておりませんので、どうか新聞記事に私の意見として載るような場合は、本委員会などで申し上げました趣旨以外は、大体新聞記者諸君のお筆になるものだと了解していただきたいと思います。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 岡崎国務大臣は実に口先は上手で、アメリカとの対日講和條約のアメリカの利益代表と、極東委員会の決定した政策を実施する機関としての連合国最高司令官とをごつちやにして、日米の講和條約によつてアメリカの軍隊が日本から撤退するという問題を、あたかも極東委員会の諸決定に基いて連合国最高司令官が、すでに日本に対して占領目的を達成したのだから、今田占領軍を撤退するのだと言つているというふうに堅白異同の弁を弄している。もし極東委員会の決定に基いて連合国最高司令官が、すでに日本はポツダム宣言に基く諸任務を達成したのだということを、正式に日本政府に言つたとするならば、私は次会にその資料をいただきたい。私は日本アメリカとの間の講和條約に基いて、アメリカ軍が撤退するとかなんとかいう話は聞いている。しかし極東委員会が正式にこの問題を坂上げて、決定したとは聞いておらない。もしそういうものがあるならお聞きしたい。この問題は次会にもう少し岡崎国務大臣と意見を交換したいと思います。  最後にお聞きしたいことは、ソ連日本との間の法律関係を――こう言つたからといつて、私は決してソ連が新しく日本に何らかの義務を課して来るとか、あるいは苛酷な條件を戰勝国として押しつけて来るということは、夢にも思つておらない。そのことはソ連が昨年の暮れからことしに至つて日本にどういう呼びかけをしているかということで明らかである。あなたはまた笑つていますが、たとえば国際経済会議でもそうでしよう。岡崎国務大臣は幾度かうそを言つている。ことにあなたはアメリカからだれも行かないと言つた。行くというなら証拠を見せろと言つた。あなたはそのことを忘れてはいないだろう。何なら速記を見ればちやんと書いてある。ところがアメリカではちやんと行つているではありませんか。十一人くらいも行つている。そうして大きな取引をしようとしている。それでモスクワにおける国際経済会議は、これは過小評価してはならないということを、はつきり言明している。正式に招請を受けて行かないのは、日本だけである。しかも国民全体としては、高良さんがモスクワへ行つてくれたことに対して、非常に大きな期待を持ち、喜びを感じている。むしろ政府の処置が不当だということは、大体の輿論であります。ところがふしぎなことには、この高良さんを処罰するとかなんとか言つている。これに至つてはわれわれはまつた政府の常識を疑わざるを得ないのであります。旅券法違反で処置考慮、保利内閣官房長官談というようなことが出ている。一体これは政府のほんとうの腹なのかどうか、もしこんなことをするならば、これはとてつもない国際的な笑いものである。しかもあなたは、ソ連では身体の安全が保障できないという、非常に御親切な心配をしてくれた。しかし高良さんがモスクワからの電話通信――これは毎日新聞にも載つておりましたし、そのほかの新聞にも載つておりましたが、自分はモスクワへ来てよかつたと思うと言つている。それから国賓待遇を受けている。非常に優遇を受け何らの身体の心配もないと言つている。ところが国会であなたはまるでうそを言つている。見て来たようなうそを言つているが、実際見て来た人から、あなたの言うことはみなくずれて来ている。一体あなたはどういう根拠から、アメリカからは代表が行かないということを言つたか、これが第一点。第二点は、一体高良さんを処罰するというのはほんとうの腹かどうか、処罰するというのは一体どういう根拠からするのか、それをはつきり責任ある答弁をお聞きしたい。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもきようの質問とはちよつと違うようでありますが、アメリカから一人も行かないということは、そのときに、多分速記録に出ていると思いますが、ただいま私の得た情報では行かないということになつておると思います。そのときは行かないという情報を確かに受けておりました。その後かわつたかと思います。高良さんのことについ今官房長官談ということを言われたので、保利官房長官に聞いてみなければわかりませんが、われわれの方では、高良さんがソ連に行くということを言つて日本を出たのでないことは確かなのです。そこでそういう場合に旅券法の違反になるかどうかということは調査はいたしておりますが、まだ結論は出ておりません。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 調査をしているが、そうすると調査の今の段階ではどうなんです。大体保利官房長官はこう言つているが、外務省としてはまた別個な見地から検討しておるというように解釈していいのですか。それともそういうことはもう考えておらない、むしろ日本の外交のために非常に寄與してくれた、政府が表面切つてやれなかつたことをよくやつてくれたというようにお考えになりますか。そう考えれば私も見直しますが、その辺のもう少しはつきりした答弁を最後にお聞きしておきたいと思います。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別に寄與したとも思つておりませんが、いずれにしても調査中で、結論はまだ出ておりませんから、どつちになるということは言えないのであります。  それからさつき言い残しましたが、高良さんが無事に帰つて来たとしても、それは一人無事に帰つて来たのであつて、逆に無事に帰つて来ないのが三十何万人いると思う。三十何万分の一であるから政府としてはやつぱり心配であるということを言つても一向さしつかえない、またそういうのが当然である、こう考えるのであります。
  114. 小川半次

    ○小川(半)委員 関連してお尋ねしますが、実は先般この旅券法に関連して、モスクワ経済会議派遣について私が質問した責任がありますから、本日お尋ねするのですが、私があのときに質問しました際に、岡崎国務大臣は、モスクワ経済会議派遣は好ましくない、これはソ連の平和攻勢の一環とも見られるので、政府は許可しない方針であるというような意味の御答弁であつたのです。この政府態度に反して、参議院議員の高良女史はソ連に入国されたわけですが、おそらく保利官房長官も、そうした政府態度とは相反した行動をとられたから、帰国後は旅券法によつて何らかの処置をするということを言明されたものだ、私はかように解釈するのですが、そのように解釈してよろしいですか。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 保利官房長官の言われたことを私に注釈せよと言われても、これは無理でありまし私の方はとにかく振舞の上においては、ソ連に行くということは書いてないのであります。それは途中でどういうようなかつこうで行かれたか、まだ明白でありませんけれども、とにかくソ連に行かれたことは事実です。そこでその事情を取調べて、旅券法との関連を研究しておる。これは結局のところ帰つて来なければわからないと思いますけれども、とにかくそういうことを研究しておるのであります。これはり初めから処罰すべきものだという先入主で研究するのも間違つておりますし、処罰しないように研究するのも間違つておるのであります。まつたく虚心坦懷に研究しておる、こういう段階であります。
  116. 小川半次

    ○小川(半)委員 それでは今後たとえばだれかがソ連に入国したい場合、最初日本を出るときにはソ連入国のヴイザをとらずして日本を出て、そうして出先からソ連へ、高良女史と同様の道程をたどつて入国しても、これは一体いいのですか。高良女史のことが例になつて、そういう場合が今後ありつ得ると思うのです。政府においてさしつかえなければ私たちでもそうして行つてみたいと思いますが、これはいいのですか。はつきりしておかないと、相当国民の間にも、どうも先般の経済会議派遣の件は、政府はけしからぬと言う人もあつたでしようし、ある人は政府は妥当な処置をとつたのじやなかろうか、こういうぐあいに解釈している国民もあつたわけです。その政府が妥当な処費をとつたと信じておつたのに、こういう事態が起つて来たならば、政府の面子はまるつぶれであるし、日本政府なんてずいぶんたよりないものだというふうに国民がなつて来るのですが、今後は出先からそうしてソ連に入国してもさしつかえないわけですかどうですか。この点を明らかにしてほしいと思います。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府はそういうことはよろしくないとは思つておりますけれども、国民の権利義務といいますか、処罰をするかどうかということになりますと、これは法律の規定によるわけであつて、小川君もその一員として旅券法を制定されたのですが、その振舞法の規定にそういうものがなければ処罰はできないわけであります。旅券法というものは、元来できるだけ親切につくつてある法律でありまして、たとえばあなたがアフリカならアフリカにおいでになる、そこには日本の領事館もない。ところがちよつとコンゴからタンガンイカに行きたいというような場合に、一々本国に言つて、入国の許可を得それをどこかの領事館に持つてつて査証をもらつて行くというのでは非常に困る。外国に行つていてちよつと隣の国に行つてみたいというときにできないから、そういうときの便宜をはかるために、旅券法では査証を得れば原則として行かれるようにしてあるわけであります。それをむやみに濫用されるということになれば、これはまた旅券法を適当に改めなければならないということにもなるわけであります。これはいずれ十分研究しまし必要とあれば旅券法の改正をお願いしなければならぬ、こうも考えておりますが、まだいずれにしても研究中でありますから、その結論をここで申し上げるのはまだ早い、こういうことであります。
  118. 小川半次

    ○小川(半)委員 とにかく先般の政府態度は一応行き過ぎであつた。こは今日から見ればもう一度反省しなければならぬ、こういう態度政府は率直に示さなければならぬと思います。私はどういう立場から見ても、あの旅券法から言つてあれを許可しないということはないと思うのです。私は先般詳しく申し上げましたから、本日は言いませんけれども、旅券法の立場から見れば、あれを不許可にするという根拠は全然ないのです。私はあのときにも何回も繰返して申し上げたのですが、どうも岡崎さんは逃げる一方で、つその結果高良さんがとにかく脱法行為というか、非常に巧妙な手段で入つたという結果が今出て来たのです。この間政府がおつしやつたような不許可の態度がやはりいいのですか。旅券法から言えば、あれは政府ちよつとかつて過ぎたと思うのです。私は振舞法の立場から言うのです。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは意見の相違になるかもしれませんが、旅券法の精神と今の政府のとつておるやり方――私は政府のとつておるやり方は正しいと思います。正しいが故券法の何といいますか、盲点を利用しそれを免れるような手段で行つたような場合に、処罰するかしないかということは、法律の規定に基くのでありますから、これはまた別問題であります。そういうことがもし自由自在にできるというようになりますれば、今度は旅券法の根本精神がくずれますから、旅券法の修正もいたさなければならないというふうに考えております。今研究中であります。
  120. 小川半次

    ○小川(半)委員 政府態度は絶対正しいのだという解釈で行きますと、高良さんはやはり規則に反する、政府の立場に相反するということになるのでありますから、帰国後は何らかの処置があるのじやないかと私は解釈いたします。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して簡単にもう一つ申しますが、岡崎国務大臣はさつき私の出した高良さんの問題を旅券法の問題にひつからんでしまつたのですが、結局モスクワの経済会議日本代表をやつた方がよかつたかどうかということを聞かせてもらいたい。あめれだけの大きな取引をするモスクワ経済会議ですから、結局アメリカもイギリスも、フランスも全部代表を出しておる。あそこに日本代表をやる方がよかつたのか、あるいは今でも日本政府はあそこにやらなかつた方がよいとお考えになつておるか、それが一つ。それから佐々木君から国際連合の問題について、いろいろ問題が出ておるようですが、もう一つさつきのあなたの言明で非常に重要な点は、連合国最高司令官から正式にあなたのところに通知があつたかどうかということです。私がこの次に資料を出してもらいたいというのも、これは極東委員会の決定として正式にあなたのところに通知があつたかどうかということを知りたいからです。この二点だけを次会の質問もありますから確かめておきます。正式にあつたのですか。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はモスクワ経済会議に行かない方がいいとかたく信じております。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 今でも……。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もちろん。連合国最高司令官は日本政府に対して極東委員会の指令であるとか指令でないとかいうことを言つたことは、過去においてもほとんど私の記憶ではないと思います。今度もむろんそういうことを言つておる。連合国最高司令官がこうすると言えばそれでこうなる。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 連合国最高司令官は正式な声明を出している。ポツダム宣言の十二項の目的を達したから一切の占領軍を撤退する、ということを正式に日本政府に申し込んだのですね。それならそれで次会に資料をもらいます。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 連合国最高司令官は平和條約が成立すれば、占領軍は撤退するということは当然言つております。
  127. 仲内憲治

  128. 黒田寿男

    黒田委員 私は岡崎国務大臣西村條約局長にお尋ねいたします。質問の事項に従いまして適宜にお答えくださればけつこうだと思います。国際連合加盟の問題につきましては、いろいろと私は他に御質問申し上げたい点がありますけれども、きようは時間も非常におそくなつておりますので、加盟の手続及び要件に関連いたしまして、多少御質問申し上げてみたいと思います。その他の問題はまた次会に譲りたいと思います。  私は原則と申しますよりも、私どもの気持といたしまして、国際連合加盟したい、ぜひ日本国際連合加盟すべきである、こういう根本的な考え方を持つております。そのような考えを私どもは持つておりますからこそ、いろいろと加盟を困難にする問題、私どものその希望を満たし得ないようないろいろな問題があると思いますので、お尋ね申してみたいと思うのであります。この加盟を困難ならしめる問題は加盟手続規定の中にもありますし、それから加盟要件の中にもあると私は思う。これをひとつ私は御質問申し上げてみます。研究題目として御質問申し上げますので、決して議論のために議論をするという立場ではありませんから、そのように御了承願つておきたいと思います。  第一に加盟手続の規定の中に問題があると申しましたのは、これは言うまでもなく、安全保障理事会における常任理事国の拒否権の問題でありますが、しかしこれにつきましては先ほど他の委員から御質問がありましたので、きようは詳しいことはお聞きいたしません。ただ私からも政府に希望を兼ねて御質問申し上げたいと思いますことは、岡崎国務大臣がきようおつしやいましたように、申請しても加盟を許されることになるかどうかはわからないが、とにかく申請するのだというような、そのような考え方で申請をするということでは、私どもは非常に心細いと思います。私どもぜひ加盟したいと思つておりますからこそ、そのような考え方は非常に心細いと思うのでありまして、現在のままではどうしても拒否権の問題が起る可能性が多いのでありますから――私どもの希望なり意見なりを具体的に申しますれば、ソ連との間の外交関係の調整ということを考えなければ、この問題は解決しない。これはわかり切つたことでありまして私は加盟の申請を政府がするというその機会に、従来のソ連に対する外交関係に何か変化が現われて来なければならない。そうでなくてただ單にどうなるかわからないが申請するというのでは、先ほど林百郎君がなさつたような質問――これをソ連に対する政府の利益のためにする宣伝の材料に供するのではないかというような質問も起つて来るのであります。私どものように、日本国民としてまじめにほんとうに、加盟したいと望んでおります者は、現在の自由党政府の政策では加盟なんかできるものではないと思つております。どうしてもまじめにソ連との間の外交関係の調整ということを考えなければならぬと思うのであります。幸いにソ連は、最近戰争の原因が二、三年前に比べて薄らいだというような声明を、公式にスターリンの名前をもつて発表しておりますし、資本主義体制と社会主義体制とは両立し得るのだ、戰争というもので問題を解決するというようなことは避け得られるのである、こうも言つております。それからまた最近は世界経済会議を開きまして、世界全体を通じまして、純粋に商業的見地から有無相通ずる物資の交流をやろうというようなことで、とにかく協議を行つております。これに対して日本政府は、何か偏見をもつて物事を見ているように思われます。どうも岡崎国務大臣は偏見を持つておいでになるように思えるのでありますが、こういう機会は商業的見地から利用すべきであります。利用する方が日本の利益になるのであります。これはおそらく国民の大多数がそういうふうに考えておるところだろうと思います。議論になるかとも思いますけれども、念のためにお伺いいたします。国際連合加盟申請の手続をするに際して、ソ連に対する外交関係の調整ないし変更を考えておる、そういう政府態度を表明できないものでありましようか、これは非常に重大な問題であると思いますから、これについてお答えを願いたい。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はちよつと約束がありまして、二時にここを退席いたしますから、あとは條約局長に答弁をさせることにいたします。今の問題につきましては、われわれは現在のような民主主義の国是といいますか、民主主義を根本の観念として、自由国家群と緊密なる提携をして、世界の平和及び経済の発展に資すると同時に、日本も安全になり経済の発展ができるようにする。この根本方針は動かすべからざるものであると考えております。この方針が悪いというならともかくも、これが正しいものであるとすれば、この方針を変更する理由はごうもないのであります。そこでソ連との間には解決すべき懸案はたくさんあります。そこでこのわれわれのとつている根本方針に何ら変更を加える必要がなく、かつ従来の懸案がわれわれの希望するように解決するものであるならば、ソ連との話合いもあえてできないことはない意いますが、われわれの主義主張を多少でも妥協してまでそういうことをすべきものでない、こう考えております。
  130. 黒田寿男

    黒田委員 岡崎国務大臣は時間をお急ぎになつておるようですから、それではもう一つだけお尋ねいたします。  私は決して自由国家群と手を切れとか、提携するなとか、ソ連とだけ提携しろ、そういう議論をしておるのではありません。多少は日本でもそういう議論をする人もあるいはあるかもわかりませんが、しかし私はそういう人は少いと思います。私ども日本人が考えておりますことは、自由国家群とも日本は和平善隣友好関係を維持して行かなければならぬということでありますが、しかし、そのことはただちにソ連圏に対する敵対行動ないし外交上の従来の絶縁関係を続けて行く、その方針を維持して行くということに、必ずしもなるとは言えない。自由国家群とも親善関係を保つとともに、それと異なる体制を持つておりますソ連圏の国々とも、私どもは親善関係を保ち得ると思う。この幅の広い外交をやるということが、私は日本の将来のために一番正しい方法であるし、また利益になる方法であると思います。他の諸国はこれをやつているのです。モスクワ経済会議に自由国家群の人々が多数乗り込んでおります。そして自由国家群としからざるものとの間で貿易をやろうではないかというので、それを具体的に相談し、かつ実行に移そうとしておるのであります。私は日本もこれをやれと言うのです。こういう方向に向けて日本政府は外交方針を転換して行け、こう言うのであります。決して私は自由国家群と手を切れ、そんなやぼなことを言つておるのではありません。従来の自由国家群とも親善関係を保ちながら、ソ連圏とも親善関係を結ぶという、幅の広い外交をやるべきである。そのような意味におきましてソ連との外交関係の調整と申しますか、ソ連圏に対する外交方針の変更と申しますか、これをなすべきである。この方針が現われて来なければ、いくら政府国際連合加盟するということを大きな声で宣伝しても、国民はばかではありません、多少国際連合の規約も知つておりますから、政府はほんとうに国際連合加盟しようという考えを持つているのではない、こう考えます。これは当然のことです。私はそういう批評が政府に対してなされるのを聞きたくないのです。だから私は外交方針の転換をやれ、外交関係の調整をはかれ、そのお考えはないか、このように聞いているのであります。岡崎国務大臣はきよう二時までしか御出席になれないというお話ですから、この問題につきましては、きようはこれ以上質問をいたしません。岡崎国務大臣におつていただく方がいいと思いますけれども、やむを得ませんので、あとの質問は西村條約局長にいたすことにいたします。  私はただいま加盟手続の問題に関連して、日本の国連加入を困難にする問題に触れてみたのであります。そしてその困難を打開すべき政府の方針、見解について質問したのでありますけれども、はなはだ不満足でありました。私はただいまのような政府態度では、とうてい国際連合加盟などできるものではないと常識上考えます。それはそれとし次に別な角度から、はたして国際連合加盟することができるかという問題を取上げてみたいのであります。私ども加盟したいと思いながらも、なおかつできなくする問題があるのではないかと思う。この点について私は政府の所信と私ども考え方を対比して、研究してみたいと思います。戸叶委員その他の委員の御質問に対して條約局長が、軍備を持つということは加盟の條件にはならぬ。すなわち兵力による制裁参加というような義務を履行する能力ないし意思がなくても、日本加盟できる。この点を政府当局として明らかにされましたことは、私は非常に意義があつたと思います。私どももそう考えるべきであると思います。その点では改進党の委員諸君と、私どもは全然考え方を異にしておるのであります。そこで、そこまではよろしいのでありますけれども、そのあとに、私は少し深く考えてみますと、大きな問題があると思います。それを申し上げてみたいと思いますが、兵力を持つて制裁戰争に参加する義務は負担する必要はない。それでは国際連合が強制措置をとります場合に、その他に、日本国際連合加盟しておる限りは、いかなる義務があるか。これは第四十三條の「兵力援助及び便益」という文字で表わしておりますその中から兵力だけをとつたものではないかと私は考えます。そうしますと、たとえば経済的には制裁に参加する義務はあるのだ、こういうような見方もできると思います。いろいろと国際法の書籍を見ますと、その中に、この場合の援助及び便益というのは、具体的にはどのようなものであるかということについて説明をしておるものもありまして、私どももそれは読んでおりますが、なお政府の御解釈として、第四十三條の兵力を除きました他の援助義務というものは、具体的には何かということを、後の質問の前提といたしまして伺つてみたいと思います。
  131. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点につきましては、先刻国務大臣からの答弁がありましたように、国連によつてとられます集団的安全保障のための行動の内容が、具体的に何を意味するかということは、第四十三條によります各加盟国安全保障理事会との間の特別協定ができませんと、具体化されない事態にあります。第四十三條に予見されております事項は、過去約六箇年間にわたりまして、軍事参謀委員会におきまして取上げましたけれども、主要理事国の間に、根本的な意見の対立がある結果、まつたく進捗を見ておりません。同委員会で取上げられました五十くらいの項目のうち、約半数くらいの項目につきましては、大体意見の一致を見ておりますが、それ以外の事項については、まだ意見の一致を見ておりません。ですから今日から第四十三條によつて加盟国が要請されるであろう援助義務を具体的に御説明することは、きわめて困難でございまして、要は国際連合憲章の解説書などにありますような、莫とした御返答しかできない結果になる、こう考えております。
  132. 黒田寿男

    黒田委員 西村條約局長は、いわゆる特別協定がまだできていないという御趣旨のお話でありましたが、特別協定の具体的内容が何になるかということは、協定ができなければ決定いたしませんけれども、しかし何らかの援助及び便益を、国際連合加盟しております限りは、なさなければならぬという義務、これは義務として定められておる、そういうふうに解釈すべきであると考えます。この種の義務まで負わなくてもいいというのではない、この義務は負わなければならぬ。ただその義務内容特別協定ができるまでは、まだ確定しないというだけだ、こういうふうに考えるべきであろうと思います。これはいかがですか。
  133. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もちろん憲章の解釈といたしましてはさようになるかと思つております。第四十一條、第四十二條による義務は負つておるわけであります。しかし第四十三條の規定によりまして各加盟国が負う援助内容、程度につきましては、各加盟国安全保障理事会特別協定目的としなければならぬということになつておりますし、その特別協定は、各加盟国憲法上の手続によつて批准されなくてはならぬ、こういうことになつております。で現状は、よく解読書やその他にありますように、この第四十一條、第四十二條、第四十三條に関する運営が、五大国一致の原則が破綻しておる結果、まつた活動不能の状態にあるという現況であるわけであります。従つて今日私どもとしては、この三つの條文から生れて来るであろうところの援助義務が、どの程度のものであろうか、どういう種類のものであろうかということについては、完全に見通しを立てることすら、不可能な事態にあるわけであります。
  134. 黒田寿男

    黒田委員 それではさらにお尋ねいたしますが、條約局長は私の見解と同じで、具体的内容は、現在協定できぬ事情にあるけれども、しかしこの憲章において定められております強制措置に関連する何らかの行為は、日本もなさなければならぬという義務は、これはある、こう私は承りました。私もそのように思つておりますから、この点に関するお答えはそれでけつこうだと思います。そこで、しかし局長はそのようには仰せられますけれども、それではあまりに漠然としておりますから、国際法学者としての西村局長の御見解でけつこうでございますからお聞かせ願いたい。将来日本が具体的にどういう義務を負うことになるかということではなくて――そうなりますと、また言いにくいことと思いますが、そうでなくて、学者として、この「兵力援助及び便益を安全保障理事会利用させることを約束する。」と第四十三條に書いてあります場合の兵力という問題を除いそれ以外のものは、一般的に言えばどのようなものであるとお考えになつておりますか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  135. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもは今手元に軍事参謀委員会の討議の基礎になりました文書を持ち合せませんので、具体的に御答弁できないのを、非常に残念に思います。しかし、普通われわれに考えられることは、軍隊の通過、それから安全保障のための行動に参加している軍隊の行動を、何といいましようか、支持して行くために必要な調達についての協力、こういうようなものが、すぐ頭に浮ぶわけであります。私どもが知つておる問題で、軍事参謀委員会で一番問題になつた点は、この予見されている援助の中に、基地の供與というものが含まれるかどうかという点について、ソ連ソ連以外の大国との間に意見の対立があつて、解決がついておりません。それからもう一つ頭に残つておりますのは、ソ連はこの特別協定によつて国連による集団安全保障のための行動に提供される兵力というものは、各自国に駐在しておくべきものである、こういう意見に対して、その他の軍事参謀委員会委員たちは、国際連合による安全保障のための行動に必要な、最も適当と認める場所に置いてもよろしいのである、その点についての意見の相違がある。それからもう一つ意見の相違の点で顕著の点は、ソ連邦の委員は、五大国は平等の兵力を提供すべきであると、こういう意見であるのに対しその他の委員は、各加盟国の国力といいますか、各加盟国の持つておる実力に応じ兵力というものを確定すべきである、こういうふうな点がおもな問題になつておると了解いたしております。
  136. 黒田寿男

    黒田委員 大分明らかになつて参りました。国際連合に関する書物などに書いてありますところを見ますと、非常措置が行われます場合における加盟国義務を大きく二通りにわけておりまして、いわゆる兵力による制裁参加の義務、それからいま一つ経済制裁に参加する義務、こういうふうに大きくわけております。日本が国連に加盟いたしました場合に、先ほど明らかになりましたように、兵力による制裁参加の義務は、これはないのである。しかしながら、いわゆる経済制裁に参加する義務は、これは抽象的に申しますれば、あるのではないか。ただその具体的内容は、まだ特別協定ができておりませんから、明らかにすることができないというだけのことで、少くとも経済制裁に参加する義務は、これは当然負わなければならぬものではなかろうか。日本を通過させる義務であるとか、基地を供與する義務であるとかになつて参りますと、これは経済制裁参加の範囲に属するものかどうか、これは別問題といたしまして――そういうものが含まれる、現実には含まれることになる、現実に日本がそういう義務を負うことに将来なるであろうとは思います。加盟する以上はそういうことが考えられるのでありますが、それはそれとしていわゆる経済的制裁に参加しなければならぬ義務が抽象的にはある、こういうふうに見てよろしいと思います。国際法の書物にはそう書いてあります。なお政府当局の御意見を直接に承りたいと思います。
  137. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 大体黒田委員の御発言と同様の趣旨に考えております。
  138. 黒田寿男

    黒田委員 それでその点は政府の御見解はわかりました。先ほど調達義務というようなお話西村條約局長からありましたが、調達義務には物資の調達もありましようが、労務の調達も私はあると思います。そのような調達に応ずるということは、これは経済制裁に参加する義務内容一つになると私は考えるのでありますが、これは一般論としそういうように考えてよろしゆうございますか。
  139. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もちろん内容をなし得る事項だと考えております。ただ問題は、ある具体的な問題について、国際連合総会なりまたは安全保障理事会なりが、加盟国について要請をいたします決議なり決定自体の中において、各加盟国に向つて要請される援助範囲が規定される、明らかにされる、こういうふうに考えておる次第であります。
  140. 黒田寿男

    黒田委員 一般論といたしまして、調達の中に、たとえば労務の調達も含まれるというようなことになるといたしますと――また私はそうなるのがあたりまえであると思うし、労務の調達に応ずることはできないというようなことは言えないと思います。こうなつて参りますと、日本の内地だけで労務の調達に応ずるだけなら、問題は比較的少ないのでありますけれど、戰地において労務を提供するというような義務も負わなければならないようなことになると、問題が起るのではないか、こう私は考えます。現に朝鮮に出動いたしております国際連合軍は、日本人の労務を確かに朝鮮に持つてつて利用しているのであります。これは進駐軍関係の労働組合の方から国会の私どもに対しまして陳情書が来ておりますものの中に書いてありますから、明らかなことであると考えます。兵力を供出する義務を負つていなくても、国際連合に参加する以上は、経済制裁に参加する義務を負担することになるのでありますから、私はどうしてもこういう義務は免れないことになると考えます。その点につきまして政府の御解釈を承つてみたいと思います。
  141. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点につきましては、少しく意見を異にいたします。と申しますのは、第四十一條で見ておりますのは、兵力の使用に至らない場合でございまして、国連側から加盟に対して要請されることは、外交関係を断つとか、交通通信関係を断つとか、経済関係を断つとかいう消極的な措置でございます。御指摘になりましたような事項は、第四十三條で見ておりますので、国際連合のとる行動に対して與える「援助及び便益」――その前に「兵力」がございますが、「援助及び便益」を提供するということで、こちらの方でカバーされる事項でございます。そうしてこの第四十三條につきましては、各加盟国がいかなる内容の事項をいかなる程度に提供して行くかということは、当該加盟国安全保障理事会特別協定できめるということになつてつて、その現況は先刻申し上げた通りでございますので、今御指摘の問題は、第四十三條との関係において解決されるべき問題だと存じます。日本といたしましては、むろんそういう特別協定が他日できるようなことがあるといたしますならば、その協定は第四十三條の規定によりまして、憲法の手続に従つて批准されなければならないとありますので、日本政府としてはむろんのこと、国会としても、特別協定内容日本憲法と打略することがないように、十分検討いたす機会を持つわけでありまして、御懸念のような事態には立ち至らないで済むものと考えております。
  142. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田さん、またひとつ次会にお願いいたします。
  143. 黒田寿男

    黒田委員 これからの問題が大事なのですが……。
  144. 仲内憲治

    仲内委員長 それはひとつ次会にお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。次会は来る四月十六日午前十時より開会することといたします。     午後二時二十六分散会